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1996-06-13 第136回国会 参議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十三日(木曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月七日     辞任         補欠選任      菅野 久光君     一井 淳治君  五月十五日     辞任         補欠選任      本岡 昭次君     武田邦太郎君  五月十六日     辞任         補欠選任      武田邦太郎君     本岡 昭次君  五月二十一日     辞任         補欠選任      千葉 景子君     青木 薪次君  五月二十二日     辞任         補欠選任      中原  爽君     井上  孝君      青木 薪次君     千葉 景子君  五月二十三日     辞任         補欠選任      井上  孝君     中原  爽君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         及川 順郎君     理 事                 志村 哲良君                 野村 五男君                 平野 貞夫君                 橋本  敦君     委 員                 遠藤  要君                 下稲葉耕吉君                 鈴木 省吾君                 中原  爽君                 林田悠紀夫君                 魚住裕一郎君                 大森 礼子君                 山崎 順子君                 千葉 景子君                 本岡 昭次君                 田  英夫君                 大野つや子君     衆議院議員         発議者     保岡 興治君         発議者     錦織  淳君         修正案提出者  太田 誠一君         修正案提出者  細川 律夫君         修正案提出者  枝野 幸男君     国務大臣         法務大臣    長尾 立子君     政府委員         法務政務次官  河村 建夫君         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房審         議官      山崎  潮君         法務大臣官房司         法法制調査部長 永井 紀昭君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省人権擁護         局長      大藤  敏君     最高裁判所長官代理者         最高裁判所事務         総局民事局長         兼最高裁判所事         務総局行政局長 石垣 君雄君     事務局側         常任委員会専門         員       吉岡 恒男君     説明員         法務大臣官房参         事官      柳田 幸三君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部人権難民         課長      川田  司君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○民事訴訟法案内閣提出衆議院送付) ○民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出衆議院送付) ○民事執行法の一部を改正する法律案衆議院提  出)     ―――――――――――――
  2. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案審査のため、来る十七日に参考人として、駿河台大学法学部教授竹下守夫君、日本弁護士連合会会長中務嗣治郎君、読売新聞社編集局解説部次長鶴岡憲一君及び弁護士坂本修君の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案を一括して議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。長尾法務大臣
  5. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  現行民事訴訟法におきましては、その第一編から第六編までにおいて民事訴訟手続に関する規定が設けられております。現行民事訴訟法は明治二十三年に制定されたものであり、民事訴訟手続に関する部分については大正十五年に全面的に改正されましたが、その後はその全般にわたる見直しがされたことはなく、今日に至るまで、基本的には大正十五年改正当時の民事訴訟手続構造が維持されております。しかし、この間の社会の変化や経済発展等には著しいものがあり、これに伴って民事紛争も複雑多様化しており、民事訴訟手続に関する現行法の規律については、現在の社会状況に適合していない部分が生じております。また、裁判に時間と費用がかかる、訴訟手続当事者にとってわかりにくいものとなっているなどの民事訴訟現状に対するさまざまな問題点指摘されている状況にあります。  そこで、民事訴訟法案は、これらの問題点に対処する見地から、民事訴訟国民に利用しやすく、わかりやすいものとし、訴訟手続を現在の社会要請にかなった適切なものとするために、新たな民事訴訟法制定し、民事訴訟手続の改善を図ろうとするものであります。  以下、この法律案の要点を申し上げますと、第一は、争点及び証拠整理手続整備することであります。  適正かつ迅速な裁判を実現するためには、事件争点が何であるかを早期に明確にし、これに焦点を当てた集中的な証拠調べを行う必要がありますが、現行法においては争点及び証拠整理手続についての規定が不十分であり、利用しにくいものとなっております。そこで、これを改め、争点及び証拠整理のための手続として、準備的口頭弁論弁論準備手続、書面による準備手続の各手続を設け、手続の種類を多様化するとともに、その内容を充実する等の整備を図り、もって争点早期明確化に資することとしております。  第二は、証拠収集手続を拡充することであります。  早期争点を明確にして、充実した審理ができるようにするためには、当事者が十分な準備を尽くすことができるようにする必要がありますが、現行法においては、証拠収集の手段として文書提出命令等制度が設けられているものの、これらは当事者が充実した審理に向けて準備をするために証拠を収集する手続としては十分なものとは言えない状況にあります。そこで、文書提出命令対象となる文書を拡張するとともに、その手続整備するほか、当事者が主張または立証を準備するために必要な情報を直接相手方から取得することができるようにする制度を設けるなど、弊害が生じないように配慮しながら証拠収集手続を充実することとしております。  第三は、少額訴訟手続を創設することであります。  現行法は、訴額が比較的少額である民事事件については簡易裁判所訴訟手続特則を設けておりますが、この特則は、少額事件訴額に見合った経済的負担で迅速に解決するための手続としては十分なものとは言えない状況にあります。そこで、請求額が三十万円以下の金銭の支払い請求事件について、原則として一回の期日で審理を遂げ、即日判決の言い渡しをするほか、被告による任意の履行がされるよう、被告資力等を考慮して分割払い等判決をすることができるようにするなど、一般市民がより利用しやすい特別の訴訟手続を創設することとしております。  第四は、最高裁判所に対する上訴制度整備することであります。  最高裁判所は、憲法判断及び法令解釈統一という重大な責務を担っておりますが、現在は、実質的に上告理由がない上告事件が極めて多数に及んでいるため、最高裁判所がその処理に追われており、また、決定手続処理される事件については、憲法違反理由とする場合のほかは最高裁判所抗告をすることができないものとされているため、最高裁判所がその本来の責務を十分に果たすことが困難な状況にあります。そこで、最高裁判所に対する上告については、上告受理制度を導入し、最高裁判所は、法令解釈に関する重要な事項を含まない事件は、決定で、上告を受理しないことができるようにするとともに、決定手続処理される事件のうち法令解釈に関する重要な事項を含むものについては、法令解釈統一を図る見地から、高等裁判所許可により最高裁判所抗告をすることができるようにするなど、最高裁判所がその機能を十分に果たすことができるように最高裁判所に対する上訴制度整備することとしております。  なお、この法律制定に伴い、最高裁判所規則制定等所要手続を必要といたしますので、その期間を考慮いたしまして、この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、また、現行民事訴訟法につき所要整理をし、必要な経過措置を定めております。  次に、民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案について申し上げます。  この法律案は、ただいま申し上げました民事訴訟法案が可決されました場合、その施行当たり民法外四十三の関係法律について規定整備等を行うとともに、所要経過措置を定める必要がありますので、これらの改正を一括して行おうとするものであります。  以上が、民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  6. 及川順郎

    委員長及川順郎君) この際、両案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員太田誠一君から説明を聴取いたします。太田誠一君。
  7. 太田誠一

    衆議院議員太田誠一君) 民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案に対する衆議院における修正部分について、その趣旨を御説明いたします。  まず、民事訴訟法案に対する修正趣旨について御説明いたします。  政府提出案は、公務員職務上の秘密に関する文書でその提出について監督官庁承認をしないものは文書提出義務がなく、当該監督官庁承認は、公共の利益を害し、または公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合を除き、拒むことができないこととなっておりますが、その判断行政庁の裁量にゆだねられ、司法審査が及ばないこととなっているのであります。さらに、情報公開に対する国民要請及び裁判所審理促進に不可欠な証拠文書の拡大という本法案趣旨を踏まえ、情報公開制度に関して行われている検討と並行して、総合的な検討を加える必要があります。  そこで、文書提出命令に関する規定について、法案第二百二十条第四号口を削除し、同号柱書きの「文書」を「文書公務員又は公務員であった者がその職務に関し保管し、又は所持する文書を除く。)」に改めた上、法案第二百二十二条を削除することとし、これに伴い、所要規定整備を行うとともに、附則において、法案第二百二十条第四号に規定する公務員または公務員であった者がその職務に関し保管し、または所持する文書対象とする文書提出命令制度について、行政機関の保有する情報を公開するための制度に関して行われている検討と並行して、総合的な検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることとし、その措置は、本法律公布後二年を目途として講ずるものとするものであります。  次に、民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案に対する修正趣旨については、民事訴訟法案修正に伴い所要規定整備を行うこととするものであります。  以上が政府提出の両法律案に対する衆議院における修正部分趣旨であります。  何とぞ両修正に御賛同くださいますようお願いいたします。
  8. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 以上で両案の趣旨説明及び衆議院における修正部分説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 野村五男

    野村五男君 ただいま法務大臣そして修正案提出者から御説明がありましたが、これまでの審議においては文書提出命令に関する質疑が中心であったように思われます。しかし、今回の改正においては、最高裁判所に対する上訴制度整備一つの柱とされており、複雑多様化する社会状況から見まして今後は司法役割がますます重要になってくると考えられるところでありまして、その意味におきましても最高裁判所に対する上訴制度整備が重要な事項であると思います。  そこで、最高裁判所に対する上訴制度改正についてお尋ねいたします。
  10. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) お答え申し上げます。  最高裁判所は、憲法判断及び法令解釈統一という大変重大な責務を負っているわけでございまして、現行法上、上告特別上告について裁判権を有しているのであります。  その問題点といたしまして、まず上告につきましては、一つに、最高裁判所におきましては、近時、民事訴訟等上告事件数が増加しておりまして、刑事上告事件等をも考えますといわば負担過重状況にあります上、今後も最高裁判所憲法裁判所及び終審裁判所としての判断を求められる事件が一段と増加することが予想されます。  二つに、現行法では広く原判決影響を及ぼすことが明らかな法令違反というものが上告理由として規定されておりますが、形式的には法令違反を主張しているものの、その実質は原審の事実認定に不服を言う者が多いという問題がございます。そういう問題のため、最高裁判所憲法判断及び法令解釈統一という責務を十分に果たすことが困難な状況にございます。  一方で、抗告につきましては、現行法上、憲法違背理由とする特別抗告を除きまして最高裁判所に対しては抗告を提起することができないということになっておりますが、民事執行法民事保全法等制定に伴いまして、決定によって判断される事項の中に重要なものがふえてきております一方で、重要な法律問題について高等裁判所判断が区々に分かれている状況が生じているという問題がございますので、決定事件についても最高裁判所法令解釈統一という責務を果たすという必要性が強いわけでございます。  そういうことから、今後、最高裁判所憲法問題や重要な意義を有する法令解釈の問題について適切な判断を示し、その本来の責務を十分に果たすことができるようにするためには、適正な範囲上告理由について整理をする、一方で、法令解釈統一を図る必要がある決定事件につきましては、法律審としての判断をすることができるようにする必要がある。こういう理由から、最高裁判所に対する上訴制度について所要改正をすることとしたものでございます。
  11. 野村五男

    野村五男君 では、最高裁判所にお伺いしますが、今回の改正において最高裁判所に対する上訴制度について改正を行った理由を改めてお伺いいたします。
  12. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 改正理由といいますと、ただいま法務省の方からも御説明がありましたように、最高裁判所負担過重状態にあるというのはこれはかなり長い間の歴史がございますが、その歴史の中で、どうしても上告事件として処理をすべき、本来の最高裁判所が果たすべき役割を果たせるような形の上告制度のあり方にしてほしいという、こういう強い希望をかねてから持っておったわけでございまして、まさにそのふさわしい事件をふさわしい手続において処理をさせていただきたい、これが私どもの念願でございます。
  13. 野村五男

    野村五男君 今、法務省最高裁判所にお伺いしたわけでありますが、最高裁判所負担過重状態にあるとのことであります。  その現状を知りたくてお伺いするわけでありますが、最高裁判所年間処理件数はどの程度になるのか、また最高裁判所判事年間一人当たりでどの程度件数処理するのか、最高裁にお伺いいたします。
  14. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 具体的に事件数で申し上げたいと思いますが、最高裁判所における平成六年じゅう上告審訴訟受事件でいいますと、再審事件を除きますが、その数は、民事事件が二千五百十八件、行政事件が二百五十四件、刑事事件が千三百三十九件でございまして、総数で四千百十一件でございます。  最高裁判所裁判官の人数は、御案内のとおり、十五名でございますので、単純計算では最高裁判所裁判官一人当たり事件負担は二百七十四件ということになるわけでございますが、最高裁判所裁判官原則的に各小法廷に配てんされた事件のすべてについてその審理に関与するということになりますので、平成六年じゅう民事訴訟上告審受事件の数は二千五百十八件でございますので、この場合は特別上告事件を含みますが、民事事件に関する最高裁判所裁判官事件負担は、小法廷三つでございますので、その三分の一でございます八百三十九・三件と、単純に申し上げますとそういうことになるわけでございます。
  15. 野村五男

    野村五男君 ありがとうございました。  形式的には上告理由を主張しているものの、実質的には上告理由がないものが多いとのことでありますが、最高裁判所原判決を取り消すのは年間どの程度なのか、改めて最高裁判所にお伺いいたします。
  16. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 平成六年じゅう民事行政事件上告審既済事件のうち、原判決が破棄された事件の数は六十八件でございます。判決総数は二千四百八十一件でございますので、その占める破棄判決の割合は約二・七%と、こういう数字になっております。
  17. 野村五男

    野村五男君 ただいま説明がありましたような状況にあるとしますと、そのような問題点を解消するために今回最高裁判所に対する上告制度をどのように改めたのか、お伺いいたします。
  18. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 最高裁判所に対する上告につきましては、まず最高裁判所に対する上告理由を、一つ憲法違反二つ法令違反のうち重大な手続法違反ということといたしまして、この事由理由とする場合に限って最高裁判所に対して上告をすることができるものといたしました。一方で、法令違反につきましては、当事者は、最高裁判所の判例と相反する判断がある事件、その他の法令解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件につきまして上告審として事件を受理するよう申し立てることができる、いわゆる上告受理の申し立ての制度を採用することといたしまして、最高裁判所がその事由に該当すると認めるときは上告審として事件を受理する決定をすることができるものとしております。  最高裁判所は、今申しました憲法違反または重大な手続法違反という事由がある場合には原判決を破棄しなければならないものとし、一方、そういう事由がない場合でございましても、判決影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるときは原判決を破棄することができる、こういう制度とすることとしているわけでございます。
  19. 野村五男

    野村五男君 それでは、現行民事訴訟法のもとでは、第二審の判決の事実の認定について不満があることを理由として上告をすることができるのかどうか、お伺いいたします。
  20. 山崎潮

    政府委員山崎潮君) お答えを申し上げます。  我が国の民事訴訟におきます上訴制度につきましては、第一審の判決に対する不服が控訴、その判決に対する不服が上告になるわけでございますが、そこには大きな質的な差異がございます。  控訴につきましては、事実認定に関します不満、あるいは法令解釈適用に対する不満、すべてが対象になるわけでございます。その関係から、控訴については理由は不要であるという構造をとっております。  最高裁判所に対する上告につきましては、これは法律判断、あるいは法令解釈憲法解釈ということに原則として限定がされるわけでございます。事実認定に関する不満は取り上げられないということで、最高裁判所におきまして上告関係につきましては、高等裁判所までで行われました事実認定前提にして判断をすると、こういう構造になっているわけでございます。
  21. 野村五男

    野村五男君 上告審は専ら法律適用について審理を行うとのことでありますが、現在は判決における事実の認定が著しく常識に反するような場合であっても上告をすることができないのか、またその点は今回の改正によってどのようになるのか、御説明を願います。
  22. 山崎潮

    政府委員山崎潮君) ただいま申し上げましたように、上告審におきましては事実認定に関する不満は言えないということになっております。  しかしながら、事実認定に関するものであっても著しく常識に反するというものもあるわけでございます。これは専門的には経験則違背ということでございますが、この具体的な内容は、経験から得られました物事あるいは事象に関する知識とか法則ということになるわけでございます。これにつきましては、法令違反ということで上告理由となる場合があるというふうに解釈されているわけでございます。この経験則、易しく言えば、例えば赤ちゃんが激しく泣いているという状況では、赤ちゃんは決して喜んではいない、要するに何かを要求しているかどこか悪いところがあると、こういうようなことが導き出されるわけでございます。こういう点につきまして、今回の改正案でどういうふうに扱われるかということが問題になるわけでございます。  先ほど答弁がございましたように、今回の改正案につきましては上告受理制度というものを設けているわけでございます。これは三百十八条に設けられているわけでございますけれども、ここでは法令解釈につきまして重要な事項を含んでいるかどうかということが受理されるかどうかの要件になっております。したがいまして、まずその法令解釈に入るかどうかということになるわけでございますが、私ども経験則違背法令解釈に関するものであるというふうに理解をしているところでございます。  この点につきましては、法律専門家の一部からでございますけれども、ここに含まれないのではないかという御指摘がございます。その御指摘のどうも内容は、経験則につきましてはそれを適用するかしないかの問題ではないかと、こういう御指摘でございまして、解釈に関するものではないんじゃないかと、こういうようなことでございまして、この解釈という文言の中に含まれないというような御指摘かと考えられます。  しかしながら、経験則適用する場合には、どういう経験則があるのかということが前提として解釈が問われるわけでございます。経験則につきましては、したがいまして、解釈適用二つの場面があります。そういう関係から、この法令解釈というところに含まれるというふうに理解しているところでございます。
  23. 野村五男

    野村五男君 次に、許可抗告制度についてお伺いするわけでありますが、今回の改正では、上告制度改正決定手続における許可抗告制度の導入は一体のものであると聞いておりますが、今回新たに導入される許可抗告制度とはどのようなものなのか、お伺いいたします。
  24. 山崎潮

    政府委員山崎潮君) ただいま上告制度につきまして申し上げてきたわけでございますが、この抗告制度判決手続ではなく決定手続に関するものでございます。  決定判断される事件につきまして、例えば民事執行関係、あるいは民事保全関係、あるいは家事事件等、最近非常に複雑なものがふえているわけでございますが、このような事件決定事件処理されることが大部分でございます。このような事件に関しましては、仮に不満がありましても最高裁判所判断してもらうためには憲法違背、あるいは憲法解釈に間違いがあるということでなければならないわけでございます。このルートは特別抗告というふうに言われているわけでございます。  しかしながら、憲法判断に至らない法令解釈適用の誤りというものもあるわけでございますが、現在ここにつきましてはルートがないと、閉ざされているわけでございます。しかしながら、やはり決定事件といいながら、大変重要なものがふえているわけでございます。このようなものについて最高裁判所判断を仰げないということになりますと、高等裁判所判断が最終の判断になるわけでございますが、物によっては東京高等裁判所と大阪高等裁判所判断が分かれてしまいまして、結論が全く反対になるということも生じるわけでございます。現に生じたことが何回かございます。こうなりますと、大変実務が混乱をするということになります。  これにつきまして、では立法改正したらいいじゃないかという御意見もあろうかと思いますが、立法改正をやるには大変なエネルギーが要るわけでございます。今回の民事訴訟法もまさに大変なエネルギーが必要だったわけでございますが、一つ一つの個別の事象についてその都度法改正をするというのは大変困難でございます。そういう関係から、その辺の調整を最高裁判所に果たしていただきたいということになるわけでございます。  そういうことから、今回はやはり最高裁判所法令解釈統一という機能を十分に果たしていただくということから、高等裁判所の方で、これは重要な法令解釈の問題を含むということであれば、許可をいたしまして最高裁判所へのルートを広げる、こういうふうにしたわけでございます。  今回の改正につきましては、上訴制度について、これを制限するものであるというふうに御指摘されるところがございますけれども、決してそうではなく、この面におきましてはかえって広げているということでございまして、私どもといたしましては上訴制度整備であるという理解をしているところでございますので、この点を十分に御理解いただきたいと思います。
  25. 野村五男

    野村五男君 最後にもう一点だけお伺いします。  ただいま説明がありましたが、今回の最高裁判所への上訴制度改正趣旨内容等については、憲法判断法令解釈統一という機能の充実を図るために適切なものとは思いますが、このように最高裁判所に対する上訴制度改正したとしても、重要なのは実際の運用だと思います。  そこで、具体的に運用に当たる最高裁判所としてはこの改正をどのように考えているのか、お伺いします。
  26. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 先ほど来、委員も御指摘になりましたが、今回の改正は、今後司法の果たすべき役割が高まり、事件がさらに増加するという状況が見込まれることから、最高裁判所憲法問題や重要な意義を有する法令解釈の問題について速やかな判断を示し、その本来の責務を十分に果たすことができるようにするため、真に最高裁判所判断するにふさわしい事件に精力を集中できる環境を整えることが必要である、こういった認識のもとに行われるものであるというふうに理解をしているものでございます。  このような改正案が提案されておりますのも、民事訴訟に対する社会的な関心が非常に高くなっておりまして、司法に対する国民の期待が背景にあるものと考えられるわけでありますが、これにつきましては非常にありがたいことであるというふうに感じる反面、今後改正法のもとでの民事訴訟の運営に携わる者として、最高裁判所を初めとする裁判所の責任の重大さを改めて痛感しているところでございます。  改正後の最高裁判所への上訴制度の運用の具体的なあり方については、実際に事件を担当する最高裁判所裁判官判断すべき事項でございますが、事務当局として意見を述べる立場ではございませんが、民事訴訟国民に利用しやすく、わかりやすいものとするという今回の改正趣旨、目的に照らして、適切に運用されることになるものと考えているところでございます。
  27. 志村哲良

    ○志村哲良君 ただいまの同僚議員の質問にも裁判所関係の問題が大分含まれておったようでございますが、私も、民事裁判に時間がどうもかかり過ぎるというような、言うなれば庶民の声を聞くことが間々ございます。そんなことに思いをいたしながら、民事裁判の問題に関してお伺いをしたいと思います。  私は、実は見てきたわけでもありませんし、聞いてきたわけでもありませんが、衆議院においては文書提出命令の問題に質疑時間の大半が費やされたようだというような話を耳にいたしております。民事訴訟法案はほかにも多くの改正を行おうとするものであります。その内容、意義を明らかにしておくことも国会として必要ではないかと考えておるものであります。  民事裁判につきましては、これに時間がかかり過ぎるという点が大きな問題であるとされていますが、今回の法案はこの問題に対処する観点から改正を行っているものと承知をいたしております。  そこで、民事裁判に時間がかかり過ぎるという問題点を改善するために今回の法案がどのような改正を行っているのかという点を中心として質問をいたしたいと考えております。  まず第一に、民事裁判に時間がかかり過ぎるという印象は多くの国民が抱いているのではないかと思います。ところで、平均審理期間は、法案関係資料によると意外に時間がかかっていないようにも思いますが、平均審理期間には争いがない事件審理期間も入っていると思います。  そこで、第一審である地方裁判所において審理期間が二年以上のもの、三年以上のもの、五年以上のものは何件あって、それぞれ何%を占めているのかという点について、まず裁判所にお伺いをいたしたいと思います。
  28. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 第一審の典型的な審理機関でございます地方裁判所の例で申し上げますが、地方裁判所における平成六年の民事通常訴訟既済事件総数は十四万四千八百十四件でございます。  このうち、審理期間が二年を超えるものは七千八百三十七件で五・四%、三年を超えるものは四千五百五十件で三・一%、五年を超えるものは千七百六十一件で一・二%、こういうことになっております。
  29. 志村哲良

    ○志村哲良君 民事訴訟法案は、民事裁判に時間がかかり過ぎるという問題点を解消して、民事訴訟を利用しやすくしようということも一つの大きな目的として理解しておりますが、具体的には民事裁判を迅速にするためにはどのように改正をしているのでしょうか。
  30. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 今回の民事訴訟法改正の目的は、民事訴訟国民に利用しやすくということでございますが、その最大の眼目は、民事訴訟が時代の要請に適合したスピードで処理される、もとより適正を確保しつつということであることは当然でございますが、適正を確保しつつ迅速に処理されるということの要請に対する対応が最も肝要なことであろうというふうに考えているところでございまして、今回の改正の主要な目的の一つに、適正かつ迅速な裁判の実現を可能とする手続法の実現ということがあるわけでございます。  そういう観点からの改正事項、細かい点を申し上げれば大変たくさんございますが、まず主要なものを申し上げますと、一つ争点及び証拠整理手続整備であり、一つ証拠収集手続の拡充であり、いま一つは、これは少額事件特有の問題でございますが、いわゆる少額訴訟手続を設けたということ、この三点を主要なものとして申し上げることができようと思います。  争点及び証拠整理手続整備という観点では、これは事案の種類に応じてその争点整理するための手続を適切に選択することができるように、三つの準備のための手続を設けるということにいたしております。  一つは、争点整理を集中的に行うことを目的とする口頭弁論である準備的口頭弁論手続、それから一つは、現行準備手続規定がございますが、この内容をより充実させ使いやすいものにするという改正を加えた弁論準備手続、もう一つは、遠隔地にある当事者裁判所に出頭しないでも、書面の提出等によって争点等の整理をすることができる書面による準備手続、この三種類の手続を設けて、事案に応じて適宜に裁判所が選択をすることができるということにして、迅速かつ適正な裁判の実現に資しようとしているわけでございます。  二つ目の証拠収集手続の充実は、これは訴訟に必要な証拠の収集をしやすくすることによって当事者争点等の整理に向けた十分な準備をすることができるようにという観点も含めまして、文書提出命令対象となる文書範囲を拡充いたしますほか、文書提出命令手続整備をすることとしているわけでございます。  少額訴訟手続の創設につきましては、三十万円以下の金銭の支払いを目的とする事件につきまして、原則として一回の期日で審理を遂げて即日判決をする。また、被告による任意の履行が期待されますように、被告資力等を考慮して分割払いや支払い期限の猶予を命ずることもできるようにするという特別の訴訟手続を創設いたしまして、そういった事件についても一般市民訴額に見合った経済的あるいは物理的な負担をもって裁判を受けることができるような道を開こうということでございます。  主要な点だけを御紹介申し上げました。
  31. 志村哲良

    ○志村哲良君 争点及び証拠整理手続として、準備的口頭弁論弁論準備手続、書面による準備手続という三種類の手続整備したということであります。  このように三種類の手続を設けた理由はどういうところにあるのかをひとつ御説明願います。
  32. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 迅速な裁判の実現という観点からいいますと、訴訟の進行といたしましては、まずもって早期にその事件争点が何であるかということを明確にし、その上で、その争点に焦点を絞った効率的な証拠調べを行うということが必要でございます。要するに、争点整理証拠調べとの間でめり張りをつけた審理をするということが肝要であろうと考えられるわけでございます。  現行法におきましては、その整理のための手続が十分なものではない、また使いにくい面がある。そういうことから、ややもすれば五月雨式の審理方式がとられがちである。したがって、争点整理されるまでに長期間かかる。あるいは、証人尋問等の証拠調べをしたところ、その後にまた別の争点というものが出てきて、前の証拠調べがいわばむだになったというようなこともないではない。  そういうことから、この法律案におきましては、通常の訴訟においては、今申しましたような争点整理手続証拠調べ手続とを基本的に区分してめり張りのついた審理をする、そういう手続整備したい。そういうことから、事案の性質に応じていろいろなパターンの準備手続を利用することができるようにするのがいいのではないかということから、幾つかの種類の準備手続を用意しようということで、先ほど申しましたような三つの種類の手続整備するということにしたわけでございます。  先ほどもちょっと申し上げましたが、一つは、公開の法廷争点等の整理を行う手続としての準備的口頭弁論手続二つといたしまして、法廷以外の準備室等を利用して行う、必ずしも公開を要しない形での争点整理手続としての弁論準備手続、それから三つ目といたしまして、当事者が遠隔の地にいるというような場合などに、当事者裁判所に出頭するについて障害がある事件につきまして、当事者の負担を軽減するとともに争点整理早期にすることができるようにということから、当事者裁判所に出頭しないで準備書面の交換とかあるいはいわゆる電話会議システムといった方法を利用する等によって争点等の整理をすることができる手続としての書面による準備手続を設けたわけでございます。  事案の性質に応じて、また当事者の意向を聞きながら、いずれの手続を利用するのかということを裁判所において適切に判断して運用していただくということを期待しているわけでございます。
  33. 志村哲良

    ○志村哲良君 早期争点を明確にすることができるかどうかは、三種類の手続を適切に選択することができるかどうかにかかっていると私ども素人は考えますが、三種類の手続をそれぞれどのように活用することをお考えになっておられるのか、実際に裁判を担当している裁判所の見解をお伺いしたいと思います。
  34. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 申し上げるまでもございませんが、私ども裁判経験した者として考えますと、事件といいますのはまさに千差万別でまた生き物であるという感じがいたします。  裁判所としては、事案の内容争点の多寡などの具体的な事情を勘案して、その事件に最もふさわしい手続を選択するということが、委員指摘のとおり、非常に大切なことであろうと思います。そういう意味で、それぞれの手続の利点、特徴を生かして活用していくということになるものと予想されます。  例えば、国民的な関心の高い事件や、当事者関係者が多数いる事件など、公開法廷での弁論によった方が円滑に争点等の整理を行うことができる事件では準備的口頭弁論が活用される。準備的口頭弁論といいますのは、形としては今いろいろ話題になっておりますラウンド・テーブル法廷のようなものを念頭に進めていきたいと思っておりますが、そのような準備的口頭弁論が活用されることになるだろうと思います。  また、その事案あるいは当事者の抱えている問題、あるいはその準備程度等によりまして、公開法廷では率直な意見交換ができなくなるような事件などでは弁論準備手続、これは先ほど法務省からもお話がありましたように、和解室とか準備室が利用されることになると思いますが、こういう弁論準備手続が活用されることになるだろうと思われます。  さらに、当事者が遠隔の地に居住しておったりあるいは病気にかかっているなどの事情によって裁判所への出頭が困難である場合などには、当事者の出頭を求めずに行える書面による準備手続が活用されることになるであろう、一応こんなところが考えられるところでございます。
  35. 志村哲良

    ○志村哲良君 次に、少額訴訟手続の創設について伺います。  少額訴訟手続の創設は、三十万円以下の金銭の支払い請求事件について、原則として一回の期日で審理を遂げるということでありますから、この手続が迅速な手続であることは間違いないと思うのですが、この手続を利用することができる事件を三十万円以下の事件に限定したのはどういう理由でございますか、これもお伺いしたいと思います。
  36. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘少額訴訟手続、これは先ほども申しましたように、一般市民がそういった事件訴額に見合った経済的負担あるいは時間的負担でもって迅速かつ効果的な解決を求めることができる、そういう特別の手続を設けようとするものでございまして、そのために手続的には通常の手続とはかなり明確な区分を設けることとしております。  すなわち、原則として一回の期日で審理を終了してしまう、そして原則として直ちに判決の言い渡しをするということのほか、不服の申し立て方法といたしましても通常の上訴という方法は認めない、同一審の中での異議手続にとどめるという制約をするということにしております。また、裁判内容といたしましても、先ほどちょっと申し上げましたように、本来即時に支払わなければならない、そういう義務がある場合でございましても、こういう事件につきましては判決をもらっても強制執行をするということは通常費用的にも合わないということでございますので、任意の履行が期待されるように裁判所判断によって一定の範囲内での分割払いあるいは支払い期限の猶予をする、そういう判決をすることもできる、こういうふうなかなり一般の手続とは明確な区分をすることとしているわけでございます。  そういう観点から考えますと、この手続対象となる事件訴額の上限、これを余り高くしますと、そういう特別の取り扱いをするということについてのコンセンサスが得られにくくなるという問題がございます。そういう観点から、その上限の額は余り高くしない方がいいのではないかというふうに考えられたわけでございます。  また、この問題につきましては、平成三年末に公表いたしました民事訴訟手続に関する検討事項、あるいは平成五年末に公表いたしました改正要綱試案、こういうものに対して各界の意見が寄せられましたが、それを見ましても訴額の上限は三十万円以下とするという意見が多かったということもございますし、外国の制度と比較してみましても、これと似たような手続を設けておりますアメリカの各州あるいはイギリスの例を見ましても、その対象となる事件訴額の上限は三十万円あるいはそれより低いというところが多いと、こういったことを総合考量いたしまして三十万円という金額をもって上限を設定することにした次第でございます。
  37. 志村哲良

    ○志村哲良君 時間が限られておりますから、あと一問だけお伺いします。  三十万円以下の訴訟事件では、弁護士を代理人に選任するということは私は困難であろうと思います。当事者が自分で訴訟をすることが通常であろうと思いますが、そこで、素人の当事者が自分が十分に主張・立証できないままに一回の期日で審理が終わってしまうということにならないように運用上の配慮が必要になると思いますが、その点について裁判所はどのような配慮をすることをお考えになっておるのか、お伺いをいたします。
  38. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 少額訴訟の対象となります事件は、簡易裁判所事件の中でも金額が少額争点も少ない、複雑な法律問題を含まない事件でありまして、証拠の量も限られているものが多いというふうに予想をしております。  また、裁判所は、後見的な立場から、第一回期日前に当事者双方に対して書面及び電話等により少額訴訟の手続内容説明し、また、第一回期日においても裁判官が必要な事項説明するなど、当事者に対する手続教示というものをできる限り丁寧に行うよう配慮することが考えられます。審理を進めるに当たっても、裁判所が後見的な役割を果たしていくことになるものと思われます。  さらに、法案では、「少額訴訟においては、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。」とされているわけでございますが、当事者が第一回期日までに準備ができなかったような場合には、弁論を続行し、次回期日に証拠提出させるような運用がされることになるものと考えられます。  いずれにしても、初めての制度でございますので試行錯誤もあろうかとは思いますが、委員指摘のとおり、配慮を加えながら育てていきたいというふうに思っておるところでございます。
  39. 志村哲良

    ○志村哲良君 ありがとうございました。以上で終わります。
  40. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 平成会の魚住裕一郎でございます。  昨日の本会議におきまして、代表して質問に立たせていただきましたけれども、本会議で質問するのはどうかなと思うようなかなり細かいこともございましたけれども法務大臣におかれては細かい点まで含めてコメントをいただきまして、ありがとうございました。  そんな中で、私としては、また衆議院の議論でもそうでした、マスコミの中でもやはりどうしても文書提出命令部分についてかなり議論が沸騰しておりまして、衆議院修正という形になったわけでありますが、その議論の中でも問題になっておりました証人義務との関連性がありました。私の本会議での質問も、この公務員の証人義務、職務上の秘密あるいは証言の拒絶というか拒否というか、そういう点についても文書提出命令の再検討と含めて一緒に検討されるのかというような質問の趣旨だったわけであります。  きのうの御答弁は、そういうことではないというような趣旨だったんですが、この公務員の証人義務、証言義務のところについては、今後の文書提出命令の再検討に当たって、再度この部分についての改正なりも視野に含めた再検討が加えられるのかどうか、この点につきまず政府の側から質問をしたいと思います。
  41. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 証言拒絶の場合の取り扱いの問題と文書提出命令制度の場合の取り扱い、それぞれの場面において、公務員職務上の秘密に関する事柄の裁判手続における開示というものをどうするかという観点から申しますと、証言にしろ文書にしろ、裁判資料として提供することによって必然的にその情報が公開されることになるという面では共通の面を有するということでございますが、他方では、証拠方法としての違いという面もあるわけでございます。  今般の衆議院における修正それから衆議院法務委員会で付されました附帯決議で指摘されました再検討対象は、いわば公務員等が保有する文書に関する文書提出命令制度のあり方ということでございます。  しかしながら、その問題を考える上におきましては、先ほど申しましたような観点から、証言拒絶の場面との整合性というものも念頭に置きながら考えてまいらなければならないというふうに考えておるところでございまして、その整合性を考えながら検討するという過程において、そちらの方についても手当てをする必要があるかどうかという観点も含めて検討をすることになるだろうというふうに考えております。
  42. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それでは、ちょっと具体的にお聞きしたいと思います。  政府原案の百九十一条におきまして、「公務員の尋問」という項目で書いてありますが、その中で「職務上の秘密」という言葉がございます。これについては、要するに監督官庁承認を得なければいけませんよという規定になっておりますが、この「職務上の秘密」という部分、この秘密性の判断はだれが行うのか、この判断権はだれが持っているのかという点はいかがでしょうか。
  43. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 現行法解釈といたしましては、関連する規定でございます、法案におきましては百九十九条、現行法では二百八十三条になりますが、公務員を証人として職務上の秘密について尋問する場合の証言拒絶の当否については、これは裁判所判断対象とならないということが間接的に規定されているところでございます。そういう規定の文言。  それから、刑事訴訟法でも同じ公務員の証人尋問についての証言拒絶の規定がございますが、刑事訴訟法ではもう少し明確に「本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、」「承諾がなければ」というふうに規定しておりますこと。  それらの対比等から考えまして、この職務上の秘密に属するかどうかという判断は、当該秘密についていわば管理する、これを秘密として守るべきかあるいは公開してよろしいかということについての判断の権限と責任を負っている行政庁が持っている、そういうふうに一般に解されていると承知しております。
  44. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 こういう手続の中では、監督官庁判断するんだということだと思いますが、ただ、秘密漏えいとかいうような場合、守秘義務が問題になる場合、またそれが実質秘かどうかというようなことは、これは裁判所判断することになりますね。  ですから、必ずしも秘密を確定的に行政庁といいますか監督官庁に専属させておくという必要性はないんではないかと思うんですが、このお考えはいかがですか。
  45. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 原案を提出しました私どもの考え方として申し上げさせていただくわけでございますが、もとより、職務上の秘密に属するかどうかということ、あるいは当該秘密の管理に関する行政庁処理の適法、違法ということが訴訟上問題になっているというような場面、そういう場面におきましては、もとよりそれは司法判断に属するということになろうと思うわけでございます。  ただ、この証人尋問における証言拒絶という問題、これは御案内のとおり、証人につきましては特段の事由がない限り証言しなければならないというふうに一般義務化されているわけでございますが、その関係は、民事訴訟を運営する裁判所と、それから国民一般あるいは行政機関、そういうものとの協力関係として、国民あるいは行政庁も含めてそういう一般的な協力義務があるということで規定されているものと思われます。  すなわち、当該秘密の管理ということの当否ということ自体が訴訟の目的となっているものではない。行政機関との関係でいえば、立法府と行政府との訴訟の場面における協力関係のあり方ということに関する規定であろうというふうに考えているわけでございます。  そういう観点から考えますと、現行法の三権のあり方といたしましては、公務上の秘密をあくまでも秘密として保持すべきものであるのか、あるいはこれを必要な場合に公表して差し支えないものであるか、そういうことの判断というものは、これは当該行政について責任を持っており、かつその業務について最も承知している行政機関というものが判断をするというのが適当ではないか。もとより、その判断は法の趣旨に沿って適切に行われなければならないということは当然でございますが、そういうことを前提として、当該行政庁判断をするのが適当ではないか。そういう考え方で、現行民事訴訟法におきましても刑事訴訟法におきましても、公務員の尋問についての証言拒絶に関する規定が置かれているものというふうに理解しているところであります。
  46. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 もう少し短目によろしくお願いします。  今度は、百九十一条二項で新たに、承認の拒否をする場合ということが規定されております。現行民事訴訟法では、どういう場合に拒否できるかという規定がないわけですね。新たにこれを加えたという形になっております。  今まで、じゃ具体的にどういう場合に拒否できるのかというのは、通説あるいは実際の実務の扱いでは、刑事訴訟法の国の重大な利益を害するような場合というような扱いになっていたわけでありますし、通説の見解でありましたけれども、この二項に規定する「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合」というのは、今までの通説の考えと同じというような趣旨で入れたんでしょうか。あえて表現も変えてこのような形にするというのはどういうような意図なんでしょうか。
  47. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 現行法上の証言拒絶の場面における職務上の秘密という概念、あるいはそれを拒絶することができる事由につきましては、いろんな言い方がされておりますけれども、今回法案化いたしました、「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」、こういうことであるというのが一般的な考え方であろうというふうに思っております。そういうことを前提としてこの規定を用意したわけでございます。  この規定を置くことにした経過でございますけれども現行法規定ではこの拒否に関する基準が明確でない。明確でないといいますか、何ら規定が置かれていない。したがって、いかなる場合に拒絶でき、いかなる場合に拒絶できないのかという基準が明確でないために拒絶が安易に行われるおそれがあるのではないか。そういうことから、現行法の一般的な考え方というものを前提として、それを法文上明確化した方がいいのではないか、そういう議論でこの規定が置かれたわけでございます。  なお、刑事訴訟法との比較の御指摘でございましたけれども、確かに刑事訴訟法におきましては、「国の重大な利益を害する」という表現が用いられておりまして、これはやはり今回用意いたしました法案とは範囲が違うのではないだろうかというふうな認識を持っています。この間は同じであるという認識は持っておらないわけでございます。  こういう違いが設けられておりますのは、一方は、国家の刑罰権の発動をする前提としての真実の発見、探求という要請であり、他方は、私人間の紛争を解決して私的秩序の安定を図るという制度である民事訴訟制度における真実の発見、探求に対する要請でありますが、その両者の間には程度において差異があるという理由に基づくものであるというふうに理解しております。  現に、現行法規定におきましても、これは一般国民の証言拒絶の事由といたしまして、民事訴訟法では「恥辱ニ帰スヘキ事項」、今回の法案では「名誉を害すべき事項」というふうに表現しておりますが、そういうもの、あるいは「技術又ハ職業ノ秘密ニ関スル事項」。こういうものは、民事訴訟法上は証言拒絶事由になっておりますが、刑事訴訟法上は証言拒絶事由になっていないという違いがあるわけでございまして、それはおのずから刑事訴訟法と民事訴訟法ではやはり国民一般の協力義務のあり方に程度の違いがあるということを前提にしているものではないかというふうに認識しているところでございます。
  48. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今、局長は、一般的考えをこの中に入れたんだというような言い方をされましたけれども、実際のこの民事訴訟法学界では、通説は違うんじゃないか、やはり刑事訴訟法と同じような規定の仕方で解釈すべきだという発想ではなかったかと思うんですね。いろいろ調べたら、この文言の規定の仕方というのは、ドイツの連邦あるいはラントの公務員法の中に似たような文言があると。そこから引っ張ってきたのかなと思っておりますが。  しかし、今、刑事あるいは民事の差異をもとにこういうような規定の仕方にしたんだというようなことでございましたけれども大正十五年の、現行民事訴訟法の前の訴訟法、このときは文言は違いますでしょう。「此許可ハ証言カ国家ノ安寧ヲ害スル恐アルトキニ限リ之ヲ拒ムコトヲ得」。ある意味ではもっと、このような百九十一条二項のような規定の仕方ではなくして、逆に言えば、刑事訴訟法的な規定ぶりといいますか、していたわけでありまして、あえて新規立法というか、ここの部分につけ加えてやるのはいかがなものかなというふうに思うわけであります。  そこで、私は納得できませんけれども、このような事由があると承認を拒むことができるというふうになっておりますが、百九十八条では、「証言拒絶の理由は、疎明しなければならない。」というふうになっているわけですが、これは監督官庁でももちろん疎明をするということになるわけですね。  これは、裁判所から見て不十分な疎明ではないかと思っても、これは判断できないことになるんでしょうか。そしてまた、そんなことであれば疎明する必要もなくなってくるんではないかというふうになってくるんで、何かこの制度の立て方自体おかしなぐあいになってくるんではないかなと思うんですが、この点について御答弁願います。
  49. 柳田幸三

    説明員(柳田幸三君) 御指摘の第百九十八条は、現行法の二百八十二条を現代語化したものでございまして、現行法内容をそのまま引き継いでいるものでございます。  現行法二百八十二条の解釈といたしましては、公務員職務上の秘密に関する証言拒絶について特に例外を設けておりませんので、御指摘のように疎明を要すると解するのが一般的な見解であると理解をしているところでございます。  判断権の所在、疎明をした後で裁判所がどのように判断するかということにつきましては、先ほど局長から御答弁申し上げたとおりでございます。
  50. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 証人の一般義務化という形で、こういう手続的にも、あるいは疎明、それに対する当否の判断等についても、いわゆる民間人と公務員との間に大きな格差が出ているわけですね。  もちろん現行民事訴訟法大正十五年ですから、明治憲法の時代につくったわけでありますけれども、もう日本国憲法になって五十年、公務員の地位も天皇の官僚といいますか、そこから国民全体の奉仕者というそういう立場に変わりましたし、余り大きな官民格差をつける必要はないんではないかというふうに考えておりますけれども、この点に関する法制審議会での議論というものはどのような展開だったんでしょうか、かいつまんでちょっと教えていただければと思います。
  51. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 証言拒絶事由に関する法制審議会の審議の経過がどういうものであったかというお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたように、現行法上はいかなる場合に証言拒絶ができるかということに関する規定がないということで、これをやはり明確にした方が行政の側の拒絶権の行使の適正を図るという観点から適当であろうということでこの規定を置く方向で議論がされたわけでございます。  その議論の中におきまして、この拒絶事由内容、今御指摘がございましたような刑事訴訟法の規定との関係も含めて、議論の中ではさまざまな意見が闘わされたというふうに承知をいたしております。その議論を経まして、先ほど申しましたように、現在いろんな考え方がありますけれども、一般的な考え方と思われるこういう表現で明文化するということに落ちついた経緯がございます。  この規定、再三申し上げますように、いろんな考え方がございますけれども一般的な考え方ということでございますが、加えまして、この公務上の秘密というものの中にはいろんな種類のものがございますし、とりわけ個人のプライバシーに関するというような問題もあるわけでございますが、刑事訴訟法の規定のような置き方をしますと、そういったものが必ずしも職務上の秘密として保持しがたいということもあるのではないか、そういうことも考慮してこういう規定を置くことにされたという経緯があると承知しております。
  52. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 なかなか納得できませんが、ここの百九十一条二項の証言承認拒否要件、これはやはり公共の重大な利益を害するというような私は文言に変えていくべきであろうと思います。また、今局長がおっしゃられたような、これは個人のプライバシーとかそういう守らなきゃいけない場合ももちろんあるわけで、秘密だっていろいろな種類があります。それこそ証人申請する場合には尋問事項もつけてやるわけですから、尋問事項との対比の中でこれは秘密かどうかというのはわかってくるわけですから、やはりこれは裁判所判断できるような何らかの制度に変えていくべきではないかなと私自身は考えております。  公務員については、どうしても文書提出命令にパラレルに考えようということでありましたので今までずっとお尋ねをしてきたわけでありますが、やはり今聞いていて種々疑問も残ります。必ずしも私は、公文書の再検討に当たっては、公務員の証人義務のやり方とパラレルに考える必要はないというふうに考える次第であります。  さてそこで、文書提出義務についてお尋ねをしたいと思います。  ちょっと確認なんですけれども、この二百二十条、一、二、三、四号とございますが、この一、二、三という文書提出義務を生ずる事由については、これは文書提出命令の申立人が立証責任を負い、四号については、イ、ロ、ハ、ニというかイ、ロ、ハというか、除外事由文書の所持者が立証していくというような構図になっているというふうに考えていいのでしょうか、その点はちょっと確認です。
  53. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘のとおり、四号におきましては「次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。」という表現をしておりますので、文理上はその立証責任は申立人が負うということでございます。  ただ、各号の適用の場面において具体的な立証の必要性という問題は、また別個の問題であろうというふうに考えております。
  54. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それで今度は、修正案がこちらに来ているわけでありますが、公務秘密文書についてはこの四号から除外されました。  そうなると、公務員が、あるいはであった者が職務に関して保管する、所持する、こういう文書というのは、一号、二号、三号に該当するかどうかという形で判断されるわけでありますが、今まで判例が積み重なってまいりまして、努力し一生懸命やってきたというのが裁判実務だったと思いますが、この判例の今までの考え方に今回の修正案は影響がないというふうに考えていいんでしょうか。この点も確認でございますが、政府の方からお願いします。
  55. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 私どもは、今回修正を受けました政府原案のもとにおきましても、全く新たに四号を加えたものであるから、これまでの一号から三号までの解釈影響を与えるものではないというふうに理解しておりました。  今回、御指摘のような修正がされたわけでございますが、これも全く同様に、新たに四号を加えるものであるということでございますので、これまでの一号から三号までの範囲影響を及ぼすものではございませんし、これらについて解釈上その範囲を広げるという運用がされてきた、そういう解釈にも全く影響を与えるものではないというふうに受けとめております。
  56. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それでは、衆議院の議論も踏まえてというふうに次からお尋ねをしたいんですが、せっかく太田先生、枝野先生、お見えでございます。この二百二十条を中心にした修正が加えられたわけでございます。  趣旨としては、いわゆる与党修正案というのは、公務秘密文書を中心にして今までの扱いをそのままにして、二年間をめどにして再検討を加えなさいよという、そういうような内容になっておりますが、そこで、衆議院の先生、どちらでも結構でございますが、再検討といいますか、これを加える機関としてどのような機関を考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  57. 太田誠一

    衆議院議員太田誠一君) 附則に書いてありますように、二年間で再検討をして整備をするということでございますので、二年後までにその部分の成案を得たいというふうに思っております。
  58. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 附帯決議は、これは政府に対してしっかり検討しろよということだと思いますが、具体的に再検討の機関といいますか、長さの期間ではなくて、審議をする場所としての機関をどのようにお考えかということであります。  要するに、私がお聞きしたいのは、これがまた戻って法制審議会でやるというふうになってくると、政府原案をつくったのは法制審議会ですから、委員のいろんな差しかえとかあるのかもしれませんけれども、また同じ場所でやるのかなと。それじゃ余りおもしろくないんではないだろうか、これだけマスコミも注目し、混乱というような表現もございましたけれども、もっともっと違った機関で私は検討を加えるべきじゃないかとも思うものですから、衆議院の先生のお考えをお聞きしたいということでございます。
  59. 太田誠一

    衆議院議員太田誠一君) それは、昨日だか昨日であったかちょっとあれなんですけれども法務委員会に小委員会を設置をいたしまして、情報開示の司法判断に関する小委員会というのを設置することを決めております。  そこで、もちろん法制審議会でも、この附則に盛られたことに、あるいは附帯決議に関連をして再検討をされるという法務大臣からの答弁もございますので、そのような作業を早速されるんだと思いますけれども、立法府は立法府としての考え方を打ち出していかなければならない。こういう表現がいいかどうかわかりませんけれども、法制審議会の審議をチェックをしリードをするという考え方で臨みたいということでございます。
  60. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 再検討は速やかに開始をすることというふうになっております。もちろん、衆議院も解散もうわさされる中で大変忙しいというふうに思いますが、閉会になってもその小委員会が機能するかどうかわかりませんが、そういう決意で臨まれるということだと承りたいと思います。  さて、政府におかれましても、この二年間という期間を限られているわけでございますが、きのうもお聞きしましたら、公表の方法はいろいろ考えるけれども基本的には何か法制審議会の方でやるんだというようなことでございます。この二年間で本当にできるのかというようなことを含めて、法制審議会じゃなくて、もっともっと工夫することがないのかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  61. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 私どもといたしましては、昨日、本会議で大臣が答弁申し上げましたとおり、この問題は民事訴訟制度に関する基本的な問題でもございますので、これはやはり事柄の性質に照らして、法制審議会の民事訴訟法部会における審議を経て成案を得るべき問題であろうというふうに理解しているところでございます。さはさりながら、附則二十七条におきまして「二年を目途」という大変厳しい指摘をいただいているところでございます。  したがいまして、この問題については、一方、いわゆる行政情報公開に関する議論をにらみながら、それと並行して速やかな検討審議をし、お願いしていかなければならないというふうに考えておりまして、そのためにどういう方法、法制審議会にお諮りするということと同時に、その準備のための事務当局としてのいろんな作業といったようなものをどういうふうにしてやればこの附則の規定による要請にこたえられるか、私どもとしては早速に検討をいたしまして御要請に応ずべく最大限の努力をいたしたいというふうに考えているところであります。
  62. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 いわゆる行政情報公開制度と並行してというようなことでございますが、もしこの情報公開法の結論がこの二年間で出なかった場合、その場合はどうなるんでしょうか。
  63. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 私どもといたしましては、行政改革委員会設置法の趣旨に照らしまして、行政改革委員会におかれては本年中に答申が出されるものと考えておりますし、それに基づく法律というものも速やかに成案を得るということになるのではないかというふうに思っておるわけでございます。  したがいまして、私どもが描いております一つの姿といたしましては、その法案準備と並んで、私ども準備をして、時期を失しない時期に私どもとしての成案をまとめさせていただくということを描いておりますけれども、しかしながら、この附則の規定はいわゆる行政情報公開法ができるということを条件とするものではございませんので、それはそれとして、もしそれについて成案が得られないということであれば、私ども民事訴訟法の立場からの独自の改正案というものを検討していかなければならないものというふうに受けとめております。
  64. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。この修正案は、あくまでも公務員が持っている文書の扱いのある意味では暫定的な規定ということでございまして、二年間暫定期間があるということになるわけですね。法律の世界では、当分の間ということもよく聞かれますけれども法律によっては当分の間が五十年来ているというようなこともあるわけでございまして、二年といったら百年になっちゃうのかなみたいな、私は大変危惧を持っているわけでございまして、しっかりやっていただきたいと思います。  ここに日経新聞の六月八日付の社説を持ってきておるんですが、今の部分につきましてこういうふうに書いているんですね。  確かに民事裁判への公文書提出要求も、情報公開請求も、役所の情報独占に風穴を開けるという意味では共通の問題を抱えている。しかし情報公開の請求は単に知りたいというだけでも認められるのに対し、公文書提出は権利実現のため不可欠の証拠として訴訟当事者が切実に求めているものだ。必ずしも情報公開に足並みをそろえる必要はない。というような書き方になっておりますけれども、まさにそうだなというふうに思います。今、局長の姿勢というか、本当にしっかりやっていただきたいというふうに思う次第でございます。  さて、この問題につきましては、本当に衆議院においては大変な努力というか、審議をされてまいりました。その一つの結論というか、それが今回の衆議院法務委員会における附帯決議ではないかというふうに、私も敬意を持って拝見するわけでございます。  そこで、ちょっと細かいことになるかもしれませんが、確認の意味で若干教えていただきたいというふうに思います。  この附帯決議の二項の一号がございます。「公務員職務上の秘密に関する文書に関し、秘密の要件の在り方、提出義務の存否についての判断権の在り方及びインカメラ手続を含む審理方式について司法権を尊重する立場から再検討を加えること。」という表現でございます。三つありますね、再検討を加えるべき対象が。どういうふうな立場からというと、「司法権を尊重する立場から」というふうに書いてあります。こういうような理解でよろしいんでしょうか。太田先生あるいは枝野先生、よろしくお願いします。
  65. 枝野幸男

    衆議院議員(枝野幸男君) お答えいたします。  今、魚住先生がおっしゃられましたとおり、衆議院法務委員会の中で、この公務員職務上の秘密に関する文書につきまして議論になりました主な点が、この秘密の要件のあり方、提出義務の存否についての判断権のあり方、そしてインカメラなど審理方式についての考え方でありますし、また、議論を全体として通して見ますと、司法権の立場というものをきちんと尊重して問題点指摘していくという姿勢であったという理解に基づきまして、こうした附帯決議案というものをつくりまして、全会一致で了解をいただきました。したがいまして、今、委員から御指摘いただきましたような趣旨と御理解いただいて間違いないと思っております。
  66. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それで、この「提出義務の存否についての判断権の在り方」、このあり方について司法権を尊重する立場から再検討を加えるということですね。要するに、三つありますから、三つがそれぞれ個別にこの司法権を尊重する立場から再検討を加える。そうすると、今の提出義務の存否の判断権、これを、司法権を尊重する立場からというのは具体的にはどういうことになるんでしょうか。枝野先生、お願いします。
  67. 枝野幸男

    衆議院議員(枝野幸男君) まさにその具体的な内容についてが、残念ながら現時点で、例えば衆議院法務委員会におきましても幅広く一致をすることができなかった問題点でございます。したがいまして、その点を二年間の間にきちんと結論をつけていこうという趣旨でございます。  例えば、実際に修正案として、私ども与党提出修正案のほかに出されて結果的に否決をされました案の中には、全面的に裁判所に持たせてもいいではないかという御提案もございましたし、あるいは裁判所判断をした上で、最終的に政治的な声明によって司法権の決定について部分的にはノーと言えるという余地を残した修正案もございました。この点についてはなかなか一致が得られなかったものですから、二年間の間にまとめていこうという趣旨でございます。したがいまして、明確にこういうことにすることだということを申し上げられないがゆえに、むしろ二年間の間先送りさせていただいたという趣旨と理解しております。
  68. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ただ、修正案というのは、政府原案があったものが、これじゃだめだよというのが一つ意思表示がされていますね。この点については再検討しましょうということになるわけで、ただ再検討しましょうというだけであれば、それはどちらの方向に行ってもいいわけですが、「司法権を尊重する立場」、そういう方向性というふうに書いてあるわけですね。一方で、この原案というのは、この秘密性の判断、これは行政庁で、監督官庁でやるんじゃないですか。  あるいは、百九十一条が準用されておりますけれども、公共の利益を害し、または公務の遂行に著しい支障が生ずる場合、こういう要件ではだめなんだよということがまずきちっと衆議院法務委員会あるいは衆議院として出ているわけですね。その上で、司法を尊重する立場からの再検討ということになれば、私どう考えても秘密性の判断裁判所で基本的にやるべきではないか。あるいは、拒絶する場合のこの要件も、あれはだめなんだからもう少し厳しくしなさいよということを意味しているんではないかなというふうに、素直に読んだらそう読めるんですが、こういう読み方でよろしいんでしょうか。枝野先生お願いします。
  69. 枝野幸男

    衆議院議員(枝野幸男君) これは附帯決議でございますので、各党一致をして出させていただいて全会一致と。政府の答弁と違いまして、私が個人的に思っていること、あるいはそういったことを申し上げてほかの人から違うということを言われる余地もないわけではございませんが、まさに今御指摘いただきましたとおり、従来の政府原案の四号ロではだめだということは明白に衆議院法務委員会の意思として示されているわけであります。  したがいまして、あの従来の政府提出案の四号ロよりも司法権の及ぶ範囲が広いという方向にならなければ論理的におかしいということは御指摘のとおりであると思いますし、この点についての理解は衆議院法務委員会として一致をしていると思っていただいて結構だと思います。
  70. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 次に、今度は審理方式についても再検討を加えるんだと。政府原案は、公務秘密文書についてはいわゆるインカメラ手続、これは除外した、これはいかぬよという形で変わったわけですね。その上で、今度具体的にこの決議では、インカメラ手続を含む審理方式、しかも司法権を尊重する立場で再検討していこう、またしてくださいよということになるわけですが、そういうふうに理解してよろしいんでしょうか。そういう方向性で再検討するんだというふうに私読めるんですけれども、その理解で正しいかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  71. 枝野幸男

    衆議院議員(枝野幸男君) この点につきましては、実は審理方式については、インカメラ手続がいいのか、それともインカメラ手続よりもボーンインデックスの方式の方がより司法権の尊重になるのではないかと、実際に衆議院法務委員会あるいはその周辺で修正案について議論をしている中で、党によってあるいは人によって若干意見が異なっております。そうした過程の中で、あえてここに「インカメラ手続を含む」という言い方をさせていただきましたのは、従来の政府原案の中でも民事秘密についてはインカメラという方式を採用している、したがってこれを排除した形で議論をすることはないであろうということで、「含む」という言い方をさせていただきました。  ここから先は若干個人的になりますが、例えば私どもの党としては、インカメラよりもボーンインデックスの方がより司法権の充実になるのではないかというようなことを現時点では考えておりますし、その点はこれから二年の間に十分な議論をして一番妥当な結論を導いていくべきじゃないか、このように考えております。
  72. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ボーンインデックスという言葉が出ましたけれども、簡潔に説明していただけますか。
  73. 枝野幸男

    衆議院議員(枝野幸男君) インカメラ手続の場合ですと、問題になっている文書裁判所だけが見て秘密に当たるかどうかを判断するということになりますが、そうではなくて双方で、これが秘密に当たるのか当たらないのかということを、秘密自体の中身の外側の例えば文書の客観的な状況等いろいろなことを相互に主張・立証し合うことによって、中身のものが表に出してはいけないものであるのかいいものであるのかということを明らかにしていこうと。アメリカの判例法などで実際に使われているというふうに聞いておりますし、また実際に現状の例えばいわゆる従来の三号文書についての秘密の判断について、事実上、ボーンインデックス的な審理がなされているというふうな見解もございます。  公文書につきましては、特に裁判所も、広い意味では公という見地から、当事者の関与の余地ができるだけ大きい方がいいんではないかという意味では、インカメラよりも当事者が関与しやすい、民間の側が関与しやすいという意味でボーンインデックスの方がふさわしいという意見もございますので、そうしたことを考えて、インカメラを入れるんだという結論自体はまだ得られなかったというふうに御理解いただければと思います。
  74. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 衆議院のこの附帯決議の二項の一というのは、三つのことについて検討するというような形になっておりますけれども、これは要するにインカメラ審理方式というのは、行政と司法との調整というか、もちろんそういうことを前提で議論をしていくということなんでしょうけれども、それでも政府あるいは国側というか公務員側が出さないといった場合、官庁が出さないといった場合、やはり最終的にそれをどう扱うかということは決めておかなければ、私は本来的にいかぬのじゃないかなというふうに思うんですね。  議院証言法にありますような疎明あるいは内閣の声明というような形で一応けりをつけるというような形がありますけれども、あれも非常に私は参考になり得るんではないだろうか。突き詰めて、最後の最後の部分になっていくんではないかと思うんですが、このような点について枝野先生どのようにお考えでしょうか。
  75. 枝野幸男

    衆議院議員(枝野幸男君) この点については、若干私見に近いということを御理解いただきました上でお聞きいただければと思います。  これは衆議院法務委員会の中でも議論をさせていただいた話でありますが、委員御承知だと思いますが、苫米地訴訟などでいわゆる統治行為論という、裁判所司法判断の及ぶ範囲についての確定した最高裁の判例がございます。日本における裁判所の機能、役割から、憲法上、いわゆる高度に政治的な判断については踏み込まないという確定判例がございます。本当に極端な部分で本当にぎりぎりのところでの問題点については、そういった憲法秩序全体の枠組みの中で司法権の及ぶ範囲をどこまでにするかということが判例等で客観的に既にあるというふうに私は思っております。  むしろ逆に、法律によってその司法権を抑制的に働かせる部分というのを明示をしていくことはかなり難しいのではないか。個々具体的な事例あるいはその問題の持つ政治的な意味などといったことについては、かなり事前に基準を設けることというのは難しいのではないかというふうに個人的には思っております。むしろ、今の仕組みの中でも、例えば全面的に司法権に判断権があるとした場合でも、先はどのような理論で、例えば衆議院において新進党から提出されましたような役割というのは、本当に高度の政治的な部分について抑制的に働くという判例理論というものを大事にした方が適切ではないかというふうな思いを持っております。
  76. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今、衆議院の枝野先生にこの附帯決議の意味、内容を中心に読み方を教えていただいたわけでありますけれども政府におかれましては、法務省もこの二項一号の読み方、同じように読んでいるというふうに私は理解してよろしいんでしょうか。
  77. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 私どもといたしましても、基本的に今御指摘のような受けとめ方をさせていただいております。この附則の二項の一は、一つに、検討すべき中心課題を三つ指摘していただいている。それと同時に、その検討に当たっては、先ほど枝野議員もおっしゃられましたとおり、司法権というもののあり方というものをきちっと踏まえて検討しなさい、こういう御趣旨の御指摘であるというふうに受けとめているところでございます。
  78. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 次に、附帯決議二項の二号なんですけれども、「私文書に関する文書提出が一般義務化された事実を踏まえ、不合理な官民格差を生じない方向で」検討しようということでございます。政府原案を修正案は拒否した上で、かつこの修正案も官民格差があると、私もちろんそう思っているんですが、そういう理解でこの決議があるのかどうかお聞きしたいんですが。
  79. 枝野幸男

    衆議院議員(枝野幸男君) 客観的な事実といたしまして、政府原案よりも修正案は、この二年間の間に限っては官民格差を大きくせざるを得なくなっているというのは否定できないだろうと思っております。そうした前提の中で、こうした状況は二年間の間にできるだけ早く解消すべきであるし、その解消に当たっても、ゼロということがないとしても、合理的な理由がない限りはちゃんとやってください、ちゃんとやりましょうという決意のあらわれというふうに理解しております。
  80. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 私は不合理な官民格差というのがよくわからないんですが、官民格差に合理性があるかという、そういうふうな聞き方の方が、官民格差をつけずに合理的な理由手続を考える、そういう方が私はいいんではないかというふうに思っておりますけれども、具体的にはこれどういうような形を想定しておられるのか。官民格差がない、この決議をつくった段階ですね、その辺についてちょっと教えていただきたいんですが。
  81. 枝野幸男

    衆議院議員(枝野幸男君) まさに、合理的な官民格差があるとすればどういったものかということについて、残念ながら現時点で衆議院法務委員会が一致をすることができなかったがゆえに、二年間議論をさせていただきましょうということをつけさせていただきました。ですから、私は個人的にはこの問題についての官民の格差はゼロでもいいんではないかというふうに思っておりますが、そうではない御意見の方もたくさんおりますし、ただ政府の原案ではちょっと問題であるということでは一致をしたという理解をしていただくのが一番かなと思います。
  82. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 すると、私見というふうな言い方をされたと思いますけれども、やはり同じに扱って、かつ合理的な格差が生じるのは、合理的かどうかわかりませんが、合理的な理由による場合はこういう場合こういう場合こういう場合と、あるいはそういう具体的に明定できないのであればこういう手続でやっていこうということを考えているということですか。
  83. 枝野幸男

    衆議院議員(枝野幸男君) きょう、実は私、参考人ではありませんので、私の個人の意見を言い過ぎてしまっては、むしろ提案者全体あるいはこれは附帯決議の方は全会一致で決議しておりますので、かえって問題があろうかと思います。そういった部分についてどこまでが合理的な官民格差なのか、一致をできれば逆に具体的な修正をむしろできる、またその試みも衆議院の中でもさせていただいたんですが、なかなか現時点ではそこまではできないと。若干、党によって、人によって意見の違いがある部分であるがゆえに二年間いろいろと検討させていただこうという理解でございます。
  84. 太田誠一

    衆議院議員太田誠一君) 少し背景を御説明申し上げたいと思いますけれども情報公開法の中間報告が既に出ておりまして、その内容を見ると六項目の不開示の項目が明示されているわけです。それは、我々が審議をしたものではないからあくまでも参考なんですけれども、例えば防衛機密のようなものとかあるいはプライバシーとか企業機密に属するものというふうに列挙をしていった場合に、秋口に、それ以外のものについては情報公開法においても国民に開示すべきだということになっておる。ということになると、同じような考え方でもって、これはあらかじめ国家機密と言っていいものであるというふうなことを特定化をして、それ以外のことについては例えば裁判官判断にゆだねられるというふうなことに、二年後の法改正はなってこようかというふうに漠然と想定をしております。  そこで、そういうふうな具体的な限定列挙をしたような方式というものが今の段階で詰められるかどうかということになると、これは幾ら頑張っても、参議院の審議を待っている中で、我々が数日間でそこを詰められるかというと、それは無理だと。そこで、誤った判断をするよりも、そこは時間をかけてゆっくりやった方がいいではないかということでこういう取り扱いになったわけでございます。  それは、インカメラ手続についてどうするかということも含めてそこはこれから特定化をしていって、司法判断権が狭められないようにやるべきだと、こんなことでございますので、今の公文書と私文書をどこで区分するかということも含めてこれからやろうということでございます。
  85. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 本当に衆議院の先生方は議論が深まっているなというふうに思いますし、また選挙もございますけれども、来年一緒に議論をさせていただきたいなというふうに思います。  さて、今度はちょっと移りまして、二百二十一条の二項なんですけれども、これは別に修正案でも取られてはいないわけでありますけれども、この二項というのは原案ではどういうような趣旨なのか、ちょっと簡潔に説明をいただきたいんですが。
  86. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 二項の規定は、今問題になっておりますこの四号の事由によって文書提出命令の申し立てをするのは、これはあえてその申し立てによってする必要がある場合に限ると、平たく言えばそういう趣旨でございます。例えば公の文書について申し上げれば、謄抄本の交付請求ができるというような場合にはそれによってくださいということでございますし、一般に公開、公刊されているようなもの、一般に公開されているようなもの、それはそちらの方で入手することができるわけですので、あえて提出命令を申し立てる必要がないのではないかと。そういうことで、そういった他の方法によって比較的容易に入手することができる資料についてはその方法によるべきであって、あえて文書提出命令の申し立てを認める必要はないのではないかと、こういう趣旨でございます。
  87. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今、具体例として登記簿謄本というようなこと等ございましたけれども修正案ですとここはどういうふうに読んだらいいんでしょうか。具体例、ちょっと私もなかなか思い浮かばないんですが、お教えいただければというふうに思いますが。要するに、公文書を除いたわけですね、四号の場合は。では、局長からでも結構でございます。
  88. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 今申しました例の一つとして謄抄本交付請求と申しましたが、これは公務員が保有する文書でございますが、もう一つ申し上げました一般に公刊されている書籍といったようなもの、これをだれかが持っているというようなことが考えられるわけでございます。それから、例えば商法上閲覧請求権がある会社の計算書類というようなものは、いつでも本店に備え置いて閲覧に供するということになっているものもあるわけでございます。そういうものは、そういう方法で閲覧することによって目的を達するという場合もあろうかと思われます。
  89. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 まだ法律ができていないのでちょっと仮定の質問になりますけれども情報公開法なるものができた場合、情報公開法でとれる文書というのが当然出てくるわけでありますけれども、その場合もそっちでとれよという趣旨になるんでしょうか、この場合は。
  90. 柳田幸三

    説明員(柳田幸三君) 行政情報公開法によって国民一人一人に情報の開示請求権が与えられるということが考えられるわけでございますが、その場合には、情報公開法による情報開示請求権と、それからこの第二百二十条四号によります文書提出義務ということが併存する形になりますので、それぞれの要件があればそれぞれの手続に従って開示がされあるいは提出がされるということになるのではないかと理解しているところでございます。
  91. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 確かに、そういう請求権、併存というようなお話でございますが、だけれども、必要がある場合でなければだめですよという規定になっていますから、こっちで請求権がとれたら必要ないじゃないですかというふうにされませんか。
  92. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) まだいわゆる情報公開法ができておるわけでございませんし、いわゆる行政文書についての文書提出命令制度をどうするかということはこれから検討するわけでございますので、御指摘の点もあわせて検討するということになろうかと思っております。
  93. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 だんだん時間がなくなってきたんですが、最後に、先ほど引用いたしました日経新聞の社説でございますけれども、末尾のところで提言というか書いてあるんですが、  国会と政府に一層の努力を求める。具体的には①公文書にも提出義務を課し、文書提出が国の重大な利益を害するかどうかは裁判所判断させる②その判断に必要な場合には非公開で裁判官文書審理する手続きを採用する――などを民訴法に盛り込むことだ。私たちも監視を続ける。 というような文章になっておるんですが、まさに要件といいあるいは判断権の所在といいあるいは審理方式といい、私自身が望むところでもございますけれども、この点に関し最後に法務省の姿勢というか決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  94. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘の問題につきましては、既に衆議院法務委員会において、これは参考人、公述人の方々の御意見も含めまして、今御指摘いただいた日経新聞で記載されているような御意見も含めて大変さまざまな御意見を伺ってきたところでございます。そういう御意見を踏まえて衆議院修正を受け、そして附則の規定及び附帯決議をいただいたわけでございます。  ただいま御指摘いただいたような視点も含めまして、附帯決議の趣旨に沿って私ども可能な限りの努力を傾ける所存でございます。
  95. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ありがとうございました。終わります。
  96. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時五分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十一分開会
  97. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  98. 山崎順子

    山崎順子君 平成会の山崎順子です。  今回の民事訴訟法改正について、私は、裁判を受ける側の身になって質問させていただきます。  まず、上告制限についてです。上告事件が極めて多数に上り、法律審としてはさほど重要でない事件に時間と精力が費やされている現実を考えますと、最高裁の判事、調査官の大幅増員も必要だと思われますし、上告制限もやむを得ないのかもしれません。ただし、それには下級審の審理を充実させることが不可欠だと思います。高裁民事控訴判決に対する上告率は四〇%近いとか、これは一、二審の事実認定への不満が非常に強いことを物語っているのではないでしょうか。  そこで、日本新党当選無効裁判について話させていただきたいと思います。  これは、平成六年十一月二十九日、東京高裁で円より子の参議院議員への繰り上げ当選は無効という判決が出た事件です。この裁判の原告は日本新党によって除名となった人で、除名は無効であり、自分が繰り上げ当選になるべきだと中央選挙管理会を訴えたものです。  高裁は、被告である中央選挙管理会の手続には全く瑕疵がないと認めながら、日本新党の除名理由は存在しないこと、そして除名手続が公序良俗に反するものだったとして、除名は無効であり、それに基づいてなされた参議院議員比例名簿からの削除と、それによって繰り上げとなった円より子の当選は無効と断じました。  この円より子というのは私でございますが、私はこの東京高裁の裁判に一度も参加することができませんでした。それは、この裁判被告が中央選挙管理会であり、この判決によって実質的に利害の生じる当事者でありながら一度も私は主張を立証する機会が与えられず、私にかかわる裁判というものが継続していることすら知らされていなかったのです。また、その日、判決の出ることも知りませんでした。私は、判決文と裁判記録を読んで怒りを禁じることができませんでした。  被告である中央選挙管理会は、日本新党内の事情についてもちろんあずかり知りません。ですから、原告の主張に対し全く反論を行っておらず、そのため原告の一方的主張のみに基づいた事実誤認が多々あり、それによって判決が出されていたからです。  この裁判は民衆訴訟という特殊な訴訟であり、高裁が第一審です。そこで、最高裁は事実審理をしないため、一回限りの事実審事件ですから、通常にも増して慎重な事実審理を期さねばならないと通常言われております。  ところが、私はもちろん参加しておりませんので、当事者になり得る私をもし参加させていたなら、日本新党の行った除名には不存在などと言われる余地のない明白な除名理由があり、その手続も公正かつ民主的であったことが証明され、全く逆の高裁判決が出ていたはずです。  私は、憲法三十二条の裁判を受ける権利を実質的に侵害された怒りだけでなく、裁判とはこのような原告側の一方的主張のみによる事実誤認に基づいた形で判決を出すものなのかと背筋が寒くなる思いがし、司法に対して大きな不信感が生まれました。おかげさまで最高裁で破棄自判となりまして、私の当選は確定いたしましたが、一、二審の事実認定への人々の不満というものを身をもって知ることとなりました。  そこで、お尋ねいたします。これはもちろん一般的なことでございますが、上告制限は裁判を受ける権利の侵害とはならないのでしょうか。また、下級審の事実認定への不満についてはどうお考えになるのか。それを解消するため、審理の充実策をとる予定なのでしょうか。その具体的対策にはどのようなものがあるのか。  以上お答えいただきたいと思います。
  99. 山崎潮

    政府委員山崎潮君) ただいま二つの点、御指摘があったと思います。  一つは、権利を制限しないかということでございます。この点について少し踏み込んで申し上げます。  今回、上告受理制度をこれからつくろうというわけでございますが、これについての御疑問かというふうに理解いたします。確かに、そういうとらえ方、御指摘があることも私ども承知しておりますが、先ほど午前中の審議でも私申し上げましたように、これは制限ではなくて整備であるという理解でございます。  具体的に御説明いたしますが、現在、例えるならば上告は、ある人が訴状を持って裁判官の家を訪ねて玄関口で案内を請うた、そのときに取り次ぎの方がいて、その訴状を裁判官に見せてどうですかということで、結局必要がない、お帰りくださいというのが上告棄却でございます。  今回、法案でつくっております上告受理は、それの一歩手前になるわけでございますが、玄関ではなくて門のところで案内を請うて訴状を裁判官に見せたと。やはり余り理由がないからお帰りくださいという、少し手前になるわけでございますが、いずれにしましても、裁判官が訴状を見てそれに答えるという点は全く変わりないわけでございまして、そういう点から、決して権利の制限になるというふうには考えておりません。要するに、お断りの仕方、判断の伝え方の相違であるというふうに理解をしているわけでございます。  それから、もう一点の後半の御指摘でございますが、まさに今回、裁判に時間と金がかかるということ、それから、審理を充実しなければいかぬ、短い間で充実するということを考えたわけでございまして、この法案の中に準備手続を三つぐらい用意をいたしまして、それから証拠を豊富に集め収集するというような方策を講じているところでございまして、これは確かに枠組みでございます。それをどういうふうに生かしていくかというのは裁判官の魂の問題になるわけでございますが、こういう制度ができたということを一つのきっかけとして、やはり当事者の言い分を十分に聞いて早く判断をするというような運用がなされていくだろうと期待しているところでございます。
  100. 山崎順子

    山崎順子君 では次に、文書提出命令に関連してお伺いしたいと思います。  まず、情報というのはだれのためにあるんでしょうか。私は、情報国民のものであり、国民のためにあるものだと思っておりますが、日本では情報はイコール権利ではなく、何か利権のように思われているのではないか。それは原則非公開、つまり、いまだに知らしむべからずよらしむべしといった社会であり、秘密でもないものを行政は公開せず、手づるがないと入手できないのが今の現状です。  例えば、行政のOBですとか新聞社の記者ですとか、何かわいろでも出したりとか、その辺はわかりませんけれども、とにかくごく普通の人が全然何ということのない情報を得ようとしてもなかなか手に入れることができないというのが今の行政情報の現実ではないかと思うんですけれども情報政府が握っているのは私は専制君主の国ではないかと思っております。国民というものは自由にいつでもだれでも情報を入手できなければなりませんし、つまり原則非公開から原則公開へと変えるべきではないかと思います。これが民主主義の原理原則ではないでしょうか。  情報原則公開とは、納税者の共有財産を取り戻すことです。そして、民主的政治が行われるためにも、経済活動をダイナミックにし国際競争に勝ち残るためにも、これから日本にとってぜひとも必要でかつ重大なことだと思われます。  そうした意味で、今回の文書提出命令に関する政府原案は、国民主権からも民主主義の原理原則とも離れた、国民が官僚によって支配されるような国家を助長するような懸念がないか、そんなふうなことも言われておりますけれども、行政情報の公開ということについて大臣の御所見をお伺いしたいと思うのですが、よろしくお願いします。
  101. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 現在の社会におきましては、確かに委員の御指摘になりますように、情報というのは行政機関に非常に多く集中しているということは事実であると思っております。  開かれた行政、国民のための行政ということは、確かにおっしゃるとおりでございまして、行政が一層公正で国民の皆様の信頼にこたえ得るものになるためには、行政情報の公開ということが大きな課題であるということは私も十分承知をしていることでございまして、こういった行政情報の公開、行政の透明性を高めていくということの重要性はますます強くなっていくというふうに認識をしているわけでございます。  この重要性を十分踏まえた上で、公務という特殊性、例えばプライバシーにかかわるようなものもやはり私ども法務省といたしましても持っているわけでございますが、こういったものについてはある一定のルールの中でやはり私どもとしては守っていかなくちゃならない部分もあると思っております。  こういった適正な行政運営ということを確保するというもう一方の課題もあるわけでございまして、この両方を十分に踏まえて、新しい時代に即応した行政情報というものの公開のあり方、これを私どもは求めていかなくてはいけない、このように考えている次第でございます。
  102. 山崎順子

    山崎順子君 この民事訴訟法審議に当たって、衆議院の方の法務委員会で冒頭から異例の展開があったということを聞いておりますけれども、ある議員が、改正案をまとめた法制審議会の審議内容の公開を求めたのに対し、法務省は非公開としています、出せませんという拒否の回答をなさったと聞いておりますけれども、二日後にこれが提出されて、A4判でわずか五枚の要旨でということで、この要旨のわずか五枚ということよりも、なぜこういったことが出せないのか、大変不思議な気がするんですね。  私どももよく質問などをするときに、さまざまな省庁に、こういった審議会のことを知りたいから教えてもらえますか、資料を出してもらえますかとか、さまざまなことを申し上げることがありますけれども、なかなか出てこないようなものもあります。  例えばアメリカなどでは、三十年たったものは外交機密文書でも本にしておりますけれども、三十年たたなくても、例えばキッシンジャーとも沢東の対談などでも、十年、何年かの間に出てきまして、もちろん本当に国家機密として大事なところは消されているんですけれども、ちゃんと何が消されていてどういうところが出てくるかということが開示されているわけですね。  日本ではなぜそういったことができないのか、なぜ何もかも秘密にするのか、その辺についてどうお考えなのか、ちょっとお聞きしたいと思うんです。どうお考えというよりも、なぜそうなるのか、お聞きしたいと思います。その法務委員会のときの拒否回答についても、なぜ拒否をなさったのかをお聞きしたいと思うんです。
  103. 頃安健司

    政府委員(頃安健司君) 御質問の点は、法制審議会の議事録の公開の問題であろうと考えておりますが、法制審議会におきましては、自由な論議を妨げないために議事録は非公開という取り扱いにされております。これは法務省というよりも法制審議会の方でされておるわけですが。  いろんな例がございますが、例えば民法の改正についての審議で夫婦別姓の問題を議論いたしますと、それに関連しまして、一部の立場の人から脅迫とか、具体的には電話とか文書でございますが、そういうようなことがよく現実にあったわけでございます。そうしますと、法制審議会の中で自由に発言がしにくい。例えば、ある委員がこういう発言をしたということを公表いたしますと、その人に対して脅迫行為が行われるおそれが十分あるというようなことを考えまして、自由で公正な議論を確保するという趣旨から法制審議会での議事録は非公開という取り扱いにされておりますが、議事の内容について国民の皆さんに御理解を得るという趣旨から、議事録の要旨については極力公開するという方向で運用されているというふうに理解しております。
  104. 山崎順子

    山崎順子君 それでは、その審議会のメンバーでなくても、それぞれが御自分の見識で社会では意見を言い、それを公表するということはどこででもなされていることで、一々脅迫が怖いと言っていては国会でも質問なんていうものはできないんじゃないかと思いますけれども。  民訴法のことも情報公開法のこともありますけれども、国としては何のためにこの民訴法を改正するのか、それから他の法律をつくるときもそれはなぜなのか、常に国民のためという、そういったことを忘れないでやっていただきたいし、審議会の議事録についても、非公開が原則ではなくて、公開が原則でという形にぜひとも変えていただきたいと思います。  では、民訴法の質疑のときではございますが、国会の会期末に当たってどうしてもこれだけは聞いておきたいということがございまして、民法改正についてお伺いしたいと思います。  今国会で通ると思っていた方が大変国民の間では多いんですね。で、ことし、もう別姓になるんでしょうとあちらこちらで聞かれます。それも、今まで別姓の運動とかをやってきた方たちでは全然ない方たちで、例えば一人っ子同士で結婚をもうすぐすると、それで父親も母親も自分の家の名前を継いでほしいというようなそういったカップルも若い方たちにはおりまして、そういった方たちも別姓になってから結婚式を挙げるわと皆さんおっしゃっているんですね。それで、いやまだ国会にも上程されていないということを言いますと、え、一体どうなっているのというふうに言われるんですけれども。  総理府の調査のときには二七%の人たちが、自分が別姓を選ぶか選ばないかにはかかわらず、別姓を選ぶ人がいてもいいんじゃないか、そのために選択制にしてもいいんじゃないかと答えております。つい最近の共同通信の調査では、もっとそれが上がりまして四五%の人が選択制ならいいんじゃないかと、そういうふうに答えているんですね。かなり別姓についての意味合い、これはだれもが強制されるものではなくて、同姓もよし別姓もよしというふうになってきているということが浸透してきているからだと思うんですけれども。  その賛成理由としては、個人の自由を尊重すべきだからというのが共同通信の場合はトップを占め、二位に、実家の名字を大切に思うのは、つまり先祖代々のことを大事にしたい、自分のアイデンティティーを大事にしたいというのは夫婦とも、男女とも同じではないかというのが二位になっております。  こういった社会状況の中で、なぜこの民法改正案が上程されないんでしょうか、その理由をお聞かせ願いたいと思います。
  105. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 私ども法務省といたしましては、委員既に御案内のとおり、本年二月二十六日に法制審議会から答申されました改正要綱を踏まえまして改正法案を立案し、ぜひともこの国会に提出したいということで努力をしてまいったつもりでございます。  法制審議会でそういう答申がされ、あるいは私どもとしてもそういう改正法案を立案いたしたいというふうに考えました理由といたしましては、ただいま委員指摘のように、まだ国民全体からすればそんなに多くの数ではないけれども、やはりさまざまな理由から従前の氏を維持したまま婚姻をしたいという人々がこれは着実に増加をしてきているということを踏まえたものでございます。  そういうことで、私ども、国会に提出するために必要な関係各方面の御理解を得るべく最大限の努力を傾けたつもりでございますけれども、既に委員も御案内かと思いますけれども、やはりこれまで、夫婦それから未婚の子供、これで構成される家族というのは同じ氏を称するということが長年にわたって定着してきたということを背景にして、別氏の婚姻ということを認めるということになればそういう家庭の秩序にゆがみを与えるのではないかと、家族の一体感といったようなものがさなきだに次第に弱まっているということが懸念されるのに、これがそれに拍車をかけるのではないかというような御議論もなお多い実情にございます。  また、国民一般の意識としても、今御紹介がありましたような世論調査等の結果によって、かなりこういう制度を是認する考え方が次第に広まりつつあるようではございますけれども、しかし今なお多くの方はそういうものになじまないという考え方が根強いというような状況を踏まえまして、なかなか法案を国会に提出することができる状況まで至っていない状況でございます。  以上で説明になりましたかどうかあれでございますけれども、現段階でそういう状況にあるわけでございます。
  106. 山崎順子

    山崎順子君 ということは、まだあと何日かございますけれども、今国会には出てこないということなんでしょうか。
  107. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 私ども、会期の点から考えまして、今国会に法案提出するということについては大変厳しい状況にあるという認識を持っております。
  108. 山崎順子

    山崎順子君 これは法務省への質問というより、こちら側、つまり与党の議員の方々へした方がいいのかなとつい思ってしまうのでございますけれども、与党三党のたしかこれは合意事項ではなかったかと思うんですが、法務省はどのようにそれは考えていらっしゃいますでしょうか。
  109. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) この問題について検討を進めるということが合意事項であったというふうに承知しております。
  110. 山崎順子

    山崎順子君 検討するというのはどういうことなんでしょうか。
  111. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) これは私どもがそんたくして申し上げるべき事柄ではないのではないかと思います。
  112. 山崎順子

    山崎順子君 言葉というのは、本当にそれぞれの受け取る意味合いが全く同じ日本語ですのに違いまして、ほとんどの人は、例えば公約に掲げたり合意事項に入れるときに、検討するということは、何もそれについていい方向へ持っていこうとか改正しようとかという意思がないときはわざわざそんなものは入れないと思うんです。それをわざわざ入れたりと、例えば選挙公約で、私たちは夫婦別姓について検討しますとか、それから民法改正について検討しますといって選挙をもし戦ったとします。そうしましたら、まず、これから投票するという人は、ああ検討してくれるというのは改正してくれるんだなと必ず思うと思いますね。改正もしないというようなことを、ただ話し合いましょうなんというだけのことをわざわざ選挙のときに話したり公約に掲げるなどというのは、これはもう詐欺以外の何物でもないと私は思うんですけれども。  その辺は、本当にどちらを向いてお話ししていいのか、ちょっと私も困ってしまいますけれども、ぜひぜひその辺を酌んで、法務省の方たちにはもう一度、再度、何度もきっと御苦労いただいていると思うんですけれども、与党の方々が閣議にかけて上程をしてくださることをお願いしてプッシュしていただきたいと思っておりますが、大臣は検討するということについてはどう思われますでしょうか。
  113. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 与党三党の合意事項ということについて、政府の立場でございますので私からとやかく申し上げることは差し控えさせていただきますが、先ほど来、民事局長からお答えをいたしておりますように、私どもといたしましては、この改正案につきまして各方面の御理解を得られていないということについて十分私ども自身もなお深く反省をし、内容についてこれからもさらに私ども検討も深めていき、それから委員がお話しになりましたように、この法案の成立について多くの方々が要請されておられるという状況も十分に踏まえて今後の方向について検討してまいりたい、このように考えております。
  114. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 先ほど、与党三党の合意につきまして、検討するという内容であったと承知していると申し上げましたが、実はうろ覚えでございまして、正確なところは、もし事実と間違っておりましたら御容赦を願いたいと存じます。
  115. 山崎順子

    山崎順子君 内容等についてはもう今までも質問もさせていただいておりますし、法務省の方は本当に五年も六年も法制審議会で審議をされ、そして各界から意見も聞かれ、かなり、私たちとしては、よくもここまで思い切った案を出してくださったと思うくらいに思っておりまして、中川善之助先生や加藤一郎先生などが昭和三十年代に選択的夫婦別姓というのがあっていいんじゃないかとおっしゃっていた、そのころから比べますと本当に隔世の感があります。  私は、何も法務省の方にばんばん質問するのじゃなくて、本当はこれはここの法務委員会で与野党関係なく、反対派というか慎重派と推進派と議論をしたら、それが議事録として外に出れば、もっと国民の皆さんに、ああどういうことかというのがわかっていただけて理解が深まるんじゃないかと思っておりまして、国会の委員会の審議のあり方にも、これはもうここに限らず、初めて国会議員として委員会に出たときに、ほかの先生方が質問なさっているときに、あ、それはどうも実情と違うんじゃないか、これはこうではないかと思ってつい私は手を挙げたくなった覚えがございますけれども。  国会審議のあり方等を検討することも一つですが、本当に、多くの女性たちだけでなく二%の妻の姓を名乗った男性の方も、大変なプレッシャーを感じてこの別姓については待っていらっしゃるんじゃないかと思いますし、嫡出子と非嫡出子の差別を撤廃するものについても、ほかのことについても、ぜひこの民法改正案を早く通していただきたいと思っている方々がいることを忘れてはならないと思うんですが、今後の見通しというものは一体どうなるのか、それについてお伺いしたいと思います。
  116. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 私どもといたしましては、先ほど大臣も答弁申し上げましたとおり、仮にこの国会中の提案ができなかったといたしましても、できるだけ早い時期に改正法案を国会に提出することができるように、関係各方面さらには国民各位の理解をより一層得るべく最大限の努力を傾けてまいりたいというふうに考えております。
  117. 山崎順子

    山崎順子君 法務大臣としては、就任のときのごあいさつで、女性としてこの民法改正案が通せるときに法務大臣になって大変うれしいという趣旨の御発言をたしかなさったことを記憶しているんですけれども、今の状況をきっと大変残念に思っていらっしゃると思うんですが、閣議等いろんなところで働きかけをぜひしていただきたいと思うんですが、今後、大臣としてはどういうふうな、本当にもうあと差し迫った日程内でも私たちはあきらめていないんですが、どういうことをなさりたいと思っていらっしゃるか、最後にお聞かせ願えますでしょうか。
  118. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今国会、本当に残り少なくなりまして、大変厳しい状況にあるということは委員もおわかりいただけるかと思います。問題は、先ほど来お話がございますように、この法案を本当に新しい時代に即応したものとして国民の皆様に御理解をいただく、国会で御承認をいただけるということを私どもも大変希望しているわけでございまして、そのための努力につきましては精いっぱいやらさせていただきたい、このように思っております。
  119. 山崎順子

    山崎順子君 この民法改正に限らず民訴法だってそうですけれども、本当にきちんとした審議ができるような時間がなくて、会期末だというだけで慌ただしく、ほかにも優生保護法ですとか何ですとかいろんな問題が出てきておりますけれども、こんな国会審議のあり方でいいのだろうかということも、質問ではありませんけれども、考えながら、今、議員の仕事というのが何だかむなしいような気がしてならないんですけれども、ぜひとも本当に、たとえ会期末までに間に合わなくても頑張って早く閣議の方へ上げ、また上程していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  終わります。
  120. 千葉景子

    千葉景子君 社会民主党の千葉景子でございます。  今回の民事訴訟法案について、既に同僚の議員の皆さんからも御質問が続いておりますので、多少重なり合う部分があろうかというふうに思いますが、大変重要な基本法案でございますので、お許しをいただき、限られた時間ではございますけれども質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、今回の民事訴訟法案、この提案の理由に、やはり民事訴訟手続について国民に利用しやすく、そしてわかりやすいものとしていこう、それから現在の社会要請にかなった適切なものとする、こういう目的が掲げられております。これをちょっとひねって考えますと、そうするとこれまでの現行民事訴訟法ということになりますけれども現行民事訴訟法では制度的にも国民にいささか利用しにくい、あるいはわかりにくい、また現在の社会要請から見るとそろそろそぐわなくなった点がある、こういうことが裏腹になるわけですね。  今回のこの新しい法案ということになりますが、この民事訴訟法案全体を見ますと、そういう中でも例えば処分権主義であるとか弁論主義あるいは自由心証主義、こういう骨格というのは訴訟手続としてはそのままやはり基本的な考え方として残されている。そして、それ以外のいろいろな個々の手続において、先ほど目的を申し上げましたけれども、それにかなったような案としてまとめられているということになろうかというふうに思います。  そこで、ちょっと総合的な話になりますけれども、これまでの民事訴訟法ではどういう点がこの目的から考えて問題点があったのか、そしてこの目的に沿うために一体どういう考え方に基づいてこの法案をまとめられたのか。ちょっと概括的な質問になりますけれども、まずその点について考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  121. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 今回の改正の目的は、国民にわかりやすく、利用しやすくということでございますが、わかりやすくということでは、まず第一点は、何しろ片仮名文語体の法律であるということでございます、これを今回、実質改正を機に平仮名口語体の新しい法律案として提出させていただいたということが一つの目的でございます。  それから、現在の民事訴訟法規定大正十五年に全面改正がされまして、その後若干細かい点の改正はございましたけれども、基本的にはそのときの法律規定が維持されているということでございます。その当時あるいはそれ以前の訴訟の形態というのは、現在に比べれば比較的単純な形の訴訟が一般的であったのではないだろうか。その後、時代の変化に伴いまして、社会経済の複雑化、高度化、多様化ということを踏まえまして、民事紛争も大変複雑なものが増加してきていると思われます。  そういう時代の変化ということを考えますと、やはり現行民事訴訟法規定には時代の要請に必ずしも適合しない部分があるということ。それから、そのこととも関連いたしますけれども裁判には時間と費用がかかり過ぎるという指摘、特に時間がかかり過ぎるという大変強い指摘があります。要するに時代のテンポに合わない、したがって裁判を利用したくてもそういった観点から裁判を敬遠するということが言われております。この点が特に強く指摘されているところでございます。  大変アバウトな言い方でございますけれども、そういう観点から民事訴訟法規定の全般につきまして見直しをして、しかしながらそのすべての問題について一挙にということになりますと何年かかるかわからないということもございますので、そういう視点から一応法制審議会の審議の期間としては五年ということを目途として、その期間の範囲内でそういう目的からできるだけ時代に適合した、利用しやすい民事訴訟法にしよう、こういうことで取り組んで、その結果としてこの法案提出させていただいた次第であります。
  122. 千葉景子

    千葉景子君 わかったようなわからないような気はするんですけれども。確かに、わかりやすいものにしようというので片仮名文語体を平仮名口語体というのは、これは最低限、確かに前よりはわかりやすいというのはわかりやすいかもしれませんけれども、多分それだけの問題ではないんだろうというふうに思います。今回のさまざま提起をされている制度の中に、わかりやすくするためのいろんな工夫とか、利用しやすくするためのいろいろな対応策というのがあるんだろうと思いますので、本当にそうなるのか、目的に沿ってこれが運用されていくか、多少具体的にお聞きをさせていただきたいというふうに思います。  そこで、国民に利用しやすい、それから社会要請にかなう、この目的ですけれども、やはり先ほど局長がおっしゃったように、その大きなポイントとしては大変裁判に時間がかかるということが挙げられようかというふうに思います。何しろよく言われることは、一カ月間待ってそして三分間審理をすると。実情を見ますと、本当に一カ月に一回ぐらい開かれて、そして代理人同士が書面をぽっぽっと取り交わして次の期日を決め、そしてまた一カ月たつというようなのがある意味では実情ではないかというふうに思うんです。そういうことで大変時間もかかる。  それから、社会の今のテンポから考えても、やはり裁判をやっているうちに物事が先へ先へと進んでしまう、裁判での解決を待っていたらもうそれに対応できない、そういうことなどもあって、そればかりではないですけれども民事介入暴力とかそういうことなどもしばしば問題になってくることもあるというふうに思います。  そこで、一番重要な、迅速な裁判をできるだけ行って国民に利用しやすいものとしていく、こういうポイントで今回どんな整備がなされているのか、何点かあれば御説明をいただきたいと思います。
  123. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘のとおり、今回の改正の最も主要な目的の一つとして、適正ということを害しない範囲で迅速な裁判が実現されるということがございます。その目的の観点からどういう改正事項を含んでいるかということでございますが、この点につきましては午前中の志村委員の御質問に対してもお答え申し上げました。  主要なものとしては、そのときも申し上げましたように、争点及び証拠整理手続整備を行う。これは、ただいま委員指摘のように、現在の審理の実情は往々にして五月雨的な審理になりがちである、争点も十分に整理されない状況のままで証人尋問が行われるというようなことが行われがちであるという実情がありますことを踏まえて、基本的には、特にそんな準備的な手続というものは必要がないという事件を除きましては、事件の種類に応じていろんなメニューを用意して、そのいずれかの方法でまず争点整理をする、そういうことを目的とする改正でございます。  いま一つは、証拠収集手続の拡充ということであり、いま一つは、これも午前中申し上げました、これは三十万円以下の金銭請求訴訟という範囲に限定されておりますけれども、特別に迅速な処理を目的とする少額訴訟手続を設けるというようなことがその観点からの大きな改正事項でございますが、そのほか細かい事項といたしましては、さまざまな点で迅速化を図るという視点からの改正を加えております。  その事例を若干申し上げますと、一つは、最近のいわゆる核家族化等に伴って送達が大変難しいということで、そのために訴訟が遅延するということもございますので、そういったことに対処するために送達場所等の届け出制度というものを創設して送達が迅速に行われるようにする。これは訴訟のスタートが早くできるようにするという目的の改正でございます。  また、裁判所が適時適切な釈明権の行使をすることができるということにするために期日外の釈明という規定を設ける。また、いわゆる当事者が主張や証拠を小刻みに出すということを防止するという観点から、これは特定の効力を直ちに伴うものではありませんけれども、従前の随時提出主義というものから適時提出主義というものに規定を改めるというふうなこと。  それから、いわゆる大規模訴訟に関する特則といたしまして、当事者あるいは証人が大変多数であるという訴訟、これを合議体の裁判官で尋問していたのでは大変時間がかかるという問題がございますので、そういった事件については、証人尋問等を効率的かつ迅速に行うことができるように合議体の裁判官の人数を五人として、裁判所内でその受命裁判官が証人尋問等をすることができるような規定を設けるというようなこと。  さらには、いわゆる電話会議システムを利用した争点整理あるいはテレビ会議システムを利用した証人尋問、そういったものを可能にすることによって、それも訴訟の審理の迅速化に資するものであろうというふうに考えているところでございます。  そういったことで、いろんな場面において訴訟の迅速化という観点からの改正を織り込んでいるわけでございます。
  124. 千葉景子

    千葉景子君 それぞれ迅速化を図るためにいろいろな工夫やら整備をなさったということで、それについては私も当然なことであろうというふうに思っています。  個々の問題についてはまた後ほどお尋ねするとして、ただ、この迅速化を図るためにこういう制度整備いたしましても、それを運用していくやはり体制がなければこれも絵にかいたもちになってしまうということにもなりかねません。そういう意味では、こういう制度をきちっと利用するということでは弁護士、代理人などの協力も当然のことであろうというふうに思いますが、裁判所の側でも、これを運用し、そして迅速にこの制度を利用して裁判を進めるという意味での人的陣容整備、これも欠かせないことであろうというふうに思います。  これも常々、裁判官定員法などの審議の際にも毎回のごときに裁判官の充実、質も当然ではございますけれども、数の上でもやはり増員をして、そしてでき得る限り体制を整えるべきだという指摘もさせていただいてきたところでもございます。司法試験合格者の数などもふえておりますので、徐々に裁判官の数がふえていることは承知をしているところでございますけれども、やはりこれについて、この制度を生かす意味でもそういう体制の整備をいただきたいというふうに思うんです。  たまたま昨日の、これは朝日新聞の夕刊でございましょうか、これは日弁連が裁判官のOBの皆さんから聞き取りをした、その調査の一部が掲載をされておりました。「裁判官は「超」多忙」ということで、担当の事件が数百件になる、あるいは休日もつぶして家族生活を破壊するような状況事件処理をされていると。そして、こんなことは多分ないのでしょうけれども、取り下げなどがあるとほっとするとか、でき得れば和解で事件処理しがちになるとか、そういう調査が出ております。  これが全部とは私も申しませんけれども、やはりどうしても裁判官の数が少なくなると一人一人にしわ寄せが行く。それが万が一こういうことになっては困るわけでして、そういう意味で、改めて裁判官の充実ということについて、私は、ぜひ大きく決断をし、そして充実を図っていただきたいというふうに思いますが、裁判所、いかがでしょうか。
  125. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 委員御承知のとおり、裁判所としては現行法のもとで充実した審理を目指した運営改善の努力を長年やってまいりました。そして、今回の改正項目の中には、その実務で培われたいろいろな創意工夫というものが随所に盛り込まれているように思っております。  ただ、この運営改善は、申し上げるまでもなく裁判所だけでできるわけではございませんで、当事者、わけても当事者の代理人となります弁護士さんの御協力が不可欠でございまして、運営改善につきましてもその意味で、常に弁護士会との協力、協議というものを尽くしてまいったわけでございますが、今回新しい民事訴訟法がもしできました場合には、改めてまた弁護士会との間で十分な審議を尽くして、国民の期待にこたえられるような審理をしていきたい、こういうふうに思っているところでございます。  今、委員の方から、しかしそれだけではなかなかできないではなかろうかと、人的な面、物的な面での整備充実が必要ではないかという御指摘かと思います。かねてから裁判官の増員等を含め毎年のように人的な充実についての措置をお願いしてまいったところでございますが、今後とも、この法改正が円滑にもしできた場合にはその円滑な遂行ができますように、人的、物的面での十分な体制の整備について精いっぱいの努力をしていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  126. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひ次の定員法などのときにはその決意のほどがまた要求などに、あるいはその整備の実情としてあらわれてくるように期待をしておりますし、私たちもそれについては積極的に協力をさせていただきたいというふうに思っているところでございます。  さて、迅速な裁判ということも大きなポイントでございますけれども国民が利用しやすく、そして社会要請にかなうということになると、私はもう一つのポイントとしてこういう面を考えておく必要があるんではないかと思います。それはやはり現在の訴訟が、先ほど局長もおっしゃったように単純なものではなくなってきている。例えば公害であるとか薬害問題であるとか、あるいは医療にかかわる問題とかあるいは消費者関連の訴訟とか、それから行政とか国を逆に相手にする訴訟とか、そういう現代型の訴訟というのがふえている。そういう中で、本当に当事者が実質的に平等な立場で裁判を受けることができるということがなければ、やはり社会の実情に合わなくなりますし、それから国民のニーズにもこたえられないということになろうかというふうに思います。  こういう現代型の訴訟を見ますと、そういう面から実質的な平等ということから考えると、証拠の所持というような観点から見ると歴然とした格差というんでしょうか、があるということは御承知のところだというふうに思います。そういう意味で、今回の訴訟法案の中で証拠収集手続についてもさまざまな整備がされている。そういうことについてはやはりこういう問題意識のもとでなされているのだろうというふうに推測はいたします。  ただ、きょうも問題になっておりますように、そういう中で公務上の文書についての扱い、これについては、本当に今回の法案国民に利用しやすく、社会要請にかなったものということでおやりになったんだとすれば、いささかその面について十分な検討が不足していたのではないかというふうに考えざるを得ないところでございます。  この民事訴訟法案がいろいろ検討されている過程では、社会の中では少なくとも情報公開というのが大きな流れになっていたことは多分御承知のところというふうに思うんです。そういうことをまさか全然知らずしてこの民事訴訟法案の策定に当たっておられたというふうには考えられません。国際的にも行政情報の公開というのは当然の流れになっておりますし、それから我が国の実情を考えましても、既に第二臨調の答申のときから行政情報の公開というのは大きな問題点として提起をされてまいりました。  既に地方自治体などでは、平成七年九月の段階ですけれども、四十一都道府県、二百二十四市区町村、計二百六十五の自治体で情報公開条例などが策定をされているという状況です。それから、大変手前みそになって恐縮ではございますけれども、社民党、社会党の時代ではございますけれども、既に八一年に議員の中で情報公開制度検討いたしまして議員提案もさせていただき、そして近いところでは一九九三年の六月に、その当時、社会党そして公明党、民社党、連合参議院という共同で情報公開法案を国会に提案をさせていただいております。そして、最近、情報公開法案要綱中間報告が行革委員会から出されている。こういう一連の流れがあるわけですね。  こういう情報公開の流れについて、一体この民事訴訟法案検討する際にどういうふうに認識されていたんでしょうか。こういう流れとは、この民事訴訟法は民訴の手続を決めるものだから関係ないものだ、別々なものだというふうに御認識をされていたのか。あるいは、やはりこういう流れを背景に置きながら今回のこういう政府提案の内容になってきたのか。その辺の御認識をお聞きしたいと思います。
  127. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 委員ただいま御指摘になりましたように、行政情報の公開の問題につきましては、相当以前の時期からいろいろな場においていろいろな形で議論がされていたことは承知しておったつもりでございます。ただ、これがいわば国として明確な形で取り組むということが明確にされたというふうに私ども認識をいたしましたのは、平成六年十一月に行政改革委員会設置法が制定され、それが施行されたということでございます。  法制審議会の審議におきましても、もとよりそういう状況を踏まえながら検討されたわけでございますけれども、しかしながら、国としてこの問題に本格的な取り組みが始まった平成六年の暮れ以降、行政改革委員会の行政情報公開部会におきまして、国の行政機関が保有するさまざまな秘密情報を洗い直してそれを議論の対象として、それについての国民に対する公開のあり方というものが大変大きな議論になっておったわけでございまして、法制審議民事訴訟法部会における全体の審議の中で、かなり後半の時期にそういうことが大きな問題になったわけでございます。  そういうことを踏まえて、最後の時期に、行政情報を、いわゆる行政文書対象とする文書提出命令制度のあり方をどうするかということが法制審議会の中でも大変大きな議論になったわけでございますが、結局、そういった幅広い議論が今されている状況において、民事訴訟手続の場面においてのみ今の段階でその議論を先取りして一定の結論を出すことは事実上大変困難であると考えられますし、またその議論が出た段階で、それを踏まえて民事訴訟法としてどのようにこれを反映させるのが適当であるかということについて改めて検討するということにした方がより適切な制度を構築することができるのではないかと。  そういう議論から、改正要綱の取りまとめに当たりましては、民事訴訟法及び刑事訴訟法の証人尋問における証言拒絶のあり方に関する現行の枠組みの範囲内で、そのスキームの範囲内でともかく提出文書範囲を拡大するという、提出義務の範囲を一般化するという改正をしようということで法制審議会の答申となり、そういうことで政府原案を提出させていただいたと、こういう経過でございます。  その点についてさまざまな御批判があり、衆議院において御案内のような修正が行われたということは既に御案内のとおりでございます。
  128. 千葉景子

    千葉景子君 今の御答弁から考えますと、少なくとも国の段階で情報公開制度が大きな議論になってきて、そして法制審などでもやはりそれに関連して討議をしなきゃいけないと。ただ、それは時間的には相当後になっての話になりますね。そこで、議論も十分ではないということで、改めて検討する方がいいと、こういう大体まとめになったと。そこは逆によくわかるんですね。まだ審議も十分でないから、それじゃこの部分はこれからの議論にゆだねて、そしてその後、情報公開制度の充実などと一緒にこれを取りまとめようというふうにしていただければむしろ素直に話はわかる。ところが逆に、行政上の公的な文書について官庁の承認でというまとめをしたがゆえに、情報公開にさお差すものではないか、ふたをしてしまうのではないかという議論にもなってきたというふうに思うんです。  まさか情報公開の流れを法務省が食いとめようなどということは考えなかっただろうというふうに思いますけれども、改めてやはりこれは十分な議論が不足していたんだということ自体は率直にお考えですか。
  129. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 衆議院において修正をいただいたという結果を踏まえて考えれば、今になって考えれば御指摘のとおりであるかもしれないというふうに思っております。  ただ、法制審議会の審議の取りまとめあるいは立案の段階におきましては、現在のスキームの範囲内においても一歩前進するという方が適切なのではないかという判断であったということだけは申し上げさせていただきたいと存じます。
  130. 千葉景子

    千葉景子君 それが一歩前進なはずだというところが即座には私もちょっと納得しにくいところなんですけれども。  衆議院の議論なども踏まえ、そして改めて法務省の方でも、やはりその指摘を受けてみれば、議論が不足していたという面もあるのではないかということでもございます。だとすれば、先ほどからの議論の中でも出ておりますけれども衆議院修正を踏まえて今後どういう取り組みをされていくか、その決意のほどをお聞かせいただきたいというふうに思います。
  131. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘の問題につきましては、これまでの国会の御審議におきまして、提出義務の存否についての判断権のあり方、その審理方式等についてさまざまな観点から、今後の検討に当たって考慮すべき重要な御指摘をいただいているところであります。そういう御指摘を踏まえて、衆議院において修正がされ附則二十七条の規定が設けられ、そして附帯決議もいただいているところでございます。  そういう指摘を受けまして、法務省といたしましては、この問題について速やかに検討を開始いたしまして、成案を得るべく全力を傾けてまいりたいというふうに考えております。
  132. 千葉景子

    千葉景子君 大臣はいかがでございましょうか。
  133. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今回の民訴法の御審議に際しまして、国会の御審議の中で一番皆様から御指摘をいただきましたのは、この文書提出義務部分であったように思います。この御審議の中で、今局長が申し上げましたが、私どもにいろいろな観点からの御指摘をいただきました。こういった御指摘を十分私どももそしゃくをいたしまして、この法案を成立させていただきましたならば、この附則にございます期間を私どもとして利用させていただきまして、その期間の範囲内で最大限の努力をさせていただき、附帯決議の趣旨に沿った方向で成案を得たいと、このように考えておるところでございます。
  134. 千葉景子

    千葉景子君 時間が限られておりまして、個々の問題、また次回がございましたらお尋ねしたいと思うんですが、これとかかわる問題で、既に魚住委員の方からも問題提起がございましたけれども公務員の証人尋問の件でございます。  先ほど御答弁がございましたので繰り返しはいたしませんけれども、これについてもやはり現行の刑訴法との違い、それから今の文書提出義務との関連、こういうことを踏まえて、いかがなものでしょうか、これはもうこれで固定したものではなくて、やはりこれも今後の検討課題として十分に再度議論をしていくという必要があるのではないかというふうに思いますけれども、その点についての考え方を改めてお聞かせいただきたいと思います。
  135. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 今回、附則において定められた検討をするに当たりましては、一つに行政情報公開一般についての制度との整合性というものを考えてまいらなければならないと思っておりますと同時に、御指摘公務員を証人として職務上の事項について尋問をする場合の取り扱い等との関係というものも含めまして総合的な検討を加える必要があるものというふうに思っております。その関係におきまして、必然的に承認拒絶の要件との関係というものも考慮するということになると思っておりますので、そういう関係検討した上で承認拒絶の要件についても見直しが必要であるということになりました場合には、そういう点についても考えてまいるということになるのではないかと考えております。
  136. 千葉景子

    千葉景子君 時間がちょうど区切りですので、終わらせていただきます。
  137. 橋本敦

    ○橋本敦君 今回の法案について最大の問題になりましたのは、公文書の扱いだったことは言うまでもありません。これにつきまして衆議院では修正が行われたわけでありますが、私ども共産党としては、この問題については原案のいわゆる二百二十条四号ロの規定は全面的に削除するとともに、秘密とされる公文書範囲を厳しく限定して、国の重大な利益にかかわる秘密に関するものに限るとした上で、しかもなおかつそれの判断は、司法権を尊重して裁判所判断にゆだねられるいわゆるインカメラの手続等を含めて厳重にすべきであるという提案をいたしました。残念ながらその修正案は通らなかったわけでありますけれども、一定の改善的修正がなされて送られてまいりました。  そこで、この問題について、せっかく衆議院から修正案を御提案いただいた先生方にお越しいただいておりますので、一点だけ考え方の基本としてお伺いしておきたいことは、この民訴法のこれに関する問題は、具体的に訴訟当事者裁判を受ける権利あるいは公正な裁判を求める権利という、そこにかかわるだけではなくて、一般国民の知る権利にかかわる非常に重大な問題であるという、こういう認識のもとに附帯決議も行われ、修正提案もなされたものだと、こう理解しておりますが、そういうことでよろしゅうございますでしょうか。
  138. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 今回の修正につきましては、先生がおっしゃられる知る権利につきましては、これは憲法には特に知る権利というような規定はございませんけれども、民主主義国家におきましては知る権利というのは当然の前提として国民に保障をされているだろうというふうに思っております。  そういう意味では、国民全員が憲法上いわゆる知る権利があるということを前提に私どもも今回の修正というのも行いましたということであります。
  139. 橋本敦

    ○橋本敦君 御答弁ありがとうございました。  そこで、知る権利の問題について政府との間で若干議論をしていきたいと思います。  有名な北方ジャーナル事件判決というのが最高裁大法廷によりまして一九八六年の六月十一日に行われておりますが、この中で最高裁は次のように言っております。  主権が国民に属する民主制国家は、その構成員である国民がおよそ一切の主義主張等を表明するとともにこれらの情報を相互に受領することができ、その中から自由な意思をもって自己が正当と信ずるものを採用することにより多数意見が形成され、かかる過程を通じて国政が決定されることをその存立の基礎としているのであるから、表現の自由、とりわけ、公共的事項に関する表現の自由は、特に重要な憲法上の権利として尊重されなければならないものであり、憲法二一条一項の規定は、その核心においてかかる趣旨を含むものと解される こう述べております。  最高裁、このような判決があったことは間違いございませんね。
  140. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) ただいま委員が御指摘になったとおりでございます。
  141. 橋本敦

    ○橋本敦君 ここで重要なのは、憲法二十一条の言論の自由というのは、表現の自由というのは、みずから主義主張を表現するというだけにとどまらずに、その基礎をなすところの情報を相互に受領することができるというそういう自由の問題、そしてここで言っておる、とりわけ公共的事項に関する表現の自由、これが特に重要だということです。  したがって、国民は公共的問題に関する情報の入手をするそういう権利を持っているという憲法原則に照らして、情報公開というのが近代民主主義においては極めて大事な問題になってくることがこの判決でも示されているわけであります。  しかし、公的情報といっても、いわゆる公務上の秘密という問題がありますから、一切の情報が入手できるということにならないということもまた言うまでもありません。  したがって、そこで、こういう国民の知る権利ということとの関係において、一体国の重大な機密とよく言われるその秘密はどうあるべきかということが一方でまた問われるわけです。  そして、この点で重要な判決は、一九七八年五月三十一日に最高裁第一小法廷で行われました、いわゆる外務省秘密漏えい事件でありますが、この事件で最高裁は、秘密ということを言うには、官庁が正当に秘密を指定するという権限に基づいて指定した形式だけではだめだと。それにとどまらなくて、そのようにして指定された秘密が実質的に秘密として保護するに値する、そういう内容を持っているものでなければならない。つまり実質秘でなければならないということを明確に判決をしておりますが、この趣旨判決があったことも間違いありませんか。
  142. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) ただいま委員が御指摘になったとおりのようでございます。
  143. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、情報公開という問題になりますと、国民の側から見て公的情報を入手する権利との関係で、その権利を本当に保障する上で非常に重要な問題がいろいろと出てくるわけであります。  この点では、アメリカの情報公開法が非常に重要な参考を提起していると私は見ておるんであります。アメリカの情報公開法の建前でいきますと、公的情報の開示を政府あるいは官庁が拒否するという、そういう場合に対する救済措置として考えられていますことは、まず非公開にするという行政庁決定に対して、それが妥当かどうかという点については、それを開示すべきであるという立証責任は国民が負うんじゃない、それは開示することができない実質的秘密性を持っているんだということを行政庁の側が立証責任を持たなくちゃならない。  この問題では、この委員会でも先ほども議論があって、今の民事訴訟法規定でいけば立証責任は請求する国民の側にあるかのような答弁がありましたが、アメリカはそこのところで、立証責任は全く、そういう私が指摘したような方向で、国民の負担にしていないわけです。  それからもう一つは、そういう行政機関決定があって公開を拒否された場合に、今私がお話ししたように、それが秘匿に値する実態的な秘密性を持っているかどうかについての判断権を行政庁だけに持たせてはだめですから、アメリカの情報公開法では、その問題についてはいわゆるインカメラのインスペクションの制度をつくりまして、裁判所が非公開でその文書を取り寄せて見た上で判断するという制度。  及びそれに関連をして、先ほども議論がありましたが、コロンビア特別区高等裁判所で提起をされて、それ以来一定のルール化されておりますけれども、ボーンインデックスと言われる方法によって行政機関に対して裁判所は、非公開とされた記録の項目ごとのインデックスを厳しく要求をして非公開された文書あるいは非公開した理由を詳細に説明することを義務づける。それでも十分な説明がなければ、裁判所はいつでも今言った非公開審理に現物を出させる、その上で判断をする。そういうことで、持ってきなさいという裁判所の命令にかかわらず持ってこなければ、日本には制度はありませんけれども、アメリカは法廷侮辱罪を適用して強制的に出させて国民のために判断するという仕組みをつくる、こういうことが行われているわけです。  こういう制度をそのとおりやれとは言いませんが、将来我が国が情報公開法を制定する上で一つは非常に参考になる制度だと、私はこう思っております。今回の附帯決議で、将来、公務文書についての扱いについては、司法権を尊重した上で、インカメラの制度も含めて慎重に検討するようにという附帯決議がつけられ、政府はそれを尊重するという立場でありますが、こういった点は重要な参考資料として今後の検討課題として政府検討すべきであると思いますが、いかがですか。
  144. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) ただいま委員からアメリカの情報公開制度について御紹介をいただいて御質問をいただいたわけでございますが、ただいま委員の御紹介いただいたアメリカの制度との対比で言えば、我が国において国民一般に行政情報をどのように開示すべきかという観点から、今、行政改革委員会において大変幅広い検討が鋭意行われているところと承知しております。当然その中では、今御指摘のようなアメリカの制度も参考にして御検討をされるものと思われるわけでございます。  私ども、今般、衆議院におきまして修正をいただいて、文書提出命令制度におけるいわゆる行政文書の取り扱いについては、原点に立ち返って改めて速やかな検討をすべきという御指摘を附則の形でいただいているわけでございます。その検討の中では、当然、今我が国において鋭意行われている行政情報公開一般に関する検討、この検討を参考にしながらそれと並行して検討を進めるということでございますので、御指摘のような視点も踏まえて検討をさせていただく、こういうことを考えておるところでございます。
  145. 橋本敦

    ○橋本敦君 この点、私はまさに憲法と我が国の民主主義の国民の知る権利にかかわる重要な課題が今後残されたと思いますので、今御指摘した点について御答弁あったように、憲法の立場を踏まえての前向きの検討を要求しておきたいと思います。  そこで、インカメラということを申し上げましたついでに、二百二十三条のいわゆるここに書いてありますように、裁判所がイ、ハ、ニに掲げる文書に該当するものについての判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができるというのが出てまいりましたが、これは今私が指摘したインカメラ制度と同等の意味を持つ制度と解してよろしいのかどうか、その点はいかがですか。
  146. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 同種の制度であるというふうに理解をいたしております。
  147. 橋本敦

    ○橋本敦君 もしも相手方が裁判所の指示に従わずに、裁判所提出すべきかどうかを判断するについて、その物を出しなさいと言っても出さない場合はどういうことになりますか。
  148. 柳田幸三

    説明員(柳田幸三君) 第二百二十三条三項の提示命令につきましては、特段の強制的な履行手段は規定されていないところでございます。
  149. 橋本敦

    ○橋本敦君 強制的履行方法はないということは、おっしゃるとおり、法律でそうでありますが、そうした場合に、裁判所としての判断に何らかの影響を及ぼすのか及ぼさないのか、その点はどうなんですか。
  150. 柳田幸三

    説明員(柳田幸三君) その場合にどのような判断をするかということになりますと、現実に文書提出されないわけでございますので、文書の記載内容に即して裁判所判断するということはできなくなるわけでございます。したがいまして、その代替手段ということで当事者に、このイ、ハ、ニの要件に該当するかどうかということにつきまして主張・立証を求めるということでございます。  その過程におきまして、正当の理由がなく提示命令に応じないということがあれば、それは裁判所の自由心証の問題としてしんしゃくされることがあり得るであろう、そのように考えているところでございます。
  151. 橋本敦

    ○橋本敦君 私が言いますのは、例えばエイズの問題で大変な問題になります。それで、製薬会社に対して訴訟を起こしていろいろんな事件文書の要求を原告がするという場合に、文書の存在はあるけれども、それを企業機密とかなんとか言って出さないということがあり得る。そうした場合に、今のインカメラの制度裁判所に持ってこさせて判断してもらいたいと、こういうことですが、それに抵抗して持ってこないということになれば、これはまさに公正な裁判裁判所が実体的真実を発見する、その上で法を適用するという、そのことを阻害することですね。だから、アメリカが裁判所侮辱罪を適用するという考え方を持っているのも私はよくわかるんです。だから、そういった問題をどうしていくかということもこれからの重大な課題になっていくであろう。  例えば、不当な課税措置が行われて、税務に関する訴訟がいっぱい起こってまいりますから、その場合でも文書提出を要求した場合に、公文書であるということを理由にしてこれはもうインカメラの制度がないから出さないでおしまいだということになったら、これはもう原告の利益、権利を保全するという裁判所の機能が著しく阻害されるわけでしょう。  だから、公文書についてもインカメラの制度は当然大事だということを私は情報公開法のアメリカの例を引いて言ったわけですが、一般の企業の秘密に関する文書についてもこの問題は非常に重要な問題になってくるわけです。  そこで、この問題については、二百二十条四号の二の文書として、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」ということもこれはインカメラの対象にはなっているわけだが、それと同時に別のところで、百九十七条の、企業の「技術又は職業の秘密に関する事項について」は証人尋問では、尋問を受ける場合には証言拒否ができるという規定もあって、こういう文書については裁判所はどう扱うかということは、これは裁判の民主的なルールづくりの上で非常に大事な問題になってくるんですが、ここらあたりについて民事局長、お考えありますか。
  152. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) ただいま企業の秘密に属する文書、これは文書について申しますれば、政府案では四号のハでございますが修正案ではロになるわけでございますけれども、この文書については今委員指摘のインカメラの手続対象になっているわけでございます。したがいまして、今回この四号の規定をそういう文書についても加えたと。例外規定に該当するかどうかはインカメラの手続審理をするということになっておりますので、この点については御指摘の観点から相当の成果を上げるものではないだろうかというふうに考えているところでございます。
  153. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりました。だから、このインカメラの制度ができたことによってかなり改善される可能性があるというように御答弁がありましたから、そんなふうに私も期待をして今後の運用を見ていきたいと思います。  もう一つ文書について伺っておきたいのは、二百二十条の今言った二の文書で、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」と、こうありますが、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」については一般提出義務が外れるということについて、この文書をどう特定しますか。文言から見ると、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」というのは、非常にその文言自体が不明確、わかりにくいですね。これはどう解釈しますか。
  154. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) この「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」というのを一般義務化の除外事由として定めました趣旨は、これはあくまでも民事裁判に対する協力義務としての国民の義務を定めるということでございますので、私人あるいは企業等の団体がおよそ外部の人に利用してもらうあるいは見てもらうということを予定していないような文書についてまでそういう協力義務という形で提供を強制するということは酷な場合があるのではないかという観点から、これを除外事由にすることとしたものでございます。  もちろん、この概念自体必ずしも一義的に明確であるわけではございません。しかしながら、これをもっと限定的に、もっと具体的に規定するということも困難なわけでございますので、こういう一般規定という形で規定しているわけでございますが、この点については、先ほど御指摘がございましたようにインカメラの手続対象となるものでございますし、裁判所においてその文書を見てあるいは当事者双方の主張を聞いて適切に判断をされるということに基づきまして、裁判例の積み重ねによって適切な運用がされることに期待すべきものではないかというふうに考えているところであります。
  155. 橋本敦

    ○橋本敦君 おっしゃるとおり、極めて法の要件自体としては不明確ですから、まさに裁判所のこれからの合理的運用にかかっておるという意味で裁判所の責任というのは重いわけですね。だから、インカメラという制度ができたその上で、さらにこういう規定の明確性を欠く文言の運用を通じて、本当に国民の知る権利なり法廷に真実を明らかにしていくという裁判本来の公正な裁判をやっていき、国民の権利を保全するというそのことをやっていくためには、裁判所は重い責任を持ってこの規定の合理的な運用、そしてまたこうした漠然とした規定の合理的範囲に関する判例なり運用の実績を積み上げていかなきゃならぬという責任があると思いますが、裁判所はどうお考えでしょうか。
  156. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) この委員会での御議論を伺っておりまして、裁判所に寄せられる期待といいますか、その重さを十分に感じておりますが、いずれにしましても、適正、妥当な判断を示していくのが裁判所役割であるということで、全力を傾けなきゃならないという覚悟をしております。
  157. 橋本敦

    ○橋本敦君 民事局長なり裁判所のおっしゃるように、まさに国民のための司法という立場を貫く、そういう観点からこれからの運用について、国民の知る権利なり公正な裁判の遂行なりについて格段の御尽力を重ねて私は要望しておきたいと思うし、またそういう要望をせざるを得ない法律構造になっているということだと思います。  そこで次に、上告理由の制限の問題に話題を移していきたいと思います。  この問題について、もう時間がありませんから端的に説明を求めたいんですが、上告理由の制限というのは、何といっても国民が三審制のもとで裁判を受ける権利に対する一定の制約であり制限であることはこれは間違いない、そういうことはもう実際間違いないわけです。  そこで今度の場合に、まさに絶対的上告理由等は別にして、重要な法令解釈に関する事項でなければ上告を受理できないという、そういうことになりますと、そこで言う「重要な事項」というのはどういう範囲を含むのか。いわゆる法令解釈の誤りがあり判決影響を及ぼす、そういうことだけでは上告受理できないということになれば、そこで言う「重要な事項」とは一体どういうことなのかをこれは客観的に明らかにしておく必要があると思うんです。その点はさっぱりこの法案では明らかになっていないんですが、まずこの点、法務省はどうお考えですか。
  158. 山崎潮

    政府委員山崎潮君) ただいまの点でございますが、現行法判決影響を及ぼす明らかなる法令違反という事由になっているわけでございますが、これはまさに判決影響があるわけですから、これはもう当然上告理由になるはずでございます。もう一つは、今回の仕切りが少し違っておりまして、この上告受理に関しましては、「法令解釈に関する重要な事項を含むもの」と書いてございます。  したがいまして、判決の結論に影響があるかないかということを問うてないということでございますから、仮に上告棄却ということになるものであっても重要な法令解釈については取り上げると言っているわけでございまして、ある意味ではスキームも少し変わっておりますけれども、見方によっては今までよりも広いということになるわけでございまして、先ほども私御答弁させていただきましたけれども、要するに最高裁が判断をするという、ここは全く変わっていないわけでございまして、その判断をどう外へお答えをするか、それが不受理という決定になるのか、あるいは上告棄却ということになるのか、そこの違いであろうというふうに考えておりまして、決して権利を制限するものではないというふうに理解しているところでございます。
  159. 橋本敦

    ○橋本敦君 非常に大事な御答弁がありました。  重ねてその点で伺いますと、判決影響を及ぼすことが明らかな法令の違背がある場合は、これは上告は受理するんですかしないんですか、その点をまず。
  160. 山崎潮

    政府委員山崎潮君) 厳格な意味ではいろいろあるかと思いますけれども、基本的にはやはり判決の結論に影響を及ぼすことということになれば、それは最終的には法令解釈の誤りあるいは適用の誤りという問題に結びつくわけでございますので、現在そういう事件があるとすれば、基本的にはそれは受理がされるということになろうかと思います。
  161. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうしますと、わざわざ三百十八条で、この申し立てにより上告事件を受理することができるという制度で、「法令解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」ということでここで入れなくても、今までどおりの上告という制度で、それで事足りるんじゃないんですか。わざわざここへこういうふうに入れても、あなたがおっしゃるように、結論として関係がないですよと。判決の結果に影響を及ぼす法令違背があるならば、当然それは上告として受理され、また事実そうであればそれなりの判決がなされるだろうというのであれば、上告理由制限だというようなことが言われているこういう制度をつくる必要があるんでしょうか。
  162. 柳田幸三

    説明員(柳田幸三君) 今回の上告受理の申し立て制度趣旨といたしましては、上告理由憲法違反と重要な手続法違反に限定されるということになりました関係で、法令違反につきましても最高裁判所判断する機会を確保する必要があるということで、法令解釈が問題になる場合のうち法令解釈に関する重要な事項を含むと認められるものについて最高裁判所がみずから事件を受理して判断をする、そういう仕組みをつくったものでございます。  ここで想定されておりますのは、三百十八条の第一項にございますように、「原判決最高裁判所の判例と相反する判断がある事件」というようなことが典型例でございまして、この場合には最高裁判所がみずからその判断を示す必要があるということでございます。  したがいまして、ここで受理するかどうかということを判断するに当たりましては、この例示も参考にしながら、最高裁判所がみずから取り上げて判断をするのが適切な事件であるかどうか、そういう観点から判断されるものではないかというふうに考えているところでございます。  先ほど来御指摘がございます原判決影響を及ぼす法令違反があるかないかという点は、この受理するかどうかという観点とは若干異なる観点からの問題でございまして、それが直ちに一致するということではないというふうに考えております。
  163. 橋本敦

    ○橋本敦君 大事なことだから聞きますが、一致するということでないということで上告が受理されないことがあるんでしょうといって聞いているんです。
  164. 柳田幸三

    説明員(柳田幸三君) 観点を異にするわけでございますので、それはあり得ることであろうと考えております。
  165. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうでしょう。だから重大な上告理由制限になると、こう言っているんです。そこが大事なんですよ、この問題については。  例えば、皆さん御存じと思いますが、昭和四十九年の豪雨で多摩川水害が起こりまして、この事件で、いろいろ事件がございましたが、最高裁判所はこの事件法令違背があるとして破棄差し戻しをした。国家賠償法の解釈適用を誤り、ひいては河川管理の瑕疵について審理を尽くさなかった違法があると言わざるを得ない、つまり法令違背、そしてこれは判決影響を及ぼすことは明らかだということで最高裁は差し戻しをした。  いいですか、重要な法令違背があるからじゃないですよ、判決影響を及ぼす明らかな法令違背があるからということで棄却になった。これは受理されなかったら原判決は破棄されてないですよ。  それから、熊本の税理士さんの起こされた有名な事件、御存じと思いますが、強制加入の税理士会が政党に献金をするという、それを徴収する、それは思想信条の自由を侵すじゃないかということで裁判になりました。  この事件裁判所は、原判決を破棄したんです。この場合でも、原審の判断にはまさに法令解釈を誤って、つまりそれぞれの政党の自由及び強制加入である税理士団体の関係に関するいろんな法令があるんですが、法令解釈適用を誤った違法があり、この違法は判決影響を及ぼすことが明らかであるからということで、これは原判決を破棄しています。こういう重要なことがあるんですよ。  そこで、もう時間がありませんから最後になるんですけれども、このような問題について一体今までどれぐらいの事件上告事件として破棄されているかといいますと、パーセンテージはなるほど少ないです。少ないけれども法令違背を理由にそれが判決影響を及ぼすとして原判決が破棄されたケースは、今までの中で最高裁にやっぱりあるわけです。これは最高裁にとって国民の権利を守る非常に大事な重要な役割を果たしているわけなんです。  だから、この問題で、上告理由が今あなたがおっしゃったように制限されるということがはっきりしているという問題は、これは実に重大な問題ですね。この点については、もう時間が来ましたから次に重ねてまた議論をいたしますが、あなたの答弁からもこの問題の不当性は私ははっきりしたと思いますので、さらに検討を求めたいと思っておりますが、また議論は次にいたします。  終わります。
  166. 本岡昭次

    本岡昭次君 七十年ぶりの大改定と言われている民事訴訟法改正と、日本政府が一九七九年に批准した国際人権B規約が保障する裁判を受ける権利との関連について質問をいたします。  まず、長尾法務大臣に伺います。  国際人権B規約を批准している日本政府は、人権規約二条二項によって、国際人権B規約の水準まで民事訴訟法内容を引き上げる義務を負っていると私は思います。  人権規約二条二項では、「この規約の各締約国は、」「この規約において認められる権利を実現するために必要な立法措置その他の措置をとるため、自国の憲法上の手続及びこの規約の規定に従って必要な行動をとることを約束する。」、こうなっております。  したがって、今回のこの重要な民事訴訟法改正においても、今読みました人権規約二条二項というものを念頭に置きながら、国際人権B規約との関連を重要視して私は改正されなければならないと考えます。その点について、どのようにこの国際人権B規約との関連を考えて改正されたか、お伺いをいたします。
  167. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 我が国が国際人権B規約を批准するに当たりまして、現行民事訴訟法がこの規約に適合しているという理解のもとにこの規約を批准したものと承知をいたしております。  今御提案を申し上げております法律案は、このことを前提といたしまして、民事訴訟国民に利用しやすくわかりやすいものとするために、民事訴訟手続に改善を加え、より適正で迅速な裁判を受けることができるようにということのための改正でございまして、人権保障の観点から見ましても現行法よりもさらに一層配慮していると、このように考えております。
  168. 本岡昭次

    本岡昭次君 この改正法の百六十八条、百六十九条二項、百七十三条など弁論準備手続は、原則非公開、一部関係者への公開と、こう言われています。言われていますと私が申しますのは、私は全くの素人でございまして、とてもこの訴訟法全体を解読する能力を持っておりません。これを全部できたら私も弁護士になれると思うんですが、大変な中身でとても理解できません。それで、いろんな識者の要するに批判とかあるいは論評を参考にするわけですが、その中で、原則非公開、一部関係者への公開と言わざるを得ないというふうなことが多いのです。  今も、訴訟を促進させるためということがありました。しかし、原則非公開、一部関係者への公開ということが訴訟を促進させるために必要ということであれば、私は大問題だと考えます。憲法や国際人権規約が保障する公正な公開審理を受ける権利をより拡充していく改正、すなわち先ほど大臣もおっしゃったように、国際人権B規約との関連ということを大事にしながら改正されたとおっしゃるのと少し矛盾するのではないかと考えます。  したがって、この原則公開が否定されるような改正はあり得ないのではないかと考えるんですが、この点はいかがなものですか、大臣の御見解をお聞かせください。
  169. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今の委員の御質問は、弁論準備手続についてのお尋ねであるかと思います。  この弁論準備手続は、現行準備手続改正したものでございまして、現行準備手続と同様に、口頭弁論の準備のために争点証拠整理をする、こういう手続でございますので、口頭弁論において本格的に審理を行う前段階の準備ということでございます。  今、憲法の問題について御言及がございましたが、憲法で公開を要するものとされております対審というものには該当はいたしませんし、国際人権B規約において公開が要求される審理にも該当しないと、こういうふうに理解をいたしております。  また、現行準備手続においては、傍聴において規定がございませんで、専ら裁判官判断にゆだねられておりますが、現在お願いいたしております改正案におきましては、弁論準備手続におきまして、当事者が傍聴を求める者については、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると裁判所が認める場合を除きまして、その傍聴を許さなければならないというふうにしておりまして、人権保障という観点から現行法よりも一層の配慮をしておりますことに御理解をいただきたいと思います。
  170. 本岡昭次

    本岡昭次君 直ちに私は反論する能力を今持ち合わせておりませんので、会議録ができましたら十分内容について精査させていただきまして、しかるべき機会に反論する必要があれば反論させていただきます。  次の問題は、国連は一九九五年から二〇〇四年までを人権教育のための国連の十年と定めております。世界の草の根の人権教育運動を受けて、各国政府やNGO、市民に人権教育の抜本的な充実と展開を求めております。  この人権教育の対象とされているのは、これは子供だけではありません。大人、それも警察官や裁判官、国会議員や官僚が私は重要な対象になっていると思うんです。教育といえば子供という単純な発想ではいけないと考えております。  口頭弁論の公開というのは、裁判による国民の人権教育という最大の場ではないかと私は思っております。女性や子供、障害者、高齢者、在日外国人などいろんな方の人権侵害をめぐる裁判、これを傍聴するということは人権教育そのものであると考えます。  法務大臣は、人権教育のための国連十年推進本部の副本部長をされております。裁判あるいは口頭弁論の公開、公開審理を受ける権利と人権教育の関連というふうなものを十分考えられて民事訴訟法改正されたと思いますが、人権教育という問題と、今後いろんな法改正をしていくについて、人権を視点に置いてどこをどのように改正したかという点を重要視していただきたいと思いますが、大臣いかがですか。
  171. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 人権教育のための国連十年の推進という観点から申し上げますと、やはりすべての法律改正の中に、特に人権にかかわります項目、人権にかかわりますような事項につきましては、その点を十分配慮すべきであるという委員の御指摘はそのとおりであると考えております。  また、人権侵害にかかわりますような裁判、これを傍聴するということは、確かに人権教育という観点から、豊かな人権感覚を深めていただくという意味でも大変重要なことであるという御指摘はそのとおりであると思っております。  今回の改正案におきまして、本格的な審理を行う手続でございます口頭弁論、これは原則として公開の法廷で行うものでございまして、これまでと変更はございません。  また、先ほど来御質問がございました争点整理手続等につきましても、準備的口頭弁論、これを設けておりますし、国民に開かれた場で争点整理を行うということが適当であると思われるような場合にはこういった手続を使われるということになろうと思っておりまして、その意味では、本法律案は今委員がおっしゃいました趣旨に沿ったものであるというふうに私は考えております。
  172. 本岡昭次

    本岡昭次君 国際人権規約十四条の公正な公開裁判を受ける権利に関連しまして、国際人権規約選択議定書について外務省に伺います。  この選択議定書は、人権委員会が、人権規約に定める権利の侵害の犠牲者であると主張する個人の通報を受理し、かつ審議することについて協定をするものです。国連人権委員会への個人通報制度と言われております。  なぜ日本政府はこの議定書を批准しないのですか。国連人権委員会への個人通報制度を認めることは、国民裁判を受ける権利をより拡充していくことになると考えます。  私が、一九八六年一月、参議院本会議で当時の中曽根内閣総理大臣にこの点を質問しました。選択議定書の批准について前向きに検討するという意味の答弁をしていただいてからもう十年を経過します。その間、アジアでどの国も批准していないからというふうな理由で、さらに検討をとおっしゃっていました。ところが、韓国、フィリピンが日本に先駆けて批准いたしましたが、依然として日本は批准という声を聞きません。外務省に早急に批准することを求めます。  今になってもまだ批准ということに対して具体的な行動を起こさないその理由は何ですか、具体的に明示してください。
  173. 川田司

    説明員(川田司君) お答えいたします。  先生御指摘の国際人権B規約の選択議定書に規定しておりますいわゆる個人通報制度でございますけれども、この制度は、人権の国際的保障のための制度として注目すべき制度であるというふうに考えております。  ただ、この制度につきましては、先生には何度も御説明させていただきましたけれども、特に憲法の保障します司法権の独立を侵すおそれがないかといった点も含めまして、我が国司法制度との関係等慎重に検討すべきという指摘もございます。こうした指摘も踏まえまして、今関係省庁と検討しているところでございまして、引き続き検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  174. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、今の課長の答弁を私は十年間聞き続けてきておるんです。もういいかげんに、そういう答弁を繰り返すのじゃなくて、なぜ来年までにとか、いついつまでにという区切りをつけてこの問題の処理をなさろうとしないんですか。今の答弁では納得できません。  それから、大臣、今の答弁を聞いたでしょう。司法権の独立を侵すおそれがないかということを検討しておるというのです。これは外務省の専管事項じゃないですね。司法権の独立を侵すか侵さないかとなると、これは法務省が、侵されるのか侵されないのかという問題をあなた方が議論しなきゃいかぬ。どうですか、法務省
  175. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) ただいま御指摘の点は、まことにそのとおりであろうと思います。  法務省としても、司法制度の基本的な枠組みについてやはり行政の立場から所管しているわけでございますので、外務省その他関係省庁とあわせて検討すべきことでございますし、現にそのことで政府部内でいろいろこれまで協議が重ねられてきたと存じております。  特に個人通報制度の問題につきましては、実際はあらゆる国内的な措置が尽くされてからそういう申し立てがなされるべきだということが定められているわけでございますけれども、実際の運用上、そういう面でない場合、すなわち現在係属中の事件につきましても申し立てがなされるというようなこともございまして、それが取り上げられたような事例もあるようでございます。  そういう状況を考えてまいりますと、果たして司法権の独立ということで、日本で、我が国で考えられております裁判所判断を尊重して、そこによってあらゆる手続を進めてまいりたいという一つの立場におきまして、個人通報という形でそれが国連の委員会に提起されまして、そこで現に係属中の裁判状況について審議される、その当否についても問題にされるということが果たしてどういうことになっていくのか、そのためのさまざまな手続との均衡上、果たしてその点が十分に保障されることになっているかというような点もございまして、慎重に検討を続けていく必要があるだろう、そういうふうに考えております。
  176. 本岡昭次

    本岡昭次君 それは勉強不足ですよ。私のような法律知識がない者でも今のあなたのような答弁では納得できませんよ。ちゃんと議定書の中に書いてあるじゃないですか。今あなたのおっしゃるような状況にあるものは受理しないと書いてあるじゃないですか。あなたのおっしゃるような状況のときの事例は国連人権委員会は受理しないんですよ。どうも納得できませんね。  だけれども、これをやっておったらいかぬので、ちょっと外務省、あなたにも言っておくけれども、課長、あなたとやりとりしたって答えは出ないでしょう、それはわかっています。  だから、私は六月二十日の決算委員会の総括のところで質問の時間をもらっています。そこで外務大臣それから総理大臣、法務大臣にこの問題の答えをいただきますから、今から一週間ほどの間にきちっとした答弁を求めたいと思います。  中曽根さんのときからずっと、私が予算委員会でもどれだけこのことを質問してきたか。同じことを繰り返しているんです。先送りがあなた方の得意やということはわかっていますよ、それは。しかし、ここまで先送りされるとばかにされているのかということになりますよ、私なんかは。理由にもならない理由を取り上げて、ただ先送りしている。私の課長時代にしんどいからやめておこうと、次へ送っておこうと、そういうことにしか受け取れぬです、私は。  それで、この間、二、三日前、私は最高裁の長官にお出会いをしましたので、そこで言うたんです。最高裁のあなたがこの選択議定書を批准することを妨害されているんですかと。司法権の独立の問題に絡んで、日本には最高裁という立派なあれがあるんだと、それ以上のものを求める必要はないといってあなたは、この国際的な裁判を受ける権利を拡大しようという動きの中で、妨害されているんですかと言ったら、目を白黒されて、いやいや、とてもそんなことじゃないやないですかということのようでしたから、これは一度きちっとした対応をやってください。国際的な問題でございますので、お願いをしておきます。  どうですか、課長、六月二十日の決算委員会の場で、いっこの問題の答えを出しますということを言っていただくように、あなたの責任でやっていただけますか。
  177. 川田司

    説明員(川田司君) よく検討させていただきます。
  178. 本岡昭次

    本岡昭次君 法務大臣、こういうときどうしたらいいんですかね。私、困ってしまうんですよ、本当に。  それでは、もう残り時間もわずかですから、次の問題をひとつ質問します。これは在日外国人の人権問題であります。  在日コリアン人権協会が一九九五年三月十三日に、人権侵害事件として調査、認定することを東京法務局に申し立てています。その事件内容は、一九九四年九月、在日コリアン・マイノリティー研究センターが東京事務所を開設した際に、事務機のリース契約に当たってリコーリース中央営業所に代表者と保証人の名前を民族名の韓国籍名で申し込んだところ、外国人が代表者の場合は日本人の保証人が必要であるとの対応がありました。外国人は保証人になれないということは、定住している韓国・朝鮮人など在日外国人に対する侮辱であり、偏見と差別意識に基づくものであると調査、認定を求めている内容なんです。  東京法務局はいまだにこの調査結果を出していないようです。私も局長と直接電話でやりとりしましたが、いまだに答えをいただいておりません。一体、おくれている理由は何ですか。また、法務省はこのような企業の外国人に対する扱いにどのような基本的見解を持っているのですか。  私は、このようなことの関心を持ったがゆえに、この間の予算の委嘱審査のときに、法務局の出先のこういう人権侵害の調査に当たる人の数をふやせと、ふやさなければこういう問題の解決をできぬだろうということを申し上げたんです。いかがですか。
  179. 大藤敏

    政府委員(大藤敏君) まず、法務省が在日外国人の問題について現状をどういうふうに認識をし、それに対してどう対応するのかという点でございますけれども、最近、御指摘のように事件が係属しておりますし、ほかにも外国人であることのみを専らの理由といたしまして差別をする、例えばアパートの入居拒否をいたしますとか、あるいは契約の締結を拒否する、あるいは侮辱的な言辞をする、そういう事案がございます。そういうものにつきましては、法務当局といたしましてはできるだけ事実関係を早急に調査をいたしまして、人権侵害の事実があるかどうか、もしあるといたしますればそれに対する、その事件に相応した適切な処理をする、そういう方針でございます。  そしてまた、同時に、加害者に対しまして個別的な啓発を十分に行う、それによって総合的な観点から被害者の救済を図る、そういう運用をしております。また同時に、そういう事件を離れて、人権相談やあるいは一般の啓発活動を通じて、積極的に外国人に対する差別をなくそうと、そういう活動をしているわけでございます。  それからもう一点、御指摘事件につきましては、今委員が御指摘になられましたように、現在、東京法務局で事実関係の詳細について調査をしているところでございます。時間が経過いたしておりますけれども、これは、双方から慎重に事情を聞いているということやら、双方の話し合いの期待もあるというようなことで事態の推移を見守っているということもあるようでございまして、しかしなお最終処理を目指して事実関係を調査して最終判断をしたい、そのように考えております。
  180. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、そのおくれている理由というものをもう少しわかりやすく言っていただけませんか。
  181. 大藤敏

    政府委員(大藤敏君) 基本的には、具体的な事件につきましては、大変申しわけございませんが、公務上の秘密ということで人権局としては従来から内容については御説明を差し控えさせていただいているところでございまして、先ほど申し上げましたように一応の事実関係は掌握しております。しかし、関係者がさまざまな関係者がおられるということでかなり事案が複雑であるということ、それからまた、私的契約の自由の原則関係もございますのでその辺も十分に考慮しながら慎重に判断をする、同時にまた、かたがた話し合いの余地もあるんではないかということで慎重に事態を見守っている、その結果、今日に至ったということのようでございます。
  182. 本岡昭次

    本岡昭次君 人手不足でこういう人権侵害の調査依頼が山積をしていて、そして順番待ちであるとか、あるいはまた、たくさんの事案を少ない人数で調査しているんでなかなか前へ進まないとか、そういうことでなくて、内容そのものが非常に複雑で調査結果を出すのに時間がかかっている、こういうふうに理解をしていいんですか。
  183. 大藤敏

    政府委員(大藤敏君) 委員が今お話しになられました前段の理由が全くないかどうかまでは正確には申し上げかねますけれども、主として私が承知しておりますのは後の方でございます。事案の性質によってそういう処理になっているということでございます。
  184. 本岡昭次

    本岡昭次君 民事訴訟法改正審理の迅速というふうなものがやはり重要なテーマになっている。同じように、こういう第一線の法務局に訴えられる人権侵害事犯について、調査を迅速にしてそして答えを早く出してやる。人権侵害なのかそうでないのかというその答えを出せばいいわけでしょう、これは。だから私は、それも同じように迅速にやはりやっていくということでなければいけないんじゃないか、こう思いますので、できるだけ早くそういう調査の結果を在日コリアン人権協会に出せるように要請をしておきます。また、具体的には、法務局の局長の方にまた話し合いをさせていただきます。  そこで、人種差別撤廃条約というのも、これも長い間すったもんだしてやっと批准したんです。何か一年か二年に一つずつ、並んでおるのを順番に処理するというのが外務省の方針か知りませんが、私は、人種差別撤廃条約が批准された、続くのはこれは選択議定書だなと思って心待ちにしておるんです、今ね。  それで、人種差別撤廃条約が批准、発効したというこのことと、今私が言いました在日外国人の人権問題が深くかかわるわけでして、批准することは手続の問題ですが、実際に批准した後、その内容、中身の問題についていかに実効性ある対応ができるかということが極めて大事であると考えます。  そういう意味で、法務省は文字どおり人権擁護行政でありますから、こういう人種差別撤廃条約を批准したその立場に立って、より人権擁護行政の責任ある対応を私は強く望むものでありますが、人種差別撤廃条約批准後における、さらに強化していくための具体的対策あるいは方策というものを今持っておられるならお示しいただきたいと思います。
  185. 大藤敏

    政府委員(大藤敏君) 今、委員が御指摘になられましたように、あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約は、国連憲章でございますとか世界人権宣言の趣旨を体しまして、締約国のあらゆる形態の人種差別を撤廃することを義務づけているところでございます。そうした趣旨や目的については、人種差別の撤廃への国際的な努力として十分に理解でき、尊重されるべきものでございます。  法務省といたしましても従来から、先ほども申しましたが、啓発活動を積極的に推進しております。これは、いわば広い意味での人権教育でございまして、人種差別撤廃の趣旨にも適合するものでございます。人種差別撤廃条約の前文には、人種のみならず、あらゆる差別をなくすと、そういう趣旨が酌み取れるわけでございまして、従来から法務当局もそういう考えのもとに人権擁護行政を展開してきているところでございます。
  186. 本岡昭次

    本岡昭次君 最後に、法務大臣にお願い、要請をさせていただきます。  国際人権規約の選択議定書の批准の問題なんですが、国連との関係の条約批准でございますから直接には外務省が所管であろうと思いますが、しかし内容的にはこれは法務省が深くかかわり、また最高裁判所関係してくるわけでありまして、ひとつ大臣として積極的にこの批准の問題について御努力いただきたいということをお願いを申し上げて私は質問を終わるものですが、一言、任せておきなさいというふうなひとつ答弁をいただければありがたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  187. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) B規約の選択議定書の批准問題につきまして、委員が長年にわたり大変御熱心に御推進をしてこられたということにつきましては敬意を表したいと思います。  しかし、先ほど私どもの方からも御説明をさせていただきましたように、この問題は司法権の独立ということに影響を及ぼす大変大きな問題を含んでいるわけでございまして、私といたしましては、今先生からのせっかくのお言葉でございますが、任せておきなさいというのはちょっと申し上げがたいということを申し上げさせていただきます。
  188. 田英夫

    ○田英夫君 既に同僚議員から問題点を多くのことを指摘されておられますから、重複をなるべく避けたいと思います。  私の基本的な物差しといいますか、政治的な立場から申し上げると、やはり今度の民訴法を新しく制定するということは、わかりやすくするということ、同時に親しみやすくするということを言われるわけでありますけれども、最も大切なことは、国民といいますか市民の皆さんの側に立った裁判、こういうものができるような、そういう民訴法でなければならないと思うわけで、その物差しに当てはめて若干のことを申し上げたいと思います。  最初に、いわゆる上告制限ということが今回の民訴法の中で出てくるわけですけれども、これがもし言われるように最高裁の負担を軽減するということを考えてのことであるとするならば、これはいささか本末転倒じゃないかと私は思うんですけれども、その辺のことを含めて、上告を制限しようという発想のもとは一体何なのか、御説明をいただきたいと思います。
  189. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 最高裁判所は、憲法上あるいは裁判所法上、裁判所としても特別の位置づけをされているものでございまして、憲法判断及び法令解釈統一という重大な責務を担っているわけでございます。この重大な責務最高裁判所が十分に果たしていただくということが何よりも重要なことであるというふうに考えているところでございますが、現実の問題といたしましては、上告につきましては、憲法違反等のほか、広く判決影響を及ぼすことが明らかな法令違反上告理由として規定されているわけでございますが、形式的には上告理由として法令違反を主張しているものの、その実質は原審の事実認定に不服を言う、ただ形式的に法令違反を主張しているという事件が大多数を占めているというふうに承知しております。そういうことでございましても、法令違反を主張しておれば、一つ一つ事件について最高裁判所判決という形で対応しなければならない。そういうことで、その重要な責務を十分に果たすということが困難な実情にあるということでございます。  他方では、これも午前中御説明したところでございますが、決定手続処理される裁判に対する抗告につきましては、現行法では憲法違反事由とする場合を除きまして最高裁には提起することができないということになっておりますが、この決定手続処理される事件判断にも大変重要なものがございまして、そういう重要な事項について最高裁で統一的な判断がされないために高等裁判所ごとに判断が分かれている、当事者としてもどちらの判断に従って事件処理をしたらいいかわからないというような問題を生じてきているという面がございます。  そういうことから、最高裁判所がその必要な機能を十分に果たしていただくという趣旨から、上告につきましては上告受理制度という制度を新たに設けまして、その規定整理をする。他方、決定手続処理される事件につきましても、解釈統一ということを図る必要があると思われるような事件については最高裁判所判断がされるという余地を認める。こういう両方からの改正をいたしまして、この機能を十分に果たしていただくということに資するということを考えているものでございます。  単に最高裁判所の負担軽減ということを観点とするものではございませんし、国民裁判を受ける権利を不当に制限するということでもないというふうに理解しているところでございます。
  190. 田英夫

    ○田英夫君 いわゆる上告が非常に多いと、しかも法令違反ということで、今おっしゃったように、それが大部分を占めるという、つまり憲法の問題以前の問題で上告されてしまうということが非常に多いという、この事実は私も感じます。よくわかりますが、結局、最高裁まで行ってしまうという原因の一つは、きょう山崎さんも触れておられましたが、下級審の判決への不信感というものが地裁であれ高裁であれやはり否定できないんじゃないだろうか。  よく公害裁判などで、あるいは人権裁判などで、刑事も含めてですが、不当判決というような紙を持って法廷から飛び出してくるというような光景をテレビでごらんになるわけですけれども、こういうことを一般の方がどう受けとめておられるか。それで上告、最高裁まで行ってしまう、やっぱりしょうがないんだろうな、こういうふうになってきますと、なかなか改まらないんじゃないか。結果的には、上告受理制度というのが出てくると、そこで制限をされると、何だこれは制限するのか、こういう不満がむしろ蓄積することを私は恐れる。国民の皆さんの側の気持ちに立ってみれば、その辺を恐れて申し上げたわけです。  もう一つ、そういう意味で、下級審の判決への不満ということも含めていろいろ原因を考えてみますと、一つ決定的に裁判官の不足という問題、そしてそれは司法予算というものの不足といいますか、こういう問題にも逢着をするんじゃないだろうかと思います。  司法予算というのは、金額を聞いて私もびっくりしたわけでありますけれども、国家予算に比べますと、つまり三権分立という、それが予算の上で三つ平等であるとは全く思いませんけれども、しかし余りにも違い過ぎるんじゃないだろうか。できましたら、大まかな数字で三千億とかそういう言い方でいいですが、今年度司法予算、おわかりになりますか。大まかな数字でいいです。
  191. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 極めて大まかに申し上げまして、委員指摘程度のものでございます。
  192. 田英夫

    ○田英夫君 大体三千億円というと、これは国家予算と比べると本当に、例えば建設省の予算は非常に大きいわけですけれども、私は反対をしてきたためについ挙げるんですが、長良川につくった河口堰が三千億近いですよ。二千五百億と言われているわけですが、これから先、水を供給するための施設をつくりますと、さらに二千億ぐらいかかると言われているわけであります。  そういうこと等考えますと、あそこにできた河口堰一つつくるのと司法予算全体とがほぼ匹敵するということで、その額の中で裁判官の給料その他賄っていくということになりますと、これはやはり根本的にそこに問題があるんじゃないか。裁判官は二千八百ぐらいと考えてよろしいですか。最高裁、いかがですか。
  193. 永井紀昭

    政府委員(永井紀昭君) ただいま裁判官総数は約二千九百弱でございます。
  194. 田英夫

    ○田英夫君 これも、この間、本会議で言っておられましたから、数字はもう挙げませんけれども、外国に比べますと全くこれも比較にならない、こういうことでまことに残念な状況にあることは否定できません。これもひとつ早急にといいましても、人事といいますか、裁判官という大切な役割を果たす人の供給源の問題にもかかわるわけですから一朝一夕にはいきませんけれども、何かこれは考えなくちゃいかぬのじゃないか。  もちろん、日本の制度を例えばアメリカのような陪審制にするというようなことは到底考えておられないと思いますが、念のためいかがですか、陪審制にするというようなこと。
  195. 永井紀昭

    政府委員(永井紀昭君) 私ども最高裁判所から聞いている限りでは、陪審制度及び三審制度についての研究を続けておられるというふうに承っております。  ただ、陪審制度につきましては、日本の場合、今陪審法が停止されていて、基本的にはあるんですが、これは戦争中からほとんど実施されておりません。これからも裁判所の方でいろいろ御検討されるものと思っております。
  196. 田英夫

    ○田英夫君 私が申し上げたいのは、そのくらいの根本的な発想の転換をしないとこの問題は解決しないんじゃないだろうか、せっかく民訴法を新しくしていただいても実際には改まらないんじゃないかということを心配するわけです。  それで、裁判官のもう一つ、資質の問題といいましょうか、供給源にもつながると思いますが、逆さまになるおそれもあるんですが、これは裁判官の皆さんの批判をするわけではなくて、あるいは国会議員の中にも裁判官出身の方がおられますからその方を批判するわけじゃないんですけれども、要するに、あの裁判所という独特の雰囲気と、独特の非常に重要な役割を果たされるというその中に入られて、一般社会からはある意味では隔絶をしているのではないか。隔絶をしていなければいけないのではないかと思っている人もいるかもしれません。  そういうことの中で、遠山の金さんのようにとは私は申しませんけれども、やっぱり庶民の中に、市民の中に裁判官も身を置くぐらいの気持ちで、庶民の生活なり気持ちなり、それからその変化ということを十分知りつつやっていかなくちゃいけないんじゃないか。もちろん法によって裁くわけでありますけれども、必ずしも法がこうだからこうだというだけでは、これはやはりどんなに近代化された現在であってもまずいんじゃないか。やはり人間の問題というのが出てくるんじゃないか。  そこで、イギリスですか、弁護士をやってそうした社会的な現象なりそれにまつわる事件を、あるいは問題を体験をした上で裁判官になっていくという、こういう制度をとっている国もあるようでありますが、私は、このこともまた国民、市民の側に立った司法ということを考えたときに非常に重要な要素ではないだろうか。弁護士出身の国会議員の方はたくさんおられますが、やはり弁護士という仕事を通じて社会現象を知ると。  私の体験で恐縮ですけれども、新聞記者でさえというか、新聞記者というのは社会の中にみずから身を置いているはずでありますけれども、新しく新聞記者になってきた人をいきなり政治部とか経済部とか外信部とかいうところに置きますと、非常に偏ったといいますか、社会の底辺で何が起こっているかというようなことが余りよくわからないで問題に接してしまうと。そのことのために、将来本当のいい記者ということにならないんで、大体今は大きなマスコミは皆地方の支局というようなところを経験させますね。それから社会部を経験させます。  これは、やはりそうした社会の一番の第一線のところで体験をする、こういうことを大事にしているわけで、そのことが裁判官の場合は特に私は非常に大事じゃないだろうかと推察をするんです、なったことがありませんからわかりませんけれども。この点はひとつ、私の意見として法務省の皆さん、最高裁の皆さん、ぜひ頭のどこかに置いていただければと思います。  あと、この民事訴訟法というのは、さっきから繰り返して申し上げていますが、国民、市民の側に立ってということを基本にしていただきたいということを申し上げているわけですが、弱者という言い方は使いたくありませんけれども、わかりやすいので弱者と申し上げますが、やっぱり社会的な弱者を救う、そういう場ということを非常に重視すべきじゃないかな、こう思っております。  したがって、公害裁判とか薬害の裁判とか、さまざまなそうした社会的な問題が最近は裁判で注目されるようになっていることは一つの大きな進歩だと思いますけれども、例えば今度のあれで簡易裁判所少額手続というようなことが出てきている。この問題も運用の仕方いかんでは結果的に、いわゆるサラ金とかあるいはそういう意味の消費者金融と言うといいですけれども、そういうところの取り立てを助ける。お金を借りるというのは庶民の零細な、お金を借りてようやく何とかその場をしのぐという、そういう人がなかなか景気が悪くて払えない、返せない、そうすると片方は取り立てようとする、それを裁判所に持ち込む、結果は弱者の方の借りた人の方が非常に不利になって、取り立て救援機関みたいな、支援機関みたいな結果になるんじゃないかという意見が庶民の間であります、今度の民訴法で。この点はどういうふうにお感じになりますか。
  197. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘少額訴訟手続、これは広く一般国民に対して、現行手続では経費的にも時間的にもつり合わないということで訴訟を利用しにくいという、そういう少額の紛争についても裁判による解決を求める道を開くということを目的とするものでございます。  ただ、特別の簡易迅速な手続等をしておりますことから、当事者双方の利益を害しないということについては十分な配慮をしているつもりでございまして、もちろん原告はこの手続を利用するかどうかの自由を持っているわけでございますが、相手方、被告におきましても弁論手続が始まる前でありますと、この手続でなくて一般の手続に回してもらいたいという旨の申し出をすれば通常の手続に移行するという担保を設けているところでございます。  また、御指摘のように、特定の個人、一般には法人の場合が多いわけですが、そういう者が多数の事件についてこの手続による裁判を求めるという事態が生じますと、本来の目的としておりますところの少額訴訟の利用を希望する人にこのメリットを十分に受けてもらうことができなくなるというようなことも配慮いたしまして、この訴訟手続につきましては法案の三百六十八条一項のただし書きにおきまして、同じ原告による同じ簡易裁判所における一年間の利用回数を最高裁判所の規則で定めるところにより制限するということにしているところでございまして、具体的な利用回数の上限は最高裁判所規則で定められることとしておりますが、当面、同じ簡易裁判所について年間十回とすることが予定されているというふうに聞いております。こういうことからも、特定の者がこの手続を独占するという事態が生ずることはないという配慮もされているところでございます。
  198. 田英夫

    ○田英夫君 ありがとうございました。終わります。
  199. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
  200. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 民事執行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、発議者衆議院議員保岡興治君から趣旨説明を聴取いたします。衆議院議員保岡興治君。
  201. 保岡興治

    衆議院議員(保岡興治君) ただいま議題となりました民事執行法の一部を改正する法律案について、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、不動産の強制競売及び担保権の実行としての競売事件処理するについて、占有者らの不当な妨害行為により、競売の手続の円滑な遂行に支障が生じている現状にかんがみ、保全処分及び引き渡し命令の相手方の範囲を拡大する等により不当な妨害行為を適切に排除することができるようにすることによって、競売の手続のより適正迅速な遂行を図ろうとするものでございます。  また、この法律案は、労働組合運動その他正当な活動に対しては、十分な配慮がなされなければならないことを前提とするものであります。  以下、簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、売却のための保全処分及び最高価買受申出人等のための保全処分の相手方を、債務者のほか、不動産の占有者にまで拡大することでございます。  第二点は、売却のための保全処分を命ずる場合において、特別の事情があるときは、直ちに執行官保管命令を発することができるものとすることでございます。  第三点は、売却のための保全処分及び最高価買受申出人等のための保全処分を命ずる場合において、裁判所が必要があると認めるときは、労働組合運動その他正当な活動をする者などの権利主張の機会を確保するため、審尋を行うことを法律明確化することでございます。  第四点は、引き渡し命令の相手方を、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者を除く不動産の占有者にまで拡大することであります。  第五点は、不動産に対する担保権の実行としての競売の開始決定がされる前に、特に必要があるときは、売却のための保全処分を命ずることができるものとすることであります。  第六点は、附則において、政府は、この法律施行後五年を目途として、この法律による改正後の民事執行法第五十五条、第七十七条、第八十三条及び第百八十七条の二の規定施行状況を勘案し、必要があると認めるときは、これらの規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることであります。  以上のほか、所要規定整備することといたしております。  以上が、この法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。
  202. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時九分散会      ―――――・―――――