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1996-04-09 第136回国会 参議院 労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月九日(火曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月十四日     辞任         補欠選任      小山 孝雄君     橋本 聖子君  三月十五日     辞任         補欠選任      橋本 聖子君     小山 孝雄君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         足立 良平君     理 事                 南野知惠子君                 真島 一男君                 武田 節子君                 大脇 雅子君     委 員                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 山東 昭子君                 坪井 一宇君                 前田 勲男君                 松谷蒼一郎君                 石井 一二君                 今泉  昭君                 星野 朋市君                 青木 薪次君                日下部禧代子君                 吉川 春子君                 笹野 貞子君                 末広真樹子君    国務大臣        労 働 大 臣  永井 孝信君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労政局長  七瀬 時雄君        労働省労働基準        局長       松原 亘子君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業安定        局高齢障害者  坂本 哲也君        対策部長        労働省職業能力        開発局長     伊藤 庄平君    事務局側        常任委員会専門  佐野  厚君        員     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (雇用問題等に係る諸法律施行状況に関する  件) ○地方自治法第百五十六条第六項の規定基づ  き、公共職業安定所設置に関し承認を求める  の件(内閣提出) ○労働安全衛生法の一部を改正する法律案内閣  提出)     ―――――――――――――
  2. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査を議題といたします。  雇用問題等に係る諸法律施行状況に関する件について、永井労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。永井労働大臣
  3. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 雇用問題に係る諸法律施行状況等について御報告申し上げます。  まず第一は、G7雇用関係閣僚会合についてであります。  四月一日、二日にフランスのリール市におきまして、G7雇用経済担当閣僚が一堂に会し、G7雇用関係閣僚会合開催をされました。開催国フランスからは、シラク大統領を初めとして関係閣僚出席をされ、日本からは私のほか大蔵省、通産省及び経済企画庁の各政務次官が出席をいたしました。今回の会合では、平成六年三月のデトロイト会合以降の各国における雇用情勢変化雇用政策の進展を踏まえて、雇用問題の解決に向けて真剣な議論と積極的な意見交換が行われまして、我が国といたしましても大いに学ぶところがありました。  会議では、まず一つは経済成長とすべての人のための雇用をいかに確実なものとするか、二つには将来の雇用創出をいかに力強いものとするか、三つには若年者、未熟練労働者等状況をいかに改善するか、この三つの主要なテーマについて議論が行われたわけであります。  参加各国は、これらの討議を通じて、社会の発展を雇用の安定と拡大に結びつけるため、財政赤字削減等による中長期的に安定したマクロ経済環境提供とともに、経済グローバル化技術革新を新しい雇用創出に結びつけるための経済社会適応力の向上、若年労働者や未熟練労働者に対する特別な配慮が必要であるとの認識で一致をしたところであります。  我が国からは、規制緩和を初めとした構造改革推進、新技術研究開発支援新規事業展開のための環境整備中小企業資金調達人材確保等支援若年労働者雇用対策、ニーズに即した能力開発施策、労使の対話の重要性などの諸点について我が国経験紹介し、また産業構造変化の中で雇用維持が困難な場合には、失業なき労働移動支援することが重要であることも指摘をいたしました。これらの発言につきましては、四号各国から高い評価と賛同を得たところであります。  なお、今後につきましては、G7相互の緊密な協力継続が一層重要となるものと考えられることから、G7閣僚はその元首や首相の要請に基づき、適宜会合を持つことができることとされました。我が国からは、若年者高齢者雇用等に焦点を当てる専門家レベル会合開催を提案しましたところ、各国から歓迎をされたところであります。  我が国としましては、今回の会合の成果も生かしながら、今後とも国際協調の観点に立って、雇用問題の解決等のために努力をしてまいりたいと考えているところであります。  次に、近年成立いたしました雇用問題等に係る諸法律施行状況について御報告を申し上げます。  まず一番目に、平成五年六月に成立いたしました労働基準法及び労働時間の短縮促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律につきましては、これに基づ労働時間法制整備支援措置により、週休二日制の普及を中心に着実に労働時間短縮が進展しているところであります。  二つ目に、平成五年六月に成立いたしました短時間労働者雇用管理改善等に関する法律につきましては、現在、同法の周知徹底、短時間雇用管理者選任助成金活用等により、中小企業などにおいてパートタイム労働者雇用管理改善に向けた取り組み促進されているところであります。  三つ目に、平成六年六月に成立いたしました雇用保険法等の一部を改正する法律につきましては、まず六十歳から六十五歳までの高年齢者雇用継続、そして育児休業を取得した者の雇用継続などを着実に推進しているところであり  四つ目に、平成六年六月に成立いたしました高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部を改正する法律につきましては、六十歳定年を基盤とした六十五歳までの継続雇用、多様な形態による高年齢者雇用就業機会確保等を着実に推進しているところであります。  五つ目に、平成六年六月に成立いたしました障害者雇用促進等に関する法律の一部を改正する法律につきましては、就職が特に困難な障害者対象とするきめ細かな職業リハビリテーションサービス実施就職が特に困難な障害者職業生活環境整備を図るための援助などを着実に推進しているところであります。  最後に、阪神淡路大震災に係る雇用対策について御報告を申し上げます。  労働省といたしましては、雇用調整助成金特例措置を延長するなどにより、引き続き被災地における雇用維持失業防止に努めるとともに、積極的な求人開拓、きめ細かな職業相談職業紹介高率助成による特定求職者雇用開発助成金積極的活用などにより、被災による離職者雇用促進等について全力で取り組んでいるところであります。  また、平成七年二月に成立いたしました阪神淡路大震災を受けた地域における被災失業者公共事業への就労促進に関する特別措置法基づ公共職業安定所紹介により公共事業に雇い入れられた被災失業者方々は、延べ人員で三千十六人目となっております。今後とも、公共事業への就労を希望する方々ができるだけ多く就労できるよう、法律の円滑かつ実効ある施行に努めてまいります。  なお、各法律施行状況等の詳細につきましては、政府委員から御説明を申し上げます。  以上、雇用問題等に係る諸法律施行状況等について御報告を申し上げました。  私は、労働行政を預かる者として、ともに働き、喜び、安心して暮らせる社会の創造を目指して全力を挙げて取り組んでおりますので、どうぞひとつよろしく御協力のほどをお願い申し上げます。
  4. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 労働基準法及び労働時間の短縮促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律について、御説明申し上げます。  これらの法律は、豊かでゆとりのある国民生活の実現を図るため、週四十時間労働制への移行等を含む労働時間法制全般にわたる整備を行うとともに、中小企業における労働時間の短縮を容易にするための支援措置を講ずることを目的といたしまして、平成五年六月二日に成立したものでございます。  その主な内容でございますけれども、まず第一に、法定労働時間については、週四十時間労働制平成六年四月一日より実施するということにするとともに、中小企業に対する週四十時間労働制適用については、平成九年三月三十一日までの間、一定猶予措置を置くということとされたことでございます。  第二点目は、年間単位での休日増を図るために、労働時間を一週平均四十時間以下とする等の要件のもとに、従前の三カ月単位変形労働時間制を最長一年単位変形労働時間制に改正することとされたことでございます。  第三点目は、時間外及び休日労働に対する割り増し賃金率でございますが、これについては二割五分以上五割以下の範囲内で命令で定めることとされました。なお、具体的には政令で時間外労働に対する割り増し賃金率従前どおりの二割五分以上とし、休日労働については三割五分以上の率といたしているわけでございます。  第四点目でございますが、年次有給休暇につきましては、初年度の継続勤務要件を一年から六カ月に短縮するとともに、出勤率の算定に当たっては育児休業をした期間については出勤したものとみなすということとされたわけでございます。  第五点目でございますが、労働時間短縮を進めにくい中小企業等に対する支援を行うため、労働時間短縮実施計画を定める団体に対する労働時間短縮実施計画推進援助団体助成金という制度を創設いたしましたし、また、中小企業に対する中小企業労働時間短縮促進特別奨励金制度というこれら助成制度を創設したということでございます。  それ以外には、裁量労働制対象業務範囲を具体的に命令で定めることとされたほか、林業に従事する労働者について労働時間、休憩及び休日に関する規定適用することとされたということでございます。  制定後の施行状況及びその効果でございますけれども、まず年間労働時間につきましては、法定労働時間が短縮されたこと等を受けまして、所定内労働時間の短縮中心といたしまして平成四年の千九百七十二時間から平成七年には千九百九時間へと六十三時間短縮をされました。また、週四十時間達成事業場割合平成四年の二七・九%から平成七年には三八・七%へと一〇・八ポイント上昇をいたしております。また、年次有給休暇付与日数でございますが、平成四年の十六・一日から平成六年には十六・九日へと〇・八日増加をいたしました。  また、労働時間短縮実施計画推進援助団体助成金につきましては、平成八年三月末までに製造業運輸業等中心といたしまして百十二件の申請がなされ、五億二千百八十三万円が支給されております。中小企業労働時間短縮促進特別奨励金につきましては、平成八年二月末日までに、省力化投資に係る申請中心といたしまして一万二千七百八十件の申請がなされ、このうち七千九百十七件、八十五億六千七百五十万円が支給をされているところでございます。  このように、改正されました労基法及び時短促進法基づきまして労働時間法制整備され、また支援措置実施されることによりまして、労働時間短縮は着実に進展しているというふうに認識しているところでございます。
  5. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 短時間労働者雇用管理改善等に関する法律、いわゆるパートタイム労働法施行状況について御説明申し上げます。  パートタイム労働法は、パートタイム労働者我が国経済社会で重要な役割を果たしていることから、その福祉増進を図ることを目的といたしまして平成五年十二月一日から施行をされております。  その後、同法に基づ平成五年十二月に事業主が講ずべき短時間労働者雇用管理改善等のための措置に関する指針、また平成六年八月には短時間労働者対策基本方針を策定し、パートタイム労働法はもとより、これら指針等周知徹底を図っているところでございます。また、企業におきましては、同法に基づパートタイム労働者雇用管理改善などを扱う短時間雇用管理者平成六年末で約二万四千人ほど選任されております。パートタイム労働法基づき、短時間雇用管理者に対する研修やパートタイム労働者雇用管理改善に取り組む中小企業事業主及び中小企業事業主団体に対する助成金支給事業を行っております。中小企業に対する助成金につきましては、平成三年の三月末現在、約四百の企業に対して一千五百万円が支給されております。また、中小企業団体に対する助成金につきましては、百団体に対し約七億三千万円が支給されておるところでございます。これらによりまして、パートタイム労働法施行後、中小企業などにおいてパートタイム労働者雇用管理改善に向けた取り組み促進されております。  なお、パートタイム労働法附則第二条におきまして、法施行後三年を経過した場合において、法律規定状況を勘案し、必要があると認めるときには検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるとされておりますが、本年秋に取りまとめることとしておりますパートタイム労働者総合実態調査の結果を踏まえて検討を進めていきたいというふうに考えております。
  6. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 平成六年六月二十二日に成立いたしました雇用保険法等の一部を改正する法律内容及び施行状況について御説明申し上げます。  この内容につきましては、まず第一に、雇用継続給付といたしまして高年齢雇用継続給付育児休業給付を創設したことでございます。  高年齢雇用継続給付につきましては、高齢者の働く意欲と能力にこたえ、六十五歳までの雇用継続援助促進するため、賃金が六十歳時点に比べて相当程度低下した状態で働き続ける高齢者に対しまして、原則として六十歳以降の賃金の二五%を支給するものでございます。  育児休業給付につきましては、育児休業を取得しやすくし、その後の円滑な職場復帰援助促進するため、一歳未満の子を養育するための育児休業を取得した労働者に対しまして、原則として休業賃金の二五%を支給するものでございます。  第二に、失業給付改善でございますが、一般保険者求職者給付あるいは日雇い労働保険者に対する給付改善等とあわせまして、再就職手当につきまして、産業構造転換等に対応し一層の早期再就職促進するため、支給範囲を拡大するとともに、厳しい雇用失業情勢に対応するための支給額引き上げ暫定措置を講じたことでございます。  この改正につきましては、基本的には平成七年四月から施行されたところでございますが、雇用継続給付平成七年十二月までの支給申請書受理件数を見ますと、高年齢雇用継続給付が十四万六千四百七十七件、育児休業給付が九万八千二百九十四件となっております。  また、再就職手当支給対象者につきましては、平成七年十二月までで二十六万三千七十人と、平成五年の同期に比べまして約一三・六%増となっております。  今後とも雇用継続給付を初め改正後の雇用保険制度活用することによりまして、労働者生活及び雇用の安定、再就職促進により一層努力してまいりたいと考えております。
  7. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 平成六年六月十日に成立をいたしました高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部を改正する法律につきまして、その内容及び施行状況について御説明申し上げます。  この法律は、急速な高齢化が進展している状況のもとで、我が国経済社会の活力を維持し、高年齢者が生きがいを持って暮らすことができる社会を築いていくためには六十五歳までの雇用機会確保する必要があるということで、企業におきます六十五歳までの継続雇用制度導入促進いたしますとともに、高年齢者がその希望に応じて多様な形態により就業し得るための措置を充実させることを目的としたものでございます。  法律の主な内容でございますが、八ページの四にございますように大きく四点ございまして、第一点は高年齢者の安定した雇用確保促進でございます。その第一は六十歳定年義務化でございまして、定年の定めをする場合には六十歳を下回ることができないものとしたことでございます。なお、この規定につきましては平成十年の四月から施行ということになっております。その第二は六十五歳に達するまでの継続雇用でございまして、労働大臣は、事業主に対しまして、継続雇用制度導入改善に関する計画作成指示あるいは勧告を行うことができることといたしております。  改正の二点目でございますが、高年齢者に係る労働者派遣事業特例でございます。派遣労働者が六十歳以上の高年齢者のみである労働者派遣事業につきましては、港湾運送業務等一定業務を除いて、派遣事業特例として行うことができることといたしたところでございます。  三点目は高年齢者職業経験活用センターでございます。労働大臣は、高年齢者に対してその知識あるいは技能の活用を図ることができる短期の雇用機会確保及び提供等を行う公益法人を高年齢者職業経験活用センターということで指定することができることといたしております。  第四点目は労働者職業生活設計援助でございまして、公共職業安定所労働者に対しまして、その高齢期における職業生活設計のために必要な助言あるいは指導を行うことができることといたしております。  これらの規定施行状況でございますが、五にございますように、まず六十歳以上定年企業割合でございますが、これは参考資料として九ページにこれまでの推移を添付しておりますけれども、平成七年一月現在八五・八%ということでございます。平成五年に比べますと五・八ポイントの上昇でございます。  定年後の継続雇用制度につきましては、何らかのこういった制度を設けておる企業平成七年一月現在で六九・五%ということになっております。  高年齢者に係る労働者派遣事業特例につきましては、平成七年度末現在で一般労働者派遣事業に係ります許可が二十八件、特定労働者派遣事業に係ります届け出が四件出ております。  次に、高年齢者職業経験活用センターにつきましては、これまでのところ一団体指定いたしまして、その運営に係る費用について助成をいたしております。また、現在二団体指定に向けて準備中でございます。  それから、平成七年度末現在の公共職業安定所高齢期雇用就業支援センターでございますが、全国二十二カ所に設置をいたしまして、職業生活設計のための必要な助言指導を行っておるところでございます。  今後ともこういった施策活用いたしまして高齢者雇用の安定に努めてまいりたいと考えております。  引き続きまして、資料の十ページになりますが、平成六年六月十四日に成立をいたしました障害者雇用促進等に関する法律の一部を改正する法律につきまして、その内容施行状況を御説明申し上げます。  この法律は、重度障害者中心といたしまして、就業を希望しながら雇用につくことができない障害者が多数存在しているということから、きめ細かな職業リハビリテーションサービス実施体制整備やあるいは障害者を取り巻く職業生活環境整備など重度障害者対策中心とした施策の充実を図ることによりまして、就職が特に困難な障害者雇用促進しようとする目的でございます。  法律の主な内容でございますが、二点ございまして、第一点は障害者雇用支援センター指定でございます。都道府県知事は、就職の特に困難な障害者職業的自立を図るために、市町村レベル雇用部門福祉部門との連携を図りながら、個々の障害者の特性に応じたきめ細かな職業リハビリテーション実施する公益法人障害者雇用支援センターとして指定することができることにしたことでございます。  二点目は、障害者を取り巻く職業生活環境整備を図るための助成措置の拡充でございまして、処遇改善あるいは福祉増進のために処遇改善施設設置等助成金ですとか、福祉施設設置等助成金を新たに創設したところでございます。  この施行状況でございますけれども、まず最初のポツにございますように、直近の時点におきます障害者の実雇用率でございますけれども、昨年の六月で一・四五%ということでございます。この経緯につきましては十一ページに参考資料をつけておりますけれども、平成五年に比べて〇・〇四ポイント上昇、過去最高の水準となっております。  障害者雇用支援センターの設立につきましては、平成七年度末までに申請が十一件出ておりまして、そのうち六件ほど指定をいたしております。また、助成金関係でございますけれども、障害者処遇改善施設設置等助成金は三件三千三百万円、福祉施設設置等助成金は四件二千百万円ほどの支給実績ということになっております。  今後ともこの法律基づきまして障害者雇用促進に万全を期してまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  8. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 阪神淡路大震災に係る雇用状況対策につきまして申し上げます。  労働省といたしましては、震災発生後直ちに雇用調整助成金特例措置あるいは雇用保険特例支給などの措置を講ずるとともに、必要な立法措置といたしまして、公共事業就労促進法あるいは新規学卒者雇用調整助成金適用等措置も講じたところでございます。さらに、公共職業安定所窓口におきましてきめ細かな職業相談あるいは職業紹介実施するなど、被災地労働者職業の安定に最善の努力をしてきたところでございます。時に雇用調整助成金あるいは雇用保険特例措置等につきましては、緊急の相談窓口としまして別途特別の窓口をつくりまして、なおかつ近隣等行政から三十人態勢での応援をお願いいたしまして、対処してきたところでございます。  兵庫県におきます最近二月の雇用失業情勢につきましては、震災前の平成六年十二月を一〇〇といたしますと、新規求職者数は一四五・六、それから新規求人者数が二八八・一というような状況でございまして、新規求人倍率で見ますと、平成六年十二月の〇・九八倍に対しまして、平成八年二月におきましては一・一三倍となっております。数字の上では落ちついているように思われますが、ただ他方、求人求職者の間には職種、年齢等ミスマッチがさまざまございまして、被災地におきます実際の雇用失業情勢は依然として厳しい状況であるというふうに認識しているところでございます。  このため、労働省といたしましては、雇用調整助成金特例措置及び高率助成につきまして本年度も引き続き延長いたしまして、被災地におきます雇用維持失業防止に努めることといたしております。  また、やむを得ず離職された方々につきましては、公共職業安定所雇用開発推進班等設置することによる積極的な求人開拓あるいは就職面接会開催を含めたきめ細かな職業相談職業紹介はもとより、高率助成によります特定求職者雇用開発助成金積極的活用などによりまして、被災による離職者方々雇用促進全力で取り組んでいるところでございます。  また、公共事業就労促進法につきましては、今後とも公共事業への就労を希望する方々にできるだけ多く就労していただけるよう、法律の円滑かつ実効ある施行に努めてまいりたいと考えています。  以上でございます。
  9. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまの報告につきまして質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 今泉昭

    ○今泉昭君 平成会の今泉でございます。  個人的な理由で質問の順序を前にさせていただきましたことを、まず最初に感謝申し上げたいと思います。  きょう、私は大きな柱として二つの問題についてお聞きをしたいと思うわけでございますが、一つは労働時間、一つは雇用保険の問題についてお聞きをしたい、かように考えている次第でございます。  まず第一の、労働基準法及び労働時間の短縮促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律施行されてから、ただいまの御報告を受けますと一定労働時間の成果が得られているという報告をいただいているわけでございます。これは大いに結構なことだと思います。  ただ、この労働時間問題をとらえる際には、ただ単に表面上あらわれました数字だけで我々としては安心をしてはいけないと思うわけでございます。例えば、労働時間というのは大変景気に変動されやすい一面を持っております。と申しますのは、恐らくここで報告をされている労働時間の年間労働時間というのは残業労働時間を含めた労働時間の実態だろうと思うわけでございますが、たまたまこの法律施行されたときから、あるいはまたそのときがたまたま不況の最中でございまして、残業時間は自然に少なくなっていった、あるいはなかなか残業をやるほど仕事がなかったというのが実態の姿ではなかっただろうかと思うわけでございます。  したがいまして、労働時間短縮において一番重要なことは、それが制度的な意味で短縮をしているのかどうか、そういう物の見方を一番重要視をしていかなきゃならないと思うわけでございますが、ここであらわれている年間総実労働時間はあくまでも実態の労働時間の合計でありますが、制度的に一体今の我が国労働時間、例えばこれはなかなか調査としても難しい一面があって報告できない一面があるかもしれませんけれども、例えばこの期間に残業が減ったのか、あるいは一日の労働時間が減ったのか、休日日数が減ったのか、どこが中心になってこのような前進がなされたのか、その実態をまず最初にお聞きをしたい、こういうように思います。
  11. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 先ほども御説明いたしましたように、平成五年の労働基準法改正につきましては、昭和六十三年の改正によって週四十時間制というのが原則として定められたわけでございますけれども、その具体的な施行日といいますかスタートの期日を平成六年四月一日からにするということ、もちろん一部の中小企業につきましては、業種、規模によってでございますけれども、中小企業等につきましては猶予措置が定められたわけでございますけれども、平成六年四月一日から週四十時間がスタートしますよと、こういうことを具体的に決めたわけでございます。  したがいまして、週四十時間制の原則というのは昭和六十三年の労働基準法改正によって明確にされたわけでございますので、昭和六十三年から現在までのその推移というものをちょっと御紹介させていただきますと、総実労働時間は昭和六十三年には二千時間を超える二千百十一時間という状況でございます。それが先ほど御説明いたしましたとおり、総実労働時間は平成七年で千九百九時間ということでございますので、二百時間余り短縮をいたしております。  その内訳でございますけれども、所定内労働時間、これが先生御指摘の企業内の制度としての所定内労働時間、一日の労働時間、休日その他全部入っておりますけれども、あらかじめ定められた労働すべき時間として制度的に決められた時間のことでございますが、この所定内労働時間が昭和六十三年には千九百二十二時間でございました。これが漸次短縮してきておりまして、平成七年には千七百七十二時間というふうに短縮してきておりますので、これを差し引きますと百五十時間ぐらいになりますでしょうか、の短縮ということでございますので、法律改正によりまして労働時間の仕組みといいますか、制度そのものも大きく短縮を見たというのが実態でございます。
  12. 今泉昭

    ○今泉昭君 ちょっと細かくなって恐縮なんですが、所定内時間の場合におきましては、これは所定内の実労とは違うんですね。例えば、有給休暇なんかの場合は個人によっていろんな差があるわけですから、有給休暇も一応制度上は設定をされているわけでありまして、有給休暇をとるという問題、これは労働時間の問題とは別問題だろうと思います、制度上の問題とは別だろうと思います。それは個人個人がそういう権利を与えられているわけでございますから。  そういう面で考えますと、有給休暇というものを除いたいわゆる所定内時間ですね、だれもが同じ条件で働く労働時間制度はこうなっておりますよと、こういうものについての変化はいかがなものでしょうか。
  13. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) その一つを示すものといたしまして、週休二日制の普及率がどの程度になっているかというのは一つそれを示す指標ではないかと思いますけれども、先ほどの時点とあわせまして、昭和六十三年の完全週休二日制を採用していた企業数の割合は七・四%でございましたが、平成六年、私どもが把握しております最新時点ですが、平成六年のその率は二四・三%というふうにふえてきております。  また、完全週休二日制が適用される労働者割合も昭和六十三年には二九・五%でございましたけれども、平成六年には五三・九%というふうにふえてきているわけでございます。これはまさに企業制度でございまして、先生御指摘の年次有給休暇等の実態はここには入っていないという、こういう数字でございます。
  14. 今泉昭

    ○今泉昭君 ありがとうございました。  労働時間の短縮という問題が取り上げられたのは、私が言うまでもなく、先進国という名前が与えられているにもかかわらず、そこで働く労働者労働の実態が必ずしも先進国に胸を張って言えるような実態ではない。特に日本の場合は当時諸外国から大変長時間労働だということを盛んに言われていたわけでございまして、ある意味では、はっきりと名指しはしませんでしたけれども、円高が推進する中で日本の貿易が集中豪雨的に伸びているのは、日本の労働者の大変長時間労働によって、いわゆる労働コストが低いがためにそのような大変集中豪雨的な輸出がなされているという批判が諸外国からあった、そういう社会的背景があったと私は理解をしているわけでございます。  したがいまして、当時そういう流れを受けまして、あれは宮澤内閣のときだったと思うんですけれども、いわゆる生活先進国としての方針と言うんでしょうか、生活大国五カ年計画というものが出されまして、その中に国で働く労働者労働時間を年間千八百時間に少なくとも持っていかなければならないという課題に基づきまして、それを実現するための一つの手段として、方策としてこの法改正が行われたというふうに理解をしているわけでございます。  そういうことを考えてみますと、この当時の目標年次というのは平成九年だったのではないかと思うんですが、現在の実態は依然として千九百時間を上回っているような実態でございます。あと一年ほどの、当時の目標としてはですね、その後経済計画も手直しをされまして構造改革のための経済社会計画などというものに肩がわりはしておりますけれども、その精神はこれにも引き継いでいかれていると思うんですが、この実現までにわずか一年程度しかもうなくなってきているはずでございますが、この計画が一体実現できる可能性があるのかどうか、またそれに向けてどのような決意を持っていらっしゃるのか、これは労働大臣にちょっとお聞きしたいと思います。
  15. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘の問題でありますが、昨年の十二月一日に構造改革のための経済社会計画というものを閣議決定いたしました。その中の第二部の「重点課題への対応」ということが定められているわけでありますが、その中に「ゆとりのための労働時間の短縮」という項目がございまして、「年次有給休暇の取得促進」であるとか「完全週休二日制の普及促進」であるとか、あるいは「所定外労働の削減」なども目標として明確に掲げているところであります。また、この週四十時間労働制への円滑な移行を図るために労使の削減に向けての取り組み促進するように環境整備をしていこうということも、この中にうたっているわけであります。  したがって、この年間労働時間千八百時間の達成、定着ということがこの中に重要な問題として位置づけられているわけでありますから、その位置づけ、目標に向けて労働省挙げて努力をしてまいりたいと、まず基本的には考えているわけであります。  そして、この完全週休二日制の普及促進でありますが、今労働基準局長が御答弁申し上げましたように、かなり促進はしてきておりますけれども、まだその目標達成というところまでに至っていないのも事実であります。また今、先生の方から、制度的に働く時間が短縮されるということが大事だという御指摘がございました。そのとおりでありますが、例えば本人の権利の問題として存在する年次有給休暇、これの取得促進というものも総労働時間千八百時間ということを目標に掲げる以上は、私は非常に重要な問題だと思うんであります。  ヨーロッパとかアメリカに行きますと、有給休暇を消化しないということは常識的に考えられないと言うんですね。この間、雇用サミットに行きましたときにもこのことが強く指摘をされました。日本の事情はどうかといいますと、年次有給休暇付与日数は平均して十六・九日であります。十七日にまだ至っていないわけですね。そして、それに対する取得の日数でありますが、わずかに九・一日であります。率にしますと五三・九%、半分ちょっとしか実はとっていないんですね。  だから、働き過ぎとか過労死の問題とかいろんなことがありますけれども、権利として与えられた有給休暇の取得だってなかなか促進されていない、こういう実情でありますから、こういう休暇の取得促進も重要な課題として私どもは取り組んでいるわけであります。  そして、もう一つは所定外労働の削減ということがございます。きょうも閣議後の記者会見でこの問題について私の方から申し上げておいたわけでありますが、所定外労働が景気の動向によってふえたり減ったりすることは、もう先生御指摘のとおりであります。  ただ、その問題だけではなくて、今一番大きな社会問題になっておりますのはサービス残業であります。この実態はなかなか把握しにくいわけでありますが、サービス残業によって過労死につながるという問題の指摘も受けているわけでありまして、そういう所定外労働の削減をまず着実に進めること。とりわけサービス残業の、極端に言えば撤廃といいましょうか、そういうところに重点を置いて取り組んでいきたい。  きのうも労働基準局長の方から日経連に対しまして、サービス残業の撤廃であるとか、あるいは所定外労働の削減などについて御協力をしてほしいということで、文書でもって申し入れをいたしました。全国の労働基準局長に対しましてもその趣旨の徹底を図るとともに、これからいろんな指導をするときに適切に対応するようにということを、これまた基準局長名で通達を出したところであります。  ぜひとも、そういうことを総合的に進展させながら、私どもが求めている千八百時間の実現に向けて進んでいきたい。  なお、余談でありますが、先日の雇用サミットの席上でも日本の長時間労働が問題になりました。とりわけ日本の中小企業が極めて長時間労働である、サービス残業が多いということなども具体的に指摘をされまして、私といたしましても日本の国内において積極的にそういう問題の解決に取り組んでいきたいと、こういうことを申し上げてまいりました。  したがって、そういうことを積み重ねることによって平成九年の四月、明年の四月一日からは完全週休二日制、週四十時間制、これを達成するために全力を尽くしてまいりたい。橋本総理も参議院の本会議の席上でこの問題の質問に対しまして、来年の四月一日を期して完全週四十時間制を達成できるように、そのことを確実なものにしたいということを御答弁されているわけでありますから、それを私どもは最大限実現できるように努力を重ねてまいりたい。そのためには事業主の皆さんの積極的な御協力も片方でお願いをしてまいりたいと、こう考えているところであります。  なお、つけ加えて言えば、あと一年しかないという御指摘がございました。私は常々事業主の方に申し上げているんでありますが、あと一年しかないんじゃなくて、まだ一年残されているという前提で、この問題に取り組んでほしいということを機会があるごとにお願いをしていることも申し上げておきたいと思います。
  16. 今泉昭

    ○今泉昭君 ありがとうございました。ぜひその決意でもってこれから御指導賜りたいというふうにお願いを申し上げておきたいと思います。  さて、現実の問題として、来年に向けましてまだ百時間ばかり長いという問題を短縮するというのは、一つのかけ声としてはやらなきゃならないことは事実なんですが、一年間に百時間を短縮するというのは、これは大変なことだろうと思います。これは経営側の立場としましても、それなりの大変な努力をしていることは事実でありましょう。そういう中で、この百時間を一年間短縮するというのは、これまでの私どもの経験からいっても大変なことでございます。  ことしの賃上げ交渉のときにも、労働組合は、労働時間の短縮をあわせて実は要求をしまして、交渉をしているわけでございます。わずか一日の休暇をふやすということ、一日の休暇をふやすということは八時間の労働時間の短縮なんでございますが、一時間の休暇をふやすことでもこれは大変難しい。現実問題として進んでいないというような実態なんでございます。  したがいまして、労働時間の短縮というのはいろんな角度から労使がこれは協力をしていかなきゃならないと思うわけでございますが、今労働時間短縮の一番ネックになっている問題点、どのように行政の方ではとらえていらっしゃるのか、それについてちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  17. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 一年間に百時間というのは非常に大変じゃないかというのは、それはおっしゃるとおりだというふうに思いますけれども、まず一つは、法制的に一部の業種規模については週四十時間がまだ義務づけられていないという実態が現在でございます。これが平成九年四月一日から、いわば適用が猶予されていたところが全面的に週四十時間制になるということでございますし、現在適用が猶予されている業種規模に働く方々というのはかなりの数に上るわけです。それが四十時間になるとどうなるかという試算まではしておらないわけでございますけれども、それによってかなり減ってくるということがございますので、ある意味では法制によって労働時間短縮を進めるというやり方をやっているところから、それが義務づけられるまでの間は多少長い時間が残るというようなこともやむを得ないというようなことだろうというふうに思います。  したがいまして、私どもとしては来年四月一日から、中小企業を含めまして原則として四十時間というのが実施できるようにいろいろな形で支援し、援助する等のことをやっていきたいというふうに考えているわけでございます。  それからもう一つ、これは若干私見にわたって恐縮なんでございますが、労働時間短縮というのは、ある意味では生産性向上の成果配分という面があるわけでございます。したがいまして、生産性向上の成果をすべて賃上げで獲得し、それに加えて労働時間短縮をということになると、これは極めて困難な面があるというのは否定しがたいかと思います。  したがいまして、労使の間において生産性向上の成果配分を労働時間と賃金とでどういうふうに分けて時短を進めていくか、労働者方々労働時間短縮に向けての取り組みということも十分考えていただかなければいけないというふうに私どもは考えるわけでございます。そういう意味で、労働時間の短縮ですとか、先ほどの年次有給休暇労働者が権利として持っているものも行使しないというような実態もあるわけでございますが、そういうことについての労使、特に労働者についても意識をもう少し持ってもらう必要があるのではないかというふうにも考えているところでございます。
  18. 今泉昭

    ○今泉昭君 ありがとうございました。ちょうど今、中小企業の時間短縮の問題が出ましたので、次に中小企業労働時間問題を中心として幾つかお尋ね申し上げたいと思うわけでございます。  中小企業猶予措置がこれまた来年の三月三十一日に切れることになっているわけでございますが、実態といたしまして、この対象となっている企業の数というのはどれぐらい、まだこれをカバーしていない企業というのはどれぐらい存在するんでしょうか。
  19. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 逆の面からお答えすることになるかもしれませんけれども、私どもが昨年行いました労働時間等総合実態調査によりますと、週四十時間を達成している事業場の割合でございますが、トータルで三八・七%というふうになっております。ただ、これを規模別に見ますと、三百一人以上の事業場では九五・一%がもう四十時間を達成しているわけでございますけれども、百一人から三百人の規模では六三・〇%、三十一人から百人の規模では四五・三%、一人から三十人という規模では三七・三%というふうになっておりまして、中小企業においてはまだ週四十時間の達成率が低いという実態がございます。
  20. 今泉昭

    ○今泉昭君 単純に計算をしてみたわけでございますが、仮に週四十時間、すなわち週五日、一日八時間労働というのを達成している企業において、制度上で単純に計算をしてみますと、大体土日が一年間に百四日あるわけでございます。それに国民祝祭日が十二日前後ございます。そうしますと、大体、土日と祝祭日を除く稼働日といいますと大体二百四十九日、二百五十日前後、こういうことになるんですが、これで八時間働くと千九百九十二時間ということになるわけです。そうしますと、週四十時間を達成している企業においては、土日それから祝祭日以外に最低でも二十四日、これは何らかの形で休みをとっていなければ千八百時間を実現していることにはならない、定時間労働だけでございます。  恐らく、大企業におきましては有給休暇が平均的に二十日に迫っているでしょうから、そのほかに特別休暇なども入れればこの二十四日をカバーすることは難しくはない現実だろうと思うわけであります。問題は、大企業におきましては残業時間をどう操作していくかというところが大きなポイントになると思うんです。  今、問題として提起をいたしました週四十時間を達成していない、猶予措置をもらっている四十四時間以上の場合を考えてみますと、今のような形で計算をしてみますと、何と二千時間以上の労働が続いているということになるんでございます。大体二千二百時間近くの労働をしている、定時間だけで。そして、有給休暇を仮にこの中でとるといたしましても、中小の場合は大企業に比べて有給休暇をたくさんとっているという可能性はまずないわけでございまして、恐らく基準法で定められている最低の十日を実現しているところがほとんどでございましょう。しかも、その消化率が半分ぐらいというのが実態でございますから、大変な時間を実は抱えて猶予措置企業においては努力をしていかなきゃならない実態があるだろうと思うんです。  そういう中から、実は私の手元にも届いているわけでございますが、商工会議所、商工会連合会から猶予措置を延期してくれという文書が最近届くわけでございます。その中の実態を見てみますと、労働省の実態とこれらの商工会が調査をしている実態とは大変な差がございまして、労働省が把握している以上の数の中小企業が実はもう四十四時間どころではないと、こういう実態にある。四十四時間を上回っているというふうに出ているわけです。私自身は、労働省は大変全国的に幅広く調査をしておりますから、労働省の実態把握の方が正確だというふうに信じているわけでございますが、そういうデータをもとに実は経営側が猶予措置をさらに求めてきているわけです。しかも問題は、この中におきまして、法改正において奨励金などを出してもらっているけれども、これは時間短縮に何ら役に立っていない、こういうことまでつけ加えて実は猶予措置を求めてきているわけでございます。私自身からしますと、大変これは心外なことでございます。  この猶予措置の問題も、急に猶予措置を解きますよということを言っているわけではないわけでございまして、十年間なら十年間という一つの長い期間の中でそれぞれの企業がひとつ努力をしてくれと、その間の猶予なんだよということをやってきているわけでございます。一体この十年間にそういう猶予対象企業がどれだけ努力をしてきているか、これをやはり把握してみる必要があるんじゃないかと思うんです。努力をしてもらわない限り、できないから嫌なんだよということを放置していたのでは、これは一向に進まないと思うわけであります。  これは、定年制のときも私はそうだったと思います。定年制の場合は、六十歳定年計画を出しなさい、計画を出すのにも反対をし、それを怠っている企業に対しては名前を公表しますよという形での強い行政指導をしてきていただいていると思うのでありますが、その結果として定年制が八五%を上回るような実績を既に示しているということなんです。  これらの企業が、この猶予措置を発表されてからどれだけ一体努力をして少なくなってきているのか、そういうデータをもしとらえられていたら出していただければありがたいと思います。いかがでしょうか。
  21. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 例えば昭和六十三年から最近まで、どの程度それがふえてきたかというところまでのデータはちょっとないのでございますけれども、現在手元にあるもので若干その点を御説明させていただきますと、週四十時間達成事業場割合というのは、猶予対象業種・規模においても着実にふえてきております。  現時点、現時点といいましても昨年調査時点における四十時間達成事業場割合は、例えば製造業の非常に小さな規模、一人から九人という規模においては私どもの調査では二七・一%になっております。一年前の時点、つまり平成六年の調査時点では一九・七%だったのが平成七年二七・一%、つまり平成六年から平成七年にかけて製造業の一 九人の規模の事業場においては約八ポイントばかり四十時間達成事業場割合はふえているというような状況になっております。  それ以外の業種、規模におきましても、この調査、毎年調査しておりますけれども、ちょっと手元にございますのが平成六年と七年の比較のデータしかございませんので、恐縮でございますがそのたった一年間の比較の結果しか申し上げられないのでございますが、それを見ましても、四十時間を達成している事業場の割合、もちろんこの今申し上げた例えば製造業の一―九大規模の事業場というのはまだ法律上は四十四時間でもいいというふうになっているわけでございますが、それでも企業努力により四十時間達成事業場が四分の一を超えるというような状況になってきているということは、私どももかなり時短の努力企業においてされてきているというふうに考えているところでございます。
  22. 今泉昭

    ○今泉昭君 労働省としましては、これらの猶予措置をとられている企業指導といたしまして、業界との話し合いであるとか、あるいはそれぞれの地方の労働省関係方々がいろんな形での労働時間短縮指導をされてきておられるというふうに推察をいたしますが、そういう中でそれらの猶予措置をもっと延ばしてほしい、なかなか実現不可能だと言われている経営側の最大のポイントというのはどういうところにあるんでしょうか。
  23. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘のこの商工団体中心にしていわゆる中小零細企業猶予措置の再延長を求めていらっしゃるわけでありますが、各政党にも要請が行っていると思いますし、私のところにも各団体から要請書が参っているわけであります。また、直接お話も聞いてまいりました。  そこで、私はもう率直に申し上げているのでありますが、今先生が御指摘になりましたように、この労働時間短縮問題は十カ年計画で進めてきたわけですね。そのために、まず業種とそれから大中小という企業の規模、これらを勘案いたしまして、まずスタートをするところ、次に第二段階で四十時間に到達させるところ、第三段階で四十時間に到達させるところ、幾つかこの実施時期の準備期間を企業ごとあるいは事業内容ごとによって格差をつけて、十年後には完全に四十時間制に移行するんですよということを法律改正としてつくってきて、そしてまた労働省指導してきたわけです。  言葉が過ぎるかもしれませんけれども、例のバブルのときは、いわば人手が不足していると、人手が不足しているから労働時間短縮どころではないという思いがあったと思うんです、いろんな場面で。今度バブルがはじけて景気が悪くなってくると、こんな景気の悪いときに労働時間短縮どころではないという思いがあると思うんです。これは率直に私の受けとめ方としてお話を申し上げる中で、そういうことも御指摘を申し上げてまいりました。  しかも、三年前に猶予措置を再延長したときに、先生も御経験なさっていると思いますが、中央労働基準審議会のメンバーでは労働委員が一時総引き揚げをするなど大変な混乱を起こしたわけであります。そのときに一応、今回の猶予措置を二回と繰り返さないという前提であのときは取り組まれたという経過があるわけでありまして、今回二度目の延長ということは労働省としては考えていないということも明確に申し上げてきているわけであります。  あるいは、とはいうものの中小零細企業の中で、あと一年間残っているんですけれども、その一年間のうちに四十時間制に移行することの困難な問題ということが具体的にどこにどういう問題があるのか。ペーパーではいろいろ書いてありますが、ここのところは行政としてこのようにやってくれれば何とかクリアできるとか、そういう問題点については具体的に提起をしてほしいということを昨年の秋ごろから申し上げてきているわけであります。あるいは、ことしになってからでも機会あるごとに申し上げてまいりました。しかし、その具体的な提起はまだなされていないのであります。  もし具体的な提起があるならば、そこでクリアできるものはクリアするという努力は私どもも全力を尽くしますけれども、しかし単に今の現実の状況からさらにこの再延長を求めたいということに安易に妥協することは私どもとしてはできないわけでありまして、もし延長するとすれば今度は法律改正になるわけでありますから、それはでき得ないと。  しかも、その十年前の約束事として、十年後には確実に四十時間制に移行するんですよということでスタートしているわけでありますから、それに対応するような事業主にも御努力を願いたい、労働組合のあるところは労働組合にも御努力願いたいということをもう繰り返し繰り返し申し上げてきているのでありまして、これからもそういう事業団体から具体的な問題提起があれば、それをどうやってクリアすることが可能なのかどうなのかは率直に話し合ってまいります。  あるいは、今お話がございましたように、時短促進の奨励金とかいろいろな手当てがございます。これは、役に立たないんではなくて、役立てるように活用してほしいということが私どもの真意でございまして、そういうことも含めてこの残された一年間に最大限お互いに努力をし合う、そして来年の四月一日には確実に四十時間制に移行するということについては、あえて言葉が過ぎるかと思いますが、私自身としてはその実施に向けては不退転の決意で臨みたい、こう思っております。
  24. 今泉昭

    ○今泉昭君 ありがとうございました。大変強い決意を述べていただきましたので、大いにそれを期待していきたいと思います。  私が、この点を特にしつこく申し上げますのは二つの点で心配があるからでございまして、ぜひひとつこの点についての加えての配慮をお願いしておきたいと思うんですが、中小企業が存続をしていくためには、やはりコストというものを大変重要視するのはこれはもう十二分にわかるわけでございます。我が国の商取引の環境を見てみますと、どうしても中小企業は弱い立場にある。したがって、取引先あるいは大企業から仕事を与えられたならば土日でもとにかく働いて製品を言われた日時に納めなきゃならないという日本独特の商慣行あるいは圧力といいますか、そういうものが依然として根づいていることは事実なのであります。  そのために、下請に関するそういうことをなくすために、例えば土日に仕事をさせないために金曜の夜に仕事は新しく与えちゃだめだよ、そして月曜納品なんということはさせないよというような法案までつくってきているわけなんですが、依然として取引先であるとか大企業からのそういう締めつけがまだまだ存在するのではないか。そういう意味でどうしても時間短縮ができないんだよというのはなかなか口に出して企業側としては言えないと思うわけでございまして、そういう点にも突っ込んだひとつ聞き取り調査あるいは実態調査をぜひしていただきたいと思うわけです。これが第一点です。  それからもう一点は、私が大変懸念をするのは、実は一九八五年にあの有名なドラッカーが「イノベーションと企業家精神」という本を出しているわけであります。「イノベーション・アンド・エンタープレナーシップ」という本なんですが、この中に、アメリカにおけるところのいわゆる将来の企業構造の変化というのを実に的確に読み取っているわけですね。そして、この本に書いてあるとおりに実はアメリカの産業界というのは推移をしているわけです。ちょうどこれが出た時期は、一九八五年といいますと例のG7でもって円高が容認された年でありまして、物すごい勢いで円高が伸展をしていたという、逆な面でアメリカは大変な空洞化と構造不況に悩んでいた時期でございました。  どういう予測をしていたかといいますと、アメリカの産業構造を大幅に転換していくために規制緩和をやっていく、あるいは税制の措置助成をしていくんだということをアメリカのレーガン政権は物すごいリーダーシップをとってやったわけなんですが、そのためにどういう状況が出てきたかといいますと、中小企業が物すごい勢いでふえたわけです。そのときに、いみじくもドラッカーはこう言っているわけです。今我が国は大変ハイテク産業を中心として新しい産業構造転換を目指してはいる、そしてそこに雇用創出を今我が国全体として期待しているようだけれども、実は物すごいアメリカにおけるところの成長がこのときにあったにもかかわらず、ハイテク関係の持つ雇用創出というのは大したことはないんだよと。  実際はそうなっちゃっているわけでありまして、ハイテク関係ではなくしてアメリカの雇用創出中心というのは実はローテク、中小企業中心とした企業の、いわゆる起業家精神で企業を起こしていくという形のしりをたたいたわけでございますから、それが大変な勢いでアメリカの今日の経済成長につながるような企業おこしにつながってきているわけでございまして、この間に何とアメリカ全体で実は三千五百万人の雇用労働創出しているわけであります、十年間に。その中心がミドルテク、ローテク、ノーテクと言われているベンチャー企業中心としてなしているわけです。  ということを考えますと、日本も恐らくそういう方向に、今盛んに苦労されているけれども、向かっていく可能性が大変強いわけであります。通産を中心としていろいろと勉強をされていろいろな法律をつくられているのは、アメリカのそういう経験を学びながらいろんな法案をつくられているわけです。ということは何を意味しているか、我が国も中小零細が今後物すごくふえるということなんですよ。しかも、この中小零細の一番ふえているところは何と五人未満のところが大変多いわけなんです。あるいは、十人未満というところが大変多いわけです。  そう考えますと、こういうところが今猶予措置対象になっている分野なのでありまして、これがますますふえていきますと、実態から見てこんなに多いんだから延ばすのは当たり前じゃないか、そういうような流れが起きてくるのが大変心配なのであります。そういう意味で、ぜひこの猶予措置というものを再延長するとか法改正するとかということではなくして、これを実現するために強いリーダーシップをお願いしたいということをあわせてお願いしておきたいと思うわけであります。  次に、もう時間もなくなってしまいましたので雇用保険関係はちょっと質問できませんので、引き続いて労働時間関係についての質問をしたいと思うわけでございます。労働時間と大変関係の深い時間外労働の割り増しの問題でございます。  この法改正のときに、労働側は最低でも三〇という要求をいたしました。日曜出勤、休日出勤の場合は四〇以上とするのが先進国としてのこれは最低条件じゃないかという主張をして法改正時に大変なお願いをしたわけですが、現実は、戦後昭和二十二年から定められている二五%の割り増し率が一つも変わらなかったという実態がございます。先進国の実態を見てみますと、実は大体時間外割り増し率は五割なんですね。後進国でさえ三五%やっているという実態の中で、依然として我が国は二五%、これは大変恥ずかしい実態なんですよ。  御存じのように、労働コストというのは賃金に比べまして大体一・八倍ぐらいの費用がかかることは事実ですね。例えば、十万円の賃金をもらっている人の労働コストは大体十八万の労働コストがかかるというのは、これは常識でしょう。これは最近はちょっと見ませんけれども、かつて労働省労働白書の中でも分析された資料が出ていたのを見ておりますが、そのころは一・六五から七ぐらいの水準でございました。と申しますのは、一時金を払ったり、退職金の積み立てをやったり、法内外の負担があるわけでございまして、教育費もかかるでしょう。そういう意味で、実は労働コストというのは賃金の一・八倍近くかかるというのは、これは常識になっていると思うわけであります。  この費用というのは、実は残業をやればやるほどコストが下がっていくということにつながるわけですね。残業で働いている人たちは定時間で働いている人たちよりも安い賃金で実は働かされているという、こういう実態なのであります。と申しますのは、残業で働く人たちには一時金がふえるはずがない、残業をやったからといって退職金がふえるわけじゃないんです。したがいまして、残業コストの中にはそういう費用は一切必要ないわけでございますから、残業で働く人たちは賃金の、最低で言うなら一・二五なんでございましょうけれども、その他の費用もかさむからせいぜい一・三から一・四ぐらいで働いている。ふだんならば労働コストというのは一・八ぐらいにあるにもかかわらず、残業をやればそれだけ労働コストが下がるというところに実はポイントがあるわけでありまして、コストという面からして経営側は残業を長くやればやるほどコストが下がる、これはもう当然コスト管理に関しましてはシビアな経営者が考えるというのは、これは当たり前のことだと思います。  そういう意味で、私は海外の労働組合などとの交流の場合にいつも言われるのはこのことであります。日本はとにかく残業時間が長い、その長い残業時間で定時間よりも低い賃金で実は働いているのと同じじゃないか、そういうことを法的にも許しているのか、こういうことをよく雷われるんです。恥ずかしい思いです。  こういう労働時間の問題とか、労使間のいろんな問題は、実は行政の手を煩わせることなく、本当だったらば労使の協議の中で水準をそれなりに高めていくというのがこれは常道でございましょう。これは残念ながら労働組合の力の足らなさというのもございまして、我が国の場合は労働時間の短縮も含めまして行政の手もかりているような状況、ある意味じゃ恥ずかしい一面もあるんですが、そういうことを考えてみますと、この時間外割り増しの問題もこのままで放置をしていくわけにはいかない。恐らく日米の産業構造協議の中でも、かつてこの問題が出たということもちらりと聞いております。  この問題について、どうでしょうか。法改正の考えがあるかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  25. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) この割り増し率につきましては、先生が御指摘されましたように、平成四年の中央労働基準審議会が出された建議の中でも触れられておりまして、既に先生御承知のとおりと思いますけれども、労働委員からはもっとこれを引き上げるべきだという意見が出ましたが、一方、使用者側の方からは割り増し賃金率は現状は圧倒的に二五%というのが実態であるといったことですとか、日本の雇用労働慣行に照らして企業経営とりわけ中小企業経営に与える影響が大きいことといったようなことを理由として、割り増し賃金率の引き上げを行うべきでない、こういう意見が出されたわけでございますけれども、公益委員としては、恒常的な時間外・休日労働の削減や国際的な公正労働基準の確立等の観点から基本的にはその見直しを行う必要があるということで、先ほど御説明いたしましたように、この割り増し賃金率につきましては、時間外労働については二五%でございますけれども、休日労働につきましてはこれを引き上げ三五%にするということで現在に至っているわけでございます。  ところで、この時間外労働割り増し賃金率の持つ意味というのは、一方では法定労働時間を超える長い労働時間に対して、労働者に対してそれを保障するといいますか、そういうことがある一方、使用者側に対しては時間外労働が高くつくといいますか、そういうことから時間外労働を抑制することを求める効果、こういったものも期待をしているわけでございます。使用者側が、先ほど言ったと申し上げました我が国労働雇用慣行ということについて申し上げれば、我が国の時間外労働というのはある意味では景気変動に対する雇用調整の機能というものも持っているわけでございます。  景気が悪くなっても、雇用はできるだけ維持しつつ残業を減らすということによって対応するということが、使用者としても雇用維持したいという、そういう雇用維持の責任を果たすという観点から行われており、また一方労働者側においても景気が悪くなれば残業は減っていく、しかし雇用維持されるということを期待をしているわけでございます。それが、そうではなくて時間外労働は非常に少ないかわりに、景気が悪くなればすぐ解雇するなり雇用関係を絶つといったようなことが雇用慣行になっている場合はまた別段であろうかというふうには思うわけでございます。  そういう意味において、この時間外労働のあり方というのは我が国雇用労働慣行、労使の意識と非常に密接に関連したものでございます。そういう中において理解しなければいけないかというふうに思うわけでございまして、そういう観点からすれば、時間外労働の時間の規制もそうだと思いますし、また割り増し賃金率、これは当然のことながら罰則によって強制されるものでもございますし、かつ先生御自身御指摘されましたように、実際の割り増し賃金率がどうなっているかということにつきましては、法定どおりというところがほとんどというような実態を考えますと、直ちにこれを引き上げるといったようなことは私どもとしては難しいというふうに考えているということでございます。
  26. 今泉昭

    ○今泉昭君 私に与えられました時間がもうなくなってしまいましたものですから、引き続いて同僚議員が質問する時間をちょっとだけいただきまして、最後に労働大臣の所見をひとつお伺いしたいと思うんです。  労働時間の短縮、例えば西ドイツあたりは週三十五時間という状況になっています。それが実現できるかどうかというと別問題でございますが、不況の問題、産業構造の転換の問題、これからの我が国経済の厳しさということの中からワークシェアリングの問題が大変浮上してきているというふうに判断をしております。ワークシェアリングに関する労働大臣の所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  27. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘のこのワークシェアリングということでございますが、一般的に仕事を分かち合い雇用機会を拡大させるということで、この言葉が使われているという認識を実はしているわけであります。諸外国におきましては雇用保障との引きかえによって、ワークシェアリングではなくてウエージシェアリングと、こういうふうに呼ばれておりますが、いずれにいたしましても、数少ない雇用者で長時間働かせて事業推進を図るということではなくて、世界的な流れとしてできるだけゆとりある社会をつくっていきたい。先進国、G7では特にそういうことが強いのでありますが、労働時間の短縮と相まって雇用者を一人でもたくさん創出できるようなそういう立場での一つの言葉として受けとめて、私どもは対応してまいりたい、このように考えているわけであります。
  28. 星野朋市

    ○星野朋市君 まず、大臣、G7雇用関係閣僚会合、まことに御苦労さまでございました。いろいろここに成果もしくは要望をうたっておるわけでございますけれども、少し辛口なことで申し上げますと、G7各国の事情によってこの関係閣僚会合の成果というものは私は余りなかったのではないか、こういうふうに思っているわけでございますけれども、改めて大臣のこれに関する所見をお伺いしたいと思います。
  29. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今回のこのG7雇用関係閣僚会合は、前回の第一回を開きましたデトロイト、ここでつくられましたモメンタムを基礎として参加各国がどのように取り組んで成果を上げてきたかということが一番大きなポイントだったわけです。したがって、各国とも事情は違いますが、それぞれの国で取り組んできたこと、あるいはそのことによってどれだけ雇用確保することができたかというところにまず第一の議論が集中をしたわけであります。  したがって、日本としては依然としてこの厳しい雇用情勢にありまして、二月末現在でも三・三%という完全失業率になっているわけであります。しかし、アメリカもかなり改善はしてきておりますが、アメリカは完全失業率が五・六%、ヨーロッパへいきますと軒並み一〇%を超えているという高失業率でありますから、なぜ日本が厳しいと言いながらも三・三%という完全失業率の状況に置くことができているのかということで各国が非常に関心を示したわけであります。  したがって、日本として産業構造がどんどん転換していく中でいわゆる失業なき労働移動ということに最重点を置いて取り組んでいること、あるいは関心を持たれましたのは、この日本独特の終身雇用制というものが関心を持たれまして、これは制度として終身雇用制をつくっているわけではありませんけれども、企業の側にすれば、自分の企業事業推進に必要な技術力を持ってもらうこと、そのために投資をすること、これは教育投資ですね、これがまた企業に大きく貢献がされるということ、そして構造転換するために企業企業でさらに社内教育をやっていく、社内教育でできない中小企業などについては公共職業訓練所などを活用してもらうとか、いろんなことをやってきて結果的に終身雇用制というふうに言われているシステムができ上がってきたこと、これらを実は紹介してまいったわけであります。  とりわけヨーロッパでは、企業内の職業訓練ということが日本のように実施されていないわけです。これは大いに学ぶべきことだということが言われましたけれども、いずれにいたしましても、これからはグローバルな経済の発展や情報技術の発展ということが見込まれるわけでありますから、それに今後はどう対応していくのかということで多く議論が出されました。  したがって、今回明確に次のいついつまでの時期に、デトロイトのときのように目標を掲げて、そのために各国はこのように取り組むということを具体的に項目として確認をしたというわけではないのでありますが、今各国の置かれているこの財政赤字という問題がありますから、これをまず減少させることが雇用創出にとって極めて有効なことである、だからそれに全力を挙げていこうということとか、あるいは労働基準をできるだけ引き上げていくことが結果として社会の発展につながっていく、経済の発展につながっていくということなども確認をし合いました。そして人への投資というものは、今申し上げましたように、資本に対する投資と同様にこれは企業にとっても死活的な問題である。したがって、労働者の訓練に積極的に投資を行う、そういう経済社会をつくっていこうではないかということも実は確認をされたわけであります。もう一つは、労働者一人一人が職業訓練を受け、よりよい職に向かうような機会が与えられるべきである。したがって、労働者個人にとって職業訓練は生涯にわたりなされなければならないということも、日本の実例も受けながらでありますが、各国が確認をし合ったということであります。  結果的に、この雇用サミットでは、深刻な失業率という状況を受けて、それぞれの各国の持っている実情、日本でいえば三・三%に何とか抑え込むことができている実情、ヨーロッパでは一〇%を超えている実態、なぜ一〇%を超えるような実態になったのかという反省点を各国が学び合おうではないかということなどで、このG7の実質一日半の討議が終わったということであります。これからは、とりわけ公的雇用機関の効率性向上を進めることにかかっているんではないかということも確認をされたような状況でございます。  したがって、先生御指摘になったように辛口で言うと、一体何がどうなったのかということでは、成果を見ることについてはなかなか見つけにくいという面があろうかもしれませんけれども、いずれにいたしましても、今回の雇用サミットは非常に討議する項目が広かった、経済から雇用問題まで非常に幅が広かった、その反省の上に立って、次この閣僚の皆さんが集まって議論するという場は、より専門的にやっていこうではないかということも日本から提議をいたしまして、今度は日本で開催するということも一応歓迎されて、事実上決まったという状況になっていることを申し上げておきたいと思います。
  30. 星野朋市

    ○星野朋市君 それはよくわかるんですが、皮肉なことに、前回から今回のサミットに至るまでに、実は、結果とすればどちらかというと悪い結果が出ている。  例えばフランスでは、要するに公的な補助をできるだけ少なくしようというのに対して大規模なストライキを起こしちゃった。それからドイツはこれまた日本とかなり似ているわけですけれども、マルク高、これによって相当な痛手をこうむっているわけです。今になってそれが非常にじわじわさいてきだ。それで、特に東ドイツを統合したことによって、東ドイツの失業率が非常に高い、一七%を超えていると思うんですけれども、そういうことでドイツ全体の失業率が一〇%を超えて、これまた問題になってきている。それからイギリスは、近々の問題ですけれども、狂牛病の結果いかんでは大打撃を受けて失業がまた多くなってくる。日本は、大臣はさっきから三・四%、三・三%でおさまっているということでありますけれども、実態的にはかなりそれより上回っておって、社内失業というものを考えれば五%を超えているんじゃないかというような実態があるわけであります。  それで、大臣が最後におっしゃった、いわゆる次は日本で若年者高齢者に対して問題を絞って会合を開こうということでの同意を得たということでありますけれども、日本のそれでは高齢者の実態ということについて、たまたまこれは都の労働研究所が五日にまとめた調査でこういう実態があるんです。中高年の離職者の三人に一人は不況が原因であると。中高年者が不況のしわ寄せを受けている実態が浮き彫りになっている、不況で職を離れた人の六割強が中小企業に勤めていたほか、調査対象の四人に一人は退職金がないか、もしくは百万円未満と低額であったと。この調査では、公共職業安定所の来訪者と都立職業技術専門校の受講者で再就職を希望する四十五歳以上の人を対象実施、千二百四十一人が回答したと。不況が離職の原因になった人は三六%で、特に五十歳代では約六割が不況の影響だったと。やめる前後の心境は、五十歳代では再就職生活への不安と会社への憤りを感じる人が多かったのに対して、六十歳ではあきらめが目立ったと。退職金は、五十歳以上の調査対象者九百一人のうち、ゼロだったり百万円未満の人が二六%に上った。規模が小さい企業ほど低額で、従業員千人以上の事業所に勤めていた人の平均が千八百二十六万円なのに対して、二十九人以下の事業所の平均は二百二十九万円と差が開いたと。こういうふうな調査結果がありますけれども、これは東京都の調査なんです。  だから、他府県の問題になるともっと条件はこれより悪いと思われるんですが、いかがでございますか。
  31. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま先生から東京都の調査の例の御指摘がございましたが、全国レベルで同じような調査実施しているものはございませんけれども、労働省におきまして雇用動向調査というのをいたしております。  これは平成六年の数字でございますが、これで離職者の離職理由を調査してございます。その結果によりますと、平成六年、一年間に離職した四十五歳以上の者のうち、経営上の都合により離職した者の割合は一一・一%となっております。このうち、三百人未満の中小企業の占める割合が七〇・四%と、この調査におきましても中小企業における状況がより厳しいという結果になっております。  ただ、現在の不況期におきます状況は、地域的に見ますといろいろあるわけでございますが、従来の不況と異なる点は、特に今回は大都会におきます不況がより厳しいと、こういう状況がございまして、雇用情勢で見ましても関東、東京、神奈川を中心とする地域、あるいは関西ですと大阪、兵庫を中心とする地域、こういうところがより厳しい状況になっているということは申せると思います。
  32. 星野朋市

    ○星野朋市君 これは、結果としてこうなったという以上にもっと現実は厳しいと思うんです。中高年者が再就職のどきに、現在希望している待遇はどうであるか、それから労働時間はどうであるか、そこまではお互いに話はできますけれども、一番最後に私が申し上げた歴然とした退職金の差、退職金の問題はどうなんですかというようなことまでお互いに話し合って、再就職なんか恐らくできっこないと思うんです、現実に。  ということは、今全国の労働者、約六千万。千人以上ということになりますと、連合の組織下にあるところで代表されますから、これはわかるんですけれども、それ以外のところの勤労者がまだはるかに多い状態であって、それで実際の待遇、退職金まで含めると大きな差があるという実態を踏まえて、労働省は、今大臣おっしゃったような、これから日本で開催するように、こういう労働問題については考えなくちゃいけないんじゃないかと私は思うんですが、いかがでございますか。
  33. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 先生御指摘のように、働く方々の実情を見ますと、格差という面でいきますと、大企業中小企業あるいは小零細企業におきまして基本的な賃金のほかに退職金等について大きな格差がある、こういう実情にあろうかと思います。私ども労働行政を進めるに当たりましては、やはりそういうことを基本に置きながら対処してまいらなければならないと、こういうふうに考えるわけでございます。  職業安定行政を具体的に進めるに当たりましては、一方でできるだけ求人開拓をし良質な求人確保し、それに対して失業された方々紹介をする。こういうことと、紹介する際に生活の保障としては、これは雇用保険制度によります失業給付生活の安定を図っていただきながら対処をする。あるいは、失業が避けられるのであれば、雇用調整助成金であるとか、あるいは改正業種雇用安定法に基づきます失業なき労働移動、そういうものの支援とかという形でできるだけ失業しないで移っていただく。  そういうことによって、我が国が西欧のような高失業社会に陥らないように総力を挙げて取り組んでいくことが最大課題であろう、そういうことを基本にしながら対処していかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  34. 星野朋市

    ○星野朋市君 私は、今の労働省の政策の中で評価すべき点は評価すべきであると思っておりますけれども、その一つに、さっき大臣も述べられましたように、職業訓練の問題ですね。  かつては離職者に対しての職業訓練、再就職のための訓練というものが主体であったけれども、そうじゃなくて私は前からいわゆる第二の専門を持つように就業しているときから訓練というものをすべきだという説を言っておって、大体最近の労働省の傾向がそういうものに移ってきた。これはもう非常にいいことだと思っておるわけでございます。  そこら辺になりますと、一つは実際に今国会に出てくるかどうかわかりませんけれども、サマータイム法案なんかも、要するにサマータイムを実施すると、かつてのように労働強化になるのか、さもなければ余暇になるのかというような二者択一の論議がされているわけですけれども、そうじゃなくてサマータイムの一つには教育訓練の問題も含まれるんじゃないか、もう一つはボランティアの問題もあるんじゃないかというようなことを視野に入れないと、このサマータイム法案というのは成立しないんじゃないかということを私は前から申し上げておりました。そういう意味で言えば、いわゆる就業者の別の意味の訓練、これは非常に評価すべき問題だと実は思っておるわけでございます。  それから、私は質問に立つたびに繰り返しております基準法の労働時間の問題に関して同僚議員とちょっと違う切り口から質問をするわけですけれども、その前に、ついこの間、電通の職員の過労死の問題で驚くべき判決が行われたわけですけれども、あれについて労働省はどういうお考えをお持ちですか。
  35. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) まず最初に、能力開発、在職者訓練の問題の御指摘がございましたが、今回の雇用サミットにおきましてもまさにその点が非常に重要な指摘事項として指摘されまして、各国の共通認識として、企業にとって資本の充実とあわせて人材の充実が非常に重要であるということ、それから能力開発というのは若年期のみならず生涯にわたって行うということが必要であるということ、それから学校教育から職場生活への円滑な移行が必要であり、そのためには労働施策と教育施策の連携が重要であるということ、あるいは失業がもたらすさまざまなコストを考えれば、失業者の生活安定のみならず、企業雇用維持努力あるいは失業者の一日も早い再就職支援等により積極的な雇用対策を展開することがより効果的であることというようなことが共通認識として言われておりまして、この点につきましては、我が国におきましては、先生御指摘のように先進的に取り組んでいるところでございます。  ただ、各国によって労働市場のあり方あるいは政策、制度が違うものですから、そういう問題認識があったとしても、それに向かってどうしたらいいかというところについてそれぞれの悩みがある。そういう観点から、例えば雇用問題の解決に当たっては労使の理解と協力が重要であると、そういう点から、ソーシャルパートナーとしての労使との対話を促進することが重要であるというようなことも言われておりますが、この点につきまして我が国ではかなり積極的に行われているかと思います。  それから、サマータイム法案のお話ございましたが、実は私ども行ったときに、ちょうどフランスはサマータイムに切りかえどきでございまして、行った日の夜が一時間短くなったんですが、そういうところに出会ってみれば特段どうということはないなという感じもいたしましたけれども、我が国におきましてこれをどうするかにつきましては、メリットデメリットいろんな御議論がある中でどういうふうな判断をするかという課題であるというふうに考えております。
  36. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 御指摘されました電通の労働者をめぐる裁判の件でございますけれども、これについての意見とか感想とかは、実は会社側はこれを控訴いたしておるものですから、今争っている最中でございます。したがいまして、私どもからこれについてとかく感想を申し上げるというのは適当でないというふうに思います。  ただ、一般的に、恒常的な長時間労働が行われるということは好ましいことではないわけでございますし、特にそれが過労死につながるというようなことがあってはならないというふうに私どもも考えているところでございます。  そういうことから、改めまして日経連に、傘下企業に対して過重な長時間労働が行われるということのないように傘下企業に十分周知徹底を図ってほしいという要請をいたしたところでございますし、私ども地方局に対しましても、監督の際には労働時間管理の適正化についてきちんとチェックをするようにということを改めて指示をいたしたところでございます。
  37. 星野朋市

    ○星野朋市君 これは、電通もマスコミの一環と考えれば、今度のTBSの問題をめぐっても明らかになっているように、要するにマスコミでさえ相当の人間が、外部の人間によって賄われている。いわゆる下請というわけではないんですけれども、この実態がある。出版界においても、実は社員の数よりも外部に委託されてそこで企画または実行されているような部分が非常に多い。これは半ば好きでやっている連中ですから労働時間は関係ないんです。だから休日も関係ない。そういうものは統計上どこにも出てこないんです。  それから、名前を挙げるわけにはいきませんけれども、日本での某有名自動車会社の研究所の人間は、定時になると一たんタイムカードを押しちゃうんです。そして、そのままもう一回研究室へ帰って仕事をする。それから、某化学繊維有名会社ですけれども、ここの人間はその日の研究で自分が納得をしたときだけ残業をつける。自分が納得しなかったら残業というものをゼロにしちやう。こういうことが実際行われている。金融機関においてサービス残業というのは、これはごく当たり前。定時後じゃなくて定時前の出勤という、そういうものはどこにも出てこないわけです。  労働省はそういう実態をどの程度つかんでおられるのか。私、前から一回聞きたいと思っておったんですけれども、いかがでございますか。
  38. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘のいわゆるサービス残業、これの実態の把握というのはなかなか時間管理という面からいきまして掌握しにくいという先生の御指摘のとおりでありまして、監督署の方では時間管理の適正化ということで監督を最近は非常に強化をしているわけであります。  平成七年度におきまして、全国約十七万の事業所に監督の実施に入りました。その結果約三万、調査対象からしますと一六・五%に当たりますが、その事業所において労働時間関係で明らかな違反が認められました。したがって、これについて直ちに告発ということではなくて、それを是正するための強い勧告指導を今行っているさなかであります。  したがって、先生の御指摘のあったように、きちっとした数字では掌握し切れませんけれども、それだけに今労働基準局長が御答弁申し上げましたようにサービス残業は本来あってはならないものでありますから、日経連に対しましてもきのう文書で強く要請をいたしました。これに対して日経連はこのように答えています。過重な長時間労働による過労死やサービス残業はあってはならないものと認識している。これまでも所定外労働時間の削減等については取り組んできたところであるが、今般労働省より要請があったことについては傘下の経営協議会あるいは企業にその旨を周知徹底して実効あらしめたい。このようにきのう日経連が回答しているわけであります。  単に文書だけの回答ではなくて、文字どおり実効あらしめるためにこれからも具体的に日経連や各事業所とも密接に連携をとりながら、とりわけ現地の監督署においてはそういう事例が見られるたびにきちっとした指導を強化していきたい。言いかえれば、大々的に旬間を決めるわけではありませんけれども、あえて言うなら今取り組んでいる姿勢というものはサービス残業撲滅旬間というぐらいの気持ちを持ってこの問題に取り組んでいきたいと考えているわけでありますので、ぜひひとつ先生方にも御理解と御協力を賜りたいと、こう思います。
  39. 星野朋市

    ○星野朋市君 前回も私質問をいたしまして、時間が来て途中で終わりましたので、松原局長大変恐縮なんですけれども、週四十時間年間千八百時間、私は前から週四十時間よりも年間千八百時間という方にスタンスを置いて問題を考えているわけですけれども、千八百時間のモデルケースというのをもう一度改めて私はお聞きしたいんですけれども、どういうふうに千八百時間のモデルをつくられたか。一日八時間労働でいけば、年間百四十日の休み、稼働日が二百二十五日でないとこれは合わないわけですよ。そうすると、その百四十日の休みというもののモデルはどうだったかということをもう一度改めてお聞きしたいと思います。
  40. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 千八百時間という労働時間の目標が初めて明らかにされましたのは昭和六十二年五月の経済審議会の建議でございます。「構造調整の指針」というふうに題されましたいわゆる新前川レポートでございます。ここにおきまして「二〇〇〇年に向けてできるだけ早期に、現在のアメリカ、イギリスの水準を下回る千八百時間程度を目指すことが必要である。」というふうにされたわけでございます。  具体的に、先生が今おっしゃられましたモデルケースということにつきまして明らかにされましたのは、さらにもう少し後の昭和六十三年四月、経済審議会国民生活部会報告の中で示された一つのモデルでございますが、そのモデルケースでは休日休暇の日数が百二十九日というふうになっております。それでは週休日が百四、週休以外が十五、有給休暇が二十、それぞれのトータルで百二十九日の休日休暇日数ということになっております。また、欠勤日数が三日ということが想定されており、したがって出勤日数は二百二十三日。所定内労働時間七時間二十五分、所定外労働時間四十分で、これらを掛け合わせまして、細かいところまで申し上げますと千八百一時間という数字が出たわけでございます。  これが一つのケースとして示されたわけでございますけれども、この千八百時間については、若干受けとめ方が違うさまざまなところがあるのではないかというふうに思われますのは、すべての労働者について千八百時間になる、こういうものではないわけでございます。働く労働者を全部平均したその結果が千八百時間ということでございますので、フルタイム労働者のみならずパートタイム労働者も全部ひっくるめたその平均値が千八百、こういうことでございます。  したがいまして、先生が今数字が合わないというふうにおっしゃられましたけれども、パートタイム労働者がどの程度の割合を占めるかということによっても違ってくる面はございますけれども、フルタイム労働者について見れば千九百三十時間から五十時間というぐらいの時間数であっても、パートタイム労働者を考慮すればトータルの労働者平均としては千八百時間になってくる、こういうような関係にあるわけでございますので、千八百時間イコールフルタイム労働者労働時間ということではないということを、まず御理解をいただきたいというふうに思います。
  41. 星野朋市

    ○星野朋市君 それはよくわかっているんです。その意味でいえば、既にフルタイム労働者は千九百三十時間とおっしゃいましたか。
  42. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 千九百三十時間から五十時間。
  43. 星野朋市

    ○星野朋市君 それよりもっと下回っていますね。それで、去年は統計上五時間ぐらいふえたわけですけれども、いつも申し上げますけれども、そのモデルで一番違うのはどこかというと、有給休暇二十日をとれと、またはそれを目標にすべきだと、目標はいいんですけれども実態はそうなっていないんだと、ここが一番違うところです。  それから、これも平成五年のときに我々が議論したんですけれども、日本にはお盆とそれから年末年始という日本古来の文化があるじゃないか、これをどうして考えに入れないんだということで議論が分かれたわけですけれども、この有給休暇二十日の問題というのは依然としてまだ変えようとなさらないのかどうか。実際には今、日本の労働者の平均的な有給休暇というのは二十日になっていないはずなんです。そこをどうお考えですか。
  44. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘のように、全部の平均は十六・九日なんです、休暇の付与日数は。したがって、できるだけ私どもは千八百時間のトータル目標の中の基礎数字となっております二十日間ということに、労使協議が必要でありますけれども、二十日間に到達させてもらいたい、これがまず第一条件であります。  もう一つは、最前も今泉先生にお答え申し上げたのでありますが、ヨーロッパとかアメリカへ行くと、労働者の権利である有給休暇を残すということは理解できないと言うんですね。これはどんなに実態を説明してみても理解を求めることはできないんです。まず有給休暇は全部とり切るというのが先進国、日本のほかの国の実態であります。これはよく言うことでありますが、私が仕事場に行かなかったら会社の仕事がとまってしまうというぐらいの気持ちを日本の働く人は持っていらっしゃる傾向が強いんです。だから、そうではなくて、権利としてとることが定着してくれば、事業主の場合もそれに対応することを当然考えてくるわけでありますから、まず働く人が権利意識を持ってもらうということが重要だと思うんです。  ただその場合に、先生が御指摘になったように、日本は労使関係の中でいろんなことの取り決めが行われているわけでありますが、日本の労働者の組織率は二四%を切っています、圧倒的な数が未組織労働者なんです。だから、未組織労働者にどこまでそういうことを権利意識として認識してもらえ、あるいはそれを行使してもらうかということについては、労働行政として極めて重要なことだと考えています。  したがって、いろんな機会をとらえまして労働基準監督署などが各事業主に対してあるいはそこに働く人々に対してそういう権利を行使することを普及徹底させるかということにかかっていると思いますので、これについても全力を挙げてまいりたいと考えています。
  45. 星野朋市

    ○星野朋市君 いろいろお聞きしたいことがあるんですが、時間がなくなりましたので、最後に、平成五年の労働基準法改正のときに、時の野党でありました日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議、民社党・スポーツ・国民連合それから民主改革連合の四会派、それを代表して社会党の庄司さんが大臣に確認質問というものをやったわけです。特に、これは衆議院より参議院に回ってきましたときに項目の追加が相当ございました。大臣みずからが相当多くの問題について確認答弁というものをなさった。これをもう一回改めて確認していただきまして、来年の実施に向けて、延期だとかいろいろ要望はあるんですけれども、先ほど今泉さんの質問の中にもありましたように、要望はたくさん来ておりますし、私のところにもあります。けれども、要するにこれを考えてから十年たっているんですから、日本人の悪い癖なんですね、ぎりぎりになってまだ再延長とか、その間何をやっているんだと。  改めて大臣の決意をお聞きして、質問を終わらせていただきます。
  46. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御提起は非常に力強い限りでございまして、私どもも先生の御指摘のように、十年間かかって進めてきているわけでありますから、いろんな障害はあろうかと思いますが、その障害を乗り越える努力をすることが事業主にも労働者にも課せられた責務だと私は思いますので、先生の御指摘のとおり、来年の四月一日から完全に四十時間制に移行できますよう、法律どおりに施行できますように全力を尽くす決意であります。  どうぞひとつよろしくお願いします。
  47. 星野朋市

    ○星野朋市君 終わります。
  48. 足立良平

    委員長足立良平君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  49. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、労働問題に関する調査を議題とし、雇用問題等に係る諸法律施行状況に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  50. 小山孝雄

    小山孝雄君 自由民主党の小山孝雄でございます。  午前中、段々の御質問そして御答弁があったわけでございますが、私はまず最初に永井大臣に、労働大臣の職を離れて国務大臣として今日の時代というものをどう認識しておられるのか。一口で言うならば、一つの時代が新しい時代へ移るその大きな端境期にあるのが今日であると、こんな認識、いろんな見方があろうかと思いますけれども、国務大臣として一人の政治家としてどういう時代認識を持っておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  51. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の今の御質問でございますが、非常に底の深い御質問だというふうに思います。  まず初めに、率直に私の感じることを申し上げたいと思うのでありますが、政治家や官僚が国民から大変に不信感を持たれているという現実は無視できないと思います。昔からよく一定の任務を終えまして転勤するときとか退職するときに出てくる言葉は、大過なく過ごさせていただきましたということがよく聞かれます。私は、政治家や官僚の大過なく過ごさせていただきましたということのあいさつは今の時代に適切ではないと思っております。大過があったら困るのでありまして、大過なく過ごせたのではなくて、私はこのように私に与えられた任務を全うすることができましたということを言えるような、そういう政治家や官僚でなければならぬと思っております。これがまず一つの基本であります。  そして、今先生が御指摘になりましたように、政治、経済は大きく変化してきているわけでありますが、新しい時代における新たな発展に向けた基盤を確立することが今求められているわけでありますから、それにきちっと対応することが必要だと思います。また、この重大な転換期にあると認識しておりますだけに、国政の主要課題に取り組むに当たりましては政治が国民の信頼を取り戻すことが必要である、そのために今何をなすべきか、何を必要としているのかということが問われていると思うのであります。  そういう視点に立って、私は政治家としてあるいは国務大臣としての任務を全うしていきたいと思っているわけでありますが、まず、多くの先人が築き上げてきました貴重な資産というものがございますが、この資産をただいたずらに浪費することであってはならぬと思うのであります。したがって、現在の平和と繁栄を土台にいたしまして、間もなく四年後には二十一世紀を迎えるわけでありますが、この二十一世紀へ我が国が世界にどれだけの貢献ができるような国に成長していくのか、発展していくのか、このことに思いをいたしまして私どもが頑張ることで、後世代の皆さんによき先輩を持ってよかったと思ってもらえるようなそういう足跡を残したい、こう思うわけであります。  また、環境問題、人口問題、食糧問題、エネルギー問題、あるいは人権問題等、地球規模の問題の重要性はますます増大をしてきておりますだけに、今まで私どもがたどってきました歴史を十分に振り返りながら、戦後の我が国の発展を支えてきたものは一体何であったのか、このことにも思いをいたしまして、それらのうちどのような面で現在や将来の発展の妨げになっている部分があるのか、こういうものも検証を加えていきたい、こう思うわけであります。  その上で、次なる世紀を展望したときに、果たして今申し上げましたような日本と世界の発展にとって非常に貢献でき得る、そういうものが道筋として展望できるのではないか。そういう思いを持ってこれからも国政に当たっていきたいし、自分に与えられた任務は瑕疵のないように、ただ単に瑕疵がないだけではなくて一つ二つと大きな足跡が残せるように、そういう思いを持って取り組んでまいります。  なお、もう一つだけ申し上げておきたいことがございますが、今一番の問題は国会の中では予算案がまだ成立していないことでありまして、一日も早く予算案が成立しますように、そのことが焦眉の課題だと考えています。そのためには、予算委員会で連日例の住専問題が取り上げられておりますが、このこと一つ見てわかりますように、その時々の問題が起きたときに適切に対応しておかなかったら今のような問題が起きてくる。もしもその時々の必要なセクションできちっとした対応をしておれば、現在のようなことが起きてこなかったのではないか。そのことを十分自分にも戒めまして、労働行政であえて言うならば、今労働行政が直面している問題を、後追いではなくて、むしろ先手先手と打って出るような立場で物事を処していくことが今の日本の現状を変えていくことになるし、国民からの不信感を除去することになるのではないか、そういう思いでこれから頑張っていく決意であります。
  52. 小山孝雄

    小山孝雄君 かたい御決意のほどを伺ったわけでありますが、今日の政治の混迷の様相を呈しましたときに、私選挙であちこちを回ってよく言われましたことは、政治がこのように混乱しておっても行政がしっかりしているから大丈夫だと、こういう声を随分聞きました。  ところが、今もありました住専問題、非常に国民の不信感といいますか、それが強い。その背景には信頼していた行政、官のあり方もなかなか信をおけない現状があると。昨年来明るみに出ました大蔵省の不祥事、そしてまた最近の厚生省のエイズ疑惑、さらにまた最近に至ってはTBS事件に見られるように報道者としての倫理も何もない、最低限の約束事も守られていなかったこの現状。それも、厚生省の問題あるいはまたTBSの問題については、それがもとになって人が死んでいるというこの現実。こうしたものに対して非常に深い不信の念が国民の中にあると、こう私自身は認識をいたしております。  そして、また一方では、今もお話ありましたけれども、今年度の予算がまだ衆議院から我が院に送られてきていないこの現状、あるいは国家の財政が国債依存度が非常に高くなってきつつある、行政改革も遅々として進まないじゃないかと。一方では、朝鮮半島における安全保障、安全の問題は果たしてどうなるのかと、日本は大丈夫かという問題、あるいは教育の荒廃、家庭の崩壊等々が目に余る今日の現状。こうした問題に政治が立ち向かっていかなければならない、その立ち向かっていく土台と力を政治が持たなければいけない現状でございますけれども、こういった問題について改めてまた大臣のお考えをお聞きいたします。
  53. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 行政の問題について具体的な問題、御提起がございました。行政が国民から信頼されるようなことが日々当然なこととして進行されねばならぬと私は思うのであります。  あえて申し上げますならば、私は今労働大臣の職にありますから、他の省庁は別にいたしまして、労働行政に取り組む基本姿勢をお尋ねになったのではないかな、こういう気がいたします。あるいは、先生のお言葉をかりれば、大変難しいことでございますが政治哲学といいますか、そういうものも求められているのではないかと推測いたしますので、そういう立場を認識しながら、若干長くなりますけれども、御答弁、私の見解を申し上げておきたいと思うわけであります。  まず、私が大臣に就任しました最初の記者会見で、戦後五十年たって今のような発展した日本の経済社会、これは多くの勤労国民が本当に懸命の努力をしてきてくれたその積み重ねが、今の日本の現状をもたらしてくれたという認識を私は初めに表明をいたしたことをまだ脳裏に浮かべているわけでありますが、その立場から申し上げますと、働くということがいかに大切かということを私は自分なりに認識を新たにしているところであります。その働くということをあえて分析するならば、単に物をつくればよいというものではないと私は思います。だれかに奉仕するとかあるいは賃金、給料をもらうとか、そのような事柄を超えまして、人間にとってはさまざまな意味が私はあると思うのであります。  ある学者によりますと、難しいことを言うようでありますが、生きるというのは息をすることであるとか、あるいは呼吸をするということだそうでありますが、それ以外にも生きるということには多くの深い意味が込められていると思うのであります。人間は孤立して生きていることができるのではないのでありまして、外の世界、いわゆる下界と交流しつつ生きていると私は思うのであります。  私は、働くということにもそのような意味があると思うのでありますが、外の世界に働きかけて外の世界から何がしかを得るということとともに、その外の世界に何がしかを与えるというか残していくといいますか、そういうものでなければならぬと私は思うのであります。働くことで人間は体が鍛えられることにもなり、健康的な美しさを獲得することにもなると私は思います。  私は若いときによく歌った歌がございます。労働歌のような歌がございまして、その歌の中にこういう言葉があります。美しい心はたくましい体に辛くも支えられる、こういう一節がございますが、この歌をよく歌ったものであります。働くことを通しまして、人間は心を通い合わせ、人間的な交流が行われて、人間としての心の流通が図られる、私はこう信じているわけであります。  私は、働くということについてはそのように考えているわけでありますが、しかし今日の経済社会は私有財産制を基本とする資本主義社会でありますから、たくさんの国民が大した資産がなくても毎日の生活を支えるために働かざるを得ないという現実がございます。そして、今日の経済社会は疑いもなくこれらの勤労大衆によって、冒頭申し上げましたように、支えられていると私は思っているわけであります。  我々が暮らすこの社会というものは、これらの額に汗をして働く人々がいわゆる流した汗が報われる、そういう社会が求められていると思うのであります。またそうでなければならぬと思うんです。さらに、この額に汗をして働くこと自体が単なる苦役ではなくて、その中で人間的な喜び、充実感が得られるようにするということも私は大変重要なことであって、これは労働の人間化ということで、どの先進国でも重要な基本的課題としてとらえられているわけであります。  私ごとで恐縮でありますが、私は満十五歳で当時陸軍に志願をして入りました。当時はそういう社会だったわけです。そのときに今の世の中では考えられないようなそういう経験もいたしてまいりました。人間が人間として扱われない、動物よりもひどい虐待を受ける、これが当たり前のようなそういう組織の中で私は一定の期間を過ごしてきました。それだけに、平和と民主主義というものをより大切にしなくてはいけないという思いに駆られて戦後私は労働運動に飛び込んだ経験を持っております。そのことが、今でもそうでありますが、私は人の喜びを我が喜びとするというのを自分自身の座右銘に実はしているわけであります。  今、労働行政の責任を預かっているわけでありますから、その私の思い、経験を生かしまして、働く人々のためになること、あるいは世の中がそういう人間の心、美しさというものをきちっととらえられるような、そういう仕組みをつくり上げたいと実は念じているわけであります。労働者あるいは労働組合が経営者と対等に話し合う、産業の発展と雇用の安定確保あるいは労働条件の維持向上が図られるような国にしたい、いわゆる産業民主主義の確立ということを私は求めているのであります。  この問題につきましては、労使団体がよく話し合いを行い、お互いの立場を理解し合ってほしいと願っておりますし、そのために必要な援助というものは私どもは積極的に考えて実行してまいりたい、このようにも考えております。特に昨今のように、経済産業の大きな転換期にありましては、経営者も大変苦労があると思うんです。しかし、これを乗り切るためには、安易に働く者、労働者にしわ寄せをしたり、企業が残ってたくさんの労働者が苦しむ、そういうようなことがあっては絶対にならない、そういう信念を持って当たっていきたいと思っているわけであります。まず労使団体がよく話し合うこと、これが産業民主主義が必要だと痛感するゆえんであります。  当面の具体的な問題については、それぞれ午前中からも議論が重ねられておりますが、こういう思いを基本に置いて一つ一つの課題に私どもは対処していきたいし、私自身もその対処する行政の牽引車になっていきたい、こういう決意を持っていることを申し上げておきたいと思います。
  54. 小山孝雄

    小山孝雄君 お若いときの御体験も含めての御答弁をちょうだいしたわけでありますが、大きな時代の変わり目、労働行政も大きな節目に当たっておると思います。例えば、昭和二十四年に開始された緊急失業対策事業というのは、今年三月をもって終わったわけであります。こういった事業はいわゆる戦後の労働行政のシンボルでもあったと思いますが、一つの歴史が終わったわけで、一つの戦後がここでも終わったのかなという感じがいたします。  そうしたときに、我々の前には今大失業時代到来ということも新聞に活字が躍るような現状が目の前に来ておるわけであります。そしてまた、午前中も段々の論議がございましたけれども、八時間、週四十時間労働時間の待ったなしが来年の四月一日から実施される。これは実に昭和十年に週四十時間制に関するILO第四十七号条約が採択されてから既に六十年、あるいは大正八年、神戸の川崎造船所が八時間労働制を採用して以来ちょうど八十年近い歳月が流れておるわけであります。  永井大臣は、今ここにも持ってきましたけれども、「改正労働基準法のすべて 労働時間短縮のために」という御著書も出しておられるぐらいで、非常に時短の問題、そしてまた失対事業なんかにも感慨がおありだと思いますが、こうした節目に当たっての、このようなときに当たって労働行政のトップとしての任務をお果たしになっておられる現在の考えを、お聞かせいただければと思います。
  55. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘のように、ちょっと余談になりますが、川崎造船所で八時間労働制実施をされた。この経緯は当時の兵庫県の労働基準局長が文書にして明らかにして、今時短を求めている時代だから、ゆとりある暮らしを求めている時代だから、それに合うような何か記念行事をすることができないかということで、あの川崎造船所の跡地に労働時間八時間労働制の発祥地という記念碑をつくっていただきました。そのときに、当時労働大臣をされておりました村上正邦先生が揮毫なさいまして、その除幕式に私は労働政務次官として出席をいたしました。感慨ひとしおのものがあったわけでございます。  先人が、今からもう八十年ぐらい前になるんですか、その時代にそれだけのことをやってのけたというその先見の明を私どもはしっかり受けとめて、今世界がゆとりある社会を築いていこう、先進国と発展途上国の格差をなくしていこうということでみんながその方向に向かって努力をしているときに、今、日本では明年の四月一日から完全週休二日制、週四十時間労働制というものの実施が求められているわけでありますから、既にその法律もつくられているわけでありますから、そのことについて、長年のゆとりがなかった時代の働く人々が今そのことによってゆとりを持つことができるという新たな視点に立って活動ができるように、何としてでもこの労働時間の短縮だけはやり遂げたい、法律規定したとおりやり遂げたい、その思いを現在強くしているわけであります。  午前中にもいろいろ御質問がございました。いろんな障害があろうかと思いますが、その障害を手をこまねいて見ているのではなくて、労使ともあるいは行政も含めて、どうやればその障害を取り除くことができるかという立場に立って、残された一年間全力を尽くすことによって初めて私はこの問題を成功あらしめることができる、こう思っておりますので、先生方の一段の御協力もお願いを申し上げたい、こう思っているところであります。
  56. 小山孝雄

    小山孝雄君 こうした基本的な御認識を伺った上で、これから景気回復の問題それから雇用の問題、時短の問題、そして技能実習制度等につきまして若干の質問をさせていただきたいと思います。既に先輩お二人が御質問をなさいましたので、重複した角度からの質問は避けたいと思います。  まず、景気回復の問題でございますけれども、ここ数年間、数次にわたって景気対策事業が進められてまいりました。予算規模にいたしまして六十六兆円、これは国の予算それからまた地方の予算も入れてでありますけれども、ほぼ年間一般会計の国家予算に匹敵するぐらいの事業総額でございますけれども、非常に投じられた資金がこれだけ多いにもかかわらずなかなか生きた金として果たして使われているのかな、あるいはどれほど実効が上がっているのかなと。いまだにまだ景気回復の足取りが重い。そしてまた、特に中小企業の現場における回復というのはまだ肌で感じられない。  こういう現状について、労働大臣としてどうお考えになっていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  57. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) きょう、閣議の前に四月の定例経済報告がございました。一口で表現いたしますと、緩やかな景気回復が進行しているという趣旨のまとめになっているわけであります。回復基調にあるということは間違いないわけでありますが、今ここに資料をもっておりませんけれども幾つかの分析がございます。その中で、住宅投資であるとか公共事業は著しい伸びを示しているわけであります。  これは、昨年の臨時国会で先生方の御協力をいただきました第二次補正予算、大型の補正予算ですね、これが今効果をあらわしてきていると思うんですが、これで見ますと大企業の生産関係は若干伸びが鈍っておりますけれども、今申し上げましたように住宅投資であるとかあるいは百貨店なんかの売り上げもかなり堅実に伸びを示してきているわけであります。しかし、ここで問題なのは、政策的な指導によってそういう分野が伸びてきているということでありまして、そこにもし手を抜くことがあれば景気回復の足取りは一挙に落ち込むという危険性を片方で持っていることも、きょうは確認をし合ったところであります。  したがって、私どもは着実に景気回復が軌道に乗って上昇していくように、そういう立場に立ってこれからの政策課題に取り組むということをきょうも閣議で再確認したところでありますが、その中で心配なのは中小企業であります。中小企業関係で言いますと、かなり景気回復の足取りを裏づけるような数字もございますけれども、しかし雇用問題一つとってみましても非常に厳しい状況に置かれていることは事実であります。  したがって、そういう面で先生の御指摘のように、大企業は自力で景気回復を支えるような産業の発展といいますか企業の発展ということがなし得るかもしれませんけれども、中小企業については政策的に行政の側、政治の側が援助するという立場で対応していきませんと中小企業の活力を着実なものにすることは難しくなってくる、そういう立場でこれからの政策運営を図っていくことにしているわけであります。
  58. 小山孝雄

    小山孝雄君 最も新しい資料をもとに御答弁いただいたわけでございますが、やはり政策的な指導によって伸びる部分とそうではなくて国民の自発的な力によって経済活動が活発になって景気がよくなる、その後半の部分がないとどうしても全体の景気回復の足取りというのはこれからも遅いだろうと思うわけでございますが、国民の活発な経済活動、やっぱり個人消費の伸びというのが、百貨店の伸びなんか随分あるという今御答弁をいただきましたけれども、果たしてどうなのかなと。  例えば、今は春らんまんでありますけれども、江戸時代の熊さんや八つぁんが宵越しの金は持たねえ、こう威張って、まあ、これは酒が好きなために一晩飲み続けたいがためにやけっぱちでそう言ったんだと、こういう意見もあるんですが、片一方では、あれは一日食える分を稼いだら後は稼がないんだという今はやりの言葉で言えばワークシェアリングの思想にものっとって、そして金をためないで金は天下の回り物だといって金を使ったことである、江戸の町には宵越しの金は持たねえと職人の皆さんに言わせるだけの町の力があったんだ、経済力があったんだ、こういう指摘もございます。  大臣いかがでしょうか。桜も満開だ、労働者諸君、こっちへ来たれ、おれと一緒に宵越しの金は持たないで酒を酌もう、こう言い切れる自信はおありでしょうか。
  59. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) なかなか先生の御指摘のように言い切ることは難しいかもしれませんけれども、いま少しこの資料で申し上げますと、民間需要ですね。民間需要は、平成六年○・二%の伸びでございます。これが平成七年になって一・三%の伸びでございます。それ以降ずっと下がってきたのでありますが、平成六年の十月から十二月までの例をとりますと○・六%落ち込んだわけであります。これが回復基調に乗ってまいりまして、昨年の十月から十二月までの数字を見ますと○・九%の伸びになっています。これを年ベースに置き直してみますと、大体三・六%の伸びという数字が仮定の数字でありますが出てまいります。しかし、落ち込んだときもございましたから、最終的な見込みとしては一・三%ということになるのではないかというふうに推定がされているわけであります。  その中に、今言われたように民間住宅の著しい伸びであるとか公共事業の伸びがありますが、百貨店、スーパーの売り上げもびっくりするほどの数字じゃありませんけれども着実に伸びてきていることは事実であります。そこへ持ってきて、春闘と言われている労働者が賃上げを要求するその大きな山は一つ越えました。まだ中小企業は随分残っておりますから、全部が春闘の結果として出されて初めてことしの春闘はどうだったかということになっていくと思うのでありますが、当初ベアゼロ論もかなり言われました。しかし、そんな中で昨年並もしくは昨年並みを少し超えるかなという程度でありますが、賃金の引き上げが実現をした。  これは、労使の円滑な話し合いの結果そうなってきたことは喜ばしいことでありますが、物価が昨年よりも○・一%下がっている、物価が下がっているという状況の中でこれだけの賃金引き上げがなされたということは、桜満開とは言いませんけれども、かなりの消費支出にもインパクトを与えるのではないかなという期待を実はしているわけであります。  要は、消費拡大、内需拡大があって初めて企業の活性化を求められるという、単純なことかもしれませんけれども、そういう一つの図式が存在することもこれまた事実でありますから、これから私どもが予算を通していただいて、その中で求めている中小企業の活性化あるいは産業構造の転換に即したような政策を一つ一つ積み重ねていくことによって、私はもっと大きな桜が満開ということに近いような状況をつくり出すことも不可能ではない。  そのために、今衆議院の段階で予算審議をしていただいておりますが、七十五兆円にも及ぶ予算規模でありますから、これを着実に実行できるような、そしてその関連する法案も一日も早く成立させてもらうことによって先生の御指摘のような経済の発展ということの展望が開けるのじゃないか、こういう思いを強くしているところであります。
  60. 小山孝雄

    小山孝雄君 ありがとうございました。  この景気問題と同時に、労働行政の一番大事な点が雇用の問題であろうかと思います。何年ごろになりましょうか、かつて長谷川峻労相が、失業は人生最大の不幸である、こう名言を吐かれまして雇用確保の政策に一生懸命取り組まれたと、こういうことを承っておりますが、雇用ということに関して大臣の基本的な考え方、雇用促進そしてまた雇用の大事さというものをどうお考えになられるか、お聞かせ願います。
  61. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 生活をしていく上において働くことができないほど悲惨なことはないと思うんです。ですから、労働行政のたくさんの施策がありますけれども、それを全部集約していけば、欲深いことでありますが、失業者ゼロというのが一番私は好ましいことだと、またそうあるべきだと思うんです。しかし、現実は求人倍率が上がってきてもミスマッチでなかなかうまく就職に結びつかないという面があります。  例えば、ちょっと余談になりますが、新規の学卒者の就職率も大変心配しておりましたが、それぞれの担当者はもちろんのことでありますが大変な御努力をいただきまして、あるいは企業家の皆さんにも大変な御努力をいただきまして、昨年並みに近い状況まで持ち上がってきているわけであります。しかし、片方で調査をしてみますと、大学に来ている求人票、これは全部埋まっておりません。就職浪人が出るという段階でなおかつ片方では大学に来た求人票は全部埋まっていない、これも現実の姿であります。それはなぜかというと、求人票に求めている仕事の内容といいますか、それと学生が求めるものと合致しない、いわゆるミスマッチがあるわけですね。  ですから、職業安定局長が先頭に立って頑張っていただいているわけでありますが、引き続き四月以降も求人票が埋まっていない企業についてはこれからも採用することを続けてほしいし、またそう期待する。そこへもってきて、就職浪人にやむなくなった人たちについてはさらにこのミスマッチをなくするような指導もしながら、従来なら年度内で終わっておった集団面接会も四月以降もさらに引き続いて実施をして、一人でもたくさんの学卒者に就職してもらおうということを今続けているわけであります。  したがって、雇用労働行政の最終的にはすべてであると言っても過言ではないほどの問題だと認識をして取り組んでいることを、ぜひ御理解をお願い申し上げたいと思います。
  62. 小山孝雄

    小山孝雄君 今、人を求める側と職を求める側とのミスマッチの問題がありました。私ごとを申し上げて恐縮でございますが、人間にとって働く場があるということはこんなに人を変えるのかと。実は、ことし大学を卒業した私の娘がおります。この前、労働委員会で質問したときはまだ求職の最中でありましたけれども、つい最近になりまして、私は一切手伝いもしないし娘も求めないでやってきていたんですが、毎日毎日足を棒にして歩いておりましたが、四年制大学を卒業しまして子供の福祉の施設に、泊まり込みの施設でございますが、そこでどうしても働くんだということで、三月の末にようやっと人のあきがあったということで四月の初めから行っているんでございますが、やはり一家の中に一人職のない者がいるということは本当に周りも切のうございますし、その人間の顔つきまでこんなに変わるのかと思ったんですが、職が見つかって今度四月から勤めるんだと言ったときの、自分の子供ながら輝いた顔というものを非常に印象深く見たわけであります。  雇用確保ということを、大臣初め労働省におかれましては、今進めておられる政策をさらにさらに充実をしてお進めいただきたいということを心から願うわけでございます。  次いで、失業ということに関しまして、この失業なき労働移動というものも大変大事だ、こう思うわけであります。労働移動と言うと、西洋諸国ではこれを失業と言うのかもしれませんけれども、我が日本国においては出向という制度も非常に一般化いたしております。そうした制度をさらに充実して、一家の中で職を失ったという言葉が聞かれない、少しでもそのことを少なくしていく上において、この失業なき労働移動施策というものは大変大事だろうと思います。どのような支援処置をとっておられ、また今後どのようにさらに発展させていくお考えか、これは安定局長でしょうか、お答えいただきます。
  63. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま雇用対策についてさまざまな御質問がございましたが、御指摘のように、景気の回復、経済成長、これが基本的には雇用創出、拡大につながるところでございまして、したがっていかに持続的、安定的な経済成長、こういうものが確保されるか、これが極めて重要でございます。そういう観点から数次にわたる経済対策がとられまして、ただいま御指摘のように六十六兆円というようなお話もございましたが、昨年九月には十四兆円というような経済対策が政府として実施されたところでございます。  そういう中におきまして、景気が回復基調ということで、これが雇用面でどんな効果があらわれているかという点につきまして、なかなか数量的には難しいわけですけれども、有効求人倍率、今回の不況期で最悪時に〇・六〇倍まで低下いたしましたものが、現在、〇・六七倍というところまで上がってきております。これは平成五年の段階の数字でございまして、そういう意味では回復しているわけでございます。あわせまして、完全失業率、これも三カ月連続で三・四%ということで非常に心配をしております厳しい数字でございますが、これも最新時点で三・三%ということで若干一息つくようなところまでになっている、こういうことでございます。  そういう厳しい雇用情勢の中で、やはり御指摘のようにできるだけ失業しない、ヨーロッパのような構造的な高失業社会にならないようにすることが私どもの最大課題であるというふうに考えておりまして、そういう観点から極めて急激な構造変化の中で、やむなく労働者労働移動せざるを得ないというケースもふえているわけでございまして、そういう場合には失業という形でなくて、失業しないで労働移動ができるような、そういう対応ができれば一番望ましいというふうに考えているところでございます。  そういう意味では、不況期におきます短期的な対策としまして、雇用支援トータルプログラムというようなことで雇用調整助成金その他の失業予防対策等を実施してきたわけでございますが、構造的な問題が非常に深刻化する過程でそれでは対応できないということで、新総合的雇用対策ということで構造的な問題に対応するという観点から昨年七月以降、業種雇用安定法等に基づきます対策をとっているところでございます。  これにつきましては、特定雇用調整業種という形で、どうしても構造問題から雇用調整が避けて通れないような業種について労働大臣指定いたしまして、これを機動的、弾力的に指定することによってその対象業種の企業につきましては雇用調整助成金高率助成等による対処、あるいは失業しない形で労働者が移る場合、例えばサービス業関係分野の企業に移る場合あるいは自分の企業内で事業転換をしまして職場の配置転換をする、こういうような場合に必要な教育訓練、これに対する高率助成、あるいは移った先におきます仕事になれるまでの間の一年間一定期間の賃金助成支援、こういうような形で失業なき労働移動支援をする、こういう政策をとっているところでございます。  あわせまして、中小企業の活力を生かした雇用機会創出とベンチャー企業支援というような観点から、中小企業労働確保法も昨年の臨時国会で改正していただきまして、これに基づ対策も現在とっているところでございます。  いずれにいたしましても、そういう形でできるだけ機動的に、弾力的に必要な対策をとっていくことが極めて重要であるというふうに考えているところであります。
  64. 小山孝雄

    小山孝雄君 労働省は、新年度の新政策で能力開発ということを非常に重点に据えておられます。こういう時代であればこそ的を射た政策であろうと思いますけれども、このことに関しては各方面から論議しなくちゃいけないことでございますけれども、たまたま先週の土曜日、日比谷公会堂で二千人以上の人が集まって労働省認可の国際技能振興財団の設立式典が催されて、そこで、言うなれば仮称ではありますけれども、職人大学、手に職を持つ人たちの四年制の大学をつくろう、こういう決議もなされて、永井大臣もそれに御出席なされた、こうお聞きいたしております。  この職人大学の構想、大変すばらしいものだと思いますが、能力開発のほかの関係施設と比べますと、かなり今までのものと違った特異な面を持っているものだと思うわけでございますけれども、この構想に対する大臣の御所見と、また労働省としてこれからどう御支援をしていかれるのか、お尋ねをいたすわけでございます。
  65. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生が御指摘されましたように、今月六日の土曜日でございましたが、日比谷公会堂におきまして国際技能振興財団の総会といいますか、職人大学を目指す決起集会といいますか、そういうものが持たれました。二千人を超える人々がそこにお集まりになりました。その会合が始まる前に会長さんと副会長さんと懇談をさせていただきました。そのときに、内容は多くは申し上げませんけれども、並々ならぬ情熱を燃やしておられました。そして、職人こそ社会の発展の基盤である、そういう意味でそれなりの立派な哲学をお持ちでございまして、それに非常に私は感銘を覚えたわけであります。  我が国の今後の経済発展を支えるすぐれた技能を維持、発展させていくためにはそれなりに、情熱も見られますように、技能者の地位の向上を図っていくことが極めて私は重要だと認識をしているわけであります。したがって、労働省といたしましても技能が尊重される社会の実現に努めているところでありますが、今回のこの国際技能振興財団というものは、そういう私どもが進めている政策からいって、これは非常にすばらしいことだということで、実は労働大臣としてその財団の設立を認可いたしました。  職人大学構想については、その後の会議の模様などを、私途中で退席したものですからマスコミを通して見ますと、佐渡に四年制の大学を具体的に設立する用地取得までされているという話を聞きまして、それがいつどのような形でいくかということはまだこれからの話であろうかと思いますけれども、そういう職人大学の構想につきましては、その意義が社会的に十分認識されて、社会全体から全面的な協力が得られるようにしていくことが今極めて大事ではないかな、こう思います。そのことは私どもが進めている職業能力開発事業と表裏一体のものであるし、むしろある意味では専門的にそのことについてはもっと深くこれに取り組んでいくという構想だと思いますので、労働省としても全面的にこれについては御支援を申し上げていきたい、こう思っております。
  66. 小山孝雄

    小山孝雄君 大学ということでありますからこれは文部省の所管にもなってくるんだと思いますが、かなりすばらしい構想ではあってもいろんな山を越えていかなくちゃいけない問題だろうと思いますが、ぜひひとつお進めをいただきたいと、こう思うわけであります。  次に、時間も大分迫ってまいりましたので、時短問題に移らせていただきます。時短問題につきましても先ほど先輩から御質問があったことでございますので、違った角度からお尋ねをいたしますが、大臣に改めて時短の意義についてお考えを聞かせていただきたいと思います。  大臣の御著書に、これは七、八年前に著されたものでありますけれども、週休二日制を完全に実施した場合に、余暇関連消費増加額が総額二兆八千七百億円、国内生産増加額五兆六千億円、雇用に至っては五十万人の雇用増が望まれるという大きな経済効果を指摘しておられます。そしてまた、時短が達成されたときに、「労働者一人一人が家族を含めて、人間性豊かなくらしのために、目的意識をしっかりもつことが極めて大切である。」ということも明記しておられるわけであります。  時短というものについての意義をどのようにお考えの上でお進めになっておられるか、改めてお尋ねをいたします。
  67. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生、私の著書についてお触れになりました。これはたしか一九八八年三月の発行ですね。  この著書を発行しましたときは、週四十八時間から四十時間とする原則を、本則にそのことを明記する、この期間が五十二年間かかっているわけです。そのことをひとつ振り返りながら、立法史的にそのときは記したつもりであります。十分でない面もありまして、御批判もあろうかと思いますが、この労働時間短縮という問題について私は情熱を燃やして取り組んできたと思っています。  まず、労働時間短縮というのは、労働組合の方でもスローガンとして掲げられておりますが、豊かでゆとりある勤労者生活を実現するために必要不可欠だという立場をとっていらっしゃいますが、私もそのことについては全く同感であります。どんなに収入が多くても、生活する上でゆとりある時間を持てない、例えば二十四時間あるうちに二十時間も働くというのはそれはとんでもないことでありますが、仮にそういう状態なら、幾ら賃金をもらっても人間性がないと思うんです。したがって、ゆとりあるそういう生活を実現するために労働時間短縮は不可欠の課題でありますから、その短縮によって職業生活と家庭生活や余暇活動あるいは地域活動との調和を図ることができる、またそうしなくてはいけない、そのように私は実は考えているわけであります。  午前中の御質問でも、この余暇という問題をもっとみずからの教育に充てることができないかという御指摘がございました。私は非常にすばらしい御発想だと思いますが、そういうことも含めて時間短縮によって初めてその目的を果たし得ることができる、こう思っているわけであります。  また、労働者の心身の健康を維持していくためにもゆとりある時間というものは非常に大切でございまして、仕事の効率の向上や創造性の確保にも資することができる、こう思っているわけであります。高齢化が進展する中で、現役世代の働き過ぎを解消しながら高齢者雇用機会確保する、これはワークシェアリングの話が出ましたけれども、一般的に言えばそういうことにもつながっていくと私は思っております。あわせて、高齢者や女性を含めたすべての労働者に働きやすい環境をつくる、こういう観点からも時間短縮というのは極めて重要である。  したがって、経済力にふさわしい労働条件を実現して、国際的に批判を受けないように、国際的にも調和のとれた経済発展の達成にそのことを通して私どもが積極的に進むべきだろう、このように考えているわけであります。
  68. 小山孝雄

    小山孝雄君 今の大臣のお話を承っていて思い出しましたが、二カ月前に神戸に本院の行財政機構及び行政監察に関する調査会のメンバーとして震災後の復興の視察に行ってまいりました。自由時間にちょっと知人を尋ねるときにタクシーに乗りました。タクシーの運転手さんと復興の建設事業についてちょっと話になりまして、そのタクシーの運転手さんの友人に、例えば耐震設計基づいて今建てているものですから、建物に鉄板を巻く特殊な技術を持った人たちがおります。自分の友人にその技術者がおりまして、運転手さんがこう言うんです。どんなに収入があってもそんなに時間、ゆとりのないことじゃ人間おしまいだよなと。どういうことかと聞きましたら、本当に去年の震災後から今日までもう一日も休んでいないと言うんですね。そのかわり給料は月々百四十万円、金はぽんぽん入ってくるけれども遊ぶ暇がない、これではもう本当におれの人生何だろうかと今思う、こんなのが数年続くだろう、こう言っておりました。  本当にそういう意味で、これまで日本人は働くことは美徳、それはそのとおりでありますけれども、また休むことも美徳だというこの頭の切りかえが必要なのかな、そういったことが我々日本人にこの時短の問題を通して迫られているのかなという感じをいたしております。まさに人生が本当に充実することによって次の新しい仕事への情熱も増加するんだろう、こう思うわけでございます。  私も、自由民主党の時短問題のチームの一員でございまして、いろんなところから、このまま中小企業猶予措置を延ばさないで来年四月一日以降待ったなしのあれはやめてくれという強い要望も来てはいることはよく承知しております。けれども、その時短の効用というものを、例えば経済効果もあるでしょう、そしてまた人間にとって、生きる上にとって大事な、自分の自由な時間を持つことも大事だということも、もっともっと別の面の効用というものをPRしていく必要があるんじゃないのかなと思いながら取り組んでいるところであります。  長い長い助走期間を経ての今日、来年四月以降の待ったなしの時短、四十時間制であります。これに向かっての改めて労働省としての御見解、御決意のほどをちょっと聞かせてもらえればと思います。
  69. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生も御指摘のように、長い時間をかけて来年の四月の完全実施を目の前にするときが来ているわけであります。  昭和六十二年と平成五年の二度にわたってこの労働基準法改正をいたしました。そのときに、それぞれの企業の特殊性あるいは企業の規模、これらによって一定の猶予期間を設けたりして行ってきましたし、三年前には特別にこの猶予期間を延長する措置もとってきたわけであります。そういうことからいきまして、十年を長いと見るか短いと見るかそれぞれその事業主の見方によって違ってくると思うのでありますが、私は、十年一昔という言葉がありますように十年という期間は極めて長い期間だと思っています。この間に十分な準備をしておけば当然スムーズに達成できる問題だと、私はこう考えているわけであります。  しかし、御指摘のように中小企業団体などからは再延長を求める動きが非常に高まってきています。しかし、安易にそれを受け入れることは結果としてその事業のためにもならない、働く人のためにもならないと思うのであります。今は失業率が非常に高くて三・三%という数字を示しておりますが、これから景気がどんどん回復してくると、いつかはまた人手不足という時代もやってくると私は思うんです。そのときに、労働時間が長い、賃金が低い、福祉関係がおくれているという企業は働く人からもそっぽを向かれてしまうおそれが私は十分に想定ができるわけであります。  したがって、今は厳しくとも歯を食いしばって、十年間の歳月をかけてきたわけでありますから、残された期間の中に時短を実施するに当たっての障害となる問題があるとするならば、その障害となる部分を十分抽出して、事業主もあるいはそういう経営団体の協議会も行政も働く側も、お互いに協力をし合ってそれを克服していくことが今求められている最大の課題ではなかろうかなと思っています。  したがって、私といたしましては、午前中も申し上げました、言葉としては行き過ぎであるけれども不退転の決意だという趣旨のことを申し上げましたけれども、何としてでも来年の四月一日を期して、完全に改正された法律どおりに実施ができるように全省を挙げて取り組んでまいりたい、そのための啓蒙活動も行っていきたい、このように考えていることを申し上げて御協力を賜りたいと思います。
  70. 小山孝雄

    小山孝雄君 ありがとうございました。  最後に、技能実習制度、これは国際協力、貢献の一環として設けられた制度でありまして、我が国のすぐれた特に中小企業の技能というものを海外に移転していこうということで、三年前に発足したわけでございます。これも既に実施されてちょうど丸三年でございますが、この実施状況と、さらに、今海外から技能、技術を学びに来ている若い青年たち、二年間の日本滞在が許されて学習をし勉強して、そして帰るのでございますけれども、実際受け入れている企業あるいは団体等から、本当に技能をきっちりと身につけて帰っていただくのには、もう一年間の滞在を許可してほしいということも非常に強い要望として出てきていると承知いたしております。  これに対する労働省としての取り組みについて、また見通しについてお答えをいただきます。
  71. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) ただいま御指摘のございました技能実習制度につきましては、より実戦的な技能を途上国の国に移転いたしまして、その国の産業発展を担う人づくりの協力の一環として平成五年度から始めているものでございます。  この制度実施状況でございますが、この技能実習へ研修から移行することを表明した研修生でございますが、制度発足時の平成五年度には千百六十四人、その後、平成六年度には二千百三十八人、それから平成七年度に入りまして、まだ十二月までの途中でございますが、二千三百二十人と、私ども当初もくろんだ数字までは至っておりませんが、着実にその利用状況が伸びているところでございます。  この制度につきましては、先生御指摘のように、私ども国際研修協力機構を通じましてヒアリングを行った際、あるいは経済団体等から、この二年という上限の期間をもう少し延ばして着実な技術、技能を身につけていただいてそれぞれの母国へ戻って活躍していただく、そういったことができないかという要望を承っております。また、送り出しの国の政府からもそういった方々の活躍のためにもう少し延ばして着実な技術、技能の習得を図ってもらえないかというお話も伺っております。私ども、そういった点を踏まえまして、また種々の観点からそういった問題について検討を進めてきております。  現在、各省とも協議中でございますが、これを急ぎまして、できるだけ早い段階で結論を出してまいりたいというふうに思っているところでございます。
  72. 小山孝雄

    小山孝雄君 時間がなくなってまいりました。  今の制度にいたしましても、そしてまた時短の問題につきましても、例えば時短奨励金、いろいろ資料を見させていただきましたら、まだまだ奨励金の使われ方が少ないようにも思います。労働行政においてのすばらしいいろんな制度等の国民へのPRというものを大いに心がけていただいてお進みをいただきたい。  そしてまた、永井大臣は、私本当に心から、前青木大臣に続いて現内閣において労働大臣として最もふさわしい方だと思って敬意を表している次第であります。どうかこれからも働く人たちのための福祉の向上ということで大いに頑張っていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  73. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 四月の一日、二日、フランスのリール市で行われましたG7雇用関係閣僚会合に御出席なさいまして、御苦労さまでございました。  新聞報道によりますと、G7のこの雇用サミットにおきましては、貿易問題と労働基準の問題が提起され、EUなどの主張に対して、我が国は違ったスタンスをとった。例えば、労働基準で児童を酷使したり、あるいは強制労働をさせたり、あるいはストライキ権の制約のある状況のもとで、そういった労働基準を貿易の中でどう評価するかという問題であったと思うんですが、どんな議論をされて日本はどのようなスタンスをとられたのか、少し御説明していただけるでしょうか。
  74. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生が今御質問されました貿易問題と労働基準の関係については、WTOの会議でもAPECの場でも、先日のヨーロッパとアジアとの閣僚会合におきましても、余り直接の議論対象にせずに、極端に言えば少し横に置いてということをやられてきた経過があると私は聞いているわけであります。  それは、南北問題と言われますように、先進国と発展途上国との格差が余りにも大き過ぎるということをどう打開するかということの一環であると私は思っているのでありますが、今回のこのG7では、事前の事務的な協議の場で貿易と労働基準の関係については議題としないということが確認をされておりまして、各国ともそのことを了承しておりました。したがって、二日間にわたるG7の本会合の中では議題にも上らなかったし一言の議論もなかったわけであります。  最後の段階で、二日間といっても実質一日半でございましたが、その一日半の本会合議論されたことを総まとめにして議長が提案をする、最後の会合にそれを提起するという手順をとることにされておりまして、そのための会合がございました。ワーキングランチということでございまして、その席上には閣僚以外はだれも入れないという形でやられたわけであります。そのときに議長団からまとめについての原稿が提示をされまして、その原稿を見まして説明を聞きますと、議題になっていなかったし一言の議論もなかった貿易と労働基準の関係がまとめの中の主要な柱として報告文書に載っておったわけであります。  それは日本的な考え方でありますが、私は正直に申し上げました。フランスでそれが通用しても日本ではそれは通用しませんと私は申し上げたのであります。シラク大統領が冒頭の演説の中で、奴隷的な労働あるいは強制的な労働、こういう労働が覆い隠されて、そのことによって非常に安いコストで製品をつくって先進国と競争するということは不合理であるということを指摘されたことは事実でありますが、会合の中には一言もその議論がなかったわけであります。  私がそこで申し上げましたのは、発展途上国の労働基準を引き上げるということは極めて重要な課題である、これは先進七カ国としてもそのために行うべき援助は積極的に行わなくちゃいけないということをかなり時間をかけて説明をいたしました。例えば、ODAで行う開発援助もそうでありますし、今も小山先生から御指摘がありましたけれども、日本が労働研修制度をとって積極的に発展途上国の労働者の技能を研修していく、高めていく、技術革新を行っていく、これも一つの大きな援助であります。あるいはその国に進出をしている企業がその国の労働者に貢献できるようなそういう企業活動をすることも大事であります。そういうことを通して、日本はかつて経験しましたようにみずからの国の生活水準を引き上げる、そのために技術革新も行っていく、いわゆる労働基準も引き上げていく、このことについてはこぞって先進七カ国が協力をしようではないか。  しかし、そのことと今回の問題は別である。この別という意味は、それは臨場感あふれる話をしませんとなかなかわかりませんけれども、その議長国の提案というのは議題になかったし議論もしていなかったけれども、議長国の権限と議長の職権においてまとめさせてもらいたいと、こういうことだったわけです。しかも、その説明をいろいろ聞いて、議論を聞いてみますと、そういう労働基準の低い国で生産されるものについては極端に言えば経済制裁を加える、いわゆる輸入を認めないとか、そういうことのニュアンスがざっと出てきたわけであります。  それは明らかに保護主義に陥るのではないか、だから、発展途上国の労働基準を引き上げることは重要であるけれども、その問題を直ちにWTOの場に持ち出すということはいかがなものか。それよりも、OECDとかILOでこの問題についてはもう既に前から議論になっておりまして、今も検討が続けられているわけでありますから、むしろOECDとILOにおいて今議論されている結果を私どもは極めて慎重に見きわめる必要がある。WTOにいきなりこの問題を持ち込んで、OECDとかILOの舞台ではなくて貿易という問題のところにそれを持ち込むことはかえって保護主義に陥って、自由主義経済社会を混乱させることになりはしないか。だから、その問題については議長の提案は受け入れることができないという態度を私はとったわけであります。  これに対しまして、イギリス、カナダそれからドイツが同調してくれまして、アメリカとフランスとEUは議長提案どおりにいこうと言ったのでありますが、私どもの日本の提案を最終的に受け入れて、WTOの場ではなくてOECDとILOの場において労働基準の引き上げ問題については対応しようということで、文言も整理をすることになったというのが経過であります。
  75. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 よくわかりました。確かに、人権という言葉は使いようによってはそういう保護主義に利用されたりするわけですから、本当の意味での人権擁護というのは、先ほど大臣がおっしゃったように、児童労働だとかあるいは強制労働だとかあるいは労働基本権の制約など、そういった問題に対して援助していくということが重要であろうかと思います。日本として、ぜひそういう形でのメッセージというものをこれからも発信をし続けていっていただきたいと思います。  それからもう一つ、その雇用サミットに関して一番大きな柱となったのは、財政赤字の削減が持続的な経済成長を支えて、これなくしては雇用の拡大がないという筋であったと思うわけですが、我が国はこの財政赤字というのはかなり大きな問題になっているわけですが、労働行政としてはこの点の取り組みというのはどういうことになるのでしょうか。
  76. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) この財政赤字を減少させる政策というのは労働行政だけでやれるものではないんでありますが、昨年は阪神震災もありました。バブルがはじけて経済が非常に低迷してきたという経過もありました。したがって、やむなく特例公債を発行するという手段も講じているわけでありますが、しかしそのことが勤労国民に対して将来とも決定的なしわ寄せになっていかないようなことを政府としては考えていかにゃいかぬということで、政府としてもいろいろと検討を進めているところでありますが、この財政赤字を解消するためにはいろんな多角的な方策が必要であろうし、ある場合には忍耐を求めざるを得ない部面もあります。  そういうことを通して、いずれにいたしましても早い機会にこの財政の赤字というものを減少させていかなくちゃいかぬと思いますが、そのことを減少させることは結果として勤労者の生活の向上につながるし、雇用創出にもつながっていく。それはあくまでも産業の構造転換、そして規制緩和、こういうものを通して新たな経済機構をつくり上げるということに尽きるのではないかな、こういうふうに実は考えているわけであります。
  77. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 我が国に課せられた課題というものは、その点において非常に我々が次の世代に負うべき責任として非常に大きなものがあるというふうに考えるものであります。  続きまして、阪神震災における雇用確保状況についてお尋ねをいたします。  先ほどの御報告では、さまざまと求人と求職の増大があり、表を見ますとある程度の求人はあるわけですけれども、ミスマッチがあるという御報告でしたが、この点についてもう少し御説明をしていただきたいと思います。とりわけ、阪神震災で何人が失業をしているのかというようなことなど総合的に把握しておられるのでしょうか。
  78. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 阪神淡路大震災によりまして被災され失業された方が何人かと、こういう点でございますが、私どもの行政で把握しております数字といたしましては、平成七年の四月現在が一番多かったと思いますが、その時点で三万四千数百人であったと思います。それが、最新時点の本年二月になりまして、二千七百八十八人という数字になっております。  そのミスマッチについて何が原因かと、こういうことでございますが、これにつきましては統計的に申し上げるのはなかなか難しいんでございますが、御承知のように震災によりまして従来の産業、例えばゴム関係、鉄鋼関係、デパート等、あるいは地場産業、そんなところが非常に大きな被害を受けて、それの復興につきまして、かなり回復しているにしろおくれている、あるいは一部企業自体がよそに移っていると、こういうような状況がございます。  そういうことで、そういう関係雇用が減少しているということと、一方で災害の復旧あるいは復興、こういう事業が進んでまいりますと、その関連の需要が大幅にふえてくるということで、その関連の求人がふえるわけでございますが、これは、御承知のように主として建設関係であるとか公共工事の関係であるとか、そういうところの求人が多いと、こういうことになります。したがって、先ほども申し上げましたように、新規求人数で見まして、数としましては最新時点平成六年十二月時点より多くなっているわけでございますが、中身が違っている。そういうことでミスマッチが起き、そういう結果になっているかと思います。
  79. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 被災労働者ユニオンという組合が被災地でできまして、その中で、二月の十八日に、いわゆる仮設住宅、ポートアイランドの第五、第六、第七の仮設住宅の聞き取りをしたという報告書がありまして、そのうち五百四十五枚、対象戸数で回収率が約三〇%ぐらいの調査結果があります。  それによりますと、仮設住宅に入っている人たちは住の問題と同時に職の問題が非常に深刻であるという報告を受けています。非常に職が少ない。中高年の求人が非常に少ないし、年齢制限の求人があって、とりわけ五十代の人たちの就職ができなくて、仮設住宅に住んでいる人たちの約半数、四六%ぐらいが職を求めているというふうに報告をされています。  そこで、被災労働者ユニオンが兵庫県知事に渡した要求書によりますと、公共職業安定所の機能強化をもっと図ってほしい。そして、これは仮称ですが、被災就労促進センターのようなものを設置して雇用を開発すると同時に、仮設住宅へ求人情報を届けてほしい。それから、職を失って非常に失望をしている人たちへカウンセラーのような作業を行って、そして就職支援継続的に行ってほしいというようなことが言われているわけなんです。  ミスマッチの問題はわかりましたが、公共職業安定所としては、現在そういう被災地就職増進についてどのような努力継続しておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  80. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 私ども公共職業安定所といたしましては、窓口でのきめ細かな職業相談あるいは職業紹介、この実施に努めているところでございますが、その前提といたしましては、できるだけ広く求人開拓をし、求人を集めて、その上で職業相談職業紹介をきめ細かく実施すると、こういうことでございます。  経緯といたしましては、昨年一月、大震災後、直ちに雇用調整助成金あるいは雇用保険特例給付などで失業の予防をまず図るということ。そのためには助成金等の手続、これをできるだけ迅速に実施するということから、特別の相談窓口被災地に別途つくりまして、そこに行政職員を集めて専門的な相談をしながら、あるいは県外からの応援、これも先ほど申し上げましたように三十人規模で応援体制をとったわけでございますが、そういうことで相談をしながら、雇用調整助成金の受付、それから雇用保険特例支給、それの受付、給付、そういうものをやりながら対応してきたところでございます。  さらに、この緊急な業務に対応するための職員の臨時増員という形で、これは二年間ということでございますが、昨年とことしと二十四名の定員増も図っております。そのほか、必要に応じて臨時職員等で書類審査等の定常的な恒常的な仕事については対処するというようなことで、今日まで最大限の努力をしてまいったところでございます。  現状でいきますと、そういうことをやりながら今日までまいりまして、状況としては、先ほど申し上げましたように、震災による離職者の方、これは現在三万四千数百名から二千七百八十八名まで落ちついてきているところでございますが、もちろんこれは安定所に相談に来ている方でございまして、現実になかなか来られないという方が別途おろうかと思いますが、そういう状況のところまで来ているということでございます。  いずれにいたしましても、就職を希望する方についてできるだけ仕事をあっせんすることが重要でございまして、そういう意味で、先生御指摘のように具体的に求人情報等をどう提供できるか、どこまでどうするか、この点につきましてはさらに検討して、機動的、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  81. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 公共事業などの需要に対する求人という形のミスマッチの原因として、労働者の方からすれば、復興事業に必要な技能というものを備えない労働力についてはどうするのかという問題があると思うんです。現地では、そういう雇用の訓練とか教育訓練の科目や機会をふやして受講者には訓練手当を支給するなどして、いわゆる就労支援を現実的にしてほしいという声があるわけですが、この点についてはどうでしょうか。
  82. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘のように、仕事に合った技能を習得するための能力開発、職業訓練、これも極めて重要でございまして、そういうものについて、現地におきます職業訓練施設の科目の状況、あるいはあきぐあい、そういうもの、あるいは民間に委託できるケース、あるいは簡易に一定の技能が習得できるような講習、そういうものについてできるだけ機動的に対処することによって必要な技能を身につけていただく、こういうことも重要かと思います。  その場合に、例えば雇用保険であれば、失業給付については、そういう訓練が必要であれば延長給付というような形で失業給付を延長するシステム、そういうものも活用しているところでございます。
  83. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 仮設住宅で職のない人たちが、現在生活は何で成り立っているかという質問に対しましては、年金という人があり、生活保護を受けているという人があり、あるいは貯金の取りましをしたという人があり、身内からの援助という人があり、また借金をして生きているという人がありまして、当面そういう人たちに支援というよりはむしろ職を与えるという意味で仮設住宅に何らかの共同作業所などを設置していただけないかというような要望もあるわけでございまして、ぜひ仕事の機会と生活支援というものを何らかの形で、実質的な形で保障してやっていただきたいということを要望したいと思います。  それについて何か、兵庫県出身である大臣の御所見があればお願いいたします。
  84. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) ちょっと数字で申し上げますと、被災地の新規求人数はことしの二月分で一万一千二百七十七でございます。求人数が一万一千二百七十七名、新たに求職されている方が被災地で一万一千五百二十八名であります。求人倍率でいきますと〇・九八という数字になります。もちろん安定所を通して求職される人以外に求職されている方もいらっしゃると思うのでありますが、被災地関係の安定所を通してはそういう数字が出てきているわけであります。被災地以外の兵庫県でいきましても求人倍率は一・四五という高い数字になっています。平均しまして被災地も含めて求人倍率は一・一三という数字でありますから、仕事をしてもらいたいという数字と仕事をしたいという数字からいきますと十分に数字は合っているわけです。  ところが、現実は今先生が御指摘になったようにミスマッチで、なかなか就職ができないということがありますから、そういう人たちにどうやって就職をしてもらえるか。もちろんそのためには技能の習得ということもあるでしょう。あるいは、今までは被災地におきましてはその後片づけといいますかそういう仕事が多かったんでありますが、これから公共事業がふえてまいりますから、そのときにこの人たちをどうやって吸収できるかということがかかっているわけでありまして、これについては積極的に労働省としてもそのミスマッチをなくするようなことを、これからも引き続き努力していきたいと思っているわけであります。  なお、共同作業所という話がございました。共同作業所に当たるかどうかわかりませんけれども、被災地の特別な産業としてはケミカルシューズがございまして、これが全滅をしたわけであります。このケミカルシューズなどの地場産業については、国が援助いたしまして共同作業所を提供いたしまして、そこへ各企業が集まってきて、仮設でありますがそこで共同作業をしてもらうということも片方でやってきました。  しかし、それをもう一つ発展させて、一定の期間しか設置法律的には認められていない仮設住宅、二年間で撤去することになっておりますが、果たして二年間で撤去することがいいのかどうなのか、今それぞれ議論されておりますが、そういうところに共同作業所を果たしてつくれるかという問題は、極めて現実は難しい問題だと思います。先生の御指摘は御指摘として受けとめさせていただきたいと思います。
  85. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それから、震災地での解体工事などに基づいて事故死など労災事件が非常に多発しているということがありますが、何かその集計などございますでしょうか。
  86. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 阪神淡路大震災被災地域における労災事故については、かなり多発しているという実態がございます。私ども現地の基準局からの報告によりますと、平成八年一月五日現在が手元にございます最新の数字なんでございますけれども、復旧工事等によって被災され死亡された方が三十六名、負傷された方が七百九十八名、これは兵庫労働基準局において把握した数字でございますけれども、そういった実態がございます。
  87. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 先回もちょっと出稼ぎ労働者の人たちの集会に行きましたときも非常にそういう訴えが出ていて、やはり安全の指示というか、そういったものをでき得る限り使用者の方が厳格に行っていただきたいというふうに思います。  それでは、時間短縮問題について質問をさせていただきます。  先ほどさまざまな委員の方の御質問で、所定労働時間ないしは総労働時間の短縮というものが進んでいるということは非常に喜ばしいことでありますが、最も問題となっているのは時間外労働がどのような状況にあるかということではなかろうかと思います。  平成五年に適正化指針というものが改定されておりまして、目安時間ということで一週間が十五時間、一カ月で四十五時間、一年間で三百六十時間というものが定められておりますが、これの実施状況といいますか、その実効性というか履行確保というものはどのような状況にあるのでしょうか。
  88. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 今、先生御指摘されました目安時間といいますか、それに関する指針は、三十六条の協定において定められる法定労働時間を超えて労働させることができる時間についての協定に関する目安時間でございますけれども、私どもが昨年の時点調査いたしました結果、協定上の一週の延長時間を十五時間以下、これは目安時間は今御指摘のとおり一週十五時間でございますが、十五時間以下としている事業場が九五・六%、また一カ月、これは目安時間が四十五時間となっておりますけれども、たまたま調査の結果、手元にございますのが五十時間以下というので切った数字がありますけれども、それが九八・六%、それから一年間三百六十時間という目安時間でございますけれども、その一年の時間が三百六十時間以下としている事業場の割合が九四・八%ということで、おおむねこの指針に示しました目安時間というのは協定においては遵守をされているという実態にございます。
  89. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、ほぼこれが九〇%を超える実施状況だといたしますと、さらにこの残業時間是正の指導の目安時間を見直すということはプログラムとしてあるのでしょうか、ないの  でしょうか。
  90. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) この目安時間を将来とも見直すことはしないということは申し上げられないわけでございますけれども、今直ちに見直すことがスケジュールになっているかというふうなお尋ねですと、現在はちょっとこれを検討するという状況にはなっていないというふうに申し上げたいと思います。
  91. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうすると、先ほどサービス残業が非常に多いということを御報告いただきましたが、それはこの目安時間を超えたいわゆる法の網にはかかってこないというところのサービス残業時間ということですが、その実態はなかなかとらえにくいわけですけれども、先ほど、違反をしているそういう各事業場については勧告ないしは指導中ということでしたでしょうか。そうすると、例えばどのような形で勧告をし指導をしておられるのでしょうか。それに対する効果はどのように期待しておられるのでしょうか。  サービス残業というのは、労基法の根源的な、近代的な労働契約の基本的なルールに違反するものであるというふうになれば、これは告発をされて断固処罰の方向へ、労働基準法の違反としてやられた方が時間短縮には効果的ではないかというふうに私などは思うものですから、その点についての御見解を伺いたいと思います。
  92. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 先ほど労働時間についての違反のことをお話ししたかと思いますけれども、これは必ずしもこの目安時間と直接的に関係があるというものではございませんで、平成七年に全国で約十七万の事業場において監督指導し、そのうち約三万の事業場において労働時間関係の違反があったわけでございますが、具体的には三十六条に基づく協定なしに時間外労働を行わせているとか、三十六条協定で定めた時間数を超えて時間外労働を行わせているといったようなものでございまして、こういったことにつきましては直ちに是正を求め、しかるべき措置をされているという実態でございます。
  93. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そういたしますと、例えばこの改正適正化指針によりますと、先ほどかなりの実施率だったわけですが、これによると特別条項で延長しなければならない特別事情があったときには協定によってまたさらにこの目安時間を超すことができるようになっております。大体、こういう協定というのはあるんでしょうか、ないんでしょうか。どの程度あるんでしょうか。把握しておられるのでしょうか。
  94. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 今御指摘の点については、私ども具体的に把握はいたしておりません。
  95. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それから、改正適正化指針の第四条などによりますと、適用除外のさまざまな業務があるわけですけれども、この業務というのは大体全労働者の何%ぐらいというか、企業数のパーセンテージでもいいんですが、この適用除外というのはどのくらいの割合なのでしょうか。
  96. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) これについても、私どもは数字として把握したものはございません。
  97. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 時間短縮の中ででき得る限り時間外労働を制約していくということが、私としては国際的にも総労働時間規制における日本に対する批判などをかわす上でも非常に重要だと思います。労働基準法三十六条のいわゆる労使協定における適正化指針を、単なる行政指針規定ではなくて、いわゆる施行規則に盛り込むとか、あるいは労働基準法の本文に入れて実効性を担保するとかというようなお考えは御検討したことがあるのでしょうか。あるいは将来そういうことについて、いかがお考えでしょうか。
  98. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 先ほど御説明いたしましたとおり、この指針に示しております目安時間の遵守状況といいますか、それにつきましては、先ほど申し上げましたように、九割以上の協定がそういうことになっているということを考えますと、現行のやり方で相当の効果を上げているというふうに私どもは認識をいたしているわけでございます。  また、先生御指摘のように、法令上具体的にこれを規定企業に義務づけてはどうかということでございますけれども、これまでもそういったことについて全く検討しなかったということではもちろんないわけでございます。ただ、我が国労働雇用慣行における時間外労働の意味といいますか、そういう観点から見ますと、これがある意味では雇用調整の役割を果たしているといいますか、そういうものになっている点というのもあるわけでございます。  そういうことから、直ちにこれを法令上位置づけるということは私どもは適当だというふうに言えないというふうに考えておりまして、現在それを具体的に検討するという状況ではないということを申し上げたいと思います。
  99. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 女性に対する時間外労働の規制というのは別途あるわけでありまして、これはかなり男女離れているわけです。しかし、ILOの百五十六号条約が制定されまして、家族的責任を持つ男女労働者のためのさまざまな基準としてILOの百六十五号勧告などは、一日の労働時間の規制とか、あるいはさまざまな家族的責任の両立、職業と家族的責任を両立し得るようなそういう労働時間法制を求めていると思われますが、この点については労働基準局としては時間外労働の観点からして何か御意見をお持ちでしょうか。
  100. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 労働時間という点において、労働者は働くということと家庭責任を果たすということとが両立できるということはもちろん極めて重要なことであるというふうに考えております。ただ、それは単に時間外労働だけの話ではないというふうに考えておりますし、全体として労働時間が短くなっていくということが必要なのではないかというふうに考えております。  また、仮に時間外労働という観点に着目いたしましても、そうであるからといって、それが直ちに法令上時間外労働の制限をつけるということにつながるというふうにも考えておらないところでございます。
  101. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、家族的責任と職業生活を両立するためのあるべき労働時間法制というのはどんなふうにお考えでしょうか。
  102. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 家族的責任というのはなかなか難しいわけでございますし、それを果たすための条件というのはさまざまあるわけでございます。つまり家族的責任、育児・介護、そういったことでございますけれども、そういったことと仕事を両立できるためには社会的なさまざまの環境整備が図られるという点もございますし、また家族の中でそういったことがどうシェアをされていくかといったようなこともございます。  また、現在非常に働き方も多様化しているわけでございますし、フレックスタイムですとか裁量労働制その他さまざまな労働時間制度なども進んできているわけでございますから、単純にこれだけをもってこれが家族的責任を両立させるための労働時間のあり方だというふうに言うことはできないかと思います。多面的にさまざまな状況を考える必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  103. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 確かにあらゆる労働条件と働く環境の中で、そういった家族的責任と職業生活を両立てき得るような労働時間法制というものが形成されていくと思うわけです。私などは、例えば時間外労働に対しては、十二歳以下の子供を持つ男女労働者とか老人介護、その他家族を介護するような家族的責任を持つ労働者の場合は、一定程度の残業時間規制がかかっていくような法制というものが将来でき得ればいいというふうに考えているところでございます。  労働時間の問題として、さらに最近、パート労働の短時間化の傾向がその中に出てまいりまして、その結果としてかけ持ちで働いている女性が、いわゆる多重就労というふうにも言われますし複合就労とも言われますが、そういった人たちが非常に多いということが明らかになりつつあります。  これは、アメリカなどでもパートタイマーの人たちの賃金がかなり低いということで、多重就労というものがある程度出てきているというふうにも聞いておりますが、我が国でもコミュニティユニオン首都圏ネットワークというのが一九九五年の八月から十月にかけて百三十二通の複合就労をしている人たちの調査をしたものがあります。そうすると、今まで複合就労というのは男性に主として多かったわけですが、このごろ女性に非常に多くなっておりまして、年齢は二十代から五十代へと広がっていて、年収は双方で約三百万ぐらい。そして、驚くことに生計を維持するために複合就労をしている年間労働時間が二千四百時間から三千時間働いている人がいるという報告が出ているわけです。  そして、その原因というのは、リストラとか収入の減少ということで、主として生計維持とか家事や育児のためとかあるいは専門性のためということですが、半数以上が複合就労を望んでいないにもかかわらず収入が少ないというために行っている。そして、驚くべきことに複合就労をしている使用者の七五%がちゃんとわかっているという統計が出ているわけです。  こういう中で、結局、問題は八時間を超えて働くにもかかわらず、時間外労働として本来ならば取り扱われるべき時間帯に割り増し賃金がつかないとか、あるいは二つを合わせれば当然社会保険の加入資格があるにもかかわらず一方だけだから加入できないとか、あるいは有給休暇の取得も非常に難しいとか、さまざまな問題が出ているわけです。  こういう傾向について、私はやはりきちっと調査をしていただきまして、新しい規制をかけていっていただきたいと思うわけですが、パートタイム労働法施行について何か把握しておられることがあるのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  104. 松原亘子

    ○政府委旦(松原亘子君) 必ずしもパートタイム労働法施行という問題ではないのでございますけれども、ちょっと古いんですが、私どもが持っております複合就労といいますか雇用労働者で他に仕事をしている人たちの状態がどうかということを調べたものといたしましては、平成四年の就業構造基本統計調査がございますけれども、この結果によりますと、副業を持っている雇用者の数は雇用者全体の四・八%に当たる二百五十四万人という状況が出ております。この内訳を見ますと、その二百五十四万人のうち男性が六八%、女性が三二%というふうになっております。また、年齢別に見ますと年齢が高い人ほどその割合が高まっているという状況がございます。  また、その副業の種類でございますけれども、二百五十四万人のうち副業として自営業をやっている方が四五%、家族従業者であるという方が二四%でございます。残りの約三割、二九・八%が本業も雇用者であり副業も雇用者であるという状況でございます。つまり、全雇用労働者の四・八%のうちの二九・八%が副業を持っており本業も副業も雇用者である、こういうような状態がございます。  また、本業の労働時間なりがどうなっているかというのもあわせて調査いたしておりますけれども、その結果によりますと、二百五十四万人のうち、本業の就業日数が二百日未満という方が六十七万人、二百日から二百四十九日という方が七十九万人、二百五十日以上という方が百七万五千人、こういう状況でございます。そして、本業で二百日以上働いている方で労働時間が短い方、三十五時間未満という方が十八万人でございます。  したがいまして、本業の就労日数や就業時間がかなり短いと思われる方、つまり二百日未満働いていらっしゃる方か、二百日以上働いているけれども週三十五時間未満働いているという方、こういう方を全体足し上げますと八十五万一千人ということになりまして、先ほど申し上げました雇用労働者で副業者である二百五十四万人に占める割合は三三・五%という状況になっているわけでございます。  そういうことからいたしますと、主としてパートタイム労働者だけが副業を持っているということでもなく、かつ雇用者の場合に、またもう一つ持っている仕事が雇用労働だという方が多いというほどでもないというような実態がこの調査の結果から出ているところでございます。
  105. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうした多重就労調査があることは承知しているわけですけれども、さらにパートタイム労働の複合が最近ふえているということについて、ぜひ御注目いただきたいということであります。  したがって、一つの職場から必要な収入が得られないということで他に職をもう一つ持つということでありまして、その一つの職場で必要な収入を得るというシステムから外れているという点ではパートタイム労働者などが多いのではないか。したがって、その中でどうしても必要になるのは、パートタイム労働者のいわば賃金の均等処遇というものがない限り、こういった複合就労というのは労働時間が短縮する中でますますふえていくのではないかということが推定されるわけです。  最近、長野地裁で、丸子警報器は均等理念に反する、八割以下は均等処遇に反する、公序良俗違反だという判決が出ましたけれども、そういった社会的な背景を踏まえまして三年後の見直しも迫っているわけでありますから、そういうパートタイム労働者の均等処遇に向かいまして、ILOの百七十五号条約の批准などを視野に入れてこれを見直すということが必要ではないかと思いますが、この点について労働大臣のお考えを聞きまして、時間ですので終わらせていただきたいと思います。
  106. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生が御指摘されました丸子警報器事件ですね、これは被告、原告双方が控訴しておりますからこの問題については直接のコメントは避けたいと思いますが、いずれにいたしましても正社員との間で不合理な格差があることは適当でない、このように私どもは考えているわけであります。  そこで、百七十五号条約の関係でありますが、先生御案内のように、この百七十五号条約の内容労働条件等の面でパートタイム労働者がフルタイム労働者に与えられる保護と同一または同等の保護を受けることを確保するための措置等について規定をされているわけであります。百七十五号条約の批准国はまだないようでありますが、我が国ではパートタイム労働法等によりましてパートタイム労働者の保護についてそれなりに各種の措置を講じてきているところは先生御案内のとおりであります。  したがって、この百七十五号条約の批准につきましては、国内法制との整合性の観点からさらに検討しなくてはいけない事項も多うございますので、今後慎重に検討してまいりたい、このように考えております。
  107. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 三年後の見直しに向けまして、ILO百七十五号条約の批准というものを視野に入れながら、検討をぜひ着実に進めていただきたいとお願いをしたいと思います。  終わります。
  108. 吉川春子

    ○吉川春子君 まず、阪神淡路大震災での失業者を公共事業にどの程度吸収したかという問題についてですが、先ほど報告がありませんでしたので伺いますけれども、昨年成立させた公共事業就労促進法による公共事業事業主団体への紹介実績は実人員で何人ですか。
  109. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 公共事業就労促進法によります事業主体への紹介実績ですけれども、ことしの二月末現在で実人員で三十三人ということでございます。
  110. 吉川春子

    ○吉川春子君 失業者をこの法律によって吸収した数が三十三人ということでは、この法律が役割を果たしたとは到底言えないと思うんです。大臣は衆議院の労働委員会でこの点について、今までは震災の後片づけが中心だったけれども、これから本格的な公共事業に入っていくので公共事業就労促進法がより効果が出てくる、こういうふうに答弁されています。この法律対象は無技能者ということですから、むしろこの一年間の後片づけに吸収率が非常に高まることが期待された法律だったというふうに思うわけです。しかし、今後その吸収率を飛躍的にふやしていくということであれば、具体的に何を考えておられるのか、答弁をいただきたいと思います。
  111. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 私どもといたしましては、今後公共事業の工事件数が伸びてくるであろうというふうに考えておりまして、それに合わせまして地元における被災失業者雇用確保に資することができるように関係の府県それから公共職業安定所を通じまして公共事業の発注部局との連携を強化していきたい、また建設業者への指導とか被災失業者に対する公共事業就労に関する周知、こういったものについてさらに徹底を図ってまいりたい、そしてこの制度の円滑かつ実効ある施行に努めてまいりたいというふうに考えております。
  112. 吉川春子

    ○吉川春子君 今までもそういうことをやってこられた結果が三十三人という数字だったと思います。職安が積極的に職業紹介に乗り出さないということによってやみの職業紹介も横行しています。こういうことを放置しておいていいわけはありません。労働省・職安は雇用創出ということについて本当に役割を果たしていただきたいと思うんです。  行革委員会の規制緩和委員会は、有料職業紹介を民間に行わせる、こういう方向を打ち出しまして、労働省と公共職業安定行政がリストラの対象になるかもしれないと。そんな口実を与えないためにも本気でこの問題に取り組んでいただきたいと思うわけです。  私は、この問題を引き続きやりたいと思いますが、大臣、飛躍的に吸収入数をふやしていただきたい。十倍、百倍、どうですか。
  113. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘はごもっともでございまして、後片づけの段階から公共事業がこれからふえてくるというそこに期待はつなげているのでありますが、最前も数字で申し上げましたように、求人数と求職数、求人倍率でいきますと一・〇を超えているわけです。超えているんだけれども、ミスマッチでなかなか就職ができない。  それは、今度の特例法でいきましても無技能者ということになっておりますけれども、どこまでその範囲を受注者が広げていただけるかということに一つはかかっていると思うのでありますが、そこを公共職業安定所を通しましてできるだけ、今も部長がお答えいたしましたように、求職者側にもあるいは事業者側にも啓蒙をやって、できるだけミスマッチをなくするようなことを片方で進めていきたい。何とか飛躍的に雇用数がふえるような努力をしていきたい、こう思っているわけであります。  したがって、公共職業安定所の方におきましても大変業務が増加してきていることは事実でありますが、厳しい行政改革の定員削減という中でも、あえてこの被災地における職業安定所の職員の数はたとえわずかでも実人員で増加させてもらったわけであります。加えて近隣の府県から応援を求めまして対応しておりますが、なかなかそれでも手いっぱいで、思うように目的を果たすことはできない非常に厳しい要員環境に置かれていることも事実であります。  その片方で、今御指摘がありましたように、衆議院の段階でも提起があったわけでありますが、やみ手配師ということがございまして、今兵庫県警の方でずっと内偵を続けてもらっています。人事異動の関係もあってすぐに中間報告が出てきていない状況でありますが、重ねて公安委員長に対しましてその協力を要請いたしました。したがって、近くその中間報告が出てくると期待しておりますが、少なくともやみ手配師というものは断じてあってはならないし、厳しくそれについては対応してまいりたい、こう考えているわけであります。
  114. 吉川春子

    ○吉川春子君 続いて時短問題についてお伺いいたしますけれども、日本の労働時間は非常に長い、そして過労死もたくさん出ている。労働者が人たるに値する生活を営むために時短は最優先課題であります。また、時短は雇用を増大させ、失業者を減少させるという効果も生むわけです。  一年後に全面的な四十時間労働制へ移行するわけですけれども、現時点でまだ四十時間労働制の恩恵を受けていない労働者の数を報告してください。
  115. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 法律上の週四十時間労働制適用が猶予されている労働者数は、現在約三千百七十万人ということで、雇用労働者全体の約六四%という状況でございます。
  116. 吉川春子

    ○吉川春子君 午前中来、大臣は、業界団体から時短を先送りする猶予とか再延長を求める動きがあるけれども、不退転の決意で時短を進めると答弁されました。ぜひ実行してほしいと思います。そのためにも各業界の抱える困難な問題を解決する必要があると思うわけです。  私は、タクシー労働者の時短問題について具体的に伺いたいと思うんですけれども、平成七年三月、タクシー運賃の値上げが行われました。運輸省の局長通達では、賃金の引き上げをこれは目的としている値上げた、それから運賃改定では時短が運賃の原資に含まれている、だから時短によって運転者の賃金を下げることのないようにする、こういうふうにしているわけです。  運賃改定に伴う労働条件の改善状況を見ますと、これは埼玉の都市部の数値ですけれども、三・九%、営業収入アップは四・九%というふうになっています。つまり、運賃改定が賃上げにも時短にもなかなかつながっていないんじゃないか、こういう現状があるわけです。  タクシー業界の四十時間の達成率はまだ非常に低くて、三百一人以上で四七・七、それから十人から三十人で二七・五。今四十四時間ということであるわけですけれども、こういう状態です。そして、歩合制をとっているという賃金体系が非常にネックになっているわけですけれども、労働省として賃下げなしの時短のためにどんな具体的な指導をしているんでしょうか、お聞かせください。
  117. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 賃金をどうするかということについては、私どもは具体的に指導するというような立場ではございませんので、労働時間の問題についてだけ申し上げさせていただきたいと思います。  御指摘のように、タクシー業においては労働時間短縮取り組みにおくれが見られるということは私どもも承知をいたしております。したがいまして、これを積極的に促進していくことは極めて重要であるというふうに考えているところでございまして、けさほど御説明いたしましたけれども、時短促進法基づきます中小企業に対する労働時間短縮取り組みについての支援措置の一環といたしまして、タクシー業につきましても労働時間短縮についての援助をいたしてきているわけでございます。  団体ぐるみで労働時間短縮に取り組んでいただくということも非常に有効なことでございますので、時短促進法基づきまして労働時間短縮実施計画推進援助団体助成金というものを支給いたしておりますけれども、ハイヤー、タクシー業界につきましても、これまで全体百十二団体助成しましたうち八団体助成しているわけでございます。また、個別企業の時間短縮努力促進するための助成金といたしましていわゆる時短奨励金制度というものがございますが、これまで七千九百十七件既に全体で支給しておりますけれども、これはハイヤー、タクシーということだけに限ったわけではございませんけれども、運輸交通業につきましては、このうち九百二十四件につきまして奨励金を支給したという実態がございます。  具体的にどういつだことで時短を進めたかということを一、二申し上げさせていただきますと、タクシー業におきましては売り上げの計算ですとかそういったことがあるわけでございますけれども、そういった乗務を終えて後の、例えば金銭の鑑別だとか現金計数収納、そういったことをもっと容易にするために機械を導入する、そういったことで乗務員や事務員の業務量を軽減し労働時間短縮を図ったといったようなケースもございますし、また日報計算についてコンピューターを導入するといったようなことで、そういう事後的な措置を素早くやれるようにするといったようなことで労働時間短縮を図ったという企業もあるわけでございます。そういうことから、来年の四十時間実施に向けまして、私ども今申し上げましたような奨励金の支給、こういったことで強力に援助指導をしていきたいというふうに考えているわけでございます。  また、来年からの四十時間労働制への移行を視野に置きまして、自動車運転者の拘束時間等について定めました自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、これの見直しのための検討を現在中央労働基準審議会の自動車運転者労働時間問題小委員会というところにお願いいたしておりまして、そこで四十時間移行に向けてのあり方を検討いただいております。したがって、その結果を待ちまして自動車運転者につきましての新たな改善基準を策定いたしたい、そしてその改善基準につきましても関係者に周知徹底を図り、タクシー運転者についての労働時間短縮を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
  118. 吉川春子

    ○吉川春子君 大臣に伺いますけれども、タクシー労働者労働組合である自交総連は、運賃改定の改善状態の到達点を明らかにして、確約した賃下げなしの時短、社会的水準の労働条件の改善へ向けた減車の厳正かつ実効ある措置を要求する、あるいは公約違反の事業者の名称を直ちに公表すること、こういう要求を出しているわけなんですけれども、運輸省は私に対して、悪徳事業者の名前の公表も検討している、こういう回答を寄せてきています。  運賃の値上げたけはする、しかしそれを賃金にも反映させない、時短も推進しない、こういうような業者については、業者一般に対して補助金を与えてどうこうということも一つの指導の方法でしょうけれども、やっぱり不退転の決意で四十時間の実施をするということであれば、こういう運輸省が今検討しているような悪徳業者の名前の公表も含めて効果ある措置をとっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  119. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生が御指摘のように、何年前か忘れましたけれども、タクシー業界が運賃値上げを申請したときに、今回の運賃値上げはすべて労働条件の改善に使うといって運輸大臣に申請して許可されたことがございました。その後、労働組合の側から全く労働条件の改善に使われていないという御指摘がございまして、当時国会でも問題になったことがございました。  今、先生の御指摘の問題は同じようなケースの問題だと思いますので、もちろん所管は運輸大臣でございますから運輸大臣の方に適切な指導をお願いしていきたいと思いますが、私どもは四十時間達成に向けて必要な指導といいますか、こういうものについては業界ごとに対応してもらっておりますが、ハイヤー、タクシー業界に対しましても適切な労働条件の改善と時間短縮、これをリンクさせて実行できるように指導を何らかの形で強めていきたい、こう思っております。
  120. 吉川春子

    ○吉川春子君 次のフォローアップは労働基準法改正で、変形労働時間制についてお伺いをしたいと思います。  時間短縮のために週休二日を導入しやすくする、こういう理由で変形労働時間制が導入された職場がたくさんあるわけですけれども、実際の運用は時短の推進どころか変形制を悪用した賃金未払いなどが後を絶たない、こういう実情があるわけです。日本最大の交通運輸会社であるJR東日本も例外ではない。その問題について私は具体的に聞きたいと思います。  まず、定められた労働日の変更、終業始業時間、これは基本的に変更してはならない、一カ月単位変形労働時間の導入についてはそういうふうになっているわけです。そうしないと導入する意味はないわけですけれども、JR東日本では勤務日の一方的な変更が簡単に行われていたという事例があったんではありませんか。
  121. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 御指摘されたのはJR東日本のケースかと思いますけれども、これは平成六年六月に監督署の方に申告がなされました。その内容は、一カ月単位変形労働時間制を採用している事業場におきまして指定された勤務の変更が行われることが多い、そのため実質的には変形労働時間制とは認められないのではないか、こういった内容等でございました。
  122. 吉川春子

    ○吉川春子君 どういう処理をされたんですか。
  123. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 今申し上げたような申告がございましたので、監督署の方で調査実施いたしまして、必ずしも適当でないと考えられたところにつきまして改善指導をし、その後一定改善が図られたというふうに聞いているところでございます。
  124. 吉川春子

    ○吉川春子君 こうしたことがなぜ起こるかといいますと、これはJR東日本の就業規則なんですけれども、ここに問題があるわけです。就業規則の六十三条では、「会社は、労基法第三十二条の二の規定基づく社員の翌月及び翌月各日の所定労働時間、翌月各日の始終業時刻及び休憩時間の配置並びに翌月の休日等を毎月二十五日までに勤務指定表により指定する。この場合、一箇月を平均して一週間の労働時間が四十四時間を超えない範囲指定する。」。二番目として、「会社は、業務上の必要がある場合、指定した勤務及び指定した休日等を変更する。この場合、会社は、速やかに関係社員に周知する。 なお、公休日を変更する場合は、前日までに振り替える。」。  こういうふうに非常に簡単に変更できるというふうになっているわけですね。就業規則は労働基準監督署に届け出ることが義務づけられているわけですから、こういうものについてもきちっとチェックをされるべきではありませんか。
  125. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 今御指摘の点、私どもそこの事業場の就業規則が手元にございませんので、それについての是非を申し上げることはできませんけれども、監督署において就業規則を受け付けるとき、当然労働基準法上問題はないかどうかということはチェックしているわけでございます。
  126. 吉川春子

    ○吉川春子君 よく調査して、これについてチェックをしていただきたいと思います。  もう一つ伺いますけれども、法定労働時間の総枠を超えて勤務指定をしていた例があったわけですけれども、それについてはどういう指導をされましたか。
  127. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) それも同じくJRでございますが、JR東海についてなされたものをおっしゃっておられるのではないかと思いますが、この内容は、一カ月単位変形労働時間制のもとで、法定労働時間の総枠を超えた勤務指定をしている場合がある、これも変形労働時間制とは言いがたいのではないかと、こういう申告でございました。  これに対しまして、所轄の監督署におきまして調査をいたし、申告は平成五年十二月でございますけれども、平成六年四月に指導を行い、改善を行ったという報告を受けているところでございます。
  128. 吉川春子

    ○吉川春子君 労働時間を超えて、枠を超えて指定するなどということはもう非常に驚くべきことであるわけですよ。しかも、あらかじめ日を特定して計画年休として指定することが多いわけです。この年休は当然労働時間として計算されるわけですけれども、今報告のあったJRでは、これを労働時間から除いて一カ月当たりの労働時間のつじつまを合わせていたわけです。  こういう問題について、具体的にどういう指導をされたんですか。
  129. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 一つは、勤務指定に当たりましては、法定労働時間を超えないように十分確認をしてほしいということ。それから、年休日の労働時間をゼロという形で扱う場合には、これは法定の年休を与えたことにはならないということについて十分注意するようにと、こういう指導をしたというふうに聞いております。
  130. 吉川春子

    ○吉川春子君 その浜松の具体的な事例ですけれども、これは労働基準監督署に申告があったからわかったわけなんですけれども、同様の事例はかなりJRの職場の中で行われているんじゃないでしょうか。こういう問題意識を持ってやはり指導、監督にぜひ入っていただきたい。これはどうですか。
  131. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 労働基準監督署が監督をする場合に、それぞれ監督計画をつくりまして監督をするわけでございますが、今先生御指摘のJR各社にいろんな問題があるということであれば、それがかつ制度的なものであるとすれば、個々の事業場ということもさることながら、本社に対してむしろ行う方が適当だというふうに考えられる場合もあろうかと思いますので、そういう形で今後とも事案の性質に応じて必要に対応したいというふうに考えております。
  132. 吉川春子

    ○吉川春子君 本社の社長に対して、この変形労働時間制の問題で何回ぐらいこの間指導されているんですか。
  133. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 恐縮でございますが、具体的に何回という数字までは持ち合わせておりません。
  134. 吉川春子

    ○吉川春子君 じゃ、具体的に何回と言わなくてもいいですけれども、十回を超える指導があったんじゃありませんか。
  135. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 申しわけございませんけれども、現在お答えできる状況にございません。
  136. 吉川春子

    ○吉川春子君 私の地元というのは埼玉県なんですけれども、今報告されましたすべての問題が起きている職場があるわけなんです。それは例えば法定労働時間の超過、それから一方的な勤務変更、それから年休の労働時間への不算入、そして月四回も指定休日に出勤させると、こういうことを全部やっているという駅があるわけなんです。  さっきのは横浜と浜松なんですけれども、埼玉でそういうことがあるということは、かなりあちこちでJR東日本はこういう変形労働時間制の導入に伴う法違反をやっているということが明らかだと思うんですけれども、こういう問題について社長に一度も指導はしていなかったということですね。こういう問題というのは具体的に埼玉という意味じゃないんですよ、変形労働時間制の問題について社長に一度もそういう指導をしたことはないと、そういうことでいいんですか。
  137. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 先ほどの御質問は、何回したかとおっしゃられましたので、具体的数字は把握しておらないと申し上げたんですけれども、本社に対して指導したという事実はございます。
  138. 吉川春子

    ○吉川春子君 その具体的な数字は言えないということなんですね、したけれども。  大臣にお伺いいたします。ちょっと時間の関係でかなりはしょって早口で申し上げましたけれども、JRや国鉄問題に詳しい大臣だからどういうことが起きているのかということはおわかりになったと思うんですけれども、こういう企業が来年から四十時間労働制に入るわけですね。今四十四時間、そして来年から四十時間に入る。なぜこういうことが起こるかといえば、これはもう人をふやさないで、あるいは減らしつつこの時短を進めようということで変形労働時間制を導入し、しかもさらにそれにも違反するというようないろいろ問題が起きてくるわけなんですね。だから、変形労働時間で法定労働時間の超過問題などを起こさない、解決するためにはどうしても人をふやさないとこういう問題は解決できない。それだけではないですけれども、企業のモラルという問題ももちろんありますけれども、基本的にはやはり人をふやさなければならない。こういうときに人減らしを行うということは、やっぱり労働基準法違反があるんではないかと言えるんじゃないでしょうか。  私は、大臣にあえてお尋ねしますけれども、今千四十七名の国鉄労働者がいまだに職場に復帰できないで闘い続けているという現状もありますけれども、こういう人たちを直ちに職場に戻したらどうなんですか。そして、さらにはきちっと時短に必要な人員を確保して、そして時短を推進する、こういうきちっとした態度を労働省がとるべきだと思いますけれども、この問題について大臣いかがですか。
  139. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生からの御指摘の変形労働時間制を含めて違法な行為があったのではないかという、このことについては今基準局長からお答えいたしましたけれども、JR側からは昨年の三月末にJRグループ全体の問題として改善のための検討を行っているという中間報告を受けているわけであります。  それはそれとして、二十四時間稼働しているという特殊な運送事業でございますから、いろんな問題点はあろうかと思いますが、変形労働時間制にしても裁量労働制にいたしましても、法律基づいてきちっとやっておられれば問題ないわけですね。それがなかなか法律どおりにやっていないというところに問題点があるという御指摘でございますから、引き続きこれからもJRに対しましては十分な指導を行ってまいりたいと思います。  それと、またこの千四十七名の問題があります。どの企業でどれだけの人員を採用すべきか、あるいはもっと採用しろとか、人を減らせとかいうことは直接労働省が介入できる問題ではありませんので、企業において措置される、あるいは労使間で措置される問題でありますが、せっかくの御提起でございますから、お答えをあえて踏み込んでしておきたいと思いますが、この千四十七名にかかる問題については、御案内のように、労働委員会で、十四件ですか、命令が出されております。しかし、法的にこれの判断を仰ぐという道筋は残されておりますから、会社側が労働委員会命令を不服として今法廷に持ち越されているわけであります。したがって、それについて直接コメントはできませんけれども、しかし、少なくとも輸送を担当するという企業の特殊性からいきまして、労使の安定というものは極めて私は大事だと思っています。  したがって、労使の安定を図る意味において何らかの円満な労使間で解決ができないものか。でき得れば労働委員会の結論に基づいて措置されるのが一番好ましいわけでありますが、今法廷に持ち込まれております。その法廷でどういう結論が出されるかわかりませんけれども、それを待っておったんではまたこれ何年かかるかわからぬということでありますから、でき得る限り円満に労使関係で話し合いによってこの問題の解決がなされるように労働省としては強く期待をしておりますが、それに対して、労働省として一定の対応ができないのかどうなのか、これについて運輸省とも協議を今現在重ねているところであります。それ以上のお答えはできませんけれども、無関心ではいないということだけはひとつ御理解を願っておきたいと思います。
  140. 吉川春子

    ○吉川春子君 最後に、さっき言いましたそれだけ法律違反をいろいろ犯している、変形労働時間で犯している問題について、大臣、やっぱりJRの職場に入って、それは権限があるわけですから、そういうことも含めてぜひ違法状態を正して、正しく法律が運用できるようにしていただきたい。最後にそれの決意を伺って終わりたいと思います。
  141. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) どういう方法をとるか別にいたしまして、JRにそういう問題点が起きないように指導を強めてまいりますが、いずれにいたしましても、まだ株式上場しておりません。いわば国営企業の延長みたいなものでございますから、あえて言うならば日本のいろんな企業に対して模範となるべき労働行政をとってほしいわけです。それだけの私はまたJRは責任があろうかと思いますので、そういう視点に立ってこれからもJRに対してはしっかりと指導をするように努力をしていきます。
  142. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  143. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 その国一国の文化程度というものをはかるときにはいろいろな方法があると思いますけれども、私の持論といたしまして、労働条件の改善、あるいはいろいろな労働に対するその国の思いというもの、これは私はまさに文化的なバロメーターになるというふうに思っております。そういう意味では労働省挙げて、私たちも世界において文化国家でありたいというこの思いには一緒になって労働条件、労働の環境、福祉というものに頑張りたいという思いです。  さて、そういう思いを込めまして、女性の労働条件というのはかつて本当に大変なことでした。かつてというよりも、私の若いときですからそんなに遠い過去ではないんですけれども、大変遠い過去だと笑っている人がいますけれども、そうかなと思いながら、大変な労働条件で、私などは歯ぎしりをした思いがあります。  そういう思いからしますと、育児休業法というのができ上がりまして、女性が働くということに対して社会的に労働条件をバックアップするというのは、私にとったら大変な進歩だったというそんな思いです。そして、平成七年四月からこの育児休業給付金がついたというのは、これまた私にとっては、二五%というのが少ないか多いかは別として、これはないよりはましたという、そういう思いです。  そこで、お尋ねをいたしたいと思いますけれども、育児休業法律として制定される前に、これからの社会は女性の労働力、女性の能力を戦列に加えることが企業の生き延びだということで、既に育児休業制度を入れた企業が幾つかあり、しかもその制度に対して何%かの補助金を出している企業があったやに聞きますが、労働省では今その資料はとってあるでしょうか。そこからちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  144. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 少し前の平成五年度の調査でございますが、その当時、育児休業制度導入している企業はほぼ半数でございました。その中で、育児休業中にいろいろな金銭の支給がありという企業が二八・一%という形でございます。
  145. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私にしたら、数字が多いとか少ないとかいうよりも、そういう現実があったということは非常にうれしい思いなんですね。  ところが、平成七年四月から現実に二五%支給されるということになりました結果、平成七年の四月以前に給付されていた企業は、どういうふうにこの法律に対して対処したのかをちょっとお知らせいただけますか。
  146. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先生御指摘のとおり、四月一日以降強制化されたわけでございますけれども、私どもでは四月以降において賃金等の金銭支給状況の実態については、まだ統計調査というものは実施しておりません。でも、実際に育児休業給付制度導入されたことによって、企業の金銭支給の傾向が従前と大きく変化したというふうには聞いておらないわけでございます。  ただ、今の点につきましては、平成八年度の女子雇用管理基本調査というものをことしの七月に実施する予定でありまして、本調査の中におきまして、育児休業給付支給される間において企業における金銭給付状況というものを調査いたしたいというふうに思っておるところでございます。
  147. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、大変そこに興味がありまして、この法律施行されていないにもかかわらず、自主的にそういう制度を取り入れて、自主的に金銭給付をしていたそういう企業が、法律ができて二五%という枠が決まっちゃった、だからもう二五%でいいやというふうになりはしないかという危惧を持つわけです。  私もここは調べておりませんからわかりませんが、例えば給料の三〇%を給付していた企業があったとしたら、かえって二五%という数字は条件を悪くしてしまうということになるわけですね。  そこで、私はこのフォローアップで、もしも二五%以上に金銭給付をしているような企業があったときには、二五%という数字にとらわれずに一歩先を行くような、そういう継続をしていただけないかという、つまりそういう助言をこれからしていただきたいというふうに思うのですけれども、その点いかがでしょうか。
  148. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 育児休業期間中の労働者企業がどの程度の金銭を支給するかという問題につきましては、労働者育児休業を取得しやすい職場環境づくりに向けて個々の労使が十分に話し合って決定すべきということが基本であると思っておりますけれども、労働省といたしましては、引き続きまして今後とも育児休業給付が効果的に活用されるように周知啓発には努めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  149. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 これは、私にとって大変興味がありますので、大臣ひとつお答えいただけませんでしょうか。
  150. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) この二五%の給付を決定するとき大変な議論がございまして、最終的に二五%ということに決定をした。その内容は言いませんけれども、そういう経過がございました。  その当時、既に育児休業が労使間の協定によって実施されているところ、あるいは協定の内容によっては三〇%あるいは四〇%支給しているところもあったやに聞いています。しかし、全体的に給付がゼロでよいというそういう顕著な動きがあった中で二五%の給付額を決定したということは、どんなに苦しくとも二五%は出すんだから、育児休業をとってもっと家庭の生活援助してほしいし、そのことによって子供を育てるために就労の断絶になっていかないように、中断になっていかないようにということで、この法律をつくられたときにはかなり労働組合の方も高く評価をしていただきました。  私の経験でいきますと、例えば労働組合があって労使協定で一定給付額を決定した場合に、最低限の給付額が法律で決められたから協定の内容を引き下げようかということはまず私はないと思うんですね。むしろ労働組合のないところについては、本来はなかなか給付がもらえない、それを今度法律によって雇用保険から給付するわけでありますが、二五%出しますからどんな零細企業でも育児休業をきちっと取得できるようにしてくださいよということで、この二五%は私は大きなインパクトを与えたと思います。  したがって、労働組合の存在するところについては法律がつくられたことによって条件を低下させることがないように期待もしたいし、そのように啓蒙もしていきたいと、こう思います。
  151. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大臣の御決意で、私も女性の一人として、法律ができたからその法律の下限に全部合わせるという、そういうことがないような労働行政をひとつやっていただきたいというふうに強く要望いたします。  それでは、続きまして障害者雇用促進等に関する法律の中から、ひとつお聞きをいたしたいというふうに思います。  実はこれは、私の経験からぜひともこうあってほしいという希望なんですけれども、この法律ができまして、障害者福祉増進ということに対して助成をするというふうにあるのですが、私が昨年足をけがをいたしまして車いすに乗ったり松葉づえをついたりいたしまして、この補助器具というのがいかに未開発であり、使う人の立場に立っていないということがよくわかりました。特に松葉づえというのは本当に進歩も全くなくて、あんな使いづらいものはないというふうにつくづくと思いました。木ですからかたいですし、支点が一つしかありませんので非常に危ない。私も何度か危険な目に遭いました。  障害を持ちながら働きたいという勤労意欲のある人には、その勤労意欲を十分にフォローするのが私は一番労働行政の原点だというふうに思っております。そういう意味で、私の経験からいいまして、補助器具の研究開発についてこの法律がどのように役に立つのか、お知らせいただきたいと思います。
  152. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 障害者就労支援のための補助器具ということでございますけれども、この補助器具の研究開発につきましては、これまでも日本障害者雇用促進協会で、幕張の方に障害者職業総合センターというのがございますけれども、そこで障害者に使いやすい機器の開発あるいは改良のための研究を推進いたしているところでございます。  どういつだニーズがあるのか、そういった調査を行いまして、既存の就労支援機器を評価したり、検討したり、あるいはまた障害の種類に応じた就労支援機器の設計ですとか試作、こういったものにも取り組んでおるわけでございまして、特に最近は就労困難な重度障害者の職域開発を図っていこうということで、コンピューターを中核とした障害者が利用しやすい各種の支援機器、あるいはその関連ソフトを含むそういった障害者就労支援機器の研究開発を進めておりまして、具体的には例えば視覚障害者の方のために声が出るようなワープロあるいはパソコンの開発とか、そういったことのいろいろ研究を行っておるところでございます。
  153. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 これはたっての私のお願いでして、障害を持つにもかかわらず働こうという意欲のある人に対してはもう一〇〇%のそういう開発援助をしていただきたい。特に私の経験から、車いすというのにはブレーキがついておりませんので、自分一人で坂道をおりるときなどは非常に恐怖感を感じまして、こんなに機械が発達しているのにブレーキ一つ車いすにつけられないというのは非常に不思議な思いでした。平面を歩いているときはそれでもいいんですけれども、ちょっと勾配がつくと自分一人の力では持ち切れなくなる、まあ体重の関係もあるかもしれませんが。非常に私はいい経験をし、これからより一層そちらのところにお金をふんだんに使っていただきたい、そういう思いでいっぱいです。  続きまして、俗に言うパート労働法というのですか、それについてお尋ねをしたいというふうに思います。  この短時間労働者雇用管理改善等に関する法律、これは私はひときわ大変な思いがあります。それは私たち当時の野党四党が一緒になりましてこの法案を議員立法として提案した経緯があります。そして、そのときの提案者が、まさに今の大臣であります永井労働大臣が提案者となってこの法案を出したということがあります。私たちも連合を通じましてこれにはもう相当熱を入れまして、この法律を何としてでもいいものをつくりたいと思って随分頑張ったものです。しかし、でき上がったものを見ると、まあないよりはましだなと。何かセンターの設立のための法律であって、きょうはここにその当時の担当局長松原局長がおりますが、松原局長にまんまとだまされてしまったような、そんな感じの思いでした。別に何もこれは悪意はありません、もうほんの単純な感想でそう思ったので、ないよりはましですから、あった方がいいんですが。  そこで、お聞きしたいんですけれども、私は大学で講義をしていますと、文部省からやいやいと、この一年間の自己評価を提出しろというお達しが来まして、文部省というのは労せずして評価するという方法をとるんだなと思って毎年出しているので、この自己評価というのは非常にいい言葉だと思うので早速ここで使わせていただきまして、このパート労働法、三年目に見直しをするというのがありますが、この三年間、パート労働法のひとつ自己評価をお願いいたしたいと思います。
  154. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) パートタイム労働法は、パートタイム労働者がその能力を有効に発揮できるようにし、その福祉増進を図ることを目的として制定されたものでございます。  これは、先生の方がずっとお詳しいことかと思うわけでございますが、このパートタイム労働法によりまして、私どもといたしましては、パートタイム労働者企業にとって重要な労働力である、そしてそれにふさわしい処遇をすべきであるという認識が労使の間で高まったということ、それから短時間雇用管理者選任、それから助成金活用などによりまして中小企業などにおけるパートタイム労働者雇用管理改善に向けて取り組み促進されていることなどは評価できるのではないかというふうに考えております。  しかし、いまだやはりパートタイムは臨時的、補助的労働であるという認識が一部に根強く残っていることも事実でございまして、必ずしも適正な労働条件のもとで就業しているとは言えない状況にあるパートタイム労働者もいるというふうに考えております。  しかし、今後とも現在の法律及び指針周知徹底によりましてパートタイム労働者の適正な労働条件の確保等には全力を挙げて努めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  155. 足立良平

    委員長足立良平君) 松原局長発言はありますか。
  156. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 当時の担当の松原局長に本当は一番聞きたいところです。委員長がわざわざ御指名したんですから、松原局長、ひとつお願いいたします。
  157. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 私は、パートタイム労働法のその後の推移は十分把握しておらないのでございますけれども、今婦人局長の答弁を聞きまして私も非常に安心をしたところでございますし、さらにこれがいいものとなるよう諸先生の御指導をよろしくお願いいたしたいと思う次第でございます。
  158. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 これが松原局長にだまされた法案でないということは、早く私も払拭したいというふうに思っております。  しかし、私は、日本の経済成長というんでしょうか、ここまで日本が経済的に成長したというのは、まさに女性のパート労働というこの戦力の功績が非常に大だったというふうに思うんです。そして、女性の働く条件というのをいかに改善していくかということが、私は先ほど言いましたようにやっぱり文化のバロメーターである。しかし、このパート労働については、私はいまだに文化国家とは言えない部分が幾つかあるんではないかというふうに思っております。  そこで、幾つか具体的なところをお尋ねする前に、自己評価というのは大体点数で言うんですね。余り言葉で言うとごまかされてしまいまして、先ほどの太田局長にも私はごまかされまいぞとこう思いながら、最後には聞くぞとこう思っておりました。自己評価というのは、百点満点でいえば自分で評価すると何点かということですので、局長の後に大臣にもお聞きいたしたいというふうに思います。
  159. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) このパート労働法を議員立法で提出しましたときの私が提案者でありまして、委員会で答弁席に座って随分と答弁もさせていただきました。途中でなかなか議員立法だけで押し通すことが難しい状況があったものですから、与野党が協議の上、閣法に改めて閣法で出していただくということにして途中から閣法になったわけです。したがって、当初私が提案しましたパート労働法の中身と閣法として内閣提出しました法律案とではかなり内容が変わってしまいました。これは事実でございます。  しかし、その中で、たとえ内閣提出した法案になったといたしましても、求めておったパート労働者の保護といいますか、こういう観点だけは大切にしたいということで、当時の婦人局長だった今の松原基準局長と徹夜までしたことがございました。そうでしたね。大変な苦労があったわけでありますが、そのときに日弁連の女性委員会ですか、のメンバーの皆さんあるいはパートユニオンの皆さん、いろんな各階層の方々の御意見も聞いて最終的に今の法律案をつくったわけであります。  その法律案がもともと私が求めておったものと違ったということはありますけれども、つくられた法律の中身からいきますと、私は今のパート労働法の成果というものは、試験でいいますと合格点と言われる八十点以上はもらえるんではないかなと、こう実は思っているわけであります。あと二十点足らないとするならば、その二十点は完全にパート問題で提訴があったりするようなことが起きないようにみんながパート労働法を認識した上で対応することができればあと二十点はもらえるのかとこう思います。  もう一つは、パートというのがかつてはアルバイトと言われた時代もありました。多様な生活のニーズに対応して、自分からパートとして働くことを求める人がおります。あるいはそうではなくて、企業の都合によって正社員としては採用しないけれどもパートなら働いてもらうということもございます。  いずれもがパートでございますから、要は私が今頭の中にありますことは、事業主の側がそこで働く労働者労働条件を低下させると言うのは語弊がありますけれども、向上させないためにパートを利用することがあってはならない。パートで働く側からすると、少なくともフルタイマーの皆さんと同じような仕事をする場合は差別をされないようにしてもらいたい。この両方が満たされて初めて私はこのパート労働法が生きてくると思っておりますので、そういう立場でこれから労働行政の中でパート問題については対応してまいりたい、このように実は考えています。
  160. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大臣、大分この法律に甘くなって八十点。私はやっぱり七十五点ぐらいじゃないかなと。といいますのは、大臣よりも私が低く点数をつけたのは、やっぱり疑似パートと言われる、同じ時間働いていて、この法律でいきますと、指針にありますけれども、疑似パートをしてはならないという、平等に扱いなさいという法律の条項がありますけれども、この条文をちょっと私は満たしていないんじゃないかというふうに思います。  そこで、疑似パートという問題で判決が出ました。長野県の裁判所で、丸子警報器というところが疑似パートをして、その問題で裁判にかけて企業の方が負けたという事実があります。この疑似パートの問題が非常に問題だと思いますが、その点について大臣はどのようにお考えになりますか。
  161. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今の御指摘の丸子警報器事件といいますか、長野地裁で原告の勝利という結果が出ました。その後、控訴されておりますから、今直ちにコメントはその中身については立ち入ることは避けておきたいと思いますが、いずれにいたしましても、ここで言われている判決の内容というのは、先生が言われる疑似パートですね、そういうパートの皆さんに差別をすることは公序良俗違反として違法であると、こういうふうに断定をしているわけであります。また、女性正社員の八割以下となるような賃金もこれは違法であると、こう言っているわけであります。  これは後の上級審で判決が出されることだと思いますが、いずれにいたしましても、私といたしましては、正社員との間で著しく不合理な条件に置かれること、不合理な格差を押しつけられること、これは適当ではない。あくまでも、疑似パートという言葉がいいのか悪いのかわかりませんけれども、正社員と同じような条件で働いている人は少なくとも差別をしないようにすることが本来の姿だろう、このように思っております。そういう立場でこれからも法律の適正な運用を図ってまいりたいと、こう思います。
  162. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 この疑似パートの問題につきまして、法律の中で、大臣はそういうことに対して勧告、助言ができるというふうになっております。これが唯一の私は救いの道だというふうに思うんですけれども、裁判に訴えられるという現状が出る前に、こういう疑似パートの問題に対して今までどのように勧告、助言、あるいは指導していることがありますか。
  163. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) これまで大臣の勧告、助言は一件もございません。
  164. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 今、大臣のお答えをいただいた内容で結論にはなるというふうに私は思うんですが、これから見直しになるんですけれども、この見直しを前にして、大臣、個人的見解で構いませんけれども、一体どこをどんなふうに見直すならば百点満点を大臣はとれるというふうに思うか、もう一度その御決意を聞きたいと思います。今大臣八十点と言いましたので、あと二十点、どこを思っているのか。
  165. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生御指摘でございますが、あと二十点をどのようにして上積みするか、非常に難しい問題でありますけれども、このパートタイム労働法は附則第二条において三年経過の後に見直すということになっているわけですが、これは大変でございまして、見直し条項を何としても入れよと言って詰め寄ったのは私なんです、当時。それでこれを入れました。したがって、せっかく入れてもらったんですから、今度はそれを見直しする側に立っているわけでありますので、そこにはいろんな深い思いがございますから、その思いに基づいて必要な措置をとるように検討していきたいと思っております。  昨年実施しましたパートタイム労働者総合実態調査というのがございますが、これを今現在取りまとめ中でありますから、それを全部取りまとめて総括をして、その内容から、取りまとめの結果からどこをどう改善すべきかということを具体的に抽出をしてまいりたいと、こう思いますので、いましばらくお時間をかしていただきたいと思います。
  166. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大臣にお願いしたいんですが、あのとき私も一生懸命大臣と一緒に参議院の方で、衆議院がいい形で参議院に送っていただきたいと願った一人でした。そして、大臣の御苦労も本当によく理解しております。まさにこのパート労働法を見直すためには、そのときの提案者が今大臣ですから、私はこんな格好な見直しの法律はないと、ひざをたたいております。  そういう意味で、この法律が女性のパート労働にとって均衡から平等なつまり労働条件になるように、そういうひとつ御努力をいただきたいというふうに、くれぐれもお願いをして私の質問を終わります。
  167. 末広まきこ

    末広真樹子君 よろしくお願いいたします。  まず、政策のフォローアップの前に、時節柄少し労働金庫についてお尋ねしたいと思います。  住専問題に対して国民の怒りは大きく、とりわけ金融界への批判、大蔵省の護送船団方式、そしてすべてのツケを国民の税で賄おうとする政府案への憤りは、いささか鎮静化したとはいえ、国民の八〇%が反対をしております。私も地元で国民の生の声を聞きたいと思いまして、二月十五日名古屋駅前で、大声測定器というのがありますが、あれを使いまして怒りの声の大きさというのを測定いたしましたら、百二十五デシベル。すごいです、これは。これを記録いたしました。最高です。ちなみに、この方は女性でございました。  さて、労働金庫は住専への貸し出しはないとのことで大変うれしく思いますが、過去バブル期には損失を出したとも聞いております。そこで、お伺いします。現状のチェック体制はどうでしょうか。預金者、国民への情報公開をどうお考えでしょうか。
  168. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 金融機関としての労働金庫のチェック体制につきましては、一つは、労働金庫内部で検査部的なものを設けて内部で検査をするやり方が一つ。それから、労働金庫の団体であります全国労働金庫協会の中に労働金庫監査機構というものを設けまして、そういった監査機構を通じて監査をするやり方が二つ目。それから三番目には、労働省、大蔵省一体となりまして定期報告を受ける形、それから立入検査を実施する。こういう形で、言ってみれば三重のチェック体制をしいているということでございます。  次に、経営状況の情報公開でございますけれども、これまでも実施してきておったわけでございますが、特に不良債権に関係する情報につきましては、先般の金融制度調査会答申を自主的に二年間前倒しをいたしまして、ことしの三月期から不良債権等にかかわる情報を開示することにしているところでございます。
  169. 末広まきこ

    末広真樹子君 一部報道では、住専処理のためにさまざまな民間金融機関は預金保険機構に新設される住専勘定に一兆円の出資を求められると伝えられております。仮にそうだとすれば、国民の税金を使うことが許されないと同じく、何の責任もない労金が出資する必要は何らありません。この点はどうでしょうか。
  170. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 住専処理の関係につきましては、住専処理機構への出資の要請があったとは聞いておりませんし、また法制上も実態上も住専に融資できないし、していないという状況でございますので、いずれにいたしましても、そういう出資要請というのはあり得ないことだろうと思っております。
  171. 末広まきこ

    末広真樹子君 この点は大蔵省に事前確認をしてまいったわけでございますが、労金は働く人々のための金融機関であり、労働者が安心して住める住宅を保障していくのに果たす役割は多大だと思います。住専処理に労金のお金が使われぬよう、重ねて大臣の決意をお聞かせいただきます。
  172. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、労政局長からお答えしましたように、住専処理機構への出資等の要請があったとは聞いておりません。したがって、労働省としては、住宅金融専門会社に融資はできないことが法制上決まっているわけでありますから、これを踏まえまして、出資の要請には応すべきではないということを私は考えております。
  173. 末広まきこ

    末広真樹子君 さて、ことしの二月二十日、産経新聞紙上で、国会の各委員会では法案づくりのための質疑は行われても過去につくった政策の評価が行われていないのではないか、一度つけた予算でもう必要なくなっているもの、成果が上がっていないものを洗い出し、点検し、不要になっているものの予算を外していかないと、国の歳出は膨れるばかりで国民の望んでいる行財政改革には少しも近づけない、国民の負担はふえるばかり、各議員並びに委員会は当然のことながら政策のフォローアップを行っていかなければならないのではないかという記事が載っております。書いたのは私なんですが。  衆議院のカーボンコピーと言われないためにも、政策効果の点検は、任期六年という特性を生かせるこの参議院の一大特徴であると思うんです。それも、もっと自由な党議拘束のない議論ができれば参議院無用論などはぶつ飛ぶと思います。本日は、初めてそういった政策フォローアップ質疑がこの労働委員会で開かれておりますことはまことに意義深く、国会の新しい一歩と感じておりまして、関係各位の皆様の御努力に敬意を表したいと思います。  と申しましても、本日検討課題に上がっております法律はいずれも私が国会議員になる前、つまり平成七年夏までにできたものでして、私としましては、もちろん法律成立時の議事録を拝見いたしましたが、これはやっぱり現場を見るのが一番ということで、住専問題で国会が空転している期間三週間をかけまして、地元愛知県ですが、高齢者雇用の現状についてアンケート調査を含めて取材、調査してまいりました。  以下、レポートに続いて、高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部を改正する法律についてお聞きしてまいります。  まず、私はこの三月から四月にかけて愛知県名古屋市で、高齢者をめぐる雇用生活の現状を学ぼうと、実にたくさんの場所を見て、人に会って、高齢者との対話を重ねてまいりました。その結果を一言で申しますと、実にじれったい、暗たんたる思いです。働きたい高齢者はたくさんいます。でも、六十歳を過ぎると全く仕事がありません。特に、本年三月末をもってその制度を打ち切られました家政婦さんたちは悲惨です。財団法人介護労働安定センター愛知支部の調べでは、看護婦家政婦紹介所への登録者数及び実働数は、一九九五年四月には六千十八人の方が登録していらっしゃいますが、十カ月後には一千五百入減少しております。実働数に至りましては、三分の一以上の減少となって二千六百四十五人でございます。これは一九九六年二月です。  家政婦さんの職域というのは七七・九%が病院の付き添いなんです。これらの人たちは平均年齢六十歳以上の高齢者。女性でひとり身の方が多くて、仕事と生活を同時に奪われ、途方に暮れている現状がまず一点指摘されます。  名古屋市内のハローワークでは、ブルーとグリーンに統一されたとても清潔な環境で、所長さん以下皆さんの熱意が伝わってくるところでした。しかし、そこに併設されている女性や学生のためのセンターには職を求める人はたくさんいても、高齢期雇用就業支援センターは職員二人ぽつんといて相談する人の姿はだれもいません。残念ながら私は見て見ぬふりをせざるを得ませんでした。これが第二点。  さらに、名古屋市では名古屋市社会福祉協議会運営の高齢者無料職業紹介所があります。ハローワークでは難しいという方の雇用を進めておりますが、それとて年金も保険も要らないという人を小規模事業所にお世話するのがやっとなんです。これが第三点。  県立名古屋高等技術専門校、これも工費四十八億円をかけたすばらしい施設です。月曜から金曜まで朝から夕方までびっしり学びます。しかも最新設備を使って六カ月間まじめに技術を身につけて、そのあげく就職先がないんです。一番よい学科で三割の就職率でした。これが最高です。学科は板金、塗装、旋盤等々。今、問題なのは高学歴のホワイトカラーの方の再就職なんです。ここが一番問題なんです。そこへ板金、塗装、旋盤を六カ月学び、学んだあげくに働き口がないでは余りにむごい。むしろ、家事や介護や料理の福祉、それから福祉コーディネーター、あるいは、私はこれ強調したいんです、農業の学科があってよいのではないか。ホワイトカラーをされた方にこそ学んでいただいていいのではないか。なぜないのとお聞きしましたら、枠からはみ出ることができない、先例に倣っている。つまり、新しい雇用創成への突破口が開けないという事態ですね。  以上が、現場調査報告でございます。そこで、まず家政婦さんの失業問題からお尋ねしてまいります。  労働省の研究会は約十一万人が病院での付添看護に従事していたと推計しております。そうすると、厚生省が計算した看護補助者六万人分の雇用計画どおり確保されたとしても、差し引き五万人が失業することとなるんです。付添介護廃止による付添婦の失業問題にどのような姿勢で臨んでいらっしゃるのか、お聞かせください。
  174. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま先生御指摘ございましたように、平成六年十月の医療保険制度改正によりまして、病院付き添いの廃止措置、これが決まったわけでございます。  これにつきまして、家政婦の病院付添看護解消のスケジュール、これが平成六年十月一日に健康保険法等の一部改正法が施行され、平成八年三月三十一日、平成七年度末をもって原則として家政婦の病院付添看護の禁止、それから平成九年九月三十日をもって家政婦の病院付添禁止の最終期限、こういうスケジュールで進んでおりまして、ことし三月三十一日をもって原則禁止、こういうことになったわけでございます。  そこで、御指摘のような状況がございまして、これまで病院等の付添看護業務の中で重要な役割を果たしてきました家政婦が、その職場をなくしたりあるいは在宅介護への転換を迫られるなど、大変厳しい現状になっているところでございます。  このような厳しい状況にある家政婦の方々につきましては、これは今後の高齢化社会の中で介護を行う極めて大切な役割を担う労働力であるわけでございます。そういう意味では、今後ともますます有効に活用されることが重要であるというふうに考えておりますが、当面現状につきましては御指摘のように極めて厳しい、こういうことでございます。  私どもといたしましては、職業講習の充実による資質の向上あるいは各種助成措置等により家政婦の方々の有効活用促進を図ってまいりたいということで、努力をいたしているところでございます。
  175. 末広まきこ

    末広真樹子君 家政婦さんの紹介所である全国民営職業紹介事業協会の調査によりますと、付添婦さんから在宅介護への転向を希望する者約四〇%、成り行きに任せるよりしようがないという方五三・六%、つまり九割以上もなすすべもなくお手上げ状態でございます。御認識いただきたいと思います。  高齢社会を迎えて、家政婦が介護分野で活躍できることも含めて、介護労働確保のため労働省ではどのような認識のもと取り組んでいこうとしているのか、家政婦が介護分野で活躍するためにはどのような職業訓練が用意されているのでしょうか、お願いいたします。
  176. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 従来から病院での付添業務に従事してきました家政婦の方につきましては、ただいまも申し上げましたように、今後とも引き続き高齢化社会において介護を行う大切な労働力として有効に活用されることが極めて重要であるというふうに考えているところでございます。  このため、労働省といたしましては、仕事を失った家政婦の方と介護労働力を求める社会のニーズ、その双方に対応して今後も家政婦が介護労働力として活躍できるように、家政婦を対象とした介護労働安定センターにおきまして実施しておりますホームヘルパー二級研修相当の講習の充実などによりまして家政婦の資質の一層の向上を図ること、あるいは特定介護労働者雇用助成金による病院等における看護補助者の直接雇用確保、これは家政婦の方々につきましてはなかなか長期雇用になじまないというようなこともございまして、常用雇用になじまない、そういうケースにつきまして紹介事業を通じて、六カ月を超えない期間ということでございますが、看護補助者として雇用する場合の病院及び診療所に対して紹介手数料相当額の助成金支給するというものでございますが、それによる直接雇用確保、あるいは企業との連携によります介護クーポン制度の普及を通じての在宅介護分野での家政婦の活用促進等施策を積極的に推進しているところでございまして、今後ともなお一層の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  177. 末広まきこ

    末広真樹子君 意識とかなお一層の努力は結構なんですけれども、三月の末日でもって失業してしまって、生きていくすべを失った方が現に五万人を超えておるんですよ。もう少し早目早目に手を打っていかれなかったものかということがとても悔やまれますし、私は実際に泣きつかれてしまいましたから、ちょっといかがなものかと。  それで今、病院へ助成金制度を採用していると言いましても、これは紹介所の手数料相当分一〇・一%を補助しているのにすぎないので、何も職のあぶれた人を実際に救済している措置にはなっていないと私は認識しております。  大臣は、この高齢者雇用の大変厳しい現実をどのように思っていらっしゃって、どうすれば雇用就業が進むとお考えなのか、一言お聞かせください。
  178. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 家政婦の方々につきましては、今も局長が答弁いたしましたけれども、より資質を高めること、家庭介護にも入っていただくこと、これらの道筋を積極的に推進していくことも私どもに課せられた大事な任務だと思っています。あるいは家政婦だけに限らず、高齢者の皆さんの就職状況は極めて厳しいものがございます。  就職奨励金制度なども設けておりますが、奨励金制度を設けたからといって直ちにぱっと就職を受け入れるところがいつも待っているわけではありませんので、どうやればそういう高齢者の皆さんの仕事がうまくいくようなことができるか。その一つの方法として、今度も国会に法律案を出しておりますが、今現在ありますシルバー人材センター、これを全国の連合体のようなものにして、横の連携をとりながらそういう高齢者の皆さんの就職をお世話できる、あるいはその対象もふやしていくというふうなことなども実はいろいろ考えているわけであります。  とりわけ、今御指摘のような健康保険法の改正に伴って起きてきました家政婦の問題、これは対応がおくれているという御指摘もございますが、この法律施行によってこの三月三十一日で職場を失うということがわかっておりましただけに、事前からセンターをつくって対応してきたんですが、十分に皆さんの御期待にこたえることができているとはなかなか現実はいっておりませんので、そういうことも反省をしながら、これからもそういうことによって仕事を失う人が一人でも少なくなるようなことをあらゆる知恵も絞って考えていきたいと、こう思っております。
  179. 末広まきこ

    末広真樹子君 僭越ですが、まず現場の担当者にレポートを提出させるというのも一つの方法じゃないかと思います。現場の声を重視してやっていただきたいと思います。  次に、高年齢者職業経験活用センターについてお伺いしてまいります。  この法律は、高年齢者の安定した雇用確保とその職業生活の充実を図る趣旨で生まれたわけであり、新施策として高年齢者職業経験活用センターの新設とそこで行う高齢者派遣事業特例として幅広い業務を認めたわけです。ところが、この高年齢者職業経験活用センターは残念ながら愛知県にはございません。それどころか、全国で東京都武蔵野市にたった一カ所しかないんです。法施行以降、一年九カ月を経過した今に至ってであります。さらに、昨年三月に唯一生まれました財団法人武蔵野エルダーがどのような実績を上げているのか、ほとんど労働省にも報告が上がってきていないようです。そもそも法律の制定に当たっては、その重要度やニーズを十分調べた上でのセンター制度であったはずであり、武蔵野の地での必要度をチェックした上で武蔵野エルダーを指定したはずです。  そこで質問です。これまでにどれだけの高齢者が登録し、どんな派遣実績や就労実績を上げてきたのか、お答えください。
  180. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) お尋ねの武蔵野高年齢者職業経験活用センターでございますけれども、この労働者派遣事業に係る実績につきましては、事業年度終了後三カ月以内に所轄の公共職業安定所を通じて労働大臣報告するようにということになっておるわけでございまして、この武蔵野高年齢者職業経験活用センターは、設立は昨年の三月でございましたが派遣事業を始めましたのは昨年の六月からということでございまして、平成七年度の事業実績につきましては現時点ではまだ報告提出されていないということでございます。  ただ、先生の御質問がございましたので、実際にどのくらいの高齢者が登録をされておるのかについて、これは集計を要しないものですから報告を求めましたところ、四月一日現在で四十五人という状況でございました。
  181. 末広まきこ

    末広真樹子君 登録された方が四十五人。就労実績も挙げていただきたいですね。
  182. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 就労実績につきましては、年度終了後三カ月以内ということでございますので、ことしの六月末までには報告提出されるものと考えております。
  183. 末広まきこ

    末広真樹子君 私がきのう聞き取りましたところでは一人という答えを聞いておりますが、次の質問に移ります。  準備中が二カ所とございますが、どのようなところでしょうか。武蔵野エルダーは現在登録者全員が一企業グループのOBであると、全員ですよ。公益法人としては望ましくないのではありませんか。
  184. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 高年齢者職業経験活用センターにつきましては、高年齢者雇用安定法上指定要件というのがございまして、三つほどあるわけでございます。  高齢者に対して、職業経験を通じて得られた知識あるいは技能の活用を図ることができるような短期的な雇用による就業の機会を確保あるいは提供することによって、高齢者の再就職促進を図ることを目的として設立された公益法人であることというのが一つございます。二つ目は、業務実施に関する計画が適正であるかどうか、かつ経理的あるいは技術的な基礎をちゃんと持っているかどうかという点。三点目には、業務の運営が適正かつ確実に行われるかどうか、そして高齢者雇用促進その他福祉増進に資するものであること。  こういった要件があるわけでございまして、こういった要件を満たす法人から指定申請が出てくれば、その要件を審査いたしまして指定をするということになるわけでございますけれども、現在、私ども承知しております範囲では、愛知県と福岡県の両県においてそれぞれ指定申請の準備を行っている団体があるというふうに承知をいたしております。
  185. 末広まきこ

    末広真樹子君 派遣契約は一日一万円程度が目安とのことです。しかしながら、そのうちセンターが取る手数料も不明ということなんですね。そうした経営実態の検討もなく、三年で助成金に頼らない経営自立をどう実現するんでしょうか。
  186. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 高年齢者職業経験活用センターに対しましては、指定から三年間は国の財政的な援助を行うということになっておるわけでございまして、指定の際に事業計画ですとか財政的な基礎、こういったものを十分審査いたしまして、三年間の国の財政的な援助を終了した後にも引き続き順調な事業活動が見込まれるものに限って指定をするということにいたしておるところでございますので、武蔵野の経験活用センターにつきましても、当初の事業計画に沿って適切な事業活動が展開をされるものというふうに私ども期待をいたしておるところでございます。
  187. 末広まきこ

    末広真樹子君 助成制度でありながら、情報の公開、三カ月後におやりになるということでございますけれども、それは必ずやっていただきたい。情報の公開、収集ということは、途中であっても収集はなさっていいわけです、公開でなくて収集の方は。ということで、後に続く申請者というのは何を目安にやっていけばよいのか、つまり先例をオープンにしてもらわないと目安が立たない。この質問にお答えいただきたいと思います。
  188. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 高年齢者職業経験活用センターにつきましては、それぞれの地域あるいはそこのいろんな構成メンバー、そういったものによりましていろんな形があるだろうというふうに思っております。労働者派遣事業もそうでございますし、無料の職業紹介事業ですとか、そのほかいろんな講習ですとかセミナーですとか各種の事業活動を行うということでございますので、必ずしもこういったような形のものにしなきゃならぬというふうには私ども思っておりません。  ただ、私どもといたしましては、こういった職業経験活用センターが今後とも健全な運営が確保されるような、いろんな観点からの指導なりについては努力をしてまいりたいと思っております。
  189. 末広まきこ

    末広真樹子君 それでは、これらを統括する全国活用センターの予算を見ていきたいと思いますが、平成六年度が四億円、七年度が五億五千万円、八年度の予定では二億七千万円となっています。実績が明らかでない、なかなか広がりもない、予算も大きく減っております。大臣、一体この制度の効果やマイナス面をどう評価なさいますか。そして今後どのような対策をおとりになるおつもりか、明確にお示しください。
  190. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘でございますが、例えば武蔵野エルダーの関係につきましては、三年間助成をいたしまして、その結果を見てさらに次の認可をしていくかどうかということが決められることになっておりますので、そういう効果が上がってくるというふうに実は期待をしているわけであります。  しかし、急速な高齢化が進展する中で、高齢者に対して多様な形態によって雇用就業機会確保することが必要でありますから、高年齢者職業経験活用センターはその手段の一つとして重要なものだと実は認識をしております。また、制度創設後まだ間もないことでもありますから、現時点までの実績は必ずしも満足できるものではないという認識も持っております。したがって、満足できるような認識が持てるようにこれからも努力をしてまいりたいと、このように考えるわけであります。  さらに、高齢者就業機会確保提供を積極的に行っていくことは、単にセンターの関係だけではなくて、全般的な労働行政として極めて重要なことでありますから、一つ一つの問題を断片的にとらえることではなくて全般的な問題としてとらえて、複合的に成果が上がっていくような行政を進めていきたい、このように考えているわけであります。
  191. 末広まきこ

    末広真樹子君 できたばかりの施策で、世間に知られてもいない、こんな名前知らない、なかなか広がってもいないというように、施策の周知というのがどれほど大切であるか。知ってもらって活用されてこそ生きた施策となるんですが、残念ながら現状は、法律ができた、それを実行に移すための組織をつくろう、施設はできた、人員配置も行った、ここで終わってしまっているんです。施策関係した身内の話で終わっているんですよね、厳しく言えば。肝心なのは、サービスは受けとめてもらって初めてサービスになる。周知の手段というのは幾らでもあると思うんですが、まずはメディアを活用なさるべきではないのか。  私の知り合いの労務士さんは、私をテレビのワイドショーに出してよと。どんどんできてくる労働規約の新しいことについてどんどん身の上相談の形で相談に乗っていくわと、そう言っている方もいます。各新聞の地方版、テレビのニュース、ラジオのニュース解説等々、取り上げてもらう工夫がなされてもいいんではないのかと。これは労働委員会だけにとどまらず、国の施策が国民に反映され、受け入れられるためには大変大切なことなのではないかと思うんですが、この点に関して最後に大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  192. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 御指摘のように、実績を上げることが大事ですね。したがって、そのように努力をしてまいりますが、単に委員会で質疑のやりとりをするだけではなくて、こういうものがありますよ、こういう活動もしていますよと。そして成果が上がってくれば、このように成果が上がりました、だから次にもこういうものをつくりたいと思うということなども、今御指摘のようにマスコミを活用するなどさまざまな工夫を行って、大切な国民の税金を使わせていただいてこういう施設もつくったり事業に取り組んでいくわけでありますから、それなりの国民の皆さんに対するPRというものは重要な問題として位置づけて、先生の御意見も御参考にさせていただきながら対応してまいりたいと、このように思っております。
  193. 末広まきこ

    末広真樹子君 大臣がきょう冒頭におっしゃったように、やはり政治不信というのはこういう努力から埋めていかなければならない。税が生きていますよと実感していただかないことには埋まらないんではないかと思います。  ともあれ、今回のような施策のフォローアップのための委員会が開かれて初めて深くいろいろと知るわけでございますから、今後ともこのような施策の成果、効率を問う質疑は継続して行われるべきだと思います。  以上でございます。ありがとうございました。
  194. 足立良平

    委員長足立良平君) 本件に対する質疑はこの程度といたします。     ―――――――――――――
  195. 足立良平

    委員長足立良平君) 次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、公共職業安定所設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。永井労働大臣
  196. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) ただいま議題となりました地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、公共職業安定所設置に関し承認を求めるの件につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  現在、労働省の地方支分部局として公共職業安定所が全国に配置されておりますが、これに関して、現下の重要課題である行政改革の一環としてその一部を整理統合するとともに、近年の地域の実情の変化に伴い、その配置の適正化を図る必要が生じてきております。  この案件は、平成八年度において行う予定の右の理由による再編整理に伴い、札幌北公共職業安定所設置を行うことについて、地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、国会の御承認を求めようとするものであります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御承認くださいますようお願いを申し上げます。
  197. 足立良平

    委員長足立良平君) 以上で本件の趣旨説明の聴取は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  198. 足立良平

    委員長足立良平君) 次に、労働安全衛生法の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。永井労働大臣
  199. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) ただいま議題となりました労働安全衛生法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  労働者の健康確保につきましては、高齢化の進展等に伴い、最近幾つかの課題が生じています。すなわち、脳・心臓疾患につながる所見を有する労働者が増加しており、定期健康診断の結果では、労働者の三人に一人が何らかの所見があるという状況にあります。  また、産業構造変化技術革新の進展等により労働の態様に変化が生じており、これに伴い仕事や職場生活で悩みやストレス等を感じる労働者が増加しているほか、過労死が社会的に大きな問題となっており、その予防のための総合的な対策を講ずる必要が生じています。  このような状況にかんがみ、すべての労働者職業生活の全期間を通じて健康で安心して働くことができるよう、労働者の健康の確保のための施策推進を図るため、中央労働基準審議会の建議を踏まえて、労働安全衛生法の一部を改正する法律案を取りまとめ、提案した次第であります。  次に、その内容を御説明申し上げます。  第一に、産業医について、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する者の中から選任することとするとともに、産業医はその専門的な知識に基づき、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができることとし  ております。  第二に、小規模の事業場における労働者の健康管理等の促進について事業者の責務を定めるとともに、国は、これらの事業場の労働者の健康の確保に資するため必要な援助を行うこととしております。  第三に、事業者は健康診断の結果について医師等からの意見の聴取を行うこととするとともに、労働大臣が事後措置の効果的な実施を図るための指針を公表すること等により、健康診断実施後の措置が適切に実施されるようにすることとしております。  第四に、事業者が、一般健康診断の結果を労働者に通知するとともに、医師、保健婦または保健士による保健指導実施することにより、労働者の自主的な健康管理の促進を図ることとしております。  以上のほか、所要の規定整備を行うこととしております。  なお、この法律施行期日は、平成八年十月一日といたしておりますが、産業医の選任に関する要件についてはさらに二年後から実施することとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  200. 足立良平

    委員長足立良平君) 以上で本案の趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会      ―――――・―――――