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1996-04-26 第136回国会 参議院 労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月二十六日(金曜日)    午後一時一分開会     —————————————    委員異動  四月十八日     辞任         補欠選任      平田 耕一君     佐々木 満君  四月十九日     辞任         補欠選任      山本  保君     石井 一二君  四月二十六日     辞任         補欠選任      坪井 一宇君     依田 智治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         足立 良平君     理 事                 南野知惠子君                 真島 一男君                 武田 節子君                 大脇 雅子君     委 員                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 山東 昭子君                 前田 勲男君                 松谷蒼一郎君                 依田 智治君                 石井 一二君                 今泉  昭君                 星野 朋市君                 青木 薪次君                日下部禧代子君                 吉川 春子君                 末広真樹子君    国務大臣        労 働 大 臣  永井 孝信君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労働基準        局長       松原 亘子君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君    事務局側        常任委員会専門  佐野  厚君        員     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労  働者の就業条件整備等に関する法律等の一部  を改正する法律案内閣提出)     —————————————
  2. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十八日、石田美栄君及び平田耕一君が委員辞任され、その補欠として今泉昭君及び佐々木満君が選任されました。  また、去る十九日、山本保君が委員辞任され、その補欠として石井一二君が選任されました。  また、本日、坪井一宇君が委員辞任され、その補欠として依田智治君が選任されました。     —————————————
  3. 足立良平

    委員長足立良平君) 労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 山東昭子

    山東昭子君 昨今の経済界は少し明るさが見えたとはいえ、二月の失業率は二・二%、若年層では七%という状況です。これからも住専の影響金融機関等でリストラはもちろん倒産もささやかれ、雇用面では一波乱ありそうでございます。そうした中でのこの法案は、派遣労働者の位置づけを明確にする上で大切なものと考えております。  平成六年の時点で約五十八万人と言われる派遣労働者の中で、女性の占める割合はどれくらいでしょうか。
  5. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) これは私どもが行いましたサンプル調査でございますが、その結果で見ますと派遣労働者の約九割が女性であるというような結果になっております。
  6. 山東昭子

    山東昭子君 時代変化とともに生活者労働に対しての価値観やライフスタイルもさま変わりしてまいりました。特に女性の中に、私はどのように生き、何かをしたいと考え女性がふえてまいりました。そこには、みずからを磨き上げ一芸に秀で、確立したアイデンティティーのもとに社会につながっていこうという欲望が生まれているんです。  さて大臣、そのような人たちを満足させる職場環境整備が必要だと思うのでございますけれども永井大臣の見解をお伺いしたい。
  7. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘でありますが、女性の理想的な働き方といたしましては、さまざまな就業ニーズを持つそれぞれの女子労働者が、そのみずから持っている価値観によって主体的に職業生活あり方を選択する、そして選択した職業生活におきまして、性別によって差別されることなく、かつその能力を十分に発揮できることであるというふうに認識をいたしているところであります。  したがって、先生の御指摘環境整備でありますが、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇の確保対策、これがまず第一番目に重要なことだろうと思っております。そして二つ目には、職業生活家庭生活を両立させることを支援する対策であろうかと思います。三つ目には、パートタイム労働あるいは派遣労働等就業形態多様化に対応した対策であると思います。  これらの三点を中心にいたしまして、労働省としてはその環境整備全力を尽くしているところであります。
  8. 山東昭子

    山東昭子君 職業家庭生活の両立を支援するため、育児介護休業取得を促進することは重要ですが、この代替要員確保対策として労働者派遣事業を活用することとした理由を、お聞かせ願  いたいと思います。
  9. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 育児介護休業制度現状を見ますと、代替要員確保が困難という理由により育児介護休業がとれない、こういうケースが相当ございます。特に、企業内で代替要員確保することが困難な中で、企業中心休業取得者代替要員確保に係るニーズに迅速かつ的確に対応できる需給調整システム整備、これが強く求められているところでございまして、この点につきましては、育児介護休業法等審議をいただく前にいろいろ要望があったわけでございますが、特に中小企業からこの代替要員問題について強く要請があった、そういう経緯もございます。  こうした状況のもとで、労働者派遣事業につきましては、育児介護休業という比較的急な事態に対応した迅速な労働力需給整備が可能であるということ、ほかの方法では確保することが難しい専門的な知識等を要する労働者確保が比較的容易に可能であること、そういう特性を有するものであることから、育児介護休業取得者代替要員確保に係ります幅広いニーズに迅速的確に対応するという観点から、港湾運送業務であるとか建設業務等、あるいは一部政令で定める業務以外の業務につきましては労働者派遣事業を行えること等を内容とします特例措置を今回の改正案でお願いしているところでございます。
  10. 山東昭子

    山東昭子君 現在、我が国における育児介護休業取得状況をお聞かせください。
  11. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) お答え申し上げます。  育児休業介護休業取得状況につきましては、これは平成五年度の女子雇用管理調査でございまして、ちょっと古うございますが、これによりますと、育児休業につきましては、一年間に出産した女子労働者のうちの約五割が育児休業取得しております。介護休業につきましては、常用労働者のうち約〇・〇七%が取得をしているというふうに数字は出ております。この休業取得した労働者性別を見ますと、育児休業につきましては九九・八%ということでほぼ一〇〇%近くが女性でございますが、介護休業の場合は約四分の三が女性、四分の一が男性というふうになっております。  それから、実際の休業期間について申し上げますと、育児休業の場合は、三三・三%が三カ月から六カ月未満というふうになっておりまして、一年未満になりますと九四・九%ということでございます。それから介護休業の場合は、七七・七%が三カ月未満という数字が出ております。
  12. 山東昭子

    山東昭子君 そのような労働者が在籍する企業の中で、どれくらいが代替要員を採用しているんでしょうか。
  13. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 同じく平成五年度の女子雇用管理調査によりますと、育児休業の場合ですが、これは約三割、正確には二九・九%の企業代替要員を採用してございます。それから介護休業につきましては、これは平成三年度の調査でございますが、約二割の企業代替要員の採用を行っております。
  14. 山東昭子

    山東昭子君 中小企業においては、現業職技能職労働者代替要員確保に係るニーズが特に強いと聞いておりますけれども、今回の特例の創設により、これらの職種についても派遣で対応することが可能になるんですか。
  15. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 現在の労働者派遣事業制度におきましては、六十歳以上の高年齢者の場合を除きまして、御承知のように対象業務が十六業務に限定されているところでございますが、育児介護休業取得者の行っている業務につきましてはこれはあらゆる業務にわたっていることから、今回、育児介護休業取得者の行っている業務につきましては幅広く労働者派遣事業を行えることとする特例措置を設けようとするものでございます。  これによりまして、育児休業取得者の多くを占める事務職あるいは介護休業取得者の多くを占める現業職技能職におきましても育児介護休業取得者代替要員確保がより容易になり、社内での要員確保が特に困難な中小企業を初め、企業におきます育児介護休業の円滑な取得に役に立つのではないかというふうに考えているところでございます。
  16. 山東昭子

    山東昭子君 今回の特例で、派遣期間を一年に限定することにした理由は何でしょうか。
  17. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 育児介護休業者代替要員に係る特例につきましては、派遣労働者業務が一部の業務を除き制限されていないということによりまして、これを派遣期間を限ることなく認めた場合につきましては、派遣先常用労働者代替が起こるなどの弊害の心配も強いところでございます。  例えば、諸外国におきましていわゆるネガティブリストというような形で一般的に幅広く認めている場合につきましても、これは非常に業務繁忙期に限るというようなことで、一週間とか三カ月とか一定期間認める、こんな形で運用されている例も多いわけでございまして、また本特例につきましては、育児介護休業という特別な事態に対応した比較的短期的な代替要員確保目的とするものであることから、特例として認められるのが一定期間であってもその目的は達せられるものというふうに考えております。  このような観点から、中央職業安定審議会におきましては派遣期間については一年に限定することが適当であると。これを一年としましたのは、育児休業期間、これが法律で一年間というふうになっているわけでございまして、そういうことを踏まえまして、一年を超える期間継続して労働者派遣を行ってはならないというふうにしたものでございます。
  18. 山東昭子

    山東昭子君 このたびの対象は、法律で定められた最低限の休業に限らず、できる限り柔軟性を持たせて、育児介護休業取得者代替要員のスムーズな確保を図るべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
  19. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 今回の育児介護休業者代替要員に係ります特例につきましては、育児介護休業制度普及促進を図るという観点から、既に講じられております委託募集特例、これはこの前国会で成立させていただきました育児介護関係法律におきましてこの委託募集特例が定められているわけでございますが、それと同じように法律に定められました育児介護休業に加えまして介護休業、義務づけ前の介護休業あるいは育児介護休業に準ずる休業につきましてもその対象としているところでございます。  また、改正法施行後につきましては、法の趣旨及び中央職業安定審議会での公労使のコンセンサスを踏まえまして、制度目的に沿った効果的な運用が図られるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  20. 山東昭子

    山東昭子君 このような特例対象となる派遣労働者を初め、女性中心とした派遣という就業形態を選択する労働者について十分に福祉増進が考慮されなければと思うんですけれども大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  21. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 経済社会情勢変化が非常に著しいわけでありますが、その変化に伴いまして、みずからの技術知識を十分に生かしながら仕事内容や時間を選んで就業したいという、そういう女性中心とした労働者側ニーズが高まってまいっております。その一方、我が国経済界長期不況を経験しております中で、派遣労働者保護等観点からいろんな問題点指摘されていることも事実であります。  こうした状況を踏まえまして、本法案を提出し、労働者派遣という形態に対する新たなニーズに的確に対応するための措置を講ずるとともに、派遣労働者福祉増進を積極的に図る観点から、派遣事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針を公表するなどの措置を講ずることにしているわけであります。  今後も、派遣事業制度の適切健全な運用を図ることによりまして、派遣労働者を含むすべての労働者の方々の福祉増進が十分に図られますように全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
  22. 山東昭子

    山東昭子君 刻々と変化する国際経済の中で、我が国規制緩和を進めなければなりません。この点からの労働者派遣事業について、今後の進め方について大臣にお伺いしたいと思います。
  23. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) この労働者派遣事業規制緩和という問題につきましては、三月二十九日に改定を閣議決定しました規制緩和推進計画に基づいて適切に対処してまいりたいと考えております。  具体的には、まず、今まさに御審議をいただいております育児休業等代替要員に係る特例等内容とする労働者派遣法等の一部改正法案を提出させていただいたところでありますが、この改正法施行にあわせて対象業務拡大していく予定であります。さらには、昨年末の行政改革委員会における対象業務大幅拡大、不適切な業務以外は対象業務とするとともに、派遣労働者保護のための措置を講ずるという意見を尊重いたしまして、現在行っております有料職業紹介事業検討に引き続きまして、平成八年度中に制度あり方について検討を開始していく予定であります。
  24. 山東昭子

    山東昭子君 二十一世紀はアジア時代だとよく言われておりますけれども、今までは主に政治や経済分野までだったんですが、科学分野でもこれからはアジア時代が到来する可能性が大であります。  昨年一月に、スタンフォード大学を視察した折に出会った科学者、これは日本人を初めみんな優秀なアジア人でした。どんなに科学が発達しても人と人との触れ合いはなくなりません。日本の経済環境も、実力主義利害関係によって動いている欧米スタイル競争原理をとらず、人間的なつながりをベースにした人格主義組織をつくっていることも、私は儒教思想の日本らしさという点で評価をしております。ただ、現在では、世界経済の枠組みを残念ながら欧米がつくっているために、欧米が正義でアジアは悪であるというように単純に押し切られている状況でございますけれども、これからはアジアが台頭していく時代です。その中で、我が国経済労働環境東洋的価値観を大切にしながら繁栄していくことを願って、ぜひ労働省にも頑張っていただきたいと思います。  ちょっと短目でございますが、これで私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  25. 小山孝雄

    小山孝雄君 山東先生に引き続き、質問いたします。  安定局長、この前私ども委員会で実際派遣業を営んでおられる大手のマンパワー・ジャパン、そしてまた小規模の方に入るんでしょうかアネックス・ジャパンの二社を実地に見させていただきました。大変参考になったわけでございまして、会社概要をもらってきましたが、設立年月日昭和四十一年十一月三十日、これがマンパワー・ジャパン。アネックス・ジャパンというのが昭和五十六年三月、こう書いておりますが、いずれも派遣事業法が制定される前から同じ事業をやっておられたわけですが、この法律が制定される前、何の事業をやっていたんでしょうか、御存じでしょうか。
  26. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 先生指摘のように、ただいまの例につきましては、昭和六十一年以前につきましては派遣事業制度はなかったわけでございます。そういう中で事業を行ってきた、こういうことでございまして、この点につきましては職業安定法の第四十四条におきます労働者供給事業に該当する場合、これにつきましては問題があるところでございます。  ただ、一方で適正な請負という形で事業が実施されている場合については、これは法律上についての問題は生じない、こういうことでございまして、恐らくこれにつきましては、今言った後者の形で事業運営がされてきたものというふうに考えております。ただし、これは経済社会状況変化する中で実情になかなか合わないという問題点等もございまして、昭和六十一年に労働者派遣事業法が制定されたわけでございますが、当時におきましても非常に大きな異なる意見、そういうものがある中でこの法律が出発してきて十年間たっている、こういう経緯があるものでございます。
  27. 小山孝雄

    小山孝雄君 さかのぼって安定法違反会社だったんじゃないかなんてことを言う気はないんですけれども、この法律が制定されるまでの間、安定法違反行政指導を受けたりあるいは検挙されたりした例はどの程度あったんでしょうか。
  28. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 職業安定法第四十四条上問題があるかどうかという観点から見まして、昭和二十三年から三十年までの間、これ戦後の諸情勢の厳しい時期でございますが、この時期におきましては約十万三千件余の違反指導件数、私どもの指導した件数がございました。その中で具体的に違反であるということで認定された件数が約半分の五万件というような数字がございます。  これが、その後、世の中が安定し法律周知徹底が図られる中で、昭和五十一年から六十年までの間、この間につきましては、違反ということで私どもが指導した件数は大幅に減少いたしまして、六百二十件、それから違反であるという認定がされた件数が五十八件というような結果になっております。
  29. 小山孝雄

    小山孝雄君 このマンパワーさん、それからアネックスさんにもちょっと敷衍して言いますと、やっていることは前々から同じであったと。請負業としての形を整えておやりになっていたんだと思いますが、すなわちこの派遣事業法というのは時代求むるところであったんだろう、こう思うわけでございますけれども、といいましても全体の労働者の中で大体一%前後、このように承知いたしておりますが、この派遣事業で働く人たちというのはそんなに大幅には今までは伸びてきていないわけでございますが、これからの見通しはどう立てておられますか。
  30. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま派遣労働者現状につきまして全就業者数の一%程度ということでございまして、これの今後の見通しはどうか、こういうことでございますけれども派遣事業主から定期的に提出されます労働者派遣事業報告によりますと、派遣労働者数は、実際に派遣されていた常用労働者数一般労働者派遣事業登録労働者数の合計で昭和六十一年度におきまして約十四万人であったものが、平成六年度におきまして約五十八万人というふうにふえているところでございます。  今後の労働者派遣事業者数の推移につきましては、これを数量的に予測することは困難でございますが、今回お願いしております法律を成立させていただきまして、実施する際にあわせて予定しております政令改正により必要な適用対象業務の追加が行われました場合、またみずからの技術知識を生かしつつ、仕事内容や時間を選んで就業したいという、働く側の多様な就業形態に対するニーズが高まる傾向にあること等から見まして、一定の増加が見込まれるものと考えております。  ただ、今回の改正につきましては、対象業務拡大につきましても十二業務予定しているわけでございますが、その制限のない諸外国の例と比較しまして、無制限にどんどん拡大するかという点になりますと、そういう可能性は少ないというふうに考えておるところでございます。
  31. 小山孝雄

    小山孝雄君 この派遣事業で働く人たちというのは、御案内のとおりある程度の専門分野、専門的な知識や経験を持った人材派遣するわけでありますけれども、そのことが、不況を乗り越えていく努力を全国民が今負っているわけでございますけれども、そうした直ちに役に立つ人材というものを派遣する、そのことによって起業活動に大きなメリットがあるのかなという気もいたしますが、大臣、こんな点どんなふうにお考えになられますか。
  32. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 労働者派遣事業につきましては、労働力需要供給両面におきますニーズ多様化に対応いたしまして、労働力需給の迅速かつ的確な結合を図るためにこの労働力需給調整システムとして機能するものであるというふうに考えているところでございます。  特に、今後業務専門化が進む中で、継続的には必要としませんが、繁忙期等に一時的に、あるいは自社では得られない専門的な人材を必要とするそういう場合にはこのシステムが有効に機能して、産業、企業の発展に寄与するものではないかというふうに考えておるところでございます。
  33. 小山孝雄

    小山孝雄君 私は、そうした点も認めながらも、大臣にちょっとお考えを聞きたいんでございますが、派遣ということは、雇い主と使う主と、主が二つ出てくるわけで、その状況の中で人が仕事をするということがどういう人間に対して影響を与えるのかなと。私も何人もそういう労働に携わっている方を見てまいりましたんですが、ちょっと気になる点があります。  それは、働く場所が転々とかわるわけでございまして、絶えず移るわけですね。そうすると、自分仕事に対する責任感とか情熱、あるいは人間の大事な特性の一つであろうと思いますけれども忠誠心だとか、仕事に対する忠誠心、人に対する忠誠心、そういったものがおろそかになるのかな、そんな心配も多少するわけでございますが、いかがでございますか。
  34. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生が御指摘のように、この派遣という形で働く場合に仕事への責任感情熱あるいは労使一体感等を欠如させるおそれがあるのではないか、私は必ずしもそのことについては否定をいたしません。  ただ、派遣される労働者が特別に自分の専門的な知識技能を持っている場合が多いわけでありますから、その場合、職場転々とかわっても自分の持っている知識能力に対する大きな自負心を持っていらっしゃると思うんです。ですから、職場そのものがかわっても自分の遂行する業務、その業務を遂行するための技能知識能力、こういうものについては私は、特定の職場にずっと常用雇用労働者で働く人と比較して問題が起きるとは実は思っていないわけであります。  しかし、先生の御指摘のような御心配も必ずしも否定できないわけでありますから、長期継続雇用を前提とした労働者企業への帰属意識等にも影響を与えないような形で対応してまいりたい、このように考えるわけであります。このため、我が国におきましても、原則として専門性の高い業務分野等に限って労働者派遣事業を認めるなど一定制限を、実はだからこそ設けているわけでありまして、今後も我が国雇用慣行との調和も十分に留意してまいりたい、このように考えます。
  35. 小山孝雄

    小山孝雄君 この法律時代の求めるところによって制定されたものだと、私はこう理解しております。十年間採用してまいりましたこの制度、それもまた時代の求めるところに従って、派遣事業を行っていい職業の定めということも、今時代の求めるところはどうも、規制緩和という観点からいきましても、いわゆるネガティブリスト方式というものが提示されているわけでございますけれども中央職業安定審議会でいろんな議論はされていたようではありますけれども、今回見送られたわけでございます。その辺の経緯はいかがでございましょうか、どうしてそうなったのでしょうか。
  36. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 中央職業安定審議会におきます審議過程におきましては、この適用対象業務あり方についてネガティブリスト方式を採用することが適当であるという意見も出ました。が一方、そのような制度の抜本的な変更を検討するものであれば、違法な派遣先に対する厳格な制裁措置等もあわせて検討する必要がある、こういう意見も出されました。その点につきましては審議会で合意に至らず、最終的には専門的な業務であるか否か等の基準、従来の法律に基づきます基準を基本として、必要性のある業務について新たに適用対象業務とするということでコンセンサスが得られ、中央職業安定審議会の建議として取りまとめられたところでございます。  したがいまして、このネガティブリスト方式、あるいは一方でより労働者保護についてきちんとすべきであるという意見につきましては、引き続きの検討課題ということで取りまとめられております。
  37. 小山孝雄

    小山孝雄君 ネガティブリストを採用する方が、派遣労働者、働く人たちにとっては選択肢がふえるという、こういうメリットがあるんじゃないかという意見もありますけれども、その点はどうですか。
  38. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 労働者派遣事業対象業務拡大につきましては、御指摘のようにメリットもある一方、労働者雇用する者と、指揮命令するいわゆる使用する者とが分離するという特殊で複雑な形態であることから、労働者保護に欠けるおそれも高いというふうに考えられておりまして、派遣先におきます常用雇用労働者との代替を促進するおそれもなしとしない、あると、こういう認識もございます。  労働者派遣事業あり方につきましては、こういうメリット、デメリット、そういうものを十分勘案しながら、雇用問題の当事者であります労使を含めた関係者による十分な検討を踏まえて、適切に対処していくことが必要であろうというふうに考えております。
  39. 小山孝雄

    小山孝雄君 三月末の閣議決定、規制緩和推進計画によりますと、ネガティブリスト方式採用について、平成八年度、今年度中に再検討すべしと、こういうふうに提言しておるわけですが、この審議会での審議の方向、そして見通しなどはどうでしょうか。
  40. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘のように、去る三月二十九日に改定し閣議決定されました規制緩和推進計画におきましては、労働者派遣事業制度あり方について、対象業務大幅拡大、不適切な業務以外は対象業務とするとともに、派遣労働者保護のための措置を講ずる等の行政改革委員会の御意見、これを尊重して有料職業紹介事業制度あり方、これを現在検討しているところでございますが、この検討に引き続きまして、平成八年度中にはこの検討を開始する、こういう計画でございます。  他方、これに基づいて、今回の法改正を行うこととなった昨年末の中央職業安定審議会の建議におきましても、「この報告に沿った制度改正が行われた後においても、経済社会情勢変化等の状況を踏まえ、」「制度の在り方等について、多角的に必要な検討を行っていくことが適当である。」、こういう指摘がされているところでございます。  中央職業安定審議会におきましては、現在有料職業紹介事業につきまして、この見直し、検討を進めていただいているところでございまして、労働省といたしましては、規制緩和推進計画を踏まえ、その検討結果を八年中に取りまとめていただき、引き続き中央職業安定審議会におきまして労働者派遣事業あり方について検討を開始していただく予定でございます。
  41. 小山孝雄

    小山孝雄君 今回の改正案では、育児介護休業での代替要員にかかわる派遣事業、これは言うなればネガティブリストになったわけでございますけれども、この特例が設けられた趣旨経緯等はいかがでございますか。
  42. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 少子・高齢化の急速な進展あるいは核家族化等に伴いまして、労働者が生涯を通じて充実した職業生活を営むためには、仕事育児や家族の介護、これを両立させながらその能力や経験を生かすことのできる環境を整備すること、これが極めて重要でございまして、育児介護休業制度普及促進の必要性が高まっているところでございます。  労働者育児介護休業を円滑に取得できるようにするためには、休業取得する労働者代替要員確保対策、この充実が必要でございます。現状を見ましても、代替要員確保が困難であるという理由により育児介護休業取得できないというケースも相当ございますし、特に企業内で代替要員確保することが困難な中小企業中心休業取得者代替要員確保に関するニーズ、これに迅速的確に対応できる需給調整システム整備が強く求められてきたところでございます。  こうした状況の中で、労働者派遣事業は、育児介護休業という比較的急な事態に対応した迅速な労働力需給調整が可能であること、他の方法では確保することが難しい専門的な知識等を有する労働者確保が比較的容易に可能であること等の特性を有するものであることから、育児介護休業取得者代替要員確保に係る幅広いニーズに迅速的確に対応する観点から、港湾運送業務あるいは建設業務その他政令で定める一部業務以外の業務につきましては労働者派遣事業を行えること等とする特例措置を今回お願いしているものでございます。
  43. 小山孝雄

    小山孝雄君 育児介護休業についての特例を認めたのが今回の改正案でありますが、同様な趣旨で今後産前産後の休暇あるいは病気休暇、有給休暇を取得した労働者代替要員についても特例を認めることを検討してはいかがかなと、こういう意見もありますが、こうした意見に対しどう思われますか。
  44. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 産前産後休業あるいは傷病者が取得する年次有給休暇につきましては、これは労働基準法に基づく最低労働基準として、労働者の権利として従前から認められている制度でございます。現時点におきましては、育児介護休業のように新たに代替要員確保対策等を講じる必要性はそう高くないというふうに考えられることもございまして、中央職業安定審議会の建議を踏まえ、今回育児介護休業取得者代替要員に係る場合に限って特例対象というふうにしたいということで、お願いをしているところでございます。
  45. 小山孝雄

    小山孝雄君 派遣労働者として働く人たち、これは働く先、仕事場の方は言うなれば要らなくなったら直ちに解雇しやすい、言い渡しやすい、こういうこともありまして、中途解除なども多々あるんじゃないかと思っておりますが、そこで働く人たちの処遇、そういう冷酷な処遇に遭っていないかどうか、こうした実態についてはどのように把握しておられますか。
  46. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 平成七年に労働省が行いました調査によりますと、一般派遣事業主の四七・八%、特定派遣事業主の三一・八%が労働者派遣契約を中途解除されたことがあるとしております。その理由といたしましては、派遣先事業計画の急な変更、中止等があったためというものが一般派遣事業主の七五・一%、特定派遣事業主の八三・五%と最も多くなっております。その際の派遣労働者の取り扱いといたしまして、一般派遣事業主の八三・九%が他の派遣先を見つけたとする一方、一般派遣事業主の一七・七%が他の派遣先が見つからないというような理由で解雇したというふうにしております。
  47. 小山孝雄

    小山孝雄君 今回の改正案で、派遣契約の必要事項に派遣契約中途解除の場合の労働者保護のために必要な事項を定めると、こうしているわけでございますが、その具体的な内容はどうなんでございましょうか。
  48. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 法案の第二十六条第一項第八号におきまして、派遣契約の当事者は、派遣契約の締結に際し「労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項」を定めなければならないとされておりますが、その内容といたしましては、例えば、相当の猶予期間をもってする事前通知、派遣事業主派遣先の連携による新たな就業機会の確保、適切な損害賠償に関する措置といったものが考えられるところでございます。  これらの内容につきましては、今回の改正法によりまして労働大臣が公表することとされております派遣元及び派遣先が講ずべき措置に関する指針に盛り込む予定でございますけれども、個々具体的にどのような派遣契約で定めるかは、派遣契約の当事者である派遣事業主及び派遣先が協議して、派遣労働者雇用の安定を図る観点から必要と思われる措置を定めるべきものであるというふうに考えているところでございます。
  49. 小山孝雄

    小山孝雄君 今御説明いただきましたが、この改正案で、働く人たちの中途解除等々、あるいは解除された場合、次のところを直ちに探してもらって新しいところへ行くと、こういったことも行われるわけでございますけれども、この改正案の実現によって今後の苦情処理体制の改善はどの程度進むと思われますか。
  50. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 例年七月に実施しております労働者派遣事業適正運営推進月間におきまして、全国の公共職業安定所等に寄せられた労働者派遣事業に関する苦情相談件数、これを見ますと、平成六年度におきまして二百十五件、平成七年度において二百六十九件に上っているところでございます。これらの苦情につきましては、公共職業安定所の窓口でも対応いたしておりますが、ほとんどのケースは派遣元あるいは派遣先責任者を中心派遣先派遣事業主との密接な連携のもとにおおむね適切に処理されているのではないかというふうに承知いたしているところでございます。  今回の法案におきましては、労働者派遣契約に苦情処理に関する事項を定めさせることといたしておりますが、これによりまして派遣元あるいは派遣先におきます苦情処理体制が派遣契約締結時に確立されるようになるとともに、派遣労働者が当該派遣就業におきます苦情処理体制を十分理解できるようになることが期待されるところでございます。また、派遣元・派遣先管理台帳に苦情処理に関する事項を記載していただく、こういうことによりまして派遣元、派遣先においてより適切に苦情処理が行われることになるとともに、行政によります指導監督の際により効果的な指導を行うことができるようになるというふうに考えております。  中央職業安定審議会の建議を踏まえまして、専門的な相談援助を行うことのできる知識、経験を有する団体が行う苦情処理に関する取り組みの促進、これも図ってまいりたいというふうに考えております。
  51. 小山孝雄

    小山孝雄君 この前、当委員会で視察をした際、両社からつぶさに実情をお聞きしたわけですが、余り大きなトラブルはあの両社に限ってはそんなにないということを私どもは伺ったわけでございます。例えば、賃金不払いとかそうした大きなことはないけれども、むしろ派遣先職場での喫煙に派遣労働者が耐えられない、特に女性が多いからそういうことだろうと思いますが、あるいは職場には窓がないとか、そうした働く環境に対する対処が大事だと、大きな点としてあるということもありました。  こうした点、どういうことを働く人たちのために改善をしていくべきなのか。恐らく会社運営の現場においてはそれがマニュアル化されていると思いますけれども、これからの派遣労働の現場で働く人たちのための苦情処理体制、賃金不払い等労基法違反に該当するようなことは別にいたしまして、非常にきめ細かな体制充実の施策を進めるべきだと思いますけれども、これは行政としてどんなふうに取り組んでいかれますか。
  52. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 派遣労働者の適正な派遣就業確保のために、適切な苦情処理を初めとします派遣事業主あるいは派遣先が講ずべき措置につきまして十分な周知啓発を図ることは、これは御指摘のように大変重要な課題であるというふうに考えております。  このため、今回の法案におきましても、適切な苦情処理に係る事項を初め派遣事業主あるいは派遣先が講ずべき措置に関して、その措置を適切に実施するための方法及びその措置を適切に実施するために考慮すべき事項を労働大臣の指針といたしまして公表するとともに、パンフレットを作成、配付すること、その他により積極的にPRし、周知徹底を図って適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  53. 小山孝雄

    小山孝雄君 ぜひその点はしっかりお進めをいただきたいと、こう思うわけであります。  それから、この改正案には派遣事業の許可の有効期間について、更新していった場合三年から五年でいいですよという点、あるいは労働者派遣事業に係る諸手続の簡素化が盛り込まれております。そしてまた、現在政府において規制緩和推進計画を実行中でございますけれども、国民の負担を軽くして行政手続の簡素化を図る、こうした観点から諸手続の簡素化を積極的に進めていかなければいけないと私も思うわけでございます。  この三月に行われました規制緩和推進計画の改定では、労働者派遣事業について新たに幾つかの事項が加わったということでありますが、新規に検討することになった事項について明らかにしてもらいたいと思います。
  54. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 労働者派遣事業につきましては、三月二十九日に改定を閣議決定いたしました規制緩和推進計画におきまして、まず一つは、育児休業等取得する労働者業務について、「一定業務を除き労働者派遣事業を行うことができることとする。」こと、これがまず一つであります。二つ目には、行政改革委員会における対象業務拡大。これがかなり議論のあったところでありますが、「不適切な業務以外は対象業務とする」、これは当然なことでありまして、もう一回申し上げますと、「不適切な業務以外は対象業務とするとともに、派遣労働者保護のための措置を講ずる等の意見を尊重し、引き続き制度の在り方を検討する。」こと。この二つが新規事項として盛り込まれたところであります。  労働省といたしましては、この規制緩和推進計画のこれらの内容を踏まえまして、その適切な実施を図ってまいる所存でございますが、具体的には、最前も申し上げましたけれども、今まさに御審議いただいております育児休業等代替要員に係る特例を含む労働者派遣法等の一部改正法案を提出させていただいているところでありますし、制度あり方につきましては、行政改革委員会意見を尊重いたしまして、現在進めている有料職業紹介事業あり方検討に引き続き平成八年度中に検討を開始する予定であります。  もともと、この三月二十九日に改定をする前は、平成九年に検討開始と、こうしておったんでありますが、これを前倒しいたしまして平成八年度中に検討を開始するということを明確にしたわけであります。
  55. 小山孝雄

    小山孝雄君 先日、私ども見させていただきました派遣元の事業主の皆さんの意見を伺って、派遣で働く人たちにふさわしい仕事を見つけるために本当にさまざまなノウハウを持っておられて、派遣労働者派遣先の両者についてきめ細かな把握を行い、大変努力をされている姿をかいま見たわけであります。  また、派遣で働く若い人々の中には、派遣やアルバイトを経ていずれ正社員となる道を歩む人も多いということでありました。派遣で一生を送るんじゃなくて、さまざまな仕事を経験してキャリアを積んで、そして正社員となって働いていかれるわけでございますが、ああしたお話を伺いますと、派遣事業拡大しますと常用雇用代替が進むとの懸念を出される方もいらっしゃるんですけれども、それはそれほど心配する必要はないのかなという気もいたします。むしろ、労働者が、働く人たちが多様な働き方ができるように選択できるように派遣事業をさらに拡大、発展させていくことが重要なのかなと、こう思うわけでございますけれども、今後の労働者派遣事業の発展に向けた取り組みについて、大臣のお考えをお尋ねいたします。
  56. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 経済社会情勢がどんどん変化していくわけでありますが、この労働力の需給の迅速的確な調整、そういう観点から新たな業務分野におきまして労働者派遣事業を活用したいという企業ニーズが生じてまいります。その一方で、みずからの技術知識を生かしながら仕事内容就業の日時を選んで就業したいという、そういう働く側の、労働者側ニーズも一層高まってきておることもこれまた事実であります。  こうしたニーズに的確に対応するために、今回の法案におきましては、育児介護休業取得者代替要員に係る労働者派遣事業特例措置を講ずるとともに、施行時に予定しております政令改正によって必要な適用対象業務の追加を実は予定しているわけであります。  今後も、この労働者派遣事業労使双方のニーズに応じて派遣労働者にとってその福祉の向上に役立つ制度として健全に成長するように適正な適切な制度運用に努めてまいりますが、片方で、この派遣事業の発展に伴って派遣先における雇用労働者雇用が不安に陥っていくことのないように、だからこそ一定期間制限も設けているわけでありますが、少なくとも本来の雇用安定ということと離反しないように、相反しないように、そういうことは十分な配慮を行って指導を徹底してまいりたい、このように考えるわけであります。
  57. 小山孝雄

    小山孝雄君 ぜひ、そのような御努力をさらにお続けをいただきたいということを要望いたします。  次に、ちょっとお時間をいただきまして時短の問題について、労基局長おいでいただいておりますので、若干質疑をさせていただきます。  御案内のとおり、あとちょうど一年で四十時間制の待ったなしの実施へ法律施行、移るわけでございますけれども、基準局長におかれましては特に、ほかの党もそうなのかもしれませんが、我が党の、自由民主党の労働部会あるいは労働時間のプロジェクトチームの会合においでいただいて、かなり激しく皆様から意見をぶつけられておるわけでございますが、大変御苦労さまでございます。そしてまた、商工団体あるいは中小企業団体等々から反対意見も出されていると思いますけれども、反対でございますという、法律はこうなっているけれども、それはやめてくれというその理由は何ですか。
  58. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) その中小団体がどういう理由で反対しておるのかというのを私どもから御説明するのもいかがかと思いますので、四団体からいただいております要望書などを見て判断しておるところを申し上げますと、今円高にあるということと産業構造が非常に大きく転換するときにあると、そして加えて資産デフレを伴った長期に及ぶ景気の低迷が続いているということから、我が国経済は破綻にもつながりかねない深刻な事態にあると、こういう御認識でおられるわけでございます。  そういう中にありまして、中小企業におかれてもいろいろな努力をされておられるわけでございますけれども、今先生指摘の来年四月からの四十時間実施ということは、中小企業にとってはこの時短のコストアップの吸収ということが、先ほどちょっと御紹介しました経済情勢の判断、こういったものから極めて困難であるというふうに指摘をされているわけでございます。  そういうことから、労働時間法制については、中小企業労働時間の実態とか経営の実態に十分配慮してほしい、雇用に及ぼす影響経済情勢を十分考えてほしいと。こういったことから、来年四月の四十時間実施をもう少し先送りしてほしいと、こういう御要望を受けているわけでございます。
  59. 小山孝雄

    小山孝雄君 不況であるからという理由が一つですね。それから、私のところへも最近とみに多くなってきているんですが、今まで一般的に労働委員の関係のところをずっと回っておられたようですが、今度は例えば商工会の、例えば私なんかでしたら今住んでいるのが埼玉なんですが、埼玉の商工会の会長、よく昔から知っている人がつてをたどって来る。そうすると会わないわけにはいかない、会えば激しく言われるわけですけれども。その中で、今不況だからという理由が一つありました。もう一つは、この時間制を守らないと逮捕される、検挙されると、これはけしからぬぞと。要するに、不況だからできないよということ、それからそれを守らないときにお縄になる、そんなばかなことないじゃないかという、大きく分けるとどうもこの二つなんだろうなと、いろんな方がおっしゃっていますけれども、私は思います。  この前の質問において、大臣労働時間四十時間制への完全移行ということの御決意をお聞きいたしておりますので、そっちの方向へ向いていくであろうと、こう思っているわけでございますけれども、そうした不況だからということと、それからそれに違反した場合は逮捕者が出るのはそれはたまらぬという、こうした意見に対して、どんなふうに今現在お考えでありましょうか。
  60. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生から、この前の委員会でもこの問題について御指摘がございまして、そのときもお答え申し上げたんでありますが、御指摘のように、労働基準法に違反しました場合は罰則規定がございます。しかし、この種の労働時間短縮問題について、違反をしているから直ちに逮捕するというような極端な指導方法をとるつもりは持っていないのでありまして、まずは指導する、勧告をする、そういうところから始めていくのは当然な行政の姿勢であろうと実は思っているわけであります。  もう一つは、このあと一年足らず猶予期間が残っているわけでありますが、前回の政令で猶予期間を延長しましたときは大変景気がよいときでございまして、こんなに人手が足りないときに労働時間を短縮したのでは中小企業はもたないということなどが大きな理由であったわけであります。今回の理由は、今基準局長から申し上げましたように、要望されておる中身というのは、これだけ不況なときに労働時間を短縮するということはコスト増をもたらして体力的にもたない、こういう理由になっているわけであります。  端的に言いまして、景気のよいときは人手が足りないから実施できない、景気が悪くなるとコスト増につながるから実施できないということになりますと、実は実施する時期がないわけでありまして、それだけに十年間かかってこの労働時間の短縮というものを着実に実行するための準備をずっとできるように期間をとってきまして、その間に一定特例措置であるとかあるいは猶予期間であるとかいうことを対象として設けて処理をしてきたわけであります。  しかし、今商工団体などを中心中小企業の皆さんが労働時間の短縮をさらに猶予してもらいたいという申し出のときに申し上げてきているんでありますが、コスト増につながることをどうやればそれを解消することができるのか。あるいは、例えば大型スーパーのそばに専門店の小さな小売店がある、そのスーパーの営業時間が最近は非常に長くなってきている。これはたくさんの従業員を抱えているわけでありますから三交代とか二交代とかいう制度をとっているわけでありますが、小売店のいわゆる専門店ではそういう対応ができないということも言われました。  しかし、それはパートを推奨するわけではありませんけれども、パート労働者も活用するなどのいろんな方法があろうかと思うのでありますが、そういう問題につきましてもどういう手だてを講じればその障害を取り除くことができるかということについて具体的に提示をしてほしい。片方で、時短奨励金制度も今回の予算が通りますと大幅にふえるわけでありまして、そういう予算も活用してもらいたい、いろんなことを申し上げてきているわけでありますが、なかなか具体的に幾ら求めてもどれが障害で、その障害を取り除くためには行政にこれをしてほしいという具体的な問題提起はいまだにないわけであります。去年の十月から私はずっと言い続けてきているのでありますが、具体的なことは御提示がない。こういう状態でありますから、一日も早くそういう問題点のクリアをするために具体的な問題点の提起をしてほしい、こういうふうに実は考えているわけであります。  もう一つは、結論的に申し上げて大変恐縮でありますが、四十四時間なら四十四時間と猶予期間が設けられている。今現在は何とか四十四時間をクリアしている。それで、三月三十一日までずっと進んでいくわけです。そのときに、この三月三十一日までに四十四時間はクリアはしておりますけれども、そのクリアしているものをもう一歩踏み越えて次の段階へ進むという積極的な前向きの準備の体制がとられませんと、来年の四月には実施できないわけであります。しかし、こんなことを言えばちょっと言葉が過ぎるかもしれませんけれども、難しい現状の中で、来年の三月末まで来てなおかつ実施できないよという状態が起きたときに、また改めて再延長してもらえるのではないかなという、そういう思いも片方で持っていらっしゃるのではないかと私は思えてならぬわけであります。  したがって、ここは労働省として決意を新たにして、来年の四月一日以降完全に実施ができますように、そういう問題点を解消することができますように、緊急でありますが、五月の中旬に全国の労働基準局長の招集を私の職権において行いまして、労働基準局長を集めまして、徹底してその取り組みを強めていきたい、こう考えているわけであります。
  61. 小山孝雄

    小山孝雄君 今、大臣から直ちに検挙するということじゃなくて、指導する、勧告する、こういった手順を踏んでと、こういう話がありました。その辺のところはぜひ、時短反対だと運動を進めておられる方々に御理解をいただければな、こういう気がして今拝聴しておりました。  そこで、今の改正労働基準法が実施されて、この三年間で時短を守らないということで検挙されたり逮捕されたり罰則を受けた統計はありますか、どのくらいありますか。
  62. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 先生指摘のように、労働基準法の三十二条と四十条で労働時間が法定されておりまして、それに違反した場合には六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金に処すというふうに法律上はなっているわけでございます。私ども労働基準監督官が定期に事業場を訪れまして、監督をいたしているわけでございます。  先生平成五年以降ということで御質問がございましたので、それ以降の状況をちょっと申し上げさせていただきますと、平成五年におきまして今申し上げました労働基準法三十二条及び四十条、つまり法定労働時間を定めた条文でございますが、これに違反しました事業場は平成五年で約二万でございます。平成六年が一万八千、平成七年が二万九千という状況でございます。全体に監督いたしました事業場数が違いますので、違反した事業場のその割合もあわせて御紹介させていただきますと、平成五年が一二・二%、平成六年が一一・二%、平成七年が一六・五%というふうになっております。  これらの事業場につきましては、法律違反、つまり、例えば三十二条に定められております労働時間を超えて労働させる場合には労使協定が必要なわけでございますけれども、その労使協定を結ばずに法定労働時間を超えて労働させたとか、また労使協定で定められている上限時間を超えて時間外労働をさせた、そういったような違反がほとんどなわけでございますが、そういった事業場に対しましては、法律の遵守を求め、今労働大臣の方から御答弁申し上げましたとおり、指導する、そして直してもらうというようなことをまずやっているわけでございます。そういうことによりまして、ほとんどの事業場はそれを改善されております。  そういうことから、送検した件数はぐっと少なくなっているというのは当然でございまして、私ども平成五年と六年の数値しか手元にちょっとないのでございますけれども平成六年に送検した件数は十三件、先ほどの三十二条、四十条違反事業場のうち、送検したのは十三件ということでございます。平成六年は九件ということになっております。なお、最終的にそれが処罰されたかどうかということにつきましては、ちょっと今手元に資料がございませんが、監督署から検察庁の方に送致したものが以上の件数でございます。
  63. 小山孝雄

    小山孝雄君 商工会議所の皆さんが持ってこられた反対の書面の中に、これが施行されたら全国の警察署の留置場がもうあふれ返ると、こういうような書き方もありましたものですから、あえてお尋ねをいたしたわけでございます。  先ほど、大臣が述べられた指導する、勧告する、こうしたことからやっていくんだということは、ぜひ多くの皆さんに御理解を得なければ、この問題の御理解は得られないのかなという気がいたしたところでございます。  以上で私の質問を終わります。
  64. 武田節子

    ○武田節子君 平成会の武田でございます。  私は、初めに派遣事業規制緩和企業のリストラの関係についてお尋ねいたします。  今回の本法律案とは別に、規制緩和の一環として、政令改正により現行の十六の適用対象業務に対して新たに十二業務を追加することが予定されておりますけれども、私は労働者派遣事業規制緩和は時期尚早であり、タイミングとしてはよい時期ではないと思っております。と申しますのは、いまだに雇用環境は大変厳しい状況にありますし、今日の我が国経済にとって最大の課題は、いかに産業構造の転換を達成するかにあると思っているからであります。  我が国が、国際公約としてきた内需型産業構造への転換もいまだその成果が上がっておりませんし、それどころか、円高に伴い人件費のコストが上昇したことによって、製造業を中心に労賃コストの低い途上国に立地するという産業空洞化が進み、逆に途上国から輸入するという産業構造に変わってきております。生活大国日本を実現するには極めて厳しい環境にあると思うわけでございます。昨年九月の経済対策によって、産業構造の転換を行うための種々の施策が推進されてきておりますけれども、そうやすやすと達成されるものとも思われません。  今日の、この構造的な不況が長期化する中で労働者派遣事業について規制を緩和することは、企業の減量経営、つまり人減らしや賃金抑制に利用されるのみで、労働者にとって雇用環境の悪化につながることを強く懸念しておりますけれども大臣の御所見を伺いたいと思います。
  65. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) まず初めに、産業の空洞化という御指摘がございました。  確かにそういう一面は否定できない面があろうかと思いますが、それだけに、先般リールで行われました雇用サミットにおきましても、発展途上国の労働基準の引き上げが重要であるということで認識を統一されたわけであります。今複雑多様な国際情勢の中で、先進国の側からのみ発展途上国の労働基準のあり方を見詰めるということについてはいろんな問題点があろうかと思いますが、OECDやILOにおきましてこの労働基準の引き上げについては今検討が進められておりますし、また日本のODAあるいは進出した企業が相手国に対して貢献できるような、そういう立場に立った産業提携といいますか企業の進出といいますか、そういうものをきちっと対応すべきだということを私も雇用サミットで強く主張してまいったところであります。  その一方で、今この不況が長期化する中において、今回のこの派遣法の改正によりまして対象業務拡大することについては時期尚早ではないか、労働条件を低下させるのではないか、こういう御指摘でございますが、この適用対象業務あり方については、長い時間をかけて中央職業安定審議会において検討していただいた内容でありまして、まず一つは、専門性等があること、二つには、労働力の迅速的確な結合を図るために必要であること、三つには、ここが非常に大事なところでありますが、常用労働者代替を不当に促進しないこと、こういう基準に基づき必要性について具体的に検討するとの考え方に立ちまして、慎重に検討が行われてきたものと思っているわけであります。  したがって、必要性があるものに限って新たに適用対象業務とすることにしているわけでありまして、また、あわせて今回の法案におきまして、派遣労働者就業条件確保派遣先における派遣就業の適正化のための措置の充実を図ることをこの法案の中に盛り込んでいるわけであります。このようなことから、今回業務の追加につきましては、常用雇用代替となったり、あるいはリストラあるいは減量経営に利用されるおそれは少ないものと理解をしているわけであります。  今後も、この労働者派遣事業の適正な運営確保派遣労働者就業条件整備、あわせて最前から申し上げておりますように、派遣先における常用雇用労働者労働条件をこのことによって著しく低下させたりあるいは雇用を不安定化させたりすることのないような指導はきちっと対応してまいりたい、このように決意をいたしているところであります。
  66. 武田節子

    ○武田節子君 私は、今日の雇用政策において最も重要でかつ緊急の政策課題は新卒者の雇用確保であると思っております。今なお厳しい高失業率の問題でもあろうかと思いますが、その認識を強く持っていただきたい、こう思います。  新卒者の就職浪人、つまり就職先が確保されないことは当人にとっても大変な苦悩でございますし、また両親にとってもさらに深刻でございます。二十年以上も子育てや教育にと必死に取り組んできた結果が失業者というむなしいことでは慰める言葉もございません。四月八日発表の平成七年度大学、短期大学、専門学校卒業者の就職内定状況調査によりますと、就職希望者の割合が昨年に比べて一・四%低下している中で、厳しかった昨年に比べて就職希望者の内定率も〇・七%低下しております。しかも、就職できた学生においても、希望先へ就職というよりも就職できればもうどこでもいいといったような、恐らく夏から秋にかけて相当離職率が高くなるのではないかとも言われております。新規学卒者、未就職卒業者の就職支援のための学生職業センターの設置推進をしてこられましたけれども、その成果はどうなっているのでしょうか。  新卒者の希望は、まず正社員として安定して働くことであり、このように新卒者の就職が安定していない状況では、若い人がその能力を生かしにくい状況となり、産業構造の転換といってもまさに夢にすぎません。この点の意識をしっかり持って、ちぐはぐな労働行政、雇用政策にならないように、中心軸をしっかり定めて進めていただきたいと思いますけれども大臣いかがでございましょうか。
  67. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 初めに、この三月末の卒業生の就職状況を申し上げてみますと、高校卒では就職内定率は九六・四%となっております。これは二月末現在よりもかなり就職数がふえてまいりまして、昨年と比べますと〇・五ポイント下回っておりますが、これが九六・四%。  中卒者につきましては、就職内定率は八八・七%であります。しかしこれは、中卒者の場合でいいますと求人倍率は二・〇八倍でありますから、求人の側はかなりまだ求人数を持っているわけでありますが、全体の一〇〇%ということになっていないのが実情であります。大学卒でいいますと、四年制大学では九五・九%になりました。かなり地方で御努力を願ってきたわけでありますが、それにいたしましても前年の同期よりも〇・四ポイント下回っているわけであります。短期大学では八四・九%となっておりまして、前年と比べて三・四ポイント下回っておりますが、十二月から一月の段階にかけての数字から見ますとかなり上回ってきたというふうに言えると思います。専修学校では九五・四%でありまして、これは昨年よりも一・七ポイント上回っております。かなり専修学校の就職状況はよい状況になっているわけであります。  一般的には、労働者は常用雇用を希望している場合が多いものと思っているわけでありますが、このような本人の希望に応じて安定した雇用確保することはもちろん雇用政策の第一の目的だと考えています。とりわけ先生が御指摘になりましたように、前途ある若者が安定した雇用につけないとすれば、社会的に見ましても大きな損失だと考えています。したがって、労働省といたしましては、昨年十二月、中長期的な雇用の方向を定めた第八次雇用対策基本計画を策定したわけでありますが、この計画を踏まえまして学生職業センターあるいは学生職業相談室における新卒者への就職支援を積極的に行っているところであります。  ちなみに、今申し上げましたように、大卒では、四年制では九五・九%ということになっておりまして、短期大学でも八四・九%の内定率でございますが、それぞれ調査してみますと、大学に対して行った求人票はかなりまだ埋まっていないのです。そこがミスマッチといえばミスマッチでありますけれども、就職求人数はかなりまだ企業が出したままになっているわけでありまして、したがって、労働省といたしましては、その求人をしている企業に対して引き続きこれからでも採用する意思があるかどうかを確かめた上で、それを全部求人一覧表として改めて全国に配布するとともに、就職していない人たち対象に、五月、六月の段階でかなりの全国の箇所におきまして集団面接会も開くことにしているわけであります。  ちなみに申し上げますと、毎年の集団面接会は八月以降にしているわけでありますが、ことしはそれまでの段階で未就職の学生を対象にそういうことも行っていこう、こういうことにしているわけであります。そして、この改正業種雇用安定法に基づきまして、いわゆる失業なき労働移動の支援などから成る新総合的雇用対策を強力に展開しているところであります。今後とも、積極的な求人開拓等の新規学卒者対策を強力に推進しながら、新規学卒者を含めまして、我が国が高失業社会に陥らないように総力を挙げて取り組んでいくことにしているわけであります。  もう一つつけ加えておきますと、これは先生の御指摘ではないんでありますが、阪神・淡路大震災の兵庫県などにおきましてはかなり求人倍率が低いということで御指摘をいただいておりまして、今挙げて求人開拓をやっているわけであります。震災以降、新たに求人数を開拓した数字は一万一千名を超えました。先日も私視察に参りまして職業安定所の窓口に行ったんでありますが、当初は建設業に集中しておりました求人が、最近は事務職にまでかなり幅が広がってまいりました。その事務職は年齢を制限しているものもありますし、あるいは五十五歳までなら年齢は問わないとか、あるいは経験を問わないとかいうかなり幅広い事務職の募集も出ているわけであります。  しかし、それでもなお埋まっていかないところは一体何が原因なのかと。今までは肉体労働ではだめだと言っておった人たちがかなりおるわけでありますが、現実には事務職もかなり採用数はふえてきた、二・七倍もふえてきているんです。その事務職もなかなか埋まっていかないところは何なのかということは、これからの労働行政にとって非常に注目すべきところでありますので、これについてはその背景について分析を進めていることも申し添えておきたいと思います。
  68. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございます。大臣の積極的な雇用政策に心から期待しておりますので、なお今後ともよろしくお願いいたします。  次に、私は適用対象業務拡大についての基準についてお尋ねしたいと思いますが、今回の労働者派遣事業制度見直しては、現行の十六の適用対象業務拡大して、新たに十二業種を加えようとしております。適用対象業務拡大について、中央職業安定審議会の民間労働力需給制度委員会ではどのような基準を立てていたのでしょうか、お聞きいたします。  また、審議会では当初五十ほどの業務が候補に挙がっていたと伝えられていますが、その中から十二業種を選ばれたのでしょうか。その決定に至るまでの検討経過を審議会の議事録公開によって明らかにされているのでしょうか。どなたが出席し、どのような事情をしんしゃくして十二業種を決定されたのでしょうか、お尋ねいたします。
  69. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 中央職業安定審議会におきまして、その審議におきましては各方面から御要望のあった業務につきまして、専門的な知識技術または経験等が必要な業務であること、労働力需給の迅速的確な結合を図るために労働者派遣事業として行わせる必要がある業務であること、常用雇用労働者代替を不当に促進しない業務であること、というこの三つの基準。これにつきましては、現在の労働者派遣事業法の第四条あるいは二十五条、こういう規定を背景にいたして踏まえておりますが、この基準に基づきまして適用対象業務とする必要性を具体的に検討すると、こういうことで慎重に検討が重ねられた結果、十二の業務を追加することが適当であると、こういう建議を昨年十二月にいただいたところでございます。  なお、この十二につきましては、先生指摘のように、各方面からの御要望、五十を超える要望がございました。これについて今言った三つの基準に合うかどうかということと、それからこれにつきましては関係者の意向、これは労働者側の御意見あるいは業界団体の御意見、そういうところについての御意見、そういうものも踏まえまして、結局結果としては十二に集約されたところでございます。  なお、中央職業安定審議会につきまして、これは公労使三者構成の審議会でございまして、特に労使の利害に直結する事項を調査審議するというようなことから慎重に考えなければいけない面もございまして、この点について議事要旨について公開をしているところでございます。
  70. 武田節子

    ○武田節子君 労働者派遣事業の需要の推移を見てみますと、平成三年をピークとしてその後下降傾向にありましたけれども、九五年下半期には売上高が前年の一〇ないし二〇%増と需要が上昇してきております。これは企業がリストラの手段として労働者派遣を利用する傾向があるのではないでしょうか。派遣労働者が正社員を代替している可能性が高いと推測できます。派遣労働者を使う企業にとっては退職金の積み立てをする必要がないし、また社会保険料の雇用主負担がない、あるいは採用の選考事務が必要ない、また社内で教育訓練を行う手間を省くことができるなどなど、労務コストを削減する上で大変大きなメリットがあります。また、不況になれば派遣受け入れを中止するなど、雇用調整の安全弁としても使われているのが実情であります。  大臣に伺いますが、労働者派遣事業による派遣労働者が明らかに企業のリストラに活用されている場合について、常用雇用者の代替として利用されていることが明確であり、また明らかに人員削減を目的としている場合については、派遣法が派遣労働を認めた趣旨を外れるものであり、法の趣旨に反する行為と言えるのではないでしょうか、御所見を伺わせていただきます。
  71. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 労働者派遣事業につきましては、当該事業の実施が労働力需給の適正な調整を図るために必要であり、かつ適切な場合において認められるものでございまして、現行におきましては十六の対象業務について認められているところでございます。  したがって、例えば人員削減等を目的とする企業が、関係企業として派遣会社を設立し労働者派遣会社に移して、その派遣会社から派遣労働者を受け入れるようなケースにつきましては、これは適正な労働力需給調整を図るものとは言えませんので、これは認められないというふうに考えているところでございます。いずれにいたしましても、労働者派遣事業法に基づきまして適正に対処してまいりたいというふうに考えております。
  72. 武田節子

    ○武田節子君 少なくともこうした実態については行政指導によって是正されるべきだと思いますが、実態をよく把握していただきたいと思います。  次に、追加される適用対象業務の中には、企業における事業の実施体制に関する企画、立案等の業務が挙げられていますが、これはまさに企業がリストラや雇用調整を行う場合に利用されると思われるものであり、もしこの業務派遣として利用が進めば、外部の関係者による厳しいリストラが一層進む可能性が出てくるのではないでしょうか。この業務企業で利用するというのは具体的にどのようなニーズがあってのことなのでしょうか。本来、企業みずからがなすべき業務であって、派遣事業に適するものなのでしょうか。これは適用対象業務から外すべきだと思われますが、いかがでございますか。
  73. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 中央職業安定審議会におきましては、適用対象業務について、先ほども申し上げましたように、専門性があること、常用雇用労働者代替を不当に促進しない業務であること等の基準を基本にいたしまして、その必要性について具体的に検討した結果、十二の業務について新たに適用対象業務とすることが適当である、こういう建議がされたところでございます。  企業におきます事業の実施体制に関する企画、立案等につきましても、その基準に基づきまして適用対象業務とすることが適当であるというふうにされたものでございまして、具体的には当該業務、これは企業の組織等についての特に専門的な知識や経験に裏打ちされた企業の組織、業務処理の方法等、事業の実施体制に関する調査、分析、企画等の業務という理解で審議会で合意されたところでございまして、これがリストラや雇用調整に利用されるといったおそれはないというふうに私どもとしては判断いたしております。  いずれにいたしましても、その具体的な範囲につきましては、労働者派遣施行令において明確にされなければならないものでございまして、法律施行する段階におきまして、中央職業安定審議会において今後さらにこの点について御審議をいただきたいというふうに考えております。
  74. 武田節子

    ○武田節子君 もう一点伺います。追加の適用対象業務の中の研究開発の業務も何となくあいまいであると思います。このままでは範囲が広がり過ぎるのではないでしょうか。専ら研究開発の補助業務に使うために派遣が利用されていくおそれがございます。適用対象業務についての三つの基準に照らし、研究開発業務はどのような検討によって加えられたのでしょうか、具体的に御説明ください。
  75. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 中央職業安定審議会におきましては、適用対象業務について、先ほども申し上げましたように、専門的な知識技能または経験が必要な業務であること等の基準、これを基本としてその必要性について具体的に検討されたところでございます。  研究開発の業務につきましても、この基準に基づきまして適用対象業務とすることが適当であるという判断がされたところでございますが、具体的には、例えば専門性につきましては、この業務は自然科学に関する高度な知識、経験に裏打ちされた分析力、思考力及び構成力等専門的な知識技術または経験を必要とすると、そういう業務でございまして、いわゆる補助的な業務は含まれないものと理解されております。そういうことで適当であると判断されたものでございます。  具体的な範囲につきましては、これも労働者派遣施行令において明確にされるべきものでございまして、中央職業安定審議会において今後さらに御審議いただかなければならないというふうに考えております。
  76. 武田節子

    ○武田節子君 よろしくお願いいたします。  次に、私は常用雇用代替している派遣の実態についてお尋ねいたします。  先般、大手商社の社長が本年四月一日の入社式の訓示の中で、一九九七年度の女子一般職の採用を中止する方針を明らかにしました。OA化による事務作業の減少や派遣社員の増加により一般職の必要性は低くなっていると、派遣社員の活用を堂々と公言しております。一九九七年度以降も女子の一般職採用ゼロを継続する可能性があると報道されておりますが、これは明らかに常用雇用を減らして派遣に切りかえようとする企業考え方を示しているものと思われます。女子だけを取り上げた点は、男女雇用均等法の趣旨からいっても問題がございます。  派遣契約の期間には種々の制限がつけられていますが、常用雇用への影響が実際に起きています。派遣先企業の認識はこの程度の認識しかないんですね。昭和六十年の法制定時には、日本の雇用慣行を壊すことを認めるものではないということで、第二十五条に「労働者職業生活の全期間にわたるその能力の有効な発揮及びその雇用の安定に資すると認められる雇用慣行を考慮する」と、運用上の配慮を定めています。しかし、実態を見ると常用雇用代替しております。  大臣は、この実態についてどのような御認識をお持ちでしょうか、お尋ねいたします。
  77. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘の点でありますが、基本的には、企業がその企業活動を維持するためにどのような労働者を採用するかはその当該企業が自主的に判断すべきものであることは言うまでもないと思うのであります。  今、先生が御指摘の、女性の一般職を採用しないという御指摘でございますが、新聞記事を私も引用させてもらいたいと思うのでありますが、女性の一般職を採用しないという表現を使っているわけではないんですね。いわゆる男女の区別なく募集しておりますけれども、実際の採用は女性だけだったという、ほとんどが女性だけだったという企業だと私は思うのでありますが、たまたまこの一般職の採用を中止するということになりますと、結果的にその企業では採用されておった女性が狭き門になってしまう、こういう実例だと私は思うのであります。  しかし、労働省といたしましては、この新学卒者の募集、採用に当たってはすべての職種、採用区分で男女に均等な機会を与えられることが不可欠だという考え方を持っておりますので、これがまた男女雇用機会均等法の精神でもありますから、今後ともこの雇用分野における男女の均等な機会及び待遇の確保に努めてまいりたいと思うわけであります。  また、派遣労働者によって業務代替されるということでありますが、私どもが一番問題視しておりますのは、この派遣労働者によって、その派遣先雇用されている常用労働者がそのことによって解雇されたりあるいは労働条件が低下させられたり、そういうことが起きないように、今回のこの法律改正案の中にもだからこそ具体的な問題を規制をしているわけでありますが、そういう視点に立ってこれからも対応してまいります。ただ、新規採用がとまったことによってそこの雇用労働者労働条件が悪くなるというふうに短絡的に考えることはいかがなものかなと、こう思います。しかし、そういう問題が起きないように私どもは十分な対応をしてまいりたいと、こう思っているわけであります。
  78. 武田節子

    ○武田節子君 さらにもう一点申し上げたいんですけれども、他の商社でも三年連続して短大卒業以上の事務職の採用を見送って、単純な補助的業務派遣社員や契約社員で補うと人事部長が言明している例がございます。このままでは、派遣のこうした利用がどんどん拡大していきます。派遣社員の導入によって正社員の採用を減らしたり、リストラの手段として利用しないよう、また特に新入社員採用への影響がないよう職業安定行政を通じて指導を行い、経済団体や事業主団体に協力を要請していくべきだと思いますけれども大臣にこの点をお伺いいたします。
  79. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 再三申し上げておりますように、この新規学卒者の採用に当たりましては、これまでも事業主団体に対しまして採用枠を拡大するように、そしてまた男女の均等取り扱いの確保について繰り返し要請もし指導もしてきたわけであります。今後とも、今先生の御指摘のような問題が懸念がないようになっていきますように今後とも積極的に対応してまいりたい。そして、男女雇用機会均等法及びその指針の周知徹底をさらに強めていきたいと、こう考えているところであります。
  80. 武田節子

    ○武田節子君 次は、中途契約解除と賃金の確保についてお尋ねいたします。  派遣契約が中途で解除された場合、それは実質的には派遣労働者の解雇も意味するものとなります。実際に解雇するには労働基準法第二十条によって三十日前の解雇予告が義務づけられております。契約解除は相当な猶予期間を持って行われるのが当然でございますけれども派遣労働者が収入を失うことは深刻です。実際問題として、派遣先による中途契約解除については損害賠償が行われ、派遣労働者も賃金分の補償がなされることが基本と考えますけれども、この点についてお尋ねいたします。
  81. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 今回の法案におきまして、労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者雇用の安定を図るために必要な措置、これを契約当事者は定めなければならないものとされておりますが、これについて、例えば相当の猶予期間をもってする事前通知、あるいは派遣事業主派遣先の連携による新たな就業機会の確保、適切な損害賠償に関する措置といったものを想定しているところでございます。  これらの内容につきましては、今回の改正法によりまして労働大臣が公表することといたしております指針に盛り込む予定でございますが、個々具体的にどのような派遣契約で定めるかは、適切な損害賠償に関する措置を含め派遣労働者雇用の安定を図る観点から、派遣契約の当事者である派遣事業主及び派遣先が協議して、必要と思われる措置を定めるべきものというふうに考えているところでございます。
  82. 武田節子

    ○武田節子君 派遣法は、第二十七条において派遣先事業主が行う不当な契約解除について例示を掲げて禁止しておりますが、第二十七条で掲げられた派遣労働者の国籍、信条、性別社会的身分以外にどのようなことが考えられますでしょうか。派遣法が施行された十年間で不当解除に当たるとされたことはどんなものがございますか、具体的にお示しいただきたいと思います。  また、労働基準法や労働組合法などの労働関係法規の権利行使を理由とする派遣契約解除は第二十七条により無効な契約解除となることを確認されたい、いかがですか。
  83. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 法第二十七条によりまして、労働者派遣契約の解除が禁止されている事由といたしまして法律で列挙されているもの以外では、障害者であること、あるいは派遣法第四十条第一項の規定により苦情を申し出たこと、あるいは派遣先が法に違反したことを関係行政機関に申告したこと等が考えられるところでございます。労働関係法令に規定されている権利を行使したことを理由とする派遣契約の解除が行われた場合につきましては、これは最終的には司法の判断を仰がなければならないものでございますが、当該権利の行使が派遣契約の解除の決定的原因であると認められる場合につきましては、一般的には当該派遣契約の解除は無効となるものというふうに解されるところでございます。
  84. 武田節子

    ○武田節子君 次に、管理台帳の閲覧についてお尋ねいたします。改正案では苦情処理について派遣元管理台帳、派遣先管理台帳に記載することとしていますが、記載内容について派遣労働者は閲覧を求めることができるのでしょうか。また、その内容について訂正を要求できることを明らかにすべきではないでしょうか。そうしないと、派遣労働者にとって一方的に不利な内容が記載されることが起きかねませんので、それを心配いたします。いかがでしょうか。
  85. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 派遣元管理台帳を派遣労働者に閲覧させるかどうかにつきましては、これは法律上特段の規定はございませんけれども雇用主と就業先が異なるという派遣労働の特性考えますと、派遣先から自己の就業状況が正確に派遣事業主に通知され、台帳に記載されているかを確認する等のため、派遣労働者に閲覧させることは、これは派遣事業主による適正な雇用管理に資する面もあるというふうに考えているところでございます。  具体的な取り扱いにつきましては、個々の派遣事業主労働者の話し合いにゆだねられることになるわけでございますけれども派遣労働者から公共職業安定所に苦情の申し入れがあったような場合につきまして、職業安定所の職員が派遣元管理台帳の内容を確認するというようなことも可能でございます。派遣元管理台帳に誤りがある場合の訂正につきましても、これも基本的には同じように考えられるところでございます。
  86. 武田節子

    ○武田節子君 それでは次に、病院における介護業務適用対象業務とすることについてお伺いいたします。  十二業務の中では、病院における介護について疑問がございます。平成八年三月末をもって病院の付添介護を廃止することに伴うものでしょうけれども、付添介護廃止は、これによって介護に当たっていた付添家政婦を病院で直接雇用すること、つまり雇用の院内化がねらいであったはずであります。介護職員を病院が自前で雇うことが当時の法改正趣旨であって、派遣を認めることは一その趣旨に沿わないのではないでしょうか。  また、病院における介護業務について派遣労働を認めた場合、懸念される点の一つは、病院の正規職員の賃金低下でございます。病院における女性の看護補助者の年収と女子労働者全体の年収の平均とはどのぐらいの差があるのか把握されておりますでしょうか、お伺いいたします。
  87. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 病院におきます付添介護につきましては、患者が付添婦を直接雇用していたため患者の費用負担が重くなっていたこと、また付添婦は業務従事中において病院の指示に従う必要がないため、病院として患者に対して質の高いサービスを行う上で問題があったことなどから、その廃止が進められているものと承知いたしております。また、付添介護の廃止に伴いまして、病院による看護補助者の直接雇用の促進も図られておりますが、直接雇用の者で常時対応することとした場合の人件費負担等から十分な雇用が進んでいない、そういう面もあるというふうに承知いたしております。  一方、病院におきます介護の業務労働者派遣事業適用対象業務にした場合においては、病院の必要に応じて派遣された介護労働者を医師、看護婦等の指揮命令のもとで就労させることとなるため、患者の費用負担の観点からも、病院としての質の高いサービスの確保観点からも、付添介護の場合のような問題は生じないものと考えておりまして、病院におきます介護を対象業務に追加することについては、これは付添介護の廃止の趣旨には反しないというふうに考えているところでございます。  それから、賃金の格差問題でございますが、これにつきまして平成六年の賃金構造基本統計調査によれば、看護補助者の平均年齢、これは四十二・三歳、平均年間賃金は約二百七十万円でございます。一方、同統計によります高卒女子標準労働者の四十二歳時の年間賃金、これは約四百四十万円であるというふうになっております。
  88. 武田節子

    ○武田節子君 病院における介護職員、つまり介護補助者の賃金は女子労働者一般に比べて低賃金であります。これには、病院職員の給与は社会保険診療報酬という決められた枠の中で支払われているという事情も影響しておると思いますが、病院で介護職員の業務派遣労働を認めた場合、病院が派遣元に支払う派遣料金の原資は診療報酬制度の枠の中で決められますから、派遣元がマージンを取った後、派遣労働者が手にする賃金は病院職員に比べて低くなります。  こうした事情のもとでは、同じ仕事をしている病院の正規職員について給与を下げる方向で影響が及ぶことになるのではないかと心配になりますが、いかがでございましょうか。
  89. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 労働者派遣によります病院における介護につきましては、付き添い廃止後の病院における夜間、繁忙時間帯におきます介護労働力ニーズあるいは常勤の看護補助者を確保するまでの短期的な介護労働ニーズに対しまして、登録して教育訓練した広範な潜在労働力をもって柔軟に対応できるものとして期待されているものであるというふうに考えております。  一方、病院に直接雇用される看護補助者につきましては、恒常的に生ずる介護需要にこたえるものでありまして、ニーズが基本的に異なることから、病院における介護の業務適用対象業務に追加することが病院に直接雇用される看護補助者の賃金水準の低下を招くことになるとは必ずしも言えないのではないかというふうに考えているところでございます。
  90. 武田節子

    ○武田節子君 派遣就労は、企業人材を育てる時間がない場合、つまり企業の臨時的ニーズにこたえるという枠組みのもとに制度化されました。このため、派遣法第二十六条第二項により労働大臣が定めた派遣の契約期間は一年以内となっており、更新は可能でありますが、登録型の派遣労働者については就業の場所、業務が同一の労働者派遣は三年を超えることは適当でないという制限が設けられています。この制限は病院での介護業務を含め十二業務すべてに適用されると理解してよろしいのでしょうか、お尋ねいたします。
  91. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 病院におきます介護の業務を含めて中央職業安定審議会の建議で示されました十二の業務適用対象業務への追加につきましては、今後政令改正を行うことを予定いたしているわけでございますが、これらの業務についても従来からの適用対象業務と同様に、労働者派遣法第二十六条第二項の規定が適用されるとともに、労働者派遣契約の更新を行う場合の一般派遣事業者に対する指導も行っていく予定でございます。
  92. 武田節子

    ○武田節子君 それでは次に、派遣労働者の組織率についてお尋ねいたします。  派遣労働者派遣元、派遣先の三者関係の中で最も弱い立場にあるのは派遣労働者であります。次に派遣元、最も強いのが派遣先であります。最も弱い立場の派遣労働者にとって労働条件を改善するためには、労働組合を結成し交渉を行うことが最も有力な道であると思います。しかし、派遣労働者派遣先はばらばらであり、お互いに顔を会わせることが少ないわけですから、組合を結成し組織を広げていくことが大変難しい構造になっております。  そこで、派遣事業所において組合が結成されている割合及び派遣労働者の組合組織率を示していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  93. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 平成六年度に行われました実態調査によりますと、いわゆる登録型で派遣された労働者のうちで、派遣元で組合が結成されており自分も加入しているとする者が六・三%、組合は結成されているが自分は加入していないとする者が八・一%、派遣元以外に結成されている労働組合に加入しているとする者が〇・二%、派遣企業に組合がなく自分も組合に加入していないとする者が八一・二%というふうな結果になっております。
  94. 武田節子

    ○武田節子君 就業条件の文書による事前交付について、お尋ねします。  派遣就労については、提供する技能労働時間をめぐって約束の内容と違うとの苦情が多いようでございます。いわゆるミスマッチが派遣労働者派遣元、派遣先の間で起きております。こうしたミスマッチを解消するためには、労働者派遣法と施行規則が定めるとおり、派遣元があらかじめ派遣労働者に対して文書で労働条件、就業条件を明示することが必要なことと思います。労働条件、就業条件についての文書による事前明示はどの程度遵守されていると認識しておられますか。ここをきちんとしないと今後もトラブルは絶えません。今回の改正案はこの点については触れられておりませんが、労働省は今後どのように対応していかれるのでしょうか、お尋ねいたします。
  95. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 平成七年の実態調査によりますと、派遣労働者に対する就業条件の明示の状況につきましては、業務内容について派遣日以前に文書で知らされた者が三七・一%、派遣日以前は口頭、以後文書で知らされた者が二三・〇%というふうな結果になっているところでございます。  労働省といたしましては、派遣労働者に対する就業条件の明示が的確に行われるようにするため、中央職業安定審議会の建議を踏まえましてモデル就業条件明示書を作成し、これに基づく指導、啓発を図ってまいりたいというふうに考えております。
  96. 武田節子

    ○武田節子君 この点については、派遣元は労働条件、就業条件を文書をもって通知すべきことを、規則レベルではなく法律によって義務づけることが必要ではないでしょうか、いかがでございますか。
  97. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘のように、派遣労働者に対する就業条件の明示につきましては労働者派遣法第三十四条に規定されまして、文書による明示は省令において規定されているところでございますが、今後一層文書による就業条件の明示の徹底を図るため、中央職業安定審議会の建議を踏まえモデル就業条件明示書を作成し、これに基づく指導、啓発を積極的に行ってまいりたいというふうに考えております。
  98. 武田節子

    ○武田節子君 介護休業制度は、昨年六月に育児休業法が改正され、平成十一年四月から義務化されます。同改正法が成立し既に一年近く経過しておりますが、この間も我が国の高齢化は急速に進展してきております。介護休業制度が義務化されることが決まったことにより事業主においても相当準備が進んでいると考えられますけれども、現時点での介護休業の普及状況はどうなっているか、先ほど伺いましたけれども、もう一度伺わせてください。  また、我が国の高齢化が進む中で介護を必要とする老親等を抱える労働者は日々ふえております。労働者にとっては一日でも早い制度化が望まれます。実施時期を三年後ではなくてきるだけ前倒しすることが必要ではないかと思いますけれども、いかがでございましょうか、お尋ねいたします。
  99. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 介護休業制度の普及状況調査につきましては、これは平成五年の調査でございまして先ほども申し上げましたけれども、一六・三%の企業介護休業制度を導入しておるわけでございます。事業場規模別に見ますと、五百人以上で五一・九%、百人から四百九十九大規模で二二・五%、それから三十から九十九大規模で一四・二%となっているわけでございます。  先生指摘のとおり、昨年施行されました育児介護休業法に基づきまして介護休業が義務づけられる平成十一年四月一日までの間におきましても、可能な限り早い時期に介護休業制度が導入されるよう、今全国の婦人少年室を中心事業主に対する指導を実施しているところでございます。企業介護休業制度を導入するに当たりましては、先ほど来いろいろ問題になっております代替要員確保の問題というのが非常に大きな問題になっておりますが、企業における介護休業制度の早期導入を支援するとともに、育児休業等取得者の代替要員特例措置を早期に導入するということも非常に重要なことであるというふうに思っております。  かつ、今先生指摘介護休業制度の義務づけの時期でございますけれども介護休業制度の現在の普及率を考えますと、やはり準備期間というのがある程度企業にとって必要ではないかということで、その準備期間を三年程度とることが必要であるという観点から平成十一年四月一日と決めていただいたというふうに考えておりまして、現時点では介護休業制度の義務づけを前倒しするということは考えておらないところでございます。
  100. 武田節子

    ○武田節子君 本当は前倒しを早くしていただきたいような気持ちで、現場では大変それを望んでいると思います。  次にお尋ねしたいのは、育児介護休業取得者に係る業務について、三つの適用除外業務を除いて適用対象業務を原則自由化する特例を認めることが改正案内容となっております。原則自由というように、何でも認めてしまいますと単純労働でもよいことになってしまいます。そうなると、専門的な知識技術、経験を必要とする業務に限って認めるという派遣法の原則に反することになるのではないでしょうか。いかがでございますか、お尋ねいたします。
  101. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 現行の法律に基づきます労働者派遣事業につきましては、常用雇用代替の防止等の観点から対象業務を限定する方式をとっているところでございまして、派遣期間につきましては、これは一方で更新することが認められており、比較的長期間にわたる労働者派遣も可能である、こういう仕組みでございます。  したがって、今回の特例につきましては、御指摘のように今の考え方を原則としますと例外、特例ということになるわけでございますが、これについては対象業務を原則自由とするかわりに派遣できる場合を育児介護休業取得者代替要員に限定しているということ、それから派遣期間についてもこれは最長一年間という制限を厳格に課することによりまして常用雇用代替の防止等を図ることにいたしておりまして、今回の特例、これにつきましては派遣法の趣旨目的に反するということではなくてその特例であると、したがってこれは法律で定めるということで今回改正をお願いしているものでございます。
  102. 武田節子

    ○武田節子君 平成六年に高年齢者雇用安定法改正して、高齢者に係る労働者派遣事業について適用対象業務を原則自由としました。今回の改正案はこれに続く特例措置であり、さらに三月二十九日に閣議決定された規制緩和推進計画の改定では、平成八年度中に行政改革委員会ネガティブリスト化の意見を尊重して労働者派遣制度の見直しを開始することが明記されておりました。現在、派遣対象業務ネガティブリスト化が積極的に議論され進められておりますけれどもネガティブリスト化が我が国経済発展を支えてきた労使関係、雇用慣行にどのような影響を及ぼすと考えられますでしょうか、お考えをお尋ねいたします。
  103. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘のいわゆるネガティブリスト、これについてはかの状況を加味せずにこれが採用されるとすれば、御指摘のように従来の日本的な雇用慣行、これに相当大きな影響を及ぼすのではないかというふうに考えております。  この点につきましては、先ほど大臣もお答え申し上げましたように、あるいは行政改革委員会の御意見におきましても、適用対象業務拡大、それから不適切な業務以外の業務についてこれを原則自由とすることということとあわせて労働者保護観点からの検討、これもあわせてすると、こういう御意見でございます。したがって、この検討についてはそういう観点から行われる必要があるというふうに考えているところでございます。
  104. 武田節子

    ○武田節子君 今回の改正案には、育児介護休業取得者代替要員にかかわる特例は国家公務員、地方公務員に適用されない旨の規定が入っております。国家公務員、地方公務員への適用を外した理由について、なぜか、お尋ねいたします。
  105. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 先般の育児休業法の改正におきまして、代替要員確保対策として講じられました委託募集特例につきまして、国家・地方公務員に対する適用を除外するとともに、そのほかの代替要員確保対策についても特段の措置を講じていないところでございます。  これは、国家・地方公務員にかかわる休業取得者代替要員確保につきましては、これは法律に基づく任命権者が任用や服務にかかわる問題を踏まえた上で対応すべきものでございまして、民間労働者と同じレベルで代替要員確保対策を論じるべき問題ではないという考え方に基づくものでございまして、今回の労働者派遣事業にかかわる特例措置におきましてもこれに倣いまして、国家・地方公務員につきましては適用を除外することといたしているところでございます。
  106. 武田節子

    ○武田節子君 無原則な派遣就労に歯どめをかけるためにも、育児介護休業にかかわる派遣事業特例については派遣労働者の導入に当たって労使協定を締結するような仕組みを設けることが望ましいと考えますけれども、いかがでございましょうか、お尋ねいたします。
  107. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 我が国におきましては、一般的にこの労使協議といいますのは、企業別の労使間におきまして緊密な意思疎通を図るための手段としてその協議が行われておるところでございますが、その労使協議の対象とするかどうかにつきましては、これは基本的には労使の自主的な判断にゆだねられるべきものというふうに考えているところでございまして、今回の特例措置に基づく派遣の導入につきましても当該派遣先労使の自主的な判断、これにゆだねるべきものというふうに考えているところでございます。
  108. 武田節子

    ○武田節子君 大臣にお尋ねしたいんですけれども派遣元、派遣先派遣労働者という三者関係については労働基準法は想定しておりません。もともと労働者派遣事業労働者供給事業の一つの形態として考えられていたもので、職業安定法四十四条に労働者供給事業は原則禁止されているものを特例として認めたものであります。  もし、原則自由あるいはネガティブリスト化を行った場合、労使関係の混乱、ひいては将来我が国雇用慣行が破壊される危険が感じられます。将来とも原則自由、ネガティブリスト化は行うべきではないと思いますけれども、社民党御出身の労働大臣として明確な御見解をお示しいただきた  いと思います。
  109. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 言葉は非常に難しいものでございますが、このネガティブリスト化ということについて、私はあえて閣議の席上でも言葉を使っていないのであります。したがって、今後検討する場合は適用が不適切と思われるものを除いてそれ以外のものをという表現に実はしたわけでありまして、ここに私の思いをひとつ酌み取っていただきたいと思うわけであります。  もう一つは、この労働者派遣事業対象業務拡大でありますが、労働力需給調整機能が多様化されるというメリットがございます。そのメリットがある一方で、労働者雇用する者と指揮命令する者が分離するという、先生指摘のように特殊で複雑な形態がありますから、労働者保護に欠けるおそれも相対的に高いと見られるとともに、御指摘のように派遣先における常用雇用労働者との代替を促進するおそれもなきにしもあらずということを認識しているわけであります。したがって、これらの点についても十分認識した上で、三者で構成されております中央職業安定審議会、ここで検討していただけるものというふうに実は考えているわけであります。  いずれにいたしましても、雇用問題の当事者である労使を含めた関係者による検討を踏まえまして適切に対処してまいりたい、このように考えております。
  110. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございます。  今、大臣の思いを伺いましたけれども、重ねて要望いたします。原則自由、ネガティブリスト化は将来とも行うべきではないことを強く要望いたします。  今日の我が国経済発展の原動力は、職場環境の劣悪な中で働いてこられた諸先輩、また現在働いておられる労働者の方々のとうとい汗で築かれていることを私は忘れてはならないと思っております。愚直なまでの責任感で働いておられる労働者の力を再評価し、これらの方々が希望を持って働きがいのある職場環境をつくることこそ政府の最も重要な責務ではないでしょうか。そこには創造力も増し活力も生み出され、健全な経済発展が達成されると思うからでございます。  ここで、もし全体に派遣労働の原則自由、ネガティブリスト化をしたとき、我が国雇用慣行のすばらしい面まで破壊されることになり、それは長い目で見たとき、労使双方にとって大変不幸なことになると私は危惧いたします。したがいまして、原則自由、ネガティブリスト化はすべきでないことを申し上げまして質問を終わります。大変ありがとうございました。  以上です。
  111. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 大臣にお尋ねをさせていただきます。  今回の派遣労働者のいわば就労条件の確保に対するための措置といたしまして、中途解除に係る問題を労働者派遣契約の締結に際して決めるということと、適切な苦情処理を図るための措置を充実したわけでございますが、そしてそのために大臣が指針を公布されるということになっておりますが、この改正に至りました背景とこうした措置、法改正の意義についてお尋ねをいたします。
  112. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生御案内のように、この労働者派遣事業制度昭和六十一年の施行以来十年目を迎えているわけであります。今その当時のことを思い出しているわけでありますが、当時、政府が出しましたこの派遣法案に対しまして私が代案を出しまして趣旨説明をして、そこで両方の案を持ち寄って今の法律ができたという経緯を思い出しているわけでありますが、その十年目を迎えまして、それなりに着実に定着してきているところであります。  しかしながら、御指摘のようにこの間、経済社会情勢変化等に伴いまして労働者派遣事業に対する新たなニーズが生ずる一方で、我が国経済長期不況を経験してきました。そんな中で、派遣労働者保護との観点からいろんな問題点指摘されていることは御承知のとおりであります。こうした状況に適切に対処するために、中央職業安定審議会の建議を踏まえて今回所要の法的整備を行うというふうにお願いをしているところであります。  このため、今回の法改正におきましては、派遣労働者就業条件確保を図るための措置を充実すること、そして派遣先における派遣就業の適正化を図るための措置を新設すること、そして育児休業等取得者の代替要員にかかわる特例措置の新設などを図っているところでありまして、これによって新たなニーズにこたえることができるとともに、労働者派遣事業の適正な運営及び派遣労働者の適正な派遣就業確保が一層的確に図られるものと実は考えているわけであります。  また、指針の関係でありますが、この指針は、労働者派遣法におきまして派遣事業主及び派遣先が講ずべきとされている措置を適切に実施するための方法及び考慮すべき事項について具体的にそれを示すということを目的としているわけであります。したがって、この指針を定めて公表することによりまして、派遣事業主及び派遣先にとって講ずべき措置内容が広く周知されることによりまして、これらの措置が適切に実施されることが期待されると考えているわけであります。派遣労働者の適正な派遣就業確保にそのことがまた資するものと考えているところであります。
  113. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 中途解除で一番問題になるのは、例えば業務上の必要性がなくなったとか、あるいは派遣労働者能力のミスマッチとかというものだけではなくて、軽微な理由によっていわば中途解除が正当な理由あるいは合理的な理由と言えないようなときに解除されるという、そういう現場労働者人たちの苦情があるわけですが、これはいわゆる派遣契約に明記すべき事項と考えておられるのかどうか、お尋ねをいたします。
  114. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 中途解除の問題につきましてさまざまな問題があるところから、今回法律改正労働者派遣契約の記載事項として、労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者雇用の安定を図るために必要な措置、これをこの記載事項の項目に入れるということでございます。  この具体的な内容といたしましては、相当の猶予期間をもってする事前通知、あるいは派遣事業主派遣先の連携による就業機会の確保、あるいは適切な損害賠償に関する措置等が考えられるところでございますが、これらの内容につきましては改正後の法第四十七条の二の規定に基づきまして公表する指針に盛り込むことを予定いたしておりまして、この指針を派遣事業主及び派遣先周知徹底するとともに、指針に基づいて指導、助言することによって派遣事業主等によりこれらの措置が適切に履行されるよう努めてまいりたいと考えております。  なお、そういうことでこの記載事項とするわけでございますから、その記載事項とするその中身に入っていない理由ならばやっていいということにはならないわけでございますから、そういう意味でのきちんとした契約の内容としてこの措置を新たに追加したいというふうに考えております。
  115. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 確かに、具体的な内容として再三御説明をしておられる相当の猶予の事前通知とか新たな就業機会の確保、あるいは適切な損害賠償ということを例示されていて、これはまた妥当なことであろうと思うわけですが、私のお尋ねは、いわば軽微な理由による中途解除というのが非常に多いということに対してこの明記する事項になるのか、あるいは関連事項としてどのような対応をされるのかということのお尋ねでございます。
  116. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘の点につきましては、この法律改正後についての指針を検討する際にあわせて検討したいと考えております。
  117. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それから、損害賠償の内容でございますが、中途解除における違約金の予定といいますか、賠償金の予定などは労基法との関係で問題になるかと思いますが、例えば賃金相当額のいわば損害賠償額とか、その他さらに踏み込んだ検討ないしは明記というようなことは御検討なさるのでしょうか。
  118. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 適切な損害賠償ということで考えているわけでございますが、この適切な損害賠償の範囲が具体的にどこまでどうするかという点につきましても、これは当然法律施行前に中央職業安定審議会で御議論いただくことになるわけでございますが、その際に検討してまいりたいと思います。
  119. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それから、相当の猶予の事前通知というのは、大体労基法の一カ月というような基準で考えてよろしいのでしょうか。
  120. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) そういうことを念頭に置いて検討することになろうかと思います。
  121. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それで、先ほど武田委員が言われましたように、文書による交付ということが一つ重要だと思いますが、今度の改正派遣契約に明記する事項も派遣労働者に交付すべき文書の内容に入れるべきが妥当と考えられますが、そういう措置というものはお考えでしょうか。
  122. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) そういうことになろうかと思います。
  123. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは次に、派遣就業の適正化のための措置といたしまして、このたび法改正によって違法派遣の防止策が強化される、そして派遣先への措置が強化されるということは評価すべき改正だというふうに思いますが、その点について大臣、何かコメントはございましょうか。
  124. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 昭和六十一年のこの労働者派遣施行後現在に至るまで、適用対象業務以外の業務にかかわる労働者派遣やあるいは無許可、無届けでの事業主による労働者派遣といった違法事案が後を絶たない旨、指摘されてまいったところであります。  この場合、派遣元をかえて継続的に無許可、無届けで派遣を受け入れる派遣先や、あるいは派遣事業主との適用対象業務について受け入れた派遣労働者派遣先適用対象業務以外の業務に従事させる例も見られることから、派遣事業主に対する措置を講ずるのみでは、このような派遣先を適正化することは困難だと、このように考えているわけであります。  したがって、このため今回の法改正におきまして、派遣先について適用対象業務以外の業務派遣就業させてはならないことなどを明確化するとともに、派遣先における派遣就業の適正化のための勧告、公表等の措置を講ずることによりまして、労働者派遣事業の適正な運営確保をより的確に図ることとしたわけであります。
  125. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、この法改正のいわば背景となりました今までの違法派遣状況と実態についてお尋ねをいたしたいと思います。  今回の改正以前にもこれまで指導、助言、勧告、許可の取り消し等の処分があったわけでございますが、これまでの指導、助言のいわばどんなようなケース、それから数があったのか、お尋ねをいたします。
  126. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 平成六年度におきまして、法第四十八条第一項の指導、助言のうち、定期指導、これは許可あるいは届け出事業所への訪問指導でございますが、これは二千四百件、臨検指導等、これは許可・届け出事業所について申し出があった事案及び違法請負事業の疑いのある事業所への指導、監督でございますが、これは九百六十五件でございます。これらの対象となったものすべてが違法事案というわけではございませんが、派遣元においては派遣元管理台帳の記載が不十分、派遣する際の就業条件の明示が不十分などの事例のほか、許可を受けまたは届け出を行った業務以外の業務労働者派遣を行っている事例、派遣先において派遣契約に定められている業務以外の業務を行わせているなどの事例が見られたところでございます。  法第四十九条の改善命令の件数でございますが、これはこれまでに一件でございますが、対象となった派遣事業主においては、複数の派遣先に対して明らかに適用対象業務以外の労働者派遣を行っており、また就業条件明示が一部の派遣労働者にしか行われていなかった、あるいは派遣事業主の講ずべき措置が適切に講じられていなかったものでございます。  また、法第十四条第一項の許可の取り消しの件数、これまで一件ございましたが、対象となった派遣事業主におきましては、派遣労働者を含む労働者に対し賃金を最高三カ月間にわたり所定の支払い期日に支払わなかったことにより、労働基準法違反により有罪判決が出され刑が確定したため、許可の欠格事由に該当することとなり許可の取り消しを行ったものでございます。
  127. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、適用対象業務以外に派遣をしたり無許可事業派遣をしたりというのは、今までの指導とか助言、勧告、改善命令、許可の取り消しのうち何%ぐらいの違反率だったんでしょうか、わかりますか。
  128. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 申しわけありませんが、ちょっとその何%ぐらいかという数字は持ち合わせておりません。
  129. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、今度の改正によって停止命令が出るということと、是正勧告に対して公表をするという法改正がなされるわけですが、これの言ってみれば実効性担保上の効果といったものはどのように期待をされているのでしょうか。
  130. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 改正後の法律第四十九条第二項の改善命令につきましては、派遣先が公衆衛生または公衆道徳上有害な業務等に係る派遣就業を行わせている場合等、派遣先適用対象業務外の派遣就業違反の態様が極めて悪質な場合に派遣元に発出することといたしているものでございます。  そのような場合につきましては、派遣就業を継続すること自体が労働者保護に著しく欠けることから、仮に派遣元が善意、無過失であっても即時に労働者派遣を停止することが必要なものでございまして、この改善命令を設けることにより、労働者派遣事業の適正な運営確保がより的確に図られるものと考えております。  また、改正後の法第四十九条の二の勧告及び公表の措置につきましては、適用対象業務外の派遣就業等、派遣先が違法な状態にある場合にその是正を勧告し、さらに勧告に従わなかった場合についてはその旨を公表することといたしているものでございます。  この勧告及び公表の措置につきましては、派遣先の違法状態の態様に応じて機動的に発動することができるとともに、公表による関係者への周知効果を通じて違法派遣に対する幅広い抑止効果が期待できることから、これによりまして派遣労働者の適正な派遣就業及び労働者派遣事業の適正な運営確保がより的確に図られるものと考えているところでございます。
  131. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 停止命令その他是正勧告、企業名の公表等、有効な実施がなされまして、違法な派遣が防止されるよう切に期待するものであります。  しかし、違法派遣の問題でとりわけいろいろ問題になり新聞上にも報道されるのは、外国労働者のいわば違法派遣といいますか、偽装請負というものが多いのですが、こういう実態はどうなっているでしょうか。
  132. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 的確な実態の把握、なかなか難しいところでございますが、警察白書によりますと、平成六年におきます外国労働者に係る雇用関係事犯の検挙件数六百三十一件のうち、労働者派遣違反は三十八件となっております。  具体例といたしましては、無許可の人材派遣会社が、ブラジルの現地のブローカーから受け入れた日系ブラジル人約二百五十人を七府県の三十五企業に対しいわゆる単純労働者として派遣し、約九億円の利益を上げていた事件で、当該会社の経営者ら八人が労働者派遣違反で検挙された例などがございます。
  133. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 警察の方に問題になって挙がった件数などは、これまで何か統計ございますか。
  134. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 警察で労働者派遣違反で事件になった例、これは平成六年におきまして三十八件というふうに承知いたしております。
  135. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 平成三年度ですが、総務庁の行政監察局の婦人の就業対策等に関する行政監察のところに、労働者派遣事業運営の適正化に関する勧告がございます。  それの第一の勧告は、派遣事業所及び派遣先事業所に対する安定所の指導監督についてでありますが、定期指導の実施事業所数を一層拡大し、文書指導の励行等によってその徹底を図るようにというふうに言われております。第二点で、定期指導で指摘した事項については適時適切に是正報告を求め、その改善効果を確保することというような状況がありますが、こうした定期指導その他のいわば現状、そしてこの勧告に対してどのように措置をしておられるか、お尋ねいたします。
  136. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘の件につきましては、公共職業安定所の定期指導の実施事業所数の一層の拡大あるいは文書指導の励行、指導事項についての是正報告を求めること、それから監督署の監督指導における違反事項の是正報告を遵守させること等について勧告が出されたものでございます。  これに対する回答の要旨でございますが、安定所関係を申し上げますと、公共職業安定所に対しより積極的な指導監督及び適切な文書指導を行うよう、またより適切な再指導を実施するよう指示徹底を図るとともに、全国職業安定主務課長会議におきましてもその旨の指示を行ったところでございます。  また、その後の改善措置状況に係る回答の要旨でございますが、公共職業安定所の指導監督について引き続き指示するとともに、より適切な再指導の実施により全国民間需給調整事業関係担当者会議等の場においてこれについて指示をいたしたところでございます。
  137. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうすると、定期指導の実施事業所数の一層の拡大と言っている場合に、大体年間こういう指導というのはどのくらいされるわけでしょうか。
  138. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 定期指導の年間件数でございます。これは具体的には許可・届け出事業所の訪問指導ということでございますが、指導件数が合計で二千四百件、内訳で申しますと派遣元に対して千九百二十三件、派遣先に対して四百七十七件というような結果になっております。
  139. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それは一年間ですね、わかりました。  そうすると、行政監察局の勧告によりますと、労働基準法上の違反事項などがあって、その是正報告などをきちっと遵守して、労働基準法に係る違反事項については監督署への通報を徹底することということになっておりますが、その点安定所はどういうふうに対応しておられるでしょうか。
  140. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 監督署の監督指導における違反事項の是正報告を遵守させること等についての勧告でございますが、これに対する対処といたしましては、監督署の監督指導につきましては、是正報告の提出の徹底を図るよう都道府県労働基準局監督課長を対象といたしますブロック会議等の場において指示をいたしております。  また、その後の改善措置状況に係る回答の要旨につきましては、監督署の監督指導につきましては是正報告の提出の徹底を図るよう全国監督課長会議等の場において指示をいたしているところでございます。
  141. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうすると、是正報告というのは一年間でどのくらい出てくるものでしょうか。
  142. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 是正指導書等を交付した件数、これで申し上げますと平成六年度で百十三件でございます。
  143. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 その百十三件の内容、どういう違反があるのか、そしてその違反に対してどのように対処したのか。これは本来なら基準局長でしょうかね、お聞きするのは。もしあれでしたら、この百十三件の内容とその是正については、三十日にお尋ねをすることにいたします。  そのほか、例えば派遣労働者の権利や労働条件の保障の方策について、残業協定、派遣元でどの程度三六協定が締結されているのか。枠組みは派遣元ですし、派遣先で使用するわけですが、いわゆるいわれない残業を命じられたというようないろんな事例が現場から上がっているんですが、派遣労働者の残業に関する協定の実態について、どのように把握しておられるでしょうか。
  144. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 恐縮でございますが、手元に資料がございませんので、後ほど。
  145. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、それは三十日にお尋ねをさせていただくことといたします。  例えば、派遣労働者の権利、労働条件の保障の問題で、雇用保険とかあるいは社会保険への加入という点ではどのような実態になっているのでしょうか。
  146. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 私どもの関係でいきますと、雇用保険の加入状況でございますが、これにつきまして、登録関係では六四・九%というような結果になっております。
  147. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 社会保険はどうでしょうか。
  148. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 社会保険の関係につきましては、自己名義の健康保険加入状況、これが登録の場合で六三・六%。それから厚生年金の加入状況が登録で見ますと五九・三%というような数字になっております。
  149. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、雇用保険とか社会保険等についての一層の加入促進のために、労働省としてはどのような対策を立てられているのでしょうか。
  150. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 雇用保険の場合で見ますと、未加入者のうち、これは御本人が加入の必要がないという方が登録で見ますと二五・五%おられます。あと、自己負担がなければ加入したいという方は三八・六%というような数字もございますが、この適用促進につきましては、いわゆる登録型派遣労働者につきましては、就労形態が多種多様でありまして、断続的に就労する者が多いことなどによりまして、雇用保険の適用対象にならない方も相当数いるものと思われます。  その一方で、適用対象となる場合であっても、その適用手続が必ずしも十分に行われているとは言えない状況にあるというふうに考えております。このため、所定労働日数あるいは所定労働時間が一定以上ある場合等の所定の要件を満たす場合には被保険者として取り扱うことを周知徹底するとともに、要件を満たしているにもかかわらず加入手続がなされていない場合につきましては、定期指導あるいは派遣元責任者研修会等さまざまな機会をとらえまして、その辺十分な指導を行うことにより、この適用促進に努力してまいりたいというように考えております。
  151. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 時間になりましたので、次回にまた質問させていただきます。  ありがとうございました。
  152. 吉川春子

    ○吉川春子君 十年前に、それまで違法であった労働者供給事業を、専門性そして特別の雇用管理の必要という二つの観点から対象業務を決めて、労働者派遣事業として合法化しました。一も問題なんですけれども、二の特別の雇用管理というのは、企業ニーズだと思います。労働者派遣先派遣元という三角関係というか、そういう中で労働者の権利が非常に侵害されているということで、徐々に伺っていきたいと思います。  労働省は、導入のときの議事録を読みますと、労働者が好きなときに好きなだけ働ける、そういう働きたいという労働者ニーズを満たすためなどと言ってきたわけなんですが、ここに民主法律協会派遣労働研究会の「がんばってよかった」という本があるんですけれども、弁護士が扱ったいろいろな事例が書かれているんですけれども、「派遣会社の過剰な宣伝文句。「自由な時間に好きなだけ働けます」とか「週に三日だけ働く」とか調子のいいことを言わないでほしいんです。実際、働きたくても仕事がなかったりして、自分の都合ではなくて、向こうの都合のみで仕事をもらってるという風なのですから。」とか「全然、仕事のない時でも、某大手新聞等の求人広告には大きなスペースを取って派遣会社が求人広告を出しています。あちこちで仕事がいっぱいあるように書いてありますが、ほとんどはウソだと言えます。私本人が何度もその広告を信じて足を運んだのですから……。またウソだろうなと思いながらも必死なのです。」と、こういうふうにあって、イラストといいますか漫画があって「「企業の好きなときに、企業の好きなだけ働かせます」とは、書いてないんだよなー。」というつぶやきも載っているわけなんです。  労働者の権利の侵害の声も無数にあるんですが、パソコンの入力と言われて行ってみるとサラ金の取り立ての電話かけであった。派遣先会社に履歴書を回す、ファクスで送る。これをもとにいたずら電話がかかってくる。見も知らぬ人が夜訪ねてくるなど大変な状況が報告されています。実は大臣、前回の労働委員会で参考人質疑をやりまして、そこでもリアルな実態が報告されました。議事録に記載されております。  大臣は、このような労働者の権利侵害の実態を、どの程度御存じでいらっしゃいますか。
  153. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘のような権利侵害の問題、事細かく事例を挙げるほどすべてを承知しているわけではありませんけれども、しかしこの派遣労働者保護という立場からいきまして、いろんな問題が指摘されていることは十分承知をしているところであります。  それだけに、こうした状況に適切に対応するために、とりわけ今回の法案におきましては、労働者派遣契約の解除あるいは適切な苦情処理にかかわる措置派遣先における派遣就業の適正化のための措置などを充実することを盛り込んでいるわけであります。  先生指摘のように、六十一年にこの法律が成立したとき、そのときのいろんな、目的としたことあるいは期待したことと現実は乖離があることも事実だろうと思います。それだけに、今回その乖離を埋めるために派遣先における労働者保護、こういう問題についてもその充実を図ろうとしているわけでありまして、適正な就業状況確保を徹底していきたいと、このように考えるわけであります。また、この適正な労働条件の確保のために、今後労働基準法、労働安全衛生法等に関する厳正な監督、指導を行っていきたいと、こう考えているわけであります。  また、プライベートにかかわることにも関係するんでありますが、派遣元から派遣先にファクスが送付されるなど非常に許しがたいケースが相当見られていることは今御指摘がございました。派遣先派遣する労働者の決定につきましては、派遣事業者が責任を負うべきものでありまして、労働者派遣契約の締結前はもちろんのことでありますが、この法律の第三十五条に基づいて派遣労働者の氏名等を派遣先へ通知を行う際にも、労働者派遣契約に定められた事項以外の個人情報を開示することは派遣労働者のプライバシーの保護という観点から問題があると考えています。  このため、派遣事業主の営業活動などに際しましては、履歴書などの提示を行わないように指導するとともに、このようなことが派遣先の要求に基づいて行われる場合があることから、こうしたことが行われている旨の情報を入手した場合には、派遣事業主とあわせて派遣先にも事実を確認し、派遣先にも厳正に指導を行っていきたいと、こう考えているわけであります。  また、この法律第三十五条に基づきまして、派遣先へ通知の際に、法で定められた事項及び労働者派遣契約に定められた業務遂行に直接関係のある取得資格あるいはその技能のレベル等以外の個人情報の提供を行っている場合には、派遣労働者の個人情報を提供することのないようにこれまた厳正に指導、対処していきたいと考えております。
  154. 吉川春子

    ○吉川春子君 今、大臣はそういうふうにおっしゃいました。履歴書の問題はたくさん出ているんですね。履歴書なんて大体人に見られたくないのに、派遣先に行って、しかも学歴から何からいろんなことが書いてあるものをファクスで送って、それを回し読みしていると。プライバシーの侵害ということからも問題があるので、今大臣が言われましたけれども、厳正な指導を要求したいと思います。ぜひしていただきたいと思います。  派遣形態というのは、雇用と使用を分けてしまうわけですね。そのために、労働者にとってはさまざまな不利益が生じる。典型的なのは、コンピューターのオペレーターだと言われて行ったが電話の受け答えが主な仕事だったと。そして、その約束も違うし、業務も違法だということで何度も派遣元に電話しても、ほかに仕事がないからと、らちが明かず、三日目にはあすは仕事に行きませんと言ったら、それまでの賃金は払わずに損害賠償せよなどとおどかされたなどという事例も起きていると。こういう無権利状態を生み出しやすい形態だというふうに思うんです。  それで、私が御質問したいのは、派遣法の生みの親とも言われている中央職業安定審議会の現金長の高梨氏がこうおっしゃっています。雇用主責任を負わずに指揮命令して労働者を使用できるというのは、一種の特権と考えますと。これは例外的な措置であって、そういうことで専門職もしくは準専門職の高賃金市場に例外的に派遣を認めるというのが派遣法の基本的な考えだと思っておりますので、これをゆがめる必要はないというふうに述べておられますけれども労働省の基本的な御認識もこれと一緒だと思いますけれども、その基本的な認識はいかがですか。
  155. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 現在の労働者派遣法に基づきます対策考え方は、基本的にただいま先生のおっしゃったとおりだと思います。
  156. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうなりますと、この派遣法にとって事業が正当に営まれているかどうか、これを分ける重要なポイントは、労働者派遣対象業務の範囲に属しているかどうか、これが非常に重要なことですね。  現在指定されている十六業種を見ても、例えば機械設計というのがありますね。機械の設計そのものに携わる人もいれば、基本的な設計を作図する人、実際の工作のための施工図をかく人、それから製図の青焼きを専ら行う人、それらの人々の中で補助的な事務を行う人というふうに際限なく対象業務の範囲が広がって、どこまでが対象業務なのかということが判然としなくなるわけなんです。現在指定されている十六業種についてどこまでが対象業務なのかという、正しい範囲をどうやって示されているのでしょうか。
  157. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 適用対象業務の範囲につきまして、これは具体的には労働者派遣施行令第二条により定められているところでございますが、その範囲がどこまでか具体的にわかりやすく示すこと、これが非常に大事でございまして、それが違法派遣の防止等の観点からも有益であるというふうに考えております。  この点につきましては、各種パンフレット等によりなるべくわかりやすく具体的に示すことによりまして周知徹底を図っているところでございます。また、適用対象業務以外の範囲を逸脱する労働者派遣事業については、これは厳正に対処しなければならない、現に対処してきているところでございます。
  158. 吉川春子

    ○吉川春子君 示されていますといっても、ここに示されているだけじゃだめなんですよ。だから、これを具体的にどうやって厳密に範囲を決めるのかというもう一つの文書が必要なんですよ、大臣。それで、しかも対象業務か否かということが違法かどうかの分かれ道になるわけですね。そして、違法の場合は懲役刑も含む刑事罰がかけられているわけなんです。だから、憲法の法定手続、三十一条ですね、罪刑法定主義という立場でいえば、刑罰を負わせるということは非常に厳密な構成要件が一方では求められていると。  それから、現在あいまいなので取り締まりがなかなかできない。あいまいなのでだけか人手が足りないのか労働省の姿勢なのか、そこもあると思いますが、そうすると、今度は放置されているから労働者の権利が侵害される、こういう状況になるわけなんです。  大臣、本当にこの点について、一言でいいんですけれども、ちゃんとした範囲を確定するための責任ある文書といいますか、基準といいますか、そういうものを施行令、政令だけではなくてきちっと示すように私は求めますが、いかがでしょうか、大臣
  159. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 対象業務十六業種、今度は十二業種を追加するわけでありますが、例えば今先生言われましたように、機械設計業務と、こうなったとしますね。その中に、直接計算をして設計する者、あるいは設計したものを今言ったように図面に置きかえる者、いろんなケースがあると思うんです。どこまでがその一つの業種かということ、これは非常に業種ごとによってかなり綿密な精査が必要だと思うんでありますが、少なくともそのことが法律違反になったり、あるいは派遣労働者の持っている専門職とかけ離れたことが結果的に本人に強要されるということなどがあってはいけませんので、この面についてはどういうふうに精査できるか、検討してみたいと思います。
  160. 吉川春子

    ○吉川春子君 ぜひ、それを明確にしていただきたいと思います。  具体的な事例で伺いますが、北九州市に本社を置く安川ビジネススタッフという派遣会社があります。一九九三年十二月に設立されました安川電機の子会社で、安川電機の本社内に本社があります。最近では親会社以外にも仕事を広げようとしていますけれども、これまでは専ら安川電機に労働者派遣しています。ここから安川電機のある設計部門に派遣している例では、製図の青焼きの業務派遣労働者によって行われ、一般事務をやっていた女子パート労働者が安川ビジネススタッフが設立されると同時にそちらの所属とされて、今度は派遣労働者として同じ仕事を続けています。ここに大企業の、労働者雇用管理の責任は逃れて指揮命令権のみを取得する、そして労働者を使うという非常な露骨な経費節約というか、そういう姿勢がうかがわれるわけですが、それが一つあります。  私が伺いたいのは、こうした労働者対象業務ではきっと機械設計という扱いになっているというふうに思われるんですね。際限もなく広がっていくというこれが実態だと、先ほど指摘したわけで、大臣検討していただくということなので、それはぜひ強く要求しますが、そういう中で、極めていいかげんな運営がなされているという実態が明らかになっているんです。  ことしの二月に、安川電機は超メカ事業の大幅な生産増加が見込まれるとして、同社小倉工場で要員増の計画を明らかにしました。外部業者に臨時的な要員を委託する計画を発表しました。それと前後して、二月六日付の西日本新聞に「長期男子製造スタッフ募集」という安川ビジネススタッフの求人広告が掲載されました。これがそうなんですけれども、業種は小型装置の組み立て作業で、勤務先は安川電機の小倉工場内となっています。製造ラインへの派遣適用対象業務外であり、明らかに違法ではありませんか。
  161. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘の点につきまして、私ども詳細な事実を把握しておりませんので、公共職業安定機関を通じましてまず事実関係を調査いたしたいと思います。その上で必要な指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
  162. 吉川春子

    ○吉川春子君 製造ラインの一部を請け負うということは現実的ではないですし、それから職安法施行規則の請負要件にも当然違反するし、会社の登記簿謄本をとって見てもこうした業務の受託業務会社目的に入っていません。今局長が言われたように、ぜひ調査して是正をしていただきたい。大臣どうですか、一言で結構です。
  163. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、安定局長が御答弁申し上げましたように、まず事実の関係を把握する、そして明確な違反があれば厳正に対処いたします。
  164. 吉川春子

    ○吉川春子君 本来こうした情報は、当該の職業安定機関がつかんで調査をすべきであると考えます。  この会社は、今年度は埼玉県にある安川電機東京工場内に埼玉支店を開設する計画だと言っています。このような大企業派遣のための子会社をつくって従来の自分労働者をここに代替するというのは、本来みずからが雇用責任を負わなければならない労働者について、従来どおり使っているわけですよ、しかし雇用責任だけを放棄する。まさに脱法行為じゃないかと思うんです。こんな派遣会社については、常用労働者代替を促進しないということがきょうの委員会でも何遍も答弁されています、指摘もされています。許可要件を厳しくするなどの措置が必要ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  165. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 労働者派遣事業に関する許可につきましては、私ども労働者派遣事業法に基づきまして厳正に審査し、対処してまいりたいと思います。
  166. 吉川春子

    ○吉川春子君 時間がわずかになったんですけれども労働者供給事業が禁止されてきた理由の中に中間搾取の問題があるわけですね。それが派遣労働者になったらもう問題ないと言えるでしょうか。  現在の対象業務についての、派遣料金と平均賃金を述べていただきたいと思います。
  167. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 平成六年度の事業報告によりますと、いわゆる登録型である一般労働者派遣事業についての派遣料金、これは業務の種類によりましてかなりのばらつきが見られますが、八時間換算でいたしますと、最も高い通訳、翻訳、速記の業務で二万九千二百四十円、最も低い建築物清掃の業務で一万一千六百三十八円となっています。また、平成六年度に行われました実態調査によりますと、賃金日額については、これも業務の種類によりかなりのばらつきが見られますが、最も高い通訳、翻訳、速記の業務で一万八千八百二十四円、最も低い建築物清掃の業務で五千五百六十二円となっております。
  168. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、この質問を引き続き次回もやりますが、これは平均賃金と特定料金のパーセント、一般料金とのパーセントを出しますと大体五割ぐらい、五割を切るものもあるわけなんですね。だから、非常に中間搾取の問題があると思いますけれども、その点についてのコメントを一言伺って、きょうは終わりにしたいと思います。
  169. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま賃金日額につきましては八時間換算で申し上げましたが、それぞれの派遣労働者の勤務時間、これまたまちまちでございまして両者を単純に比較することは、これは難しいかと思います。  なお、建築物清掃の業務につきましては、これは就業時間が一般的に短いというようなことから賃金日額も低い数字になっている、そういう可能性もございます。
  170. 吉川春子

    ○吉川春子君 中間搾取等の問題については、次回に質問いたします。
  171. 末広まきこ

    末広真樹子君 労働者派遣法の制定以来既に十年がたちまして、今回の見直しに至ったとのことでございますが、私自身は、今回初めてこの法律及び改正案を勉強させていただきました。そして、この法律が大変重要でかつ労働市場の将来を左右する重大な課題を持つ奥の深いものであることを学びました。  東京での視察につきましては、日程の都合上残念ながら欠席せざるを得なかったのでございますが、その分地元名古屋にて派遣企業二社とそれから派遣先企業一社をじっくり見学させていただきました。  制度が始まって以来、着実な発展を見せてまいりました労働者派遣業でございますが、平成四年から六年にかけてはやはり不況影響で低迷したようですが、ここに来てまた順調な伸びを示しているようです。私が見てまいりました派遣元二社では、一社が一般労働者派遣事業いわゆる登録型、九七%が女性でございます。また、もう一社は特定労働者派遣事業いわゆる常用型、これは男性が一〇〇%でございました。一般の方は年間派遣労働者数が五千人と、一事業所当たりの派遣労働者数の全国平均が二百十一・一人ですから、大変規模の大きい会社でございます。登録からオリエンテーション、スキルアップ、大変鮮やかな指導です。さらに、先般の参考人質疑の折にもちらっと出ました、大臣いらっしゃらなかったんですが、紹介者への特典があるんだそうです。それ以外にも女性の喜ぶショッピングの五%から一〇%の各種割引制度や高級会員制リゾートホテル、これはもう何千万クラスのものです。その割引利用など福利厚生といったきめ細かいサービスと特典がついているんです。もう女性ならばまりますね、私も思わずはまりそうになりました。行政と民間の差がくっきり出ているという鮮やかさでございます。  一方、男性派遣の特定の方も今年度一千名を新規採用いたしております、一社でですよ。合計四千五百名の派遣労働者を抱える大企業でございます。特定派遣の一事業所当たりの派遣労働者の全国平均が十五・九人ということですから、そのスケールの大きさがずば抜けているということでございます。しかも、来年はさらに二千名を新規採用しようというプランです。物すごいパワーです。しかも、契約料は時給四千円から、上は月収百六十万円、国会議員も負けましたというハイテクニカル派遣労働者を常用雇用しております。  こうした派遣企業では、優秀な人材を集めてかつ十分な研修を積み、派遣先にも十分満足してもらっているからこそどちらも急成長しているんだと思います。労使ともども派遣という形態を希望するという大きな時代変化をひしひしと実感いたしました。  また、優良な派遣先企業の一つといたしまして登録型を拝見いたしました。ここは大企業の子会社の一つで、この十年間で派遣労働者がわずか一、二名から二十名へ、全社員が六百五十名でございますけれども、着実に伸びているようです。この会社派遣期間が一年を超えて更新したという女性と、もう一人は今三カ月目という二人の女性から直接お話を聞く機会を得ました。お二人とも二十代後半の女性で、現在の仕事にとても満足されていて、こんなに働きやすいところはないと口をそろえておっしゃいました。実際、賃金面での格差も正社員に比べて少なく、会社側のコストとしては、正社員と比較しますと一割程度安くなるとのことでございました。あとの就労条件面や実際の職場での仕事派遣ということでの区別は全くないとのことでした。お一人は海外の生活から一時的に日本に戻っている間だけの三カ月間就労であり、まさに派遣労働という形がぴったり当てはまって、これはもう働き手の派遣労働活用法わざありと、本当に感心させられるものでした。  優良で大規模のこうした派遣元は、社内的にもしっかりとしたスタッフを抱えておりまして、派遣先派遣労働者とのトラブルや苦情に対して迅速な対応がなされているようです。一例を挙げますと、体調が悪いからやめたいという派遣労働者に対して、派遣先との関係がまずくならないように健康診断書を添えるようアドバイスをしたといいます。その診断料も派遣元が負担したと聞きました。しかしながら、一方では労働者派遣についてさまざまなトラブルがあることも知りました。その詳細につきましては、きょうのところは余り時間がありませんので次回四月三十日に、光と影の部分があるとすれば、影の部分は次回に回したいと思います。  登録型の派遣は、九割以上が女性でございます。女性の側の働き方の希望もその一因でしょうが、企業側が女性の正社員としての採用を手控えていることも、これも事実です。先ほどの派遣先企業でも、平成二年には八十人女性を採用しておりました、正社員として。ところが、六年と七年はそれぞれ一人、八年に至ってはゼロです。その裏で派遣女性社員が十年間で二十倍にふえているというのが実態です。大きなところはいいんですが、より規模の小さい派遣元、派遣先にいけばいくほどトラブルがふえているかと思います。登録型の女性派遣労働者が、どんな就業状態であるのかがとても心配です。  そこで質問です。派遣労働者就業状態について、平成七年の労働者派遣事業調査について、派遣元、派遣先事業規模別に統計がとられているのかお教えください。特に、労働条件や保険の加入状況、苦情件数などでどうなのでしょうか。
  172. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま先生指摘の点でございますが、私ども現在統計的に規模別な数字というものは把握いたしておりません。
  173. 末広まきこ

    末広真樹子君 ちょっと今、先生質疑時間は十六時十三分までとなっておりますというカードを受け取っている間に私への答えは終わっちゃったんですか。何とおっしゃったんですか、もう一度お願いします。
  174. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま先生指摘の点でございますが、統計的に規模別な把握というものは現在いたしておりません。
  175. 末広まきこ

    末広真樹子君 私、毎回質問のときにお願いしているんでございますが、事業規模別に統計をとるということが非常に大事でございますね。つまり大きいところと小さいところでは全く違うんで、ぜひその点ひとつ次回にお願いしておきます。  派遣労働者の置かれている条件や状況に応じたきめ細かな施策がとられなければ、本法案趣旨とされている派遣労働者保護という観点は生かされていないと思います。そこで大臣にお伺いいたします。派遣労働者現状をどうとらえておられるのか、基本的認識をお示しください。
  176. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) この派遣労働法ができましてから、働く側のニーズ自分能力技術、経験を生かし得るような職場派遣元を通して就業する、あるいは派遣先企業の方では事業には波動もある、波動対策もありましょうし、あるいは短期間代替要員を埋めるという必要性もありましょうし、そういう面ではこの労働者派遣法というものの果たしてきた役割というのはかなり効果があったのではないかな、こう思います。  効果があったからこそ、さらに今その派遣事業拡大を産業界から求められていると思うのでありますが、しかし、片方で先生が御指摘になったように、すばらしい大きな派遣事業を行っていらっしゃるところもあるし、零細なところもありますし、かなりその内容については労働者に対する労働条件のあり方についても格差があると思うので、その格差をできるだけなくすることと、そしてその派遣先に対して派遣労働者を配置することによって悪影響を及ぼさないということなどが常に留意しなくてはいけない問題点だと思います。そういうものをいま一度検証しながら、これから派遣対象事業をふやしていくとか、あるいはこれから規制緩和の中でさらに検討を加えてもらうわけでありますが、そういうものを踏まえた上で問題の起きないように対応していくことが今労働省に求められている、課せられている責任ではないかな、こういうふうに認識をいたしております。
  177. 末広まきこ

    末広真樹子君 前向きな御答弁で、力強い限りでございます。  今回、労働者派遣事業適正運営協力員制度というチェック機能を持った制度があるということを知りました。余り機能していないという意見がさきの参考人からもあったので、早速調査させていただきました。結論から申し上げますと、まことに残念なことですが、制度はあるけれども中身がないという実例にまたまたぶつかってしまったんです。  適正運営協力員は、労使同数で、平成八年三月現在全国で九百三十二名、我が愛知県では十九名ずつの三十八名となっております。そこで、労使それぞれの方にお話を聞きたいと思いまして連絡をいたしました。そうしましたら、どちらの側の方も話すことがないので、県の事務局つまり県労働職業対策課に聞いてくれ、こういうことでございました。一人の協力員の方は、この制度の名前を挙げましても、初めは何のことかわからないという感じで、しばらく間があってからやっと思い出していただけたんでございます。そして、言われたことは、去年一回やっただけで、特にこれといった話もなく、具体的な相談事例やケーススタディーもありませんでしたと。これでは制度が生きていないように思います。他県ではもっと活発に活動されているのかもわかりませんが、少なくとも私が見てまいった実態はこのようなものでございました。しかしながら、この制度のために平成七年度予算では二千七百万円、そして今年度予算では八千五百万円と大幅な増額予算となっております。  そこで質問です。一体この制度現状をどのように認識していらっしゃるのでしょうか。また、今年度予算での大幅な増額は何に使うためでしょうか、具体的にお示しください。
  178. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 適正運営協力員制度につきましては、派遣労働者派遣先等に対する相談援助等を行う民間の協力員を設置することによりまして、民間の協力体制を整備し、その自主的な取り組みを通じて労働者派遣事業の適正な運営確保派遣労働者雇用の安定、福祉増進に資することを目的としたものでございますが、率直に申し上げまして現状先生指摘のように必ずしも十分機能しておりません。  したがいまして、今回法律改正をお願いしておりますが、これの実施を契機といたしまして、これをより積極的に機能するような仕組みにしてまいりたい、こういう観点から、平成八年度においてはこの協力員制度に係る予算を増額いたしておりますが、これにつきましては適用対象業務の追加等によりまして派遣先の増加、あるいは初めて派遣労働者を受け入れる事業所における就業援助の必要性が見込まれること、またもう一点は、労使の自主的な取り組みを促進するための協力員の活動、これをさらに充実すること、そういうことに対処するために予算を増額したものでございます。こうした措置によりまして、従来以上に相談援助が促進されるように努力してまいりたいというふうに考えております。
  179. 末広まきこ

    末広真樹子君 予算が大まかに三項目に分かれるというお話で、具体的な数字はお示しにならなかったので、いずれこの具体的な配分数字は下さい。  愛知県の協力員名簿というのを見ますと、労働者側は連合各単組の委員長クラスの幹部、この方の身分は会社では正社員でございます。使用者側は大企業の取締役クラスの幹部がずらりと顔をそろえております。余りにも名誉職という感じがいたします。会議に出席いたしましても報酬はなく、交通費のみ実費が支給されているということで、タクシーの利用もだめということです。さてその会議ですが、わずか一時間ほどで終わったということです。ちなみに出席者は三十八名中二十一名、下手をすると過半数を割りかねない現状でございます。各協力員の皆様は大物過ぎて、しかも組合の正社員でございます。派遣労働というものの現実にタッチされていないんで実態を御存じないのではないかという疑問と、それからお互いに恥をさらけ出すことを控えるかわりに、相手を責めて事を荒立てないようにするという事なかれ主義が働いているのではないのか。そして肝心なのは、協力員の構成では最も肝心な派遣労働の主役が参加できていないという大きな欠陥が指摘されます。  そこでお伺いします。協力員の選出に当たっては、労働者側なら派遣労働問題に取り組んでいる組合の方や派遣労働者御自身、また使用者側なら派遣元、派遣先企業の指揮命令者や人事担当者が最適任だと思うのですが、いかがでしょうか。
  180. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 協力員の方々につきましては、労働者派遣事業の適正な運営のための熱意と識見を有する方を都道府県知事の推薦に基づき委嘱しているものでございます。この協力員に委嘱されております方々、これについては協力員としての経験年数、これは現在かなり長い方が多くなっております。また、一部派遣事業主の方も協力員に委嘱されている例はございますが、これは御指摘のように数は少ない状況でございます。  今後この協力員制度を適切に運営していくためにどうしたらいいか、この点につきましても今後検討してまいりたいと思います。
  181. 末広まきこ

    末広真樹子君 さらに申し上げますと、どんな方が参加されたとしても、年に一回の会議ではただ言うだけに終わってしまうと思われます。会議のあり方についても御一考なさる必要があるのではないでしょうか。  愛知県内の職業安定所では唯一名古屋市中区の職安に派遣法の専任者が一名いらっしゃるだけで、ほかの各職安にいる派遣法担当者はすべて兼務ということでございます。派遣労働者にとって、派遣元は雇用者で、派遣先は使用者という全く新しいトライアングル型の労働形態であり、従来の手法では対処できない課題がたくさんあると思います。毎年七月に労働者派遣事業適正運営推進月間というのがございます。ただ一カ月間で、この時期は労働者からの苦情、派遣元、派遣先からの問い合わせが寄せられ、その統計がとられておりますが、そのほかの期間は統計もないと聞きました。  職安における労働者派遣事業関係の取り組みはどのように行われておりますか。また、現状をどのようにとられているのか、お聞かせください。
  182. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘のように、毎年七月を労働者派遣事業適正運営推進月間と定めまして、啓発のためのセミナーの開催など事業の適正な運営のための取り組みを集中的に行っているところでございますが、労働者派遣事業の適正な運営の推進につきましては、このような月間中だけの活動を行えばよいというものではございません。もちろん御指摘のとおりでございまして、日常的な機会をつかまえまして、制度に関する理解の促進を図るとともに、必要な指導監督を行っていくことが重要であると考えているところでございまして、今後一層積極的に事業の適正な運営に努めていきたいというふうに考えております。
  183. 末広まきこ

    末広真樹子君 現場調査を踏まえて私の意見を述べさせていただきますと、労働行政の機能充実をというよりは、より熱心な社団法人日本事務処理サービス協会などの機関に、雇用管理アドバイザー制度に見られるようなお金と機能を渡すといった方法がよりよい効果を生むのではないかなと思います。これに対しては大臣の御意見を聞きますので、後でよろしくお願いします。  委託先を、事業主団体だけでなく派遣労働ネットワークなどの労働者団体、それから日本労働弁護団などの弁護士団体等にも広げて、派遣労働者がより働きやすい環境づくりと労働者派遣法の趣旨を定着させていくことが望ましいと考えます。そして何よりも派遣労働者派遣元、派遣先の三者が相互にコミュニケーションが図れるようなシステムづくりが必要であると実感いたしました。  労働大臣は、この点についていかがお考えでしょうか。今後の労働行政の機能充実の将来についてお答えいただきたいと思います。
  184. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生指摘のように、派遣労働を問題のないように、また法律趣旨からいって労働者が働きやすいあるいは労働条件も確立てきる、いろんな面からこの法律をきちっと運用しないと法律をつくった価値がないことは御指摘のとおりであります。  したがって、数の少ない職員で現場は頑張ってくれているのでありますが、それらの職業安定所の現場の中で専任を置いているところ、置いていないところという御指摘がありましたけれども、できるだけ安定所の職員がお互いに助け合って、問題の起きないように、みずからも派遣労働に対する知識を高めていく、対応できる能力を持つこと、そして今先生言われましたように専門的な相談援助を行うことのできる、そういう経験を有する団体のノウハウを活用することも有益だと思います。  したがって、これは絵そらごとではなくて、今愛知県のことが出ておりましたけれども、協力員の運営も本当に緻密にやれるようなことも、予算もぐんとふやしたわけでありますから、片方でそういうことの指導もしながら、お互いに連携をとり合って初めて法律の求めているものを効果あらしめるというふうに官民が協力して頑張っていきたい、この決意だけをきょうのところは申し上げておきたいと思います。
  185. 末広まきこ

    末広真樹子君 もう少し踏み込んだお答えが欲しかったんでございますが、それは次回に期待しております。  労働者派遣法が成立して十年、派遣元も派遣先もお互いに必要とし合って一兆円産業にまで急成長した、まさにベンチャー産業の一つでございますが、その間に介在する派遣労働者の人権と労働保障に関しましては次回の委員会質疑で述べさせていただくことにいたしまして、私の本日の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  186. 足立良平

    委員長足立良平君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回の委員会は三十日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十五分散会      —————・—————