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1996-04-17 第136回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十七日(水曜日)    午後三時三分開会     —————————————    委員の異動  四月十六日     辞任         補欠選任      阿部 正俊君     馳   浩君      笠原 潤一君     狩野  安君      牛嶋  正君     鈴木 正孝君      朝日 俊弘君     伊藤 基隆君      阿部 幸代君     笠井  亮君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         井上  裕君     理 事                大河原太一郎君                 斎藤 文夫君                 清水 達雄君                 塩崎 恭久君                 泉  信也君                 白浜 一良君                 都築  譲君                 山本 正和君                 有働 正治君     委 員                 板垣  正君                 狩野  安君                 久世 公堯君                 河本 三郎君                 鴻池 祥肇君                 坂野 重信君                 関根 則之君                 武見 敬三君                 谷川 秀善君                 野沢 太三君                 野村 五男君                 馳   浩君                 服部三男雄君                 真鍋 賢二君                 依田 智治君                 荒木 清寛君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 大森 礼子君                 加藤 修一君                 小山 峰男君                 鈴木 正孝君                 直嶋 正行君                 益田 洋介君                 横尾 和伸君                 伊藤 基隆君                 一井 淳治君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 川橋 幸子君                 前川 忠夫君                 緒方 靖夫君                 笠井  亮君                 小島 慶三君                 島袋 宗康君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        大 蔵 大 臣  久保  亘君        法 務 大 臣  長尾 立子君        外 務 大 臣  池田 行彦君        文 部 大 臣  奥田 幹生君        厚 生 大 臣  菅  直人君        農林水産大臣   大原 一三君        通商産業大臣   塚原 俊平君        運 輸 大 臣  亀井 善之君        郵 政 大 臣  日野 市朗君        労 働 大 臣  永井 孝信君        建 設 大 臣  中尾 栄一君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    倉田 寛之君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  中西 績介君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       岡部 三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  臼井日出男君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       田中 秀征君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 秀直君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  岩垂寿喜男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  鈴木 和美君    政府委員        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        総務庁長官官房        審議官      土屋  勲君        防衛庁参事官   小池 寛治君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛施設庁長官  諸冨 増夫君        防衛施設庁施設        部長       小澤  毅君        公安調査庁長官  杉原 弘泰君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省経済局長  野上 義二君        外務省条約局長  林   暘君        大蔵省主計局長  小村  武君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        農林水産大臣官        房長       高木 勇樹君        農林水産省経済        局長       堤  英隆君        農林水産省畜産        局長       熊澤 英昭君        食糧庁長官    高橋 政行君        郵政大臣官房審        議官       品川 萬里君        労働大臣官房長  渡邊  信君        建設大臣官房長  伴   襄君        自治大臣官房長  二橋 正弘君        自治大臣官房総        務審議官     湊  和夫君        自治省税務局長  佐野 徹治君    事務局側        常任委員会専門        員        宮本 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○平成八年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成八年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成八年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、総括質疑を行います。泉信也君。
  3. 泉信也

    泉信也君 厳しい外交日程の中ではございますが、きょう発表されました日米安全保障共同宣言中心に御質問させていただきます。  きょうの共同宣言は、いわゆる冷戦後における日米同盟の将来にとって歴史的な意味合いを持つ極めて重要な宣言であると私は思います。また、こうした宣言ができましたことに対しまして賛意を表したいと思っております。この共同宣言がいかに格調の高いものでありましても、いかに理想的なものでありましても、これを具体的に実行していくためには我が国の相当な決意が必要だと考えております。  そこで、まず第一に、総理にお伺いをいたしますが、この共同宣言性格と申しましょうか、ある方に言わせれば安保の再確認だという表現で言われる方もありますし、また再定義だと、こうした表現で言われる方もありますが、総理のこの共同宣言性格についてお答えをいただきます。
  4. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本日、クリントン大統領と私の間で議論し、署名し、公表いたしました日米安全保障共同宣言、これは、これまでの安全保障分野における日米間の緊密な対話の成果というものを踏まえ、日米安保体制の重要な役割というものを改めて確認し、二十一世紀に向けた日米同盟関係のあり方についての内外に対する意思を明らかにしたものと私は思います。  こうした日米関係信頼性を高めていくという中で、何といいましても重要な柱の一つ日米防衛協力というものにあることも共同宣言の中で申し上げているとおりであります。  我々としては、今まで定義、再定義といった言葉は使ってまいりませんでした。むしろ、改めて日米安保体制というものの重要な役割というものを確認した、そのように位置づけております。
  5. 泉信也

    泉信也君 確かに、政府資料あるいはきょうのこの宣言の内容を見ましても、確認という言葉しか使われていないというふうに思いますが、後ほどお尋ねいたします日米防衛協力のための指針の見直しというところに踏み込んでまいりますと、これは実質的な安保改定にもつながりかねないような性格のものではないかというふうに私は受けとめておるところでございます。いずれにいたしましても、今回の宣言によって新たな枠組みが決められたというふうに思うわけであります。  そこで、今回の宣言の中で地域情勢についての言及がございます。この中で「朝鮮半島における緊張」というような言葉は使われておりますが、台湾中国との間の台湾海峡問題等についてのコメントは具体的にはなされておりません。このことについては外務大臣にお聞きした方がよろしいんでしょうか、そうした議論はなかったのかどうか、あるいはなぜなかったのか、お答えをいただきます。
  6. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども日米間では常日ごろからアジア太平洋地域のいろいろな情勢について緊密に情報の交換もし、いろいろ対応もしてきている次第でございます。そういった中で、その時々のいろいろな情勢の変化についてもいろいろ話はしております。私どもは常にそういう話をしておると、そうしてまた今回の首脳会談におきましてもいろいろそういった地域情勢についても話をされておるところでございます。  今回の日米安全保障共同宣言、こういったものの性格から申しまして、先ほど総理からお話のあったとおりの性格でございますし、むしろ二十一世紀へ向かってこれからきちんと協力関係を高めていくことでこの地域の安定に資していこう、こういう性格のものでございますので、地域情勢の叙述については発表しましたような形にしておると、こういうことでございます。
  7. 泉信也

    泉信也君 ここに言及がなかったということは、実は今後の日米安保あるいは日本の安全にとって大きな課題が欠落しておるのではないか、あるいは意識的に外したのではないか、そんな思いを持っておるものであります。  そこで、北朝鮮の問題、「朝鮮半島における緊張は続いている。」という表現がございますが、現在の北朝鮮の軍事的あるいは政治的な動向をどういうふうに認識しておられるか、外務大臣、お願いいたします。
  8. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、朝鮮半島におきましては韓国そして北朝鮮が対峙するという事態がずっと長年にわたって続いておるわけでございます。また、昨今、北朝鮮のいろいろ国内的な困難その他の影響もございますでしょう、いろいろ緊張を高めるような発言がございましたり行動があったりすることは事実でございます。  私ども、今この情勢をどう見ているかということでございますけれども、基本的には北朝鮮経済面あるいは生活面、いろいろな面を含めまして非常に大変困難な情勢にあるということは事実だと思います。しかし、政治情勢に関する限りは、今、金正日書記中心とする勢力というものが事態を掌握している、こういうふうに考えるところでございます。そして、経済的にあるいは社会的にも非常に苦しい状況ではございますが、これが直ちに一部に言われますような体制崩壊だとかにつながるかというと、まだそういった差し迫った状態にはないのではないかと思っております。  ただ、私ども非常に注意しておりますのは、先般来いわゆる休戦協定、これをもう維持することができないということがあり、そして三日間にわたりあのような北朝鮮休戦協定違反の軍隊の移動があった、こういうことが場合によっては北朝鮮の計算を外れて予測しない事態に発展するおそれがある、そこを非常に心配しておりました。  しかし、これに対しましては米国あるいは韓国、そしてそれ以外の我が国も含めた国際社会が一様に北朝鮮の今回の行動というものを容認することはできない、休戦協定をきちんと遵守する、まずそこへ戻るべきだということを申しました。そういったことで、北朝鮮側の反応も少し控えられたものになったのじゃないかと思います。  さらに、御承知のとおり昨日、クリントン大統領金泳三韓国大統領との間で、あのような米国韓国北朝鮮、それから中国を含めた四者の会合和平をつくっていくというようなプロセスでやろうという提案がなされたわけでございます。これが動いていけば半島の安定にとって非常に好ましいものになると思いますので、我が国でも昨日、総理みずからが早速その提案支持するということを表明されたところでございますが、そのような状態を見ながら我々としては、北朝鮮南北対話を通ずる、あるいは今回提唱されました四国の会合を通ずる和平を確実にするプロセスの中に積極的に参加してくることを期待しておるところでございます。
  9. 泉信也

    泉信也君 今、外務大臣からお答えいただきました中に、韓国大統領クリントン大統領との間のいわゆる四カ国会談提案に対してのお話がございました。  総理には大変恐縮でございますが、事前に通告を申し上げておりませんが、この日米共同宣言日米の強いきずなをうたいとげるまさにその前日に韓国の方でこうした四カ国のお話し合い提案された、その中に日本が入っていない。これは隣国であるということ、そしてまた、もしも不安な状態になれば日本の基地から米軍の出動すらあり得る、さらにKEDOの場合には多くのお金を出した日本がある意味では蚊帳の外に置かれておる、そういう気分が私はするわけですが、きのう、きょうの大統領との会談の中でこのことについてどんなコメントがあったのか、もし御披瀝できますならばお願いをいたします。
  10. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、きのうの金大統領クリントン大統領共同記者会見で発表されました北朝鮮中国を加えての四カ国会談というものは非常に素直に支持の声明をいたしました。そして、あなたのように、その外にいるというような受けとめは私はいたしませんでした。  なぜなら、現実に三十八度線を挟んで緊張状態の続いております朝鮮半島でありますから、ここに平和のよみがえるきっかけはどのような形であれ私は非常に望ましい方向だと思います。そして、御承知のように北朝鮮国境線沿いに挑発的な示威行動を繰り返している、そういう状況の中で、休戦協定を締結した当事者たち、すなわち韓国北朝鮮、それにアメリカと中国という四者が何らの前提なしの話し合いの場を持つということは、私は望ましいことだと思います。  そして、その中で日本が求められる役割があるなら、我々は当然その平和を実現するための協力を惜しむものではありませんが、そのスタート時において休戦協定に参画した四者で話し合いを始めるということを私は何ら違和感を持っては受けとめておりません。
  11. 泉信也

    泉信也君 総理のお考えはわかりましたが、クリントン大統領から何かこの点についての説明なりコメントはございませんでしたでしょうか。
  12. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) むしろ、私の方から、そうした提案が両大統領の方から発せられたこと、そしてこれを私は非常に期待を込めて支持し、その後において役割があるなら役割を果たしたいということを申し上げたのに対し、大統領としては、現状でこの提案がそのとおり受け入れられるかどうか自分にはまだ何も連絡はないけれども、非常に早いタイミングで支持を表明してくれたことに感謝するという話はございました。
  13. 泉信也

    泉信也君 ありがとうございました。  先ほど、外務大臣北朝鮮に対する分析評価というものを聞かせていただきました。私は、若干これは、甘いという言葉を使うと失礼でございますけれども、甘いのではないか、そんな認識でよいのかな、こういう思いを持っておりまして、具体的に北朝鮮日本に対して異常なまでに関心を示している兆候を御披露させていただいて、御意見を賜りたいと思います。  実は、先日、食糧庁から提出をいただきました「北朝鮮輸出状況一覧表(二次)」という米の輸出についての資料を分析いたしますと、十一月から四月初めぐらいまでの間、約半年ぐらいの間に四十五の日本の港に船が入っております。十日間以上停泊したのが八隻、中には二十四日も在港したという船もございます。これはなぜか。  本来ですと、船はできるだけ早く荷役を済ませて目的港に行くというのが通常の経済的なベースで考えましたときの姿であります。いかにも長いということでございまして、日本じゅうの港に入港して荷役をしておる。このことについて公安調査庁は何か調査をされた、あるいは何かつかんでおられるようなことがございますでしょうか。
  14. 杉原弘泰

    政府委員杉原弘泰君) お答えいたします。  私どもといたしましても、我が国内の公共の安全を確保するという観点から、北朝鮮からの船舶の往来につきましてはそれなりにかねてから把握をするように努めておりました。  また、今回の米支援のための船舶の入出港状況についても、可能な範囲で、また必要な範囲調査を進めておりましたけれども、ただいま御指摘のような点につきましては特異な動向は把握いたしておりません。
  15. 泉信也

    泉信也君 まさにサリンを積み出したのではないかと言われる船も実はこの中には入っておるわけであります。  食糧庁、お見えでしょうか。なぜ韓国と同じように日本船を使うという方法をとられなかったのか、お伺いをします。
  16. 高橋政行

    政府委員高橋政行君) 我々、北朝鮮側と米の支援についていろいろ協議をしたわけでございますが、その際に船の手配をどうするかということで、まず用船に要する経費、これは当然海上運賃がかかるわけでございまして、その負担をどうするか、運送中の危険負担をどちらが持つかというような問題がございましたし、それからまた北朝鮮側の意向もございまして、我々といたしましては北朝鮮側の船を使うのがいいんじゃないか、いわゆる北朝鮮側が責任を持って運搬していただくのがいいんじゃないかということで決めたわけでございます。
  17. 泉信也

    泉信也君 船は一日停泊をいたしますと、一万トンとか一万五千トンの船ですと七十万から八十万、高いものは百万ぐらいの滞船料を取られるというような中で、このような長期間一つの港に滞在するというのは私は異常だと。  一説によりますと、これはソ連の崩壊で衛星から得ていた情報が得られなくなったために、直接この機会を使って日本港湾施設状況調査しておったのではないかという疑いすら実は持たれるわけであります。これほど我々が平和の中に生き続けてきたために、わからないところであらゆる情報をとろうとして北朝鮮が動いておるのではないか。そういう意味からいたしまして、先ほど申し上げました北朝鮮の問題についてはさらに細かな情報分析が必要だと。  総理も、先日この委員会で、北朝鮮とは言っておられませんが、朝鮮半島において現在私どもが非常に神経を張り詰めてその状況をウォッチしているような情勢が生まれていることは極めて不幸なことでありますと、こういうお答えをいただいておりますが、まさに私も、こういう我々には及びもつかないようなことがなされておるのではないかということを危惧するものであります。  さて、今回の日米同盟意味合いは、アジア太平洋全体の平和と安定ということが高らかにうたわれておるわけでありますが、このアジア太平洋地域というのはどこを指すのか、外務大臣お答えをいただきたいと思います。
  18. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 一般アジア太平洋地域と申しました場合に、その使われ方によっていろいろなバリエーションがあり得るんだと思います。  例えば、経済関係で、アジア太平洋地域経済的な関係が非常に密接であるとか、これから成長のセンターになるとかいろいろ言われる場合、あるいはそうではなくて厳格な意味で、例えば外交上、アジアという州はどうかというような場合、いろいろ違うと思います。  しかし、今の御質問が、もしきょう日米首脳会談において発出されました文書において言うアジア太平洋地域ということでございますならば、私は画然とここからここまでがその地域に入っているという、そんなラインが引いてあるものではないと思います。  一般的に申しまして、経済的にも文化的にも、あるいは技術の面でも非常に交流のある地域、そして政治面でもお互いに共通利害あるいは関心を持ち続ける地域、とりわけ安全保障の面においてそういった、今申しました経済や社会的、政治的なものの共通利害というものを背景にいたしまして、ともに安定を維持していくということに関心を持っている地域と、そういうことになろうかと思うのでございます。  我が国がそのど真ん中にあることは疑いもないところでございますが、あとどこからどこまでというような画然と線の引けるものではないと、こう思っております。
  19. 泉信也

    泉信也君 これは今回の共同宣言の根っこになったとすら言われておりますナイ・レポートの中で、在日米軍日本防衛にとどまらず極東全域、いわゆるエンタイア・ファー・イースト・リージョンという言葉が使われておるわけであります。これがいわゆるアジア太平洋という言葉に変わったのかなと。  そういたしますと、外務大臣が今お答えになりました、やや包括的といいますか、抽象的なお言葉でございましたので、具体的に安保条約六条の極東範囲とはどういう関係になるのか、御説明をお願いいたします。
  20. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 安保条約第六条で言うところの極東範囲というのは、これは安保条約目的というのが我が国の安全を維持する、守ると同時に、極東地域における平和と安定を守っていく、維持していくと、そういうことで書かれている地域でございます。この地域についてはかねてから政府としての統一した見解が繰り返し述べられておるところでございまして、その範囲を今回の安保宣言において動かすということは全くございません。  それで、今回こう言っておりますが、どういうことかと申しますと、それは変わらないんだけれども、要するに日米安保体制によって支えられる米軍のプレゼンスというもの、そして米国が関与していくということをはっきり明確に示す、そのことがアジア太平洋地域全体の安定要因となって作用する、いわばそういう効果がある、こういうことであろうというふうに考えるわけでございます。  そういったことで、極東範囲というものとここで言っておりますアジア太平洋というものは、これは必ずしも一致するものじゃございません。委員今御指摘ナイ・イニシアチブにおいても、やはり今申しましたような認識の上に使われている、こういうふうに理解しています。
  21. 泉信也

    泉信也君 実にこの定義がわからない。もしも極東という言葉を使って差し支えなかったんであれば、なぜ今回の宣言の中で極東という言葉を使わなかったのか、お願いいたします。
  22. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 極東という言葉を使って差し支えないというわけでは、私の答弁がちょっと不十分だったかもしれません、不明確だったかもしれませんけれども安保条約六条で書いてある極東という範囲は、これは今回も変わらないと申しました。そして、それには従来からのずっと長い間の解釈がございます。それは一般的に申しますと、日本の周辺地域でございますけれども、フィリピン以北と、こういうのが出されているわけでございますが、それを今回変えたわけじゃございません。  一方、アジア太平洋というのは、先ほど申しましたように、その使われるコンテクストによっていろいろ意味合いが変わってはきますけれども、いずれにしてももう少し広い範囲を言っているというのが一般的でございます、通常でございます。  そして、今回の宣言で言っておりますのも、あるいはナイ・イニシアチブでその意味しておりますのも、何も日米安保条約の適用の範囲を広げてやっていくなんていうことを言っているわけではございませんで、安保条約はこれまでとそれはきちんと同じですから、極東範囲も同じと。しかしながら、そういうふうな安保条約に支えられた日米協力体制がきちんとあるということ、そのことがアジア太平洋全域の安定にとって非常にいい効果を持つといった意味アジア太平洋地域全般の安定要因である、こういう認識を指しておるわけでございます。  したがって、極東地域アジア太平洋地域に置きかえたとか、あるいは同じ意味だから今回の宣言でも極東地域と言ってもいいじゃないかというわけにはいかぬと、こういうことでございます。
  23. 泉信也

    泉信也君 これは後々大変問題になる地域限定だと。概念的には経済範囲だとかアメリカのプレゼンスの影響するところだというふうにおっしゃいますけれども、具体的にこの共同宣言に盛られたことを実行していく上において、大臣が今おっしゃった六条の極東範囲を超える部分が必ず出てくるだろうと、私はそう思います。  これはよくわからないままでございますが、次に移らせていただきます。  今回の宣言の中で、日本への米軍の駐留の数については具体的には触れてございません。「日本におけるほぼ現在の水準を含め」云々で、前方展開軍事要員が十万人というのは具体的な数字が出ておりますが、日本の数字が出なかったのはなぜでしょうか。
  24. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日本の数字といいましょうか、いわゆる数字では示しておりませんけれども、現在の日本におけるプレゼンス、そのことにはきちんと言及してあるわけでございます。
  25. 泉信也

    泉信也君 現在、四万七千人という数字が在日米軍の数字としてあるわけですが、これが具体的にはコメントされていない。これは日本防衛能力、質も量も含めてでありますが、そのことがアップされるというような期待がある、あるいはアメリカ国内の対日感情の推移を見なければ四万七千人の数字が維持できないというような、プラスにもなるしマイナスにもなり得る、そういう要因があってコメントをされなかったのかどうか。いかがでしょうか。
  26. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) そこのところはこの文章では「日本におけるほぼ現在の水準を含め、この地域において、約十万人の前方展開軍事要員」と明確に書いてあるわけでございまして、これはちゃんと書いてあるんだと思います。  それでなお、これが変化するかどうかという点につきましては、政府も何度か答弁しておりますけれども、これは米国日米安保条約に基づく責務、役割をきちっと果たしていく、そのためにいろいろなコミットメントをしていくわけでございますけれども、その中の一つとしてこれだけの水準の米軍日本に置く、こういうことを示していると。これが大切なのでございまして、その水準というものは、その時々の安全保障環境あるいはそのときの武器技術や装備のレベルがどうなるか、そういった変化に応じて、必ずしも固定的なものじゃないということは従来から答弁しているところでございます。  しかし、少なくとも現在における日本の周辺地域安全保障環境、あるいは先ほど申しました軍事技術などのレベル等々から考えて、米国がアメリカの責務を果たしていくためにはこれだけのレベルの米軍の存在が妥当である、こういうふうに判断して、それを実際に置いておられる。そして、我が国政府といたしましても、第一義的にはそういった米国の判断を尊重しますし、我々もその現状をいろいろよく考えながら、また米国のそういった判断が適切であると、こういうふうに現在の段階においては考えているわけでございます。
  27. 泉信也

    泉信也君 十万人という数字が片方で出ておきながら、在日米軍は「ほぼ現在の水準を含め」という非常にあいまいな形で表現がされているところに、ちょっと私としては理解できないところがあります。  今回のこの共同宣言の中で日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの見直しということが出てくるわけでございます。これは一九七八年に締結されて、なぜ今までこの研究が進められなかったのか、お願いいたします。
  28. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 委員承知のとおり、前防衛大綱は約二十年間、私ども防衛の指針として役に立ってきたわけでございます。この間、五十三年につくられましたこの指針というものは、アメリカの前方展開の状況等も考慮に入れながらアメリカとの間で研究をいたしてきているわけでございます。  今回新しい防衛大綱ができましたので、当然その調整の要があるものと私どもは考えております。
  29. 泉信也

    泉信也君 大臣、それはおかしいんじゃないですか。新防衛大綱ができたから研究するということは、それは逆さまじゃありませんか。研究した結果を新防衛大綱に反映させるというのが本来の姿じゃございませんか。
  30. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 既に研究をいたしてまいっております。今後、新しい防衛大綱がスタートいたします。また、新中期防もスタートいたします。御承知のとおり、大綱は従来我が国防衛だけをうたっておったところですが、そのほか、あと二つ防衛力の役割というものも明示いたしました。当然、それらのことについても新しく研究することを検討するという立場でございます。
  31. 泉信也

    泉信也君 この宣言で研究にかかろうというわけでございますが、これはいつまでに、どういう体制で、どんな組織で結論を出すことになるんでしょうか。そしてまた、その過程にあって研究成果を国会へ報告するというようなことを考えていらっしゃるんでしょうか。
  32. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今御質問にございます防衛協力のための指針でございますけれども、現在まで使っておりましたのは五十三年につくられたガイドラインでございまして、それに基づいてこれまでいろいろ研究をしてまいりました。第一項、第二項、そういうものを中心にしてやってきたわけでございますけれども、大臣から今説明がありましたように、防衛大綱も新しくなりましたので、この五十三年につくられましたガイドライン、つまり防衛協力のための指針そのものを見直していくべきではないかという議論が今出ているわけでございます。そして、その見直されたガイドラインに従ってまた新しい研究をしていくわけでございますが、このガイドラインそのものの見直しにつきましては、早急に日米で審議していこうということでございます。
  33. 泉信也

    泉信也君 国会への報告は。
  34. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 現在のガイドライン、五十三年につくられましたガイドラインも国会に報告しておりますので、新しいガイドラインができますれば当然国会に報告、説明することになるかと思います。
  35. 泉信也

    泉信也君 このガイドラインにうたわれております極東というのは、安保条約六条の極東と解してよろしいんでしょうか。それとも、その範囲が広がると解すべきでしょうか。
  36. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 現在のガイドラインの第三項にございます極東というのは、安保条約第六条の極東の概念と全く同じでございます。
  37. 泉信也

    泉信也君 そういたしますと、この共同宣言に盛られた、先ほど来外務大臣にもお尋ねをさせていただいておりますアジア太平洋地域極東、この言葉がどうももう一つ私にはすっきりわからないわけです。しかし、これは先ほど一応打ち切っておりますので。  このガイドラインには米軍による自衛隊の基地の共同使用のあり方も含まれている、こういうことでありますが、これは米軍とのオペレーションの一体化、こうしたことが結果的に促進されることになると解釈してよろしいでしょうか。
  38. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 新しいガイドラインで日米防衛協力をどういう範囲で、どういう形で進めていこうかということをこれから議論しようということでございますので、今の御指摘の点も含めまして早急に検討してまいる、こういうことでございます。
  39. 泉信也

    泉信也君 このガイドラインの見直し、研究こそ実質的な安保改定とも称される、あるいはそれに値する、そういうものでありますだけに、今のような答弁では今回の共同宣言に基づくガイドラインの見直しということについては大変先行き不安であります。これはもっときちんとした答弁をいずれ求めさせていただきたいと思います。  それから、この共同宣言とは若干離れますが、ACSAの協定が結ばれました。これまでは自衛隊法の百条の一とか、あるいは防衛庁設置法などでこれに類することがなされてきたと言われておりますが、どんなことが今まで行われたのか、御報告ください。
  40. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) これまで日米共同訓練などを実施する場合におきまして、現行法制上は、例えば防衛庁長官に付与されました物品の管理権に基づきまして、物品管理法第二十九条に規定する物品の貸付要件に合致する範囲内で洋上給油等を行ってまいったものでございます。
  41. 泉信也

    泉信也君 今回、共同訓練あるいはPKOなどのいわゆる平時に限った理由は何でしょうか。
  42. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 米国の軍隊と日本の自衛隊の共同訓練を行うに当たりまして、今申し上げましたような物品管理法の世界ではなかなか効果的な訓練への寄与がないということで、従来から共同訓練におきましていわゆる物品あるいは役務の相互提供といったようなことを議論してまいりました。  これは、自衛隊の出先あるいは米軍の出先、そういうところでどんなニーズがあるのかということをこれまでずっと議論してまいりまして、一番大きいのは共同訓練でございました。そして、今回の締結をするに当たりましてそのニーズを検討いたしました結果、PKO活動あるいは人道援助、そういったところに相互にニーズがあるということで、範囲をそこまで広げたということでございます。
  43. 泉信也

    泉信也君 これは平時か有事かという概念の区分が大変わかりづらい。一条二項の対象となっている法律で区分するということかもしれませんが、例えば今凍結されておりますPKF活動が解除された場合、こういう場合には今回の協定は適用されることになるんでしょうか。
  44. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今回の協定では、まさに適用の対象を共同訓練とかPKO活動あるいは人道援助というところに範囲を限りました。かつ、このPKO活動及び人道的援助に関しましては、我が国の法律の国際平和協力業務法の範囲内というふうにしております。  そして、この国際平和協力業務法で言うところの現在凍結されております業務につきまして、我々としては当然PKO法のその目的範囲内に入っている、凍結はされておりますけれども範囲内に入っているという理解でございますので、あくまでも我が国の法律のPKOの活動の範囲内と、そういう認識でございます。
  45. 泉信也

    泉信也君 これは、PKFの活動ができるようになれば、この協定によって日本の国外でも物品等の融通が可能になるというふうに今の御答弁で理解をさせていただきます。  そこで、平時といってもこれは大変難しいわけで、いつも議論になるわけでありますが、例えば日本が提供した油を積んで米軍が戦闘域に入っていったとき、これはどういう理解をすればよろしいんでしょうか。
  46. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今回の協定では、今御説明したように、共同訓練、PKO活動それから人道援助というのが対象でございますので、御質問の趣旨がちょっとわかりかねるのではありますが、共同訓練の中で今おっしゃるようなケースというのはちょっと考えられないところでございます。
  47. 泉信也

    泉信也君 北朝鮮の問題が緊迫しましたときに、いわゆる米艦船の海上阻止行動というようなものが半島周辺で実施された場合に、後方支援の要請をどういうふうに日本としては受けとめていくのかということが一時議論されたことがありましたが、今回は今の御説明ですとそういうときには対象にならない、こう理解してよろしいわけですか。
  48. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 御質問に関連するところとして、例えば新防衛大綱の「大規模災害等各種の事態への対応」というところで、「我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合には、憲法及び関係法令に従い、必要に応じ国際連合の活動を適切に支持しつつ、白米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図ること等により適切に対応する。」という閣議決定をされたところがございまして、これによって適切に対応するということでございます。  今御説明いたしました物品役務の相互提供協定は、まさに共同訓練、それからPKO、人道援助、繰り返しますけれども、適用範囲はそういうところでございます。
  49. 泉信也

    泉信也君 この件についてもう一つお尋ねいたしますが、アメリカからは有事のときの要請というのはこの議論をする過程ではなかったのでしょうか。
  50. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 本件については、大分長い間、日米間で議論してまいりましたが、スタートの当初から共同訓練が中心でございました。
  51. 泉信也

    泉信也君 極東範囲につきましても、今のACSAの問題につきましても、非常にグレーゾーンがあってわかりづらいところが実はあるわけであります。これは、まさに今日まで問題になってまいりました集団的自衛権の解釈が憲法にとらわれ過ぎておるのか、あるいはそれが正しいのか議論が十分になされていないためにグレーゾーンを残しておるのではないか。  アメリカ側がこのACSAについて、訓練とPKO云々ということだけでいいなんて思っておるはずがないんですね。アメリカにとっては戦時体制においてこそ最も有用な協定でなければならぬはずですから、これからこれをどういうふうに動かしていくかというのは大きな問題でありますが、その際、この集団的自衛権という問題についてどうしても乗り越えていかなきゃならないものがあると思っております。  法制局長官にお尋ねいたしますが、憲法上の解釈は再三聞かせていただいているとは思いますが、もう一度、この解釈がいつごろからどういう経緯の中でできてきたのか御説明ください。
  52. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) まず、集団的自衛権と憲法との関係ということでございますが、国際法上、国家というものは集団的自衛権、すなわち自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止することを正当とされる地位を有しているということが言われておりまして、我が国も国際法上はこの集団的自衛権を有しているということは、主権国家であるということから当然のことであるというふうに理解されているわけでございます。  しかしながら、従来から一貫しまして、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使というものは、我が国防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであるということでありまして、他国に加えられた武力攻撃を実力で阻止するということを本質的な内容とする集団的自衛権の行使というものは、憲法九条のもとではこれを超えるものとして許されないというふうに従来から一貫して御説明しているところでございます。  そして、この集団的自衛権のこういう考え方がどういう経過でいつ生成されたのかという御質問に対しましては、これがある一時期に、ある事件あるいはある議論を通じて突如として生じたというものじゃございませんで、昭和二十二年憲法制定以来いろいろ、当初はこういう議論が生ずる現実性もなかったと思いますが、昭和二十九年自衛隊が発足しまして、また国連加盟とともに安保条約の解釈、そして三十五年の安保条約の改定、そのあたりの議論の中で明確に形成されてきたものであるという説明が一番事態に即した御説明ではなかろうかと思う次第でございます。
  53. 泉信也

    泉信也君 今、長官の御説明の中で、集団的自衛権は国の本来固有の権利としてあるという一方で、憲法上行使してはならないということはこれは大変論理が矛盾をしておるんではないか。本来的に持っておるものが行使できないということについて論理的に理解ができないところがあるんですが、もう一度御説明いただけませんでしょうか。
  54. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) ただいま申し上げた説明が論理矛盾であるかどうかという点につきましては、そういう考え方もあろうかと思いますけれども、要するにこの問題は、国際法上の問題と、そして憲法を頂点とする国内法上の問題点の一つの対立点といいますか、そういう対立点上に存在する問題でございまして、国際法上認められている集団的自衛権であっても、我が憲法がそれを制約する、制約を課しているんであるということでございますので、決して論理矛盾あるいは成り立たない考え方ということではさらさらないというふうに考えている次第でございます。
  55. 泉信也

    泉信也君 権限の有無というのは、これは解釈の問題だというふうに私は思うんですね。ですから、行使するかどうか、それは実は政策の判断がそこに入ってきてしかるべきではないか。  これまでの有権解釈は、内閣法制局がずっとこれまで行使できないと解釈をしてこられたわけでありますが、政策判断としてこれを行使するという、そうしたことは考えられますでしょうか。
  56. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) この集団的自衛権の行使というのは政策判断に基づく行動であるということを前提としたお尋ねかと思いますが、これは私ども決して政策判断によって行使することができたり、行使したり行使しなかったりということ以前の、そもそも憲法によって国はそういう行使をおよそ認めていない問題であるというふうに理解しているわけでございます。
  57. 泉信也

    泉信也君 それは法制局としての、いわゆる私が言う憲法の解釈論に立ったものだというふうに私は思うわけですが、このことについて、この集団的自衛権を行使するか否かというのは、私の論理でいけばまさに総理大臣の政策判断ではないか、それでできるのではないか、こんな思いを持ちますが、総理いかがでしょうか。
  58. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今従来からの集団的自衛権に関する法制局の見解というものをお問いかけになり、それを確認された上で私に政策判断という答えを求められるわけであります。  しかし、集団的自衛権というものについて、学説はそれはいろいろあるかもしれません。内閣としては、従来一つの考え方を国会にも御説明をし、そして我々はそのもとで今日まで過ごしてまいりました。そして、大変失礼でありますが、議員が我々と党を同じくしておりました時代にもその解釈は現存しておったわけであります。  そして、私はその集団的自衛権の議論というものを決して否定するものではありませんけれども、より現実的に我々が何ができ何ができないのか、そしてどういうものがまた必要とされるのか、むしろそうした議論の方が今必要なのではないかと拝聴しながら感じておりました。
  59. 泉信也

    泉信也君 この問題について、同僚の益田議員が関連質問をいたします。
  60. 井上裕

    委員長井上裕君) 関連質疑を許します。益田洋介君。
  61. 益田洋介

    ○益田洋介君 総理、大変過密な日程の中、毎日御苦労さまでございます。  御存じのとおり、東西ベルリンの壁が崩壊しまして、取り払われて、ソ連邦が解体されまして、冷戦が終結したという段階を迎えました。世界の主要国の間の通商とか外交といった枠組みが大きく今変容してきているわけでございますが、同時に私は、安全保障に対する考え方、そして各国の取り組み方も当然枠組みを変えていかざるを得ない、そういう要請が今強くあるのではないかというふうに感じております。  そして、九三年にアメリカの国防総省が発表しましたボトムアップ・レビューの中にも、同時に世界の中で二つの地域において、例えば中東と極東というふうに地域紛争が同時発生する可能性があるんだと。そこで、アメリカとしてはヨーロッパに十万、そして極東太平洋に十万人という兵力を常備しなければならないということを訴えております。私たちはそういう認識のもとで当然七八年のガイドラインが日米間で締結をされたという認識をしております。  伝え聞くところによりますと、日本有事の件についてはともかくとして、第三項の極東有事についてはほとんど手がつけられていない、日米間での検討が進んでいないというふうに伺っております。その理由としては、今同僚の泉議員が指摘をされていたところと関係するわけでございますが、やはり集団的自衛権と憲法九条の解釈との乖離というところが日本政府としては余りタッチしたくない部分であったという事情があって今日まで至っているのではないかというふうに思っております。  いずれにしましても、集団的自衛権の問題は当然解決しなければいけない問題でございますし、まず国連憲章とそれから我が国の憲法との優位性という問題についてもこれから十分に議論がなされていかなきゃいけない、その必要があると。そして、明確な形で我が国が実際アメリカとパートナーシップを組んで、アジアの平和維持のために協力体制を組んでいくんだというそうした積極的な姿勢を今ここに世界に向かって示す必要があるのではないかと思っております。  さらに、けさほどいただきました日米共同宣言の中にも、このガイドラインの見直しをする必要が生じてきているということで両国は早急に見直しを始めなければならないというふうに盛り込まれておりますが、具体的にどのような見直しをどの段階にタイムリミットを区切ってされていくおつもりであるのか。通告は申し上げませんでしたが、総理、きょう話し合われたことが多いと思いますので、御説明、御所見をお願いしたいと思います。
  62. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 先ほど来御答弁を申し上げておりますが、従来、防衛大綱の中で使ってまいりました五十三年につくりましたガイドラインは新防衛大綱ができましたので当然のことながら調整の要がある、このように私どもは理解をいたしております。  先般行いました日米防衛首脳会議におきましてもその必要性を認め、夏にかけまして協議を進め、秋の2プラス2等におきましてはできる限りはっきりしたものを御報告するように努力するということでもって話をいたしているところでございます。
  63. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは、具体的にこれから十分に討議がなされなければならない憲法解釈の問題、それから国連憲章の我が国の法制における位置づけといった話し合いのベーシックな入り口の部分の話をきょうは時間もございませんのでさせていただきたいと思います。  まず、国連憲章を我が国の法制の中でどのように位置づけるのかという問題でございまして、憲法九十八条におきましては確かに条約というものが列挙から抜けております。したがいまして、憲法それから法律という順位がございますので、それは条約優位であるからあえて憲法の中に条約という言葉を入れなかったのではないかという条約優位説、御存じのとおりございます。さらには、憲法九十八条の第二項における条文、これは確立された国際法規、すなわち慣習国際法を内容とする条約については憲法に優位と解釈する説が有力であるというふうに理解しております。  この辺について、法制局と条約局でございますか、お答え願いたいと思います。
  64. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 条約と憲法の関係につきましては、外務省サイドとしては条約局長から答弁させます。  その前に、今我々が米国との間でいろいろ御相談し、また協力していこうということは、それは国連憲章を初めとする国際法にのっとるのは当然でございます。また、今の日本国憲法を前提として協力していこうという話でございますので、今我々が日米間でいろいろ話していることで条約優位か憲法優位かということを議論する必要はないし、先ほど来いろいろ議論もございましたけれども、せっかく安全保障という大切な問題について、今のこういった情勢の中で一体何をなすべきかということを考えるときに、またがっての一部で神学論争と言われたような仮定を置いての細かな論議というものは、ちょっと言い過ぎだったら申しわけないと思うのでございますけれども我が国安全保障のためにも日米関係のためにも決してプラスにならぬということだけ私から申し上げたいと存じます。
  65. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 憲法との関係でございますので、まず私の方からお答えいたしたいと思います。  ただいまお尋ねになりました国際連合憲章、これは九十八条第二項が述べております我が国が締結した条約、すなわち我が国が国際連合に加盟するために締結した条約に当たると解しているわけでございます。  そして、このような国際連合憲章を含めた条約と憲法との優越関係、これはただいまお尋ねの中でも学説上は若干の意見の分かれがございますが、私ども政府といたしましては、従前から憲法の尊重、擁護義務を負っている国務大臣で構成される内閣が憲法に違反する条約を締結するということは背理であるということと、そしてまた条約締結手続が憲法改正手続よりも簡易であるということ等を理由といたしまして、一般には憲法が条約に優位するというふうに解してきている次第でございます。  それからもう一点、九十八条第二項で規定しています確立された国際法規と憲法との関係については別の意見があるじゃないかというお尋ねであろうかと思いますが、この確立された国際法規と申しますのは、学説によりますと、一般に承認され実行されている慣習法的な国際法規ということを意味するというふうに憲法学者は解しておりまして、例えば国家の基本的な権利義務とか公海の自由とか、あるいは外交使節の特権に関する国際法というようなものを指すのであろうと言っております。  このような確立された国際法規ということになりますと、これは国際社会の基本的な法則ともいうべきものであろうと思いまして、このような法則を前提として各国家が存在している、我が国憲法もその秩序の中に受け入れているということからいたしますと、これらの確立された国際法規と憲法との間でそもそも抵触というものは生じないはずであるというふうには解しております。ただし、だから憲法に優位するのであるというようなところまでのことではないというふうに理解しております。  以上でございます。
  66. 林暘

    政府委員(林暘君) 我が国憲法におきます条約と憲法との関係につきましては法制局長官が今御答弁されたとおりでございまして、私の方から申し上げることはございません。  我が国が国際連合の加盟国として義務を果たして、国連に対して協力を進めていくということは我が国の憲法に合致したものと考えておりますし、我が国が国連との関係で果たす義務が我が国の憲法と合致しない点があるというふうには我々としては考えておりません。
  67. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。  ただし、池田外務大臣の今のお話の中で、細かいことをつつき合って、せっかく枠組みができた日米安保に支障を来すようなことになりはしまいかというような御指摘でございましたが、私はむしろ逆の考え方でございます。  アメリカ合衆国の憲法第六条第二項においては、明らかに条約が最高法規であると明記をしてあるわけでございますし、また同時にEUの諸国においても、国際法と自国法に二律背反が生じる場合には国際法の法規が優越するということは明確に書かれておるところでございますので、私は日本だけが何かそうした先進諸国の立場から乖離したような状態に現在あって、そのことが話し合いをなかなか前進できない一つのネックになっているんではないかという気がいたしております。  そうしたことで、相互補完という言葉がございますが、二国間あるいは二人以上の個人の間でお互いに協力をし合うという英語の言葉意味としてはコンプリメントとサプリメントと二つございます。  御承知だと思いますが、コンプリメントというのは、一人のパートナーが剣を持ち、そしてもう一人のパートナーが、あるいは国家の場合も同じでございますが、盾を持って、そして自分たちの平和の維持のために戦う。一方、サプリメントというのは、お互いに剣と盾を持って、そして力を合わせて倍加させて戦っていくという考え方でございます。  現在までの日米間の関係というのは、特に安全保障関係というのはまさにこのコンプリメントでありまして、私はそうした意味から、憲法問題を含めましてお互いに一つ一つハードルを乗り越えていかなきゃいけない、そういう時代にあると思います。  そして、その憲法解釈について、アメリカはやはり集団的自衛権ということに大変な関心を持っていると思いますが、私は、現在の段階でこうした状況から憲法九条の解釈の見直しあるいは改正についてどういう御意見をお持ちか、与党三党のそれぞれの代表の方、総理、副総理・副党首、それから副代表の三人から党の立場として御意見を伺いたいと思います。  二月二十七日、衆議院において私どもの同僚の石井一議員が類似した質問をなさいました。そのとき副党首・副総理におかれましては、党務から離れているので個人としては発言を控えたいということでございましたが、やはりこれは党の大事な方針だと思いますので、きょうはしっかりとお答え願いたいと思います。
  68. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 衆議院で石井さんから御質問がございましたのは憲法改正についての御質問ではございません。そのことは誤解がないようにしていただきたいと思います。  それから、今お話がございましたが、私ども社民党の前身でございます日本社会党が九三年の総選挙の後、連立政権を初めて樹立いたしますときに、当時益田さんはいらっしゃらなかったわけでございますけれども、あなたのお仲間の方々と連立政権樹立のための政策合意書をつくりました。この冒頭に、日本国憲法の理念と精神を尊重するということが明記してございます。そして、この考え方は今の三党連立政権樹立に当たりましても引き継がれたものと思っておりまして、村山政権下におきまして、国会の所信表明の中で、正確には記憶いたしませんが、武力なき世界は人類の崇高な理想であって、日本国憲法の理念でもある、こういうことを申されたと思っております。  なお、橋本新政権が生まれますときのことし初頭の三党の合意の中にも、日本国憲法の目指す平和と民主主義を守るということを明記いたしてございます。この考え方は今の社会民主党にそのまま引き継がれているものと私は考えております。  したがいまして、今、日本国憲法九条のお話をされましたけれども、憲法を改正する考えは私にはございませんし、内閣がそのようなことを発議せられるようなことはないと私は考えております。
  69. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) まず、政府見解は正しい憲法解釈だというふうに認識しております。したがって、これを変更することはできないというふうに思っております。  日米安保体制は憲法の枠内で運用されてきましたし、これからもその方向で運用されていくということは明確だというふうに認識しております。
  70. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 現行の憲法についての論議というものは随分長い間さまざまな角度から問題が提起をされてまいりました。私は、その論議というものはそれぞれに議論はされてきましたけれども、国民全体の意見が一つに集約され憲法改正を求めておる状況にはないと考えております。そして、現段階において内閣として憲法改正をいたそうというつもりはございません。
  71. 泉信也

    泉信也君 それでは質問を続けさせていただきますが、共同宣言防衛計画の大綱の関係についてお尋ねをいたします。  現在の防衛計画の大綱は昨年の十一月に閣議決定をなされておりますが、本来は今回の共同宣言案ができてその後に新しい大綱をつくるべきではなかったかと思いますが、いかがでしょうか。
  72. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 我が国の今後の防衛力のあり方につきましては、昨年の六月に安全保障会議において検討を開始しました。関係省庁においても各種の作業を行いまして、与党内の調整も終え、幅広い観点から総合的な審議を経ました上で、昨年十一月に新防衛大綱、十二月に中期防衛計画を決定いたしたところでございます。  新防衛大綱につきましては前中期防中に結論を出す、したがって前期に結論を出す、こういうことに決められております。  また、新中期防におきましては、新防衛大綱のもとで引き続き計画的、継続的に防衛力整備を行うことは適当である、こういうふうにいたしているところでございまして、平成八年度の予算というものも考慮に入れまして昨年の末に決定をいたしたところでございます。  他方、新防衛大綱及び新中期防の策定は、さまざまなレベルの日米間の協議の場、そういうものを経まして、冷戦終結後の国際環境あるいは安全保障政策のあり方、そういったものを緊密に意見交換した上でつくっているわけでございます。このような経緯を反映いたしましてつくったものでございますので、今回公表されました日米共同宣言のものと同一の基本的な考え方と、こういうことになっているわけであります。
  73. 泉信也

    泉信也君 長官お話はある意味ではごもっともかもしれませんが、本来クリントン大統領の来日が、昨年でしたか、取りやめになっていなければそこでこの共同宣言が出たはずなんですね。それを受けて新しい防衛計画の大綱が決められたというのが私は道筋だったと思うんです。  今回の防衛計画の大綱の中でも、みずからが力の空白となって周辺地域に云々という文章があって、必要最小限の基盤的防衛力を保持するいわゆる基盤的防衛力構想が踏襲されておる。このことと今回の共同宣言にはかなり差があると思いますが、いかがでございましょうか。
  74. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 委員がおっしゃるとおり、基盤的防衛力整備の理念というものは今回も踏襲をいたしております。しかし、御承知のとおり、この新防衛大綱あるいは中期防というものは我が国が自主的にまた継続的に我が国を守る計画を立てるものでございます。当然のことながら、先ほど申し上げましたけれども、アメリカともその間緊密な連絡をとってつくってございますが、主体的には私ども日本がみずからの国をいかに守っていくか、こういうものをみずからの力でもって、またみずからの判断で決めるべきものと、このように理解をいたしております。
  75. 泉信也

    泉信也君 おっしゃることはごもっともでございますが、例えばこの大綱に言われておる「我が国安全保障防衛力の役割」という中に「大規模災害等各種の事態への対応」という項目がございます。ここに実は我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態への対応が述べてある。「大規模災害等各種の事態への対応」というタイトルの中に、周辺地域の平和、安全のために尽くすことが位置づけられておるんですね。こんなことで今回の共同宣言と矛盾がないというふうに言い切れますか。もっと大々的にこの項目を前に出して書くべきではないか、私はそんなふうに思いますが、いかがでしょうか。
  76. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) お説のとおりでございますが、私は矛盾はないと確信をいたしております。
  77. 泉信也

    泉信也君 実は防衛問題懇談会で言及されたACSAの話もこの新大綱には入っておりませんし、集団的自衛権の問題についても官房長官談話で処理するというような大変逃げた格好で大綱ができておることを申し上げて、次の問題に移らせていただきます。  基地問題については、総理の大変な御努力で普天間の問題が解決の方向に一歩踏み出しましたことは敬意を表するものでありますが、どうも国会議員も含めまして総論賛成各論反対、こういうことになりかねないわけであります。この問題につきましては、外交交渉の難しさというようなものももちろんございますけれども関係者へ前広に綿密な打ち合わせをしていただきながらお進めをいただきたい。これは一つの要望でとどめさせていただきます。  最後に、今回のこの共同宣言というのはある意味では、若干表現が悪いんですが、社会党首班、村山総理の時代だったらこれはできなかったんではないか。いわゆる日米間の信頼に基づく橋本総理であったからこそこれができたんではないかと私は思います。しかし、宣言ができただけではだめなわけでありまして、これが誠実に実行されていく上においては、先ほど総理は少し違う見解を述べられましたけれども、憲法改正の論議を真っ正面から取り上げてぜひ国民の意向を再確認していただきたい、このことを申し上げまして質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  78. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で泉信也君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  79. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、狩野安君の質疑を行います。狩野安君。
  80. 狩野安

    狩野安君 沖縄問題を初めとして国内外に難問が山積している中で橋本総理が本当に奮闘されているお姿を拝見いたしまして、私は大変敬意を表したいと思っております。また、きょうもテレビを拝見させていただきましたけれどもクリントン大統領を初め橋本総理の本当に明るくそしてさわやかな会見風景を拝見いたしまして、私もすごく安心をしたというか、新しい日米関係がこれからスタートするんじゃないかなというふうに感じまして、大変期待をいたしております。  きょうのクリントン大統領との日米首脳会談の結果を先ほど共同記者会見日米両国民へのメッセージとしてお話しになりました。日米両国が同盟国として、よきパートナーとして二十一世紀に向かって世界の平和と繁栄のために何ができるかということで胸襟を開いて話し合われた成果が伝わってまいりましたが、厳しい内外の諸情勢が多くある中でかなり突っ込んだやりとりもあったのではないかと推察いたしております。  もちろん、日米関係を基軸として日本人とアメリカ人とが交流と理解を深めて、アジア地域の安定化、日米間の経済問題の解決に努めていくことが大切でありますが、きょうの国民へのメッセージの中での総理思いをもう少し具体的にお話しいただければと思います。特に、総理は本日の首脳会談は太い柱と大きな屋根で支えられていたと言われておりますが、この点についてもわかりやすく御説明をお願いいたします。
  81. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本日そして昨夜、公式、非公式二度のクリントン大統領との会談の時間を持つことができました。そして、これに至ります関係者の努力にも心から敬意を表する次第であります。  今回、その議論を踏まえまして、日米両国国民へのメッセージ並びに今御議論をいただいておりました日米安全保障共同宣言という二つの文書に私はサインをいたしました。そして、恐らく大統領も同じ気持ちでおられると思いますけれども、この両国国民へのメッセージというものの中に、我々が今日当然のこととして改めて意識をしない民主主義あるいは自由というものがどれだけ大切なものであるのか、しかもお互いが逆にこれを大事にしていかなかったら非常にもろいものになりかねない、これは地球上いろいろなところで起きております現実の状況を振り返ったとき、特に私はそう思います。  そして、その上で、地域問題について、現在もいろいろなところで我々は協力関係を持っておるわけでありますけれども、両国が協力していくことの大切さ、あるいは戦後五十年という一つの節目を越えて次のステップに入ろうとしている国際連合、国連改革という言葉が昨年は随分あちこちで聞かれましたけれども、ことしに入りましてからだんだん聞かれなくなりました。  しかし、ただ安保理の問題だけではなくて、これからの開発に対する取り組みをどうしていくのか、あるいは国連そのものが財政的にどうすれば健全な姿になっていくのか、実はいろんなことを我々は価値観を共有するものとして話し合っていかなければならないと考えております。その意味で私は、昨日から本日にかけて、お互いが自分たちの問題意識をストレートにぶつけ合うことによって非常に得るものが多かったと思っております。  昨年、私自身も責任がありますけれども、自動車問題という一つの分野での論争があたかも何か両国の関係を壊しかねないような印象にすらとられた時期がございました。私は、そんなものにならなくて本当によかったと思っておりますし、むしろその中から、経済問題というのはお互いにこれからも出てくるでしょうけれども、それこそ必要な場合にはいつでも話し合うということでお互いの中で処理をしていく、あるいはそれは国際ルールのもとで処理をしていく、当然のことでありますけれども、そういうことを改めて確認ができたことも一つよかったと思っております。  そして、太い柱と屋根という形容詞の今お尋ねがありましたが、私はきょうの首脳会談というものを根元からしっかりと支えてくれた大きな柱があったと思うんです。それはまさに日米両国国民の相互理解というものでありましょう。そして、このごろむしろ交通手段が余りに発達し過ぎましてお互いの距離が近くなりました結果、ビジネスの行き来はふえましたけれども、私どもが学生時代、あるいはその後の時代を振り返りましたときほど、本当に若い人々がじっくりと相互で交流をする機会が逆に減ってきているような気がします。  殊に、アメリカから日本に来て、日本で暮らし、日本で学び、日本を理解する、そうした機会が減ってきたような気がしてなりません。それだけに、私はこの相互理解という柱をもっと太くしたい。そして、将来もっとたくさんのアメリカの若者が日本に来られる機会をふやしたい。高校生の招聘プログラムも始めたい。今まで大学はございましたが高校までは手を伸ばしておりませんでした。あるいは若い芸術家の方々の招聘、そうした機会をふやしていきたい。そして、それによって相互理解という柱をもっと太いものにしていきたいと本当に思っております。  また、屋根という形容詞を使いましたのは、まさに民主主義、あるいは自由、人権、あるいは開かれた経済といった普遍の価値のうち我々が共有するもの、これが私は屋根だと、そう思っております。そして、私はさまざまな思いを込めながら、こうした柱と屋根を持つ日米両国というものがこれから先もしっかりとしたお互いの協力関係を築き上げていくことによって、両国のためだけではなしに世界のために役立っていくものにしていきたい、そんな思いを込めております。
  82. 狩野安

    狩野安君 ありがとうございました。何か総理思いがすごく伝わってきたような気がいたします。  次に、沖縄基地問題の象徴である普天間基地が沖縄県民の長年にわたる願いがかなって全面返還されることを初め、過去二十五年の返還実績を大きく上回る基地の縮小等の方針が決定されましたことは、クリントン大統領に敬意を表するとともに、死に物狂いで臨まれた橋本総理の政治決断とリーダーシップに大変感銘いたしました。  国内的に、これから十一月に向け返還に伴う移転先等の問題について関係者の理解を得つつ取り組んでいかなければならないなど調整の積み上げが必要になってきますので、総理の決意のほどを承りたいと思います。
  83. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私どもは、本日まとめました日米安全保障共同宣言の中でも、「総理大臣と大統領は、米国が引き続き軍事的プレゼンスを維持することは、アジア太平洋地域の平和と安定の維持のためにも不可欠であることで意見が一致した。」という内容を盛り込みました。私どもは、確かに現在、日米安全保障条約というものを基盤にした日米関係によりまして、日本だけの平和ではなく、この地域の安定の上に大きく資していると思っております。  そして、その結果、今日まで沖縄県に非常に多くの基地が重なってしまい、本土の我々がその重みに苦しんでおられる沖縄の方々の思いに十分意を用いなかったことから大変不幸な事件が発生し、それを機に基地の整理、統合、縮小というものが大変大きな問題になりました。そして、そのお気持ちを酌みながら、同時に米軍の機能、能力というものを低下させないという、ある意味では相反する部分を持つ命題に死に物狂いで取り組んできたつもりであります。  結果として、普天間基地は五年ないし七年の間にヘリポートの新しい建設といった条件を満たした上で返還をされるということになりました。しかし、これはまさに約束ができ上がったということでありまして、これからその実現のためにはヘリポートが移される既存の基地の周辺の方々にも御同意を願わなければなりませんし、また御協力をいただかなければなりません。あるいは、返還後の跡地利用計画というものを本気でまとめ上げ、県とともにその計画にいつでも着手できるだけの準備を整えなければなりません。さらに、沖縄県外の他の基地にその機能の一部が動くケースもございます。  先ほど泉議員にも御指摘を受けましたけれども、交渉事というものの性格から、途中で御報告のできなかったこと、あるいは事前に御相談ができなかった点でおしかりを受けている部分が多々ございます。これは交渉の責任者である私自身の責任でありますし、こうした点はおわびを申し上げます。  方向がやっと確認をされ、前途に姿が見え始めましたこの普天間基地の全面返還というものに向けて、またそのほかのSACOにおいて合意をいたしました事項の着実な実施に向けて、我々も全力を挙げてまいりますし、県も協力を約束してくだすっております。国会におきましても、でき得る限りの支援をお与えいただきますように心からお願いを申し上げます。
  84. 狩野安

    狩野安君 基地問題はこれからが本当のスタートだと思いますので、どうぞ頑張っていただきたいと思います。私たちもできるだけ後押しをさせていただきたいというふうに考えております。  次に、最近、朝鮮半島情勢緊張が続いており、我が国にとって朝鮮半島の安定は死活的な重要性を持つと考えております。朝鮮半島の平和のために日米韓の三カ国の協力が今回確認されましたが、他方、きのうの米韓首脳会談での韓国北朝鮮米国中国の四者会談提案との関係も考慮した場合、日本が今後具体的にどのような役割を果たしていくのか、これも総理大臣にお聞きしたいと思っております。
  85. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、昨日、クリントン大統領と金泳三大統領の間で合意をされ呼びかけの行われました韓国、アメリカ、中国、そして北朝鮮、その四者会談の呼びかけというものを非常に歓迎し、これを支持し、これが実現し、その結果、朝鮮半島に真の平和がよみがえることを心から願っております。  そして、これに対しては、その意図が公表されました瞬間に私は支持の談話を出させていただきました。そして、数十年前に朝鮮戦争において相対峙したその当事者が、休戦協定に参画した四者が今回何らの前提なしにテーブルを一つにしてくれることができれば、そこから平和が生まれてくるのではないか、私はそう望みたいと思います。そして、その中で日本が果たし得る役割があれば、無論これに対して喜んで私は協力していくべきだと思います。  他方、現実に進展しております問題として、いわゆるKEDO、軽水炉の供与の問題がございます。これは北朝鮮の核開発の疑惑が非常に大きく取り上げられました時点から、それに対応する方策としてアメリカが交渉の当事者となり、韓国日本がともに手を結びながらこの論議を煮詰め、核開発疑惑を解消する手法として軽水炉供与という方針を決めました。私は、まさにこれは日本、アメリカ合衆国、そして大韓民国、この三つの国が連携をとり協力し合いながら行動していく一つのいい例だと思っております。  そして、我々は朝鮮半島に平和が本当に戻ることを期待いたしますし、日朝の国交というものについても正常な姿になることを願います。しかし、それについても我々はきちんと韓国と相談をし、あるいはアメリカの意見も聞き、本当の平和がよみがえるその助けになるような形でその努力はしていかなければなりません。朝鮮半島の問題を議論していこうとした場合には、私は今まで以上に韓国、そして時にアメリカとの相談というものはきちんと連係プレーで進めていきたいと思っております。
  86. 狩野安

    狩野安君 朝鮮半島と同じようにまた大事な問題があります。それは、中台関係については中国のミサイル発射演習により一時本当に緊迫の度を高めまして、私たちも万が一何かあるかと思って大変心配をいたしました。台湾海峡緊張を解きほぐしていくためには、日米中心となり、両国が対話を進める国際環境づくりが重要と思われます。  今回の共同宣言には中台関係について直接触れられませんでしたが、首脳会談ではどのような話があったのでしょうか、これまた総理大臣にお伺いします。
  87. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) この安全保障共同宣言の中で中国問題に触れております部分は、「両国政府が、アジア太平洋地域安全保障情勢をより平和的で安定的なものとするため、共同でも個別にも努力することで意見が一致した。」、こうした流れの中におきまして、「この地域の安定と繁栄にとり、中国が肯定的かつ建設的な役割を果たすことが極めて重要であることを強調し、この関連で、両国は中国との協力を更に深めていくことに関心を有することを強調した。」という表現をいたしております。  我々は、先般、台湾海峡をめぐる情勢の緊迫で非常に心配したことを決して隠してもおりません。しかし、そういった問題が議論をされたかどうか自体を私はお返事すべきではないと思います。  しかし、そうしたさまざまな状況というものを十分に踏まえた上で、我々は、中国国際社会の中でより改革・開放路線を進めながら肯定的な役割を担ってくれることを両国が願っている、この宣言の中にはそのメッセージを織り込むべきだということで一致したと、そう御理解をいただければ幸いであります。
  88. 狩野安

    狩野安君 共同宣言の「二十一世紀に向けての同盟」におきましては、安全保障面の二国間協力として、一九七八年の日米防衛協力のための指針の見直しを開始することで一致いたしました。この中には、いわゆる極東有事の際の対応を検討、準備するということも重要な課題ではないかと見られますが、総理として先日、法的側面の検討にも言及されているようですが、今後具体的にどのような方針で検討されていかれるか、お伺いいたします。
  89. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まさにこれから検討をするわけでありますので、具体的に今申し上げる中身を持ちません。ただ、私は先般、法的側面から申し上げたつもりはございません。  ただ、先日、私は例示で、例えばどこか特定の地域における何らかの危機の中で在留邦人を救出する、あるいは避難民が発生しそれを受け入れる、そういった具体的ケースを考え、その場合に使える手法というものについての検討が十分なされていないということに気づいたということを申し上げました。そして私は、さまざまな事象がどういうものがあり得るかということをまず考える、そしてそれに対する対応策を検討していく中から、あるいは法的な整備を必要とするものも出てくるであろうと想定はいたします。  しかし、これから作業を進めてまいります段階で、私どもは例えば法律制度が必要であるとかないとかいう固定した考えからこの作業をスタートさせようとは考えておりません。
  90. 狩野安

    狩野安君 ありがとうございました。  次に、共同文書の中で、人類や地球社会に対する脅威に日米協力し立ち向かっていくことも確認されました。私は、女性の立場からしても、生命の安全、環境問題等にグローバルな視点で取り組んでいかれることは大変大切なことであり、コモン・アジェンダの協力に多数の国と人々が参加するよう働きかけていくべきだと思います。また、これを日本国民に知らせる努力が必要ではないかとも思います。我が国の平和外交の大きな柱として位置づけ、人類共生のプロジェクトに発展するよう総理の強いリーダーシップをお願いいたしたいと存じますので、一言御決意をお述べいただきたいと思います。
  91. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、実は日米間のさまざまな分野の協力の中でコモン・アジェンダの果たしている役割というものが世間から余り注目を浴びておらないことを大変残念に思っておりました。  今御質問いただきまして改めてお礼を申し上げますが、コモン・アジェンダと言われますものの中には、保健と人間開発の促進という柱、人類社会の安定に対する挑戦への対応という柱、そして地球環境の保護という柱、さらに科学技術の進歩という柱と相互理解のための交流の助長という大きな五本の柱がございます。そして、例えば途上国の女性の支援でありますとか、あるいは人口問題、エイズ、子供の健康といったテーマがこの保健と人間開発の促進の中では今までも進められてまいりました。  今回、ここに新たに私どもが取り上げましたのは、一つは地球的な食糧供給。そして、エボラ熱のような新興感染症、あるいは現在結核が抗生物質に耐性を持ってしまい抗生物質の効かない結核が実はふえてきております。再び興るという意味で再興感染症という呼び方をしておるようでありますけれども、こうしたテーマを我々は新たに取り上げることにいたしました。この新興及び再興感染症につきましては、日米両国の感染症の専門家によります初めての会合を、本年七月、京都で開くことにいたしております。  あるいは、人類社会の安定に対する挑戦への対応、これは今まで麻薬だけが問題として取り上げられておりました。今回、テロ対策、自然災害、そして市民社会と民主化というテーマを新たに追加いたしました。市民社会と民主化と申しますと、途上国の選挙監視でありますとかあるいは司法制度の強化などの分野における支援調整といったものもございます。  また、自然災害についてはアメリカも地震において苦い経験を負ったわけでありますが、我々も昨年の阪神・淡路大震災というもので手痛い被害を受けました。多くの人命も失いました。そうした共通の経験に立ちまして、自然災害早期警戒ネットワークを構築していけないだろうか、そんな思いを持ちながら本年の秋に地震のシンポジウムを開催したい、こうしたこともございます。  あるいは、地球的な食糧供給という意味では、食糧生産力の向上のために共同調査研究等を行いたい。  さらに、二十一世紀のための工学教育というテーマを新たに取り上げておりますが、これはコンピューター等先端技術の利用可能性を模索していこうということでありまして、これは日本でも既に一部さまざまな試みは始められておりますが、体系づけられたものとしてはまだ自信の持てるものにはなっておりません。これはアメリカの方も同じような問題があるようであります。二十一世紀のための工学教育というものができないだろうか。  コモン・アジェンダの中で新たに我々が取り上げてきた幾つかのテーマはこのようなものでありまして、こうした地道な協力が私は何よりも大切な日米関係というものを下支えしてくれている、そのように信じております。
  92. 狩野安

    狩野安君 まさしく、一見地味ではありますけれども日米の共同作業として極めて有意義なものであると思います。そしてまた、これを国民に知らせる努力もぜひしていただきたいと思っております。  この予算というものは、まさしく住専問題ということに集中をしておりますけれども、私を含めて国民の大半の方は新聞、テレビなどマスコミを通じていち早く住専という言葉を知り、そしてまた住専というのは何だということになると、あのバブルの時代に何千万円、いや何億円、何十億円のお金を右から左へ動かし、高級車を乗り回していた人たちの会社である、その人たちの借金のツケに私たちの税金が使われるんだということをマスコミ等で教えられたわけですから、お願いするとか御理解をいただきたいだけではもう国民の皆さん方は聞く耳を持たないわけです。聞く耳を持たないし、そして納得することもできないわけですから、もっと政府側が自信を持って、本当に日本の国のためになることだったら、絶対に必要と判断したならば、もう自信を持って進んでいただきたいというふうに私は思っております。  そして、これはもう早い時期に、これはこういうふうになってこうだからと、住専問題という言葉が流れる前に政府の方から、これはこういうふうになるんですよ、こうだからこうしなければいけない、だからこういうことをした人たちはこのようにきちっと責任をとってもらいますよ、こういう悪い会社はだめにするんですよと、こういうことをもっとわかりやすい言葉で国民に示していただきたかったと私は思っております。  しかし、その時期にはまだ橋本総理大臣は総理大臣としてのバトンタッチをされていなかったわけですから総理大臣に遅過ぎたということは言えないわけですし、また総理に歴代の方々の責任をとれというわけではありませんけれども、私たち政治家としての自己批判とともに、政治家としての責任の所在の追及が足りなかったような思いがいたします。  ですから、今の国民の皆さんはよく勉強をしてしっかりした知識も持っておられますので、政府が自信を持って、そしてしっかりしたビジョンを国民の皆さん方に示すことにより、不安ながらも理解していただけると思います。本当に一生懸命私たちも頑張りますので、自信を持って進んでいっていただきたいと思います。  それで、参議院の自由民主党では住専問題に関してのプロジェクトチームをつくりまして、衆議院の予算委員会と並行いたしまして約一カ月、八回にわたる会合を重ねて調査と検討をしてまいりました。その中間報告も出ておると思いますので、ぜひそれも参考にして活用をしていただければというふうに思っております。  私は、そのプロジェクトチームの中で特に農林系の金融機関についての調査をさせていただきましたので、その件に関して二、三質問をさせていただきます。  六千八百五十億円もの財政資金導入の目的について、農協系金融機関の救済や負担軽減をねらいにしたものであるとの論議があります。このような論議のせいで、農業の現場では、この問題に直接関係のない農業者までが非難の声を受けているという声も聞きます。  今国会において、橋本総理、久保大蔵大臣とも繰り返し財政資金の導入は系統金融機関を救済することを目的としたものではないと答弁しておられますが、その声が必ずしも現場まで届いていないのではないでしょうか。あるいはまた、その声を否定しようとする傾向があるのではないかと考えられます。  そこで、住専処理策が農林系統の救済や負担軽減の目的ではないということについて、改めて総理と大蔵大臣の明確な答弁をお願いいたします。
  93. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) これは二つの考え方を申し上げなければいけないと思っております。  一つは、貸し手でございますいわゆる債権者としての金融機関、その一分類であります系統金融機関と呼ばれる農協関係の金融機関、こういうところと、母体行と呼ばれるいわゆる銀行へこういうところと住専とのかかわり方において過去の経緯における責任論という立場に立って考えてまいります場合に、系統金融機関は貸し手責任や経営責任は存在するとしても、住専問題の処理に当たって住専との直接のかかわりにおける責任というのはない。そういう意味においては、住専問題の処理は系統金融機関の救済という立場において財政資金の投入を決めたものではないという考え方を申し上げてきたわけであります。  今度は物を考えてまいります場合に、農協系統金融機関は金融機関としての体力の面で銀行等と比べました場合に非常に基礎が弱いということがございます。その背景には九百万の農家が存在するということがございます。そういうようなことをすべて検討しました上で、農協系統金融機関にも贈与という形で一定の負担はしていただくが、この体力を超えるようなことをやりました場合には結果的に系統金融機関に信用不安を起こす可能性も、おそれもある。いろいろなことを検討してまいりまして最終的に決めたので、系統金融機関の救済を目的としてやったものではないが、最終的に預金者全体のことに配慮を加えるという意味においては系統金融機関の問題もよく考えた上で全体の合意を得たもの、こういうことだと思います。
  94. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、久保副総理から御答弁をされましたけれども、もともとこの住専の問題というものが民間のことでありますから当事者間の話し合いで処理をしたい、そのことに時間をかけ過ぎ、先ほど御批判をいただきましたように、かえって国民に御説明をするのが後手に回った、この点でおしかりは私は甘受しなければならないと思います。  そして、副総理が述べられたことに私からつけ加えるといたしますならば、住専というものに非常にたくさんの金融機関が母体行として、あるいは一般行として資金を供給してまいりました。それは住専七社と言われるそれぞれの社によって違いはあるわけですけれども、いずれにしても多くの金融機関が関与してきたということは変わりがありません。そして、その七つに対して共通して一つ大きく横のくいのような形で入っている、それが系統金融の資金だったということもこれは事実です。  そして、系統金融をも含めて当事者の責任分担を決めていく中からこのスキームというものが決まってまいりました。系統金融機関救済ということで決められたスキームではない、むしろ住専問題を処理するために住専というものをなくしてしまう、そのために必要な手法を講じたということでございます。
  95. 狩野安

    狩野安君 明快な答弁をいただきまして、ありがとうございました。  次に、農林系統の住専問題に関する責任の明確化には、住専設立から今日の破綻に至った経緯を十分踏まえる必要があります。農林系統金融機関は、母体金融機関と異なり、住専の経営には参画せず、また母体行がみずから住専の業務分野に進出したような経営破綻の原因をつくったわけでもありません。  さらに、平成五年の第二次再建計画の中で金利減免協力を行った際、金融監督当局から、農協系統には今般の金利減免措置を超える負担はかけさせないよう指導していく、農協系統には元本ロスは生じさせないとの説明を受け、これを前提として再建に協力したと聞いております。このような経緯を踏まえて、農協系統の貸付債権について全額返済することにしたと聞いております。  しかし、農協系統金融機関が住専に多額の貸し出しを行っていたことに対するリスク管理の問題があるとの指摘もあります。  住専問題については、バブルの時代に余裕資金が豊富にあったとしても、住専に対し多額の貸し付けを行っていたということは、結果的に農協系統が金融機関を経営していく上でのリスク管理が不十分であったのではないかという疑問も生じております。特に、これから金融自由化が定着する中で、他の業態との競争が激化するとともに経営の自己責任の一層の徹底が求められます。  しかし、今回の住専問題に関して農協の貸付審査体制などのリスク管理を不安視する声もあります。農協は、農家組合員の相互扶助組織とはいえ、農家組合員の大切な貯金を預かっているからには、その安全な管理運営には一層の体制整備が図られるべきであると考えます。  農協、信連の審査体制と内部検査体制の実態について、またこれからの体制整備はどのようにお考えになっているのか、農林水産大臣にお伺いいたします。
  96. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 委員御存じのとおりに、ただいま農政審議会におきましてもこの九月ぐらいまでに、今おっしゃったような特に農協の信用、組織のありよう、これからの監督体制のありよう、それからそのチェック機能の充実等々について御審議をお願いしているところであります。農林水産省といたしましても、独自にプロジェクトチームをすぐにつくりまして、おっしゃったような問題について基本的な課題に今取り組んでいる最中でございます。  先ほど、総理、大蔵大臣から大変御丁重な答弁をいただいたわけでございますけれども、御承知のように五千三百億円の拠出といいますか贈与というのは、これは農協系統にとっては大変な負担なんです。  ちなみに一例を申し上げますと、内部留保が一兆三千しかないんです。協同組織ですからこれは当然なことであります。その中で五千三百を負担したわけでございます。一般行や二十一行等を見ますと、三十兆ないし四十兆円という内部留保を持っているわけでございまして、そういう意味では経営責任の果たし方として、もとより金融秩序の再構築という問題もございまして、五千三百億を贈与して、厳しい中であるがこの問題の解決をしてもらいたいということで拠出することになったわけでございます。  御承知のように、金融組織の中で七十兆円というお金をいかにこれから運用していくかということ、非常に難しい課題をたくさん抱えております。農協内部で融通し合うということは不可能でございます。農協も、機械は持っている、自動車は買ったし、もう設備投資というのはそんなにないんです。貯蓄はふえていくことは確実でありますが、その資金を効率的に運用する仕組みが現在の系統の金融秩序では担保されておりません。それらを含めて抜本的な改革をしていきたい、かように考えているところでございます。
  97. 狩野安

    狩野安君 力強い農林水産大臣の御答弁をいただきました。ぜひよろしくお願いを申し上げます。  次に、農協系統金融機関の再編整備についてお伺いしたいと思います。  このたびの住専問題を機に、銀行運営の改革や効率化などとともに農林系統金融機関の再編成などが論じられてきています。既に五年ほど前から、これはもう住専の前ですけれども、組織の再編成に取り組んでいたと聞いております。従来の三段階方式を平成十二年までには二段階方式に改めるという点で、組織機能の強化や効率化などの面でその効果はいかがなものなのでしょうか。  また、農林系統機関については、農林中金法及び農協法を改正し、農林中金と都道府県の信連との合併などを進め、さらに全農と経済連、全共連と共済連の統合なども進めていると聞いております。これらの再編整備について、法改正の見通しを含めて農林水産大臣の所見をお伺いいたします。
  98. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 委員のプロジェクトチームでも既に取り上げられたと聞いておりますが、現在あります農協システム三段階をできるだけ早く二段階システムに切りかえたいというのは、農協の、JAそのものの自己改革の御提言があって、我々としてもその提言を積極的にサポートする仕組みをつくっていかなければなりません。  その中で、特に先ほども指摘のございました金融システムのありようが、農協系統の存立の基盤にかかわるだけに非常に緊急を要する課題でございます。したがって、我々としては新しい農協法、農林中金法の改正を遅くとも次の通常国会までには用意をしたい、準備をさせていただきたいと思います。
  99. 狩野安

    狩野安君 よろしくお願いを申し上げます。  先ほども農林水産大臣がおっしゃっておられましたけれども、農協系金融の資金の源泉は農協貯金でありますから、農林団体の皆さんも地域への還元融資を望んでおります。もちろん、農協系統としてもそのことが望ましいと考えているのでしょうが、今日では農業活動も地域経済活動も停滞しており、融資の需要を考えることはほとんどできないでしょう。  農協系統の貯貸率は全国的に五〇%程度しかなく、貸し金の運用対策に頭を痛めているのが現状と聞きます。一方、農協系の住専七社への融資は五兆五千億円であり、七社借入額のおよそ四三%を占めております。  私は、この機会に、農協の金融機関としてのあり方について十分に考える必要があると思います。農協系統は地域密着型の金融機関であり、地域還元を望む声を考慮するならば、この資金が地域においてより有効に活用されるよう検討する必要があるのではないでしょうか。  そこで、農林水産大臣にお尋ねしますが、政府としてこれから農協系統の金融機関としての資金運用をどのように考えておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  100. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) これは、大蔵省もおやりになるこれからの金融制度改革の一環として考えるべき部門がたくさんあると思われます。  ただ、御指摘がありましたように、貯貸率が単協で四割水準、信連で二割、残りは全部農林中金か国債、地方公共団体にも回っておりますが、そのシェアは非常に少ない。したがって、蛇口が狭いわけでございます。そういった面で、これからの金融改革の中で七十兆円、一千兆円の中で七十兆円の役割をどのように考えていくかということは、大蔵大臣もこれから進められる金融改革の中の位置づけを我々としても積極的に農協系統にも展開できるような仕組みをつくっていかなきゃならない。  特に農林中金でございますけれども、ここへ全部お金が集約されております。今度、農林中金は先ほどの金融制度改革で、農中の証券会社、農中の信託会社、いわゆる子会社をつくることもできるようになりました。したがって、現在吸い上げられている四割とか五割の農中に集約された資金がむしろ一般金融機関並みに効率的に運用できる仕組みにできるだけ近づけていく手法はないかというのがやはり私は改革の一番大事なキーポイントだと思っております。
  101. 狩野安

    狩野安君 いろいろと問題があるようですけれども、ぜひ国民の皆さんが納得いくような、そしてまたこの金融というか農林系の系統を初めいろいろな問題が、行革その他リストラ、いろんなことで国民の皆さん方が納得いけるようにぜひ御努力をお願いしたいと思います。  最後ですけれども、食糧問題についてちょっと質問をさせていただきます。  現在、我が国の農業は、担い手の減少、高齢化の進展、農山村における過疎化など厳しい状況に直面しております。二十一世紀に向けての世界の食糧需給は、開発途上国を中心とする人口増加や砂漠化などの地球的な環境問題から不安なものとなることも懸念されます。  我が国の食糧の安定的な供給を図っていくためには、食糧供給体制を検討し、食糧自給の維持強化を図ることが重要であると考えます。これについて農林水産大臣はいかがお考えでしょうか。
  102. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 大事な御指摘、ありがとうございます。  現在、食糧自給率は、いろいろの数字を見ましても、FAOの数字を見ましても穀物自給率では世界で百十八番目だという非常にお粗末な自給率水準でございます。牛肉を食べますとその十一倍の量のトウモロコシが飼料として必要だということで、そういう計算でいきますと自給率がカロリーベースで四六%に落ちてしまう。これ以下に自給率を落とすということは、これはもう大変なことだと思うんです。  ちなみに、二〇五〇年には地球人口が倍になって百億になる。我々の隣国には中国の十二億という、そしてまたその先には九億というインドの民もいるわけであります。この人たちの所得水準が上がり食糧志向が上がっていけば、やはり穀物の自給率等々、我が国に直接に影響を及ぼすものがかなり大きいと思うんです。  そういう意味で、我々は今までいろいろ農業白書とかたくさん出してまいりましたけれども日本の食糧自給率を上げるには、ないしは現状を維持するにはどうしたらいいかという処方せんが不透明な部分がかなりございます。これにはWTOのあのあらしのさなかで、我々はやはりある程度後退に後退をしてきた部門もなきにしもあらずでございまして、委員がおっしゃったように、これから二十一世紀を考えた場合に、そしてその際に、しまったという後悔がないようにするためにはどうしたらいいかということは、食糧安全保障ということで国策の基本にかかわる大きな問題の一つだと、かように認識をしております。
  103. 狩野安

    狩野安君 食糧問題はすごく私は大事なことだと思います。  特に、衣食住ということを言われておりますけれども、衣と住は一回きりで人間は死ぬということもございませんけれども、食糧だけはもうなくなったら人間は絶対生きていけませんので、本当に食糧の確保ということが大事だと思います。最低限の自給というものは守っていかなければいけないというふうに考えておりますので、ぜひよく御検討いただきまして、これからの日本の将来、私は食糧問題だけは大事に扱っていただきたいというふうに心からお願いを申し上げます。  そしてもう一つは、今私も大変びっくりしているわけですけれども、イギリスで今起こっております狂牛病です。イギリス国民を大変恐怖におびえさせている狂牛病については、もういかなる手段を用いても我が国への侵入を防がなければならないと思います。政府はこのイギリスからの侵入を防止するためどのような措置を講じられているか、お伺いしたいと思います。
  104. 熊澤英昭

    政府委員(熊澤英昭君) お答え申し上げます。  まず初めに、我が国におきましてはこれまで狂牛病は発生しておりません。いわば狂牛病の清浄国でございます。それをまず申し上げておきたいと思います。  今お尋ねの輸入の問題でございますけれども、英国本島からの牛肉あるいは牛の臓器につきましては一九五一年以来輸入は禁止されております。また、生きた牛につきましても一九九〇年以来禁止をされております。ただ、昨今、狂牛病が国際的な問題となっていることにかんがみまして、これまでの措置に加えまして牛肉の加工品等につきまして、実はイギリスからは平成五年以来輸入実績はございませんけれども、三月二十七日以降、牛肉の加工品等につきましても禁止措置をとったところでございます。  今後ともこれらの措置を確実に実施いたしまして、水際での防疫には万全を期してまいりたいと存じます。
  105. 狩野安

    狩野安君 もちろん、英国からの輸入というものは今はやられていないということですけれども、これは牛が来るか来ないかというよりも、やっぱりこの病気が日本に入ってこないように、どういう形で入ってくるかわかりませんので、ぜひその辺もよく勉強していただきたいと思います。  そしてもう一つ、最後になりますけれども、今また騒がれております水増し牛乳の問題についてでございます。  全酪連の長岡工場に引き続き宮城工場においても、牛乳に脱脂粉乳、クリーム及び水を加えたものを成分無調整牛乳として販売していた問題が発覚したところでありますが、このような事態は消費者の牛乳に対する信頼を損ね、牛乳消費全体に大きな影響を及ぼしかねないだけに、あってはならないことであります。しかも、専門農協の全国連組織であり大手メーカーでもある全酪連がこのような不祥事を起こしたことが酪農生産者や国民全体に与えた不信感はまことに大きいものがあります。  今回の不祥事が乳業者、乳業界全体に与えた影響を考慮し、これについての事実関係と農林水産省における対応についてお伺いいたします。
  106. 熊澤英昭

    政府委員(熊澤英昭君) 先生御指摘のとおり、私ども牛乳消費の拡大に努めている中で大変遺憾な不祥事だというふうに強く感じているところでございます。  私どもは事件が発生した直後に全酪連から事情聴取を行い、さらに製品回収の指導を行ったところでございますが、同時に両工場におきます事実関係、さらに再発防止の体制の整備、責任者に対する厳正な処分等を直ちに厳重に指導したところでございます。  また、酪農農家への影響が大変心配されますので、私どもは酪農農家への影響をできるだけ小さくするという視点から、中央酪農会議さらには全農に対しまして、両工場を初めとして全酪連に生乳を出荷いたしております農家の生乳が円滑にほかのメーカー等へ振り分けができますように直ちに指導をしたところでございます。あわせまして、全農及びさらに大手の乳業メーカーに対しまして、そうした振り分けた先の生乳の加工処理等について協力を要請したところでございます。  なお、本日、新潟県知事から長岡工場に対します営業禁止処分を解除したという通知が全酪連に入ったという報告を受けたところでございます。また、全酪連が新潟県に対しまして再発防止対策を提示していたわけでございますが、それが適切であると認められた上で営業禁止処分が解除されたというふうに承知をいたしております。  なお、宮城県につきましては、現在、全酪連が再発防止対策を提示しておりまして、県の方で精査中というふうに承知をいたしております。  農林水産省といたしましても、こうした事態を再び招くことのないように今後とも指導に万全を期してまいりまして、消費者の飲用牛乳に対します信頼回復に努めてまいりたいというふうに考えております。
  107. 狩野安

    狩野安君 これはもう二度と起こしてはならないことですので、厳重に監督のほどをよろしくお願いいたします。  大変お忙しい中、お疲れのところを貴重な時間をいただきましてありがとうございました。  以上で終わります。
  108. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で狩野安君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午後三時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十一分散会