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1997-05-14 第140回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月十四日(水曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 逢沢 一郎君    理事 鈴木 宗男君 理事 福田 康夫君    理事 牧野 隆守君 理事 森山 眞弓君    理事 青木 宏之君 理事 東  祥三君    理事 玄葉光一郎君 理事 松本 善明君       安倍 晋三君    石崎  岳君       河野 太郎君    櫻内 義雄君       田中 和徳君    田中 昭一君       田村 憲久君    戸井田 徹君       原田昇左右君    森  英介君       坂口  力君    島   聡君       松沢 成文君    丸谷 佳織君       山中 燁子君    若松 謙維君       井上 一成君    藤田 幸久君       古堅 実吉君    伊藤  茂君       平野 博文君  出席国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      西田 芳弘君         外務大臣官房領         事移住部長   齋藤 正樹君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 河村 武和君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省中近東ア         フリカ局長   登 誠一郎君         外務省経済局長 野上 義二君         外務省条約局長 林   暘君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      中島  明君         大蔵省主税局国         際租税課長   谷口 和繁君         国税庁調査査察         部国際調査管理         官       下村 英紀君         運輸省航空局監         理部国際航空課         長       井手 憲文君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   柿澤 弘治君     田中 和徳君   下地 幹郎君     田村 憲久君   新藤 義孝君     戸井田 徹君 同日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     柿澤 弘治君   田村 憲久君     下地 幹郎君   戸井田 徹君     新藤 義孝君     ――――――――――――― 五月十三日  可塑性爆薬探知のための識別措置に関する条  約の締結について承認を求めるの件(条約第一  三号)  千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協  定の譲許表第三十八表(日本国譲許表)の修  正及び訂正に関する確認書締結について承認  を求めるの件(条約第一四号)  サービス貿易に関する一般協定の第四議定書  の締結について承認を求めるの件(条約第一五  号) 同日  核兵器完全禁止核廃絶国際条約締結に関す  る請願(古堅実吉君紹介)(第二七一一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  航空業務に関する日本国政府香港政府との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第五号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための旦本国政府南アフリカ共  和国政府との間の条約締結について承認を求  めるの件(条約第一〇号)  航空業務に関する日本国とパプア・ニューギニ  アとの間の協定締結について承認を求めるの  件(条約第一一号)  包括的核実験禁止条約締結について承認を求  めるの件(条約第一二号)  可塑性爆薬探知のための識別措置に関する条  約の締結について承認を求めるの件(条約第一  三号)  千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協  定の譲許表第三十八表(日本国譲許表)の修  正及び訂正に関する確認書締結について承認  を求めるの件(条約第一四号)  サービス貿易に関する一般協定の第四議定書  の締結について承認を求めるの件(条約第一五  号)      ――――◇―――――
  2. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 これより会議を開きます。  航空業務に関する日本国政府香港政府との間の協定締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府南アフリカ共和国政府との間の条約締結について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国とパプア・ニューギニアとの間の協定締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福田康夫君。
  3. 福田康夫

    福田委員 本日は、日本香港航空協定、またパプアニューギニア航空協定日本南ア租税条約、この三件でございますけれども、順次、また一緒になるかもしれませんけれども質問させていただきます。  まず、航空協定でありますけれどもパプアニューギニア香港の二カ国が今回選定されまして、協定締結に至ったわけであります。申し込みは現在たくさんあるのではないかと思いますけれども、何カ国あるのか。また、日本側要望というのは現在幾つあるのか。  こういうふうな選考については、我が国とそれぞれの国との交流状況政治経済文化、さまざまな交流関係、また両国間の航空需要、これは極めて大事なことでありますけれども、そしてまた、航空企業乗り入れ計画があるかどうかまた、相手国ハイジャック防止等にどういうふうな対応、取り組みをしているかというふうなことを勘案して検討されるということであろうかと思いますけれども、この基準は現在も変わっていないのかどうか、その辺をまずお尋ねをしたいと思います。
  4. 野上義二

    野上政府委員 御説明申し上げます。  平成九年五月現在、我が国に対して新規航空協定締結を正式に要請してきております国ないし地域の数は三十九でございます。我が国としては、二国間の航空協定を結ぶことによってその二国間関係が促進されるということから、航空協定締結を積極的に推進しているわけでございますが、現在、三十九のうちの七カ国と当局間の予備協議を行っております。  それからまた、締結基準でございますが、今先生指摘のような航空需要でございますとか両国間の政治経済文化等交流関係、それから我が国空港事情、それから相手国ハイジャック防止対策への配慮、先生指摘になったわけですが、それに加えまして、相手国航空企業各社賠償責任限度額現状、そういった点を総合的に勘案して選定しているということでございます。
  5. 福田康夫

    福田委員 現在香港との間は、年間往来が百二十万人くらいだと思います。これは、恐らく米国に次いでトップクラスに位置するのではないかというふうに思います。また一方、パプアニューギニアの方はわずか年間二千八百人、これは平成七年の統計でありますけれども、こういうふうに非常に少ないのでございます。  香港の方はともかくとして、パプアニューギニアの方の航空協定、これはこのように少ない人数でもって締結ができるのかどうか。ということは、今答弁ありましたように、航空需要の見通しという面において問題があるのではないかというふうに思いますけれども乗り入れ希望航空会社があるのかどうか。あるから締結するのですけれども、それはどこなのか。そして日本空港空港事情という話がありましたけれども、この空港はどこになるのか。これを御説明ください。
  6. 井手憲文

    井手説明員 お答えします。  パプアニューギニア側でございますが、現在パプアニューギニアにはエアニューギニーという航空会社がございまして、エアバス級航空機も保有、運航している会社でございます。この協定を御承認いただけますれば、この航空会社は、ポートモレスビー日本側では関西国際空港、ここの運航計画してございます。
  7. 福田康夫

    福田委員 具体名はわかりましたけれども、このような少ない人数で、航空協定ができれば急にふえるということがあるのかどうか知りませんけれども、このような実績でもって実際に運航できるかどうかということですね。また同時に、このような往来の少ない路線というのは恐らくほかの国でもあるのではないか。これはもう既に協定を結んでおる、しかし実際に乗る人が少ない、そういうのがあるのではないか、こういうふうに思いますけれども、そういう実情を教えていただきたい。  そしてまた、少なくて、航空協定はあるけれども実際には飛行機は飛んでいないというふうなことはあるのかどうか、これもあわせて御答弁ください。
  8. 井手憲文

    井手説明員 お答えいたします。  このパプアニューギニア航空会社でございますが、確かに先生指摘のとおり、香港あたりと比べますと、もちろん需要は少ないわけでございます。したがいまして、便数も、先ほど申し上げた関西国際空港ポートモレスビーの間を、一週間に何便もということではございませんで、この辺につきましては、協定締結の前に航空当局間でもいろいろ需要の吟味をいたしまして、需要に応じた便数ということで、当面週一便程度で運航をしていきたいということで了解いたしております。  それから、さらに御指摘のございました我が国との間で需要の少ない国の具体的な例でございますが、週一便ということでは、今バングラデシュのピーマン・バングラデシュ航空という航空会社がございますが、ここがやはり日本バングラデシュの間を週一便でずっと運航を行ってきております。  それから、残念ながら、航空協定締結した後、運航を休止してしまったというふうな例ももちろんないわけではございません。一例を挙げますと、例えばクウェート等は、九〇年までは週二便の運航をこれは日本側がやっておりましたけれども、その後、残念ながら、需要が減ってきたということで、現在は協定はございますけれども、直接の運航関係は休止している状況でございます。
  9. 福田康夫

    福田委員 もしそういうふうにゼロになったときに、この場合には要するに空港があくわけですから、ほかの国と新しく協定ができる、こういう事情になるわけですね。  それから、希望は三十九カ国あるということでありますけれども日本の方から希望しているというのはないわけですね。そうしますと、我が国航空業界というのは、航空業界自由化というふうな中にあるわけでありますけれども、みずから積極的に新規路線を開拓する、こういうふうな考え方というのはないのですか。
  10. 井手憲文

    井手説明員 お答え申し上げます。  先生の御質問がございました、現在我が国航空協定締結の申し入れのある国との間において、私の現在承知している限りで、日本航空企業運行計画は当面は具体的なものはないと承知しております。  ただ、最近航空協定締結いたしました例で申し上げますと、例えば平成六年が一番新しい例でございますが、ベトナムとかあるいは南アフリカ航空協定締結してございます。この二つの国につきましては、協定締結後、特にベトナムは直ちに日本航空企業乗り入れをいたしましたし、また、南アフリカにつきましても、近々、南アフリカ側と提携してヨハネスバーグまで運航するという計画が今持ち上がってきております。  そういうふうに、協定締結いたしますれば、日本航空企業としても、需要の動向とか、あるいはそれぞれの機材の調達の状況とか、そういったものを勘案しながら前向きに取り組んでいただきたいというふうに私ども希望しております。
  11. 福田康夫

    福田委員 わかりました。  できるだけ日本航空企業もいろいろな路線について積極的な協力を示す、そういうふうな態度をもって臨んでいただきたいというふうに思います。  また、そういう面においては運輸省もよく指導をされる。民間航空企業人事面においては指導力を大変持っているようですから、ぜひそういう面においても指導していただきたい。特にパプアニューギニアのように実績がないところについて、これをどうしたらふやせるかということについても、他人事でなくて自分のことと考えてぜひ協力をしていただきたい、こういうふうに思います。  次に参ります。  香港でございますけれども香港との航空協定は、香港中国返還後の円滑な運航を、歴史上例を見ない一国二制度のもとに行うために締結をされることになると思います。と同時に、日本とイギリスの日英航空協定の適用を排除するということになるわけであります。  この方法では中国との協定返還後の香港との協定はどのような関係になってくるのか、これは七月一日以降でございますけれども中国政府とその点について完全な了解を得ているのかどうか、また、将来中国との協定が優先して運航に困難が生ずるということはないのかどうか、その辺について答弁をお願いしたいと思います。  香港との今回の協定というのはそういうふうな一国二制度という特殊状況の中における協定ということになりますけれども、この協定がほかの国との協定と異なる部分があるかどうかそういうことがあればお教えいただきたいと思います。
  12. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 日港航空協定日中航空協定との関係でございますが、日港航空協定返還後の香港特別行政政府との間で引き続き適用されることになっておりまして、香港特別行政区には日中航空協定は原則として適用されないという認識でございます。この点については、中国側といたしましても既に了解しているところでございます。したがいまして、御指摘のように、中国との協定が優先して運航に困難が生ずることはないというふうに考えておるわけでございます。  また、この香港との協定に他国との協定と異なる部分があるかという点でございますが、結論を先に申し上げますと、基本的にそういうことはございません。いずれも通常の航空協定の場合と同様、指定航空企業特定路線上で航空業務を運営する権利を相互に許与するとか、業務の開始、運営についての手続、条件、輸送力決定基準運賃手続航空機あるいはそれに使用する燃料などに対する関税その他の課徴金の免除といったものを取り決めるという形になっておりまして、協定全般にわたりまして基本的に最近の我が国航空協定の例に沿った規定ぶりが採用されていると思っております。
  13. 福田康夫

    福田委員 航空協定そのものではございませんけれども、今香港の話が出ましたので、ついでにと言っては言葉は適当でないかもしれませんけれども香港のことについてお伺いをしたいと思います。  我が国香港関係は、年間往来数が今申しましたように百二十万人、それから貿易額が三百億ドル、また対香港向け投資というのが千億円内外というふうに、非常に順調な関係にあると思っております。また、東南アジアの貿易金融センターとして今後とも緊密なパートナーの関係日本は維持していく、そういうふうな関係にあると思います。  しかし、香港中国返還される七月一日以降は、一国二制度というふうな形で試行錯誤が行われていくだろうと思います。  この香港日本との関係というのは、これは中国日本との関係であるというふうにも言えるわけでありますけれども、今後我が国香港とどのような協力関係を築いていくべきであるか。また、米国返還後の香港に対して人権保護の面で今懸念を表明し、最近は米中外交の極めて大きなテーマに浮上してきておる、こういうことでありますけれども、そういうことになりますと、こういう米中関係というものを頭に置きながら、我が国香港に対してどういうふうな対応をしていくかということについて、外務大臣に御答弁をお願いいたします。
  14. 池田行彦

    池田国務大臣 福田委員指摘のとおり、我が国香港との関係、特に貿易であるとか、あるいは投資であるとか、そういった関係は非常に順調にこれまでも発展してまいりました。  ことしの七月一日から中国への返還ということになるわけでございますが、それ以後も一国二制ということで、基本的に現在の香港地位といいましょうか、とりわけ経済の面では現在の状況というものは維持される、そういうふうに我々は理解しておりますけれども香港が現在のような状態を維持できるということは、香港我が国との二国といいましょうか、両者関係において重要であるだけではなくて、今も御指摘がございました貿易あるいは金融センターとしての香港の果たしてきた役割というのは大変大きいものがございます。  これは、アジア太平洋地域だけじゃなくて、国際経済社会全体の中においても相当なウエートを占めるものでございますから、そういった機能というものが今後とも維持されるということは国際経済全体にとっても大きな関心事でありますので、我が国もそういったことで、その機能がきちんと維持されるように、またその基礎になります法の支配であるとか、そういったことが継続されるようにということを、いろいろな機会に、香港関係者はもとよりでございますが、中国側にも話してきたところでございます。  そして、米国も基本的に香港については同じような関心を持っております。経済的な機能は維持されること、そして法の支配、そしてまた人権の問題などでいろいろな主張をしておること、我々もよく承知しております。そういった問題をめぐって、中国との間で、時に主張がぶつかるというケースもこれまでないではございませんでした。  そういった様子を見ておりました私どもとしては、やはりこの地域で大きな役割を担っている米国中国との間が、これは香港の問題をめぐっても、やはりかけ離れたものであってはうまくないだろうということで、両者に対してこれまでもお互いの立場、考えというものを率直にぶつけ合って調整を図っていくようにいろいろな機会に慫慂してきたところでございます。  これからも、いよいよ大詰めでございますので、七月一日以後の香港地位が、香港の方々、そして中国にとってはもとよりでございますが、国際社会、特に国際経済の面できちんと維持されていくように、中国はもとよりでございますが、米国ともよく連絡をとりながら対応してまいりたいと思っております。
  15. 福田康夫

    福田委員 それでは、先ほど申し上げましたパプアニューギニア、この地域のことについてお尋ねいたしますけれどもパプアニューギニアを含む十六カ国で南太平洋フォーラムというものを構成しておるわけであります。このうち豪州、ニュージーランドは援助対象外でありますけれども、残りの十四カ国に対しましては、日本かなりの力を入れて経済援助もしておるという状況にあります。  この地域に対して日本は、今は米国援助を減らすということがありまして、その肩がわりをするというぐらいな状況になっております。といっても、この地域においては、総額ではまだ日本米国に及びません。しかし、近年非常に重視をしておるということについて、日本としてはどのような外交的な戦略を持ってそのように援助をふやし、関心を持っているのか。  また、ことしの十月にはサウスパシフィックフォーラム南太平洋フォーラム十六カ国、これは国だけではなくて地域も入っていますけれども我が国がこのフォーラム域外としては初めて参加して、東京首脳会議を開く、こういうことになっておるのであります。この会議意義はどういうものか、これも外務大臣、御答弁願います。
  16. 池田行彦

    池田国務大臣 南太平洋諸国とは、我が国はやはり同じ太平洋地域の国として、その繁栄に一定役割を果たしていく、そういった責務と申しましょうか、そういった立場もあると思います。  同時に、我が国自身にとりましてそんなにウエートとして大きいものではございませんけれども経済面でいろいろ交流もございますし、特に漁業や林業の面ではかなり関係があるところでございます。また同時に、一つ一つの国家は決して大きくはございませんけれども、例えば国連のようないろいろな国際的なフォーラムの場におきましては、南太平洋地域の十数カ国の行動というものはやはりそれなりの重みを持つわけでございます。  我が国も、そういった国際場裏での活動におきまして、この地域諸国協力を取りつけながらこれまでもいろいろ対処してきたことがございます。こういった関係はこれからも続けてまいりたいということで、経済面政治面での関係も維持し、さらには強化していきたいと思っております。  経済面、特に援助の面で米国肩がわりという見方もあるという御指摘でございましたけれども、確かにこの地域一定の国におきましては、この前の戦争が終わりました後、国連のもとで米国の、言うならば当時のあれを見ているといろいろな状況がございましたから、今世紀後半の早い段階で米国影響力が非常に大きいという時代もございましたけれども、その後、次第に日本も含めた他の諸国もいろいろな関係を持つようになっております。しかし、現時点におきましてもまだこの地域への、例えばODAの額で申しますと日本は第四位でございまして、今、米国我が国より上位にあるというような状態になっております。そんな状態でございます。  それから、これまでもいわゆるSPF会議には日本域外国としてずっと参加してまいりました。主として外務政務次官が出てまいったわけでございます。そういった関係を踏まえまして、今回東京SPF首脳日本との会議をやろうではないかという提案をいたしまして、十月の半ばにそのような会議を持つことにしております。  先ほど申しましたような経済政治的な面、特に国際場裏でのこの地域諸国役割というものを考えますと、初めてでございますが、東京でのこれら諸国との間の首脳会談というものは非常に意義のあるものと考えている次第でございます。
  17. 福田康夫

    福田委員 多少時間がありますので、別件をお尋ねしたいと思います。きょうは外務省の方に朝鮮半島のエネルギー開発機構現状についてお尋ねしようと思ったのですけれども、これはちょっと時間がかかりますので、きょうはやめておきます。  それで、きょうは条約の日ですから、文化財保護のための国際条約、こちらの方を選ばせていただきます。これは質問と申しますか要望をさせていただきたい、こう思います。  実は、戦争が起こりますと、そういう戦乱の中でもって略奪した遺跡文化財海外に持ち出す、こういうことはよくあることであります。そしてまた、これが美術市場でもって高値で取引をされるということであります。  実際に一九九〇年の例の湾岸戦争では、多国籍軍イラク国内南メソポタミア遺跡を荒らし、また暴徒が十一の地方博物館を襲って、登録済み遺物三千五百点を略奪した。また、その後、経済制裁がありまして、それによって国民が困窮し、文化財の盗難や盗掘が起こった。この結果、合計四千点以上の文化財イラクから海外市場に流出した、こういうふうなことが言われております。このうち幾つかが日本にも流入しているというふうにも言われておるわけであります。  このようなケース対応しまして、この問題はもう古くからあったわけでありますけれども、まず第一に、一九五四年に、武力衝突の際における文化財保護に関する協定、これはハーグ条約と申しますけれども、が締結されました。これは占領地域からの文化財の移動と不正輸出を規制し、原産国への返還を義務づけている条約でありまして、参加国は八十八カ国になります。  そして第二に、一九七〇年、パリにおけるユネスコ総会で、文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移譲禁止及び防止の手段に関する条約が採択されまして、八十五カ国が批准しております。  そして第三に、これは一昨年でありますけれども、ただいまのパリ条約を補完する形で、一九九五年ローマにおいて、ユネスコの要請によりましてUNIDROIT、これは私法統一国際協会というのでありますけれども、この用意した文案によりまして盗取、不法輸出文化財返還条約というのが採択されました。これには盗難や盗品の定義と返還の方法が規定されておりまして、これによって、ディーラーは扱う文化財が盗品でないということ、また不法に輸出されたものでないということを証明しなければならないということになっております。非常に厳しい内容であります。  我が国は、これら三条約のいずれにも加盟しておりません。このような文化財の取引が容易に、国際的盗難物件のマーケットに日本がなっておる、そういうことができるような状況になっているとも言われております。  我が国と同様にこういうふうな条約に加盟していない国には英国があるのでありますけれども、英国については、密輸品と知らずに買った客の、所有者との兼ね合いが難しいという理由をつけて、これは民法上のことだろうと思いますけれども条約批准を渋っておるということでありますけれども、実際には、その裏には、美術品の競売業者、美術商が規制反対のロビー活動をしているというふうに言われているようであります。  我が国文化国家というふうにずっと言ってきているわけであります。文化に理解の深い国民であるということになっておるわけでありますから、いやしくも盗品の国際売買に加担することのないよう、また、このようなことで国際社会から批判をされないように、進んでこの条約に参加、批准すべきではないかというふうに思うのでありますけれども、この辺は国内ども関係があるので非常に難しいという話も伺っておりますけれども外務省の担当の方の御意向はいかがでしょうか。時間がありませんので、やる意向があるかどうかをはっきりと言っていただければ結構です。     〔委員長退席、森山委員長代理着席〕
  18. 中島明

    ○中島説明員 お答え申し上げます。  先生指摘の武力紛争の際の文化財保護条約、これはハーグ条約でございますが、御指摘の中には入っておりましたけれども条約実施のための国内措置、これについて種々検討すべき問題がございます。  それから、二番目の文化財の不法な輸入、輸出等に関する条約ユネスコ条約でございますけれども、この文化財保護するという趣旨については望ましいものであると考えておりますけれども、やはりこの条約の規定を実施するための制度に関連して、国内法制との整合性について慎重に検討する必要があると考えられます。  それから、三番目に御指摘のございました、盗取されまたは不法に輸出された文化財に関するUNIDROIT条約、こちらの方はまだ発効されておりません、未発効でございますが、その内容についても同様の問題があると考えております。  以上のとおりではございますけれども政府としましては、外国文化財保護に関するいろいろな施策、これに対してはできる限り積極的に取り組んでいきたいと思っておりますし、今申し上げた条約についても、引き続き各国の動向、こういったものを見守りながら締結の可能性を検討してまいりたい、そのように思っております。
  19. 福田康夫

    福田委員 なかなか難しい問題であるかもしれませんけれども、できるだけ早く一歩でも前進をしていただきたい、こういうことでお願いをいたします。  私の質問は終わります。ありがとうございました。
  20. 森山眞弓

    ○森山委員長代理 次に、島聡君。
  21. 島聡

    ○島委員 新進党の島聡でございます。  本日は、日本香港航空協定及びパプアニューギニアとの航空協定、南アとの租税条約についての審議でございますが、この質問に先立ちまして、ペルー大使公邸占拠事件の問題につきまして、まず危機管理の観点から御質問を申し上げる次第でございます。  今回の大使公邸突入の前に事前通告がなかったということが問題になったわけでございます。結果としては事前通告がなかったというふうに報道されておりますが、私の最初の質問でございますが、もしも事前通告があった場合に、日本国政府としてはどのような対応をすることを想定していたかということをお聞きしたいわけでございます。  報道によりまして私なりにまとめますと、トロンド会談の時点では国際法尊重の合意を取りつけておられた。それで、外交関係に関するウィーン条約第二十二条では、大使の同意がある場合を除いての在外公館の不可侵が定められておる。ということは、今回は大使も人質となったケースでありますから、判断は日本国政府に持ち上がってくることになります。  今回の場合は事前通告はされなかったわけでございますが、通常の場合、強行突入の際には事前通告があると想定できるわけであります。その際、事前通告を受けて、どのような手続で事前通告に回答するということを想定していたのかということをお聞きします。  これは識者の意見でございますが、ウィーン条約二十二条一項によって大使の承諾が必要となる、しかし今回はそれができない、となると、行政のトップである橋本総理に承諾を求めることになる。その時間午前五時二十三分、サッカーをやっているわけでございますが、橋本総理にペルーから連絡が来る。しかし、現行の日本の法制では総理にはイエス、ノーも言えない。なぜなら、内閣法四条で閣議を召集しなければならないからであります。閣議は閣僚の全会一致が原則になりますから、閣議が開かれて了解を取りつけるのは恐らく午前七時を過ぎるだろう。これでは成功はおぼつかなかったのではないかというような意見があるわけでございますが、もし事前通告があった場合、どのような形で対応すると日本国政府として想定されておられたかを外務大臣にお聞きしたいと思います。
  22. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、ウィーン条約の今御指摘の条項というのは、その条項が想定している通常のケースというのはどういうことかといいますと、今回のようなケースではございません。むしろ、接受国の官憲、例えば警察とか、あるいは税務がいいのかどうかそういった接受国の官憲が入っていっていろいろな活動をするということ、それはいけないよと、大使の方の同意がない限りそれはだめだよ、入ってはいけないよ、こういうことが通常想定されているケースなんでございますね。したがいまして、今回のようなケースについてどうかというのは、一応、当該二十一条ですか、その条項の対象にはなりますけれども、ちょっと別のものとして考えなくてはいけないと思います。  そういったことを条約上、法律上どういうふうに解釈するかにつきましては、要すれば、別途政府委員から答弁いたしますけれども、今回もし事前に同意を求めてきた場合にどうするつもりであったかという点につきましては、それは私どもは、閣議で諮ってそれにどういうふうに対応するかを決める心づもりでございました。  ただし、そのことは、そういう心づもりでおったということでございまして、法律的に閣議にかけなくてはいけない事項かと申しますと、必ずしもそうではない、法律的な性格からいって、閣議付議事項とは考えませんけれども、事柄の重要性にかんがみ、今回の場合は事前に話があれば閣議で諮ることも考えたところでございます。
  23. 島聡

    ○島委員 今の大臣答弁をお聞きしましても、非常にあいまいな点が多かったと思います。今後の危機管理におきまして、不備な点はこれを機にきちんと整備をしていただきたいと思う次第でございます。  きのうの参議院の外務委員会で、この問題についてはいろいろな御質疑がありました。青木大使が辞意を表明されたわけでございますけれども、私は、あのような厳しい状況の中で、青木大使の被害を最小限にとどめられた行為というのは、敬意に値する点もあったのではないかと思っておる人間の一人でございます。  しかし、内容はどうあれ、結果責任を非常に厳しく問われることは事実であります。どうしても、あのようなテロリストが一つねらいを定めて公館に行く場合に、すべてそれに対応するということは、ある意味で非常に困難を伴うことは事実でありますが、結果責任は結果責任であるとして辞意を表明されたことに対しましては、そのとおりであろうと思うわけであります。  しかし問題は、青木大使は辞意を表明された、結果責任として表明をされた。それで、大使館の長として、責任者として、結果責任として表明されたわけでございますが、より結果責任を問われますのは政治家であり、さらに言えば行政の長であるということだと思います。きのうも池田外相は、外務省を統括する立場であり、事件が起きたことを申しわけなく思う、全体としてきちんと対応していく中で考えていきたいと答弁をされたということでございます。  全体としてきちんと対応していくということでございますが、これは六月中旬当たりに外務省の報告書が出ると聞いております。ということは、それまでに国民が納得いく形で、また、世界に日本の姿勢がきちんと明示される形で外務大臣が責任を明示されるというふうにとらえてよろしいでしょうか。大臣にお聞きします。
  24. 池田行彦

    池田国務大臣 私ども、今、調査委員会におきましていろいろな角度から今回の事件について事情を調査し、またこれから分析もし、そして何より大切なことは、将来においてこのようなことが起きないようにするためにはどうすればいいのか、そしてまた不幸にして起きた場合にどういうふうに対処しなくてはいけないのか、そういったことを踏まえ、また、こういった問題に対する事前の対策の強化等についてきちんとやっていかなくてはいけない、こう考えております。それと同時に、今回の事件、このような大きなことが起きたわけでございますから、外務省としてのこれまでの対応ぶりで十分であったかということを十分に検証いたしまして、その上で責任のあるなし、有無を含めまして、よく考えて対応してまいりたい、こう考えております。そういった場合に、外務省を統括する立場にございます私自身も、もとよりきちんとした対応をしてまいりたいと思います。  ただ、一点申し上げておきますけれども、結果責任をとってというふうに断定しておっしゃいましたけれども、これは昨日私が参議院の外務委員会で申しましたように、青木大使の方から、いろいろなことがあったけれども、結果として、ああいった大勢の人質の方をあんな長期間にわたりああいった苦しいお立場にしたわけでもあるし、またとうとい犠牲も出た、それから大勢の方々に、日本の国民、また世界の人々にも御心配をかけた、そういうことを考えて、非常に申しわけないということで、責任を痛感しておりますと。そして、その職を辞したいということを重ねてそう言ってこられたわけでございます。  そういったことを踏まえまして、踏まえましてといいましょうかそういった青木大使のお気持ちというものを酌み、同時に、私が申しましたのは、いろいろな観点から熟慮いたしまして、この際、在ペルー大使の職は解くということにしたいということでございまして、いろいろな、いろいろな観点から考えた結果でございます。この際、ペルー駐箚ということは外れていただこうということでございまして、必ずしも今の段階で、委員が御指摘になりましたような、責任、したがって解職というふうな措置をとったということではございません。
  25. 島聡

    ○島委員 状況はどうあれ、事件発生という事実がございました。そしてまた殉職者が出た。また人質の中からお一人、本当にとうとい犠牲者が出て、これは大使館として、日本がゲストとして招いた方であるということだそうでございます。これに関しまして、きちんとした形の結果責任が問われるべきであると私は思いますので、今、大臣が答弁された、いろいろな角度から熟慮されまして、本当に賢明なる御決断をいただきたいと思っておる次第でございます。  今、外務省全体のという御発言があったわけでございますが、今後、外務省が六月中旬までに調査報告をされるということでございます。先ほど申し上げましたように、テロリストが本当に公館をねらってやった場合、なかなかそれをすべて対応するまでやるのは難しいかもしれませんが、その事前の段階で、どうも日本の大使館というのはきちんと防備されているからねらってもいけないぞというような状況に、外務省全体として果たしてつくっていたのかどうかそれは非常に大いなる疑問があるわけでございます。  九五年十一月の新聞記事でございますけれども、総務庁の行政監察に関する記事でございます。大使館の緊急対応、これは大使館の在外邦人の安全確保が急務とされるという中で、危機管理の具体的マニュアルを作成している在外公館は全体のわずか三分の一だ、情報収集の不備から大使館が退避勧告を出すのが諸外国に比べて遅かったというお粗末な実態が総務庁の行政監察で浮き彫りになったというのがあります。  この新聞記事の中では、注目されるのは在外公館の緊張感の希薄さというのがあります。これは総務庁筋の発言だそうでございますが、このような行政監察を受けられて、その後、その回答に対しましては、在外公館に関しては、勧告の御指摘も踏まえ平成七年十二月に公館所在地の政情、治安の安定などの現状対応した緊急事態マニュアルの作成につき検討するよう改めて指示したとあります。  検討しなさいと指示をした。その後、どのように検討し、どのような対策を打ったかというきちんとした復命行為をされ、そしてかつ、それまでフォローされたのかどうか、お聞きしたいと思います。
  26. 齋藤正樹

    ○齋藤政府委員 お答えいたします。  総務庁の行政監察の中で、三分の一程度ぐらいしか作成されていないと言われました緊急事態対処マニュアルでございますけれども、その時点では、例えば内乱が余り想定されないとか、あるいは在留邦人がそもそも少ないとか、あるいは先進国にある公館ではそういう緊急事態、そもそも余り必要がないというような認識もありまして、委員指摘のように三分の一程度ぐらいしか行政監察の時点では緊急事態対処マニュアルが作成されておりませんでした。  にもかかわらず、そういうように少ないではないかという御指摘がありましたので、去年の七月の報告を待つことなく、すぐに在外公館に訓令を上げまして、一斉に緊急事態対処マニュアルをつくりなさい、その場合にも、単に内乱とかあるいは革命、暴動というようなことだけではなくて、大規模自然災害とかあるいは航空機墜落事故とかそういう大きな事件も念頭に入れて緊急事態対処マニュアルをつくりなさいということを指導してまいりまして、現在ではそういう緊急事態マニュアルができている公館が百十三公館ということになっております。  いずれにしましても、緊急事態の際にやはり邦人の安全確保が非常に大事でありますので、これからも緊急事態に対応するように在外公館と一緒に協力してまいりたいと思っております。
  27. 島聡

    ○島委員 今は在外邦人の安全確保に関してでございますが、これ一つをとりましても、決して外務省の今の危機管理に対する対応というのがきちんとしているわけではないということの一つの事例だと思います。恐らく、六月中旬に報告されるだろうという今回の調査報告書、ともすれば、事件が起きたことは残念だけれども外務省が事件を予見、適切な対応をするのはなかなか難しかったというようなトーンの報告書がまとまることが多うございます。  もっと反省していただいて、きちんとした外務省の責任というものをこれを機に明らかにし、そして危機管理というものに対してきちんと対応していただくことをお願いいたします。     〔森山委員長代理退席、委員長着席〕  そして、本日の質問に入るわけでございますが、非常に時間が少なくなりましたので、通告質問を幾つか削除させていただくことをお許しください。関連質問を申し上げます。  まず航空協定の関連質問としまして、日米航空協定についての御質問を申し上げる次第でございます。  一時中断しておりました日米航空交渉が昨年十一月のAPECの際の日米首脳会談において、問題解決に向けた努力を継続して行うことの意見の一致を見た。ことしに入りまして、一月、三月、四月と非公式協議が行われたと聞いております。日米が対立する問題、大きくとらえますと、我が国航空協定の不平等性を解消するため協定を改正することを主張し、米国側は一歩進みまして、現協定の枠組みを超え、さらなる自由化を目指したオープンスカイ構想を日米航空業務に採用しようと主張しています。なかなかお互いの主張の妥協点は見出せないというふうに聞いております。  米国側は、これまでオープンスカイ構想の旗印のもとで、主に欧州を中心としまして、十数カ国とオープンスカイ協定締結または交渉中と聞いているわけでございます。  事前にいろいろお聞きしますと、運輸省はなかなかオープンスカイ構想には慎重と聞いているわけでございますが、幾つか調査させていただきますと、いろいろな御意見があります。  現航空協定における日米双方の輸送力格差問題、指定航空会社間の権益格差問題、あるいは問題になっている以遠権問題もオープンスカイ構想では解決をされるのではないか。供給サイドでは、航空会社がみずからの経営戦略に基づいて自由に路線便数を設定でき、またサービスに工夫を凝らすこともできるのじゃないか。消費者サイドから見れば、航空市場における自由な競争の結果、安い運賃と良質なサービスが受けられるのじゃないか。総合的に見れば、人や物の自由な流通を促進させ、グローバルな経済活動の成長が促進されるのじゃないかというような御意見が多々あるわけでございますが、私もこれをずっと聞いて、消費者の観点から見た場合には、オープンスカイ構想受け入れというのは望ましいのではないかと考えられますが、運輸省は慎重と聞いております。運輸省の見解をまずお聞きいたします。
  28. 井手憲文

    井手説明員 お答えいたします。  アメリカがヨーロッパを中心に幾つかの、アメリカの言葉をかりますと小国とオープンスカイ協定を結んできているということは先生指摘のとおりでございます。  この内容でございますが、オープンスカイ政策という言葉が一般名詞で語られておりますので、その内容あるいはメリットなりデメリットなりという点について内容に即してよく吟味しなければいけないと思っておりますけれども、アメリカの言う、これは引用符つきでオープンスカイと言うべきだと思っておりますが、この内容につきましては逆に、競争促進という観点からいきますと、多々の問題もあるのではないかというのが私どもの考え方でございまして、そういった観点から、必ずしもオープンスカイという名前とは関係なく、逆に競争が阻害されて、あるいは寡占に向かっていくというふうなケースがヨーロッパのオープンスカイ協定を結んだ国との間では現に発生してございます。  そういった観点も踏まえて、私どもは、アメリカの言うオープンスカイにつきましては、最終的な目標としてこれを受け入れることはできないという立場をとっているものでございます。
  29. 島聡

    ○島委員 アメリカは、四月にはアジアの国としては初めて、シンガポールとオープンスカイ協定の調印を行ったと聞いております。そのほかにも、交渉中の国も幾つかあります。  オープンスガイ構想はある意味で米国の強引とも言えるようなイニシアチブがあるかもしれませんが、徐々に今国際的な広がりを持ちつつあります。この構想が今後国際航空の主流になっていくというようなことは否定できないのではないかと私自身は思うわけでございます。  このような国際航空環境の中で、オープンスカイ構想を我が国が受け入れられない理由を今述べられたわけでございます。あいまいだった点が多々ありますが、きょうは時間の関係で御説明だけを聞きます。  国際的な立場から見た場合、今のような運輸省の説明は十分に正当性があるものかどうか、外務省の見解を伺います。
  30. 折田正樹

    ○折田政府委員 国際的な場で、一般的な意味でオープンスカイ政策が是か非かということで議論がされているわけでは必ずしもないのだろうと私は思います。私どもといたしましては、日米関係を考えた場合には、運航機会の不平等性という問題があるということで、ここの不平等性をまず是正すべく今協議を進めておりまして、平等化ということを前提とした上で日米航空関係のより自由化を図っていくということが現実的な対応ではないかというふうに考えているわけでございます。  そして、アメリカが言っているいわゆるオープンスカイ政策ということにつきましては、今運輸省の方からお話がありましたように、種々問題があるというふうに考えておるわけでございまして、これをアメリカの言っているとおりそのまま受け入れるわけにはいかない、受け入れることは困難であるということではございますけれども、他方で、日米航空関係の平等化を前提とした自由化を図っていくということが現実的な対応ではないかという立場から、現在協議を進めているということでございます。
  31. 島聡

    ○島委員 今オープンスカイ構想について承ったわけでございますが、この問題につきましては、今後時間を十分とって検討させていただくことにしまして、今回の日港航空協定につきましての質問を一間させていただきます。  日港航空協定の附属書によりますと、中国本土を除くアジア内の地点を中間寄航地あるいは以遠の目的地とすることが可能であるとされています。これは日本国内-台北-香港便の開設可能性についてお聞きするわけでございますが、すなわち、台北を中間寄航地として、例えば成田-台北-香港とか、あるいは関西-台北-香港便が少なくとも協定上は可能になると理解しております。実際、外国の航空会社日本発、台北経由、香港行きの路線に現在就航していることも十分承知しているわけでございます。  この台北寄航便の開設に当たっては、日本香港航空協定のほかに、日本と台湾との間の航空取り決めの制約も受けることになるということもお聞きいたしておりますけれども、現在、日台間には民間レベルの航空協定が存在しているが、今申し上げたように、日本発、台北寄航、香港行きという航空路線は、希望すれば日本のどの航空会社も就航が許されることになるのか、これについて運輸省にお聞きしたいと思います。
  32. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 現在日英の航空協定のもとで運航されております日本香港との間の路線は、そのまま日港航空協定のもとで維持されることになります。したがいまして、そのような路線でありますれば、台湾を中間地点とする路線についても、ほかの路線と同様、この協定のもとで引き続き運航されることとなります。
  33. 島聡

    ○島委員 それでは、関連質問としまして、香港の問題についてお聞きをしたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。  香港返還に向けまして、中国と英国はさまざまな問題について協議を随分行ってまいりました。しかし、両国の協議はこれまで必ずしも良好であったわけではなく、特に立法機関のあり方をめぐって両国の確執が大きく、現在でも大きな懸案となっております。具体的に言いますと、行政レベルでは、香港政庁に対して返還準備委員会と行政長官が今おりまして、立法レベルでは、立法評議会と臨時立法会という二重構造が今でき上がっている。  返還後、行政長官に就任することに決定しています董氏が、返還前に人権関係法の改正、廃止を行うことを決定し、五月からは臨時立法会で審議に入ると発表しています。アメリカやイギリスは、このような人権問題に関する中国主導の動きを、香港の高度の自治の保障を侵害するものであると事あるごとに批判はしています。我が国はこのような香港をめぐる状況をどのように理解しているのか、分析しているのかという観点から御質問をするわけでございます。  臨時立法会における人権関係法の二部改正、廃止の動きを、中国返還前に香港中国化しようと分析している専門家もいます。香港に一国二制度、高度の自治を適用すると言いながら、なぜ中国返還直前に駆け込み的にこのような動きを進めるのか、その観点でお聞きしますが、この中国の立法活動、人権関係法の一部改正、廃止の動き及び行政指導は、外交、国防以外の権限は五十年間変えないという香港基本法に抵触すると私は思うのですが、政府の見解を伺いたいと思います。
  34. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 今委員指摘のような問題があるということは私たちも承知いたしております。  現在、香港の議会に相当する機関として存在しているのは、これは立法評議会の方でございまして、臨時立法会の方ではないということであろうと思いますが、返還後も今の立法評議会議員が引き続きその地位を維持できるかどうかというようなところが不透明であるということであろうと思います。それから、人権法改正についても御指摘のような動きというものがありまして、国際社会がこれに注目いたしております。  しかし、臨時立法会の設置ということが香港基本法との関係でこれに抵触するかどうかという点につきましては、これは中国の国内法の解釈の問題となりますので、私どもとしてコメントは差し控えさせていただきたいというふうに考えます。
  35. 島聡

    ○島委員 それでは、具体的に日本政府としてはどうかということをお聞きしますが、ということは、日本政府は、現在、返還準備委員会並びに臨時立法会は香港人民の正統な代表機関ではない、立法評議会こそ香港の正統な代表機関であると考えていると考えてよろしゅうございますか。
  36. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 立法評議会が香港の議会、立法府に相当するものとして現に存在するということは事実だと思っております。  ところで、臨時立法会の方でございますが、これは私ども、結論として、よくわかりません。少なくとも、香港基本法というものの中で臨時立法会的なものを設置してはいけないとかいいとかという規定そのものはないというふうに承知いたしているわけでございます。しかし、そのことが香港基本法との関係でどうなるのか、臨時立法会の設置ということが違反であるのかどうか、これは前にも申し上げましたように、中国の国内法の解釈の問題でございまして、我が方が有権解釈をする立場にはないということでございます。
  37. 島聡

    ○島委員 解釈する立場にはないということでございますけれども、要するにわからない、あいまいだということでございますが……。  また聞きますが、恐らくこういうことと私は思います。人権関係法の改正、廃止を返還前に臨時立法会で審議することは、私は民主主義に反する行為じゃないかと実は思っております。すなわち、人権関係法の改正、廃止、これ自体がもう既に世界的な人権尊重の風潮に逆らうものでありまして、それ自体受け入れがたい。  また、私は、民主主義の原則からすれば、今どうかわからないとおっしゃいましたが、返還前の香港人民の正統な代表機関は香港政庁であり立法評議会である、これはもう明快だと思います。とすれば、返還前に臨時立法会が何らかの立法措置をとることは違法であると私は考えておりますが、政府の御見解を伺いたいと思います。
  38. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 ことしに入ってから、香港特別行政区の準備委員会、これは返還問題に責任を有する中国側の機関でございますが、そこの法律小委員会が現行人権法の返還後の香港への適用について一部改廃を提案し、人権法制定に伴って改正された社団条例及び公安条例の廃止などを提案しておりまして、これを二月の中国全国人民代表大会、全人代において、こうした提案が修正の上、採択されたという事実があるというふうに私たちは承知いたしております。  これは、返還後の現行人権法の香港への適用についての改廃の問題でございます。そのような行為というものが香港基本法との関係でどういうふうになるのかということについて、日本政府としてこれを答弁できる立場にはないわけでございます。
  39. 島聡

    ○島委員 何度も日本政府としてコメントする立場ではないということでございましたので、今度は、今後日本の外交を考えていく場合に、このように香港中国返還される。それで、アメリカの下院を見ますと、米国の下院で、中国返還後の香港に高度の自治権が確保されない場合、大統領に貿易及び領事業務等を含む香港当局との全面的な関係見直しを求める香港返還法というのを可決したわけでございます。  ある意味で国際法と逆的な意味の国内法を持つことによって、将来問題が起こったときに、国際法と国内法のバランスで外交を進めることができる。ここにアメリカ外交の進め方、そしてまた、さすがにアメリカ外交だなと思うところがあるわけでございます。  私は、顔が見えない、何を考えているかよくわからないとよく言われる日本外交から脱却するためにも、日本でもアメリカのような香港返還法を考えていく、あるいは検討していくべきではないかと思うわけでございますが、この意見に対しまして、恐れ入りますが、外務大臣に見解をお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  40. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもも、香港中国返還後、一国二制のもとに、香港が基本的に現在のような自由が保障されるような状況を維持するということには関心を持っております。そしてまた、これは経済あるいは金融のセンターとしての香港の果たしている役割がこれからも維持されるためにも、やはり法の支配を初めとしたそういった自由な社会というものが必要であろうということは、いろいろな機会に私自身も中国側にも申しているところでございます。  しかし、具体的にどういうふうなプロセスで、どういうふうな法制でやるかということは、これはまず中国と英国との間の取り決めに基づいて行われるものであり、そしてその後の話は中国の国内法で行われるわけでございますので、やはりそこのところを踏まえながら対応しなくてはいけないと思っております。  米国対応についてあれこれ申し上げることは必ずしも適切ではないかもしれませんけれども、一般論として申しますならば、米国の場合は、議会においていろいろな法律をつくりまして、法律といいましても日本の場合の法律と性格の違うものがたくさんあるのは委員御高承のとおりでございますが、そういうことを含めまして、いろいろな国際関係についての米国立場を鮮明にしていこうということがよくあるということは、私も承知しております。また時には、往々にして、そのことが米国の国内法の域外適用になるんじゃないかということで、別の角度から国際社会から疑問が呈されることがあるということも、これは委員御高承だと思います。  いずれにいたしましても、日本といたしましては、先ほど私も前半で申しましたように、基本的に、香港の現在のような自由な社会が、そして香港の今果たしているような機能が維持されるということを期待しながら、そういったことで中国とも機会をとらえながら話をしているところでございます。
  41. 島聡

    ○島委員 最後に、最初に申し上げましたペルー大使公邸占拠事件につきまして、決してある意味で玉虫色に終わることなく、きちんとした責任を、結果責任に基づいた責任の果たし方を示されることを再度お願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  42. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、丸谷佳織君。
  43. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 新進党の丸谷佳織です。  三十五分という短い時間なんですが、精いっぱい質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  さて、外務大臣、ペルー大使公邸占拠・人質事件解決に向けて長期にわたっての御尽力、本当に御苦労さまでした。今、島委員の方からも質問が若干ございましたので、重複を避けまして二、三お伺いしたいと思います。  当委員会でも数回にわたりましてこのペルー占拠事件のことについての質疑がなされていますが、大臣の御答弁の中に、人質になられている方々の全員の無事解放に向けて御努力されている最中ということを考慮されて、発言を控えていらっしゃった事柄もあったというふうに存じております。  当委員会三月二十一日、東委員が、この事件が起きたとき、日本政府は、テロには屈しないというスタンスをとらずに、あくまでも平和的解決という言葉しか使わなかったのではないかという趣旨の質問をいたしました。これに対しまして大臣は、いろいろと反省点はあるが、細部にわたって議論することは、現に過程にある解決への努力への影響もあることを念頭に置かなければならないというふうに御答弁をされています。事件が解決しました今、大臣がおっしゃったいろいろな反省点というのを改めてお伺いします。
  44. 池田行彦

    池田国務大臣 文字どおり、今外務省に調査委員会をつくりまして、事件が発生いたしましてからの経過、それからまた事件が発生する前の警備体制あるいは情報収集のあり方等々につきまして、いろいろ調査を進めているところでございます。  外務省といたしましては、基本的にこれまでもこのような緊急の事態が起こらないように留意をしてきたつもりでございますし、それなりの対策もしてきたつもりでございます。しかし、結果としてこれだけ大きな事件が起きたわけでございますから、やはりそこに反省すべきところがあったに違いないということで、今、青木大使を含めまして、ペルーの大使館、あるいは人質だった方々からもこれからもお話を聞かなくてはいけないと思いますが、事情の聴取に努めておるところでございます。  なぜ起きたか、情報収集に遺憾なかったかとかあるいは公邸の警備の体制、これは施設面でも、あるいは人的な面でも、機器の面でも、遺漏があったかなかったか。それからまた、あのような行事をあの時点であのような形で行うことがどうであったか等々、今鋭意調査を進めているところでございます。
  45. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 では、調査委員でまとめられた総括的な反省点ではなく、外務大臣としての三月二十一日の時点で考えていらっしゃった反省点というのをお伺いすることはできますでしょうか。
  46. 池田行彦

    池田国務大臣 私としてというよりも、要するにこのような事件が起きたわけでございますので、これがなぜこんな事件を回避することができなかったのか、あるいは起きたのはどういう事情があるのか。そして、将来に向かって再発を防止するにはどうしたらいいか。  そういう観点から、あらゆる角度から今検討し、そうしてまた対策を強化しようとしているところでございますので、今その中の一部だけを断片的に引き出して、私はこれが一番の原因であったと思いますなどと申しますと、かえってこれからの調査、そうして対策立案に場合によってはバイアスを、ゆがみをもたらすおそれもあるかと思いますので、ひとつ調査委員会の結果をお待ちいただければと思います。
  47. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 では、日本政府は、昭和五十三年に決定されましたハイジャック等に対する対処方針及び昨年のG7で合意されましたテロに対する対処方針等に基づきまして今回のテロ事件に対応されたというふうに認識をしておりますが、テロには決して屈しないと同時に、人質全員の無事解放に向けて御努力をされて、大臣の発言の中では、三カ月を過ぎた時点で、解決の方策としまして第三国の協力も得られるような状況が開けてきた、その中で何とか解決の道を確実に見出して、もしそれができない場合には何をすべきか、この三月の時点では、議論すべき段階ではないというふうにおっしゃっています。  第三国の協力を得ての平和的な解決方法を一つの方法としてお考えになっていたときから四月二十二日、公邸に強行突入するまでの間に、いろいろな状況の変化があったというふうにも存じております。四月十一日には、保証人委員会とMRTA側が十七日ぶりに個別協議を行っています。これは大臣がおっしゃっていました第三国の協力を得ての平和的な解決から見まして、よい方向に向かったというふうに思いますが、一方、二十日にはセルバが医師の公邸入りを週一回に制限するように要求すもなどと、いろいろな状況の変化があったと思います。  第三国の協力を得ての平和的解決はどの時点まで考えていらっしゃったのか、また、それができなかった場合にはどういうふうに対応するかということをどの時点で御議論されたのかお伺いします。
  48. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもは、事件発生以来、ペルー政府と連携をとりましてこの事件の解決に努力してきたわけでございますが、その際の基本方針というのは、テロリズムに屈しないという、いわゆるノーコンセッションの原則というのが一つございます。しかし、目的はあくまでも人質の全員無事の解放、これを実現しなくてはいけないわけでございます。そうして、それを平和的な手法で、極力実力を行使することなくできないか、その道を追求したわけでございます。  しかしながら、それでは実力の行使というのをはなから一〇〇%否定しておったかといいますと、それはそうではございません。これは、例えばトロントにおける橋本総理とフジモリ大統領との話の中でも、あくまで平和的な道を追求していく、しかしながら、人質の身に危害が及ぶというようなことになれば実力行使という可能性も排除できないのだ、こういうことが一つあった、そういうことでございます。  それで、平和的な手法で解決するということでいろいろな工夫をしてまいりました。それは、保証人委員会のいろいろな対話であるとか、あるいは個別のいろいろな折衝であるとか、いろいろなプロセスの中で模索してまいりましたのは、要するにテロには屈しないということでございますから、まず第一の事件解決の当事者であるペルー政府立場からいえば、もう法によって裁かれ収監されている犯罪人を無原則に釈放することはできないということは、フジモリ大統領も非常に強く主張されていたわけでございます。そういったことはある。  しかしながら、テロリストの方の姿勢、態度の変化を何かもたらすことはできないか。それはテロリスト自身が自分たちの主張していることの不当さを認識し、あるいは自分たちの要求が通るということの非現実さを認識して姿勢を変えるというのが一番なのでございますけれども、それをもたらすためにはいろいろなことがあり得るだろう。  そういったことの中の一つとして、既に法で裁かれて収監されている囚人ではなくて、今回の事件を起こした人間自身、そういった者のこれからの身をどうするかという話で、その選択肢の一つとして第三国への出国ということも考えられた。そして、もしそういうことについてテロリストもそれでいいと言い、またペルー政府もそれをやむを得ないとした場合に、受け入れる国があるだろうかどうだろうかということで、御承知のとおり高村政務次官にも総理特使として飛んでいただきまして、いろいろな作業をしてもらった、こんなこともあるわけでございます。  そういうふうな努力をしてきたわけでございますけれども、結果的には四カ月を超える長期の拘禁状態が続き、先ほど申しましたようないろいろな状況についてのテロリストとの間のやりとりがございましたけれども、依然として最終的に道が開けてこないという中で、もうこのあたりに参りますと、人質の方々も、心身の状態からいっても非常に難しい、限界に近い状況に来ているという感想も随分あったわけでございますね。  それからまた、一方においては、テロリスト側の平生の態勢といいましょうかどの程度の緊張状態でいるか、注意しているかというような状況も子細に見ながら、やはりこのあたりで、やむを得ないことではあるけれども、実力を行使しなくてはいけない、そのことが人質の全員無事救出という、解放という目的を達成することに最も有効であるという現場の最高指揮をとっておられるフジモリ大統領の判断があって、あのような決着を見たということでございます。  そういった意味で、極力実力の行使は避けてということでございましたから、最終的な解決の手法は違いましたけれども、目的とするところは、基本的に、とうとい犠牲はございましたけれども、おおむね達成されたということでございますし、また、実力の行使を極力避けていくということをずっと言い続けておったということが、同じ実力行使をするにしても、周到な上にも周到な準備をし、また非常に機微な状況の中でタイミングをきちんととらえてやったということが、あのような人質の大多数の方の救出につながったのだと思っておりますので、平和的解決を追求していたということはそれなりの意味があった。あのような違う手法ではあるけれども、このような結果をもたらす基礎を形成したということだと思います。  これは、日本政府だけではなくて、保証人委員会の方々の御努力というものも、そういった意味で、今回の決着を図る上で非常に大きな力になったと考えております。
  49. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 では、四月二十二日の時点では、テロリストに対して、第三国の協力を得ての対策というのはもうお考えにはなっていらっしゃらなかったという理解でよろしいでしょうか。
  50. 池田行彦

    池田国務大臣 いや、その時点におきましても決してその選択肢を放棄したわけじゃございません。やはり第三国への出国という一つの選択肢が存在した。しかし、そのほかにもいろいろな、要するにノーコンセッションの原則を大切にしながら、しかしいろいろ犯人側の態度の変化を誘い得るようなものは、周辺的なものはいろいろあったわけでございますので、そういうことはどうかということで、まだその道も追求する姿勢にはあったわけでございます。しかし一方において、これも非常に難しいところであるので、ほかの、実力を使う選択肢もペルー政府としては準備しておられた。  そして、こちらが非常に難しい状況になっているし、一方で、実力行使については相当程度の成功の確信が持てたということ。これは先ほど言いました、テロリストの犯人側の油断を誘って、サッカーをやっておるなんという状況も含めてでございますが、いろいろな状況の中でこの道をということで、最終的にはフジモリ大統領が選択された、こういうことでございます。  こちらも決して完全に捨て去ったということではなかったと思います。こちらと申しますのは、第三国への出国を前提とした選択肢でございますね。
  51. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 今後、今も行われていますが、調査委員会で包括的な話し合いはなされていくと思いますけれども、青木大使が辞任希望されて、それを外務大臣が受領したということに関しまして質問させていただきたいのです。  いろいろとマスコミにも大使のことについて書かれまして、御自分が責任を感じられて辞任を御決意されたというのは、心理的にはわかるのですけれども、一国の公人である大使が辞任をする、それを外務省が認めるということは、今責任問題も含めまして調査委員会で話し合いがなされている中、先ほど六月中旬に結論が出る予定だというふうにおっしゃったかと思うのですけれども、その中で、なぜペンディングにせずにこの時点で辞意を受領されたのか、何か根拠があって受領されたと思うのですが、その所見をお伺いします。
  52. 池田行彦

    池田国務大臣 昨日の参議院の外務委員会の場で参考人として出席されました青木大使御自身が述べられました心情というものがございます。その心情も酌みました。そしてまた、いろいろな観点からこの問題は考えなくてはいけません。私もいろいろな観点から熟慮に熟慮を重ねまして、この際、青木大使には在ペルー大使としての任は離れていただく、ペルー駐箚は解く、こういうことにしようと決めさせていただいたわけでございます。
  53. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 あえて、六月中旬に結論が、責任の所在がはっきりするまでペンディングになさらなかった理由といいますのは、今おっしゃいました大使の心情を考えてということでよろしいですか。
  54. 池田行彦

    池田国務大臣 国会の中にも、あるいは世間にもいろいろな御意見がございました。また、それぞれの段階におきまして、同じ方が全く別の角度からの御意見を言われたこともございました。また、国会の中でも一つの党派で全く同じではない、全く逆の御意見が出るということもございました。それほどこの問題について、どう対応したかいろいろな見方があり得るんだと思います。  そういった中で、やはり青木大使の心情も酌まなくてはいけない、あるいは大使の心身の状態も配慮しなくてはいけない、あるいはペルー大使館の機能をどうするかというのも考えなくてはいけない、あるいはペルーの方では青木大使の留任を歓迎するという意向が表明されたとしても、一体、その状況の中で引き続きお仕事をされる場合にどうなんだろうかと、当然考えなくてはいけないんじゃないでしょうか。  だから、そういったことで、いろいろな面から、いろいろな観点から熟慮に熟慮を重ねまして、ペルー大使の職を離れていただく、こういうことにさせていただいたわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたけれども、責任、したがって解職といったような直接的な、また、それだけの判断ではございません。
  55. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 御答弁ありがとうございます。  では、ペルー事件に関しましては最後の質問をさせていただきたいのですが、今後のことについてお伺いします。  昭和五十三年のハイジャック等に対する対処方針には、テロに対抗するための原則は明記してあるのですが、その原則を実行するための手段は記述されておりません。冷戦が崩壊した今、欧米各国の安全保障の主要課題は、個別地域の民族紛争への対処、それに付随する形でのテロ、ゲリラ対策となっております。  以上のことを踏まえまして、この政府方針の見直し、また新たな政府方針の打ち出しが必要だと思われますが、大臣の見解をお伺いします。
  56. 池田行彦

    池田国務大臣 御指摘の五十三年の政府の方針が決まりまして以後も、国際社会におきましても、例えばG7の場等におきまして何度もテロ対策が話し合われ、そしてノーコンセッションの原則に基づき協力していこうということが確認されると同時に、またテロ対策を充実する方途についてもいろいろ話し合われてきたところでございます。そして、日本もそれに参加してまいりました。  そういったことも踏まえながら、日本としても考えなくてはいけない。そしてまた、今回の大きな事件の教訓も踏まえなくてはなりません。また、これ以外にも我が国の国民がテロの対象になった事件もございます。そういった経験も踏まえながら、今後とも対策の充実を図ってまいりたい、こう考える次第でございます。
  57. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 どうもありがとうございました。  では、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府南アフリカ共和国政府との間の条約に関する質問をさせていただきます。  南アフリカといいますと、ことしの二月四日に、一切の差別を禁じました世界で最もリベラルな憲法の一つというふうに言われています新憲法が発効しております。この新憲法によりまして、法律上アパルトヘイトは完全に過去のものとなったわけなんですが、実際に、全人口の七六%を占める黒人と、一三%にすぎない白人、そして九%のカラードが共存する南アフリカにおきまして、本当の意味での人種融和までには時間がかかるのかもしれません。  報道によりますと、南アフリカのヨハネスブルク中心で、三月十二日午後、与党のアフリカ民族会議、ANCと対立する議会の第三勢力インカタ自由党、IFP支持のズールー族のデモ隊と警官隊が銃撃戦を展開、少なくとも十二人が負傷、またデモ隊は同日の朝、郊外の黒人居住地区ソウェトなどでも発砲事件を起こし、二人が死亡したという記事が載っております。  ANCもIFPもともに黒人を主体とする政党であり、南アフリカには人種対立のほかにも部族対立も厳然として存在し、このことが南アフリカの将来に暗い影を落とさなければよいと思うのですが、南アフリカにおきます人種対立及び部族対立の現状についてお伺いします。
  58. 登誠一郎

    ○登政府委員 お答えいたします。  今御指摘いただきました事件は、ことしの三月にヨハネスブルクで起きましたデモにおける発砲事件でございます。このデモは現在与党の一部になっておりますインカタ自由党、これはズールー族が主体でございますけれども、これが三年前に起きましたデモ発砲事件に対する追悼ということでデモを行ったわけでございますが、その際に、またデモ隊の方から発砲がございまして、それの結果、何人かの負傷者がヨハネスブルクで出まして、また地方では、ごく少数ですけれども犠牲者も出ております。  既に御指摘がございましたけれども、まだ国民和解制度ができてから間もない南アフリカでございますので、このような形で部族の対立が多少残っていることは事実でございますけれども、現在、南アフリカは、マンデラ大統領の指導のもとに国民和解路線を強力に進めておりまして、政情は大変安定した方向に向かっていると言えると思います。  さらに、このマンデラ政権は、国民融和の実現、それから黒人を中心といたします貧困層の救済ということに重点的に取り組んでおりますとともに、新政権における主要な政策の柱として、民主主義の定着あるいは人権擁護のための文化の形成ということを掲げておりまして、この結果、南アにおいては、一時、多少ございましたけれども人権侵害というのは大幅に解消されておりまして、現在ではアフリカにおきましても最も人権尊重が進んでいる国の一つだというふうに私どもは理解しております。
  59. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 ありがとうございました。  今おっしゃいましたように、南アフリカ国際社会に復帰できた背景というのは、マンデラ大統領の強い求心力に負うところが大変大きいと思います。が、九九年の四月までのマンデラ大統領任期後、ポスト・マンデラを考えた場合なんですが、同国が不安定化する懸念も決してぬぐい切れません。しかし、両国関係を長期的に見ていくとき、大切になってくるのは、新世紀を担っていく若者の育成だと思います。  そこで、中曽根内閣が打ち出しましたアジア青年招聘計画のように、日本の若者が南アフリカへ行き、また南アフリカの若者を日本に迎えて、国の実情ですとか文化を学んでいただくようなプランが実現すれば、両国の友好関係の土台づくりになるというふうに思いますが、外務大臣はこの提案についてどのようなお考えですか、お伺いします。
  60. 池田行彦

    池田国務大臣 老いも若きも大切でございます。が、しかし、おっしゃるように、やはりその国の、そして地球社会のあすを担う若者というものは大切にしなくてはいけませんし、そういった方々と我が国との交流というものは非常に重要であると思っております。文化交流あるいはその他のいろいろなプログラムを通じまして交流を進めてまいりたい、こう考える次第でございます。
  61. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 経済交流とともに文化交流、人間同士の交流というのがやはり大変大切になってくると思いますので、前向きに努力されていただきたいと思います。  次に、本条約の第二十五条についてお伺いしたいと思いますが、租税に関する脱税防止するため情報を交換するという記述がございますが、これは具体的にどのような方法で情報の交換を行っているのか、お伺いします。
  62. 下村英紀

    ○下村説明員 お答え申し上げます。  私ども国税庁では、租税条約に基づきまして、条約締結国と情報交換をいたしてございます。その中身は、利子配当等の支払いに関します自動的情報交換、それからあとは、個別的に税務当局相手国税務当局に事実関係の確認をお願いいたします個別的情報交換、それからもう一つは、一方の税務当局が自発的に、こういう情報がありますというのを相手国税務当局にお知らせする自発的情報交換というのがございますが、この三つの形態で情報交換を活用させていただいてございます。
  63. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 従来から我が国は、租税条約の主な目的の一つであります脱税防止の観点から、条約相手国またはそのほかの国に対しまして調査官の相互派遣を行っているというふうに認識しておりますが、この認識は正しいでしょうか。
  64. 下村英紀

    ○下村説明員 お答え申し上げます。  国際取引事案の調査に当たりましては、取引先が海外に所在するなど、国際取引を利用した租税回避等を的確に把握することが困難でありますことから、租税条約等に基づく情報交換や調査官の海外派遣等の実施により、適正な課税の実現に努力しているところでございます。
  65. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 では、現在の調査官の派遣及び受け入れの実績をお伺いします。
  66. 下村英紀

    ○下村説明員 お答え申し上げます。  調査官の海外派遣につきましては、海外における企業実態を解明する有効な手段でありますことから、年間二百名程度の調査官を派遣しているところでございます。
  67. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 現在、毎年二百人程度の規模の派遣が行われているということなんですが、国際化に伴いまして企業の海外進出が進む中、さらなる調査官の派遣が必要と思われます。派遣しています国の数を考え合わせた上で、この規模で適正な調査が行えるのかどうか、政府の見解をお伺いします。
  68. 下村英紀

    ○下村説明員 国際取引事案の調査に当たりましては、取引先が海外に所在するなど、国際取引を利用した租税回避等を的確に把握することが困難でありますことから、租税条約に基づく情報交換や調査官の海外派遣等を実施いたしますとともに、新たな調査手法の開発にも努め、適正な課税の実現に努力しているところでございます。  また、国際取引に関する調査体制につきましては、国税庁に国際調査管理官、国税局に国際調査課、国際情報課の設置、税務署に国際調査情報官の配置等の機構の整備、それから税務大学校におきます国際租税セミナー及び各国税局における各種研修などによる人材の育成などにより、充実に努めていただくところでございます。  今後、我が国経済の国際化の進展により、海外取引は量的に拡大するとともに、その内容もより一層複雑となることが予想されますことから、適正公平な課税の実現のため、必要に応じ、調査官派遣の一層の拡大等を含め、国際課税の執行体制の一層の充実に努めてまいる所存でございます。
  69. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 どうもありがとうございました。  では、経済的にも大変重要な関係を築いています日米の間でも日米租税条約締結されておりますが、報道によりますと、日米間で二十年以上続いてきました調査官の派遣、例えば米国の内国歳入庁の係官が、米国企業に対する調査の一環としまして日本に出向きまして裏づけ調査をしてきたわけなんですが、現在、この調査官の派遣が途絶えている。この調査官派遣中断の背景には、日本側米国からの調査官派遣の申し出を留保しているというふうに報道にありますが、現状についてお伺いします。
  70. 下村英紀

    ○下村説明員 お答え申し上げます。  今先生が御指摘ありました内容の新聞報道が行われましたことは私ども承知してございますが、相手国との関係もございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。  日米税務当局間では、これまでも租税条約上の情報交換、各種国際会議の場での意見交換等を通じて、緊密な協力関係が築かれてございます。日米税務当局間の問題は、これまで築かれてきた協力関係の中で十分に話し合いを行うことにより解決されるものと考えているところでございます。
  71. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 私が言うまでもなく、日本とアメリカは最も緊密な経済関係を有しまして、調査官の相互派遣が途絶えているということは、我が国の国益を損なうおそれがあるのではないかと危惧をしての質問なんですが、国会の場で審議できないとおっしゃるのであれば仕方ありませんが、租税条約は、二重課税回避及び脱税防止のためという目的におきまして大変大切な条約だと思います。  この質問を考えるときに、お答えいただけない部分もあるということで大変苦労をしたのですが、これは外交上の問題でお答えできないのか政策上の問題でお答えできないのかちょっと今わからなかったのですが、外務大臣はお答えいただけない部分で御苦労されたことはあるでしょうか、教えてください。
  72. 池田行彦

    池田国務大臣 私も必ずしも専門的な知識も有しませんので何とも申せませんけれども、やはり国際的な取引のことでございます。だから、そういった外交的な観点というもののことが皆無とは申しませんけれども、やはり経済的取引に伴う課税関係をどうするかということでございますので、むしろそちらの方の観点からの配慮でなかなか内容をお答えできないというケースが少なくないのじゃないか、こう考える次第でございます。
  73. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 ありがとうございました。  では、時間もなくなりまして、最後の質問をさせていただきたいのですが、過日、当委員会質問をさせていただきました地中海漁業一般協定は本会議の方でも承認されていますけれども、五月七日、日本国籍のマグロはえ縄漁船がリビア沖で拿捕されました現状について、最後にお伺いします。
  74. 登誠一郎

    ○登政府委員 今お尋ねの件は、去る五月七日に高知県のマグロはえ縄漁船がリビアの沖で操業中にリビアの警備艇と見られる船舶の臨検を受けて拿捕されまして、そのままリビアの軍港に連行されました。  我が在リビアの大使館といたしましては、直ちに、すなわちその翌日でございますけれども、大使館員を現地に派遣いたしまして、リビア側の治安担当者と面接して、乗組員、日本人十二名、インドネシア人十名全員が無事である、拘束はされたが無事であるということを確認いたしました。さらにその翌々日に、同じく大使館員が、この拘束された船の日本人の船長さんとお会いしまして、全員が無事であるということを確認いたしました。  その後、この船は軍の取り調べを終えまして警察に引き渡される、それで、別の港に回航されまして、その警察に我が方の大使館員が改めて出向きまして、今度は乗組員全員と面談いたしまして、全員無事であり、生活あるいは食糧その他について特に不便なところはないということでございます。私ども日本政府といたしましては、引き続き乗組員の安全、それからさらに取り調べが順調に行われるように、今後邦人保護の観点からも必要な支援を行っていきたいというふうに考えております。  それから、拿捕の原因につきましては、リビア側は日本の船がリビアの領海内に許可なく入ったというふうに言っておりますけれども、私どもは今実態の把握に努めておりまして、いずれにしましても、リビア側に対して、この漁船が公正に取り扱われるように申し入れを、今後とも強く行っていきたいというふうに考えております。
  75. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 どうもありがとうございました。  以上で質問を終わります。
  76. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、玄葉光一郎君。
  77. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 玄葉光一郎と申します。  まずペルーの人質事件について、危機管理と責任という問いかけをさせていただきたい、そのように思います。  昨日、青木大使が辞任をされました。昨日の青木大使の参考人質疑の中で、大使は、情勢認識の甘さ等々についていわば過失をお認めになられ、また同時に、結果責任を負われるという形で辞任をされたわけでございます。私は、基本的に、この行為は評価をしたいというふうに考えております。  きょうの新聞報道、幾つかの社説とか読みましたらば、責任の問題というのは本質論ではないという、そういう議論がございました。本質というのは、まさに在外公館の警備強化のあり方であるとかそういった問題だというような指摘もあったわけでありますが、私は、もちろんそれは一つの本質ではありますが、責任をとる行為というのも本質の一つだというふうに私自身は考えております。  なぜなら、責任をとるということがわかれば、いやが応にも次の人は危機管理に一生懸命にならざるを得ない。たとえすばらしい教訓を引き出したとしても、責任をとる行為ということがなければ、多くの場合、もしかしたら教訓を引き出しただけで終わってしまうのではないか、そういう心配があるわけであります。決して、よく言われているようなバッシングとかそういう気持ちで申し上げているわけではございません。危機管理を考える上では、どうしてもこの責任という問題は考えていかなければならない、そのくらい危機管理というのは最重要テーマの一つだというふうに考えているところでございます。  人情的には酷だというような気持ちも若干ないわけではございません。しかし、重ねて申し上げますけれども、この国の危機管理体制をこれから進展をさせるという意味では、正面から議論をしていかなければならない問題だというふうに考えておりますが、外務大臣は、危機管理と責任という問いに対してどのようにお考えか、お伺いをさせていただきたい、そのように思います。
  78. 池田行彦

    池田国務大臣 まず冒頭に申し上げておきますけれども、昨日、参議院の外務委員会で、青木大使からお気持ち、真情の吐露がございました。そして、その中で、あのような事件が起こり、とうとい犠牲が生じただけではなくて、人質の方々に非常に長期にわたり大変な苦痛を与えたということ、また広く日本国民初め大勢の方々に御心配もかけた、そういったことを考えて責任を痛感しております、そして、調査委員会におけるその調査の結果を待つことなく職を辞したい、こういう気持ちだということが、真情の吐露がございましたけれども、そういったことを繰り返して私どもの方にも表明されました。  そういった青木大使のお気持ちも酌み、そしてまた、いろいろな観点からの事情も熟慮いたしまして、ペルー大使という職からは離れていただく、こういうことにさせたわけでございます。それはもとより先ほど申しましたように、青木大使が責任を痛感しておられるといった、そういった心情も酌んだものではございますけれども、決して責任論、それだけで措置をとった、こういうことではないということは申し上げておきます。いろいろな観点からの熟慮の上の措置である、こういうことでございます。  それから、もとよりテロ対策に限らず、行政の世界でも責任ある立場にある者、とりわけ大使というような重責にある者は、常にその責任感を持って事に当たらなくてはならないわけでございますし、そして何らかのことが起きた場合に、その結果としての責任の有無を問われるということはあるんだと思います。  しかしながら、責任という言葉は、やはりいろいろな意味合いがございますから、先ほど委員は、過失を認めた、そして責任をとったというふうなあれをなさいましたけれども、過失とかあるいはそういうことになりますと、これは法的な意味での責任を言っておられるのかなという感じもいたしますし、それから法的な意味といっても、やはり行政法的なものなのか、あるいは別のカテゴリーなのか、いろいろございますから、一概にその責任どうなった、こう言われましてもお答えのしにくいところではございます。  しかし、私どもも、それぞれの衝にある者が責任を持って事に当たらなくてはいけない、テロ対策の面でもそうでございます。そしてまた、不幸にして何らかのことが起きました場合には、それはよく、これを防ぐことができなかった、避けることができなかったのかなぜ起きたんだろうかということも子細に調べた上で、一方においては再発防止の対策を講ずると同時に、他方においてはやはりその責任の、事後的な事態の調査を踏まえての責任の有無というものは当然考えなくてはいけない、こういうぐあいに考える次第でございます。
  79. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 これから事件調査委員会で、まさにアメリカなんかでも行っているようでありますけれども、個々の責任ということも含めて調査をされるということだと思います。身内をかばうということを、心情的には本当にしたいという気持ちはありますけれども、おっしゃるとおり、ぜひ公正に調査をされて、まさに先ほど申し上げたように、私も本当は言いたくないんですけれども、しかし、この危機管理という面で、これから出される教訓をしっかり担保するために、その責任の問題というのも直視をしていただきたいというふうに申し上げておきたいというふうに思います。  ちなみに、政府委員で結構でありますが、この事件調査委員会は、いつまでに、先ほど六月中旬という話もありましたけれども、どんな手法でどんな内容を調査されるのか御答弁をお願いしたい、中間報告もされるのかどうかも含めてお願いをしたいと思います。
  80. 齋藤正樹

    ○齋藤政府委員 お答えいたします。  省内に設置しましたこの事件の調査委員会におきましては、事件発生に至る事実関係の究明、反省点及び今後の改善点等につきまして調査分析の上、大臣に報告を行うべく現在鋭意作業を取り組んでいるところでございます。  外務省としましては、この調査作業を重視するとともに、できるだけ早く報告を取りまとめたいと考えておりまして、六月中旬を一応の目途としまして、報告書を公表する予定で作業を急いでおります。現段階では中間報告を行うことは予定しておりません。  十分な調査分析のためには、一定の時間が必要だという点につきまして御理解をお願いしたいと思いますけれども、いずれにしましても、できるだけ早く報告書が出せるよう精力的に作業を進めてまいりたいと考えております。
  81. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 国会もしっかりとこの問題について議論しなければならないというふうに思いますので、今のところ中間報告は考えてないということでありますが、確かに、しっかりとした報告を出していただきたいという思いはありますが、できれば国会で議論に付すためにも中間報告ということも検討をすることもよいのではないかというふうにも思います。  一つだけ、いろいろとこれは議論が出ると思うんですね。いろいろなところから、これが大切だ、あれが大切だという議論が出ると思いますが、たくさんある中で、私は一番大切だなというふうに思っているのは、専門家、テロの専門家というのがこの国に足りないんじゃないかなという思いがあるんですね。防衛庁とか警察庁だとか、外務省だとか、法務省だとか、それぞれ何人がおられるのでしょう。しかし、それは一体どのぐらいいるんだろうか、あるいは学者、研究者、民間人、どのぐらいいらっしゃるんだろうかそういう思いが実はございます。  例えば、警察庁なんかで一生懸命テロの専門家として蓄積を持った、しかし、何か二年交代で、二年交代とばかり決まったわけではありませんけれども、何かずく転勤してしまってその蓄積が生かされないということもあったりはしないかどうか。これはある方に聞いたらば、アメリカのCIAというのは、情報マンは親子二代でつくるんだというような話を聞いたこともあります。  これはある意味で、心理学もできなければいけない、経験もなければいけない、才能もなければいけない、社会学もできなければいけないかもしれない、非常に大変なことだと思うので、ぜひこれは早急に検討して、早くその人材の養成を開始をする必要がある。時間かかると思います。ぜひ今回の教訓を生かして、専門家の要請にいち早く着手すべきだ、こういうことも事件調査委員会ではぜひ検討いただきたいというふうに思いますが、答弁できれば答弁をしていただきたいというふうに思います。
  82. 池田行彦

    池田国務大臣 テロ対策専門家と申しましても、いろいろあると思います。テロリストの事件が起きてしまったときにそれに対処する、実力行使するというのも一つでございましょうし、あるいはテロを防ぐために一体どういうふうな体制を組むのがいいというふうなノウハウを蓄積するということもそうでしょうし、あるいはテロリズムのいろいろな活動についての、それはどういうところから出てくるとか、どういう行動をしがちだといったような社会学的、心理学的な分析の専門家もあるでしょうし、あるいは情報面の専門家もある、いろいろあると思うんですね。しかも、情報面といっても、テロリストの中にも、イデオロギー的なバックグラウンドのあるのもあれば、そうでないのもいろいろあると思います。  だから、一概には申せないわけでございますけれども、いずれにしても、今回の経験にかんがみまして、再発を防止する、あるいは不幸にして事が起きた場合に対処する上において、一体どういうことが必要であろうか、どういうことが、あるいは日本においてこれまで抜けておったというようなことは検討の結果出てくると思いますので、そういうことを踏まえて、今おっしゃるようなことについても、これは外務省だけで対応できない部分も随分あると思います。また政府部内において、あるいはこの日本という国全体において考えるべきテーマかもしれませんが、いずれにしても、調査の中からそういう面での何らかの教訓なり、講ずべき手段、措置についての方向なり、ニーズというものが明らかになれば、それはこれからの対策に生かしていかなくてはいかぬ、こう思います。
  83. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 もう一つ、ある意味で私も申し上げにくいし、答えにくい質問かもしれませんけれども、危機管理、今おっしゃったようにいろいろな場面があると思うのですね。  事前対応の場面、あるいはもう事件が発生してしまったらある意味では管理危機だと思いますけれども、そういう場面とかあると思いますけれども、今回ペルー事件で投げかけられた一つの意味というのは、私たち国民は、ある意味ではどれだけの犠牲を払ってどれだけのことを守るのかという部分を本当に考えなければいけない、管理危機の面でも特に感じたのですね。ある意味では一定の覚悟というのが要るのだろうなという気持ちなんです。  例えば、恐らく実際に管理危機を行うに当たって外務大臣いろいろ御苦労されたと思いますけれども、本当の本音ベースで、どこまで日本人でも例えば守るのか。これは言いにくいですけれども、例えば政治家であるとか外交官であるとか、そういった人たちは場合によっては犠牲になっても仕方がない、民間人優先だということとか、そういう一定の覚悟というのが私たち日本人がこれから考えていかなければならない問題だというふうに考えていますけれども、これもまさに外務省の事件調査委員会だけでできる問題じゃないと思います。国会あるいは政府全体でやらなければいけない話だと思いますけれども、この点について、外務大臣、お答えがあれば一言お願いしたいと思います。
  84. 池田行彦

    池田国務大臣 本来、日本人の国際的ないろいろな活動、それが円滑に進められるような条件や環境を整えるのが外務省の務めでございます。テロ対策もそういった点が中心だと思うのです。  ところが、今回は、そういった役割を担っている外務省の外交施設そのものが、残念ながらああいったテロ事件のターゲットになったわけでございますので、私ども、いろいろこうではないかなと申し上げたいこともないではございませんけれども、どうも今申し上げるような、口幅ったいことを言うような立場でないなという気がするわけでございますが、あえて申し上げますと、委員のおっしゃることはよくわかります。  それは、かつて七つの海を雄飛したと言われた往時の大英帝国のいろいろな役割を担った人間であるとか、あるいは最近におきましても、世界のいろいろな地域のいろいろな事柄に積極的に関与していった例えば米国の国民の中で、いろいろなこういった種類の問題についての考え方、あるいは心構えと言ったらいいかもしれません、そういうこともあるのだと思います。  日本も、現在では年間に千六百万人を超す人が海外に行かれ、在外で活動される方々も七十万人を超えている、そういう時代でございますので、私どももそういったところも、御指摘のような点も十分これから考えていかなければいけない大きな課題であろうとは考えております。
  85. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 それでは、今回提出をされております協定及び条約関連の質問に移らせていただきます。  香港航空協定が入っておりますから、香港の問題について一つお伺いをしたいと思います。一言で申し上げれば、日本政府の対香港政策についての基本方針というものについてお伺いをしたいというふうに思います。  さきの大戦もあって、ある意味では私たちの国は香港に対して負の遺産もあるというのも事実だと思いますが、一方で、日本の発言権というのもかなりあるなという思いがございます。  これは新聞の引用で恐縮でありますが、サッチャー元首相の回顧録にもこのように書いてあるということでございます。「日本経済大国であり極東地域の有力な民主主義国家であるばかりでない。香港にとっても非常に重要である。香港に対する信頼感は香港における日本投資家の持つ信頼感によって大きな影響を受ける」そういう言葉も残しているわけであります。  今後五十年、一国二制度が続くわけであります。香港返還によって、ある意味では日本の対香港あるいは対中政策というものの注目度もさらに高まると思いますし、返還後の香港がうまくいかなかったときの衝撃というのは結構大きいなというふうに思っております。  日本政府は、中国の対香港政策というものをどういうふうに見通しを持っておられて、同時に、対香港についてどのような基本的な対応をされていくおつもりか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  86. 池田行彦

    池田国務大臣 御指摘のとおり、香港日本との関係につきましても、経済の面、貿易あるいは投資あるいは金融といった面で非常に緊密な関係があるわけでございまして、その観点からも、香港のこれからの姿というものは大きな関心事項でございます。  それだけではなくて、香港貿易、情報、とりわけ金融のセンターとしての大きな役割を果たしているということを考えますと、やはりそういった機能というものが今後とも維持されるということは、国際社会全体、とりわけ国際経済社会として大変重要なことだ、こう考える次第でございます。そういった意味で、私ども日本としても大きな関心を持っております。  もとより、香港の現在の自由な社会が維持されること、法の支配であるとか人権とか、そういうことも香港の方々のためにも大切でございますし、普遍的な原理として我々も唱道しなければいかぬわけでございますが、直接的にその面を主張し続けますと、今委員ちょっと過去の負の遺産ということを言われましたけれども、あるいはそこまで考えなくてもいいのかもしれませんけれども、やはり当事者である香港の方々あるいは今度返還される中国の方々の気持ちを考えた場合に、ストレートに日本から提起するよりも、先ほど申しましたような経済面での、あるいはフィナンシャルセンターとしての機能が維持されることが大切ですよと申し上げ、そのためにはルール・オブ・ロー、これが基本なんだというアプローチの方がより効果的なのではないかと私は考えておりまして、ずっと昨年来そういうことでやってまいりました。  今、経済界が大切だというお話がございましたけれども香港マカオ非公室の主任というのは銭其シン副首相兼外相でございます。銭其シンさんにもそういったことをずっと私書い続けてまいりました。  そして、具体的には、そのもとで主任をやっております、実際の責任者をやっております魯平さんという方がおいでになりますが、ぜひその人に日本に来ていただいて、日本経済界の人々に説明をしてほしいし、話も聞いてほしい。つまりは、中国は幾ら一国二制で現在の香港の仕組みを守りますよとおっしゃっても、あるいはそれを日本を初めとする各国政府が、外務省がわかりましたと言っても、それではだめなんだと。要は、世界のビジネスサークルで香港の将来についてのコンブィテンスが維持されることが大切なんですということを申し上げまして、魯平さんに日本に来ていただいて、何カ所も経済人と、セミナーといいますか、ディスカッションの場を持っていただきました。それをきっかけにして、他のアジアの諸国あるいは米国でも同じような試みもされたと思います。  そういったふうなアプローチをしているところでございまして、今後とも、香港の将来、大切でございますから、我々も大きな関心を持ちながら、我々として最も効果的な手法で努力を重ねてまいりたい、こう思う次第でございます。
  87. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 きょうたまたま、ある朝食会でキッシンジャーさんと話をする機会があって、その中で実は香港の話題も出まして、自分はアメリカでは少数派なんだけれども、静かにしているべきだと。つまり、特にアメリカがということだと思うのですけれども、いろいろな人権等々でかなり口幅ったく言うのは失礼だというような言い方をされておられました。静かに上手に返還がされる。おっしゃったように、経済のためにルール・オブ・ローだ、私もそれは賛成でありますが、そのような方針で適時適切に対応をお願いしたいというふうに思います。  あと、これも関連でありますけれども、国会の中でまだ一度も議論されていなかったものですから、一度聞かなければならないなと思っていたものに、四月に江沢民国家主席がロシアを訪問されて、エリツィン大統領と会談をされました。共同声明を発せられたわけでございます。共同声明の内容を見ますと、世界はもう一極じゃなくて多極なんだよとか、あるいはいかなる国家の覇権主義も認めない、あるいは軍事ブロックの拡大と強化の試みへの懸念、そういうようなことをうたわれているわけであります。ある意味でアメリカを牽制をしたという見方を私なんかはするわけでありますけれども、中ロ首脳会談、あの共同声明を政府としてどのように分析をされておられるか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  88. 池田行彦

    池田国務大臣 私、三月の末に、三十日だったと思いますけれども、北京へ参りまして、その際江沢民主席、あるいは銭其シン副首相ともいろいろ中ロの問題についてもお話をいたしました。実は、銭其シンさんが江沢民主席訪ロに先立っての先遣隊のような形で行ってこられて、帰ってこられた翌日でございましたから、そういった話も含めまして、中国もロシアとの関係を緊密化していこうというふうに考えている、特に、ロシアと中国との国境をどうするかという話もございます。特に中央アジアの方の数カ国を含めた問題で、それをきちんとするのだということを言っておられました。しかし、それは決してどこかの国を頭に描きながらやっていることではなくてというような話もあったわけでございます。  そういったことも含めまして、中国もロシアとの関係も非常にきちんとやっていこうというあれでございますので、決してこれが何らかの同盟だとか、あるいは今ちょっとおっしゃいましたけれども米国の圧倒的な力に対抗するためとか、必ずしもそういった意味づけをしているわけでもないのじゃないりかなという気がします。  しかしながら、一方において、中国もロシアもそうでございますけれども、やはりこれからの世界のいろいろな諸活動の中においても相応の発言力はきちんと持っていきたい、こういった意欲は確かに持っているわけでございまして、そういった意味では両国は相通ずるところもあるのじゃないのかなという感じもいたします。  私どもも十分両国からもそういう話を聞きながら、一方で、米国も、ひょっとして中ロが考えるかもしれない、いわゆるヘゲモンとしての行動なんかも今から将来に向かって志向しているわけじゃないと思いますし、またそういう状態でもないと思いますので、そこのところは両方の話の聞ける日本としていろいろ役割を果たしていけるのかな、こんな感じを持っている次第でございます。
  89. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 何かホットラインも中国とロシアで間もなく開設されるということのようであります。中国は初めてなのじゃないでしょうか、いわゆる外国政府とホットラインというのをきちっとした形で設ける。しかも、今度はエリツィン大統領は中国をことし訪問される。同じ年に相互訪問だということですよね。ですから、この中ロの問題というのは、日本としてもかなりこれからウォッチしていかないといけない問題だなという思いがございます。余り事を荒げることはいけないと思いますけれども、やはりウォッチをする必要があるだろう、そんな思いで、外務委員会で一度聞いておかなければならないという思いでございました。  最後に、まさに全く話は変わってしまいますが、変わってしまうというか、この条約航空協定、ある程度、より関連する問題を質問しなければなりませんから、一つだけ質問をさせていただきます。  航空協定一般についてなのですが、これは補償の問題です、航空機事故における補償の問題です。昨年のガルーダの航空機事故あるいは名古屋で中華航空が事故を起こした。その場合の、いわゆる先進国の乗客が途上国の航空機の乗客になっていて事故が起きた、事故に巻き込まれた、そういう場合、非常に補償額をめぐってどうも交渉が難航するのですね。  それで、何か聞くところによれば、ICAOという機関で、どうも今までの補償額を定めたワルソー条約というものを改定するという動きになっている。どうやら聞くところによると、ワルソー条約というのは補償の上限を二百万にしているのだ、その上限を取っ払うことによって、ある意味では途上国の低い補償額をやめていただくというかそういうことを今模索をしているというふうに聞いておりますけれども、このワルソー条約の改定、改正の見通しと我が国の方針について、最後にお伺いをしたいというふうに思います。
  90. 野上義二

    野上政府委員 お答え申し上げます。  今先生の御指摘のワルソー条約、国際航空運送における航空運送人の責任等を定めた、ワルソー条約と言っておりますけれども、これは実は一九二九年に作成されまして、その後、一九五五年で一部改定等がございますけれども、実際問題として、近年の国際運送における実態と今の補償額の問題等を含めてかけ離れたものとなっておりまして、今先生指摘のように、新しい条約をつくろうではないかということで、ICAOで作業が始められております。  ことしの四月二十八日から五月の初めにかけてICAOの法律委員会というところで改定の交渉をやったわけですが、残念ながら、必ずしもその法律委員会では、今先生指摘の途上国の問題等も含めまして意見が収れんしておりません。したがいまして、今後は、外交会議というか交渉会議、外交会議と言っておりますけれども、外交会議で作業を進めることになっております。ただ、今のところ、いっその会議が開催できるかという点についてはまだ必ずしも明確になっておりません。  我が国としては、一九九二年に、ほかの国に先駆けまして我が国航空会社は補償限度額の上限を撤廃しておりますので、そういう意味で、我が国の基本方針としては、国際航空の利用者保護という観点から、旅客の傷害、死亡については責任限度額の撤廃の確立を目指す、こういった基本方針のもとに新条約の作成に当たっていきたいと思っている次第でございます。
  91. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 終わります。ありがとうございました。
  92. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、松本善明君。
  93. 松本善明

    ○松本(善)委員 香港政府との航空協定は、言うまでもなく香港返還とのかかわりで締結されたものだと思います。香港は間もなく中国返還されるわけでありますが、イギリスが香港中国から取り上げたときには、中国がイギリスに九十九年貸すということでありました。この九十九年という数字で言いますと、日本中国から旅順や大連を含む中国東北地方の一部を取り上げたときも、九十九年この地域日本に貸すということでありました。アメリカがキューバやフィリピンから軍事基地をとったときも、九十九年貸すというものでありました。  つまり世界じゅうで、外国から土地を取り上げるときに九十九年の租借協定というのが普通だったと思いますが、なぜ当時九十九年という有限の期間が決められたのでしょうか。外務大臣、どのようにお考えになっているか伺いたいと思います。
  94. 池田行彦

    池田国務大臣 たしかこれは、英国と当時の中国といいましょうか清国との間の条約で定められたものでございまして、一八九八年でございますから、当然私は存在しておりませんし、その事情はつまびらかでないわけでございますが、私どもの聞いておりますところでは、それまでは、大体植民地というのは割譲という形でやられておった。香港についても、香港島あるいは九竜というところはそうだったと思うのでございますね。それが、いわゆる新界と言われているところが九十九年の租借ということで定められた。先ほど委員おっしゃいました、日本も当時の中国とそういう期限つきの租借と言われたというお話がございましたけれども、確かにそうでございますが、この英国のが一番最初ではなかったかと思うのです、国際的には。  だから、九十九年というのが一体どういう意味がというのは、私ども当事者でございませんし、何とも言えないわけでございますけれども、当時の情勢からしますと、九十九年というのは非常に長い、だからこれは実質的に割譲と変わらないのだという感じも一方ではあったのではないかと思います。そういうことも言われているのも私は聞いたことがございます。そういったことくらいしかわからないのでございます。  それから、あえて言いますならば、これは領土の話ですから別かもしれませんけれども、英米法の世界では、いわゆる所有権ではなくてリースというものが中心になっておりまして、そうしますと、長期の、例えば九十九年リースなんというのは、私、契約の世界でも決して珍しいものではないのではないかな、それがこういった国と国との間にもあるいは適用されたのかな、これは想像でございますが、御答弁になっていますかどうか。
  95. 松本善明

    ○松本(善)委員 私も、ほぼやはりそのように思います。割譲と同じような意味で、半永久的に、永久の代名詞と同じようなものであったのではないか。だから、力関係は変わらない、今中国がこういうふうになっていなければ、あるいはその後またということもあり得る、そういう性質のものである。あの当時、力で屈服をさせたわけですから、無期限ということでやる、あるいは割譲ということも考えられたと思いますが、やはり無期限とはされなかった。  なぜそういう扱いをできなかったかというと、やはり幾ら当時でも無期限使用というのは不可能だったのではないだろうか、国際法と国際政治の制約があったのではないかと思いますが、同じ趣旨をお答えになりましたが、もう一度お聞きしたいと思います。
  96. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 今委員が御指摘になられましたように、不可能であったということもあるかもしれませんけれども、一説によりますと、イギリスとして、ほかのより価値の高い植民地と申しますか、場所に割譲というような制度をほかの列強がしいてしまうかもしれないということ、それは果たしてイギリスにとっていいことなのか悪いことなのかということをめぐって、英国内で当時相当議論があったというような話も紹介されているようでございます。
  97. 松本善明

    ○松本(善)委員 いわば戦争が肯定をされるという国際法のもとですね。今は戦争は非合法ということになっています。戦争を肯定されるという時代でも、長期とはいえ、九十九年という期限がつけられていたわけです。  私は、そこでお聞きしたいのは、日米安保条約に基づく在日米軍の駐留期間は期限もつけられていません。既に五十年たっております。クリントン大統領は、昨年四月に日米安保共同宣言を出した後、国会で、日米関係を私たちは今後五十年の展望で考えているというふうに演説をされました。つまり、百年は駐留し続けるということになるのですね。私は、外務大臣に、少なくともあと五十年駐留させる、百年日本米国が駐留するというクリントン大統領の発言をどういうふうに見ておられるか、伺いたいと思います。
  98. 池田行彦

    池田国務大臣 まず申し上げたいのは、香港の割譲あるいは租借の問題と日米安保関係というのは、幾ら何でも、例えであっても、これは引き合いに出されるのはいかがかと存じます。  これはやはり、委員もおっしゃいましたように、香港の問題というのは、戦争が認められておった時代というよりも、むしろ植民地主義あるいは帝国主義と言われるような状態かなり一般的だった時代に、清国の意に反して、あるいは香港の方々の意に反して結ばれた、実質的には意に反して行われた租借であったのだと思います。  しかし、日米の安保関係というのは、我が国日本といたしましても、みずからの安全を守るためにぜひ必要だと考え、そしてまた米国も、自分たちのこの地域に持つインタレストあるいは世界の安定を守ろうという気持ち、そういったものから考えて、米国もぜひこの条約を結ぼうと。いわば日米両国が積極的に求めてつくっておる関係でございますので、香港と英国の、とりわけ前世紀末に締結された条約と比べてあれこれ議論するのは、まず不適切であると私は考えていることを申し上げさせていただきます。  その上で、日米安保関係、将来どのくらいというお話でございますけれども、私どもは、少なくとも今のアジア太平洋の状況というものを見ました場合に、我が国の安全を守る上においてもそうでございますし、この地域の安定の一つの基盤をなす、形成するという意味においても、日米安保体制は非常に重要な役割を担っておると思っていまして、少なくとも二十一世紀の相当な期間にわたってその重要性は変わらないのだと思っております。  もとよりこれからいろいろ国際情勢も変化するでございましょうし、多国間のいろいろな信頼醸成の仕組みがまた予防外交あるいは安全保障の枠組みという方に発展していく可能性はもちろんありますし、我々もそれは努力しなくてはいけないと思っておりますけれども、最終的に実力を備えた枠組みとしての安全保障の仕組みという意味で、多国間のものがそう早急にできるとは思いませんので、かなり長期にわたって米国を一方の当事者とする二国間の仕組みというものは必要性、重要性を維持し続けますし、その中でも日米安保体制というものは大切なものだ、こう認識しておるわけでございます。  ただ、それが具体的に何十年なのかということは必ずしも断定的に申し上げるわけにはまいりませんし、先ほどおっしゃいました、米国サイドで五十年と言っておられるのも、大体一応の感じとして言っておられるのだと思います。しかし、だからといって、日米安保体制の中での具体的な対応がその間完全に同一であるかどうかというのは、また別の話だと思います。そちらの方も情勢の変化によって変化はあり得るのだ、こう思います。
  99. 松本善明

    ○松本(善)委員 合意でやったんだとおっしゃいますが、この租借協定だって、香港だって同じですよ。一応形はそういうふうになっている。それから、韓国併合の条約についても合意でやったんだと言って、大問題になったこともあります。形はそうであっても、やはり戦勝国と戦敗国との間の協定なのですね。  それで、私は、外務大臣にきちっとお聞きしたいと思うのは、クリントン大統領の言い方でいけば、やはり百年はいる、日本の基地を使う、言うならばそういう言明です。それを、それはやむを得ないものだというふうに言われるのか、それはおかしいではないかと思っているのか、そこを端的に聞きたいと思うのです。
  100. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほどは日米安保体制の安全保障面での役割について申し上げました。その観点から申しましても、私はやはり二十一世紀に入っても相当長期にわたってこの条約は大切であるし、その有効性を我々は大切にしなくてはいけないと考えております。それだけではなくて、委員御承知のとおり、日米安保条約というのは経済関係も含めた日米両国の全般の友好な関係の基礎をなすものでもございまして、そういった観点から申しますと、これは五十年、百年はおろか、さらに将来に向かっても、やはり日米関係はお互いにとって大変重要な関係であると同時に、国際社会にとってもこの両国がきちんと友好関係を維持するということは大切なことだ、こう思っておる次第でございます。     〔委員長退席、福田委員長代理着席〕
  101. 松本善明

    ○松本(善)委員 今の御答弁は、基地のこのような状況が百年続いてもいわばやむを得ないという御答弁と承りました。私どもも、アメリカとの関係が、基地がなくなっても友好関係が続くということについては、当然そうしなければならぬというふうに思っております。思っておりますけれども、私はやはりここで考えなければならぬと思うのは、アメリカが海外に米軍を駐留させているのはアメリカの国家利益のためです。これは国防報告を私は持ってきております。一々読み上げませんが、読めば明白であります。地域に紛争がなくなれば在日米軍はすべて撤去するというようなことは頑として言えませんね。それどころか無期限駐留さえ言っている。  キャンベル国防副次官補、東アジア太平洋担当が日米首脳会談の直前の四月十五日、本会議でも言いましたけれども、アメリカ上院外交委員会のアジア太平洋小委員会の公聴会で、日米安保関係について次のように証言しました。我々の同盟関係強化の戦略は、無期限の将来にわたって現在の在日米軍の水準を維持することも含め、アジア太平洋地域における米軍の軍事公約と、米軍の駐留を継続するというアメリカの誓約を基礎としている。在日米軍は無期限の駐留をするというのがアメリカ政府の公式の方針であることがキャンベル国防副次官補によって明らかにされていますね。外務大臣、どうお考えですか。
  102. 折田正樹

    ○折田政府委員 今委員、四月十五日の上院の外交委員会アジア太平洋小委員会におきますキャンベル国防次官補代理の発言を引用されておりますが、私どもが承知しておりますのは、彼が述べたのは、アメリカのアジア太平洋地域における政策の基本について若干触れたいと言われた上で、まず最も重要なのは約十万人の前方展開兵力を維持させるという米国の決意であるということを述べられた上で、我々が果たす重要な役割はこの地域全体において評価されていて、残り少ない今世紀中、そしてその後もその役割の重要性は増すばかりであろうという趣旨を述べられたというふうに承知しております。  アメリカはこれまで、日米安保共同宣言を初めとしていろいろな機会を通じまして、現在の国際情勢のもとにおきましては、我が国における現在水準の兵力を含め、アジア太平洋地域に約十万人の前方展開兵力を維持するという基本政策を表明してきておりますが、キャンベル国防次官補代理の発言も、このような基本的な政策を維持することについての重要性を述べたものであろうというふうに思っております。
  103. 松本善明

    ○松本(善)委員 いろいろ別のことをお述べになりましたけれども、私のお聞きしているのは、キャンベル国防副次官補は無期限駐留ということを言ったのですね。これが日本政府が同意できるものなのかどうか、日本政府はそれは認められないということなのかということを聞きたいのです。それはやはり外務大臣でないと無理でしょう。
  104. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもは、基本的に日米間の安全保障体制というのは、先ほども申しましたけれども、これから将来に向かってかなり長期間にわたって大切な関係だ、こう思っております。しかし、その日米安保体制のもとで具体的にどういうふうな備えをお互いにするかということは、これはその時々の国際情勢であり、あるいは武器技術の変化なり、いろいろな要素によってこれは変化し得るのだ、こう思っております。  しかし、今申せますのは、現在のもろもろの国際情勢等々に立脚して、こう考える限り、現在の在日米軍のレベルというものが将来しばらくの間は少なくとも必要だということは日米間で合意しているということでございます。無期限にこの水準がとか、あるいはあれが、ということは申せません。
  105. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっと語尾がはっきりしないが、無期限に……
  106. 池田行彦

    池田国務大臣 無期限にこの水準が必要であるとか、そういうことを申しておるというわけではございません。
  107. 松本善明

    ○松本(善)委員 水準は別として、キャンベルさんは無期限に駐留するということを言ったのです。それは認められないということですか。今、後の方で言われたことは、その前であっても兵力は削減をするということがあり得る、こういう考えを述べられたのですか。そこの辺はなかなか大事なことですから、あいまいではなくてはっきりお答えいただきたいと思います。答えられないなら答えられないと。
  108. 池田行彦

    池田国務大臣 現在の国際情勢等々を前提に考える限り、しばらくの間、あるいは予見し得る近い将来という言い方もございます。現在の体制、現在の水準の駐留というものが必要であろう、こういうふうに考えております。しかし、中長期的にどうかといいますと、これからの国際情勢等々の変化に応じて、それは軍事体制、それはレベルも含めて、当然変化はあり得るわけでございまして、これは昨年の日米共同宣言にもきちんと明記されているわけでございます。  それでさらに、もし委員がおっしゃるのは、無期限という言葉をつかまえて、超長期、先ほどおっしゃった九十九年とか百年とか、そういうことでおっしゃるのならば、現在の時点で申せますことは、将来とも長期にわたり日米間の友好関係は大切であろう、そしてまた安全保障の面でも、やはり日米間は基本的に良好な関係を持つことが大切であろうということは言えます。しかし、それを具体的にどういうふうな形で、あるいは体制でやるかということは、もし委員のおっしゃるのが超長期の話を無期限ということでおっしゃるならば、今の段階であれこれ申し上げられることではないのだと思います。     〔福田委員長代理退席、委員長着席〕
  109. 松本善明

    ○松本(善)委員 少し進みかけたという感じですけれども、超長期、九十九年、さっきクリントンさんはあと五十年、これはいわば今のお話でいえば超長期ということになるわけでしょうが、無期限に駐留をするということは、それは日本政府としてはとらないということなのか、どうでしょう。  それから、中長期的には兵力削減があり得る、中長期といいましても、今あと五十年が超長期ということに、外務大臣の見解ではそういうことになりそうです。中長期というと、中期といえば中期防は五年ですから、中長期というのはどのくらいのことをお考えですか。  その二つ、無期限というのは認められないのかどうか中長期というのはどのくらいを外務大臣はお考えになっているのか。
  110. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもは、中長期的にはと申しましたのは、現時点においてほぼこんなことだろうと予測できる状況が、そういう時期については大体現在の体制が必要であろうということを申し上げてきました。そして、いやしかし、中長期的には、それは変化に応じてということを申し上げるということは、現時点でかなりの確度を持って予測することができない、そういう時期というふうに御理解いただけばいいと思います。
  111. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほど超長期というのは九十九年という例を挙げられましたから、あと五十年よりも短い期間、二、三十年、それを中長期というというふうに理解していいですか。
  112. 池田行彦

    池田国務大臣 少なくとも申せますことは、私ども、まだ二十二世紀のことまではなかなか考えが及ばないということでございます。
  113. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、そういうようなことではやはり日本の国民は納得しないし、今の状況に合わないのじゃないのだろうかというふうに思います。  十一日に放送されましたテレビ朝日系の報道番組「二十一世紀への伝言」の中で、後藤田正晴元副総理がこう言っていますよ。本当に安保条約というものはこのままでいいのかという提起をしているのですね。果たして日本が仮想敵国としてある国を対象としながらアメリカと同盟条約を結ぶ一体必要性があるのか、同盟条約から日米の間は友好条約にだんだん変わっていくのが望ましいのではないか、後藤田さんのような方の発言がこういう形で出ています。  これは今外務大臣のお話で行きますと、私は、ソ連が崩壊した後の国際情勢の変化というのは、だれでもわかっていますよ。それと同じ状態で、しかもあと五十年、無期限、このアメリカ側の米軍駐留について何の批判もできない。そういうような日本外交のあり方でいいのだろうか。この後藤田さんの発言を御紹介しましたけれども外務大臣、どう思われますか。
  114. 池田行彦

    池田国務大臣 今委員が御披露になりました後藤田さんの発言も、仮想敵国を置いてあれこれというのでいいのだろうかという御発言だったとするならば、少なくとも現在の日米安保体制というのは、どこか特定の国を仮想敵国として、あるいは脅威とみなしていろいろやろうというものではないということでございますので、そういう意味では、ある意味では後藤田さんの発言、正確な文言はわかりませんけれども、考えよう、とりようによっては、やはり同じ日米安保体制と申しましても、それがかつての旧条約ができたころ、あるいは現行の条約ができたころ、そして今日というところで、いろいろ役割も変わっておるのだということも示唆しておられる、あるいは意味として含んでおられるのかなという感じもいたします。  もしそういうことであるならば、将来に向かってもそれは日米の安全保障の関係においてのきちんとしたきずなは、基本的に大切だと私は申しましたけれども、しかしその意味するところの、国際関係のコンテクストの中でどういう意味を有するかとかあるいはそのために内容がどうなっているかというところについては、変化はあり得るのだと思いますし、それは超長期の問題として、その変化が一体どういうふうな変化なのかと言われますと、その点は現時点では責任を持って申し上げることは甚だ難しい。むしろ、正直にそこのところは今はわからないと申し上げるのが総体的にいって責任のある姿勢じゃないかと思います。
  115. 松本善明

    ○松本(善)委員 仮想敵がないのだというお話でありますが、アメリカは在日米軍の駐留を正当化するためにいろいろ言っています。  例えばクルーラック米海兵隊司令官は、朝鮮半島情勢だけに結びつけるのは、より大きな問題を見逃すことになる、海兵隊や海軍の前方展開は、北東アジアだけではなく、東南アジア、インド洋、ペルシャ湾まで対象にしている、これは五月五日のワシントンでの講演での質疑応答でした。シャリカシュビリ・アメリカ統合参謀本部議長は、この地域の米軍は朝鮮半島のためにだけ駐留しているのではない、地域の安定と安全に貢献するためである、日本での四月十一日のホテルでのインタビューに答えています。コーエン国防長官も、朝鮮半島が沈静化しても、台湾環境が現在のままなら、沖縄海兵隊は依然抑止力を発揮する、これは日米防衛首脳会談、四月七日ですね。  それで、仮想敵国を持っていないというのだけれども、朝鮮半島について、北朝鮮は、今飢餓状態は全世界的に知られています。燃料もない。夜飛びますと、向こう側は真っ暗で、南の方は明るい。燃料も電力も不足している。こういう状態で、韓国への武力侵攻とか日本への武力侵攻というようなこと、現実の問題としてあり得ると外務大臣は考えているのでしょうか。
  116. 池田行彦

    池田国務大臣 まず最初に念を押しておきますけれども、今どの国も具体的には、仮想敵国ということはもとより、脅威とか潜在的脅威という前提を置いて安保体制を考えているわけじゃないということを申し上げておきます。  それから二つ目には、朝鮮半島だけではないという発言が米国筋から相次いであるという御指摘がございましたけれども、それはそのとおりでございまして、私どもは、この地域全体の安定というものを視野に入れながら考えているということでございますので、半島情勢のみではないというのはそのとおりだと思います。  さて、その二点を申し上げまして、三つ目の具体的なお尋ねがございました。  北朝鮮が現実に今のような状態で他国を攻めるというようなことがあると思うか、こういう御質問だったと思いますけれども、それは、確かに現在食糧あるいはエネルギーも含めまして北朝鮮が大変厳しい情勢、状態にあるということは私どももよく承知しております。それからまた、いろいろな周囲の状況を考えました場合に、一体そのような行動をとるとすれば、それが北朝鮮自身にとってもどういうふうなメリットがあるのだろうかということも、なかなかこれは説明しにくいところだと思います。  しかしながら、他方において、現実問題として北朝鮮がいまだに地上兵力においても百万を超えるものを維持し、しかもそのかなり部分、三分の二ぐらいを軍事境界線沿いの方に前方展開しているという現実もあるわけでございます。  そして、私どもが、これは北朝鮮について言うわけではございませんけれども、過去のいろいろな歴史をひもといてみました場合、それは、その一部には我々自身の歴史も含まれるかもしれませんけれども経済社会情勢、そういったものをもとにして持てる力、そしてまた国際的ないろいろな環境というものを考えて、これが現実的であるとは到底思わないという場面において、とても現実的だとは思えないような行動がとられたということもあったということを我々は忘れてはならないのだ、こう思う次第でございます。
  117. 松本善明

    ○松本(善)委員 それが私は、仮想敵国はないというふうに言われるが、実際上そういう力がないという判断を持ちながらも、やはりそういうふうに言われる。それでいくと、やはり中国もそういう点では心配だ。そうすると、やはり半永久的に米軍が要るのだということにならざるを得ない。  そこで、私は、先ほどの後藤田さんの言う仮想敵国を持つ安保条約、考えなければいかぬのじゃないかという問題がやはり出てくるのだと思うのですよ。ただアメリカの方で無期限に駐留する、あと五十年展望して米軍は要る、それに唯々諾々としてやはり従うということでいいのだろうか。  後藤田さんの引用をしましたから改めて申しますけれども、それで最後にしますけれども、ソ連にある大韓航空機撃墜事件に関して、あのときの自衛隊が傍受した交信記録が自動的にアメリカに伝わっている仕組みになっているという問題について、当時の佐々防衛庁官房長、彼は、アメリカに対して毅然たる姿勢がなかったということですと。後藤田さんは、やはり同じ番組ですよ、一体日本という国というものは本当の意味で独立しているのかという気がしましたねと言っているのですね。  私も、本会議でも紹介しましたが、アメリカの方で植民地外交という声が複数出ています。私は、米軍駐留の問題、安保条約の問題について、やはり今の時点で真剣に考えないといけないのではないか。改めてこの後藤田さんの発言も紹介しながら、今のままで何ら差し支えないと思っているのかどうか、外務大臣に最後に伺って終わりにしたいと思います。
  118. 池田行彦

    池田国務大臣 現在、現時点における日本状況あるいは国際関係、そういったものをいろいろ考えて、どういうふうにこの国の安全を守るか、あるいは米国との関係を特にその分野においてどうするか、これは真剣に考えなくてはいけない、当然のことでございます。  我々もそういった作業を通じまして、その上に立って、昨年の四月の時点で両国首脳間で日米安保共同宣言というものを出したわけでございまして、そういったものを基本にいたしまして、これから当面の予見し得る将来にわたる日米安保関係を考えてまいりたい、こう思います。  さらに、長期的な関係をどうするかということは、当然のことでございますけれども、国際情勢の変化あるいは我が国自身のいろいろなこれからの変化というものも踏まえながら、常にその見直し、そして例えば日米安保体制の有効性を確認しながら進んでいくべきものだと思います。その有効性が確認される限りにおいては続くんだと思いますし、あるいはその事態の変化によってはまた別の工夫があり得るという可能性を排除するものではございません。
  119. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  120. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、伊藤茂君。
  121. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  その前に、きょうの日にちということもございまして、質問項目ではございませんが、外務大臣に気持ちを伺いたいと思いますが、沖縄復帰二十五年の日取りでございます。十年目、二十年目には県も含めましていろいろな催しもあったようでございますけれども、中間年ということでそれはないようでございます。いずれにいたしましても、しかしこの二十五年の時点というのは、私も振り返ってみて、今国会における特措法の審議などを改めて振り返りますと、思いを深くいたします。  やはりきょうのお天気ではありませんが、二十五年の節目に当たって、多くの方々が明るい青空が目の前に、先に開いているということでは必ずしもない非常に難しい状態で節目を迎えているというふうに思うわけでございます。やはり目の前にたくさんの問題がございますし、それから振興策につきましても、今後の展望につきましても与党間の議論もさせていただきましたが、いろいろな努力をしなければなりません。  ただ、必要なことは、これから先の中期展望と申しましょうか、やはり将来こういう努力をお互いに汗をかいてやって、そして何か明るい展望を開いていこうではないか、その展望性をどうお互いに持てるのかというところが非常に大事なところ、特に二十五年の節目では大事なところではないだろうかという気がいたします。  そうなりますと、できたら沖縄県の皆様も含めて、あるいは国民的なコンセンサスも得て、何か政府と県、難しいことを言っているのじゃなくて、やはり何か共通のベースからお互いに汗をかきながらどういう展望を開くのかというふうなことが望ましい、また求められるところではないだろうかというふうな気持ちもいたします。  私は、そういう面からいいますと、来月早々にはガイドラインの問題の日米の御相談の中間報告も予定されているようでありますし、これから夏、秋までさまざまの大きな課題もあるという中でありますけれども、やはりこういう状態をよりよい方向にと申しましょうかそういうことについてのより平和的な展望が開けるようにと申しましょうかそういう意味での外交戦略と申しましょうかアジア・ビジョンと申しましょうかそういう大きな筋の中でやはり展望を開くというようなことが求められるときではないかな。  きのう、きょうと二十五周年という節目がございまして、今国会の経過などもいろいろ振り返りながらそんな思いを深くしたところでございますけれども、二十五周年という日取りもあって、御感想を伺いたい。
  122. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、本当に二十五周年という記念すべき日でございます。このときに当たりまして、私ども、これまでの沖縄の方々の歩んでこられた歴史というものをいま一度振り返り、かみしめ、将来に向かって、今昔い空とおっしゃいましたけれども、本当に展望が開けるような努力をしなくてはいけない、こう考える次第でございます。  とりわけ、昨今この沖縄返還の問題に大変御尽瘁されました佐藤栄作氏の手記がだんだん明らかになってきておりますけれども、あの当時の沖縄問題に取り組んだ大変な御苦労というものも今さらながら我々振り返り、そして我々もこれから将来に向かってさらなる意欲と真剣さを持って取り組まなくてはいけないんだと思っております。  そういった中で、何らかの展望を持たなくてはいけないという点でございますけれども、展望と申しました場合に、一つは、どうしてもやはり日米安保体制の中で沖縄の方々に大きな御負担を願っているこの基地の問題をどうするかというのがございます。それから、いま一つは、基地が縮小されるならば、そういったものも活用しながら、そして沖縄の将来の発展のためにどういうふうな施策を展開していくか、これがあるんだと思います。これは別の物であるように見えながら通底している、底は通じているんだ、こういうふうに考える次第でございます。  そして、基地の問題につきましては、昨年あれだけの精力的な作業の上に立ちましてSACOの最終報告ができたわけでございますから、ともかくこれは着実にそれを実行していかなくてはいけない。今、沖縄におきましてもいろいろ御理解をちょうだいしながら作業を進めようとしておりますが、これは沖縄と同時に本土の方の御理解も得なくてはいかぬ面もございます。ぜひこれを進めていきたい。その上に立って、将来ともにこれでおしまいだなどとは申しませんけれども、まずはSACOの報告を実現するということに全力を傾注したいと思います。  そういったものを踏まえながら、沖縄の将来計画については政府一丸として考えますけれども、まずは沖縄の地元でいろいろな展望、夢も描いておられます。既にアクションプログラムというものもおつくりになっているわけでございますね。そして、大田知事さん御自身も、自分たちの方でいろいろ政策的な面からの検討をして構想を出してみよう、こういうように言っておられますので、政府といたしましても、そういうものもお受けしながら、さらに政府としての考え、あるいはもちろん力も加えて、着実にそれを進めてまいりたいと思います。  もとより、アクションプログラムの中の、もうこの段階で基地は全部なくなるのである、そのことを前提にしての将来展望と言われますと、なかなか政府としてはいと申せないところがございますけれども、しかし、あの基本にございますような考え方、将来に向かって青い空を目指していくということは政府も全力を傾けたい、こう考えている次第でございます。
  123. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣もおっしゃいましたように、例えば基地返還アクションプログラムというものがございます。二〇一五年目標ですね。一五年というふうにはっきり一つの日程を区切ることができるかどうかはこれからの問題ですが、ただ、例えば二〇一五年と申しますと戦後七十年、やはり戦後七十年という長期な節目ですから、まあ学者の方では、それは長過ぎる、もっと短くていいんだと言う人もいますし、それはまだわかりません。しかし、何かやはり沖縄の方でも、そういう長い年月と段階を踏んで、情勢もこうなってもらいたいし、沖縄の基地もこうなってもらいたいし、そういうまた幸せな気にしたいということで、知恵を絞って出されたということでございましょう。  したがいまして、今の連立与党の協議のときにも、この沖縄からのビジョンを重く受けとめて努力をするというふうな合意をしているわけでございますけれども、二十五周年、さてこれからということで、いろいろな方々がやはり思いを深くするときだろうと思います。気持ちは伺いましたので、お互いにいい展望がさらに開けるように、さらにぜひ努力をしてまいりたいと思います。  案件に関連をいたしまして、二、三質問をさせていただきます。  南アフリカ日本との租税条約ということが一つございますけれども、今、南アのマンデラ大統領など含め、また、南アを舞台にいたしまして、ザイールの問題の協議などが行われているようであります。前のPKO派遣の経過その他からいって、あの地域につきましては、いろいろな方々が関心を深めている、関心が高まっているということではないかと思います。非常に緊迫した情勢にあるということもさまざま報道されているという今日の事態でございます。  私も友人もございまして、いろいろな方々の現地の話などを伺うのですが、今アメリカの方でも、ポスト・モブツと申しましょうかモブツ大統領以後どうなるのかという方向に、アメリカも含め、またフランスなども含めて動いているというふうな状態でございまして、いずれにいたしましても、そう遠くない時期に、どういうふうに次を考えるのかあるいは現地の皆様がどうなさるのか、それにどういう関係を持つのかということを考えなければならない時点であろうというふうに思います。それから、この半年かそこらの時期、非常に急展開しているという状況もございますが、外務省として、その辺をどう認識をされておりますでしょうか。
  124. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもも、現在のザイール情勢、非常に心配しながら注視しているところでございます。おっしゃいますように、モブツ大統領とカピラ議長との間の直接会談というのが、南アのマンデラ大統領の仲介により実現したわけでございますけれども、残念ながら、そこで合意を形成するには至りませんでした。しかしながら、基本的に申しましてモブツ大統領、これは退陣はやむを得ないなという情勢にあるし、そのことは御本人もよくわかっておられる。ただ、その後を一体どういう体制にするのか。今の体制のもとでの、いわゆる議長をつくるという動きがある、それに対してカビラ議長の方は認めないということで、非常に難しい情勢になっているわけでございますけれども、我々いずれにいたしましても、新しい体制ができるにしろ、あるいはこれまでの体制が何か変化するにしろ、極力流血の惨事というようなことを招くことなく、あの地域が安定に向かうことを期待しているわけでございまして、日本としてもいろいろ努力してまいります。  実は、両者の会談を取り持ちます前の段階で、本省からも担当者を派遣いたしまして、いろいろその努力をしたこともございます。それから、実は、今来日しておられますアナン国連事務総長とお会いいたしました際にも、いろいろこの問題も含めて、それぞれに国連として、あるいは日本として何か果たす役割があるかどうか、そういったこともお話ししながらやったわけでございまして、今後とも関心を持ちながら、我々としてなし得る努力は傾注してまいりたい、こう思います。
  125. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 関連して、もう一つ外務大臣要望がございます。  やはりアフリカ大陸、第二次大戦まで、あるいは冷戦時代、その役と、大きな変貌を遂げつつあるということだと思います。冷戦時代にはどうしてもやはり二大超大国と申しましょうか、ここのさまざまの経過、あるいは植民地時代の昔の経過などを踏まえて、非常に複雑な状況もあったと思いますが、やはり本当の民主的な方向への国の建設という流れが動いているということだと思います。そういう中で、南アのマンデラ大統領就任のときなどでも、あの演説その他は、私ども、非常に感銘を持って聞いたわけでございまして、だんだんそういう新しい時代に入っていくということだと思います。  また、私も私なりに勉強してみますと、前のPKO問題、ルワンダとかというときにはツチ族とフツ族の部族の対立とかそういうものがない日本ですから、それが基本がというところが非常に不幸なことだなと思いながら聞いたのですが、やはり長い歴史の中でそういう部族の問題、そこが絡んで起こっている。何か次の時代のシナリオをどう描くのかという意味でのさまざまな努力がなされているということも、実は伺っているわけであります。  また、そういうことを考えますと、我が日本は何か直接利害に絡んで、どこかの国を植民地にしたり、介入したりということのない国でございますから、また、世界におけるポジションから申しましても、私ども日本としては、そういうかかわりを離れたという立場も生かしながら、そういう大きな歴史の流れへの次の貢献ということを含めた努力をし、またそれが評価をされるような外交活動をしていくという立場ではないだろうかと思いますが、どうお考えでしょうか。
  126. 池田行彦

    池田国務大臣 伊藤委員指摘のとおりでございまして、アフリカの歴史というものを考えました場合に、かつては、植民地主義といいましょうか、あるいは帝国主義時代と言われた時代に、欧州の列強が次々と植民地化していったという時代がございました。そういった中で、アフリカの部族と言われましたけれども、アフリカの地理的な状況だけではなくていろいろな、そこに住まう人々のつながり等々と比べまして、必ずしも自然ではない境界線が引かれたというようなこともございました。  また、その後、御指摘もございました冷戦時代の中で、やはり冷戦構造に基づくいろいろな思惑から、いろいろな国家間の関係が、アフリカの中においても、またアフリカと欧米諸国との間、あるいはその他の国との間でも持たれたわけでございますが、幸か不幸か日本は、そういった長いアフリカの歴史を通じて、比較的縁が薄かった、かかわりが少なかったわけでございます。  しかし、そのことが逆に、今日、冷戦時代も終えんし、それぞれアフリカが自分たちの手で、しかも民主的な道を目指して努力する中で、日本はこれまで利害関係がなかっただけに、中立な立場で物を言ってくれるんじゃないかという期待感があり、また日本があれこれ発言しました場合には、いわば素直に耳を傾けてくれるという面がございます。  それが先ほど申しました今回のザイールの問題についても、ある程度の役割が果たし得る基本条件になっているわけでございますし、その他の面でも、いろいろOAUその他、アフリカ自体での組織もございますけれども、そういったところへ日本としてのいろいろな助言もできるわけでございます。それと同時に、PKOその他での努力も、我々これからも必要なときにはやらなくてはいけないと思います。  いま一つ大切なことは、開発戦略の中において、いわゆるODAの世界でございますけれども、やはりこれからアフリカの経済問題をどう解決するかというのは、これは世界全体の関心事だと思います。そういった意味で、日本は、一九九三年に第一回のアフリカ開発会議というのを主催いたしましたけれども、それ以来、アフリカの開発をいわゆる先進国とアフリカ諸国との間のパートナーシップという考えのもとに進めていこうというので進めておりまして、そういった開発を進めていく面での日本の努力というものも、あの地域の安定と民主化の進展に寄与するんじゃないかこう考えている次第でございます。そのような多角的な面で努力してまいりたいと思います。
  127. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 やや技術的なことで、もう一つだけ伺って終わりにしたいと思います。  大蔵省、来てもらっておりますけれども、みなし外国税額控除の取り扱いですね。税額控除の取り扱いということでございまして、前にも大蔵委員会を通し、こんな議論を随分したことを覚えておりますけれども、今回の南アフリカとの租税条約という中では、みなし外国税額控除の規定を設けていないということでございます。それから、それについての国連モデルとかOECDモデルとかあるわけでございますけれども、OECDの勧告などもある予定になっておるようですが、発展途上国から先進国、そういう過程の中で、一体こういう問題をどう取り仕切っていくのかということを、一つ租税条約に関連をして仕切りのある認識を持っておいた方がいいのではないか。今の韓国との関係、韓国の経済も急テンポの発展をしているというような状況にありますが、そういう中でどういう取り仕切りをして考えていったらいいのかということをちょっと思いましたので、簡単にお答えいただきたいと思います。
  128. 谷口和繁

    ○谷口説明員 お答えいたします。  三点ほど御質問があったと思いますので、簡潔にお答えをさせていただきたいと思います。  まず、南アフリカとの租税条約でございますが、確かに先生がおっしゃいますように、みなし外税控除の規定は設けておりません。これはどういうことかと申しますと、このみなし外税控除といいますのは、そもそも我が国条約ポリシーとしてはできるだけ慎重に対応するということがございまして、それはなぜかと申しますると、やはり公平の観点でありますとか、それから税の引き下げ競争を助長するのではないかといったような観点で、慎重に対応しているわけでございます。さはさりながら、相手国が開発途上国でございまして、非常に開発のためにぜひとも必要であるというような強い要請がございましてやむを得ないという場合には、その対象範囲を限定いたしたり、あるいはサンセット条項をつけるといったような限定を付しつつ、認めていくというような対応をとっておるわけでございます。  ところが、先生指摘のとおり、国際的にも、このみなし外税控除というものが本当に開発に資するのかといったような疑問もございまして、また、公平の観点等からの問題もあるということでございますので、国際的にもこういうものはなるべく縮小していこうという流れがございます。その中で、南アフリカとの交渉の中で、我が国のポリシーを説明し、かつ国際的な流れも向こうの方も御理解いただきまして、今回、みなし外税控除なしで条約がつくられたということになったわけでございます。  国際的な観点についてさらに付言させていただきますと、OECD等では、現在、今申し上げたような観点から、みなし外税控除をなるべく縮小していった方がいいのではないかというようなレポートを取りまとめているところでございます。  現在、まだ具体的な中身については加盟国の中で検討中でございますが、方向としては、あるいは問題意識としては、今申し上げたような問題意識で、できるだけ縮小していこうということになっておりまして、我が国としても、そのような基本方針については全く賛成しておりますので、積極的にこのレポートづくりに参加しているところでございます。  それから最後に、韓国との関係でございますが、韓国との条約、現行条約は既にもうかなり古い条約でございまして、当時の韓国経済状況等をかんがみれば、やはり韓国経済発展のためにみなし外税控除を設けだということは、その当時の判断として妥当であったと考えておりますけれども、最近の韓国経済状況、特にOECDにも昨年十二月に加盟いたしましたし、もはや先進国の仲間入りをしたということでございますので、先生がおっしゃいますように、この時点ではみなし外税控除を韓国に与え続けることがいいのかという問題点はございます。このような問題意識を持ちつつ、韓国当局とも意見交換を行っているところでございます。
  129. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 終わります。
  130. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  131. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 これより航空業務に関する日本国政府香港政府との間の協定締結について承認を求めるの件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決いたします。本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  132. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  133. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府南アフリカ共和国政府との間の条約締結について承認を求めるの件に対する討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。松本善明君。
  134. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、日本共産党を代表して、日本南アフリカ共和国との間の租税条約に対する反対討論を行います。  反対理由の要点は、第一に、この条約は、外国税額控除制度の適用をうたい、世界的規模で生産活動を行い、国内以上に海外で高利潤を上げる大企業に対してへ国内と同じように優遇税制を保障することになっておりますが、その必要はないと考えるからであります。  第二に、二重課税の排除とは結局国際投資の障壁の一つをなくすことであり、資本の海外進出に対する税制面からの必要な民主的規制を実施できなくするからであります。  第三に、配当、利子、使用料に対して課税額の上限を定めることによって、主権国の課税権を制限することになるからであります。  反対の理由を述べて討論といたします。
  135. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 これにて本件に対する討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  136. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  137. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、航空業務に関する日本国とパプア・ニューギニアとの間の協定締結について承認を求めるの件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  138. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  140. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、包括的核実験禁止条約締結について承認を求めるの件、可塑性爆薬探知のための識別措置に関する条約締結について承認を求めるの件、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定譲許表第三十八表(日本国譲許表)の修正及び訂正に関する確認書締結について承認を求めるの件及びサービス貿易に関する一般協定の第四議定書締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  これより政府から順次提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣池田行彦君。     ―――――――――――――  包括的核実験禁止条約締結について承認を求 めるの件  可塑性爆薬探知のための識別措置に関する条約締結について承認を求めるの件  千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定譲許表第三十八表(日本国譲許表)の修正及び訂正に関する確認書締結について承認を求めるの件  サービス貿易に関する一般協定の第四議定書締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  141. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま議題となりました包括的核実験禁止条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、ジュネーブの軍縮会議での交渉を経て、平成八年九月十日にニューヨークの国際連合総会において採択されたものであります。  この条約は、核兵器の拡散の防止、核軍備の縮小等に効果的に貢献するため、あらゆる場所において核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止するとともに、あわせて、条約上の義務の実施を確保するための検証措置として、国際監視制度の整備、現地査察の実施等について規定するものであります。  我が国がこの条約を率先して締結することは、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮のための努力を積み重ねていくための国際協力に寄与するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、可塑性爆薬探知のための識別措置に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、平成三年三月一日に、国際民間航空機関の主催によりモントリオールで開催された航空法に関する国際会議において作成されたものであります。  この条約は、これまで探知が困難とされていた可塑性爆薬の製造に際し探知剤を添加すること等を義務づけるものであり、この条約により、可塑性爆薬を使用したテロリズムの行為が抑止されることが期待されるものであります。  我が国がこの条約締結することは、国際的なテロリズムを防止するための国際協力に一層貢献するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定譲許表第三十八表(日本国譲許表)の修正及び訂正に関する確認書締結について承認を求めるの件について提案理由を御説明いたします。  この確認書は、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定に含まれている我が国譲許表に関し、医薬品の関税撤廃の対象産品の見直し及び情報技術製品の関税撤廃に伴う修正及び訂正を確認するためのものであり、平成九年四月七日にジュネーブにおいて作成されたものであります。  医薬品の関税撤廃については、ウルグアイ・ラウンドの成果に追加してさらに関税撤廃の範囲を拡大するものであり、平成八年十一月に合意されたものでありますが、その結果、約四百六十品目の医薬品が新たに関税撤廃の対象となります。  また、情報技術製品の関税撤廃については、平成八年十二月にシンガポールで開催された世界貿易機関閣僚会議機会に、主要国間で合意され、平成九年三月末にその詳細等がまとめられたものでありますが、その内容は、コンピューター、通信関連機器等を含む約二百品目について関税を撤廃するものであります。  我が国がこの確認書締結することは、国際貿易を促進する見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この確認書締結について御承認を求める次第であります。  最後に、サービス貿易に関する一般協定の第四議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この議定書は、サービス貿易に関する一般協定の基本電気通信の交渉に関する附属書に基づく平成九年二月十五日に妥結した交渉の成果として、平成九年四月十五日にジュネーブで作成されたものであります。  この議定書は、基本電気通信サービス分野に関し、世界貿易機関の関係加盟国が、一層高い水準のサービス貿易自由化を達成することを目的とし、最恵国待遇を基本としつつ、市場アクセスを自由化し、内国民待遇を付与すること等を約束するものであります。  我が国がこの議定書締結することは、我が国が世界の主要な基本電気通信サービス貿易国であることにかんがみ、サービス分野での多角的貿易体制の発展に寄与するという見地から極めて有意義であると認められます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上四件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  142. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 これにて各件に対する提案理由の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十三分散会      ――――◇―――――