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1997-02-25 第140回国会 衆議院 科学技術委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十五日(火曜日)     午前九時三十分開議  出席委員   委員長 佐藤 敬夫君    理事 小野 晋也君 理事 栗原 裕康君   理事 三ッ林弥太郎君 理事 山口 俊一君    理事 斉藤 鉄夫君 理事 田中 慶秋君    理事 佐々木秀典君 理事 吉井 英勝君       石崎  岳君    江渡 聡徳君       河井 克行君    木村 隆秀君       桜田 義孝君    田中 和徳君       塚原 俊平君    渡辺 具能君       井上 義久君    近江巳記夫君       笹木 竜三君    近藤 昭一君       辻  一彦君    鳩山由紀夫君       辻元 清美君    堀込 征雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      近岡理一郎君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁長官         官房審議官   興  直孝君         科学技術庁科学         技術政策局長  近藤 隆彦君         科学技術庁科学         技術振興局長  青江  茂君         科学技術庁研究         開発局長    落合 俊雄君         科学技術庁原子         力局長     加藤 康宏君         科学技術庁原子         力安全局長   池田  要君  委員外出席者         外務省総合外交         政策局科学原子         力課長     遠藤 善久君         外務省北米局日         米安全保障条約         課長      梅本 和義君         資源エネルギー         庁長官官房省エ         ネルギー石油代         替エネルギー対         策課長     河野 修一君         資源エネルギー         庁長官官房原子         力産業課長   伊沢  正君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電安全管         理課長     東郷 洋一君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事)      中野 啓昌君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事)      井田 勝久君         科学技術委員会         調査室長    吉村 晴光君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   鳩山由紀夫君     辻  一彦君   羽田  孜君     堀込 征雄君 同日  辞任         補欠選任   辻  一彦君     鳩山由紀夫君   堀込 征雄君     羽田  孜君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として動力炉・核燃料開発事業団理事中野啓昌君及び同理事井田勝久君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 この際、申し上げます。  近岡国務大臣につきましては、着席のまま自席からの答弁を認めたいと存じますので、御了承願います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君
  5. 小野晋也

    小野委員 まず、近岡大臣には、病気御加療中のところを当委員会へ御出席いただいた御礼を申し上げたいと思います。随分よくなっておられる御様子でございますが、早い御回復を心からお祈りを申し上げたいと思います。  きょうは、一般質疑ということでございまして、本来ならば、「もんじゅ」の事故の最終報告も出された直後でございますから、この「もんじゅ」の問題、またプルサーマルの問題、熱核融合炉の建設問題等々、原子力行政をめぐる問題にも触れるべきところではありますが、きょうはこの分野を外して、後にまた集中審議がなされるときの質問にさせていただくといたしまして、科学技術振興問題について私の方から質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、平成九年度予算全体のことについてのお尋ねをさせていただきたいと思います。  振り返りますと、平成七年の十一月、我が国科学技術によって立つ国、科学技術創造立国を目指しての科学技術基本法制定をされました。そして、それを受けまして、平成八年の七月には科学技術基本計画閣議決定をなされまして、平成八年度から平成十二年度までの五カ年の間の科学技術振興考え方が示されたところでございます。言うならば、平成九年度予算といいますと、これらの科学技術基本法基本計画、これらの考え方最初に盛り込まれてつくられた予算と言って過言でないと考えるわけでございます。  平成九年度予算案を拝見いたしますと、一般会計歳出予算で申し上げますならば、科学技術庁は五千七百十四億円余り予算総額になっておりまして、前年度当初の比較でいきますと、八%増の予算案でございます。また、科学技術庁の総歳出予算で見ますと、七千三百四十四億円余りでございまして、六%余りの増の予算案ということになっております。  これらのことを含めまして、科学技術基本法制定精神科学技術基本計画をこれから具体化していくという観点から考えました場合に、先ほど申しましたとおり、第一歩と言うべき平成九年度の予算近岡大臣はどのように御評価をなされるのでありましょうか。そして、それとともに、これから日本の国を切り開いていく、未来を切り開いていく上に極めて大事な科学技術行政でございますが、この科学技術行政に立ち向かっていかれる御決意をお伺いしたいと思います。
  6. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 まず第一に、ただいま委員長初め皆様方の特別のお計らいによりまして、自席から答弁させていただくことになりまして、心から感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。  ただいまのお尋ねに対しましてお答えしたいと思います。  平成九年度の予算案において、一般会計科学技術振興費は、対前年度比にしまして一一・九%の増であります。政府全体の科学技術関係経費については、科学技術庁において集計したところでは、一般会計特別会計を合わせて三兆二十八億円となっております。これは初めて三兆円を超えるものでありまして、一般歳出の対前年度比一・五%増に比較しまして、六・八%の高い伸び率となっております。また平成八年度補正予算案においても、同様に取りまとめた集計で、千五百五十五億円の科学技術関係経費の追加がなされております。  このように、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、関係省庁の特段の努力によりまして、科学技術関係経費は、八年度予算に引き続き高い伸び率を示しておりまして、科学技術基本計画の策定後編成した初めての予算案として、同計画の達成のため重要な第一歩となるものと考えております。  今後とも、科学技術基本法精神に基づきまして、科学技術基本計画に示された新たな研究開発システムの構築のための制度改革、それから政府研究開発投資拡充、この二つを二本の柱といたしまして、その実現を通しまして、関係省庁との密接な連携のもとに、科学技術創造立国実現を図るべく全力を尽くしてまいりたい、このような考えでおります。
  7. 小野晋也

    小野委員 近岡大臣の御決意にございましたとおり、これから本当に重要性を年々増してまいるこの科学技術予算でございますが、また科学技術行政でございますけれども皆さんのお力で未来日本に大きな花を吹かす行政の展開を心からお願いを申し上げたいと思う次第でございます。  さて、科学技術研究の今後のあり方ということをめぐりまして、きょうはその振興立場からの御質問をさせていただきたいと思っているわけでございますけれども、この社会を構成するものの基本的なものは一体何だろうかということを考えてまいりましたときに、個々要素とそれらの連結の仕方というのが社会の基本的な考え方だろうと思います。  つまり、科学技術研究という問題を取り上げてまいりましたときにも、いかなる研究機関存在をして、そしていかなる特質をその研究機関が持っていて、またそれぞれがどのような成果を上げているかというのがこの要素であろうと思います。そして、それが単にその研究機関としてのみ存在し、その単独の評価を受けるとするならば、それは産業界また日本国民生活の方への波及が極めて遅いものになってしまうということでございまして、それら個々要素が有機的にまた効果的に結びつき合って、例えば民間研究機関だとか、国民生活ですとか、または世界皆さん方と結び合ったときに、それが効果的なものとして科学技術の実りを得てくるものだと考える次第でございます。  そんな側面から日本科学技術研究あり方考えてまいりましたときに、私は、個々研究機関というのは非常に科学技術研究予算の額に対して有効な研究が進められていると考えているわけでございますけれども、残念ながら、縦割り行政というような指摘もこの行政をめぐってはあるわけでございますが、研究機関におきましても、お互いの連絡をとり合う部分というのが少し弱い傾向があったような印象を免れないものでございます。  そんな点から考えましたときに、日本科学技術研究振興する上にこれから留意すべき点は、科学技術研究機関とその他の機関、またいろいろな国民だとか世界ということも申し上げましたけれども、より広い意味での構成要素というものを考え合わせたときに、それらの間のインターフェースをどう整えながら、科学技術研究というのがより有効に生かされる社会的仕組みをつくっていくかということが、今後の技術振興の上に大きな問題として問われる課題だと考える次第でございます。  その観点に立ちましたときに、幾つかの視点からの御質問をさせていただこうと思うわけでございますが、まず第一には、産業界とのインターフェースの問題でございます。  その第一点が共同研究推進の問題でございますけれども、これは科学技術基本法制定以来、特にいろいろな面で改善をされてまいりまして、職務発明規程だとか研究規程、また兼業許可等々におきまして、随分大きな規制緩和が行われたり、また新しい制度が盛り込まれたり、そういう措置がとられてきているわけでございますが、私ども研究者皆さんの御意見をお聞きしておりますと、どうも民間との共同研究を推進するということを考えましたときに、単に制度改善のみではなくて、研究者自身考え方の中にもまだ壁を持っておられる部分があったり、企業の姿勢の中に研究機関との交流ということに対するちゅうちょがあったり、また、研究機関の職場の中において、お互い交流促進する雰囲気になりにくいものが残っているのではなかろうかというような指摘を聞くことがございます。  このような問題に対して、どのように認識をしておられるのでありましょうか。そしてまた、今後この種の問題に対してどう対応をしていかれようとしているのかについてお尋ねをいたしたいと思います。
  8. 青江茂

    青江政府委員 お答えを申し上げます。  先生指摘のとおり、産官学連携と申しましょうか、民間との間の交流促進といったことは大変重要な課題だというふうに私どもも受けとめてございます。すなわち、創造的な研究というものをなそうとする場合、それはもうどうしてもセクターというものの壁を超えてお互いに触発し合うということが不可欠だというふうなことも言われてございます。また、国の研究成果パブリックセクターにおきましての研究成果といったものを実用化に移していくというふうな観点からも大変重要な課題というふうに受けとめているわけでございます。  こういった観点から、制度面につきましては、先生今御指摘のような、第一には、研究交流促進法ということでもちまして法的な措置というものを講じておるということでございますが、それに加えまして、研究兼業緩和といったことにつきましても昨年の十二月にきちんと明確化いたしたというふうなところでございます。さらには、産官学連携というものを念頭に置きました予算措置というものは大幅に拡充をしてきておるというふうな状況にございます。  しかしながら、確かに御指摘のとおり、我が国におきまして、交流といったことにつきまして、やや諸外国に比べますと不活発といった側面というのはどうしても否めないという事実がございまして、いろいろ研究現場状況といったものを聞いてみますと、一つは、いわゆるパブリックセクター側研究者の方に、いわゆる企業ニーズにマッチングできるような研究といったものが比較的少ない。この辺は、例えば、そういうふうな種類の研究でございますと、どうしても研究論文というのが出にくいような傾向というのがございます。そうすると、研究者評価の問題としまして、論文でもって勝負といったところがございますので、どうしてもそちらの方に行かないといったところがございます。したがって、例えば有識者の方の言をかりますと、特許一つというのは論文十に値する、そういった研究風潮というのをつくらなきゃいかぬというふうな御指摘もございます。  また一方、企業側におきましても、先生指摘のような若干のあれがございますが、かつてのように、研究現場に非常に近いところに有為な人材というのを投入して部分改良していくといったふうなことでは、どうしてももう企業として成り立っていかないというふうな、企業のマインドというのも変わってきてございます。  どういうふうなことで、少しずつ状況というのは好転をしておるというふうには思っているわけでございますけれども、まだ、先ほど申し上げましたように、なお改善余地多分にありというふうに認識をしてございまして、きめ細かな対応というものを講じてまいりたい、かように考えているところでございます。
  9. 小野晋也

    小野委員 今の御答弁中、特許一件が論文十に相当するという考え方国立研究所の中に広めていかねばならないという指摘があるというお話でございましたが、私もこの点は同感でございます。世界の情勢を見てまいりますならば、今やまさに技術開発世界特許戦争の様相を見せてきているところでございまして、国立研究機関におきましても、この特許をめぐる問題についての検討を今後真剣にやっていただきますように、この点は要望を申し上げておきたいと思います。  ところで、この特許をめぐりまして問題になってくる点と申しますのは、民間企業との共同研究をいたしましたときに、その特許権実施に当たりましてどういう配慮が下せるのか。また、そのあたりがあいまいなまま進行いたしますならば、特許をめぐりましての係争が国立研究機関民間企業の間に発生するということも私どもの危惧する点でございまして、この点はしっかりとした対応を今後進めていただく必要があると思うわけでございますが、特許実施権につきまして、その帰属問題をどのようにお考えになっておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  10. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  実施権の前に、特許権自体の所属、帰属ということについての状況というものをちょっと御説明をさせていただきたいと思うわけでございますが、共同研究の場合におきましては、これは共有ということになってございます。それから、国が受託をするといったケースにおきましては、これは交流促進法でもちまして、いわゆる民間サイドにも一部譲与というのが認められておる、道が開かれておるというふうな状況にあるというわけでございますが、一方、国の委託の場合につきましては、これは、申し上げてみますと、いわゆる全面国が吸い上げというふうな形になっておるというわけでございます。  この一番最後の点につきまして、これは私ども長年の一つの宿題としまして勉強しておるわけでございますが、やはり財政原則の問題といたしまして、国がその当該特許に係る経費というものは出したんだということでもちまして、これは国のものですよというふうな考え方というので今律せられておるわけでございます。一方、考え方を変えてみますと、確かに直結する経費というのは国が出した、しかしながらそこにはベースとなる民間サイドのいわゆるポテンシャルというのがあるだろう、そこのところを認めれば、一部いわゆる共有の道を開いてもいいではないかというふうな考え方もあるわけでございまして、その辺をもう少し勉強させていただきたい、かように思っておるわけでございます。  加えて、その実施権ということにつきましては、相手方に対しまして、共同研究の場合でございますとか受託の場合、そういったことにつきましては優先的に実施権を付与するという道が開かれてございまして、かなり明確化されておるというところでございますが、委託の場合につきまして、順次そういう形のものが具体化しつつございますけれども、もう一つそれが一般化していないという状況でございます。その辺をもう少し推し進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  11. 小野晋也

    小野委員 この点に関しましては、ぜひ今後さらなる検討をいただきたいと思いますと同時に、質問項目に入れていたのですが、一項目要望にさせていただこうと思います。  研究者サイドから見ますと、特許申請ということは、研究業務に追われている立場の中からはなかなか困難な部分がございますので、ぜひ今後の検討課題として、申請事務等をどこかで代行できるような仕組みをつくっていただいて、その後の特許の保持、管理、そしてそれを企業等に供与するような作業につきましても、そのセンターが機能してうまく働くような仕組みづくりをすることによって、研究者にこの特許に絡む問題での負担を余りかけない仕組みをおつくりをいただきますように、この点は要望に切りかえさせていただきたいと思います。  それから、引き続きまして、公的研究機関から民間企業への技術移転の問題でございますが、以前にもこの科学技術委員会で御指摘を申し上げたことがあったわけでございますが、国立研究機関民間企業の間は、よほど平素のつながりがないと技術移転問題ということについてうまく運びにくい状況というのがあるようでございます。  つまり、地方の中小企業等にいたしますと、国立研究機関にはどのような特許があるかということもわからないし、またそれを使おうとするとどういう作業をしなきゃいけないかということもよくわかっていないというような状況でございまして、これを打ち破っていくためにいろいろな工夫をされていることは高く評価をさせていただきたいと思いますが、加えまして、やはり技術移転というのは極めて人的要素の大きな問題である。ですから、有能な技術移転する才覚を持った方が間に入らないと、なかなかお互いのギャップを埋め合わせながら民間における商品開発につながりにくいという点が存在するように考えております。  したがいまして、土地の売買と同じように、売る側と買う側とがお互い売りたい、買いたいと言ってもなかなかそのニーズをつなぎ合わせるということは困難であるから、不動産業等存在をしてその間に入り、土地仲介料を受け取ることによってそれを業として成り立たせて生計を立てていくというようなスタイルを、この科学技術の権利の移転においても日本の国で確立することはできないだろうかというような考え方を実は持っている次第でございます。  例えば、国立研究機関において特許を取得したようなものにつきまして、一年から五年の間でありますならばそれは非常に新鮮な発明特許でありますから、こういうものはそのニーズも極めて高いだろうから、仲介をする者に対して実施権の一割程度の配分をする。六年から十年くらいになると少し古びてきた特許権であるから、二割くらいのより高率のその移転に伴う実施権料の割り当てを行い、それから以降になると、例えば三割、四割というようにしまして、休眠特許を生かすような形の技術仲介業というものがこの国で成り立つならば、もっと活発にこの技術移転というものが展開できるのではないだろうか、こんな気持ちを持っておりまして、私は、ある意味では国立研究機関の持つ研究力民間企業移転する上に、この仲介業の確立ということが決定的な方式なのではないだろうか、こう思っている次第でございますが、この点について御見解はいかがでございましょうか。
  12. 青江茂

    青江政府委員 お答えさせていただきます。  確かに、いわゆるパブリックセクター研究成果というものを実用化に移していくことの重要性というのは、御指摘のとおりだというふうに私ども自体も受けとめておるわけでございます。こういうふうな観点から、私ども所管法人でございます科学技術振興事業団という場におきまして、新技術委託開発制度あるいは開発あっせん制度、こういったものを運用して、いわゆるパブリックセクター技術の種というものを事業化に移していく、企業化に移していくという事業をやっておるわけでございます。  今先生がおっしゃったいわゆる一種の仲介業的なものということにつきまして、私ども従前この場におきまして御指摘をいただき、勉強してきたところなのでございますけれども、こういう話がございます。NRDOという組織組織と申しましょうか、これは国際的なフォーラムというふうに申し上げた方がいいかと思いますが、ナショナル・リサーチ・ディベロップメント・オーガナイゼーションというものでございますけれども、これはテクノロジートランスファーの役割を担っておる各国の機関が二十機関ほど集まりまして、いろいろな議論をやっておるという場でございます。そこにおきましても、今先生が御指摘になりましたような構想につきましての議論がなされてございます。しかし、これは日本だけの問題じゃなくて諸外国ともに、いわゆるコマーシャルベースでもってそういったことをやるというのはなかなか現実問題難しいね、そういうふうな議論状況のようでございます。  ただ一方、昨日でございますか、一昨日でございましたか、いわゆる企業眠り特許というものを移していく、そのための機構というものがプライベートセクターでもってできたというふうな新聞報道もなされてございます。この辺、時代の推移とともに、場合によりますならばコマーシャルベースでもってなし得る余地というのがあるのかなというふうなことも気になるわけでございまして、今後ともその辺を勉強させていただきたいというふうに思うわけでございますけれども、先ほど触れました私ども科学技術振興事業団従前のお仕事というものをどう実効あるものにしていくかということも並行して考えていきたい、かように考えてございます。
  13. 小野晋也

    小野委員 ぜひ、この点は日本技術開発の決定的なものになろうと思いますから、今後の御検討をよろしくお願い申し上げたいと思います。  引き続きまして、OTAの問題を一言御質問申し上げようと思っていたのですが、ちょっと時間の関係質問する時間がないようですので省かせていただいて、次に、科学技術研究国際社会の間のインターフェース問題ということで二点の質問をさせていただきたいと思います。  その一つは、きょうは田中眞紀子長官も後ろにお見えでございますけれども、ロボリンピックということで、ロボットの競技を通して青少年の科学技術離れを防ぎ、またその技術振興を進めていくことを通して、未来世界の人類と科学技術が共存する形を追い求めるイベントとしてこのロボリンピックを開催してはどうだろうかという問題提起をして、もう三年になりました。先日、いよいよロボリンピックを考えようという懇談会が科学技術庁内に設置をされて、その具体的検討が始まったところでございますが、今後どのようなスケジュールで振興をお考えであるか、この点についてのお尋ねを申し上げたいと思います。
  14. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 今後、科学技術が一層進展していく中で、人間と科学技術の調和、共存がますます重要になっていくものと認識いたしております。また、昨今の若者の科学技術離れも憂慮されているところであります。先生が御提唱のロボリンピックについては、このような人間と技術の調和、共存、あるいは青少年の科学技術離れ対策等多方面にわたって効果的なイベントである、このように認識をいたしております。  当庁でも、有識者からのいろいろな意見を聴取するために、ロボリンピック懇談会を開催しているところでございます。今後、専門家の英知を結集して、ロボリンピックについて検討を進めてまいりたい、このように思います。
  15. 小野晋也

    小野委員 この点、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。  最後の質問になりますけれども、昨年夏、HⅡロケットで打ち上げられましたADEOS衛星、その後衛星になりまして、「みどり」というふうな名称がつけられた衛星でございますけれども、これが運用を始めまして半年の月日がたってまいりました。その間、いろいろな観測にこの衛星が携わってきているわけでございますが、その実績がどういう形であらわれているか、お尋ねを申し上げたいと思います。  そして、それと同時に、このADEOS衛星の活用の問題について一つ提案を申し上げて、皆さんの御意見をお聞きしてみたいと思うわけでございます。  ことしの暮れには京都で、世界じゅうの環境関係皆さん方がお集まりになられまして、気候変動枠組み条約第三回締約国会議というのが開かれる予定で、鋭意この準備が進められているとお聞きをいたしております。この略称COP3というのに合わせまして、非常にいい舞台がこの国に準備されるわけでありますから、日本の国の環境に対する貢献を強くアピールしてみてはどうだろうか。そのアピールをする上に、地球環境を観測するこの「みどり」という衛星を有効に活用をいたしまして、全世界にその情報提供の仕組みをつくり上げるということが一つ。  それからもう一点は、この地球環境の問題というのは子供たちの未来に非常に大きな影響を与えるという問題でありますから、子供たちに対してADEOS衛星からの情報を提供しながら、それを活用した研究についての世界的な、国際的なコンテストを開催することを考えてみてはいかがだろうか、こんなことを実は考えている次第でございます。  環境会議といいますと、これがだんだん具体的な詰めの作業になってまいりますと、どうしても厳しいところでのやりとりというものが中心になってきて、切った張ったというような形の交渉になりますけれども、それだけではなくて、やはり未来に夢を与えるということをやらなければ日本の国の活動というものが強くアピールできないということを考えましたときに、非常にいい材料としてこの「みどり」衛星というのがあるというふうに考える次第でございます。今後、こういう方面の取り組みを進めてみられてはいかがだろうかということを感じているわけでございますが、その点についての御所見もあわせてお伺いをさせていただきたいと思います。
  16. 落合俊雄

    ○落合政府委員 地球観測衛星「みどり」でございますが、昨年の十一月に初画像の取得をいたしまして、機能確認は終了をいたしております。現在、各センサーから送られてきておりますデータにつきまして、地上の観測結果と照合するなどの、データの検証や補正作業を行っているところでございます。今後、ことしの春以降のデータの配布開始を目指す予定となっております。  一方で、「みどり」のデータ利用の一環といたしまして、さまざまの共同研究計画されておりまして、既に、「みどり」によって得られました海色や海温データを漁業や気象業務に活用するための研究等に着手されているところでございます。  「みどり」につきましては、地球の温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林の減少などの地球規模の環境問題の解明でございますとか、海洋状況の把握によります漁業情報の提供などにも大きな威力を発揮するものと期待をいたしておりまして、今後とも、国内外の利用者と連携をとりながら、有効利用に努めてまいりたいと考えているところでございます。  ただいまお話ございました、ことしの十二月に気候変動枠組み条約の第三回締約国会合が京都で開催されるわけでございますが、私どもといたしましては、従来から、宇宙開発が青少年に夢を与えるものということで、各種の普及啓発活動を行っているところでございますが一御指摘ございました「みどり」の活用ということにつきましては、青少年の我が国の宇宙開発に対する理解を深めるという観点からも極めて有益であると考えておりまして、先生の御提案も踏まえまして、今後、関係方面と相談をいたしました上で検討してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  17. 小野晋也

    小野委員 以上で質問を終了いたします。
  18. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 斉藤鉄夫君。
  19. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 新進党の斉藤鉄夫でございます。  きょうは科学技術基本計画について質問をさせていただきたいと思っておりますが、その前に、この科学技術委員会科学技術行政、もっと言いますと国会と科学技術行政という点について、最近ちょっと気になることがございますので、一言意見を申し述べさせていただき、もしよろしければ、大臣の御所見を最初にお伺いしたいと思います。  それはどういうことかと申し上げますと、どうも最近、科学技術行政が国会での審議を経ずしてどんどん方針変更なりが行われているのではないかという危惧でございます。  去年、新型転換炉の方針変更がございました。これまで三千五百億円という国費を研究開発に投入してきた、その新型転換炉が方針転換されたわけです。実証炉は建設しない、基本的に新型転換炉の研究はストップするということになりました。これはこの科学技術委員会で私取り上げましたけれども、それは、方針が変更された後、どうしてそういうふうになったんですかという形で取り上げさせていただいて、国会での審議は実質的になかったと思います。  今回の原子力問題、プルサーマル問題については、後ほど笹木委員の方から詳しく質問がありますけれども、今回も、何か新聞を読んでおりますと、高速増殖炉路線がプルサーマル路線に変更されたんだ。きのう予算委員会で、そうではないんだということを御説明いただいて私は納得しておりますけれども、新聞を読んでいる限りでは、そういう感じがいたします。  今回も、国会の審議、またこの科学技術委員会の審議を全くしないで科学技術行政の方針が大きく変更されるとしたら、あのATR、新型転換炉の場合と全く同じになってしまいます。これでは、一体何のために我々国会議員がいるのか、また何のためにここで科学技術委員会の審議をしているのか、わからなくなってしまうわけで、まあ極端な言い方をすれば、決してそのようなおつもりはないでしょうけれども、国会軽視と言えなくもない。  そういうことが最近、新型転換炉にしても、このプルサーマル問題にしても、続いているわけでございまして、方針変更、これは当然あると思います、世の中変わるわけですから。そういうときには、一応国民の代表でございますので、国会議員で、この科学技術委員会できちんと議論をするという点をまず確認をしたいと思うのですけれども、大臣、いかがでございましょうか。
  20. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 国民を代表する議会と、それから行政機関、これが本当に国民のためにそれを具体的に実施していく場合に、何といっても国民の理解がなければ進むものではございません。  私も約四十年近い間、議会に籍を置きまして、これからも、科学技術行政に限らず国の政治においても、議会と行政機関、特に国民を代表する議会の意思というものも十分に尊重しながら、行政、政治が一体となって国民のためにやっていかなきゃならぬということで、先生の御指摘の点については私も全く異存はございません。今後、そういった方向に私も留意しなきゃならぬなと、大きく責任を感じております。
  21. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 どうかよろしくお願いいたします。  それでは、科学技術基本計画について質問をさせていただきます。  一昨年、科学技術基本法が議員立法で成立をいたしました。超党派で成立をいたしました。その科学技術基本法に基づいて、昨年七月、科学技術基本計画ができたわけでございます。  私もこれを読んで、非常によくできた基本計画だな、こう思うわけですけれども、この基本法成立から基本計画策定までの簡単な経緯と、それから、科学技術庁がその基本計画を策定するに当たって果たしてきた役割。金額的に見ますと文部省やほかの省庁の方が大きい部分もありますけれども、しかし、核になってきたのは科学技術庁ではないかと思います。その役割についてお伺いいたします。
  22. 近藤隆彦

    近藤(隆)政府委員 お答え申し上げます。  科学技術基本法は、一昨年の十一月に全会一致で議員立法でつくっていただいたわけでございますけれども、これは科学技術振興を最重要の課題としまして推進するための基本的な枠組みというものを定めていただいたものと、大変重たく受けとめておるところでございます。  基本法におきましては、その科学技術基本計画の策定が義務づけられておりまして、このために、法律成立後直ちに、具体的に申しますと平成七年の十一月二十九日でございますけれども、これを科学技術会議に諮問いたしまして、半年余りの審議を経まして、平成八年の六月二十四日、科学技術会議からの答申を得ました。これを踏まえまして、七月二日に政府としまして閣議決定をしたところでございます。  この間でございますけれども科学技術庁としましては、科学技術会議の事務局でございますので、審議過程におきます同計画の取りまとめとか、あるいは、その閣議決定に際しまして関係省庁間の精力的な調整といったところにいろいろ努力をしたところでございます。  また、この科学技術基本計画の策定後におきましても、盛り込まれましたいろいろな施策の実施に当たりまして、できるだけ各省庁の牽引力となるように積極的な役割を担っているというふうに自覚しておりまして、鋭意頑張っているところでございます。  今後とも、関係省庁との密接な連携を持ちまして、同計画の内容の実現に向けまして最大限の努力をしていきたいと思っておりますので、よろしく御指導いただきたいと思っております。
  23. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 科学技術庁が事務局となって科学技術会議が策定した基本計画ということでございましたけれども計画をつくる中で、学者の国会と言われている学術会議、うるさい先生が山のようにいらっしゃるその学術会議意見、それから予算的には一番大きな比重を占める大学セクター、それから研究開発の主体を担っている民間、経済界の意見、それぞれ利害が相反するところがあるかと思うのですけれども、そういうところをどう意見を聞き、どう調整して基本計画をつくられたのか、またどういう点に苦労されたのか、その点についてお伺いいたします。
  24. 近藤隆彦

    近藤(隆)政府委員 お答え申し上げます。  科学技術基本計画の策定のための審議につきましては、科学技術会議の総合計画部会、これは産学官の有識者から構成されておりますけれども、総合計画部会がその任に当たったわけでございます。さらに、同部会のもとに基本問題分科会を設けまして、さらに専門的事項の検討をお願いしまして、十分な審議を尽くしたというふうに聞いております。  また、各界の意見でございますけれども、同部会の審議に十分に反映させるために、御指摘いただきましたような日本学術会議を初めとしまして、国立大学協会とか私立大学団体連合会とか、あるいは経団連とか、関係の団体からも直接その会議意見を伺っておりますし、また同時に、インターネットを活用しまして、広く国民各般からの意見を伺っております。項目にしますと、百六十項目を超える意見をインターネット等々を通じましてちょうだいしております。そういった意見計画策定の参考にいたしております。  また、科学技術会議におきましては、日本学術会議の議員は非常勤の議員ということで、常日ごろから学術会議意見も反映するようにしておりますので、このような意見を十分聞きながら基本計画の策定を行ったというふうに認識をしております。
  25. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 その中で、例えば民間セクターですと、研究結果がすぐ民間研究開発に役立つ、そういうところに集中して研究開発投資をしてほしいというふうな意見もあったでしょうし、これはわかりません、私の想像ですけれども。大学セクターの方は、もっと基礎的な研究に資金をつぎ込むべきだ、そちらに重点を置くべきだというふうな意見もあったでしょうし、その意見の対立というふうなことは基本計画策定の中であったのでしょうか。お答えにくい点もあるかと思いますが、一番大きな論点になったのがこういうところで、その論点はこういうふうな克服をしたというふうなことがもしお答えいただければ、お答えにくいかと思いますが、教えていただきたいと思います。
  26. 近藤隆彦

    近藤(隆)政府委員 実は、初めての基本計画ということもありまして、いろいろな御意見があったようでございますけれども、特に人材の育成とか各機関交流促進の方法あるいは評価の問題、多岐にわたり、まして議論があったようでございます。また、大学の関係をどのように考えるかとかいったような、関係方面からいろいろな御意見をいただきました結果、基本計画がまとまったというふうに聞いております。
  27. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 わかりました。  先ほどの小野委員質問ともちょっとダブりますけれども、この基本計画の中で一番注目されたのは、何といいましても、平成八年から平成十二年まで五カ年で十七兆円の国費を投入して、基礎研究といいましょうか、戦略的研究をやるのだという、その数字のところだと思うのですけれども、この十七兆円という数字、簡単で結構でございますので、どういう経緯で十七兆円という数字が出てきたのか、また、この十七兆円の中で今回の平成九年度予算がどういう位置づけなのか、お答え願えればと思います。
  28. 近藤隆彦

    近藤(隆)政府委員 お答え申し上げます。  十七兆円という科学技術関係経費の規模でございますが、これは基本計画に書いてあるわけでございますけれども、この規模の考え方でございますけれども、二十一世紀の初頭に政府研究開発投資の対GDP比率を欧米の主要国並みに上げようという考え方が基本でございます。さらに、平成四年に閣議決定されました科学技術政策大綱におきまして、政府研究開発投資の早期倍増ということが明記されておりますので、これを受けまして目標値として設定したものでございます。  現在御審議いただいております予算案におきまして、政府全体の科学技術関係経費につきましては、科技庁において集計したところ、一般会計特別会計合わせますと三兆二十八億円ということでございます。これは、基本計画ができ上がってからの初めての予算としまして第一歩というふうに考えておりますけれども、なお、平成八年度の補正を含めて、八年度、九年度合計しますと六兆円弱でございますので、全体からいいますと十一兆円強のさらに追加が必要ということでございますので、補正の機会も含めて、これから平成十二年までにつきまして、また大いにその拡充につきまして努力をしていきたいと思っておりますし、またいろいろ御支援いただきたいと思っておる次第でございます。
  29. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 非常に財政事情が厳しいときにこういう十七兆円という一つの大きな目標があるということは、科学技術振興しなくてはいけないというふうに信じている我々にとっては大変ありがたいことなのですが、逆に、他の分野からも羨望と嫉妬の目で見られがちでございますので、その分気を引き締めてといいましょうか、後ろ指を指されない、きちんとした予算とその執行が必要かと思いますので、その御努力をお願いしたいと思います。  次に、この基本計画の中身でございます。  科学技術基本法制定するときにいろいろ議論を行いました。非常に長年の懸案でございまして、最初つくった案が、どうしても経済開発のための科学技術という側面が非常に強かったように思います。つまり、当時、二年前でございますけれども、バブルが崩壊をして、日本経済の先行きが非常に不透明になってきた、また日本も、それまではジャパン・アズ・ナンバーワンと言われてきて少し自信を持っていたのだけれども、その自信もなくなってきた、そういう時期でございましたので、とにかく日本技術力、経済力を再び盛り返そう、そのための科学技術、先端技術を生む科学技術という色彩の濃い科学技術基本法がまず最初に案として出されました。それを超党派でみんなで議論をしたわけです。  まず、そういう新しい産業を生む科学技術という面については異論はない。しかし、それだけでいいのだろうか。やはり科学技術の中の特に科学については、新しい知的領域を広げる。これは経済の発展に直接役立たないかもしれないけれども、しかし、これは人類の知的資産をふやすという、世界文化への貢献、人類への貢献という意味合いもある。その意味合いをこの科学技術基本法に加味しなくてはいけないのじゃないだろうか。十年前につくった科学技術基本法ではなくて、今つくる科学技術基本法として、文化への貢献という視点も加味しようということで、本文の中に「世界科学技術の進歩」という文章が入った、こういう経緯を思い出します。  この科学技術基本法の「目的」のところを見ておりますと、「経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与するとともに世界科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献する」、こういう文章になっているわけでございまして、「経済社会の発展」これが一つ目、「国民の福祉の向上」これが二つ目、「世界科学技術の進歩」これが三つ目、「人類社会の持続的な発展」これが四つ目。こういうことで、三つ目に「世界科学技術の進歩」という言葉が入ったわけでございます。  この科学技術基本計画を見ますと、その点についてもきちんと基本計画の中に入っておりまして、ここで本文を読むことはいたしませんけれども、人類の知的領域を広げる、人類の文化の発展に貢献する基礎研究を積極的に振興するというのが一ページ目に入っておりまして、この点を私は高く評価をしたいと思います。  そういうことで、すぐに役立たないと思われるこの基礎研究振興について、お考えをお聞かせ願えればと思います。
  30. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  基礎研究の強化ということは、言ってみれば、まさに現下の科学技術政策の最大の課題というふうな受けとめ方も私どもいたしておるわけでございます。  そういう観点から、私ども科学技術庁におきましても、基礎研究強化のためのいろいろな手を打ってきてございますが、十数年、十六年ぐらいになりましょうか、創造科学技術というものをスタートをさせたというとき以降、さきがけ21とか理研のフロンティアという仕組み、それから振興調整費を活用いたしましてのCOE育成制度、こういう形で、順次基礎研究強化のための対応措置、施策というものを打ってきたということでございます。とりわけ、平成七年の補正からスタートしたわけでございますが、特殊法人への出資金というものを活用しての基礎研究の強化ということでもちまして、戦略的基礎研究推進事業、これを今後の基礎研究強化のための基幹的な仕組みとしまして充実強化をさせていただきたい、かように思っておるわけでございます。  こういう形でもちまして、順次制度充実を図ってきておるというわけでございますけれども、この辺は、あくまでもいわゆる資金面、お金の面の強化ということにすぎないわけでございます。よく、研究というのは人、物、金というふうなことが言われますけれども、資金の側面というのは一つのアドバンテージということであろうと思うわけで、基本的には、やはり人ということになろうと思うわけでございます。その独創的な、いわゆる発想力を持った人というものをどう育てていくのか、そしてその独創力を持った人というものを、その発想というものを発揮させるための研究環境というのはどういう仕組みがあるべきなのかというふうなことを、総合的、多角的に考えていかなければいかぬというふうに思ってございます。  とりわけ、先般の基本計画の中におきましては、我が国研究開発システムというものが閉鎖的、非競争的、硬直的だ、こういうふうな指摘もなされてございまして、それをどう打破しまして、非常に柔軟で、開かれた、競争的な研究環境というものを、研究システムをつくり上げていくのか、この辺が最も大きな課題であろうかというふうに思ってございまして、多角的な対応措置というものを考えていきたい、かように思ってございます。
  31. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 その競争的な雰囲気をどうつくっていくかということについては、後でちょっとまた御質問させていただきますがその前に、もう一つこの基礎研究ということについて質問させていただきます。  基礎研究といいましても、私は二つカテゴリーがあると思うのです。例えば、素粒子の研究だとか宇宙が始まったときはどんな状態だったとか、まさにそれを知ったからといってすぐ人間の生活に役に立つわけではないけれども、我々の人生観なり宇宙観を深めるという意味で、非常に人類の財産になるような、そういう理学的な研究、これも基礎研究というふうに言われます。そういう研究。  それから、技術を目指している、つまり、人類社会にまた経済社会に役立つ技術を目指すのだけれども、その本当に根底的なところの研究、うまく言えませんけれども、例えば液晶というものがございます。液晶は、今我々日常生活でたくさん使っております。その液晶を実現するための基礎研究といいますと、まさにこれは、原子の電子状態がどういうふうになっているか、またそれぞれの原子がどういう形で結合しているか、その間の電子状態がどうなっているかというところを研究しなければいけない。これは全く基礎研究でございます。すぐには役立たないけれども、しかし、それをやることによって将来液晶というものに役立つものが出てくる。こういう基礎研究。こういうふうに、基礎研究にも二つのカテゴリーがあるかと思います。  日本の場合は、理学的な研究というのは結構世界のトップレベルに行っている部分もある。例えば、加速器で原子核の内部がどうなっているかとか、そういうものについては非常に世界のトップレベルを行っている。しかし、技術の分野の基礎研究日本は足らなかったのではないか。技術の分野のすぐ大金になる研究、これはもう民間企業が一生懸命やっていて、これは世界のトップレベルですけれども、それを支える基礎研究が足らないのではないか、こういう指摘が最近されてきたわけですけれども、この部分の基礎研究振興については、どういうふうなお考えでございましょうか。
  32. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  確かに、今先生おっしゃったような我が国研究構造というのがあるのではなかろうかというふうな気がいたすわけでございます。ここ一、二年のことかと思うのでございますが、戦略研究というふうなタームが非常に強く意識され始めてきている。それは今先生がおっしゃられたような、将来のテクノロジーに発展していく、しかしながら、そこのベーシックなところをきちんと積み上げて行われなければどうにもならぬ、そこまでおりていって積み上げてこそ画期的なテクノロジーへ発展していく、そういう性格のものをかなりストラテジックに攻めてみようじゃないか、こういうふうな概念だろうと思うわけでございますが、先ほどちょっと触れました戦略的基礎研究推進事業といったものは、まさにそういうところをねらっておるというものでございます。  加えて私どもは、特に重要施策等で御披露させていただきましたが、本年度から脳の研究と、それから地球変動のメカニズムの解明というふうな、かなりゴールセッティングというものを明確にさせた形で基礎研究というものを幅広く積み上げていこうじゃないか、いわゆる目的達成型基礎研究というものを強化していこうということで乗り出しておるわけでございますけれども、それも今先生がおっしゃったような流れにあるものというふうに認識をいたしてございまして、そこのところを特段の力を注いでまいりたい、かように考えておるところでございます。
  33. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ぜひ御努力いただきたいと思います。  私たちが基本法を議論しているときは、今まで言ってきたこととちょっと矛盾するかもしれませんが、基礎研究に力を入れれば必然的に経済に役立つような研究ができるのだ、私は単純にそう信じて基本法を議論したわけでございます。私が今言った基礎研究というのは、技術の基礎研究ということですね。技術上の基礎研究、これを一生懸命やれば必ずできるんだ、経済活動に役立つような技術が生まれるんだ、だから基礎研究に力を入れなければならないというふうに信じて、今でも信じておりますけれども、だからこういう質問をするのですけれども。  最近いろいろな技術論文を読んでおりますと、何か、基礎研究、応用研究技術開発、産業技術、基礎研究を一生懸命やれば応用研究に発展し、応用研究技術開発、産業技術という形で実を結ぶ、これをリニアモデルと言うのだそうです。線形、単純な線形になっておりますからリニアモデル。このリニアモデルは、昔は成り立ったけれども、もはや現代の技術社会では成り立たない、こういうことが学術の世界では言われてき始めているんだそうです。その分非常に、技術といいましょうか、研究の底が深くなってきた。ここを押せばすぐここへぽっと出てくるという単純なものではない、それほど深い世界に入ってきたということではないかと思います。  そういうことも含めて、ちょっとこんな質問はお答えにくいかと思いますけれども、こういうリニアモデルが成り立たなくなってきているという指摘が最近出てきたということも含めて、今後基礎研究振興をどういうふうに、答えにくいと思いますけれども、こういうことも含めて考えていただかねばいけないと思うのです。その点について、何かもし御意見がありましたら。
  34. 青江茂

    青江政府委員 十分にお答えになっているかどうかわからないのでございますけれども、イノベーションのいわゆるリニアモデルというものが今、なかなかかってのような非常にシンプルな形で成立しないというふうなことが言われておるということは了知してございます。シロスパイラルと申しましょうか、いわゆるべ-シックサイエンスとアプライドサイエンスというもの、そしていわゆるディベロプメントというものが非常にサイクルのような形で発展をしていく。東大の吉川先生あたりは、いわゆる競争前段階と競争後というものはぐるぐる回りながら発展していくんだというふうなことも言われておる。  確かに、近時の状況を見ますと、非常に端的に言えますことは、基礎研究といわゆる応用開発といいましょうか、そこのところの距離がうんと縮まっておるということは非常に明確に言えると思うのでございます。したがいまして、いわゆるテクノロジーディベロプメントというものは、そのベーシックのところまできちんとおりていかないと画期的なものというのは期し得ないということは非常に明確に言えると思ってございまして、そういう意味におきまして、先ほど申し上げましたような、やや目的志向的なベーシックサイエンスというものを、ゴールに向けての基礎研究の力を結集しながら持っていくというふうなことが、その辺に大いに力を入れていくというところではないかなというふうに思っておるのでございますけれども。十分にお答えになってございませんが……。
  35. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 その点、特にこれから十七兆円というお金を、他の省庁がうらやむようなお金をつぎ込んでいく。つぎ込んだけれどもすぐ結果が出ないじゃないか、どうなっているんだ、むだ金じゃないか、こういう指摘が必ず出てくると思うわけでございます。そうじゃないんだ、今リニアモデルじゃなくてスパイラルモデルなんだ、こう言ってもなかなか納得してもらえないと思いますので、そこら辺、科技庁としてもきちんと、我々もそうですけれども、理論武装をする必要があるのじゃないかということを申し伝えさせていただきます。  それから、科学技術基本計画が出て、最近いろいろな方がいろいろな提言をしていただいているんですけれども、人事院の人事官の方が「ブレークスルーを生む研究組織に向けて」という論文を発表されております。人事院の方が発表されている論文で私は非常に注目をしたんですけれども、この方が言うには、研究者に向いている人というのは、どの民族にも共通にある部分ある。研究者というのは、頭がいいということとは余り関係ないというふうに私も思います。とにかく、少々変人風であっても、絶対これまではと執念を持ってやり遂げる、そういう特質を持った人が研究者に向いているわけです。日本人の人口の一億二千万の中からそういう人を引っ張ってくるのではなくて、五十億の世界の人口の中からそういう特質を持ってきた方がより優秀な人が集まる。それをやっているのがアメリカだ。日本研究所は一億二千万から集めている。アメリカは五十億から集めている。したがって、五十億から集めている方が優秀な人たちが集まってくる。こういうことをこの方は書いていらっしゃいます。  世界から優秀な人を日本に集めてくるためには、一つは、日本研究システムが世界に開かれたものでなければいけない。日本人であろうがどこの人であろうが、共通の土壌で就職ができる、研究者として就職ができる、そして同じ土壌で評価をされる、こういうことが必要ではないか。アメリカはそれを現にやっているわけです。私も、これからの科学技術研究でそういうことが必要になってくる。これがある意味では一番大きなインパクトになるかもしれませんけれども、そういう方向について御努力をされていればお答え願いたいと思います。
  36. 青江茂

    青江政府委員 今の先生の御指摘、そのとおりだというふうに私ども受けとめてございまして、海外からの研究者というものを受け入れるということは、いわゆる異なる文化というもの、それ自体大変研究機関に活力を与えるというふうなことも言われてございまして、ちなみに理研あたりは相当数の外国研究者が来てございますけれども、それが理研の活発化の一つの要因になっているというふうにも見られてございます。そういうことでもちまして、海外からの人材というものを日本研究の中に取り込んでいくということは大変重要な課題だというふうに思っておるわけでございますが、そのためには、基本計画におきましては、研究一つには必ず一人受け入れというふうなものを一つの目標にしてございます。そうしますと、国立試験研究機関、二千超の研究室がございますが、今千人ちょっとということでございますから、もう千人ほど外国人を受け入れなきゃいかぬというふうな目標にもなるわけでございます。そのために、例えばSTAフェローシップというのを拡充していく等々の予算的な側面におきましての施策というものを打っていかなきゃいかぬということであろうと思うわけでございますが、それと同時に、おいでになる研究者、やはり日本の場合はどうしてもバリアがございます。言葉の問題というのがございますし、生活環境というのがございます。その辺の環境というものを整えていかなきゃいかぬというふうに思うわけでございます。  ただ、その辺はサイドの話でございまして、やはり最も基本は、外国人の研究者外国からの優秀な俊英が日本のあそこへ行って研究したいというだけの魅力のあるものといいましょうか、そういう人材を引きつけるだけの実力がなければ、これはもうどうやりましても話にならないということでございまして、そういう研究現場状況というものをつくり上げていくということが基本ではないかというふうに思ってございます。
  37. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 御努力をいただきたいと思います。  科学技術基本計画質問の最後として、大臣に、この科学技術基本計画についての御決意をお伺いしたいと思います。その後、ちょっとまた原子力の質問をさせていただきますけれども
  38. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 我が国が、二十一世紀に向けて、産業の空洞化、社会の活力の喪失等を回避し、豊かな国民生活実現するためには、科学技術創造立国実現することが重要であります。今後とも、関係省庁との密接な連携のもと、厳しい財政事情を踏まえつつ、同計画に掲げる施策の推進に必要な経費拡充を図るとともに、新たな研究開発システムの構築のための制度改革等を推進し、科学技術振興に努めてまいりたい、このように思います。
  39. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 どうかよろしくお願いいたします。  それでは最後に、質問を二つだけさせていただいて終わります。一つは核融合炉の件、一つは、きょう新聞に出ました東電の福島原発の件でございます。  第一番目の質問は核融合。JT60、それからヨーロッパのJET、アメリカのTFTR、三大トカマクが研究を競ってまいりました。この三大トカマク時代がそろそろ終わろうとしております。その中で日本のJT60は、この三つの中で一番いい成績をおさめたのではないか。今核融合では日本がまさに最先端を行っている、こういう状況でございますけれども、この三大トカマクの後の、次の研究炉、これはもうお金がかかり過ぎて一国ではできない、国際協力でつくろうということで、国際熱核融合炉、ITERの検討が進んでおります。これをぜひ日本に誘致すべきだ。周辺技術も大変な、たくさんの周辺技術がございますので、日本で建設するということで日本科学技術のレベル全体を上げることにもつながります。そういう意味で誘致をすべきだと思います。この点について、大臣はどういうふうにお考えになっているかという点を一つ。  ちょっと時間がありませんので、最初質問を言います。  それから、けさほど朝日新聞で大きく、福島第一原発冷却水の放射線、倍になったという記事が出まして、大変心配しております。きょう資源エネルギー庁の方に来ていただいておりますので、これは大丈夫なんですか、安全なんですかという点、その二つの質問をさせていただきます。
  40. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 核融合でございます。  ITERにつきましては、現在、工学設計ということで、日本、米国、EU、ロシアの四極で、来年の七月を目途に設計活動を進めておりますが、それにあわせて、建設のための準備の話し合いも始まっております。  その実際の建設の協議は来年から始まることになると思いますが、いずれにせよ、ITERにつきましては、長期にわたりまして大きな資金を要する、それから人材も要する計画でございますので、幅広い観点からその計画について御議論いただくために、原子力委員会にITER計画懇談会というのをこのたび設置しまして、今月の十日に第一回の会合を開いたところでございます。  この計画は、もともと四極のプロジェクトとしてスタートをしておりますので、国際間で応分の協力ができるということが非常に肝要な点でございます。今先生からは、日本がホスト国になれというお話でございましたけれども、先ほどの懇談会の議論とか国内外のいろいろな環境を十分見きわめまして進めてまいりたいと考える次第でございます。
  41. 東郷洋一

    ○東郷説明員 水素注入の件でございます。  福島第一発電所三号機で昨年十一月から、四号機で十二月から水素注入を実施しております。その目的は、応力腐食割れ対策でございます。水素注入によりまして放射線量が上昇することは事実でございますが、十分管理可能な範囲内にございまして、保案件業等に問題はございません。  また、この水素注入につきましては、海外でも、アメリカ、スウェーデンを中心に十数プラントで既に実施されておりますし、また国内でも、他のプラントで試験的に実施されておりまして、その効果等につきましては実証されておると考えております。
  42. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  43. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 井上義久君。
  44. 井上義久

    ○井上(義)委員 新進党の井上義久でございます。  本日は、科学技術基本計画につきまして若干お伺いをしたい、こう思います。  昨年の七月二日に科学技術基本計画閣議決定をされまして、今後五年間、平成十二年までに総額十七兆円の科学技術関係費を計上して、研究開発投資のGDP比を欧米主要国並みに、現状〇・六から一%まで引き上げる、こういう決定をされたわけでございます。GDP比一%、十七兆円、この政府関係研究開発投資の考え方ですけれども、要するにフロントランナーになるんだ、こういうことでこの計画ができているわけでありますけれども、どうもGDP比一%というのはどういう意味があるのかよく理解ができないということが一つ。そういう意味で、このGDP比一%というのはどういう議論で、またどういう戦略に基づいて決められたものなのかということを一つお伺いしたい。  それから、この十七兆円を実現していくためには、平成七年度の科学技術関係経費二兆七千億、これを年率一二%で伸ばしていく必要がある。それと、先ほどもちょっと議論が出ましたけれども平成八年度は、補正の千五百七十億円を入れて二兆九千六百七十七億円で、一一%増であった。それから、平成九年度の今の政府原案では、科学技術庁の取りまとめだと三兆二十五億円、当初予算に比して前年比六・八%、補正を含めた八年度予算総額との比率では一・一%増にしかなっていないわけです。全体が非常に厳しい中でよく頑張ったと、先ほどからそういう評価なわけでございますけれども、この計画を達成していくためにはかなり厳しいんじゃないか。あるいは、補正があるということであれば、最初から補正を前提とした当初予算というのは、これは特に政策経費ですから考え方としてはちょっと違うんじゃないかな、こんなふうに思うわけでございますが、このことについてどういう現状認識をされておるのか、それをまず最初にお伺いしておきたいと思います。
  45. 近藤隆彦

    近藤(隆)政府委員 お答えを申し上げます。  まず、最初の十七兆円ないしは対GDP比一%という問題でございますが、実は、政府研究開発投資の拡充につきましては、平成四年の科学技術政策大綱の議論の段階からいろいろな議論となってきた点でございます。特に日本におきましては、当時から、基礎研究について投資が非常に低い、そのために、特に政府研究開発投資を充実することが基礎研究の充実に意味があるだろうということから、何としてでも政府研究開発投資を大幅に強化したいということが議論となったわけでございます。それで、そのときに具体的な目標としまして、とりあえずといいましょうか、政府研究開発投資を倍増しようじゃないかということが議論となって、平成四年の四月に閣議決定されました科学技術政策大綱におきまして、「できるだけ早期に倍増する」ということが明記されたわけでございます。  これを踏まえておりまして、十七兆円という数字を考える場合に、今回の基本計画が、十年間を見越しまして当面五年間ということで、平成八年度から十二年度まで五年間ということでございましたものですから、平成十二年度に一つは倍増という数字を考えつつ、他方、主要先進国、欧米国におきまして対GDP比をずっと見ていますと、これは一つの参考でございますけれども日本が非常に低くて、特に自然科学系は低かったのでございまして、大体〇・八か九か一%という国が多いわけでございまして、それも一つの目標として使えるだろうということがありました。その両方から、平成十二年度におきまして、対GDP比で欧米主要国並みの一%前後という数字と、それから早期の倍増という両方を加味しまして、十七兆円という目標値を設定したわけでございます。  それで、御指摘平成八年度の本予算ないし補正の合計額と、平成九年度の政府原案におきましての合計をいたしますと、六兆円弱でございます。大変財政事情が厳しい中で、特に平成九年度の予算案におきましては、一般歳出全体が対前年度比一・五%増に対しまして六・八%増という政府全体の科学技術関係経費の伸びでございますけれども、十七兆円という目標から比べてみますと、まだ平成十年度、十一年度、十二年度と三年間で十一兆円の確保が必要ということでございまして、大変厳しい目標というふうに考えております。  それで、このような厳しい財政状況の中でございますけれども、できましたら補正予算の機会も含めて、最初から補正予算ということではないわけでございますけれども、補正予算の機会も含めて、関係省庁の協力を得まして政府全体の研究開発投資の充実を図っていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。     〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕
  46. 井上義久

    ○井上(義)委員 なぜこういうお話をお伺いしたかというと、私は、欧米に比べて基礎研究が立ちおくれている、ところが最近は応用開発研究技術についても比較優位が失われつつあって、非常に危機感を持っておるわけでございます。  日本の国は、国土も狭隘でありますし、見るべき資源もない、唯一あるのは知的資源、これはもう無尽蔵である、したがって科学技術創造立国という国家戦略を立てた、これはもう大変私は高く評価しているわけでございます。二十一世紀の大競争時代、これを生き抜いていくためには、この科学技術創造立国、これはどうしても国家的な戦略目標として実現をしていかなければいけない、こういうふうに思っておるわけでありますけれども、今お話がありましたように、いわゆる財政再建ということがもう一方で非常に緊急な課題になっておるわけでございまして、この財政再建が本格化してくると、例えばことしについても、全体が一・五%の伸びの中で六・八%の伸びを確保した、大変頑張った、こういうことなわけでありますけれども、もし本当にこの十七兆円をやろうということであれば、これはこの程度で満足していたんじゃとてもおぼつかないわけでございます。今、補正予算というお話もありましたけれども、先ほども言いましたように、政策経費最初から補正予算で見込むというのは、これは、それだったら予算出し直してきなさいと、ここで言ってもしようがないので、そういう指摘だけしておきます。  やはり民間でありますと、生き残るために限られた予算というものを効率的に配分する、そのためにリストラをやる、それからスクラップアンドビルドをやる、こういうことをやって生き残り策を図っているわけでありますけれども、私は政府も全く同じであるというふうに思うわけでございます。大臣、閣僚の一員でございますから、やはり政府予算というものを、一つはリストラする、それからもう一つはスクラップアンドビルドをきちっとやるということ、これをやりませんととても目標の達成はできないわけでございます。  ところが、相変わらず予算は、例えば公共事業事業別のシェアを見てもほとんど変わらないという現状の中で、しかもパイはかつてのように大きくなるわけではない。パイの分け前をふやしていけばいいという理論じゃなくて、もう全く考え方を抜本的に変えないとこの実現はできないのじゃないか。閣議でこれを決定したわけでありますから、やはりそういうきちっとしたコンセンサスをつくっていかないとこの予算というものは実現できない。もしこれが本当にできないと、日本科学技術創造立国というお題目を唱えているけれども、現実はそれが実現できないということになれば、日本は大きく立ちおくれてしまう、そういう危機感を持っているわけでございます。  本来は総理に申し上げなければいけないことなのでありましょうけれども、大臣、閣僚の一員でございますので、その科学技術予算十七兆円、これを絶対確保していくのだということ、それから、そのためにはそういうリストラあるいはスクラップアンドビルドというものを方針として明確にしていかなければいけないのだ、こういうことについて、大臣の御決意なり所信なりをお聞かせいただければと思います。
  47. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 ただいま御指摘の件につきましては、私もこれは大変重要なことだなと感じております。  したがって、私は、第二回の閣議後の閣僚懇談会におきまして、総理以下全閣僚のいる中で、特に私が預かっている科学技術関係の例えばエネルギー問題一つを取り上げても、これは本当に国の政治全体から見てやっていかないと解決できない問題であると。例を挙げて何だかと思うのでありますが、例えば沖縄の基地問題にしましても、こういった問題というのは日本の将来にわたる重要な問題でございますから、やはり政治全体から見てやらないと、今の沖縄問題のような格好になきにしもあらずというようなことを憂慮いたしまして、私はその点を強く閣僚懇談会で申し上げました結果、過般も総理から、通産省と一緒になって、ひとつプルサーマルの問題なんかも、この内閣議了解した件につきましても、よく立地県の知事さん方と話をするようにというふうに総理みずからも言われましたので、私も初めて科学技術庁長官として通産省に出向きました。  そして、もう今、行革というさなかにおいて、縦割り行政というものをできるだけなくさなきゃならぬ、ですから、両大臣が一緒になってやるなんということは前例がなかったそうでありますが、私はもうそんなことを言っている暇は今日本にないということで、これからの、例えば御指摘の十七兆円の規模にしましても、今財政構造改革等を見たときに、そう簡単なものではないということになればなるほど、やはり政治と国民の理解というものがなければこれは推進できません。  そういった意味で、御指摘のように心をさらに新たにしてこれから取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。
  48. 井上義久

    ○井上(義)委員 この問題はまた別な機会にやりたいと思いますが、今の大臣の御決意をお伺いいたしまして、我々も応援団の一人でございますから、ぜひしっかり頑張っていただきたい、こう思います。  それから、研究費がこれまでに比べて非常に潤沢になってきたということで、これは非常に喜ばしい限りでございますけれども研究費が幾らあっても、その研究インフラ、研究を実際にやる環境というものがやはり充実してきませんとお金が有効に使われない、こういうことがあるわけでございます。私も理工系の出身、工学部の出身でございまして、友人、知人に研究者も随分多いわけでありますけれども、やはり一つは、施設が非常に老朽化あるいは狭隘化しているというのがございます。それからもう一つは、研究支援者、研究を支えるスタッフの問題、この二つがやはり今後研究開発を進めていく上で非常に重要なのだ、こういうふうに思うわけでございます。  基本計画では、国立大学施設については、老朽化、狭隘化で改善が見込まれる千二百万平米、国立試験研究機関については八十万平米、これを調査検討を行いつつ計画的に整備を推進する、こんなふうになっているわけでございます。文部省についてはまた別な機会にお伺いしたいと思いますけれども、今のこの予算仕組みといいますか、要するに建物は建てるけれども維持管理にお金が出ないというのが国の建物の、といいますか、私は国立研究機関については余りよくわからないのですけれども、例えば大学を見てみますと、そういう維持管理費が出ないために、せっかくの建物が結局非常に耐用年数が短くなってしまって、むだも多いというようなことをいろいろ聞いたりしているわけでございまして、この施設整備ということは非常に重要な問題なのだというふうに思っています。  それで、文部省についてはまた別な機会に聞きますけれども、この国立試験研究機関約八十万平米、これが整備が必要な施設である、こんなふうに基本計画にうたわれているわけでありますけれども、この五カ年の十七兆円の計画で基本的にこれは改善されるというふうに見ていいのか。であるならば、例えば平成八年度、九年度、どういう形で具体的にこれが進められているのか、この辺を伺っておきたい、こう思います。
  49. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  施設整備ということにつきましては、老朽化、陳腐化対応ということのみならず、研究が高度化していく、それに対応するいわゆる研究環境というのを整えていくということからも大変重要な課題というふうに受けとめておるわけでございます。  確かに、基本計画策定当時におきましての一応のスクリーニングというものを建設省等の協力を得ましてやって、今の筑波の状態がどういうことであるのかというふうな概括的な調査を行ったのでございますけれども、もう少しその辺をきちんと調査を進めまして、建設省の一括計上分ないし公共投資重点化枠といったものも活用しながら、段階的に整備を進めていきたい、かように思ってございます。     〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  50. 井上義久

    ○井上(義)委員 先ほど質問しましたように、この十七兆円、五カ年という枠の中でこれが具体的に整備されるというふうに考えていいのかどうかということが一つと、それからフォローアップがどうなっているかということをちょっとお伺いしたいと思います。
  51. 青江茂

    青江政府委員 いわゆる観念的に申し上げますと、施設整備費というのはもちろん十七兆円というものの内数になっているわけでございますので、そういう中におきまして、先ほど申し上げましたように、もう少し実態というものをきちんと把握した上で、段階的に、計画的に進めていきたいということでございまして、陳腐化、高度化、こういったものの程度の問題をどこまで持っていくのかといいましょうか、そういったことというのもまだ十分に整理ができておらないということでございまして、もう少しお時間をいただけますればというふうに思ってございます。
  52. 井上義久

    ○井上(義)委員 これは国立研究機関ではないのですけれども、突然補正で予算がついて、早く計画を出せというので四苦八苦しているというふうなことも話として聞くわけでございまして、やはり計画をきちっと立てて、具体的にわかるような形で示していただくことが大事であるというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  それから、研究開発基盤の整備のもう一つの問題であります人的なインフラということで、いろいろな資料を見ますと、大体研究者日本は諸外国に比べて数としては多い。質の問題もあると思いますけれども研究者はそういう意味で足りているのかな、こんな感じはするわけでありますけれども研究者を支えるいわゆる研究補助者とか技能者とか、こういう支援者については現状は非常に厳しい。この辺についても基本計画でうたわれておるわけでありますけれども、この辺につきまして具体的にちょっと教えていただければと思います。
  53. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  支援者の問題というのは、日本の場合大変深刻と申しましょうか、諸外国が大体研究者一に対しまして一前後といったオーダーに対しまして、我が国の場合は〇・二七でございましたか、〇・三を切っておるというふうな深刻な状況にあるというふうに認識をしてございます。  そういうことでもちまして、基本計画におきましては、御案内のとおり、国立試験研究機関におきまして、研究者一人に対しまして支援者一、いわゆる一・一計画というふうに私どもはニックネームでつけておるのでございますけれども、そのようなことを目標に支援者の充実を図ってまいりたいと思ってございます。  具体的には、まず一つは、一昨年スタートしたのでございますけれども、重点研究支援協力員制度というのがございます。これは振興調整費でスタートしたのでございますが、要するに、いわゆる総定員法の枠組みの中ではこれは現実問題なかなか難しい。したがいまして、別途、研究支援に当たられるような有能な、いわゆる技能者と言われるような方々を雇い上げまして、そして重点的に国研の中に派遣をしていくという仕組みでございますけれども、この辺をもう少し充実させていきたい、こういうことが一つございます。  それから、研究費の中にそういう支援者というものを雇い上げるためのお金というものを順次埋め込んでいくといいましょうか、そういうことでもちまして、外部の能力というものを活用してその辺の充実を図っていくということでもちまして、資金面での手厚さというものを加えていくというふうなことと両方あわせまして、言ってみれば研究者一に対しまして支援者一というふうなものをできるだけ早期に達成をいたしたい、かように思ってございます。
  54. 井上義久

    ○井上(義)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。雑務に追われてなかなか本来の研究ができない、こういう声もよく聞くわけでございますので、充実をお願いしたい、こう思うのです。  それで、もう一つ。今おっしゃったのは、いろいろな施策で、研究費の中にそういうものを埋め込んでいく、これはこれで大事なことだと思うのですけれども、もう一つは、技能者そのものがいなくなっているのじゃないか。  例えば、試験、検査なんかでもかなり高度な技術が必要とされておって、そういう技術者であるとか、それから、私の友人に義肢装具を中心にして福祉機器を研究している研究者がいるわけですけれども、要するに機械加工とか電気加工とかそういうことをやる人がいない、一生懸命、予算はあって募集するのだけれども、そういう細かな具体的な作業をする技術者がいない、こういうことを非常に言っているわけでございまして、かなり計画的にそういう技能者、技術者というものを一方では育てていかないといけないのじゃないか。そのためには、やはりそういう技能者を育てるということ、例えば処遇とか社会的な認知とか、そういうことをきちっとやっていかないと、この辺は非常に厳しいのではないかというふうに思っているのですが、それについて具体的な対策がありましたら。
  55. 青江茂

    青江政府委員 まさに先生指摘のとおり、かつては大学にも、それから例えば理化学研究所というところにもいわゆる工作室という部局がございまして、非常に有能なといいましょうか、もうガラス細工をつくらせたら名人と言われるような人が結構いた、そこが非常に先端的な研究というもののかなりの部分を支えておったというふうな実態がございます。その辺が確かに散りつつあるというふうな状況だというふうに私ども受けとめてございます。それにどう対応していくのか。確かに、先ほど申し上げましたようないわゆる数をそろえるといったことだけで十分かといえば、そうではない。これはちょっと小さいのでございますけれども、理化学研究所にまだある程度の伝統が残ってございまして、そこへ一種のトレーニングコースのようなものを、数は少ないのでございますけれども、そういういわゆる技能を受け継ぐ人を受け入れまして、そして今育てている、そういうふうな試みも今やっておるわけでございますが、もう少しその辺を規模を大きくしていくといったことも一つ検討課題ではないかなというふうに思ってございます。
  56. 井上義久

    ○井上(義)委員 かつては日本の独壇場だった技能オリンピックなんか、そういう選手がだんだん東南アジア諸国に移っているというようなことも聞いているわけでございまして、今まではいわゆる工業を支える技能者という意味で、その辺はだんだん生産の形態が変わってきていますから必要なくなってきていると思うのですけれども、それに対応して、実は科学技術研究というところはそういう手仕事というところが大変なわけでございまして、別な角度で、研究支援者を育てるという意味でのちゃんとしたプログラムが必要なのではないか、こういうふうに思いますので、この辺についてはぜひ具体的に検討して計画を立てていただきたいと思います。よろしくお願いします。  それから次に、競争的研究資金の拡充ということについて。これは戦略的基礎研究推進事業平成七年度からスタートして、大変期待をしているわけでございます。  いろいろ状況を聞きますと、この戦略的基礎研究推進事業平成七年度、これは採択予定五十課題に対して応募が千三百五十件で二十七倍だった。八年度は、採択予定四十課題に対して応募が千百三十一件で二十八倍であったという。私どもが想像する以上の大変な高倍率でございまして、どうも研究者はやはり研究資金については飢餓状態にあるのかな。そういう意味で、これはますます充実していかなければいけないな、こう思っているわけであります。  予算は単年度でやっていきますから、毎年採択の件数がふえていくとそれだけ予算がふえていかなければいけないということになるわけでございますし、特に、一件大体五年ということになっておりますから、五年後にピークが来るんだと思うのですけれども、大体どの程度この事業の規模というものを考えていらっしゃるのか。毎年五十件くらいずつふやしていくという基本的な考え方でいいのかどうか。これは非常に研究者は関心のあるところでございますので、よろしくお願いします。
  57. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  確かに、戦略的基礎研究推進事業をスタートしましたところ、まさに御指摘のような三十倍に近いような競争率ということで、研究者からの熱い期待とでも申しましょうか、そういうものをひしひしと感じたというところでございます。  これは、平成七年の補正からスタートした段階でもちまして五十一億、それで八年度が百五十億、そして九年度原案におきましては二百四十億という予算を計上させていただいておるというわけでございます。これをどの段階まで持っていくのかというところでございますが、確かに、私どもはすだれというふうに呼んでおるのでございますが、こういうふうに五年で順次立ち上がっていくということになりますと、一種の立ち上がりピークというのは想像がつくわけでございます。これは資金的な規模というのはもう少しいろいろな幅があろうかと思うわけでございますが、せめてテーマ的には五、六十といったテーマをきちんと拾っていけるような体制にまで、まず第一段階持っていきたいなという希望を持ってございます。
  58. 井上義久

    ○井上(義)委員 五、六十というテーマは、そのテーマについて今は大体六件から八件くらいになっていますね、それぞれのテーマについて。こういうくらいの規模でというふうに考えていいのですか。
  59. 青江茂

    青江政府委員 さようでございます。
  60. 井上義久

    ○井上(義)委員 そうすると、これは科学技術庁の科学研究費の中で比率を相当高めていかないといけないことになると思うのですけれども、競争的研究資金について。そういう考えでいらっしゃるということですか。
  61. 青江茂

    青江政府委員 先ほども申し上げましたように、基礎研究を推進するための仕組みというのは私どもいろいろ持ってございまして、それを多角的に運営していきたいと思っているわけでございますが、この戦略的基礎研究推進事業は、そういう幾つかの仕組みの中の基幹的な仕組みといたしまして位置づけ、育てていきたいと私どもは思ってございます。そういうことからいたしますれば、資金的なウエートと申しましょうか、そういうことの側面におきましては今先生おっしゃったような形になろうかというふうに思ってございます。
  62. 井上義久

    ○井上(義)委員 それで、この事業の具体的なシステムについてお伺いしたいのですけれども、今、基礎研究の重要な戦略的な事業というお話があったのですけれども、いわゆる戦略目標というのを立てて、それに基づいてテーマを決めていらっしゃるというようなことを伺っているのですけれども、具体的な仕組みをちょっと簡単に御説明いただけますか。
  63. 青江茂

    青江政府委員 この戦略的基礎研究推進事業の基本的な枠組みでございますけれども、まず、いわゆる戦略目標というものを、これは科学技術庁行政庁が、科学技術基本計画を含めまして諸般の情勢というものを勘案いたしまして、こういうものをなし遂げるのだといいましょうか、攻め落とすのだというものを設定いたします。  例えば、一例で申し上げますと、いわゆる環境の低負荷型の社会というものを実現していくのだ、こういうふうな行政的な側面からの目標というものを設定いたします。そういうことになりますと、その目標というものを攻め上げるには、科学技術というサイドからどういうふうな研究というものを積み上げねばならないのかということでもちまして、重要な領域というものがおのずからある程度固まってくる。そこのところを実施母体でございます振興事業団が詰めてまいります。その辺の、いわゆる重要領域というものの将来的な科学の発展といいましょうか、そういったことにつきましては、当然のことながら、当該分野に非常に専門的知見の深い方々、有識者の方々の意見というものを聞いて、その将来性というものも勘案するということでもちまして、行政庁が決めます戦略目標と、それに脈絡をきちんと持った形の重要領域というのが決まる。それでもって内容的にはこういう方向をということが整理がされますので、それに対しまして、その分野というものの言ってみれば統括をお願いする方、いわゆる研究統括をお願いする方を、その領域におきまして一番適切な方というものを招聘いたしましてその分野というのを見ていただく、そしてセレクションの中心にもなっていただく、こういう仕組みになってございます。
  64. 井上義久

    ○井上(義)委員 この研究領域、事業団がこれを決めるということなのですけれども事業団がやるといっても、これは国民の税金でございますから、やはり国民的なコンセンサスが得られるものになっていないといけない、こう思うわけでございます。具体的にこの研究領域を決めるときの仕組み、どういう形で決めていらっしゃるのか。
  65. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  基本的には、先ほどのいわゆる戦略目標との脈絡ということでもってある程度の、おのずからの限定というのは当然あるわけでございますが、それの中でどう重点というものを絞り込んでいくのかということにつきましては、当然のことながら外部の有識者の方々の御意見というものもお聞きする。  同時に、振興事業団の中には法律に基づきます審議会ができてございまして、そこに付議をいたしまして、そこには各界の有識者の方が集まっていらっしゃる、そういうところでもって御議論をいただく、これが一つございます。もう一つ上には、科学技術会議のもとに、特殊法人等における新たな基礎研究推進制度に関する懇談会、これは森先生に座長になっていただいてございまして、各界の有識者の方々にお集まりをいただいている。これは、私どもの戦略的基礎研究推進事業のみならず、各省庁のそういう特殊法人への出資金を活用しての基礎研究推進事業、これを一括して見ていただいてございまして、そこで多角的な御議論をいただいている。そういうふうな御意見というのも踏まえつつ決まっていくというところでございます。
  66. 井上義久

    ○井上(義)委員 この有識者というのは例えばどういうような方々で、それはオープンになっているのでしょうか。
  67. 青江茂

    青江政府委員 先ほど触れました、振興事業団の中に法律に基づいて設置されてございます新技術審議会のメンバーでございますけれども、これはオープンになってございます。
  68. 井上義久

    ○井上(義)委員 それで、あと、いわゆる採用の仕組み、これを簡単にちょっと御説明ください。
  69. 青江茂

    青江政府委員 セレクション、いわゆる採択でございますけれども、先ほども申し上げましたように、三十倍に近いような競争率でございますが、重要な領域ごとに統括をお願いをしてございます。そこにプラスアドバイザーということでもちまして、数人から大体六、七人のその関係の有識者の方々にお願いをしてございます。その方々に選考というものをお願いをしておる。  まず公募にかけますが、公募にかけて、いわゆる計画書が上がってまいります、それを書類審査いたします。書類審査の段階である程度、相当振るい落としますが、それで残ったものにつきまして面接を行います。研究統括プラスアドバイザーの方がずらりとこちらに並びまして、一人十五分でございますがプレゼンテーションをさせた上で、ディスカッションをやります。それで、こちらのアドバイザーを含めた七、八人の方々の総合採点によりまして採択というものを決定していくということになってございます。
  70. 井上義久

    ○井上(義)委員 統括の方はオープンになっておるようでございますけれども、この統括を選定するのは、どこで選定しているのでしょうか。
  71. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  振興事業団の方にお願いをしてございます。振興事業団においてなされます。
  72. 井上義久

    ○井上(義)委員 このアドバイザーという人はどこで決めていらっしゃるのでしょうか。
  73. 青江茂

    青江政府委員 同じく振興事業団において選定がなされます。
  74. 井上義久

    ○井上(義)委員 アドバイザーはオープンになっていないのですね。これはオープンにした方がいいのじゃないか、こう思うのですけれども、どうなのでしょうか。
  75. 青江茂

    青江政府委員 実は、アドバイザーの方につきましてはオープンにしてございません。選考の事前にオープンになってまいりますと、いろいろな雑音と申しましょうか、そういったものが入ってくるというふうな配慮をいたしまして、現段階におきましては事前にオープンにいたしていないという事情にございます。
  76. 井上義久

    ○井上(義)委員 逆にまた、オープンになっていない分だけ逆な雑音も入ってくるわけでございまして、どうも、アドバイザーが決まると、大体アドバイザーで結果的には採択される研究、何といいますか、公募された研究が決まってしまうのじゃないかというふうに思っているというか、考えていらっしゃる方もいらっしゃるようであります。それから、最初だからしょうがなかったかと思うのですけれども、逆指名があったというようなこともちょっと伺ったりしているわけでございまして、それは実際はどうかわかりませんけれども。  逆に、やはりこれだけ大事なことですから、競争的と言っているわけですから、できるだけオープンにして、なぜ選ばれたのか、どういう人が選ばれたのかということを情報公開していくということは、特に予算がこれからふえていくわけですから、非常に大事なポイントじゃないかな、こんなふうに思うわけですけれども、その辺はどう考えていらっしゃいますか。
  77. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  確かに、選考過程におきましての透明性ということにつきましては、先生指摘のような改善余地があるのではないかと思ってございます。  当初段階におきまして、先ほどのような事情でアドバイザーの方を事前に公表しなかったということなのでございますけれども、現実問題、よく考えてみますと、面接試験をやっておるわけでございますから、その方々はどういう方々かというのはほぼ公知の事実になっておる。それを公表もしないというのもやはりちょっとおかしいかなというふうな感じも持ってございます。少なくとも事後にきちんと公表していく、そして、いわゆる選考の過程というものをある程度明らかにしていく努力というのは必要じゃないかというふうに思ってございまして、検討させていただきたい、かように思ってございます。
  78. 井上義久

    ○井上(義)委員 こういうことを申し上げるのは、選考過程の透明化ということと同時に、やはり選んだ人の責任もきちっと明確にしていかないといけないんじゃないか、こういうふうに思うのですね。選ばれた方の研究者は、これは、例えば論文発表とかいうようなことである程度の評価はできるわけですけれども、今度は選んだ方の評価というのは、どうも恣意的だったんじゃないかというようなことが言われないようにしなければいけないと思います。それから、やはり評価も明確にしていかなければいけない、こういうふうに思うわけでございまして、ぜひオープンにしていかれた方がよろしいんじゃないか、こう思います。  それと、最後になりますけれども研究評価ですね。特に、これだけ予算がふえてきますと、国民的な関心といいますか、やはり評価というものが当然これからクローズアップされてくると思いますので、この研究評価ということについて、戦略的基礎研究推進事業における評価と、それからもう一つは、基本計画でも平成八年度中に大綱的指針を出すというふうにうたってありますので、これの進行ぐあい、この二点、ちょっとお伺いします。
  79. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  選考の段階でいわゆる事前評価というものがなされるわけでございますけれども、その節目節目におきまして、いわゆる公開のシンポジウム、研究成果というものを公開でもちまして発表していくという形でもって、一種のピアレビューというものがきちんと働くようにしていく仕組みというものは考えられてございます。  それから、大変申しわけございません、後者の点につきましては、ちょっと聞き漏らしたのでございますが。
  80. 井上義久

    ○井上(義)委員 大綱を示していただくことになっているので、その進行状況をちょっと教えていただきたい。
  81. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 時間が参っておりますので、簡潔にきちんと述べてください。
  82. 近藤隆彦

    近藤(隆)政府委員 御指摘のとおり、科学技術基本計画におきましては厳正な評価実施することが決められております。  まず、私どもとしましては、科技庁に関しましては、来年度から早速、附属の各国立試験研究機関評価につきまして外部評価の導入をしたいと思っております。  また、研究開発課題及び研究開発機関につきまして評価をする場合に、国の研究開発全般に共通します評価実施方法のあり方につきましての大綱的指針、こういったものを、平成八年度中に結論を得ることを目途としまして検討をし、つくるということにされております。  現在、これらを実施するため、科学技術会議におきまして政策委員会のもとに研究評価指針策定委員会というものを設けておりまして、昨年十月以来八回、もう既に会合をしております。この委員会におきましては、評価が透明性のある、しかも公正な形で行われまして、実効性を持つようになるよう留意しながら、指針の内容について鋭意検討を進めている最中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  83. 井上義久

    ○井上(義)委員 ぜひ第三者、いわゆる外部からの評価ということがきちっと明確になるようなものにしていただきたい、そのことを要望いたしまして、質問を終わります。  以上でございます。
  84. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時二十四分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十四分開議
  85. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。笹木竜三君。
  86. 笹木竜三

    ○笹木委員 新進党の笹木竜三です。質問を始めさせていただきます。  最初に、先ほどから、科学技術基本法を踏まえて今後の科学技術振興にかかわる質問がいろいろ出たわけです。十年を見越した五年の計画、あるいはその先、長期も見越した科学技術振興、これはもちろん非常に重要なことだと思いますけれども、一般の我々から、あるいは国民から考えたら、そういう中長期のことと同様に、科学技術振興がそのまま我々の身近な生活にも反映して役に立っていく、そのことにもさらに力を発揮してほしい、こういう思いが当然ございます。  それで、まず一つ目でお聞きしたいわけですけれども、私の住んでおります福井県で、御存じのようにロシアのタンカー漂着の事故がございました。これについてお聞きしたいわけですけれども、ひしゃくですくうとか手で一生懸命小石とか岩から油を取っていく、こういった作業をしながら、もっと何とかならないのかと、みんな思うわけです。こういった事故に対して科技庁はどのような事業をされているのか。あるいは他の省庁でもいろんな事業をされていると思います、これにかかわるような。そういったことについてどのように調整の役割を果たしておられるのか。その二点についてお答えいただきたいと思います。
  87. 落合俊雄

    ○落合政府委員 ただいま、ロシアのタンカーでございますナホトカの事故につきまして御質問がございました。  科学技術庁といたしましては、御承知の、前半部分と後半部分、前半部分が福井県三国町に流れついたわけでございますが、船の後半部分につきまして、科学技術庁傘下の海洋科学技術センターが持っております海洋探査装置を使いまして、隠岐諸島の北東百四十キロの地点におきまして、水深二千五百メートルですが、この深い地点でナホトカを見つけ出し、その状況がどうなっているかというような状況の把握を行いまして、その情報をすべて、油の流出状態、それから破断した船首部との破断面がどうなっているかというような情報につきまして運輸省に提供いたしました。  今後、後半部分の事故対策といいますか、流出しているであろう油の対策につきましては、今提供した情報が今後運輸省の事故対策の中で生かされてくることを期待をいたしておりますし、さらに事故原因の調査につきましても、破断面の情報というものが相当大きくこれからの、特にロシアとの交渉等々につきまして役に立つのではないかという期待をしているところでございます。     〔委員長退席、田中(慶)委員長代理着席〕
  88. 笹木竜三

    ○笹木委員 例えば、科学技術振興調整費により実施している課題のいろんな項目を見ますと、原油汚染海浜の光・生物化学的浄化技術に関する共同研究、これは通商産業省が担当省庁になっていますけれども、それとナホトカ号油流出事故による環境影響に関する緊急研究、こういうようなものが挙げられています。  具体的には科技庁としてはどのようにかかわっておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  89. 落合俊雄

    ○落合政府委員 ただいま御指摘ございました平成八年度科学技術振興調整費の緊急研究で約二千万円強を用意いたしまして、今回のナホトカ号の油流出にかかわります海洋汚染の状況等々についての基礎的なデータの調査、収集等を既に行っております。  この中におきます科学技術庁の役割でございますが、関係する省庁が多岐にわたります。例えば運輸省、農林水産省、環境庁等々でございますが、これらの研究につきましての全体の統括を科学技術庁でやらせていただいているという状況でございます。
  90. 笹木竜三

    ○笹木委員 具体的に言いますと、その統括というのは、この二つの研究に即して言いますとどういうようなことをされておられますか。
  91. 落合俊雄

    ○落合政府委員 具体的に申し上げますと、実際の研究は、研究委員会を特に学者の先生方を中心といたしまして組んでいただいておりまして、それらにつきましての総合調整というような役割が中心でございます。
  92. 笹木竜三

    ○笹木委員 例えば、船首部分の油の抜き取りがもうほぼ終わったであろうと言われてから一週間たって十八日、また油の漂着が三国の隣の町で起こっております。どこから来たんだ、海面ではほとんど見えない、恐らく底にたまっていた油が浮かんできて漂着したんだろうと言われています。こういうことを見ますと、砂浜あるいは岩浜の海岸でも、危険でなかなか油を取りに行きにくい場所もあります。  何回も新聞、テレビ等でこの期間中報道もされていますけれども、アメリカなんかであるいはヨーロッパでもかなり使われている、海岸そのものあるいは海そのものを浄化していく、きれいにしていくバイオスティミュレーションですか、もともといるバクテリアに栄養分を与えて、それで浄化をしていく。これはアメリカが、エクソン・バルデイス号の事件の一カ月後には実地の実験をして、三カ月ぐらいでかなり効果があったということで、その後対象範囲を広げて、その後メキシコ湾の事件でもこれを使っている。ヨーロッパでも使われています。  こういったことをどうして日本で、例えばこれはアメリカの役所が主導してやっていたわけですけれども、どうしてアメリカと共同で日本で早速実験を行わないのか。ひしゃくですくったり手で取ったり、こんなことばかりやっていたわけですけれども、せめてこの後、海岸と海そのものの浄化については科学技術の力をぜひかりたいと思うのが普通の国民の実感だと思うわけですが、このことについては何かされていることはありますか。
  93. 落合俊雄

    ○落合政府委員 海岸に漂着いたしました油の除去につきましては、私ども実は直接担当をいたしておりませんで、運輸省なり環境庁なりの仕事としてやっていただいております。  今先生指摘のバイオを使った分解というようなものにつきましては、既に通産省で研究に着手しているというようなことでお聞きをいたしているところでございます。
  94. 笹木竜三

    ○笹木委員 非常に遅いので、これは時間がたてばたつほどさらに固まっていく、もう皆さん御存じのことだと思うわけですけれども。  このことに絡めてお伺いしたいわけです。先ほどから何度も話題になっております科学技術基本法、これは我々も一緒になって、超党派で議員立法で通したわけですけれども科学技術振興、これを願っているわけです。各省庁で予算を使っていくことになります。十七兆円という予算も各省庁で使っていくことになる。科学技術会議の事務局を担当している科学技術庁はどういう調整機能を果たしていかれるのか。そのことについて、具体的な調整機能、例えば科学技術関係予算を各省庁が申請をしていく、その過程でどういうような調整を科学技術庁がされているのか、お答えいただきたいと思います。
  95. 落合俊雄

    ○落合政府委員 科学技術関係経費を各省庁として要求をするわけでございますが、科学技術庁といたしましては、各省が大蔵省に予算要求を出す前、どのような予算項目について要求を出すのかということを各省庁から聴取いたしまして、幾つかの省庁で内容についての重複その他がございましたら、それを科学技術庁として調整をいたしまして各省からの要求に反映をさせる。さらに、通常八月末が概算要求時点でございますが、各省が概算要求を出した後、各省から改めてヒアリングをいたしまして、それにつきましての意見書を、見積もり調整意見書という表現でございますが、これを科学技術庁としてまとめまして、大蔵省及び制度官庁である総務庁等々に対しまして、科学技術庁としての意見を付して、その予算の査定の作業に資するという作業をやっていただくというような調整を行っております。
  96. 笹木竜三

    ○笹木委員 きょうはほかの点でも時間を使って質問したい項目があるので、余り長くはやりませんけれども、ぜひその予算の執行に当たっても、チェックというか、あるいはもりと強い調整機能を果たしていただきたい。基本法を通した我々の気持ちは、どこの省がとかどこの省がとか、そんなのは関係ありません。全体の科学技術研究振興と、そして生活に役立つ、このことを願ってやっているわけです。どうも、その最初の法律を通したときの気持ちからすれば、相変わらず縦割りでやっているなというのが率直な実感です。ぜひそういうことを意識していただきたいと思います。  ついでに、もう一点だけ具体的な例で。阪神の大震災の後、これも縦割りで、国土庁がやる、気象庁がやる、文部省がやる、科技庁がやる。研究もそれぞれやっている。この縦割りを超えて共通で、例えば、地震の予知はもちろんですけれども、起こった直後に、どこに一番被害が大きくなるか、それを早く類推がきくような、そういうシステムはつくれないのか。例えば地盤のデータを入れる。あるいは活断層のデータを入れる。あるいは建っている建物についてのデータを入れる。GISですか、国土庁が一部やっている。あるいは気象庁か文部省でもいろいろな研究をやっている。科技庁もあの震災の後に、リアルタイムの研究ということで若干始められました。その後、どういうような調整機能を果たしておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  97. 落合俊雄

    ○落合政府委員 ただいまリアルタイム地震防災という話がございました。確かに、阪神・淡路大震災の大きな教訓の一つといたしまして、地震発生時の危機管理というものをどうするかというのは非常に大きな問題であったと思います。地震が発生した場合、即時に情報伝達を行いまして、地震災害時の対応の充実を行うというようないわゆるリアルタイム地震防災体制でございますが、これは私どもとして、地震災害を最小限に抑えるという観点から極めて有効なものであるという認識をしいたしております。  例えばアメリカにおきましても、従来から、大学ですとか自治体等がリアルタイム地震防災について熱心に取り組んでおりまして、我が国といたしましても、気象庁、自治体、民間等におきましてこのリアルタイム地震防災の考え方の開発を行ってきたわけでございますが、科学技術庁におきましても、横浜市が現在計画しておりますリアルタイム地震情報ネットワークシステムの整備事業に対しまして補助を行っておりますし、さらに、科学技術振興調整費などによりまして積極的な取り組みを行っているという状況でございます。  なお、このリアルタイム地震防災の取り組みについての将来の可能性を探りますために、来月でございますが、横浜市と共同でシンポジウムを開催いたしまして、情報交換、意見交換を行いまして、これらの各機関の方策との連携を図ることといたしているところでございまして、私どもといたしまして、本件につきましては、各方面と連携をしつつ積極的に取り組んでまいりたい、そのように考えている次第でございます。
  98. 笹木竜三

    ○笹木委員 地震が起こった直後から、私も予算委員会とかこの科学技術委員会で何度も、南カリフォルニアのCUBEシステム、そういうことを意識して質問させていただきました。大体その方向でいろいろ連携がとられ始めているなとは思いますけれども、今言った国土庁のGISのシステムですとか気象庁、あるいはさらに、実際地震が起こって、運輸省のユレダスとか、いろいろな機能があります。そういったところとも連携したシステムをつくることをぜひ早く開始していただきたい、そう思っております。  それと、最後にちょっとこの件について大臣にコメントをいただきたいわけですけれども、先ほどの海とか海岸の油の浄化、あのことについてなんですけれども、結局、ああいう事故が起こった場合に、条約もOPRCを結んだ、閣議決定もされた、他の国からいろいろ援助をもらうことも、いろいろ何回もセミナーとか専門家会議で話し合いをしていた、しかし担当の窓口が全く決まっておりませんでした。あるいは、他の国からああいった事件に対して援助を受ける、協力を受けるときの担当の窓口とマニュアルもできておりませんでした。  何をお話ししたいかというと、今言ったバイオの技術を使ったことにつきましても、アメリカのこれにかかわっている専門家が何度か連絡をしたというけれども、幾つかの省庁に電話を回されて、結局、具体的な話にはならなかった、そういうお答えもありました。  ぜひ、さっき言った、せっかく科学技術基本法を通して、科学技術会議で事務局を持って日本全体の科学技術振興を図っていかれるわけですからざらに強い調整機能を果たしていただきたい、リーダーシップをとっていただきたい、そう思うわけですけれども長官に一言コメントをいただきたいと思います。
  99. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 けさも閣議の前に関係閣僚会議が開催されまして、今御指摘のように、現在、運輸省がそれの中心になっておりますけれども、これはやはり、ああいった事故が発生しますと日本の各省庁が、縦割り行政とはいうものの、本当に連絡を密にして、一刻も早くああいったものを処理するための総合的な力を発揮できるような仕組みというものをこれからも考えていかなければならぬな、このように思っておりまして、委員指摘の点については私も十分にこれからも留意しなければならぬことだな、このように思います。
  100. 笹木竜三

    ○笹木委員 次に、原子力発電所の問題についてお伺いしたいわけですけれども、今回、プルサーマルについて中長期的に推進することを強く打ち出した、そして閣議の決定もされて、三県の知事に対して大臣が申し入れもするということが行われました。今、このプルサーマルをさらに強く打ち出して中長期的に推進すること、この方針はどうして打ち出されたのか、そのねらいについてお答えいただきたいと思います。
  101. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 プルサーマルにつきまして、今回、閣議了解がございましたけれども我が国といたしましては、原子力発電所から出る使用済み燃料につきましては、それの中に含まれております残りのウランとか新たにできておりますプルトニウム、そういうものを回収して再利用する、それを政策の基本としているわけでございます。  そのプルトニウムを利用する場合に一番効果的なものは高速増殖炉ということでございますが、高速増殖炉の実用化は二〇三〇年ごろというふうに予定されておりまして、まだこの数十年間は高速増殖炉の利用ではなくて、既存の軽水炉で使おうということでございます。これが、原子炉を特に改造せずにそのままプルトニウム燃料を入れられるということで行われるわけでございますが、その方針は既に、前回の長期計画に入ってございますし、その以前からの長期計画にも入ってございまして、以前からプルトニウムは軽水炉で利用しようという方針は変わっておりません。  今回、プルトニウムの軽水炉利用の話がなかなか地元で進まないということがございまして、三県知事からの話もございましたので、この際改めて政府として方針を明確にしたわけでございますが、プルサーマルにつきましては従来からの方針として進めている次第でございます。
  102. 笹木竜三

    ○笹木委員 資源エネルギー庁の方も来られているかと思うのですけれども、同じ質問をさせていただきたいと思います。従来からの方針どおりで別に変わったことがない、それでよろしいわけですね。
  103. 伊沢正

    ○伊沢説明員 ただいまの科学技術庁答弁にもございましたように、我々も同じような認識を持っておりまして、従来からプルサーマル計画を進めるつもりで準備をしてまいりました。これは、先ほどの説明にもありましたように、高速増殖炉が二〇三〇年以降になるということでございまして、それまでの間、プルトニウム利用の柱として位置づけてまいりました。  今回、「もんじゅ」の事故がありまして、核燃料サイクル全体につきまして不透明感が漂ってまいりまして、いろいろな意味で信頼を回復する、そういう観点もございましたので、それからまた近々の課題としてプルサーマルが非常に大きな問題となってきたこともありまして、もう一度総合エネルギー調査会でも再整理させていただきまして、今回閣議了解もしていただいたということでございます。
  104. 笹木竜三

    ○笹木委員 若干、科技庁の方のお答えと資源エネルギー庁の方のお答えは違うように思いますけれども、この後いろいろ質問させていただきたいと思います。  それで、まずお聞きしたいわけですけれども核燃料サイクルにしましても、あるいはこのプルサーマルにしましても、原子力の燃料であるウランは限りがある、そのためにウランを有効に使う、あるいは節約する、そういった目的もこのプルサーマルに強くあると思うわけですけれども、ウランについて、これはこの総合エネルギー調査会の原子力部会の中間報告書にもいろいろ書いてございます。  その二十三ページを見ますと、「旧ソ連崩壊等により旧共産圏からのウランも国際市場で供給されるようになったこと等の供給要因により、ウラン需給が従来の予想よりも軟調に推移しており、」「量的な観点からは二十一世紀中葉までは十分な埋蔵量が存在するとの見方が多い。」こういったことも書いてあります。お答えいただきたいわけですけれども、今ウランが全世界でどのぐらいの埋蔵量を有しているのか。それと、それを全世界で消費する、原子力発電所で消費していく、その需要量で割ると大体何年ぐらいになるのかについてお答えいただきたいと思います。
  105. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 世界的なウランの埋蔵量につきましては、OECDとIAEAという国際機関がそのデータを収集しているわけでございますが、そのデータによりますと、一九九五年の世界のウラン資源の確認埋蔵量は約四百五十一万トンでございます。これは、ある程度確認ができている、あるいはある程度経済的に採鉱可能であろうという数字でございますが、それを現在の年間のウラン需要量で割りますと約七十三年という計算になりますので、可採年数は約七十三年と申しております。
  106. 笹木竜三

    ○笹木委員 七十三年ということでしたけれども、さらに、これを仮に今話題になっているプルサーマルでずっと回していくと、ウランの節約はどのぐらいになると思うかということについて。
  107. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 プルサーマルでは、ウラン235のかわりにプルトニウムを使うわけでございますが、そのようにして使った効果としまして、結果的に二五%ぐらいのウランの節約になるということでございます。
  108. 笹木竜三

    ○笹木委員 普通の、今の需要量で割ると七十三年で、さらにプルサーマルによって今お話があったような節約ができるというお話です。七十三年が八十年になるのか、あるいは九十年まで可能なのかわかりませんけれども、そういうお話でした。  さらにお聞きしたいわけですけれども、この軽水炉でのプルサーマルの技術の向上で、このウランの節約の度合いがさらに向上する可能性はあるのかないのか、お答えいただきたいと思います。
  109. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 いずれにせよ、ウラン235とかプルトニウム239が燃える量が発電量に関係しますので、プルサーマルのその辺の技術的な、量的なことによっては余り変わらないのではないかと考えております。むしろ、ウラン238をプルトニウムによく転換するような炉型にいたしますならば、それは当然効果が、FBRは一番効果がございますし、そういうようにプルトニウムを転換を図るような炉になりますと、そこは節約が可能かと思っております。
  110. 笹木竜三

    ○笹木委員 今お聞きしましたように、今のままで大体七十三年、プルサーマルで回していくとさらに節約ができる、さらに技術の向上でさらなる節約も可能というお話でした。  ここでちょっとまたこの中間報告書のことについてお聞きしたいわけです。資源エネルギー庁の方にお答えいただきたいわけですけれども、例えば「大規模な投資を必要としかつ長期にわたって展開する事業については、将来的な不確定要素を勘案しつつ進めていくことが必要であり、」云々、「チェック・アンド・レビューを行いその必要性や進め方を見直していくことが適切である。」こういった表現が幾つかあります。  これは具体的には、この核燃料サイクルなんかの大規模な投資、大規模なプロジェクトについてのチェック・アンド・レビュー、これはどういう要素、どういう点からのチェックなのか、具体的にはどういうようなことをイメージして書かれているのか、お答えいただきたいと思います。
  111. 伊沢正

    ○伊沢説明員 ただいま委員から御指摘ありましたように、総合エネルギー調査会原子力部会の答申におきましては、特に大規模な投資を必要としまして長期間かかります核燃料サイクルの事業につきまして、さまざまな観点からチェック・アンド・レビューが必要だという指摘をいただいております。  この背景には、これまで核燃料サイクルにつきましては大きく分けて二つの批判がございまして、一つは、世の中、エネルギー情勢が変わってもなかなかそのテンポに調整しないのではないかという観点からの御批判と、それから、特に地方の自治体から見ました場合に、いろいろ事業を進めてきて最後の段階で急に政策を変えてしまうのではないか、そのような御批判があったわけでございます。ですから、こういうことも頭に置きまして、長期的な観点から進める事業につきましては、その節目節目で、どういった形で今後進めていくのがいいのかについて議論すべきではないのかという指摘だと受けとめております。  したがいまして、ここにも、答申にも書いてございますように、技術的に見てリードタイムがどのぐらいかかるのかとか、その時々のエネルギー情勢をどう見るのかとか、さらにコストはどうなるのかとか、そういったさまざまな面から、透明性を確保しながらチェック・アンド・レビューをしていただくことが重要ではないかと思っております。
  112. 笹木竜三

    ○笹木委員 世の中のテンポになかなかついていっていない面もあるというのは、これは経済的なコストのことなんでしょうか。
  113. 伊沢正

    ○伊沢説明員 一つは、やはりエネルギー情勢であると思うのです。オイルショックが二度にわたって起こりましたが、その段階でなかなか将来のエネルギー確保が予測できなかったという点。さらに、今御指摘もございましたように、コストの面も重要な要素であると思っております。
  114. 笹木竜三

    ○笹木委員 ここでまたお伺いしたいわけですけれども、この核燃料サイクルの目的はウラン燃料の有効利用だと思っているわけです。例えばこのウラン燃料の有効利用ということで、先ほどプルサーマルはさらに技術向上の可能性もあるということについて質問させていただきましたけれども、こういったウラン燃料の有効利用ということからさらに新たないろいろな技術的な向上、技術開発、そういったことが行われた場合には、現在の核燃料サイクルの最初から最後までの流れ、これは当然変わっていくことはあり得る、そう考えてよろしいのでしょうか。まず資源エネルギー庁の方にお聞きしたいと思います。
  115. 伊沢正

    ○伊沢説明員 現在我々が進めています核燃料サイクルはかなり長期の視点に立って行っているものでございまして、二十一世紀中葉まで見通した形で行っております。我が国エネルギー情勢を勘案しますと、アメリカやカナダといった国と違った我が国の事情を考えていきますと、時期のずれが多少あるかもしれませんが、大きな流れの中では、日本にとってやはりエネルギー確保の努力というのは必要だと思っておりますので、基本的考え方は変わらないと考えております。
  116. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 今答弁ございましたように、核燃料サイクルにつきましては、再処理をして、長期的にはプルトニウムを高速増殖炉で利用するというのが一つの流れでございまして、そういう概念につきましては変わらないと考えております。
  117. 笹木竜三

    ○笹木委員 今お二人の方にお答えいただきましたけれども、この報告書自体一月二十日に出されているわけです。これは総合エネルギー調査会原子力部会が出しているわけですけれども、今お話しになった資源エネルギー庁の方と科技庁の方のお答えは、一般的な常識で考えれば、この原子力部会の部会長の認識と当然一致しているということでよろしいのですね。
  118. 伊沢正

    ○伊沢説明員 エネルギー調査会原子力部会長の個人的な御意見、その他の場での御意見はつまびらかにしておりませんが、少なくとも、この部会をまとめるに当たりました原子力部会長の立場というのは我々は理解しているつもりで御発言させていただきました。
  119. 笹木竜三

    ○笹木委員 いろいろな資料で見させていただきますと、かなりニュアンスは違うと思います。いろいろな新しい技術開発があれば、ウラン燃料の有効利用ということで、その観点核燃料サイクルというのは考えていくべきだ、そういったような発言もされておられます。  ちょっと話を転じまして、先ほど同僚の議員から、核融合、ITER、この質問がありました。ITERの誘致、ぜひ日本で行っていただきたいと思いますし、積極的に取り組んでいただきたいと我々も思っておりますけれども、この核融合は、今からITERを誘致して研究を進めていこう、建設も進めていこうとしているわけですけれども、いつぐらいに実用化し得るのか。いろいろな考え方があると思いますけれども、お考えをお聞きしたいと思います。
  120. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 ITERにつきましては、ただいま工学設計の段階でございまして、これから建設の協議を進めるわけでございます。日本に誘致したいという非常に力強い言葉をいろいろいただいておりますが、これも国際的な事業でございますので、国際間の話し合いというのが第一にあるかと思います。  そういう話がまとまりますと次は建設という段階になるわけでございますが、実は、今回のITERにつきましてもまだ実験炉と申しますか、技術的に熱が取り出せるというところをねらっているわけでございまして、さらにその先には原型炉と申しますか、電気を取り出すというような過程もございます。それからさらに実用のものというのもございますので、非常に長期の時間がかかると思っております。     〔田中(慶)委員長代理退席、委員長着席〕
  121. 笹木竜三

    ○笹木委員 長期、具体的にはどのぐらいでしょうか。
  122. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 着実に研究開発が進みますと、二十一世紀半ば以降に何とか貢献できるのではないかということでございます。
  123. 笹木竜三

    ○笹木委員 うまくいかなかった場合はわからないということでしょうか。
  124. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 あくまでもこれは開発要素がございます。それから、コストがどれぐらいのものになるかということもございますので、その辺は研究開発の成果を見てからになるかと思います。
  125. 笹木竜三

    ○笹木委員 今一連の質問をさせていただきましたのは、ウランの埋蔵量ということで七十三年ぐらい、プルサーマルでさらに節約が可能で、さらなる技術向上でさらに節約も可能だ。そうしますと、例えば二十一世紀の後半とか終わりぐらいまで大丈夫だという考え方もあるかと思います。ここの先はいろいろな議論があると思います。それで、このことについては先ほどお話ししました。この部会に入っておられる方の中でもいろいろ議論がある。今の核燃料サイクルの流れ、それを構成するいろいろな流れ、これについても大きな変更があり得るかどうか、そういうことについてもいろいろな議論がある。  ぜひ大臣にお答えいただきたいわけですけれども、先ほど同僚の議員からATR、新型転換炉、これについて原子力委員会が、当然必要な技術である、研究である、しっかりと続けていくんだ、その報告をした約一年後に、原子力委員会がみずから、やはり新型転換炉は取りやめにするという発表をしました。先ほど同僚議員が言っているように、何でもかんでもこういった報告書で発表される、方針が決められる、あるいは変更される。それで、この委員会では常にそれを単に文句を言ったり追認したり、その議論だけをしている。  科学技術の大きなプロジェクトで、予算もたくさん使うわけですけれども長官がしっかりとリーダーシップをとる、あるいは国会が。科学技術基本法制定するときに議論がありました。国会の中に、大きなプロジェクトについて役所任せだけではなくてしっかりと評価をする機構をつくろう、組織をつくろう。今もそういった議論が続いているみたいですけれども、こういった議論もございます。  政党の代表として、与党の代表として長官をされているわけですけれども、ぜひこういった問題について、報告書任せではなくてしっかりとリーダーシップをとっていただきたいと思っております。一言コメントをいただきたいと思います。
  126. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 高速増殖炉は、限られたウラン資源の利用効率を飛躍的に高めることができることから、核燃料サイクルの中核を占めるものであり、その意義は重要なものと理解しております。  「もんじゅ」も含めた将来の高速増殖炉開発のあり方につきましては、先般原子力委員会に設置した高速増殖炉懇談会にて幅広い検討が始まったところでございます。  私は、原子力委員会委員長としまして、本懇談会の精力的な検討に期待しておりますし、懇談会の成果は今後の原子力政策に的確に反映させてまいりたい、このように思います。
  127. 笹木竜三

    ○笹木委員 次に、使用済み燃料のことについてお聞きしたいわけですけれども、この中間報告書の中にも、大体二〇一〇年ごろをめどに発電所外での貯蔵も可能となるような所要の環境整備をしていくというふうにあります。それまでは、二〇一〇年までは既存の原子力発電所の敷地内でこの使用済み燃料を貯蔵する。その量がどんどんふえていく。場所によっては敷地の拡大を図る必要もあるところが当然出てくる。プルサーマルで発生する使用済みMOX燃料も同じように扱っていくというように書いてあります。  ここでお答えいただきたいわけですが、先般長官も三県の立地自治体の知事にプルサーマルについての申し入れをされました。基本的にそれは三県の自治体の知事から合意を得たというふうに認識をされておられるのか。それともう一つ、今現在ももちろんこの使用済み燃料はサイト内に貯蔵されているわけですけれども、これが二〇一〇年まではどんどんふえていく。そのことについても、二〇一〇年に本当にサイト外にそういった貯蔵の場所ができるのかどうか。はっきり約束されているわけじゃございませんけれども、それまでどんどんふえていく、それで敷地内の拡大も知事の合意を得られたとお考えなのかどうか、長官にお聞きをしたいと思います。
  128. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 三県知事に対しましては、大臣から、通産大臣とともに、二月の十四日に先ほどの閣議了解について説明し御協力を求めたところでございます。その協力の内容は、プルサーマルとか先ほどの使用済み燃料の問題がございます。  その場で三県知事からは、これまで行いました国の努力、それにつきましては評価していただいておりますが、地元の御了解をとるにはまだまだ一層の努力が必要でございますので、それにつきましては国の方に、今後とも国も一生懸命に努力してほしい、そういう要請があった次第でございます。
  129. 笹木竜三

    ○笹木委員 二〇一〇年ごろをめどにと書いてあるわけですけれども、逆に言うと実現できないかもしれないよということなのでしょうか、サイト外での貯蔵。そこら辺はなかなか保証できないということなのでしょうか。
  130. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 それは、そういうものが目途でございますので、それに向けて最大限の努力をしていくということでございます。
  131. 笹木竜三

    ○笹木委員 過去に、第二再処理工場の建設計画、ここら辺も最初計画が変更された、そういったこともございます。立地の自治体としてみれば、そこら辺がはっきりと保証されないでサイト内にどんどん使用済み燃料がふえる、これは勘弁していただきたいというのが当然の考えです。  それと、先ほど、これから手続を経てそういったことの合意に努力すると言われましたけれども、具体的にはどういうことをされるのか、もしあればお答えいただきたいと思います。
  132. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 使用済み燃料のサイト外貯蔵の問題でございますが、それにつきましては、この三月にでも、通産省、電気事業者、それから我々で検討会をつくりまして具体的な計画検討を始めたいと思っています。  それからなお、使用済み燃料につきましては、我が国では全量を再処理するということでございますので、それが基本でございますので、タイミング的には少しずれるかもしれませんが、いずれにせよサイトからは運び出す、そういう前提でございますので、地元の方々にも御了解いただくよう努力してまいりたいと思います。
  133. 笹木竜三

    ○笹木委員 もう時間が来ましたので、最後に長官に一言だけ。  前半でお話ししました、しっかりと政治のリーダーシップをとっていただきたいというお話。それと、こういった報告書、よくまとめられているとは思いますけれども、こういったものだけでその都度方針が決められたり変わったり、それで実行されていく、非常に危うい気がします。この報告書を見ても幾つか感じるところがございます。今それに即して質問もさせていただいたわけですけれども、これで方針が決まって国民的合意も得られたのだというふうな考え方じゃなくて、ぜひしっかりとさらに吟味を、長官自身もそういった動きをお願いしたいと思っております。  それと、二〇一〇年ごろをめどにサイト外の貯蔵という表現があるわけですけれども、ここら辺についてはもう少し明確に、具体的に立地の自治体に対して約束をしていただくことが必要かな、そう思っております。コメントいただきたいと思います。
  134. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 ただいまの御指摘の点につきましては、私も全く同じ考え方に立っております。したがって、先ほども政府委員から答弁ありましたとおり、三県知事を初め、さらに全原協、すなわち全国原子力発電所所在市町村協議会というのがありますが、そういった首長さん方ともこの間大臣室でお会いをいたしました。そして、やはりこれからはどうしても国民的合意形成にさらに政府が一丸となって努めなきゃならぬな、これなくしてエネルギー確保というのはあり得ないというようなことを痛感しておりますし、そのためには情報の公開、そういったふうなことにさらに徹底して努めなきゃならぬな、このように思っておりまして、ただいま委員指摘のようなことにつきましては、今後十分に留意しながら行政に携わってまいりたい、このように思います。
  135. 笹木竜三

    ○笹木委員 質問を終わります。
  136. 佐藤敬夫

  137. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。  先日伺いました大臣の所信の中に、「国民生活に密着した科学技術の推進」の項目の中で、「健康の維持・増進、生活環境の向上などを図るために、がん関連研究、ヒトゲノム解析などを総合的に推進して」いくという条項がございます。それで、本年度の科学技術庁予算を拝見いたしますと、この趣旨に沿うものとして、健康の維持・増進の費目の中でがん関連の研究について百二十四億四百万円の予算づけがなされている。それに関連して、重粒子線等がん治療について八十六億五千五百万円、また粒子線高度がん治療促進研究施設、これは重点化枠の要望となっておりますけれども、九億円という予算づけがなされているようであります。  これだけ医学あるいは科学が発達しているにもかかわらず、がんの克服ということはなされていない。そして現在の死因として、がんによる死亡というのが非常に大きな割合を占めているということも御案内のとおりだと思うのですね。したがいまして、このがんの克服が科学的に、医学的にできるということになれば、これはもう大変な朗報だということになるわけでありまして、それだけに恐らく科学技術庁は、従来からのがん治療の方法としての放射線治療、このことを念頭に置きながら、厚生省と関連の上でこういう研究を進められ、これだけの予算も組んでいると思われるわけですけれども、この予算がどういうところでどのように使われて、現在どういう施設で研究あるいは実際に治療まで行われているのかどうか、その辺のことについてまずお尋ねをしたいと思います。
  138. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 がんの治療の中で放射線による治療のところでございますが、放射線によりますがんの治療は、手術をする必要もないし痛みも伴わない、そういうことで患者のクオリティー・オブ・ライフと申しますか生活の質、それを維持する有効な治療法として当庁の附属の放射線医学総合研究所において行われてきております。  今そこで行っております重粒子線、これはヘリウムを含めもう少しく大きな原子核でございますが、粒子線では、従来の放射線に比べまして、まずがんに対する殺傷能力が強い、それからまた副作用が少ない、そういうことから、政府の対がん十カ年総合戦略や、今回新たにできましたがん克服新十カ年戦略の柱の一つとして位置づけられてきております。  現在、その放射線医学総合研究所におきましては、医療専用の重粒子線がん治療装置としては世界でただ一つでございますが、HIMACと申しておりますが、それを用いまして平成六年六月からがん治療の実際の、臨床試行と申しておりますが、それを実施しております。その成果は、半年ごとに開かれます専門家の会合において評価されているところでございます。一番最新の評価は昨年の九月に行われたわけでございますが、それも百四例の患者について検討が行われました。その結果、他の治療法では見込みのなかった多数の例で腫瘍の縮小が観察されるなど、おおむね良好な経過をたどっていると評価されております。  なお、重粒子線治療は本年二月までに約二百三十例の患者に対して適用されております。なお、三月中旬には次の半年の評価が出ると思いますので、また新しい結果が出ると思います。  以上でございます。
  139. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 お話しのように、科学技術庁の附属機関として、これは千葉県の稲毛でしたか、放射線医学総合研究所というのが置かれているわけですね。ここで今のお話のような研究あるいは治療の試行というのですか、こういうことが行われているということですけれども、この重粒子線によるがん治療装置、HIMACというお話がありましたけれども、今のお話だと、これはまだ新しいわけですね。三年ぐらいということですか。これが従来の放射線治療と違うところについては、今、殺傷能力が強いというお話があったのだけれども、もう少し砕いて言うとどういうことになるのか。  実は、この装置などについて、研究所の平尾所長さんが前にたしかテレビに出られて解説されているのをちょっとかいま見て、そのときには何か、もっとわかりやすく言えば、つまり、従来の放射線治療に比べると深部まで照射ができて効果があるんだ、そして、従来の放射線では人体に対する別な副作用などがあって心配されたのだけれども、その副作用は薄いというか、その懸念が少なくなるんだというような、かみ砕いたお話を聞いたような記憶があるのですが、そういうように理解していいのかどうか、その辺をもう一度お話しいただきたいと思います。
  140. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 従来の放射線、特にガンマ線とか中性子線ですと、照射いたしますと、体の表面から奥までずっと被曝をするわけですね。したがいまして、正常なところも被曝をする。ところが、この粒子線ですと、深さが十五センチぐらいのところへピンポイントに当たりまして、それまでの間は被曝と申しますか、作用が少ないものですから、がんのところだけがやられる。それで正常なところは余り問題がない。そういう意味で、副作用が少ないし、非常に効果が高いということでございます。したがいまして一体の内部のところ、頭の奥とか、普通の放射線で届かないところもよく届くという意味で、二重に非常にいいものと考えております。
  141. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 まだ試行をやっているそうですから、まだまだこれで足りるということではないのでしょうけれども、今までの試行例などと照らし合わせ、想定されるがんの治癒率というのですか、これはがんの程度にもよるのだろうと思うけれども、あるいはがんの種類などによってもその効果というのは違うのか。早期がんはこのごろ、胃がんなんかの場合に早期発見された場合などというのは、いろいろな医療法で割合治癒率が高いとも言われているわけですけれども、特に今の装置によってねらいとするところはどの辺のところなのか、どんな効果が期待できるのか、もう少しお話しいただけますか。
  142. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 本件は試行でございまして、どのような部位のがんにどのように効くかということを調べるために、いろいろなところからサーベイ的にやっているものですから、普通の病院のように中立という格好で出すには適当かどうかよくわかりませんが、どのような試行があるかという例を申しますと、現在二百三十一例、臨床試行しておりますが、頭頚部のがん、頭で脳を除いたところのがんでございますが、それが三十八例。一番多いのが肺がんでございまして、肺がんが四十四例。その次が先ほどの頭頚部のがんでございまして、三十八例。それからあとは脳腫瘍とか肝臓がん、前立腺がん、これが二十数例ということでございます。  以上でございます。
  143. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 いわゆる放医研、これはお聞きをしますと、設立されてからもう随分、数十年たっているわけですね。そこであらゆる放射線について検討され、その医学的な効果についても検討されてきたわけですね。  ところで、従来の研究の上でと思われますけれども、こういう世界にも類例がまだないというような新しい装置を、この重粒子による治療法の装置を三年前に開発をしてつくったということには、これはお聞きをしますと、この装置の建設費として三百二十六億という相当なお金がかかっているわけです。それだけ膨大なお金をつぎ込んでこれだけの装置をつくったということは、それなりに相当積極的な目的があって、あるいは意図を持ってつくられたに違いないと私は思っているわけなので、そういう点から考えると、まだ試行例が少ないから効果がはっきりしないというようなことではちょっと自信がなさ過ぎるのではないかと思うのですけれども、もう少し、そのねらいとするところをはっきり言っていただきたいのです。
  144. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 先ほど申しましたように、試行例が結構結果がいいわけでございまして、この重粒子ではございますが、同様の性質を持っている陽子で同じような治療をしようというものがございます。それですと、例えば厚生省のがんセンターにおきましても、今度は専用の治療施設でございますね、今の放医研は研究でございますので試行でございますが、実際の患者を普通の病院の手術と同じように治療する、そういう施設の整備も開始されているところでございます。  さらに、地方自治体では一部、そういう粒子線の治療の施設をつくろうという計画がございまして、兵庫とか静岡県におきましては、それぞれの病院の中にそういう粒子線の治療装置を置いて治療、まあ試行も入るかもしれませんが、治療の拡大に向けて努力を図る動きがございます。したがいまして、放医研におきます。そういう研究成果が全国的に普及するといいますか、広がりつつあるというふうに考えておる次第でございます。
  145. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 それから、そういう試行をする上で対象となる患者さんといいますか、これが必要なわけですね。この対象となる患者さんが、この治療というか、試行を受けるについては患者さんの同意は得られているのか。つまり、患者さんが自分ががん患者であることをわかっていて、その上でこういう試行の対象になることを了解されているのかどうか、その点はどうなんですか。
  146. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 患者の方でございますが、先ほど試行の評価をするということを申しましたが、そういうのは、重粒子線治療ネットワーク会議という会議がございまして、そこの会議でこういうプロトコルといいますか、規則をつくっております。そういう規則を患者さんも当然承知して、それから試行に乗ってもらう、そういうことになっております。
  147. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 それから、お話しのように、この研究所に附属する設備として、重粒子治療センターの建設が平成五年から行われてきた。それが今度完成されて、明日ですか、落成式があって、三月一日からこれがいよいよオープンになるというようにも聞いているわけです。  そうすると、この重粒子治療センターと、今のこの施設というか、重粒子線のがん治療装置との関連はどういうことになるのですか。
  148. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 先ほど申しましたHIMAC、重粒子線がん治療装置というのは、いわゆる放射線を発生してそこに患者を置く装置でございますが、当然患者は、病院といいますか、病室があったり、ケアをしなければいけません。今回できます重粒子治療センターというものは、病院、居室と申しますか、患者がふだん生活する、そういう感じが主目的のところでございますので、病院と治療装置、こういう感じになるかと思います。
  149. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 これが大きな効果を発揮できるということになりますと、これはもう大変に、がんの克服に大きな一歩も二歩も踏み出すことになると思うので、私は期待感が大きいと思うのですけれども、これががん治療に実用化されるのは大体いつごろをめどにしておられるのか。また、そういう他の治療機関、病院との関係、それから癌研などとも当然協力しておられるんだろうと思うのですけれども、そういうことの上で実用化されるのはいつごろになるかということを、お見通しを言っていただけますか。
  150. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 先ほどの放医研の重粒子線につきましては、研究施設でございますので、その実用化に際しましては、まず患者の試行の数をふやしてより正確なデータを得る、それから機器面につきましても、使いやすいものとか効率のいいものにする、そういう意味の開発はこれから必要かと考えております。  先ほど申しましたように、陽子線に基づきます治療は、既に厚生省のがんセンターにおきましても整備が開始されておりますし、地方の地域でもそういう動きがございます。したがいまして、陽子線の方につきましては、もう実用の段階に近づいているというところだと思います。  それから、先ほどの放医研の技術、平尾所長を初めHIMACをつくられた方々が、先ほどのがんセンターとか兵庫、静岡におきます。そういう整備につきましても技術的な指導をされておりますので、放医研におきます。そういう開発成果というのはすべてのところに貢献していると考えている次第でございます。
  151. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 私どもとしても期待をしておりますので、ひとつしっかりと研究をし、早く実用化できるようにお願いをしたいものだと思います。  実は、この後プルサーマルなどについてもお伺いしようと思っていたのですが、時間がなくなりました。後ほど辻委員が恐らくその辺もお聞きになると思いますので、譲りたいと思います。  ただ、最後に申し上げたいと思いますのは、政府の方ではプルサーマル計画、非常に積極的にお進めになるということで閣議決定もなされているわけですけれども、しかし、これについてはやはりさまざまな反応があるようです。特に、いわゆる当事県とも言われるような福井県あるいは新潟県の知事からは、相当慎重にというような御意見も出ているやに報じられております。それからまた、どうも、ヨーロッパの先進国などを見ますと、我が国のこの積極的な核燃料サイクル、リサイクルの方向とはむしろ違った、抑制的な態度をとつている国が多くなっているんじゃないかということも言われているわけですね。それだけに私はやはり慎重にやっていただきたいと思います。  そして、大臣の所信でも述べておられるように、科学技術というのは尽きることのない知的資源であって、世界の繁栄と平和に積極的に貢献するということはわかるんですけれども、しかし同時に、それを使う意図あるいは使い方によっては、それが一転悪魔の武器になってしまう。これはもう、原爆を初めとして武器技術などにおいて見るとわかることであるわけですから、そういうことにならないような科学技術というものを、やはり私ども考えていかなければならないのではないかと思います。  時間がありませんので大臣のお答えも結構でございますけれども、どうか大臣、その辺のことも十分にわきまえていただいて、これからの本当に平和で幸福のために役立つ科学技術ということで頑張っていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。
  152. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 辻一彦君。
  153. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、今お話のありましたプルサーマルの問題を中心にして、二、三質問いたしたいと思います。  まず、一月三十一日に出された原子力委員会の報告書、それから閣議了解事項等々を見ると、その中に、今日では最も確実なプルトニウムの利用方法はこのプルサーマルだ、こういうことがうたわれておるんです。  今まで原子力の長期計画は、昭和三十一年以来七回ぐらい改定をして、六十二年に改定をして、その後は平成六年ですね。そういう改定の中で盛られている内容をずっと見てみると、プルサーマルは今まで全くわき役であった、つなぎの役割を果たしておった、そういう評価であったんですね。ところが、突然今度は主役に躍り出たというか、それが中心になっている。だから、この変化をずっと見ると、かなりわき役が表へ出たという感じがします。  これは、考えてみれば、まずプルトニウムを使うところの一番大きな原子炉はFBR、高速増殖炉にあったし、それからまた新型転換炉、ATRがそうであるし、その新型転換炉も、今度は実証炉を大型のをつくって展開しよう、こういう構想があったわけであります。これは重水を使う原子炉でありますが、やはりプルサーマルといいますか、MOX燃料を使っている。しかし、これはコストが合わぬので電気事業業界が返上したいということで、ついに棚上げになってしまったんですね。  というように、考えてみれば、プルトニウムを使う予定であった新型転換炉、また高速増殖炉は、「もんじゅ」の一昨年暮れの例に見るように、これだけの事故が起きてインパクトを与えれば、これはもう開発は相当な期間、進もうとしてもおくれると言わざるを得ない。言うならば、この新型転換炉、そしてまた高速増殖炉の開発が行き詰まってきたという中で、プルトニウムを余らせてはならないという数合わせにプルサーマルは表に躍り出ているという感じが私はしますが、それらについてどういう見解を持っていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。
  154. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 お答えさせていただきます。  プルサーマルは、既存の軽水炉でプルトニウムの利用を行うものでありまして、新たなる発電設備への追加投資をほとんど伴うことがなく、ウラン資源の有効利用を図ることができるものであります。  また、プルサーマルは、欧米先進国において、一九六〇年代より着実に実績が積み上げられてきておりまして、諸外国における千六百体を超える実績、我が国におけるMOX燃料の使用実績、あるいは原子力安全委員会における検討結果などから、技術的に特段の問題はないと考えられまして、我が国においてもその実施段階に入ることができるものと考えております。  このような状況にかんがみ、プルサーマルは現時点で最も確実なプルトニウムの利用方法であると考えております。  このプルサーマルについては、現行の原子力開発利用長期計画も含め、従前より高速増殖炉の実用化までの主要なプルトニウムの利用方法として位置づけられているものでありまして、今般の閣議了解においては、それを改めて国の方針として明らかなものにしたものでありますので、御了承願いたいと思います。
  155. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それはそういうお答えになるんでしょうが、実態を見れば、これまではつなぎだったものが急に飛び出した、こういう感じが否めないんですよね。  それを裏づけるように、例えば一九九四年、平成六年の六月に長期計画を見直しをしていますが、このときには八十五トン使うというプルトニウムの需要を余りに多いという国際的な批判も考えて七十五トンに減らしました。そのときに、軽水炉のMOX燃料は大体二十トンから二十五トンを使う、こう打ち出しておるんですが、「もんじゅ」の事故の前、平成七年八月の時点において既にこの数字をかなり変えて、新型転換炉や増殖炉を大きく減らして、そしてMOX燃料は二十五トンから三十トン、そして海外から返ってくる燃料は、プルトニウムは全部MOXに加工するんだというので三十トン。だから五十五トンから六十トンというような膨大な、これはキロじゃないですよね、五十五トン、六十トンというような数字をMOX燃料に振り向けておるんです。確かに国際的には、このプルトニウムは今日の再処理の路線の中でやっていけば出てくるんですから、それが余ってはならない。だからFBRで、高速増殖炉で、新型転換炉でどんどん使うのがもうなかなか頭重くて難しいからMOXへといって、このMOX燃料のいわゆるプルサトマルの方にどんどんと量がふえていく。  私は、「もんじゅ」があれだけの事故を起こして、あの中でこの長期計画をこのままにしておくわけにはいかない、見直してしかるべきだと思うんですが、その数字も一体どう考えているのか、後でこれは伺うようにしますが、こういうことを考えると、長官の言われるように、初めからきちっと計画をして、もうこれしかないんですというようには話は展開されないんですね。そういう理解をするのは、よっぽどこれは特殊な人じゃないとなかなかそういう理解がされないという感じがします。それを前提にして、私は非常にプルトニウムの数字合わせの嫌いが強いということをまず指摘しておきます。  第二に、「もんじゅ」の事故後、去年の一月に、福井、新潟、福島の三県知事は連名で非常に重要な原子力政策についての提言を政府に対して申し入れている。これはもう御存じのとおりであります。その主なものは、一つは、「もんじゅ」の事故の原因を含む徹底的な究明をやるべきだ。第二は、原子力政策について国民の合意を形成しなくてはならない。三つ目は、原子力長期計画の見直しが必要である。こういうことを提言をして、プルサーマルの問題等はこういうことがきちっとやられてから考える問題であるというように言っておるんです。随分この計画は先行しつつあるように思いますが、この三県の知事があれだけの実態を踏まえて提言した中身は既に明らかにされたというように考えておるのか、それはどうなんですか。
  156. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 「もんじゅ」の事故を契機といたしまして、昨年の一月二十三日でございますが、福島、新潟、福井の三県の知事から、原子力に関する国民的合意の形成、核燃料サイクルの全体像の明確化等を内容とする御提言をいただきました。  そのうち、「もんじゅ」事故の徹底的な原因究明ということにつきましては、事故直後より鋭意調査を進めまして、今般、この二十日でございますが、報告書が取りまとめられまして、事故の技術的な原因の究明は終了したところでございます。今後、安全性総点検等を着実に進め、万全の対策を講じることとしております。  それから二点目、先生指摘国民合意の形成の点でございますが、昨年の四月から九月まで、原子力政策円卓会議を計十一回開催いたしました。その円卓会議では、一般の国民の方々、多彩な分野で活躍されている方々など国民各界各層の参加を得て多角的に議論をし、議事も全面公開のもとで実施されたわけでございますし、このほか、地域のフォーラムとか、通産省でも一日資源エネルギー庁等、地元における説明を精力的に行いまして、原子力政策に関する国民的な合意形成に向けて努力を図ってきたところでございます。  それから、長期計画の関連につきましては、今般の原子力委員会の決定におきましては、今後の核燃料サイクルの着実な展開に向けて、その進捗状況等を的確に把握し、必要に応じて適切な場において評価検討を行う、それらの結果については、現行長期計画の見直しをも視野に入れ適切に政策に反映していくものとされておるところでございまして、例えばFBR懇談会におきましても高速炉の問題をいろいろ議論しているわけでございます。  そのようなことで、一月末には原子力委員会決定、それから二月四日に閣議了解をいたしまして、二月十四日には両大臣から三県知事に御説明申し上げたところでございますが、三県知事からは、国の努力につきましてはおおむね評価しているとの御発言がございました。  したがいまして、プルサーマルについての合意の前提というふうには理解しておりませんが、いずれにせよ三県知事さん、地元の理解を得るためにはなお一層努力が必要である。国の努力も求められているわけでございますので、そのように国も努力していく所存でございます。
  157. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きょうは全体がそんなに時間がありませんから余り詳しくはやりませんが、指摘だけしておきます。  「もんじゅ」の事故解明、技術的にはそれは温度計の曲がりだとかいろいろ出ております。解明された点が随分とあると思いますね。しかし、もっと大事なのは、フランスはもうナトリウムのいろんな漏れが随分とあって、火災も起こし、火災対策も随分とやっている。公聴会も何回も開いて、そういう記録は全部科学技術庁の倉庫にも動燃の倉庫にもある、日本文にもなって。その中身を見たら当然対応しなくてはならないようなことが点検をされていないですね。それで慌てて去年の一月に動燃は現地を見に行って、ああ前から知っておりました、見てきました、こう言っておるんですね。  こんなことももっと、国民のあれだけの財産が重大な損傷を受けたあの背景には、まだまだやるべきことをやらなかったという面が随分とあるんですよ。そんなものが、事務次官や局長の減給ぐらいで問題は終わったというようなことは誤りであって、なぜそういう重大なフランス等の経験が生かされなかったか、生かされなかった責任はどこなんだということをきちっと報告書に書き上げて初めて報告書が完結するのであって、そんなものをもって報告が終わったというようにはとても私は思えない。しかし、この問題は次の機会に、「もんじゅ」問題についてひとつ限定してやりたいと思いますから、ここは指摘だけにしておきます。  それから、国民合意の形成でいろいろとやってきましたということですが、このプルサーマルを初めて日本に導入したのは昭和六十年ですかね、日本原電の敦賀と関電の美浜に二体と四体。それは、三百八の燃料体の中に二体とか四体を導入して、一、二年実証試験をやった。確かにやったことはやったわけでありますが、欧州あたりは千五百体からいろいろ試験をやっている。それに比べれば、それは物の数にはならないですね。しかも、六十一年にプルサーマルの試料を二体ほど導入するときに、敦賀市では、安全委員会検討した結果を原子力安全委員会のメンバーが敦賀へ来てちゃんと説明を聞きたい、こう言ったにもかかわらず、事前の説明は二回ほどやっていましたが、そのときも門前払いで、原子力安全委員会は出かけて説明もしていなかった。こういうことが過去に一、二回あったというごとで、もう心配ないんです、だからもうプルサーマルをやるんですよというようなことでは国民の合意形成はとてもできていないと私は思うのですね。  まず、FBRの懇談会、いわゆる高速増殖炉の懇談会をせっかく持ったのですから、高速増殖炉とプルサーマルはプルトニウムを挟んで一番縁が深いわけでありますから、ここでもう少しじっくりと各界の意見を聞いて、そういう中で合意をより形成すべきだと思いますが、FBR懇談会において、こういう問題について十分皆さんの声を聞いて論議をする用意があるのかどうか、いかがですか。
  158. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 FBRの懇談会におきましては、「もんじゅ」を含めました高速増殖炉路線、それをどうするか、どうあるべきかということを、先生指摘のように幅広い各界からの学識経験者に集まっていただきまして御議論していただいているわけでございますので、それはFBRに関係したところについての議論をさせていただきたいと考えております。  プルサーマルにつきましては、先ほど申しましたように、地元にそういういろいろな御不満がございましょう。そういうものは我々も出かけまして一生懸命御説明し、理解を得るよう努力したいと考えております。
  159. 辻一彦

    ○辻(一)委員 せっかくFBR懇談会をつくって、かなりプルトニウムに関心のある皆さん、経験のある皆さんが参加をされるのだから、プルサーマルも非常に縁が深いというか、プルトニウムを挟めば同じ問題なんですから、それはここのもっと広い意見を聞いて国民の合意を形成するという努力をしなければ、閣議了解がなされたから、これでもう国民の合意が形成されたなどと思うのは、これは私は尚早で誤りだ、だからさらに国民の合意形成に努力をぜひやってもらいたいと思います。  そこで、原子力の長期計画の見直しの問題が一つあるのですが、今言ったように、平成六年の六月二十四日に第七回の見直しをやって、そして平成七年の八月に需給計画についての見直しを若干しておる。しかし、七年の八月というのは「もんじゅ」の起こる年の夏ですから、「もんじゅ」の事故というのはその後に、十二月八日に起こっておるわけですから、あれだけの問題になれば明らかに高速増殖炉の開発は随分と後におくれざるを得ない。それで新型転換炉も余りめどが立たない。こうなれば、プルトニウムを中心とする長計、原子力長期計画の見直しは当然やって、そういう上でプルサーマルをという問題の出し方が当然であって、見直しもせずにこれからひとつ状況を見てやりましょう、それは、要するにほかで、増殖炉等で使えなくなった分は全部プルサーマルへ入れて、量を数字だけふやしていって、つじつまを全体として合わす、そんなのは簡単ですが、そういうことでは理解がされないと思うのです。原子力長計の見直しをきちっとやるべきというこの三知事の提言にどうこたえるつもりなのか。いかがですか。
  160. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 三県知事からの御提言に関します長期計画のことにつきましては、先ほどの原子力委員会決定におきまして、核燃料サイクルの着実な展開に向けて、その進捗状況を的確に把握し、必要に応じ適切な場において評価検討を行い、これらの結果については、現行長期計画の見直しも視野に入れて反映していこうということでございまして、これから、必要な事態に応じまして評価検討を行っていこうということでございます。  今回のプルサーマルの問題、それから使用済み燃料の管理の問題、これにつきましては現行の長期計画の方針と変わっておりません。我々は、その長期計画をより具体化した問題と考えておりますので、また新たにそのような検討の必要がありましたならばそういう検討を行いまして、新しい長期計画に反映していこうと考えている次第でございます。  なお、需給の問題につきましては、長期計画におきましては基本的な方針を定めておりまして、需給と申しますのはそのときそのときのものによって変わるかもしれませんが、いずれにせよ、余剰なプルトニウムを持たないという国際的な話もございますので、そういう考えのもとに進めてまいりたいと考えております。
  161. 辻一彦

    ○辻(一)委員 三県の知事は、原子力長計の見直し等がなされる、そういう上に立ってプルサーマルのことを考えましようと、この前、一月に言っているわけですから、だから三県知事が要請した中身にはなおこたえていない。そういうことを努力をしなくてはなかなかこれから難しいのではないか、そのことを指摘しておきたいと思います。  あと、大急ぎでちょっと二件ほど聞きますが、先ほどもお話がありました使用済み燃料のサイト内保管を一体どうするのかという問題があります。  御存じのように、福井県には十五の原発が幸か不幸かあります。問題の発祥地、発信地のようになっておりますが、とにかく毎日発電所が動けば使用済み燃料が出てくるのは当然なんですが、それをサイトの中にそれぞれ保管をして、何年かすれば満杯になって大変なことになるという状況にあるんですね。そもそもその使用済み燃料を水中に保管しているのは、熱を出した燃料体を水につけて冷やして、一定の冷却期間が過ぎたならばほかにちゃんと搬出するという約束になっておるのですね。しかし、受け取るところがなかなかないというので、これは随分とサイトにたまっている。それなら、そのサイトの中の保管の設備を増強してそこへ入れてくれというお話ですが、それはいつサイトから搬出をするのか、どうするのか、そういうことを明確にしなければ、今いかに自治体も国に協力しようと思いながらも、これはやるわけにはいかないと私は思いますね。  そこで、エネルギー庁のこの報告書も見ましたが、原子力委員会科学技術庁も一緒に、今、中間保管設備を場合によれば考えたいと言っておりますが、考えたいとか、何年ごろになればやりますというようなことではだめですよ。フランスなんかは、例えばスーパーフェニックスを見直すには、何年までにちゃんとやりますということをもう法律で決めて、退路を断って、その間に全力を尽くしておるのですね。それぐらいの覚悟がなければこういう難しい問題はなかなか解決をしない。  そういう点で、このサイト内の搬出をいつやるのか、中間保管施設をつくるならいつまでにそれをつくるのか、ちょっとその時期を明確にしていただきたい。
  162. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 我が国では、発生するすべての使用済み燃料を再処理するということを基本にしております。したがいまして、いつまでも使用済み燃料が発電所の敷地にとどまるということはございません。しかしながら、再処理するまでの間、貯蔵の長期化に対する地元の理解を得る努力をしなきゃいけませんが、適切に貯蔵していかなければいけないと考えている次第でございます。  いつまでにという話でございましたが、そのために、今回の原子力委員会決定におきましては、中間的な貯蔵と申しますのはサイト外の貯蔵のことだと思いますが、当面は原子力発電所において貯蔵能力の増強を図る、それも地元の理解を得て行っていく必要がございますが、さらに長期的な対応といたしましては、二〇一〇年を目途に発電所の敷地外におきます貯蔵も可能となるよう所要の整備を進めるということで今回委員会の決定もございますし、我々科学技術庁、通産省それから事業者から成る検討会を早急に、三月からでも開催いたしまして、その方策を早急に検討したいと考えている次第でございます。  法律でという話もございましたが、いずれにせよ、発電所内での貯蔵の長期化に対する地元の懸念に対しましては、再処理計画の着実な推進を図る、再処理工場に搬出するためには再処理計画の着実な推進が必要でございますし、先ほど申しました発電所外におきます貯蔵の検討促進するなどを通じまして理解を深めていただけるよう努力してまいりたいと考えている次第でございます。
  163. 辻一彦

    ○辻(一)委員 理解を深めるには、時期を明瞭にしなければ簡単に理解できないのですよ。十五の発電所が千二百万キロワットの容量を、毎日電気をおこすのだから、その使用済み燃料も随分たまっていくのですね。それをいつまでも抱えている不安をやはり原発の立地の住民の皆さんが持っている、このことをひとつよくよく頭に入れて、時期を明確にするということで、これは原子力委員会、エネ庁もよく相談をして、法律もしくはそれに準ずることによってきちっとやってもらえるように努力をしていただきたい。ちょっと一言、長官、いかがですか。
  164. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 ただいまの件は、過般の三県知事さんと私と通産大臣と一緒に懇談会を持ちましたときに、特に福島県の知事さんから今の問題を強く要請されました。したがって、今御指摘のとおり、この問題に対しては、やはりもっと具体的に示すことが国民からの理解を得られる、また、現在立地している各地方の方々の御理解を得るためにもぜひこれはもっと具体化すべきものである、このように私は理解しております。
  165. 辻一彦

    ○辻(一)委員 事務当局も、ひとつ長官の発言をよく踏まえて、具体的にきちっとやってもらいたいと思います。  それから、最後に一つ聞きますが、プルトニウムを使用済み燃料から抽出するときに、軍事的転用ができないような方法でプルトニウムを取り出す道がないのか。昭和六十一年に原子力委員会の方で、超ウラン元素と、ウランより重たい元素とまぜてこれを取り出せば不純物、不純というか、軍事的にはもう使えなくなる、こういう研究開発をやるということを原子力委員会が、六十一年であったと思いますが、今資料そっちにありますが、提起をしているのですね  プルトニウムは、そもそも出発点が軍事をねらいにして取り出したから、純粋度が高ければ高いほどいいというので、そういう方向のやり方が、その後の原子力発電所の使用済み燃料のプルトニウム抽出にも使われておるのですね。しかし、完全な平和利用なんですから、そんなに純粋じゃなくても結構なんです。プルトニウムがエネルギーの価値も持ち、しかも、今言った超ウラン元素等が、これも燃えるのがある。そういうものをまぜて取り出せば、こんなものからプルトニウムを軍事用に抽出するのは、もう世界で幾つかの高度の工業国家でなければ、それだけはできない。テロリストの国家が手に入れても、その工業力をもってしては、今言った超ウラン元素が入ったところからプルトニウムを抽出するのはできないと思うのですね。そういうような道を開発すれば、軍事転用に対する懸念は、この面では抑えることができると私は思うのですね。毒性とかいろいろ問題はありますが、それは別にして。  そういう点で、動燃では、三年ほど前ですね、だから平成六年ぐらいから具体的にこの問題の検討に入っていますが、どれぐらい開発検討のめどがつき、現況はどうなのか、将来の展望はどうか、ちょっと伺いたい。
  166. 井田勝久

    井田参考人 御説明申し上げます。  動燃事業団は、プルトニウムリサイクルの技術開発を進めておりますが、核不拡散への取り組み、これは大変重要であると認識しておりまして、技術システムとして、核不拡散性を強化する技術、これが非常に大事だ、こういうことで研究開発を進めているところでございます。  これは私ども、先進リサイクルシステム、こう呼んでおりますが、まず研究開発の現状について御説明申し上げますと、まずこれは再処理するわけでございますが、再処理の分野では新しい溶媒の開発が必要である、こういうことで新しい溶媒をいろいろ研究開発しておりまして、この溶媒を使いまして、東海事業所のCPFという施設がございますが、ここで、プルトニウム、ウランとマイナーアクチニドを一緒に回収する技術開発を鋭意進めているところでございます。また、ピューレックスフローシートの改良試験をフランスのCEAと協力して進めております。  また、これは次に燃料に成形加工しなければいけないのでございますが、マイナーアクチニドを含む燃料は極めて放射線が強い、こういう特性がございますので遠隔で製造する必要がございます。したがいまして、東海事業所の燃料開発部におきましては、これに対応するため、簡素で経済性向上をねらった新しい製造技術といたしまして、振動充てん法というような技術を今進めておりまして、これは、国内各機関、それからスイスのポールシェラー研究所、こういうものがございますが、ここと協力して進めております。  またさらに、再処理・燃料工程を一体化したプラントの概念設計検討を進めております。また、大洗工学センターでは、マイナーアクチニド燃焼のピン照射試験、これを進めまして、燃焼評価などの基礎研究に着手しているところでございます。  そういうことで、サイクル全体の研究開発、いろいろな要素技術がございますので、全体を着実に進めてまいりたいと考えているところでございます。  研究開発の規模といたしましては、全体で今、数十人の要員で年間約十数億円程度、こういうことでございます。  また、私どもとしては、こうした研究開発を進めるに当たりましては、やはり動燃だけではなくて開かれた研究開発体制でなくてはいけない、こういうふうに考えておりまして、このため、日本原子力研究所、電力中央研究所、大学の先生方、電力等と協力いたしまして、動燃の施設を活用して幅広く研究開発を進める、また海外では、フランスの原子力庁、スイスのポールシェラー研究所などと協力いたしまして、着実にこの研究開発を進めてまいりたい、このように考えているところでございます。
  167. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いろいろ聞きたいことはありますが、また次の機会にいたします。どうもありがとうございました。
  168. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 吉井英勝君。
  169. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、最初に「もんじゅ」の問題から伺いたいと思います。  一年余り前の「もんじゅ」事故の後調査に行きまして、特に私が非常に頭の中にひっかかりましたといいますか、注目をいたしましたのは、一九九二年六月にフランスのスーパーフェニックスの事故に対する調査報告書というのが出されておりまして、実はそれを思い起こしたわけです。  その報告書の中では、「高温下で水素放出が起こる可能性を否定することはできない。あらゆる爆発の危険を排除できるように、このような放出の大きさを制限する必要がある。」つまり、ナトリウム・コンクリート反応の後の水素爆発の問題について随分注目をしていたわけです。  それで、昨年の動燃における「もんじゅ」事故の再現実験ですね。ビデオも私は繰り返し何度か見ましたけれども、やはりライナーに、腐食が進んで穴のあいたところで、ぽこつぽこつと、時々青い火の玉のようなのが見えるのですね。それは水素爆発によるものなのか、あるいは、まだ検討不十分で、水素爆発とまでは決めつけてはいないが水素爆発の可能性のあったものと見ているのか、あるいは、もう少しさらにわからないということであれば、水素爆発の可能性を排除することはできないという見方をしていたのか、その辺のところから伺いたいと思います。
  170. 池田要

    ○池田政府委員 御説明申し上げます。  先生からただいま水素爆発についてお尋ねがございました。  そもそも水素爆発は、空間の全体に一定濃度以上の水素が蓄積してこれに着火をする、瞬時に燃焼する現象を指すわけでございまして、この場合の燃焼限界濃度というのは約四%と承知しております。  今、ナトリウム漏えい燃焼実験におきます観察結果についてのお尋ねでございますけれども、この実験の間じゅう、装置内の水素濃度は観察を続けてございました。実験中には、ほぼ二〇〇ppm、〇・〇二%程度で推移してございましたけれども、実験を開始しまして約三時間と二十分ほどたった段階では、一七〇〇ppm、すなわち〇・一七%まで上昇していることを確認してございました。この濃度は、先ほど申しましたいわゆる水素の燃焼限界濃度と言われております約四%という数字に比べましても十分低いものでございまして、私どもは、水素爆発が懸念されるような状態に至らなかったと考えてございます。
  171. 吉井英勝

    ○吉井委員 それは部屋全体の話を言っておられるのです。青い火の玉の出ているその部分に直接検出器を置いて、そこの濃度がローカルに非常に高まって爆発限界に入って、それで反応が起こつたのか、あるいは、それは検出できていないので、可能性としては排除できないという立場なのか、そこのところを聞いているのです。
  172. 池田要

    ○池田政府委員 確かに、この実験におきましてはライナーを損傷いたしました。穴があいたわけでございまして、ナトリウムとライナーの下のすき間にございました水分との反応、それから断熱材等との反応が起こった可能性がございます。そういう過程で発生しました水素が、ライナーの付近で燃焼した可能性はございます。ただし、その測定はしてございませんから、明確にこれが水素爆発と言えるものかどうかということについては断定できない状況にございます。
  173. 吉井英勝

    ○吉井委員 今おっしゃったように、水素爆発の可能性を否定はできなかったわけです。  私は、フランスのこの報告書と今回の最終報告を見ておりまして、あらゆる可能性についてきちっとした調査報告を行って、そして将来に教訓を残すというものでなかったら、これはちょっと最終報告とは言いがたいというふうに思うわけです。  それで、続けて伺いますが、この報告書の中で、ライナーのところの裏面温度、この資料、グラフもつけてありますから見ておりますが、普通の状態で大体八百度ぐらいに上がっていて、所によっては、三時間半後ぐらいのところで一千度とか一千四百度を超えるぐらいのところへ行っている。そういうデータが記録されたのではありませんか。
  174. 池田要

    ○池田政府委員 一部破損してございますから、そういった場所についてはそれだけ高い温度になったということを観測してございます。
  175. 吉井英勝

    ○吉井委員 破損して高くなったのはその千度とか千四百度の話で、通常八百度ぐらいになっているんじゃないですか。
  176. 池田要

    ○池田政府委員 この実験におきましては、大部分の時間は八百度から八百五十度Cで推移してございます。おっしゃるとおりでございます。
  177. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、私は改めて高速増殖原型炉もんじゅ設置許可申請書を読んでみました。その二次冷却系のところ、そこの解析結果というのは、「床ライナの最高温度は約四百六十度Cであり、設計温度五百三十度C以下にとどまる。」これが申請時の解析なんですね。この結論として、「十分に厳しい条件を仮定しても、」「床ライナの温度はいずれも設計値以下であり、その健全性が損なわれることはない。建物コンクリートの温度も過度に上昇することはなく、その健全性が損なわれることはない。」これが設置許可申請書です。これが出てきて、原子力安全委員会の方でいろいろ審査されたと思うのですね。この点について審査をされて、結論はどうなっていますか。
  178. 池田要

    ○池田政府委員 当時の安全審査におきましては、先生指摘のようなことで、ライナーの健全性についての確認をした次第でございます。
  179. 吉井英勝

    ○吉井委員 どういう表現をしていますか。この評価書全体についてでいいですよ。一言でぱっと言っているでしょう、この評価書全部について。
  180. 池田要

    ○池田政府委員 この審査書の結論の部分を読ませていただきます。  「漏えいナトリウムによる熱的影響については、流出・移送過程及び貯留後について、それぞれ、十分に厳しい条件を仮定しても、部屋の内圧及び床ライナの温度はいずれも設計値以下であり、その健全性が損なわれることはない。建物コンクリートの温度も過度に上昇することはなく、その健全性が損なわれることはない。」としてございます。
  181. 吉井英勝

    ○吉井委員 ですから、最初申請図書と昨年事故の後改めてやった実験結果とは、大体五百度以下だというのと八百度というデータは全然違うのです。三百度の差ですよ。六割以上も高い温度が出ているのですよ。しかも、ライナーは破損されているのですね。私は、一体この日本の原子力安全審査というのはどうなっているのか。これは大臣、ちょっと根本的に見直してもらう必要があると思うのですよ。  つまり、こういう審査書が出てきて、これをさらっと読んで、読んだだけで判断してオーケーと出すのか、それとも独自に調査検討も加えて、独自の審査を行っていく。ダブルチェック、ダブルチェックとよく言葉ではあるのですけれども、全然ダブルチェックになっていないですね。  だから、審査をしようと思ったら、審査をするだけの人とか体制とかやはりきちっとした、アメリカの原子力規制委員会のような、そういう体制をきちっととらないことにはできない。今の体制では、これは丸読みして、丸々認めて判こをつくだけ、これが安全審査では、これは国民にとって「もんじゅ」のような事態は、何度でも起こるのじゃないかと思わざるを得ないと思うのです。  ですから、大臣、一言で結構ですから、やはり今のこういう審査のあり方については根本的な見直しをする、これが今回のこの結果報告書を読めば、素直にまじめに読めば出てくる結論だと私は思うのです。そこのところ、大臣からお答えしてくれますか。
  182. 池田要

    ○池田政府委員 ただいま先生からの御指摘でございますけれども、「もんじゅ」の事故におきましては、床面のライナーにつきましては、確かに、ナトリウムが漏えいしました結果、七百度ないし七百五十度という、当初の安全審査におきます温度とは違った温度になった次第でございます。  ただし、事故におきましても、床の六ミリほどの厚さのライナーにつきましては、一部一ミリほどの減肉はあったものの、健全性は保たれたという次第でございました。  ただいま御指摘のございましたナトリウムの燃焼実験につきましては、今回の報告書でも明らかにさせていただきましたように、「もんじゅ」の設備とは相当に違った状況で行われたものでございます。狭い空間をコンクリートで囲って実施したものでございますから、結果的にはコンクリート自身が非常に加熱された、水分も多く放出されて、これは「もんじゅ」の事故に比べましても違った反応が起こったということにつきましても見きわめた次第でございます。  なお、ただいま先生指摘のような当初の安全審査と違うじゃないかという点につきましては、このような知見を踏まえまして、当初の安全審査で確認しました建屋の健全性等が、今回の原因究明の過程で得られました新しい知見に照らしても、安全評価上大丈夫と言えるのかどうかといったことにつきましては、今後行政庁としましても審査を検討するつもりでございますし、安全委員会におきましても、昨年の九月の段階で、この旨、二次系のナトリウム漏れにつきましては安全評価を行うべしという御指摘もいただいております。このようなことで、安全性についてはしっかり見きわめてまいりたいと思っております。
  183. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 ただいま局長からも答弁されたわけでありますが、今の御指摘の点を聞いておりまして、なぜ温度がああいうふうに違った結果において出てきたかなということに対して、私もちょっと考えるところがございますので、今後庁内で、今局長が答弁されましたように、将来のこともありますので、これに対しては十分に論議してみたい、このように思います。
  184. 吉井英勝

    ○吉井委員 局長、そんな眠たいことを言っておったらだめですよ。将来の問題じゃないのですよ。過去に自分たちのやってきた問題が審査がまともにできていなかったということがはっきりしたわけでしょう。だから、大きな事故につながらなかったからよかったんだ、そういう発想では、何のために再現実験をやったり原因究明をやってきたのか全然意味がないじゃないですか。私は、そういうふうな態度では、とてもじゃないが日本原子力行政というのは国民皆さんから信頼されるものにはならないと思いますよ。だって、いや、あれは条件が違うから、また条件が変わったら違う結果が出ます、そんなことを言い出したら、相撲をとっている真っ最中に土俵をどんどん広げていったり形を変えるみたいなもので、それは審査にも何にもなりませんよ。私は、これはちょっと、局長の考えていることは根本にかかわる問題だと思います。  それで、次の問題も含めながらさらに伺っていきたいと思いますが、劣化ウランの問題について次に伺っておきたいのです。  劣化ウランというのは、法律上の定義によれば「ウラン二三五のウラン二三八に対する比率が天然の混合率に達しないウラン」ということですが、それは、濃縮ウランを原子炉の中で燃やしている間にもウラン235はどんどん燃えていって比率が天然の場合の混合率以下になる場合だってあるわけですから、その場合には原子炉の中にも劣化ウランがあるということにもなるし、さらにそこから使用済み燃料として取り出してサイトに保管しておく場合も劣化ウランがあるということになるわけですが、日本の原子炉とサイトの中にある劣化ウランは今七百八十五トンですね。昨年末になればもう少しふえているかと思いますが。  その点で、ウラン鉱石を製錬して濃縮した後の、いわば搾りかすですね、この劣化ウランや、原発から出てきた使用済み燃料を再処理した後濃縮工程に回した後の搾りかすですね、この劣化ウランは現在ほとんど貯蔵庫にしまわれていると思うのですが、それらは、日本ではどの場所でそれぞれ幾らずつ劣化ウランを貯蔵しているのか、これを伺いたいと思います。
  185. 池田要

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま我が国における劣化ウランの保有状況についてのお尋ねがございました。  昨年の末の段階で我が国が保有しております劣化ウランは、総量で五千三百十トンに上ります。このうち、四千四十四トンという数字を持ってございますけれども、これは濃縮工場において、先ほど御指摘ございましたように、濃縮の結果得られた減損ウランということで保管をしてございます。それからもう一つ、原子炉の中に使用済み燃料、濃縮ウランの燃料を燃やした結果出る劣化ウランがあるではないかという点でございますけれども、この数字につきましては九百六十一トンという状況でございます。それから、再処理工場につきましては七十二トン。このほかに、さまざまに燃料物質を使いました研究開発あるいは遮へい材等をつくっております事業所におきましては約二百三十三トンという状況にございます。
  186. 吉井英勝

    ○吉井委員 要するに、劣化ウランをそれぞれ、動燃事業団の人形峠とか日本原燃の六ケ所の方とか貯蔵しているでしょう。それをそれぞれ幾ら貯蔵しているのかということを伺っているのです。
  187. 池田要

    ○池田政府委員 先ほど申しました濃縮の四千四十四トンという数字のうちの、動燃の人形峠のウラン濃縮原型プラントにおきましては二千百十九トン、それから原燃の六ケ所の濃縮施設におきましては、二つの施設を合わせまして一千八百八十六トンでございます。
  188. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、約四千トンの劣化ウラン、これは大体粉末状ですからシリンダーに入れて貯蔵庫に入れられていると思いますが、この劣化ウランというのは金属で、その性質というのは非常に反応性が強くて、粉末状のものは空気中で自然発火をする、水を分解する。もしエアロゾルになって拡散すれば、人間の体内に入ったら体内被曝を招くことになりますし、劣化ウランというのは大体そういう性質のところかなとも思うのですが、科学技術庁としてはいろいろほかにも問題を研究検討していらっしゃると思いますが、ほかにあれば聞かせていただきたいと思います。
  189. 池田要

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  劣化ウランにつきまして申し上げます。  一般に、劣化ウランの放射能につきましては、それほど強いものではないということでございます。したがいまして、体の外にあります場合には、多量に長い時間にわたって被曝をするというようなことがない限りは、その影響が問題になるようなものではございません。  ただし、吸入ですとかあるいは摂取といったことによって体内に取り込まれるようなことになった場合、かつそれが水に溶けにくく体内にとどまるような形態でありました場合には、その量によりましては放射線によって内部被曝を考えなければならないと存じます。  また、劣化ウランが仮に水に溶けやすい形態で、かつ体内に取り込まれるというような場合になりますと、重金属でございますから、化学的毒性の問題があり得るものと承知してございます。
  190. 吉井英勝

    ○吉井委員 アメリカの上院の住宅・銀行・都市問題委員会におきまして、そこのリーグル委員長は九四年の五月二十五日の報告書の中で、ウラン粒子が体内に入ったとき、骨や主要臓器に沈着し、骨髄に影響を与え、遺伝子の中核となるDNAの損傷を引き起こす、こういう報告なども出しているわけですが、この劣化ウランについて、日本独自の研究としてはどういうふうなものをやっていらっしゃいますか。
  191. 池田要

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  ウランにつきましては、先生御案内のように、我が国でも人形峠で採掘もしてございます。そういう長い歴史がある金属でございます。そういう意味では、先ほど申しましたような加工あるいはさまざまな利用におきましての使用、それから最近では濃縮といったような事業も進められてございます。そういった次第で、いろいろな角度からの研究は今までしてきてございます。  ただいま先生指摘のような、ウランそのものがどういう状態になったら人体に対して危険な状態なのかといったことにつきましても、そういった意味では、原子力開発を始めましたかなり当初に相当程度の知見を蓄えて、これまでその取り扱いに万全を期してきている状況でございます。
  192. 吉井英勝

    ○吉井委員 アメリカの方のこのレポートですね。DNAにダメージを与える、そういうものだということなんですが、それらを含めて、随分劣化ウランについても研究検討がされてきております。  その点で、青森県六ケ所でこの劣化ウランの建屋を建設するときに、あそこは米軍基地が近いということで、ミサイルの実弾射撃もあれば航空機も飛び交うということで、その墜落とかミサイルの誤発射によってこの劣化ウラン貯蔵建屋が破壊されたときには、ここにはさっきもおっしゃったように約二千トンですか大量の劣化ウランがシリンダーに入れて貯蔵されているわけですから、その劣化ウランが燃えてエアロゾルとなって周辺の住民に被害を及ぼすことにならないかということで、安全審査をやって検討したんじゃありませんか。
  193. 池田要

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  確かに先生指摘のとおり、六ケ所の濃縮施設につきましては、三沢の空港それから三沢の対地訓練区域がございます。ただし、こういった空港、訓練区域からの離隔、それから定期航空路につきましても、航空機は原則としてこういった原子力施設の上空を飛行しないように規制されてございまして、この安全審査におきましても、施設に航空機が墜落する可能性については極めて低いという考えに立ってございます。  また、濃縮施設につきましては、比較的内蔵する放射能量が小さいこと、それから施設としての潜在的危険性が小さいことから、安全確保上の支障はない。したがって、航空機に対する特別の防護設計は実施されてございません。  しかしながら、日本原燃の加工事業許可申請書におきましては、仮に、ウラン濃縮施設の安全上重要な施設に訓練中の航空機が墜落したときにつきましての評価は行ってございまして、その場合には一般公衆への影響が小さいことを確認してございます。  具体的に申しますと、ウランの貯蔵施設について言及がございましたが、この建屋につきましては、航空機墜落に伴う建屋内のシリンダー、貯蔵容器でございますけれども、シリンダーの破損及び燃料油の火災等を想定いたしまして一般公衆の線量当量を評価し、その被曝による影響は小さいことを確認した次第でございます。
  194. 吉井英勝

    ○吉井委員 さっきの「もんじゅ」の例があるだけに私は余り信頼できないのです。というのは、今おっしゃったのも、この工事許可申請書をただ読んでイエスかノーかの判こをついただけでしょう。それでは、実際に劣化ウランのDNAダメージの問題とかそこまで深い研究検討をやったわけでもなければ、ここで火災を起こしてエアロゾルになって、その拡散がどうなるかとか、これは、粒子状の場合は、本当に拡散によって広がることもあれば、その他、植物連鎖を通じて体内に入ってくることもあるのですね。そういったことについては、本当に徹底した究明を行った上でオーケーを出したということになってないわけですね。だから、私は「もんじゅ」のことも今取り上げましたのは、本当に安易なんですね、物の発想が。  それにしても、ここの場合はまだ日本の法律上の管理監督のもとにあるわけですね。本来ですと、アメリカの劣化ウランの今出ている問題だって、大体、貯蔵する場所とか、貯蔵することや使用することについて法律が適用されて当たり前だと思うのですが、これは、日本のこれらを管理している関係する法律はすべて適用されているのですか。
  195. 池田要

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  米軍の活動につきましては、白米間の政府の取り決めに従いまして、直接我が国の法律が適用される状況にはないと承知しております。
  196. 吉井英勝

    ○吉井委員 よく安保、安保と言いますが、こういう劣化ウランその他から国民の安全を守ることが一番の安全保障なのですから、そこを間違えてはいけないと思います。  それで、鳥島での米軍による劣化ウラン弾の問題について昨日も調査に行かれたと思いますが、岩石に当たって砕け散って、劣化ウランが空気と反応して燃え上がり、エアロゾルとなって拡散して地上に落下、沈着する、このために地上が汚染されるという問題も起こってくるわけですが、きのうの鳥島調査では、島に上陸して、島の土壌、小石、貝、サンゴ、海藻などのサンプルを採取しての調査でしたか。
  197. 池田要

    ○池田政府委員 昨日の調査は、周辺の海域における調査でございます。
  198. 吉井英勝

    ○吉井委員 海に落下したものは大体溶けやすくて拡散される、しかも一年もたっておりますので、海水のサンプルでは本当に顕著な汚染データが出てこないということもあり得るわけです。それでもって安全だ、問題なしと、これをやられたのではたまったものじゃないですね。  科学技術庁としては、環境影響の調査意味のあるものにするために、やはり島へ上陸してきちっとサンプルもとるべきだと思いますが、やりますか。
  199. 池田要

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  鳥島の射爆撃場、先生今御指摘の陸地の部分につきましては、昨年の段階で米軍による調査実施された旨聞いております。ただし、私どもは今まだその調査の結果につきましての詳細を入手しておりませんので、ただいま外務省を通じまして、米軍に対してはその詳細な結果につきまして情報提供を求めている状況でございます。  また、これまでのところ、米軍におきましても、ことしの三月末までには再度陸地部分についての調査を行うということでございますので、これにつきましても、政府としても関心を持ってその調査状況について見守りたいと考えているところでございます。
  200. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本の国土なんです。カリフォルニアとかハワイに調査に行けと言っているのではないのです。日本の国土、領海、領土内で起こっている問題なんです。私は、島へ上陸して日本調査するべきだと思うのです。これは大臣の方からやはり決意をお聞きしておきたいと思います。  それから、科学技術庁が多少とも科学技術的な調査検討を行おうと考えるならば、約二百キログラムと言われている劣化ウラン弾の劣化ウランの総量は幾らか、発生したエアロゾルの粒子の直径、それから直径分布ですね、均一ではありませんから。それから、化合物の形態や密度、射爆が行われた日時、そのときの気象、それから、そのときの煙の高さと分布について、少なくとも劣化ウランの拡散方向と、鳥島やあるいは近隣の久米島とかへの落下総量の算出を行えるような基礎的な情報というものは米軍に出させるべきだと私は思うのです。やはり日本国民にとっての安全を本当に守っていくという上での調査をやるべきだと思うのです。  これは、細かいところは局長でも結構ですが、大臣、やはり私は、それができなかったら日本はもう植民地と一緒だと思います。やはり、日本国民にとっての安全というものと、そして我が国の主権にかかわる問題ですから、日本の領土、領海、領空の中では、劣化ウランの貯蔵や保管は、簡単に法律無視で勝手なことを許さない。もちろん実弾射撃のような劣化ウランの使用を許さないし、今回の件については、米軍から必要なデータはすべて提出させる、鳥島へも直ちに上陸して調査を行う、これをやるべきだと思うのですが、この点は大臣の決意の方をお聞きしたいと思います。
  201. 池田要

    ○池田政府委員 先生から再三、鳥島へ上陸して調査を行うべきという御指摘でございますけれども、私ども、この鳥島の状況についてより詳細な情報が欲しいと考えているところでございます。米軍に対しては、実施しました調査の情報について提供を求めているところでございますし、また、調査を行いますときには、その内容についてつぶさに承知したいと考えておるところでございます。そして、入手しましたデータにつきましては、今回の周辺海域につきましての調査とあわせまして、専門家で構成しますデータ評価検討会を持って、その影響評価についても万全を期したいと考えているところでございます。  なお、この米軍の情報の提供もしくは調査の詳細の提供につきましては、政府としても、外務省を通じまして米側に対して真摯な協力をお願いしているところでございます。
  202. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 ただいまも局長から答弁されたわけでありますが、今回の米軍が行った劣化ウラン含有弾の誤使用によりまして、環境に対してどのような影響が及んでいるかを見きわめるためには、鳥島及びその周辺環境において劣化ウランがどのような状態にあるかを把握することが必要だと思います。  このために、科学技術庁としましても、ただいまも言われましたように、米国を初め、関係省庁と緊密な連携のもとに鳥島周辺海域の調査を行ったところでございますが、今後もやはり、米国による現地調査の結果も踏まえながら、環境調査に万全を期してまいりたい、このように思います。
  203. 吉井英勝

    ○吉井委員 終わります。
  204. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 辻元清美君。
  205. 辻元清美

    辻元委員 今の吉井委員は劣化ウランのことを質問なさいましたけれども、私も、一九九五年の十二月五日と七日及び九六年一月二十四日の三回にわたり、沖縄の鳥島において、米軍のAV8BハリアーⅡという飛行機から二十五ミリ機関砲により劣化ウランを含むPGU20/U弾というのが千五百二十発発射された件に関して、科学技術庁の見解と対応について御質問したいと思います。  劣化ウランは、核兵器ではありませんけれども、法律を見ますと、原子力基本法第三条の三に定義された核燃料物質であることは明白であると思うのです。また、この原子力基本法の第十二条に規定されているとおり、国内で扱う際には、「核燃料物質を生産し、輸入し、輸出し、所有し、所持し、譲渡し、譲り受け、使用し、又は輸送しようとする者は、別に法律で定めるところにより政府の行う規則に従わなければならない。」とあります。これは、何するときでも規則があるというふうに私は思うのですが、当然、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法第二条第四項、第十三条第二項で規定するとおり、原子力委員会、安全委員会が規制する対象になっていると理解しております。また、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律という長い名前の法律の第一条、第五十二条、第五十三条によって、国内で劣化ウランを使用するためには、内閣総理大臣の許可が必要になるというふうに理解しております。  さてそこで、この事件についての科学技術庁及び関係省庁対応について、ここから質問させていただきます。  この劣化ウラン弾を米軍が使用することについて、米側から総理大臣に使用許可の申請があったのか、なかったのか、事実関係をお答えください。
  206. 池田要

    ○池田政府委員 ただいま先生からの御指摘で、劣化ウランを使用する場合には原子力基本法及び関連の法律によって規制がなされているはずだ、それはそのとおりでございます。  ただし、米軍につきましては、先ほど申し上げましたとおり、日米間取り決めによりまして、直接国内法規は適用されない状況になっていることについて御理解を賜りたいと存じます。  したがいまして、米軍から原子炉等規制法に基づきます申請はなされてございません。
  207. 辻元清美

    辻元委員 ちょっと略して、原子炉等の規制に関する法律と呼ばせていただきたいと思うのですけれども、この法律によりますと、五十三条によって、平和目的以外に使用されるおそれがあるときは許可すべきでないとはっきり定められていると思います。  さてそこで、仮に米軍から劣化ウラン弾を使用したいという旨の許可申請が来た場合、この法律によりますと許可できないと私は理解するのですが、このような状況の中で、今回の事件は、米軍が許可申請せずに劣化ウラン弾を使用したということに対して、どのようにお考えでいらっしゃいますか。
  208. 池田要

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  米側が許可申請をしなかったことにつきましては、先ほど御説明申し上げましたように、日米間取り決めによりまして、米軍の活動につきましては直接国内法規が適用される状況にはございませんから、それをもって、米軍に対して、適切でないということは当たらないかと存じます。  ただ、ただいま御指摘のように、仮に、国内におきまして事業者もしくは研究者等が、劣化ウランを研究開発その他の目的につきまして使用しようとする場合には、当然、原子炉等規制法に基づきます規制があるわけでございます。仮に、そういった者がこういう劣化ウランを含むような砲弾をつくって利用したいというような申請があったとすれば、それは、先ほど指摘ございましたような、核燃料物質が平和の目的以外に利用されるおそれがあると考えられるわけでございますから、当然、この原子炉等規制法に基づく許可をすることは難しい、できないと考えてございます。
  209. 辻元清美

    辻元委員 私が質問しましたのは、米軍から来た場合は、それはいかがでしょうか。今後も科学技術庁として、米軍に対して許可申請をするようにと求めたいのか、いや、これはもうしようがない、米軍に対しては一切許可申請なんかしてくれと言えない、この二つ、どちらとお考えなのか、見解をお聞きしたいと思います。
  210. 梅本和義

    ○梅本説明員 ただいま科技庁の方から御答弁ありましたけれども、一般国際法上、それからまた地位協定上、接受国、これはすなわち我が国でございますが、接受国の同意を得て我が国に駐留する外国の軍隊、この場合在日米軍でございますが、特段の合意がある場合を除くほか、接受国の法令というものがそのまま適用されることはないということでございます。日米地位協定もそういう考え方に立ってできております。したがって、今お話しになっております国内法のいろいろな手続というものが、そのまま米軍の行為について適用されるということはないわけでございます。  他方、一般国際法上、外国の軍隊というのは接受国の国内法令を尊重すべきだということになっておりまして、そういう意味では、米軍も、我が国の法令を尊重し、劣化ウランを含有する弾の使用あるいは保管といったことについては、公共の安全や国民生活に十分配慮を払うべきだということは当然でございます。  今回の劣化ウランを含みます砲弾の誤使用につきましては、これは、もともとアメリカにおいても、アメリカの国内法令及び米軍の規則によりまして、米国国内の指定をされた基地、演習場においてのみ使用し得るということになっておったわけでございますが、誤って使われてしまったということでございます。  私ども、これがそういうことで誤って使われたということはまことに遺憾だというふうに思っておりまして、その旨は、外交ルートを通じまして、高いレベルでアメリカに対して遺憾の意を表明し、二度とこういうことが起きてはならないということを強く申し入れている次第でございます。アメリカ政府も、このようなことが起きてしまったということについては深い遺憾の意を表明しておりますし、また、二度とこのようなことが起きないようにきちんと再発防止のための措置をとったというふうに説明をしておるところでございます。
  211. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、確認させていただきますと、日本政府としては、米軍による劣化ウラン弾の使用の許可申請は、この事件があったからといってしないというふうに理解していいのですか。
  212. 梅本和義

    ○梅本説明員 お答え申し上げます。  ただいま御説明いたしましたように、これは、米国という外国の主権国家の国家機関であります在日米軍でございますので、我が国の法令の手続というものがそのまま適用されるわけではございません。  ただし、今回の件については、本来使われるべきでなかったものが使われたということについて、私どもも遺憾に思っておりますし、その旨申し上げているところでありますし、アメリカ側も遺憾に思っておる。それから、私どもとしても、二度とこのようなことが起きてほしくないということを申し上げておりますし、アメリカ側も、今回はまことに遺憾であったけれども、再発防止策をとって二度と劣化ウラン弾が日本において誤って訓練で使われることのないようにしたいというふうに言っておるわけでございます。
  213. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、許可申請の要求もしないと理解してよろしいですね、ちょっと要求という言葉が抜けてしまったのですが。  さてそこで、引き続き質問したいのですけれども、このウランの空気中の濃度というのが問題になってきているというふうに私は理解しておるのです。放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律を受けた施行令の一条で、その数量は、放射線を放出する同位元素の数量等を定める件にあるウラン238の場合になるわけなんですけれども、この劣化ウランが発射された当時の鳥島における、拡散した後というよりもそのとき、どれだけ劣化ウランがそこでウランを放出したかという濃度が問題になってくると思うのです。この濃度について、科学技術庁の方では、シミュレーションなり、あれぐらいの量の砲弾が発射された場合にどれぐらいの濃度になるかということについては、何か見解を出されているのでしょうか。
  214. 池田要

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま、劣化ウランを含みますこの砲弾が使われた場合の影響についてのお尋ねでございますが、劣化ウランは武器でございまして、この武器の詳細については、私どもは承知する立場にございません。  また、この劣化ウランの物理的な性状でございますとか、撃ち込まれた際の挙動ですとか、あるいは使用後のウランの状況等の詳細についても不明でございまして、何とも申し上げられない状況でございます。  そうした観点から、いずれにしましても、私どもとしましては、現地の状況につきまして米国からの情報提供を求めることなど、本件の状況の把握に万全を期してまいりたいと考えている状況でございます。
  215. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、今のお話を聞いていましたら、報告を待って、待ってということなのですけれども、一切そのときの状況を、今の科学技術庁の英知を結集して、あのときのああいう状況だったらどうだから風下にある村に対してはこういう影響が想定されるのじゃないかとか、その場合はこうしなくてはいけないとか、そういう手は全く今のところは打っていないというか考えていらっしゃらないということでしょうか、報告を待つまで。
  216. 池田要

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘のような問題に対する答えを見つけるために、昨日、関係省庁の協力をいただきまして、周辺海域についての調査を行った次第でございます。  また、米側からも、昨年には陸上地点につきましてもサンプリング等調査をやったということも聞いておりますし、それを私どもとしましては、詳細な情報の提供について働きかけている状況にございます。  また、三月末までには、また改めて米側も調査を行うということでございますから、こういった状況についてつぶさに把握することによって、今御指摘のような問題に対する答え、情報が得られるものと考えてございます。
  217. 辻元清美

    辻元委員 あそこの鳥島というのは村営地だと聞いているのですね。久米島というところにある二つの島、この二つの島の持ち物である。それを米軍が使用しておるわけなんですけれども、その調査によっては、原子力損害の賠償に関する法律というのがあると思うのですが、これに適用される場合も考えられると思うのです。この所有者に対して今政府では何か、今こういう調査をしているからこういう結果によっては皆ざんにはいついっその調査をお知らせするとか、この持ち主に対してはどういうことをされているのでしょうか。
  218. 梅本和義

    ○梅本説明員 今回の劣化ウラン含有弾の誤射が環境にどういう影響を及ぼすのかということにつきましては、アメリカ側も昨年の三月及び四月に調査をしたということで、その調査結果についていろいろ情報提供を受けているわけでございますが、引き続きより詳しい情報というものを私どもとしてもアメリカ側にさらに提供を求め、関係省庁とも連絡をしながらよく分析をしていくとともに、また今般、科学技術庁そのほかの関係省庁の協力によりまして、私ども独自の調査というものも行っていくということとしているわけでございます。  なお、損害賠償の問題につきましては、これは一般論として申し上げますと、施設・区域の土地所有者に対する損害賠償というものは、当該施設・区域が返還される際に、施設・区域の原状回復との関係で、国と所有者との間、国というのはこれは日本でございますが、日本政府と所有者との間で問題となるということでございまして、鳥島射爆撃場についてこのような問題があるかどうかということにつきましては、将来射爆撃場が返還されることがある場合に検討されるのではないかというふうに考えております。
  219. 辻元清美

    辻元委員 さて、この劣化ウランは、原子力の平和利用に関する協定というので、日本政府とアメリカ合衆国政府の間の協定によっても規定されていると思うのですけれども核燃料物質の指定を受けております。いずれにせよ、問題が生じたときには第十四条というのによって「相互に協議する」というふうになっておりますが、この協定による協議は今現在進められているのでしょうか。
  220. 遠藤善久

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  原子力の平和利用に関する日米協定は、原子力発電等原子力の民生利用についての枠組みを定めるものでございまして、本件のような劣化ウランを対象とするものではございません。したがいまして、本件協定に基づいた協議というのは行っておりません。
  221. 辻元清美

    辻元委員 あと、今後の対応ということなんですが、実際にこの問題が起こって、先ほどから国内法によっては規定できないという話ばかりが出てくるわけなんですけれども、昨日も沖縄では、久米島でたくさんの人が集まって、自分たちの環境や自分たちの生命にどういう影響があるのか非常に不安であるというので、全島民がほぼ集まって集会を開いていると聞いております。それと、きょう東京にその人たちが出てくるというふうにニュースでも報道されていたわけなんです。  こういう問題が起こっているときに、いや、これは日本の法律には適用できないのでアメリカが言ってくるまで、調査についてもアメリカの資料がもらえるまで自分たちとしても手も足も出ないんだというような印象が、私は今の答弁を受けていたら否めないというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。どういうふうなイニシアチブをとって、例えば大臣がイニシアチブをとられてこれから何か具体的な措置をとられるおつもりがあるのかどうか、いかがでしょうか。
  222. 梅本和義

    ○梅本説明員 本件につきましては、事件発生以来、私ども米側といろいろのやりとりをやってきております。  具体的な措置ということで申し上げますと、まず一つは、米側が過去において行いました環境調査等についての資料というものを、できるだけ詳しいものを提出してもらうということで、一部分はもう既に出てまいりましたが、まだ引き続きこのような情報の提供を受けていくということを求め続けていきたいというふうに思っております。  また、先ほど科学技術庁の方からも御答弁ございましたけれども、アメリカ側のそのデータあるいは資料というものを一方において評価すると同時に、これは日本政府としても独自に環境についての影響というものを調査しようということで、昨日、船を出しまして調査をしたということがあるわけでございます。  また、アメリカ側に対しましても、もう一度調査及び回収作業を行うということを申し入れておりまして、アメリカ側も、三月末までに再度環境調査及び回収作業を行うというふうに言っております。これにつきましては、引き続き日米間で協力、協議ということで話し合いをしているわけでございます。  以上でございます。
  223. 辻元清美

    辻元委員 三月末までにというお話が出ましたけれども、それはアメリカ側の調査であって、そのときに科学技術庁も一緒に行くというような話し合いはされていないんでしょうか。
  224. 梅本和義

    ○梅本説明員 まさにアメリカ側が主体となって調査、回収作業を行うわけでございますが、ここに私ども日本政府としてどのようにかかわり合っていくのかということにつきましては、現在、アメリカ政府といろいろな話をしているところでございます。
  225. 辻元清美

    辻元委員 今話をしているというふうにおっしゃいましたので、その可能性もあるということで私の方は受け取らせていただきたいと思います。  時間が来ましたので、質問を終わります。
  226. 佐藤敬夫

  227. 堀込征雄

    堀込委員 堀込征雄でございます。  私、ややアバウトな問題についてお伺いをし、大臣の見解あるいはまた御教示も賜りたいと思うわけであります。  「もんじゅ」の事故対策、いろいろあるわけでありますが、細心の注意をもって対応をいただきたいと思います。一方でまた、確固たる信念を持って対応をいただかなければいけないのじゃないかというふうに思っておるわけであります。  さて、プルサーマルの実施についてでありますが、私は、これからいろいろな問題整理がなされ、そして地元の理解を得るためにいろいろな御努力などがなされていくのだろう、こういうふうに思うわけであります。この問題を考えるときに、私は、現代社会の直面するいろいろな問題なんかとやはりダブらせて考えざるを得ない感がするわけであります。  例えば、沖縄の米軍基地の問題があるわけでありますが、あるいは私ども生活に直結している廃棄物の処理場なんかの問題もそうでありますが、我々が豊かで安定した便利な生活を維持するためにさまざまな条件というものが要るわけでありまして、私どもが水道の栓をひねれば水が出てくる、これも上流の豊かな水があるからだ。あるいはまた、上流の豊かな自然があって初めて水も、そして私どもが呼吸をしている空気も維持できているということがあるわけであります。安全保障なんかの問題を考えますと、やはり日米安保があり米軍基地もその役割を果たす中で、私どもの日常の安全生活といいますか、そういうことが成り立っている。そのためには、やはりその基地を了解してくれている人々がいる。あるいは、我々人間生活、さまざまな問題があるわけでありますが、日常の便利な、豊かな生活をしながら、一方では大量のごみや廃棄物を出しているわけでありまして、そういう処分場などで地元の皆さんがいろいろ理解してくれて私ども生活が成り立っているわけであります。  そういうことを考えますと、私ども生活というのは、さまざまな問題で、今二十一世紀を前に大きな岐路に立っているのではないか。そうした問題をやはりトータルに考える、一方でそういう大きな視点も必要ではないか。スイッチをひねれば電気はつくわけでありますけれども、やはりこれに理解をしていただいている発電所の周辺の皆さんの御了解の上に私ども生活が成り立っているのだ、こういうこともあるわけであります。そういう意味で、私どもはまさにこれから国民全体でみずからの生活の問題としてこうした問題を考えていく、そういう何か非常に時代の大きな曲がり目で考えなければならぬ問題に直面しているのではないかと思っているわけであります。  沖縄問題で言えば、一方で基地の縮小というような問題があり、一方では沖縄振興策をどうするかというような問題があるわけであります。廃棄物処理場なんかも、一方でその地域振興策をどうするのだというような話も出るわけであります。私は、そういうものの見返り策ということだけではなしに、そうした問題にまさに今我々が直面しているのだという性質の問題として、国民みんなで考え合いながら理解し合っていくことがないと、私どもの豊かな生活というのは維持できないことはもう明らかだろうというふうに思うわけであります。  このプルサーマルの問題にしても、地元との折衝は国や電事連の仕事だという国民意識ではなくして、もちろん国や電事連も詳細な気配りをしながら対応をいただかなければならぬわけでありますが、やはり自分のことなんだという中でこの問題を考え対応していくことが今国民に求められているのではないか。  そういう意味で、国民的理解を得るために科学技術庁が単にPRを進めるというような問題だけではなくして、まさに現代の人間社会のありようというようなものが問われているのではないか。個々人が自己責任を持ちながら社会にかかわっていく、そういう視点の中でこの問題を考えていくというような対応が一方で求められているのではないか。まさに現代社会の本質的な問題として、科学技術庁だけではなくして、政府、そして私ども国会も一体となって国民に問いかけていく、そういう時代の中での問題ではないかというふうに私は考えるわけでありますが、長官、御見解をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  228. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 ただいま委員御発言の事柄につきまして、私は午前中の委員会で全く同じ趣旨のことを御答弁させていただきました。  今回のプルサーマルの問題のみならずこれからの日本エネルギー問題というのは、今も沖縄という言葉が出ておったようでありますが、やはり沖縄の基地問題と同じようにこれから日本人みんな、国民とともにこのエネルギー問題というものを考えていかないといけない問題だなというぐあいに考えております。  そういった意味から、私は特に今回は、原子力安全委員会のみならず閣議了解まで取りつけまして、そして、これからは国民から信頼される、特に情報公開というもの、午前中からいろいろ審議を聞いておりまして、原則的にすべてのものをありのままに国民に提示する、それがあって初めて信頼を得られるのだなという実感を本当に強く感じました。そういった意味で、これからもこの問題について、今委員指摘のように真剣に取り組んでまいりたいということで、全く同感でございます。
  229. 堀込征雄

    堀込委員 ぜひ、現代社会におけるいろいろな問題に私ども直面していると思いまして、これはもう政府トータルの問題としてお取り組みをいただきたいなと思いますし、私どももそういう観点から対応する必要があるのではないか、こう思うわけであります。  さて、科学技術分野あるいは基礎研究の推進という問題についてでありますが、よく日本技術は、改良的な開発技術だとか加工技術だとかあるいはまた生産管理、品質管理、こういう面については非常に優秀であると言われているわけであります。応用や改良の面で非常にすぐれているけれども基礎研究は大きなおくれをとっているのだ、こういうふうにも言われているわけであります。  私、科学技術基本計画に基づく今度の科学技術庁予算を見るときに、確かに研究支援者の確保だとか、あるいはポストドクターの支援計画だとか、あるいはまた戦略的基礎研究の推進、あるいは地域の科学振興ですか、こういうことがたくさん盛られているわけでありまして、これはこれで大変結構なことだろうし、進めてもらわなければならぬ、こういうふうに思うわけでありますが、もう全く素人目で恐縮でございますが、本当の意味の基礎研究ができ上がっていくという、その土壌について一体これからどうしていくのかというのが課せられた問題ではないかなというふうに実は思っておるわけであります。  確かに、基礎研究が産業技術に育ち、つながっていく、そういうことは大切だと思うわけですが、その基礎研究の推進をどうするかということを想像すると、あるいはまた基礎技術なり研究の広がり、奥深さといいますか、そんなようなことを考えると、産学官の共同研究ということもよくわかるのですが、やはり小中学校からの教育というところに行き着かざるを得ないのではないかという気がするわけであります。これは主として文部省の仕事なんでしょうけれども、この基礎研究の問題について考えると、縦割り行政の弊害というようなところに、どうしてもそこに壁があるのではないかというふうに考えるわけであります。  日本科学技術の将来を考えると、どうしても独創的な考え方あるいは学ぶ心を育てる社会環境、教育環境の整備というのは欠かせないのではないか、こういうふうに思うわけであります。その意味で、偏差値教育で育った子供ではなくして、伸びやかな、何といいますか、科学する心を持った、そういう子供を育てる教育環境の整備、社会環境の整備というのはどうしても必要なのではないか。そうした広がりの中から、科学技術の高い水準というのが将来的にも花開いていくのではないかなと実は思うわけであります。そういう意味で、基礎研究というのは、私よくわからないのですけれども、しかし、とてつもない時間、とてつもない空間、広がりを視野に置いた基礎研究というものの充実策が必要なのではないかな、こういうふうに思うわけであります。  その意味で、この予算はこの予算でそれは結構でございますが、これから日本の遠い未来考えたときに、大胆な行政改革を通じたり、教育システムの改革を通じたりしながら、そういうことを視野に置いた、科学技術庁の枠を超えた、内閣全体としてもあるいは国としても、将来を見据えた何か広がりのある、そういう対策が必要なのではないか、こう思うわけでありますが、これも長官の御見解をひとつ承りたいと思います。
  230. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 ただいまのお尋ねの件につきましても、午前中私はあえて答弁させていただきました。  私も、第二次橋本内閣で第二回目の閣議後の閣僚懇談会で、今御指摘のように、やはり日本エネルギー問題というのは将来の日本のために欠かすことのできない重要な問題であるので、内閣挙げてこれに取り組んでいかなければいけないというようなことを、総理以下全閣僚の面前におきまして強く要望いたしました。  そういった意味で、午前中も御答弁申し上げましたとおり、三県知事との、いろいろ通産大臣と私が一緒になりまして、私も通産省まで出かけまして、御指摘のように縦割り行政云々なんて言っている暇はもう今の日本にないんだと。したがって、日本の政治全体から見て、先ほど来指摘されたもろもろの事柄について本当に内閣挙げてやらなければならぬな。こんなことを考えてみますと、今御指摘のように、やはり小さい子供の時代から自分の国の将来というものを考えていただけるような教育というのは大事なんだなということを、今も御指摘のように私も全く同感でございまして、その意思を尊重してまいりたい、このように思います。
  231. 青江茂

    青江政府委員 一点補足だけさせていただきたいと思います。  教育の問題、私どもの役所の方で直接的には取り扱っていないわけでございますけれども、一点ちょっと御紹介させていただきたいのは、科学技術系人材というのをどう育てていくのだというふうな議論が巻き起こりましたときに、科学技術会議、これはいろいろな各省庁の問題全部まとめて御議論いただく最高審議機関でございますが、そこでもちまして、科学技術系人材という角度から教育の問題まで踏み込んで議論をいたした。その基本的なレポートをまとめられまして、それを文部省も持って帰って、文部省の行政の中で今それを具体化をしている、こういうふうな状況にもございます。  そして、そういうことでもちまして、科学する心、そういったことは基本的には、一義的には教育の問題であろうというふうに思うわけでございますが、一点、私どもの方では、学校の外の問題といたしまして、例えば地域におきましての科学館、体験型の科学館というのをどう育てていくのか。そこにおきまして、バーチャルリアリティーとかそういったことを使いまして、いわゆる科学する楽しみというものをどう具体化していくのか。そのためのソフトウェアの開発でございますとか、それからサイエンスキャンプとか、出前レクチャーというふうな呼び方もしておるのでございますけれども研究者が教育の現場に入っていって、その研究の現場の状況というのを伝える。こういったふうないろいろなことをやってございまして、文部省におきましての教育の問題と一体になりまして、今先生の御指摘のようなことでもちましてぜひ頑張ってまいりたい、かように思ってございます。
  232. 堀込征雄

    堀込委員 ぜひそういうことで、少し長い視野で、広がりを持った視野で頑張っていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  233. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十四分散会