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国務大臣(
永井孝信君) この朝日の記事に載りましたりフキン氏の論文といいますか、問題提起といいますか、これの中身についてはかなりの部分が雇用サミットでも議論の
対象になりました。とりわけ、主催国でありますフランスのシラク大統領は、このアメリカの現状をフランスなりに実は厳しく批判をしたわけであります。
もう亡くなりましたけれ
ども、当時出席しておりましたアメリカのブラウン商務長官は、八百万人の雇用創出を我々はやってのけた、したがって、この五・六%という失業率まで雇用
状況を改善することができたと、こう言ってブラウン商務長官が実は胸を張ったわけであります。
しかし、そこで問題になりましたのは、八百万人の雇用創出をしたということを胸を張ったんでありますが、その八百万人の内容というのは、非常に劣悪な労働条件であったり、あるいは恒久的な常用雇用
労働者じゃなくて一時的な採用であったり、賃金が物すごく低くて、アメリカの場合は賃金の格差が余りにも大き過ぎると、こういうやり方で雇用安定ということが言えるのかと厳しく議論の中で
指摘があったわけであります。私は、すべてを肯定するわけではありませんけれ
ども、アメリカのこの八百万人の雇用創出というものは我々が求めているような雇用創出の内容とは異質のものではないかという気が実はしているわけであります。
加えて、今
先生が御
指摘になりましたように、ダウンサイジングということから、どんどん人を減らすことによってトップは何億円という年俸をもらう。これを、当時その雇用サミットの席上で新聞が配られたわけでありますが、その新聞にはザ・ヒットマンと書いてある、見出しが。そのザ・ヒットマンとは何かというと、
労働者を犠牲にして、特定のトップが高給を取っている、これでいいのかという警鐘乱打のような新聞が雇用サミットにも配られました。
したがって、私は、このアメリカ型が必ずしもすべていいと思いませんし、といってすべてが間違っているとも思わない。御
指摘のように、新聞で書かれておりますように、このリフキン氏が提起した問題、これはかなり傾聴に値するところがありますから、これはこれなりに私
ども分析をいたしまして、十分こういう問題についてもそういう間違いのわだちだけは踏みたくないという気持ちで
対応してまいりたい、このように考えているわけであります。
なお、
先生、大前さんのことも冒頭に触れられました。これはこの際にちょっと私も時間をおかりして申し上げておきたいと思うんですが、この大前さんの毎日新聞に出ました「雇用が今後最大の政治課題」、この見出しはそのとおりで私はいいと思うんです。私
どもそういう
認識を持っております。しかし、この中身はかなり大きな誤解があるし、御
指摘も間違いがあると言わざるを得ないわけであります。
例えば、雇用調整助成金の問題についてもこのように触れております。雇用調整助成金の制度を適用するようにするから応募してきてくれと
労働省が言う、これを要らないと断っても統計上失業にならないから雇用調整助成金を上げるよと
労働省は言う、そういうことで納税者の税金を突っ込もうとしていると、こう
指摘されているわけであります。
私たちは、雇用
状況が厳しいだけに企業の経営
実態が、かなり実績が低下してきてもそのことを
理由に
労働者を解雇することがあってはならぬと、できるだけ解雇をさせないようにするために、その間企業が継続して活動できるように、再建できるように援助しましょう、そのための雇用調整助成金でありまして、しかもこれは大前さんが言われておるように納税者の税金を使っているわけではないのでありまして、これは特別会計でありますから、事業主と
労働者が納付しているお金でありますから、税金ではないと。
あるいは統計の問題でもそうでありますが、このように言っています。アメリカの失業率は五・六%だけれ
ども、これは極めて完全雇用に近い
数字であって、実際はこの中には働く意思のない者あるいは就職活動していない者も含まれているんだから、こういう者も含めると日本はもっともっと高くなるよ、失業率が八%、九%になるよということを言っていらっしゃるわけであります。
しかし、これはアメリカの場合も日本の場合も統計のとり方は全く一緒でありまして、OECDの決めた基準に基づいて各国がやっておりまして、アメリカも日本もフランスもドイツも全く同じ基準で完全失業率の
調査を実はしているわけであります。しかも、アメリカは五・六%という
数字でありますが、完全に就職をする意思のない者、こういう人たちは全部除いているわけでありまして、これを入れますとアメリカはもっとぐんと高くなるのでありますから、事実と違うということも、せっかくの
先生の御
指摘でありますから
指摘をしておかざるを得ないと、私はこう思うわけであります。
あるいは、ここが一番問題でして、私はこの
労働委員会を通してぜひひとつ
先生方にも御理解を求めたいと思うのでありますが、日本政府はこれまで雇用問題をサボってきたと。
労働省は雇用問題を最重点に取り組んできたわけでありまして、それをサボってきたと言われたんでは、私はこれは反論せざるを得ない。しかも、こういうことを言っているんです。ある企業がレイオフの相談に
労働省に行ったら、そういうことをするのはやめてくれと言った、おたくのようないい会社がレイオフすると社会的に騒動が大きくなると言ってとめたと、あるいは退職金の上積みをするという制度もつくったからということを言ったけれ
ども、それもだめだと言った。きのうも一日かかって調べましたけれ
ども、そんな事実はありませんでした。
しかも、レイオフ制度だけじゃなくて、
労働省は雇用を守ることが一番大きな任務でありますから、首を切りたいとか解雇したいとか、レイオフをして一時帰休をしてということを相談に来れば、それはそうですねと言うわけにいかぬわけです。これを何とかそういうことをさせないようにとめるのが
労働省の仕事でありますから、これを批判されるということは私はどうしても納得ができないわけであります。むしろ雇用調整助成金なんかは適用してくれと陳情が山ほど来る方でありまして、こちらから無理やりに押しつけるというものではないということも、ひとつこの中で私は反論をしておきたいと思うわけであります。
なお、
労働省の幹部がどう言ったこう言ったということがいろいろありまして、調べてみました。大前さんが書かれておる論文もきのう引っ張り出しました。その論文に書かれていることをきのう新聞で言われているわけであります。これは
平成二年から三年ごろに
労働省といろいろ話があったときのことをもとにして言われたようでありまして、今の時点の問題ではない。
あえて、不謹慎かもしれませんけれ
ども、せっかくの
先生の御
指摘でございますから、こういうことがそのとおりだというふうに
国民の皆さんに理解されたら大変でありますので、この
委員会の席をかりて弁明じゃなくて反論をしておきたいと、このように思うわけであります。