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中川(秀)
委員 広島県第四区選出の
中川秀直であります。
新制度で行われた総
選挙後初の
予算委員会で、与党第一党、自由民主党を代表して
質問に立たせていただくことは、私にとりましても大変な名誉でありまして、
同僚議員の
皆さんに感謝を申し上げたいと存じます。
総理、昨日は、
沖縄訪問、
東アジア社会保障会議、
大変御苦労さまでございました。
現下の諸問題について私なりの考えを申し上げ、
質問の方は端的に
お尋ねを申し上げたいと存じますので、要点だけで結構でございますから、
総理初め
関係大臣によろしくお願いを申し上げたいと存じます。
きょうはテレビでもこの
質疑が中継をされておりますので、私は実は、
我が国が今直面している大変な
財政危機、
先進国でも一番悪い
状態になってしまったということ、これは私
ども立法府にも大きな責任がございます。こういうことが言われてまた随分時間もたつのでございますが、
国民の
皆さんにとってこの
財政危機が
国民生活にどういう影響があるかということについては、
十分御存じない方も随分いらっしゃると私は思います。
そこで
ボードを使って、この際、
お尋ねする前に簡単に御
説明を申し上げたいと思っております。
総理初め
委員の
皆様方にはお
手元に
資料をお配りしておりますので、ごらんをいただきながらお聞き取りを願いたいと存じます。
まず、
我が国の
長期債務でございますけれども、国の
長期債務の方はついに三百二十兆円、
地方の
債務残高は百二十六兆円。これ、ダブルカウントしたものを引きましても、ついに四百四十二兆円という、一年間の
国内総
生産GDPの約八九%というところまでやってまいりました。
国民一人
当たりに直しますと約三百五十二万円、
夫婦子供二人の
家庭ですと、実に千四百八万円という
数字になっているわけであります。
今、全世界の
開発途上国の
累積債務、これも大きな問題になりつつございますがこれが百八十兆円でございますから、
我が国の国、
地方の
債務というもの、
借金というものがその実に二・五倍に達しているということになっているわけでございます。
続きまして、これ以外にも処理をしなければならないという
借金が、政管健保の
棚上げ債務あるいは旧国鉄の
長期債務、合わせまして四十三兆円ございます。前と合わせますと四百八十兆という、そういう
数字になってくるわけでございます。
実は、この
利息がどのくらいかかっているかということでございますが、これは国の方の三百二十兆に対する
利息でございますが、一日
当たり三百二十億円、一時間
当たりでは十三億円、一分
当たり二千二百万円という
利息になっております。本日、私は二時間の予定で
お尋ねを申し上げるわけですが、その二時間のうちにも
金利だけで二十六億円という、そういった国費が必要になってくるわけでございます。
さて、そういう中で、ややこれは小さい字で申しわけないのですが、
高齢化が
ピークに達する二〇二五年の
我が国の
経済、
財政の展望、
経企庁、
通産省あるいは
アメリカの
議会予算局CBO、こういうものが分析をしたものを比較をいたしましても、これは大変なことになっております。
高齢化が
ピークに達する二〇二五年の
我が国の
債務、このまままいりますと、
経企庁の
推計でそのときの
国内総
生産の一五三%、
通産省の
推計で一七五・二%。また、その年の単年度の
財政赤字は、一年間の
国内総
生産GDPの一四・七%というのが
経企庁の
推計で出ておるわけであります。
そうなりますと、実は、
経常収支、
日本の
国際収支でございますが、そのころにはやはりこれとあわせて
赤字化をする。そして、今は
債権国でございますが純
債務国に転落をして、
国民が汗を流した果実である
国内総
生産の多くが海外への利払いで流出するようになる。その
経常収支の
赤字幅が、
経企庁の
推計で一四・三%、
通産省の
推計で四・七%という
数字になります。実は、このまま放置すると、二〇二五年、本当に
高齢化が
ピークに達する
我が国で、
双子の
赤字という
状態になるわけであります。
双子の
赤字と言われた八〇年代の
アメリカで、
経常収支が最も悪化した一九八七年に
経常収支は
マイナス三・五%でございました。
財政収支は
マイナス三・一%であったわけでございます。それが、実はこの
ボードでおわかりのとおり、
日本は七%から一四%の
財政赤字、そして
経常収支は五%から一五%ぐらいの
赤字になるわけですから、あの
危機と言われた
アメリカの
双子の
赤字よりもはるかに倍する、あるいは三倍する、そういった
事態を迎えてしまうわけでございます。
高齢化に伴います
貯蓄率の
低下もございます。したがいまして、そのころには、
双子の
赤字のもとで
金利も高騰する、
国内の投資も減退をする。
長期金利は、
経企庁の
推計では二〇一一年から二五年の
平均で七%。そうなりますと、
経済成長は大幅に鈍化をして、
国民の
生活レベルが
低下をする。一人
当たりの
実質所得は減少に転じまして、さらに
勤労者一人
当たりの
手取り所得伸び率も完全に
マイナスになる。
通産省の
推計では
マイナス〇・三%ということですが、これは少しどころか大いに甘い
推計だと思います。
なぜかと申しますと、これは
アメリカの
議会予算局が
アメリカ自身について
推計したもの、多少関連がございますから申し上げるわけでございますが
アメリカ自身は、
ベビーブーマー世代が退職をし始めます二〇一〇年ごろから、
高齢化の進展によって
財政赤字はまた大幅にふえていくだろう。そうなりますと、二〇三〇年には
財政赤字が
GDPの三七%に達する、そして長年当然と考えていた
生活水準の向上が
低下に転ずる、そして著しい
金利の高騰、さらには
景気後退、
株式市場の崩壊を引き起こし、
国民は大恐慌におびえ、消費の
切り詰めに走るといった
事態も生じ得る、かように書いております。
そのときの
アメリカの二〇二五年の
長期債務の対
GDP比が一七四%。先ほど、
通産省の
推計でも、
日本の場合も一七五%近くになると言いましたが、この
アメリカの
議会予算局が言っているとおりの
事態が
日本にも起こってくるわけでございます。
しかも、
高齢化の
ピークは、実はこの下の段にございますけれども、これは
アメリカ議会予算局の表現でございますが、なお
高齢化については、
米国は
先進諸国よりは恵まれた
状況にある、
日本においては二〇〇五年から
米国以上に厳しい
財政赤字の拡大が見込まれる、こう言っておるわけであります。
つまり、
高齢化の
ピークは、
アメリカが、六十五歳以上の
人口の
比率が
生産人口の二十−六十四歳
人口の中で三五・七%になるというのが二〇三〇年であるわけでありますが、しかし
日本の場合は、それが二〇一〇年になる。つまり、二十年も早く来るわけでございます、
事態は
アメリカを上回ってはるかに深刻、こういうことに相なるわけでございます。
さて、そういう中で、これはいわゆる
国民負担率その他でございますが、実は最近、
国民負担率については、
税金、
社会保険料負担、これを
国民負担率と言っておりましたが、その国が持つ
財政赤字も足して、潜在的な
国民負担率、こういう統計をとるようになってまいりました。
その
国民所得に対する
比率が現在は三十数%と言われておりますけれども、これが
日本の場合、二〇〇〇年には
経企庁推計でも
通産省推計でも四割前後になる、二〇一〇年には四五、六%前後になる、二〇二五年にはこのように五一・五%から五六・四%になる。さらに、それに
財政赤字を足した
潜在的国民負担率は実に七三・四%、
通産省推計でも六五・九%と、まさにもう働いても六割、七割は
国民がそういった
税金やあるいは
社会保険料や
財政赤字の穴埋めのために支払っていかなければならない、こういうことになってしまうわけでございます。
これからこういうことを避けるためのいろいろなことを申し上げますが、最後にもう一点だけ申し上げたいと思いますのは、実はこれはある種の思い切った
推計であるわけでございますけれども、ちょっとこれ、
選挙のときの
ボードを使ったもので変なものがついていて、野党の方には御不満でしょうが、慌てたものですから。こっちへ向けたいところでございますが……。
これは
一般政府債務の対
GDPの
仮定計算であるわけでございます。お
手元には
資料があると思いますが、実は
一般歳出、国の
歳出をそのまま伸ばしてまいりますと、このように今申し上げたような
事態になっていってしまう。つまり、
財政赤字の結果、それを積み重ねていく
残高というものが
国内総
生産の二一八%といった
方向、さらには先ほど言ったように一五〇%、一七〇%といった
方向に二〇二五年、
高齢化の
ピークまで向かっていってしまうわけであります。これは
自然歳出の
伸び率を毎年三・八%といった場合であります。この
一般歳出の
伸び率を二・四%にしましても、実に
国内総
生産とほぼ同じぐらいになってしまう。さらには
一般歳出の
伸びをゼロにして、西暦二〇〇〇年ぐらいで一〇〇に近づいて、その後下がっていく。これが
平成十八年でございますから、そういうふうになってまいります。
一般歳出の
伸び率を
マイナス五%にして初めて六割を切る。
実は今、
欧州連合が、EUがユーロという
共通通貨を目指しておりますが、その
共通通貨の同盟に加入する
参加条件は、
一般政府債務いわゆる
長期借金のその
債務の
残高の
GDP比が六割以下、こういうことになっていることは御案内のとおりでございますが、
我が国がそれを達成していこうと思うと、
一般歳出を毎年五%ずつ削っていかなければならない、こういう厳しい
推計になっていくわけであります。
さて、ここで、このような
状況にある
我が国の
財政を例えば
家計に例えてみますと、まず今年度の、八年度の
予算、この税収及び
税外収入を合わせると五十四・一兆円でございますが、仮にこれを年収五百四十一万円の
家計である、こう考えます。大体
平均五・二カ月分をボーナスといたしますと、毎月の月収は約三十一万円ということになります。ボーナス時も通常の月と同率で田舎への仕送りや住宅ローンなどの返済を行うとすると、月々三十一万円の収入のうち、八万円は
地方交付税交付金に相当する田舎への仕送り、そして九万円は国債費に相当する住宅ローンなどの元利払いに充てるために消えてしまう。実際使えるお金は十四万円程度しか残らない。しかしながら、
一般歳出に相当する月々の生活費としては二十六万円が必要だということですから、三十一万円の月収では到底賄い切れず、不足分の十二万円もの金額が国債というクレジットカードによって支払いに充てられるという
状況でございます。
この結果、ただでさえ膨大なローンを抱えているのに、ローンの
残高がますます膨らんでいって、到底自分の時代だけでは払い切れないということで子供たちに膨大な
借金を残していく、そういうまさに火の車の
状況に
日本の国と
地方の
財政状況がなってしまったんだということになると思うのでございます。
さて、
総理、私どもは今回の総
選挙で
国民の
皆さんから大変大きな温かい支持をいただきました。しかし、それでも二百三十九議席、過半数いただいたわけではございません。その意味で、私どもは常に謙虚に
国民の声に耳を傾けながら、また民意を吸収して、その実現に努めていかなきゃいけない。特に最大課題の行革は、
国民の理解を得ることが不可欠であるし、また困難も多いだけに、超党派でこれを実現していかなきゃいけない、またそうしなければ実現できるものではない、このように考えます。
しかしながら、
総理は、最近の世論
調査の内閣支持率五十数%台、また上がって、内閣発足当時の水準に戻られた。それだけ
国民の多くは、行政改革を初めとする
総理の掲げる五つの改革について
総理のたぐいまれなリーダーシップの発揮を望んでいるわけでありまして、私ども自民党も、どんな努力をしても
日本のためにこの
総理の改革を支える。したがって、
総理御自身も、決断と責任でどんどんこれらについての政治的なメッセージというものを発せられるべきだと思います。
しかし、同時にまた、
国民に訴えていくことが非常に大事だ。暮らしを守るためにもこの改革をやらなければならないこと、それには痛みを伴うものであることも、そして、今やらなければ先ほど来御
説明をしたように大変な
事態を招いてしまうということを、決意を込めて訴えていくことが本当に大事だ、このように私は考えます。
実は、
総理の尊敬される
佐藤栄作首相、この
佐藤内閣のときに、まあ内遊という言葉が悪いということで
国内視察、その後一日内閣というふうに表現を変えられましたが、直接ブロックヘ出かけていって一日内閣をやるといったようなことも取り組まれたことがあるわけでございますが、このようなことも含めて、
国民の理解、協力を得るために全国数ブロックでそういうものも催されてみてはいかがか、このように考えますが、お考えはいかがでありましょうか。