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小川参考人 小川でございます。
このような重要な場で
意見を述べさせていただくことを大変光栄に存じます。
国際情勢に関しましては、これまで
佐久間参考人、
渡邉参考人の方から極めて適切な
お話がございました。私はやはり
岡崎参考人と同じ
日米安保、とりわけ沖縄の
米軍基地問題に関して若干の
意見を述べさせていただきたいと思います。
この
委員会の
テーマ設定からまいりまして、
東アジアにおける
我が国の
安全保障問題ということになっておりますので、まず、お手元のレジュメにありますように、Aについてはその第一
項目、
アメリカから眺めた
日米安保ということを若干踏まえまして、Bにあります沖縄
米軍基地問題の解決ということで
お話を進めさせていただきたいと思います。
私自身、この問題に触れます問題意識といたしましては、とにかく
日米安保体制を、
日本なりの平和主義でもよろしいのですが、それに沿って健全化することによって国際平和を実現すること、そして沖縄の
米軍基地問題に関してはやはり解決の
方向に大きく前進すること、それをも問題意識とさせていただきたいと思うわけであります。
そこにおいて、レジュメのAにございます
東アジアの安定における
日米安保体制の役割ということで若干の
お話を申し上げたい。
岡崎参考人の方からも
お話がございましたけれども、
アメリカから眺めた
日米安保ということで
議論を整理してまいりたいと思うわけであります。
とにかく、
同盟関係と申すものは、その国の国益にかなっているというところから選択されるものであります。ですから、
日米安保というものは
日本の国益にとっても極めて重要である、そのような
立場というのは当然あるのだと思います。しかし、
アメリカから眺めた場合、お情けで
日本と
同盟関係を結んでいるのか、さにあらず、
アメリカの国益にとって極めて重要であればこそ
日米安保を
維持しているのだというところは、私どもは
認識をもう一度改めてみる必要があるのではないか、そのような感じがするわけであります。
私自身は、十三年前に、
アメリカ政府の正式な許可を得て、北は三沢基地から南は嘉手納基地まで、実際に
米軍基地を歩き、基地司令官に聞き取り
調査を行い、また、
アメリカ側から資料の提供を受け、また、ブリーフィングを受けたわけであります。
その中で、私自身のささやかな分析を報告書の形で公にしたわけでございますけれども、その結果を申し上げますと、それまでの俗論でありますところの、在日
米軍基地などは韓国にある
米軍基地の数十分の一の位置づけしかない、あるいは当時フィリピンにあったスビックの海軍基地と比べて
日本の基地などは五十分の一以下の重要性しかないといったものに比べて、逆であります。例えば
朝鮮半島にある在韓
米軍基地というのは、
朝鮮半島の
戦争にのみ備える格好で展開をしてきた。それに対して、在日
米軍基地は、
アメリカ第七艦隊の
任務区域であります西経百六十度、これはハワイでございます、それから東経十七度、これはアフリカ最南端の喜望峰でございますが、つまり、地球の半分で行動する米軍を支えるような機能を担っているということが明らかになったわけでございます。
つまり、軍事基地の性格として、韓国にある
米軍基地、あるいは当時フィリピンにあった
米軍基地が第一線の野戦基地であったのに比べ、在日
米軍基地は
アメリカが
世界のリーダーであり続けるための
戦略的根拠地である、そのような位置づけにある。それを
日本国民が
認識をし、みずからの税金で
維持をしているという自覚のもとに
アメリカとの
同盟関係を健全に
維持することが極めて重要ではないかという思いを持つに至ったわけであります。
いかに
日本が
アメリカとの
同盟関係において重要な役割を果たしているか、これは
日本国民の
国民性からいいますと、
アメリカ側の
議論に振り回される傾向がありますので、
アメリカ政府の要職にかかわった方の発言を御紹介する中で若干の御説明を申し上げたいと思います。
昨年の十一月十五日のことでありますが、東京で沖縄問題に関する研究会が開かれました。これは霞が関ビルであったのですが、主催をしたのは東海大学の平和
戦略国際研究所であります。司会をしてくださったのは自民党の参議院議員武見敬三さんです。
アメリカ側のスピーカーは、
アメリカ国防総省の前のジャパンデスクであったポール・ジアラ氏、そして、その横に
アメリカ国防総省の国防分析研究所の研究員でありますマイケル・グリーン氏が同席をする。
日本側のスピーカーがたまたま私であったわけであります。
私は
日本側の
出席者の方に聞いていただきたいということがありまして、ポール・ジアラ氏に確認を求めた、これは当時の記録にちゃんと書いてあります。「
日米安保抜きに
アメリカは
世界のリーダーでいられますか。」まさしくこれは、シンガポールが陥落した後、山下奉文将軍がパーシバル中将に対してイエスかノーかと迫ったような雰囲気で私は聞いたわけであります。そうしたら、すぐさま
アメリカ側は答えた、リーダーではいられませんと。
アメリカにとってもそれだけ重要であるということなのです。
その話の流れの中で、ポール・ジアラ氏は、とにかく湾岸
戦争のときの
日本の貢献というものも、お金を拠出する以前に、
軍事力の出撃拠点として極めて重要な役割を果たした、
最大の貢献をしたということを向こうが言ったわけであります。私は、私のこれまでの
調査でありますし、持論でございますけれども、とにかくその五十六万余りの米軍を湾岸において支えたのは
戦略的根拠地である
日本列島であり、特に、燃料と弾薬の八割以上は
日本から運ばれたものであるというような御説明を申し上げたとあります。
とにかく
日本は、
アメリカの
同盟国の中で、もちろん
軍事力の提供ということにおいては大きな制約を抱えておりますけれども、極めて大きな役割分担をしている、その自覚が極めて重要であろう。
このレジュメのBの一番下にeの⑧とありますが、片務性という
議論が
日本ではしばしば
日米安保に関する
議論を屈折させている原因になっていると私は考えますので、若干の考えをお聞きいただきたいと思います。
とにかく
日本は
アメリカから守っていただいているのだ、だから、
アメリカに何か物を申すと
アメリカを怒らせてしまうのじゃないか、
アメリカを怒らせると
アメリカが
日米安保を切ってしまうのじゃないか、そうすると、
日本は裸同然になってとにかく大変なことになるのじゃないか、だから、ひたすら
アメリカの言うことを聞くのだというような
議論が戦後一貫して
日本の中にかなり大きなものとして存在してきたわけであります。
ただ、
同盟関係の常識ということを
前提にこの片務性の問題を考えたとき、戦後五十一年間を眺めましても、
アメリカの
同盟国の中で、果たして軍事的に見てどの国が
アメリカと対等であったことがあるのでしょうか。
さまざまなかかわり方をしておりますが、軍事面で見たとき、
アメリカの
同盟国はやはり
アメリカの軍事的リーダーシップのもとにあるわけでありまして、
アメリカから見ると、すべてが片務条約であります。中には、
アメリカから軍事的に丸抱えになっている国もございます。そこには
アメリカ国民の税金が使われ、場合によっては
アメリカの若者の血が流されるかもしれない。それが片務条約であるがゆえに
アメリカにとってむだだということになりましたら、
アメリカ国民がそれを許すはずはありません。
アメリカの国益にとって重要であればこそ、丸抱えの片務条約でも
アメリカは
維持しているわけであります。ですから、片務的だということだけで肩身の狭い思いをするというのは、国際常識に欠ける
議論であろうということをまず申し上げたい。
ただ、同時に片務条約をそのまま放置していいのかという問題もございます。とにかく
外交は対等が
前提であります。ですから、軍事面では対等になれないにしても、
同盟国は、例えば重要な基地の提供あるいは資金の提供などによって対等な
関係、つまり双務性を高めることが極めて重要でございます。
その面から
日本を見た場合、例えば
戦略的根拠地である在日
米軍基地を提供している、これは金銭に換算できないほどの重要な役割分担であります。また、金銭面でも、このレジュメの三枚目、データの5にございますけれども、
平成八年度で見た場合の
在日米軍経費は総額六千三百八十九億円であります。同時にまた、我が自衛隊の役割分担というものを
アメリカから見た場合は極めて重要である。自衛隊は
日本の国を守るために存在しているわけでありますが、私どもの
防衛費で
維持されている自衛隊は、
アメリカが
世界のリーダーであり続けるために必要不可欠な
戦略的根拠地である
日本列島を守る
戦力として
認識をされている。ですから、年間五兆円余りの資金的分担も行っているという
議論を基本的には行わなければいけないわけであります。
私自身のささやかな体験で言いますと、このような
議論を
アメリカ側とこれまでやってきて、一度も反論などを受けたことはございません。そのとおりだというような
認識でございます。ですから、これはやはり
民主主義国である
日本側としても、納税者にこたえるために明確にしていくべき問題であろうかと思います。
とにかく、先ほど
岡崎参考人の
お話にもありましたように、
国際情勢に対する分析等は同時に重要でございますけれども、私はここで申し上げたいのは、
日米安保を、
日本なりにでよいのでありますけれども、健全に
維持することの中で
アジアの安定が相当進むのだ、それが
確保されるのだということを申し上げておきたい。
我々がそういう自覚を持ち、
日米安保を健全に
維持しようとしているかどうかの試金石が、このレジュメのBにあります沖縄
米軍基地問題の解決であろう。
そこで、若干の
お話を申し上げたいわけでございます。このレジュメのBのa、b、c、dというところで若干
お話を進めたい。
とにかく沖縄の人々に大変重い、しかも偏った差別的な
米軍基地の重みが加えられてきたということに対して、私どもが戦後一貫して無自覚な
状態にあったということは、大きく反省し、改善に向けて
努力をしなければいけない。これは、現在、国を挙げて進められていることであろうと信じたいと思います。ただ、その場合に、やはり
議論を進める前にさまざま整理をしなければいけないポイントがあるだろう、そこをここに述べたわけでございます。レジュメのBのaにありますように、白紙的に見た場合の沖縄
米軍基地問題の解決における選択肢は、大ざっぱに言って三つあると思います。
つまり、
米軍基地問題全体をなくしてしまおうと思ったら、
日本から
日米安保をやめてしまえばなくなるのです。こういう選択も白紙的にはあるでしょう。ただ、私は、それは
日本の国益にとつて望ましいことではないと思いますし、
日本国民の恐らく半分以上は、
日米安保の解消というものは望ましくないと選択するでありましょう。ですから、これは、ここでは私は消させていただきます。
結果的に言いますと、この③にあります
米軍基地の再配置、
縮小などを図る中で、沖縄に加えられている過重な
米軍基地の負担というものはなくしていくという
方向に行きたいわけでありますが、もし
日本国民を挙げてそのようなことに取り組む
姿勢が生まれてこなければ、沖縄としてはみずからその問題を解決せざるを得なくなる。それが、この二番目にあります沖縄独立という選択肢であります。
これはリスクは伴いますが、沖縄が例えばシンガポール並みの通商
国家として生きていく将来を保証するものかもしれません。ただ、
日本全体から眺めた場合、国内問題にすぎない沖縄
米軍基地問題を良好な形で解決できないとなりますと、国際的な信用を失います。これも国益の問題から見て甚だ好ましくない。ですから、ここでは消去法で消させていただく。
三番目の再配置、
縮小ということを
前提に、このレジュメのBのbの問題に入ってまいります。沖縄
米軍基地問題を基地の再配置や
縮小などによって解決していくためには、この①から③までの条件を同時にクリアしていくことが必要になると私は思います。
一つは、
米軍基地の再配置、
縮小であります。この中には、沖縄における戦後処理という問題がまず第一になければいけないと思います。
とにかく沖縄戦が
終結した後、米軍が上陸をし、そこに居座る形で現在の
米軍基地は存在しております。これは、沖縄の主要な部分を占め続け、沖縄の自立というものを阻んできた。これは、沖縄復帰後も、その根本的な部分においてはいささかも変わることはなかったわけであります。とにかく沖縄の復興、繁栄というものを考えるとき、沖縄県内においてまず基地をどこかに移すという作業は、正面から取り組まなければいけないだろうということであります。同時に、これはやはり
日本本土にも分散しなければならないし、
アメリカと交渉する中で、
縮小するあるいは整理統合するという作業を進めなければいけないと思います。
これと同時に、
アメリカとの交渉を行う中で、二番目の沖縄の
経済的自立を可能とする抜本的振興策というものを本来的に望ましい形で描くことが重要であろう。
しかしながら、この三番目にありますように、これを可能とする条件は、
アメリカの軍事的プレゼンスを
維持してやるということであります。とにかく軍事的プレゼンスが
維持されていると
アメリカが認める限り、
日本の要求を
アメリカは相当受け入れると私は乏しい体験の中で感触を得ております。しかし、そのための条件を整え、
日本なりのカードを備えない限り、これは無理であります。ですから、
議論を最初から整理していくことが極めて重要になるだろうと思っております。
そういう条件を
前提として、このレジュメのBのcでございますが、
日米両国が沖縄の
米軍基地問題の解決のために目指すべき到達点というものを明らかにし、そこへ向けての歩みを始めることが重要であろうと思います。これも私は三点ここに書きました。当面の
目標としては一番目と二番目であります。そして、三番目が継続的
目標となってまいります。
一番目は、沖縄振興策の主な柱として、
アメリカ空軍嘉手納基地を
アジアのハブ空港にしていくという問題でございます。
とにかく
日米安保をどのような形にしろ続けるということになりますと、
アメリカが嘉手納基地を返還するということは通常では考えられません。ほうっておきますと、沖縄の中心部を占めるあの基地が、軍事的にのみ使われるわけであります。これは沖縄にとって大変不幸なことであります。しかし、
日米安保を
日本の
努力によって健全に
維持する中で、
アジアの平和が保たれている限りあるいは
世界の平和が保たれている限り、嘉手納基地は民間用に使用することは可能になってまいります。ですから、とにかく条件をきちんと整理をし、嘉手納基地をハブ空港にしていく、これが沖縄振興策の極めて重要なポイントになると思います。
いま
一つ、当面の
目標としては、海兵隊
地上部隊を
アメリカの領域に動かすという問題なんです。
ただ、後ほど申し上げますけれども、現在、与野党を挙げてあるいはマスコミを挙げて行われております削減とか撤退という
言葉は、定義を明確にしない限り
アメリカとの交渉の場には出せないのです。ですから、私は、新しい概念として、即応後方配備ということを出しております。即応性の高い形で海兵隊の能力を
維持し、そして沖縄県民が望んでやまない海兵隊
地上部隊の
アメリカ領域への駐留というものを実現していくという話であります。
同時に、この三番目の継続
目標としては、
日米安保による国際的軍縮を実現しつつ、
アメリカと
協議をしながら軍事基地を
縮小していく、それを追求していくことであろうということであります。
この到達点を実現するためのステップ、つまり、
日本側で申しますと、
日本が備えるべきカードというものは、このBのdの①、②、③であろうと思います。
とにかく普天間基地の返還が決まった後、代替航空施設につきましては海上ヘリポート案が去年の九月に浮上し、それをめぐって決着がつかない
状況が続いております。しかし、昨年四月二日の段階まで、
アメリカ政府は普天間基地を返すということは言っておりませんでした。四月二日の段階で、
政治的な決着をつけようということを
橋本総理が決断をされまして、とにかく普天間基地は返還という
方向に動いたわけであります。
ただ、その中で条件になったのは、普天間基地と同等の能力を持つ陸上基地を沖縄県内につくるというステップ、それを踏まえるということであった。これは密約とかそういう話ではありませんが、そういうことを
前提にして、初めて
アメリカは普天間基地を返すということに同意をしたわけであります。
これは、県内移設ということに反対しておられる沖縄県民の気持ちはわかりますけれども、
一つのステップとして考えた場合、海兵隊
地上部隊の即応後方配備を実現するためにも必要な段階ではないかなと思っているわけであります。海上ヘリポート案では、とにかくフル編成した海兵隊航空部隊を有事に受け入れるためには不十分過ぎます。つまり、
アメリカと交渉するカードにはならないということであります。
二番目の軍民共用空港の新設と那覇空港の閉鎖、これは嘉手納基地の
空軍部隊をとにかくほかの基地に分散をし、ハブ空港として使うための対案でございます。沖縄県内に軍民共用の空港を
建設する、そこに嘉手納の戦闘機部隊と那覇空港の自衛隊航空部隊を収容する、また、嘉手納基地の大型機の部隊は北海道千歳基地に移駐をさせるということであります。そういう中で、初めて
アメリカ側は海兵隊
地上部隊の即応後方配備を受けとめるであろうという感触を私は受けております。
そのような
議論をしていくことが沖縄の基地問題を解決の
方向に動かしていく上で極めて重要なことになってまいりますが、あと一分で
お話を申し上げたいのは、レジュメの一番下、従来の
議論の問題点のうち、一番目と二番目でございます。
とにかく定義が不在であるという問題をもう一度整理しよう。削減という
言葉を使いますと、
兵力構成全体を変更するという問題になりますから、
アメリカは受けません。撤退ということになりますと、軍事基地の撤去という問題が本来的に入ってまいりますから、
日米安保を解消しようとするのかということになりますので、受けません。これは違う定義をしなければいけない。
日米安保を解消するということを
前提にしないというのであれば、やはり県内移設というステップを踏まえるという
議論も、いま一度沖縄県民の皆様としていくことが重要ではないかと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)