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上田耕一郎君 三つ質問させていただきたいんですけれども、一問ずつお答えをいただくようにします。
野上局長のお話の中で、
経済のグローバリゼーション、これが非常に大きな問題だというふうに言われました。私も、
APECというのは
経済のグローバリゼーション、特にソ連崩壊後一層強くなっていると思うんですけれども、それに対してアジア
諸国がどういう対処をしていくかということが
APECにとっての中心問題だと思うんです。
私どもは、八月から九月にかけてASEAN五カ国を回って、そのとき安全保障の問題についても、アメリカや
日本などの大国の考え方とASEAN
諸国の自主的な考え方と、ある流れの違いというものを感じたんですけれども、
経済問題についてもやはりそういうある流れの違いがあるように思うんです。
NIESに続いて、ASEAN
諸国、
中国、ベトナム等のアジア
地域は最も
経済的発展を遂げているんだけれども、その上に立って、ASEAN
諸国としては国民
経済の発展を主にして、同時に先進
諸国との
協力、相互間の
協力、これに基づいて進めていこうという考え方だったと思うんです。だから当初、八九年に
APECが発足したときは緩やかな
協議体、それから決め方も多数決じゃなくてコンセンサス方式ということで進んでいったんだと思うんです。
ところが、それに対してアメリカや
日本など先進
諸国の態度がむしろグローバリゼーション、これに
参加することによって国民
経済も発展するという考え方に立っている。これはどうも南北問題についての北の先進
諸国の態度の変化でもあって、かつては南の国々にさまざまなODA中心の援助をやって自主的発展をというんだったのが、もうとにかくこういう
状況で、しかもアジアの
経済力が強いから、グローバリゼーションに
参加し、
貿易・
投資の
自由化をどんどん進めることによってそれぞれの国が発展するんだという考え方がクリントン大統領の九三年の
シアトルイニシアチブ以後ずっと強まって、今度の
マニラ会議まできて、いよいよ来年一月から始まるというところになってきているように思うんです。
「複合不況」で有名な宮崎義一教授の「国民
経済の黄昏」、これ去年出た本ですけれども、彼は、多国籍企業の登場と
情報通信革命、これによって国民
経済の枠組みから新しいトランスナショナルな
経済的枠組みをつくる動きが世界じゅうに広がっているということを言い、ヨーロッパのEU、それから北米のNAFTA、それからアジアの
APEC、この三つを実例に挙げているんです。
同時に宮崎さんは、ただ、
APECの中にはいまだ国民
経済の枠組みを自主的に完成させるに至っていない発展途上国が数多く残存している。非常に発展はしているけれども、まだそういう国々もあると。そういう国々にとっては、やっぱり自分の
経済を発展させるためにある程度保護政策をとらなきゃならぬし、かなり高い
関税も必要な部面もあるということは出てくるんだが、それに対して、いや、
貿易・
投資の
自由化で二〇二〇年までには完全な
自由化をなし遂げろということになってスピードアップされていきますと、やっぱりその間にどうしても考え方の矛盾というか対立が出てくる。今度の
APECマニラ会議でも反対のデモまであったし、それから
貿易・
投資の
自由化に異議を唱えるNGOの
会議まで開かれる、一方でそういう動きもあるわけです。
そこら辺の問題、今のところアジア
経済というのは発展しているから、この矛盾はそう顕在化していないと思うんだけれども、今後進んでいくとやはりそういう国民
経済の発展を主にして自主的な、割に緩やかな、余り無理をしない
経済協力をという考え方、当初出発時はそうだったんだが、いやもうとにかくみんなで頑張って
貿易・
投資の
自由化を進めることが
経済発展だということで
関税もどんどん下げていくという方向が、まあコンセンサス方式が尊重されているから押しつけじゃないかもしれぬけれども、やっぱり問題を今後生む危険があるんじゃないかと思うんです。
その点で、最大の多国籍企業を持っているアメリカが今度の
マニラ会議でとった
行動は、新聞報道を見ますと若干気になるところがあるんです。例えば、クリントン大統領が一番力を入れたのは情報技術協定、
ITAの締結だということで、二士一首の
閣僚宣言では協定を締結するための
WTOにおける努力を支持となっていたのを、二十四日の
首脳経済宣言では、今度は努力じゃなくて締結を求めると一歩進んだと、これには非常なロビー外交をやったというんです。それで、アメリカのウルフ
APEC特使は、
会議の結果はアメリカにとって喜ばしい限り、クリントン大統領の大勝利だと言って喜んだというんでしょう。
そうすると、宮崎さんが多国籍企業の登場と
情報通信革命、この二つが
経済の
グローバル化の大きな導因だと言っているんだけれども、まさに多国籍企業による情報技術協定、アメリカの多国籍企業は最もこの
分野で進んでいるんだけれども、それに非常に膨大な利益を約束する
分野が開かれるという論評、コメントなんです。それをとったことはクリントンの大勝利だと喜ぶような
状況が生まれると、これはそういう態度をアメリカがとり、
日本もまたべったりそれを支持というのでは、発展途上国の本当の自主的発展、これに対してさまざまな問題が今後生まれるんじゃないだろうかと思うんです。
私たちも東南アジアを回ったときにいろいろ驚いたことがあったんだけれども、バンコクを初め自動車の渋滞は物すごかったし、自動車からおりると空気もにおいがすぐわかるぐらいひどいんです、バンコクのは世界でも有名らしいけれども。それから、あちらこちらでちらちら見たスラム、これはタイでもインドネシアでも
フィリピンでもどこでも大変あるんだけれども、インドネシアで今度かなりいろいろトラブルが起きたのもそういう貧富の、所得格差の拡大だというんです。
今後、そういう方向で進んでいったときに、私がさっき言った二つの流れのある矛盾と結びついて、
環境問題、今度も
環境問題も非常に重要になったし開発
協力も改めて重視されたというんだけれども、そういう問題とか貧富の格差の拡大、そういう問題の見通しで心配する点があるんじゃないかと思うんです。そこら辺をどうごらんになっているか、まずお聞きしたいと思います。