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1997-06-16 第140回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十六日(月曜日)     午後二時五十九分開議 出席委員   委員長 逢沢 一郎君    理事 鈴木 宗男君 理事 福田 康夫君    理事 森山 眞弓君 理事 東  祥三君    理事 玄葉光一郎君 理事 松本 善明君       安倍 晋三君    石崎  岳君       柿澤 弘治君    河野 太郎君       櫻内 義雄君    新藤 義孝君       原田昇左右君    森  英介君       坂口  力君    島   聡君       松沢 成文君    丸谷 佳織君       山中 燁子君    若松 謙維君       井上 一成君    藤田 幸久君       古堅 実吉君    保坂 展人君       平野 博文君  出席国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君  出席政府委員         外務大臣官房長 原口 幸市君         外務大臣官房領         事移住部長   齋藤 正樹君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省経済協力         局長      畠中  篤君         外務省条約局長 林   暘君  委員外出席者         内閣官房内閣安         全保障室内閣審         議官      山崎信之郎君         警察庁警備局警         備企画課長   小林 武仁君         外務省中南米局         長       田中 克之君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ――――――――――――― 委員の異動 六月十六日  辞任         補欠選任   伊藤  茂君     保坂 展人君 同日  辞任         補欠選任   保坂 展人君     伊藤  茂君     ――――――――――――― 六月十二日  二百海里体制早期実現のための外交展開に関す  る請願鈴木宗男紹介)(第四六九九号)  ILOパートタイム労働条約の批准に関する請  願(岩田順介紹介)(第四七〇〇号)  核兵器完全禁止核廃絶国際条約締結に関す  る請願中桐伸吾紹介)(第四七〇一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 逢沢一郎

    逢沢委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣池田行彦君。
  3. 池田行彦

    池田国務大臣 昨年十二月に発生した在ペルー日本大使公邸占拠事件は、御承知のとおりの形で終結を見ました。しかし、この事件は、人質やその家族の方々を初め多くの人々に多大の苦痛をもたらし、日本ペルー両国を初め世界各国政府国民に非常な御心配をおかけする結果となりました。  私としては、この事件を深刻に受けとめ、人質解放の後直ちに在ペルー日本大使公邸占拠事件調査委員会設置し、事実関係の究明、政府対応の総括、反省点及び今後の改善点について調査を行うことにしておりましたが、今般、調査の結果を取りまとめた報告書が完成いたしました。  本件報告書は、既に委員各位にもお配りしてございますが、報告書のよって立つ基本的な考え方を御説明したいと思います。  在外公館の安全の確保は、第一義的には接受国の責務でありますが、我が国としても自国の在外公館を危害から守ることを専ら接受国にゆだねているわけではなく、在外公館安全確保のために独自の警備体制を持っております。  本報告書は、このような我が国自身警備体制調査対象の中心に据え、情報収集及び警備上の問題点、反省すべき点、改善すべき点について調査いたしました。  調査結果から見て、私としては、本件事件において、個別の職員に具体的な職務遂行上の落ち度があったとは考えておりません。しかし、任国の治安情報収集分析体制につき改善の余地があったこと、公邸警備盲点があったことは否めず、事件発生により我が国外交に対する国民信頼を損なったことはまことに遺憾であり、この点についての外務省責任は重大と考えております。  私自身責任及び関連職員処分については、去る六月十二日に公表したとおりでございますが、私としては、本件報告書に示された問題点反省点を踏まえて、在外公館警備体制情報収集体制を初めとする具体的措置を着実に実行するとともに、外交活動に対する国民信頼を一刻も早く回復するよう全力職務を遂行する覚悟でございますので、引き続き委員各位の御指導と御鞭撻を賜りたいと存じます。
  4. 逢沢一郎

    逢沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木宗男君。
  5. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣ペルー報告書に関する質問をする前に、恐らく現時点で今国会での外務委員会質疑は、時間的にはきょうが最後かなと思いますので、私はこの国会で二月二十一日、さらには四月十八日に質問をした経緯もありますので、その関係について二、三前もってお聞きしたいと思います。  日中と日韓漁業交渉でありますけれども、次回いつ行われて、少なくとも政府与党共通認識として、タイムリミットとしては七月だというような認識の中で交渉をされてきたと思っているのです。  しからば、六月十三日、全国漁民大会も東京で行われました。この際、我が党の加藤幹事長は、日中、日韓協定廃棄も辞さずという極めて強い姿勢をもって外交交渉に臨んでもらいたいと、アジア局長もまた同席しておったから、その意気込みなり雰囲気は十分わかったかと思うのでありますけれども大臣から、次の日中、日韓交渉がいつ行われるか、同時に、まとまらなければ、外交交渉ですからまとまらないこともあるわけですね、そのときやはり私は現行協定廃棄もやむを得ない、こう思っておるのですけれども、その点もあわせてお答えをいただきたい、こう思います。
  6. 池田行彦

    池田国務大臣 韓国との関係におきましては、去る十三日に漁業実務者協議を開催いたしました。そして、次回をいつ行うか、まだ確定はしておりませんけれども、七月の上旬に次回の協議を行う、こういうことで今詰めておるところでござい ます。  そして、十三日の協議におきましても、我が国国内における非常に厳しい状況につきましては、これまでも伝えてまいりましたけれども、今回は特にそこのところを詳細に、また念入りに伝えた上で交渉早期妥結を強く働きかけたところでございます。そして、先ほど申しました、七月上旬に予定しております次回の協議がいかに大切か、重要であるか、どうしてもここで解決を見出すべく最大限の努力お互いに傾注しなくちゃいけないということを先方に伝えておるところでございまして、我が方としてもそのような心構えで鋭意努力してまいりたい、こう思っております。  中国に対しましても、累次の交渉におきまして、我が国考え方はもとよりでございますが、国内の厳しい状況についても十分に伝えた上、早期妥結を働きかけておるわけでございまして、今後とも鋭意努力をしてまいります。  先ほど委員が御指摘になりました、十三日に開催されました全国漁民大会における自民党幹事長の御発言、決意の表明も、私ども承知しております。そういった状況も十分に踏まえながら、何としても解決へ向かっての道が開けるように全力を傾注してまいりたいと思います。そして、先ほど御指摘のあったような、委員初め国内の強いお立場ということも十分念頭に置きながら、交渉に当たってまいりたいと存じます。
  7. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣中国についての次回交渉も、これはセットされているわけですね。
  8. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 中国につきましては、六月二十日からとりあえず二十三日まで北京において次回交渉を開催する予定でございます。
  9. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、この日韓日中関係もこれは極めて大事であります。同時に、日本漁民皆さん方の思いというものもまた特に私は大事にしなくてはいけないと思っているのです。しからば、お互い外交ですから、これは考え方があって、特にまた国益をお互い尊重するわけでありますから、なかなか難しい問題もあろうかと思いますけれども、私はやはり現行協定廃棄も辞さずという強い姿勢で臨まなければ、この問題はまとまらないと思うのですけれども、その認識大臣と私では共通だということでよろしいですか。
  10. 池田行彦

    池田国務大臣 現に外交交渉を継続しているところでございますので、今の段階で私の立場でそれがうまくいかなかった場合を仮定して、前提にしてあれこれ申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じますが、先ほども答弁申し上げましたように、委員初め与党においても、あるいは関係漁業者方々の間においても、大変強いお気持ちがあるということは十分承知しておりますし、それを私どもも踏まえましてこの交渉に臨んでまいるつもりでございます。
  11. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣交渉中であることは私も百も承知なんですよ。交渉の任に当たっている人が、重要な意味を持つ交渉になる、いわゆる例えば七月上旬、韓国との間で開く会議は。重要な意味を持つ交渉というのは、国内世論はこうですよということを明確に言っているわけでしょう、交渉に当たっている大臣部下の人が。ですから、大臣交渉に当たっているその部下の人よりもバックした答弁をしていると、私はこれは外交にならぬと思いますよ。同じラインで進めていかなければ、逆につけ込まれるもとになると思っている。だから私は確認しているのです。  少なくともこの六月十三日のソウルにおいては、日韓漁業交渉においては、次回交渉が重要な意味を持つ交渉になる、その重要な意味ということは、現協定廃棄も辞しませんよ、そのくらい国内は強いのですということをきちっと伝えているわけですよ。ですから、それを私はきちっと大臣の口から確認したいと思って言っているのですから、ブレーキとアクセルを一緒に踏むような話は私はいかがなものかと思うのです。外交交渉というのは一貫性がなければこれは成功しませんから、その確認をしているのです。
  12. 池田行彦

    池田国務大臣 従来の交渉におきましても、私自身の口からも、相手国に対しまして、日本国内の非常に厳しい状況、そうして強い御主張というものを伝えながら交渉してまいりました。そうして先般、十三日の実務者協議におきまして我が方代表が先方に伝えた強い姿勢も、私ども十分連絡調整の上でしたことでございます。そういったものを踏まえてこれからも交渉に当たってまいります。
  13. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 どうぞ大臣、次の交渉、まさに私は山場だと思いますから、背水の陣と言ってもいいと思いますので、担当者を督励してもらいたいし、まとめるのがやはりこれは一番でありますから、それに向けての努力をお願いしたい、こう思います。  次に、ユジノサハリンスク出張在官事務所設置が決まったわけでありますけれども、その立ち上がりの時期がいつになるか、これは明確にしてもらいたい、こう思います。
  14. 浦部和好

    浦部政府委員 先生御指摘のように、平成九年度予算におきましてユジノサハリンスク出張在官事務所設置を認めていただいたところでございます。  現在、事務所の物件の調査を行う等、可及的速やかに事務所を立ち上げるべく所要の手続、作業を進めている状況でございます。
  15. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 欧亜局長さん、その時期は。
  16. 浦部和好

    浦部政府委員 例えば十月ごろを目標に、いずれにせよ年内にも、今、現地領事事務のニーズにこたえることができるよう手当てすることとしております。
  17. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、大体大使館を新しく設置する、あるいは領事館を設置する、事務所設置するというと、今の予算上の慣行で、人の問題があるものですから第四・四半期に今までおくれてきましたけれども局長の言う十月というと、過去の例から比較するならば前倒しなんですね。ですから、十月目標ということは、それは大臣も約束できますね、立ち上がり
  18. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど欧亜局長から御答弁いたしましたように、いろいろな準備の関係もございますけれども、例えば十月にもということで、いずれにしても年内には設置できるようにということで鋭意努力をしているところでございます。
  19. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 北方四島問題ではやはりサハリン州との関係が大事でありますから、これは一日も早い立ち上がりが必要でありますから、今の大臣答弁、さらには局長答弁で言う十月ごろを目標というのをぜひとも実現をしてもらいたい、強くお願いをしておきます。  そこで、デンバーサミットが間もなく開かれますが、日ロ首脳会談、私は、ロシアが初めてサミット正式メンバーで参加するという中で、極めて大きな意味合いを持ってくると思うのですけれども橋本エリツィン会談は二国間ではいつ行われる予定でしょうか。
  20. 池田行彦

    池田国務大臣 実は、サミットの全体の行事との関係、それからまた、その際行われます他の二国間の会談日程もございまして、まだ具体的な日時は確定はしておりません。けれども、例えば二十日の朝のうちにもできないか、そしてまた、それは実質的な中身のある会談にしなくてはいけませんので、それが可能になるような時間をとってということで、目下調整しているところでございます。
  21. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 池田大臣がモスクワに行った際、エリツィン大統領会談のとき、大統領はそばにいるプリマコフさんに、橋本総理との会談は十分な時間をとれと指示した、池田大臣も満足そうにうなずいておったというふうに私は聞いておるものですから。  デンバーサミットでの日ロ首脳会談は極めて大事だ、意義のあるものだと私は思っているのですね。二十日の朝、各国首脳との会談もありますから、恐らくもうあらかた詰まっていると思いますけれども、事務的に欧亜局長、私らにも情報が入ってきていますけれども、この段階である程度、具体的に詰まっているのではないですか。
  22. 池田行彦

    池田国務大臣 これは欧亜局長というよりも、私の方から御答弁した方がよろしいかと存じま す。と申しますのは、サミットの際には、サミット自身行事もいろいろございますし、また欧亜局長所管外のいろいろなバイの会談もございますので。  そういうことでございまして、先ほど私が御答弁申し上げましたように、残念ながら具体的にまだ確定には至っておりませんけれども、二十日の朝という方向で今最終的な詰めをしているわけでございます。
  23. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 細かいことで大臣に聞くのはいかがかなと私は思って、今欧亜局長に話を振ったのでありますけれども。  事務的にも日程は詰まっておって、アメリカ大統領との日程は極めて難しい、しかしほかの方は大体詰まったやに私は伺っておりますから、二十日の朝行われることは間違いない、こう思うのですけれども。  どうぞ大臣エリツィンさんの親書も来た、また橋本さんの親書大臣が持って行ったということで、エリツィンさんも年内会談しましょうということになっておりますから、この点やはり前向きにとらまえて、橋本総理も肩ひじの張らない会談をしたい、こう言っております。日ロ首脳会談というと、すぐ何か成果がなければできないというのが今までの流れでしたけれども、私は、会うことに成果があると思っています。まずは信頼醸成をつくることが大事だ、こう思っております。  とにかく、デンバーサミットで、恐らく橋本さんとしても訪日についての何がしかのお答えを出すということをネムツォフさんにも言っているわけですから、ぜひとも前向きで検討してもらいたい。  同時に、現時点外務大臣としては、橋本訪ロをいつと考え、また戦略としてどういうふうに持っていきたいと思っているか、お尋ねしたいと思います。
  24. 池田行彦

    池田国務大臣 今委員も御指摘になりましたけれども、私ども日ロ関係の今後について、基本的に、会談をやった以上何かそこですぐに具体的な答えをということではなくて、これまで、特に橋本内閣成立以来いろいろなレベルで、またいろいろな分野で、両国間の関係、交流を深めてまいりまして、かなり信頼関係が醸成されつつあると思うのでございます。それを今回は、もう既に何度か会っておられますけれども首脳間での対話の強化ということをお互いに約束しながら信頼関係を高めていく、そのことに非常に大きな意義があると、委員指摘のとおりに考えております。  そしてまた、橋本総理訪日関係につきましては、今も御指摘ございましたが、エリツィン大統領の方から、先般私が参りましたときもお話ございましたし、また先般来日されましたネムツォフ第一副首相が橋本総理を表敬されました際に、総理の方から、最近の親書やりとりども踏まえながら、デンバー大統領と直接話し合って、平和条約締結による日ロ関係完全正常化という問題も含めて、二十一世紀に向かっての両国関係を、ダイナミックに進展を図るために一緒に考えていきたい、こういうことをおっしゃり、具体的な訪日の問題についても、デンバーの際には自分としての考え方を明らかにしたい、こういう気持ちをにじまされたわけでございます。  今私がいつと申し上げられるまでにまだ固まっておりませんけれども総理のそのような熱意のあるお考え方、そして姿勢というものを前提にして、両首脳間でデンバーで話し合いがされるものと考えている次第でございます。
  25. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 そこで大臣、もう一つ。  このデンバーでのエリツィン橋本首脳会談はもちろんですけれども大臣プリマコフさんと当然お会いになると思いますね、デンバーでは。日ロ関係で今大事なことは、できることからやっていくということです。それは四島周辺の安全操業枠組み交渉しかないと思っているのですが、この問題も当然、大臣の方からも切り出すべきだと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
  26. 池田行彦

    池田国務大臣 プリマコフ外相と私との間ではもう何度も会談を持っております。先般持ちましたのは第六回目でございましたか、そしてもとより、今度デンバーへ参りましても、またいろいろお話しすることがあると思います。  ただ、それを具体的に首脳会談とは別個の外相会談ということで設定するかどうかはまた別でございますけれども現地に行きましたら、しょっちゅう同じ会議に出ているところでございますし、ちょっと時間があったら、おい、ちょっと話をしようよということでやりとりもできる間柄になっておりますので、いろいろな問題を詰めてまいりたいと思います。  そういった中で、今御指摘のございました枠組み交渉は、当面の日ロ関係を進展する上において非常に大きな問題である、大切な問題だということは共通認識になっておりますので、その点についてもしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。
  27. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今の点はくれぐれもよろしくお願いしたいと思います。  ペルー問題についてお尋ねします。  今、ペルー報告書を踏まえての大臣からのお話もありましたけれども、この報告書を見ながら、大臣事件が起きた、さらには事件の最中、そして終わってから、大臣として青木大使に対してどんな評価あるいは感じを持っておるか、手短にお答えをいただきたいと思います。
  28. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、事件発生に至るまでの、あるいは事件の発生したことについての大使対応をどう評価するかという点でございますが、報告書の中にもございますように、私は、大使も含めまして個別の職員対応に具体的な落ち度があったとは考えておりません。  しかしながら、結果としてああいうことが起きましたし、この報告書にもございますように、情報収集で、今になってみるとこうしておけばよかったなという改善をすべき点があることも事実でございますし、また、警備体制にも、あの隣の建物から侵入してくるということを想定していなかった、いわば盲点になっていたということがあったことも事実でございます。そういったことも含めまして、在外公館の長として、やはり、あのような事件が起きたということを考えますと、それは責任を全うしたとは言い切れないという点はある、そういったことで、先般のような厳重訓戒という処分はしたところでございます。  しかし、繰り返し申しますけれども、決して、それまでの大使対応国家公務員法責任を問われるようなことはもとよりございませんでしたし、具体的な落ち度があったとは思っておりません。  それから、事件が起きまして以来の、とりわけ事件決着に至りますまでの、あの四カ月を超える長い間の人質生活の中での青木大使対応につきましては、一部にいろいろなことをおっしゃる方もありますけれども、私は、全体として、本当にあの長期間にわたって、人質方々の間で極力冷静、そして平静を保ちながら対応できた、それはやはり青木大使の沈着な対応が、大いに力があったんだと思います。もとより、その期間におけるテロリストとの対応においても、私は、そういう意味では大使対応は評価されてしかるべきものである、こう考えております。
  29. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、私も、極限状態におけるあの百二十七日間という中で、本来大使館の中で暴発が起きても不思議じゃない、こう思うんですよ。起きなかったというのは、やはり私は青木大使の頑張り、忍耐、もちろん館員だとか民間人質協調性もあったかと思いますけれども、しかし、その中での責任者青木大使でありましたから、私は、この青木大使の頑張りというか努力というのは評価してやっていいと思うんですね。しかし、どうも人質が解放された後、いい意味で伝わってこなかった、これはお互いに不幸だったと私は思うんです。  同時に、今、大臣ですから言葉を選んで答弁されていると思いますけれども外務省最高責任者大臣でありますから、もっと大臣は胸を張って、我が省、外務省職員はよくやっている、お互い連係プレーお互い後方支援があって、最終的にはこういう結果となった、私はもっと、我々政治家もそうですけれども大臣の口から、評価していいものは評価するという明確なメッセージが必要だと思うんです。  この点、慎重過ぎたり、ちょっと腰が引くと誤解される面もありますので、やはり外務省最高責任者大臣でありますから、私は、青木さんの今の立場を見ても、あの極限状態の中ではよくやったという共通認識の中で、さらに、あの青木さんの能力だとかあるいは人柄というものは生かすことがまた外務省のためになる、こう思うんですけれども、どう思いますか。
  30. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおりでございまして、三人のとうとい犠牲者が出たということはございましたけれども人質の大部分が無事に解放された、しかも、テロリズムの要求に屈することも避けられた、このような決着が見られたということは、いろいろな要因はございますけれども、その中で、やはり人質方々があの長期間の極限状態に耐え、しかも冷静に全体として対応できたということが、この解決を可能にした大きな要素であったと思います。  そして、その中で青木大使があのような対応をされたということが、人質方々の全体としての冷静な対応をも可能にしたわけでございますし、また、テロリストとの間の対応においても、やはり暴発状態を避けるという意味でも、大きな役割を果たされたんだ、このように考えております。全体として、この事件解決を可能にした一つの大きな要素は、青木大使の冷静、沈着な対応であったと評価しているところでございます。
  31. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 そこで、大臣、この報告書が、私から見れば、抜本策にはならないなという心配を持っているんですね。  例えば、この「事件を振り返って」という提言を見ましても、警備官をふやすだとかあるいは民間警備会社を使うだとかという話がありますけれども、少なくともテロリストという玄人集団がねらってきた場合、警備員をふやしても、あるいは警備会社を雇っても、私は解決にならぬと思います。特に、アメリカでも、ドイツでも、イギリスでも、あるいはイタリーでも、軍を派遣したり警察官を派遣したりして国で対応していますね、いわゆる危険度の高いところにおいては。  私がお尋ねしたいのは、この報告書をつくる際、在外公館警備について、例えば警察官だとか自衛隊を組織として派遣する、そういった検討がなされて初めて私は抜本策になると思うんですね。この「日本人による在外公館警備の強化」について、「我が国自身の法体系との関係等検討を要する点が多い。」と言って、若干これはぼかした報告になっていますね。法改正してでも、自衛隊だとか警察官の派遣も考えなくてはいけない、危険な国には。そういう検討がなされたかどうか、お尋ねしたいと思います。
  32. 池田行彦

    池田国務大臣 この報告書全体の前提になっているところでもあり、また、先ほど私も冒頭で御説明申し上げました中で簡単に触れましたけれども警備の第一義的な責任接受国にある、こういうことでございますので、まずそれを前提にして、そして我が国自体としてどうするかというふうに考えていく、この前提がございます。  そういった中で、私どもとしてもいろいろなことを検討し、例えば情報収集の面での改善であるとか、今委員も御指摘になりました警備員の増強であるとか、いろいろ考えております。それで、そういった中に、我が方の警察あるいはそういった警備の方の専門的な知識あるいは能力をお持ちの方を派遣するということも、将来検討しなくちゃいけないんじゃないかということも、報告書に書かせていただきました。  そして、ただ、今委員が具体的に御指摘になりました、例えば警察のそういった警備あるいは場合によってはレスキュー、救助の役割を果たす方々を、部隊というか、あるいはグループとして出すとかどうかという点につきましては、これは外務省だけで判断できる問題ではないと思います。  まずは、そういった警察の能力等は、日本国内でそのような緊急な事態が起きた場合にどう対応するかということで、これまでもいろいろ努力もしてこられたと承知しておりますが、まずそれがあるかどうか。その上に立ちまして、また、海外で活動するためには相手国の同意というものが前提になるわけでございます。そういったことも踏まえながら、今後の、国内関係省庁あるいは内閣全体として少し時間をかけながら考えるべき課題がなということで、この外務省としての報告書の中では、必ずしも方向性は明示せずに、今御指摘になりましたような表現で記述しているところでございます。
  33. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ということは、大臣調査委員会のこの報告書をつくる、作成の中では、自衛隊の派遣だとか警察官の派遣等も、一応検討というか、勉強したという認識はしていいんですね。
  34. 池田行彦

    池田国務大臣 具体的な検討までは、正直申しまして、やっておりません。しかし、そういうことが将来の課題にはなり得るという認識はございました。そういったことで、ごらんのとおりの記述になっているわけでございます。
  35. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、私は、外交官は、時には命をかけなくてはいけないし、今までもそういった例が多々あります。不幸な犠牲になった人がたくさんいますね。在外の任地によって、環境が悪いだとか、あるいは単身で行って、大使の中には、ガスのスイッチを間違って入れて亡くなったとかあるんですね。  さらにはまた、絶えずテロの危険だとか、あるいはまた、国の名前は出しませんけれども、青年海外協力隊も女性なんか出せないという治安の悪いところもあるわけですから、やはり国内の法整備はもちろんですけれども、少なくとも、国益を考えて命がけで頑張っている外務省皆さん方が、より名誉と誇りを持って働ける環境づくりをするためには、やはり自衛隊だとか警察官を、その国の状況に応じてきちっと組織として派遣することも今検討すべき時期でないか、私はこう思うのですね、今回のペルー事件を機に。  そこで、あえて質問させてもらったのですけれども報告書だけではあくまでも報告書であって、いま一歩抜本的な改善策にはなっていない、私はこう思います。国内の危機管理、安全保障の問題も大事でありますけれども、今や一千八百万の海外旅行者、さらには、在外には六十万から七十万働いている人がいるわけですね。そういった人たちのセキュリティーを考えた上でも、やはり法改正も含めて、組織で人を出すということをまずは検討していくべきでないかと私は思いますけれども大臣、いかがでしょうか。手短にお願いします。
  36. 池田行彦

    池田国務大臣 私どももそういったことが将来の検討課題になり得るということは考えております。先ほど御答弁したとおりでございます。  ただ、一般的に申しまして、一義的には接受国責任であるということ。それから二つ目には、やはり外務省だけの判断ではなくて、検討するならば、内閣全体として検討しなくてはいかぬものであろうということ。それから三つ目には、やはり能力の問題も勘案しなくてはいけないということ。  いずれにいたしましても、そういうことをもし実行するとするならば、それはまず相手国の同意というものが前提になるということである、そういうことを考えながら、先ほど申し上げたような御答弁をしたわけでございます。
  37. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ぜひとも前向きに検討してもらいたい、私はこう思っております。  大臣外務省の正面のエレベーターホールのところにハトに戯れる像がありますけれども、御存じですね。あそこの横に顕彰碑があります。あそこの顕彰碑の中身を御存じでしょうか。
  38. 池田行彦

    池田国務大臣 申しわけございません。まだ外務省内を子細に点検するいとまがございませんので、承知しておりません。
  39. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、ぜひとも見てもらいたい、 こう思うのですけれども、   我が国の今日の平和と繁栄は多くの先人の労苦を礎として築かれたものである。外務省職員とその家族の中にもこのために尽くし、尊い生命を犠牲にした者が少なくない。  これらのひとびとを偲びその功績を永久に称えてここに顕彰の像を建立する。     昭和五十六年五月  外務省職員一同 となっているんです。  私は、これは外務省職員の素直な気持ちだと思っています。同時に、そのくらい誇りを持ってやってきたあかしだと思っているんですね。  そういった意味では、今回のペルー事件を含めても、やはり人が足りない、情報収集が足りなかったと大臣は言った。しからば、情報収集はやはりマンパワーです。これは機械ではできません。どうしたって人が必要だということです。  今構造改革だ、財政改革、再建で大変だと言われますけれども、少なくともこれから日本が常任理事国入りをしてさらに国際社会の中で頑張りたい、貢献をしたい、こう言うならば、最低の要員は必要でありますから、閣議でも大臣には堂々と言うべきことは言ってもらいたい。同時に、我々政治家もしっかりとそのサポートはしてまいりたい、私はこう思うのですね。要員の関係について、ぜひとも大臣、我々も応援しますけれども、中でも十分検討して、それなりの整合性を持った中で予算獲得等やっていきたい、私はこんなふうに思っているのです。  ついては大臣、要員について、ペルー事件を機に、例えば来年は最低何人必要だという数字なんかを明示すべきだ、私はこう思っているんですが、いかがでしょうか。
  40. 池田行彦

    池田国務大臣 外交活動を支える一番の力がやはり有能な外務省職員であるということは、私どももそのとおりに考えております。そして、外務省の定員につきましても、当委員会委員の皆様方を初め各方面の御理解をちょうだいしながら、このところ大分充実させていただきました。しかしながら、諸外国の陣容と比べますと、依然としてまだまだ不十分であるというそしりは免れないと思います。  そういった意味で、今、行政改革あるいは財政改革の重要性が叫ばれる中ではございますけれども、私ども、もとより人員の配置なりあるいは稼働の体制なりについてあらゆる努力をするのは当然でございますが、そういったことも織り込みながら、なお必要な定員の充実については今後とも求めていきたいと思っております。ただ、具体的に平成十年度についてどうこうということは、今持っているわけではございません。  ただ、その観点で一点だけ申し上げさせていただきますと、先般来、閣議と申しましょうか閣僚懇談会の場におきまして、総務庁長官の方から、定員の削減を進めなくてはいけないんだけれども、そう簡単にこれは進まないので、まず新規の入省者を抑えていきたい、新規採用を来年からまず従来の半減するということで協力をしてほしいというお話が何度かあったわけでございます。  私は、その閣僚懇の立場においても、一般論としてそういうことをおっしゃるのはわからないではない、しかし、基本的にはまず行政の役割、機能というものを見直して、その関連で定員をカットしていくべきものであって、それが難しいからといって採用をカットするというのはいかがかということを申し上げると同時に、事外務省につきましてはいろんな要因がありますと。  例えば、各省におきましては、いわゆる肩たたきという名前の勧奨退職ということを通じて、早目早目に退職しておられる数が多いので、今話題になっているような新規採用の大幅減ということがありましても、その勧奨退職のところを調節して、例えば定年まで者お勤めいただくということにすれば、実員を確保するということは可能なんだけれども外務省の場合は、既に肩たたきというのがほとんどない。おやめになる方の大体五%前後でございます。そうなると、せっかく認められた定員も、そういった入り口のところで抑えられるために、与えられた定員すらも充足できないという状態を強いられるというような点も指摘しながら、外務省にとって要員の充実が重要であるということを力説したところでございます。  今後とも、先生方にもひとつよろしくお願い申し上げます。
  41. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 我々政治家もちょっと外務省に対して偏見というか、正しい評価をしない人たちもおります。しかし、今国際社会の中で日本の果たすべき役割は重いし、私は、どの役所よりも、愛国心だとか国家に対する忠誠心を持って働いているのは外務省が一番だ、こう思っていますから、どうぞ大臣のもとでしっかりと、職員を勇気づけたり、より誇りを持って働ける環境にしてもらいたいし、私どももまたこのことはサポートしなくてはいけないかな、こう思っておりますので、ますます大臣の頑張りを期待したい、こう思っております。
  42. 逢沢一郎

    逢沢委員長 次に、藤田幸久君。
  43. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 私の公務の都合で時間を繰り上げて質問をさせていただく御配慮、関係者の方々にお礼を申し上げたいと思います。  ペルー人質事件について御質問を幾つかさせていただきたいと思います。  まず、こういう事件が起こりますと、レポートが出てもどうしてもネガティブな批判等が出るわけですが、一方で、余りマスコミ等で伝わっていないことで、外務省の体制の面で実は今までにない取り組みをされていい成果が上がったのではないかと思われる点、たまたま私が存じ上げている点がございますので、その点について御質問したいと思います。  百二十七日間の間に四名の局長が輪番制で毎晩泊まられていた。きょうも来ていらっしゃいますが、条約局長さんと官房長と国際情報局長と総合外交政策局長さんですか、泊まられていたと。例えば、予算編成のときに大蔵省の局長さんが泊まられるかというと、恐らくないんだろうと思いますし、それから、阪神・淡路大震災のころに関係の省庁の局長さんが相当長い間泊まられていたというようなことも恐らくないのではないか。つまり、外務委員会で大変難しい質問お答えされていた合間に、実は毎晩四人の局長さんが交代で泊まられていたというようなことも聞いております。  それから、このニュースが、つまり侵入事件が起こって二時間後には、新しくできた地下のオペレーションルームで対策本部ができていたというようなことも聞いております。こういったことは余りマスコミ等で目にしてないのですけれども、こういう点は実際に、日本政府のシステムあるいは官僚制度等々の状況からいいまして、極めて画期的なことではないかと思っておるんです。そういう今までにない取り組み、今までのいろいろな経験の蓄積もあったのかもしれませんけれども、そういったことについても、せっかくでございますので、お聞かせいただきたいと思います。
  44. 池田行彦

    池田国務大臣 必要でございましたら詳細政府委員から答弁させますけれども、私から概略申しますと、昨年十二月十七日でございました、午前の八時半ごろでございますけれども。この事件が発生しました後、我々その報に接して直ちにその対応を始めまして、今おっしゃいましたようなオペレーションルーム、これはたまたま移転をいたしまして新しくできたばかりでございましたけれども、そこでその対応を開始いたしまして、事件が発生してから二時間後には事務次官を長とする在ペルー大使公邸占拠事件緊急対策本部を設置して、関連する情報収集あるいはその情勢の把握に努めたところでございます。そして、その際には、もとより私もオペレーションルームに参りましたし、橋本総理も駆けつけてこられていろいろ対応をしたところでございます。  さらに、現地の方におきましても、御承知のとおり、大使以下人質状態にとられたわけでございますので、これをどうするかということでございまして、十八日の朝、これは現地時間でございますが、その時点で既に近隣公館からの応援要員の第一陣が到着いたしまして、その日の夕刻には、 当時のサンパウロ総領事、今中南米局長として本委員会に出席しておりますけれども、田中総領事が現地入りした。そして、九日には寺田野メキシコ大使もリマに到着してということでございまして、その後順次本省からあるいは関連近隣の公館から、さらには関係する省庁の応援もちょうだいいたしまして、現地態勢を整えてきたところでございます。  それから、先ほど委員の方から御指摘ございましたように、東京の緊急対策本部におきましては、四局長が百二十七日間交代で泊まり込みでその指揮をとったわけでございますし、またさらに審議官、課長レベル、あらゆるレベルで遺漏のないような対応をとったところでございます。  私ども、もとより、このような事件が起きたわけでございますので、胸を張って申すわけにはまいりませんけれども、我々なりに、現地においてもあるいは東京においてもこの事件への対処、対応に誤りなきよう、また最善を尽くすように努力はしたつもりでございます。
  45. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 もう一つ、余り伝わってない出来事で、ちょっと直接質問通告をしておりませんが、知っている範囲で申しますと、よくマスコミに出ました共同通信とテレビ朝日の侵入事件というのがございましたが、一方で、NHKがいわゆるMRTAのセルパ代表の方から単独インタビューを申し込まれた。NHKの方でもちろんのどから手が出るほどインタビューをしたかったけれども、結果的に、MRTA側の目的に利する可能性があるということで断って、単独インタビューをしなかったという話を聞いております。  これなんかは、余り報道では伝わっておりませんけれども、やはり長い解決のプロセスの中で非常に意味があったのではないかという気もするんですが、これについて、もしコメントがございますれば、いただきたいと思います。
  46. 池田行彦

    池田国務大臣 今回の事件は極めて重大な事件であると同時に、また特異な事件でもあり、我々外務省だけではなくて、この事件にかかわりを持った各方面に、なかなかどういうふうに対応をすべきか、必ずしも経験がないだけに、いろいろな動き、ある意味では試行錯誤というようなこともあった、こう思います。これは、報道に当たられたメディアの方々についても同じだったと思うのでございます。  そういった中で、私は、一つ一つの出来事について、外務省としてあれこれコメントするいあるいは評価するというのは適切かどうか存じませんけれども、我々としては、極力そういった報道の体制も事件解決にマイナスの影響を与えないように、とりわけ人質方々の安全にあしき影響を与えないように配慮をちょうだいしたいなということを常に念願しておりまして、また、そのようなことは一般的な形でも、また場合によりましては特定の事態に対する対応についても、我々としての希望はお伝えしたことはございました。  そういった中で、今委員が御指摘になりました、かなり早い段階においてNHKがテロリスト側からのいわばインタビューの誘いに対して、いろいろな観点から、特に人質の安全、そしてこの事件解決するためのペルー政府あるいは日本政府のいろいろな対応に対する影響というものもお考えになって、あえてその誘いに乗らなかった、誘いを受けなかったということは、私ども承知しております。  それが結果的に事件との関係でどういうふうになったか、これは何とも申せないところでございますけれども、少なくともいろいろな御配慮の上に立って対応していただいたという点は、評価しているところでございます。
  47. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 今そういう余り伝わっていないポジティブなことをちょっと申し上げましたが、そういう延長上でちょっと幾つか質問したいと思いますけれども、今政府の中でも、内閣の安全保障室等も含めまして、こういう危機管理の体制についていろいろな検討が進められておるようでございます。  よく危機管理といいますが、結局危機管理の本質は九九%が事前対応といいますか、予防外交的な対応をいかにとれるかという意味で、先ほどのオペレーションルーム等については、今までの前例を生かした、対応が随分変わってきて改善された面ではないかという気もいたします。  それから、危機管理といいますが、要するに危機を管理するんじゃなくて、いわば管理危機といいますか、クライシス・オブ・マネジメントといいますか、いかにマネジメントができるか、有機的にできるか、危機管理ではなくてむしろ管理危機ではないかという専門家の話もございます。  そういう観点からいたしますと、従来の縦割りの制度でありますとか先例主義とか、あるいは今までの伝統的な人事とか予算とか、そういうやり方を超えた省庁横断的な、オペレーションルームはそういう本部が既に対応ができたという先ほどの御答弁にもありましたけれども、そういう点も踏まえまして、どういう危機管理を強化されていかれるか、そういう現在の状況について御説明をいただければ幸いです。
  48. 山崎信之郎

    ○山崎説明員 お答え申し上げます。  先生おっしゃられましたように、危機管理というのは、なるべく早目に情報をきちんと把握して、その危機の態様に応じてきちんとした対応をしていくということであろうかと思っております。  それで、まさに先生が御指摘になりましたような事案につきまして、先般、行政改革会議の方から、内閣の危機管理機能の強化につきまして、危機管理を専門的に担当する官房副長官に準ずるクラスの職を設けること、それからこの専門官を補佐する事務体制を整備すること、それから三つ目としまして、内閣の情報収集、集約、分析機能を強化することを柱とする御提案をいただいたところでございます。  このような御提案を踏まえまして、内閣官房としましても、その対応策について早急に検討してまいることとしております。  先生御指摘の点につきまして、縦割りあるいは前例主義で硬直した体制ではなかなか、支障があるというお話につきましても、内閣官房を核としまして関係省庁、それから内外の専門家等とのネットワークを一層充実させることにより、緊急事態に対応する省庁横断的な対処体制を整備するとともに、危機管理に関する実務的なノウハウの一層の蓄積や対応策の点検、改善をさらに進めていく必要があると考えております。
  49. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ありがとうございます。  東京といいますか、日本国内におけるそういう体制と同時に、今度は対外的に、今度のレポートにも出ておりますけれども情報収集が非常に重要だということをうたっておるわけです。その中で、例えばペルー在外公館におきましても、政務班と警備班の連携不足というようなことがございましたけれども、例えば、ワシントンに日本の防衛庁関係職員の方が二十名行っていらっしゃる。つまり、ワシントンのいわゆる大使館には三名しか行っていらっしゃらないそうですが、実際にはいろいろな機関へ行っていらっしゃったりとかということで、十七名の方が大使館以外のところへ実際は行っている。これは通産省にしても大蔵省にしても、大使館出向以外の方が実際は出ていると思うのです。  結構、かなりいろいろな人々が出ているのだろうと思うのですが、人は出ているのだけれども、その連携というものをどういう形でこういう情報収集に生かしておられるのか、あるいはどういうふうに改善をするかということについて、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  50. 原口幸市

    ○原口政府委員 お答え申し上げます。  まず最初に、先生今、ワシントン大使館の防衛庁出向者の数を三谷とおっしゃいましたが、実際には、制服が六名おりまして、それに防衛庁の本庁から一名、全七名の体制でございます。  在外分館における警備関係情報の収集でございますが、もちろん報告書指摘させていただきましたように、警備担当の者が直接集める情報、それから政務担当の者が集める情報、さらには公館長がより高いところから集めてくる情報、こう したものを館内で有機的に取りまとめるということで、一層各部局の連携協力というものを強化していかなければならないと考えております。  それから、当然のことでございますが、在外公館はそれぞれ自分の情報収集先というものを各班持っているわけでありますが、余りこれを固定的に考えずに、例えば、隣国に所在しております主要国公館の同じような仕事をしている人たちからも情報を大いに収集する、そして持っている意見を交換し合う、あるいは、今回図らずも非常に明らかになったところでございますが、国によっては、治安情報を特に多く持っているというのが軍とか情報関係の機関でございますので、そういうところとの接触もこれからは大いに進めていかなければならないと思っております。  そういうものの一環として、例えばワシントンのように防衛庁から、大使館ではないけれども出ている人たちにも、いろいろと情報をお持ちだと思いますので、そうした点につきましても、先ほど申しましたような情報収集努力の一環として、今後一層情報収集努力を強めていきたい、このように考えている次第でございます。
  51. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 今度は国内の方で、政府の方で、いわゆる特殊部隊、SATの創設ということが出ております。既に五つの都道府県に属する数百名の方がいらっしゃるということですけれども、どういう資格の方を選考されておられるのか、それからどういう内容の訓練をされておられるのか、そういう部隊の現況と、それから今後どういうふうに強化をされるつもりであるか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  52. 小林武仁

    ○小林説明員 お答え申し上げます。  警察では、昭和五十二年九月に発生いたしました日本赤軍による日航機乗っ取り事件、いわゆるダッカ事件を契機に、警視庁、大阪府警に特殊部隊を設置しております。しかしながら、深刻さを増す銃器情勢等に的確に対応するために、平成八年四月に、警視庁、大阪府警に加えまして、五道県警察に総数約二百名から成る特殊部隊、いわゆるSATを設置したところであります。  SATについての装備でありますが、現在は、特殊型防弾着衣や自動式けん銃、ライフル銃等の銃器等の装備資機材を保有しており、実戦的な訓練の実施に努めておるところであります。  現在、特殊部隊の隊員の採用等につきましては、基本的には都道府県警察においてそれぞれ選抜を行っております。具体的には、危険を極めて伴う任務でございますから、年齢とか健康、体力、精神力等を総合的に考慮いたしまして、身体強健で判断力にすぐれた者を選抜していると承知しております。
  53. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 今、身体強健、それから健康や体力のような資格をおっしゃったのですが、多分、先ほど来出ております、あるいは今回のペルーのような事件にそういった方々が参画をされても、対応が難しいのではないかという気がするわけです。  例えば、比較はできないかもしれませんが、アメリカのグリーンベレーの隊員なんかの場合には、資格要件として、二カ国以上の言葉ができる、それから外科医の資格を持っている、それから小型兵器。分解と修理ができる、それから銃の改造ができる、これは先ほども出ていましたけれども、規制緩和の問題ですから国内法制にも絡むと思います。それから、ほかの人間を教育できる資質を持っている。それから、例えばCIAの場合には、ずっと写真を見ていて、この人間はどういう経歴がある人間だ、こういう動向を持った人間だという分析ができるぐらいの資質を持って、しかも親子二代でそういった仕事をしている、それだけ誇りも持っているし、待遇もそれなりのものがあるし、それだけいろいろな資格を持っている。それから、心理学、社会学、文化人類学、哲学、宗教にある程度造詣がある。  この二つは極端な例かもしれませんけれども、ただ、先ほど来申している、九九%が事前対応で、敵がだれだかわからない、いつどこからどういう形で来るかわからない、そういうこれからの危機管理というものが必要になってくる場合に、いわゆる身体強健というような形ではなく、少なくとも今申し上げたかなりの部分をむしろ勘案した、単にこの隊員の方だけではなくて、政府のシステム自体がそういった資格を持って対応ができるようなソフトといいますか、が必要ではないかという気がいたします。  たまたま新しい事例を申し上げましたけれども、こういう話を聞かれまして、大臣、何かコメントがあればちょっとお聞かせいただければ、多分こういうことがこれから日本共通努力目標として必要ではないかという気がしておりますけれども、コメントなり感想があれば、お答えいただければ幸いです。
  54. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど委員から、九九%は事前の対応だというお話がございました。その中には、事前というのもいろいろな要素があるとは思いますけれども情報なりあるいは警備の体制その他いろいろな面があると思いますけれども、確かに、こういった想定していない事件に対する対応策ではございますけれども、それにしても事前のいろいろな準備なり作業というものが大切だな、備えが大切だなということは、そのとおりだと考える次第でございます。  それからまた、具体的にこのような問題に取り組むそれぞれの人物なり、あるいは体制をどうするかという点につきましても、単に警備なら警備という面だけ、しかも国内で求められるような条件だけではなくて、いろいろな要素から望ましい資格なりあるいは能力というものもこれから考えていかなくてはいけないんだなという点は、それはそのとおりだと思います。
  55. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 もう一つ、警察庁の方がいらっしゃっておられますので、今回のペルー事件を通しての危機管理の一つとして、例えば東京で大使館なりにそういう攻撃があったらというような、マスコミ等々でも出ておりますけれども、私もたまたまいろいろな国際関係のことに従事しておりましたときに、例えばミャンマー、当時でいえばビルマとかカンボジアの国内で活動している方々に関する情報に関して、警視庁の外事課の方と、それから都道府県の国際関係の担当の方がかわりばんこに情報を聞きに来まして、競うように同じ対象について聞きに来るわけです。あるときには、つまり相手方といいますか、競争相手側の方が既に私のところに来たかどうかということも気にされながらやっているような状況なわけです。  これは、長年警察の縦割りの問題ということがテーマになっておりますけれども、やはりこういうケースが日本の場合でも起こり得るという場合に、なおさらこういった問題について、警視庁と警察庁といいますか、都道府県、県警との間の、先ほど来の省庁を超えたといいますか、対応というものが非常に緊急を要するのではないかという気がいたしますが、その点、お答えいただければ幸いです。
  56. 小林武仁

    ○小林説明員 御指摘のとおり、我が国の警察は、基本的に都道府県警察単位ということになっております。しかしながら、警察法の条項によりまして、都道府県警察は、必要に応じて管轄区域外に権限を及ぼすことができるとされております。また、一つの都道府県警察の能力をもってしては処理することができない事案に対応するためには、警察庁または他の都道府県警察に対しまして、援助の要求をすることができるようになっております。また、委員指摘の広域事案につきましても、警察庁が全国的な観点から、しかるべき調整を行うことができるということになっております。  このように複数の都道府県にまたがる、例えばテロ事件につきましても、運用により的確に対処してまいるということができようかと思います。
  57. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 こういうことができるということではなくて、あったときにこうするという、今ガイドラインの話が出ておりますけれども、こういったことこそガイドラインをつくって、もうできるじゃなくてこういう体制ができているというふうにぜひ変えていただきたいということをお願いをいたしまして、時間が参りましたので、質問 を終わらせていただきます。
  58. 逢沢一郎

    逢沢委員長 山中燁子君。
  59. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 山中でございます。  まず、長い間の外務省の担当部局の方々の御苦労に対しまして、ねぎらわせていただきたいと思います。  ことしの一月六日からカナダのバンクーバーで開かれましたアジア・太平洋議員フォーラムの折に、ペルー与党、野党の議員の方たちと懇談いたしましたけれども、そのときに、日本にわかってほしいことということで、今回のゲリラはテロリストであるという認識をしっかり持ってもらいたい、もう一点は、政府も国も絶対にお金で解決しないように、このことを随分強く訴えておられました。また、その後、米国の政府方々関係者の方と何人か懇談しましたが、幸いなことに巻き込まれずほっとしているというような感想もありまして、これはなかなか複雑な事件だというふうに思っておりましたが、日本にとってもフジモリ大統領にとっても非常にラッキーな終わり方で、私はほっとしております。  しかし、この調査会の報告が出まして、何点か疑問に思いますので、日本が国際社会の中でどういう活動をしていくか、これからどういう視点で本当の意味での危機管理をしていくかということも含めて、そういった観点に立つということを前提にして御質問させていただきたいと思います。  まず、一番最初に、この調査委員会の目的というのは何でしょうか。時間に限りがありますので、恐縮ですが、できればお答えは手短にお願いしたいと思います。担当の部局の方で結構でございます。
  60. 原口幸市

    ○原口政府委員 お答え申し上げます。  目的は、事実関係の究明、政府対応の総括、反省点及び今後の改善点についての分析と評価を行うということでございました。
  61. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 そういうことでありましたら、国会のこの終わりの間際でなくて、できればもうちょっと早い時期にそういった報告が出てきてほしかったと思いますが、今言った観点からいたしますと、この報告というのはもう少し具体性があってもよかったのではないかと思います。例えば、ペルー国会での報告というのに関しましては、かなりはっきりした事実関係を述べて、そして責任まで至っているわけですけれども、そういった形になっていないという点が私は大変残念に思っております。  それで、次の質問ですけれども、この調査の方法について、これはヒアリング調査だったのでしょうか、その辺についてちょっとお願いいたします。
  62. 原口幸市

    ○原口政府委員 調査の方法でございますが、四月二十三日に委員会設置して以来、十回にわたりまして会合を開催して議論を重ね、既に入手済みの情報及び公開情報を再検討したのに加えまして、日本ペルー双方の関係者から幅広く事実聴取を行ったものでございます。  具体的には、邦人の人質すべてから詳細なヒアリングを行っておりますし、また五月に入りまして、外務省調査チームをペルーに送りまして、ペルー警備関係責任者の皆さんからお話を聞く、それから、ペルーにある主要国の警備担当の人からもいろいろと関連情報をお聞きするというような調査を行った次第でございます。
  63. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 普通は報告も、経過報告であればこういう形だと思いますが、調査報告書であれば、一番に目的が書いてありまして、次に調査方法で、いつ、だれが、どこで、どのような形でしたかということがあって、そしてその実際の事件の概要があって、それから四番目に原因ということで、例えば今回の場合ですと、ペルーの現状あるいはトゥパク・アマルの現状、そしてなぜ日本がねらわれたのか、なぜ大使館だったのかというようなこともあってよかったのではないかと思います。  それから、経過の報告に関しましては非常に詳しく載っておりますので、それに関しては問題ございませんけれども対応といたしましても、日本政府、首相、外務大臣外務省その他の省庁、企業、マスコミ、国民がどのような対応を示してきたか。あるいはペルー政府、それも大統領、軍、警察、そして国民議会、そういったものがどのような対応を示したか。そのほかの国、人質になった国、例えば米国、ボリビアその他カナダなどはどのような対応をしたのか。そのほかの英国、イスラエル、ニカラグア、キューバなどいろいろと意見を述べていたというような国はどのように対応したのかというのがわかるような形で報告が出てくれば、もっと私どもはその全容がつかめたと思います。  さらに、解決の方法につきましても、一体突入のときどんな現状だったのか、問題点はなかったのかどうか、そういったことも含めて総合的な分析の上で、法的な責任とかあるいは道義的な責任ということを踏まえて、今後の課題、そして提案になるというふうに思っておりますので、私はひょっとしたら今回の報告書というのは、ある意味では一部分であって、実際にはもっと膨大な、大変大きな資料がおありと思いますけれども、そういったことに対して、今後また報告するとか公開するというようなことをお考えでしょうか。
  64. 原口幸市

    ○原口政府委員 確かに膨大な資料が裏にあるわけでございますが、やはり、いろいろお話を伺わせていただいた人々もお立場があって、公表できないものが多々ございます。そういう前提でいろいろとお話を伺っているものでございますので、この報告書に加えて、また新しい報告書を出すということは考えておりません。
  65. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 それはもう当然のことだと思います。これからにかかわるいろいろな問題もありますから、全部が出せるとは思いませんけれども、今のような点で、出せる形で、もう少し事実関係、客観的なものをお出しいただければ、今回の事件に対して国民が一体どういうふうに認識していくべきなのか、どのように理解するのか、そしてこれをどのように今後につなげていくか、そういったことがもう少しわかりやすくなったのではないかと思います。  そういう視点で、でき得る資料を、報告書という形ではなくても、例えば資料を請求させていただいたりというようなときに、できる範囲で公開していただくということは可能でしょうか。
  66. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもも、この調査がもうこれで完璧だとは思っておりません。御承知のとおり、ペルー政府の側では、まだいろいろな、調査というよりも責任を追及する司法手続も続いているわけでございますから、我々にも明らかになっていない事実がまだまだあることも否定できません。  しかし、我々は、今の段階で、可能な聞き取り調査あるいは現地での調査等を含めて、外務省としての事実関係の解明なり、事件発生決着に至るまでの対応についての評価もさせていただいたわけでございますし、それを踏まえて、――将来に向かってのいろいろな改善点反省点等もある程度提起させていただいた次第でございます。  先ほど官房長がお答えいたしましたように、もとよりこの報告書に盛り込まれていない資料もございますけれども、それは必ずしも全部表に出せるものじゃないということは、調査に協力していただいた方との関係もございますし、それからもう一つ申し上げたいのは、この調査報告書を出しまして公表するということは、一体どういうふうなことが将来あり得るだろうかと考えますと、もとより、国民の皆様方に、あるいは世界にいろいろ事実関係を知っていただくというのは大切かもしれません。しかし、場合によっては知っていただいては困る事実関係もあるということは、御理解ちょうだいしたいと思います。  天下に公表すれば、それは、将来あり得べき、テロリストとは断定はいたしませんけれども、そういった関係者にも、そういった将来のいろんな動きに対してもいろんな資料を提供することになるという点もあります。  そういった意味では、今後におけるテロリスト対応するという観点からいって、わかっておっても公表できない事実もあるということは、御理 解賜りたいと思います。
  67. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 もちろん、先ほど担当者もおっしゃいましたし、今大臣もおっしゃいましたが、できないものを公表していただきたいというふうに申し上げているわけではありません。  それでは、ちょっと質問を変えさせていただきますが、突入に関して、リマ発の四月二十六日の新聞によりますと、池田外務大臣が、犯人の一部が投降後、特殊部隊に処刑されたということを元人質が証言していることを認めたという報道がございます。四月二十三日にはシプリアニ大司教が、死亡した最高裁判事、二人のペルー軍兵士、そして我々も同じ人間であるということも言っていますし、また、国際赤十字のミニング代表が、トゥパク・アマルも同じ人間であるということを言っています。また、解放されました当地のムニャンテさんというのですか、農業大臣も、実際に撃たなかったということも言っております。こういったことについての事実関係というのは確認できませんが、そういう証言はあったのでしょうか、なかったのでしょうか。
  68. 池田行彦

    池田国務大臣 今回の事件をめぐる報道は、いろんな方が、またいろんな報道機関がいろんな立場で携わられることもありまして、随分不正確なものも混在しておったというのは否定できないと思います。  現に今引用されました私の現地における記者会見につきましても、私が現地で述べましたところと報道されておるようなところとは随分違ったものもございましたし、ましてやその発言の根っこにある趣旨なり背景なりとは全くかけ離れた立場で引用されているというのも、私自身も随分経験しておりますから、そういった経過において報道されたものを一つ一つ事実として前提にしてあれこれするのは非常に難しい面があると思います。  現に、私がそういったことがあったということを確認したわけじゃございませんで、あるいは質問につきましては、ああいった事態の中でどういうことが起きたのか、そこのところはよくわかっていないんだということを言って、だけれども聞いたんだろうとおっしゃいますから、いや私は、人質状態になっておって、その後釈放された、解放された大使館関係者からいろんな話を聞きましたと申し上げたのが、それがあたかも特定の出来事が起こったということを、直接そういった証言を私が聞いたというふうにキャリーされたということもございます。  そういった点については、私どもは現在の段階でもどういうことが起こったかということは確認しておりませんし、少なくとも、伝えられた、今紹介されましたようなことがあったということは、我々としては承知しておりません。
  69. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 今大臣おっしゃいましたように、マスコミのとおり受け取りますと、もしかしたら国民がミスリードされるというところもかなりあるわけです。だからこそ、できるだけこういうことに関しては、確認されていないとかいるとか、そういったことも含めて情報を入れていただければいいと思います。  そして、私がなぜ今のことについてこだわったかと申しますと、九五年の十二月十二日のオタワ宣言の中で、当然すべての国が人質行為を非難して、犯人に対して実質的な譲歩を行うことを拒否し、人質の安全のために努力し、犯人が犯罪行為からいかなる利益を受けることも許さず、進行中の人質事件解決のために共同して精力的に行動し、犯人を裁判にかけるように求めるというようなことになっておりますが、この後の方の、オタワ宣言に加入した国が協力してやったのかとか、あるいは裁判にかける努力がされたのかとか、そういった客観的な事実について、やはりもう一度きちんとした認識を私たちが持てるということが大事ではないかと思います。  それでは、次に移らせていただきます。  報告書の内容についてちょっとお伺いいたします。  先ほどもお触れになりましたけれども、提言の中で警備についてというところがございますけれども、百三十五の公館に百六十五人というのは非常に少ないとだれもが思うわけです。これは、お聞きするところによりますと、民間の安全保障の会社、あるいは警察の関係者ということで、こういう人たちをふやすということは、予算の措置が確定すればいいのであって、法的には何か変えなければいけないということはないと思うので、財政的な担保が必要ですけれども、それさえあればすぐできるということなんでしょうか。そういうふうに解釈してよろしいのでしょうか。
  70. 原口幸市

    ○原口政府委員 在外公館警備官は、自衛隊、それから警察、それから先ほど先生言及のありました民間警備会社、あるいは少しですが、法務省の入管等からも来ておりまして、これらの警備官の方たちは身分は外交官でございます。  したがって、外務省職員でございまして、外務省の定員の中で送られているわけでございますので、外務省の定員がふえれば、そしてそのふえた分を警備官に回せばもちろん対応ができるわけでございますが、御承知のとおり、外務省警備に限らずいろいろな面で人員不足という状況にございまして、毎年、先生方の御理解と御支援を得て定員はふやしていただいているのでございますけれども、そのふえた分も限りがございますし、そのふえた分をすべて警備官だけに回すこともなかなか難しいという状況でございます。直接先生の御質問お答えするとすれば、もちろん大幅に定員がふえればその中で警備官に回すことも、相当ふやせる、こういう状況でございます。
  71. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 その範囲についてですけれども報告書ですと、在外公館がいかに安全にということで、これはもう書かれているとおりほとんど異存はございませんから、できるだけ、できるところから実現して整備をしていっていただきたいと思います。そのほかの海外におります日本人の生命を守る、あるいは企業に関して危機が起こったときにどう対処するか、そういったことについてが一点。  それから、ほかの国との情報の交換、連携ということはかなり書かれておりますが、日本独自の情報収集というのは、危機管理の方で設置した情報の組織もなかなか作動してないということもありまして、新たなものを何かお考えかどうか。  そして三つ目、最後ですが、民間との連携というのが大変必要だと思うのですが、日常的に情報の交換もそうですし、危機管理も事後処理の協力も必要だと思いますが、この辺について余りお触れになってないと思いますが、手短にお答えいただければと思います。
  72. 原口幸市

    ○原口政府委員 一つは、この報告書のクームズ・オブ・レファレンスといいますか、目的が、特に在外公館がテロの対象になったものですから、在外公館警備強化の面でどういうことをすべきかということを視点として考えたということがございます。  したがいまして、今先生の言及のあったような、民間の海外に出られている邦人の方たちの安全確保在外公館がどう貢献するかという面については、必ずしも十分室言及はなかったかと思います。私ども、やはり在外公館というのは、最後のところ、民間の方にとっても安全確保の面で非常に重要な拠点になると思いますので、そういう意味では在外公館の抗たん姓とかいうことも大いに強化していかなければいけないと思いますし、それから、民間の方たちにも、例えば日本人会その他を通じていろいろと在外公館が持っている情報等を流していくというような努力はしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  73. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 危なくなったらアメリカ大使館に逃げ込めなんというようなことが書かれないように、ぜひ日本大使館も含めて、在外公館はおっしゃったとおり拠点ですから、整備をしていっていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、今のこれを基本にいたしまして、外務省だけでなくほかの省庁も含めたテロ対策というようなことの基本になる情報、データ、そしてそれを分析して、課題としてどういうふうに提言していくか。これを今官房長官で やっています危機管理のそちらの方にも進言していくために、私は、ひょっとしたら、直接の担当者からのものが出ましたから、その後、例えばテロの専門家、学者、法律家、そういった第三者の調査委員会というのを設けて、それで全体的にどういうふうなことが必要かということで、省庁を超えた部分の提言をしていただくというようなことが必要ではないかと思うのですが、その点について、これは外務大臣の範囲ではないと思いますけれども、個人的にでも、どういうふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  74. 池田行彦

    池田国務大臣 政府としては、今後このような在外におけるテロ事件あるいは国内におけるいろいろな緊急事態、そういったものにどういうふうに対応していくか、いろいろ検討をして備えは強化していきたい、このように考え、現にそういった努力もしているところでございます。しかし、それを具体的に、今おっしゃるようにこの事件に関連してさらなる調査委員会をつくって報告というようなことを考えているわけではございません。
  75. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 それは御検討していただけないということでありますから、また新たな機会に議論させていただきたいと思います。  危機管理で一番大切なことが何かということで、元警察庁警備局長の三島健二郎氏がペルー事件に関して、「日本事件処理への姿勢が問われた」、つまり、日本姿勢が問われたものであるという位置づけをしています。私はこれも同感でございます。「日本の危機管理上の最大かつ致命的な問題は、危機に対応する「国家の姿勢」である。」ということで書かれておりますが、この中で、これは引用でございますが、日本は「自国民の生命の安全のために、ペルー政府に拘留中の犯人の仲間を釈放するよう働きかけたり、武力突入しないよう要請したりするとすれば、」危機に対する姿勢を間違ってとられるのではないかということで、当然、人命尊重とテロリストに屈しないというこの二つの命題は大変苦しいわけですけれども、それを持っていくためには、このほかに、例えば平和解決のためには、平和を説得する宗教者でもいいですし、例えばシプリアニ大司教のような方もいますが、NGOの関係者、あるいはゲリラを納得させる具体的な手段というのがあるのか、どういうふうにしてこれから平和を構築していくかということが非常に大事になってくると思います。  そして同時に、もう一方で、リマで橋本総理大臣が特殊部隊のことに触れられました。突然触れられたわけですから、どういうことかということを皆さん感じましたけれども、しかし、これももちろん当然両方を常に見ながらやっていくというようなことが大事なわけで、そういった意味では、もう少し平和解決のノウハウというのを日本としても構築していく必要があると思います。  そして実際に、これまでの日本の政治も企業も無条件で平和解決を求める姿勢に見えてきた、この見えてきたということを速やかに払拭していくのも、外務省も含めて私たち国民も大変大事な役割だと思っています。  もう既に、この中にきちんと日本の危機に対する姿勢はうたってあるわけですから、それをどういうふうに知ってもらうか。二十年前、十五年前の日本とは変わってきたということを知ってもらう、そういう努力も必要であろうと思います。そういった意味で、フジモリ大統領自身が、速やかに平和的解決をするというのは疑問だというようなことをおっしゃる、そういったことに関してもこれから私たちは対峙していかなければいけないと思います。  最後に、ウィーン条約にかんがみまして、これは第一義的にはペルー責任ではありますけれども、ひょっとしたら、私は、せっかく首脳がトロントでお会いになったときに、いざというときの危機管理という意味でも、いざといったときに侵入することの同意を与えているかいないかというようなことも含めて、これからますますトップの判断というのが危機管理で最大重要な役割になると思います。  そういう意味で、橋本総理大臣が今度のデンバーサミットで、三カ国に二〇〇〇年までにテロに関する条約を批准しようと呼びかけるそうです。橋本総理大臣が行く前に、何とか頑張って日本が残っている四本を批准すれば、そうすれば日本はここまでやってきている、皆さんもぜひやりましょうということになったと思いますが、もう時間がございません、時間がないというのは橋本総理大臣の時間もないわけですから、そういう意味では、二〇〇〇年などと言わずに、日本が早く条約を締結する、そういうことも含めて。  それから最後に一つ、これは大変失礼になるかもしれませんが、ぜひ外務大臣も毅然とした態度で、おやめになるかならないかということは大変な重みを持ちますので、ぜひその辺のところは、撤回なさるのだったら私は言っていただきたくなかったし、私は、おやめになるとおっしゃる必要は本当にあったかどうかというのはよくわかりませんけれども、その一言一言は大変重いものですので、ぜひ堂々と毅然として言ってほしいと思いますし、それを支える戦略というもの、それからどういうふうにしているかというアカウンタビリティー、そういったものをもう少し蓄積するという、そういう方の危機管理も必要だと思います。  どうもありがとうございました。
  76. 逢沢一郎

    逢沢委員長 東祥三君。
  77. 東祥三

    ○東委員 在ペルー日本大使公邸占拠事件調査委員会報告書並びに関連することに関し、質問させていただきます。  まず初めに、本事件を通して三名の犠牲者が出られ、その御家族の方々に改めて犠牲者の冥福を祈ると同時に、事件当初、約七百名に及ぶ人質があり、またその後、長い間にわたりまして人質という極めて苦痛な経験をされ、またそれによって多くの御家族の方々が精神的また肉体的な苦痛を感じられたことに対し、一日も早くその精神的、物理的苦痛が軽減されることを祈る次第でございます。  本報告書それ自体は、第Ⅰ部と第Ⅱ部プラス提言の三部構成で百ページに及ぶ大部なものでありまして、一つは、事件発生に至るまでの事実関係の究明、反省点及び今後の改善すべき点についての調査分析が行われている、さらにまた、事件発生後から終結に至るまでの推移と対応についての総括も行っている、その上で提言を行っているという意味で、それなりに評価いたします。  と同時に、外務省のテロリズム対策に真剣に取り組んでいこうとする姿勢がうかがえます。しかし、この問題は、一外務省だけがどんなに力強い姿勢で取り組もうとしても解決できる問題ではなくて、日本国全体としてどう取り組んでいくかという視点が重要であるということを考えますと、国家としてテロリズムに対しどうあるべきかという点が欠如している印象を持ちます。  また、この報告書は、本事件に関して客観的な公平な結論を導き出すという目的を有しているにもかかわらず、本委員会報告書の作成の委員長が外務事務次官であったということは、問題がなかったのかどうなのか。  こういった視点から、時間の許される限り、報告書に盛られている提言の内容とその実効性について、つまり、情報収集・分析と警備体制の強化、それから今事件責任問題の処分について質問させていただきます。  まず初めに、順序として、二十九分しか私には与えられておりませんので、質問時間の関係がありまして、責任問題の処分から質問させていただきます。  このたびの質問は、外務大臣にとって極めて厳しい内容になるかと推察いたします。しかし、池田行彦氏個人を責めるということではなくて、外務大臣という職務上、日本外交最高責任者というポストについている人に対する質問ととらえていただければ、幸甚でございます。  まず初めに、六月十二日の記者会見で外務大臣は次のように述べられました。この事件で個別の職員に具体的な落ち度があったとは判断していな い。しかし、問題がなかったかといえば、そうは言えない。情報収集・分析、警備上の盲点を事後的に振り返ると、問題があったと記述している。そういったこともあるし、これは重大な事件であり、日本外交信頼が損なわれた責任には大きなものがある。それを踏まえて、本日、私として、関係職員処分を行った。職務執行上での具体的な落ち度があったわけではないので、公務員法上の責任追及には該当せず、外務省内規に基づく処分をした。そして、林事務次官、原口官房長、佐藤中南米局長当時、そしてまた青木ペルー大使をそれぞれ、厳重訓戒厳重訓戒、訓戒、厳重訓戒として処分いたしました。  事実に相違ございませんか。イエスかノーかでお答えいただきたいと思います。
  78. 池田行彦

    池田国務大臣 最後のあたりで処分の内容を何度か繰り返されましたが、そこのところがだれに対応するのかちょっとはっきりいたしませんでしたけれども、その部分を除けば、おっしゃるとおりでございます。
  79. 東祥三

    ○東委員 外務大臣は、外務省最高責任者として、この問題に関連し、記者会見の前に総理に対し辞意を表明したと言われておりますが、これは事実でございますか。
  80. 池田行彦

    池田国務大臣 そのとおりでございます。  ただ、総理に、しかし現下の外交の抱える諸課題、それに対応する重大性あるいはテロリズムに屈しないという観点からどうかというような点も含めましていろいろお話しをいただき、総理は、それを受けるわけにはいかないというお話がございまして、私といたしましても、引き続きこの任にとどまり、従来以上に職務に精励することを通じて責任を全うしてまいりたい、このように考えた次第でございます。
  81. 東祥三

    ○東委員 撤回された理由についてはまだ質問させていただきますが、外務大臣最高責任者として、日本外交上極めて重要な時期にかかっていると私は思いますが、その最高ポストにいらっしゃる外務大臣総理に対し辞意を表明されたという、その理由をまずお聞かせ願いたいと思います。
  82. 池田行彦

    池田国務大臣 記者会見でも申しましたけれども、そして今も御披露ちょうだいいたしましたけれども外務省内に調査委員会をつくって、この事件の発生以前から事件決着に至るまでの経過あるいは外務省としての対応をずっと調べてきたわけでございます。それを踏まえて、私ども、具体的に外務省職員の行動あるいは対応国家公務員法上責めを負わなくてはいけないような落ち度はなかった、こういう判断をいたしました。  しかしながら、結果としてこのような事件が起きたということ、そして、具体的な落ち度はなかったけれども、事後的に振り返ってみるならば、やはり情報の収集なり分析に、もう少しこうやっておけばよかったな、改善すべきといいましょうか、さらに手を尽くしておくべき面があったなということは否定できませんし、また警備体制にも盲点があったということは、事後的に我々も認めざるを得ないわけでございます。  いずれにいたしましても、そういったことが個別の職員責任につながるというものではない、少なくとも国家公務員法上の責めを問うには当たらない、こう思いました。しかしながら、内規による処分というものを、今申しましたような事情にかんがみ、したわけでございます。  しかし、全体として、やはり、この事件が起きたということを通じて我が国外交に対する国民の皆様方の御信頼が揺らいだということ、それが損なわれたということは、これは否定できませんし、私どもは、大変残念だと思っております。そうして、そのことの責めは、当然それは外務省全体としてそれを痛感し、将来に向かって信頼の回復に努力していくべきものでございますが、先ほど来委員も御指摘されますように、とりわけ外交の最高の責任者でございます外務大臣という任にございます私が、まずだれよりもその責めを痛感し、対応、対処しなくてはいけないと考えたわけでございます。
  83. 東祥三

    ○東委員 外務大臣外務省の最高位にいらっしゃるのが外務大臣というお立場であり、そしてまた、日本外交最高責任者でございます。今回の事件を通して、外務大臣は、日本外交信頼が損なわれた責任を一番強く感じなければならないのは自分自身である、このようにお考えになったのだろうと思います。そして、その意味で辞意を表明された。辞表は提出されたんですか。いかがですか。
  84. 池田行彦

    池田国務大臣 外務大臣の職を辞すことをお許しいただきたいと総理に申し上げたわけでございます。そうして総理は、それは認めるわけにはいかない、こうおっしゃったと、こういう経過でございます。
  85. 東祥三

    ○東委員 後からも論じますけれども総理大臣が慰留されて、そして、かたい辞意表明が撤回されたわけでございますが、改めて聞きます。基本的に、なぜ撤回されたのですか。
  86. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほども申しましたけれども、私は、この事件日本外交に対する国民信頼を揺るがした、それを損なったという点について、私自身がその大きな責任があるということは痛感しております。そういった意味で、職を辞させていただきたい、こう申し上げたわけでございます。  しかしながら、外務大臣としての立場でいろいろ対応しなくてはいけない問題はほかにも多々あるということは承知しております。現在、日本外交の抱えております諸課題、そして、当面それに対してどういうふうに対応しなくてはいけないか等々のことも、もとより私も考えなかったわけではございません。  そして、その際、総理にも申し上げたわけでございますが、ちょうどあの前日に、参議院の本会議におきまして、今回国会外務省から御提出申し上げております条約十六本の最後のものが御承認を賜りました。そういうことで、今国会における外務省として提出した条約も全部御承認をちょうだいしたということ、そしてまた、今いわゆるガイドラインの御論議もいろいろちょうだいしておりますけれども、それにつきましても、一巡とまでは申しませんけれども、ともかく衆参両院での委員会のまず最初の御審議も、御論議もちょうだいしたということ、それからまた、当面する外交のいろいろな課題を考えまして、サミット等々もございますけれども、それが、仮に私が職を辞した場合に我が国としての対応がどうか、どういうふうなそれを補う手段、方法があるか、そういったこともいろいろ考えて、そういったペルー事件に関する責任以外の面で、私が職を辞するということが日本外交に及ぼすあしき影響というものと、それから、責任を辞職という形で全うするということの効果というものを私なりに考えながら、職を辞させていただきたいと申し上げたわけでございます。  総理からは、当面する外交課題に対する取り組み、それの重要性について、私の認識を超えるといいましょうか、それよりももっと重いものがあるということも御指摘を賜りましたし、また、このペルー事件とのかかわりにおいて外務大臣が職を辞すということが、ある意味ではテロリズムに屈するということにつながるおそれというものをどういうふうに考えるかということも御指摘いただきました。  また、外務省職員の諸君は、こういった事件を乗り越えて、将来に向かって、外交に対する信頼回復を初めいろいろな仕事に取り組んでいかなくてはいけないわけでございますが、その職員皆さん方の仕事に取り組んでいく上での、あるいはその気持ちの面での、私自身が職を辞することがどういうふうな影響を持つか等々のいろいろな観点から考えて、職を辞するべきではないというその総理の御指摘、そして御説得もあったわけでございまして、私も、そのような総理のいろんなお話をお伺いいたしまして、私自身の思い及ばなかった点も含めてのお話でございました。  そういったことで、私は、職を辞したつもりで、いわば身を捨てたつもりでこれから外交の諸課題に身を挺していく、そのことを通じて責任を全う してまいりたい、こういう気持ちになった次第でございます。
  87. 東祥三

    ○東委員 それでは、やめる意思はどこかに打っちゃったんですね。やめる意思はもうなくなってしまったわけですね。別の言葉で言いますと、やめるというふうに決意されて総理のところに辞意を表明しに行った、総理からいろいろ言われてやめる意思はなくなった、そういうことですか。
  88. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたとおりに、職を辞することによってその責任を果たしたいという、こういう気持ちがございました。いろいろな事情も比較考量した上ででございますが、しかし、総理からのいろいろなお話をお伺いする中で、先ほども申し上げましたけれども、むしろ職にとどまり、外交の当面します諸課題に従来以上に挺身していく、真剣に取り組んでいく、そうしてそのことを通じて外交信頼回復にいささかなりとも寄与し得る、その道を通じて責任を全うすべきである、こう考えたわけでございます。
  89. 東祥三

    ○東委員 いろいろな理由を言われました。  私は、外務大臣は、外交の最高ポストにつかれている方であると同時に、やはり日本国の外交を代表する象徴である、したがって、日本国内から、また国外からも外務大臣の一挙手一投足がちゃんと注目されているということを十分お気づきだと推察いたします。そして今外務大臣が申されたとおり、事件発生以来、この問題について自分自身どのような去就をとったらいいのかということを深く考えていたのだろうと思います。そして最終報告が出ることによって、そしてそれを踏まえた上で、外務大臣みずからが自分自身責任を果たす一つの手段として辞意を表明されたのではないのか。また、この事件が起こってしまった、そして結果として、結果として責任外務省の高官に背負わせているわけではありませんか。  そういうことを踏まえるならば、私は、この報告書を見る限り、公務員法上何の過失もないというわけですから、外務高官、外務省の高官に対して何ら処罰をする必要がない。私は、国際的な視点から見たとしてもそのように判断できるのではないのか。にもかかわらず、結果責任という名なのかよくわかりませんが、外務大臣みずからが外務省の最高ポストとして、四人の方々にそれぞれの訓戒を垂れたではありませんか。そうであるとするならば、外務省の最高ポストである外務大臣がそれなりの一つのけじめをつけるべきなのではないのか。こういう視点から質問させていただいているわけでございます。  司馬遼太郎さんの有名な小説「峠」というものがございます。その主人公である長岡藩の家老河井継之助、有名な方でございますが、出処進退の大原則にかかわる名言を、外務大臣、御存じだと思いますが、彼は次のように言っています。進むときは人任せ、退くときはみずから決せよ、と言っております。なぜやめるときに人に相談したらいけないのか。やめない方がいいと言うにみんな決まっているわけです。  したがって、例えば、宏池会の大臣の先輩であります伊東正義元外務大臣。昭和五十六年の日米共同声明の後、日米共同声明の発表の仕方、さらにまた国内における、その発表における紛糾があった。外相としてみずから責任をとる。ごうごうたる非難が来ました。しかし、それによって新たに、日米関係をさらに充実させていかなければならないと、自分で決心されたわけです。先輩みずからが、そのように日本の指導者として範を垂れているわけです。  また現総理であります橋本龍太郎氏は、平成三年の蔵相時代、当時、富士銀行不正融資に自分の秘書が絡んでいたことに関して、その責任を感じて辞意表明をいたしました。当時、サミットが近づいていた。サミットが終わるまで何とかしてくれないか、このようにやはり慰留されるわけでございます。サミットが終わった後、明確に辞表を提出され、それが受け取られているではありませんか。  外務大臣外務大臣は少なくとも最高ホストにいらっしゃる方です。我が子供たちあるいは日本の人々にどのように説明すればいいのですか。自分自身日本外交信頼回復のために全力を尽くしていくとするならば、辞意なんか表明する必要ないじゃありませんか。他の人に相談する必要なんかないじゃありませんか。それを外務大臣みずからが辞意を表明したということは、最高責任者としてやってはならないことをやってしまったのです。それをどのように内外の人々に説明できるのですか。  だから、私はこのように何とも言えない寂しい気持ちです。ただ単に外務省の高官の方々を訓戒処分にする。自分自身は、やめたいんですけれども総理どうしたらいいんでしょうか、君、外務大臣立場というのは十分わかっているはずだろう、そんなものでやめられると思うのか。デンバーサミットが追っているなんということは前々からわかっていることではありませんか。テロに屈しない、それは日本国全体の問題として、五十二年当時のダッカ・ハイジャック事件以来、日本というのはテロに弱いんだということが言われ続けたではありませんか。  今回、この事件が起こって、先ほど鈴木宗男代議士がみずから言っていたとおり、抜本的な形で、外務大臣が命をかけて、日本はテロに屈しない国にさせるんだ、そのような方針をみずから打ち立てて、それをやらせてくださいということを胸に秘めて、そして総理大臣のところに行って、これをやらせてくれるのですかという、そのようなせっぱ詰まった交渉をしているならば、私は納得しますよ。そうではなくて、どうでしょうか、総理大臣、やめたらいいんでしょうか。だれもが、君、やめるのよしなさいと言うに決まっているではありませんか。それに対して、どのように落とし前、けじめをつけるんですか。それを私は申し上げているんです。いかがですか。
  90. 池田行彦

    池田国務大臣 いろいろな御意見がある、委員の御意見として承っておきます。  しかし、私は私なりに真剣に考えて、調査委員会の報告も得た、そしてテロ事件にどう対応するかという点についても、今回の事件の反省を含めて、外務省として今後こうしょうという方向も出した、そういう区切りでもございました。そして、外交関係についてのいろいろな関係は先ほど申しましたから繰り返しませんけれども、私としては職を辞させていただきたいと申し上げたわけでございますが、それは総理の方から、先ほども申しましたけれども、それは認めない、そしていろいろなその事情をお話しになったわけでございます。  その中には、委員が今お触れになりましたからあえて申し上げますけれども橋本総理自身が過去にいろいろなそういった厳しい情勢に立たされたときに、どういうふうに考えたかということを踏まえての言葉もございました。  そういった話の中で、私も、とどまることもつらいのでございます、気持ちの上では。しかし、それは身を捨てたつもりで、これから外交課題に従来にも増して、許される期間内全力を傾注してまいる、そのことを通じて責任を全うしようと考えた、そういうわけでございます。
  91. 東祥三

    ○東委員 日本外交信頼を失われたと外務大臣みずから言っているではありませんか。日本外交信頼を失ってしまった責任を自分自身が一番多く負うと言っているではありませんか。それを回復させるために、何を外務大臣、やられるのですか。まず、テロに対して屈しない国ということをつくるために、自分自身外務大臣をやり続けさせてください、そのように総理大臣にお訴えされたんですか。どうなんですか。  かつてドイツにゲンシャーというすごい外交官がいた、外務大臣がいました。十八年間、記憶に間違いがなければ。この方は、まさに自分自身の一生を外務大臣として、そして貫いた方ではありませんか。外務大臣、皆さん聞いていらっしゃいますよ。日本外交信頼を失ってしまった、それを回復させるために死ぬ気になって頑張ってくれ、辞職したと思って頑張ってくれと総理大臣から言われた。何をされるのですか。具体的に申し 上げてください。みんな聞いていますよ。  それができないならば、自分自身もうやめると言ったのだから、それに対してちゃんと主義、主張を貫くというのが、まさに日本の政治の指導者のあるべき姿なんではないのですか。内外から質問されたらどういうふうに答えられるのですか。子供たちから、外務大臣というのはおもしろいですね、外務省の最高ポストにいながら、外務省の高官だけを処分しておいて、自分自身はその責任の重さを感じて総理大臣にやめたいと言った、総理大臣は、やめるのよしなさいと言った、はい、そうですか、これで答えられるのですか。このように子供たちに言えるのですか。  私はまだ若い世代かもわかりませんが、日本の政治指導者のありよう、あるべき姿ということをいろいろな方々から教わってきました。本来ならば、外務大臣という外務省のトップにある人間は、外務省方々に何らかの問題があったとしても、おれ自身がすべて責任を負うというのが、私が描いている一つ政治家像であります。全く違う。国内的にも理解できない。国際社会においても全く理解できない。それを外務大臣はそのまま踏襲されようとしているのですよ。それは、日本外交信頼を回復させるどころか、さらに失墜させてしまうのではないのですか。そのことを私は強く思うがゆえに、あえてこういう質問をさせていただいているわけでございます。  デンバーサミットが近づいている、それはかつて橋本さんもやられたことです。デンバーサミットが終わった後やめられるのですか。それならばそれなりの一つの筋として成り立つかわかりません。もしやめられないとするならば、自分自身はこういうことをやるから外務大臣をずっとやらせてください、そういう交渉をされたのですか。ちゃんと明確に言ってください。
  92. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど申しましたように、私にとりましても、職を続けるということも気持ちの上では大変つらいわけでございます。しかし、総理とのいろいろなお話の中で、そのつらさをあれこれ言うことはない、むしろ身を捨てたつもりでも、許される期間内、全身全霊を傾けて外交の課題に取り組んでいくということを通じて責任を全うしたい、こう申し上げたわけでございます。
  93. 東祥三

    ○東委員 外務大臣がつらいかわかりませんけれども日本国民、もっとつらいですよ。私も、日本外交に対し、また安全保障に対し、自分自身の力を全力投入したい、そういうふうに思っている人間として、そのように何を言っているのかよくわからない、そういう外務大臣がいらっしゃるということが、とっても日本外交にとってつらいです。説明できないわけでございます。だから、それをすべてわかった上で、そして自分自身責任を全うしていきたい、何を責任全うされるのですか。日本外交信頼を回復するために何をやられようとしているのですか。  情報収集体制の強化という一つ問題を取り上げたとしても、私は議員になる前、難民高等弁務官事務所というところで仕事をしていました。私が扱う相手というのは、接受国にとってみれば、それは反政府軍です。日本はそういうところとコンタクトをとること自体が許されていないではありませんか。情報をいろいろなところからとると言ったとしても、今の外務省の体制である限り、法体系である限り、反政府軍から何らかの情報をとれるはずがないではないですか。  そういう一つの事象を取り上げたとしても、外務大臣がこれを契機に自分自身が初心を入れかえて、そして日本外交の樹立のために一生懸命頑張っていくというならわかりますよ。そういうのは何もなくて、ただ自分自身責任は感じている、しかし慰留されてしまった、総理大臣が言うから、それだったら残る。  今までの代々の各省庁の大臣にしても、そういうことも全部乗り越えて、河井継之助の話ではありませんけれども、道もときは人任せだ、退くときはみずから決せよという一つの原則ですよ。まさに大企業の人物と言われる方々がみんな踏襲していることです。だから一番難しいのですよ。難しいがゆえに、日本の政治の最高ポストに外務大臣がいらっしゃるのでしょう。外務大臣みずからの去就というものがどれだけ多くの人々に影響を与えるかということをもう一度お考えになられて、そして決断されることを心から私は願って、時間が二分過ぎました、大変興奮いたしましたけれども、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございます。
  94. 逢沢一郎

    逢沢委員長 松本善明君。
  95. 松本善明

    ○松本(善)委員 この報告書の「提言」の部分の最初には「今回の救出作戦については、本報告書第Ⅱ部で指摘したように、作戦実施のタイミングが極めて重要な要素であった。もしその判断を誤っていれば、相当の犠牲者が出た可能性もあった。一方で今回の事件解決には幸運な面があったことは否めない。したがって、テロに屈せず、人命を尊重していくという二つの重要な命題をどのように実現するのか、という困難な問題への取り組みは依然残されているといえよう。」こういうふうに述べています。  テロを許さないということと人命尊重を追求するという問題がなお残されているということでありますが、こういう事件が起こりますと、具体的な場合いろいろ違いますので、私は、今回のことを典型にして何でもテロには実力でということになりますと、非常に危険で大きな間違いを起こすのではないかと思います。一歩間違えば今回の場合でも大惨事になっていたかもしれないと思います。この点についての外務大臣の見解を伺いたい。
  96. 池田行彦

    池田国務大臣 テロ事件には、いろいろな事件を通じて共通する部分もあれば、また一つ一つ事件に特殊な要素なり姿なりもございます。そういうことで、今回の事件解決に当たって適切であったことは、あらゆる今後のテロ事件解決に当たってすべて適切であるとは言い切れないというのはそのとおりだと思います。  そして、今回の最終決着が、三人の貴重なとうとい犠牲者が出ましたけれども、全体としてあれだけのほとんどの人質を解放するという成果が得られたというのは、もとより最終の解決のための作戦が極めて周到であって、また果敢なものであったということは大切な要素でございますが、それがあれだけの効果を、結果をもたらすに至るためにはそのほかのいろいろなそれまでの要因、要素、例えば保証人委員会の作業であるとか、あるいは我が国あるいはペルー政府のそれまでの粘り強い対応であるとか、あるいは国際社会のバックアップであるとか、そういったものが事件のいろいろな状況に、あるいはそれにかかわる人間に対して与えたもろもろの影響、そういったものの土台の上に立ってあのような成果があったのだと思いますから、委員おっしゃるように、今回のやり方がすべてのケースにそのまま当てはまるというふうには我々も考えておりません。
  97. 松本善明

    ○松本(善)委員 委員会調査報告書によりますと、今回の場合、被招待者には大統領が入っており、そして代理が出席したということが述べられております。天皇誕生日をナショナルデーとして、日本在外公館は大々的に外交行事をやっているということでありますが、今回のように、大統領がもし出席をしていたならば事態の発展は全く違っていただろうし、日本外交は深刻な事態に直面したのではないかと私は思いますが、外務大臣いかがお考えですか。
  98. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもは今回の事件を、我が国外交に非常に深刻な影響を与えたと思っております。そしてその影響を一刻も早く減殺していくために、そして我が国外交に対する内外の信頼を回復するために全力を傾けたいと思っておるわけでございます。  しかしながら、今委員がおっしゃいましたようなことを今から振り返って仮定して、前提にして、それでどうだろうかと論評することは必ずしも適切ではないと思いますが、今後、今回の事件の教訓も踏まえながら、我が国として、今回のような事件の発生を防ぐために、あるいは不幸にして発生した場合に適切な対応ができるように、最善の努力をしてまいりたい、こう考える次第です。
  99. 松本善明

    ○松本(善)委員 大統領を招待して代理が出席しているわけですから、仮定の問題では決してないのですよ。そういう事態が起こったら本当に重大だったということについても、深く検討しなければならぬのは私は当然だろうと思います。仮定の事態だから適切でないなどというような問題では決してありません。  それで、この報告書によりますと「各国は、元首の誕生日、独立記念日、革命記念日等の特定の祝日を国祭日(ナショナル・デー)に指定している。我が国の場合は、特に法令による規定はないが、明治時代から天皇誕生日を国祭日と位置づけて世界各地の我が国の公館でこのような行事を行ってきたという伝統がある。」本会議総理はこれについて、「長年定着した慣行」という言葉で答えられました。天皇誕生日をナショナルデーとする法令上の根拠がないということは間違いありませんね。簡明に。
  100. 原口幸市

    ○原口政府委員 これは長年の慣例でございまして、法令上の根拠はございません。
  101. 松本善明

    ○松本(善)委員 世界じゅうの国はすべてナショナルデーを持って、またその日に世界じゅうの在外公館で大々的にレセプションを行っているのでありましょうか。
  102. 原口幸市

    ○原口政府委員 若干の例外があるかどうかは知りませんが、原則としては先生がおっしゃったように我々も理解しております。
  103. 松本善明

    ○松本(善)委員 それはいいかげんな答弁と違いますか。私は儀典課に確かめましたところが、わからない、そういうことは調べていないのでわからない、東京に在外公館を持つ百二十の国はほとんどナショナルデーを持っているけれども、これらが皆その日にレセプションを行っているかどうかもわからない、要するに全世界的にやっているかどうかもわからない、それから、東京でやっているのが全部その日にレセプションをやっているかどうかもわからない、そういう答弁です。  儀典課が言っていることと私に答えたことと比べますと、今の官房長の答弁というのは、この儀典課にはそういう答弁になるのかと聞いたらそうですと言っていましたけれども、調べないでやってきたのではないかというふうに思います。  外務大臣、私はそれにいつまでもかかわっているわけにいきませんのでかかわりませんが、天皇誕生日というのは国内では祝日の一つにはなっておりますけれども国民はこれを祝うことを義務づけられておりません。大々的な国民的祝賀行事も行われておりません。大使館占拠事件そのものも重大でありましたが、この事件を通じて、天皇誕生日が対外的には日本のナショナルデーとして、アメリカの独立記念日に匹敵する大規模なレセプションを行うことが在外公館の最大行事になっている、これは多くの国民が驚いた、私は何人もそういうふうに、そんなことを日本外務省はやっておるのですかというふうに言われました。  この外務省のやっていることと日本国民の感覚ですね、やはり最大の行事としてやっている一そういうのと、国内行事国民の感情というのは乖離していると思いませんか。戦前ならいざ知らず、戦前はそういう状況でしょう、それは今の国民の感情と私は乖離していると思いますが、外務大臣はそれについては何の矛盾も感じませんか。
  104. 池田行彦

    池田国務大臣 対外的には、戦後におきましても、たしか昭和二十七年以降、天皇誕生日に在外公館でこういった行事が行われておるわけでございまして、定着していると思います。  そして、今の委員の御指摘は、国内で、我が国国民気持ちとの関係でどうかという点を御指摘でございましたが、私は、天皇誕生日が国の祭日の一つとして規定されておるということ、そういったものとして国民の中でも定着しているということは、これは委員もお認めになると思いますし、そしてその日に在外公館がこのような行事をするということについて、我が国国民の多くが違和感を持つとは思いません。現在の憲法のもとにおきましても、御承知のとおり、天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であると明確に規定されておりまして、多くの国民も、そのような天皇のお立場を十分理解し、また、その日が国の祭日として祝われることをよく承知し、国民の中に。定着しているわけでございますから。
  105. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは、外務大臣の感覚が少し麻痺しているのだと私は思いますよ。戦前ならいざ知らず、今は祝日の一つにすぎないのですよ。同じように思う人もいるかもしれませんが、それはおかしいと思う人もたくさんいます。それから、定着した慣行と言いますが、それは外務省が定着したと思っているだけなんですよ。これはやはり明治憲法時代の天皇絶対の慣行を引き継いでいる。それを定着したというふうに言っておられるわけです。  国を挙げて祝うべきナショナルデーが歴史的、理論的な根拠がはっきりしているという国も、アメリカの独立記念日がある、これはそうでしょう。しかし、日本は今そうではありません、天皇誕生日を特別の祝日にしておりませんし。こういうような理論的、歴史的な根拠のはっきりしている国もありますけれども、そうでない国もある。私は、日本はそうではない。国祭日をつくらなくても法令違反ではありませんし、あるいは国祭日を憲法記念日にしたって悪くはない。すべて政策的なものなんです。  天皇誕生日をナショナルデーにするのに固執する理由がありますか、根拠がありますか、慣行ということ以外に。
  106. 池田行彦

    池田国務大臣 それは慣行でございますし、それから、先ほど申しましたように、現下の憲法のもとにおきましても、天皇の地位は日本国の、そして日本国民統合の象徴というふうに憲法に明定されているわけでございます。したがいまして、そのことと、長年の慣行であったということとあわせ考えますならば、在外公館におきまして天皇誕生日にこのような行事をするということは、極めて自然でもあり、また、多くの方々の、それは海外だけでなくて我が国国民の理解も得られるところであると考える次第でございます。
  107. 松本善明

    ○松本(善)委員 それがやはり明治時代から引き継いだ慣行で、時代錯誤も甚だしいと私は思うのです。天皇が元首でないことは明白で、日本国憲法が国民主権ということで明治憲法とは違うことははっきりしております。特にアジアの諸国では、その国の国民が天皇の軍隊に侵略をされ、数々の略奪、凌辱を受けたことを生々しく覚えている国がたくさんあります。やはり天皇誕生日をナショナルデーとして大々的に外交行事でやるということは根本的に再検討すべきことである、このことを要求して、次の質問をしたいと思います。  ペルー日本人を含む人質事件というのは、これは重大な問題ですが、これはガイドラインの見直しの中間報告に言います「日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」ということに入るでしょうか、入らないでしょうか。     〔委員長退席、森山委員長代理着席〕
  108. 折田正樹

    ○折田政府委員 いわゆる中間取りまとめに言う周辺事態とは、「日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」を言うと書かれているわけでございますけれども、このような事態は、一般的には、日本周辺地域において日本の平和と安全に重要な影響を与えるような実力の行使を伴う紛争が発生する場合が想定されているというふうにお答え申し上げているところでございます。  今回のペルー大使公邸占拠事件のような事件は、防衛協力のいわゆるガイドラインの対象として想定されるものではないというふうに考えております。
  109. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは、アジアなら入りますか。その地域的なことでお答えいただきたい。
  110. 池田行彦

    池田国務大臣 今回の公邸占拠事件は大変重大な事件ではございますけれども、今、ガイドラインの作業を進めております、いわゆる周辺事態、我が国の安全に重要な影響を与えるような事態というふうには当たらない、つまり、事態の方でガ イドラインの想定しているものには当たらない、我々はこう言っているわけでございます。
  111. 松本善明

    ○松本(善)委員 なぜこういう質問をするかといいますと、秋山防衛局長が五月二十七日の参議院内閣委員会で、「人道支援ですとか非戦闘員の退出の問題とかそういった問題も含めて議論をしておりますので、当然のことながら我が国周辺で発生する事態で我が国の安全保障に及ぼす影響というものは、そういったものが起こり得る、そういう事態を想定しているわけでございます。」こういうふうに言っているわけですね。日本周辺で非戦闘員が退出するような事態、流出するような事態を、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合、こういうふうに見ている。  日本への武力攻撃が全く心配されない状態だけれども非戦闘員や難民の流出が発生する事態を一重要な影響を与える場合、こういうふうに見ているのではないかと思うから聞いているのです。いかがでしょう。
  112. 池田行彦

    池田国務大臣 そこのところは、例えば、政治的な大変な混乱が起きてそのために大量の難民や避難民が発生する、そのことが我が国の安全に重要な影響を与えるという、そういう事態が想定されないことはないと思うわけでございます。  しかしながら、今回のペルーの公邸占拠事件というものは、その事件そのものは重大ですけれども、事柄として、全体として日本の平和に重要な影響を及ぼすという位置づけは適当ではないと思う次第でございます。
  113. 松本善明

    ○松本(善)委員 ペルーの問題はもうわかりました。だけれども、今の答弁はなかなか大事でして、それは南米であってもアジアであっても同じでしょうか。退出、難民の流出、そういう問題が起こった場合は、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合ということになりますか。
  114. 折田正樹

    ○折田政府委員 先ほど秋山局長答弁を引用されました。私はそれを正確に読んでいるわけではないので、あるいはちょっとピントが外れているかもしれませんけれども、仮にいわゆる周辺事態となった場合の協力の態様、協力の検討項目について多分言及したものではないかというふうに私どもは思っております。  私ども、周辺事態には具体的にはどういうものが想定されるかという御質問を受けて答弁させていただいておるのは、先ほど述べたのが一般論で、一般的には、日本周辺地域において日本の平和と安全に重要な影響を与えるような実力の行使を伴う紛争が発生する場合が想定されているが、なお、周辺地域において実力の行使を伴う紛争が発生する場合以外においても、例えば、国内の政治体制の混乱等により大量の避難民が発生しているような状況とか、日本周辺地域内の特定国の行動であって、国際の平和及び安全の維持または回復のために経済制裁の対象となっているものが行われているような状況であって、それらが日本の平和と安全に重要な影響を与えるような場合も含まれるであろうということを申し上げているわけでございます。
  115. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、私は、この秋山さんの答弁をちゃんと示して、これで聞きますよということを事前に通告しているのですよ。それを、知りもしないと。では、何のためにレクをしに外務省は来るのだろう。私は、こういう答弁をやるというのは本当に不誠実だと思いますよ。  改めて聞きましょう。秋山さんが言ったような非戦闘員の退出という問題、そういう問題は、アジアで起ころうと、南米で起ころうと、事によって、規模によって、日本の平和と安全に重大な影響を与えるという事態になるのかどうか。そんなことは、別に調べなくたって答えられるはずです。しかも、事前にわざわざ秋山局長答弁を示して、いつの答弁だということまで言って、そして準備をさせているのに、そういう答弁では絶対納得できない。はっきり答えてください。局長はもういいです。大臣、今の問いにそのままお答えください、入るのか入らぬのか。
  116. 池田行彦

    池田国務大臣 まずその前提として、事前にお示しがあったということでございますけれども、残念ながら私のところに、あるいは局長のところにも事前にそういった御示唆が、あるいは御連絡があったということは伝わっていなかったという事実がございます。  いずれにいたしましても、私は、今おっしゃいました、大量の避難民、難民が発生するという事態が我が国の安全に重要な影響を及ぼす場合というのは、やはり具体的に、その事件の起こり方、あるいはその背景によって、いわゆる周辺事態になるのかどうなのかというのは判断しなければいけないと思いますので、一般的に言うことはできません。  しかし、あえて申しますと、特に、難民、避難民の発生、そのことによって我が国の安定に重要な影響を及ぼすというのは、やはり余り地理的に遠いところで発生した事態ではないのだろうな、こういうことは言えると思うのでございます。  ただ、それではそれが一体どこまでの地域が、それを明確にせよと言われますと、そこのところは、やはり先ほど言いましたように、具体的な事件の態様、あるいはその背景、あるいはその際の我が国状況、あるいは事件の発生している地域の状況等によって違ってまいりますので、一概には申せませんけれども、そういうことで余り遠いところの避難民あるいは難民発生ということは、いわゆるガイドライン上の周辺事態には当たらないということではないかと思います。
  117. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、それは相当重大な答弁だと思います。  非戦闘員だとか難民の流出、そういう事態が、余り遠いところでは問題にならぬけれども事態によっては入ると。これは自衛隊の出動にかかわる事態なんですよ。だって、そうじゃないですか、周辺事態というのはそういうことなのだから。難民の問題だとか非戦闘員の退出の問題、これはやはり国連の諸機関もあり、それから外交的に処理できる、そういう性質の問題だと私は思います。ところが、それが、防衛局長がああいう答弁をし、それで今の外務大臣答弁がある。  周辺事態というのは自衛隊の行動にかかわることです。私は、自衛隊がそういうことで出動すれば、米軍の行動の一環ということで攻撃をされる、何らかの形で米軍との関係で起こっている事態ですから。難民の問題とか非戦闘員の退出というようなもの、ここがこういう事態に発展をしていきますと、これはもう明白に、やはり憲法の予想している平和原則には、はっきり違反をしているということを指摘をしておきたいと思います。  質問を終わります。
  118. 森山眞弓

    ○森山委員長代理 次に、保坂展人君
  119. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  今回のペルー事件で、人質になられた方、そして解決のために努力をされた方に、本当に敬意を払うとともに、犠牲者方々に、心から哀悼の意を表したいと思います。  今回の事件で、日本政府は発生以来、一貫して平和的解決を掲げてきたと思います。この平和的解決を掲げる姿勢ということについて、いろいろ議論があるわけですが、私自身は、決してこれは恥ずかしいことではないというふうに考えております。  テロリズムを憎み、また、今回同様の事態を再び招かないという知恵を絞る時点を現在迎えていると思います。現在、危機管理の名のもとに、テロに譲歩すれば必ず再発をするということが言われています。例えば、国際社会の中でテロに最も強硬な国として知られるのはアメリカであり、イスラエルでありますけれども、アメリカやイスラエルで悲惨なテロがなかなか後を絶たないということも一これまた周知の事実だと思います。  今回の武力突入のシナリオ、そして現実に起こったことを詳細に検討すると、大変多くの課題を残していると思います。  成功というふうに一言で言われるのですが、人質、突入部隊、そしてゲリラも含めて、ペルー人十七名が死亡しています。日本人が死ななかったのは事実なんです。しかし、この死ななかったという事態は、大変幸運という言葉が使われています けれども、例えば、日本に帰ってこられた人質の方のお話だと、日本人がいる部屋にゲリラが入ってきて手りゅう弾を投げつけられなくてよかった、もし投げつけられていたら死んでしまっただろう、死傷者が出ただろう、あるいは、ペルーの農業大臣が撃たれなかったなど、長い未解決期間の中で、たまたまそういった、ゲリラ側が引き金を引かなかったという部分に助けられたということもあっただろうと思います。  日本人が五人、十人、あるいは二十人と犠牲になっていたら、これはこれでよかったのでしょうか。ここについて、その平和的解決という方針を掲げて一貫してこれを発言したはずの日本政府として、このことについてどう考えられているのか、お答えいただきたいと思います。     〔森山委員長代理退席、委員長着席〕
  120. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもは、この事件解決に当たって三名のとうとい犠牲が出たということは大変、本当に残念だし、また、その御遺族の方のお気持ちを考えますと、まことに申しわけないことだな、こういうふうに考えます。  しかしながら、全体として、その人質の大部分の方が無事に解放されたというこの結果は、我々このような結果ができたということについては、まあ、いわばよかったなという気持ちがあるのも、これは否定いたしません。  そして、それをもたらす上で、いろいろな力が働いた。国際社会の一致したバックアップもそうでございますし、平和解決を求めた、強調した、我が国政府対応もそうでございます。それから、もとより保証人委員会のあれだけの粘り強い作業というものがございました。そういったいろいろなものがございまして、そういったものを背景として、その先に行われた、あのような周到な準備の上に立った果敢な作戦というものがこの結果をもたらしたのだと思っておりますので、私どもは、いろいろな、要するに人質解放の最終的な作戦以外の面での努力も、それだけの役割を果たしたものというふうに評価している次第でございます。  そういった意味で、私どもは、テロリズムに屈せず、そうして平和的解決を求めるといった道筋というのは決して非現実的なものではないし、幸運にだけ助けられてこのような解決に至ったとは思っておりません。今回の一連の努力というものが総合される中に、今回のような解決があったのだと思っております。  さらに、もし人質の中にさらなる犠牲者が、とりわけ日本人の犠牲者があった場合にどうかという仮定の上の御質問でございますが、私どもは、ともかく人質方々全員の無事の解放を願って努力をしてきた、そしてその結果がこういうことになったわけでございますので、その現在の結果を先ほど申しましたように評価しているわけでございまして、それを、そうでなかった場合をどうかということについては、今コメントする立場にございません。
  121. 保坂展人

    保坂委員 その平和的解決の部分の交渉ペルー政府も行う、両面でいたと思うのですね。そこの中で、当初ゲリラ側が四百人という莫大な要求から二十人まで下げてきている。ペルー政府の側もゼロから三というふうに、いわばにじり寄ってきた段階であったということを押さえておきたいと思います。  そして、武力突入はある日突然、予告なしに行われたわけですけれども、これは日本政府として、橋本総理は遺憾という言葉を使われましたけれども、やはりこれは、事前通告がないのは主権国家に対する侵害ではないかという視点でどうなのかということを伺いたいと思います。  加えて、平和的解決ということで、今お話ししましたように、にじり寄って三人と二十人というところで、日本政府としての、いわば日本外交の積極性の中で解決の提案をしていけるタイミングでもあったのではないかというふうに思うのですが、これは簡潔にお答えいただきたいと思います。
  122. 田中克之

    ○田中説明員 お答えいたします。  後半の部分の御質問でございますが、これはいろいろ交渉がございました。ございましたが、例えばこの人を出していただくようにというようなこと、数の上でこの人あの人というような形で、例えばの話として収監者を、これはやれということを日本側から言うというのは、やはり私どもが置かれております立場、国際的にはテロに屈しない、不法なテロの要求には屈しないという点、それから私どもペルーに対する内政干渉を行わないというような立場からいいましても、これはやはり難しい、できない相談だと思います。
  123. 保坂展人

    保坂委員 時間がないのでちょっと先に進みますけれども、私、きょうは委員を差しかえということで入っていますので、きょう質問するに当たって、これを詳細に読まさせていただきました。  これだけ大きな事件、そしてまさにこの調査委員会報告書を受けて、先ほどの、外務大臣の身の振り方まで含めて議論があったと思いますけれども、この報告書はなぜ全国会議員に配付されないのですか。これだけ大事な報告をなぜ速やかに全議員に配付しないのですか。お答えいただきたいと思います。
  124. 原口幸市

    ○原口政府委員 先生まず御指摘のとおり、大変大部な報告書でございまして、せかされていたものですから、相当、つくるにもぎりぎりの時間までかかったわけでございます。  私どもとして、全国会議員に配らないという決定をしたことではございませんので……(保坂委員「では配っていただけますか」と呼ぶ)はい。先ほど言いましたように、少し作成までに時間がかかるかもわかりませんが、配らせていただきます。
  125. 保坂展人

    保坂委員 これを見ますと、この報告書の内容としては、これはもう第一義的にはペルー政府責任があるというふうに書いてあるのですね。何があるのかなというふうに読んでいきますと、MRTAは九五%崩壊をしたといいながら、これは報告書の九ページに当たるのですけれども、治安当局の把握していた事実として、国会占拠未遂事件というのがございましたね。これの一周年ということで、政府や軍の高官を誘拐し、政府に対して収監中の仲間の釈放を要求する可能性がある。それに関連して、九六年の十月二日に、三名がリマへの武器輸送途中で逮捕された。これはMRTAが同作戦を実際進行させている可能性がある。次のページで、セルパは妻に、要人の誘拐等のテロ行為を通して同人を解放することを約束していた。こういったことが出てくるわけですね。  出てくるのですが、これはどうですか、こういう事実をペルー政府も押さえながら、必ずしも日本政府あるいは大使のところに届いていなかったということに対して、改めてこういう事実を見て、抗議をするということはされないんですか。
  126. 池田行彦

    池田国務大臣 第一義的にはペルー側に責任がある、こう申しております場合、その責任という言葉の意味は二つの意味があると思います。  一つは、そもそも在外公館警備について、国際法の枠組みの中でどちらがまずその役割を果たすべきかという点でございまして、それは御承知のウィーン条約におきまして、接受国が第一義的な責任がある、こういうことがある、その面を言っているわけでございます。  そして二つ目の意味は、委員が今の御質問の中で展開されたところでございますけれども、要するに、ペルー側においてMRTA側のいろいろな動きに関する情報を察知していたにもかかわらず、それに対して十分な対応をしていなかったという、いわば本件と直接絡んだ、しかも事実関係からする法的な責任について述べられている部分でございます。先ほど申しましたのは、国際法の枠組みとの関連での責任でございますので、ちょっとそれは分けて考えなくてはいけないと思います。  さて、その後の方の問題について、我が方にその連絡がなかったからそれについて何らかの措置をペルーに対してとるべきではないかという御指摘でございますが、そこのところはどうなんでございましょう、まだペルーにおける事件の解明が完全には終わっておりませんから、何とも申せないわけでございますけれどもペルー政府の中でも、その情報を受けました部署が必ずしも適切に 連絡をしたかどうかという問題がある、あるいは、連絡を受けた部署が適切に対応したかどうかという点があるということで、いろいろ議論、議論といいましょうか、今文字どおりその点についても司法手続が進捗しておるところでございますので、なかなか判断の難しいところでございます。  いずれにしても、何かそういった動きがあれば、まず第一義的にはその国の責任においてテロが起きないようにいろいろ対応していくわけでございますから、その対処がきちんといけば、それは関係の国に連絡しなかったといって、そのことが責められるという性格のものではないと思います。あるいは、場合によっては、事件に適切に対処するためには、極秘にいろいろ行動した方がいいというケースもあり得ると思います。  ただ、本件についてどうであったかは何とも言えない。これはまずペルー政府の内部での得られた情報の伝達、あるいはそれに対する、それを受けての対処というところに問題があったというところでございますので、全体として、我が国に対してそのことの通報がなかったという点をつかまえて、直ちに何らかの具体的な措置をペルー政府にしなければいけないとまでは考えておりません。
  127. 保坂展人

    保坂委員 持ち時間が少ないもので……。  これはそうすると、先ほど来の御答弁を聞いていますと、この報告書を読んでも、特にここという落ち度というのはなかった、確かに五ページのこれを見ていますと、最もテロが集中していたのは九一年、九二年でございますよね。その時期は大変な厳戒態勢をとったということです。  今回のパーティーというのは、裏の壁が爆破されて入ってくる。裏の壁あるいは裏のドイツの機関ですか、これについてはチェックをしていなかったということが責任と言われれば責任なんでしょうけれども、そのことでいうなら、まさに日本大使館があの場所に置かれた当時から裏の壁は警備されていなかったはずで、よりテロが頻発していた時代にもそのことが恐らくされていなかっただろうと思うのですね。  そうすると、今回の処分というのは全くよくわからないわけなんですけれども、例えば青木大使が記者会見でたばこを吸ったからいかぬとか、いろいろなことが言われていますよ。しかし、それは一部のマスコミ、週刊誌だとかあるいは新聞もほんの一部です。これは、どうして事件発生のときには大変英雄的に扱われた大使責任をすべて負うような形になるのですか。処分ということと、この報告書と、大臣自身が辞意を表明されてそしてまた撤回されるということ、すべて含めて見て、やはりこれはわからないという感じが率直にするのですが、その点についてお答えいただけたらと思います。
  128. 池田行彦

    池田国務大臣 全体として報告書に書いてございますように、確かに情報収集の面で、今になって振り返って見れば、もう少しこういう手を尽くしておけばという点がないわけじゃございません。あるいは警備についても、あそこは盲点になっていたということはございます。しかし、そういったことは、通常の外務省職員としての職務を遂行していく上で、そこまでを求めなくてはいけないのかどうかという点があると思います。そういった観点から考えますと、職務執行上に落ち度があったとは申せない、それが私どもの判断でございます。  しかしながら、実際問題として、事実問題として、このような重大な事件が起きた、そして今申しましたような、具体的には落ち度とは言えないけれども、さらにこういうところがという、望まれる点がなかったわけでもないということをいろいろ総合的に勘案いたしまして、そしてまた、外交に対する信頼が揺らいだというふうなことも考えまして、内規におけるそういう処分をしたというところでございます。  そういったところについてどうもはっきりしないとおっしゃるかもしれませんけれども、文字どおりそこのところが非常に難しい、法律的には瑕疵ありとは評価できないところであるし、しかし、一方においてこういった事件が起きたという、これは非常に判定、評価の容易でない事態に対応する処分をしたということでございます。  私自身の身の処し方については、いろいろな御批判はそのまま受けさせていただきます。
  129. 保坂展人

    保坂委員 時間が来ましたので質問はもうこれで締めくくりますが、今回、例えば警備官の数をふやす、あるいは正門を中心にこれからこういった行事のときに武装した警備官を派遣すべきなんという議論もありますけれども、しかしこの種の、今回の事件のような、壁を破って周到に用意をして襲撃されるということを、じゃ果たしてそういう増員ということで防げるのかどうかというと、これはやはり襲われない努力ということを重ねていくのが正しいのではないかというふうに思うのです。  やはりそういう意味で、ペルーのフジモリ大統領は大変な功績を残したわけです。これはペルーの貧困層、社会的にずっと抑えつけられていた人々の熱狂的な支持を受けて大統領に選出をされて、そしてフジモリさん自身が、私もゲリラになっていたかもしれないというようなことまで言われているわけです。つまり、そのくらい、貧困や格差のあるところにはこういう問題というのはずっと眠っているわけですね。常に沸々とあるわけです。  ですから、そういった援助の際に、例えば人権の問題などにもくぎを刺して、あるいはNGOの、決して政府機関のみの神経回路ではなくて、きちっとそういう情報を分け合って正しい判断をするように向かっていただきたいということを要請して、私の質問を終わります。
  130. 逢沢一郎

    逢沢委員長 次回は、来る十八日水曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会