○村上正邦君 私は、自由民主党・自由
国民会議を代表して、
橋本総理並びに関係閣僚に質問と若干の提言をいたしますので、意欲的に前向きに答えていただきたいと存じます。
三党の
連立政権であることにかんがみ、若干控え目に、配慮しながら、しかし自民党として聞くべきところはずばりお聞きしてまいります。どうかお
役人的な
答弁ではなく、本音、本心をお聞かせ願います。検討するなどという
答弁はもう聞き飽きております。
まず、質問に入ります前に、
内閣の行う
施政方針演説のあり方についてみんなで考えていかなければならないと思います。
去る二十二日にこの本
会議場において、
総理ほか三閣僚より
政府演説をお聞きいたしました。今回に限らず毎回感じておりましたことは、衆議院において全国放送や
国会テレビを通じて既に放映され、今回は特に夕刊に全文が
報道された後、おくれて参議院で一字一句同じ
演説が行われているのであります。これは全くの二番せんじとなって、
演説を行う方も気迫と感激性が薄れ、聞く方もつづり方を聞いているようで、この本
会議場から
国民へ向けて緊張感も熱気も伝わらないと思うのは私一人でございましょうか。参議院の
予算委員会は非常に緊張感と活力、熱気があると言われていますが、
国会論議の口火となる重要な
政府の
施政方針演説だけに、改善に向けて一工夫あってしかるべきと思います。
皆さん、いかがでしょうか。
さて、
日本の
政治史の中で大きな節目となった三
党連立、自民党と旧社会党、さきがけとの
連立は、決して野合などと野党から非難されるものではなく、戦後の
日本の繁栄と時代の進展の中で、双方の足らざるを補い合う必然の中で生まれたものであります。
それが証拠には、
村山政権は、長年にわたる自民党単独
政権ではなし得なかった
課題、つまり水俣病患者の救済を初め、被爆者援護法の制定、消費税率の見直しなど多くの
課題を三党
連立政権の枠組みの中で
解決し、日米安保条約の堅持、自衛隊の合憲を容認するなど、戦後五十年という歴史的な節目に重要な
役割を果たしたのであります。
村山総理は、
日本の行く末に深い思いをして、三
党連立のさらなる強いきずなが求められるこの時期に退陣を決断されたものと拝察いたします。歴代首相の出処進退を見る限り、その決断は潔く、しかも鮮やかなものでありました。この
村山総理の決断にこたえていくためにも、新しい時代にふさわしい
政治を切り開くチャンスにしなければならない、私はそう決意しておりますが、
総理の所感はいかがでしょうか。
日本は、来るべき二十一世紀に向けて、国家としての進むべき道を定め、さらに国際的な
役割を果たしていかねばならない。今ほどそうした国づくりを進めることのできる強力なリーダーシップを求められている時代はないと私は考えております。
橋本内閣の
発足直後の各新聞の世論調査の数字を見ますと、支持率は六〇%前後と非常に高くなっています。
国民の期待の大きさを知ることができるものであります。龍が雲を得て天に駆け登るように、
橋本龍太郎
総理が
国民の期待にこたえて
日本の新しい国づくりに向けて大きく飛躍していただきたいのであります。
私は、三
党連立は三頭立ての馬車だと考えます。個性の違う悍馬の持ち味を生かして初めて目的地に到達するのであります。
橋本総理は、その御者として、
政治の王道をばく進していただきたい。
過日の一月二十一日、国技であります大相撲は千秋楽でありました。大衆の大歓声で歓迎を受け、
総理として初めてみずから
総理大臣杯を手渡した。そのように、素朴にみずからの行動と
言葉で
政治理念を
国民に率直に語りかけてください。これからも、
総理、人の意見をどしどし聞き入れてください。
橋本総理、あなたは
国民の待望久しい
総理であります。
総理御自身、思いこもごもの
総理の志があると存じます。その志、その思いを率直にお聞かせいただければと存じます。
さて、景気に幾らかの明るさが出て、株価も二万円台を回復し、三年連続のゼロ成長から脱する兆しが見え始めました。しかしながら、本格的な景気回復の軌道に乗るかどうかは今がまさに重要な段階にあり、その重大な決め手となる
平成八年度
予算を初め、税制等の
関連法案の早期成立が強く望まれております。
自民党総裁選のとき、
橋本総理は、今後一年間であらゆる政策を集中的に
投入し、ゼロ成長からの脱却と本格的な景気回復を図ると強調されておりました。金融不安、特に
住専処理、土地の流動化が喫緊の
課題となっている今日において、
総理としてどのような景気展望をお持ちか、どう取り組んでいかれるのか、その方針をお伺いします。
特に、景気回復の足取りを確かなものとし、
日本経済の再建の基盤を固めるためには、金融不安の払拭、中でも大きな足かせとなっている
住専問題の
処理が焦眉の急となっております。
久保大蔵大臣は、我が参議院出身の初の副
総理であり、
大蔵大臣として入閣され、未曾有の難問に直面している金融・財政の立て直しの
使命を担われました。今
国会の最重要
課題である
住専問題の
処理については、政争の具としてではなく、
国民の目線で取り組んでいくことが肝要であります。
久保大蔵大臣は、社会民主党きっての財政通であり、高い見識を持ち、胆力もあり、西郷隆盛翁のような愚直さも備える薩摩隼人であります。国際的にも信用を回復するために、
国民の期待にこたえるよう自信を持ってぜひ頑張っていただきたい。参議院の野党の
皆さんも御賛同いただけるものと信じます。
住専問題を初めとする金融・財政再建の取り組みについての決意と、どう
認識されているか、お聞かせ願います。
昨年暮れに
決定されました
住専問題の
処理案、特に六千八百五十億円の
政府支出案については、
国民の大きな批判を巻き起こしています。
住専七社の六兆二千七百億円に上る巨大な
損失額について、明確な
情報開示もされずに、
責任問題もあいまいなまま、
国民一人当たり約五千五百円に及ぶ
負担を求めることはとても理解されにくく、我々は
国民の声を真剣に受けとめ、全力を挙げて対応していかなければなりません。
長年、額に汗して営々と築き上げてきた
中小企業が連鎖
倒産の憂き目に遭ってもだれも、救済してくれない。乱脈
経営の
金融機関だけになぜ
公的資金の
導入がなされるのか。この大きな疑問に真正面から答えていかなければなりません。
「
政治の要諦は、不公平と不安定をなくすにあり」、これは論語に示されている
言葉であります。事は、
住専の借り手、貸し手の徹底的な
責任追及は言うに及ばず、金融
行政の
責任、システムの総点検、大
改革を要する問題であります。
莫大な
公的資金を
導入する以上、プライバシーの守秘義務というベールはもはや許されません。
政府が今日、資料
開示に積極的に取り組んでいることは評価したいと存じますが、さらなる透明性の確保に努められるよう強く要望いたしておきます。
二次
損失が最終的に二兆円を超すとの
報道もある中で、今や、徹底的に不正を摘発し全力を挙げて
不良債権を回収することにより、
国民の
負担を軽くしていくことが至上命題であります。
不良債権の回収機関の具体的構想はどのようになっているのか、
大蔵大臣の
お答えを求めます。
特に、借り手
責任の追及は重大であり、借り入れた法人
役員の
個人責任、時効等の障害が出てくると思われますが、どのような特別
措置が考えられるのかどうか、その点、
総理及び
大蔵大臣に伺っておきます。
また、
住専各社には
母体銀行から多数の幹部や職員が出向しており、その
経営を担当してきたことは明白であります。
住専本来の
住宅ローン分野へ
母体銀行は大きく進出し、
住専を不動産
融資に走らせ、さらに
母体銀行から
住専への紹介という形でリスクの大きな
融資を押しつけた等、
母体銀行の
責任は大変大きいものがあります。
また、このような事態を招いた
責任の
明確化を求め、金融
行政・検査・監督のあり方についていろいろ論じられています。
バブルを抑制する
融資総量規制を実施したときの
大蔵大臣であった
総理は、みずからの
責任について、世間に誤解があると言われていると
報道されています。先ほど大久保議員の質問に
お答えになられましたが、そのこともわかりやすく機会があるたびに
説明される必要があり、さらに金融
行政のあり方についてどのようにお考えか、お聞かせをいただきたい。
住専処理問題は、もはやあいまいな
解決は許されません。
国民の目線で
国会で審議を進めることが何よりも大切であります。二院制のもと、参議院としてもその
役割を果たすべく、チェックすべき点については十分に
責任を果たしていく決意であります。
景気停滞が長引く中で、
国民生活を直撃している問題があります。その第一が
中小企業の問題であります。
今までの
日本の
経済発展を支えてきた
中小企業は、産業の空洞化、下請の減少、単価の切り下げ等により、かつてない苦境に陥っております。さらに、
日本の伝統的な技術、工芸を守ってきたさまざまな分野での後継者がいなくなっているという問題が生じております。これは地場産業衰退のみならず、
日本文化、工芸の伝承という面からもゆゆしき問題であり、後継者の育成確保のため、例えば職人
大学の
設立等を進め、ドイツのマイスター制度のように、職人の技能を養成し、資格を与える特別の施策を早急に打ち出すべきであると提案いたしますが、
総理大臣のお考えはいかがでしょうか。
第二は、いまだ改善の兆しが見えない雇用問題であります。
特に、この春、
大学、短大を卒業する若者たちのうち十五万人がいまだに就職が決まっていないことは、大変な社会問題であります。新たな人生へのスタート、社会への第一歩の夢が無残にも打ち砕かれた当人はもちろんのこと、我が子の成長を願い、
生活費を削って仕送りしてきた御両親の心情を思うと、かつて労働
行政の
責任を担ったことのある私といたしましては、いても立ってもおられません。
会社訪問を何十回と繰り返し、疲れ果てて私のところにやってきた女子学生が、私たちも働きたいのです、早く就職先を決めて親を安心させたいと悲痛に訴えました。これらの学生たちに何とか手を差し伸べられるよう国を挙げて取り組んでいただきたいと切に要望いたします。
また、昨年のWTOの
発足に伴い、国内の体制の整備の問題があります。
日本の農業の再建、
国民への食糧の安定確保が重要な
課題となっております。特に、思い切った発想の転換により、農業の魅力を引き出し、若者が生き生きと農業
経営に取り組む新しい農政の枠組みを示すことが何よりも必要であります。そのため、早急に新しい農業・食糧基本法を制定すべきでありますが、見通しを
総理大臣にお伺いしておきます。
政府は、昨年、新
経済計画を
決定し、
総理は
施政方針演説において「強靱な
日本経済の再建」のシナリオを打ち出しておられますが、科学技術、
情報通信等、
経済フロンティアの拡大、
経済構造改革の中で、
中小企業の
役割をどのように位置づけ、雇用の安定確保をいかに図り、農業分野を含む
日本全体を元気づけていかれるか、
総理にお伺いいたします。
次に、これからの高齢化社会への対応や家族の問題でありますが、このテーマは
総理がこれまでも一
政治家として最も力を注いでこられた問題であります。
今や世界一となった長寿社会に魂を入れ、長生きして本当によかったと実感できるようにするのも
政治の重大な
使命であります。
ところが、老後のために長年節約して当てにしてきた貯金が、この史上最低の超低金利で十分の一近くに利子収入が激減してしまい、多くのお年寄りの暮らしが一段と厳しくなっているのが現実なのであります。
私ども参議院自民党は、昨年来この問題を取り上げて、年金
生活者に金利上乗せ
措置を講ずるように具体的提案を行い、金利を一%上乗せする一年定期預金が実施され、
金融機関にも広がっております。
しかし、この問題は、こうした臨時の
措置や
民間の協力のみで事足りる問題ではもちろんなく、今後の金融政策を推進するに当たり、景気の動向を見て超低金利政策の転換が必要であると思いますが、いかがでしょうか。
総理の方針をお聞かせください。
間もなく四人に一人が六十五歳以上になる大変な少子・高齢社会が到来することになります。その準備のために新ゴールドプラン、エンゼルプラン等が策定され、さらに新たに介護保険制度の問題が検討されつつありますが、いずれにしても、その社会の基礎単位としての家庭の問題が一番大切になることは言うまでもありません。
家族の中ではぐくまれ、苦楽をともにする家庭からすべてが始まるのであります。ところが現実はどうでしょうか。安らぎ、助け合う家族のきずなが年々弱まっていると感じるのは決して私一人だけではないと思います。
高齢化が進展していく中、健全な社会をつくっていくために、この家族の問題についてどのように考えていかれるのか、これは個々人の人生観、価値観にもかかわる問題でありますが、家族のきずなの復活こそ新しい社会づくりの原点と考えます。お年寄りの介護保険問題も含め、
総理のお考えを伺っておきたいのであります。
また、民法の改正で夫婦別姓が提案されようとしていますが、これは家族のきずなをさらに弱め、家族崩壊の芽をはらんだ大きな問題と心配しています。この問題につきましては
国会で十分議論する必要があります。あわせて御
答弁を願います。
また、子供の問題も深刻であります。
近年、痛ましい事件として、いじめ、自殺や不登校の問題があちこちで起こっております。担任の先生から、自殺にまで追い詰められているとは全く知りませんでした等という
言葉が繰り返し聞かされるようでは、学校教育のあり方として根本的に反省しなければならないことは言うまでもありません。しかし、すべてを学校だけの
責任ということでは問題の本質を見失ってしまいます。
学校教育については、対立していた文部省と日教組の対話が始まり、いじめを初めとする多くの問題について
解決していく方向が出てきたことを大いに期待するものであります。いじめ、不登校等の問題には、戦後五十年の
日本社会のひずみのしわ寄せが最も弱い立場の子供たちに襲いかかったものと考えます。教育現場と家族と地域の連携を緊密にして、健全な青少年が育っていくようにしなければなりませんが、
総理大臣、この
実態をどのように思われますか。
村山内閣は、戦後五十周年記念事業の重点施策として国立こども図書館の
設立を計画し、その推進のため、党派を超えて二百余名の議員が加入いたしております。この議員連盟では、こども図書館をさらに発展させ、豊かな感受性を持つ子供たちの知的形成を助けるため、国際こども基金の
設立を提唱しております。
総理は、
施政方針演説において、文化立国への取り組みに対する強い決意を示されました。まさに文化こそ
日本の存立基盤であり、また、子供こそ文化を継承し、我が国の将来をゆだねる相手であります。子供の目線で子供の
生活全体を見た総合政策の立案に向けて、有識者による諮問委員会の
設立を提案いたします。
総理の御見解をお聞かせください。
さて、今ほど宗教の問題が
国民的関心を呼んだことはかつてなかったことだと思います。あのオウム真理教は、宗教の名において、身震いするほど凶悪な数々の事件を起こしました。そのようなオウムになぜあれだけの若者が吸い寄せられていったのか。世間ではエリートと言われるような前途ある多くの青年たちが、いいように操られることになったのはなぜなのか。私たちは、教育のあり方も含めて宗教のあり方というものを深く考えさせられたのであります。
我々は、昨年、臨時
国会で、宗教法人法の大きく不備な点について必要最小限度の改正を行いました。しかし、法改正の議論を通して他のさまざまな問題点が浮き彫りになりました。その中で看過することのできないのは、憲法二十条の政教分離の原則についての
政府見解の見直し問題であります。
国民の信教の自由が保障されなければならないことは憲法の明記するところであります。が、同時に、いかなる宗教団体も
政治上の権力を行使してはならないということについても憲法はうたっているのであります。
ところが、国の内外で活発な活動を続ける創価学会においては、公明党という自前の政党を結成して
政治に大きな影響力を及ぼし、細川、羽田両
内閣においては
政権に直接参画するに至りましては、これが宗教団体の
政治権力の行使でなくて何でありましょうか。
さらに、創価学会は、
政権交代を主張する新進党の中にあって極めて大きなウエートを占めており、
政治への影響力はこれまで以上に強くなっているとさえ言われております。
事態は、従来の
政府見解が示したような、宗教団体の幹部である者と
政権を担当する者とがたとえ同じ人物でも、法律上は別個の存在であるから憲法上の問題はないなどという形式論で済ましてはいられないところまで来ていることを
政府は
認識すべきであります。
人が信仰を持つことは大変大切なことであると思います。私は、特に
政治家が信仰心を持ち、政策や立場の違いを超えて和解し、調和し、許し合う心を錬磨することは、
政治の自浄能力を高めるために極めて大切なことであると思います。しかし、そのことと、宗教団体が
政治権力を行使してはならないという憲法二十条の規定の問題とは全く別問題であります。
宗教は、絶対的なるものへの畏敬であり、疑うことなく信ずることであります。一方、
政治は、さまざまな価値観を持った多くの人々の最大多数の最大幸福を実現することにほかなりません。したがって、宗教の世界の価値観をそのままストレートに
政治の世界に持ち込むことには、私は恐怖感すら覚えるのであります。まして、
政治を宗教の手段とすることは厳に戒めなければならないことだと思います。あのオウム事件の始まりは、麻原を盟主とするオウム王国をつくるという目的を持ったときからであり、そこからさまざまな惨事が引き起こされたことを見逃してはなりません。
橋本総理、
国民がこの
国会に特に注目しておりますのは、
住専、宗教、そして沖縄問題でありますが、
施政方針演説では宗教問題は取り上げられていませんでした。宗教と
政治にかかわる問題について、この
国会における位置づけをどうお考えになっているのか、私の質問の
お答えの中で、この宗教と
政治の問題で何が問題なのか、この際、触れていただきたい。
橋本総理、憲法二十条の政教分離の原則の
政府見解の再検討に当たっては、宗教団体が実質的に
政権を支配することの是非を初め、今申し上げたことを十分に念頭に置き、また、野坂前官房長官より、検討し
政府見解を出すとの約束を踏まえて、遅くともこの
国会中には新しい見解を示されるよう強く要望いたします。
加えて、宗教法人については、優遇税制の問題、認証のあり方等を初め、宗教団体の
現状にそぐわない点など、いまだ多くの問題点があります。
本院は、今
国会でも再び宗教法人等に関する特別委員会を設置して、宗教法人法の再改正を視野に入れながら、残されたこうした問題点を鋭意引き続き議論していく必要があると思っております。健全な信仰者を守るために
政治は今何をなすべきか、我々は真剣に考えなければならないときであります。あわせて
総理の御見解を伺います。
ちょうど一年前の
阪神・
淡路大震災による甚大な被害で、今もなお
仮設住宅で不便な苦しい
生活を余儀なくされている
方々が十万人近くもいるのであります。一日も早い
生活基盤の回復に
政府が一体となって努めていかなければなりません。鈴木国土庁長官の就任早々現地入りした姿勢は、さすがと敬意を表するものであります。
政府は、今回の大地震を教訓に十分な危機管理体制を整える必要があることは言うまでもありません。この
阪神・
淡路大震災は、図らずも現在の我が国における危機管理体制が決して十分ではなかったことを白日のもとにさらしたのであります。
総理及び国土庁長官はどのように受けとめておられましょうか。
これには憲法に非常事態における
総理大臣の
権限が何
一つ規定されていないことに根本的な原因があると思います。
例えば、
阪神・
淡路大震災のような緊急事態が発生した際、
総理大臣は即座に各省大臣を招集して閣議を開き、有効適切な
措置を講じなければなりません。しかし、時として、大臣の出張などで所在が直ちにつかめず閣議を招集できない事態が当然予想されます。そこで、
総理大臣は閣議を経ずに適宜有効な施策を講ずることができるかというと、それができないのであります。
憲法六十六条は、「
内閣は、行
政権の行使について、
国会に対し連帯して
責任を負ふ」と規定しております。しかも「閣議は全会一致でなければならない」という
政府解釈であります。現憲法のもとでは、非常事態に際し、
総理が迅速適切な施策を講ずることは難しいのが
現状なのであります。
憲法改正といえば九条だとされがちでありますが、論点はそれにとどまるものではありません。我々が目指す参議院
改革も、突き詰めればその
一つの
課題であります。そのほかにも、天皇の国事行為の限界・機能の範囲について
国会の召集及び衆議院解散の
決定権の所在が明確でないこと、
国民の権利義務について人格権及びプライバシー権に関する明文規定が欠けていること、私学助成などに対する公金支出の禁止など、時代の進展、価値観の多様化に応じて
現状に合わない面も多くあるのであります。
戦後、
日本国憲法が施行されて以来五十年近く、憲法改正はタブー視されてきました。しかし、憲法は不磨の大典であってはなりません。
国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という三つの原則は擁護されなければなりませんが、時代の要請、
国民の要望に沿って憲法を改正することは
国民に対する
国会の重大な
責任なのであります。
諸外国を見ましても、この五十年間に、
アメリカは六回、フランス十一回、ドイツ四十三回、イタリアは七回、憲法改正が行われております。
もちろん、
連立三党の憲法問題についての見解を十分承知しております。しかし、憲法は国の根幹にかかわる基本的な問題であります。タブー視することなく、常に見詰め直し、議論の俎上にのせておかなければならない、そうした思いからあえて質問をさせていただきました。
総理、どのようにお考えになりますか。
橋本総理は、外交の基本理念として「平和立国」、「平和貢献」、「平和創造」を掲げ、あらゆる分野で機先を制して行動する、自分の足でしっかり立つ外交の展開を目指しておられます。さらに、自衛隊の派遣を初めとする人的貢献の重要性を説いておられます。まず、
総理から、
橋本外交の真髄についてわかりやすくお聞かせ願いたいと思います。
ところで、国際交流に重要な
役割を担う国際
会議の開催が最近とみに減少していることは問題であります。ちなみに、三年前、東京で開かれた国際
会議は九十件、これが二年前には約半分の五十五件に減っています。
この国際
会議開催の減少は、
日本の国力、国威が低下している証拠であります。どこに問題があるのか、国際国家
日本として世界じゅうから尊敬され、
日本で国際
会議が再び盛んに開かれるようにするにはどうしたらよいか、
総理にお伺いしておきます。
私は、二十一世紀の我が国を担う若い人々に、自国の歴史に誇りを持ち、未来に向かっての展望と勇気を与えることのできる歴史教育が今、必要とされていると考えます。
「平和は戦争よりも気高く、理解は
怒りより高く、愛は憎しみより高い」、私たちは教訓としてこのことを戦中戦後の歴史の中から学んだのであります。
日本の未来を担う子供たちが、近隣諸国との友好を一層深め、国際社会の中で名誉ある立場を得るためにも、諸外国との共通の歴史
認識に立った教育が必要なことは当然のことであります。
民間レベルを初め、学界、財界、政界などさまざまな交流の中で共通の
認識の醸成を図っていくことが大切ですが、まず
日本政府が中心となって関係国との間でこの問題について話し合いを進める機関をつくることが緊急の
課題だと思うのでありますが、
総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。
次に、日米関係についてお伺いいたします。
冷戦構造が崩壊したとはいえ、アジア太平洋地域は依然として不安定要素を抱えております。日米安保体制はこの地域の平和と安定に引き続き重要な
役割を果たしています。来る四月、クリントン大統領の来日において、冷戦後の安保条約の意義を鮮明にした日米安保共同文書を公表し、我が国の外交の基軸である日米安保の根幹をなす安保体制に新たな魂を吹き込まねばなりません。
総理、日米安保体制の今日的な意義をどのように考えておられますか。
昨年九月、沖縄で起きた米兵の暴行事件以来、
日本国内では日米安保体制をめぐる議論が巻き起こっています。もとより、今回の沖縄における不祥事件の
解決と米軍の沖縄における諸問題の改善は
政府の最重要
課題であります。我々は、沖縄の同胞の痛みを我々自身の痛みとしてこれを分かち合いながら、沖縄の県民の
方々が納得できる方法を何としても見出さねばなりません。在日米軍基地の七五%が沖縄に集中し、沖縄の人々の犠牲において安保体制が成立していると言っても過言ではありません。沖縄以外の地域でも、同じ痛みを分かち合うということがぜひとも必要であります。
本土より遠く離れた沖縄県の振興開発を促進するために、観光立県として観光・リゾート地域の開発整備を積極的に進め、ノービザで海外の人が沖縄県を訪問できるように、また、航空運賃に関しても他の地域より安く抑える等の施策を早急に努力していただきたいのであります。
この沖縄問題に関し、
橋本総理並びに岡部沖縄開発庁長官の
答弁をお願いします。
世界一の援助国である我が国は、それに見合う外交機能の充実強化が図られなければなりません。この観点から、例えばODAを専ら担当する外務政務次官の増員やスタッフを充実し、機能的な援助体制の整備が急務であります。
アジアは世界の
経済成長センターと言われ、特に中国、東南アジア諸国、韓国、台湾等は目覚ましく発展しつつあります。今後、アジア近隣諸国との友好関係の発展がますます重要となり、このため、長期的幅広い視野でアジアにおける
日本のあり方を検討するため、参議院外務委員会において常設の小委員会の設置を提案したいと思っております。
本日、各紙一斉に、中国が台湾に対してのミサイル攻撃の準備が完了したとの
報道があり、これはアジア及び
日本にとってまことにゆゆしき事態であり、
政府はこの
実態をどう把握しているのか、
総理にお伺いいたします。
日本周辺の軍事情勢を見れば、朝鮮半島の緊張は依然として続いており、また、今申し上げました中国の軍事力強化は、アジアの安定にとって脅威となっております。我が国の防衛力は、目前の
課題にとらわれず、長期的な視野に立った整備でなくてはなりません。科学的装備の開発と展開に向けた不断の努力とともに、国際情勢の変化、多様な危機に対する柔軟な対処が求められていると考えます。
総理の御見解を承ります。
行政改革と規制緩和につきましては、行革のプロと自他ともに認められ、旧国鉄の民営化に大きな成果を上げられた
橋本総理の手腕に大いに期待するものであります。集中から分散へ、規制から創造へと
日本の進むべき方向を大胆に転換し、
国民のエネルギーを結集できる変革の大目標を掲げて蛮勇を振るうべきであります。
総理の決意を明確にお述べください。
私は、昨年七月の参議院
選挙の投票率四四・五二%という数字を見て愕然としたのであります。これは
国会が
国民から余りに遠い位置にいること、参議院そのものの存在が問われていること、及び
政治家に対する抜きがたい不信の意思表示以外の何物でもありません。とはいえ、
政治不信は、ただ法律をつくれば解消するというような生易しいものでは決してないということであります。
衆議院においては、
政治改革がいつの間にか
選挙制度の
改革にすりかわってしまい、二年前の細川
政権の際、小
選挙区比例代表並立制度法案を参議院が否決したにもかかわらず、
導入が
決定されました。今になって、衆参を問わず与野党のあちこちからも、あれは熱病のようなものであったと反省の弁が聞かれる始末であります。
先日、土井衆議院議長が小
選挙区制について、講演で小
選挙区制に疑念を示されたと
報道されています。
小
選挙区制では、金がかからず、政党本位で政策中心で
選挙が争われ、二大政党に収れんしていくことがうたい文句でしたが、しかし、現実は、これまで以上にきめ細かな金のかかる運動をしなければ生き残れず、政策論争はどこかに吹き飛んでしまった感じがあります。
一度も
選挙をやらず
選挙制度をつくり直すのは間違っていると言う人もいるが、悪くなるものは実行しないことに
意味があると言う人もいると土井議長は指摘されております。他方、自民党の加藤紘一幹事長は、立法府で決めたことを朝令暮改していいとは思わない、一回か二回はテストしてみなければならないと発言されております。この問題については、否決という二年前の院議を重く受けとめて、議員立法として提案してはどうかという要望が私のところへ多く寄せられております。
関連して参議院
選挙制度の問題であります。
本来、衆参の
選挙制度の
改革は、同時一体としてとらえるべきでありました。二院制の一翼を担う参議院としても、定数是正の大幅削減を含む抜本
改革は急務と考えます。今後、党内で、あるべき参議院の
役割と機能を十分検討した上、それにふさわしい大胆な制度
改革を早急に確立しなければなりません。
政府として参議院の
選挙制度の
改革をどう受けとめておられましょうか。これについては、
総理及び自治大臣の御見解を伺います。特に自治大臣は参議院を本籍としていることを自覚して御
答弁願いたい。
私は参議院議員に初当選して以来、参議院はどうすればその
役割を果たし
国民の負託にこたえることができるかということを真剣に同志と議論してまいりました。三年前に超党派の議員集団「あるべき参議院を考える会」を結成したのもこうした思いからでありました。
私は、参議院が与党と野党というような政党間の対立で二分化されてしまえば、良識の府としての参議院の
役割は果たせないと考えます。それでは衆議院と同じになってしまいます。そうなれば参議院はもう要らない。二院制の価値や意義も生まれてこないのであります。
国会審議に当たっても、熱く焼けたフライパンの上を走っていくようなことではなく、参議院はきめ細かくしっかり腰をおろして問題点を解明していかなければなりません。
我々参議院は、二十一世紀への展望として自然破壊や国家間の対立等を止揚し、自然と調和しつつ世界が持続的に共生していく思想や哲学に焦点を当てた地球的、総合的、長期的な国策を打ち立てるべきであります。また、私は、六年間の任期を保障された参議院の特性からいって、防衛、文教、外交など長期的視野に立った議論が必要なものについては参議院に優位性を持たせるべきだと考えます。
さらに、憲法、外交、防衛など各政党の立党の基本にかかわる問題はともかく、それ以外の問題については極力党議拘束を外すべきだと考えるのであります。
例えば、七たび衆議院で継続審査となっております臓器移植法案やサマータイム法案などの議員立法は言うに及ばず、およそ人間の生命、倫理、社会や家族制度など多様な価値観にかかわるものについては、党議で一律に縛るものではなく、
個人の良識と
責任において、自由裁量にゆだねるべきではないかと思います。党議拘束を外すことができれば、参議院は参議院らしさを発揮し、我が国の
政治に新たな活力を与えることになると私は確信するものであります。
総理は、私が提案した一連の参議院
改革についてどうお考えになりますか。
国民の
政治に対する信頼を取り戻す施策として、
国会と
国民の距離を近づけることが大切であります。
国会には
日本全国から年間八十万人もの小学生、中学生、高校生が見学に来ています。こうした子供たちに
国会の真の姿を理解してもらうために、ナショナルセンターとなる「
国会情報センター」の設置を提案いたします。
国会の
情報を一堂に集め、参観者のサービス向上に努めるとともに、
情報通信を利用して全国の
国民にいながらにして
国会情報を提供できるようにしようというものであります。
また、
国会周辺の立地についても、危機管理上必要とするならばヘリポート基地を
国会情報センターの屋上に併設することや、尾崎記念館を有効に使用する観点に立って、例えば
日本文化の象徴たる正倉院の宝物の常設展示場として広く
国民のために活用するなど、前向きに検討すべきだと思いますが、
総理の御意見をお伺いします。
終わりに、我が国の近現代史を振り返ると、昭和という時代が大きな位置を占めていると思います。
昭和天皇の誕生日であります四月二十九日は、今、みどりの日として
国民の祝日になっておりますが、私は、この日を「昭和の日」としてその名称を変えることを提案いたします。このままでは後世に、なぜ四月二十九日が
国民の祝日なのか、昭和天皇とみどりの日との関係がだれにもわからなくなるおそれがあります。
総理、この私の提案をどのようにお考えになりますか。
ところで、私は、昨年十二月に国立劇場で行われた戦後五十年を記念する集いに出席して深い深い感銘を受けたことを忘れることはできません。それは天皇陛下のお
言葉でありました。今上陛下のこのお
言葉の一言一言に深く思いをいたしたのであります。
特に国政に携わる者にとっては、一層重く受けとめなければなりません。そのお
言葉の趣旨を私なりに次のとおり拳々服膺させていただいております。
とうとい自由と平和を未来にわたって維持していく
責任、
国民の創造性を伸び伸びと発揮させる環境とシステムづくり、国の繁栄を
国民一人一人の幸せにつなげるきめ細かな
行政の確立、
国民が国の内外にあっても常に他と共存する精神であらゆる差別や紛争をなくす取り組みの強化、慎みと品位ある
国民性を培い、世界各国と友好を強め、真の国際化を目指す、いずれも二十一世紀の新しい国づくりに向けて欠かすことのできない五つの理念なのであると私は思いますが、
総理はいかがお思いでしょうか。
総理は、長生きしてよかったと思える長寿社会建設、そこに息づく
国民一人一人が心豊かに平和に暮らせる社会をつくるために全力を傾けると所信を述べられました。生きとし生けるもののすべてがみずからの所を得て互いに争うことなく、病むことのない、飢えることのない、貧しさに苦しむことのない、そうした社会をつくることこそ
政治の至高の目的であると私は思います。希望にあふれる二十一世紀の扉を、若いリーダーとしてあなたの力で、あなたの英知で開いていただきたいのであります。
総理、
橋本内閣の歴史的
使命を勇気を持って果たしていただきたい。
政治家が勇気を失うことはすべてを失うことであると申します。その大きな期待を込めて、私の代表質問を締めくくらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔
国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕