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1997-03-21 第140回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月二十一日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 逢沢 一郎君    理事 福田 康夫君 理事 牧野 隆守君    理事 森山 眞弓君 理事 青木 宏之君    理事 東  祥三君 理事 玄葉光一郎君    理事 松本 善明君       安倍 晋三君    荒井 広幸君       石崎  岳君    臼井日出男君       大村 秀章君    柿澤 弘治君       河野 太郎君    櫻内 義雄君       実川 幸夫君    新藤 義孝君       田村 憲久君    林  幹雄君       原田昇左右君    茂木 敏充君       坂口  力君    島   聡君       松沢 成文君    丸谷 佳織君       山中 燁子君    若松 謙維君       井上 一成君    藤田 幸久君       古堅 実吉君    伊藤  茂君       平野 博文君  出席国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君  出席政府委員         外務大臣官房長 原口 幸市君         外務大臣官房領         事移住部長   齋藤 正樹君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省経済局長 野上 義二君         外務省経済協力         局長      畠中  篤君         外務省条約局長 林   暘君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十一日 辞任          補欠選任   安倍 晋三君     荒井 広幸君   櫻内 義雄君     林  幹雄君   下地 幹郎君     大村 秀章君   新藤 義孝君     茂木 敏充君   田中 昭一君     臼井日出男君   森  英介君     実川 幸夫君 同日  辞任         補欠選任   荒井 広幸君     安倍 晋三君   臼井日出男君     田中 昭一君   大村 秀章君     下地 幹郎君   実川 幸夫君     田村 憲久君   林  幹雄君     櫻内 義雄君   茂木 敏充君     新藤 義孝君 同日  辞任         補欠選任   田村 憲久君     森  英介君     ――――――――――――― 三月十九日  ILOパートタイム労働条約の批准に関する請  願(近藤昭一紹介)(第一〇一六号)  同(赤松広隆紹介)(第一一四三号)  同(藤木洋子紹介)(第一一四四号)  日米地位協定の見直しに関する請願(深田肇君  紹介)(第一一四二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第二三号)      ――――◇―――――
  2. 逢沢一郎

    逢沢委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森山眞弓君。
  3. 森山眞弓

    森山委員 私は、まずコタキナバル領事館総領事館変更するという件についてお伺いいたします。  この変更をする理由をまず聞かせていただきたいと思います。
  4. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 サバサラワク両州、すなわちコタキナバル領事館管轄下にあるこの両州には現在五百名の在留邦人がおりまして、約百三十の本邦進出企業がございます。また、近年におきまして、サバ州の沖合のラブアン島にマレーシア政府金融センターを設置することを九六年に決定いたしまして、九六年四月からオフショア市場としての活動も始めておるわけでございます。また、九四年以来禁止されていた丸太輸出が九六年十一月再開されたというようなこともございまして、領事館において処理の対象と考えていた業務というものが拡大したということが一つ大きな理由になっております。
  5. 森山眞弓

    森山委員 コタキナバルというところがあるボルネオ島は、地球の上でも数少ない、自然資源の大変豊かなところでございますが、特に生物多様性に富み、地球環境保全観点から貴重な地域だというふうに聞いております。  最近、野生生物の種の絶滅が急速に進みまして、生物生息環境の悪化、生態系の破壊が憂慮されている状況の中で、生物多様性保全生物資源の持続可能な利用のために生物多様性条約というのが作成されまして、日本平成五年末にこれに参加いたしまして、今は百六十以上の国が加盟している大きな国際的な枠組みとなっております。  この条約に入りましたことによって、日本も、自分の国の中で生物多様性保全努力をする義務を負うというのはもちろんでございますが、締約国である開発途上国に対しまして、関連の技術知識の移転を公正に、円滑に行うこと、必要なら資金を提供することなどの責任を負っているわけでございます。  世界の貴重な生物の宝庫の一つでありますボルネオ島、このコタキナバルのあるボルネオ島は、日本に最も近くて、いろいろな意味関係の深い地域でございまして、その天然資源保全持続的活用のため、我が国知識技術協力が最も望まれる場所であると思いますが、いかがでしょうか。
  6. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、生物多様性保全するということは全地球的な取り組みを必要とする重要な課題であると考えておりまして、我が国条約に加盟し、そして九五年でございますか、こういった問題についての我が国取り組み方を包括的に、また体系的にまとめまして、生物多様性国家戦略というものを打ち出したわけでございますが、そういった中におきましても、国内においていろいろな施策を講じていくと同時に、国際的にもいろいろ役割を果たしていかなければいけない、こう考えております。  そういたしましては、東南アジアはやはり南米のアマゾン地域と並びまして、こういった生物多様性という観点から、我々として重視する地域だと考えております。そういった中におきましても、このコタキナバルあるいはブルネイ等々は非常に注目すべき地域だと考えております。  現在までのところ、御承知のとおりインドネシアにおきまして米国と協力しまして、我が国ODA予算を使って生物多様性センターというものをつくっておりますが、これをひとつ活用しまして東南アジア地域プロジェクトをいろいろつくっていけないか、こう考えております。  ブルネイにつきましても、これまで林業研究であるとか、あるいは森林資源調査といった観点から、いろいろなプロジェクト方式技術協力を進めておりますが、生物多様性という観点、切り口からどういうふうな協力を進めていけるか、これからもいろいろ検討はしてまいりたい、こう思っております。
  7. 森山眞弓

    森山委員 日本の国の中のいろいろな学会におきましてもこの問題に非常に関心を持っておられるようでありまして、その例の一つとして、日本動物学会というのがガイアリスト21というプロジェクトを提案しております。これは多様な地球生物保全持続的活用基礎データとしまして、全生物リストを作成して、それらの細胞やゲノム、DNAを保存すること、そのためのセンターをつくり、あるいは幾つかの場所フィールドセンターもつくりまして、保存方法研究とか保存の実行とか情報管理を行う、さらにこれらに必要な研究者専門家を養成するというような構想と聞いております。このような仕事を展開するのにもボルネオ島は大変適当な、また必要な場所なのではないかというふうに、私は素人なりに考えるわけでございます。  実は昨年の年末、縁がございまして、コタキナバルに隣接しておりますASEAN加盟独立国ブルネイを訪ねる機会がございました。年末、大変押し詰まったときでございましたが、産業資源省次官臨時代理、そのほかたくさんの関係者の方とこの問題について会談をさせていただきましたし、また今大臣がおっしゃいました林業試験センターでしたか、その場所へも現に行きまして、実際にも見てまいりました。  ブルネイというのは、十三年前に英国から完全独立した国でございまして、小さな王国でございます。千葉県くらいの広さのところに人口が二十八万という大変小ぢんまりしたところでございますが、国土の八〇%が熱帯雨林に覆われておりまして、天然ガスと石油が豊富に産出されまして、それがほとんど唯一の収入源という国でございます。しかも、その九〇%が日本輸出されているということでありまして、日本ブルネイは互いに深く依存し合っていると言っても間違ってないと思います。お互い関係が深い国なのでございますが、その割には一般に余りよく知られていないのではないか。その点、ちょっと残念に思います。  そういう国でございますので、そこの王様世界一のお金持ちということで、そのふんだんにある富を国民の医療、福祉、教育、治安などに使われて、国民は全く税金というものを払わなくてもいいという、今どき信じられないような国なのでございますが、そのおかげでこの小さな国、大変インフラ整備をされておりまして、安全で衛生状態もよろしいし、生活も大変しやすいところでございます。ですから、国際的な研究とか研修機関などをつくるのには大変よい条件がそろっているのではないかなと見てまいったわけでございます。  そのようなわけですから、ブルネイ日本ODADACリストを既に卒業しつつあるわけでございますが、新たな立場で日本協力したいと私がお会いした方々は口々に言っておられました。例えば、私がちょっと日本ODAの一種なのだけれども、第三国研修プロジェクトというようなものも他の国で始めているところもあるということを申しましたら、そのようなことをやってみたいと、非常に強い関心を示しておられたわけでございます。  その十日ほど後に、一月七日でしたか、橋本総理ASEAN諸国を訪問されます一番最初にブルネイに行かれまして、王様会談をされたと聞いております。その中で、このような話題は出たのでしょうか。また、両国の関係を進めるために次官級定期協議を行うということが合意されたと新聞なんかで拝見いたしましたが、その後どのように進んでおりますか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  8. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 御指摘の一月七日、ブルネイ国王橋本総理との会談の際には、総理から、ブルネイを含むASEANとの関係をもっと従来より幅広く奥深いものにしたいという意向を述べられました。そして、今後の日・ASEAN協力の三つの柱の一つとして、国際社会が直面する諸課題への共同の取り組みを行うことを提案して、国王の賛同を得た経緯がございます。  この諸課題というのは、エネルギーとか食糧とか人口とか、それから麻薬とか、いろいろあるわけでございますが、その中の非常に大きな要素は環境ということでございます。総理より、特に環境問題について、日本ブルネイ協力することが重要であるということを強調されました。  そういうことで、生物多様性に関する具体的な協力あり方にまでは、その首脳会談においては話は及ばなかったわけでございますが、今御指摘がございましたとおり、政治及び経済に関して、広く高級事務レベル議論する場を設けるということについて合意がございましたので、こういう場の活用ということが当然考えられると思います。  今、日本ブルネイの間でこの高級事務レベル協議をできるだけ早く開催したい、具体的にいつ開催するかということを調整中でございます。
  9. 森山眞弓

    森山委員 その事務レベル次官級定期協議ですか、それを具体的に早く進めていただきたいと思いますし、ああいう国でございますので、非常におっとりしていらっしゃると申しましょうか、余りお急ぎにならない国民性のように伺いますが、環境問題は一刻を争う大事な、深刻な問題だと思いますので、日本の側から積極的な提案をされまして、具体的に進められるということをぜひ希望いたします。  特にブルネイのようなある程度経済水準をクリアした国々東南アジア諸国は非常に経済成長も、ほかの国もみんな大変目覚ましいものがございまして、これについては、日本の今までのさまざまな形での援助がお役に立っているのかと思いますと大変うれしいことではありますけれども、いずれどこの国もみんな成長されて、ある一定の水準に到達し、単なる援助対象国というだけではなくて、そのほかのやり方で協力をしていかなければならないということに早晩なっていらっしゃるのではないかと思います。  ODA対象国を卒業したいわば優等生の国々とのつき合い方、協力あり方というものについて、逐次検討し、具体的に進めていくということがとても大切ではないか。経済的な援助によって、それのみによってつながっているというような関係というのはむしろ望ましくないわけでありまして、本来の協力あり方、特にODA対象国を卒業した国々との協力あり方というものを、このブルネイなどを一つモデルとしてしっかり組み立てていただきたいというふうに思いますが、その点についていかがでしょうか。
  10. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、ブルネイもいわゆるODA世界から卒業する、今段階的にそういう作業が進んでおりまして、九九年には完全に卒業ということになる、こういうことになっております。しかしながら、ODA対象ではなくなったからもう関係が切れるというのでは、これはいけないわけでございまして、これからもいろいろな面でのつながりは大切にしていきたいと思います。  特に、今話題になりました生物多様性研究であるとかあるいは環境問題というような問題につきましては、お金の面だけではなくて、それこそ研究者の方であるとかあるいは技術に携わる方であるとか、そういった人的な面でのいろいろな連携というものは十分可能でありますし、意味もあるのだと思います。それから、このようなプロジェクトを進めていきます場合にも、単に二国間だけではなくて、例えばASEANの国を網羅するとか、あるいは国際機関と連携するとか、いろいろな手法も想定されるわけでございます。  そういった意味では、ブルネイは間もなく完全にODA世界から卒業しようとしておられる、しかも経済的な面では御自身である程度基礎を持っておられるということでございますので、日本として一体何ができるか、お互いに足らざるところを補うというのか、あるいは得意な分野を生かすというのか、そういったことでこれからのODA卒業生とのつき合い方の一つモデルとしてという御提言、まことに有意義なものでございまして、私どもといたしましても積極的に考えてまいりたいと存じます。  特に、先ほどおっしゃいましたようにおっとりした国柄といいましょうか、日本からの積極的な働きかけがあれば、幾らでもまた力を出していただく可能性にも富んだ相手だと思いますので、そういったことで、将来的に大切におつき合いしてまいりたいと考える次第でございます。
  11. 森山眞弓

    森山委員 コタキナバル領事館総領事館に変えるということで、先ほど理由の御説明がございまして、いずれもごもっともなことで、私も異議はございませんけれども、例えばその理由の中の一つに、丸太輸出が自由になったからということもございました。そういう経済交流活発化ということはそれ自体は大変結構なことで、そのために領事館総領事館というふうに規模を拡大し、地位も高めて、大いにその地域における外交を進展していただくということは大変結構なことでございますけれども、ボルネオの大切な、貴重な天然資源を、ただ切り出して持ち出して商売をするというだけではなくて、その貴重な資源を人類全体のために、地球環境保全のためにさらに積極的に、あるいは大きな意味で生かしていくということの重要性を十分留意していただきたい。そのようなこともこのコタキナバル総領事館になるという機会に、その地域全体についてよく留意をしていただきまして、そして例えば、そのすぐお隣のブルネイなども含めたその地域全体としての協力を積極的に進めていただきたい。  ただいま外務大臣がおっしゃいましたようなそういう気持ちをぜひ事務レベル協議にも徹底的に生かしていただきまして、この地域が、日本も力をかしながら、アジア地域ばかりではなく世界全体の環境問題に大きく貢献できるような、そういう仕組みにしていただきたいものだと強く感じる次第でございまして、そういう意味でのこれからの御努力を重ねてお願い申し上げます。  終わります。
  12. 逢沢一郎

    逢沢委員長 次に、河野太郎君。
  13. 河野太郎

    河野(太)委員 河野太郎でございます。  外務大臣並びに外務省にこの件につきまして、お時間をいただいて質問をさせていただきたいと思います。今回名称変更等がございます公館に関する質問に入ります前に、少しお時間をいただいて、前回予算委員会分科会における質問のフォローアップをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  私が、三月四日でございますが、予算委員会分科会において、今回のペルー事件に関する外務省予算あるいは外務省発生をした経費についてどうなっているかという質問をさせていただきました。そのときに、官房長の方から、予算範囲内でいろいろやりくりをしているというお答えはございましたが、実際に幾ら使われているかというお答えはございませんでした。  ところが、この件に関しましては、私もその場で聞いてお答えをいただけるとは思っておりませんでしたので、事前に、こういうことを聞きたいと思うので調べておいてほしい、そういう質問通告をさせていただきました。そして、三月の三日までに外務省会計課の方で数字がまとまっていたはずでございます。  ちなみに、十二月の十八日から平成九年二月二十八日まで七十三日間の、支払い額及び支払い見込み額を含めた外務省ペルー事件に関してかかった経費でございますが、外務本省庁費二千百七十五万円、在外公館連絡庁費一千二百六十万円、外国旅費三千九百三万八千円、在外公館分として合計で一億八千五百五十七万一千円、七十三日間のトータルで二億五千八百九十五万九千円。一日当たり数字に直しますと、このペルー事件外務本省在外公館分含め三百五十四万七千円の経費がかかっている。そういう数字が三月三日までに外務省会計課で取りまとめが行われていたにもかかわらず、三月四日の予算委員会で一日当たり経費支払い額を教えてほしい、そういう質問に対して、そういう数字はないと官房長の方からお答えをいただきました。  国会予算委員会で、事前質問通告をし、予算に関する質問をしたにもかかわらず、お答えがいただけなかったわけでございますが、これは一体いかなる理由によるものか、本日改めてお伺いをさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  14. 原口幸市

    原口政府委員 お答え申し上げます。  ペルー事件に関連する経費につきましては多岐にわたっておりまして、例えば、具体的に申しますと、国際電話等につきましては何遍もペルーと東京の間で電話のやりとりがあるわけでございますが、実際に請求書の形で確定した金額が我々のところに来るということになりますと、相当時間がかかります。したがいまして、具体的な数字を出して一日当たり幾らというようなことをお答えすると、かえって誤解を招くことになるのではないかと考えまして、そのようなお答え前回分科会ではさせていただいたわけでございますが、もし、そういう極めてラフな数字でもいいから見積もりを出せという御指示でございますれば、そういう前提で、三月の十五日まで大体こんなところであろうという数字は集めさせておりますので、この場をかりて改めて回答させていただきたいと存じますが。
  15. 河野太郎

    河野(太)委員 ラフな数字で結構でございますので、最新の数字お答えいただきたいと思います。
  16. 原口幸市

    原口政府委員 それでは、そういう前提お答えさせていただきます。  ペルー事件への対応のための経費につきましては、事件発生後の十二月十八日から三月十五日までの間に、総額で大体三億一千三百万円程度を要していたというふうに見積もっております。  この内訳につきましては、外務本省分は、国際電話ファクス送信料本省から現地への出張者旅費等経費として約九千三百万円、それから在外公館分といたしましては、現地オペレーションセンター借料現地警備員等の雇い上げの費用、通信費、それから通信機器借料在外公館職員現地への対応のための出張旅費等として約二億二千万円になろうかと思います。これを十二月十八日から三月十五日までの八十八日間で単純に日割り計算してみますと、一日当たり約三百五十万円程度経費がかかっているのではないか、そのように考えております。
  17. 河野太郎

    河野(太)委員 国会予算委員会でございますから、手に入る限りの一番精緻な数値で、それが実際の額とは違うかもわかりませんが、議論の参考にするに一番足る数字を出していただかなければ、国会予算が審議できないわけでございます。誤解を生むおそれがあるのならば、そういう前提条件をはっきりした上で数字を出していただければ、誤解など生むことはないわけでございます。その辺のことをもう少しきちんとお考えになった上で、今後、外務省予算に関する議論をいろいろとさせていただきたいと思います。  私自身ペルーでこうした危機的な状況発生したために、そのほかの在外公館オペレーションが、日常業務が支障が出てくるということでは困ると思います。外務省予算というのは、地球上のどこか一カ所で危機が起こっていても、それに対応しつつ、それ以外の日常業務はきちんとこなせる、そうしたところを目標にきちんとした整備をしていかなければいけないのではないかと思います。外務省予算をつけるのは決して大蔵省の主計局ではなく、国民全般外務省オペレーションに対する理解でございますから、外務省はそうしたことを踏まえて、きちんとした情報公開をしていただきますようにお願いを申し上げます。  さて、今回の在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律に関しまして、三カ所、地名変更等に伴う関係規定整備というのがございます。対象になっておりますのが、香港それからムンバイチェンナイの三カ所ということでございますが、この三カ所の総領事館管轄範囲在外邦人がどれぐらい長期にわたって住んでおられるのか、数字がありましたらお教えいただきたいと思います。
  18. 原口幸市

    原口政府委員 香港でございますが、一九九五年統計での数字でございますが、在留邦人の数は二万一千七百六十六名というふうにつかんでおります。それから、ボンベイ、今回はムンバイとなりますが、九六年十月現在で八百十八名、それからマドラス、今回チェンナイとなりますが、九六年五月現在で百十九名というふうにつかんでおります。
  19. 河野太郎

    河野(太)委員 ただいまお答えをいただきました数、足しまして三万人に満たない数字ではございますが、この三カ所の総領事館管轄する邦人を含め、今現在、全世界日本人の方が約七十万とも八十万とも言われる数、長期滞在をされているわけでございます。そして、この七十万、八十万という日本人方々には、現在、選挙権が与えられていません。要するに、選挙をすることができないわけでございます。  例えば、憲法の第十五条の第二項を見ますと、「公務員選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」という一項がございます。あるいは、公職選挙法を見ておりますと、第九条「日本国民で年齢満二十年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。」という規定がございます。ところが、そういう規定が憲法並びに公職選挙法にあるにもかかわらず、現在、外国に住んでいる日本人に関して選挙権が与えられていない。こういう状態を憲法違反あるいは公職選挙法に違反している状況である、そういう認識を持たれておりますでしょうか。外務大臣にお伺いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  20. 池田行彦

    池田国務大臣 選挙権というものは、これは国民の権利の中でも非常に重要な、基本的なものであろう、こう考えております、特に民主主義社会におきましては。  そういった意味におきまして、本邦人の海外活動が非常に活発化し、現在、御指摘もございましたように、長期在住される方だけでも七十万を超えておると見られるわけでございます。こういった方々が、基本的な国民としての権利、その重要な一つである選挙権を事実上行使できない状態になっているというのは、これはやはり問題あり、こう考えておりまして、いろいろ難しい点もありますけれども、何とかそういった方々にも、政治に参画できる、そういった状況を早くつくらなければいけないというふうに認識しているわけでございます。
  21. 河野太郎

    河野(太)委員 この三カ所、香港及びムンバイチェンナイの三カ所の総領事館管轄に入る日本人の方がその選挙権を行使することを認められる、仮にそういうことになった場合に、この二万一千七百六十六人及びムンバイチェンナイの約千人近い方々は、どのような方法で投票をされることになるのか。今の外務省研究範囲で構いませんので、お答えいただきたいと思います。
  22. 齋藤正樹

    ○齋藤政府委員 お答えいたします。  昭和五十九年の国会公職選挙法が改正案として出まして、その意図するところは、先生おっしゃいましたように、在外のそういう在留邦人選挙権を与えるということでございますけれども、審議未了でお流れになりまして、この数年、また在外選挙のために選挙法を改正するということで、おととしあたりから、特に在外公館投票、郵便投票、そういう併用制でもって検討しなさいという宿題を外務省と自治省がいただいておりまして、鋭意検討しております。  その中身は、在外公館の立地条件、例えば雑居ビルであるかあるいは独立家屋であるか、その周辺の治安の、警備状況は安全かどうか。それから、郵便投票にしますと一往復半の郵便に頼るケースがございます。例えば在外にいます在留邦人が投票用紙を要求する、そうすると日本の選管から投票用紙を送ってもらってさらに投票するという場合には一往復半かかるわけですが、その郵便事情を調査しました。例えば五通出して何通届くか、何日かかるか。こういうことを総合的に調査しまして、今また最後のまとめの段階であるわけですけれども、例えば香港のような場合には、二万人もおる方々一つのオフィスに詰めかけると、在外公館投票の場合には非常に混乱が予想されるということで無理だ、そういう場合には郵便投票にならざるを得ないということでございます。あと二カ所は私、今資料ございませんけれども、基本的には独立家屋、それから治安対策上問題がない場合には在外公館投票ということも可能だ。  いずれにしましても、個別の在外公館の立地条件、周辺の事情、あるいは相手国との相互主義の前提、いろいろな条件を考えまして、個別具体的にどの公館地域在外公館投票が可能だ、どの公館ならば郵便投票でないとだめだ、こういうことを詰めておる段階でございます。
  23. 河野太郎

    河野(太)委員 今、郵便投票と在外公館における投票と両方を併用するような御答弁をいただきました。  外務省の方で、それぞれの公館がどれくらいの範囲をカバーしているかという表をつくっていただきまして、私、これを見させていただいたのですが、こうしてそれぞれの地区を見ておりますと、大変に広い範囲をカバーする在外公館というのが大変多いようでございます。公館まで車を走らせて丸一日、あるいは、もうとても卓では行き切れなくて飛行機で行かなければいけない、そういうところが随分とあるようでございます。そういう在外公館管轄邦人が、そこの中では在外公館に行って投票せよというのは、現実的にはなかなか難しいのではないかなと私は思います。  もう一つ在外公館で投票をする場合、ある特定の日に日本人がその在外公館の建物に集中するわけでございますから、今回のペルーの大使公邸の事件と似たような状況が生じるのではないか。日本人が集まって選挙の投票をする、あらかじめ日時もわかっている、そういう状況をつくり出すということは、当初治安状況がいい、あるいは警備状況がいいと思っていたところでも、テロの対象になるのではないか、そんな気がいたします。  そういうことをいろいろ考えますと、郵便投票で統一をするのが私はいいのではないかと思いますが、そのあたり、いかがでございましょうか。
  24. 池田行彦

    池田国務大臣 今、委員指摘されますように、いろいろな問題がございます。  在外公館で投票するという場合には、時間的、距離的、あるいは経済的にもどうかという問題。あるいは、非常に在留邦人が多いところでございますと、物理的に対応できるかどうかという問題。さらには、今申し上げましたように、大勢の在留邦人が集まりますと、何か不測の事態が起きやしないか、何かの対象になりはしないかといった危険性も排除できないところでございます。さらには、やはり相手国の考えが、あるいは態度がどうかということも十分考えなければいけない、そういう問題もあるわけでございます。  一方、郵便投票ならそういうことは問題にならないわけでございますが、郵便投票には郵便投票として、また別の面でのいろいろ難点もあるのだと思います。  そういったことで、政府といたしましても、昭和五十九年でございましたか、一度、衆参両院の選挙について投票権を与えるということで御提案したことがございましたけれども、これは実質的な審議がほとんど行えないままに廃案になった、こう承知しております。  その後、政府においても、自治省を中心として関係省庁でもいろいろ検討も引き続きやっておりますが、国会と申しましょうか、あるいは各会派、各党の間でもやはりこの問題についてはいろいろな御論議があり、例えば現在連立を組んでおります三つの党の間では、いろいろな検討の上での合意がなされておると承知しております。いろいろなそういった問題点を検討しながら、何とか早期に実現する方向で努力しようということでございます。  これは、すぐれて国会あり方にかかわる問題でもございますから、私どもといたしましては、政府における検討もそうでございますが、そういった院の立場での、あるいは各党、各会派の間での議論を深めていただき、何とか公正でしかも適正かつ円滑に行われるような仕組みを見出していただけないか、このように考えている次第でございます。
  25. 河野太郎

    河野(太)委員 この海外に住んでいる日本人方々が、事実上選挙権を行使することができない状況がこんなにも長い間続いているということは、大変におかしな状況でございます。ぜひ外務省は、これを早く解決する立場から積極的に政府部内でも行動をし、あるいは発言をしていっていただきたい、ぜひそうお願いをさせていただきます。  もう一つ、先ほどの法案に戻りますと、コタキナバル日本領事館総領事館に種類変更ということになりました。私の了解では、これで日本領事館というものがすべて総領事館になったというふうに考えておりますが、外務省の内部規定で、例えば対外的なプロトコールでは領事、総領事、いろいろと違いがあると思いますが、外務省の内部規定あるいは人事規定で総領事と領事はどのように待遇その他が違うのか。総領事館及び領事館は機能、あるいは総領事館領事館としての待遇といいますか、がどのように違うのか。またそれぞれの場合で、コスト的に領事館総領事館にすることによって予算がどれぐらい余計にかかるものなのか、お教えいただきたいと思います。
  26. 原口幸市

    原口政府委員 歴史的な沿革からいいますと、総領事館領事館ではやはり格といいますか、違いがございまして、古い昔であれば、やはり総領事館にはシニアな人を任命し、領事館の館長にはそれよりはジュニアな人を任命するということであったと考えておりますが、最近になりますと、必ずしもそういうルールに基づいてやっているわけではございません。むしろ、唯一コタキナバルだけが領事館ということになったことによって、州政府あるいはマレーシア政府から、何でこの自分たちのところに置いた日本領事館だけが世界じゅうで領事館ということになっているのかというようなことでクレームを受けるというようなことも、事実としてはあった次第でございます。  しかしながら、外務省の内部の人事規定からいたしますれば、総領事館の館長として発令する人と、唯一残っていた領事館の館長として発令する人とで、シニア、ジュニアというようなことで必ずしも分けている、そういうものはございません。  ただ、総領事館領事館ということになりますと、やはり給与の面では違いが出てまいりますので、総領事館に格上げになりますと総領事というカテゴリーが出てまいりまして、その部分につきましては在勤基本手当に関連して若干の修正があるということでございます。
  27. 河野太郎

    河野(太)委員 赴任される総領事あるいは領事の給与の格差以外に、附帯的なフリンジベネフィットといいますか、どのような格差が総領事と領事にはあるのでしょうか。あるいは総領事館領事館にはどのような差があるのでしょうか。
  28. 原口幸市

    原口政府委員 私が先ほど申し上げた以外のフリンジベネフィットということであれば、館長として差異はございません。  ただ、ちょっと先ほどの続きをさせていただきますと、例えば現地で、ほかの国がみんな総領事館我が国領事館ということになりますと、我が国の館長が実はほかの国の総領事館の館長よりも先に赴任していたとしても、プロトコールオーダーからすると後から来たほかの国の総領事の方が先に行くというような非常な不都合があるというようなこともありまして、そういうことも関連して、この際、ぜひ残っていたコタキナバル領事館総領事館にしていただければありがたいということが一つございます。  それからもう一つ、実際的な問題として、マレーシアにはペナンにも総領事館がございまして、同じマレーシアの中でペナンの方は総領事館、それからコタキナバルの方は領事館ということになりますと、サバ、サラワク州の政府からするとおもしろくありませんし、それから、現地にいる在留邦人にいたしましても、自分たちの地域を監督している在外公館領事館で、ペナンの方が総領事館というのは何だというようなこともあるものでございますので、そういう実際的な考慮も実はございまして、お願いしている次第でございます。
  29. 河野太郎

    河野(太)委員 これで領事という発令がなくなり、すべて総領事という発令になるということになりますと、例えば給与面にしても、今まで総領事と領事と二クラスあったものが一クラスになるわけですから、総領事の待遇を含めた見直しをされるのでしょうか、あるいはその総領事の中を一号総領事、二号総領事というような形で新しくクラス分けをされるのでしょうか、そのあたりを教えていただきたい。  それと、領事館がなくなり総領事館に統合されたということが、外務省の中の大事にどのような影響を及ぼしているのかも、あわせて教えていただきたいと思います。
  30. 原口幸市

    原口政府委員 総領事に対する在勤基本手当と申しますのは、各地の為替レートあるいは物価水準、そういう点を勘案して、各地にそれぞれ別々の在勤基本手当が設定されているわけでございまして、したがいまして、すべてが総領事になったからといって、総領事の給与体系が全体として見直しをするということではなくて、各地の、日本との間の為替レートあるいは現地の物価事情を勘案して、毎年従来の水準が維持できるようにチェックをしておりまして、それで改定をするということでございます。  それから、すべて領事関係をやっている我が方の在外公館が、もし今回の法案をお認めいただけることになりますと総領事館になるわけでございますが、それによって外務省の人事政策が変わるかということであれば、そういうことは我々は想定していないわけでございまして、いずれにいたしましても、領事館ないし総領事館の仕事というものを念頭に置いて、一番適切な人材をそういうところに配属したいということでございます。
  31. 河野太郎

    河野(太)委員 外務省の若手が海外に赴任されるとき、あるいは研修生として海外に行くときに、行った先の地方によってはとても生活ができない、自腹を切って持ち出してやらなければいけない、今もあるのかどうかわかりませんが、かつてはそういうようなところがあったという話をいろいろと聞いております。  仕事で海外に赴任する方々が自腹を切らずにきちんとした生活が、外務省を代表する人間としてきちんとした生活ができるように、地域地域において適正な給与水準、待遇が保障されることをぜひお願いをいたしたいと思います。  本日の私の質問は以上でございます。ありがとうございました。
  32. 逢沢一郎

    逢沢委員長 次に、東祥三君。
  33. 東祥三

    ○東委員 在外公館名称位置法改正案に関連して、小一時間質問させていただきたいと思います。  本法案そのものに関しては、もう既に森山議員、さらにまた河野議員の方から今御質問がありましたので、その質問の重複は避けたいと思います。  三点についてきょう質問させていただきますが、外務大臣ペルー事件ももう三カ月を超え、その次の一手をどういうふうにするのかということで、大変見通しの暗い状況にあるのだろうというふうに推察します。大変心中穏やかでないだろうと思います。また沖縄の基地問題に関連して、これまた、日米関係のみならずアジア諸国また国際社会における日本位置づけ、そういう視点から考えた場合、これも心中穏やかではないだろうと思います。  でも、どうか外務大臣、二十一世紀を志向する上で、日本あり方そのものが問われている極めて重要な時期に差しかかっていると私は思います。そういう意味で、本当に大変なお仕事に携わられていて、心中をお察しいたします。きょう、きつい質問になるかわかりませんが、それはそれとして、国のことを思う一人の政治家がいるということだけでとらえていただきたいというふうに思います。  まず初めに、本法案の関連で質問させていただきますが、外務省のお仕事の内容、また国際社会においてこれだけ日本経済活動を中心とする種々の活動が世界的に広がってきている、その活動に合わせて当然外務省としての仕事の内容も複雑多岐にわたっている、そういう意味で、外務省の省員、この数を外務大臣が見られておりまして、また先進諸国国々と比較されて、現在の陣容でいいと思われるのかどうなのか、さらにまた、もし少ないと思われるとするならば、大体どれぐらい最低必要だと思われるのか、その二点についてまず御質問させていただきたいと思います。
  34. 池田行彦

    池田国務大臣 まず冒頭に、いろいろな難しい課題あるいは問題に直面して心休まるいとまがないであろうというお言葉をちょうだいいたしましたこと、感謝いたします。私がというよりも、外務省の人間すべて、現在直面している問題あるいは解決に取り組まなくてはいけない課題に真剣に取り組みまして、二十一世紀に向かって我が国の安全、安定、そうして発展の道を切り開いてまいりたい、今日の我々の取り組みいかんが未来のこの国の姿を左右する、そういった認識を持って真剣に取り組んでまいりたい、こう考える次第でございます。  さて、そのような外交上の諸課題に取り組むに、現在の外務省の陣容、とりわけ定員で十分であろうかという御指摘でございます。  外務省の定員につきましては、おかげさまで政府部内においても、また国会におきましても御理解をちょうだいいたしまして、ここのところ大分充実させていただいた次第でございます。そして、現在におきましては、在外、本省含めまして五千五人になっておるわけでございます。これは、かってに比べますと随分充実はいたしましたわけでございますが、諸外国と比べますと、G7の中で見ますと、米国の二万四千というのはこれは別格といたしましても、フランスで一万二千、ドイツで九千数百、英国で七千余りということでございまして、五千五人というあれは、カナダの五千三百数十人、イタリアの五千三百弱というところにようやく近づいてきたかなという姿でございまして、決して他国と比べた場合に、いやこれで十分でございますと胸を張れる姿にはなっていないと思います。  そういった中におきましても、我が国は極力本省をスリムにいたしまして、在外に重点的に配置するというふうにしておりまして、現在三千余りが在外、本省二千弱ということになっておりまして、これは例えばカナダのように、ほぼ日本と同じ水準でございますが、カナダの場合は三千余りが本省、二千弱が在外ということになっておりますので、我々としては、限られた定員の中で極力在外における活動に重点を置いてまいりたい、こういうふうにやっておるわけでございます。  こういったものにつきまして、一体適正な規模がどのくらいかというのは、ちょっと物差しのつくりようがないわけでございますが、今申しましたような主要各国との比較におきましても、私どもは、まあ十二分であるとは思いませんけれども、おかげさまでようやくG7の国々に近づいてきているな、こういう認識はしております。  これから先も、我が国の財政事情も非常に苦しい時代である、また行政組織そのものも極力スリムなものにしなくてはいけないという状況の中でございますので、外務省についてのみ定員充実をと申し上げましても、なかなか国民の皆様方の御理解の得にくい面はあろうと思いますけれども、今申しましたような各国との比較をよく御理解をちょうだいし、そうしていよいよ活発化してまいります我が国国民なり、いろいろな企業その他の団体の国際的な活動を支障なく行っていくためにも、外務省としていろいろお役に立つところもあるということ、それからまた、もとより我が国の安全なりあるいは国際社会における役割を果たしていく上においても遺漏なきを期さなくてはいかぬというところに御理解をちょうだいいたしまして、これからも充実を図ってまいりたい、こう考えておりますが、具体的にその目標なりあるいはあるべき姿についての数字を挙げての御答弁は、この際はちょっと控えさせていただきたいと存じます。
  35. 東祥三

    ○東委員 平成九年度の予算案におきましては、在外公館の機能強化を盛り込んでいらっしゃいます。その予算額を平成四年度と比較いたしますと、約倍で、五百五十億に上っているわけでございますが、具体的に機能強化というのは何をやられているのかということについて答弁をお願いいたします。
  36. 原口幸市

    原口政府委員 お答え申し上げます。  平成九年度予算案におきましては、重点項目の一つであります在外公館の機能強化のための予算といたしまして、在外公館施設等の強化と海外邦人対策、それから危機管理体制の強化ということで、今先生御指摘のとおり、合計五百五十億四千二百五十万円を計上しておりまして、これは平成四年度予算における在外公館の機能強化のために計上した二百二十七億四千四百万円の二倍以上となっております。  この伸びの主なものといたしましては、平成四年度予算額と比較いたしまして、勤務環境の厳しい地に勤務する職員の健康管理、宿舎対策等の不健康地対策に約二・七倍の二十一・六億円、在外公館の施設整備に約二・一倍の九十五・五億円、緊急事態邦人無線機や在外邦人用の緊急備蓄の整備等の海外邦人安全対策に約八・四倍の七・七三億円、在外公館の警備強化を含む危機管理体制強化に約三倍の三十六・七億円を計上したことなどによるものでございます。  このように、国会における御理解も得て、在外公館の警備は、厳しい財政事情のもとにおいても、海外邦人安全対策や在外公館施設警備体制の強化、不健康地対策等の形で着実に拡充を図ってきているところでございます。
  37. 東祥三

    ○東委員 今御質問させていただいている前提は、まさに次の質問にすべてかかってくるわけでございますが、いわゆる危機管理という言葉がいろいろな機会に語られるようになって久しいわけでございますが、この危機管理、一口に言ったとしてもなかなかいろいろ、多種多様になっていくのだろうというふうに思います。  後から質問させていただきますが、現在スポットで日本以外に、学生だとかあるいは観光旅行だとかあるいはビジネスとして、あるいはまたボランティア活動として等、いろいろな日本方々世界各国に散らばっているわけでございますが、そういう人々の安全の問題、これも多分広義には危機管理という問題に入ってくるのかもわかりません。普通言われるところに従えば、例えば阪神・淡路大震災のようなああいう自然災害に対するものだとか、また、今まさにその解決の状況が多くの人々の関心の的になっております在ペルー日本大使館公邸人質事件のようなテロに対するものであったり、あるいはまた茨城県東海村の動燃東海事業所で起きた火災、爆発事故、多分これはチェルノブイリ原発の崩壊のような重大な事故に対するものというふうに位置づけられるのだろうと思いますが、さらにまた日本及び極東有事など日本の安全保障にかかわるもの、いろいろな形態の危機が想定されると思います。  私は、結論から言うと、日本というのは何らこれらの問題に対して対策ができていない。過去に種々の経験があるにもかかわらず、一切、一億二千六百万人の安全を守るためにそれなりの有効な、明確なるポリシーに基づくものが何らできていないということなんです。それを何とかしていただきたいということでいつも大声を張り上げているのです。また、気持ちはみんな同じだったとしても、なぜそういうものが進んでいかないのかということが最大の問題なんだろうというふうに思うのです。  こういう問題意識を前提にして、まず、今日本から海外に渡航している人々の数というのは一体どれぐらいいるのでしょうか。
  38. 齋藤正樹

    ○齋藤政府委員 海外渡航者に関する統計は毎年法務省入国管理局が作成しておりますが、同入国管理局の統計によりますと、平成七年に海外に渡航した日本人の数は、全体で千五百二十九万八千百二十五人でありまして、これを三百六十五で割った一日当たりの単純平均で出しますと、丸い数字で約四万二千人となります。
  39. 東祥三

    ○東委員 一日当たり四万二千人、必ずどこかに、日本国以外にいらっしゃるということなわけですが、国の数というのはわかりますか。
  40. 齋藤正樹

    ○齋藤政府委員 先ほど申し上げたのは一日当たりの単純平均で、旅行の場所にもよりますけれども、アジア地域ですと三泊四日とか四泊五日、その辺がパターンとしては一番多いようでございます。それから、遠くに行きますと一週間とか十日ということになりますので、延べで言いますと、さっきの四万二千をそれぞれの滞在日数でさらに乗じた数というのが常時いるということになります。  それから、どういう国に行くかということでございますけれども、一番多いのはアジア、それからヨーロッパ、アメリカ、この辺が渡航者の渡航地域としては一番多うございます。  他方、最近では、もう行ったところには行きたくないということで、例えばサハラ砂漠とか、ヒマラヤの雪道をトレッキングするとか、南極を行くとか、太平洋の島に行くとか、そういう珍しいところに行く傾向もございます。でも、多いのは、さっき申し上げましたアジア、欧米、大体その辺が多うございます。
  41. 東祥三

    ○東委員 常時、今おっしゃられた、一日で単純平均すると四万二千人の方々が外に出られている。当然その人たちにとって、もし何か起これば、例えばパスポートをなくしたらすぐ公館に駆けつける。あるいはまた強盗に遭ってしまう、その場合でもすぐ公館に駆けつけていかなくてはいけない。そういう意味においては、在外公館の役割あるいは任務というものが単純にそういうものに対応するということであるならば、ますますその仕事というのはふえていくわけですけれども、私が聞きたいのは、そういった海外にいらっしゃる日本人方々が困ったときに、また安全が脅かされたときに、日本として彼らをどういうふうに守ろうとしているのか、あるいはまた守れないというポリシーなのか、その辺のことをまずお聞きしたいと思います。
  42. 齋藤正樹

    ○齋藤政府委員 まず、海外にいる在留邦人の分類でございますが、先ほど申し上げましたように、旅行者で行く場合と、それから長期滞在あるいは永住でおられる方という大きく二つの分類がございます。  それで、後者のすなわち長期滞在者、例えば会社の駐在員で行く、向こうの大学に留学する、こういう方々につきましては、大抵の場合三カ月以上の長期滞在でございますので、在留届というものを在外公館に提出していただいて、いざというときの連絡ができるような体制をとっております。  それから、各地の商工会議所、日本人会を通じまして、そこに滞在する日本人の間の緊急連絡網、どこをどう押せば皆さんに伝わるという連絡網をつくっていただいております。それで、官と民の安全の協力会議というのを、各地の在外公館、大使館あるいは領事館と、先ほど申し上げました民側の商工会議所、日本人会、それを通じまして連絡をとっております。そういう緊急連絡網の一環で、最初に申し上げました海外に旅行する人々がよく泊まり得るようなホテル、そういう宿泊所のリストもつくりまして、例えばいざというときの連絡網の中にそういうものを含めて緊急連絡の対象にするということをやっております。  それからさらに、一般的に申し上げますと、海外に渡航する人たちが非常にふえて、珍しいところに行くということも踏まえまして、海外の渡航情報、これを外務省で、在外公館が集めたものを海外安全相談センターの情報として関係企業の方に流しております。これは官と民の海外邦人安全対策官民協力会議という事務局がファクスのサービスを、受信料は相手側持ちということでやりまして、どこがどの程度危険かということを情報として配っております。  それから、いざというときのためには、先ほどの連絡網で連絡していただいて在外公館の担当官のところに情報が入る、それに応じて援助の手を差し伸べる。それから、珍しいところ、通信手段がないようなところということを踏まえまして、そういう場合には民側の方々に一応無線の装置を預けまして、これはウォーデン・システムと呼んでおりますけれども、そういうように民側の協力も得て、官民一体となって安全情報の交換、いざというときの通信連絡網に使っているということでございます。
  43. 池田行彦

    池田国務大臣 今政府委員から御答弁ありましたけれども、外務省といたしましては、在留邦人の安全のために万全を尽くしてまいります、こう言わざるを得ないわけでございます。そうして、その上に立って、今るる御説明いたしましたような施策を講じようとしているわけでございます。  しかしながら、あえて言わせていただきますと、大前提として、我が国の国内と海外とは基本的に違うということは、海外においでになる国民の皆様方にも御認識いただかなくてはいけない点だと思います。何といいましても、日本の国内でございましたら、国民の生命財産の安全を確保するためにあらゆる法制その他を整備し、それからいろいろな行政機構も整え、やっておるわけでございます。これは国の責任でございます。  しかしながら、海外に行きました場合には、基本的にその地域、その社会の安全を確保するためのいろいろな仕組みなり努力というものは、これはそれぞれの国の責任でやっておるわけでございまして、そういう前提の中で、日本の国の外務省としては、邦人保護の観点からどうするかということはできる、その根底のところは国民にも御理解をいただかなくてはいけない。  それから、さらに申しますならば、最近、日本は随分危ない世の中になった、こう言われてはおりますけれども、もろもろの犯罪発生率その他のあれで見ますと、なお世界で見ましても非常にまれな、安全な、安心して行動のできる国であることは、これは否定できないと思います。しかしながら、最近はもう非常に海外へ行くことが容易になりましたものですから、どこへ行っても日本と同じような安全があるのだというふうな感覚でおいでになる方が少なくはない。やはりそこのところはよく考えていただかなくてはいけないんだと思います。  外務省としてもとよりベストは尽くしますが、その前提が違うということは、海外へおいでになる国民方々にもよく御理解を賜らなくてはいけないと思います。
  44. 東祥三

    ○東委員 例えば三月の十四日に、騒乱が続いていたアルバニアで、日本人が、ボランティアの方々が中心だったと聞いておりますが、プラス記者さんがいらっしゃって、十一人が運よく、ドイツの初めての試みだったと思いますが、域外に出て、そして軍事救出作戦を展開されて、基本的に無事救出された、これは湾岸戦争のときもそうでした。  いろいろなことが起こったときに、それぞれに対してそれなりに対処できる、そういう体制は整いつつある、それはよくわかるのです。ただ、問題は、何らかの騒乱に巻き込まれてしまう、アルバニアにボランティア活動として行かれる方々が、赴任する前に外務省と相談してどういう状況なのか、また今日のその事態を想定した上で行っており、さらにまた緊急避難をしなければならなかったときにはどういう対処をしなければならないかということまでもすべて情報として入れて、そして行ったということであるならば、また話は別なわけですけれども、短絡的に考えればそこまで想定していなかったのじゃないのか。  そういう軍事的なあるいはまた国内の治安の悪化、あるいはそれに基づく騒乱、あるいは政治的な種々のコンフリクトによって日本の人々がそこにい続けることができなくなったときに、日本政府としては基本的には何もすることができないということであるとするならば、そういうことはやはり明確に言っておくべきなんじゃないのか、この点についてはいかがですか。
  45. 池田行彦

    池田国務大臣 今お話の中にちょっと出ました、湾岸戦争の際にどうするかということでいろいろ問題になりました。当時、たまたま私、防衛庁長官をしておりまして、その避難民の救出のために自衛隊機を派遣するといういわゆる特例政令、極めて国会でも評判のよろしくない政令でございましたけれども、そのようなものもつくらせていただきまして、我が国としても、在留の邦人を中心といたしまして他の国の方々であっても避難をされる方に対応しようということをしたわけでございます。  そういったこともございますけれども、一般的に申しますと、ああいった非常に危険な状態になったときにどういうふうに在留邦人方々を安全なところへ避難していただくかという点につきまして、我が国としてまだまだよく考え、対策、施策というものも充実しなくてはいけない、こういうふうに認識しております。  しかしながら、例えば自衛隊を使うということになりますと、これは御承知のとおり、我が国の憲法の枠内でどうか、武力行使と一体化するんじゃないかといった御議論もいろいろあるわけでございますから、そういうところは国会でもいろいろ、これからそういった緊急事態にどう対応するか、政府としても考えますけれども、また御議論いただかなくてはいけないところだと思います。  それからまた、一般的に申しますと、アルバニアの例を申されましたけれども、今回、アルバニアにつきましてはかなり事態が緊張の度を加えてきておりましたから、そういったことはアルバニアへ行こうという方々には、外務省としましても御注意は申し上げておったはずでございます。それから、その間際になりましていよいよ事態が深刻化してまいりました段階では、当然のこととして、アルバニアから早く出国されるようにお勧めもした、こういうこともありますし、また、我が国として直接脱出の手段を準備することはできませんでしたので、他の諸国にいろいろ依頼もし、またそういうところへ連絡をとるように在留しておられる方にもお話を申し上げたところでございます。  しかし、委員も御承知のとおり、最近は世界の各地で、まあ大丈夫だろうと思っておった国が極めて短期間の間に非常に急速に事態が悪化し、避難を必要とするような状態になることが少なくありません。  そういったことで、外務省としても従来以上にそれに対する対応を考えてまいらなくてはいけませんけれども、また同時に、先ほども申しましたが、日本国民方々も、やはり海外での行動というのはそういうものだということを、幾ら日本の政府がやるといいましても、日本の主権が及び、日本の国が全責任を持って国民の安全を守るという、そういう地域とは違うんだ、基本的に違うんだということは、よく御認識を賜りたいと思いますし、それから特に、かなりの危険の予想される状態の中でもあえてその地に行こうと言われる方にはそれだけの、個々人としてもそうでございますが、そういった方を派遣される例えば組織体があるとするならば、そこでも心構えと備え、備えというのは、非常に危険度が高まってきたらいろいろ仕事をしたいという意欲はわかるけれども、早目に出るんだぞとか、そういうことも考えていただきたいなというふうに感ずる次第でございます。
  46. 東祥三

    ○東委員 一般論としては、外務大臣が言われるとおりなんだろうというふうに思うんですね。  ただ残念ながら、本来、国際社会状況について、とりわけ各国でどういう動向があり、ひょっとして不安な状況になるかもしれない、その情報に最も早く接することのできるのは、たとえおくれているといえどもやはり外務省以外、日本の国内においてはないんだろうというふうに僕は思うんですね。  それがまさに、今外務大臣が言われていたことを、にわかに信じる、信じない、そういうこと以前において、つまりペルーの大使館が、そのものがペルーのMRTAというところによって占拠されてしまった、それによってある意味外務大臣が言われていることというのは、そんなことを大臣言われたって、本来そういう危険の問題に関しても、危機管理の問題に関しても最もよく知っている日本外務省方々がいらっしゃる公館がねらわれてしまったじゃないですか。さらにまたペルーという、ああいうセンデロ・ルミノソだとかMRTAだとか、そういうところと戦ってきた国の中で、まさに相手につけ込まれてしまったじゃないですか。今までのやり方そのものを、もう一度やはり本格的に見直さなければいけない大きな問題点を提起しているんじゃないのか。  先ほど機能強化の問題だとか、そういうことでこういうことをやっていますとるる御説明がありましたが、基本的に何かが欠落しているんじゃないのかということが問われているんじゃないか。  まさに、特にラテンアメリカにお勤めになられている人々というのはその国の状況を一番よく知っているはずですし、そして、にもかかわらずこのペルーにおいてこういう事件が起こってしまった。今はその対処に追われていて、僕は大変心中お察ししますというふうに申し上げましたけれども、本質的な何かが多分欠落してしまっているんじゃないのか。  つまり、大臣にとって、例えばMRTAというのをテロリストと判断するのか、ゲリラと判断するのか。いろいろな新聞や報道官の説明を見ていると、犯人グループだとか、一定した視点でもって言っていることがないのですね。多分、私にとってみればあれはテロリストなんですね。テロリストであるとするならば、日本というのは過去に例をいっぱい持っているのですね。一九七四年もそうだし、七五年もそうだし、七七年のあの有名なダッカ・ハイジャック事件がありました。満々たる経験を持っているにもかかわらず、同じことをずっと繰り返している、何なんだということが多分本質的な問題なんだろうというふうに思うのです。  そこで、僕はこれからペルーの人質事件に関連して、テロ対策ということについて御質問させていただきますが、まず外務大臣、MRTAというのはこれはテロリストですか、あるいはゲリラですか、どういうふうに御判断されているのですか。
  47. 池田行彦

    池田国務大臣 テロリズムあるいはテロリストということにつきまして、国際的な条約あるいは国内的な法律に基づいた、きちんとした定義があるわけではないと存じます。しかしながら、一般的に申しますと、政治的な動機に基づく暴力行為、こういうことでよろしいのではないか、こう思うわけでございます。そういった観点から申しますと、現在ペルーで起こっております事件、それを起こしたグループというのはテロリストである、私はこのように認識しております。
  48. 東祥三

    ○東委員 今回のペルー人質事件、公邸占拠事件が起きましてから、日本政府は時間を経て、テロには屈しないというスタンスをとるようになったと思います。テロに屈しないという言葉を日本政府が、一番初めにこの事件が起きたときに、その言葉を使わなかった、あくまでも平和的解決という言葉しか使わなかったというふうに思います。最初の数日は人質の全面解放あるいはまた平和的解放という言葉だけを言っていて、テロという言葉が出てこなかったというふうに僕は認識しますが、もし間違いならば御指摘いただきたいのですが、これは事実に相違しますか。
  49. 池田行彦

    池田国務大臣 委員重々御承知のことでございましょうが、ペルーの事件はまだ現に続いておるわけでございまして、私どもその解決を何とか早期に、しかも人質になっておられる方の全員の無事解放という形を確保したい、今もそれを願い、そしてそのために努力をしている最中でございますので、この問題についてのいろいろな御議論はあろうと思います。  それから、私どもといたしましても、いろいろ反省点はございますけれども、その細部にわたってどうだこうだと言うことは、余り議論することは、現に過程にある解決への努力への影響もあるということをひとつ念頭に置いていただければな、こう考える次第でございます。  さて、テロリズムに屈することなくという点が我が国政府、少し当初の段階では鮮明ではなかったではないかという御指摘かと存じますけれども、御承知のとおり、私どももいろいろな過去の経験も踏まえまして、やはりこういった問題に対応する場合には、テロリストに唯々諾々と譲歩するようなことがあってはいけないんだ、こういう反省のもとに、昭和五十三年だったと思いますけれども、政府としてそういったことを明確に決定したところでございます。また、その後もG7その他いろいろな国際的な場におきましても、テロリズムには屈しないんだということを、我が国も入って何度も確認しているわけでございます。  我々も、今回の事件に対応するに当たりましても、当初からそれはもうもちろん大前提として、しかしあれだけ大勢の方々が人質の状態になっておるわけでございますから、何とか平和的な解決の道を模索していきたい、そして全員の御無事の解放を実現したい、そういうことでやってまいりましたので、当初から基本方針は全く変わっていないところでございます。
  50. 東祥三

    ○東委員 外務大臣のお言葉ですが、私もこういう質問をしている以上、当然何らかの形でMRTAにこの質問が伝わるだろうということを前提にして質問させていただいているということを御理解願いたいというふうに思います。  既に九七年、ことしの一月四日でございますが、現地にエスプレソという新聞がございます。そこでペルー国会議員三人が明確に言っているわけです。これはある意味でテロ対策、テロに対しての基本原則を言っているわけです。何と言っているかというと、まず初めに、ありとあらゆる可能性を追求して、そして人質を安全に救出することが大切だ、しかしもしそれができなかった場合どうすればいいのかといえば、そのときには最終的には国にとって、また国民の誇り、これを最優先させなければならないということを言っているんです。テロに屈してはならない、すごく勇気のある発言だというふうに僕は思います。  私は、さっき申し上げていることは、ただ単にテロに屈しないという言葉が先に出てこなかったからだめだというふうに言っていないんです。事実としてもしそうであるとするならば、それはいいか悪いかというのは、それはまた別の判断が僕は出てくるのだろう。事実としてそういうことがなかった、そこに日本の、また日本政府のテロに対しての物の見方、考え方、原理原則、こういったものがないのではないのかということを指摘しているわけです。ないならばないで結構なんです。あるということであるならば、ではその日本のテロに対する原則は一体何なんですかということを示していただきたい、そういうことです。
  51. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほども申しましたように、テロリストの要求には屈しないということは、我が国の基本的な方針でございます。しかし同時に、人質の全員の無事な解放を何とか実現したい、そういったことを国会議論の場におきましても、それは二律背反ではないかというふうなことをおっしゃった方もありますけれども、非常に難しいことであっても何とかその二つを確保したい、こういうことで努力してまいりました。  今日もう三カ月を経過して、いまだに確実にその道が見えてきていないのはまことに私どもも残念ではございますけれども、しかしながら何とかこれまで最悪の事態は避けながらここまでやってきた。そして、保証人委員会方々のいろいろな努力もあり、ようやくここでペルー政府とそれからMRTAの間の対話も何回か積み上げられてきた。それからまた、今高村政務次官も海外でフジモリ大統領とお会いになり、そしてカストロ大統領と会見され、またさらにドミニカ共和国にきょうは回っておられますけれども、現地におけるペルー政府とMRTAとの間の話がつきますならば、その解決の方策として第三国の協力も得られるというような状況が開けてきておるわけでございます。  そういったことで、我々としては何とか解決への道を見出したいと考えておるわけでございますので、もしそれができなかった場合に一体何をやるべきであるかということを今は議論するべき段階ではない、こう考える次第でございます。
  52. 東祥三

    ○東委員 大臣は個々の問題に今入っているのです。私は、個々の問題に入っているのではなくて、一般論として、原理原則の問題について御質問させていただいているのです。テロ対策というのがあるとするならば、その基本原則というのはありますかと聞いているのです。あるというお言葉なんですけれども、具体的にはその内容について聞いていない。  アメリカでは例えば、もう御案内と思いますけれども、テロに関する年次報告書というのを毎年つくっている。七十五ページぐらいにも及ぶ徹底的なものでございます。そこに対テロ基本政策として、テロに対しての基本原則、三原則というものが書いてある。  一つは、テロリストと全くノーディール、ディールはしないと言っているのです。そして二番目としては、テロリストというのは犯罪者として扱う、そして徹底的にこれをアグレッシブに追及していくということを言っているわけです。さらにまた、彼らを国内の法律にちゃんと適用する。そしてまた第三番目として、テロリストをスポンサーする国々にはちゃんとプレッシャーをかけていきますよ、これが原則だと言っているわけです。  では、そういう原則というのは日本にあるのですか。大臣はあると言っているのですけれども、僕は個々の、今のペルーの公邸人質事件についてどういう展開になるのですかということを言っているのではなくて、テロに対しての基本原則、物の見方、こういうものはちゃんとあるのですかということを聞いているのです。あると言っているのだから、大臣、それは何ですか。
  53. 池田行彦

    池田国務大臣 一般論としての議論だとおっしゃっていますが、委員自身が冒頭においてペルーの事件もありと、こういうことで話を始められました。そして、現にペルーの事件は今続いているわけでございますので、やはり一般論といえどもそれが今の具体的な事件の解決の努力に対して影響を与えるものだということは、我々十分念頭に置かなくてはいけないことだと思います。  それから、テロリズムに対する一般原則ということは、先ほども私も御答弁申し上げましたように、我が国政府としても五十三年のその方針の確定がありますし、その後も、G7その他の国際社会、昨年はテロサミットも開かれました。そういうところでもいろいろ話し合われ、合意がなされておるところでございます。  そういったものを踏まえながら、今回の具体的な事件の解決に当たっては、まずペルー政府が努力しておられますから、我が国としてもそれと連携をとりながらやっておる。それからさらに、国際社会全体も、今行われている解決への努力を支持する、そういった支持するということが、例えばG7においてもあるいはASEMにおいても出されておりますし、国連の安保理の議長の声明としても出されておるわけでございます。  こういったものもすべて、国際社会としてのテロリズムには屈しないという原則を踏まえて、今回の事件に当たっては、今継続されている努力を支持し、それに連帯を表明しているというふうに御理解賜りたいと思います。
  54. 東祥三

    ○東委員 どうも理解してもらえないみたいですけれども。  日本が、例えば一九七七年のあのダッカ・ハイジャック事件があった。レバノンに今日本赤軍の問題、あのときのまさに後遺症として、今ブーメランで戻ってきているのではないですか。テロ対策というのは、日本というのはそういう原理原則がはっきりした形ではないのではないのかという視点で僕は申し上げている。大臣はあると言っているのですけれども。  例えば一九七四年二月、これは在クウェート日本大使館でPFLP、これはパレスチナ解放人民戦線というふうに言うのでしょうか、ある意味では今回のペルー事件と似たような、そういう同質の事件がありました。一九七五年八月には、日本赤軍のテロリストによる在クアラルンプール米国総領事館事件があった。そして一九七七年九月、御案内のとおり、ここに御子息いらっしゃいますけれども一時の福田総理のもとで、日本政府は、日本国内に服役中の赤軍兵士六人を解放してしまって、犯人側に六百万ドルの身代金を払った。今そのブーメランが戻ってきているのですよ。  僕はそれを踏まえた上で、日本のテロ対策というのはちゃんと原則というのはできているのですかということを申し上げているのであって、それに対して大臣は何にも答えてくださっていないというふうに思うのですけれども、いかがですか。
  55. 池田行彦

    池田国務大臣 だから、先ほど御答弁申し上げましたのは、過去にいろいろな経験もあった、そういうものを踏まえながら、我が国としても五十三年に方針を決めておりますと申し上げました。それで、文字どおり今委員が挙げられました幾つかの事件というのは、五十三年の決定以前の問題でございますね。例えば、今おっしゃったクアラルンプールが五十年でございますし、クウェートが四十九年、ダッカが五十二年でございますね。そんなこともいろいろあり、そしてまた、当時G7におきましても、航空機ハイジャックに関する声明というものも出ました。  そういったことも踏まえまして、我が国として、五十二年の八月でございますけれども、ハイジャック等に対する対処方針ということを決定し、法秩序の維持のために、犯人の不法な要求に対しては断固たる姿勢のもとに臨むということを決定しておるわけでございます。  それからその後も、先ほどからいろいろと御答弁申し上げておりますけれども、G7その他のテロに関する国際的な会議の場におきましても、我が国も各国と歩調を合わせましてテロリズムに屈しないという方針を何度も重ねて表明してきている、そういった流れの上で我々は今対応しておるわけでございます。先ほど委員が、かつての日本対応の仕方がブーメランとして帰ってきている、こういうふうなことをおっしゃいましたけれども、我々は過去のそういったいろいろな経験も踏まえ、あるいは反省も踏まえて、今申し上げましたような方針を、基本的なあり方を決め、今それを大切にしながら、しかもなお何とか人質の方々の全員御無事な解放を実現しようと努力しているということでございます。
  56. 東祥三

    ○東委員 質問を変えます。  それでは、過去の経験を踏まえた上で、テロに対しての対策の仕方が変化しているというふうに僕は理解するのですけれども、もし、過去の経験を踏まえて今ちゃんとしているとするならば、過去はどういうものであって、現在はどういうふうになっているのかということを教えていただけますか。
  57. 池田行彦

    池田国務大臣 過去の、先ほど申しました五十二年以前の事件に対する対応につきましては、そのときはそのときで最善の道と思ってそれで対応されたのだと思います、そのときの衝にあった方々が。しかしながら、そういったことの経験を踏まえてどうなのだろうかということで、五十三年に、先ほど来申し上げておりましたような明確な方針を打ち出し、今それにのっとって対応している、こういうことでございます。
  58. 東祥三

    ○東委員 何を言っているのかさっぱりわからないです。過去には原理原則というのはなかった、その場で対応してきた、今は原理原則がある、それに基づいて対応している、こういうことですか。
  59. 池田行彦

    池田国務大臣 我が国だけではなくて、国際社会全体としてもやはりテロリズムに対して対応するのにどういう方針で臨むべきか、いろいろな考え方もあり、またいろいろな経験も積んできたのだと思います。そういった中から、G7等におきましても何度にもわたりいろいろな声明あるいは合意がなされたわけでございまして、それから、我が国としても、先ほど言いましたように五十二年にあのような方針を打ち出しておる、こういうことでございます。
  60. 東祥三

    ○東委員 いろいろな情報というのがあるわけですけれども、僕のところに入ってくる情報というのは、今回ペルー政府が――これはペルーに関して申し上げますが、ペルー政府が間にいてくれて東さん、よかったですねと。ペルーがまさに今回の人質事件に関しての最大の最高の責任者になってくれている、日本に最高の責任者を与えてしまうと、また日本というのは頭を下げてテロリストとディールしてしまうのではないのか、本当にペルー政府が間にあってくれてよかったですね、こういう話がいっぱい来ます。  それに対して、きつい質問ですから何となくお答えづらそうだなというふうに思うのですけれども、僕はまたよくわからないのが、ウルグアイ政府がMRTAメンバーを釈放したことで、これもペルーの人質事件に関連してしまいますけれども、ウルグアイ政府に対して日本政府が批判しました。本来ならば、日本の今までのあり方でいくならば、別にウルグアイ政府に対して日本が批判なんかできるような立場になかったのじゃないのか、首尾一貫した物の見方があるとするならば。そこに批判している。それは日本がずっとやってきたことですね。七四年、七五年、七七年、ある意味でテロリストに屈している国だ。日本人というのは何かねらわれやすい国民だということは流布しているわけですよ。あるいはまた橋本総理がシンガポール、マレーシアに行って、そしてASEAN諸国訪問中に、日本政府はテロに屈しないと言い回ったということも存じ上げております。  しかし、そうじゃないのですね、世界の見る目というのは。だから、口で言っていることとやろうとしていることというのは違うんじゃないのか、そういうふうに思われているということも事実である。そうであるとするならば、改めて、こういうこの大変な時期に、僕はテロに対しての基本原則というものを明確にしておくべきじゃないのか。  大臣が言われていることというのは、前、七四年、七五年、七七年、時の総理、時の大臣が言われていることと基本的には同じですよ。基本原則が新しく変わっているだとか、テロに対して明確に日本政府というのはこういうスタンスで臨むということは、何ら言ってくれていない。その状況状況対応して言っている。この問題が終わってしまえばまた忘れてしまう。それがずっと日本一つの伝統として続いてきているのじゃないですかということを言いたいがために、あえて私はこの問題をここで取り上げさせていただいているということです。コメントがあればどうぞ。
  61. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど来、何度も繰り返し申し上げているつもりでございますけれども、我が国だけじゃなくていろいろな国が、また国際社会全体としても、こういったテロリスト、テロリズムにどうやって対応するか、随分苦労をし、いろいろな経験もし、また勉強もしてきたのだと思います。  そういった中から、テロリズムに屈してはいけないのだ、そういうことがあっては、それがまた新たなるテロリズムを生む要因にもなり得るのだ。こんなこともあり、国際社会全体として、ずっとそういった長年の経験を踏まえて、テロリズムには屈してはいけないのだ、それで断固たる姿勢で臨まなくてはいけないのだという流れがずっと出てきたのだと思います。  そして、我が国もそういった中で、いろいろなことはございましたけれども、五十三年八月に、先ほど言いましたように、明確にそういったことを政府の方針として打ち出して、今日までそれをずっと堅持してきている。今回の事件に対応するに当たっても、その原則の上に立って我々は対応しておる、こういうことを申し上げているわけでございます。  しかし、それをしも、おまえは明確に答えていないと。そうしてやはり日本はまた、かっていろいろな苦労の中でそのときはよかれと思ってやった。それが今日の目から見て、海外のメディアが、テロリズムに断固たる姿勢で臨まなかったじゃないか、そんなことがあるからまた日本は同じようなことをやるのじゃないかとおっしゃいましたが、委員自身もそういうことをいろいろおっしゃっているわけでございます。我々は、そういうことじゃない、これはきちんとした姿勢で対応しているということを申し上げているのでございますから、それを信じないとおっしゃるのならば、それはやむを得ませんけれども、我々はそういう姿勢で今事件の解決のために最善を尽くしておる、こういうことでございます。
  62. 東祥三

    ○東委員 では、ペルー人質事件に関連して質問いたしますが、今回の日本における最高責任者というのはだれですか。
  63. 池田行彦

    池田国務大臣 これは当然のことといたしまして、外務省におきましては、私が大臣を今務めておりますので、私のもとで全省一致してこれに対応しておるわけでございますし、また政府といたしましても、全力をもって政府全体としてもこの問題を大切に、大変重要な問題だ、こう考え、今対応しているところでございます。
  64. 東祥三

    ○東委員 本当にそうですか。橋本総理日本にいるときには多分橋本総理が最高責任者であるのでしょう。ペルー側ではフジモリ大統領、だれが見たとしてもフジモリ大統領だというのが明確です。  ところが、橋本総理日本にいないときに、副総理というのを輪番制で何か回してみているみたいですけれども、外務大臣がこの四人の中には入っていないじゃないですか。ということは、この問題に対しての最高責任者で、もし橋本総理がいらっしゃらないときに、外務大臣が最高責任者にはなり得ないじゃないですか。
  65. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもといたしましては、この問題につきましては、まず外務省が第一義的にはその責任を持って対応しなくてはいけない、こう考えております。  しかしながら、この事件の持つ、事柄の持つ重大性から考えまして、政府全体としてもこれを重視し、これのこれからの解決に最大の努力を払っておるところでございまして、総理自身が今政府としての対策本部の本部長でもあり、常にこの事件の解決のために御努力なさっている次第でございます。今、総理がたまたま海外へ出られるときの臨時代理とのかかわりで御質問がございましたけれども、その臨時代理というのは、これは国政全般にわたっての臨時代理をどうするかということの観点から決められておるわけでございます。  最近のことでございますから、いろいろな通信手段もございますし、総理が海外に行かれたときも、もしペルー関係で、総理自身の御判断を仰がなくてはいけない、そうしてまた総理自身に何らかのアクションをとっていただかなくてはいけないということに備えまして、いつでもそういうことに対処できるような準備はいたしまして、総理にも、例えば先般のASEANにもおいでいただいたわけでございます。
  66. 東祥三

    ○東委員 例えば、二月一日のトロント会談には、外務大臣は行かれませんでしたね。外交政策の最高責任者になるはずの外務大臣がこういう場に参加しないというのは、私にはおかしいというふうに思われます。総理大臣が行く、そして外務大臣が行かない。今までの慣例でいくならば、一緒に行くということは余りないのかもわかりません。しかし、ある意味で、日本にとって極めて最重要のトッププライオリティーの課題であるとするならば、そこに行って議論してもおかしくないはずじゃないのか。そのときに外務大臣日本にいらっしゃる。  例えば、フジモリ大統領がアメリカを訪問中に、クリントン大統領だけではなくて副大統領、さらにまた国務長官、国家安全保障担当が参加して、この問題について議論しているわけですね。アメリカがこの問題を大変重視しているということも、そういう一つ会談の形式、内容を見てもわかるわけです。  今私が申し上げたとおり、この問題に関しての第一義的な最高責任者というのはフジモリ大統領だと思いますが、それをある意味ではバックアップするのが日本政府であるとするならば、日本政府における最高責任者は橋本総理じゃないのか。  橋本総理日本にいないときにはその最高責任者は一体だれになるのかといったときに、残念ながら外務大臣は一切指名されていない。あくまでもスタッフとしてそこで掲示をされているとするならば、それはそれでいいわけですけれども、現実には、何かその期間に問題が起こったときに、外務大臣が最高責任者として発揮できるような状況になっていない。それも輪番制で、あるときは三塚大蔵大臣、あるときは藤本農相というような形になってしまっているのじゃないのか、一貫性に欠けてしまうのじゃないのか。  さらにまた、これは質問させていただきますが、例えばメキシコの大統領が訪日するというその前段階において、保証人のメンバーであります現地の、日本のまさに責任者であります寺田顧問がメキシコにお帰りになったときに、ペルーにおける寺田顧問にかわり得る最高責任者というのを御指名になっていたのですか。いかがですか。
  67. 池田行彦

    池田国務大臣 実質的に、この問題をきちんとやっていくために、どういうふうにやっていくか、それを形の上でどうするかというのは、いろいろな考え方があり得るのだと思います。もとより、例えばトロントの会議のときの出席、私が総理のお供をしなかったことについていろいろございましたけれども、しかしながら、実質的には十分その御相談をしながら、それからまた、この問題についても、東京においてもいろいろ対応しなくてはいけないこともある。あるいは外交という観点からいいますと、ほかにもいろいろある。そういうことで、連絡、連携は常にとれるようにしておる、こういうことでやっておるわけでございます。  それから、米国についてのいろいろなお話がございましたが、それはやはりいろいろな問題に対応する場合のそれぞれの国でのやり方というものはあるのだというふうに思います。  それから、寺田顧問がメキシコに一時帰任されました。その点につきましては、御承知のとおり、今寺田顧問はいわゆる保証人委員会のオブザーバーの立場で、大変大きな役割を果たしていただいておるわけでございますが、しかし、そういったことと、メキシコの大統領がその後訪日される、メキシコ大使としてのお立場の仕事もあります。その辺は十分両方の状況を見ながら、あのような対応をしていただいたわけでございます。  それから、当然のことでございますが、ペルー、リマにおける我が国の体制といたしましては、現在、中南米局長長期に出張しておりまして、それを本部長といたしまして現地の対策本部をつくっておるところでございます。
  68. 東祥三

    ○東委員 どうも余り話がかみ合わなくてフラストレーションがたまってしまうのですが、基本的に僕が申し上げたかったことは、彩って大切なんですね、目に見える形というのは。ペルー側から見るならば、ペルーにおける状況を見れば、フジモリ大統領が陣頭指揮をとってこの問題に対して最高責任者としてありとあらゆる活動をしているというのは、一本の筋としてちゃんと見えできます。  ところが、日本の場合を見ますと、個々のそういう問題をついていくと、橋本総理大臣がいないときに、だれが何かあったときにこの問題の責任をちゃんととってくれるのだろうか、そこにちゃんと情報が伝わっていくのだろうか、そういうこともよく見えない。外務大臣は当然外交政策の、外交問題の重要な問題だからということで、何か起こったときにはそれは責任をとられるのかどうかわかりませんけれども、そういう形として、目に見えない形としてあるかわかりませんけれども、一本の筋が通っていない。  だから、そういうことが大切な時代に今入りつつあるのじゃないですか。そういうことを具体的にあらわすとするならば、過去にこれほどテロリストに、ある意味で、僕なんかのイメージですけれども、日本人ほどねらいやすい国民はいないのではないのか、そういうふうに思えてならないのですけれども、そのイメージを払拭できる基本的な、明確な原理原則、物の見方、考え方、また国際社会に通用して、日本というのは、もう七四年、七五年、七七年、いろいろな経験をしてきていますけれども、変わっているのですよ、そういうイメージは、何ら外務大臣のお話からは伝わってこない。  残念でなりませんけれども、時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。
  69. 逢沢一郎

    逢沢委員長 次に、青木宏之君。
  70. 青木宏之

    ○青木委員 今までの質問者と若干項目的に、あるいは内容的に重複する箇所もあるかと思いますが、私の立場でいろいろとお尋ねをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。  今の東議員の御質問ですけれども、大変日本にとって重要な、これからの大きな課題であろうというふうにも思います。たまたまといいますか、政府の方でも、この危機管理のシステムといいますか、新しい構想を考えておみえのようでありますが、早く何らかのこういう危機管理体制というものがきちっと、今東議員が言われましたように目に見える形、そういったものがつくられるということを望むわけであります。  いろいろお聞きしたいわけでありますけれども、在外公館にそれぞれ職員がおみえになるわけですけれども、国内の場合は、警察そして自衛隊等々実力部隊が数多くあるわけでありますけれども、海外では、もとよりそういうことは基本的にはその国の警備等々に依拠する、最終的には、ということになるわけでありますけれども、在外公館在外公館としてやはり警備体制、いま一度見直さなければという、今多分そういう空気になっておられることと思います。  そこで、ペルーのこういう事件もたまたま今進行中でありますけれども、今後、この在外公館におきます。そういう警備体制あるいは保安というものの見直し等々は、どのように現在お考えになってみえますか。お聞かせをいただきたいと思います。
  71. 原口幸市

    原口政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、在外公館の安全の確保は、基本的にはウィーン条約に定めるとおり、第一義的には接受国の責務であるというふうに認識しておりますけれども、各種脅威から我が国在外公館と館員の安全を守るために、外務省といたしましても、接受国治安当局等と連携をとりつつ、自助努力によりなし得る限りの在外公館警備対策上の強化措置を講じているところでございます。  また、今回の在ペルー大使公邸占拠事件を踏まえまして、緊急的措置として、脅威度の高い地に所在する公館に対してエックス線の爆弾探知機あるいはゲート式の金属探知機等を本年度中に配備する等の物的措置を講ずるとともに、警備要員の拡充等、人的警備体制の強化につきましても、平成九年度予算で早急に手当てしたいと希望しているところでございます。  なお、今回の事件を含めまして、大変深刻な国際テロ事件が国境を越えて相次いでおりますので、私どもとしても今般、外務省の中に委員会を設置いたしまして、現在の在外公館警備体制について全般的に、かつできるだけ早く見直しを行い、警備体制の一層の強化を図っていきたいと考えておりまして、委員会の結論を二、三カ月のうちに得て、それに基づいて具体的な対応をさらに検討してまいりたい、このように考えております。
  72. 青木宏之

    ○青木委員 そうしますと、今年度予算でもろもろそういうものは全部手当てができるということでしょうか。
  73. 原口幸市

    原口政府委員 今年度予算におきましても一部資機材等の手当てをいたしておりますし、また予備費、二十億円をちょっと超えますけれども、これで先ほどちょっとお話しいたしました金属探知機あるいは爆弾探知装置あるいは携帯電話等、警備強化に資する機材の購入、さらには脅威度の特に高い公館の外壁の補強といったような措置を講じているところでございます。
  74. 青木宏之

    ○青木委員 今年度は今年度としてですけれども、なお今後、人的な問題も含めまして、なおやはり相当この機会に充実をしていただかなければならないと思います。  そこで、そういう施設的な、装備的なものも当然でありますけれども、人的な面で、人的のその中身の問題ですが、こういう危機管理的な対応のレクチャーとかあるいは訓練というものは、現在まで在外公館勤務されてみえる方も、これから当然勤務されるであろうという方に対してのそういうレクチャー、訓練等はなされているのでしょうか。
  75. 原口幸市

    原口政府委員 私どももその重要性は認識しておりまして、例えばビデオをつくりまして在外公館に送って認識を高めるような努力をさせておりますし、また、危機に対応するためのマニュアルというものを作成して在外公館に配備しております。それで十分かということになりますと、私ども、必ずしも自信がございません。今回の事件の教訓も踏まえまして、さらにこうした措置の充実を図ってまいりたいと思っております。
  76. 青木宏之

    ○青木委員 やはり起こらない、予防というのが大事ですし、起こった場合にそれに反撃、対応するということも大事でありますし、現在のようなああいう異常な事態が起こったときには、結局そこに人質になっている立場としての行動とかあるいは考え方等々、その人の頭の中の問題というのが非常に大事であろう。精神的な問題も起こってきますから、やはりそういう点は日々の訓練で相当頭の中にたたき込まれていないと対応が即座には難しいということから、今のお話でそこそこやっておみえのようですけれども、これは在外公館のことばかりでなくして、本当に今叫ばれております日本国じゅうの危機管理意識という問題とも、あるいは危機管理体制という問題とも絡むことでありますから、外務省当局としてもこの問題は相当力を入れて対処をしていただきたいと思います。  細かい点で幾つかお尋ねをしたいと思うのですけれども、ちょっと幼稚な質問になるかもしれません。今ペルーでは占拠されておるわけですが、このペルーにおける公館の任務というのはどこで今行われているわけでしょうか。
  77. 川島裕

    ○川島政府委員 大使館自体もございますし、それから非常に大きな部分は現地対策本部というものを別途開いてやっておる次第でございます。
  78. 青木宏之

    ○青木委員 ちゃんと正常に公館としての機能はされているわけでしょうか。
  79. 原口幸市

    原口政府委員 こういう事件がなくて我が方のリマにあります大使館がそのままあったとすればもっと円滑に物事が動いていたかもしれませんが、現下の情勢において許容される範囲内で、私どもとしては最善の努力を尽くしてきているつもりでございまして、例えば最近におきましても、ペルーに対する経済協力の実施のための署名なども滞りなく行われているという状況でございます。
  80. 青木宏之

    ○青木委員 これらお尋ねしておりますのは、先ごろ機会がありまして、例えば外務省オペレーションルームを見させていただきましたときにも感じましたし、あるいはいろいろお話をお伺いしておりまして当然だろうなと思うのでありますけれども、こういう突発的な事態が起こりますと、これは相当に、お金もそうですけれども、人のやりくりが大変だ。これもマスコミ報道でも出ておりますけれども、本来この危機管理というものは、こういう緊急時、常時あるわけではありませんので、本来ないことが望ましいわけですけれども、起こったときに、もちろん即応そして的確に対応するというものでありますから、通常業務の考え方で金なり人なりを配置しておるだけではこういうときにきちっと対応ができ得ないという意味で、この危機管理というものは、起こってはならないが、起こったときに通常業務にできるだけ支障を来さないようにできる体制というものが緊急的な危機管理体制ということになるわけであります。  外務省のことだからとりあえずは外務省の人をあちこちからやりくりしてということなんでしょうが、これはなかなか簡単にはできないかもしれません。やはり先ほど申し上げましたように、国内の場合はそこそこ対応できる人もあるわけですけれども、海外の場合は非常に難しい面があるわけですから、そういったときにきちっと対応できるような、これは国全体として、先ほどの政府としての危機管理システムの構築ということもそうですけれども、外務省としては在外を特に見るということからして、外務省の中にもこういったような一種の危機管理システム、体制というものが望ましいのではなかろうか。  今後これは政府の方で具体的に検討されていくことと思いますけれども、そういった点については政府の中に統一的なものがあればいいか、外務省外務省としてそういったものが整備されるのが望ましいということなのか、そのあたりは大臣、お考えはいかがでしょうか。
  81. 池田行彦

    池田国務大臣 危機管理と申しましても、危機の態様はさまざまでございます。また、海外において起こる危機というものもいろいろなものが考えられるわけでございます。  今回のペルーで起きました事件というのは、そういったことからいいますと、外務省としてどう対応するかと考える場合に、ちょっと一般的なケースではないと思うのでございます。  一般的に、海外で起きた危機的状態に政府としてあるいは外務省としてどういうふうに対応するかということを考えます場合には、在外の邦人であるとか活動しておられる企業、そういった方々が危機状態あるいは緊急事態でいろいろ困難に遭遇される、それに対して政府としてどういうふうな対策を講じようか、外務省としてどういう役割を果たそうか、これがまず考えるべき話だと思うのでございます。  しかし今回は、そういった役割に当たるべき外務省の活動の拠点である大使公邸、外交施設がテロリストのターゲットになってしまった。そして、さらに大勢の方々が人質の状態になってしまったということでございますので、ちょっとこれは一般論ではいかないのだと思います。  今回はそういうケースでございますので、すぐれて外務省が中心になって対応しなくてはいかぬわけでございます。しかし、これに対処するためには、今いろいろ関係の省庁の方々のお力も現におかりしておるわけでございますので、一概には申せませんけれども、一般的に、先ほど申しましたような我が国国民あるいは企業の在外における活動が緊急の事態に巻き込まれたときにどうするかということにつきましては、まずは外務省として、いろいろな情報なりあるいはそういった危機の状態を脱却するための手法についていろいろお手伝いするという体制を整えておくということかと思います。  また、委員がお話しの中で、そのために特別の組織とまではおっしゃいませんでしたけれども、仕組みと申しましょうか、場合によっては人員というものも常日ごろから備えておくべきではないかという御論旨のようにも受け取れましたけれども、そういった点につきましては、やはり特殊な事態でございますので、平素からそういったことが起きた場合にどうするかという対応ぶりについていろいろ研究をし、そしていざとなったら体制をすぐに立ち上げていくということは考えなくてはいけませんけれども、常にそれに先端する組織なり陣容を張りつけておくというのは、必ずしもとるべき道なのかどうなのか、よく検討してみなくてはいけない、こう考えております。
  82. 青木宏之

    ○青木委員 例えば、例えばといいますか、自衛隊は戦後五十二年たっていますが、災害派遣あるいはPKO派遣はありますけれども、戦闘行為はまだ一回もやっていないわけです。なのに毎年毎年膨大な金をかけて人を雇っているわけですからね。だから、先ほど来出ておるテロ対策というようなことからしても、これは今後の検討課題になろうかと思いますけれども、自衛隊の一部活用とかあるいは自衛隊にそういう任務を一部与えるとか、あれだけの人数、専門家を雇っているわけですから、何かやはり国全体の危機管理に、恐らく今後その辺が焦点になってくると思うのですけれども、そのあたりの人の活用というものも今後検討をしていただかなければならない問題ではないか。この点につきましては、またの機会にしたいと思います。  そこで、私が基本的な問題として申し上げたい、そしてお答えもいただきたいと思いますのは、先ほどの東議員の御質問にもあったのですけれども、そのときの大臣の答弁はちょっと、何といいますか消化不良といいますか、納得できない部分があります。多分に遠慮ということもあるのでしょうが。外務省の人とか金ですね、予算、これは外務省だけがもっともっとというわけにはいかないというような御答弁もありましたし、それから、どれぐらいが理想といいますか望ましいかと、人の問題でありましたけれども、数字はちょっと控えたいというお答えがございましたが、もちろん細かい数字はなかなか難しいかもしれませんが、現実に外交展開をしておりますと、何でもそうですけれども、ああ、もう少し人があったらな、お金があったらなという思いは現実の活動でやればやるほど出てくるものだと思うのですね。  それで、今までから比較すれば、徐々に、いわゆるG7諸国と肩を並べるところまで職員数もふえてきておるというようなことで、やや満足的なお話、御答弁もございましたが、私に言わせれば、もっと欲を出してこれは主張をしていただかなければならないと思います。  いただいた資料を見ましても、先ほどもお話がちょっと出ておりました、これは人数で大臣から御答弁がありましたが、日本は、カナダ、イタリアあたりと肩を並べるところまで人数的には来た。ところが、一概には言えないかもしれませんが、私は、これは人口が違う、規模が違うわけですから、人口当たりでちょっと計算をしていただいたのですけれども、そうしますと、日本は同じ五千人規模でありましても、国民一万人当たりで〇・四人なんですね。それで大体同じ規模のカナダが一・八七人、もう四倍から五倍ですね。それからイタリアが〇・九三、これは倍以上なんですね。  そういうようなことで、数的には五千あるいは五千数百と言っておりましても、国民人口当たりからすれば、日本は圧倒的に職員が少ないということですね。一万人当たりの数で一概には言えませんけれども、しかしそういう意味では、やはり外交の充実という観点から見ますと、どうしてもこれは人、金というものが伴うと私は思うのですね。人が少なくて、金が少なくて、いい外交ができれば大変結構ですけれども、やはり現実問題としては、いい外交、充実した外交を展開するには人、金というものが伴ってくる。  そういう意味では、日本は過去に比べては確かに充実はしてきていると言えるかもしれませんが、そういうG7、先進諸国と比べてみましても、人という点でも相当劣後にあるという感じがするわけでありますから、ぜひひとつ、御遠慮もあられたことと思いますけれども、それから、これから行政改革あるいは地方分権ということで、国政全般いろいろ見直しがどんどんされていくと思いますけれども、これは結局、いわゆるだんだんスリムになっていく、日本政府関係がスリムになっていくということで一律、もう既に報道もされておりますけれども、来年度からはもう聖域なしで、予算もマイナスシーリングでいくというようなお話も出ておりますし、当然人もそういうことになってくる。  ところが、やはりそれだけに、スリム化して、そしてまた地方分権されていけばいくほど、国政における外交という問題めシェアといいますか、この部分はもう相当肥大する、大きくなるべきだというふうに思いますとき、やはり人も数も、ただ行革だといってこれは減らせばいいという問題ではむしろない、逆にもっと外交の分野においては充実をさせていくべきだ、こういうふうに私は考えておるわけでありまして、ぜひひとつ外務当局としても、あるいは大臣としても、そういう立場で今後御努力をいただきたいと思いますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  83. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもも当然、今の定員あるいは陣容で現在日本外交に求められている役割を十分に果たし得るとは考えておりません。G7の他の国に肩を並べるという表現をなさいましたけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、決して肩を並べてはおりません。  定員数で見ますと、我が国を除いて最も少ない数でございますカナダ、イタリアあたりが五千三百人前後であって、我が国は今五千五人、まだまだ後ろから追いかけているという状態でございます。そういっだことで、これからも何とか御理解をちょうだいしながら定員の増をお認めいただきたい、こういう思いは本当に大変大きなものがあるわけでございます。  しかし、それを例えば、具体的な数を挙げては申しませんと御答弁申し上げましたのは、こんなことがございました。かつて、例えば千人ふやしたいとか、あるいはせめてイタリアあるいはカナダ並みにというような、そういった一応の目安をつくっていろいろお願いしていた時代があるわけでございます。現在でも、いや、事業量から見れば倍増してもいいという計算もできないわけじゃないじゃないかという御主張もございます。いや、部内にもございます。そしてまた、今度はせめてドイツ並みに七千とかそういった水準を目指したいという声もございます。それもそれぞれ理由のないことではないわけでございますが、しかしながら、全体として今行政のスリム化が求められている時代でございます。これは我々も無視するわけにはいかない。  行政全体としましても、先ほど委員、例えば国民一万人当たりでということを言われましたが、それで見ますと、我が国公務員、とりわけ国家公務員の数は非常に少ない数値になっていると私は理解しております。  そういった中でも、なおかつ国家公務員の数も抑制しろ、こういう風潮の中で、外務公務員についてだけはこれは別枠としてどんどんふやせというわけにもいかぬ。だから、そこのところは、そういった流れをよく認識しながら、しかし、この外交重要性について御理解を賜るようにお願いして、着実に陣容の充実を図ってまいりたい、こう考えている次第でございます。
  84. 青木宏之

    ○青木委員 時間が来たようでありますけれども、申しわけない、あと一点だけ。  そういう考えを私は持っておりますので、そういうことでぜひ御努力をいただきたいと思いますが、在外職員と本省職員の関係なのですけれども、先ほども少しお話出ましたが、これは見てみますと、どうもアングロサクソン系と他のところとはっきり違いが出ておる。イギリス、アメリカ、カナダは本省が圧倒的に多い。あとのところ、フランス、ドイツ、イタリア、日本は在外が多いのですね。これは何か特別な理由があるのか。そして、日本としてはこういう今の本省、在外の配分での全体的な充実があればと言われるのか、なお本省の方がもっともっと必要なんだというふうに思われるのか、その辺を最後にお聞かせをいただきたいと思います。
  85. 池田行彦

    池田国務大臣 いかなる理由でこのような構成になっているかについては、必ずしも明確な答えがあるわけじゃないと思いますけれども、今たまたま委員、アングロサクソン系はと言われましたけれども、そういった観点からいうと、例えば今国際的に一番よく通用するのは、アングロサクソン系の言語である英語であるという点が一つはあるのかなと思います。それは外交官として働く人間がどうこうというだけじゃなくて、その国の方々がいろいろ活動される場合にも、言葉を中心として歴史的な経緯もあり、非常に国際的な活動にいわばなれておられる、そういった外務省あるいは外交部門からのサポートを余り必要としないという面が一つはあるかもしれないと思いますね。それからまた、外交の陣容自体の中でも、言語にかかわる人間が少なくて済むという要因もあろうかと思います。  いろいろな要因があるのだと思いますけれども、我が国の場合には、今大体在外六、それから本省四の割合でおりますけれども、どちらもまだまだニーズはあるわけでございますけれども、極力効率的な運用を図りまして、できることならば、これだけ国民の海外での諸活動もふえてきておるわけでございますし、日本としての役割も果たさなくてはいけませんので、やはり今のように在外に若干ウエートを置いた形で続けるのかな、こう考えている次第でございます。
  86. 青木宏之

    ○青木委員 いよいよ外交が、これから特に国際化の中で、本当に日本国政の中で重要性を増してくるという考えを持っておりますし、そしてぜひその方向で御努力をいただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  87. 逢沢一郎

    逢沢委員長 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ――――◇―――――     午後零時五十分開議
  88. 逢沢一郎

    逢沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玄葉光一郎君。
  89. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。よろしくお願いいたします。  本日は、付託法案として在外公館名称位置法改正案ということでありますけれども、理事会におきまして一般質疑でもいいということでありましたから、お許しをいただいて、ODAの問題と、沖縄基地問題、特に海兵隊の問題について御質問をさせていただきたいと思いますので、外務大臣、よろしくお願いをいたします。  まずODAの問題であります。  これは総選挙が終わってからまだ一度も取り上げられていないということもありましたから、あえて取り上げたいという思いもあるのでありますが、私は、先日の月曜日の中東開銀の質問のときに、ODAを含めて日本援助全般について、財政赤字の状況もあって国民の視線が厳しくなってきましたというお話をさせていただきましたが、その後、総理府の世論調査を拝読いたしました。そうしたらば、やはり同じような傾向が、つまり、経済協力に関する世論調査に対して、国民の視線が厳しくなってきたという傾向が数字でも出ているようでありました。  私は、今後の国際社会にあって、各国がそれぞれの得意分野で国際的な公共財を提供し合うということが望ましい形ではないかというふうに思っておりますし、その意味においては、日本の得意分野というのはやはり何だかんだいって技術力と経済力ですから、ODAというのはやはり大切だ。また同時に、この国の今後のあるべき姿としては、基本的には、私の個人の考え方でありますが、軽武装、経済国家ということになるのではないかというふうに考えておりますから、これまでのODA重視の政策というのは私は理解をできるものでありますし、今後もPKOなどとセットで重要な外交の柱ではないかというふうに認識をしております。  さらに、リップサービスではないですが、一言だけつけ加えさせていただければ、これまでの外務省ODA政策についても私は一定の評価をするものでございます。しかし、だからといって、日本ODAをこれまでどおり国際貢献の必要性を強調してただ量的にふやせばいいというものではもちろんないのだろうというふうに思います。  ODAは、八〇年代の財政再建の過程では例外扱いをされたという実績があると思いますが、現在の事態においては、橋本総理も、ODAも聖域ではないというようなことをはっきりおっしゃっておられます。だとすれば、限られた予算をいかに効率よく効果的に使うかが問われるべき大切なテーマの一つとなってくるのだというふうに考えます。今重要なことは、ODAに対する逆風を、ある意味では逆風を活用してこれまでのODA政策の問題点というのを洗い出して、それを改善していくということなんだろう、そして、そのことによって、最初申し上げたことと関連しますが、真に国民に支持されるODAにしていくということなんだろうというふうに思います。  まず総論的な話でありますが、外務大臣は、これまでの日本ODA政策をどう評価され、そして、ODAについても歳出削減が叫ばれる昨今、それに対してどのように対応をされるおつもりか。また、行革の観点から、ODAを改革、改善していく必要があると思いますけれども、その点についてはいかがお考えか、お伺いをさせていただきます。
  90. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、これまでの我が国ODAあり方というものをどう評価するかという点でございますが、私は、やはり日本国際社会でいろいろ活動していく上においてODAというのは非常に大きな外交手段の一つであったし、その役割をよく果たしてきたと思います。それは二つの意味があります。  一つは、今委員もおっしゃいました国際貢献。国際社会我が国が一体何を果たしていくかといった場合、それぞれの得意わざでやるべきだというお話がございました。そういった観点からいいまして、いろいろありますけれども、我が国はやはりこういった経済協力、それは資金協力だけではなくて技術協力も含めてでございますが、そういったものを拡充してまいりましたし、そのことが、例えば今アジアの諸国一つまた一つというふうにテークオフを果たしまして、そして今二十一世紀へ向かって世界経済成長の先端とも言われているようになりましたけれども、これにはその国々方々の御努力が一番ではございますけれども、我が国ODA、その量と同時に手法、取り組み方というものも、よってもって力があったんだ、かように考えております。そういった意味で私は評価しているところでございます。  それから、もう一つの面といいますのは、我が国自身の立場から申しましても、利害から申しましても、それは早い段階におきましては、例えばタイミングでございましたから、我が国のいろいろ輸出なりなんなりに結びついた、そういった非常に狭い意味での利害と結びついた点もございますが、それでなくてもやはり我が国はこういった資源の乏しい国でもございますし、どうしても国際経済全体が発展する中で自分たちも伸びていく、そういうやり方しかないわけでございます。現在でもそうでございますが、そういった意味では、やはり開発途上国が発展していって、それがまた世界全体にも大きなマーケットをつくっていく、そういった意味で、国際経済の網の目の中で生きている日本にとっても大きな役割を果たしたんだ、こう考える次第でございまして、私は、そういった両方の意味ODAは非常によかったな、こう思っております。  しかしながら、これからもそうですかと言われますと、いろいろな見方がある。今国民の皆様方の中にも、これだけ財政が窮乏した時期でもある、そして、国民の皆様方にもいろいろまた御負担もお願いしなくてはいけない、あるいはこれまであったサービスも我慢してもらわなくてはいけないと言われるときに、ODAはどうなのかという御意見があるのもよく承知しております。  しかしながら、私どもは、それじゃそんなに大きく、言われるようにODA我が国は出しておるのかということも考えなくてはいけないと思うのです。確かに、冷戦が終わりましてから先進各国にODAファティーグという、疲れという現象が見られる中で我が国はまだ着実に伸ばしてまいりましたから、今絶対額でいえばトップになっております。  しかし、国際社会のためにどの程度貢献したかという観点から申しますと、GNP比、つまり自分たちが稼ぎ出したものの中からどれだけを国際社会のために拠出しているか、そういう観点から見るべきだと思いますね。それでいいますと、たしか私の記憶では、九五年のDACの統計でございますが、日本は〇・二八だと思いました。そういった中で、フランスはたしか〇・五四か五五、カナダは〇・四五ぐらいでございますね。そして、イギリス、ドイツ、そしてイタリーも我が国よりもわずかではございますが、GNP比は上であったと思います。アメリカはたしか〇・一ぐらいでございますが、そういった意味では、やはり持てる力との比較において、ODA世界に限定しても、そんなに国際社会に随分貢献していますよと胸を張れる状態にはなっていない、量の面でも。  それから、質の面で申しますと、各国は無償援助が中心になっておるのに比しまして、我が国の場合は円借款というものが大きなウエートを占めているということもございまして、いわゆる贈与比率であるとかグラントエレメントという観点からいいますと、DACの今二十近くなった国の中でも、いわゆる援助の質の面ではまだ努力すべきところが一番多いじゃないかと言われているのは、御承知のとおりでございます。そういうふうに、必ずしも十分にやっていない。  それから、先ほどアメリカが非常に比率が低いと申しましたけれども、しかしアメリカの場合は、ほかの面で随分国際社会に貢献しているんだと思いますね。それは、かつての冷戦時代とは違いますが、例えば今、世界の平和あるいは安全保障の面で、やはりアメリカというのは随分役割を果たしているんだと思います。そういった意味では、国際公共財の非常に重要な一つである世界の安全保障のための貢献は随分している。そういったものを勘案しなくてはいけない。それから、経済の分野で考えましても、例えばアメリカのマーケットは非常に大きゅうございますし、最近いろいろ勝手な法律をつくって規制をするとは言われますけれども、全体として見るならば、やはり世界で最も開かれたマーケットであり、開発途上国に対しても大きなマーケットアクセスを認めているんだと思いますね。そういった意味での貢献もある、そんなことも全部勘案しなくてはいかぬ。  そういうことを考えますと、私どもはまだ決して、今の日本ODAがいかにも過大であるとか、少し世界のためとは言いながらやり過ぎであるというにはまだまだ早いのではないのかな、こういうふうな認識を持っております。  しかし一方、国民の皆様が、日本経済社会もこういった大きな改革を必要とする、そしてその中で財政もという中で、ODAあり方もよく考えるべきだとおっしゃるのもよくわかります。  橋本内閣といたしましても、財政再建のために全く聖域なく全部見直していこうという方針で今臨んでいるところでございまして、私どももそのような気持ちでおります。そのときに、やはりODAにつきましても抑制しなくてはいけない。もう既にかなり抑制されております。  八年度の予算もそうでございましたが、今、国会で御審議いただいております九年度の予算では、二・一%という過去で最も低い伸び率になっております。円のレートが昨年からことしにかけてどうなっているかということをお考えいただければ、これが実質においてはもっともっと厳しい実態になっているというのは御理解いただけると思います。  そういった意味では、既に聖域ではなくなっておると思いますし、これからもそうならざるを得ない。そのときに我々は、やはりいろいろ創意工夫を凝らしまして、むだを省き、効率的なODA予算の執行に努めていくと同時に、またそのほかのいろいろな工夫もしなくてはいけないと思います。  例えば、開発途上国の中でも、次第に経済発展をしてきて、かなり近い時期にいわゆるODA世界から卒業できるという見込みの立っているところには、だんだんとODA以外の面でのお手伝いという方向へ切りかえていく。  これは直接投資なんということもございましょうし、それから、大幅な規制緩和を進めていくことによって、日本の市場をもっと開発途上国の産品も含めて開かれたものにしていくとか、あるいは資金の流れについても、例えば東京の金融あるいは資本市場の一層の効率化を図りまして、そういったところから開発途上国のいろいろな資金ニーズに応じていくということも可能でございましょう。  いろいろな工夫をしながら、我が国として、国際経済のため、また開発途上国に対する役割も果たしながら、なおODA予算そのものについては他の経費と同じように節減を図っていくということは考えなくてはいかぬ、こう考えている次第でございます。
  91. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 ありがとうございました。  おっしゃるとおりだと思いますが、今まさに求められているのは、中身を濃くする、限られた予算で、その中でいかに効率よく使うか、先ほど大臣もむだを省いていくというようなお話がありましたから、ぜひその点から、これから追求すべきは追求していかなければならないというふうに思うのです。  それでは、きょうは具体的に一つだけ問題を取り上げて、ODAの改善につなげられればなというふうに思うのでありますが、きょう取り上げたいと思いましたのは、縦割り行政の弊害というものがこのODA政策にもあるのではないかということであります。  日本援助は、もうここにいらっしゃる皆さんは御存じのとおり、有償、無償、技術協力、三分野から成っております。そのうち技術協力はさらに四分野くらいに分かれていて、一つはJICAが各省庁に依頼して行う専門家派遣、二つ目にはJICAによる途上国からの研修員の招致、三つ目にはJICA専門家派遣に付随する機材供与だ。四つ目でありますけれども、技術協力の中の三分の一の予算を占めているわけですが、各省庁独自に予算を組んでいる。これが大体九六年度予算で千二百七十八億円、先ほども申し上げましたが、技術協力費全体の三分の一を占めているわけであります。当然、そうなれば、外務省は他のODA関係省庁との有機的な連携をこのODA政策について図っていかなければならないということになると思いますけれども、これまでどのような連携を図ってこられたか、お伺いをさせていただきます。
  92. 畠中篤

    ○畠中(篤)政府委員 今御指摘のとおり、技術協力をいろいろな形で実施しております省庁は十八省庁ございます。御指摘のように、大きなところはJICAがまとめまして、ただ、JICAがまとめて技術協力を実施すると申しましても、JICAを通じまして派遣をする専門家あるいはJICAを通じて受け入れる研修生の受け入れ先、そういったものはすべてJICAであるわけではございませんで、それぞれの関係技術を持っておる関係省庁にお願いをして、JICAベースの技術協力もそういったことで実施をしております。これが一つでございます。  これはいわゆる政府間ベースの技術協力と申しますか、国際約束に基づいてやっております技術協力でございますが、御指摘のとおりそのほかにも、政府間ベースの技術協力事業とは別に、他省庁がそれぞれの所轄事項の範囲内で専門分野を生かしながら、短期ではございますけれども、研修生を受け入れたりあるいは専門家を派遣したりといったようなことをしておられます。こういった他省庁が独自の予算要求をされております内容につきましては、実はその他省庁が独自に持っておられます予算の要求の中で、例えばそれまではODA勘定にならないようなものをスクラップいたしまして、その省庁が関心を持つ、経済協力関心を持ってくれるところがODA予算につけかえて要求をしていく、つまり次第次第に関係省庁が国際協力関心を持ち予算をつくってきたと申しますか、積み立ててきたような、そういった積み重ねが今の姿でございます。  そういうことでありまして、JICAあるいは外務省といたしまして、詳細にわたって意見交換をするとか、あるいは情報提供を受けるというようなことが従来できてはおりませんでしたけれども、最近は、そこの点につきましてもできるだけ協力関係を強化していくということで、まず情報提供を受けるということで、平成八年度のいわゆる経済協力の年次報告の中には、関係省庁がどういった内容の技術協力をし、どのくらいの予算を使っているかということを、情報提供を受けてまとめて公表をいたしました。  そういったことで、そのほか各省庁が出しますときにも、できるだけ、私どものノウハウといいますか、現地の情勢その他も踏まえて、それから援助政策も踏まえて出していただけるように、可能な限り連携を強めるように働きかけておるところでございます。
  93. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 ありがとうございます。  各省庁の積み重ね予算だということでありますけれども、結局連携を図っていかないと、いろいろなむだや重複が出るわけですね。もうさまざまな点で、調査段階から実はいろいろなところで指摘をされてきている。これは、今局長はこれから詳細にわたって連携をしていくというふうに言っていただいたので、期待をしたいと思いますが、本当にこの点は重要視していかないと、ODAに対する目がさらにさらに厳しくなると思うのです。  ちなみに、通告していましたからわかると思うので簡単におっしゃっていただきたいのですが、各省庁の独自予算、先ほど申し上げましたようにありますけれども、過去五年ぐらいの推移を数字でおっしゃっていただけますか。十八省庁ありますから、例えば一番大きいところで、文部、農水、通産ぐらいでいいです。億単位でさらっとおっしゃっていただけますか。
  94. 畠中篤

    ○畠中(篤)政府委員 申し上げます。  文部省の技術協力予算、過去三年を申し上げますと、平成六年度でございますけれども三百九十億八千八百万円、それから平成七年度が四百二十億百万円、それから平成八年度は四百六十四億一千九百万円が文部省でございます。  それから、農水省につきましては、平成六年度が五十八億二千四百万円、それから平成七年度が六十二億六千九百万円、平成八年度が六十六億六千九百万円ということでございます。  通産省は、平成六年度が三百三十三億一千八百万円、平成七年度が三百四十六億五千七百万円、平成八年度が三百六十三億九千万円となっております。
  95. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 ありがとうございます。  これは、一番大きい省庁三つだけおっしゃっていただいたのです。大体どの省庁も同じように、もうはっきり申し上げて、ODA予算の伸びにただ比例しているという感じなんですね。つまり配分比率が固定化しているのですよ。私はこれでいいのかなというふうに思うのですけれども、いかがですか。局長で結構です。
  96. 畠中篤

    ○畠中(篤)政府委員 ODA予算につきましては御存じのように、概算要求のときにシーリングが決まりまして、各省ともそのシーリングの中でどこまで、各省庁が持っておりますODA予算を、この場合は技術協力でございますけれども、できるだけ予算要求をしていくということで、その中身につきましては各省庁が大蔵省といろいろ折衝しながら決まってまいりますので、最初のシーリングのところは各省庁といたしましてもシーリングいっぱい要求しているものと承知しております。
  97. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 各省庁がそれぞれということでありますけれども、まさにそこが問題なんですよね。今、私なんかは、外務省ODAに関することは他省庁分も一元管理できるようにならなければいけないというふうに思うのです。  ちなみに、今各省庁独自予算だけを申し上げましたけれども、時間がないですから私が申し上げますが、JICAが各省庁に依頼して行う専門家派遣の各省庁分の配分比率はどうなっているかというと、やはり同じなんですね。つまり、これは私も最初いただいたときわかりませんでしたけれども、要はどこを読めばいいかというと、厚生省関連だったら人口家族計画協力費とか保健医療協力費とか、見るところがあるのですね。過去何年間か見ていると、配分比率が全く固定していますね。よく公共事業で、農水と運輸と建設と配分比率が固定している、あるいは建設省の中だったら各局間で配分比率が固定化しているという話がよく出ます。建設省だと各局間で、最大でもことし〇・一九だったと思いますけれども、固定している。そういう問題がODAについてもあるのですね。  ですから、ここは先ほど局長おっしゃったように、そのぐらいでは私足らないと思っているのですが、ぜひ外務大臣のリーダーシップで、政府全体としてこのODA関係のもっと有機的な連携を図るように、そして重複をなくすように、リーダーシップを発揮していただきたいというふうに思うのですけれども、いかがでありましょうか。
  98. 畠中篤

    ○畠中(篤)政府委員 JICAの派遣いたします専門家の各省部分について、比率が同じという御指摘がございましたけれども、私ども、必ずしもそう思っておりません。人口家族計画の分野あるいは農林水産業の分野、産業開発の分野、それぞれございますけれども、伸び率その他は、例えば最近の環境重視といったようなこと、あるいは人口問題についての重視といったようなことを踏まえまして、それぞれ伸び率をいろいろ考えながら伸ばしてきております。  ちなみに、これまでプロジェクト方式技術協力と申しますのはそういうセクター別で一まとめにしておりましたけれども、昨年平成八年度からは、プロジェクト技術方式の技術協力を全体として再調整がしやすいようにまとめて、その垣根を払って調整ができるようなことに変えて実施してきております。
  99. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 きょうは余り専門的な議論をしている時間がないのですが、今まとめてとおっしゃったけれども、そういう議論をしたらもう切りがないのです。細かい話になりますけれども、結局は産業開発協力費だけでしょう、まとめたのは。いわゆる文部とか、さっき申し上げたような例えば厚生、農水、通産以外のところをある程度まとめたということでしょう。  いずれにしても、さっきの数字を申し上げてもいいですけれども、固定している傾向が少なくともあるというふうに思うのですが、外務大臣、有機的な連携が図れるように、ぜひ政府全体として調整といいますか、図っていただきたいというふうに思いますが、いかがですか、一言だけ。
  100. 池田行彦

    池田国務大臣 ODA全般につきましても、一体どういうふうな体制でこれを進めていくべきか、極めて長い間いろいろな議論があったわけでございます。経済協力省をつくれとか、いろいろな議論が浮かび上がってはまた消えてまいりました。そういった中で、今基本的には外務省、それに大蔵省、経済企画庁、通産省あたり、四省が中心になっていろいろ協議するというシステムで何とか連携をとりながら円滑に進めようとしているわけでございます。  そしてまた、今御指摘技術協力の分野につきましては、さらに関係する省庁が多くなりますので、その中での調整は大変難しいところはあるわけでございますけれども、今御指摘のような観点も踏まえまして、今後、本当に必要な、役に立つ技術協力が重点的に行えるように、政府部内での調整を円滑に進めるように努力してまいりたいと思います。
  101. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 実はODA関連はかなり用意をしてきたわけでありますけれども、最後に一点だけ申し上げれば、そういう縦割り行政の弊害を打開するための方策として国別援助計画をつくるというのが一つ考えられるわけであります。これについて、どうも一年に二つ、三つという話でありますけれども、本当にそれでいいのか。費用対コスト、費用対効果という話もありますが、まさに今問われているのは、外務省でも各国別にそれなりの指針とがあり方というのはまとめられているとは思いますけれども、それはやはり政府全体のものではないのですよね。政府全体としてオーソライズされているものではないので、しっかりとこのところをもっとピッチを上げて作成できるようにしていただきたいというふうに思います。  時間がありませんから、ODAの問題についてはまたいずれの日にか質問させていただきたいと思います。  それでは、頭を切りかえて、海兵隊の問題に入りたいと思います。  この海兵隊の問題でありますけれども、誤解のないように申し上げておきますが、冷戦後の日米安保というのは、外務大臣とか総理がおっしゃるように、アジア太平洋の平和と安定のかなめであるという認識を私も実は持っております。持っているからこそ、非常にこの米軍基地問題、悩ましい問題なわけでありますけれども、どうしても振興策とかあるいは日本全体での負担の公平ということは、なかなか一部を除いては特効薬ではないということで、あえて海兵隊の問題について御質問をさせていただきたいというふうに思います。  きょう御質問申し上げたいのは、海兵隊という軍隊がなぜ沖縄に駐留をしなければならないのか、あえてこれも申し上げれば、実は党内でも私たちではいろいろな議論があります。私自身は、実は今すぐに撤退をすべきだ、削減をすべきだという側に立っているわけではございません。ただ、この点が、沖縄の皆さんに対してなぜそこにあるのかということがきちっと説明なされないと、なかなか理解をしていただくというのは難しいだろう。つまり、グアムとかハワイとかアメリカ本土とか韓国とか、そういったところではなくてなぜ沖縄なのか。迅速性とおっしゃるかもしれないけれども、現代の戦争とはいかなるものなのか。つまり、ピンポイント攻撃が追求されて敵も味方も最小限の犠牲にとどめなければ、アメリカの国内の世論とかあるいは議会というものもどうも耐えられないのではないでしょうか。  そう考えると、海兵隊が半島有事発生後に、数時間後にすぐ投入されて、上陸戦闘で兵員がばたばたと死ぬなどという戦争は本当にできるんだろうか。半島有事でまず行われるのは結局のところ、私もテレビで見ましたけれども、湾岸戦争なんかで見られたような空爆、航空作戦とかミサイル攻撃であって、それによって抵抗を少なくしてしか、なかなか海兵隊を投入して上陸戦闘というのはできないのではないかという見方が軍事専門家にも出てきているということでありますけれども、この点は外務大臣、いかがでありましょうか。
  102. 池田行彦

    池田国務大臣 今専門家の間でもと言われましたけれども、それはいろいろな見地からいろいろな議論が出されていることは、私ども承知しております。  しかしながら、基本的に申しまして、今米国が日本あるいはこの周りの地域、このあたりの平和をあるいは安定を守ろう、そのためにコミットメントをしている、それをきちんと達成していくという上において、海兵隊も含めた現在のような駐留米軍のレベルと兵力構成がこれは必要だ、こういう認識に立っているわけでございますし、そして、その中で海兵隊の果たす役割というのは、それの持つ機動性あるいは即応性、そういった点で、他の兵士と連携を持ちながらではございますけれども、迅速に緊急事態に対応するというところに特色がある、こう考えております。  今、特定の地域のいわゆる有事というのを想定して御答弁するのは難しいわけでございますけれども、一般的に申しまして、ハワイとかあるいは米国本土、西海岸とかに置かれた場合と沖縄に置かれた場合とどうかということでいいますと、幾ら最近輸送総力が増強され、またスピーディーになったと申しましても、かなりの数の兵力が移動するには、やはりハワイからでございますと相当な時間がたちます。そういった意味では、現在沖縄という地域にある海兵隊というのは、それがハワイなり本土なりに移動いたしますと、かなりその持つ力、効力というものは変わってくるんだと思います。  それからまた一方、このアジア太平洋地域、特に極東地域のいろいろなところを見ますと、ある意味では、ほどほどの距離があるというので縦深性もある、こちらは余り近くないという意味で有効なんだということも言われているわけでございまして、いろいろ特定なケース、まずピンポイント攻撃をしてから云々というふうな、そういうふうな前提を置いて議論される方もありますけれども、そういった重大な事態というのはいろいろな起こり方があるわけでございまして、まずこれが典型だから、必ずこの方式で起きてくる、これにはどう対応するかというだけじゃいけない。そういった意味では、いろいろな事態に対して柔軟に対応するという意味で、やはり海兵隊というものの役割というものは大きいものがあるんだ、このように考えております。
  103. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 議論したいところでもあるんですが、一歩進めて質問させていただきたいと思うのです。  もし半島が、これもまた特定の場所を想定して議論するというのはなかなかしにくいんですが、半島が統一をされて、その統一プロセスが南側主導で進められて親米政権ができたというふうに仮定した場合、海兵隊の削減は可能だというふうに思われますか。そしてまた同時に、今申し上げたような形で半島統一がなされた場合の海兵隊の削減という問題について約束をするということは可能か、可能でなければなぜそれはできないのかということについてお伺いをしたいと思います。
  104. 池田行彦

    池田国務大臣 私ども、今日本の防衛政策を考える上におきましても、あるいは日米安保体制を考える上におきましても、特にどこの国がどういうふうになるということを想定してやっているわけではございません。一般的に申しまして、やはり日本の周辺の地域あるいはアジア太平洋という地域、まだいろいろな不安定な要因もある、不確実な要素も多過ぎる、いわばこれが我々のターゲットというのか対応しなくてはいけないその状況なんだと思いますね。そういった意味では、こういった地域の安定度が今後どんどん増していくならば、やはり現在我々がとっているその対応の仕方というものにも変化は当然あるんだ、出てくるんだと思います。  そういった意味で申しますと、日米安保条約に基づいて、今日本に駐留している米軍も含めて、今後この地域の安定度がぐんと高まってくれば、これはかなりの変化というものは当然起こる、起こるということは当然あり得るんだ、こう考えております。  しかしながら、今の時点で、それじゃどこがどういうふうになったら、いつ、どの程度の、またどういう性格の変化があるかということは、残念ながら申し上げられない。少なくとも今の状況にかんがみる限り、現在の兵力構成を含めた駐留米軍のレベル、そのような軍事体制というものが必要であろう、こう考えておるわけでございます。  しかし、これからも、昨年の日米安保共同宣言にも明記してございますけれども、そういうふうないろいろな周辺の状況の変化に応じて、どういうふうな体制が一番いいのかということは協議はしてまいりましょう、こういうことになっておりますので、中長期的な視点からそういう協議はしてまいりますし、また先ほど申しましたような、安全保障環境がずっとよくなるような、安定度を増すような状況を現実のものにするために、我が国としてもいろいろな外交努力は傾注してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  105. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 また別の質問をさせていただきますが、三月十六日、NHKの討論番組がありました。その後の記者団との会見といいますか会話の中で、自民党の山崎拓政調会長がこういうことをおっしゃっておられます。  ことしの秋に期限が迫った日米防衛協力のための指針、つまりガイドラインの見直しについて、米軍の兵力削減問題とはワンセットになっている、海兵隊の削減を主張するならばガイドラインの見直しも協議することになるというようなことを与党第一党の自民党の山崎政調会長がおっしゃっておられます。つまり、この考え方というのは、海兵隊の削減とガイドラインの見直しをセットとして議論して、ガイドラインの見直しによって海兵隊の削減につなげていくというようなニュアンスが少なくとも入っているコメントだと思うのですけれども、これについて外務大臣、どういうふうにお考えになられますか。
  106. 池田行彦

    池田国務大臣 私も、どういう状況の中でどういう表現で山崎さんが発言をされたのか、あるいはその発言を委員がどういうふうにおとりになったのかということと、山崎さん御自身の真意といいましょうか、それがどうだったのか、その点も全部ひっくるめましてよくわかりませんので、そのことについて直接私からコメントするわけにはまいりませんけれども、政府あるいは日米間の話といたしましては、それはもちろんそのガイドラインにつきましてはこの秋を目途にまとめていこう、いろいろな事態に対応するときの日米協力あり方について、いわゆる第三項目、我が国の周辺の地域に緊急な事態が起きた場合にどうするかという問題も含めて、いろいろ作業を進めておるところでございます。しかし、そのことと我が国に駐留する米軍のレベルなり兵力構成と直接結びつけて、アメリカと日本とどちらがどうなったらこちらがどうなるというふうな話をしておるわけではございませんし、そこのところは山崎さんも、そのようなリンケージがあるわけではないというのはよくわかっておられるのだと思います。
  107. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 これも議論したいところですが、時間が来ましたから、きょうはこれで終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  108. 逢沢一郎

    逢沢委員長 次に、古堅実吉君。
  109. 古堅実吉

    ○古堅委員 日本共産党の古堅です。  本日議題となっております在外公館関係法の改正案については、我が党も賛成であることをまず最初に表明しておきたいと思います。  今、政府が米軍用地特別措置法案を改悪しようとする動きが強まってきて、重大な政治問題となりつつあります。最初にそれについて伺わせていただきます。  米軍特措法のもととなっている土地収用法では、軍事に関する事業は公益事業とみなされず、したがってそのために強制収用も使用もできないことになっています。なぜそうなっているかについて、外相の認識を最初に伺いたいと思います。
  110. 池田行彦

    池田国務大臣 現在の土地収用法に軍事のための使用というのが対象になっていないというのは承知しておりますけれども、これは私の所管外でございまして、なぜそういうふうになっているかについてはつまびらかにしておりません。
  111. 古堅実吉

    ○古堅委員 一九五一年、昭和二十六年でありますが、土地収用法の抜本的な改正がございました。その審議の中で、五一年五月二十五日の衆議院建設委員会において、建設省の管理局長である澁江政府委員が、この土地収用法の改正の内容について説明をしております。このように述べています。  従来の規定におきましては、国防、その他軍事に関する事業、それから皇室陵墓の建造ないしは神社の建設に関する事業が、公益事業の一つとして上っておりますが、新憲法のもとにおきまして、当然不適当であると考えられますので、これは廃止することにいたしております。 というふうに、土地収用法の改正に当たって、収用、使用の対象に軍事は省かれるんだということを明確に説明し、審議を経て現在の土地収用法がつくられた、こういういきさつがありますが、外務大臣はそのいきさつを御存じないのですか。
  112. 池田行彦

    池田国務大臣 昭和二十六年に制定されました土地収用法の規定の内容なり、そういったものを規定された趣旨はともかくといたしまして、今委員も冒頭に言われました米軍との関係で、我が国が提供しております区域・施設の問題につきましては、これは日米安保条約に基づいて我が国が提供する、そういった責務を負っているところでございまして、国内的にもそういった我が国の安保条約上の責任がきちんと果たせるような体制を整備することは必要なことだ、こう考えております。
  113. 古堅実吉

    ○古堅委員 今そのことをお尋ねしているのではないんですよ。我が憲法とのかかわりで、軍事にかかわるものは収用、使用の対象にできないんだという政府の見解のもとで法律も改正された。それについては外務大臣もそのとおりだと認識されますか。
  114. 池田行彦

    池田国務大臣 土地収用法の規定の中においては、それは対象になっていないのはそのとおりでございます。  それから、一方におきまして、我が国といたしまして米軍が日米安保条約上の責務を果たしていく、そのために必要な区域・施設の提供を我が国としてする、これは必要なわけでございまして、そのためにいろいろ国内的な体制の整備をしていくということは、私は必要でもあるし、もとより憲法上何らの問題もないものと承知しております。
  115. 古堅実吉

    ○古堅委員 質問もしないことをしゃべらないでください。土地収用法が制定されたときに、我が国の憲法はこれができないんだという立場に立って土地収用法の改正案から除外したということなんですよ。  そこで、次の質問に移ります。なぜ新憲法は軍事に関する事業における土地収用、使用を禁止したと思われますか。
  116. 池田行彦

    池田国務大臣 そこの前提が違うわけでございまして、私が先ほど御答弁申し上げましたのは、現行の土地収用法はそういう規定になっているだろう、しかし我が国といたしまして安保条約上の責務として米軍に区域・施設の提供をするということは必要である、そのためのいろいろな国内的な法制を整備するということはこれは憲法に何ら触れるものではない、こう認識しておる、こういうことでございます。
  117. 古堅実吉

    ○古堅委員 委員長から注意してあげてください。質問したものには答えないで質問していないことを繰り返し繰り返ししゃべっておられる。それではやりとりできませんよ。  もう一度。今質問したのは、なぜ新憲法は軍事に関する事業における土地収用を禁止したと思われますか。答えられなければ答えられないとおっしゃってください。
  118. 池田行彦

    池田国務大臣 それは早い場面でお答えしたと思いますけれども、私の所管でございませんからつまびらかにしておりませんけれども、私の承知しておるのは、現在の土地収用法ではそういうことは対象になっていないということでございます、  そして、必ずしも軍事か否かということではございませんけれども、あるいは軍事というものに関連するとするならば、安保条約に基づいて我が国が米軍に提供する区域・施設の問題がそれにかかわってくるわけでございますけれども、その関係でいろいろ国内的な法制を整備していくということが憲法に抵触するというふうには私どもは理解しておりません。
  119. 古堅実吉

    ○古堅委員 憲法にかかわる問題を所管ではないなどということで質問をはぐらかすなどということは、これは許されないことですよ。  新憲法は、その前文で、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」して「この憲法を確定する。」と前文でうたい、第九条で恒久平和主義、それを明確にしたのであります。そういう立場に立てば、軍事のための土地収用、使用、それが許されないということになることは明らかではありませんか。  戦前は、天皇が主権者であった。軍隊も天皇の軍隊でしかなかった。ですから、軍事にかかわるものは、本当に今の世の中では想像もできないほどの時代があったのです。帝国憲法下の一九〇〇年制定の土地収用法は、国民の財産権など無視するひどいものでもありましたが、戦前の土地収用法で収用、使用できる事業の第一番に挙げられているのが「国防其ノ他軍事ニ関スル事業」です。第二番目が「皇室陵墓ノ営建」云々ということになっております。軍事に関するものは特別扱いで、軍機に関する事業は、「事業ノ準備」や「事業ノ認定」という手続はすべて省いて「収用ノ手続」に入れるようにされました。その「収用ノ手続」はまたひどいもので、「収用審査会ハ開会ノ日ヨリ一週間内ニ裁決」すべし、このようになっていまして、収用審査会が「裁決ヲ為サザルトキハ地方長官」、これは今の知事です、「地方長官ハ之ニ代テ裁決」すべしというものでありました。こうして軍事のために国民の土地が強奪されていったのであります。それは戦前です。戦後に至り、恒久平和とともに国民の財産権保障を明記した憲法がこうした軍事のための土地強奪を二度と許さないとしたのは、当然ではありませんか。  大臣は、戦前の反省から今日の土地収用法が軍事に関するものを禁止しておるという点について、どう思われますか。
  120. 池田行彦

    池田国務大臣 我が国の憲法のもとにおきましても、我が国の安全はしっかりと守っていかなくてはいけません。そういった、意味合いにおきまして、この憲法の枠内で当然許容されるものとして、国を守るために自衛隊もあるわけでございますし、そして日米安保条約も締結しておるわけでございます。  そういった、我が国を守るために必要な自衛隊あるいは安保条約に基づいて駐留する米軍がいろいろ活動するために必要な施設や区域をどういうふうに獲得していくか、取得していくかという点につきまして、やはり国内法的にいろいろな整備をしていくということは、これは当然憲法の許容するところであり、何らそれに抵触するものではないと思います。  ただ、それが現在の、昭和二十六年に制定されました土地収用法という一つの特定の国内法によって根拠づけられるか否かということは、また別のことでございます。
  121. 古堅実吉

    ○古堅委員 日本国憲法は、先ほど申し上げたように、軍事のための強制使用、収用などできないことを前提にして、憲法に反する法律は当然のことながらつくられないということが前提になっています。そういう立場を明確に政府が表明したのが土地収用法の改正に当たっての態度でした。ところで、その後に政府の態度も変わっていきました。  憲法が軍事のために土地の収用はできないのだという立場を踏まえて、その立場から、いろいろな困難がありながらも今日なお、多い数ではありませんけれども、百十何人の反戦地主と二千人余の一坪反戦地主を合わせて三千人余の人たちが、軍事のためには土地を貸さない、契約を拒否するということで頑張り続けております。その立場こそ、憲法が求めた恒久平和、その精神にかなうものであるし、国民の立場からも努力しなくてはいかぬ、そういう方向だと思います。ですから、反戦地主の皆さんは、日本国憲法のあるべき姿を描いて、誇りを持って、自分の土地を軍事のために取り上げさせないために頑張り続けておるのです。  外務大臣は、こういう地主が頑張っている、そういう立場というのは至極当然のことではないかというふうに思いますが、いかがですか。
  122. 池田行彦

    池田国務大臣 私は、やはり現在のこういった国際情勢のもとで国の安全を守っていく、国民のために平和をしっかりと守っていく、そのためには、日米安保体制というものは大切であると考えております。そうしてまた、それがちゃんと機能していくために、我が国に米軍が駐留し、またそのための施設・区域が提供されることも、これは必要なのだと考えております。  もとより、今沖縄の県民の方々が非常にあれだけの、全国のわずか〇・六%という狭い面積の中に米軍基地の七五%にも上るものが集中いたしまして、大変な御負担を強いられておるという現状については、私どももこれは本当に真剣に考えなくてはいけないということで、今あらゆる努力を傾注しまして、沖縄における施設・区域、米軍に対して提供する施設・区域の整理、統合、縮小に全力を傾注しているところではございます。  しかしながら、依然としてまた続けて使わせていただかなくてはいかぬところもある、そういったことで、地主の方を初め県民の方々にもいろいろ御理解をお願いしているところでございます。そういった中で、今地主の方のうちの大方の方々、人数で申しましてたしか九九・八%の方までには御理解をちょうだいし、賃貸借契約も締結していただいていると承知しております。  そういった中で、残念ながらまだ御理解をちょうだいできない方が、地主の方が何人がおられますけれども、今二千人ぐらいでございましたか、しかしその中で、いわゆる在来地主と言われる前々からずっと土地をお持ちになっておられた方は現時点でたしか百十三名の方であって、その他の方は、巷間一坪地主というふうな呼ばれ方をされることがございますけれども、特定の、たしか四筆の土地に集中して大勢の方々が狭い地域を持っておられるという方でございます。もとよりそういった方々もいろいろなお気持ち、お考えで、そういう今のようなお立場あるいは御主張をなさっているということは承知しておりますけれども、どうか我が国の安全を守る上においての安保条約の必要性、あるいは基地の必要性について御理解をちょうだいしたい。そうして、先ほども申しましたように、地主の本当に大多数の方にもそういったことで御理解をちょうだいし、御協力を賜っていることもよくお考えいただきたい、こう考える次第でございます。
  123. 古堅実吉

    ○古堅委員 先ほど、審議における会議録に基づいて引用し、読み上げましたが、それによって明確なように、憲法上、軍事のために国民の土地を強制収用、使用することが許されないという立場をとり、土地収用法ができた。ですから、軍事に関する項目というものは入っていません。自衛隊のための基地の強制収用、使用も、土地収用法をもってできないような仕組みになっています。  しかるに、なぜ米軍基地であれば、国民の土地を強制収用、使用する、そういうことができるというのですか。なぜですか。
  124. 池田行彦

    池田国務大臣 私が申しましたのは、土地収用法という名前の特定の実定法によって、自衛隊あるいは米軍のための土地を提供するというための手だては講じられることにはなっていない、それは承知しておりますと。しかしながら、その別途の法の枠組みを準備し、それで対応、対処していくということは、憲法に抵触するものではない、こう考えている次第でございます。
  125. 古堅実吉

    ○古堅委員 端的に聞きますが、憲法が禁止した軍事のための土地収用、使用も、安保条約があるから許されるという見解ですか。
  126. 池田行彦

    池田国務大臣 そういうことじゃございません。  私が申し上げているのは、安保条約上は、我が国としてそういった区域・施設を提供する義務を負っている、これは一方にございます。そうして、それを可能にするために国内においていろいろな手当てをしていく。その中で、いろいろな法を整備していくということはございましょう。そしてそういうことはできるのだ。もとよりそういった法律も、憲法の許容する範囲内でなくてはいけないのは当然でございます。
  127. 古堅実吉

    ○古堅委員 念を押しておきますが、自衛隊のための土地の収用、使用、それは強制的にできないのだが、米軍基地のためのものであれば憲法上もそれは許されるという見解ですか。
  128. 池田行彦

    池田国務大臣 いや、そういうことは申しておりません。米軍だからできるというようには言っていない。米軍のために米軍に提供する区域・施設について、憲法の枠内で法律的手当てをすることも可能でございますし、それからまた、自衛隊についてそういうことを手当てすることも、それは憲法の禁止するところではないと思っております。  ただ、おっしゃるような昭和二十六年の土地収用法においては、そのようなことは規定されていない、こう申し上げているわけです。(発言する者あり)
  129. 逢沢一郎

    逢沢委員長 御静粛にお願いします。
  130. 古堅実吉

    ○古堅委員 憲法上、どの対象であろうと、自衛隊であろうと米軍であろうと、土地が収用、使用を強制的にやられるという面では何の区別もしていないはずであります。それがなぜ米軍のための土地収用、使用であるのであればできるのか、どうして憲法がそれを許す、憲法の範囲内なのだということになるのか、憲法がそう定めているのか、なぜなのだということを聞いております。
  131. 池田行彦

    池田国務大臣 私はそういうことを申し上げているのじゃございませんで、昭和二十六年に制定された土地収用法という法律では、それは対象になっていないということでございます。しかし、別途法律をつくり、そういった例えば収用という手続をつくったとしても、それは憲法に抵触するものではない、こう思います。
  132. 古堅実吉

    ○古堅委員 なかなか質問にそのまま答えようとしないので、時間がたってしまう。  政府が米軍に基地を提供する義務があるという立場を踏まえて、今回も沖縄県民の土地の強制使用をそのように強行しようとしておりますが、提供の義務があるからというだけで、直ちに米軍のために強制収用、使用が憲法上も許されるというふうなものにはならないんですね。  国有地を提供したり、あるいは契約に応じた土地を提供したりなどというものがあります。しかし、明らかに拒否している地主さんの土地を憲法のもとで強制収用することができるのか、できないのかということを繰り返し尋ねているのです。それは、できるはずがありません。  軍事のためには国民の財産を奪うことができないという立場を、憲法の前文、第九条とのかかわりにおいても、安保条約やあるいは米軍用地特措法を持ってきても、第二十九条における、財産権を侵してはならぬ、そういうこととの関係においても、この憲法を超えることは絶対にできないものです。先ほど申し上げたように、戦前の軍国主義のもとにおける土地の収用というのは、もう本当にひどいものでありました。  ところで、五月十四日までに期限が切れようとしている使用権原を獲得することができそうにないというふうなことになったら、今度はこの米軍用地特措法、それをさらに改悪して、有無を言わさず取り上げることができるような仕組みにしようとさえ今動きが強まっておるというのであります。これは、戦前のあの軍国主義のもとにおける、国民の土地強奪と何ら変わることのできない、こういう意味合いを持ちます。  同時に、沖縄はアメリカの占領下に長い間置かれておりましたが、米軍の都合に合わせて布告・布令を出して、県民の土地を、嫌だというのに銃剣、ブルドーザーで取り上げる、そのようなことをしました。そのようにつくられた軍事基地を復帰に当たって、そのまま結構だというふうに政府はした、こういう仕打ちのもとで、今日まで強制使用の繰り返しなどを含めて続いています。  こんな布告・布令をもってやったようなことを、新たな特措法の大改悪によってやるなどということがどんなに言語道断の話であるか、言葉をきわめて申し上げても言い足りない、そういうものだと思います。断じて許されないと思いますが、大臣、どうお考えですか。
  133. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもも、沖縄の県民の方々がこれまで長い間本当に筆舌に尽くしがたい御苦労をなさり、そうしてまた御負担をしてこられたということは、重々それを認識しております。そうして、そうであればこそ、何とか可能な限りの御負担の軽減に努めたいと努力もしているところでございます。  しかしながら、なお現時点におきまして、引き続き駐留米軍に対する施設・区域の提供の面でお願いしなくてはいけないところもあるわけでございまして、そして今、特措法に基づいていろいろ手続が進められております。何とかその手続の中で御理解を得ながら、その道が開けていくことを願っているところでございます。
  134. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間がもう残り少なくなりました。最後に、いわゆる五・一五メモについて簡単に質問させていただきます。  五・一五メモの全容についてですが、新聞報道によりますと、十四項目から成る全体像があるというふうにして報道されております。五・一五メモというのはそういうものですか、大臣
  135. 折田正樹

    ○折田政府委員 五・一五メモ、五・一五メモと言われますけれども、定義だとか正式な名称があるわけではございませんけれども、これまで国会等の御議論でいわゆる五・一五メモの対象となっているのは、昭和四十七年五月十五日の日米合同委員会におきまして、八十八件の施設・区域それから訓練区域の提供に係る合同委員会合意でございまして、施設・区域の条件、使用条件等が定められているものであるというふうに考えられているところでございます。
  136. 古堅実吉

    ○古堅委員 この二十五日に橋本総理と大田知事が会談されるという報道がございます。そのときにこの五・一五メモについても明らかにするということが言われてきておりまして、それとの関連でお尋ねしますけれども、新聞にも報道されているような十四項目のすべてを明らかにされるのか、それともその一部なのか、そこについて。
  137. 池田行彦

    池田国務大臣 私ども、今その全容が明らかになる形でなるべく早く公表したい、こういうことで作業並びに調整を急いでいるところでございます。
  138. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が参りました。  五・一五メモなるものは、今までいろいろなことを言って、全面公表しろという要求を踏みにじって明らかにしてこなかったこと自体が許せない問題だというふうに考えます。隠されたその中で、沖縄はひどい被害を受け続けてまいりました。知事との会談で明らかにするなどということを言っておるのだが、それも全面公表するなどということも言い切ることができない、本当に言語道断な態度だと思いますね。今まで全部を公表してこなかったということ自体が許せないだけに、一日も早く、今度の知事との会談でこの問題を明らかにするというのであれば、一つ残さず全部を公表するよう強く要求して、終わります。
  139. 逢沢一郎

    逢沢委員長 次に、伊藤茂君。
  140. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ただいま審議をしております法律につきましては、社会民主党として賛成であることをまず冒頭申し上げる次第であります。  沖縄問題が非常に重要な局面になっております。重大な局面と言ってもよろしいかと思います。私どもも、与党の一員として特段に大切な立場を持っておりますので、真剣な議論を、非常に短い期間だと思いますが、真剣にやらなければならない、与党間でもさまざまな部面でも相談をさせていただきたいというふうに思っております。そういう中で、短い時間ですが、幾つか質問をさせていただきたいと思います。  私は、一番大事なのは、沖縄の県民に展望を持っていただけるように、五十年間はかの県とは違った立場に置かれてまいりました、私も第二の基地県という神奈川県ですけれども、第一の基地県と第二の基地県では格段の、置かれている状況の違いがございます。五十年間苦労してきて、これから五年、十年、二十年どうなるんだろうかという思いがひとしお強い県民の気持ちを、私もわかります。今日のアジア情勢ですから、また大事な日米関係ございますから、一挙にというわけにはなかなかいかない。しかし、やはり将来へ向けて展望の明るさをどう持つのか、どう持っていただける努力を、政治が、また政府もやるのかということが一番大事だと私は存じております。  そういう面で申しますと、これは私の意見なんですが、よく特措法の問題がマスコミで焦点になっております。これにつきましてはまだ政府から、また総理外務大臣から、正式な法的、政治的な御判断を伺っている段階ではございません。大田県知事も間もなくお見えになって総理とお話しになるということでございますから、今の段階で賛否断定のようなことを言う段階ではないだろうというふうに思っております。間近の段階にその判断をしなければならないというわけでございますし、また、そういう法律の前に私はやるべきことが三つあると思っております。  一つは、沖縄県の方から、昨年の一月及び八月でございますけれども、基地返還アクションプログラムとか、あるいは沖縄国際都市形成構想とか、さらに規制緩和に伴う緊急の経済施策の要望とか出されております。これらを積極的にやはり受けとめていくということがまず必要であろうというふうに思いますし、また、法律改正が話題となるといたしますれば、憲法九十五条などを含めました問題をどうクリアするのかということも当然議論されなければならないということであろうというふうに思います。沖縄のそういう三つの点、三つのビジョンをどう受けとめるのかということが一つ。  それから二つ目には、沖縄における米軍の規模の縮小の問題、特に、今焦点となっている海兵隊の問題の展望をどう持つのか。  それから三つ目には、振興策、これも沖縄県と政府の間でも、また与党間でも真剣な議論が、今協議が行われているということでございますが、この三つ、前提にあるのではないかというふうに思います。  ただ、短い時間でございますし、外務大臣にお伺いする立場ですから、一つだけ、特にこの基地返還アクションプログラム、三段階、十五年計画という内容でございまして、大田知事が前に言われておりましたが、長い苦しい基地返還闘争という形は転換をしたい、県民ぐるみでみんなでやはり努力をして、明るい将来像をかいて、みんなで一歩一歩汗をかきながら明るくしていく、そういう県政を私はやりたいという気持ちもあらわれているような気がいたします。大臣、この中身をどう受けとめられますか。     〔委員長退席、福田委員長代理着席〕
  141. 池田行彦

    池田国務大臣 今委員指摘のとおり、沖縄の方々は、現状をどうするかもさることながらこれから先どうなるんだろう、展望が大切だ、そのとおりに私ども考えております。そういったことを踏まえながら、沖縄県におかれましても、基地返還につきましてもあのアクションプログラムというものを策定され、三段階に分けていろいろ返還を進めていくという、県としてのでき得る限り現実的な対応をしようとされた、そういった姿勢のあらわれであるとも私ども受けとめております。  私どもも、昨年集中的に行いましたSACOの作業におきましても、今、沖縄に駐留する米軍のあり方というものを抜本的に変えるということは、残念ながら国際情勢その他からいってできないわけでございますが、しかし、そういった中においても、可能な限り基地の整理縮小、統合縮小を図っていこうというので努力をいたしまして、そのときには、当然のこととして沖縄県の御要望、その中の大きな柱の一つとしての基地返還のアクションプログラムも念頭に置いて作業したわけでございます。  委員も御承知のとおり、SACOの最終報告におきまして取り上げられました返還の対象というのは、あのアクションプログラムにおいて第一段階あるいは第二段階に組み込まれておったものがほとんど盛り込まれている、中心になっていることは御承知のとおりでございます。そういった意味で、私どもはまず最終報告の実施に向けて、県、お地元の御協力も得ながら最大限の努力を払ってまいりたいと考えている次第でございます。
  142. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣、ただいま大きく念頭に置いてという御趣旨のことを言われましたが、これは第二次橋本内閣スタートのときの三党政策協議におきましても、沖縄の三点の要望を重く受けとめ、そして基地の問題、経済問題を含めましてその促進に全力を尽くすという表現になりまして、橋本総理を含めまして三党首がサインをされたということを御認識いただいていると私は思います。重く受けとめるということを三党首確認をしているのですから、その方向に具体化をするのは当然のことでございます。私は、重く受けとめ、そして責任を持った努力をするということを政府として表明されるべきではないかと思います。  これは重大な問題でありまして、そのことをきちんと受けとめるということが、沖縄県民と政府との間で責任と信頼感がそれで確認できれば、それから後は、二〇一五年まで二十年間というのは私は期間が非常に長いような気がいたしますけれども、香港も百年でしたが、二〇一五年までとしますと戦後七十年ですから長過ぎるような気がいたしますが、しかしそこに向けてのカウントダウンの努力お互いの信頼に基づいてできていくことになるわけであります。ですから、昨年一月に沖縄県の大田知事から政府に正式に出されましたその中身を重く受けとめ、そして政府が責任を持って努力をする、政府がきちんと受けとめる、あるいは政府のビジョンにしていくという視点が私は決定的に姿勢として重要なのではないかと思いますが、どう認識されておりますか。
  143. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、三党としてもまた政府といたしましても、このアクションプログラム、沖縄県からの御要望、沖縄県の御意思というものを本当に重いものとして受けとめております。そして、それをむしろ政府のプログラムとしてはどうかという今の御提唱でございましたけれども、私どもも気持ちにおいては本当に沖縄県の方々と一体になって実現したいという気持ちはございます。  しかしながら、御承知のとおり、このアクションプログラムは三段階になりまして、また具体的には二〇一五年というふうに年限が書いてあるわけでございます。そういたしますと、もしこれを政府が本当に責任を持ってということになりますと、それが実現できるというある程度の展望といいましょうか、そしてそれに至る具体的な道筋についても、何らかのものを持った上でおこたえしなくては誠意のある対応だと申せないと思うのでございます。  そういった意味合いにおきまして、私どもは、このアクションプログラムを重く受けとめて、その方向へ向かって努力はしてまいります。そういったことで、私が伊藤委員の御質問に対して、予算委員会におきまして橋本総理も答弁されたと思いますけれども、沖縄の米軍の兵力構成あるいはそのレベルなどにつきましても中長期的には協議をしていく、いや、それだけではない、そういった国際情勢の変化、より安定した状態を我が国周辺でつくるために、外交的にもあらゆる努力をしてまいりますという趣旨のことを総理も御答弁なさったと思いますけれども、政府もそういったことで対応してまいりたいと思います。
  144. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣の御答弁の中に、気持ちとしてはとございましたが、なるべくその気持ちとしてはというのは括弧の中になるように、あるいはなくても済むようにと強く私は期待をいたしております。  要するに、完全に今すぐそのとおりのスケジュールになるかどうか、しゃくし定規に出せばいいわけではありませんよ。沖縄県民の切なる願いはわかりました、政府もやりましょうと言えば、あとはカウントダウンで期間の問題ですよね。そのことがすっきりすればまた全然違ってくるという気がするのです。それがいわゆる沖縄の心を受けとめるということではないだろうかというふうに思います。  重ねて、つなげて伺いますが、海兵隊の問題であります。これに対するワシントンの反応その他いろいろと私も伺っております。ただ、最近新聞を見ておりますと、総理外務大臣も日米交渉の中で今海兵隊という言葉を一切口にしない、口にすべきではないというふうな意味合いのことが出てまいります。  現実、政治判断はいろいろあるでありましょう。ただ私は、特にトップの間の会談ですから、本当にやはり世界で最も重要な二国関係にふさわしい率直な意見交換があるべきだと思います。何か枠をかけて沖縄県民に失望感を与えるようなことを前もってやっていくというのはいかがなものだろうか。  オルブライトさんがお見えになりましたときにも、総理は朝食会で言葉を言われていたわけですね。それから、普天間ということを総理の方からクリントンさんに申し上げたということも一つの契機でございました。やはりトップの責任、そして両国関係、そしてまたフランクな意見交換というものを考え、これから四月二十五日、予定ですが、そこまでの間にさまざまの努力をしなくてはならぬということになっているわけでありまして、海兵隊という言葉を口にしないとか、今言うべき段階ではないとかという否定型を強調されるのは、私はいかがかと思います。可能性をいろいろと追求するというのが当然ではないだろうかと思いますが、いかがでしょう。     〔福田委員長代理退席、委員長着席〕
  145. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもも、先ほど来申し上げておりますように、沖縄におられますものも含めまして、在日米軍の水準なり兵力構成の大きな変化が可能になるような状況を強く望んでおりますし、またそのために努力もしたいと思っております。  ただ、それが現時点で、あるいは極めて近い将来においてそういったことを期待できるかといいますと、残念ながら今そういうふうな状況ではない、そういったことで、現時点ではと申し上げているわけでございます。  それでも会談で出すぐらいはいいじゃないかという御趣旨かと思いますけれども、実はこれまでやってきているのでございます。一昨年来、いろいろ日米間で作業します場合に、当然のこととして、何とか基地も縮小できないかとなればその前提条件もいろいろ話はいたします。しかし、そういった作業を通じまして、結局現在の国際情勢を前提にすれば、現在の兵力構成あるいはそのレベルというものが必要であるという認識になっている。それが昨年の四月の首脳会談、その後の2プラス2であるとか、あるいはそれから後にもいろいろな機会で繰り返し米側からも明らかになっているわけでございまして、我々も全くこの問題を取り上げないできたわけではないわけでございます。  これからも、安保共同宣言にも明記されているところでございますので、いろいろな状況に対してどのように対処するのが適当であるか、そのために米軍の兵力構成や水準がどうあるべきかということは日米間で協議してまいります。  ただ、例えば近々国会のお許しがちょうだいできれば、また総理とクリントン大統領とお会いいただくということもあろうかと存じますけれども、その場で具体的に海兵隊の問題を提起するかと申しますと、これまでのいろいろな日米間の話し合いを踏まえて申しますと、そのことは決して、今委員もおっしゃいますような沖縄の方々の願いを具体的に進める方向には資するものでもないのだ、こう思うのでございます。  可能性はというお言葉もございましたけれども、可能性と蓋然性というものもございますし、そういった蓋然性が極めて低い、むしろそういったものが想定されない段階において、余りそういったことを取り上げるということを申し上げることは、現実とは異なった甘い御期待を投げかけ、そして結果的に裏切るということになっては、かえって政府のとるべき姿勢として適切ではないのではないかとも考えておる次第でございます。
  146. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣に申し上げますが、現状いろいろな問題があることは事実であります。ただ、余りにも政府の態度表明というのは否定型だと思います。要するに、それは難しい、できませんという形での回答が非常に多い。そういう意思表示が非常に多いというのが現実だと私は思います。困難があっても、否定型ではなくて、やはり開発型か肯定型で物を考えるということが非常に大事だと私は思います。非常に苦しい中に置かれている方に、だめですよと言うのと、しかし苦労すればこうできますから、この方向にお互い努力しましょうと言うのでは、全然違うと私は思います。  海兵隊の問題にいたしましても、定量的にといいますか、何年何月何日までにこうしますとかということは非常に難しい。しかし定性的に、いつも大臣おっしゃっているように、朝鮮半島、アジア情勢が安定をすれば米側と軍事レベルについては協議をしますというのは当然の話ですから、そうなりますと、北の問題にいたしましても、私どもはいわゆる亡命事件でちょっとショックを受けましたが、それから後アメリカの方も真剣な努力をいたしまして、KEDOの問題にせよ、あるいは代表部の相互設置も努力が進んでいる、やはり本当にしっかり考えているのだなという思いがいたします。  そういうことを考えますと、やはり否定型ではなくて、肯定型、未来型に、あるいは定量的にすぐ言えないという場合でも、定性的と申しましょうか、冒頭申しました展望を語るということがやはり非常に大事だと思います。またそれが、一面で言うところのアジアの環境、アジアビジョン、あるいはいきなりヨーロッパのOSCEのような形にはいきませんけれども、さまざまな不確定要因がございますけれども、そこに向けてのビジョンと行動が目に見えるように、目に見える、姿のある日本外交となるようにすることはあわせて重大なことではないだろうかと思いますが、それを伺いたいと思います。
  147. 池田行彦

    池田国務大臣 委員のおっしゃることは本当によくわかります。私どももそれを心がけてまいりたいと思います。  半島情勢の安定のためにも、あるいはアジア太平洋地域の安定を考えました場合には、我が国とアメリカとの連携はもとよりでございますが、中国との関係、これをきちんと安定化し発展させていくこと。さらに、北東アジアのことを考えますと、ロシアをも含めていろいろ話をしていくとか、あるいはアジア太平洋というところでございますと、ASEAN地域フォーラムのメンバーの国々との間での連携はどうであるか、こういうこともございます。そういったあらゆる機会あるいはフォーラムを通じまして、我が国としても、この地域の安定化、安全保障環境の改善を図るための最大限の努力を展開してまいりたいと思います。そしてその上に立って、今沖縄の県民の方々が、そして私どもも、ともに願っているような状態が実現することを、それを目指してまいりたい、このように考えている次第でございます。
  148. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もう時間ですから質問をやめにいたしますけれども、いずれにしても今日の沖縄問題というのは、まさに日本のアジアにおけるあるいはグローバルにおける進路の姿勢が問われているという視点で大事な問題だと思います。沖縄をどうするか、すなわち日本の進路が問われているという視点が非常に大事なことだと思います。  わずかな時間に三、四点だけ、外務大臣からは大変まじめな御答弁をちょうだいしましたが、現段階、今の話題の段階では、私ども与党ではございますけれども、大臣が期待するような方向に判断をすることはなかなか難しいなというのが率直な気持ちでございます。  終わります。
  149. 逢沢一郎

    逢沢委員長 次に、平野博文君。
  150. 平野博文

    ○平野委員 無所属の平野でございます。  きょうは質問機会を与えていただきまして、心から感謝を申し上げます。一番最後の質問でございますので、相当数ダブっている、あるいは重なっているところがあると思いますが、重要だ、こういう視点で御理解をいただき、御答弁をちょうだいしたいと思います。  まず香港返還、中国経済、日中、米中関係について質問をいたします。  今回の改正の中に、在香港日本総領事館位置の国名を英国から中国に戻す、この変更が含まれているわけでありますが、百五十年に及ぶ歴史という意味におきましては、歴史的な出来事である、このように思います。私も、非常に感慨深いものがあるのだな、このように感じておるところであります。しかしながら一方、資本主義という体制のもとに来た部分と、社会主義という一つの異なった部分が本当に共存していけるのかな、いわゆる一国二制度が本当に機能するのかな、こういう不安もあるわけでございます。  一方、中国の経済なんかも、いろいろ内部問題、矛盾が生じておるように思いますし、非常に難しい国内問題を抱えておるようにも私は感ずるところであります。中国公称十二億人の国民を抱える中にあって、中国が確実に経済成長していく、このことについては好ましいわけでございますが、もし中国が飢えるなりあるいは混乱を起こす、こういうことになれば、地球的規模で大きな影響が出かねない、こういう懸念もあるわけでございます。  そういう意味で、私、昨年来、米中、日中の関係は非常に、国交正常化以来最悪になっている、こういうふうにも思うわけでありますが、それ以上に、この米中あるいは日中あるいは日米、このアジアにおいても、三角関係というのでしょうか、この関係は非常に重要な関係になってこようと思いますし、またその中での外交政策は非常に難しい中であるけれども、やっていかなければだめだ、こういうことが言われると思うわけであります。  そこで、私は、米国も日本も中国の経済的な重要性という視点から、関係改善にもっともっと日本努力していくべきである、こういう視点で池田外務大臣に、今後の日中、米中の関係について進むべき方向を、外務大臣の考え方をお聞きしたい、かように思います。
  151. 池田行彦

    池田国務大臣 我が国にとりまして中国とのおつき合いというのは、最も古いと言ってもよろしゅうございますでしょう。非常に古い関係でございますし、そしてまたこれはお隣同士、切っても切れない関係でございます。本当にそういった歴史的あるいは地理的に近いがゆえにいろいろな問題が時として生ずる、これは避けられない面もございます。しかし、基本的に申しまして、これはお互いに友好裏にあらゆる面での関係を深めていく、また広げていく、これが相互の利益であることはもとよりでございます。  それだけではございません、我が国も今、アジア太平洋地域はもとよりでございますが、国際社会全体におきましても、経済面あるいは政治面その他の面におきましても大きな役割を果たし、あるいは大きな責任を果たさなくてはならない時代に入っておりますが、中国もあれだけの大きな国でございますし、近年、改革・開放路線に基づきまして発展も遂げておる、そして国際社会における役割もいよいよ大きくなっているわけでございますから、この中国と日本、二つの国がどういうふうな関係でこれから推移していくかということは、国際社会全体を左右する大切なことであると思っております。  そういった意味で、私どもといたしましては、我が国のためだけではなくて、あるいは中国のためだけではなくて、世界全体のためといった視点も踏まえながら、両国関係の維持発展に努めていかなくてはいけないと思っております。  ことしは国交回復二十五周年、来年は平和友好条約締結二十年といった大切な時期でございます。そして一方におきまして、冒頭、委員指摘になりましたけれども、両国の国民のいろいろなお気持ちを世論調査なんかで見ますと、必ずしも、今、本当の親しみを感じているとかあるいは良好な関係であるとは思っておられない方がふえておる、それは事実でございますけれども、しかしそれでいいとはだれも思っておられないのだと思います。基本において、この両国関係を維持発展しなくてはいけないという願いは皆さん持っておられるのだと思います。そのことを大切にしながら、今後日中関係の維持発展に全力を傾けてまいりたいと思います。  それから、米中関係というお話もございましたが、やはりアメリカは国際社会であらゆる意味で大きな存在でございますし、アジア太平洋でも大きな存在でございます。したがって、これは米中の関係あるいは日本とアメリカ、中国を含めた三つの関係がどのように発展していくかということは、非常に大きな意味世界のために持っておると思います。世の中に、何となく、最近米中が接近したから日本がのけものになるのじゃないかとか、あるいは逆になれば云々という見方をする人がありますけれども、私どもはそういうふうには考えていない。この三国の関係はゼロサムゲームではなくて、三国がそれぞれ手を携えながら、お互いに相乗効果も出るような関係の増進を図っていくということでプラスサムゲームにしなくてはいけない、こういうふうに考えている次第でございます。
  152. 平野博文

    ○平野委員 ありがとうございました。  私、時間が非常に短いものですから、大臣は非常に丁寧に御説明されますもので、私の質問時間がなくなりますので簡潔にお願いをしたい、このように思います。  それでは、そういう三国の関係において、次は日米の経済関係について少し懸念をいたしておりますので、質問したいと思います。  つい先日でありますが、東京新聞に、貿易摩擦再燃が、こういうことが実は出ておるわけでございます。このことは、対米黒字が五カ月連続してふえてきている、こういうことをあらわしていることでありますし、逆に円安・ドル高を基調にして反映されている、こういうことだと私は理解をしているわけであります。  したがいまして、今日の日本経済の構造というのは、円安では輸入物価が高騰するのだ、円高では輸出城、こういうことでなっておるわけでありまして、こういう中で求められている対策というのは、何をおいても為替レートの安定と内需拡大という経済運営にあるというふうに私は思っておるところであります。国内的には低金利、消費税のアップ、減税等の打ち切りなどで、このままではますます輸出依存型の体制に戻っていくのではないか、こういう懸念がされるわけでありまして、ここは何をおいても内需拡大策が必要であると私は考えますが、大臣はどうでしょうか。イエスかノーで結構でございます。
  153. 池田行彦

    池田国務大臣 基本的にはそのとおりだと思います。我が国もいろいろな規制の緩和も進めながら、より開かれた市場にしていく。そうしてまた同時に、民間主導で内需を拡大していくことを通じまして、日米関係も含めまして、国際経済関係の増進の道を歩んでいくべきものだと思います。
  154. 平野博文

    ○平野委員 基本的には内需拡大策が必要だ、こういうことでございますので、私はこの方法についてはいろいろあると思うのでありますが、やはり何をおいても国内の個人消費を高めていく、こういう視点に立ちますと、今回減税を打ち切っている、こういうことでなくて、減税を改めて実施する、こういう方法もぜひ有効ではないか。これについては、イエス、ノーで結構でございますから、ぜひ答えていただきたいと思います。
  155. 池田行彦

    池田国務大臣 イエスと言いたいのでございますが、現在の財政の姿なりなんなり考えますと、そうは申せません。  一方におきまして、確かに消費というものはGNPの中でも一番大きなウエートを占めているわけでございますので、これがどうなってくるかというのは大切なところだと思います。そして一方におきまして、確かに国民の暮らしは楽ではないと思います。今見ますと、消費性向などはここのところずっと落ちてきておりますね。たしか今家計調査によると、七二・数%じゃないでしょうか。だから、六十年ぐらいに比べると五ポイントぐらい落ちているのだと思いますね。そういうことを考えますならば、まだいろいろ、国民の皆様方のお気持ちのありよういかんによりましては、減税ということはなくても消費がまた盛り上がってくるということは可能だと思います。
  156. 平野博文

    ○平野委員 もう時間が参ったようでございます。まだまだ一時間分ぐらいの用意はしてきたわけでありますが、最後に一言だけ、対人質問題、いわゆるペルー日本大使館での問題について少し触れておきたいのであります。これは要望でございます。  私は、昔の同僚の仲間が四名、実は人質になったわけでありまして、実は今まだ一人残っておるわけでございます。そういう意味においては、多くの日本人の方を含めて人質になっていますが、他人事とは思えない日々を実は毎日過ごしております。昔の職場に行きますと、おまえ国会にいるよりも、ペルーに行って君がかわって人質になった方がよっぽどいい、こういうふうによく言われるわけでございますので、何とぞこの事件を早期に平和解決されますように、切に願うわけでございます。  また、私、外務省の方が非常によくやっていただいていると思っておりますが、つい先日三月十九日に、日経新聞に実はこういう新聞記事が出ました。これは、危機管理体制ということを大臣しきりに言っておられますが、現地の人並びに今やられている方が少し甘えているのではないか、甘えがあるのではないかという記事でございます。こういうことがありますので、我々一生懸命やっていただいていると思っていますが、実はこういうものが出てきますと、不信感になりがちであります。  したがいまして、そういう意味では、多くの議員からも出てきましたが、できるだけ現地の情報を、出しにくいとは思いますが、情報公開を含めて、これだけ頑張っているんだ、しかし難しいんだということを国民の皆さんにやはり知らしめる必要があると思いますので、その点について強く求めておき、早期解決に御努力をいただくことをお願いをし、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  157. 逢沢一郎

    逢沢委員長 以上で平野博文君の質問は終わりました。  これにて質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  158. 逢沢一郎

    逢沢委員長 これより本案に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  159. 逢沢一郎

    逢沢委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 逢沢一郎

    逢沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  161. 逢沢一郎

    逢沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十七分散会