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今泉昭君 ぜひひとつ、国民全部がひとしく法のもとに平等であるような行政
指導を徹底して、四十時間制度の実現に
指導力を発揮していただきたいというふうにお願いを重ねて申し上げておきたいというふうに
思います。
次に、あちこち飛ぶようで申しわけないけれ
ども、空洞化の問題について少し触れてみたいというふうに
思います。
この
委員会でも過去に、我が国の産業の空洞化、それに伴う雇用情勢の問題について論議をした経過があるわけでございますが、多少円安に振れることによりまして海外進出の流れがやむかなというふうに見ていたわけでございますが、全体的な流れというのは、必ずしも多少円安に振れてもそういう方向に行くという
状況にはございません。特に我が国の高コスト構造ということは、わずかばかりの円安によって解消できるものではございませんから、大きな流れというのは、まだまだ我が国の産業が海外へ海外へと転出をしていく流れになっているのではないだろうかというふうに
思います。
そこで、通産の方では当然、我が国の産業面での高コスト構造の解消のためのいろんな施策を練っていると思うわけでございますが、
労働行政の面でも、高コスト構造という面ではなくして、いろいろとこれからやっていただかなきゃならない面があるのではないだろうかというふうに私自身思っております。
御存じのように、産業にはいろいろなグループに分けた産業の区分けというものがございます。これは業種ではございません。今まで我が国で特に東南アジアに転出をしていった製造業のグループというのはどういうグループであったかというと、どちらかといえば組み立て産業を中心とする、優秀な機械を
日本から持っていって
現地の安い
労働力によって品物をつくるという形の産業群が大変多かったんではないかと思うんです。私自身は、これらのグループが東南アジアに進出していっても我が国の産業自体の問題としてはそう大きな問題ではないというふうに
考えておりました。
ところが、問題はその下のいわゆる底辺部分にある。一番高度な技術を開発するグループを頂点とするならば、その下を支えるのがエンジニアを中、心とする組み立て・加工産業、そしてその下を支えるのが中小企業を中心とした、いわば物づくり基盤になる技能
労働者集団だっただろうというふうに私は思うわけであります。この技能
労働者を軸とする製造業の基盤というのは、我が国の場合はどちらかといえば産業集積地に集中をして、これまで我が国の製造業を中心とする産業の発展に大変な寄与をしていたグループであっただろうと思うのであります。
ところが、聞くところによりますと最近は、一番下の下支えにある、三角形の底辺のところにある一番すそ野の広い、この産業基盤である金型であるとか鋳物であるとか鋳鍛であるとかというような、こういうところの産業が、南の方の安い賃金のあるところではなくして、そういう基盤を受け入れやすい
地域にどうも移動をする危険性が出てきている。
特に、中国で言えば東北地方、いわゆる満州、昔の満州でございまして、ここは
日本の昔のインフラが残っているような
地域でございまして、技能の吸収も大変しやすい
地域であったというふうに言われているわけでございます。そういうところにどうも移動せざるを得ないのではないかという流れが出てきているということに大変危険な兆候を感じるわけでございます。
もしこれらの基盤が
日本から失われたとするならば、本当の意味での
日本のいわゆる物づくりの空洞化というのはそこによって生まれてくるんじゃないかと
思います。幾ら組み立て産業、例えば電機だとか時計だとか大量生産の組み立て産業が、深圸を中心とする、あるいは香港周辺の
地域に流れていっても、
日本の機械をつくる、その最低基盤を支える腕を持った技能者がつくっているところが行かなければ、
日本から優秀な機械を持っていかなければそこではっくれないわけでございますから、ただ単なるエンジニアリングだけを教えておけばいいわけです。それは一定の限度があるわけですが、その基盤をつくる最低の技能というものが流出していくことになれば、これは大変なことになるだろうと思うし、そのことによって雪崩を打ったように我が国の産業の空洞化と雇用の不安というのが起こってくるんではないだろうかと思うわけであります。
そこで問題にしたいのは、そのような
労働者を
日本から失わさせるような我が国の環境が今、先に先に進みつつあるんではないかと思うわけです。例えば、中小企業白書なんか見てみますと、我が国で三百五十ぐらいあった産業集積地がもう既に三百を切るような状態になっているという
状況もあります。そして、現在存在しているその産業集積地すらますます崩れるというような
状況になっている。
具体的な一つの例を申し上げますと、大田区や品川には機械金属のいわゆる産業の集積地がありました。川崎にもありました。そこに大手企業が、これから一つの製品をつくりたい、ちょっと試作をしてくれと持っていけば、必ずどこかがすぐにつくってくれる。大手企業が注文したものをすぐできるような、いわゆる技能を持っている中小零細企業がたくさんあったわけであります。
ところが、これらのところで経営をしている、働いている
人たちというのは大変
労働条件的にも恵まれない
労働者層が多いわけであります。工場は小さい、汚い、もうからない。そして、何かお客さんである大手からはぎりぎりぎりぎりコスト的に締められていって、そこの親方というんでしょうか、工場主、オーナーも生産意欲を失って、一つはやめていかざるを得ない。
さらには、環境が最近問題になっていますから、周りから環境で責め立てられて、とてもじゃないけれ
どもというわけでほかに転出しなきゃならない。さらにはまた、親のそういう姿を見ていると、子供が親の後を追ってその企業を受け継いでいこうなんという気持ちにはならないわけでございまして、親のようにはなりたくないなんて言って、全然違う仕事に行ってしまう。そういうような
状況が今、
日本の集積地にここかしこで生じているわけですね。
これを
考えてみますと、これは一体何なんだろうかというふうにいいますと、確かに今我が国の産業を再構築するために技術の革新、技術の革新ということが盛んに言われているけれ
ども、技術の革新に関しては大変お金も使っていただいている、脚光も浴びている、いろんな援助の
体制ができている。ところが、技能というものをいかにして継承し、技能をいかにして育成していくかというところに対する焦点が大変薄いわけです、
日本の場合は。技術革新の問題は通産行政かもしれない。技能の問題は、私はこの
労働行政に大変重点があるんじゃないかと思うんです。技能というのは人の問題であろうと私は思っているわけですね。ですから、この技能をいかにして育て継承し、発展させていくかというところでの
労働行政を大いに期待を実はしたいわけであります。
世間の目を見ましても、例えば子供の日のテレビ番組を見ましても、あるいは母の日のテレビ番組を見ましても父の日のテレビ番組を見ましても、技能を持って汗まみれになって、油まみれで働いた親とかお母さんとかが番組に呼ばれたことはないですよ。何か汚い仕事、汗まみれにやっている仕事に対しては
日本全体の価値観が、ああすばらしいものだというそういう雰囲気にはないんですね。華々しい、何か格好いい
活動をしているところばかりが持ち上げられる。こういう雰囲気をなくすために一体どうしたらいいか。
まあ技能検定であるとか職能訓練だとかというふうなことで
労働省自体も努力をされているけれ
ども、これらの
労働者の扱い方、評価の仕方、もう少し工夫がないかと思うわけでございまして、この点についての大臣のひとつ御見解をまずお聞きしたいと思うのですが、その後ひとつ
局長の方から。