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1996-04-24 第136回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月二十四日(水曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  四月二十三日     辞任         補欠選任      板垣  正君     松村 龍二君      依田 智治君     中島 眞人君      寺澤 芳男君     加藤 修一君      益田 洋介君     水島  裕君      山下 芳生君     阿部 幸代君  四月二十四日     辞任         補欠選任      吉村剛太郎君     金田 勝年君      加藤 修一君     釘宮  磐君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         井上  裕君     理 事                大河原太一郎君                 斎藤 文夫君                 清水 達雄君                 塩崎 恭久君                 泉  信也君                 白浜 一良君                 都築  譲君                 山本 正和君                 有働 正治君     委 員                 阿部 正俊君                 石井 道子君                 金田 勝年君                 久世 公堯君                 河本 三郎君                 鴻池 祥肇君                 坂野 重信君                 関根 則之君                 谷川 秀善君                 中島 眞人君                 野沢 太三君                 野村 五男君                 服部三男雄君                 真鍋 賢二君                 松村 龍二君                 荒木 清寛君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 大森 礼子君                 釘宮  磐君                 小山 峰男君                 鈴木 正孝君                 直嶋 正行君                 水島  裕君                 横尾 和伸君                 朝日 俊弘君                 一井 淳治君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 川橋 幸子君                 前川 忠夫君                 阿部 幸代君                 緒方 靖夫君                 小島 慶三君                 島袋 宗康君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        大 蔵 大 臣  久保  亘君        法 務 大 臣  長尾 立子君        外 務 大 臣  池田 行彦君        文 部 大 臣  奥田 幹生君        厚 生 大 臣  菅  直人君        農林水産大臣   大原 一三君        通商産業大臣   塚原 俊平君        運 輸 大 臣  亀井 善之君        郵 政 大 臣  日野 市朗君        労 働 大 臣  永井 孝信君        建 設 大 臣  中尾 栄一君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    倉田 寛之君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  中西 績介君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       岡部 三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  臼井日出男君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       田中 秀征君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 秀直君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  岩垂寿喜男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  鈴木 和美君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        藤井  威君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        人事院総裁    弥富啓之助君        人事院事務総局        管理局長     武政 和夫君        人事院事務総局        職員局長     佐藤  信君        総務庁行政管理        局長       陶山  晧君        総務庁行政監察        局長       大橋 豊彦君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛施設庁長官  諸冨 増夫君        防衛施設庁総務        部長       大野 琢也君        防衛施設庁施設        部長       小澤  毅君        経済企画庁調整        局長       糠谷 真平君        経済企画庁総合        計画局長     土志田征一君        経済企画庁調査        局長       澤田五十六君        科学技術庁原子        力局長      岡崎 俊雄君        科学技術庁原子        力安全局長    宮林 正恭君        国土庁計画・調        整局長      塩谷 隆英君        国土庁大都市圏        整備局長     五十嵐健之君        法務大臣官房司        法法制調査部長  永井 紀昭君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省条約局長  林   暘君        大蔵省主計局長  小村  武君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省理財局長  田波 耕治君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        証券取引等監視        委員会事務局長  岡田 康彦君        国税庁次長    若林 勝三君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文部省高等教育        局長       雨宮  忠君        文化庁次長    小野 元之君        厚生大臣官房総        務審議官     亀田 克彦君        厚生省保健医療        局長       松村 明仁君        厚生省生活衛生        局長       小林 秀資君        厚生省薬務局長  荒賀 泰太君        厚生省保険局長  岡光 序治君        厚生省年金局長  近藤純五郎君        社会保険庁運営        部長        兼内閣審議官   横田 吉男君        農林水産大臣官        房長       高木 勇樹君        農林水産省経済        局長       堤  英隆君        農林水産省畜産        局長       熊澤 英昭君        通商産業大臣官        房商務流通審議        官        大宮  正君        通商産業大臣官        房審議官     横川  浩君        通商産業省貿易        局長       広瀬 勝貞君        資源エネルギー        庁長官      江崎  格君        中小企業庁長官  新  欣樹君        運輸省鉄道局長  梅崎  壽君        海上保安庁次長  加藤  甫君        郵政大臣官房審        議官       品川 萬里君        郵政省電気通信        局長      五十嵐三津雄君        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労働基準        局長       松原 亘子君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        建設大臣官房長  伴   襄君        自治大臣官房長  二橋 正弘君        自治大臣官房総        務審議官     湊  和夫君        自治省行政局長  松本 英昭君        自治省行政局公        務員部長     鈴木 正明君        自治省行政局選        挙部長      谷合 靖夫君        自治省財政局長  遠藤 安彦君        自治省税務局長  佐野 徹治君    事務局側        常任委員会専門        員        宮本 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○平成八年度一般会計予算内閣提出衆議院送  付) ○平成八年度特別会計予算内閣提出衆議院送  付) ○平成八年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付) ○資料の提出要求に関する件     —————————————
  2. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、総括質疑を行います。川橋幸子君。
  3. 川橋幸子

    川橋幸子君 おはようございます。社会民主党の川橋幸子でございます。  それでは、初めに外交安全保障の問題からお伺いしたいと思います。  けさ新聞あるいは昨日の新聞大変内閣支持率が回復してきておられます。住専で失った分を外交で取り戻された総理というような、こういう明るいコメントも載っております。住専で失った分というのは、あるいは座り込みという敵失もあったのではないかと思いますけれども。  まず、日米首脳会談を成功裏に終了させまして、引き続きまして原子力安全サミット出席され、対ロ外交の新たな再スタートを切られたという大変画期的な時期でございます。この時期の総理の心境をお伺いしたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、昨年の日米自動車協議の非常に紛糾しました時期におきまして、日本側主張各国支持を取りつけようとして必死で動きました時期に、EUあるいはアジア太平洋各国から、日本側主張支持するけれども、この自動車協議の失敗によって日米関係にダメージを与えないようにしてくれ、日米関係が安定していることが我々にとって非常に大事なことなんだということを口をそろえるようにして各国から言われました。そして、我々が考えている以上に、日米関係が安定しているということが国際社会にとっていかに大切かということを改めて知らされたような思いでありました。  それだけに、内閣スタートをすることになりましてから、日米安保体制というものを基盤とした日米関係というものを我々のきちんとした基軸として位置づけ、これをできるだけ拡大強化することを考えながら、同時にアジア諸国などとの二国間関係、さらにアジア太平洋地域における協力、あるいは国連などを軸とするまさにグローバルな協力関係、これをいかに総合的、重層的に発展させていくかということを念頭に置きながら行動してまいりました。  今回の日米首脳会談原子力安全サミットへの出席とその機会に行いました日ロ首脳会談というものが、三月に行われましたアジアEU首脳会合などと連動いたしまして、いろいろな角度での協力関係というものを強化していく上でそれだけの効果を上げていればと今願っております。  同時に、今後におきましても、新たな国際秩序の構築というものに向けて我々は積極的にまた創造的に外交活動というものを続けていかなければならない、それが日本役割であろう、そのように考えております。
  5. 川橋幸子

    川橋幸子君 メディアのこのところの報道は、やはり日米共同宣言共同文書の問題について大変大きなスペースが割かれております。中では、やはり安保定義といいましょうか、政府の側では再確認というふうにおっしゃるわけでございますけれども、再定義あるいは実質的な改変ではないかと、こういうポイントが一つ。二点目は、極東範囲を拡大いたしまして安保役割をなし崩しに広域化するのではないかという点が二点目。三点目といたしましては、ガイドラインの研究ということが有事立法研究につながるということから集団的自衛権憲法解釈を改変するのではないか、するのかしないのかといった論点。四点目、ACSAによります相互の協力役務協定でございますけれども日本が今まで堅持してまいりました武器輸出禁止原則を変えるのではないかというような諸点に集中しているようでございます。  総理、一昨日でございましたか本会議、昨日はこの委員会でさまざまもう十分に御答弁いただいたということかもわかりませんけれども、改めて私からもお伺いさせていただきたいと思います。
  6. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 多少答弁が長くなりますことをお許しいただきたいと思います。  まず申し上げたいことは、今申し上げましたような視点から見ましたとき、日米安保体制というものが我が国防衛にとりまして必要不可欠であるという以上に、アジア太平洋地域の平和と繁栄、さらに安定というものに現実に重要な役割を果たしているということはお認めをいただきたいと思います。私は、この点は従来から基本的に変化は全くないものだと思っております。  そのような認識の上で、日米安保共同宣言におきましては、日米関係の中核をなす日米安保体制というものについて、これまでの安全保障分野における両国の緊密な対話の成果というものを踏まえながら、改めて日米安保体制というものの重要な役割というものを確認すると同時に、二十一世紀に向けました日米関係というものについて内外に明らかにしたところであります。今後、むしろその内容は具体的に一つ一つ実施に移していかなければなりませんし、日米安保体制の一層円滑かつ効果的な運用というものに努めていかなければなりません。ただ、日米安全保障共同宣言はあくまでも現在の日米安保条約を前提としたものでありますから、これを何ら改正しているものではないということは繰り返して申し上げなければならないと思います。  次に、その極東範囲が変わるのではないかという御質問も実は何回かちょうだいをしてきました。しかし、日米安保条約上の極東というものにつきましては、これは日米両国が平和、安全の維持に共通の関心を有している区域であり、これが大体におきましてフィリピン以北並びに日本及びその周辺地域ということは、安保国会の当時、統一見解として示されたものが何ら変更されているわけではありません。  一方、確かに今度の日米安保共同宣言の中ではアジア太平洋地域という言葉を用いております。これは、日米安保条約目的達成のために米軍我が国に駐留しているという事実がアジア太平洋地域諸国安心感を与えている、結果としてこの地域安定要因として作用しているという認識をそのまま述べたものでございまして、日米安保条約安定要因として作用している地域は必ずしもその特定の地理的な範囲に限定されるものではないと私は思います。ですから、実は衆参本会議でも御議論のありましたところですが、今回の共同宣言で言うアジア太平洋地域が一体どの国を含んでいるのか、あるいは含んでいないのかという議論は、実は実質的に余り私は意味がない議論ではないだろうかと。むしろ、どの国がこれを安定要因として受けとめているかということで変化をする、私は実はそのような感じでこれを考えてまいりました。  ですから、この共同宣言を契機として安保条約が広域化する、あるいは極東範囲が拡大されるといった考え方を私どもは持っておりません。  また、十七日、クリントン大統領との間で署名いたしたわけでありますけれども、この共同宣言の中で、日米防衛協力のための指針の見直しを開始する、及び日本周辺地域において発生し得る事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米協力に関する研究を促進することを表明いたしました。  こうした見直しあるいは研究の具体的な内容というものは、まさに今後の検討を待つものでありますけれども、いずれにしても我が国対応というものが憲法に従って行われるということは当然でありますし、集団的自衛権の行使のように我が国憲法上許されないとされている事項につき政府見解を変更いたしておりません。  しかし、政府としては、安全保障上のさまざまな事態に対しまして、これは米国との協力も含めて、我が国がこれにどう対応するかというその手段をきちんと整備しておく必要は本当にあると私は考えております。そして、そうした対応法的側面に係る問題というものは真剣に検討しておかなければならないと思っておりますこともまた事実でございます。  また、ACSAについての御指摘がございましたが、私は、日米安全保障条約というものが円滑かつ効果的な運用を図られる、また国際連合を中心とする国際平和のための努力に積極的に寄与するというこの協定の意義などにかんがみ、この協定のもとに行われる武器などの提供武器輸出原則などによらないという決断をいたしました。  これは、その限りにおきまして確かに武器輸出原則を変更いたしておる部分でございます。しかし、この場合におきましても、協定に基づいて提供された物品または役務提供国際連合憲章と両立するものでなくてはならないことなどが規定されておりますから、この結果、国際紛争などを助長することを回避するという武器輸出原則などの基本理念を確保している点は変わりがない、私はそう考えております。.
  7. 川橋幸子

    川橋幸子君 今の大変真摯な御説明がそのとおりであれば、大変国民も安心できるのではないかと考えます。  これはけさの日経新聞でございますので、あるいは総理の目まではとまっていないかもわかりませんが、アンケート調査が載っております。防衛協力についてのアンケート調査でございます。  幾つかございますけれども、私が国民の真意はここにあるのだなと思いますのは、憲法解釈を変えずに米軍後方支援をするのがよいというのが四二・九%、それから憲法解釈の変更や米軍への協力の必要はないというのもかなりパーセンテージがありまして三六・八%、憲法解釈を変えるというこの問いに対してはわずか一一・六%。ですから、世論調査の結果では、日本国憲法日本国民が愛し、これをずっと守っていきたいという、憲法を守るというのは当たり前のことでございますけれども、それをさらにずっと堅持していくのが九割近くの日本国民の気持ちなんだ、日本国民というのはこういう理念を持った国民なんだということが世論調査で出るのではないかと私は思います。  しかし、先はどのような安保定義ですとか極東範囲集団的自衛権等々のテーマを政界再編の軸にして、衆議院解散、あるいは総理の人気が高いうちに解散とかさまざま、ちまたはうるそうございます。私は、有事研究についても総理は社民党に配慮して非常に穏やかな言い方をしているというような書かれ方をいたしますと、ちょっと違うのではないかと思います。  先ほど御紹介いたしました世論調査に見るように、国民世論がどこにあるのか、国民が何を望んでいるか、それを考えた場合には、政権の維持というような永田町あるいは霞が関の話ではない。日本全体をよく見据えたときのこれからの外交あり方安全保障あり方ということを考えるべきことではないかと思います。  少々生臭いお話なのかもわかりません、総理のお言葉は重いのかもわかりませんけれども永田町の中の、政界の中の動きとそうしたマスコミあるいは国民の意識のずれというものは、私どもはそう簡単に見逃してよいことはないと思いますけれども、この点については、総理、いかがでございましょうか。
  8. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 日米首脳会談を前にいたしまして、官邸のコンピューターネットワークを使い、インターネットで日米首脳会談に臨むに当たって何か私に助言していただくことがありますかという呼びかけをいたしました。最終的に数が幾らぐらいになりましたか、全部私も最後まで見届けませんでしたが、少なくとも前々日ぐらいまでに二百余りの意見をいただいておりました。  そして、その流れというものは、まさに普天間基地の返還というものを非常に強く求める声、そしてむしろクリントン大統領に対して日米関係というものを安定させるようにしっかり話し合えといった御意見、さまざまな角度のものがありました。首脳会談が終わりました後、とっさに受けましたものの中には、今ちょうど議員がマスコミ世論調査の中を御紹介いただきましたのと同様の方向がうかがわれたように思います。まだ最終的なものは見ておりませんが、恐らくそれは国民の多くの流れでありましょう。  ただ、そこで一点私が気になりましたのは、日米安全保障条約に基づくこの体制信頼関係というものが、日本側努力がなくて一方的にアメリカから与えられる恩恵ではないということを、私は日本国民に改めてぜひ受けとめていただきたいと思っております。友情というものは双方が努力をしなければ育ちません。そして、その限りにおきまして我々もまた努力をしなければなりません。その中でアメリカに全部責任は負ってもらう、しかし我々は負担も責任も負わないということが許されるものでないということを私はどこかで国民に対して訴えなければならないのかな、共同文書を発出し、共同記者会見を行いますときにはそのような思いも私の中にございました。  そして、もし安保条約というものが根底から崩れるような事態が起きたとき、例えば最恵国待遇我が国に与えられるんだろうか、あるいは日米間において行われておりますさまざまな分野における交流は今のままに維持できるんだろうか等々考えてまいりましたとき、私は、我々も努力するという言葉がなければ信頼関係維持できないと思っております。  そして、マスコミ皆さんマスコミ皆さんとしての立場からさまざまな意見を報じておられますが、今景気の状況を考え、切れ目のない経済運営というものに思いをいたす、あるいは今回のSACOの合意を受けて中間報告現実のものとしてまとまりますまでに我々がなお払っていかなければならない努力、あるいはリヨン・サミット、そして金融三法案、あるいは住専処理に関する関連の法案、こうしたものを今国会中にぜひ成立を願いたいと思っております私にとって、いかなる思惑のもとにおいてでありましても、今衆議院解散するほどの勇気はございません。
  9. 川橋幸子

    川橋幸子君 きょうのコラム欄に社会民主党は腰抜けと書かれた記事がございました。その記事に別に私がどうこうということはございません。ただ、私個人としましては、平和、民主主義、そして基本的人権、これこそが日米の共通の価値観だと思っております。国民世論を考えると、もし挑戦があるなら私ども努力して受けて立ちたいと思っております。  さて、沖縄問題に入らせていただきたいと思います。三点伺わせていただきたいと思います。  私は、沖縄問題といいますのは純粋に国内問題である部分が非常に多いのではないかと思っております。今まで本土側の人間といたしましては、過度に沖縄に負担をかけてきたことに対する反省とか、それから今までは過度の負担を冷戦構造の時代には我慢してくださいということでやってきたわけでございますけれども、これからはやはり解決していく、負担をみんなでシェアし合うという努力が必要ではないかと思っております。そのためには、何といいましても政府がよく説明すること、納得を得られるように、理解が得られるように説明すること、場合によっては関係自治体に頭を下げてお願いしたって、それは必要なことじゃないかというふうに思っております。  二点目といたしましては、普天間の移転に伴います費用負担というものは非常に金額が大きくなることが予想される。金額そのものではなくて、せんだって本会議総理は一段と声を大きくなさいまして「しかし、」とおっしゃいまして、この問題はお金の問題ではないというふうな御趣旨の答弁があったことは大変印象的でございました。そのお気持ちをもう少しお伺いさせていただきたいと思います。  三点目といたしましては、ただ日本国民の非常に率直な気持ちといたしましては、米側だけに甘く寄りかかるわけじゃない、日本国民努力をするということはわかっているとは思いますけれども思いやり予算という名前のもとにドイツあるいはイギリスの十倍、何十倍というようなコスト負担について、何となく米軍の、日本ないしは極東範囲アジア太平洋だけの安定どころかもっと広い地域、グローバルなプレゼンスに対する負担を強いられているのではないか、こういうわだかまりがあるように思います。  これらにつきまして、総理からまた率直にお伺いできればありがたいと思います。
  10. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私自身が初めて昭和四十年にパスポートを持って沖縄を訪問いたしましてから随分沖縄には伺わせていただいた経験を持っております。そして、復帰の前後から幾つかの問題で沖縄の皆さんのお手伝いをしてきた経験もございます。それだけに、沖縄の抱える問題というものをある程度頭の中では理解しておるつもりでありました。  しかし、総理に就任をいたしましてから、最初に大田沖縄県知事にお目にかかりじっくりお話を伺いました後、私がそれに答える冒頭に使いました言葉は、無意識のうちにでありますけれども、本当に申しわけありませんでしたという言葉でありました。なぜなら、我々の知らないことが余りに多過ぎた。  しかも、その沖縄県における基地の問題というのは、何も米軍から発生したわけではなく、第二次大戦中に当時の日本の軍によって強制的に収用されたという意味では同様の基地収用が行われ、沖縄戦が始まっていった。そして、多くの県民を巻き添えにし、多数の死者を出す事態になった。そのまま占領に入り、占領軍としての行動の中で新たな基地が生まれていった。  施政権返還までの歴史を大田知事から改めて伺ったとき、本当に申しわけありませんという言葉しか実は出なかったんです。それだけに私は、一方で日米安全保障条約目的達成というものは非常に国として大事な施策であると思っております。これとの調和を図りながら、どこまで沖縄の皆さんに今まで過度に集中していた負担を軽減できるかは今回の日米首脳会談というものを迎える上での私にとりましての一番大きな課題でありました。  そして、必ずしも沖縄の皆さんがこれを十分だと受けとめていただいてはおらないという報道も多く見かけておりますけれども、現時点において、自分としてできる限りの努力はした、それだけにこれを具体的なものにするための努力をこれから払っていかなければならない、私は自分にそう言い聞かせております。  そして、既にこれも公表いたしておりますが、法的な面、経費の面、総合的にこれから我々は早急に検討をいたさなければなりません。事務の副長官であります古川官房副長官のもとに関係省庁のタスクフォースをつくるという決断を私はいたしました。  しかし、これは国だけでうまくいくものではございません。大田知事にお願いをいたしまして、県の責任のある方、副知事さんあるいは調整監、このタスクフォースに対等の立場で入っていただき、今後の解決のためにぜひ国と一緒に力を合わせていただきたいというお願いをし、その点については気持ちよくこれを受け入れていただいたことを今幸せに思っております。  近いうちに正式にこれをスタートさせ、これから我々は努力を開始いたしますが、ぜひとも国会におかれましても、このタスクフォースが有効に機能いたしますようにお力添えを心からお願いする次第であります。  また、その費用負担という点につきましては、現時点でこれを算定できる状況ではございません。しかし、いずれにいたしましても、早急な検討を行う中で十分かつ適切な措置と、今言葉を選ばせていただきますが、十分かつ適切な措置を講ずることが必要だ、そのように考えております。  ただ、議員がお触れになりましたドイツ等と比較をしてという点は、私は多少議員と意見を異にいたします。なぜなら、例えば湾岸戦争、湾岸危機の起こりましたとき、ドイツはNATOのエリアでは軍隊を使用することが許されているということで、湾岸戦争そのものに参加はいたしませんでしたが、周辺のトルコまで戦闘部隊を動かしておりました。そして、湾岸戦争が拡大いたしまして、NATOの一国であるトルコに対してもしイラクが攻撃を加えた場合には戦闘に入る準備を完全に整えて行動しておったわけであります。  現在、それ以上にルールは変わっていると思いますけれども、少なくともNATOの中において、NATOの危機に際しては共同で行動するという姿勢をドイツは持っておりました。こういう違いもございます。  あるいは、数字的なことで申しますならば、国有地の使用料を費用に積算するかしないかといった会計原則のような部分での違いもございます。私は単純に比較はできないものだと思っておりますが、在日米軍駐留経費というものは、米軍我が国に駐留している、これを支える大きな柱でありますし、日米安保体制というものの円滑かつ効果的な運用を確保していくという視点で自主的にできる限りの努力を払ってきたもの、そのように考えております。  昨年度末失効いたしました特別協定にかわりまして四月一日から新たな特別協定が発効したところでありますけれども、この協定に基づくものを含めて、我が国による駐留軍経費の負担というものはむしろ在日米軍の効果的な活動、それは日米安保体制の円滑かつ効果的運用という視点からのものでありますけれども、これを支える上で重要な意義を持つもの、私はそう思っております。  そして、その必要性についてはぜひ国民の皆様にも御理解をいただきたいと思いますし、そのための努力を誠意を持って我々は払っていかなければならない、そのような性格のものだと考えております。
  11. 川橋幸子

    川橋幸子君 沖縄への負担というのは戦前からの負担であったという総理のお言葉、私も大変同感でございます。  質問するときには基地の負担だけでございましたけれども、そういう点も含めまして、本土としましては沖縄に対する気持ちというものを各政党が、あるいは一民間人同士でもこれは言っていかなければいけないことではないかと思います。  負担をかけて申しわけありませんと素直にそういうお言葉が出たというふうにおっしゃいましたけれども、やはり一人一人が申しわけありません、今回は受諾いただいてありがとうございました、これからも移転について、あるいは基地の整理、統合、縮小についてよろしくお願いしますと、こんな気持ちが日本国民の中で持てるようになることが大切ではないかと私も思っております。  十分適切な費用をお約束いただいたということで、ありがとうございます。  さて、コスト負担でございますが、私はそういう論理的な説明は国民の中に支持といいますか、理解できる層は随分あるのではないかと思いますが、一点、思いやり予算という言葉の使い方でございます。こういう情的なものではないのではないでしょうか。これはもっと論理的に説明して、日本国民も負担しなければいけない、日本努力しなければいけない。当面は集団的自衛権は行使はしないけれども、今度はコスト面で負担しなければいけないということをはっきり明確に伝えるべきだと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  12. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) よい御指摘をいただいてありがとうございます。  今私も思いやり予算という言葉は答弁では使わなかったつもりでありますが、やはり駐留軍経費という言い方をいたしましても、これはどなたの造語かわかりませんけれどもマスコミ皆さんからはこの言葉が非常によく多用されますし、恐らく最初はどなたか説明のために我々の先輩がお使いになったのかもしれませんが、私は、確かに今になりますとこれは非常に不適切なイメージを与える、御指摘のとおりだと思います。できるだけ正確に御説明する努力をしたいと思います。
  13. 川橋幸子

    川橋幸子君 自民党が政権党に長くおいでになった当時と今とは違うわけでございます。ぜひその方向で今度は説明していただけますようにお願いしたいと思います。  さて、今私も国民への説明ということを何回か申し上げましたし、総理もそのような表現をお使いくださったのではないかと思いますが、政治ないしは行政への国民の信頼とか、あるいは経済界に対する、金融業に対する国民の信頼とかと言うときには、必ずその前段にちゃんと説明してくれないのかということがございます。あるいは関係者間で、当事者だけで密室で談合をすると。これをよく言えば政治的決着だとおっしゃった方もいらっしゃいますけれども、もっと情報を開示してほしい、公開してほしい、こういう問題が大きいのではないかと思います。  先日、クリントン大統領国会を訪問されまして、そして演説をしてくださいました。この日の夕刊でございますけれども、これは朝日であったかと思いますが、「根回しより演説」というタイトルの表現がございました。言葉というものは国民に対して説明する、コミュニケーションの非常に重要な手段でございまして、総理言葉を大変大事に使っていらっしゃるように私は印象づけられております。  ちょっと新聞名はわかりませんが、これはエールの交換だと思いますけれどもクリントン大統領が、橋本総理は思うことそのまま話すということで信頼ができそうだと、こういうメッセージも送られているようでございます。そういう言葉の持つ力と、この政治が信頼を回復する上での政治家としての言葉の持つ力というものについて、総理、御所見がありましたら伺いたいと思います。
  14. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 「根回しより演説」という言葉の意味をどう報道が使ったのかわかりませんけれども、私は国民に訴えていく努力というのは必要だと思います。  同時に、これはマスコミの諸君を経由して国民に伝わっていくわけでありますけれどもマスコミ皆さんにも私は、根回してはありません、交渉の途中などは報道をしない選択というのもあるということをわかっていただけないものかなと、実は自動車協議で火花を散らしておりますときにそういう思いを何遍かいたしました。私は、結果責任という言葉をよく使いますけれども、議員の御指摘のように、語りかけていく努力は必要だと思います。しかし同時に、交渉の途中を報道されることがどれほど相手に対して武器を与えるか、こちらの足場を弱くするか、その辺は考えていただけないものかという思いを何遍かいたしました。  その意味では、もしそのプロセスまで全部公開しろということでありますなら、私はその辺は多少判断を異にする部分があります。しかし、できるだけ説明の必要があることは申し上げるまでもありません。
  15. 川橋幸子

    川橋幸子君 クリントン大統領総理は思うことそのまま話すなんという、こういう記事を突然申し上げましたので総理も少し警戒なさったのではないかと思いますが、私はそのことを申し上げているのではございません。大統領のあの衆議院会議場の中での話し方ですね、特に沖縄の部分については私どもも拍手いたしましたし、沖縄の人たちもあの場面についてはとても信頼が寄せられるという思いを持った方が多いのではないかと思います。  ここに、これまたメディアの中からの御紹介でございますけれども、せんだって亡くなられました司馬遼太郎さん、小説家であると同時に非常に歴史についての洞察が深く、国のあり方、来し方行く末についてとても洞察力のある方でいらっしゃいました。この方の手紙が収録されている「知のモラル」、インテリジェンスのモラルということで紹介されているものがございました。明断であるということは手のうちのカードをすべて見せてしまう勇気と無縁ではない。これはちょっと外交とは違うと思います。人と人とのコミュニケーション、政治家と国民とのコミュニケーション、行政と国民とのコミュニケーション、そういう意味のコミュニケーションでございます。  住専、薬害エイズ、TBSビデオ問題当事者たちはモラルを問われてきたけれども、人と人とのコミュニケーションにおいて言葉、インテリジェンスというものが非常に大きな力を持ち、かつその力を使うためにはモラルが必要だということではないかと思いますので、ちょっと御紹介させていただきました。  さて、総理の方がもう先に責任のお話に踏み込んでくださいましたけれども、アカウンタビリティーという言葉が最近大変よく使われます。責任には二つの種類のものがあると。一つは結果に対して責任を負うこと、もう一つは説明することの責任であるということでございます。  エリート、指導者と言われる者は、自分の判断や行動を社会に対して説明する責任といいましょうか、責任イコール義務でございますが、そういうものがあると。日本の指導者にはこのアカウンタビリティーが決定的に欠けたのではないか、これが問題なのではないかという、これはよく御存じのカレル・ウォルフレンさんの言葉でございますし、アカウンタビリティーという言葉はこの方以外にもたくさんの政治家が最近使うようになっております。住専、エイズ、「もんじゅ」等に共通しておりましたのはこのアカウンタビリティーの欠如であったのではないかと思いますが、総理、いかがお考えでしょうか。
  16. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、説明する責任というものは非常に大事なものであろうと思いますし、私自身も今のお話は委員からの御忠告として受けとめていきたいと思います。  その上で私は、確かに住専の問題について、当事者間の話し合いで何とか決着をさせたいという努力への時間が余りに長く、結果として、結論に至るまでのプロセスを含めて国民に対する情報の開示が非常におくれたということは大変申しわけないと思います。そして、透明性の確保あるいはさまざまな責任の明確化というものが問われながら、政府として一生懸命に御説明を申し上げ、また国会からの御要求に対しまして膨大な資料の提出をさせていただいてきました。これは我々にとって非常に大きな教訓だと思います。そして、今後こうした対応については十分我々は努力をしていかなければなりません。  また、エイズの問題につきまして、当時の事実関係あるいはなぜ感染の拡大を防止し得なかったか、今厚生省が一生懸命に調査をいたしております。この事実関係に対してだけではなく、今後一層その真相を明らかにしていくだけではなく、対応策等を含めて説明の努力というものはとっていかなければなりません。  また、「もんじゅ」の問題については基本的な部分で欠落していた部分が私はあったように思います。それは事態そのものをどう当事者が把握するかと。説明以前の問題があったように思いますが、その後において情報の意図的な秘匿といった事態は、まさに議員の御指摘のとおり、説明する責任というものが全くないがしろにされた、そういう申し方もできるかもしれません。  いずれにしても、大事な御注意と受けとめさせていただきます。
  17. 川橋幸子

    川橋幸子君 それでは、住専、エイズ、「もんじゅ」について、それぞれ担当の大臣にお伺いさせていただきたいと思います。  国民住専予算に対して大変怒っておるというんでしょうか、今回予算についてまだ十分な納得が得られていないというのが私の率直な感じ、感想でございます。しかし、国民の怒りというのはどこにあったかといいますと、借り手の方、住専経営者の方、それから母体行、系統金融の方、それぞれ来ていただいても、だれも自分が悪かったとおっしゃらない。悪徳の借り手の方は、本当に世間をお騒がせして申しわけないと思っておりますというようなお話が出るわけです。お騒がせするという話なのでしょうか。私はそうではないと思います。  ミスター住専こと庭山さんにおかれましては、非常に明快に大蔵省の責任を追及していらっしゃいます。今回のそれは我が国自身の政策の失敗による人災である、この責任は当時の政権政党だった分裂前の自由民主党、内閣、大蔵省、日銀を含む政府にある、それについて現政府がまず国民に対して深謝するのが筋だ、こんなことを大変声高らかに明確におっしゃっておられました。先日、参議院にお見えになりました今の担当の方は、この方に対しては大変迷惑をしておると。多分迷惑していらっしゃると思います。そんなお話もあったわけでございます。そういう当事者の責任、だれが悪いと言っていることは多分正しいのだろうと思いますが、自分が悪かった、間違っていたと言わないという問題、当事者の責任。  それからもう一つは、やはり行政の側の責任でございます。結果責任局長さん方はお認めくださるわけでございますけれども、ただし当時の選択としては仕方がなかったんだ、こういう言い方でございます。多分仕方がない部分もあると思います。だからこそここで予算を投じて、ここでガンになっております部分を退治して金融システムの安定、これもわかりにくい言葉ですが、もし言いかえるとすれば金融への信頼回復ということだろうと思います。安心できる、安心感が得られるならコスト負担もやむを得ない、そういう国民の意識はあると思います。  つまり、怒っているのはモラルハザードに対して怒っているわけでございまして、そこをちゃんと受けとめない限り理解は得られないというような感じがいたしますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  18. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今、川橋さんからお話がございましたように、この住専問題に限らず、今の政治の問題で国民の皆様方の心との乖離といいますか、そういうものが大きくなってまいりますと社会の秩序を維持するためのルールが破壊される、それがモラルハザードだと思っております。そういう事態になることを私どもは一番恐れるわけでありまして、そのような事態を招かないためにも問題を的確に早期に処理をしていくことが非常に重要だと考えております。  もちろん、国民の皆様方の意見をどのように的確に把握して尊重していくかということが議会制民主主義のもとでの基本でございますが、一方また政治に責任を持つ者のリーダーシップというものも今日ほど問われている時代はないと思っております。そのリーダーシップは、しっかりとした国家国民の将来に対する責任感というものに裏打ちされたものでなければならないと考えております。そういう立場から住専の問題を政府としては考えてまいりました。  また、行政そのものが住専問題に対してどのように責任を明確にし、その責任をとるという形で何をなすべきかということも今日問われている問題であると考えております。そのことをきちんとやり遂げるために今お願いを申し上げておりますのは、金融の新しい時代におけるあり方、これをどのように確立していくかということを住専問題の処理とともにつくり上げていかなければならないということだと思っております。  責任をどうとるかということは、この問題の反省の上に立って何をなすべきかということと、それから個々に負うべき責任、そのことに対してどのようにすべきかということで、すべての情報が明らかにされるということが大事であると思っております。中には歴史的な審判に問う問題も出てくると思っております。  大蔵省といたしましては、バブルの発生から破綻に至るまでの間、大蔵行政の立場からこの問題への対応はどうであったのか、そのことに対してどのような責任が過程としてまた結果として存在するのかというようなことについてもきちんと取りまとめることが重要であると考えて、そのような立場で、今大蔵省の担当者に対しても検討を私の方からお願いをしているところでございます。
  19. 川橋幸子

    川橋幸子君 リーダーシップが今の政治、行政に大変求められている、国民が求めている部分でございます。  久保大臣は、バブルの発生にもバブルの延命にも後始末の失敗にもかかわりはなかった、そうした第三者的に中立的に物が見られる大臣でいらっしゃいます。それだけに私どもは期待しているわけでございます。これからリーダーシップを発揮していただいて、大蔵省の自己改革、それから繰り返し母体行の責任というものが比較して考えれば重いという声があるわけでございますけれども、それに対しても事務方に指示をなさっていただきまして、今度はこれしかないというメニューじゃなくて何案か出してくださるような、そういう方向の検討をお願いできればありがたいと思います。  さて次に、エイズに入りたいと思います。  菅大臣が厚い厚い行政の壁を乗り越えるためにチャレンジなさいまして、国民の信頼回復にこのエイズの問題については大変貢献してくださっているわけです。ここでも責任論が大きく取り上げられております。  例えば、エイズ研究班の安部さんでございますけれども、同僚の議員が、御自身の責任をどういうふうに感じておりますかと厚生委員会で聞きましたら、責任とは一体どういう責任でございますかと切り返されたということがございました。それから、自分は研究者であって学術的に判断するだけである、決定権限は行政にあったはずだというような意見も述べておられます。  それから、郡司さんという方でございますけれども、この方は、研究班という諮問機関でもない会議に行政の責任をゆだねてしまったこと、それに問題があるというようなおっしゃり方をしておられます。  それから、けさ新聞でございましたが、自民党さんに申しわけないというか、そういう連立関係の話ではなく、これはやはり事実としてお伺いしたいわけでございますが、元業務局長をしておられました持永衆議院議員、この方が、全くエイズについての報告も受けていないし書類も見てもいなかった、私自身は科学的、医学的な知識は持ち合わせていないのでどういう議論があるかはわからなかった、当時行政の一端を担ったけれども、そういう被害について責任は痛感しているけれども、でも自分は医学的な知識がなかったので、やはり決定は専門家にやってもらうというようなコメントが載っております。  これはマスコミが収録されたものでございます。どのようなお言葉だったのか正確なところはわかりませんけれども、厚生行政としての責任を大臣としてはこれからどんなように解明していけるのか、いこうとなさるのか、お伺いしたいと思います。
  20. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 先ほど来、川橋委員の方から、政治家のアカウンタビリティー、あるいは当時の薬害エイズに関する研究班の問題など、いろいろ御指摘をいただいております。  私も考えるところが多いんですが、やはり行政というのが、基本的には国民のための行政、あるいは国民が政治家を通して行政をコントロールするという民主主義の基本的なルールというところが必ずしも十分にお互いに理解されていないために、ある意味では行政の情報というのは行政自身が独占してもそれは構わないんだというふうな形で進んできているのではないだろうか。そういった意味では、もちろん交渉事とかいろんな場面で情報として開示できないものもその都度あるかもしれませんけれども、しかし基本的には国民に民主主義という手続の中で判断をいただくわけですから、判断し得る情報はきちんと行政としても開示すべきだと私は基本的に考えております。  また、その中で、このエイズ研究班に関して、当時の班長の安部先生が、自分は研究者であって行政の立場ではないので、つまりそういった加熱製剤の緊急な輸入等については責任がないんだということをおっしゃっていることは私も承知をいたしております。  私は、確かに純法律的あるいは純形式論でいえばある意味ではそのとおりとも言えるわけですけれども、しかし当時の安部研究班は、いわゆる血友病患者に対する非加熱製剤による治療がこのままでいいのかどうか、そのことを問うために専門家の皆さんにお集まりをいただいて、そしてその結論を重視して行政として決定を下すという大変重要な行政の参考意見としてお願いをいたしたわけですから、私は形式論議だけで自分に責任がないと言われることについてはやはり若干納得ができないものを感じるところであります。  また、当時の業務局長の発言は私も新聞でしか知りませんけれども、一般的に言えば、例えば私も薬の専門家ではありませんし、あるいはそれぞれの立場の者も狭い意味での専門家とは必ずしも言えません。しかし、行政のそれぞれの立場にある者は、そういった専門家の外の意見あるいは内部の意見を十分聞きながら、そういう人たちの判断を参考にしながら決定するわけですから、それぞれのポジションにある場合には当然ながらそのポジションに応じた責任というものが行政としては発生している、これは間違いのないことであろうと、このように考えております。
  21. 川橋幸子

    川橋幸子君 次の「もんじゅ」の事故も、エイズに大変共通する部分がございます。科学技術庁の中川大臣にお伺いしたいわけでございます。  先ほど総理からは、情報開示以前、説明以前の問題という言葉がございました。そこで、私も本当に抽象的なことを言わせていただきますが、社会人としての何かそういう常識というものが問われる問題かなとも思います。  通告した順に私の方の用意した質問をさせていただきますと、まず情報隠し。ビデオ改ざんというのは、画面を変えたわけじゃないでしょうけれども、編集の仕方によって相手に伝わる内容がまるで違うわけでございます。こういうことがございました。  それから二点目、こうした事故への対処につきまして、関係者の方は大変真剣に、説明が足りなかった等々反省なさったり、ではどこに問題があったのかということを自己分析していらっしゃるわけでございますけれども、「もんじゅ」の動燃理事長は、今回の安全の問題には技術的な安全に対する社会の信用、この問題と、社会的信用というのでしょうか、そういう事業そのものの安全性、あるいは原子力、ナトリウムといったものに対する社会的な安全、社会的な信用、こういう二つの問題があって、このうちどちらかといえば社会的な信用という要素を技術者の方は余り重視してこなかったのではないか、こう反省を述べられて、今自己改革本部をつくって対策づくりを構築していらっしゃるわけです。これが二点。  三点目は、この社会的信用というものの中身でございますけれども、刑法の世界では疑わしきは罰せずということでございますが、こういう人命に関すること、安全に関すること、エイズ、「もんじゅ」両方に共通して言えることは、社会的な常識としましては疑わしきはもうやめると。非加熱製剤をもうやめる、あるいは「もんじゅ」の運転、これは試運転段階ですけれども、とにかくバルブを締めてやめるということが大事な要素ではないかと思います。そして、今にして思えばどうしてこんなプリミティブなことが、大変常識的なことできなかったかということでございます。  その点は、だれが悪い、かれが悪いといいますよりも、むしろ行政というものの中に、失敗しても安全であるというような、それをチェックする第三者機関というものが組み込まれていた方がいいのではないかと思いますが、「もんじゅ」につきましては既に原子力安全委員会という第三者機関が存在しているわけでございます。ただ、この存在が科学技術庁の原子力行政、当局の中に置かれていたこと、それから委員の人選というものも、技術的な安全性に偏ったせいでしょうか、専門家、技術家に偏っていたということが今から反省点として挙げられると思います。  以上、三点につきまして中川長官にお伺いしたいと思います。
  22. 中川秀直

    国務大臣(中川秀直君) 委員おっしゃるとおり、私は今、今日までの日本の社会を支えてきた高信頼社会というものがいろいろな面で、原子力に対する信頼あるいはまた行政、政治に対する信頼が揺らいでいると思いますが、今後の自由主義的な政治経済体制の活力のためにも、やはり健全なダイナミックな市民社会の存在にかかっていると、こう思うわけであります。そのためにもアカウンタビリティーというものが必要だと、こう考えております。  特に原子力の問題については、原子力関係者に対する市民の信頼というのは本質的にはもろいものだということを忘れてはならないのではないかと私は考えております。常に、正直で情報を包み隠さないというのがまず大前提になければならない、こう思っております。  特に、チェルノブイリのような事故が起きれば直接被害を受けるのは地元住民でございます。その意味で、安全は事業者のものでもなければ行政のものでもない、まさに住民のものである。そう考えましたときに、住民の立場からすれば、命にかかわる情報はすべて出すべきだと考えるのが当然ですし、またそれを隠すということになれば不信感が広がるというのは当然だと。その意味で、今回の「もんじゅ」の事故後の一連の対応というものは、総理から御答弁のあったとおり、決してしてはいけない対応であったと、こう考えておる次第でございます。  いろいろそういう意味での社会的な信用あるいは社会的な安全、安心というものを損なってしまった。そこで、今後はこのような事故が起こった場合にはすぐとめる、あるいはすぐ知らせる、そして絶対にうそはつかないという原則でやっていかなきゃいかぬと、このように動燃等においても指導をしておるところでございますし、現実にそのために自己改革本部や情報公開課あるいは担当者の常駐等、動燃におかれても措置がとられたと。また、私どもも、さまざまなそういう情報をできる限り公開しようということで、「もんじゅ」に関しては今週、「ふげん」に関しては五月一日から保安規定等々も公開をすると、こういうことにいたしているところでございます。  最後のお尋ねの第三者機関でございますが、現実に原子力安全委員会は法制上も第三者機関であるわけでございます。しかし、委員が御指摘のとおり科学技術庁の中に事務局があるではないかと。一般の規制行政をやっている課とは全く違う調査室というものが事務局をやっておるわけですが、委員の先生方からすると、我々が役人の言いなりになっていると言われるのは心外にたえないとおっしゃる委員もいらっしゃる。同じ場所にあるためにそう言われるならば場所を変えようかと言う先生方もいらっしゃるぐらいでございます。まさに国会で御承認いただいている委員の方々、しかもそれは原子力関係分野においてすぐれた人格識見を有する方々ばかりでございますが、その方々のまさにリーダーシップ、指揮監督のもとに事務をやっておるわけでございます。  スリーマイル島のまさにシビアアクシデントが起きたときには、またこれは別の議論が米国でもあったように、私はケメニー委員会などというものが設けられたようなことは起こり得るんだろうと思いますけれども、「もんじゅ」の事故、そして現実に行われている安全委員会の行政、これは私はかなり勉強もし、委員の御指摘もいただいて考えてみましたが、ただいまは本当に厳正にやっていただいている、このように考えております。  また、独立の大きな事務局を設け、そして常時五十カ所ある原発の運転まで監視するということになると膨大な体制ということが必要になってきましょうし、それが行革の観点でどうかという議論もある。ただ、安全委員会に対する信頼性というものは、私は声を大にして今厳正にやっていただいているということはひとつ御理解を賜りたい、こう考えております。
  23. 川橋幸子

    川橋幸子君 大変立派な方々がついていらっしゃると思います。でも、大臣、安全委員会が持つ機能を発揮する一番わかりやすい形は、総理に対してこの行政の安全性確保について勧告できる権限を持つことですね。この勧告権というのは行使されたことがあるのでしょうか。
  24. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) お答えさせていただきます。  これまで原子力安全委員会が勧告権を行使されたということはございません。原子力安全委員会がいろいろと御提言になる、そういう御意見につきましては内閣総理大臣あるいは各省庁が尊重する義務を持っているということで、いろいろ原子力安全委員会がおっしゃった事項、そういうものについては実際上ちゃんと各省庁において全うされている、こういう事実があるからでございます。
  25. 川橋幸子

    川橋幸子君 こういう言葉をお贈りしたいと思います。価値とは他人が決めるものという言葉でございます。  行政、私もかって役人でございました。微力ですが大変誠実に取り組んだつもりでございますし、国民への義務というものをわかったつもりでございますけれども、ある日、事業主の方からそれは独善ですよと言われたことがございます。国民の目から見たときには、この役所は本当に大丈夫なんだろうか、既にさまざまな事故が起こっておりますときにはチェックしてくれるもう一つの機関が必要ではないかという、こういう問題が今大きくなっているわけでございます。  さて、残り時間が少してございますが、行政の信頼回復についてという点でお伺いさせていただきたいと思います。  内閣は各省大臣を指揮命令される。その中には、政策立案だけではなくて、その実行についての監視というんでしょうかモニターできる権限が内閣にはあるはずでございます。また、三条機関という、そういう機関の重要性というものが今またもう一度再認識されたらよいのではないかというお話がございます。  それからもう一つは、人事交流をどこかで遮断しないと、当事者は一生懸命まじめにやっているつもりでも外から見たときにやはり癒着という感じの疑いが持たれやすいこと、それから本人自身が自分をどこまでチェックできるかというと、人間の人間たるゆえんでございます、他者の目でチェックしてもらった方がよりよくなることがあるわけでございます。そういう意味で、人事交流をあるところで遮断した方がいいのではないかという話がございます。今大蔵改革といいましょうか、大蔵省の信頼回復のためには大蔵改革が必要だということが議論されているわけでございますが、イギリス王立国際問題研究所のスティール博士という方の言でございますが、大蔵省に自己改革を期待するのは無理だと。これは日本の大蔵省のことを言っていらっしゃるのかどうか不明でございますが、客観的なコメントでございます。幾つか監視機関を設けることを提言された中で、人事の遮断も大事だということもつけ加えて言っていらっしゃるわけでございます。  さて、金融行政を護送船団方式から改めて、ルールづくりに行政を純化させ、それに対する監視機能を強めるということが求められている。これが金融システムの安定に対する国民の疑いの目に対する答えになると思うわけでございます。これを内閣に置いた方がよいというふうに大蔵大臣思われませんでしょうか。
  26. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今御質問の趣旨は、恐らく監督指導に当たる、あるいは検査の任務を持つ行政と相対する業界との関係を大事において遮断すべきだという意味でお話しくださったのではないかと思いますが、私どもは、業界と行政との関係には一定の距離と絶えず存在する緊張感がなければならない、こう思っております。そのためには、やはり今日まで批判を受けてきた問題を具体的に改革しなければいけない、こう思っておるところでございます。  そういう場合に、行政の機構をどうするかという問題と、具体的に人事交流等の面における問題点をどのようにやっていくかという問題は、一つは効率の問題、それから権利の問題、こういう問題等をよく整理して、できるだけ速やかに私どもは改革の方針を明らかにしなければならないと考えております。
  27. 川橋幸子

    川橋幸子君 大蔵大臣それから先ほどの中川大臣、両方とも言葉の隅々からはおっしゃりたい気持ちは伝わってまいりますけれども、いまいち各省にいらっしゃるということでおっしゃりにくいことがあるのではないかと思います。総理、いかがでございましょうか、内閣機能の中に監視機能を強化する、あるいは遮断した方がよい人事交流がある、この二点についてお伺いいたします。
  28. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、実は証券不祥事が起きましたとき、証券等の監視の機能をどうつくるかで大変苦しみました、大蔵大臣として。当時、世間からはこの機能を大蔵省の外につくれという御意見が圧倒的でありました。ただ、そこで一つの壁になりましたのは、外につくれという御意見の方々は日本の雇用制度というものの実態を全くお考えいただけておらなかったという点であります。  例えば、アメリカの証券等監視委員会、SECの場合、これは非常に民間の人々がどんどん採用されます。そして、そこで優秀な業績を上げた人はまた民間にどんどんスカウトをされます。しかも、それは直接、監督権限といいますか監視権限といいますか、関係のあった部署から関係のあった業界に移ることを規制しておりません。ただし、そのかわりに、一たん外に出た者が中におりましたときの知識を利用し、人脈を利用しといった行動をとることに対しては非常に厳しいファイアウォールが築かれております。  ところが、もし日本の終身雇用制の形態の中で外に監視機構をつくるといった場合に、どういう人材が得られるであろうか、そして例えば民間から特例任用で守秘義務を課せられたそうした職種にどれだけの方が御協力をいただけるだろうか、さらにそれを支える事務局機能はどうか。  結果として、大変いろいろ御批判を受けましたが、私は中に監視委員会をつくる、そのかわりに監督権限を持つセクターと新たな監視機能を持つセクターとをはっきりと仕組みの上で遮断するという工夫をすることに全力投球をいたしました。  私は、議員が今御指摘になりました御論議の中に二つの問題点があるように思います。  一つは、交流を制限するという言葉が一般的になりました場合、今我々は各省の横の人事交流というものをできるだけ積極的に行いたい。一つの役所で固定するのではなく、さまざまな役所に動けるような人材を育てていきたい、こういう考え方とどこで問題を生ずるだろうか。  さらには、公務員の採用方式そのものについても今さまざまな議論がなされております。私は、これはある意味では公務員の採用から終身雇用形態の中における異動、さらに定年後の人生設計というものまで含めて考えなければならない問題ではなかろうか、御論議を伺いながらそう思いました。  ただし、それが特定の関連を持つ業界等に対しての再就職、いわゆる天下りといったようなもの、こうした点を指しての御指摘であるとするならば、人事院等に十分工夫をしてもらう必要があると思います。
  29. 川橋幸子

    川橋幸子君 そこで、最後になりましたが、人事院総裁お見えでいらっしゃると思います。  人事交流の遮断と働き場の確保、これを両立させることは日本のような終身雇用の労働市場では大変難しいことがございます。特に公務部門は難しゅうございます。例えば公務部門の人材バンクという、これは全く私の個人的なアイデアでございますが、何か新しい方策を研究していただくことはできませんでしょうか。これを伺って終わりたいと思います。
  30. 弥富啓之助

    政府委員弥富啓之助君) お答えを申し上げます。  ただいま委員が言われましたとおりに公務員の退職後の雇用機会の確保と、それから天下りの問題が非常に関連があるということはお説のとおりだと存じております。  高齢者の雇用機会の確保の問題につきましては、長年その公務部内で培われました職員の知識や経験や能力、これを公務外でどう活用していくかという観点が一つございます。他方では、官民を通じまして人材の活用や流動化にどう対処していくかという観点から、人事管理全般にわたりまして幅広くこれは検討していくことが重要であると考えております。  御指摘のような趣旨からも、あるいは職員個々人の能力、適性にふさわしい雇用機会を拡大するという趣旨からも、今お話しございました公務部門の人材バンクといった一つの考え方、これは職員の高齢対策の一般の中で一つの方策といたしまして検討対象になり得るものではないかというふうに考えております。
  31. 川橋幸子

    川橋幸子君 どうもありがとうございました。終わります。
  32. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で川橋幸子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  33. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、久世公堯君の質疑を行います。久世公堯君
  34. 久世公堯

    ○久世公堯君 私は、宗教問題と行革についてお尋ねをいたしたいと思います。  改正宗教法人法が昨年の十二月十五日に公布以来、四カ月が推移をいたしました。報道によりますと、九月に施行するという予定で、準備ももう終盤になっていると伝えられております。  私は、二十一世紀に向かって国民にとって宗教というのは非常に重要な意味を持ってくる、こう思っております。宗教法人法の改正は、宗教法人に対して不安を与えたりあるいは必要以上の負担をかけてはいけないものだろうと思います。  そこで、文部大臣にお伺いいたしたいのは、この改正宗教法人法の施行に当たって、特に所轄庁として巨大宗教法人も所轄することになるわけでございますので、そのあたりのお考えなりあるいは決意についてお尋ねをしたいと思います。
  35. 奥田幹生

    国務大臣(奥田幹生君) 去年の十二月十五日に当面必要とされる非常に大事な問題を改正していただきました。したがって、文化庁といたしましては、その改正していただいたことが——国に今届け出られております宗教法人は三百七十三、それからそれぞれ都道府県の知事さんに届け出のあります宗教法人を合計いたしますと十八万四千二百八十八になっているんですね。それだけの宗教法人が改正点を正しく理解していただいて、そうしてきちっと活動をしていただけるように、そういう認識を持っていただくように今準備作業を精力的に、文化庁は文化庁で、それから都道府県は都道府県の担当者で進めていただいておる最中でございます。当面の責任は私はそこにあると。きちっと改正点が漏れなく周知徹底いたしまして、それが宗教法人の活動の中に生かされていくように全力投球をいたしておるところでございます。
  36. 久世公堯

    ○久世公堯君 あさって四月二十六日に宗教法人審議会が開かれる、このように報道されております。昨年の九月二十九日以来七カ月ぶりでございまして、非常に注目を浴びた宗教法人審議会でございますので、今回一体どういうことを予定しておられるのか、承りたいと思います。  また、昨年も問題になりましたが、この宗教法人審議会の議事録は公開をするのかどうか。たしか去年の閣議決定の中では宗教法人審議会は非公開と承っておりますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  37. 小野元之

    政府委員(小野元之君) お答えを申し上げます。  御指摘のように、四月二十六日に第百三十二回の宗教法人審議会を開催することといたしております。具体的な内容といたしましては、収支計算書の作成義務が免除されます収入額が寡少であるというその額の範囲を定めるということが一つございます。それからもう一つは、宗教法人審議会の今後の運営について、そういったことを中心にいたしまして御審議をいただきたいというふうに考えております。  なお、議事録の公開の問題でございますけれども、これにつきましては閣議決定の趣旨を踏まえまして審議会自身で御決定されることでございます。昨年来議論のあったところでございますけれども、その所掌事務が行政処分である認証あるいは不服申し立ての調査、審議といったこと等もございますので、そういった趣旨も踏まえながら適切な結論を出していただきたいというふうに私どもとしては期待をいたしているところでございます。
  38. 久世公堯

    ○久世公堯君 ただいま小規模宗教法人の基準のお話がございましたが、これはどのくらいの額でございましょうか。これも新聞報道ないしは私どもいろいろ検討した段階におきましては八千万円以下ぐらいが適当ではなかろうかと思いますが、いかがでございましょうか。
  39. 小野元之

    政府委員(小野元之君) この額につきましては、宗教法人サイドの御意見としては、小規模法人に余り過大な負担をかけないでほしいというお気持ちがございまして、できるだけ高い金額にしてほしいという御要望がございます。私どもといたしましても、そういった御意見等も踏まえながら、八千万円も有力な案だというふうに考えているわけでございますけれども、いずれにいたしましても審議会にお諮り申し上げまして、審議会の御意見も踏まえて文部大臣に決定いただくということで考えておるところでございます。
  40. 久世公堯

    ○久世公堯君 八千万円とした場合には、一体どのくらいの宗教法人がこれに該当することになりましょうか。
  41. 小野元之

    政府委員(小野元之君) 文部大臣所管の宗教法人、先ほど三百七十三ということを申し上げたわけでございますけれども、こういった法人の中から今任意で財務関係書類を御提出いただいているところがございます。それが百五十六あるわけでございますけれども平成六年度の数字でございますが、それを平均いたしますと、八千万以下の文部大臣所轄の法人というのは約六三・四%になってございます。  知事所轄の法人につきましては、実は昭和六十三年度の数字しかないものですから余り正確な数字が申し上げられないわけでございますけれども、八千万以下ということになりますとかなり多くの部分が免除されるというふうに考えております。
  42. 久世公堯

    ○久世公堯君 かなり多くというと九五%以上になりましょうか。
  43. 小野元之

    政府委員(小野元之君) 六十三年度の数字でございますので、その後の経済状況の変動等がございますが、六十三年度の数字そのままということになりますと、御指摘のように九五%を超えるものと思っております。
  44. 久世公堯

    ○久世公堯君 そうなりますと、大半の宗教法人は収支報告の義務が当分の間は免除される。ですから、先ほど申しましたように、本当に必要以上の負担をかけないという法の趣旨が生かされると思うわけでございます。  そこで、次に所轄庁の変更についてお伺いいたしたいと思いますが、たしか公布の日から六カ月以内にその事務を進めておられるはずでございます。今、文部大臣の所管法人が、先ほど文部大臣は三百七十三とおっしゃったわけでございますが、今回はどのくらいこれがふえるわけでございますか。
  45. 小野元之

    政府委員(小野元之君) 現在、六カ月以内に御報告いただきたいということで、各都道府県知事を通じまして各法人からお届けをお願いしている段階でございますので正確な数字は把握できないわけでございますけれども、およそ数百の法人が文部大臣所管の法人に今回新たに追加されるというふうに考えております。
  46. 久世公堯

    ○久世公堯君 数百といっても二、三百か三、四百か五、六百か、いろいろあると思いますが、どの程度なんでございましょうか。  それから、その主な、大きな法人にはどんなものがございましょうか。
  47. 小野元之

    政府委員(小野元之君) 数百と申し上げましたけれども、実は今までのところ、私どものところに、文部大臣所管法人になるというのは百五十幾つの法人がはっきりしているわけでございます。ただ、これは全県を集計したわけではございませんので、まだ途中の段階でございます。  それから、現在県知事の所管法人で大きな法人がたくさんあるわけでございますけれども、例えば創価学会さんでございますとか統一教会さんでございますとか幸福の科学さんでございますとか、そういったところは恐らく文部大臣所管法人になるのではないかというふうに私どもとしては予測をいたしております。
  48. 久世公堯

    ○久世公堯君 それでは、所轄法人になるには一体どういう手続をとるのか。文化庁から各都道府県なんかに御指導されている面から見ますと、知事を経由して大臣に上げると、こういうようなことになっておるようでございます。その際、境内建物関係の書類を添えて行うということになっておるようでございますが、そのチェックはどのようにされるわけでございますか。
  49. 小野元之

    政府委員(小野元之君) 御指摘ございましたように、昨年の法改正によりまして、知事所轄の法人で、改正後の施行日におきまして他の都道府県内に境内建物を備えておられる法人というものは文部大臣の所轄になるわけでございます。  この場合、所轄庁の変更ということになるわけでございますが、これは前の国会でもいろいろ御論議あったわけでございますけれども、認証をやり直すということではなくて、現在知事が所轄していらっしゃるわけでございますので、その書類を文部大臣の方に送っていただきまして、私どもといたしましては、これが所轄が変わった時点で書類等が不足しておったり不備であったりした場合にはそれらについてきちんと出し直していただくということはあると思います。  いずれにいたしましても、そういう手続を経まして、新たに文部大臣所轄法人として宗教法人にさまざまな面で適切な対応をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  50. 久世公堯

    ○久世公堯君 今は書類をチェックする、書類を保管する、このように言われましたが、もうオウム真理教は解散命令でなくなりましたけれども、もし今オウム真理教があったとするならば、パイプがある、悪臭があるあの第七サティアンとか、ああいうのが書類上、上げられてきた場合においては、その書類のチェックだけで何もしないでそのまま通すのでございますか。
  51. 小野元之

    政府委員(小野元之君) 仮定の問題でございますので、特定の法人それぞれについて対応が必要だと思うわけでございますけれども、基本的には、既に法人格をお持ちでございますので、それらについて所轄庁が移管することに伴う手続をきちんとやるということが必要だと思うのでございます。  ただ、お話がございましたオウム真理教等のような場合につきましては、今回改正法で報告を求めたり、あるいは調査をお願いするということも法律が完全に施行になりますればできることになるわけでございますので、そういった権限を適切に行使して適切な対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  52. 久世公堯

    ○久世公堯君 オウム真理教の場合じゃなくても、例えば別邸であるとか私邸であるとか、そういうようなものがこの宗教法人の境内建物になっている場合もあるかと思うわけでございますが、そういう場合においてはどういうチェックをされるのか。  私は、文部省の方でおつくりになりました宗教法人法の改正の概要という文書によりますと「文化庁では、その確認を行った後、改正法の施行により所轄庁が文部大臣となる宗教法人に対しては、都道府県知事を経由してその旨通知する。」と、確認を行った後と書いてございますが、この確認とはどの程度でございますか。
  53. 小野元之

    政府委員(小野元之君) 法改正に伴いまして文部大臣所轄になる場合でございますけれども、他の都道府県内に境内建物を備えていらっしゃるかどうかということにつきましては、宗教法人の方から知事を経由して書類が出てくるわけでございますけれども、それにつきまして境内建物を備えているかどうかという確認は私ども文化庁で行いたいと思っております。  これは基本的には書面で行うわけでございますけれども、この確認の場合に、境内建物かどうかといったことに疑義等がある場合は具体的に見せていただくといいますか、必要な範囲におきまして必要な確認のための手段をとるということはあり得るというふうに考えております。
  54. 久世公堯

    ○久世公堯君 わかりました。書類だけではなくて必要に応じては調査をする、それで確認をするという御趣旨がよくわかったわけでございます。  先ほども申し上げましたように、私は宗教法人の大半はまじめな団体だろうと思います。また、小規模法人というのも相当多いだろうと思います。したがいまして、宗教法人法の改正というものは、先ほども申し上げましたように、多くの宗教法人に不安を与えたり、あるいは必要以上の負担をかけてはならないものでございます。  しかし、一方におきまして、許可や認可ではございませんが、認証も所轄庁としてやはり責任を持つ行為でございます。今回は認証がえではございませんけれども、しかし所轄庁として十分責任を持っていただきたいと思うわけでございます。この所轄庁が知事から文部大臣に移るという以上は、非常に責任ある対処をしていただきたいと思いますが、文部大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  55. 奥田幹生

    国務大臣(奥田幹生君) たまたまきょうはオウム真理教麻原代表の初公判が十時から東京地裁で開かれております。けさ七時過ぎに東京拘置所を麻原被告が護送車に乗って出て、裁判所へ向かうのをテレビで私は見ました。なおまた、そのテレビが続いて、去年三月二十日の地下鉄サリンで亡くなられた御遺族の方の感想をも放映されておりました。  そういうテレビ報道を見まして、私は昭和二十六年に制定された宗教法人法というのは性善説に立っておるという感じを強く持っておったわけでありますが、こういう事件が起きたからには、去年先生方によって宗教法人法を改正していただいたその趣旨を十分に文部省の責任者として生かして、きちっと全宗教法人が実行していただけるように、これがあの地下鉄サリン事件で亡くなられた方々、あるいはまだベッドに伏しておられる方々に対する私ども責任であるというような感じも持ったわけでございます。
  56. 久世公堯

    ○久世公堯君 それでは次に、たびたび当委員会におきましても議論になりました政教分離についての憲法解釈、これについて伺いたいと思います。  たびたびここで話題になりましたが、従来の政府解釈というのは、宗教団体による国家権力の行使を禁止している、また国家の宗教に対する国家権力の行使を禁止している、そこまでしか言っていないわけでございます。しかし、国あるいは地方自治体が課税権あるいは公務員の任命権を宗教団体に与えるというようなことは過去にも日本においてはなかったし、現在もないし、将来も考えられないわけでございます。  そこで、私ども自民党といたしましては、この前、宗教法人法が可決をされましてからワーキングチームをつくりまして、この勉強を含めて広く宗教法人に関する勉強会を週に二回の割合でやってまいったわけでございます。そして、宗教団体がどこまで政治にかかわり合いを持てるかという議論をやったわけでございます。  その大体の結果によりますと、政治参加は構わない、しかしながら政治支配というのは憲法に違反をする、憲法に抵触するおそれがある、こういう結論に達したわけでございます。  政治参加と申しますのは、例えば宗教団体の役員や宗教団体の信者が個人として政治活動を行ったり、あるいは宗教団体が政治団体をつくって政治活動や選挙運動をやっておる、これは政治参加である。  それに対して、例えば宗教団体の信者が特定候補者の応援のために選挙期間中ほとんど朝から晩まで宗教団体の施設を専ら使用する、こういうこととか、あるいは宗教団体が教義を実現する目的を持って政党をつくるとか、あるいは宗教団体が結成した政党によって政権を獲得、樹立するとか、さらには宗教団体の実力者がその結成した政党から選出された議員を国務大臣に推薦するとか、あるいはまた宗教団体と事実上一体の政党が議会で多数派を占めたりキャスチングボートを握ることによって政権を意のままにする、こういうのが政治支配であると。政治参加は構わないけれども政治支配は許されない、こういう結論に達したわけでございます。  しかも、いろいろ学説も読ませてもらいましたが、戦後五十年の間にいろんな学説があって、従来の法制局の解釈は主として初めの十年か二十年の学説を根拠にしておられますが、最近二十年ぐらいの新しい学説を見ますと、私が今申しましたところに大体集約されているわけでございます。  この点について、まず文部省の御見解、次いで法制局の見解をお聞きいたしたいと思います。
  57. 小野元之

    政府委員(小野元之君) 政教分離につきましての私どもの考え方でございますが、もちろんこれは政府統一見解と私ども同じでございます。  したがいまして、若干繰り返しになりますけれども、国及びその機関が国権行使の場面におきまして宗教に介入し、または関与することを排除する趣旨のものであるというふうに理解をしております。すなわち、立法権、課税権等の統治的権力をもって国やその他の公の機関が国権行使の場面において宗教に介入し、または関与することを排除するということでございます。そのように私どもは理解をいたしております。
  58. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 多岐にわたる御意見を拝聴したわけでございますが、憲法二十条に規定しています政教分離の趣旨につきましては、もう既にただいま文化庁の方から御説明がございまして、全く同趣旨でございます。  余りつけ加えて言うところもないわけでございますけれども、念のためもう一度申し上げますと、憲法第二十条第一項後段では「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」と規定しております。また、同条第三項で「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」と規定し、そしてこの財政的裏づけといたしまして八十九条で「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、」「これを支出し、又はその利用に供してはならない。」、こういう三カ条を政教分離の規定として置いているわけでございます。  この政教分離の規定の趣旨をどう解するかという問題でございますが、この問題につきましては、ただいま御指摘がありましたように、従前から政府としましては一貫して、これらの規定は宗教団体が国または地方公共団体に独占されている統治的権力について授けられてこれを行使してはならない旨を規定しているものである、それを超えて宗教団体が政治的活動をすることをも排除しているものではない、こういう趣旨として理解している。これは前国会以来においてもるる御説明申し上げたとおりでございます。  そこで、もう一点のお尋ねに当たろうかと思いますが、今までの学説を自分の方で検討したら政府見解はかえって古いじゃないかという御指摘があったと思います。私どもも入手し得る限りの学説について、それを調査し、精査、分析を行ってきております。  これは非常に莫大な量であり、また長期間にわたる学説の精査、分析でございますので、結論だけ申し上げますと、第一説は、二十条一項後段に言う「政治上の権力」とは、国または地方公共団体に独占されている政治的権力を言うと。  第二説は、宗教団体の政治活動には一定の限界があるというものでありますが、この中にもいろいろな類型がございます。一つの類型は、宗教団体が積極的な政治活動によって政治に強い影響を与えることを禁止したものと解する説。もう一つの類型は、宗教団体による政治支配を禁止したものであり、具体的には特定の宗教団体が議会で多数を占めたりキャスチングボートを握ったりすることによって政治の動向を決定したり左右することがいかぬのだという説。そしてもう一つの類型は、これはただいま御指摘になった説であろうと思いますが、宗教団体がみずから政党を組織したり他の政党を支配下に置き、その政党を通じて政権を掌握し、または政権に対して重大な影響を有するに至ることを禁止したという説、これは第二説の亜系でございます。  第三説は、宗教団体が政治的権威の機能を営んではならないという趣旨を示したものであるという説。大体こういう三分類にできようかと思います。  そして最後に、最近二十年間における学説を通観してみるとかえって第二説の方が多数説じゃないかという御指摘でございましたが、私どももそういう観点から実はカウントしてみました。既に委員にも事前にお渡ししています共通の資料に基づきまして分類してみたわけでございますけれども、それによりますと、第一説の統治的権力の行使を禁止しているという説は、私どものカウントによりますと二十三名の学者がおられる。これに対しまして第二説に立たれる学者は十二名、そして第三説に立たれる学者は二名。二十三対十二対二という比率で、やはり政府が従前からよって立っております説が過去二十年間においても多数説ではなかろうかというふうに目下のところ考えているわけでございます。
  59. 久世公堯

    ○久世公堯君 法制局長官にお尋ねしますが、憲法の解釈というものは時代の変化に従って行われなければいけないと思います。  実は、野坂前官房長官がここで、勉強いたしますということを何度言われたかわかりません。そこで、その勉強の成果をお聞きしたいんですが、今学説の方は学説として、何を勉強されたか。宗教の国民生活に与える影響、あるいはまた宗教と政治の今の日本現実の実態、それについてどのように勉強されたかを長官にお尋ねしたいと思います。簡潔にお願いします。
  60. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 簡潔にということでございますが、私どもの基本的な考え方といたしますと、やはり憲法を初め法令の解釈というものは、当該法令の規定の文言とか立法の趣旨にまず即しつつ、立法者の意図をも考慮し、また議論の積み重ねのあるものにつきましては全体の整合性をも留意して理論的に確定すべきものであるというふうに考えております。  したがいまして、宗教団体の政治活動の実態について勉強したのかという御質問がございましたけれども、もちろんそういう議論にも耳を傾け、また調査の対象として十分重点を置くべきであるとは思いますけれども、やはり憲法解釈という事柄の性質上、冒頭に申し上げましたような視点というものが非常に重要であるというふうに考えております。
  61. 久世公堯

    ○久世公堯君 私は、前にも申し上げたんですが、内閣法制局というのはかたくなに昔のことを守る、そういうような伝統のあるところでございます。今の勉強の結果も、社会の実態それから宗教の変化、あるいは今の宗教が政治とどういうかかわりを持っているか、そういうものは一つも勉強していない。そして、法律の字句だけを考えておられる。そういうことでは私は真の憲法解釈というのはできないと思うわけでございます。  法制局というのは、別に内閣の中で法制局が憲法解釈を決めるわけじゃございせん。憲法解釈を決められるのは最高裁だけで、あと各省大臣も憲法解釈をできれば、法制局もできる。ただ、法制局は、設置法に言われておりますように、内閣総理大臣なり各省大臣に対しまして意見を述べるということが権限のはずでございます。したがいまして、これ以上法制局長官にお聞きをしても、社会の実態も御存じにならないし、宗教の現実も御存じにならない。それでは本当の法解釈というのはできないと思いますが。
  62. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 甚だ厳しい御批判でございまして、これはこれとして十分心にとどめたいと思います。  客観的な制度の説明だけさせていただきたいと思いますが、御指摘のとおり、内閣法制局設置法の第三条第三号におきましては、内閣法制局の事務として「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること。」と、このように定められておりまして、内閣法制局は法律問題に関して意見を述べることをその所掌事務としているわけでございます。  ただいま御指摘ございましたように、憲法を含めまして法令の解釈というものは、最終的には最高裁判所の判例を通じて確定されることが現行憲法上予定されていることは御指摘のとおりであります。したがいまして、そのような意味で私ども見解というものがいわゆる最高裁判所の判断のごとく拘束力を持っているものではないということは、もう指摘されるまでもなく重々承知しているわけでございます。  ただ、やはり法律問題に関し意見を述べることを所掌事務として設置法に明記されていることに照らし考えますと、法制局の意見は、行政部あるいは政府部内においては専門的意見として最大限尊重されるものであることが制度上予定されているということは申し上げたいと思います。したがいまして、法令の解釈において、各省庁において疑義があるとか、あるいは関係省庁間において争いがあるというような場合は、法制局の意見を出すことによって行政部内においてはその解釈を統一していくということになろうかと思います。  最後に、若干申し上げたいわけでございますけれども、制度論はともかくといたしまして、私ども法制局、これは八十名に足らない、七十数名によって構成される非常に簡素な機関でございます。しかしながら、その中核となります参事官は各省庁からよりすぐられて出向してきている者でございまして、いずれも一騎当千のつわものと言えようかと思います。そこで、我々は、先ほど申し上げたようなそういう制度論に頼ることなく、常にその出す意見が妥当となるように日々研究調査に専心しているということだけは御理解いただきたいと思います。制度的な保障に頼ることなく、その具体的な内容において関係者から尊重されるように、今後とも一層の努力に努めてまいりたいということでございます。
  63. 久世公堯

    ○久世公堯君 私もこの質問をするに当たって法制局から資料をいただいたのでございますが、いただいたのは従来の学説のその部分をコピーしたものと、それから外国の制度も、別に外国のそのものではなくて、学者が翻訳をしたものを幾つかいただいた。本当に二、三日かかれば全部できるような資料を過去四カ月の成果としていただいたわけでございます。  そこで、官房長官にお尋ねをしたいと思いますが、この前、補正予算の審議のときに同じような質問を佐藤議員からされました。私は、官房長官の答弁をお顔を見ていたわけでございますが、官房長官は元帝国陸軍将校、将官でいらっしゃいますから、やはり答弁をされるときに顔がきりつと引き締まる感じがしたわけでございます。  この官房長官の御答弁の中で、今までは常識的な平板的な解釈をしていたけれども十分検討して政府見解というものを出したいと、こういうような答弁をされたわけでございます。常識的な平板的にとどまらないと、さすがやはり官房長官だという気がしたわけでございますが、重ねて御趣旨をお尋ねしたいと思います。
  64. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 確かに委員御指摘のように、私は二十条を平板的に常識的に読めば、それは双務的なものであり、介入してはいけない、また関与してはいけない、そういうものというふうに読みましたし、それから特権を受けてはいけないと。そういうところから見ますと、余りにも政治介入があるのではないかという久世委員今御指摘のような面、これも十分に私も承知をしているつもりであります。そして今、大森法制局長官から、過去から今日までの経緯、これについても勉強をさせられました。ですから、まだ私にとっては、しかし結論は出ません。まだ勉強中であります。  そして、この中で言われるように、例えば特権を受けるという問題で、税法上その他の特権を受けるのは何があるのかというと、三十四条に公益法人の設立、これには冒頭に宗教が入っているわけですから、こういうことが果たして整合性があるのかどうなのか、頭の中で考えているだけではなかなかわかりません。しかし、その優遇をさるべきいわば公益法人の範疇に入れているということもこの憲法との絡みがどうなのか、そういう点を考えますと早急に結論が出る問題でもない。  ですから、私は、現実と現行の体制、それから今までの法理論、今までの経緯、こういうものを引き続き勉強する気であります。
  65. 久世公堯

    ○久世公堯君 ただいまの官房長官の御答弁、御趣旨はよく理解したつもりでございます。  憲法解釈というのは、先ほども申しましたように、社会の実態、国民生活の実態、国民と宗教とのかかわり合い、非常に変わってきております。昭和二十年代、三十年代とさま変わりでございます。また、宗教団体の行っているところの宗教活動、政治活動、政治運動、これもよく調べて解釈というものを考えていかなきゃいけないと思うわけでございます。法制局はかたくなにこの条文に固執しておられるようでございますが、今の官房長官のお話を聞きましてよく理解したわけでございます。  そこで、宗教問題の最後に宗教法人に対する課税問題について承りたいと思います。  平成八年度の税制改正におきまして、税務署長への収支計算書の提出の基準を五千万円以上のものは提出しなければいけない、こういうふうに規定をされたわけでございますが、その趣旨と時期、またその基準につきまして承りたいと思います。
  66. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 昨年秋に宗教法人並びに公益法人等につきましての課税の適正化について厳しい御論議をいただきました。与党税調におきましては、おととしからこの問題を議論してまいりましたし、政府税調におきましても宗教法人、財団、社団あるいは学校法人等々の公益法人等に対する課税の適正化が大事なことであるということで、一歩でも前進するように指摘を受けたわけでございます。これを受けまして今御指摘の収支報告書の提出義務を公益法人等につけるということを決めたわけでございまして、これは三月に通りました税法で現在実施できる形になっております。  なお、この収支報告書の提出義務につきましては、事務負担の問題がございますので、年間収入五千万以下の小規模法人につきましては義務を外すということにしております。  また、時期についての御指摘ですが、来年、平成九年の一月以降に始まる事業年度について提出していただくということを考えております。
  67. 久世公堯

    ○久世公堯君 先ほど小野次長からお話の小規模な法人の収支報告書の免除、それが八千万円以下になっているわけでございまして、五千万と八千万と違うわけでございますが、そこは大蔵省の方で何とかならないものでございましょうか。
  68. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 小規模法人の事務負担を軽減するという発想で、どこで線を引くかということを議論いたしました。いろいろな計数を見てみますと、先ほど文化庁からもお話がありましたが、古い資料ではございますが、宗教法人につきましては五千万で線を切って九五%が外れるという数字がございますし、その他の資料を見ましても五千万が適当と考えております。  もう一つ、所得税につきまして、総収入が三千万以上ですと資料を出してほしいという制度があります。これが発足したときには五千万からスタートしておりまして、これとの横並びも考えますと、税制上は宗教法人だけでなく他の公益法人等も含めて対象にしておりますので、五千万が適当と考えております。
  69. 久世公堯

    ○久世公堯君 一般の国民から、あるいは宗教法人から見た場合、今おっしゃったように課税庁の論理と所轄庁の論理とが違う。それは私もしょうがないと思いますけれども、将来においてできればこれは八千万円に合わせてもらいたいなという気持ちがいたします。  政治改革の選挙法改正のときに、今度は記号式だけでも残したからいいのでございますが、万一衆議院の総選挙と参議院の選挙が同時選挙になったときに、国民にとっては、小選挙区の投票、参議院の選挙区の投票、衆議院の比例区の投票、参議院の比例区の投票、非常にわかりにくいと私は思うわけでございます。みんな一緒になった場合はですね。ちょうどそれと同じように、やっぱり一般の国民的な感覚、あるいは宗教法人の感覚からしたら将来八千万円に合わせてもらいたいなと、これは希望を申し上げたいと思います。  あと一問、固定資産税の問題でございますが、この宗教法人に対する非課税制度の運用につきまして、その趣旨を御説明していただきたいと思います。
  70. 佐野徹治

    政府委員(佐野徹治君) 固定資産税につきましては、地方税法で「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第三条に規定する境内建物及び境内地」に該当するものにつきましては非課税措置が講じられているところでございます。  この趣旨につきましては、宗教法人法で宗教法人というのは「宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成する」、こういう規定がございまして、こういった宗教活動の特性にかんがみまして非課税とされているところでございます。
  71. 久世公堯

    ○久世公堯君 これにつきましては法制意見もたしかございまして、なかなかいいことを言っておられるわけでございます。多少他の目的に使用しても構わない、こう言っているわけでございます。それは私も結構だと思います。  ただ、例えば宗教法人の幹部しか専ら使わないところの施設とか、あるいはとにかく一般の信者は入れないような施設、それが非課税になっている、時折そういうようなことも耳にいたしますので、そのあたりのところは自治省といたしましてはたしか宗教法人法の施行に当たっていろいろ調査をされる。ただ、非課税の調査というのは非常に難しいと思うのでございまして、課税されているものの実態は調査できるけれども非課税の実態というものは難しいと思いますが、どのように対処しておられますか。
  72. 佐野徹治

    政府委員(佐野徹治君) 固定資産税が非課税に該当するのかどうか、これにつきましては、宗教法人の各施設の利用の実態を見て課税団体でございます市町村が認定をする、こういうことになっております。  この認定の運用につきましては、従前から私ども適正な運用がなされるように市町村に対しては指導もいたしているところでございます。本年の一月におきましても、実地調査時点の現況等を記載した非課税資産に関する諸資料の保管、整理、こういうことに努めることによりまして非課税資産の的確な把握を行うように指導いたしております。また同時に、判断に当たりましては、認定に当たりましては、定期的に実地調査を行うこと等によりまして、その利用状況をより一層的確に把握するように、その運用につきましてより一層適切な認定が行われるように、この一月にも指導をいたしたところでございます。  今後とも適切な運用がなされるよう指導してまいりたいと考えておるところでございます。
  73. 久世公堯

    ○久世公堯君 今の税務局長の御趣旨のように御指導のほどをお願いいたしたいと思います。  では、午前の質問はこれで終わります。
  74. 井上裕

    委員長井上裕君) 久世公堯君の残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時四分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  75. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、久世公堯君の質疑を行います。久世君。
  76. 久世公堯

    ○久世公堯君 午後は行革の問題を御質問したいと思います。  私は、昭和三十六年から三十九年まで第一次臨調に出向いたしておりました。それから三十数年間、直接間接、行革というものにかかわってまいりました。  行革は、絶えず官と民、すなわち規制緩和とか特殊法人改革とか行政と民間との活動領域の分担、それから第二には国と地方、地方分権、さらに政と官、内閣の機能、総合調整、中央省庁の改革、こういう官と民、それから国と地方、政と官、これを一体的に行う必要があると思うわけでございます。  今度の予算委員会に際しまして、大河原委員の質問に対して総理は、二回にわたってかなり詳細に答弁をしておられます。それは、経済審議会、行政改革委員会、地方分権推進委員会、それに国会等移転調査会、既に会長ないしは会長代理と二回懇談会をやり、また事務局長ともやっておられる。この四審議会、委員会というものが有機的に連携を図りながら進行していく、大変総理のアイデアとリーダーシップによるものだと思うわけでございます。  また、昨日は阿部委員の質問に対しまして、財政再建と高齢化社会対策という調整から、社会保障制度審議会、財政審議会、税調、経済審議会、こういうものの会長なり事務局に集まってもらうことも考えたい、このように述べておられます。  そこでまず、きのうは夕方でもございましたので質問通告をしておりません。したがって、四審議会、委員会について既に二回もやっておりますし、有機的連携という総理のすぐれた問題意識というものに対して、規制緩和なり地方分権なり中央省庁のあり方なり首都機能移転というものを所管しておられる各大臣に、この総理の問題意識に対するお考えをそれぞれお聞きしたいと思います。企画庁長官からお願いいたします。
  77. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 経済企画庁は経済審議会の事務局を務めているわけであります。今回の四審議会の連係プレーといいますか、そういう場が総理の強い意向でつくられたわけですが、私は共通のテーマは改革であろうと思っております。構造改革と言ってもいいですが、広い意味での構造改革を共通のテーマとする四つの審議会、そのように受けとめておりますが、それぞれの仕事が着実に迅速に進むようにという趣旨であろうかと思っております。  私どもが事務局を務めている経済審議会は、昨年、経済計画を策定したわけですが、その中には首都機能の問題、あるいは規制緩和はもちろんでありますが、地方分権、それぞれの問題が重要な項目として掲げられております。今回、総理の御意向で有機的な連携ということになった中で、私どもは経済審議会に早速首都機能に関する委員会も設けたわけでございます。  いずれにしましても、この趣旨を体して、私どもの経済の構造改革を中心として、それぞれの課題が着実に迅速に進むように努めてまいりたい、そのように思っております。
  78. 鈴木和美

    国務大臣鈴木和美君) 首都機能移転を担当する国土庁でございますが、機能の移転問題は我が国の政治、行政、経済、社会などの改革を進める上で極めて重要な課題だと認識しております。そのために、規制緩和や地方分権などの国政上の改革とも有機的な連携を図りつつ推進してまいることが重要だと認識しています。  特に、今後、国会において移転先候補地選定機関の設置等が所要の措置として検討されてまいりますので、国土庁といたしましては国会の方針を受けまして、また関係省庁とも連絡をとりながら進めていくべきものだと考えております。  私自身といたしましては、首都機能の移転は国政全般の改革を加速させ定着させるためにも重要であるという認識でございまして、そのために全力を尽くしてその実現に向けてまいる所存でございます。  同時に、総理からお話がありました四審議会の横の連絡についても十分連携をとりながら図ってまいりたい、さよう考えているところでございます。
  79. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) お答えいたします。  規制緩和あるいは地方分権、さらに首都機能移転等を含めまして、総理が申されておりますように、行政改革は橋本内閣における最重要課題である、こういう認識に立ちまして、それぞれの委員会あるいは審議会等、その出発する時期が異なっておったために相当開きがあることも事実であります。  したがいまして、こうした問題を調整しながら、特に首都機能問題一つを取り上げてまいりましても、移るときに全く今のままの状況でこれを移していくということになりますとこういう不都合なことはないわけでありますから、これを具体化するためには何としてもこうした地方分権、地方と中央における任務分担というものがやはり明らかにされておる必要があろうと思います。  こうした問題等がありますので、十分な調整を図りながら進めていくということは大変重要であるということを認識して現在進めておるところであります。
  80. 久世公堯

    ○久世公堯君 自治大臣、お願いします。
  81. 倉田寛之

    国務大臣(倉田寛之君) 四審議会、委員会等の有機的な連携につきましての総理の御趣旨というのは、我が国の構造改革という目標に向けまして、各審議会等の審議に際しても相互の情報交換、審議の進度の調整、さらには重複あるいは相反する部分の調整を図るなど、横の連係プレーをとって進める必要があるとの考えに基づくものでございまして、私も同感に存じているところでございます。  また、間近に迫りました二十一世紀にふさわしい国、地方を通ずる行政システムを考えますときに、現行の中央集権型の行政システムを変革して地方分権を推進することはぜひとも必要であるというふうに考えております。  さきの地方分権推進委員会中間報告におきましても、首都機能移転による新首都を第二の東京にしないためにも地方分権の推進が不可欠であるとされているところでございまして、地方分権推進法におきましては、五カ年間に集中的かつ計画的な取り組みを行うことによって成果を上げようとするものでございます。  政府といたしましても、地方分権推進委員会から具体的な指針の勧告をいただきまして、地方分権推進計画を速やかに策定させていただき着実に実施をしてまいりたい、かように考えておりますし、私といたしましても実りある成果を期待して強い決意で臨んでまいりたいと思いますので、本院におきましてもよろしく御理解と御協力を賜りたいと思います。
  82. 久世公堯

    ○久世公堯君 私は、かつて国、地方の問題で、行革の成果を上げるために地方制度調査会と行革審とそれから国土審、これを合同で代表を出してやれる方法が何かないだろうかということを提案したことがございました。ところが、なかなか大きな審議会でございますので、その委員の代表といっても大変でございますし、それから総理がこの前の大河原質問に対してお答えになっておられますように、国会承認人事で任期も違うし、その間の情報交換もうまくいかないし、いろいろな点で問題があって、なかなか合同の委員会をつくったり代表の委員会をつくるということは難しいということがわかったわけでございます。  そこで、最後に、総理に対して三点お尋ねをしたいと思うわけでございます。  今の四審議会、委員会の懇談会、これを今後どのように運営されるのか。また、新しく社会保障等の問題についておつくりになるとすれば、これから問題ごとにそうおやりになるのかどうか。  特に総理が御指摘になっておられますように、事務局の連携というのが非常に大事だと思います。今は内政審議室というところでやっておられるそうでございますが、お聞きしますと、ここは十三人の審議官がおられます。それが十二省と国家公安委員会の全部から一人ずつ出ておりまして、しかも課長補佐か係長かを連れてペアでやっていると、こういう話でございます。内政審議室までがそういう縦割りの代表だと果たしてそこで総合調整ができるんだろうか、多少そういう疑問もないわけではございません。そこで、そういう見通しを含めて事務局をどのようにして束ねていくのかということを伺いたいと思います。  第二点目は、この四審議会、委員会の問題でございますが、国土審というのを加えられたらどうだろうかという気がいたします。場合によっては財政審も必要なのかもしれません。余り多くなるといけないと思いますが、五つ六つはどうだろうかなという気がしますが、それに対して御意見をいただきたいと思います。  三点目は、国土庁長官もお触れになりましたが、首都機能の移転というのが一つの起爆剤になると思います。特に、二〇一〇年の国会開催というものを期して今やっておられるわけでございますので、この首都機能移転にすべてを合わせると総理も多少御指摘をされているわけでございますが、そのあたりをどうお考えか。  この三点について伺いたいと思います。
  83. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私自身、今まで行政改革というものをいわば斜めの立場から見ておりながら、議員が今御指摘になりましたような問題意識を持ってこの四審議会の会長さん方の話し合いというものをスタートしてみました。そして、お話し合いをしていただいた。それはそれだけの価値があったように思います。これから先、大きな問題、小さな問題を含めましてますます効果が出てくることを期待いたしております。  一つの例を挙げますならば、先般、住宅に関する規制緩和を各省庁の権限を越えて束ねて進めさせていただきましたが、この際、従来、地方自治体の持っておられました水道関係の規制緩和につきましても、国と歩調を合わせていただくことによって効果のあるものにすることができました。今後、こうした確率は、だんだん規制緩和あるいは地方分権が進めば進むほど数はふえてくるであろうと思います。  そこで、議員から今御指摘のありました第一点でありますけれども、この四審議会、委員会というものを束ねてまいりますにつきまして、事務局をそれぞればらばらにということではなく、連絡会議のような形で事務局の意思の疎通を図る組み合わせをつくりました。これには古川内閣官房副長官に、事務の副長官でありますが、座長格を願いまして、今御指摘のありました内政審議室長あるいは行革委の事務局長、経企庁の総合計画局長、地方分権推進委の事務局長、そして国土庁の大都市圏整備局長、それぞれの形で連絡体制スタートさせております。  私は、会長さん方による会合も大事でありますけれども、その会長さん方の下で仕事をいたしますこの事務局メンバーの連絡体制の中から、より前進したものが生まれてくることを一番期待もいたしております。そして、問題意識を共有してもらうだけでも恐らく変化が出るでありましょう。  今、これに国土審あるいは財政審という御指摘がございました。たまたま財政審は経済審の会長と同一の方であります。基本的には私は、この四つの審議会、委員会が連携をとっていただけば大宗は方向づけられると考えておりますけれども、具体的な問題を進めていきますうちには、国土審だけではなく他の審議会の会長さん方にも随時お入りをいただく必要が生ずるかもしれない。それは、むしろ基本的に四審議会の会長さん方に何ら制肘を加えず話し合いをしていただいております中で、必要と思われる方を随時呼んでいただくことを私からも進言させていただきたいと思います。事務局体制も同様の問題があろうかと思います。  また、そうしたものを踏まえまして、国会等移転調査会が示されました方向に向けて全体を集中していくことについてどう考えるかという点につきまして、私も同じような考え方を持っております。しかし、当然のことながら、規制緩和でありますとか分権の議論というものは、その日程にかかわらず前進させられるだけ前進させておきたい。むしろ、一年でも早くそうした方向の作業は進めてまいりたいし、結論の出たものは着実に実施に移してまいりたい。殊に、住民に身近な行政ほど住民に身近な自治体にお願いをしていくことの方が望ましいわけでありますから、そうした視点を持って進めてまいりたいと思います。  ただ、中央省庁の再編成というものは、私はやはり国会等移転調査会が示しておられる新首都機能の創設というものとできるだけ平仄を合わせながら進めてまいりたいと思います。現実の行政に混乱を生ずることも私は望みません。同時に、新しい首都の候補地が決まり国会等が移転します場合に、現在のままの行政機構がついて移転をしたのでは問題は変わらないわけであります。それだけに、中央省庁の再編成というものは、当然のことながら現在の行政府の姿よりスリムなものになっていくでありましょうが、あるいはその中に新しいものを必要とするものも出てくるかもしれません。そうしたものを含めまして、国会等の移転と平仄を合わせて進めていくことが望ましい姿、そうした方向に全体が動いていただけるならと、そのような期待も持ちまして審議会の会長さん方のお話の場を組み立ててまいりました。
  84. 久世公堯

    ○久世公堯君 ただいま総理がおっしゃいましたように、私も、中央省庁の改革と地方分権、これはぜひとも首都機能の移転と時期を合わせていただきたい、そしてひとつぜひ官邸主導型でこの改革をやっていただきたいと、このように思うわけでございます。  道具立てが全部そろっております。ひとつ、総理のすぐれたこの問題意識の具体化の実現に大きな期待をいたしております。総理のさらなる意欲というものを期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  85. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で久世公堯君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  86. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、横尾和伸君の質疑を行います。横尾和伸君。
  87. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 平成会の横尾和伸でございます。  限られた時間ですので、前置きを省略しまして質問を始めますけれども、九三年の二月に大蔵、農水の両省庁の局長間で結ばれた覚書、この覚書について農水大臣は、農林系統の元本保証を意味するものであるということを一貫して明確に述べておられます。この点についていま一度ここで確認をしたいんですけれども、大臣、お願いいたします。
  88. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 当時の状況を何回か御説明申し上げたのでありますが、多くの当事者の間で、系統もたくさんの当事者があるわけでありまして、資金の引き揚げ問題が第一次再建計画、第二次再建計画でともに問題になりました。そういう状況の中で、何らかの形でこれは意見をまとめなきゃならないということで、これらの意見を集約するためにあの覚書ができたものと、このように私は理解をしております。  その中には、金利は四・五%を保証します、六・五ないしそれ以上だったのでありますが、保証いたします、それ以外の負担はかけませんと、こう書いてございまして,委員御承知のとおり、当時の農協系統がこれによって元本は担保されたものと安心したと私は思っております。
  89. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 大分言い方が変わっておりまして、元本を保証する意味だという議事録が随所にあるんですけれども、今のお答えは元本を保証すると受けとめたと、系統の受けとめ方を説明しただけであります。そのことを聞いているんじゃないので、農水大臣御自身が元本を保証するという意味のものであると断言されているんですけれども、ここでもう一度確認をしたいんです。
  90. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 当時の状況からしまして、ないしは事務局の説明、信連の当事者等の説明からいたしまして、元本は保証されたもの、こういう理解を示したと、こういうことでございます。
  91. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 今の理解を示したというのは、だれが示したんですか。
  92. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 当事者であります。農中、信連、共済関係でございます。
  93. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 大臣の受けとめを聞いているんですよ。
  94. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 大臣がそのときに、私が受けとめるという状況にはありません。
  95. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 私は、聞いていることに対してお答えいただかないと困るんですけれども、農水大臣御自身がどう受けとめているかということを聞いているんです。
  96. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 何回も申しますように、その当時の状況を元本保証だと受けとめたということは、これは衆議院の答弁も全く同じことを申し上げているわけであります。
  97. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 何回言っても、私はこれではちょっと質問できません。
  98. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  99. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記を起こして。
  100. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 私がずっと申し上げていることは、元本保証とは書いてございませんけれども、これによって系統並びに共済関係の皆さんが元本保証だと受けとめたと、私もまたあれを読みながらそう思います。
  101. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 はっきりそう言っていただければ、農水大臣は元本保証であるというふうに受けとめているということを確認ができました。  なぜこれにこだわるかといいますと、この覚書そのものが今回の税金投入、六千八百五十億が昨年の十二月に突然決まった原因になっている非常に大事な書類であるからなんです、それは説明を要しないと思いますけれども。  ところで、同じ覚書について、今度は銀行局長と大蔵大臣はどう受けとめていられるのか。だれが受けとめたかではなくて、今の御自身がどう受けとめているか、お願いいたします。
  102. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 衆議院予算委員会においても何回もお答えしたことでございますが、この覚書という文書そのものは法律的な元本保証の効力を持つ文書でもありませんし、またそのことが明文化されていないことも農水大臣が今お答えになったとおりであります。  ただ、当時の第二次再建計画をめぐるいろいろな経緯やこの再建計画が金利によって行われたという状況等を考えた場合に、系統側がこれを元本を保証されたものという期待感を持ったであろうということは、私が御答弁を申し上げてきたところであります。
  103. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 そんなことは聞いておりません。また同じことを言っている。大臣自身がどう受けとめているかを聞いているんです。第三者、ほかの方がどう受けとめたかということを私は聞いていません。聞いていることに答えてください。
  104. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) そのように当時の覚書を私は見ているということを申し上げて、それ以上の答えは何が必要でしょうか。
  105. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 元本保証を意味するものかどうか、大臣のお考えをお伺いします。
  106. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 私の答弁は非常にわかりやすいと思うのであります。私が申し上げているのは、これは法的拘束力とか明文化されている元本保証をした文書ではない、しかし当時のいきさつから見て、(発言する者多し)静かに聞きなさい。当時のいきさつから見て、系統側はこれを元本を保証してくれたものと受けとめたであろう、期待感を持ったであろう、それが私がこの文書に対するみずからの見解として申し上げているのであります。(「見解が違うじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  107. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  108. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記を起こして。
  109. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 私が聞いているのは、この覚書は大変重要な書類であるから、大臣はこの覚書の趣旨について、農水大臣はもう明確に元本を保証する意味だと、こう言っておられるんです。それに対して、それに対してというか、元本を保証する意味かどうかということについて大蔵大臣の御意見を伺いたい、こういうことでございます。
  110. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 先ほどお答えしたことで御理解いただけるんじゃないでしょうか。(「閣内が違うじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  111. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 答えられないんですか。大蔵大臣御自身の判断は、あれは元本保証してないのか。御自身の判断を言ってください。
  112. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  113. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記を起こして。
  114. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 今、私が申し上げたことに対して、大臣は第三者の……(発言する者多し)
  115. 井上裕

    委員長井上裕君) 御静粛にお願いします。
  116. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 私は大臣とお話ししているんですよ。大臣がどう思っているかということを聞いているんです。  それでは違った角度から申し上げますけれども、大臣の御見解とそれから農水大臣の見解が違うんですね。私はこの違いについてこれを明確に、一緒にしていただかないと、こんな大事な書類についての見解が違うのでは質問ができない、こういうことでございます。(「閣内不一致だよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  117. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  118. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記を起こして。
  119. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 これだけ言ってもわからないんですか。  この覚書というのが非常に今回の最重要文書と言ってもいいんじゃないんですか。今回の税金投入が決まったのは、昨年の十二月にこの覚書を盾にして族議員の方々が大変な活躍をされたと、これはもう国民皆さん知っていますよ。  この重要文書、例えば一つの重要な文書について、大蔵大臣、農水大臣、AとBと違う解釈をしている。違う解釈をしていて、その談合の結果がCなる住専処理案になったんでしょう。だから、そのCなる住専処理案も、私ども同僚議員が何回も指摘しているようにガラス細工のようにいつ壊れるかわからない。もし途中で壊れたら、仮に皆さんの思うとおりに法案が通ったとして、途中で壊れた場合には、またAとBの違いに戻るんですよ。その違いが戻って、また談合して、また国民に迷惑をかけるのか。これだけ重要なことだからAとBと違うんじゃ困ると、こう聞いているんです。閣内不一致にならないように答弁してください。(発言する者あり)
  120. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 私は、同じことを何回も申し上げて恐縮でございますが、この覚書は元本の保証を明文化していないということについては、農水大臣も私も全く同じ答弁をしていると思います。  そして、この覚書がつくられるときは第二次再建計画が議論されたときである、そのことについても同じ答弁をいたしました。  そして、この文書がつくられたことによって系統側がこれに対して元本保証の期待を持ったであろうということを私は申し上げました。そのことについて農水大臣も同じことを答弁されたと思っております。  私は、それ以上の御答弁を申し上げることはございません。
  121. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 農水大臣は、元本保証をするものと受けとめた、私もそのように思うということをはっきり言われたから、私はそれは違うでしょうと。大蔵大臣と農水大臣の意見は違いますよ。
  122. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) この文書に元本保証が明文化されていないということで、同じことを答えているんじゃないでしょうか。それに対して農協系統側はこれを元本保証を意味するものと期待したであろう、こういうことを私は言っているのでありまして、大原農水大臣の方もそのような立場で御答弁になったと私は理解いたしております。
  123. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 閣内不一致で、私はこれじゃ質問が続けられません。
  124. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  125. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記を起こして。
  126. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 それでは、同じ問題を銀行局長、元本保証する意味か否か、どうとらえているのか。
  127. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) いわゆる平成五年二月三日の覚書をごらんいただければおわかりいただけると存ずるわけでございますけれども、この覚書自体は、住専の再建の支援について当事者の問題意識のすり合わせをしているものでございます。  この文書の中に書いてございますことは「再建計画に沿って母体金融機関が責任を持って対応していく(大蔵省は、農協系統に今回の措置を超える負担をかけないよう責任を持って指導していくものとする)。」、このように記されているものでございます。  このことは、当時は、さらに金利の変動があった場合にその問題をどのように処理していくかと、こういう問題意識のもとに当事者がこのような文書を取り交わしたものでございまして、このこと自体、先ほどから大蔵大臣、農水大臣お答えになっておられますように、元本保証そのものに触れたものではございません。これは明文上明らかであろうかと存じます。  しかしながら、大蔵大臣が先ほど申し上げましたのは、その際、金利の問題についてこれ以上の負担をかけないということをこの覚書で言っていることが、言外に系統金融機関側からすると元本を保証されるというような受けとめ方をされた、あるいは期待を持たれたと、そういう点はあったかもしれないということを大蔵大臣は申し上げたものであり、農水大臣もそのような御理解をしておられるのではないか。これは衆議院以来の長い審議の過程で、そのようなことで進んできていると理解しているところでございます。
  128. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 こんな大事な問題を違った意見のまま、そして六千八百五十億円を決めた根拠になっているんですよ。これが破綻をしたらまたもとに戻るんですよ、AとBの違いに。また争いが起こるんですよ。  それでは、時間の問題もありますので、ぜひ私はこれは政府として統一見解を出していただきたいと思うんです。覚書について、元本保証するものであるか否かについて統一見解を出していただ叩くように委員長にお願いいたします。
  129. 井上裕

    委員長井上裕君) これは答えておりますから。(発言する者あり)  速記をとめて。    〔速記中止〕
  130. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記を起こして。
  131. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 それでは、別な質問に行きます。  総理にお伺いしますけれども、四月の上旬に自民党の加藤幹事長の疑惑が、私は断定しているわけではありません、一千万円のやみ献金の問題とか随分いろいろ取りざたされているわけですけれども総理はそのときに、新聞情報なんですけれども、一蓮托生だと、加藤幹事長とは一蓮托生だという言葉を使われたんですが、新聞で十分意味が伝わらなかったんですけれども、一蓮托生というのは大変意味深長な言葉でありまして、場合によっては同じ疑惑につながるというような解釈もあり得ては困るので、総理にその点をお伺いしたいと思います。
  132. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、幹事長が党の幹事長という立場で党務を遂行される、そして国政の中で自由民主党の幹事長として役割を果たしていかれる、その問題について総裁と幹事長の関係でありますから一蓮托生ということは申しました。議員が、そのようなことはないと思うけれどと御注意をいただきましたことには感謝を申し上げつつ、私は疑惑云々という問題で幹事長と話し合っているわけではございませんし、そうした問題を一蓮托生と申してはおりません。  公党の総裁と幹事長として党務における責任者に対しその運営を一任する、その結果責任は私にもあるという意味では一蓮托生であります。
  133. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 次に、覚書の強引な作成とか、九三年のことですけれども、この覚書をてこにして昨年の後半に自民党の農林族議員の大変な御活躍があった、こういう報道が盛んにされたわけですけれども総理は族議員を大変礼賛されているわけですが、族議員について是非論も含めて総理のお考えを伺います。
  134. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 衆参両院議員に対して世間から求められることの一つに、官僚に負けないだけの政策立案能力、判断力等が求められております。そして、一方ではその官庁の代弁者に議員がならないようにという声がございます。  議員が指される族議員という言葉はいずれを意味するものかわかりません。しかし、私は、国会議員が専門性を持ち、自分の見識において官僚をリードできるような分野を持つことは決して悪いことだとは考えておりません。そして、もし議員が言われる族という言葉が私の意味すると同じように専門性を持ち、専門性を持ちながら官僚をリードできるような能力を有する議員ということでありますなら、私はそうした議員が育っていくことは望ましいことであると思っております。
  135. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 総理の持論として私も前々から実は知っていてきょう確認をさせていただいたんですけれども、政治家は政策で判断をする、勝負をするものだと、こういう趣旨だと理解いたします。  そうだとすれば、ちょっと一般論としてもう一回聞きたいんですけれども、政策判断にもし大きな誤りがあった場合に、大きな誤りを犯した政治家は何らかの具体的な責任をとるべきだと思うんです、政策が大事ですので。一般論で結構ですが、その点をお伺いします。
  136. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 政治家がその責任を問われる最大の場は選挙というものであると思います。その任期中にみずからが進めてきた、あるいはみずからが主張してきた政策の是非は、その次に行われる選挙において有権者が判断されるでありましょう。私は、最高の責任をとる場面というのは、その選挙という場で有権者に御判断を願うこと、だと思っております。
  137. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 それは矛盾をしていませんか。政策で勝負をする、政策でリードをする、そのことと選挙とは少し距離がある、まあつながりはしますけれども。  もう一度伺いますけれども、政策判断に大きな誤りがあっても政治家は選挙以外では責任をとらないでいいというふうに聞こえたんですけれども、そのことを確認します。
  138. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 政治家の責任をどういう形でと言われますから、私は最高の審判を受ける、判断を決する場所というものは、新人の方々は別であります、しかし一期でも国政の中に身を置きました場合、次の選挙に臨みます時点では、その任期内において自分が何をなし、何を主張し、そして今後何を主張しようとするかを当然ながら有権者に訴えていくでありましょう。そして、有権者は判断を下されるはずであります。私は、有権者の判断というものは責任を判断する一番大切なものだと思います。  その上であえてお問いになりますなら、私は政治家それぞれの出処進退はみずからが決すべきもの、そのように思っております。
  139. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 選挙だけじゃないということも聞いて少しは安心しました。  それでは、具体の問題として伺いますけれども総理は九〇年の三月に出された一連の総量規制関係の通達、これの直接の責任者といいますか、実質的には一番の責任ある立場で御判断されたんだと思うんですが、この政策の実行によって農林系の住専への傾斜が急速に強まったわけですけれども、事実は認められるでしょうか。
  140. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変全体を要約してお述べいただきましたので、それだけをとらえてお返事をいたしますなら、そうした事実があったということを申し上げます。こういう事実がありましたということを私は否定いたしません。  しかし、その当時の状況を御勘案いただきたいと思いますのは、私はバブルの最盛期に近い時期に海部内閣の閣僚として大蔵大臣を拝命いたしました。そして、土地の暴騰をどうして防ぐかということが当時国会においての大変強い御論議でありました。本院におかれましても、土地税制あるいは土地基本法、さまざまな角度から地価の鎮静についての御論議があり、そしてその面では資金的な問題についてもいろいろの御論議があったところであります。  いわゆる総量規制通達と申しますものは、まさにその当時の地価の重要性という中から、その直前に行われました海部内閣としての地価の閣僚会議の席上、さらに踏み込んだ措置をという総理の指示を受け、前年に施行されました土地基本法あるいは金融機関の業務の公共性の趣旨というものを踏まえ、当時としては一歩踏み込んだ措置をとったことでありました。  そして、よく御指摘を受けることでありますが、農協系の金融機関に対し三業種向けの融資報告を求めなかったのは、当時既に農水省を経由いたしましてはかの通達で報告を求めていたという事情によるものでございます。農協系統が住専にその後貸し付けを伸ばしておられた、これは私も今承知をいたしておりますけれども住専と系統の取引というものは当時の経営環境のもとにおいてそれぞれの経営判断でなされたものだと私は思います。
  141. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 大変無責任な発言であります。今この通達、九〇年三月の通達でございますが、その通達が出されたことによって、事実農林系の金融機関の融資が兆単位で、兆円単位といいますか、例えば八九年二兆八千億だったものが、九〇年、通達が出された年ですが、この年の年度末には四兆九千億円、さらに一年たったときには五兆六千億円とふえておるわけです。  今農林系が住専七社に融資をしているのが実は今回の問題の中心の一つ、それが五兆五千億円なんです。この通達によってつくられたというのが多くの国民皆さんの理解だと思うんです。そういう意味で大変責任があるんじゃないか、私はそう思うんですけれども総理、もう一度その責任についてどうお考えなのか伺います。
  142. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) あえてそれをしも責任だと言われるなら、私はそれを全く回避しようというつもりはありません。  ただ、金融の世界において、総量規制をかけました後に、既に先行している報告でそれが代行できるという事務当局の判断がありましたものを、私はそのとおりに信用をいたしました。  そして、先般来、衆議院また本院の御審議の際に、農林系の金融機関においてはその状況下にもかかわらず住専というものをよき貸し手と判断し融資を実行したという御答弁がありましたことも議員は御記憶であろうと存じます。そうしたものをすべて踏まえた上で、結果責任はすべておまえだとおっしゃいますなら、あえてそれに反論はいたしません。
  143. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 反論がないのでしたら、私は、この政策の根本を誤った総理が今また住専問題で、大変社会の秩序も無視する、また国民の声も無視する、こういう問題を責任を持ってやるというお立場、大変失礼な言い方かもしれませんけれども、重大な問題ですので申し上げざるを得ないので言いますけれども、最高責任者として住専問題を扱うには、これだけの間違いを犯した総理、大蔵大臣当時ですね、これは不適当だと思うんですが、失礼かもしれませんが、総理のお考えをお伺いいたします。
  144. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) どのように申し上げればいいのかわかりませんが、先ほど私は、その当時の状況というものをお考えいただきたいということを申し上げて、事実関係の御説明を申し上げました。  もし、それだけの不安を住専というものに世間が感じておられたならば、当時、恐らく本院におかれましても、また衆議院におかれましてもそのような御論議があったのではないでしょうか。また、系統の融資にそれほど危険だと、議員が御指摘になるような状況であるということでありましたなら、まさに農林関係の方々から御注意があったのではないでしょうか。  私はそれなりに、そのときそのとき、平成元年の夏から平成三年の秋まで大蔵大臣の職にありましたが、予算、税あるいは金融の各面において自分なりに全力を尽くしたつもりであります。そしてその上で、議員の立論をされておりますような責任の問われ方を受けろというのが本院の意思でありますなら、甘んじて受けます。その上で、この事態を解決するために全力を尽くさせていただきます。
  145. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  146. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記を起こして。  ただいまの件につきましては、後刻速記録を精査の上、理事会におきまして協議することといたします。
  147. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 私がこの総量規制の一連のものにこだわるのは、大変これ重要、これもやっぱり先ほどの覚書と並んで重要な柱の一つなんですね。  住専問題の一つのガンというのは、農林糸金融機関の住専向け融資が九〇年以降に急増した、先ほど数字言いましたけれども、急増したこと、私はこれが一番大きな問題だと思っているんです。この原因をつくったのが、先ほどから言っている二つの通達であります、総量規制、三業種規制、こう言われておりますけれども。  詳細は省きますけれども、大蔵省所管の金融機関は、不動産融資すなわち住専への融資を厳しく制限される。一方で、農林系は融資先がなくて巨額の資金がだぶついている。そういう状態の中で、従来どおり融資ができることになっている。その結果、農林系の住専向けの融資が急増したと、こうなったわけです。それは言いかえれば、総量規制と称して全体の蛇口を閉めながら、見えない一部の蛇口をあけるといったことをやったわけです。私、これは私なりの言い方で小細工と言っているんです。小細工づきの総量規制と、こう言っているんです。これは言ってみれば、厳しい規制というのがむちであるとするならば、特別な一部分のみを外すというのは、うまみを残すという、いわゆるむちに対してあめの役割をしているんだろう、こう思うんです。  ここで何でこんなことを言うかというと、住専の関係者がこの小細工づきのといいますか、今申し上げた意味での一連の総量規制の施策を大変ありがたがっているということを聞いているんです。それは、一つは、住専自身は農林系統という強い味方を得て実質的に規制から外されたわけで、生き延びることができたと。当時の状況からすれば本当にありがたかったんだろうと、今はどうかわかりませんけれども、九〇年当時。  また農林系統、これも言うまでもありませんけれども、お金があり余ってのどから手が出るほど融資先を求めていたとき、大口で強力な融資先を与えられたということで、これも事実が物語っているように相当ありがたがったんだと思います。何しろ無審査、無担保、無保証、ほとんどの案件がそういう形で相当な額の融資をされたわけです。  問題はもう一つ、母体行なんですけれども、母体行は厳しい規制をかけられて大変だっただろうと、こういう面はあるんですけれども、反面、反対の実は御意見を言われる方もいらっしゃいました。すなわち、事態を一番よべ把握していた母体行は、バブルの進行とともに不良債権の怖さと実態をよく知っていた。何とかしたいと悩んでいた。そんなときに総量規制の名のもとに小細工をしてもらって手ごろなごみ箱を得た、これは新聞の表現ですけれども、手ごろなごみ箱、住専という。自分は融資が制限されている、だから母体行から見て、住専よ、あなたがかわって融資をしてあげてくださいと。表現の仕方もいろいろあると思いますけれども、これがいわゆる紹介融資の主要部分と考えられるわけです。  危ない債権をどんどんごみ箱に投げ込む。母体行にとってもこの総量規制は、むちだけでなくて、みずからの安全を高める、いわゆる身ぎれいになるために大変都合がよくて、したがってあめの部分もあったということであります。その意味では、母体行もその責任者。実行者に対して随分と感謝をしていただろうと思います。すなわち、この措置をありがたいと思っていたのは住専、系統のみならず、母体行も一面ではありがたいと思っていたということを申し上げたいわけなんです。  このことを前提にしましてちょっとお聞きしたいんですけれども総理総理の九〇年の政治献金が約四億円、九〇年に限ってふえているんですね。私は政治家個々人のそういったポケットに手を突っ込むようなことは好まないんですけれども、ただ大変大事な立場、特別な立場におられるのでお聞きします。これをグラフにしたんですけれども、八七年から当面九〇年前後でグラフにしました。(図表掲示)  これは自治省の届け出分だけを合計したものですけれども、橋本総理の政治献金の推移をトータルであらわしたものです。したがって、これはほかに、自治省ではなくて都道府県選管分の届け出もありますのですべてとは言いません。私の調査の能力というのはこれしかないものですから、官報から拾ってきました。それを合計したものですが、例えば八九年は四億七千万、九〇年が八億五千万、九一年が五億五千万、このグラフで九〇年だけが何でこんなにふえているんだろうか。四百万が八百万になるというのならわからないではない。四億が八億になって倍増している。しかも、その次の年はもとに近い形に戻っている。  政治家というのは、九〇年だけですけれども、億単位でこんなにも変動するものかということで私は大変興味を持ったと同時に、九〇年の時点で、先ほど申し上げたように大変ありがたいと、総量規制、これは私は断定はしません、総理に後でお答えしていただければいいんですけれども、九〇年のあの総量規制でありがたいと思った方々が大変金融関係で多くいらっしゃいました。そういう意味で私としてはどうも結びつけて考えたくなってしまうんですが、そうでないということを御説明いただきたいと思います。
  148. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 御連絡を事前にいただきましたので、私も調べ直してみました。  しかし、既に政治資金規正法の資料保存の期間を過ぎておる状況でありますので、御指摘の自治省報告分ということで過去の官報を調べてみました。八九年、約四億四千万円、九〇年、九億円余り、九一年、約四億五千万円ぐらいになっております。ただ、これも政治団体間の重複分の数字はこれではわかりませんので、概数であることはお許しをいただきたいと思います。  そして、私もその理由はよくわかりませんが、あなたが何を御想像になるのか私も見当はつきません。しかし、九〇年というのは選挙のあった年でありました。そして、お互いの政治資金というのは、選挙の年、選挙のない年で増減はあると私は思います。
  149. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 私はそういう観点で、例えば加藤紘一議員また山崎拓議員とか何人かの人たち、やはり選挙で御苦労されているだろうなと思う人たちを調べてみました。九〇年に特別、億円単位で、あるいは億円でなくてもこんなに大きな変動のあった政治家は見当たりませんでした。いかがでしょうか。
  150. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私はほかの方々の懐まではわかりません。ただ、自分の政治資金については、現在わかる限り調べをし、議員のお調べとほぼ間違っていないと思います。
  151. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 私が何でこだわるか、もう一度申し上げた方がいいと思いますので。  つまり、総理にぜひこれをお答えしていただきたいというのは、先ほど来から申し上げている住専問題、今回の問題の一番の根源をつくった張本人でいらっしゃるということが一つあります。言ってみれば原因者だと私は思っております。また二番目に、総理のお立場でこの住専に関連した問題では責任の明確化をしっかりやっていくということを、終始大変御立派な口調で何回も何十回も私はお聞きしているんです。そのことを実行されたらどうですかという意味が二点目にございます。三点目、私は、総理が政治家として、ある意味では総理大臣ですから代表選手ですので、国民の前に関係がないということがわかるように御説明、あるいは証明をしていただきたい。  これは私の要望でございますけれども、しなければいけないと決めつけているわけではありません。これだけのものがそろっているので、私にとっては大変なイメージができ上がってしまうんです。ですから、恐らく国民皆さんも同じ疑いが出てくるかもしれないので、そういうことに対してどうなのかということをお答えいただきたいと思います。
  152. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員が御論議になることは、院内においてはその発言は保障されておるわけであります。そして今、私は議員がお述べになりました中で何をおっしゃろうとされるのか、意味がもう一つよくわかりません。  九〇年に政治資金の届け出がふえている。それは、保存期間を過ぎておりますが、私も官報を調べさせ、議員の数字はほぼ恐らく間違いがないであろうと思うということも申し上げました。  また、私自身の過去の政治資金の中に、住専そのものの献金はございませんでしたが、住専から融資を受けており、そして不良債権となっており、それが返済不能の状態になっております会社、当初私が調べさせましたときは三つあると思っておりましたが、その後、衆議院の新進党からもう一つ御指摘をいただき、調べましたら確かに名前が違っておりましたためにおわびをして訂正いたしましたが、四つの企業から献金を受けておった事実がわかりました。そして、その中の二つの企業は現在も何ら問題のない正常な営業を続けておられる企業でありますが、二つは不良債務を負っておられるところでありましたので、そこからの政治献金は返納をいたしました。  私は、先ほどから議員の御質問を拝聴いたしておりまして、いろいろ自分なりに考えてみて、あと何を求めておられるのか判断に苦しんでおります。
  153. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 私は、政治家の責任ということに対してもう少し、私も政治家の一人ですので、しっかり政治家の責任というのを明確にしなければいけない、こう思うんです。  それでは、政治家としての責任を明確にするという意味では、例えば社民党さんが大変立派なことを言っておられるんです。これは手元にお配りをしておりますけれども、二月六日に社民党として「住専問題について 三つの基本的態度、四つの課題」、こう称して、二月九日付の社会新報に載せたものの冒頭の一部であります。  「三つ」、「四つ」とありますが、そのうちの一番先に書いてあることなんですが、傍線を引いて読みやすくしておりますけれども住専問題は、」「自民党単独政権下の政策の誤りによって発生し、深刻化したもので」「ある。」、断定しているんですね。「社民党は」「住専問題を公正かつ厳しく追及すべき立場と責任を持つ。」、政治家というのは言ったことはきちっと守ると。  それをしっかりしなきゃいけないという意味で、そういう意味では社民党を代表して入閣しておられる久保大蔵大臣初め全閣僚に、これだけ立派なことを言っていらっしゃって、これで結構ですけれども、例えば自民党単独政権下の政策の誤りについて、また深刻化させたことについて、どう責任を追及しておられるのか、あるいはとらせたのか、このことをお答えいただきたいと思います。
  154. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) ただいま御紹介いただきました社会民主党の二月六日付の資料は、住専問題についての基本的態度の一番目の内容でありまして、全文は二ページにわたる長文のものでございます。  このことは、バブルの発生から破綻に至る間は自由民主党の単独政権下であったことは何か間違いでしょうか。これは私は、自民党単独政権下においてその政権与党としての政策責任もあるが、国会として政策の判断、決定について、国会、政党が負うべき責任は与野党ともにその責任を負うべきものと考えております。  それで、そのことについて……(「そんなこと、書いてないじゃないか」と呼ぶ者あり)書いてあります、後の方に。線が引っ張ってないところ、残念ながら。「社民党はこの自覚に立って、責任問題も」、当然みずからの「責任問題もあいまいにすることなく、公正かつ国民多数の理解が得られる住専問題の解決を行う決意である。」というのが結びになっているのであります。  しかも、この全文の中では、政府が提案をいたしております今日の住専問題の処理策、方法が最善の選択であることを誠実に訴えてまいりたい、こういうこともこの中に明記してございます。全体を通じて御批判をいただければ幸いだと思っておりまして、部分的に取り上げますと、私は余りこんなことをもう言いたくありませんが、この文章の中では、前連立政権であります「細川・羽田連立政権の下でも解決が先送りされてきた」と、そのこともやはり政治の側の責任として明記してございます。  全体を通じて、今政党対政党という問題ではなく、バブルの発生から破綻に至り今日の深刻な住専問題に直面している、すべてのかかわった政党、政治家が与野党それぞれの立場からのみずからの責任を明確にすべきものと考えております。
  155. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 それでは、同じ質問を郵政大臣、労働大臣、総務庁長官環境庁長官国土庁長官、お答えいただきたいと思います。
  156. 日野市朗

    国務大臣(日野市朗君) ただいま久保大蔵大臣がお答えになった分にあえてつけ加えることはないわけでございますが、この問題についてはもう国会に出ていた政治家全員の責任だと思います。衆議院でもこういう議論がありました。これは一人、二人の責任ではない、全員の連帯責任だと、こういう発言がございました。私も全く同感であります。  そして、社民党として現在この住専問題を解決するために、この予算を通すために、そして関連法案の成立のために懸命に頑張っている、これが政治家の一人として責任を果たすゆえんであろう、こう考えております。
  157. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) お尋ねに対してお答えいたしますが、社民党から出ております閣僚が社民党の基本方針にそれぞれ違う見解を持っているわけがございませんで、大蔵大臣の御答弁されたことと全く同じであります。  ただ、私は、この二月六日の基本的見解、この中に触れられておりますように、当時、自民党の中におられた方で今政党を異にされている方も含めてのことであります。そして私は、その政治家としての責任というものは、今もお話がございましたけれども、与党野党問わずに存在すると思っています。  社民党からすれば、仮に「政策の誤り」という表現がされておりますような問題があったときに、当時、社民党は社会党として野党でございましたけれども、野党としてそのことがきちっとチェックできなかった責任もみずからこの中に問うているわけであります。  しかも、全体のこの基本方針の中には、今現在、政府がとっております住専対策というものが景気の回復を着実なものにするためにも最善の道であるということもきちっとうたっているわけでありまして、一日も早くこの問題が政府の提案いたしております方向で、方針で決着がつくことが一番大切だと私自身も考えているところであります。
  158. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) お答えします。  前三者の皆さんが申されましたように、この問題につきましては、私が今改めてさらにつけ加えるところはありません。  以上です。
  159. 鈴木和美

    国務大臣鈴木和美君) 私は、横尾先生と三月一日の災害特別委員会で、あなたから同じ質問を三十分いただきましてお答えしたとおりでございます。
  160. 岩垂寿喜男

    国務大臣岩垂寿喜男君) 副党首である久保大蔵大臣の答弁のとおりでございますが、だからこそ、ここに書いてございますように、今、「住専問題を公正かつ厳しく追及すべき立場と責任」を持って国会に臨んでいることを申し添えておきたいと思います。  ありがとうございました。
  161. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 漏れている方いらっしゃいませんか。  日ごろから雄弁で鳴らした皆さんがこの程度の答弁しかできないのかと思うと、私は今がっかりしました。この程度というのは、これだけ立派なことを言っていることに対して中身がないじゃないですか。言葉をもてあそぶのがいいというものじゃないんですよ。政治家というのは、日ごろの主張を大臣あるいは権力の使える立場に立ったときに、それを使えるように権力を求めるんじゃないですか。  皆さん、大臣になって、なったけれども、立派なことは言っているけれども、何もやっていない。これからやるというようなことだけ立派なことを言っている。そんなんじゃ……(発言する者多し)
  162. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  163. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記を起こして。
  164. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 私が何もやっていないと言ったのは、言葉流れの中で御理解いただきたいと思うんですが、いいですか、いいですか、今説明しますから。言葉流れというのは……(発言する者多し)静かにさせてください。質問できません。
  165. 井上裕

    委員長井上裕君) 御静粛に。——ちょっと御静粛に願います。与党席だめだ。御静粛に。
  166. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 私が何もやっていないと言ったのは、話の流れの中で、この住専問題についての社民党の御立派な宣言があると。これに対して、これでは「誤りによって発生し、深刻化したもの」であると断定しているわけですよ。断定してはっきり判断しているわけですから、責任をとらせればいいんですよ。しかし、そのことに対して何もやっていないじゃないか、この文について私は申し上げたわけです。  それでは、次に質問をしますけれども政府にこれまで届けられた反対署名の総数、アバウトでも結構ですけれども。それと、国民の九〇%がいまだに理解ができなくて反対をしている、これは明確なんですけれども、こういう多数の直接行動の署名の重みをどのように受けとめているのか、総理、官房長官、お伺いします。
  167. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) その折々、政府にはさまざまな国民の御意見が届けられております。それぞれに届けられました御意見は、所轄の省庁において国政の参考にさせていただいていると存じます。  どのぐらいの分量がこの問題について投書あるいはその他の形で届いているか、私は存じません。
  168. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 時間です。終わります。
  169. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で横尾和伸君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  170. 井上裕

    委員長井上裕君) この際、資料の提出要求に関する件についてお諮りいたします。  平成八年度総予算三案の審査のため、住宅金融専門会社問題について、株式会社桃源社代表取締役社長佐佐木吉之助君、麻布建物株式会社代表取締役渡辺喜太郎君、麻布自動車株式会社代表取締役渡辺喜太郎君に対し、過去十年間の各年度ごとの  一 貸借対照表  二 損益計算書  三 決算書  四 現・預金出納帳  五 商品(土地、建物)在庫表  六 役員名簿  七 株主名簿  八 住宅金融専門会社各社及び金融機関(主要   二十一行別)との間の借入・返済状況  また、麻布建物株式会社代表取締役渡辺喜太郎君に対し、過去十年間の各年度ごとの  一 関連会社名(出資及び人材派遣をしている   ム本社)、所在地及び役員名簿  二 関連財団名、所在地及び役員名簿、寄附行   為  三 一、二に係る財務諸表(ない場合は予算・   決算書)  以上の文書を本委員会に提出するよう議長を経由して要求いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、その手続等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  172. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  173. 井上裕

    委員長井上裕君) 質疑を続けます。  次に、野沢太三君の質疑を行います。野沢太三君。
  174. 野沢太三

    ○野沢太三君 このたび、日米首脳会談におきまして、沖縄基地の整理、統合、縮小について事前の協議を重ねられまして、十数項目の合意と二〇%に及ぶ基地面積の縮小が図られることになりました。  米軍基地の問題は日米安保にとって非常に重要な位置づけと考えられるわけでございますが、今回、特に普天間の全面返還が決まりましたことは、この基地の重要性にかんがみましてまだまだ困難であろうと思っていたところ、大きな喜びでございます。沖縄県民の期待にこたえられまして、事前にサンタモニカまで飛んでクリントン大統領に普天間の重要性を直接訴えられました橋本総理のリーダーシップに心から敬意を表するものでございます。  しかしながら、今後、基地の移転を進めるに当たりまして不可欠でありますのは、米軍基地の周辺の騒音問題が私は大変大事な問題であると思うわけでございます。それで、この問題に絞りまして二、三お伺いをいたしたいと思います。    〔委員長退席、理事大河原太一郎君着席〕  現在、米軍基地周辺の騒音対策の根拠法規あるいは対策実行の責任者はどなたでしょうか。
  175. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) お答えいたします。  現在、防衛施設周辺の安定的使用を図るということで、先生おっしゃるように、住宅防音それから学校防音等の騒音対策を私ども最重点にやっておるところでございます。  根拠法令といたしまして、私ども所管の防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律というのがございまして、この法律に基づいて私ども防衛施設庁としてその事務を行っておる、こういうところでございます。  責任者は一応防衛庁長官、それから実施の責任者は私、施設庁長官でございます。
  176. 野沢太三

    ○野沢太三君 私は、昨年十月二十一日に沖縄におきます八万五千人の県民大会に党を代表して参加させていただきました。その中で一番切実に、毎日悩んでいる問題が基地周辺の騒音問題である、こういうことも直接お伺いをしてきた次第でございます。  しかしながら、様子を伺いますと、どうも必ずしも十分対策が進んでいるというふうに見られないわけでございます。例えば、普天間あるいは嘉手納等の米軍基地につきましては、環境庁で出されております告示百五十四号、航空機騒音に係る環境基準という指針がございますが、これは適用されるんでしょうか。
  177. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 御指摘の環境庁告示、航空機騒音に係る環境基準というのがございまして、これは私ども自衛隊及び米軍が使用する飛行場につきましても、公共用飛行場に準じてその基準が達成され、また維持されるように努めるものという表現がございまして、適用があるというふうに理解しております。
  178. 野沢太三

    ○野沢太三君 自衛隊等が使用する飛行場ということで米軍基地も含まれる、こう解釈してよろしいわけですね。
  179. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) おっしゃるとおりでございます。
  180. 野沢太三

    ○野沢太三君 そこで、騒音対策というのは二つ対策がありまして、音源を抑えるというのが一つ。それから、音源が難しい場合には周辺対応するというのが二つ目でございます。  まず第一に、音源をコントロールする、これが非常に重要でございます。その意味で、運航時間の規制や飛行経路の規制というものが実施されているかどうか。既に厚木、横田等では大分前に実行に移されておりますが、これについてお答えください。
  181. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 委員今御指摘の音源対策の方でございますが、これは日米間の話でございます。  これまで日米間の取り決めは存在しなかったわけでございますが、SACOでの議論を行い、それから日米合同委員会議論を行いまして、嘉手納及び普天間両飛行場に係る騒音規制措置につきましては、去る三月二十八日日米合同委員会におきまして、厚木及び横田飛行場に係る騒音規制措置等に関する合意とも比肩し得る内容の合同委合意を取りまとめたところでございます。  概要を若干申し上げますと、二十二時から六時までの間の飛行及び地上での活動は、米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される。それから、日曜日の訓練飛行は差し控え、任務の所要を満たすために必要と考えられるものに制限され、慰霊の日のような特別の日については訓練飛行を最小限にするように配慮する。ジェットエンジンのテストは、有効な消音器が使用されない限り、または運用上の能力もしくは即応態勢が損なわれる場合を除き十八時から八時の間は実施しない。離着陸のための飛行経路については、できる限り学校、病院を含む人口稠密地域上空を避けるように設定する。飛行場近傍におきましては、原則として海抜千フィートの最低高度を維持すること等でございます。  それから、四月十五日に発表いたしました特別行動委員会中間報告においても合意がございまして、嘉手納飛行場につきましては、海軍駐機場の移設及び遮音壁の設置について合意がなされ、さらに普天間飛行場につきましては、KC130の岩国飛行場への移駐、夜間飛行訓練の運用の制限について合意されたところでございます。
  182. 野沢太三

    ○野沢太三君 返還以来二十年余りを経過してようやく本土並みということでございます。やはりこの点、私どもは大いに反省をし、そしてその反省の分をこれからの措置の回復に大いに力を尽くさないかぬ、かように思うわけでございます。  そこで、基地の騒音というのは、機種その他が制限されまして、音源対策については限界があるということで、周辺に対する障害防止の対応が極めて有効でかつ重要と考えます。既に公共飛行場におきましては、特定飛行場を中心に対応が実施されておりまして、大変効果を上げております。皆さんも御案内と思いますが、伊丹空港などでは、音源対策それから数千億を超える防音対策等が施行されまして、既に騒音に関する苦情は激減をいたしまして、出ていってほしいという移転の要求が、残ってくれという存続の方向に地元の要望が変わってきておるわけでございます。  これは私自身の経験でございますが、新幹線の騒音に関する訴訟が起こりまして、四苦八苦をして対策を講じたわけでございます。音源、周辺ともに誠心誠意の努力を重ねまして、ついに和解にこぎつけまして、名古屋地区等についても今正常の運行が図られている状況にございます。  そこで、沖縄の基地周辺に対する住宅防音あるいは公共施設に対する防音工事はどのくらい進捗しているか。昨日、依田議員から御質問がありまして、住宅については追加工事分が五三%、沖縄について六四%という数字はいただきましたが、公共施設、学校、病院等についていかがでしょうか。
  183. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) お答えいたします。  学校防音等につきましては、私どもは先ほど御説明いたしました生活環境の整備等に関する法律第三条の規定に基づきまして、いわゆる騒音の障害の防止、軽減のための措置を講じておるところでございます。現在、ちなみに嘉手納飛行場及び普天間飛行場関連で学校に対する防音工事の実施状況を御説明いたしますと、嘉手納町におきましては、小中学校三校ございますが、これにつきましては一〇〇%既に防音工事が終わっているところでございます。普天間町を抱えております宜野湾市につきましては、公立及び私立の学校が全部で十三校ございますが、平成八年度予算の実施見込みまで加えますと、そのうち十一校が既に防音工事が実施済みもしくは実施見込みという状況になっております。  この学校防音等につきましては、補助額が十分の九・五ということで本土よりも手厚くやっておるところでございます。地元の市町村におきますいわゆる予算措置であるとか、あるいは建てかえ時期に合わせてこういう補助をやる関係上残っておりますが、残りましたこの二校につきましては、私どもは最優先で地元からの御要望があれば実施したいと、このように考えているところでございます。
  184. 野沢太三

    ○野沢太三君 そこでお伺いしますが、平成八年度、今年度予算ですね、これにおきまする基地の周辺対策費と対前年の伸び率についてお伺いします。
  185. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) お答えいたします。  基地対策関連の経費で平成八年度予算案につきまして御説明いたしますと、契約ベースでは対前年度比一・三%減の千五百七十四億円、歳出ベースでは千五百三十九億円となっております。しかしながら、私どもとしては、限られた財源の中で重点的かつ効率的な配分を図りながら、防衛施設の安定的使用に支障が生じないように種々工夫を凝らしながら予算の執行に努めておる、こういう状況でございます。
  186. 野沢太三

    ○野沢太三君 昨年来の沖縄の基地問題というのは、日米安保条約体制並びに我が国安全保障の根幹を揺るがすような事態と私は認識しておるわけでございます。こういうときには、ふだんの何倍、何十倍ものお金を投じても必要なことはやるんだと、この取り組みが必要ではないかと思います。  現場でもいろいろ担当者の御苦労を伺ったんですが、やはり予算の顔を見て仕事をする、ことしは幾らついたから、じゃこのくらいという姿勢にどうしてもなる。これは私自身もそういう経験がございますが、その意味で何としてもこれは防衛庁が、そして政府全体でこの種の問題についてしっかり取り組むという対応をしていただきたいと思うわけでございます。総理に御見解をお伺いしたいと思います。
  187. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 現在御審議をいただいております平成八年度予算の内容につきましては、防衛施設庁長官から今御答弁を申し上げたような内容であることは事実であります。  しかし、今回SACOにおきまして中間報告をまとめ、十一月に向けてこれを具体的なものに仕上げていくプロセスにおきまして、当然のことながら私はこうした分野に非常に大きな資金を必要とする状況が来るであろうと思います。そして十六日に、私どもといたしましてはそうしたある意味での覚悟を決めました上で、法制面及び経費面を含めまして総合的な観点から早急に検討を行う必要性、そして十分かつ適切な措置を講ずることの必要性を踏まえて、政府としてその姿勢を明らかにするためにその旨の閣議決定を行いました。  今後、政府といたしましては、所要の移設等を含めまして、中間報告の措置を実施するというその責任を持ちながら、本土を含みました地元関係者の御同意が、また御理解と協力が最大限得られますように十分な配慮を持って対応してまいりたいと思います。
  188. 野沢太三

    ○野沢太三君 大いに期待をいたしておるわけでございます。  それでは、続きまして国連海洋法条約関連の質問に移らせていただきます。  我が国は四面海に囲まれておりまして、これから二百海里水域を適用いたしますと、その面積が三百七十六万平方キロということで世界で七番目の海洋国家というふうに位置づけられるわけでございます。今度の条約は海の憲法とも言われまして、海に関します国際ルールを定める極めて重要な条約であり法案でございます。  しかしながら、この条約が一九八二年に既に国連で採択され、日本も八三年二月に署名をしておりますが、今日まで批准が長引いた理由につきまして外務大臣のお考えをお伺いします。
  189. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 委員御指摘のとおり、国連海洋法条約は一九八二年に採択され、我が国も八三年に署名いたしました。しかしながら、その後、海洋法条約の一部、つまり第十一部というのがございますが、これは深海底開発制度を規定している部分でございますが、その部分につきまして、我が国も含めました先進国の中でその規定の内容に疑問が出てまいりまして、それをより現実に合致したものにすべきではないかという声が出てまいりました。そういったことで、八三年に署名をいたしましたものの、我が国としてその後の手続を控えておったところでございます。しかしながら、その第十一部に関する改善のための交渉が一九九〇年に行われまして、九四年、一昨年でございますが、その第十一部の実施に関する協定というものが採択されました。  そういうことを受けまして、先進国を含む国際社会の大勢がこの条約を締結するための道が開かれたという認識を持ちまして、政府といたしましても同条約及び実施協定を早期に締結すべく今国会で御審議をお願い申し上げておるところでございます。  なお、九四年にできて昨年なぜ出さなかったかという御疑問もおありかと存じますが、実は委員御承知のとおり大変大部な条約でございます。条文だけでも五百条に及ぶというもの、それから当然のこととして国内の関係の法律案も非常に多うございます。そういったことで、いろいろ法案化作業等で昨年の通常国会には提出に至らず今回御審議をお願いしている、こういうことでございます。    〔理事大河原太一郎君退席、委員長着席〕
  190. 野沢太三

    ○野沢太三君 条約を批准いたしますと、定めによりまして排他的経済水域の設定を行うということになっております。これは条約発効と同時に行うわけですが、これまで既に漁業関係の必要から、東経百三十五度以西の水域について、一九七七年当時この海域設定をしたときにこの部分だけ欠落をしておる。しかし、今回は全面設定、全面適用ということでやっていただく必要があろうかと思いますが、現在どのように取り組んでおられるでしょうか。
  191. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 委員御指摘のとおり、百三十五度以西の地域につきましては水域を設定せずにまいりました。これは一九七七年当時の我が国の漁業の実態、あるいは中国、韓国との関係等々をも勘案いたしましてそのような措置をとったところでございます。  今回につきましては、排他的経済水域の設定及びその範囲につきましては、条約とともに提出しております排他的経済水域及び大陸棚法案に規定されておりますが、そこでは一部水域の除外は行っていないところでございます。
  192. 野沢太三

    ○野沢太三君 その中で厄介な問題があるわけですが、竹島周辺と尖閣諸島周辺につきましてはどこを基線に設定するのか。我が国としては独自の立場を歴史的な事実に基づきまして明確に主張すべきと考えますが、いかがでしょうか。
  193. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 韓国との関係につきましては、三月の初めにバンコクで日韓首脳会談が持たれました。その席におきまして橋本総理から、竹島問題についての我が国の立場は一貫していると明確に述べた上で、金泳三大統領との間で、海洋法条約の締結に伴い生じ得る排他的経済水域の境界画定にかかわる問題などについては領有権にかかわる問題とは切り離しつつ協議していくということで合意したところでございます。そして、この合意に従いまして、排他的経済水域の境界画定につきましてこれから韓国側と協議をしながら適切な解決を探ってまいりたい、このように考えておるところでございます。  また、中国につきましては、現在中国側で海洋法条約を早期に締結する国内手続を進めておると承知しておりまして、具体的にどのような対応を甲国側でするのか、つまびらかには承知しておりません。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては尖閣列島に関する我が国の立場というものを踏まえて対処していく、こういうことになろうかと存じます。
  194. 野沢太三

    ○野沢太三君 確かに、切り離してという合意をいただきましたことは大変大きな成果であるとわかるわけでございますが、漁業交渉をするにいたしましても、線引きをどうするか、その範囲がどこへどうなるのかということが明確にならないと交渉にならないわけでありまして、その意味で領土問題というのは避けて通れない課題であろうかと思うわけでございます。その場合、韓国、中国の考え方と対立する場合の対処方法はどういう道筋があるのか、外交上の問題その他司法裁への提訴等を含めてお答えいただきたいと思います。
  195. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 先ほど申しましたように、現在提案申し上げております法案では一部水域の除外は行っていないということでございますし、韓国そして中国との交渉に当たっての対処の基本の考え方につきましては先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。  それで、この交渉というのは実は今から始まるところでございまして、中国との間では一たん交渉を開始するための予備的な会談をやりましたが、まだそういう段階でございます。韓国との間におきましても、会談を早期に開きたいということで今呼びかけております。実は、合同で実務的な調査を韓国との間に行っておりましたが、その結果が今月中にも出てまいりますので、それが出次第、早急に交渉に入りたいと思っております。  そういった段階でございますので、交渉に入って、どういう事態になったらどういうことが想定されるかというのは、ひとつどうか、今の段階では私の口から御答弁申し上げるのは差し控えさせていただくことをお許しいただきたい。それが国益にも資するところだと存ずる次第でございます。
  196. 野沢太三

    ○野沢太三君 外交交渉ですからそのような配慮は十分必要かと思いますが、いずれにしても今国会でこれは議了せねばならない、さように心得ておりまして、また別途外務委員会等においての議論にこれは譲りたいと思います。  しかしながら、もう一つの大きな課題がありまして、この広い海域を巡回して回る、あるいは問題があったら取り締まる、そういった場合の体制が十分であるかどうか。大陸棚等の調査等も喫緊の課題であると考えますが、現在、海上保安庁におきます巡視船の数とか性能、要員その他は十分であるかどうか、また海上自衛隊との連携はどうなっているのか、その辺についてお答えいただきたいと思います。
  197. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) お答えいたします。  海上保安庁は、昭和五十二年の領海十二海里及び二百海里漁業水域の設定以来、巡視艦艇あるいは航空機による広域哨戒体制の整備を進めてきたところであります。海洋法条約の批准により、接続水域十二海里の設定、排他的経済水域の全面設定に加え、特に近年、集団密航事犯あるいは薬物及びけん銃の密輸入問題の深刻化等によりまして、海上警備がますます重要になっておるところでもございます。そのような対策にかんがみ、近代的装備等を有する高性能な巡視艇及び航空機の整備を計画的に推進いたしまして業務執行体制を充実してまいりたいと、このように考えております。  なお、いわゆる軍艦あるいは潜水艦、こういう場合の対応と、海上保安庁が領海内で無害でない通航を行う外国軍艦を発見した場合等につきましては、慎重な対応が求められるところであります。関係省庁と協議の上、これに基づき外交ルートを通じ是正を求めることが基本と考えております。なお、当庁の現場においても、まず事実確認を行い、必要に応じ行為の中止を求める等、適切な措置をとることといたしておるところであります。  また、潜水艦が潜没航行を行っている場合の対応についてもこれと同様でありますが、現在の海上保安庁の装備ではその実態把握や情報伝達が必ずしも十分でないものがあります。防衛庁と連携して対応することが必要であると、このように認識しております。いずれも防衛庁、外務省等関係省庁との連絡を密にして協力することにより適切な措置をとってまいりたいと、このように考えております。
  198. 野沢太三

    ○野沢太三君 中国とは既に漁業交渉を進めておられるということでありますし、韓国とも間もなくそのような段取りに入るということでございますけれども、今度の条約を見ますると、魚種別の総漁獲量を決めるとか、いろいろ事前の準備が必要だと、基礎的な調査が不可欠と考えますが、これに対する取り組みはどうなっているでしょうか。農水大臣、よろしいですか。
  199. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 委員御存じのとおり、TAC制度というのがございまして、二百海里が決まりますと、二百海里水域内の資源管理、いわば総量規制の義務づけが行われるわけでございます。  現在、韓国との間では、外務大臣からちょっとお話がございましたが、資源調査をお互いにやろうということでやっておりますが、韓国の資源調査と日本の資源調査の間に開差が大分ございまして、それもすり合わせを早急にやろうということで、近いうちにその議論もしていきたいと思います。  資源管理ということがお互いに大変厳しい問題になってくることは事実でございまして、我々としても、漁業の長期安定のためにこのTAC制度を生かしていきたいと、このように考えております。
  200. 野沢太三

    ○野沢太三君 もう一方、尖閣諸島の周辺で中国が資源探査を熱心に進めているというニュースがございます。  この地域については、石油その他、大陸棚の下に相当量の埋蔵が予想されるということになっておりますが、我が国としての科学調査、資源探査はどうなっておりましょうか、通産大臣にお伺いしたいと思います。
  201. 塚原俊平

    国務大臣(塚原俊平君) 今御指摘のございました地区は、国連アジア極東経済委員会でも指摘をされておりますが、石油等の資源賦存の可能性が高い地域で、我が国の関係者も必要な情報収集等を過去において行ってまいった経緯はございます。しかし、同水域については大陸棚の境界画定を含む問題があり、さらなる活動については日中両国関係等を総合的に判断しつつ行うべきものと考えております。  いずれにいたしましても、今後の東シナ海の大陸棚における資源探査等については、今後の日中双方の国連海洋法条約の批准等、新たな環境整備、日中の両国関係等を総合的に判断しつつ、外務省等関係省庁と連携をして適切に対処してまいりたいというふうに考えております。  委員のこの地域におきますお考えは十分承知をしておるつもりでございますけれども、一応今のところいろいろな状況がございますので、この答弁でお許しをいただきたいと思います。
  202. 野沢太三

    ○野沢太三君 いずれにいたしましても、この国連海洋法条約は大変広がりの大きな条約でございます。今国会に提出されております関係国内法だけでも八本に上るということでございまして、しかも内政、外交ともに各般にわたる努力を前提としてこれから進めていかなければならないわけでございます。ここでひとつ総理の指導力発揮を大いに期待するものでございますが、御所見をちょうだいいたしたいと思います。新しい海洋秩序構築に当たりましてということでお願いをいたします。
  203. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今各閣僚からの御答弁にもございましたように、この国連海洋法条約に関連いたします一連の問題点、それはまさに国際社会における安定した海洋の法的秩序の確立というものに資するだけではなく、海洋一般に依存することの大きい海洋国家としての日本にとりましては、非常に長い目で見ましても、また総合的に考えましても、国益を非常に大きく進めていくものだと私どもは受けとめております。それだけに、私どもはこの条約をできるだけ早期に締結し、同時に近隣諸国との関係におきましても新たな海洋の法的秩序の構築を目指してまいりたいと考えております。  今それぞれの主管閣僚から、韓国との間、そして中国との間については御答弁がございました。私から一点補足をいたしますと、実はちょうど先日の日ロ首脳会談の中におきましても、領土問題という問題との関連において、具体的な議論はいたしませんでしたが、双方がこの問題を頭に置いて今後を見据えた問題の提起をいたしました。それは今の北方四島水域をめぐります漁業枠組み交渉についてでございます。これは数次にわたって真剣な会談が行われながら、暗礁に乗り上げた形になっておりました。今回、ロシア側もこの話し合いを、協議を継続することについて同意をしてくれました。この漁業枠組み交渉も実は極めて難しい交渉でございます。そして、陰に陽に領土交渉と連動する部分も持っております。しかし、これについて双方が難しい問題点を抱えながら妥結に向けて協力をしようという認識が一致し、今後の協議が継続できるようになりました。  我が国の抱える、先ほど来外務大臣等お答えを申し上げておりましたものに加えて、問題の一部海域でありまして、こうしたそれぞれの問題を抱えながら近隣諸国との間で今後新たな海洋秩序、法的な秩序の構築を目指すために全力を尽くす覚悟でありまして、本院におかれましてもぜひともさまざまな角度から御支援を賜りたいとこの場をかりてお願いを申し上げます。
  204. 野沢太三

    ○野沢太三君 ぜひともひとつ内閣挙げて取り組んでいただきたいと思います。この問題についてはまだ入り口の段階かと考えますので、また機会ある都度御議論をさせていただきたいと思います。  それでは、続きまして国鉄清算事業団債務の問題について少し質問をさせていただきます。  国鉄改革から十年目を迎えておりまして、誕生しましたJR各社は順調に業績を上げております。特に本州三社につきましては、株式公開も可能になりまして、改革時の計画を上回る実績も上げておるわけでございます。しかしながら、清算事業団に残されました債務は、数々の努力にもかかわりませず、減少せずにむしろ増加の傾向が見られます。  そこで、国鉄改革当時の事業団債務と現在抱えている債務残高は幾らになりますか。減少できなかった主な理由は何でしょうか。
  205. 梅崎壽

    政府委員(梅崎壽君) 国鉄改革当時、すなわち昭和六十二年度首におきます国鉄清算事業団の債務等は約二十五兆五千億円でありました。これに対しまして平成八年度首におきます債務等の残高は約二十七兆六千億円になっているものと見込んでおります。  この債務等が増加した主な理由でございますけれども、清算事業団が所有いたしております土地やJR株式の資産売却が不動産や株式市場の低迷により思うように進んでいないことによるものでございます。
  206. 野沢太三

    ○野沢太三君 そこで、これまで売却した土地の面積あるいは売却した株式の数、その金額等について言っていただきたいと思います。特に土地につきましては、当初予定しました公開競争入札、それから非常に数が多くなってまいりましたが随意契約、そして事業団がいろいろ工夫してくれました地価を顕在化させない多様な処分方式という、大筋で三通りの処分実績があろうかと思いますが、これは金額ベースでどのくらいになっておりますか、まとめてお願いします。
  207. 梅崎壽

    政府委員(梅崎壽君) 国鉄清算事業団が所有しております土地につきましては、昭和六十二年度から平成七年度までの間に総面積約九千三百ヘクタールのうち六二%に当たります約五千八百ヘクタールの売却を行いまして、約四兆六千億円の収入を上げたところでございます。内訳といたしましては、公開競争入札により約七百ヘクタール、約三千四百億円、随意契約により約五千ヘクタール、約三兆四千億円、その他の多様な処分方法により約二百ヘクタール、約八千二百億円となっております。  また、JRの株式につきましてでございますが、平成五年度にJR東日本の株式につきまして四百万株中二百五十万株の売却を行いまして、約一兆一千億円の収入を上げております。
  208. 野沢太三

    ○野沢太三君 当初予定した公開競争が差しとめられまして、結局そのために思った時期に思ったように売れなかったと。しかし、もし仮にあのときにそのような売り方をしたら、今の住専のような形で人様に迷惑をかけるということもあったかと思います。  その意味で、これから対応をどうするか大きく考えを固めなければいけないわけです。ただいま新橋の汐留等で大規模用地の売却準備が進んでいるようですが、これはどのような方式で処分をする予定でしょうか。
  209. 梅崎壽

    政府委員(梅崎壽君) ただいま御指摘の大規模用地の処分の問題でございますが、汐留地区につきましては、平成八年三月に事業団が仮換地を受けました街区につきまして、当該地区の町づくり、あるいは都市計画等を考慮いたしまして売却のための基本条件を設定し、その条件のもとで開発希望者を募集した上で入札により購入者を決定する、このようなことで進めていきたいと考えております。  それ以外の大規模な土地につきましても、それぞれの土地の特性に応じました適切な処分方法によりまして処分を進めてまいりたいと考えております。
  210. 野沢太三

    ○野沢太三君 いずれも、面積といい、また位置といい、かけがえのない財産でございますので、ひとつこれは公明正大にしっかりと処分をして債務の減少に努めていただきたいと思うわけでございます。  そこで、土地処分を進めてもなお債務が残るということでございますが、六十三年一月二十六日の閣議決定では、最後に残った債務等については最終的には国において処理すると決まっておりますが、具体的にはどのようにこれを進められましょうか、大蔵大臣、よろしくお願いします。
  211. 小村武

    政府委員(小村武君) 御指摘のように、昭和六十三年一月の閣議決定におきまして「土地処分収入等の自主財源を充ててもなお残る事業団の債務等については最終的には国において処理するもの」というふうにされております。  本件につきましては、清算事業団の未処分の土地、株式がまだ相当残っております。まず、これらの資産のできるだけ早期かつ効果的な処分をしていただきまして、長期債務をできるだけ減少させていただくということが先決であろうかと思います。  現時点におきましては、具体的な債務処理方策の案をまだ提示できる状況ではございませんが、処理を行わなければならない額が相当程度に及ぶということ、それから国全体の歳入歳出の状況も踏まえまして、最終的には国民の負担ということになっておりますが、どのような形でそれを負担していくかについては今後幅広い検討をしていかなきゃならない問題であろうと考えております。
  212. 野沢太三

    ○野沢太三君 そこで、債務の内容を拝見いたしますと、大部分が資金運用部資金等の財投資金からの借り入れでございまして、しかも五ないし八%の高利のものが十兆円近くに達するわけでございますが、これを現今の金利体系に応じた低利の債権に借りかえができないかどうか、これについての御意見はいかがでしょうか。
  213. 田波耕治

    政府委員(田波耕治君) 国鉄清算事業団の運用部からの借り入れの問題でございます。  委員御指摘のように、先ほど運輸省からお答えがございましたけれども、八年度首二十七兆六千億程度の長期債務がございますが、そのうち運用部に対する債務は約十一兆四千億程度でございます。そのうち金利五%以上のものというのは大体六兆八千億ぐらいのものでございます。  そこで、今御指摘の低利借りかえでございますけれども、これは委員御存じのように、資金運用部は、郵便貯金であるとかあるいは年金等のお金を長期の固定金利で預託を受けまして、それぞれの財投機関に対しましてこれと同じ金利で長期固定の貸し付けを行うと、こういう仕組みになっておるわけでございます。したがいまして、この仕組み上、資金運用部資金の条件を変更するということにつきましては、大蔵省預金部等の債権の条件変更等に関する法律というのがございまして、災害など極めて特殊な事由による場合以外は認められていないわけでございます。  御指摘の低利借りかえというのは、私ども考えますに、例えば繰り上げ償還をする、片方で新規の貸し付けを行うというようなことではないかなというふうに拝察をいたしますけれども、そういうことをいたしますと、この法律のいわば脱法行為というようなことになるわけでございます。今申し上げました資金運用部の仕組み上、これに応ずることはできないということを御理解いただきたいというふうに思います。
  214. 野沢太三

    ○野沢太三君 いずれにいたしましても、二十兆に及ぶ国の借金がふえるということでございますから、そういったルールの見直し等も含めて知恵を絞らなければならないだろうと、かように思うわけでございます。ぜひともこの辺については早目に見通しをつけて善処せねばならぬと、私どももまた汗をかく必要があるだろうと考えておるわけでございます。  一部の報道等に住専と並べてのお話がよく出てまいりますけれども、この事業団債務というのは、明確にその性質、性格、責任が決まっておるというものでありますから、その辺はきれいな処理ができるのではないかと思いますので、それも含めて事前の対応を抜かりなきようお願いいたしたいと思うわけでございます。  そこで、清算事業団が、債務の処理あるいは資産運用の関係等の業務が終了した時点で事業団を解散しまして、職員の雇用あるいは就職のお世話等を行いまして整理をすると、こういう方針が既に閣議決定で決まっておるわけでございます。国鉄改革の当初、官民の皆様の御協力をいただきまして、一人たりとも路頭に迷わせないということで雇用が保障されていたわけでございますが、今回もその点については同様と期待してよろしゅうございましょうか一運輸大臣、ひとつお願いします。
  215. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 委員今御指摘のとおり、閣議決定がなされておるわけでありまして、国鉄改革の総仕上げとも言うべき長期債務の処理に取り組んでおります事業団職員の雇用の確保につきましては極めて重要な課題であると、このように認識をいたしております。  運輸省といたしましても、事業団と密接な連携をとりまして、関係各方面の御協力をいただきまして適切に対処してまいりたい、このように考えております。
  216. 野沢太三

    ○野沢太三君 総理、一言お願いいたしたいと思います。
  217. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 当時、中曽根総理が、一人たりとも路頭に迷わせることはない、そうした決意で取り組むと言われた御答弁を私も記憶をいたしております。そして今日までも、清算事業団における待機の職員の方々に再就職のお世話は随分一生懸命やってきたと思います。  これから主たる業務が終了する時点で、まさに職員の方々の雇用という問題が発生をいたします。その安定確保を図らなければ整理という目標に到達しない仕組みになっているわけでありまして、当然のことながら国としてできるだけの努力をしてまいりたい、そう考えております。
  218. 野沢太三

    ○野沢太三君 改革のときの運輸大臣でいらした総理でございます。その事情を最も詳しく知っておるということもございましてみんなが非常に頼りにしておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。  それでは続きまして、国民各位の大きな期待がございます整備新幹線についての質問を申し上げたいと思います。  整備新幹線は、国鉄改革以後、政府・与党の申し合わせに基づきまして建設を進めてまいりました。現在、東北、北陸、九州の三線五区間を工事中でありますが、このうち高崎−長野間については九八年の冬季オリンピックに間に合うように工事が完成に近づいております。しかしながら、現行の建設方式でまいりますと、JR、国、地方の三者の負担により進めておりますけれども、これ以上の区間については、輸送量等の減少もこれあり、さらに建設を進めるには、JR負担については受益の範囲にとどめて名実ともに国家プロジェクトとして進める必要があると考えますが、いかがでございましょうか。運輸大臣と大蔵大臣、お願いします。
  219. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 整備新幹線の整備につきましては、国土の均衡ある発展と地域の活性化を図る上で重要なプロジェクトである、このように認識をいたしております。  未着工区間については、平成六年十二月の連立与党申し合わせ及び関係大臣の申し合わせにおきまして、本年中にその整備のための新しい基本スキームの成案を得る、このようにされておるところでもございます。運輸省といたしましても鋭意検討を進めてまいる所存であります。財源、負担割合についてはその中で検討していきたい、このように考えております。特別の財源、こういうものでなければ進まない、こういうことでなしに、基本的に私は国からの公共事業関係費の大幅な充当、このことも必要ではなかろうか、このように考えております。
  220. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 新幹線の整備が始まりました当時から、今御質問がございましたように国家プロジェクト的な色彩を濃くして始まったものと思っております。そして、この整備新幹線は日本列島を縦断する基幹的な高速陸上交通網として整備されることによってその価値が高まるわけでありますから、今後も財源その他との整合性を図りながら可能な限りの努力をいたしたいと思っております。  今国の負担割りが三五%でございますが、この負担割りにつきましても、新幹線に関するプロジェクト等でもいろいろと御検討いただいていると思いますし、本年にはまた未着工区間等も含めての新たなスキームについての御検討も進むと考えておりますので、その中で検討させていただきたいと思っております。
  221. 野沢太三

    ○野沢太三君 そこで、今回のスキームの見直し、私も検討委員の一人でございますが、問題は在来線を走るJR貨物の存続問題がございます。  貨物輸送は、御案内のとおり、国鉄改革のときに一社全国体制ということで旅客会社の線路を借りて運営する二種事業者として位置づけられております。省エネルギー、環境対策、交通安全等の面からしましても貨物輸送は今後とも維持し活用すべきものと考えておるわけでございますが、この貨物輸送を存続させるには、貨物ルートの確保と線路使用料について、現在やっております回避可能経費の枠内で維持をするということが不可欠と考えますが、運輸大臣の所見をお伺いします。
  222. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 整備新幹線の建設に伴って並行在来線をJRの経営から分離する場合、経営分離後の鉄道貨物輸送の取り扱いについては、我が国の物流体系におけるその役割にかんがみ、線路等の使用条件を含め、適切な輸送経路が確保されるよう、関係者間で十分協議をし適切に対処することが必要である、このように認識をいたしております。本年の新しい基本スキームの検討の中でも、鉄道貨物輸送の取り扱いについては検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  223. 野沢太三

    ○野沢太三君 時間が少なくなりましたので少し省略をしますが、地方分権の推進と地域格差の是正のために整備新幹線の役割は極めて効果的と考えられるわけでございますが、北海道から鹿児島に至ります全国各地から熱心な建設促進の御要望がございます。自治省としてこれにどう取り組まれるか、御回答をお願いします。
  224. 倉田寛之

    国務大臣(倉田寛之君) 野沢委員御指摘のように、整備新幹線につきましては、平成六年十二月十九日でございましたが、関係大臣の申し合わせによりまして、三線五区間以外の区間の整備のための新しい基本スキームを引き続き検討いたしまして、平成八年中にその成案を得ることとされているところでございます。  自治省といたしましては、整備新幹線は国土の基幹交通体系を形成いたしますナショナルプロジェクトであるということにかんがみまして、厳しい地方財政の状況も踏まえながら、同申し合わせに従いまして適切に対処をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  225. 野沢太三

    ○野沢太三君 どうか地方の御要望に厚い配慮を  いただきますよう、これはお願いをしておきます。  そこで、新幹線でございますが、高速、安全、確実という点で世界的に今これが大変歓迎をされている。お隣の韓国や中国までこれを建設しようという時代になっておるわけでございまして、これをできるだけ多くの国民の皆様が利用できるような工夫が必要と思います。  既にEC諸国では、路線の維持管理を営業と切り離しまして、インフラについては国が責任を持ち、営業は民間に任せるいわゆる上下分離の民営化が大いに進んでおります。今後の鉄道のあり方としてこれは大いに参考になると考えられます。これらを含めて総理の御見解をお伺いいたしたいと思いますが、よろしくお願いします。
  226. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今国鉄改革当時のこの問題についての議論を振り返っておりましたが、鉄道輸送というものの将来性が非常に疑われました当時におきまして、私どもは必ず鉄道というものはその必要性が認められる、そう信じてお互いに努力をいたしました。そして、そのポイントというものは、一つは大都市部における通勤通学輸送。そして、将来、一定の距離までは自動車との競争は自動車の勝利に終わるということは目に見えているが、一定距離を超えた段階から航空機との競争圏に至るまでの中距離都市間の輸送については鉄道輸送というものが非常に大きなメリットを持つ、これが当時の結論でありました。  同時に、委員がお触れになりました貨物輸送というものについて、当時一番悲観されていた分野でありますけれども、むしろ定時性と安価な大量輸送というものについてその特性を生かすことができるはずだというのがお互いの論議のポイントであったように思います。  そうした論議を振り返りますとき、委員が今御指摘になりましたような、地方の拠点都市を結んでといいますか、従来から組み立てられておりました新幹線構想というものにはそれだけの意味のあるものであろうと存じます、  先刻来、各関係閣僚から御答弁を申し上げておりましたように、与党のチームにおきましても、また関係閣僚の間におきましても、スキームについての論議が進められているところであり、議員が今御指摘になりましたような視点を含めた検討が、また結論が導き出されるものと考えております。
  227. 野沢太三

    ○野沢太三君 それでは、最後に公的年金の統合問題について御質問を申し上げます。  今国会に提案されております厚生年金法の一部改正の法律によりまして、懸案の公的年金の統合が前進しまして、一元化に向けて大きく一歩近づくことが期待できるわけであります。特に、行き詰まっておりました旧国鉄の共済年金が、厚生年金への統合という形で他の公的年金からの支援をいただきながら将来の見通しがついたことは、関係者の大きな喜びでございます。  国鉄改革当時、運輸大臣としていち早く四閣僚懇談会をつくって対応していただき、財政調整の助け合いを実現し、引き続き統合一元化への道を開いていただきました橋本総理並びに関係の皆様に、この機会に厚く感謝を申し上げる次第でございます。この法案が今国会で成立するように、私ども努力をしなければならないと考えておる次第でございます。  しかしながら、今回の統合を拝見しますと、当面、公的制度が官民五本立てということでありまして、官民二本立てもしくは一本立てという目標にはまだまだはるか道のりがあろうかと思いますが、今後の統合の見通しについて、厚生大臣、一言お願いします。
  228. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 就業構造や産業構造の変化対応して、長期的に安定的な年金制度を構築していくことが年金制度一般としても重要だと考えております。このため、今後各制度が成熟化する段階に応じて、財政単位の拡大、費用負担の平準化を推進してまいりたいと考えております。  具体的には、野沢委員も今言われましたように、第一段階として旧三公社の共済組合を厚生年金に統合する、これはこの国会法案を出させていただいているところであります。そして、その次の段階といたしましては、国共済及び地共済については、それぞれの成熟化の状況に応じて公務員制度としてのあり方も踏まえつつ、両制度において財政安定化措置を検討する。そして三番目には、あと残された二つの農林共済、私学共済については、被用者年金制度の中におけるそれぞれの制度の位置づけについて検討を行うことといたしております。  こうして被用者年金制度の再編成に当たっては、制度運営に関する適切な情報公開を行うとともに、制度の安定性、公平性の確保に関し財政再計算時ごとに検証を行いつつ、今言われましたように、今回五本になります制度を将来は少なくとも二本程度にはしていきたい、最終的には一本にできるか、こういうこともあわせて検討していきたいと考えております。
  229. 野沢太三

    ○野沢太三君 どうもありがとうございました。これで終わります。
  230. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で野沢太三君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  231. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、釘宮磐君の質疑を行います。釘宮磐君。
  232. 釘宮磐

    釘宮磐君 今国会は、住専国会とも言われたわけでありますが、この住専の問題と並んで薬害エイズの問題が大変大きな国民の関心を呼んでおります。私は、きょうはこの薬害エイズの問題について絞って質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  先般、菅厚生大臣は原告患者に対して謝罪をなさいました。まず、総理にお伺いをいたしたいのでありますが、この薬害エイズ問題に対する総理御自身の認識、これについてお伺いをいたしたいと思います。
  233. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、一月二十二日の施政方針演説の中で、和解に全力を挙げ、そして責任問題も含めて必要な調査を行い、医薬品による健康被害の再発防止に対し最大限の努力を尽くしたいということを申し上げてまいりました。  三月二十九日にこのエイズ訴訟の和解協議、和解が成立をいたしました。七年という時間を要した裁判でありますけれども、和解の成立という形で一つの区切りがつきましたことを非常に厳粛な思いで受けとめております。  そして、この和解が成立をいたしました後にも、治療そして研究推進体制の整備など、まさに患者の方々の御意見も伺いながら、安心して治療の受けられる体制というものをどうつくっていくか、あわせて、なお社会的にエイズという病気に対して一部残っております偏見に対し、その偏見を取り除く努力をどう仕上げていくかが非常に問題であると思っております。  私自身がちょうど厚生省の政務次官のときに、スモンの原因がキノホルム説という形で公表をされました。そのスモンが、今度は私自身が厚生大臣になりましたとき、まだ訴訟の形で残っておりました。そして、和解を決心いたしましてから、今度は原告であります患者の方々、遺族の方々に心を解いていただくまでに随分時間がかかりました。今回の和解におきましても、その方向を打ち出されました森井前厚生大臣、そして菅大臣、関係の方々すべての努力に心から敬意を表しますとともに、こうした思いを二度と繰り返したくない、スモンの和解のときに思いましたものがまたこういう形で悲惨な現実に直面しなければならなかったことを本当に残念に思っております。
  234. 釘宮磐

    釘宮磐君 今回のエイズの問題についてある新聞社が調査をしたところによると、九割の方が薬害エイズ問題には関心があると。これはいわば住専以上のものが私はあるのではないかというふうに思います。住専の問題はある意味では税金を払えば済むことだけれども、薬害は命をとられる。国を信じて、行政を信じてきた人たちにしてみればこれほど不安なことはない、このように思うわけです。  私は、ここで総理にお聞きしたいんですが、では、なぜ薬害エイズは防止できなかったのか。総理も今いみじくもおっしゃいましたスモンのような問題がまた起こった。エイズが起こったということについて、総理自身どのような見解を持っておられるのか、お聞きしたいと思います。
  235. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 和解が成立をいたしました日、菅厚生大臣が談話として発表されました中に、和解成立に際し、改めて厚生省の責任を認めるとともに、深く反省し、患者及び家族の方々に深く衷心よりおわびいたしますという言葉がございました。私もこの言葉をまずこの場で繰り返した上で、私なりの感じを申し上げたいと存じます。  スモンのときも大変悲惨な実態がございました。そして、当然ながらここでも国の責任は厳しく患者の方々から指摘を受けました。ただ、そのときに、複数ある治療手段の中でキノホルム製剤を使うかあるいは他の製剤を使うかという選択は、私は医師にあったと思います。医師の方々が違った薬を選択される可能性もあったと思います。  しかし、血友病患者のHIV感染というものにつきましては、代替手段が血友病患者の方々にはなかったわけであります。延命というものを目的として使われる血液製剤、その血液製剤の中に別の危険が潜んでいるということを患者が予見することは不可能でありました。そして、血液製剤というものを介してエイズウイルスが伝播し得るというところまで、当時だれがどこまで推察をしておったか、私は十分な知識を持つわけではありません。  しかし、今振り返ってみるならば、血友病患者の方々に血液製剤が使用される限りにおいて、その血液製剤の安全が確認されなければ罹患の危険性は高いということは認識をされてしかるべきことであったろうと思います。殊に、我が国のように献血による血液供給体制をとっている国ばかりではないわけでありますから、こうした点に十分思いをいたさなかった、それが対策のおくれを招き被害の拡大を防止し得なかった原因ではないかと思います。そして、改めて政府責任を認め、政府として反省をすると同時に、患者及び家族の方々には心からおわびを申し上げたいと思います。
  236. 釘宮磐

    釘宮磐君 今の総理のお言葉ですが、今回私もエイズの問題をかなり勉強してみましたが、私は最も大きな原因は日本の官僚体質にあるというふうに思うんです。官僚というのは、自分たちは絶対に間違っていない、したがって一度決めたら決してこれを変更しない、その間の情報は一切外に漏らさない、これが官僚の体質だろうと思うんです。これは、ある意味では住専の問題と根っこは一緒だというふうに思うんです。  本来、こうした問題について政治がこれをチェックしていかなければならないわけですけれども、残念ながら一党支配体制が続いたためにそこに政治と官との間にもたれ合いが起こってきた、私はこのことは否めない事実だと思います。  水俣病問題が三十年ぶりに、いわゆる現連立政権が誕生して解決を見ましたが、あの問題一つとっても、こんなに長くやらなければならなかったんだろうかという思いがしてなりません。  そこで、私はそういう意味で、今回どういう経緯があってこういう問題が発生したのかということについての真相究明、これをやって、そしてその真相究明をやったことによってどこに構造的な欠陥があったのか、このことを今やらなければ国民に対しての我々政治家の役割は果たせない、このように思うんですけれども、その点どうでしょうか。
  237. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 具体的に現在進んでおります調査につきましては、厚生大臣からお答えを願いたいと思います。  しかし、こうした事態を起こさないために徹底した真相解明が必要であるということは私も全く異論はありません。そして、当然のことながら、それだけの努力をしていく責任が我々はあると存じます。ですからこそ、厚生省で調査プロジェクトチームを設置し、できるだけの事実関係の調査、整理を行いながら、いろいろな御批判を浴びながらも、厚生大臣の強い指示を生かしながらこれまで、四月五日に公表したファイルの調査などを含めまして補完的な調査を今も行っているわけでありまして、真相解明のために努力をしていくのは当然のことであると存じます。
  238. 釘宮磐

    釘宮磐君 この問題については後ほど菅厚生大臣にも質問をしてまいりたいと思いますし、この委員会の場で一つ一つ検証しながら、きょう委員会に御出席していただいている閣僚の皆さん委員皆さんがやっぱりおかしいと思うんであれば、私はこの点についてはしっかりと政治がチェックをしていくということを確認していただきたいと思うわけです。  和解が成立しましたが、これから恒久対策が待たれるわけですけれども、これも後ほどまた菅厚生大臣にはお聞きしますが、総理からひとつ決意を聞かせていただきたい。
  239. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 恒久対策で求められております細かい部分まで私は存じませんが、今まで菅大臣から御相談を受けましたり厚生省から報告を受けましたりした中で、エイズの治療研究推進体制の整備というものにつきまして開発センター、仮の名前を今つけながら、その設置、そして拠点病院の一層の整備充実というものが大事な問題となっております。また、治療薬ができるだけ早く患者の方々に行き届くような措置をとらなければなりません。そして、もう一つ問題になっておりますのが差額ベッドの問題でありまして、御本人の意思に反した不適切な差額徴収が行われないような措置というものも必要になっているはずであります。  医療体制につきまして、しばらく前から厚生大臣といろいろな想定の御相談もしてまいりました。当初その病院におられると思った専門家がその後転勤をしておられましたり、当初私が考えておりましたものと、厚生大臣のもとで今随分修正をしながら御工夫をいただいております。
  240. 釘宮磐

    釘宮磐君 私は、総理にはぜひ菅厚生大臣をバックアップしていただいて、この問題はやはり国が最後まで責任を持つという姿勢を貫いていただきたいとお願いを申し上げたいと思う。  参議院でも衆議院でもそれぞれ厚生委員会及び小委員会の中でこのエイズの問題参考人招致等を行って、それぞれの皆さんから当時の模様をお聞きしながらいろんな問題点を今解明しているところであります。参考人質疑の中ではいろんな人の名前も出てきておりますし、新たな疑問も出てきております。  そこで、厚生大臣にお伺いをしたいんですが、きのうの新聞でしたか、どうも最終報告を近々出して厚生省の調査をもはや終えるというようなことが書かれておりましたけれども、これから国会がいろんな参考人招致や喚問を行っていく中で、厚生省は厚生省でこれと連携をしながら一緒になって解明をしていくということが必要じゃないですか。私は、そういう意味では厚生大臣の強力なリーダーシップを期待したいんですけれども、どうですか。
  241. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 先ほど総理からもお話をいただきましたように、この問題では総理を初め関係閣僚に大変応援をしていただいておりますし、また与党のプロジェクトあるいは野党も含めて大変御支援をいただいていることに改めて感謝を申し上げたいと思います。  調査プロジェクトにつきましては、一月の二十三日に省内に調査プロジェクトをつくりまして、当初は一カ月程度をめどにということで調査を進めたわけですけれども、その後新たな資料やいろいろな議論が出てまいりまして、今日補完的な調査を続けているところであります。当初はもう少し前の段階で一応の区切りをつけたいと思っておりまして、今週中ぐらいには一定の区切りをつけたいというふうに思っております。  今、委員がおっしゃいますように、確かに衆参の委員会でもいろいろな議論が出ておりますし、またその中から厚生省にさらにこういう問題を調べろという御指摘もいただいておりますので、そういう御指摘をどういう形で受けとめていくのか。今のプロジェクトをそのまま存続させるのか、あるいはさらに、これからの問題を議論する場を順次つくっておりますのでそういうものに引き継いでいくのか、あるいは従来の国会対応するような平常時のやり方で対応していくのか、そのあたりはもう少し様子を見て考えさせていただきたい。今おっしゃった問題も十分念頭に置いて考えたいと思っております。
  242. 釘宮磐

    釘宮磐君 私は、政治が行政をチェックしていかなければならない、これは政治の復権だと思うんですね。今そういう意味で政治のリーダーシップが問われているときですけれども、この時期に、エイズの問題、住専の問題も同じでありますけれども、これを政治がしっかり解明して国民の期待にこたえていくということは極めて大事なことでありますから、これはこれから衆参でしっかり我々やりますので、菅厚生大臣のリーダーシップをぜひ期待を申し上げたいと思います。  それでは、少し各論に入っていきたいと思うんですが、この薬害エイズの問題では、いわゆる一九八三年あたりから血液製剤がエイズ感染に関係があるという指摘があって、アメリカでは非加熱製剤から加熱製剤に移していった。それを踏まえて厚生省では、当時生物製剤課の郡司課長を中心に研究班の設置を行ってきたわけです。  当初は郡司さんも、先般の参考人招致の中でも、非常に危機感を感じていたというふうに言っていたわけですね。それが一週間後、よく言われるなその一週間ですけれども、一週間後、研究班が第二回目の会合を開く前あたりから急激に熱が冷めてきた。これは何かあったんではないのかということがよく言われているわけです。  私は、先般の参議院の参考人招致の中で、松田重三さん、当時の研究班員ですけれども、彼が、厚生省の上層部や厚生省のOBからの圧力があったと想像するにかたくない、こういう衝撃的な発言をしたわけであります。私自身もずっとこれを勉強していまして、やっぱりここはおかしいというふうに思って、松田さんの話を聞いてなるほどなというようなことを感じたんですけれども、大臣、この当時の郡司課長を含む厚生省の対応についてどういうふうにお感じになりますか。
  243. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 今回、当時の郡司課長や松田委員あるいは安部委員が衆参の国会に直接参考人で出席をされまして、それぞれいろいろな質問に答えておられるわけです。  私も従来からいろいろな資料やいろいろな方の発言を聞いておりまして、もともとエイズ研究班がスタートをする段階で、正確な日付は忘れましたが、例えば読売新聞に安部班長が、本当にこの非加熱製剤による血友病患者へのHIV感染のおそれがあって、いても立ってもいられないということを言われ、さらに同じ中で加熱製剤のいわばつくり方まで披歴をされているわけであります。また、郡司課長も、国会の中の答弁といいましょうかお話でも、相当に強い危機感を持ってエイズ研究班をつくられたと。これはいろいろな質問に対する答えにも出ているわけであります。それがとにかく結果において非加熱製剤の使用がとまったのが、つまりは回収のおくれも含めて言えば六十年をはるかに越えて残ったというこの関係は、どうしても納得しがたいという思いが私にもあるわけであります。  ただ、そこがどういうことでそうなったのか。この間、厚生省自身も重ねていろんな関係者に問いを出しておりますけれども委員の今言われたような議論もあることは承知をいたしておりますが、私の立場で断定的にこのことについて見解を申し上げるというところまで来ていないということを御理解いただきたいと思います。
  244. 釘宮磐

    釘宮磐君 当然大臣の答弁としてはそうだろうと思うんですが、そういう意味ではこの疑わしいところを明確に解明していかなければだめだということをここで申し上げておきたいと思います。  さきの参考人招致の中で、危険な状況になったということでエイズ研究班をつくったわけですけれども、その目的や諮問事項の理解について、さきの参考人質疑の中で当時の郡司課長はこのように言っているんです。意思決定機関でないエイズ研究班に重要な決定をさせてしまった、このように述べている。一方、エイズ研究班の班長になった安部英さんは、日本にエイズ患者がいるかどうか学問的に研究してくれと頼まれただけで、結論は行政の担当者、このように答弁している。私は一介の医者である、このように言っているわけです。  要するに、この研究班の設置の目的についての認識が全く違っている。厚生省は、この認識が適切に伝わっていなかったということについては非常に大きな責任が問われると私は思うんです。結果的に彼らは今責任をなすりつけ合っているわけです。このことについて、大臣、この二人の責任のなすりつけ合い、多分大臣も見られたかと思いますけれども、どういうふうに思われましたか。
  245. 荒賀泰太

    政府委員荒賀泰太君) ただいまお話がございましたが、郡司課長におきましてはエイズ研究班設置目的につきまして、エイズの危険に直面して、その危険をどう評価するか、治療方法を変えるべきか、そういった点をぜひ早急に検討してほしいというふうに述べております。  これに対して安部氏におきましては、この委員会日本にエイズの患者がいるかどうかを決めてくれということであった、あくまで学問的な立場であって、行政的なことは関係がないというふうに述べておるわけであります。ただ、当時の新聞報道によりますと、このエイズの水際防止対策について、ウイルスを不活化する方法をとりたいとも述べておるわけでございます。  当時の生物製剤課がこのエイズ研究班につきまして、研究班の目的として対外的に説明をしておるものを見ますと、我が国においてもエイズが存在するかどうか調査をして、そしてその対策を早急に検討する必要があるというふうにうたっております。また、当時の新聞報道におきまして、郡司課長のコメントとして、血漿製剤は九割以上アメリカから輸入に頼っておりまして、エイズについては極めて重大な関心を持っている、発病者が出た場合は早く発見して対策を打てるよう早急に検討班を発足させたい、そういったコメントも掲載をしておるところでございます。  そういった事情を考えますと、厚生省としては本研究班の目的、趣旨ということについては十分説明をしていたのではないかというふうに考えておるところでございます。
  246. 釘宮磐

    釘宮磐君 いや、私は、この二人が責任をなすりつけ合っているということについてどう思うかということを聞いているんですよ。
  247. 荒賀泰太

    政府委員荒賀泰太君) この研究班の位置づけにつきましては、通常は研究費を基礎にして学問的な研究をするというのでございますが、しかしこの研究班の場合には、エイズの危険性ということに対していかに実態を把握しそして対策を練るかということで、行政が意思決定をする上での非常に重要な参考意見を審議しまとめていただく、そういう結果をもたらすような、研究班にそのような役割を負わせたところでございます。  それにつきましては、行政とこの研究班との一般的な関係としては、確かに学問的な治験を取りまとめ、それを行政側が受けとめ施策に反映していくということではあります。しかし、この場合には、各界の専門家に一堂に入っていただいて、そしてそれが重要な意思決定の参考資料になるという意味におきまして、この研究班の責務というものは非常に大きかったというふうに考えておるわけでございます。
  248. 釘宮磐

    釘宮磐君 ちょっと何かわからないような答弁なんですが、要するに郡司さんはいわゆるエイズ研究班に託したけれども、これに重要な決定をさせたこと自体が間違いだったと言っているわけでしょう。一方、安部さんは、私は一介の医者だからただ学問的に研究しただけだと言っている。では、今の荒賀局長の話を聞けば、この二人が言っていることを厚生省は認めるということですか。
  249. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 実情は荒賀局長の方から今申し上げたとおりなんですが、率直に申し上げまして、こういうふうな形になってしまったことはやはり当時の決定のシステムとしては少し反省すべき点があったんではないか。  つまり、形式上は単なる研究班と、いろいろな研究をお願いする班ということですが、実質上はこの場に血友病の専門家にお集まりいただき、エイズに詳しい人にも集まっていただいて、血友病患者への非加熱製剤の治療をどうするか専門家の御意見を聞きたい、聞いたものを重要な参考意見として行政に反映させたいということでお願いしたわけですから、私は、安部先生が言われていることは形式論議としては確かにそういう言い方はあり得るかもしれないけれども、実質的には非常に大きな意味を持った御意見であったと思っております。  ただ、先ほど最初に申し上げましたように、その研究班というものに必ずしも法律的な位置づけとかそういうものがきちんとない中で実質的に大きな決定をゆだねたということについては、行政のあり方として今後考えていく上で反省材料ではないか、このように考えております。
  250. 釘宮磐

    釘宮磐君 これは今回の問題だけじゃないんですよ。役所は審議会とかこういう研究班とかいろんなものをつくるけれども、その審議会や研究班は、形式的に議論はさせているけれども、要は落としどころというか、その筋書きはもう役所がいつも決めているんですよ。だから、今回みたいな問題が起こったときに責任のなすりつけ合いになっちゃうんです。私は先ほども言いましたけれども、ここのところをはっきりと解明して、そういうところの欠陥を直していかなきゃならない。  だから、審議会とかいろんなものを公開はできないというようなことを言っていますけれども、その中でどういう議論がなされているか、そういうようなものが全く表に出てこなくて、決まったものについて我々はただ従うだけだというところに国民は大きな不安を持っているんですよ。やはり情報公開というのをきちっとやっていればこんなことにはならなかったと私は思うわけです。  この問題だけをやっていますともう時間がなくなりますので、次に移りたいと思います。  このエイズ研究班がやった最初の仕事というのは、当時安部教授が抱えていたいわゆる帝京大の症例患者、この人をエイズと認定するかしないかということがここで問題になったわけですね。結果的にこの帝京大症例はエイズとは認められなかったわけです。特に、私がさきの集中審議、また参考人質疑の中でも申し上げたのが、いわゆるスピラ認定というやつなんです。これは米国のCDC、アメリカの国立防疫センターのスピラ博士が帝京大症例を見て、これは間違いなくエイズだというふうに言ったんです。しかし、このスピラ認定は研究班では結果的に否定されたんです。  ここで厚生省にお伺いしますが、安部先生はこういうふうに参議院の答弁で言っているんです。当時のCDC基準と日本の基準とは異なっていた、だから認定されなかったということですけれども、当時、日本にエイズ患者もいないのに日本の基準なんかあったんですか。
  251. 松村明仁

    政府委員松村明仁君) 我が国におきます最初のエイズの診断基準というものは、形が整ったということでは昭和五十九年三月に後天性免疫不全症候群の実態把握に関する研究班によりまして、AIDSの臨床診断の手引き、それからAIDSの免疫学的診断の手引き、こういう形でまとめられたものがございます。したがいまして、昭和五十八年当時のことだと思うんですが、当時は皆さんが納得された上で決められたような日本独自の診断基準は存在していなかったと、こういうことになろうかと思います。  しかし、当時あのODCの基準というようなものはあったようでございますし、また専門家の先生方の中ではこういったCDCのものも参考にしたり、それぞれ独自の情報を得て典型的なエイズケースについて皆さん勉強をされておられたと、こういうふうに承っております。
  252. 釘宮磐

    釘宮磐君 要するに、日本にはまだ基準なんかなかったんです。安部さんもこの前の参考人質疑の中では、いわゆる研究班でやってきたことだから自分が班長として責任があるからあえてそういう答弁をしたんですが、安部さんはこの帝京大症例に非常にこだわったんですよ。そして、安部さんは、それを何か意図的に抑えられた、否定されたものですから、厚生省に対してそれから以降全く協力的でなくなっている、このことを私は申し上げておきたいと思うんです。  松田さんは、先般の参考人質疑の中でこういうふうに言っているんです。一号患者が血友病だったら加熱製剤の緊急輸入が実現をする、これは当時開発のおくれていた国内メーカーは大打撃を受ける、厚生省の血液行政にも汚点を残すと。もし松田氏の推測が、これはある程度私は当たっているというふうに思うのでありますけれども、そういうことであれば、先ほど言いましたように、もうここで調査をやめるというのじゃなくて、我々がせっかくこういうふうな問題を参考人招致の中で見出してきたわけです、指摘してきているわけですから、これらの人を厚生省は呼んで直接聞いたらどうですか、大臣。
  253. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) この間、調査プロジェクトは質問状をそれぞれのエイズ研究班の先生方に提出をいたしまして、それに答えていただくという形で当時の様子をいろいろ聞いております。また、中にはこちらの担当者がお会いして当時の事情を聞いた例もあります。  そういった意味では、十分であるかどうかは別として、今名前を挙げられたような方はほぼどこかの段階で少なくとも一度以上は事情について説明を求めてお願いいたしているところです。
  254. 釘宮磐

    釘宮磐君 それは、今までの段階と今の段階、この前の参考人招致が終わった段階とでは随分と皆さんの発言が変わってきているわけですよ。ですから、そういう問題を当時の人たちを呼んで厚生省がもう一回、一つ一つの言質を照らし合わせながらこれらの矛盾というものを解明していく。そしてその結果、私が先ほどから申し上げるように、これらの問題についての解明をやらなきゃいけない。だから、ぜひそのことについてはお願いしたいと思うんです。  私は、ここでエイズ研究班のその後の状況をちょっと聞きたいんです。研究班の設置の最大の目的の一つ日本にエイズ患者が既にいるかどうかだったと。このことは安部さんも郡司さんも同じように答えています。ならば、研究班では第二回の会議以降、帝京大の症例が否定された以降、疑わしい症例の収集、検討をしていますか。その辺教えてください。
  255. 松村明仁

    政府委員松村明仁君) 既に業務局から公表されました資料によれば、帝京大症例が否定されました第二回の班会議において、全国の主要な百十六の医療機関に対し追跡的に疑わしい症例の報告を依頼することといたしまして、続く第三回の会議におきましても、新たに報告された二症例を含みます四症例の検討がされたと考えられております。さらに、第三回会議以降もエイズが疑われる症例の把握に努めることとされたと、このように私どもは理解をしております。
  256. 釘宮磐

    釘宮磐君 それじゃ、八四年度になってはどうですか。
  257. 松村明仁

    政府委員松村明仁君) 八四年度になりますと、昭和五十九年でございますが、九月二十日でございますか、AIDS調査検討委員会というものを設置いたしまして、医療機関の協力を得ましてエイズの疑いのある方の調査を開始いたしました。このAIDS調査検討委員会と申しますものは昭和六十一年十二月にエイズサーベイランス委員会というふうに名前を変えまして、現在に至るまで継続的に患者等の把握、こういったことを行っております。
  258. 釘宮磐

    釘宮磐君 それじゃお伺いしますが、保健医療局ファイルのナンバー5の中に、一九八四年七月七日、新潟県の信楽園病院青木忠夫医師が自分の患者二人がエイズであると厚生省に報告したとの毎日、東京新聞の記事があります。この中で、厚生省はエイズ研究班に報告して判定を急ぐ、また安部班長の談話として研究班で検討する、こういうふうになっているんです。  そうすると、この研究班というのは八四年の三月でもうなくなっているわけですけれども、これはどういうことなんですか。
  259. 松村明仁

    政府委員松村明仁君) 八四年の三月に年度末ということで一たん打ち切りまして、今度は保健医療局の方で昭和五十九年九月から行ったものでございます。  また、御指摘のこの二症例につきましては、五十九年の十二月二十八日に新潟県よりAIDSサーベイランス調査票というのを受け取りまして、昭和六十年二月二十一日のAIDS調査検討委員会におきまして当時のAIDSの臨床診断の手引き、またAIDSの免疫学的診断の手引き及びエイズに関する治験というようなものをもとに検討した結果、この二人の方はエイズと認定をすることはできない、こういうことになったものでございます。
  260. 釘宮磐

    釘宮磐君 それじゃ、この研究班ができてからエイズの症例として地方から上がってきたのは帝京大症例も含めてどれぐらいあったんですか。これは質問通告していませんから、もしなんだったら教えてください。後からでも結構です。わかりますか、今。——わからない。  私は先ほど、それから以降もエイズの症例が出てきた、しかしそれは違っていたというふうに言っているんですけれども、厚生省が今言うようにこれほどたくさん出ていたのなら、少なくともそこで危機感を感じるのが当然じゃないですか。アメリカではもう既に使用しなくなった非加熱製剤をまだ使っているということ自体、先ほども言いましたけれども、一度決めたら、走り出したら絶対に最後まで走ってしまう、そして自分たちは間違っていないということをそのまま証明しているようなものじゃないですか。私は、そういう意味でこの当時の厚生省の行政執行というものに極めて不信感を持ちますし、この問題はぜひ解明をしていかなければならないと思うんです。  さらに、この安部さんのいわゆる帝京大症例、結局これはスピラ博士は認定しましたが、研究班で否定されましたけれども、その後、ギャロという博士がおるんです、この方はいわゆる血液製剤の権威であります。このギャロさんが八四年の九月六日付で、安部さんが四十八検体を依頼したんですが、そのうち二十三検体が陽性である、要するにエイズに感染しているという結果を報告しているわけです。これを安部さんは先般の参考人招致の中で、厚生省には連絡した、郡司さんに電話をしたが郡司さんがいなかった、だから留守の係の人に伝えた、そして資料を後から持っていったと。この資料は保健医療局感染対策課作成のファイルの中にあったんですが、当時どの部局のだれが受け取ったのか、これについて調査をしましたか。
  261. 荒賀泰太

    政府委員荒賀泰太君) ただいまの昭和五十九年九月六日付の米国NIHのギャロ博士からの抗体検査結果につきましては、その時点におきまして、郡司生物製剤課長の後任の課長、またその課の課長補佐の調査プロジェクトチームへの回答によりますと、安部班長からの報告を受けた記憶はないということになっております。  また、郡司課長につきましても、安部班長からそういった報告は記憶がないというふうに言っておるわけでございます。  ただ、この点につきましては、安部氏の陳述もございますので、さらに今後必要な調査を行ってまいりたいと考えております。
  262. 釘宮磐

    釘宮磐君 要するに、安部さんは言った、厚生省は聞いていないと、またここでも責任のなすりつけ合いをやっているんですよ。何よりもこういう問題はこれから参考人とか証人喚問でぜひ解決をしていかなければ、これは国民は納得しませんよ。私はそのことをぜひ指摘しておきたいと思います。  特に、この情報を受け取って厚生省は何もしていないんです。何もしていないから受け取ったとは言えないんですよ。要するに、厚生省はこの時点ではギャロの報告があっては困ったんではないか、私はそのように推察をするわけであります。  実は、こうしてずっとエイズ患者を押しとどめてきた厚生省も、栗村さんのいわゆる抗体検査、これは日本で独自でやったんですけれども、こういうふうな報告がどんどん出てきて外堀が埋まっちゃって、もうこれ以上耐え切れなくなった八五年の三月に米国在住の同性愛の男性を患者第一号と認定しているわけです。松田参考人は、帝京大症例を認定しなかったのは血液行政に汚点を残したくなかったため、先ほどの論調になるわけですけれども、最後に、厚生省がつくったストーリーの上で審議を重ねていたということを言っているんです。  それで、この発言を裏づけるように、厚生省の当時の保健情報課の野崎課長は、NHKの「埋もれたエイズ報告」の中で次のように述べているんです。エイズの対応というものが整っていなくてはいけない、そうしないと大パニックになってしまうわけですね、対応ができてきた段階で、軟着陸した状態で第一号患者が見つかるというのが一番いい形ではないかと考えておりましたと。  要するに、私はこういうことをずっと調べてくると、やっぱりこれはストーリーがあったんだというふうに言わざるを得ないんです。そして、その帝京大症例の否定後、新たな症例発掘にも否定的、数々の症例、血友病患者のエイズ感染が持ち込まれるたびに厚生省はこれを否定するのに躍起となっていったように思えてならないわけであります。  きょうはもう時間がなくなりましたので、私はもっとたくさん質問したかったんですが、それは後日に譲ります。  先ほども総理にお願いをして、総理から決意をいただきました恒久対策について、これをちょっとぜひお答えをいただきたいというふうに思うんです。  健康管理費用についてでありますが、それぞれ、CD4が五百以下は三万五千三百円、CD4が二百以下は五万一千三百円、発症者については月額十五万ということになっておりますが、裁判所の和解所見で将来の拡充を求めています。この方策について厚生省としてどう考えていますか。
  263. 荒賀泰太

    政府委員荒賀泰太君) この和解で定められております健康管理手当の関係でございます。一つは、現在、国が発症予防のために支給をしております健康管理費用につきましては、和解確認書におきまして、国は和解成立後も健康管理費用の給付の継続、拡充に努めることとされております。原告の方々の意見も踏まえまして、今後必要な検討を行ってまいりたいと考えております。  また、発症者健康管理手当につきましては、この和解の際に最も重要かつまた難しい課題でございました。国と製薬企業が負担するということでございますが、この和解協議におきまして重要事項として協議が重ねられまして、三月の末に成立をしたばかりでございます。今直ちに見直すことはなかなか難しい面があるのではないかというふうに考えております。
  264. 釘宮磐

    釘宮磐君 これはぜひやっていただきたいと思います。これではやっぱり本当に、ここまで国の責任を認めていながらこれぐらいの金額で済ませるというのは私は非常に酷だというふうに思います。  それから、医療体制の整備の観点からでありますが、研究治療センター構想というのがあります。また、国立予防衛研究所に基礎研究部門を設置するということが約束をされたわけでありますが、現在その準備の進行のぐあいはどうなっているのか。  それで、具体的にエイズ治療・研究開発センターの立ち上げ、いわゆる診療の開始ですが、これはいつごろになりそうか。  さらに、和解において、エイズ治療・研究開発センターの設置については原告被害者の意見を反映することが要求されているが、制度的には今後どのような形で原告被害者の意見を反映させていくつもりなのか。  以上、三点について。
  265. 松村明仁

    政府委員松村明仁君) 原告の方々と厚生省との間で、エイズ治療・研究開発センターということ、仮称でございますが、これを設置していくこととしておりますが、現在、国立国際医療センターに作業委員会を設けまして精力的に検討を行って、その早期の実現に努めているところでございます。  それから、エイズ治療・研究開発センターの診療開始はいつごろになりそうかということでございますが、現在、病棟の整備とか専門外来の実施体制とかそういったことをいろいろ準備をしておりまして、具体的にいつかということを申し上げることはなかなかできないところでございますが、七月ぐらいを目途に専門外来を実施することができるかなと、こういうことでございます。ただ、完全な稼働というものは、今申しましたように病棟の改修工事、こういったものを行う必要がございますので、もう少し長くかかるかと思います。いずれにいたしましても、本年度から実施可能なものにつきましては早急に実現に努めてまいりたいと思います。  それから、原告の方々の意見を反映させることということでございますが、これは原告の方々と厚生省の間で本年三月二十九日に合意をしたところでございますが、今後のエイズ治療研究推進体制の整備及び運営のあり方につきましては、厚生省と患者、感染者の団体との協議の場を設けることとしておりまして、今後この御要望等についてはその協議の場で承っていくこととしております。
  266. 釘宮磐

    釘宮磐君 二次、三次感染者の医療負担、この件について医療費の負担を免除するというようなことが言われておりますが、これはいつごろの時期からそういうふうにするつもりですか。
  267. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 今いろいろ準備をしておりまして、関係審議会にも諮問し、答申を得なきやなりません。それからまた、医療機関の方の事務手続体制も、それからまた周知徹底も図る必要がございますので、今のところ七月を考えております。
  268. 釘宮磐

    釘宮磐君 先ほど総理が触れられました差額ベッドの問題でありますが、この処理についてお伺いをしたいと思います。
  269. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 一つは、医療機関の側に対しまして経済的な補てんをする必要がございます。いわゆる重症者につきまして、そういう人を扱う場合には加算をする格好になっておりまして、本日、関係の審議会である中央社会保険医療協議会に御諮問をして、ちょっと私そっちへ出てまいりましたが、本日御答申いただいていると思います。それで、そういう加算制度をつくった上で経済的な補てんをして、その趣旨を医療機関に徹底しようと思っております。  それからまた、厚生省それから各都道府県にこの差額ベッドに関します苦情窓口を設置いたしまして、そういう何か不適切な事例がある場合にはここに御連絡をいただいて早急に対応するようにしたいと。このことの趣旨をエイズ拠点病院につきましては十二日に御連絡をしましたし、各都道府県に対しましては、明日、担当者を集めまして周知を図ることにしております。  こういうふうな総合的な対応をいたしまして、私どもは関係の医療機関の協力を得ながら、そういう差額ベッドについて問題が生じないように監視していこうと思っておりますが、どうしても非常に無理なケースがあった場合には、これに対してよくよく個別事例につきまして御相談をしたい。それから、既に差額ベッド代につきまして医療機関側が取っているというケースがある場合には、その医療機関から本人に返還させる、こういうことも考えたいと思っております。
  270. 釘宮磐

    釘宮磐君 時間がありませんので、通告した分について後ほど書面で回答をお願いしたいと思います。  私は、真相解明は我々の手でとにかく一生懸命やる、そして恒久対策については一生懸命これもやる、このことをぜひお願いして、水島さんに関連質問を譲ります。
  271. 井上裕

    委員長井上裕君) 関連質疑を許します。水島裕君。
  272. 水島裕

    水島裕君 平成会の水島でございます。  私は、薬害エイズ関連としまして、狂牛病を取り上げたいと思います。  今お話しのように、薬害エイズに的確な対応がとれなかったということの反省を踏まえまして、第二のエイズになるかもしれないという狂牛病に対しまして、国の対策、特に組織づくりはどうなっているか、まず担当官からお願いいたします。
  273. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) お答えいたします。  医薬品による健康被害の防止対策につきましては、省内にプロジェクトチームを設け、政策決定プロセスのあり方、それに情報提供等についての検討を現在行っているところであります。  いわゆる狂牛病の人への伝達の問題につきましても、情報の迅速な収集、それから機動的な対応、的確な情報提供等が重要であると考えておりまして、省内の連絡対応体制を整え、生活衛生局が中心となって鋭意取り組んでいるところであります。  このような認識に立ちまして、まず三月二十五日にEUの常設獣医委員会が英国産牛肉等の輸出禁止措置を採択したことを重視いたしまして、三月二十六日及び三月二十七日に、まず英国産の牛肉加工品等の輸入自粛の指導をいたしました。次に、農林省による家畜衛生の観点からの英国産牛肉加工品等の輸入禁止措置がとられたところであります。  また、牛由来を用いた医薬品等の安全性確保の要請等速やかな対応を行ってまいりました。  また、既に輸入されていた英国産の牛肉加工品等につきましては、販売先を調査し、在庫及び回収したものについて保健所で確認の上、現在廃棄または積み戻しを指導しているところでございます。  さらに、四月二日、三日にかけまして、WHOにおいて開催されました専門家会議我が国からも専門家を派遣いたしまして情報収集等に努めるとともに、これを受けまして四月十一日に直ちに食品衛生調査会を開催したところでございます。  今回の食品衛生調査会については、従来の委員のみならず、いわゆる狂牛病や人のクロイツフェルト・ヤコブ病等の専門家六名にも臨時委員として御参加をいただきました。この六人のうち四人の方は厚生省の保健医療局で組織をいたしております遅発性ウイルス感染調査研究班のメンバーの方でもございます。  同調査会におきましては、WHO専門家会議のプレスリリース内容が厚生省のみならず他省庁にもわたる内容であったものでありますので、省内関係部局や他省庁からの出席者も交えて報告会を開いた上で全般的な議論を行いまして、今後の各省各局の施策に資することといたしました。その上で、食品衛生上の対応について御審議をいただき、当面の食品衛生上の対応について厚生大臣に意見具申をいただいたところであり、現在これに基づきまして対策を実施しているところでございます。  さらに、四月十六日には中央薬事審議会常任部会を開催して、医薬品等の当面の安全確保等について見解を取りまとめ、これに基づき十七日に、英国産の反すう動物由来の原料を使用した医薬品等の製造または輸入を行わないよう都道府県を通じて指導したところでございます。  なお、本件に関し食品衛生調査会及び中央薬事審議会に提出した資料について、すべてこれを公開してより広く国民の皆様にお知らせできるよう努めているところでございます。
  274. 水島裕

    水島裕君 生活衛生局で今のような対応をなされているということで一応評価いたしますけれども、今回、狂牛病が問題になりましたのは、狂牛病自体ではないわけですね。狂牛病はもう十年前からあって、だんだんと減ってきている。英国でもって十人、この狂牛病からと思われる患者が出て、新型ヤコブ病と申しておりますけれども、そういうのが出て問題になっているということですから、日本における対応ももっと医学的な面をしないといけないと思います。ですから、本当にある患者さんのサーベイをするとか、そういう患者さんがいたら診断ができるとか、検出ができるとか、そういうことが大切じゃないかと思います。  そうなりますと、むしろ疾病対策課の方が適当な課ではないかと思いますけれども、そこでもこのようなことについて検討はなされているはずでございますから、その点について御報告いだだきたいと思います。
  275. 松村明仁

    政府委員松村明仁君) 今問題となっております狂牛病と同様の疾患であるプリオン病というものの一つであります人の場合のクロイッフェルト・ヤコブ病というのがございます。この調査研究につきましては、昭和五十一年以来、保健医療局の特定疾患調査研究事業、いわゆる難病の調査研究事業でございますが、この一環といたしまして遅発性ウイルス感染調査研究班、慢性的に出てくるウイルス感染症、こういった研究班の中で現在も研究を進めているところでございます。
  276. 水島裕

    水島裕君 私もその難病の研究班は実は二十三年も続けて班長を含めてやらせていただきましたのでよくわかっているんですけれども、それは年に二回ぐらいするので、とても緊急の対策には間に合わないわけでございますね。  それで、今はどうも食品衛生調査会というのが中心に動いていらっしゃるようでございますけれども、その委員長はどなたでございましょうか、小林局長
  277. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 食品衛生調査会の委員長は名古屋市立大学の学長でいらっしゃいます伊東信行先生でございます。この調査会の委員長は、国民皆さんが一番怖がっている食品の発がん性の研究をしていらっしゃる先生でございます。
  278. 水島裕

    水島裕君 私も医学界のことは電話一本で大概全部情報が集まるわけでございますので、すぐ電話をかけて取り寄せてみましたら、こういうファクスが来ました。委員長先生は食物とがん、今おっしゃいましたようなことではもう第一人者であるけれども、先ほど私が申しました必要なウィルスとか免疫、中枢神経、そういうことに関しては一切研究はなさっていらっしゃいませんというファクスがちゃんと参っております。  そうしますと、委員長もそれから乳肉衛生課の方もどうもみんな専門家ではなさそうであるということで、また十年ぐらいたってもし問題になったときに、いえいえ私は専門家ではありませんので忘れました、そういうことはよく存じませんということになりかねないと思いますので、私はもう一度厚生省の中で、どこでこういうことを扱った方がいいか、それから委員責任者はどういう人がいいかということを考えていただきたいと思いますが、菅厚生大臣、御意見をいただきたいと思います。
  279. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 水島委員から大変積極的な御提案が今あったわけですが、これまでの経緯は、政府委員から申し上げましたように、肉が輸入されてそれを食べたときに心配だというところから始まったものですから、食品衛生調査会あるいは厚生省の場合は生活衛生局が当面担当して、生活衛生局に他の部署の情報も全部集めるようにということをけさも改めて指示をしたところであります。  ただ、今の御意見もありますので、今後の進め方として、やはり感染症というふうに物をとらえるとすれば確かにおっしゃるような体制の方があるいは適切なのかとも思いますので、またその御意見を踏まえながら検討してみたい、今後の対応の仕方は早急に検討したいと思っております。
  280. 水島裕

    水島裕君 菅厚生大臣は有識者の意見をいろいろと取り入れてなさっていらっしゃいますので、この件もぜひお願いいたしたいと思います。  参考までに、先ほどの肉の制限とかいろんなことはいいんですけれども、これは小林局長にまだお伺いした方がよろしいと思いますけれども、今後の検出とか診断とかそういうことの中で、現在、国としてどういうことを一番推し進めていらっしゃいますでしょうか。
  281. 松村明仁

    政府委員松村明仁君) 疾病という面からの対応を今すぐやらなきゃならないことは何かと、こういうことでございますが、私ども、今回の英国の情報によりますと、クロイッフェルト・ヤコブ病の従来のものと少し異なって、発病年齢が二十代と若いいわゆるバリアント型と言われる症例報告がなされておりますので、これが国内において存在するか否かを含めまして、我が国におけるクロイッフェルト・ヤコブ病の実態を把握するために新たに緊急に研究班を設置いたしまして、平成八年度中に緊急の全国調査研究を実施することとしております。  また、先ほど、難病の調査研究事業の中でこの問題を検討しておると、こういうふうに申しましたけれども平成八年度におきましては、委員今御指摘のような病因に関する研究、さらに病態の解明を初め簡易な検査法、あるいは臨床の診断技術の開発等に関する研究を進めていくこととしております。
  282. 水島裕

    水島裕君 情報開示の問題が出ましたけれども国民ばかりでなく議員にもこういうことがわかる人がいるわけでございます。WHOで四月二日と三日にこのプレスリリースをしまして、私のところには情報が来ませんで、先週の金曜日、この委員会でこれをやるというふうになってから情報をいただいたわけですので、少なくとも私どものところにはもっと情報を開示していただかなければとても国民に情報を開示するというところまではいかないと思いますので、よろしくお願いいたします。  それから、これが四月十八日でしたか、日経新聞に「国産牛肉は、安心です。」と、こんな大きな宣伝が載っているんですけれども、農水大臣、本当に日本の牛は狂牛病になっていないんでしょうか。
  283. 熊澤英昭

    政府委員(熊澤英昭君) 我が国ではこれまで狂牛病の発生事例はございません。
  284. 水島裕

    水島裕君 そう簡単に信用するわけにもいかないので、橋本総理にぜひ御意見をいただきたいのでございます。いや、これに関してではなくて、牛が大丈夫か、それから肉が大丈夫かという検査、それから臨床的に人の狂牛病がどうであるかという研究とか診断というのは、先ほどから出ましたように脳神経の専門家ということも必要ですけれども、免疫学とか分子生物学の先端技術を使ってやるということでは一致しているわけでございますね。  ですから、これは農水省の仕事、これは厚生省、おまけに厚生省の課も今指摘しましたけれども二つの課にまたがっている、こういうことではなくて、例えば農水省あるいは厚生省、両方が予算を出し合って至急に一つ研究会をつくって、そこに権限を持たせてこの問題を早急に解決する。感度のいい抗体をつくるとか学問的にはいろんなことがございますので、それを至急やるという、省庁の壁を乗り越えた政策をやるいい機会ではないかと思いますけれども総理大臣、いかがでございましょうか。
  285. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 委員今のお言葉の中で、私はいい機会という言葉だけは余りうれしくありません。いい機会をどうというお言葉をお使いになりましたが、こういう不幸な病気とか事件というのは起きない方がいいんです。ただ、そういう問題が起きた場合の対応として専門家としての御見識を今拝聴し、私なりになるほどと思いながら拝聴いたしてまいりました。  役所の諸君がよこした答弁資料では、厚生省と農林水産省が協力して必要な研究を行うべくと書かれておりますが、今のような御指摘の視点からいきますと、大学の医学部あるいは農学部、さらには研究機関等の協力も必要かもしれません。そうした視野を持ちながら、関係閣僚にきちんとした対応を指示いたしたいと思います。  御指摘の点はありがとうございました。
  286. 水島裕

    水島裕君 では、時間でありますので終わりにいたします。
  287. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で釘宮磐君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  288. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、前川忠夫君の質疑を行います。前川忠夫君。
  289. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 社会民主党の前川でございます。  今度の国会、特に予算に関連してはほとんど住専の問題一色なんですが、住専の問題を解決するということは、これは政府に何度も御答弁をいただいていますように、景気の問題に非常に大きな影響があるという視点からもできるだけ早く予算を成立させたい、こういう議論が重ねられてきたと思っています。  そこで、まず景気の問題について経済企画庁長官に御質問をしたいと思います。  四月の月例報告を拝見いたしました。昨日も平成会の寺澤委員からも御指摘がありましたが、景気のこのさまざまなレベルといいますか、計量的、計数的なものを日本語に直す御苦労は大変なものだろうと、私も少し教えていただきたいなというふうに考えているんですが、緩やかながら回復の動きを見せている、こういう表現であります。政府の今度の平成八年度の経済見通しというのが二・五%であります。それから、ついせんだって世界銀行、IMFが発表した日本平成八年度の見通し、これは暦年でありますが、平成八年二・七%、平成九年は三・一%、先進国の中ではかなり高いといいますか、来年は一番高い成長を実は期待されてというか、予測をしております。  現状の景気の動向と今申し上げましたIMFのこの数字について、長官の感想がありましたら、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  290. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 景気の現状についてお尋ねでありますけれども、景気回復の本来の主役は何なんだというふうに問われたら、これは個人消費と設備投資であると申し上げてもよいと思うんですが、その主役が今の景気回復過程の主役の座に着いていない、わき役にとどまっているというのが現状だと思います。かわって、公共投資とか住宅建設、政府が後押しをするいわゆる政策需要が主役の座で頑張っている、そういう状態が現状だと思いますが、そのわき役の場にいる個人消費あるいは設備投資が徐々に力をつけて着実に主役としての力をつけつつあるという感じで私は見ております。そういう現状であろうかと思います。  二・五%、またIMFの二・七という数字は私も見たわけですけれども、二%台に入るというこの目標を達成していくためには、どうしても本来の主役が主役の座に早期に着かなきゃいけない、そういうふうに思っております。
  291. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 そこで、総理にお伺いをしたいわけですが、今の景気の現状を、確かに長官おっしゃるように、かなりのウエートを占めている個人消費とか民間の設備投資に期待をし、あるいはそういう動きが見られるということは確かなんでしょうが、私はそんな楽観をしていいんだろうかという実は心配をしております。  政府が発表するさまざまな見解ですから、そう不安をあおるというわけにはいかないのはもちろん私は十分承知をしながら御質問させていただきますが、ある方の指摘は、四つのKの心配があると。一つは価格破壊、二つ目は金融不安、三つ目が雇用調整の進行、四つ目が空洞化という指摘を実はしているわけです。私もなるほどなというふうに思います。  確かに、ここで指摘をしておりますように、例えば価格破壊の問題を一つとりましても、これは消費者の立場に立って見ますと、物すごくメリットが来るという反応が一つはあるわけです。と同時に、ついせんだってもあるメーカーといいますか業界の方にお聞きをしましたら、これは電機業界ですが、例えば一円のテレビを売っている、あるいは五円の冷蔵庫を売っていると。こんなものは長続きするわけがないんですね。また、そういう価格破壊が進行しますと、いわゆる生産現場ではどういうことが起きるかということはもう当然のことなんですね。そういう心配がある。それから、金融不安の問題については、今住専の問題をきっかけにして何とか金融システムを安定化させようという努力をしておられる。  しかし私は、三番目の雇用の問題、後ほどまた労働大臣あるいは通産大臣にお伺いをしたいんですが、雇用の問題を大変実は心配をしているんです。雇用というのは消費に対しても非常に大きな影響を与える。今の雇用の問題というのはかなり難しい、非常に難しい時期じゃないかと実は考えております。そういった意味では、経企庁で判断をしておられる見通しというのはもう少しシビアに見なければいけないんではないか。  そう考えてまいりますと、これからの経済運営というのは非常に重要になってくると考えるんですが、総理としてのこれからの経済の運営あるいは経済対策の基本的なスタンスについてお伺いをできればというふうに思います。
  292. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 恐らく、程度の差はあるのかもしれませんが、懸念をされました部分については私自身も同様の問題意識を持っております。  昨日、ある場所で不特定多数の方々に対して私の考えでいることを申し述べる機会がございましたが、そのときに私が申しましたのは、今本当に緩やかではあるけれども回復の動きが始まり、これが続いてきた。この景気の回復力を強めて、持続性を保持して、確保して、中長期的な安定成長につなげていくために我々は切れ目のない適切な経済運営を必要とする。  その中で気になる部分が二つある。今まででありますと、ある程度景気の流れが回復に向かい始めた時点で中小企業が一斉に活気づく時点がございます。今回、残念ながら依然として中小企業、殊に中小の製造業の部分に活気が戻ってまいりません。これは我々として非常に真剣に注視しながら、本年度予算が成立いたしました直後から、この中に盛り込まれております中小企業の本来の持ち味を生かしながら活躍していただけるための施策、予算というものをフルに活用し、ここに力をつけ弾みをつけていかなければならないということが一点であります。  もう一点は、雇用失業率の問題であります。今数字の上では一時期の天井に張りついた状況から多少下がる気配が見え始めてまいりました。しかし、今年、就職戦線に異状ありということで新卒の方々の就職に対して非常に大きな懸念を世間も表明していただき、この面における御協力はいただいたわけでありますが、先ほどの中小企業の延長線上の問題として、小規模な企業あるいは小さな商店の廃業というものの数が今非常にふえております。我が国の雇用の相当部分を、というよりも過半数を中小企業が雇用しておることの状況は申し上げるまでもありません。  ところが、価格破壊の延長線上の一つの現象でありましょうけれども、殊に零細な商店に閉店が相次いでいること、これは雇用失業情勢にボディーブローのように非常に深刻に効いてきております。ここにどうやったら活気を取り戻すことができるのか、あるいは店を続けていただく意欲を持っていただくことができるのか。これは、商店街対策その他さまざまな施策を通産省の諸君が苦労して中小企業庁を中心に工夫してくれておりますけれども、こうした対策を活用できるだけ活用しながら、この部分に対しては注目を怠らずにまいりたい。  そのような懸念は私自身も持っております。しかし、そのためには、やはり当年度予算を早く執行させていただける状態に、そして関連する法律案の成立をできるだけ早く国会にお願いをし、用意した施策がフルに使えるようにお力添えを願いたい、心からそう願っております。
  293. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 そこで、大蔵大臣にちょっとお伺いをしたいんですが、さきのG7の蔵相・中央銀行総裁会議がございました。その中でも日本の景気に対してはかなりの期待感を含めて強い要請があったというふうにお聞きをしておりますが。御案内のように、昨年の秋、十四兆を超す経済対策を打ち出されて、公共事業を中心にかなりの伸びを期待して、それがある意味では今の景気を支えているという見方もあるんですね。ところが、反面、今の財政状況から考えますと、ここでもし息切れをした場合にどうするんだという実は心配をする声もあるわけです。大蔵省としてはどのようなお考えをお持ちか、今の段階で結構ですからお伺いをしたいと思います。
  294. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今回、ワシントンで開かれましたG7におきまして、先ほど、最初にお話がございましたIMFからの専務理事の報告がございました。その中で、特に日本の状況についてというので彼は話をいたしました。G7の各国が今、一時的であるという見方が強いですけれども、景気が下がった状態にあります。その中で日本は、先はどのように二・七、次年度は三・一というような見通しの話をしました。ただ、日本の今後の経済をより回復の軌道に乗せるためには、もう景気刺激をできるだけやめて自律回復の道を選ぶべきだという意味のことを彼は申しました。  それから、アメリカのルービン長官とお会いしましたときにも、今お話がございましたように、日本は景気が回復の軌道にあるが、ことしの後半はどう考えているかということを非常に熱心に話題にしたと思います。  私は、確かに日本の景気回復には空前の公共投資を中心とする財政の出動によって下支えされた部分が多く、今もそれが続いていると思っております。そのことは、G7の各国に共通してございます財政赤字を今度はどうするという問題がございます。特に、日本は景気が上向きだということの反面、財政赤字の面ではまたG7の中で突出して、フロー、ストック両面にわたって巨額になりつつございます。  こういうことが一つございますのと、ドイツは今度のG7を前にして、直前に公定歩合の〇・五%引き下げを行ってG7に来たのであります。このことは各国で非常に歓迎ぎみでございましたが、日本の場合には九次にわたる金利の引き下げを行いました。今はもう後のない〇・五%という状況にございます。この金利を金融緩和の方向で、今後の景気のためにこのことには余り手をつけてほしくないというのが各国の非常な注目点でもあるように思いました。  私は、日本の場合には、この平成八年度の予算を一日も早く成立させて切れ目のない景気対策を一推進したいし、金融問題については日銀の判断、景気回復を確かなものとするための万全の対応を考えていきたいというスタンス、私どももそれでよいのではないかと思っております。景気そのものにつきましては、ことしの後半これを息切れさせないためにどのようにやるべきか、財政再建の問題とあわせてもう少し動向をしっかり見きわめながら、誤りのない対策を財政、金融両面にわたって検討していかなければならないと考えておりまして、今直ちにことし後半にこのような対策が必要だという結論を出す段階には来ていないと思っております。
  295. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今経企庁でも緩やかな回復過程にあるということですから、先ほど田中長官からも御発言がございましたように、やはり設備投資やあるいは個人消費がしっかり回復をしてもらわなければ困る。その際また、先ほど雇用の問題には触れていただきましたが、私もやはり雇用の改善というのが非常に大きなウエートを占めるんじゃないかというふうに考えています。これは後ほど労働大臣にお伺いをしたいんですけれども、雇用の問題の景気に対する影響というのをこれからどうお考えになっているか。  それから、もう一つあわせてお伺いしたいんですが、設備投資の問題です。確かに、かつての景気循環の時代には、例えば電機ですとか自動車ですとか、これまでの日本の高度成長を支えてきた産業が割合、設備投資面で引っ張ってきた。今の状況を考えてみますと、果たして民間の産業の中でそういう大きな力になるような産業というのはどこがあるんだろうか。例えば、最近、半導体の問題についてはやや陰りが出てきたんじゃないかという声も実は聞かれるわけです。  それから、非常に大きなウエートを占めていると思うのは中小企業なんですが、先ほども総理からお答えいただいたように、せんだっての中小企業白書を見てもわかりますように、従来、割合に中小企業というのは先行的に設備投資がふえるという傾向があったんです。今回はどうもそれがないということになってきますと、いわゆる民間の力で何とか景気をということが外れる可能性というのを私は実は非常に心配をしているんですが、この雇用の関係あるいは設備投資の関係、その辺のこれからの見通しも含めて、長官、どのようなお考えをお持ちでしょうか。
  296. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 私は、個人消費というのは景気に明るさを与えるものだというふうに思っていますし、設備投資は力強さを与えるものだというふうに思っております。  個人消費は、御承知のように、GDPのほぼ六割を占めておりますし、いわゆる民需の四分の三近くを占めているわけで、この個人消費の動向というのは景気の動向に非常に大きなウエートを占めるわけでありますけれども、それに密接に関連するのが雇用情勢ということになると思います。  雇用情勢から見た個人消費ということになりますと、雇用者所得との関連でございますけれども、御承知のように大変厳しい雇用情勢が続いておりまして、三・四、三二二という完全失業率は、もう前川先生よく御承知のように、昭和二十八年以来比較可能な中で最悪の数字でございます。そういう厳しい中にも、有効求人倍率等を見ますとわずかながら改善されつつあると。ですから、悪化はしていない、わずかながら改善されつつあるというのが今の雇用情勢だと思います。非常にわずかながら改善されつつある。したがって、そういう面からの雇用者所得に対する影響もあります。  それから二つ目は、いわゆる春闘の賃金交渉の経過を、状況を見まして、やはり所得面で改善の方向が見られているということも挙げられると思います。さらに挙げるとすれば、やはり物価が非常に安定的にこれからも推移していくだろうということで、個人消費が活発化していく上では非常に緩やかながらも回復の動きを見通すことができるという状態にあろうかというふうに思います。  一方の設備投資でありますけれども、これも単純化して申し上げますと、先ほども総理の方からもお話がありました、非製造業よりも製造業が先行している、中小企業よりも大企業が先行していると、こういう構図で今走っている状態ですが、しかし中小企業あるいは非製造業という面から見ても、これも緩やかながらも明確にいろいろな経済指標には改善の動き、回復の動きが見られるという状態にあります。この点については、設備投資の業種別あるいはまた内容別、建物か機械かということについて、ちょっと政府委員の方から説明していただきたいと思います。
  297. 糠谷真平

    政府委員(糠谷真平君) ただいま大臣からお答え申し上げました点でございますけれども、設備投資につきまして若干補足をさせていただきたいと思います。  民間設備投資の最近の動きを業種別に見てまいりますと、製造業に比べまして非製造業の方のウエートが圧倒的に大きいという特色がございます。非製造業の中でもウエートが大きくなっておりますのは、リース業、それから電力、情報通信、卸小売、こういうことになっておりまして、製造業の中ではそういったものと匹敵するウエートを持っておりますのは電機、機械ぐらいでございます。  そういう観点から、今後の動きということでございますけれども、大企業製造業の中で大きな動きを占めますのは、やはり半導体を含めます電機、機械だと思います。委員御指摘のように、今後あるいは幾分テンポを鈍化させるという可能性はあろうかと思いますけれども、引き続き増加を続けていくと、こういうことではないかと思っております。非製造業につきましては、情報通信それから小売業、リース業を中心に引き続き増加が見込まれると、こういうことではないかと思っております。  建物と機械ということでございますけれども、建物の方は確かに不動産関係は低迷を続けていたわけでございますけれども、多少持ち直しの兆しが出てきているということではないかと思っております。  それから、中小企業の動きが鈍かったわけでございますけれども、最近ようやく中小企業につきましても業況の改善の兆しが出てきているということがいろんな指標から見られますので、今後徐々に回復をたどるのではないか、このように思っております。  そういう意味では、大企業の製造業から始まりました設備投資の回復が今後非製造業あるいは中小企業にも広がってまいりまして、全体として回復の動きにつながっていくのではないか、こういうふうに考えておるところでございます。
  298. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 そこで、大変大事な要素を持っています雇用の問題についてちょっとお伺いをしたいんです。  まず、労働大臣、さきの四月一日、二日でしたか、フランスのリールで雇用サミットが開催をされましたが、この中での論議、討論の焦点ほどこだったのか、あるいは日本はどんな役割をこれから果たせるのか、その辺についての感想がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  299. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) お答え申し上げます。  今、委員御指摘のように、この四月一日、二日、フランスのリールにおきまして雇用サミットが開かれました。これは二回目でありますが、この雇用サミットは、前回のデトロイトの雇用サミット以降のそれぞれの各国の取り組みの成果を踏まえながら、まず一つには経済成長とすべての人のための雇用をいかに確実なものにしていくのか、そして将来の雇用創出をいかに力強いものにするか、若年者や未熟練労働者等の状況をいかに改善するか、この三つが主要テーマになったわけであります。  参加の各国は、これらの討議を通じまして、社会の発展を雇用の安定と拡大に結びつけるために、財政赤字削減等による中長期的に安定したマクロ経済環境の提供とともに、経済のグローバル化や技術革新を新しい雇用の創出に結びつけるための経済社会の適応力の向上、そして若年労働者、未熟練労働者に対する特別な配慮が必要である、このことをまず基本的な認識として統一をしたわけであります。  日本役割でありますが、我が国からは中小企業の人材確保等の支援、それから若年労働者の雇用対策、ニーズに即した能力開発施策、労使の対話の重要性などについて我が国の経験を事細かく紹介をしてまいりました。  また、産業構造の変化の中で雇用の維持が困難になった場合には、例えば新たな能力開発へ国が助成することであるとか、あるいは人材確保のために新しい人材を受け入れた企業へのこれまた国からの助成、こういうものなども具体的に御紹介を申し上げながら、いわゆる失業なき労働移動を支援することが重要である、このことを指摘したわけであります。これについては各国は高く評価をしてくれました。  さらに、我が国からは、若年者、高齢者の雇用等に焦点を当てるいわゆる専門家レベル、労働大臣だけにするかあるいは通商産業大臣を入れるか、こういうこともありますが、その専門家レベルの会合の開催について日本で開催したいということを提案いたしまして、これについて各国はこれを歓迎し、そのレベル、時期、議題等については今後関係国と協議をすることになったわけであります。  これを通しての感想ということでございましたが、現在ヨーロッパでは本当に高い失業率であります。フランスあたりでは一二%から一四%という高い数字を示しておりまして、一方アメリカでは所得格差が著しく拡大しておりまして、これが深刻な社会問題になっているわけであります。  冒頭にあいさついたしましたフランスのシラク大統領は、ヨーロッパ型でもなく、そういう賃金の格差が著しいアメリカ型でもない第三極の雇用対策というものを見つけ出すべきだ、こういう指摘がありましたけれども、残念ながらその第三極の具体的な方策をお互いに決定するところまで至っていないわけであります。  我が国はこれらの国々に比べますと労働市場は良好な状態を維持しているわけでありますが、しかしながら産業構造の変化の中で将来の経済社会の見通しは依然として不透明であります。したがって、我が国としては今後とも雇用と賃金等の労働条件の両方が確保されるような社会の維持が必要だと考えています。  なお、貿易と労働基準についてということでかなり議論が激しく行われました。言いかえるなら、労働基準の低い発展途上国などについては、WTOの場でこれを取り上げてこの対応を考えるべきだという一つの指摘であります。しかし、それは考え方によりますと保護主義の台頭にもつながりますし、あるいは制裁ということも議論の中に出てまいったわけでありますが、もしもそういう国々に対して制裁を与えるというようなことになりますと、これまた片方で大変な問題を生じるわけであります。  したがって、日本といたしましては、OECDやILOで今労働基準の問題について慎重な検討が加えられている最中でありますから、その推移をまず見守るべきだ、その上で対応しようということを日本から提案いたしまして、各国もそれを了承して受け入れてくれたわけであります。  いずれにいたしましても、労働省としては、当面構造的な問題への対応に重点を置き、改正業種雇用安定法に基づくいわゆる失業なき労働移動、この支援などから成る新総合的雇用対策を強力に展開してまいりまして雇用問題に万全を期していきたい、このように決意をしておるところであります。
  300. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今、大臣の方から日本の雇用の現状も若干触れていただいたんですが、景気がある程度よくなって、例えば失業率が低下をする、また不況になると少し上がる、いわゆる従来で言う景気循環型の失業と今の失業は少し質が違ってきているんじゃないかというふうに私は思うんです。例えば、かつてアメリカがそうだったんですね。景気がよくなったけれども失業率は改善しない、こういう時代が一時期ございました。  それから、今、日本のさまざまな状況を見ていますと、例えば大企業の場合は、確かにここ三月期の決算もあるいは来年の決算も増収増益を見込んでいる企業が多いんです。ところが、リストラは引き続き続けたいという企業もこれまた圧倒的に多いんです。私どもリストラというのは必ずしも人員整理とは思っていないんですが、どうも経営者の皆さん方はリストラというと何か首を切ればいいと思っているらしくて極めて遺憾なんですが、こういう新しい経営の考え方というんですか。  それからもう一つは、最近の傾向とは言えないんですけれども、中高年層の余剰感というんですか、どこの企業もこれを言うわけです。いわゆるホワイトカラー、しかも四十代から五十代、まさに一番いろんなものの負担がかかる年代の過剰感というのを企業の経営者の皆さんはおっしゃるわけです。としますと、多少景気がよくなったからといってそういう部分の雇用が改善をするというふうには必ずしも私は思えないんです。  それから、もう一つの事情があります。それは確かに三・三%です。ところが、若い人の失業率、十五歳から二十四歳までの人たちの失業率というのは七・一%なんです。これは後ほど新卒の問題でちょっと触れたいと思うんですが、こういう五年前、十年前には考えられなかったような変化が今あるんです。ですから、単純に景気がよくなれば雇用の問題も改善するだろうという発想は私は少し甘いんじゃないかという感じがするんですが、いかがでしょうか。
  301. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、委員の御指摘のように、最近の雇用情勢というものは必ずしも景気の動向と一致をしないという面が見られるわけであります。  加えて、中高年齢者のホワイトカラー族と言われている皆さん、いわゆる中間管理職の方々、この方々についてはリストラとの関係で極めて雇用情勢が厳しくなってきておりまして、労働省といたしましても、このホワイトカラーの皆さんの新たな技術能力の開発であるとか、あるいは特段の就職支援の対策などに今全力を尽くして取り組んでいるところであります。  最近のそういう厳しい状況、これは景気循環的な問題、生産拠点の海外移転、そして製品輸入の増大や流通業等における効率化など構造的な問題が絡んできていると思うんです。したがって、その構造的な問題に適切に対処できなかったら、今改善の方向にあると言われている雇用問題も逆に高い失業率になっていく懸念を持っている。だからこそ今、改正中小企業労働力確保法であるとか、あるいは改正業種雇用安定法、こういう法律をフルに活用いたしましてそういう問題の解消を積極的に進めていきたい、このように考えているわけであります。  また、第八次雇用対策基本計画を踏まえまして、今後我が国が高失業社会に陥らないための総合的な対策、委員の今御指摘のような問題も含めまして、そういう対策について新たに検討を始めたい、そのための準備に入っていることも申し上げておきたいと思います。
  302. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 そこで、さまざまに厳しかったと言われている今春の就職の状況について、もし数字がおわかりでしたらお願いします。
  303. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 平成八年三月卒業予定の新規学卒者の内定状況でございますが、二月末時点の数字で申し上げますと、四年制大学は九一・五%、これは男子が九三・四%、女子が八五・二%でございます。それから、短期大学につきましては七二・六%、男子が七四・七%、女子が七二・五%でございます。高等学校につきましては九二・八%、これは男女別の内定率は集計いたしておりませんので不明でございます。  三月末の数字につきましては、現在、最終の集計中でございますが、前年で見ますと四年制大学では九六・三%でございますが、三月になりまして大分就職につながっているケースがふえてまいりまして、最終的な数字はこれよりは若干落ちる程度になるのではないかと考えております。短期大学につきましては、前年の数字は八八・三%でございますが、これにつきましてはやや厳しさが、数字的に落ち込みの幅がやや大きいのではないかというふうに考えております。高校につきましては、前年は九六・九%でございますが、これにつきましても最終的には若干落ちる程度ではないかというふうに考えているところであります。
  304. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 そこで、今労働省の方から数字をお聞きしたわけですが、やはり気になりますのは、特に女子学生の超氷河期なんという言葉が平然と横行しているんですね。十年前になりましょうか、雇用機会均等法というのが施行されたんです。本来は、もう十年もたったら、男性だからあるいは女性だからということで就職のこういう極端な数字の差、極端と言えるかどうかわかりませんけれども、少なくとも男子の場合が九三、女子の場合が八五、これが何となく当たり前のような感じになって、女子学生については超氷河期だとごく平然として何の不思議もなく使われているんですね。私はこれはちょっとおかしいんじゃないか。  確かに労働省で今見直しの作業が進んでいると思うんですが、この雇用機会均等法の見直しの問題について、今どんな状況になっているのか。  それから、私はこういうやり方は余り好きではありませんが、ある時期、例えば採用とか募集に差別をした企業に対しては罰則を科すと。これはずっとやれという意味じゃなくて、ある期間、定着をするまでそういうものをやったらどうか、個人的にはそういう考え方も持っているんですが、その問題についての議論がされているのかどうか。  あるいは、最近規制緩和と並んで女子の保護規定について見直しをすべきだという声がいろいろあります。私もさまざまな問題についてできるだけ条件を同じにしていくというのは基本的に賛成なんです。賛成なんですが、そのことがもたらす影響という問題についてやっぱりきちっと検証しておかないといけないだろう。例えば、今申し上げたように保護規定を撤廃すれば、今一つの例で申し上げました、例えば就職の状況だとかなんかが同じようになるという保証がされれば、これも一つの緩和の条件になるでしょう。あるいは女子の保護規定ということで議論する場合に、例えば男性との比較で時間外労働等について同じにしなさいという場合に、男性の方はそのままでいいのかという議論が当然あるわけですね。そんなような問題について今見直しの過程の中でどんな議論があるのか、できればお聞かせをいただければというふうに思います。
  305. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) ごく簡潔に御答弁申し上げたいと思いますが、今御指摘のように、厳しい就職状況の中で女子はとりわけ厳しい状況に置かれていることは事実であります。したがって、女子生徒の進路決定に当たりましては、将来の職業生活も念頭に置いて能力と適性に応じて適切な選択が行われるように全国の婦人少年室を通しまして今行動を展開しているところであります。  そして、今御指摘の男女雇用機会均等法の関係でありますが、全国の婦人少年室にはこれらにかかわる問題で年間約二万件も相談が寄せられているわけであります。すべてがこの均等法上の問題でありますから、そういう問題の具体的な提起のありましたところについては、その企業に対して厳正な指導を行っているところであります。  また一方、現在、労働基準法の女子保護規定とあわせて、今御指摘がありましたように、保護規定とあわせて婦人少年問題審議会において幅広い議論をいただいております。その議論の中では、労働基準法の改正の趣旨に沿って、保護規定についても一応一定の特別な事情のあるものを除いて廃止すべきだという議論もかなりされているやに実は聞いているわけであります。したがって、その審議の結果を踏まえまして適切に対応してまいりたいと思いますが、ただこの罰則の問題をあらかじめ念頭に置いて、罰則を設けるべきだとかあるいは設けるべきでないということは今直接は私どもは言及していないのでありまして、労使の代表から成るこの審議会で十分なコンセンサスが得られるように、その結果を尊重してまいりたい、このように考えているところであります。
  306. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 そこで、今の学卒あるいは新規の卒業者の就職の問題で、ごく簡単にお答えいただいて結構なんですが、学校を卒業して仕事がなかったという場合の保障といいますか、何もないですね。例えば、仕事についていて失業したという場合には雇用保険で保障されるわけですね。最近子供が少ないですから、しばらく親のすねをかじっていてもいいよというような家庭が多いのかもしれませんが、こういう時代になりますと、やはり何かその手だてというのは考えるべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  307. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今御指摘の問題でありますが、この学卒者の厳しい状況を踏まえまして、三月二十一日には新規未就職卒業者の早期就職に向けた対策をとるように全国の基準局や職業安定所を通しまして通達を出したわけであります。  その中身は、積極的な求人の確保。実は話が変わりますが、おととい兵庫県庁へ行きましたら、労働部とそれから職業安定所がタイアップして新規求人開拓をやっておりましたが、わずかこの半年ほどの間に新たに一万一千数百名の求人開拓をとってきているわけであります。そういう努力も片方でやっていきたい。  そして、学生職業センター及び学生職業相談室における職業相談や職業紹介を積極的にやっていくことと、この未就職学生を対象に就職面接会を五月にも六月にも実施をしようと思っているわけであります。今までこの就職面接会は大体八月以降に行っておりまして、平成六年度では五十カ所、昨年度は百三カ所で集団面接会を開きましてかなりの効果を上げているわけであります。これを今度は就職できなかった学生を対象に五月、六月に各都道府県で一斉に実施をする予定にしております。  もう一つ問題なのは、そうはいいながら大学等に求人を出した、いわゆる求人一覧表が全部配付されているわけでありますが、その大学等新卒者求人一覧表に掲載されたもののまだ就職してもらえない未充足の企業が随分あるわけであります。これは簡単に一言でミスマッチと言って済ませていいものなのかどうなのか、分析もしてみなくてはいけませんが、片方で学卒者が就職できない、大学には求人票が残ったままだと、こういう状況でありますから、引き続き求人の意思を持っていらっしゃる企業については御協力を求めまして、今言ったようなそういう集団面接会などもやっていきたい。そして、未就職卒業者を対象に職場体験プログラムを国として実施をしていく、労働省として実施をしていくことにしているわけであります。  いずれにおきましても、この未就職学卒者の関係については深刻な問題でありますから、まずはミスマッチをなくすることも含めて全力を挙げます。
  308. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今の問題とも若干関連をする部分が私もあると思っているんですが、最近企業の中で四月の採用というんじゃなくて通年採用という動きが出てきています。  実は、先ごろ経団連も、創造的な人材育成に向けてという提言の中で似たような提言をしているんですね。通年採用ということになりますと、今いわゆる三月卒業で四月の時点での就職浪人という問題と同様の問題が発生をする。今は企業の側では例えば技術者だとか何かに限定はしているようですが、もしこれが拡大をしていきますと、学校は卒業したけれどもということで、学校の卒業と就職というものが切れてしまうといいますか、分断をされてしまうというような大変大きな問題が出る可能性もあるわけです。もちろん、学校というのは何も就職をさせるために教育をしているわけではないかもしれませんが、この辺の問題について文部省はどのような問題意識を持っておられるか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  309. 奥田幹生

    国務大臣(奥田幹生君) いろいろ御心配いただきましてありがとうございます。  文部省の調査によりますと、去年の十二月末で短大それから四年制の大学含めましてまだ決まっていない生徒が十五万三千人ほどいました。その大体八割近くが女子学生であるというように聞いておったんです。私、一月に文相を拝命いたしまして、すぐに商工会議所、日経連、経団連、中小企業団体中央会、こういうところにお願いに上がって、それぞれの出先にもひとつ活発に採用していただくように、あるいは機関紙にもそのことを載せていただくようにずっとお願いをしました。三月一日現在の数字によりますと、就職の未定が七万六千人に減ったということになっておりまして、非常に関係者の御協力に感謝をしておるんです。  今、先生お話しの通年採用、それから加えまして九月採用という会社もあるようでございます。両方合計いたしますと、経団連の調査で一部上場の企業の中ではそれが一三%にまでふえてきた、非常に結構なことだと、そういう通年採用でございますと就職浪人がまたそこに常時チャレンジすることができますから、文部省としましてもそれは歓迎をしておるところでございます。  ちょっと話が長くなりますが、実はおととい、就職指導ガイダンスというのが東京大学の安田講堂で今年度初めて開かれました。そこへ私も行きまして、日経連の代表あるいは大学の就職指導課長さんクラスの方が大勢集まってそれぞれ情報交換をやっておられましたので、私もお願いをしてきたというような状況でございます。
  310. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 次に、規制緩和の問題についてお伺いをしたいと思うんです。  三月の末に政府の規制緩和のいわゆる見直し、改定の発表が行われました。これまで予算委員会等の議論の中で規制緩和のあり方についてよく議論されますのは、公的規制についてはとにかくできるだけ見直しをして緩和していこう、あるいは廃止していこう、その中でも特に経済的規制についてはできれば全廃したい、しかし社会的規制については必要最小限度にとどめたい、よくこういう線引きをしていろいろ議論がされるんです。規制緩和というのは、もちろん行政の側あるいは官庁の側にあるさまざまな規制についてはできるだけこれを撤廃して、あるいは手続や許認可等々を簡素化するということは私は大賛成であります。  ただ、考えていただきたいと思っていますのは、規制緩和というのは、場合によっては力のある者と力のない者とのバランスをとるために規制をしているケースというのはよくあるんですね。そういったような視点が非常に大事なんじゃないかというふうに実は思っております。  今回の規制緩和推進計画の改定に当たって、総理はさきの通産大臣でもおありであったわけですから、今回の規制緩和推進計画の改定の問題について総理としての御所見がありましたら、今の問題点を含めてお答えをいただければというふうに思います。
  311. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、基本的に規制緩和というものはこれからも進めていかなければならないものだと思います。なぜなら、我々は今、一定の限界に達しております我が国の産業を新しい分野に発展させていくということを真剣に考えなければならない時代に入っているからであります。そして、その新たな産業が立地しようとする場合、これがどういう種類の規制によって妨げられるのか、そしてその妨げる規制のルールには適正な理由があるのか、これは私は本気で調べていく必要があると思うんです。  それと同時に、一つの規制を動かしました場合に、その緩和をした結果が有効に機能するかどうか。他の分野によって影響される、言いかえれば省庁の壁を越えて一つの方向に向かった見直しを進めないと、せっかく一部で改善してもトータルでは役に立たないというケースがあります。  今回の規制緩和の中で、住宅関係などは典型的な例かもしれません。従来と発想を全く変えました。その結果、国内ばかりではなく、海外からの輸入住宅にも道を開くことになりました。しかし、気がついてみますと、水道等の地方にあります規制をあわせて変更しなければ、これが生きないということに気づきました。これはある意味では分権に逆らうことかもしれませんが、地方自治体にも協力を得て、これを一つのルールに組み込んでまいりました。  ところが、最後に出てまいりましたのは実はワーキングビザ発給までの期間でありまして、例えば輸入住宅の関連の資材は入ってきましても、それを建てるための技術の指導者が一緒に入らなければ結果としてロスタイムが生じる。保管料等を考えるとコストが上がってしまう。ビザまであわせて組み立てて、ようやく一つの目標を達したというようなものもございます。  従来、必ずしもこういう発想を十分とってまいりませんでした。各省庁はそれぞれの所管の分野における、みずからの分野の規制の緩和という視点だけで動かしてきた面は確かにあったと思います。ですから、目的意識を持って動かしていくという作業が必要になる。これは間違いありません。  また、私は、議員が言われました光と影ということに当たるのか当たらないのかわかりませんが、問題意識として申しますならば、例えば大店法の緩和、廃止ということが声高に主張をされてまいりました。そして、大店法の規制の緩和は今日までに三回行われました。しかし、廃止という目標はまだ達成をいたしておりません。  ところが、これが一方では価格破壊という、先ほどの議員のお言葉をかりるなら消費者に喜ばれる方向、しかし同時に零細な商店の閉店、倒産を各地で招き、商店街がくしの歯の欠けるような状況を来している遠因であることもまた事実であります。  国民が、なお大規模店が普及し、その中で価格競争が行われ、より安いものを入手することを求められるのか、あるいは身近な商店が生き延びる道を選ぶべきだと私たちにおっしゃるのか、見直しの期間内、私はこれを注目しながら通産大臣当時見ておりました。  一つの例でありますが、今日も同様の問題意識を持ちながら規制緩和というものは進めてまいりたい、そのように思います。
  312. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今、総理の方からもお答えをいただいたんですが、規制緩和に伴って、経済構造を含めましてさまざまな分野を新しい仕組みに切りかえていく過程では多少の痛みはお互いに我慢しなければならないだろう。ただ、政府あるいは政治がやる場合には、強い者を助けて弱きをくじくでは困るわけですね。やはり弱い人たちに対しては最低限の規制というもの、あるいは保護策というものは場合によっては必要なんじゃないか。これは企業に対してももちろんそうです。  今、総理からも触れられましたが、大店法のこれ以上の緩和が、緩和した結果がどうなるのかということをきちっと検証せずに、ただ緩和あるいは廃止ということだけが声高に叫ばれるというのは、私は正直に言って問題があるんじゃないか。きちっと検証した上でこれは大丈夫だということでゴーサインを出してもらうということが必要だろうと思います。  例えば、ガソリンスタンドもそうですね。最近、特石法が廃止になりましてガソリンの輸入が自由化をされる。けさ新聞では、輸入したガソリンまで元売の方へ結果的に売ったから余りメリットはないよという話もちょっとニュースでは見ましたけれども、少なくとも、例えば大手のスーパーがそういう産業へ参入をすると周辺のガソリンスタンドは軒並み閉店の憂き目に遭うんじゃないかと言われているわけです。  これが本当に規制緩和によって消費者が喜ぶということ、回り回って国全体にとってプラスになるんだろうかという、そういう検証も私はきちっとしていただかなければならないというふうに思っています。後ほどまたこれらの所管であります通産大臣から、もし御所見があればお伺いをしたいと思うんです。  もう一つは、個人といいますか消費者の立場から見て、先ほども申し上げましたが、例えば大手の企業が、スーパーの場合でもそうですが、安いものを供給できるような仕組みができましたと。じゃ、地方はどうなんだろうか、あるいは過疎と言われるところはどうなんだろうかというふうに考えてみますと、そこにまた新たな格差が生まれるということになりはしないだろうか。恐らく大手のスーパーが山間の山奥でスーパーを開くとは私は思えないんですね。どうしてもやっぱり大都市圏に集中をする。そうすると、地方の人たちはその分新たな格差に悩むということになりはしないんだろうかという心配があるんです。  ですから、規制緩和の場合には、さまざまなそういう視点をきちっと踏まえた上でやっていただきたいというふうに考えておるわけですが、この辺の問題について、特に具体的な消費者等に関連の深い通産省の方、通産大臣の所見がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  313. 塚原俊平

    国務大臣(塚原俊平君) 私が初当選しました昭和五十一年はまだどちらかというと保護が大変強い時代でございました。それから二十年のうちに振り子がぐんと規制緩和の方に一気に行ってしまったということでございまして、非常に戸惑っている方々がたくさんいらっしゃると思います。ただ、総理から御答弁がありましたように、どうしても規制緩和は産業界がこれから生きていくために通らなければならない重要な道筋であります。  ただ、余りの急激な状況の中で、総理も具体的な例を挙げられましたが、例えば高齢でじいさんばあさんでやっている商店がついていけるかということになると、それは大変厳しい面が出てくると思います。  通産は確かに中小小売・製造業も含めてやる気のある方々というものに対しては全面的な支援措置を、今これは先生方の御指導もいただいてつくっております。ただ、やる気がもう出なくなつちゃうような方々というのも当然いらっしゃるわけでございます。そういう方々につきましてもやっぱりきめ細かい配慮をしていかなければいけないわけでございまして、地方通産局並びに県の商工労働部等の協力をいただきまして、私どもできるだけきめ細かな配慮というものをいたしてまいりたいというふうに考えております。  それからまた、大店法のお話も総理の方からございました。これは非常に陳情が多いところでございまして、緩和をしろという陳情もあれば緩和をするなという陳情もございます。そういう状況の中で、緩和をするなという陳情の方々のところにお話をしているのは、平成九年に見直しをいたすわけでございますが、今の状況からいって、やはりどう考えても今より大店法の規制を強化するという見直しになるのはなかなか難しいと思いますと。  ところが、商店の方々は、何で自分の経営が苦しいんだという状況を考えたときに、それはいろんな要素があるわけですけれども、一番最初に大店法ということをお考えになります。ですから、大店法が平成九年になったらもっと規制がきつくなるんじゃないかということをもし期待をされるとすると、そこはやはり戦略を誤るということになりますので、役所からは余りそこは言うなと言われているんですが、必ず陳情のときには、今より大店法の規制がきつくなるということはないですから、何とかそれで戦略を立ててくださいというようなお話を現在私はさせていただいております。  いずれにいたしましても、そういった状況の中で、今の地域で安売りのスーパーができるところとできないところという部分も当然あるわけでございまして、そういった点につきましても十分に私ども配意をいたしながらこれからの行政に当たってまいりたいというふうに考えております。
  314. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 これからの施策に当たっては、総理あるいは通産大臣が今お述べになったそういう考え方というのはやっぱりきちっと踏まえてやっていただきたいということを要望しておきたいと思います。  そこで、構造改革あるいは規制緩和に伴って新しい産業も興していかなきゃならない、いわゆるベンチャーですね。今ベンチャーについてはさまざまな分野議論をされているわけですが、私はこれからの雇用の問題を考えましても、新しい産業を興すという意味では大変有望な、あるいは有力な一つの手法であり手だてだろうというふうに実は考えております。  特に、大企業のリストラというのはまだこれからも続くのじゃないかという懸念が当然あるわけですから、そういう意味でベンチャー企業の育成ということはぜひやっていきたい、やってもらいたいというふうに考えています。そこで、さまざまな規制がここにもかかっているわけですから、そういう規制はやはり外していくということが必要だろうというふうに思っております。  建設省にちょっとお伺いをしたいんですが、建設省の場合もたくさんの住宅やあるいは公共工事を含めまして規制があると思うんです。  実は、ある企業から私も苦情を持ち込まれたわけです。特許をとった工法なんだそうですが、給排水のパイプの中の赤さび、これを除去する工法というのを開発した。これは特許をとったんですけれども、建設省のお墨つきをもらわないと公共工事にはなかなか入れない。それで、第三者機関、日本建築センターですか、それと建築保全センターというところへ審査証明書を発行してくれということで出した。それで、結果的に六年かかっているというんです。  それは、新しい技術を幾ら開発して積極的にそういうものをやろうと思っても、六年もかかっていたら場合によっては新しい技術も陳腐化する可能性もあるんですね、今のような製品サイクルの短い時期ですから。第三者機関がやっているんだからというふうにお答えになるかもしれませんが、私はやっぱりそれぞれの、これは先ほど通産省のことを言いましたけれども、ほかの省庁にも関連をするわけです。これは通産省だけの問題だというんじゃなくて、それぞれの省庁が持っている権益とか、第三者機関あるいは財団法人等に与えているそういう権限というものもこの際思い切って見直しをしてもらって、むしろそういう部分こそ私は規制緩和をしていただきたいというふうに考えるんです。  簡単で結構ですから、総理あるいは建設大臣、もし所感がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  315. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 前川委員にお答えをさせていた、だきます。  先ほどから経済論議を聞いておりますと、本当にもう私の言いたいことをすべて言ってくださったようなものですから、ほとんど私もこのまま去った方がいいんじゃないかと思うくらいでございます。  ただ、ベンチャーの話が出ましたのでちょっと申し上げておきますが、産業構造というのは、どうでございましょうか、戦後から見ても、五十年間の中に重厚長大なものが栄えておった時代の産業がそのまま育成されているわけじゃない。そこに昨今、二十一世紀はベンチャービジネスの産業時代だと、こういうようなことも言われておるわけでございます。私も今それを聞いておりまして、そういえば私自身も地建を回ったときに同じようなことを言われたことがございました。  そこで、私どもといたしましては、公共工事の品質というものを確保、向上させながらコストの縮減というものを図るためには、やはり建設技術の開発普及が極めて重要ではないか、この点は全く認識は同じでございます。この観点につきまして、建設業としては、大学、民間と連携を図りながら、これまでさまざまな技術開発に取り組んできたところでございます。特に、民間技術の活用を図るためには、民間の開発建設技術の技術審査証明事業というものを行ってきたわけでございます。  恐らく今のさびの問題などはそういうもので、今までの規格からするとちょっとひっかかっている点もあるのではないかというように類推するわけでございます。しかし、それだけにこれは民間における研究開発の促進及び新技術の建設事業への適正かつ迅速な導入を図るために、民間において自主的に開発されました建設技術の内容について、建設大臣が認定した機関において審査証明を行うということになっておるわけでございます。  そこで、本事業が公正、透明に運用されるように、認定機関を指導することによりまして適正な運用に努めて、ベンチャー事業の育成についても積極果敢に二十一世紀をにらみながらこれを考えていかなければ、新しい産業分野としての大きな主軸的な役割がなくなっていくだろう、こう思いますので、委員の御指摘のとおりの方向で迅速にこれはいろいろと研究していきたい、こう思っている次第でございます。
  316. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 建設大臣としてお答えするのはそれが限界だと思うんですが、私は内容を実はかなり詳しくお聞きをしております。  細かく精査、点検したわけじゃありませんので余り極端な言い方は避けたいと思いますが、この六年間に、これは開発したのは本当に小さい会社なんですね。ところが、この審査をやっている過程の中で、ほとんど似たような工法を実は大手が開発して申請してしまったというケースがあるんです。こういうことでは、ベンチャーを育成するといっても口先だけということになりかねませんので、私は、一つでもそういう事例がありますと全部がそうだというふうに言われかねないんで、ぜひ心してやっていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。  最後に、労働時間の問題について申し上げたいと思うんですが、これは答弁は結構でございます。  といいますのは、来年の四月から労働基準法本則に基づく週四十時間制が施行されることになっております。御案内のように、中小企業団体からは何とかもうちょっと延長してくれないかという要請を私ども受けております。と同時に労働団体の方からは、何とか来年四月一日からいわゆる本則に基づいてやってくれと、これは政府の時間短縮の基本にかかわる部分じゃないかという要請があります。  私は、かつて労働組合に籍を置きましたから、労働団体の主張はもっともだ、と同時に、逆に中小企業の立場に立ってみますと、確かに今の状況から考えて大変だなというふうに率直に思います。さまざまな施策を実は労働省にもとっていただいていることは私も十分承知をしております。  あわせて、国全体の仕組みの中で考えていただかなければならないのは、先ほど中小小売店の話が出ました。例えば、大手のスーパーが元旦営業をことしから始めましたね。元旦営業をやったら近辺の小売店はどうなるんだという問題があるわけです。大型店は、例えば人のやりくりをしながら一日の営業時間を長くする。個人商店はそれができないわけです。あるいは小規模の店はできないわけです。そういう問題もきちっと規制してもらわないと、ただ単に小売店だけ、あるいは中小、小規模のところだけ責めても実は仕方がないんです。  さらに言えば、例えばこれは通産の所管だと思いますけれども、相変わらずまだ金曜日に発注をして月曜日に納入しろというようなことが平然と横行しているんですね。こういう問題もあわせて解決をしないと、ただ時間短縮をしたら補助金を出します、奨励金を出しますだけでは私は問題は解決しないというふうに思っています。確かに中小企業にとっては大変厳しいかもしれませんが、やはり法で決めた以上はきちっと実施をするということに政府としても決意をしておいていただきたい。  あわせて、あと一年あるわけですから、その間に考え得るさまざまな手だてについてはきちっととった上で、法の施行について労働省としても取り組んでいただきたいということを最後にお願い申し上げ、実は最後に労働時間の問題を持ってきてもう少し短縮をしようと思ったんですが、わずか一分しか短縮できませんで、大変申しわけありません。質問を終わります。  ありがとうございました。
  317. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で前川忠夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会