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1996-05-14 第136回国会 参議院 労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月十四日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  五月十三日     辞任         補欠選任      坪井 一宇君     保坂 三蔵君      青木 薪次君     川橋 幸子君  五月十四日     辞任         補欠選任      今泉  昭君     平田 健二君      川橋 幸子君     三重野栄子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         足立 良平君     理 事                 南野知惠子君                 真島 一男君                 武田 節子君                 大脇 雅子君     委 員                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 山東 昭子君                 保坂 三蔵君                 前田 勲男君                 松谷蒼一郎君                 石井 一二君                 平田 健二君                 星野 朋市君                 川橋 幸子君                日下部禧代子君                 三重野栄子君                 吉川 春子君                 笹野 貞子君                 末広真樹子君    国務大臣        労 働 大 臣  永井 孝信君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労働基準        局長       松原 亘子君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君    事務局側        常任委員会専門        員        佐野  厚君    説明員        社会保険庁運営        部保険指導課長  鬼沢 幸夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、坪井一宇君及び青木薪次君が委員辞任され、その補欠として保坂三蔵君及び川橋幸子君が選任されました。     —————————————
  3. 足立良平

    委員長足立良平君) 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 南野知惠子

    南野知惠子君 自由民主党の南野知惠子でございます。  労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案について、お伺いいたします。今回の法改正におきまして二段階審査請求置主義を維持し、むしろそれを整備しようとする、そういった理由につきましてお聞かせいただきたいと思っております。
  5. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 先生指摘のように、労災保険法は二段階審査請求置主義をとっているわけでございますけれども、この趣旨は、多数に上る保険給付に関する決定に対する不服審査を迅速かつ公正に処理すべき要請があるわけでございますが、そういう要請にこたえるために、専門的知識を有する特別の審査機関を設けた上で、裁判所の判断を求める前に、まず第一段階といたしまして簡易迅速な処理を図る第一段階審査請求、そして慎重な審査を行い、あわせて行政庁判断の統一を図る第二段階の再審査請求、この二つを必ず経由させることによって行政司法との機能の調和を図りながら保険給付に関する国民権利救済を実効あるものとしようという趣旨であるわけでございます。  労働省といたしましては、このような二段階審査請求前置の趣旨を生かしつつ、他方で国民司法救済を不当に閉ざすことがあってはならないわけでございますので、そういうことのないようにするため、今回、第一段階審査手続が遅延した場合の救済の道を開くということで法的整備を図ろうとするものでございます。
  6. 南野知惠子

    南野知惠子君 労災保険給付決定にかかわる審査請求事案につきまして、平均してみますとその処理にはどれほどの時間を要しておられるのでしょうか。また、三カ月以内で処理しておられる事案、それらについての割合をお知らせいただきたいと思います。
  7. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 残念なことではございますけれども若干長期間を要しておりまして、私ども整理をいたしました結果では、平成年度審査官レベル審査請求に要する期間というのが一年一カ月、すべての事案平均値でございますが、一年一カ月というふうになっております。なお、速報で七年度、急いで集計した結果によりますとこれが一年ということで、若干縮まってきてはおりますけれども、この程度期間を要しているというのが実態でございます。  なお、御指摘の三カ月以内でどの程度処理をされておるかという点でございますが、これはまだ六年度の数値しか集計ができておらないのでございますけれども、六年度全体で審査請求事案が九百一件ございましたが、このうち九十日以内に処理ができたものが五十件、率にいたしまして五・五%という状況でございます。
  8. 南野知惠子

    南野知惠子君 審査にそれだけの長期間を要しているということにつきましては、何かこれという理由があるんでしょうか、お知らせください。
  9. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 審査官段階審査請求事案というのはいろんなものがあるわけでございますけれども、そのうち業務上の疾病に関するものもかなりございます。その認定の中には、業務疾病発症との関係がどの程度のものかということを判断しなきゃいけないわけでございますけれども、その判断をするのに相当困難なものがあるというのが実態でございます。そのための調査ですとか医学的証拠収集等にやはりかなりの長時間を要しているというのが実態でございます。  また、これまで審査官は、迅速ということは非常に重要なことですけれども、丁寧といいますか念を入れて調査をしなければということの方がかなり先立っていたということもございまして、審査官原処分庁と同じように幅広く資料収集する、また事情聴取も非常に幅広く、原処分庁がやったのとある意味ではダブってやっているというような実態も実はあったわけでございます。そういったことから非常に長期化してきていたというのが実態でございます。  また、特に近年、先生も御承知のように過労死事案と言われているような事案ですとか、非常に複雑困難な事案がふえてきております。そういうことが労災給付対象になるかどうか、審査をするに当たりましては、業務がどの程度過重だったのかといったようなことですとか、その被災された労働者の方の基礎疾患がどの程度のものであったかといったことについて医学的な証拠を相当収集しなければいけないというようなこともございまして、詳細な検討に非常に時間がかかっているというのが実態でございます。
  10. 南野知惠子

    南野知惠子君 大変よくわかりました。  いろいろなことが絡み合わさってそのような遅滞をいたしているというのが実情のようでございますが、そのような実態を踏まえてみますと、今回の審査官決定遅延などにおける救済規定を設置したということによって審査会決定を経ないでまた再審査請求がなされるというケースがかなりふえるのではないか、数が多くなるのではないかと考えられますが、その数についてはどの程度見込んでおられるのでしょうか。  また、こうしたケースがふえるようになりますと、第一段階審査官によるいわゆる不服審査、それは骨抜きになってしまうという懸念があるんですが、その件についてはいかがでございましょうか。
  11. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 私どもといたしましては、救済規定を今回の法改正で創設するということでお願いしているわけでございますけれども、そもそもこの救済規定が適用されるようなケースが生じないように、なるべく早く審査請求事案処理しなければいけないということをまず第一に置いているわけでございます。  そういうことから、先ほど申し上げましたように、非常に複雑な事案があり、調査に時間を要し処理に長期間かかっているということを御説明申し上げましたけれども、これからの事務処理というのはやはりかなり効率化していかなければいけないんではないかというふうに考えたところでございます。  基本的には、審査請求事案は三カ月以内に処理をするということをまず前提といたしまして、一番の問題点は、原処分庁の処分したその処分理由といいますか、そういうものに対して被災をされた労働者の方また遺族の方がそうではないということでそれに不服を申し立てているわけでございますが、その争点整理する、まずこれをきちんと整理するということが出発点になってくるわけでございますので、それを徹底して行う。したがいまして、先ほどちょっと申し上げましたが、原処分庁とダブってさまざまな調査を幅広くやっていた、場合によっては改めて調査しなければいけないというようなことも出てくるわけでございますけれども、ダブってやるというようなことがないように調査効率化していくというようなことが争点整理の結果きちんとやれていくのではないかということから、そういうことを徹底するように指示をいたしております。  また、OA機器を活用しまして事務処理を機械化する、それによって効率を上げるといったようなことなど、審査業務を抜本的に、実は昨年最高裁から判決が出た後、局内プロジェクトチームを設けまして審査業務抜本的見直しをやってきたわけでございます。その局内検討結果を踏まえまして今申し上げたようなことを地方局指示をいたしたわけでございますが、審査業務そのもの合理化効率化、こういったものをまず図り、先ほど一番最初に申し上げましたように、救済規定が適用されるということにならないように、三カ月以内で処理をするという前提業務を進めるようにという指示をいたしたわけでございます。  それから、今非常に定員事情が厳しい折ではございますけれども審査官増員、今年度平成年度二十七名の増員を認めていただけましたので、その増員を図りまして審査体制充実するということもあわせてやろうといたしているわけでございます。  先生質問のように、ではどの程度審査請求の方に行くのかという御質問でございますけれども、ここはなかなか、どの程度かという見込みは難しいというふうに考えておりまして、私ども何しろそういうことにならないようにしたいというのがまず前提でございます。  仮に三カ月を超えるという事案が出た場合、全くないとは言えないかと思いますので、そういう場合にどうするかということがあろうかと思いますけれども、まず不服を申し出た労働者の方の立場に立って考えますと、少なくとも三カ月の間いろいろ意見も言い、また資料も提出し、審査がかなり進んでいるという実態があるわけでございます。そういうことから、不服審査を申し立てた方は地元といいますか、都道府県労働基準局審査官はおりますので、その地元審査官に引き続きその事案処理してもらう方が適当だと考えられる場合も相当あるのではないか。再審査請求ということになりますと中央に一つ審査会があるわけでございますので、資料を提供したり、また場合によっては意見を言ったりするようなことについても非常に時間がかかるといったようなこともあるわけでございますので、審査請求をされた方も結論が出るのであればもう少し待とうかということもあろうかと思います。  いずれにいたしましても、三カ月を経過した時点で私どもとしてある程度、一体どういう状況になっているか、請求をされた方にその進行状況といいますか、そういったことは御説明することは必要かなと思っておりますけれども、そういったことで御理解をいただき、なるべく第一段階処理ができるようにいたしたいというふうに考えているわけでございます。
  12. 南野知惠子

    南野知惠子君 いろいろと細かに御説明いただきました。慎重に物事を考えなければいけませんし、またそういったことについては効率化も考えなければいけません。さらに、三カ月以内に処理をなさるということ、それに加えまして二十七名の増員もお図りになる、そういった具体例もお示しいただきました。さらに地方審査官、そういった方々にも一つの大きな依頼ができるのではないかというようなこともるるお話しされ、そういった第一回目の審査を飛んでというようなことがないということについての何か御決意をいただいたような感じがいたします。それがぜひ実行されますことをお願いしたいと思います。  次は、審査請求事案処理、それらについての迅速化を図るためには手続ども必要ではないかというふうに思っております。今お示しいただいたものに加えまして、何か手続についての内容等がございましたらお聞かせください。
  13. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 先ほど来、事務処理効率化ということで、原処分庁との重複を避けつつ調査を行うですとかOA機器を活用するといったようなことを申し上げましたが、それ以外にも細かい点ではございますけれども、例えば審査請求をまず受け付けるわけでございますけれども審査請求理由が不備な場合には受け付け後それを戻して補正をさせるというようなことをやっておりましたけれども、窓口で補正をさせるということで、これは受付前ではございますけれども、まずその補正期間を短縮をするとか、それから請求をされた方またはその代理人の方から意見書が出ることがございます。意見書について提出するということが最初におっしゃられた、それがなかなか出ない場合に督促を繰り返して早く出してほしいということで言っているわけでございますけれども、いつまでもそういう督促を繰り返して三カ月を徒過してしまうというようなことになってもいけませんので、意見書を出したいという場合には提出期限を定めて、このときまでに出してほしいといったことの協力を依頼する、請求人に対してそういう依頼をするといったようなことも必要なのではないかというふうに考えております。  また、事情を聞く場合には請求人の方の都合に合わせて事情を聞いて、いつ来ていただきたいというようなことでやっていたわけでございますが、そうしますとなかなか、もちろん都道府県労働基準局ですから管轄区域は県内でございますが、地域によりましてはその県庁所在地まで来るのに時間がかかるというような場合もございます。そういう場合にはむしろ審査官の方から相手先に出向いて事情を聞くといったようなことでその日程をいろいろ調整して期間を短縮するなど、非常に細々としたところを少しずつ短縮させるといったようなことで、先ほど申し上げましたように三カ月でやるという前提でまず事務処理、モデル的なものを地方局に示しまして、それに沿ったような形で審査計画審査官が立てて進めるようにといったようなことを指示いたしたわけでございます。  先ほど二十七名増員をしたというふうに申し上げましたけれどもただ人がふえればいいというわけではございませんので、この新たに増員になります審査官も含めまして研修も充実をしたいというふうに考えているところでございます。
  14. 南野知惠子

    南野知惠子君 細かに気配りをしてくださっていることにつきましては、大変いいことだなというふうにも思っております。それに、審査請求事案処理、それの迅速化を図るということはどちらの方にしても大変必要なことであると思いますし、そのためには原処分段階手続、それを充実することが必要というふうにも考えております。それらについての具体的な対応策がございましたら、お示しください。
  15. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) おっしゃるとおり、審査請求事案を迅速に処理するというためには、原処分段階でいかに効率的にまた適正に調査等を実施しているかということがポイントになってくるわけでございます。そういうことから、原処分段階においても調査を徹底する、また的確な事実認定を確保するといったようなことについて特段の注意を払うように指示を、これまでもしてきておりますけれども改めて指示をし、また医証収集医学意見書ですね、そういう収集を初め各種の事務処理効率的に行うようにということをさらに徹底させたいというふうに考えているところでございます。
  16. 南野知惠子

    南野知惠子君 今回、このような細部にわたります法律改正が行われますが、その後にも相変わらず審査に長期間を要する状態が続くのであれば、そのときこそ労災保険審査請求制度存在意義というものがなくなるのではないか、問われるのではないかということを感じております。そういう意味で、審査段階を含め審査迅速化の実を上げることにつきましての、大臣の御決意をお願いしたいと思います。
  17. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の、今御心配されていることは非常に重要な問題だと認識をいたしております。したがって、労災保険審査請求制度が二審制になっている趣旨及び審査置主義をとっている趣旨にかんがみまして、審査迅速化ということについては重大な問題であるという認識のもとにその迅速化を図ってまいりたい、このように決意をいたしておるわけであります。  今後とも、事務処理の抜本的な見直しによる簡素合理化等を進めるほか、審査体制整備であるとかあるいは充実等を図りながら、より一層先生の御心配されているようなことの起こってこないように全力を尽くしてまいることを決意として申し上げておきたいと思います。
  18. 南野知惠子

    南野知惠子君 大臣の御決意をお聞きしまして、これから労災被災者にとりましてもへまたそれを審査される方々につきましても大変前向きに取り組めるのではないかなというふうに思っております。  そこで、一番私が気になりますことが過労死の問題でございますが、そのことについてお尋ね申し上げます。昨年二月に過労死認定基準改正がございましたが、そのポイントはどこにあるのでしょうか。お示しいただきたいと思います。
  19. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 昨年二月の認定基準改正につきましては、認定に関する問題点整理検討を行うとともに、最近の医学的知見検討結果等も踏まえて行ったものでございますが、ポイントは主に四点でございます。  まず第一は、業務過重性を客観的に評価するに際しまして、従来は一般的な労働者にとっても特に過重であるかどうかということで評価をいたしていたわけでございますけれども、これにつきまして年齢ですとか経験、そういったことについても考慮することにしたというのが第一のポイントでございます。  第二の点は、発症前一週間より前の業務評価でございますけれども、従来はこれを付加的に考慮するということにいたしていたわけでございますが、これを発症前一週間以内の業務日常業務を相当程度超えて過重であるというような場合には、発症前一週間より前の業務についてもこれを考慮し総合的に評価をするということにした点でございます。  第三点目は、日常従事していた業務と質的に著しく異なる業務に従事した場合の過重性評価でございますが、これまでこの点については十分明確にしていなかったわけでございますけれども、専門医による評価を重視して判断をするということにしたというのが三番目でございます。  四番目のポイントは、継続的な心理的負荷精神的ストレス評価についてでございますけれども、従来はこれについての対応は必ずしも明確でなかったわけでございますけれども、今後は医学的判断に基づき、これについても対応を図ることにしたということでございます。  以上、四点でございます。
  20. 南野知惠子

    南野知惠子君 この四点については大変重要な事柄が盛り込まれていると思います。特に、最後の精神的な問題というのが過労死にも大きな影響を及ぼしているということをお認めいただいたことは、これからの作業が大変進めやすくなるのではないかなというふうにも思います。  同じく、昨年二月の認定基準改正後の過労死事案に関する労災保険給付認定状況について、お伺いいたします。
  21. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 過労死労災認定状況でございますけれども認定基準を今申し上げましたように平成七年二月に改正したわけでございますが、それ以降を申し上げさせていただく前に、その前の状況をちょっと御説明させていただきますと、平成年度十八件、平成年度三十一件、平成年度三十二件ということで推移をいたしてきたわけでございますが、平成年度、八年の三月末でございますが、七十六件というふうにふえました。  平成七年の二月に改正したわけでございます、ちょうど年度で切れないわけでございますけれども。ちなみに平成七年の二月から平成八年三月末、十四カ月間になりますけれども、つまり認定基準改正後という十四カ月間をとりますと、これが九十件ということになっておりまして、年度で比べましても、かつまた昨年二月以降の数字を見ましても、これまでの認定件数よりも大幅に増加をしているというのが実態でございます。
  22. 南野知惠子

    南野知惠子君 特に準備はしておられないと思うんですけれども、その九十件のうち何件ぐらいが処理されたものなんでしょうか。  今までの事案をずっと通しまして平成年度十八、平成年度三十一、平成年度三十二件、そして今回の九十件でございますか、そこら辺について何かございましたら教えてください。
  23. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 今申し上げました数字は、労働基準監督署段階におきまして過労死請求があったもののうち認定した件数でございます。  なお、請求件数というのはこれよりももちろん多いわけでございまして、例えば平成年度に七十六件認定したというふうに申し上げましたけれども請求件数は四百八十八件でございます。
  24. 南野知惠子

    南野知惠子君 本当にそういったものがふえてきているということに大変心を痛めております。  さらに、本年一月にも過労死認定基準というものを改正したというふうに承知いたしておりますけれども、その具体的な理由というのはどのようなものなんでしょうか、お伺いいたします。
  25. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 本年一月に新たにまた改正したわけでございますけれども、本年一月の過労死認定基準改正は、業務による過重負荷を原因とする不整脈による突然死、死亡に至らない場合もありますので突然死等と言っておりますけれども、それを新たに対象疾病に加えたというものでございます。  具体的には、この不整脈による突然死等業務上外判断でございますけれども、これにつきましては、まずその労働者基礎心疾患がある、これが明らかである場合には、それが業務による過重負荷によって急激に著しく増悪したものかどうかということで判断をするということでございます。場合によりましては、この基礎心疾患等が認められなかったとか、またその存在が明確でなかったというような場合で突然死等になる方もあるわけでございますが、そういう場合には不整脈そのもの業務による過重負荷を受けたことにより発生したものであるかどうかということにより判断をするということにしたものでございます。
  26. 南野知惠子

    南野知惠子君 高齢者方々もふえてきておられますし、そういう面では、今お話がございました不整脈、いわゆる突然死というようなこともございますし、また作業によってはストレスがかかるというようなことも多かろうというふうに思っております。  それと関連する基礎疾患というところで、やはり健康が大切であるということの基本に着眼するわけでございますけれども、最近の認定基準改正などで今後さらなる認定基準見直しというものもお考えだろうと思いますが、そういったものも含めた過労死事案に関する労災補償対策、そういったものにはどう取り組んでおられるのか、お伺いいたします。
  27. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 労災補償対策全般になりますと非常に幅が広くなるわけでございますが、今先生から一連の御質問がございました過労死事案労災認定について申し上げさせていただきますと、昨年の二月とことしの一月に改正をしたわけでございまして、これに基づきまして迅速適正な労災認定に努めてきているわけでございます。  今後とも、医学研究の動向等を見守りながら、新たに医学的な知見が得られた場合にはさらに認定基準を見直すなど適切に対応いたしたいというふうに考えているところでございます。
  28. 南野知惠子

    南野知惠子君 そういった疾病も複雑化してまいります。そういった意味では、過労死事案を初めとする複雑困難な事案につきましては、やはり専門的な医師というものの協力を得ることが不可欠であるというふうに思っておりますが、積極的に医師の協力を得るということにつきましてはどのようなことが図られておるんでしょうか、お知らせください。
  29. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 先生おっしゃるとおり、専門的なお医者様方の協力を得るということは本当に不可欠なことでございます。私どもといたしまして、業務上外判断に当たりまして、こういう医学的な専門知識を必要とする事案につきましては、これまでも中央及び地方に労災医員という方をお願いして配置をし、必要な御意見を伺ってきているところでございます。  さらに、医学に関する専門的な意見を迅速に収集するということが求められてきているわけでございますけれども、そういうことに対応いたしまして、医師会ですとか労災病院、こういったところとの連携をさらに密にいたしまして、労災認定に関しより一層専門的なお医者様方の協力を得られるように努めたいということで、また改めて地方にも指示をし、努力を促しているところでございます。  また、労働基準監督署の職員、原処分を行うのはまず労働基準監督署の職員が調査をし認定手続をやるわけでございますけれども、この職員が労災補償を的確かつ迅速に処理する上で医学に関する必要な知識、経験というのが蓄積されているかどうかということが非常に重要になってまいります。そういうことから、先ほど申し上げた地方にお願いして置いております労災医員の方々ですとか、その他私ども行政に御協力いただける先生方と職員との情報交換、意見交換、こういった場なども設け、常日ごろから医学的な知識に職員自身が触れられるように努力をするようにということを私ども地方局指示し、積極的なお医者様方の協力も得るようにあわせて指示をいたしているところでございます。
  30. 南野知惠子

    南野知惠子君 過労死判断ということは本当にドクターにとっても過労死するぐらい切迫した診断になるだろうというふうに思っております。そういったドクターを得られるということは大変難しいこととは思いますけれども、やはりそういったものの知見をたくさん持っておられる先生方、正確にそれを診断できる先生方、そういった先生方に頼らざるを得ないというところだろうというふうに思いますが、ぜひ効果的なドクターの活用、積極的な活用ということをお願いしまして、その事案がなるべく迅速に取り計らわれることをお願いしたいと思っております。  過労死事案を含めまして、そういう労災保険制度による被災労働者の保護、それを確実なものとしていくためには、やはり労災保険制度の趣旨などを広く国民方々に知っていただかなければならないというふうに思っておりますが、そういう周知する措置、まずそういったことについてのお考えをお示しいただきたいと思っております。
  31. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 労働基準監督署の窓口ですとか、また電話などで労災の問題について相談がありました場合には、相談者の立場を十分踏まえまして、労災保険制度そのものがどういう制度であるかといったこと、また労災請求する場合の手続等に関しまして懇切、丁寧に説明するということを旨とし、対応いたしているわけでございますが、またあわせまして事業主に対しましても集団指導の場などを通じましてその周知を図っているところでございます。  特に、過労死についての認定基準、先ほど来御質問もありお答え申し上げましたけれども、昨年二月とことしの一月に認定基準改正したわけでございますが、これらについてより一層周知を図るために、平成年度から財団法人労災年金福祉協会に委託をいたしまして、全国一斉に窓口相談及びフリーダイヤルによる電話相談を実施することといたしているところでございます。  ちょっとお許しをいただきましたので、ポスターを御紹介させていただきたいのでございますが、(資料を示す)「相談のお知らせ」ということで、キャッチフレーズ「大切にしましょう あなたのからだ!」、「毎月第二月曜日は「仕事と健康を考える日」」と、こういうキャッチフレーズで、毎月第二月曜日十時から十六時まででございますけれども、フリーダイヤルによる電話相談、もちろん来所いただいてもいいわけでございますけれども労災年金福祉協会にこういう事業を委託いたしまして労災保険制度について正しく認識していただけるように、またいろいろ悩みがあっても相談できないという方に電話でも相談できるようにと、こういう事業も始めまして、PRを始めたわけでございます。  ぜひ先生方もPRに御協力いただければありがたいと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、この労災保険制度について正しく皆様方に認識していただくことは重要なことだと考えておりまして、今後とも努力をいたしたいというふうに考えております。
  32. 南野知惠子

    南野知惠子君 ポスターをお示しいただき、仕事と健康を考えると、そういったフリーダイヤルは議員からも殺到するのではないかなというふうに思っております。  やはり、我々にとっては健康が一番大切でありますし、かといって仕事もこれはサボることができないということでございます。そういったことについて窓口をお開きいただき、住民の方々もそれを活用できるということは大変いいアイデアであるというふうに思っております。  今日的な高齢化の進展もございます。そして、産業構造や技術改革、いわゆるそういった革新が労働を取り巻く環境というものを大きく変化させているようでございます。また、働く人たちにとりましてもやはり働く側の変容ということも見せておるのが今の現状かと思います。そういった中でいわゆる職場でのストレス、悩み、そういったことを感じる労働者方々が増加しております。平成七年の先ほどの事案についても相当の数に上っているということは驚きであると同時にこれが実際の状態かなというふうに思うわけですが、先ほど来からそういった過労死が大きな社会問題化されていることを痛切に感じ入りました。  さらに、過労死の予防対策ということについての取り組みといたしましては、産業看護の法的位置づけについて、労働災害者の増加を大変心配してきました看護協会、看護連盟、これは三十年来からの念願でございましたが、私も労働政務次官を仰せつかりました間も絶えずそのことが頭から離れませんでした。そういったことに関連しまして努力してまいりました結果、皆様方の御意見によりましてようやく当委員会におきまして産業保健婦の法律化というものが可決され、今衆議院に送付されております。なるべく早い衆議院での可決を見て、より一層現場での効果的な活動ということを願っているわけでございます。  やはり、働く人々の心身の健康、またそういったことを長年案じながら、また実際にかかわってきた、産業保健婦の誕生に努力してきた深沢くにへ姉、または日本看護協会におきましても元保健婦職能理事であり、現在山梨県看護協会の会長を務めている望月弘子氏やまた仲間、または看護を取り巻く先輩の方々からも感慨深い喜びをあらわしておりますので、ぜひその法律が一日も早く通りますことを祈っております。またそれが通りました日にはやはり産業保健婦としての活動というものが効果的にできることを待たれることでございます。  またそのほかにも、我が国の少子問題または国際的にも関心が高まっておりますリプロダクティブ・ヘルス・ライツ、そういったこととも関連する働く女性の母性保護対策、または男女雇用機会均等法などに見る観点から、妊娠中及び出産後の健康管理の必要性というものも働く方々にあるのではないかと思いますが、単にその視点のみでなく、やはり人間としての親子のきずなを結ぶというところがその出発点にあるというふうに思います。  このような大切な時期におきます心身両面の生活指導というのは、本当にこれからの生まれ育つ人たちには欠くことのできないものであろうかと思っておりますので、産業分野におきましても、専門職者である助産婦の保健指導の推進ということも今後ぜひ必要になってくると思われますので、労働者のいる場所には必ず設置していただきたいとも思っております。  また、勤労者のいる場所には衛生管理者として看護職が現在活用されておりますけれども、産業界におきましては積極的にこれらのいわゆる健康管理スタッフと申し上げるんでしょうか、そういった方々の活用が円滑にできるようにすべきであるということを考えております。したがいまして、労働省におかれましては今後も引き続き検討課題としていただくことを切にお願い申し上げたいと思います。そのほか、労働時間対策なども今話題となっておりますが、そういったものも含めまして過労死の予防対策、それにつきましては総合的に講じていくべきというふうに考えております。  そこで、今るる申し上げましたことに関連しまして大臣の御見解と御決意をお伺いして、最後の質問とさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  33. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生が長年にわたって培ってこられました経験をもとにいたしまして御提起がございました。  先生の御指摘のように、例えば産業医だけでこれらの問題に対応することはまだまだ問題が多うございますので、先生の御指摘のように、看護婦であるとかあるいは助産婦の皆さんであるとか、こういう方々にもぜひひとつ過労死の防止などに対する指導に参画をしてもらいたい、こういうことを基本に置いて考えていきたいと思っているわけであります。  いずれにいたしましても、ゆとりを実感でき、そして安心して働ける勤労者の生活を実現することが私ども労働行政にとって最大の使命でありますから、この過労死の防止を図ることはその中でもとりわけ重要な労働行政の課題であるというふうに認識をしているわけであります。このために労働時間が過重なものにならないように所定外労働の削減や完全週休二日制の促進あるいは年次有給休暇の取得の促進といった施策を推進するとともに、健康診断の確実な実施とこれに基づく的確な事後措置の実施、これをまずきちっとやり遂げていきたいと思うわけであります。そして、心身両面にわたる健康づくりの推進、さらには産業保健センターの整備、これらの対策を今講じているところでありますが、さらにこれを重点的に進めてまいりたいと思うわけであります。  また、今国会に過労死の予防等労働者の健康確保対策の充実を図るために、産業医の専門性の確保やあるいは保健婦等による保健指導の実施等を内容とする労働安全衛生法を、先生が御指摘になりましたように、この国会に提出しておりますが、一日も早くこれが成立するように先生方の御協力をいただきたい、こう思っているところであります。  なお、保健婦や看護婦等の産業保健スタッフの果たす役割というものは、今先生が御指摘になりましたように、極めて重要であります。したがって、これらの産業保健スタッフが産業保健活動を適正に実施できる方策についてもあわせてこれから検討してまいりたい、このように考えるわけであります。  労働省といたしましては、改正労働安全衛生法の成立後は、その円滑な施行を図るとともに、今後とも施策の充実強化に努めますとともに、すべての労働者が冒頭に申し上げましたようにゆとりを持ちながら健康で安心して働くことができるように最大限の努力をしてまいります。ぜひひとつ御協力をお願い申し上げたいと思います。
  34. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。終わります。
  35. 星野朋市

    ○星野朋市君 労災の問題につきましては、後でちょっと触れることにいたしまして、雇用の問題について少し質問をさせていただきたいと思います。  昨日から始まった、これは毎日新聞がこのような特集をやっておりますけれども、それに大前研一氏の批評がございまして、雇用がこれから最大の政治課題になるであろうと、こういう予言をしております。私も全くそれに同感なんでありますけれども、ここのところで失業率、最大三・四%であったのが、どうやら景況感とともに三・一%まで低落、まあ上昇といいますかいい方に向かってきたわけですけれども、四月に入って今まで失業者の統計に入っていなかった若年労働者、いわゆる学生ですね、これが恐らくどっと労働市場に流れ込み、現在考えられているように十数万人のまだ未就業者がいるということでありますから、四月の統計が出ますと失業率がぐんとまたはね上がるんではないかと恐れておりますけれども労働省の方、どういうふうに考えておりますか。
  36. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいま先生指摘のように、景気が緩やかながら回復の動きが見られる中におきまして、完全失業率、これにつきまして、昨年十一月から本年一月まで過去最高水準の三・四%で三カ月連続推移したわけでございますが、その後二月に三・三%、三月に三・一%というふうな形で低下はいたしております。また、あわせまして有効求人倍率も、今回の不況期で〇・六〇倍というところまで厳しい状況になったわけでございますが、その後上昇し、最近三カ月連続して〇・六七倍というようなところで推移しているわけでございます。このように雇用失業情勢、一部に改善の兆しが見られるというふうに考えていい事態も出てきているかと思いますが、ただ完全失業率が三%を超えている水準、これは依然として高い水準でございまして、そういう意味では依然として厳しい状況が続いているというふうに認識しているところでございます。  そこで、先生指摘の新規学卒者の方について、これが四月、就職できなかった方が労働市場に参入することによって失業状況にどうはね返るか、こういうところでございますが、この辺につきましても今後心配しながら対処しなければならないわけでございますけれども、ただ、この辺につきましては、三月末時点で就職できなかった方が本年大体二十万人程度でございますが、昨年は実は二十三万人おりまして、全体の新規学卒者の方が減少傾向にある中で、そういう意味では昨年よりは就職できなかった方の数は少なくなっております。  いずれにいたしましても、これが四月以降にどうはね返るか、こういうところについても心配をしながら対処しているところでございます。
  37. 星野朋市

    ○星野朋市君 日本の高齢化社会という方向に対して、労働省は今までどちらかというと高齢者向けの労働対策、これに力を入れてきたわけです。基本的には日本のいわゆる高度成長といいますか、三・五%実質成長という宮澤内閣が掲げた政策、これによってやがて日本は労働力不足になるであろうという予測があって、それをもとにしていろんな政策が行われてきたわけです。ところが、現実には、皮肉にも若い二十歳代に失業率が高い、統計的に言えばもうほぼ一〇%に近い統計なんです。こういう逆の現象が出ているんです。それで、役所とすれば長期的な展望、これに対処することはもちろん大事なんだけれども、一方、現実の問題というものに関してどうすべきか、これは重要な問題だと思うんです。  現実には、ここのところ数年間ゼロ成長に近いような状態で来ている。労働省は、経済成長が三%未満である場合においては労働力不足どころかいわゆる大きな労働力過剰が起こるという警告をいち早く発した唯一の官庁でありますけれども、現実にそういう形で若年労働者の失業率が高い。これに対してどういう対応策をとるか、重要な課題であると思うんですが、いかがお考えですか。
  38. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生指摘のように、バブルの崩壊後、雇用情勢が急速に悪化したことは御指摘のとおりでありまして、だからこそ労働省は今この雇用対策にすべてをかけるという意気込みで実は対応しているわけであります。  まず、新規学卒者の就職状況も今局長から答弁をいたしましたけれども、二十万人に近い人たちがまだ就職できていないという現実がございます。したがって、数字的に見ますと十五歳から二十四歳までの若年者の失業率は、ことしの三月で八・一%になっております。昨年の三月と比較いたしますと、昨年よりも〇・六ポイント上昇しております。  一方、御指摘のように、学卒の未就職者が労働市場に参入しました場合には、失業率をさらに押し上げることが懸念されるわけであります。このために、未就職の卒業者対策といたしまして、もう既に三月二十一日に、未就職卒業者の早期就職に向けた対策を早い段階から実施すべきだということで、職業安定局長名でもって各都道府県知事にあてて指示をしているところであります。  その中身は、一つは積極的な求人の確保。この前も当委員会で御答弁申し上げたことがございますが、大学に対する求人票はまだかなり残っているわけであります。どこにどういう形でミスマッチが起きたかということはそれぞれ見方があろうかと思いますが、二十万人に近い新規学卒者が就職できない状況の中で、まだ大学に出した求人票が埋まっていないという問題があります。したがって、そういうものを全国的に集めまして、その求人の一覧表というものをすべて関係者の皆さんに配付するということも実は行っているわけであります。  そして、学生職業センター及び学生職業相談室におきます職業相談や職業紹介を積極的に進めること。  三つ目には、就職面接会の開催。これは、毎年八月の末から九月以降において集団面接会などを実施してきました。一昨年は五十会場でありましたけれども、昨年度はこれを倍以上の百三会場で実施をしてきたわけであります。それでもなおこれだけの未就職学生が出ているわけでありますが、ことしは新たな試みとして今申し上げましたように全国一覧の求人票を公表いたしまして、それをもとに就職面接会を十六都道府県で二十一会場、これを予定いたしまして、この五月末から六月にかけて行うことにしているわけでございます。これはもう初めての試みでありますが、このことによって今未就職になっている卒業した学生たちに一人でもたくさん就職をしてもらおうということで取り組みをしているわけであります。また、未就職の卒業者の職場体験プログラム、これを活用、促進してまいりたい、このように考えているわけであります。  また、若年者の高い失業率という構造的問題への対応も必要でありますが、この高失業率の原因としては、産業社会構造の変化によって職業の内容が大きく変わっていく、変質している、その内容についての十分な理解が進まない中で、若年者の職業意識の希薄化等によりまして見通しが欠ける、いわゆる転職者あるいは離職者が多いことも一つの原因となっております。  したがって、若年者の定着が上がるように、事業所における雇用管理指導というものを実施するとともに、若年者が働くことの意義をもう一度考え直してもらう。そして、職業の社会的意義あるいは内容等を理解して早期離職を未然に防止するように、若年者の職業意識啓発のための事業を今推進しているところであります。これをもっとさらに強化してまいりたい、このように考えているところでございます。
  39. 星野朋市

    ○星野朋市君 それでは、少し長期的な問題について私の意見を述べて、御見解を承りたいと思うのであります。  私は、予算委員会その他の場面で、宮澤内閣のときから経済成長率三・五%というのはもう高過ぎると。その数字があるがために、大蔵省は財政の計画を立てるときにこの数字の束縛から離れられない。だから、名目で言うと五%、さらに弾性値一・一というのをやって税収の見積もりを立てる。それから、エネルギー計画も同じような形になる。それで、もうそんな実情に合わないものは早く改定しろとずっと言い続けてきたわけです。これは宮澤内閣のとき、それから細川内閣のときもそう言ってきた。  ようやくいろんな矛盾が露呈をして、村山内閣のときに構造改革のための経済社会計画というのが昨年でき上がったわけですけれども、これは珍しく二通りの例が例示されているんですね。それで、実質経済成長率が三%程度であった場合には、完全失業率は最終年度、これは二〇〇〇年を目指していると思うんですが、二カ四分の三。もしこの構造計画が進まなかった場合は、実質経済成長率は一カ四分の三で完全失業率は三カ四分の三、こうなるであろうという数字が列記されている。  実は、これの過程では、中間計画のときにはこの数字が入っていなかったんですね。それで、でき上がったときに急遽この数字が入ってきた。これの根拠は何かということは明確ではないんです。ですから、私は非常に疑問を持っているんですけれども、こういう政府としては珍しい二つの数字が出ている。それで、構造改革のための経済社会計画といって、現状についていろいろ問題点は羅列しているんです。ところが、これをどう直したらいいかということに関しましては余り具体的ではないんです。  それで、これから議論に入るわけですけれども、「今後成長が期待される分野」といって七項目挙げています。私は、青木大臣のときに、経団連とそれから連合が共同研究をして、これからの成長四分野、それは何かというと、良質な住宅分野、それから環境、それから情報産業、それからあとは高齢者のための分野と、この四項目について提言があったはずなんだけれども、どうだという質問をしたことがあります。時間が短くてほとんどの御意見は聞けなかったわけですけれども、この七項目の中にはこれが全部含まれておる。  さらにそれ以外に、「多様化する企業ニーズを充足させるための企業活動支援関連(例えば、リース、広告)」、余りこれは大したことじゃないんですよ。こんなことを入れてみたり、それから「所得水準の向上や自由時間の拡大等を背景とした余暇・生活関連(例えば、旅行、文化・芸術鑑賞、外食)」、これも特につけ加えるような目新しい問題じゃない。そういうような項目が入って七つの成長が期待される分野、こういうことがうたわれておりますけれども、今私のずっと述べてきたことを踏まえて、労働省はこの成長率とそれから失業率の問題についてどういうふうに考えておられるか、御見解を伺いたいと思います。
  40. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘のとおり、新経済計画、そして第八次雇用対策基本計画におきまして、実質三%程度の経済成長率を前提にいたしまして、平成十二年度の完全失業率の目標を二カ四分の三程度と、こういうふうにしているわけであります。この二カ四分の三程度に最低限でも抑え込むようなことが施策の中に推進できるような、ここに労働省としては今全力を尽くしているわけでありますが、当然その中には構造改革、規制緩和という問題も、あるいは行政改革という問題も全部絡んでまいると思っています。  そして、先生が御指摘のように、そういう規制緩和や構造改革が進展しない場合には、我が国の経済の潜在的な能力を生かすことができなくなってくる。そのときには、非常に心配をしているのでありますが、実質経済成長率は一カ四分の三程度となりまして、その場合は完全失業率は三カ四分の三程度になるというふうに、まあいわば経済政策の推進などについて雇用面から警鐘を鳴らしたという思いをしているわけであります。  したがって、何としてもこの構造改革を推進しなくてはいけない。片方で規制緩和も進展させなくてはいけない。そういうことができ得れば私どもが求めているような二カ四分の三程度以下に失業率を抑え込むことができますよと。だから、労働行政だけではなくて、関係省庁はこぞってそういうものに取り組んでほしいということが、この中に大きな意図として盛り込まれているわけであります。  労働省といたしましても、この新たな雇用創出あるいはこの雇用創出に絡んでいわゆる失業なき労働移動、こういうものの支援などを積極的に強めていきたい。そして、この総合的な雇用対策というものが機動的かつ強力に実施されることによりまして、初めてその目的を達成することができる。個々の具体的な施策について、先生指摘のように、非常に細かいところまで今全部が確立されたわけではありませんけれども、そういうマクロ的に提起をした、あるいは警鐘を鳴らしたということを踏まえて、今各省庁がそういう雇用の安定というものを目指して総合的に内閣として取り組んでいるというのが実態であります。
  41. 星野朋市

    ○星野朋市君 大臣認識については、私は本当に評価をするものであります。この最終年度の、経済成長率とそれから物価の数字が記されておるんですが、行き着くところは失業率の問題なんです。  だから、冒頭に申し上げたように、これからの政治課題の最大の問題は、私は雇用問題であるという認識のもとでこれを言っているわけですけれども日本の高コスト構造の解明について、十項目にわたってこれかなり詳しい分析とそれから対策が書かれているんですけれども、一番問題は何かというと、触れたがらない分野を除いてあることによって、これのインパクトがないんですね。  それは何かというと、絶対的に高い日本の土地代の問題と、それから相対的に高い人件費の問題であります。人件費の問題は若干触れられておるんですけれども、この絶対的に高い日本の土地代、これは住専の問題と絡んでだれも実は触れたくない問題なんです。だけれども、この問題と人件費の問題、これは後でちょっと別の形で触れたい問題がありますので特にそれを強調しているわけですけれども、この問題が全然ネグレクトされている。それによってこの高コスト問題というものを解明できないというのが私の見解なんですが、大臣、どうお考えですか。
  42. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 土地の問題はさておきまして、人件費が高くつくという御指摘でございますが、日本の場合は、現在労使の関係が極めて安定をしております。労使が安定しているということは、いろんな労働条件について真摯に労使間で協議が続けられている、そこから私は今のこの安定した労使関係というものが生まれてきたと、こう認識をしているわけであります。  加えて、ゆとりある社会をつくっていこう、働く者が豊かさを実感できるような社会をつくり出していこう、これは労働界も含めてそうでありますが、一つの大きなスローガンになっているわけであります。これをしっかり踏まえながら、ことしも春闘がございましたけれども、実質物価の上昇率がマイナスになっている、〇・一ポイントマイナスになっているという現状の中で、それでもなおかつ、それぞれそれなりに経営側も労働側も努力をしていただいて、一定の賃金のベースアップというものは実現をしているわけであります。そういう人件費に係る問題については、労使間で実質的に決められることでありますから、政府がとやかく言えないかもしれませんけれども、人件費が高くつくということが仮に豊かな社会をつくり出す大きな要因としてそのことが容認されていくならば、それに見合うような経済政策を片方で政府が後押しをする、ここが相まって初めて日本の経済というものが実質豊かなものに発展していくんであろう、このように考えますので、細かい問題一つ一つは申し上げることはできませんけれども、そういうことを十分に認識した上で政府としても対応してまいりたいし、労働省としても対応してまいりたい、このように考えるわけであります。
  43. 星野朋市

    ○星野朋市君 昨日、政府委員に新聞の切り抜きはお渡ししてありますけれども、先日も大臣御出席の雇用サミットが行われました。六月には先進国のサミットが行われて、その中の主要テーマにやはり失業の問題というのが今度は入ってくる。当然、アメリカにおける失業問題、それからヨーロッパにおける失業問題、日本もかなり深刻な状態であると。それぞれ統計上の問題があって、アメリカの失業率は今五%台ですけれども、実質的にはいろんな面で計算するともっと高いだろうと。それからヨーロッパの中では、特にドイツが為替の問題を含めて一〇%を超えてかなり高い失業率だと。日本の実質的な失業率はどうかというと、だれしも三%でおさまっているとは思われない。  そういう中で、アメリカの経済活動調査財団の代表であるジェレミー・リフキンという人が朝日新聞の記者に対して、サミットにおける失業問題に絡んで従来の考え方を覆すような発言をされているんです。これは個人の意見じゃないかといえばそれまでですけれども、この人の説というのは世界的にかなり影響があるところでありまして、日本での今までの考え方からいけば実は落とし穴があるような説をここで述べている。  例えば、アメリカの失業率は五・四%と数字では小さくなっているけれども国民は第一の不安要因に雇用を挙げているというのは、これは日本でも同じようなことと考えられます。「常雇用に就けず、一時雇いやパートでしのいでいる人や就職活動をあきらめた人を加えると、失業率は一四%になる。増え続ける企業のダウンサイジングによる突然の解雇が不安を増幅させている」「米国だけでなく、欧州も慢性的な高失業率に悩まされ、日本でも一九九四年半ばから九五年にかけて五十五万人が職を追われた。世界の失業者は八億人ともいわれている」というふうに述べておられますけれども、この間、雇用サミットに出席された大臣は、この説に対してどういうふうにお考えですか。
  44. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) この朝日の記事に載りましたりフキン氏の論文といいますか、問題提起といいますか、これの中身についてはかなりの部分が雇用サミットでも議論の対象になりました。とりわけ、主催国でありますフランスのシラク大統領は、このアメリカの現状をフランスなりに実は厳しく批判をしたわけであります。  もう亡くなりましたけれども、当時出席しておりましたアメリカのブラウン商務長官は、八百万人の雇用創出を我々はやってのけた、したがって、この五・六%という失業率まで雇用状況を改善することができたと、こう言ってブラウン商務長官が実は胸を張ったわけであります。  しかし、そこで問題になりましたのは、八百万人の雇用創出をしたということを胸を張ったんでありますが、その八百万人の内容というのは、非常に劣悪な労働条件であったり、あるいは恒久的な常用雇用労働者じゃなくて一時的な採用であったり、賃金が物すごく低くて、アメリカの場合は賃金の格差が余りにも大き過ぎると、こういうやり方で雇用安定ということが言えるのかと厳しく議論の中で指摘があったわけであります。私は、すべてを肯定するわけではありませんけれども、アメリカのこの八百万人の雇用創出というものは我々が求めているような雇用創出の内容とは異質のものではないかという気が実はしているわけであります。  加えて、今先生が御指摘になりましたように、ダウンサイジングということから、どんどん人を減らすことによってトップは何億円という年俸をもらう。これを、当時その雇用サミットの席上で新聞が配られたわけでありますが、その新聞にはザ・ヒットマンと書いてある、見出しが。そのザ・ヒットマンとは何かというと、労働者を犠牲にして、特定のトップが高給を取っている、これでいいのかという警鐘乱打のような新聞が雇用サミットにも配られました。  したがって、私は、このアメリカ型が必ずしもすべていいと思いませんし、といってすべてが間違っているとも思わない。御指摘のように、新聞で書かれておりますように、このリフキン氏が提起した問題、これはかなり傾聴に値するところがありますから、これはこれなりに私ども分析をいたしまして、十分こういう問題についてもそういう間違いのわだちだけは踏みたくないという気持ちで対応してまいりたい、このように考えているわけであります。  なお、先生、大前さんのことも冒頭に触れられました。これはこの際にちょっと私も時間をおかりして申し上げておきたいと思うんですが、この大前さんの毎日新聞に出ました「雇用が今後最大の政治課題」、この見出しはそのとおりで私はいいと思うんです。私どもそういう認識を持っております。しかし、この中身はかなり大きな誤解があるし、御指摘も間違いがあると言わざるを得ないわけであります。  例えば、雇用調整助成金の問題についてもこのように触れております。雇用調整助成金の制度を適用するようにするから応募してきてくれと労働省が言う、これを要らないと断っても統計上失業にならないから雇用調整助成金を上げるよと労働省は言う、そういうことで納税者の税金を突っ込もうとしていると、こう指摘されているわけであります。  私たちは、雇用状況が厳しいだけに企業の経営実態が、かなり実績が低下してきてもそのことを理由労働者を解雇することがあってはならぬと、できるだけ解雇をさせないようにするために、その間企業が継続して活動できるように、再建できるように援助しましょう、そのための雇用調整助成金でありまして、しかもこれは大前さんが言われておるように納税者の税金を使っているわけではないのでありまして、これは特別会計でありますから、事業主と労働者が納付しているお金でありますから、税金ではないと。  あるいは統計の問題でもそうでありますが、このように言っています。アメリカの失業率は五・六%だけれども、これは極めて完全雇用に近い数字であって、実際はこの中には働く意思のない者あるいは就職活動していない者も含まれているんだから、こういう者も含めると日本はもっともっと高くなるよ、失業率が八%、九%になるよということを言っていらっしゃるわけであります。  しかし、これはアメリカの場合も日本の場合も統計のとり方は全く一緒でありまして、OECDの決めた基準に基づいて各国がやっておりまして、アメリカも日本もフランスもドイツも全く同じ基準で完全失業率の調査を実はしているわけであります。しかも、アメリカは五・六%という数字でありますが、完全に就職をする意思のない者、こういう人たちは全部除いているわけでありまして、これを入れますとアメリカはもっとぐんと高くなるのでありますから、事実と違うということも、せっかくの先生の御指摘でありますから指摘をしておかざるを得ないと、私はこう思うわけであります。  あるいは、ここが一番問題でして、私はこの労働委員会を通してぜひひとつ先生方にも御理解を求めたいと思うのでありますが、日本政府はこれまで雇用問題をサボってきたと。労働省は雇用問題を最重点に取り組んできたわけでありまして、それをサボってきたと言われたんでは、私はこれは反論せざるを得ない。しかも、こういうことを言っているんです。ある企業がレイオフの相談に労働省に行ったら、そういうことをするのはやめてくれと言った、おたくのようないい会社がレイオフすると社会的に騒動が大きくなると言ってとめたと、あるいは退職金の上積みをするという制度もつくったからということを言ったけれども、それもだめだと言った。きのうも一日かかって調べましたけれども、そんな事実はありませんでした。  しかも、レイオフ制度だけじゃなくて、労働省は雇用を守ることが一番大きな任務でありますから、首を切りたいとか解雇したいとか、レイオフをして一時帰休をしてということを相談に来れば、それはそうですねと言うわけにいかぬわけです。これを何とかそういうことをさせないようにとめるのが労働省の仕事でありますから、これを批判されるということは私はどうしても納得ができないわけであります。むしろ雇用調整助成金なんかは適用してくれと陳情が山ほど来る方でありまして、こちらから無理やりに押しつけるというものではないということも、ひとつこの中で私は反論をしておきたいと思うわけであります。  なお、労働省の幹部がどう言ったこう言ったということがいろいろありまして、調べてみました。大前さんが書かれておる論文もきのう引っ張り出しました。その論文に書かれていることをきのう新聞で言われているわけであります。これは平成二年から三年ごろに労働省といろいろ話があったときのことをもとにして言われたようでありまして、今の時点の問題ではない。  あえて、不謹慎かもしれませんけれども、せっかくの先生の御指摘でございますから、こういうことがそのとおりだというふうに国民の皆さんに理解されたら大変でありますので、この委員会の席をかりて弁明じゃなくて反論をしておきたいと、このように思うわけであります。
  45. 星野朋市

    ○星野朋市君 だから、私は内容については何にも言っていないんです、彼一流のいつもの書き方ですから。私は、要するに見出しの雇用が一番政治課題だということだけを申し上げたのであって、内容については何も言っておりませんので、大臣の今の弁明については十分理解をいたしました。  それでもう一つ、リフキン氏の中に、要するに情報化社会になって雇用が増大すると、日本でも百二十三万人の新規雇用がというような郵政省の試算があります。ところが、彼はこう言っているんです。例えば、インターネットは世界じゅうの買い物を、要するに司会者とプロデューサーがいればできてしまう、実はそれによって要するに流通業から相当な失業が出ると、こういう内容のことを言っている。実際に情報化社会になって百二十三万人の雇用創出に対しては日本でも異論を唱えている人もいるし、私も実はそう思うんです。  それからもう一つ、バイオテクノロジー産業、これは常にベンチャー産業の一つに挙げられるんですけれども、新産業と言われるけれども全米の雇用者はたった九万二千人にすぎないと。アメリカはベンチャー産業が盛んであるから日本もという声がかなりありますけれども、アメリカのサクセスストーリーのベンチャーというのは実は大体コンピューターのソフトとそれからバイオテクノロジーぐらいしかないんです。これは、私も企業家のときにいろんな会社とファンドをつくりまして、それでいいベンチャー産業というものをいろいろ探した経験からいっても、これが大きな雇用を生むとはなかなか考えにくい。これ、やらなくちゃならないことなんですね、新技術という面では。  それで、最後に、これは今回の労災の問題につながることですから、「どんな対応策があるのでしょう。」というのに対して、  ひとつの解決法は、労働を分かち合うワークシェアリングだ。失業率の高い欧州では、現実の取り組みとなっている。 途中略しますけれども、  ヒューレット・パッカード社のフランス法人やドイツのBMW社も週四日勤務に移行したが、生産体制の工夫で賃金水準は維持している。  日本でも「企業内失業」という形で、一種のワークシェアリングがむかしから存在するのではないか。企業も労組も米国流ダウンサイジングを追いかけるのではなく、雇用を維持して仕事を分け合う方法を探るべきではないか。子どもとのふれあいの時間が増え、ボランティア活動にも参加でき、日本特有の「カローシ(過労死)」の問題も解消できるはずだ。 と、こういうふうに言っております。過労死という言葉が既に世界語になってしまったような一面をあらわしております。  私は、新産業が興るまでの間、大量に出てくる失業者の問題とタイムラグがあるんじゃないか、この間の解決策はワークシェアリングであるという説をかねてから主張しているのでありますけれども、ワークシェアリングの問題は実は賃金の問題と絡んで一種のタブーになっているようであります。これは研究を早く進めておかないと、その間のミスマッチが起こる可能性があるとかねがね思っておりますけれども、いかがですか。
  46. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいま先生指摘の点でございますが、私どもそれは一つの考え方であるというふうに認識をいたしているところでございます。現状で申し上げますと、御指摘のようになかなか賃金と仕事との関係、これは日本の労働市場におきます日本的な雇用慣行の積み重ね、そういう中でドイツのようなわけにいかないという問題が一方にございまして、そういうところでなかなかこの具体化が難しい面もあるわけでございます。  もう一つの点での御指摘でございます、企業内失業という言い方はされておりますが、一種のワークシェアリングという見方がございますが、景気の不況期、厳しい時期にできるだけ失業を出さない形で雇用調整助成金制度等で雇用を維持する、これは一つのワークシェアリング、日本的な形であるというふうな、現実的な形であるというふうに考えておりまして、この点につきましては、短期的な不況期におきます雇用調整助成金とあわせまして、業種雇用安定法の中で構造的な問題を抱えた業種、企業について、これが労使間で話し合いをして労働者を移すまでの間に必要な場合の休業あるいは教育訓練等について雇用調整助成金を適用するというようなことで構造問題にも対処をいたしているわけでございます。  そういう形での日本的なワークシェアリング、あるいはパートタイム労働、雇用全体としてみますとパートタイム労働、日本は恐らく世界的に見ましてもこの割合が多い国、二〇%を超えておりまして多い国でございますが、これも一つの見方をすればワークシェアリングというふうな考え方もできないことはない、そういう雇用形態であろうかというふうに思います。  いずれにしましても、当面の雇用情勢が厳しい中で今後どう対処するかという観点からの一つの視点として、先生指摘のようなワークシェアリング、これも研究課題として対処してまいりたいというふうに思っております。
  47. 星野朋市

    ○星野朋市君 大分時間も経過しましたので、今回の労災法の改正に関する問題について若干質問をしたいと思います。  先ほど、南野委員質問にお答えがあったように、審査請求にかかわる平均処理期間というものについて松原局長にお伺いいたしますけれども平成年度から、これは資料によりますと、毎年全体では一年三カ月、一年二カ月、それから一年一カ月、先ほど平成年度の速報で一年というように一カ月ずつ縮まってきております。ところが、この傾向がこれからも同じようなスピードで続くとはとても考えられないんですね。もしこのままいったら、恐らくこれ審査官過労死するんじゃないかと私は思うんですけれども。  それで、それに対する対策、先ほどOA機器の問題とかそれからシステムを変えるとかというような御答弁がございましたけれども、もう一度その点について確認をさせていただきたいと思います。御答弁をお願いしたい。
  48. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 審査請求事案先生から詳細にわたりましてその平均処理期間、御紹介をしていただいたわけでございますけれども、これからこの傾向が続くのかどうか、私どもはだんだんこれをもう少し短く短くしていかなければいけないというふうに考えているところでございます。  昨年の最高裁の判決を受けまして、局内審査請求をどのようにスピードアップしていくか、効率化していくかということをプロジェクトを設けて検討いたしてきたわけでございます。その結果を踏まえまして、地方局に対しまして今後の審査業務抜本的見直し審査体制整備について指示をいたしたわけでございますけれども、幾つかございますけれども、そのポイントだけを御紹介させていただきます。  まず、審査をする場合には、原処分庁の処分をした理由があるわけでございますが、それと請求人が争っている点があるわけでございます。そういう両者の争点整理をまず行う。それに基づいて、場合によりましたら必要な調査を行うということもあるわけでございますけれども、これまでは原処分庁と重複するような調査も実はやってきた、それによって時間がかかっていたというところもあるわけでございますので、争点整理をやっていけばそういったことが必要ないというのもクリアになってまいります。  そういうことから、原処分庁との重複を避けつつまず調査を行うといったことですとか、それから審査請求書を受け付けて決定書を作成するというのが一連の流れなのでございますが、その各段階で、先ほど先生からも御指摘ございましたOA機器を活用していくといったようなこと、それからこれまではきちんとした事務処理の手順といいますかモデル例といいますか、そういったものを十分示してこなかったという反省に立ちまして、三カ月で処理するという前提に立った事務処理手順を示しまして、それに沿って審査計画を立てるといったようなことを指示いたしております。  それから、審査請求事案を迅速に処理していくというためには、原処分段階における的確な調査の実施、事実の確認がちゃんとやられているということが極めて重要なことでございます。そういうことから、医学的な意見書収集を初めといたしまして、各種の事務処理効率化、原処分の段階から行うようにということを改めて指示し、それに向けて全体として努力をしたいというふうに考えているわけでございます。  また、担当する職員の資質の向上ということも極めて重要なことでございます。そういうことから、審査官について、先ほど申し上げましたように今年度二十七名増員を図るということを申し上げましたけれども、その数をふやすというだけではなく、研修の充実ということについても努力をいたしているわけでございまして、今後とも審査業務抜本的見直し効率的な審査業務の実施ということに向けて努力をいたしたいというふうに考えているところでございます。
  49. 星野朋市

    ○星野朋市君 御参考になればと思うんですが、私は一つの提案があるんです。というのは、いわゆる品質管理の手法の中でTQC、トータル・クオリティー・コントロールというのがあります。そもそも品質管理というのは工場の現場から始まったんですけれども、要するに事務の全体を含めてTQCの手法というのがありまして、どういうのかというと、要するに一つの問題についてどういう原因があるかという枝葉を分けて矢印をつけ、それを一つずつつぶしていくやり方があるんです。  それから、先ほども質問がありましたけれども、どういう原因でもっておくれているのか、一番それの原因は何かというこの順番をつくっていくわけです。そうすると、一番大きな原因を早く片づけてしまえば大部分が短くなる。それを平均的にいろいろ処理しているからなかなか難しいと。要するに、人力で増員するか時間を長くするか、こういうことをやらなくちゃならないんですけれども、このTQCの手法というのをもし御検討されたら、かなりその処理がスピード化されるんじゃないかという御提案を申し上げておきたいと思います。  それから、先ほど過労死の問題で、ことしの一月ですか、五項目めの不整脈の問題、これの項目がつけ加えられました。実は、私が不整脈の問題で常に今脅かされているものですから非常にこれは切実に感じておるんですけれども、次にどういう問題が起こるかという予測をひとつ私はしておきます。  というのは、全体に日本人、それから特に産業労働者の体質が糖尿病にかかりやすい体質になっているんですね、今。これは食事の内容とも関係しています。それで、実は糖尿病そのものはそんなに怖くはないんですよ。私も糖尿病だと言われたんですけれども、薬でもって治すというような段階にはまだ至らないで、食事療法で対処しなさいというそういう段階で実は心筋梗塞を起こしまして、辛うじて助かったわけですけれども。もう一つ怖いのは実は合併症で、失明の問題が起こりやすいと、糖尿病は。この問題が次に出てくるんじゃないかなと私は予想しているんです。これは私の見解ですからお答えは要りませんけれども、これに労働省は対処しておいた方が私はいいと思っております。  それから、もう一つ過労死の問題について、再審査請求にかかる平均処理期間がデータによると二年九カ月、そのうち過労死事案については三年二カ月、平均ですから長いものはもっと、数年かかっているものもあると思われるんですが、この過労死事案について、対象になっている人の年齢構成というのはおわかりになりますか。
  50. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 具体的な資料は今ちょっと手元にないんでございますが、昨年の何月末だったですか、ちょっとこれも明確に覚えてなくて恐縮ですが、九月末かそのあたりで一度、昨年の二月以降の認定基準改正後具体的に過労死認定された方の事例をちょっと集めてみた、三十例ぐらいの非常に少ない例の中なんでございますが、やはり年齢的に見ますと四十代、五十代、これがもう圧倒的な部分を占めていたというふうに記憶をいたしております。
  51. 星野朋市

    ○星野朋市君 これは本当は重要な問題なんです。多分この過労死で問題になるのは家族、それからもちろん過労死の当人、これは生計が、一番お金のかかる年代だろうと思うんです。四十代ないし五十代の前半においてはいわゆる家計費というものが一番かかる時代ということで、この再審請求にかかる、これが長ければ長いほど一番問題を生計上起こしやすいと私は思うので、そういう意味からも、これからこの問題についての早期解決が望まれると私は思います。  この法案に関しての直接の質問は非常に短かったわけでございますけれども、全般を通じまして労働省はこれからこの問題についてどういう取り組みをするのか、大臣のお答えをいただいて質問を終わりたいと思います。
  52. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生からいろいろな御提起をいただきまして、非常に参考になるところも多うございますので、十分にそれを受けとめてこれからの行政に生かしていきたいと思います。  それともう一つは、この過労死の問題についてそれぞれの先生方からそれぞれ御意見をちょうだいしてまいりました。要はこの過労死をなくすることが大事でありまして、そのために、ワークシェアリングの問題も出ましたけれども、少なくとも少ない労働者の数で多くの業務量をこなす、そのために時間外労働が過重になっていくとか、あるいは場合によってはサービス残業が多くなっていくとか、そういうことをなくすることも非常に大事なことでありますから、これは労働時間の短縮問題と大きなかかわり合いを持っておりますが、そういうことを含めて、過労死が起きてからの対策ではなくて、過労死が生じないようなそういう施策に労働省としてはとにもかくにも全力を尽くしていきたい、このように考えているわけであります。  先生の御提言ありがとうございました。
  53. 星野朋市

    ○星野朋市君 終わります。
  54. 足立良平

    委員長足立良平君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時三十四分休憩      —————・—————    午後一時開会
  55. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、川橋幸子君が委員辞任され、その補欠として三重野栄子君が選任されました。
  56. 足立良平

    委員長足立良平君) 休憩前に引き続き、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  57. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今般、労災保険給付に係る不服申し立ての審査遅延時の救済規定の創設と審査体制の強化を柱とする改正法案が提出されました。  この法改正におきましては、救済規定により労働保険審査会に対し再審査請求がされた場合、審査官に対する審査請求は取り下げられたものとみなす等の措置を講ずるとされておりますが、この取り下げられたものとみなす等の措置というものの意味、内容はどう解釈したらよろしいのでしょうか。
  58. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 今回の法改正案、労災補償保険法だけではございません。御指摘の点は、労働保険審査官及び労働保険審査会法の改正部分でございますけれども、再審査請求、つまり審査請求から再審査請求の方に移行した場合には、その審査請求がされたものは取り下げられたものとみなすということで、みなしで取り下げとみなすということにいたしたわけでございます。これは、審査請求手続と再審査請求手続というのはともに行政機関内部の手続なわけでございます。そういうことから、この二つの手続が同時並行して継続するというような事態はやはり回避する必要があるのではないかということから、こういうことにいたしたわけでございます。  したがいまして、審査請求後三カ月を経過しても審査官決定がない場合は、今回救済規定を創設いたしたわけでございますが、それにより審査請求人が審査官決定を経ずに再審査請求をするということができるわけでございますが、そうしたときは、他の立法例と同様に審査請求は取り下げられたというふうにみなすこととし、審査請求手続は終えんさせるということにしているわけでございます。  ただし、改正の中にも書いてございますけれども審査請求人が再審査請求をするという時点で既に審査官がもう決定をし、その謄本を審査請求人に発しているという場合、非常に時間的に、それほど多いケースかどうかは別なのでございますが、そういう場合については、その審査官がいたしました決定が原処分の全部または一部の取り消しを内容とする場合には、その決定によりまして審査請求人の方の請求が認められるということが出て、部分的である場合、全部である場合がありますけれども、認められるということになってまいりますので、それについては生かすということから、その部分については再審査請求を取り下げたものとみなすということで、やはり再審査請求手続を終えんさせるということにしているわけでございます。
  59. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、救済規定により再審査請求がなされたときは、審査官に対する審査請求は、今おっしゃいましたように取り下げられたものとみなされますが、この場合、請求人審査官に提出した資料について再度提出しなければならないことになるのでしょうか。  要するに、労災請求に関しては、請求人の負担をできるだけ軽くするということがまた審査を迅速にすることの一つにもなっているということを考えますと、取り下げられたものとみなされた事件の書類というのはどういう取り扱いになるんでしょうか。
  60. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 今回の法改正によりまして救済規定に基づいて再審査請求されて、したがって審査官段階では審査請求が取り下げられたというふうにみなされた場合、請求人の方が審査官にいろいろ資料を提出されているということは当然あるわけでございます。これにつきましては、先生がおっしゃいましたように、請求人の方に過大な負担をかけるということは私どもも避けなければいけないというふうに考えております。  そういうことから、できるだけ請求人の方に負担をかけるということのないように、請求人の方が希望する場合には審査官から直接審査会資料を送付する、もちろん請求人の方が希望した部分についてでございますけれども、送付するなど、請求人の方の意向を踏まえたような形で資料を一たんお返しして、また請求人の方が審査会にというようなことのないようにする措置はとりたいというふうに考えております。
  61. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 もう一つ審査官あるいは原処分庁が独自に集めた資料で情報を開示してほしいと、例えば使用者の概要の録取書だとかあるいは賃金台帳だとか、あるいは健康診断に対する一般のものだとかお医者さんの診断書とか、現場の証人の調書など、原処分庁審査官も集められると思うんですが、これなんかは請求人が申請した場合、審査会へ行くんでしょうか、行かないんでしょうか。また、改めて審査会はそういう調査はどのようにされるんでしょうか。
  62. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 審査官段階での審査官が必要に応じて集めた資料、これらについてどの程度開示をするかという問題がまずあるわけでございますけれども、私ども、この点に関しましては労災保険審議会の中でも御議論がございまして、その審議結果を踏まえまして、審査請求人の方から資料の開示を求められた場合には、プライバシー等の問題もあって第三者に迷惑が及ぶと判断されるものですとか、資料提供者の同意を得られないものなどは開示をするということは適当ではないと考えられますので、そういったものを除きましてできるだけ開示をしたい、開示していくという取り扱いをいたしております。  したがいまして、今おっしゃいましたことに関連いたしましても、この線に沿った形で対応をしたいというふうに考えているところでございます。
  63. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 例えば、本人の陳述書などというのは現場ではなかなか出てこないという弁護団の意見なんかもあるんですけれども、これは本人が出してくれと言えば出るんでしょうか。
  64. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 今おっしゃられましたのは、本人が例えば監督署ですとか審査官段階でおっしゃられたことを審査会段階にそれを資料として提供できるかどうかという御趣旨であるとすれば、先ほど申し上げましたように、御本人が再審査請求のときに使いたいということで、既に述べた意見ですとか提出した資料、こういったものを活用したいからということで御希望があれば、それはしかるべく審査会の方に審査官なりから提出するということはできるというふうに考えております。
  65. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 恐らくこの取り下げとみなすということの最も本質的なところは、そういった諸資料がどのように上へ上がっていくのか、あるいは証拠、情報として開示されるのかということが大きな関心になっているのではないかと思います。  次に、「再審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるときその他その裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき」には審査会の裁決を経ないで処分の取り消しの訴えを提起できるというふうにされておりますが、これは具体的にどのような場合を指すのでしょうか。
  66. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 御指摘の規定の内容は、現在でも行政事件訴訟法の第八条の中に規定がございまして、これは既に全般的に適用されてきたわけでございますが、今回、労災雇用保険につきまして審査請求手続整備するということから改正をすることにしたわけでございますので、一般法である行政事件訴訟法の中にある規定をいわば確認的に規定をするということで改正案に盛り込んでいるものでございまして、従来の取り扱いと変わるものではないわけでございます。  この行政事件訴訟法の趣旨でございますけれども審査請求置主義をとる場合でありましても、原処分の執行をそのまま認めてしまうということであれば、回復不能な損害が生じてしまう場合など緊急を要する場合ですとか、これに匹敵するような正当事由がある場合には、そもそも不服申し立てそのものを経由させることが適当でないという場合もあるということから、審査請求手続を経ずに直ちに出訴することはできるというふうに理解をしているわけでございます。  したがいまして、これはどんな場合でも審査請求手続をとらなければ裁判を起こせないということにしてしまうと、場合によっては著しく裁判を起こそうという人の利益を害するというようなことも全く考えられないわけではないということから、念のためそういう規定を置いたのだというふうに理解をいたしているわけでございます。そういう意味からは、やはり極めて限定的に適用されるものではないかと思います。  現在、私どもこれで具体的にどういうことが想定されるかというのは直ちに申し上げられないわけでございますけれども、具体的な事例が生じた場合に、本当にこの規定が設けられた趣旨に沿って、審査請求、再審査請求を飛ばしても裁判の道を開くことが必要だというふうに判断される場合には、この規定によってその道を開くということになろうかというふうに思いますが、今直ちにどういう事態を想定しているかという具体的な事例までは現在御紹介できるような状況にはないということで御理解をいただきたいと思います。
  67. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 審査請求が遅いということで実務上は結構訴訟提起がなされてきたわけですが、現在、この二つの審査官決定審査会の再審査決定を経ないで訴えが提起されているもので、しかも三カ月未満のもので訴えを提起されている現状のケースというのは、これはどうなるんでしょうか。遡及して適用があるんでしょうか、それとももうそれは提起したものとみなしてそのまま進行するんでしょうか。
  68. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 件数としては、審査官決定する前に訴訟が提起されたものもございます。もちろん審査会が裁決をする前に訴訟が提起をされているというものもございます。  この取り扱いでございますけれども、基本的には行政機関の中における不服審査手続司法救済というものが並行的に行われてはならないということではございませんので、実際上どうするかということは別といたしまして、建前といたしましては、仮に裁判が進行するということがありましても、一方で不服審査手続審査請求がある、または再審査請求があるということであれば、それはそれとして進めていくということになってくるわけでございます。
  69. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 審査請求事案処理に長期間を要している大きな要因といたしまして、医証収集がおくれるということが挙げられていたわけですが、この医証の早期収集のための具体的な対策はどのように考えておられるでしょうか。
  70. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 労災審査請求事案の中には、最近特にそういう傾向が強まっているわけでございますけれども業務上外認定に当たりまして医学的な専門知識を要するものが非常にふえてきているわけでございます。これにつきましては、従来から中央及び地方に労災医員を配置し必要な御意見を伺うということをやってきているわけでございます。  またさらに、こういった医学の専門家の方々との連携を強める必要があるということから、医師会ですとか労災病院などとの連携をさらに密にする必要があるんではないかということで、そういう連携をさらに密にして一層医師の協力を得られるように努めるよう地方にも指示をいたしたところでございます。  また、医学的な意見書をもらうということ、もちろんお医者様の協力なんでございますが、お医者様方だけではなくて労働基準監督署の職員も、労災補償を的確迅速に処理するという観点からは、医学に関する必要な知識、経験を持っておくということは極めて重要なことでございますので、そういうことから、医師と職員とで意見交換、情報交換、そういった機会も持つようにいたしているところでございます。
  71. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 昨年二月に、蓄積疲労や精神的ストレスに着目するなど、過労死に係る認定基準改正が行われましたが、改正後の労災保険給付請求数というのはふえているのでしょうか。先ほど請求を認容する件数はふえているということは伺いましたが、審査請求段階で原処分を取り消した件数とかあるいは再審査請求段階で原処分を取り消した件数というのはふえているのでしょうか。
  72. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) いわゆる過労死事案につきましての請求件数審査請求件数、再審査請求についてのお尋ねでございますけれども、まず過労死であるということで労災認定請求があった件数請求件数をここ数年について申し上げさせていただきますと、平成年度が三百七十八件、五年度が三百三十二件、六年度が三百三十五件、そして平成年度が四百八十八件ということでございます。四年度から六年度までは三百三十ないし三百七、八十ということでございましたけれども平成年度は約四百九十というふうに大幅に請求件数がふえてきております。  認定件数については、先ほど申し上げさせていただきましたけれども平成年度十八件、五年度三十一件、六年度三十二件という推移でございましたが、平成年度は七十六件と、前年度までの平均に比べまして倍以上の認定件数になっているわけでございます。  審査請求でございますけれども過労死事案ということで審査請求があり決定した事案というのは、平成年度が百十四件、六年度九十二件、七年度百十七件という状況でございます。そのうち、特に認定基準改正後という御指摘がございましたけれども平成年度におけるその百十七件の決定件数のうち原処分を取り消した件数が十九件でございます。それ以前は、平成年度が四件、平成年度が八件ということでございましたので、平成年度のその原処分の取り消した数というのが非常にふえているという状況にございます。  それから、その次の段階の再審査請求段階でございますけれども、再審査請求でこの過労死に関連する裁決件数は、平成年度が四十五件、平成年度が四十三件、平成年度五十七件という推移でございました。そのうち原処分が取り消されたものが、平成年度はございませんで、平成年度一件という状況でございましたが、平成年度は四件ということで、傾向的にといいますか、平成七年二月の認定基準改正以降、原処分の段階審査請求段階、そして再審査請求段階、いずれの段階におきましても過労死として労災が認められたケースがふえているというのが推移でございます。
  73. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 昨年二月の改正前の過労死に係る認定基準は極めて厳しいものがありまして、遺族が血を吐くような思いで認定のために努力してきたというのが実態であったと思います。  全国の過労死弁護団の相談件数を見てみますと、一九八八年の六月十八日から一九九五年の五月十五日まで労災補償の相談件数は二千五百五十一件、そのうち死亡事案は千六百五十一件という数字が出ております。そして、合計相談件数のうち約七〇%が労災補償の相談であるということでありまして、その他、働き過ぎの予防相談もほぼ三〇%あるということであります。とりわけ、相談者の中を見ますと、妻がほとんど五〇%を占めておりまして、先ほどの星野議員のお尋ねのように、四十歳代が二五・七%、五十歳代が二五・一%で、四十代と五十代が半分を占めているという状況にあります。  そういう中で、昨年やっと認定基準改正されましたが、余りにも遅きに失した感があるのではないかというふうに思います。厳しい認定基準は過酷な労働とか働き過ぎの実態を許容するというものでありますし、人間的な働き方をするためには本来認定基準は緩やかといいますか、少なくとも共働原因であれば認めていくという疫学的な手法の中で認定がなされるべきではないかと私は思っているわけです。  このような過労死認定に至る歩みを踏まえますと、今後さらなる認定基準見直しも含めまして、過労死事案に対する労災補償対策にどのように取り組んでいかれるおつもりか、大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
  74. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生から遅きに失したという御指摘でありますが、その御指摘については謙虚に受けとめておきたいと思います。この厳しい認定基準が過酷な労働あるいは働き過ぎの実態を許容するものである、これは大きな見識だと思います。  したがって、そのことも十分踏まえて対応してまいりますが、いずれにいたしましても過労死労災認定につきましては各方面からさまざまな御意見をちょうだいしているわけであります。また、訴訟も幾つか新しい動向も出てまいっておりますし、医学的見地等も踏まえまして、昨年の二月、さらにことしの一月と既に御答弁申し上げておりますように、認定基準改正を行ってきたところでありますが、この認定基準に基づきまして迅速適正な労災認定に努めているところでありますけれども先生指摘のように、今後の医学研究の動向等を見守りながら、新たな医学的知見が得られました場合にはさらに認定基準を見直すなど適切に対応してまいりたい、このように考えているところであります。
  75. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 過労死は国際語にまでなったという状況がありますが、そういった過労死を生み出す土壌についてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。  なぜ、過労死が生ずるのか。過労死するまで働かせる企業、過労死するまで働いてしまう労働者、それを見守る家族、過労死の問題はまさに日本人の働き方を問うているものというふうに認識されるわけですが、この土壌について局長大臣はどのようにお考えでしょうか。
  76. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 私は、常に申し上げていることでありますが、ともに働き、喜び、安心して暮らせる社会ということをキャッチフレーズにしているわけであります。その中にすべての思いを込めているわけでありますが、いずれにいたしましても、この過労死という問題が起きないようにすることが私は最大の重要課題だ、こう思っているわけであります。  例えば、過重な超過労働、これを事業主が強要してもなりませんし、労働組合の組織のあるところは適切に労使交渉でそういう問題が起きないように三十六条協定の運用なども考えてもらいたい、こう思っているわけでありますが、とりわけ最近問題になっておりますようなサービス残業と言われるようなことが現実的に起きてこないような、そういう労働時間管理といいますか、そういうことをきちっとしてほしいということも含めまして、先般、基準局長の方から日経連にもそういう対応について強く要請を行ったところであります。既に日経連の方も傘下の事業主に対しましてそのことを踏まえて適切な対応をするように指導していただいているというふうに聞いておりますが、とりわけ労働基準法に違反するような、そういう問題が目に余るようなことが起きてきました場合には、当然のこととして厳正に法律に照らして対処してまいりたい、このように考えるわけであります。
  77. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 大臣からお答えがありましたが、あえてつけ加えさせていただきますと、労働時間の問題だけではなくて、やはり職場における健康確保対策といいますか健康管理といいますか、そういう面があるのではないかというふうに思います。  最近、労働者の方も非常に中高年の方がふえてきている。私どもが集めました調査結果なんかを見ますと、健康診断の結果、三分の一の労働者の方が何がしかの所見がある。特にコレステロール値が高いとか、先ほど糖尿病のお話もございましたけれども、糖尿病につながるようなそういう尿酸値が出ているとか、また血圧の高い方もいるとか、いわば成人病の要素を持った方が労働者の方の中に非常にふえてきているということがあるわけでございますので、働く場合にも労働者みずからも自分の健康状況を把握し、何に気をつけなければいけないかということを十分認識を持たなきゃいけないということと同時に、職場の中においても健康診断というのはきちんとやる、そして労働者もそれをきちんと受ける、そしてその結果を把握した上で、その事後措置をどうするか、また保健指導をどうするかといったような企業の中全体における健康確保対策を十分やっていくことが必要なのではないかというふうに思います。  過労死ということで認定した幾つかの事例を集めましてどのような傾向があるか見ましたときに、先ほど四十代、五十代、年齢的にはそういう層が非常に多くを占めておったということを申し上げさせていただきましたけれども、中には産業医が置かれているというふうに報告を出していない企業もかなりあったり、また労働者の方が実際には健康診断を受けていなかった。これは事業主が機会を提供しなかったのか、したけれども労働者御本人が受けなかったのか、そこまではちょっとわからないんでございますけれども、健康診断を受けていなかったというようなケースも中にはございました。そういう意味から、労働時間の問題とあわせまして、職場における健康確保、こういう観点からの対応が極めて重要なのではないかというふうに考えている次第でございます。
  78. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 さまざまな労災の事件を見ますと、中高年のストレスに対する耐性が低下しつつあるという傾向も言われておりますし、あるいは時間外労働が一カ月三十時間を超えると心身の過労状態が進捗するというような調査もあります。  私は、労働行政について二つの点を指摘したいと思うんです。その一つは、労働基準法というのは労働時間に関しましても、労働安全衛生法もそうですが、結局処罰規定でいわゆる刑罰によって担保されている法律であると思うんです。しかし、ほとんどその処罰ということは実態では余り聞かなくて、行政指導で主として対応しているということがやはりこういう一つ過労死を生み出す基盤になっているのではないかという点。  もう一つ、労働時間法制に対する法規制で、変形労働時間制などが導入されましたが、時間外労働に対する規制はない。サービス残業に対する有効な取り締まりもなかなかない。深夜労働に関しては、少なくとも男性に関してはほとんど規制がない。さまざまないわばガイドラインや目安時間というような形で努力はされておりますが、やはりそれは労働基準法にしっかりとした規制をそろそろ置かなければいけない時代ではないかというふうに思いますけれども過労死の予防対策への取り組み方針というものはどのようにお考えでしょうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  79. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 労働基準法は、先生指摘のように、罰則規定が設けられておりまして非常に法律としては重いものだと私は思っています。しかし、実際に摘発件数が余り表へ出てこないとかいろんなことで、果たしてそういう罰則規定まで設けた法律としてきちっと守れるようなことがされているのかという問題点も今は指摘されたと、こう思ってお聞きをいたしました。基本的には、労働基準法の違反行為があった場合に、できるだけまず指導をするということから始めているわけでありますが、それでもなお是正されない場合は厳しい態度で臨んでいるわけであります。  ちなみに、どの程度実際問題としてこういうことが日常の監督業務の中で行われているかということをちょっと申し上げてみますと、これは平成年度だけでとってみますと、定期監督でありますが、実施事業所数は十七万五千八百七十五事業所に対して行っております。その中で実際に違反があったと認められた事業所の数は十万三千三百六十、五八・八%に上っているわけであります。そして、労基法の三十二条、四十条、いわゆる労働時間の違反、これは二万九千五十九件ございまして、率にしますと二八・五%であります。このような実態でありますが、そういう指導を進めながら、なお是正されないといいますか悪質といいますか、そういう事業所については、平成年度では八件送検をいたしております。そして、平成年度でそのうち二件が起訴されているわけであります。  数からいきますと、調査をしました数字、違反した事業所数、これからいくと極めて少ないわけでありますが、できるだけ強権力を発動しない前に、指導によって事業所、事業主にも適切に対応してもらおうということを第一段階として取り組んでおりますので、数字的にはそのようになっているわけであります。  なお、先ほども申し上げましたけれども、時間外労働あるいはサービス残業などもそうでありますが、これらについては可能な限り、可能というよりも完全にそういうことがなくなるように、そういう前提で全国の監督署にも督促をしておりますし、近く、この二十日の日に全国の基準局長を緊急招集いたしておりますが、その中でも実際のそれぞれの基準局あるいは監督署で取り扱ってきている内容、あるいは今重点的に進めている内容、これらを全部点検いたしまして遺憾なきように期していきたい、このように思っているわけであります。  なお、最前に局長が答弁しましたように、労働時間だけの問題ではなくて、みずからの健康管理あるいは職場の環境改善、あるいは福祉の充実、こういう問題も複合的に積極的な対応をしてまいりたい、このように考えているわけであります。
  80. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 私の愛読書といいますか、非常に感銘を受けたものに、井上浩さんという昔の労働基準監督官の「労働基準監督官日記」というものがあります。今いろんな労災の情報誌に掲載をされ始めております。本当に身命を賭して労働基準法を守っていくという、そういう人の日記が今静かに労働者の中でベストセラー的に読まれているわけでございます。  週四十時間制への全面移行も正念場にかかっている折から、労働基準監督署ないしは監督官の方々の御奮闘を心から祈りまして、私の質問を終わりにさせていただきます。
  81. 吉川春子

    ○吉川春子君 今回、労災法の改正のきっかけになった最高裁の判決は、労働者災害補償保険法による保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をした日から三カ月を経過しても決定がないときは、審査請求に対する決定及び労働保険審査会に対する再審査請求手続を経ないで処分取り消しの訴えをできる、このように判示しております。しかし、今回の法改正は、同様の事例について「労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。」というふうにして、直ちには提訴できないこととし、裁判への道を相変わらず閉ざしたままにしておりますけれども、これはなぜでしょうか。
  82. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 労災保険法は、行政司法の機能調和を保ちながら、大量かつ専門的な内容の労災保険給付に関する国民権利救済を実効性あるものとするために、裁判所の判断を求める前に二段階審査請求手続を経由させるということにしているわけでございます。  しかし、先生が御指摘されましたように、昨年七月の最高裁判決におきましては、こうした労災保険法による二段階審査請求手続の意義を認めつつも、現行の労災保険法労災保険審査官決定が遅延している場合の救済規定を用意してないというために国民司法救済にとって非常に大きな問題だということで警告が発せられたというふうに私ども認識いたしているわけでございます。  そういうことから、今回の改正は、この判決を厳粛に受けとめまして、国民に対して審査官段階での手続が遅延した場合の救済の道を新たに開こうとするものでございます。そういうことから、審査請求制度趣旨をより一層生かそうとするものだというふうに私ども認識をいたしているわけでございます。
  83. 吉川春子

    ○吉川春子君 国民の提訴の道を一部開いたけれども、最高裁の判例どおりですと、決定が三カ月おりなければ提訴もできる、そういうふうにしているんですが、そこはふさいだままであるわけです。司法判断にゆだねる前に行政庁自身が再検討し直すという裁決前置主義といいますか、そういうものについて別に否定するわけではないんですけれども、先ほど局長も答弁されましたように、司法救済審査手続が並行的に行われてはならないということはないんであって、それはやはりそういう道を今回の法改正で、せっかくの法改正ですから私は開くべきであったと。そういう点について私たちは修正案も準備しているわけです。  それで、労働省労災課のコンメンタールによると、今のようなことをおっしゃっておりまして、簡易迅速に国民の権利利益の救済を図るのに有効なんだと、行政庁に対する不服申し立てを前置することは有効なんだというふうにしているんですけれども、簡易迅速に国民の権利の救済がなされる状態にあるのだろうかということで、先ほどもちょっと質問があったかと思うんですけれども審査請求平均処理期間について審査官審査会について、それぞれ数字を報告していただきたいと思います。
  84. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 全事案につきまして、審査官段階での平均処理期間、ここ数年の傾向を御報告させていただきますと、審査官段階は、平成年度に平均的に一年三カ月かかっておりました。平成年度はそれが一年二カ月、平成年度は一年一カ月というふうになっておりまして、平成年度、これはまだ暫定的な数値でございますけれども一年というふうに、今毎年一カ月ずつではございますけれども短くなってきております。  なお、審査会段階でございますけれども平成年度が二年九カ月、平成年度も同じく二年九カ月、平成年度も二年九カ月、ここ三年間二年九カ月という平均処理期間でございます。
  85. 吉川春子

    ○吉川春子君 さっきも過労死の数値について報告がありましたけれども、三カ月以内では五・五%にしかすぎないわけです。それで、あえてもう一度伺いますけれども、最高裁の判例と同じように、どうして審査官が三カ月その決定を出さないときにも提訴できるというここをふさいだのか、その一点について端的に理由を言ってください。
  86. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 出訴の期間が結局は延びる、出訴できる期間が延びるということになるんだと思いますが、審査官段階で三カ月たっても結論が出なければ審査会に行ける、そして審査会で三カ月たっても結論が出なければ裁判に持っていける、改正案のとおりになればそういう形になるわけでございます。  そういうことからすれば、最初に不服審査請求をした段階から出訴できるまでの期間は六カ月、こういうことになるわけでございまして、先生がおっしゃいましたのは、審査官段階で三カ月たっても出なければ、そこから出訴の道を認めるべきではないかと、こういう御趣旨だと思います。そういう意味では三カ月結局長くなる、裁判を起こす期間を待たなきゃいけないと言ったらいいんでしょうか、結局裁判を受ける権利が三カ月そこで遅くなる、こういうことになるという点においては、裁判を起こしたいと思っておられる請求人の方にとってそこで若干の不利益があるということかもしれません。  ただ、先ほど来、この不服審査制度、労災保険法におきます二段階審査請求手続につきましてその立法趣旨等申し上げさせていただきましたけれども行政司法の機能の調和を図る、そして労災保険給付に関する国民権利救済を実効あらしめるというそういう観点に立てば、三カ月間それが延びるという不利益を考慮しても、なおやはり今回の改正案のような形で整備するのが最も適当であるというふうに私ども判断したわけでございます。  最高裁判決は、先生も当然読んでいらっしゃるというふうに思いますけれども、国税通則法のように審査請求の第一段階救済規定など特段の定めがあれば、その第一段階の遅延については出訴の道を閉ざすという立法も許容しているというふうに私どもは読めるというふうに解釈をいたしているわけでございます。  そういうことから、先ほど申し上げましたように、著しい遅延による出訴の道を閉ざすといったようなことのないようにするように、第一段階での救済規定を設けるということが最も適当な措置だというふうに判断をいたしたわけでございます。
  87. 吉川春子

    ○吉川春子君 数字を見ても、権利救済を簡便にスピーディーに行うという点で、裁決前置主義は既に崩れていると言ってもいいほどだと私は思うわけです。  少なくともこの制度が機能していると言えるためには、これは過労死弁護団の意見なんですけれども、申請後六カ月以内に結論が出て救済率も三〇%ぐらいないとそれは救済機関としての機能を果たしているとは言えないと指摘しているんですけれども、裁決をスピードアップしてその三カ月の不利益を、裁判に持っていくよりは利益なんだと今局長言い切ったんですが、そういうふうにするためには体制の強化が必要だと思うんです。  今回の改正審査官二十七名が増員され、労働保険審査会委員九人としていますけれども、これで案件処理がどの程度進むのか。大臣に伺いますけれども、ほとんどが三カ月以内に決定が出せると、こういう確信のもとに今度の法改正やら体制の整備をされたわけですね。
  88. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) まず、審査官段階につきましては、三カ月以内に処理をするという前提で、昨年の最高裁判決を受けました後、私ども局内に、いかにして審査請求を迅速に処理するか、そのための業務効率化を見直すためのプロジェクトチームを設けたわけでございます。  そこで、先ほど来申し上げさせていただいておりますけれども、まず審査請求を受け付けた段階からどのような形で三カ月以内にどういうふうなスケジュールで調査を進め結論を出すかというモデルを示しまして、例えば医学的な意見書をとるとかいろんな調査をやるというのを原処分段階とダブつて、必要なものは改めてとるということはあるにせよ、改めてすべてまた一からやり直すというようなことではない、争点整理した上で必要なものについてのみやるというような形で調査合理化するとか、またOA機器の活用というのはこれまで十分じゃなかった面があるんでございますけれども事務処理におきましてそういったものの活用を進めるといったようなことをやっていくというようなことによりまして、三カ月でモデル的にこういう形で処理できるんじゃないかというものを示したわけでございます。  もちろん、全部それで処理し切れるかというふうに聞かれますと、中には非常に難しい事案、それから特にお医者様の意見書決定的に重要な役割を果たし、それをいただくのに時間がかかるという場合も審査官段階でも生じてくることも皆無ではないと思いますので、すべての事案を三カ月以内にということまでは残念ながら断言できないわけでございますけれども、まずそれを前提として仕事を進めるということで指示をいたしております。  それから、審査官増員は二十七名でございますけれども、二十七名の増員をお認めいただきまして、数をふやすだけではない、一人一人が持てる力を最大限発揮してもらうために研修も充実をするというようなことで、今回提出させていただいております改正の内容で本当に国民権利救済がスムーズにできるように、いろいろな角度からの手を打ってきているというふうに考えているところでございます。
  89. 吉川春子

    ○吉川春子君 救済率を上げるというためには、労働基準監督署決定を厳密に検討して、場合によっては覆すわけですから、やはり独立性というか中立性というか、そういうものが求められるというふうに思うわけです。それで、今審査会委員の三分の二が労働省OBというのでは、やっぱりその裁決に納得しない被災労働者救済が確率高く行われるとは思えないわけです。  大臣、私は二つのことを要求いたします。審査官はすべて労働省の職員なんですけれども、やっぱり数をふやしても中身も必要だと思うんです。それから審査会委員も、これはもっと客観的な第三者が、学識経験者とかもっと労働省と中立の立場で判断できるような、そういう人選をしない限りやはり中身で本当に救済率を上げることはできないと思います。この人選について、救済率を上げるような方向で検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  90. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) まず、審査官について私からお答えさせていただきますと、労働保険審査官につきましては、労働保険審査官及び労働保険審査会法という法律に基づきまして、「労働者災害補償保険審査官労働省の職員のうちから、」「労働大臣が任命する。」ということになっておりまして、労働省の職員のうちから任命する、これは法律上そういうことになっております。  ただ、労働省の職員ではありますけれども、個々の事件の処理につきましては職務の執行に関しては何人の指示、拘束をも受けることなく決定をすべきものというふうにされているわけでございまして、労働保険審査官労働省の職員であるからといってその職務の執行に当たりまして、公平に欠けるということはないものというふうに確信をいたしております。
  91. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 審査会委員でございますけれども審査会委員の選任につきましては、審査会法によりまして、人格が高潔等々の資格要件を満たす人の中から国会の同意を得て任命するということにされております。  今回、改正を認めていただきますと、もともとの数が六名ですが九名になるという相当大幅な増員になるというふうに思っておりまして、私どもできるだけ幅広く人材を求めながら的確迅速な処理のできるような体制を整えていきたいというふうに考えております。
  92. 吉川春子

    ○吉川春子君 続いて、労災隠しの問題についてお伺いいたします。  労働省の定義によりますと、労災が発生しているのにその事実を隠ぺいするために故意に労働者死傷報告を出さないものや虚偽の内容を記載して提出するものを労災隠しと言っているんですが、これが横行しています。  日本医師会の労災・自賠責委員会の答申というのが昨年、九五年十二月に出ました。労災事故であることを隠し、その診療を健康保険によって行ういわゆる「労災かくし事案が増加傾向にあるということばかりではなく、その内容が企業ぐるみで行われている疑いのある事例が増加している」、「労災診療を実施する医療機関側、健康保険等による診療を求める患者あるいは事業主側との間のトラブルは深刻化の一途を辿っている。」、こういうふうに指摘をしております。  広島県の医師会が六百七十の医療機関にアンケート調査した結果なんですが、明らかに労災と思えるものの扱いで自費扱いとなっているのは六〇・二%、前回は九・三%ということです。健保扱いになっているのが三四・八%、同前回は二〇・二%、こういう数値が出ておりまして、今回の調査では自費診療扱いがかなりふえていることは注目に値すると広島県医師会速報千五百六十二号付録で指摘をしております。そして、どのように労災隠しが行われているかというリアルな報告も出されていますが、某大企業の工場内で両側のかかとの骨を骨折して労災が発生した。かなり長期休業を要し、後遺症を残しやすい厄介な外傷だった。ところが課長が来て社保で扱ってほしいと言ってきた。それを断ると翌日係長が来て、その作業所では連続○千日の無事故達成が近い、その三日前の事故だった、どうしても無事故の表彰を受けねばならないので労災を隠さねばならない、表に出ると課長の出世も部長の重役への栄進もみんなだめになるので労災にしないでほしいと。また断るとまた次の日に課長が来た。社保扱いがだめなら自費にしてほしい、後遺症についても自分が払うからと。いろいろやりとりはあったんだけれども結局自費扱いにしたと。このお医者さんは、労災隠しの共犯者になってしまったことが後味悪いというふうに告白をしているわけです。  そこで、労働省にお伺いしますが、労災隠しの件数、どれぐらいつかんでおられますか。
  93. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 労災隠しの現状の把握というのは非常に難しいのでございますけれども先生指摘のように、労災隠しというのは安全衛生法で定められました労働者死傷病報告の提出を行わないものとか虚偽の発生事実を記載して提出するものということでございますが、こういったことは本来あってはならないことでございます。ただ、監督署の窓口に休業補償の請求が回ってくるとか、それが死傷病報告で以前出たものと突合してみると合わないといったようなことを端緒として、御指摘のいわゆる労災隠しといったものが把握されるということもあるわけでございます。  このようなことから、私どもが把握し、安全衛生法の違反ということで送検した件数でかえさせていただけるとありがたいのでございますが、平成七年では六十一件、これが安全衛生法の百条違反による送検件数でございます。これがすべて労災隠しかどうかというところまでは断定できないんでございますけれども、この中にそれらが入っているということで御理解をいただきたいと思います。
  94. 吉川春子

    ○吉川春子君 厚生省、お見えになっていますね。  厚生省の社会保険庁が診療報酬明細書、レセプト点検調査についてという通達を発行して、これの効果を上げるための格段の努力をということでやっておられますけれども労災を健康保険扱いで給付を行っている例が相当あるわけです。申請により当初健康保険で給付を行ったものを後で労災扱いとして判明したものの数、そしてどういうふうにしてこの労災隠しを発見したか、その二つについて御説明いただきたいと思います。
  95. 鬼沢幸夫

    説明員(鬼沢幸夫君) 御質問についてお答えいたします。  政府管掌の健康保険の保険給付事故のうちの労災扱いといたしました件数は、平成二年から六年度まで順次申し上げますと、件数で、六万一千件、六万二千件、六万件、五万八千件、五万四千件と、大体六万件ぐらいの件数でございます。それから金額につきまして、同じように平成二年から六年まで申し上げますと、二十億三千四百万、二十二億五千五百万、二十一億四千万、二十二億二千百万、二十億三千八百万と、大体二十億から二十二億ぐらいの金額を過誤調整しております。平成年度について申し上げますと、この過誤調整の率でございますが、全体の中で件数では一・六%程度、それから金額では三・一%というような形になっております。  レセプトの、レセプトというのは診療報酬請求明細書ですが、お医者さんからいただいた明細書の点検調査というのは各社会保険事務所でやっておりますけれども、いろいろな事項につきまして調査をやっております。その中で、例えば外傷性のものの中から業務上のものを探すというような形でチェックをいたしておりますけれども、そのチェックにつきましては、各事務所の担当の方から疑わしいものを見つけ出しましていろいろ調べていくという形で、毎年担当者の研修とか打合会、あるいは業務監察等を通じまして問題のないようにという形でやらせていただいております。  今後とも、政府管掌の健康保険の適正な事業運営については努力をしていきたいと思います。御理解をいただきたいと思います。     —————————————
  96. 足立良平

    委員長足立良平君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、今泉昭君が委員辞任され、その補欠として平田健二君が選任されました。     —————————————
  97. 吉川春子

    ○吉川春子君 社会保険庁がつかんだ件数というのはすごいと思いませんか。要するに、労災じゃなく申請してくるわけです、健康保険とかなんとかかんとかで。そして、結局調べてみたらそれは労災であったということで、勘定だけは労災で支払う。そういうことを、これはお金が絡みますから社会保険庁は必死だと思いますけれども、厳密に毎年毎年調べ上げてこれだけの件数が出てきているわけです。しかし労働省は、労災隠しというのは隠れているものだからわからないということじゃ済まないと思うんです。  大臣、この数字どう思いますか。こんなことを許しておいていいんでしょうか。
  98. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘のように、労災隠しが横行するというようなことがあってはなりませんし、本来労災処理すべきものを健康保険で肩がわりをさせるといいますか、事業所の姿勢の問題が一番大きな問題だと思うんでありますが、そういうことは本来あってはならぬと思うのであります。  なかなかすべてのことを調査し切れていない、そのことは否めない事実でありますが、こういう国会における審議の経過というものを十分踏まえまして、これからも厳正に対処してまいりたいと思います。とりわけ臨検監督、集団指導等あらゆる機会を通して啓蒙し指導し、そしてなおかつ労災隠しの存在が明らかになりました場合は司法処分を含めて厳正に対処していきたい。そのことを、まあ一罰百戒じゃありませんけれども、積極的に取り上げていきませんと、なかなかその事業主も目が覚めてくれない面があるかもしれませんので、そういうことについては厳正に対処していくということをここで申し上げ、いずれにいたしましても、この労災隠しの排除ということを、効果的に答えが出るような対応を心がけてまいりたい、こう思います。
  99. 吉川春子

    ○吉川春子君 さっき松原局長が死傷病報告書をとっていない、数をつかんでいないんだとおっしゃいましたけれども、ここで数をまずつかんで、そしてそれが何件という数値がわかれば、結局少ないわけですから、上がってくる件数が、今度それで保険のところで決済する件数というのはまたふえるわけですから、その差でもつかめると思うし、ただ抽象的に労災隠しを何かなくすという形でもだめだと思うんです。  局長でも大臣でも結構なんですけれども、厚生省のこの数値をつかんでいましたか、この数値について何か対策を講じられましたか。
  100. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 先ほど社会保険庁の方から紹介のありました数値、私は今初めて承知したのでございますけれども、中には先生がおっしゃったような労災隠し事案がその社会保険庁の紹介の数字の中に入っているということもあろうかと思いますけれども、必ずしもすべてがそれということでもなく、労働者が誤って健康保険で受診しているといったものも入っていることもあるわけでございます。  しかしながら、もちろんその労災隠しというようなことがあってはならないというのは当然のことでございまして、先ほどその死傷病報告について本省ではそれを把握していないというふうに申し上げましたけれども、もちろん監督署段階では死傷病報告、それから労災請求があればその請求の申請書、同じところに、監督署にやってくるわけでございますので、それらを突合しておかしいと思われるようなものについては調査を徹底するようにという指示は既に平成三年にいたしております。  そういうことから現に労災隠してあるということが判明し、先ほど申し上げましたような送検件数といったようなものも出てきているわけでございまして、本省段階数字を把握していないからといってそれについて全く何の手も打っていないということではないということを御理解いただきたいと思います。現場ではそういう目で見ているということについて御報告をいたしたいと思います。
  101. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは、その現場で死傷病報告の件数をちゃんと押さえて、そして保険の支払いの方の決済の件数と照らし合わせて、そしてその差がどれぐらいあるかというようなことまで細かくやっているんでしょうか。それを一つお伺いいたします。  それから、全部が労災隠しとは言えないとおっしゃいました。それはそうだと思うんですよ。しかし、相当な労災隠しが含まれているということも予測されていますので、一〇〇%労災隠してはないからということでこの数値に全然アタックしないということは、私は、厳しい言葉で言えば労働省の怠慢であろうと思います。  大阪医師会の労災部会のアンケート調査結果を私は持っていますけれども、「明らかに業務上の負傷であるにもかかわらず事業主が五号或いは十六号の三の用紙を患者に交付しないで、貴医療機関と患者、事業主との間でトラブルが起きた経験はありますか。」、こういうことについて病院、診療所合わせて三八%、三分の一以上が「しばしばある」、「ときどきある」というふうに答えているわけです。そして、そういうトラブルがあったときにどうするかということについて、「患者に説明をし、用紙の提出を求めた。」というのも八一%ありますが、「労災手続をとるよう連絡した。」というのが三三・七%、「患者の判断に任せた。」というのが三五%、「労働基準監督署に連絡した。」というのはわずか三・九%なんですよ。だから、私はむしろ今まで労災隠しということが事実上野放しにされていたに近いんじゃないかと思うんです。  だから、労災隠しというのは労働者労災発生ということにもつながるし、企業責任を野放しにしておくということなんですよ。ちゃんとその保険料を払わなきゃならないんですね、ペナルティーを科されて。そういうこともやられていないわけで、この問題については大臣、それこそエイズじゃないけれどもプロジェクトチームでもつくるぐらいの気持ちで具体的な方法を考えて、この労災隠しの数値を、厚生省とも協力して、あるいは医師会とも協力して徹底的に調査して明らかにして、なくすようにしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  102. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) まず、その労災隠しを徹底的になくすということについては私どもも全くそのとおりだというふうに考えておりまして、先ほど平成三年に既に通達を出しているというふうに申し上げましたけれども先生もおっしゃいましたように、労働者が災害をこうむったという実態を正しく把握するということは、今後の労働災害防止対策の立案にとっても極めて重要なことでございます。  そういう基本的な立場に立ちまして、事業主に対してもちろん死傷病報告書を適正に提出するよう指導するということとともに、具体的に監督署レベルにおいて、先ほどもちょっと申し上げましたように、死傷病報告と労災の休業補償給付の支給請求書等、関係書類が提出されてくるわけでございますけれども件数の数というよりはむしろ個々に提出された書類を突合いたしまして、記載が不自然であるとか、例えば労働保険の番号がちょっとおかしいと、幾つか私ども職員が発見した事例というのも報告を受けておりますけれども、いろんな端緒から労災隠しが見つかっているケースもございます。それについては、どういうふうなやり方でその発見に努めるようにといったようなことですとか、また発見した場合には厳正に対処をするとか、また建設事業の無災害表彰、先ほど先生もちょっと御指摘ございましたけれども、既にそういったものを受けた事業所についてはそれを返還させるとか、具体的な措置についても既に厳しく指示をいたしております。  先ほど、大臣から来週局長会議を招集しておるというふうに御紹介がありましたけれども、改めてこの通達についてもう一回再認識し、各局署を通じて労災隠しの排除に努めるように指示をいたしたいというふうに考えております。
  103. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、局長が答弁いたしましたけれども、いずれにいたしましても事業主にそういう労災事故が起きたときに報告をさせるということが第一段階なんですね。これ報告してこなかったら、監督署も毎日毎日けががあったかどうか、多くの事業所を回ることはなかなか人的に不可能だと思いますので、まず事業主に事故があったことについては正直に報告をさせる、または報告してもらうということを徹底することがまず第一だと思うんであります。  そして、社会保険庁とも連携をとってまいりますが、いずれにいたしましても社会保険庁は社会保険庁でそういうものを把握して、後でこの労災保険の方に財源の措置を求めてくるということがなされてはいるのでありますが、そういうものが日常的に労災隠しをさせないようなものにつながっていくような連係プレーはきっちりとやっていきたいと、こう思います。ひとつ御協力をお願い申し上げたいと思います。
  104. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  105. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 最初に、先ほどから各委員の御質問に対して大臣及び局長は一生懸命にやっているという御回答で、私もまさにそうだろうと思いつつ、いかに基準監督署といえども聖人君子だけではないわけですから、私はこれから二十一世紀に向けて一番重要な役所になるのは労働省だと、こういうふうに京都で一生懸命頑張っている私にとりまして、きょうは朝から非常に嫌なニュースをキャッチいたしました。  新聞あるいはきょうの朝のテレビで大きく報道されました。どうしてこんなことが起きるのかという非常に悲しい気持ちを込めて質問させていただきますのは、京都の労働基準監督官が松原署に逮捕されたということですが、これはどういうことだったのか、内容をお答えいただけますでしょうか。
  106. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) まことに残念なことを御報告しなければいけないわけでございますけれども、京都の下監督署に勤務する私どもの職員が昨日午後八時に逮捕されたわけでございますけれども、どういうことから逮捕されたかというふうに言いますと、この職員が勤務いたしておりました監督署におきまして、ことしの三月下旬ごろ勤務先から不正に入手した使用済みの収入印紙を未使用の収入印紙と偽りまして金券ショップで換金することを考えたようでございます。自宅におきまして、使用済みでございますからその上に消印が押されているわけですけれども、その収入印紙上に押されております。その監督署の消印を消し去りまして、そして未使用のものに見せかけて、ことしの三月下旬ごろから四月中旬ぐらいまでの間に四回にわたって一万円物の収入印紙等百数十枚、額面金額で二百数十万円相当のようでございますが、それを金券ショップにおいて換金したという疑いで逮捕されたというものでございます。
  107. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、監督署というのはそこを信用し、安心し切って働く人がその役所を訪れるということなわけですから、国民にとってそこに行けば公平で公正な判断の人がいるんだという、そういう気持ちを持たせなければいけないんで、そこの中にいる人が悪いことをしているというような、そういう社会的不安を受けさせるということは私自身は実に残念というか、せっかく私が労働省頑張れと言っているのにもかかわらず、私の地元の京都の監督署でそういうことが起きたということは本当に残念というか、怒り心頭に発しているような思いです。  先ほどの御回答を聞いていますと、この二十日に局長を集めて会議をなさるということですけれども、ぜひともこういうことがないようにひとつ大臣の方から、先ほど官房長の方から人格識見の豊かな人というお言葉がありましたけれども、やっぱり人格識見豊かであるような、そんな署を目指していただきたいというふうに思いますので、ひとつ大臣頑張っていただきたいと思います。大臣から一言、御回答をお願いします。
  108. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生指摘のように、私も朝のニュースを見まして、本当に言葉で言いあらわしようのない残念さを感じたわけであります。  最近、ともすれば公務員のあり方が問い直されようとしてみたり、あるいは公務員が国民への奉仕者であるということを忘れているという厳しい御指摘があったり、いろんなことがございます。そういうときでありますだけに、ましてこれから雇用問題、あるいはこれからの二十一世紀に向けた労働者の暮らしにかかわる問題、いろんな問題で労働省先生指摘のように大変な役割を果たそうという、そういうときでありますだけに、これはもう申しわけないという気持ちを言葉で言うよりほかに方法がないんでありますが、まことに遺憾なことであります。  したがって、こういうことが労働省の職員、本庁も出先も含めまして二万数千名おりますが、一人たりともこういう者が二度と出ないように厳しく指導してまいりたい、綱紀の粛正を図ってまいりたい。二十日の日に都道府県の局長会議を開きますので、そこでもこの問題も取り上げて厳しく監督するように指導してまいりたい、このように考えます。大変申しわけないことでございました。おわびを申し上げます。
  109. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 まず真摯な反省という上に立ちまして、今度はその監督署たるところが厳しくしていただかなければならないところをひとつ指摘させていただきたいと思います。  今度の住専問題を聞いておりまして、だんだん審議が進むにつれて末野興産の問題が明らかになってまいりました。私は、企業というのは勤労者をきちっと守らなければならないという、そういう義務があるにもかかわらず、この末野興産のあり方というのは私はまたまた違った意味で怒り心頭に発しております。今大臣のお言葉で、労働省はきちっと反省した上でこういう人のことを厳しく叱責できるわけですから、この問題に対してどのようにお考えになりますでしょうか。
  110. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) これは住専の問題だからというわけじゃないんですけれども、まことに借り手として国民の批判を招くようなそういう企業であるということで、労働保険もどうやら加入していないような傾向がある。その中の社員の一人がけがをいたしまして、監督署に救済のための相談に参りまして、それで労働保険に加入してなかったということがわかりまして、私の指示で緊急に立入調査をしたわけであります。  果たせるかな、系列の企業の中で二社が加入しておりましたけれども、あとの五社は加入してないという事実が判明いたしました。その際に、就業規則を含めまして労働基準法に違反することも明らかになってまいりまして、たまたま所得税法違反の問題もありますので、大阪府警と国税局と労働基準局三者が一体になりまして摘発をしてきているわけであります。きのうからざっと百五十名と言われている末野興産系列の各社の社員を一人一人全員に今事情聴取を進めているところでありまして、その結果を二十日の局長会議のときに中間報告として私は受けることにしているわけであります。  いずれにいたしましても、そういう法律違反、義務違反ということについては厳しい対応で臨んでいくことにしておりますが、これが単に末野興産だけではなくて、日常的に監督業務を負っている労働省としてそういうことがこれからも他の事業所に起きてこないようにきっちりと監督指導を進めてまいりたい、このように考えているわけであります。ひとつ厳正に対処してまいります。
  111. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は怒り心頭に発したというよりも、こういう事業主をほっておくようでは、勤労者がお互いに助け合うという非常にいい保険制度というのは、本当につぶれていってしまうというふうに思います。  そこで、ちょっとお聞きしますけれども、これはなかなか大変なことだと思いますけれども、保険の加入状況というのはどんなようになっているんでしょうか。その加入する企業の捕捉率はどのようになっているんでしょうか。
  112. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 労働保険の労働保険料の徴収状況について御説明させていただきたいと思いますが、平成年度決算で見ますと徴収決定済み額が三兆四千六百六億円、つまりこれだけのお金が入ってこなければいけないわけでございますけれども、そのうち収納済みが三兆三千九百六十億円ということで、収納率は九八・一%というふうな状況になっております。
  113. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、その数字が高いのか低いのかということはちょっと、本来ならば一〇〇%になるとこれは一番いいと言わなければいけないんでしょうけれども、非常に大変難しい問題だとは思うんですけれども、末野興産のようなああいうところが大っぴらに野放しになっていたというこの現状をしっかり労働省に踏まえていただきまして、あれは私は氷山の一角じゃないのかななんという、そんな不安もしないでもありませんので、ああいう事業主がいなくなるような、そういうきっちりとした対応を今後とも続けていっていただきたいというふうに思います。  続きまして、各委員からの御質問にありましたように、今度の改正によりまして増員されて三カ月以内に処理をするということは、趣旨としては私は大変いいというふうに思うんですが、ちょっと数字を見てみますと不安が残っちゃうんですね。それで、この不安をちょっともう一度、先ほど大臣局長も何度もお答えになっておりましたけれども、私の不安をもう一度解消させていただきたいと思いますのは、この資料で見ますと審査官が九十三人から百二十人にふえた。しかし、今までの数字を見ますと新規の請求件数、これは審査官の方ですが、平成四年から平成年度を見ますと平均をとりますと九百二十一件あった、それに前年度の残が九百九十八件あった、ですから合わせると一千九百十九件処理しなければならなかった。その一千九百十九件の処理に対して一千十件しか処理できなかった、残るのは九百九件残っている。この九百九件残っているのに、また多分新規に入ってくるという、こういうサイクルで今動いているようです。  また、審査会の方を見ますと全部で九百六十件審査をしなければいけない。これは平成四年から平成六年の平均値としていただいた表ですが、処理できたのが二百七十八件、残るのは六百八十二件ということなんで、これにたった三人が加わっても、審査会の方を見ると九百六十件あるのがたった二百七十八件しか処理できなかった、そうすると六百八十二件も残る。それに新しいのがまた加わってくる。そうすると、たった三人がプラスされてもこれは処理できるのかなという、そういう不安が物すごく私自身は感じているんです、OA化するとかいろいろお話ありましたけれども。  さて、私はそういう不安を抱きながら、東京地裁の判決、毎日新聞に出ました判決文ですが、過労死した方の親が前置主義に基づかないで、請求に基づかないで、そのまま直接裁判にかけて、裁判でほとんど全面的に認められて一億二千万円の賠償の判決をされた、今控訴中とは聞きますけれども。つまり、私は先ほどの不安、三人ふえても処理できるのかな、こんなにたくさん残っているのに処理できるのかなと。そして、片方は裁判にかけると非常に迅速に多額の補償金として裁判で認められていく。そうすると、労働省はせっかく働く人の立場に立っていろんなことを調査して労災認定をしようと頑張っているにもかかわらず、片一方は非常にたくさん抱えて時間が遅くなる、片一方は判決でもってきちっと出ていくということになると、労働省に対する国民の信頼感というんでしょうか、労働省は働く人を助けてくれる省ではないんだ、だからもう裁判に訴えてしまった方がいいんだという、そういう機運になるのではないかという私自身が非常に不安を持っているんですけれども。その点は、この不安をどのように国民から除くような労働行政をするのでしょうか。その熱い気持ちをひとつお話しいただきたいと思います。
  114. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 私から事実関係を御説明させていただきますと、労災保険の特に審査請求、再審査請求につきましては、適正であることはもちろんでございますけれども、迅速に処理をしなければいけないというのはまさにおっしゃるとおりだというふうに思います。  それで、先生がおっしゃられました数字平成年度から六年度までの平均の数字でございますけれども、若干私は年度を追いまして御紹介させていただきますと、例えば平成年度は新規請求件数が八百七十四件、前年度の残処理件数が千八十六件でございました。要処理件数千九百六十件のうち処理をできたものが九百六十三件。したがって、翌年度への繰り越した件数が九百九十七件。  新規はちょっとおきまして、じゃどの程度繰り越されてきているかだけをちょっと簡単に御紹介させていただきますと、平成年度は先ほど申し上げましたように千八十六件、平成年度の前年度からの繰り越しが九百九十七件、六年度が九百十二件、七年度が八百二十一件、そして七年度末、つまり七年度の八百二十一件というのは六年度から引き継いだものでございますが、七年度が終わって八年度に繰り越したものが六百六件というふうに急速に前年度からの残処理件数というのは減ってきております。これは、特に七年度に大幅に減ったというのは、先ほどから御指摘もございました最高裁判決を受けまして、私ども内部でとにかく、まだもちろん増員が認められる前ではありますけれども、迅速に処理をしなければいけないということで、スピードアップ化を図ったということの結果が一つはあらわれているのではないかというふうに思います。  さらに審査官につきましては、今年度二十七名増員が認められております。その増員効果とそして業務処理のスピードアップ効果と掛け合わせれば、この残処理件数というのはさらに減っていくというふうに私どもは考えておりまして、またそうしなければいけない。そして新たに来たものは三カ月以内にとにかく処理をするということで対応するということで、十分国民の皆様方の御期待に沿えるようにいたしたいというふうに思っているわけでございます。  なお、先ほど先生御紹介がございました直接裁判に行った事例でございますけれども、この方がといいますか労働者の方が自殺をされたのは一九九一年ということで、地裁段階で五年かかっているわけでございます。これがさらに上に行くということになりますと、必ずしも裁判が迅速とは言えないんではないか。どっちがいい悪いというわけではございませんけれども、そういうこともあるんではないかと思いますし、私どもとしてはやはり行政手続として迅速に処理をするということを、さらに一層心がけて御期待に沿えるようにしたいというふうに思っているところでございます。
  115. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、労働省という省が国民から、要するに働く人から本当に頼れる省なんだという気持ちを持ち続けていただくために、これからの労働行政、仕事を進めていただきたい、そのように切に願っている一人です。迅速であることはもちろんのこと、公平に公正に、どちらかというと遅いというのは勤労者を性悪説に見ているからじゃないかなというふうに私は思います。本当のことを言うと、働く人の申請をもっと性善説的に見ると迅速になるんじゃないかなという気もするんですが、こんなことを聞くと大臣局長をいじめていることになりますので、いずれにしても性善説に立っているんだろうというふうに思いながら、ひとつ頑張っていただきたいというふうに思います。  時間がどんどんなくなってしまいますが、この資料を見ますと、人間というのは三十五歳を過ぎますと何らかの病気がどんどん出てくる。先ほども局長は必ず高血圧とか動脈硬化とか出てくるんだと言いましたけれども、死亡者数を見ますと、三十五歳を過ぎますと六十四歳までどんどんどんどん死亡率が高くなります。ちなみに平成三年を見ますと、三十五歳から三十九歳までは百七十三人だったのが、六十歳から六十四歳にいきますと三千四百六十八人という非常に高い死亡率になっていきます、人口動態としては。  また平成六年で見ますと、三十歳代の人は百八十五人が心臓疾患で死亡した人だけですが、心臓疾患で死亡した人を見ますと六十歳を過ぎますと三千八百十七人という、やっぱり年齢が上がるにつれて心臓で亡くなる人の数だけを見ましても大変ふえていくという実態があります。そうすると、働くときにある一定の許容量を過ぎて負荷すると、年齢が高くなるにつれてその労働の負荷が死因に結びつくということは、これはある方が当然だというふうに見なきゃなりません。  そこで質問なんですが、この過労死という問題だけにしてみますと、やっぱり長時間労働というのが一番いけないんじゃないかというふうに思います。先ほど、サービス残業云々のことでおもしろいやりとりがありましたけれども、これは把握しなきゃいけないと思うんです、それが過労死一つになるわけですから。そうすると、今までの過労死の把握あるいはサービス残業の把握、長時間労働の把握というやり方は、毎月勤労統計調査というものでやっているようですが、これは私は調査対象を事業主の方にしているわけですから、余り信憑性のある統計ではなくなるんではないかという、これは信憑性がないとは言い切れませんけれども。  そこで、発想を転換いたしまして、私ども連合が提唱しておりますこういう統計のときには、先ほど来野興産のときには、大臣、一人一人働く人にアンケートを出したと、私は本当にすばらしいと思います。ちょっと気弱な労働省にしては、私は本当にすばらしいことだというふうに思います。こういう働く人に何人かポイントを決めておいて、そういう人の調査をとるという発想の転換はいかがなものでしょうか。
  116. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 今、先生がおっしゃいました毎月勤労統計調査というのは確かに事業所調査でございます。これは、事業所に働く常用労働者の月間の実労働時間というものを把握するというものでございまして、そのうち所定内労働時間、所定外労働時間というのがあるわけでございますが、それぞれごとに実労働時間を把握しているわけでございます。  事業所調査ではなかなか正確な実労働時間の実態が把握できないのではないかという先生の御指摘でございますが、実は個人調査としては労働力調査、これは総務庁が実施しております調査でございますが、失業率などを出す調査なんですが、その中で労働時間についても調査をしております。これは個人を対象にして、月末の一週間にあなたは何時間働きましたかということで調査をしているわけでございますけれども、これと毎月勤労統計調査というのは若干数字に開きがございます。それが一体何になるのかというのはいろいろあるのでございますけれども、労働時間という場合に、個人の方は事業所にいる時間というふうに思う場合も多いのではないかと思いますけれども、間にある休憩時間というのを労働時間から除いてカウントするというのが通常でございますが、個人調査をいたしますとその辺のところの分け方がきちんとできるのかどうかという問題がまずございます。  それからもう一つ、例えば兼業農家などを想定していただきますと、また実際に人に雇われて働いているのに加えて内職をやっているというような場合を考えていただいてもいいのでございますが、労働時間といいますと、事業所が違っても、雇われている人が違っても、仕事が違っても、個人の立場から見ればどっちも労働時間なわけです。  そういうことになりますと、正しい意味での制度的なといいますか、仕組みとしての労働時間というのはどういうふうに変わってきているのか、それに基づいて働いている人の労働時間はどう変化してきているのかというのはなかなか把握できない。本当にエンドレスにお金と人をかけてやるということならばともかく、限られた範囲で最も適切なやり方をやるという観点からすれば、やはり個人調査というのはそういう意味ではどうも適当じゃない面があるのではないかというふうに思います。  そういう意味から、これまでずっとやってまいりました事業所から出していただく毎月勤労統計調査によって、私どもとしては基本的には我が国の労働時間の実態を把握できるというふうに考えているものでございます。
  117. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 個人調査は大変だというお話はある程度わからないでもないんですけれども、私たち選挙をやりますと、マスコミは当選するかしないかという個人調査をやりまして意外と的確な結論を出しますから、そうばかにしたものでもないというふうに思います。  そういう意味では、残業はしているんではないか、その残業もサービス残業ではないんだろうかという、そういうところは労働省はこれから独自の知恵と人を引きつける人格でもって協力者をふやして、そういう調査を出していただけるようになると大変私は頼りがいがあるというふうに思いますので、ひとつ何とか知恵を出していただきたいというふうに思います。  さて、時間もありませんけれども過労死という問題がこのように討論されるようになったというのは、それを防がなければいけないから討論しているわけで、そういう点では産業医、この間法が改正になりました産業医というものを非常に活用しなければいけないというふうに私は思うんです。  フランスやドイツでは産業医の活躍というのが大変目立ちましたけれども、私たち連合も過労死を防ぐために連合過労死問題プロジェクトというのをつくりまして報告書をまとめておりますが、そのときにドクターストップというのを入れる制度をつくってはどうかという提言があります。その点、どうでしょうか。もうこの人をこれ以上働かせると過労死になるというような産業医のドクターストップ制というものの導入については、どのようにお考えでしょうか。
  118. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 既に参議院では可決をしていただきましたが、労働安全衛生法の改正案を今国会に提出させていただいておりまして、私どもが今回こういった改正をしたいというふうに考えましたのも、いわゆる過労死と言われているような事態が起こるというようなことは、労災認定の問題としてクローズアップされるということだけではなくて、というよりはむしろそういったことが起こらないようにするということが重要じゃないかということで提案をさせていただいたわけでございます。  その中では、産業医の方につきまして一定の要件を備えた医師であるということにするとともに、健康診断の結果に基づいて事後措置というのを事業主はやるということになっているわけでございますけれども、そこにお医者様の意見、産業医になるわけでございますけれども、産業医の意見を反映した形で事後措置がとられるように、ドクターストップと言えるのかどうかということまで含めて、例えば就業時間をどうするかとか勤務場所をどうするかといったようなことを含めまして適切な事後措置が行われるように医師の意見を聞くということを今回の改正案で入れさせていただいているわけでございます。  また、産業医は労働者の健康確保のために必要があるときは事業者に対して必要な勧告をすることができるという条文も入れさせていただきたいというふうに考えておりまして、事業場における産業医活動が的確に行われることによって労働者の健康確保ができるようにという工夫をいたしたいというふうに考えているわけでございます。
  119. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、今こうやって過労死の問題を話し合えるというこのこと自身にちょっとした時代の流れに対する感動というのを覚えます。  かつては、人間が働いて死ぬというのは、それはその人に働く能力がなかったんだというような冷たい気持ちで見過ごされた時代がありました。特に、私はいつでも言うんですけれども、女性の労働というのは本当に悲劇の歴史だったというふうに思っております。それが、労災というのが身体のけがから今は精神的な問題、ストレスとかそういう問題まで論議されるような時代になりました。  こういうふうに今精神的なストレスとか、脳血管あるいは心臓疾患というところまで議論をされるという現象というのは、私は憲法に保障されております勤労権という権利の一つの具体的なあらわれだと。要するに勤労権という権利は、死なないために死ぬような要素を排除する権利というのが含まれていると、そんな思いがいたします。過労死とか労災というのは勤労権の一つの具体的なあらわれだという、そういう把握の仕方をなさっていると思うんですけれども、そこまでまだ行っていないような気がするんです。  そこで大臣、この過労死の問題は勤労権の一つの具体的なあらわれかどうかということのお尋ねと、もしも大臣がこれが一つの勤労権の具体的なものだとお考えになるとするならば、これからの労働行政にとって過労死の問題というのは、具体的に防ぐ手だてをしなければならないというふうに思うんですが、そこら辺のこれからの労働行政に対する御見解をお聞きして、私の質問を終えます。
  120. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) なかなか先生難しい御質問でございまして、勤労権というのはもちろん憲法で保障されておるんですが、働こうとしても病気になったら働くことができない、しかもその病気というのが働き過ぎであったり、いわゆる時間外労働が過重であったり、サービス残業したり、精神的なストレスがたまるような過酷な業務の内容を押しつけられたり、そういうことがあって結果的に自分の健康を損なって、勤労権というものがあっても勤労することができない、勤労することができないということは生活の保障をみずからが確立することができない、そういう観点から見て今先生言われている勤労権という問題であれば、先生の御指摘を私はそのまま同じ思いだということでお答えできると思うんです。  そこで、いずれにいたしましても、そういう勤労すること、労働することが阻害されることのないような健康管理というものを事業主もそして労働者もお互いにきちっとしていかなきゃいかぬ。そのために労働安全衛生法の改正もお願いをしているわけでありますが、産業医体制、きょうの午前中にも南野先生からも御指摘がございましたけれども、単に産業医がいればいいという問題じゃなくて看護婦さんあるいは保健婦さん、助産婦さん、いろんなそういうものにかかわりのある人たちに協力を求めて、そして過労死を発生させないような、そういう職場の健康管理、環境維持・改善という問題について、労働省としてはあらゆる観点から適切な対応をするように全力を尽くしたい。これ以上のお答えはちょっと、なかなか難しい御質問でございますから、先生の御期待になっているようにうまくいかないかもしれませんけれども、全力を尽くしていきたいと思います。  なお、そういう環境を含めまして、事務処理をするについてOA機器どもさらに充実させなきゃいかぬと思っています。労働委員会からもぜひひとつ御視察願いたいと思うのでありますが、例えば上石神井にそういう保険業務をやっているコンピューターの基地がございます。それは一つの例でございますが、労働省としても本当に、世界に誇るべきとまでは言えないかもしれませんけれども、労働行政の中ではこういうことまでやっているのかということが新たな視点で認識してもらえるような設備もちゃんと持って今やっておりますが、さらにそういうものを充実させて事務処理迅速化していきたい、このように私は考えております。
  121. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 ありがとうございました。終わります。
  122. 末広まきこ

    末広真樹子君 この労災保険法改正案は審査迅速化を図ることを目的とした法律案でございます。感想といたしましては、前には進んでいるが歩幅は小さいなと、このような感想を持っております。  そこで一つには、今改正案によって本当に迅速化が実現するのかなという問いかけが生じます。もう一つは、迅速化のためにはもうちょっと違った方法があるのではないのかなという疑問でございます。この二点に沿って進めさせていただきます。  まず一つ目の件ですが、迅速化のため審査請求を担う労災保険審査官が全国で二十七名増員され百二十名となりました。しかしながら、審査官は三百七十カ所余りの労働基準監督署に対して二十七名の増員でしかありません。つまり一割に満たないということでございます。でも、現在九十三名に対する二十七名増しですから、この角度から見ると三割増しであり、数字的には一見大幅増しに見えてしまうんですね、数字っておもしろいものですね。  しかし、審査請求件数がこれまで審査官一人当たり十件余りであったのが九件を切るぐらいの変化でしかない。審査請求一件当たり一年三カ月、過労死事案では一年八カ月もかかっているという現実がございます。これで三カ月内に決定できない事案は再審査請求に回すことができるという本改正意味をなしてくるのでしょうか。そして、再審査請求のためには非常勤委員が三名増員されて、常勤六名と合わせて合議体が二チームから三チームに、一チーム増となります。当面は常勤二名プラス非常勤一名の合議体三チームになりますが、非常勤の増員だけでは十分な活躍が期待できないんではないだろうかと。また、その下で手足となって働く事務局の労働保険専門調査官は何ら人員の変化はないと聞いております。  そこでお伺いしますが、この法改正はそれに伴う予算増しによって一体どの程度審理の迅速化が進むとお考えなのでしょうか。
  123. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 審査官、今年度二十七名増員をさせていただきましたけれども、この二十七名は四十七ある都道府県労働基準局に配置するものでございます。ですから合計百二十名は、局によりまして多いところ少ないところありますけれども、四十七都道府県労働基準局に百二十名が配置される、こういうことになるわけでございます。  審査請求事案の迅速処理という観点からいえば、単に人員をふやしただけで済むというわけにはいかないわけでございます。そういうことから、まずは私どもはこの迅速を旨とする審査請求制度においては第一審の審査官存在意義が問われているというふうに認識をいたしておりまして、まず審査官段階での審査業務をいかに迅速化するか、効率的にやるかということにつきまして、昨年七月、最高裁から判決が出た後、局内業務処理体制の見直しを含めまして迅速なる審査業務処理をいかに図るかという観点から、局内プロジェクトチーム検討いたしました。  幾つかあるわけでございますけれども、当然審査請求でございますから、原処分庁である監督署が行った処分につきまして、請求人の方がおかしいということで不服を申し立てられる。したがって、そこに一つ争いがあり、両方からの論点があるわけでございますけれども、そういう争点をまずきちんと整理をし、重複した調査をやるというようなことも、これまでともすればそういうことがあったのでございますけれども、もちろん必要な調査はやるにしても、ダブってやるといったようなことのないようにきちんとやるということが必要だというふうに考えておりますので、そういうことも指示をいたしました。  また、OA機器の活用も必ずしもこれまで十分進んでなかった点もございますけれども、そういうものを図ることによって事務処理の抜本的な見直しを行い、簡素合理化を図るということも指示をいたしました。まず、迅速化ということにつきましては、今確かに、先ほど先生一年三カ月というふうにおっしゃられましたけれども、最新時点では平均一年で審査官段階では処理をされてきております。年々かなりスピードアップ化が図られてきておりますけれども、いずれにしてもそれでも長いわけでございますので、三カ月で処理をするためにはどういうふうにやっていかなければいけないかというモデルを示し、それに基づき審査計画を立てて効率的にやるようにという指示をいたしたところでございます。  人員の増加効果とあわせまして、迅速処理にさらに徹底を期してまいりたいというふうに考えております。
  124. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 労働保険審査会の方でございますけれども、労働保険審査会は、先ほどからお話がありますように、処理に平均二年九カ月かかっているというような状況でございます。今般、三名ふやしていただくことは大変大きな戦力になろうかというふうに思っています。  審査会審査の遅延の大きな原因は、毎年申し立てられるものよりも処理件数の方が多いのが実情でありますが、それでも七百件ぐらいの繰り越し繰り越しがあるというふうなことが大変大きい原因であろうかというふうに認識をしております。したがいまして、当面はこの滞留件数、残っておる件数をできるだけ少なくするというふうなことによりまして、二年九カ月をできるだけ速やかにもっと短期でできるように努力をしていきたいというふうに思っております。  また、労働保険専門調査官も若干ずつではありますが増員をしておりますので、こういった努力もさらに続けていきたいというふうに思っております。
  125. 末広まきこ

    末広真樹子君 どうもこの法改正だけでは不十分であるのかなという気持ちがいたします。もっとほかに改革をすべき点が多々あるのではないか。  ここに第二東京弁護士会主催のシンポジウム、これは一九九四年九月三十日の報告がございます。クモ膜下出血の業務上外認定争点となりましたいわゆる過労死にかかわる審理です。保険給付請求から裁判所での救済に至るまで何と十年四カ月を要しております。その中で、審査請求に二年二カ月、再審査請求に二年一カ月を要しているんです。もう御遺族の御心労はいかばかりなものであったろうか。何か御遺族の方もつられてストレス死してしまうのではないかな、そんなことが推察できます。平均的な事例と言ってもよいのではないか。この報告の中で、再審査請求にかかわる労働保険審査会手続は、この審理の場合では一年一カ月ですが、平均的には二年九カ月かかっている。それなのに、その手続の中で証人尋問手続というのは三十分ないし一時間の審理が一回あるのみと報告されております。  審査会の審理の実態はこのようなものなのでしょうか。一体、審査会ではどれほどの審査がなされ、決定に至るまでどれほどの空白があるのでしょうか。この審理の進め方を改革することが一番重要なんではないか。途切れ途切れにやっておったんでは、時間ばかりかかってしょうがないよということを考えます。審査官審査請求に対する審査実態とあわせてお答えください。
  126. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) それでは、私からは審査官事務処理の手順等についてちょっと御説明させていただきます。  審査官は、まず審査請求人が審査請求を行った場合には、その審査請求が適法なものであるかどうかを確認するわけでございます。適法な審査請求であれば、請求人意見を求める、また医学的な意見を求めることも必要になってくる場合もありますので、そういったことも含めまして各種資料収集を行うということ。資料収集、そしてそれを検討する、また請求人の方の意見検討もする。もちろん原処分庁意見検討するわけでございますが、そうしたもろもろの意見資料検討を行い、決定を出すに足るだけの十分な心証が得られた段階検討を行うということをいたしているわけでございます。  非常に時間がかかっているという御指摘でございますが、この審査官段階で最も時間がかかっておりますのは、医証を含みます各種資料審査官のところに提出されるのに時間がかかるというのが最も長くかかっているわけでございます。もちろん、提出した資料を今度は審査官がみずから分析をするということになってまいりますので、そのあたりの実質的な作業に実際には時間がかかるということでございます。  ただ、三カ月で処理をするという前提に立ちますと、資料につきましても原処分庁が集めたものをまた再度集めるというようなことをするのをやめて、重複を避けるような形で効率的な調査等をやるというようなことによって、相当程度スピードアップ化が図られるというふうに考えているところでございます。
  127. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 審査会におきます審査でございますけれども審査会審査行政段階におきます最終審ということでございますので、かなり慎重な手続をとる必要があるかと思っております。そのため、審理の公開でありますとか、今お話のありました口頭弁論的な手法をとるといったふうなことも行っておりますが、いずれにしましても本体審査に入りますと、平均的には九カ月で審査会審査は終わっているわけでありますが、審査官から上がってきまして審査に入るまでに約二年を要している。これはつまり、先ほど申しましたが、七百件ぐらいの件数が残っていますために、審査官から上がってまいりましてもなかなか審査に入れないということでございまして、私ども、まず何よりも増員等によりましてこの残っておる件数を少しでも少なくしていくということが審査会においては審査迅速に一番資するのではないかというふうに見ております。
  128. 末広まきこ

    末広真樹子君 つまりは、前がつかえておると、こういうことですね。早くそこをきれいにお掃除せんと、せっかくいい制度ができても結局は前がつかえて進めませんということですから、よろしくお願いしたいと思います。  さらに、審査会委員の実情についても疑問を感じます。現状では委員六名のほとんどが労働行政にかかわるOBの方です。もっと医師や弁護士、労働者といった方が委員になっていいのではないでしょうか。もちろん、女性の委員も絶対に必要不可欠であると思います。この委員の構成について、大臣はいかがお考えでしょうか。審査会について大胆に民間人の登用をお考えになればいかがかなと思うのですが、どのような御見解をお持ちでしょうか。
  129. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) この審査会委員の任命でございますが、これは労働保険審査官及び労働保険審査会法という法律の第二十七条に基づいて選任することになっているわけでありまして、それは「人格が高潔であって、労働問題に関する識見を有し、かつ、法律又は労働保険に関する学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」と、こうなっているわけです。したがって、その資格条件を満たすような人を各界から選んでいくわけでありますが、いずれにいたしましてもその職務の遂行に当たりまして公正に欠けることがあってはならぬ、これがまず第一です。そして、独立性が損なわれるものであってはならぬということ。この二つをしっかりと踏まえて審査会の任務が遂行できるようにということで人選を進めてきているわけであります。  また、この審査会では、処理の公正を確保するために、それらの委員の皆さんが関係労使の代表の意見を聞きましてこれを尊重することとされています。そして、審理は公開としていることでありまして、十分にその公正さを担保することはできると思っております。現在の審査会委員のメンバーは六人のうち、いわゆる今の二十七条に基づく資格要件を満たす者として選ばれているわけでありますが、その中の四名が労働省のOBということになっております。これはOBだから入れたのではなくて、その二十七条に適切に合致するような人ということで人選しているわけでありますが、今度三人が増員されると。このメンバーの選考に当たりましては、十分に先生の御指摘を踏まえて検討してみたい。また、医師の方であるとかあるいは民間人の方というところに焦点を合わせて人選をするようにしていきたいと、こう考えております。
  130. 末広まきこ

    末広真樹子君 ひとつよろしくお願いいたします。  審理を進めるためには企業への調査が不可欠でございます。労災であるか否かの証拠請求人、つまり労働者やその家族が準備するというのは、これはもう大変なことです。労災が頻発すれば、それだけ労災保険料が増額するといった企業側のデメリットがございます。先ほど来出ている労災隠しというのもこの辺から出てくるんやないかなと思うんですが。ですから、真実が伏せられたりするというのは否定できない事実でございますが、過労死の審理をめぐっても、タイムカードの確認だけでは実際の労働時間はわからないのではないでしょうか。審査官などの行政側、請求人、企業、この三者が、もっと審理を円滑にするための情報公開のシステム、大臣もやっていこうと先ほど言っていらっしゃいますので、これはお答えを求めません。  次に移ります。今回の法改正審査請求、再審査請求をもっと迅速化しようということでございます。しかし、一番大事なことは最初に給付請求がなされる労働基準監督署における対応ではないかと、一番の取っかかりのところですね。今年度、監督署における労災対応の事務官の増員は特にないと聞いております。審査官でも同じなんですが、ただ増員すれば審査がスムーズに進むというわけでもないんですが、しかし、労災に対する最初の窓口の対応がしっかりすれば問題は一番解決しやすくなる、出口が見えると思うんです。  この点、いかなる改革を考えていらっしゃるんでしょうか。現時点での労災対応の事務官の数、その業務量はどれほどか、あわせてお答えいただきたいと思います。
  131. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 本年度の全国の労働基準監督署における労災給付を担当する職員は約千六百名でございます。労災保険の給付決定件数平成年度から六年度で約七十一万件あるわけでございますが、この約七十万件余りを今申し上げました千六百名が対応しているということでございます。  御指摘のように、審査請求ですが、再審査請求迅速化ということの前提といいますか、そのためにも原処分が的確に行われなければいけないというのはおっしゃるとおりでございます。労働基準監督署におきましては、労災請求事案を受理しました場合には、事案の内容を審査した上でどういう形でこれを調査していくかという調査計画を策定いたします。そして、これに基づきまして被災された労働者の勤務の実態ですとか被災状況調査、また医証収集など、事実認定に必要な調査を行った上で最終的に労災保険給付の支給か不支給かという決定を行っているわけでございます。この原処分段階で迅速適正に事案処理するということは、請求人、その労災給付請求された方の権利の早期救済ということのために必要であることはもちろんでございますが、その後場合によっては続くかもしれない審査請求、そういったことの適切・迅速処理を図る上でも極めて重要でございます。  そういうことから、原処分庁における調査の徹底、的確な事実認定の確保を迅速に行うために、先ほど申し上げましたようにまず調査計画を策定する、これが適切に策定されることが重要でございますので、その適切なる策定、そして医証収集などについて各種の事務処理手順を標準化していく、そういったことをやってきているわけでございますし、さらに徹底をしたいというふうに考えております。また、研修も充実させ、個々の職員が一〇〇%の力を発揮できるようにということで、OJTも含めまして充実をしていきたいというふうに考えております。
  132. 末広まきこ

    末広真樹子君 まことに細やかな御答弁、ありがとうございます。ちょっと時間の関係でスピードアップして簡潔にお願いしたいと思います。  事務官、審査官審査会委員、それぞれの業務を考えるときに、労災認定基準がどうなのかは重要な問題となってくると思います。平成七年二月の基準改定によって、脳・心臓疾患による労災認定は急激に増したと思います。この基準改正労災認定にもたらした影響を具体的に明らかにしてください。また、ことし一月にも改定がなされています。今後とも労災認定の基準見直しを進めていくのでしょうか、見通しをお聞かせください。
  133. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 簡潔にお答えいたします。  平成七年の二月に基準を改定したわけでございますけれども平成年度請求件数四百八十八件でございました。それまでは三百五十件前後でございましたので、大幅に請求件数自体がふえております。また、認定件数でございますけれども平成年度七十六件ということで、それ以前は三十件前後だったわけでございますけれども、倍以上にふえているということで、新しい認定基準、どこが変わったかということをちょっと御説明する時間がございませんけれども、変わったことによって過労死ということで認定された事案が具体的にたくさん出てきているわけでございます。ということで、今後とも医学的知見を踏まえまして、認定基準見直しが必要な場合には行ってまいりたいと思います。
  134. 末広まきこ

    末広真樹子君 済みませんね、急いで。労働保険料収入というのは平成年度より減少しております。私の地元愛知県では製造業、建設業の衰退によりまして平成年度より減少し続けております。大臣にお伺いしますが、労災保険の収支状況について具体的にどうとらえていらっしゃいますか、これもひとつ簡潔に。
  135. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 労災保険の財政状況でございますが、平成年度の決算で収入総額は前年度より〇・六%増の一兆八千七百五十八億円、他方、支出総額でございますが、前年度より二・〇%増の一兆二千五百五十六億円でございます。  この収支差である約六千二百億円でございますけれども、これにつきましては既に発生した労災事故による年金受給者の方々がいらっしゃるわけですけれども、この年金受給者の方々に対する将来の給付のために積み立てております積立金に繰り入れているところでございます。この積立金の額、かなりあるではないかというふうにおっしゃられるかもしれませんけれども、現在年金受給者が約二十一万人おりまして、今の積立金ですとこの方々の将来の給付に必要な額のまだ六割程度でございます。そういうことから、引き続き積み増しをする必要があるというふうに考えているところでございます。
  136. 末広まきこ

    末広真樹子君 随分あるじゃないかと言いたかったんですが、飛ばします、時間の関係で。  労災年金受給者の高齢化に応じて、労災保険制度の改革、重度被災労働者に対する新たな介護施設の必要性が言われております。本年四月からいろんな制度が始まったんですね、労災保険給付の中に介護給付が生まれました。昨年には、長期家族介護者に対する援護金制度や在宅介護住宅資金貸付制度が始まっております。そして、労災ホームヘルプサービス、介護機器レンタル事業が昨年十月より施行されております。そのための財団法人労災ケアセンターやケアプラザも全国に六カ所というように充実されていっております。労災年金受給者の高齢化に応じた労災保険制度の改革について、大臣は今後どのような見通しをお持ちなのでしょうか。制度の充実は大変結構なんですが、今言っただけでも四つ、五つ、六つと、こうあるわけでございますね。私が心配なのは、制度が分散化していくことなんです。充実が分散化であってはいけない。いろいろな介護サービスにしても別の制度が生まれ、また別のセンターがつくられ、そのためにまた多くの人員が手当てされます。国民は制度が複雑になってますます使いづらくなり、かかる費用のロスも多い。つまり、生きてこなけりゃ費用はロスですからね。  大臣、縦割り行政の枠を取り払った思い切った制度改革が必要と思うのですが、いかがでしょうか。
  137. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘のように、幾つかの制度がございます。それを一本にくくって一つ事案として処理することは内容によってなかなか難しゅうございますから、ケースごとに対応するような制度をつくってきたわけであります。これを十分に生かし切るようなことを労働省としてやることがまず大事だと思います。  それ以上の答弁をするのは非常に言葉が難しゅうございますから、全力を尽くすということでひとつ御理解を願っておきたいと思います。
  138. 末広まきこ

    末広真樹子君 本当に難しいと思うんですよ。会社でも、支店がふえてくりやふえてくるほど、社長は全容をつかみ切れないということになりますものね。ここらは非常に一考を要するところだと思います。  平成五年の総務庁勧告に始まりまして、行政改革の一つとして、地元愛知県にありますリハビリテーション自動車教習所が閉鎖されようとしています。名前が長いんですが、正式には労働福祉事業団労災リハビリテーション愛知作業所付設自動車教習所、こう言うんです。これが今年度を最後として来年三月には閉鎖されると聞いています。この教習所は、唯一の公的な障害者向け自動車学校として一九七一年に開設されまして、これまでに約一千四百名の免許取得をさせてきたといいます。一時期は、労災被災者、年間百名の免許取得を行ってきてもおります。昨年一年間でも五十名の身体障害者の免許取得を可能にしました。ところが、このうち労災被災者は十名だけでした。明らかに労災被災者の数が減ってきているのです。なぜでしょうか。調べてみますと、被災時に免許を持っていた人は千五百ccまでの車なら従来の免許証がそのまま使えるという規定があるからなんです。このことが影響している一面があるようでございます。  たとえ労災被災者の利用が減っても、依然として身体障害者一般の利用は多いのです。各地に自動車学校の数というのはふえていっても、身障者の使える自動車学校は非常に限られています。特に、重い障害を持つ人にとってはなおさらでございます。重度の障害を持つ人が使える民間の自動車学校は、埼玉県所沢市にたった一つあるだけでございます。それなのにこの学校は閉鎖されようとしているんです。これほど重度障害者にとって貴重な公的な自動車学校を、なぜ閉鎖しようというのでしょうか。労災リハビリテーション事業としてふさわしくなくなったとすれば、他事業との共同で運営できる道を探ってはもらえないのでしょうか。その点、どうなのでしょうか。
  139. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘のございました、現在、民間自動車教習所施設等の中で、障害者用の教習車を備えつけて教育をしているところは五百十施設ございます。全国の自動車教習所の三三・三%でございますが、それだけで十分かどうかということはそれなりに問題があろうかと思いますが、いずれにいたしましても、この政府関係特殊法人である労働福祉事業団は、民間事業体では力の及びにくい分野で労災被災者やその御家族の福祉の増進のために活動することが期待されているわけでありますが、平成五年の行政監察におきまして、障害者の自動車運転免許については民間自動車教習所にゆだねるべきであるという旨が指摘をされたわけであります。このため労働省は、先生指摘のように、自動車教習所の廃止に向けて具体的な措置を進めておりますが、現在入所されている方についてはその方が卒業されるまでは今のままで継続をしていく、こういうことにしているわけであります。  いずれにいたしましても、それに代替するような教習所における十分な教習ができるような配慮だけはきちっとアフターケアとしてやっていきたいと、こう思います。
  140. 末広まきこ

    末広真樹子君 そうなんですか、民間にゆだねていくべきという方向に変わってきているという御答弁でございますね。
  141. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 行政監察として、そのように指摘をされたのでありまして、それを受けて労働省として対応を進めているということであります。
  142. 末広まきこ

    末広真樹子君 わかりました。  こんな話が聞こえてきているんですよ。このリハビリテーション自動車教習所がある場所は、二〇〇五年に開催を希望しております愛知万博の会場のすぐそばにあるんです。開催のための名古屋—瀬戸道路建設のルートに当たるためにぜひこの土地が必要である、こういう話が聞こえてきております。まさか、そのような開発のために全国で唯一の公立の重度障害者のための貴重な学校がつぶれていくんじゃないとは思うんですけれどもね。  大臣にお伺いします。一点目は、なぜここが閉鎖されるのか、その理由。それから二点目が、愛知万博のための開発が影響しているのでしょうかということ。それから三点目に、愛知県にあるこの施設を知らなくて利用していない人がまだまだ多いんじゃないか、啓発が足りないんじゃないかということでございます。全国の障害者のためにこの地をしっかり啓発して、貴重な場所を生かす道を見つけてあげていただきたいなと。  以上、二つの質問一つのお願いでございますが、大臣よろしくお願いいたします。
  143. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、私が申し上げましたように、平成年度行政監察におきまして、まず一つは、民間の自動車教習所で障害者用自動車を備えている施設が多く整備されていることを最前に申し上げました。平成七年で三三・三%の教習所がそういう施設を整備しているわけであります。二つ目に、障害者となる以前に自動車運転免許を取得している者が非常に多くなってきていること。こういうことから、当該教習所の利用者数の減少が著しく、廃止を含めそのあり方を見直すべきだという勧告を受けたわけであります。平成七年二月の特殊法人の整理合理化に関する閣議決定におきまして、労働福祉事業団について、「業務の範囲の見直し、事業の選別重点化を図る。」というふうに閣議で決定がされたわけであります。  以上の経過を踏まえまして、先生指摘の愛知県のその教習所については廃止をすることで今進めているわけでありますが、この廃止時期につきましては、既に受け付けている平成年度の教習予約者の教習終了までは今のままで対応できるようにしているわけであります。そして、それ以降は、今申し上げましたように、他の自動車教習所に十分にそのことが対応できるような施設をさらに拡充してもらいながら受け入れ体制を万全にしていきたい、こう考えているわけであります。  なお、愛知万博との関係の御指摘がございましたけれども、これについては全く承知をいたしておりませんので、そのように御答弁申し上げます。
  144. 末広まきこ

    末広真樹子君 ありがとうございました。
  145. 足立良平

    委員長足立良平君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 足立良平

    委員長足立良平君) 御異議ないと認めます。  本案の修正について吉川君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。吉川春子君。
  147. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、その提案理由を説明いたします。  今回の労災保険法改正は、昨年七月六日の最高裁判決をきっかけとして提出されたものであります。  最高裁は、審査請求期間中の裁判手続について、再審査請求に対する裁決を経ないで取り消しの訴えが提起されることは、本来労災保険法の所期するところではないと言えるとしつつも、第一に、行政事件訴訟法が言う審査請求労働省が主張するように第二段階の再審査請求に限定することはできないこと、第二に、第一段階の遅延についての救済規定を置いてない現状ではなおさら再審査請求に限定する解釈はとり得ないことを明らかにしたのです。  ところが、政府案では、今指摘した第二段階での救済規定を新たに置くことだけにとどめ、審査請求段階から国民司法救済を求める道を拒否しているのです。これでは最高裁の指摘を正確に受けとめたとは言えません。  そこで、本修正案の第一は、審査請求についての決定があったか、もしくは決定が三カ月以上遅延したときには、再審査請求でも裁判所への提訴でもどちらも認めることにより、国民権利救済の道を広く確保しようとするものです。  本修正案の第二は、被災者に保険給付についての決定にかかわる資料を開示させようというものです。  裁決前置主義の目的は、裁判における訴訟手続、費用、係争期間等の大変さから、簡易迅速に国民の権利、利益の救済を図るために、できるだけ短期間被災救済を図ることにあります。  そのためには、審査官の人員をふやすこと、その人選を労働省の職員のみからとする現行制度を改めること、審査会委員については労働省OBの比率を減らすことなど、体制上の問題を解決することも重要です。  また、被災者の救済に資するために、審査官段階以降、審査官及び審査会の所持する記録を自由に閲覧できる権利を確立することが憲法上の要請であると考えます。  憲法三十一条が定める法定手続は、行政手続についても適用されるとの最高裁の判断も示されています。行政不服審査法は、資料の閲覧請求権を認めていますが、労災保険法は三十六条において、こうした閲覧請求権を確保している行政不服審査法三十三条の規定をわざわざ適用しないこととしているのです。このことが審理の迅速化の面からも甚だ不都合を生じさせているのです。今回の改正をより労災被災者の権利確保にとって十分なものにするためには、この点での修正もぜひとも必要であると考えるものであります。  以上、委員各位の御賛同をお願いし、提案理由説明といたします。
  148. 足立良平

    委員長足立良平君) それでは、これより原案並びに修正案について討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、吉川君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  149. 足立良平

    委員長足立良平君) 少数と認めます。よって、吉川君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  150. 足立良平

    委員長足立良平君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 足立良平

    委員長足立良平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十六分散会