○村井
委員 大臣のおっしゃっていることと私はほとんど同感なんですが、ただ、大臣はこれを報道する新聞記事に出動を非難するようなことはなかったと言うが、これを
訓練名目でやったことはけしからぬとか、一部の評論家はこれは不適当だったとかというようなことを言っている記事を見ますよね。これは否定できない。
今、大臣御自身、こういうルールをつくる必要がある、マニュアルをつくる必要があるということはお認めになられましたので、結構であります。そういう方向で、ぜひお互いに
協力しながら、ともかく現場で余りどうしようかということで悩んだりしないようにしなきゃいかぬと思うし、させなきゃいかぬと思うし、それから、下甑島の場合なんかは、現場の指揮官の対応は、どっちかというと基本的に褒められこそすれ責められるべきものじゃない、私はそういうふうに思うわけでございまして、ぜひひとつよろしく
お願いしたいと思うわけであります。
さて、今度のこの
法律案は、
陸上自衛隊の
装備関係の組織の改編が提案されているわけでございますが、そこで私は、
装備品、とりわけて正面
装備の問題を少し議論させていただきたいと思うのです。
正面
装備の問題というのは、大変残念なことですけれども、余りこの
安全保障委員会でも議論がされていない。どちらかというと、午前中与党の両
委員の御質疑を拝聴しておりましたけれども、隊員の
処遇の改善でございますとか、そういう
お話の方には話題が行きますけれども、私は、
自衛隊の
自衛隊たるゆえんはやはり
武器を持っているから、武装しているからだと思うのですね。その一番肝心な
武器の問題、武装の問題、それについての議論が非常に欠けているというのは私は大変な問題だと思うのです。
日本の防衛費というのは、計算の仕方は為替レート、それから人件費をどういうふうに読むかということでみんな違いますから、また、どこまでを防衛費として算入するかということで違いますから、これはなかなか計算しにくいのですが、たしかソ連がまだ盛んなりし時代に、一部の計算の文書では、日本の防衛費は既に世界第三位だというようなことを言っているのを読んだような気がいたします。これはうろ覚えですから、余りそんなことをお尋ねする気もありません。
政府委員の皆さんに別にお尋ねする気はありません。
そこで、私は、日本の防衛費が金額の上で高いのはある
意味で当たり前のことだと思っているのです。それはなぜかというと、まず徴兵制を採用していませんから、結局、世間並みの人件費をきちんと払わなければ要員の確保ができない。当たり前のことなんですね。そういう
意味では、世界一人件費の高い日本で、
自衛隊員が受ける給与も世間並みのものであるべきであるとすれば、当然に防衛費の中に占める人件費が相当実額で金額が高くなる。当たり前のことなんです。それから、食糧費にしましても、あれだけの
訓練量をこなすわけでありますから、たくさん食べるのは当たり前のことだ。そういったことを考えますと、こういったいわゆる人件・糧食費というようなものが相当な金額に上るのは当然のことであります。
それからもう一つ、日本の場合は非常に特徴的なのは、
武器輸出をしないという原則を立てているわけであります。政策選択をしているわけであります。これは別に憲法上のルールでもなければ何でもない。
法律にそう書いてあるわけでもない。要するに、日本
政府の政策としてそういう政策を採用して、そして国民に日本はこういう政策をとっていますよと言っているわけですね。
これがあるわけでありますが、
武器輸出をしないということは、日本でできた
武器は
自衛隊しか買ってくれない、
自衛隊という大変限られたマーケットしかないということなんですね。言ってみれば、
自衛隊の特別注文品をつくっている。これが日本のいわゆる
武器産業の実態です。そうなれば、特注品というのは当然高くなる。だから、この辺は
自衛隊も、いよいよ窮屈になりましたら、ミルスペックなんかもだんだんあきらめ始めて、普通に輸送車とか、非戦闘的車両といいましょうか、そういうものにつきましては少しずつ対応を変えているようでありますが、それにしても、そんなにえらい安くなるものじゃない。本当の
武器というのはよその国に比べたらやはり割高にならざるを得ない。
だから、私に言わせれば、日本は、意識するかしないか、そのように深く考えるかどうかは別にして、率直に言って、日本人は高い防衛費を
負担することをあえて選択をしているのだと思うのですよ。このことは、私は、
防衛庁もはっきり国民に伝えるべきだと思うのですね。いや、いろいろな言い方で言っているとおっしゃるかもしれないけれども、国民の皆さんは、防衛費はすぐ役に立たないのだから削ればいいではないかというようなことをおっしゃるけれども、このあたりの事情を国民によくわかっていただく、その必要は私はあるだろうと思うのです。
そこで、
武器の
開発生産というような問題について議論をさせていただきたいのです。
防衛費がだんだん
削減されてきます。近年特に大幅に
削減されてきますよね。人件費は世間並みに払わなければならないから減らせない。それから生活環境も、これは言われるように非常に劣悪なところが多い。これをどんどん改善してくれという
お話があるということで、このために非常に金を食う。そうすると、しわはどこへ寄るか。いわゆる正面
装備の世界へだんだんしわが寄ってくるという実態になるというのが現実ですよね。
これは本当にゆゆしき問題で、私はさっきこの話の最初に申し上げたように、
武器というのは
自衛隊にとって文字どおり不可欠のもので、
武器がなければ
自衛隊ではないのですよね。そういう
意味で、それが十分に
補給されない。「たまに撃つ弾がないのが玉にきず」という有名な川柳がありまして、これをつくったのはある
自衛隊員ですけれども。こういうことでは
訓練のレベルというものが本当に恐ろしいことになってしまう。
高い防衛費と言われます。それを払っていてもいざというときに役に立たない、こんなことになってしまっては、これは取り返しのつかない話でありまして、やはりたまに撃つ弾では困るので、きっちり
訓練ができるだけの所要を充足してやる。私は、これは大臣の責任でもあるし、我々政治家の責任でもあると思っているのです。
もう一つ、十分に
補給されないとか、あるいは時代おくれのものを結構使っている。これは最近どうなっているか知りませんけれども、ともかく第二次大戦末期の
武器が三十年たっても使われていたというような現実もありますし、少し調べてみれば、今でもどこかにあるのではないか。そういう細かいことはまたで結構ですけれども、私は、そういう状態というのは本当に寒心にたえない、本当に残念なことだと思うわけであります。
特に、後で触れますけれども、
即応予備自衛官という
制度をおつくりになる。
自衛官のOBが民間にいて、これが入ってきて、今度は実際の防衛活動にも
防衛出動の際にも使われるということになりますと、やはり使い勝手のいい、精度のよい
武器をきちんと所要の分だけ与えるということがどうしても必要になってくると思うのですね。そういう
意味でも、私は、
武器の問題というのは非常に重要だと思うのです。
ところが、世の中には、
武器は外国から買えばいいではないか、外国ではたくさん安い
武器を売っているよ、これを買ってくればいいではないか、特にアメリカは日本にとって友邦である、同盟国である、ここから買ってくれば全部済むではないか、何も日本でわざわざつくる必要はない、こういうことをおっしゃる方がある。私は、幾つかの点からこれについては批判を申し上げたい。
一つは、極東という地政学的な場所ですね。この
地域で日本ほどのレベルの工業国というのはそうたくさんない。これは一つの現実であります。そこで、米軍と共用する
武器体系を持ち、そして、それを補修できる設備をきちんと備えている状態を確保するということは、非常に重要なことだと思うのです。これは非常に現実的な
防衛力の一部を構成する要素だと思っているのです。
それからもう一つ、
我が国に
開発製造能力がありませんと、先端的なよいものを入手することができないということがあるのです。私は一つの例を挙げさせていただきたいのですが、私も
防衛庁に勤務した人間として、一種の防秘、防衛秘密の世界を尊重するものでありますから具体的な話は申し上げませんが、私が
防衛庁に勤務しておりますときに、日本がある
武器のFMS契約を、ライセンス契約を結ぶのですね。その結果、NATOのいずれの国にもアメリカがまだ供与していない最新鋭のある
武器を、日本に対してだけはライセンス生産するのを認めるのですよ。これは大変な
事件だったのです。
それは米国の最新鋭の
武器だったのですけれども、それにほぼ匹敵するようなレベルのものを日本が独自に
開発して生産しそうになったので、これは大変だ、伝統的に日本はアメリカ製の
武器体系を使っているのに、日本に独自に
開発されてつくられてはかなわぬ、それではライセンス生産でお売りしましょうということでぱっと売ってきたということであります。たしかイギリスに先駆けること五年くらい早く日本はその
武器体系を手に入れることができたと記憶しておりますけれども、そういうことがある。
これは何かというと、一種の国際的なバーゲニングパワーの問題なのですね。幾ら同盟国アメリカだといっても、やはり別の国なのですから、そう簡単には渡しはしない。そういう
意味で、日本にそういう能力があるということが、アメリカからそういう最新鋭のものをきちんと手に入れて、もちろん日本にとって必要なものを手に入れて、そして生産をする、そういうことが可能になる条件なのだろうと思うのです。
日本が自国でせっかく
開発したものを、この場合は生産できなかった。そういう
意味では、
関係者は非常にがっかりした人たちもたくさんいるわけです。しかし、世界最新鋭の、しかもいろいろな形で使われることによって実証された
武器体系を日本の
自衛隊が使うことができたということで、この
開発努力は報いられた、私はこんなふうに思っているのです。
そこで、そんなようなことを申し上げた上で、
武器という問題について十分議論することの必要性ということはるる申し上げたわけでありますけれども、アメリカとの
武器の共同
開発、これは言葉はちょっと荒っぽい言い方ですけれども、これは可能になっているわけでございますね。そうなってからは随分時間がたつわけです。
これは昭和五十八年、中曽根
内閣の登場とともに始まったプロジェクトでありまして、その後、
事務レベルで、また歴代の
防衛庁長官が非常な御努力をなすって国防総省とも交渉されて今日に至っているわけでありますけれども、一番問題は、その結果共同生産されたものを第三国に輸出するという話になりました場合は、それは今の
武器輸出についての原則のもとではできないということになっている。これは私は非常に実は大きな問題だと思うのですね。
そもそも
武器輸出三原則というのはどういう内容であったかということを、わかり切った話ですけれどもおさらいしてみますと、まず第一に、共産圏には出しませんというのです。ところが、共産圏というものは事実上なくなってしまったわけですね。それから、国連でここへは出しませんと決めたところには出さないということになっているわけですね。それから、現にドンパチやっているところ、紛争当事国には出さない、あるいはそのおそれのある国には出さない。これが
武器輸出三原則で、これ自体はある
意味では当たり前のことを書いていたのですね。
ところが、そもそもの共産圏がともかくなくなってしまったということになりまして、いわゆるココムというのもなくなってしまった。そして、御案内のとおり、今、ワッセナー・アレンジメントという形で新しい
武器の貿易のコントロールのシステムというものが、日本も含む先進諸国の間で合意がなされている
状況であります。
そこで、私は、昭和五十一年当時、三木
内閣のときに、
武器輸出三原則の対象になる三
地域に対しては輸出しない、それ以外の
地域に対しては慎むということを決定して、それで
武器輸出三原則なるものがいわば
武器禁輸の体系になって二十数年たっわけでありますけれども、そろそろこれは考え直さなきゃいけないんじゃないかという気がするんですね。
といいますのは、日本と米国の間で防衛技術の交流をやって、ある
武器体系をつくるということになりました。そして、それぞれで、例えば日本でこの
部分をつくります、アメリカでこの
部分をつくります、そうしてできたものは日本でもアメリカでも使いましょうねということになります。そうすると、これは必ず、いわゆるNATO諸国、さらにはNATOが今度東の方へ延びるとかいって、昔のワルシャワの同盟軍の国々も
武器体系に入るのかどうかなんてところが随分微妙な話になっていますけれども、NATO諸国とアメリカとの間では
武器体系の共有が行われているという実態があるわけですね。どこでもというわけにはもちろんいかない。それはもちろん日本がかかわっている以上、ここはいいよ、あそこはだめだよということを言う権利は当然あるはずですけれども、そろそろそういうことも考えなきゃいけないんじゃないか。
といいますのは、金がないでしょう、そうすると、
武器というのは高いですから、結局共同生産をやらなきゃ安くならないんですよ。そういう
意味で、日本は、安くさせる、安い
武器体系を手に入れる、しかも日本の技術はちゃんと維持する、そういうことが可能な条件を持っているんですよ。それを何とか氷を割る、ブレークスルーする、そういう政治決断がいずれ必要になるんじゃないかと思うんです。
私、昔、中曽根総理、そしてたしか谷川
防衛庁長官の時代だったと思いますけれども、対米
武器技術供与を決めるという大変感動的な政治的現場に居合わせたことがありました。
久間大臣、大いに研究をしていただいて、この問題につきまして何か一つ御在任中にでも前向きにやっていただけるといいんじゃないかなという気がするのでありますが、御見解をひとつ。