○
小泉国務大臣 ただいま議題となりました
介護保険法案、
介護保険法施行法案及び
医療法の一部を改正する
法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
まず、
介護保険法案について申し上げます。
我が国においては、急速な高齢化の進展に伴って、介護を必要とする者の数も急速に増加しております。このことは、介護期間の長期化や核家族化等に伴う家族機能の変化などと相まって、介護問題をより深刻化させる一因となっており、今日、介護問題は、
国民一人一人にとって、老後生活における最大の不安要因となっております。
介護が必要となった場合、訪問介護等の
福祉サービスのほか、その心身の状況に応じた保健
医療サービスが必要となりますが、これらは、老人
福祉及び老人保健の異なる二つの
制度のもとで提供されてきたところであります。このため、利用者の立場に立ったサービス提供や効率的なサービス提供という
観点からさまざまな
問題点が指摘されております。
こうした状況を踏まえ、
現行制度の再構築を図り、
国民の共同連帯の
理念に基づき、社会全体で要介護者の介護を支える新たな仕組みを
創設するため、今般、本
法律案を提出した次第であります。
次に、本
法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。第一に、
介護保険は、被保険者の要介護状態または要介護状態となるおそれがある状態に関し、必要な保険給付を行うこととし、給付に当たっては、被保険者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、被保険者の選択に基づき、適切な保健
医療サービス及び
福祉サービスが、多様な事業者または
施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮することとしております。
第二に、市
町村及び特別区は、
介護保険を行うこととし、国及び都道府県は、
介護保険事業の
運営が健全かつ円滑に行われるよう必要な各種の
措置を講じなければならないこととしております。
第三に、
国民は、共同連帯の
理念に基づき、
介護保険事業に要する費用を公平に負担するとともに、みずから要介護状態になることを予防するため、常に健康の保持増進に努め、要介護状態となった場合においても、その有する能力の維持
向上に努めるものとしております。
第四に、
介護保険は、六十五歳以上の者を第一号被保険者とし、四十歳以上六十五歳未清の
医療保険加入者を第二号被保険者とすることとしております。
第五に、保険給付は、要介護状態の軽減もしくは悪化の防止または要介護状態の予防に資するよう行われるとともに、その内容及び水準は、要介護者の有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならないこととしております。
第六に、保険給付の円滑な実施の確保を図るため、厚生
大臣は、保険給付に係るサービスを提供する体制の
確保等に関する基本的な指針を定めるものとし、市
町村及び都道府県は、それぞれ保険給付に必要なサービスの
確保等に関する計画を定めることとしております。
第七に、
介護保険制度を各主体が重層的に支え合うという
観点から、国は、介護給付等に要する費用の四分の一を負担するとともに、要介護認定等の事務に要する経費の二分の一に相当する額を交付することとし、都道府県及び市
町村は、それぞれ、保険給付に要する費用の八分の一ずつを負担することとしております。また、第一号被保険者は市
町村に保険料を納付するものとし、各
医療保険者は、すべての被保険者数に対するすべての第二号被保険者数の割合を勘案して算定される介護給付費納付金を、社会保険診療報酬支払基金に納付し、支払基金はこれを各市
町村に対し一律に交付することとしております。
第八に、市
町村の
介護保険の財政の安定化に資するため、都道府県は、財政安定化基金を設け、一定の事由により市
町村の
介護保険の財政に不足が生じた場合に、資金の交付または貸し付けを行うこととしております。また、市
町村は、
介護保険の財政の安定化を図るため、他の市
町村と共同して、介護給付等に要する費用の財源について、相互に調整する事業を行うことができるものとし、この場合に、都道府県は、当該市
町村の求めに応じ、所要の調整等を行うものとしております。
第九に、
国民健康保険団体連合会は、市
町村から委託を受けて保険給付に係る費用の請求に関する審査・支払
業務等を行うとともに、サービス提供機関に対する必要な指導助言等を行うものとしております。
第十に、政府は、要介護者に対する保健
医療サービス及び
福祉サヒビスの提供体制の状況、
国民負担の
推移等を勘案するとともに、障害者
福祉施策、
医療保険制度等との整合性に配慮し、被保険者の範囲、保険給付の内容及び水準、保険料の負担のあり方を含め、
介護保険制度の全般について、地方公共団体等の
関係者の意見を考慮しつつ、検討を加え、その結果に基づき、必要な見直し等の
措置を講ずるものとしております。
なお、本法律の施行日は、一部の
事項を除き、
平成十二年四月一日としております。
次に、
介護保険法施行法案について申し上げます。
本
法律案は、
介護保険法の施行のために必要な経過
措置を定めるとともに、
関係法律の規定の整備を行おうとするものであります。
以下、本
法律案の主な府容につきまして御説明申し上げます。
まず、
介護保険法の施行のために必要な経過
措置であります。
第一は、居宅給付支給限度基準額に関する経過
措置であります。
介護保険法の施行時においては、居宅サービスの供給体制の整備状況が地域によって異なることが考えられるため、法定の支給限度基準額に基づく介護給付等を円滑に行うことができる日までの間、市
町村は、居宅サービスに係る供給体制の整備状況等を考慮して、法定の支給限度基準額を下回る額をその市
町村の支給限度基準額とすることができることとしております。また、国及び都道府県は、このような市
町村に対し、必要な
支援を行うこととしております。
第二に、現在の指定老人訪問
看護事業者、特別養護老人ホーム、老人保健
施設等が
介護保険法の指定居宅サービス事業者または
介護保険
施設に円滑に移行できるよう必要な経過
措置を定めることとしております。
なお、施行日において老人
福祉法の
措置により特別養護老人ホームに入所している者については、施行日以後引き続き入所している間は、五年間に限り、
介護保険の保険給付を行うに当たり要介護認定を不要とする等、所要の経過
措置を講ずることとしております。
第三に、
介護保険法の施行のために必要な準備として、各種の基準についての審議会への諮問や要介護認定の手続等の行為を、施行日前においても行うことができることとしております。
次に、
関係法律の規定の整備であります。
第一に、老人
福祉法の改正であります。
老人
福祉法の老人居宅生活
支援事業等について、原則として利用者がみずから契約により利用できることとなることに伴い、定義規定の改正を行うほか、やむを得ない理由により
介護保険のサービスを利用することが著しく困難である場合には、市
町村が居宅における介護等の
措置をとること等の改正を行うこととしております。
第二に、老人保健法の改正であります。
介護保険法において老人訪問
看護事業者及び老人保健
施設に相当する事業者及び
施設が規定されることに伴う所要の規定の整備等を行うこととしております。
第三に、健康保険法の改正であります。
健康保険事業に要する費用に
介護保険の納付金の納付に要する費用を含めるとともに、被保険者の保険料額は、
介護保険の第二号被保険者である被保険者については一般保険料額と
介護保険料額との合算額とし、それ以外の被保険者については一般保険料額とする等の改正を行うこととしております。
第四に、
国民健康保険法の改正であります。
国民健康保険事業に要する費用に
介護保険の納付金の納付に要する費用を含めるとともに、その費用に充てるための保険料は
介護保険の第二号被保険者である被保険者について賦課することとするほか、保険料の未納
対策を強化する等の
措置を講ずることとしております。
このほか、
生活保護法の改正として介護扶助を
創設することとするほか、
介護保険法の施行に伴う所要の法律の改正を行うこととしております。
なお、本法律の施行期日は、一部の
事項を除き、
介護保険法の施行の日としております。
続きまして、
医療法の一部を改正する
法律案につきまして申し上げます。
近年、人口構造の高齢化の進展、慢性疾患中心の疾病構造への変化、
医療の質の
向上に対する
国民の要望の高まり等、我が国の
医療を取り巻く環境は著しく変化しております。
こうした中で、要介護者の増大に対応するために、介護体制の整備を図ることが重要な
課題となっております。また、日常生活圏において、通常の
医療需要に対応できるよう
医療提供体制の整備を図ることや、
患者の立場に立った
医療に関する情報提供を促進することが一層求められております。
このような状況を踏まえ、療養環境、介護体制の整備や地域
医療の確保の
観点から、
医療提供
施設に係る
制度の見直しを行うとともに、
医療計画
制度の
充実、
医療法人の
業務範囲の拡大を行うなど、
国民に良質かつ適切な
医療を効率的に提供する体制の整備を図るため必要な
措置を講ずることとし、本
法律案を提出した次第であります。
以下、本
法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、
医療の担い手は、
医療を提供するに当たって、適切な説明を行い、
医療を受ける者の理解を得るよう努めるものとしております。
第二に、療養型病床群
制度の診療所への拡大であります。要介護者の増大に対応するため、身近な
医療機関である診療所を活用する
観点から、長期療養
患者の療養に適した人員配置及び構造設備を有する療養型病床群を診療所にも
設置できることとしております。
第三に、地域
医療支援病院
制度の
創設であります。地域に必要な
医療を確保する
観点から、地域の
医療機関が提供する
医療への
支援、救急
医療の実施、地域の
医療従事者の研修等を行う病院を地域
医療支援病院として位置づけることとしております。
第四に、
医療計画
制度の
充実であります。日常生活圏で必要な
医療を確保し、地域
医療の体系化を図る
観点から、
医療圏の設定及び必要病床数に関する
事項に加え、地域
医療支援病院や療養型病床群の整備の目標等に関する
事項、
医療提供
施設相互の機能の分担及び
業務の連携等に関する
事項等を二次
医療圏ごとに定めることとしております。
第五に、
医療法人の行い得る
業務に老人居宅介護等事業その他の在宅
福祉事業を加えるとともに、公的な
運営が確保されている特別
医療法人について収益事業の実施を認めることとしております。
第六に、医業等に関する広告規制の見直しとして、広告できる
事項に療養型病床群の有無等を規定することとしております。
本法律の施行期日は、
医療提供に当たっての
患者への説明に関する規定及び
医療法人の在宅
福祉事業への
業務範囲の拡大に関する規定につきましては公布の日としておりますが、それ以外の部分につきましては公布の日から一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
以上、三法案の提案理由及びその内容の概要について御説明申し上げました。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。