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池田国務大臣 私
どもは、事件発生以来、ペルー
政府と連携をとりましてこの事件の解決に努力してきたわけでございますが、その際の基本方針というのは、テロリズムに屈しないという、いわゆるノーコンセッションの原則というのが一つございます。しかし、目的はあくまでも人質の全員無事の解放、これを実現しなくてはいけないわけでございます。そうして、それを平和的な手法で、極力実力を行使することなくできないか、その道を追求したわけでございます。
しかしながら、それでは実力の行使というのをはなから一〇〇%否定しておったかといいますと、それはそうではございません。これは、例えばトロントにおける橋本総理とフジモリ大統領との話の中でも、あくまで平和的な道を追求していく、しかしながら、人質の身に危害が及ぶというようなことになれば実力行使という可能性も排除できないのだ、こういうことが一つあった、そういうことでございます。
それで、平和的な手法で解決するということでいろいろな工夫をしてまいりました。それは、保証人
委員会のいろいろな対話であるとか、あるいは個別のいろいろな折衝であるとか、いろいろなプロセスの中で模索してまいりましたのは、要するにテロには屈しないということでございますから、まず第一の事件解決の当事者であるペルー
政府の
立場からいえば、もう法によって裁かれ収監されている犯罪人を無原則に釈放することはできないということは、フジモリ大統領も非常に強く
主張されていたわけでございます。そういったことはある。
しかしながら、テロリストの方の姿勢、態度の変化を何かもたらすことはできないか。それはテロリスト自身が自分たちの
主張していることの不当さを認識し、あるいは自分たちの要求が通るということの非現実さを認識して姿勢を変えるというのが一番なのでございますけれ
ども、それをもたらすためにはいろいろなことがあり得るだろう。
そういったことの中の一つとして、既に法で裁かれて収監されている囚人ではなくて、今回の事件を起こした人間自身、そういった者のこれからの身をどうするかという話で、その選択肢の一つとして第三国への出国ということも考えられた。そして、もしそういうことについてテロリストもそれでいいと言い、またペルー
政府もそれをやむを得ないとした場合に、受け入れる国があるだろうかどうだろうかということで、御承知のとおり高村政務次官にも総理特使として飛んでいただきまして、いろいろな作業をしてもらった、こんなこともあるわけでございます。
そういうふうな努力をしてきたわけでございますけれ
ども、結果的には四カ月を超える長期の拘禁
状態が続き、先ほど申しましたようないろいろな
状況についてのテロリストとの間のやりとりがございましたけれ
ども、依然として最終的に道が開けてこないという中で、もうこのあたりに参りますと、人質の方々も、心身の
状態からいっても非常に難しい、限界に近い
状況に来ているという感想も随分あったわけでございますね。
それからまた、一方においては、テロリスト側の平生の態勢といいましょうかどの程度の緊張
状態でいるか、注意しているかというような
状況も子細に見ながら、やはりこのあたりで、やむを得ないことではあるけれ
ども、実力を行使しなくてはいけない、そのことが人質の全員無事救出という、解放という目的を達成することに最も有効であるという現場の最高指揮をとっておられるフジモリ大統領の判断があって、あのような決着を見たということでございます。
そういった意味で、極力実力の行使は避けてということでございましたから、最終的な解決の手法は違いましたけれ
ども、目的とするところは、基本的に、とうとい犠牲はございましたけれ
ども、おおむね達成されたということでございますし、また、実力の行使を極力避けていくということをずっと言い続けておったということが、同じ実力行使をするにしても、周到な上にも周到な準備をし、また非常に機微な
状況の中でタイミングをきちんととらえてやったということが、あのような人質の大多数の方の救出につながったのだと思っておりますので、平和的解決を追求していたということはそれなりの意味があった。あのような違う手法ではあるけれ
ども、このような結果をもたらす基礎を形成したということだと思います。
これは、
日本政府だけではなくて、保証人
委員会の方々の御努力というものも、そういった意味で、今回の決着を図る上で非常に大きな力になったと考えております。