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1996-04-22 第136回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月二十二日(月曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月十九日     辞任         補欠選任      武見 敬三君     馳   浩君      林  芳正君     真鍋 賢二君      三浦 一水君     橋本 聖子君  四月二十二日     辞任         補欠選任      橋本 聖子君     石井 道子君      馳   浩君     岩井 國臣君      三重野栄子君     一井 淳治君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         井上  裕君     理 事                大河原太一郎君                 斎藤 文夫君                 清水 達雄君                 塩崎 恭久君                 泉  信也君                 白浜 一良君                 都築  譲君                 山本 正和君                 有働 正治君     委 員                 阿部 正俊君                 石井 道子君                 板垣  正君                 岩井 國臣君                 久世 公堯君                 河本 三郎君                 鴻池 祥肇君                 坂野 重信君                 関根 則之君                 谷川 秀善君                 野沢 太三君                 野村 五男君                 橋本 聖子君                 馳   浩君                 服部三男雄君                 真鍋 賢二君                 依田 智治君                 荒木 清寛君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 大森 礼子君                 加藤 修一君                 小山 峰男君                 鈴木 正孝君                 直嶋 正行君                 益田 洋介君                 横尾 和伸君                 朝日 俊弘君                 一井 淳治君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 川橋 幸子君                 前川 忠夫君                 緒方 靖夫君                 筆坂 秀世君                 小島 慶三君                 島袋 宗康君    事務局側        常任委員会専門        員        宮本 武夫君    参考人        農林中央金庫理        事長       角道 謙一君        社団法人全国信        連協会会長理事  杉浦與曽松君        住友不動産株式        会社取締役相談        役        安藤 太郎君        株式会社共国債        権買取機構取締        役社長      金澤  彰君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○平成八年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成八年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成八年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     ―――――――――――――
  2. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、平成八年度総予算三案の審査のため、住宅金融専門会社問題について参考人方々から御意見を承ることにいたしております。  まず、午前中に農林中央金庫理事長角道謙一君、社団法人全国信連協会会長理事杉浦與曽松君から意見を求めることといたします。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  当委員会におきましては、目下、平成八年度総予算に関する審査を進めておりますが、本日は特に参考人方々から住宅金融専門会社問題について御意見を聞くことになった次第でございます。  質疑に入るに先立ち、委員各位に申し上げます。  本日は、申し合わせの時間内で参考人に対し質疑を行うのでありますから、特に御協力をお願い申し上げます。  また、質疑時間が限られておりますので、参考人答弁は要点を的確に簡潔にお願いいたします。  それでは、参考人に対し質疑のある方は順次御発言を願います。野村五男君。
  3. 野村五男

    野村五男君 私は自由民主党の野村五男であります。  農協系統金融を代表されております角道理事長さん、そして全国信連協会会長であります杉浦会長のお二人に、参考人として住専問題に関連いたしまして忌憚のない御意見を伺わせていただきたいと思っております。  実を申しますと、ここまで来る間に、我が党の予算委員会のメンバーの方々からいろいろな質問なりが出てまいりました。自民党の予算委員の中には、農林関係のスペシャリストや実際に信用組合を経営される方、あるいは日銀におられた方、県議であった方、そしてまた役人の中で最高の地位まで上り詰めた方たち等、いろいろな立場から御質問をされてきたわけであります。  そこで、私はこのたびお二人に国民の目線に合わせた質問をさせていただきます。  まず、認識についてお伺いしたいのでありますが、地元へ帰りまして、このたびの住専、このたびの社会構造自体がどのようになったのかと言われたときに、私はこのように説明をすることにしております。  きょう初めてお二人にお会いするわけでありますから、その点を、志というか、あるいは意見が同じであるかどうかということをまず確かめてみたい感じがするわけでございます。  日本経済が、高速道路に例えるならば、時速四十キロ、五十キロ、六十キロと順調に進んできたときに、一番我が国で信頼されておりました大蔵省そして日銀時速百五十キロに行ったときに、突然一番先を走っている大蔵省が物すごく強いブレーキを踏んだのであると。そのショックで次々にその後ろにいた銀行、系統不動産業並びにありとあらゆる建設業、そして最後国民までが追突事故を起こしてしまったんだろうと、私はそのように説明をすることにしているんです。そして、ジャパン・プレミアムの問題もあります。しかし、最終的にはこの一番最後に走っておられた国民方々の税金も投入をして解決しなくてはならないほど非常事態が訪れてしまったのであろうと私は一考えております。  忘れもしません。今から三年前でしょうか、四年前でしょうか、私は細川内閣のときにこの席でこう質問したことがございます。細川総理と、三重野さんがこのまま日銀総裁であって本当に大丈夫なんでしょうかと。余りにも世の中が壊れ過ぎてしまうのではないかと心配をして私はここで質問した経緯がございます。もちろん、そのとき全然取り上げられることはなかったのですが、私は危惧をしておりました。  と申しますのは、もうそのときに体で言うならば大分傷んでおりました、日本経済は。しかしながら、例えば悪いかもしれませんが、まだ糖尿病であったかもしれない。そこへ、いきなりインシュリンを十本打ったような強烈なブレーキを踏んできた、そしてずっと踏み続けてしまったと。実に厳し過ぎる。土地本位制であった日本総量規制という強いブレーキで、現実的にはバブルに何も関係のなかった日本の隅々の方の土地に対する考え方を変えさせてしまった。いきなり評価も違ってしまった、そういう戸惑いが今日あるのだろうと私は思うのであります。  そこで、御両人に現在のお立場からこの日本の置かれている現状をどのように考えられているのか、まず角道参考人よりお聞かせ願いたいと思います。
  4. 角道謙一

    参考人角道謙一君) お答えを申し上げます前に、私は農林中央金庫理事長でございます。  今回の住専処理問題に関しまして、本来、住専母体行、系統など当事者間で完結すべき問題でございましたけれども関係者間で合意に達することができませず、世間をお騒がせし、国民皆様方に御心配をかけ、また御迷惑をかけ、解決につきまして政府・与党、さらには国会の御審議まで煩わせるに至りましたこと、私ども非常に心苦しく申しわけなく思っております。答弁の前に所見を述べさせていただきたいわけでございます。  ただいまの野村先生からの御質問は非常に難しい問題だと思います。基本的にはやはり日本経済がこの数年間で非常に大きな構造改革、むしろ戦後の経済の総括といいますか、そういうような形で急激な転換を強いられた。その原因がどこにあったかということで、先生御指摘のとおり、大蔵省あるいは日銀というものに責任があったのではないかというようなお話でございますが、財政、経済のかじ取りあるいは金融政策責任者という意味では、やはり大蔵省なり日銀なり政府御当局のいろいろな御判断があったということについては私どももそのように考えております。  しかしながら、経済動向は行政府日銀だけでなしに、企業、その他の消費者あるいは労働者、そういうものの動向を見ながら経済判断あるいはいろんな金融判断等をやられているわけでございますので、あながち政府あるいは日銀に非常に大きな責任があるということだけでは済まないのではないかというふうに考えております。また、私ども系統にいたしましても、そういう意味構造改革構造変化というものを予見できなかったということにつきましては私ども自身も反省をしなきゃいけないというように考えております。  いずれにしましても、かつてないこういう経済変化の中でありますので、私どもも過去の経験を生かしながら、将来に向けてこれから厳しくやっていかなきゃならないというように考えておる次第でございます。
  5. 杉浦與曽松

    参考人杉浦與曽松君) お答えを申し上げる前に、一言ごあいさつさせていただきたいと思います。  私は全国信連協会会長杉浦でもございますし、愛知県信連会長も務めさせていただいておるわけでございます。諸先生方には、常日ごろ農業及び私ども系統信用事業運営に当たりまして特段な御理解と御支援を賜っておるところでございまして、この機会に厚くお礼を申し上げたいと思います。また、本日は私ども考え方を聞いていただける機会を設けていただき、重ねてお礼を申し上げます。  お答えする前に、まず私ども全国信連協会の役割や業務について申し上げたいと存じます。  私どもの主な業務は、各信連等の会員の意見調整や集約を行うほか、業界代表としての必要なる業務を行っておりまして、具体的な貸し付け等のいわゆる金融業務は行っておりません。したがいまして、事業を行う他の全国段階系統組織とは目的や性格は異なっておりますので、この点につきまして御理解を賜りたいと思います。  とはいいながら、系統といたしましての立場は基本的には農林中央金庫と全く同一でございまして、系統内は一致して対応しているところでございますので、この点の特に御理解を賜りたいと思います。  それでは、先生お尋ねお答えをさせていただきたいと思いますけれども、基本的には理事長が今御案内を申し上げたと同じ考え方でございますので、よろしくお願いいたします。
  6. 野村五男

    野村五男君 それでは、いろんな問題点について、時間が許す限り十二問ぐらいお聞きしていきたいと思っております。  まず、農協系統主張根拠についてお伺いをするものであります。  実は金曜日にここへ全銀協の橋本理事さん、そして玉置地銀協会長のお二人を参考人としてお呼びしました。突き詰めていきますと、お二人とも債権全額放棄とか平等の権利ということを主張されておりました。もともと私どもはそんな生易しいものではないという判断に立って質問をしているわけでございますが、このときのスキームについて、農協系統主張根拠について角道参考人にお伺いしたいと思います。
  7. 角道謙一

    参考人角道謙一君) お答え申し上げます。  住専問題につきましては、非常に長い経過なり、あるいはお互いの主張等があったわけでございまして、私ども主張を御運解いただく上で若干時間をとるかもしれませんが、経過等につきまして簡単に御説明申し上げたいと思っております。  昭和四十年代、ちょうど列島改造期のころに母体行がみずからの住宅補完機能、補完するという意味で、そういう目的住専を設立し、主要な役員、これは常勤役員のほとんどは母体行から出しております。また、主要な職員を派遣しているということで、住専経営を実質的に支配してきたという実態がございます。  また、昭和五十年代には、ちょうどオイルショックの後でありまして、経済高度成長から低成長に移った。また、金融自体につきましても間接金融から直接金融へ移っていった。企業融資も減ってきた。そういうような状況の中で、母体自身がみずからリテールの方に踏み込んでいった。その間、本来であれば母体自身子会社であります住専との関係住宅資金の問題につきまして調整を行うべきであったんではないかというように思っておりますが、そういうことを思わないままで、母体行がみずから住宅ローン融資業務に参加し拡大していって、そして侵食していった。  そういうようなことがございまして、住専自身が、昭和五十年代の後半から六十年代あるいは平成の初めにかけまして、みずから生きていくために不動産業建設業向け企業融資にシフトをしていった。その結果、経済成長が続いているうちはよかったわけでありますが、バブルが崩壊した途端に急激に経営不振に陥ったというのが今までの経過でございます。このため、私ども平成三年の下期から五年度にかけまして、母体行、住専お話し合いをいたしまして、第一次再建計画、第二次再建計画というものを母体行、住専から私どもの方に提示があり、これについて協力を求められたわけでございます。  系統といたしましては、そういう状況から見まして、また先行き私どもも非常に不安がございましたので、この住専母体行につきましては、系統については迷惑をかけないということを非常に強く要請をしておりましたし、また母体自身もこういう再建計画については責任を持って対応していくんだというようなお話がございました。また、主務省からも、特に第二次再建計画につきましては計画に沿った指導をしていくというようなお話もございまして、私どもとしては、母体行のそういう主張、こういうものを信頼いたしまして残高維持あるいは金利減免というものに十分応じてきたというのが今までの経過でございます。  それにもかかわらず、この関係者合意から一年たちました昨年の夏ごろからでございましょうか、急に住専母体行の方から一方的に再建計画を放棄するというようなことがございまして、この間、利払いなり元本償還等もございましたけれども住専側からは将来の不安については何ら説明もないと。計画どおり利払い元本償還が行われたというので、私どももそれを信頼していたわけでございます。  こういうような経過を経ますと、やはり住専についてはその設立の経過なり経営実態、あるいは金融制度上の位置づけであるとか経営悪化原因及び再建計画経過、さらには金融機関信義誠実原則、あるいは住専の不良化した巨額な債権につきまして相当程度母体行あるいは一般行紹介等があるというような実態等を踏まえますと、これは金融問題でございます。また住専経営問題である。  そういう意味で、住専母体行の経営責任というものをはっきりすること、そして母体行がその責任最大限に果たすこと。具体的に申し上げますれば、整理に伴います負担最大限母体行が負担をするということが本来の自己責任原則に基づく対応のあり方であるというように考えております。  また、この母体行の責任といいますのは、一般企業におきましても親会社子会社経営責任問題に責任を持って対応するというのが我が国企業慣行であります。また、金融機関につきましては、特に顧客との信義誠実というものの原則の上で、これを基盤として信用を主にする業務を営んでいるわけであります。公共性も高い、また社会責任も重い存在であります。自分の子会社であります住専問題につきましては、最後まで責任を持って対応するのが本来の姿である。また、子会社でない場合でも、メーンバンクということで取引先のお世話をする、経営破綻の場合でも責任を持って対応する、これがむしろこれまでの金融機関責任であり、本来の業務であったというのが日本金融慣行だったと考えております。  そういう枠から見まして、私どもとしては、母体行につきましては本来この住専問題について経営問題として最後まで責任を持って処理していただくということが基本的な仕組みになっているわけでございます。
  8. 野村五男

    野村五男君 おおよそは今、角道参考人の御説明でわかります。  私どもがここに立ってこれを強く、今予算も大詰めに来ておりますが、その頭の中には、心の中には、ここまでまじめに、あるいは日本文化そのものが入っていると思うんです。農民のいわゆる蓄財と申しますか、そういうものがどんどんたまってきて、しかも私たち農民のこのたびのスキームについての怒りみたいなものを感じるものですから、代弁するわけではないんですけれども、このスキームの中に入るなら、角道参考人ももっと怒りを持ってこういうスキームの中に入るのはおかしいんではないかということを言うべきであったろうと。  それから、私はずっと経緯を調べできますと、系統はやっぱり被害者だろうと思います。しかし、こういうスキームに入った途端、いつの間にか貸し手側責任になってしまうような、だんだん流れが変わっていくということが実際に見受けられるのではないか、私はそこを非常に心配しているわけなんであります。  そして、やはり五兆五千億円などという幾らバブルの時代とはいえ余りにも多額な金を住専というものに出してしまう経過を見た場合、貸し手側責任としても相当これは問われるべき結果にもなっているんだろうと。そして、この現実において角道参考人は、いわゆる農協系統貸し手としての責任についてはどのように考えているのかお伺いします。
  9. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 住専問題につきましての母体行なり住専に対します系統考え方というのは、野村先生が今おっしゃったとおりでございまして、私どもそういう意味で非常に激しい態度で昨年来、母体行あるいは住専と話を続けてきたわけでございます。  それに対しまして母体行、住専はもう当事者能力がなくて専ら母体行の方に移っておりましたが、母体行としては私ども主張に耳を傾けない。極端なことを申し上げますと、あなた方は母体行だろうということで、先ほど来申し上げました母体責任というものを追及してまいりました。それに対して、例えば再建の場合には母体行は責任を持ちますよと、母体行であることは最後には御了承、御認識をされたわけでありますけれども母体行としては再建の場合には責任があるんだ、しかし整理、清算の場合には母体行の責任というのはなくて、いわゆる一般債権者と同じような責任しか持たないよというのが基本的にこの交渉の最初のスタートだったわけであります。  再建の場合には責任を持つというのは、有利な場合、利益が出る場合には母体行は責任があるよと、しかし損をすれば一般債権者と同じような程度しか責任を持たないと、これは余りにも手前勝手な考え方ではないかということで私ども強く主張をしております。  特に、先ほど申し上げましたように、親会社あるいはメーンバンク、こういうものが子会社経営責任を持つというのは当然でありますし、そういうものが日本の場合、確立された金融慣行であり商業慣行であるという点を非常に強く申し上げてきたわけであります。非常に激しい論議も繰り返し、また面談も相当期間やったわけでございますが、残念ながら結局、私ども主張については耳も傾けないというようなことがあったわけでございます。  そこで、貸し手責任がどうかというふうな今お話がございましたが、実は、母体責任に対置される意味貸し手責任という言い方はございますけれども、これは非常に言葉として誤っている。本来ならば貸し手責任というのは、金融機関お金を貸した場合、相手方に対しまして非常に不利益を生じさせた、その場合に貸し手責任というものが生じてくるわけであります。これはレンダーズライアビリティー、確立された法理でもコントロール理論といいますか、母体行の責任というのは貸し手責任であるということで言われておりますし、また子会社親会社が同時の場合には法人格否認というような形で母体行の責任を追及される、これが本来の姿であります。  したがって、貸し手責任というものをこの場合で申し上げれば、やはりこれは母体そのものが持つのが貸し手責任であると。私どもはその経営に対して経営責任を持っているわけではありませんので、それを踏まえました。  ただ、経営破綻をした場合の残余財産の配当、そういうものについて私どもとしては同じような立場、同一事業者の間では同じ負担を受けるということはよく理解をしておりますし、そのようなリスク負担を私どもも思っていると。  今お尋ねのように、非常に巨額の金を住専に貸し付けたのではないかということにつきましては、確かにこういう大きな経済変動というものにつきまして私ども予測ができなかった。そういう意味で、私ども信用事業運営あり方等につきましてはやはり反省すべき問題点が非常に多いというように考えております。
  10. 野村五男

    野村五男君 ある人が、これはお金の話ですけれどもお金を貸すということは芸術よりも難しいと言った人がいる。今この住専の問題で新聞やテレビの報道を見ますと、約八割の方が大変御不満に思っているというニュースを見るときに、私は一つはこれがあると思うんです。やはりどこかに、エイズの問題でもそうなんですけれども、何か責任が明確でない。だれの責任なのかよくわからないということと、まあ言葉は悪いですけれども、逮捕されるのが民間の人ばかりで官の人は一体どこへいってしまったんだろうか、これだけ経済を壊しながらと。  実は、この住専の問題について農林関係方たちが、いいところはみんな母体行や一般行が持っていってしまったと。だから、早く言えば三次抵当、四次抵当というんですか、そこへこういうバブルで消えましたものですから、実質上非常にまずい部分だけという話を聞かされたとき、非常に残念なんです。と申しますのは、私が感じますのは、農業とか系統関係にはいわゆるお金に関してのプロがいなかったのではないだろうか、それは目的が違いますから。  そこで、今考えられることで質問するんですが、実は担保、当時これだけのお金が出ていくわけですから、農協系金融のいわゆる審査及び担保、その辺についてどうだったのか角道参考人からお伺いします。
  11. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 一般的に申し上げる前に、金庫の住専向け貸し出しについての審査なり担保のとり方、これは一般信連の場合も私どもと同じようにやっておりますので、これについてお話を申し上げたいと思いますが、住専向けの貸し出しの場合は、一般事業法人などの貸し出しと同じように営業部店でやはり第一次の審査をする、さらに本店、本部におきまして審査あるいは営業の観点からも二次審査をする、そういうような二審制の審査体制をとってきております。  したがいまして、貸し出し審査の場合にも、貸し出し先の業況であるとか、資本あるいは役員等の派遣の状況から見た系列の関係、あるいは融資債権の保全の条件というものを総合的に勘案いたしまして判断するものでございます。住専の場合についても全く同様でございます。  また、日ごろから業態の業況や事業計画等を把握しておりますし、借り入れ申し込みの際には書類等で十分収益性あるいは債権の保全の可能性、こういうものにつきましても確認をしてやっているわけでございます。  加えまして、住専業務は確かに今でこそこういう状況でございますが、当初におきましては住専業務国民に広く住宅の供給を行うという公共性、社会性の非常に高いものでございました。また、住専そのもの金融制度調査会におきましても、国民への住宅の供与の上で育成が望ましいということでございまして、制度金融の面からも大蔵省も直轄会社として指定をしている、監督をしていると。  また、住専につきましては、先ほど来申し上げておりますように、都銀など母体行の住宅金融業務の補完を目的とされた母体行の金融公社である。また、母体行も主要役員をほとんど派遣して業務運営に参画をしている。そういう意味では、バブル崩壊前におきましては、母体行のこういう高い信用力を背景として非常に大きな強い信用力を持っていたということが一般事業法人に比べてあったというふうに私ども理解をしております。信連につきましても、やはり同じようなことで審査に臨んでいたんではないかというふうに考えております。  また、今担保についてお尋ねでございましたが、住専の場合、一般的にこれは銀行なんかも同じでございますけれども住専の所有します住宅資金債権、これを譲渡担保とする形で各融資機関が準共有の形で管理をしておりますし、これはリースないし信販、貸金業者の貸し付け、それから担保徴求としては一般的な方法でございまして、住専におきましては全部同じような方法をとっております。  この譲渡担保債権につきましては、母体行が幹事行となりましてすべての融資金融機関が協定書を結ぶ。それに対しましておのおのの貸出額に応じて担保を準共有する、こういう協調保証方式をとっておりまして、これが対象となる債権担保が非常に膨大であるということから、幹事行となっている母体行は一元的に担保管理をする、こういうようなことでございます。これは私どもの場合も全く同じような手続でこれに参加をしておりますので、通常の場合でもこの担保につきましては、私どもとしては十分な手段を尽くしたというふうに考えております。
  12. 野村五男

    野村五男君 今から考えますと六・五%の金利とか四・五%とか夢のような、しかし現実的にそこへ走ったわけでありますが、新聞報道によりますと、一月から三月、住専がどうせなくなるので、約束どおり六百億円の金利が入ってこないということが報道されております。この点について今、角道参考人はどのように考えられておりますか。
  13. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 一月期から三月期までの利子についてはどうかというお話でございますが、これにつきましては私ども、当然、三月までにはこの金融関係法案あるいは住専処理問題というのが国会で御審議をいただいて成立することを期待しておりました。したがって、政府の処理策におきましても、住専側債権債務の中には一般行あるいは系統に対します利払いというものが予定をされていたというように私ども伺っておりますし、私どもも、住専会社が完全に清算をするという段階に入るまでは、やはり契約として金利の支払いの契約を結んでいるわけでございますから、法律上は当然住専側に支払い義務があると。  また、昨年暮れの政府債権処理策が決まった後におきましても、住専は会社によって多少の差はございますけれども正常な業務を続けておる。たしか、一-三月の間でも、新規業務でも三千五百億円程度の新規貸し付けを行った。また、ニューマネーの返還であるとか、一部金利の支払い等というような業務形態をとっている状況から見ますと、また正常に債務者からは金利を取っている、こういう状況から見れば、当然住専会社には支払い義務があるというふうに私ども考えております。  そういう意味で、予定をしておりましたけれども、三月二十七、八日でございますか、各住専会社がそれぞれの取締役会等で、利払いについてはこれはやめたというのではなしに停止をすると、これについてはまた先々御相談させていただきたいというふうな話でございます。私どもとしては、それは契約に基づいて清算までは支払い義務が当然あるということで強く利払いを要求しているわけでございます。  ただ、こうして住専処理策につきましても現在まだ完全に成立をしたということでもございませんし、この四月以降の問題等も踏まえて住専ともお話し合い、母体行ともお話し合いをする機会があると、また向こうもこの段階で話し合いをしたいということを言っております。私ども立場としては、何ら変わることなしにやはり法的には請求を続けるというように考えております。
  14. 野村五男

    野村五男君 今の問題について、もちろん系統としてはこれはもらえるべきものだと思って大変強い怒りを感じているとは思います。十九日に衆議院の方で金融問題特別委員会が設置されたり、この問題も含めまして、もちろん我が参議院の側ではこの問題の行方を見ていかないと解決がつかないという感じを持って質問しているわけです。  全国信連協会による住専貸付額の調整について杉浦参考人にお伺いしたいわけです。  もちろん、信連協会は会員である信連の相互の連絡を図ることを通じ、農村金融の改善、発達を図ることを目的にした団体であると私も承知はしているわけなんですが、いわゆる信連住専への貸付額についてはその最高限度額を大蔵、農水両省に届け出ることとなっていたと承知しております。  新聞報道によりますと、これについて全国信連協会が事前に調整していたとか、特別の枠を与えていたとか言われておりますが、事実だとすれば全国信連協会の責任問題にもなると思われますが、実態はどうだったのか、杉浦参考人にお伺いしたいと思います。
  15. 杉浦與曽松

    参考人杉浦與曽松君) お答えを申し上げたいと思います。  御指摘の通達に基づく届け出、信連住専への貸付額の最高限度の届け出のことでございますが、会員に対する貸し出しに支障を及ぼさないように行政庁から把握されるものであると聞いておるわけでございます。  当時、協会といたしましては、各信連から提出をされました貸出計画を取りまとめて、最高限度として農水、大蔵省に届け出たところですが、貸し付けに当たって個別に調整するとか枠を配分するとかというような性格のものでないと承知をしております。私も当時、信連会長といたしまして、そのように理解をしておったところでございます。  以上でございます。
  16. 野村五男

    野村五男君 それでは、今度、角道参考人にお伺いしたいのであります。  第一次再建計画、そしてわずか一年ぐらいで第二次再建と移っていってしまったわけでありますが、私は先ほど申し上げましたように、住専の設立経緯とか性格や経営破綻原因などを考えれば、母体行の責任はもちろん極めて重いと考えております。母体行が住専経営責任を通常の債権者と同様にとればよいということとなれば、先ほど角道参考人もおっしゃいましたが、子会社をつくり、危ないことはすべて子会社にやらせるといった風潮が充満し、実務的に大きな混乱が生ずると思われます。  したがって、母体行は本問題について体力の限りの責任を果たすべきだともちろん思っております。ですから、十九日のお二人のお話を聞いても、債権放棄であるとか平等の権利などと言われますと、この体力の限りの責任を果たすべきというのも非常にあいまいに見えるわけであります。  まず、平成三年十月から平成四年八月にかけまして住専七社の第一次再建計画が作成されましたが、当事者間で折衝を重ねたあげく、最終的には住専各社から農協系統に対し、系統にはこれ以上迷惑をかけないとの意思表明がいわゆる文書でなされ、農協系統残高維持という協力をしたと伺っております。この第一次再建計画経緯、特に住専側からどのような協力要請等があったのかを含めて、角道理事長参考人としてお伺いします。
  17. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 第一次再建計画先生今御指摘のとおり、平成三年十月から四年八月にかけまして住専七社から私ども系統に対しまして再建計画の提示がございました。これについて私ども協力を求められたというのは御指摘のとおりでございます。  私ども平成二年から三年ごろまでは非常に好況であり、また当時バブルの崩壊というようなことも、このような地価の低落が続いていくということも予見をいたしませんでしたこともございますけれども平成三年の秋になりまして業況が少し悪くなってきた。したがって、先行き多少不安も出てまいりましたので、また一部外国銀行はこの時期資金引き揚げをしたというようなこともございまして、私どもとしても住専に対する債権については回収ということも考えた。これはそれぞれの信連あるいは私ども判断も違いますけれども、そういうようなこともあったわけでございます。  それに対しまして住専の方からは、残高維持に努めてほしい、自分たち再建は必ずやりますと。ただ、金利につきましては母体行だけが、当時たしか公定歩合二・五であったかと思いますが、これをそのままやると。それ以上のことを、金利につきましては一切負担はかけないと。そういう残高維持だけの要請であったというようなこともございまして、また母体行からも住専と同様にそういう再建につきましての私どもへの協力依頼も一あった。また、関係金融機関なべてこの第一次再建計画については了承したというような状況を踏まえますと、私どもとしてもやはり金融システムの安定という観点からはこれには協力せざるを得ないと。そういうことで、母体行を信頼して第一次再建計画については残高維持ということを了承したという経過でございます。
  18. 野村五男

    野村五男君 それでは、角道参考人に第二次再建経緯についてもお伺いしたいと思います。  いわゆる第一次再建計画から一年もたたぬ平成四年秋ごろから、第一次再建計画の見直しということで当事者間の協議が開始されたと伺っております。農協系統は、先ほど述べられましたが、第一次再建計画の際、住専各社からの系統にはこれ以上迷惑をかけないという約束が、結局これはだめにされてしまったわけですね、債権回収の動きを見せていた、動きが起こりながら、そういうふうに聞いております。  そして、再建計画の見直しの協力を求める住専各社に対し、今度は母体行がちゃんと保証しなければ協力しないことを強く要請したと。先ほど第一次再建計画では残高維持であると、今度は母体行がちゃんと保証をしなければ協力しないことを強く要請したと言われておりますが、それが覚書だとか母体行の誓約書というのか一次案を経て、第二次再建計画がどのようにつくられていったのか、まずお伺いしたいと思います。
  19. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 今お話がございましたように、第一次再建計画が策定されてから一年ほどたってさらに第二次再建計画お話がございました。この段階におきましては、急激に住専経営が悪化をしてきたので、従来の残高維持ということだけでなしに金利減免ということも考えてもらえないかと。残高維持は当然お願いをしたい、ただ金利減免だけをということで支援の拡大をやってもらえないかというようなお話がございました。私どももそれまでの経過また先行き等を見ますと非常に不安もございますし、それならばやはり母体行に、残高維持をするならば当然それについて母体行も保証はできないだろうかということを強く申し上げたわけでございます。  ただ、金融機関の債務保証につきましては、大蔵省からは五十年代、たしか五十四年ごろだったかと思いますが、通達によりまして非常に縮小、抑制の方向がございました。したがって、先ほど来の住専担保につきましても、もともとは母体行の保証ということをやっていたのを、そのころから住専自身が非常に信用力もついてきたということもあり、こういう債務保証から譲渡担保方式に変わってきたというふうな経過もございまして、母体行の側にはこの債務保証については非常に強い抵抗がございました。ある会社によりましては、丸ごとの保証であれば株主総会に諮らなければできないというようなことも伺った記憶がございます。  ただ、私どもといたしましては、それまでの経過を見まして、また金融機関同士の約束事を安易にほごにするようなことでは私どもとしてはとてもこれは引き受けられませんよと、そういうことで、こういう第一次再建計画あるいは第二次再建計画につきましても、これを達成するということであれば、母体行が住専再建責任を持つということをはっきり明確にしてもらわなければ私どもとしてはこの残高維持にも協力はできないということを強く申し上げたわけでございます。  その間、母体行ともいろいろお話し合いもございました。母体行は母体行のグループで再建についていろんな交渉あるいは内部の検討を行われたというふうにも聞いております。この間、私ども主張につきましては、必ずしも母体行と十分な合意ができない。そういうことで、私ども主張なり当事者間の折衝状況につきまして私どもの主務官庁であります農林水産省にも御報告を申し上げ、また大蔵省についても農林水産省を通じましてこれらの折衝が円滑にいくようにというような要請をしていたわけでございます。  こういうような折衝を経まして、住専母体行からは系統に対しまして、今回の措置以上の迷惑はかけないので協力をしてもらいたいというふうな強い要請がございました。また、母体行からは大蔵省に対しまして、計画に沿って責任を持って対応するというような文書が提出されたということを私ども主務省住専母体行からも承っております。また、主務省からも計画に沿った対応がされるよう所要の指導を行っていくというような意向が表明されたわけでございます。  こういうことで、債務保証につきましては非常に難がある。ただ逆に、今申し上げましたように母体行からも強い協力要請がある。また、行政庁からもそれについて指導をしていくというようなお話を受けまして、包括的に、関係金融機関が全部この再建協力するということでございますので、私どもだけが反対をすればこの再建ができないというようなことにもなりましょうし、ちょうど平成五年当時におきましては経済が非常に不況の時期、バブルが崩壊をしたんだん景気が悪化していくこういう状況では再建を断念することが非常に難しいというようなこともございまして、私どもとしては金融システム安定の観点ということからこの再建計画協力したということでございます。
  20. 野村五男

    野村五男君 今般の住専処理にかかわるいわゆる当事者間の話し合いについて、ちょっと詰めてお伺いしたいと思うのであります。  昨年九月末から五回にわたり、いわゆる農協系統住専母体行側との話し合いが行われたと聞いております。母体行と住専との関係はいろいろ取りざたされておりますが、住専の融資先は問題のある不動産会社それから建設業者がずらりと並んでおり、融資のやり方も、角地とかがけ地等を担保に膨大な資金を融資するというような考えられない融資が起こったわけであります。そして、言葉は悪いですが、住専ごみ箱と称して利用したと言われておりますが、でたらめな融資であったと言われております。これらの融資そのもの母体行の紹介や持ち込みだとか、あるいは母体行から出向してきた社員がいわゆる悪徳な人たちと組んでやらせたという案件が相当あると言われております。  特に問題となる事項としては、金融機関の不良債権住専に肩がわりさせる、そしてもう一つは、協調融資の際、住専は後の順位の担保とさせるということ、それから紹介に伴う見返り預金を求めるとか住専の優良案件を引き抜くなどがあったと言われておりますが、角道参考人の方のいわゆる系統の方から実際にこういう問題に対しては相手側に対して問いただしたのかどうか、お伺いします。
  21. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 私ども実は不良債権実態等につきまして十分な把握ができていなかったということについては、私ども債権管理の面でいろいろ反省すべき点があったと思いますが、金融制度調査会が昨年夏から行われておりまして、大蔵省がその際に立入調査をしたと。その結果、不良債権実態というのが総額で、たしか九月の末、金融制度調査会に報告がございました。  その際も、私もその安定化委員会におりましたのでその不良債権実態というものについて説明を求めたわけでございますが、大蔵省の方からは、やはり守秘義務ということもございまして、むしろ不良債権実態住専なり母体行から聞いてほしいというお話がございましたので、私ども大蔵省の方にも住専母体行との話し合いの中で不良債権実態について明らかにしてもらうようにというふうな要請を行ったわけでございます。  今お話しのように母体行、住専との話し合いを私ども、昨年の夏ごろまでは非常に計画はちゃんと、先ほど申し上げましたように利払いの面でも元本償還の面でも、また決算報告を伺いましても住専はきちんとやっておりました。再建計画責任を持ってやっていくんだというような状況で私ども母体行と話し合いをしておりましたが、急に母体行の代表者等からいろいろ破産整理というようなお話があったものでございますから、これに対しまして私どもとしては、突然の話である、また不良債権大蔵省の方から明らかにされても実態はわからないと。  そういうことで、連立与党のプロジェクトの勧告あるいは金融制度調査会でも当事者間の話し合いが大事ではないかということがございまして、ようやく両当事者間の話し合いの場ができたということで、その際、私どもは中金、信連、共済の代表者あるいは住専母体行代表者等の間で九月末から十一月末まで延べで約三十五回でございますか、五回にわたりまして話し合いを行ったわけでございます。  私どもとしては、その場合、なぜ住専がここで清算、整理に入るのか、余りにも突然の話ではないか、また資産がどの程度不良化したのか、その実態について資料を出せということを強く求めたわけでございますが、五回にわたる話し合いの中でも、そういう不良債権実態担保の設定状況、そういうものについては余り具体的な資料提出はございません。  私ども、いろいろ向こう側から提出されました大口融資者のリスト等を見ながら、担保の設定状況等も調査をいたしましたけれども、やはり限られた時間、また私どもの法的なあれはございませんし、相手側から明確な資料提出がなければ具体的な調査はなかなかできないということで、幾つかの事例につきましては、私ども母体行側にこういう具体的な事例を挙げて説明を求めましたけれども、十分な説明がないままに五回の話し合いが終了してしまったということで、私どもとしては不良債権実態把握について非常に残念に思っているわけでございます。
  22. 野村五男

    野村五男君 この問題を我々は何としても乗り越えなくてはならない。皆さんの後ろにはもちろん普段本当にまじめに働いておる農業者の人がおる。そして、日米会談や日ロ会談では何としてもこの不良債権を解決しなさいという国際約束事があるわけであります。  私が一番心配なのは、実を申しますとこれからのことなんですが、旧国鉄からJRに移られた際の資金運用ということで先日我が党で話をしたときにも、公定歩合が〇・五%、こういう低金利になってきますと、結局キヨスクの売り上げがどうだこうだという問題を通り越してしまったと。ですから、この膨大な資金の運用をしていかなければ大変な問題になろうと思います。これが一番難しいことになっていくと思うので、当座の運用についてまずどのように考えられているのか、それを角道参考人にお伺いします。
  23. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 一般論で申し上げますと、やはりこういう低金利時代、また自由競争の時代でございますから、金融機関は資金運用が非常に大変であるということは御指摘のとおりでございます。  ただ、この資金運用につきましては、無論貸し付けの拡大ということもございますし、また証券運用、あるいは資産運用、例えばインターバンクでの運用、そういうふうな問題もございますし、あるいは国債その他安全性の高い有価証券の運用というようないろんな手段があろうかと思っております。  信連から、系統から貸し付けております五兆五千億、この返済についてどうかというお話でございますれば、私どもといたしましてはこの五兆五千億の返還を受けました際には協力資金としては五千三百億円の贈与を決めておりますし、また約二兆二千億でございますか、住専処理機構への低利融資ということも政府住専処理策で基本的な枠組みとして決められております。したがって、残りの二兆七千億程度につきまして、それぞれの信連あるいは系統から運用ができなければ私どもの方に預託が来る。  したがって、私どもの資金量というのは預金だけでも三十兆ぐらいあるわけでございますから、こういう資金量の中でこれを消化していく、そして有利な運用をしながら信連の方にお貸しをしていく、そういうことで信連の運用機能を私どもとして補完をしていくというように考えております。
  24. 野村五男

    野村五男君 時間がありませんので最後質問にしたいと思いますが、やはり日本で一番おくれているのがディスクロジャーと申しますか、情報開示の面がある。  そこで、さっきの朝日新聞ですが、埼玉県の農協の「組長へ一億数千万円」とか、こういうことが出るときに、いわゆるノンバンク、住専以外に出ていってしまった金が七・七兆円もあって、私が先ほど言いましたように、これほど土地が価格破壊を起こしている時期、やはり同じような問題があるんではないか。  そして、こういう問題が七・七兆円の中には入っていないのだろうし、実際にディスクロージャーということと、それからノンバンクに貸し付けてしまっておるものというものは本当にディスクローズしながら完全に計画を立てていかなかったら、結局、二次ロス、三次ロスと出ていく間にとんでもない結果になってしまうということで私は心配しているわけなんであります。その点を角道参考人にお伺いしまして、質問を終わりたいと思います。
  25. 角道謙一

    参考人角道謙一君) ただいまのノンバンク等の貸し付けの実態というお話でございますが、ひとつ御理解をいただきたいのは、ノンバンクそのものにつきまして一様に悪いというような印象をお持ちでございますけれども、ノンバンクそのものは、リース、クレジットあるいは信販であるとか、そういうものがノンバンクの主体でございまして、ノンバンクは一律に悪いというような御指摘につきましては非常に私ども疑問があるんではないか。  ノンバンクは、今申し上げましたように、非常に堅実な経営を行っているグループも相当ございますし、また最近は企業が資金調達手段を多様化させる金融子会社、これもつくっておりますが、これもやはりノンバンクの一つでございます。これについては、後ろにメーカーなり商社なりそういうはっきりした母体がついておりますので、そういう意味では非常に高いものであるというように考えております。  今七兆五千億でございますか、そういう数字がございましたけれども信連なりJAのノンバンク貸し付けというものの実態につきまして、私ども直接の調査権限もございませんし、全体の数字については承知はいたしておりません。農林水産省等から資料をちょうだいしたり、あるいは必要に応じて信連等お話し合いのときに連絡をしていただくというような実態でございます。  したがって、金庫のノンバンク貸し付けについて申し上げますと、ノンバンク貸し付けば相当、三割程度ございますが、これは他の長信銀なりあるいは信託七行ではたしか四割ぐらいと思っておりますが、こういう状況から見れば必ずしも高くはないわけでございます。また、ノンバンクの実態につきましても、先ほど申し上げましたように、経済構造の変化金融変化に伴いましてこういうものが伸びてきたわけでありますので、私どもとしてはそう大きい問題は持っていないと。ただ、信連等につきましては、個別の問題としてこれから問題があれば私ども御相談に乗っていくということでございます。
  26. 野村五男

    野村五男君 時間でございますので、終わります。
  27. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で野村五男君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、都築譲君の質疑を行います。都築譲君。
  28. 都築譲

    ○都築譲君 おはようございます。平成会の都築譲でございます。参議院では新進党と公明で平成会という院内会派をつくっておりますので、よろしくお願いをいたします。  参考人のお二方には、きょうは本当に御多用の中、参議院の予算委員会の審議に御協力を賜りまして、わざわざお出かけをいただきまして、心から御礼を申し上げます。  平成八年度の予算案の審議、参議院におきましても四月十二日から、先々週からようやくスタートしたわけでございます。今まで総括質疑を行いまして、さらに参考人質疑ということできようはいろんな御意見をお伺いしたい、こういうことでございます。今回、八年度予算につきましては、何といっても住専の問題が大変大きな話題になっておりまして、当初からいろいろ議論が衆議院の方でも行われてまいりました。  実は三月四日には、私ども十分審議をすべきだと、こういうふうなことで衆議院の新進党の方は要求をしておったわけでございますけれども実態も十分解明されないまま、あるいは責任の所在も不明のまま、そしてまた金融システム全体がこれから本当にどうなるのか、こういうことも十分明らかにされないままに、どうも与党三党の皆さん方が強行的に押し切ろう、こんなことがあったわけでございまして、私ども物理的な抵抗をさせていただいた、こういうことでございます。  ようやく四月十一日に、与党三党と新進党とで一定の合意を見まして審議を再開するということで、衆議院の方を上がって今参議院に送付されている。その合意の第一点が、制度を整備した上で六千八百五十億円については措置をする、こういうことでございます。すなわち、支出するとははっきりとは言ってない。制度を整備した上で、制度のありようによってどういうふうになるのか。支出するのか、一部支出になるのか、あるいは全額削除になるのか、そういうことが措置をする、つまり決まりをつける、処分をする、こういうことだろうと、こういうふうに私どもは考えております。  参議院の方におきましても、鋭意皆様方の御協力をいただいて審議を進めておるわけでございますけれども、本当によくわからないところがまだ多々ございます。なぜ六千八百五十億円が必要なのか、国民の皆さんも本当にわかって賛成をされるのか。橋本総理のお話を聞いていると、まだ国民の皆さんの理解は十分得られていないと思う、こういうことをよく答弁の中でも言われるわけでございまして、実態が本当にわからない、真相がわからない。  そういった中で、今回特に農林系統の方、いわゆる新聞とかいろんなところでも、今回の住専処理策六千八百五十億円というのは、住専処理に当たって一次損失分、これを本当だったら農林系統で一兆二千億円ぐらい負担してもらいたかったんだけれども、その体力がないから農林系統金融機関、いわゆる農林中金とかあるいは県の信用事業農業協同組合連合会、さらに各地域の総合農協、こういったものを救うために税金を投入するんだ、こういう意見がいろいろ聞かれるわけでございます。  では、本当にそれがそうなのかというところも、実はいろいろ国会で大臣などの御答弁を聞いておりますとそうでもないというように言いますし、また先ほどの角道参考人お話を聞いておりましてもどうもそうでもないんではないか、こういうふうに思うわけでございます。  では、何でこんなことになってしまったのか。住宅金融専門会社、今問題になっておりますのは住専七社ということでございますけれども、農林系統金融機関がどうやって五兆五千億円もの、五兆五千億というのは物すごいお金でございますけれども、なぜ住専にどんどん貸し込んでいったのか、その背景は一体何だったのか。そのときにしっかりと担保とかあるいは事業審査とか、そういったものをちゃんとやっておられたのか。  あるいは、今回の処理に当たって、例えば母体行の方は三兆五千億円のいわゆる債権全額放棄する、こういうことになられましたけれども、農林系統は放棄ではなくて、五兆五千億は一度返していただいて、それで二兆二千億を、正確には二兆二千六百億ですか、これをまた低利融資で住専処理機構の方に回していくと。さらに五千三百億円を贈与するという形、債権放棄じゃなくて贈与する、どうしてこういう仕組みをつくるんだと。  それから、これから本当に今回の住専処理の方策によりまして金融機関全体、また農林系統信用事業、これが本当に大丈夫なんだろうか、そして日本農業あるいは農民の皆さんは一生懸命働いておられるけれども、そういった方たちの本当に期待にこたえられるようなそういう農協経営、こういったものが本当にできるんだろうか、そういったところがよくわからないわけでございます。  今まで責任問題、私は、本当に同じ人が同じ過ちを繰り返さないためにも責任の追及は徹底的にやらなきゃいけない。今ようやく末野興産の社長さんに国税とかあるいは検察が入りまして取り調べが始まっております。ようやくということでございます。ただ、これが何か見せしめだけで、一社だけ取り上げてそれでもう責任問題が終わったなんというふうな形になってしまうんじゃこれまた困るというふうに思うわけです。ただ、責任の問題はいずれまた司直の手でしっかりとやっていただく必要があろうと思いますけれども、真相を知りたいという国民の願いはまだかなえられていないというふうな気がするわけでございます。  以上、大分前置きが長くなりましたけれども、こんなことで幾つか御質問させていただきたいと思います。  まず、どうして住専にこんなに金を貸し付けたのか、今回の住専の処理方策というので農林系統というのは本当にいいのかというところ、それから最後は今後の系統信用事業あり方、あるいは農協のあり方、こういったものについてお伺いをしていきたい、こういうふうに思うわけです。  まず、本題に入る前に一つお伺いをしたいわけでございます。角道参考人そして杉浦参考人、お二方の参考人をきょうお招きしたわけでございますけれども、私もどんな方かなと思っていろいろと調べさせていただきました。そうしたら、ちょっと共通するところがございました。  共栄火災海上保険という相互会社がございます。角道参考人はそこの相談役になられておりますし、杉浦参考人はそこの監査役になられておる、こういうことでございます。取締役とかそういった方を見ますと、結構農協系統の、例えば豊田全中会長とかこういう方が入っておられるということでございまして、この共栄火災海上保険というのはどうして農協系統の方がそういう役職におつきになられているのか。今までの経緯、そして農林系統との関係、出資の関係とかあるいは融資の関係、それから役職者としての業務、報酬、こういったことをお聞かせいただければと思います。  角道参考人には、今までの経緯とか系統との関係といったものを含めて御説明いただければと思います。
  29. 角道謙一

    参考人角道謙一君) ただいまの共栄火災の問題についてのお尋ねでございますが、共栄火災海上保険相互会社というのは、昭和十七年七月に現在の農業協同組合の前身でございます産業組合が当時の保険会社二社、正確には大東海上火災あるいは大福海上火災と承知をしておりますが、これらの株式を取得いたしまして設立した保険会社であると。したがって、当時、産業組合がこういう保険機能を十分に発揮しておりませんでしたので、産業組合の機能補完という意味系統でこの共栄火災を設立したという歴史的な経緯がございます。  昭和二十一年に共栄火災保険相互会社は、保険業法に基づきまして相互会社に改組されまして現在に至っておるわけであります。農協自身は戦後の農協法に基づきまして共済事業をやってきておりますけれども、保険等につきましては、昭和二十六年に全共連が設立されて全国的に共済事業を展開するまではこの共栄火災が系統の保険事業を補完していた、また全共連が設立された後も、全共連の事業ができない部分またやらない部分につきましては共栄火災が補完をしているというような関係でございます。  こういうように、系統関係で設立しました会社でございますので、社員総代につきましても農協系統の代表者を中心に構成されております。私は、取締役会の決議に基づきまして相談役というものについての就任要請がございましたので、平成三年六月に相談役に就任いたしておりますが、金庫の理事長は法律によりましてそういう報酬等は受けてはならない決めになっておりますし、共栄火災からはそういう報酬を一切受けていないということでございます。
  30. 都築譲

    ○都築譲君 恐れ入りますが、杉浦参考人も役職者としてどういう業務をやってこられたか、報酬の方はどうだったか、二言お願いします。
  31. 杉浦與曽松

    参考人杉浦與曽松君) お答えを申し上げます。  先ほど角道理事長さんの方から内容的には御案内がございましたとおりでございまして、私に至りましては、平成七年六月に同社の総代会におきまして監査役を受けたわけでございます。私どもには兼任ということが許されておりますので、多少の報酬はいただいておる。  以上でございます。
  32. 都築譲

    ○都築譲君 先ほど角道参考人お話の中で、全共連が設立をされたということで保険関係業務は全共連の方が生保とか損保を担当するということになろうかと思うわけですが、全共連がやれない部分を補完するとかそういうふうなお話でございますけれども、しかし基本的には農協の共済事業と共栄火災海上保険、こういったところがやるのは競合するようなところが実際にはあるんじゃないかというような気がするわけです。  ここもまたよくわからないのですが、補完をするということを言われるわけですから、そうすると全共連が実は保険のお金を集める仕組みだけをやって、保険事業の方は全部共栄火災の方におろしている、こういうふうなお話になるわけでしょうか。
  33. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 共栄火災は保険相互会社としてそれなりの事業活動をやってきております。また、全共連は全共連として二十六年設立以来、最初は生命共済、特に養老共済でございますか、こういうものから始まりまして、あるいは今回神戸の震災等でいろいろ有名になりました建物更生共済とか生命共済、それから同時に損害保険につきましても、そういう共済も共済という名前でやっておりますし、また自動車保険も自動車共済ということで主として自分たち系統の組合員を対象にして共済事業を実施している。そういう意味で、多少共栄火災と事業分野では競合する分野はあるかもしませんけれども、全共連が金を集めて共栄に金を出すというようなことはないというふうに考えております。
  34. 都築譲

    ○都築譲君 それから、先ほどの御答弁の中でお伺いしたがったのは、あと出資の関係とかあるいは融資の関係お金を共栄火災海上の方に貸しているのかどうか、そこら辺のところを少し詳しく教えていただけますか。
  35. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 相互会社でございますので、出資というのは共栄火災にはございませんで、それにかわりまして出資に相当する基金というのを保険会社が持っております。この場合、相互会社が基金といたしまして現在持っておりますのは、たしか約七億円というように承知をしております。これにつきましては、金庫、信連、全共連、共済連、そのほか関連会社等におきましてこれらの基金を保有しているということだと理解しております。
  36. 都築譲

    ○都築譲君 その七億円というのは基金全体ですか。そして、そのすべてを系統が持っているということですか。
  37. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 基金の全体が、総額がたしか七億円でございまして、その大半は系統が保有している、基金の拠出をしているというふうに記憶をいたしております。
  38. 都築譲

    ○都築譲君 それでは、その共栄火災海上の関係はまた別途ということで、本題に入りたいと思います。  まず、なぜ住専にこんなにお金を貸し付けたのか、ここのところが本当によくわからない。今のところはどうも責任の押しつけ合いのようなところも感じるわけでございますが、母体行の元本保証、これがあったのかなかったのか、迷惑はかけないというふうなことを言ったとか言わないとか、こういう話があるわけです。これは、例えば昭和五十年に銀行局長が通達を発出いたしまして、要は、住専に対して農協が金を貸す、それについては母体行が保証することを自粛せよというふうな通達が銀行局長から各銀行に出ているはずでございますが、それは御承知だったですか。
  39. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 先ほども答弁申し上げましたが、私どもはその通達については承知をいたしております。
  40. 都築譲

    ○都築譲君 そうすると、元本保証はなかったという認識でよろしいわけですね。
  41. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 法律上の保証契約というものは第二次の再建計画についてはございませんが、この再建計画というものを母体行が系統に提示をし、それについて協力を要請したというような経緯から見まして、私どもとしてはそれに信頼を置いたと。また、第二次再建計画の策定の経過から見ましても、元本につきましては負担をさせないというところからこの再建計画の話が始まったわけでありますから、再建母体行は責任を持ってこれを指導していくということであれば、実態的、道義的に当然そういう実質的な保証はあると。  また、先ほど来も御説明申し上げておりますように、母体行の責任というものは金融機関として非常に重いものでございます。そういう意味で、私どもとしては、保証ではないにしても、この住専問題については住専経営責任問題として、まず住専母体行が実質的に最大限負担をすべきであるというように申し上げてきておるわけでございます。
  42. 都築譲

    ○都築譲君 御説明を聞いていると、何となく母体行が再建実態的に責任を持つんだ、こういうことですが、例えば第一次再建計画が立てられてからわずか一年ですね、第二次再建計画の話が出てきたのが。それで、例えば五兆円を超えるようなお金系統全体で預けている立場にあって、これは皆さん方、大丈夫なんだろうか、なぜこんなことになっているのか、元本は大丈夫かということで、元本を引き揚げるというふうなことは本当にお考えになられなかったのか、その辺のところはいかがでございますか。
  43. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 都築先生今御指摘のように、私どもも非常に不安を持ったことは事実でございます。特に、第一次再建計画の提示がございまして、協力をしてからわずか一年余りのことでございますから、当然私どもとしても不審を持ち、債権回収、元本を引き揚げ回収したいということも視野に入れて母体行とも話し合いをしたわけでございます。  それに対しまして母体行の方では、母体行の方々はいろいろお集まりになって再建計画を策定され、これでやっていくんだ、残高維持についても回収をしないでほしいと、そういうのが母体行の申し入れであり、また再建についての協力要請であったわけであります。また、それにつきまして、住専については関係金融機関全体が住専を存続させていく、再建させていくということで一致していたわけでございます。  したがいまして、系統がこれに反対をした場合、母体住専整理させると。五兆五千億の金を回収した場合、やはり住専経営については非常に大きな支障を来すということもございまして、私ども経済金融システムの安定の観点からこの再建計画には協力せざるを得なかった。  そのために、前提といたしまして、残高元本は必ず返済をしてほしいということを強く申し入れしていたわけでありますし、そのためにまた農林省の方あるいは大蔵省の方にもそういう実情をもって、また母体行にそういうような指導もお願いをし、そういう要請をしてきたわけでございます。そういうことで、私どもとしては再建計画協力をしてきたということを申し上げたいと思っております。
  44. 都築譲

    ○都築譲君 ですから、そこまで貸し込んできたところの問題もまたこれあるわけでございまして、住専が設立されてから先ほどの七五年の通牒が発せられるように、相当早くから住専に対して系統もいろいろお金を貸してきたんだろう、こういうふうに思うわけです。ただ、一番大きなきっかけになったのが昭和五十五年、一九八〇年の信連の融資範囲について、いわゆる員外貸し付け規制の除外通達といったのが発せられて、それから相当の額がどんどんどんどん流れていったわけでございます。  この除外通達でございますけれども、この解釈などについては今までいろいろ言われておりました。ただ、この時期にどうしてこういう通達が出されたのか。これは公の理由はいろいろなされております。公的な資金需要とかそういったものがいろいろあった、こういうふうなことですし、あるいは系統の方の立場もいろいろあったんだろうと思います。ただ、実際のところはこれはどちらが言い出したのか。農協が言い出したのか、あるいは農林中金、県信連、こういったところが言い出したのか、あるいは大蔵省の方が言い出したのか、銀行の方が言い出したのか、住専が言い出したのか、そこら辺の経緯について角道参考人は御承知でしょうか。
  45. 角道謙一

    参考人角道謙一君) どちらがこれを要請したかということにつきましては、私は当時の状況について必ずしも正確には承知をいたしておりません。ただ、全体といたしまして、たしか五十年代の半ばは第二次オイルショックのころであり、やはり金融の引き締めということもあった時期ではないか、景気が停滞をしていた時期でなかったかというふうな記憶がございます。そういう中で、本来系統自身も、高度成長の後、農業資金の需要も非常に少ない、また構造的に資金が過剰になっている、そういうこともあり、有利、確実、安全な、また公共性のある投資先があれば、やはりそれに運用を広げたいというふうな規制緩和の要望もあったのではないかというふうに承知をいたしております。  そこで、特に住専につきましては、非常に公共性の高い住宅金融というある意味では大蔵省直轄の準政策金融機関であると、そういうような認識もありましたし、また母体行がその出資者であり、あるいは実質的な経営の支配者であるという観点から見ますと、非常に信頼度の高いものであるというのが当時の認識だったと。したがいまして、恐らく農協法上の金融機関というような指定を受けて、住専に対する員外貸し出しの例外として銀行あるいは短資業者に対する融資と同じように認められたというふうに理解をしております。
  46. 都築譲

    ○都築譲君 どちらが言い出したか、確かにそういうことなのかもしれません。  それからもう一つの問題は、八九年ですか、農林中金の方で農協財務処理基準令を改定して信連の資産運用の幅をさらに広げたということであろうかと思うわけでございますけれども、そこら辺のタイミングの問題もございますし、その改定の理由、それからそれについてはどういうお考えでやられたのか、そこのところをまたお教えいただきたいというふうに思うわけです。
  47. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 私、正確に記憶しておりませんで、誤っていればお許しをいただきたいと思いますが、八九年の財務処理基準令の改正は、恐らく資金量が非常に多い信連につきまして、従来の二割制限だけでなしに、指定信連につきましては貯金量の一五%だったかと思いますが、そこまでの部分は員外貸し出しとして認められる、そういうような改正ではなかったかというように記憶をしております。これは御指摘のように、協同組合組織という観点からいいますと信連自身が非常に資金運用という面でも規制が強いので、それについて運用力を強化していく、拡充していくという観点から規制の緩和が図られたのではないかというように理解をしております。
  48. 都築譲

    ○都築譲君 今の財務処理基準令の関係でまた資産運用の幅を広げたということで、この時期に実はちょうどバブルが絶頂期というか、日経ダウ平均も八九年末に四万円の水準に駆け上がっていく、こういう状況だったわけです。世の中、非常にいろんなところで資産価値の高騰が起こっておる中で、この財務処理基準令の改定によって、さらに株式投信の方にも相当系統お金が回っていったんではないか、こういうふうに思うわけでございますけれども、今それがまた大きな問題になりつつあるんではないかと思うわけです。  というのは、あの八九年末の絶頂期を迎えると日経ダウ平均はもう転がり続けてくるわけでございます。最低水準は一万四千円ぐらいまで落ちたわけでございまして、株式投信で物すごい痛手を信連では負っているんではないか、こういうふうな話があるわけです。実際には株式投信の償還延長といったものがもう二度ほど行われてきておりますが、証券関係者の話だと、結局、償還延長措置というのは系統金融機関を救済するために行ってきたのだと、こんな話がある。ただ、もう再々延長はないよということになると、いよいよそれは九六年、ことしたということになる。  そうすると、今までは含みということで表に出てきませんでしたけれども、いよいよ全部償還ということになれば全部含み損が表に出てくる、こういう状況になるんではないかというふうに思うわけでして、その際、信連とか農林中金とか、こういう系統金融機関の方でどれぐらいの含み損が表に出てくることになるのか、そういった状況についておわかりになりますか。
  49. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 申しわけございませんが、私ども個別信連の資産の運用の内容につきましては正確には承知をいたしておりません。それぞれの信連がそれぞれの判断で資金の貸し出しをやり、あるいは資金の余裕金につきましては運用している、そういう実態でございまして、金庫は直接にそれを承知するということはございません。  ただ、全般的に申し上げますと、やはり安全確実ということで、国債であるとか地方債であるとか、そういう安全性の高いものが主体に運用されてきている。ただ、御指摘のように非常に信頼の置けない、リスクのあったようなものに投資を運用したというような信連も一部あったことも事実でございますが、これにつきましては全般的な問題としてそれほど致命的なものではないというように考えております。私ども自身は相当程度こういう資金運用はやってきておりますが、御懸念のようなロス、これは生じていないというふうに申し上げておきたいと思います。
  50. 都築譲

    ○都築譲君 その点についてはいずれ改めてお聞きする機会があればぜひまたお伺いをしたい、こういうふうに思っております。  それから、特に農協系統のもう一つの問題は、実は協住ローンというのがございます。今まで政府の処理案の中でも住専七社、こういうことでやってきております。ただ、協住ローンの方は、実はこれは農林系統母体となって設立をした住宅金融専門会社、昭和五十四年の八月でございましょうか、今回はその七社からは除かれておるわけでございます。協住ローンについては割と早く住専関係の問題が多いということに気づいて手を引いたというふうなことがあるわけでございますが、現在のところの状況はどういうふうになっているのか、協住ローンについて。  さらに、これからどういうふうな形でやっていくことになるのか。例えば、住専関係でも二千億円とか言われるお金が出ているそういう状況、さらにノンバンクとか、そういったところの問題もこれからあろうかと思います。ですから、協住ローン、これは今住専処理方策の中に入っていないかもしれないけれども系統としてどういうふうにお考えになるのか、そこを教えていただきたいと思います。
  51. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 協同住宅ローンにつきましては、私ども系統の機能補完という意味昭和五十四年に住専の一つとして設立を認められまして、恐らく住専八社最後でございましたが、また大蔵省からもそういう意味住専の指定を受けたというような経過でございます。その後の運用状況を見ておりまして、ちょうど六十年代の初めでございましたか、若干不良貸し付けというような問題を指摘されまして、それによりまして私どもとしては協住ローンについて経営の見直しということを始めまして、そういう意味再建計画といいますか、協住については私どもは十分配慮をしていた。  この協同住宅ローンにつきましては私どもが完全に母体行でございますので、この協住ローンにつきましては、今後の経営なりいろんな損失問題がありましても母体行として完全にこれを見ていく、他行には一切迷惑をかけないというのが私ども原則でございます。  現在、資本金は大体五億円、職員も一時はたしか二百人ぐらいおりましたが百二十人程度に縮小しております。また、事務所につきましても現在三行、当時は十行ぐらい、十支店ぐらいございましたでしょうか、それも縮小をして整理してきたということで、堅実な経営を図ってきている。  しかしながら、これだけの大きな土地あるいは住宅需要と融資の変動でございますので、残念ながら協同住宅ローンにつきましても相当の不良資産を出したということは事実でございます。私ども、現在住専として協住ローンは約七千億の貸し出しをいたしておりますが、処理を要する不良資産は大体二千億程度というように考えております。一般の他の住専に比べますと、そういう意味では痛手は少ないんではないか。また、私ども系統といたしましては、母体行の立場から、この協同住宅ローンの処理を要する負債につきましてはやはり母体行、私ども責任を持って処理をしていく。  また、今後これをどうするかということでございますが、住宅資金については一般金融機関も、あるいは制度融資といたしまして住宅金融公庫というものもございますけれども、住宅金融公庫におきましては延べ面積ないし敷地なり融資対象についても制限があり、また融資額についても制限がある。また、民間におきましても同じような制限がありまして、この制限外の方々につきましては、また超過分につきましてはそれなりの住宅資金の需要があるということもございます。また、制度融資等につきましては、特に公庫資金が出るまでの間つなぎ融資の必要もございます。こういうこともやはり私どもとしては手がけているわけでございまして、今後これらの資金需要を見ていけば十分経営として成り立つという見通しがございますので、存続を図っていきたいというふうに考えております。
  52. 都築譲

    ○都築譲君 今まで住専にいろいろ貸し出して、それで特に母体となった協住ローンのお話についてもお話を伺ってまいりました。先ほど来、あるいは衆議院の予算委員会での角道参考人お話などを聞いておりますと、住専については信頼度が高いとかあるいは大蔵省直轄の機関であるとか、そういうふうなことでいろいろやられてきたわけでございます。  それで、先ほど野村委員の指摘の中にもございましたし、その御答弁の中にもございましたけれども、いわゆる融資をする際の体制と申しますか、あるいは手続と申しますか、こういったものは本当にしっかりやっておられたのかどうか、こういったところについて少しお聞かせをいただきたいと思うわけです。先ほどちゃんと担保については準共有で一緒にやっております、こういうふうなことを言っておられます。それは担保協定書の中にそういうふうな規定があるわけでございますか。
  53. 角道謙一

    参考人角道謙一君) そのとおりでございます。
  54. 都築譲

    ○都築譲君 そうすると、担保協定書というのは大体母体行とそれから設立される住専との間で協定をされて、それでさらに幹事行を決めて、どういうふうな形で運営をしていくか、こういう話を決められるものだと思うんですが、それに対して系統の方はどういうふうなかかわり方をしてやっておられるわけですか、担保協定書を結ばれているわけですか。
  55. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 融資の場合には担保の徴求は当然でございまして、私どもも融資を行う場合に協定に参加をしていくという形で入ってきております。特に、融資対象物件が非常に多い、またこういう担保管理には相当の専門的な知識も要する、またそのために母体行が幹事行となりましてこれを管理していく、それに私どもが参加をするという形で担保管理をやってきたということでございます。
  56. 都築譲

    ○都築譲君 参加ということだから、それではそのほかの母体行と自分たち立場が違うんだ、こういうことが一つ出てくるわけですか。そこのところをひとつ。
  57. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 担保の面におきましては、別に母体行と私ども一般債権者で差がある、ということではございません。ただ、担保管理の面で瑕疵があった場合、それは当然この管理に当たっていた幹事会社に責任が生ずる、それ以外におきましては、担保の共有あるいは担保の処分につきましては同じ地位にあるというふうに考えております。
  58. 都築譲

    ○都築譲君 そういうことになれば、先ほどから母体母体行ということで母体行の責任親会社としての責任、そういったものを言われるわけですけれども、そういう形でしっかりと協定の中に入るんであれば、やはりイコールフッティングというか、同じ立場で物事の処理をするに当たっては取り組まなければいけないんじゃないか。そういう責任というのは出てこないんでしょうか。
  59. 角道謙一

    参考人角道謙一君) お答え申し上げますが、担保の処分というのは、具体的に全面的にこういう形で住専整理というようなことになりますと、住専整理の場合に初めて担保の処分ということが行われるわけであります。  また、私どもの申し上げておりますのは、そういう住専整理、清算に至る前の、なぜ住専がこういうふうに経営破綻をしたか、経営破綻責任はだれが一体負うのか、そういう経営問題について私どもは申し上げておりまして、この経営破綻について母体行は一般債権者と違う立場にあると。  これは、再々申し上げておりますように、設立も自分たちがやり、また役員のほとんどは自分たちが出してきた、また経営にも参画してきた、そういう実態から見ますと、今回の経営破綻については、母体行は住専と全く同じ、むしろ住専にかわっでこういう債権処理に当たる、最大限負担をすべきであるということ、私が申しましたのはあくまで住専経営責任の問題でございます。担保を処分してどう配当するかというのは、経営者として経営責任を果たした後、残余財産が残った場合にこれをどうするか、これはまさに担保をどう処分するかというこれからの話になっていくんだろうと思います。  そこで、私どもとしては、この担保処分については、同一順位者は、そこから仮に利益が出た場合、清算し配当ができた場合、その場合には一般債権者は同じ順位にあれば同じ立場で配当を受けるということになりますが、出資者なり経営者あるいは経営に実質的に参加している方、こういう方の債権一般債権者に比べまして劣後する、担保処分の配当を受ける場合でも後順位になると。  したがって、現在の住専の債務状況から見ますと、恐らく今母体行の持っておられる債権につきましては全額放棄をしてもなお足りないんではないか。配当は受けられないんではないか。したがって、母体行が一般債権者と同じような配当の権利を主張されるということは非常におかしい、社会正義に反するということを私どもは申し上げている次第でございます。
  60. 都築譲

    ○都築譲君 今言われた劣後するということについて後でお聞きしょうと思ったわけです。それは貸し出していった方の責任ということで、母体責任というのは貸し手責任と、こういうふうなことを先ほども答弁されておりましたし、衆議院の予算委員会で二月十五日に参考人質疑があったときもたしかそういうことを角道参考人はおっしゃっておられたわけでございます。  ですから、母体行として出資者あるいは経営責任を持っていた者の持つ債権というのは一般債権者に比して劣後する。だから、いざ事業会社を整理するというふうになったときに、担保の処分だというふうになったときに、たとえ銀行が第一順位のそういった担保権を持っていても、系統とかほかのところが第二順位、第三順位、こういったものを持っていても、それが劣後するということであれば、自分たちの方に先に弁済されるべきだ、こういうことを言われるということだろうと思うんですが、それは法的な根拠というか、あるいは裁判例とかそういったものがあって言われておられるのか、それとも自分のお考えで言われておられるのか、いかがですか。
  61. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 今までの会社更生の実例等におきましても、こういう経営者の持っております債権が劣後化される、劣後債権として後順位に回るということはあるというように私どもは承知をいたしております。  私どもは、今住専について申し上げておりますのは、あくまで住専経営責任という観点で、経営者として他の債権者にどういうような責務を負うのかということを申し上げておりまして、したがって母体行は住専と同じ立場で、むしろ住専と同様に一般債権者に対しまして債務をまず弁済する任務があるのではないかということを申し上げております。  担保処分の問題は、そういうことが済んだ後、一般債権者に対しまして、他の債権者に対しまして実質経営者としての経営責任を果たした後の問題というように理解をしております。
  62. 都築譲

    ○都築譲君 今おっしゃられた会社更生の実例としてあるということになりますと、今回の住専の処理スキーム、処理方策というのは一体何だったのかという話になると思うんですよ。農林系統方々を救済するためにというふうなことがいろんなところで言われて、それで税金を六千八百億円も投入するんだ、こういうことで系統に余り迷惑をかけないんだと、こんなことが言われてきたわけです。  ただ、角道参考人が今言われるように、会社更生の実例でそういうことがあるんだ、母体行の責任として担保権の実行については劣後するんだ、劣後債権になるんだ、こういうことで会社更生でやればいいということであれば、それは新進党の案と同じじゃないですか。新進党の案と同じことになると思います。だからこそ、管財人がさらに責任の追及を民事でも刑事でもやることができるようになるわけです。我々はなぜそれをやらなかったということを前々から言っていたのに、今系統の代表であられる角道参考人がそういうことを言われると大変心強いような気がするんですが、いかがでしょうか。
  63. 角道謙一

    参考人角道謙一君) この住専関係者というのは約三百社ぐらいに上りまして、また系統だけでも九十数社、また債権というとたしか二十三万ぐらいの一般の住宅ローンの債務者等もおられますが、こういうように非常に住専の場合は関係者が多いわけでございます。  それに対しまして、そういう法的な問題をやった場合には、私どもとしては更生計画に基づきまして母体行の主張になかなかそのまま賛成するというわけにはいきませんし、また先ほど来、母体行がいろいろ主張されているような債権者平等の負担だというようなことになりますと、一件一件私どもとしては母体行の債権額についてもそれについて否認をする、異議申し立てをやらなきゃいけません。こういうことをそれぞれ一件一件の問題につきまして訴訟手続をとっていった場合、大きな時間のロスあるいは費用がかかるという点で非常に難点がある。そういう意味で、積極的に私どもの方から法的措置をとるというようなことはございませんけれども母体行の方でそういうような対応をされるということであれば、やはり私どもとしては黙ってそのとおりだというわけにはいかない。  したがって、法的な立場で言えば私どもはそういうことはあるということは申し上げておりますけれども、実際解決の面から見るとそれは適策ではない。これは今までの、昨年来いろんな政府関係者あるいは母体行の中でもそういう議論はあったろうと思います。私ども、同じようにお話し合いをしてきた中で、相手方に対してそういうことを十分申し上げてきたつもりでおります。
  64. 都築譲

    ○都築譲君 今の御答弁を聞いておりますと、確かに関係者が多いというのはございます。ただ、住専処理機構一本で住専七社をやるよりも、住専七社ごとにそれぞれ管財人を置いて更生計画を実行していくというような形のものも実は相当合理化、省力化ができる話になるだろうと思いますし、一件ずつ否認をしていくあるいは異議申し立てをしていかなきゃいけないという話も、確かに時間的なロスがあるかもしれないけれども、十五年もかかるような話ではない。今までの更生の実務とかそういったものからすれば大体五、六年で済むわけでございますから、そういったものもしっかりとやって、しかも裁判所の透明な手続の中でやっていくことが一番正しいことではないかというふうに私どもは考えておりますので、ぜひまた角道参考人にそういう方向でお力を賜りますようにお願いをしておきたい、このように思います。  それから、ちょっと話が飛んで恐縮でございますが、県の信連ごとに実は貸し出しの状況が相当異なるわけですね。例えば愛知県の場合は、昨年の暮れには農協貯蓄四兆円を全国で初めて超えるという状況の中で、住専への貸し出しは約三百八十億ぐらいだっただろうと、こういうふうに思うわけでございます。ところが、お隣の静岡県の場合は、住専への貸し出しが約三千四百九十億と愛知県よりけたが一つ違うわけでございますけれども、これはどうしてこんなに違いが出てくるのか、そこのところはいかがなんでしょうか。どういうことでこんなに大きな違いが出てくるのか、杉浦参考人、もしお答えになれましたらちょっとお願いをしたいと思います。
  65. 杉浦與曽松

    参考人杉浦與曽松君) 愛知県信連は資金量に比較して住専向け貸し出しのウエートが相対的に少ない、こういうことでございますが、これは当信連が、一つには地域内の農業事業が比較的安定をしていることから預金その他の経営要素の変動が少ないということでございます。  もう一点、従来から資金量が比較的大きく、バブル当時においても資金量と比較して伸び率が他県ほど大きくなかった、そういうことでございますので、私ども農林中金への預金を中心に運用してきた経緯があるんじゃないか、こんなふうに思っております。
  66. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 資産運用なり貸し出しの方針につきましては、それぞれの信連がそれぞれの資産経過あるいは地域の需要あるいは全体的な資金需要というものを見ながら判断をしてきておりまして、それはそれぞれの信連によりまして与信の仕方あるいは余裕金運用は非常に異なってきているかと思います。ただ、住専に関しましては、先ほど来申し上げておりますように、農協法上の金融機関ということで当時におきましては非常に信頼がおける貸出先である、また社会的にも意義があると、そういうふうに思って資金運用を伸ばした信連があるということも事実であろうかと思っております。  なお、先ほど会社更生法云々とございましたが、更生法自身はやはり更生の見込みがある、再建の見込みがある会社、これにつきまして更生法による更生手続をとるわけでございまして、既に住専会社は七社とも三月末の取締役会で整理、清算ということを決めております。したがって、みずからもう再建と更生の見込みを絶っているわけでありますから、更生法の手続には乗らないのではないかというふうに今思っております。
  67. 都築譲

    ○都築譲君 指摘をいただいたんですが、再建の見込みということについては、見込みがなくはなければいいという解釈もあるわけでございます。今までの実例でも、例えば北炭の整理のときに、そういうことで更生の見込みはないかもしれないけれども、なくはないわけではないということで、たくさんの労働者の賃金債権を確保するとか、あるいはいろんなところを整理する、その過程で全部きれいに片づけた後、清算をしていくということであったわけでございます。今回の住専の処理に当たってもそういう方策は全く否定できないということでございますし、ましてや法律で一応いろんな手だても援助していこう、こういうことを考えておるわけでございますから、今の角道参考人の御意見には私は実は賛同できないわけでございます。  それで、次の大きなテーマとして、今回の政府住専処理策で大丈夫かというところにもう既に入ってしまったわけでございます。  一点は、住専からの利払いの停止の問題、先ほども質問がございました利払い。当初、系統の贈与は五千三百億円ということになっておったんですが、一月から三月までの住専七社からの利払い六百億円を期待しておったのにこれが入ってこないということになると、この五千三百億円というのはどういうふうになるのか。今まで農林中金に二千億あるいは県信連が二千億そして全共連で千三百億と、こういうふうな割り振りをやっておりましたけれども、もし入らなかったらこれはどういうふうになるんでしょうか。
  68. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 利払いの問題につきましては、先ほど申し上げましたように、私どもとしては法的にお支払いをいただきたいということを申し上げております。  また、五千三百億というのは、既にもう政府で決められました政府処理策として系統住専処理機構に拠出をする、そういう資金でございますので、それはそれとして私どもとしては何らかの形で決算剰余金を吐き出しながら、あるいは積立金を取りまして五千三百億というものを何とかしてつくらなきゃいかぬというふうに思っております。仮に利払いの問題が今解決すれば、それなりにやはり五千三百億の中に吸収されていくというふうに私どもは考えております。
  69. 都築譲

    ○都築譲君 そこのところがちょっとよくわからないところがあるわけです。例えば今回の五千三百億円。県信連で二千億、全国の県信連で割るんだけれども、例えば栃木とか埼玉とか宮城、こういったところはもうほとんど赤字になっちゃっているから全然払えない、こういう状況の中で、そこのところの負担はゼロだよ、こういう形でやった。それで余力のあるところに薄く割り当てて二千億を出すということになっているけれども、そこの原資になる六百億円が実は入ってこないということになるわけです。  そうすると、何とかやると言ったって、ほかの県信連もどんどんみんな赤字になっていってしまうんじゃないか。赤字になったらまた理事の皆さん方の責任追及が出てくるだろうというふうに思うわけです。責任追及が出てくるぐらいの問題であるならば、支払いを停止していますなんというのは私はおかしいと思うんですよ。もう本当につぶれかかっている会社に利払い六百億も払ってくれなんという、これ自体が本当はおかしいんじゃないかと思うんだけれども、そこまで言われるんだったら、何で損害賠償請求を起こしてでも、あるいは利払いを早くやれという執行命令を出してもらうなりそういう手続をとらないのか、そこら辺いかがでしょう。
  70. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 住専の問題は、利払いだけではなしに元本の問題あるいは第二次ロスの問題、こういう問題が全部絡んでおりまして、特に住専処理が、解決策の確定といいますか、これがおくれております関係で、この分だけ切り離してどうこう処理をするということは非常に難しいんではないか。  また、住専会社自身も一-三月の問題について利払いをしないということではなしに、一応停止をしておいてこれから話し合いをしたいということを言っているわけでありますから、そういうことで私どもとしてはこれからの話し合いにまちたい。ただ、私どもとしては当然請求をしていくということでございます。(発言する者あり)
  71. 都築譲

    ○都築譲君 後ろから、随分余裕があるなと、こういう声が飛んでおりますけれども。  次の問題は、今御指摘になられた元本がそもそも五兆五千億もあるわけでございまして、その五兆五千億円の全額の返済を今の政府住専処理策でやってもらって、そして二兆二千六百億を低利融資でやると、こういう話になっているわけですね。そうすると、問題が幾つかあるんです。  まず一つは、この二兆二千六百億円の分担の割合はこれまたどういうふうになるのか。農林中金、各県信連、こういったところへどういうふうに割り振っていくのか、全共連にどういうふうに割り振っていくのか、そこら辺の問題。それから、低利融資と言っているけれども、これまた随分議論があるんじゃないでしょうか。聞くところによると、低利と言うからには公定歩合、今〇・五%、プラス〇・一%というのが母体行、銀行の通常の低利の発想だと。これに対して系統の方は短期プライムレート、今だと一・六二五%ですか、それを要求しているという話でまた話がまとまらないというふうなお話も聞きます。  それからもう一つ。さらに、政府住専処理策、十五年なんて言っている。実は心配なのは、国鉄の債務だって、あの国鉄の民営化のときにみんなJRになって、国鉄清算事業団に残ったたくさんの土地資産があって、それが二十何兆円あったのを今これ全然払い切れていない、今残っている土地を全部売ったってまだ二十兆円借金が残ってしまったと。これが政府が今までやってきたことになってしまうわけですね。  だから、十五年もたった後で本当に二兆二千億円、農協系統の方に返ってこなかったらどうするのか。そのときは担保はどういうふうにつけるのか。先ほど担保をしっかりとるんだと、こういうふうに言っておられましたけれども、本当にこの二兆二千六百億円預けて大丈夫なのか。  まとめて言いましたので恐縮ですが、何項目か手短にお願いいたします。
  72. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 今いろんな問題、特に第二次ロスの処理だと思いますが、お話がございました。私ども、第二次ロスの問題は第一次ロスの処理の問題と切り離しては考えられないということで、昨年の暮れ政府処理策を決める段階で、第一次ロスにつきましても政府決定について具体的な金額等について私どもは承諾をいたしております。  ただ、第二次ロスにつきましては、母体行あるいは一般行あるいは証券会社その他について十分まだ話が煮詰まらないということで、むしろ基本的な枠組みとしては、母体行、一般行は特別低利の融資をすると、私どももこの住専処理機構については低利融資をするということで基本的な枠組みは決めております。  ただ、その具体的な金額、今二兆二千六百億というお話もございましたが、あるいはこの金利がどうであるかということにつきましては、まだ大蔵省から私どもには正式なお話はございません。現在、特に母体行、一般行あるいは証券会社等、そういう方と細目についてお詰めになっているのではないかというように聞いておりまして、私どもはまだ御相談を受けておりませんので、大体大蔵省の方でこの詰めができれば、その間、状況をまた私どもの方に御相談をいただけるのではないか、提示があるのではないかというように考えております。
  73. 都築譲

    ○都築譲君 まだお話が来ていないということでございますけれども、この利率の問題、これまた元本が大きいわけですから相当な影響が実は出てくるわけでございますね。  ですから、大蔵省の方が母体行だ、一般行だ、証券だ、生保だ、こういったところとお話し合いになっているというふうな状況をお聞きになっているということであれば、恐らく大蔵省と農水省の間でいろんな話があるのかもしれない。そこのところは角道参考人お答えになる立場にはないだろうと、こういうふうに思いますけれども角道参考人、農林中金のお立場で低利融資の利率は一体どれくらい、母体行あるいはほかの一般行と同じでいいというふうにお考えになるんですか。それともそうじゃないと、農協系統は違うということをおっしゃるんですか。
  74. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 融資条件につきましては、系統立場からは住専の処理に関しまして私どもはほかの一般行母体行と立場が違うと、そういう意味で今までこの問題の処理をしてきております。ただ、特別低利融資ということにつきましてこの条件をどうするかということについては、第一次ロスの処理と同じように系統系統としての立場主張してまいりたいと思っておりますし、そういう御理解をいただきたいというふうに思っております。
  75. 都築譲

    ○都築譲君 今住専の処理策ということで、これからのことも実際どうなるのかということで考え方などを聞かせていただいたわけでございます。  もう一つ、今回の住専処理策の背景に、系統が本当に大変だ大変だということで、先ほども杉浦参考人もうなずいておられましたけれども、今まで農協系統で実はお金にまつわる、信用事業にまつわるいろんな不祥事がたくさんございましたですね。トキワ園芸農協とか各県でいろいろなことがございました。そういった場合、その農協の組合長さんが責任をいろいろとらされるような状況になって大変悲惨な不幸な事例もあったやに聞いておるわけでございまして、そんなところから農協の経営については無限責任だと、こういう議論がされておりました。  ただ、これは農協法の三十三条の二項で規定してあるわけですが、いろいろな方に聞くと、今回の住専処理スキームはとにかく県信連会長を救わないといけないんだ、もし債権放棄とかそういうことで責任問題になったらみんな首が飛んでしまうと。本当の生首が飛ぶということはないかもしれませんけれども、あってはならないんですけれども。そんなことで無限責任だから大変だ大変だと言っていたら、最近ちょっと資料を拝見しましたら、無限責任じゃないんだ、そこのところは株式会社、商法と同じような有限責任だと、こういう話が実はJAの金融関係の実務雑誌に御宿さんという弁護士の方が書かれておるわけでございます。  だから、そこのところは本当にどういうふうに、まあ農林中金のお立場では有権解釈ということにはならないのかもしれませんけれども、どういうことでこんな話になってしまったのか。本当に無限責任だと、こうお思いになるんですか。  もう一つ、たしか鹿児島県の農協でやはり民事の責任が追及された例がございました。福岡高裁の支部かどこかで判決が出ているのかもしれませんけれども、そういったものもあったのかどうか。もし無限責任ということでなければ、本当にきっちりと有限責任ということで対応していけばそれがよろしいわけでございまして、そこら辺について角道参考人、いかがでしょうか。
  76. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 組合の責任役員責任につきましてはやはり善管注意義務ということが原則でございまして、今の農協法の中には商法の準用ということで明確に責任の範囲は有限であるということが示されていると思います。  ただ、かつて現実の貸し出しの段階で組合の役員に保証させるというふうな慣行があったことも事実であります。したがって、こういう保証をされる場合には役員が連帯保証すると。これはそれぞれの組合におきまして債権担保のためにそういうことも間々あるわけでありまして、したがってその場合には保証契約責任ということで役員が無限責任を負っていると。こういうものがいろいろ混同されて実態と法律の点で問題になっているんではないか、誤解があるんではないかというふうに考えております。
  77. 都築譲

    ○都築譲君 どうも世間に流布された情報、だから私も当初は農協の皆さん方は無限責任だということでこれはやっぱり大変だなと。いろんな悲惨な事例も、本当に自分に生命保険を掛けて、二十億円ぐらいの生命保険を掛けて自殺された組合長さんもいらっしゃると、こんな話があったわけですから、これは実際はどういうふうに対応したらいいのかなと思っておりましたけれども、実はやっぱりそうではないわけでございますね。  だから、世の中の情報がどうも混乱するというのもだれかが意図的に何かやっているのかなというふうなことを、というのは先ほど申し上げた資料は実はごく最近の資料なんです。だから、住専の資料をいろんな関係で見てまいりましたけれども、この三月ぐらいまではそういった状況は全然出ていなかったわけでございまして、どうしてこういうことになっているのかなというのは本当に不思議でならない。  それから、今回の住専の問題でいよいよこれからのことをもう少し詳しくお聞きしたいなと、こういうふうに思っておったんですが、時間がございません。  農協系統が五兆五千億円も貸し出していった、そして確かに審査もしました、あるいは物的担保もちゃんととったんです、共有、準共有という形でやっているんですと、こういうふうに言われます。私自身は、いろんな本を読んでみますと、例えばこれは荒井浄二さんという農林中央金庫の常務理事を務められた方が九四年に「農協金融」という本を書いておられるわけです。  その中の一節の「住専・ノンバンク向け貸出の背景」というところで、いわゆる信農連の住専向け貸し出しというのは、政策当局から金融機関貸し出しとして貸出枠が与えられて実行をされているということ、そしてまた住専のこの間の経営幹部の方たちなどのお話も聞けば本当にもう電話一本で何億円という金が実は流れていった、だからほとんど無審査、無担保、無保証という状況の中で農家農民の皆さんから預かった大変貴重なお金をどんどん流し込んでいったんではないかと、こういうことが考えられるわけでございます。  それからもう一つ、こういうふうな状況になるに当たって、実は何年間もかかってこういう状況になったわけでございますから、そういう審査体制もしっかりしろということで、農協の監査、信用事業の監査というものもしっかりやってくればこういうことにならなかったんではないかと、こういうふうに思うわけでございます。  私自身思いますのは、戦後、昭和二十二年に農協が設立をされて、そのときは農家農民の皆さんは本当に自分たちの組合だという意識があったと思うんです。ただ、そのうち、何かわけがわからないうちに経済事業とかいってどんどん商社化をしていった。購買物品とか生活物資とかあるいは肥料とか、そういったことでどんどん商社化をしていく、さらに信用事業ということでこれまた金融機関化していくということの中で、どうも今の農協というのは本当の組合員の皆さん方あるいは農民の皆さん方のお気持ちと離れているのではないかというふうな気がしてならないわけでございます。  ただ、農業というのは国の基本でございます。そして、日本人の勤労観というのも、私は二十年間労働省におりましたけれども、本当に四季折々に一生懸命生き物を相手にして、植物を相手にして毎日毎日丹念に見ていかなければならない、そういう地道な堅実な誠実な労働の中から日本人の勤労観というのが生まれてきたと私は確信をしておるわけでございます。  そういった意味で、今回五兆五千億円もの住専への貸し出しということで大変大きな問題になっているわけでございまして、これからもぜひ農家農民の皆さんのためにしっかりと農協が頑張っていただきますように心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  78. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で都築譲君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、大渕絹子君の質疑を行います。大渕絹子君。
  79. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 両参考人には、きょうは大変御苦労さまでございます。  私は、住んでいるところは新潟県の中山間地の農村部なんです。金融機関というと郵便局と農協しかないというところに住んでおりまして、地域の人たちは郵便局や農協さんに対する信頼というのは非常に高いものがございます。また、地域の触れ合いの場所としてもそういう農協系統の窓口が活用されているというような日常の中で、今回の住専の問題は、非常に信頼をしておった農協系統に対する問題として地域住民には大きなショックを与えたというふうに思っております。そのショックをできるだけ早く取り除き、そして地域の金融機関として信用を回復していただきたいということの観点からきょうは質疑をしていきたいというふうに思っております。  まず、住専五社から二千三百六十七億円、それからノンバンクや銀行を合わせると五千億円もの巨額な融資を引き出しまして、そして見せ金で次々とグループ会社を設立し、所得税の脱税や源泉所得税の徴収義務違反の疑いもあり、海外への悪質な資産隠しの疑惑も指摘されている末野興産社長の末野謙一容疑者が、四月十八日未明、公正証書原本不実記載あるいは同行使の疑いで逮捕されましたが、そのときの参考人の率直なお気持ちはどんなだったか、角道さんにお聞きをいたします。
  80. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 末野興産の問題につきましては、既に司直の手にゆだねられているということでございますので、詳細について私どもも承知はいたしておりません。  ただ、私ども従来から住専会社の債権管理については厳しくやるべきであるということを求めておりまして、本来、借りた金は返すというのは金融の常道でありますし、また貸したものは返してもらうというのも金融の基盤でございます。  そういう意味で、住専の借り手の最大手といいますか、末野興産につきまして今いろんな意見が出されておりますが、こういう意味で債務、借りた金を返さないということについては非常に不誠実である、またこれについて十分な資産管理を行わなかった住専についてもやはり同じような問題があるのではないかというようなことで、私どもは非常に遺憾に感じているというのが実態でございます。
  81. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 おっしゃるとおり、借りた金は返すのが金融界の鉄則ですね。しかも、利息を払って返していくというのが普通の常識だというふうに私たち国民は全部思っているわけです。  捜査当局は、今回の末野興産の社長の逮捕をきっかけに、借り手の責任ということを十分に追及していただき、そして不良債権化している債権を回収していっていただきたいというふうに強く思っているわけでございます。また、ずさんな融資を繰り返した住専各社についても特別背任容疑も視野に入れて厳しく対処していただきたい、そう思っておるところでございます。そうでなければ国民怒りは決しておさまらないと、私はそんなふうに思っているところでございます。  住専、ノンバンク、銀行等、貸し手も末野興産などの悪徳業者を見分けることができずに安易な融資を続けたということで責任が問われています。その貸し手に融資を続けていた立場農協系統金融責任もまた重大だと思いますが、この件に関して角道参考人はどうお考えでしょうか。
  82. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 先生今御指摘のとおり、私ども住専に対しましてこれだけ巨額の資金を貸し込んだ、この結果、系統に対しましての負担を抑えられなくなったということについては、系統信用事業運営について非常に問題があったというふうに考えておりますが、これはやはり農協系統経営の問題でございまして、住専の処理の問題、これは住専経営責任の問題ということで分けて考えるべきであると。私どもとしては、本来、住専の処理につきましては住専経営者、住専母体行が責任を持って最大限負担をして処理していく、これが本来の問題であるというように考えておりますので、系統系統といたしまして、これからの問題といたしましても系統信用あり方については大きな反省を持っていかなきゃならないというふうに考えております。
  83. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 おっしゃるとおりに融資には大きなリスクを伴うこともあるのだという認識の中で事業が行われなければならないと思いますけれども、この件に関しましては系統金融はその自覚が非常に希薄であったのではないかなというふうに指摘せざるを得ないと思っております。  まず、担保をとりながら審査をしなかった責任が一点ございます。それから、特定企業に融資を集中させていったという責任もございます。また、バブル崩壊時に大量の追加融資に踏み切った責任、ここは金融機関としてバブルの崩壊あるいは情報を的確にキャッチしておれば、こうしたことにはつながっていかなかったのではないかというふうに思って、そういう情報の収集等々のノウハウに欠けていた点があったのではないか、そう思っております。  また、もう一点、融資規則を超える形、いわゆる協同組合、農協系は組合員以外の貸し出しには規制がかかっているわけですけれども、その規制の枠を超えてリスクの大きい不動産融資に乗り出していったという責任は、ここは厳しく指摘をしておかなければならないんだろう、そういうふうに思っているわけでございます。  住専処理に伴いまして三兆五千億円の債権全額放棄する母体行ですが、本院の審査の中で、一般行としての債権分一兆六千八百億円が回収できることが明らかになりました。これは一般行の貸し出し債権の五五%、二兆一千億円、この中の八〇%が母体行として重複をしているということが明らかになったわけでございますが、この件に関しまして久保大蔵大臣も、母体行が一般行として融資をしている場合もその責任は重いという認識を示していますが、角道参考人はこの件についてはいかがお考えでしょうか。
  84. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 今母体行の一般行としての責任問題というお話でございます。  そのお答えに先立ちまして、今住専に対して系統は金を貸し込んでいった、この金の貸し出しにつきまして員外規制がかかるのではないかというようなお話がございましたが、住専の設立の経過あるいは住専の社会的機能、そういうものから見まして非常に信頼度の高いものである。また、住宅専門金融の政策金融を行うということで、昭和五十五年に農協法の員外規制に対しまして、その他金融機関ということで規制から外されております。それほど当時におきましては信頼性の高いものがあったということは事実でございまして、その点から私どもとしては、そういう住専に対します信頼度、また特にきょう冒頭から申し上げております母体責任というものを信頼してやったということが一点でございます。  それから、今の一般行の問題につきましては、やはり母体行を一種のメーンバンクとすれば一般行は準メーンバンクというような形と思っておりまして、母体行としても、お互いにほかの母体行はほかの住専にも融資をしている、そういう実態もあるわけでありますから、それはそれなりの負担もあってしかるべきではないかというように考えております。
  85. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 今回の政府案は農協系統金融の救済であるという世論が高まっておりますけれども、私は公的資金六千八百五十億円は住専問題の責任論と大きくかかわりを持つものと思います。  日本農業研究所の佐伯尚美先生は、行政責任を一二〇、母体責任を一三〇、系統農協は五〇という数字を挙げています。政府は絶対に認めませんが、行政の責任は、覚書の件はもちろんですけれども、今日までこの事態を長引かせたという責任、二点目は、住宅関連に多額の公的資金を投入した時期において住専に対する的確な行政指導が行われていなかったという責任、こういうことからしても行政責任は明らかであり大きいというふうに思います。だから、民間の住専処理に対しても政府が間に入り今回のスキームの作成に手をかしていったということがあるというふうに思うわけです。  もちろん、政府スキームをつくるに当たり、当然、負担し得る分担を考えていかなければなりません。そういう中で、母体行、一般行系統でとことん詰めるべきであったと思いますけれども、信組の実態国民の前に本当に細かく開示することをしないままに、系統の皆さん方は政治的圧力に頼って無理な公式論にしてしまったことがこの問題を非常にわかりにくくし、世論の非難も農協系統救済だというところに向けられてしまったと、私自身はそう思っているわけでございます。  杉浦参考人、こういう私の考え方について何か御意見がございましたらお願いいたします。
  86. 杉浦與曽松

    参考人杉浦與曽松君) ただいま御指摘ございましたように、私どもも真剣にこの問題を解決していかなきゃならぬ。そして、母体行もあるいは行政も真剣に取り組んでいくことこそが今一番大事なときではなかろうか。そして、このことを早期に解決することがまた我々に対しても温かい気持ちを持たれるのではないかと、こんなふうに思っております。
  87. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 系統農協の体質的な欠陥を挙げるとすれば何だと思いますか、角道参考人
  88. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 非常に難しい御質問でございますが、系統信用事業そのものは戦後、お互いに協同組合組織の金融機関として組合員相互の本来の資金融通をやってきた。これがやはり高度成長の中で相当程度変質をしてきて、金融機関として多少へんぱといいますか預貸率が非常に低い、むしろ資金の過剰が前提になるような、恒常化するような問題になってきている、そういうところがやはり信用事業の一番の問題ではないかと。したがって、今この預貸率をどのように上げていくか、またこういう恒常的にあります資金をどのようにこれから運用をし組合員の方々に還元をしていくか。  そういう意味では、現在の単協、県信連あるいは中金と、こういうような組織の三段階制というものにつきましても、この際、将来を見ればやはり極力合理化をしていく、また重複機能をなくしていく、資産運用の効率を上げていく、そういうことが一番のこれからの問題ではないかというふうに考えております。
  89. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 農協の基本的な任務についてお尋ねをいたします。  農協は、昭和二十二年、耕作農民の相互扶助を基本理念とした民主的協同組合として農民に対する奉仕を目的とする非営利団体として生まれました。信連や農林中金は、これら農協の機能を補完したり、余裕資金を運営し還元するための組織として位置づけられていると思います。こうした性格にかんがみれば、本来、農協の基本的任務は、組合員の行う農業へのサービス、すなわち営農指導だとか経済事業にあるのではないかと考えております。  しかし、現状を見ますと、農協の経営は大変厳しいものがございます。購買部や販売部、倉庫部、加工利用部、指導事業部、その他事業部というようなそれぞれの事業部があるわけですけれども、それらのすべてにわたって、これは全国平均でございますけれども、すべてが赤字であるという実態がございます。そして、その赤字を補う形で信用事業や共済事業が行われているという実態を見ますときに、果たしてこういうあり方でいいのかという疑問がすごくわくわけでございますけれども、この件に関して角道理事長参考人の御所見を伺いたいというふうに思います。
  90. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 今、大渕先生御指摘のように、農協の基本的な性格、任務というのは御指摘のとおりでございます。  ただ、実態といたしまして、農協が組合員の営農指導等をやってまいります場合には、営農指導からは収益は生まれてこない、費用を取るということはなかなか困難でございます。
  91. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 国から補助が出ますでしょう。
  92. 角道謙一

    参考人角道謙一君) それは、やはり経済事業とかそういう形で、できた生産物を販売し、あるいは資材購入という形でのサービス、こういうものと一体となっているわけでございます。また、その代金等につきましては、あるいは支払い費用については金融が担当していく、そういう意味ではそれぞれの分担があるわけでございます。  ただ、経営といたしましては、総合事業でありますから、中でそれぞれが不可分であるという意味でこれを切り離すことはなかなか難しい。今までのところ、金融あるいは共済につきましては、護送船団とよく俗に言われますけれども、そういう一種の安定した金融秩序の中で信用事業あるいは共済事業というものは収益を上げてきた。したがって、その収益をもとにして経済事業なりあるいは営農事業というものが赤字でありながらやってこられたというのが実態でございます。  ただ、既に米につきましても新食糧法の時代になり米の流通の形態も変わってきた。また、金融につきましても、護送船団が変わりまして完全な自由競争、市場競争の真つただ中で行っている。したがいまして、それぞれの事業事業として成り立っていくような方向に農協系事業も考えなければならない、そういう時期に来ているというように思っておりますし、そのための農協のあり方につきまして私どもとしては抜本的に考えて直さなきゃいけない。これには組織の整備、事業運営の効率化、改革というものを徹底するということを現在進めているわけでございます。
  93. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そういう改革の中で、三段階から二段階に変えていこうというような話も出ておるということは十分に承知をしておりますが、農協金融あり方について、今もおっしゃいましたけれども金融の自由化や国際化が急速に進んでいく中で金融機関同士の競争もこれから大変熾烈になってくると思うんです。そういう熾烈な戦いに今のような体質のまま系統金融が果たして競争に耐えられるだろうかという疑問が非常にあるわけです。  そういうことに対して改革をしていくというふうにおっしゃっているわけでございますけれども、そこで農林水産業専門の金融機関として農林系の今日的役割をどう受けとめ、そして生き抜くための方策をどういうふうに立てていこうとしておられるのか。特に、経営の健全性確保のためには信用事業だけを切り離したらどうかというような議論も今出ているわけですけれども、それに対してはどのようにお考えになっていますでしょうか。
  94. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 信用事業分離論というのを申される学者の方々が一部におられることは事実でございます。  ただ、先ほど営農事業あるいは経済事業、農協の基本的なあり方について御質問がございました折に申し上げましたように、農協自体はやはり営農あるいは生産物の販売、資材の購入、生活資金の供与であるとか、あるいは加工、保管とか、そういうものと一体になって運営されていっております。その中で金融だけを切り離してやるということになりますと、やはり農協の今の運営自体が成り立たない、また組合に対しても非常に大きな支障を来す。例えば資金の決済一つをとっても、別途の金融機関でやるというようなことになりますと非常に大きな支障が出てくる。したがって、総合事業というのは、今の農協の本来の性格、事業運営として一番すぐれたやり方であるというように現在考えておりまして、これを切り離すということは難しいと思っております。  そこで、自由競争の中でどのようにこれから組合系統金融が生き残っていくか。これにつきましては、現在の農協の数は約二千数百に縮小しておりますけれども、一金融立場から申し上げますと、農協の預金規模にいたしましてもせいぜい今のところでは二百億から三百億、これは平均的に見た場合ですね。これは信用組合の約六百億に比べましても半分というような非常に小さい規模でございます。これから金融事業として生き残っていくためには、やはり資金運営につきましても専門的な知識、経験、それから同時に大量に運用できる、そういうことができるような体質につくっていかなきゃいけないわけであります。  そういう意味で、現在、信連と単協の部分でも機能重複の部分がございます。また、中金と信連の間におきましても機能の重複している部分もあるでしょう。そういう点を改革しながら、事業二段あるいは組織二段ということも申しておりますが、あるいは現在の信連三段階で十分やっていける地域もあろうかと思います。あるいは場合によりましては、一県一農協というようなことを目指している農協もございますし、あるいは地域全体としてこれだけ情報化あるいは交通手段が発達している時期でありますから、広域信連としてまとまっていった方がいいと。  こういういろんな改革の仕方がございますが、基本は事業二段、組織二段ということをパターンにしながら、それぞれの実情に応じてそれぞれの仕事の仕方を改めていく、そういう抜本的なことをやはりこの際やるべきであるということで、私どもも数年来検討を進めております。また、この住専問題を契機にいたしまして、これらの組織整備を一層強く進めていかなきゃならない。  また、農林省におかれましても、農政審議会に農協部会を設けて、そこで今申し上げた問題について法制整備を図るというような御検討をなさっているというように承知しております。
  95. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 系統金融がより地域に密着をした金融機関として生き残っていくために、今の農民組合制といいますか、本組合員を農業者に限定してというような形ではなく、今はもう準組合員というような形の中で農民以外の方たち金融に参加しておる実態は確かにあるわけでございます。思い切ってその枠を取り外して、庶民、消費者や中小工業者にも組合員になっていただいて、その地域組合、協同組合ですか、そういう地域組合化をすることが系統金融の生き残っていく道だ、だから法改正も果敢にやって抜本的な農協改革に踏み出していくべきだと、そういうことを大胆におっしゃる方もございますけれども、この地域金融機関として組合員の枠を超えていくという考え方について、角道参考人それから杉浦参考人、お二方にコメントをお聞きしたいと思います。
  96. 角道謙一

    参考人角道謙一君) ただいまの問題は非常に大きい問題の指摘でございまして、戦前の産業組合はそういう方向だったわけでございますが、戦後はそれぞれの業態別に協同組合ができた……
  97. 井上裕

    委員長井上裕君) 簡単にお答えください。
  98. 角道謙一

    参考人角道謙一君) ということで、こういう問題が今の農協の運動につきまして、経営あり方につきまして問題があるということは御指摘のとおりでございます。  したがって、将来の方向として、私どもとしては地域組合的な性格を強くしていく、地域金融機関としても伸びていくということはこれからの道として大事だということを申し上げたいと思います。
  99. 杉浦與曽松

    参考人杉浦與曽松君) 私といたしましては、単協の組合長も務めております。そういうことでございまして、組織整備、こういう言葉で整備をされておるわけでございますけれども、組織のための組織整備ではだめなのでございまして、組合員がより豊かな、そして楽しくいける農業、そういうもののための組織整備であってほしい、これは特に私からもお願いしたいな、これから提供していきたいな、そんなふうにも考えております。
  100. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  終わります。
  101. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で大渕絹子君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、緒方靖夫君の質疑を行います。緒方靖夫君。
  102. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  農林系統金融機関あり方については、住専の融資の問題とかいろいろな批判、議論があります。私も多くの批判的な意見を持っております。しかし、きょうは住専処理、そして特に母体行の責任問題に限定してお伺いしたいと思います。  まず、角道参考人にお伺いいたしますけれども住専処理は昨年九月までは八社で考えられてきました。しかし、そのうち協同住宅ローンがほかの住専七社と違って、母体行であります農林中金、そしてまた信連が全責任を持って再建するという方向に行きました。これはどういう考え方に基づくものなのか、まずお尋ねいたします。
  103. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 協同住宅ローンそのもの系統の組織の中の住宅資金需要、特に最近、大都市近郊では組合員が土地を売って住宅等にしていく、そういう資産管理の需要もふえていると思いますし、また系統の役職員でも住宅資金需要も多いというようなこともあります。そういうことから見まして、協同住宅ローンの果たしております補完機能というものは現在もなお十分生きているというように思っております。  そういう意味で、私どもとしては、確かに不良債権問題も発生をしておりますけれども、この不良債権問題を私ども母体行で処理すれば今後十分健全な姿でやっていけるというように理解をしておりまして、そういう認識のもとに協同住宅ローンについては今後も存続を図っていくというように考えております。
  104. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 今の答弁の中で母体行主義でということで話がありましたけれども母体行が責任を持つという点でいいますと、ほかの住専七社についても私はそれを貫くべきだと思うんですけれども、その点についてはどのようにお考えですか。
  105. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 住専問題そのものにつきまして、昨年の夏ごろまで住専再建計画についていささかも問題があるというようなお話はございませんでした。突如として夏ごろからそういう話が出てまいりましたので、私どもとしては、特に第二次再建計画締結のときに母体行からは再建計画について責任を持って対応していくんだというようなお話もございましたので、住専については当然母体行が責任を持って対応すべきであるということを強く主張してきておりましたが、残念ながら住専あるいは母体行の方では私ども主張理解していなかったというのが今回の住専問題の発端ではないかというように考えております。
  106. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 実は、母体行主義でいくか否かという問題はきのう、きょう始まった問題じゃないと思うんです。一九九三年に第二次再建計画を策定するときに既にいろいろ問題になっている。このことが新聞報道などでも報じられております。  例えば、一九九三年二月十九日付の日本経済新聞、そこには、将来の元本ロスの負担をめぐって農林系は母体行主義を主張し、母体行は貸出額に比例して負担するのが原則主張して対立した、なかなか決着がつかないと報じられております。そして、その際、大蔵省が調停役をしたということなんですけれども系統が第二次再建計画協力することになったのはこの問題に決着がついたからだと思うんです。この対立が大蔵省の調停によってどのような結論になったのかお伺いいたします。
  107. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 今、緒方先生御指摘の九三年二月の日経というのは私どももチェックをしてみましたけれども、当時の私どもの記憶では、母体行の方から融資比率で分担をするというようなお話、これは恐らく整理なんかも頭にあったのかもしれませんが、そういう話を私どもは受けたあれはございません。母体行、一般行あるいは系統という三者がそれぞれの責任のもとに負担をするというようなお話は私ども受けております。したがって、この日経の記事につきましては、ある意味では記者の方の観測あるいは推測ではないかというのが実態かと思っております。
  108. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 もう少し具体的にお伺いしたいと思うんですけれども、農林系統が第二次再建計画への協力を求められた際に、いろんな資料を見ますと、随分ちゅうちょされている、あるいは不信感をあらわにされている、そういうことが目につくわけです。  そこで、系統は大蔵、農水に対する要望事項三項目を出しております。これ手元にありますけれども平成五年二月十六日付で、その冒頭に、行政庁の適切な御指導をお願いしたい、そう訴えられております。  こういう中で、住専の第二次再建計画協力するに当たって系統として一番不安に感じられたこと、それは何でしょうか。
  109. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 第一次再建計画のときもそうでございますが、やはり貸し手立場からいきますと元本確保というのがまず第一でございまして、そういうことを主張しております。
  110. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 その不安を押して、あるいはその不信感を押して協力に踏み切るに至った。それは母体行から何らかの保証があったからなのかどうか、その点をお伺いいたします。
  111. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 私ども母体行と随分析衝を重ねました。特に私どもとしては保証まで要求をいたしましたが、この保証については母体行側は法律上の保証というのはできないというようなことがございました。しかしながら、母体行としては再建計画について責任を持って対応していく、したがって私どもとしてはこれ以上元本ロスは生じないというような理解でおりました。また、それを前提といたしまして再建計画が立てられたというふうに私ども理解しておりましたし、また農林水産省あるいは大蔵省の方にもそういう方向でぜひ御指導いただきたいということを強く主張してきたわけでございます。
  112. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 三項目の指導要望に対して大蔵省から九三年三月十二日付の回答があったと思います。そうですね。大蔵省も国会答弁で認めておりますけれども大蔵省の回答というのはどういうものだったのか、そして大蔵省責任を持つというものだったのか、その点についてお伺いいたします。
  113. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 私ども、この第二次再建計画の段階では経営再建は三点ほど要求がございました。  まず第一点目としては、経営再建につきましては母体行が責任を持って対応していく、農協系統には元本ロスの負担を負わせないということが第一点でございます。  第二点目は、金利減免につきましては、これは第一次再建計画と違いまして、第二次再建計画では残高維持だけでなしに金利減免というのが大きな要望項目でありましたので、金利の減免につきましては農協系統の体力を十分考慮したものとする、またそれ以上の負担はかけないということが第二点でございました。  第三点目には、景気が低迷して、少し先行き明るさは見えたような時期でもありましたし、当時におきましては既に公定金利も四・五%でしたか、割に高目でございました。今から見れば高目でありますが、なおそれが反転をして上昇するのではないかという心配を私どもは持っておりまして、したがって金利が上昇する場合、これにつきましても経営上の重大な問題が生じないようにと、そういうような主張を申してきたわけでございます。  それに対しまして、主務省の方からは系統に対しまして、今御説明ございましたように、再建計画が達成されれば、元本ロスが生じることなく、関係者に対しましてさらなる負担を求めるということはないよというような見解がございましたし、また母体行から銀行局に対しましても、再建計画に沿って責任を持って対応してまいる所存であるというような文書が出ているというようなお話もございました。また、大蔵省としてもそれについて十分な指導をしていくというふうなお話があったと承知をしております。
  114. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 私、その大蔵省の回答を手元に持っておりますけれども、その中には、行政庁としての立場からも最大限の努力を払う、こういうことが強調されておりますが、そのとおりですね。  次に、杉浦参考人にお伺いいたします。  農林中金は母体行主義が貫かれるということを考えて、そのことを信じて協力したというふうに今話があったと思うんですけれども、その点、信連はいかがですか。
  115. 杉浦與曽松

    参考人杉浦與曽松君) 先ほど角道理事長から説明がございましたが、最終的には母体行が大蔵省銀行局に対して、再建計画に沿って責任を持って対応してまいる所存である旨の文書が提出されました。大蔵省といたしましても、再建計画に沿った対応がなされるよう所要の指導をしていく所存である旨の意向が表明されたことによりまして、私どもも、系統が最も心配いたしておりました元本ロスの懸念が解消されたという点を評価した次第でございます。  そういうことでございまして、信連系統といたしましてはこうした点を踏まえて、平成五年三月十七日の全国信連会長会議におきまして再建計画への協力を決定した次第でございます。
  116. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 第二次再建計画が決定された後、母体行、住専がそれぞれ全国の都道府県の信連を回って、まさに全国行脚をしてその中で協力要請しております。私、その幾つかの会談記録を読んだんですけれども、その中にはこんなことが書いてある。注目いたしました。  口先だけでは信用できない、母体行が全責任を負うことの文書によるきちっとした約束、要請事項を担保とする文書と大蔵省の関与、保証が必要だ。それから、母体行や住専は連名で念書を大蔵省に提出している、あるいはこれから提出する。このことを強調して母体行の責任を言明している、このことも非常に特徴的だと思いました。  信連は不安を持ちながらも結局協力に踏み切ったわけですが、その際、端的に言って何をよりどころにしてそう決断されたのか、お尋ねいたします。
  117. 杉浦與曽松

    参考人杉浦與曽松君) 確かに、住専問題の本質とこれまでの経緯を踏まえますと、先生の御指摘のとおりではなかろうかと思います。債権放棄だけが母体行としての責任を果たしたことになるのか疑問があるとのことでございますが、政府住専処理策については母体行、一般行系統それぞれの立場住専問題の経過を踏まえて負担を決定されたものと承知しております。私どもも、これを真摯に受けとめ、金融システム安定の観点から資金贈与を決定したところでございます。
  118. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 お二人のお話を伺いますと、今母体行が母体行主義を否定して、三兆五千億円の負担がぎりぎりだ、これ以上の負担は断じてできない、こう言っているのは今の経過から見て非常に私はおかしいと思うんです。  そこで、私また思いますのは、そもそもの話になりますけれども、そういう経過が仮にあったとしても、系統住専への貸し付けという点でどうしてあのような無謀な貸し付けをしたのか、そのことがやはり根本的な疑問として残るわけです。これは冒頭にも述べたことなんですけれども系統金融あり方の問題、その点で批判が起こるのは当たり前だと思います。系統金融に打撃を与えたという点でもはっきりしていると思います。  そこで、これは最後お尋ねになりますけれども、どうしてそうなったのか、その背景に何があるのか、その点をお尋ねいたします。
  119. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 住専につきましては、住専というものの評価あるいは位置づけが当時におきますものと現在では全く異なっておりまして、当時におきましては、住専はむしろ準政策金融機関と、またこれは法律上も金融機関という指定もございましたし、また背後には母体行がちゃんとついておる、そういうようなものとして私ども認識しておりました。また、特に五十年代から六十年代、国民住宅資金需要というのは非常に強かったわけであります。したがって、私どもがこれに協力をするということは、そういう国民住宅資金ニーズに対応して、それにこたえる社会的なあるいは公益的な意味があるというように考えておりましたが、これが結果的には誤ったというようなことだと考えております。
  120. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 終わります。
  121. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で緒方靖夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、小島慶三君の質疑を行います。小島慶三君。
  122. 小島慶三

    ○小島慶三君 どうもお二人の参考人の方、お忙しいところありがとうございます。御苦労さまでございます。  私、二つばかり質問させていただきたいと思うんですけれども、農村協同組合というものは、私は本来は農民農民による農民のための組織であるというふうに強く思っております。そういう意味で協同組合のあり方、協同組合というものはやはり農村での事業形態のある意味での一つの理想的な姿なのかなと前から思っていますし、そういう農村協同組合論というのを書いたこともございますし、それをテキストにしたことも実はあるわけです。そういう立場から見ますと、今回の問題というのは、全く唖然とせざるを得なかったというふうに私は思うのでございます。  そういった農村の協同組合原理というものが一方ではありながら、実際やっていることはあれだけの巨大な融資を流し込むという、先ほどの方が暴挙とおっしゃいましたけれども、まさにそういうものだろうと思うんです。どうしてそういう利潤原理あるいは市場原理に押し流されてしまったのか、いつからそういうふうなことになったのか、何がそういうものに押しやったのかというふうなことを、私としてはもう本当に心から問題とせざるを得ないというふうに思うわけでございますが、この点について、まずお二人の御意見を伺いたいと思います。よろしくどうぞ。
  123. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 小島先生の言われるとおり、やはり農業協同組合は協同組合として組合員のための事業、これを行うというのは当然のことでございます。そういう意味で、私ども系統の中でも無論そういう方針で運営をしてきております。  ただ、今回の住専問題につきましては、やはり戦後の経済発展の中での協同組合金融の質の変化といいますか、構造変化の問題というのはもう十分御指摘のとおりでございますが、やはり三十年代、高度成長に移るまでの間は、協同組合組織の金融機関として組合員相互の資金融通、こういうもので十分充足されており、むしろ金も不足するというような状況だったかと思いますが、所得倍増であるとかあるいは列島改造、こういうような高度成長の時期に農業農地の成長率というものが他産業に比べて相対的に弱くなっていった。そこで、資金構造は全くそれ以前と変わってまいりまして恒常的に資金が余っていった。  これをどのように運用していくか。これをどのように国のために役に立てるか。また、そこから生じた利益をどのように組合員に還元していくか。これが信用上の大きな課題になってきたということから今回の問題があったわけでありますし、先ほど申し上げましたように、住専というのはそういう意味では当時におきましては極めて社会性、公共性の高い、また安心のできる信頼度の高い金融機関だったというように思って、私どもとしてはそういう社会的な見地から融資をしたということでございます。
  124. 杉浦與曽松

    参考人杉浦與曽松君) 農協系統は、農業組合としての農協の利益は組合員の利用の成果によるものであるという考え方から、経済活動の成果を組合員に還元することを基本としておるわけでございます。したがいまして、他の金融機関のように営利を目的とした経営を行っているものではないことをまず御理解いただきたいと思います。  こうした中で、金融自由化という厳しい環境のもとでこの要望にこたえていくためには、役職員が一体となって経営の合理化、効率化に取り組み、経営基盤の増強に努め収益力を高めていくことが何よりも重要であろうと考えております。このため、農協系統信用事業では、現在、農業の振興や地域金融機関としての役割について機能を十分発揮できるよう努力をいたしておるところでございます。
  125. 小島慶三

    ○小島慶三君 それからもう一つは、これはあるいは時間がなくなってしまうかもしれませんのでお答えが得られないかもしれませんが、先ほどから、これから信用組合中心の農協の再編成といいますか、そういうことをお話しになっておられると思うんですけれども、それで果たしてやれるのかどうか。私はむしろ単協を中心に再編成をやられた方が本当ではないかなというふうに思っておりますけれども、ちょっともう時間がありませんので、これで終わりにいたします。  どうもありがとうございました。
  126. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で小島慶三君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、島袋宗康君の質疑を行います。島袋宗康君。
  127. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 最後になりましたけれども住専の処理に伴う都道府県信連の最終的な配分額が二月の末日に決まったようでありますけれども、全国の各農協の基礎体力は一様ではありませんから、農協の金融事業にもそれが大きく影響するのではないかと懸念されます。  そこで、両参考人にお伺いします。  この住専処理を機に、信連と農林中金の合併案など組織再編は緊急の課題であると思います。農協再編成の機運も高まっているやに聞いております。この合併案についてはそれぞれの組織内で検討されていると思いますけれども、もし検討されておればその進捗状況、あるいは今後のリストラ計画等について御説明を願いたいと思います。
  128. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 今の系統のリストラ問題についての御質問でございますが、先ほどの小島先生の御質問にも若干お答えになるかと思いますが、やはり系統組織といたしましては、単協はJAがまず強くなること、これがやはり組織の基盤でございます。  そういう意味で、私ども五年前の農協大会以来、農協の合併問題というものを非常に重視しておりまして、当時におきましては紀元二〇〇〇年までに大体千ぐらいの農協に統合していくと。当時三千四、五百の農協がございましたが、そういうことを目標にしてきたわけであります。さらに、その後の金融自由化あるいは食糧管理制度の改革、こういうような世の中の変化に対応いたしまして、合併についてはなおこれを加速するということを今進めております。  したがって、現在での目標は、平成十二年に、二〇〇〇年でございますが、大体五百五十程度の農協に統合していくというのが一つの大きな目標になっております。また、大きくなっていく、経済的に強化をしていく農協につきましてはさらに経営の合理化、効率化を図っていくということが基礎にありますし、その上で、その上部機関であります県連あるいは全国連というものにつきましても、機能の重複等を排除しながらさらに簡素化して、できるだけ省力化していくということが基本になっております。  現在、私どもとしては、JAの中に、全中の中に改革本部を設けまして、ここで組織整備計画、これはもう既に県段階、全国段階でも大まかな計画が立っておりますが、それを加速させていくということをやっております。  さらにまた、政府におかれましても、今度の住専問題を契機にいたしまして農協法の改正、これは信用事業中心になろうかと思いますけれども、現在そういう方向で農政審議会でも農協部会で審議が行われておりまして、この方は今年の八月ごろに大体報告が取りまとめられるのではないかというふうに伺っております。私どもそれを目指して組織整備あるいは長期の経営刷新計画というものを並行してまとめていきたいというふうに今努力をしております。
  129. 杉浦與曽松

    参考人杉浦與曽松君) 厳しい農業情勢及び金融自由化という条件のもとで、農協の組織、経営の全般にわたってリストラが必要なことは言うまでもないことだと考えております。我々JA組織においても、各事業を通じて単位農協の合併を進めるとともに、組織二段、事業二段を究極の目標として系統全体のリストラに取り組んでいるところでございます。  なお、具体的には、各県においてその条件に適した整備法を定めて推進をしていくことと考えております。
  130. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 信連と中央金庫との合併問題について聞いたんですけれどもお答えがありません。
  131. 角道謙一

    参考人角道謙一君) 信連と中金をどうするか、これにつきましては、統合は組織二段、事業二段というのが現在の系統再編の組織整備の眼目でございますので、私たちはそれを基本にする。しかしながら、地域の実情に応じましてそれぞれの段階で、それぞれの県の実情に応じて金庫と信連の統合、あるいは広域信連ということもございましょうし、一県一農協というところもございます、あるいは現在のままで効率化を進めて存続をしていくというふうなところもございますが、それぞれの地域の実情に応じて、これは組織原理でございますから、そういう方向で組織整備を進めていきたいというように思っております。
  132. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 ありがとうございました。終わります。
  133. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で午前中の質疑は終了いたしました。  参考人方々一言御礼を申し上げます。  本日は長時間にわたりまして貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしましてここに厚く御礼を申し上げます。  御退席くださって結構でございます。  午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午後一時二分休憩      ―――――・―――――    午後二時開会
  134. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  休憩前に引き続き、参考人方々から御意見を承ることとし、午後は住友不動産株式会社取締役相談役安藤太郎君、株式会社共国債権買取機構取締役社長金澤彰君から意見を求めることといたします。  この際、参考人方々一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  当委員会におきましては、目下、平成八年度総予算に関する審査を進めておりますが、本日は特に参考人方々から住宅金融専門会社問題につきまして御意見を聞くことになった次第でございます。  質疑に入るに先立ち、委員各位に申し上げます。  本日は、申し合わせの時間内で参考人に対し質疑を行うのでありますから、特に御協力をお願い申し上げます。  また、質疑時間が限られておりますので、参考人答弁は要点を的確に簡潔にお願いいたします。  なお、安藤参考人につきましては、随行者一名を隣に座らせるとともに、着席したまま答弁を行うことで御承知おきください。  それでは、参考人に対し質疑のある方は順次御発言願います。清水達雄君。
  135. 清水達雄

    ○清水達雄君 自民党の清水達雄でございます。  お二方の参考人におかれましては、住専当事者というわけではございません。債権回収を進めるに当たりましていろいろ難しい問題もあるものですから、学識経験者として御意見をお伺いしたいということでお招きをしたわけでございます。そういうことでございますので、実態でありますとか政策提言なんかをひとつ御自由に濶達にやっていただきたいというように思うわけでございます。  それで、住専を初めとして不良債権の処理をするということ、つまり回収をするということは担保不動産を売って金にかえないと債権が回収できないということになるわけでございまして、今非常に不動産市況が低迷をしておりましてほとんど売れないというような状況でございます。こういう事態の中で住専の不良債権担保物件をどういうふうに処分していっていいのか、その点につきまして、まず最初に安藤参考人から総論的な御意見を伺いたいと思います。
  136. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 今、先生からお話がございましたが、極めて自由に率直にというお言葉でございますので、私、不動産業界の一員といたしまして率直な、また少し先生方には勝手なことを言っておると思われるような点をおしゃべりするかもしれませんが、ひとつ御了承のほどお願いいたします。  さて、先生から今お話がありましたが、私は、これほど騒がれております住専処理に関しましては、我々業者が何か不動産を売るというようなものとは違いまして、非常に重い一つの別な役目があろうと思います。わかりやすく言えば、住専さんが売りますのには理念というものがやっぱり必要なんではないかと、憲法ですね。  一つは、住専がお売りになったものは、利用されないものは利用されるように何とか工夫しなくちゃいかぬ。売ったものは、あるいは御自分が持っているものでも、利用されないものを何とか利用するようにするということが大きな一つの使命であるというふうに思います。  それからもう一つは、先生から今お話がありましたが、最近四、五年間資産デフレで不動産が全然動きません。結局、不動産の需要が非常に減退しておるということでございます。何とか不動産の需要を喚起するということが必要なのではないか。これは住専さんがそれをお扱いになることによって需要喚起の一つの起爆剤とするという大きなお役目があるのではないかというふうに思います。  そこで、どういうふうにしてこれを換金するかということにつきましてはいろいろな切り口からお話ができるというふうに思いますが、私は、きょうはテレビの放送があるというのでお茶の間の方がたくさんおられると思います。ですから、そういう方々にわかりやすいような切り口でひとつお話ししたらどうかというふうに思います。  それで、そのスキームは方針としては大体五つに分けたらどうか。完成物件、そのまま売れるものがありますね、これはひとつ我々業者にお売りいただく、極めて簡明なものだと思います。  第二は、割合にまとまった土地があると思います。ビルをつくるのに二百、三百坪を目指しておったけれども五十坪しか買えない、しかし道路に面したいい土地であるというようなものは百坪でも別な用途に使える、そのまま何かをつくればそれで役に立つ、こういうものもあろうかと思います。住専の債務者の中にはまじめな方もたくさんおられるわけでございますので、そういう方には付加価値をつける資金を、ほかの銀行でもいいし、貸さなければ住専処理機構が融資をなさるという場合だってあるのではないか。しかし、なかなかいま一つ信用ができないということでございましたなら、それは我々の業界の方に、この業界ばかりじゃありません、一般に売却をする、こういうことだと思います。  それから第三番目には、使えそうな土地、まとまってはいないけれども使えそうな土地というものがあるのじゃないかというふうに思います。これは例を言いますれば、駐車場に使えるじゃないか、あるいは何かの小さな店舗にも使えるじゃないか、あるいは少し引っ込んでいるけれどもアパートに使えるじゃないかというような、まとまってはいないけれども使えそうな土地というものがある。これもやはり民間に売ったらどうか。ですから、完成物件は売る、まとまった土地も大体原則として売る、使えそうな土地も民間に売る、こういうことです。  第四に、虫食いと買い手のないものがあります。七住専が持っております土地は東京と大阪と神奈川県で大体九割を占めるというふうに伺っておりますので、これはやはり将来の、福祉施設をつくるとか、公園にするとか、それの代替地にするとかというようなことで東京都とか厚生省、公園なら厚生省ですか、そういうところにお売りになったらどうか。これはひとつ東京都に大きく買っていただく、非常に安い値段になると思いますが。  以上が切り口で大体四つの段階のものを申し上げましたが、残るのは、なかなか債権の保全が、詐害行為とかなんかありまして今新聞をにぎわせておりますが、不法占有とか資産隠しをしておる、これは私は、やはり検察、警察、国税というような強権の機能を持っているところにお頼みするしかないと。しかし、承りますと処理機構は株式会社、それではそういうことはできませんので預金保険機構というところに、親会社みたいな格好になりましょうか、そこにお願いをしましてそこで債権の保全をやっていただく、こういうようなことであろうかと思います。  それで、そのまとまった利用できないものをいろいろ統合、整地をしたりあるいは土地整理などを行って利用できるような土地には自分がやるんだというお考えがあるようにも聞いておりますが、これは私は住専処理機構の設立の趣旨から申しましても、御自分ではなさらずに一般の方に売却しましてそれにさせる、その処理機構のお仕事はまあまあ五、六年の短い間にこれを終了させる、こういうようなことの方がいいのではあるまいか、以上がその総論でございます。  これをいかに実行するかということは各論で、いわゆる手だてとか方法論になりますが、それはまた後で御説明申し上げたい、かように思います。
  137. 清水達雄

    ○清水達雄君 今大体の粗い売り方のスキームみたいなものをお示しになったわけですけれども、完成物件とかまとまった土地というのは非常によくわかるんですが、使えそうな土地を、そんな駐車場ばかりいっぱいつくってもしようがないとか、あるいは虫食い状のものでも福祉施設みたいなものがちゃんとできるようなもの、使えそうなものがどのぐらいあるのかとか、あるいは公園、公園はまあそれはミニでもいいよと言えばできるかもしれませんけれども、その辺のことについてはかなりいろいろ使い方を考えなきゃいけないんじゃないかなというように思うわけですね。  特に、地価が下がり、こういう不良債権担保土地みたいなものがいっぱい出てきている今の状況というのは都市づくりの非常にいいチャンスなんですね。だからここで、ミニでもいいけれども、交換分合的な土地区画整理事業をやるとか、再開発をやるとかいうふうなことで、立派な町をつくるチャンスとして生かしていくということも考えられるんです。事業をやることはかなり大変なんですけれども、今までやろうやろうと思っても余りできなかったのがやりやすくなったということはあるんです。その点について、これは公的にはやろうと思えばやれますけれども、民間でそういうふうなこともやろうというようなことになるのかならないのか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  138. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) それは今私が総括的に申し上げたことをスムーズに実行する手法という中に私は入ると思うんです。それは、やっぱり買う人があるわけですから、買った人がそういうものに利用しやすいようにインセンティブを与えなくちゃ私はいかぬというふうに思うんです。そうすればそのインセンティブの中に、インセンティブは何かといったら、特にこれは容積率を少しふやしてやろうとか、いろいろのインセンティブがあると思いますが、都市開発法というのが今おありですね、これに措置いたしますと法定開発ができるわけです。  そうしますと、虫食いがたくさんあって、その半分ぐらいしか、五百坪のうち二百五十坪ぐらいしか機構が持っておられなくて、あとの二百五十坪は三十人が持っていると。これはもう全然開発にならぬのですけれども、今の都市開発法の適用を受けて、そして区なり市なりによりまして法定開発ができるということになりますと、あとの虫食いの三十人も一緒になって、そこで大きなビルができるとかホテルができるとかと、こういうことになりますので、今のお話は買った方にインセンティブを与えるというインセンティブの一つの例だというふうに思います。
  139. 清水達雄

    ○清水達雄君 これはアメリカのRTCの例なんですけれども、一九八九年ですか、平成元年ぐらいにつくったわけですね。つくっても最初のうちはなかなか売れなかったというふうなことで、随分努力をされたようです。最初の段階は、独立機関が評価したような値段を曲げちゃいかぬぞというふうなことを言っておったら一向に売れない。それで、いわゆる不動産業者、ブローカーなんかに頼んで、例えば六カ月以内は評価額の八〇%ぐらいまでなら売ってもいいよとか、それから六カ月から十八カ月以内は六〇%に下げて売ってもいいとか、そういったようなことをいろいろやって、ある程度期間に応じて価格に自由度を与えて売るというようなことをやったり、あるいは証券化をして売ったりとか、いろんな努力をしたようですけれども、こういうのを見ておられて、どんなことが非常に効果があったというふうにお考えか、お伺いしたいと思います。
  140. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 今、先生からアメリカのRTCのお話が出ましたが、今度の処理機構もRTCのような手法でやりますればこれは非常にスムーズにいくだろうと思います。  それから、RTCは御承知のように六年間で一すっかり店じまいしたんですが、債権の約七〇%を回収したという実績を持っているんです。私に言わせますと、これは日本と違った大体三つの特権を持っておる。  一つは競売ですね。日本では強制競売というものは裁判所だけがやるのでございますが、RTCも強制競売の主催権を持ったんです、法律ができましてね。ですから、物件を一々今のように競落の申し立てを裁判所にしまして、それで競落をすると。きょうの新聞にもちょっと出ておりまして、非常にこのごろはスムーズにいっているというような記事が出ておりましたが、やはり二、三年かかるというのが私たちの常識でございます。ところが、RTCは自分で競売をするような機能を持ちましたので、そこでどんどん、二、三年を待たずに競売ができたと、こういうことが一つ。  それから、今おっしゃったように、そこですぐ競売をしますときに、向こうはオークションなどを使っておるんです。御承知のようにアメリカには日本と違ってハイリスク・ハイリターンというのが国民性といいますか、そういうものがあります。日本ではハイリスク・ハイリターンというものはなじまない、ノーリスク・ハイリターンを望んではかりおる国でございます。  向こうにはハゲタカ・ファンドというようなものがございます。オポチュニティーファンドと言うんです。これは、みんなが買いに向かっているときに逆に売るという、そういう逆張りのあれなんですが、これはやっぱりアメリカの国民性のハイリスク・ハイリターンというものの一つのあらわれだと思います。最近のベンチャービジネスにも日本はなかなか金を出したがりませんが、アメリカはそういうものに金をどんどん出すというエンゼル税法というものがございます。そういう国民性の違いだというふうに思います。そういうものがあるものですから、逆に安ければどんどん引き取るというものがあるんです。日本じゃただだったらみんなもらうでしょうけれども、少々安くてもリスクがありますのでなかなか引き取らぬと思いますが、そういうものがある。  それで、話が長くなりますから簡単に言いますが、御存じのようにREITというものがありまして、それから向こうの不動産証券というのは証券化が非常に盛んだったわけであります。  不動産証券というのは、日本は今組合方式というものが四つか五つぐらい例がございますが、不動産証券であっても日本の法律というのは取得税は取る、登録免許税は取る、譲渡は個人のときは三九%取るぞということで、転々流通なんというものは全然ないんです。  ところが、アメリカは非常に不動産証券というのが流通していまして、無論マーケットもあるわけでございます。そういうものが引き受けた上に、先生の今御質問のところの安売りということを非常にやったんです。日本の競売ですと最低価格というものがありますね。ところが、向こうの競売は最低がなくて一円でもいいよと言うことができるわけでございますが、今御指摘になったように、どんどん安く売ったものですから急にはかどったと。それで、私の言い方はあれだけ安売りすれば売れるに決まっているというようなことでありましたけれども、そういうような背景でRTCというのは非常に仕事がうまくいった。  それじゃ日本ではどうかということを言いますと、強制競売の方は裁判を待たなくちゃいかぬわけです。それから、債務者がオーケーをすれば任意の売り立てができるわけです。これを任売といいますけれども、そういうことは日本においては債務者がうんと言わなければできません。だから、今度の住専の処理機構の中で債務者がたくさんいますが、もう損をしても、売り値だって幾ら安くても結構ですよという承諾のものがうんとありますれば私は相当売れるかと思いますが、その辺がよくわかりません。  そういうことでは、売却するのにも大分環境といいますか、規制が違うといいますか、RTCと日本の今度の場合を同じような環境、背景というわけにはまいらぬかと、こういうふうに思うわけでございます。  以上です。
  141. 清水達雄

    ○清水達雄君 今のお話でRTCが競売の主催権を持ったという、これは何か特別立法をやって、日本でいえばいわゆる民事執行法に基づく法的な競売みたいな、そういう競売をRTCが特別法か何かでやったということですか。
  142. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) そういうことだと思います。  ですから、今度預金保険機構がみずから強制競売の裁判所と同じような開催、自分でそういうものを開催できるというものの権利を、法律が必要でございますが、あれは公的機関なんですからそれを速やかに先生方によって与える、やりやすいようにしてやる、これは一つの大きなポイントだというふうに思います。
  143. 清水達雄

    ○清水達雄君 それからもう一つ、証券化のお話の中で、日本の場合には例えば土地の譲渡益課税の税率が三九%もあるとか、登録免許税だとかいろんな税金のお話もいっぱい出たんですが、証券化をしてもそれの取引等に係る税制については、土地についての税制が日本ではかかる。アメリカの場合には土地税制というのは余りすごいのはないようですから、普通の株式の譲渡みたいな、そういう証券の譲渡という税制で扱われている、こういうことをおっしゃったわけですか。
  144. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) そういう意味のことを申し上げたつもりです。
  145. 清水達雄

    ○清水達雄君 それから、いわゆる証券化という問題で今までよく言われてきたことは、日本では証券市場というものがそんなに発達していなくて、証券化をしても流通性がないからみんな余り買わないんじゃないかとか、そういうことが言われたし、それから土地を紙っぺらの証券にするということの信頼度といいますか、そんなふうなこともいろいろ言われてきたんですけれども、そういうふうな点を考えると、今言ったように税制の改善等をやれば何か日本でも育つでしょうか。その辺についての感じをお願いします。
  146. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) それは先ほども、どうも説明がまずくてよく御運解いただけなかったのかなとも思いますが、とにかくアメリカの不動産証券というのは株式や債券と同じように転々流通して、それで金額も小さい十万円とかなんとかいう小口のものが行われておる。それがどんどん流通して市場で売ったり買ったりされるというゆえんのものは、ただ一つ、不動産証券のときも取得税はない。それから、登録免許税もない。ただ、固定資産税はかかるんです、アメリカも日本も同じです、その証券に。譲渡税が個人の皆さん、先生個人だったら三九%から三二・五%もかかるわけですね。  それから、法人が持っておる場合には、法人税のほかに短期の譲渡特別重課税とかがつきまして、五年以上が五%、三年から五年が一〇%ですか、それから二年以下なんというのは一五%、今度半額にしていただいたんですけれども、そういうものが日本はかかる、向こうはかからないと。アメリカと日本では、もし比べたらそういうふうに土地の税金が皆かかりますので、それが大きなネックだろうというふうに思うんです。  それから、大蔵省が小口のものを今度の法律で五百万にしました。今一億とか五千万のものが組合方式でできているわけですけれども、それを五百万にしてくれましたけれども大蔵省さんが本当に株式や債券と同じように不動産証券というものを扱ってくれるかどうかなんというのはなかなか難しいんじゃないか。アメリカの不動産証券というのは三十五年の歴史があるそうでございますから、そういうところで、これは言うべくして一番実現の薄い課題じゃないかと、私個人では思っております。
  147. 清水達雄

    ○清水達雄君 アメリカの証券化の場合は、例えばメリルリンチであるとかモルガン・スタンレーとかという非常に有数の証券会社が不良債権担保不動産を買い取って、それで証券化をしたというようなことがありますから、やっぱり日本の証券業界とかそういうところでよくこれは検討してほしいなというふうな感じがするわけでございます。  それから、なかなか土地が今売れないわけですね。売れないのはもちろん需要が少ないから、設備投資もまだ余り本格化しておりませんし、住宅は売れているけれども、どっちかというと小さな住宅が売れているというふうなことであります。特に、ビルなんかについては非常に供給過剰状態というふうなこともありますから、需要がないという点も非常にあるんです。しかし、それにしましても、例えばビルなんかはいいビルもあればそうでないビルもあるわけで、値段が安ければもっといいビルに入ってもいいという人もいるというふうなことにもなろうかと思うんです。  そういう意味で、現在の日本の地価ですね、地価も大変今値下がりを続けておりますが、今の家賃とかなんとかと比べまして、収益バランスがとれるような形でそういうレベルに地価が行っているのかどうか、そういう点についてはどんなお感じでおられますでしょうか。
  148. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 今官製の公示価格というのがあることは御承知のとおりだと思いますが、しかし最近の情勢は、住宅地については大体このぐらいの収益還元価格からこのくらいの価格だったら成り立つが、そういう値段で売りますかというと大抵売ってくれます。  ですから、住宅地は東京都心から十キロ、二十キロ、三十キロというふうに土地を分けまして、三十キロぐらいのところだったら大体一種幾ら、大体二種か三種です、これは。それから、二十キロぐらいのところはそれより少し高くなります。だから、十キロのところはそれよりも少し高くなると。  建設費をこれだけかけてつくったものを、二十坪か三十坪か、大体三LDKやなんかで売っていたときは、大体この価格で売ると言えばこちらは、売る方も損はしない、それからその土地を売った人も損をしないというのが定着しております、今。だから一口に言いますと、大体東京の住宅地は底値が見えた、底打ちがあったと。だからもうそれが収益還元価格だと。適正価格というのは、土地の値段は、住宅地に関しては大ざっぱに言いまして私はもう収益還元価格で大体安定したと。  もっとも、住宅というのは住宅金融公庫の三・二%というものが前提になっておりまして、これが五%か六%に上がりましたら、今度はやはり値段を少し下げませんと売れませんから、だから金利がキャッシュフローで少し赤が出るというようなことになりますが、今の状態でしたら完全にこれは収益還元価格で、このぐらいの値段で買いたい、そうすると結構売り手がいる、都心の話ですよ。それで、つくったマンションもこの価格で売りたい、そうするとちゃんと買い手がある、こういうことになっております。  ところが、ビルの方は、これはもう全然値段があってないようなものでございまして、大変な下落をしております。麻布のいいような土地でも、五百坪はありますが半分は虫食いですよと言ったらこれはだれも買いません。値段がないようなものです。公示価格は相当高いですけれども、買い手がありません、それは。  ただ最近は、新聞にもしょっちゅう出ておりますが、都心に近い近、それから大というのは五千坪以上を大と申します、大。それから新しくなくちゃいかぬ。ロケーションが遠い千葉県とか何かではいかぬので、やっぱり東京の永田町とか霞が関とか青山とかというところが近になります。これが第一条件。  それから、大というのは五千坪以上。五千坪以上といいますと、大体七種としまして、七、七、四十九ですから七百坪がまとまったものが、いい格好でなくちゃいけませんよ、変なでこぼこした格好ではよくございません。  また、七百坪のもので、そして新しくなくちゃいかぬ。何で新しくなくちゃいかぬかというと、耐震、地震ばかりじゃなく、揺れというものに対する、それも一つはありますが、やっぱり情報インフラがすっかり整備されているということが非常に大きい。それから柱が今のところは細いんです。それからワンフロアが広くないとオフィスワーカーとしては非常に不便である。  そういうことで、特殊なものというのが今言う近、新、大ですか、こういうものだけが結構売れまして、それも一坪二千五百万か二千万で買って、それで五千坪のビルをつくってそれを貸します。そうすると、共益費入れて私は大体三万五千円ぐらいは取れると。すぐ満杯になる。大会社が入ります、大団体とか大企業。  ところが、それ以外のところは、現在ではとてもなかなか、小さい百坪ぐらいのところを、細長い鉛筆ビルなんという言葉がありますが、幾ら東京のど真ん中でもそういう三十坪とか五十坪のところではビルをつくりましてもなかなか賃貸料のいいのが取れない。  二極分化なんという言葉を新聞などが使っておりますが、現状ではそういうことでございまして、そのほかのビルは空き室あり空き室ありというのが現状で、これは地価がどのくらい下がっているかということを、最近のやつを……
  149. 清水達雄

    ○清水達雄君 それはいいです。
  150. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) はい。
  151. 清水達雄

    ○清水達雄君 住宅地については下げどまりというか安定段階に入ってきているのかなというお話ですが、ビル用地については、立派なビルが建つ土地なら使えるけれども、小さい土地はもう値段に関係なくなかなかこれからビルを建てることは困難だと。  そうすると、虫食い状態にあるような不良債権担保土地を有効利用しようと思うと、やっぱり大きな土地にまとめなきゃだめですね。集めるという、交換分合等で集約換地でもしてやるというような、あるいは地上げをしてもっと大きな土地にしなきゃならぬというふうなことが伴わないとなかなか有効利用は困難だと。  値段の問題を余り議論しても、これはもう政策的にどうこうするという問題じゃありませんけれども、住友不動産が最近商業ビルの建築に着手するというのが新聞に出ていました。これなんかは、その土地はもう前から持っていた土地ですか、今の地価状況関係があるのかないのか。
  152. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) これは私の社長時代なんですが、一つの例をとりますが、神田の神保町、あそこで十五、六年前にビルをひとつつくってやろうというので買ったんです。虫食いだらけでございまして、目的土地の半分ぐらいは買ったんですけれども、半分ぐらいは三十人も四十人も虫食いの地権者がおりまして、それはどんどん地価が高くなったものですから、しょうがないのでほったらかしておいたんです。そのかわり、金利と固定資産税なんかはちゃんと払っておって、非常に垂れ流しみたいなことをしておったんですが、最近地価がおさまった。  しかも、最近はさっきの都市再開発というのが一つのやはり大きな課題になっておりまして、都市再開発法の適用になりました。それで法定開発をして、私の方が持っている土地と、それ以上の虫食いの土地方々の地元の方々と一緒になって建てる。こういうもので、私の方が単独で建てている、新しく土地を買って建てるなんというのでは毛頭ございませんで、やっと日の目を見たというようなものでございます。
  153. 清水達雄

    ○清水達雄君 それから、この不良債権問題を考える場合に、私はいつも困ったなと思っているのは、不良債権担保不動産にどんなものがあるのか、どんな状況にあるのかというのがよくわからないんです。きょう、金澤参考人から後で伺いますけれども、共国債権買取機構が相当のものを持っているわけですね。ところが、担保土地がどんな土地であるかというのがよくわからない。今度、住専のいわゆる担保不動産というのを住専処理機構に譲渡するというようなことをやるわけですけれども、これもどんな土地があるのかというのがわからない。  これは一つには、こういう不良債権全体として見てかなりのものが供給圧力として今後あるよと、だけどどんなものなのかよくわからないというようなところがあって、市場関係者というのは非常にすっきりとよくわかったという状態になかなかならぬ。後から供給圧力で土地がまた出てくるかもしれないというふうなこともあるわけです。だから、やっぱり情報開示ということが非常に大事だなと思うんですけれども、その点についてはどんなふうにお考えでしょうか。
  154. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) すべて仕事をおやりになるうちで一番の根本がやはりディスクロージャーということだろうと思います。オークション式にしてそれで競売をやるといっても、どんなものがあるのかわからないでは応募できません。ですから、これは今度の住専ばかりの問題ではないと思うんですけれども、後でこちら様にも同じ問題が出ると思いますが、根本はディスクロージャー。  しかし、そのディスクロージャー、こういう物件があります、その物件にはこれだけの抵当権がたくさんついております、それにはこういうものがいろいろついておりますとか、そういう会社の名前とか金額とか抵当権者の名前を洗いざらいディスクローズするということになりますので、おのずからこれは日本の風土からいいましても限界があると思いますが、ともかくディスクローズあっての話で、何か今度、政府はこれだけの情報公開をしなくちゃならぬという法律もできたことでございますし、それに準じて、そういうようなものにつきましてもやっぱり公開やむを得ずと。  ですから、債務者に、おまえのところの借金は半分しか返ってこないんだぞ、こいつを一刻も早く売却してそれで競売にでもしなくちゃいかぬ、レインズにでも載せなくちゃいかぬ、それならひとつ全部洗いざらい公表するぞというようなことで、半分強制的と言っちゃ言葉が過ぎるかもしれませんが、応諾を得まして、そしてディスクローズ、公開をして、公開があって初めて仕事が機能していく、こういうふうに私は思います。
  155. 清水達雄

    ○清水達雄君 今のお話ですと、例えば銀行だとか共国債権買取機構とか、住専処理機構はできておりませんけれども住専とかいうところが債権を持っていて、担保不動産を持っているけれども、それが所有者の了承を得ないと公開できないということになっているからなかなか進まないという面もあるということをおっしゃっているわけですね。わかりました。  では次に、金澤参考人にお伺いしたいと思います。  時間があと二十分ぐらいでございますので、共国債権買取機構のことについて余り詳しく御説明いただいていると時間がなくなりますから、設立は平成五年の一月、資本金は七十九億円余というようなことで、金融機関の百六十四社が設立をしたということでございます。やっておられる仕事というのは、銀行が持っている不良債権を共同処理機構に簿価よりも安く売って、その差額は銀行の方が無税償却をする、それで共同機構の方はその債権担保不動産を処分して回収をする、こういうことをやっておられるというふうに思っているんですが、そういうことで大体よろしゅうございますか。
  156. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) ただいまおっしゃったとおりでございます。
  157. 清水達雄

    ○清水達雄君 この会社設立以来今日に至るまでの不良債権の買い取り実績と、それから担保不動産に係る回収実績につきまして御説明をお願いしたいと思います。
  158. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 買い取りました債権の元本額、不良債権のもともとの元本額でございますが、ちょっと丸めた数字で申し上げますが十二兆円、それに対しまして私どもがそのときの時価と認めた価格、それが五兆円でございます。ですから、その差額の七兆円、先ほど償却というお言葉でございますが、これは売却損という形になりますが、これが銀行業界において処理をされているわけでございます。  一方、回収でございますが、これは先ほど来お話しのように、地価が開設後三年間大変下落を続けておりますわけでございますが、その中でも何とか努力をして売っていこうということで売りました不動産の処分額が四千億。そのほかに、これは債権として買っておりますので、債務者の収入、それから得ている回収金というのがございます。わかりやすく申し上げれば、例えば家賃とかなんとかいうものを債務者の方がお取りになっている、その中から少しでも返せるものはこちらへ返していただく、それが三百億円、合わせて四千三百億円というのがただいま三月末の回収実績でございます。
  159. 清水達雄

    ○清水達雄君 それで、債権を買い取るわけでございますけれども、どんな銀行が持ってきても債権を買い取るのか、その債権を買い取る対象金融機関は設立に関与した銀行だけか。しかも、新聞を見ておりますと、住専の借り手あたりに対する債権住専債権が共国債権買取機構へも相当売られているというふうな記事も大分あったんですけれども、その辺の関係、つまり債権の買い取りのやり方、それがどんなふうになっているかお答えいただきたいと思います。
  160. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) お答え申し上げます。  まず、債権の買い取りのやり方と申しますと、結局、買い取り対象債権の定義ということでよろしゅうございますでしょうか。  これは不動産担保つきの不良債権、ただし居住者用の住宅ローン債権は除いております。それから、債権担保は国内所在の不動産に対して抵当権ないし根抵当権が設定登記済みであること。それから、紛争など買取機構として対応しがたい事由が存在しないこと。これはどういうことかと申しますと、我々はあくまでも任意売買を前提といたしまして、任意売買をあらかじめ了承しておられる債務者からその物件を買い取るという手続をしておりますので、当事者間で紛争等がありますともともとそういう条件にはならない、こういうことでございます。それから、当然のことながら法令に違反しないことというような条件のもとで買っておりますわけです。  住専の貸出先との重複と申しますのは、やはりそういう定義で不動産業向けの買い取りというのが多くなるものですから、新聞報道等で承知しております限りでは、やはり我々の買い取っている部分と重複がございます。
  161. 清水達雄

    ○清水達雄君 何か聞くところによると、第一方式とかいって出資金融機関が保有する債権を買う、それからさらに第二万式とかいってその出資金融機関の関連ノンバンクが保有する債権も買い取るというふうなところで、住専の借り手というのはノンバンクからも金を借りているし、あるいは出資金融機関からも金を借りている、そういうものが共国債権買取機構にも買い取られていっている、そういうことになるわけですね。
  162. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) さような御理解で結構でございますが、一つ申し添えておきたいと思いますのは、ノンバンク債権の買い取りについてでございます。  これは、当該ノンバンクに対しまして合理的な再建支援計画の存在が確認されていること。要するに、その債権に対する権利関係でございますとか損失分担の調整でありますとか、はっきり申し上げれば、裏返して申し上げれば、そういう再建支援にかかわる負担というものの割合というものがその当事者間できちっとされておる、そういうものがありますものにつきまして私どもの株主金融機関を経由してその債権を買い取る、こういう仕組みになっております。
  163. 清水達雄

    ○清水達雄君 買い取った債権担保不動産の売却なんですけれども、これについてはさっき安藤参考人との間の質疑であったんですが、所有者が同意をしないと売ることはできないということになるんでしょうか。
  164. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 原則的には任意売買を前提としておりますのでそういうことでございます。それで、その辺につきましては、鋭意任意売買ということで持ち込み金融機関を通じてずっと折衝を続けておるわけでございますけれども、ただし任意売買を行うことができないというような客観的、合理的な事態が発生しました場合には、これは例えば競売等の手続に頼らざるを得ない、これもやむを得ないと考えております。  その具体的な事例と申しますと、例えば債務者と債権者との間で交渉のパイプがなくなってしまった、信頼関係がなくなってしまったというような場合、あるいは、担保不動産を買い取りますときには私どもは任意売買を前提としておりますから妙な権利等の付着したものは買いませんけれども、その後において第三者が介入してきたというようなことがあって権利関係が非常に複雑になったような場合、これはやはり競売に頼らざるを得ません。  それからもう一つは、我が機構が発足して三年ほどたちましたけれども、任意売買をやるやると言いながら実は全然その動きがないというようなところにつきましては、三年のところでもう一度任意売買状況というものはどうなっておるか、過去の経緯、それから今後の具体的な見通しはどうなっておるかという再折衝を行いまして、競売も視野に入れてさらに活用していくことを考える、こういうことでございます。
  165. 清水達雄

    ○清水達雄君 今後、住専処理機構ができるわけですけれども住専処理機構で回収をやる場合も競売に付さないと任意売買というふうなことになって、やっぱり共国債権買取機構と同じようなことになるんでしょうか。
  166. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) ただいま御審議中の処理機構の内容についてまだつまびらかでございませんので、ちょっと問題が先ほどの安藤先生のおっしゃったことに絡むかと思うのですが、先ほど公表ということがございました。この問題なんでございますけれども、殊に任意売買の場合に、私どもは最初から公表のシステムというものに力を入れてきておりました。ただ、これが先ほどもお話がありましたように、公表をしてしまうとそもそもこの物件が不良債権であるということがわかって御自身信用にかかわるとか、実際営業を続けておられるわけですからいろいろ影響があるというようなことで、最初は非常にいろいろな抵抗がございました。  それで、とりあえずは我々としては概要公表というシステムをつくったわけです。概要公表と申しますのは実際非常に粗っぽいものでして、物件の市とか区とか郡あるいは町村名ぐらいをあらわして、それからその種別では、例えば住宅地ですよ、商業地ですよ、容積率がどのくらいです、更地です、あるいは建物があると。それから規模は、例えば何平米から何平米まで、何平米から何平米までと階層をつくる。そういうようなことなら物件が特定できない。特定できないけれども、大体こういうところにこういう物件はあるよということからスタートいたしたわけです。  それから、さらに進めまして、その物件の地番に至るまで、ですから確認しようと思えばその地番が特定できるというところまでを詳細公表と申しますが、そこまで同意をしてもらったものは詳細公表に移る。ただ、これは当然のことながら名前は公表いたしません。  そういうようなことに努めてまいりました結果、これまで買い取りました不動産の件数が一万五千件でございますが、両方合わせた公表件数が一万二千件、八〇%以上が何らかの形で公表されておる。そのうち詳細公表は五千件、三三%ぐらいなのですが、特に下期に買い取りました二兆二千億につきましては詳細公表を義務づけまして、原則詳細公表のあるものしか買わないというようなことでほぼ一〇〇%まで参ったわけでございます。  その結果ですが、やはりいろいろ不動産業あるいは不動産を買いたいというお考えの方からの照会件数というのが非常にふえてまいりまして、創業以来これまで合計八千四百件ぐらい引き合いというものが参っております。これはそのまま今度は持ち込み金融機関の方にそれを流しまして、それをまた債務者との任意売買の促進の役に立てていただく、そういうような活動をやっているわけでございます。
  167. 清水達雄

    ○清水達雄君 共国債権買取機構もまだできて三年間というようなことなんですけれども、我々今まで不良債権問題を議論するときには、共国債権買取機構は債権は買うけれども回収が進まない、極めて微々たるものだというようなことをいつも言い続けてきた。いまだに金額的に見ますと買い取った回収額というのは四千三百億、買った金額は五兆というふうなことになるわけです。ただ、今お話しのように、最近は非常に回収の実績が上がってきているわけですね。要するに、レベルとしては非常に回収実績が低いんだけれども、しかし最近は上がってきているということの原因といいますか、それをどんなふうに御説明なさいますか。
  168. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 上がってきたとおっしゃるように胸を張って言えるような数字ではないと認識しております。しかしながら、やはり三年間地価が下がり続けているというアデンストの中で、例えて申しますと、これはキャッシュフローからの回収額も合わせてで申し上げますけれども、九三年度三百億、九四年度は千四百億、それに対しまして九五年度、昨年度は二千六百億、それも上下に分けますと上期が千億に対して下期が千六百億というようなこと。  何とかこういうものをさらに積み上げまして、我々の機構ができましたのは一つは金融秩序の維持安定でございますが、もう一つは土地取引の活性化への呼び水と。この役割を果たしていないじゃないかという御批判は十分承知しておるんですが、一方で物件の件数も二千件売れてまいりました。先ほど来申し上げておりますが、公表でございますとか、それからレインズというものへの登録も実は昨年から始めまして、首都圏のレインズは去年の四月からで千三百件でございましたが、近畿圏はことしから始めて三百件。それに登録したものの中からというつかみ方でございますが、売却されたものが六十件を超したと。要はそういう地道な努力を続けていくより仕方がないのかなというふうに考えているところでございます。
  169. 清水達雄

    ○清水達雄君 今レインズとおっしゃいましたけれども、これは不動産流通情報を登録して、要するにどんなものが市場に出ているかがわかるようないわば不動産流通機構のことを言っておられるわけですが、こういうふうなものを大いに利用していただいて、売らんとしている物件が市場のみんなにわかるようにするということが非常に大事なことだと思うんです。  やっぱり何といっても回収実績が余りにも低いという、これを何とかしなきゃいけない、何かはかに手だてはないのかというようなことは真剣にお考えになっているんだろうと思うんですけれども、その辺について、今後どうしようかというようなことがあったらひとつお答えいただきたいと思うんです。
  170. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) これまで申し上げましたことに尽きるわけでございまして、三年見直しルールというようなものをきっかけに、なお一層の回収努力をやりたいということでございます。  それから、先ほどちょっと証券化のお話も出ましたのでございますが、実は昨年公表されておりますので御承知と思いますが、三菱銀行さんで一件、証券化をおやりになって成功裏に発行なさいました。その裏づけとなる物件というものも、当機構のものも数件その対象となっております。この辺の問題につきましても、なお当機構も各持ち込み金融機関等とさらに研究を進めていきたいと考えておる次第なのでございます。  証券化に伴います幾つかのネックで先ほどからお挙げになっていないものを我々の立場から申し上げますと、我々の持っておりますのは物件ではございませんで抵当権でございますので、それからくる制約というものがございます。それから不動産にいたしましても、欧米のように、例えば賃貸契約が十年、二十年というように安定したキャッシュフローというものが定まっているというような商慣行がなかなか日本にはないとか、そういうところ等のネックがございます。この辺をさらに工夫をいたしまして、証券化に一つの実績もあるわけですから、さらにそういうものを進められるかどうか、そういうことも含めて検討してまいりたい、かように考えております。
  171. 清水達雄

    ○清水達雄君 RTCなんかの例を見ますと、硬直的な価格ではなくてやっぱり市場として売れる値段はどんな値段かというようなことで、先ほど申し上げましたように八〇%、六〇%、一年半以内なら五〇%でもいいよというようなことで価格を市場に任せるような形でやっていったと。  それからさらに、民間も使って、例えば政府と民間で政府が七五、民間の人が二五ぐらいの範囲でパートナーシップを組んで売る仕事をやるとか、あるいはRTCが担保不動産の全部、あらゆる不良債権を集めて公表するとか、要するにみんなにわかるように競争させる、オークションをやるとか、不良債権買取機構も実際は銀行等の方々に頼んで売り手を探すとか、そんなことじゃないかと思うんですが、より多くの国民にこういう物件が売りに出されているよというようなことがわかるようなことを、これは我々も考えなきゃいけませんけれども、民間の方々もいろいろ考えていただく必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  何かやや中途半端な時間で、余り存分に御意見を承ったということにはなっていないかもしれませんけれども、今後とも引き続き御指導をいただきたくお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  172. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で清水達雄君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、荒木清寛君の質疑を行います。荒木清寛君。
  173. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 平成会の荒木清寛でございます。  きょうは、お二人の参考人におかれましては大変にありがとうございます。  まず、私は金澤参考人お尋ねをしたいわけでありますが、そもそもこの買い取り会社の構想といいますのは、本来は住専の救済のために浮上した構想であると言われております。しかし、事実上、住専問題を先送りして現在の買取機構が設立されたというふうに認識をしているわけです。そこでまず、買い取り会社としまして、住専自体が保有しておった債権金融機関を通してでしょうか、購入したという実績はございますでしょうか。
  174. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) お答え申し上げます。  まず、一番最初の住専救済のために当機構が発足したというお話でございましたか、私ども認識はそういうことではないのでございます。  当社の設立趣旨と申しますのは、平成四年八月十八日、大蔵省から発表されました「金融行政の当面の運営方針」、それから同八月二十八日、経済対策閣僚会議に発表されました「総合経済対策」の趣旨を踏まえまして、民間金融機関の自助努力によって延滞債権計画的、段階的処理を通じ、金融機関の信頼性の向上と融資対応力の強化を図り、あわせて不動産取引活性化への呼び水効果を果たすことを期待して当社を設立という運びになったわけでございます。  第二の御質問住専からの買い取りでございますが、これは先ほど御説明申し上げましたように、ノンバンクの持っております債権は、ノンバンクに対しての合理的な再建支援策が存在し、かつその債権について支援にかかわる、あるいは権利にかかわる負担というものがはっきりお話し合いがついているものについて私どもの株主金融機関から買い取らせていただく。住専さんについてもその枠内に入っておるわけですが、結果として住専さんからの債権の持ち込みはなかったということでございます。
  175. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 御社はそういう経緯でしょうけれども、そもそも平成四年八月の政府の決定を受けて金融機関で協議をされたときには、住専をどうするのかということも恐らく大きな課題であったんではなかったかと思います。もしそうでなかったとすれば、金融機関としての危機管理が大変に問題であったというふうに思うわけです。  それで、次にお尋ねすることは、御社、買取機構に対しましては、野口悠紀雄教授が金融機関への公的資金による援助が既に大規模に行われているというふうに指摘をされております。すなわち、若干解説しますと、金融機関は不良債権を買取機構に売却し、それによって生じる損失を法人税の計算上損金扱いできることとされている。つまり、法人税負担の軽減という形で公的な補助が与えられていることになる。要するに、国から見れば入ってくるべき税金が入ってこないんだから、公的な補助の一種なんだという御指摘でありまして、私はそのとおりだというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  176. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 野口先生のお説、よく私どもも承知をいたしております。しかし、当社では、金融機関が不動産担保つき債権を譲渡する際に生ずる譲渡損、これはもともと損金の額に加算されるという法人税法第二十二条第三項第三号の規定にのっとったものであって、これをもって銀行のみに対する優遇措置だという御指摘は当たらないのではないかというふうに理解している次第でございます。
  177. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 その点ですが、不良債権につきまして、本来であれば回収の努力をしまして何年かたって最終的にやっと償却できるわけですね。その時点で損金算入ができるわけです。  しかし、この買取機構への売却ということになりますと、その時点ですぐに現段階で損金算入して法人税の軽減が得られるということになるわけですから、これはやはり一種の金銭的な利益がそこに生じているというふうに思うわけです。実際、御社の買い取り対象債権の額面と、そして実際に買われた取得額の差額の累計は七兆一千三百十一億円という発表になっております。それを金融機関というのは売却をした時点で損金として無税償却したわけですから、実効税率が五〇%として考えますと、その半分の約三兆五千億円の税負担が軽減された、そういう計算になるわけです。  もちろん、それが全部公的な援助だということはおかしいわけですけれども、本来は何年か先でなければできなかった償却がすぐにできたわけですから、これは理屈の上では、理屈の上といいますか、経済的に見ても三兆五千億円の無利子の融資がなされたという利益が生じているはずでありますけれども、違うでしょうか。そういう意味からすれば、明らかに実質的には公的な補助がこの買取機構の存在を通して金融機関に対してなされていると言うべきではないでしょうか。
  178. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 再度先ほどの説明を繰り返しましてもいかがかと存じますが、この辺は私ども理解は先ほどのとおりでございますので、そういうことで御容赦いただきます。(発言する者あり)
  179. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 今、そのとき反対したのかというお話もありましたが、私はそれがいけないというふうに言っているわけじゃないんです。しかし、はっきりさせておかなきゃいけないことは、大規模な公的資金による援助が既に行われているという点ではないかと思います。それを明らかにする必要があると思います。そうであれば、金融機関としてはその上にさらにこの住専問題で税金を投入して救済してくれ、そんなことはとても言えないんではないかというふうに思うわけです。  もしも私が言ったとおりであるならば、少なくとも実質的な公的な補助が既に行われているわけですから、各持ち込み金融機関ごとに御社を通してどれだけの不良債権の償却をし税負担の軽減を受けたのか、そういう個別の公表をすべきではないんでしょうか。それもやはりディスクロージャーの上から必要ではないんでしょうか。
  180. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) これは各業態に応じまして統一のディスクロージャーの基準というものがございますけれども、例えば都銀でございますとか長信銀、信託銀行等におきましてはおおむね毎期、当機構に対する債権譲渡損を正式に開示しておられます。
  181. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 では、次の問題で、買取機構における債権回収システムについて若干具体的なことをお尋ねいたします。  この買い取られた債権回収の具体的な手続、つまり取り立てまたは担保不動産の売却についての所有者の同意の取りつけ、仲介業者への売却の依頼、あるいは保証人への督促等、これは具体的にはだれが行っていらっしゃるんでしょうか。
  182. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) ただいまお挙げになりましたうち、不動産業者への情報の公開と申します部分、これは先ほどの御質問お答えいたしましたように公表という形で毎月行っております。それから、そこから参ります引き合いは当機構を通じて各持ち込み金融機関の方に還元いたします。実際の管理というものあるいは債務者との折衝その他につきましては、持ち込み金融機関に引き続き事務委託をしているところでございます。
  183. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 その持ち込み金融機関が銀行に業務委託をされている理由は何でしょうか。私が推測しますに、もともとの借り主あるいは担保不動産あるいは保証人等につきまして最もよく情報を持っておって、しかも人間関係があるのはもとのそういう持ち込みの金融機関であるというところから、回収の実を上げるために業務委託をしていらっしゃるんじゃないかというふうに思うわけですが、違いますでしょうか。
  184. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 大筋御指摘のとおりでございます。  私どもが保有しております担保不動産は一万五千件、これはほぼ全都道府県にわたります。そういう物件につきまして任意売買を進めようというものでございますから、これは当然のことながら債務者とのパイプというものをずっと持ち続けることが必要でございます。それから、担保不動産でございますから管理という問題がございます。物件の現状について、それから諸権利関係について登記簿等を見る、この辺を定期的にやらなければならない。この辺は持ち込み金融機関にお願いをするということにしております。
  185. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 その御経験を踏まえて住専処理スキームについてちょっと御意見を承りたいんです。  今回のスキームにつきましては、住専が第三者である住専処理機構に債権譲渡をしてそこで回収を行うということになっているわけです。しかし、御社のそういう経験も踏まえて考えますと、それよりも私はむしろ法的な手続をとって、本来の貸し主である住専のもとに管財人を入れまして、そして従業員にも全面的に協力をさせて回収するという方が実効的ではないかというふうに思いますが、この点、御意見をお願いします。
  186. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 例えば住専処理機構、これは先ほども申し上げましたように、私ども、現在、その内容等についてまだ御審議中ということでつまびらかでございませんのですけれども、そこでどういうスタッフがお働きになるか、そこのところで従来の債務者というようなものとパイプをお持ちになったスタッフというものがそのまま仕事をお続けになるのかどうか、あるいはまたそうしなくてもちゃんと別に手当てできるよという前提でそれなりの理由でおやりになるのか、この辺のところは、今御指摘の切り口からいえばちょっと私がただいま判断いたしかねる問題でございます。
  187. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 もう一つ関連してお尋ねをしますが、こういうケースもあると思うんです。同じ人間に複数の金融機関が貸し付けをしている事例、あるいは同じ担保に複数の金融機関担保権をつけているという事例がありまして、そういう債権が持ち込まれた場合には回収手続はどうされていますか。要するに、複数の金融機関から集まって同じ債務者、同じ担保不動産というのが生じたという場合ですね。
  188. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 私どものケースでございますね。
  189. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 はい、そうでございます。
  190. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) もちろんそういうケースはございます。ただ、物件がそのことによって例えば処分がやりにくいかとかやりやすいかとかいう問題とはさほど関係がない話でございます。要は一つの物件に幾つかの権利がついている、これは売れたときに法律上定まった順序で配当していくわけでございますから、結局、任意売買という場合にはちょっと競売の場合と違いまして、やはりいろいろな債権者間の話し合いというものが必要になってまいります。例えばそういうものが当買取機構のところで集まってきて、一つの物件に対する債権が全部集まってくるということにおいて、それが売りやすさにつながるかどうかということとはちょっと問題が違うのではないか、売れたときに売れた後のその配分の問題ということだと思います。
  191. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 その点でまた住専処理スキームについてお尋ねしますが、いわゆる第Ⅲ分類と言われております一兆二千四百億円というお金があるわけです。これはそもそもは損失見込み、つまりロスの見込みというはずだったんですけれども、この住専処理スキームではなぜか回収できる方に分類が変わってしまっているわけですね。これが衆議院の方でも随分問題になりまして、そのときの政府答弁というのは、七社ばらばらの回収体制では実現できないような回収が可能になる、だから一兆二千四百億円がアウトからセーフになるんだと、そういう説明なんですよ。  今の参考人お話ですと、七社まとめてやったから全然回収できないものが一兆二千四百億円入ってくると、債権回収というのはそんな簡単なものではないという気がするのですが、御意見があれば教えていただけますでしょうか。
  192. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) わかりました。  そういう意味でございますと、例えば住専相互間で一つの物件に対して幾つかの債権が重複しておる、その七つを一つにまとめれば一つの権利になると。そうすると、先ほど申し上げましたように、物件処分そのものがやさしいかやさしくないかという観点は別にいたしまして、売れたら売れたでその後もう権利関係調整というのは必要なくなるわけでございますね、任意売買であっても。  そういう意味で、それが先生今御指摘の金額の増加につながるかどうかということ、これは私、審議の内容もつまびらかでございませんので意見を申し上げる立場ではございません。確かに、権利関係というものを、我々の場合は任意売買を前提としてそれぞれの持ち込み金融機関の権利のついたものをそのままで持っているわけですが、今お話しのように七つの会社をいわば統合して、言ってみれば合併してしまうというような切り口で一つの債権者債権に変えてしまうということであれば、その後の調整がやりやすくなるということは事実であろうかということです。
  193. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 調整がやりやすいことは間違いないでしょうが、だからといって例えば売れない物件が売れるとか、それはまた別の問題ではないかと思います。  次の質問に行きますが、先ほどもお話がありましたが、鳴り物入りで登場した買取機構でありました。しかし、確かに銀行のバランスシートはきれいにはなりましたけれども担保不動産を流動化させ、最終的に債権を回収するという当初の目的からはほど遠いんではないかというふうに私は認識をするんです。この点につきましてゴールドマン.サックス証券のD・アトキンソン金融調査室長は「邦銀は共国債権買取機構を使えば無税で償却できるため、最終処分までは有税負担の海外と異なり、早期に処理するインセンティブが働かない」という指摘をしているわけです。  私も考えてみますに、銀行としては値段を下げて売ってしまうとまたそこで債権損が生じてしまうわけですから、むしろ物件の値段が上がるのを待った方がいい、そもそも無税償却というのは先にしているわけですから。そういう意味で、銀行に委託をしているんですが、早く物件を処分しようというインセンティブ、あるいは安くてもいいから売ってしまおうというインセンティブが働かないということがこの物件の売却を妨げている要因ではないかという気もしますが、いかがでしょうか。
  194. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 私の現場としての感覚を率直に申し上げます。  不十分とおっしゃいますでしょうけれども、とにかく二千件の不動産を売りました。私ども債権を時価で買い取っておりますが、これは当然のことながら、マーケットで売れる場合は時価でございます。  銀行の方として、私どもが今見ておりますところ、この問題は当機構にある債権を早期に解消したいということで銀行内部でも非常に真剣に、私もよく株主金融機関方々ともいろいろ情報交換をいたしますけれども、さまざまな工夫を凝らしておられます。私どもの機構の方にある担保不動産の売却、それについて、例えば銀行内でのいろいろなインセンティブというのはあるわけでございますね、その業績にかかわる。そういったようなものまでも考えるようなことをしながら早期売却に努めておられる、今そういう雰囲気だというふうに考えております。
  195. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 次に、野村総研によりますと、昨年九月末で買取機構は六千億円の含み損を抱えていると指摘しています。つまり、当時のレベルで四兆三千百億円で購入しました債権につきまして、地価のさらなる下落により担保不動産の価値が下がって六千億円の回収が不能となっているという判断をしております。要するに、買い取った不良債権がさらに不良債権化しているという指摘ですが、この辺の実態、あるいは何らかのそういう試算というのはされていますか。
  196. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 確かに、総体として地価の下落の影響はそれなりに受けていると思います。その点は私どもの買い取り比率の推移というものでもある程度明らかでございまして、発足当初は、もともとの債権に対して私どもの買い取った債権の価格の比率というのは五割ぐらいからスタートしておりますのですが、それがだんだん下がってまいりまして、直近、この三月で終わりました半年間は、二兆二千億に対しまして我々の買い取りました価格が三〇%でございます。現在、債権の、先ほど申し上げましたように、十二兆円に対して五兆円ですから約四一%ということになっておりますわけですが、そういう地価の下がり方の影響は受けていると思います。  ただ、今見ておりますところでは、我々の方は買い取りますときに、不動産というのは個性の大変強いものでございますので、個別物件ごとに不動産鑑定士に依頼をいたしまして、それを価格判定委員会という我々にとっては第三者の機関の御決定を得て買い取り価格というものを決定しているわけでございます。例えば、外部の御計算というのは私も見てはおりますけれども、全体の地価の公示の下落率であるとかそういったものから単純に積算されるような性格のものでもないであろう。それでは、今の価格で幾らなんだということについては何とも申し上げかねる。全体としての地価下落の影響は確かにございますでしょう。ただ、その金額がどうだということについては申し上げられないというところでございます。
  197. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 そうしますと、別の観点からお聞きしますと、最終的にこの債権の回収が済みまして買い取り価格の差額が生じた場合には債権売却損という形で金融機関に請求されますね。これまで請求された債権の売却損の累計というのはおわかりですか。
  198. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) これはちょっと逆の立場からでよろしゅうございましょうか。  私どもの方で相応の範囲ということで五%損益負担をやるわけですから、残りが金融機関ということになるわけです。  それからもう一つ、ちょっと個々の御説明もいたすことになりますと少し話が技術的になりますけれども……
  199. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 もう簡単に言っていただければ、時間も余りないものですから。
  200. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) わかりました。  それではまず、逆に少ない方から何だというお話があるかもしれませんが、利益が出ているものから申し上げます。  利益が出たものは、債権売却件数六十九件、そのもともとの債権元本額九百六十九億円、これに対しまして当初見積もりました債権買い取り額三百五十六億円、それから担保物件を全部売却時に回収いたしました金額四百五億円、その差額はプラスで四十九億円でございます。この数字で申し上げれば大体の感じはおわかりいただけますね。  損の方を申し上げます。損の方は件数で三百二十四件、もともとの債権元本額四千四十七億円、見積もりました買い取り価格が千八百八十五億円、それから担保処分をすべて済ませたところで回収いたしました金額が千百四十六億円、この差額がマイナスの七百三十九億円でございます。  ただ、技術的なことはもういいとおっしゃいますのであれですが、これは言ってみれば我々の立場としては中仕切りでございまして、実を言いますと、債権元本額と回収いたしました額と申し上げましたが、その差額というのは無担保債権者という立場でなお追及し続けてまいります。その辺の金額ももちろんわずかではございますが、実績は少しずつふえているところでございます。  以上でございます。
  201. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 次に、当初から指摘されましたことで、収益水準が悪い中小金融機関はなかなか買取機構を利用できないのではないかと言われておりました。御社発表の資料によりまして利用金融機関数を見ますと、都市銀行、長信銀、信託はすべての金融機関が利用しております。一方、信金、信組を含むその他の利用実績はわずか三十八行です。信金は全国で四百十八、信組は三百七十二、合計七百九十ですから、信金、信組の利用というのはもうごくわずかであるという、そういう理解でよろしいんでしょうか。
  202. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) わずかという御指摘でございますが、持ち込み金融機関数ももちろん今御承知のとおりで百二十九でございまして、内訳も先生の方から今おっしゃったわけでございますけれども、我々、持ち込み金融機関は株主金融機関ということにしておりますが、その最低出資金は五百万円でございます。  それから、農林中央金庫さん、全国信用金庫連合会、全国信用協同組合連合会等の各傘下系統金融機関については、それぞれの上部団体を通じて申し込みを受け付けております上に、買い取り対象債権は元本で最低千万円以上のものは持ち込んで結構です、千万円以上でしたら結構ですということでやっておるわけでございます。ですから、決しておっしゃるように利用を制約するスキームにしているとは我々は考えておりません。
  203. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 しかし、この実績を見るとなかなか利用されていないと思うんです。  また、買取機構の債権買い取り実績は、平成六年度が額面で四兆三百八十億円、これがピークになっておりますが、買い取りのピークというのはもう既に過ぎたという理解でよろしいんでしょうか。
  204. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 結論から申し上げますと、そのとおりでございます。  実は、昨年度上期が一兆三千億でございました。その前の年度が、先生御存じのとおり各半期二兆円、二兆円でございましたから、上期一兆三千億と、さあ下期どうだろうかということで、実は私ども持ち込み金融機関の方等とも大ざっぱな予測というものを期首にやっております。その結果、やはり下期も上期と大体同じぐらいの一兆三千億ぐらいかなという感じでおりました。しかし、結果として二兆二千億とそれを大幅に上回ったわけでございます。  この辺は、推測いたしますに、やはり皆さん問題意識をお持ちである不良債権の前倒し処理、ここですかっと処理をしてしまおうというような御方針の決算方針を各銀行さんがお立てになって、やはり相当の前倒しをしてお持ち込みになったなというふうに考えております。  なお、今期以降の予測につきましては、今まだ期首でもございますので、これから皆さんのヒアリングなどやらせていただこうかなと思っておりますが、我々の感じとしてはもうピークは過ぎたなというふうに考えております。
  205. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 なぜこのことをお聞きしたかといいますと、不良債権買い取りのピークはもう既に過ぎている、また信金、信組という小さいところは実態としてはなかなか利用できないということからしますと、やはり今は不良債権全体の処理スキームというのを一日も早く考えるべきであるというふうに思うわけであります。  次に、安藤参考人にいろいろお聞きしょうと思ったんですが、時間が限られておりますので一、二点にさせていただきます。  先ほどのお話で、都心の商業地につきましては虫食い状態のものはほとんど値段がつかない状況であると。近大新、近くて大きくて新しいという条件に合えば売れていくというお話だったんですね。そうしますと、今回の住専処理スキームでは、不良債権につきまして住専担保不動産を路線価で評価をしてその七割程度は全部回収できるという、そういう前提に立っているわけです。しかし、住専担保不動産といいますと、都心のそういうまさに虫食い状態なものもたくさんあるわけでして、先ほどの参考人お話からすると、そういうスキームのように路線価の七割で売れるというのはなかなか難しかろうと思いますが、いかがでしょうか。
  206. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 先ほども申し上げましたが、虫食いの一つ一つは本当に価値のない、公示価格をもずっと下回るというものでございますが、それをいろいろ整地に分合したり、向こうの土地と交換をしたりして非常に形のいいマンションも建てられる、ビルも建てられるというようなものになりますと、一躍化けるといいますか非常に価値の高いものになる、こういうことでございます。虫食いあるいはそのままでは余りお役に立たぬ、余り価値のない土地を買った方々がそういう分合とか合併、いろんな整地をやりまして、いい製品としまして付加価値を持ってやれば非常に価値の高いものになる。  その手法として、先ほど申しました法定の開発であるというところに結びつけますと、必ず総合設計とか面積などで建てる量が非常に多くなりまして、容積率がプラスになりますといろいろの補助金なども出るようなことで、悪い材料だけれどもいろいろ工夫によって大変ないいものに化ける、そこが一番のポイントだろうというふうに思います。  ただ、そのままでは本当になかなか買い手がないという現状で、先生のおっしゃるとおり、そこの路線価格とか何かというものに当てはめて足してみたら、そのままではやはりなかなか予定どおりにはまいらぬのではないかというふうに思います。
  207. 井上裕

    委員長井上裕君) 関連質疑を許します。加藤修一君。
  208. 加藤修一

    ○加藤修一君 平成会の加藤修一でございます。本日は、安藤参考人並びに金澤参考人お二人におかれましては、わざわざ国会の方においでくださいましてまことにありがとうございます。  今回は住専国会と言われておりますが、日本の全金融機関が抱えております不良債権の総額は、さまざまな債権まで含めますと約百五十兆円規模である、言うなればこれは国家総予算の七十五兆円の二倍になると。そのことから、これを解消していくためには二十年ぐらいの年月がかかるというふうに言われているわけです。戦後日本経済復興をするために約二十年ぐらいかかっているわけでございますが、このバブル崩壊によりますいわゆる経済的な損失というのは第二次世界大戦のときの経済損失、それに匹敵するのではないか、そのように思うわけであります。さらに、この問題につきまして直接に責任ある人はその責任を十分にやはり果たしていかなければいけない、そのように思うわけでございます。  一つ投書を紹介したいと思うわけでございますが、この方は六十六歳の新潟の男性でございます。「今回の住専問題で最も論じられたのが責任の所在であった。貸し手も借り手もこのような原案を作った大蔵官僚も、そしてこれを政府案とした総理.大蔵の大臣もだれ一人として責任を感じている者は見えなかった。」と。さらにさまざまな話が展開されるわけでございますけれども、「日本の国全体が危険な方向に向かっているのではないかと思わざるを得ない」、このように話をしながら、さらに加えて「また自・社・さ三党連立政権は非常に危険な体質を持っていることも露呈した。民間人は安易に証人や参考人として国会に引っ張り出すが、自分たちは別格だと思い上がっている。他人には厳しく自分には甘い。」、そういった意味では「腐敗している何よりの証拠だ。」、このように投書の中では述べられているわけでございます。  私は、現国会の中で責任の所在が追及されているわけでございますけれども責任には従来言われている責任いわゆるレスポンシビリティーと、さらに説明する責任がございます。先ほど参考人から御答弁がございましたように、その中に情報開示の話もございました。そういった意味では、説明する責任がやはり責任者の中に当然あるのではないか。いつも暗がりの中で物を決めて、その結果だけが表に出てくる、まさにそういった意味では密室行政である、そういう節があるように私は思うわけでございます。  そこで、先ほど来の御意見の中で、私も非常に関心を持って聞かせていただいていたわけでございますけれども、地価の問題でございます。地価の下落の原因といたしましてさまざま言われているわけでございますけれども構造変化が起こってきていると。簡潔に申し上げますと、買い手市場になっていて、さらにその原因としては、さまざまあるわけでございますけれども、供給が爆発的に増加している。  例えば、三点それは挙げられるんではなかろうか。一つは、農業政策の転換により八十三万ヘクタールという日本の中の住宅地の規模に匹敵する農地が都市的土地利用へ転換を迫られている、これが第一点でございます。第二点としては、産業構造の変化、それによって企業がリストラをしなければいけない、そういった点から企業用地が放出されてきている。さらに、今回の住専などによりまして大量の土地、不動産が市場に流入しようとしている。そういうことを考えていきますと、なかなか地価が上がるというような傾向にはならないのではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、安藤参考人お尋ねしたいわけでございますけれども、先ほど来、住宅地についてはほぼ安定的な傾向になってきている、しかしビジネスの面につきましてはちょっと難しい、そういう話がございました。今私が述べました件につきましてどのようにお考えでいらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思うわけでございます。
  209. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 私は、日本のこれからの産業構造の変化ということを見ますと、東京への一極集中から地方への均衡ある分散ということで、御承知のように首都圏の人口は、社会増が減っているために、もうこの二、三年減っております。二十三区はむろんのこと首都圏、茨城県は除きますが、それの人口も減っておりまして、自然増はふえておるんですけれども、社会増が減っておるものですから人口は減っておる。  これはやはり東京の魅力というんですか、そういうものが少しなくなってきたんだということも、いろいろあるでしょうが、やはり雇用の場というようなものも東京が少しその力を失ってきたんだろうと。かえって地方の核都市、仙台とか福岡とか広島とか名古屋なんていうのがふえておりまして、東京が減ってきておる。そこでまた空洞化も行われておりまして、それでまたやはり地方に分散するということで人口が地方に分散するということもありましょう。  そこで私は、東京における、首都圏における土地の需要というものは、企業のいわゆるビル用地に対する需要というのは、わかりやすく言うと私はもう頭打ちになるんじゃないかというふうに思います。殊に首都機能の移転、十年か十五年かかるかもしれませんが、そういうこともございます。それで産業構造の変化で、これは新しいハイテクその他の産業が取ってかわれば別ですけれども、そういうこともなかなか期待もできないということになると雇用の場としての魅力も少し少なくなるというようなことで、オフィスビルの用地、商業地というものに対しては、現在は新大近なんということで、そういうものは特別なものでにぎわっておりますが、遠い今後の二十一世紀のこれを見まして私は悲観的に思っております。  ただ住宅地の方は、これは非常に核分裂化しているといいますか、世帯数が非常に多くなっておりまして、人口が減っているにもかかわらず世帯数はふえている。それから、一人の方がセカンドハウスとかそういう別荘とかいうものを持って住宅地、住宅の需要というのがやはりふえるんじゃないか。しかも、今狭いですから今度はやっぱりもう少し広い豊かな住宅ということで建てかえとかなんとかそういうこともありましょうし、それから今まで土地が上がるという魅力でしょうか、二時間も一時間半もかかっているところから東京に通っておったんですが、そういう方はやはり土地の値上がりの妙味がないということでだんだん職住近接で東京の方、都心の方に移ってきておられます。そういうことで、私は住宅地は今後ますます需要は強くなるというふうに思っております。  大量の農地があって、農地から宅地に転換するといって宅地供給源も非常にあるわけでございますから、そういう意味で宅地の方はそれじゃ需要が多いから高くなるかというと、結構供給の方も十分間に合うということで、私は結論として、ビル用地も上がらないですけれども、住宅の方は需要があっても土地の伸び方というものが非常に鈍化すると。現に、先生御承知のことと思いますが、五十八年が一〇〇としますと現在はGDPが一八二、住宅地が一六五、ずっと減っておりますが何と商業地は一四七というような数字を示しておりまして、これが今後ずっとGDPに追いつくようなことにはそう簡単には絶対にならぬというふうに私個人は思っております。
  210. 加藤修一

    ○加藤修一君 ビル需要が頭打ちという話がございましたけれども、安藤参考人が住宅新報で述べていますように、もはや地価上昇に依存する経営はできない、そういった意味ではランドレスのビジネス展開が不可欠であると、そういう意味として改めて確認させていただいたわけでございます。  それでは、金澤参考人にお聞きしたいと思います。  当初、この機構を設立する準備段階の話になるわけでございますけれども、私が調べた範囲では、この機構につきましても公的資金の導入が考えられていた、しかし見送られたと、そのように聞いているわけでございますが、その理由を教えていただきたいと思うわけでございます。
  211. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 私といたしましては、公的資金を導入することが考えられておったということは存じません。私どもは純粋の民間企業、私企業という位置づけでございます。
  212. 加藤修一

    ○加藤修一君 できる前の準備段階の話でございまして、これは産業界の反対によりまして、要するに民間の企業方々は血を流す合理化を進めている、そういった中でこういう買い取り会社について公的資金を導入するのはまかりならないと、そういう意見が強固にあったように思います。  例えば、キャノンの会長の賀来龍三郎氏は、金融界だけ特別扱いして救済すべきでないと、極めて厳しい指摘があったわけでございます。そういったことから、今回の共国債権買取機構の中の設立趣旨、その中にも要するに自己責任原則、そういった形でお書きになっているように私は理解しているわけでございます。  それでは、金澤参考人に再びお聞きしたいんですけれども、御社につきまして参考人がこのように述べているわけでございます。「金融財政事情」、これは昨年の六月に出された雑誌の中でございますけれども、その中で「日本金融史にかつてなく、今後もあってはならない組織」であると、そのようにこの機構について述べられているように思うわけでございますけれども、そもそもこの発言の意味というのはどのように理解したらよろしいでしょうか。
  213. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) これは私自身の私見でございます。「かつてなく、」というのは、要するに金融界で不良債権がこれだけできた、こういうこと。それで、その処理のためにこういう会社ができたわけでございますが、こういう会社はそもそもあってはならないはずのものであるし、今回、これはどうしてもこの会社を成功させて、我々のところに来ている不良債権というものを回収して役割を果たさなければいけないわけです。しかしながら、将来再びこういう会社ができるような事態になるようなことがあっては絶対にならないという、個人的な意見として確かに申し上げました。
  214. 加藤修一

    ○加藤修一君 ただいまの御発言の中に、ぜひとも成功させたいと、そういう話があったわけでございます。設立以降の買い取り総金額、先ほど荒木委員質問した件でございますけれども、回収率は八・六%、このように考えてよろしいかと思うんです。ということは、逆に考えますと九一・四%が売れていない、そのように理解できるわけでございます。民間の企業ということで、確かに不動産市場というのは極めて厳しいという現状もございます。三年間の中で、大変な中で売ったという実績が八・六%ということはどういうふうに考えたらいいのかなということがあります。  そういった意味では、民間の会社として機能しているのかなという見方もする人がいるわけでございます。この辺についてはどうお考えかということと、なかなか売れない、そういった点から考えていきますと、当分の間、巷間言われていますように、塩漬けになってしまうような感さえあるというふうに考えられるわけですけれども、この辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  215. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 数字等については御指摘のとおりでございますので、確かに足りないではないかということはそのとおりだと思います。  しかしながら、私どもの機構というのは、創立当初から、これは明文化してはおりませんけれども、十年間で役割を終えたいというのが基本的な考え方でございます。最初の五年間、これを金融機関からの債権買い取りの期間、受け付ける期間といたしたい、これも明文化したものではございませんが、当初のめどはそういうことでございます。残りの五年間というのはこれはもう回収専一でいくんだと、最初そういう発想でスタートさせたわけでございます。  しかし、それは別に、最初の五年間は買い取り期間で残り五年間は回収だという意味ではなくて、最初のスタート時点から、入ったもので売れるものはどんどん売っていけと。先ほども質問ございましたけれども、マーケットでついた値段のものはそれで売っていこうと、こういうことで、この三年間かなり大幅な不動産価格の下落の中で今挙げた数字、それが御指摘になった数字であると。  それで、先ほどから御質問あった件でございますが、買い取り期間というのはあと二年残しておりますが、もちろん買い取りはなくなるということはないと思います。まだいろいろとすそ野も広がっておりますし、先ほど利用が少ないのではないかというような御指摘もありましたけれども、これは毎期、何機関かずつ新規利用の機関というのも出てきておりますし、まだ買い取りはそれなりにあるとは思いますが、大体ピークアウトしたことだけは間違いないとすれば、今後ますますこれまでの延長線上におきまして精いっぱいの回収努力をいたしたい。  民間の企業でないのではないかという御指摘は、ちょっと発言の御趣旨がわかりかねますのですが、我々はあくまでも民間の企業として、そして民間のそれぞれの株主金融機関あるいは持ち込み金融機関の自助努力ということでやっていくつもりでおります。
  216. 加藤修一

    ○加藤修一君 御発言、御丁寧でありまして大変よろしいんですけれども、簡潔にお願いいたしたいと思います。  今の御発言に関連いたしまして、債権の額面に対する三年間の回収率は三・六%ということなんですけれども、アメリカのRTCの率というのは四年間で九〇%回収したということになるわけです。御社の場合は九〇%できていない、これはどういう違いによってこういうふうになったか、簡潔にお願いしたいと思います。
  217. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 先ほど来申し上げておりますように、私どもは任意売買を前提といたしまして、任意売買について応諾した債務者から債権を譲り受けて、あくまでも任意売買で解決していこうと、こういうことでございます。  それで今回、先ほど申し上げましたように、三年見直しルールというのを設けまして、三年ぐらいたったところでそこをさらにもう一押ししていくかという形になっておる、こういうことでございます。
  218. 加藤修一

    ○加藤修一君 それから、設立趣旨の中に流動化の話がございますけれども、じゃ債権をどうやって流動化するか。この流動化につきましては検討しているというふうに伺っていますけれども、その進行状況というのはどのような状態でしょうか。
  219. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 先ほど申し上げましたように、現在までに実現いたしましたのは一件でございます。それを踏まえまして、なお各金融機関とともに研究を続けているところでございます。
  220. 加藤修一

    ○加藤修一君 先ほど三菱銀行の話が出ていたわけでございますけれども、例えばゼロクーポン債の形で売るとかそういったことも聞いているように思うわけでございます。その点につきましてはどのようにお考えでしょうか。
  221. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) さまざまな形態が研究されておりますのですが、一つだけポイントとして申し上げますと、債権債権化と申しましても、やはり基本はその債権の基本になっている不動産マーケットでございます。ここのマーケットがどんどん下がっているという状態の中で債権化というのは、スキームはいろいろ検討しても、それを実際に移すのはなかなか難しい局面、今はまだそういうことかなというのが実感でございます。
  222. 加藤修一

    ○加藤修一君 先ほど五年間で買い入れるという話がございました。商法上、債権の時効というのは五年であるというふうに思います。既に三年たっていると、あと二年で時効になるというふうに考えられるわけですけれども、機構におきましてはこれについてどう対応を考えておるでしょうか。
  223. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 時効中断につきましてはいろいろやり方がありまして、債務承認をとるあるいは元利金の一部なりの弁済を受ける、それから競売というのが一つの有効な手段でございます。この辺の時効管理というのは、持ち込み金融機関とともに遺漏なくすべて行っております。
  224. 加藤修一

    ○加藤修一君 先ほど荒木委員質問したわけですけれども、約七兆円が実は共国債権買取機構の中で無税償却、銀行の方が無税償却になるという話でございまして、法人税率で考えていきますと三兆五千億円ぐらいが無税、納めるべきところに納めないと、そういう話になると思うわけでございます。今回の住専法案に関しましては、そのほかに母体行、一般行を初めとしまして債権を放棄する、こういったことに関しましてもやはりこの無税償却というのが行われるというふうに聞いているわけでございます。それが二兆六千億円見当になるわけでございますし、さらに登記の手続あるいは印紙税、そういった面を含めますとこれが約一千億円になる。これを合計いたしますと六兆円を超える、住専処理案の予算額の約十倍ということになるわけです。  さらに、政府が、自治体や財団法人であります民間都市開発推進機構、これに対して土地先行取得のために税金を投入しているいわゆる三兆二千三百億円、これは必ずしも悪いという話じゃないわけですけれども、これも住専処理案の予算額から考えていきますと五倍になる。  さらに、この超低金利政策によって銀行の方に我々の財布の方から所得が移転している、そういったことから銀行はもう空前の業務収益であると。九四年度におきましては約五兆円、九五年度も約五兆円、合わせて十兆円。これは金融機関プラス企業ということでございますけれども、その中で約二兆円ぐらいは銀行の方に所得移転という形でお金が行っているというふうに理解できるわけでございます。それを全部合わせてまいりますと約十八倍の金額になると、そういうふうに考えられるわけでございます。  先ほど私、空前の業務純益という話を申し上げたわけでございますけれども、ここで安藤参考人お尋ねしたいわけです。  昨年の五月でございますけれども、住宅新報で「金利が下がっても貸し出しが増えていない状態では日本経済の活性化はない」と、こうお話しされておるわけでございます。  確かに、業務純益が銀行の方で多くなって金庫を閉めていると、そういった意味では経済の回復につながることはなかなか難しいというふうに理解してしまうわけでございますけれども、この辺についてはどのようにお考えでしょうか、簡潔にお願いしたいと思います。
  225. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 金利を安くしてマネーサプライがふえても、一般企業の方が設備投資をするとかあるいは生産を増すとかというようなことは、これは完全なデフレ経済だという意味で言ったのではないかというふうに思います。
  226. 加藤修一

    ○加藤修一君 そういうことから考えていきますと、銀行が金庫を閉めてなかなか排出しないということから、当初の目的でありました経済の回復をさせるということが思うとおり進んでいない。ある意味では、不良債権を何とか解消しようと、そういったことから超低金利政策というのが行われたのではなかろうか、そのように考えているわけでございますけれども、先ほど来御説明申し上げましたように十八倍という形になっていると。要するに国の持ち出し、あれは国に入るべき税金が入らないでいるということですから、間接的には税金が使われている、そういったふうに理解できるところがあるわけでございます。  そういった意味では、非常にけしからぬというふうに言わざるを得ないわけでございまして、国民にとっては泣き面にハチだと、このように言うことができると思うんです。こういったからくりというのはやはり明確に公開していくべきであるというふうに考えるわけでございます。  家計を預かっている主婦にとっては、自分たちのわからないところで税金がこのような形で使われているというふうに知っていただきたいと思いますし、さらにこれを踏まえた形でといいますか、わからないところで進んでいる中にあって、実は今回の住専処理案では六千八百五十億円、これがさらに使われようとしている、とんでもない話であると。  そういった意味では、大蔵省というのは国民の税金を何を間違えたか自分の金と誤解していると、そういうふうに思いますし、本当に今回の住専処理案の中身というのは実にいいかげんで、我々が気がつかないところで物事が進められていた。  そういった意味では、冒頭に私が申し上げました密室行政の典型的なあらわれであると、このように私は訴えて、きょうの参考人お二人に対する質問を終わらせていただきます。  どうも大変ありがとうございました。
  227. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で荒木清寛君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、川橋幸子君の質疑を行います。川橋幸子君。
  228. 川橋幸子

    川橋幸子君 午後二時から始まりまして二時間経過でございます。両参考人におかれましては大変お疲れのことと思いますけれども、社会民主党の川橋幸子と申しますが、引き続き質問をさせていただきたいと思います。  本日の朝日新聞に「債権回収の課題も焦点」と、きょうお二人にお見えいただきましての参考人招致というこの会議の意義が紹介されております。衆議院ではこのような課題はそう議論されておらなかった、参議院らしい国会論議ということで紹介記事が出ているわけでございます。そうした観点からもぜひ率直にお話しいただければありがたいと思います。安藤参考人におかれましては、朝日の紹介によりますと、不動産業界の長老的な存在でいらっしゃるというふうに御紹介されてございます。  さて、冒頭、きょうお二人にお見えいただきましたのは、住専問題の当事者というよりは学識経験者としてお話を伺いたいということが紹介されましたが、両参考人ともがやはり銀行業のリーダーとして大変熟知していらっしゃる方々でいらっしゃいます。今回の住専問題について、当事者ではないといたしましても、今までのお仕事の関係では無縁でないお二人でいらっしゃると思います。  そこで、まず安藤参考人お尋ねしたいと思います。  日銀出身の吉野俊彦さんとおっしゃる方がおられます。銀行マンであると同時に、森鴎外の研究家としても著名でいらっしゃいますが、この方がある雑誌に「住専問題は、経済の問題であるとともに日本人の道徳観、モラルハザードの問題」だと思うというようなことを書いておられます。不動産業界あるいは銀行業界のリーダーといたしまして、安藤参考人はこのコメントについてどのようにお考えになられますでしょうか。
  229. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 吉野先生がおっしゃるのは、やはり貸す側の銀行も借りる側の人たちもみんな道義心、モラルハザードというのは倫理観、道義観の欠如という用語で私話しますが、貸す方も、本当のサウンドな貸し金であって、回収できる健全な貸し金だと思って貸さない。それから借りる方も、必ず返そうと思って借りているんではなくて、両方ともいいかげんだと、こういうことであろうと思います。人のことは余り言えませんが、そういう傾向は、昔のサウンドバンキング時代に比べますとやはり大分たがが緩んでおるんではないか、そういうふうに思っております。
  230. 川橋幸子

    川橋幸子君 結局、安藤参考人が今おっしゃいましたように、だれも自分が悪かったとは言わないということが一つ。もう一つは、一般市民が納得がいかないと思うところは、当時の選択としては仕方がなかったと。結果的に見れば、今日住専問題に象徴されますようにさまざまな結果責任があるけれども、当時の事情から考えれば、土地というものは右上がりで上がっていくもので、土地が下がることはない。土地というのはとっておけば安全な担保物件であり、安全な資産であり、また値段が上がるかもしれないというような、そういう土地神話があったから当時としてはいたし方のないことだったというようなことから責任をとらなくて済む、こんな風潮があったのではないかと思います。  この二点について、やはり国民がなかなか納得できないということではないかと私は考えております。同じような質問かもわかりませんが、ちょっともう少しつけ加えて参考人の方から御意見を伺いたいと思います。
  231. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 貸す方も、この担保が今一億だけれども土地が右肩上がりだからそのうち倍になるだろうと思って、掛け目を六〇か五〇%に抑えるべきものを一〇〇%ぐらいで貸したと。借りる方も、貸してもらった方がいいですからそれで借りている。これは貸す方と借りる方ばかりでなく不動産業者も、このぐらいの高い値段で買ってもまたそのうちに右肩上がりでもっと上がるだろうということで、極めて安易に貸したということは否めないというふうに、私もその当時社長でございまして随分反省をしておるわけでございます。
  232. 川橋幸子

    川橋幸子君 さて、今回の住専問題といいますのは、このようにモラルハザード、日本人の道徳観ないしは倫理観を問われる大変大きな問題だと私も思いますが、一方ではやはり経済問題であることはもちろんでございます。  これまでの参考人方々の御意見ないしは総括質疑の中で、経済政策とか物価安定政策ですとかあるいは金融政策ですとか、そういうマクロの経済問題についてはさまざまな議論がございましたが、意外に経済問題としてのマクロの土地政策についての議論が余りなされていなかったような感じが私はしております。  土地政策としては、もちろん土地の高騰が大変異常だったものですから、土地基本法ができましたり、監視区域を設けましたり、あるいは地価税というような税が導入されたりいたしたわけでございます。しかし、一般庶民から見ますと、先ほど安藤参考人もおっしゃったように、普通のノーマルな通勤時間の中で家族が安心して過ごせるような住宅、生活大国五カ年計画というものもございましたけれども、一つは国民生活上の住宅政策というものを持っていると思います。  今までの国のマクロ政策、経済政策、物価安定政策、金融政策といったものと土地政策との関連につきまして、安藤参考人はどのようにお考えになられますでしょうか。
  233. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) もう昔の昔、私も物価安定会議の委員を四年間やっておったことがありますが、その物価安定会議では物価指数に土地が入っていないんですね。縦割り行政ということが言われておりますが、経済政策全般にわたっては経済企画庁がおやりになる、それから金融政策日本銀行と大蔵省がやる、それから土地なんというのはやっぱり国土庁とか建設省、縦割りになっております。  今、先生が御指摘のとおり、土地が上がればやっぱり家賃も上がる、それから借地料も上がるということで、家計に十分響く大きな問題でございますので、土地問題につきましてはやはり全部が一丸となって、今も御指摘のように、経済企画庁も地価問題というものに照準を合わせた経済政策を立てなくちゃいかぬし、それから金融政策も地価問題というものを照準の中に入れて金融政策をとる、その総合一体とした政策が必要であると。先生の御質問、そのように受けとめたんですが、よろしゅうございますか。
  234. 川橋幸子

    川橋幸子君 安藤参考人の方から、質問の趣旨がはっきりしないということで逆にお尋ねを受けたようでございますが、まさに私はそのようなことで伺っております。  もう少し具体的に言いますと、現在、不動産業界はバブルが崩壊した直後のどしゃ降り状態から少し明るさが見えた状況でございましょうか。この債権回収も、むしろ地価が下げどまるとかあるいは若干ちょっと戻してくれれば債権回収はうまくいくんだという経済界の方々の感覚がある一方で、一般の市民は土地は下がった方がよいのでございます。住宅を取得するという意味で、土地は下がった方がありがたいのでございます。国民の方は、地価を下げどめて少し地価を上げるような経済政策がとられるよりは、少し賃金が上がらないぐらいな不便は自分は甘受しても、真に国民生活の向上に意義のある経済政策が立てられなければと、土地問題の解決のためだけの経済政策というのはそんなに望んでいないように思います。  つまり、国民生活を主眼とした経済政策。企業経営のためのあるいは経済成長のための経済政策を国民はもう望んでいないと思っているわけでございますが、安藤参考人、いかがでございましょうか。
  235. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 私は、先ほども申し上げたんですが、土地の安定ということが、底値感がなければ土地の問題というのは、土地の流動性というものは考えられないわけでございます。  私は先ほど申しましたが、今は、住宅地はもう既に底値感が出た、それから商業地の方も近大新といったような、特定のそういうようなものについてはベイラインが出て、いわゆる収益還元価格というものが出ているわけですね。そういう意味で、土地の価格というのは収益還元価格だということを政府御当局もアナウンスしていただいたら、それでアナウンス効果というものがずっと出て地価が安定して、それに基づいて銀行も収益還元価格の価格というもので担保にとって貸せば大丈夫と、こういうことになるので、土地の流動性というものがそこから始まるんじゃないか、私はそんなふうに思っております。  もっと下がればいい下がればいいと言いますが、商業地の虫食い地なんていうのはもっと下がるかもしれません、それは市場経済ですから。とにかく住宅地でもそれから商業地でも収益安定価格というものが一応は今出ておるんですから、それを底値として経済のいろいろ与信その他の行為が行われる、それで土地の流動性がそこから行われるというふうに思い、またそれを期待しているわけでございます。
  236. 川橋幸子

    川橋幸子君 行政といいますか政治の方のアナウンスメント効果というものが非常に大きいから、そこを間違えないようにしっかりやらなければいけないということでございますね。それは私もそのように受けとめまして、今回の住専処理が、バブルのツケを税金で賄うというんでしょうか、国民にとっては大変ありがたくない話でございますが、これが下支えとなりましてこれから景気が回復軌道に乗っていくことを私としても望むわけでございます。  さて、本題の債権回収について金澤参考人にお伺いをしたいと思います。  今度の住専処理機構の中では、債権回収を徹頭徹尾やるということが意図されております。こちらの政府案の方では、例えばさまざまな専門家をそこの処理機構の中に結集させる、警察関係の方、あるいは国税、弁護士、公認会計士の方々、それからもちろん銀行関係者の方というような専門家が結集されまして、その中で債権回収をやりたい、やっていきたいというそういうことがプランされているわけでございます。  しかし、先ほどの安藤参考人お話もそれから金澤参考人お話も両方ともそうでしたが、土地というのはさまざま個性を持つもので、いろんなタイプの土地を、不動産を、担保物件を売るには工夫と知恵が必要だということになるわけですね。そうしますと、こうした専門家集団の中に、土地のマーケット、地域の事情に非常に詳しい不動産業関係方々がおられて、いろんな専門家をむしろコーディネートしてマネジメントしていかないとこの債権回収というのはうまくいかないのではないかと思いますが、金澤参考人にお伺いします。いかがでしょうか。
  237. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 確かに、社内に置かれるか、あるいは社外でもそういう御相談に乗る方をお持ちになるか、いずれにしても、私どもは純民間の会社でございまして、先ほど来申し上げているように、任意売買というようなことでやっておりますのでちょっと位置づけは違うかと思いますが、いろいろとその業界あるいはその区域に通じた方々と、御意見を十分に拝聴しながら仕事を進めていっている次第でございます。
  238. 川橋幸子

    川橋幸子君 住専処理機構の中で債権回収に当たりますところは株式会社組織になって、むしろ機動的に債権回収が進むようにとプランニングされておりますので、その辺はこれからも目配りしていただけるとありがたいと思います。  また、今の住専は今度整理されるわけでございますが、実際の手足になる職員はそこの職員の方々が引き継がれるわけでございます。こういう職員の方々がやる気を出して債権回収に当たるためにはどのような工夫が必要か。これはお二人にお聞きしたいと思います。これは初めに申し上げました質問の中には書いていないかもわかりませんが、先に金澤参考人の方から。
  239. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) これは先ほどの御質問にもかかわりまして私もちらっと触れたことでございますけれども、やはり債務者とのパイプというものをずっとつなぎながら、そしてよく話し合いをしていく、あるいは折衝をしていく、交渉と、いろいろな言い方があるわけでございますが、これがやはり回収の一番要請だと思います。  ですから、これまでのスタッフの方々がそのままなさるというのがベストの選択であって、それに応じたインセンティブなりモラールなりというものの維持をぜひお考えになるのが一番よろしいのではないかなと。
  240. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) どうも抽象論みたいなことになりますが、これだけ大問題として今世問で注目されておりますから、職員の方々みんなが自分の仕事が非常に大事な仕事であるという使命感に燃えることが一つと、それからやはり短期に住専処理機構もクローズされるというような漠然とした不安もあるでしょうから、そういうことに対する雇用の不安、そういうものを何かやはりある程度安心して働けるようにということは、もし私がその衝に当たっているとしたらそういうことを考えます。
  241. 川橋幸子

    川橋幸子君 安藤参考人それから金澤参考人、お二人のおっしゃったとおりなのでございますが、夢を持ってやる気を出してもらう工夫というのは大変なことではないかと思います。ある方の表現によれば、住専は今まで母体行、一般行あるいは系統金融のごみ箱として使われたというような言い方をされることがあるわけです。また、相手の会社の資金内容もちゃんと検査しないで大変無謀な融資をしたというようなことを言われてきた住専の職員の人たちがやる気を出せるようにするには一体どうすればいいか。長年のお二人の業界の中での御経験に照らしてお答えいただければありがたいと思います。
  242. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) なかなか難しい御質問でございますが、先ほどお使いになりました表現、実は私どもにも使われたことがございます。私はあえて自分でその言葉は使いたくございません。しかしながら、私どもで不良債権というものを扱っておりますけれども、これを見ますと、国民経済の中において何らかの価値、必ず果たすべき役割を持った価値のあるものなんです。それがたまたま今ある状態において果たすべき役割を果たし得ていない、その潜在的な力というものを働かせる。先ほど比喩の言葉をお使いになりましたからあえて比喩で申し上げれば、我々はリサイクルをやるんだ、きちっと生かしてリサイクルをやる、そういう仕事をやっているんだよと。  私どもの方も三十名の職員でございますが、とにかくそういう意欲に燃えて一生懸命やろうよということで、繁忙月にはそれこそ、御出身からあれでちょっといかがかと思いますが、徹夜をやりましたり休日出勤をやりましたりということはあるんですが、我々の機構は我々の機構で意欲に燃えてやっておる。これが御参考になるかどうかわかりませんが、そういうことです。
  243. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 先ほども冒頭に申し上げたんですが、処理機構の憲法といいますか理念というのは、一つ一つは甚だ価値の少ない、役に立たない土地が多いと思うんですが、それをいろいろ統合したり継ぎ足したりアセンブリーをして、利用されない土地を非常に利用価値のあるものにするということが債権の回収に一番大事だと思うんです。ですから、どういう会社がどこに持っている、あの会社が七つ、全体に一つずつ持っているとか、あるいはほかの銀行から借りてこういうものを持っているとかというようなことの情報は職員の方が一番知っておりますから、その職員の方が事務的な仕事から一歩離れて、それでこれらの土地をもっとこういうことにしたら利用価値のある土地になるではないかというようなことにも、ひとつ勤務なさるときに思いをはせてそういうことをやりましたら非常にやりがいのある仕事だというふうな自覚をお持ちになるんではないか、そういうことでございます。
  244. 川橋幸子

    川橋幸子君 抽象的とおっしゃいましたけれども、むしろこれは大変大事な、精神的な面でプライドを取り戻して倫理観を取り戻す、経済人としての非常に大事な心得かと思います。  発足します新機構について、両参考人ともこれからもぜひサジェストしてくださいますように、またこれで日本経済が立ち直れるようにということで、経済界のリーダーとしても、ぜひ優秀な職員を銀行関係から派遣してもらうような雰囲気づくりにも御尽力くださいますようにお願いしまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  245. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で川橋幸子君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、筆坂秀世君の質疑を行います。筆坂秀世君。
  246. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 日本共産党の筆坂です。  まず、金澤参考人に事実関係について幾つかお伺いしたいと思うんです。  一つは、共国債権買取機構、先ほど実績はないとおっしゃいましたが、住専の不良債権を持ち込むことは仕組みの上では可能ですね。
  247. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 先ほど申し上げましたように、仕組みの上では可能でございます。
  248. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 この共国債権買取機構が発足する契機になったのは、一九九二年、平成四年十月三十日に、当時全銀協の会長行だった三菱銀行が買い取り会社構想というのを提案されるということからスタートしたわけですが、この設立趣旨というのはどう述べておりますか。
  249. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 民間金融機関の自助努力により、延滞債権計画的、段階的処理を通じ金融機関の信頼性の向上と融資対応力の強化を図り、あわせて不動産取引活性化への呼び水効果を果たすことを期待してということでございます。
  250. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 つまり、住専の不良債権も含めて、あるいはノンバンクの不良債権も含めて、金融機関の不良債権の処理を公的資金は使わずにあくまでも自助努力で進めていく、そのためにこの買い取り会社構想が生まれてきた、こういうふうに理解してよろしいですね。
  251. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) さようでございます。
  252. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 これは当然のことで、二月十六日に衆議院の予算委員会参考人として出席された当時の寺村銀行局長も、住専問題は金融機関の過剰貸し付けで起きた問題でございますから金融機関の自己責任で処理をするのだ、それから公的資金は入れない方がいいというのが当時の態度だったと、こう述べられております。  三菱銀行がこの買い取り会社構想を発表した同じ九二年十月三十日に、大蔵省から「買取会社構想に対する税務上の取扱いについて」と題する文書が出されております。この要旨はどういうことでしょうか。
  253. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 申しわけございません。私、ちょっと手元に資料を持ち合わせておりません。税務上の解釈につきましては、先ほどちょっと触れて御回答いたしました。
  254. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 ですから、その内容、その要旨で結構です。
  255. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) それでよろしゅうございますか。少々お待ちください。  金融機関が不良債権担保つき債権を譲渡する際に生ずる譲渡損は、もともと損金の額に算入されるとの法人税法第二十二条第三項第三号の規定にのっとったものと我々解釈しておると、こういうふうに申し上げました。
  256. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 つまり譲渡損、売却損が発生した場合に、これまでの損金処理と同じようにいわゆる無税償却、これを認めましょうというのがこの同じ日に出ているんですね。私は、これは非常に異例なことだと思うんです。民間の銀行が十月三十日に買い取り会社構想というのを発表すると、同じ日にその買い取り会社に対して法人税法を適用しますよ、無税償却を認めますよと。これはどこから見たって銀行と大蔵省の、言葉は悪いですけれども、いわば出来レースだというふうに言わざるを得ないと思うんです、この問題は別に金澤参考人にお聞きしようとは思いませんけれども。  先ほどの質問に対して金澤参考人は、譲渡損があれば損金処理をするというのは何も買い取り会社構想で特別なことじゃないんだ、従来からやられてきたことなんだという趣旨の御答弁をされましたね。確かに譲渡損が発生すれば損金処理をして無税償却ができる、これは従来からやられてきたことです。しかし私は、だからといって買い取り会社構想が同じですと言うわけにはいかないと思うんですよ。  お伺いしますけれども、銀行が持っている不良債権を共国債権買取機構で買います、この買う資金はどういうふうに調達するんでしょうか。
  257. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) お答えいたします。  それぞれの債権を持ち込んでくる金融機関より、いわゆるバックファイナンスと申しておりますが、金融を受けております。
  258. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 不良債権の売却によって売却損、譲渡損が出たと、こういうふうに言われるんだけれども、例えば私が銀行とすれば、私が金澤参考人のところへある債権を持ち込みます。私がその金を出すんですよ、融資をして。つまり、実際の土地取引なんか行われちゃいない。実際の土地取引なんか行われていないんですよ。いわば仮装です。フィクションで土地の取引があったことにして、そして売却損が出てくる。売却損を出すんですよ、出てくるんじゃなくて。無理やり出すんです。そして、無税償却を認めようというのが買い取り会社構想ですね。ですから、これまでの譲渡損に対してやられてきたのと全く同じことがやられているんだというわけには、これは国民の目から見たら到底見るわけにいかないと思うんですね。  しかも、それによってこれまでどれだけのことがやられたかというと債権元本で約十二兆円、これを約五兆円で買い取られているわけですね。約七兆円の譲渡損が生まれていると。これは単純計算すれば、どれほどの税の減免効果があったことになるでしょうか。
  259. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) それだけをとらえてその税額というのをちょっと私、申しわけございませんが計算いたしかねます。
  260. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 先ほど来指摘があったように、ともかく七兆円の譲渡損が出ているわけですから、法人税、地方税合わせて実効税率が四九・何がしかで約五割です。つまり、単純計算すれば三兆五千億円、仮装の土地取引によって銀行は税の減免を受けていると。少なくとも税の減免を受けていることはお認めになりますでしょう、三兆五千億かどうかは別にしまして。これは私の計算です。
  261. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 私ども立場としてちょっとその辺をお答えするのもいかがかと思いますが、ただ一つ、先生おっしゃいました土地の仮装売買という御認識でございますね、ここの部分はちょっと申し上げさせていただきますと、そもそも欧米には例えば不良債権の売買市場というようなものもございまして、そういうものを経由して処理をするということがございます。ただ、日本にはそういうマーケットはございません。その場合に、土地ではなくて、土地に対する債権というものを評価するシステムというのが外国にあるけれども日本にはない。外国ではいろいろそういうものも処理に使っているけれども日本で何とかならないかなと。  ただ、これを流通市場ということに一気に持っていくわけにも相まいらぬということであるとすれば、少なくともその不動産担保債権の値づけをして、それをスタートのきっかけにもできないかという発想があったことは事実でございまして、それならば今度そういう債権をどういうふうに値づけをするか、欧米でやられているような評価ですね、これを真剣に検討したわけです。  当社はこれ初めての会社でございますから、これまでの説明と重複するようなことはもう今さら申し上げませんけれども、いろいろ苦労して現在のシステムを使って不良債権の時価評価システムというものを確立したと。これが実際にマーケットで流動するような証券化にどうつなげるかというのは、これまで御指摘もありましたし、私お答えいたしましたように、これからの課題と認識いたしております。  以上でございます。
  262. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 いろいろおっしゃったけれども、だからといって私が指摘した仮装売買、日本にはそういう市場がないといったところで、その事実には変わりないわけです。  つまり、大事なことは、一九九二年にこういう構想ができ上がって、そして共国債権買取機構ができ上がりました。そして、無税償却も大幅に認められるようになった。だって、買い取り会社がなかったらそういうのはできなかったわけだから。そのかわりに公的資金は導入しません。当たり前ですよ。先ほども指摘があったように、事実上の公的援助なんです、支援なんですから。ところが今、それでもうまくいかないから、住専処理で税金使おうというんでしょう。これは約束が違うということにならざるを得ないじゃないですか。もちろん金澤参考人に言うべきことじゃありませんけれども、三兆五千億を、話が違うことは間違いないんだよ、話が違うことは間違いない。(「失礼だよ」と呼ぶ者あり)何が失礼ですか、第一勧銀の元副頭取じゃないですか、金澤参考人は。無関係じゃないですよ。そういう問題ですよ。  それで、共国債権買取機構の実績を見ますと、債権元本額と実際の買い取り価格の間には相当な開きがあります。既に九六年の三月までで約五八・八%、六割近い元本ロスが発生しているんじゃないでしょうか。
  263. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 要するに、おっしゃっておりますのは、十二兆円に対する五兆円ということでございますね。ですから四一%、逆に申せば五九%の差がございます。
  264. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 しかも、債権元本に対するロスが約六割近く発生しているだけじゃなくて、実際の回収率を見ますと、今までの回収された分だけですが、全体はもちろんまだわかりませんけれども債権元本と比較すると約三割程度というのが回収の実績じゃないでしょうか、回収されたもののうちですよ。
  265. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 我々が買い取りました十二兆円の債権に対してですか。
  266. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 じゃなくて、回収されたものの債権元本に対する回収額ですね。――いいです、いいです。
  267. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) ちょっと御趣旨がわかりかねますが。
  268. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 つまり、債権元本がある、買い取り価格がある、これで約六割ですよね。この買い取った債権を売却をして回収します。その際には、全体として買い取り価格よりも今まで売れたものがなお下がっているわけですね。なお下がっています。ですから、六割のロスが約七割のロスに実際の回収の局面ではなっているんじゃないかということです。いかがでしょうか。
  269. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) これは先ほどもちょっとお話しいたしましたように、当然地価の下落というものの影響はある程度ございまして、先ほど、それでは全体として幾らだというような御質問もあったんですが、これはなかなか個別要因、それからケースの少なさ等からまだそれを推しはかるに至っておりませんと申し上げました。  売ったものが四千億でございますので、それのほかに三百億という、担保不動産処分以外の回収というのもやっておるわけです。この回収というのはもう本当に息の長い仕事でございまして、とにかくこちらに債権がある限りやりますので、ちょっとその辺の議論、何割というようなことはまだ申し上げるに尚早かと、かように考えております。
  270. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 結局、共国債権買取機構を見ましても、今度の住専処理機構、まだできてはおりませんけれども政府スキームで見ましても、今のような地価の下落が続く限りはなかなか債権元本の回収どころか、ロスがどうしても拡大するということに私はならざるを得ない。ところが、そこに二分の一税金を使うことを決めているという点で非常に問題であるということを指摘して、私の質問を終わらせていただきます。
  271. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で筆坂秀世君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、小島慶三君の質疑を行います。小島慶三君。
  272. 小島慶三

    ○小島慶三君 きょうは安藤先生、金澤先生、どうも本当に御苦労さまでございます。  せっかく財界の先達がおいでになっておられますので、初めに金澤先生に、今回のこの住専処理のスキーム、これをどういうふうにお受け取りになられましたか、またどういう御注文がおありでしょうか、これを伺いたいと思います。
  273. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) 住専処理スキームにつきましては、私どもも新聞報道等を通じてしかまだ現状をよく承知しておらないところでございます。  いずれにいたしましても、この不良債権問題というのは、やはり同じ不良債権というものを管理している身にとりまして早期解決が望ましいというふうに考えておりますので、早くその方向性を御審議いただいてはっきりさせまして、実際の回収作業に早く入るということが何よりも一番重要なことではないかなと。私どももこれまでやってまいりまして、少しずつでもやってくれれば、それだけの積み上げがあるという経験から、とにかく早く回収行動を起こすようなことが望ましいのではないか、かように考えております。
  274. 小島慶三

    ○小島慶三君 安藤先生、いかがでございますか、今の問題。
  275. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 一応、ああいうスキームができるまでには、関係方々がいろいろ協議に協議を重ねた上でああいう結論に達した、こういうことだろうと思うんです。  しかし、その後、住専からの借り入れの方のいろいろ不祥事とか、あるいは貸している方のそういうことが出ましたものですから、そこに補てんするのに税金を六千八百億使うとはけしからぬではないかといって現在大衆が、庶民が、国民が怒っているわけですが、この怒りも私は十分理解できるなということでございまして、今後どういうふうにあれをおさめるのか、これは先生方の問題だろうと思います。
  276. 小島慶三

    ○小島慶三君 それから、せっかくおいでになりましたのでこの機会に安藤さんのお考えを伺いたいと思うんですけれども、こういう土地問題がやかましくなりますと、また土地国有論とか土地公有論とか、そういったものも出てまいりますし、利用権についてドイツ並みにもつと土地のレギュレーションをきつくしろ、そんな議論も出てまいりますんですが、この点についてのお考えをひとつ伺わせていただきたい。
  277. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 今はグローバリゼーションの、世界経済の一体化の時代でございますので、土地の国有論というのは次元の違った議論になると思うんです。  それで、土地というのは土地基本法で公共財である、投機の対象にしてはいかぬというようなモラルコードがちゃんと出ておるわけでございますので、市場経済のもとにおきましても土地というものは普通の商品とはやはりその点が違うんじゃないかということで、その社会性を考えまして、我々土地を扱う業界人といたしましては、慎重に、反社会性のないように、土地基本法というものを大憲法にいただきまして慎重な行動をとりたいと常々思っているわけでございます。
  278. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。  終わります。
  279. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で小島慶三君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、島袋宗康君の質疑を行います。島袋宗康君。
  280. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 参考人御両人、大変御苦労さまでございます。  まず、安藤参考人にお伺いいたします。  今回、住専問題の一番大きな責任である借り手責任をもっと追及せよというふうな声が非常に強まっておりますけれども債権回収はその割には余り進んでいないというふうなことでございます。その原因は、担保不動産の管理や固定資産税などの保有コストの問題、さらには不十分な競売制度や法体系など多くの要因が複雑に絡み合っているというふうなことでございますけれども金融機関は本気になって債権回収をやっているのかどうか、国民の側からすると非常に問題があるんじゃないかということでございます。  安藤参考人に、不動産会社の立場から、債権回収が進まない原因についてひとつお伺いしておきたいと思います。
  281. 安藤太郎

    参考人(安藤太郎君) 住専債権が全部移るわけでございまして、それで債権回収については、鋭意債権回収に努力するという言葉は十分期待できるんですが、借りている方の方に、債権回収の阻害行為を行ったりあるいは借入金の一部を自分の私財として隠匿をしたり、いろいろそういうようなことがあるわけでございます。そういうことは、聞くところによりますと預金保険機構が、これは公的組織でございますので、そこに検事さんとか警察とか国税庁とかという現役の方がお入りになって、そういうことは絶対に容赦せぬぞと。RTCが大体二千人を逮捕したと言われておるんですが、そのくらいのことは本気になってやれば十分できて、この点は国民的感情を、よくやってくれたというぐらいのことを期待できるんじゃないかというふうに思っております。
  282. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 金澤参考人にお伺いします。  債権回収は暴力団による妨害とかいろいろ困難な問題があるようです。御社の場合、実際上何%程度債権回収がこの種のいわゆる妨害に遭って困難を来しているのかというふうなことについて、もし実態がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  283. 金澤彰

    参考人(金澤彰君) お答え申し上げます。  私どもの買い取り物件数、担保件数で申し上げますが、一万五千件でございます。それに対しまして妨害的行為があるもの六十二件、ただしこれは一つの物件に対して二つ三つと妨害行為が重なる場合がございますが、それを延べ数で考えて六十二件でございますが、〇・四一%。妨害行為の中身を申し上げますと、例えば短期賃借権の設定、これはもちろん短期賃借権というのは法律に認められた権利でございますが、明らかに不当なもの、それから所有権移転仮登記、物件占有、所有権移転、そういったものを合わせて六十二件。債務者ベースで見ますと、債務者は私ども四千八百件ございますが、介入のある債務者は七件でございます。  それに対応します私どものやっておりますことは、まず競売、それから保全処分、賃借権不存在の訴訟、仮差し押さえ、賃料差し押さえその他考えられ得る手段をとってきちっと対応しているところでございます。  以上でございます。
  284. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 時間ですので、終わります。
  285. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で参考人方々に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、ここに厚く御礼を申し上げます。  御退席くださって結構でございます。  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会      ―――――・―――――