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国務大臣(
橋本龍太郎君) 寺沢
議員に
お答えを申し上げます。
冒頭、順序を変更されまして、モスクワの原子力サミットについて御
質問が幾つかございました。もし足りないものがありましたらどうぞお許しをいただきたいと思います。
冒頭、
海洋投棄についてより具体的にという御
指摘がございました。
御
承知のように、かつてロシアの
放射性廃棄物、低レベルのものではありましたが、海洋に投棄をされ、
我が国の漁民等にも大きな不安を与えた事件がございました。そして、今回、この
海洋投棄について、私はロシア側にこれを停止することを確認したいという
一つの願いを持ってまいりました。先刻御
報告を申し上げましたように、九六年中にロンドン議定書の
改正についての受諾の意思を明らかにすると同時に、この間、海中・
海洋投棄は行わないという大統領の明言を得ましたことは
先ほど御
報告したとおりであります。
なお、
日本は現在、
放射性廃棄物の
海洋投棄を行わないでも済むような施設の
整備に
協力をいたしておるわけでございます。少なくともこれで太平洋側に対する
海洋投棄はもう行われないと私は確信をいたしております。
また、その他の問題としてございますのは、核兵器の解体に伴う核物質の処理についてでありますが、これは私が
先ほど申し上げましたように、核兵器を製造し有している国が一義的に処理すべきこと、非核兵器国としての
日本、唯一の参加者の立場でありましたが、この点は——唯一ではありません。イタリアもありました。失礼をいたしました一の立場で私の方からこれを主張し、これに異論はございませんでした。
そして、今後、我々は原子力発電所の事故に対し、ともに
対応していかなければならないわけでありますが、現在、チェルノブイリ原発の事故以来十周年の今日、石棺の老朽化に問題が生じ、現在これに対するEUのフィージビリティースタディーが行われております。今回の
会議の席上、クチマ・ウクライナ大統領もおられる席上でこの中間の
状況が
報告をされ、年内にはフィージビリティースタディーが終了するであろうというEUの発表を受け、その結論が出た後に今後の
対応をしていくことが決定をいたしました。
そうしたことを踏まえながら、各国の首脳は原子力の利用に当たり安全が最優先されるべきであることを決意して、確認をしてきたわけであります。
そして、具体的には、G7及びロシアは、原子力の安全に関する条約の年内発効のために各国に対し同条約の締結を呼びかけることになりました。また、チェルノブイリ原子力発電所の二〇〇〇年までの閉鎖のためにG7諸国が
協力していくことも確認されました。そして、核兵器の解体から生じる核物質の処理の選択肢を検討するための国際的な専門家会合を本年中に開催することが決定されております。
次に、CTBT交渉の早期妥結に
中国をいかに説得するのかという御
質問がございました。
今回のモスクワ・サミットにおきまして、従来必ずしも途中の姿勢に明確さを欠いておりましたロシアを含め、参加しました首脳が全員一致でCTBTに関する声明を発表し、本年九月までの交渉妥結及び署名への強い決意を示しましたことは、独自の立場をとっておる
中国にも強いメッセージを与えるものになると思います。
日本は、従来から
中国に対して、平和的な核爆発をCTBTの禁止する核実験の範囲外とするといった独自の主張は
考え直してもらいたい、我々は全面的な核実験の禁止を求めるということを繰り返し主張し、CTBT交渉の早期妥結に
貢献するよう働きかけているわけであります。今回の原子力サミットの
成果も踏まえ、あらゆる機会をとらえて働きかけ、説得の
努力をしていきたいと
考えております。
また、原子力安全に関する東京
会議の開催につきまして、私は、本年中を目途に里足でアジア原子力安全
会議を開催することを明らかにいたしました。
この
会議は、原子力発電の
導入の機運が非常に高まっておりますアジア
地域において、原子力発電所の安全
確保、
放射性廃棄物の管理などの
地域協力について議論をすることを目的と
考えております。こうした議論の場を提供することによりまして、アジア
地域における原子力安全についての意識を高め、具体的な取り組みの
強化を訴えていくことが重要であると
考えております。
原子力安全条約につきましては、G7及びロシアは、この条約が本年末までに速やかに発効するよう各国に対し同条約の締結を呼びかけることになりました。
我が国といたしましても、原子力安全の分野における初めての法的枠組みであるこの条約の早期発効が極めて重要であると
考えております。
次に、日米関係の良好な
協力協調関係を維持し
発展させていくことは、冷戦終結後におきましても、アジア太平洋のみならず、
世界全体の平和と繁栄のために不可欠のことだと思っております。殊にその基盤をなす日米安保
体制は、国際
社会が依然として不安定な要因を内包している中で、
我が国の安全及び
世界の自由、繁栄、平和にとって共通の利益だと
考えております。
こうした日米関係の
重要性につきましては、十七日の
日米首脳会談及びその際に合意、発表されました二つの共同文書におきましてクリントン大統領との間で再確認をしたところでありまして、今後とも今回の大統領訪日の
成果を
基礎として幅広い分野における日米
協力関係を一層
進展させてまいりたいと思います。
次に、日米安保共同宣言についてでありますが、日米関係の中核をなす日米安全保障
体制につき、これまでの安全保障分野における日米間の緊密な対話という
成果を踏まえ、この重要な役割を改めて確認いたしますとともに、二十一
世紀に向けた日米同盟関係のあり方について内外に明らかにしていくという
意味で、私は極めて重要な意義を有するものであると
考えております。
具体的には、
日本がアジア太平洋
地域においてより安定した安全保障
環境の構築のために
協力していくこと、日米安保
体制を基盤とした日米間の各般の
協力を進めていくことを含めて、二十一
世紀を見据えた日米安保
体制のあり方を幅広い
観点から明らかにするものであり、今後その
内容を具体的に
一つ一つ実施に移しながら、日米安保
体制の一層円滑かつ効果的な運用に努めていく所存であります。
また、アジア太平洋
地域の範囲について御議論がありましたが、地理的概念としてのアジア太平洋については必ずしも確定したものがあるわけではありません。例えばAPECでアジア太平洋
地域と申しました場合には、中南米の一部まで含んでおります。
したがって、明確にどの国がアジア太平洋
地域の範囲に含まれるのか、あるいは含まれないのかということを一般的に申し上げることは困難であり、また、日米安保条約が安定要因として作用している対象は一定の地理的範囲に限定される性格のものではありませんので、今回の日米安保共同宣言に言うアジア太平洋
地域の範囲を厳密に定義することは、私は余り
意味がないように思います。しかし、強いて申し上げるなら、これは
基本的に東アジア及び大洋州の両
地域を念頭に置いたものとお
考えいただいてよいのではないかと思います。
次に、日米防衛
協力のための指針についてでありますが、十七日、クリントン大統領との間で署名いたしました日米安保共同宣言におきましては、日米安保
体制が
我が国の安全及びアジア太平洋
地域の平和と繁栄のために引き続き果たしていく重要な役割にかんがみ、日米間の安全保障面での
協力を
促進していくという
観点から、日米防衛
協力のための指針の
見直しを開始するとしたものであります。
こうした
見直しの具体的な
内容につきましては、まさに今後の検討を待つ必要があるわけでありますが、既に現行の指針のもとで、
日本以外の極東における事態で
日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の
協力について研究が行われており、また、新防衛大綱におきましても、
我が国周辺
地域において
我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合に、日米安保
体制の円滑かつ効果的な運用を図ることなどにより適切に
対応することといたしておりますことからも、このような場合の日米間の
協力のあり方も指針の
見直しの際に重要な要素となることは当然であると存じます。
また、有事法制につきましては、自衛隊の行動にかかわる有事法制の研究につきましては、自衛隊法第七十六条の規定により防衛出動を命ぜられるという事態において、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の問題につき、政府部内で昭和五十二年から検討をいたしております。
これまでに防衛庁所管の法令及び他省庁所管の法令についての問題点を、昭和五十六年四月、昭和五十九年十月にそれぞれ取りまとめ公表してまいりました。また、所管省庁が明確でない事項に関する法令につきましては、現在、内閣安全保障室を中心とする政府部内で検討を加えております。
こうした問題につき、特に法制化の問題につきましては高度の政治判断に係るものであり、
議員からも御
指摘をいただきましたように、国会における審議あるいは
国民世論の動向等を踏まえて
対応すべきものである、それは御
指摘のとおりに存じます。
また、米軍
支援と集団的自衛権の行使についてであります。
政府としては、安全保障上のさまざまな事態に対し、米国との
協力も含め、
我が国がこれに
対応していくための手段をきちんと
整備する必要があると
考えておりますが、いずれにせよ、
我が国の
対応が憲法に従って行われることは当然であり、集団的自衛権の行使のように
我が国憲法上許されない事項について、従来の政府の
見解に変更はございません。
次に、沖縄の米軍基地の返還について
お尋ねがございました。
沖縄県には米軍の基地施設が集中しておりますことから、従来から大変な御苦労をかけてきております。その沖縄県の方々が担っておられる
負担というものを日米安保条約の
目的達成との調和を図りながらも少しでも軽減するために、普天間飛行場の全面返還を含めて、今回発表されました特別行動委員会の中間
報告の
措置を確実に実現していくことが不可欠であります。
こうした認識に基づいて、法制面及び経費面を含めて総合的な
観点から早急に検討を行って、十分にして適切な
措置を講ずることが必要だと
考えておりまして、士八日、政府はこれに挙げて取り組む決意を閣議決定としてお示しをいたしました。政府としては、所要の移設を含めました中間
報告の
措置を実施する
観点から、本土を含む地元関係者の御理解と御
協力が得られるように
配慮しながら、今後、最大限の
努力を払ってまいります。
また、今回の中間
報告の実現に要する具体的な所要経費、これは今後見積もりなどを行い算出するものでありまして、現時点で確たる数字を得ているものではございません。しかし、逆に、幾らお金がかかるといたしましても、沖縄の方々のためにこれは仕上げなければならないことであります。
また、さきのクリントン大統領との会談における保険、フィルム、半導体のやりとりについても
お尋ねがございました。
議員からは日限を切った話し合いが行われたような印象を持つ御発言がございましたが、これらの点につきまして日限を切った発言はクリントン大統領からはございません。むしろ、個別経済問題が日米関係全体に悪影響を及ぼさないように、そうした認識で一致をいたしてまいりました。そして、引き続き解決に
努力をしていきたい旨を述べられたのに対し、私からは、これまでの実績を踏まえて必要な場合にはいつでも話し合っていくという立場を明らかにいたしました。
また、保険、フィルム、半導体という三点を大統領の方から提起をされましたのに応じて、私の方からは、民間航空、特に旅客における話し合いが大事だということも提起をいたしております。
今後とも、御
指摘の三分野を含めまして個別の経済問題に関しては、問題の性格に応じて、これまでと同様国際ルールにのっとって、二国間でも多国間でも誠意を持って話し合いをしていきたいと存じます。
最後に、解散・総選挙につきまして御
意見をいただきましたが、私どもは今、景気に切れ目のない経済運営に万全を期しますとともに、御
指摘のありました沖縄における施設・区域の特別行動委員会での合意事項を的確に実行していくこと、リヨン・サミットなどさまざまな懸案を抱えております中で、到底
考えるゆとりがございません。
残余の
質問につきましては、
関係大臣から補足をいたします。(
拍手)
〔
国務大臣池田行彦君
登壇、
拍手〕