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1996-05-15 第136回国会 参議院 本会議 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月十五日(水曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二十九号   平成八年五月十五日    午前十時開議  第一 国務大臣報告に関する件(平成年度   決算概要について)  第二 国務大臣報告に関する件(規制緩和推   進計画改定について)  第三 労働者災害補償保険法等の一部を改正す   る法律案内閣提出衆議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一及び第二  一、公営住宅法の一部を改正する法律案(趣旨   説明)  一、日程第三      —————・—————
  2. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣報告に関する件(平成年度決算概要について)  大蔵大臣から発言を求められております。発言を許します。久保大蔵大臣。    〔国務大臣久保亘登壇拍手
  3. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 平成年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計におきまして、歳入決算額は七十六兆三千三百九十億円余、歳出決算額は七十三兆六千百三十六億円余でありまして、差し引き二兆七千二百五十四億円余の剰余を生じました。  この剰余金は、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計平成年度歳入繰り入れ済みであります。  なお、平成年度における財政法第六条の純剰余金は六千七十六億円余となります。  以上の決算額予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額七十三兆四千三百五億円余に比べて二兆九千八十四億円余の増加となりますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れ予算額に比べて増加した額二兆六千二百四十八億円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、歳入の純増加額は二千八百三十六億円余となります。  一方、歳出につきましては、予算額七十三兆四千三百五億円余に平成年度からの繰越額二兆六千二百三十億円余を加えました歳出予算現額七十六兆五百三十五億円余に対しまして、支出済み歳出額は七十三兆六千百三十六億円余でありまして、その差額二兆四千三百九十九億円余のうち、平成年度に繰り越しました額は二兆九百六十五億円余となっており、不用となりました額は三千四百三十三億円余となっております。  このうち、予備費でありますが、平成年度一般会計における予備費予算額は一千五百億円であり、その使用額は一千四百八十五億円余であります。  次に、平成年度特別会計決算でありますが、これらの決算内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  次に、平成年度における国税収納金整理資金受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は五十五兆九千四百四十八億円余でありまして、この資金からの一般会計等歳入への組み入れ額等は五十五兆九千三百四十四億円余でありますので、差し引き百四億円余が平成年度末の資金残額となります。これは、主として国税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。  次に、平成年度政府関係機関決算内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  以上が、平成年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書概要であります。  何とぞ御審議のほどお願いを申し上げます。(拍手)     —————————————
  4. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。武田節子君。    〔武田節子登壇拍手
  5. 武田節子

    武田節子君 平成会武田節子でございます。  ただいま報告のありました六年度決算につきまして、平成会を代表して、総理並びに関係大臣質問をいたします。  平成年度一般会計決算におきましては、六千億円余の純剰余金が発生しており、平成年度、五年度と続いた決算上の不足、いわゆる歳入欠陥という事態は避けられましたが、この純剰余金は、昨年二月の二次補正において八千億円余の特例公債発行した結果生じたものであり、実質的には六年度においても歳入欠陥状況であったと言わざるを得ません。  税収について見ますと、前年度と比較すると三兆円余の減収となっており、平成年度から四年連続して対前年度マイナスを示しております。  また、公債残高は、六年度末に二百兆円の大台を超え、七年度末には二百二十兆円、八年度末には二百四十兆円を超えると見込まれており、二十一世紀を目前にした我が国財政は、私たちがかつて経験したことのない極めて深刻な状況に陥っております。  そこで、以下、我が国財政の現状と今後の展望について、総理並びに大蔵大臣の御所見を伺っておきたいと思います。  最初に、七年度税収見通しについて伺います。  三次補正において三兆円近くの減額修正を行っておりますが、景気に明るさが見えてきたとはいえ、超低金利による利子所得減少不良債権償却等による金融機関赤字決算の続出などが予想される中で、さらに税収減少が生じることはないのでしょうか。  私たちは、再び歳入欠陥という事態を危惧するものでありますが、今三月期決算法人等から企業収益動向についてのヒアリングを経た現時点での政府見通しはいかがですか。総理大臣大蔵大臣答弁を求めます。  ところで、参議院は、決算委員会での審査を踏まえ、本年二月、平成四、五年度決算について議決を行いましたが、その警告決議の第一項目で、内閣に対して、税収減少公債残高急増等による極めて深刻な財政状況を厳しく認識し、歳出全体について社会経済情勢変化を踏まえた徹底した見直しなど財政改革への真剣な取り組みと、今後の本格的高齢社会に対応し得る行財政確立に向けての一層の努力を求めております。  また、一昨年の十月にも、経済見通しの策定や税収見積もり精度向上について政府のさらなる努力を求める警告決議を行っており、財政問題に対する本院の相次ぐ警告は極めて異例のことであります。政府は、本院のかかる決議を受けて、財政改革への取り組み高齢社会に対応した行財政確立に向けて今後いかなる施策をとるおつもりですか、その具体的内容についてお伺いいたします。  私は、最近の常会における政府財政演説、各年度予算提案理由説明を改めて読んでみました。そこには、「財政改革を引き続き強力に推進する」とか、「公債残高が累増しないような財政体質をつくり上げていくことが基本的な課題である」とか、「既存制度施策について見直しを行うなど経費の徹底した節減合理化に努める」などの言葉は並んでおりますが、各年度予算編成において財政改革推進のためにどのような具体的措置を講じてこられたのか、これら政府財政演説等からは明らかになっておりません。  そこで伺いますが、平成年度から八年度までの各予算編成において財政改革成果として挙げられるものは何か、また、既存制度施策について見直しを行い、歳出削減節減合理化に結びついた主要なものは何か、削減節減ができたおおよその金額を含めて大蔵大臣に具体的な説明を求めます。  平成年度予算編成を前に、当時の武村大蔵大臣は事実上の財政危機宣言を出されましたが、これが去る十日成立いたしました本年度予算編成に、特に歳出面にどのように生かされているのでしょうか。財政危機宣言により、平成年度年度当初から特例公債発行が避けられないということが逆に各種歳出圧力を生み、その要求に屈した面はなかったのでしょうか。  自社さきがけによる政権たらい回しの中で、財政危機緊急事態にもかかわらず、与党の族議員による利益誘導型の予算分捕り劇の復活は言語道断であります。平成年度予算編成細川内閣が取り組んだ公共事業予算分野別シェア見直しも後退する一方ではありませんか。これでは政府財政再建に真剣に取り組んでいるとは思えません。橋本総理、今こそ毅然たる姿勢財政再建展望を明確に示すべきだと思いますが、いかがでしょうか、お伺いいたします。  今や財政危機を超えて財政破綻目前にしながら、政府住専処理に巨額の公費をつぎ込むスキームの決定予算編成を行い、国民の厳しい批判を受けながらも一片の反省もなく、それを強引に推し進めております。  我が国財政に民間の放漫経営のしりぬぐいをするほどの余裕などあろうはずがありません。国債累積額二百四十兆円余、八年度予算公債依存度二八%、隠れ借金累積額四十三兆円、国鉄清算事業団債務額は二十七兆円と、目を覆うばかりであります。しかも、幾多の金融機関が、預金者の大切な預金に対し責任感倫理感も全く感じていない無軌道な融資の実態であります。そこには企業経営者としての自負も誇りも何もないではありませんか。  政府住専処理国民の税金は一切使うべきではありません。そのために努力することこそが財政再建への第一歩だと思いますが、橋本総理大蔵大臣の御見解を求めます。  さらに、細川羽田内閣村山橋本内閣との大きな違いは、行政改革規制緩和に取り組む姿勢にもあらわれております。自社さきがけ政権村山橋本内閣において行政改革と呼べるものは何か、お示しいただきたい。橋本総理にお伺いいたします。  来年四月から消費税が五%に引き上げられます。その前に、本年九月末とされる消費税率見直し条項においては、総合勘案する項目として、「社会保障等に要する費用財源確保」の次に「行財政改革推進状況」が挙げられております。このことは、仮に本格的高齢社会に備えての消費税のアップを国民にお願いするとしても、目に見える形で行財政改革成果を上げておく必要性をうたったものであり、政府責任は重大であります。橋本総理行政改革への取り組みについてお伺いいたします。次に、会計検査院平成年度決算検査報告指摘事例の中から、政府反省を求めて幾つか見解をお伺いいたします。  まず、公務員による不正行為の問題であります。  検査報告を見ますと、法務省二件、文部省二件、労働省一件、計五件、領得金額にして七千六百万円と、近年になく公務員不正行為が目立っており、また、郵便局職員による現金領得も四十三件、金額で七億六千万円と、件数、金額ともに急増しております。特に、法務省関係の二件は法の厳正な執行に当たるべき検察庁を舞台にして起こっており、また、文部省関係の二件は教育の場である国立大学舞台にしております。  昨年は、いわゆる盲官接待大蔵省幹部職員をめぐる不祥事に対し国民の厳しい批判を受けたところでありますが、平成年度検査報告を読んでみますと、国、地方を問わず、改めて公務員に対する厳しい綱紀粛正が求められていると思います。橋本総理大臣の認識と今後の対応はいかがですか、答弁を求めます。  また、昨年一月の阪神淡路大震災を契機に公共土木施設安全性に対する国民の関心が高まっており、会計検査院首都圏高速道路東海道新幹線震災対策補強工事の現況について検査を行い、その状況を六年度決算検査報告に記載したことは大いに評価するものであります。  ところで、同じ検査報告を読んでみますと、設計不適切により構造物が不安定になっている事例が八件指摘されており、また、施工不良、いわゆる手抜き工事事例も例年になく多く指摘されております。  政府は、地方公共団体と一体となって公共工事設計ミスや悪質な人為的施工不良の防止策に万全を期すべきと思いますが、いかがですか。また、公共土木施設安全性確保については思い切った予算措置対策が必要と思われますが、中尾建設大臣見解を求めます。  最後に、多目的ダム等建設事業について伺います。  六年度検査報告には、建設省水資源開発公団が実施している多目的ダム等建設事業についての検査結果が記載されております。それによりますと、事業着手後十九年から二十九年経過した今日でも基本計画作成本体工事着工見通しが全く立っていなかったり、本体工事着工までに今後もさらに長期間を必要としたり、事業計画周辺事業進展状況と乖離している事例指摘されております。  政府においては、事業が一向に進展せず、その効果の発現が大幅に遅延している多目的ダム等について、今後どのように対処するつもりか、その基本方針を伺いたいと思います。長い年月を要しても基本計画作成すらできない事業については、その後の社会経済情勢変化や環境問題に配慮して思い切って中止するという英断も必要ではないでしょうか。中尾建設大臣見解をお伺いいたします。  以上で平成年度決算に対する私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  6. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 武田議員お答えを申し上げます。  まず、七年度税収見通しについてのお尋ねでありますが、現在判明しております八年三月末の税収実績から見ましても、三次補正予算見積もりにおいて想定いたしました税収動向の基調に特段の変化はないと見ております。  次に、財政改革への取り組みにつきましては、議員からも御指摘がありましたように、もはや危機的とも言える財政事情のもとで、今後、財政改革取り組み、できるだけ速やかに健全な財政体質をつくり上げていくことが緊急課題であり、国会財政制度審議会などでの御議論を踏まえながら、財政改革に強力に取り組んでまいりたいと考えております。  高齢社会に対応した行財政確立についてのお尋ねでありますが、人口構造変化という一つをとってみましても日本は変わらなくてはならないということを申し上げ続けておりまして、そのためにも行財政改革は国政の最重要課題であります。このため、政府は、規制緩和地方分権など行政改革に関する各般措置を着実に実施しているところであり、今後もこうした諸課題相互の有機的な連携に配慮しながら積極的に取り組み、対応力に富んだ行財政確立すべく努力をしてまいります。  財政再建展望については、もはや危機的とも言える財政事情のもとで、先般国会に提出されました「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」にもありますとおり、今後、歳出全般にわたって制度根本までさかのぼっての洗い直しを行うことが重要な課題であると考えております。  なお、公共事業配分に当たりましては、公共投資基本計画などの考え方社会経済情勢変化国民のニーズなども踏まえながら重点化などに努めておりまして、この結果として、そのシェアも相当程度変動しているところであります。  次に、住専処理に当たっての財政支出につきましては、今般、住専処理にかかる六千八百五十億円の財政支出を含む平成年度予算国会で可決成立させていただいたところでありまして、今後、住専法案につきましても、御審議の上、一刻も早く成立をさせていただき、可能な限り速やかに住専処理機構の業務を開始したいと考えております。そして、住専整理債権の回収などを現実に進めていけば、それが景気によい影響を与え、必ずや国民の皆様にも御理解をいただけるものと考えております。  また、村山内閣橋本内閣における具体的な行政改革内容についてのお尋ねがございました。  例えば、規制緩和につきましては、先般の改定計画におきまして、住宅建設コスト低減情報通信分野における新規事業創出のための措置決定するなど、着実に成果を上げてきていると確信しております。  行政改革全般への取り組み姿勢についてのお尋ねがございました。  もう何遍も申し上げておりますとおり、本格的な高齢社会の到来に備えるとともに、我が国各般構造改革を進めるためにも行政改革は極めて重要なことであり、このため、規制緩和地方分権特殊法人など各種課題に積極的に取り組んでいるところであり、今後ともそれぞれの課題相互有機的連携に配慮しながら積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  公務員綱紀粛正についてでありますが、公務員国民全体の奉仕者であり、その職務を行うに当たり、いやしくも国民の疑惑や不信を招くような行為があってはなりません。御指摘のありましたような事実が会計検査院報告において指摘をされたことは極めて遺憾であり、政府は、今日までも官庁の綱紀の保持を重要課題として取り組んでき、従来から閣議決定などにより機会あるごとに各省庁や地方公共団体に対し注意を喚起してまいりましたが、今後とも綱紀粛正を徹底してまいりたいと考えております。  残余の質問については、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)    〔国務大臣久保亘登壇拍手
  7. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 七年度税収見通しにつきましては、ただいま総理から御答弁を申し上げたとおりでございますが、本年三月末税収実績は前年度とほぼ同率の七七・六%でございます。今後、さきに終了した所得税確定申告の結果や、ウエートの大きい三月期決算法人に係る法人税確定申告動向等について十分注視してまいりたいと考えております。  次に、参議院警告決議を受けての財政改革への取り組みについてでございますが、平成年度末には公債残高が約二百四十一兆円に増加する見込みであるなど容易ならざる財政事情のもとで、喫緊の課題となっております。  したがって、先般国会に提出いたしました「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」にもございますとおり、今後、歳出全般について、制度根本にまでさかのぼって洗い直しを行うことが重要な課題であると考えており、総理からも申し上げましたとおり、財政制度審議会国会等における御議論を含め幅広い議論を踏まえつつ、財政改革に強力に取り組んでまいりたいと考えております。  次に、財政改革成果についてのお尋ねがございましたが、これまでも各年度予算編成において、厳しい財政事情のもとで、社会経済情勢変化に対応した財源の重点的、効率的配分を行う一方、制度施策見直し歳出削減合理化を図ってきたところであります。  例えば、平成年度から八年度までの予算編成におきましては、補助金等整理合理化に努めるとともに、社会保障文教予算につきましても制度効率化適正化に努め、歳出削減を図ってきたところでございます。  こうした制度施策見直し歳出削減合理化の結果、六年度から八年度の各年度予算におきましては、一般歳出伸びがそれぞれ対前年度二・三%、三・一%、二・四%増と低い伸びとなっているところであります。  昨年十一月の武村大臣発言については、八年度財政事情は容易ならざる事態に立ち至り、特例公債発行を回避することは困難であること、そのような状況であればこそ、歳出削減に一層強力に取り組む必要があることを申し上げたのであります。  平成年度予算においては、このような容易ならざる財政事情のもと、景気国民生活の質の向上に十分配慮しつつも、歳出削減などに一層強力に取り組んだところであります。  具体的には、まず一般歳出については従来にも増して洗い直しを行っており、特に経常部門経費は厳しく抑制し、一・五%と、六十三年度以降では最も低い伸びとなったところであります。また、その他の歳出につきましても精査を行い抑制に努めるとともに、歳入面においても税外収入確保に努めているところでございます。  次に、八年度予算への歳出圧力という点につきましては、特例公債発行が避けられないという財政事情のもとであればこそ、景気国民生活の質の向上に十分配慮しつつも、歳出削減などに一層強力に取り組まなければならないと考えてきたところであります。  具体的には、一般歳出は対前年度一兆円を下回る増、二・四%増でありますが、そういう結果となっており、最近では六年度に次いで低い伸び率であることを申し上げました。  しかしながら、このように歳出抑制を図っても、なお税収が七年度当初予算で見込んだ水準を二兆円以上も下回る見込みとなる一方、特例的歳出削減措置が限界に突き当たったことなどにより、特例公債を含め二十一兆円にも上る公債発行に依存せざるを得なかったところであります。  いずれにせよ、この八年度予算を地ならしとして、財政改革を強力に進めてまいりたいと考えております。  住専問題につきましては、ただいま総理から御答弁を申し上げたとおりでございます。(拍手)    〔国務大臣中尾栄一登壇拍手
  8. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 武田節子議員お答えをさせていただきたいと思います。  品質確保についての御質問でありますが、道路河川等公共施設国民生活の基盤をなすものでありまして、その供用性安全性等確保の観点から高い品質が要求されており、設計施工段階において所要の品質確保することは極めて重要であると認識しているところでございます。−  このため、設計段階においては、委託先であるコンサルタント等において定められました照査技術者による入念な点検を義務づけておりまして、さらに発注者においても厳正な検査というものを重ねておる次第でございます。また、工事施工段階におきましても、必要な監督・検査を行っているところでございます。  地方公共団体におきましても、同様に、自治省と連携を図り、適正かつ確実な設計施工が行われるよう、支援マニュアル整備等に努めているところでございます。  今後とも、良質な社会資本整備に向けまして、公共工事における適切な品質確保に努めてまいる所存でございます。  また、公共土木施設安全性確保についてのお尋ねでございますが、公共土木施設安全性確保は、豊かで安心して暮らすことのできる国土を構築していく上で最も基本的かつ重要な課題であると認識しておる次第でございます。  阪神淡路大震災の例をとって具体的に申し上げますと、施設耐震設計基準見直し防災点検及び補強を重点的に進めておりまして、平成年度予算におきましても、各施設耐震補強に係る費用を大幅に増額している次第でございます。  今後とも、地震対策に限らず、公共土木施設安全性確保を図るために必要な予算措置技術基準充実等、万全を期してまいる所存でございます。  また、多目的ダム建設事業についてのお尋ねもございましたが、一般的にダム事業につきましては、土地や家屋の大規模な水没を生じること、上流と下流で地域の利害が異なることから、地域実態や意向を尊重しながら広く合意形成を図っていく必要が特に大きい性格の事業であろうと思います。そのため、合意形成の過程で多くの時間を要し、結果的に事業完了までに長期間を要することはやむを得ない面があると考えておる次第でございます。  建設省としましては、これまでもダム事業について事業必要性に十分に御理解を賜りまして、地域との十分なる合意形成を円滑に図れるよう努力してきているところでございます。例えば、建設省直轄及び水資源開発公団が実施するダム事業につきましては、ダム等事業審議委員会の設置による新たな評価システムを昨年から試行いたしまして、ダム事業の目的、内容等につきまして審議いただいているところでございます。  建設省としましては、審議委員会の意見を十分に尊重し、事業に反映させてまいる所存であることを申し添えたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  9. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) 前川忠夫君。    〔前川忠夫登壇拍手
  10. 前川忠夫

    前川忠夫君 私は、自由民主党、新党さきがけ、社会民主党・護憲連合を代表して、ただいま大蔵大臣から説明のありました平成年度決算及び当面する諸問題について、総理並びに大蔵大臣質問をいたします。  我が国経済は、総じて低迷の続く厳しい状況の中、平成六年二月の総合経済対策や、景気に配慮した平成年度予算の着実な実施等、適切かつ機動的な経済運営に努めた結果、これらの努力の効果もあり、企業設備等の調整は続いていたものの、緩やかながら回復基調をたどってきました。  このような状況の中、平成年度決算においては六千七十六億円の剰余金が生じておりますが、二次にわたる補正予算が組まれ、税収を二兆八千億円減額し、一方でこれに見合う規模の特例公債を含む公債が発行されました。この結果、平成年度決算においては、税収は当初見積もりに対して約二兆六千三百億円の大幅な減収となり、また、四年連続して減少するなど、政府状況判断は結果として甘かったと言わざるを得ません。経済情勢を的確に見きわめた上で精度の高い税収見積もりが必要であると考えますが、大蔵大臣見解をお伺いいたしたいと思います。  次に、財政の状況財政改革に関してお伺いいたします。  我が国財政の現状を見ますと、公債発行残高は八年度末で約二百四十兆円にも達する見込みであり、平成年度予算では公債の償還や利払いに要する国債費が一般会計歳出の二割以上を占め、政策的経費を圧迫するなど、財政事情は悪化するばかりであります。  一方、我が国は、今後、世界の主要国においても例を見ないほどの速さで人口の高齢化が進み、これに伴う社会保障給付と国民負担は増加する見込みであります。現在の財政の置かれた厳しい状況が今後も続くようであれば、高齢化の進展など社会経済情勢変化に財政が弾力的に対応していくことは困難となり、我が国経済社会の発展にとって重大な支障となってしまいます。景気国民生活の質の向上に十分配慮しながらも、今後の財政運営に欠かすことのできない中長期的な財政健全化のための目標とその実現に向けての方策について早期に結論を得て、財政体質の改善に向けた努力が必要とされています。  財政構造の改革に当たっては、橋本政権樹立に当たっての与党合意にもありますように、公共投資の配分見直しやその効率化の検討も積極的に行われなければなりません。また、財政投融資制度についても、制度全体の情報開示の推進とともに、制度自体のあり方についても検討が求められているところであります。二十一世紀に向けて財政の構造改革をいかに行っていくのか、総理のお考えと御決意をお聞かせ願いたいと存じます。  次に、平成年度決算検査報告予算への反映という問題について質問いたします。  既に国会に提出されている平成年度決算検査報告を眺めてみますと、法令や予算に違反したり、著しく不経済、非効率的であると指摘された不当事項の金額が約二百億円に達し、前年度の約二倍になっております。また、その内容についても、職員の不正などは言うまでもなく、保険料の徴収不足であるとか、保険給付や医療費の支払いが不当であるとかなどが依然として見受けられるなど、なお多くの指摘を受けています。  予算国民の貴重な血税であります。予算の執行に当たっては厳正かつ効率的にこれを行い、これらの指摘を根絶するための努力が従来にも増して必要ではないでしょうか。六年度決算検査報告を受けての対応はいかがか、大蔵大臣にお聞かせ願いたいと存じます。  最後に、決算の早期提出の問題についてお尋ねいたします。  予算歳入歳出の計画であるのに対し、決算予算執行の実績を示すものであります。予算執行の実績を正しく把握し、これを予算と比較し、決算結果に基づく事務事業の実績内容、効果を分析評価することなどによって、次の予算編成予算の執行に改善を加えることができるのであります。  この意味において、決算の果たす役割はまことに重要なものであると考えます。財政運営や予算執行の問題点を具体的に指摘し、自後の施策遂行、行政執行の面で誤りなきを期す、それが決算審査の使命であります。決算審査は、国民の税金の使途を点検する意味からも、予算審議にまさるとも劣らない使命が課せられているのではないでしょうか。  参議院においても、決算審査を早期に行い、直近の予算にその結果を反映させるのが最も効率的であると考え、参議院改革をめぐる議論の中で決算審査の充実と改善について議論が進められているところであります。審査の促進について私どもも精力的に取り組んでまいりますが、政府においても、審査促進のための協力、決算国会への早期提出について特段の協力をお願いしたいと存じます。  本件に関しまして大蔵大臣の御所見を伺い、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  11. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 前川議員お答えを申し上げます。  財政の構造改革につきましては、もはや危機的とも言える財政事情のもとで、今後、公共投資の配分見直しも含めながら財政改革取り組み、できるだけ速やかに健全な財政体質をつくり上げていくことが緊急の課題であります。国会での御議論や、財政制度審議会、経済審議会、社会保障制度審議会、税制調査会の会長の方々などにもお集まりをいただきまして、それぞれの立場から財政構造につき意見交換を行っていただくなど広範な取り組みのもとに、財政改革に強力に取り組んでいきたいと考えております。  また、財政投融資につきましては、今後とも社会経済情勢などの変化に弾力的に対応し、対象事業等につきましても不断の見直しを行いながら、効果的かつ適正な運用に努めてまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)    〔国務大臣久保亘登壇拍手
  12. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 当初予算税収見積もりにつきましては、予算編成時点までの課税実績、政府経済見通しの諸指標等をもとにして最大限の努力を傾けて見積もっているところでありますが、見積もり時点では予測しがたかったその後の経済状況等の変化、例えば平成年度におきましては、当初四・〇%と見込んでおりました名目経済成長が〇・四%の伸びにとどまったことなどが税収に反映し、結果的に当初予算額に対し増減が生じることとなるわけでございまして、これらの点につきまして、私どもといたしましては、税収見積もり精度向上につきましては、主要な大法人に対して行っている聞き取り調査を充実させるなどの工夫をしているところでありますけれども、今後とも、御指摘がございましたように、さまざまな視点から創意工夫を加えていくほか、有効な資料の収集に努めたいと考えております。  次に、会計検査院指摘についての予算執行にかかわっての御質問でございましたが、厳正かつ効率的な予算執行については各省各庁の責任において行われているところでありますけれども、毎年会計検査院から多くの不当事項等の指摘を受けていることはまことに遺憾に存じます。  財政当局といたしましては、従来からあらゆる機会をとらえて各省各庁に対しその厳正かつ効率的な執行について指導を行うとともに、会計検査院指摘事項のうち予算編成等に関連する事項については、関係各省庁の協力を得つつ、できる限り予算編成等に反映するよう努めてきたところであります。  今後とも会計検査院報告の趣旨を十分認識し、厳正かつ効率的な予算執行に向けて最大限の努力をしてまいりたいと考えております。  決算国会への早期提出につきましては、予算編成に反映させる見地からのみならず、決算の効果的な審議をお願いするためにも望ましいことと考えており、政府といたしましては、従来からできるだけ早期に決算国会に提出できるよう努力をしてまいりました。  このため、提出前に必要な手続である内閣から会計検査院への送付は、財政法第三十九条の規定では翌年度の十一月三十日までとされておりますが、いろいろの努力をいたしてまいりました結果、現在では十月初旬に送付をいたしているところでございます。  今後とも決算作成事務の促進を図るよう、政府として最大の努力を図ってまいりたいと考えております。(拍手
  13. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。      —————・—————
  14. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) 日程第二 国務大臣報告に関する件(規制緩和推進計画改定について)  中西国務大臣から発言を求められております。発言を許します。中西国務大臣。    〔国務大臣中西績介君登壇拍手
  15. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) 規制緩和推進計画改定について御報告申し上げます。  規制緩和の推進は、我が国経済社会の抜本的な構造改革を図り、国際的に開かれ、自己責任原則と市場原理に立つ自由な経済社会としていくために不可欠の政策課題であり、内閣の最重要課題の一つであります。  このような考え方に立ちながら、政府は一体となって規制緩和の推進に取り組んでいるところでありますが、今般、「規制緩和推進計画」を平成年度から九年度までの三年計画として改定したところであります。  改定に当たっては、各省庁において、内外の御意見、御要望、行政改革委員会の意見を踏まえながら積極的に既定計画を見直すことにより、五百六十九事項の新たな規制緩和方策を盛り込んでおります。また、既定計画に計上された方策につきましては、その約三分の二については措置済みでありますが、残余の事項につきましても実施時期の前倒しや実施内容の具体化等を図っております。  具体的な緩和措置としては、国民生活の質の向上、内需の拡大や輸入の促進、国民負担の軽減などを図る観点から、「住宅・土地等関係」を初めとして十一分野にわたる措置を盛り込んでおります。  今後は、本改定計画を着実に実施するとともに、内外の御意見、御要望、行政改革委員会の監視結果等を踏まえ、平成年度末までに計画を改定することとしており、引き続き積極的に規制緩和の推進に取り組んでまいる所存であります。  議員各位の格段の御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げる次第であります。(拍手)     —————————————
  16. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。続訓弘君。    〔続訓弘君登壇拍手
  17. 続訓弘

    ○続訓弘君 私は、平成会を代表して、ただいま御報告のございました規制緩和推進計画改定に関連して、総理並びに関係大臣質問いたします。  規制緩和は、自由な経済社会をつくり、国際的にも開かれた社会となるために必要な国家的課題であると同時に、国民生活に密接不可分なものであります。そのために、規制緩和推進計画をさらに一層充実した内容改定すべきことは当然であります。  そこで、まず橋本総理規制緩和に対する基本姿勢について伺います。  橋本総理が書かれました「政権奪回論」によれば、連立という体制は無難な最大公約数でしか物事を処理できないようでは日本の将来は託せないと主張されておられますが、今回の改定はまさに連立政権の党利党略に左右された結論となっております。  NTT分割や持ち株会社の解禁といった重要な問題ほど与党内での利害が対立して調整が進まず、その結果、中身が極めて薄いことが国民批判を招いております。これは総理のいわゆる連立政権の限界を示すものと言わざるを得ません。国民は、橋本総理のリーダーシップに強い期待を寄せておりましたが、果たして総理はどの程度積極的に指導力を発揮されたのでしょうか。今回の改定では、日本の将来像が国民には全く見えてこないのであります。この点に対する橋本総理の明確な答弁をお願い申し上げます。  現在の我が国は、政治、経済、社会あらゆる面において構造改革が必要とされる大転換期にあることは国民周知の事実であります。ところが、今回の緩和策は、項目数こそ多いものの、制度の根幹に踏み込まず、各省庁にとって痛みの少ない、数合わせに終始しているとの印象を免れないものであります。総理には、この危機的状況に対する認識が希薄であると断ぜざるを得ないのであります。「変革と創造」を標擁し、経済の構造改革を最優先課題とされる橋本総理にとって、この日本の置かれた現状をどのように認識しておられるのか、御所見を承りたいと存じます。  次に、今回の規制緩和推進計画改定における行政改革委員会の意見の尊重について伺います。  行政改革委員会は、昨年十二月十四日、「規制緩和の推進に関する意見」を村山総理報告いたしました。委員十六人のうち官僚OBが一人だけという行政改革委員会の規制緩和小委員会によって練り上げられた報告は、従来の官僚主導の作業によるものとは一味違ったものと高い評価を得ました。  行政改革委員会の意見については、行政改革委員会設置法においてその尊重義務が明示されております。先般の施政方針演説においても、行政改革委員会の意見を最大限尊重することを総理みずからがはっきりと表明されております。  しかるに、NTT分割や持ち株会社解禁等の重要事項について先送りした今回の規制緩和推進計画改定は、行政改革委員会の意見を最大限尊重したものと果たして言えるのでしょうか。総理の明確な答弁を求めます。  さらに、行政改革委員会は、規制緩和について勧告権というこれまでにない強い権限を付与されております。今回の改定作業の大詰めの段階で、各省庁の抵抗に危機感を抱いた行政改革委員会が、計画の決定直後の委員辞任や勧告権の行使を検討したという報道がございました。  そこで、総理に伺いたいのは、実際に改定計画が不十分であるという勧告が出された場合、その勧告はどのような効果を有するのでしょうか。私は、当然勧告に従うべきものと考えますが、重ねて総理の明確な御答弁をいただきます。  なお、今回の改定では、NTTの経営形態の見直し、持ち株会社の解禁、著作物の再販売価格維持制度見直しなど、改定内容の目玉とされてきた幾つかの重要課題が先送りされておりますが、今後の取り組みと方向づけについて、総理の御見解を伺います。    〔議長退席、副議長着席〕  さて、規制緩和は、従来から臨調や行革審の提言を受けて逐次実施されてきたところでありますが、平成五年八月に発足した細川内閣規制緩和を政治が真正面から取り上げるべき課題として大きく掲げました。続く羽田内閣も、内外価格差の縮小をキャッチフレーズとして、透明性の向上と国際的調和を図りつつ、自己責任と市場原理を根拠とする民主的な経済社会の実現を高らかにうたいとげてから、一躍脚光を浴び、内外から大きな期待と熱い声援が送られたのであります。  しかし、その後、現連立政権となってからは、平成六年の行革大綱のような型どおりの公的規制の見直しを示すにとどまり、国内はもとより海外からも、現政権ではもはや日本に規制緩和を期待するのは無理と、その当事者能力を疑問視する意見すら出ているのであります。こうした指摘に対して総理は何と答えられるのか、伺います。  規制緩和推進五カ年計画が三カ年に前倒して実施されたにもかかわらず、抜本的な構造改善につながるような目に見える形での規制緩和はほとんど進んでおりません。一体その最大の要因は何だと思いますか。総務庁長官に御答弁を願います。  規制緩和は公的規制の緩和・撤廃だけで完結するものではございません。公的規制と並行して、民間における各種の競争制限的な行為の撤廃もまた重要であります。談合、カルテル、取引慣行といったいわゆる民民規制は業界の努力ですぐにでも撤廃できる事柄であるのに、既得権益にしがみついて慣行という形で残っており、国民に大きな負担を強いる結果となっております。これら民間における規制の改善は、基本的には業界団体等の意識改革の問題かもしれませんが、行政の側においてもこれまでの保護育成中心の行政から政策中心の行政に転換する必要があると思います。そこで、民間における規制緩和にどう対処されるのか、総理の御所見を伺います。  次に、規制緩和の情報開示と経済効果について伺います。  規制緩和は戦後改革の最大の課題とされ、内外から強くその早期実現が要請されてきたにもかかわらず、それがなぜ必要であるのか、いまだに国民の皆様には十分に理解されているとは言えません。それは政府国民の皆様に規制緩和の経済効果について理論的、定量的な分析結果を明確に示していないため、国民の多くは一体どの制度を改善すればどのような新しい事業の拡大が期待できるのか、また、国民生活がどう豊かになるのか、ほとんどわからないままに来ているのであります。  規制緩和は、規制の数を減らすという視点より、経済的な効果をどう高めるかということに力点を置くべきであります。そして、規制緩和に関するすべての情報をわかりやすく丹念に提供して、規制緩和の効果を理解してもらう努力が極めて重要であると考えますが、これに関する総務庁長官の御所見を伺います。  あわせて、規制緩和の経済効果の詳細について、経済企画庁長官にお尋ねいたします。  関連して、内外価格差の是正について伺います。  内外価格差の問題は、これまでも豊かさの実感を妨げている大きな要因として繰り返し指摘されてきた問題でありますが、私は、内外価格差がビジネスインフラのコストを引き上げ、日本産業の国際競争力を損なう要因ともなっていることをここで指摘しておきたいと思います。  日本のエネルギー、オフィス使用料、電気通信料金などのビジネスインフラのコストの高さが国内産業の海外移転を招く結果となっています。そして、発展するアジアから日本が取り残されていくことにつながるということを政府は認識し、この内外価格差の是正及び規制緩和の推進に当たらなければならないと思います。これについての総理の御所見を伺います。  次に、去る四月一日、米国通商代表部発表の「一九九六年外国貿易障壁報告」について、国内の規制緩和措置との関連で伺います。  発表によりますと、障壁数の最多国である日本は、八分野五十項目にわたり不公正な貿易慣行を指摘されております。この中には、新規のものとして著作隣接権、通信サービス、放送衛星サービス等が挙げられており、このような例示は将来をにらんだ戦略的なものであるとか、大統領選を意識した成果強調型とも言われておりますが、米国の通商戦略の重心がサービス分野に移ってきていることを示しております。  このようないわゆる物以外のサービスについての規制緩和は、今回の改定で対外的に十分対応できるものなのでしょうか。特に報告は、サービス障壁として、建設・建築・エンジニアリング、金融・保険サービス等も例示しておりますが、この分野についての対応を通産大臣にお伺いいたします。  次に、日米間における規制緩和の問題について伺います。  今回の規制緩和推進計画改定について、米国側は、橋本総理が二月に訪米された際、規制緩和を強くアピールされたにもかかわらず、重要問題はすべて先送りされたと、よい反応を示していないと報道されております。  さきに行われた日米首脳会談では、日米の安全保障問題を中心とした協力関係が主要なテーマとなり、経済問題、通商問題はさほど大きなテーマとはなりませんでした。  しかし、クリントン大統領は、首脳会談後の記者会見や国会演説でも、我が国の市場開放、自由競争の促進の必要性指摘し、政治家の強力なリーダーシップの必要性を随所で強調されました。規制緩和計画については米国からも総理の強いリーダーシップが求められることになると思いますが、米側への対応について、総理の御所見を伺います。  次に、地方公共団体における規制緩和について伺います。  現在、地方自治体においては、宅地開発等指導要綱、公害防止条例等によって国の定めた基準を上乗せ、横出しする規制が行われております。今回の改定計画の中でも、改定前の計画と同様、地方自治体による規制については、「国・地方を通ずる規制緩和の推進の観点から、この計画の趣旨を踏まえ、規制の見直しが進められることを期待する」としております。宅地開発等指導要綱については、昨年、自治省、建設省からその行き過ぎの是正を求める通達が出されたと伺っております。  もちろん、規制緩和の実効性をより高めるためには、地方における規制の緩和は重要であると思います。しかし、一方では、地方自治体がその地域の実情に応じて自主的、主体的な判断のもとに個性的で多様性に富んだ地域社会を実現していくことは地方分権の観点からも非常に大事なことであり、地方がそれぞれの地域特性に合った形での規制をしていく中では、国の基準を上回るものが出てくることもあるわけであります。こういった場合、国は地方自治体に対してその規制の緩和を求めるのか、それとも地方の判断を尊重するのか、国、地方を通ずる規制緩和推進の要請と、地域の自主性、自立性を高める地方分権推進の要請との整合性をどう保っていくのか、総理の御所見を伺います。  最後に、去る三月二十九日、地方分権推進委員会から、機関委任事務の廃止を含む中間報告橋本総理に提出されました。  これに関して都立大学の磯部力教授は、「「分権型社会の創造」と題する今回の中間報告は、地方分権推進法によって直接設置された地方分権推進委員会が、同法の基本趣旨を具体化しつつ、その権威と責任をもって来るべき分権改革の実現への具体的な道筋を示したものであり、これからの日本を方向付ける重要な処方せんとして、歴史的な意義を持つということができる」と毎日新聞にコメントしておられました。ところが、同じく毎日新聞によれば、「分権論議に不快感を募らせる中央省庁とその意向を受けた「族議員」が、露骨な抵抗を始めた。三月中旬、自民党の関係両院議員が自治省と総務庁の幹部を呼び、「こんなんじゃ法案は絶対につぶれる」などと声高な反対論をぶった」と報じておりました。  私は、あえてこのような報道を信じたくありません。なぜなら、国会では日本国憲法が保障する地方自治の実現を目指して、平成五年六月に地方分権の推進に関する決議が、また、昨年五月には地方分権推進法をともに全会一致で議決し、地方自治体でも民間団体においても地方分権の実現に真剣に取り組もうとしているさなかであるからであります。  橋本総理は、昭和五十年代、自民党行財政調査会長として地方分権に情熱を傾けておられました。私は、総理が今なおいささかも変わらない情熱を持ち続けておられるものと信じ、総理地方分権に対する基本姿勢を伺って、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  18. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 続議員お答えを申し上げます。  まず、規制緩和にどれだけの力を発揮したかという御指摘でありました。  評価は皆様にお任せすることでありますが、先般の計画改定に当たりましても、私自身、例えば住宅建設コスト低減のための緊急重点計画を各省を指揮し策定させましたが、これは複数の省庁に共同して作業をさせるなど効果が上がるように努めた一つの例であり、今後ともに規制緩和の推進は内閣の再重要課題の一つであり、従来にも増して真剣に取り組んでいきたいと考えております。  日本の置かれた現状の認識につきましては、現在、我々は大変大きな転換点にあると思っております。内外におきましては、グローバリゼーションの進展、あるいは高次な成熟経済社会への転換、そして少子・高齢社会への移行、情報通信の高度化といった大きな潮流変化が生じている中であり、これらに適切に対応し、二十一世紀に向けた我が国の発展を確かなものにしていくことが重要な課題だと認識をいたしております。  昨年十二月、政府構造改革のための経済社会計画を閣議決定いたしましたが、これに従って大胆な構造改革を進めてまいります。  今回の改定計画行政改革委員会の意見の関係につきましては、今回の改定に当たり、行政改革委員会の意見を最大限尊重し改定作業を進めてまいりました。そして、行政改革委員会からも、委員会の意見が大幅に盛り込まれたことを率直に評価するとともに、関係者の御努力に敬意を表したいというコメントをいただいているところであります。もとより、これで十分というものではありません。今後ともに引き続き規制緩和の推進に積極的に取り組んでまいります。  また、行政改革委員会からの勧告のお話がございました。行政改革委員会の勧告や意見というものを最大限に尊重するというのは、これは当然のことであります。政府としては、今後とも行革委からの監視や督励をいただきながら、最終的には政府責任において規制緩和を初め各般の改革に積極的に取り組んでまいります。  NTTのあり方につきましては、平成年度内には残念ながら結論が得られなかったところでありますが、今回の閣議決定にもありますように、現在の情報通信の国際市場をめぐる情勢、国内における競争状態を取り巻く環境というものに留意すれば、早急に結論を出さなければなりません。  今後、閣議決定に基づき、電気通信審議会の答申の趣旨に沿って、関係者の十分な意見も伺いながら、次期通常国会に向け結論を得ることができますよう引き続き検討を進めてまいります。  持ち株会社の解禁問題につきましては、与党三党で独占禁止法改正問題プロジェクトチームが設置され、検討が行われているところであります。政府としても、このプロジェクトチームの検討結果も踏まえ、所要の法改正を行っていくこととしたいと考えております。  次に、著作物の再販売価格維持制度見直しにつきましては、今回の閣議決定において、再販適用除外が認められている著作物につき、平成年度末までにその範囲の限定、明確化を図ることとしております。また、昨年十二月、行政改革委員会におきましても、この制度見直しは引き続きの検討課題とされております。  これらを踏まえ、現在、公正取引委員会におきまして関係業界や消費者団体などから意見を伺っているところであり、引き続き国民各層の多様な御意見の把握に努め、さらに議論を深めてまいりたいと考えております。  現政権には規制緩和を期待するのは無理という御指摘でありますが、私どもはそうは考えておりません。今後の規制緩和推進計画改定に当たりましても、行政改革委員会の意見を最大限に尊重し、内外の意見、要望を踏まえて新たな規制緩和方策を積極的に盛り込んだところであり、全般的に成果は進んでいると考えております。  また、民民規制についてお話がございました。  規制緩和によって市場原理に基づく自由な事業活動が行われる分野が広がり、民間における公正かつ自由な競争を促進すること、これが一層重要になっていくと思います。このため、民間における入札談合、価格カルテルなどの競争制限的な行為に対しては、公正取引委員会事務局の強化拡充を図り、独占禁止法の厳正的確な運用により積極的に対処するなど、規制緩和とあわせて競争政策の積極的展開を推進することが大切であります。  内外価格差の存在、経済の高コスト構造化、これは国民生活の充実を妨げるとともに、産業の空洞化をもたらす要因として私どもとしては非常に強い関心を持っている事項であります。こうした事態を回避するためにも、政府としては、今後ともに内外価格差の実態調査に努めるとともに、新経済計画の中に織り込みました高コスト構造是正、活性化のための行動計画及び規制緩和推進計画の推進に全力を挙げてまいる決意であります。  規制緩和に関し、アメリカ側への対処についてのお尋ねがございました。  米国政府とは包括経済協議のもとにおきまして二度にわたる作業部会を行い、また、今回の改正の内容につきましては、外交ルートを通じましてアメリカ側に詳細な説明を行ってまいりました。アメリカ側からは、当時のカンター通商代表の声明の形で一定の評価がなされるとともに、今後のさらなる努力を期待する旨の反応が示されたところであり、いずれにいたしましても、アメリカ政府の依頼があるなしにかかわらず、日本としては引き続き規制緩和を積極的に進めていかなければなりません。  次に、規制緩和地方分権の整合性の確保につきましては、地方公共団体の自主性、自立性を高めながらも、国における規制緩和の実効性を確保するためには規制緩和地方分権が有機的な連携のもとに推進されるべきだと考えております。  このため、先般、関係審議会の会長などに対しまして、規制緩和地方分権の関係を初め各般課題について有機的な連携確保しながら進めていただくようお願いを申し上げたところでありまして、私としても相互の整合性に配慮しながら積極的に取り組んでまいる所存であります。  また、最後に基本姿勢を問われました。  地方分権の推進は、地方がその実情に沿った個性あふれる行政を積極的に展開できるように地方公共団体の自主性、自立性を高めていくことが必要でありますし、本来、住民に身近な行政ほど住民に身近な自治体にお願いを申し上げるのが地方分権を進めていく基本であると考えております。私どもが国会に当選させていただきます前後、第一次の臨時行政調査会がございました。この第一次臨時行政調査会の関係者から後にお話を伺いましたとき、国と地方の関係にもう一歩入り切れなかったことに心が残るというお話でありましたが、その当時から地方分権の推進というものは重要な国の課題でありまして、私といたしましても、国民の御理解をいただきながら、実りある成果を上げることができるよう取り組んでまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)    〔国務大臣中西績介君登壇拍手
  19. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) 私に対する質問、三点あったと思います。  規制緩和を妨げる要因につきましては、平成七年三月三十一日に閣議決定した規制緩和推進計画を三月末に改定するなど、規制緩和の計画的な推進を図り、その成果は着実に上がっているところであります。もとより、これで十分ということではなく、引き続き積極的に取り組む所存であります。  規制緩和を進めるに当たって最も困難な点は、いずれの制度についても、また、基本的な制度であればあるほど、これを維持すべきであるとする立場と緩和すべきであるとする立場の双方の利害が相対立する面があることであります。この点は、昨年七月に行政改革委員会において整理された「論点整理」からもうかがわれるところであります。  政府としては、規制緩和必要性について関係方面の御理解を得るとともに、これに伴うさまざまな影響についてきめ細かな配慮を行いつつ、具体的な成果を上げるよう引き続き努力する所存であります。  規制緩和の経済的な効果についてのお尋ねでありますけれども、今回の規制緩和推進計画においては、各省庁において規制を徹底的に見直した結果、さまざまな分野で経済的効果をもたらす措置が盛り込まれているところであり、新規事業の創出、事業拡大などの促進、競争の促進や価格の弾力化による市場の効率化など、相当な効果が期待されるところであります。  もとより、規制緩和取り組みは今回の計画改定ですべて終わるというわけではありませんので、今後とも行革委員会や内外の意見を踏まえつつ、引き続き規制緩和の推進に努力してまいる所存であります。  規制緩和に関する情報の提供についてのお尋ねでありますけれども、規制緩和を進めていくに当たっては国民の御理解と御協力を得ることが極めて重要であり、そのためにも積極的に規制緩和に関する情報を提供していく必要があると認識しております。  政府としては、今後とも引き続き、いわゆる規制緩和白書の作成を初めといたしまして、さまざまな機会、方法を活用して、できるだけ国民にわかりやすく規制緩和必要性、効果等に関する情報を提供するよう努めてまいる所存であります。(拍手)    〔国務大臣田中秀征君登壇拍手
  20. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 規制緩和の経済効果についてのお尋ねでございますが、規制緩和は、企業の自由な創意工夫を引き出すことによって新規事業を創出し、また、内外価格差の是正、縮小等を通じて新たな需要を生み、雇用を増大させるものと認識しております。これまでの規制緩和においても、情報通信、エネルギー分野等、広範な分野に効果が見られたと推測されるところであります。  続議員の御質問の趣旨、私にはよく理解できまして、私自身も強い関心を持って事務当局に指示をしてきたところであります。例えば、地ビールが解禁になりまして、今のところ日本では二十数社が製造に入ったと聞いていますけれども、これがどれだけ製造会社がふえるのか、それによってビール工場がどれだけ設備投資に寄与するのか、あるいはどれだけの雇用の増大が見込まれるのか、ビールの消費がどうなるのか、あるいはビールのジョッキがどれだけ売れるのか、これはすべて経済効果でございます。  全体を経済効果として試算するということは大変難しいことで、幾つか試みてみました。しかしながら、責任を持ってお示しできるようなものがまだございません。しかし、検討を続けてみたいと思っております。それで、その中で例示してお示しできるものがあればこれからお示ししたい、そんなふうに思っております。  一般的に申し上げますと、昨年十二月に策定いたしました新しい経済計画におきまして、西暦二〇〇〇年までの実質平均成長率は規制緩和を中心とした構造改革を進めることによって年平均三%を見込んでおります。規制緩和構造改革がうまく進まない場合には一と四分の三程度にとどまるというふうに見込んでいるところでございます。(拍手)    〔国務大臣塚原俊平君登壇拍手
  21. 塚原俊平

    国務大臣(塚原俊平君) 米国通商代表部の発表した外国貿易障壁報告との関連で、我が国の規制緩和についての御質問でございました。  報告自体は、米国が一方的に作成したものでありまして、政府として直接これに対処するような性格のものではありませんが、今後、WTOを中心とした国際的趨勢や国内での経済構造改革の推進という視点から、サービス分野での規制緩和がますます重要になってきております。  通産省といたしましては、今次規制緩和推進計画改定において、建築規制の抜本的見直しを初め、御指摘がございました建設、金融等の分野で大幅な進展があったことを高く評価をいたしております。  今次改定後も、さらなる規制緩和の推進を図るために、政府全体として積極的に取り組んでいくことが重要であると認識をいたしております。(拍手
  22. 松尾官平

    ○副議長(松尾官平君) これにて質疑は終了いたしました。      —————・—————
  23. 松尾官平

    ○副議長(松尾官平君) この際、日程に追加して、  公営住宅法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 松尾官平

    ○副議長(松尾官平君) 御異議ないと認めます。中尾建設大臣。    〔国務大臣中尾栄一登壇拍手
  25. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 公営住宅法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  公営住宅制度は、従来から、住宅に困窮する低額所得者の居住の安定と居住水準の向上のために大きな役割を果たしてきたところでありますが、急速な人口の高齢化など大きく変化する経済社会情勢に対応するため、諸般の改正措置を講ずることが必要であります。  この法律案は、このような観点から、真に住宅に困窮する者に対し良好な居住環境を備えた公営住宅の的確な供給を図るため、所要の改正を行うものであります。  次に、法律案の要旨を申し上げます。  第一に、長寿社会の到来等に対応するため、高齢者等に配慮して入居収入基準を弾力化するとともに、適切な負担のもとで居住の安定が図られるよう公営住宅の家賃を入居者の収入及び公営住宅の立地条件、規模等に応じて設定するほか、公営住宅の社会福祉事業への活用や建てかえ事業における社会福祉施設、公的賃貸住宅との併設を促進することとしております。  第二に、既存住宅の有効活用等により需要に応じた的確な供給を図るため、民間事業者等が保有する住宅を買い取り、または借り上げて公営住宅として供給する方式を導入するとともに、公営住宅の種別区分を廃止するほか、建てかえ事業の要件を緩和することといたしております。  第三に、地方公共団体の自主的な政策手段の拡大を図るために、高齢者等の入居収入基準を一定の上限のもとで地方公共団体が条例により設定できるようにするほか、家賃の改定等についての建設大臣への報告義務を廃止するなどをあわせて行うこととしております。  これらの改善措置に伴い、平成年度予算に盛り込まれているとおり、公営住宅の供給に係る国の補助制度を整備する等所要の改正を行うこととしております。  以上が公営住宅法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。  ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  26. 松尾官平

    ○副議長(松尾官平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。片上公人君。    〔片上公人君登壇拍手
  27. 片上公人

    ○片上公人君 私は、平成会を代表し、ただいま提案のありました公営住宅法の一部を改正する法律案及び政府の基本的な住宅政策について質問いたします。  まず、住宅政策につきまして、総理の基本的認識をお伺いいたします。  総理は、今国会の冒頭、施政方針演説の中で、「我々が目指す社会は、そこに息づく国民一人一人が心豊かに暮らせる社会である」と言われました。しかし、我が国の国民は、その豊かさを実感できておりません。その大きな原因の一つとして住宅の問題が挙げられております。  総務庁の住宅統計調査を見ても、賃貸住宅の居住水準は持ち家に比較して著しく劣っており、特に墓示圏では、借家で三人ないし五人で暮らしている世帯の三割近くが最低居住水準未満という結果となっております。  また、我が国においては、持ち家取得の際に融資面や税制面において公的な支援措置が講じられるなど、賃貸よりも持ち家を優先した住宅政策がとられてまいりました。持ち家を取得することができない人たちのための公営・公団等の公的賃貸住宅は、倍率が高く、抽せんに当たった一部の幸運な人しか入居できません。多くの人は公的支援の恩恵を受けられず、条件の悪い民間の賃貸住宅で高い家賃を強いられているのであります。  このような住宅政策の不公平をなくすためには、民間賃貸住宅の入居者一般に対する家賃補助や税制上の家賃控除制度を設けるべきと考えますが、賃貸住宅に対する公的支援のあり方につきまして、総理見解を伺います。  次に、公営住宅法の改正について伺います。  第一に、本改正案につきましては、高齢者等に配慮した入居資格の設定、公営住宅の社会福祉事業への活用、社会福祉施設との併設促進、買い取り・借り上げ方式の導入等による供給促進、収入に応じた家賃の設定等を主な内容とするものであり、私どもも、高齢者の居住の安定を進める上で必要な改正と考えており、一定の評価をいたすものであります。  そもそも公営住宅制度の目的は、住宅に困窮する低額所得者に対し低廉な家賃で住宅を賃貸し、健康で文化的な生活を保障しようというものであります。その制度趣旨を念頭に置き、福祉行政との連携を強化するなど、きめ細かな制度の運用が不可欠と考えますが、この点について建設大臣の所見を伺います。  第二に、公営住宅の建設計画について伺います。  本年三月に閣議決定された第七期住宅建設五カ年計画によれば、公営住宅の建設戸数は前計画の二十四万戸から新計画では二十万四千戸へと減少しております。しかし、公営住宅の応募倍率は三大都市圏では九倍に達し、新築住宅に限れば十六倍を超えているのであります。  本改正案において高齢者等の入居資格を緩和して対象範囲を広げ、かつ買い取り・借り上げ方式の導入等による供給促進措置を講じているにもかかわらず、新五カ年計画では供給戸数を減らしているというのでは、何のための法改正であるのか非常に疑問を感じるのであります。建設大臣の明快なる答弁を求めるものであります。  次に、阪神淡路大震災に関する住宅問題について伺います。  まず、災害復興公営住宅についてであります。  未曾有の被害をもたらした阪神淡路大震災からはや一年四カ月が経過いたしました。今、被災者は懸命に立ち上がろうと努力をしておりますが、大変苦しい状態が続いております。今月七日に発表された兵庫県による四万三千世帯の仮設住宅入居者アンケート調査結果を見ましても、七〇%の方が公的賃貸住宅入居を希望しておられるのでございます。  総理、仮設住宅入居者の公的住宅確保の切実な要望に対してどのように対処していかれるのか、明確かつ真摯な答弁を求めるものであります。  次に、被災地の住宅家賃についてであります。  仮設住宅入居者の世帯で六十五歳以上の入居者が四二%に達していることを考えて、恒久住宅については、量的に確保するだけではなく、低廉な家賃で入居できる住宅を用意する必要があります。県の仮設住宅入居者の調査結果でも、賃貸住宅に住んでいた人の被災前の家賃が三万円未満の割合が四〇%になっております。また、仮設住宅入居者の年収も二百万円未満の方の割合が五〇%以上に達しております。  地元紙の報道によりますと、神戸市内の仮設住宅に住む七十九歳の母親と二人で暮らす六十一歳の御婦人の場合、母親は震災前から年金暮らしで、この御婦人は病院の付添婦をして多い月で四十万円の収入があったが、昨年五月、母親が避難先で体調を悪化させ、そのころから痴呆症が出始め、母親の介護のため仕事をあきらめたそうです。現在、生活費は月十万円、母親の年金八万円と自分の貯金を取りましながら生活をしております。仮設住宅を出れば家賃が必要となり、経済的な理由から公営住宅以外は考えられないと言い、貯金もそのうち底をつくと訴えております。  また、ある六十四歳のひとり暮らしの男性は、仕事を終え帰宅後、仮設住宅で亡くなりました。仕事を終えたとき、同僚に、疲れたと話していたそうです。この言葉は、生活への不安、絶望、心労とが重なり合った一言であったに違いありません。  このような将来に対する不安でいっぱいの人、希望を失いながら亡くなっていった人々の悲惨な例は数多くあります。昨年来、報道された仮設住宅におけるいわゆる孤独死だけでも七十人近くになります。  そんな状況の中、去る二月十八日、橋本総理は被災地を訪れ、その過酷な実態に触れ、被災者救済の最大課題は現在仮設住宅に住む被災者を一刻も早く恒久住宅に移転させることとして、翌二月十九日、関係大臣を官邸に呼び、災害復興公営住宅の低家賃化を指示されました。総理のこの素早い反応に、地元被災者は、この総理ならきっと我々のためにやってくれる、復興が早くなると期待をしたのであります。  しかしながら、総理、その後三カ月にもなろうとしているのに、いまだその具体的な方針、また、めどについて被災者に何も伝えられておりません。被災者からは、最終的に災害復興公営住宅の家賃が幾らになるのか、自分も災害復興公営住宅に入居できるのか、入居できる時期はいつになるのかという不安の声が広がり、新聞報道や行政のコメントに一喜一憂しながら、今この瞬間も将来の見えない不安の中、じっと耐えているのです。  この際、総理自身の言葉で、災害復興公営住宅の家賃の低減化について、いつからスタートできるのか具体的に示していただき、最も苦しんでいる被災者のもとにまず希望の灯をともしていただきたい。そして、総理が掲げる政治信条である決断と責任をもって家賃低減化について明確な見通しを示していただきたいのであります。  総理、私は本当に思います。被災地の人は心から待っております。私は、橋本総理総理になったときから、間違いなくこの人はやる方だと思っております。決断をしてください。  総理の誠実な答弁を求め、以上をもって私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  28. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 片上議員お答えを申し上げます。  まず、住宅政策についてのお尋ねですが、住宅政策の基本は、国民一人一人がその状況に応じ豊かさを実感できる住生活を営むことができるようにすることだと思います。政府としては、今後とも国民の住生活の質の向上を目指した総合的な住宅政策を積極的に推進してまいる所存であります。  次に、賃貸住宅に対する公的支援のあり方についてであります。  現在、大都市圏を中心に賃貸住宅の居住水準は持ち家に比して、御指摘のとおり、立ちおくれております。良質な賃貸住宅が不足している現状から、このような状況を改善いたしますために、特定優良賃貸住宅の供給の拡大、賃貸住宅に対する住宅金融公庫融資の活用などによりましてへ良質な賃貸住宅の積極的な供給に努めることが必要だと考えております。  なお、家賃控除制度につきましては、税制面のあり方として、家賃が食費や被服費と同様、典型的な生活費であることから、家賃だけを取り出して特別の控除を設けることは適当でないと考えております。  次に、災害復興公営住宅の適切な供給についてのお尋ねでございます。  現在、地元において、仮設住宅の入居者調査の結果などを踏まえ、公的住宅の供給計画の点検を行っていただいておりまして、今後、政府といたしましても、これを踏まえ、必要な災害復興公営住宅の確保を図ることにより、仮設住宅から恒久住宅への円滑な移行ができるよう対処してまいりたいと考えております。  最後に、家賃の低減化についてのお尋ねがございました。  今、種々の施策により引き下げを図っている公営住宅ですら重い御負担になるような被災者の方々を念頭に置いた何らかの工夫を検討するよう私からも関係閣僚に指示し、現在、政府、地元自治体が一体となって検討いたしております。  去る九日、阪神・淡路復興対策本部を開催いたしました際にも、兵庫県知事、神戸市長さんにも御出席をいただき、被災地の現状を踏まえた御意見、御要望をお出しいただきまして、これらも踏まえて、できるだけ早く具体的な結論を出し、被災者の方々に安心していただきたいと考えております。残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)    〔国務大臣中尾栄一登壇拍手
  29. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 片上議員お答えいたします。  福祉行政との連携など、きめ細かな公営住宅制度の運用についてのお尋ねでございますが、今回の改正は、公営住宅の的確な供給を行い、高齢者など住宅に困窮する方々の居住の安定を図るためのものでございます。  今回の改正では、高齢者などの入居者資格の弾力化、適切な負担のもとで居住の安定を図るための家賃制度の改善、建てかえ時の福祉施設の併設の推進などを行うこととしております。  今後ともシルバーハウジングプロジェクトの積極的な実施など、高齢者の方々に配慮した供給を伴うとともに、改正後の運用に当たりましては、福祉との緊密な連携を図るなど、今回の改正の趣旨が十分生かされ、高齢者の方々が安心した住生活を送れますように努力してまいりたいと考えておる次第でございます。  さらに、公営住宅の供給戸数についてのお尋ねでございますが、公営住宅と特定優良賃貸住宅を適切な役割分担のもとに一体的に供給することとしており、今年度から始まります新しい五カ年計画におきましては、公営住宅及び特定優良賃貸住宅の計画戸数を四十二万五千戸と、前回計画の三十一万五千戸と比べて大幅に増加させることとしております。  また、公営住宅のストックは約二百九万戸に達しておりまして、これらの高齢者向け改善を進めることなどによりまして、ストックの有効活用そのものも積極的に図ることとしておる次第でございます。  今後とも公営住宅などの的確な供給に努めてまいる所存でございます。  ありがとうございました。(拍手
  30. 松尾官平

    ○副議長(松尾官平君) これにて質疑は終了いたしました。      —————・—————
  31. 松尾官平

    ○副議長(松尾官平君) 日程第三 労働者災害補撹保険法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。労働委員長足立良平君。     —————————————    〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕     —————————————    〔足立良平君登壇拍手
  32. 足立良平

    ○足立良平君 ただいま議題となりました法律案につきまして、労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  本法律案は、労働保険に係る不服申し立ての審査が、過労死事案に見られるように複雑性を増していることなどにより長期化しているため、その迅速化を図る観点から、審査請求後三カ月を経過しても労働保険審査官の決定がないときは、労働保険審査会に再審査請求をすることができる救済規定を設けるとともに、労働保険審査会委員を増員するなど審査体制の整備を図ろうとするものであります。  委員会におきましては、二段階の審査請求制度を設けている趣旨と審査請求事案の認定状況、審査に長期間を要している理由とその迅速化のための対策、過労死認定基準と予防策、労災隠しの実態と今後の対応等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終了いたしましたところ、日本共産党の吉川委員より、審査請求後三カ月を経過すれば裁判所に提訴することもできることなどを内容とする修正案が提出されました。  次いで、採決の結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  33. 松尾官平

    ○副議長(松尾官平君) これより採決をいたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  34. 松尾官平

    ○副議長(松尾官平君) 総員起立と認めます。  よって、本案は全会一致をもって可決されました。本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十三分散会      —————・—————