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1996-12-02 第139回国会 衆議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年十二月二日(月曜日)     ―――――――――――――  議事日程 第二号   平成八年十二月二日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑     午後一時三分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――  国務大臣演説に対する質疑
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 国務大臣演説に対する質疑に入ります。西岡武夫君。     〔西岡武夫登壇
  4. 西岡武夫

    西岡武夫君 私は、新進党を代表して、橋本総理所信表明について質問いたします。  去る十月二十日に行われた第四十一回総選挙は、小選挙区比例代表並立制による初めての選挙でした。残念ながら我が党は第二党に終わりましたが、第一党となった自民党も過半数を待ちれず、少数単独政権として第二次橋本内閣がスタートしたのであります。  ところが、自民党は、単独政権をよいことに、国政を壟断し、国民の税金を公然と党利党略に使う方針をあらわにし始めたのであります。報道によれば、十一月二十五日の自民党役員会において、大型プロジェクトの予算は選挙の結果を考えて配分するべきだ、名古屋、大阪は自民党議員が少ない、こういうところの知事に予算をやることはないなどといった信じがたい議論が行われ、二十六日には、予算は自民党議員が多いところに重点的に配分すべきなどの方針を確認したと報じられております。さらに、二十七日には、橋本総理記者団に、加藤幹事長記者会見で、このことを容認する旨の発言をしているのです。  自分の党が敗北した都道府県や選挙区に対して政権政党制裁措置を予告する恫喝政治は、我が国議会政治を破壊するものであります。(拍手)そして、こうした恫喝は、今回の総選挙中も自治体や各種業界や団体に対して行われたことを指摘しておかなければなりません。  総理、あなたは、自民党の総裁としてまた内閣総理大臣として、公金を党利党略に使うことを見過ごすことなく、この言語道断な方針を全面撤回し、この議場から国民の皆様方に謝罪するよう強く要求いたします。(拍手)一政治と行政に対する国民の不信について質問いたします。  質問に先立ち、我が党に所属していた友部達夫参議院議員がオレンジ共済問題で強制捜査を受け、多くの方々に御迷惑をかけ、被害者を出していることはまことに遺憾であり、党として国民の皆様方に衷心よりおわびいたします。我が党は、これまで本人並びに関係者に対し調査を行い、国会議員として許されないこととの結論に達し、議員辞職を勧告したところであります。新進党は、ここに、改めて襟を正して国政に取り組む決意を表明するものであります。  今回の岡光前厚生事務次官を中心とした厚生省社会福祉法人贈収賄事件は、その実態が明らかになるにつれて、腐敗の根深さに唖然とする思いであります。これは、さきのエイズ問題とあわせて厚生省構造的腐敗の実態を示すものと言わざるを得ません。また、住専問題で明らかになった金融機関をめぐる大蔵省官僚の姿勢や、さらには巨額の脱税容疑で逮捕された泉井容疑者通産省幹部の癒着など、今や公務員に対する不信と国民の怒りは頂点に達しています。しかしながら、こうした数々の疑惑に対する橋本内閣の対応は極めて不十分であり、真剣さが感じられないのであります。  私は、ここで、厚生省の問題を中心に橋本総理の見解をただしてまいりたいと思います。  厚生省岡光事務次官がみずからの所管分野の業者と癒着し、多額の現金を受け取り、飲食、旅行などの接待、車の提供を受けるなど、国民全体の奉仕者たる公務員にあるまじき行為を平然と行い、しかも、その提供された金品が国民の税金である補助金で賄われていたことは驚くべきことであります。このほか、社会福祉法人代表者が主宰する私的な勉強会には厚生省職員二十数名が名を連ね、接待、ゴルフなどの利益供与を受けていたことが明らかになっております。昨年来の薬害エイズ問題をめぐる不祥事に続き、今回、政官業の癒着が厚生省全体に拡大しており、まさに厚生省ぐるみ構造汚職というべきであります。  橋本総理、あなたは、今日まで長年にわたり厚生関係議員のトップに立ってこられました。そして、ミドリ十字などの製薬会社を初め、各種厚生関係の業界、団体から多額の政治献金を受けておられ、その深いかかわりは世に知られているところであります。一方、小泉厚生大臣は、岡光前事務次官に対し、行政処分を行うことなく本人の辞表を受理するという決定をしております。小泉厚生大臣自身市中引き回しの上、打ち首、獄門という感じがあるのを承知していると語っておられますが、それならば、なぜ懲戒免職でなく辞表受理なのか、理解に苦しむところであります。橋本総理の御見解をお聞かせいただきたい。  橋本総理小泉厚生大臣は、岡光前事務次官利益供与を受けた小山氏の関連会社ジェイ・ダブリュー・エムの大株主が関係する日本病院寝具協会及び日本メディカル給食協会から政治献金を受けているとのことでありますが、そのことが岡光氏の処分を鈍らせたのではないかという見方もあります。  私は、福祉行政の周辺に政治連盟をつくり、そこから政治資金を得るという仕組みがあることを今回の事件で初めて知りました。我が国の最大の内政問題であり、今後の国民の税負担あり方の根幹にかかわる福祉の分野で、このような形で政治資金を集めることが異常なことだと橋本総理はお考えにならなかったのですか。そして、このことは、政治資金として適正に処理されているからいいと言える問題でしょうか。橋本総理の率直な見解をお聞かせいただきたい。(拍手)。  政府は、今国会に介護保険法案を提出しています。ところが、この法案の担当者であり直接の責任者である和田審議官は、今回の一連の不祥事と深くかかわっていることが明らかになっているのです。現時点で、厚生省が新たな国民負担を求める資格はなく、法案提出自体不見識であります。厚生省が試算した社会保障コストそのものも見直す必要があり、法案の前提となっているゴールドプランをこの機会に洗い直す必要があります。  一方、何よりも、厚生省に対する信頼回復に全力で取り組み、一連の不祥事徹底究明こそ先決であります。このことに関連して、先月二十七日に厚生省から綱紀粛正策が発表されましたが、公務員全体の倫理規定を定めた公務員倫理法を制定すべきだと考えます。総理の見解を伺います。  新進党は、今回の総選挙において、国民との五つの契約を提示いたしました。  我が国は今、表面上、一見豊かで平穏な状況が続くかに見えます。しかし、現実は、厳しい歴史的試練にさらされていると新進党は認識しております。国家社会全般にわたる改革を断行しなければ、衰退と没落の道をたどる危機的状況にあると私は考えます。構造的変化に対応し切れず、経済不振は長引き、何よりも将来の展望がないことこそが重大な問題であります。(拍手)  失業と生活不安、急速な高齢社会がもたらす老後への不安、子供たちの心と体を破壊する薬物汚染の激増、衰退する過疎地域、殺伐とした過密都市借金財政と硬直した行政、増大する政治不信、崩れ去った安全神話国際社会からも取り残されようとしているなど、日本は、出口のない閉塞状況の中で、危機に陥る直前の一時的静けさを保っているにすぎません。政治に今求められていをことは、我が国が置かれている歴史的状況を正じく認識し、危機に陥る前に真の改革を政治の責任において断行することであります。(拍手)  新進党は、この自覚に立って、さきの総選挙において、我が国仕組みを根本から改革し、日本を立て直すため、国民との五つの契約を提案したのであります。  契約の第一は、消費税は三%に据え置き、さらに所得税住民税の半減を中心とし、法人税減税等、来年度から十八兆円の大減税を実施することであります。  橋本総理お尋ねしますが、総理は、日本経済の現状をどのように認識しておられますか。  去る十一月二十七日に発表された日銀の企業短期経済観測においても、日本経済見通しは全く不透明です。国家社会仕組みを改革するためには、低成長にあえぐ我が国経済をまず安定した成長軌道に乗せ、国民の雇用や生活に不安なく改革を進めることが必要であります。  我が国経済潜在的成長力は三%台であるのに、本来の景気対策でない金融機関不良債権処理のための低金利政策や、公共事業に頼る従来型の政策により、過去数年間の実質成長率は一%台の低い伸びにとどまっております。景気を回復し、我が国経済実力相応の三%台の安定した成長軌道に乗せ、改革を進める基盤を整えなければなりません。そのためには、国民総生産の約六割を占める個人消費の喚起が不可欠であります。このことから、消費税据え置きはもちろんのこと、大胆な大減税を実施し、景気の回復を図る必要があるのであります。  契約の第二は、大胆な行政改革地方分権規制撤廃を断行し、国と地方の経費を二十兆円以上削減するというものであります。  中央集権、官主導の行政システムの根幹をなす許認可権限補助金の配分は、今回の社会福祉法人厚生省官僚との贈収賄事件に見られるように、国民の税金の膨大な浪費を生んでいるのであります。地方分権と地方自治体の再編、規制の撤廃による経済のダイナミックな展開と、新しい産業、雇用の創出、補助金の廃止による腐敗構造の根絶などの行政改革は、我が党の改革案の根幹をなすものであります。  第三は、公共料金を二割から五割引き下げることであります。  世界は大競争時代を迎え、国が企業を選ぶ時代から、企業が国を選ぶ時代に変わりつつあります。日本経済の高いコストは、強い規制と相まって、海外の企業は日本進出を避け、邦人企業は次々と海外に移動するなど、産業の空洞化現象を引き起こし、日本経済をむしばんでおります。我が国経済の高いコストの最大の原因は、国民の生活や企業活動の源となる公共料金が海外に比べ高いことにあり、これを国際的水準並みに引き下げなければなりません。また、これは官営事業の徹底した改革を促すことにもなるのであります。  第四は、年金、介護を保障し、老後の不安を解消することであります。  本格的な高齢社会の到来とともに、国民の間に年金財政に対する不安、介護に対する不安が広がっております。これまでの画一的な福祉行政を改めなければなりません。民間の活力を生かした介護制度を確立するとともに、公的年金を将来とも安定的に保障する体制を整えることが重要であります。そして、国民一人一人のライフサイクルに応じた福祉ニーズに対応し、自己実現を支援する選択肢のある公正な生きがい社会の実現を図ることであります。  なお、介護保険制度について、我が党は通常国会に独自の対案を提出する考えであります。  第五は、官僚依存を排し、政治家が責任を持つ政治を実現することであります。  国民から遊離し、信頼を失った政治を再生するためには、官僚依存、一利権追求型の政治と決別し、政治家が責任を持つ政治を実現しなければなりません。国会の審議は、官僚による答弁をやめ、議員の間の討論を通じて立法府としての意思を決定していく仕組みに改め、副大臣・政務次官制度を導入し、政治家が政府の政策決定に責任を持つ体制をつくらなければなりません。また、痛みを伴う改革に国民の皆様方の理解と協力を求めるためには、国会議員の定数を削減し、みずからが改革の先頭に立たなければなりません。  選挙の結果、国民の皆様方との契約は成立しませんでしたが、新進党は日本の再生をかけて公約の実現に邁進していく決意であることを改めて表明するものであります。(拍手)  総理、国政の最高責任者として、我が党の提案に対して、総理が総理自身の考えと言葉で、日本の置かれた状況をどう認識し、これを打開するため具体的に何をなされようとしているのかを、審議会の意見を聞くまでもなく、国民の前で明らかにすべきであります。お考えをお聞かせください。  次に、消費税について総理にお尋ねいたします。  政府は、消費税率引き上げる一方、特別減税は中止する方向と聞いております。そして、自民党は、景気対策として従来型の公共事業を中心とした補正予算の編成を求めております。個人の消費は抑えながら公共投資はふやすというまことに一貫性のない政府・与党のやり方は最悪の選択であり、これでは景気回復も財政の再建も不可能であります。総理、果たしてこのようなやり方で本当に景気の回復ができるのか、その根拠を明確に示していただきたい。  また、自民党は、消費税率について我が党の小沢党首の発言を故意にねじ曲げたり、細川連立政権時代のことをあげつらいながら、みずからは消費税の将来見通しについて今なお口を閉ざしているのです。自民党山崎政調会長によると、消費税五%を十年間継続するということでありますが、総理は、消費税率五%をいつまで続けるのか、将来の消費税率をどのように考えるのか、明らかにすべきであります。  新進党の公約の基本的考え方は、経済再建なくして財政再建はないというものであります。これに対して政府の方針は、増税による財政再建であります。すなわち、消費税率引き上げで約五兆円、特別減税打ち切りで約二兆円、国民年金健康保険料引き上げで約二兆円、合わせて約九兆円の国民負担増を図ろうとしていることが明らかになっているのであります。  行政改革なき消費税率引き上げはやらないというのが、自民党としても本来の国民との約束だったはずであります。今回の総選挙を通じて、自民党公認候補の多くが、消費税五%に反対の意思を演説や文書で明らかにして当選されております。選挙期間中、党首脳もそのことを黙認すると公式に発言しておられるではありませんか。公約の重みを考えれば、我が党が今国会に提出した消費税三%据え置き法案は、与野党ともに成立させなければいけないのです。  橋本総理、現にあなたの内閣の閣僚の中でお二人は、ここにその実物がございますが、コピーがございますが、ここにあるとおり、選挙公報でそのことを明記しておられるのです。この選挙公約の重さについて、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。増税による財政再建路線財政再建が果たしてできると考えておられるのか、明確にお答えいただきたいのであります。(拍手)  行政改革は、我が党の国民との契約の中でその根幹をなす改革であります。この問題については、あすの本会議において我が党の石田幸四郎議員が政府の姿勢をただすことにいたしております。したがって、私からは一点だけ総理にお尋ねいたします。  行政改革についてはこれまで既に議論が尽くされており、今さら一年もかけて論議するというのは結局問題の先送りでしかありません。総理が所信表明で述べられたように、身を燃焼させ尽くしてもやり抜く決意ならば、直ちに国会に関連法案を提出すべきではありませんか。この点について総理の明確な見解を求めるものであります。  次に、安全保障政策について総理の見解をただしたいと思います。  本年四月十七日の日米安保共同宣言に基づき、極東有事日米協力あり方を協議するため、日米防衛協力のための指針の見直し作業が行われており、九月に中間報告が行われました。中間報告を見る限り、国連及び国際世論の動向への考慮が全くなされておらず、日米有事協力を二国間だけの論議と位置づけております。  日米安保条約がアジアの安定に大きな役割を果たしていることは事実でありますが、日本周辺有事という不特定の有事に際しての日米間の防衛協力を完全に規定することは、日米安保を変質させ、かえって外交選択を固定化するおそれもあると言わざるを得ません。日本周辺有事であれ中東有事であれ、軍事行動国際世論の合意があるのかどうかの視点こそ、冷戦後ますます重要と考えます。  さらに、この防衛協力指針見直しは、単に政府間の合意だけで済まされる問題ではありません。当然、条約として批准し、国民的合意を得る必要があると考えます。あわせて、見直しに当たっての総理の基本方針を伺いたいと思います。  憲法で許される自衛権の行使のあり方については、これまでさまざまな議論がありました。我が国として海外での武力行使は行うべきでないことは明らかであります。我が国の有事や周辺有事の際の日米協力国連部隊等への参加のあり方などについて、安全保障基本法を制定してその原則を明らかにするとともに、有事に際して超法規的な行動をとることのないよう有事法制の整備を進めるべきと考えますが、総理の所見を明らかにしていただきたいと考えます。(拍手)  最後に、沖縄基地問題について伺います。  本日の日米協議で沖縄基地問題の最終報告が行われましたが、焦点の普天間基地代替海上ヘリポートについては明記されておりません。この海上ヘリポートは、総理の肝入りでこれまで日米交渉が進められてきました。しかし、沖縄の県議会を初め県内のすべての市町村が県内移設に反対しており、地元沖縄の理解を得ることは極めて難しい状況にあります。もし地元の理解がないまま日米両国政府がこれを強行するならば、沖縄基地問題は完全に暗礁に乗り上げることは明白であります。  技術的にも未知数な海上ヘリポートを数千億円という巨額の経費をかけ建設する意味が果たしてどれだけあるのか、そもそも普天間の返還期限である七年後以降いつまで沖縄に海兵隊が存在し続けなければならないのか、その理由は何か等々、国民に納得いく説明がなされたとは到底考えられません。  米国内では、最近、沖縄海兵隊撤退の議論が高まってきており、米国は明年、海外兵力構成見直しか行われる予定になっていると聞いております。私は、これまでの交渉の経緯にとらわれることなく、国際情勢を十分勘案しつつ、いま一度沖縄基地問題の原点に立ち返り、海兵隊存在あり方について再検討すべきだと考えます。政府内には一カ月以内に結論を出すべきなどの主張もありますが、少なくとも総理は、地元の同意なしに海上ヘリポート建設を決定しないことをこの際明言すべきであります。総理の明快な答弁を求めるものであります。  橋本総理、総理は最近発刊された「担税同盟」という本を御存じだと思います。担税とは、税金を拒否するという意味であります。私たちが今、与党だとか野党だとかの立場を超えて、政治の責任において本物の行政改革地方分権を実現させ、規制撤廃によるコストの高い社会からの脱皮を図らなければ取り返しのつかないことになることを恐れます。日本は国際社会で孤立し、内にあっては担税同盟に象徴される、よい国家をつくるために国家を壊すという運動が起こらないという保証はどこにもないのです。担税同盟がインターネットを戦場として戦う図式は、決して荒唐無稽な出来事でないことを橋本総理も想像されることでしょう。  私は、この二十年間、平時の革命の必要を訴え、あるときは行動し、しかし、なおみずからの非力を恥じ続けてまいりました。橋本総理にも、この私の危機感は必ず理解していただけると信じます。  昭和三十八年、橋本龍太郎総理と前自民党総裁小渕恵三君とともに、私は二十代で衆議院議員に初当選いたしました。当時二十代だった私たちも、三十年を超す政界における年輪を経、率直に申して残された時間はわずかであります。その中で、総理大臣となった橋本龍太郎が、二十六歳で衆議院議員に当選したときの初心に返り、今おのれを捨て平時の革命を決断されることを、野党第一党の幹事長の立場を超えて心から期待し、私の代表質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
  5. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 西岡議員にお答えを申し上げます。  まず、選挙結果と地域予算かかわりについてのお尋ねがございました。  私は、予算自由民主党議員が多いところに重点的に配分すべきだということを容認するような発言は、記者会見でも記者団に対してもいたしたことはありません。まず、この点を申し上げておきたいと思います。  国の予算の配分あるいは執行、それはその政策目的などに照らして厳正かつ公正に行われるべきことは当然であります。たまたま議員が例示に挙げられました地域を例にとりましても、例えば愛知万博などにつきまして、私自身が、国際博覧会事務局調査団が先日訪日をいたしました際に、この愛知万博の持つ意義というもの、その実現必要性というものに対して、国際博覧会事務局に対して説明をいたすぐらい真剣に会談をいたしました。こうしたことをお考えいただきましても、私どもがそのように考えておらないということは御理解をいただきたいと思います。  次に、岡光厚生事務次官辞職についてのお尋ねがございました。  去る十一月十八日の朝刊で報道されました疑惑について、岡光事務次官がその事実を否定する中において、懲戒処分を行うには事実関係の確認に相当な時間を要するということから、厚生省において山積する課題に取り組む体制を整えるために、翌十九日の未明、小泉厚生大臣辞職の承認を政治的に決断されたと承知しています。私としても、限られた時間の中で新しい体制をつくり、厚生行政の立て直しを図るために、緊急的にとられた措置としてやむを得ないものであったと受けとめております。  また、私の政治資金についても触れられましたので、事実関係を申し上げます。  報道されている九〇年から九二年までをまず調べさせました。日本病院寝具政治連盟から四百万円、日本メディカル給食政治連盟から百万円の寄附を受けております。なお、念のために九三年以降これまでの間を調べさせましたところ、日本病院寝具政治連盟からは九三年に百万円、日本メディカル給食政治連盟から同年やはり百万円の寄附を受けており、それぞれ政治資金規正法上の措置を適切にとってまいりました。  なお、福祉分野政治連盟が結成をされて政治資金を集めることは異常だという御指摘につきましては、政治資金制度全体にもかかわり、また、かつ多くの議員にかかわることでもありますので、各党各会派でよく御議論をいただきたいと思います。そして私は、政治連盟というものの機能を一概に否定する、そのようには思いません。  次に、公務員倫理規定について御意見がございました。  公務員の服務につきましては、既に公務員法制規定されており、これらの規定公務員がきちんと従っておる限りにおいて、このような事態は発生をいたしませんでした。既に決められておりますこれらの規定あるいは従来の決定事項を一人一人に遵守させることが何よりも大切なことだと思います。このため、現在、本当、に実行される綱紀粛正の方策について政府部内で鋭意検討を行っており、早急に結論を得て綱紀粛正の徹底を図りたい、そのように考えております。御指摘のような新たな倫理規定が必要か否かは、まず現在ある倫理規定公務員が遵守するというところから始まるべきもので、それを踏まえて考えてまいりたいと思います。  次に、日本経済現状というお尋ねがございました。  最近の動向を見ますと、設備投資回復基調にあります。また、住宅建設は大変高い水準で推移しておりますし、個人消費も緩やかながら回復傾向にあります。また、純輸出の減少テンポは鈍化しております。こうした需要動向を背景として生産は緩やかに増加しています。こうした。緩やかではありますが、景気回復テンポをたどっているわけであり、民間需要は堅調さを増しています。ただし雇用情勢は、改善しつつはあるものの、なお厳しい状況が続いております。先般発表されました日銀短観の設備投資あるいは企業業況判断を見ましても、景気が緩やかな回復傾向にあることを裏づけていると私は思います。  しかし、だからといって楽観ができる情勢か、それならそうではございません。まず、我々は高齢社会というものの到来を踏まえて今後の運営を考えなければなりません。さらに、企業が国を選ぶ時代議員も御指摘になりましたように、生産の海外拠点への移転というものが大きな問題になり、結果として技術集積の高い地域における中小あるいは零細企業を含めましての技術集積を将来に向けていかに保っていくかという課題がございます。こうした状況考えますとき、我々は一歩も経済運営についての手を緩められる状況ではない、その認識は議員と変わりません。  次に、新進党五つ契約についてお尋ねがございました。新進党のお考えは一つの御見識と思います。  しかし、私は、所信表明演説でも申し上げましたように、我が国が世界一の急速な高齢化と、そして大きな変貌の中においてさまざまな課題に直面している、そうした中で(政治行政経済社会、こうしたそれぞれの分野における「変革と創造」を何としてもやり遂げなければならないと考えております。そして、その中で、先般も申し上げましたように、行政改革経済構造改革、金融システム改革社会保障構造改革、そして財政構造改革というものを、この内閣沖縄問題七並ぶ最重要課題と位置づけてきました。  確かに、議員から御指摘もございましたように、官業のリストラ、これは、民間企業が懸命に経営努力を行っている中において、公共料金についても競争的な環境を整備することによって事業の効率化を促すことが非常に重要なことであることは御指摘のとおりであり、既に電力等はそうした方向に動いておりますが、なお努力をしてまいります。  また、介護保険につきましては、社会保障構造改革の第一歩として介護保険制度の確立を殴ってまいりたい。そして、社会保障全般については、二十一世紀における医療、年金福祉等を通じて、給付と負担のバランスがとれ、かつ経済活動と両立し得るサービスの選択、民間の活力を発揮していただくといった考え方に立ち、効率的で安定した社会保障制度の確立を図ってまいりたいと考えております。  その際、政治家責任を持つ政治を目指すべきではないかという御指摘については、先ほど申し上げましたように、我が国の大きな転換期に当たってこの五つ改革政治責任においてなし遂げていこうと覚悟を決めております。  次に、税制改革補正予算、そして景気回復関係についてのお尋ねがございました。  私ども政府としては、民需中心の自律的な経済回復への移行を図る、これが基本的な立場であり、今、緩やかではありますけれども、その方向に沿って動いていると思っております。こうした中で、政府としては、財政危機的な状況にかんがみ、来年度を財政構造改革の元年とし、同時に、中長期的な経済発展の基盤を構築するために経済構造改革に積極的に取り組んでまいります。これらにより、安易に財政に頼らず、民間活方を生かしながら、民需中心景気回復を図り、これを中長期的な安定成長につなげていきたいと考えており、新進党がお考えのような大規模な大減税に頼るという考え方はとっておりません。  また、八年度補正予算の内容につきましては、追加や変更の必要な要因など諸般の情勢を把握した上で検討してまいりたいと考えております。  また、特別減税の取り扱いについては、景気動向財政事情を勘案し、税制調査会などの議論を経た上で、年末に向けて最終的に決定すべき事柄であると考えております。  そして、選挙中私自身が訴えてまいりましたように、消費税率五%への引き上げは法律に定められたとおり実施してまいりたいと考えております。そのうちの一部が地方の財源に回ることも議員御承知のとおりであり、我々としてはこれを変更する意思はございません。  将来的な消費税率についてのお尋ねもございました。しかし、この問題は、今後の財政需要の動向、税制全体としての負担のあり方などを踏まえて、国民的な議論によって検討していくべき課題だと思います。したがって、予断をもって将来の税率を申し上げることが適切な対応だとは考えておりません。  そして、税制につきましては国民理解と信頼が必要なものであります。選挙中の閣僚の発言についてもお触れがありましたが、国会での論議あるいは行政改革の実行などを通じて、そうした税に対する国民理解、信頼を高めていくことが重要だという趣旨と私は理解しており、いずれにいたしましても、橋本内閣は税制改革を法律どおり確実に実施してまいります。(拍手)  そして、既に議員よく御承知のように、所得税減税が先行しておりますことも申し添えておきたいと思います。  また、財政再建についてのお尋ねがございました。  我が国財政危機的状況にあり、財政構造改革に取り組むことが喫緊の課題となっていることは御承知のとおりであります。そのため、九年度予算の編成に当たりましては、各般の制度改革実現に努力をするとともに、財政構造改革元年にふさわしい公債減額を実現して、中長期的な財政健全化に向けた目標の第一歩、そのように位置づけていきたいと考えております。  行政改革についてのお尋ねがございました。  この中核になります中央省庁の再編は、行政機構の単なる再配分ではございません。二十一世紀における国家機能のあり方を踏まえた成案を行政改革会議において一年以内に得、その結論に基づいて、平成十年の通常国会に所要の法案を提出する所存であり、同時に、国が担うべき機能に大きく関連する規制の緩和・撤廃等あるいは地方分権などを初めとして各般の改革課題について大きく前進させ、同時に、それを中央省庁の再編にも連動させていくために全力を傾けてまいります。  また、日米防衛協力のための指針についてお尋ねがございました。  政府としては、防衛大綱及び日米安全保障共同宣言を踏まえ、これまでに進めてきた日米間の防衛協力を基礎として、新しい時代におけるより効果的な防衛協力関係を構築するために、日米による指針見直しの作業を来年秋をもって終了するように積極的に進めております。当然ながら、この論議の過程を透明化していき、周辺諸国の不安を取り除く努力をしていかなければなりません。  その指針の対応につきましては、具体的内容を含めてまさに今後の検討を待つ必要があり、現時点で、議員がお述べになりましたような、条約として批准をすべきであるといったようなこどまで具体的に申し上げられる状況ではございません。  次に、安全保障基本法を制定すべきという御議論がありました。  従来から、本院におきましても、各種の御議論がこの点において交わされてきたことを承知いたしております。そして、国会の御審議を初めとする各方面の御議論というものを踏まえながら、その可否について検討してまいりたいと思います。  また、有事法制を整備すべきではないかという御意見をいただきましたが、自衛隊の行動に関する有事法制の法制化という問題については、高度の政治判断を必要とする問題でありますし、国会における御審議、また国民世論の動向等を踏まえて対応すべきものであると考えております。  また、沖縄海兵隊の問題についてお触れになりました。  政府としては、依然として不安定要因を残している国際社会の中で、米軍が日米安全保障条約の中におきまして駐留することは、その目的達成のために必要なことであり、不可欠なものだと考えております。沖縄に駐留する海兵隊につきましても、その有する高い機動力、即応力というものを通じ、在日米軍の重要な一翼を担っていると考えておりまして、現時点において海兵隊の削減や撤去を求めることは考えておりません。他方、政府は、日米安保体制の信頼性を向上するためにも、四月に発出いたしましたいわゆる共同宣言において確認いたしましたように、国際情勢の変化に対応して、在日米軍の兵力構成を含む軍事体制につき、引き続き緊密に米国と協議していく考えであります。  最後に、普天間海上ヘリポートの移設の問題についてお触れになりました。  私は、沖縄県の抱える問題、その中で象徴的なものがこの普天間基地であり、住民の安心を取り戻していきますためにも、普天間基地を、何とかこれを廃止の方向に持っていかなければならない、そのための方策にどのようなものがあるかを悩み抜いてまいりました。そしてその中から、海上への移設、しかも移動、撤去の可能な海上ヘリポートというものをここまで進めてまいりました。  普天間飛行場代替ヘリポートの移設先につきまして、現在日米間で協議中でありますけれども、当然のことながら、具体的な移設先を選定いたしますには、地元理解と鶴力がなくうまくいくはずはありません。私どもは、きょうSACOで出されました結論というものを踏まえながら、引き続き、技術的な可能性とともに、どうすれば沖縄県民の声にこたえられるか、地元との緊密な連絡をも含め、理解協力を得るための努力を、これからも全力を傾けてまいりたい、そのように考えており、ぜひ国会の御協力をもお願いを申し上げる次第であります。(拍手)     ―――――――――――――
  6. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 森喜朗君。     〔森喜朗君登壇
  7. 森喜朗

    ○森喜朗君 私は、自由民主党を代表して、橋本総理所信表明演説に対して質問を行います。  まず最初に申し上げたいことは、最近の行政府」における大蔵省、厚生省幹部などによる一連の不祥事件についてであります。  総理も、先日の所信の冒頭、最近行政に対する信頼を失墜させる事例が続いたことはざんきにたえない、綱紀の粛正を徹底するよう重ねて求めなければならない状況を本当に残念に思うと述べておられ、同時に政治責任も痛感しておりますとも申されておられます。  そこで、公務員の皆さんには、当然なことでありますが、改めて国民全体の奉仕者であることを十分に自覚し、一規律と襟を正してもらうために、この際、公務員倫理法を制定すべしという意見がございます。先ほどの西岡新進党幹事長の御質問に対しても総理からお答えがございましたけれども、我が党でもその検討を行っていきたい、このように考えております。総理はいかがお考えになられますか。  さらにまた、昨年起きたオウム真理教信者による地下鉄サリン事件において、有名大学を卒業し最高の学問を学んだ信者の幹部が、生命の尊厳性を考えようともせず、教祖の言いなりとなって残忍な事件を引き起こしたのでありますが、こうした事件を見ると、最高学府を出て国民の指導者たるべき者が、やってよいことか悪いことかの判断さえも持ち合わせていなかったという事実であります。  私は、こうした問題の本質は、ずばり言って、戦後の教育のあり方に問題があると言わざるを得ないと思います。受験戦争を勝ち抜いて、ペーパー試験だけで高い成績をとった者だはが出世するという官僚の世界に代表される社会、自由な個性と創造性が発揮しにくい閉塞状況にある社会、あるいは現在の日本は、個人としての権利の尊重が、時として自分さえよければいいという自分勝手な個人エゴとして存在する社会になってしまったような気がいたします。  戦後五十年、廃墟の中から人々は血のにじむような努力をして、日本の復興、再起を願ってきました。すべてとは言えないことでありますが、最近のこうした誤った社会現象を見るにつけ、こんな国家社会をつくることが国民の目標ではなかったことだと思います。総理は、我が国の教育が平等性、均質性を重視する余り、一人一人の個性と創造力を十分に伸ばしてこられなかったことは否定できない、これからは知識を教え込むだけではなく、伸び伸びと「生きる力」をはぐくむ教育を目指すとも申されているわけであります。  資源のない我が国の唯一最大の資源は、昔も今も人材であります。その人材をしっかりと育成するのが教育であります。これからは、他人を思いやる心、正義感、家族愛、郷土愛、地域愛、国を大切にする心、地球環境を大切にする心を持ったバランスのある健全な人格を身につけた人材の育成が大切だと思います。(拍手)また私は、日本のよき伝統文化を尊重し、改めて家庭の果たす役割を十分認識しながら、国際化時代に対応できる活。力ある人材を育成し、そうした中でも特に心の豊かさを追い求めていくことが重要なことだと考えております。  先般の総選挙でも、我が党は選挙公約の中で、創造性豊かな人づくりを居指した教育改革を最重要課題として位置づけました。総理御自身も本年一月の第百三十六国会における施政方針演説で、個性と創造力にあふれ、責任と思いやりを持ち、将来の夢を生き生きと語ることのできる子供たち日本の宝であると明言されました。そしてこのたびの所信表明演説においても、未来に大きな可能性を持つ子供たちが健やかに育つ環境をつくり上げることは我々大人の責務であると言及されました。  二十一世紀を担う子供たちに夢と希望のある明るい展望を切り開きたいという橋本総理の信条に接して、私自身も大変心を強くいたしておりますが、日本の宝である子供たちが光り輝くためには、教育に対する予算は未来の先行投資として位置づけるとともに、政府を挙げて教育環境の整備に取り組むべきだと思いますが、総理はいかがお考えでありましょうか。(拍手)  総理は、行政改革、財政改革等の当面五つの改革に強い意欲を示しておられます。総理のこの方針は大いに評価するものでありますが、改革をした行政を担当するのも新しい時代公務員です。「新しい革袋には新しい酒を」と言われますが、もう一つの重要な改革の柱である教育改革がさらに重要であることをこの際申し添えさせていただきます。  昭和五十九年の中曽根内閣当時、臨時教育審議会が設置され、私は当時文部大臣として教育改革に携わった経験があります。臨教審は四次にわたって答申を出し、この答申に基づいた教育改革が現在も進行中でありますが、六・三・三制の学制改革や、就学年齢や入学期の見直しあるいは幼保の一元化など、根本的なテーマについては手がつけられておりません。  戦後の教育制度は、五十年をライフサイクルとして子供たちを育てることに主眼が置かれてきました。しかし、現在の子供たちは、八十年はおろか百歳までも生きることが可能となっています。百年生きる子供たちに、人生五十年を基準とした教育制度が間尺に合うはずがないのは当然であります。このため思い切った教育改革にも着手すべきであると思いますが、総理の御所見を承りたいと思います。  日本は現在、明治維新、第二次世界大戦後の社会改革にも匹敵するようなうねりの中にあります。東西冷戦の終結、どの国も経験したことのない超高齢社会を迎える一方で、成長あるのみという前提でつくられてきた経済社会構造が明らかに制度疲労を起こし、行き詰まっています。二十一世紀にふぎわしい経済社会構造に再構築していくためにも、まず政府みずからで行政改革、霞が関改革に直ちに着手する必要があります。  その際重要なことは、将来を見据えて、将来日本はどうあるべきかという基本ビジョンをまずもってしっかりと固めることだと思います。その上で、まず、国家、行政の機能は何であり、民間との役割分担はどうあるべきかという点を問い直していくことであります。私は、来るべき二十一世紀における日本は、個人と家族、地域社会、国家及び国家と国際社会全体との間の個別利益と全体利益との調和を図りつつ、国際社会で重要な役割を積極的に果たしていくことができる活力があり、魅力のある国を目指すべきだと考えます。  今回の中央省庁の再編を中核とした霞が関改革のポイントは、役所本位の改革から、いかに国民本位の改革が実行できるかということです。  さらに、もう一つの行革のポイントは、地方分権の推進であります。地方分権必要性は、現在のように全国各地に銀座通りがあるということではなくて、それぞれの地方が個性を持った。地域の特性を生かした発展をするためにはどうしても必要なことなのであります。中央が何でもかんでも全国一律に画一的に指導するというやり方から、個々の地域がみずからの創意と工夫によって主体的に、いかに住民のために独自性を発揮した地域づくりを行うかということが大変重要になるわけです。  地方分権の推進は、国と地方の役割分担を明確。にすることにあります。しかし、一方では県の肥大化、権限が知事に集中することも予想されます。この沈め、同時に地方においても行政のスリム化を進めるべきで、市町村に権限を移すことも重要であります。こうした地方分権の確立が進めば、行政のスリム化と効率化のためには、地方や民間への権限、業務の移譲が必要となります。また、行政のスリム化と同時に、国民行政の透明化も求めております。  総理は、行政改革、霞が関改革、そして地方分権の推進は焦眉の急であるとして、第二次橋本内閣の最重要課題と位置づけられ、これに関する審議期間を発足一年に限定して成案を得ることを明言されました。自由民主党は、いかなる困難をも乗り越えて、これらが成就されるよう万全を期してまいります。「変革と創造」をキャッチフレーズとした総理のこれら改革についての決意と、具体的に取り扱っていかれる総務庁長官の決意のほどをお伺いいたしたいと思います。  次に、我が国経済は、バブル経済が崩壊する中、激しい円高、高コスト構造のもとでの産業や雇用の空洞化といった現象に見舞われています。先般の通産省の調査によれば、我が国製造業の雇用は今後五年間に百二十万人も減少するものと予測されております。人口高齢化の進展、また先進国の中でも最悪の状況となっている赤字財政の現状も放置できません。  日本の産業、経済を活性化させるためには、早急に既存の制度やシステムを抜本的に見直し経済についての規制を取り去る等、高コスト構造の是正を進め、新規事業創出のための支援、高度情報通信社会の建設など経済フロンティアの拡大といった経済構造改革に取り組んでいくことにより、初めて二十一世紀への展望が開けるものと考えます。また、日本版ビッグバンを目指した規制緩和と金融資本市場の整備は、国民の資産運用の場としても、企業、特に新規産業の資金調達の場としても、さらに国際金融センターとしても十分な機能を発揮できるように進める必要があります。  このため、今般、総理は大蔵大臣及び法務大臣に対し抜本的改革を指示されたと聞いておりますが、従来この種の改革では、役所間にあるセクト主義を取り払うことが必要とされます。つまり総理の強い指導力が求められていますが、総理の御決意と大蔵大臣の具体的な取り組みについて伺いたいと思います。  続いて、農林分野について質問をいたします。我が国農業・農村は、土地利用型農業の規模拡大のおくれ、担い手の減少、高齢化、農山村における過疎化の進行など、多くの問題を抱えております。このような情勢に対処するため、政府は平成四年六月に「新しい食料・農業・農村政策の方向」、いわゆる新政策を策定し、これに沿って各般にわたる施策を推進することとしたわけであります。その後のウルグアイ・ラウンド農業合意が行われ、WTO体制という新たな国際環境のもとで、この新政策をどのように位置づけ、どのような農政を展開しているのか、農林水産大臣にお伺いをいたします。  現在、地方公共団体や農業団体等から、現行農業基本法にかわる新しい基本法制定の要望があり、我が党としてもこうした声に対応していかなければならないと考えていますが、この新しい基本法の中において新政策をどのように位置づけようと考えているのか、あわせて伺いたいと思います。  次に、財政構造改革について伺います。  今や国の公債発行残高は約二百四十兆円にもなっており、これを一万円札の束で積み上げると実に富士山の約六百三十七倍になるそうであります。また、このほかに隠れ借金と呼ばれている特別会計の借金と県や市町村といった地方の借金を入れると、何と約四百四十二兆円にもなります。財政赤字に直面しているのは我が国だけではありませんが、欧米諸国においては二〇〇二年までに財政収支を均衡させることを目指す動きにあります。我が国も今こそ財政健全化に向けての取り組みを急がないと、我々の子供たちに負担を残し、子供たち時代の活力を奪い、発展を阻害することにもなりかねない状況にあります。  財政構造改革を進めるには、国民に痛みを分から合っていただかなければなりません。このため、政治のリーダーシップが必要となりますが、総理並びに大蔵大臣には、財政改革に向けてどのような目標を掲げていかれるのか、また、財政構造改革元年となる平成九年度の予算にいかに対応されるのか、お伺いしたいと存じます。  次に、総理のおっしゃられた。長生きをしてよかったと思える社会の建設でありますが、高齢社会が到来することは避け得ないことであっても、社会が全体として活力に満ちたものであり、お年寄りだれもが長生きしてよかったと思えるような社会をつくることは政治の重要な役割の一つでありますが、今日の社会構造はいまだに、人生五十年と言われたころとまでは言わないまでも、人生八十年時代に対応できるシステムとはなっていないのであります。  諸外国では、定年後のお年寄りと若い人たちがともにボランティア活動の中に生きがいを求める姿を見かけますが、残念ながら我が国にはこのような土壌はできていません。このたび、我が党は、社民党、さきがけとともに市民活動促進法案、いわゆるNPO法案の作成に当たってきましたが、その早期成立を図ることは必要でありますが、まずその土壌づくりを進める必要があります。  先日開かれました我が党総務会のときでありましたが、ある総務から、ドイツの国民基本法には徴兵制がある、もちろん忌避もできる、しかし徴兵制を忌避した場合、ある一定期間は社会奉仕を義務づけることとなっているという発言がございました。私は、もとより徴兵制度に言及するわけではありませんが、社会に出る若者が学校教育の中でボランティア活動を必ず体験することが必要だと思います。また、諸外国では、ボランティア活動の中でお年寄りの生き生きした姿があります。二十一世紀を支える大切な子供たちに、就学制度の中で、ある一定期間奉仕活動を体験して社会に出るような思い切ったことを行うことこそ重要だと考えますが、総理の所見はいかがでありましょうか。(拍手)  そこで、当面の最大の課題である介護問題については、介護保険制度の創設という対応が提示されていますが、この介護保険制度の創設とあわせて、二十一世紀に向けて、そしてまた少子・高齢社会の活性化に向けた教育制度、雇用制度等、社会保障制度をどのような姿としていくべきか、またその構築をどのように進めていくべきかを考える必要があります。  さらに、少子・高齢社会では女性の活躍が一層期待されますが、女性は今でも相当活躍しておられます。農業では六割の女性労働力が我が国農業を支えています。しかし、一方において、それにふさわしい立場や地位は与えられていない現状もあります。最近では役所の中にも女性がふえてきましたが、部長、局長は少ないし、民間の大きな会社でも取締役になればマスコミが物珍しい扱いをいたしております。総理は、男女共同参画社会実現に向け新たな国内行動計画を策定すると言っておられますが、国でやれることはまず実践することが必要です。  ちなみに、今日、社会民主党、新党さきがけはいずれも女性党首であります。そこで、男女共同参画社会実現が必要と思いますが、総理にその抱負のほどを伺いたいと思います。  次に、安全保障について伺います。  我が国の安定と繁栄は、アジア太平洋地域、ひいては世界全体の平和と繁栄に密接不可分に結びついております。日米安保体制は、我が国の安全にとって必要不可欠な要素であるとともに、アジア太平洋地域の平和と安定に大きな意義を有しております。本日、日米安保協議会が開かれ、沖縄に関する特別行動委員会の最終報告が出されましたが、今後、政府は、普天間飛行場の代替ヘリポート建設を含め、最終報告実現するため最大限努力すべきと考えますが、これらを含め沖縄問題の取り組みについて総理の決意のほどを伺いたいと思います。  また、日米安保関係の一層の充実のため、日米安保共同宣言に基づく日米協力を進めることは重要でありますが、その中で、日米防衛協力のための指針の見直し作業に対しどのように取り組むお考えか、あわせて総理に伺います。  アジア太平洋地域における相互の政策の透明性と安心感を高めるための政治・安全保障対話及び協力を積極的に推進すべきであり、その意味で、ASEAN地域フォーラムの活動を我が国としても積極的に支持し、その進展に貢献すべきと考えますが、いかがでありましょうか。  我が国の繁栄は広く国際社会において平和が確保されることが前提であり、顔の見える貢献をする必要があります。世界各地で起きている地域紛争、対立の背景の一つは途上国の貧困に起因することから、途上国の開発問題への取り組みの強化が不可欠であり、そのためにODAの果たす役割は大きいと考えますが、総理のお考えを伺いたいと思います。  また、我が国は国際平和協力法に基づき国連PKOに参加しておりますが、今もゴラン高原にPKO・自衛隊が派遣され、中東和平のために汗を流しております。これら日本のPKO参加は国際社会から高い評価を得ており、今後とも積極的な貢献を行っていくべきでありますが、いかがでありましょうか。  国連に期待される役割はかつてないほど増大しており、国連がこれにこたえて十分な役割を果たすためには、その機能を強化することが必要であります。九月の国連総会の一般討論演説で、総理は、安保理改革、行財政分野の改革経済社会分野の改革が全体として均衡のとれた形で進められることの重要性を強調するとともに、安保理改革については、「我が国は、憲法が禁ずる武力の行使は行わないという基本的な考え方の下で、多くの国々の賛同を得て、安保理常任理事国として責任を果たす用意がある」と明言しておられます。  明年一月より我が国は非常任理事国となり、世界の平和と繁栄に一層積極的に貢献していくべきものと考えます。また、地域紛争や開発問題への取り組みに加え、国連の機能強化のための改革を強力に推進していくべきであると考えますが、改めて、安保理非常任理事国となるに当たっての決意と、安保理改革を初めとする国連改革に関する総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。  次に、今般の総選挙の結果についての評価であります。  我々自由民主党は、一昨年六月、村山連立政権の一員として与党に参加してからは、民主的で自由でかつオープンな政策論議によって、被爆者援護法や水俣問題など、多年にわたる懸案事項の成案を得ることができました。本年一月、橋本連立政権になってからも、安全保障問題や沖縄問題への取り組みに見られるような難しい政策課題の解決を積極的に図ってまいりました。こうして自民、社民、さきがけの与党三党は、連携して政局運営に責任を持って当たることで、極めて強権的などの批判のあった旧細川・羽田連立政権下によって混乱していた日本政治を、国民が切望する、信頼される安定した政治の方向に進めてきた結果が今回の国民の審判であったと考えます。  今回の選挙においてでは、かつて、消費税が七%、一〇%、一五%のアップが必要と言っていた人たちが、選挙になると途端に三%据え置きや、選挙目当てでできもしない十八兆円もの大幅減税を無責任に主張するという御都合主義の政党よりは、責任政党として勇気を持って改革を掲げた民主的な議論を行う政党を国民は選んだわけであります。このことは、第一党の自民党中心とした安定した政権を求め、引き続いて橋本首班による政権を継続してほしいという国民の期待であったとも考えます。(拍手)  政治の信頼を取り戻すため、我々は選挙制度を含む抜本的な政治改革を断行し、今回の総選挙は新しい選挙制度で、政党中心、政策本位の選挙を行い、国民の選択を求めたものでありました。しかし、今回の選挙妃おいて、国民からは、供託金没収者が復活当選したのはおかしい、さらに、例えば奈良一区では三、四位の候補者が比例選で復活し、我が党の二位の候補者を追い越して当選するといった。いわば追い越し当選の問題や重複立候補のあり方などが指摘されたわけであります。これらの疑問を含めて、国民からはこのたびの制度に相当の不満や批判が出されています。  早速、我が党としては、こうした今回の選挙で明確になった問題点や選挙制度のあり方を含めての定数削減について、例えば比例区を次回から完全になくすとか、まず二百の議席を百にするといった意見などもありますが、何回か選挙を重ねることで最終的には三百の小選挙区に移すことなども考えられます。こうしたことについても選挙制度調査会において検討を行い、あしき点は改めて、行政改革を進める前に、まず政治みずから隗より始めよということで国会議員の大幅削減を行い、率先して政治国会改革に取り組む必要があると考えますが、総理の御決意を伺いたいと思います。(拍手)  今回の選挙は、我が党の議席が過半数に至りませんでした。しかし、将来の日本のために、戦後の社会経済システムの変革は待ったなしでやってきます。このことを強力に推進していく政党として、自民党に大きな期待を寄せられたものだと思います。そこで、我々は今回も社民党、新党さきがけと政策合意を図り連立政権を組み、また21世紀の皆さんとも政策において合意をした上で、第二次橋本政権を誕生させることができたわけであります。  第二次橋本内閣の最大の政策課題は、何といっても行政改革です。これをなし遂げるには強力で幅広い政治のリーダーシップが必要とされます。そうした意味からも、民主党との間でも行革を中心とした政策協議を行い、ともに責任を果たすことに喜びを持ちたいものであります。今や、政治が一致協力して、国家国民の将来のための行政改革を初めとする戦後日本社会経済のシステムの変革を何としても成功させなければ、日本の未来はないと言っても過言ではないと考えます。  我が自由民主党は、こうした観点に立って橋本政権を強力にバックアップし、行政改革を初めとする諸課題、諸政策については、国民にわかりやすいようにオープンな議論に心がけ、国民の皆さんに協力をお願いし、また率直な御意見に謙虚に耳を傾け、政治を進めてまいります。将来の日本のための改革を断行する過程においては、国民皆様方には一時的には痛みを伴うことがあるかと思いますが、二十一世紀の日本の将来のため、さらに子供たちの未来のため、思い切った決断と実行によって「変革と創造」を実現していかなければなりません。(拍手)  総理日本の近代を開いた明治の元勲たちは、大きな国家目標を打ち立てました。  その第一は、殖産興業でありました。この目標は百年で達成されましたが、今日では債権国家、債務国家となり、総理が今先頭に立って財政改革犯着手べれることになりました。  第二は、帝都建設でありました。これは東京一極集中で終えんし、新しい首都機能を持つ地域を設定し、国土の均衡ある発展に努力しなければなりません。  第三は、学制発布でありましたが、ある時期、我が国の発展に大きな役割を果たしましたが、これも今日では画一的な人材を育成するのみで、人づくりの機能を果たしておりません。  明治政府は大きな犠牲を払いました。勇気を持って廃藩置県もやり遂げました。まさに今日の行政改革そのものです。また、正本じゅうの昔からあった寺子屋、塾を学校にし、義務教育制をしき、欧米諸国を追いかけることを目標にいたしました。  さらに、今では考えられない財政状況で、北海道から九州に至るまで日本じゅうに鉄道を敷設しました。これが戦前戦後を通じ国土の均衡ある発展につながったことは言うまでもありません。  さらに、政府を挙げて北海道の開発に着手しました。二十一世紀を控え、今まさに沖縄振興を掲げることも歴史の偶然とは言えないのではないでしょうか。  総理、明治の開拓者と同じ燃えるような情熱と使命感を持って、新しい日本を創生させるために、全力を振り絞って我々の先頭に立っていただきたいと思います。(拍手)  我々連立三党は、さきの村山政権を支え協力したときと同じ気概を持って、橋本政権を今後とも強力に支え、改革を断行していくことこそ我々議会人の使命であるという決意を申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
  8. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 森議員からの御質問に対してお答えを申し上げます。  まず冒頭、公務員倫理法の制定についてのお尋ねがございました。  先ほども御答弁を申し上げたどころでありますが、公務員の服務につきましては、既に公務員法制規定をされており、これがきちんと守られておればこのような事態は発生しなかった。そのような思いでいっぱいであります。それだけに、現在ありますこうした規定や従来の決定事項というものを一人一人に遵守させることがまず重要であります。このため、現在、真に実行される綱紀粛正の方策につきまして政府部内でも鋭意検討を進めておりまして、早急に結論を得て綱紀粛正徹底を図りたいと考えております。  御指摘の新たな公務員倫理法が必要かどうかについては、私はそれを踏まえて考えたい、まず現在あるそのルールをきちんと守らせることから進めていきたい、早急に進めたい、そのように考えております。  次に、教育というものは未来への先行投資という御指摘をいただきました。  まさにそのとおりでありまして、私は、未来を見据え、国際化時代にふさわしい豊かな人間性を持った。活力を持った人材を育てる教育を実現するように積極的に取り組みたいと思います。そして、少なくともいじめとかこうした悲惨な声が教育の現場から聞こえるような事態は一日も早くなくさなければなりません。こうした観点から、次代を担う子供たちが健やかに育つ環境の整備に努めてまいりたいと思います。  そして教育改革について、まさに議員はかつて文部大臣として大変御苦労された部分でありますが、伸び伸びとした「生きる力」というものをはぐくむ教育を目指し、学校教育の内容の改善なとさまざまな教育改革を進めていかなければなりません。  私どもは、ちょうど敗戦の時点で小学校の二年生でありました。そして、学制が改革されるまでの間、大変混乱していた時期を身をもって体験をいたしております。それだけに、学校制度の改革というものにつきましては、過去、臨教審の答申などにおいても、例えば中高一貫教育の導入の問題などについて提言がされてまいりました。現在も中央教育審議会において御議論をいただいているところでありますが、その議論を踏まえながら、いかにすれば教育現場に混乱がなく現在の教育体系から移行できるか、そうした視点をも踏まえ積極的に対応していきたいと考えております。  次に、行政改革、霞が関改革というものについての取り組みの決意お尋ねいただきました。  私は、この行政改革という言葉、それは中央省庁の再編だけではなく、選挙中にも国民に対して訴えてまいりましたとおり、一方では、我々が経済構造を改革し、新しい産業を育て、国の富をふやしていくためにも、規制の緩和・撤廃という努力を怠ることができません。同時に、地方分権を我々はますます進めていかなければなりません。そして、官民の役割の分担もまた大切なことであります。  言いかえれば、こうした課題は、どれも国が担うべき機能は何かという問いかけに対する答えを書くということであり、この観点から、私は行政自体のスリム化を求めていく必要があると思います。年内に予定されております行政改革委員会の御意見、また地方分権推進委員会の勧告を踏まえながら、運輸に関する規制など六分野を初めとする規制緩和を大胆に進めるなど、こうした作業も一方で進めながら、改革を着実に実施し、中央省庁再編のためにもこれを十分に反映させていきたい、そのように今考えているところであります。  行政改革会議には、発足後一年という期間を切っての成案を求めているところであります。これがまとまり次第、我々はそれを法制化することに取り組み、再来年の通常国会には国会で御審議をいただける状態に持ってまいりたい、そのように考えております。  次に、金融システム改革についての御議論をいただきました。  私が今非常に懸念をし、金融システム改革というものを打ち出したのは、現在の我が国の金融情勢それだけの問題ではありません。新たに欧州において基軸通貨の一つになり得べきユーロが誕生じようとい。たしております。そして、ヨーロッパの首脳たちとさまざまな角度でお話をしてまいりましたが、ヨーロッパの首脳たちは皆、強いユーロを実現しようとしておられます。これは、反面、国際経済の上で歓迎すべきことではありますけれども、そのダイナミックに変化する金融の中で円がローカルカレンシーにならないためには、私どもは大変な努力をしなければなりません。  国際通貨としての円の地位の向上を図りますために、国民の資産の有利な運用を図りますために、また次代を担う成長産業への資金供給を考えましても、世界への円滑な資金供給を必要とする非常に大切な時期、そうした視点からも、私自身が強い決意を持って、法制度などまで含め総合的な改革を果断に進めて、我が国の金融市場が国際的な市場として復権するように取り組んでまいりたい、そのための御協力を心からお願い申し上げたいと願っておる次第であります。(拍手)  次に、財政健全化の目標についてでありますが、現在の財政構造を放置すれば、既に二十一兆円に上っております歳出と歳入のギャップはさらに年を追うごとに拡大し、公債残高は急激に増加をすることになります。しかし、二十一世紀に向けてそのような財政構造を放置することは許されません。我が国の実情を踏まえながら、欧米諸国の状況をも参考とし、幅広い御議論の中から、財政健全化を進めるに当たっての具体的目標の設定に積極的に取り組み、党にもお願いを申し上げておりますけれども、財政再建のための法律についても検討を進めてまいりたいと考えております。  また、財政構造改革元年となる来年度の予算編成につきまして、私どもは、この平成九年度を財政構造改革の元年とすべく各般の制度改革実現に努力をいたしますとともに、歳出歳入の両面においてあらゆる努力を傾注していくことによって、三兆円以上の公債減額を実現するよう最大限努力をしたい、そのような決意のもとに現在作業に取り組んでおります。  次に、学校教育や社会福祉におけるボランティア活動、これをむしろきちんとした就学制度の中に位置づけるという御提言をいただきました。  確かに、学校教育の場におきましても、地域福祉の場におきましても、ボランティア活動というものは極めて大切なものであり、同時にこれが、児童生徒が他人を思いやる心や社会に奉仕すみ精神を培う、こうした上で極めて大切なものだと認識をいたしております。今後、社会福祉協議会のボランティアセンターと相まって、学校教育におきましても一層その充実を図ってまいる所存でありまして、御提言につきましても十分検討をさせていただきたい、そのように思っております。  次に、男女共同参画社会実現に向けた抱負というお尋ねをいただきました。  女性と男性が支え合いながら喜びも責任も分から合う、そうした男女共同参画社会の形成というものが我が国の将来を決定する大きなかぎであること、そして政府が一体として取り組むべき最重要課題の一つであることは、議員が御指摘のとおりであり、政府自身が今までそれぞれの内閣におきまして各般の取り組みを進めてまいりました。年内には新たな国内行動計画を策定することにいたしており、男女共同参画社会実現に向けて関連施策の総合的かつ効果的な推進に努めてまいります。同時に、行政改革の中においてこれが埋没しないように、むしろより強化されるように、そのような思いも持って取り組んでいきたいと思います。  次に、沖縄問題への取り組みについてのお尋ねがございました。  本日、日米安全保障協議委員会におきましてSACO最終報告が了承され、沖縄の米軍施設・区域に関連する問題の日米間の共同作業に一つの区切りをつけたところであります。今後、この中に盛り込まれました措置実現していくことは当然のことであり、政府が一丸となって着実な実施のためあらゆる努力を払ってまいります。  普天間の問題は、ある意味でこの沖縄県の抱える今日までの問題を象徴するようなものでありました。これが円滑に終了できるよう、どうか国会の御協力を心からお願い申し上げる次第であります。  そして、長い間国政との間において不信感が現実に生まれてしまった沖縄県の実態考えますとき、こうした沖縄県の抱える諸課題については、内閣の最重要課題の一つと所信表明で申し上げましたように、強い決意を持って取り組んでまいりたいと思います。(拍手)  次に、日米防衛協力のための指針見直しにつきましては、防衛大綱及び日米安全保障共同宣言を踏まえて、これまでに進められてまいりました日米間の防衛協力を基礎として、新しい時代におけるより効果的な防衛協力関係を構築するために、日米による指針見直しの作業を来年秋に終了することを目途に積極的に進めてまいります。その論議の過程を透明化することにより、周辺諸国に現に存する不安というものに対してもきちんとした答えをお見せできるようにしていきたい、そのような思いで作業に取り組んでまいります。  次に、ASEAN地域フォーラムにつきましては、アジア太平洋地域の安全保障のために、米国の存在と関与を維持しながら、二国間及び多国間での政治・安全保障分野での対話あるいは協力を推進することは極めて大切なことであります。したがって、我が国としては、アジア太平洋地域における全域的な対話の枠組みでありますASEAN地域フォーラムには積極的に取り組み、その進展に引き続き貢献をしてまいりたい、そのように考えております。  次に、ODAの果たす役割につきましては、ODAというものを通じ途上国の開発問題への取り組みを強化すること、これは国際社会の平和と安定に貢献すると同時に、我が国自身の国益にも寄与するものだと考えております。先般終了いたしましたAPECの非公式首脳会合における論議のテーマの一つも開発というものであり、これをめぐってODAの充実を求められた部分もございました。我が国としては、厳しい財政事情というものを踏まえながらも、今後とも相手国の実情というものを十分に把握して、ODAの効率的、効果的な実施及びその一層の充実に努めてまいりたいと考えております。  また、我が国としては、平和維持活動など国連の活動に人的な面でも積極的に貢献していきたいと考えておりまして、今日までも、国連平和協力法に基づき、カンボジアや現在も進行しておりますゴラン高原等の国連平和維持活動に参加してまいりました。今後とも、こうした経験を踏まえながら、国連のPKOには積極的に参加していきたいと考えております。  また、安全保障理事会の非常任理事国として、今回、日本は各国の支持を得ることができました。私どもは、国際の平和と安全の維持に関する主要な責任を負っておりますこの安全保障理事会において、地域紛争の解決、国連改革などのために、一層建設的かつ積極的に責任のある役割を背負っていきたいと思います。私は、九月の国連総会におきまして、安全保障理事会、国連の行財政そして経済社会の三分野が全体として均衡のとれた改革を進めるべきだ、そう主張してまいりましたが、国連五十周年の機運を生かして、各国とともに国連改革議論の推進に努めたいと考えております。  最後に、政治改革の取り組みにつきまして御意見がございました。  小選挙比例代表並立制は、随分長い期間にわたりまして論議が重ねられてきた政治改革の一環として導入されたものであります。よりよい制度に向けて論議を深めていくことは、当然のことながら極めて重要なことだと思います。先般の三党政策合意におきまして、衆議院の選挙制度につきましては「議員定数の削減を前提にし、民意がより良く国政に反映されみよう、早急に選挙制度見直しを開始する」こととされており、各党各会派におきまして十分御紛議いただけるものと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)     〔国務大臣武藤嘉文君登壇
  9. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 森議員にお答えをいたします。  まず、内外情勢に対する認識については、私も全く同感でございます。  そこで、そういう時代を踏まえて、総理がこの間もおっしゃっておられます「変革と創造」の時代になりました。総理は、それに対してへ行政改革財政構造改革、そして金融システム改革経済構造改革社会保障改革、この五つをぜひともやり遂げなければならないけれども、とりわけその中でも行政改革は最重要課題であり、しかもこれに対してはいろいろとこれから困難な状況も出てくるであろう、しかし自分はそれに対して身を燃焼し尽くしてでもやり抜くのだ、こういう御決意でございます。  私も、行政改革担当大臣を仰せつかりましたので、ひとつ総理と一体となりまして、自分の政治生命を賭して、命がけで頑張ってやってまいりたいと思います。(拍手)  なお、もう総理からおっしゃっておられますからつけ加えることはございませんけれども、とにかくいろいろな改革をやって、要は新しい時代に合った。そして国民の期待にこたえ得る、簡素で効率のよい行政にしていかなければならないと存じておりますので、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)     〔国務大臣藤本孝雄君登壇
  10. 藤本孝雄

    ○国絶大臣(藤本孝雄君) 森議員の御質問にお答えをいたします。  まず、新政策の農政上の位置づけについてのお尋ねでありますが、「新しい食料・農業・農村政策の方向」、いわゆる新政策は、他産業従事者並みの年間労働時間と生涯所得を実現できる、そのような経営体が生産の大部分である農業構造であるとか、また活力ある地域づくりを目指すものでございまして、現在におきましても農政の基本的な方向であると認識をいたしております。平成六年度からのウルグアイ・ラウンドの農業合意関連対策におきましても、新政策の具体化を図り、その目標が早急に実現されるよう、各般の施策を総合的に講じているところでございます。  次に、新しい基本法についてのお尋ねでございますが、農林水産省におきましては、九月十日に提出されました農業基本法に関する研究会の報告を契機に、新たな基本法の制定に向けた本格的な検討を開始しております。そして、その検討に当たりましては、現在の農政の基本的な方向である新政策の内容を十分に踏まえながら、二十一世紀における我が国農業・農村の発展と国民生活の向上のために新たな農政の指針をつくり上げていきたいと考えております。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣三塚博君登壇
  11. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 森議員にお答えを申し上げます。  総理大臣から、金融システム、財政構造改革そして同時に経済構造改革等々、強い決意の披瀝があったところでございます。まさに危機的状況に今日の我が国財政がありますこと、御案内のとおりであります。  特に東京ビッグバンと言われる金融システムの問題、総理みずから、ローカルカレンシーになってはならない、円の力がニューヨーク・ドルとロンドン・ポンドと肩を並べ、我が国の国勢、力に比例する貨幣であってほしい、こういうことで強い指示をいただいたところであります。まさに金融市場改革は非常に広範かつ抜本的なものでありますから、法務省等の協力を得つつ、全力を挙げてその実現に邁進をしてまいる決意であります。  大蔵省としては、既に、関係する五審議会会長をお呼び申し上げ、二〇〇一年までの間に金融市場改革、いわゆるビッグバンの実現を期して、その完了が二〇〇一年でありますようプランをできる限り早急に取りまとめていただくよう、御要請を行ったところであります。各審議会におかれては、そのため、具体的な検討項目を定め、その実施のためのスケジュールを決めて精力的に取り組んでいただいておるものと理解をいたすところであります。  次に、財政構造改革に向けての目標いかんというお尋ねであります。  我が国財政危機的状況を踏まえ、財政制度審議会において、財政健全化に取り組む従当たっての目標及びその手模について論議をいただき、本年中間報告を、七月でありますが示されたところであります。中間報告においては、二〇〇二年までの財政均衡を目指す米国の目標と、一般政府ベースでの財政赤字の対GDP比三%等差目指すEUの目標など、欧米諸国の状況も参考にしつつ審議を重ねていくことになる、その場合、特例公債の発行を厳に回避すべしという方針については、当然目指していかなければならないとされておる報告であります。現在、財政審において論議をいただいておりますが、大蔵省としては、財政審及び国会における議論等を踏まえまして、新たな目標を設定すべく積極的に取り組んでまいるつもりでございます。  第三番目でありますが、財政構造改革となる来年度予算編成についての決心いかんということであります。  我が国財政は、平成八年度予算において特例公債を含めて二十一兆に上る公債発行を余儀なくされるなど危機状況にありますこと、御案内のどおりであります。総理が申し上げましたとおり、平成九年度予算編成に当たりましては、平成九年度を財政構造改革元年とすべく各般の制度改革実現に努力するとともに、歳出歳入両面においてあらゆる努力を傾注することによりまして、三兆円以上の公債減額を実現するよう最大限努力をし、中期的な財政健全化に向けた第一歩としてまいる所存であります。また、従来にも増して徹底した歳出の洗い直しを行い、限られた財政資金の重点的、効率的な配分に取り組んでまいる所存でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  12. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 鳩山由紀夫君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔鳩山由紀夫君登壇
  13. 鳩山由紀夫

    ○鳩山由紀夫君 私は、第百三十九回国会の開会に臨み、民主党代表としての所信を述べ、橋本総理所信表明に対して質問をいたします。  まずは、第二次橋本政権の発足につきましてお祝いを申し上げます。ぜひとも、総理を初め各閣僚の皆さん方が責任を持って内閣のかじ取りを進められ、日本の未来に誤りなき進路を示されんことを切に期待する次第でございます。  しかし、総理の所信演説でも述べておられますように、日本社会は今多くの困難な課題を抱えており、それらの課題をどのように解決していくか、実に大切なときを迎えています。こうしたときに、泉井石油卸商事件やオレンジ共済事件、厚生省不祥事など、政官業の利権構造がもたらす汚職と不正が続発したことはまことに残念であり、同じ政治家の一人として責任を痛感するものでございます。  一連不祥事周辺では、総理御自身のお名前も登場する政治献金が必ず話題になっています。また、特に政官業癒着を露骨に演じた茶谷容疑者は、総理が総裁を務める政党の公認候補でございました。その茶谷候補の応援と称して、岡光次官が医師会に数千万円もの政治資金提供を求めていたことも報道されています。しかも、その行為が発覚するや否や、自民党のある議員は何と、厚生省の役人が立候補するのだから医師会の支援をもらおうと厚生省のトップが出向くのは当たり前と言ってのけたのであります。明らかに憲法違反ではないですか。政権与党の候補を省庁の幹部や業界が応援するのは当然だと、それが当たり前だとずっと続けてきたのではないでしょうか。  私は、総理がこうした政治の醜悪な現状を問うことなくして、あたかも公務員の綱紀の粛正問題に矮小化しようとする姿勢に、残念ながら真摯なものを読み取ることができないのでございます。(拍手)  敗戦後間もない昭和二十年十二月一日、第八十九回帝国議会の衆議院本会議が開かれておりました。そして、まさにこの本会議場で戦争責任案が可決されています。戦争の原因とその責任国会みずからが明らかにし、責任をとって議員個々人の去就をはっきりさせようではないかと激しい論議が行われた末の可決でありました。実際、この戦争責任決議を受け、実に十一名もの国会議員辞職をしているのでございます。おかしいと思っても、軍部の独走と横暴を抑えることができなかった。それをやり遂げる勇気を示すことができなかったという深い反省から出た行動選択でございました。  しかるに、今日、私たち政治家官僚の独走と横暴を抑制することもできずにいるのでございます。まさに政党政治危機と言わなければなりません。総理演説にそうした危機の意識が残念ながら感じ取れないのは、まことに不幸なことでございます。(拍手)  ここで、私は民主党の代表として、民主党の目指すべき方向とその実現に向けての覚悟を述べたいと思います。なぜ私たちは既成政党を離れ新党を立ち上げたのか、私なりに三点に集約して申し上げます。  第一に、時代認識でございます。  今日は、明治維新以来の社会構造そのものが大変革されなければならない時代でございます。単に金権腐敗やいわゆる国対政治を克服するのにあらず、明治国家以来続いてきた官主導政官業のもたれ合いによる追いつけ追い越せ型社会構造そのものを次の百年に向かって超えていかなければなりません。そのことによって、政治行政への依存や癒着から解放され、自立と復権を果たすことができるのです。民主党はいまだ未熟な政党ではありますが、政官業のもたれ合いからみずからを解放し、変革を担い切る自立した政治家の集団となることをここにお誓い申し上げます。  第二は、未来への責任です。  社会構造の大変革をなすためには、過去の経験や発想の延長線上での漸進的な改善ではなく、それらを一たん断ち切って、十年後、二十年後の未来から大胆に今をとらえ直すという政策的発想が極めて重要であります。そうでなければ、目の前の問題に実務的に対処することに得意な官僚体制への依存を断ち切ることはできないと思うのです。  第三は、市民が主役となる政治実現です。  これまでの政治は、弱者を定め、彼らに保護を与え、補助金などの予算で救済してきました。このような官主導の上からの保護政策は、財政硬直の原因となったばかりでなく、甘えの構造から人々の自立する意欲を奪ってきました。民主党は、一人一人の人間は、みずからの運命をみずから決定する権利と、選択の結果に責任を負う義務があるという個の自立の原理を尊重したい。市民のためにプロの政治家政治を行うのではなく、市民自身が政治を行う力量を持ち、実際に政治を行い、プロの政治家は彼らの行う政治を助けるための道具であるとの自覚を持たなければなりません。  民主党は、今述べました考えのもとで野党として出発をいたします。しかし、単に与党の足を引っ張り権力の座から引きずりおろすことばかりを考える野党ではなく、時の政権がしっかりとした時代認識を持ち、未来への責任と市民中心型の政治を志す限りにおいては、積極的に協力することもやぶさかではありません。議会人として、議院内閣制のもとで、政治による行政のコントロールを可能にするために立法府をよみがえらせることに全力を挙げたいと思うのです。  総理は、所信表明において、五つ改革と並ぶ内閣の重要課題として、沖縄の諸課題を挙げられました。私は、総理が就任以来、沖縄の米軍基地問題の解決に相当の努力を払われ、普天間飛行場の返還を初め一定の成果を挙げられたことを率直に評価申し上げ客ものですが、本当り正念場はこれからだと考えます。  本日、沖縄行動委員会、SACOの最終報告が出され、一年以止にわたって続けられた日米協議は一応の結論を見ることになりますし小し、これは一つの区切りにすぎず、合意事項の実現を図り、さらに米軍基地の整理、統合、縮小を進めていくために、新たな出発が求められていると考えます。SACOの最終報告の発表を踏まえ、総理御自身が沖縄の米軍基地問題も地域振興について今後いかなる新たなる出発を切ろうとなさっておられるのか、所見を伺いたいと思います。  阪神、淡路大震災の被災地では、依然、自立の意思を持ちながらも生活再建や事業の復活という困難に直面している方々が少なくありません。一年十カ月を過ぎた今日に至ってもそうした状態が放置され、不備な環境の中で孤独死や自殺者も続いている現状にあります。事態はもはや人権問題とも言える状況です、現在の災害関連法では補うことができない陰のすき間があり、それが行政の力では処理し切れない悲惨な事態をつくり出しているのであります。このようなときこそ、まさに政治の出番だと言わなければなりません。被災者個々人にも手が届くような対策が可能な、きめの細かい支援制度を確立する必要があると考えるのですが、総理の所見をぜひお尋ねしたいのでございます。  公的介護保険の導入に関して、総理選挙期間中、今臨時国会に不退転の決意で提案を行い、その実現を目指すと発言しておられました。介護保険制度の所管庁たる厚生省事件の解明が続いている中、この大きな政策課題についてどのように取り組まれようと決意しているのでしょうか。  公的介護については、その早期の導入「整備を望む声が強いことは総理も十分認識しておられるものと推察いたします。一人一人のお年寄りとその介護者の人権と人間としての誇りにも触れる大事であるだけに、不祥事を理由に制度の実現を先送りすることは許されないと考えますが、いかがでしょうか。総理の所見を伺います。  景気対策と称して再び公共事業中心補正予算が与党内部で議論されていると聞いています。財政赤字に対する無責任ぶりとともに、構造的な欠陥を改善することなく、財政支出によって抜本的な産業構造の転換を先送りするようなやり方を続けるならば、結果として二十一世紀の日本経済活力をそぐことにもなりかねません。  今求められているのは、一時的なカンフル剤を注入することではなく、将来の日本経済を見据えて大きな規制緩和の必要性を主張しておたれますが、政官業のしがらみをみずから断ち切る勇気なくしてそれを果たすことはできないと見ております。経済審議会行政改革委員会の報告を受け、具体的にどのような規制緩和を断行されようとしておられるのか、総理決意お尋ねいたします。  次に、行財政改革について民主党の基本姿勢を述べたいと思います。  官僚主導の行政を市民が主役の行政に変えていくには、政官業癒着閉塞状況に陥った政治行政を厳しく監視し、誤った政策予算のむだ遣いを正すことができる体制をつくることから始めなければなりません。この考えに立って私たちが今国会に提出したのが行政監視院法案でございます。  総務庁の行政監察局は、これまでに、今回の小山容疑者のように補助金を受けた社会福祉法人が関連業に事業発注をしないように是正勧告をしたことがありました。しかし、その後は厚生省が十分な対応をしないままに見過ごしてきました。その結果が、前事務次官や茶谷容疑者の収賄など一連の汚職事件の発生となっているわけです。行政内部のチェックだけで事足れりとして、国民には十分な情報を公開せずに、よらしむべし知らしむべからずで来た。薬害エイズでも問われた内向きの行政の矛盾が今まさに霞が関じゅうに噴き出しているのです。この構造を変えるため、ぜひとも行政監視院が必要です。  私たちは、この行政監視院法案に対する賛否を、橋本内閣が本気で行政改革に取り組もうとしておられるかどうかをはかるリトマス試験紙にしたいと考えています。行政の監視を行う機関を国会に設置するという政策は、自民党自身がさきの、総選挙で掲げていたものでもございます。行政監視院法案をこの臨時国会で成立させることに賛成か否か、情報公開の早期実施に対する姿勢を含めて橋本総理の明確な答弁を求めます。(拍手)  橋本総理が火だるまになる覚悟で取り組むという中央省庁の再編成について、それを単なる数合わせや縦割り行政の組み直しに終わらせてはなりません。政治任命者のチームが責任を持って予算の骨格を決めるという予算編成の根本から変えて、また地域主権の国をつくっていくという観点からも、国と地方の役割分担や税財源配分を見直し補助金漬けの中央集権行政を改めなければ、今回のような不祥事を根絶することはできないのであります。  しかるに、総理の足元では、自民党単独政権になった途端に、議員会館には補助金の獲得を目指す陳情の人波が押し寄せてまいりました。連立政権時代は少なくともこんな光景はありませんでした。橋本総理所信表明で行革、財政再建に取り組むと幾ら言っても、こうした状態を放置していたのでは、とてもそれを信じることはできません。果ては、自民党が勝った地域には補助金をつけるが負けた地域にはっけないなどということがまじめに政権政党の役員会で議論されていると伝えられています。自民党は、国民が納めた税金を私物化し、選挙の道具に使おうというのでしょうか。総理の所見を伺いたいと思います。  いわゆる橋本行革の試金石となるのが、大蔵省の改革です。民主党は、大蔵省の改革に当たって、財政と金融の完全分離という原則を堅持していくべきと考えています。野球に例えて、プレーヤーとコミッショナーとアンパイアの仕事まで一人で兼ねるということになれば、ゲームがつまらなくなり、また不正が生じるのは当たり前ではないでしょうか。また、世界的な金融市場の自由化の進展の速度を考えれば、可能な限り早期に思い切った金融の規制緩和、いわゆる日本版ビッグバンを実現する必要があります。金融自由化時代に対応できる金融行政体制を構築するためにも、財政と金融の分離は一刻の猶予もありません。総理は、金融行政に関する大蔵省改革を先行し、次期通常国会で大蔵省設置法などの改正を実現するお考えかどうか、明確な御答弁を求めます。  ここで、会計検査院の検査官大事について一言申し上げたい。  会計検査院は、大蔵省が作成した決算を審査する機関であり、その独立性を確保するためにも、大蔵省OBが検査官の一人を占め続けてきた人事慣行は改めなければならないと考えます。総理決意がしっかり示されることを期待しております。  次に、財政再建に関して総理の基本的な姿勢を伺います。  予算編成を前に、公共事業の長期計画の満額獲得を目指す大会が開催されています。これをすべて言い値で認めていけば、必要経費はおよそ一千兆円にも上ります。従来聖域とされてきた分野についても、思い切った歳出削減にまず取り組まなければなりません。公共事業の中期計画の総点検と執行の効率化、一般競争入札の拡大など発注方式の見直し補助金等の削減、特殊法人や公益法人の関連予算の削減などに大なたを振るわなければならないと考えます。また、財政再建のためには、米国の包括財政均衡法のように、中期的な目標を設定して財政赤字を計画的に削減していくように政府に義務づける立法措置が必要と考えます。財政再建の具体策に関する総理並びに大蔵大臣見解お尋ね申し上げます。  次に、外交と安全保障問題についてお尋ねいたします。  総理五つ改革を最重要課題と位置づけられましたが、私はこれに加えて外交・安全保障政策もまた改革を迫られていると考えるものでございます。冷戦時代においては、日本のとるべき外交選択の幅は狭く、米国主導の外交につき従うことが多くならざるを得ませんでした。しかし、今日、市場経済のもとで力をつけつつある多様な国々が台頭する中にあって、日本はより自立的でダイナミックな外交政策を、特にアジアの近隣諸国に対して展開することが求められるようになっています。  民主党は、冷戦後の新たな国際情勢日本の国際的地位の変化を踏まえ、日米関係を新たな次元においてとらえ直し、日米安保を基盤として、多国間安保のあり方を同時に追求することがこれから求められる道だと考えています。すなわち、アジア太平洋地域における安定要因としての米国の存在を確保しつつ、日米両国がこの地域において、多様な手段を用いながら紛争要因の除去に努め、安全裸陣対話を推進し、地域的な安全保障の枠組みづくりに寄与することであります。また、とりわけ北東アジア地域で、いかにして信頼醸成と平和的共生の枠組みをつくり出していくのかということにこそ日本外交の真価が発揮されなければなりません。  そこで、橋本総理お尋ねいたします。  二十一世紀に向けて日米関係の進むべき方向について、どのようなお考えをお持ちでしょうか。また、外務大臣に対して、北東アジアの地域的安全保障体制の構築に向けた日本の具体的役割について御所見を伺います。  総理は、所信表明演説において、日米関係と並んでアジア諸国との関係の重要性を指摘されました。私も全く同感でございます。しかしながら、特にアジア諸国との関係においては、過去に誠実に向かい合うことなしに、未来を開く扉のかぎを日本はしっかりと握り締めることはできないのであります。過去にばかりこだわらず未来を見詰めるべきだと言う方々もおります。しかし、私たち民主党は、未来の日本の姿にこだわるからこそ、日本という国の尊厳を回復するためにも過去の過ちに対する責任を避けてはならないと考えるものでございます。  私は、まさにそのような考えのもとに、先ごろ、結党後初の訪問国として中国を訪れてまいりました。私が会談した胡錦濤中国共産党常務委員は、「前事を忘れず後事の戒めとする」ことの重要性を強調されました。言うまでもなく、これは一九七二年に周恩来首相が田中角栄総理に披露した言葉であります。くしくも来年はその年から二十五年目に当たります。そのような記念すべき年を目前にして、改めて日中両国民がこの言葉の重みをかみしめ、未来に向けて新たな出発を始めなければならないと強く思うのであります。  総理が靖国神社参拝を行って近隣諸国の反発を招いたことはまことに残念なことでありますが、他方、さきのAPECマニラ会議において、昨年八月に植民地支配と侵略についての痛切な反省とおわびの気持ちを表明した村山前総理の談話を尊重すると明言されたことを歓迎するものであります一そこで、今度は国民に向かって改めて総理のお考えとしてお聞かせいただきたいと思います。また、明年の二十五周年を控えて、さまざまな問題を抱えている日中関係をどのように発展させていくおつもりか、御所見を伺います。  私は、アジア太平洋地域は、今なお冷戦の残り火を抱えてはいるものの、これからは非軍事的な脅威、例えば環境破壊、エネルギー不足、人口増大、食糧不安などの問題が大きな比重を占めるようになると認識しています。これらの非軍事的な脅威にかかわる諸問題にAPEC加盟国が共同で取り組んでいくことを目指す必要があります。わけても日本は、そのために持てる力のすべてを投入する気構えで臨むことが特に重要であると考えるのです。総理の御所見をお伺いいたします。  また、これからは人権を普遍的な価値として外交の重要な柱と位置づけ、その原則に基づいて人権外交を推し進めていくべきであると考えるものでありますが、残念ながら、その点において日本外交の評価は決して高いものではありません。ミャンマー軍事政権への対応を含めて、人権擁護のために果たすべき外交の役割について総理のお考えをお聞かせください。  次に、核廃絶と国際軍縮に向けた日本の役割についてお尋ねいたします。  私たちは、唯一の被爆国である日本こそ核廃絶に向けた国際努力の先頭に立つ責任と資格を有していると考えるものであります。しかし、残念なことに、政府はこのほど国連総会第一委員会において採択された核廃絶条約の締結交渉の早期開始を呼びかけた決議案に棄権をしたのでございます。私は、包括的核実験禁止条約の早期発効とカットオフ条約交渉の早期開始など、現実的なステップを積み上げていくことも重要ではありますが、何時に、日本が核兵器の使用と威嚇が国際法に違反することを明確にした上で核兵器禁止条約の締結を呼びかけるならば、核廃絶に向けた国際世論の喚起に極めて大きな影響を与えることになると考えます。総理の御見解を求めるとともに、核廃絶の具体策について外務大臣にお伺いいたします。  ことし五月には、特定通常兵器使用禁止制限条約の改正が行われました。しかし、地雷の全面禁止に向けてはまだ道半ばと言わざるを得ません。総理は、国際社会に向かって、対人地雷撤去に対する積極的な取り組みを表明しておられますが、国内において自衛隊は百万個以上の地雷を保有しで国内数カ所に備蓄をし、その埋設。散布訓練を行っています。来年度予算にも最新式の地雷の製造が盛り込まれているのでございます。対人地雷の全面禁止に向け総理の御決意を伺うとともに、その具体的方針について防衛庁長官にお尋ねをいたします。  明治の超然内閣の存在からスタートした日本の行政府の体質は、極めて独特な民衆観の土壌から生まれています。それは一言で言えば、民、すなわち市民や民業に対する不信であり、すなわち官尊民卑の思想にほかなりません。そして、こうした思潮が役人の横暴を生み、民間業界の卑屈をもたちすのであります。その傾向は中央と地方との関係にも蔓延し、保護する者と保護される者との縦の関係の中で、地方は官官接待で国の機嫌を伺い、国はますます権威主義的になる、そこから卑屈と傲慢が混在する世界がつくられてまいりました。  一体、今日私たち政治家が直面している行政改革とは何でありましょうか。それは、政官業の構造とそれがもたらした卑屈と傲慢が共存するいびつな政治文化そのものの変革を進めることなのであります。それは、明治の近代化以来の官尊民卑の風潮を改め、市民感覚に見合った新しい政治文化を育てる、いわば世直しの取り組みであると断言しなくてはなりません。(拍手)  さて、私はさきの訪中の中、大連市で中国残留日本人孤児の養母である宋桂栄さんにお目にかかってまいりました。宋さんは、手塩にかけて育てた我が子が日本人となって戻る、その別れのつらさを超えて、初対面の私に対し、あの子が日本人だろうと中国人だろうと関係ない、自分の子供でないと思ったこともないと目を潤ませながら語ってくださいました。この一人の女性に友愛の原点を見た気がいたしました。それに比べ、政治は何をしてきたのでしょうか。目先の利害にとらわれて深い歴史意識を見失った小政治の繰り返してはなかったかと、私は恥ずかしい気持ちを抑えることができませんでした。  グローバリズムが叫ばれる中、本当に日本人の心は世界に向かって開いているのでしょうか。国境を越えた協力のネットワークを創造するためにも、こうした信頼のかけ橋を広げることが日本のとるべき道だと考えます。憲政の神様と称される尾崎行雄は、愛され、尊敬され、信頼されることが日本のあるべき道だと説いています。ドイツとフランスとの和解に貢献したフランク・ブックマンは、一国の最大の安全は隣国の尊敬と感謝を受けることにあると述べています。今最も大切なことは、政治家みずからが自己の尊厳を高め、みずからを律することによって市民の意識にも働きかけ、政治家と市民との周に地球規模の愛、信頼、尊敬のきずなを構築することではないでしょうか。  昨年の代表質問で私は、リベラルは愛と述べました。愛の反対は憎しみではなく無関心であります。その意味において、今回の総選挙で投票率が低かったことは、民主主義にとって大変危険なことと言わなければなりません。政治家は市民に票を求めることではなく、みずからの理念を示して市民と対話し、市民と共有する新しい思考を育てていくのでなければなりません。  私は、友愛の精神こそ、自由と平等、公正のかけ橋であり、地球市民としての自立と共生のメッセージであると信じています。橋本総理も、このような精神のもとに、現下の幾多の困難な課題に立ち向かっでいただきたいと存じます。  民主党は、この旗を高く掲げ、未来からの責任を強く意識しながら、時代が私たちに与えた使命を果たすべく最善の努力を尽くすことを約束して、代表質問といたします。  御清聴ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  14. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 鳩山議員にお答えを申し上げます。  まず、議員が冒頭に触れられました。私自身も含めた政治献金の問題につきましては、今日の一連不祥事の発生によりまして、改めて政治資金規正法に基づく寄附の適正かつ厳正、透明性のある処理の重要性というものを思い知らされております。  また、茶谷容疑者を自民党公認候補といたしましたことは、落選したとは申しながら、その前職中に犯しておりました行動について、これを見抜けなかった我々の不明をおわびいたします。  次に、沖縄に係る諸問題につきましては、議員も御承知のように、沖縄の方々が背負ってこられた重荷というものを国民全体で分から合う、そうした姿勢に立ちながら、引き続き内閣を挙げて解決に最大限努力をしてまいりたいと思います。  沖縄米軍基地問題につきましては、まさに本日、日米安全保障協議委員会におきましてSACOの最終報告が了承をされ、この問題についての日米間の共同作業に一つの区切りをつけることになりました。今後、政府が引き続き一丸となって、この最終報告に盛り込まれました措置というものを着実に実施するためにあらゆる努力を行っていくとともに、最重要課題の一つとして沖縄米軍施設・区域に関連する問題にこれからも真剣に取り組んでいきたいと思います。  また、沖縄の振興につきましては、現在、関係大臣及び沖縄県知事で構成する沖縄政策協議会において沖縄振興策を具体的に検討していただいております。また、先般、沖縄米軍基地所在市町村に関する官房長官の私的懇談会から提言もちょうだいをいたしました。私どもは、その検討結果を踏まえながら、課題の解決に向け全力で取り組んでまいる決意であり、ぜひ国民すべての皆さんがともにその重荷を背負うといった視点でこの問題に目を向けていただくことを心から願わずにはおられません。  次に、阪神・淡路大震災の被災者に対する支援という点についてお触れをいただきました。  被災者に対するきめ細かな支援制度の確立につきましては、被災者の生活再建に向け、政府はこれまでも、公営住宅家賃の大幅引き下げを初めとする思い切った住宅対策、地元自治体が設けられた阪神・淡路大震災復興基金への地方財政措置生活支援アドバイザーの設置など、さまざまな支援体制の充実をできる限り講じてまいりました。さらに、現在、地元の自治体との間で、被災者の健康、福祉や生きがい対策など、きめ細かな生活再建策の拡充に向けて検討を行っているところであり、これからも努力をしてまいる問題でございます。  次に、公的介護保険制度実現についてのお尋ねがございました。  これは、国民老後最大の不安要因である介護社会的に支える仕組みを構築しようとするものであり、現内閣の最重要課題の一つとなっております。今国会に提出いたしました法律案は、これまで関係審議会審議地方関係団体との協議などの積み重ねの上に取りまとめたものでありまして、不祥事を理由に先送りすべきものでも、またされるべきものでもありません。成立に向けて全力を尽くしたいと考えております。  次に、規制緩和につきましては、高コスト構造の是正、新規産業の創出といった観点から、情報通信、物流、金融、土地・住宅、雇用、医療・福祉の六分野中心に、また行政改革委員会の意見最大限に尊重しながら、来年三月末までに規制緩和推進計画を再改定し、大規模な規制の緩和や撤廃を推進してまいります。  次に、行政監視院法案について御意見をいただきました。  私は、国会行政の監視機能を強化される、そうした観点から、憲法の諸規定を踏まえ活動されることは大切なことだと考えておりますし、そうした考えを否定するつもりはございません。その上で、監視院そのものにつきましては国会みずからが判断をされるべき課題であると思います。同時に、国民行政に対する信頼というものを確保しようとする場合、私は、政府の中の行政監察業務を全くなくしてしまうということは不適切なことだと思います。政府自身がみずからやはり不十分な点は補う努力をしながら行政の改善を進めていくべき責任はあると考えております。  情報公開の早期実現についてのお尋ねがございました。  現在、情報公開法の制定について御審議いただいております行政改革委員会からは、年内に御意見をいただくことになっております。政府としては、情報公開法の早期制定の御要望にこたえるべく、意見具申をいただきました後は直ちに立案作業に着手し、全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。  また、国民が納めた税金を私物化し、選挙の道具に使おうというのかという御指摘でありましたが、補助金配分、執行に当たって、その補助目的等に照らして厳正かつ公正な配分、執行が行われるべきことは当然であり、今後ともそのような観点に立って適正を期してまいります。  次に、金融行政に関する大蔵省改革を先行させて、次の通常国会において大蔵省設置法などの改正を実現する考えか、そうした御指摘をいただきました。  金融行政機構のあり方につきましては、中央省庁全体の再編に先駆けて、与党三党の大蔵省改革についての報告を踏まえて最大限努力をし、次期・通常国会に所要の法案を提出したいと考えております。また、財政と金融の分離など金融行政以外の大蔵省改革については、我が国行政機構のあり方根幹にもかかわるものであり、与党三党の報告でも述べられておりますように、中央省庁の改革を初めとする行政改革全体の中で検討を進めることが必要だと考えております。  また、会計検査院の検査官人事についてお触れをいただきました。  私どもとしては、行政及び財政にすぐれた識見を有する方が適当、そうした観点から人選を行ってまいりました。検査官は内閣が任命する官職であり、今後とも内閣としてこの職にふさわしい幅広い人材からの登用に努めてまいりたいと思います。  次に、財政再建については、まず、九年度予算編成に当たり、財政構造改革元年とすべく各般の、制度改革実現に努力をしますとともに、従来にも増して徹底した歳出の洗い直しを聖域を設けることなしに行い、限られた財政資金の重点的、効率的な配分に取り組んでまいりたいと考えております。また、中期的な財政健全化目標の設定などにつきましても積極的に取り組み、財政再建の法律につきましても検討を進めてまいりたいとお答えを申し上げたところであります。  次に、二十一世紀に向けての日米関係の進むべき方向というお尋ねをいただきました。  現在、日米協力関係は、政治・安全保障、経済、そして地球規模の問題への取り組みなど、本当に幅広い分野にわたっております。この関係の維持発展というものは、我が国のみならずアジア太平洋、ひいては世界の平和と繁栄に欠くことのできないものだと私は信じております。私は、これまで築いてきた両国間の強固な信頼関係を基盤としながら、今後とも青少年の交流等まで含めた日米関係の一層の強化に全力を尽くしてまいりたい、そのように考えております。  次に、歴史認識につきましては、政府は、一九九五年八月十五日の村山内閣総理大臣談話を基本とし、世界の平和と繁栄に向かって力を尽くしていく、この立場を今までも申し上げてまいりました。改めて申し上げる次第であります。  次に、日中関係について御意見がございました。  日中関係は、この両国だけではなくアジア太平洋地域、さらには世界全体の平和と繁栄のために大変重要な二国間関係であります。そして、今日までも我々は、例えばWTOへの中国の早期加盟を各国に働きかける、それは世界経済のためにも必要なこと、そのような思いで努力をしてまいりました。今後とも相互信頼に基つぐ日中関係の一層の発展に努めたいと考えておりますし、先般のマニラでの日中首脳会談におきまして、江沢民国家主席と私の間で相互の訪日、訪中を招請し合いました。日中両国民が明年の国交正常化二十五周年を心から祝福できるように、これからも努力を尽くしていきたいと考えております。  また、アジア太平洋地域の非軍事的な脅威に対する取り組み、これは、昨年の議長国として日本が主宰いたしましたAPEC大阪会合並びに非公式首脳会合において日本自身の発案として、問題提起として、二十一世紀におけるアジア太平洋地域の制約要因として人口、エネルギー、食糧、環境といったテーマをお互いが関心を持ちながら検討していくべき問題として提起をいたしたとおりでありまして、これまでもAPECの活動を通じ、環境やエネルギー、食糧などの問題に精いっぱい取り組んでおります。本年もAPECの非公式首脳会合におきまして、太平洋の海洋環境の保全などにつきましての具体的な提案を行ってまいりました。明年は、議長国でありますカナダとともに一層の努力を傾注してまいりたいと考えております。  次に、人権擁護の外交ということから御指摘がございました。  世界人権会議で、人権が普遍的な価値であり、国際社会の正当な関心事項とされたことを受け、我が国も世界における人権擁護の促進に外交面で積極的な役割を果たす必要があると思います。  ミャンマーに対する対応につきましては、我が国はミャンマーに対し民主化と人権状況の改善を求めながら、対話を通じ粘り強く今日までも働きかけてまいりました。これからもそうした努力を続けたいと思います。  次に、核兵器禁止条約の締結を呼びかけるべきだという御意見をいただきました。  しかし、私は、核兵器のない世界を実現するためには、核兵器禁止条約の締結の呼びかけ以前に、先般採択されました包括的核実験禁止条約の早期発効のために寸すべての国の署名、批准を呼びかけるとともに、との条約に続くカットオフ条約交渉の早期開始に向けて努力するなど、現実的かつ具体的な核軍縮措置を着実に積み重ねていくことが重要だと思います。この包括的核実験禁止条約にも今日なおその態度を留保し、あるいは反対の姿勢を持っている国がある状況の中で、我々は早期発効のための努力、まずこれを優先させていきたいと考えております。  最後に、対人地雷の全面禁止につきましてお尋ねがありました。  我が国としては、既に本年六月、全面禁止に向けた国際的な努力を支持するという立場を発表すると同時に、先般、国連第一委員会で採択されました対人地雷全面禁止に関する決議について共同提案国となるなど取り組みを行っております。また、地雷の除去につきましても、来年三月に我が国の主宰で国際会議の開催を予定するなど、今後とも関係国とともに最大限の努力をしてまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)     〔国務大臣三塚博君登壇
  15. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 民主党代表の鳩山議員にお答えを申し上げます。  既に総理大臣から財政危機的状況についての言及があり、本件に対する再建決意が表明されたところであります。既に先ほども申し述べましたが、八年度予算におきまして二十一兆の赤字国債、いわゆる公債を発行いたしました。そのうち十二兆円が後世にツケを回す赤字国債でございます。まさに現代に政治の衝にある私ども、責任の重大さを痛感いたし、これに取り組むことが喫緊の課題と相なっておりますこと、鳩山議員演説のとおりであります。  私は、九年度予算編成に当たりましては、橋本首相の基本方針、ただいま言われました徹底した歳出の洗い直し、また聖域を設けることなく限られた財政資金の重点的、効率的な配分に取り組んでまいる、まさに主管大臣としてこのことにすべてをかけてやり抜かなければならぬと考えております。また、中期的な財政健全化目標につきましては、積極的に取り組んでまいります。  御鞭撻のほど、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)     〔国務大臣池田行彦君登壇
  16. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 鳩山議員から、私には二つの御質問がございました。  まず、北東アジア地域の安全保障体制を構築することについてでございますが、この地域の安定を図っていくために、地域的な対話と協力を進めることは大変重要でございます。そういった観点から、必ずしもこの地域に限定したフォーラムではございませんけれども、例えばASEAN地域フォーラム等におきまして、この地域信頼醸成のために話し合いを行っているところでございます。また同時に、民間レベルにおきまして、北東アジア協力対話というような活動も行われておりまして、この地域の安定を図る上で、信頼醸成を図る上で有意義な対話の場であると考えております。  他方、北東アジア安全保障体制と呼び得るような、いわばかたい枠組みをつくることができるかどうかという点について申しますと、この地域は各国で脅威に対する認識というものがいろいろ異なっているということ、あるいは一部の国の間では正常な国家間の関係がない、このような状況でございますので、いまだかたい体制をつくる環境は整っていない。そういった意味で、先ほど申しましたような対話の努力をまずは進めていく、こういうことであろうかと思っております。  次に、核兵器禁止条約の問題につきましては、総理から御答弁がございました。私から一点だけ補足させていただきますと、カットオフ条約以降の核軍縮措置について国際社会としての共通認識を形成していこう、その一助といたしまして、実は本二日より我が国が、NPT延長後の核軍縮セミナー、こういうことを主宰しているところでございます。今後もこのような具体的な努力を積み重ねてまいりたいと思います。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣久間章生君登壇
  17. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 対人地雷の全面禁止に向けた具体的方針についてのお尋ねですが、先ほど総理からお答え申し上げましたとおり、我が国は、本年六月に、対人地雷の全面禁止に向けた国際的な努力を支持するとともに、地雷の使用制限等に関する。一連の自主的措置を講ずる旨を表明いたしました。防衛庁としましても、我が国の平和と安全を守るという任務を踏まえつつ、自主的措置の着実な実行を図るとともに、全面禁止に向けた国際的な努力に我が国が参加、協力していく中で、これに可能な限り協力していく所存であります。〈拍手)      ――――◇―――――
  18. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明三日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
  19. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 荒井広幸君の動議に御異議ありませんか。      〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十六分散会      ――――◇―――――