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1996-05-07 第136回国会 参議院 労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月七日(火曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月三十日     辞任         補欠選任      中原  爽君     松谷蒼一郎君  五月一日     辞任         補欠選任      三浦 一水君     坪井 一宇君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         足立 良平君     理 事                 南野知惠子君                 真島 一男君                 武田 節子君                 大脇 雅子君     委 員                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 山東 昭子君                 坪井 一宇君                 前田 勲男君                 松谷蒼一郎君                 石井 一二君                 今泉  昭君                 星野 朋市君                 青木 薪次君                日下部禧代子君                 吉川 春子君                 笹野 貞子君                 末広真樹子君    国務大臣        労 働 大 臣  永井 孝信君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労政局長  七瀬 時雄君        労働省労働基準        局長       松原 亘子君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業安定        局高齢障害者  坂本 哲也君        対策部長        労働省職業能力        開発局長     伊藤 庄平君    事務局側        常任委員会専門        員        佐野  厚君    説明員        文部省高等教育        局大学課長    近藤 信司君        文部省高等教育        局学生課長    櫻井  清君        厚生省保険局保        険課長      角田 博道君        通商産業省産業        政策局産業構造  中嶋  誠君        課長     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○平成八年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付)、平成八年度特別会計予算内閣提出、衆  議院送付)、平成八年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)について  (労働省所管) ○労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を開会いたします。委員異動について御報告いたします。  去る四月三十日、中原爽君委員辞任され、その補欠として松谷蒼一郎君が選任されました。  また、去る一日、三浦一水君が委員辞任され、その補欠として坪井一宇君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 足立良平

    委員長足立良平君) 高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 武田節子

    武田節子君 おはようございます。平成会武田でございます。  今国会に提出されました高年齢者等雇用安定等に関する法律案考える上で、多少疑問になる点がございますので、その点について質問させていただきます。  初めに、日本の平均寿命の延びと出生率低下による高齢社会は急速に進んで、平成七年度で六十歳以上の人口は約二千五百万人に達しております。二十一世紀初頭には、全人口の約五人に一人が六十五歳以上、労働人口の約四人に一人が五十五歳以上の高齢者となる超高齢社会は確実にやってまいります。したがいまして、増加の一途をたどる高齢者就業ニーズにこたえていくことはますます重要になってまいります。しかし、現在の失業率求人倍率にあらわれているように、高齢者就労環境は大変厳しい状況となっております。政府は、就業支援に向けてさまざまな施策を実施しておりますが、その一環としてシルバー人材センターが存在しておりますが、そのねらいは臨時的かつ短期的な就業機会確保に置かれております。  高齢者就業ニーズはさまざまであり、それにこたえるべくさまざまな施策がとられることは、高齢者の選択肢を広げる意味から評価できるのですけれども高齢者就業への願いはもう少し切実なのではないかという気がいたします。定年をあすに控えた多くの方々から、労働省は現実を知らな過ぎるという声も聞かれます。  大臣、いかがでございましょうか、御所見を伺わせていただきます。
  5. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生から御指摘がございましたけれども、御指摘のように我が国におきましては平均寿命の伸長は著しいものがございまして、出生率低下を背景に、超高齢化社会という表現が使われておりますように、大変高齢化社会が進んできているわけであります。  二十一世紀初頭には労働力人口の四人に一人が高齢者と、これはもう統計上明確になっているわけでありますが、このような超高齢化社会の到来を迎えまして、我が国経済社会活力を維持していくためには、高齢者皆さん自分の培ってきた知識あるいは経験を生かしていただいて、希望すれば現役として六十五歳まで働くことができるような社会の仕組みをつくり上げていくことは極めて重要だと考えます。  また、先生が御指摘になりましたように、この高齢者方々就業への願いという中には、生きがいを求めることも当然でありますが、より高い収入を求めるということも切実なものがあろうかと思います。したがって、このシルバー人材センターもそうでありますが、一方で年金などの高齢者福祉の充実を図っていくことはこれまた極めて重要なことでありまして、これらの施策労働行政として進めていく高齢者対策、これが一体的に進展をすることによって初めて高齢者皆さん就業へのニーズというものが満たされるのではないかと、このように考えるわけであります。  労働行政といたしましては、先生指摘のように、一つは六十歳定年基盤とする六十五歳までの継続雇用推進ということが極めて重要でありまして、そのための対応を国会の方でも御審議いただいて、今具体的に進めているところであります。  また、多様な形態による雇用就業機会確保、これらも非常に大事でありまして、そのことについても全力を尽くしてそういうことのニーズにこたえていくようなことを図っていきたいと考えているわけであります。具体的には、六十歳定年基盤とした六十五歳までの継続雇用推進につきましては、雇用保険の高年齢者雇用継続給付の支給を初めとしていろんな支援措置を講じているところでありまして、これらをより具体的に高齢者皆さんの期待にこたえることができるような中身として活用いただけるような努力を私ども進めてまいりたいと思うわけであります。  また、再就職希望する高齢者皆さんに対しましては、公共職業安定所におきまして、特定求職者雇用開発助成金制度を活用しながら、きめ細かな職業相談あるいは職業紹介等を実施することによりまして、早期に再就職ができますようにその促進を図ってまいりたいと、このように考えているわけであります。  さらに、高齢者ニーズに応じた多様な形態による雇用就業機会確保推進するためにこのシルバー人材センター事業の発展が不可欠だと考えておりまして、シルバー人材センター事業の拡充、そして高齢者にかかわる労働者派遣事業特例措置などの諸般の対策を総合的に労働行政としては進めてまいりたいと、このように考えているわけであります。
  6. 武田節子

    武田節子君 シルバー人材センターは、臨時的かつ短期的な就業機会確保するためのものであるとしていますけれどもシルバー人材センター活性化高齢者意欲考えると、ここに問題はないのでしょうか。  まずお聞きしますが、会員就業意欲には高いものがあるのではないでしょうか。会員希望する就業時間や希望日数あるいは月間配分金希望額などはどうなっているのでしょうか、お伺いいたします。
  7. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) ただいまお尋ねのシルバー人材センター会員希望する就業時間ですとか就業日数、あるいはどのくらい報酬をもらいたいか、そういったものを具体的に直接調査をしたものはございませんけれどもシルバー人材センターに対する会員要望事項としまして、会員に適する仕事の量、それから仕事の質、そういったものを確保してほしいという要望を掲げた会員が二八・九%という調査がございます。しかしながら、この同じ調査で、シルバー人材センター会員自分希望していた仕事についている、そういうふうに評価をしておる会員が七〇%を超えております。七〇・六%に上っているという状況でございます。  また、シルバー人材センター事業全体について見ますと、平成六年度の実績でございますが、就業率は全体で七三・七%、それから月平均就業日数が八・八日、それからまた報酬平均が四万円弱というようなことになっておりまして、会員要望とか評価、こういったものを考慮しますと、おおむね高齢者希望にこたえてきているのではなかろうかというふうに思っております。
  8. 武田節子

    武田節子君 会員希望にこたえていくには十分な就業機会確保すべきであることは申すまでもありませんが、それには絶対的な受注件数をふやす必要があると思います。  しかし、全国シルバー人材センター協会で行っているシルバー人材センターに対する発注者意識調査によりますと、これまでシルバー人材センター仕事を依頼する上での不安点として、「責任ある仕事をしてくれるか」ということが二二・二%と、かなり高い比率を占めております。やはり、臨時的かつ短期的では仕事を発注する企業側も二の足を踏むのではないでしょうか。そして、このことは結局、シルバー人材センターでなかなか仕事が見つからないという仕事あっせん面で非常に効率の悪い現象を生んでいるのではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  9. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) シルバー人材センターにおきましては、高齢者ニーズあるいは適性、こういったものを十分に把握した上で適切な仕事あっせんを行うことにしているわけでございまして、また講習等を通じまして会員である高齢者資質向上にも努めているところでございまして、そういったことを通しまして責任ある仕事を遂行しているというふうに考えておるわけでございます。  今御指摘の臨時的かつ短期的という要件でございますけれども、これはシルバー人材センターが、いわば常用雇用労働を卒業いたしましてその後任意的な就業希望する高齢者のための組織ということ、それを担保するための基本的な要件というふうに私ども認識をいたしております。  そういう中で、各シルバー人材センターにおきましては高齢者数名でチームをつくりまして、一人当たりの就業日数は短いけれどもチーム全体としては長期の仕事を引き受けることができる、そういったような運用を行っているところでございまして、臨時的かつ短期的ということが仕事開拓上の大きなネックになっているというふうには私ども考えておらないところでございます。  なお、シルバー人材センター事業、これはまだ地元の企業等に十分浸透していない、こういったことで仕事開拓障害になっている面もございますので、今回のシルバー人材センター連合を契機といたしまして、都道府県下全域対象とするシルバー事業の周知、高齢者資質の一層の向上、こういったものを通じまして仕事の一層の開拓を進めてまいりたいというふうに考えております。
  10. 武田節子

    武田節子君 この法律案趣旨説明中に「高年齢者が長年にわたり培ってきた知識経験等を活用していくことが必要」とありますが、なかなか実情はこれとはほど遠いように思われます。シルバー人材センターでの仕事職種としては、どうしても清掃や建物、駐車場管理といったものが大半となっております。私は、これでは働く人自身活力や豊かさは感じられないのではないかというふうに思うわけでございますけれども、働く人に活力と豊かさがなくてどうして活力ある社会、豊かな社会の維持ができるのだろうかと危惧いたしております。  どういう社会ができるかは、どういう人間によってつくられるかだと思いますので、本当に豊さ、活力を感じられる職種ということを考えていかなければならないと思っているんです。したがいまして、もっと多種多様な、これまで培ってきた知識経験や技能が活用でき、雇用就業機会確保できるようにしていくべきであると考えますが、この点に関してはどのような対処をしていくお考えですか、お伺いいたします。
  11. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) シルバー人材センター仕事中身でございますけれども、例えば補習塾ですとか、あるいは名所旧跡の観光案内といったような仕事、あるいは民芸品の製作、こういったようなそれぞれの会員知識経験を大いに生かした事業展開を行っている例もございますけれども、まだまだ高齢者就業ニーズが多様化する中で必ずしもすべてのシルバー人材センターが十分に対応できているというふうには言えないというふうに認識をいたしております。  このため、労働省といたしましても、平成四年度からは福祉家事援助サービスにつきまして、また平成六年度から事務系職種につきまして、必要な講習を行う事業に対して補助を行っておるわけでございまして、こういったものを通じまして多様化する就業ニーズなりあるいは仕事ニーズに対応すべく努力をしてきたところでございます。  さらに、今回の制度改正は、地域によってはせっかく仕事が申し込まれたのにそれをこなすことができる高齢者がいない、十分いない、そのために仕事をお断りするといったような事例とか、逆に高齢者はいるけれども仕事がない、こういったような問題があるということを踏まえて新たに制度改正をしたいというふうに考えておるわけでございます。  今般の、シルバー人材センター連合設立によりまして、連合支部となりますシルバー人材センター間での人なり仕事の融通、それを容易に行えるようにしたいということが一つございますし、また連合におきましては都道府県下全域での就業機会開拓ですとか新たな就業機会企画開発、こういったものを集中的に行えるようになるわけでございまして、こういったことによってより一層ニーズに対応できるんではないかというふうに考えておるところでございます。
  12. 武田節子

    武田節子君 次に、都道府県知事公益法人として指定できるとされているシルバー人材センター連合についてお尋ねいたしますけれども、これはまさか労働省OB天下り先になるのではないだろうかなどという、とかく国民の目には天下り先と映りがちでございますので、疑念を招きやすいものでございます。私も少々この点を心配している一人でございますけれども、こうした点に十分配慮すべきであり、工夫し、誤解を招かないようにすべきと考えますが、どのようにお考えでしょうか、お尋ねいたします。
  13. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 一言で言いますと、天下り先になるんではないかという御心配だろうと こう思うんですが 全くそのようなことは考えておりませんし想定もいたしておりません。  このシルバー人材センター連合本部事務局といたしましては、各支部共通事務、これをまずやります。二つ目には、各支部事業をより積極的に展開できるように新たな事業企画開発を行うこと、あるいは普及啓発を行うこと、これが重要な任務になってまいります。  先生が最前御指摘になりましたように、シルバー人材センターの実際の仕事の内容というのが単に清掃であったり単に駐車場管理人であったりというふうなことでは意欲もわかないし、社会的にもなかなかシルバー人材センターのいい面を引き出すような認知が欠けるんではないかという問題だろうと思いますので、そういうことではなくて、平成四年度あるいは平成六年度から新たに育成を始めておりますように、事務作業も含めていろんな知識経験が生かせるようなことをこのシルバー人材センターで取り扱うことができるような啓発普及活動、こういうものが本部事務局としての重要な役割を持つことになってくるわけです。  現在、各都道府県におきまして相互の連絡調整を行うために都道府県内すべてのシルバー人材センターが自主的に協議会組織されているわけで、これはもうあくまでも自主的に組織されているわけであります。このシルバー人材センター連合としては、これらの協議会が今度の法改正によって指定されるものというふうに見込んでおりまして、天下りのための組織となるおそれはそういう立場からも全くないと考えているわけであります。  このシルバー人材センター連合本部事務局が積極的かつ効率的に機能するためには、まず一つ職員として幅広い人材を登用することが必要だと考えています。したがって、自主的に運営するためには会員を活用することも大事なことだと考えています。会員の中からそういう人材を登用していくということは大事なことだと思っています。これらの点につきまして全国シルバー人材センター事業協会を通じまして適切に指導してまいりまして、先生の御心配のようなことになっていかないようにきちっと対応してまいりたい、このように考えております。
  14. 武田節子

    武田節子君 ぜひともよろしくお願いいたします。  社団法人全国シルバー人材センター協会会長専務理事労働省OBであり、シルバー人材センター役職員自治体OBが多いのではないでしょうか。これでは、労働大臣が今おっしゃったように、自主性を尊重すると言われておりますけれども、真の自主性というものが確保できるのでしょうか。十分な配慮が必要だと思いますけれども、この点についてお尋ねいたします。
  15. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 全国シルバー人材センター協会会長専務理事労働省OBでございますけれども、いずれの方もシルバー人材センター事業に大変詳しい方でございまして、その能力あるいは人格等に照らして最もふさわしい方だというふうに思っております。なお、会長は非常勤で無報酬ということになっております。  シルバー人材センター全国に約七百団体ございますけれども役職員が全体で一万五千名ほどおられます。地方自治体OBはその約一割程度というふうに承知をいたしております。シルバー人材センターは、これまでも地域に密着した仕事確保ですとか提供、そういったものを行う事業体といたしまして地域関係者理解と協力を得ながら、事業に参画する高齢者自主性を損なうことのないように、そういった観点から運営されてきているところでございます。  そういった意味で、確かにシルバー人材センター職員には地方自治体からのOBもおられるわけでございますけれども、いずれの方もそれぞれの地域の事情に明るい、またその能力人格等に照らして最も適当な方である、そういったように判断された方が登用されておるわけでございまして、これがシルバー人材センター事業の自主的な運営を阻害する、そういったことは全くないというふうに考えております。  またなお、今回の法改正におきまして、今後ホワイトカラーを経験した会員がふえてくるだろう、そういったことも見込みまして、会員自身事務局業務を行うことを奨励していきたいというふうにも考えております。こういったものでより一層自主的な運営が図られていくのではないかというふうに考えておるところでございます。
  16. 武田節子

    武田節子君 今、特に国民の目が厳しく向けられているときでございますので、十分な御配慮をお願いいたします。  シルバー人材センター連合となることによってデメリットが起こり得る可能性はないのでしょうか。例えば、事業協会連合センターというような変な上下関係が生じて、センターとしての自主的な活動が阻害されるなどの心配はないのか、また連合単位シルバー関係はどうなるのか等、これらの点についてお尋ねいたします。
  17. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 現在、シルバー人材センター事業につきましては、各シルバー人材センターが各市町村ごとにその実施主体となりまして、各都道府県段階におきましてはシルバー人材センターが自主的に組織した協議会が、また全国段階では全国シルバー人材センター協会が各シルバー人材センター間の連絡調整役となりながら展開しているところでございます。  今回の制度改正により設立てきることとなりますシルバー人材センター連合には協議会が、また全国シルバー人材センター事業協会には全国シルバー人材センター協会が指定される見込みでございまして、また高齢者に対する就業機会提供等業務につきましては、その支部となるシルバー人材センターが引き続き当たるものというふうに考えているところでございます。  したがいまして、シルバー人材センターにとって従来からの自主的な活動を阻害されることはないわけでありまして、むしろシルバー人材センター連合本部事務局によります。ただいま申し上げましたような事務、こういうものの活動によりまして一層自主的かつ積極的な業務展開ができるような環境が整備されるものというふうに考えているところでございます。
  18. 武田節子

    武田節子君 次に、連合を設置することによって都道府県サイドには新たな財政負担が生じるわけですけれども、この点について意見集約するなど理解が得られているのでしょうか、お尋ねいたします。
  19. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) シルバー人材センター連合設立に関しましては、各都道府県におきまして各都道府県内すべてのシルバー人材センター構成員といたしまして自主的に設立されている協議会、これが中心になって地方関係行政機関との間で調整を進めていくことと、こういうふうに考えているところでございます。この協議会と各都道府県担当部局との間で既に話し合いが進められているというふうに承知いたしております。  労働省といたしましては、この協議会地方行政関係機関との調整が順調に行われるよう、全国シルバー人材センター事業協会を通じまして指導する。これとあわせまして都道府県担当部局に対しましては、協議会からの申し入れについて十分配意しつつ、関係市町村との協議を進める中で適切に対応するように指示をいたしているところでございます。
  20. 武田節子

    武田節子君 連合事務局職員は三名程度考えているとのことでございますけれども、一団体どの程度予算考え、その財源手当てはどのように考えておられるのか、お尋ねいたします。
  21. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) シルバー人材センター連合本部事務局の体制ですけれども、私どもとしましては、その事務局運営に要する経費を補助対象として、国はその二分の一を連合に直接補助するという形で考えておるわけでございます。その補助の額につきましては、事務局の規模ですとかあるいはその活動実績、こういったものに応じて定めていくことになりますけれども、現時点では、その上限額として四千万円程度国庫補助限度額にしたいというふうに考えておるところでございます。  したがいまして、また残りの二分の一につきましては都道府県及び市町村補助することとなるわけでございますけれども、基本的には都道府県による補助中心になるんではなかろうかというふうに見込んでおるところでございます。
  22. 武田節子

    武田節子君 一定の区域ごとに一を限り連合として指定するとありますけれども、その地域性や地場産業の状況と現状を十分踏まえて、現実に即したもの、利用者の便宜性をも考えて、場合によっては県で二つ以上の複数の指定も可能とするような予算措置を講じるべきと提案いたしますが、いかがでしょうか。
  23. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 御指摘シルバー人材センター事業は、高齢者が自主的に設立をした公益法人が自主的に運営をする、そういったことによって実施されることが大原則になっているわけでございまして、またその発展あるいは拡充につきましても各シルバー人材センター、それから関係地方公共団体の自主的な判断によって行われるべきものであるというふうに認識をいたしております。そういった観点から、シルバー人材センター連合につきましても都道府県内で指定できる数につきましては法律上の制限はございませんで、シルバー人材センター事業関係者自主性を発揮できるような枠組みを用意しているところでございます。  ただ、シルバー人材センター事業を効率的に運営していくためには、都道府県内すべてのシルバー人材センターシルバー人材センター連合構成員となることが望ましいというふうに考えておるわけでございます。また現に、既に各都道府県単位においてすべてのシルバー人材センター構成員とする協議会といったものが自主的に設立をされておるわけでございまして、これが母体となってシルバー人材センター連合設立されるのではないかというふうに見込んでいるところでございます。  いずれにいたしましても、関係者の間でシルバー人材センター連合設立に向けて円満な話し合いが行われるように見守ってまいりたいと考えております。
  24. 武田節子

    武田節子君 従来、広域型で運営されていたシルバー人材センターが新制度へ移行した場合も引き続いて広域型が選択でき、しかもいわゆる一・五倍の補助はどうなるのでしょうか、引き続き受けられるのでしょうか。この点も確認しておきたいと思いますが、いかがですか。
  25. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) シルバー人材センター連合を設けましたねらいの一つといたしまして、既にシルバー人材センター活動している地域、その地域のほかにも、さらに未設置地域にもこの事業を拡大していきたいということを大きなねらいにしているわけでございます。そういった意味からは、広域シルバー人材センターというのはこれまでも複数の市町村において事業を実施してきたということでございますので、シルバー人材センター連合の今後の運営にとっても大変有益なものであるというふうに考えておりまして、今後ともそういった事業活動は必要というふうに考えております。  こういった観点に立ちまして、制度改正後におきましても、シルバー人材センター連合に対する国庫補助額の算定に当たりましては、広域シルバー人材センターに対するこれまでの財政支援が維持されるように十分措置してまいりたいと考えております。
  26. 武田節子

    武田節子君 最初に述べましたとおり、我が国は若年労働者が減り、超高齢社会を迎えます。このような時代に、年金や医療等社会保障をどう成り立たせるかを考えれば、高齢者雇用就労は大変重要な意味を持っております。とにかく我が国は二十一世紀初頭には、若者に負担がかかるという意味なんでしょうか、非常に強烈な若肉老食の時代を迎えるなどと言われているようであります。したがいまして、より一層就労環境の整備をすることは緊急の課題でございます。  四月二十八日の日経新聞によりますと、さくら総研の試算として、「高齢者雇用推進で年金財政の収支が、年間四千六百億円改善する」と取り上げられております。政府としては、一人の人間が若年から高齢に至るまで職業生涯として見て、何歳まで生涯に働けば社会として成り立つのか試算をしたことがおありなのでしょうか。もし、ございましたらお答え願いたいと思います。私はこの大前提があってこそ、高齢者雇用安定法もあり、そして社会的余裕があり、初めて臨時的、短期的な就労も成り立つものと思っております。  労働省としてどのような御見解をお持ちか、大臣にお尋ねして私の質問を終わります。
  27. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の今の御指摘でございますが、何歳まで生涯働けば社会が成り立つか、そういう点についての直接的な試算というものは現在持っておりません。正直申し上げて持っておりませんが、労働省といたしましては就業希望する高齢者方々がその希望する就業形態で働けるようにしていくことが重要だと、そのように考えているわけであります。  また、御指摘のように、我が国経済社会活力を維持するためにも高齢者方々が、最前から申し上げておりますように、その持っていらっしゃる知識であるとか経験を生かして働くことができる社会の仕組みをつくり上げていくことが大事だと、こう思っているわけであります。このため、今後ともシルバー人材センター事業の発展、拡充だけではなくて、六十歳定年基盤とした六十五歳までの継続雇用推進あるいは再就職の促進など総合的な高齢者対策推進していきたいと、こう考えているわけであります。  かつては五十五歳で定年だったものが六十歳までの定年に延長してきた、そして今六十五歳まで継続雇用と、高齢者方々ニーズにこたえることが仕組みとしては徐々にでき上がってきている、これをさらに進めていきたいというのが私ども願いであります。
  28. 武田節子

    武田節子君 これで終わります。どうもありがとうございました。
  29. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今回、高齢者等の雇用安定等に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、シルバー人材センター事業の発展、拡充を通して、高齢者雇用を開発していくというところに一つのねらいがあると思うわけですが、この改正の意義について大臣にお尋ねいたします。
  30. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 我が国におきましては、御指摘のように急速に高齢化が進展しております。この超高齢化社会のもとにおいて我が国経済社会活力を維持していかなくてはいけない、そのためには高齢者皆さんが長年にわたって培ってきた知識経験等を活用しながら六十五歳まで多様な形態によって働くことができるという社会を実現していくことが不可欠だと、これは最前から私がずっと申し上げきていることでありますが、シルバー人材センター事業はこのさまざまな形態による就業機会確保するための重要な施策一つだと考えているわけであります。  生きがいの充実であるとか、あるいは地域社会への貢献を目的とする臨時的かつ短期的な就業ニーズに対応していこう、そして高年齢退職者に就業機会をできるだけ幅広く提供していきたい、このシルバー人材センター事業の役割はそういう面からまたますます大きくなっていくと思うのでありますが、今後一層その事業の実施地域であるとかあるいは会員仕事の拡大を図っていくためにも、今回の法律改正によって全国組織を拡充していくことが極めて重要だと考えているわけであります。  現在まで、シルバー人材センターは七百団体を数えるまでに発展してきておりますが、全国市町村の約二九%にしかこのシルバー人材センターが設置されていないという問題が存在をしているわけであります。そこで、全国どこでも高齢者シルバー人材センター事業によって仕事提供を受けることができるように、あるいは社会的にそのことが大きな成果を上げることができるように、そのための所要の法改正だと実は認識をしているところであります。
  31. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、今回の改正法案の内容についてお尋ねをいたします。  今回の改正によりましていわゆるシルバー人材センター連合というものが指定されるわけですが、現在七百団体の公益法人としてのシルバー人材センターがあり、会員数約三十三万人と言われております。それとほとんど同数のミニシルバーなどがあるというふうに聞いておりますが、これらが一体連合の中にどのように組み合わさって形成されていくのか、大体のシミュレーションといいますか見通しなどをお持ちでしょうか。どういう基準で、これを認めていかれるのでしょうか。
  32. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) シルバー人材センター連合は、各シルバー人材センターがその事業をより積極的に展開することを目的として自主的に設立をしてもらう、そしてその運営につきましても構成員であるシルバー人材センターが自主的に行うというものでございます。したがいまして、シルバー人材センター連合の指定の基準という点につきましては、そういった自主的な運営が可能な団体であるか否か、そういったものを判断するものになるわけでございます。  具体的には大きく四つほど基準がございまして、まず、二以上のシルバー人材センター構成員とすること。それから二つ目には、高齢者に対して臨時的、短期的な就業機会確保すること、こういったことを目的としていること。三点目は、その業務の実施計画が適正であるかどうか、またはそれを確実に遂行することができるような経理的、技術的な基礎があるかどうか。また四点目には、その業務運営が適正かつ確実に行われる、そしてそれが高齢者福祉の増進に資すると認められるかどうか。こういった点を中心に判断することになるわけでございます。  今お尋ねのミニシルバーセンターとの関係がございましたけれども、先ほど申しました四つの要件のうちの第一点目のシルバー人材センター二つ以上を構成員とすることということで連合を指定することになりますけれども、その連合の中に会員といたしまして、これはそれぞれの連合の中でお決めいただくことになりますけれども、ミニシルバーも会員という形で取り込むことができるわけでございまして、私どもといたしましてはこういった形でできる限り多くのミニシルバーもこの連合に参加をしていただくように願っておるところでございます。
  33. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 シルバー人材センターのいわば事業の内容として臨時的かつ短期的な就業機会確保及び提供というふうになっておりますが、この短期的かつ臨時的という業務の具体的な内容といいますか、例えばフルパートで働く人あるいはパートで働く人の区分とか、あるいは短期的、臨時的といった場合に、そこに定着して仕事場として恒常化しているそういう人たちが傾向としてあるのかないのかなと、具体的な内容はいかがなものでしょうか。とりわけ職業安定所の職業紹介と比べてどういうふうな関係にあるんでしょうか。
  34. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 現在、シルバー人材センターで取り扱っております仕事は臨時的かつ短期的な仕事ということになっておるわけでございます。具体的な例といたしましては幾つかかなり幅広いものがございますけれども、一般的な清掃等の作業ですとかあるいは自転車置き場、公園の管理の事業だとか、あるいはサービス的な事業観光案内ですとか家事手伝い、こういったいろんな仕事があるわけでございます。  そこで、臨時的かつ短期的ということで、例えば一カ月以内でなければだめだとか一年を超えるものはだめだとか、そういったことで基準を数字をもって示しているわけではございませんけれども、先ほど言いましたように、仕事自体はかなり継続するものであってもそこで働く高齢者チームを組んでローテーションでこなしていくというような形、そういった運営も実際に行っておるところでございます。  また、職業安定所で取り扱っておりますのは、基本的には雇用という形で次の仕事につきたいという方を対象として職業相談、職業紹介を行っているわけでございますけれどもシルバー人材センターの場合はそういった雇用はもう卒業する、自分の好きなときに好きなような働き方をしたい、こういったような方のための組織というふうに整備しているところでございます。
  35. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 全国シルバー人材センター事業協会設立されるわけですが、現在の業務、そしてさらに業務の拡充ということについて御検討中なのかどうか、お尋ねします。
  36. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 全国シルバー人材センター事業協会の行う業務でございますけれども、これはシルバー人材センターとそれから今般設立を予定しておりますシルバー人材センター連合、このそれぞれの健全な発展を図っていくために、このシルバー人材センター等に関する啓発ですとか各種の情報の収集、あるいはまた職員に対する研修ですとか、またシルバー人材センター間の連絡調整、指導援助、こういった業務を行っていくことを予定いたしているわけでございます。  既に現在、全国シルバー人材センター協会がございますけれども法改正の後におきましてはこの社団法人全国シルバー人材センター協会全国シルバー人材センター事業協会として指定をしていきたいというふうに考えております。
  37. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 現代の社会におきましては、高齢者に対するイメージというのはかなり負のイメージが定着していると思います。とりわけ産業社会が若年の労働者を非常に尊重するという傾向の中で、高齢者のイメージは、頑固であるとか老醜であるとかあるいは能力低下するとか、さまざまなそういった価値観が社会の中にあることによって高齢者能力の開発というものがさまざまな障害にぶつかっているのではないかと思われます。しかし、高齢者、とりわけ六十歳以上といいましても、これは子育てからの解放をされて、負債率についてもあるいは貯蓄率についても若年をしのぐような形で人生を自分の生き方で生きているという人たちが非常に多いと思います。  最近、高齢者能力自身もさらに開発されるんだという考え方が国際的になりつつあると思うわけですが、そういった今までの高齢者に対する能力を生かすための積極的な我が国施策というものはどのようにお考えか、お尋ねをいたしたいと思います。
  38. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 一般的に、今後高齢化社会の中で、先生指摘のように高齢者能力開発が非常に重要であるということから、私ども能力開発行政におきましてもこの点の取り組みをしているところでございます。  シルバー人材センターにおきましても、そういうことが非常に重要になっておりまして、運営に当たりましては、高齢者就業ニーズが多様化する一方で、地域によっては申し込まれた仕事就業できる高齢者が十分いない、そういう問題もございます。このため、平成四年度から福祉家事援助サービスにつきまして、平成六年度からは事務系職種について、必要な講習を行う事業に対して補助を行うなど、多様化する就業ニーズあるいは仕事ニーズに対応すべく努力をいたしているところでございます。  具体的に講習につきましては、事務系職種に関しましてはワープロ・パソコン、編集・校正、あるいは毛筆・筆耕、簿記等につきまして、福祉家事援助サービスに関しましては家事、介護補助等につきまして、それぞれの専門の講師によって実施しているところでございます。また、職業能力開発促進センターあるいは技術専門校等の職業能力開発機関にも協力依頼をしているところでございます。  今後、法律改正によりましてシルバー人材センター連合が設置されました場合には、この連合におきまして適切な講師によります効率的かつ集中的な講習の実施が可能になるというふうに予定をいたしているところでございます。
  39. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 先ほど、仕事があるのに対応する高齢者がいない例などがあるというふうに言われましたが、例えばこれは具体的にどんな職種などでしょうか。
  40. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 私ども聞いております例では、季節的に集中するような仕事が実はあると。雪国で雪囲いというんですか、雪が降っても大丈夫なように木をあれする、そういったような仕事の注文が特定の時期に集中してくるけれども、必ずしもそれにこたえられるほどのそれができる会員がいない、そういったような事例を聞いております。
  41. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 高齢者の就労で、一方において非常に高齢者の人が不安に思っているのは健康とそれから職場における安全確保だと思うわけです。しばしば職場におけるけがなどがあるというふうに聞いておりますが、この健康と安全確保のための施策、そしてその実態はどのようになっているのか、お尋ねをいたします。
  42. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 御指摘のように、会員である高齢者が健康を維持しながらそして安全に就業するということがシルバー人材センター事業の健全な発展のために不可欠な事項であるというふうに認識をいたしております。このため、平成五年度からすべてのシルバー人材センターにおきまして高齢者に対する安全教育の実施、そういったものを担当する安全就業推進員というものを配置いたしまして、この安全確保にいろいろと努力をいたしておるところでございます。
  43. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 我が国の労働市場あるいは企業の中でいわゆる不合理な年齢差別というものが数限りなくあると思うんです。例えば、大きく言えば定年年齢も一つかもしれませんが、提供すべき労務との関連のない年齢でいわば一つ評価を切っていくということ、それはまた女性など、男性もそうでしょうが正規従業員に対して一定の年齢で切るというそういう考え方、私は、例えば労働市場においては労務提供と関連のない年齢差別というものは不合理な年齢差別として撤廃をしていくべきではないか、年齢差別禁止法のようなそういった差別撤廃の法のスタンスみたいなものが考えられないかということをずっと今までも考えてきたわけです。  アメリカなどにはそういった州法もあると聞いておりますが、こういった不合理な年齢制限に対する差別の撤廃という視点はいかがでしょうか。今どのように局長なり大臣はお考えでしょうか、お尋ねをいたします。
  44. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま先生指摘考え方、これは一つ考え方と思います。  御指摘のように、アメリカ合衆国におきましては年齢差別禁止法がございまして、民間労働者及び公務員について年齢を理由とする差別を禁止している、こういう法制がございます。具体的には、原則として四十歳以上の労働者について年齢を理由とする雇い入れ、解雇、賃金、昇進、労働条件等に関する差別が禁じられているというふうに理解をいたしておるところでございます。  ただ一方、我が国の場合で考えますと、我が国におきましては、御承知のように定年までの長期雇用制度、これは年功賃金制度とあわせまして企業において慣行として定着しておりまして、それが雇用安定等に貢献してきている、こういう状況がございます。このような慣行等を踏まえまして、我が国の法制におきましては六十歳定年というような定年をこれは強制的な形で義務化をするというようなことで定めまして、定年後については継続雇用等の推進を図っていく、こういうことが実態に即した有効な手段である、こういうことで立法がされておるわけでございまして、そういう意味におきましてはアメリカにおきます状況とは少し違っている、あるいはそういう法制が必ずしも我が国にはなじまないのではないかというふうに考えているところでございます。  また、あわせまして、この点につきましては我が国の労使関係者におきましても見解が大幅に違っている、そんな現状にあろうかと思います。
  45. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、局長からもお答えいたしましたけれども先生御案内のように、日本の労使の雇用関係というものが一応定年制という仕組みになっている。これを、五十五歳の定年制だったものを六十歳に法律によって延長させる、なおかつ、今の平均寿命が六十歳を超えて長いわけでありますから、六十歳を超えた人を六十五歳まで継続雇用してもらうためのいろんな援助、助成の措置も現在講じているところでありまして、六十五歳を超えた人がなお働きたい、そういう方々も含めて、できるだけさまざまな就業ニーズにこたえていくための一つ施策としてこのシルバー人材センターというものを最大限に拡充し活用していこうと、こうしているわけであります。  そういう面からいきますと、先生が御指摘になっておりますような年齢差別禁止法制というものは、今も局長が答えましたけれども、日本の現状の実態から考えますと、必ずしもそれはなじむものではないんではないかと、このように考えているわけであります。  しかし、高齢者方々ができるだけいつまでもお元気で働いていただく、自分の持っていらっしゃる知識経験を生かしてもらう、そのために何がどうできるかということを総合的な政策の中で私たちは十分に掘り下げて考えていくべき問題だろうと、このように認識をしているわけであります。
  46. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 確かに我が国の年功序列を中心とした雇用慣行のもとでは、年齢というのが一つ評価要素になっていることは間違いないわけですが、これからの社会におきましては能力評価も個別的になっていく傾向があり、年功序列も漸次崩壊をしていくという傾向の中で、不合理な年齢制限あるいは年齢差別というものに対してもう少し敏感に反応をしていくようなシステムが必要ではないかというふうに考えるものであります。したがって、高齢者とか年齢に対する偏見というのを除去していく施策というものをお進めいただきたいと要望いたします。  以上で質問を終わります。
  47. 吉川春子

    ○吉川春子君 シルバー人材センターは、高齢者就業意欲にこたえ、その能力地域社会において活用するもので、全国的にも要求も高く、箇所数も広がっています。今回の法改正は、都道府県ごとに連合を設置し、シルバー人材センターのない地域であっても高齢者がどこでも仕事提供を受けられるようにするということで、高齢者の要求に沿うものであると思います。  そこで伺いますが、シルバー人材センターは自主・自立、共働・共助の理念を掲げて地域高齢者が自主的に運営している組織で、ここに特徴があるわけです。改正によってこの自主性が損なわれはしまいかということを会員皆さんは一番心配されておられます。  さっきも質問がありましたけれども都道府県連合が設置されてもこの理念を生かした活動を保障することが必要だと思います。連合が個々のシルバーセンターの上部団体として運営や方針について点検、介入が行われてはならないと思いますが、このセンター自主性をどのように保障されるのかという点が第一点。  そして、同時に補助金について、シルバー人材センターに直接支給されていた補助金が一括してセンター連合に支払われ、そこから各シルバー人材センターに配分されることになりますが、この各センター補助金についても増加させるべきであり、逆に削減されるようなことがあってはならないと思いますが、この二点についてお伺いいたします。
  48. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘のように、シルバー人材センターというのはあくまで自主的に運営されるべきものでありまして、それぞれの市町村におけるシルバー人材センター都道府県単位でそこの協議会を設置する、これが全国的に一つ連合組織していくわけでありますが、一般の企業と違いまして、中央の連合が具体的にこうしなさいああしなさい、こうしなくてはだめですということではなくて、あくまで自主的な活動をむしろ幅広く援助していく、啓蒙活動をしていくというようなことに力点が置かれるのでありまして、先生の御指摘のような心配は私は全くないものと考えております。御心配ないようにお願いを申し上げておきたいと思います。あとは局長がお答えします。
  49. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘の各シルバー人材センターに対する補助の問題でございますが、平成八年度予算案におきましてシルバー人材センター及びシルバー人材センター連合に対する補助といたしまして百十六億円を計上いたしておりますが、これは前年度と比較いたしまして約九億円の増といたしているところでございます。  また、個々のシルバー人材センター連合に対する補助の額を計上するに当たりましては、各シルバー人材センター事業を発展拡充するための所要額を確保することといたしておりまして、従来の補助額が減少することはございません。今後とも、シルバー人材センター事業に対する補助の充実に最大限努力してまいりたいというふうに考えております。
  50. 吉川春子

    ○吉川春子君 次に、労災保険について、シルバー人材センターで労災が発生しているんですが、九〇年と九四年の事故発生状況はどうなっていますか。
  51. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) シルバー人材センターでの事故の発生状況でございますけれども平成二年度一九九〇年度と、平成六年度一九九四年度、この状況について御報告いたします。  まず、事故の発生件数でございますが、平成二年度が三千五百十六件、平成六年度が三千九百六十四件。それから事故の発生率、これは会員を分母としてどのくらい発生しているかという率でございますけれども平成二年度は一・五六%、これが平成六年度は一・一九%になっております。また、そのうちの死亡の件数でございますが、平成二年度が二十八件、平成六年度が二十四件。入院の件数は平成二年度が五百四十四件、平成六年度六百十二件。それから通院の件数でございますけれども平成二年度が二千九百二十四件、平成六年度は三千二百八十八件。このうち、後遺症の発生件数は平成二年度が二十件、平成六年度が四十件、こういう状況になっております。
  52. 吉川春子

    ○吉川春子君 非常に労災がふえているわけです。九三年に出された労働省の研究会報告でも指摘されておりますけれども、安全就業対策の強化と福利厚生機能の拡充という項目で、死亡事故の増加が目立ってきている。シルバー人材センター団体傷害保険は必ずしも高いとは言えず、特に死亡事故に対する水準は見直す必要がある。このため、保障内容がより充実したものとなるように制度の見直しを図っていくことが重要だと指摘しています。  今回の改正ではこれは見送られましたけれども、この提言を生かすことが必要ではありませんか。
  53. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 先ほども申し上げましたように、高齢者が安全に就業するということはシルバー人材センター事業の健全な発展のために不可欠な事項であるわけでございます。このため、平成五年度からすべてのシルバー人材センターに安全就業推進員を配置いたしまして、安全教育の実施等に努めておるところでございます。  労災保険の適用の問題、これは制度発足当初からいろいろと議論がございました。しかし、基本的にシルバー人材センター高齢者との間、あるいはまた発注者会員である高齢者との間にはいずれも雇用関係がないという仕組みでございますので、労災保険というのはなかなか難しいわけでございます。  これにかわるものといたしまして、労働省としましてシルバー人材センター用の団体傷害保険制度を特別につくりまして、その制度への加入を促進する。そして、それに対する掛金の補助を行っておるわけでございますけれども平成八年度予算案におきましては、この掛金補助をさらに拡充することにいたしておるところでございます。
  54. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、この労災の問題についてもぜひ研究していただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それで、具体的な労災の問題について伺いたいと思いますが、労働者は健康に年をとらなければシルバー人材センターも活用できないわけですけれども、最近の労働現場の状況が労働密度の異常な高まりのもとで年齢まで健康を保てないという事態に直面しているわけです。  四月九日の委員会で、私はJRにおける変形労働時間制のもとでの労働基準法違反の問題を指摘しましたけれども、同じような変形労働時間制のもとで、五十七歳になる西鉄バスの運転手の死亡災害が起きていますが、この北九州市で起きた事件について、簡潔にちょっと報告していただきたいと思います。
  55. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 御指摘の事故は、四月二十八日に北九州市におきまして、福岡空港行きの西鉄高速バスの運転手が高速道路を走行中発作を起こし、停車後救急車により病院に搬送をされたわけでございますけれども、急性心不全により死亡したというものでございます。
  56. 吉川春子

    ○吉川春子君 この西鉄バスは、乗客のとっさの判断がなければ大惨事になるところだったんですが、同社では四月中にも同様の事故があったのではありませんか。
  57. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 私どもが報告を受けておりますのは、四月六日に事故があったということは報告を受けております。  四月六日の事故は、バス停にバスが停車中に、つまり降車取り扱いといいますか人がおりるときだったわけですけれども、そのときに運転者が貧血によって意識が少しずつなくなってきたということで、停車中ですからブレーキを当然踏んでいたわけでございますけれども、貧血によって意識がなくなってきたことに伴いましてそのブレーキを踏んでいた足が緩み、バスが動き出してその前にあった電柱に衝突をした、こういうものだというふうに聞いております。
  58. 吉川春子

    ○吉川春子君 ここ数年来、西鉄バスは事故が頻発しておりまして大きな社会問題になっております。九四年からでも六件大きな事件があるわけです。  なぜこんな事故が多発しているかというと、会社が変形労働時間制を利用した人件費削減のために過密労働が行われているということが指摘されております。三月十七日の西日本新聞は、「週休二日制導入で、新たに五百三十四人分の雇用と三十五億円のコストが要る計算だ。だが、西鉄はダイヤの調整や、待ち時間の給与を大幅に減らすなど給与体系の見直しで、運賃を上げずに三十五億円分のねん出を目指している。」、こういうふうに指摘されているわけです。  この問題について、労働者から当該の監督署に申告が出されているはずです。衆議院でも問題にされていますけれども、このときの問題が完全に解決されていれば今度の事故も起こらなかったと思うんですけれども、どういう指導を労働省は行ってきたのか報告してください。簡単で結構です。
  59. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 御指摘のように、西鉄バスにつきましては変形労働時間制の運用について問題があるという申告がありまして、それに対しまして昨年六月、福岡労働基準局が会社に対して指導を行いました。  その指導の内容でございますが、一つは、一カ月単位の変形労働時間制のもとで勤務日時が特定されるわけでございますけれども、その特定された勤務日時がたびたび変更されているということ。また二点目は、一日の拘束時間が十時間を超える日というのが運転者に、変形制の中ですから当然割り当てられるわけですけれども、その一日の拘束時間が十時間を超える日に年次有給休暇を労働者が取得した場合には他の労働日に時間外労働が生ずる場合があるわけですけれども、その時間外労働手当を減額しているというような実態があったわけでございます。そういう申告がございました。  そういうことで、福岡労働基準局は調査をし、今申し上げました二点につきまして改善をするように指導を行ったというものでございます。
  60. 吉川春子

    ○吉川春子君 私の調査によると、現在でもほとんど改善をされておりません。ある営業所の五月の勤務予定表を見ると、労働時間を具体的に定めていない改善を求められている空番が二回組まれて、これを加えれば所定労働時間の枠を超える勤務指定となっています。しかも、月に五回の端数実働と呼ばれる時間外労働を組み込んだ、出勤から退社までの時間が十二時間から十六時間に及ぶこういう残業ダイヤなどが月に十三回もある。これが近づくと労働者はもう本当に気分が悪くなるという、過剰なストレスも与えられているわけです。  詳しい実情についてはちょっと時間がなくなってできませんけれども、私は最後に大臣に求めたいわけです。西鉄については、徹底的な指導改善、今労働省が途中ですけれども、徹底的に指導改善を行っていただくということと、JRも含め全国のバスについて、変形労働時間制をとっているわけですから、どこでも事故が起こり得るわけなんですから、こういう緊急の臨検、監督を行うように要求します。  それから、これは局長に、今ある規制はもちろんなんですけれども、バスや鉄道について、変形労働時間制導入に当たっては長時間の拘束をなくすために一日当たりの拘束時間の上限を決める。それから、よっぽど緊急な事態がない限り休日の代替出勤を認めない。予備員確保のために変形の適用を受けない労働者を一定数置くことを義務づける、これがないとできないんですね、変形というのは。そういうこともサボって対策をとらないようなところには変形労働時間制の導入を認めない。これぐらいの厳しい監督をやり、労働者を守るとともに国民を事故から守っていただきたい。お願いします。
  61. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) まず、西鉄バスの変形制の導入は、単に労働者の労働時間を長くするというために導入されたものだというふうに私どもは承知しておりませんで、自動車運転者の労働時間の短縮、休日増を図るために一カ月単位の変形労働時間制を採用したというふうに承知をいたしているわけでございます。  今、先生が御指摘ございました変形制導入に当たっての一日の最長拘束時間等の問題につきましては、現在、中央労働基準審議会に自動車運転者労働時間問題小委員会というのがございますけれども、この小委員会におきまして、来年四月からの四十時間制実施というものを念頭に置きまして、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準についての見直しを検討いたしているわけでございます。  先生も当然御承知と思いますけれども、現行の改善基準におきましても、一日の拘束時間、一カ月の拘束時間、また運転しておりますもの、例えばトラックとかバスとか、それによって違うんでありますけれども、そういう拘束時間等について指導基準というのを定めておりまして、それについての指導をやっているわけでございます。したがいまして、この自動車運転者労働時間問題小委員会における結果を踏まえまして私どもは対処をいたしたいというふうに考えているところでございます。
  62. 吉川春子

    ○吉川春子君 大臣、どうですか、具体的な問題。
  63. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生から御指摘がありました西鉄バス、具体的な事例でございますが、基準局長がお答えしましたように、現地に厳しく指導しているということでありますが、その指導が守られていないとするとこれは問題でありますから、引き続き厳しく指導を強化したい、まずこれが一つです。  バス運行にかかわる変形労働時間制の問題で、適切な運用がされない場合に人命にかかわることが発生しても困りますから、これは西鉄バスだけではなくて、JRだけではなくて、バス事業全体の変形労働時間制にかかわる問題については、より適切に運用されるように徹底をしてまいりたい。この前も御答弁申し上げたことがあると思うのでありますが、いろんな問題が今山積しておりますので、五月二十日に全国の労働基準局長会議を招集してあります。その中に、一つの検討課題としてこの問題も入れまして検討してまいりたいと、このように考えております。
  64. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  65. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 これからの高齢化社会の到来に当たりましては、今回のこの法改正、またシルバー人材センターそのものの存在というのは非常に重大ですし、よりシルバー人材センターの充実をきちっとしていただきたいと、私はそういう感じでおります。また、高齢、障害関係をなさっている皆さん方には、私の個人的な見解からしましても、私がけがをしましたときに大変よくしていただきましたので、ちょっと個人的えこひいきが入るんではないかと思いながらきょうは質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず第一、私もこのシルバー人材センターをよく利用させていただいております。ですから、非常に具体的な内容とか仕組みとか、そういうものを私も知っておりますし、あるときには非常に感謝をし、あるときには怒り、あるときにはあきれるというようなことを随分体験いたしました。  そこで質問したいんですけれども、今回の改正に当たりまして、改正以前にどのような不利あるいは不便等が起きたので今回の改正ということに相なったんでしょうか。
  66. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 今回の法改正の背景といったようなものかと思いますけれども、再三お話し申し上げておりますように、二十一世紀初頭にこれまでに例を見ないような超高齢社会、これはもう避けることができないわけでございます。そういった中で、高齢者の非常に多様化する就業ニーズにこたえるための一つの有力な手段として、このシルバー人材センター事業の果たす役割というのは大変大きなものがあるというふうに思っております。  このシルバー人材センター事業は、昭和五十五年に国庫補助事業としてスタートいたしまして、当初は九十三団体でしたか、スタートしたんですけれども、これがそれから十六年、その間に法律改正もございましたけれども、そういった中で七百団体まで順調に拡大、発展をしてきたということでございますけれども、しかし、全国三千三百の市町村で見ますとまだ三割弱、二九%程度しかカバーをしていないという問題がございました。  来るべき超高齢社会では、任意的な就業希望する高齢者は、一つの試算では大体二百万人ぐらいいるんではなかろうかというふうにも言われておるわけでございますけれども、そういった人たちが全国どこにいてもこのシルバー人材センター事業に参画できるように、そういった事業を通じて就業機会提供を受けることができるようにする必要があるのではないか。そのためには、今のような市町村単位のやり方では設置のペースはおのずから限定されてくるわけで、とても超高齢社会に間に合わないし、対応できなくなるのではないかと懸念をいたしているわけでございます。  そこで、市町村を超えまして都道府県下全域でこのシルバー人材センター事業を展開することができるように、そういった枠組みをぜひこの際つくらせていただきたいということでございます。
  67. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私にとりましては大変いいことだというふうに思います。というのは、私がお願いをしましても、かつてはそれはそういう地域じゃないとか、こっちの担当じゃないとか、まさに最も悪いたらい回しをされた経験がありまして、何て守備範囲が狭い事業なんだろうかということを感じましたので、今回のセンター連合というこの設定は非常に私はいいというふうに思っております。  しかし、先ほどからの各委員の質問に対しましてお聞きをしていますと、年齢というもの、これに対して私は一つ非常に不思議な思いを今しているんですけれども、六十歳まで一生懸命働いたんだからその後は悠々自適の人生を送った方がいいという人もいるし、いや、やっぱり働き続ける方が人生にとっていいという人もあるわけで、私にしたらこのセンターというのは、働くというのをどのような人生の意義としてとらえながらこのセンター運営していくのか。要するに、もうそんなに一生懸命働くことはないから、まあ軽い気持ちで働きたいというその意思だけを尊重して、そういうつもりで働くという、勤労という考え方をとらえているのか。  つまり、このシルバー人材センター高齢者に働くということを奨励するその意義というんでしょうか、どういう働くという価値観の基準を求めているのかということを、ちょっとお聞きいたしたいと思います。
  68. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) なかなか難しい御質問でございますけれども、基本的には先生指摘のように、高齢になっても希望すれば働ける、あるいは働くことが健康管理面その他からいっていいことだと、こういう基本的な考え方に基づいているものというふうに思います。  将来的には、ただいま申し上げましたように非常に高齢社会になってくる、二十一世紀になりますと。そういう中で、国として考えました場合に一番大事な点としまして、一つは、経済社会活力をどう維持していくか。これがなくなりますと、これは国にとって非常に重大な問題になりますから、そういう意味経済社会活力を維持していく、こういう面からいきますと、この高齢化社会の中で希望する高齢者の方はできるだけ健康で働いていただく方がいい、こういうことがございます。  それから、それぞれの高齢者の立場からいきましても、我が国の場合には非常に諸般の調査から見まして就業意欲が高いわけでございまして、そういう意味では就業意欲の高い高齢者の方が長年にわたって培ってきました知識経験、そういうものを活用して働いていただく、そういう社会の仕組みをつくることが非常に重要ではないか。  ただし、働き方につきましてはそれぞれで非常に個人差が出てくるわけでございますから、常用雇用というような形で働きたいという方、それからシルバー人材センターのような形で任意的に働きたいという方、あるいはただいま御指摘ございましたように、もう定年になった以降は悠々自適で特に働かなくてもいいという方、あるいは働けないというような方、いろんな方がおられるわけでございまして、そういう中で健康で希望する方についてはできるだけ働いていただく、そのことがむしろ社会にとっていいことではないかということで、そういう中の枠組みの一つとしてこのシルバー人材センター制度がある、これを充実強化していくことが必要であると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  69. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 そうしますと、経済的な問題、あるいは働きたいという意思を、勤労によって健康を保つ、そして高齢者の多様な、つまり趣味を生かせるような働き方というようなことをじっと聞いておりますと、つまりこのシルバー人材センターというのは、六十歳を過ぎたらもう六十歳までの人の仕事の補完をするのか、あるいはそういう趣味を生かしてあげるのか、高齢者の方の勤労の方に重点を置いた施設というふうにとらえてよろしいんでしょうか。
  70. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 基本的に先生指摘のとおりと考えていいかと思います。高齢者を補完的労働力として位置づけて働かせるということではなくて、御本人が働きたいという方が自分に合った形で働く、そういうものを積極的に支援する、そういう枠組みとして考えているものでございます。
  71. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は自分センターの方をお願いしまして、先ほど怒ったりあきれたりということを言いましたけれども、これは経済活動というのは契約で成り立っているわけですから、こちらの方はこういう仕事をお願いしたいというときに、六十歳過ぎているんだからまあ六〇%か七〇%仕事ができればいいやと、頼む方はそういう思いで、一〇〇%してもらわなくてもいいよ、相手の人生を楽しませてあげるんだからと、そういうボランティア的な気持ちでこれを頼むんでしょうか。
  72. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 仕事自体はただいま御指摘ございましたように、これは契約に基づいてきちんと金銭を伴って対処するわけですから、それで請け負った以上は仕事はきちんとしなければならない、こういうことでございます。  ただし、働き方の枠組みとしまして、一定の期間、短時間就労、あるいは一定の期間を限ってやる、そういうことを希望している方が請負という形で仕事をする、こういうことでございますが、仕事自体はきちんとその時間の中でやらなければならない、これは当然のことであります。
  73. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 そこで、私の経験の具体的な例を挙げますと、例えばお留守番をしてほしいと思いましてお願いをしまして、当日になりますと、ちょっとぐあいが悪いから行けなくなったという本人の電話一本で来なかったり、あるいはこういう仕事をしてほしいと言うと一カ月後じゃなきゃいけないとか、私の経験からしますと実に過保護な非常に甘やかされた中で、六十歳を過ぎるとこんなに勝手なことを言ってもいいものかしらという経験があります。  私も、だんだん考え方を変えまして余り怒らなくなりましたけれども、しかし経済活動をするというならば、これはやっぱり労働に対する契約としての責任をきちっととってもらわなきゃいけないんですが、このシルバー人材センター仕事に対する苦情の責任はどういうふうになっているんでしょうか。
  74. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) シルバー人材センターの経済活動の側面でございますから利用者の方とは対等な契約関係に立つわけでございまして、その契約に基づいていろんなトラブルについては両者で相談するということになりますけれどもシルバー人材センター事務局におきまして、そういったことのないように会員のいろんなローテーションといいますか、等を本来やっておるというふうに私ども理解をいたしておりますけれども、今後も、利用者があってこそ初めてシルバー人材センターが成り立つわけでございますので、そのあたりのことにつきましても十分認識をするように、改めて全シ協を通じていろんな指導をしてまいりたいと思っております。
  75. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、本質的には非常に頑張れ頑張れというそういう気持ちですので意地悪を言うつもりは毛頭ありませんけれども、私が実際利用しますと問題点がいっぱいあるということがわかるんですね。それで、頼んだ仕事をあっさり放棄されて、一体だれにこれを言ったらいいのか、だれから損害賠償を取れるのか、どうしたらいいのかというその体制が何もないということがわかりました。それで、事務局に電話をしますと、大体地方の自治体の、余りいい言葉じゃないですけれども天下りの方がおりまして、何かわかったようなわからないようなことを言って言を左右されてしまうのが、私の経験から言うとそうなんですね。  これは私は、仕事の内容にもよりますけれども、これからセンターが大いにみんなから信頼され活性化をするためには責任の所在、仕事をやった責任の所在というのをもっときっちりするというシステムをつくらなければ不安でお願いできないのが現状であるということがわかりました。そういう意味で、私は働く意欲を大いに鼓舞してあげたい、でも経済社会の中で経済活動というのはすごい責任がつくんだというところを、今回の改正を通じましてひとつそういうシステムづくりの方にもお骨折りいただきたいと思いますが、大臣はいかがでしょうか。
  76. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘、具体的な問題で御提起がありました。  ただ、一つ私は、言葉は過ぎるかもしれませんけれどもシルバー人材センターが一般の社会に存在するような営利を目的とする企業でないという性格だけはまず前提にひとつお互いに御理解を賜りたいと、こう思うわけです。しかし、言われたように、利用者の方とシルバー人材センターが契約関係で成り立つことはこれはもう間違いない事実でありますから、高齢者方々知識経験が生かされるように働くということを奨励することは非常に重要だと、こう思っています。  したがって、このシルバー人材センター事業が一層発展するためには、まず利用者も拡大しなくてはいけないわけです。また、その事業の内容も知識経験を生かしてできるだけ幅広いものにしていかなければならない。そういうことをこれから積極的に開拓したり啓蒙したりするのも事務局の私は大事な仕事だと思っています。だから、単に天下りという意味じゃなくて、そういうことをノウハウとして活用できるような人材を必要があれば自治体からもOBを活用する場合もあるだろうし、あるいは会員の中からそういう能力を持っている人を活用することも非常に重要だということを実は申し上げてきているわけであります。  したがって、シルバー人材センター事業を担うお年寄りの方々事務局職員が一丸となって、先生が御指摘になったような問題が解消されるようなそういうサービス精神を持って仕事に臨むようなそういう活動、指導というものを重視していきたいと、こう考えているわけであります。  そのためにも、自主的な組織でありますけれども、この全国シルバー人材センター事業協会を通して、全国に府県単位でつくられる連合がそういう活動を積極的に進めるような役割を事務局自身が持ってもらう。このことを通して、一〇〇%先生の御期待に沿うことができるかどうかこれはわかりませんけれども、できるだけそういう問題が起きないように、契約関係の上にこの事業が発展するように、そういう指導も協会を通してやっていくということでひとつ御理解を賜りたいと思います。
  77. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私も一生懸命応援したいと思います。  終わります。
  78. 末広まきこ

    末広真樹子君 まず、今回の法改正案のシルバー人材センターについて考えますときに、私が個人的に三月に見学いたしました自転車リサイクル作業所のことを思い出しました。名古屋市南部のある施設の一角につくられましたこの作業所では、その日、六人ほどで作業しておりました。交通の便が悪くて建物の周囲の雰囲気も暗くてうっとうしいところで、入るのをちょっとためらうような雰囲気でした。  しかし、引き戸をあけてそこに一歩入って驚いたんです。そこで働く六十五歳、七十歳から八十歳といった御高齢の方が、実に生き生きと、放置されておりました壊れた自転車に手を加えて、新品同様のぴかぴかの自転車をつくり出していく姿がございました。そこには何の暗さもありません。この自転車は、アジアや中南米などに無償援助され、現地で医療機関や郵便配達などに有効に活用されているそうです。  そこで働くシルバー人材センター会員以外にも、その日、自転車小売業界の方が完成品の最終検査に来られていました。この方も八十歳でございました。リサイクル、海外援助、そして高齢者の就労、この作業所というのは見てくれの悪さとは対照的に、現代に必要とされている重要な課題を担ったまさに最前線現場なんです。しかしながら、自転車の生産台数は年間三百台というように制限されているんです。ですから、毎日来たくても仕事がありません。週に二日ぐらいずつ交代で働きに来るという状況なんですね。実にもったいない。高齢者の労働力を社会に生かして、高齢者が生き生きと暮らせる機会を制限して抑制してしまっているんです。また、名古屋のシルバー人材センターでは、芳野学習教室という小中学生を対象とした塾が開かれております。国語、英語、算数を月謝一人五千円ほどで教えています。塾はまだ見学する機会はないんですが、ユニークな授業と思われます。このような創意と工夫で高齢者の力を生かす道はいろいろとあるのだなとまざまざと実感させられました。  そこで、今回のこの法改正案について考えてみます。そもそも、このシルバー人材センターは「高年齢退職者の希望に応じた臨時的かつ短期的な就業機会確保し、」とあります。ですから、ここでの労働は雇用ではないのです。支払われるお金も賃金ではありません。配分金と呼ばれております。名古屋のシルバー人材センターにおいて、平成六年度の配分金は約九億円、それに対しまして年間就業実人員は二千百名余り、一年間当たり四十数万円の配分金でございます。会員平均年齢は全国で六十八・二歳、名古屋では六十九・二歳です。高齢者の方に果たすシルバー人材センターの役割は高く評価いたしますが、実人員一人当たり月平均日数が全国でも名古屋でも八・八日という実情なんです。これで高齢者への施策として十分であるとお考えなんでしょうか。  まず大臣に、高齢者への施策としてシルバー人材センターの占める位置について、そしてそれ以外に十分な雇用施策があるとお考えなのか、そこらあたりの基本的認識をお示しください。
  79. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) これも難しい御質問でございまして、高齢化社会の到来を迎えまして、まず労働行政が取り組んでまいりましたのは、一つは六十五歳まで働くことができるような社会の仕組みをつくっていこう、これが第一なんです。そして、このために六十歳定年基盤とする六十五歳までの継続雇用推進で奨励金制度もつくってまいりました。また、さまざまな形態による雇用就業機会確保推進することが必要だということで、そういう中に一つはこの高齢者方々の就労機会を求めたい、あるいは自分知識経験を生かしたい、そいうことをできるだけ、片方は働きたいという人たちのニーズにこたえることと、働くことによって社会自分たちの知識経験が生かされるという社会的貢献、こういうものの双方をできるだけ生かし切っていこうというのが一つはこのシルバー人材センターの私は目的だと思います。  したがって、先生が御指摘のように、一般の企業で雇用されている常用労働者のような立場ではなくて、だからこそ短期的あるいは臨時的な就労機会としてこのシルバー人材センターを活用していただこう、こういう立場でございますから、これだけで高齢者対策がすべてうまくいっているとは思いませんけれども、片方で福祉も充実させていかなければいかぬ。本人の健康管理やあるいは自分知識経験を生かして人生観を自分なりに全うすることができる。いろんな要素を全部盛り込んでこのシルバー人材センターにさまざまな思いがこもっているというふうにひとつ御理解願えないだろうかなと、こういうふうに私は思います。
  80. 末広まきこ

    末広真樹子君 思いがこもっているのでございますね。  愛知県では、シルバー人材センターの管轄が民生部の高齢化対策室の中にございます。労働行政の一部とはなっておりません。この事業はむしろ福祉行政の仕事と言った方がいいと言うことをいみじくも表現しているんです。名古屋市では、社会福祉協議会が職安では相手にしない高齢者に対する無料職業紹介を熱心に行っていらっしゃいます。労働行政福祉行政の逆転現象が起きていると言ってもよいのではないでしょうか。全国都道府県ではその管轄はどのようになっているのでしょうか。愛知県、名古屋市だけが例外なのかどうか。そして労働省は、このような施策よりは本来の雇用につながる施策に強力に取り組むべきと思いますが、いかがなんでしょうか。
  81. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 全国都道府県におきますシルバー人材センターの管轄の問題でございますけれども、四十七都道府県中、実は四十五の都道府県で商工労働部といった労働主管部局が担当いたしております。例外は栃木県と愛知県でございまして、栃木県は保健福祉部、それから愛知県が民生部、今先生お話しのとおりでございます、が主たる担当ということになっておりますが、いずれの県におきましても、労働主管部局との共管ということで事業を行っておるところでございます。いろいろ経緯があるのだろうと思いますけれども、確かに労働施策としての側面、それから福祉施策としての側面、両方持っているわけでございまして、愛知県では後者の側面に着目をされたのではないかというふうに考えております。  また、第二点目の、シルバー人材センターもさることながらもっと雇用につながる施策を充実すべきではないかということでございますけれども、先ほど大臣から答弁ございましたように、高年齢者雇用就業対策につきましては大きく二つの柱、六十歳定年基盤とした六十五歳までの継続雇用推進、これはまさに雇用につながる施策なわけでございますけれども、これを大きな一つの柱にいたしました。それからまた、六十歳代前半になると高齢者就業ニーズが非常に多様化するという点に着目いたしまして、その多様なニーズに対応できる多様な形態による雇用あるいは就業機会確保していかなきゃいかぬということで、この二つに重点を置いて具体的な施策に取り組んでおるところでございます。  具体的に申し上げますと、六十歳定年につきましては平成六年に高齢法改正がございまして、平成十年四月から六十歳未満定年、これは民事上無効にされるわけでございます。平成十年四月に義務化されるわけでございますけれども、私どもとしましては、その施行の時期を待たずにできるだけ早い時期に六十歳定年が定着しますように強力な指導を行っておるところでございます。また、六十五歳までの継続雇用につきましては、企業に対しまして継続雇用制度を導入するように、いろんな機会をとらえて啓発指導を積極的に展開をいたしておるところでございますし、また雇用保険の高年齢雇用継続給付を初めとする各種の支援措置につきましても、いろいろと拡充を図っておるところでございます。  また、やむを得ず離職をされた方で再就職希望する、そういった方々に対しましては、公共職業安定所におきますきめ細かな職業相談職業紹介等を通じまして、早期再就職の促進、そういった努力をいたしておるわけでございまして、いずれにいたしましても高齢期は大変ニーズが幅広くなり個人差が拡大してくるといったような状況を踏まえまして、そういったニーズに対応できるような雇用就業対策に今後とも全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  82. 末広まきこ

    末広真樹子君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。  今回の法改正により、会員数を平成七年の三十五万人から二十一世紀初頭には百万人へとほぼ三倍にすると聞いております。同時に、仕事量の確保も三倍以上必要になってくるわけでございます。現在、全国の六十歳以上の人口の入会率が聞いてびっくりするような数字でございまして、一・九%、名古屋に至っては〇・八%でございます。名古屋ではここ十年近く会員数は横ばいで、やっと平成五年度から増加の傾向になってきております。  次に、希望職種と実際についた職種の対比を見てみます。全国でも名古屋でも、事務整理の仕事希望が多くてもなかなか仕事につけません。逆に、軽作業、先ほど来出ておりますようなビルの清掃とかあるいは駐車場の管理とかあるいは草むしりとか、それは希望者以上に仕事につくケースが多くある。つまり、あなたは事務をやりたいと言っているけれども、ちょっと草むしりの時期だから草むしりに行ってという、こういう頼まれ方が多々あるということです。このような問題点をいろいろ抱えているのが現状です。  シルバー人材センター連合をつくることで空白の地域を埋め、センター間の調整をやっていくというのが今回の法改正の趣旨でございますが、これで果たして会員の増大や仕事量の確保が見通しどおり進んでいくんでしょうか、御見解を明らかにしてください。
  83. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 二十一世紀初頭は、これまで例を見ないような超高齢社会が到来することが避けられないわけでございまして、私どもはそういった時代の中でシルバー人材センターの果たす役割はますます大きくなるというふうに思っております。  会員数が百万人ということでございますけれども、この超高齢社会の中で、一つの試算でございますけれども雇用政策研究会の推計なり高年齢者就業実態調査、こういったものをもとに試算をしますと、臨時的かつ短期的な就業希望する高齢者というのは、全国で約二百万人ぐらいに達するのではなかろうかというふうに思っておるところでございます。こういった状況を踏まえまして、百万人会員というのは、実はシルバー人材センター事業に取り組んでおられる全シ協を初めとする関係者皆さん方の強い熱意のあらわれでございまして、二十一世紀初頭までに現在の三十五万会員を百万人目指して大いに取り組んでいこうではないかということで、いろいろと努力目標として打ち立てられた数字でございます。  私どもといたしましても、このシルバー人材センター事業関係者のこういった熱意、取り組みを積極的に支援をしていきたいということで、会員がどうすれば拡大できるか、またそれに見合って仕事をいかに確保、拡大できるか、そういったことが少しでもやりやすいような環境をつくってまいりたいということで、今回のシルバー人材センター連合の改正もお願いをしているわけでございます。  これまでの空白地域事業が実施できるということ、あるいはまたミニシルバーもこの会員となれるというようなこと、そういったものを通じてシルバー人材センター会員の数がかなり大きく広がっていくだろうと。また、シルバー人材センター連合事務局において集中的にいろんな新しい仕事企画開発ですとか普及、PRを行うことによって、仕事確保の面でもそれぞれの地域の特色を凝らしたいろんな取り組みが行われていくんではないか、そういったものを通じて仕事の拡大というものも大いに期待できるんではないか、こういうことで私どもこの関係者の取り組みに大いに期待をいたしておるところでございます。
  84. 末広まきこ

    末広真樹子君 時間がなくなってしまいましたが、これまでは市町村の費用の二分の一を国が補助してきたんですが、これに今回の法改正都道府県の費用も二分の一国から補助することになっております。平成七年度百七億円、今年度予算が百十六億円とされております。ですから、経費としてはその倍額の二百三十二億円以上ということになります。名古屋市にあっては、国からの補助七千六百万円に市独自の上乗せをしまして、合わせて年間三億二千万円の予算が使われております。それで高齢者に渡される配分金が九億円ぐらいです。配分金に対する運営費の額が多過ぎはしないでしょうか。これでは運営費の予算もそのまま高齢者にお渡しした方がいいんじゃないかなと思ったぐらいでございます。今回の法改正案のシルバー人材センター連合も、結局は事務費用の増大を招くだけということにならないように強く要望しておきたいと思います。  お手元に私が毎月発行している「ニュース レター」を委員長の御許可を得ましてお配りしております。大臣、恐縮ですが、四ページの自転車リサイクル作業所で働く高齢者のお顔をごらんに一なってください。元気で、生き生き、七十五歳でいらっしゃいますが、非常に張りを持ってお仕事をなさっています。いろんな高齢者、すべての高齢者にこの表情を差し上げたいと思うんですが、ただ制度をつくって助成金を出して仕事を与えてもだめなんです。一個足りないものがあるんです。それは、ありがとうね、あなたの仕事で助かっているわ、世の中は。この言葉をその労働に対して添えない限り、配分金だろうが賃金だろうが、六十を超えた七十を超えた八十を超えたお年寄りには、何の喜びも感じられないんです、そんなもの、年金があるんですから。  だから、それを制度の中にどうやって組み入れていくのか、心のこもった、相手の心に通じさせる制度をつくっていかなければならないんじゃないかなと、そういうことを切にお願いしまして、時間になりましたので私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  85. 足立良平

    委員長足立良平君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 足立良平

    委員長足立良平君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  87. 足立良平

    委員長足立良平君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 足立良平

    委員長足立良平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後零時四十五分まで休憩いたします。    午前十一時四十三分休憩      ―――――・―――――    午後零時四十八分開会
  89. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を再開いたします。  去る五月一日、予算委員会から、五月七日午後の半日間、平成八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、労働省所管について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  予算の説明につきましては既に聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  90. 山東昭子

    ○山東昭子君 景気の現状認識につきましては、多少のニュアンスの差はあっても、総じて明るさを取り戻しつつあるという点でまず異論はないと思われますが、ただ、雇用面の回復のおくれがまだ気になるところです。シュヴァイツァー博士は、現状認識はいかに厳しくとも希望意欲は明るくという言葉を残しておりますが、将来に向けて国民が明るい希望意欲を持てるかどうかは雇用動向いかんにかかっていると言えるのではないでしょうか。  まず、雇用のミスマッチと労働の流動化についてお伺いいたします。最近の失業の中身は、景気不振に伴う循環的な失業に加えて、幾つかの構造的要因による雇用のミスマッチが相当なウエートを占めていることを考えますと、従来の発想にとらわれない斬新な雇用対策が必要かと思われます。そもそもの原因は、企業の厳しいリストラや産業構造の急激な変化、高齢化に伴う雇用の年齢別ミスマッチ、四年制大学を卒業する女子の就職難という男女別の格差など多岐にわたっております。そして、何といっても根本的な原因としては、企業の海外移転による産業の空洞化の結果として生じる雇用機会の喪失が挙げられます。  そこで第一に、リストラによる失業に対処するための労働流動化対策として、労働者派遣事業に関しては現在審議中ですが、民間による有料職業紹介や労働者派遣事業に係る規制の見直しが必要になると思われますが、いかがでございましょうか。
  91. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 有料職業紹介事業及び労働者派遣事業の規制緩和でございますが、これにつきましては、去る三月二十九日に改定されました規制緩和推進計画におきます民営職業紹介事業に係る規制及び労働者派遣事業に係る規制に関する措置内容等に基づきまして適切に対処することといたしているところでございます。  具体的には、有料職業紹介事業に関しましては、昨年末の行政改革委員会の意見を尊重し、取扱職業及び紹介手数料等、そのあり方につきまして中央職業安定審議会で昨年の十月以来御検討をいただいているところでございますが、この検討結果を平成八年中に取りまとめていただきまして、その結果を踏まえて九年度に実施に移すことといたしたいというふうに考えているところであります。  労働者派遣事業につきましては、ただいま先生指摘もございましたが、行政改革委員会の意見におきまして早期に実現することが望まれるとされております昨年十二月の中央職業安定審議会の建議を踏まえまして、育児休業等取得者の代替要員に係る特例措置等を内容とする労働者派遣法等の一部改正法、これを今国会に提出し、既にもう本委員会においては御審議いただいたところでございます。また政令改正によりまして、改正法の施行とあわせて対象業務を拡大することも予定しているところでございます。  労働者派遣事業に関しましては、さらに行政改革委員会の意見を尊重し、有料職業紹介事業制度のあり方の検討に引き続きまして、平成八年度中に制度のあり方について検討を開始する予定にいたしているところでございます。
  92. 山東昭子

    ○山東昭子君 第二に、産業構造の変化や高齢化の進展に伴う雇用問題への取り組みとしては、労働者の再教育と再訓練が最も重要ではないかと思いますが、大臣としてこの面の対策をさらに充実させるお考えはございましょうか。
  93. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘のように、これからの雇用問題を確実にしていくためには、何といいましても能力開発は極めて重要であると認識をいたしております。  とりわけ、産業構造の変化が最近は非常にテンポが速まっておりまして、そういう社会環境には、産業構造の変化だけではなくて社会環境そのものも大きく変化していくわけでありますから、これらに対応するためには、まず第一番に事業の高付加価値化、そして新しい分野の展開に取り組む企業に対する人材育成面での積極的な支援、そして自発的に職業能力開発に取り組める環境を整備していきたい。三つ目には、将来のキャリア設計に応じた早い段階からの高年齢者の職業能力の開発の支援をしていくことが重要だと考えています。そして四つ目には、そういう職業能力の適正な評価推進しなくてはいけない。これらをいずれも含めまして、私ども重要な問題と認識しておりまして、積極的な対応を進めてまいりたいと考えているわけであります。  また、各個人の個性を生かしながら、経済社会の変化に的確な対応を図る職業能力開発の実現を目指しまして、本年二月に策定いたしました第六次職業能力開発基本計画に基づきまして産業や地域などの実情に根差した職業能力開発施策を総合的にかつ積極的に進めてまいりたいと考えているところであります。
  94. 山東昭子

    ○山東昭子君 第三に、産業空洞化についての現状認識と対応策について、まず通産省にお伺いしたいと思います。
  95. 中嶋誠

    説明員(中嶋誠君) 産業空洞化についてのお尋ねでございますけれども、まず実態を申し上げますと、我が国の産業の空洞化について幾つかの指標がございます。  一つは、国内の設備投資を見ますと、九二年度以降三年度連続で減少を続けております。九五年度は辛うじて微増したと見込まれておりますけれども、依然として極めて低い水準にとどまっております。それから二番目に、海外向けの直接投資が非常に高いレベルで推移している一方で、海外から日本に対する対内直接投資、これが極めて低い水準にとどまっております。第三に、製造業の海外生産比率でございますけれども、これが近年大変な勢いで上昇しつつございます。私ども調査によりますと、製造業一般の海外生産比率は八五年度、約十年前でございますが、三%程度であったものが九五年度には一〇%に上昇しているというふうに考えられております。これは確かにアメリカとかドイツに比べますとまだ低うございますけれども、個別の業種で見ますと、例えば輸送機械などはもう二〇%を超えておる、電気機械でも一五%といったような水準になっております。  こういうデータに見られます産業の空洞化の懸念の背景でございますけれども、第一に我が国の高コスト構造というのが指摘されております。これは日本で物をつくったりサービスを提供する際の環境が諸外国に比べて悪化をしているのではないか、高コストになっているのではないかという点でございます。それから第二に、研究開発基盤を含みます社会資本整備のおくれでございます。こういった点が多々指摘をされているわけでございますけれども、こういった問題を乗り越えるためには大胆な経済構造改革を早急に実施していくということが肝要かと存じます。  具体的には、例えば規制緩和などを通じまして、まず高コスト構造を少しでも是正をしていく、さらには既存の企業あるいはベンチャー企業も含めまして新規事業分野の発展のために基盤を整備する、それによって経済の新しいフロンティアを拡大していく、さらに将来の新しい分野の芽になります研究開発基盤、これを整備していく構造改革型の社会資本を整備していくといったようなことが必要かと存じます。また、その一環といたしまして、通産省の関係でございますと、昨年来、事業革新法の制定でございますとか、あるいは新規事業法の改正、民活法の改正といったような点につきまして御審議をいただきまして、現在その施行に全力を挙げているところでございます。  このような政策を積極的に講じることによりまして、将来の新しい分野を切り開きながら日本の経済が活力と創造性あふれたものになるように全力を挙げてまいりたいというふうに考えております。
  96. 山東昭子

    ○山東昭子君 次に、労働省として雇用面での取り組みはどのように考えていらっしゃいますか。
  97. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいまも御指摘ございましたように、厳しい雇用情勢、この背景には従来のような景気循環的な問題のほかに生産拠点の海外移転あるいは製品輸入の増加など構造的な問題があるものというふうに考えているところでございます。  したがいまして、雇用対策面からもこうした構造的な問題に適切に対処しなければ我が国が今後高失業社会に陥ることも心配な面があるわけでございまして、こうした観点から昨年十二月に策定いたしました第八次雇用対策基本計画、これで今後の中長期的な雇用対策の方向を定めたところでございます。これを踏まえまして、改正中小企業労働力確保法に基づきます中小企業あるいはベンチャー企業、そういうものの活力を生かした雇用機会の創出、これにつきましては中小企業労働力確保法、通産省と共管の法律でございまして、通産省とも連携をとりながら対処しているところでございます。あるいは失業なき労働移動という形で改正業種雇用安定法に基づく支援対策、これにつきましては出向、再就職あっせん、あるいはこれに伴う能力開発、そのようなものに対する対策でございますが、こういう対策中心といたします新総合的雇用対策を展開しているところでございますが、今後とも我が国が高失業社会にならないように総力を挙げて雇用対策を進めてまいりたいというふうに考えております。
  98. 山東昭子

    ○山東昭子君 次に、教育面から伺います。  先日、経団連会長の豊田さんがお書きになった「「魅力ある日本」の創造」という本を読んでみましたが、その中で、経済界が求めている人材と大学教育との間には大きなギャップがあるとして、そのギャップを埋めるための教育改革が提案されております。また、加藤寛千葉商大学長は、大学改革に関してトワイライトスクールや大学間の単位互換制度、さらには卒業生の品質保証をする学生PL制度など、画期的な構想をお持ちと伺っております。  そこで、文部省にお尋ねいたしますけれども、このような大学と社会とを円滑に結びつけようとする努力に対してどのような姿勢で対応なさるおつもりか、お聞かせください。
  99. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) お答えをいたします。  今、委員指摘先生方の御意見でございますけれども、大変貴重な御提言だろうと思っております。学生が大学でどのような能力を身につけたかということが現在強く問われているわけでございますけれども、大学が社会国民のそういった多様な要請に適切に対応しながらその役割を果たしていくためには、各大学がそれぞれの理念でありますとか目的を明らかにした上で教育機能の一層の強化を図っていく、これが重要であろうと、こういうふうに認識をしておるわけでございます。  そこで、文部省では大学審議会におきます検討を踏まえまして、現在、高等教育全般にわたる改革を進めておるところでございますが、特に平成三年に大学設置基準を大綱化いたしまして、各大学が特色ある教育研究を自由に展開していくことができるようにしたところでございます。これを受けまして、現在、各大学でいろいろな大学改革が進んでおります。先ほど御紹介がございましたような、例えば大学間での単位の互換の問題でありますとか、あるいは社会人を大学に受け入れまして社会人に即したような教育を展開していく、こんな工夫が今各大学で起きつつあるわけでございます。  文部省といたしましては、各大学がそれぞれの創意を生かして個性豊かな教育研究活動を展開していくよう引き続き努力をしてまいりたい、支援をしてまいりたいと、かように考えているところでございます。
  100. 山東昭子

    ○山東昭子君 昨年来、女子学生の就職難は社会問題となっておりますが、この問題は学校側と採用側と経済界との協力がなければ解決できない問題でございます。  そこで、文部省にお尋ねしますが、産学官の話し合いの場を設けて、双方の言い分を調整して具体策を講ずる必要があると思いますが、いかがでございましょうか。
  101. 櫻井清

    説明員(櫻井清君) 先生指摘のとおり、昨今の雇用情勢の厳しさによりまして、学生、特に女子学生の就職状況は大変厳しいものがございます。そのような状況を踏まえまして、大学側と企業側との連携でございますが、就職問題につきましては、かねてから大学側の代表及び企業側の代表で構成いたします就職協定協議会という組織がございまして、その特別委員会等におきまして、昨年におきましても学生、特に女子学生の就職問題の対応につきましては何度も企業側協議を重ねてきたところでございます。  また、文部省といたしましても、昨年度から新たに全国の大学の就職指導担当者、それと企業の採用担当者の参加を得まして全国就職指導ガイダンスを開催してきておりまして、本年も去る四月二十二日には本年度の第一回目を東京で開催したところでございます。  文部省といたしましては、今後とも学生の就職状況を適切に把握しながら、大学側、企業側と緊密な連携、協力をとりながら学生の就職支援に最大限の努力を継続してまいりたいと考えております。
  102. 山東昭子

    ○山東昭子君 また、採用される側の女子大生につきましても、そもそも社会人となるに当たっての、心構えが不十分であったり、仕事に対する甘えが指摘されたりしているのも残念ながら現実でございます。  女子の労働条件の見直しの問題も提起されているようでございますが、出産や育児は別にして、女子労働に関する保護規定の見直しについての御見解を簡単にお聞かせ願いたいと存じます。
  103. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 現在、婦人少年問題審議会におきまして、母性保護を除く女子保護規定の見直し、それから均等法の見直しもあわせて検討が進められているところでございます。その結果を踏まえて対応していきたいというふうに考えております。
  104. 山東昭子

    ○山東昭子君 次に、裁量労働に該当する業務の拡大についてお尋ねいたします。  情報化の進展や通信手段の発達、高齢者や主婦の雇用機会確保、通勤時間のむだの排除など、さまざまな背景から裁量労働への要請が高まっているようであります。ところが、労働基準法で定められる業務の範囲が、現在では新技術の研究開発や衣服等のデザインなど五つの職種のみに限定されております。例えばこれを企画部門や調査部門など、時代に合わせて広範に拡大してもよろしいのではないでしょうか。
  105. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 裁量労働制につきましては、平成五年の労働基準法改正の検討の際の中央労働基準審議会の建議におきましても指摘をされておりますが、そこで裁量労働になじむ業務の具体的な範囲について、できるだけ早い機会に別途検討の場を設け、その検討結果を待って対象業務を検討することとするというふうにされたわけでございます。これを踏まえまして、平成六年四月から裁量労働制に関する研究会を開催してまいりまして、平成七年四月にその報告が取りまとめられました。  この報告におきましては、今先生指摘されましたけれども、現行五業務が指定されておりますが、これとの均衡上、これらの業務に類似する個別具体的な業務としまして、金融商品等の物品以外の新商品の研究開発の業務、コピーライターの業務、公認会計士の業務、弁護士の業務、一級建築士の業務、不動産鑑定士の業務、弁理士の業務を指定することが適当だというふうにされました。  これは現行制度にのっとっての指定業務として適当なものが挙げられたわけでございますが、さらに、この研究会報告はこれだけではなく、今後の裁量労働制のあり方といたしまして、例えば対象業務としては高度な経営戦略の企画の業務ですとか、高度な法務関係業務、高度な経済動向等の分析評価関係業務等幾つかの業務をさらに指定することが適当だとされましたが、あわせて後段で申し上げました幾つかの新しい業務をさらに対象業務として広げるという場合につきましてはかなり広範になってくるということもございまして、手続的な要件についても、労使協定の締結に加えて企業内労使委員会を設置するということが適当であるとか、また本人の同意を必要とするというようなことも考えなければいけないとかいうようなこと、こういう手続的なこともあわせて指摘をされております。  また、加えまして、現在の裁量労働制はいわゆるみなし労働時間制として扱われておりますけれども、裁量労働制の本来の趣旨にかんがみますと、労働時間に関する規定について適用除外とすることが適当だというふうにも指摘をされているわけでございます。現在、この報告を受けまして、昨年十月以降中央労働基準審議会の労働時間部会というところでこの裁量労働制を含みます労働時間問題について検討をされているところでございます。したがいまして、私どもとしてはこの中央労働基準審議会の時間部会の検討の結果を踏まえまして対処をいたしたいというふうに考えているところでございます。
  106. 山東昭子

    ○山東昭子君 ここで、持ち株会社制度と労使関係についてお尋ねします。  持ち株会社制度解禁を認める与党内の議論が、労使関係の取り扱いをめぐり足踏み状態だと伝えられておりますが、この問題に関する進捗状況政府の方針を労使関係の実務派でいらした永井大臣に伺いたいと存じます。
  107. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生指摘のように、持ち株会社の解禁の問題につきましては、与党内でプロジェクトチームがつくられまして、多方面から検討がされてきているようでありますが、仄聞するところによりますとまだ結論が出ていないというふうに聞いているわけであります。  ただ、この議論の中で、先生指摘のように労働団体からは解禁に伴う非常に懸念が表明されているということもありまして、経済界、経営者側と労働界との間で検討のワーキングチームをつくられたのでありますが、ここでも意見が対立したままになっているというふうに聞いているわけであります。  いずれにいたしましても、労働省といたしましては、この持ち株会社がどの規模であれ解禁されるということと現在の労働法制は決して無関係ではないと思っておりまして、そういう面で与党内でどういう結論が出されるかわかりませんけれども労働省としては、労働法制にかかわる問題が持ち株解禁との関係でどのような問題点が生じてくるか、こういうことはやっぱり研究していかにゃいかぬということで、今専門家会議を設けまして鋭意検討してもらっているわけであります。その検討の経過、結果も見ながら適切に労働省としては対応していきたい。今の段階で言えますことは、これが労働省としての大事な責務ではないかと、私はこう考えているわけであります。
  108. 山東昭子

    ○山東昭子君 ゴールデンウイーク中にいろいろな勤労者に今後の労働環境について意見を聞きますと、こんなに休みが多いと我々干上がっちゃうよと悲鳴を上げる日給労働者や、時短によっておれたちにしわ寄せが来るんだよなと嘆く中小や零細企業で働く人などさまざまです。  労働省は、どうぞいろいろな角度から勤労者に配慮されるよう、そして、そうした労働者に対して大臣がどのようなお考えをお持ちか、最後に見解を伺って私の質問を終わりたいと存じます。
  109. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 働く人が十分な余暇を持っていただくということは、私は非常に大切なことだと考えています。  昔のようにただ単に働きバチだと言われないように、働いた対価ももちろん正しく評価されなくてはいけませんけれども、しかしその働く中で、人生のあり方として十分な余暇を持つことが必要だろうと。したがって、これは全体の労働時間の法制上の問題もありますけれども、できるだけ一定の期間集中的にリフレッシュできるような、ゴールデンウイークはそれに当たると思うのでありますが、単に生活面での収入という問題だけではなくて、次への生産力を構築していくという意味から、私はこのゴールデンウイークを含めて、働く者が十分に余暇を楽しむような制度は極めて重要な今の社会の要請にこたえるあり方だと、こう考えています。
  110. 山東昭子

    ○山東昭子君 終わります。
  111. 真島一男

    ○真島一男君 ことしのメーデーでは、一つ画期的なことを私も統一メーデーの壇上で拝見したわけですが、自民党出身の総理が永井労働大臣と壇上で並んでいらっしゃるという光景を見て、私どもとしては世の中の移り変わりというものを感じたのでございますけれども大臣自身このことについてどんな御感想をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  112. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 一言で言って、先生も御指摘になりましたけれども、私はすばらしいことだと、こう思っています。  現に、今労政懇談会でありますとか、あるいは産業労働懇話会でありますとか、あるいは時と場合によっては政労交渉も何回か開かれているわけであります。言いかえれば、日本の社会を構成する労働団体として、このメーデーの今度の象徴的な出来事によって改めて認知をされたのではないかと、こう思っているわけでありまして、昨年のメーデーに初めて総理大臣として村山前総理が出席をされました。ことしは橋本総理が出席されたわけです。  ただ、主催者がどなたに招請状を出すかということが第一義的な問題でありますから、今までは政党関係で言いますと、聞くところによると自民党には招請状が出ていなかったということでありますが、内閣総理大臣として招請を求められて橋本総理が出席されているわけでありますから、いずれの政党であっても労働界との関係は全く無視できない、これはもう実態でありますから、そういう意味では、労働界がそういう政治的にも大きく重要な組織であると認知されていることについては非常に喜ばしいことだと実は思っているわけであります。  つけ加えて言えば、橋本総理はごあいさつの中で、内閣総理大臣としてではなくて自民党の総裁として来年は出席したいということを言われておりましたけれども、それは第一義的に組織がどのような方を招請されるかにかかっているわけでありますが、いずれにいたしましても、私は去年、ことしと続いて総理大臣が出席をされたことはすばらしいことだと、こういうふうに認識をいたしているところであります。
  113. 真島一男

    ○真島一男君 先般、大臣も出席なさいました雇用サミットにおいて、その焦点が何であったか、そして日本はその中でどういう役割を果たしてきたのか、そしてまた、その会議の成果は我が国雇用対策にどのようにいい影響をもたらし、取り入れるということになっているのか、その辺のことを伺いたいと思います。
  114. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今回の雇用サミットは、三つの主要テーマについて議論をいたしました。  まず一つは、経済成長とすべての人の雇用をいかに確実なものにするか、これがまず第一番であります。二つ目には、将来の雇用創出をいかに力強いものとするか。三つ目には、若年者あるいは未熟練労働者等の状況をいかに改善するか。この三つが議題として議論がされたわけであります。  参加いたしました各国は、社会の発展を雇用の安定と拡大に結びつけるために中長期的に安定したマクロ経済環境提供する必要がある、そして経済のグローバル化や技術革新を雇用創出に結びつけるための経済社会の適応力の向上、そして若年労働者への特別の配慮が必要という認識で一致をしたところであります。  日本の役割でありますが、我が国は中小企業の人材確保などの支援、そして若年労働者の雇用対策、あるいはニーズに即した能力開発の施策、そして、ここが一番大事なところでありますが、労使の対話の重要性などについて我が国経験を紹介してまいりました。その中で、例えば日本型と言われている終身雇用的なシステムがいかにしてつくられてきたか、いかに実態に合わせてこういうものが必要として認知されてきたか、そういうことも実は紹介をしてまいったわけであります。  また、産業構造の変化の中で失業なき労働移動の支援が重要だということも指摘をいたしました。各国はこれを高く評価いたしました。なぜこれを各国が高く評価したかといいますと、私どもが進めているような、例えばリストラに伴う失業なき労働力の移動の支援、こういうものは余り各国では見られないわけですね。だから、そういう点については高く評価をされたわけであります。  そして、さらに若年者、高齢者雇用などに焦点を当てる専門家レベルの会合の開催を次は日本でやろうではないかということを提案いたしましたところ、各国はこれを非常に歓迎してくれまして、そのレベルであるとか時期であるとか議題等は、今後関係国間で相談しながら具体化を図っていくことにしたわけであります。  そして、この雇用サミットにおけるいろんな議論の過程から我が国雇用対策への活用方策でありますが、我が国の労働市場は欧米諸国に比べまして非常に良好な状態を維持しているわけであります。確かに史上最高の失業率で大変でございますけれども、ヨーロッパなどと比べると圧倒的に良好な状態にあるというふうに言えますし、各国もそのように評価をしてくれているわけであります。しかし、産業構造の変化の中で将来の経済社会の見通しは不透明でありますから、今後とも雇用と賃金等の労働条件の両方が確保される社会の維持が必要であるというふうに認識を新たにしたところであります。  当面、構造問題の対応を重点にいたしまして、改正業種雇用安定法に基づくいわゆる失業なき労働移動の支援などから成る新総合的雇用対策をさらに積極的に強力に展開する必要があろうというふうに再認識をいたしました。そして、これらによって我が国が高失業社会に陥らないように、総力を挙げて取り組むことが必要だというふうに考えているところであります。  いずれにいたしましても、各国の経済事情あるいは失業の状態、あるいは学卒者の新規採用についても全く日本と違う対応が各国でとられておりまして、そのことが日本にも、いい言葉か悪い言葉かわかりませんけれども、そういうヨーロッパのわだちを踏むことのないようにしていかなきゃいかぬということを強く認識をしたところであります。
  115. 真島一男

    ○真島一男君 雇用失業の情勢というのが、昨年来特に国民の関心を集めているところでございますけれども、現在の雇用失業情勢につきまして、製造業、サービス業あるいはホワイトカラー、そしてまた若年の失業率が高いということも一つ大変気になるところでございますけれども、それぞれの失業者がなぜそのようなことで昨年来大きく数をふやしているかということの理由も加えて御説明を願います。
  116. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 設備投資の回復等、景気が緩やかながら回復の動きが見られる中で、ただいま御指摘のように完全失業率、これは過去最高水準でありました昨年十一月からことしの一月まで三カ月連続して三・四%と過去最悪の水準だったわけでございますが、この回復の動きの中で二月には三・三%に、三月には三・一%へと低下をしてきているところでございますが、なお依然として厳しい、こういう認識でございます。  これを内容的に見ますと、ただいま御指摘の産業別にはこれ数字がございませんでなかなか難しいわけでございますが、例えば年齢階級別に見ますと、若年層、これは十五歳から二十四歳層で見ますと、ここにおきます状況が三月には前年同月と比べて〇・六%上昇いたしまして八・一%、全体が三・一%のところを八・一%と過去最高水準になっているわけでございます。他方、有効求人倍率で見ますとこれが全国で〇・六七倍というところでございますが、今言った若い方につきましてはより求人倍率が高くなっておりまして、ほぼ一倍に近い数字になっておるわけでございます。そういう面から見まして、失業率の高い理由としては、雇用機会の不足というよりはむしろ景気回復の動きに伴う適職探し等のための離転職が多いこと、こういうことが主たる原因ではないかというふうに考えているところでございます。  ただ、いずれにいたしましても、完全失業率低下したとはいえ依然として高い水準にありますし、若い方の失業率がより高い、また有効求人倍率も全体として見ますと〇・六七倍ということで一に達していない低い水準である、こういうことでございまして、雇用失業情勢は依然として厳しいというふうに認識いたしております。  今後につきましては、先ほど来お話ございますように、生産拠点の海外移転であるとか、あるいは流通業におきます構造改革の進展等を背景といたしまして、製造業やあるいは卸・小売業等が相対的に縮小する一方、サービス業が拡大するなど大幅な産業構造の変化が見込まれるわけでございまして、こうした問題に適切に対処することが雇用面でも非常に重要であるわけでございまして、この点についての対応が適切でない場合には我が国もヨーロッパと同じように高失業社会に陥る、そういう心配もあるわけでございまして、この点が一番重要な今後の対応であるというふうに考えているところでございます。
  117. 真島一男

    ○真島一男君 今、製造業からサービス業にシフトしていくこともあるのではないかというようなお話もございましたけれども、サービス業における失業者の増大ということは我が国でも既に起きているところであるし、アメリカではもうおととしになりますか、九四年の一月の調査では一月一カ月で十万八千人の失業者が主としてサービス業から出ているという数字もあるのでございますから、今おっしゃったようなワンパターンの、製造業からサービス業に移行することによって失業問題を解決していく方法と考えるのは私は必ずしも適切でない時代に入っていると思うのであります。  労働省は、各大企業のリストラ計画がどのようなものであるかということを把握していらっしゃいますか。
  118. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 個々具体的な企業のリストラ計画を全般に詳細に把握しているということはございませんが、私ども公共職業安定機関におきまして、一時に大量の雇用変動が生ずる場合、これについては事前に届け出をしていただきまして対策考える、こんな仕組みがございまして、三十人以上だったかと思いますが、そういう雇用変動がある場合、これにつきましては第一線の公共職業安定機関で把握しているところでございます。
  119. 真島一男

    ○真島一男君 そういう対応は私の感じからすると少し受け身であろうと思います。これだけ大きな産業変革、リストラが進んでいる中で、先ほど申し上げたアメリカの企業は高収益の中で失業者を出しているわけでございますから、待っているということでなくて積極的に労働省として各大企業のリストラ計画を把握するようにしていただきたいと思うのですが、大臣、いかがでございましょうか。
  120. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 労働省といたしましては、第八次雇用対策基本計画を策定したわけでありますが、この計画を踏まえまして、改正中小企業労働力確保法に基づく中小企業の活力を生かした雇用機会の創出を図っていきたい、これがまず第一番であります。第二番目には、改正業種雇用安定法に基づきまして、いわゆる失業なき労働移動の支援など、そういうものから成ります新総合的雇用対策、これを強力に推進をしているところでありますが、今後とも我が国が高失業社会に陥らないように総力を挙げて取り組んでまいる所存であります。  現在の完全失業率が三・一%でございますが、でき得ればそういういろいろな施策を通しまして少なくとも二%台の後半ぐらいにまでは到達させる、そういう目標をしっかり踏まえて対応してまいる所存であります。
  121. 真島一男

    ○真島一男君 私がお願いしたことと別のお答えが来たような気がいたします。私が申し上げたことは、リストラについて大企業はどういう動向をとっているか、個別に確実に労働省は把握することが必要でないか、こういうことをお尋ねしたところでございます。  最後に、大臣にお伺いいたします。橋本内閣のみならず我が国政府にとってこれから一番大切なことは行政改革であろうと思うのでございますが、そういう中で大きな構造的な労働情勢の変化のしっかりしたビジョンを持つ、羅針盤を持つということが労働省の必要性をアピールする上で大事なことだと思います。行政改革についてのお考え、それから過去五十年を振り返って、この先の五十年政府は何をすべきか、労働省国民に対して何をすべきかということの御所信を伺って、私の質問を終わります。
  122. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生指摘のように、行政改革は極めて重要な課題でありまして、内閣といたしましても総力を挙げてこの行政改革を推進することにしているわけであります。  その中で、労働省といたしましても、これまでずっと何回か行ってまいりました臨調あるいは行革審の答申や毎年度の閣議決定される行政改革大綱に基づいてそれぞれ適切に対処してきたところでありますが、これにとどまらずにより積極的に労働省としても対応してまいりたい。先生が言われたように、五十年先にどうなるかということまでなかなか見通しを持つほど豊かな識見を持ち合わせているわけではありませんけれども、しかし少なくとも行政改革の中で労働省だけが取り残されることのないように、そのことはしっかり踏まえて対応してまいる所存であります。
  123. 真島一男

    ○真島一男君 終わります。
  124. 今泉昭

    ○今泉昭君 さきの労働委員会で、労働大臣は所信表明をなさいましたけれども、その中にことしの労働行政の大きな柱として六つの柱を立てられたというふうに理解をしております。  その中の一つに出ている雇用対策雇用問題というのはその六つの柱の中でも私は大変重要な課題であろうというふうに認識をしているわけでございますが、昨今発表されました労働関係の指標を見てみますと、平成七年の雇用状況では失業率が三・二%という、安定をいたしましてからの我が国雇用統計としては過去最大の大変高い失業率を記録しております。  また、有効求人倍率を見ましても、一応〇・六三ポイントというふうになっておりますけれども、これもまた前の年を〇・〇一ポイントですか下回るような大変危機的な状況を示しているわけです。この有効求人倍率も実はパートタイマーの有効求人倍率が含まれている数字でありまして、常用雇用者だけの有効求人倍率を見てみますと〇・五六というふうに、二人の求職者のうちに一人しか就職ができないというような大変厳しい雇用情勢を昨年我々は経験をしてきたわけであります。  たまたまことしに入りまして景気状況も幾らか改善をしたということを受けまして、三月の指標は失業率が三・一%という形に下がってはいますけれども、失業者の数は二百十万という大変数の多い完全失業者を抱えているわけでございます。  こういう状況を踏まえて、ことしの労働行政の中でこの雇用問題にどのように取り組んでいくのかということについての考え方と見通しをお聞きしたいと思うわけですが、政府の経済計画を見てみますと、ことしは実質で二・五%程度の経済成長を一応予定しておりますし、雇用労働者の伸びも〇・六ぐらいの伸びを期待しているようでございますが、この政府の経済政策の中で考えられている失業率というのは大体どのぐらいの腹づもりで運営しようとされているか、まずそれをお聞きしたいと思います。
  125. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 現状につきましては、ただいま先生指摘のとおりでございまして、完全失業率が三月で三・一%ということでございます。水準自体はなお厳しいというふうに認識いたしておりますが、景気の回復基調が雇用の改善につながるところに来ているかどうかのポイントであろうかと思います。  今年度の経済見通しにつきましては、昨年、今回の予算の際に閣議決定されております経済成長率はただいま御指摘のように二・五%ということでございますが、それとあわせまして、完全失業率は一応三・一%という見通しになっているところでございます。
  126. 今泉昭

    ○今泉昭君 雇用問題というのは我が国だけの課題ではなくして、先ほど労働大臣が申されましたように、雇用サミットですか、それをこれから積極的に開いていかなきゃならないように、世界の各国が大変今重要な課題として位置づけるような状況にあるんじゃないかと思います。  一説によりますと、一応工業化を進めている国々の中で全世界の失業者の数を合わせてみると八億を上回るのではないかと言われておりますし、OECDなどの失業状況を見ましても、実質的に二千万人を超えるのではないかと、そのようなことが大変言われているわけでありまして、今や雇用問題というのはどこの国においても政府が真っ先に抱えなきゃならない大変重要な課題であろうと思うわけであります。  特に皮肉なことに、一九八九年に御存じのようにベルリンの壁が崩壊いたしました。これを機にいたしましてこれまで続いておりました社会主義経済体制というものと資本主義を軸とする経済体制のぶつかり合いというものは一応資本主義経済体制の陣営に旗が上がったような形になりましたけれども、実は資本主義経済が抱えている今最大の課題というのは、この雇用問題というのをどのように解決をしていくかということじゃないかと思うわけであります。  これまで資本主義経済が持っていたいろいろなアキレス腱というものは資本主義経済自体がみずからの努力によりましていろいろと解決をしてまいりました。もともと社会主義経済体制は雇用というものは国家でもって保障をしていくという体制でございましたから、そういう意味では雇用問題については社会主義経済体制に一日の長があったのかもしれません。一日の長があるという表現はおかしいかもしれないけれども、そういう面では資本主義陣営は、今まで社会主義陣営が持っていた一つの長所というものをどのように経済体制の中に生かしていくかというような大変重要な課題を持つことになったわけであります。  永井労働大臣は、これまで社会党のリーダーとして、あるいはまた労働界におきましても総評におけるときの中心的なリーダーとして活躍をされてきたわけでございまして、その時代は社会主義経済体制に向けての努力をされていたというように思っておりますが、このような世界の変化を目の当たりにいたしまして、大臣としてどのような所感を今お持ちですか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  127. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生指摘のように、社会主義経済体制というものが事実上崩壊いたしまして自由主義経済社会になっているわけでありますが、計画経済のもとで雇用問題を論じる場合と自由主義経済のもとで雇用問題を論じるのは基本的にその土台が違うわけです。計画経済社会の中で進められてきた社会というものが事実上実態に合わないということから今自由主義経済になってきているのでありますが、自由主義経済であるからこそ行政の側が積極的に雇用創出につながるように産業、経済をリードしていくということが私は今一番求められている段階ではないかなと、こう思うわけであります。  この自由主義社会の中でも先進国と言われておりましたヨーロッパで、日本と違って今一〇%をはるかに超えるような失業者を出している。そこには行政の側が、他国を誹謗するわけではありませんけれども、いわば安易に対応しておったんではないのかなということを今度の雇用サミットでもしみじみと感じることができました。経済界と行政の側が一体となって失業なき社会をつくり上げるという施策が今改めて求められているということに先進国でも認識を新たにする、そういうところに今ようやく到達したんではないかなと、こう思うわけであります。  日本は他国に比べて失業率が低いということはすばらしいという一言で片づけることは決してできないと思いますが、日本は日本なりに経済界といわゆる産業界と行政が連携をとりながら雇用政策、あるいは社会の生活水準を高めるためのいろんな施策というものをそれなりに対応してきたところがヨーロッパと違う失業率の低い数字にあらわれてきているんではないかなと。これをもっと着実なものにするとともに、ヨーロッパ型に陥っていかないようなそういう産業構造の転換に即した行政の推進をやっていかないと、下手をすればヨーロッパ並みの高失業社会を招いてしまう、そういう危機感を片方で持ちながら、今私ども労働行政としては積極的に施策を検討し、対応してまいっているところであります。
  128. 今泉昭

    ○今泉昭君 大臣のその決意を多としながら、ぜひひとつ努力をしていただきたいと思うわけでございますが、今日の先進国の政府が抱えている雇用問題を考えてみますと、大きく分けて三つのポイントがあったんではないかと思います。  一つは、これは大いに結構なことなんですが、冷戦構造が崩壊をいたしまして世界全体が軍縮の流れになりました。軍事産業にあるいはまた軍隊に投入をされていた労働力というものが一斉に民間の産業に流れ込んでくるわけでございまして、当然これを受けとめる受け皿がなければ労働力は過剰になっていくというわけでございますから、これはもう当然のことだろうと思うわけであります。  それから二番目は、よく論議をされているいわゆる第三次産業革命とでもいうんでしょうか、どういう表現がいいかわかりませんが、コンピューターを中心とする技術革新によって労働力が今まで我々が想像している以上の形で置きかえられているという現実。我々はこれまで技術革新なりあるいは生産性向上に一生懸命努力をしてきてはいましたけれども、必ずしもその生産性向上や技術の革新によって新しい職場というものが十二分に生まれてきていない。こういう現実の中から、どうしても技術の革新というもののスピードについていけない中で労働者が多量失業という中に投げ出されていかざるを得ないという流れ、これが二番目にあったと思います。  それから、もう一つの大きな流れといたしましては、特に軍事的な対立がなくなった反面、各国間におけるところの経済的な利害の対立、競争というものが今まで以上に大変激化しているような状況にあるんじゃないだろうか。お互いにそれぞれの国あるいはそれぞれの企業が過当競争を繰り広げる中で、低コスト地域にどんどん仕事が流れていく。そういう中で、高いコストを持っている国におけるところの空洞化が日本だけではなくして各国に広まっていって、そこにおいてどんどん失業者がふえていく。こういう大きな三つの流れが私は現実にあるのではないかというふうに考えているわけであります。  そこで、まず我が国にこれを照らし合わせてみたいと思うんですが、第一の軍事の問題、もう全然別個にいたしましょう。第二の技術革新に伴います人減らしというのは、我が国において想像を絶するような形で進んでいることは事実だろうと思います。  我々が、今まで大企業と言われていたところをずっと調べてみますと、ほとんどは金属産業に存在しておりました。金属産業の中には十万人に上るような大企業も存在しておりました。例えば新日鉄にしろ三菱にしろ、かつては十万そこそこまで実は従業員を抱えていた時期があったわけであります。ところが、今見てみますと、これらの産業は、新日鉄は二万数千人ですよ。三菱だってもう四万人を切っています。電機産業を見てもしかりであります。大体四万人以上の企業があるというところはほとんどが金属産業でございましたが、これらの金属産業というのは実は一番技術革新の激しいところであります。生産性が大変高いところでございます。ところが、こういうところにおいて今物すごい勢いで人減らしが進んでいるわけであります。こういうことを考えてみますと、この技術革新というのはとどまるところを知らないわけであります。まだまだ技術革新が進むことは間違いがないと私は思うんです。  最近、本屋の中でベストセラーになっているものを見てみますと、例えばリプロダクションであるとかダウンサイジングであるとか、リエンジニアリングであるとかあるいは脱フォードだとか、要するに人をいかに減らしていくかということを命題にした企業の再構築というものが実はトップトピックになりつつあるわけであります。それを実現しなければいい企業じゃないと言われるような現実になっているわけであります。  このように、今まで一番雇用の吸収力の多かった産業、企業において、物すごい勢いで吸収じゃなくしてどんどん人減らしをしている中で、これに追いつけるような雇用の創出というものが具体的に考えられるんでしょうか。それについて、ちょっとお聞きしたいと思います。
  129. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま先生ヨーロッパの例をとりましてさまざまな問題点を御指摘になったわけでございますが、確かに我が国におきます経済社会の中にもそういう傾向があるかと思います。その点が一番心配であるというふうに考えます。  御指摘のように、特に製造業、金属産業、そういうところで生産性は高くなる一方で人が減る、こういう状況にあるわけでございまして、そのままでいきますと、これは雇用の面に非常に深刻な影響があり、かつ高失業社会になる、そういう心配があるわけであります。  あわせまして、したがって新しい分野でどういう雇用創出が進まなければならないかという点につきまして、これも御指摘のように、新しい分野として情報通信関係であるとかあるいは住宅、医療であるとかいろんなことが言われているわけではございますが、具体的に減る分に見合うだけの雇用がふえるかという点についての道筋はまだはっきりしていない、そういう状況であろうかと思います。  ただ、一方でサービス経済化が進む中で、いわゆるサービス産業について、これは中小企業が中心になろうかと思いますけれども、堅調に雇用が伸びている。そういう中で雇用のバランスがある程度とられている。その辺については今後ともそういう形であろうと、こういうことでございます。いずれにいたしましても、新しい分野についてこれがどういう形で国の産業政策面での支援等とあわせて起こっていくか、そういう中でどう雇用が創出されるか、この辺のバランスが崩れると先行きが非常に心配であるということはもう御指摘のとおりでございます。  それから一方で、金属産業等を中心に生産性が高い、そういうことで人をどんどん減らしていく、こういうことでいいかという点につきましては、例えばアメリカで見ましても、どうもそれが少し行き過ぎているのではないか、そういう批判も現実に出てきているわけでございまして、私どもとしましては、そういう諸般の事情を考えながら雇用対策面でどこまで手が打てるか、あるいはできるだけ高失業社会にならないような形での対策が現実にどう可能か、その辺について今後とも情勢の変化を見ながら、検討しながら対処していかなければならないというふうに考えておるところであります。
  130. 今泉昭

    ○今泉昭君 今お答えにございましたように、今ここですぐ答えが出ないというのは私自身も十分承知をしておりますし、私が言いたいことは、我が国の場合はいかに雇用問題というのが一般的に言われている以上に危機的な状況にあるかということを申し上げたかったわけであります。  農業の事態を見てみますと、かつて我が国の半数以上が農業人口でございました。農業で飯を食っておりました。ところが、これらの工業の発達によりまして、あるいはまた農業におけるところの機械化の促進によりまして、今やもう我が国の農業人口というのは三百万人を切るような状況になってまいりました。いわば農業という産業の中に機械を導入することによって、実は現在の農業は三百万人も要らないような状況なんです。  アメリカなんかの例をとってみますと、アメリカでもかつてその就業人口の六割は農業人口だったそうでございますが、今やもうアメリカですら農業人口というのは微々たるものになってしまっている。これも一つは科学技術の進展に伴います機械が産業にすっかり定着して、必要とされるだけの生産物を十分生産できるような状況になったからなのでありまして、今生産現場で働いている一般の人たちも、農業で働いている人たちがかつてこうむったような状況にならないという保証は実はないわけであります。  そういう意味で私が声を大にして叫びたいのは、労働行政の中にもっと予算をうんととってもらって、この問題を政府の最大の課題として積極的に取り上げていってもらいたい。ぐずぐずしていたら遅くなるわけでございますから、ぜひそういう意識を持って臨んでいただきたいという気持ちを申し上げたかったわけでございます。  それから、先ほど申し上げましたもう一つ雇用の不安という側面、すなわち市場が過熱化をするという中において生じている不安でございます。  かつて我が国は怒濤のごとく貿易を伸ばしてまいりました。我が国はとにかく失業を輸出する、洪水のごとく失業を輸出するといいまして欧米諸国からさんざんにたたかれた八〇年代がございました。今はいろんな意味で日本の実態が高コスト化しておりますから、外国からの非難は幾らか和らいでおりますけれども、かつて我が国がやったようなことを今度は我が国よりも低いコスト国がどんどんやってくるというのは、これは歴史の必然なのであります。我々もそれを覚悟しておかなければならないと思うのであります。  ところが、それでもって苦労に苦労を重ねたアメリカが逆に今、今度は低コスト国にしようとしている。その流れを見てみますと、収益が上がるにもかかわらずどんどん人減らしをしている。御存じのように、GMなんかは一時四十万人を超える大企業でございました。今もう二十万を切っております、十四万ぐらいしかおりません。しかも、なおかつ長期計画でこれを五万人減らそうなんというような計画さえ打ち立てているわけです。そして、それをすることによって現在の収益を三倍に伸ばす、すなわち人を減らすことによってコストを低くして競争力を高めていくという政策、これをやっているわけでございまして、これはたまたま一つの例としてGMを取り上げたわけでございますが、アメリカの大企業と言われるところは軒並みそういう方策を今とっているわけであります。  したがって、アメリカの大企業は日本の大企業と同じようにダウンサイジングの真っ最中でございます。特にアメリカの場合は、生産をする場合に大変内製化の高い産業構造を持っておりました。ところが、内製化の中で今どんどんアウトソーシングをしておりまして、下請にどんどん仕事を出しているようなわけでありまして、本体の企業は大変小さくなっている。  我が国の実態を見てみますと、今まで我が国はどちらかといえば企業系列がしっかりしておりました。そして、いろんな部品などの調達は系列の中小企業にやらせていたということでございますから、そういう意味では日本の産業、大企業の姿というのはアメリカに比べて今まではスリム化をしていたという中での出発でございました。しかしながら、日本も同じように、アメリカがそういうような状況をやってきているわけでございますから太刀打ちできないということで、海外に生産設備を持っていくだけではなくして、中小企業に一番実は効率の悪い部門をどんどん出しているわけであります。  先ほど、大臣の答弁の中にもございましたように、中小企業を活性化していく、あるいはベンチャー企業をふやしていくという形で、中小企業で雇用の受け皿をつくっていくと言われておりますけれども、現在の我が国の中小企業の実態というのは、実は中小企業が生まれる数よりもやめる数の方が多い、倒産する数の方が多くなっているわけです。  かつて我が国は、産業の二重構造がある意味では批判的に言われておりましたけれども、この二重構造というのは我が国の実は経済基盤を支える場合に大変大きな役割をしていたわけでございまして、倒産する以上の中小企業が年じゅう生まれてくるというところから我が国の産業界の活性化というのができていたわけです。  ところが、今の現状を見てみますと、大企業から効率の悪い仕事ばかりどんどん回ってくる、締めつけられる。これではもうやったってもうからないからやめていこう、こんなの子供たちに譲っていけない。子供たちだって、おやじ、もうそんなもうからないような企業はやめて、資産を売った方がよっぽどいいよというような形になっていて、中小企業をふやそうにも一つもふえていってないような現状なのであります。  そういうことを見てみますと、我が国の産業構造のあり方ということについても本当に抜本的に見直さなきゃならないのではないかと思うのであります。特に我々が考えなきゃならないのは、そういう中で今進められている例えば対外投資あるいは内部における設備投資の額は、減っているとは言いながら、まだまだ日本の場合は大変多額なものを投資しております。実は、収益を上げたものをどのような形で還元をしているかというと、我が国の場合はそこで働く人たちや、あるいはその企業を支えている株主に還元をするということよりも、設備投資、将来のためにという形での投資を大変してきたわけでございます。そういう意味で、そこで働く人たちの生活というのは二の次三の次という形でこれまでやってきたことは事実なのであります。  そういうやり方を、実はアメリカも最近まねし始めた。欧米諸国も日本に勝つためにはそれをやらなきゃならないということで、世界各国の労働者が実は日本の中で一番今まで感心されなかったことをまねし始めたわけであります。これがいわゆる過当競争という形になりまして、人減らしの過当競争につながっていっている。これは大変なことなのであります。  このことにつきましても、我々としては今までの観点と違った形で、上がった収益をどのような形で配分をしていくかということに対する行政の適切な指導というものが、世界の秩序というものをつくる上にも必要なのではないだろうかという気を大変強くしているのでございますが、大臣、これについてどのようにお考えでございましょうか。
  131. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の経歴が示しますように、非常にそういう雇用問題、中小企業の問題については高い御識見をお持ちでございますから、なかなかそのことにうまく対応してお答えすることができないかとも思いますが、御指摘がありましたように、どんどんとリストラ、リストラというのはイコール首切りだと理解する人が多いほど今要員削減が進められているわけであります。アメリカで問題になりましたように、幾ら収益が二倍になっても三倍になっても、それは全部労働者に還元するんではなくて人を減らすことによってそういう収益を上げていく、そしてそのトップの人は年俸を数億円ももらっているという、これが先日の雇用サミットでもフランスのシラク大統領が厳しく批判をしたところであります。  要は、企業の存在というのは社会全体の生活の態様あるいは社会の仕組みというものが高度化されて初めて私は企業が存在すると思っています。幾ら技術革新をやって低コストで高い生産性を誇ってみても、それを消化し得るだけの社会能力がなかったらその企業は存在しないのでありますから、その辺のところは日本の場合、経営者の側に十分にそのことについての理解を求めて、単に収益を上げるための人減らしということだけに走らないようなそういう指導といいますか要請を、労働省としても政府としても積極的に展開をしてきているところであります。  それが一つの歯どめになって、アメリカ型のようにまでは今到達していないと思うのでありますが、そのためには中小企業の育成ということ、あるいはベンチャー企業もそうでありますが、どうやって行政の側がそういうところに援助の手を差し伸べることができるか、あるいはそういう仕組みをよくしていくための手だてを講じることができるか、こういうことにかかっていくと思うのであります。  もう一つは空洞化という問題もございますが、雇用サミットのことを例にとって大変恐縮でありますけれども、今アメリカの実態もお話がございましたけれども、片方でどんどん人減らしをやりながら片方でサービス業、情報通信関係などを中心に人の採用をふやしていく、そのふやしたところだけを高く評価を求めてきた経緯がございました、先日の雇用サミットで。しかし、それがノーマルな状態だと私は思っておりません。  したがって、アメリカやフランスも提起をしてきたのでありますが、労働基準の低いところ、こういうところを日本がかつてアメリカから批判されたようなことを、今他の国に対して先進国と言われておる国が矛先を向けて、労働基準が低いことが一つの武器になって経済摩擦が起きている、あるいは先進国が雇用不安を助長することになる、こういうような御指摘がございましたけれども、労働基準を発展途上国を含めて引き上げることは極めて重要でありますから、そのことに対する援助、助成というものは私は先進国の大きな務めだと思っています。  しかし、先生が御指摘のように、そういう労働基準の低い国々と先進国との間の摩擦をなくするために、あるいは先進国の空洞化を促進されないように、労働基準の低いところの国については経済的に一定の規制を加えるとか、あるいは制裁を加えるとかというところに走ってしまうと、かつて日本が経験したようなわだちを日本が今度あえて踏むことになってくる。  したがって、発展途上国の労働基準を引き上げることに全力を尽くしながらも、そのことを直ちに経済貿易関係の問題としてストレートに取り上げることは今の実態に合わないのではないかという立場を私は雇用サミットでとってきたわけでありまして、その辺のところも十分に私ども配慮しながら、これからの雇用といわゆる技術革新ということについては間違いのないような対応を進めてまいりたい。非常に短い言葉でありますが、そのような決意を申し上げておきたいと思うわけであります。
  132. 今泉昭

    ○今泉昭君 一つの具体的な例を申し上げたいと思うんですが、実は日経連が昨年発表いたしました「新時代の「日本的経営」」の中で、新しい我が国雇用体制というものの一つの指針を出しているわけであります。  これは全体の従業員構成を三つに分けまして、一つは長期蓄積能力を活用するグループという形で、これがいわば今まで日本の終身雇用、そしていわゆる年功序列型の柱になっていたグループのかわりだろうと思うわけであります。それからもう一つのグループは高度専門能力活用型グループというものをつくる、それから三番目には雇用柔軟型グループというのをつくる、こういう形の雇用体系というものが今後必要ではないか、そういう形に今までの日本の雇用体系を変えていく必要があるんではないだろうかという一つの提言をしているわけでございます。  この提言を受けたときに私が感じたのは、実はアメリカにこういう例がございました。一九九三年のことでございましたけれども、バンク・オブ・アメリカ、これはアメリカの第三位に位する大きな銀行なんですが、ここの経営施策といたしまして、将来的に十人のうちの六人は週二十時間労働の短時間労働者によって賄っていく、すなわち全体の六割は短時間労働者でもって支えていくんだ、一つの企業を支えていくのは四割の従業員で十分なんだと。短時間労働者をいろんな形で使えばいろんな付加給付が必要でなくなる、自由に人の入れかえもできる、こういう企業側としてのメリットをとったんではないかと思うんですが、これに大変触発されてつくられてきた一つの日本的雇用慣行を新しく変えていこうという方向づけではないだろうかという気が私はしたわけでございます。  これについてどのように労働省の方では受け取られておりますか、ちょっとお聞きしたいと思うんです。
  133. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 日経連の研究報告で、先生指摘のような形での取りまとめがされましたことにつきまして私ども承知いたしております。  これにつきまして、どう考えるかという点でございますが、今御指摘ありましたように長期蓄積型、いわゆる従来の形で言えば長期雇用型、それから高度能力活用型、雇用柔軟型、こんな形でのパターンを分けているわけでございますが、これにつきまして従来からこういう形がなかったかといいますと、基本的に長期雇用制、いわゆる終身雇用制というものが日本の場合あったわけでございますが、それとあわせてその他の形、これは言われ方はさまざまでございますが、いろんな形であったことも事実でございます。そういう組み合わせによって経済社会の枠組みの中で労働市場が成立し今日まで来ている、こういうことでございます。  恐らくこの背景には、非常に大きな構造変化がある中で非常に選択の幅が多様化する、これは需給両面から多様化する、そういう中で改めてこういう三つの構成ということで分析をしたものであろうというふうに思います。  私ども、そういう中で、それじゃこの長期雇用型というのは今後不要なのか、なくなっていくのかという点につきましては、これは必要でありますし、なくなることもありませんし、これが基本であろうというふうに考えているところでございます。これは、働く者の立場のみならず企業経営という観点からいきましても、この長期雇用がなくて経営が成り立つはずはないので、それはもう基本としてある。  ただ一方で、サービス経済化する中で、ウエートからいってそういう長期雇用型の面が非常にウエートが少なくてその他のウエートが高い、そういう産業、企業がふえていることも事実でございまして、そういうところからいろんな選択肢が出てきている、こういうことでございます。  ただ、これをどう考えるかという点になりますと、これはいずれにいたしましても、我が国経済社会の戦後のあるいは戦前からのいろんな経緯の中でいわゆる雇用慣行として積み重ねられてきたものでございまして、それが今の経済社会の中で相当大きく変わるかどうかという曲がり角だというふうな形で指摘がされているわけでございますが、いずれにいたしましても、その辺の雇用慣行が今後どうなるかという点につきましては、これは労働省がなかなか制度的にこうあるべきだというような形で法令等で対処するというのは一方で困難だと、こういうことでございます。  ただ、やはり基本が基本としてどうあるべきかということも考えながら、あるいは経済社会情勢の変化の中で一定の見きわめをしながら、どんなところにこの線引きといいますか考え方の整理をしたらいいか、そういうところを常に考えていかなければならない、一つ考え方で凝り固まってずっとこれでということでいくわけにはまいらない、そういう非常に複雑かつ難しい問題ではなかろうかというふうに考えているところでございます。
  134. 今泉昭

    ○今泉昭君 ありがとうございました。先ほど大臣雇用サミットでいろいろ論議された中でフランスの例を出されまして、最近は一握りの経営側に配分が大変偏りつつあるという問題の提起があったという話がありました。  産業構造が激変をする場合、それから過去のいろいろな形の流れが大きく変わる場合において我々が一番注意をしなければならないのは、世の中のいわゆる富の配分が大変偏った形でいびつになっていくという側面ではないかと思っております。そういう面では、労働省といたしましては、とにかく働く国民の最低の生活を安定させ、最低の保障を誤らないように常に指導されている立場だろうというふうに承知をしているわけでございますが、私どもは今後我が国が大変な勢いで変化をする場合に生ずるこの格差の拡大ということに注目をしていく必要があるだろうと思うんです。  我が国は、戦後大変富の配分が平均化をいたしまして、世界でも誇れるような大変格差の少ない国であると言われてまいりました。私どももこれまでそういう形で我が国の経済運営をされてまいりました先達の皆さん方の御苦労に大変感謝をしたいと思うわけでございますが、どうも最近それが急激に崩れてき出した兆しがあるわけであります。  産業の一つの例をとってみますと、例えば自動車の一つの生産の例をとってみたいと思います。一九二〇年代、自動車一つをつくる際に、つくるコストの八五%というのは大体労働者あるいは株式配当に充てられていたそうでございまして、大体残りの一五%というのが特別の人たち、設計者であるとかあるいはパテントであるとかという形の方々に流れていた。それがだんだん変わってまいりまして、一九九〇年になりますと、労働者とか株主とかに配分をされている製造コストというのは六〇%になりまして、残りの四〇%というのが設計者であるとかスペシャリストであるとか、あるいは特別の幹部であるとかいうような形の配分が目立ってきたそうであります。  もっと激しいところを見てみますと、半導体であります。今花形である半導体の場合は、これが物すごく激しいわけでありまして、例えば半導体を生産する事業体において、そこで働いている人たちのコストの受取分というのは大体六%、それから機械、設備などの投資によってこれを受け取る人たちは大体五%程度のコストだそうであります。原材料が大体三%ぐらいだと。残りの八五%程度はどこに行くかといいますと、パテントであるとか設計であるとか著作権であるとか、そういう人たちの手にみんな流れていっているんだそうでございます。  こういう形のいびつな配分の中から特定な人たちが急激に資産家として浮上してきているわけでありまして、これが激しいのは特にアメリカでございます。そういう人たちによりまして、アメリカの場合は、統計を見てみますとアメリカの人口の四%の人たち、大体三百八十万と言われる人たちがアメリカの人口の半分の人たちの収入に匹敵する収入を得る、こういう状態が生まれつつあるんですね。このことは同じように我が国にもだんだんとあらわれてくる危険性があるわけであります。  我々は、こういうことを考えてみますと、雇用と並んでこの富の配分というものについての一定の道筋というものをどう考えていくかということは当然必要じゃないかと思うんです。これが行き過ぎますと社会不安につながりますし、ある意味では特権階級的なものの意識が目覚めてくる可能性があるわけであります。そういう意味で、我々としましては、この新しい時代の雇用と並んで配分のあり方ということも十分やはり警鐘を鳴らしていく必要があるんじゃないだろうかというように考えるところでございます。これは特に御回答を求めませんが、そういう考え方を持っているということだけ申し上げておきたいと思います。  時間がございませんから、二番目の点に移りたいと思います。労働時間の問題でございます。  平成七年の労働時間の実態が発表になりましたが、平成七年の実態を見てみますと、これまでの労働時間の減少から一転するという表現はちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、また労働時間が増加にこれは振られてまいりました。年間の総労働時間がふえるということについては残業時間がふえるということでそう問題ないと思うんですが、実は定時間労働もふえてきている、こういう実態が見られているわけでございますが、定時間労働を減らすことに力を入れてきたはずであるにもかかわらず、昨年の場合は一転してこれがストップをしたというのは一体どういうところに原因があるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  135. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 御指摘がありましたのは所定内労働時間のことだというふうに承知をいたしましたけれども、たまたま平成七年度、つまり昨年の四月からことしの三月まででございますけれども、昨年度、平成七年度の二月がうるう年だったわけでございます。そういうことから、出勤日数も前年度に比べまして一・二日ふえております。その結果所定内労働時間もふえたということでございますが、特にパートタイム労働者の出勤日数が前年度に比べまして二・四日ふえておりまして、特にこのパートタイム労働者において所定内労働時間が大きく増加したといったようなことが全体としての所定内労働時間の増加ということの大きな要因になっているというふうに判断をいたしているものでございます。
  136. 今泉昭

    ○今泉昭君 同じく、発表になりました労働時間のこの実態を見てみますと、実は週四十時間労働に向けまして猶予措置がとられ、いろいろな形での御指導を労働省からもいただいてまいりました。それらの実態を見てみますと、実は業界団体から週四十時間達成は難しいからまだ猶予をしてくれというような要望が大変出されているというお話でございましたけれども、この労働省の方で出されている労働時間の実態を見てみますと、もう既に週四十四時間を実現している企業というのが半数以上を上回っているような状況になっているという実態が明らかになりました。  こういう実態を見てみますと、四十時間に向けての実現というのは、単純であるかもしれないけれども、そう難しくはないんじゃないだろうかという気がするわけでございますが、これについてはいかが受け取られておりますか。
  137. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 御指摘のように、四十四時間を達成している事業所、先ほど御紹介いたしましたのは実労働時間数で今度は所定労働時間、つまり就業規則等であらかじめ定められた時間になるわけでございますけれども、御指摘のように週所定労働時間が四十四時間、これをもう達成している事業所の割合というのはかなり高いものがございます。  例えば、製造業で一人から九人という中小企業、非常に小さいところでございますけれども、そこにおきましても四十四時間を達成している事業所は八七・六%という率になっております。ただ、じゃ同じ業種の同じ規模で四十時間を達成しているのはどれぐらいかということになりますと二七・一%という状況でございまして、まだ四十時間達成企業の割合は高いとは言えないというのが実態でございます。  ただ、先生指摘されましたように、例えば今申し上げました製造業の一-九大規模につきましては、現在四十時間制の適用が猶予されており、来年の四月から四十時間ということになってくるわけでございます。もちろん、中小企業団体から、特に中小企業、零細企業になりますと四十時間達成が難しい、特に長く不況が続いた後だけに、若干景気回復傾向にあるとはいえ、まだまだ中小企業は非常に体力的にも四十時間を実現するだけに十分回復していないということから、猶予してほしいという声が強く出ているということはおっしゃるとおりでございます。  ただ、あと一年あるわけでございますので、私どもとしましては、いろいろな政策努力をし、また中小企業の方々にも御努力をいただきまして、何とか来年四月からの四十時間制実現というものを確実にしたいというふうに考えているところでございます。
  138. 今泉昭

    ○今泉昭君 あわせまして、これも労働省で出されております調査結果を見てみますと、猶予措置事業所以外のいわゆる特例措置対象事業所というのがございますが、これらの実態などを見てみますと、例えば保健衛生業であるとか、あるいはまた映画・演劇業であるとか、あるいは接客・娯楽業なども見ましても、実は猶予措置がとられているところ以上に四十時間を既に達成しているような実態が出ておりますけれども、こういうのは依然として特例措置という枠は外さないでこのままいかれる予定ですか。
  139. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) この特例措置をどうするかという問題は必ずしも猶予の問題と一体というわけではございませんが、実はこの特例措置をどうするか、特に来年の四月以降この特例措置の範囲、それから時間、水準、これをどうするかということは正直申し上げまして今後の検討課題ということでございまして、今このままにするのかどうかという御質問でございましたけれども、現在、今年度の調査を実施しているところでございます。労働省としましては、その調査結果がまとまりましたら審議会にお諮りをし、平成九年四月以降の特例措置の範囲、水準をどうするかというのを御検討いただきたいというふうに考えているところでございます。  なお、昨年出ました労働基準法研究会の報告でもこの特例措置の問題が触れられておりまして、これまでこの特例の範囲というのは漸次縮小してきたというような過去の経緯、それをかんがみると、基本的にはこれは廃止をしていくという方向で検討すべきだという長期的な方向が示されております。それから水準につきましても、他の業種における労働時間短縮に取り残されることのないように検討する必要があるという方向性は示されているわけでございます。  ただ、これを受けまして、先ほど申し上げましたように、今年度の調査結果を踏まえ、審議会で御検討をいただくという予定にしておりますので、その検討の結果を踏まえて対処いたしたいというふうに考えております。
  140. 今泉昭

    ○今泉昭君 よろしくひとつ御検討をお願いしたいと思いますが、特に最後にお願いをしておきたい点は、工業、建設業についての実は四十時間の達成事業所の割合の大変低いことでございます。これらの業種の特別事情というのはわからないわけではないわけでございますが、ぜひひとつこれらの業種の指導の特別なる強化ということもあわせてお願いをしておきたいというふうに思います。  それから、もう一点あわせてお聞きしたいわけでございますが、先ほど私が申し上げましたように、大変な雇用不安というものを前提にいたしまして、私どもとしては実はつかみどころのない不安におののくような状況なんでございますが、そういう中で、雇用確保するためにワークシェアリングの考え方というのはいろんな国で浮上しております。我が国の場合は国民性に合うか合わないか、これは論議のあるところだろうと思うわけですが。  実は、私も十五年ぐらい前、ドイツのフランクフルトで世界の金属労働者の時間短縮会議がございまして、そこに出席をいたしました。その際いろいろ論議をした中で、日本の労働者の労働時間に対する感覚と、既に労働時間を短縮して次のステップに向かおうという国の労働者の感覚の違いのギャップに大変驚いたような経験がございます。当時既に西ドイツあたりは、今のドイツはワークシェアリングの構想が浮上しておりまして、いかにして時間をお互いにシェアし合うことによって雇用確保していこうかというような気持ちを強く持ってきたわけでございます。我が国の場合はまだなかなかそういう気持ちにはなれないわけでありまして、私も実は組合運動の指導者であった時期に次のような経験をした苦い思いもあるわけであります。  と申しますのは、全体的な日本国内におけるところの時間短縮の風潮、この流れに逆らうことなく少しでも時間短縮を前進するために努力をしようではないかということで、例えば残業の野放しはやめてある程度の規制をしていこう、労働時間を短縮しよう、こういうような動きをやったところ、日本の場合はまだ余暇を拡大するというよりも実際に手元に入る賃金というものが大きい方がいいという感じを持つ働く人たちが多数いることもこれは事実でございます。したがって、時間短縮を提案した執行部が逆に不信任を食うなどというような事態が起こったこともございました。何でせっかく稼げる残業代を減らすんだとかいうようなことで反発があったわけでございますが、こういう流れも実は労働省中心とするいろいろな啓蒙、宣伝のために大変少なくなってまいりました。最近はそういう意味で余暇に対する考え方というのが十年ぐらい前からしますと大変な大きな違いを見せてきたことは事実なわけでございます。  そういう流れで我が国の場合を見てみますと、まだ相当な長時間労働で働いているところもあるわけでございまして、これからの雇用の不安、失業者の増大を考えてみた場合に、もうそろそろこのワークシェアリングという問題も論議をしておく必要があるんじゃないだろうかと思うわけでございますが、労働省あたりは審議会かあるいはそういう段階で論議をされた経過か何かあるんでしょうか、御紹介ください。
  141. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 最後に御質問でございました審議会等でワークシェアリングの問題を議論されたかということにつきましては、まだそこまでの議論はございません。  先ほど西ドイツの例が御紹介ございましたけれども、私が承知しておりますところでは、ワークシェアリングという場合にはやはり一定のウェージシェアリングが伴う、それは時間外労働の削減というよりはむしろ所定内労働時間を短くする、したがってその分、イコールでないにせよ相当程度の賃下げもあわせて行われるというようなことのようでございますので、そういたしますとなおさらのこと労使で十分お話をされる必要があるし、さらにそういう話し合いをしようという環境をつくるための十分な状況があるかどうかということも左右をするんではないかというふうに思います。  いずれにしましても、現在日本で労働時間短縮という場合には、完全週休二日制の定着、来年からの週四十時間の実施ということが大きな柱になるわけでございますが、それに加えて、今約六割程度でございます年次有給休暇の取得率、これをさらに上げ、もう少し多くの労働者に年休を完全消化してもらう、こういったことが大きな柱になろうかと思います。加えまして、御指摘ございました所定外労働の削減、こういったことで労働時間の短縮を進めていくということが必要であり、かつまたそれだけの幅といいますか、そういったものもあるわけでございます。  そういう意味から、所定内労働時間をさらに短縮し、加えてウエージシェアリングを伴うという意味でのワークシェアリングを議論するというところまではまだ行っていない状況ではないかというふうにも考えております。
  142. 今泉昭

    ○今泉昭君 幾つかの課題についてお聞きする予定だったんですが、時間が経過をいたしまして、質問の仕方も悪かったものですから時間がなくなってしまいました。幾つかを省略させていただきますが、一つお聞きをしておきたいと思うのは実は地方分権推進委員会が指摘している地方事務官制度の問題でございます。  私は、これは地方分権推進委員会が指摘しているように廃止せよということを申し上げるのではございません。一応地方分権推進委員会で取り上げられたということでございまして、これについて労働省側ではどのように受けとめられているか、必要ならば当然これは存続しなければならない問題でございますから、この点についてお聞きしたいと思います。
  143. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘地方事務官制度についてでございますが、地方分権推進委員会の中間報告におきまして、地方事務官制度は「機関委任事務の廃止に向けた抜本的な改革に伴う国と地方公共団体の新たな関係にふさわしい仕組みとなるよう、引き続き検討するもの」とされているところでございます。  私ども、この職業安定関係事務につきましては、幾つかの特徴、性格があるわけでございますが、三つほど申し上げますと、行政区画にとらわれずに形成される労働市場における労働力の需給調整の必要性、それから二つ目には雇用情勢の変化に対する統一的かつ迅速な対応の必要性、三つ目には全国統一的に運営を行う雇用保険事業と不可分の関係にあること、こういう性格を持つものでございまして、したがいましてこれは国が直接行うことが必要な行政分野であるというふうに基本的に考えております。また、その具体的実施に当たりましては、そういう基本を持ちつつも、商工、民生その他の幅広い行政分野との密接な連携のもとに、地域の実情も踏まえて展開される必要がある、そういう行政であるというふうに考えておるところでございます。  したがいまして、この地方事務官制度につきましては、職業安定行政の中間的監督機関として都道府県に職業安定主務課を設置し、そこに地方事務官を配置することで、全国的な労働市場に対応しつつ、幅広い行政分野を持つ都道府県知事の指揮監督を受けて地域に根差した職業安定行政の展開を可能とする仕組みである、こういうことでございまして、私どもとしてはこれを存続することが最も適当であるというふうに考えているところであります。
  144. 今泉昭

    ○今泉昭君 雇用の問題に大変関係のある事務官でもございますので、この問題について、その存在の意義をもう少し我々にもよく知らせていただかないと私どもとしても発言のしようがないわけでございますので、そういう意味でもう少しわかるようにひとついろいろな御示唆を賜ればありがたい、こういうふうに思っております。  時間が参りましたので、私の質問はこれで終わります。どうもありがとうございました。
  145. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ことしのメーデー、五月一日の朝日新聞の社説を覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、非常に示唆的な社説が載りました。それは「メーデーにパートを考える」という社説でございまして、「政府は不安定雇用者の保護を真剣に見直す時です。」というふうに提言をしております。その中で、企業にとって一人を七時間雇うより二人を三時間半ずつ雇う方が安上がりだということで、「生活ができない、と日中と夜に別々のところで働くダブルパートも珍しくありません。」というふうに指摘してあります。  先回に続きまして、この点についてお尋ねをしたいと思います。先回、パート労働者の実態調査の取りまとめがなされるやに聞いておりますが、これは既に調査を実施されたというふうに伺ってよろしいのでしょうか。そしてその中で、いわゆる日本の特色と言われております疑似パートの実態について、その調査項目に入っているでしょうか、お尋ねをいたします。
  146. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 先生指摘のように、パートタイム労働者総合実態調査は昨年秋に実施をいたしております。ただ、取りまとまりますのがことしの秋以降ということでございますが、その中で、パートタイム労働者の所定労働時間及びその当該パートタイム労働者が勤務いたします企業の正社員の所定労働時間の双方について調査をしております。したがって、いわゆる疑似パートというんでしょうか、そういうような方々につきましてもその実態を把握することができるようになっております。
  147. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、その複合就労といわれる二つの企業に働くパートタイム労働者の実態の把握は、先回御説明を受けましたが、いわゆる純粋なパートタイム労働者の複合就労の問題について、今後の調査についてはどのように臨まれるでしょうか。
  148. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 純粋なパート労働者のうち、複合就労というふうに伺いましたけれども、とりあえず私どもが既に調査したのは平成二年の調査がございます。パートタイム労働者総合実態調査でございますが、そのときにパートタイム労働者につきまして、いわゆる労働時間が通常の労働者より相当短いパート労働者と、それから通常の労働者にほぼ近い時間働いているけれどもパート労働者というふうに分けて調査した結果でございますが、そういう労働者について多重就労状況というのを調べております。  それによりますと、純粋なパート労働者とおっしゃいましたので、労働時間が通常の労働者より短いパート労働者につきまして、別に仕事をしたかどうかという問いに対する結果、別の仕事をしたという人は七%でございます。別の仕事をしたこの七%の人の内訳を見ますと、他の会社などに雇われて仕事をしたという人たちが九七・七%でございまして、そのうちほとんどの方が別の会社でもパートの仕事をしたというふうに答えておられるという結果が出ております。  以上でございます。
  149. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 平成二年度からさらに年月を経ておりまして、労働時間短縮の中でその恩恵を受けない形で多重就労といいますか複合就労を強いられているパートタイム労働者の人たちが増加しているというふうに言われてもおりますので、ぜひ労働省としては今後そうした項目についての実態把握をされるようにお願いをしたいと思います。  現在、そういった状況の中でさまざまな法的な問題が発生しております。例えば、残業手当については、A企業で五時間、次にB企業で五時間労働したとき、B企業での二時間というのは法定労働時間を超える部分なので時間外労働として割り増し賃金が支払われるべきであると考えられますが、その点はいかがでしょうか。さらに、未払いとなった場合どのように対処するのか、行政上の立場をお伺いいたしたいと思います。
  150. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 労働基準法三十八条によりまして「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」、こういう規定がございます。したがいまして、今先生がおっしゃいました、A企業で五時間働き同じ日にB企業で五時間働くということになりますと、その労働者にとっては一日の労働時間は十時間ということになってまいります。したがいまして、法定労働時間の八時間を超えた二時間については時間外労働にかかる割り増し賃金の支払いが必要になってくるわけでございます。  じゃ、この場合においてA企業とB企業のどちらの使用者が時間外労働についての法所定の手続をとらなければいけないのか、また割り増し賃金を負担しなければいけないかという問題が生じてくるわけでございますが、これについては、個々具体的に判断するという、一般的にいえばそういうことでございますが、通常はその労働者と時間的に後で労働契約を締結した使用者になるというふうに考えられるわけでございます。  しかしながら、その場合でありましても、後で労働契約を締結した使用者が、その労働者が複数の事業場で就労しているということ、そしてかつみずからの事業場で労働させた場合には八時間を超えて時間外労働が生ずるということを承知しているときに限り罰則をもって割り増し賃金の支払いを強制できるというふうに考えられるわけでございます。  このように考えますと、今未払いとなった場合どう対応するのかという御指摘でございましたけれども、じゃこういうケースについて割り増し賃金の支払いをどういう形で確実にさせられるかということでございますけれども、そうしますと、使用者は労働者を雇う場合に複合就労しているのかどうかということを尋ねるとか、また何時間働いているのか、自分がこの人と労働契約を締結すればトータル何時間になって自分に割り増し賃金の支払い義務がかかってくるということを、十分承知できるようなそういうことをまた法的にも担保しておかなければいけないということになってくるんではないかというふうに考えられます。そうしますと、そういったことがじゃ労働者にとっても得策なのかと、得策と言うとちょっと変ですけれども、どういう影響が出てくるかというさまざまな問題もあろうかと思います。  先ほど御紹介しました労働基準法三十八条の規定は、戦前の工場法の規定を踏襲いたしまして、第一義的には同一の使用者の二つの事業場で働かせる場合、それをいわば業務命令として、例えば五時間A事業場で働きその後B事業場で働くということを同一の使用者が業務命令として命ずるという、つまり使用者としては働けば当然時間外労働になるということを知っていて働かせる、そういう場合において先ほどの三十八条というのは有効に効いてくるわけでございますけれども、使用者が全く違う場合についてどうかということになってまいりますと、就業形態も非常に多様化してきていることから、この新しい時代に本当に適合した規定なのかどうかといったようなことも含めまして、先ほど申し上げましたように、刑罰を科して、刑罰でもって割り増し賃金の支払いを強制するということは、特に後に労働契約を締結した事業主がその労働者の労働実態というのを十分把握しておかなければいけないということになってくるわけでございますので、十分これは新しい時代に適応した規定かどうかということを検討しなければいけないテーマではないかというふうに承知しているわけでございます。
  151. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 首都圏ネットワークの組合が調査した中では、七〇%の使用者が多重就労というか複合就労であるということを承知しているというような数字も出ていることでもありますし、労働者の有利、不利ということもさることながら、やはり八時間を超えて働く労働者に対する割り増し賃金の保障ということにおいて差があるのはいかがかという気がいたします。  この問題、同じように年休の付与についても生じてくるのではないかと思います。例えば、一週間にA企業三日、次にB企業で二日間労働したとき、六カ月後の付与日数はそれぞれの労働日数を基礎といたしますとA企業で五日、B企業で三日となるわけです。一週間に五日就労していれば常用労働者と同様の取り扱いがなされて十日付与されるべきだというふうになるわけですが、この場合どのようにお考えでしょうか。例えば、十日を保障するとしたときの対応はどう考えるべきでしょうか。
  152. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 御指摘の件、先生がおっしゃったような計算になってくるわけでございますけれども、年次有給休暇制度そのものの意義といいますか、そういうことを考えてみますと、やはりこれは功労報償的な性格を持っているのではないかと。そういうこともありまして、勤続年数が長くなると日数がふえるといったような仕組みにもなっているわけでございます。  そういうことから、この年次有給休暇につきましては、労働者にとっては同じ日数だけ週働くということであっても、それが同一企業で働く場合と、働く企業を異にする、複数の企業で働く場合とではやはり法律上はその扱いは異ならざるを得ないんではないかというふうに考えるわけでございます。  先生が御指摘されたような形で扱うということを検討するということになりますと、年次有給休暇制度というのを一体どういうものと考えるかといった基本問題にまでなってくるのではないかと思いまして、現行法上は御指摘のような働き方をした人につきましては、A企業で五日、B企業で三日と、先生指摘されましたけれども、そういうことになってくるわけでございます。
  153. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 確かに、有給休暇を功労報償的なものとして見るのか、あるいは労働者のいわば働くことによる当然の権利と見るかということによっては立場が違ってくるのかもしれません。いずれにせよ、残業手当の問題もこの年休の問題もそうした複合就労の問題においては、さらにきめ細かな対応が必要なのではないかというふうに思います。  そうなりますと、A企業で三日、B企業に二日労働したときの雇用保険の適用はどうなるのでしょうか、あるいは社会保険についてはどのように考えたらいいのですか。労働省と厚生省の、それぞれ御担当の方にお伺いいたします。
  154. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいまのいわゆる複合就労におきます雇用保険の適用の問題でございますが、現在の雇用保険法におきます取り扱いといたしましては、同時に複数の事業所で就労する労働者については、当該複数の雇用関係のうちその者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける一の雇用関係について被保険者として適用を行う、こういう取り扱いになっております。したがいまして、複数の事業所において同程度の時間就労している者については、当該就労によって得る賃金額の多い一カ所の事業所について雇用保険の適用に係る要件を満たした場合に、適用を行うことといたしているところでございます。
  155. 角田博道

    説明員(角田博道君) 健康保険、厚生年金の世界でございますが、健康保険、厚生年金におきましては、適用関係におきまして被保険者本人にするかどうかという問題になろうかと思います。被保険者本人になる者とそれからそれに養われる者、これをどう区分するかという問題でございますが、被保険者本人で代表して保険料を払っていただく方、これを常用的な雇用関係にある者というふうに適用をしております。  立法論としては確かにあろうかと存じますが、現在のところ常用的な使用関係にある者が代表して保険料を払う、これで保険制度を成り立たせているということでございますので、そのような取り扱いになっております。
  156. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 朝日新聞の社説も指摘しているように、雇用保険などの負担がないからこの複合就労という形が使用者にとっていわば好都合だというふうにも指摘しておりますし、今まで疑似パートというのが日本的なパートタイム労働者の就労形態であったものが、時間給という言ってみればパートタイム労働に特殊な賃金支払いの方法で、時間短縮の中で生活費が稼げない労働者がそうした多重的な就労をするということにもなっておりますので、この点について本当に、法のいわば網目から落ちてしまうような働き方に対して何らかの形で検討を始めていただきたいというふうに思います。  新聞も、日本も一日も早くこの条約を批准すべきだと言ってILOのパート労働条約を挙げておりまして、パート労働法の見直しに当たってはこの条約、勧告の内容を踏まえたものにしなければならないとしてパート労働者の均等処遇について提言をしている、そういう社説であります。  三年後の見直しという年に向けて、労働省としてはどのように取り組まれるのか、再度、大臣にお尋ねをいたします。ぜひ、実態を踏まえ積極的な御対応をお願いしたいと思います。
  157. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生指摘のように、パート労働者に係るさまざまな問題がございますから、三年後の見直しということで今鋭意努力をいたしているところでありますが、法律の施行状況、これをまず見ていかなくてはなりません。そして、その結果に基づいて必要な措置を講ずるということとされているわけでありますが、パートタイム労働法は平成五年十二月一日から施行されておりますので本年十二月にその三年が経過するわけであります。  このため、労働省といたしましては、昨年実施しましたパートタイム労働者総合実態調査について現在取りまとめ中でありますが、その結果がまとまる本年秋以降、調査結果を踏まえまして、パートタイム労働者の適正な労働条件の確保及び雇用管理の改善を一層促進する観点から検討を行ってまいりたいと考えているところであります。  いずれにいたしましても、パート労働者がどんどんふえている実情にありますから、そういう実態の中から問題点をできるだけ的確に把握をして誤りのないような対応をするように私どもは鋭意努力をしてまいることを申し上げておきたいと思います。
  158. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 最近の雇用失業情勢が深刻化しつつあるというふうに言われておりますが、完全失業率は三・二%といいましても、年齢別に見ますとかなり若年者の失業がふえているということが言えるのではないかと思いますが、業種別に見るとこの失業率はどのようになっているでしょうか。
  159. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 失業率につきましては、先ほどもお答え申し上げましたけれども、失業者を業種別に把握できないために、業種別の完全失業率、これにつきましては計算いたしておりません。したがいまして、これは全体としての数字でございまして、業種別の完全失業率、これにつきましては資料がございませんで年齢別にしかわからないということでございます。
  160. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、年齢別の完全失業率というのは大体どんなふうになっていますか。
  161. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 完全失業率は三月で三・一%ということでございますが、年齢別に見ますと、十五歳から二十四歳これで八・一%、二十五歳から三十四歳これが三・九%、三十五歳から四十四歳までが二・二%、四十五歳から五十四歳が一・九%、五十五歳以上が三・一%という結果になっております。
  162. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そういたしますと、我が国雇用保険の基本手当と給付日数ということは、これは被保険者であった期間と年齢別になっておりまして、三十歳未満は九十日から百八十日、三十歳以上四十五歳未満、それから四十五歳から六十歳未満、そして六十歳から六十五歳未満と刻みがありまして、六十五歳未満までは二百四十日から三百日となっております。  これは、経済が右肩上がりでいわゆる失業率が低かったときには給付日数を制約して就労を促進させるという効果はあったと思うんですが、九十日から百八十日という三十歳未満のこの給付日数は、失業率の今の年齢別の刻みと対比いたしますと非常に不合理な結果になるのではないかというふうに考えられますが、そういうふうにはまだ至っていませんでしょうか。有効求人倍率などで十分にこの期間で対応できるという見通しでしょうか。
  163. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 雇用保険制度におきまして失業給付の基本手当の所定給付日数、これは保険制度ということが前提でございまして、考え方としては原則として離職の日における年齢とそれから被保険者であった期間、これに応じて区分が設けられる、こういうことでございます。したがいまして、若年の方については被保険者期間が短いというようなことを踏まえてただいま御指摘のような給付日数になっているところでございます。  若年者の方の雇用失業状況がどうかという点につきましては、一つには有効求人倍率がどうかということでございまして、これは先ほどもお答え申し上げましたが、〇・六七倍ということで非常に厳しい状況ではございますが、そういう中におきまして若年者の方については一倍前後、こういう状況であるということでございます。  それからもう一点は、若年者の失業率が高い背景でございますけれども、これが非常に解雇されて厳しい状況の方が多いかという点になりますと必ずしもそういう状況ではない。中身を見ますと、むしろ景気の回復過程でより積極的に適職を探している、こういうことで多いと、こういうような問題点もございます。そういうことで、保険制度の仕組みとしては、現在の雇用保険制度においてはただいま申し上げたような給付日数になっていると、こういうことでございます。
  164. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 一定事由がある場合に延長が認められておりまして、個別延長給付とか訓練延長給付とか広域延長給付、全国延長給付などありますが、これらの適用人員といいますか適用状況というのは大体どんなものでしょうか。基本的な所定給付日数を超えているような状況というのはどのくらいのパーセンテージに至っているんでしょうか。
  165. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 延長制度でございますが、全国延長給付につきましては、これは非常に雇用情勢が深刻な場合に発動される制度でございまして、現時点におきましてはそういう事情にはございません。それから、訓練延長給付につきましては、これは雇用保険を受給しながら仕事をかわるための職業訓練、能力開発を行う場合に、雇用保険が切れてしまうという場合に延長される制度でございます。それから、個別延長給付というのは就職困難な方について個別に延長する、こういう給付でございます。  その実績につきましては、個別延長給付につきましては平成六年度で総額で約五十五億六千万円でございます。それから、訓練延長給付につきましては総額で百九十八億四千万円でございます。
  166. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、失業給付費を見ますと、三年間で少しずつじりじりと上がってきているわけですが、これからの失業給付の見通し、それから積立金の累計額などを見ますと、大体どんな収支状況になっているんでしょうか。
  167. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 失業給付につきましては、非常に厳しい不況の中での雇用情勢、これについても悪化するというような状況が続いておりまして、昨年の八月か九月ぐらいの時点だったと思いますが、受給者実人員が九十万人を超えました。これは一般的に普通の時期ですと大体五、六十万人でありましたものが、昨年九十万人にまで行きまして大変心配をしてきたわけでございますが、その後景気の回復過程とあわせましてこれが減少に転じまして、最新時点では八十万人を割って七十七、八万人になっているかと思います。  そういう状況でございまして、この現状からいきますと、今後の雇用情勢をどう見るかということはございますけれども、いずれにしましても基本的に現在の我が国におきます雇用保険制度、失業給付の考え方、これを当面変えることは必要ないのではないかというふうに考えているところでございます。  積立金の現状につきましては、そういう厳しい雇用情勢を背景といたしまして、平成六年度、七年度、この辺については取りましをいたしております。六年度がたしか若干二百億ぐらいだったかと思いますが、七年度は恐らくこれが数千億になるのではないかというふうに考えますが、ただトータルの積立金の現状が四兆円を超えておりまして、その中での取りましということでございまして、当面の雇用保険制度につきましては、ヨーロッパ等諸外国におきましては非常に厳しい雇用情勢の中で完全失業率が一〇%を超えるというようなことで、雇用保険制度がパンクしている例がありますけれども我が国においては当面の間はそういう事態にはならないものというふうに考えているところでございます。
  168. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 確かに積立金が四兆円というのは諸外国に余り見られないほどの一つのストックだと思うわけですが、その中で、昨年から高年齢雇用継続給付とそれから育児休業給付などが出されるようになりましたが、大体これらの実績はもう出ておりますでしょうか。
  169. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘雇用継続給付の実績でございますが、これにつきましては平成七年四月から実施されたところでございまして、平成七年四月から十二月までの延べ支給申請書の受理件数が、高年齢雇用継続給付で十四万六千四百七十七件、育児休業給付の基本給付金で九万八千二百九十四件となっております。また、職場復帰後に支給される育児休業者職場復帰給付金の支給申請書の受理件数は三千百十二件となっております。  なお、育児休業給付の受給者数の男女比等は不明でございまして、雇用継続給付の具体的な支給額の合計も、これは平成七年度決算前でございますので現時点ではまだわかっておりません。
  170. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 平成六年十一月の行政監察結果報告によりますと、制度改正を踏まえた失業給付に係る全般的な中長期的な財政見通しを作成するようにというふうになっておりますが、この点についてはどんな作業をしておられるんでしょうか。
  171. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘のような行政監察結果に基づく勧告が出されたところでございますが、最近におきます雇用保険の財政の動向を見ますと、雇用失業情勢が引き続き予断を許さない、そういう状況の中で、先ほども申し上げましたように、失業給付の増大等により雇用勘定が平成六年度から単年度収支で赤字となっておりまして、平成七年度及び八年度予算におきましても大幅な積立金の取りましを予定いたしているところでございます。  また、一方で雇用継続給付に係る支給対象者数の今後の見込みにつきましては、これは制度を発足したばかりでありまして、いましばらく様子を見る必要があると考えているところでございます。このため、私どもといたしましては、この勧告を受けまして、直ちに中長期的な財政見通しをつくることは困難であると考えておるわけでございますが、今後この失業等給付費の実績値あるいは見通しを踏まえながら必要な推計作業を行ってまいりたい、検討したいと、こういうふうに考えておるところでございます。
  172. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 さらに、この行政監察によりますと、女子の再就職準備サービスその他女性については一元化するということで、いわゆる21世紀職業財団というものにそれを統合する、見直しをするというふうに回答しておられますが、21世紀職業財団の将来の業務業務の規模あるいは予算、交付金その他はどんなものでしょうか。
  173. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 21世紀職業財団の主要業務でございますが、育児・介護休業法に基づく指定法人といたしまして、事業主に対する各種給付金の支給とか、育児・介護を行う労働者に対する相談、講習などを内容といたします仕事と家庭の両立支援事業、またパートタイム労働法に基づく指定法人としての相談援助、助成金の支給等を行う短時間労働者福祉関係事業等が主なものでございます。これらの業務に要する費用といたしまして、平成八年度におきましては約七十二億円を交付する予定にしております。
  174. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、幸いにもある雇用保険の財源を踏まえながらも、なおかつ失業が増大すると、やがては限界値に達してくるのではないかというふうに考えますが、現在の雇用情勢や経済動向を踏まえまして、雇用保険制度の運用につきまして、大臣、何か御意見がございましたら最後にお尋ねをして終わりたいと思います。
  175. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 一番いいのは、雇用保険の給付がゼロになるのが限りなくいいことでございまして、したがって雇用対策いわゆる雇用の創出であるとか、あるいは失業率を限りなく低下させるとか、そういうところにまず全力を尽くしていきたいと思うわけであります。  なお、この雇用保険の財政は、今も局長から答弁いたしましたけれども、今直ちに財政的に不安を生じるということは全くございませんけれども、しかし、将来いかなる場合が起きましてもこの雇用保険制度が破綻を来さないような、そういうことは日常心がけて対応してまいりたいと思っています。  何はともあれ、まずは雇用保険の給付を必要としないような状況をつくり出すために、これは理想かもしれませんけれども、そのための施策というものにすべてを集中して頑張ってまいりたいと、このように決意をいたしておるところでございます。
  176. 吉川春子

    ○吉川春子君 雇用機会均等法が施行されて十年たちました。この問題について質問をしたいと思います。  女子学生の就職差別が社会問題になっておりまして、この委員会でもほとんど全部の委員が質問をしていると思いますが、一向になくなりません。原因の一つは、雇用機会均等法では募集、採用について努力義務規定にすぎないからです。しかも十三条の苦情の自主解決の対象にもなっていません。  私はこの質問をするに当たって、委員長大臣にこの本を差し上げたいんですが、お許しいただけますか。
  177. 足立良平

    委員長足立良平君) はい、許可します。
  178. 吉川春子

    ○吉川春子君 皆さんに差し上げたいんですが、これは高くもないんですが、大臣に代表して差し上げたいと思います。
  179. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) ありがとうございます。いただきます。
  180. 吉川春子

    ○吉川春子君 それで、五ページをちょっとめくっていただきたいんですが、終わりから六行目のところにこう書いてあります。  「不況なんだから仕方がない」と思っているあなた。日本の大企業は、不況を口実にして女子を採らなかったりリストラをしたりして、さらにボロもうけしています。こんなやり方が続く限り、景気が回復しても就職難の問題が解決するとはいえません。 それから一行飛ばして、  「就職するには、一人一人がもっと努力すればいい」と思っているあなた。自分能力努力を見せる場すらない女子学生のつらさ、苦しみを知ってほしいのです。 それから次のページの四行目に、  「女子学生は甘い」と思っているあなた。この本を読んで、女子学生の働きたいという思い、その真剣さを知ってください。その思いがいかされる社会こそ、男性にとっても生きやすい社会だと思いませんか。  大臣、後でこれをお読みいただいて、本当に女子学生の就職難をなくすために適切な労働行政をしていただきたいと思います。  それで、労働省にお伺いします。労働省は個々の企業に、自主的に雇用管理の改善と女性の活用について積極的に取り組むことが必要だと、こういう観点に立って自主点検表を配っておられますが、これの内容それから回収状況等について報告をしていただきたいと思います。
  181. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 今、先生おっしゃいました自主点検は、均等法及び指針に沿って募集、採用から定年退職に至るまでの雇用の各ステージにつきまして、人事担当者みずからが自分の会社の雇用管理を点検し、均等法の遵守及び女性活用の実情を確認していただくものでございます。そして、今後の雇用管理の改善を検討する上での基礎資料としてもらおうということでやっておるものでございます。  募集、採用に関しましては、例えば募集区分ごとに男女とも募集をしているとか男子のみ募集とか女子のみ募集といった募集状況についても聞いておりますし、それから女性にも男性と等しい機会を与えているかどうかも点検しております。また、女子の応募を受け付けないということはありませんかとか、男子の選考を終了した後で女子を選考していませんかとか、年齢、通勤状況、既婚、未婚等に関し女子についてのみ不利な条件をつけていませんかといったような均等な取り扱いに関する項目をいろいろと盛り込んでいるものでございます。  この事業は自主点検の名称が示しますように報告を目的とするものではなくて、すべての項目を点検することによりまして各社の雇用管理を見直す機会としていただくということを目的としておるものでございます。このため、回収につきましてはあくまで婦人少年室が自主的に報告を依頼しているものでありますが、平成六年度については約二万件が回収されているというふうに聞いております。
  182. 吉川春子

    ○吉川春子君 これは総務庁の行政監察も行われまして、その中で自主点検促進事業をもっと拡大して効果的に行うようにと、こういう意見がついております。  確かに、自主点検のお勧めとなっておりますしね。それから、よろしかったらとは書いてなくて、お手数ですがチェックの結果について労働省に郵送してくださいと。非常に控えめというか、行政指導なんですからもっと迫力を持っておやりになっていただきたいと思うんですが、その一つとして、女性の数をどれぐらい採用するか、それもこの中に入れていただいて、そして各企業が、今は女性の労働者は少ないけれども、何年後には何人にしたい、こういう計画もこの点検の中に一項目加えたらどうですか。
  183. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 何人採用するかというのはこれは結果でございまして、やはり男子何人、女子何人という枠を設けてはいけないというふうにも指針でも決めておりますので、結果として女性がたくさん採用されることは極めて望ましいことだと思いますけれども、それはあくまでもそれぞれの個人の意欲能力、それから各会社への適性によって決められるものであるというふうに考えます。
  184. 吉川春子

    ○吉川春子君 要するに、今は女性の労働者の数が少ない。国家公務員は本庁で一二%なんですね、大臣、女性労働者が一二%しかいない。局長は二人しかいません、ここの。そういう形になっていまして、女性をもっと採用していくということを民間企業も自主目標を定めて計画を実現していくということは行政指導としてできると思うんです。  婦人少年問題審議会が雇用機会均等法の改正問題について話し合っていると思いますけれども、この問題について、募集、採用の女子差別についてはどんな意見が出ているんですか。
  185. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) ただいまの先生の御質問は、いわゆる募集、採用に係るアファーマティブアクションの問題であろうと思うわけでございますが、婦人少年問題審議会の婦人部会におきましては、昨年十二月以来、男女の均等な機会と待遇の確保のための有効な方策につきましての御議論をいただいておるところでございますが、この中では、御指摘のアファーマティブアクション関連につきましては、女性の積極的な活用のための措置として法律に位置づけるべきであるという意見がある一方、募集、採用については、どの人を採用してどう育成していくかというのは企業経営上の自由であり、権利であるという意見が出されているところでございます。  これらの点も含めまして、男女の均等な機会と待遇の確保のための有効な方策につきまして、今後とも審議会の場において労使に十分に御議論いただくことが重要であるというふうに考えております。
  186. 吉川春子

    ○吉川春子君 去年の北京での世界女性会議では、行動綱領でポジティブアクション、アファーマティブアクション、積極的な措置について行うべきだとされておりますし、十二月に出されました日本の男女共同参画審の中間まとめ、論点整理には、女子差別をなくすための積極策としてポジティブアクション、アファーマティブアクションを導入することがうたわれています。  今、局長の報告の中で、どの人を採用して育成するかは企業の経営上の自由だと、こういう意見があるという報告がありましたけれども、こういう資本主義国の一番中心的なアメリカでは、一九六四年に既に公民権法ができ、六五年の大統領令で積極的な女子というか、これはマイノリティー全体ですけれども、女性も含めて、そういうことを国の政策としてやっているわけなんです。ヨーロッパでもこういうことはもう行われているわけなんです。  アメリカの場合は、連邦政府と公共事業の契約を結ぶ場合には、これは五万ドル以上の契約をするものについては書面でアファーマティブアクション・プログラムを提出させて、そしてそれに沿って企業が努力すると、そういうところとだけ公共事業の契約を連邦政府は結びますよと、こういう形になっていまして、これは私が言っているんではなくて、労働省の婦少審の婦人部会の報告にもそれは載っていることなんですけれども、やがては日本でもこういう方向をとっていかなきゃならないと思うんですが、大臣、この問題の最後に、私は女性の採用については何らかの積極策をとらなければもうだめなところに来ていると思うんです。女子学生の就職差別の問題がその中心点ですけれども、こういう問題について労働省としても前向きに積極的に一歩を踏み出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  187. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生が御指摘のように、日本は世界先進国、サミットにも参加する国でありますけれども、男女の雇用関係という面ではかなり日本はまだおくれをとっていると思うんです。したがって、男女雇用機会均等法をつくったときに罰則規定まで設けるべきだという議論もかなりあったんですが、とりあえず段階的に進むことがいいだろうということで当時罰則規定をつけなかったという経緯がございます。  したがって、今先生が御指摘のようないろんな問題がありますから、積極的にこの婦少審の審議の場にいろんな問題をまず提起することによって婦少審の先生方に適正な判断を仰ぐということがまず大事だろうと思うんです。  そこで、出てきました建議については、労働省としてもそれを最大限生かし切るような形で法改正をする必要があろうと。そこには意図的に今のような先生から言えば女性のそういう就職問題についてまだまだ不公正がある、あるいは差別があるという実態が放置されることのないような形で労働省としては対応することがまず重要だろうと、そういう認識は持って婦少審の建議を見守っていきたいと、このように考えるわけであります。
  188. 吉川春子

    ○吉川春子君 教育訓練について伺いたいと思うんです。  女子差別撤廃条約は、その十一条で「雇用の分野における女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。」としまして、21において「職業訓練及び再訓練(見習、上級職業訓練及び継続的訓練を含む。)を受ける権利」としています。これを受けた我が国の均等法においてはどうでしょうか。新入社員研修、管理職、業務遂行に必要な研修、それぞれ男女とも教育訓練の実態はどうなっていますか。
  189. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 均等法におきましては、雇用の場における男女の均等な機会と待遇の確保を実際に推進する上で女性の能力の開発、向上が不可欠であり、このためには教育訓練の機会が女子にも与えられることが重要であるというふうに認識をしておるところであります。  そのため、労働者の業務の遂行のための能力の開発、向上にとって最も重要な基礎的な能力の付与のための教育訓練を禁止規定の対象といたしまして、その具体的内容を労働省令で定めているところでございます。  なお、基礎的な能力の付与のための教育訓練以外の教育訓練につきましては、企業ごとにいろいろ多様な実態となっておりまして定型的にとらえることは困難でございますし、また労働者とか事業者による任意性が強く、規制になじみにくい面があるということ等を配慮いたしまして、禁止規定の対象外としておるものでございます。  しかし、教育訓練というのが女子労働者の能力の開発、向上を図る上で非常に重要であるという認識につきましては、私どももそのとおり考えておりまして…○吉川春子君 OJTは後で聞きますから。
  190. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) はい、済みません。そういうことで基礎的なものだけになっております。
  191. 吉川春子

    ○吉川春子君 均等法施行十年目の女子雇用管理の状況の教育訓練の数値について報告をしていただきたいと思います。男女とも対象に実施しているという新入社員研修、管理職研修、業務遂行に必要な能力付与の研修、これの数値はどうなっていますか。
  192. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 失礼いたしました。  平成七年度の女子雇用管理基本調査の中でございますけれども、新入社員教育、それから管理職研修、それから業務の遂行に必要な能力付与の研修の実施率でございますけれども、いずれの教育訓練とも男女とも対象という企業がそれぞれ新入社員研修で八五・四%、管理職研修で六三・八%、それから業務の遂行に必要な能力付与研修で七七・四%というふうになっております。
  193. 吉川春子

    ○吉川春子君 職業訓練は強行法規にもかかわらず、今の数値を逆に読みますと女性を対象にしていない企業が新人研修で一四・六、管理職で三六・二、業務遂行上の研修で二二・六%あることになります。  これは、平成四年と平成七年と比べていますけれども、数値がほとんど変わっていません。減っているのもあります。こういう違反企業がなぜ多いんでしょうか。そして、こういう企業に対してどういう指導をされていますか、端的で結構です。
  194. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 女子のみが少ないという御指摘でございますが、その対象に男性しかいないという場合もあると、対象となる女性がいないとか、また女性の希望者がいないというものもございますので、その残りがすべて法違反というわけではないわけでございます。  また禁止規定、この十一条のクレームにつきまして、婦人少年室の方に女子労働者、また企業等からいろいろと御相談があった場合には指導をさせていただいております。
  195. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは、具体的に法違反と思われる事例を、私申し上げたいと思います。  大臣、非常に有名な日立製作所の例なんですけれども、ここでは女性というだけで同期、同学歴の男性と比べて年収三百六十万の賃金の格差があり、昇格差別があるということで現在東京地裁に提訴をしております。この問題を聞くわけじゃありません。  この企業では、教育訓練がどうなっているかと申しますと、高卒の技能職の場合、一九七〇年に高等職業訓練学校の制度が発足して、男性は全員が高等職業訓練学校に入り技能教育を受けましたけれども、女性は教育を受けられなかった。中卒の技能職の場合は、男性は全員が三年間技能訓練生として教育を受けたのに対して、女性は全くこの教育を受けることができませんでした。雇用機会均等法の施行後はどうか。高卒執務職の女性が希望し、上司の推薦を受けた場合には実習員教育を受けることができる。高卒執務職の男性の場合は、全員が実習員教育を受けています。また、高卒技能職の女子が希望し、上司の推薦を受けた場合には、高等職業訓練学校に入り技能教育を受けることができるようになりましたが、男性の場合は全員がこの技能教育を受けていると、こういう違いがあります。非常に優秀なる電機のメーカーですから、非常にすばらしい学校も持っているそうです。日立工業専門学院では一年半管理職になるための高いレベルの教育が行われていますけれども、毎年入学が認められる三百六十人前後の中、女性は二十数名であると。  こういうことで、非常に女性に意欲があってもなかなか教育訓練での決定的な差によって女性が上に上がれない、こういう実情があるんですけれども、こういう問題について、これは強行規定なんですから、きちっと労働省もつかんで指導していただきたいと思いますが、どうですか。
  196. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) ただいま先生から、具体的な事例、会社の名前が出てまいりましたので、調査をさせていただきたいというふうに思います。
  197. 吉川春子

    ○吉川春子君 ぜひ調査をして実態を把握して、適切なる指導をしていただきたいというふうに思います。  それから、さっきちょっと太田さんが答弁しかけましたOJTについて移りたいと思います。オン・ザ・ジョブ・トレーニング、私も舌をかみそうなんですけれども、オン・ザ・ジョブ・トレーニングといいまして仕事の遂行に伴って教育訓練を受けるという制度があって、先ほどの答弁ですと、これは強行規定から外してありますという説明がありました。教育訓練は、女性の昇格昇進に対して決定的な意味を持つわけなんです。  それで、さっき伺いました均等法施行十年目の女子雇用管理の状況でも、管理職に占める女性の割合は、部長相当職が一・五%、百人に一人しかいない、課長相当職が二%、百人に二人しかいない。そして、男性のみを配置した理由として技能や資格を持つ女性がいない、かなり高度の判断力を必要とする、だから対象者とならないという意味なんでしょうね。女性管理職が全くいない職場もその理由は、必要な知識経験、判断力を持つ女性がいない、これが五二%になっています。  現在を輪切りにすると、対象となる女性がいないという回答も私は否定しません。だから、これをいかにして全部の女性を対象にした教育訓練をして引き上げていくかということが今非常に必要になっているわけです。そのために一番有効な訓練がオン・ザ・ジョブ・トレーニングなんですね、仕事をやりながらそういう訓練を受ける。しかし、そこは今任意規定になっているので女性はかなり外されてしまっている、それが能力のある女性がいないんだと企業が回答してくる、その一因だとは思われませんか。    〔委員長退席、理事武田節子君着席〕
  198. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) やはり、日本では長期雇用システムでございますので、ある程度長く勤めていませんと、なかなか係長、課長、部長というふうに昇進していけないというふうに思うわけでございます。その点まだ残念ながら、女性の勤続年数は長くなっておりますけれども平均値で見るとまだ男性に比べて短いというようなこともあって、なかなか男性の意識が女性全体を引き上げようというものになっていかないというような点があることも事実だろうというふうに思います。  ただ、私どもは、先ほどもちょっと途中になりましたけれども、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの重要性につきましては十分認識をしておりまして、先ほど先生おっしゃいました自主点検表の中にも、女性にもちゃんとオン・ザ・ジョブ・トレーニングをやっているでしょうねというような質問項目も書いてあるわけでございますので、今後とも女性に対する教育訓練、能力開発については充実をさせていきたいというふうに思っておるところでございます。
  199. 吉川春子

    ○吉川春子君 今後とも充実の中身は、やはりこれも強行規定の中に含めると、ほかの教育訓練からオン・ザ・ジョブ・トレーニングだけ外すということはしないということが必要だと思うんです。  具体的な事例を挙げますと、これも裁判になっている事例ですが、芝信用金庫というところがあります。ここでは係長昇進に男女の格差があり、係長というのは一番下の職ですね、管理職とまでは言えないところですけれども、昭和二十五年から六十三年までの三十八年間に、女性職員総数二千人以上で係長に昇進したのは九人にすぎない、これに対して男性は千四百人中千二百人が係長に昇進をしております。そして、この会社は、昇格試験に受からないと原則として昇格できない、こういうふうにして試験をしているので別に女性を差別しているわけではありませんとおっしゃっているんです。しかし、男女とも受験資格は平等に保障されていると言われても、本当に女性差別がないと言えるのか。例えば、係長の昇格試験の学科試験に税務、財務等の問題が出るわけなんです。  しかし、女性は実際には得意先係とか融資受付に全く配置されていないわけなんです。業務研修とか職務配置で差別されている女性がペーパーテストだけで高得点をとるということは、これ不可能なんですよ。日常的にそういう事務をやっている男性が試験で高得点をとるのは当然じゃないでしょうか。また、論文試験において、管理職としての姿勢や考えを問うと、こういう設問があるんです。ところが、女性は役職についた経験もない、部下を持った経験もない、単純で定型的な仕事を日常的にやらされている。ペーパーテストでそういう問題が出されたって、これはいい答案が書けない。実際に部下もいて管理職にもついている、そういうオン・ザ・ジョブ・トレーニングを日常的にやっている男性にはかなわないのは当然じゃありませんか。  だから、昇格昇進差別をなくすという点も重要で、これも私たちは義務規定にすべきだと思いますが、そういうことをやるためにもこのOJTというものが非常に重要だと思うんですけれども大臣、ここまでお聞きになって職業訓練の重要さというのをわかっていただけたと思うんですけれども、ぜひこれは女性に平等に、平等以上に機会を設けるように労働行政の中でもやっていただきたいと思いますが、どうでしょうか、大臣
  200. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 個々のケースについて具体的に御指摘がございました。それぞれの企業がその職場の実態に合わせてどういう昇進の手続をとるか、方策をとるかということまで直接的には介入できない問題でありますけれども、男女雇用機会均等法を制定したその当時からの経過を踏まえまして、少なくとも女性であるがゆえに不当な扱いを受けないように、あるいは昇職試験という名称を使っても、実態的に女性が結果として差別されることが起きてこないように十分に配慮をして、行政指導の立場でそれは強めてまいりたい、こう思います。  個々のケースについて、どこの企業におまえのところはこうだからということで直接的な介入は難しいかもしれませんけれども、十分にそういうことを認識して対応してまいりたいと思います。
  201. 吉川春子

    ○吉川春子君 このOJTを含めて、やっぱり強行規定にすべきだと思います。審議会の中でも議論されていると思いますけれども、どうですか。今度ぜひそういう改正をしていただきたいと思いますが。
  202. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 現在、審議会におきまして、このOJTにつきましてというよりは教育訓練に関しましては、先生おっしゃるとおり、現行法で禁止規定の対象となっている教育訓練が極めて限定的であるという意見があります一方、省令で範囲は限定しているものの、この限定があることによる問題が現実には少ないではないか、ですから教育訓練そのものが今回の見直しの検討事項にはなりにくいのではないかというような意見も出されているのも事実でございます。  ただ、これらの点も含めまして、男女の均等な機会と待遇の確保のための有効な方策につきましては、今後とも審議会の場で労使に十分御議論いただきたいというふうに思っております。
  203. 吉川春子

    ○吉川春子君 大臣、婦人少年問題審議会の問題なんですけれども、いろんな問題が話し合われているわけなんです。そして、その議事要旨というものが発表されているんですが、それを拝見しますと、こういうふうに書いてあるんです。教育訓練は既に禁止規定になっており、現実に問題が少ないことから検討項目になりにくい、こういうふうに委員の方が発言されているわけですよ。だから、一生懸命これから婦人少年問題審議会で議論して云々というんじゃなくて、もう検討項目にもなりにくいなんて実際に委員がおっしゃっているんですよ。  これは、どういう経過でどなたが発言されたんですか、ちょっと見過ごせない。もう検討項目になりませんなんということに対して、ほかの委員はどういうふうに対応されたんでしょうか、どうですか。
  204. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) これはどなたがと言うわけにはいきませんもんですが、公労使で構成されている委員会でございますので、先生御想像にはできるかと思いますが、ただ、それに対して特段の反論がなかったということも、これまた事実でございます。    〔理事武田節子君退席、委員長着席〕
  205. 吉川春子

    ○吉川春子君 非常にそういう重要な発言がされて特段の反論もなかったと、しかも、どなたがそういう発言したかも詳しいことも公表できませんでは、これは私は納得できません。  大臣、審議会の公開というのは閣議決定の事項ではありませんか。そして、審議会によってはもっと議事録を公表しているところはいっぱいあるんですよ。ところが、婦人少年問題審議会はけしからぬです。これは労働省がけしからぬのか、婦人少年問題審議会自身がけしからぬのかわかりませんけれども、今回議事録要旨として私いただいたのは、去年の十二月二十一日から四月四日まで六回にわたる審議内容は、A4で十ページぐらいですよ。当労働委員会の議事録にすれば三時間コースぐらいです。  あとどれぐらいできるんでしょうか。そういう中で、その審議内容も公開されずに国会に出てきたときはもう法律ですと。十年前の雇用機会均等法の審議を見ますと、突っ込まれると当時の中曽根総理大臣坂本労働大臣は、いやあ婦少審でお決めになったことですと、ここへ全部逃げているんですよ。しかし、その前に国会には何も知らせない、そしていきなり法律になってしまう。しかも、教育訓練一つだけ例を挙げましたけれども、もう検討項目にする必要もないなどというようなことを委員の方がおっしゃっている。そういうものを見過ごしていったら、これはとんでもない法改正になると思うんです。  私は、どなたが何を言ってけしからぬということにウエートがあるんじゃなくて、それは自分の御意見だからいいんです、自由におっしゃって。しかし、その内容を国会に明らかにしてもらいたい、国民に明らかにしてもらいたい。大臣、どうですか、議事録の公表を思い切ってしてください。
  206. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) これは婦少審だけではなくて、中央労働基準審議会あるいは中央職業安定審議会いろいろありますが……
  207. 吉川春子

    ○吉川春子君 労働省関係、みんな悪いんですよ。
  208. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 一応、委員皆さんの発言の、個人個人の発言の秘密は守るという前提で実は審議に参加してもらっておるわけであります、今までの経過が。したがって、今まではその委員会の要旨をまとめて公表しているのでありますが、個々の委員がどういう発言をしたのかという、例えば国会の議事録のような形で公表するということは、なかなか今簡単に、そのとおりですねと、こうなかなか言えない状況にございます。  しかし、その委員会の審議の経過の中で、今言われましたように、国民皆さんに、極端に言えば堂々と胸を張ってすばらしい建議が出されたというふうにするのが一番好ましいわけでありますから、そういう意味においては十分に私どもも心がけてまいりますが、今の段階で直接すべての議事録を公表するということは、いささかちょっと、今のところは即答しかねるというのが現状であります。
  209. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと最後に一言。  大臣、いつも割と積極的なコメントをされるのに、審議会のこの問題については、それは大臣らしくないですよ。私は、議事録即全部公開というのはそれはできないとおっしゃるんだけれども、その議事内容をこんな木で鼻をくくったような簡単なものじゃなくてもっと詳しく、審議はやっていると思うんですよ、六回も。たかだか三時間に足らないような内容じゃないと思うんです。だから、もっと詳しい議事内容、百歩譲って人の名前は言えないとしても、その中身はもっとリアルに私たちにもわかるような公開をしていただきたいと思います。もう一度答弁をいただいて、終わりたいと思います。
  210. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘は痛いほどわかるわけでありますが、今までこの労働省関係の審議会だけではないと思うんですがね、特定の審議会は除いてもほとんどの審議会がそうだと思うのでありますが、委員の自由闊達な議論を保障する、もし議事録を公開するんならもう委員に参加しませんというようなことも十分にあり得るという前提に立ちまして、今まで要旨のみの公開にしてきているわけであります、だから先生の言われることは十分わかるんですよ。十分わかりますけれども、今の段階で直ちにじゃその会議の内容、議事録をすべて公開するということに私がこの場で踏み切るということについては、若干踏み切りにくい面がありますので、先生の御指摘の分は十分に頭に置いて今後のあり方についても検討させてもらいたいと、こう思います。
  211. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  212. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私の父というのはとっても古い男でして、私が物心ついたときに私を呼びつけまして、おまえも大きくなってお金が欲しくなるときが必ずあるだろう、そういうときにはお金を追いかけてはいけない、仕事を追いなさい、仕事を追うとお金は後からついてくる、お金を追うとお金は逃げていってしまうと、こういうことをよく言われたものでした。  私にしましたら、随分古いことを言うなと思ったんですけれども、しかし私はこれが非常に好きでして、お金を追いかけるとお金は逃げるけれども仕事を追いかけるとお金は後からついてくる。その仕事というのは、誇りを持って、そしてその仕事がおもしろくなるような実力をつけなきゃいけないというのもまた私の父の言い分でした。そういう意味で私は、勤労意欲ということは非常に興味を持っている一つなんです。  このごろの住専の次々のいろんなのを見ていますと、何か働かないでぬれ手でアワのうまいことをした方が世の中おもしろおかしく渡っていけるんだというような人がいっぱいいて、一番重要な信用を置かなければいけない金融機関の中にそういう人がいるというのは、私にしてみたら、正しい勤労意欲というのは何なんだろうか。また、オウム真理教の若い信者を見ていると、自分のやった仕事の結果どういうことになるのかということもわからない勤労をしているというのは、これまた私にとっては何か非常に気持ちの悪い世の中が来てしまって、このまま放置しておいていいんだろうかという、そんな気がする昨今なわけです。  そこで、日本の国は人的資源とよく言いますけれども、人的資源というのは正しい勤労意欲を持った人がいかにたくさんいるかということであって、間違った勤労意欲とかあるいは勤労意欲を喪失してしまうようなそういう社会構成があってはいけないというのが私の持論でもあります。私は、資本主義経済という経済は、まさに競争社会の中に投げ出されているわけですから、制度プラス個人の意欲というのが十分生かされるような制度というのが非常に必要じゃないかというふうに思っております。ですから、企業によってあてがわれた研修をする、あるいは義務教育によって何か嫌々ながら勉強をさせられるという、そういう勉強の仕方ではなくて、やりたいときに誇りを持てるような、そして仕事を追いかけて、その仕事が何か社会的に本当に誇りを持てるような、そういう勤労者を多くつくるような行政というのが私はこれからの最も重要な行政じゃないかというふうに思います。  そこで、勤労するために誇りと実力を持てるような施策と、そういう能力開発というか積極的に勉強をする場というのを、官使労という三者が一体になって、健全な将来の日本をつくるような、そういう考え方というのに対して、大臣はいかがお考えでしょうか。
  213. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生が言われますように、勤労する意欲の中には、みずからの技能、能力自分評価ができて、その評価している技能や能力を適正に活用してくれる企業というところと結びつくのが一番いいわけです。  最近、若い人たちの中には思い切った人もいるもんだと思うのでありますが、高い賃金で自分能力を認められて雇用されている人が、どうも企業は雇用してくれているんだけれども、実際入ってみると自分能力を生かし切ることがこの企業ではできない。だから、次の企業を探してからじゃなくて、じゃ私はやめますと、やめて次のところを探しますと言って思い切って離職される方も僕自身も何人か承知をしています。しかし、だからといって次のところがすぐに待ち受けているわけじゃありませんので、その人は離職してから後大変困っていらっしゃるという現実も存在するわけであります。  まず、先生が言われているように、働く人の能力や技能、こういうものを高く評価できるようなものにしていくことが大事だろう。だから、今までは、有給で教育訓練休暇などを付与している企業に対してはそれなりの助成を行ってまいりました。本年度は、これが新しいところでありますが、雇用促進センター能力開発支援コーナーを設置いたしまして、自分能力開発をしていくために自主的な教育をどうすればいいのか、どこでそういう教育を受けることができるかなどについて具体的に個々に相談を受けることができるようなことを本年度から実施することにしたわけであります。  そしてまた、本年二月に策定した第六次職業能力開発基本計画、ここにおきましても個人主導の職業能力開発の推進は重要な柱の一つだと位置づけているわけでありまして、公共職業能力開発施設のみならず、各種教育訓練機関等における多様な教育訓練の受講機会の整備、拡大を図ることに実はしているわけであります。そのために必要な予算措置もそれなりに、不十分かもしれませんけれども、新たにそういう予算措置もとることにしているわけであります。言いかえれば、広く労働者個人への直接支援ということをことしの能力開発の大きな目玉にしているわけでありまして、これを十分に活用してもらえるようなPRといいますか啓蒙活動も実はしていきたいと、こう思っているわけであります。  いずれにいたしましても、働く人が自信を持って働ける、自分能力をフルに活用してくれるというところに働きがいも生まれてくるわけでありますし、そのことが企業にとっても非常に有益なことは間違いないわけでありますから、そこがミスマッチにならないように全力を尽くしていきたいと考えております。
  214. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大臣のそういう意欲的な行政が、これから日本の将来のあるべき姿というのをきちっと浮き彫りにしていくんじゃないかというふうに思ったりもしております。  勤労意欲というのは、小さいときからの一つの教育というか訓練というか、そういうものが非常に重大に影響します。例えば、女性の問題にいたしましても、小さいときに家庭の中で、女の子は少小のときにもう仕事はやめて結婚したらいいんだよというような教育を受けていますと、勤労意欲というのは本当に一〇〇%の勤労意欲じゃなくなってしまう。まだ私は、日本の社会の中には、女性の教育というのは、そういう本当の意味の勤労意欲というのがきちっと備わっていない現象が、もろもろの今不幸な現象に結びついているんじゃないかというふうに思ったりいたします。そういう意味では、能力開発という面に私は大いなる期待というのを持っている一人ですので、大臣、ひとつこれから能力開発に十分力を入れていただきたいというふうに思います。  それに関連いたしまして、ホワイトカラーが今まさに女性と同じように受難の時期を迎えているということはもう御承知だというふうに思います。こういうホワイトカラーの雇用、つまり再雇用あるいは技術革新にとって、今生涯能力開発センターというのを建築中だということですが、この能力開発センターの構想とそれからその進捗状況予算はどのようになっているのか、ちょっと御説明ください。
  215. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 御指摘の生涯能力開発センターの構想でございますが、ここ数年私ども取り組んでまいってきている構想でございますが、この生涯能力開発センターは、主としてホワイトカラーの方々につきまして、近年非常に経済活動が高度化するとともに国際化を初めいろんな大きな変化が急速に進展しております。そういった中で、ホワイトカラーの方々がそれぞれの専門を持った分野で十分な知識を持って国際的にも活躍できるような非常に戦略性、あるいは問題の把握能力、決断力、そういったものを磨く場として、そういった教育訓練を提供する場として位置づけてまいりたいということで準備に取り組んでまいりました。  このセンターにおきましては、そういった教育訓練を提供していくために、一つはホワイトカラーの方々についてそういった教育訓練をどういう形で展開したらいいか、カリキュラムの開発を含め、主としてかなり実戦的なケーススタディー中心の教育訓練になると思いますが、そういったものを産業界とも一緒に開発してモデル的な教育訓練を実施していく。  それと同時に、あわせましてここのもう一つの重要な仕事といたしまして、ホワイトカラーの方々、これから産業構造等が変わる中でいろんな職場の変更、私どもはもちろんその間にできるだけ失業のない形でそういったものが実現できるように努力してまいるわけでございますが、その際にどうしても新しい異分野、そういったところへ移る際にも、今までのキャリアに加えて新しい教育訓練、追加的な教育訓練をどう施せばいいかといったそういうキャリアカウンセリングを通じての追加的な教育訓練というものも非常に大事になるかと思います。そういったものもそこで実施していく。そうやってノウハウをそこで培いまして、それをかなり発達いたしました通信その他の設備を使いまして、一般の企業あるいは各種の教育機関に広く展開して開かれたホワイトカラーの教育訓練の拠点としていこう、こういうものでございます。  現在、錦糸町の駅前に建設中でございまして、平成九年度から具体的な事業を開始いたしたいということにいたしております。施設に関する予算は大体本年度で終了でございますので、あとは運営に伴う予算等を今後準備していくという段階になります。
  216. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私も錦糸町に行って見てまいりました。非常に大きな敷地で大変立派なものなんですが、一つ私が危惧をしているのがあります。  というのは、働いてそして中途で勉強しよう、そしてまたどこかに力をつけて再就職というようなそういうときには、実態を知らない、理論だけとか、あるいは余り実態に合わない学問というのはこれはよくないというふうに思うんです。ですから、そのカリキュラムを決めたり講師とかそういうものは、まあ自分が所属しているところを言うのはちょっとはばかれますけれども、やっぱり連合の、組合の、いろいろと長いこと悩んだり実態がわかったりするような方の意見を十分聞いていただくとか、あるいは講師に招いてそういう実態を聞くという、そういうことはいかがなものでしょうか。
  217. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のとおり、この生涯能力開発センターで展開します教育訓練は、かなり実戦的な、私どももそのカリキュラムの内容に当たりましてはかなりケーススタディーを中心とした教育訓練にしてまいりたいと思っております。そうなりますと、当然ケーススタディー等を進める際のインストラクターにせよ、かなり実際の経済界、ビジネスの世界に詳しい方をお願いしていかなくちゃいかぬケースも多々あると思いますし、そういったカリキュラムを編成するに当たって広く関係方面の意見等を聞いていかなければならないと思っております。  具体的に今準備に入っておりますが、各業種別のいろんな業界から問題点、あるいはホワイトカラーの方々にどんな知識を勉強してほしいか、いろんな問題点を今当たっております。御指摘連合方々からもそういった、私ども説明にも伺っておりますが、そういった問題提起を受けて、十分参考にしながらいいものをつくってまいりたいというふうに思っております。
  218. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 現場主義というんでしょうか、実態を知ってこそ悩みとか喜びとかそういうものがわかるというふうに思いますので、どうぞ実態をよく十分わかっている人の意見を取り入れるような仕組みをつくっていっていただきたいというふうに思っております。  次に、機械では代替できない非常に芸術的あるいは伝統的な仕事というのがあるわけですが、今、日本はまさにこういう仕事が、危機に瀕していると言うとオーバーかもしれませんが、後継者問題というのは非常に困難をきわめている現状があります。私は、生産性、効率を高めるというのも一つの非常に重大なことですけれども、しかし機械で代替できないような高度な技術を持つそういう仕事というのはきちっと残すべきですし、そういう後継者もきちっとつくるべきだと思いますが、その点はどのような施策でしょうか。
  219. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 先生指摘のように、我が国の産業界には機械ではとても達成できないような精度の高いミクロン単位の仕事をこなすいろんな技能を持った方々がおられるわけでございます。御指摘のとおり、高齢化していく、またかなりの部分機械によって置きかえられていく部分がある。しかし、私どもが産業界から聞きますのは、先生指摘のとおり、そういった方々の存在がむしろいい工作機械をつくったりする際にエンジニアがそれを追いかける目標となったり、あるいは試作品をつくる段階でまだ定型化できない段階ではそういった方々の存在が不可欠なんだと、そういう方がいなくなることについてかなり危機感を持った声を私どもは聞いておるわけでございます。  それで、今年度予算措置をいたしまして、私どもはそういった方々が産業界のどういう分野に、またどんな技能を持ってどんな製品を残しておられるか、それを把握いたしまして、そういった方の情報をデータベース化して産業界ともどもそういった方々の技能を大事な場面で使ったり、あるいは後継者にそういった技能を伝えていくためのお手伝いを国がどこまでできるか、そういったことを早急に検討して具体策をつくっていこうということで、先般そういった関係業界の方々も入っていただいた研究会を発足させたところでございます。この研究会で精力的に進めていただきまして、先生指摘のような問題点につきまして具体策に結びつけてまいりたいと思っております。
  220. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大変興味のある問題で、その研究会ができたというのは私は大変うれしいと思います。  ただ、一つまた危惧をいたしますのは、こういう伝統とかそういう技術的な産業というのは、ともすると女性を入れないようなそういう産業も多々あります。私も京都におりまして、京都というのは特に伝統産業の中には女性を入れないという、例えば典型的なのはお酒をつくる杜氏ですね、ああいうのは女性が酒蔵へ入ってもいけないというようなそういうことがあったりしますので、その点どうぞ新しい女性の仕事開拓というそういう面もひとつ兼ねまして、これから懸命にやっていただきたいと思います。  私のように長らく教育の場にいる者は、教育の結果というものに対してとてもうれしく感じるものです。勉強しているときには死にそうな顔をしている学生が、コンパになりますともう生き生きと飲んで踊る姿を見ると、人間の能力というのはいろんなところにあるんだなというふうに思って、人間楽しいな、人間万歳というような気がいたします。人間というのは能力がいろんなところにあるわけですから、その能力を磨き開発するということはこれから非常に重要な問題だというふうに思いますので、ひとつ頑張ってやっていただきたいと思います。  続いて、介護休業制度のことをお尋ねいたしたいというふうに思います。この介護休業制度が導入されてまだ休業給付がついていない今の段階では奨励金を出しているわけですけれども、先ほど局長の方からも御発言がありましたけれども、もう一度この奨励金の今の実態を御説明いただきたい。
  221. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 介護休業制度の導入奨励金は、平成十一年四月の介護休業制度が事業主に義務づけられるまでの間、広く介護休業制度を普及させる施策として昨年十月から実施をさせていただいているものでございます。  現行の介護休業制度の導入奨励金は、介護休業法に沿った介護休業制度を導入した事業主に対しまして、最初の休業取得者が生じた場合に、中小企業にあっては七十五万円、それ以外の事業主にあっては五十五万円を支給するというものでございます。  しかしながら、企業が介護休業制度を導入するに当たりましては、代替要員の確保を初めといたしまして制度導入に伴いますさまざまな負担がありますので、介護休業制度の導入を促進するためには企業に対する支援を充実しこれからの企業負担を可能な限り軽減することが必要であろうということで、八年度の今度通していただきます予算で介護休業制度の導入奨励金を拡充いたしまして、二人目以降の取得者が生じた場合も、中小企業にあっては二十万、それ以外の事業主にあっては十万円を支給するということにしたものでございます。
  222. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 それで、ちょっと私は不思議に思うんですが、一人目のときには七十五万で二人目になるとどうしてそんなに少なくなるんでしょうか。
  223. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 最初に介護休業制度を入れます場合には、就業規則の作成だとか、それから介護休業制度導入に伴う費用とか、代替要員の募集費用、訓練費用、それから休業取得者の復職後の訓練費用等を積算根拠として七十五万円ないし五十五万円を計算したものでございます。二人目以降の場合は、例えば就業規則の作成などというようなものはもう要らないわけでございますので、そういうものを引いて休業取得者の発生に伴う経費のみを積算根拠として出したわけでございます。
  224. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 その積算根拠と言われるともう一つまた私はわかりづらくなるんですけれども、一人のときが二人目よりも三倍も経費がかかるという意味なんですか、七十五万と二十万。
  225. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 介護休業制度をまず導入するに当たりまして、やはり人事労務管理担当者の人件費等も最初はいろいろ就業規則等を導入しなきゃいけませんので、そこの費用が非常に大きゅうございまして、そこの差でございます。
  226. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 確かにそれは一人目のときはいろいろ直したり改良したりするんですけれども、代替要員が必要なのは一人目でも二人目でも一緒だと思うんです。そうすると、その代替要員に対する人件費の保障というのが二人目になると、私が今当てずっぽうに言いますと半分ぐらいになる計算になりますね。いろいろ諸経費が二十万ぐらいかかった。あとの残った五十万のうちの二十万ですから、その代替要員は二人目になると半分ぐらいの計算という意味なんでしょうか。
  227. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) お使いいただくのは企業ですので、どういうふうにお使いいただいてもよろしいわけでございますが、あくまでも積算根拠として申し上げるならば、一人目と二人目の違いは介護休業制度に伴う費用として、繰り返しになりますが人事労務管理担当者の人件費だけでございまして、代替要員の募集費用とか代替要員の訓練費用とか、それから介護休業をとった方の職場復帰のための訓練費用等は同じ額で計算をさせていただいております。
  228. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 余り心から納得はしていないんです。私はやっぱり一人目よりも二人目、三人目と導入した方が、本当は奨励金をたくさん上げてよくやったというのが何か普通の奨励金の考え方じゃないのかなというふうに思うんですが、これは私の希望といたしまして、何かちょっと納得いたしませんので、二人目からもうちょっと多くするようにこれからひとつ御検討をいただきたいというふうに思います。  続きまして、これからこの奨励金は平成十一年まで積極的に取り組んでいただかなきゃいけないと思いますが、その積極的に取り組む姿勢と、それから今後のこの奨励金の取り組んだ結果に対する予算のあり方というのはどのようにお考えになっているのか、お聞かせください。
  229. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 先生おっしゃるとおり、できるだけ多くの事業所が介護休業制度を早期に導入してくださることが極めて重要であると思っておりますので、育児・介護休業法の周知には全力を上げていきたいと思っておるところでございます。  具体的に申しますと、十月に仕事と家庭を考える月間というのをつくりまして、ここで集団説明会等を開かせていただきまして、昨年の例で申しますと全国の婦人少年室で二百件を超える説明会を開いております。それから、あらゆる機会を通じての事業主に対する相談指導もしておりますし、それから今申しました導入奨励金の支給、それからさらには中小企業集団において集団ぐるみで介護休業制度の円滑な導入を進めていただくための支援ということで、中小企業集団における仕事と介護両立支援事業等、いろいろなメニューを考えてやっておるところでございます。  それから、介護休業制度導入奨励金につきましては、この介護休業制度の早期普及を図るための有効な手段であるというふうに考えておりまして、引き続き事業主に対してこの有効活用について周知徹底に努めていきたいというふうに思っております。
  230. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 我々女性にとって、こういう制度というのは本当に待ちに待った一つの制度ですので、これが徹底して女性が働くために大いに役立つような、そういう制度にしていただきたいと思います。  そこで、最後に大臣にお伺いします。私も自分でお財布を持ってみて、ああこれがもしも使っても使っても何ぼでも使えるようにお金があるんだったら人生はどうなるだろうかと思いながら、いややっぱり限られた予算の中で一生懸命考えているから人生おもしろいのかなとか、こう考えながら、今までの労働行政は本当に労働省は一生懸命限られた予算の中で頑張っていることはもう重々わかりますけれども大臣、ひとつ予算全部の枠を取っ払っちゃう、もう使うだけ使いなさいという状況が来たら、大臣は一体何を今おやりになりたいというふうに思いますか。ちょっと夢を語っていただきたいと思います。
  231. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) これは大変な御質問を受けたもので、もともと国民から税金を納めてもらったり保険料を徴収させてもらったりして全体の国家予算を組むわけでありますから、その国家予算をどれだけ有効に使うかということが政府なり国会の努めだと思うんです。だから、余りにも全部取っ払ってということになりますとお答えするのに大変困るわけでありますが、私、大臣になりましてともに働き、喜び、安心して暮らせる社会をということをキャッチフレーズにしたんです。  そういう意味でいいますと、一人も失業者がなくなること、これがまず第一です。そして、十分な賃金を保障されること。仕事ができないような、健康を害したとかあるいは高齢者になって肉体的な条件が低下してしまったその人たちも安心して暮らせるような、そういう福祉社会のために税金、お金を十分に使うことができるというのが一番理想だと思うんです。これはなかなか現実的ではないかもしれませんけれども、それに一歩一歩近づくようなことが毎日の労働行政の中で今取り組まれているわけであります。  例えば、障害者の方がたくさんいらっしゃいます。障害者の方が十分な仕事につけるような教育を受けているか、あるいはリハビリができているかということになりますと、施設は十分じゃありません。あるいは障害者の方が通所といいますか施設に通って研修を受けるとかリハビリを受けるとかいうことがありますから、そういう人たちは全部全寮制にして、十分な介護をしながらそういう能力を身につけていく、リハビリをしていくと。そしてその人たちが十分に働けるような職場をつくり上げていく、あるいは授産所じゃなくて障害者のためのそういう特定の生産設備というものもつくる、そこはもう採算を度外視するということなどもできれば障害者の方も含めて全部失業者がなくなっていくということはできます。  だから、夢のような話ではありますが、とにもかくにもみんなが安心して暮らせる世の中をつくり上げること、それに必要なお金が幾らでも使えるならどんどん使って施設もつくる、必要な人材も配置をする、こういうことができると思います。その夢をどこまで広げればいいのかわかりませんけれども労働省でありますから、そういうことをまず頭に考えて、ともに働き、喜び、安心して暮らせる社会ということの実現のためにそういうことができればなと、こう思います。
  232. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大臣、どうぞ頑張ってください。  終わります。
  233. 末広まきこ

    末広真樹子君 初めて予算委員会からの委嘱審査について取り組ませていただきます。  そこで、平成八年度予算について労働省予算案を改めて見させていただきました。そこで、全般的に感じるさまざまな疑問について質問させていただきたいというまことにつらいところへ我ながら突っ込んでしまったなと思うんですが、結論から申し上げますと、非常にわかりづらい。だれが読んでも理解できる書き方が必要だと思いました。  まず、大きく言って収入では一般会計五億円と労働保険特別会計約五兆円がある。これはわかります。支出においては一般会計からの支出と労働保険特別会計、それも労災勘定と雇用勘定からの支出がある。この支出区分の根拠が明瞭ではない、記載されていない、最初はあったんでしょうけれども。後から来るものは知らぬでよろしいということなんでしょうか。  労働保険特別会計において失業給付や労災補償にどのように支出されているのか、具体的に年度別の変化もすぐにはわからない。さらに、各項目での予算額の推移もなぜなのかという説明もついていない。七年度決算はもちろん出ていないにしても、その前年度決算から見て予算の執行状況はどうかという説明もない。あるのは積算内訳だけなんです。根拠と理由がわからない。対比の比較もできない。これで一国会議員にどう審査をせよというのでしょうか。これでは審査というより、丸のみ御承諾くださいという押しつけ予算表と言われても仕方がないんではないでしょうか。さらに言うと、一般国民予算中身が一体どうなっているのかさっぱりわからないことでしょうね。これはだれがどうやって理解させるんでしょうか。まずもってもっとわかりやすい予算案の説明があってしかるべきと思うんですが、この点いかがでしょうか。
  234. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 労働省関係予算につきましては、先ほど当委員会にも配付をさせていただいて説明させていただきましたが、できるだけわかりやすく簡潔な資料というふうなことで対策別の項目を立てまして、それに必要な予算、経費は幾らである、こういったふうな資料をつくらせていただきました。  ただ、先生今お話しのように、これでは余りに簡単過ぎて支出根拠等々明確ではない、あるいは特別会計からどのように支出がされているのか、具体的にないではないかというふうな御意見もありました。こういった御意見もこれから十分参考にさせていただきまして、資料をつくらさせていただきたいと思います。
  235. 末広まきこ

    末広真樹子君 前向きな御答弁でございますが、ぜひお願いしたいと思います。  労働省予算は、一般会計の額が他省庁と比べて非常に少ない。それに対して労働保険特別会計の額が大変多いという、自主独立採算であるということがすぐにわかります。では、その労働保険料支出のうち幾らを支出し幾らを積み立てるのか、ストックとフローの基準がわかりません。次の質問は、平成七年度の保険料収入、そしてそのうちの積立額、その区分の基準をお教えください。
  236. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 平成七年度予算におきます保険料収入は、労災勘定分で一兆五千六百四十五億円、雇用勘定分で一兆八千七百十八億円で、合計した労働保険料額は三兆四千三百六十三億円となっております。  積立金につきましては、労災勘定、雇用勘定、これにつきましては労働保険特別会計法がございまして、この法律による区分経理のもとにそれぞれ積み立てております。この基準といいますのは、例えば労災と雇用とのお金がまじり合わないと、ごく簡単にいいますとそういったことでございますが、こういったことで積み立てをしております。その積み立ての額は、労災勘定分で五兆七十三億円、雇用勘定分で四兆一千二百四十二億円、合計九兆一千三百十五億円というふうになっております。
  237. 末広まきこ

    末広真樹子君 おっしゃるとおりですね。平成六年度労災保険料は三・八九兆円、雇用保険料については四・五兆円の積立額があるようでございます。このような積み立てができるのであれば、労災申請に対してももっと速やかな支給を、失業給付に対してももっと多い支給をしてもいいように思うのですが、この点いかがでしょうか。国民の多くは、保険料がさまざまな施策の費用に使われていることを全然知らないと思うんです。いかがでしょうか。
  238. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 労災保険については、私からお答えをさせていただきます。  労災保険の給付申請があった場合に、それに対して迅速的確に対応するということは私どもが最も重視している点でございます。ただ、この労災保険の積立金についてでございますけれども、これは既に発生した労災事故によって年金受給者となっている方々がいらっしゃるわけでございますが、そういう方々に対する将来の給付のために積み立てているものでございます。現在、労災年金の受給者の方々は約二十一万人でございますけれども、この方々に対する給付に将来必要と見込まれる給付原資に比べまして、この積立金の額は約六割という状況でございます。そういうことからいえば、引き続き私どもとしては積立金の積み増しの必要があるというふうに考えているところでございます。
  239. 末広まきこ

    末広真樹子君 一家においてはそういう奥さんがいてくれるといいなと、財布のひもがかたくていいなと思うんですけれども。  平成八年度の労働省重点施策を見ても多種多様な施策がうたわれております。一見、きめ細やかな施策であるのかなと思われます。でも、私がこの予算案をにらんでいて一番不思議に思ったのは、これでより労働者の生活は豊かになっていくのでしょうかという素朴な疑問なんです。きょうの午前中審議いたしました高齢者雇用安定法についてもそうなんです。シルバー人材センター連合の創設が一体どう高齢者にとってプラスになるのかが見えてこない。今通常国会で改正される五つの法案すべてについても素朴な疑問を抱かざるを得ない。どこに一体効くんだいというような気持ちがします。この前審議いたしました労働者派遣法でもいらいらを感ぜざるを得ませんでした。労働者派遣事業適正運営協力員制度などという効力のない制度、役に立たない制度をつくってなぜ予算を増額していくんでしょうか。余りにも予算が総花的になっていないのかなと。行政改革と言いつついろいろな特殊法人をつくったり、○○センターつくったり××審議会つくったり、結局は行政肥大化を招いているのではないのでしょうか。  例えば労働者派遣業の問題業者を取り締まったりするんだったら、いろんな機会を設けずに、労働基準監督官の権限を強化し人員を増加すればどうでしょうか。官が有効に働かないというのであればいたし方がない、オンブズマンのような民間登用の機関を一本つくることも一案ではないかと思います。もう総花的施策はやめにして、機能しない制度や機関は廃止して、有効な方法に絞って予算をどかんとつけるべきだと思いますが、大臣、基本的認識をお示しください。
  240. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 確かに先と言われますように、予算を組む場合に単なる総花的な組み方というのはいかがなものかという気持ちは私ども持っています。それだけに労働省予算をつくる際にも、現実は各政党の予算要求というものが労働省に対してもなされるわけでありますが、それを精査しながら、どこに重点的に配分をすれば今の労働行政に一番有効かということも時間をかけて検討しながら、最終的な予算の配分枠を実は決めているわけであります。したがって、先生が言われるように、豊かな勤労者の生活を保障するのは、単に労働省が取り組んでいる施策とそれを裏づける予算だけによって勤労者の生活が豊かになるというものではなくて、それは行政と経済界とあるいは労働界、それぞれの持っている役割というものが十分に発揮されて一つのものとして結果的に大きな効果が生まれるものというふうに私は理解をしております。そういう面でいきますと、今の労働省の組んでいる予算というものは、総花的なのではなくて必要な最小限の予算はそれぞれの分野において保障するということを前提にして、私はこの予算配分を決めたと自負をしているわけであります。
  241. 末広まきこ

    末広真樹子君 そういう予算の決め方をしてくると、スキームがあってそこにはこれだけをつけてやると、つけてもらえなかったところがぴいぴい言うからもうしょうがないからまたつけようということになって、重点施策というものはいつまでたっても打てないのではないかなと思うんです。  それに関する具体的事例として高齢者雇用考えてみます。高齢者ニーズに対応した雇用就業対策の拡充として平成八年度予算額は約百六十三億七千万円が挙げられております。ここに高齢者に関するすべての制度の費用や助成金が全部挙げられているんでしょうか。私は、地元のさまざまなところを回って、余りにもいろいろな制度があることにびっくりいたしました。似通った制度、そして意味のない、実効性のない事業大臣にお伺いしたいんですが、二百四十一兆円の赤字国家日本の将来を踏まえて、思い切った制度や事業の統廃合をして行財政改革を本気でやるべきときが来ているんではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  242. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) せっかく先生の御指摘でございますが、例えばこの間の高齢者雇用安定法の改正もそうでありますが、一つのそういう組織をつくる、その組織が必要でないものをつくったとは思ってないんです。それぞれやっぱり必要だからつくっているのであります。先生が言われるように、そういうものは一切つくらずに、労働省職員の数が無制限に拡大されてすべてがそこで取り仕切ることができれば一番いいんでありますが、行政改革もありますし、できるだけ職員の増加というものを抑えて、そのかわりに民間の活力やあるいは能力というものも生かし切ってもらうということで、いろんな個々の組織もつくったりしてきているわけですね。  したがって、先生が言われるように思い切った整理、統合をすることはこれは当然必要なことかもしれませんけれども、しかし労働省としては今持っている使命、その使命を達成するために必要なものが今労働省関係でつくられているのでありまして、それを運営するために、あるいはそのことが一つ事業として行われていく場合の最低限のものはやっぱり国が保障してやらないとできないという面がありますから、そういう面では私は、今予算として提起している中にこれは切って捨てていいというものは残念ながら一つもない。本当はもっともっと広げたいんですが、広げるところを辛抱して今の予算の項目というものは最小限に絞った形で必要なものを配置していくということでありますから、先生のせっかくの御指摘でございますが、これを切り捨てるというものはないというふうにひとつ御理解願いたいと思います。
  243. 末広まきこ

    末広真樹子君 あえてきつく言わせていただいているので、シンプル・イズ・ベストという言葉があるように何事も原点に返って簡素になってみるという精神は必要であろうかと思ってきつい表現をしております。  高齢者能力開発で、県立名古屋高等技術専門校を見てまいりました。このことは前の委員会でも簡単に触れてまいりました。平成五年に四十八億円の費用をかけ移転開設された建築面積一万一千平方メートルの実に立派な施設でございます。高齢者対象となる離転職者コースは平均年齢五十五・四歳、就職率が三割強であるということも前にも述べております。ここには離転職者コース、一年間に三百名のほかに、中学・高校卒業者対象のコースがあるんです。これは二年間で一学年百二十名ずつが在籍しております。ここでは高齢者向けでも第二次産業に偏っており、農業であるとかサービス業であるとかの幅広い選択が与えられておりません。若者向けはどうかというと、せっかくの情報処理科の中に、これはすばらしい設備ですよ、恐らくは名古屋大学もぶつ飛ぶというぐらいのすごいものだと思うんですが、英語などの外国語を導入することに対して何の配慮もないんです。外人教師一人いないんです。英語ができなくてどうして海外とインターネットできるんですか。ひょっとすると労働省は鎖国時代の日本をイメージしているのかなと心配になりました。  能力開発のために世代別、目的別、男女別でどれほどの予算がかけられているんでしょうか。そして、その能力開発のあり方についてもっともっと時代に応じた改革がなされていっていいと思うんですが、いかがでしょうか。
  244. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 先生指摘のように、職業能力の開発につきましては、経済あるいは産業構造等非常に変わる中で、やはりその変化を円滑に乗り越えていくためにも、新しい時代に対応した能力を一人一人の方に身につけていただいて発揮していただくことが何よりも大事だというふうに認識しておりまして、そういった方向でこの関係施策推進を図ってまいりたいと思っております。  御指摘予算の面でございますが、平成八年度能力開発関係予算といたしましては、総額千六百億円を用意しておりまして、御案内の資料にもございますように、そのうちでも産業構造等が変わる中で新しい分野あるいは高付加価値化を担う事業主の方へオーダーメード型の訓練を実施していく、そういった人的資産形成プログラムを軸に百七十五億円をまとめて予定しております。  御指摘の世代別あるいは男女別、目的別に分類できるかということでございますが、私どもいろいろと工夫できるかどうかやってみましたが、実は例えば障害者の方につきましても、できるだけ私どもは一般校に入っていただくような努力をしておりまして、障害者専門校十九校ございまして、ここに要する費用としては六十九億円を予定しておりますが、ほかの一般校でもかなり障害者の受け入れが進んでおりますのでちょっと区分けできないとか、あるいは事業主が実施します能力開発の施策につきましても、生涯の節目節目で労使と計画を立てて能力開発に取り組む場合の助成金を二百八十億円ほど予定してやっておりますが、これも定年間近の人から若年者の方まで一緒に入っておりましてなかなか区分けができない。そういうことで世代別、男女別、目的別に提示することについては御容赦を願いたいと思います。  いずれにしましても、御指摘のように県立の能力開発校、御指摘の名古屋の件等も含めまして、私ども常々都道府県とも連絡、意思疎通を密にしまして、時代に合った能力開発を実施できるように御指摘を踏まえて努力してまいりたいと思っております。
  245. 末広まきこ

    末広真樹子君 決して我が地元の学校にいちゃもんをつけているわけではないので、労働省がそういうところまで細かく御指導なさるべきではないのかなと思います。一生懸命現場はやっているんですよ。  去年の第百三十四回国会障害者に対する雇用納付金に基づく助成金についてお尋ねしました。その際、助成金の削減が行われようとしていると質問しましたら、それに対する回答は、いかに効果的に適正に執行していくのか、そのための改善の措置であるということでした。ところが、聞こえてまいりますところによりますと、その削減措置の影響が早速去年の秋から出てきているということです。具体的には審査チェックが厳しくなっています。従来なら三カ月以内には支給された助成金が、今では半年間待っても支給されるかどうかの回答すら出てこない、こういう状況でございます。助成金が切り刻まれ、さらにその支給も大幅におくれるようでは何のための障害者雇用助成金なのかわかりません。  次の質問は、雇用納付金財政はいかに悪化しているというのか数字でお答えください。そして、助成金業務の遅滞をどう是正していかれるのか、明らかにしてください。
  246. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 身体障害者雇用納付金財政の状況でございますけれども、最近雇用率が着実に改善をする、それに伴いまして収入の方は着実に減少しているわけでございます。平成六年度の収支実績を見ますと、収入が二百四十九億二千五百万円、これに対しまして支出の方は三百三十一億五百万円ということになっておりますし、また平成七年度について見ますと、収入がさらに減少しておりまして二百二十六億八千七百万円、これに対しまして支出の方は三百三十一億七千万円が見込まれるといったような状況でございます。  また近年、助成金の認定申請の件数、これは平成六年度実績が今一万件を少し超えておりますけれども、それからまた支給申請の件数、これは平成六年度実績で四万四千件余りでございますが、いずれも増加傾向にあるわけでございまして、その審査に当たりましても障害者の特性に応じた具体的な措置の内容について十分な審査をやっていかなきゃいかぬというようなことから、支給までに時間を要している場合もあるわけでございます。  これまでも、私どもといたしましては助成金の認定あるいは支給業務に関しましては円滑な処理に努めてまいったわけでございますけれども、今後ともより一層審査業務の迅速化を図りまして、助成金の支給が遅滞するといったようなことがないように最大限の努力をしてまいりたいと思っております。
  247. 末広まきこ

    末広真樹子君 ぜひお願いいたします。  今年度予算の重大な柱として豊かな勤労者生活の実現が挙げられております。そのことを考えますと、特にこの日本にとっては住宅の保障がまず第一に考えられなければなりません。勤労者の豊かな生活を考えるとき、一方に時短があるとして、もう一方で住宅問題の解決は不可欠です。とはいえ労働省で住宅政策を立てろということではございませんで、労働省の立場から建設省に強く働きかけていくことが必要なのではないでしょうか。建設省が住宅施策の管轄省であっても、従来の縦割り行政ではいけないと思うんです。労働省、厚生省それぞれの立場で住宅保障を強く発言していくべきだと私は思うんですが、大臣、この点の基本的認識及び省庁間の連携についてのお考えをお示しください。
  248. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 勤労者の持ち家比率というのは少しずつ高まってきている状況にはございますけれども、自営の方々とかそういう方々に比べるとかなり持ち家率が低いという状況があって、このあたりをどう改善していくかというのが労働省の大きな仕事だろうと思っております。  このため、財形制度で非課税貯蓄制度を活用し、また持ち家融資制度を活用しながら、いろいろと住宅の面でも勤労者福祉対策をやっておりますが、労働省は勤労者福祉の立場から、建設省は住宅政策の立場から、そこで一緒になるところがあるわけでございますので、建設省と十分連携をとりながら、とりあえず現実的には財形制度の活用という観点から住宅を通じた勤労者福祉に貢献してまいりたい、そのために努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  249. 末広まきこ

    末広真樹子君 雇用促進事業団のつくる雇用促進住宅とか財形制度の中での住宅融資というのは微々たるものであるということを私も聞いておるんでございますが、労働省のもとに十三の審議会がございます。そして、そのほか労使コミュニケーションを進めるための産業労働懇話会があります。産業労働情報を収集するためには産業別経営者懇談会なる機関もあります。  さきに労働者派遣事業適正運営協力員の委員選任の問題点を挙げました。余りにも女性委員の数が少な過ぎます。そして、その委員は大企業の経営者、連合の労組幹部、そして大学の先生などに偏り過ぎています。これらの審議会などに使われている予算の総額について教えてください。その中の人件費、事務経費の内訳もお願いします、手短に。
  250. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 平成八年度の審議会関係予算額は二億二千八百九十四万円で、うち委員手当として二億四百四万円、委員の会議出席のための旅費及び会議の資料作成等の事務費として二千四百八十九万円を予定しております。
  251. 末広まきこ

    末広真樹子君 それだけ予算を使って、今後こうした審議会等の委員で、先ほど来の御議論もございましたが、だれがどういう発言をしたかわかるのでは嫌だなという無責任な顔の見えない委員はどんどんおやめいただいた方が結構じゃないかと。もっと幅広い立場でさまざまな労働者、経営者そして市民に広げていこうというお考えをお持ちでしょうか。何よりもさまざまな労働者の声を酌み取るシステムが肝心だと思うのですが、いかがでしょうか。
  252. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 労働行政の課題につきましては、労使関係の間において解決される問題というのは大変多いわけでありまして、雇用の問題、労働時間短縮等々皆そうでございます。したがいまして、労働省関係の審議会は公益を代表する委員のほかに労使を代表する委員、この公労使の三者構成で通常は運用しております。  その際、労使の委員につきましては関係労使団体の推薦を得て、役所で勝手に任命するのではなくて推薦を得て任命するというのが現在までとってきている方式でございまして、その推薦に当たりましてはできるだけその分野に精通した方を推薦していただくように、また女性委員を積極的に推薦していただくように従来からお願いをしているわけでありまして、こういったことで今後とも審議会の充実を図っていきたいというふうに考えております。
  253. 末広まきこ

    末広真樹子君 先ほど来、労働省に大変厳しい発言をしているので、職員皆さんはひょっとすると末広はおれたちのリストラをやろうとしているのじゃないのかなという思いではらわたが煮えくり返っている方もいらっしゃるのじゃないかと思います。決してそうじゃないんですよ。労働省職員の皆様は優秀な方が多くて、たくさんのお仕事をこなしていらっしゃると非常に敬意を持って日ごろ感じております。  しかし、さまざまな人々がどのような労働実態にあるのかを現場で肌で知っているかについては、これは限界があるんじゃないかと思うんです。各都道府県へ出向している方も多いとは思います。各労働部などの機関、職安を含めてもどうしてもデスクワークに偏りがちで、現場労働者の視点は薄くなりがちだと思います。職員皆さんの、これは質問ですが、職員皆さんの研修予算は年間どれほどでしょうか。そしてその研修実態はどのようなものでしょうか。もっと労働現場に接し、労働者の生の声を聞く研修が必要かと思いますが、その点いかがでしょうか。
  254. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 平成八年度の研修の実施にかかります予算額は四億四千百三十五万円でございます。研修内容は、初任者研修、中堅職員研修あるいは管理職研修というふうに縦系列の研修と、それから労災保険なら労災保険の研修というふうに横の系列の研修と、こういったものを組み合わせまして、年間約二千五百名ぐらい、労働省職員は約二万五千名でございますが、その一割ぐらいに毎年研修を行っているところでございます。  現場の声を聞くような研修ということでございますが、労働省職員二万五千人のうちの大部分は第一線の職員でございまして、日々労働者と接しているわけでございます。問題になるのは労働本省で勤務する職員かと思いますが、Ⅰ種採用職員につきましては入省しました年に八カ月程度、二、三カ月たちましてから八カ月程度第一線に派遣をしまして、そこで研修をしてもらうというふうな制度をとっております。  ただ、おっしゃいましたことは大変重要な問題だと思っておりまして、研修について我々はいつも試行錯誤でやっているような状態でございます。今後とも充実をしていきたいというふうに思っております。
  255. 末広まきこ

    末広真樹子君 非常に前向きに取り組んでいただいてありがとうございます。ぜひその線でお願いしたいと思います。  前回、労働者派遣法の審議の際、派遣事業に対するPR費用が七年度百万円から八年度予算では一千百万円に増額されておりました。それでは、労働省全体でのPR予算は幾らになるのでしょうか。
  256. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 労働省平成八年度の行政広報経費は約八千三百万円でございまして、内容としましてはテレビ番組等を通じるもの、あるいは労働省独自の広報誌をつくっているもの、こういったものでございます。
  257. 末広まきこ

    末広真樹子君 細切れにPRを行っても、カラーパンフレットにお金をかけても、大抵各行政機関でそのパンフレットが眠っているという事態になりかねないのですね。テレビやビデオ、そしてパソコンを活用されてインターネットのホームページを開いて労働省への不満や苦情を受け付けるなど、時代に応じたPRも今後は必要じゃないのかなと思います。  そこで、大臣にお伺いしたいのですが、これからの時代に見合った労働施策のPR方法についてどのような御意見をお持ちでしょうか。労働行政の改革に応じて国民理解国民的議論を巻き起こすためにはどのようになさるのか、基本的見解をお示しください。
  258. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 現在、労働省がとっております広報の手段というのは幾つもございまして、例えばテレビ番組で「快適マイワーク」というのがございます。あるいは広報誌等では労働行政全体について「労働時報」であるとか「労働ニュース」、これは毎月発行いたしております。各行政について「労働基準」あるいは「職業安定広報」あるいは「職業能力開発ジャーナル」、これも旬間であったり毎月であったりして発行しているわけであります。また、ポスター、パンフレット類も、いろいろな運動の月間がありますね、その月間に合わせて安全・衛生週間であるとか、ゆとり創造月間であるとか、あるいは高齢者雇用促進月間など、そういう公的な行事、これに合わせてそういうポスターやパンフレットも大量に実は作成をして配布をしております。あるいは総理府の広報を通じたものとして「あまから問答」、私も出演させていただきましたけれども「あまから問答」であるとか、あるいは新聞の広告、これは中央紙、地方紙も含めてであります。あるいは文芸春秋や一般週刊誌などにも広告を実は出しているわけであります。  しかし、それだけ幾つも出しておってもなかなか目につかないではないかとか、途中でとまっているではないかという御心配でありますけれども、そういうものが途中で滞留されないようにできる限りこれからも広報に力を入れていきたいと思いますし、今先生の御指摘のように、インターネット時代でありますから、それにどう対応するかということもこれからの重要な検討課題だと思います。  労働省は、私常に言っているんですが、非常に地味な官庁ではあるけれども、これほど大事なところはないと思っておりますので、労働省ここにありということがわかるような、先生方にも御協力いただきながら私ども積極的な広報活動を展開していきたいと、こう思っております。
  259. 末広まきこ

    末広真樹子君 新米議員の私が予算というものに取り組んで四万八万どこからつっついても決してぼろを出さない永井労働大臣でございますので、ぜひどんどんテレビの生にお出になって、現況の雇用とか労働施策とかというもののPRに大臣御自身が体を張っていただきたいなと私は思うのでございます。  一〇%を超えるヨーロッパの失業率、その対策にいずこの国も頭を痛めているんです。新しい雇用を創出した国が次の時代のリーダーとなることは、これはもうみんなよく知っていることだと思います。新しい時代に向けた労働対策、そして働く人の意欲活力を引き出し、豊かさを実感できる生活のために、総花的ではない、重点課題へどすんと予算をつけて、着実に成果を上げたら次に行こうという労働行政をお願いして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  260. 足立良平

    委員長足立良平君) 以上をもちまして、平成八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、労働省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  261. 足立良平

    委員長足立良平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  262. 足立良平

    委員長足立良平君) 次に、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。永井労働大臣
  263. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) ただいま議題となりました労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  労災保険給付に関する決定に対して不服がある被災労働者等については、その迅速かつ公平な保護を図るという観点から、裁判所の判断を仰ぐ前に、労災保険審査官への審査請求及び労働保険審査会への再審査請求という二段階の審査請求手続を設けております。  しかしながら、近年、「過労死」事案に見られるように、審査請求事案が複雑となっていることなどから、審査請求事案の処理期間が長期化する傾向にあり、その迅速な処理が求められております。  このような中で、昨年、最高裁判決において、第一段階の労災保険審査官の決定が遅延した場合に、再審査に段階を移して手続を進めることができる旨の規定が置かれていないという問題点が指摘されたところであり、同様な審査請求手続を設けている雇用保険法を含め、その審査請求制度の見直しが求められている状況にあります。  このような事情にかんがみ、政府といたしましては、審査の迅速化を図るとの観点から、労災保険審査官または雇用保険審査官の決定が遅延した場合に関する手続を整備するとともに、労働保険審査会の審査体制の充実等を図ることとし、このための法律案を作成し、関係審議会の審議を経て成案を得ましたので、ここに提出した次第であります。  次に、この法律案の内容の概要を御説明申し上げます。  第一に、労災保険審査官または雇用保険審査官に対して審査請求をしている者は、審査請求をした日から三カ月を経過しても当該審査官による決定がないときは、その決定を経ないで労働保険審査会に対して再審査請求をすることができることとしております。  第二に、現在、労働保険審査会は委員六人をもって組織しておりますが、新たに三人を増員し、委員九人をもって組織することとするとともに、そのうち三人は非常勤とすることができることとしております。  また、これに伴い、再審査請求事案について意見を述べることができることとされている関係労働者及び関係事業主を代表する者に関しても、現在、労災保険制度については労使各四名とされていますが、これをふやし、労使各六名とすることとしております。  以上のほか、労働保険審査会による労災保険審査官または雇用保険審査官に対する差し戻しの制度を廃止する等、所要の整備を行うこととしております。  なお、施行期日は、一部の内容を除き、本年七月一日としております。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  264. 足立良平

    委員長足立良平君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十三分散会      ―――――・―――――