運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1996-04-25 第136回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月二十五日(木曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月二十四日     辞任         補欠選任      石井 道子君     狩野  安君      中島 眞人君     依田 智治君      松村 龍二君     釜本 邦茂君      直嶋 正行君     猪熊 重二君      水島  裕君     益田 洋介君      阿部 幸代君     聴濤  弘君      緒方 靖夫君     上田耕一郎君  四月二十五日     辞任         補欠選任      狩野  安君     石井 道子君      金田 勝年君     亀谷 博昭君      猪熊 重二君     直嶋 正行君      釘宮  磐君     加藤 修一君      横尾 和伸君     渡辺 孝男君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         井上  裕君     理 事                大河原太一郎君                 斎藤 文夫君                 清水 達雄君                 塩崎 恭久君                 泉  信也君                 白浜 一良君                 都築  譲君                 山本 正和君                 有働 正治君     委 員                 阿部 正俊君                 石井 道子君                 狩野  安君                 釜本 邦茂君                 亀谷 博昭君                 久世 公堯君                 河本 三郎君                 鴻池 祥肇君                 坂野 重信君                 関根 則之君                 谷川 秀善君                 野沢 太三君                 野村 五男君                 服部三男雄君                 真鍋 賢二君                 依田 智治君                 荒木 清寛君                 猪熊 重二君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 大森 礼子君                 加藤 修一君                 小山 峰男君                 鈴木 正孝君                 直嶋 正行君                 益田 洋介君                 横尾 和伸君                 朝日 俊弘君                 一井 淳治君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 川橋 幸子君                 前川 忠夫君                 上田耕一郎君                 聴濤  弘君                 小島 慶三君                 島袋 宗康君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        大 蔵 大 臣  久保  亘君        法 務 大 臣  長尾 立子君        外 務 大 臣  池田 行彦君        文 部 大 臣  奥田 幹生君        厚 生 大 臣  菅  直人君        農林水産大臣   大原 一三君        通商産業大臣   塚原 俊平君        運 輸 大 臣  亀井 善之君        郵 政 大 臣  日野 市朗君        労 働 大 臣  永井 孝信君        建 設 大 臣  中尾 栄一君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    倉田 寛之君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  中西 績介君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       岡部 三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  臼井日出男君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       田中 秀征君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 秀直君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  岩垂寿喜男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  鈴木 和美君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        藤井  威君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        公正取引委員会        委員長      小粥 正巳君        公正取引委員会        事務局審査部長  矢部丈太郎君        警察庁長官官房        総務審議官    山本 博一君        総務庁長官官房        審議官      土屋  勲君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛庁経理局長  佐藤  謙君        防衛庁装備局長  荒井 寿光君        防衛施設庁長官  諸冨 増夫君        防衛施設庁総務        部長       大野 琢也君        防衛施設庁施設        部長       小澤  毅君        経済企画庁調整        局長       糠谷 真平君        経済企画庁総合        計画局長     土志田征一君        経済企画庁調査        局長       澤田五十六君        環境庁企画調整        局環境保健部長  野村  瞭君        環境庁水質保全        局長       嶌田 道夫君        沖縄開発庁総務        局長       嘉手川 勇君        国土庁土地局長  深澤日出男君        国土庁大都市圏        整備局長     五十嵐健之君        国土庁防災局長  村瀬 興一君        法務大臣官房審        議官       山崎  潮君        法務大臣官房司        法法制調査部長  永井 紀昭君        法務省刑事局長  原田 明夫君        法務省人権擁護        局長       大藤  敏君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省経済局長  野上 義二君        外務省条約局長  林   暘君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局長  小村  武君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省理財局長  田波 耕治君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        国税庁次長    若林 勝三君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文部省初等中等        教育局長     遠山 耕平君        文部省体育局長  佐々木正峰君        厚生大臣官房総        務審議官     亀田 克彦君        厚生省生活衛生        局長       小林 秀資君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        農林水産大臣官        房長       高木 勇樹君        農林水産省経済        局長       堤  英隆君        農林水産省構造        改善局長     野中 和雄君        林野庁長官    入澤  肇君        通商産業省機械        情報産業局長   渡辺  修君        特許庁長官    清川 佑二君        運輸省航空局長  黒野 匡彦君        郵政大臣官房審        議官       品川 萬里君        郵政省電気通信        局長      五十嵐三津雄君        労働大臣官房長  渡邊  信君        建設大臣官房長  伴   襄君        建設省都市局長  近藤 茂夫君        建設省道路局長  橋本鋼太郎君        自治大臣官房総        務審議官     湊  和夫君        自治省行政局長  松本 英昭君        自治省行政局公        務員部長     鈴木 正明君        自治省行政局選        挙部長      谷合 靖夫君        自治省税務局長  佐野 徹治君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   涌井 紀夫君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  石垣 君雄君    事務局側        常任委員会専門        員        宮本 武夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○資料提出要求に関する件 ○平成八年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成八年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成八年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     ―――――――――――――
  2. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、資料提出要求に関する件についてお諮りいたします。  平成八年度総予算三案の審査のため、住宅金融専門会社問題について、株式会社桃源社代表取締役社長佐佐木吉之助君に対し、  一 過去五年間の所有不動産の全リスト(所有   地・面積、販売用を含む)  二 過去十年間の関連会社名(出資及び人材派   遣をしている会社)、所在地及び役員名簿並   びに従業員数  三 過去十年間の関連財団名所在地及び役員   名簿、寄附行為  四 二及び三に係る過去十年間の財務諸表(な   い場合には予算決算書)  また、日本住宅金融株式会社代表取締役社長丹羽進君、株式会社住宅ローンサービス代表取締役社長井上時男君、株式会社住取締役社長山本弘君、総合住金株式会社代表取締役社長大槻章雄君、第一住宅金融株式会社取締役社長山仲靖朗君、地銀生保住宅ローン株式会社代表取締役社長坂齊春彦君、日本ハウジングローン株式会社代表取締役會田稜三君に対し、   融資額上位十グループについて母体行が先順  位で融資を行ったものの担保権設定額担保権  設定順位  以上の文書を本委員会に提出するよう議長を経由して要求いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、その手続等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  5. 井上裕

    委員長井上裕君) 平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、総括質疑を行います。猪熊重二君。
  6. 猪熊重二

    猪熊重二君 平成会・公明の猪熊重二でございます。住専問題について質問したいと思いますが、その前に一点、現時の沖縄の基地に関連する問題について、防衛庁長官にお伺いします。  御承知のとおり、在沖縄米軍楚辺通信所の一部敷地につき契約上の使用期限が切れて、現在政府は地主の知花昌一さんの土地を何の権原もなく占有し、これを米軍に提供している。  そこで、防衛庁長官に、国が知花さんの土地を占有することの法的な正当性があるのかないのか、また知花さんが現在提起している土地使用妨害禁止仮処分裁判見通しについてお伺いしたい。
  7. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 委員お尋ね楚辺通信所使用権原につきましては、五十万平方メートルという、所有者四百四十名、そのうち一名の方の使用権原切れに伴いまして使用できない、使用権原が得られていない状態になっているわけでございまして、極めて残念でございます。しかしながら、楚辺通信所は、我が国及び極東の平和と安全のために日米安保条約並びに地位協定に基づいてその使用が認められている施設・区域でございまして、我が国は引き続き米側に提供する義務を負っているものでございます。  従来から申し上げてまいりましたとおり、過去二十年間にわたり、土地所有者との間で賃貸借契約に基づいて適法使用してまいった土地でもございます。また、当該土地を引き続き米側に提供するということは、日米安保条約地位協定上の私ども義務であるのみならず、極東の平和と安全のために必要なものであると考えております。  目下、駐留軍用地特措法に基づきまして土地使用権原を得るための所定の手続をとりつつございます。現在、引き続き使用権原を得るための努力をいたしているところでもございます。また、土地所有者に対しましては、賃借相当の全員を提供することによりまして所有者に損害を生じない措置も講じているわけでございます。  以上のような事情を勘案いたしますと、土地所有者との間で法的な紛争状態にあるということは言えるわけでございますが、当該土地所有者に返還をされていない状態を直ちに違法であるということは申し上げられない、こういうふうに従来から申しているわけでございます。  私どもといたしましては、いずれにいたしましても、できる限り早期に駐留軍用地特措法に基づきまして使用権原を得るよう最大限努力をいたしてまいりたいと考えております。
  8. 猪熊重二

    猪熊重二君 裁判経過は。
  9. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) なお、裁判経過につきましては、政府委員の方からお答え申し上げます。
  10. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) お答えします。  知花氏からの所有地立ち入り等仮処分申請が現在行われておるところでございまして、その内容は二つございます。  一つは、所有地への立ち入り及び立ち入りに関する使用妨害禁止でございます。それから二つ目は、工作物の収去、いわゆる撤去でございます。土地明け渡し趣旨とする二つ仮処分命令申し立てがなされておるところでございまして、昨日、第三回の審尋那覇地方裁判所において行われたところでございます。  この審尋におきまして、債権者でございます知花昌一氏からは、本件申し立て二つのうちの二番目の工作物撤去及び本件土地明け渡しにつきましては取り下げられておるところでございます。したがいまして、現在本件土地立ち入り条件について裁判所で仮執行の検討が行われているという状況でございまして、本日五時から第四回の審尋が予定されておるところでございます。  この裁判見通し等につきましては、いずれも裁判所で係属中の問題でございますので、私ども裁判見通しについての答弁は差し控えさせていただきたいというふうに考えます。
  11. 猪熊重二

    猪熊重二君 防衛庁長官にもう一度お伺いします。  あなたの答弁は、一方において、知花さんの土地を国が占有しているのは違法とは言えない、こう言っている。一方において、占有権原がないから占有権原を求めるために土地収用委員会に今申請中だと言うんです。片一方では適法だ、違法じゃないと言い、片一方では権原がないから権原土地収用委員会に求めている。どちらの答弁が本当なんだ。
  12. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 私どもは、先ほど申し上げましたとおり、土地使用権原が失われている状態でも直ちに違法ではないという立場をとっておるわけでございます。  お申しつけの件につきましては、我が国アメリカとのいわば国と国との約束、こういうことを踏まえると、引き続き提供する義務というものをしっかり果たしていくべき立場にある、こういうふうに考えているわけでございます。
  13. 猪熊重二

    猪熊重二君 憲法条約の優劣問題において、憲法の方が条約よりも優越するというのは憲法学界の通説なんです。あなたが今言っているのは、日本国アメリカ合衆国との間の条約上の義務日本国にどれだけあるかどうかそれは知らぬけれども、その問題と憲法二十九条の財産権保障規定とでは、財産権保障規定の方が優先するんです。  あなたが言っていることはだめだ。もう一回答弁し直しなさい。
  14. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 繰り返しになって恐縮でございますが、先ほど申し上げた四つの事由によりまして、私ども使用権原は失われている状態でも直ちに違法ではないと、こういう判断の上に立って、引き続き米側に対して土地を提供する義務というものを果たしてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  15. 猪熊重二

    猪熊重二君 総理、私が申し上げたいのは、日本法治国家なんです。国が法律を無視するようなことがあって、それで国民に法を守れなんということが言えますか。  その辺において、総理がもう少し、日本法治国家である、道義国家であるという立場に立つとすれば、誤りを認めて、ともかく一たんは土地を返すべきだ、こう思いますが、総理の見解はいかがでしょうか。
  16. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今事実をよく熟知された上で猪熊議員はこの議論を展開しておられると思います。  私は、憲法条約のどちらが優先するかといった議論をここで蒸し返すつもりはございません。そして、国が現に土地使用権原を失っている状態というものは事実御指摘のとおりであります。同時に、我々は日米安全保障条約というものを遵守し、これを維持強化していくということを、私は国の安全のみならずアジア太平洋地域の安定のためにと申して先日来委員会でもしばしば大変厳しい御叱声を浴びておりますが、私はその役割が減じているとは思っておりません。そして、こうした事態を現出しないために、私は緊急使用申し立て権原法律上担保され、また緊急使用手続というものが法定をされておったと思います。  委員からおしかりを受けるといたしますならば、そうした十分な日程を考えた上で、法律上の個人の権限を侵す状態を現出しないように、しかも条約上の責任を果たし得るように政府は今日までの日程を考えていくべきではなかったかという御指摘であろうと思います。私は、そうした御意見があることを否定するつもりもありませんし、その中に含まれている事態の御認識を不当なものだと思うつもりは全くありません。  ただ、昨年、御承知のように沖縄県におきまして大変不幸な事件が発生をいたしました。そして、法的な手続に入る――大変失礼ですが、真剣に話しているときは真剣に聞いていただきたい。手続をそのまま実行することと発生した不幸な事件に対する事態の収拾と果たしていずれを優先すべきかという認識が私はあったと思います。そして、少しでも感情的な対立を避けたいという思いが、もし結果として法的手続に入ることがおくれ今日の事態を起こしたという意味政府責任を問われるのであれば、これは私はおしかりを甘んじて受けたいと思います。  その上で、私は今回のSACOの協議の中で、中間報告に至りますまでの中で、アメリカ側としては最大限努力を払って案をまとめるために努力をされたと思っております。そして、我々は今そのSACOにおける中間報告を受けて、十一月までにこれを具体的なものに仕上げていくために努力をする責任を負うております。  私から申し上げられることはただ一つ、現実の事態をおしかりいただくことは甘受いたしますが、この状況が一日も早く終結し正常な状態に戻り得るよう委員にもお力添えを願いたい。これは日米両国間の問題だけではなく、今後SACO合意事項というものを具体化していく上でも、私は非常に大きなプロセスを今体験しつつあると感じるからでありまして、どうぞその点の御理解を賜りたいと心からお願いを申し上げます。
  17. 猪熊重二

    猪熊重二君 総理とすると、もう少し早く手をつけておけばよかったんだけれども、といって余り人のことを非難もできないし、やむを得ぬ答弁ということで私としても一応了解申し上げます。  住専処理スキームに関して三、四点伺いたいと思います。  なお、質問に先立って私の立場を申し上げておきますと、住専問題は法的手続によって処理さるべきが相当であるという前提でございますので、御了解願いたいと思います。  まず、大蔵省が四月に発行した住専問題パンフレット、このパンフレットには国民の疑問にお答えするということで書いてあるんですが、この中に「政府住専処理策皆さん預金を守るためにどうしても必要です。」と、こう書いてある。  大蔵大臣に伺いたいのです。ここで言っている「皆さん預金」というのは、国民のうちのだれの、だれに対する預金を守るために住専問題処理策が必要なのか伺いたい。
  18. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専はいわゆるノンバンクの一種でございますので、直接には預金を受け入れておりません。しかし、この住専に対しましては、系統金融機関を初めといたしまして、広く国民一般から預金を受け入れております多数の金融機関が巨額の融資を行っているわけでございます。  したがいまして、もし住専問題を未解決のまま放置いたしますならば、このような体力が弱いと考えられておりますような金融機関預金者に不安が生じることは必至でございまして、さらに不安の波及によりまして、我が国預金全般に対する信用の低下につながるおそれが大きいと考えたものでございます。そういう意味で、広く「皆さん預金」と、このように御説明を申し上げているわけでございます。
  19. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、銀行局長、今のあなたの答弁だと、ここに言う「皆さん預金」というのは、住専に対する融資先である母体行ないし一般銀行及び農協系統金融機関預金している預金者の保護だと、こういう趣旨でよろしいんですか。
  20. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘のとおりでございます。  もとより、こういう波及が起こりまして、その結果として預金受け入れ金融機関が破綻をする、あるいは経営危機に陥った後に、預金者を直接救済するという段階になってから行政が関与をすべきではないかという御意見のあることも私ども承知をいたしておりますが、この住専問題というものの特殊性あるいは現在の金融環境が不安定であるということを勘案いたしまして、私どもとしては事前にと申しますか、そのような事態に至る前に国民預金を守るための措置が必要だと、このように判断をした次第でございます。
  21. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、要するに住専そのものには預金者はいない、だから住専に関する預金者保護ということはあり得ないわけです。その住専に対する貸し付けをしている銀行及び農協系金融機関預金者の保護だということを前提にして、銀行等の一般金融機関に対しては預金保険法、それから系統金融機関に対しては農水産業協同組合貯金保険法という法律が制定されている。  この預金保険法及び貯金保険法の制定時期、立法理由、それからそれぞれの機構において現在保険金に充当するべき責任準備金の具体的金額について、大蔵大臣及び農水大臣から伺いたい。
  22. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) まず預金保険でございますが、預金保険法は昭和四十六年四月に施行されたところでございますが、これは当時における銀行預金等の支払い手段としての地位の増大等にかんがみまして、金融機関が破綻した場合に預金者等の保護を図るため、預金等の払い戻しにつきまして保険を行う制度を確立いたしまして、もって信用秩序の維持に資することを目的としたものでございます。  なお、預金保険機構の平成七年度決算につきましては現在取りまとめを行っているところでございますが、七年度末における責任準備金の残高は約三千八百六十億円でございまして、これは六年度末の残高が約八千七百六十億円でございましたので四千九百億円の減ということになっております。
  23. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 農水産業協同組合貯金保険法の関係でございますが、これは農水産業協同組合、農協と水協ということでございますが、その貯金者の保護という観点に立ちまして、農協や水協の貯金等の払い戻しにつきまして保険を行う制度を確立し全体的な信用秩序の維持を図ろうということで、昭和四十八年七月から施行されております。  また、貯金保険機構の責任準備金の残高は、平成七年三月末段階で一千五十八億円でございます。
  24. 猪熊重二

    猪熊重二君 両方の法律とも、預金者に対する必要な保険金を支払うことが信用秩序の維持に資するためだと、こう書いてあるんです。ですから、預金者預金を保険して保険金を支払う制度をつくるということが信用秩序維持の中心的課題だということになっているんです。  そこで伺いたい。大蔵省、じゃ今住専に対する貸付金融機関のうち銀行等で、このような住専が破綻した場合に、さらに銀行が破綻し、そのために預金者預金払い戻しに不安を生ずるかどうかというふうなことについて調査いたしましたか。
  25. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 私ども、直接に、住専が破綻することによって銀行の経営に関して国民がどのような不安をお持ちになるかということについての調査はいたしておりません。  ただ、最近、特に一昨年末の二つの信用組合の破綻以来、預金というものに対する国民の方々の御関心が大変に深まり、金融機関の経営状況というものに関して御関心が高まりまして、その状況によって自分の預金を移すというような動機をお持ちの方々がふえているのではないかというような民間の調査機関の調査の結果については、幾つか承知をしておるところでございます。
  26. 猪熊重二

    猪熊重二君 私の質問とは違う、その答弁は。私が質問したのは、住専が破綻してそこに貸し付けている金融機関がおかしくなった場合に、おかしくなることはないんです、なぜかといえば債権放棄しているんだから。まあそれはいい。要するに、住専が破綻することによって貸し付けている金融機関がおかしくなる可能性があるということで、そこの預金者預金保険の適用に関する調査をしたかしないかと聞いている。
  27. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 今御指摘のような調査は直接にはいたしておりません。
  28. 猪熊重二

    猪熊重二君 農水省はいかがでしょうか、今の問題について。
  29. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 同じような考え方で、そういう調査はいたしておりません。
  30. 猪熊重二

    猪熊重二君 住専問題で中心的課題は預金者の保護だと、これにも言っているじゃないか。(資料を示す)これにも言っている。この預金者はだれだと言ったら、結局、今言った住専に対する融資元の銀行の預金者あるいは住専融資している系統の預金者の保護だと言っている。だから、大蔵行政がもしやることとすれば、住専が破綻することによって金融機関はどうなるんだろう、その金融機関に対する預金者を保護せにやならぬ事態になるのかどうなのかと、それをやるべきがまず第一の仕事なんだ。なぜやってないんですか。
  31. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 政府が、住専が破綻することによって預金者がどのような不安を持ち、その結果としてどのような預金の移動が起こるかというような調査をすること自体の影響というものも、また私ども考えなければならないことかと存じます。  ただ、そういう調査も必要な場合もあろうかと存じますけれども、先ほど申し上げましたように、預金者が現在の金融情勢につきましていろいろな意味で御心配になっておられる、そのことが金融機関の経営状況について不安を与えるということをきっかけといたしましてどのような影響を与えるかということについては、私ども常々非常に懸念をしておるところでございまして、今回の住専の処理もそのような現下の金融情勢を勘案した上、決定をいたしたものでございます。
  32. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 今回の処理スキームの策定に当たりまして、例えば農協系統といたしましても一定の資金供与を行うということにしたわけでございますが、この場合におきましても、例えば農協の点についてお考えいただきますというと、九百万人の農家組合員等から約六十八兆円という大変膨大な額の受信業務を受けていると、こういう事情にございます。かつ、それが全国二千五百の農協によって経営されているということでございますので、農協をめぐります新たな信用不安が起きるといった事態は避ける必要があるということを基本に対応したところでございまして、御指摘のような貯金の払い戻しといった事態を想定することは適当でないということから、そういう考え方に立ちまして調査をいたしていない、こういうことでございます。
  33. 猪熊重二

    猪熊重二君 私が申し上げたいのは、国会がせっかくこういうふうな預金保険法、貯金保険法という法律をつくっているんでしょう。そして、預金保険法、貯金保険法のそれぞれに信用秩序維持のための最重要課題だと書いてあるじゃないか。だから、まず住専が破綻したということになって、さあ国民は、預金者はどうなんだろうと考えるんだったら、まずそれを考えなきゃいけないじゃない。  だから、先ほど聞いたのは、責任準備金は幾らあるんだと。預金保険法だと三千八百六十億あると、これで足りるのか足りないのか。あるいは、貯金保険法に基づく責任準備金は千五十八億あると、これで一千万までの預金者に対して心配ありませんよという金額に合うのか合わぬのか、合わぬとしたらどう処置したらいいか。それをまず考えるべきであって、それについて何にも調査していないんじゃ、あなた、住専問題に関する大蔵行政あるいは農水省の農協系統に対する処理として、行政のあるべき姿としては全く逆じゃないか。  銀行局長憲法七十三条第一号に何と書いてあるか読んでみなさい。
  34. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 憲法七十三条は内閣の職務を定めてあると存じておりますが「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。 一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」と書いてございます。
  35. 猪熊重二

    猪熊重二君 国会が定立した法律の施行を、法律を誠実に執行することは内閣の業務の第一号に書いてある、憲法上。なぜこれをやらないんですか。そして、おかしなスキームを持ってくる。  大蔵省の場合は私はまあいいと思うんです。なぜかというと、全額債権放棄してまだ金を出せと言っているんだから。銀行が倒産することはないだろう、銀行が倒産しなければ預金者預金不安ということもない、これはわかる。  特に農水省、もちろん貯金保険法は農水省だけじゃなくて大蔵省も共管なんだから、両方で集まって、一体これによって農協系統金融機関がおかしくなるかならぬか、なりそうだったら、一千万円以上要る人が何人いるのか、一千万円の人が何人いるのか、八百万円の人が何人いるのか、幾ら金があったらこの貯金保険法を誠実に執行することができるだろうかということを調べるのがまず第一の仕事なのに全然やっていない。やるべきことをやらないでおかしなものをやるというような、そこがこの住専処理のつまずきの第一歩だと私は思うんです。  総理預金保険法、貯金保険法の執行に関する今の状況について総理の所見を伺いたい。
  36. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 金融における信用不安の起こる可能性をどのように判断するかということは、今政府の持っている非常に大きな責任だと考えております。  特に、今日のように深刻な不良債権の状況をどのように解決していくかという問題を考えますときに、予測される事態が起きてからの判断では、この問題は国民の金融に対する信用、信頼を回復することは非常に難しくなると思っております。そこは政策上と申しますか、事態に対する責任を伴います判断の問題であろうと考えております。  確かに、猪熊さんが今おっしゃいましたように、預金保険法、貯金保険法という制度が法律をもって整備されております。この法律に従うことがまず重要ではないかという御意見も、私は法制上の問題として理解できないことではございません。しかし、国民の間には今金融に関しての情報その他について十分なものが確保されていないという問題もございます。  したがいまして、この国会に対しましては、深刻な不良債権問題の処理とともに、新たな時代における金融システムをいかに確立していくかということで、必要な法律等、預金保険法、貯金保険法に関します法律の改正等も提案を申し上げて御審議をお願いしているところでございます。
  37. 猪熊重二

    猪熊重二君 もうこれ以上申し上げませんが、私が申し上げたいのは、預金保険法、貯金保険法を執行する、その執行するについての調査をやることがまず第一だと。そして、それで預金者保護のために対応し切れぬと言うのなら、それの改正を考えるべきだと。そういうことについての調査を何にもしないで、現行法の調査を何にもしないでおいて、住専処理機構法なんという全然別個な法律を持ってくる。しかも、預金保険法を改正するというふうな全くへんちくりんな法律によって処置しようとしている。  だから、まず現にある法律を適用して、不足ならばそのときにまた考える。これは現にある法律の適用を全然考えていない行政府の越権だと私は思うんです。国会が定立した法律をなぜ履行しない、なぜ誠実に執行せぬ。憲法上誠実に執行するのが内閣の第一の仕事だと書いてあるんです。  次の質問に移ります。  平成五年二月三日付の覚書について伺いたい。  この覚書は、署名者は寺村銀行局長、眞鍋経済局長となっているが、合意の主体は大蔵省及び農林水産省となっている。  そこで、まず大蔵大臣及び農水大臣に対して、この覚書の法的効果に関する包括的、概括的な所見を承りたい。これは大臣から承りたい。
  38. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) この覚書は第二次再建計画を誠実に履行するという立場に立ってつくられたものと承知いたしております。したがいまして、両局長間におけるこの覚書が法的に拘束力を持つというものではないと、こう思っております。
  39. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 今、大蔵大臣からお話ありましたように、当時、系統は住専の債権に非常にいろいろ問題があるんではないかという疑義を持っていました。貸し込んだ系統もたくさんの当事者がありました。これを大蔵当局とそれから農水省の間でまとめてくれというお話もございまして、それに基づいてできた覚書でございます。  したがって、大蔵大臣がお話ししましたように、覚書でございまして、これに基づくいろいろの法的な効果というような問題は、特に覚書というのは一つの今後の処理方針を確認したと、こういう性格のものだと私は思っております。
  40. 猪熊重二

    猪熊重二君 農水大臣にまた伺いたい。  この覚書は法的に拘束力はないけれども、今後の処理方針に対する指針であるというふうな趣旨のことを言われたが、法的に何の効果もないものがどうして今後の処理の指針になるのか、その辺のことをもう少し明確にお答えいただきたいんです。
  41. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 大臣が申し上げましたのは、きのうもお話がございましたけれども、覚書自体には、両当事者間のいろいろ話が難航する中での議論の整理をしたということでございまして、それに尽きるわけでございます。そういう意味で今後の処理の指針といいますか、そういう意味での両省間の話し合いの整理をした、こういう意味で大臣はおっしゃったというふうに私は理解いたしております。
  42. 猪熊重二

    猪熊重二君 少し覚書の内容について伺います。  この覚書は、住専の再建についての協議、こういうことになっているんです。しかし、住専を再建するとかしないとか、民間の単なる貸金業者にすぎない住専の経営方針や再建計画について大蔵省がいかなる指揮命令権を持っているか、大蔵大臣
  43. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専は旧出資法に基づきます届け出制の会社でございますので、銀行のように法令上いろいろな規制とか指導とかいうことを行う権限を与えられているものではございません。したがいまして、大蔵省住専の経営方針等に対しまして指示、命令するという権限を有するものではございません。  御指摘の点につきましては、そういう住専につきまして金融全体の立場からどのような施策が必要であるかということについて関係の省庁たる農水省と打ち合わせをしたと、そういうことでございます。
  44. 猪熊重二

    猪熊重二君 要するに、住専に対して大蔵省が有している権限は、貸金業に関する監督という一般的な監督権はあるけれども住専を再建するとか再建させぬとか、どうだとかこうだとかそんなことは何の権利もない。何の権限もないことを当時の寺村銀行局長がやるということは、これはどういうことなんだ。
  45. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 当時、銀行局長にいたしましても、農水省経済局長にいたしましても、住専の経営そのものをどうする、あるいはどう指示するという見地からあの覚書を結んだということではございませんで、先ほどから農水省あるいは大蔵大臣から御説明申し上げておりますように、当時の状況、当事者間の協議が難航しておった、そういう中において関係者の協議を円滑に進めるようにと、そのためには行政としてどのようにすればいいかという点について意見の交換をしたと、こういうことでございます。
  46. 猪熊重二

    猪熊重二君 時間の関係で質問をはしょりますが、この覚書の中には住専の「資金の返済に当たっては、高金利の調達先から優先的に実施する」なんという言葉があるけれども大蔵省住専に対して、借金を高金利の方から順番に返しなさいよなんということを言う権限がどこにあるんだ。
  47. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 当時、既にこの二月三日という時点の以前の段階におきましても、住専の再建をどのように図っていくかという関係者の話し合いというものは進んでいたわけでございます。しかしながら難航していた、そういう関係者の話し合いの状況をも踏まえまして、行政当局としてどのような姿勢で臨んだらいいものか、こういう点について意見の交換を行ったものでございます。ここに記されてございますような金利あるいはその他の状況につきましても、恐らく関係者の間でこのような問題について当時いろいろな議論が行われていた、そういうものを踏まえまして、行政庁としての姿勢を協議した、こういうことかと考えております。
  48. 猪熊重二

    猪熊重二君 いや、服部さんから今余りでかい声を出してどなるなと言われたから少し小さい声で質問するけれども、しかしあなた、農水省にしろ大蔵省にしろ、住専に対してどれの借金のうちどの順番から返せの返さぬなどということを言う権限が何もないにもかかわらず、いい大人が二人で何でこんなことを相談するんだよということなんです。  さらに言えば、農協系統の金利は四・五%、母体金融機関は〇%、一般金融機関は二・五%とする。この住専が借り受け先に対して支払うべき金利について、どうして大蔵省なり農水省がこんなことを住専に言えるのか、私はそこが全然わからぬからさっきから聞いているんです。それを銀行局長は今、いや、いろいろ何か関係者が協議していたけれども、なかなか協議が混乱するとかいろいろあるから、そこでこういうふうなことでどうだろうと、こうやったのがこの覚書だと言うんだけれども大蔵省も農水省も何にも権限がないことについて、何で銀行局長と経済局長がこんな覚書なんというものをつくるんだ。なぜこんな人のうちの金利まで言えるんだ。銀行に対しても言えやせぬですよ、この借り入れについては金利を幾らにしろなんていうのは。大蔵省が具体的問題に関して、何々銀行に対してあなたは金利を幾らにしろ、そんなこと言うんだったら私に対する貸し金についても金利を下げてもらいたい。そんなこと言えっこないじゃないか。  何にも言えないものをなぜこの二人がやるんだ、なぜやったんだと、そこのところを聞いているんです。
  49. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) この覚書の初めにも記されてございますように、この覚書というのは行政当局たる大蔵省及び農水省が当事者間の協議が円滑に行われるよう対処していくためにどうすべきかという観点から相談をしたものでございます。  ところで、もとより猪熊委員指摘のように、個々の金融取引に対して行政当局として関与すべきものでないことは御指摘のとおりでございますが、しかしながらこの住専問題のように全体として十三兆円というような巨大な権利義務関係が基礎にあり、またその処理の仕方によっては預金受け入れ金融機関の経営に大きな影響を与え、結果的に国民預金というものに不安を与えることになるような問題につきましては、御指摘の権限という意味で申しますならば、私ども日本の金融秩序を安定させるという責務を負っているものと考えております。  したがいまして、個々の金融取引という観点からではなく、日本の金融システム全体の安定に責務を負う立場の当局としてどのような姿勢で臨まなければならないか、このような観点から当時の関係者が協議をした、こういうふうに理解をいたしております。
  50. 猪熊重二

    猪熊重二君 今、銀行局長が言うように、覚書は確かに表題では「当事者間の協議が円滑に行われるよう対処していく」と、こう書いてある。しかし、本文には何と書いてあるか。「母体金融機関に次の点を文書により確約させる」と書いてある。要するに、文書によって、再建計画はこうですよ、借入金の返済順番はこうですよと、あるいは金利の問題。何も当事者間の協議が円滑に行われるように覚書を書いておこうよということじゃなくて、金融機関に対してこうさせると言っているんです。させる権限はないんだ。住専に対してもないし、金融機関に対しても、要するに母体行を中心とする銀行に対しても大蔵省はそういう権限を持っていないんです。持っていないにもかかわらず、何でこんなことをやるかということなんです。  それで、これが単なる雑談ならいいですよ。これがもとになって今回のスキームをやっていく根幹になっているんです。だから、私が先ほど申し上げた預金保険法、貯金保険法の適用と誠実な執行というのを全然念頭に入れないのが第一のつまずきの石である。その次に、このおかしな覚書というものをもとにしてつくったことが第二のつまずきの石なんです。何にも権限がないんです。もし公務員として権限がないこういうふうなことを本当に履行させたら公務員の職権乱用じゃないか。その辺について、大蔵大臣、どうお考えなんですか。役人にこんなことをやらせちゃいけないと私は思うんです。  しかも、何の権限もないことについてこんなことをやらせて、お互いに局長同士でこうで、それを大臣が知っていたのか知らぬか知らぬけれども、こんなことをやっちゃいけないんだ。なぜかというと、要するに法治主義を根幹から否定してしまうんです。法律を無視して行政が、役人がこんなことをやるのをこのまま黙認したら、法治主義は崩れ去って日本の民主主義はどうにもしようがなくなると私は思うから、こんなおかしな覚書なんというものに従ってスキームをやる、とんでもない話だと思っているんです。大臣どうですか。
  51. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 先ほどお答え申し上げましたように、この覚書が当事者間の権利義務に関する問題を拘束するものではないと私は思っております。  当時、この覚書は、経営の問題を生じている住専の再建のために多くの金融機関がかかわっている状況にかんがみて、大蔵省として行政的にどのような指導助言ができるかということで努力をされた結果であり、当時は住専を再建するという立場で進められたものと思っております。  今おしかりをいただきましたけれども、この種の覚書というものが局長レベルの責任で結ばれていることについてこれをどう考えるかというような問題は、行政責任のあり方として検討すべき問題ではあろうかと思っておりますが、当時としてはこのような行政指導が適切な対応と考えられたものと思っております。
  52. 猪熊重二

    猪熊重二君 何にも権限がないことにこういうふうに口を出す、こういう官僚国家を許したらだめなんです。  私が申し上げているのは、この覚書に関して一番最初に申し上げたように、単なる町の貸金業者の再建だとか再建でないとかなんということは行政が何ら関係することじゃないんです。それなのになぜこんなに大騒ぎしてやるのか。むしろ、そういう大騒ぎしてやる反面において、国会が定立した預金保険法、貯金保険法の誠実な執行なんということはすっぽかしじゃないか。  今、今回の住専処理スキーム全体を見て、何で国が法律に基づかずにこんなに民間に介入するんだろうか。民間に任せておけばいいんだ。そして、行政がやるべきことは、ささやかな預金が吹っ飛んじゃったという国民の不安をどう解消するかという問題なんです。預金、貯金がちゃんと保証されるということになれば、大蔵省はもう半年も一年も前からずっと金融秩序の何だとかいろんなことを言っているけれども国民にとっては直接的には自分の預金さえちゃんと返ってくれば心配は何もないんです。にもかかわらず、こういうふうな覚書を結び、この覚書によって事が処理されるということは非常な民主主義の危機だと私は思うんです。  それで、次の観点から伺う。大蔵省銀行局長でもいいけれども、今大蔵省が考えているこの住専処理スキームを実行したことによって最終的に住専の資産、負債はどういうふうになる見通しなんですか。私の立場からいえば、そんなものは人のうちのことだから本当は関係ないんだけれども銀行局長大蔵省、一生懸命住専処理スキームをやっているから、大蔵省が考えている住専処理スキームの最終的な到達点における住専の資産と負債はどうなって、残った資産はどこへ行くんだということを聞きたいんだ、私は。  もし資産が残ったら、現在のスキームからいったら国民が出した六千八百五十億をまず返すべきなんだと。私は出すことに反対ですよ。反対だけれども、仮に出すんだったらまず返すべきだと思うけれども、いずれにせよ、大蔵省が描いているこの住専処理スキームの最終における住専の資産と負債がどうなって、その負債の処理をどう考えているか伺いたい。
  53. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 予算をお認めいただき法案を成立させていただきますならば、一日も早く住専処理機構を設立いたしまして、住専を消滅させた上、その資産はこの住専処理機構が引き継ぐ、こういうことになるわけでございます。  引き継ぎました際に、母体行が三兆五千億の権利を放棄する等によりましてその評価をするわけでございます。再評価した上で、残りました資産につきましては回収に努めまして、それ以上の損失が出ないように、もとより損失を見込みましたものにつきましてもすべて回収する努力の対象とするということによりまして、もしその結果といたしまして予定していた以上の回収ができますならば、御指摘のように六千八百億につきましても国庫に還流することによりまして結果的に国民に御負担をかけないというような方策をも講じているところでございます。
  54. 猪熊重二

    猪熊重二君 今、銀行局長は非常に重要なことを言ったけれども、そういうふうにして住専処理で金が残ったら住専債権者に、ということは極端にはっきり申し上げれば農協金融機関ですよ、そこへ返すんじゃなくてまず国費に返すと、こう言われたんだけれども、そんなことはどこの法律のどこに書いてあるのか、ちょっと伺いたい。
  55. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 想定いたしております以上に債権の回収が進みましたならば、それは国庫に還流するというふうに今御提案を申し上げております住専処理特別措置法の中で明記をしているところでございます。
  56. 猪熊重二

    猪熊重二君 大分大きい声を出して、怒られたり大変いろいろしたんですけれども、ただ私は総理に最後に申し上げたいというか、総理に考えていただきたい。  この住専処理に関する現行のスキームは、私に言わせれば法律違反とは言わぬまでも法律を無視して、そして行政が不当に民間に介入して、しかも公平公正な処理策ではないと思う。ことしの四月十日に、住専問題の処理に関して四党の国対委員長の合意によって、金融全体の問題を含め、この住専処理に関する六千八百五十億の支出も含めていろいろ検討しょうという合意事項も成立しているわけです。だから、過ちを改むるに全くはばかることはない、国民に納得してもらう処理をするために何とかこの現行のスキームを変更して、法的に処理するという方策へ一歩でも二歩でも近づくべきだというふうなことを私は考えておりますが、総理のこの問題に対する総括的な見解をお伺いしたいと思います。
  57. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは、私ばかりでなく久保副総理からも同様の御答弁を申し上げてまいりましたと思います。  私どもは、この住専処理スキームというものをさまざまな角度の検討をいたした上で、何とか当事者間の話し合いで決着することを求めて、むしろぎりぎりまで時間を使い過ぎたという御批判もありました。そのために情報開示がおくれたという御批判も受けておりますが、要するに金融機関の損失額が確定しない状態が長く続くことによって、我々は、その場合の体力の弱い金融機関が経営不安にさらされ続けることの危険性、これが預金者に不安を与えること、さまざまな角度の議論を検討した結果、こうした決断をいたしました。  そして、それに対して、本院の御論議におきましても、また衆議院の御論議におきましても、さまざまな角度から、かわるべき考え方として御提起をいただいたお考えはございます。今、議員から、預金保険機構、貯金保険機構にゆだねるべきだ、むしろそれが本来の法律上のあるべき姿ではないかという御指摘もいただきました。法体系上の議論として、私はそれを否定するものではございません。  しかし、私自身が大蔵大臣のときに、実は、小さな信用組合でございましたけれども経営危機に陥りましたときに預金保険機構を使いたいということを考え、結果として、その執行までのタイムラグ等を考えましたときに、その信用組合の預金者の構成比率を見てついに断念いたした経験がございます。これもあるいは御批判の対象になり得るのかもしれませんが、現実の問題として私自身そういう体験を持ったことがございました。  あるいは破産法によれ、あるいは会社更生法によれ、さまざまな御意見を真剣にちょうだいしてまいりましたが、現在のスキームを捨ててこの御提案でいくならば間違いなく最大多数の合意を形成し得るであろう、しかも経済の動脈として非常に大切な金融に対する不安というものを一掃してしまう、景気回復を確実なものにするだけのスピードで処理ができるという考え方をまだ見出しておりません。私どもは、そうした問題意識を持ちながら、政治の決断として国民経済全体の立場からこのスキームというものを決断いたした次第であり、御理解を得たいと心から願っております。
  58. 猪熊重二

    猪熊重二君 関連質問をお願いします。
  59. 井上裕

    委員長井上裕君) 関連質疑を許します。海野義孝君。
  60. 海野義孝

    ○海野義孝君 平成会の海野でございます。  ただいま猪熊委員から住専につきまして種々御質問申し上げ、総理を初め皆様から御回答をいただきましたけれども、私は、今回の政府のおつくりになったスキーム、この処理策につきまして今日までこの法案がまだ審議もされない、こういう状況にまでなってきたということにつきまして、まず大蔵大臣、その辺についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、御意見をお聞きしたいと思います。
  61. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 平成八年度の予算の中に住専問題処理のための六千八百五十億円の財政支出を計上いたしております問題をめぐって、両院の予算委員会において熱心な御論議をいただきました。まだ参議院においては御審議を継続中でございまして、国会のお取り扱いについて私が申し上げる立場にはございません。  なお、この六千八百五十億円に関連をいたします住専処理特別措置の法案につきましては、既に二月九日に国会に提出してございます。この御審議は国会において行われることでありまして、審議の状況について私が申し上げる立場にはないと思っております。
  62. 海野義孝

    ○海野義孝君 恐らく今回のスキームをおつくりになった事務当局は、西村さんの銀行局の方で御苦労されたと思いますけれども、当初、このスキームを策定する準備に入られ、そのときに具体的に今回のスキームについての問題点、あるいは事前に準備しておくべきこと等について、西村局長はどのようにお考えになってこのスキームをスタートされたか、準備に入られたか、その辺をお聞きしたいと思います。
  63. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) この住専問題の検討の歴史は随分と長いわけでございまして、ある意味におきましては第一次再建計画、第二次再建計画も住専問題をどのように取り扱うべきかという検討め歴史の一環かと考えております。  私との関連で申し上げますならば、既に一昨年の七月に現在の仕事に就任いたしました時点でも、住専問題の重要性というものは政府部内のみならず、いろいろな民間の金融界あるいは言論界の中におきましても重要な金融行政上の課題として掲げられていたわけでございます。具体的には昨年の四月十四日に緊急円高・経済対策が政府として掲げられました時点で、間接的ではございますけれども、この住専問題というものに決意を新たにして取り組もうという趣旨のことが記されているわけでございます。  さらに、六月から七月にかけまして、金融制度調査会あるいは与党の金融・証券プロジェクトチームにおきまして住専問題という明確な課題が掲げられ、検討に取り組まれたわけでございます。  したがいまして、最終的には十二月十九日に政府・与党の御決断がなされたわけでございますけれども住専問題の検討の経緯というものは非常に長くかつ真剣なものがあったということを御理解いただきたいと存じます。
  64. 海野義孝

    ○海野義孝君 お伺いするところによりますと、ちょうど一年ぐらい前からもうこの問題については取り組んでこられたということでありますけれども、私の記憶するところによりますと、昨年のたしか十二月十九日にこの法案が、まさに翌日はいわゆる大蔵原案が、平成八年度の予算案が提出というか発表される前日でございましたし、しかも前総理が深夜に記者会見をして、国民は全くまさに寝耳に水をかけられたというか、そういうふうなときでございまして、この実態はほとんど知らない。  こういうように長く時間をかけてこられた割には、何か最後のところへ来てまさに脱兎のごとくこういったスキームをまとめ上げられたという点につきまして、これはもう結果論でありますけれども、現在、衆議院にいわゆる金融特別委員会が設置されて、広範囲にわたってこの問題について研究調査等をこれから審議されていくということでありますが、なぜこの問題が、昨年の四月にできないとしましても、夏の間の臨時国会等もあったわけですから、どうしてそのときからできなかったか。  結局、この問題がここまで長引いてきているわけですし、さらに今回例えば政府のこの処理案というものが決定したとしても、いつからこれが具体的にスタートするか。それまでの間の住専七社の債権債務と資産についての保全というものは全くないわけです。  こういったことから考えてみましても、まさにこういうスキームをおつくりになった中で一番の問題は、やはり国民の税金、つまり財政資金を投入するということについて国民の理解を十分に得られない中で、並行しながら国民の理解を得ていこう、こういったところにそもそもこのスキームを進めるに当たっての問題があった、このように思うわけでありますけれども、その点、大蔵大臣、どのようにお考えでしょうか。
  65. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 私は、海野さんが今御指摘になりましたことについては、行政立場で反省すべき問題がたくさん含まれていると考えております。  ただ、このような深刻な事態に至り、そして財政支出を行ってもこの問題の早期処理を行わなければ将来的に国益をさらに大きく損なうということになるかどうか、そこのところの判断の問題であったと思っております。その判断に基づいて、政府としては、前内閣において十二月十九日に決定された方針を新内閣の方針として引き継いで実施すべきものと考えたのでございます。今はそれが最善の方策であると思っております。  しかし、このような事態に至る過程について、御指摘がございましたように、もっと考えるべきことがあったのではないか、やるべきことがあったのではないかという御指摘については、私はそのとおりだと思っております。  したがいまして、新内閣においてこの方針を引き継ぎますに先立って、情報の開示の問題、そして債権回収の問題、責任の明確化の問題を関係閣僚会議において決定し、閣議の了承を得た上で進めているところでございます。  御指摘の点は、私どもとしては教訓として残さなければならない問題を含んでいると考えております。
  66. 海野義孝

    ○海野義孝君 実は先般、十一日に平成八年度の予算案が衆議院を通過したわけでありますけれども、この中で「制度を整備した上で措置する。」と。このことにつきましては、先日、同僚委員からも御質問申し上げたわけであります。  実は、この点につきまして、つい先日交代されました全銀協の前会長であった富士銀行の橋本さん、この方がこの問題について、住専処理のための六千八百五十億が執行凍結とも受け取れる形で扱われているということについての質問に対して、このように答えているわけです。「財政資金の受け皿となる預金保険機構の住専勘定や債権回収のための住専処理機構が設立されれば、ただちに執行される」と、こういうように述べ、予算の凍結には当たらないと。こういったことを民間銀行の幹部が退任に当たっての記者会見の際に言っているわけでありますけれども、大変この点は私はおかしいんじゃないか。  そもそも「制度を整備した上で措置する。」という問題については、まさに従来の予算というものはいわゆる官によって策定をされ、民によって、つまり国会においてこれが審議されるということでありましたけれども、いわゆる大蔵省でつくられた予算の執行に当たって、国会としまして「制度を整備した上で措置する。」と、このように言っているわけであります。こういった民間の機関からこの点についての解釈等を述べる、またこれと同様なことを大臣も言っていらっしゃるように私は、ちょっと記憶が誤っていたらこれはお許しいただきたいんですが、そのようにとっています。  そういう意味で、この「制度を整備した上で措置する。」ということ、これは平成八年度の予算の執行に当たって具体的に何をするかということについて大蔵省の御答弁をお聞きしたいと、このように思います。
  67. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) ただいまの問題は、与党と野党新進党の国対委員長間で合意をされましたことと、国会で修正をされましたこととの間にちょっと変化がございまして、それで国会に正式にこれを修正案として提案されましたのは与党三党でございまして、そして与党の賛成によって総則十六条が追加修正されたという経過承知をいたしております。  その際、提案されました与党の提案理由説明の中で申されておりますことは、住専の不良債権処理に財政支出を行うことの重要性と、このことに対する国民の十分な理解と納得を得るべくこの修正を行うものであるということが修正案の提案理由の中の重要な部分であったと私は記憶をいたしております。政府といたしましては、そのとおりに理解をいたしたいと考えております。
  68. 海野義孝

    ○海野義孝君 具体的に大蔵大臣としての御所見は述べていらっしゃらないというふうに思います。  次に、今回のスキームについてはこれまで長時間を要して討議されてきたわけですけれども、いろいろな問題点がどんどん指摘されてきているわけでありまして、責任問題等についても日常新聞等でもいろいろと、借り手等についても司直の手が入ったりして新しい事実が出てきているわけであります。  母体行の責任ということについてちょっとお聞きしたいと思うんですけれども、このところ久保大臣は頻繁に、いわゆる母体行の追加負担とかあるいは追加責任というようなことについて盛んにおっしゃっているわけでございます。このスキームの中で国民の税金を使うというようなことから大臣としても大変御苦心をされているということで、私は大蔵大臣としては精いっぱいの御努力をされているんじゃないかと、このように思うわけでありますけれども、それについて具体的に、そういった大臣のこのところでの発言の御真意ということについて。  それからもう一つは、政府の処理策での母体行の三・五兆円の全額負担、こういったことでは不足というようにお考えになっているのか。また、国民の負担六千八百億に対する厳しい批判に対して、大蔵大臣として精いっぱいの御努力をされているのか。  もう一つは、一昨日ですか、全銀協の前、新会長交代の際に大蔵大臣にお会いになったようでありますけれども、一部の新聞報道等によりますと、追加負担について再び要請をされたというようなことが出ております。その点につきまして、ひとつ大蔵大臣のお考えというか御意見というか、お答えいただきたいと思います。
  69. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 母体行の責任問題につきましては、衆議院の予算委員会において審議が開始されましたときから、私は終始一貫して、母体行の住専問題に関する責任は極めて重い、そのことに母体行、つまり銀行側はこたえなければならないと、それは国会においても各党を通じて厳しく御意見のあったところでございます。  私は、そのような立場に立ちまして銀行協会の責任者ともお会いをいたしましたし、また事務当局を通じても銀行側との十分な意見の交換を行っておくよう、特にこれらの問題は誤った伝わり方をいたしますと誤解を生んだり問題を難しくいたしますから、私の記者会見、国会答弁の内容等につきましてテープを起こしましたものを事務次官は相手方に届けたようでございます。そのようなことを通じて今協力を要請しているところでございます。なお、その間、与党三党におかれても直接銀行協会側といろいろ御協議になった経過もございます。  二十三日に銀行協会の会長は富士の橋本さんからさくらの橋本さんに交代されました。それで、専務とともに御三人で大蔵省にあいさつに来られまして、その際、二十分程度でありましたが、私とこの問題について話をする機会が、最近一番近くにはその機会にございました。  私が特に申し上げましたことは、もう経過や国会の論議については御承知のところでありますから、銀行側としてこの住専問題をできるだけ速やかに解決した方がよいというふうにお考えならば、具体的に目に見える新たな寄与の仕方について考えてもらうことが望ましいということを私から申してございます。前会長の方からは、大臣のおっしゃる趣旨はよくわかっております、前にお話ししたとき名案が浮かばないと申し上げた、確かに体力はあるが株式会社としての法的な制約があって正直言って今の段階では名案がない、ただ大臣から再度にわたってこのようなお話を伺ったのでありますから、このことをしっかり新しい会長にも引き継ぎたいと。それで、私の方から、国会で予算が成立し、そして住専問題の処理に取り組む段階が来たら、さらにこの話をもっと詰めて進めていきたいということを申し上げているところでございます。
  70. 海野義孝

    ○海野義孝君 終わります。ありがとうございました。
  71. 猪熊重二

    猪熊重二君 時間が参りましたので、終わります。
  72. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で猪熊重二君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  73. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、聴濤弘君の質疑を行います。聴濤弘君。
  74. 聴濤弘

    聴濤弘君 私は、住専問題及び日米首脳会談について質問をさせていただきます。  早速ですが、住専問題で久保大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。  蔵相は、これまでの質疑を通して、母体行の追加負担の問題について、第一に母体行が三・五兆円の債権放棄で済んだと思うのはとんでもないことだ、二つ目にはその追加負担額は六千八百五十億円にとどまる必要はない、それから三つ目に政府は誠意を持って努力しなければならないと述べて、追加負担の必要性、規模、それから政府責任という三点にわたってこの問題の必要性を認める発言をされてきました。  こういう到達点に立ちまして、四月十五日、我が党の上田議員が追加負担の案を早く出すようにということをここで求めました。これに対して久保蔵相は、銀行側との話し合いにも触れながら、国会においてこの処理案をお認めいただきましたらできるだけ早くその上に立って新たな寄与を話し合いたい、具体的なことも申し上げたい、そういうときが来ると私は今でも思っております、こういうふうに答弁をされました。  案を出させるようにしたいという趣旨はいいんですけれども、国会で今の処理案を認めてもらったらという言い方は私はおかしいと思うんです。といいますのは、母体行の追加負担によって当然今の処理案の六千八百五十億円の税金投入額は縮減されるかあるいはゼロになるか、我々はもちろんゼロであることを主張いたしますが、そこが動くこと、これは明瞭だと思うんです。ですから、それにもかかわらず政府の処理案を国会で通してもらったら新たな案を出すというのは私は矛盾だと思いますが、いかがですか。
  75. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 聴濤さんのおっしゃっている意味を取り違えているかもしれませんが、私は全く私の申していることに矛盾はない、非常にすっきりしていると思っております。  と申しますのは、もしこの政府の処理案として御審議願っておりますものがだめだということになりますと、当事者を含めて合意をしているという前提がございますから、その前提がなくなるわけであります。その場合には、もはやこれは法的処理に任せよう、当事者で解決しろということになりますから、何回も申し上げましたように、破産処分にするということになりますれば母体行の責任は果たして今よりも重く要求できるだろうか、その逆の結果になるのではないか、そのように私は非常に憂慮をいたしております。そういう意味で、この政府の方針が国会において認められてこれを実行していく段階に入れば、それまで何もしないと言っているんじゃありません、そうなれば結論に向けて話をさらに進めることができるだろうと言っているのであります。  それから、六千八百五十億との関係についてお話がございましたが、これは六兆四千百億の損失と欠損をどのように負担するかということで合意している問題でございますから、スキーム全体を崩す結果になりますから、母体行の新たな負担を検討して実行してもらうならば、その額は必ずしも六千八百五十億ということで限定されるものではないということを私は申したのでございます。
  76. 聴濤弘

    聴濤弘君 一遍に幾つかのことをお答えになったので、ちょっと整理していかなけりゃいかぬと思うんですけれども。  合意してある前提が崩れてしまうのでとおっしゃったけれども、追加負担をさせなきゃならぬというんですから、その合意をしたスキームというんですか、これの根拠というものが崩れてきているということは明白だと思うんです。それから、法的な云々というのは、これは方法論の問題ですから後で議論させてもらいます。  今の久保蔵相の言い方によりますと、今の案はもうともかく合意されているんだから通してもらわなきゃ困るんだと、こういうおっしゃり方なんです、簡単に言いますと。そうしますと、こういうことになるんですよ。国民は、ともかく仮払いでいいから早いところ払ってくれ、まずは払っておいてくれ、その後何とかするからということになるんですね。六千八百五十億はともかく払ってくれ、その後何とかしていきまずからという、そういう論理に久保蔵相の考え方ではなってしまうんですよ。法的根拠云々というのは後で議論をさせてもらいますけれども、そういうことです。  そうすると、後で何とかすると言うんだけれども、後でどうなるんですか。何にも明らかになつていないですね。二次処理で処理される、二次処理の中で出されるということなんですか。
  77. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 私が申しておりますことは、もし今、当事者を含めて合意されているものの中にあります財政支出、これを認めがたいということをこちらから言いますならば、このスキームというものを一遍御破算にしなければ話ができないわけです。そうなりました場合に、法的処理という御主張もたくさんございましたが、この法的処理、会社更生法のお話もございましたけれども、もう実際に上場二企業は再建のめどが立たないので再建計画を放棄するということを決定して発表しているわけですね。そういう状況の中では、破産処理以外に法的な処分の仕方はないのではないかと思っております。そうなりました場合に、母体行に対して新たな負担を我々がどのような根拠で要求するかという問題を私は申し上げたのであります。  そして、母体行であります金融機関が、金融機関の持ちます公共性、社会的責任にかんがみて今度の住専問題に対するみずからの責任を深く自覚されるならば、それに対応する新たな負担というものは考えられてよいことだ、それをどのようにしていくかというのは今後の相手方との協議の問題。これは共産党の皆さんもお認めになっておりますように、今法的に強制する手段は残念ながらないということを私は申し上げているのであります。
  78. 聴濤弘

    聴濤弘君 法的な問題についてはちょっと後で議論しますが、ともかく負担させるとあなたはおっしゃったんで、それでどうやって負担させるか。法的なのは方法論なんですよね。どこからどういうふうにして負担させるのかということの案をあなた方がお示しにならないと、もう繰り返しになりますが、六千八百五十億円は国民皆さん払ってくれ、その後何とかしますからと言うんだけれども、何とかするめどは何にもないじゃないですか。そのことを私は聞いているんですよ。
  79. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) これは、私が私の側の考え方を今あなたに一方的に申し上げても、そのことが相手方との協議に関する問題でありますから、非常に申し上げることは難しいと思います。しかし、私が新たな寄与と言うのは、母体行である金融機関が、何らかの形でと申し上げますと聴濤さん御納得いただけないと思うけれども、何らかの形で相当な額を負担するという方法を考えてもらいたい、向こうも名案があればとおっしゃっていることは、よい方法があればそのようなことを検討したいということだと私は思っております。今はそれ以上のことを申し上げることは難しいと思います。
  80. 聴濤弘

    聴濤弘君 二つあるんですね。一つは、二次処理の過程で何とかして出させるというやり方、もう一つは、そういう次元とは全く違うところの次元で問題にするという、二つあると思うんです、大きく分けて。どちらをおとりになるんですか。
  81. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) そのようなことを協議しなければならぬのであります。
  82. 聴濤弘

    聴濤弘君 二次処理の中からは新たな負担というのは出てこないんですよ。なぜならば、二次処理の過程で拠出金を金融機関、母体行を含めて出させるということはあります、確かに。しかし、もともとは、そうやって九千億ですか一兆円ですか、今の案では出させる、それは全部終わればもとへ返るんですよ。そういうことになっている、法律で。  それから、住専から例の不良債権を買い取るための低利の融資、これは元本が保証される。これ二次処理の法案ですね、今度提案されている。ですから、そこからは母体行の追加負担というのは出てこないんですね。これはもうはっきりしていると思うんです。これ、銀行局長、いかがですか。
  83. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) いや、あなたの方が例示されたから私はいろいろな方法を協議するんだと言っているんであって、それでそんなものは問題にならぬのだというようなことは、そもそも例示される方がおかしいんじゃないでしょうか。  私は、新たな寄与ということを申し上げている。新たな寄与に相当するかどうかということを相手との協議の中で詰めていかなければならないと申し上げているのでありますから、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  84. 聴濤弘

    聴濤弘君 新たな寄与というのは、今言いましたように、新たな寄与という言葉で言えば新たな寄与を、蔵相は負担を求めるということを交渉すると。それならば、そういうことが母体行でできるならば、じゃ私、角度を変えて聞きますが、何で第一次の今のところでそれを求めないんですか。
  85. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) さっき申し上げましたように、銀行側としては、みずからの責任の上に立って、債権の全額放棄や住専処理機構ができました場合の二兆円を超える低利融資や総額一兆円になります拠出基金の問題などについて、既にその責任の上に立って了解をしてきたわけです。  それで、そういう問題をさらに超える、もっとその責任は重いじゃないか、その負担をすべきだということについて、皆様方の御意見もございましたし、私もそうであるということについて全体を見ながら判断もいたしましたので、銀行側に対して今そのことを申しているわけであります。彼らの新たな寄与というものを何らかの力でもって強制するというような性格のものではない、私は協議に基づいて相手の合意の上で行うべきものと考えております。
  86. 聴濤弘

    聴濤弘君 それでは再度、私確認させていただきますが、母体行に新たな負担を求めるということは、ともかく国民に税金をまず六千八百五十億円を払わせる、その後何とかする、しかしその方法はまだわかっていないんだと、そういうことをあなたはおっしゃるわけですね。
  87. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 誤解を受けるといけませんけれども、六千八百五十億を国民に払わせるという新たな住専税的なものの税負担を考えているわけでは全くありません。  これは将来にわたって財政上の負担となっていく可能性を持っているものでありますが、だからこの問題は、今回六千八百五十億の財政支出をお認めいただいた上で、いろいろな形で国民に利益がより大きく返ってくる。もともと住専の不良債権問題の処理は、このような事態に立ち至ったことは甚だ遺憾であり、残念なことであり、国民に対して申しわけないことだということも政府としては再三にわたって申し上げてきたところでございます。そのような考え方の上に立って、今このことを御負担願うけれども、将来にわたってより大きな国益として国民の皆様方に還元できるその努力が当然責任を伴って存在しているんだ、求められているんだということを申してきたつもりでございます。  そういう中で、母体行であります金融機関の負担も、単なる業績の向上による法人税の増加というようなことにとどめず、より大きな国家国民に対する寄与、負担が求められているのだということを申しているのでございます。(「よくわかった」と呼ぶ者あり)
  88. 聴濤弘

    聴濤弘君 よくわかったという声がありますが、私にはわからない。  二次処理からは出てこないんです。二次処理以外の何か別の次元からというのは、これは全く別の、この追加負担という概念とは違ってくると思うんです。  それで、現にこの前、与党三党がつくったあの追加負担というものについては蔵相自身が、これはきのうの産経新聞に出ておりますが、あれを追加負担とは言えないという記者会見をやっておられるんですね。ですから、二次からも出てこない。何か別の次元から出てくるのか出てこないのか。出てきても、これが本当の追加負担と言えるのかどうかわからない。  そういうことになりますと、蔵相が今繰り返し繰り返しお答えになってきていたことが、母体行に追加負担をさせますよという言葉が、これはやっぱり国民を、言葉汚く言いたくないですが、だましたということにならざるを得なくなってくるんですね、実際は。ですから、私はやっぱりさせるというんだったら、今出さなかったら意味がないと思うんですよ。もう一度質問します。
  89. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今、与党の銀行協会側とお進めになりました話について、新たな負担とは言えないということを私が申したというのを新聞の記事でお取り上げになりましたが、私はこれで新たな負担と言えるかという意見があるということを申したのであります。だから、それは誤解がないようにしていただきたいと思うんです。私自身が与党のお決めになりましたものを否定するような発言をいたしてはおりません。それは、そういう意見もあるので、これだけでは納得はいただけないのではないかというのをお話し申し上げたのであります。  今繰り返しおっしゃいますけれども、私は国民の利益に還元されるような方法というものを母体行の新たな負担によって考えられるのではないかと思って、それはいろいろな方法があると思います。一番わかりやすいのは、直接国庫にお金を入れてもらえば、それは一番わかりやすいことでありますが、しかしこれらの問題は、相手方との相当な協議を行い、またその方法が法的にきちっと確認される方法でなければならないと思っております。今ここで申し上げることは非常に難しいということを先ほどから申し上げておりますので、御理解を賜りたいと思います。
  90. 聴濤弘

    聴濤弘君 一番障害になる問題として法的な問題があるということを最初の答弁から一貫して言っておられるので、この問題をきちっとさせて、そしてまた私、今まで質問してきたことにもう一回返りたいと思います。  追加負担をさせたいんだが最大の障害というのがこの法的な手段というものがないということを繰り返し言われましたけれども、蔵相が何回もおっしゃった現在あるスキームというんですか合意ですね、これ自体、別に法的なことがあってやられたわけじゃありませんね。それは確かですね。
  91. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 今回の政府の処理策は、政府がこのような方策を御提案している、要請しているということでございまして、直接法律に基づいてこのような案が策定されているということではございません。
  92. 聴濤弘

    聴濤弘君 今のスキームも別に法的な根拠があって法的な手続によってやられたものじゃないということを銀行局長は言われたわけです。ですから、母体行にどれだけのものを負担させていくかというのは別に法がなければできないことでないことは、現在のスキームができ上がった過程からいって明確だと思うんです。  現在のそういうやり方というのは法律の上で任意整理と言われるようでありますけれども、そこでは母体行主義、このルールに基づいて、これは法律じゃないけれども、母体行が実際上の住専の親会社であり経営者であるということから、やはり母体行としての責任を持ってやっていくんだというのがもう不文律のルールになっているわけなんです。  ですから、久保蔵相が法律がないから追加負担はできないんだと、これはなかなか困難なんだと言われる根拠は私はないと思うんですよ。
  93. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) なぜそういう御質問になるのか、私の答弁の仕方が悪いのかよくわかりませんけれども、法的に強制する手段がないということを申しているのであります。これはあなた方の方も認めておられるんじゃないですか。  それで、私は、法的に強制する手段がないからこちらからも積極的に新たな寄与を銀行側に申してある、その上に立って合意を得られるような協議をしたいということを申しているのであります。法的な手段がないからできない、そんなことを私は言っておりません。
  94. 聴濤弘

    聴濤弘君 それでは、母体行主義を貫いて、その立場から強い指導をされたらどうなんですか。
  95. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) だから、指導と申しますか、こちらから協議を申し入れて、そして銀行側が考えるようにやっているんじゃないですか。それがどこか間違いでしょうか。
  96. 聴濤弘

    聴濤弘君 そこから結果が出ずして、またちょっともとに戻るんだけれども、六千八百五十億円はまずは払ってくれというのはやっぱり政治のやるべきことじゃないと私は思うんですよ。そういうふうに蔵相は国民皆さんに約束しているわけだから、新たな母体行負担をさせるということを。  ですから、そこが、これこれなんですよ、こういう案がまとまったよということを国会にも国民にも報告してから、それじゃ六千八百五十億円はどうしようかというふうに筋を立てるのが道理じゃないんですか。もし、法的手段に別に自分はこだわっているわけじゃないんだとあなたがおっしゃるんなら、そういうふうに筋を立てた政治をやるのが道だと私は思いますが。
  97. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) ここは余り私の方から議論をしてはいけないんだと思うんですけれども、要するに法的に強制する手段が、もちろん損害賠償請求権に属するようなものは法的にできますが、しかしそれ以外に新たな追加負担というようなものを法律をもって相手に要求する手段がないということを申しておるんであります。それはあなたの方もわかっておられるはずです。それなら協議に基づいて負担をしてもらおう、その合意を得るために今その努力の過程にあるということを申し上げているのでありまして、それ以上のことをお答えすることは無理だと思うんです。
  98. 聴濤弘

    聴濤弘君 今非常に重要な答弁があったと私は思います。法的な手段、法的なものがなければ追加負担ができないんだということじゃないということをはっきり言われた。それは本当に私確認したいと思うんですね。それで、今協議をしているんだと。  一方で、法的な手段でもって強制することができないから、今一生懸命協議しているんだというふうにおっしゃる、これまでもしてきた。それならば、それがまとまって、これこれになりましたということになって初めて六千八百五十億円はどうしようかというふうに問題を立てるのが筋だと私は思いますよ。どうなんですか。
  99. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 六千八百五十億とその問題を直結させているものではないということを申し上げたつもりであります。  それと、私どうしてもわからないのは、法的に手段がなければできないと私が言っているようにおっしゃいますならば、それならあなたの方から法的に強制する手段を示していただきたいし、もしそのことができないならば、できないんだというならば母体行の負担を求められることが私は非常に無理なんじゃないかと思っております。  今私どもも精いっぱいの努力をし、また議会でも皆様方から、母体行の新たな寄与、負担についてさらに努力をすべきだという御主張を各党を通じて非常に強くなさっているわけでありますから、皆様方の御協力もいただきながら、私としては議会の御議論におこたえできるような最大の努力をしたいと御答弁を申し上げているのでありまして、それを御理解いただきたいと思います。
  100. 聴濤弘

    聴濤弘君 大分いろんな議論をしたけれども、問題の整理がついてきたと私は思うんです。今協議している、それは法律がどうのこうのじゃない、ちゃんと協議をしている、それを期待してくれと、こういう話であります。  それなら私申しますが、蔵相はそういうふうに母体行の追加負担が必要だとずっと言っておられて、今協議をしている。総理自身も、これは四月一日ですけれども衆議院で、銀行にみずからの努力を求めるという点においては久保蔵相と考え方は変わらないということを総理自身お答えになつている。  それから、参議院では自民党からも大きな追加負担の声が上がっている。村上正邦幹事長も記者会見でこういうふうに言っている。母体行がこれ以上の負担はないと言っているのは国民への挑戦と受けとめている、これは四月十九日の村上幹事長の記者会見での発言です。また別のその以前にあった記者会見では、母体行の責任を明確にし、母体行が責任を持ってやるという議論を進め、実を上げればよいと。参議院の予算委員会で追加負担等財政支出の軽減策を議論すべきだというふうに自民党の幹事長は言っておられる。  ということは、私は平成会も六千八百五十億円については削除だということだと思うんですよ、別のいろんなことはあるにしても。我が党もそのとおり。そうしますと、参議院全部、これ何とかせい、六千八百五十億円。これが参議院の総意だと思うんですよ。  そうならば、私はあなたの論理からいっても二つの方法しかないと思うんです。一つは、参議院で審議している中で、あなたが案をまとめてこういうことでいきたいという案を提出する。あるいはもう一つは、それが参議院の審議で間に合わないならば、六千八百五十億円というところは削除して白紙にしておいて、そして後でこれこれこうだった、これだけ必要になった、我々はゼロを主張しますけれども、ともかくあなた方としてはこれこれが必要になったと言えば、それは補正でやるべきだと思うんですよ。  この一をとるか二をとるか、これは私たちの論理じゃない、あなたが言ってこられた論理からいってそうなると思うんですけれども、どうですか。
  101. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 政府として責任を持ってこの不良債権処理に当たります立場からは、聴濤さんが今申されましたような選択はいずれも私どもとしてはとり得ないところであります。
  102. 聴濤弘

    聴濤弘君 それはちょっと私はおかしいと思うんですよ。だって、一生懸命今協議して何とか案をまとめたいと言っているんだから、それを出すのが筋でしょう。それが間に合わないというんだったら、六千八百五十億円は今のところペンディングにしておいて、後で何とか処理するというふうに考えるのが国民に対して誠実な政治のやり方じゃないんですか。しかも、母体行の追加負担は求めるとあなた方は言っておられるんだから。  私、総理の見解を聞きたいと思います。
  103. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私どもは、話し合いの根底といいますか、全体の根底を崩した上であなたのような御議論が出てくるというふうには思いません。我々は今、大蔵大臣から繰り返し御答弁を申し上げている、そうした努力をこれからも続けたいと思っております。
  104. 井上裕

    委員長井上裕君) 聴濤君の残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十分開会
  105. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、聴濤弘君の質疑を行います。聴濤君。
  106. 聴濤弘

    聴濤弘君 午前中の質疑の一番最後に私が、新たな案をこの審議の間に出すか、あるいはまたそれが間に合わないならば補正でやるか、そのどちらかだということを提起し、総理、蔵相からどちらもとらない、理由は現在の合意、スキーム、これがあるから、崩れるからということでありました。  私は、この点について一言だけ申し上げたいんですが、母体行に追加負担を求めるということ自体が、これは午前中の質疑の中で私も言いましたけれども、そのこと自体がスキームの根拠が崩れているということを意味しているんだと、このことについてはお答えがなかったことを私は非常に残念に思います。  次に、母体行に追加負担を求めるに当たって大蔵省が本気でこれをやるのかやらないのか。単に同意が得られないからということではなくて、母体行に対して社会的な責任を果たさせるという、そういう姿勢があるのかないのかというところが一つの大きなかなめになるというふうに私は思います。  また、その責任を持たせる上で重要なことは、母体行についてのやはり徹底した真相解明だというふうに私は思うんです。簡単に言うと、ディスクロージャーを徹底してやるかどうかということだと思います。  私たち日本共産党は、母体行に関するいろいろな資料の提出を求めているんですけれども、これがなかなか出てこない。例えば、母体行が住専を設立する際の母体行会議の会議録、こういったものはあるはずだと。ところが出ない。大蔵省にお聞きしたいんですが、なぜ出ないんでしょうか。
  107. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 今回の住専問題に関しましては、私どもといたしましては、御要望のありました資料につきましては、私どもができる限りの努力をいたしましてできる限りの資料を開示するように努力をしているということは、今まで御提出申し上げました相当な数に上る資料状況からしましても御理解いただけるところと存じております。
  108. 聴濤弘

    聴濤弘君 母体行の負担を求める上で紹介融資の問題というのは非常にかなめになると思うんです。細かい数字はやめますけれども、その分だけでも引き取らせれば、これは梶山官房長官が引き取らせろという言葉を言われたぐらいなんですが、それを引き取らせただけでも六千八百五十億円というのはカバーできる、それぐらいのものなんです。  上田議員がこういうことで、紹介融資についての母体行の犯罪的ともいうべきひどいやり方をここで暴露されました。ですから、住専の側からの資料というのはいろいろ出てくるんだけれども、母体行側からの、特に紹介融資に関する内規とか基準とか、そういったものの資料を出してくれということを言っても出てこない。なぜ出さないんですか。
  109. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 紹介融資に関しましても、御要求のありました資料につきましては、私どもあるいは住専各社から最大限努力をして今まで相当な資料を御提出申し上げていると存じます。  なお、紹介融資の内容につきましては、紹介総額全体で四兆円ばかりに上るわけでございますが、必ずしも母体だけの紹介ということではございません。一般行からの紹介もございますし、相当多額の事業会社等からの紹介もございます。そのような内容も御勘案の上、この紹介融資の問題について御検討いただきたいと存じているところでございます。
  110. 聴濤弘

    聴濤弘君 余り細かく聞きませんけれども、内規とか基準とか、それからだれが決裁したとか、そういうものはあるはずなんですよ。今いろんなものを出しましたと言われますけれども、母体行の側からの、役員がどれだけ派遣されたとか、たしかきのうそれは出ました。しかし、紹介融資そのものについての資料というのは出ていないんですよ、母体行の方から。
  111. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘の点が個別の取引に関する紹介の決裁だとかそういう御指摘だということであるならば、これは個別の取引先に御要求していただくべきものと存じますけれども、そういうことが可能であるかどうか。今まで、私どもは紹介融資の問題につきましても、私ども立場から、あるいは住専各社に協力してもらえるという性格のものにつきましては、相当な数の資料を御提出申し上げていると存じております。
  112. 聴濤弘

    聴濤弘君 住専からの資料が出されたことは私も承知しております。母体行の側からのと何回も言っているのにお出しにならない。私たちの要求に対して出せないといって大蔵省が回答をよこしました。なぜ出せないかといったら、母体行の側にそういう資料がないから、ABCDのランクがついて、Dというので回答が来ているんです。相手側に資料がないから出せないというのが大蔵省の回答だったんです。  ところが、いっぱい例があるんだけれども、私は一つだけ申し上げたい。これはことしの二月十六日、衆議院予算委員会での参考人招致のときに信託銀行の協会の藤井さんが、これは予算委員会の議事録ですが、そこでこういうことをおっしゃっているんです。紹介融資をしたことがあるかと、信託銀行協会ですが、もちろんございますと。それで、次にこういうことを言っておられるんですよ。紹介融資はもちろんやったことがあります、ところが大蔵省の数字と不良債権率が数字として違っている、私たちは五年にさかのぼって、十年にさかのぼって担当者をずっと当たりまして調べた結果でございますと、こう言っておられるんです。  母体行にこの紹介融資資料があるということははっきりしているんです。ないから出せないんだ、だからDランクだというのは、これは違うんです。なぜ出さないんですか。
  113. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 当時の藤井信託協会会長がどういう調査の結果そのようなお話をされたかという根拠につきまして、私つまびらかに存じておりません。紹介融資につきましては、もう今まで私どももたびたび御説明申し上げているところでございますけれども、紹介を受けた住専の側の理解と、紹介をしたという立場にある銀行あるいは事業会社立場の理解とが必ずしもすべてが一致しているわけではないと。この点については、提出申し上げた資料の中にも明記しているところでございます。  今紹介融資というものはすべてが遺憾なものという受け取り方をされているわけでございますが、紹介のやりとりがあった当時においては、紹介をしてくださいという依頼を受けて紹介をしたというものもございますし、皆さんの御指摘からすると無理やり紹介をしたというふうに受け取られるものもあろうかと存じます。そこは紹介の当事者同士で必ずしも意見の一致しない部分もございますが、私どもが提出しあるいは住専各社が提出申し上げた資料におきましては、そこは住専側の理解といたしまして紹介を受けたというふうに解釈されるものについて資料を提出している、こういう整理をしてございます。
  114. 聴濤弘

    聴濤弘君 あなたがいろいろ解釈するんじゃなくて、まず資料を提出してくれということを言っているわけなんで、そのことと今の答弁、私が言っていることとあなたが解釈をしてということとは違うと思うんです。  そこで、私は聞きたいんですが、大蔵省は銀行に対して大変な権限を持っています。銀行法の二十五条にはどういう権限が書かれているか、読み上げてください。
  115. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 二十五条は立入検査の規定でございます。五項目にわたるかなり長い条文でございますが、お読み申し上げるということでよろしゅうございましょうか。  二十五条、「大蔵大臣は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該職員に銀行(代理店を含む。)の営業所その他の施設に立ち入らせ、その業務若しくは財産の状況に関し質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」。
  116. 聴濤弘

    聴濤弘君 以上でいいです。  今言われたとおり、いろいろ立入調査もしてやっていくことができる。そういう権限を持っている。この紹介融資の問題というのは、ここに書かれているとおり、健全かつ適切な運営に全く私は反すると思うんです。上田議員がこれはずっとここでやられたことで、私は繰り返しませんが。それにもかかわらず、今いろんな解釈を加えたり、資料はありませんからと私たちに回答してくるというんですから、これでは本腰を入れて調査する、この二十五条を使ったってできるはずのことをやらないということになる。  私、久保大蔵大臣に聞きたいんだけれども、この二十五条をちゃんと使ってこのぐらいの資料は出させるように、立入検査もするということをやってほしい、そのことを蔵相に聞きたいんですが、どうですか。
  117. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 事実の問題からちょっと御説明申し上げますが、ただいま御質問がございましたのは銀行に対する規定でございます。住専規定に関しましてはまた別でございまして、そのような立入検査という規定はございませんので、念のため申し添えます。
  118. 聴濤弘

    聴濤弘君 一種の私はへ理屈だと思うんですよ。銀行で、住専にはできないとか、いずれにしろ久保大蔵大臣のこういう問題についての見解を聞かせてください。
  119. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 私は、就任以来、内閣の了解事項であります情報の積極的な開示という立場に立って、法律上制約を受けるものについてはこの法律の制約をどのようにして超えるかということについて、国会にも議院証言法の適用等も御検討いただいて極力情報の開示に努めてきたつもりでございます。  今、聴濤さんから御指摘を受けております問題につきましては、提出する側が銀行の側でございますから、銀行法を適用して立入調査をいたしますには相応のまた理由もなければいけないと思っております。  しかし、今御指摘になりましたような資料が、ないという報告をいたしましたものがもし実際に存在するのであれば、これは事実でないことを申し上げていることになりますから、私もよく調査をし検討してみたいと考えております。
  120. 聴濤弘

    聴濤弘君 ぜひその辺はよろしくお願いいたしたいと思います。藤井参考人はあると言っておるわけですから。それで、必要な措置をその上でとられるということを私は確認したいというふうに思います。  最後に総理にお聞きしたいんですけれども、やはり本腰を入れて政府は誠実に母体行の負担を求めると言ったんですから、本当に政府自身がこの問題に当たる、それで社会的な責任を果たさせていくという政府の強い姿勢が私は要ると思うんです。今のスキームというのも閣議で決めたわけですね、今の処理案というのは。その後になりまして村山前総理は、自分でお決めになったんだが、こんなに大きな問題になって、これはこんなに大きな問題になるとは思わなかったという、そういう会見までやっておられる、発言もされている。  いずれにしろ閣議でこういう決定をされたんだから、そして今母体行に追加責任を果たさせなきゃならぬということを多くの閣僚、多くの人々がそれを求めている。ですから、改めて追加負担をさせるという閣議決定をやって強い姿勢で当たっていくべきだと私は思いますが、いかがでしょうか。
  121. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、午前中、大蔵大臣が繰り返し御説明をしたその内容を支持し、その方向でともに努力していきたいと考えております。
  122. 聴濤弘

    聴濤弘君 ともかく、大蔵省がこれまでの住専問題でとったいろいろな措置というのは非常に大きな責任がある。その責任を果たすためにも、今度は国民の側に立って今の閣議の決定もして、そして事に当たるべきだと。大蔵省責任を果たすという、そういう強い立場からこの問題に対処すべきだということを申し上げ、閣議決定をやはりやって当たっていくべきだということを重ねて申し上げて、私はこの住専問題についての質問を終わりたいというふうに思います。  続いて、日米首脳会談についてお尋ねをしたいと思います。  まず最初に総理にお伺いしたいんですが、クリントン大統領が来日し、例の共同宣言が出ました。極めて重要な一連の問題があるんですが、初めに次の点をお伺いしたいと思います。  それは、宣言に、日米安保条約が日米同盟の中核であり、地球的規模の問題についての日米協力の基礎たる相互信頼の土台であると、そういうふうに規定をされております。  別の言葉で言えば、世界に生起する諸問題に日米が共同で対処する、その土台になるのは安保条約であるということだと、こういうふうに述べられているんですけれども、まず第一番目に、これは私は明らかに条約の改定だというふうに思いますが、いかがですか。
  123. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、議員が今読み上げられましたように「日米安保条約が日米同盟関係の中核であり、地球的規模の問題についての日米協力の基盤たる相互信頼関係の土台となっている」という記述はございます。  これは、軍備管理あるいは軍縮の問題あるいは中東和平プロセスなど、国際社会全体の平和と繁栄に大きな影響を与え、二十一世紀の世界の展望を定めるかぎとなるような事項につきまして、日米両国は現在におきましても協力しながら積極的に関与し、貢献していこうといたしておりますし、この貢献は私は重要なことだと思っております。  そして、こうした面で日米両国が協力して努力していくというそのためには、この両国間が堅固な相互信頼関係により結ばれている必要があると私は思います。そして、このような相互信頼関係というものは、首脳会談でも改めて確認をいたしたところでありますけれども、同盟国として長年の緊密な協力関係を通じて生まれてきたものでありますし、その日米関係の最も中核的な部分を構成しているのが日米安保条約だと私は考えております。  そうした共通の認識を持っておりますものをそのとおりに述べたものでございます。
  124. 聴濤弘

    聴濤弘君 日米関係の長い間の共通の認識というものをこういう形で述べたんだというふうな趣旨のお答えでしたけれども、私はやはり非常に重要な問題がここにあると思うんです。  先日、本会議で我が党の東中議員が、こういう観点からいうと、かつてのベトナム侵略戦争、あれをアメリカは今正しい戦争であったというふうに東アジア戦略などでも言っているんですが、総理もそういう見解をとるのかという質問に対して、総理は、その当時米国は東西冷戦構造の中にあって自由主義陣営の支援のために介入をしたんだと言って、このベトナム戦争を美化する、そういう答弁をされたというふうに記録に残っております。  それは、私非常に重大なことだと思うんです。あのベトナム戦争を正当な戦争であったというふうにみなされるというのは極めて重大だと思うんですが、改めて総理、どういうふうに考えておられますか。
  125. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 記録と言われますので、あえて御答弁を申し上げましたその速記を起こしていただきましたので、その部分を正確に読み上げさせていただきます。   また、ベトナム戦争についてどう考えるのだというお尋ねがございました。   ベトナム戦争というのはいろいろなことのあった戦争でありますが、基本的には南北ベトナム間の内戦が基本にあり、そこに米国の介入があった戦い、戦だと思います。ただし、米国は、東西冷戦構造の中において自由主義陣営の支援のために介入をしたということであり、領土的野心から戦争に介入したとは私は認識をいたしておりません。現在、ベトナムが国民和解のもとで繁栄を築きつつあることを私は非常に喜んでおります。 これがその答弁、そのとおりの文句であります。
  126. 聴濤弘

    聴濤弘君 そうすると、あの戦い、戦争がアメリカ側から見て正義の戦争であったという見解はとらないとおっしゃるわけですか。
  127. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) とるもとらないも、正確に今私は認識を、本会議で御答弁をしたとおりを繰り返しました。
  128. 聴濤弘

    聴濤弘君 あの戦争、トンキン湾事件、あれがでっち上げたったということもその後明らかになっているし、それから当時のマクナマラ国防相が「回顧-ベトナムの悲劇と教訓」という本も最近出しておる。あの中で、あのベトナム戦争というのは誤りだったということまでマクナマラ元国防相は述べている。こういう戦争だったんですね。  それに対して、やはりあの戦争というのは誤りだったという立場総理、明確にとれないと、ただ事実を述べたんだということでは、これではちょっと我々納得できないんですが、どうですか。
  129. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変失礼でありますが、あなたが御納得いただけるかどうか、これは聴濤さんの考え方と私に違いがあるのかもしれません。そして、書籍の名前を挙げますならば、恐らくベトナム戦争について非常におもしろい角度から論議を展開したという意味では、ハルバースタムの「ザ・ベスト・アンド・プライテスト」などもあるであろうと思います。  しかし、私はアメリカが領土的野心で戦っていたとは思っておりません。そして、東西二大陣営対立の時代において、自陣営にくみする立場からの戦闘を行ったとは思います。  事実関係をそのままに私は申し上げましたし、それよりも私は、今ベトナムがASEANに加盟し、そして私どもとテーブルをともにし、将来を語り合える仲になったことの方がはるかに私には関心がございます。
  130. 聴濤弘

    聴濤弘君 あの戦争というのは、ベトナム人民の民族自決、これに対する外部からの干渉であったということはもう間違いないんで、あれは領土を獲得するための戦争でなかったこと、これはもう事実ですよ。だけれども、ベトナムの人民が統一をしていくという民族自決権の行使、これに対して外部から侵害をしたという戦争であったことは間違いない、そのことを申し上げておきたいと思います。  次に、私は今度の共同宣言について幾つも伺いたいことがありますが、まず次のことについて伺いたいと思います。もう既に指摘されておりますが、例のガイドラインの改定をして、日本周辺において発生し得る事態、紛争に対して日米が共同で対処していくことを研究し、政策調整していくということが決められました。これと同時に、昨年の末に防衛庁が新防衛計画の大綱というものを作成いたしまして、我が国周辺地域の紛争に適切に対処するということを自衛隊の任務としてそこで明記しております。今度の共同声明は、この新大綱と宣言とが一体になったものだと、そういうふうに思います。  そこで、防衛庁に私はお聞きしたいんですけれども、自衛隊法の何条に基づいてこういう我が国周辺の紛争にも対処するということを決められたのか、何条にそれの根拠があるんですか。
  131. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 自衛隊の行動につきましては自衛隊法に規定がございます。いろいろな規定がございますけれども、防衛庁設置法による規定もございます。そういうものを全部考えまして、御指摘の点について、もし自衛隊が行動を必要とするということであれば、当然その法令に従って行動をするということでございます。
  132. 聴濤弘

    聴濤弘君 全然答えになっていないと思うんです。  自衛隊法の三条というのは、私ずっと読み上げていると大変なので、自衛隊法の三条というのは何が書いてあるんですか。ここに自衛隊の任務が規定されているんです。どうして周辺諸国への対処ができるなんということが三条から出てきますか。この三条というのが自衛隊のあり方、これを決めた基本ですよ。
  133. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 御質問の三条は「自衛隊の任務」でございまして、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」という自衛隊の任務についての規定でございます。  今御質問の新防衛大綱にございますところの、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が生じた場合に自衛隊が適切に対応すると。これは国連の活動もございましょう、それから日米の共同の協力という点もあると思います。それらにつきまして、例えば防衛庁設置法あるいは自衛隊法の災害派遣の関係、その他現在の規定でなし得ることをしていこうということでございますし、また憲法の枠の中でこれからいろいろな議論をしていかなければならない、こういうふうに考えているところでございます。
  134. 聴濤弘

    聴濤弘君 ちょっと私、本当言ってひどいと思いますよ。どこにも条項はないんですから、全部ひっくるめたら出てくるというふうな、そんなことで本当に法治国家でありますか。  これは自衛隊法を改正するかどうか。私はもちろん自衛隊法改正は反対ですけれども、どうにかしなきゃ、こんないいかげんなことで乗り切れるとあなたは思っているんですか、本当に。
  135. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 新防衛大綱に書かれておりますところの、今御指摘我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合の適切な対応の中に、これは各論になるわけでございますけれども、いろいろなことが考えられるわけでございます。  例えば、情報面での協力、実際に難民が発生した場合のいわゆる災害救助、邦人の救出のための自衛隊の活動、あるいは場合によりますれば結果として浮遊機雷が到来するといったようなものに対する対処、そういったものにつきまして現在ある自衛隊法のそれぞれに対応する条文に従いまして自衛隊が行動をするということがあるわけでございます。  あと、さらに言いますと、新防衛大綱に書いてございますように、憲法及び関係法令に従って適切に対処するということでございますから、当時の官房長官談話にもございますような、憲法の解釈も含めた枠の中で、さらにその時々に適用される関係法令に従って自衛隊が行動をするということが当然考えられるわけでございます。もちろん、これから具体的な点についての一部の検討というものが政府においてもなされることになろうと思います。
  136. 聴濤弘

    聴濤弘君 今のようなよくわからない答弁で、全体として何とかなるんだというようなことでガイドラインの改定をやっていく、そして共同対処を研究していく、政策調整もやっていくというんですから、法律がなくたってやれるような、もうひどいことだと思うんですね。  それで、私はいっぱい問題があるので次のことを伺いたいと思うんです。周辺地域の紛争、有事の際にということが今度の共同声明、以前もありましたが、今度特にそのことが重要な問題になってきましたが、有事というのは一体何なのかということもこれまた私はよくはっきりしない。  そこで、きちっと防衛庁に確かめたいんですが、今度ACSAが結ばれました。物品役務相互提供協定ですね。政府はこれは平時に限ったものだ、こういうふうに説明しているんですが、別に協定の文面に平時という言葉があるわけではありません。したがって、私は明確にしておきたいんですが、こういう場合にはACSAが適用できるんですか。こういう場合というのは、極東あるいは周辺諸国の有事で米軍が作戦行動をとっている。しかし、日本は平時なんですね。その場合には平時だからというので物品役務の提供はできるんですか、できないんですか。
  137. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今御指摘がございましたように、有事、平時といったようなことが日米間の物品役務の相互提供協定の中には入っておりません。それから、つけ加えるならば、その有事、平時という定義もこれまた非常に難しい問題でございます。  そして、今の御質問に対する答えは、まさに今回の日米間の物品役務の相互提供協定の中で、その適用対象といたしまして共同訓練、PKO、人道援助と。かつ、PKO及び人道援助につきましては、これは我が国の国際平和協力業務法の範囲内ということになっておりますので、この答えで今の御質問に対してはおのずから明確になるものと思っております。
  138. 聴濤弘

    聴濤弘君 明確にならない。もう一回。そうすると、これは適用しないんですね、私の言った場合の。
  139. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今申し上げましたように、共同訓練とPKOと人道援助、これだけでございます。
  140. 聴濤弘

    聴濤弘君 じゃ、適用しないということだというふうに私は確認をしておきます。これ、とっても大事なことですからね。  次のような場合はどういうことになるんですか。これはまさにACSAの人道援助に適用するということが出ているんですけれども、人道援助というのは、例えば難民が出てきた難民救済、それから邦人の救出等ということが問題になるわけですが、そういうものが出るということは武力衝突ということ、すなわち有事ということを前提にしていると思うんです。  例えば、今非常に大きな問題になってきている朝鮮有事の際に、大量の難民が出るだろう、あるいは邦人の救出をしなきゃならぬだろう、またアメリカの市民を救出しなきゃいかぬだろうというようなことが起こる。その際に、日本はどう対応するんだというようなことが問題になって新聞にも出ております。そういう場合はどうするんですか。ACSAを適用するんですか。有事だから適用しないというんですか。
  141. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 難民の発生を有事とおっしゃるのであれば、有事と平時についての定義をまずしなければならないわけでございます。先ほど申し上げましたように、PKO活動及び人道援助につきましては、この協定におきまして我が国の国際平和協力業務法の範囲内ということでございますので、国会で御成立いただきました国際平和協力法のその世界が我々としては常識的に平時の世界というふうに考えているところでございます。
  142. 聴濤弘

    聴濤弘君 具体的にいきます。  朝鮮でそういう事態が発生したときに、日米でACSAを適用して救生活動をやるというようなことはしないということですね。
  143. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 国際平和協力業務法でいわゆる五原則というのがございます。外国から見た場合ですと、最初の三つの原則がその中心になろうかと思いますので、その原則が満たされなければ国際平和協力業務は実施しないわけでございますから、その世界の中での人道援助というのは当然あり得るわけでございます。
  144. 聴濤弘

    聴濤弘君 いずれにしましても、先ほども局長答弁されましたように、平時、有事、これなかなか区別のつかないものであります。ですから、平時がいつ有事になるかわからないという非常にすれすれあいまいなものであって、これは本当に運用のいかんによってどちらにでも使える。現にNATOが結んでいるこの協定にも平時、有事の規定はない。しかし有事にも適用しているというのが現実であります。  先ほど来ずっと問題になっております自衛隊の周辺有事の対処の問題にしても、またきょうは私取り上げませんでしたけれども極東という範囲の問題についても非常にあいまいである。法律とか条約というものは、やはり明文上の解釈においてきちっとしていなければならないものだと私は思います。  特に、軍事に関する条約あるいは協定というのは国際的に極めて重大な意味を持っております。適用範囲だとか目的だとか、そういうものが明文上厳格に解釈できるようなものでなければ、これは相手国、周辺諸国、世界の国々にとっては大変な、たまったものじゃない。条約でもってこれもできます、これもできます。明文的には何も出ていないのにこれもできる。そんな解釈でもって条約を運用するというようなことがあれば、他国は本当にたまったものじゃない。現に中国からは危惧の声が起こっている。  こういう重大な共同宣言、これを国会にかけずにやったということは、私は本当言って政府の大きな越権行為だと思うんです。憲法七十三条には条約の事後の承認ということも書かれております。私は、この措置を今とるべきだというふうに思いますが、総理の見解をお聞きして、上田議員の関連質問をお許し願いたいと思います。
  145. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) ただいま今回の日米安保共同宣言を国会にかけるべきではないかという御質問でございますけれども、私どもは今回、共同宣言を発することによって従来の安保条約の改定とかそういったことは一切しておりません。従来の安保条約の枠組みはそのまま維持しておるわけでございます。  現在の国際情勢のもとにおいて、安保条約日本の国の防衛のために、そしてまたアジア地域の安定のために果たしている役割というものを再確認し、それを宣言の形でやったと。いわばそれは政治的な意味を持つものでございまして、条約の枠組みには何ら変更はないわけでございますので、国会の議決は要しないものと考えます。
  146. 井上裕

    委員長井上裕君) 関連質疑を許します。上田耕一郎君。
  147. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 聴濤委員の質問に続きまして、関連質問をさせていただきます。  今有事の問題で追及がありました。私は十五日にここで首相に質問いたしまして、普天間飛行場の返還問題での合意に、危機が起きたとき米軍による施設緊急使用日米両国が共同で研究を行うと、これは有事立法への突破口ではないかということをお聞きしました。首相は、いやそうではないと、研究もできないということになったら大体普天間の返還もできなかった、そういうふうに答えられましたけれども、もう既に私の取り上げた危険が現実のものになっています。  北海道新聞四月十二日付の夕刊がここにあります。「米国は普天間返還を前提に、「新千歳、成田、羽田の有事提供」を日本に求めたことが十二日分かった。日本側は、基幹空港の有事使用は「民間の航空輸送に混乱を招く恐れがある」として、提供は困難との考えを示した。」と。十二日の夕方、普天間の発表なのに、早くもその前に新千歳、成田、羽田ですよ、この三つを有事に使いたいという申し入れが明らかになったというんだけれども、首相、御存じですか。
  148. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今この記事を私も手元で読んでおります。  普天間について交渉しておりました私自身が受けたことのない申し入れがどこでなされたのかが大変不思議でありますし、私自身が全くこうした申し入れを受けておりませんのに、この報道をなさった方がどこに確認をされたのか、これも不思議であります。少なくとも私自身、モンデール大使及びマイヤーズ司令官とこの問題を議論した当事者でありますが、その中にこうしたお話は全くございませんでした。
  149. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 外務大臣、防衛庁長官、このアメリカからの申し入れば御存じですか。
  150. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 全く存じません。
  151. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 存じません。
  152. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大臣も知らぬうちに日本の官僚というのはすごいことをやるんですよ、返事までしてあるというんだから。  それで、なぜこういうことが起きるかというのは明らかなんですよ。その前の十一日、自民党安保調査会の正副会長会議に、政府極東有事の対米支援の要旨、これを示したんですね。これも十一日の夕刊に詳しく出ている。「極東有事の対米支援」、外務省が示した要旨の中に、民間空港、港湾の使用、これは地位協定五条で出入りが認められていると。もう外務省は民間空港の使用を自民党の安保調査会に示しているんですよ。だから、アメリカは当然早くも民間空港の使用問題で三つ使いたいと言っているじゃないですか。  事実を調査してください、外務大臣。
  153. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 総理や大臣が知らないところで官僚が云々というお話がございました。私は特別行動委員会日本側の共同議長でございますけれども総理、外務大臣が今申されたとおり、アメリカからこういう申し入れがあったという事実はございません。  いずれにいたしましても、普天間飛行場の返還に当たって必要となる危機に際しての緊急使用についての日米の共同の研究については、今後アメリカ側と検討していくこととなっているわけでございます。
  154. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 二年前、北朝鮮の核開発が大問題になっている時期、アメリカが大問題にしたんですがね、その当時、アメリカ太平洋軍の準機関紙スターズ・アンド・ストライプスは九四年六月十六日付で「日本は朝鮮戦争を支持するか」という記事を載せたんです。その中にも今の話が出ているんですよ。  戦争勃発から数日以内に、ワシントンは日本に対して数百機の部隊輸送機、数千トンの補給物資を着陸させるため、札幌、新潟、成田のような主要民間空港の定期旅客便の発着を停止させるよう日本に要請するかもしれないというんです。  三つの空港を挙げてあるんだが、今度の北海道新聞と一つ違うだけでしょう。新潟のかわりに羽田が入っているんだ。羽田と成田まで米軍が有事のときに使うという申し入れが日本政府にあったというんでしょう。  運輸大臣、お聞きしたいんだが、もしアメリカが、有事に、このスターズ・アンド・ストライプスの記事が書いたように民間定期便の発着停止、こういうことを要請したとき、この発着の停止というのは現行法でできますか。
  155. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) お答えいたします。  先ほど来答弁申し上げておりますとおり、そのようなお話を聞いておるわけでありませんので、私どもとしては、それらの問題につきまして研究するというようなこともございませんし、現段階でお答えすることはできない状況でございます。
  156. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 では、一般論で聞きましょう。  運輸大臣、亀井さん、もしアメリカから要請があったとき、主要民間空港の旅客機の定期便を発着停止、今の現行法でできるんですかと聞いているんです。一般論です。
  157. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 一般論としても申し上げるようなことじゃないと思います。
  158. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 一般論でもできないんですよ。一般論なのに何で運輸大臣答えられないの。あなた何にも法律知らないんだろう。じゃ、局長でいいや、これは。
  159. 黒野匡彦

    政府委員(黒野匡彦君) 一般論といたしましても、現在の航空法上そのような事態は想定していないと私どもは考えております。
  160. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 想定していないと。できないんですよ。有事立法が必要になってくるんですよ、いざとなると。だから、私はあなたに、あなたが決めた普天間空港の返還についての合意の最後の項は有事立法への突破口になると。民間空港を有事のときにアメリカに使わそうというと、こういうことになるんですよ。  さて、次の問題です。  このスターズ・アンド・ストライプスはもっとすごいことが書いてある。一層ドラマチックなことは、数万人の米軍兵士が北朝鮮軍に壊滅されかねない気配が見えただけで戦術核兵器を配備せざるを得なくなるだろうと、日本に。朝鮮有事で核兵器配備、こういうことまで予想する記事が載っているんです。  そこで、防衛庁長官にお伺いしたいんだが、新防衛計画大綱の中で、アメリカの核抑止力に依存するものとする、そう書いてある。九六年度のアメリカの国防報告には、同盟国を守るために核を使い得る、使うこともあると書いてあるんですよ。それで、それが核抑止だというんですよ。そうすると、わざわざ新防衛計画大綱でアメリカの核抑止力に依存と書くのは、核兵器の使用まで前提としているんでしょう。どうですか、防衛庁長官
  161. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 我が国の防衛につきましては、適切な規模の防衛力を保有するとともに、これを最も効果的に運用する態勢を築き、我が国の防衛意思を明示することによって、日米安全保障体制と相まちまして我が国に対する侵略を未然に防止する、こういうことを基本にいたしている次第でございます。  一方、我が国は専守防衛に徹する、また非核三原則を遵守するという政策を堅持いたしておりまして、こうした侵略の未然防止に関して、核兵器の脅威に対してはかねてより米国の核抑止力に依存することといたしているところでございます。  こうした観点から、新防衛大綱においても、核兵器の脅威に対しましては「核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮の国際的努力の中で積極的な役割を果たしつつ、米国の核抑止力に依存するもの」といたしているところでございます。  なお、先ほど来ございましたけれども、核持ち込み等に関するいろいろな密約等というものは、従来から総理大臣答弁等にもございますが……
  162. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まだ聞いていないんだけれども
  163. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) ないものと承知をいたしております。
  164. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 先取り答弁ありがとうございました。  それで、先日、本会議で立木議員が今の核密約問題を首相にお伺いしました。首相はそういうものはないと答えられた。  ここに若泉敬氏の「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」という、その問題を書いた詳しい本があります。この冒頭、その密約の英文の写真版まで載っているんですよ。若泉さんは佐藤夫人の了解を得て閲読、複製、引用を許可されて、四日間応接間に通って佐藤さんの日記も読んだと。日記の引用まであるんですよ。  その核密約を結んだのは佐藤・ニクソン会談第一日目。会談が終わったらニクソンが絵を見せたいからといって隣のスモールルーム、小部屋に連れ込む。別の部屋からキッシンジャーが入っていってこの文書を渡して二人でサインした。佐藤さんは、イニシアルで書くはずだったのに、ニクソンがフルネーム書いたので、私もフルネーム書いたとまで言っているんですよ。事実なんです、幾らあなたが否定しても。  それで、首相が知らなくても条約締結権者が結んだこういう取り決めは、廃棄されない限り後継首相を拘束すると、七八年三月十四日の参議院予算委員会で、私は若泉氏の名前も挙げてこの問題質問したんだが、そう当時の真田法制局長官は答えている。  法制局長官どうですか。秘密、未公表の取り決めでもその次の政府を拘束し続けると、こういう問題を今どう考えていますか。
  165. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) ただいま御質問にございました秘密の約束というものが存在しない、こういうことは歴代の政府から繰り返し明白に御答弁しているところでございます。したがいまして、ない密約についてそれがどうだろうかという御質問に政府として御答弁することは適切でないと思います。
  166. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 一般論です。
  167. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 私が答えようかと思っていることを外務大臣から先に答えられてしまったわけでございますが、私の立場からいたしましても、一般論を答えろということでございますけれども、しょせん具体的な問題についての前提的なお尋ねということにならざるを得ません。そういたしますと、ない事実あるいは想定できないような事実を前提とした一般論というものは私どもとしても答えるべきものとは考えておりません。
  168. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この本の中で佐藤首相は、岸首相、岸内閣のときに密約があったらしいと二回言っています。三百八十八ページ、「どうも岸内閣のとき、そういうものが若干あったらしいんだな。よくは知らんけど」と言っているんですね。どうも兄弟で密約を結んだようですな。  そこで、外務省にお伺いします。  アメリカ政府関係文書の公開によって岸・アイゼンハワー密約の内容が判明いたしました。アメリカがひそかに核持ち込みをする際の原則がNCND原則、核兵器の存在を否定も肯定もしないという原則なんですね。このことが明らかになったんだが、八九年五月十五日付のアメリカ国務省メモのナイトノートが公開されたんですが、その内容を外務省説明してください。
  169. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 報道でナイトノートなる国務省のメモと称するものが報ぜられたということは承知しておりますが、私どもとして、政府としてこの文書を入手しているわけではございませんので、報道されている内容についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  170. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 報道されている内容について差し控えるというんですが、原文があるんです、ここに。これは英文です。  これは、沖縄の東で水爆を積んだ飛行機が落ちたんですね。それで、タイコンデロガというアメリカの空母が二日後に横須賀に着いたという大事件がありました。六五年のことですけれどもアメリカ日本政府に言ったそのときの文書です。最後にこう書いてある。日本政府は追加情報に大いに感謝し、NCNDを厳格に維持することの重要性を強調していると。つまり、核兵器の存在を肯定も否定もしないという原則を厳格に維持するということを日本政府がやってきたということがアメリカの文書によって明らかになった。それで政府高官は、岸・アイゼンハワーの密約があった、このNCND原則の尊重を約束した密約があったということを明らかにしておりますけれども、外務大臣、この岸密約を国会に提出していただきたい。
  171. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) おっしゃるような密約はございませんので、提出のしようもございません。
  172. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今後さらに追及します。
  173. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で聴濤弘君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  174. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、小山峰男君の質疑を行います。小山峰男君。
  175. 小山峰男

    ○小山峰男君 平成会の小山峰男でございます。  住専問題もさることでございますが、きょうは財政問題を中心にして御質問いたしますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  さて、昨年の十一月十四日でございますが、武村前大蔵大臣はいわゆる財政危機宣言を発表したところでございますし、また十二月十二日には財政制度審議会も財政の基本問題に関する報告を発表するなど、近年、急速に悪化してきております財政状況等について、政府も大変言及する機会が多くなっていると思っております。  しかし、これらのいわゆる財政危機宣言の中でも、また財政審の報告の中でも、財政危機という言葉は一言も使われておりません。わずかに、財政は容易ならざる事態に立ち至ったというようなことを言っております。ただ、総理の施政方針演説の中では、我が国財政はもはや危機的状況と言っても過言ではありませんというような言い方で言及をされているわけでございます。総理は、なぜこの大変な状況である財政危機を正面切って財政危機だと言わないのか、危機的状況というのと危機とは違うのかどうか、その辺について、総理、よろしくお願いします。
  176. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は危機的状況と言っても過言ではないと申しましたが、大変失礼でありますけれども、それが危機と違うということでありますか。
  177. 小山峰男

    ○小山峰男君 違うのかどうかというのをお聞きしているわけです。
  178. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) いや私は、危機的状況というのはまさに危機のことだと思うので危機的な状況だと思うんですけれども、むしろ私の就任前の問題として、他の方々がどういう言葉を使われたのか、そのときの認識がどうであったのか私は存じません。しかし、少なくともやはり公債残高二百四十一兆円にも達するというのは危機的状況だと、私はそう思いましたからそのとおりに申し上げました。
  179. 小山峰男

    ○小山峰男君 そうすると、総理の感覚としては危機的状況というのはまさに危機と同じ意味に使われているというふうに理解をさせていただきます。  ところで、この危機あるいは危機的状況の現在の財政状況ですが、具体的にどういう状況をもつていわゆる危機なりあるいは危機的状況だというふうに言われるのか、具体的な項目でお示しをいただきたいと思います。大蔵大臣、よろしくお願いします。
  180. 小村武

    政府委員(小村武君) どのような状態を財政危機と言うかということについては必ずしも一義的な定義はございませんが、平成八年度の予算編成を見ていただいても、公債依存度が二八%、公債残高が二百四十一兆円、対GDP比四九%どいうことで、諸外国に比べましても非常に財政状況は悪化しているということでございます。  もう一つは、財政赤字が景気循環的な中での一過性のものではない、このまま放置すればますますその赤字が拡大し、我が国の経済の健全な発展の阻害要因になるという意味において申し上げているところでございます。
  181. 小山峰男

    ○小山峰男君 それでは、今のような状況になってきているわけでございますが、そのことが日本経済なりあるいは国民生活に一体どのような影響を与えるのかということを御説明いただきたいと思います。いろんな影響があろうと思いますが、短期的な影響あるいは長期的な影響、この状況につきまして御説明をいただきたいと思います。
  182. 小村武

    政府委員(小村武君) 我が国におきまして、この財政状況につきまして国民の間でまだ危機感が必ずしも強くはないという要因の一つは、我が国の場合に投資を上回る大幅な民間部門の貯蓄がございます。しかしながら、これだけの大量の公債が毎年毎年発行されていきますと、必ずや諸外国で見られておりますような金利の上昇、それに伴う民間投資の抑制等々があらわれてきまして、インフレといった財政赤字の問題点がだんだんと顕在化してくるということでございます。  経済的にはそういった問題がございますと同時に、財政赤字は世代間の不公平をもたらすということでありまして、言うなればこういう公債は必ず将来の増税によって賄われなきゃいけないと。今投票権のない二十歳未満の者、あるいは生まれていない赤ん坊等々に負担がかかってくるということで、世代間の不公平というのは最大の問題であろうと存じます。
  183. 小山峰男

    ○小山峰男君 短期的にも中期的にもいろいろな影響があるということのようでございますし、また、ただいまの説明では、今日の財政の危機というものが国民に十分理解されていない点もあるというふうにおっしゃったわけでございます。  財政再建というような問題につきましては、当然国民の理解がなければ実現は不可能だと思うわけでございます。政府国民の理解がなくてもいいと思っているわけではないというふうに思うわけでございますが、大蔵大臣国民の目の高さで、わかりやすい言葉で訴えていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  184. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 小山さんも地方自治体の財政担当や副知事をおやりになっておりますからよく御存じのことと思いますが、武村前大蔵大臣が昨年の十一月に、国民の皆様に日本の国家財政の容易ならざる事態について発表をいたしましたことも国民の理解を求める手だての一つでございます。また、既に本国会に対しましても、今日の財政状況がこのまま推移するならばどうなるかということを数値的にお示ししましたものを中期的な展望ということで、これは展望と言うのが適切かどうかわかりませんが、中期的な見通しの試算を差し上げてございます。  また、国民皆さんの間にも一番よく御理解をいただきつつありますのは、先ほど主計局長がお話を申し上げましたように、今日の我が国平成八年度の予算にあらわれている財政の状況だと思います。  この七十五兆円に及びます平成八年度の一般会計予算のうち、既に地方財政の分を控除し、十六兆という巨額の国債費等を差し引いてまいりますと、一般会計の歳出としてどうしても必要な、家庭で申しますならば生活や教育のためにどうしても必要な経費の半分しか税収を充当できない、そして残り半分は国債をもって充てなければならないという会計の現状にございます。  そういう中で、ここで財政再建の方策を思い切って講じ、そして目標を定めることがなければ、私はこれ以上の財政危機というのは国家財政の言ってみれば、一般の企業でいいますならば破綻とも言える状況になってきているんだと思っております。そのようなことについて、国民の皆様方にも国会の財政論議等を通じて十分おわかりいただきたいと思っておりますし、また大蔵省といたしましても、可能な限り財政の実情について国民皆さんに御説明し、御理解をいただく中で財政再建へ御協力いただくように力を尽くしてまいりたいと考えております。
  185. 小山峰男

    ○小山峰男君 いずれにしましても、大変な課題だというふうに思っているわけでございまして、大蔵大臣も全国を行脚するぐらいの覚悟でやっていただかないと、なかなか国民皆さんの理解も得られないだろうと思うわけでございます。  ところで、住専問題について若干お聞きするわけですが、こういうパンフレットを出したわけでございますが、このことにつきまして二点ほどちょっとお聞きをいたしたいと思います。  二次損失について一言も触れていないという状況でございまして、これはどうして触れなかったのかというのが一点。  それから、大変関係者が多くて時間がかかるという中で、八ページですか、「住専からお金を借りている人・社のべ二十万人・社。」と、こうなっております。これで見ると確かに大変多いようでございますが、実際にはこの中にはいわゆる個人住宅ローンを借りた人も入っていると思うわけでございます。国民が見ればいかにも多いような形でPRしているのではないかというふうに勘ぐるわけですが、その二点についてちょっとお話しいただきたいと思います。
  186. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 政府広報によります住専パンフレットは、今回の住専処理策につきまして、その背景、内容、必要性等につきわかりやすく記載する、そのことによりまして国民の御理解に資することを目的としたものでございますが、できるだけ簡潔に論点を整理したために必ずしもすべての論点を記載しているわけではございません。しかしながら、さらに説明が必要と考えられる事項につきましては、国会の御審議やあるいはさまざまな広報活動を通じまして、国民の皆様の御理解が得られるよう引き続き努力をしてまいりたいと考えております。  なお、住専七社の債務者約二十万人の件でございますけれども平成七年六月末現在で、御指摘のように個人住宅向け貸し付けの債務者が約十八万強でございます。さらに、事業者向け貸し付けの債務者が約一万強でございまして、合計いたしまして概数で二十万社ないし二十万人と記載しているところでございます。御指摘のように、個人住宅向け貸し付けが多いということはそのとおりでございます。
  187. 小山峰男

    ○小山峰男君 そういう意味では、このパンフレットは大変まやかしと申しますか、足りないと申しますか、というような状況になっていると思っております。  総理も、住専問題についてはまだ国民の理解が得られていないということは時々言っているわけでございますが、大蔵省としてこのパンフレットの効果というのはあったというふうにお考えでしょうか、お聞きします。
  188. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専問題を含めまして、金融問題は大変複雑でございます。国民に身近な問題ではございますが、なかなか技術的な点もございまして御説明するのに難しい点がございます。今回のパンフレットを通じまして少しでも御理解を賜れたと考えてはおりますが、まだまだ私ども努力が不足しているところもあろうかと存じております。今後、引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
  189. 小山峰男

    ○小山峰男君 先ほど大蔵大臣も財政危機についていろいろの方法で国民の理解を得るべく努力をしていくというふうに申されたわけでございますが、こういうパンフレットのような形ではなくて、本当に真実の姿を出して、国民皆さんの理解を得るんだという真摯な気持ちで取り組んでいただきたい、そういうことを心から願うわけでございます。  そういう点、もう一度大蔵大臣からよろしくお願いいたします。
  190. 小村武

    政府委員(小村武君) 昨年十二月十二日の財政審の報告におきましても、先生御指摘のようなことを私ども指摘をされております。   今後の財政赤字削減に向けての取り組みは、  諸外国の例に照らしても、歳出削減、歳入増のいずれであっても、何らかの意味国民に負担を求めるものとならざるを得ず、このような取り組みが可能となるためには、国民的な合意とそれに裏打ちされた政府と議会の財政改革への真剣な取り組みが不可欠である。   残念ながら我が国においてはそのような国民  的合意が成立しているとは思われない。財政当局には、財政の現状の国民への開示を進め、財政事情の悪化の実状を国民に訴えるだけでなく、二十一世紀の我が国経済の活力を奪ってしまうといった財政赤字の問題点についてもわかりやすく示し、 と、こういう御指摘がございまして、私どもいろんな工夫をこれからやってまいりたいと思っております。
  191. 小山峰男

    ○小山峰男君 ぜひそういう形でディスクロージャー等をしながら、国民とともに歩む政治をやっていただきたいと心からお願いする次第でございます。  次に、財政審の報告書にも財政の健全化ということが書いてございます。財政がどのような状況になれば健全化したというふうに言うのか。国債残高とか依存度とか、そういう具体的な数値でお示しをいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。
  192. 小村武

    政府委員(小村武君) どのような状態を健全財政と言うかについても、これも必ずしも一義的な定義はございません。健全な財政と言えるためには、まず償還財源の手当てのない特例公債、赤字公債の発行や国債費による政策的な経費の圧迫がない、そういう財政の状況だと考えられます。  さらに申し上げますと、高齢化社会に向けて十分対応能力のある、財政需要にこたえ得るものであること、そのためには国民負担率との調整が必要であるということでございます。さらに申し上げますと、健全な経済成長に資するそういう財政であろうと思います。
  193. 小山峰男

    ○小山峰男君 なかなか具体的な数値でお話をいただくというのは難しいと思うわけでございますが、しかしこの幅ぐらいまではというような数値をやっぱり大蔵省としては当然持つべきだというふうに思っております。またの機会にお願いをしたいと思っております。  ところで、この財政健全化のための具体的な方策、施策というのはどういうことをお考えになっているか、大蔵大臣、お願いいたします。
  194. 小村武

    政府委員(小村武君) 財政改革の具体的な切り口と申し上げましょうか、どういう考え方でこれを進めていくかということでございますが、現在、財政制度審議会におきまして議論をされている点は三点ございます。  一つは、公的分野の関与すべき範囲をどう考えるかということでありまして、自己責任の原則の確立あるいは市場にもっと任せてもいいんじゃないかというような問題、これは突き詰めていきますと、国民の負担能力の中でどれだけの行政サービスをしていくかという問題でございます。第二の視点は、財政支出の削減、いわゆるリストラとそれからより効率的な財源の配分をどうすればいいだろうかという点でございます。第三の切り口は、財政赤字の経済に与える影響という観点からでございまして、財政赤字の累積は経済にどのような影響を与えるか、あるいは景気調整のための財政出動のコストとベネフィットの関係をどう考えるか。  今後こういった三つの切り口から財政構造の改革を進めてまいりたいというふうに考えております。
  195. 小山峰男

    ○小山峰男君 いろいろの切り口があるのは当然だと思いますが、単純に考えますと、とにかく入ってくる方をふやして出す方を少なくするということに基本的には尽きるだろうと思っております。  まず、税収の問題でございますが、やっぱり税収を確保していくには景気だとか経済の適正な成長が必要だと思っております。政府が決めました構造改革のための経済社会計画によれば、今後我が国の経済成長率は名目で三・五%程度にとどまる、場合によってはその半分の成長だというようなことが言われているわけでございます。この政府が想定しております三・五%程度の成長に本当に乗っていくのか、またそれはいつごろからそんな形になるのかというような見通しにつきまして経済企画庁長官からお願いしたいと思います。
  196. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 昨年決定しました経済計画、御指摘のように名目で三・五、実質で三・〇%の成長を見込んでおります。しかし一方で、構造改革がうまくいかなければ一と四分の三、一・七五%程度にとどまるだろうということも言っているわけでございます。この差はどこにあるかというと、構造改革が思うように進まなかったらという点で示しておりますように、このままでは名目で三・五、実質で三・〇の成長というのは極めて困難である、構造改革が進まなければできないということをメッセージとして送っている。それほど構造改革の必要性がせっぱ詰まっているということであります。
  197. 小山峰男

    ○小山峰男君 我が国の経済は最近の円高等もありまして、リストラに次ぐリストラというような状況で推移してきていると思っております。企業にとっては大変身軽になったというような意味で利益が出るところも多くなっていると思いますが、一方、雇用調整だとか企業の海外移転だとか、あるいは部品の海外調達というような問題もあって、マイナスで作用する面も大変大きいんではないかと思うわけでございます。  そういう意味で、リストラによる景気の回復効果とマイナス面、そういうものについてどのように見ておられるか、経済企画庁長官、よろしくお願いします。
  198. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 小山委員が今おっしゃったとおりで、企業のリストラによってどちらかというと設備投資にはプラスの影響を与えます。企業収益が改善していくということで設備投資にはプラスの影響を与えますけれども、一方で人件費が圧縮されるということですから、雇用者数あるいは雇用者所得の伸びを鈍化させるということで、個人消費に対してはどちらかというとマイナスの影響を与えるのは委員の御指摘のとおりですが、全体的な景気回復の過程の中でこれらを解決していくということになると思います。
  199. 小山峰男

    ○小山峰男君 今三・五%の経済成長率というような数字をいただいたわけでございますが、こういう成長率の中で現状の形の税構造だとすれば税収増加というのは一体どの程度見込めるのか、その数字をお願いしたいと思います。また、そういう税収で本当に赤字国債体質から脱却できるのか、その辺の考え方につきましてもお願いをしたいと思います。
  200. 小村武

    政府委員(小村武君) 経済計画に見込まれております名目成長率三・五%を前提といたしまして過去の平均的な弾性値一・一を置きますと、税制改正の影響を排除いたしますと平年度で二・四兆円の毎年の税収の増が見込まれるということは、我々の中期展望等々の資料でお示ししたとおりでございます。  これに対しまして、歳出の方はどうかと申し上げますと、国債費、地方交付税等々の増加額、それに既存の制度を前提といたしまして一般歳出の増加額を合計いたしますと、大体三・五兆円が見込まれます。この差約一・一兆円ずつが毎年財源不足だということで現在の財政赤字に加算をされていくというような財政構造になっている、いわば発散型の財政構造になっているということでございます。
  201. 小山峰男

    ○小山峰男君 今二・四兆円というようなお話がございましたし、仮に平成九年度にいわゆる定率減税を取りやめるというようなことになるとすれば一・四兆円、さらに消費税につきましては、後ほどお聞きしますが、五%に引き上げて、一%分として二・四兆円というような形になろうかと思います。そうすると、全部足しても約六兆というような数字にしかならない状況だというふうに思うわけでございます。十兆円を超えるこの赤字国債、これの解消にもとても追いつかないような状況になろうかと思うわけでございますが、大蔵大臣、その辺のお考え方はどうでしょうか。
  202. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 平成六年に通していただきました税制改革関連法どおりに税制を進めていけば、来年の四月一日から消費税率が五%となり、ネットでは四兆円超の増収となります。また、特別減税を平成九年に行わないとすれば、その分二兆円は結果的な増収となる。その中で、先ほど主計局長答弁いたしましたように、自然体で考えれば、三・五%の成長率ならばその一・一倍、大体二兆何がしの増収になるということで、これらと地方分をプラス・マイナスしてみますと御指摘のような増収ということになろうかと思います。そのことは、御指摘のように財政の状況に比べれば、依然として大変な状況にあるということでございます。
  203. 小山峰男

    ○小山峰男君 三・五%程度の成長率ということになるとすれば、今のような状況で財政再建もできない形になろうというふうに思っておるわけでございますが、経企庁長官、企業の維持更新費だけで成長率を幾らぐらい押し上げるかという数字は出ておるでしょうか。
  204. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 維持更新だけでどれだけ成長するかというお尋ねだと思いますが、正直に言って明確なところはわかりません。ただ、維持更新だけでは日本経済はじり貧になるだろうというふうに思っております。したがって、新規事業の展開というのは不可欠である、そのための規制緩和はまた不可欠であると、そのように思っているわけです。
  205. 小山峰男

    ○小山峰男君 ある銀行の調査によりますと、成長率を二%ぐらい押し上げると推計しているところもあるわけでして、そうすると三・五といってもいわゆる実質的な成長は大変少ないものになるということでございまして、将来の税収も大変難しいと、先ほどお話があったとおりでございます。九月末までに見直しされると言われております消費税の見直しをやっぱりきちんと行う必要があるだろうというふうに思うわけでございます。消費税の税率見直しについて政府としてはどのような姿勢で臨むのか、総理、お考えをお願いします。
  206. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 御承知のように、六年十一月の税制改正によりまして、明年四月一日から消費税は税率を五%とすることが既に決定されております。ただ、その際、検討条項が改正法に明記されました。社会保障、行政改革、財政改革、そして税制そのものの改革、これらの四つの分野にわたっての検討を加えた上、この税率に変更を加える場合には、本年九月三十日までに法改正を終わるという意味での検討を終えることに決められております。既に政府税調でも御論議をいただいておりますが、これらの検討条項で税率に変更を加えるような内容にわたっての論議がまだ終わっていないという状況にございます。  七年度、八年度の予算編成の上でいろいろな検討を加えられました経緯も含めながらさらに検討してまいりたいと思っておりますが、今日の段階ではこの消費税率の九年四月一日、五%への既に法定されました分をさらに変更するというような状況にはなっていないと考えております。
  207. 小山峰男

    ○小山峰男君 後ほど若干触れさせていただきたいと思いますが、次の問題としては歳出の抑制という問題だろうと思っております。現実の姿として歳出の抑制というのはなかなか難しいと思っております。特に最近は、例の公共投資基本計画の六百三十兆円だとかいろいろな各種の長期計画がたくさんありまして、それが財政を大変硬直化させている原因になっているんではないかというふうに思うわけでございます。そういう意味で、長期計画と財政の硬直化という関係についてどのようにお考えか、総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  208. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、長期計画として委員が御指摘になりましたものにある意味では二つの流れがあると思います。  一つは、まさに例示に挙げられました公共投資基本計画、あるいはその一つ一つの項目をなします例えば道路でありますとか、港湾でありますとか空港、漁港あるいは土地改良、こうしたそれぞれの個別計画を持つ五カ年計画等、これが一連のものとしてありましょう。  これは理屈を言い出しますといろいろな理屈は多分あるとは思いますけれども、一面、議員が言われるような硬直性を全く排除するということではないと思います。私は、それは議員の御指摘が一部、その意味での硬直性というものはあり得るとは思います。しかし、これは国土の開発、発展につながり、あるいは地域の開発整備といった目的を持ち行われる投資でありまして、反面、これは地域における経済の浮揚効果も当然のことながら計算をできるものだと思います。そして、その地域における経済の浮揚効果、景気の浮揚効果と申しますものは、当然のことながらこれに参画いたします産業を通じて税収の増という形で国に返ってくる性格を持っている、そう申し上げても間違いではないと思います。  もう一つの分野で、長期計画、あるいは議員の御想定の中にあるかもしれません、我々は今高齢社会というものを見据えながら、ゴールドプラン、新ゴールドプラン、さらにはエンゼルプラン、こうした福祉の面での計画を進めております。そして、本日、衆議院において本会議で趣旨説明の行われました年金統合一元化に向けての今回の厚生年金保険法の改正といったものも、計画的に進めるという意味ではあるいは同じような意味を持つかもしれません。  しかし、これは逆に、ある意味では家計の負担を助ける部分、国民の生活の一番必要とする部分に国費が投入されていき、そうしたものなかりせば、すべてが自己責任原則のもとに国民の直接の負担にかぶっていくものを公的な仕組みで支えていくという意味ではまた違った効果を有するものだと私は思います。さらに、そうした支援の中で個人消費を伸ばしていく部分等も、これも厳密に計算するなら生じるかもしれません。  私は、一連の長期計画が、それぞれその年度年度におきまして財政の健全性というものをにらみながら積極的な計画の促進に努めていきますものは、必ずしも財政の硬直性というとらえ方だけで論ずるべきではないのではなかろうか。経済の効果あるいは国民生活への支援という視点から、それが個人消費を育てていく効果等々、多面的な議論のできるものではなかろうかと思います。
  209. 小山峰男

    ○小山峰男君 確かに、すべての計画がということではないと思うわけでございますが、しかし先ほどの財政状況あるいは財政を健全化しなければならないというような状況を考えるときに、かなり大胆な歳出抑制というものが要請されると思っております。この長期計画につきましても大胆な見直しが必要かと思っております。  特に、予算の査定と申しますか、編成をこの辺で少し変えたらどうかなという気がいたすわけでございます。予算の編成というのは政治の最も大事な作業でございますし、内閣の顔だと思っておるわけでございまして、各省の言うことだけを聞いて大蔵が査定をしてというような時代はもう終わったんじゃないか。やっぱり内閣が指導性を持って予算を編成するというような、そういう大胆に編成の方式を変えることも必要だというふうに思っておりますが、総理いかがでしょうか。
  210. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは、型どおりの御答弁を申し上げるなら、各年度の予算編成に当たっては、その財源の重点的、効率的配分を行う一方、制度、施策の見直しや歳出の削減合理化を図ってきたところということになるんだと思います。  しかし、私は、議員が今御指摘になりましたように、今まで以上に予算編成に努力を必要とし工夫を必要とする、これは間違いのないことだと思います。そして、本年度の予算編成に際しましても、私どもは公共事業の固定した配分の比率というものをできるだけ見直したいという意味での努力を随分いたしたつもりでありました。そして、ある程度の効果は出したと思います。  しかし同時に、それぞれ例えば地方自治体のお立場になりますと、他の施策との均衡といったものが非常に強いプレッシャーとして働き、それぞれの分野についての伸び率を競うような雰囲気は残念ながらいまだに消えてはおりません。あるいは従来、非常に大きな当然増経費を生む原因になっております社会保障、福祉の分野におきまして、たびたびの制度改正を行いながら、その制度改正を行うことによって新たな施策の財源を生み出すという努力をしてこられたと承知をしておりますが、そうした努力もこれから当然のことながら考えていかなければならないことだと思います。  しかし、高齢社会というものの性格上、社会保障、福祉関係の費用というものはほっておけば高齢人口の増加に伴って当然膨らんでいく経費でありますし、その制度をどう改変していくかといったことには、ただ単に官邸主導とか言葉だけで済むような問題だとは私は思っておりません。  それだけに、今後ともに本院を初め国会での御論議あるいは財政審等の御議論も私どもとしては参考にしながら、いかにすればよりよい予算編成の手法があり得るかについて一層真剣に検討してまいりたいと思います。
  211. 小山峰男

    ○小山峰男君 もう一つの歳出削減の方策としては、行財政改革あるいは地方分権、規制緩和、こういうものがあろうと思っております。この三つは一体として当然推進していくことが必要なわけでございまして、特に行財政改革というようなものは、先ほどもちょっとお話がございましたが、消費税の見直しの前提条件にもなっているわけでございまして、当然この辺を考えながら税制改革も進めていくということになろうと思います。  その辺の確認を再度させていただきたいのと、総理の行財政改革あるいは地方分権、規制緩和に対する決意のほどをお聞きしたいと思います。
  212. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、規制緩和あるいは地方分権というものは、私自身の頭の中では行財政改革のそれぞれ主要な柱と位置づけてまいりました。そして、私は、先ほど経企庁長官の御答弁にもありましたように、我が国の実質的な成長を確保してまいりますためには、構造改革というものが進まなければどうしてもそれを達成することはできない。その産業構造を変革させていきますためには、現在のその規制等の中で新たな産業分野の発展を促す上で支障のあるものがありますならば、積極的にこれを取り除いていかなければならない。さらには、国民生活の利便の上からも規制緩和というものは進めていかなければならないものと考えております。  また、地方分権につきましても、私はもともと住民に身近な仕事ほど住民に身近な自治体にお引き受けをいただくべきだということを年来主張してまいりました。今地方分権推進委員会でさまざまな角度から御論議をいただいております方向が、私はより一日も早く具体的な方向づけとして進んでいくことを期待いたしております。  私自身、就任をいたしましてから非常にある意味で悩みましたのは、行政改革委員会、地方分権推進委員会あるいは国会等の首都機能の移転を主管しておりました国会等移転調査会、それぞれがスタートをいたしました時期が違いましたために終わる時期がみんなばらばらである、そのために作業がそれぞれ独自に行われる、事務局間の連携がない、これを何とかそれぞれの進度調整をしながら相乗効果を出すことはできないかということでありました。  今経済審議会にも加わっていただき、これら四つの審議会の会長あるいは会長代理の方々に定期的に懇談を願い、情報を交換し、それぞれの抱える問題点をすり合わせていただく、こうした御努力を始めていただきましたし、これに伴ってそれぞれの事務局もまたその問題の所在を共通に認識し、情報交換を行い、すり合わせを行う体制を今つくりつつあります。  要は、効果を上げていくためにどういう手順が一番いいのかということでありましょうが、今後、殊に地方分権推進委と規制緩和の関係の中で、自治体の条例制定権等につきましての従来から残っております大変厄介な議論につきましても一定の方向をお示しいただくことによりまして、全体の作業が少しでも加速できるよう全力を尽くして私も取り組んでまいりたい、そのように思います。
  213. 小山峰男

    ○小山峰男君 お話しのように、抜本的な規制緩和というのは当然もうやらなければならないと思っております。  ここで一つ具体例でございますが、許認可事務だけでも一万一千件ほどあるというふうに言われておるわけでございまして、せめてこういうものを例えば半分にするとか、そういう意気込みを総理に期待するわけでございますが、いかがでしょうか。
  214. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは、私は必ずしも余りそういうやり方をいいやり方だと思っておりません。  と申しますのは、たまたま証券・金融不祥事が起きました際、私は大蔵大臣でありました。そして、今回も実は覚書とか行政指導が非常に問題になって国会で論じられておりますけれども、この証券の不祥事が起きましたときにも許認可行政、覚書行政というものが非常に問題になりました。そして、私は、辞任をいたしますまでに、その原因を調べて、少なくとも再発防止策の第一段だけは進めさせていただきたいと願いまして証取法の改正に取り組みました。  そのときびっくりしましたのは、通達集を持ってこいと言いましたら、証券の通達というのはこんなにあったんです。そして、それを取引所、証券業協会、要するに民間の自主規制に移せるものは皆移せ、そして事務的に必要なものは残し、どうしても必要なものは法律に取り込めと言いましたら、これくらいありましたものが結果としてはこの程度に減りました。減りましたが、実は規制の数としてはふえたわけであります。規制の数としては実は結果としてふえました。  例えば、これは一つの例でありますけれども、電電公社のみに認めておりました電気通信事業というものを一定の許可要件を付して民間事業者に開放いたしましたときにも、規制緩和を行った結果として新たな分野での許認可件数がふえるということはございます。  それだけに、その数だけに着目して半減とかそういうやり方は必ずしも私は理想的ではないと思います。むしろ、より積極的に民間からの意見を伺いながら不必要なそれぞれの許認可行政を整理していく、私どもはそういう努力を続けていきたいと思っております。
  215. 小山峰男

    ○小山峰男君 確かに、一万件を半分にというようなことはかなり粗っぽい論議なわけでございますが、ただそのくらいのやっぱり総理の意気込みが欲しいということで申し上げたところでございます。  時間もあれでございますので、公正取引委員会にお聞きしますが、規制の緩和というのは一方では自由な競争をかなり保障しなければならないと思っておるところでございまして、これが逆に寡占につながっていくようなことでは何のための規制緩和かわからないという状況かと思います。そういう意味では、やっぱり独禁法の運用等の強化というようなものが必要だと思っておりますが、その辺、公取としてはどのようにお考えか、お願いします。
  216. 小粥正巳

    政府委員(小粥正巳君) ただいまのお尋ねは、規制緩和との関連で競争政策についてのお尋ねであったと理解をいたしますけれども、端的に申せば、規制が多い時代には事業活動がそれだけ拘束をされているわけでございますけれども、この規制の緩和が進むということになりますと、自己責任原則それから市場原理に基づく自由な事業活動に経済社会全体が移っていくということになります。これは、私どもの仕事でございます自由公正な競争を基盤とする経済社会を目的とする、これが競争政策の目的でありまして、これと一致をするというふうに考えております。  それから、規制緩和が行われた後の市場を考えてみますと、御指摘のように、その場合には独占禁止法が事業者の公正自由な競争を促進するためのいわば一般的なルールになるわけでございますから、こうした分野におきまして独占禁止法の厳正な運用がますます重要になるということは御指摘のとおりでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、このような観点から、規制緩和と競争政策の積極的展開というものは文字どおり一体的に推進していくということが不可欠であると考えております。このような考え方は、昨年来政府が策定し推進をしております規制緩和推進計画の中でも最も重要な柱として取り上げられているところでございます。  今後とも、政府規制の緩和に積極的に取り組みますとともに、市場における公正かつ自由な競争の維持促進、私どもの業務そのものでございますけれども、これに一層努めてまいりたいと考えております。
  217. 小山峰男

    ○小山峰男君 ぜひそういう方向で強化をいただきたいと思います。  いろいろございますが、地方分権につきまして若干お聞きしたいと思います。  特に、重要な土地関係の権限はやっぱり地方に分権すべきだと。今回の中間報告でもいろいろ出ているわけでございます。この秋の答申が出た場合に確実に実施するということをお話しいただきたいと思いますが、まず建設大臣、農水大臣、さらに総理大臣にお願いしたいと思いますが、よろしくお願いします。
  218. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 小山委員にお答えいたします。  都市計画の決定は、身近な事項は地域に密着している市町村、広域的事項は知事という役割分担のもとで、すべて地方公共団体において行われているところでございます。その際、知事決定のうち高速道路などの国の政策や利害との調整が必要な事項につきましては、建設大臣の許可あるいは関係省庁協議は行っている、こういうわけでございます。  この役割分担につきましては、従来から市町村の役割を重視する方向で制度の拡充を図ってきているところでございますが、今後とも地方分権推進委員会や都市計画中央審議会における検討を踏まえまして地域住民に身近な市町村の役割を一層拡大する方向で努力していきたい、このように感ずる次第でございます。
  219. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 委員指摘の点は、特に調整区域の緩和の問題であろうと思っておりますが、農水省としてはかなりこれまで弾力的に運用してきたつもりであります。全国で十二万ヘクタール市街化区域農地があり、現在のところ農水省の許可というのは、許可件数で〇・一%程度、面積で六%程度でございます。  なお、県、市等からその緩和措置についての要請が非常に強いことにかんがみまして、今回の地方分権推進委員会中間報告にもありますとおり、現在の二ヘクタールの基準について、さらに緩和策について十分検討してまいりたいと思っております。
  220. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、農用地と都市計画等の場合には多少問題の所在が違うように思います。しかし、特に都市計画につきましては、今まで役割分担として市町村の役割というものを重視する方向で制度の拡充を図ってまいりました。今後も私はその方向を変えていくというつもりはございません。地方分権推進委員会の御議論も踏まえながら対応してまいりたい、そのように考えております。
  221. 小山峰男

    ○小山峰男君 いずれにしましても、勧告が出た時点では全面的に実施をしていただくということで、ぜひ地方分権を進めていただきたいと思っております。  地方分権あるいは規制緩和、あるいはトータルとしての行財政改革というものが進んだとすれば、先ほどから総理言われておりますが、首都機能移転というのは本来的に必要なくなるのではないかと私は考えるわけでございます。地方分権をしてスリムになった形でということができればと思っておりますが、その辺いかがでしょうか。総理にお願いしたいと思います。
  222. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これはもう長野県立候補取りやめと理解してよろしゅうございますか。というのは、私はちょっと議員がお考えになるのと違った角度からこの問題をとらえておりました。  東京の一極集中の是正、あるいは防災対応力の強化といった視点からよくこの問題が議論されます。しかし、その議論の組み立てを例えばそれでは東京の方々が喜んでおられるかといえば、私は必ずしもそういう議論の組み立てに東京の方々が満足しておられるとは思いません。しかし、現実にこの東京という都市を考えましたときに、少しでも都市空間をふやしていき、東京の住民の生活環境をよくしていこうとすれば何らかの対応が必要だということは、私、間違いないと思うんです。  同時に私は、今東京というところに集中し過ぎております政治、行政、経済あるいは社会、さまざまなシステムというものを少なくとも新しい装いにして二十一世紀を迎え得る体制をつくっていこうとする努力が必要だと思うんです。その中で我々の力で移していけるものとすれば、恐らくそれは政治の機能と行政の機能を新たな構想のもとに新たな地域を求めて築き上げていくということではなかろうかと思います。  そうした観点を考えますとき、この首都機能移転というものは、一つは、東京都民の生活の中に潤いを取り戻すだけの空間を創出し、その跡地利用を含めて都市環境を改善するという方向がありますし、もう一つは、新しい首都機能というものを構想していきます中で、全く従来の発想にとらわれない行政のあり方を模索していくこともできるのではなかろうか。  その中には当然ながら中央省庁と地方と、すなわち地方分権というテーマも大きな柱としてここに登場するでありましょうし、それまでにできるものを片づけておくことは当然ですけれども、その新しい首都に、首都機能を移転した場所に現在の中央省庁がそのままの姿で移り変わることはあり得ないと。私は、当然ながら、新たな行政官庁を必要として創出するものはあるかもしれませんけれども、トータルとしてははるかにスリムなものになるであろう、そのような願いをここに込めております。
  223. 小山峰男

    ○小山峰男君 長野県に必要ないのかというお話でございますが、これはちょっと総理、大変な失言だと思っております。私も国会議員として活躍をしたいということでございまして、私なりに考えているところでございますからよろしくお願いします。  あとのお話については確かにそういう考え方もあろうと思いますが、私は順序としては地方分権、行財政改革、そういうものが先行して、それでその後として今の首都機能移転というようなことが行われる、順序としてはそういうものかなというふうに思っておりますので、いろいろまたよろしくお願いをいたしたいと思います。  時間がなくなりましてあれですが、私は地方分権を進めて国としてやらなければならない事務というのはたくさんあると思うんです。例えば、司法の問題だとか輸入食品の衛生上の問題だとか、あるいは貿易の問題、それから通産省の問題にしても、本来国がやることが大変おくれているというふうに思っております。  せっかく最高裁からも来ております。裁判が大変時間がかかるというような問題についての対応、さらに競売事務等についてこれからますますふえてくると思いますので、その辺の対応につきましてお話をいただければと思います。
  224. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 我が国裁判、これは特に民事裁判でございますが、何よりも事件処理の迅速化という点が最大の課題であるという御指摘は各方面から受けております。裁判所の方としましても、国民にとって利用しやすい裁判、そういうものを実現するための一つの重点課題としましてこの裁判の迅速化に取り組んできておるところでございます。  一つ裁判手続の運用でございますが、これはやはり裁判の当事者双方の主張のうち本当に争いのポイントになっている点がどういう点なのか、それをできるだけ早い時点で確定していくということ、それからそういう争点整理を受けまして、そのポイントに集中した証拠調べを連続した期日で集中的に実施していく、こういうふうな裁判の運営を実現したいということで、これは弁護士会の方の御協力も得ながらいろいろ工夫を重ねてきているところでございます。  実は、今国会に民事訴訟法の改正案が提出されております。この改正法も、ねらいの一つの大きな点は裁判の運営の改善というところにございますので、この法改正が実現しますことがこういう迅速な審理を実現していく上で大きな力になるものと考えております。もちろん、手続の運用面での工夫に合わせまして、裁判官の増員を中心としました人的な機構の面での整備充実を図っていく必要もございます。そういう観点で、このところ継続的に毎年裁判官の増員をお認めいただいてきているところでございます。  それからもう一つ、現在一番大きな問題になっておりますのは、やはり不動産の競売事件が急増してきておるということでございます。この点につきましては、私ども東京とか大阪といった執行事件の急増しております庁に、ほかの庁からの応援を思い切って投入するというふうな方策も現実に講じております。また、事件の処理にコンピューターを導入いたしましたり、また物件の売却率を高めるための一つの方法としまして、競売に参加していただける方にできるだけ競売に関する情報をいろんな形で提供していく。例えば、最近ですとファクシミリを利用しましてそういう情報を提供していく、そういったような工夫もしております。今後ともこの執行事件の処理が遅滞しないような工夫を重ねていきたいと思っております。
  225. 小山峰男

    ○小山峰男君 ぜひ頑張っていただきたいと思います。  それから、最後に総理にお聞きするわけでございますが、財政状況がこういう状況の中で、財政再建法というような法律をつくって改革していく必要があるんじゃないかと思うわけですが、いかがでしょうか。
  226. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今私は、実はそういう法律をつくろうという考え方は持っておりません。と申しますよりも、今我々は、やはり何といいましても景気を回復軌道にきちんと位置づけていく、そのために使える武器は何でも使いたい、そのための一時的な国債の発行の増はやむを得ないと私自身腹をくくっておる部分がございます。しかし、これが非常に危険度の高い考え方であることも自分でも自覚をいたしておりますが、やはり景気を回復軌道に乗せなければ次のステップに入れないという思いは率直に私が持っております。  それだけに、先ほど来の御注意の中で、来年度の予算編成に向けて一層の工夫を凝らしていくこと、国債依存度その他御指摘をいただきましたような諸点に留意しながら努力をしていくことにつきましては御指摘のとおりと考えておりますけれども、まず財政再建法といったものを考える以前の問題として、我が国の経済がきちんとした成長路線に定着するまで全力を尽くさせていただきたい、それが今率直な私の気持ちであります。
  227. 小山峰男

    ○小山峰男君 その気持ちもわからないことはないんですが、報道によりますと、神通力を失った財政出動政策というような話もあるわけでして、現在の財政出動というような形で本当に景気が回復していくのかどうか、ただ赤字だけが積み重なって残ったというような形にならないかと大変危惧をするところでございます。また、いろんな面で健全財政の再建のためにぜひ頑張っていただきたいと思う次第でございます。  どうもありがとうございました。
  228. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で小山峰男君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  229. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、鈴木正孝君の質疑を行います。鈴木正孝君。
  230. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 平成会鈴木正孝でございます。  本日は総括質疑の大分最後の方になってまいりましたけれども、お時間をいただいて質疑させていただきます。何せ初めてのことですので、少々失礼なことがあるかもしれませんけれども、それはぜひ御容赦をいただきたい、そのように思っております。  先般、日米安全保障共同宣言が行われたわけでございますけれども、これに絡みまして幾つかの御質問をさせていただきたいというふうに思います。  初めに、昨年の二月に出されましたアメリカ政府の報告書、ナイ報告ですけれども、東アジア太平洋地域における安全保障戦略に関する報告書、これを見てまいりますと、今回の日米安保の共同宣言、かなりいろんなところで似ているようなそういう思いがするわけでございます。そんなことを含めまして、特にアメリカの国益あるいはアジア太平洋地域における米国が取り組むいろんな課題などを含めまして見てまいりますと、今言ったようなそういう印象が非常に強く持たれるわけでございますけれども、その辺の関係はどうなっているだろうかというようなこと。  特に総理、一生懸命おやりになったわけでございますけれども、この辺も含めまして共同宣言をまたどのように評価しているのか、その辺をぜひお伺いいたしたいと思います。
  231. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは何回か既に御答弁を申し上げてきたことと重複をいたしますけれども、今回発出いたしました日米安全保障共同宣言、これは我が国の安全と同時にアジア太平洋地域の平和と繁栄を図る上で、日米安保条約というものを中核とする日米同盟関係というものが今後ともにこれまでと同様に重要な役割を果たしていくことを確認する、同時に将来に向けての両国間の協力のあり方について具体的な方向性を示していきたい、両国の協力の出発点ともいう位置づけを与えております。  今、議員からナイ報告書との関係ということを御指摘になりました。これは当然ながらアメリカ側議論をしながら作業し、煮詰めてきたわけであります。そして、これはお互いの共通の認識を表明しているものでありますから、アメリカ側議論の土台はまさに東アジア戦略報告、いわゆるナイ報告にあったであろう。我々も新防衛大綱を土台にして議論をしてきた。ですから、直接どういう関係があるんだというお尋ねになりますと、直接の関係はございません。しかし、当然ながらアメリカ側の関係者の議論の土台には東アジア戦略報告が存在していたでありましょう。私は共通点が多々あるのはむしろ自然なことではないかと思います。
  232. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 共同宣言の中で情勢的なことをちょっと最初にお伺いしたいというふうに思いますが、最後の方になりましょうか、特に朝鮮半島等につきまして「地域における協力」というところで「朝鮮半島の安定が日米両国にとり極めて重要であることにも留意し、そのために両国が、韓国と緊密に協力しつつ、引き続きあらゆる努力を払っていくことを再確認した。」という文言、取り組みの姿勢というものがそこに出ているわけでございます。  朝鮮半島の平和のために日米韓三国の協力ということが今回確認されたということでもあるわけですが、さきの米韓首脳会談で、米国、韓国、そして北の方あるいは中国という四者会談の提案というものがなされたわけでございますけれども日本はその中で今後どういう役割を果たしていくのがよいのか、最近の情勢等を含めましてぜひお聞かせいただきたいと思います。
  233. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 何となくプロに私がお話をするというのはちょっと心外でありまして、むしろ逆に私の認識が誤っていたならお教えをいただきたいぐらいでありますが、私どもはここしばらくの間の朝鮮半島の情勢というものを注意深く見守ってまいりました。同時に、このところちょっとまた静まりましたけれども、板門店を中心として起きておりました事態というものに非常に神経をとがらせていたことも事実であります。  そうした状況を踏まえて韓米首脳会談が行われ、その成果としてクリントン大統領と金泳三大統領から何らの前提なしにの話し合いという呼びかけが中国、北朝鮮に対して行われました。私は、これは非常に朝鮮半島の平和と安定のために成功してほしいと願いましたし、今も願っております。そして、今私の手元には残念ながらその後の状況は入っておりません。けさ、少なくとも国会に参りますまでに、正式の北朝鮮側からの反応というものはまだ入手をいたしておりませんでした。  ただ、私は、日米首脳会談でクリントン大統領と当然ながらこうした問題もお互いが話題にしたわけでありますけれどもアメリカの意思として非常に明確なものは、アメリカと北朝鮮だけの対話というものを行う意思はないということであります。この点は私は大統領の考え方というものは非常に明確であったと思っております。  そういう状況の中で、私は、アメリカと韓国、そして中国と北朝鮮、朝鮮半島における暫定協定の生まれます時点でその対話を成立させた関係者、これが前提なしに話し合うということは非常に望ましいことだと思いました。そして、これが受け入れられること、その話し合いが行われることとともに、そうした平和が達成されるまでの間、北朝鮮が休戦協定を遵守してくれることを強く願っております。ただ、それではそれだけで朝鮮半島における問題は終了するのかといえば、決してそうではございません。  そして、現実に韓国とアメリカ日本とが共同で半島のために努力をしておる例としては軽水炉の供与の問題、いわゆるKEDOの問題がございます。これは一昨年でありましたか、北朝鮮の核開発疑惑というものが非常に深刻な状態を我々の上にも惹起していたわけでありますが、その中におけるアメリカと北朝鮮の軽水炉供与の交渉というものが実り、韓国、日本が共同してこれに当たるということで今日まで進んでまいりました。これは現在の一つの例であります。  今後、北朝鮮との間で南北の対話というものを私は本当に優先してほしいと思っておりますけれども、そのプロセスの中におきましても、韓国あるいはアメリカと共同で解決に当たっていくべきテーマというものがあるいは生まれてくるのかもしれないと思っております。そうした中での我々の役割というものは当然あるでありましょう。そして、それを果たしていくためにためらうつもりはございません。
  234. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 日本もこういう新しい流れ、動きの中でひとつ一生懸命に工夫、努力をしていただきたいというふうに思います。  具体的に共同宣言の中で少しお聞かせをいただきたいと思うわけでございます。これはさきの本会議あるいは当委員会でもいろいろと話が出ておることの重複のようなところもありますけれども、この共同宣言に極東という文言が出てまいりませんで、日本周辺地域とか、あるいは十六日に閣議決定されました「沖縄県における米軍施設・区域に関連する問題の解決促進について」と、こういうものもあるわけですけれども、ここでも我が国周辺地域という言葉、あるいは共同宣言そのものでもアジア太平洋地域という言葉が出ております。  安保条約六条の極東の範囲が変更されたかという質問については、変更していないという御答弁がされているわけでございますけれども、そうであるなら極東我が国周辺地域とアジア太平洋地域の関係はどういうようなものなのか、お話をお伺いしてもイメージとしてなかなかわきにくい。恐らく、国民皆さんは非常に言葉のあやの中で悩んで、本当に何だろうかと疑問を持たれる方が多いんではないかというような気もいたしますので、そんなことを前提にして少しわかりやすく明確にお話しいただければ大変ありがたいと思います。
  235. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) まず、極東という概念でございますが、これは安保条約上はっきりと規定されているところでございまして、在日米軍日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域でございます。そして、そういった区域は、従来の政府答弁におきまして、大体においてフィリピン以北及び日本及びその周辺の地域、こういうふうに解しているところでございます。  一方、今回の安保共同宣言におきましてアジア太平洋地域と、こういう言葉を使っておりますが、これは日米安保条約によりまして米軍我が国に駐留している、そのことが結果としてその地域の安定と平和に寄与しているそういった地域ということでございまして、安保条約上の極東のような条約上の概念ではございませんので、はっきりした境界があるわけではございません。  なお、これまでもアジア太平洋地域という表現はしばしば使われております、日米首脳会談等が行われましたときに。例えば、中曽根総理の五十八年一月のステートメント、竹下総理訪米の際の六十三年のステートメント、あるいは海部総理平成元年のプレスリマークス、それから宮澤総理とブッシュ大統領との間の日米グローバル・パートナーシップに関する東京宣言というのがございました。さらに、一番近いのでは細川総理のジョージタウン大学における演説、そこでもほぼ同じような概念でアジア太平洋地域という言葉が使われているところでございます。  なお、三つ目に、安保共同宣言におきまして日本周辺地域という表現がございますが、要するにこれも、我が国の周辺の地域で発生し得る事態我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合の日米の協力について言及しているわけでございますので、その意味するところは、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態の発生し得る日本の周辺の地域という一般的な意味使用しているものでございまして、これまた明確に範囲を確定できる性格のものではございません。  そういった三者の関係になります。
  236. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 次に、この共同宣言の中に、実質的に非常に大事な部分といいましょうか、非常に重要な重い部分が幾つかあるわけですけれども、その中で一つ「国際的な安全保障情勢において起こりうる変化に対応して、両国政府の必要性を最も良く満たすような防衛政策並びに日本における米軍の兵力構成を含む軍事態勢について引き続き緊密に協議する。」というくだりがございます。  「兵力構成を含む軍事態勢」というのは具体的にどういうようなものを指すのか、あるいは米軍の軍事態勢に対して日本側もこれから物申すというようなそういうスタンスで対応していこうということなのか、あるいは「引き続き緊密に」としているわけでございますので、従来からこのようなことについてどういう場でどういうような協議が当事者で行われていたのか、防衛庁長官、できればお伺いをいたしたいというふうに思います。  このことが、日本政府の合意した協議内容、その事項を確実にこれからまた責任を持って実行するということが当然のことながら求められていくと思うんです。そうしますと、これが実行できないというようなことになりますと日米の間の信頼関係をまた損なうような大変大きな問題にもなってくるということを考えますと、ここにさらっと入っている「緊密に協議する。」ということはかなり重い表現だというふうに考えているわけでございますが、防衛庁長官あるいは外務大臣、よろしければお願い申し上げたいと思います。
  237. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 日米両国は、日米安全保障体制のもとで従来から国際情勢についての緊密な情報交換を行うとともに、国際情勢の変化に対応してそれぞれの防衛政策なり軍事態勢について緊密に協議をいたしてきているわけでございます。御指摘の記述につきましては、かかる実態を反映しているものでございまして、特段の経緯があるわけではございません。  いずれにいたしましても、御指摘の記述も踏まえまして、今後ともあらゆるレベルと機会を通じまして日米間の緊密な政策協議というものを行いまして、もって日米安全保障体制の一層の信頼性の向上というものを図ってまいりたい、このように考えております。
  238. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 特段のということのようですけれども、恐らくかなり一生懸命いろんな角度で多角的に実質的な協議をおやりになって今日に至っているというふうに推測はするわけでございます。  その次に、在日米軍の記述でございますけれども、十万人の前方展開軍事要員というような形で、在日米軍については「ほぼ現在の水準」という表現を使われ必ずしも数字が入っているわけではないんですが、ここの文言のところに現在、現在、現在という三つの現在が入っていまして、いろいろと条件をつけて縛りをかなりかけている感じもするわけでございます。全体枠として今たしか四万七千くらいだったでしょうか、国民皆さんは数字があるとないとじゃえらいまた感じが違いまして、そういうことを思ってみますと、それを記載しなかった理由というのは本当は何だろうかということを多くの人が思っていると思うんですよ。ですから、その辺をちょっとお伺いできますか。
  239. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 御指摘の部分は、安保共同文書におきましては「日本におけるほぼ現在の水準を含め、この地域において、約十万人の前方展開軍事要員からなる現在の兵力構成を維持する」と、こういう表現になっておりますので、「日本におけるほぼ現在の水準」と明確に書いております。したがいまして、そこについて何万何千、例えば四万七千という数字が書いてあるかどうか、数字が出るかどうかというのはいわば二次的なことでございまして、米国のコミットメントについてはこの部分でも極めて明確に書いてございますし、また安保宣言全体を通じてごらんいただければ、そのコミットメントには何ら疑念がないところだと思います。  それから、現在、現在と念を押してあるとおっしゃるのでございますが、これはもう委員よく御承知のとおり、将来にわたりまして国際情勢、とりわけ安全保障環境がどういうふうに変化していくか、軍事技術あるいは装備等のレベルの変化に応じてその辺が変わり得るんだということは、我が国あるいは米国の当局者がこれまでしばしば表明してきたところでございます。
  240. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 今、総理あるいは外務、防衛の大臣からお話しいただいたように、この宣言というのは将来にわたって非常に重い重要な、人によっては安保条約の実質的な改定だ、あるいはその種のお話をされる方もいらっしゃるというようなことを考えてみますと、政治、軍事的な意味というのは非常に大きいと思うんです。  こういうものの署名等の手続はどういうように行われたのか。例えば、安全保障会議あたりに少し何か報告をされたのか、その辺のことについて官房長官にお話し一お出かけですか。
  241. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 官房長官に対する御質問でございますが、この文書は政府部内におきまして主として外務省が中心になって取りまとめをしてまいりましたので、私から答弁させていただきます。  御指摘のとおり、安保共同宣言は日米安保体制の果たす役割の重要性につきまして首脳レベルで確認するという非常に意味のある重要なものであると思います。しかしながら、これは法形式的に申しますと、条約あるいはそういう条約を改定するようなものじゃございません。また、安保会議の関係から申しますと、安保会議に必ずかけなくちゃいけない事柄あるいはかけるべき事柄等がいろいろ書いてございますが、それにも該当するものではないと思いますので、特にそういった手順を踏んでおるわけではございません。  政府部内におきましては、先ほど申しましたように外務省が取りまとめの中心になりまして、関係各省との連携あるいは関係の閣僚とも密接に連携をとりながらまとめまして、それを最終的に総理そして米国大統領との間できちんと合意をされまして、そういった両首脳の政治的な意思を明確に内外に示すという意味で、総理並びにクリントン大統領の間で署名されたという、そういった意味で政治的な意義が大きいというものでございまして、手順、手続の方につきましては、むしろ実質面に着目していただければと存ずる次第でございます。
  242. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 今、外務大臣からの御説明で、確かにそういうことなのかなと思いますが、例えば議員懇談会のような形で非常に大事なものについては、安保会議の活性化なんて私の立場で言っていいかどうかわかりませんけれども、時々そういう議論も出るようなことを考えてみますと、重要な文書等につきましてはそういうものに諮って、あるいは報告してもよろしいんじゃないのかなというような感想を強く持っていることを一言申し上げたいと思います。  それから、次はガイドラインの見直しでございますけれども、「日米防衛協力のための指針」、昭和五十三年の十一月に出たものでございますけれども、これの見直しをやろうということでございます。  それに続きまして「両首脳は、日本周辺地域において発生しうる事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究をはじめ、日米間の政策調整を促進する必要性につき意見が一致した。」と。あるいは、現在のガイドラインそのものといたしましては、共同研究の前提条件といたしまして、研究、協議の結論は「両国政府の立法、予算ないし行政上の措置義務づけるものではない。」と言っているわけでございます。  したがいまして、ある意味では、現在のガイドラインというのは研究のための研究のような、具体化されないといいましょうか、そこまで強く言うことはないのかもしれませんけれども、そういうようなものであったようにも思うんです。今度は政策調整の促進というかなり強い表現も含まれているというようなことを考えてみますと、具体化を前提とした研究、実行を前提とするような研究というふうに読むのが素直ではないかなとも実は思うわけでございます。  そこで、幾つか御質問をしたいと思うわけでございますが、このガイドラインと言われるものの見直しの開始とあるわけでございますけれども、このガイドラインは三項から成っておりまして、第一項は「侵略を未然に防止するための態勢」、第二項が「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」、あるいは肝心の第三項めが「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」というようなことであるわけです。  三項というのは、いわゆる安保条約第六条の極東有事の事態というようなことになるわけでございますが、今回の研究というのはその第三項の極東有事に関する研究と思われるわけでございますけれども、その辺はひとつ明確に御答弁をいただければと思います。
  243. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) いろいろとガイドラインのことにつきまして御質問がございましたけれども、今回の日米安保共同宣言において、委員指摘の「日本周辺地域において発生しうる事態」と、こういうことで研究を促進する、こういうふうにしているわけでございます。この場合は、そのような事態に対し、日米協力して対応する方法につき幅広く研究をする旨でございまして、必ずしも先ほどお話しのガイドライン第三項の米軍に対する便宜供与のあり方についての研究にとどまるものではない、こういうふうに考えております。  例えば、事態の拡大波及を防ぐための外交努力、あるいは在外邦人等の保護、輸送における協力などさまざまな内容を含むものと考えておりまして、このような事態においてもなお我が国が日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を通じて適切に対応すべきとの考え方については、先般決定いたしました新防衛大綱でも述べているところでございます。
  244. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 特に、その第三項に関連するような事柄というのが、ちょうど五十三年に現行のガイドラインができて、それ以来約二十年くらいたっているわけでございます。この間もちょっと質問が出たかもしれませんが、言ってみればさしたる進展もなく今日までやって来られたというようなことなんですけれども、この辺の理由というのはどういうものなのか、お聞かせいただけますか。
  245. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 委員指摘のように、昭和五十七年一月の日米安全保障協議委員会において研究を行うことが望ましいということで、日米間の意見の一致を見たところでございますが、残念ながらこれまで余り進捗していないということでございます。  その理由というのは、ガイドライン、先ほど委員もおっしゃっておられましたが、三項目から成っておりまして、その第一項目と二項目から始めたということ、研究の対象が米軍の運用に直接かかわり極めて多岐にわたるということ、それから外務、防衛両省庁以外に非常に多くの省庁の所管事項にも関係する幅広い事項にわたること等が理由となって今のようなことになっているわけでございます。
  246. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 いろんな国内の政治状況等を反映しながら、そういうような個々の理由ということなのかなとも思えるところがございます。  それはそれといたしまして、見直しを開始するということなんですけれども、具体的にどのようにやっていくのか、全体を再検討するのか、あるいは現行指針の何か組みかえのようなことでやっていくのか、その辺の事柄。目的とか方向性とか、あるいは後の見直しをやっていく体制、恐らくこの枠組みづくりをまた早急に検討する場が多分必要になるんじゃないのかなという感じもするわけです。  SACOや何かに含めまして、秋にも多分何か予想されるような、2プラス2というようなものがあろうかと思うんですが、そういうところで報告する、そういう段取りかなという気もするんですけれども、その辺のお話をお伺いできますか。
  247. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 共同宣言の中で、見直しを開始するというふうに合意がなされたわけでございますが、まさしく体制の問題、スケジュールの問題等、これからアメリカ側と詰めていくということでございます。  参考までに申し上げますと、現行のガイドラインの作成の場合には、昭和五十一年の日米安全保障協議委員会におきまして防衛協力小委員会、SDCというのを設置いたしまして、その場で議論したという過去の例もございます。こういう例も参考にしながら、今回の首脳レベルの合意を受け、早い機会に協議の場を設けてアメリカ側と取り進め方についてすり合わせを行っていきたいと考えているところでございます。
  248. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 相手のあることですから、具体的にいつどのような形でということはなかなか言いにくいことだろうと思います。  それから、総理、集団的自衛権にかかわるようなお話をお伺いしたいと思います。  この日米間で実のあるといいましょうか、そういう防衛協力を進めるという観点に立ちますと、集団的自衛権を含めて国家固有の権利である自衛権の問題というのは避けて通れない非常に大きなテーマだと思います。  総理は記者会見で、特に集団的自衛権にかかわってというふうに思いますけれども憲法などの観念的な議論から始まってしまうことは不幸だというような趣旨のことをちょっとおっしゃられていたようにも思います。しかしながら、事実上ここからある程度出発をしていかないと、できることとできないことの区別といいましょうか、なかなか明確にならないようなことがあるだろうと思うんです。問題の棚上げということではなくて、きちっと整理をして、やっぱり勇気を持って国民の理解を求めるということが大変大事だというふうに思うわけです。  集団的自衛権に関してはいろんな議論がもちろんございます。経過的に言えば、国連憲章五十一条の経緯とか、昭和三十年代の初めくらいにいろいろとありました座して死を待つのかというような議論、あるいは武力行使の一体化論の中身の問題とか、朝鮮戦争当時に実際に日本がいろんな実質的な支援というものをやったというような、そういう実績も過去にもあるわけでございますけれども、そんなことを含めて見ますと、その辺をどういうふうにお考えになっているのか、率直にひとつお伺いをしたいと思います。
  249. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、私は憲法改正論、第九条を云々するところから、あるいは集団自衛権を現憲法は認めているかいないかという議論を始めるよりは、実質的な問題から取り組みたいと申しました。そして、今も私はそう思っております。  私は、本当に安全保障というものを考えますときに、いろんな緊急事態というものが想定されるわけでありますから、そういう事態を想定して具体的にどう対処するか、またその事態に対して日米がどういう防衛協力をするか、これを検討、整理していくことは本当に大事だと思っております。そして、万全の体制でそういう議論に臨み得るように引き続き努力をしてまいります。  ただ、今日まで私ども国会の生活の中で、何回か集団的自衛権あるいは九条というものが論争になったその状況を見てまいりました。そうなりますと、往々にして神学論争に入ってしまいまして、現実に進行している事態というもの、そのときそのとき問題があってそういう議論はされたわけでありますけれども、それからいつの間にか遊離してしまったという経験を何回か持っております。  それと同時に、我々は憲法のもとで行政府を組織いたしております。国の対応というものが憲法の範囲内で行われるということは当然のことであると私は思っておりますし、行政府として憲法の枠を超えた行動を想定するということ自体が私は許されることではないと思います。そして、集団自衛権の行使のように我が国憲法上許されないという事項について、政府の見解を変えるつもりはありませんということも申し上げてまいりました。  私が申し上げたいことは、例えば先ほど難民あるいは在外邦人の救出といった事態を閣僚のうちのどなだかから例示として出されましたけれども、そういう事態が起こり得るケース、それに対して使用し得る手法、そしてそれを受け入れてもらえるかもらえないかという相手側の状況、我々の方の対応、むしろ具体的に一つずつのケースを整理し、それを取りまとめていくことが大事だと思っていることは、私はそのとおりでございます。
  250. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 あと、沖縄の基地返還のお話をお伺いしたい、こう思うわけでございます。  総理、さすが仕事師らしいといいましょうか、非常に素早く対応されたといいましょうか、それが過ぎたと言うと言葉は悪いんですけれども、非常に多くのプロセスが、岩国の市民の方々あるいは嘉手納町周辺の方々にしましてもかなり大きなショックがあったんだろうというような気もするんです。  そのことがまたいろんな形で、例えば県道一〇四号線越えの実弾演習やなんかにつきましても、沖縄から本土に機能移転しようというような話が出ているわけでございます。そうすると、その関係の地域の人たちにやはり同じような不信感といいましょうか、そういうことが起こる可能性というものは非常に大きいんじゃないか、かえってまた大きな混乱が起こるんではないかというような気もいたします。  ですから、情報というのはなかなか事務方におろすということは難しいのかもしれませんけれども、政治的決断ということで官邸主導でやられたということのようでございます。そういうことではありますけれども、ある程度慎重に取り扱っていただいた方が大きな混乱が生じないで済むというようなこともあろうかと、こう思います。  そんなことを感じますし、それからまた経費につきましても、防衛費の中でやるのかやらないのか、別枠でやるのかやらないのかというようなそういう問題もあります。沖縄の県民のためにとにかく最大限努力をしようという姿勢でございますし、それはよくわかります。ですから、確実にやれるという体制をつくっていくことが非常に大事だというふうに思います。私は、防衛費の中ではとてもじゃないけれどもできないのではないかという気もいたしますし、工夫、努力をしてもなかなかそれは無理がある、限界があるというような思いもいたします。  そんなことを含めまして、どのように対応されるつもりか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  251. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) やり方がけしからぬという御批判であれば甘受をいたします。その上で、私が聞いていただきたいことは一点であります。  マスコミの皆さんも、国会での御論議でも、普天間を、普天間を、普天間を、普天間をとすべての方々がおっしゃいました。同時に、自分のところには嫌だということも前もって皆さんおっしゃっておられました。そして、でき得るならば他に迷惑をかけないで解決することができないかと努力をいたしましたが、残念ながら全く他に御迷惑をかけない解決策は私の力では見出せませんでした。  そして、ぎりぎり最後の決断をいたします前に、私は大田知事の御意見を伺いました。ここでも御披露をいたしましたが、大田知事は心から喜んでお返事をくだすったわけではありません。しかし、次善の策として、それでもと言っていただきましたので私は決断をいたしました。  確かに、私は御相談をいたしませんでしたから、それが許せないということであればその責任は私一人でありますけれども、あれだけ沖縄県民の苦労を考えろ、沖縄県民の長年の苦労に報いるべきという声がありました中で、確かに関係の方々に御迷惑をかけることにはなりますけれども、少なくとも現状が改善されるのであれば御協力をしていただくことはできないものだろうか、私は本当にそう考えてまいりました。  今、委員から県道越え射撃訓練の例示もございました。今可能な各地域でそれぞれに反対の声が出ております。しかし、その方々といえども、では沖縄の方々に苦しみをしょい続けろと言われるわけではありますまい。そして、日米安保条約が不必要だと言われるわけでもありますまい。だといたしますなら、それを受け入れるならば我々にはこれだけの条件があると言っていただくことはできないものだろうか。そして、その解決策を提示され、その解決のために努力することによって御協力をいただくことはできないであろうかとただ願うのみであります。    〔委員長退席、理事大河原太一郎君着席〕  それから、経費はどれだけかかろうと、私は少なくとも沖縄県民を見殺しにすることはできないというのが政府の姿勢だと考えております。
  252. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 あと、同僚の加藤議員に関連質問をお許しいただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  253. 大河原太一郎

    ○理事(大河原太一郎君) 関連質疑を許します。加藤修一君。
  254. 加藤修一

    加藤修一君 平成会加藤でございます。鈴木委員の関連質問をいたします。  その前に、先週の日米首脳会議等につきましては、私も大きな関心を持っておりまして、新聞等を見ました。大変な課題が多いというふうに再認識した次第でございますけれども総理、大変にお疲れさまでした。  まず、在日米軍基地の返還等にかかわる環境問題についてお伺いいたします。防衛庁よろしくお願いします。  沖縄の金武町は県道一〇四号越えの演習地で、返還後、約四万発に及ぶ着弾によって環境破壊が進んでいると聞いておりますが、どのような訴えが来ているか御説明をお願いいたします。
  255. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 現在、キャンプ・ハンセンにおきます演習でいろいろ地元の方に御迷惑をかけておるところでございますが、主として出ておりますのは、表面の土層が赤土と言われる土層でございます。米軍の演習に伴いましてその一部が大量の雨等の場合には赤土が出るということで、私どもかねがねそういう被害の除去につきましては考慮しておるところでございます。現在もそういう赤土の流出防止の砂防ダム等を計画的につくってそういうものの被害を少しでも食いとめる、こういう手当てをやっておるところでございます。
  256. 加藤修一

    加藤修一君 深刻な事態があると思うわけでございますけれども、恩納村の環境汚染の問題あるいはPCBの事件の問題等がございまして、演習地等の返還があった場合の原状復帰、それはどのような内容を言うのか、またそれには汚染された環境の浄化というのが含まれるかどうか、その辺についてお願いします。
  257. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 現在、施設・区域に提供されております土地所有者の方に返還する場合には、私ども原状回復の義務を負っておりまして、当然国費でそういう建物の撤去であるとかあるいは埋設物の除去であるとか、そういうことをした上で所有者の方に返還する、こういう制度でございます。
  258. 加藤修一

    加藤修一君 その原状復帰の内容について、汚染された環境の浄化は含まれますか。
  259. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 汚染というのはいろいろ原因があろうかと思いますが、私どもでき得る限りの除去といいますか、そういうことをした上で返還するということは当然含まれると考えております。
  260. 加藤修一

    加藤修一君 それでは、その辺に関しましてちょっと申し上げたいことがあるわけでございますけれども、外務省にお尋ねしたいんですが、NATO軍がドイツと交わしておりますNATO地位協定、ボン補足協定というのがございますけれども、第五十四条のAとB、この全文をちょっと読み上げていただけますか。
  261. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) これは改正協定で追加される五十四条のAということで、まだ未発効の部分でございますけれども、その第一項におきまして「派遣国は、その軍隊の連邦共和国内におけるあらゆる活動に関し、環境保全の重要性を認識し確認する。」旨規定した上で、第二項におきまして、軍当局はその行動につき「その環境との両立可能性を可能な限り早期に調査する。」旨定めているところでございます。  そして、五十四条Bにおきましては、軍当局は、可能な限りドイツの環境法令に従って低公害とされる燃料等のみを使用し、飛行機、船舶及び自動車を操縦することを確保するとともに、当局は自動車等に関し可能な限りドイツにおける騒音及び排気ガスの規制に関する法令を遵守することを確保する旨規定しているところでございます。
  262. 加藤修一

    加藤修一君 外務省にお願いしますけれども、同じように日米地位協定の中にこういった環境にかかわるような項目はございますか。
  263. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 地位協定第三条三項というのがございまして「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」と規定しているわけでございます。  この規定は、地位協定第三条一項に基づいて米側がいわゆる管理権を有しているわけでございますが、そうであるからといって施設一区域内における米軍の活動が全く自由であるということではなくて、我が国の公共の安全等に関連ある限り、米軍我が国の法令を尊重することは一般国際法上の米国の義務であるという考え方を規定したものでございます。
  264. 加藤修一

    加藤修一君 それでは、日米地位協定の三条の第三項についてちょっと読み上げていただけますか。
  265. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 今私が読み上げましたのが地位協定三条三項でございまして「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」ということでございます。
  266. 加藤修一

    加藤修一君 その三項についてですけれども、これに環境にかかわる項目を具体的に明示的に入れる考え方はございませんか。
  267. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) それでは、米側はどういうふうに対応しているかでございますけれども米軍は外国における基地においてファイナル・ガバニング・スタンダーズと呼ばれる一定の評価基準を設定し、これに基づいて環境に配慮した行動をしておりまして、在日米軍においてもこの評価基準が用いられているものと承知しております。  そして、アメリカ側の方針によりまして、オーバーシーズ エンバイロンメンタルベースライン ガイダンスドキュメントに示されるアメリカの国内法の基準と接受国の基準のうち、より厳格な方を選択して定めることになっているというふうに承知しております。  そして、在日米軍が用いる評価基準については、昨年在日米軍で作成されたところでございますけれども米側は日米合同委員会のもとの環境分科委員会を通じて、日本側に対してこの評価基準が我が国の基準との関係で問題がないか今チェックを求めているところでございまして、現在関係省庁において作業中であると承知しております。  こういうことを通じまして、環境の実際の基準が守られるというふうになっていくものと考えます。
  268. 加藤修一

    加藤修一君 それでは質問を変えます。さきの日米首脳会議におきまして、産業、経済、そういった問題についても扱われていたようでありますが、私は日米間において、特にこのままでは日本側に大変不利になるものがあると考えているものがございます。それは何かと申しますと、電子取引システム、こういうことではないかなと思います。これにつきまして質問を申し上げたいと思います。  通産大臣並びに郵政大臣にお願いしたいんですけれども、現在通産省並びに郵政省で進めています電子商取引プロジェクト、この進捗状況と期待される成果、さらにその時期についてお伺いしたいわけでございます。
  269. 塚原俊平

    国務大臣(塚原俊平君) 電子商取引の推進は、経済、産業構造の変革のかぎと認識をいたしております。ただし、その実現のためには解決すべき技術的課題や制度的な課題があることは事実です。  とりあえず、通産省といたしましては、かかる課題を解決するために平成七年度補正で合計三百億円を超える規模の予算をお認めいただきまして、四十五の実証プロジェクトを採択して現在実施をしております。本プロジェクトにおいては、電子商取引に必要な暗号認証技術やICカードに関する技術など幅広い成果が期待をされております。  さらに、電子商取引の実現に当たり解決すべき制度的な課題につきましては、昨年四月より電子商取引環境整備研究会を開催いたしまして、さまざまな角度から議論をしておるところでございまして、一昨日に中間報告を発表したところであります。  こうした取り組みを通じて電子商取引の実現に向けた動きが一層加速されるよう、当省としても引き続き精いっぱい努力を続ける所存でございます。
  270. 日野市朗

    国務大臣(日野市朗君) 電子商取引というのはかなり大規模に行われるようになってまいりました。実はこの電子商取引といいますと、結局お金の流通から決済からいろんな方面に広く影響いたします。でありますから、我が国としても、郵政省のみならず、通産省また大蔵省などでも検討をしておられる事項であります。  郵政省といたしましては、今サイバービジネス協議会という協議会をつくりまして、そしてそこで電子商取引の実証的な実験をやっております。これは本年四月から二年間という予定でやっているわけでございます。  この協議会には百社ほどの会社に参加をしていただきまして、そしてここで高速のインターネット網などを利用いたしまして、実際に商品の販売、電子決済などを行っていくという実験をやるわけでございます。技術、特に暗号認証技術、そういったものの検証、確立、これを行っていこうと思いますし、そこに参加した人々にその実験の成果をどんどん使っていただくということにいたしております。  私たち心配しておりますのは、いわゆるアメリカなんかでどんどん先にこういったものを進めて、ディファクトスタンダードと言われる一つの基準をつくってしまって、それを国際基準に当てはめてくるという動きがございます。それに負けないように、きちんと我々としても日本の基準をディファクト化していく、そういう努力もやってまいりたいと、こんなふうに思っております。そういう実験を現在進めておりまして、これからも鋭意進めてまいりたいと思っております。
  271. 加藤修一

    加藤修一君 郵政大臣にもう一度お尋ねいたしますけれども、どんどん使っていく、あるいはディファクトという話がございました。どんどん使うというのは、プロジェクトの期間が二年間でございますけれども、どんどんというのは具体的にどういう意味のどんどんでしょうか。
  272. 日野市朗

    国務大臣(日野市朗君) 実験の成果としては、二年間かけてそれをやるわけですが、その途中でもそれはもう使って構わぬということです。ですから、二年間たってそれを解禁いたしますというやり方ではなくて、それはもう……
  273. 加藤修一

    加藤修一君 途中でリリースするんですか。
  274. 日野市朗

    国務大臣(日野市朗君) リリースと言えばリリースでございますが、そういう形で成果を生かしてまいりませんと国際競争に立ちおくれるということになることを恐れます。
  275. 加藤修一

    加藤修一君 通産大臣にお伺いしたいんですけれども、先ほどの説明の中にあったように思いますけれども、それでは電子決済の実現の見通しについてお願いいたします。
  276. 塚原俊平

    国務大臣(塚原俊平君) 当省が推進をしております電子商取引実証プロジェクトにおける電子決済の取り組み、金融政策など幅広い観点からの検討を通じまして、技術的な対応、制度面での対応が進展することにより新しい電子決済が実現されるものと見込んでおります。  それで、これは先生から御質問をいただきまして、機械情報局の方と私どもも勉強したんですけれども、機械情報局長は非常に勉強しておりますので、もしよろしければ答弁をさせていただければと思います。
  277. 渡辺修

    政府委員渡辺修君) お答え申し上げます。  電子決済の実現の見通しについての御質問でございました。今、大臣からお答え申し上げましたように、電子情報技術を活用いたしまして買い物、代金支払い手続、そういったような一切の手法をICカードを用いまして、それで例えばインターネットにバーチャルモールという仮想店舗をたくさん置きまして、パソコンでICカードを使ってホームショッピングで注文をする。そうするとそれが自動的に、これは幾つかのプロトコルがございますけれども、それが流れていってそれぞれのところで注文が行われ、その品物がこちらに届いてくる。お金はクレジットで、ICカードで落ちていく。  非常に簡単に言うとそういうことなんでございますけれども、これを非常にたくさんのプロジェクトを組みまして、ちなみに平成七年度の補正予算で我々がやり始めておりますのは、こういうので全部で十九のプロジェクトを約三百五十社、五十万人ぐらいのモニターということで、消費者も加えました壮大な実験を今やり始めたところでございます。  この結果、何が一番難しいかといいますと、その個々のICカードでございまして、それによってお金が流れる、実質的に支払いが行われるわけですけれども、それが安全、セキュリティーがちゃんと確保できるのか、それが他のハッカー等によって盗まれることがないのかといったような問題点とか、その他もろもろの技術的な問題が出てまいります。  これらについては、今の実証実験をこれから約二年ぐらいかけて一斉に行うつもりでございます。その過程で次々に暗号技術についての熟度が上がってまいりますし、それについての評価をどんどん関係業界に流していきたいと思います。それをもとにしてそれぞれの業界において現実的な対応が行われていく、そういったようなことを期待いたしておるわけでございます。  平成七年度の第一次補正につきましては、十二月に本件全部、プロジェクト十九ほど動かし始めまして、現在、それに伴いましてソフトウエアをそれぞれのコンソーシアムごとに組んでおります。それに基づいて実際に、例えば一例で言うと、東芝、ビザカード、エアラインといったような約二十五で組んだ一つのプロジェクトですけれども、それについては七月ぐらいから現実にモニターが入りまして、お客さんがそれで買い物を始める、こういったようなのが動き始める。そういうことで、約二年これから続いていくというのが現在の我々の状況でございます。
  278. 加藤修一

    加藤修一君 今ICカードの話が出てきましたけれども、結論を先に言いますと、ICカードはそれほど大きな影響を社会に与えないと思うんです。クレジットカードもそうだと思います。問題はeキャッシュの関係です。デジタルの関係のやつですけれども、それについてはどういうお考えですか。
  279. 渡辺修

    政府委員渡辺修君) 御指摘のように、現在、諸外国でこのICカード、さらにそれを銀行で決済、口座同士でそれが決済で落ちることになります。事実上これが電子通貨の役割を果たしてくるわけでございます。それについての実験が一斉に行われております。  あるいは先生御案内と思いますけれども、イギリスにおいてはモンデックスという、これは非常に小さい規模でございますけれども、実験というか、あるいはコマーシャルで現実に小さい町でございますけれども使われ始めておる、こういう状況でございます。アメリカにおきましては、コマースネットというところが中心になりまして、日本よりも約一年半前からでございますけれども、九四年から相当な規模でこれも実験が行われております。  我々、今申し上げました十九プロジェクトの中で幾つかは、私先ほど一つの例でクレジットカードの例を申し上げましたけれども、それに伴いまして、購入をし決済をしたものが自動的に銀行で落ちるようなそういった技術についても実験をしようというのが幾つかプロジェクトで入ってございます。    〔理事大河原太一郎君退席、委員長着席〕  ただ、これにつきましては、今の暗号技術、公開かぎと秘密かぎの両方を突き合わせてセキュリティーを確保しながら落としていくといったような非常に難しい技術の開発、さらにはそれが現実に決済が行われていくことになってまいりますと、当然のことながら金融制度そのもののあり方の問題、さらにはそれに今類似の金融取引に関する幾つかの規制がございます、そういったような問題との調整、その他非常に間口と奥行きの広いいろんな検討すべき問題がございます。こういったような問題も今の実験の過程で着々と勉強しながら将来に備えていきたい、かように考えておるわけでございます。
  280. 加藤修一

    加藤修一君 eキャッシュについての社会的な影響、経済的な影響、それについては明快な答弁がなかったように思いますけれども
  281. 渡辺修

    政府委員渡辺修君) eキャッシュにつきましては、今オランダのアムステルダムに本社を置いております企業でこれも実験が行われておるわけでございまして、インターネット上でeキャッシュと呼ばれるお金に相当するものが発行されまして、それでもって幾つかのバーチャルモールにおいて購入が行われておる、それに応じてどんどん模擬販売が行われておるというのが現在の状況でございます。
  282. 加藤修一

    加藤修一君 十分納得しておりませんが、次の質問に行きます。  私は、こういう質問をなぜしているかといいますと、非常に恐ろしさを感じていまして、こういった実験を通産並びに郵政省さんが一生懸命やっていらっしゃいますけれども、実験を行っている間にアメリカの技術が日本会社あるいは一般の家庭に浸透してしまう、それが先ほど郵政大臣がおっしゃったようにディファクトスタンダードになってしまうと。そうしますと、非常に大変な状態になる可能性があると思うんですね。  といいますのは、日本でも既にネットスケープベースの電子決済が始まっていますし、こういった「Netscapeではじめる電子商取引」という本もあるわけでございます。実際にやれる、実験じゃないと。先ほど壮大な実験と言いましたけれども、もう実用レベルに入っているということなんですよ。だから、私は、そういうディファクトスタンダードになってしまうと大変ですので、こういった面についてどう考えるかということが一つあると思います。  さらに、パネルをつくりましたけれども、これはコンピューターのモニター上のものを拡大コピーしたわけです。(図表掲示)これはオープンなインターネット上の、ネットワーク上の銀行です。これがどんどんアメリカで誕生している。口座に日本人の口座も開き始められているというわけなんです。そういった意味では、実験じゃなくてもう実用レベルに入っている、そしてディファクトスタンダードの方に向かいつつあるということでございますので、この辺について通産大臣、よろしくお願いします。
  283. 塚原俊平

    国務大臣(塚原俊平君) 非常に貴重な御指摘をいただいたと思います。  我が省におきましても、まだ若い室長でございますが、石黒君という熱心に本を何冊も書くぐらいの非常なプロがおりまして、そういう実際にしっかりとした基本認識を持っている方々をできる限りフル活用いたしまして、先生の御心配の点、特によく日本は乗りおくれる点がある、あっと気がついたらもう全く遅くなっていたというようなことがございますから、その乗りおくれがないように対応いたしてまいりたいというふうに考えております。
  284. 加藤修一

    加藤修一君 先ほど壮大な実験と言いましたけれども、壮大な実験に終わらないようにしていただきたいと思います。  それから、三年などという悠長な事態ではないと思いますので、私はプロジェクトの期間を短縮してほしい、柔軟に変化に対応するような即時的な能力を持つようなプロジェクトをつくっていただきたいと、そう思います。  そういった意味では、タイム・イズ・マネー、ハイスピード・イズ・マネー、そしてディファクトスタンダード・イズ・マネー、そういう時代だと思いますので、この辺についてどうお考えでしょうか。通産大臣と郵政大臣、お願いいたします。
  285. 渡辺修

    政府委員渡辺修君) 先生御指摘のとおりだと思います。  先ほどの四十六のプロジェクト、いずれもそれぞれの産業界が生産性向上のためにみずからやろうとしておったプロジェクト自身を今必死で動かしておるわけでございます。したがって、向こう二年間でございますが、節目節目の技術が開発をされれば、それを着々と活用しながら、規模は小さくなるかもわかりませんけれども、どんどん実用に移していく、そういったようなことを試行錯誤しながら前に進んでいく、こういうことだと思います。
  286. 五十嵐三津雄

    政府委員五十嵐三津雄君) 電子決済の実験ということで、先ほど大臣が申し上げましたように、サイバービジネス協議会でこの四月から二年間という予定でオープンな格好で実施をいたしております。  今、委員から御指摘のありましたとおり、その二年という期間の中におきましても、実験中でも逐次参加しています企業がオープンなものを吸収してこれを実行に移していけるという体制をとりつつあります。  なお、この暗号技術につきましても、アメリカで開発された有力な方式とともに我が国で開発されました方式も併用するということにいたしておりますので、この二年間の期間中におきましても我が国技術のディファクト化ということについても寄与できるものというふうに考えているところでございます。
  287. 加藤修一

    加藤修一君 ただいま暗号技術の話が出ましたが、これは最も重要なものだと思います。日本の技術開発の状況はどうであるか、通産大臣、よろしくお願いいたします。
  288. 渡辺修

    政府委員渡辺修君) 正直申し上げて、この分野においてはアメリカに比べて相当おくれておるのは事実でございます。したがいまして、現在、情報処理振興事業協会が平成七年度の事業といたしまして、暗号技術について大学、国立試験研究機関その他の学識者の意見をどんどん公募しまして、全部で五つの非常に特筆すべき暗号技術について今実験がスタートした、こういう状況でございます。
  289. 加藤修一

    加藤修一君 暗号技術に関しましてはOECDで専門家会議がやられているわけでございますけれども、これには外務省も出ています、通産省も出ています、郵政省も出ておりますけれども、これに関して防衛庁はなぜ参加していないのでしょうか。よろしくお願いします。
  290. 荒井寿光

    政府委員(荒井寿光君) 装備局長の荒井でございますが、答弁させていただきます。  今御指摘がありましたOECDの暗号政策専門家特別部会に防衛庁から参加していなかったのは事実でございます。OECDという組織が国際経済に係る問題を協議する場であるということがあり、また同部会についてもそういう観点から検討するというようなことで私ども防衛庁は参加していなかったわけでございます。
  291. 加藤修一

    加藤修一君 私は、こういった技術におくれをとらないためにやはり専門のセクションを置くべきだし、それから専門家を養成すべきだと思いますけれども、通産省並びに防衛庁、よろしくお願いします。
  292. 渡辺修

    政府委員渡辺修君) 先ほど申し上げましたように、現在、この暗号技術については特に力を入れまして、情報処理振興事業協会でプロジェクトを動かしておりますし、大学、国立試験研究機関等を挙げてこれに今応募し、やっておるところでございます。あわせて、セキュリティー、プライバシー問題に関する委員会も発足し、一年がかりでそれぞれの勉強をいたしております。そういった形を総合いたしまして専門家の育成に努めてまいりたい、かように考えております。
  293. 荒井寿光

    政府委員(荒井寿光君) 防衛庁におきましては、暗号技術の重要性にかんがみまして、従来から継続的に調査研究をしてきております。さらに、最近では通信技術とかコンピューター技術を利用いたしましたいろいろなシステムが大変発達してきておりますので、これらのシステムで取り扱われます情報を保護する暗号の重要性はますます高まっているというふうに認識しております。  また、暗号技術が国家の安全保障にもいろいろ関係してきているという観点も私ども承知しておりますので、従来以上に暗号技術の研究開発に努めてまいりたいと思いますし、さらに専門家の育成にも努力してまいりたいと思っております。
  294. 加藤修一

    加藤修一君 お手元の配付資料の中にKDDのインターネットの接続事業ですか、その参入の話が出ておりますけれども、将来インターネットが普及することによってKDDの事業収益が悪くなってくると。要するに、それは生き残り戦略である、そういうふうに思います。  インターネットが普及しますと、かなりの分野にわたってこういう形で影響を与えて、それぞれの既成の産業が従来と同じような形で展開していくことがなかなかできないというふうに考えられるわけでございます。  そういった意味では、産業に対する影響というものを包括的に私は計測、評価することをやらなければいけない。産構審ですか、そのあたりについてもう一度見直しをすべきである。その辺について通産省並びに経済企画庁、よろしくお願いいたします。
  295. 渡辺修

    政府委員渡辺修君) 電子情報技術の産業及び産業構造に及ぼす影響は御指摘のとおりでございます。既に本件につきましては、産業構造審議会の情報産業部会というところに基本問題小委員会というのを設けまして、昨年来鋭意検討をいたしまして、昨年の秋に今後の高度情報化及びそれの産業に及ぼす影響というのを答申いただきました。これに基づきまして、先ほど来申し上げた一連の施策を講じておるところでございます。  さらに、これが二十一世紀にかけまして、新規産業の育成、消費者の質的水準の向上、さらに産業の生産性の向上と、こういう三つの側面で大変大きな影響を持つと思っておりますので、引き続き鋭意全力をささげたいと思っております。
  296. 土志田征一

    政府委員土志田征一君) 私ども、昨年、経済審議会で構造改革のための経済社会計画を策定する際に高度情報通信社会小委員会を設けていただきまして、そこでさまざまな側面について御議論をいただきました。それ以後の動きはさらにこの委員会での御議論より進んでいるようでございます。引き続き、私どもでも経済計画のフォローアップの中でこういった問題に取り組んでいきたいというふうに思っております。
  297. 加藤修一

    加藤修一君 産構審の報告や経済計画に見られる情報産業の雇用予測、これは非常に甘いと、こんな伸びに恐らく情報関係でなっていかないであろう、これほどふえることはないだろうというふうに思いますので、この辺についてやはりインターネットの通信技術の影響、そういったものを含めて包括的に私は練り直しを、見直しをやっていただきたい、そのように思いますけれども、どうでしょうか。
  298. 渡辺修

    政府委員渡辺修君) 二〇〇〇年、二〇一〇年を見越しました産業構造審議会の雇用予測、新規産業の市場規模の予測等におきましては、我々情報部門がこれからの新規産業の過半を占める、半分強を占める、こういうことで、それに対する全体の雇用関係及び市場規模その他を見通してうまくマッチするんではないか、こういうふうなものを二年前に出しておりますけれども、御案内のように刻々と事態は動いております。そういうことで、新たな技術を盛り込んだ形で常時これを見直しをしていきたい、このように考えております。
  299. 加藤修一

    加藤修一君 どうも大変ありがとうございました。
  300. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 どうもありがとうございました。
  301. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で鈴木正孝君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  302. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、荒木清寛君の質疑を行います。荒木清寛君。
  303. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 平成会の荒木清寛でございます。  私は、主に住専に絞りまして質問したいと思います。  まず、母体行に対する追加負担につきましてお尋ねをいたしますが、大蔵大臣は、母体行の責任につきましては、三兆五千億円の債権放棄で終わるものではなく新たな負担を一貫して求めてきたということをおっしゃっていまして、きょうも、全銀協の前会長が大臣のおっしゃる趣旨はよくわかるというお話があったということでした。  そういうことを聞きますと、税金投入に大変怒っている国民も少し期待していいのかなというふうに思うわけですが、しかしこの全銀協の前の会長さんは退任の際の会見では、法制上許される最大限の対応をしており、これ以上の負担はあり得ないと強調したと。私に言わせれば、もう捨てぜりふを吐いてやめていったという感じがするんですね。  また、現金長の橋本さんも参考人として当委員会に来られまして、債権の全額放棄は商法の解釈上妥当だが、それ以上の負担には法的な裏づけはないと。要するに、もう取りつく暇もないという感じなんですね。  ですから、大臣のお話は余りにも楽観過ぎるんじゃないかと。本音にこれは国民にお約束いただけるんでしょうか。
  304. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 楽観的かどうかということよりも、両院の予算委員会を通じて皆様方から非常に強い御発言がありまして、母体行はこれで済むかということでありますから、済まないと私は言っているのであります。そして、そのためにどうするかということで精いっぱいの努力を続けているんです。  それで、やったってできるかと、そういう御発言ではなくて、母体行にもっと寄与を求めろと、こういう御発言なんですから、皆さんの方からも協力的な立場でお話しくだされば大変ありがたいと思います。
  305. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 では、そういう趣旨でこれから質問いたします。  しかし、私は大臣と根本的に考えが違いますのは、法的処理か任意整理かということですけれども、大臣は母体行の責任は三兆五千億円で終わるものではないけれどもそれ以上の責任法律上は強制できないと、要するに法的な義務ではないというお考えなんですが、私はそれは違うんではないかと思うんです。  ちょっとお尋ねしますが、四月二十三日、直嶋委員の質問におきまして、母体行の責任について大臣は、法律上の責任が問われるものは、その責任が司法によって問われることはやむを得ないことでありますと。要するに、三兆五千億円の債権放棄以外に母体行が住専から法律上の責任、損害賠償責任を問われることはあり得ると、そういうことですね。
  306. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) そのことも一貫して申し上げております。損害賠償請求に該当するようなもの、法律的に母体行が責任を問われて、そして請求を受けるもの、こういうものは当然のことだと申し上げているのであります。  しかし、一般的に、新たな寄与というのを皆様方と私が同じ見解に立って母体行側、銀行側と話をいたしましても、その場合に、法的強制力を持ってこちらから具体的に、これだけは当然あなた方の法的義務として支払うべきだというその根拠がなかなか我々の側にはないということを申し上げているのであります。その意味では、母体行側の責任に対する協議に応じて合意をするということが前提になるということを申し上げてまいりました。
  307. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 そこが私と考えが違うんですが、私は法的義務があると思うんです。  それは、きょうもありましたけれども、紹介融資責任ですね。銀行は住専七社に対して、母体行として一兆七千二百八十七億円、一般行分も含めると二兆七千九百二十七億円の事業向け融資を行い、実にその九割が不良債権化しているということです。銀行が不良債権化することを予測できるのにこれを紹介する、押しつける、あるいはみずからの不良債権を住専につけかえるというようなことがあれば、これは私は紹介融資に基づく損害賠償責任が成立すると思います。  私、判例を調べましたけれども、確かにこの紹介融資ずばりというのはなかったですが、銀行の紹介責任というのが最高裁で今係争中なんです。それは、銀行がお客さんに倒産寸前の建設会社を紹介して五千五百万円の損害を与えたということで係争中なんですね。そんなようなことも考えてみますと、私は紹介融資に基づく母体行の住専に対する賠償責任というのはもう明確に成立すると思うんですよ。  ちょっとお尋ねしますが、先ほどのお話と同じなんですが、三兆五千億円の放棄という中には母体の住専に対する紹介融資責任というのはもちろん含まれていませんね。
  308. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 紹介融資の中で、これは明らかに法律に違反する職務上の背任、詐欺、そういうものに該当するものは、私は住専処理機構は預金保険機構と協力をして告発していく、そしてその損害は賠償請求を行うものだと思っております。
  309. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 なぜ私は聞きましたかというと、仮に住専処理機構が成立しまして母体行に対してそういう賠償請求をした場合に、いや、それはもう三兆五千億円の放棄で清算されているはずだというふうに言われると困りますから確認をしたわけです。  そう考えますと、大臣のように三兆五千億円を上回る分は一切法律上の問題じゃないんだということを前提に母体行と交渉しているというのは私はおかしいと思うんです。先ほどの紹介融資に係る不良債権ですが、一般行としての分も含めますと実に二兆五千億円なんですよ。母体行紹介で不良債権になったものは一兆五千億円ですから、仮にその二分の一、三分の一、四分の一に責任があるとしたって大変な額になるわけでして、私はそういう事実を無視してほしくないと思うんです。  仮に会社更生法に基づく処理をしますと、管財人がそういう責任一つ一つ追及するはずであります。清水公述人が衆議院で陳述したところによりますと、例えば母体行が一番抵当、住専が二番抵当という紹介融資の場合、母体行が丸々優先弁済を主張するなんということはできない、平等弁済にするというのを実務の例からいって当然管財人は母体行に主張しますよというふうに言っているわけです。だから、そういう意味で我々は、法的処理をやってそういう紹介責任一つ一つ追及すればもっと責任があるはずだということを言っているわけです。  仮に大臣の立場に立ったとしたって、債権放棄以外は責任がなくて、銀行のそういう寄与といいますか好意に甘えるというような言い方をするから、向こうは開き直って払えませんというふうに言うんじゃないですか。
  310. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) どうも話がずれているところがあるんです。私は、紹介融資等の中で法的に責任を問われるものは当然に請求されると言っているんですよ、初めから。一度も変えたことはありません。そして、三・五兆の債権を放棄すればこれらが全部免責されるなどと言ったことは一度もありません。すべてのこれらの責任は徹底して追及されなければならないということを申し上げているのであります。  住専の設立段階から破綻に至る過程を見れば、この母体行と呼ばれる銀行は単なる債権の所有者、貸し手という責任を超えるはるかに重い責任がある。それは三・五兆の債権放棄で済むものではない。何かこちらから少し足りないから出してちょうだいよと、そんな簡単な話をしているのではありません。これは銀行側も、銀行側は三・五兆の債権放棄を行い、そして二兆を超える融資や一兆円の基金の拠出も行うというようなことで我々もぎりぎりやってきましたということを言っているんです。  そのことを承知の上で、それでもなお母体行はもっと新たな寄与を行うべき責任があるのではないか、これは国会でも党派を超えて与野党の別なく皆さんが御主張になったことであります。そのことにどうこたえるかということで私どもは一生懸命努力をしているのでありまして、何か甘っちょろいことをやっていてそんなことで話になるかというような御主張をされますと、大変心外でございます。
  311. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 いや、私はそんなことは言っていないわけでして、法的責任がそれ以上あることは明確なんだから、それも踏まえて強く追加措置を迫れというふうに言っているわけです。もうこれぐらいにしておきます。  次に、これは総理にお聞きします。  三月四日に与党が発表されました「住専問題に関する新たな措置について」、この問題については、大蔵大臣は衆議院予算委員会最大限尊重してまいりますというお話です。参議院でも議論になりました。私はこの最大限尊重の意味が若干明確でないのでお聞きするんですが、特にこの中で、リストラによって七年間で民間金融機関からは五千億円、農林系は千八百億円の税収増を実現するという項目です。  橋本総理にお聞きしますが、この追加案というのは政府の正式な案でしょうか、あるいは国民に対する橋本内閣の公約でございましょうか。
  312. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 当時もたびたび同様の御質問をいただきまして、そのたびに私がお答えをしておりましたのは、その当時、先般のという言葉を使いました。先般の与党合意は与党の関係者の中で熱心な議論を重ねて取りまとめられたものと承知する、政府としてはこの与党合意の趣旨を重く受けとめて最大限尊重してまいりますということでありました。  今もそうであります。
  313. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 そうなりますと、このいわゆる追加税収増が実現できなかった場合には、これは橋本内閣の政治責任の問題になると、そういう意味での案でございますか、決定でございますか。
  314. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今申し上げましたように、与党として御決定になった案である、そして与党で決定されたということを我々は了知し、重く受けとめ、最大限尊重するということであります。
  315. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 この三月四日の発表につきましては、税収増の実現について大蔵省を通じて国会に報告をする、あるいは農水省を通じて国会に報告するという項目も入っているわけですよ。これは単に与党の案というだけじゃなくて、与党も政府も一体となって実現することを国民にお約束しますと、そういうことじゃないんでしょうか。
  316. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今御引用になりましてお話しのものは「住専問題に関する新たな措置について 平成八年度予算案衆議院通過にあたってさらに国民の理解を求めるために 平成八年三月四日 自由民主党 社会民主党 新党さきがけ」と三党で書かれたものでありまして、内閣という文字は入っておりません。
  317. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 わかりました。もうこのぐらいにしておきます。  次に、この住専処理スキームはもう既に破綻をしているということで御質問いたします。  四月二十三日の直嶋委員に対する答弁に関しまして、二次ロスに対する税金投入につきまして主に銀行局長との間で種々やりとりがありました。局長に確認しますが、要するに、二次ロスが発生するかどうかは別として、もう最大限発生しないように、ゼロに近いように努力をする、仮に発生をしたとしたって一兆二千四百億円を上回ることはあり得ない、そういう御答弁ですね。
  318. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 私どもが御説明申し上げておりますのは、最大限そういうロスが生じないように努力をするということを申し上げているわけでございます。
  319. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 いや、私はそう難しいことを言っているんじゃなくて、それはわかりますけれども、仮に発生したってそれが一・二四兆円を上回ることはないということをおっしゃっているわけですね。
  320. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 私ども、一定額の損失の発生を前提としているわけではございません。そういう意味におきまして、最大限そういうロスが発生しないように努力をするという姿勢でこのスキームをつくっておりますと申し上げているわけでございます。  なお、そういうものが仮に発生した場合にどういう方法で処理するかということをあわせて決定していると、こういうことでございます。
  321. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 まだ明確じゃないですが、いずれにしましても、今のは第Ⅲ分類のことですが、要するに第Ⅱ分類になります二兆五百億円というのは、逆に言いますと全額回収できるという前提に立っているわけです。  確認いたしますけれども、この第Ⅱ分類というのは、住専の不良債権の担保物件を昨年の路線価で評価をし、その七割の価格で処分できるという前提ではじいた数字であり、この評価も安全を考えての評価だと再三言われていますが、そのとおりでございますね。
  322. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 不動産の担保につきましては、そのような考え方で評価をしているところでございます。
  323. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 そこで私は、住専の押さえておる担保物件につきまして調べようと思ったんですが、きのう提出のありました大口借り手上位十社の担保物件の概要というのによりましても、個々の物件の状況、要するに所在、地番、面積とか、あるいは商業地か住宅地か、そこまではわからなかったわけです。しかし、大部分が東京近郊、大阪近郊に集中しているというふうに思いました。  我々の認識する限りでは、この担保物件というのはバブルのときにとったものが多いわけですから、要するに都心の狭い商業地であるとかあるいは地上げの途中の虫食い状態土地なんかもたくさんあると思いますが、その点、大蔵省はどういう認識をしておりますか。
  324. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 私ども、個々の担保物件の具体的な状況まで把握をしているわけではございませんが、御指摘のように担保物件の所在地というのは東京、大阪、大都市圏に所在するものが多いであろうと思います。  そのような物件の処理がなかなか難しいということは、この住専に係る担保に限らず一般的に言われておることでございますし、またこの住専の処理策いかんにかかわらず、そのような問題が住専の担保について存在するということも事実でございます。しかしながら、そのような困難をどのようにして乗り切っていくかという点において、今回の処理策というものは一定の役割を果たし得るのではないかと、このような考え方で臨んでいるわけでございます。
  325. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 先般、住友不動産顧問の安藤太郎氏が参考人として御出席になりました。その中で、与党委員が地価に関して質問をされましたところ、東京の住宅地は大体底が見えた、しかし商業地、ビルにつきましては値段があってないようなもので大変な下落をしている、虫食いの土地はだれも買わない、値段がないようなものだと、都心の商業地で売れるのは近大新と言われましたけれども、近くて、大きくて、土地で言うと七百坪ぐらい、それでビルが新しいと、そういう商業地しか売れないというお話でありました。  そこで、国土庁長官にお尋ねしますが、今の住宅地あるいは商業地の動向というのは参考人がおっしゃったような大体こういう状況ですね。
  326. 鈴木和美

    国務大臣鈴木和美君) 地価の動向は今お話のあったような状況でございます。
  327. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 そこで、私も参考人に住専の処理スキームを具体的に示して聞いたわけです。新聞の要約を読みますと、「虫食いの土地のひとつひとつは価値がなく、公示価格を下回るが、それを他の土地と交換したり、整地したりすれば、形のいいマンションを建てられる。そのままでは、なかなか買い手がなく、それを路線価格にあてはめれば、なかなか予定通りにはいかない。」と。予定どおりというのは路線価の七割でそういう商業地も売ると、こういう非常に厳しい認識をしているわけでして、先ほどの銀行局長の、努力をすれば虫食いだって売れるんだなんというのは余りにも甘いわけなんですよ。  この点、地価の動向を見て、本当にその担保物件を路線価の七割なんかで処分できるんですか。
  328. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘のように、虫食い状況の担保物件というのはなかなか処分がしにくかろうと存じます。そういう意味から申しましても、今回の住専処理機構は弾力的な運営ができる株式会社組織にいたしまして、土地の再開発、そのようなことにも取り組めるような仕組みということをも考えているところでございます。  もとより、いろいろ難しい状況はございましょうが、そのような問題を乗り切っていくために少しでも役立つような手法をという考え方で臨んでいるところでございます。
  329. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 株式会社にすれば処分できるなんというのはおかしい話でして、そのときに株式会社共国債権買取機構の社長もいらっしゃったわけです。ところが、その機構だって買い取った債権の八%、八・三%でしたでしょうか、しか回収できていないと。要するに、土地が塩漬けになっているわけです。民間にやらせれば利潤追求するからうまくいくなんという、そんな甘いものじゃないんです。この参考人は、土地を交換したり整地したりすればそういう虫食いだって何とかなるというふうに言っていらっしゃいましたけれども。  ちょっと大臣に聞きますけれども、この土地の担保物件の処分につきましては、何かそういう特別な措置というか施策といいますか、国土庁とかと相談されて考えていらっしゃいますか。
  330. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 今共国債権買取機構の例を挙げられましたが、形は同じ株式会社でございますけれども、今回私どもが提案申し上げております住専処理機構は共国債権買取機構ではできないようないろいろな手法をもあわせてできるような工夫をしてございます。もちろん、だからといって決して簡単な問題ではございませんが、この問題をいつまでも放置しておくことはできないということで一歩でも二歩でも前進できるよう努力をしてまいりたいと考えております。
  331. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 そうしますと、担保物件の処理に関しまして、株式会社共国債権買取機構にはできないけれども株式会社住専処理機構にはできるということは何かあるんですか。
  332. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 共国債権買取機構は民間会社が純民間の組織としてつくっている機構でございます。住専処理機構は公的な色彩を有します預金保険機構と一体となりまして、公的な手法によるメリットと私的な手法によるメリット、両方兼ね備えて運営できるように工夫をしようとしているところでございます。
  333. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 これができます、こういう特別措置を考えていますという具体的な答弁は何もありませんでした。  住専の問題は以上にいたします。  次に、総理にお聞きしますが、先ほど衆議院では財政再建についての議論がなかったと言われておりましたが、参議院に来まして随分と各委員から質問があり、私も拝聴させていただきました。  それで、先ほどの小山委員に対する御答弁から大体私は答えが予測できますけれども、あえてお聞きします。財政再建というふうにおっしゃるんでしたら、大事だとおっしゃるんでしたら、まず隗より始めよでありまして、ことしの予算におきましてそういう歳入と歳出のギャップを埋める努力というのをまずすべきではなかったんでしょうか。
  334. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 答えがわかっておると言われましたけれども、あるいはおわかりかもしれませんが、私もあえてそれでは申し上げたいと思います。  本年、国債依存度を高めることを覚悟で景気回復のための努力をするのか、あるいは国債発行高を抑えることによってある程度予算による景気の刺激をあきらめるか、私は両方の選択肢はあったであろうと思います。  そして、ようやく景気の回復基調が見え始めながらなお失業率が非常に高い、あるいは中小企業の回復の姿が出てこない状況の中で、赤字国債を発行してでも景気を回復軌道に乗せる方が現時点においては必要であると政府としては判断をいたしました。私もその判断は間違っておらないと考えております。
  335. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 そうしますと、来年の特別減税の打ち切り、四月の消費税率アップ、これがそういう観点からしますと大変問題になるのではないかと思うんです。  経企庁長官にお尋ねしますが、三月の月例報告では、景気は緩やかながら回復の動きが見られると。このことに関しまして、大臣のお言葉として、回復の動きは見られるけれども、まだひとり立ちできるような状況ではないというおっしゃり方をしましたね。要するに、いろんな政府のサポートが必要だということになるわけですが、もしこういう状況がまだ続くのでしたら、来年の一月に減税を打ち切って四月に消費税を上げるということは景気回復に非常に悪い影響を与えることではございませんでしょうか。その辺の見通しを御示唆いただきたいと思います。
  336. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 一般的に申し上げて、消費税の増税が消費者の購買意欲にとってマイナスの影響を与えるということは一般的に言えることだというふうに思います。ただ、今回の減税は景気対策にとってやはりプラスになっていたというふうに受けとめております。  また、おととし、平成六年十月に経済企画庁が今回の減税の経済効果について試算いたしました。それによりますと、平成八年度まで減税を続けて、その後、消費税を五%に上げた場合の試算でありますけれども、実質GDPを平均〇・五%上げると、そういうふうに試算をいたしました。  いずれにしましても、委員指摘のように、消費税をアップするということ、あるいはまた減税をやめるということが来年に迫っているということになれば、それこそことし何とかこの二・五%の成長を何が何でも達成して経済に勢いをつけていかなきゃいけない。そのためには、切れ目なく予算を執行していくこと、あるいは規制緩和の推進計画を着実に早期に実施していくこと、あるいはまた住専の処理を初めとする不良債権の問題にはっきりとした展望を切り開いていくこと、これが不可欠だと思っております。
  337. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 この点、総理にもお尋ねしますが、そういう景気の動向も見ながら、場合によっては来年の二重の税負担につきまして施行の時期を少し延ばすとか、そういう柔軟なお考えもすべきではありませんでしょうか。
  338. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) むしろ、そうしたことを考えなければならない状態を現出するのではなく、繰り返しお願いをしておりますように、一日も早く予算を成立させていただきますとともに、この景気に関連する各法律案をできるだけ早く国会で御承認いただき、万全の対策がとれるようにしていただきたいと心から願っております。  そして、私は検討条項が設けられた趣旨あるいは深刻な財政状況というものを考えますと、議員は景気の観点からのみお話をされましたけれども、私はこの税制についての議論というものはしっかりした議論を避けてはいけないと考えております。  いずれにしても、本年九月末という法律の期限に向けて慎重な判断をしていく必要があると思いますし、むしろそうした税制上の配慮を必要としないだけの経済の強さを取り戻すためにも、一日も早く我々が行動できる状態にしていただきたいと心から願います。
  339. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 政府は先般の税制改革を今後の少子・高齢社会に対応したものと位置づけておられました。そうであるならば、将来の福祉社会の具体像を明らかにしていくことが国民に増税を求める政府としての最低限の責務であります。現に平成六年十一月十一日の参議院本会議における当時の村山総理の御答弁では、この福祉ビジョンを税制の見直し、つまりことしの九月末までにはきちんと示しますという趣旨答弁をされております。  そこで、厚生大臣にお聞きしますが、来年の四月に仮に消費税が上がるとしまして、その前にきちんと福祉ビジョンは示していただけますね。そうしませんと、国民にとっては何のための税負担増かということになるわけであります。
  340. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 今、荒木委員からお話がありました消費税率の検討条項というのがあるわけですけれども、社会保障に要する費用については、この条項における期限を念頭に置きながら検討を進めなければならないと思っております。  九月末までに何らかの修正といいましょうか、何らかの変更を加える場合は、そのときまでに法案が成立をしていなければならないという考え方でありますので、社会保障に要する費用の提案といいましょうか、その費用については、それに十分間に合うようもう少し早い段階でその中身について提示を申し上げたい、このように考えております。
  341. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 最後に、私は毎年取り上げております通学路安全点検調査につきましてお尋ねします。  昨年の三月六日、都道府県及び政令指定都市の道路担当局長あてに、建設省が安全点検のマニュアルを作成し、この日に通達を出しました。この通達を出してから今日まで、全国二万四千校ある公立小学校のうち、どの程度この安全点検が実施されましたでしょうか。
  342. 橋本鋼太郎

    政府委員橋本鋼太郎君) 通学路の点検につきましては、平成五年度にモデル調査をいたしまして、平成七年の三月から全国の道路管理者におきまして点検を具体的に進めております。  従来からもやってきておりましたので、平成六年度までに三千二百、平成七年度に一万五千二百、そういうことでございまして、重複がございますが、平成八年三月末現在までに約一万七千校、全体の七二%の点検を実施したところでございます。
  343. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 本年の二月九日、本年度を初年度とする第六次交通安全施設等整備事業五カ年計画が閣議了解されております。この計画では、通学路安全点検調査についてどう取り組んでいくこととなっておりますでしょうか。
  344. 橋本鋼太郎

    政府委員橋本鋼太郎君) 新しい第六次特定交通安全五カ年計画におきましては、主要な課題といたしまして、科学的な手法に基づく事故多発地点の集中的な対策の実施、あるいは高齢者のための歩行空間の確保、さらに三つ目としまして利用する視点からのいろいろな点検等の取り組みを図っていきたいと、このように考えております。  そういう意味で、平成八年度からの第六次交通安全五カ年の「利用する視点からの安全への取り組み」という中で、この通学路点検についても最も重要な施策として取り組んでまいるということにしてございます。
  345. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 そこで、これは建設大臣にお尋ねしますが、埼玉県ではことしの新学期の前に県内の全小学校八百二十三校でPTAと教職員が共同して通学路の総点検を実施し、危険箇所のチェックを行いました。この総点検によって通学路に約四千の危険箇所があることが判明し一この改善方に取り組んでいるということでございます。  そこで、建設大臣に、今話がありました通学路点検を強力に推進していくという決意と、その際にぜひ子供さんも一緒にそれに参加をして子供の視点からそういう危険箇所を見ていくということを取り入れていただきたいと思いますので、決意を伺います。
  346. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 先ほど来ずっと道路問題で、特に安全総点検という中で通学路点検に対する御熱心な御討議を賜っておりました。私も荒木委員が大変にこれに御熱心だということは聞いておりまして、日ごろ非常に敬意を表しておる次第でございます。  交通事故は確かに毎年連続して一万人を超える極めて厳しい状況下にあるわけでございますから、平成八年度を初年度とする第六次交通安全施設等整備事業五カ年計画においては、まず第一に科学的手法に基づく事故削減方策の集中的実施、第二点としまして高齢者等の社会参加を支援する歩行空間の面的整備、あるいはまた、三点といたしましては利用する視点からの安全への取り組みということを基本方針にがっちりと置きまして、そのベースのもとに交通安全施設等の整備を鋭意推進することにしておるということを決意申し上げ、また建設省全体に対しても申し上げておる次第でございます。
  347. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 最後に、中央交通安全対策会議の議長でもあられます総理から、この点検について力強い決意を承っておきたいと思います。
  348. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今私的に議員に確認をいたしまして大変失礼いたしましたが、埼玉県の実例をもお教えいただいたことは非常に私にも参考になります。  先ほどの事務方からの報告でも、今までに七〇%余り小学校の場合の通学路点検を終わったということは、まだ二十数%が残っているわけであります。しかも、都市の変化が激しい中で、また地方においてもどんどん道路交通事情の変化しております中で、一度点検が終わったからそれでそこは安全だと言い切ることはできないと思います。こうした思いを持ちながら関係当局を督励し、でき得る限り子供たちに、子供たちだけではありませんけれども、事故の少ない道路を完備できるように努力をしてまいりたいと思います。
  349. 井上裕

    委員長井上裕君) 関連質疑を許します。岩瀬良三君。
  350. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 平成会の岩瀬でございます。  住専を主体に関連質問をさせていただきたいと存じますので、しばらくおつき合い願いたいと思います。  貸したものは返す、これはもう社会生活のルールでございますし、また先輩委員が何人もこのことを仰せになったところでございます。ただ、いろいろな社会事象、大変なことがありますと、オウムのときもそうだったんですが、学校教育がどうなっている、こういうような問題になるわけでございます。そういう意味で、文部大臣、これは低学年になるかと思いますけれども、貸したものは返す、社会のルール、こういうものをどう教えておられるのか、お考えも入れてお答えいただきたいと思います。
  351. 奥田幹生

    国務大臣(奥田幹生君) ちょっと私、聞き間違えたのかもわかりませんが、借りたものは返すですね。あちらにおりますと、貸したものは返すというような……
  352. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 同じです。
  353. 奥田幹生

    国務大臣(奥田幹生君) 先生も教育長を御苦労いただいてきたわけですからよく御存じだと思いますけれども、非常に大事な問題でございますから学習指導要領におきまして、やはり発達段階に応じてこの問題の取り上げ方も簡単なものから少々難しいものまで分けて取り上げております。つまり、小学校の低学年におきましては約束や決まり事は守ることというようなこと、高学年に入りますと公徳心を持って法や決まりを守っていきましょうというようなこと、中学校になりますと公徳心を持って社会の秩序と規律を高めていくように努めましょうというようなことで、いずれも発達段階に応じまして公徳心あるいは規則の尊重、遵法というようなことを取り上げているわけでございます。
  354. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 お考えもお聞きしたがったんですが。  多くの人、一般の人は、住宅金融公庫のお金を借りたのを苦しくなっても返しておるわけですね。そういう意味で、大多数の人はもうこの基本を守っておるわけでございまして、そういう意味総理から一言御感想をお願いしたい。
  355. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今の議員の御質問に関連しての答えでありましたならば、彼らが子供のときお教えになった先生方は今どのような思いをしておられるだろうかと思います。
  356. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 ありがとうございました。  国民が怒っておりますのは、こういう社会問題を起こしてかつ国費を投入しようというときに貸し手、借り手の責任が一個もはっきりあらわれてこない、こういうようなことだと思うわけでございます。  また、総理大蔵大臣も申されておりますが、金融システムというようなことで抽象的に総論で申されておるわけでございます。それも大事なことだということで否定はいたしませんけれども、個々の会社のことも考えてみることが必要かと思うわけでございます。こういうことで、住専会社にどういう問題点があったのか、これは大蔵省の方からお答えいただければと思います。
  357. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専問題に関しましては、御指摘のように、こういう社会問題を起こしておきながらというお気持ちは国民の皆様に幅広くあろうかと存じます。そういう問題を早く処理するために今回の処理方策を御提案申し上げておるわけでございますが、その場合の住専サイドの問題と申しますど、半ばに及ぶような膨大な損失を抱えて、このまま放置すればますますそのようなものが大きくなっていく、一日も早くこれを処理しなければますます国民に大きな御負担をかけてまいる、こういうことかと存じます。
  358. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今会社の問題点と、こういうようなことで申し上げましたけれども、それなら私が申し上げますけれども、この会社、もう皆さん承知のように、投機資金、株式投資をやって失敗したのも入っておるとか、またこの間も報道されましたけれども、ハワイで豪邸を買って、これがそのときの評価の四倍以上で買っているというような事柄とか、担保不足だとかいろいろ言われておるわけですね。こういう会社に対しての考え方、こういうことを大蔵大臣はどう思いますか。
  359. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今国際社会におきましても、この融資、借款の返済問題などが非常に重要な問題になってきておりますときによく使われる言葉がモラルハザードということで、最近はこれが何かジューセンが外国で通用するのと同じように、モラルハザードというのが日本の国内でよく使われるようになりました。  私は、岩瀬さんがおっしゃいますように、そういう社会の秩序を保つルール、最低のルールというものをあえて脅かしたり壊したりする者は厳重に問われなければならないと思っております。  住専の経営責任、特に住専の経営の失敗ということではなくて、経営に当たって不正を働いた者、それから借りて返さない者、きのうも申し上げましたけれども、もう返さないつもりで借りた者、こういう不届きな者は、私どもは今度の住専処理機構と預金保険機構の協力の中で、国税、検察、警察、こういった部門の全面的な協力のもとに徹底した追及をしなければならないということを終始申し上げているわけであります。そのためにも、一日も早くこの処理機構を整備することが必要であると考えております。
  360. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そういう意味では、過日、大阪地検特捜部とか大阪府警、こういうものが動かれたということでありますし、税務当局も動いておられる、こういうことはもう承知しておるわけでございますけれども、何か考えますと、洋の東西の象徴的なところだけに動いておるように思うわけでございます。  私、何年か前、斉藤和子さんという方、チャーミングな方なんですけれども、お会いしたことがあるんです。これは御存じかどうか、「マルサの女」でモデルになった有名な方なんでございます。これは特別国税査察官というお名前らしいんですが、そういう意味でそこの方への国民の期待というのもかなりあるわけなんで、そういう点で国税庁の方がどう動かれているのか、お話のできる範囲でお話しいただければと思います。
  361. 若林勝三

    政府委員(若林勝三君) 国税当局といたしましては、いろんな機会をとらえまして資料、情報を収集いたしまして、問題があるという場合には調査をするというようなことで適正な課税の実現に努めておるわけでございます。  今回の住専に関係する関係者につきましても、課税上一体問題がないのかという点について関心を持っておるわけでございまして、そういう意味におきましてこれからも適正かつ厳正に対応させていただきたいと思っております。
  362. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 もっと活発にやっているよというお答えを期待したんですが、言えない部分もあろうかと思います。できるだけ御努力いただきたいというふうに思うわけでございます。  ちょっと話が別の方になりますけれども、最近の例でもございますし、また決算情報はごまかせないというようなこともあったというふうに理解しているわけですが、また大蔵省の方も、こういう事件が起こってから金融機関のそういう問題についてはできるだけ皆さんに知らせるというようなことの流れにもあろうかと思うわけですけれども、さくら銀行の太平洋銀行に対する回収不能債権の処理策についてお答えいただきたいと思います。
  363. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 今さくら銀行の太平洋銀行に対するという御指摘でございましたけれども、むしろ御質問は太平洋銀行の不良債権全般の処理をどのようにしていくのかというような観点からの御質問と理解してお答え申し上げたいと存じます。  今御指摘もございましたように、ディスクロージャーが進んでまいります。また、世の中の銀行の経理状況に対する目というものも厳しくなってまいります。そのような中で、銀行が将来の経営を展望いたしましていつの時点でどのような立て直し策あるいは収拾策を図るかということは、以前にないような厳しい状況を迎えているように思います。これは、太平洋銀行の経営者の御判断あるいは太平洋銀行をバックアップしてこられた四つの都市銀行の御判断ということではございますが、やはり大きな流れといたしましては、ディスクロージャーが進んでまいり、銀行の経営に対する世の中の目というものが厳しくなってまいる中の一つの御決断だと存じております。  具体的にこの不良債権一千七百億円をどのように処理するかという点につきましては、太平洋銀行につきましては商法の手続により解散を提案いたしました上、自己資本の全額取りまし、あるいは四行負担によっての償却、あるいはペイオフコストの範囲内での預金保険の援助等の手法によりまして、太平洋銀行の受け皿となる子会社を設立するという構想が描かれているところでございます。
  364. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今太平洋銀行の処理策がお話しありましたけれども、金額等、今現在処理をしているのではっきりした点が出ないかと思いますけれども、この千七百億の不納欠損額に対しまして、自分のところの資産、それから預金保険機構からいただくお金、あとは母体行である四行がこれに対して処理する、比較的最近の例であり、しかもすっきりした形なので紹介してもらったという点があるわけでございます。  住専の問題に入るわけでございますが、住専の資産はどういうものがありましょうか。
  365. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専七社の資産内容につきましては、国会に御提出申し上げております資料の中にも記されているところでございますけれども、七社合計で申し上げまして十二兆九千二百六十二億円の資産があるわけでございますが、そのうち十兆七千百九十六億円が貸付金でございます。有価証券、不動産が一兆二千二百九十三億円ございます。その他の資産が九千七百七十一億円でございます。
  366. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 この間の末野興産の多額の預金についてはかなり、千百億円、全部じゃないでしょうけれども、大半が資産の算定の中に入ってなかった、こういうようなことも言われておるわけでございますが、例えばハワイでの、というより海外でのこういう資産は算定されておるんでしょうか。
  367. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 海外に所在いたします資産についても同様に評価、査定され、計上されているところでございます。
  368. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、先ほどちょっと申しました日住金のハワイの邸宅、こういうものは路線価というのはないと思いますので、これはどういう評価になっておるんでしょうか。
  369. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 路線価で評価するというのは、もとより国内の土地の担保に係る部分でございまして、今御指摘の日住金のハワイの物件につきましては、その地におきます適正な価格というものを想定いたしまして評価をいたしております。
  370. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それはそれでとめておきます。  資産の中でいろいろ区分けされたわけでございます、Ⅰ分類、Ⅱ分類、Ⅲ分類、Ⅳ分類と。不良資産、当面の六兆四千百億円の一次損失、これが議論されておるわけでございます。これをⅣ分類としまして、その前のⅢ分類は先ほど来話がありました一兆二千四百億円、これは回収困難というようなことで言われておるわけでございますし、Ⅱ分類は二兆五百億円で回収に時間が必要と、こう言われておるわけです。Ⅳ分類の物件がⅢ分類の方へ、またはⅠ分類の物件がⅡ分類、Ⅲ分類の方へ行く場合があるんでしょうか。
  371. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) この資産の評価はそれぞれの資産によりまして区々でございますので、一般論として申し上げるのはなかなか難しいのでございますが、一番多いケースで申し上げますと一ある債権がございます場合に、担保でカバーできない部分についてその債権の回収が難しいという場合に、担保でカバーできない部分を第Ⅳ分類として損失額に見込んでおるわけでございます。担保でカバーできるもののうち、三割相当額を第Ⅲ分類といたしまして、残りの七割を第Ⅱ分類と、このような形にしているのが最も一般的なケースでございます。
  372. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、一次損失の方の物件も地価動向の変動によりまして第Ⅲ分類の方へいくということなんですが、今お話を承っていますと、第Ⅳ分類の方、一次ロスの方につきましては公費の投入が約一割弱なんですね、比率で申し上げますと。ところが、二次損失の方へいくというと、これが二分の一負担しようというようなことになるわけなんです。これは、同じ物件についてあるところまでは十分の一で、あるところからは二分の一負担しようと。何かちょっとおかしいわけなんですが、この点大蔵大臣どうでしょうか。
  373. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) いわゆる今御指摘の一次ロスに係る損失の分担につきましては、まず第一には関係者、母体行であり一般行であり系統金融機関最大限努力をして、できることならば全体を分担するという考え方で努力をしたわけでございます。  しかしながら、残念なことに、関係者のぎりぎりの努力ではカバーできない部分が六千八百億円生じました。その部分を、この問題を一日も早く処理するために公的な資金でもってカバーをしていただくという御提案、お願いをしているわけでございます。そういう意味におきましては、それは結果的には六兆四千百億の約十分の一という金額にはなっておりますが、全体の十分の一を負担するという考え方で成り立っているわけではございません。  それに対しまして、二次ロスと言われているものにつきましては、関係者が一次ロスについてもう最大限できる限りの努力をした後、さらに万が一発生した場合にどうするかということでございまして、これはだれの負担、だれの責任ということではなくて、金融システム全体のためにどう処理していくかという観点から考えられた方策といたしまして、民間と公の負担を半ばで処理をしていこうという考え方をとっている、こういうことでございます。
  374. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 一つのものに対してあるところは十分の一、あるところは二分の一と。予算書では補助というような表現がなされておりますけれども、ちょっとおかしなすっきりしない形であるわけでございます。  また、母体行の三兆五千億を一次ロスの中における比率で見ますと五五%でございます。二次ロスを入れますと四五%ということになるわけですね。そうしますと、母体行の責任というのは大体すべて負っているわけなんで、それが二分の一程度または二分の一を割ったもので処理させるというようなことになるわけでございまして、ちょっとこれもう少し負担をしたり、また負担を求めたりしてもいいんじゃないでしょうか。大蔵大臣、どうでしょうか。
  375. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) これは関係者、当事者それぞれの考え方があるわけでございますが、母体行の立場からいたしますと、母体行という責任の重い立場にかんがみまして、自分たちの債権は三兆五千億全額を放棄するということで自分たちの最大限努力をしたと、こういう考え方に立っているわけでございます。もとより、そういうことだけですべての役割を果たし終えたわけではないということで、金融システム全体の安定を図るための貢献という見地から、拠出基金一兆円に対する寄与及び低利融資約二兆二千億円というものにつきましても貢献をしてもらうという考え方でこの処理策は成り立っているわけでございます。
  376. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 なかなか大蔵大臣お立ちにならないようですけれども、ちょっと時間の関係でもうあとほかに申し上げる時間がございませんので、ひとつ最後に文部大臣にお尋ねしたいと思います。  今中央教育審議会でいろいろ将来の教育のあり方について審議されておるわけでございます。この間の当委員会で寺澤委員からもお話がありましたけれども、英語教育、これは小学校からの英語教育でございますが、私が申し上げるまでもなく重要だということは御理解のあるところだと思います。若ければ若いほどいいというような実証的研究もなされておるわけでございますが、ひとつ文部大臣、英語教育についての御決意、これをお答えいただきまして終わりとします。
  377. 奥田幹生

    国務大臣(奥田幹生君) 先生御存じのとおり、非常に急速な国際化でございますので、やはり児童生徒にも早い段階で外国語のコミュニケーション能力を身につけさせることが必要ではないか。そういうことに文部省としましても着目をいたしまして、平成四年から今日まで全国で十四の小学校、これを研究開発校に指定いたしまして、英会話を取り入れて研究をしてまいりました。これは正規の授業の中で取り入れるのと違いまして、いわゆるクラブ活動の中でそういうものをやってきたわけでありますが、今御審議をいただいております平成八年度の予算では、新年度からは各都道府県一校ずつにふやしましてやっていただこうという方針を持っておるわけでございます。  お話にございました中央教育審議会、新しい時代の中でどういう教育を進めていったらいいか、その中の特に国際化への対応というのは第二小委員会議論をいただいておるところでございますけれども、正直に申し上げまして、やった方がいいよ、小さいときからの方が身につきやすいからという御意見もございますし、もう少し小学校、中学校ともに教科の子供への負担を軽くした方がいいんじゃないのというような御意見の両方がございまして、非常に私どもも注目をしておるのであります。  いずれにしましても、六月の中旬か下旬には中教審総会を開いていただきまして、一定の方向を打ち出していただくように私どもは聞いておりますから、その答申を注目しておるところでございます。
  378. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で荒木清寛君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会