○
参考人(
白石正彦君)
東京農業大学の
白石と申します。よろしくお願いいたします。
私は
研究者の
立場から今回の
改革二法についての
意見を述べさせていただきます。
私はこの二年ぐらいの間、
国際協同組合同盟という
協同組合の
国際組織がございますけれ
ども、そこで
協同組合の
原則改定の
検討委員をしておりまして、いろいろ各国の
協同組合の皆さんとも議論する
機会がございました。そういうふうな少し国際的な視点と、それから日常的に私は
東京農大の方で
協同組合それから
農協論を講義しておりますので、いろいろ各地の実情を
調査したりする
機会がございました。そういうことで、その辺を踏まえまして
意見を述べさせていただきます。
私のお話しします柱としましては、第一に
農協系統及び
金融をめぐる
状況の
認識です。それから第二番目に
農協改革の
必要性と
基本方向。この二つに絞ってお話しさせていただきます。
第一の
農協系統及び
金融をめぐる
情勢認識ですけれ
ども、既に
系統農協では
平成三年の第十九回
全国大会で今回出されております
組織二段の
方針を打ち出しております。既に六年たっているということで、ある面で私は若干遅過ぎているのじゃないか、もっと早くこういう
法律を通さなき
ゃいけなかったのじゃないかという感じがしております。
系統では
平成三年の十九回大会、それから
平成六年の第二十回のJA大会、ここでもそれを強力に進めるということで
方針を打ち出されております。
あわせて、その間の
情勢の急激な変化がございます。先ほどから言われましたバブルの崩壊、
金融をめぐる大きな難題、こういう点を抱えているわけですけれ
ども、私が先ほど申しましたように、ICAでは新原則、従来は一九六六年の六原則というふうに言っておりましたけれ
ども、昨年の九月のICAの百周年大会で七原則が決定されております。さらに、
協同組合の定義なり価値なりこういう点もあわせて決定しておりまして、こういう点を踏まえてこれから取り組んでほしい、こういうふうに私は思っております。
あわせて、私は
発展途上国の方といろいろ話す
機会があるんですけれ
ども、日本の
農協に対する期待が非常に高いんですね。日本の国内で見ますと非常に
批判が強いのですけれ
ども、タイの人たち、韓国の人たち、あるいは中国の人たちは、やはり日本の
協同組合はしっかりしてほしい、あるいは学びたいということでいろいろそういう
意見を聞くことが多いわけです。ですから、今回のこの改定についても単なる国内的な視点だけじゃなくて、国際的なそういう期待ということもあわせて見ておく必要があるんじゃないかと思います。
そういうふうな
状況認識に基づいて、それでは
農協改革の
必要性と
基本方向ですけれ
ども、そのうちの一つ、
組織再編、これは
農協合併、
組織二段ということですけれ
ども、私の
認識も、従来の全国
組織がいろいろ
指導していくという
状況あるいは
政府が
指導するというところから、今の
段階は
広域合併をしまして
単位農協がみずからその
方向を決めていく、
組合員に支えられながら取り組んでいく、そういう舞台、枠組みをつくる上で非常に重要であると。
しかも、それは今のように非常に厳しい
状況、川下といいますか、スーパーなり消費者に接近した流通業界の力が強くなっておりますから、それとのバイイングパワーをつける意味でも、自分たちがみずから
自己責任を持ってやる意味でも、やはりこういう
改革、
単位農協を軸にして連合会がバックアップしていく、こういう
体制をつくる必要があるというように考えております。
もう一つは
経営の
健全化、これも今までは、私の
認識では、
農協の
経営は
信用事業、共済
事業の黒字であとの部分を、
基本的な部分である例えば営農
指導事業等もそのいわば収益でもって
指導をやってきたということがあると思いますけれ
ども、これからはそういう特定の分野に依存して
経営をやるということではなくなってきたわけですね。しかも既に食管法も廃止されております。みずから取り組まなきゃいけない、こういう
段階になりますと、従来は
組織代表を軸にしてやっていけたと思うんですけれ
ども、だんだん今の厳しい専門的な
機能が求められる
段階においては、この
業務執行体制の中に今回選択肢という形で
提案されておりますけれ
ども、
経営管理
委員会がそういう専門的に日常の
経営に
責任を持てる
理事を
選任していくと、こういうふうな選択肢も非常に注目されるところだと思います。
これを
導入するかどうかは最終的には
農協の総代会等で決めることですから、選択は個々の
農協だと思いますけれ
ども、そういう新しい枠組みを提示したということは私は大いに評価しております。また後ほど質疑がございましたら触れますけれ
ども、私自身ヨーロッパ等の
農協をいろいろつぶさに見ている中で、やはりこれは必要だという感じがしております。
それから、
経営の
健全化の中で、
自己資本、
内部留保、これも私、
協同組合原則の改定にかかわってきましたけれ
ども、その中で一つの最大の
課題は大規模化、これは流通業界、生産
体制もそうですけれ
ども、その中でやはり資本の
充実というのが極めて重要だという点は各国とも共通です。例えばカナダあたりでは、最近向こうの先生から聞きますと、サスカチュワンという小麦地帯、それからアルバータ、ブリティッシュコロンビア、そういうところで広域の酪
農協をつくったりする。それは何が目的かといいますと、やはり
自己資本の
充実だということを皆さん言っております。
そういうふうに、このためのバックアップの
体制が今回できている、またミニマムのそういう点を
導入するということは、そういう
経営の
健全化を
促進する上で非常に注目されると思います。
それから、
経営監査体制、これもやはり
経営者を
チェックしていく、こういう力がますます私は求められていると思うんです。これはヨーロッパの
協同組合等を見てもそうですし、またヨーロッパでは、ここで触れられている以外に社会的
監査といいますか、
協同組合あるいは
農協が社会的にどこまで貢献しているか、こういう点を
チェックするような、これはむしろ
法律というよりも内部的なことですけれ
ども、そういうことまで含めて
監査体制をどう拡充するかということが大きな
課題になっております。
さらに、この部門別損益、これは先ほど申しました。やはり
農協の
組織基盤がかなり変わっております。従来の同質的な
農業者だけではなくて、かなり兼業化している
農家、あるいは准
組合員という形で
地域に住んでいる
方々の
組織も少しずつ変わってきております。そういう
状況に対応して、やはり
信用事業、共済
事業で得た利益をほかの分野に回すという時代は既に終わっていると思うんです。それぞれの分野が独立して
透明性を持って損益をきちっとしていくということがますます求められる。それをバックアップする今回の
体制も注目すべきではないかと思います。
それから、
資金運用の規制の問題、これもやはり
農協の場合、
協同組合金融ということでいろんな規制がたくさんございました。それを少しずつ緩やかにしていこう、最終的にはこれは自分の
責任ということになりますけれ
ども、
情勢の変化に機動的に対応できる、そういう枠組みを少し緩和していくということも極めて重要だと思います。
協同組合らしさを生かしたこういう
資金運用というのは、やはり
地域に密着した循環だと思います。そういうことを
農協という、総合
農協の形態で
事業をいろいろ
改革しながらやっていく意味で、それを資金面での
運用もやれる
体制づくりをバックアップするという意味でも今回の
改正は非常に重要だと思います。
今までの
農協法の
改正あるいは戦前の産業
組合法の
導入にしても、どちらかといいますと上からという視点が強かったかと思いますけれ
ども、今回の
改革法案は、二十一世紀に向けて
農協が自律的といいますか、みずからの
責任と
組合員に支えられた参加型民主主義というものをどんどん出しながら
改革をみずからやっていくと。二十一世紀社会は今までの効率
中心から、むしろ効率と効果といいますか、持続型といいますか、要するに本当の意味での心の豊かさ、経済だけに偏重しないあり方が求められていると思います。
そういう意味では、
農協の歴史も、例えば
農村部での医療
事業、これは既に大正時代に産業
組合で
導入しておりますけれ
ども、それは無医村の中でやっているという、こういうふうな人を大事にするという
組織になるためにも、もっとそれを
充実するためにも今回の
改革法案は重要であるというふうに考えております。
以上でございます。