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池田国務大臣 委員御
指摘のとおり、アジア地域は今世界の中でも成長センターと言われるように、目覚ましい経済発展をしているわけでございますが、とりわけその中の東南アジアの諸国、ASEAN諸国を中心としまして、今、一つ、また一つとテークオフを実現しながら経済の成長を遂げておられます。
そういった中で、政治的にも安定していく、また民主化も進展していくという
一般的傾向がありまして、いわば経済成長と政
治安定が一種の好ましい好循環を生んでいるというのが趨勢だと思います。そういった中で、それぞれの国にとりましても、平和な状態の中で経済成長をさらに進め、
国民生活の向上を図っていくということが、政策体系の中でも一番プライオリティーの高いものになるということでございます。そういった
基本的な認識がございます。
しかし、他方におきまして、
委員も御
指摘になりましたけれ
ども、スプラトリーアイランズを初めとして
領有権をめぐっての争いがある等、不安定な要因もございますし、時に、特にそれが資源との関連でいろいろ緊張度を増すおそれというものもあるわけでございます。そういったところは注意していかなくてはいけないと思っております。
もう一つ
指摘しておきたいと思いますのは、そういった東南アジアの地域も含めまして、今いろいろな地域的な国際的な枠組みができております。例えば経済面でのAPECというものもございます。そういった中で、特に
安全保障にかかわるものといたしましては、ARF、ASEAN地域フォーラムという枠組みでございますが、これが最近急速にその役割を高めてきておりまして、お互いの信頼醸成、さらには
安全保障対話の枠組みとしてこの地域の安定にこれから大きな役割を果たすのではないかと期待もし、そして
日本も積極的にそれに参画しておるわけでございます。
その枠組みの中で、例えば
領有権をめぐる問題についてもある程度の話し合いが行われる。まだ今の段階でそれが解決に結びつくというところまでは遠いというのが実態でございますが、少なくともそういうことが話題になることもあるということも、私
ども、この地域の安定を図る上において好ましい傾向だ、こういうふうに考えております。
それからもう一点、
委員が御
指摘になりました、一方で経済成長の成果が軍事力の強化に結びつく点があるのじゃないか、それが武器の近代化あるいは調達の競争につながるおそれがあるのじゃないか、そういったところも私
ども注意して見なくてはいけないところだと思います。しかし、そういったところは、今申しましたような
安全保障をめぐるいろいろな対話などを通じてお互いの信頼感が高まってまいりますならば、要らざるあるいは望ましくない軍拡競争なんかがエスカレートすることに対するブレーキといいましょうか、抑止の力もあるのじゃないかというふうに考える次第でございます。
それから、この東南アジア地域にとりまして、中国がこれからどういうふうな動向をとるかというのは、当然のこととして大きな
意味を持っておると思います。あれだけ大きな国でございますから、食糧の問題、資源の問題の
観点からもそうでございますし、あるいはマーケットという
意味でもそうでございましょう。それからまた、先ほど申しました
領有権をめぐる
紛争の一つの当事者としての中国ということも当然考えなくてはいけないと思うわけでございます。
しかし、中国につきましても、
基本的に申しますと、改革・開放路線を通じて民生の向上を図っていくということが最大の政治目標になるということでございましょうから、そういうことを我々念頭に置きながら、この東南アジアも含めたアジア・太平洋地域で大きな役割をこれからも果たしてほしい、建設的なパートナーとしての役割を果たしてもらうように、今でも
基本はそういう
姿勢でございますが、それをさらに強めていかれるように、
日本等々の国も慫慂していくといいましょうか、そういったことでやってまいりたい、こう考えている次第でございます。
それから、香港の問題についてもちょっとお触れになりましたけれ
ども、七月一日以降、中国に返還されましても一国二制ということで、
基本的にこれまでの香港が
維持してきた機能も
維持される、あるいは社会の
状況も
維持されるという了解になっておりますので、私
どもも、現在の香港の安定なり繁栄なりが継続されるということは、香港の方々にとって重要であるだけでなくて、中国にとっても重要でございましょうし、
日本も含めたアジア・太平洋地域にとっても香港の果たす経済上の役割は非常に重要ですから、そのようなことで、香港の中国返還後も現在の制度が
維持され、これまで香港がこの地域の
国際社会、とりわけ国際経済の中で果たしてきた役割が
維持されることを期待している、こういうことでございます。