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1996-05-09 第136回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月九日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  五月八日     辞任         補欠選任      筆坂 秀世君     上田耕一郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         井上  裕君     理 事                大河原太一郎君                 斎藤 文夫君                 清水 達雄君                 塩崎 恭久君                 泉  信也君                 白浜 一良君                 都築  譲君                 山本 正和君                 有働 正治君     委 員                 阿部 正俊君                 石井 道子君                 板垣  正君                 久世 公堯君                 河本 三郎君                 鴻池 祥肇君                 坂野 重信君                 関根 則之君                 武見 敬三君                 谷川 秀善君                 野沢 太三君                 野村 五男君                 服部三男雄君                 真鍋 賢二君                 依田 智治君                 荒木 清寛君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 大森 礼子君                 加藤 修一君                 小山 峰男君                 鈴木 正孝君                 直嶋 正行君                 益田 洋介君                 横尾 和伸君                 朝日 俊弘君                 一井 淳治君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 川橋 幸子君                 前川 忠夫君                 上田耕一郎君                 緒方 靖夫君                 本岡 昭次君                 西川  潔君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        大 蔵 大 臣  久保  亘君        法 務 大 臣  長尾 立子君        外 務 大 臣  池田 行彦君        文 部 大 臣  奥田 幹生君        厚 生 大 臣  菅  直人君        農林水産大臣   大原 一三君        通商産業大臣   塚原 俊平君        運 輸 大 臣  亀井 善之君        郵 政 大 臣  日野 市朗君        労 働 大 臣  永井 孝信君        建 設 大 臣  中尾 栄一君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    倉田 寛之君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  中西 績介君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       岡部 三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  臼井日出男君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       田中 秀征君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 秀直君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  岩垂寿喜男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  鈴木 和美君    政府委員        内閣官房内閣外        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房外政審議室        長        平林  博君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        総務庁長官官房        審議官      菊池 光興君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛庁経理局長  佐藤  謙君        経済企画庁調整        局長       糠谷 真平君        経済企画庁調査        局長       中名生 隆君        法務省刑事局長  原田 明夫君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省条約局長  林   暘君        大蔵省主計局長  小村  武君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        厚生大臣官房総        務審議官     亀田 克彦君        厚生省年金局長  近藤純五郎君        社会保険庁運営        部長        兼内閣審議官   横田 吉男君        農林水産大臣官        房長       高木 勇樹君        資源エネルギー        庁長官      江崎  格君        郵政大臣官房審        議官       品川 萬里君        郵政省郵務局長  加藤豊太郎君        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        自治省行政局選        挙部長      谷合 靖夫君        自治省財政局長  遠藤 安彦君    事務局側        常任委員会専門        員        宮本 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○平成八年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成八年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成八年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を  一括して議題といたします。  昨日に引き続き、締めくくり総括質疑を行います。梶原敬義君。
  3. 梶原敬義

    梶原敬義君 私は、常々考えていることを最初に申し上げまして、総理見解を承りたいと思います。  いろんなことはあるかと思いますが、今日、我が国は、客観的に世界の中で見渡してみますと、衣食住は足りておるし、いろんな意味で恵まれていると思います。  一方、世界情勢というのは、かつては核戦争七分前と言われるような時期がありまして非常に緊張しておりましたけれども米ソが和解をし東西両陣営の境がなくなって、世界核戦争危機からだんだん遠ざかりつつある。そういう意味で、民族紛争や宗教にかかわる問題や資源、こういう局地的な紛争というのは多発をしておりますが、世界全体を見ますと、表現はよくないかと思いますが、いい方向に進んできているような気がしております。  そうして、確かに国内外、毎日毎日、大変御苦労されておりますが、しかし客観的に見ますと、我が国国民も恵まれているんじゃないか、考えようによっては今ピークの時点ではないか、こんな感じを時々持つのであります。  私は、東京と大分を週末はほとんど飛行機で行き来しますが、東京の上をずっと飛行機で見て、この大都会に住んでいる我々は若干バブルの上に座っているんじゃないか、こんな予感というか、そういうものが私の心を打つんです。それはどういうことかといいますと、三十年先ぐらいを考えると三つの問題でこれは大変な事態になるんじゃないか。  一つ石油の問題です。アメリカのオイル・アンド・ガス・ジャーナルなんかの指摘で見ますと、石油確認埋蔵量とそれからとり出している量を割ってみますと、もう四十五年ぐらいしか可採年数はない。しかし、価格が上がったりいろいろなことをすることによって石油はまだ少しとれるんじゃないか。しかし一方、考えますと、中国や東南アジアでは多量に自動車も普及して消費量がふえつつある。こういうような状況からしますと、資源を見つけてそして掘っていくよりも消費の方が加速度的に進んでくる。  私は、これは予言みたいになりますが、三十年たったら必ず石油坑の底が見えてくる、このように思います。本当にそういう時代が来ると思います。今のように自動車がどんどん有限の天然資源を掘って使って、そして化学製品をどんどん使って、これでなくならないはずがない。この四十四年、四十五年という時期に私は確実にそういうエネルギー危機というのは来ると思います。これを一体どうするか。  もう一つ食糧です。農業の問題で見ますと、アメリカワールドウォッチング研究所レスターブラウン所長日本にも来ましたが、あと三十年、四十年後には人口が八十億を超える。そういう状況の中で、中国における食糧というのは大変な問題になるし、世界最大輸入国になる。恐らくここで食糧危機を引き起こしていくだろう、このように言われて、私はこの問題も非常に深刻だと思います。  それからもう一つ、これは国内問題ですが、今高齢化率が一五、六%、これが二〇三〇年ごろになりますと二五%近くになる。  この三つの問題というのは、私はどうしても今ある問題を片づけつつ、ここに照準を当てていかなきゃこのバブルがはじけたときには大変な事態国民は陥ってくる。だから、今こそ基本的に取り組みをしっかりとそこに照準を合わせて、特にエネルギー石油にかわる代替エネルギー省エネルギーをどうするか、こういう問題について挙げて頑張っていかなきゃならない、このように思うんですが、総理見解最初に承りたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 非常に大切な問題を改めて御提起いただきましたことに敬意を表します。  まさに、議員が今指摘をされました問題点は私どもが常に心がけなければならないことでありますし、これは日本だけではなく、昨年のAPECにおきましても、特に非公式首脳会議における村山総理の取りまとめられました内容として、アジア地域におきましての二十一世紀成長制約要因という形でこの問題提起日本はいたしたわけであります。  すなわち、人口の爆発的な増加、それに伴う食糧供給、さらに経済発展に伴いましてエネルギー使用量の急速な拡大、そしてこれに伴います環境、これらが二十一世紀アジア制約要因という共通の認識日本は各国に提示し、これを受け入れてもらうことに成功をいたしました。しかし、その中の議論を振り返りましても、幾つかの実は問題点がございます。  現在、なお非常に高い出生率のもとに人口が爆発的に増加をしておる国もございます。こうした国は、当然ながらそれなりの処方せんを必要とするわけでありますが、議員からの今御指摘のように、我が国は既に出生率が急速に低下をした、そして一方では長寿という目標を達成し、高齢社会というものが現実の姿になった。  その中で、我が国が今後二十一世紀に入りましてもなお活力を持った社会を維持し続けるためには、他の要因を一切抜きましても、今の産業構造も変わらなければなりませんし、社会構造も変わらなければなりません。私は、行政改革というものの目標一つの大きな柱がこの点にあると考えております。  しかし、それ以前の問題として、今エネルギーについて御指摘がございました。我が国は御承知のように省エネルギーを第一次、第二次のオイルショック以来ある程度国民の中に定着をさせていただきました。しかし、なおそうした努力は必要であろうと存じます。  と同時に、化石燃料にかわるエネルギーを我々は開発しなければなりません。太陽光発電等がよく例示に挙げられますけれども、それ以外にも地熱でありますとか風力でありますとか潮力であるとか、あるいはバイオマスを利用しての発電、さまざまな試みが既に進行しつつあります。こうした新しいエネルギー開発導入というものに我々は大きな期待をかけますが、それにいたしましても、我々は安全というものを最前提に置きながら原子力開発の推進というものにも努めていかなければならないと思います。  こうした将来に向けて確実に枯渇する資源をいかに不必要に使わずに済ませていけるか、我々としては引き続き長期的な視野に立っての取り組みをしていかなければならないと思います。  また、もう一点御指摘のありました食糧についてでありますが、まさに委員が御指摘になりましたような数字を私ども承知をいたしております。そして、現状においてはともかく、中長期的な世界食糧供給需給関係を見ましたときには、需要面におきましても生産面におきましても余りにも不透明、不確定な要素が数多くあります。そして、逼迫の危険性が全くないという状況ではありません。  ウルグアイ・ラウンド合意の最後の時点におきまして、日本農産物というものに対して非常に強く将来を見越した議論をいたしましたが、国際社会においてこれが残念ながら受け入れられなかったプロセスがございます。我々は、このウルグアイ・ラウンド合意というものは約束をしたことでありますから着実に実行してまいりますけれども、同時に、その間において二十一世紀初頭以降の食糧というものを国際的にも改めて考えていかなければならない大切な時期に入っておると思います。  さきのAPECの「首脳行動宣言」におきましても、アジア太平洋地域における急増する人口及び急速な経済成長により食糧及びエネルギー需要並びに環境への負担が急激に増大すると予想されると記しております。  こうしたことを踏まえました場合、今後の農政というものを進めていきますためには、昨年末策定をいたしました農産物需要生産長期見通しを踏まえながら、食糧自給率低下傾向にいかにして歯どめをかけるかということを基本とし、可能な限り我が国農業生産維持拡大を図っていかなければなりません。そうした方向への努力をしてまいりたい。同時に、その間に人口構造の非常に大きな変化の中で耐え得る社会構造産業構造経済構造、さらには行政の仕組みといったものを見直していきたい、そのように考えております。
  5. 梶原敬義

    梶原敬義君 総理の深い認識に対しまして、心から敬意を表します。  私は、石油については近い将来本当になくなるときが来ると思います。これは有限ですから、今のまま掘ったらもう必ずなくなる。日本経済に与える影響国民生活に与える影響考えるとこれは大変なことですから、今から本当に石油にかわるエネルギーを一体どうするのか。原子力も今のままでいくと原料はあと六十年ぐらい、あるいは天然ガスも六十三年、石炭は今の消費率でいくと二百三十年、このような数字が出ております。石油がなくなったときにざっと寄っていけば皆なくなるわけですから、ぜひ本格的にこれから照準をそこに合わせて国を挙げて取り組んでもらいたいと思います。  次に移ります。  経企庁長官に、あした経済月例報告がなされる予定だと聞いておりますが、直近の景気動向について承り、そして見通しについても承りたいと思います。
  6. 田中秀征

    国務大臣田中秀征君) 景気現状についてお尋ねですけれども委員承知のとおり、先月は緩やかながらも回復の動きが続いているという形で総括的な判断をさせていただきまして、あすまた月例経済報告を申し上げるべく今作業を進めているところですが、基調としては先月とほぼ同じ形の御報告になろうかと思います。ただ、わずかながら個人消費が伸びている、あるいはまたこれもわずかながら雇用環境が改善されつつあると、そういうところでございます。  この景気現状、今のところ政府見通したとおりの足取りでここまで来ているわけですが、再三申し上げておりますとおり、これからが大変だというふうに思います。  私どもが感じております懸念材料を二つ三つ申し上げますと、一つ設備投資動向でございます。これはもう業種間、地域間あるいはまた規模別に非常にまだら模様が目立つわけですけれども、非製造業中小企業などが特にそうですが、設備投資平成八年度において慎重姿勢であるということ、これは大きな懸念材料でございます。  それから二つ目は、先ほど申し上げました、わずかながら改善されているとはいえ雇用情勢が非常に厳しい環境にある。昭和二十八年以来、比較可能なところでは最悪の状態にあって、これが雇用者の所得に影響を与え、個人消費の伸びを鈍らせている、そういうことにもなっているわけでございます。これも懸念材料です。  三つ目は、海外景気動向、特にヨーロッパの景気動向を注目して見ているところでございます。  さらに、私ども政府、政治の側からの克服すべき課題ということになりますと、これはもうこの予算委員会でずっと申し上げてきておりますのは、予算住専規制緩和というふうに申し上げてきております。この三つ課題を克服していかなければいけない、そうでなければ本格的な回復軌道という形にはなっていかないだろうというふうに思っております。
  7. 梶原敬義

    梶原敬義君 若干重ねてお尋ねをしたいんです。  今の経済を引っ張っているのは、十四兆二千億の景気対策公共事業あるいは予算、これと財政投融資を中心にして展開をしております住宅金融公庫の無制限というか、申し込みがあったらよっぽどのことがない限りみんな貸すという、この両建てで景気の落ち込みを引っ張っているような状況ですね。  これがことしの暮れぐらいに公共事業の切れ目が出てきたときに、今のそういう大変厳しい財政状況のもとで果たしてまた景気対策補正予算が組めるのかといったら、なかなかこれは難しい問題で、そこらは一体どのようにお考えなのか、お尋ねしたいと思います。
  8. 田中秀征

    国務大臣田中秀征君) 公共投資住宅建設、いわゆる政策需要が引っ張っている現在の景気回復状態というのは先生おっしゃるとおりでございます。  これを民需主導に転換できるかということがかぎになっているわけでありますけれども、これはもう今の状態の中で、金融緩和基調、そして為替相場が安定的に推移するとして、構造改革規制緩和、これに真剣に取り組んでいく、そして先ほど申し上げた課題を解決していく、懸念材料が払拭されていく中で私は二・五%という成長は可能だというふうに思っております。  公共投資の方も高水準で維持するということは、昨日もこの委員会で申し上げたとおり、本年も同様でございます。秋に息切れするんじゃないかという声も聞かれるわけでありますけれども、やはり財政出動に頼り過ぎるということ自体が構造改革への熱意や取り組みを鈍らせるという面も私はあろうかというふうに思います。モルヒネとかあるいはカンフルとか、そういうものに終わりがちな懸念もございますので、何とか秋にそういう新たなる追加的な財政支援というものをなしで済ましていく、そしてそういう決意が本格的な軌道に乗せることを可能にするんじゃないかということを現段階では真剣に考えているところです。
  9. 梶原敬義

    梶原敬義君 重ねてちょっとお尋ねしますけれども住専処理法が去年の十月に大体予算が組まれまして、株価も大分上がり、景気にもいい材料が出た。株価が大体日経平均で千円上がったら約十八兆円ぐらい価値が上がってくると、株の全体で。経企庁の方は今日まで大体どのくらいトータルでそれが寄与していると見ておられますか。
  10. 糠谷真平

    政府委員糠谷真平君) 株価が上昇あるいは下落をいたしますと、個人の株主の比率がそれほど大きくございませんので、個人消費にどれだけ大きな影響を与えるかということを定量的に私どもはっきりと申し上げることはできませんけれども株価が上昇いたしますと少し資産がふえたなということで消費に好影響を与えるということはあろうかと思います。  ただ、現時点におきまして、それが具体的にどの程度、何%寄与しているとまで明確には申し上げられないということかと思っております。
  11. 梶原敬義

    梶原敬義君 資産はどのくらいふえたのか、いわゆる計算上は。
  12. 糠谷真平

    政府委員糠谷真平君) 申しわけございませんけれども、ただいまのところ私、今何兆円現時点でふえているというのを持っておりませんので、また後ほどお届けをさせていただきたいと思います。
  13. 梶原敬義

    梶原敬義君 恐らく五、六十兆ぐらいはトータルでふえているんではないかという推測でございますが、それでは後でいただきたいと思います。  住専に移らせていただきたいんですが、大蔵大臣、きょうの日経の朝刊を見て少し驚いたんです。「農林系負担増を」ということで、記者会見大蔵大臣が「住宅金融専門会社の処理問題に関連して「農林系金融機関金融機関経営者として責任がないことはない。新たな寄与について真剣に考えるのが筋だと思う」と述べ、」云々と、こういうことで大きく出ておりますが、この点について一体どういうことなのか承りたいと思います。
  14. 久保亘

    国務大臣久保亘君) ただいまの点についてお尋ねがあるということでございましたので、昨日の記者会見のテープを起こしたものを届けていただきました。  そんなにこの問題について長い時間話をしたわけではございません。最初に、母体行の追加負担についての御質問銀行のトップの交代などについてのお尋ねがございまして、私の考えを申し上げました。  記者団の方から質問がございました。大臣は、農林系統について追加的な新たな寄与を求める発言はこれまでないが、それは農林系統については新たな寄与なり負担できるだけの体力がないというふうに考えているからなのかという質問がございました。  これに私がお答えしましたのは、一つは、責任のとり方が、立場が違うことがある。母体行として住専の設立から破綻に至る過程に深くかかわった立場の者と、いわゆる債権者貸し手立場の者とは違いがあると思う。しかし、やはり系統金融機関であっても、金融機関経営者として、貸し手としての責任がないということはない。だから、そういう意味では、系統金融機関の新たな寄与については真剣にお考えになるべき筋のものだと思っている。そのことがあるから、与党三党の代表が新たなる寄与について関係者と話を詰めた中には、リストラの問題でいわゆる銀行系統金融機関それぞれとの間で意見を交わしたということもある。これだけ申し上げました。  これに関してさらに質問がございまして、今後農林水産省あるいは農林系統金融機関代表大臣みずからが新たな負担については話し合いをされるような機会を設けるというような考えはあるのかということでございました。  私の答えは、まだ今のところそれを予定していない。農林水産大臣もいらっしゃることであるから、また今後予算が成立して具体的な話し合いが行われるということになれば、その段階では農林水産大臣ともよく話し合っていきたいと思っている。  これだけが農林の系統金融機関に関連してきのう私が記者団質問にお答えした内容でございます。それ以上でも以下でもございません。
  15. 梶原敬義

    梶原敬義君 よくわかりました。よく理解ができます。大蔵大臣がいつもかねがね基本的に考えている考え方だと思います。ありがとうございました。  余り時間がなくなりましたが、この住専問題につきまして具体的に大蔵省に承りたいと思います。  我が国の金融システムに対する内外の信頼回復云々というようなことをよく言われておりますし、また住専問題を一刻も早く解決することが金融システムを確立することだと私もそう思いますが、この点についてもう一回整理の意味で述べていただきたいと思います。
  16. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 住専問題を未解決のまま放置いたしますと、農林系統金融機関等の預金者に不安が生じるということもございますし、ひいてはそのことが我が国の信用秩序に多大な悪影響を及ぼすおそれがございます。それがようやく回復軌道に乗りました景気の先行きを不透明なものにするおそれがある、このように考えているわけでございます。  こうした事態は何としても避ける必要があることから、預金者の保護を図りつつ、我が国の金融システムに対します内外の信頼を確保いたしまして景気回復を確実なものとするため、我が国の命運に責任を持つ政府といたしまして、今回財政資金の導入を含みます住専処理方策をお願いしているところでございます。
  17. 梶原敬義

    梶原敬義君 住専処理に当たりまして、不良債権の強力な回収を一体どうするかというのはもう至上命令で、国費も投入いたしますから。私はそれに当たって、いろんな御意見ありますが、七社をばらばらにやるんではなくて一社にまとめて住専処理機構でやっていくしかない、このように思うんです。私もこの種の仕事を昔したことがあるんですが、そう思います。  これについて、大蔵省としては、そうすることが国民に対して絶対にメリットがあるんだ、これしかないという基本的な姿勢があるはずですが、それを述べていただきたいと思います。
  18. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 御指摘のように、今回住専七社の資産を一括して引き継ぎまして回収に当たるということにしておるわけでございますけれども、これによりまして、まず第一に、各住専七社共通の債権を一括して取り扱うことによりまして債権管理に係る経費のコストダウンを図ることができると思います。さらに重要なことは、困難事案に対しまして、よく世の中で御指摘を受けております回収が困難な事案に対しまして、共同してかつ公的な支援も期待して立ち向かえるということは非常に大きなことかと考えております。  第二に、各住専の担保及びそれに係る法律関係、これは七社それぞれ重複したり絡み合ったりしている点があるわけでございますが、そういう問題に七社分を集約して整理した上で対応するということが可能になる、そのような利点があると考えているところでございます。  また、住専処理機構は、公的な性格を持っております預金保険機構と一体となりまして強力に不良債権の回収を行うこととしているところでございますが、新たに付与される権限を含めまして、法律上認められるあらゆる回収手段を迅速的確に用いることとしております。  例えば、住専の債務者の資産隠しにつきましては、現段階でもいろいろな関係者努力によりましてそのような点が既に明らかになっているところもございますけれども、さらにこのような機能を生かしまして、債務者及びその関係者の財産の実態を調査するため、与えられております財産調査権等を活用して適切に対処してまいりたいと考えているところでございます。
  19. 梶原敬義

    梶原敬義君 きのう同僚議員質問に対して、回収体制が一体どこまで進んでいるのかということに対する大蔵省の答弁というのは、私ども聞いておりまして少し歯がゆい思いをいたしました。財政資金を投入する以上は、やはり本気になって徹底してやらなきゃならないと思いますが、回収体制は一体どういうことでどのように進んでいるのか、また回収困難事案に対する体制は一体どうなのか、基本的なところからその進みぐあいについても述べていただきたいと思います。
  20. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) まず回収体制という点では、ただいま資産隠しの問題について財産調査権の問題を指摘させていただいたところでございますが、そのほか、回収困難事案につきましては、住専処理機構からの委託を受けまして、公的な性格を持つ預金保険機構がみずから取り立てをできることが定められております。また、回収に際しまして違法な妨害行為がございました場合には、捜査当局と緊密な連携をとり積極的に告発する等、厳正に対処していくというような措置も法案の中に提案を申し上げているところでございます。  以上のような強力な回収、責任の明確化に必要な体制といたしましては二つあるわけでございますが、まず預金保険機構につきましては、回収体制を指導、推進する組織を設けまして、法務・検察、警察及び国税当局等からの出向のほか、不動産取引及び金融取引の専門家の参加を求めることといたしております。  第二に、実務を担当いたします住専処理機構でございますが、これにつきましても法務・検察、警察及び国税のOBの参加を求めることといたしまして、具体的には、組織面では業務運営全体をコントロールいたします本部の機能と、個別の具体的に債権回収を行います債権管理・回収部門を設けることといたしております。  このうち本部につきましては、特に責任追及等のために弁護士等法律の専門家を結集した特別の対策部を設ける予定をいたしております。また、債権管理・回収部門には共通、大口、悪質事案に対応する特別の部門を設けることといたしております。  以上のようなことを通じまして、預金保険機構及び住専処理機構の回収体制を十分に整備することにより、住専から引き継ぎました不良債権等の強力な回収に努めてまいりたいと考えております。
  21. 梶原敬義

    梶原敬義君 住専処理法案がまだ審議に入っていない段階でなかなか答弁はしにくいと思いますが、今大蔵省挙げてこの預金保険機構の組織あるいは住専処理機構の組織にプロジェクトみたいなものをつくって作業をどんどんやっているのかどうなのか、その辺のところまででいいですからひとつ生のところを話してください。
  22. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 昨日も申し上げましたように、ただいま予算及び法案の御審議をいただいております段階でございますので、私どもといたしましてはその結果を待ちまして、迅速に一日も早く私どもとしての責務を果たすことを念じているわけでございますが、現段階におきましても私どもはそういう限度を十分わきまえた上で、一日も早く体制を整えられるように準備をするための体制を各省と協力しながら整えている、こういうことでございます。
  23. 梶原敬義

    梶原敬義君 準備だけはどんどんしておかないといざというときは間に合わないと思うんですね。それは当然やることはやっておく必要があると思いますから、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  大蔵大臣、先ほどもちょっとお話がありましたが、母体行の責任あるいは住専の担保もいいかげんで金を貸したそういう責任に賠償責任と刑事責任の二つあるんですけれども、やっぱりこれは徹底してやるという気構えで臨んでいただきたいんですが、もう一度決意を承りたいと思います。
  24. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 住専問題の処理に当たりまして重要な問題は、債権の回収に全力を挙げてあらゆる力をここへ糾合してどれだけ成果を上げられるかということが一番大きな問題だと思っております。もちろん、情報の開示や責任の明確化ということも大事なことでございます。  債権の回収に当たりましては、再三御説明を申し上げておりますように、検察、警察、国税のそれぞれの分野並びに弁護士や公認会計士等専門の方々の御協力もいただきながら、細かく債権の内容も精査しつつその回収にあらゆる力を尽くしてまいりたいと思っておりますが、現在はまだ法案の審議が始まっていない段階でもございますし、国会の御審議の状況等をよく考えながら、できるだけ体制を整えるために必要な準備は進めてまいりたいと考えております。
  25. 梶原敬義

    梶原敬義君 もう時間がなくなりましたから最後に、総理大臣、政治の責任ですね、これはかつて司法研修所の跡を大京観光に売ったときに、平米当たり二千八百万円で国有財産を払い下げている。あるいは新宿の西戸山国有地の払い下げ問題をめぐって、あるいは麻布の林野庁の宿舎を非常に高い値で売ってバブルの引き金を、当時の政府、国を挙げて、我々にも責任があると思うんだが、引き金を引いたと思うんですよ、政府があの当時。それが一つ。  それからもう一つは、今度のバブルをつくり出した大蔵省金融当局、銀行あるいは日銀、これらの責任をはっきりさせなきゃならないし、あるいはもっと早く解決をすればよかったものを延ばした当局の責任等についても総理としてもやはり思いをいたして指導していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  26. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今までこの委員会の御論議の中でも、さまざまな角度から政治に対し、あるいは行政に対しての責任の追及もございました。こうした御批判を背に、私どもとしてはこの問題を契機とし、日本金融機関の抱える不良資産問題の解決のために全力を挙げて努力をしてまいりたい、そのように思います。
  27. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で梶原敬義君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  28. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、有働正治君の質疑を行います。有働正治君。
  29. 有働正治

    ○有働正治君 私は、焦点の住専問題に絞ってお尋ねします。特に母体責任、そして追加負担問題をめぐってお尋ねしたいと思います。  一つは、政府認識の問題について幾つかまずお尋ねしたいと思うのであります。  当委員会では、この間論議を進め、また実態解明のために参考人質疑、証人喚問、さらに必要な資料をかなり提出していただきました。その中で、銀行、とりわけ母体行が住専の経営破綻の上に重大な責任を持っている、このことが非常にはっきりしてきたと私は思うのであります。  特に、一日の証人席に立った原秀三住総元社長は、住専の本業である個人住宅ローン客、しかも優良な客をターゲットにして銀行が借りかえ攻勢をかけたと、この旨証言され、その結果、住専が本来の設立の目的とは違う事業者向け融資にのめり込まざるを得なかった、そしてそのほとんどが不良債権として残ったということを証言されたわけであります。いわば、住専をつぶす、経営破綻に陥れる上で母体行が決定的な役割を果たしたということだと私は思うんです。  その点で、まず大蔵大臣、こういう母体が顧客を奪った等々の実態から見ての母体行の責任につきまして、証人喚問等を踏まえて認識がどう深められたのか、まずお尋ねするわけであります。
  30. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 当委員会の御論議が始まりましたときから終始申し上げてまいりましたことは、母体行の住専へのかかわり、これは設立、出資の段階から経営、人事、そして破綻に至る問題を含めて、その責任は極めて大きいということを申し上げてまいりました。証人の証言等を私も全部ではございませんけれども部分的に聞かせていただきながら、やはり母体行の責任は大変大きいものがあるという私どもが申し上げてまいりましたこと、また委員会において各党の皆さんが御主張になりましたことは間違ってはいない、このような認識を持った次第であります。  ただ、そのことをもって住専経営者責任がまた肩がわりされるものではない、住専の経営責任住専の経営責任として厳しく問われなければならない、このように考えております。
  31. 有働正治

    ○有働正治君 住専責任はもとより私も言うまでもないと。今述べられた点、本委員会に提出されました住専各社への大蔵の第一次立入調査でもはっきりしています。  お配りいたしました資料1「総貸出に占める個人向け住宅ローンのシェアの推移」を見ますと、例えば日本ハウジングローンの場合には、八五年三月末が九〇・四%でありましたのが、九〇年三月末に二八・九%という形で急落しているわけであります。これに対する立入調査に基づく大蔵省の指摘が「原因は都銀等による肩代わり」というものが明記されているわけであります。  これは提出された資料を私なりに整理して簡潔にまとめたものでありますが、大蔵省、この資料について基本的に間違いないかどうか確認を願いたいと思います。
  32. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 私どもが提出申し上げた資料をもとにしておつくりいただいたものと存じます。  ただ、「大蔵省の指摘」という点につきましては、その他いろいろな原因も書いてある中で抜粋をしていただいていると、このように理解をいたしております。
  33. 有働正治

    ○有働正治君 本当に母体行が食いつぶしたと言ってもいいわけで、母体行の責任は非常に大きいということははっきりすると思うのであります。大蔵大臣見解をお述べいただいたので、総理、どのように認識されるのか、総理見解を求めたいと思います。
  34. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先刻、大蔵大臣が述べられたのと基本的に違いがあるわけではありません。  そして、今御党からちょうだいをいたしました資料を拝見いたしましても、その状況というものは御指摘のとおりのものがあると、そう思います。
  35. 有働正治

    ○有働正治君 次は、本委員会でも大きな問題となりました紹介融資問題の実態をめぐってであります。  住専が本来の個人向け住宅ローンから変質して破綻していく中で、母体行などによる紹介融資が大きな役割を果たしています。証人喚問等を通じまして、なぜ紹介融資をふやしていったのか、こういう背景、これも明らかになったと私は考えるわけであります。紹介融資をめぐる母体行などの責任については、大蔵大臣、どう認識を深められたのでありましょうか。
  36. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 紹介融資は、前にも申し上げましたとおり母体行だけではございませんで、一般行もございますし、それから一般の事業会社から紹介をしたものもございます。全部を合わせますと四兆円にも上りまして、そのうち母体の部分は重要な部分を占めますが、必ずしも全体ではないわけでございます。しかしながら、母体行は経営、人事等についても関係の深い存在でございますので、そのような意味から同じ紹介ということにつきましても母体からの紹介についてはまた別の意味を持つ点もあろうかと存じます。  そのような点は、今後、住専資産を引き継ぎまして、その状況につきまして十分に精査をいたしまして、仮に法的に責任を追及すべきような事例が見出されましたならば、民事、刑事を問わず、そのような責任についても厳正に対処する必要があるものと考えております。
  37. 有働正治

    ○有働正治君 非常に認識が甘いんです。この期に及んでそういう繰り返しの答弁じゃだめなんです。  私どもの上田議員が、証人喚問を通じて、住総側が融資額と同額をお礼の意味で一週間の通知預金として預けていたと、百億だったら百億、あるいはそれを上回るという問題さえあったと、そういう通知預金があったことを指摘しました。一般銀行では禁止されている不動産仲介の手数料を取っていたこと、これも明らかにいたしました。そういううまみがあるからこそ母体行はどんどん紹介融資としてやって、その紹介融資の母体行分の九一%が焦げつく、こういう状況になって、住専破綻の上で極めて大きな役割があるわけであります。そういう点を明確にする必要が私はあると思うわけであります。  そこで、大蔵省に尋ねますが、紹介融資に際し通知預金をとっていたこと、これは問題だと思うんです。九一年に全銀協は、問題だということで自粛までやっているはずであります。この点、大蔵省はどういう認識でしょうか。
  38. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 過度な協力預金等を行うことにつきましては自粛するよう指導しているところでございます。  なお、通知預金の預け入れにつきましては、商慣習として行われていたと聞いておりますが、平成三年七月の都銀における偽造預金事件を契機にいたしまして、全銀協の協力預金自粛申し合わせを受けまして、平成三年九月三十日から中止していると聞いております。  また、顧客からの借り入れ申し込みの受け付けや取り次ぎ等に関しましては、母体行と住専各社が事務委託協定書を締結し、当事者間の経営に基づきまして住専各社が母体行に手数料を支払っていたと、そのように伺っております。
  39. 有働正治

    ○有働正治君 自粛どころかやっぱり手数料を取っていたというわけで、これは重大問題としてきっちり調べて対応願いたいわけであります。  そこで、何のために融資をふやしたかという問題であります。文字どおり大もうけのためにどんどん融資していたということであるわけでありますが、紹介した融資をふやせば利払いがあることは言うまでもありません。しかも、通知預金、手数料、バックファイナンス、こういうものがあるわけで、紹介すればするほど銀行側にとってはうまみが出てくる、こういうことであります。資料3の中でも、母体行取次機関に対しての通知預金その他の、これは住総側の資料でありますが、このことについては住総側も証人尋問の中で認められたわけであります。  そこで、住専側の支払い利息がどれぐらいになるのか計算した表が資料4であります。これは、これまで示された本委員会への提出資料に加えまして、明らかになっていなかった分について私の資料要求に対して大蔵省の方でそれなりに苦労して出してもらったものであります。それによると、母体行分の受取利息としては一兆六千五百六十六億円となっているわけでありますが、この資料は大蔵省、間違いございませんでしょうか。
  40. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 母体行くの支払い利息という資料の御要求でございましたので、私ども実際に支払われた額というのを調べることはなかなか難しい、分類することが難しいのでございますが、あくまで支払い利息の総額を融資残高で案分するというようないろいろな工夫をいたしまして、委員の御要求にこたえまして試算したものということでございます。
  41. 有働正治

    ○有働正治君 そういうことで、これは大蔵省公認の資料なんです。  問題は紹介融資とのかかわりでありますが、母体行くの支払い利息の中で紹介融資による受取利息というのを私、融資残高比率をもとに計算しますと、一兆六千五百六十六億円のうちのちょうど八千億なんです。そうしますと、母体行は一方で住専をつぶしていながら、これはぽっぽにきっちり入れているんです。そして、あとは三兆五千億で自分たちは責任持てないということで、これだけはきっちりもらっておいて、そして追加負担にはなかなか応じようとしないと、こういう問題があるわけです。六千八百五十億を賄わさせられる国民はたまったものじゃないわけであります。  そういう点で、この八千億円が母体行の紹介融資による受取利息分に相当するわけで、これだけでも税金投入は不要になるという点で、これらを含めて母体行に強く迫るということが求められていると思うわけでありますが、大蔵大臣いかがでありましょうか。
  42. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 私どもは、母体行に責任が重いという点について決して委員と意見が違うわけではございませんし、紹介融資というものが重大な問題であるという点についても私ども認識をいたしているつもりでございます。  ただ、紹介融資というものは、今でこそいろいろな結果を呼んでおるわけでございますが、紹介をされた時点におきましては、住専の側から紹介を求めたというケースもございましょうし、いろいろなケースがあろうかと存じます。そのようなものについて法的な責任を含めましてすべて責任を問うということはなかなか難しい面もございましょうが、先ほど申し上げましたように、私ども住専処理機構におきまして、民事、刑事を含め、損害賠償請求を含めて十分に責任は追及してまいりたいと考えているわけでございます。  そのような性格のものでございますので、その額と関連をさせました貸付金の利息につきまして、今のような意味での関連づけをするということについては私どもなかなか難しい問題があるのではないかと考えております。
  43. 有働正治

    ○有働正治君 そんなことで国民が納得すると思いますか。とんでもない発言ですよ、私に言わせれば。  住専は設立して、その責任はあるんです。そして、つぶした責任もあるんです。その上に立って自分だけはちゃんともうかるところはもうけておいて、それだけでも私によれば八千億あるんですよ。こういう問題を含めてきっちり母体行に責任をとってもらう、そして追加負担を国会に示す、はっきり予算からも削除していくと、こういうことが国民の要望なんですよ。  大蔵大臣、今のような答弁じゃ私納得できませんよ、こんないいかげんな答弁では。
  44. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 私が申し上げておりますように、母体行の責任の重さからさらに母体行は追加負担による新たな寄与を行うべきだという立場に立っているわけでございますから、住専処理機構がスタートできますならば、預金保険機構との間で一体的な協力のもとに、紹介融資などについても当然にその一件一件について精査の上、この問題に対する扱いを決めていかなければならないと思っております。  今は、できるだけ早く処理機構がスタートできますように皆さんの御協力をお願い申し上げ、その体制を通じて、今お話がございましたようなことにも積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  45. 有働正治

    ○有働正治君 時間の関係で、ここで上田議員の関連質問をお許しいただきたいと思います。
  46. 井上裕

    委員長井上裕君) 関連質疑を許します。上田耕一郎君。
  47. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今安保条約をめぐる最大の問題は、去年十一月、閣議で決めた新防衛計画大綱と四月に橋本首相が発表されました日米安保共同宣言で、日本が武力攻撃を受けていなくても、アジア太平洋あるいは日本の周辺で紛争が起きた場合、日米安保体制が発動され自衛隊も対処する、そういう非常に重大な新しい問題なんですね。  四月二十五日に聽濤委員がこの問題を取り上げまして、秋山防衛局長に自衛隊法の何条に基づくのかという質問をしました。防衛局長は、防衛庁設置法、自衛隊法の災害派遣の関係その他を挙げましたけれども、何条かはっきり答えていただきたいと思います。
  48. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 新大綱に出ております我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態につきまして、特定の事態を念頭に置いているわけではございませんけれども、あえて申し上げれば、我が国周辺地域において限定的な武力紛争が生起するような事態、そういったものが一つ考えられるわけでございます。その場合の我が国への直接的影響とそれに対する自衛隊の行動についての法律の条文については次のように考えております。  直接的な影響としては,考えられるものといたしまして、例えば大量の難民が到来すると。これに対しましては、海上保安庁長官の要請等によりまして遭難した難民の捜索、救難を行うといったようなことが考えられるわけでございまして、これは自衛隊法第八十三条でございます。  それから、在外邦人等の緊急退避のための我が国への輸送が必要となるといったようなことが考えられるわけでございますが、これにつきましては、このために政府専用機等による在外邦人等の輸送を行うということが考えられるわけでございまして、これは自衛隊法第百条の八でございます。  それから、敷設された機雷が遺棄機雷となりまして我が国周辺海域に浮遊するといったようなことが考えられるわけでございまして、これにつきましては、遺棄されたと認められる機雷の除去を行うということで自衛隊法第九十九条があるわけでございます。  いずれにいたしましても、かかる事態におきまして自衛隊がどのような措置をとり得るかということにつきましては、その時点で措置の具体的な内容等について今後とも憲法や関係法令に照らしまして十分に検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  49. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 難民、機雷問題などを挙げられましたけれども、新防衛計画大綱には「日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図る」とまで書いてある。この「効果的な運用」は自衛隊法の何条でやるんですか。
  50. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 日米安保体制の効果的な運用ということでございますと、米軍に対する支援といったようなことが一つ考えられるわけでございます。  個々の具体的なケースによりましてこれは異なることになると思いますが、これもあえて一般論として申し上げれば、例えば米軍に対する施設・区域の提供というものが考えられるわけでございますが、これは日米安保条約第六条及びそれに基づく地位協定第二条第四項(b)、それから法律で申し上げますと防衛庁設置法の第六条第十四号でございます。  それから、遭難した米軍の兵員等の捜索、救難といったようなことも想定されるわけでございまして、これにつきましては、先ほどと同じでございますけれども、海上保安庁長官の要請等によりまして、自衛隊法第八十三条に基づく捜索、救難といったようなことが考えられるわけでございます。  もちろん、ここにとどまらないとは思いますけれども、このような事態が起こった場合にどのように自衛隊が米軍支援を行い得るかということにつきましては、今後とも憲法や関係法令に照らしまして十分検討する必要があると考えているところでございます。
  51. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 防衛局長はこれにはとどまらないと言いましたけれども、自衛隊法、防衛庁設置法の今の規定では到底カバーすることのできない問題が生まれるわけですね。今度、ガイドラインのつくり直し、格上げ、こういう問題まで生まれているわけです。  一九五九年、当時の林法制局長官がこう言っています。  日本の自衛隊は日本が直接にあるいは間接に侵略された場合にしか動き得ないわけでございます。それ以外に米軍がよそに出て行くことを応援するということは、いわゆる米軍の一環として米軍に協力して、これを応援するということは、日本の憲法あるいは自衛隊法からできないことだ、  だから、自衛隊法改正はできないでしょう。日本が侵略されていないのに米軍を応援するというのは自衛隊法ではできない、今でも。  さて、法制局長官、この問題をどうお考えになりますか。
  52. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) ただいまのお尋ねがこの問題をどう考えるかということで、具体的にどういうお尋ねであるかいささかあいまいなわけでございますが、ただいまお尋ねの中で引用されました林元法制局長官の答弁は、米軍の行動を助けることが憲法に違反するような形においてはできないということを答えたのであろうと思います。自衛隊法との関係におきましても、自衛隊法上明確な根拠のないものはできない、もちろん憲法上の枠を超える、限界を超えるものはできないということを答えたのでございます。  要するに、何が現行憲法上できるか、何が現行自衛隊法上できるかというのは、具体的な目的と具体的な行為の態様を前提として個々具体的に検討して初めて確たるお答えができるものであろうかというふうに考えております。
  53. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは、具体的にお伺いします。  法制局長官、私が問題にしているのは新防衛計画大綱なんですが、この新防衛計画大綱なるものは、アメリカのナイ国防次官補が去年の十月アメリカの下院の小委員会で、これが二月に発表したアメリカの東アジア極東戦略とオーバーラップして初めていいんだという証言をしたんです。それでオーバーラップして、四月の安保共同宣言より前に、十一月二十八日に閣議決定してこんなとんでもないのが入った。  それで、法制局長官にお伺いしますけれども日本は武力侵略されていない、しかし周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態、これが生まれた場合、周辺地域にですよ、これを日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を図ることで適切に対応すると。安保体制の効果的運用で、先ほど防衛局長は難民その他、そのほかのこともあると言ったんだが、日本は攻められていないのに、武力攻撃を受けていないのに日本周辺で安保体制発動、また自衛隊が対処する、これは憲法上許されているんですか。
  54. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) ただいま新防衛計画大綱に関するお尋ねでございますが、やはり日本周辺の事態での自衛隊の行動一般について許されるとか許されないとか、そういう一般的なお答えはいたしかねるわけでございます。そういっただいま御指摘になりましたような状況のもとで自衛隊がいかなる目的のもとにいかなる行動をするのかということを個々具体的に検討しなければならないわけでございますが、いずれにしましても、この防衛計画大綱で述べておりますように、憲法及び関係法律に従い適切に対応するということでございます。  多分御懸念は集団的自衛権の行使との関係であろうかと思いますが、集団的自衛権の行使というものは現行九条のもとでは認められないということはたびたび申し上げているとおりでございまして、集団的自衛権の行使を認めないということを含めまして、あくまで憲法及び法令の範囲内で適切に対応するというのがこの新防衛計画大綱の趣旨、内容でございますから、その点自体につきましては何ら御懸念には及ばないというふうに考えているわけでございます。
  55. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 七八年のガイドラインにも侵略のおそれがある場合という一項が入っているんですね。今度はこのガイドラインでアジア太平洋で有事のときに自衛隊が動くこと、安保体制発動が動くわけですよ。非常に危険なことです。  法制局長官、じゃ日本は武力攻撃を受けていない、極東で何か武力紛争が起きた、日本の安全にも影響がある、そのときに個別的自衛権は発動できるんですか。
  56. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 個別的自衛権というのは何かということに関係しようかと思いますが、我が国立場から考えた場合には、我が国に対する武力攻撃に対して我が国を防衛するために必要最小限度の行為を行うということであろうかと思います。そういたしますと、ただいまのお尋ね我が国は攻撃を受けていないという前提でございますから、個別的自衛権行使の要件は満たしておらないということになろうかと思います。
  57. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ですから、ここが非常に大事なところで、法制局長官、今の答弁はいいですよ。これをしっかりやらなきゃならない。  新防衛計画大綱というのはおかしいんですよ。八一年に稲葉誠一委員質問に対して角田政府委員は「間接にわが国の安全が害されるようなときにもわが国は自衛権を行使することはできない。」とはっきり答えている。「運命にかかわりあるというようなことではわが国の個別的自衛権は発動できない。あくまでわが国に対する直接の攻撃がある場合に限る、」ですから、そういう場合、もし極東有事なんかで動いたらもう集団的自衛権にかかわるんですよ。  首相、どうですか。僕は防衛計画大綱やガイドラインの見直し、それから安保共同宣言、これは憲法に違反する違憲行為だと思いますけれども、極東で何か動いたときに、武力紛争があったときに一切憲法を守って自衛隊は対処はしないという態度をおとりになるかどうか、はっきりお答えいただきたい。
  58. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 憲法のもとにおいて許される最大限の行為をとることになるでありましょう。
  59. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で有働正治君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  60. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、本岡昭次君の質疑を行います。本岡昭次君。
  61. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 去る三月十八日よりジュネーブで開催された第五十二回国連人権委員会で、いわゆる従軍慰安婦問題が審議されました。まず、外務省にその報告を求めます。
  62. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) ことしのジュネーブの人権委員会では人権問題にかかわるさまざまなテーマが取り上げられましたが、その中の一つとして女性に対する暴力の問題が取り上げられました。その附属書としていわゆる従軍慰安婦についての報告書がついておったわけでございますが、その問題につきましても、討議の結果、一定の決議が得られたということでございます。
  63. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 もっと詳しく言ってください。
  64. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 女性に対する暴力の問題についての決議でございますが、この決議は全会一致で無投票で採択されてございます。  その中身といたしましては、クマラスワミという特別報告者の作業を評価する、関係の文書をテークノートする、それからクマラスワミさんが家庭内暴力についてまとめられた報告の内容を評価する、そういったような内容でございます。
  65. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 審議の経過も報告してください。
  66. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 審議そのものにつきましてはたしか四月に入ってからでございます。いろいろ議題がございまして順番に取り上げておりますので、三月十八日に人権委員会が始まった後、女性に対する暴力の問題が取り上げられましたのは四月に入ってからと記憶しておりますが、その問題を討議したときに幾つかの国が発言いたしました。その中でいわゆる従軍慰安婦問題について発言しました国は、日本を含めて四カ国でございます。私の記憶では、数時間でその討議は終わり、およそ十日ほどたってから決議案の採択ということになったと承知しております。
  67. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 韓国と中国の発言内容を報告してください。
  68. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 韓国は、今申し上げました女性に対する暴力の問題を討議しておったときに、次のような趣旨の発言をいわゆる従軍慰安婦にも関係しまして行っております。  つまり、韓国政府は一九九三年三月に、従軍慰安婦問題に関して日本政府に対して物質的補償を求めない、こういうことを表明し、真相の究明を求めてきた。この観点から、一九九三年八月の日本の官房長官談話を一つの積極的なステップとして評価している。こういうことを述べた上で、日本政府が特別報告者の勧告を自主的かつ早急に実施するために必要な措置をとるよう要請する、女性に対する暴力撤廃決議案に報告書の内容が適切に反映されることが必要と考える、そういった趣旨の発言がございました。  中国の場合は、日本政府は歴史と現実を直視し、この問題の適切な解決に向けて責任あるアプローチをとる必要がある、こういった趣旨の発言がなされたと承知しております。
  69. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 要するに、日本政府に法的責任を求めたこの決議が採択されたということであります。  そこで、橋本総理総理は法的に反論すべきことはしていくと表明されておりましたが、人権委員会の結論が出ました。この際、政府は謙虚にこの結果を認めて、国の法的責任に基づく謝罪と補償を緊急に措置すべきです。橋本総理の決断と英断を求めたいと思います。
  70. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、今回の決議は人権委員会で全会一致で採択されたところでございますが、御指摘の従軍慰安婦に関する部分、これは附属文書に書かれております。これはいわゆるテークノートされておるというわけでございまして、このことによって我が国の法的責任が問われているという、こういうことでは決してないと、このように理解しております。
  71. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は総理にお伺いしている。英断と決断を求めているのに、外務大臣には求めていない。
  72. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 先ほど御答弁申し上げましたように、法的責任が問われているわけではございません。いずれにいたしましても、我が国といたしましては、この従軍慰安婦の問題につきましては、女性のためのアジア平和国民基金というものが先般設立されておりますが、その事業が早く具体化されるように政府としても可能な限りの協力を行ってまいりたい、引き続き誠実に対応してまいりたいと、このように考えているところでございます。
  73. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、総理の決断を求めたんです。
  74. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、外務大臣からも事務当局からも御答弁を申し上げましたように、今回国連の人権委員会において採択をされました決議は女性に対する暴力撤廃の決議であります。  日本としては、さきの大戦に係る賠償、財産請求権の問題についてサンフランシスコ平和条約などに従って誠実に対応してきたことは議員よく御承知のとおりであります。そして、女性のためのアジア平和基金に対して政府が一日も早くその事業が具体化されるように、引き続き可能な限りの協力を行ってまいります。
  75. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それでは、総理国民基金が償いの金を支給する準備を始めておりますが、そのときに総理の謝罪文を出すとしておりますが、出しますか。
  76. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 謝罪文と言われます意味が私にはもう一つよくわかりません。しかし、基金が、国民が募金をしてくださったそのお金を使いまして対象となるべき方々に支給事業を開始いたしましたときに、そのお金だけをぽんと届ければいいというものではありますまい。
  77. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 だから、謝罪の手紙をお出しになるんですかと聞いているんです。
  78. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私が現在申し上げていることは、現時点において申し上げられるぎりぎりのことでございます。少なくとも国民がこの問題に対し関心を持たれ、募金に応じてくださっております。そのお金を対象となられる方々のところに、お手元にお届けをしますときに、お金だけをぽんと届ければ済むというものではないでしょう。しかし、そのやり方はいろいろあろうかと思います。
  79. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 お金が足りないからといって総理は企業に募金を要請されると新聞にありましたが、要請されるんですか。
  80. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先日、理事長さんからそうした御協力への御相談がございました。一般の方々、労働組合を初め非常に幅広く募金活動をしております中で、企業にも協力を求めたい。募金のお手伝いは私自身が今までもいたしてまいりましたし、これからもいたしてまいるつもりであります。
  81. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 先日、呼びかけ人の三木睦子さんが呼びかけ人を辞任されたと聞いております。総理と御相談の上に辞任されたように報道されておりますが、どのような理由で辞任されたんですか。
  82. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 御相談は別にございませんでした。
  83. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 総理と直接お話し合いの上、決断されたと聞いています。
  84. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大先輩の奥様でありますし、私の母の友人でもありました。そして、訪ねたいということでありましたから、ほかの方も御一緒にお目にかかりました。その席上、呼びかけ人であるというお話をしておられましたけれども、御自分の行動について御相談をいただくほど、恐らく母と同年齢の先輩から見れば大人とは思っておられなかったのかもしれません。
  85. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 一九九〇年の六月、六年前ですが、本委員会で私はこの従軍慰安婦問題の質問をいたしました。そのときに政府は、国は関与していない、民間の業者がしたことなので調査はできない、こういう答弁で、結局国民や国会をだまして被害者の名誉を二重に傷つけました。  政府は謝罪をすべきであると思います。私は謝罪を求めます、政府に。国会のこの予算委員会で正式に私は抗議したんですよ。
  86. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいまの平成二年六月当時の私ども労働省の答弁についてでございますけれども、公共職業安定所の前身であります職業紹介所が一部担当しておりました徴用の対象業務、これは国家総動員法に基づく総動員業務でございまして、それには従軍慰安婦に関する業務は入っていないと考えられることから、労働省といたしましては、できる限り実情の調査に努力はするけれども十分な結果を得ることは困難である、そういうことを申し上げたものというふうに考えているところでございます。
  87. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それで、現在の結果に対してどうなんですか。
  88. 平林博

    政府委員(平林博君) 現在の政府の姿勢といたしましては、先生御存じのように、従軍慰安婦の問題につきましては、当時、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったわけでございますが、その場合も甘言とか強圧による方法とか、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあった、さらに官憲等が直接これに加担したこともあったということがその後の調査で判明いたしましたので、それに即しまして累次官房長官談話等を発出いたしまして、これについての対応をとってきたわけでございます。  先ほど総理の方から申し上げましたように、法律的な責任につきましてはサンフランシスコ平和条約その他で誠実に対応してまいりましたので、道義的な責任を含めて何ができるかということを考えましたあげく、先生御承知のとおり、アジア女性基金を中心とした事業によりまして現在対応しているというところでございます。
  89. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それなら、なぜ私が質問したときに法的に決着しているんだと言わなかったんですか。
  90. 平林博

    政府委員(平林博君) 当時、労働省の担当政府委員が先生の御質問にお答えになった時点では、まだこの従軍慰安婦の問題につきまして十分な調査を政府として行き届いた形で行っていなかったと。いろんなお話等はございましたが、そういう状況でございましたのであのような答弁になったと思われますが、その後、鋭意調査をした結果、先ほど申し上げましたような官房長官談話を含めましての政府の対応ということになったものでございます。
  91. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 調査した結果、法的責任は決着がついたということになったんですか。おかしいじゃないですか。そんなこと初めからわかっているでしょう。
  92. 平林博

    政府委員(平林博君) 繰り返して申し上げたいと思いますが、法律的な責任につきましてはサンフランシスコ平和条約等で既に対応済みだと、その結果を踏まえて誠実に対応してきたというのが政府立場でございます。  その点はさておきまして、その他の点で政府として現時点で何ができるかということを考えた結果が、先ほど申し上げました方法による対応ということでございまして、アジア女性基金を中心とした事業について政府としては最大限の協力をしているところでございます。
  93. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そのときに法的に決着済みだと言えばいいじゃないですか。何で言わないんだ、そのときに。法的に決着していることは調査しないとわからないのか、外務省は。
  94. 井上裕

    委員長井上裕君) ぴたっと答えなさい、イエスかノーか。
  95. 平林博

    政府委員(平林博君) いずれにしましても、法律的な決着というのは先はどのようについておるということでございます。何度も繰り返して恐縮でございますが、それ以外の道義的な責任等についての対応をするというのが政府立場であるというふうに理解しております。
  96. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 一九九〇年の私の質問のときになぜそのことを言わないのかと言っておるんですよ。
  97. 平林博

    政府委員(平林博君) 甚だ申しわけないのでございますが、先生が御質問をなさったときには政府としての調査が十分に行われていなかったと。その後、時間をかけて調査した結果が先ほど申し上げましたような政策、姿勢でございます。先生は非常に早い時点問題提起をされたわけでございますが、その時点での政府の調査が行われていなかったということで御了解いただきたいと思います。ただし、その後、調査をした結果、今のような対応になっておるということでございます。
  98. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 納得できませんが、あと質問を二つしてから後ほどやります。  本年三月、ILO条約勧告適用専門家委員会が年次意見報告書の中で、慰安婦はILO二十九号条約に禁止されている強制労働に当たると報告した。その内容の報告を労働省に求めます。
  99. 永井孝信

    国務大臣(永井孝信君) 今、委員の御質問の問題でありますが、本年三月にILO事務局から条約勧告適用専門家委員会報告書が公表されました。その中の五百四十一件の意見のうちの一件としてこの従軍慰安婦問題についての記述がなされているわけであります。  これは、委員承知のことだと思いますが、実は大阪府特別英語教職員組合という団体からの申し立てに関する意見であります。その教職員組合は、高等学校の外国人英語教師四十人前後から成る団体でございまして、その構成員のほとんどは外国の方々であります。  この中し立てに対しまして、委員会の意見におきましては、当該団体の申し立てをもとに、戦前及び戦中における従軍慰安婦行為はILO第二十九号条約に違反する性的奴隷として特徴づけられるべきものであると認識するとしておりまして、また従軍慰安婦は賃金その他の給付を受ける権利を有していたと思われるという旨を述べているわけであります。  そして、結論といたしましては、この条約及び委員会の委任事項のもとで、委員会は補償及び賃金のために求められている救済を命ずる権限を有していない。二つ目には、委員会政府が速やかに本件に適切な考慮を与えることを希望するとの表明がなされているわけであります。
  100. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 ありがとうございます。  そこで、韓国の労働総連盟も慰安婦問題を昨年ILO理事会に提訴しました。しかし、日本政府の反対によりこの提訴が受理されていないようであります。なぜ政府は反対をするんですか。
  101. 永井孝信

    国務大臣(永井孝信君) 今、委員の御指摘の問題でございますが、昨年三月、韓国の韓国労働組合総連盟からILOに対しまして、いわゆる従軍慰安婦問題に関してILO憲章第二十四条に基づく申し立てがなされているわけであります。  本件を理事会で取り上げるか否かにつきましてはILO自身が判断すべきものでありまして、現在ILO内部において受理性の有無も含めてその取り扱いを検討中であるというふうに承知をしているわけであります。  なお、このILO憲章第二十四条に基づく申し立てに関しましては、理事会に先立って、ILO事務局や理事会役員会において申し立てが所定の要件に合致するか否かの検討が行われる仕組みとなっているというふうに承知をしているわけであります。  したがって、いずれにいたしましても、この問題については日本政府としては従来より政府考え方について説明はしてきておりますけれども、それをどのように受けとめ、受理性の問題を含めてどのように取り扱うかについては、ILO事務局や理事会役員会がILOの立場において判断されることであるというふうに考えているわけであります。  いずれにいたしましても、この問題につきましては、主として外務省や外政審議室の所管事項とのかかわりが深いものでありますから、これらの省庁と労働省といたしましては密接な連携をとりながら今後の推移を十分注意深く見守っていきたい、このように考えております。
  102. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 台湾からも、従軍慰安婦問題の解決について九〇%を超す台湾の立法院の委員が連名で、国民基金ではなく国の責任による謝罪と補償を求める要請書が総理にも届いているはずであります。  総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  103. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、第二次世界大戦前、そして戦時中というものを振り返りましたときに、我々が非常に厳しく受けとめなければならない事柄が幾つもあったように思います。そして、この従軍慰安婦問題と言われます問題も、その不幸な我々の負っていくべき歴史の一つでありました。  そして、先ほど私は、ちょっと議員が大変詰め寄られたような言い方をされたので感情的な答えを申し上げたことを改めておわび申し上げますけれども、私は今この問題が、女性基金という形で本当に国民の善意をもって構成される募金、これを原資として関係された方々へのお見舞いと申しますか、おわびと申しますか、どういう形であれ支給事業を開始しようとしておりますことを非常に成功裏に、これが成功するだけの国民の拠金が寄せられることを願っております。  そして、五十年という歳月の中でさまざまな問題が風化しております時期でありますだけに、私は国民のそうした気持ちが集められて、対象となられた方々にお届けができるという姿が一番今ふさわしい姿だと思っております。  そして、先ほど謝罪文というお言葉がありましたが、私は、それにどういう形で国がその心をあらわせばよいのかは、ちょうどこの女性基金が生まれます前提となりました、たしか河野官房長官が官房長官談話として述べられたものがございましたが、その中に込められたような気持ちをもって対すべきものだと存じます。  そして、それを今後進めていきます上で、むしろ私は、内輪の意見の違いがあるとか、自分の重点の置き方がどうだとかということではなくて、やはりかつての先輩たちの償いを一つずつ国民全体が対応していく。今たまたま台湾を例に引かれて議員は御質問でありました。どこの地域であれ私は同じような気持ちで対してまいりたい、そのように思います。
  104. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 この問題の解決はいろんな方法があるかもしれません。しかし、国連の人権委員会というところで国際的にこの問題が四年間にわたって議論されて、そして一定の結論が出た。この段階において、その採択を無視した形で橋本総理がおっしゃるように従来のやり方をやり続けるんだということは、何か国連人権委員会を無視した形になりはせぬかと思うんですが、ここで再考、再検討されるという余地はありませんか。
  105. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 報告書は、先ほども申し上げましたように、別の問題で採択されました。議員の言われる部分はテークノートという部分にとどまっております。そして、それとは別に、国民全体の意思があらわれる基金という形が一番今ふさわしい姿と、私はそう考えております。
  106. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 終わります。
  107. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で本岡昭次君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  108. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、西川潔君の質疑を行います。西川潔君。
  109. 西川潔

    ○西川潔君 よろしくお願いいたします。  私も三分という短い時間でございますので、身近な生活の問題点に要点を絞って質問をいたします。  まず、在職老齢年金制度について、この制度の御説明からお願いいたします。
  110. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 在職老齢年金のことでございますけれども、厚生年金に例をとりまして御説明を申し上げます。  厚生年金では、六十歳から六十四歳までの方につきましては特別支給の老齢厚生年金を支給しているわけでございます。六十歳以降におきましても働いて賃金収入があるという方、つまり厚生年金に引き続き被保険者としてとどまっている方、こういう方でございますけれども、こういう方につきましては、賃金の額、具体的には標準報酬月額という形でやっておりますけれども、その標準報酬月額の額に応じまして年金額が減額されるということになっておりまして、その標準報酬の額が高ければ高いほど年金の減額幅が大きくなる、こういうことになっているわけでございます。こういう仕組みを在職老齢年金制度と呼んでいるわけでございます。
  111. 西川潔

    ○西川潔君 この制度について、以前より改善を求める声が強くあったわけですけれども、六十歳で定年退職をし、引き続き同じ会社でパートで働くような場合には、給料は大幅に下がったにもかかわらず年金の支給が三カ月も待たされるという問題がございました。  この問題について、厚生省では改善を行う内容の通達を出されたとお伺いしております。これまでの問題点と改善の内容について、厚生大臣にできれば御説明をお願いします。
  112. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) おっしゃるとおり、これまで六十歳定年退職で、同じ会社にまたパートとして働いたような場合に、年金の支給が三カ月待たされるという問題がありまして、西川委員の御指摘もありますので、そういったことの改善の通達を出して改善に努めております。  その内容につきましては、まず現在の構造を申し上げますと、在職老齢年金額は標準報酬の額に応じたものとなるわけですが、一般的にはこの標準報酬は過去の三カ月の給与の平均額が大きく変動したときに改定されるという形になっております。再雇用の場合は、一たんやめて新たに就職したという形になれば新しいものが基準になるわけですが、今御指摘のあったように、やめた翌日から雇用ということになると継続して雇用関係が続いているということになるものですから、そのために、簡単に言えば給料が下がったときの扱いということで、三カ月間下がったところが継続したときに、その四カ月目から新しい基準ということになったために三カ月待っていただくということに従来はなっていたわけであります。  そこで、今回はこうした事例に対応するために、定年退職後、継続して再雇用される場合には、一たん被保険者資格を喪失して再雇用時に改めて資格を取得するという取り扱いをすることによって、三カ月待たずに退職後の給与に基づいた在職老齢年金を支給することとしたものであります。そういった意味で、実質的には継続して雇用されるんですが、一応考え方としては一たんやめて再雇用する、そうすると最初の一カ月目だけの基準で二カ月目から新しい基準による在職老齢年金が支給されることになるわけであります。  この改善措置については、四月に都道府県に通知し、六月一日より実施することとしており、この方向で円滑な運用に努めてまいりたい、このように考えております。
  113. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございます。いつも法律や制度の細かい部分ばかりのお願いでございますが、これも全国の方々は大変喜ばれると思います。  次は、高層住宅についてお伺いしたいと思います。  高層住宅にお住まいの障害者の方々などへの郵便配達についてですが、実は昨年の八月にお体が御不自由なお年寄りから、私は市営住宅の五階に住んでおりますが、日常生活の中で郵便物を一階までとりに行かなければいけない、行くのが大変困難、大きな悩みでございますという御相談をいただいたわけです。早速、郵政省にそういった場合の対応についての御説明をいただいたわけですが、その際の説明では、障害者の方など郵便物をとりに行くことが困難な方については戸別に配達するように通達を出していますということでございました。  せっかくそのようなサービスをされているにもかかわらず、利用者が御存じなければ申し出をしようにも申し出ることができないわけですから、これまでの通達内容を一度整理していただいて、利用者へはもちろんのことですが、職員の方々に対しても周知の徹底をお願いしたいと要望させていただきました。  その後、郵政省ではこの件についてどのような対応をおとりいただいたのか、郵政大臣にお願いしたいと思います。
  114. 日野市朗

    国務大臣(日野市朗君) 先生にはこういう問題についてお取り上げをいただいて本当に感謝をいたしております。  郵便というのは本当に基本的な通信手段でございますから、心の通ったといいますか心のぬくもりが伝わるような取り扱いというのは郵政省が非常に強く意識して心がけているところでございます。  先生から御指摘いただきましたように、高層住宅にお住まいの重度心身障害者、それから高齢者の方などが一階までおりていくというのは確かに非常に大変なことでございますね。今の取り扱いは二階までは戸別に配達をするわけでございます。三階以上の方になると一階にまとめて置きまして、とりに来ていただくという形をとっておりますが、そういう身体障害者の方とか高齢者の方については、昭和五十三年十二月から、そういうことがわかればそこにちゃんと戸別に配達するということで実施をしてきていたわけでございます。しかし、まだ徹底を欠くところがあったと思います。  この施策の周知、それから情報入手が不十分であるという御指摘を先生からもちょうだいしているわけでありますが、昨年の十月に、ちゃんとその旨を郵便局の窓口に掲示する、郵便局便りを活用する、それから地方公共団体や福祉関係機関等と連絡をとりながら広報紙に記載してもらうというような手段をとりまして、より実効ある利用者への周知、さらには、これは職員の方もよく知っていなくちゃいけないことですから、職員の方への周知の徹底も図るように通達によって指導をしているところでございます。  私ども、今後とも実効性が上がるように一生懸命取り組んでまいりますので、よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございます。
  115. 西川潔

    ○西川潔君 今後ともこちらこそよろしくお願い申し上げたいと思います。  最後に、総理にお伺いしたいと思います。  これから超高齢化社会を迎える中で、お年寄りにとっては医療、年金、福祉、仕事、住まい等々、それぞれの分野の中に日常生活でのさらに細かい悩みや心配がたくさんございます。それは言うまでもない私たちの問題でもあると思います。人が生まれて健康で幸せで長生きできたら最高なんですけれども、そのためにも、今後ともきめの細かな施策にお取り組みいただきたいことを総理にお願いしたいと思います。  これで、今年度予算審議長後の質問者に僕がなるわけですけれども、締めくくりといたしまして、総理の今のお気持ち、そしてこれからの御決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  116. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 高齢社会というものを真正面から見据えようといたしましたとき、私どもは非常に幅広くさまざまな問題に対応していかなければならないと思います。そして私は、人口構造の変化だけでも我々は行政改革をやらなきゃならないという言い方をよくしてまいりました。それは、経済産業構造社会、あらゆる分野が当然のことながら変化をしなければならない中で、それに対応する努力行政が払おうとすれば今のままの姿ではできないと思ってきたからであります。  そして、政府としての長寿社会対策大綱というものが御承知のとおり既に生まれ、いろいろな施策を進めてまいりました。そして、さらに昨年、本院から御提案をいただきました高齢社会対策基本法というものが制定をされましたものを受けて、私どもはこの基本法に基づく新たな大綱の策定作業を進めているさなかであります。この中では、まさに議員が御指摘になりましたような職業、就業の問題、所得、健康、福祉など幅の広い分野に総合的な内容を策定し、政策としての指針をまとめたいと考えているさなかであります。  これからも、こうした問題につきましてぜひ御関心をお寄せいただき、政府を御激励いただきますように心からお願いを申し上げます。
  117. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。
  118. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で西川潔君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて締めくくり総括質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、平成八年度総予算三案に対する質疑は終局したものと認めます。     —————————————
  119. 井上裕

    委員長井上裕君) それでは、これより討論に入ります。  討論の通告がございますので、順次これを許します。なお、発言者は賛否を明らかにしてお述べ願います。都築譲君。
  120. 都築譲

    ○都築譲君 私は、平成会を代表して、ただいま議題となりました平成八年度予算三案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。  四月十二日に、衆議院より送付された予算三案について、本委員会で審議を開始して以来二十八日、実質審議日数十七日という極めて限られた審議日程ではありましたが、明らかになったことは、自民・社民・さきがけ連立政権の限界ということであります。  今日、国民の安全も安心も、そして豊かさも、政治が指導的役割を発揮し、国民の負託にこたえていくべき重要なこのときに、住専処理問題を初め、有事対応、薬害エイズ、経済活力の回復高齢社会への対応などについて、将来の展望も改革の道筋も示すことができない野合連立政権の限界をこの予算案は露呈しているのであります。  まず第一に、住専の処理策であります。私たち平成会は、住専の破綻処理のための六千八百五十億円の削除を要求し、国民負担を押しつけるべきではないと強く主張してまいりました。  実態の解明、責任の追及もまだまだ不十分でありますが、明らかになったのは、住専の破綻処理ではなく、住専処理策の破綻であります。本来、民間会社の整理については、自己責任原則、法治主義、預金者保護の原則を貫徹して、公正かつ透明な手続で行うことが当然であります。  政府提案の住専処理スキームは、六千八百五十億円の合理的根拠も示されず、母体行の債権放棄額もいまだ確定せず、債権回収の具体的方途も示されず、責任追及の熱意も見られない、まさに密室協議の談合でつくられた虚構に等しいもので、これで果たして政府が金科玉条のごとく繰り返す金融システムの安定が図られるとは到底考えられません。まして、このために血税六千八百五十億円を使うことなど国民の理解を得ることは不可能であります。  さらにゆゆしきことは、参考人招致、証人喚問等を通じ、借り手も貸し手母体行も、そして指導監督の任に当たる政府、大蔵省、農水省も、この事態に立ち至った責任を自覚しない総無責任状態であります。  また、住専への融資を初め、宮城県酪農連の水増し牛乳事件等に見られるように、協同組合の本来のあり方を忘れ、もうかればよいと金もうけに狂奔する農協系統の姿は、およそれ百万農家農民の心からかけ離れたもので、農民の、ひいては国民全体の信頼を裏切るものと断ぜざるを得ません。  アメリカの勤労倫理をあげつらい外交問題となった事例が以前ありましたが、今我々に求められているのは、金融システム等に限らず、社会全般にわたり戦後の繁栄を築き上げてきた勤勉、誠実な勤労観、人生観が報われる公正、公平、透明なルールの確立てあります。これらの視点を全く欠落させた政府予算案には断じて賛成することはできません。  このほか、政府予算案は、民需拡大による景気回復を強めるための大胆な規制緩和と新産業育成分野への重点的な予算配分の視点に欠け、他方、財政再建の道筋を示さぬまま巨額の赤字国債を発行し、膨大な公債残高を累積させるなど、将来に禍根を残す無責任野合連立政権の産物と断じてはばからないものであります。  最後に、住専問題の政治責任の所在を問われて、社会民主党の閣僚は、すべての政治家の責任と強弁いたしました。すべての政治家の責任ということは、それを選んだすべての有権者、国民責任であると主張するに等しく、だから国民に税金で負担せよと言うのでしょうか。情報も公開されないまま、明確な理由も示されないまま政府の決定に従わざるを得ない国民の現実から目をそらし、国民を愚弄するもの以外の何物でもない、激しい憤りを覚えるものであります。  すべての政治家、すべての有権者の責任であると閣僚が強弁するのであれば、有権者の信を問うべく、速やかに衆議院を解散し、国民の審判を仰ぐべきが憲政の常道であります。  総理大臣の決断を強く要請して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  121. 井上裕

    委員長井上裕君) 山本正和君。
  122. 山本正和

    ○山本正和君 私は、自由民主党並びに社会民主党・護憲連合を代表して、ただいま議題となりました平成八年度予算三案について賛成の討論を行います。  賛成の第一の理由は、景気への配慮が行われている点であります。  本予算案における公共事業費は、前年度当初予算比四・一%増と、一般歳出全体の伸び率二・四%を大幅に上回る予算が確保されております。加えて、二兆円規模の所得税、住民税の特別減税も継続されており、かかる措置が相まって景気回復をより確かで力強いものにしていくことを確信するものであります。  賛成の第二の理由は、経済構造改革への積極的な取り組みが見られることであります。  国際的競争の激化の中で我が国経済構造改革を進めるため、科学技術振興費は前年度当初比一〇・九%増と十七年ぶりに二けた増の予算が計上されております。大学など国立の研究所に勤める研究者を対象に独創的な研究テーマを募る公募式研究制度や若手研究者を育成する特別研究員制度の拡充など、将来の経済発展基盤を形づくる分野に重点配分がなされており、これらはいずれも二十一世紀に向けた我が国経済のさらなる発展に大いに資するものであります。  賛成の第三の理由は、高齢者やハンディキャップのある人への対策を重視している点であります。  本予算案では、在宅介護、老人保健などの施設の充実に重点が置かれており、社会福祉費は前年度に比べて九・四%増の三兆八千億円が確保されております。さらに、ハンディキャップを持つ人に対しても、昨年十二月に七カ年計画の障害者プランが策定され、関連施策費としてホームヘルパーなど在宅サービスの充実などで総額二千二百億円余りが計上されております。  このたび障害者プランがつくられたことにより、高齢者介護の新ゴールドプラン、子育て支援の緊急保育対策と二十一世紀に向けての総合的な保健福祉施策の三本の柱がそろい、これらの施策は人にやさしい政治を実践するものとして高く評価するとともに、今後は目標の早期実現を大いに期待するものであります。  最後に、本予算案審議の最大の焦点であった住専問題の処理について申し上げます。  本予算案では、住専処理のため、緊急金融安定化資金として六千八百五十億円が計上されております。現下の喫緊の課題である住専問題の早期解決は、我が国金融システムの安定性とそれに対する内外からの信頼を確保し、預金者保護に資するとともに、我が国経済を本格的回復軌道に乗せるために必要不可欠なものであります。かかる状況においては、いたずらに処理をおくらせることなく、まず政府の今回の住専処理スキームを一日も早くスタートさせ、その上で徹底した関係者責任の追及を行うとともに、責任に応じた資金の拠出を求め、もって国民負担の可能な限りの軽減に全力を挙げて取り組むことこそが真の国民の利益にかなうものであることをここに強く申し上げ、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  123. 井上裕

    委員長井上裕君) 有働正治君。
  124. 有働正治

    ○有働正治君 私は、日本共産党を代表して、九六年度政府予算三案に反対の討論を行います。  反対する第一の理由は、政府予算案があくまで住専問題を六千八百五十億円の血税で処理しようとしていることであります。  しかし、本委員会での予算審議が進む中で国民の反発はますます広がりました。最近の世論調査でも九割が反対の意思表示を明確にしています。本院の役割は、こうした国民世論にこたえ、血税投入を削除することにこそあることは余りに明白ではありませんか。  しかも、この間の論戦を通じ、政府の処理策の破綻ぶりは明々白々となりました。政府は、住専処理にかかわって、母体行の追加負担を繰り返し言明してきました。これ自体、三・五兆円の債権全額放棄が母体行のぎりぎりの負担としてきた説明の破綻を示しています。  さらに、母体行の責任のみならず、その犯罪的役割、それに追随した政府責任も鮮明になってきました。特に、証人喚問を通じて、住専側は本業である個人住宅ローンの顧客をターゲットにした借りかえ攻勢によって優良客が引き抜かれたことを証言しました。このことは、母体行が住専を設立したにとどまらず、つぶした責任があることを明らかにするものであります。  紹介融資の驚くべき実態も鮮明になりました。なぜ紹介融資をふやしていったのか、その背景に手数料、融資額と同額のあるいはそれを上回る通知預金、バックファイナンスなどがあることを住専母体行側も認めました。このことは、我が党が指摘したように、ぼろもうけ箱扱いしたことを裏づけるものであります。  大蔵提出資料をもとに母体行の紹介融資分に対する住専側の支払い利息を算出すると、八〇年度末から九一年度末の十二年間で八千億円に達しています。政府も紹介融資が問題であることをはっきり認めています。となると、母体行の紹介融資による大もうけの一部を追加負担させるだけでも六千八百五十億円の税金投入は不要となるではありませんか。  予算案に反対する第二の理由は、クリントン米大統領来日の際発表された日米安保共同宣言のもとでの軍拡予算となっていることです。  在日米軍の作戦範囲を極東からアジア太平洋地域等に拡大し、海外での日米共同作戦に道を開く安保再定義のもとでの軍事費の拡大は、日本の平和とアジア太平洋諸国への脅威の増大はもちろんのことで、財政破綻を一層深刻にすることは避けられず、断じて容認できません。  軍事費は伸び率二・五八%と四年ぶりの高い伸び率となり、四兆八千五百億円となっています。加えて、沖縄県民が強く返還を求めている普天間飛行場の返還に伴う一兆円にも上ると言われる移転費は国民負担に求める意向です。こうした軍拡の結果は、消費税率の五%にとどまらない大幅な税率アップを招くことは必至であります。  第三に、予算案については、浪費とむだの構造を温存、拡大する部分に徹底的にメスを入れること、また不況からの脱出を図る予算に転換するため、消費税の増税を中止し、個人消費拡大の思い切った予算配分を行う、防災対策や福祉、教育を大幅に充実させることなど、深刻な財政危機の打開、国民本位の財政再建に向けた第一歩とすべきです。  以上、本年度予算案に対する反対討論といたします。(拍手)
  125. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で討論通告者の発言はすべて終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  三案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  126. 井上裕

    委員長井上裕君) 多数と認めます。よって、平成八年度総予算三案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。(拍手)  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三分散会