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1997-03-25 第140回国会 衆議院 安全保障委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月二十五日(火曜日)     午後一時一分開議  出席委員   委員長 伊藤 英成君    理事 江口 一雄君 理事 中谷  元君    理事 中山 利生君 理事 浜田 靖一君    理事 岩浅 嘉仁君 理事 平田 米男君    理事 前原 誠司君 理事 中路 雅弘君       浅野 勝人君    今村 雅弘君       臼井日出男君    大石 秀政君       奥山 茂彦君    嘉数 知賢君       栗原 裕康君    阪上 善秀君       砂田 圭佑君    田村 憲久君       谷垣 禎一君    戸井田 徹君       中野 正志君    中山 正暉君       宮下 創平君    目片  信君       遠藤 乙彦君    神田  厚君       倉田 栄喜君    佐藤 茂樹君       冨沢 篤紘君    中野  清君       福島  豊君    二見 伸明君       村井  仁君    鰐淵 俊之君       安住  淳君    藤田 幸久君       横路 孝弘君    東中 光雄君       上原 康助君  出席政府委員         防衛政務次官  浅野 勝人君  委員外出席者         参  考  人         (元統合幕僚会         議議長)    佐久間 一君         参  考  人         (青山学院大学         教授)     渡邉 昭夫君         参  考  人         (外交評論家) 岡崎 久彦君         参  考  人         (軍事アナリス         ト)      小川 和久君         安全保障委員会         調査室長    平川 日月君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十九日  辞任         補欠選任   川崎 二郎君     栗原 裕康君 同月二十五日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     砂田 圭佑君   達増 拓也君     鰐淵 俊之君 同日  辞任         補欠選任   砂田 圭佑君     臼井日出男君   鰐淵 俊之君     中野  清君 同日  辞任         補欠選任   中野  清君     達増 拓也君     ――――――――――――― 三月十九日  沖縄の米軍基地縮小・撤去、特別立法反対に  関する請願(深田肇君紹介)(第一一七一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件(東アジアにおける我  が国の安全保障問題)      ――――◇―――――
  2. 伊藤英成

    伊藤委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人といたしまして元統合幕僚会議議長佐久間一君、青山学院大学教授渡邊昭夫君、外交評論家岡崎久彦君軍事アナリスト小川和久君に御出席を願っております。  この際、委員会を代表いたしまして、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の皆様には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  当委員会におきましては、国の安全保障に関する件について調査を行っておりますが、本日は、特に東アジアにおける我が国安全保障問題について、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでございますが、参考人にそれぞれ二十分ずつ御意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず佐久間参考人にお願いいたします。
  3. 佐久間一

    佐久間参考人 御紹介いただきました佐久間でございます。  安全保障という国にとって最大の命題につきまして、国民を代表してその重責を担っていらっしゃいますこの委員会におきまして意見を申し上げる機会をいただきましたことを、大変光栄に存じております。  本日のテーマは非常に大きなものでございますので、お手元にございますレジュメに従いまして、それぞれの項目の骨格について申し上げたいと思います。  まず、情勢認識であります。御承知のとおり、冷戦後の国際情勢は、不透明という言葉であらわされるとおりだと思います。  東西対峙の構図が消えまして、全世界的な紛争の危険はなくなりました。しかし、その一方で、各種要因に基づく地域紛争等が多発し、あるいは今後も予想される状況が続いております。この要因は、例えば価値観の対立、民族、領土、宗教問題、さらに経済力の格差、あるいは資源問題、国際テロもろもろ要素が絡み合っております。また、冷戦後、近代兵器を含む武器の拡散というのが大きな趨勢になっておりまして、特にアジア太平洋地域においてその傾向は顕著であります。  世界のうちでも、私どもに関係がございますアジア太平洋地域につきまして、若干述べさせていただきます。  まず、朝鮮半島であります。これは、御承知のとおり、いわゆる冷戦構造が現在も存在している地域であります。  南北両地域軍事力整備の最近の趨勢を見てみますと、韓国におきましては、海軍力空軍力近代化、そして北朝鮮におきましては、前方展開兵力充実あるいは兵力前方展開、さらにいわゆる奇襲戦力充実ということに重点が置かれていると考えております。  この朝鮮半島の将来がどうなるか、予断を許さないところがございますが、その将来の統一のプロセスによっては、我が国にも大きなインパクトを与えることは容易に想像できるところであります。また、将来、朝鮮半島が統一された場合、その地域国際社会においてどのような姿勢を見せるのか、これも未知数の大きな課題であると考えております。  いずれにせよ、この地域は大陸と太平洋を結ぶいわゆる戦略上の要衝であるという地理的条件は今後とも変わらないわけでありまして、それだけに、この地域の安定のために国際社会努力する必要があると考えております。  次に、中国であります。  中国につきましては、近年、その国家政策が次第に鮮明になってきていると私は考えております。すなわち、その国家目標は国力の増大、昔の日本言葉で言いますと、いわゆる富国強兵であります。それと社会主義体制下経済力の発展、これが国家目標であると考えます力  また、一九九二年には、中国軍隊任務として、従来の主権の防衛に加えて海洋権益防衛という任務が加えられました。同じく同年には、領海法の制定によって我が国の尖閣諸島を含む地域をその領域と宣言したことは、御承知のとおりであります。これらの要素から、中国がいわゆる海洋進出という方向を目指しているのは間違いのないところだと考えております。  この中国軍事力近代化あるいは海洋進出の動向というのは、国際社会がどのようにアプローチをしても、私は、基本的には変えることはできないだろうと思っております。と申しますのは、これは中国にとうていわば国家目標であり、また、エネルギーの確保という要因背景にあると考えております。  そして、中国軍事力につきましては、いろいろな評価がございます。例えばアメリカは、そのみずからの強大な軍事力を物差しにして、中国軍事力を見て、これは大したことはないという評価をいたしますが、一方、同じ中国軍事力でも、周辺地域各国から見るならば、それは非常に強大なものに映るだろう、その認識のギャップというものを常に留意する必要があると思っております。  また、中国は、いわゆる台湾の問題、あるいは香港の返還、新疆ウイグル地区チベット問題等、幾多の内政問題を抱えております。これは内政問題であると思いますけれども、ただ、台湾海峡においてもし武力が行使されるという事態になるならば、それは単なる中国の国内問題ではなくて、我が国を含む関係諸国にとっての国際問題としての意義を持ってくるというふうに考えております。  中国は、御承知のとおり、長い歴史と伝統を持ち、それだけに物事を判断し政策を推し進める場合に、二年とか三年という短いスパンではなくて、十年、五十年、百年という長いスパンで物を考え、着実に目標に向かって歩んでいくという体質を持っていると思います。  これと対照的なのがアメリカでありまして、アメリカは、情勢の変化に応じてドラスチックに政策を変えます。それはそれで一つ特徴でありますが、こういう対極的な両国政策のはざまにあって、我が国がどのように正しい道を歩んでいくのか、非常に難しい立場に置かれていると思っております。  次は、ロシアであります。  ロシア軍事力は、ソ連邦の解体後、大幅にその規模において縮小されてまいりました。ただし、現在の時点においても、極東ロシアには地上軍が約十九万、艦艇が約百五十五万トン、空軍作戦機九百機というレベルを維持しております。ただし、報道されておりますように、軍の規律が乱れあるいは燃料の不足等による訓練の低下ということから、即応態勢が著しく落ちているのは事実だと思います。  ただ、近年、ソ連軍事戦略といいますか、政策の中で、核戦力を重視しているということは注目すべきだと思います。すなわち、厳しい状況の中にあっても、戦略核近代化、あるいは戦略核部隊訓練即応態勢維持ということには最も重点が置かれているというふうに見ております。  ロシアの軍が将来どのような体制になるのか、当初、二〇〇〇年までに再編計画いたしましたが、それが五年間延期されております。ただ、もしこの軍の再編が成功した場合には、従来のソ連のケースと違って、近代的でスリムな軍隊が誕生することになります。  また、ロシアという国、民族は、御承知のとおり、伝統的に力、特に軍事力を信奉する、これは歴史的な背景があると思いますが、さらにいわゆる大国意識、そういった体質を変わらず持っているということを私は感じております。  東南アジアにつきましては、冷戦が終わり、あるいはそれぞれの国の経済力の伸展に伴いまして、軍事力近代化、なかんずく海軍力空軍力の装備の近代化に力を払っております。これはある意味では当然の帰結だろうと思いますけれども、ただ、結果的にこの地域安全保障環境が従来と異なってきている。例えば我が国のシーレーンの安全確保という観点から見るならば、この地域安全保障環境が変化しつつあるということは留意する必要があると思っております。  以上のような情勢認識を踏まえまして、それでは今後の我が国安全保障はどうあるべきかということになるわけでありますが、最初に、冷戦終結後のアメリカ及び我が国安全保障政策見直し、再構築について振り返ってみたいと思います。  御承知のとおり、米国におきましては、冷戦後、各種安全保障政策見直し、策定してまいりました。例えばボトムアップレビューあるいは関与及び拡大戦略と言われます国家安全保障戦略東アジア太平洋地域における安全保障戦略、そういったもろもろ政策を再構築してまいりました。  その新しい政策共通する基本的な構想を私なりに分析してみますと、まず、脅威として四つ挙げております。第一は、地域の不安定あるいは地域紛争であります。二番目が、大量破壊兵器拡散。三番目が、テロ麻薬等国際犯罪行為。第四が、地球規模環境の悪化ということであります。  そうした情勢認識に基づいて、米国としては、国家安全保障目標として、こういった情勢に積極的に関与し、経済活性化民主主義拡大するという、関与拡大ということを政策目標にしております。  また、これらの政策見直しを通じて兵力再編成が行われつつありますが、代表的な考え方は、一つは、ボトムアップレビューに示されております二つの大規模地域紛争に同時に対処し得る戦力を保持することであります。また、その政策の一貫として、アジア及びヨーロッパにそれぞれ約十万人の兵力規模維持するということを方針にしております。さらに、アジア太平洋地域においては、日本との同盟関係をこの地域政策の柱として位置づけております。  一方、我が国におきましては、御承知のとおり、冷戦後、平成二年の暮れに中期防衛力整備計画が策定されました。この計画は、二年後の平成四年十二月に規模縮小基軸とする見直しが行われたわけであります。そして一昨年、平成七年十一月に新防衛計画大綱が閣議で決定されました。これら冷戦後の日米両国安全保障政策の再構築のゴールが、昨年四月の日米安全保障共同宣言であると私は考えております。  この共同宣言は、恐らく歴史的な意義を持つものだと私は高く評価しているところであります。この宣言が発せられるまでに、日米両国関係当局の緊密な協議、連携と、橋本総理のリーダーシップ、その成果であると私は考えております。  今、冷戦後の政策の再構築を申し上げてまいりましたが、要するに、冷戦が終わった、共通脅威であったソ連は消えた、だから、今後どのように国が生きていくのかといういろいろな論議がありました。例えば日米安保条約破棄論見直し論、そういったもろもろの論が日米両国においても唱えられたわけであります。その立場はそれぞれ違ったと思います。  しかし、一方において、冒頭に申し上げました不透明、不確実な世界情勢の中で、我が国がどのように生きていくのか、本当に大きな課題であったと思います。  そういった情勢のもとで、この共同宣言を通じて、将来とも日米両国同盟関係基軸としていくということを国際社会及びそれぞれの国内に宣明した意味は非常に大きいと思うわけであります。この宣言によって日米安保条約は再確認された、あるいは再定義されたということが言われておりますが、私は個人的には、同盟の再選択である、歴史的な視点で考えるならば、この時期、両国同盟を再選択したということが言えるのではないかと思います。  ただし、後ほど申し上げますが、この共同宣言によって日米両国の基本的な枠組みは明らかになりました。それを肉づけし、具体化することが今後の課題であり、それが実現しなければこの共同宣言は単なる言葉宣言になってしまうだろうと思っております。  そして、我が国基本政策としては、今申し上げました日米同盟が第一であり、また、我が国国際社会の平和と安定のためにしかるべき責務を遂行していくということを大きな柱にすべきだと思います。我が国だけのことを考えて平和と安全だけを求めるというかつての単なる一国平和主義と言われる姿勢は、この際、捨て去るべきだろうと思っております。  また、ツートラックアプローチと書いておりますが、私は、安全保障確保するためには二つの道を同時に歩むことが必要だと思います。第一の道は、平和が壊れないように、必要な軍事態勢安全保障体制を堅持すること。もう一つは、同時に、平和をより確実なものにするために、平和をつくるために各種努力、すなわち、信頼醸成とか安全保障の対話、そういった努力を行ってより安定した世界をつくっていく。この二つ努力を同時にやっていく必要があると思います。片方だけでは極めて不安定で、もろい安全保障政策になるだろうと思っております。  次に、今後の努力方向ということを書いておりますが、基本的な枠組みは、先ほど申し上げました新しい防衛計画大綱日米安全保障共同宣言に示されているとおりだと思います。  そして、先ほどツートラックアプローチということを申し上げましたが、第一の安全保障体制、すなわち、日米同盟関係に基づく軍事態勢を今後とも確保していくことが大切だと思います。我が国にとっては、新防衛計画大綱及び安全保障共同宣言あるいは新大綱に基づく現在の中期防衛力整備計画を着実に推進することが我が国のとるべき道だと思います。  現在、我が国の厳しい財政事情のもとで中期防を含む各種政府計画が見直される、これは当然だと思います。ただ、御理解いただきたいと思いますのは、この中期防あるいは大綱というのは、先ほど申し上げましたように、冷戦後の国際環境我が国の厳しい財政事情、そういったものを前提にしつつ懸命の努力を経てつくり上げられた政府計画であるということであります。  もう一つ申し上げたいのは、昭和五十年代、冷戦時代でありますが、一九八〇年代の当時の冷戦の厳しい情勢の中で、我が国財政再建という大きな課題を背負っておりました。各省庁の予算が毎年ゼロシーリングあるいはマイナスシーリングという時代が続いた中で、防衛費の突出とたたかれながら、批判されながら防衛努力我が国はそれなりに続けたわけであります。  その結果は、我が国が当時の西側陣営同盟の一員であるということの意思の表明であり、同時に、我が国を含む各国が当時のソ連の軍事的な冒険を許さないということを明確に、具体的に示した結果をもたらしたと思います。歴史的に見るならば、あのとき我が国が非常に苦しい中で努力をした、それが冷戦終結に導いた一つ要因であると私は考えております。  また、我が国努力にあわせて、米国アジア太平洋地域における戦略あるいはコミットメント確保するための努力我が国自身も怠ってはならないと思います。  現在、戦略核の削減ということが行われておりますが、計画はできましたが、しかし現実にはまだ膨大な核が存在しているわけであります。そういった時代が続く以上、やはり米国核抑止力というのは、我が国の安全にとって不可欠であると思います。あわせて、我が国を含むこのアジア太平洋地域において、海上、地上あるいは航空の戦力維持するというコミットメント確保することも必要であります。  また、日米安保体制信頼性向上、これは日本だけで行うことでなくて、両者が行うことでありますが、例えば政策協議あるいはガイドラインの見直し緊急事態対応策の検討、さらに日米同盟にふさわしい相互支援体制整備あるいは共同訓練在日米軍の駐留の円滑化、これらの努力を今後ともやっていく必要があると思います。  もう一つは、国際協力活動であります。これは、先ほどツートラックということを申し上げましたが、いわゆる平和な環境をつくるための我が国努力を重視していくということであります。  時間が非常に迫ってまいりましたので、最後に政治に対する期待、これは私の個人的な希望、お願いを申し上げたいと思います。  冷戦時代は、我が国政治の場におきましては、日米安保体制あるいは自衛隊の存在そのものについての論議が交わされた、私は、それは入り口における論争であったと思います。しかしながら、近年共通の土俵が得られたと考えております。それだけに、より現実的、建設的な安全保障論議を行っていただきたいということであります。  また、安全保障というのは、冒頭に申し上げましたように、国家、すなわち、政治にとって最大共通任務であろうと私は考えております。それは、ある意味では党派を超えて、与野党という枠組みを超えて共通課題だというふうに考えております。したがって、国家国民の安全というその基準を認識しながら、建設的な論議政策の確立を心から希望しております。  以上で陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  4. 伊藤英成

    伊藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、渡邉参考人にお願いいたします。
  5. 渡邉昭夫

    渡邉参考人 青山学院大学渡邊昭夫でございます。  本日、このような場で意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、心から感謝申し上げます。  私は、軍事問題の専門家というよりも、安全保障とか政治外交専門としている者でございますので、そのような観点からお話をさせていただくことになるかと思います。大きく分けて、まず第一に冷戦終えんアジア安全保障問題というテーマについて、第二に我が国としての対応という、大きな二つ項目に分けてお話をさせていただきたいと思います。  第一の冷戦終えんアジア安全保障問題でございますが、冷戦終えんというのも、もう何年も言い続けてきていささか陳腐に過ぎるという感じがございますけれども、あえて使わせていただくことにいたします。全般的な特徴アジア太平洋特徴というふうに分けてお話をさせていただきます。  全般的な特徴と申しますのは、別にこの我が国周辺地域について言えるだけでなくて、世界的な特徴として言えることではないかというふうに思います。簡単に申しますと、いわゆる冷戦時代というのは特定の脅威というものがあって、いわば集中した形で脅威というものが存在していた。それが非常に拡散してまいりまして、形が定まらない、非定型的な危険へというふうに拡散といいますか、分散しているというふうに言えるのではないかと思います。  よく冷戦が終わったのに軍事的危機があるのはどういうことだろうかとか、逆に、軍事的な危機があるからまだ冷戦が終わっていないのではないかというような議論がございますが、そういう議論は当たらないのではないかと思います。冷戦というのは、ある非常に特徴的な構造を持った脅威というものであって、そのような構造的な特徴は、確かにソ連崩壊という形でなくなったと思うのですけれども、しかし、別の形でいろいろな危険に発展し得るものがあるということは間違いがないのではないかと思います。  では、どういうところに今の特徴があるかというと、やや大胆に申し上げますと、しっかりした国家の枠があって、その国家間の全面的な、組織的な武力衝突というもの、これを我々は戦争というふうに呼んできたと思うのですけれども、そういうある意味で古典的な戦争というものから、国家枠自体が余り定まらない、そういう国家的な秩序崩壊に起因するさまざまな暴力的な抗争、それを内乱と言ったりあるいは地域紛争と言ったりすることがあると思いますが、そういうものあるいはゲリラ的な行動が頻発するというふうな形へと変わってきているのではないか、これがまず第一の前提でございます。  その上に立ってアジア太平洋のことを考えてみますと、アジア太平洋についても同じようなことが言えるといえば言えるのですけれども、ここでやや相反するような二つの面があるように私は思います。一言で言えば、地域的な安全保障環境が非常に流動的であるということではございますが、私はプラス面マイナス面があると思います。  時に、世界全体は冷戦後非常に穏やかな方向に行っているのに、アジアだけは非常に危ない、極端に言うと一触即発の危機にあるというようなことを言う人がいないわけではないのですが、私はそうではないと思っております。  プラス面といたしますと、先ほど申しましたように、内乱とかそれに近いような状態が実はあちこちにございます、日々ニュースになっているので今改めてここで申し上げることはないと思うのですけれども、ところがアジア太平洋地域を見ますと、むしろそういった内乱ないしそれに近い混乱状態からは遠いというふうに言っていいのではないかと思います。むしろ目覚ましい経済的な成長と、それを根拠にした、インドネシアの人の好む言葉で言うとレジリエンスというふうな、一つの国としての秩序維持あるいは地域的な秩序維持というふうな健全な方向がむしろ伸びているというふうに言えるのではないかと思います。  私の見るところ、多分一つ例外は、ここ二、三日ニュースになっているパプアニューギニアというところでございます。あるいはもう一つ、カンボジアは一応おさまったわけでありますが、まだ安心し切るわけにはいかないかもしれないというような幾つかの例外があるにしても、全体として見れば、この地域では国家建設というものが着実に行われてきていて、それを安定的な形にするための経済社会建設も、いろいろな問題を抱えているとしても、他との比較でいえば全体としては明るい方向に向かっているのではないか、その意味ではプラスの面があると私は思います。  マイナスの面は、どちらかというとむしろ国家国家の間、国家の枠は次第にでき上がってきているわけでありますが、国家国家の間の関係が非常に流動的であり、形がはっきり定まっていないということになると思います。これは無理もないといえば無理もないわけでありまして、この地域に一人前の国家ができて、その一人前の国家同士の間のつき合いという形での国際関係というものができるようになったのは、ここ近々、三十年とかといったようなことであるわけでありますから、言うなれば国際システムというものとしては非常に若いというふうに言っていいと思うのですね。  したがって、幾つかの国境の未確定問題を持っていたり、多角的秩序と申しましょうか、この地域一つ秩序であるという形でとらえていくようなことがまだ十分にできていない、そういうやり方が十分にできていないということになるでしょうし、よく使われることで言うと、信頼醸成ということが必ずしもまだ十分いっていないということであって、つまり、国家同士の間のつき合い、一つ地域的なシステムとして問題をどのように議論し、どのように扱っていくのかという行き方をいわば学習している最中であるということになると思うのですね。そういうのがこの辺の特徴であろうと思います。  もう少し具体的に申しますと、アジア太平洋地域のこうした特徴は、安全保障協力ということにとって有利な環境なのであろうか、それとも不利な環境なのであろうかという問題になろうかと思います。これまた白黒はっきりと決めるわけにいかないのですが、非常に難しい話をごく――焦点を合わせるためにあえて申し上げますと、その中でやはり中国の動向というものが、これからの長い将来を見る場合にかぎを握っているのではないだろうか。  よく言いますように、中国脅威であるかどうかというふうな議論があります。あるいは、むしろ中国はこれから安全保障を考えていく場合のパートナーとして考えるべきかというふうに議論されます。アメリカでの言い方によると、いわゆる封じ込めなのか、それとも抱きかかえ論なのかというふうな議論の仕方をするわけでございます。  私は、ここで中国脅威論というふうなことで中国がかぎだと言っているわけではないわけでございまして、むしろ中国というのは非常に大きな存在であり、かつ、ますます経済的にも軍事的にも重要な国になろうとしているということを当然大前提としているわけでありますが、その中国というのは、一つ国家の形成の過程ということから見ますと、やはりまだ未完成のところがあるということがあると思います。それからもう一つは、中国というのは非常に特異な地政学的な地位を持っているということがあると思います。  そこで、これからのこの地域安全保障問題を考えていく場合に、中国との関連でいろいろな問題を見ていくということが一つの行き方、やり方として大事ではないかという意味で申し上げております。  もう少しわかりやすく言うために、地図を念頭に置きますと、我が国に一番近いところから始めますと、北東アジア――北東アジアというのは、一言で言えば朝鮮半島とその両側の海域という一つの固まりだと思います。  それから、左回りにぐっと行くわけでありますが、その次には、今度は台湾海峡と東シナ海という問題でございます。ここには尖閣諸島という問題が我が国に直接関係する問題としてあることは言うまでもございません。  さらに左回りに行きますと、今度は南シナ海と東南アジアという一つの固まりがございます。ここでは、御承知のように、南沙群島というのが問題になっているということになります。  このあたりが我々が普通考える場合に一番関係の深いところだということになるわけでありますが、さらに回っていきますと、中央アジアとの国境問題を中国は抱えておりますし、ここにチベット問題を含めてもいいかもしれません。そして、さらにミャンマーを経てインド洋へというふうな出口がございます。ここにも一連の問題がある。  今度はぐっと上へ回っていきますと、モンゴルからシベリア、沿海州、そして環日本海というふうに一回り回ってくるわけでありますね。これはお互いに少しずつダブっていると思いますが、ぐるつと取り巻いている。いずれも中国関係するということであるわけですね。  最後に、もう一つは、オホーツク、千島、カムチャツカからベーリング海、アリューシャンというところになりますが、これは中国は直接関係がないということになる。しかし、日本としては忘れ去るわけにはいかない。大体こういうふうな状況になるのではないかと思います。  私がここでわざわざそういうことを申し上げるのは、いずれも中国がどう動くかということと関係せざるを得ないという問題であるわけですね。こういうのがアジア太平洋の大きな特徴であろうかというふうに思っているわけであります。  その場合に、先ほど申した第一の北東アジア、それから東シナ海、南シナ海、狭い意味での東アジアというふうに言っていいでしょうか、この問題を考えるときに、これらはもちろんそれぞれ別個に考えなければいけない面があると同時に、お互いに関連もし合うということになろうかと思います。  やや話をはしょることになりますけれども、今問題になっております沖縄の戦略的な地位がどうか、あるいは沖縄を中心にした日本列島というものがこの中でどういう位置を持つかというふうに置きかえてもいいかもしれませんが、そういう問題を考えるときに、先ほど申しました三つの安全保障上の地域というものと深くかかわりを持つところに実は存在しているのだというふうに言っていいのではないかと思うわけであります。これについては当然後ほど議論があると思いますので、とりあえずそこで終わることにいたします。  次に、我が国対応でございますが、これは長期的な目標と当面の対策というふうに二つに分けて申し上げさせていただきます。  最初に、長期的な目標というのは、先ほど申し上げた言葉で言いますと、しっかりとした国家、なかんずく大きな力を持った国家というものが自分たちの間の紛争を解決するために全面的に軍事力を動員して戦い合うというような状態よりは、いわゆる地域的な紛争地域紛争という言葉はもう少し正確に本当は考える必要がある言葉だろうと思うのですが、とりあえず地域紛争という言葉を使っておきますと、そういう地域紛争というものを抑止する。不幸にしてそれが起こったときには、できるだけ早目に手を打って拡大しないようにするという、早期的な対処ということを国際社会が共同で取り組んでいくというのがこれからの安全保障課題であろうと思います。  そういうふうな地域紛争の抑止または早期対処を共同で保障するあるいは担保するためにはどうしても――国際社会全体というふうに言うと漠然としてしまうので、そういう国際社会秩序を担っていくために特に重要な責任を持っている諸国間、大国というふうな言葉をもし使うとしますと、大国間の基本的な協調というものをグローバルな規模であるいは地域的な規模でどうやってつくり出していくことができるかという問題であろうと思うのです、大きく言えば。  アジア太平洋に関して言うと、どうしてもそこで日本アメリカとが中心にならなければなりません。それで、プラス中国というものをどうその中に組み込んでいくかという新しい日米関係構築していくということが長期的には一番大事な問題ではないかと思います。  例えば、ヨーロッパでは、いわゆる冷戦が終わって、東西の間の新しい安全保障関係が進んでいるというふうに言われておりますが、ついこの間のクリントン・エリツィン会談でも問題になりましたように、NATOの東方拡大ということをめぐってかなり激しい議論の相違がございます。つまり、アメリカロシアは、もちろんかつての状態ではないけれども、それでは地域的なあるいは世界的な安全保障問題を考えていくときの気の合ったパートナーかというと、そこまではいっていないだろうと思うのですね。それを我がアジア太平洋に引きかえますと、中国との関係中国安全保障上の本当のパートナーとして考えていくようにするにはどうしたらいいかという大きな問題があるのではないかと思います。  当面の話としてはどういうことかということでありますが、ここも二つございます。  一つは、流動的で不定型な地域的な国家関係というものにどういう形で安定性をもたらしていくかという問題であります。これについては、ASEAN諸国を中心にしたいわゆるASEAN地域フォーラムというような多角的な話し合いの場が少しずつ形をとり始めておりますし、そのほか、日本を中心にして見ますと、日本と韓国とか、日本中国日本ロシア、その他そういう二国間の安全保障対話の積み重ねというのがございます。あるいは、もう少し焦点を合わせれば、朝鮮半島をめぐる何カ国かの間の協力という形でその問題を処理していこうという動きが、なかなか突破口はないようでございますが、しかし一時期に比べるとかなり形をとってきているように思うわけで、その種類のことであろうと思います。  それからもう一つは、さはさりながら、何か突発的な事態が起こったときにどう備えるかということで、ここはどこの国でもそうでございますが、今非常に重点が置かれているのは、いわゆる即応性ということであろうと思うのですね。いかに早期に対処して事が大きくなるのを防いでいくかという、即応性を備えていくということだろうと思うわけです。  そういう即応性の維持と向上という観点から、どうやって日米安全保障関係を立て直していくかということが課題なのであろうと思います。いわゆる日米安全保障関係の再確認、再定義、再選択ということが今問題になっているわけであります。少なくともそれを日本側から見た場合には、今申しましたような即応性ということをどう維持し向上していくかという目的から、それをどう立て直していくか。別に今まである枠組みを全部解体してつくり直すという意味ではございません。そういう方向での課題が求められているのであろうかと思います。  時間が参りましたので、とりあえず私の意見の陳述とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 伊藤英成

    伊藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、岡崎参考人にお願いいたします。
  7. 岡崎久彦

    岡崎参考人 国政に責任を持たれる先生方に直接お話しできるチャンスを与えられまして、光栄に存じます。  時間が限られておりますので、日米安保条約に関連することを中心に申し上げたいと思います。  まず、情勢判断でございますけれども、これはもう既に、佐久間参考人渡邉参考人から詳しく御説明があったので詳しいことは申し上げませんが、結局、冷戦は確かに終わりまして、ヨーロッパ、あるいはアフガン撤兵後の南アジア、あるいはベトナムのカンボジア撤兵後の東南アジア、これは全部変わりました。ところが、極東では余り変わっておりません。特に、朝鮮半島台湾海峡は全く変わっておりません。むしろ逆に、過去三十年間は、これは客観的事実でございますが、比較的安定期でございます。これから十年、二十年は変動期に入るのだ。これは世界のいかなる専門家といえども反対できないわけでございます。  そうなりますと、むしろ安保条約というものは非常に、冷戦が終わったから安保条約は要らないということはあり得ないのでありまして、これから変動期に際して最も重要になるということでございます。  むしろ安保条約をつくった、要するに朝鮮休戦後の時期あるいは沖縄返還後の時期によく似ております。当時、ソ連の海空軍というのはアメリカの第七艦隊の前で微弱でございまして、安保条約の主な目的は朝鮮半島台湾海峡でございました。冷戦の最後の十年間、ソ連脅威が非常に強かったものでございますから、その記憶ばかり非常に強いのでございますけれども、それは、そういう時期があったということでございまして、安保条約が初めにできたころの目的から考えますと、今こそ安保条約が最も必要な時期が来ている、そういうことでございます。  それからもう一つ、歴史的に申しますと、確かにソ連は今軍が弱体化しております。ただ、これはわからないのです。一九一七年の革命のときから十五年たって、三二年ごろにソ連はまた強くなってまいりました。辛亥革命の後、大体十五年して蒋介石の北伐が始まりまして、その間日本は全く心配しなくていい時期があったのです。そのときに日英同盟の廃棄を許してしまった。それで、日本は孤立して漂流するのでございます。こういう中間的な時期こそ、今までの態度を非常に堅持しなければいけない、そういう極めて大事な時期でございます。  十五年と申しますけれども、ソ連革命からもうこれで七年目に入っておりますので、あとちょうど半分しか残っていない。確かに、この半分でロシアというのは非常にしっかりするだろうと思います。  情勢というのは、今は一番ロシアが弱い時期でございますけれども、これはどうなるか全く将来のことはわからない。中国の軍備強化もございますし、将来はわからないのでございますけれども、将来どうするということを考えます場合に、むしろ基礎となるのは日米同盟の力でございます。  日米同盟というのは圧倒的に強い力を持っておりまして、軍事力を合計すれば、それは問題なく強い。経済力も、アジアが全部必要とする市場、技術、資本、これは全部ほとんど独占的に持っております。ですから、日米同盟がしっかりしますとアジアというのは安定するのだというか、ほかの変動要素が、選択肢が減ってくるわけでございます。  ですから、対中関係、対ロ関係、対朝鮮あるいは統一朝鮮関係、これをどうするのだと聞かれますと、第一の方策は日米同盟を強くすること。これによって非常に関係は安定いたします。  そこで、日米同盟強化の方策というのは、非常にはっきりしております。これは、沖縄の基地問題を解決することと集団的自衛権の問題を解決すること、この二つさえ解決すれば、恐らくこれから我々の孫子の代まで数世代にわたって日本国民は平和と安全を享受できると思います。これは必ずしも易しいことではないのでございましょうけれども、これだけ先行き不透明な世の中で、これさえずれば済むというものが見えているということは希有なことであろうと思います。  そこで、米軍基地の問題でございますが、米軍基地は、冷戦後のアメリカによる世界秩序維持には大変重要なことでございます。アメリカの今持っております基地は、沖縄と、それからあとはインド洋の真ん中のディエゴガルシア、これも沖縄の支援を受けております。ですから、これを失いますと、アメリカはヨーロッパ以外の地域については介入能力を失うのでございますね。要するに、世界秩序維持の責任を失ってしまう。ということは、むしろ日本の基地がないとアメリカはもう世界政策ができない、そういうふうになっております。  アメリカというのは非常に特殊な国家でありまして、アジア諸国全部、アメリカの駐留を望んでおります。これは一種理想主義的な国でありまして、過ちも大変犯すのでありますけれども、結局は私心がないことをみんな知っている。ベトナムで五万五千の兵を失って、初めから寸土も得る気持ちはない。韓国もそうでありますし、湾岸もそうである。そういう極めて不思議な国でありまして、アジアの国が結局は信頼しております。北朝鮮でさえも、アメリカとだけは仲よくしたい、そういう国でございます。ですから、日本アメリカの基地を維持しているということは、日本のためでなしに、これはアジアに対する最大の貢献であります。これが揺らぎますと、アジアの国が一斉に不安定になります。  そこで、また沖縄の基地なのでございますけれども、それだけの重要な基地、これはだれかが負担しなければいけない、それをたまたま沖縄が最も大きく負担している。これはだれかが負担しなければいけないのはやむを得ないことでございますけれども、沖縄に特殊事情があることは認めなければいけません。  沖縄について同情すべき点は多々ございます。古くさかのぼれば、かつて独立国であった。それから、戦前は差別さえもあった。それから、戦争中に最大の被害を受けた。これは大田中将の言葉でございますけれども、沖縄県民には「後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」と、そういう歴史的経緯がございます。それから、戦後は外国支配。それで、単に戦略的重要性でアメリカ軍がいるというのではなしに、そういう経緯があっているという特殊な事情がございまして、これについてはやはり同情すべき点はございます。  それについては、基地の国内移転、それから沖縄開発プロジェクト、そういう面でもって政府が全面的に協力すべきものでございます。  ただ、一坪地主とか無責任な反基地、反米闘争、これと沖縄の民意とは違うものでございます。これに対しては、やはり毅然たる態度をとらなければいけない。これは既に最高裁判所の判決が出ておりまして、条約に基づく国家の義務履行のために必要かつ合理的なものだとそれが認められておりますので、しかも、争って負けた側がいまだに最高裁の判決の趣旨に従わない、これはちょっと法治国家としては遺憾なことであると思います。  今言っているこの無責任な反米、反基地闘争、これは非常に六〇年安保、七〇年安保と似ておりまして、六〇年安保、七〇年安保では、こういう無責任な反米、反基地闘争を毅然たる態度を通して押し切った、それによって現在の日本があるわけなのでございます。それは当時の自民党政権、自民党の先人がそれをなさったわけでございます。私は、現在の自民党も、党の先人に恥じないように措置していただくことを希望いたします。  それから社会党も、これは安保堅持をおっしゃった、国家に責任を持つ政党である以上、政策と論理の整合性がなければいけない。安保堅持の整合性に従って行動されれば、無責任な反米、反基地運動とはやはり一線を画さざるを得ない。でなければ、政策の論理が崩れてまいります。  そこで、今度は海兵隊の問題でございますけれども、ここ十日ぐらい、新聞だけでございますけれども、私は何となく脇に落ちませんのは、海兵隊縮小政府から言い出す、そういうニュースがしばしば流れております。これも、橋本・クリントン会談、これを引き継いだSACOの結論がございまして、在日米軍の能力及び態勢を十分に維持するということを合意しております。  もちろん、それを実施することの困難はわかるのでございます。それは、基地を移転と申しましても国内でいろいろ反対もある、それはわかるのでございますけれども、それが難しいからといって、半年もたたないうちにまたこの問題をアメリカに持ち込む、これは日本として大変恥ずかしいことであろうと私は思います。  そういうことをしますと、これは国内の基地移転にいたしましても、ここにおられる臼井前長官、現長官も誠心誠意を持って地方自治体とお話しになって、着々と進んでいるわけでございます。こうした努力が無になってしまう。それから、何よりも大事なのは、アメリカの基地を持っている、これが日本最大の貢献になりますけれども、アジア諸国に対して動揺を与えるわけでございます。これは日本の責任を果たさないことになります。  それからまた、少しぐらい削減して、例えば有事駐留のようなことをして歩兵部隊を千人、二千人減らしたところで、沖縄の将来にとってはどれだけのプラスがあるかというと、それ自身も疑問でございます。ということで、海兵隊縮小は、これは軽々にアメリカに持ち出すべき問題ではないと私は思います。  そこで、最後に、集団的自衛権の行使の問題でございます。  これは、アメリカも最近はいろいろ考え方が固まってまいりまして、昨年以来のアメリカの軍事専門家意見はほとんど一致しております。集団的自衛権の行使を日本が認めないと、日米同盟というのはひび割れがしてしまうということを言っております。これは政府関係者は違います。政府関係者は、いや、それは日本がお決めになることである、憲法を尊重すればいい、そういうことを申します。それ以外は一言も言えないわけでございます。それ以外を言えばアメリカ日本の内政に干渉している、そういう非難を受けることは明らかなので、これは口が裂けても言えないことなんです。ところが、そういう人たちが一度政府を離れますと、非常にはっきり申します。それは、昨年の夏のカール・フォード、それからことしの冬のトーケル・パターソン、それからジム・アワー、そういう方の論文をお読みになれば非常にはっきりするわけでございます。  これは、また実際の問題として、アジアの軍事バランスというのはこれからだんだんと変わっていくわけでございます。例えて申しますと、昨年の三月のような台湾海峡事件が起きる、台湾海峡は平和的に解決されるべきだ、これには日本アメリカも合意しております。これは、アメリカが空母機動部隊を二つ出して、その結果、中国が軍事上手も足も出ないで引っ込んだ、そういう状況だ。ただ、これがどんどん変わってまいります。そのうちに、何年か先でございますけれども、空母機動部隊が二つではどうにもならない、そういうふうに軍事バランスがだんだんと変わってまいります。  アメリカはまだまだ余力がございますけれども、余力を使う場合に一つ一つハードルを越えていかなきゃいけない。その場合に、一体日本はどうしているんだ、この声が出てくるのは、これは避けがたいことでございます。また、日本は大変力を持っております。これは営々として築き上げてきた力がございまして、それで、アメリカと協力すればいろいろ使える力があるのでございますけれども、今のところ、アメリカと共同行動するという意味ではゼロになっております。ゼロの力が使えるようになることでアジアの軍事バランスというのは一挙に変わるのでございます。  例えばアメリカが空母機動部隊二つではとても守り切れない、そういう状況が十年後あるいは七、八年後に起こるとする、それまでに日本が態度を変えている、集団的自衛権の行使を認めるということになっておりますと、あと十年、十五年、アジアは全く平和になります、安定します。我々の子供や孫の代まで安定した平和な生活が楽しめるようになると思います。  実は、これは不思議な話でございまして、もはや日本政治アジアの平和の安定を決める、そういう状況にまでなってきております。これは、別に日本が軍備を増強する必要はございません。日本が軍備を増強したらどうなるかとか軍事大国化したらどうなるかとか、そういうことはございますけれども、現在の防衛整備を続けていくだけでも十分でございます。同じものが、ゼロだったものが使えるようになる、それだけの差でございます。  それからまた、いざという場合はどこに出兵するというコミットメントは全く必要ございません。これはむしろ、兵を動かすということは国の大事でございますから、これは一〇〇のうち九九はしないことでございます。ただ、ひょっとしたらできるかもしれないという法律的な可能性を残すだけでアジアが一挙に安定いたします。  そこで、集団的自衛権の問題でございますけれども、これは、私は憲法改正の必要は全然ないと思っております。実は、憲法は集団的自衛権を認めているんです。これはいかなる場で、総理にお聞きになっても外務大臣にお聞きになっても、そういう返事が出るわけでございます。憲法ができまして、それから日本が講和条約を結びまして、それから安保条約を結んで、国連憲章に加盟する、それで正式な批准手続を経ております。そのすべての条約に、日本は集団的自衛権があるということがはっきり書いてございます。  これを、集団的自衛権を行使しないというのは、国会答弁でそういう答弁があって、それをただ踏襲しているというだけのことでございます。憲法は集団的自衛権の権利を認めている、ただし憲法は集団的自衛権の行使を認めていない、これは非常に不思議なことでございまして、こういうことをもし私がはっきり言うと、後で速記者がこれは間違っているんじゃないかと聞きに来るぐらいの間違いだと思います。  本来憲法は集団的自衛権を認めている、ただ、今政府は方針としてそれを行使しない、これは当然でございます。それは正当防衛権と同じで、泥棒が金を出せと言ったら私は出すわけでございます、危険でございますから。ただ、それが自分の子供を殺すとか妻が犯されるというような場合は、これはやむを得ない。それが権利というものでございまして、権利があるけれども行使できない、そういうことはあり得ないことでございますね。つまり、通常、取引をして、金を払えばその物を私はもらえるわけなんです。金を払って、もらおうとすると、確かにおまえはそれをもらう権利がある、だけれども権利を行使していいとは言っていないと。相手は渡す義務があるので、おまえは義務があるだろうと言うと、いや、確かに私は義務があります、だけれども義務を履行するとは言っていない、これでは社会というものは成立しないのであります。  今までそういうような答弁をしたというのは、これは一つの知的退廃でありまして、これは解釈とかそういう種類の問題ではないのであります。でありますから、今後、憲法改正の必要は全くない。それから、解釈の改正といっても――解釈の変更と言うと、今までまともな解釈があったかのごとき誤解を与えます。まともな解釈というのはなかったわけでございます。だから、要するに、今後は、集団的自衛権はあるか、ある、これはだれでもそう言います、これをいつ行使するのかと聞いた場合に、集団的自衛権の行使というものは国家の重大事項である、だから国民の安全と平和、繁栄、それだけを基準にして、慎重の上に慎重に考える、その答弁が私は正しいと思います。その答弁一つで、もはや憲法の改正とかそういう問題ではないと私は存じております。(拍手)
  8. 伊藤英成

    伊藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、小川参考人にお願いいたします。
  9. 小川和久

    小川参考人 小川でございます。  このような重要な場で意見を述べさせていただくことを大変光栄に存じます。  国際情勢に関しましては、これまで佐久間参考人渡邉参考人の方から極めて適切なお話がございました。私はやはり岡崎参考人と同じ日米安保、とりわけ沖縄の米軍基地問題に関して若干の意見を述べさせていただきたいと思います。  この委員会テーマ設定からまいりまして、東アジアにおける我が国安全保障問題ということになっておりますので、まず、お手元のレジュメにありますように、Aについてはその第一項目アメリカから眺めた日米安保ということを若干踏まえまして、Bにあります沖縄米軍基地問題の解決ということでお話を進めさせていただきたいと思います。  私自身、この問題に触れます問題意識といたしましては、とにかく日米安保体制を、日本なりの平和主義でもよろしいのですが、それに沿って健全化することによって国際平和を実現すること、そして沖縄の米軍基地問題に関してはやはり解決の方向に大きく前進すること、それをも問題意識とさせていただきたいと思うわけであります。  そこにおいて、レジュメのAにございます東アジアの安定における日米安保体制の役割ということで若干のお話を申し上げたい。岡崎参考人の方からもお話がございましたけれども、アメリカから眺めた日米安保ということで議論を整理してまいりたいと思うわけであります。  とにかく、同盟関係と申すものは、その国の国益にかなっているというところから選択されるものであります。ですから、日米安保というものは日本の国益にとっても極めて重要である、そのような立場というのは当然あるのだと思います。しかし、アメリカから眺めた場合、お情けで日本同盟関係を結んでいるのか、さにあらず、アメリカの国益にとって極めて重要であればこそ日米安保を維持しているのだというところは、私どもは認識をもう一度改めてみる必要があるのではないか、そのような感じがするわけであります。  私自身は、十三年前に、アメリカ政府の正式な許可を得て、北は三沢基地から南は嘉手納基地まで、実際に米軍基地を歩き、基地司令官に聞き取り調査を行い、また、アメリカ側から資料の提供を受け、また、ブリーフィングを受けたわけであります。  その中で、私自身のささやかな分析を報告書の形で公にしたわけでございますけれども、その結果を申し上げますと、それまでの俗論でありますところの、在日米軍基地などは韓国にある米軍基地の数十分の一の位置づけしかない、あるいは当時フィリピンにあったスビックの海軍基地と比べて日本の基地などは五十分の一以下の重要性しかないといったものに比べて、逆であります。例えば朝鮮半島にある在韓米軍基地というのは、朝鮮半島戦争にのみ備える格好で展開をしてきた。それに対して、在日米軍基地は、アメリカ第七艦隊の任務区域であります西経百六十度、これはハワイでございます、それから東経十七度、これはアフリカ最南端の喜望峰でございますが、つまり、地球の半分で行動する米軍を支えるような機能を担っているということが明らかになったわけでございます。  つまり、軍事基地の性格として、韓国にある米軍基地、あるいは当時フィリピンにあった米軍基地が第一線の野戦基地であったのに比べ、在日米軍基地アメリカ世界のリーダーであり続けるための戦略的根拠地である、そのような位置づけにある。それを日本国民認識をし、みずからの税金で維持をしているという自覚のもとにアメリカとの同盟関係を健全に維持することが極めて重要ではないかという思いを持つに至ったわけであります。  いかに日本アメリカとの同盟関係において重要な役割を果たしているか、これは日本国民国民性からいいますと、アメリカ側の議論に振り回される傾向がありますので、アメリカ政府の要職にかかわった方の発言を御紹介する中で若干の御説明を申し上げたいと思います。  昨年の十一月十五日のことでありますが、東京で沖縄問題に関する研究会が開かれました。これは霞が関ビルであったのですが、主催をしたのは東海大学の平和戦略国際研究所であります。司会をしてくださったのは自民党の参議院議員武見敬三さんです。アメリカ側のスピーカーは、アメリカ国防総省の前のジャパンデスクであったポール・ジアラ氏、そして、その横にアメリカ国防総省の国防分析研究所の研究員でありますマイケル・グリーン氏が同席をする。日本側のスピーカーがたまたま私であったわけであります。  私は日本側の出席者の方に聞いていただきたいということがありまして、ポール・ジアラ氏に確認を求めた、これは当時の記録にちゃんと書いてあります。「日米安保抜きにアメリカ世界のリーダーでいられますか。」まさしくこれは、シンガポールが陥落した後、山下奉文将軍がパーシバル中将に対してイエスかノーかと迫ったような雰囲気で私は聞いたわけであります。そうしたら、すぐさまアメリカ側は答えた、リーダーではいられませんと。アメリカにとってもそれだけ重要であるということなのです。  その話の流れの中で、ポール・ジアラ氏は、とにかく湾岸戦争のときの日本の貢献というものも、お金を拠出する以前に、軍事力の出撃拠点として極めて重要な役割を果たした、最大の貢献をしたということを向こうが言ったわけであります。私は、私のこれまでの調査でありますし、持論でございますけれども、とにかくその五十六万余りの米軍を湾岸において支えたのは戦略的根拠地である日本列島であり、特に、燃料と弾薬の八割以上は日本から運ばれたものであるというような御説明を申し上げたとあります。  とにかく日本は、アメリカ同盟国の中で、もちろん軍事力の提供ということにおいては大きな制約を抱えておりますけれども、極めて大きな役割分担をしている、その自覚が極めて重要であろう。  このレジュメのBの一番下にeの⑧とありますが、片務性という議論日本ではしばしば日米安保に関する議論を屈折させている原因になっていると私は考えますので、若干の考えをお聞きいただきたいと思います。  とにかく日本アメリカから守っていただいているのだ、だから、アメリカに何か物を申すとアメリカを怒らせてしまうのじゃないか、アメリカを怒らせるとアメリカ日米安保を切ってしまうのじゃないか、そうすると、日本は裸同然になってとにかく大変なことになるのじゃないか、だから、ひたすらアメリカの言うことを聞くのだというような議論が戦後一貫して日本の中にかなり大きなものとして存在してきたわけであります。  ただ、同盟関係の常識ということを前提にこの片務性の問題を考えたとき、戦後五十一年間を眺めましても、アメリカ同盟国の中で、果たして軍事的に見てどの国がアメリカと対等であったことがあるのでしょうか。  さまざまなかかわり方をしておりますが、軍事面で見たとき、アメリカ同盟国はやはりアメリカの軍事的リーダーシップのもとにあるわけでありまして、アメリカから見ると、すべてが片務条約であります。中には、アメリカから軍事的に丸抱えになっている国もございます。そこにはアメリカ国民の税金が使われ、場合によってはアメリカの若者の血が流されるかもしれない。それが片務条約であるがゆえにアメリカにとってむだだということになりましたら、アメリカ国民がそれを許すはずはありません。  アメリカの国益にとって重要であればこそ、丸抱えの片務条約でもアメリカ維持しているわけであります。ですから、片務的だということだけで肩身の狭い思いをするというのは、国際常識に欠ける議論であろうということをまず申し上げたい。  ただ、同時に片務条約をそのまま放置していいのかという問題もございます。とにかく外交は対等が前提であります。ですから、軍事面では対等になれないにしても、同盟国は、例えば重要な基地の提供あるいは資金の提供などによって対等な関係、つまり双務性を高めることが極めて重要でございます。  その面から日本を見た場合、例えば戦略的根拠地である在日米軍基地を提供している、これは金銭に換算できないほどの重要な役割分担であります。また、金銭面でも、このレジュメの三枚目、データの5にございますけれども、平成八年度で見た場合の在日米軍経費は総額六千三百八十九億円であります。同時にまた、我が自衛隊の役割分担というものをアメリカから見た場合は極めて重要である。自衛隊は日本の国を守るために存在しているわけでありますが、私どもの防衛費維持されている自衛隊は、アメリカ世界のリーダーであり続けるために必要不可欠な戦略的根拠地である日本列島を守る戦力として認識をされている。ですから、年間五兆円余りの資金的分担も行っているという議論を基本的には行わなければいけないわけであります。  私自身のささやかな体験で言いますと、このような議論アメリカ側とこれまでやってきて、一度も反論などを受けたことはございません。そのとおりだというような認識でございます。ですから、これはやはり民主主義国である日本側としても、納税者にこたえるために明確にしていくべき問題であろうかと思います。  とにかく、先ほど岡崎参考人お話にもありましたように、国際情勢に対する分析等は同時に重要でございますけれども、私はここで申し上げたいのは、日米安保を、日本なりにでよいのでありますけれども、健全に維持することの中でアジアの安定が相当進むのだ、それが確保されるのだということを申し上げておきたい。  我々がそういう自覚を持ち、日米安保を健全に維持しようとしているかどうかの試金石が、このレジュメのBにあります沖縄米軍基地問題の解決であろう。  そこで、若干のお話を申し上げたいわけでございます。このレジュメのBのa、b、c、dというところで若干お話を進めたい。  とにかく沖縄の人々に大変重い、しかも偏った差別的な米軍基地の重みが加えられてきたということに対して、私どもが戦後一貫して無自覚な状態にあったということは、大きく反省し、改善に向けて努力をしなければいけない。これは、現在、国を挙げて進められていることであろうと信じたいと思います。ただ、その場合に、やはり議論を進める前にさまざま整理をしなければいけないポイントがあるだろう、そこをここに述べたわけでございます。レジュメのBのaにありますように、白紙的に見た場合の沖縄米軍基地問題の解決における選択肢は、大ざっぱに言って三つあると思います。  つまり、米軍基地問題全体をなくしてしまおうと思ったら、日本から日米安保をやめてしまえばなくなるのです。こういう選択も白紙的にはあるでしょう。ただ、私は、それは日本の国益にとつて望ましいことではないと思いますし、日本国民の恐らく半分以上は、日米安保の解消というものは望ましくないと選択するでありましょう。ですから、これは、ここでは私は消させていただきます。  結果的に言いますと、この③にあります米軍基地の再配置、縮小などを図る中で、沖縄に加えられている過重な米軍基地の負担というものはなくしていくという方向に行きたいわけでありますが、もし日本国民を挙げてそのようなことに取り組む姿勢が生まれてこなければ、沖縄としてはみずからその問題を解決せざるを得なくなる。それが、この二番目にあります沖縄独立という選択肢であります。  これはリスクは伴いますが、沖縄が例えばシンガポール並みの通商国家として生きていく将来を保証するものかもしれません。ただ、日本全体から眺めた場合、国内問題にすぎない沖縄米軍基地問題を良好な形で解決できないとなりますと、国際的な信用を失います。これも国益の問題から見て甚だ好ましくない。ですから、ここでは消去法で消させていただく。  三番目の再配置、縮小ということを前提に、このレジュメのBのbの問題に入ってまいります。沖縄米軍基地問題を基地の再配置や縮小などによって解決していくためには、この①から③までの条件を同時にクリアしていくことが必要になると私は思います。  一つは、米軍基地の再配置、縮小であります。この中には、沖縄における戦後処理という問題がまず第一になければいけないと思います。  とにかく沖縄戦が終結した後、米軍が上陸をし、そこに居座る形で現在の米軍基地は存在しております。これは、沖縄の主要な部分を占め続け、沖縄の自立というものを阻んできた。これは、沖縄復帰後も、その根本的な部分においてはいささかも変わることはなかったわけであります。とにかく沖縄の復興、繁栄というものを考えるとき、沖縄県内においてまず基地をどこかに移すという作業は、正面から取り組まなければいけないだろうということであります。同時に、これはやはり日本本土にも分散しなければならないし、アメリカと交渉する中で、縮小するあるいは整理統合するという作業を進めなければいけないと思います。  これと同時に、アメリカとの交渉を行う中で、二番目の沖縄の経済的自立を可能とする抜本的振興策というものを本来的に望ましい形で描くことが重要であろう。  しかしながら、この三番目にありますように、これを可能とする条件は、アメリカの軍事的プレゼンスを維持してやるということであります。とにかく軍事的プレゼンスが維持されているとアメリカが認める限り、日本の要求をアメリカは相当受け入れると私は乏しい体験の中で感触を得ております。しかし、そのための条件を整え、日本なりのカードを備えない限り、これは無理であります。ですから、議論を最初から整理していくことが極めて重要になるだろうと思っております。  そういう条件を前提として、このレジュメのBのcでございますが、日米両国が沖縄の米軍基地問題の解決のために目指すべき到達点というものを明らかにし、そこへ向けての歩みを始めることが重要であろうと思います。これも私は三点ここに書きました。当面の目標としては一番目と二番目であります。そして、三番目が継続的目標となってまいります。  一番目は、沖縄振興策の主な柱として、アメリカ空軍嘉手納基地をアジアのハブ空港にしていくという問題でございます。  とにかく日米安保をどのような形にしろ続けるということになりますと、アメリカが嘉手納基地を返還するということは通常では考えられません。ほうっておきますと、沖縄の中心部を占めるあの基地が、軍事的にのみ使われるわけであります。これは沖縄にとって大変不幸なことであります。しかし、日米安保を日本努力によって健全に維持する中で、アジアの平和が保たれている限りあるいは世界の平和が保たれている限り、嘉手納基地は民間用に使用することは可能になってまいります。ですから、とにかく条件をきちんと整理をし、嘉手納基地をハブ空港にしていく、これが沖縄振興策の極めて重要なポイントになると思います。  いま一つ、当面の目標としては、海兵隊地上部隊をアメリカの領域に動かすという問題なんです。  ただ、後ほど申し上げますけれども、現在、与野党を挙げてあるいはマスコミを挙げて行われております削減とか撤退という言葉は、定義を明確にしない限りアメリカとの交渉の場には出せないのです。ですから、私は、新しい概念として、即応後方配備ということを出しております。即応性の高い形で海兵隊の能力を維持し、そして沖縄県民が望んでやまない海兵隊地上部隊のアメリカ領域への駐留というものを実現していくという話であります。  同時に、この三番目の継続目標としては、日米安保による国際的軍縮を実現しつつ、アメリカ協議をしながら軍事基地を縮小していく、それを追求していくことであろうということであります。  この到達点を実現するためのステップ、つまり、日本側で申しますと、日本が備えるべきカードというものは、このBのdの①、②、③であろうと思います。  とにかく普天間基地の返還が決まった後、代替航空施設につきましては海上ヘリポート案が去年の九月に浮上し、それをめぐって決着がつかない状況が続いております。しかし、昨年四月二日の段階まで、アメリカ政府は普天間基地を返すということは言っておりませんでした。四月二日の段階で、政治的な決着をつけようということを橋本総理が決断をされまして、とにかく普天間基地は返還という方向に動いたわけであります。  ただ、その中で条件になったのは、普天間基地と同等の能力を持つ陸上基地を沖縄県内につくるというステップ、それを踏まえるということであった。これは密約とかそういう話ではありませんが、そういうことを前提にして、初めてアメリカは普天間基地を返すということに同意をしたわけであります。  これは、県内移設ということに反対しておられる沖縄県民の気持ちはわかりますけれども、一つのステップとして考えた場合、海兵隊地上部隊の即応後方配備を実現するためにも必要な段階ではないかなと思っているわけであります。海上ヘリポート案では、とにかくフル編成した海兵隊航空部隊を有事に受け入れるためには不十分過ぎます。つまり、アメリカと交渉するカードにはならないということであります。  二番目の軍民共用空港の新設と那覇空港の閉鎖、これは嘉手納基地の空軍部隊をとにかくほかの基地に分散をし、ハブ空港として使うための対案でございます。沖縄県内に軍民共用の空港を建設する、そこに嘉手納の戦闘機部隊と那覇空港の自衛隊航空部隊を収容する、また、嘉手納基地の大型機の部隊は北海道千歳基地に移駐をさせるということであります。そういう中で、初めてアメリカ側は海兵隊地上部隊の即応後方配備を受けとめるであろうという感触を私は受けております。  そのような議論をしていくことが沖縄の基地問題を解決の方向に動かしていく上で極めて重要なことになってまいりますが、あと一分でお話を申し上げたいのは、レジュメの一番下、従来の議論の問題点のうち、一番目と二番目でございます。  とにかく定義が不在であるという問題をもう一度整理しよう。削減という言葉を使いますと、兵力構成全体を変更するという問題になりますから、アメリカは受けません。撤退ということになりますと、軍事基地の撤去という問題が本来的に入ってまいりますから、日米安保を解消しようとするのかということになりますので、受けません。これは違う定義をしなければいけない。日米安保を解消するということを前提にしないというのであれば、やはり県内移設というステップを踏まえるという議論も、いま一度沖縄県民の皆様としていくことが重要ではないかと思います。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  10. 伊藤英成

    伊藤委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  11. 伊藤英成

    伊藤委員長 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各党を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。なお、御発言は着席のままで結構であります。中谷元君。
  12. 中谷元

    ○中谷委員 参考人の皆様方の御意見どうもありがとうございました。  皆様方が共通して言われたことは、今の国際情勢認識と、今後、日米安保体制を重視すべきだ、そして、その日米安保の構えば我が国の安定のみならず東アジアの安定に最重要であるという認識だったと思います。  そこでお伺いしたいのは、今後、日米安保共同宣言を受けてどのような役割、責務を果たしていくかという問題でございますが、今ガイドラインの作業が続けられておりますが、先ほど岡崎参考人から御指摘がありましたけれども、一つのポイントとしては、集団的自衛権の行使の必要性がありゃなきやという点に絞られるのではないかと思います。  そこで問題になるのは、政府の統一見解というか解釈でありますが、一九八一年の稲葉質問に対して、集団的自衛権を有しているが行使ができないと。また、その点について、主権国家として集団的自衛権を保持しているなら、それができないとすれば果たして主権国家であるかどうかという点も私も感じておりますけれども、この点につきまして、佐久間参考人渡邉参考人は集団的自衛権についていかにお考えか、お述べいただきたいと思います。
  13. 佐久間一

    佐久間参考人 申し上げます。  私は、集団的自衛権の問題は、法理論の世界政策論の世界という二つの見方があるのだろうと思います。  現在の憲法の立法趣旨等からいって集団的自衛権が行使できないという立場、これも理解はしております。しかし、私は、どちらかといいますと、これはその時々の政府政策判断であったというふうに考えております。  したがいまして、このガイドラインの研究あるいは橋本総理の指示に基づく緊急事態対応策の検討に当たっては、この問題を避けて通ることはできないと思いますが、さりとて、現実の話として、ことしの秋までにそういった基本的な政策変更のコンセンサスが得られるとは思いません。したがって、これは我が国の国益及び憲法の理念に照らしてなすべき行為か行動かといった個々のケースについての判断をなすべきだ。  その判断基準というのは、やはり今申しました我が国の国益、それから憲法の理念、そして、安全保障というのは国家国民の安全を守るという最大の機能であるという観点から判断するならば、そんなに難しい問題ではないだろう、個々のケースについて相当整理ができるだろうというふうに思っております。
  14. 渡邉昭夫

    渡邉参考人 武力行使はなしにしようというのが一般的な国際的なルールだった。ただし、二つ例外がある。一つは、国際社会が共同の行動をするといういわゆる集団的安全保障とそれに関連したことだと思います。もう一つは自衛のためだと思います。今問題になっているのは自衛のためでございますが、そのどちらの場合もできるからといって何をやってもいいわけではない。  例えば国連の集団的な安全保障ないしそれに絡むのは、御承知のように、国連の安保理事会で、こうこうこういう状況のもとでこういうことをするのだということに従ってやるわけでありますね。  では、自衛権の場合はどうかというと、自衛権の場合も、自衛権があるから何をやってもいいというわけではもちろんないわけであります。一つは本当に必要であるかという必要性の問題、それからもう一つは、その状況に応じたつり合いの問題があって、相手から殴られたからといって殺していいというわけではない、そういう意味の、つり合いという、この二つの条件があると思うのですね。その範囲の中でどういうふうに自衛権を行使するのかという判断を常に迫られるというのが、いうところの政治的な判断だろうと思います。  権利のあるなしは、私の考えは岡崎参考人佐久間参考人と同じでありまして、あるいは佐久間さんはちょっと違った御返事だったかもしれませんが、私は、憲法であるないという問題ではないだろうと思うので、自衛権はあるかないかだけであって、その自衛権をどう行使するかというのは、先ほど申しましたようないろいろな幾つかの基準に従ってどう行動するのが適当であるかという、極めて高度な政治的判断だと思います。それが第一点。  第二点は、例えばドイツであのようなNATOという範囲の中で問題にならないことが、なぜ日本では問題になるのかということにかかってくると思うのです。つまり、一つ安全保障上の仲間というのがだれであって、どことどこがお互いに守るのだということがはっきりしているかしていないかという問題があると思います。そこが、先ほど申しました集団的な自衛権を集団的な自衛権の行使という意味日本が何をするかというときに、非常に必要になってくる判断の一つの根拠だと思います。  端的に言えば、例えば韓国と日本が明白な同盟国であるというようにお互いに考えていて、そのような関係にあれば条約上も政治上も余り問題にならないことが、現在のあるいはこれまでの日本と韓国との間の関係ではあり得るということですね。だから、そのような関係のときに、一体どこまでどういうことをするのが日本として適当であるか。一方では、アメリカ日本同盟関係にあるだけでなくて韓国とも同盟関係にある、そういうアメリカが行動するときに、日本は例えばどう行動するか、そういう判断に迫られる種類の問題であろうと思うので、これは憲法を盾にしてあるとか一切ないとかという白黒の問題ではないというふうに思います。
  15. 中谷元

    ○中谷委員 続いて、今の質問ですけれども、問題提起されました岡崎参考人にお伺いいたします。  この政府の集団的自衛権の解釈を変更するかどうか。もし修正をするとなった場合に、ある程度の限定的な行使を認めるということで、何らかの歯どめみたいなものが要るかどうかという問題と、仮に解釈の変更をしない場合は、現状のままなのですけれども、ガイドラインの実現を図るためにはある程度の基準が必要になってくると思うのですけれども、この基準はどういうふうに設定すればよろしいのでしょうか。
  16. 岡崎久彦

    岡崎参考人 大きな問題と小さな問題と両方ございますけれども、小さな問題は、現在のガイドラインの研究をどのような枠内で行うか、そういう問題だと思います。  これは今までどおりの憲法解釈というか、要するに憲法が集団的自衛権の行使を許していない、そういう解釈のもとでガイドラインを進めている限りは、はっきり申し上げてこれは成功しません。成功というのはどういうことかと申しますと、同盟国であるアメリカが、日本は本当に信頼すべき同盟国であると信頼してくれるような関係には到達し得ません。これは、恐らく一九八九年のガイドラインの研究とほとんど同じ結果に終わります。部分的には改善されますけれども、それ以上のことはございません。  そこで、今度は全部外した場合どうなるかということでございますけれども、これは人工的な歯どめというものが我々の将来の子孫の手を縛るというだけでなしに、将来の子孫に対する侮辱でもあるのですね。国家の安全というのは最も大事なものでありまして、特に武力を自分の国の領域外で使うようなことは国の死命に関するものです。これは恐らく百のケースがあって、九十九あるいはそれ以上も使わないことであります。  これはその場になれば常識でわかる話でありまして、むしろ今集団的自衛権は使えないということになっているものでございますから、それについてだれも考えていない。これがもし使えるということになって考えたら、これほど重大なことはないのです。これは国民議論を尽くせば、これしかない、この場合だけが無理なく使える、それ以外はとても使えるものではないということはおのずから見えてまいります。ただ、今その議論をしていないところに問題がございます。
  17. 中谷元

    ○中谷委員 次の質問をさせていただきます。渡邉参考人小川参考人岡崎参考人にお伺いします。  渡邉参考人の問題提起の中に、アジア太平洋特徴として中国の動向がかぎを握るということで、中国脅威なのかパートナーなのかという問題があるのですが、日米安保体制の中で我々も物事を考えていかなければなりませんが、尖閣列島の問題一つにしても、明確に言うべきことを日本人は言っていないわけですね。中国は大局的に判断する国ですから、何か言えば聞き入れる国民だと聞いていますけれども、そういう中国に対しても日本は言うべきことを言っていないのは、いざこざを起こしたくないという国民性があるのではないかと思います。  その冷戦後の中国とのつきあい方は、今までのように対米重視べったりの感じでいくのか、それとも独自カラーでつき合っていくのか、アメリカの言いっぷりの範疇でしか言わないのか、範疇の外でも物事を言うべきなのか。中国に対してのそういう日本独自の戦略というかカラーについて御意見を聞きたいと思いますけれども、いかがでしょうか。渡邉参考人から。
  18. 渡邉昭夫

    渡邉参考人 難しい御質問ですね。  二つ問題があったと思います。一つは尖閣列島という具体的な問題、もう一つはもう少し一般的に、対米重視という枠内で中国とかかわるのか、独自のかかわり方があるかという問題だと思います。  第一については、物事は何事も経緯がございますので、尖閣列島については、亡くなられた鄧小平さんとの間でこれは将来の問題にしようという了解があったと思うので、その了解をどれだけ守っていくかという問題なのだろうと思います。それについては、私が見るところ、少なくとも政府レベルでは中国側も日本側も一定の良識の中で対処してきていると思います。  ただし、いずれの国もその良識の中でおさまらないという行動が出てくるわけで、そのことが波風を立てるという話になるのではないかと思います。もし中国が明らかに国家としてそのような了解に反するような行動、端的に言えば軍事的な行動を尖閣列島でとるというような場合には、これは当然日本側としても明確に物を言わなければいけない問題であり、かつ必要な行動をとらなければならないということになるのだろうと思います。  もっと一般的に、中国とどうするかという問題でございますが、これは三分以内という範囲ではなかなか意を尽くしませんので不十分になると思いますが、また後で御質問があればということでとりあえず申しますと、先ほども申しましたように、日本アメリカががっちりと手を組んでいくということが、世界的にもそうですが、これからのアジア安全保障を保っていくための不可欠の要素だと私は思うのですね。この点は多分余り議論のないところなんです。ただ、その場合に、例えば中国との関係でいうと、それではどういうふうに中国との政治的な了解をつくっていくかという問題があるということを忘れてはいけないであろうと思うわけですね。  現在、橋本・クリントン共同宣言以来、中国は今までとかなり違った形で日米間の安全保障問題について反応しているように私は理解しております。それは、一つには、日本が今までより積極的な安全保障政策をとるだろうということに対しての一定の警戒心であろうと思うのです。これはある意味では当然警戒するだろうと思うのです。ただ、それはあなた方が警戒するようなことはないのだということをどうやって説得するかという問題であり、かつ、単に言葉で言うだけではなくて、実際に行動するかという問題だろうと思うのであります。  ですから、日本アメリカ中国との関係が大事だといったときに、文字どおり三角関係でそれぞれが独自に動くというふうな形ではないと私は思っています。ですから、全くアメリカとの関係なしに、もっと極端に言うと、アメリカと競争するような形で日本中国と何かをするというふうな意味でもし独自な対中政策というふうなことをおっしゃっているのだとすると、私はそうは考えておりません。
  19. 岡崎久彦

    岡崎参考人 中国をいかに扱うかということにつきましては、一般論は一つでございまして、これは日米同盟をしっかりさせればいいのです。日米同盟がしっかりしてまいりますと、中国としては選択肢が非常に狭まるわけでございます。  要するに、国家関係というのは一番の基礎は軍事バランスでございまして、軍事バランスというのは何を意味するかと申しますと、平和的にしか問題を解決できない形をつくること、それが軍事バランスなのです。ヨーロッパのバランス・オブ・パワーというのも基本的にはそういうことなのです。あのときは幾つかの国が集まってそういう形をつくったのですけれども、必ずしも国が複数である必要はないのです。平和的にしか問題を解決できない形をつくることが軍事バランスなのです。それさえつくっておけば後は何も警戒することはないので、中国との友好関係を大いに増進する、それから経済援助をしてもいい、私はそれは一向に構わないと思います。  ただ、一つだけ中国との問題で日本が気をつけなければいけないことは、日本国内の意見の分裂でございます。中国政府にとっても一番大事なことは中国の国益でございますから、例えば日本の教科書とかそういうものに干渉して日本人を怒らせてしまって、それが中国の国益を害するようなら言ってくるはずがないわけであります。ところが、日本の国内で分裂がある場合はそれを戦略的に利用し得る、その場合は言ってまいります。それは中国の国益にとって得でございますから。  ただ、尖閣の問題は、どうも思ったよりも日本の国内の反響は一つにまとまったという判断を今度は持っただろうと思います。ですから、今後は若干安心しております。
  20. 小川和久

    小川参考人 中国脅威にするかどうかという問題が一つここでは重要だと思います。脅威は敵の意思と能力だと決まり切ったことを申し上げるつもりはありませんけれども、やはり中国という国が経済的に成功してくれて、しかも日本経済にとって望ましい国になってくれること、これは日本にとっては一つ重要なポイントであります。  しかし、巨大な経済力を身につけた中国が巨大な軍事力を備え、それが日本に対する脅威となっては困る、それがまた日本が目指すべきところでございます。そこにおいて、中国とどのようにかかわっていくかということでは、やはりアメリカの積極関与政策というのは日本外交政策を考える上で極めて参考になるのではないかと私は思います。  アメリカの考え方というのは、例えば中国経済的に成功するためには、中国なりの尺度で結構なのですが、国内の体制近代化し、民主化を遂げなければならない。民主化できないと経済的に成功できない。民主化を遂げた中国は、大きな経済力を持ってもその軍事力をむやみに振り回す国にはなりにくい。だから、民主化を遂げさせることがアメリカにとって都合のいい中国をつくることだ、そういう認識のもとにさまざまな角度から口出しをしていると思うのですね。  その考え方については、例えばアメリカのエール大学の国際政治学の教授であるブルース・ラセットさんの持論の中に、民主主義国家同士は戦争しないのだというのがあるのです。極めて似通った認識アメリカは示して中国にかかわっております。  ですから、とにかくアメリカの積極関与政策というのを参考にしながら対中政策というのを一つ定める。同時にその極めて重要な柱として、岡崎参考人の方からもお話がございましたけれども、日米同盟をどのように日本の平和主義に即して運用し、それを中国に対して外交のカードとして機能させるか、その辺を考えていくべきだと私は思っております。  以上です。
  21. 中谷元

    ○中谷委員 以上で終わります。
  22. 伊藤英成

    伊藤委員長 次に、平田米男君。
  23. 平田米男

    ○平田委員 参考人の皆さん、大変ありがとうございました。私から幾つか御質問させていただきたいと思います。  既に集団的自衛権の話がありましたが、具体的には、目の前の話はガイドラインをどうしていくかということが大きなテーマかと思います。政府はこれまでの憲法解釈のもとでということを言っておりまして、そのままだと余り大きな成果は得られないという意見が強いわけでありますが、どうも集団的自衛権の議論を始めますと神学論争みたいなことになってしまうので、私は、日本の国益を考えたら、何をやるのか、またどこまで踏み込むのか、こういう具体的なところを議論をしていかなければいけないのではないかというふうに思うわけであります。  まだ政府は中間報告も出しておりませんが、今の時点で具体的にどこまで踏み込むべきである、これが日米安保のためなんだ、またアジア太平洋の安定のためなんだという視点から、各参考人で具体的にもし御発言をされる用意がありましたら御指摘をいただきたいと思います。これは、四人の参考人に順次していただければと思います。
  24. 佐久間一

    佐久間参考人 先生御指摘のとおり、ガイドラインの検討に当たっては、この問題をどう処理するかというのは、大きなバロメーターといいますか、むしろ基準になると思います。  私は先ほどちょっと申し上げましたが、個々のケースについて検討すべきだろう。個々のケースというのは、例えば我が国周辺において緊急事態が起こって、その地域にある我が国の同胞、あるいは状況によってはその国の人あるいはアメリカ人、そういった人々を緊急に輸送する、避難させるといった行動は予想されるところであります。そういったときに我が国がどこまでやるのか、あるいは非常に厳しい場合、そういった輸送が軍事的な危険というものにさらされる、例えば軍艦だとかあるいは作戦機がそれに対して何か干渉をするというような事態で、それを全く丸腰のままで輸送させるのかどうか、そういったケースがあるのだろうと思います。  そういった場合に、私は、いろいろな検討の軸があると思うのですが、一つは地理的な軸があると思います。例えば第三国の領域において、私は、武力行使というのはやるべきでないと思います。また一方、逆に、我が国の領域において、我が国の主権の範囲内ですから国民の安全のために必要な措置をとるのは当然でありますが、その間に、例えば公海あるいは公空という地域的な領域があります。そこで、目的が我が国国民の安全というためでしたら、そのための必要な措置をとる、これは集団的自衛権云々といった憲法の理念に反することではないだろうと私は思っております。一つの例でございます。  よろしゅうございますか。
  25. 渡邉昭夫

    渡邉参考人 余りつけ加えることはございませんが、特に一番難しい問題は、先ほどもちょっと私が例に申し上げましたが、いうところの朝鮮有事、半島有事の場合だろうと思うのです。  これは、先生、具体的にどういう状況かによって物事が大きく変わってくるのは当然だと思いますが、事と次第によっては日本それ自身の安全に及ぶことであって、そうしますと、日本の自衛のために日本が行動するという範囲の話になりますね。ところが、その場合に地理的な近接性等々であちら側の事態にどこまで我々が踏み込むかという問題が当然生じてくるわけで、そのときに、これは集団的と言う以上は、相手次第でございますから、相手との関係が具体的にどうかということを念頭に置かずには議論できないだろうと思います。  一般論としては、佐久間参考人がおっしゃったように、人の国の領域で行動するということはよっぽどのことがない限りあることではないだろうと思います。  問題は、その間のグレーゾーンだろうと思いますね。その場合にどの程度のことをするかであって、しかも、もう既に周知のごとく、そういう場合には在日の米軍が行動するということが当然考えられるわけで、その米軍の行動に対していかなる規模、いかなる範囲、いかなる方法で後方支援的な活動をするかという問題は避けることができないだろうと思うのですね。これを集団的な自衛権の行使と言うのか言わないのか、その辺は法律問題ではないというように私は思っております。
  26. 岡崎久彦

    岡崎参考人 確かに今の解釈のままでまいりますと、佐久間参考人が言われた程度のこと以上できないと思います。その程度のことというのが日本人の救出である場合、それは日本の勝手じゃないか、アメリカのために何の役に立つのだ、そういう話になるわけであります。結局、日米同盟関係の信頼関係を全然増すことになっていない。  それで、ジム・アワーの論文というのがございまして、これが本当に具体的に言っております。そこで言っている内容は、韓国、台湾の領海以外の公海におけるアメリカの第七艦隊の行動に対して日本が対潜哨戒、空中哨戒によって援護するというのがジム・アワーの提案でございます。もう一つジム・アワーが言っておりますのは、それさえも言ってもなかなかしないだろう、それで、自分が本当にしてほしいのは、二つのケースを勉強してほしい、つまり、従来の解釈でやった場合はここまでしかできない、従来の解釈を外せばここまでできる、その二つを両方ガイドラインの結論として出してほしい。それが出れば、そういうものがあるというだけで、これは既に抑止力になります。日本が解釈を変えるような範囲でこれだけのことができるのだということが周りの国がわかりますから、それだけで変わります。  ですから、できればアワーの言っている公海部分における日米共同行動、これはアメリカの第七艦隊の護送でもございますし、それからアワーによりますと、尖閣に対して日本防衛を行う場合、アメリカのインディペンデンスがそれに対して協力する、それも入っております。そこまでいけば日米信頼関係というものは確立すると私は思います。
  27. 小川和久

    小川参考人 御質問ありがとうございます。  私は、集団的自衛権というのはもともと独立国家固有の権利であるという前提お話をするのですが、日本での議論というのはまだまだ未整理の部分が多い、この問題についても若干整理をする作業が必要だろうという立場お話を申し上げます。  私は、この場合、一つのたたき台として、日本国憲法と国連憲章と日米安保条約という三つの関係においてこれを考えていくということが一つ日本モデルとも言うべきものを導き出す上で重要ではないかなという立場をとります。  日本国憲法は国連加盟を否定しておりません。当然ながら、国連憲章のどの条文についても日本国憲法は否定していないわけであります。同時に、日米安保条約は、第一条、第七条、第十条を見ればわかるように、国連憲章のもとでの条約であるということが明記されております。  そこで考えていきますと、とにかく日本周辺の有事に当たって日本の基地や施設を使う、その場合、日米安保条約第六条が適用される場合にも日本側の姿勢いかんによっては米軍の行動は国連憲章の枠内に制約されるという考えもとり得るわけであります。逆に考えますと、とにかく集団的自衛権について日本が国連憲章の一つ枠組みの中で行動するということはあるいは可能になるのではないかなと思っております。  例えば国連憲章の第五十一条には、「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、」という文言がございます。この条件をまた日本側で厳密に定義をした上で、安保理事会が機能した時点で集団的自衛権の行使を例えば日本は停止し、派遣された自衛隊に撤収を命じたり、あるいは米軍への支援を制限する、そういった線を引くことは、これは暫定的なものであるかもしれませんが、可能ではないかと思っています。  ですから、日本国憲法、国連憲章、日米安保条約の三者の関係において一度枠組みを考えてみることが重要ではないかと思います。  どうもありがとうございました。
  28. 平田米男

    ○平田委員 次に、今沖縄の基地の問題が大きなテーマになっているわけでございますが、私も去年の七月から四回ほど沖縄に行っておりまして、その都度沖縄の状況についての認識はどんどん変わってきてはおるのです。  この二月に沖縄に行って、基地を抱えております市長さん、町長さんと懇談をいたしましたが、その際に、政府が考えております特別措置法をもし政府が強行するならば、テロさえ起きかねませんという危惧の表明がございました。  私どもこの問題を考えるに当たって、楚辺のような法律違反状態というふうに指摘されるような事態を回避したい、法治国家としてはこれは当然だ、形式的に法律に合致しているという物の考え方、これは当然一理ありますが、もう一つは、統治者として、国を預かる者としての責任としては、社会の安定というのも考えなければならない。すなわち、実質的な合法性、社会の安定ということも考えていかなければならないのではないかというふうに思うわけであります。そういう意味では、沖縄の状況の中で、特別措置法の強行によってどのような結果を招来するのか、この辺の見通しが極めて重要なのではないか。  要するに、三千名の反戦地主の皆さんの土地を違法状態で占拠している。しかし、そこには反戦地主の皆さんは実際上は法律上は入れないわけであります、通行権がないわけですから。他人の土地を通って自分の土地に入るという権限、囲繞地通行権がなければ入れないわけでありまして、そういう楚辺のような状態でも事実上の安定があり得る、実際上あり得るのではないか、そういうことも考えますと、どちらがとるべき選択肢なんだろうか。  要するに、特措法の強行によって反米軍基地闘争が大変盛り上がってしまったということになりますと、基地の運用そのものに支障を来す事態も招来する。これは日米安保の信頼関係を大きく傷つけることになるわけでありまして、日米安保を守らなければならないという基本的な考え方にも実質反してしまう。  こういう事態も考えますと、特措法の強行によってどのような事態を招来するかという見通しが一番重要なのではないかというふうに私は思いますが、その点について四名の参考人の方々の御意見を承りたいというふうに思います。
  29. 佐久間一

    佐久間参考人 特措法の問題はすぐれて政治的な問題になっているという認識を持っております。それを強行した場合の反発ということも、先生御指摘のとおり、十分に予想されるところでありますが、私は、その問題と、日米の安保体制あるいは条約の遵守、さらにそういった条約に基づいて当事国の政府としてなすべき措置というものを同列に並べて論じるのはいかがなものかという感じはいたします。  もちろん、現実に出てくるリアクションというものを十分認識しなければならないわけですけれども、それだけですべての判断をするというのは、国家としてあるいは政府としての判断は妥当なものかどうかということについて、私は疑問を持っております。  だからといって、強行、とにかく国の決めることだからという一方的な押しつけというのは確かに避けるべきであり、最後までぎりぎりの努力はなされるべきだと思いますけれども、法律的な空白あるいは無秩序状態というものを法治国家として認めるわけにはいかないだろうと私は考えております。
  30. 渡邉昭夫

    渡邉参考人 特別措置法の問題は、万策尽きた場合ということだろうと思います。万策尽きた場合は、日米安全保障上の国家としての義務を行うためにそれが必要になるということでありますが、そうなったときにどういうことが起こるか。場合によっては、テロが起こり、沖縄が内乱状態になるという御指摘でございますが、私にはわかりませんが、そんなことはないと思います。  もしそのようなことが予想されるのであれば、これは大田知事を初め市町村長の政治的な責任が非常に重大である。つまり、そのような最後の万策尽きたときに追い込まないでどう解決するかということは、これは現地の政治家の責任でもあろうかというふうに私は思います。
  31. 岡崎久彦

    岡崎参考人 三千人の地主の方々が本当に沖縄全体の声を代表しておられるかどうか、これは大変に問題があろうと思います。  まず、日本全体として、最高裁判決というものがありまして、条約に基づく国家の義務履行のために必要かつ合理的な限度である、これが最高裁が既に決めたことでございます。それから、自民党は従来安保堅持、社会党も今や安保堅持と理解しております。そうしますと、安保堅持ならば、単なる基地反対闘争というものは矛盾するわけでございます。そうしますと、自民党にも社会党の思想にもそぐわない行動となりますと、これは本当にごく一部としか言いようがないと思います。  私は、特措法が通ればいいと思いますし、それから、毅然とさえしていればあるいは特措法がなくてもいいかなという気もしているのです。  それはどうしてかと申しますと、戦後の日本の法制では、土地を借りている場合は、借りている人間が非常に強いのですね。それで、それまでちゃんと家賃を払って、しかも、最高裁の判決でもってこれは適法だと判断されている。その場合は、立ち退きの裁判が起きて立ち退けという判決が出るまでは、これは必ずしも違法行為でもないのです。これは今までの裁判所の判決では全部そうなっているのです。  ですから、万が一それが通らないとしても、条約上の義務を履行するために、政府がそれによって余り動揺しないで毅然としていれば、それは必ずしも違法行為ではないと私は思っております。
  32. 小川和久

    小川参考人 私は、特別措置法の強行の中身によってかなり議論は変わってこざるを得ないと思っております。沖縄の県民の方々の神経をまるっきり逆なでするような格好というのは、現在の政府姿勢の中からは見てとることはできません。ですから、必要な手だてを講じながら特別措置法の議論をしていく中では、一定のところに落ちつき、そのテロ云々という話にはつながらないのではないかなと思います。  ただ、その場合、やはり沖縄県民の方々とさらに議論を深める必要があると思いますのは、沖縄県民の方々のどのぐらいの部分が日米安保をやめようと考えているのかという話なんです。  日米安保を続けながら基地問題を解決しようと考えている限り、特別措置法に関しては一定の理解が存在するものだと思いますし、それに対して、政府としてはとにかく、先ほど私が意見を述べます中で申し上げましたように、基地問題解決のための一定の到達点といったようなものを示しながら、そこへ歩みをともにしていくことが重要だと思います。  テロといったようなことを地元の首長さんがおっしゃったというお話でございますけれども、テロをやるぐらいだったら独立しなさいよと私は申し上げたい。その方が建設的だと思います。  ありがとうございます。
  33. 平田米男

    ○平田委員 もう時間がありませんので、岡崎参考人のみにお伺いします。  沖縄の人たちは基地の縮小を願っているわけでありますが、日本の〇・六%の国土に七五%の米軍基地があるというのはやはり異常な状態で、やむを得ない要望だろうというふうに私どもは思うわけであります。  その場合に、沖縄の基地を減らすという目的を遂行するためにどんな手だてがあるというふうにお考えでございましょうか。
  34. 岡崎久彦

    岡崎参考人 これは、実は橋本・クリントン会談の合意に基づきましてSACOの結論が出ております。  それで、在日米軍の能力及び態勢を十分維持することを考慮して沖縄の基地の統合、整理、縮小をする、これが要するに日本の国際的約束でございます。  これを実行するに当たって結局しておりますことは、日本国内における基地の移転でございます。これは必ずしも易しくないことはわかっておりますけれども、これは歴代の防衛庁長官の営々たる御努力があって、それからまた良識のある地方自治体が受け入れております。ここに日本国民全体の協力の可能性があると私は思っております。
  35. 伊藤英成

    伊藤委員長 次に、前原誠司君。
  36. 前原誠司

    ○前原委員 参考人の皆さん方、きょうはお忙しいところおいでいただきまして、どうもありがとうございました。貴重な意見を拝聴させていただきました。  四人の方それぞれに幾つかお伺いしたいところでございますが、日米安保についての将来像というものをまずお伺いしたいと思います。  確かに日米関係というのは非常に重要でありますし、日米の友好ということについては、これは未来永劫続けていかなくてはいけないということについては私も何ら異論がありません。ただ、何百年、何千年の歴史というものをひもといてきたときに、今はある条約というものが、果たしてそれがまた未来永劫続くのかどうかといえば、歴史の繰り返しの中でドライに見ていくと、それはあり得ないということはあるわけですね。ですから、いつまでも日米安保重視ということを言い続けるということについて、どういう情勢になるのかわからないし、また、そういう完全な双務的な関係はあり得ないということを小川参考人の方からも言っていただきましたけれども、どういう日米関係というものを今後つくり出していくかといったことは、私は大変ポイントになると思うわけです。  そこで、幾つかの点でお伺いしたいと思いますが、先ほど渡邉参考人の方から、当面の課題と将来的な課題ということで分けてお話がございました。当面は日米安保重視ということで、将来的には地域的な安全保障体制というお話がARFなんかを例にとって挙げられておりました。しかし、これも漠とした話でして、先ほど岡崎参考人がおっしゃったように、戦前の日英同盟を破棄して何ら実体のないワシントン条約に移ってしまって、ある意味日本は裸になった部分があるわけです。  したがって、日米安保からARFを中心とする地域安全保障体制というのは、夢としてはいいし、方向性としてはいいかもしれないけれども、そのときに、日米安保というものは実際残してそれに移行するのかどうか。また、ARFが広がって、実際問題、信頼醸成機関となったときに、それがNATOのようないわゆる強制力を内部で伴って、お互いが軍事力を出して、兵隊を出し合って、そしてお互いの地域紛争に対処するようなものになるのか、あるいはただ単に条約として結ぶだけのものになるのか、その点で随分違いが出てくると私は思うのです。  そういう中で、四人の方々に伺いたいのは、日米安保というものの将来像を描く中で、もしそういう地域的な安全保障体制を描くのであれば、それが実行力を伴うものなのか、あるいはペーパーのものなのか、あるいは日米安保の変質というものを想定するのか、そこら辺のことをちょっとお伺いをしたいと思います。
  37. 佐久間一

    佐久間参考人 御指摘の趣旨は非常に難しいと思いますけれども、結論をまず申し上げますと、ARF等に代表される多国間の枠組み日米同盟に取ってかわるという時期が、見通し得る将来に生まれるとは私は思いません。  私は、先ほどツートラックということを申し上げました。あくまでも片方で平和が壊れないための体制維持しながら、同時に平和がより確実なものになる信頼醸成等の努力をやっていく、その二番目のアプローチという意味において、多国間の対話あるいは緩い枠組みというものを将来目指していくという努力は続けなければならないと私は思います。  しかし、NATOと違いまして、NATOというのはいわば共通の、ある意味では脅威感、危機感、それから共通の自分たちの負担し得る機能、例えば軍事力にしても、もちろん国によって軍事力の大小はありますけれども、例えば軍事力は提供するといった共通の機能、役割があるわけですけれども、アジア太平洋地域において、その基盤となる、前提となる歴史とか危機感とかあるいは民族性というものが異なっているアジア太平洋地域において、NATOのような仲間、本当に危機に共同して対処するという組織が簡単にできると思いません。  したがって、最初に申し上げましたように、日米同盟という基軸維持しながら、なおかつ、それを前提にしてこの地域における多国間の枠組みをより充実したものにする努力は続けていく必要があると思います。したがって、日米同盟は確かに未来永劫にということはだれも言えないと思いますけれども、こうなったら日米同盟は終えるよあるいは変質するよということを今の時点で言うことは私は賢明ではないというふうに考えます。
  38. 渡邉昭夫

    渡邉参考人 NATOの場合も、一方でNATOというものは拡大しつつ残していこうという話があり、片一方にOSCE、欧州安全保障協力機構というものがあり、そのほかにも、ヨーロッパの場合は複雑でございますね、幾つものものが重なっているわけです。  アジアの場合はもちろんそれと同じではないのですけれども、アジアの場合には幾つものものが重層的に絡まってくるんだろうと思うので、今あるものをなくして、きれいに消して、そのかわりに新しいアジアの集団的な地域安全保障をつくろうというふうに進むようには私には見えません。  それで、地域的な安全保障の方は、最近よく使う言葉で言えば協力的な安全保障安全保障のための協力という、その雰囲気というのでしょうか、心がけというのでしょうか、そういうものをどうやつてつくっていくか、これは私は非常に大事なことだと思うのですね。それさえうまくいけば大事には至らないで済むわけですから、これは非常にやらなきゃいけないことだと思うのです。しかし、それが例えば日米安保なりアメリカを中心とした安全保障の機構に取ってかわるという性質のものではないのだろうというふうに私は思っています。まずそれが第一点ですね。  第二点は、そうはいっても、歴史から見ると、例えば条約というものが永続するはずはないぞ、国と国との関係がいつまでも変わらないとは言えないのではないか、非常に哲学的な返事をすればそのとおりであると思うのですね。何が起こるかわからないだろうと思います。  ただ、普通に我々が生きているぐらいの時代の範囲で言えば、例えば今アメリカで四年ごとの国防計画見直しというのをやっていますよね。その結果どうなるかというのは、二〇一〇年ぐらいにどうなるだろうかというような話をやっているわけですね。例えば二〇一〇年ぐらいまでの範囲で物を考えるとすると、そんなに驚天動地のことが起こって、日米安保条約は全部解体、アメリカは一切ここから引いていきますというような形にはならないだろうと思うのですね。  そこが、古典的な意味での同盟と戦後できてきたいわゆる同盟というものは、NATOもそうでありますし日米関係もそうでありますが、これは非常に違うのだろうと私は思うんですよ。だから、状況が変わったから、例えば冷戦というものが終わったからこれを組みかえましょうなんていうような話はどこもやっていないわけですね。  そうじゃなくて、今までソ連というものを念頭に置きながらつくってきたいわゆる同盟というものが、一つの国際的な安全保障維持していくための恒続的な制度としてでき上がってきている。もちろん、そのままではいけないから、いろいろ足していったり修正したりしなければいけないわけですけれども、そういう話であって、これはこういう時代のためのものであって、これが終わったんだからつくりかえようという時代ではないように私は思っております。
  39. 岡崎久彦

    岡崎参考人 集団安全保障同盟というものはいろいろ定義がございますけれども、本質的な一番もとの定義から申しますと、これは全く別個のものでございます。別個のものでございますけれども、排他的なものではないのです。両方一緒にあっても構わない。両方一緒にあっても構わないけれども、代替できるものではないのです。どっちかがどっちかに代替できてしまうというものではないのです。  つまり、集団安全保障というのは、今世紀の初めにウィルソンが提唱しまして、それ以来、これはアメリカの見果てぬ夢でございますし、国際社会が何度も何度も試みて、試みはやっているのでございますけれども完全な成功というのはまだ見ていないのでございます。それは国際連盟でございますし、ロカルノ条約でございますし、日英同盟の後の四カ国条約、九カ国条約、それから国際連合でございますし、これはすべてある程度の役割を果たした。つまり、みんなで話し合いの場をつくったとか、その程度の役割は果たしておりますけれども、国際平和を維持するという一番大事な面においてまだ一度もはっきり成功したことはないのでございます。  その集団安全保障を考える場合に、二つ原則を守ればいいと私は思うのです。  一つは、バランス感覚を失わないこと。それは、同盟というものはあくまでも国の安全にとって大事であって、それで集団安全保障を補完するのだ。このバランス感覚を失って、いっか同盟をやめて集団安全保障にかえてもいいというようなことに考えると、間違えるわけです。  第二は、集団安全保障というのは限界があるということです。集団安全保障の到達し得べき最大の、恐らく極致と言えるのが透明性でございます。透明性の確保、完全の透明性が確保できれば、それだけで大変な成果だ。例えば今は中国の核開発というのは全く秘密でございまして、どの程度の核兵器がどの程度の発達段階にあるか、どの程度の数量を持っているか、これは全くわからないのです。これがはっきりすれば、中国に対する戦略アジアの平和にとって非常にはっきりした構図が描けるようになる。そのために、中国に対して透明性確保を今努力している。この努力は価値がございますし、ちゃんとした目標がございます。到達されればアジアの平和にとっては大変な意味があると思います。ただ、それ以上には進まないだろうと思う。  あとは、未来永劫の同盟があるかとおっしゃるのですけれども、近代的な国際関係が生じたのは明治維新以来でありまして、過去百五十年間という時期をとってみますと、未来永劫と申しませんけれども、日本にとって国際政治が始まった限りにおきましては、島国日本としては、海洋を支配しているアングロアメリカ世界同盟しているときは完全に安全でございまして、完全に平和でございまして、しかも、完全に民主的でございました。そうでないときは、孤立して非常に危険なことをやっています。それで一時破滅しております。  ですから、現在の近代国際社会構造が続いている限りは、これは永劫ということではございませんけれども、これが続く限りは日米同盟というものは続けなければいけない。これが時として要らなくなるように見える時期があるのです。しかし、それは短い時期でございまして、そのときに判断を誤ってはいけない、そう私は思っております。
  40. 小川和久

    小川参考人 日米安保の将来像というのは大変難しいテーマでございます。ただ、私は、大変乱暴な言い方を申し上げますと、日本次第であるということを申し上げたい。その場合、二つの条件を順序よく日本がクリアしていくかどうかで将来の日米同盟日米安保のあり方は相当変わってくるだろうと思っています。  これは皆様方、とっくに御承知の話でございますが、例えば日本防衛力と呼ばれる軍事力は自立不可能な構造になっております。これは基本的に敗戦国である日本の再軍備に当たってアメリカが望んだものであります。同様な自立不可能な構造軍事力というものは、ドイツ国家においても存在しております。  その日独に対するアメリカのかかわりというものに対して、日本が自分の国益に沿った形でそれを運用していくためには、まず第一に、外交安全保障構想というものを日本の原理原則に沿った形で打ち立て、少なくとも周辺諸国の信頼をかち取るために提示をし議論を高めていく。そして、周辺諸国の信頼関係というものを明確なものにしたとき、周辺諸国の信頼を外交の力として初めてアメリカと向き合うことができる。そこにおいて初めて日米安保というものをいわゆる平和化という方向に引っ張り、そこにおいて日本の平和に対する役割が実現できるだろうと思います。  そういったことを進めていくためには相当な時間がかかります。ですから、例えば十年といった時間の単位で考えますと、ARFといった地域安保の構想と同時に、これは重層的な重なりとなってまいりますけれども、日米安保というものは存在し続けなければならないだろうと考えております。  以上です。
  41. 前原誠司

    ○前原委員 ありがとうございました。  十五分間なので一問で終わってしまいますけれども、私の認識も、基本的には日米安保というのは当面死活的に重要だ、そして、地域的な安全保障体制というできるかどうかわからないものに期待をかけて現実の足元を見なくなるというのはもっと危険である。そういう意味で、そういう夢というか理想は求めながらも、まず足元である日米安保をいかに機能よく、うまく運用できるような形にしていくかということは大切だと思うのですね。  そのためには、私は、より総合的な形での日本の役割の見直しというのは不可欠だと思うのです。ガイドラインの見直しもしかりでありますし、日本防衛力というものをもう一度見直さなければいけない時期に来ていると私は思うのですね。例えば独自で情報を収集できるようなシステムを持っていない、あるいは訓練の機能化とか、あるいはこういう海に囲まれた島国でありながら、侵攻を急に受けたときのための空中給油機も今ない。こういう状況では、やはり変えていかなければいけない。  しかしながら、財政再建という大きな問題が片方にあり、今のように人件・糧食費、歳出化経費、一般物件費、この三つの中で削れるのはどこだという発想で防衛を考えていれば途端に壁にぶち当たるという中で、日本安全保障のあり方あるいは三自衛隊の構成のあり方そのものを見直す時期に来ているのではないかと思うのですね。  もう質問はできませんけれども、そういう認識で、日米安保はとにかく重要だけれども、沖縄の負担を減らして、海兵隊の問題を言う前提として、今後ガイドラインの見直しあるいは防衛力の全体構成の中で日本はどういう役割を果たしていくかという前提がなければ、アメリカにも、ただ単に沖縄が困っているから海兵隊は撤退をしてくれということはなかなか言えないのではないか、そういうことをつけ加えて、私の質問を終わらせていただきます。
  42. 伊藤英成

    伊藤委員長 次に、中路雅弘君。
  43. 中路雅弘

    ○中路委員 共産党の中路雅弘です。  最初に佐久間参考人にお尋ねいたします。  新しい防衛大綱では、日本防衛に際して日米共同対処ということが言われていますが、これまでも日米で共同の訓練、演習が頻繁に行われてきました。ところが、防衛庁や外務省で、質疑の中でもそうですが、米軍の運用についてはほとんど知らない。例えば、今問題になっています沖縄の施設・区域の整理統合の中でも、普天間の航空基地の機能や、いわゆる有事のときの増援態勢などについてもわからない。また、先日の鳥島に劣化ウラン弾が撃ち込まれた問題でも、米軍がここで何をやっているかということは防衛庁はほとんどあずかり知らないという答えが返ってくるわけですけれども、佐久間参考人は、九三年のたしか六月までですか、統幕の議長も務められたわけですが、米軍の兵力構成や運用状況軍事態勢について、防衛庁は知っているんだけれども建前上明らかにできないということなのか、また知る立場になかったということなのですか、どちらなのでしょうか。
  44. 佐久間一

    佐久間参考人 申し上げます。  御質問の中身が二つあったと思いますが、一つは米軍の構成あるいは運用について、それからもう一つはいわゆる在日米軍に提供されている施設の使用についての二つであると思います。  後者につきましては、私は、日米間の条約及びそれに基づく地位協定に基づいて国際的に日本が提供している施設、それをその日米安保条約等関連取り決めでどのようないわば自由度を持って米国が使えるようになっているか、その法的あるいは条約上の裏づけに従って米軍は使用している、それを超えていることはないだろうと思います。  ですから、必要な場合は、あるいは大きな事案が起こるような場合は、日本政府立場として米側に細部にわたって質問することは私は可能だと思いますし、今までもしていると思いますけれども、すべてその施設をどのように使うかという細部にわたってあらかじめアメリカから聞くということが果たして運用上可能か、物理的にも可能か、これはちょっとわからない部分があると思います。  それから、米軍の構成とか運用そのものについても、一々この船があした出てどこに行くとか、この飛行機がどこに行くということを事前に知ることもまた現実には不可能だと思いますけれども、例えばアジア太平洋地域における基本的な米軍の構成、兵力そのものについては、これは全体的に言いますと、日米間で各種協議の場があります、例えば2プラス2を頂点にして各レベルで日米間の政策協議の場がありますけれども、そういったところで節目節目では今までもその説明なり協議が行われてきたというふうに思っております。それから、兵力の運用そのものについても、大枠、基本的なところでは、その都度防衛庁、自衛隊としては必要な範囲では情報は持っているというふうに私は考えております。ただ、細部について、今この船、部隊がいつどこを出てどこに行くか、そこまで一々聞くという関係は必ずしも必要ないだろうというふうに私は思っております。
  45. 中路雅弘

    ○中路委員 次の問題は四人の参考人の皆さんにお聞きしたいのです。  沖縄の問題で、大田知事も沖縄からの海兵隊の削減、撤去の要求を繰り返しされていますし、沖縄では海兵隊が沖縄駐留米軍の六〇%を占めていますし、沖縄県の総合的な発展のためにも、この海兵隊の基地の問題が大きな焦点になっているわけですけれども、四人の参考人にお聞きしたいのですが、この海兵隊、正確に言いますと第三海兵遠征軍、これの任務あるいは日本防衛とのかかわり合い、この点について御意見をお聞きしたいと思います。
  46. 佐久間一

    佐久間参考人 申し上げます。  まず、海兵隊の兵力が沖縄に所在する米軍の中で非常に大きなウエートを占めている、これは私は事実だと思いますし、沖縄に過大に基地が集中しているというのも事実だと思います。したがって、その現状を改善するために日米間で協議が行われた結果がSACOの最終報告だと私は思いますし、そのSACOの最終報告に沿って、今後その実現に努力すべきだと思います。  ただ、海兵隊自体について申し上げますと、海兵隊というのは、御承知のとおり、あらゆるレベルの任務に即応するといった使命を持っている、しかも、いわば自己完結型の部隊だ、兵力だというふうに思います。海兵隊というのは、地上部隊だけでなくて航空部隊、さらにそれが移動する場合は海軍部隊と一緒になって立体的な行動ができる部隊であって、しかも、十五日あるいは三十日、六十日といったある程度の一定の行動を自分だけでできるという性格を持っております。したがって、各種事態と申し上げますのは、単なる軍事紛争ではなくて、例えば災害派遣とか人道援助といったことも含めて、まず動くのは海兵隊、それが海兵隊の特性だろうと思います。それは、規模が大きい場合は、我が国防衛という事態についてもまず対応できる地上部隊であるというふうに私は考えております。  ただ、沖縄にいる海兵隊が日本防衛任務だけに限定されるかということについては、私はそうではないと思います。と申しますのは、そもそも軍事力というのは、この部隊はどういった任務という限定された任務で配備され運用されるというのは、これはアメリカだけでなく、どこでもそういったことは現実にあり得ない。多数のあるいは複数の任務対応できるように柔軟な配備と運用をやっていく、それがいわば部隊運用の一番基本的な機能でありますので、沖縄にいる部隊が、日本防衛だけではなく、広くこの地域の平和と安定のために存在しているというのも事実だと思います。ただ、それはまた振り返ってみると、我が国の安全にも寄与しているということになるんだろうというふうに考えております。  よろしゅうございますか。
  47. 渡邉昭夫

    渡邉参考人 海兵隊の任務についての御質問だと思いますが、まず第一は、日本防衛のためであるということになります。これは、差し当たり表に出ないかもしれないけれども、一番基礎にあることだろうと思います。それから、日本周辺事態対応するため。これは、いわゆる第七艦隊の守備範囲というのは非常に広いわけですから、先ほども西の方はアフリカの南の喜望峰まで行く、ケープタウンまで行くというお話がありましたが、そういう非常に広い範囲で、現に湾岸戦争のときにそのような実例を見たわけでありまして、非常に広いということになると思います。  そこで、これは一番最初に私が申し上げたことにもう一遍戻るわけですが、例えばどういう事態を想定してアメリカ兵力を展開しているかという問題とも関係してまいりますが、いわゆる二つの主要な地域紛争が同時に起こった場合というのが一応の答えになっていますよね。  今それについていろいろ議論があって、果たしてそれでいいのか、あるいは今それに合っただけの能力を米軍が持っているか、いつまでも持っていられるかという議論をやっていたのです。それがどういう結論になるかわからないと思いますが、あらゆることが議論の対象になっている、こういうふうに言うわけであります。  ですから、わかりませんが、一般的な傾向として言うと、私の考え方が正しければ、いうところの冷戦後の状況では、世界的な大戦争に際して備えるというよりは、むしろかなり小回りのきく、いろいろなところで即応的に対応するという、いわゆる即応性ということが一番重要視されているのですよね。どこの国の軍隊もそうだと思うのです、ロシアも含めて。ただ、ロシアはなかなかそういかないということがあるのですが。ということですから、即応性を重視するということになると、ひょっとすると海兵隊というものの役割はむしろ今までより以上に、ほかとの比較でいうと大事になってきているというふうに言えるのかもしれません。アメリカの友人なんかに聞くと、そういうような感想がございますね。ということで、非常に大事な役割なのではないかと考えております。
  48. 岡崎久彦

    岡崎参考人 私は、佐久間参考人の詳細な御説明にほとんどつけ加えるところはございません。できる限り多くの事態に対して即応態勢を持つ、そういう部隊でございます。
  49. 小川和久

    小川参考人 今、佐久間参考人の方から御説明があったというのが、海兵隊については一番模範解答ではないかと思います。ただ、日本のマスコミ等の論調の中で、例えば日本防衛には関与していないという書き方がございますので、若干その辺を補足するお話をしたいと思います。  海兵隊というのは、陸海空三軍と並んで四軍と呼ばれたりいたします。予算的には海軍の予算でございますが、本来的には、有機的に機動展開できる部隊であると同時に、米軍の中における特殊な位置づけを持った部隊であります。ですから、アンフィビアスフォース、つまり両用戦部隊であるという言い方と同時に、あいつらは両生類みたいでどっちの味方なんだというような言い方をアメリカの陸海空がするような、おれたちの仲間じゃないという扱いを受けるような特殊な性格を持った部隊です。  この海兵隊の任務というのは、小さいところでは、例えばアメリカの航空母艦に百名ぐらいの海兵隊員が乗っておる、これが弾薬庫を警備している。これは外敵から弾薬庫を守ると同時に、米軍の将兵の反乱から弾薬庫を守るという任務もあるわけであります。  その海兵隊の任務の中には、第一優先順位として根拠地の防衛というものがあります。ですから、私がさっきの意見陳述の中で申し上げましたように、日本列島がアメリカ戦略的根拠地である限り、アメリカ海兵隊の任務の最優先順位として日本防衛というものが当然含まれてくるものと考えていいと思います。  以上です。
  50. 中路雅弘

    ○中路委員 時間ですので、終わります。
  51. 伊藤英成

    伊藤委員長 次に、上原康助君。
  52. 上原康助

    ○上原委員 社民党の上原です。  各参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。時間が非常に短いので、まず小川参考人にお尋ねをさせていただいて、また時間がありましたらそれぞれ御見解があればお答え願いたいと思います。  かねがね沖縄の米軍基地対応について小川さんがいろいろお書きになっているものとか、きょうのお話も参考になる点が多いのでお尋ねするわけですが、若干私は見解の面で異にする面もあります。  そもそも沖縄の米軍基地というのは、日米安保体制、安保条約の枠外のものを復帰の時点で安保、地位協定にはめ込んだ、そこに非常に無理があったと思うのですね、理論構成の面で。そのことはぜひこれから解明というか、もっと本来の安保体制にはめ込むようにというか、そこが縮小方向だと私は理解をしております。  そこで、そもそもあの小さい沖縄に四軍が一国独立国並みに存在することが私は問題だと思うのですね。それが非常にティピカルに象徴されているのが海兵隊の存在であり、事件事故も多いから海兵隊の削減ということが出てきている。  ですから、私は、日本全体への統合分散ということも社会党時代に出して、相当党内からいろいろな異なった意見が出たりしてたたかれましたが、しかし、今日の状況を見て、私が指摘をしたことは必ずしも間違ってはいなかったという一面の自負心も持っております。そういう意味で、この四軍体制ということについて、軍事専門の皆さんあるいは政府がもっと検討したらということを私は申し上げているのですが、なかなかまだそこまでいっておりません。その点についてどうお考えかということと、先ほどの即応後方配備というのは私なりに言うと有事駐留対応というふうにも理解できると思うのですが、その点についてそういうふうに受けとめていいかということをもう少しお聞かせを願いたいと存じます。  今、私が申し上げたことについて小川参考人からまずお答えをいただいて、岡崎参考人は何かこの即応後方配備、いわゆる有事駐留対応については少し否定的な御見解のような感じを受けましたが、それぞれお答えいただければと思います。
  53. 小川和久

    小川参考人 御質問ありがとうございます。  まず、沖縄の米軍基地の位置づけということで、四軍がそっくりあそこに固まっているというのは尋常ではないというお話でございますが、これは確かにあの狭い面積の中にあれだけの基地を占有しているということがまず異常であるということから認識を持ちたいと思います。  ただ、そういう中で、日本では米軍基地問題が語られる場合、沖縄に基地が特に面積的に集中しているということで、沖縄を中心に日米同盟が回っているかのごとき錯覚した議論があるんです。やはり日本列島全体で眺めて、アメリカ戦略の中の位置づけというものを考え、そこにおいて基地の配分についての議論をしなければいけないと思います。  私の大変乱暴な言い方を許していただければ、人間の体に例えると、沖縄に置かれた米軍は強力な手や足の筋肉であります。ですから、アメリカ軍事力を持ってリーダーシップをとる場合の強力な打撃力であります。どんな強力な筋肉であっても、頭脳や心臓や中枢神経や肝臓がなければ単なる肉の塊であります。その頭脳や心臓や肝臓、中枢神経に当たる機能は、日本の本土に置かれております。これがワンセットで在日米軍基地という戦略的根拠地を形成しているわけであります。  そういう中で、沖縄におけるこの打撃力の部分は余りにも沖縄の面積を食い過ぎている。そういう側面からもアメリカ協議をし、もう少し基地の面積を縮小できないのか、日本本土に移すという問題もありますが、アメリカ同盟国の中で一定の役割分担をしていくことはできないのか、そういった形で議論を進めることが一つは重要ではないかなと思っております。これが一つ目の御質問に対する回答であります。  それからもう一つ、私が先ほどお話の中で、アメリカの海兵隊地上部隊をアメリカの領域、これはハワイとかカリフォルニアとかグアムを意味しますが、そこに即応性の高い状態で後方配備をするということであればアメリカは受けるだろうというふうに受けとめているという話をいたしました。そこにまず当面の目標を置いて進んでいくことが重要だと申しました。  これに関しましては、とにかく訓練を行うに当たっても、アメリカ本土でも装備品は一式要る。沖縄にも一つ置いておかなければいけない。また、有事の兆候が生まれた段階で、二十四時間以内にアメリカ本土からでも沖縄に戻ってこれるように緊密な有事協定を結ぶ必要がある。また、沖縄に戻った場合、それを受け入れるだけの基地が少なくとも現状のレベルでなければいけない。それを保証するという中でアメリカ側は多分受けるだろうと思っています。  その場合も、アメリカ議論したときの話をしますと、装備品が二セット要るけれどもそれを日本が買ってくれるかという言い方をアメリカがしたものですから、いや、それは場合によったら買ってあげるけれども、場合によったらアメリカの予備役のものを集めてくれ、あそこにこういう装備があるじゃないかと言ったら頭をかいている、そういうレベルであります。  これは日本の交渉能力次第であると私は考えております。  ありがとうございました。
  54. 岡崎久彦

    岡崎参考人 それでは、後方支援に限って申し上げます。  後方支援は、今おっしゃったとおり、いろいろ工夫があるのですけれども、工夫した結果、実現できるところが極めて少ないのですね。これは一種の事前集積によっていざという場合は人員だけ運ぶ、そういうことになると思うのです。  器材というものも、いつもこれは整備して即応態勢をつくっておかなければいけない。これは、即応態勢をつくる人間とこれを扱う人間は普通大体同じ人間でございます。そうしますと、本当に切れるのは数が限られてくるのです。限られてきまして、それは恐らく歩兵部隊の一部でありましょうけれども、歩兵といいましても今は大変いろいろ装備を持っておりまして、今小川さんが言われたように、両方で同じものを持つかもしれない。両方で同じものを持っているといって、沖縄に置いたものをさびさせていいというわけでもないわけでありまして、これまた補修が要るのでございますね。  ただ、これは交渉いかんとおっしゃいますけれども、工夫してあちこちひねり出して例えば何とか百人とか千人とか減らす、これは理論的には不可能ではないと思いますけれども、今度はそれの政治意味が私はマイナスだと思うのです。最大政治意味は、これはアジアに対する信頼感の裏切りでございます。日本アメリカの海兵隊を維持して、それでアメリカアジアから引かないという姿勢アメリカにとらせている。それを日本が少しでも減らしてくれと言って、アメリカがそれに応じて減らす、これは日本アジア国民に対する裏切りであります。  それから、今度は逆にアメリカの国内で、つまり、日本は海兵隊に出ていってほしいと思っている、そういう雰囲気が出てまいりますと、アメリカの議会にやはり孤立主義というものがありますので、専門家はみんな重要性はわかっているのですけれども、孤立主義の人は、日本が要らないものをどうして置いておくんだという議論になってくる。日本は要るのでございます。要るのでございますけれども、その一部分をどうするという細かいことをいたしますと、これは心理的影響が大きいのでございます。  この二つから申しまして、これは交渉次第と申しますけれども、その交渉する労力、費用、その効果――逆効果でございますね、これを計算しますと、これはある意味で取るに足らないくらい非常に小さな問題である上に、益と害を比べると害の方が多い、そう判断しております。
  55. 上原康助

    ○上原委員 もう時間ですが、まだ一、二分ありますから、一言ずつお二人に。
  56. 佐久間一

    佐久間参考人 海兵隊の特性が即応性にあるということは先ほどから述べられているとおりでありまして、私もそのように考えております。  その即応性というのは、今岡崎参考人からお話がありましたように、装備だけを前方に置いておいて、いざというときに人間を運んでくるという、それは理屈の上では成り立つかもしれませんけれども、その前方に配備している装備を平時どのようにメンテナンスするか、これは非常に大きな作業であると思います。米軍は今事前集積部隊というものを世界各地に展開しております。船もそうでありますけれども。これを維持するのも非常に大変な努力を続けているわけであります。したがって、装備だけを置いておけばいいということにはならないと私は思います。  もう一つ、沖縄の地理的位置からいいますと、それをグアムあるいはハワイに下げることが距離的に、それが二千二百キロとか七千キロとかの距離になるわけでありますけれども、今言った即応性ということからいうと、やはり非常に大きなギャップといいますかハンディをしょうことになるだろう。したがって、私は沖縄における海兵隊の前方展開という態勢は、我が国防衛にとってあるいはこの地域の安定にとって、近い将来においても必要だろうというふうに考えております。  ただ、四軍についておっしゃいましたけれども、先ほど私が申し上げましたように、現在の沖縄における基地面積は非常に過大であるという認識を私は持っております。それを具体的にどう解決するかというのがSACOの検討結果でありますので、その実現に向かって努力を当面は行うべきだというふうに考えております。
  57. 上原康助

    ○上原委員 渡邉先生に申しわけありませんが、時間ですので。  そうしますと、沖縄の基地は減らないということになるので、そこは何とかしてもらわなければいかぬし、SACOの最終報告が仮に十年、十四、五年かかってやっても米軍の専用基地の七〇%は沖縄にあるということになりますから、その皆さんがおっしゃる過大な負担というものはなくならぬので、そこをどうするかということをみんなで考えていただきたい。  以上、終わります。
  58. 伊藤英成

    伊藤委員長 以上で各党を代表する委員の質疑は終了いたしました。  この際、委員各位に申し上げます。  これより、質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言するようお願いいたします。また、発言の際は、着席のまま、所属会派及び氏名を述べた上、お答え願う参考人のお名前を告げていただきたいと存じます。  なお、一回の発言は三分以内で簡潔にまとめていただくようにお願いいたします。  それでは、質疑を続行いたします。  質疑のある委員は挙手をお願いいたします。
  59. 神田厚

    ○神田委員 新進党の神田厚でございます。  参考人の皆さん、大変貴重な御意見ありがとうございました。  私は、我が国安全保障の問題で朝鮮半島の安定が非常に必要だということを思っておりますが、この際、参考人の皆さん方にお聞きをしたいのでありますが、北朝鮮で特に食糧不足が云々されております。そして、日本において援助したらいいだろうというふうな意見がございますが、この問題について端的にお尋ねいたしますが、北朝鮮への援助米の問題について、是か非かあるいはどういう条件が満たされればいいかというふうな問題についてお尋ねをいたしたいと思います。
  60. 佐久間一

    佐久間参考人 申し上げます。  米韓両国との共同調整ということが今までの日本の基本的な方針になっておりますが、私はこの方針は今後とも維持すべきと思います。  ただ、日本の場合は、いわゆる国民感情的に見て、簡単に食糧援助をしていいのかということについての疑問はあると私は思います。ですから、日本が食糧援助をやるとするならば、客観的に見てその必要性が認識できること、そして援助した食糧が国民に的確に配分されること、その二つを明らかにする、これはいわば国際社会、国連等に期待する役割だと思いますけれども、それが必要だろうというふうに私は思っております。
  61. 渡邉昭夫

    渡邉参考人 余りつけ加えることはございません……(神田委員「いいか悪いか」と呼ぶ)困りましたね。いいことには違いないのだろうと思うのです。ただ、政治的にこれから朝鮮半島の南北関係をうまくどういう方向に持っていけるかというシナリオというのでしょうか、見通しというものと全く無関係にというのではやはり困るのだろうと思うのです。  その意味で、例えば南北の間の対話にどう持っていくかとか、あるいはいわゆるKEDOをめぐっての四カ国の枠組みがあるといったような、そういう中で動いているわけですから、そういうことを当然考慮しながらやらなければいけないのではないかと思います。
  62. 岡崎久彦

    岡崎参考人 北朝鮮問題についての最大の原則は、日本と韓国との関係を傷つけないこと。ですから、韓国の意向を無視してまでの行動はとってはいけない。ただ、現在、アメリカと韓国は人道援助まで考えておりますれども、日本は例の拉致事件がありまして、そこまでもいけないという状況になっております。  これは人道援助でございますから、人道援助というものは政治的判断から切り離すべきものでありますけれども、人道援助というものはあくまでも善意に基づくものなので、それに対してやはり向こうも最低の善意は示してくれないと人道援助さえもできないだろう、そう思っております。
  63. 小川和久

    小川参考人 私も岡崎参考人の御意見と似たような認識を持っております。  とにかく人道援助というのはすべきことだろう、しなければ悪者扱いされるわけです。しかし、北朝鮮として日本外交の道を開こうとどれだけ努力をしてきたのか、日朝交渉についてどれだけ彼らは積極的な姿勢を見せているのか、最終的にはアメリカが自分の方を向いてくれれば安全でいられるという認識のもとに核兵器を開発したではないか、そういう国に対して私たちはおいそれと人道的だからといって援助をする必要はない。その辺を明確にする中で、北朝鮮と外交関係を結ぶ必要があるのかどうか、それを問いかけることがまず前提条件になるだろうと思います。  以上です。
  64. 東中光雄

    ○東中委員 日本共産党の東中光雄でございます。  岡崎参考人と、違う意味佐久間さんのお二人にお聞きしたいのです。  まず岡崎さんに、先ほどのお話で、日本国憲法は集団自衛権を認めているとおっしゃられました。そして、集団自衛権の行使を禁止している解釈というのは、政策的解釈で非常に奇妙な解釈だという趣旨のことを言われました。それでお伺いしたいのですが、日本国憲法の何条で集団的自衛権を認めておるのか、あなたが言われるその根拠をお聞きしたい。  それからもう一つは、集団的自衛権の行使ができないというふうに言っているのは、憲法の戦争放棄、武力による威嚇、それから武力の行使を禁止している規定と交戦権否定のあの憲法の規定からいって、憲法解釈上集団自衛権の行使はできないのだというのが政府の解釈だったわけです。そう私は理解しているのですが、あなたの言われていることはどうも理解できませんので、その辺を説明していただきたい。  佐久間さんには、海幕長及び統幕議長の経験者としてお伺いするのですが、劣化ウラン弾の使用問題で、政府の今までの答弁を見ますと、こういうふうに言っているのです。  劣化ウランは核燃料物質の管理という観点から、日本でも、アメリカでも原子力エネルギー法及びその関連法令に基づき管理されておる、米軍はこの国内法令に従って劣化ウラン弾の使用については米国内の指定基地においてのみ訓練を行っておる、こういうふうに言っていました。そして、劣化ウラン弾は、我が国訓練場における使用は禁止されているが、有事の場合に米軍がこれを使用する必要があるかもしれないということで、米軍規則に基づいて、所定の基準を満たした特定の弾薬庫において安全に万全の配慮を払いつつ厳重な管理をして保管をしている、これが政府の予算総括の委員会での答弁なんです。  ところが、三月十八日になって同じ北米局長が、米軍からこういうふうに言ってきたと言うのです。米海軍は、一九九六会計年度の訓練用として、太平洋艦隊に四万六千発の劣化ウラン弾を割り当て、カタログに……
  65. 伊藤英成

    伊藤委員長 質問は簡潔にお願いします。
  66. 東中光雄

    ○東中委員 はい。記載がなかったために海兵隊に支給されてこの発射になった、こう言っているのです。これは、軍の運用をやってこられたあなたから見て、軍の規則で厳重に保管するだけだ、訓練はやらないのだということになっておるのを、海軍が、海軍省から太平洋軍に配備されて、そして、訓練で千五百二十発撃った、大変なことですね、軍人ならそれは考えられぬことでしょう、こういうことが起こるのは一体どういうことなんだ。軍の運用の長におられたあなたとして、これはあり得ることか、本来ならないことを米軍はやっておるということになるのじゃないかということをお伺いしたいのです。
  67. 岡崎久彦

    岡崎参考人 憲法は集団的自衛権を認めております。その憲法の規定は、条約尊重の規定でございます。  国連憲章、サンフランシスコ平和条約、安保条約、これを全部批准しております。日本は非常にまじめに国際条約は守っておりまして、条約に我が方の国内法に反するものがある場合は、まず国内法を改正する法案を同時に通しております。あるいは、国際条約の場合、それだけはだめだという留保を付しております。いずれも付さない場合は、それは条約を受諾したことになります。条約を受諾した以上、それを遵守する義務があります。それが第一点でございます。  第二点は、憲法解釈でございますけれども、憲法の有権解釈というのは裁判所が持っているわけでございます。別に政府が持っているわけでもないし、国会の先生が持っているわけでもない。有権解釈は裁判所でございますが、裁判所は、憲法は独立国固有の自衛権を否定していないと考える、それが憲法解釈でございます。  それで、我が国が批准しました国連憲章によりますと、自衛権の内容は個別的及び集団的自衛権の両方がございます。いかなる裁判所の判決も、個別はいいが集団が悪いという判決はございません。ということは、憲法解釈上、個別自衛権、集団自衛権の両方がございます。
  68. 佐久間一

    佐久間参考人 私、かつて海上自衛隊に勤務しておりましたので、昔海軍で奉職されました東中先生には先輩としての敬意を表したいと思います。  今の劣化ウラン弾のことにつきまして、私は三月十八日云々といった事実を承知しておりませんので、正確にお答えできない立場にあることを御理解いただきたいと思います。  ただ、その前にいろいろ御説明がありましたように、これは非常に厳重な保管をするというルールがあるのだろうと思います。それは安全上のリミットを超えないようなルールで保管している。ただ、その安全上のリミットを超えない範囲でそれを訓練に使うということが同じ基準からもし出ているとするならば、それはあり得るかなという感じがします。  ただ、正確に事実を承知しておりませんので、私は的確なお答えをできる立場にないということを御理解いただきたいと思います。
  69. 中野正志

    中野(正)委員 自民党の中野正志でございます。  佐久間参考人にお伺いをいたします。  朝鮮民主主義人民共和国は内なる崩壊のときが近づいてきたのではないかと推測いたしております。その場合に、大混乱が起きる、当然ながら難民の発生が出てくる。陸か海しかないわけですね。今現在も、中華人民共和国に大分の難民の方が、発表はされていませんけれども、逃げ込んでおるという話があります。しかも、そういう大混乱のときは、当然ながら海に逃げられる人たちもいる。そういう人たちが、当然ながら日本を目指しながらやってくるということは十二分に想定されるわけであります。  現職中に考えられたかどうかということを聞くのは大変失礼でございますので、佐久間参考人なら、その場合に、日本の平和と安定のために重大な影響を及ぼすわけでありますから、どういうシミュレーションをなされるか、お伺いをしておきたいと思います。
  70. 佐久間一

    佐久間参考人 私、現職時代、長崎県の佐世保で勤務しているときに、中国沿岸からいわゆるボートピープルという人々が九州の沿岸あるいは一部日本海に到着したという事案がございました。  そのときに、現場で見ておりまして、あの何十人、何百人というオーダーでも、それに対応する現地の関係省庁といいますか関係当局、例えば出入国管理等、非常に大変な労働をしょわれた、当時の関係者の一人が過労で亡くなられたということも目の当たりにいたしました。したがって、もしそれをはるかに超えるオーダーの事態が起こった場合に、我が国にとって非常に大きな問題になるのは想像にかたくないところであります。  ただ、それは、現行の法体制では一義的には法務省なり警察庁なりが対応されるべき仕事だと思います。ただし、そういった本当に想像を絶するような大規模事態において、国全体が総力を挙げて対応しなければならないときに、防衛庁、自衛隊も必要に応じてしかるべき任務を分担するのは当然だと思いますし、そういった検討はもちろんなされているというふうに私は考えております。ただ、それを実現するためには、法体制整備も含め、国家として、政府としていろいろなすべき措置が必要だと考えております。
  71. 上原康助

    ○上原委員 さっき少し伺えませんでしたので、渡邉参考人と、これは佐久間参考人がいいかもしれませんが、一点だけ簡単にお尋ねしておきたいと思います。  どうも日米共同宣言は、さっき再確認あるいは再選択、再定義という表現がありましたが、確かに日米間で、同盟という立場からすると、そういうふうに解釈できると思います。  そこで問題は、私の乏しい情報、知識からして、アメリカ側の期待はガイドラインの見直しというところに非常に比重をかけているのではないかという気がいたします。そこで、ガイドラインがアメリカ側の期待並みに見直しが可能ならば、在日米軍基地のことについてももっと積極的に対応しようじゃないかという考えがあるのじゃないかと私なりに推測したりするのですが、その点はどうお考えかということが一つ。  そして、ガイドラインを、抜本的という表現をなさる方もいるのですが、見直しをするとなると、これまでどおり今の制度、法制の中にはまるのかどうかということも、もしお気づきでしたら教えていただきたいと思います。
  72. 渡邉昭夫

    渡邉参考人 御質問を正確に理解しているかどうかわからないのでありますが、日米安全保障再確認、再定義に関するアメリカ側の期待はガイドラインの見直しにあるのではないか、この点で、アメリカの期待にもし日本が沿えるならば――アメリカは何をしようというふうにおっしゃったのか、ちょっとよくわからないのですが。(上原委員「沖縄の米軍基地とか在日米軍基地対応見直しも可能か」と呼ぶ)  そのような了解が両政府にあるのかどうか、私は存じ上げません。  ですから、非常に一般的なお答えしかできないかと思いますが、ある意味で、今まで沖縄に大きな負担がかかってきているということは、本当にアメリカから見て日本がどれだけ安全保障上のいざというときの頼りがいのある相手であるかどうかという問題とどこかでつながっているということは、遺憾ながら否定できないだろうと思います。  早い話が、沖縄返還ということに米軍が踏み切るときにもそのようなことがあったと思うのですよ。つまり、日本が人ごとではなくて、アジア太平洋という言葉が当時あったかどうかわかりませんが、アジア安全保障のために、日本がそれは自分の問題だという気持ちでアメリカと本当に一緒にやる気があるのかねというのが、いろいろな形でアメリカが当時の日本政府に問いかけた問いであろうかと思います。  それに対して、当時の佐藤総理大臣が、そうだよということで、有名な日米共同声明及びプレスクラブでの演説で、例えば朝鮮半島の問題、台湾海峡の問題、当時はベトナムもございましたが、そういうような問題について日本側はまじめに考えるのだという意思を表明なさったという歴史的な事実がございます。  ということで、もちろんアメリカから見れば、明らかに今まで持っていた権利の何がしかかなりの重要な部分を日本側に譲るのである、そのかわりにもつと大きな得るものがある、それは全体としての日米安全保障上におけるより確かな協力関係である、こういう考え方であったのだというふうに私は理解しています。  ですから、その意味でいえば、そういう関係は今でもあると思う。ということは、余り勘ぐっていただくと困るのですけれども、それじゃアメリカは依然として日本を信用していないのかということになるのですが、基本的には信頼していると思いますけれども、その上に立って、より具体的に日本アメリカがより広い共通の目的のために協力していきやすい体制を全体としてどうつくっていくかということをアメリカは常に考えている、それは当然なことだろうと思うのですね。  これは、アメリカが都合のいいように考えて、日本はそれを本当はしたくないのだけれどもそれに合わせるという形でしばしば理解されることが多いと思うのですが、そうではなくて、私が考えている限り、昔のことはともかく、少なくともここ何年かの最近のことを見ますと、むしろ日本がより意味のある安全保障の役割をどうやっていくかということは日本自身の国益であり、そのために日米安保条約を初めとした日米関係という枠組みを使って日本がどうやっていくか、何をやるべきかというふうにむしろ日本側から積極的に答えを求めている、そういう関係であろうと思います。  それを現象的にいえば、上原議員のおっしゃったように、これとこれとが対になっているのではないかというふうな解釈もあるいはできるのかもしれませんが、私は以上のように考えております。
  73. 佐久間一

    佐久間参考人 現行のガイドラインの問題点というのは、私は以前から二つ大きく述べております。  一つは、御承知のとおり、あの研究というのは単なる研究であって、両国政府に義務を与えるものではないというのが一つ、そういう位置づけの問題がございます。もう一つは、一九七八年にできたガイドラインは、当時の情勢前提にしておりますので、いわゆる五条事態の、しかも日本だけが侵略、攻撃を受けた場合に日米共同でどう対応するかといったケースに限定されて、しかも六条事態についてはやろうといいながら何もできなかった、そういった対象とする事態の問題があります。  冷戦が終わって、今後、日米両国各種事態に共同して対応していく、もちろんそれは作戦行動だけではありませんけれども、そういった広い意味の分野というものを視野に入れてもう一度見直すべきだろうというふうに私は考えております。  去年の日米安全保障共同宣言の中で、御承知のとおり、ガイドラインの見直しということがうたわれました。これは先ほど陳述で私申し上げましたが、言ってみれば両国政府首脳が宣言した基本的な大枠を肉づけしていく一つの手段だというふうに私は思います。それによって、日米双方にとって、この日米の安保体制同盟関係が確実になるというふうに考えます。  ただ、このガイドラインの見直し作業というものは、アメリカが言うからやるとか、そういった外圧云々といった観点、視点で考えるべきではないと私は思います。あくまでも将来の情勢を踏まえて、我が国が国益に照らして何をやるべきか、そういったことをまず考えて、いわば主体性を持って私はやるべきだと思うのです。そして、幾らアメリカの要求、ニーズがあっても、それは日本としてやるべきでないという行動とか活動はやらないということをはっきり宣明すればいいわけだというふうに思います。外圧によって、アメリカが十言うからそのうち何とか五つぐらいやっておこうかといった主体性のない姿勢はとるべきでないというふうに私は考えています。  むしろアメリカとしては、従来、ガイドラインが、先ほど私言いましたように、研究はしたけれどもこれは一体根拠があるのか、いざというとき日本はどう対応するのかということが全くわからないままに来た、その不安というものはあると私は思います。  したがって、今回のガイドライン見直し作業で、ことしじゅうに有事法制を含めてきちんとした体系ができるとは私は思いません。しかし、少なくとも両国の首脳が約束した宣言に基づいて行う作業を実際に適用するときには、国家としてどれぐらいのいわばオーソリティーを与えるかといった裏づけは必要だろうと思いますし、それが改善されることによって、現行のガイドラインよりもより信頼性が高いものになると思います。  そういうことが私の認識でありますが、先生御指摘のように、それと沖縄の部隊云々あるいは基地とのトレードオフ、そういうことは考えていないだろう、私はそう思います。  以上です。
  74. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ありがとうございます。  主に小川参考人、それから部分的に岡崎大使にもお答えをいただきたいと思います。  先ほどの上原康助議員の最初の質問の中で、海兵隊の地上部隊のグアム等への即応後方部隊配備という質問がございましたけれども、これは先ほどの二人のお答えから考えますと、在日米軍基地世界戦略的拠点としての役割を持っているということを、日本側も知らないだけではなくアジアも知らないということも一つの大きな問題ではないか。  したがって、アジアの諸国に対して、実は在日米軍基地がこういう役割を持っている、さらに、先ほどの小川さんの表現でいえば、沖縄の方が仮に筋肉だとすると、特に本土の部分が頭脳的な役割を持っているんだという認識アジア側から持っていただくことによって、例えばその筋肉の部分をアメリカ領域に移転をするということが全体的からいって大した意味を持たない、相対的に。したがって、先ほどの岡崎さんの話でいえば、それが政治的にマイナスイメージにならない。  そういう条件をクリアした上で、先ほどの、沖縄問題の解決の中でのアメリカ軍の軍事的プレゼンスを維持するということの条件が満たされれば、上原さんが言うところの沖縄におけるいろいろな構成を変えていくことが可能ではないか、そのぎりぎりの問題ではないかと思うのですけれども、であるならば、軍事的プレゼンスを維持するためには、例えば海兵隊の地上部隊に関していえば、グアム等に関していえば可能だとか、あるいは演習場を仮に多少減らした場合にどこまで可能か、例えばアジアに対してあるいは日本に対しても最低そういった在日米軍基地意味を知らしめた上でどこまで可能かという点についてお二人からお話をいただきたい、それが非常にこの沖縄問題の解決のかぎになるような気がいたしますので。
  75. 小川和久

    小川参考人 御質問ありがとうございます。  先ほど上原さんの御質問に対するお答えがちょっと舌足らずだったので、岡崎参考人佐久間参考人から大変御指摘をいただく結果となりました。もう少しその辺のところをお話をしておかなければいけないのだと思います。  私が即応性の高い後方配備という格好で海兵隊地上部隊をアメリカの領域に下げることができるのではないか、それに対してアメリカ側も受け入れる可能性があるという感触を得ているというお話をいたしましたのは、単に戦場近くの基地に装備等を事前集積をしておくいわゆるポンカスというものがありますが、それではないということなんです。  日本アメリカ戦略的根拠地であり、ポンカスが必要とされるのは第一線の野戦基地である、その違いがございます。ですから、私どもが提案をしておりますのは、やはり戦略的根拠地である日本の現状というのを踏まえて、沖縄の海兵隊基地には装備品は一式置き、それは常に有事即応の態勢でメンテナンスをしておき、適宜第一線の部隊が戻ってきてそれを使うといったようなエクササイズの内容も伴うものであります。  そういったことの中で、例えばアメリカ西海岸に後方配備をする場合でも、アメリカが湾岸戦争のとき見事に実証しましたように、CRAFといいますが、民間の航空機をチャーターする制度を持っております。これで、湾岸危機が発生した一九九〇年八月中旬の段階に、カリフォルニアに駐留しております第四海兵旅団、定員一万五千人でございますが、これをわずか六日間でサウジアラビアに展開した、そういったことがありますので、二十四時間以内に例えば即応後方配備の部隊が戻ってくることになっているということを明確に示す、それを有事協定として結ぶ、それを周辺諸国には周知徹底しておく、これが誤ったメッセージを伝えないための第一の条件ではないかと思います。  とにかく撤退とか削減とかいう言葉を安易に使わないようにしようというのが先ほどの私の話でございました。これは別な概念で語らなければいけない。だから、アメリカの軍事的プレゼンスは一定のところで維持されるのだ、アメリカ側が了解をするレベルであるということは重要であります。  そういう中では、私の最初の意見陳述にありましたように、一見したところ沖縄の米軍基地の強化につながるようなステップも踏まなければいけない、これが海兵隊の地上部隊を後方配備するためのカードになるだろう、それを日本側が持つ用意があるのかないのかということを沖縄の方々にも投げかけ、もう一回議論をしたいというのが私の立場でございます。  ちょっとお答えになったかどうかわかりませんけれども。
  76. 岡崎久彦

    岡崎参考人 アジアヘの周知徹底でございますけれども、私が仄聞しているところでは、ことしの初めに橋本総理がASEAN訪問をされまして、それで各首都で必ずおっしゃったことは、日米同盟アジア全体の公共財産である、たしか英語で、要するにアジアの平和と安定のインフラストラクチャーである、そういうことを言われたそうでございます。それに対して反応は非常によかったと言っております。これは新聞には余り出ておりませんけれども、アメリカも大変アプリーシエイトしております。そういう意味で、日米同盟をがっちり守る、だからアジアは大丈夫なんだよ、これがアジア諸国に対する日本のメッセージでございます。  そこで、それを伝えた上で減らすという話でございますけれども、今の小川さんのお話も伺っておりましたけれども、ぎりぎり減らしてもどのくらい減らし得るのか、もちろん減らした結果は二十四時間の損になります。戦争における二十四時間の損というのはかなりの意味のあることでございますけれども、やはり二十四時間の損にはなります。それをあえて冒して千人単位まで減らせるかどうか、極めて疑問に思います。  つまり、それを減らすことが今度沖縄問題解決のかぎだという判断ですと、三万七千人のうち千入減らすことが沖縄問題解決のかぎになるかというと、私はかぎにならないと思うんです。沖縄問題解決というのは、やはり別のことだと思います。
  77. 奥山茂彦

    ○奥山委員 自民党の奥山です。  東アジアにおける軍事的なバランスの問題で岡崎参考人小川参考人に聞きたいんですけれども、私はよく中国へ行きまして、何回も、またいろいろな機会で向こうの人民解放軍のいろいろな方と交流する機会があったわけです。  それで、最近中国も軍事費が非常に高い勢いで伸びておるということで、将来の東アジアにおける大きな軍事的な脅威になるのではないか、こういう話もよく出てくるわけでありますけれども、基本的には中国の人民解放軍というのは防衛的な組織であって、渡洋攻撃をする、侵攻をするような組織体にはなっておらないように私は理解しておるのですけれども、先生の方から見られまして、将来的に東アジアにおける大きな軍事的な脅威になり得るかどうか、政治的に――経済的には大きな脅威中国はなってくると思うのですが、その辺についてどうか、お尋ねをしたいのです。
  78. 岡崎久彦

    岡崎参考人 先生仰せのとおり、現在はもう脅威ではございません。現在は、いわゆるプロジェクション、海洋とかそういうところに進出する能力を持っておりません。  ただ、長期的な方向は、冷戦が終わりましたころ、その少し前からですけれども、防衛的な配備についていた百万人の軍隊を削減しまして、浮いたお金を専ら海空軍に投資しております。これが非常に時間のかかる過程でございまして、現在のところはまだまだ弱くて、昨年の三月の台湾事件では、空母機動部隊二個を前にして手も足も出ない、そういう状況でございます。  ただ、現在伝えられている計画が今後進んでまいりますと、まだ数年ということはございませんけれども、専門家、例えばアメリカのチャールズ・フリーマンなんかに言わせますと、二〇〇五年ごろになりますと、海空軍でもって周辺地域を脅かす能力が出てまいります。私はもう少し早いかと思っておりますけれども、これは私個人の意見なんです。それから、それに対する今度は練度ですね、完全な練度を持ってそれを運用するようになるのは、専門家に言わせると二〇一〇年という人もおります。  ですから、結論として申しますと、現在は、おっしゃるとおり、何も能力はございません。ただ、現在の計画が進むにつれて、二〇〇五年ごろからだんだんと脅威になる、そういう判断でございます。
  79. 小川和久

    小川参考人 中国人民解放軍については、私、専門ではありませんので、非常に大ざっぱなところでしかお話をできないのですが、例えば中国人民解放軍について、中国は大陸国だから陸軍が主体だといったような言い方がよくされます。ただ、それはちょっと認識を変えてみる必要があるだろう。その中で、中国人民解放軍の目指している将来像がどれぐらい現実味を持ったものかということを考えていくという角度も必要ではないかと思います。  中国は大陸国家だから陸軍が主体になっているという言い方では正確ではないと思うんですね。中国の場合は、これは共産党が政権を持っており、共産党における軍事力というのは共産党の権力を守るための暴力装置である、だから、治安任務が主体だから大陸国家であろうと島国であろうと陸軍が中心になる、陸軍が巨大な存在としてあり、それにつけ足される格好で海空軍が加わってくる、そういったような構造であると考えた方がいいと思います。  ですから、そういう中で、過去には陸軍の七大軍区という形で分かれておりましたが、その一つの軍区ぐらいの位置づけしか海軍はなかった、そういう時期もございました。そういう中で、劉華清氏が政治的に登場してくる。そして、空母の建造願望を示すという格好でパワープロジェクションの能力を備えようという方向は見せております。  ただ、中国人民解放軍の基本的な性格が、共産党の政権を維持するための治安任務を主体とする暴力装置である限り、その辺にはおのずと限界が来るだろう。ですから、私どもが注意をしていかなければならないのは、中国が共産党政権とその人民解放軍との関係をどのように変えていくのかいかないのか、その辺の問題が一つ肝要かと思います。  そういう中で、今岡崎参考人の方から、二十一世紀前半において一定のパワープロジェクション能力を持つ可能性があるというお話がございまして、私もそれは同感でございます。  ただ、そういう場合に、それがどれぐらい可能になるかどうかを左右するかぎは、やはり世界一の海軍国にして世界のリーダーたり得るような軍事力を極東においても展開しているアメリカの動向次第であろう。アメリカとどのように中国外交関係を結ぶことができるか、それによって中国軍事力がどの水準に達するか分かれてくると思うんです。  ですから、私どもアメリカ同盟国として、その中国軍事力がとにかく日本初め周辺諸国の脅威とならないように、中国との良好な関係日米同盟基軸に組んでいくことが重要ではないかと思います。  どうもありがとうございました。
  80. 村井仁

    ○村井委員 新進党の村井仁でございます。きょうは大変いろいろありがとうございました。  岡崎参考人小川参考人にお尋ねしたいのでございますけれども、極東といいますか東アジア情勢の問題で、香港の中国への回復の問題、これはある意味では、世界で最も自由を享受した地域が、ちょっと表現は適当でないかもしれませんが、世界で最も不自由な国に完全に統合される。しかし、一国二制度とかいろいろ言っていますけれども、実際はいわゆる民主派が何となく抑え込まれつつあるような感じもある。このあたりが、近未来といいますか、一種のトラブルのもと、不安定の要素になるのかならないのか、このあたりの見通しが一つでございます。  それともう一つ、これはちょっとまた別な話でございますけれども、先ほど岡崎参考人から、いわゆる米国の孤立主義的傾向という御指摘がございました。私は、アメリカがグローバルコミットメントをきちんと続けていくということがやはり世界平和の基礎だろうと思っているのでございますが、御指摘のような孤立主義的な傾向というのは、常に恐ろしいといいますか怖いものだと思っています。  一方で、アメリカは何かありますと、例えば人権ですとか民主主義ですとかいう普遍的理念の追求ということで世界じゅうに何でも手を出してくるという傾向もあり、一方では、孤立主義との綱引きがしばしば行われる。ここ五年、十年、フォーシーアブルフューチャー、予見できる未来において、これはどっちの傾向が強まるというふうにお考えになるか。この二点、両参考人からお伺いしたいと思います。
  81. 岡崎久彦

    岡崎参考人 香港につきましては、私は、中国移転はスムーズだろうと思っております。  スムーズという言葉の定義でございますけれども、中国はもともと香港返還をスムーズにして、それを手本にして台湾と統一ということを言っております。それとはちょっと意味が違うのでございまして、なぜ香港返還がスムーズかと申しますと、中国人というのは現実的でございますから、もうあきらめているんですよね。英国時代のような言論の自由があるとも思っていないし、政治の自由があるとも思っていない。それでも商売ができればいいじゃないか。それから、英国時代のように、汚職もなくコネもなく、自由な経済活動ができるとも思っていないです。一年、二年前からみんな競争で北京とのコネを求めて走っている、そして大体のコネもできた。つまり、ある種の敗北主義で、長い物には巻かれろということでもって復帰準備は大体できている、そういうことでございます。  ですから、短期的な将来の見通しとしては、恐く余り混乱もなく返還されると思います。若干の民主派の反対運動はあるかもしれませんけれども、これは幾ら運動をしましても、イギリスはもう助けに来ない、アメリカも助けに来ない、これはしょせん早かれ遅かれ鎮圧される性質のものでございますから、大した意味がない。ですから、これはスムーズであることは間違いないのでございますけれども、今度は台湾の人にとってそうなってもいいかということになると、それはまた全然別の問題でございます。  それから、アメリカの孤立主義は、今のところ理論として孤立主義を言っている人は極めて少数です。これは冷戦が終わっても大変心強い現象でございまして、私の知っている限りではブキャナンただ一人でございます。  ただ、孤立主義的な感じが出てまいりますのは、予算の削減のときに、この部分の軍事費は切れとか、それから海外駐留はこれを切れとか、QDRと申しまして、それの前提となる兵力見直しがもうすぐ行われます、それについても、そんなに在外兵力は要らないじゃないか、政策論としてはそういう形の孤立主義的な傾向は出てきそうだ。ただ、きのう見えたゴアさんが十万人体制維持する、そのことをはっきりおっしゃっておられますので、今度のQDRは乗り切ったんだと思います。  ということは、今のところ、孤立主義はイデオロギーとしてはまだごく少数でございますし、傾向としても今歯どめがかかっている。これが続けばいいと思っております。
  82. 小川和久

    小川参考人 御質問ありがとうございました。  香港の問題につきましては、中国側は香港を回収するんだ、回収したんだということを言っております。これは大方の見方と同じように、本当に大きな混乱もなく、多少のテロ事件や何かあるかもしれませんが、落ちついていく問題だと思います。  ただ、日本として一つ気にしなければならないのは、岡崎参考人がおっしゃったこととも重なりますけれども、中国がしゃにむに台湾問題を解決していくためのモデルにしようとするのではないか。しかし、台湾はそれを受け入れるわけがない。そこにおいて軍事的な摩擦が生じる可能性が高まるわけであります。  そこにおいてアメリカはどうかかわるのか、また日本は、アメリカを介してでありますが、どのようにかかわるのか、また中国とダイレクトにどういう外交関係を結びながらそういう事態を避けるのか、その辺については明確な将来像というのが提示されているわけではございませんので、逆に、これからこの安全保障委員会を中心に御議論をいただいた方がいいのではないか、そういう感じがしております。  いま一点、アメリカの孤立主義的傾向ということでございますが、それこそ昔の日本側の認識で、アメリカに何か日米安保について文句を言うと、アメリカが安保を切ってしまって日本は寒い目に遭うよといったような形で、アメリカが一方的に日本を初めとする各国へのコミットメントから手を引くというようなこと、つまり、かつてのモンロー主義のようなことは可能性としては考えられても、実現可能性が高いとは言えないと思います。ただ、冷ややかなまなざしを日本に向けてくる、あるいはドイツに向けるといったようなことは、アメリカ国内の情勢において大いにあるでしょう。  ただ、私どもは、そういう場合に二つのかかわり方を同時にしておくのが普通の独立した国の外交ではないかと思います。  一つは、君たち、余り文句を言うんだったら、アメリカ日本から手を引くよと向こうが露骨に言った場合には、どうぞということを言わなければいけない。日本も困るけれどもおたくも困るでしょう、どうぞと。  もう一つは、常に言わなければいけないことは、アメリカ国民に対して、日米関係がどのようにこれまで良好に維持されてきたか、それによって世界の平和に対して貢献してきたかということ、また、そこにおける日本の役割については常に伝え続ける努力が必要だということなんです。  一昨年の秋、私は、沖縄の米軍基地問題で、少女暴行事件が起きた後、東京のプレスクラブに呼ばれまして二時間半ほどスピーチをいたしました。アメリカ大使館も六人ぐらい来ていました。それを、アメリカのC-SPANという議会の生中継をやるテレビ局が一時間半の番組にしてアメリカへ流してくれた。それを見たアメリカ人から反応があって、今まで日本側からこういう説明を受けたことがないという話なんですね。  だから、これはある意味日本側の怠慢であっただろう。とにかく外交関係は、お互いに最後は国益でありますから、アメリカほどいい相手国はないんですから、それが壊れないようにするためにはさまざまなかかわり方をすべきだろうということを考えております。  どうもありがとうございました。
  83. 平田米男

    ○平田委員 大変長時間、ありがとうございます。  もう時間もありませんので、限定してお伺いをさせていただきたいと思います。  佐久間参考人にお願いをしたいというふうに思いますが、まず沖縄の基地、SACOの最終報告で一応一段落したという見方を政府はしておるのですが、沖縄の人たちは、一応の評価はするけれどもこれでは困る、これはもっと減らしてもらいたいんだという強い要望がありますが、それについてどのようなお考えなのか。岡崎参考人は本土へ移せばいいじゃないかとか、あるいは小川参考人即応態勢をもってアメリカの領域内に移すことも将来は可能かもしれないという解決策を一応提示はしておいでになりますが、これが実現可能かどうかは別にして、佐久間参考人はどのようにお考えなのか、お伺いをしたい。  あと二点ございまして、もう一つは、米軍はフィリピンからクラーク基地とスビック基地を撤退してしまったわけですね。撤退をするというのは、極東の安全ということを考えますと、やはり日本にとっても極めて重要なテーマだったと思いますが、これはどのような話し合いが行われたのか、また、行われるべきだったのか、その辺、もし御説明をいただければありがたいなというふうに思います。  それから、私ども、この安全保障委員会で、今後もこういう参考人という形で法案審議以外にも徹底した議論をしていきたい、こう考えておりますが、委員長からの御提案もございまして、テーマによっては制服の皆さんにも来ていただいたらどうかという御意見もありますが、それについてお考えがありましたら、お聞かせをいただきたいと思います。  以上でございます。
  84. 佐久間一

    佐久間参考人 三点、御質問いただきました。  まず沖縄の基地のさらなる縮小、私はそれは希望としてあり得るということは十分に理解できます。しかし、現実の政策としては、繰り返しておりますが、両国政府が当面の目標であるSACOの最終報告を出した、それを実現するのがまず最初のやるべきことだろうと思うのですね。約束はした、しかし、全然進まないじゃないかということになると、これは沖縄の人たちにとっても、第一の約束もやってくれないのに次の約束ができるかという政府に対するむしろ不信感にもなりかねない。そういう意味で、ステップ・パイ・ステップで進めるべきだろうというふうに私は考えております。  次に、フィリピンのスビック、クラーク基地の撤退につきましては、あるいは岡崎参考人の方がお詳しいのではないかと思いますけれども、私はあの交渉に直接タッチしておりませんが、聞いた話では、当時の交渉において、これはアーミテージが当たっておるわけでありますけれども、フィリピンが終始言ったのは、ハウ・マッチ・マネーという話であったということであります。それで、戦略的なあるいは安全保障という土俵と全く食い違った交渉をある程度やって、もうやめたというのがアメリカの本音ではなかったんじゃないか。  それは、この地域安全保障にとってはある意味では非常に大きなダメージだと思うのですけれども、アメリカのドラスチックな変更というのは、そういったところにもぽっと出てくる可能性がある、私はそういう印象を持っております。ですから、一つは火山という要因もありましたけれども、あの基地を返還した後、アメリカ自身は別に安全保障上大きな影響はないという説明をいたしましたが、私は、そうではないだろう、ある意味ではあれは政策の断絶であったというふうに考えます。  ただ、フィリピン側もその後政権が変わりまして、基地の復活ということは言いませんけれども、いわば米軍がフィリピンにアクセスするという道を通じてそのコミットメント確保するという、ある意味では政策の転換をしてきたというふうに考えております。  最後の御質問で、国会のこの委員会等において制服自衛官が出席して云々ということでありますが、私は現役時代から、そういった意見も一部ございましたが、反対してまいりました。  と申しますのは、二つ理由がありまして、一つは、本当に制服自衛官がここに来てお話を申し上げるという必要性、それはテーマによって非常に掘り下げたことだろうと思いますけれども、そこまで現実的な論議が率直に言ってなされていなかったというのが私の否定的な理由の一つであります。  それからもう一つは、やはり制服自衛官が出てくる以上は、ある程度秘密に属することもお話しすることが求められる、そういった場になるのだろうと思います。それは、やはり国の安全ということにかかわる非常に大きなことでありますので、あるいはこの委員会のいわば秘密会的といいますか、秘密保全という十分な措置がとられることが必要だろうと思います。それは簡単にできないだろうと思ってまいりましたので、私は現役時代から制服自衛官の国会出席には賛成しておりません。  では、今後どうかということにつきましては、今申しましたことの延長になりますけれども、本当にユニホームで、現役でなければ申し上げられない非常に専門的なことを論議されるということになればあるいは必要かと思いますが、その場合も、今言った秘密保全という保証はどうしても不可欠だろうと考えております。  よろしゅうございましょうか。
  85. 平田米男

    ○平田委員 せっかくですので、今岡崎参考人の方がお詳しいとおっしゃったので、クラーク基地とスビックの問題について、もし御説明いただければありがたいと思います。
  86. 岡崎久彦

    岡崎参考人 リチャード・アーミテージ氏があのときのチーアネゴシェ一夕ーで、たしか三年ぐらいやっておりました。それで、私の情報源は佐久間さんの情報源と同じでございます。  ただ、スビックの重要性は、これは横須賀、佐世保とは比べ物にならないほど小さいのです。本当に大事なのはクラークなのです。あれは世界最大空軍基地だったのです、海外基地で。これはベトナム戦争のときに最も使った基地でございまして、貴重な基地だったのですけれども、あの交渉で、これは本当に偶然なのでございますけれども、交渉している最中に火山が爆発して全部埋まってしまいました。それで交渉の対象でなくなってしまったのです。それで、アメリカとしても失うということの実害がそう大きくなくなったということがございます。
  87. 江口一雄

    ○江口委員 ちょっと時間も過ぎているわけですが、自民党の江口でございます。  極東の安全、平和について、ただいまはいろいろな議論の中で、特に領土問題については出なかったような気がいたします。ですから、南沙あるいは尖閣あるいは竹島、こういうような領土問題について、この地域に及ぼす安全保障についての危険度とかそういうようないろいろなことがあろうかというふうに思いますが、その辺の見通しなりあるいは解決の方法なり、こういうことがありましたらひとつお教えいただきたい、このように思います。渡邉さん、岡崎さん、小川さん、三人から。
  88. 渡邉昭夫

    渡邉参考人 時間もございませんので、ごく簡単に申し上げます。  領土問題というと、日本ロシアとの間にもございますが、安全保障の問題として考えた場合に、一様ではないように思います。  一つは、今お話しになった南沙の問題、それから尖閣列島の問題ということに関して言えば、多分に資源の問題というのが非常に大きく絡んでいるのだろうと思うので、できれば何らかの形でそういう資源の問題の解決というのが一つであろうと思います。ただ、南沙の問題は関係国が物すごくたくさんございますので、これはちょっとやそっとでは片づかないように思います。  一番大事なことは、要するに幾ら文句があっても軍事力を行使して解決するというようなことはやめようではないか、そういう了解というのはだんだんできてきておりまして、その点では多少望みがあるのではないか。ただ、それは根本的な問題の解決ということにはならないかもしれません。というのが答えになったような、ならないようなことで申しわけございませんが。
  89. 岡崎久彦

    岡崎参考人 確かにそれぞれケースによって違うわけでございまして、東アジアと申しますと、まず尖閣、尖閣は私は何か解決したような感じがしております。  と申しますのは、当初アメリカの腰は座らなかったのでございますけれども、その後、キャンベル次官補代理の発言で、あれは日本の施政権下にある地域である。主権下とは言っておりません。ところが、安保条約というのは日本の施政権下にある地域に適用されるのです。ですから、あれは施政権下にある地域だということを明言いたしました。  あとは軍事バランスの問題でございますけれども、尖閣に関しては、日本が個別自衛権を使って、アメリカが集団的自衛権を使えるとなりますと、これはもう平和的解決以外にあり得ない、そういう軍事バランスができ上がっていると思います。それこそ、これは二〇一〇年でなしに、もっと二〇二〇年、三〇年になってそのバランスが崩れるまでは、実質的にもう心配ないのではないかと私は思っております。  それで、南沙の問題は、今後も大いに問題がございます。これこそ本当に紛争は平和的解決以外あり得ないという形をつくるしかないだろうと思います。軍事的に守るということは不可能でございます。今は大丈夫でございますけれども、南沙が軍事バランスが一番真っ先に崩れると思います。スホーイ27というのは、これは本来海軍航空機でございますから、これが南シナ海の要所要所に配備されるようになりますと、これを武力でもって介入を排除するということはほとんど不可能でございます。常時、空母機動部隊を二隻か三隻置くというようなことならばできますけれども、そういうことはあり得ないことでございますから。そうしますと、武力を行使した場合はASEANとか日米同盟を含めてアジア地域全部の国を怒らせてしまう、そういうような形をつくることによってのみ平和的解決ができるのだろうと私は思っております。
  90. 小川和久

    小川参考人 簡単に申し上げなければならないのは大変つらいのですが、領土問題を解決していく、あるいは安定化させていくということは、やはり日本の国の安全保障にとっても避けられない問題でございます。その中で私どもが一番力を入れて取り組まなければいけないのは、やはり北方領土問題だと思います。  それで、北方領土問題についても、お金で買い戻すといったような発想が正面に出るというのは外交上大変好ましくない。やはり、日ソ中立条約が六カ月間有効期限が残っているにもかかわらず旧ソ連が満州に侵攻した結果生じた事態である、ですから、国際法の精神を踏みにじるような、条約の精神を踏みにじるような行為であったということで、正面から外交的に交渉して取り返すというのが日本の国益にとっても一番ふさわしいあり方であります。  ただ、そのためには、風が吹けばおけ屋がもうかるといったような議論ではないのですが、一見遠回りのように見えても、やはりアジア諸国との関係を、これは謝罪外交をする必要はないのですが、戦後処理を明確にして、信頼関係を今より以上にかたいものにしていく、そしてアジアの信頼を外交の力としながらアメリカとも大変健全な関係を築く、その日本に対してロシアがやはり北方領土交渉に応じざるを得ない、真剣に応じざるを得ない状況をつくっていく、その中で取り返していくというのが基本だと思います。  そういう中で、中国との間の尖閣の問題についても、中国が余計な口出しをするということはなくなるであろうという感じがいたします。  ただ、非常に厄介なのは、韓国との間の竹島、独島の問題でございます。これに関しましては、やはりお互いに領有権を将来的に主張し続けながら、両国のあるいは国際共同管理に持っていくぐらいのところしかないだろう。  私も韓国の政府の上級職職員に日本安全保障政策を三年以上教えているわけでございますけれども、そのとき必ず出てくる質問というのはこれなんです。だから、私は彼らに次のことを申し上げております。  日本としては、三つ選択肢がある。一つは、領有権を放棄することだ。問題はなくなる。しかし、日本としてはそんなことは受け入れられない。もう一つは、日本の自衛隊の軍事力というものは、これは海外で展開する能力はないけれども、韓国の海空軍と戦って竹島を実効支配するぐらいの能力はある。しかし、そんなことをしても日本にとっては全然益はないんだ。だから、最終的にはとにかく、日本の提案によってということが望ましいけれども、国際共同管理に持っていくというのがいいだろうということを言う。そうすると、彼らも同じ考えである、ただ韓国側の提案にしていただければという話をするわけであります。  ただ、こういったものを日本が模索する中で、南沙諸島の平和的解決のモデルをつくることはあるいは可能であろう、そういう感じがしております。ちょっとお答えにならないような話をいたしましたけれども。  ありがとうございました。
  91. 伊藤英成

    伊藤委員長 どうもありがとうございました。  予定した時間も超過をいたしましたので、本日の参考人に対する質疑はこの程度で終了すること といたします。  参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十二分散会