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上田耕一郎君 今度の五カ国訪問は非常に意義のある
調査になったと思います。準備に当たった
委員部、
調査室、外務省、それから
現地の大使館の皆さんにお礼を申し上げたいと思うんです。
調査室の御努力でこういう会談の記録を出していただいて、これは非常にいいことで、何年か前に中東五カ国を回ったことがあるんですが、あのときも
外務大臣その他に会いましてなかなか充実したあれだったんです。私は赤旗に連載を書いたんですけれども、今後ともこういう
調査をやった場合に今度のようなやり方で記録をきちっと残す、大変でしょうけれども、お願いをしたいと思います。
四つの点についてちょっと感想的なことを申し上げたいんですが、まず、
アジアの
情勢認識です。
日本では、今度の
日米安保共同宣言なんかでも、
アメリカの
見方に
影響されて、北朝鮮が大変だから十万の
米軍、四万七千の在
日米軍などということになっていますけれども、
ASEANの五カ国では
中国についても脅威と見ていない、北朝鮮についても大体安定している
方向と見ていまして、
日本で言われている
状況と非常に違うということがよくわかりました。
日本はやはり
アメリカに
影響され過ぎて、少数派の過激な
情勢認識をやっているなと思います。
中国なんかも
ASEANの仕組みの中に平和的に取り込める、南シナ海のシンポジウムの経験なんかも持っていまして、そういう自信を持っているんです。
その自信は、
会長も言われましたけれども、
ASEANが、最初反
ベトナムでできた同盟が、去年
ベトナムも
加盟、それから
ラオス、
カンボジア、
ミャンマーが入れば
ASEAN10になる。西暦二〇〇〇年には四億を超える人口だという大変な自信がありまして、そういう自信が、
ASEANがイニシアチブをとって
アジアの平和を進め得るんだというものが土台にあるんだと。それでこういう
楽観的な、根拠のある
楽観論を皆さん持っているんだなと思いました。
次は、
軍備増強問題です。
事前のレクチャーやいただいた資料なんかでも、
各国かなり
軍備増強が進んでいるんです。それで、
アジア経済研究所の諸論文とかいろいろ読んだんですけれども、大体前に読んだのでは、
アジアの
経済発展から
経済的余裕ができている。それから、ゲリラ戦などその他
解決したので、陸軍中心の内戦型の
方向から、空と海、特に石油資源問題なんかがあるので海軍の増強に力が入っている。それからまた、
中国や
日本に対する警戒等々の分析がありましたが、
現地に行ってお聞きしますと、専ら
軍備拡張ではなくておくれた古い
軍備の
近代化なんだというのがほとんどのお答えでした。
ただ、
アメリカのプリンストン大学の
日本研究所長のケント・カルドー氏の「
アジア危機の構図」などを読むと、やっぱり今後
アジアで、
中国ももう既に石油輸入国になっているし、二十一世紀にはエネルギー危機がかなり進展するだろうという
見通しなんかがあって、桜美林大学の加藤助教授はそういう点でいうと海軍増強、特に潜水艦がかなり重要な
役割を果たす
地域だということなど指摘されているので、海軍の
軍備増強については今後我々も見ておく必要があるのではないかという感じがしました。
三番目は、
日米安全保障共同宣言とその反響です。
五カ国の中で
フィリピンだけが非常に高い
評価で、理由は、
アメリカの核の傘がないと
日本は対
中国防衛用に核を持つんじゃないかということを言いました。誤解があるんですけれども、そういう
見方で見ていた。
なお、核の問題について私おもしろかったのは、
フィリピンは憲法で非核政策を書いてあるので、しかし
アメリカが核兵器を持ち込んだらどうするんだと聞きましたら、シアゾン外相は、
アメリカは持ち込んでくるだろう、しかし我々はないだろうとそういうふうに言っている、これは
日本と同じだと。
日本から学んでそうやっているんだというまことにおもしろい説明で、
日本における核兵器持ち込みを
日本の政府が
アメリカが核の存否について言わないというNCND原則を守って覆い隠しているという実態が
フィリピンの
外務大臣の口から暴露されたというので、私は大変おもしろく思いました。
ほかの国は、大体理解すると外交的儀礼で言いながらやはり警戒を持っています。
ベトナムは非常にはっきり、否定的
影響を与えるんなら賛成しないと言いました。それから、いただいた資料では、例えば
タイのバンコク・ポストなどというのは、これはNATOの小規模版だと、なかなか鋭い正確な指摘などしてあったので、
タイのプラサート準教授にこの問題を聞いたら、彼はやはり、これは新しい課題、新しい問題があるということで、慎重ながら今度の
日米安保共同宣言についての新しい問題の重要性を見ていました。
私は、まだ
各国はこの
日米安保共同宣言の危険性について中身をよく御存じないと思います。
ベトナムの外務
次官は、
池田外務大臣が来ていろいろ聞いたら、新しい内容はないと言っておったと。そういう新しい内容はないということを
外務大臣が
各国を回って説明しているというのは、これも非常に問題で、新しい内容がないのなら今後を見るけれどもそう反対はしないという態度なのかもしれません。
日米安保共同宣言の危険性、来年の秋にはガイドラインが出てきますけれども、やっぱり非常に重要な問題がここにはあると思うんです。まだ実態をよく御存じないので、一応外交的儀礼で
評価はされるけれども、内心はやはり警戒的な
見方で今後の展開を見ていく、こういう感じがしました。
それから
最後は、非同盟の問題と
アメリカの
プレゼンスの問題です。
私はこの問題に一番関心を持っているんですが、今度訪問した五カ国はすべて非同盟諸国
首脳会議の参加国で、
フィリピンは九一年にクラーク、スービックの両基地を撤去し、あのとき上院が新基地条約の批准を拒否したんですが、翌九二年に非同盟諸
国会議に参加しました。
タイは、
ベトナム戦争のとき北爆の拠点だったんですけれども、その
米軍の基地を撤去させて、私が
フィリピンの基地撤去のことを言ったら外務
次官は私に、
タイも
米軍基地を撤去したことを忘れないでくださいと、そういうことまで言われました。そのクイも去年、九五年に非同盟諸
国会議に参加したんです。そうしますと、
アジアでは非同盟諸
国会議に参加していない国は
日本、緯国、
中国、この三カ国で、あとほとんど二十カ国以上が非同盟諸
国会議に参加しているわけです。
しかし、この非同盟もいろいろ動揺やら問題点というのをさまざまに持っています。今度お会いした中でも、
タイのプラサート準教授は、もう非同盟主義の
時代はほぼ終わったと思う、そういう
評価を言いました。
マレーシアのカディール外務第一副
次官は、質問をしましたら、非同盟の
目的、原則には何ら変更はないんだ、そう言われました。この二人の中間が
インドネシアでお会いしたジャーナリストのカトッポ氏で、非同盟は非常に重要なんだが、しかし現実を見なきゃならぬということで、いろいろ問題点あるいは矛盾、現実と非同盟の原則との間の矛盾を感じておられる言い方でした。
その矛盾が一番出ているのが
米軍の
プレゼンス、
アメリカの
プレゼンスに対する非同盟諸国の
評価と対応なんです。これは非常に矛盾がいろいろ出ているんですね。
例えば、
フィリピンは、
先ほど言いましたように新しい基地条約を拒否している。これは
時代錯誤だといって上院が拒否しているんですが、メルカドさんも拒否した側の有名な論客だったんです。しかし、あそこは
アメリカと軍事同盟条約を結んでいるんです。相互防衛条約を結んでいるんです。相互防衛条約を結んでいるんだから、それからあそこの憲法は戦争放棄、政策手段としては戦争を放棄すると。新しい憲法は非核も決めているし戦争放棄も決めているんですが、じゃ
アメリカ側が攻められたら
フィリピン軍は一緒に守るのか、どうなるんだと聞いたら、お答えは、国連が承認し議会が承認すればということで、国連の承認と議会の承認を条件として挙げました。だから、非同盟諸
国会議に参加していても、防衛条約を結んでいて、五カ国の中で
アメリカと軍事同盟条約を結んでいるのは
フィリピンだけでしたけれども、議会が承認すれば戦うこともあり得るような、非常に矛盾を抱えた、横暴が進んでいるなと思いました。
タイは、七六年に
アメリカの軍事基地をなくしたんですけれども、
アメリカとの定期的な軍事演習もしています、コブラ・ゴールド演習というのもやっているんですね。同時に、
タイ湾に
アメリカが事前集積の基地といって補給船を置かせてくれということを申し入れて、
タイ側の説明では、何で
アメリカのこういうものを置くんだと言ったら非常に不明確だったので断ったというんですよね。だから、
アメリカと軍事演習をやっているんだけれども、
タイ湾に
アメリカが事前集積の船を置かせてくれと言ってくると、問い合わせて答えが不明確だと断るというようななかなか自主的な態度もとっているんですね。さっき言ったカトッポさんは、
インドネシアはジレンマに陥っている点もあるんだというふうに言っていました。
だから、
米軍の
プレゼンスについては当面はやっぱりやむを得ないだろう、ある
バランスのためにやむを得ないと皆さん見ている。長期的には減ってほしいんだという言い方をしています。
マレーシアのマハティール
首相は、
日本でのある会の講演で、外国軍事基地は全部撤去すべきだという話もしましたし、
インドネシアのアラタス外相もある会合で、外国軍事基地は反対だということを述べているんです。
楽観的に見ながらも、今の
アジアにはさまざまな問題が起きるので、
バランスとしては
米軍がしばらくいてもいいと。けれど、長期的には減ってもらいたい。しかし、
最後までやっぱりいるだろうとか、なかなか
米軍プレゼンス問題については矛盾した
評価がありまして、これがさつき言った
日米安保共同宣言についての
評価の微妙な感じとも結びついているんだろうと思うんです。
私は、今度行って、非常にまとまった
お話をしてくださって強い
印象を受けたのは、
マレーシアのリヨンさんという
日本研究センター所長の
お話で、リヨンさんは食事のときにかなりまとまった話をしてくださいまして、ここにほとんど全文ありますけれども、非常に
印象的でした。
リヨンさんは、とにかくソ連崩壊後の
情勢の中で、今までは軍事的な
バランス・オブ・パワーが
役割を果たしていたけれども、今後はそういう軍事的な
バランスパワーに基づかない、
軍事力に基づかない平和へのアプローチを
ASEANとしてしたいというんです。それで、
アメリカ、
中国、
日本、韓国のような
大国が核となるのではなくて、
ASEANが核となった
ARFにしたいとかね。だから、非常に自覚的、自主的に平和的なアプローチを進めていきたいという話をされていて、私は非常に
印象的でした。
私ども
日本共産党は、安保をなくして非核、非同盟の道を進もうと思っているので、そうなれば皆さん方も、そして
日本も非同盟
首脳会議に入れるんだという話もあちこちでしたんですけれども、やっぱり
アジアの行く
方向として非核、非同盟の
方向が非常に豊かなものがあるし、大きな流れとなっているんだということを五カ国を回って
印象を持ちました。
板垣さんとは反対の
印象でございますが。