○今泉昭君 今お答えにございましたように、今ここですぐ答えが出ないというのは私自身も十分承知をしておりますし、私が言いたいことは、
我が国の場合はいかに
雇用問題というのが一般的に言われている以上に危機的な
状況にあるかということを申し上げたかったわけであります。
農業の事態を見てみますと、かつて
我が国の半数以上が農業
人口でございました。農業で飯を食っておりました。ところが、これらの工業の発達によりまして、あるいはまた農業におけるところの機械化の促進によりまして、今やもう
我が国の農業
人口というのは三百万人を切るような
状況になってまいりました。いわば農業という産業の中に機械を導入することによって、実は現在の農業は三百万人も要らないような
状況なんです。
アメリカなんかの例をとってみますと、アメリカでもかつてその
就業人口の六割は農業
人口だったそうでございますが、今やもうアメリカですら農業
人口というのは微々たるものになってしまっている。これも
一つは科学技術の進展に伴います機械が産業にすっかり定着して、必要とされるだけの生産物を十分生産できるような
状況になったからなのでありまして、今生産現場で働いている一般の人たちも、農業で働いている人たちがかつてこうむったような
状況にならないという保証は実はないわけであります。
そういう
意味で私が声を大にして叫びたいのは、
労働行政の中にもっと
予算をうんととってもらって、この問題を
政府の最大の課題として積極的に取り上げていってもらいたい。ぐずぐずしていたら遅くなるわけでございますから、ぜひそういう意識を持って臨んでいただきたいという気持ちを申し上げたかったわけでございます。
それから、先ほど申し上げましたもう
一つの
雇用の不安という側面、すなわち市場が過熱化をするという中において生じている不安でございます。
かつて
我が国は怒濤のごとく貿易を伸ばしてまいりました。
我が国はとにかく失業を輸出する、洪水のごとく失業を輸出するといいまして欧米諸国からさんざんにたたかれた八〇年代がございました。今はいろんな
意味で日本の実態が高コスト化しておりますから、外国からの非難は幾らか和らいでおりますけれ
ども、かつて
我が国がやったようなことを今度は
我が国よりも低いコスト国がどんどんやってくるというのは、これは歴史の必然なのであります。我々もそれを覚悟しておかなければならないと思うのであります。
ところが、それでもって苦労に苦労を重ねたアメリカが逆に今、今度は低コスト国にしようとしている。その流れを見てみますと、収益が上がるにもかかわらずどんどん人減らしをしている。御存じのように、GMなんかは一時四十万人を超える大企業でございました。今もう二十万を切っております、十四万ぐらいしかおりません。しかも、なおかつ長期計画でこれを五万人減らそうなんというような計画さえ打ち立てているわけです。そして、それをすることによって現在の収益を三倍に伸ばす、すなわち人を減らすことによってコストを低くして競争力を高めていくという政策、これをやっているわけでございまして、これはたまたま
一つの例としてGMを取り上げたわけでございますが、アメリカの大企業と言われるところは軒並みそういう方策を今とっているわけであります。
したがって、アメリカの大企業は日本の大企業と同じようにダウンサイジングの真っ最中でございます。特にアメリカの場合は、生産をする場合に大変内製化の高い産業構造を持っておりました。ところが、内製化の中で今どんどんアウトソーシングをしておりまして、下請にどんどん
仕事を出しているようなわけでありまして、本体の企業は大変小さくなっている。
我が国の実態を見てみますと、今まで
我が国はどちらかといえば企業系列がしっかりしておりました。そして、いろんな部品などの調達は系列の中小企業にやらせていたということでございますから、そういう
意味では日本の産業、大企業の姿というのはアメリカに比べて今まではスリム化をしていたという中での出発でございました。しかしながら、日本も同じように、アメリカがそういうような
状況をやってきているわけでございますから太刀打ちできないということで、海外に生産設備を持っていくだけではなくして、中小企業に一番実は効率の悪い部門をどんどん出しているわけであります。
先ほど、
大臣の答弁の中にもございましたように、中小企業を
活性化していく、あるいはベンチャー企業をふやしていくという形で、中小企業で
雇用の受け皿をつくっていくと言われておりますけれ
ども、現在の
我が国の中小企業の実態というのは、実は中小企業が生まれる数よりもやめる数の方が多い、倒産する数の方が多くなっているわけです。
かつて
我が国は、産業の二重構造がある
意味では批判的に言われておりましたけれ
ども、この二重構造というのは
我が国の実は経済
基盤を支える場合に大変大きな役割をしていたわけでございまして、倒産する以上の中小企業が年じゅう生まれてくるというところから
我が国の産業界の
活性化というのができていたわけです。
ところが、今の現状を見てみますと、大企業から効率の悪い
仕事ばかりどんどん回ってくる、締めつけられる。これではもうやったってもうからないからやめていこう、こんなの子供たちに譲っていけない。子供たちだって、おやじ、もうそんなもうからないような企業はやめて、資産を売った方がよっぽどいいよというような形になっていて、中小企業をふやそうにも
一つもふえていってないような現状なのであります。
そういうことを見てみますと、
我が国の産業構造のあり方ということについても本当に抜本的に見直さなきゃならないのではないかと思うのであります。特に我々が
考えなきゃならないのは、そういう中で今進められている例えば対外投資あるいは内部における設備投資の額は、減っているとは言いながら、まだまだ日本の場合は大変多額なものを投資しております。実は、収益を上げたものをどのような形で還元をしているかというと、
我が国の場合はそこで働く人たちや、あるいはその企業を支えている株主に還元をするということよりも、設備投資、将来のためにという形での投資を大変してきたわけでございます。そういう
意味で、そこで働く人たちの生活というのは二の次三の次という形でこれまでやってきたことは事実なのであります。
そういうやり方を、実はアメリカも最近まねし始めた。欧米諸国も日本に勝つためにはそれをやらなきゃならないということで、世界各国の労働者が実は日本の中で一番今まで感心されなかったことをまねし始めたわけであります。これがいわゆる過当競争という形になりまして、人減らしの過当競争につながっていっている。これは大変なことなのであります。
このことにつきましても、我々としては今までの観点と違った形で、上がった収益をどのような形で配分をしていくかということに対する行政の適切な指導というものが、世界の秩序というものをつくる上にも必要なのではないだろうかという気を大変強くしているのでございますが、
大臣、これについてどのようにお
考えでございましょうか。