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佐藤道夫君 私からは、当
委員会が今取り組んでいる行
財政の
改革、それから税制の
改革、これの原点ともいうべき問題、出発点となった問題と言ってもいいかもしれません、これを取り上げさせていただきたいと
思います。
一言で申し上げますれば、二百四十兆円という膨大な赤字国債を一体どのようにしていつごろまでに解決していくのか、償還していくのか、こういう問題であります。そのうち何とかなるだろうと、植木等の無責任男みたいなことを言っていても物は始まらないわけですから、具体的に一体いつごろまでにこういう方法で解消できるんだということをそろそろ示すべき時期ではないか。もう二十一
世紀がそばまで来ておるわけですから、こういう問題をきちっとさせた上で新しい
時代を迎える、そういう気持ちになっていきたい、こう思っておるわけであります。
日本の赤字はこのほかにもたくさんありまして、先ほど問題になりましたが、国鉄の関係でも二十数兆円、それから
地方債では百兆円、その他あれやこれやでもう五百兆を超えているというふうにも言われております。全部を取り上げますと焦点がぼけてしまいますので、この二百四十兆円の赤字国債に絞ってお伺いしていきたい、こう思っております。
二百四十兆円というのはどんなに膨大な数字かといいますと、今首都機能の移転が問題になっております。首都機能を移転するのにどれだけの金がかかるか。国土庁が試算いたしましたら十四兆円だと。私、これはうそではないかと一瞬思ったんですけれども、いずれにしましても、十四兆円で新しい首都機能を持つ町がつくれるんだそうです。そういたしますと、その二十倍の借金というのは一体どれほど膨大なものか見当もつかないということが正直な話であります。
今私の手元に、昭和五十五年八月、大蔵省発行の「
財政再建を考える」という簡単なパンフレットがございます。昭和五十五年というと大平内閣から鈴木内閣にかわったころだと
思います。これが実に的確にこの問題を
指摘しておりまして、いろんな問題とその対策を打ち出しておるんですけれども、その実態は十数年たっても全然変わっていない、むしろ
財政状態が悪化したという結果だけが残っておる。
今そのさわりの部分だけをちょっと紹介させていただきます。もちろん、このパンフレットは
政府の資料でありまするから、
皆さん方もお読みいただいておるということを前提にしての話であります。
まず第一ページに「国債という名の借金が積もり積もって約七十一兆円。」と書いてございます。それから十数年たちまして、現在は三・五倍の二百四十一兆円となっております。
国民一人当たりは、この当時は六十万円、現在は二百五十万円になっておるようであります。
それから、「自慢になりません。
世界一の国債発行額。」、要するに
世界一だということを半ば自慢しておるわけであります。この当時は二十一兆円を発行しておりましたが、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、この四カ国を足した発行額をはるかにオーバーしておったわけです。現在もこの状態はほとんど変わっておりません。
それから、これはいささか問題だなと思うわけでありますけれども、「このまま国債の大量発行を続けると、インフレという高い代償を支払うことにも」なりかねませんよと。インフレという
言葉がここではっきりこうして使われております。
実は、先日さる
経済学者と
議論をしておりまして、この二百四十兆円はどういうふうにしたら解消できるんだろうかなと
質問いたしましたら、彼は暗い顔をして腕組みをして、なるようにしかならないようでございますよ、ただ
財政当局にはインフレ待望論があるようにも聞いておりますがと。まさかそんな悪らつなことを今日考えておる
財政当局があろうとは思えませんけれども、いずれにしろ、貨幣
価値を物すごく切り下げてしまいまして猛烈なインフレを招来すれば、こんな二百四十兆なんというのはあっという間に返還できるわけですから、そういう魅力に取りつかれないとも限りません。警戒を要することです。いずれにしろ、十数年前にインフレという文字が使われておることも記憶していいんじゃないかと、こういう気がいたします。
それから、「国債の大量発行は、子孫に大きなツケを残します。」、これはもう当たり前のことで、みんな承知の上で営々と借金を積み上げてきたわけであります。
これもある
政治学者と
議論をしておりましたら、彼がいわく、しかし我々は借金をして大変な財産をつくり上げたんだ、橋、空港、それから新幹線、建物、特別養護老人ホーム、幾つもつくった、そういうことになっておるんだと。それを子孫に引き継いで、子孫はそれを使いながら借金を払ってもらう、そんなに悪いことではないだろうというふうにその
政治学者は申しておりました。
子孫というのは、我々の子や孫から見ますれば、彼らが使うころにはこういう建物もかなり老朽化しておって、補修費に相当金がかかるでしょう。そういう金のかかる財産を押しつけられて、しかも借金は丸ごと払えと言われたのでは、子孫の立場から見ますると、何と無責任な先祖であったのか、先祖の墓なんか壊してしまえというふうにも言いかねないような気もいたすわけであります。
それから、高齢化
社会に備えて
財政再建を急げと。これはもう言うまでもないことですが、十数年来こういうことが叫ばれておる。
次に、赤字国債を解消するためには
財政再建しかない、これには三つの道があると。
一つは公共サービスの引き下げ。要するに、
行政改革もこの中に入るんだろうと
思います。それが第一。第二は負担の増加、これは増税であります。第三の道として、この二つを兼ね備えた道があると。今回
消費税を三%から五%に引き上げること、それから
行政改革を行うこと、少なくともこれだけはこのパンフレットに従った対応策が打ち出されたようであります。
それから、税の自然増収を当てにしてはいけないということも言っておるようであります。これはよく言われることですけれども、借金をして、それで公共投資をして景気を刺激すると税収がふえて、それで払えるだろうと。これはもう十何年来言われていることで、全然効果はあらわれていない。もう考えを直す時期であろうと
思います。
最後に、「支出をへらす再建策」といたしまして、十数年前の話ですが、これまでも「実行してきました。これからも実行します。」、これは支出の節減合理化をやらねばならないということを言っておるわけでありまして、
公務員の数の削減、それから
行政改革の計画的な推進、補助金についてもこれから四年間で四分の一割愛しますということをはっきり言っておるんですが、結果は
皆さん方御承知のとおりであります。
十数年前に実は
行政改革として
佐藤内閣が一省一局削減というのを打ち出しました。御記憶のある方、
皆さんそうだと
思いますけれども、あれは
佐藤さんのすぐれた
政治力をもってして断固不退転の
決意でやり抜くということでやり遂げたわけであります、一省一局削減を。
何をやったか。
国民の立場から見ますると、例えば十の局のある省は
一つの局を削減すれば費用と人員丸ごと十分の一削減される、スリムになる、スマートになる、浮いた金は借金の返済に充てることができる、こういう発想でやったのだろうと
思いますけれども、現実にやったところは何をやったかといいますと、
一つの局の名前を部にした。
局長はいなくなりましたが
部長が誕生した、こういうやり方が
一つ。
もう
一つは、A局とB局を足してAB局にした。名前を変えただけ。防衛庁の場合で恐縮ですが、人事局と
教育局を合わせて人事
教育局にして、これまた
局長が一人減った。しかし、これだけの犠牲を払ったのだから何か見返りを出せということで
部長と
局長の中間にいる官
房審議官をそれぞれ獲得しておる。それで、十数年たちましたらもとに戻っておった。何のことはない、名前は多少変わっておりますけれども、残ったのは官
房審議官だけ。
要するに、機構いじりというのは大体こういうことになるんですね。今回の
行政改革の目玉として省の数を半分ぐらいに減らしたい、こういうことも言われておるようですけれども、これを打ち出しますと、例えば建設省と通産省を合体させて通産建設省というふうな名前でやったやったと、こういうことになりかねないんですが、また十数年たってみますると、やっぱり建物も違いますしやっていることも違うからこれが一緒になっているのは何かと不便だ、別れようということでまたもとに戻っちゃう。
行政改革をやるからには、一番大事なことはこれでもって一体いかほどの冗費をつくることができるかということだろうと
思います。年間五兆なら五兆、人数も相当削減する。それから、すっぱりとこの部分は切り捨ててしまう。それによって五兆なら五兆冗費を生み出してそれを国債の支払いに充てる。こういう
時代が来ておるんだろうと
思います。
財政再建法が提案されるらしくてまことに結構なことではあろうかと
思いますけれども、抽象的な訓示規定などを羅列してはほとんど
意味がないと
思います。この法律の上で、これから五年なら五年、十年なら十年かかって赤字国債依存の体質はやめる、それから二十年なら二十年かかって赤字国債はすべて解消する、償還する、それぐらいのことを法律に打ち込むべき時期ではないか、こういうふうに私は考えております。
恐れ入りますけれども、どうか私の今のことについて
総理の御
所見を承れればと
思います。