○今泉昭君 ありがとうございました。大変強い決意を述べていただきましたので、大いにそれを期待していきたいと思います。
私が、この点を特にしつこく申し上げますのは
二つの点で心配があるからでございまして、ぜひひとつこの点についての加えての配慮をお願いしておきたいと思うんですが、
中小企業が存続をしていくためには、やはりコストというものを大変重要視するのはこれはもう十二分にわかるわけでございます。
我が国の商取引の環境を見てみますと、どうしても
中小企業は弱い立場にある。したがって、取引先あるいは大
企業から仕事を与えられたならば土日でもとにかく働いて製品を言われた日時に納めなきゃならないという日本独特の商慣行あるいは圧力といいますか、そういうものが依然として根づいていることは事実なのであります。
そのために、下請に関するそういうことをなくすために、例えば土日に仕事をさせないために金曜の夜に仕事は新しく与えちゃだめだよ、そして月曜納品なんということはさせないよというような法案までつくってきているわけなんですが、依然として取引先であるとか大
企業からのそういう締めつけがまだまだ存在するのではないか。そういう意味でどうしても時間
短縮ができないんだよというのはなかなか口に出して
企業側としては言えないと思うわけでございまして、そういう点にも突っ込んだひとつ聞き取り
調査あるいは実態
調査をぜひしていただきたいと思うわけです。これが第一点です。
それからもう一点は、私が大変懸念をするのは、実は一九八五年にあの有名なドラッカーが「イノベーションと
企業家精神」という本を出しているわけであります。「イノベーション・アンド・エンタープレナーシップ」という本なんですが、この中に、アメリカにおけるところのいわゆる将来の
企業構造の
変化というのを実に的確に読み取っているわけですね。そして、この本に書いてあるとおりに実はアメリカの産業界というのは推移をしているわけです。ちょうどこれが出た時期は、一九八五年といいますと例の
G7でもって円高が容認された年でありまして、物すごい勢いで円高が伸展をしていたという、逆な面でアメリカは大変な空洞化と構造不況に悩んでいた時期でございました。
どういう予測をしていたかといいますと、アメリカの
産業構造を大幅に転換していくために
規制緩和をやっていく、あるいは税制の
措置で
助成をしていくんだということをアメリカのレーガン政権は物すごいリーダーシップをとってやったわけなんですが、そのためにどういう
状況が出てきたかといいますと、
中小企業が物すごい勢いでふえたわけです。そのときに、いみじくもドラッカーはこう言っているわけです。今
我が国は大変ハイテク産業を
中心として新しい
産業構造転換を目指してはいる、そしてそこに
雇用創出を今
我が国全体として期待しているようだけれども、実は物すごいアメリカにおけるところの成長がこのときにあったにもかかわらず、ハイテク
関係の持つ
雇用創出というのは大したことはないんだよと。
実際はそうなっちゃっているわけでありまして、ハイテク
関係ではなくしてアメリカの
雇用創出の
中心というのは実はローテク、
中小企業を
中心とした
企業の、いわゆる起業家精神で
企業を起こしていくという形のしりをたたいたわけでございますから、それが大変な勢いでアメリカの今日の
経済成長につながるような
企業おこしにつながってきているわけでございまして、この間に何とアメリカ全体で実は三千五百万人の
雇用労働を
創出しているわけであります、十
年間に。その
中心がミドルテク、ローテク、ノーテクと言われているベンチャー
企業を
中心としてなしているわけです。
ということを考えますと、日本も恐らくそういう方向に、今盛んに苦労されているけれども、向かっていく可能性が大変強いわけであります。通産を
中心としていろいろと勉強をされていろいろな
法律をつくられているのは、アメリカのそういう
経験を学びながらいろんな法案をつくられているわけです。ということは何を意味しているか、
我が国も中小零細が今後物すごくふえるということなんですよ。しかも、この中小零細の一番ふえているところは何と五人未満のところが大変多いわけなんです。あるいは、十人未満というところが大変多いわけです。
そう考えますと、こういうところが今
猶予措置の
対象になっている分野なのでありまして、これがますますふえていきますと、実態から見てこんなに多いんだから延ばすのは当たり前じゃないか、そういうような流れが起きてくるのが大変心配なのであります。そういう意味で、ぜひこの
猶予措置というものを再延長するとか法
改正するとかということではなくして、これを実現するために強いリーダーシップをお願いしたいということをあわせてお願いしておきたいと思うわけであります。
次に、もう時間もなくなってしまいましたので
雇用保険関係はちょっと質問できませんので、引き続いて
労働時間
関係についての質問をしたいと思うわけでございます。
労働時間と大変
関係の深い時間
外労働の割り増しの問題でございます。
この法
改正のときに、
労働側は最低でも三〇という要求をいたしました。日曜出勤、休日出勤の場合は四〇以上とするのが先進国としてのこれは最低条件じゃないかという主張をして法
改正時に大変なお願いをしたわけですが、現実は、戦後昭和二十二年から定められている二五%の割り増し率が一つも変わらなかったという実態がございます。先進国の実態を見てみますと、実は大体時間外割り増し率は五割なんですね。後進国でさえ三五%やっているという実態の中で、依然として
我が国は二五%、これは大変恥ずかしい実態なんですよ。
御存じのように、
労働コストというのは
賃金に比べまして大体一・八倍ぐらいの費用がかかることは事実ですね。例えば、十万円の
賃金をもらっている人の
労働コストは大体十八万の
労働コストがかかるというのは、これは常識でしょう。これは最近はちょっと見ませんけれども、かつて
労働省の
労働白書の中でも分析された
資料が出ていたのを見ておりますが、そのころは一・六五から七ぐらいの水準でございました。と申しますのは、一時金を払ったり、退職金の積み立てをやったり、法内外の負担があるわけでございまして、教育費もかかるでしょう。そういう意味で、実は
労働コストというのは
賃金の一・八倍近くかかるというのは、これは常識になっていると思うわけであります。
この費用というのは、実は残業をやればやるほどコストが下がっていくということにつながるわけですね。残業で働いている人たちは定時間で働いている人たちよりも安い
賃金で実は働かされているという、こういう実態なのであります。と申しますのは、残業で働く人たちには一時金がふえるはずがない、残業をやったからといって退職金がふえるわけじゃないんです。したがいまして、残業コストの中にはそういう費用は一切必要ないわけでございますから、残業で働く人たちは
賃金の、最低で言うなら一・二五なんでございましょうけれども、その他の費用もかさむからせいぜい一・三から一・四ぐらいで働いている。ふだんならば
労働コストというのは一・八ぐらいにあるにもかかわらず、残業をやればそれだけ
労働コストが下がるというところに実はポイントがあるわけでありまして、コストという面からして経営側は残業を長くやればやるほどコストが下がる、これはもう当然コスト管理に関しましてはシビアな経営者が考えるというのは、これは当たり前のことだと思います。
そういう意味で、私は海外の
労働組合などとの交流の場合にいつも言われるのはこのことであります。日本はとにかく残業時間が長い、その長い残業時間で定時間よりも低い
賃金で実は働いているのと同じじゃないか、そういうことを法的にも許しているのか、こういうことをよく雷われるんです。恥ずかしい思いです。
こういう
労働時間の問題とか、労使間のいろんな問題は、実は
行政の手を煩わせることなく、本当だったらば労使の協議の中で水準をそれなりに高めていくというのがこれは常道でございましょう。これは残念ながら
労働組合の力の足らなさというのもございまして、
我が国の場合は
労働時間の
短縮も含めまして
行政の手もかりているような
状況、ある意味じゃ恥ずかしい一面もあるんですが、そういうことを考えてみますと、この時間外割り増しの問題もこのままで放置をしていくわけにはいかない。恐らく日米の
産業構造協議の中でも、かつてこの問題が出たということもちらりと聞いております。
この問題について、どうでしょうか。法
改正の考えがあるかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。