運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1996-03-22 第136回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年三月二十二日(金曜日)    午前十時三分開会     —————————————    委員異動  三月十五日     辞任         補欠選任      千葉 景子君     志苫  裕君  三月十八日     辞任         補欠選任      志苫  裕君     千葉 景子君  三月二十二日     辞任         補欠選任      下稲葉耕吉君     松村 龍二君      鈴木 省吾君     岩井 國臣君      中原  爽君     三浦 一水君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         及川 順郎君     理 事                 志村 哲良君                 野村 五男君                 平野 貞夫君                 橋本  敦君     委 員                 岩井 國臣君                 遠藤  要君                 林田悠紀夫君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 魚住裕一郎君                 大森 礼子君                 山崎 順子君                 一井 淳治君                 千葉 景子君                 本岡 昭次君                 田  英夫君    国務大臣        法 務 大 臣  長尾 立子君    政府委員        法務大臣官房長  頃安 健司君        法務大臣官房司        法法制調査部長  永井 紀昭君        法務省刑事局長  原田 明夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   涌井 紀夫君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君    説明員        農林水産省経済        局農業協同組合        課長       米田  実君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○証人等被害についての給付に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出)     —————————————
  2. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、下稲葉耕吉君及び中原爽君委員辞任され、その補欠として松村龍二君及び三浦一水君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 証人等被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。長尾法務大臣
  4. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 証人等被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、今国会に別途提案されました警察官職務協力援助した者の災害給付に関する法律の一部を改正する法律案において、警察官職務協力援助した者について介護給付が設けられ協力援助者に対する給付充実が図られることにかんがみ、証人等被害についての給付制度においても介護給付を創設して被害者に対する給付充実を図ろうとするものであります。  この法律案による改正点は、現行法では、被害者が負傷し、または疾病にかかり、そのため重度の障害にある場合には傷病給付または障害給付を支給しておりますが、さらに、被害者傷病給付または障害給付支給原因となった障害により必要な介護を受けている場合における給付として介護給付を新たに設けることとするものであります。  以上が、証人等被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  5. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 志村哲良

    志村哲良君 ただいま御説明をいただきました証人等被害についての給付に関する法律趣旨に関して、もう少し御説明をいただきたいと思います。
  7. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 御質問に関しまして御説明いたします。  この法律は、刑事事件証人または参考人、これは検察官あるいは警察官のもとに参考人として出頭することになる方々でございますが、証人または参考人他人の犯罪に関しまして知り得た事実を裁判所あるいは捜査機関供述したことに起因いたしまして他人から危害を加えられる事例が往々発生することがございましたことから、証人等またはその近親者証人等供述等に関しまして他人からその身体または生命に害を加えられた場合に、国において療養その他の給付を行うことによりましてこれを救済するとともに、このような制度を設けることによりまして、証人または参考人不安感もしくは畏怖感をできるだけ除去あるいは緩和いたしまして、証人または参考人供述そして出頭を確保いたしまして、刑罰法令の適正なまた迅速な適用、実現に寄与せしめようとするものでございます。  また、一時、いわゆる過激派裁判等を契機といたしまして、裁判所によって被告人に付されました国選弁護人方々弁護方針被告人等裁判への対応方針が相違しているなどから、国選弁護人がその身体に害を加えられるなどの事例も発生いたしましたことにかんがみまして、国選弁護人の場合につきましても、証人参考人の場合と同じく、国において一定給付を行うこととしたものでございます。  以上がこの法律趣旨でございます。
  8. 志村哲良

    志村哲良君 今、御趣旨は伺いましたが、先ほど大臣の御説明の中にも、「証人等被害についての給付制度においても、介護給付を創設して被害者に対する給付充実を図ろうとするものであります。」という一項がございましたが、本法による給付内容にはどのようなものがあるのか、御説明をいただきたいと思います。
  9. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) この法律によります給付の中には、これは法律の第五条に列挙されているものでございますが、療養給付傷病給付障害給付遺族給付葬祭給付、それから休業給付の六つの種類のものがございます。
  10. 志村哲良

    志村哲良君 ただいまの御説明の中の傷病給付というのはどんな内容を持ったものですか、ひとつ教えていただきたいと思います。
  11. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 言葉の使い方で若干わかりづらい面があろうかと存じますが、傷病給付と申しますのは、被害者が負傷いたしまして、または病気にかかって治療を受けている状況でまだ治っていない場合において、治療は続けているのでございますけれども身体等障害が残っているという場合に、その障害に対する給付を行うものでございます。その障害内容及び支給金額施行令で定められているところでございます。
  12. 志村哲良

    志村哲良君 給付基礎額というのがございますが、これはどういうものでございますか。
  13. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 療養給付の場合は、その療養治療等にかかった金額給付するものでございますけれども、給付基礎額と申しますのは、そのような療養給付を除く他の給付を行います場合の金額を算出してまいる基礎となるべき金額をいうものとされております。  現在の給付基礎額は八千七百円とされておるのでございますが、この額が例えば被害者の通常の収入額に比べまして少な過ぎるという場合には、一万四千円を超えない限度で増額し得るものとされております。  また、被害者がその被害を受けた当時に配偶者等一定範囲の者を扶養していた場合には、この金額一定の額、これにつきましては扶養加算額と申しておりますが、この扶養加算額を加算した金額をもって給付基礎額とするものでございます。
  14. 志村哲良

    志村哲良君 その給付基礎額はどのような手順  で決められるものなんですか。
  15. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 給付基礎額は法の第六条に基づきまして政令で定められることとされております。その金額は、従来から、この法律のいわば兄弟とも言うべき法律でございますが、警察官職務協力援助した者の災害給付に関する法律施行令に規定する給付基礎額と同一の金額本法基礎額といたしておるものでございます。  その実際の定め方につきましては、警察官の場合それぞれいろいろ等級がございますが、それらの中のある標準的な俸給表金額から日々の収入相当額を算出いたしまして、それに例えば扶養手当相当分を加算して定めていく一定の方式に従って計算されたものでございます。
  16. 志村哲良

    志村哲良君 本法制定後に本法に基づいて給付された事例概要を、差し支えない範囲でお示しいただけたらありがたいと思います。
  17. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) この法律を施行していただきました後、これまでにこの法律に基づきまして給付が行われました事例は五件ございます。  その概要は次のとおりでございます。  まず、昭和三十四年二月二十日、京都地方裁判所舞鶴支部法廷の廊下におきまして、強盗傷人被告事件証人として待機中に被告人から軽便かみそりで顔面等を切りつけられまして、全治八日間の傷害を負わされた事案がございました。この場合は療養給付が支給されました。  二番目には、昭和三十六年三月十五日に被害者の自宅におきまして、恐喝被告事件証人であるこの被害者が、被告人であります者の舎弟分に当たる加害者から、被告人に有利な証言をするように強要されました上、顔面等手拳で殴打されまして全治二週間の傷害を負わされた事案でございます。これにつきましては療養給付休業給付が支給されたものでございます。  三番目には、昭和三十八年十一月二日、被害者の居宅におきまして、刑期を満了して出所した加害者から、証言をかつてしたことについての恨みを理由に切り出し小刀によって殺された事案でございます。これにつきましては、遺族に対する遺族給付とお葬式等に関します葬祭給付が支給されたものでございます。  四番目には、昭和四十三年十一月十三日に名古屋地方裁判所豊橋支部法廷におきまして、傷害等被告事件証言中の証人被告人からボールペンで顔面を突き刺されまして全治三カ月の傷害を負わされた事案でございます。これにつきましては療養給付休業給付が支給されました。  最後に、昭和五十八年二月八日、仙台高等裁判所法廷におきまして、現住建造物等放火被告事件証言中の証人被告人から左手で顔面を殴打されまして全治六日間の傷害を負わされたものでございます。これにつきましては療養給付が支給されました。  幸いなことに、それ以後、本法によって給付を行うような事案は発生いたしておりません。
  18. 志村哲良

    志村哲良君 ただいま伺いますと、いろいろな事案があるわけでありますが、このような状況下におきまして検察庁におかれては証人参考人等警護にどのような配慮をしておられるか、差し支えない範囲で教えていただきたいと思います。
  19. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 参考人につきましては、その方が被疑者らと対立するような者である場合には、例えば検察庁等出頭していただく場合、その待合室、待機していただく場所を別々にいたしましたり、あるいは呼び出しを行います日時を違えるなどの配慮を尽くしまして、最初から危害を受けることが予想される参考人取り調べを行うような場合には、例えば庁外に安全な取り調べ場所を確保するなど特別の取り扱いを行いまして参考人警護に万全を期していると承知いたしております。  また、証人につきましては、これは裁判所出頭が求められるわけでございますが、裁判所等協力を得ましてこれに準じたような措置を講じ、また必要に応じまして検察官から裁判所事情を御連絡申し上げまして、その対立関係にあると考えられるような者との接触が行われないように配慮しているものと、また裁判所からそのような御協力をいただいているというふうに承知しております。  また、参考人または証人捜査機関裁判所供述をした後でも危害を受けることが予想されるということがございます。そういう場合には、警察官に対しまして具体的にその参考人あるいは証人状況を通報いたしまして、必要な限度警護をしていただいているものと承知しております。
  20. 志村哲良

    志村哲良君 ただいまの法案の御説明はわかりましたが、介護給付を創設する理由をひとつお聞かせいただけたらありがたいと思います。
  21. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 近年の人口構成変化、またいわゆる核家族化と言われているような状況等、さまざまな社会事情変化によりまして、非常に重い障害を負った方が家庭で家族のみによっては十分な介護を受けられることが困難な状況になっていることが指摘されております。そうした場合、民間のそれに当たるような専門方々、あるいはそのことを事業とされるようなところから援助を受けまして実際に費用を払って介護サービスを受けているという場合がございますし、また今後そういうことの必要性が一段と高まってくるものと指摘されております。  そのような状況に対応いたしまして、国家公務員また地方公務員につきましては、そのような制度が既に法律によって創設されまして、この来る四月一日から実現されるようになりました。それを受けまして、公務員についてもそのような状況でございますので、これを勘案いたしまして、先ほど申し上げましたような警察官職務協力をした方々に対する給付法、また本法におきましても同じように、被害を受けまして障害が残り、そして介護を必要とするという事案になった場合には必要な介護費用給付させていただこうというものでございます。
  22. 志村哲良

    志村哲良君 介護給付制度そのものについては一般的な形での御説明をいただきましたが、その内容をこれも差し支えない範囲でお聞かせいただきたいと思います。
  23. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 介護給付具体的内容はこれから制定されることになります政令で定めることとしているのでございますが、その中身は、警察官職務協力援助した者の災害給付に関する法律施行令に規定する給付と同等のものを予定しております。  具体的にはその内容は次のようなものでございます。  まず、その介護給付につきましては、先ほど御説明いたしました傷病給付年金または障害給付年金を受ける権利を有する者が、当該傷病給付年金または障害給付年金支給事由となった一定障害によりまして、常時あるいは随時介護を要する状態にあり、かつその介護を受けている場合に、実際にその介護を受けている期間支給するというものでございます。  その中身は、月を単位といたしまして支給するものといたしております。政令で定める一級の障害状態にあって常時介護を要する者につきましては、家族等介護を受け民間事業者等に支出した費用がないか、またはその費用月額五万七千五十円を下回る場合、実際に費用を払っていないか、あるいは家族がそういうことをやっているという場合には最低金額として月額五万七千五十円を支給いたします。また、民間事業者等に支出した費用月額五万七千五十円を超える場合は、月額十万五千八十円を限度といたしまして、その支出した費用の額を介護給付月額にすることを予定いたしております。  また、政令で、一級または二級の障害状態にありまして随時介護を要する者につきましては、家族等介護を受け、あるいは民間事業者等に支出した費用がないか、またその費用月額二万八千五百三十円を下回る場合には、最低の額として月額二万八千五百三十円を支給いたします。また、民間事業者等に支出した費用月額二万八千五百三十円を超える場合は、月額五万二千五百四十円を限度といたしまして、その支出した費用の額を介護給付月額とすることといたしております。
  24. 志村哲良

    志村哲良君 それでは、ぼつぼつ時間でございますから最後に、介護給付はどのような場合に支給され、またその支給要件は何で定めるのかというようなことに関してお聞かせを願います。
  25. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 介護給付は、傷病給付年金また障害給付年金を受ける権利を有する者が、その年金支給原因となりました一定障害があるという場合に、実際に必要な介護を受けているというときに、その介護を受けている期間支給するというものでございます。  実際にその具体的な要件につきましては、先ほども申し上げましたが、証人等被害についての給付に関する法律施行令で定めて支給してまいることといたします。
  26. 志村哲良

    志村哲良君 まだ五、六分残っておりますが、以上で私の質問は終わります。ありがとうございました。
  27. 及川順郎

    委員長及川順郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、鈴木省吾君が委員辞任され、その補欠として岩井國臣君が選任されました。
  28. 平野貞夫

    平野貞夫君 平成会平野でございます。  日切れ法案証人等被害給付改正案審議でございますが、今回、介護給付の新設という制度拡充でございます。この問題は法務行政を支える非常に大事なものでございまして、さらなる拡充を要望いたしまして、平成会といたしましても賛成をいたすものでございます。  この法案そのものの直接の質疑というより、少し幅広くなりますが、この法律法務行政全般にかかわることでございますので、それに関連させまして、現在国民の最大関心事である住専問題と法務行政とのかかわりについて、限られた時間で質問をさせていただきたいと思います。  先般、大臣所信表明をされまして、第一に挙げられたことが、「治安の確保及び法秩序の維持」という、当然のことでございます。特に、その中で、住専問題に触れられておりまして、「大蔵省から公表された資料をも含め、さまざまな観点から資料情報収集検討等を進めている」という所信表明がございました。注目しているところでございますが、この「さまざまな観点から」とは一体具体的にどういうことか、あるいは現段階での調査状況について御説明いただきたいと思います。
  29. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) いわゆる住専をめぐります不良債権問題につきましては、御指摘のとおり、大変大きな関心が寄せられ、関係者の民事上あるいは刑事上の責任が明らかにされる必要があるということは、政府といたしましても、全体として取り組むべき問題ということで、法務省また検察当局もその大きな立場の中で努力していこうということでやらせていただいております。  検察当局におきましては、既に東京及び大阪に住専問題等に関する協議会や専従の捜査班を設置するなど所要の体制を整えているところでございます。現在、さまざまな観点から、ただいま御指摘のような情報資料収集に努めまして、その分析検討を行っているものと思います。  その、さまざまな観点というところについての御質疑でございますが、昨今、金融の問題全般をめぐりましていろいろの問題が取り上げられております。こういう事態は、多くの関係者がいわゆるバブルと称せられました状況の中で、非常に長い期間にわたりましてさまざまな観点立場から多種多様な行為を行ってまいりました。そういう行為種々要因とが複雑に絡み合って、時代の大きな流れの中で生じてきたいろいろな出来事があったものと考えられます。そして、その結末が今日に至っていろいろな形で顕在化して問題を生じていると考えられます。それは、ある意味では一つの大きな社会的な事象として理解されるべきものであると思います。こうした状況の中で、種々要因から特にクローズアップされているものも含めまして、その底流においてどういう状況があったのかということも含めて理解していく必要があると思います。  そこで、検察当局におきましても、このような状況を全体的な視野でとらえつつ、それぞれの立場からさまざまな状況について認識を深めていきまして、その実態を十分解明した上で、そのような事態を招くに至った原因、背景あるいは問題点について解明した上で、刑罰権を行使すべき社会的不正義があったのか、あったとすればどのような形でこれについて問擬すべきなのかということにつきまして、厳正に対処するという立場で現在努力を進めているというふうに考えております。
  30. 平野貞夫

    平野貞夫君 大変頭のいい答弁で、具体的によくイメージがわかないんですが、要するに勉強されているという段階ですか、あるいは検察業務あるいはそういったことを行使する前提での調査といいますか、そういう段階になっておるんでしょうか。ちょっとそこら辺、もう一回答弁を願います。
  31. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 単なる勉強という状況ではないと考えております。既に国会等の御論議でさまざまな観点から問題点指摘されていることは、検察当局も十分これについて関心を持っていることと思いますし、冒頭に委員指摘行政庁収集されました資料等についても、それらについて十分検討して、そして具体的な検討を現在行っている。しかしながら、その中で、ある個別の問題について直ちにさわっていくということがこの大きな事象の中では必ずしも適切でない場合もございます。やはり大きな事象としてどういうことがあったのかということを十分理解した上でなければ、場合によっては事柄をかえって混迷に導くということも十分あることを検察当局は考えているものというふうに考えます。そういう中で、本当に国家刑罰権を行使すべき事態がどの辺にあって、そしてどのような形でこれを行使すべきであるかということについて真剣に検討しているものと考えているわけでございます。
  32. 平野貞夫

    平野貞夫君 わかりました。時間も制約されておりますし、いずれ法務委員会としても本格的に議論をせにゃいかぬ時期が来ると思いますので、その点はこれで抑えておきます。  法務大臣国会住専処理法案というのが提出されていますね。事前に法務省と打ち合わせといいますかがあったかどうか。と申しますのは、この住専処理スキーム法案というものは、政府はいろいろな言い方をしていますが、私たちは、住専問題にかかわる不正行為不法行為あるいは不当な行為を隠ぺいするといいますか封印するスキームになりかねない、あるいはもうそういうことをねらってやっておるんだという、いろいろな調査の中でそういう確信を強めておるんです。この法案が立案されるプロセスの中で、そういう観点から大蔵省、農水省などから法務省相談があったかどうか、あるいは相談がなくても法務省はそれについてどういう認識を持っていたか、それをお聞きしたいんです。
  33. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 現在、政府が御提案しております住専処理に関するスキーム実態について委員の方から御指摘なされたこと、またそのような御指摘があることは私どもも承知しているところでございますが、これの基本的な立案の過程におきます法務省立場について御説明申し上げたいと存じます。  政府全体として、ある種の、いかなる場合でも法案の形で内閣が提案する場合には、各省に必要に応じて合い議がなされまして、それについて関係する当局責任を持って検討していくということは委員御承知のとおりでございます。  本件につきましても、その主務官庁であります大蔵当局から法務省に対してその全体の法案の構想、そしてそのスキームについてこういう形で行いたいということで検討依頼がありました。その中で、法務省としてはその制作の過程についていわば法務行政立場からどのような問題が生ずるかということについてもやはり検討はいたしました。その中で、特に刑事局の場合は、そのような一般的なスキームの中でどのような刑事罰適用の問題が生ずるか、またさまざまな観点から問題が生じ得ることについても検討をいたしました。  そしてその結果、政府全体としてこの方針によって行おうというときに、法務行政あるいは検察立場からこれに対して協力できるできるだけのことをしていこうということで、これについて法務省としてもこれに賛成して、それが次官会議、閣議を経て決定されたものというふうに考えております。
  34. 平野貞夫

    平野貞夫君 別の角度からお尋ねしますが、農林中央金庫の総合研究所というのがございますが、そこの研究所の副社長で荒井浄二さんという方が一昨年、「知られざる大機関投資家 農協金融」という本を出しております。私たち平成会でもいろいろな独自の調査をやっておるわけなんですが、平成二年でございましたか総量規制をやった後、さまざまな日本の金融機関の構造的な問題が起こるわけでございますが、その本の中にこういう記載がございます。  「住専・ノンバンクの資金需要は、まさに「渡りに船」であったし、」、総量規制が行われた直後のことだと思いますが、「融資の相手が部長銀・信託・証券などわが国の最も信用ある企業のいわば別働隊として機能していたこともあり、貸出の審査も不十分で、担保措置もほとんどとられないまま実行されていた。」、こういうことを具体的に農林中金のプロが本に書いているんです。  審査も不十分で担保措置もほとんどなされないまま実行されていたということは、既に内部から、住専への融資、貸し出しについてはかなり不法行為あるいは犯罪的な行為があったということをこれは示唆しているものだと私は思うのでございます。ここら辺についてどんな感じをお持ちでしょうか。
  35. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 検察当局が具体的に特定の事実についてどういう対応といいますか、とらえ方をしているかということについて私の立場から申し上げるのは適切でないと思いますが、一般論ということで大変申しわけございませんけれども申し上げさせていただきますれば、検察当局といたしましては、当委員会を含めまして国会等でさまざまな形で御議論がなされております。また、その過程で、ただいま御指摘のような物の考え方、当時の事情説明というものが明らかにされていくということについてももちろん関心を持っていると思いますし、その他さまざまな報道あるいは論評ということにつきましても十分念頭に置きながら、それらも含めていわば資料情報収集に当たって、それを今後の具体的な捜査また処理に反映していくものというふうに承知いたします。
  36. 平野貞夫

    平野貞夫君 昨日、衆議院の新進党の住専疑惑調査プロジェクトチームの有志の方たちが、静岡県信連それから静岡県信連の幹部であった人たちと会っていろいろ調査をして帰ってきたわけでございます。この住専スキームをつくるプロセスあるいは住専問題の今日のいろいろ混迷の原因の一つ、農林系統金融機関の融資のずさんさ、どうもその発端は静岡県信連にあったというように私たちは目星をつけておるんです。  これは農水省にお聞きしたいんですが、そこの調査の結果によりますと、どうも無担保、無保証、しかも債権譲渡契約があったかどうかわからぬような状態での融資が行われた疑いがあると。  また、その担保も母体行が一括して管理するという極めて問題なことが行われていたのではないかということが報告されておるんです。こういう静岡県信連の住専七社に対する各社別融資残高とか担保契約の実物が本当は欲しいんですが、要求すれば出すかどうかということと、そういったことの事実関係について農水省から御答弁いただきたいと思います。
  37. 米田実

    説明員(米田実君) 御説明申し上げます。  まず、静岡県信連の住専七社別の融資残高の状況などでございまして、個別信連の経営内容にかかわる事項でございまして、ディスクローズされていないなどというような状況事情がございます。そういうわけで、具体的な数字というのはなかなか申し上げにくいわけでございますが、各信連が住専七社に対しまして全体で融資残高約三兆三千億ございます。その中で静岡県信連の融資残高でございますが、その一割程度というものになっておる次第でございます。  そういうような状況でございまして、具体的な貸し付け等々でございますが、信連からの貸し付け、これは他の一般金融機関と全く同様に、住宅ローン債権譲渡担保、そういうことでやっておりまして、そういう住宅ローン債権譲渡担保というやり方として母体行が一括管理するとかいうやり方もございます。ただ、申し上げたいのは、他の一般金融機関と同様のやり方で基本的にやっておるというふうに承知しているところでございます。
  38. 平野貞夫

    平野貞夫君 そうしますと、静岡県信連の住専に対する融資については特に問題ないというのが農水省の見解だと理解してよろしいですか。
  39. 米田実

    説明員(米田実君) 静岡県信連の融資状況でございますが、具体的なことにつきましてはいろいろ申し上げにくい状況がございますが、一般論で申しまして、今申しましたような担保の状況、これは他と同様にやっておるというふうに承知しておる次第でございます。特段、他と比べて、他と違った、他の一般金融機関と違ったやり方をやっておるというような情報は我が方は承知しておりません。
  40. 平野貞夫

    平野貞夫君 その情報公開の問題が一つはあると思います。もちろん国政調査権というものを発動させれば個々の問題についての資料も入手可能だと思いますが、それは現段階では申しません。  いずれにせよ、個々のやっぱり融資の実態資料なりそういったものを調べなければ、今の農水省の方の答弁も、よかったとか悪かったとかという評価はされていないものだと見ております。私たちはかなり問題があるというふうな認識をしておりますので、それだけはこの機会に申し上げておきます。  それから、そういった個々の具体的な問題点不法行為、そういったものをこれから国会審議を通じて摘出していく、そういうことを申し上げておきます。  それから、法務省にお尋ねしますが、昨日のプロジェクトチームの調査で、元静岡県信連の幹部であった方から、いわゆる住専問題のさまざまな問題の解決を政治家へ依頼した、要請した、こういう説明を受けたという報告がございました。農事評論家あるいはマスコミ関係では、平成五年二月の大蔵省銀行局長と農水省経済局長の覚書、これは私は憲法違反だと思いますが、国会の権限をじゅうりんしたもので、これは公務員法違反にもなりますし、また職権乱用罪にもなると思っておるんです。かなり無理をした五兆五千億円という農協系の元本保証というものがそこで実質的になされておるわけでございますが、専門家の話によりますと、やはり政治工作資金が使われたという情報もございます。そして、政治家に解決策をお願いしたという話も出されておりますが、この辺について法務省調査の対象にされているか、あるいはどういうような関心をお持ちになっておるか、お聞きしたいと思います。
  41. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 具体的な事件につきましての検察関心のとらえ方ということで、現段階で具体的に私の立場で申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、先ほども一般論という形で申し上げましたけれども、ただいまの御指摘のことも含めまして、やはり公の席等で、特に国会の御論議の中で御指摘され、また御論議されたことにつきましては検察当局としても十分な関心を持って、これについて必要な場合には検討をしてまいるものというふうに考えます。  そして、どのような状況におきましても、先ほども申し上げましたが、さまざまな観点から情報あるいは資料収集検討いたしまして、みずからの職責を十分自覚いたしました上で、刑事事件として取り上げるべきものがあれば鋭意所要の捜査を遂げて、法と証拠に基づきまして必要な処分をしてまいるものというふうに考えております。
  42. 平野貞夫

    平野貞夫君 国民の九〇%がこの住専予算六千八百五十億に反対しております。税金を投入することに反対しております。当然だと思います。その国民の気持ちが国会で生かされないといういら立ち、これが非常に政治不信のもとにもなっておると思いますし、日本の憲政史史上このようなことはなかったのではないかと思います。  その国民の意向が生かされることを願っておるわけなんですが、実はその住専予算の六千八百五十億も重大な問題ですが、法務行政法務委員会立場として私が申し上げたいのは、この住専処理スキームそのものが、法務省の皆さんもいろいろ頑張って事務的な打ち合わせを法案作成の中ではやったと思いますが、法秩序を維持していかなきゃならぬ法務当局にとって、一体こんな法案を許していていいだろうかという大変な危惧を私は持っておるわけでございます。  それはどういうことかといいますと、要するに、住専七社を一括してつぶして、そしてさまざまな債権債務を、特殊法人ではありますが民間企業、株式会社住専処理機構というものの中に移していく。これは移せるかどうかはわかりませんですけれども、実際。営業譲渡を決められない会社だってあるかもわからぬし、もう既にそういうスキームは破綻していると思います。その際に問題は、かなりずさんな、不法な、しかも目を覆うようなバブル時代の融資、不正、そういったものを結局民間株式会社の住専処理機構が本気で対応をするつもりはないんじゃないかと思います。いわば選択的にそういった行為のものをその処理機構に移して、そして自分らの背任行為とかあるいは民事上の損害賠償の責任とかそういったものを全部封印する、どうもそういう意図でこの法案がつくられているんじゃないか、こういう危惧を非常に持っておるわけでございます。  そうすると、いわば国家自身がそういった日本のバブル時代のとんでもない不法、不正、不当な行為、これは暴力団絡みあるいは地上げ屋絡みあるいは政治家のやみ献金絡み、いろいろあると思いますが、そういったものにふたをしてしまうという、そういうものに国家が手をかしている、あるいは国会がこれをこのまま成立させましたら国会自身がそういった行為に手をかす、こういういわば国家犯罪的な要素をこのスキーム、やり方は持っておる、こう思っているわけなんです。  恐らく平成会の先輩の人たちも、あるいは衆議院で新進党の人たちも、これからこの点、果たして我が国は近代法治国家、そして市場経済原理で世の中が果たして本当に動いているかどうかという、そういうデモクラシーの根本にかかわる問題をこの住専問題というのは抱えていると思います。  そういう意味で、長尾法務大臣法秩序の維持ということを一番念頭に置かれるなら、私は、法務省としても黙ってはおれない。今後我々の調査の中でそういうものを指摘していきますが、指摘していきましたら、一体法務省としてどういう責任をとるか。法案の提出にサインをされた法務大臣立場として、最後に御所見をお聞かせ願いたいと思います。
  43. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 先生からお話がございましたように、住専問題、国民の皆様の最大の関心事であると思っております。  税金をこの問題の解決のために使わせていただくという観点からいたしますと、やはり国民の皆様に納得をいただくためには、御指摘のように関係者の民事上のまたは刑事上の責任、これは厳しく追及されなければならないと思っているわけでございます。  具体的な法案内容については申し上げるのを差し控えさせていただきますが、おっしゃいましたように、私どもはこの法案の具体的な執行に当たりまして、今申し上げました国民の皆様の期待にこたえ得るような、現実の対応ができるようなことを追求してまいりたい、それが私どもの責務であるというふうに考えております。
  44. 平野貞夫

    平野貞夫君 再度結論的に申し上げたいと思いますが、私は三つの点で憲法に違反していると思っております、この政策それ自身が。  一つは、法のもとの平等に反すると思います。  阪神大震災であれだけやられた方たちの救済とこの信連、農林系への救済のアンバランスというのは余りにもひどいと思います。  それからもう一点は、国会議員も含めてあるいは役人も含めて、国民全体の奉仕者でなければならないのが一部の奉仕者に成り下がっておる。そして、自分たちの犯罪的行為をそれを法律でもって隠そうとしている。全くこれは日本のデモクラシーのあり方の根幹にかかわっていると思います。  三つ目は、税金のことですが、財政が公正でなければならないという財政民主主義に反している、私はそう思っております。  そういう意味で、ひとつ法秩序の維持という点から、法務省の皆さんにもこの問題については目を覚ましてきちっとした認識で対応されたいことを要望いたしまして、終わります。
  45. 一井淳治

    ○一井淳治君 まず、法案に関連して質問をさせていただきます。  刑事事件証人とかあるいは捜査機関参考人に対して協力するということは非常に重要なことでございまして、時には生命にもかかわるということで、その協力者についても本当に守ってあげなくちゃいけないということが言えると思うわけであります。  そういったことで、今回、介護費用の支給を始めるということは非常によいことでありますから私どもも賛成であります。ただ、介護費用の支給が始まりましても、これは実際に正しいといいますか、適正な認定が行われないと支給ができないわけですから、十分法の方向に従った介護費用が実質的によく払われるようにしてもらわなきゃいけない。この認定の適正ということが大切であると思いますけれども、いかがでございましょうか。
  46. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) まさに御指摘のとおり、実際に制度がございましても具体的なその適用について御納得がいただけるようなことにならなければならないという御指摘については、私どもも重く受けとめてまいりたいと思います。  そして、障害状況または傷病状況につきまして、具体的には請求の際に医師がその内容や程度、級のあり方を証明した請求書を提出する必要がございます。法務大臣といたしましてはこれをも参考にして具体的な支給の決定を行うものでございますので、その過程で適正にその認定がなされるように努力してまいりたいと存じます。
  47. 一井淳治

    ○一井淳治君 今回の法案によりまして一歩前進するわけですけれども、よくよく考えてみますと、まだ十分とは言えぬのじゃないかと思います。  この支給要件が法の三条に規定されておるわけでございますけれども、要するに他人から身体、生命に害を加えられたということに限定されておりまして、例えば喫茶店の経営者が暴力団被害について協力した、そして喫茶店の店を壊された、これは物的損害ですけれども、これは入っていないわけです。それからまた、例えば東京の参考人が神戸の警察の取り調べのために出頭する、協力するという場合に、道中で交通事故が起きたということについても補償の対象外になっていると思います。  ですから、私は、今後は具体的に、本当に協力者というのは大変困難な中を、本当に厳しい中を真実の解明あるいは事案の適正な解決のために時には体を張って協力するわけですから、そういった方々に温かい御支援を申し上げるというふうにすべきであると思いますので、そういった方向の御努力も御検討を賜りたいと思うわけでございますけれども、御所見を伺いたいと思います。
  48. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 委員指摘の点につきまして、そのような刑事司法の適正な実現のためにより手当てと申しますか、さまざまな措置を講ずべきだということにつきまして御指摘をいただきまして、私どもといたしましても今後の大きな流れの中での検討課題ということで検討してまいりたいと思います。  ただ、本法ができ上がっている状況につきましては、いろいろな歴史的な経過の中で、いわば関連法律の中で現在における刑事司法の実現のための手当てということで逐次そのような改善が図られてきておりますので、ただいま委員指摘のようなより広い立場から一挙にということにはなかなか難しい面もあろうかと思いますが、やはりこれは刑事司法のあり方そのものにつきましても昨今さまざまに指摘されているところでございまして、私どもといたしましても、主として組織犯罪対策であるとか、さまざまな観点からいわば手続法の充実に向けて努力をしてまいりたいと思います。  そうした中に、あくまでやはり国民の皆様方の一層の御支援と御協力ということがなければ刑事司法の適正な実現が図れないということでございますので、そのような観点から検討すべきものというふうに理解してまいりたいと思います。
  49. 一井淳治

    ○一井淳治君 今回の資料をいただきますと、公務員の災害補償法との兼ね合いということが説明資料に入っております。  公務員の場合は、例えば仕事のために道中で交通事故に遭ったという場合は補償の対象になると思うんですけれども、そういった点では非常にバランスを欠いていると思うんです。私も今回の法案が出てくるときにもつと早く気がつけばよかったんですけれども、ちょっと手おくれでしたけれども、今後関連法案を含めて改正をするというような場合には、必ずこの問題を十分に検討いただきたいという要望をさせていただきたいと思います。  それから次に、最近よく問題にされておりますのが食糧費、これは法案とは関係ありませんが、食糧費ですね。空出張等々を利用して財源をつくり出して、そしてこれが結果的には官官接待に使われているということで非常に大きな話題になっているわけでございます。  県警は、警察の方は自分の身内の取り調べみたいな感じがありますから、自分はしてはいないと思うんですけれども、しかし、県庁内部というふうになれば、やはり日ごろおつき合いがある人たちの捜査になりますからなかなかそういったところは手が回らない、やりにくいということがあると思いますので、これは検察庁の非常に今期待されている分野じゃないかというふうに思うわけでございます。  この食糧費の問題についての刑事捜査というものは、これは迅速に行われるのが当然であると思いますけれども、しかるべく適正に行われているのかどうかということを質問させていただきます。
  50. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいま委員指摘の問題につきましては、さまざまな形で取り上げられていることを承知しております。その関係から、幾つかの検察庁においては具体的な事案として告発を受理している状況もございます。  そのような状況を踏まえまして、検察当局といたしましては現在捜査中というふうに承知しておりまして、十分な捜査を遂げた上で、やはり法と証拠に基づきまして適正に処理してまいるものというふうに考えております。
  51. 一井淳治

    ○一井淳治君 余りにも件数が多過ぎて、一つどれかを取り上げると取り上げられた人が不公平じゃないかという問題が起こるんです。しかし、私も長い間そういった問題について対応してきましたけれども、検察庁の言い分によると一罰百戒と言われるんです。たまたま取り上げられた人は不公平なんですけれども、しかし取り上げた件は本当に骨の髄までしゃぶられるというふうな物すごい捜査をやるわけですね。その辺はどうか、私は、いいか悪いかは別にして、適正に捜査が行われるということはやはり国民の検察に対する信頼を確保する上で不可欠であると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  それから次は、裁判所の方にお尋ねをさせていただきたいと思います。  言うまでもないことでありますけれども、三権分立の中で、司法は国の重要な機関としてその機能を十分に発揮していくということが憲法上強く期待されておるわけでございます。まさに今は激動の時代でございまして、新しい時代の中で司法はいかにあるべきかということが考えられ、そしてまた多くの期待が寄せられておるんじゃなかろうかというふうに思うわけでございます。私は、こういった時代にこそ司法の威信を高め、そして将来司法の発展につながるさまざまな施策を展開されていくことが必要ではなかろうかと思うわけでございます。  去年の年末に「構造改革のための経済社会計画」というものが発表されておりますけれども、「自由で活力ある経済社会の創造」とか、あるいは「地球社会への参画」ということが言われておるわけであります。要するに、経済の活性化のためにも、あるいは世界の中の日本として生きていくためにも、日本人の頭の切りかえとか、あるいは経済の自己責任情報公開、公正というものが強く要求されていると思うわけでございます。  そういった中で、やはり司法部には新しい役割というものがだんだんと期待されていると思うわけでございます。予算の確保とか人員の増員、これは非常に困難だと思いますけれども、そういったことを含めまして新しい時代に即応した司法制度の確立という観点でどのような御所見をお持ちなのか、お伺いしたいと存じます。
  52. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 委員指摘のような社会状況がございますので、今後見通しとしましては、やはり司法、特に民事の分野の司法に対する国民のニーズといいますか、需要がどんどん増大していくだろうという点、我々も同じような認識を持っております。  それに対する対応の仕方としましては、何といいましても国民の目から見まして利用しやすく、わかりやすい司法を実現していくということが最大の課題であろうかと思います。もう少し具体的に言いますと、新しい社会のテンポに合いましたような迅速で適正な裁判を実現していくということになろうかと思います。  そのための方策としまして我々の方で非常に力を入れております点が二点ばかりございまして、一つは裁判のやり方をこれまでのようなやり方ではなくて改善していく必要があるだろう。もう少し効率的といいますか、早い裁判というものを実現していかないといけないだろう。この点につきましては、弁護士会の方の御協力も得まして、このところ、早期の争点整理、それから集中的、実効的な証拠調べというこの二点を柱にしました訴訟の運営改善の努力をずっと続けてきております。今国会に民事訴訟法の改正法が提案をされておりますが、この新しい法律ができましたらさらにこの訴訟の運営改善という面で一つの大きなステップになるんじゃないか、我々の方としてはそう考えておるところでございます。  それからもう一つは、やはり裁判所の側の事件処理体制を充実強化していくということであろうと思います。一つは、委員指摘のありましたような裁判官を初めとします人員の充実という点がございます。それと、最近はかなりの規模でOA機器等を導入しまして事務の効率化ということも図ってきております。そういった面での人的、物的な事件の処理体制の充実強化という点についても今後さらに力を入れていく必要があろう、かように考えております。
  53. 一井淳治

    ○一井淳治君 これは次の定員法のときにまたお伺いしたいと思うんですが、要するに、世の中をリードするといいますか、輝く司法といいますか、そういう何か夢のあるものをお示しいただきたいと思うわけであります。  次に、簡単に法曹教育についてお尋ねいたしますけれども、せんだって法曹養成制度等改革協議会の意見書が提出されました。非常に困難な課題について対応されたわけでありますけれども、やはり司法制度のあり方とか法曹養成のあるべき姿とかというものが見えないものですから、そういったこともあって、私は、余り高い評価が残念ながらなかったんじゃないかと憂えているものでございます。  最近の法曹養成の実態でありますけれども、大学には立派な学者の先生がいらっしゃるんです。  しかし、司法試験を受ける人たちはその講義を聞かないで予備校の方へ通っていて、本当に人格的にこんなことでいいのかということで、ここに一つの基本があると思うわけであります。アメリカの様子なんかを見ますと、ロースクール、本当に法曹のあり方を含めまして判例とかいろいろ真剣にこの二年間、若い人たちが鍛えられているというようなことであります。  私は、修習期間とか司法試験の合格者数とかというふうなことだけではなくて、もっと広範な法曹教育全般のことを考えていかないと、将来の本当の意味で国民が司法の権威を認めるといいますか、司法の威信というのは司法部にいらっしゃる方々の陶冶された人格というものが大事だと思いますから、そういったことも長期的には考えていかなければならないんじゃないかと思うわけでございます。  もう時間になりましたので、そういったことを検討いただきたいということを要望させていただきまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  54. 橋本敦

    ○橋本敦君 私はこの法案に賛成の立場質問をいたしますが、今後の課題としてこの法案拡充改善について二点にわたって質問をしたいと思います。  オウム事件の裁判に関連をして具体的な問題としても提起をしたいんですが、御存じのようにこの事件については、弁護士会に裁判所から要請がなされたことを受けて、弁護士会は国選弁護に全面的に協力をいたしました。これは、まさに憲法秩序を守り、刑事司法の適正な進行を図る上で弁護士としての責務を自覚する、そういう立場での積極的な協力であります。  ところで、万が一にも生命侵害を受けた場合に遺族補償は一体どれくらいになるか。最高額は、一万四千円の千倍とすれば一千四百万にしかすぎない、こういう現状があることは否めないのではありませんか。
  55. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 確かに、委員指摘のような一定の限界があることはそのとおりであろうと存じます。
  56. 橋本敦

    ○橋本敦君 今日、自動車損害保険の社会的状況からいっても、死に際してわずか一千四百万というのは余りにも低過ぎますね。したがって、弁護士の皆さんは、せめて一億円の生命保険に入るということで、そういった保障を担保として弁護活動に専念をしたいという希望をお持ちになるのは当然であります。  そう考えてみますと、保険料はどれぐらいになりますか。これは大変なものになりますので、この問題について裁判所との話で、国選弁護料の中に保険料を加味するという、こういった話もしておったようであります。当初、裁判所はもっともだという立場のようでした。ところが、それは結局は最終的には入れられないことになったようであります。  したがって、どうしたかといいますと、一億円の保険を掛けたいんだけれども、保険料の関係で五千万円にする。五千万円にして保険料は年間約八万円かかります。そこで、東京第一弁護士会では、国選弁護を引き受けました三十一名の弁護士の皆さん、年間八万円の三十一倍ですから約二百五十万円、これを弁護士会の皆さんの募金をもってこれに充てるという、そういう協力をしているわけであります。裁判は今後五年かかるという見込みあるいは六年かかるという見込みを考えますと、毎年それだけの費用の弁護士相互間の扶助的負担になるわけです。  こういうことの事故が起こらないことをもちろん期待はしておりますけれども、オウムの凶悪な犯罪性ということを考慮に入れながら、安心して国選弁護を引き受けて弁護活動をする上ではこれは必要な処置なんです。こういうことを考えましても、仮にまた証人等に死亡事故を起こすようなそういう凶悪な被害が加えられた場合の遺族補償、弁護士に限らず考えましても、生命補償は余りにも低いというのが現状です。  したがって、こういう問題については今後抜本的な改善に向けて一層の努力をする必要があるということが一つと、特に国選弁護という司法制度への積極的協力という弁護士の立場からすればこういった保険料の最低限は、これは刑事弁護費用で見るかあるいはその他知恵を出すか何らかの国家の補償的処置が私は当然必要な場合だと、こう思っておりますが、刑事局長もしくは法務大臣のお考えを伺いたい。
  57. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 刑事司法全般におきます問題を踏まえての委員の御指摘でございまして、私どもといたしましても、今後本法の運用、また刑事司法に協力してくださるさまざまな方々のお立場ということを考えながら、広い意味で検討の課題にさせていただきたいと存じます。  ただ本法、これは若干、法の建前からということで申しわけない言い方になるかもしれませんが、やはり本法ができ上がってきた過程で、いわば母法とも言うべき警察官職務協力援助した者に対する災害給付法というものがございまして、これを参酌しながら定めていくという形でつくられております。また、それは国家公務員の一般的な災害を受けた場合の状況を参酌して定めていくという建前になっております。そういうわけで、この法律刑事司法に協力された方々、特に御指摘国選弁護人立場ということを考えますと、その被害をすべて全般的に補償してさしあげるという状況には恐らくないと思いますし、それは法律の考え方からそういうふうになっていたのだろうと考えます。  しかし、御指摘のとおり、これからの我が国社会における刑事司法の果たすべき役割とその重要性という観点から、これのさまざまな過程協力された方々に対する配慮というものをまたいろいろな角度から考えていくべきだという御指摘といたしまして、私どもとしても重く受けとめてまいりたいと考えて、できる限りさまざまな機会に論議してまいりたいと存じます。
  58. 橋本敦

    ○橋本敦君 もう一つの問題は、この法律では弁護士とその近親者ということが適用対象になっておりますね。ところが、御存じのように坂本事件を考えていただきたい。あの早川にしても上祐にしても、坂本弁護士一家が拉致される直前に法律事務所へ参りまして、そこであのTBS等の関係があるんですが、厳しい抗議をして大激論をしている。あれは大激論で終わったからいいですが、ああいうところに暴力的に乱入した場合は同僚の弁護士なりあるいは事務員なりが制止をするなりして被害を受ける可能性があるんですね。  だからしたがって、そういう弁護士事務所ということも活動の舞台になっている弁護士の仕事の現状から考えますと、日弁連が希望しておりますように、本法適用対象を国選弁護人とその近親者だけにしないで、事務員あるいは事務所の同僚弁護士も事情によっては適用対象にするという、こういった配慮も将来の改善点として考えるべきではないか、こう思いますが、いかがですか。
  59. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいま御指摘の点につきまして、そのような考え方あるいは感じ方があるということについては私も理解できるところでございますけれども、具体的なプログラムとして本法の中で取り上げていくということにつきましてはなおさまざまな困難があろうかと思います。  これは、法律事務に携わるすべての立場の問題ということでこれから議論していくべきものではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  60. 橋本敦

    ○橋本敦君 これからも大いに議論をしていく課題だというように私は思っておりますから、これからもまた機会を見て議論をしていきたいと思います。  そこで、地下鉄サリン事件、松本サリン事件に関連をしてもう一つ私がこの機会に議論をしたいのは、あの地下鉄サリン事件から一年たった被害者救済が実際どうなっているかという問題であります。この点は本法と直接関係がありませんが、法律の関係としていえば犯罪被害者給付、この問題であります。  不幸にして地下鉄サリンで亡くなった方、松本サリンで亡くなった方、これらの方に対しては犯罪被害者給付制度から給付金が支給されると、こうなっていると思いますが、それは間違いありませんか。
  61. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 御指摘のとおりでございます。
  62. 橋本敦

    ○橋本敦君 それから、五千人を超える皆さんがサリンの被害を受けた、大変なことであります。  きのうも法廷で、被害を受けられた方々三千名以上の氏名を検察官は明らかにされて大変な努力だったと思いますが、かってない大テロ事件であります。そういう生存なさって被害を受けた方たちの被害救済は今どうなっているか。労災で労災給付を受けた方はあります。しかし、労災の給付を受けられない方で、そして後遺症に苦しんでいる皆さんに対して、今それを救済する法的措置がありますか。
  63. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいま御指摘の労働者災害補償保険法等その関連法律等もございますが、それによる救済が先ほど御指摘の犯罪被害者給付金支給法に加えてあるわけでございますが、その他一般法といたしましては、一般の不法行為法に基づく損害賠償請求権ということが法的な大きな枠組みとしてはあるであろうと考えます。
  64. 橋本敦

    ○橋本敦君 つまり、いかに法律の不備がひどいかなんです。不法行為被害を受けた皆さんが損害賠償請求を起こす。しかし、あのオウムの全資産を処分しても、とてもすべての債権を満足させるものがないということは今日明らかになっているんです。だから、損害を受けた人は損害賠償請求を起こしなさい、こう言ったって救済にならない。  今現に、どれだけのたくさんの人が後遺症に悩んでいらっしゃるかという実態をまず政府は把握しているでしょうか。把握している機関がありますか、法務省やっていますか。
  65. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 検察当局におきましては、被害者という立場でその事情を聴取し、また必要な資料を集めておりますので、その限度で把握しているものというふうに考えます。いわば被害者救済という観点からの立場ではないことは委員御承知のとおりであろうと思います。
  66. 橋本敦

    ○橋本敦君 じゃ、厚生省はやっているかというと、厚生省は被害者実態調査すらしていないんです。  きのうの毎日新聞でも、「地下鉄サリン キズなお深し」として、ある女性会社員が、この後遺症で自分の精神が荒れ果ててしまった、つらいことは余りに多くてもう答え切れない、毎日が精神的に地獄だ、こういう報道もなされています。そしてこの問題について、聖路加国際病院が多くの被害者の手当てをなさったんですが、そこの精神科の担当の中野医長が、まさにこの問題については深刻な事態だということを明らかにされておっしゃっています。これは、心的外傷後ストレス障害、PTSDの典型症状を示しているそういう被害者が実に全被害者の六割を超える数に及んでいるということを言っておられます。  共通する症状はいわゆるフラッシュバック、つまりその事故の惨状を突然思い出すという精神的な被害ですね。突然、事件の状況をありありと思い出し、おびえる、過敏に反応する、落ちつかない、こういった症状が出てくる。そして、その恐れを回避する方向に進んで、ついには無感動、無気力、そして忘れっぽくなり、体力の衰えを訴え、それが身体化をするということで精神障害身体面にもあらわれて、頭痛、目まい、そういったことから仕事をすること、日常生活さえ困難になるという、こういう状況だと言っています。まさに深刻です。  こういう皆さんがどういう治療を受けるかというと、これはもう自分で医者に行って自分で治療費を払って受けるしかないんですよ。例えば犯罪被害者給付制度によりますと、障害を受けた場合の給付はありますよ、しかしこれは極めて重い障害に特定されているでしょう。それに認定されるような症状でない、精神的ストレスを含むこういう心的外傷後遺症というのは、とても犯罪被害者給付制度で救済対象になるような障害とはならないんですよ。そこに深刻な問題がある。  こういった問題について一体国はどのように責任を持って補償していくかということが今問われているわけです。  ですから、この患者の皆さんたちは切実な要望として、この問題について被害者の現状を国が把握をし、そして国、法務省、厚生省が先頭に立って、後遺症に悩むこれらの皆さんに対する医療費負担をどうするか、あるいはさらに進んで、精神的カウンセラーということは非常に大事ですから、そういったことを切実な要望にこたえてどのように設けていくかなど、抜本的な地下鉄サリン事件の被害者救済対策を国の責任でやってほしいという要望をしておられるのは、私は当然だと思うんです。こういう要望に私はこたえるべきだと思います。  そこで、刑事局長おっしゃったように、犯罪被害という範囲でサリンの被害を受けた皆さんを法務省はつかんでいらっしゃる。名前も住所もつかんでいらっしゃる。厚生省と協力をして、そういう皆さんに対する現状の後遺症を含む被害の実情の調査政府はまず責任を持って行うこと。そして、それらの皆さんに対する治療体制を国としてどう援助して進めるかを検討すること。そしてさらに、それだけじゃありません、国の責任として必要な補償をやる必要があれば、犯罪被害者給付制度、これをさらに改善して、それも含めて検討することということを、犯罪の徹底的糾明、処断と並んで被害者の問題を私は責任を持ってやるべきだと思うんです。  そういう点を閣議において政府としても積極的に取り上げて議論をしていただきたい。そのことは法務大臣として、政府の中でこういった問題について、今私が指摘したような方向で、政府としての実情把握、そして処置をどうとれるかという問題についての議論を法務大臣がぜひ積極的に推進していただきたいということを強く要望しますが、大臣いかがでしょうか。
  67. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今回のオウム真理教によります犯罪は、その規模の大きさ、また社会的な影響の深刻さという点におきまして未曾有の事件であったというふうに思うわけでございます。  こういった犯罪の被害者に対します。その後の対策ということにつきましては、従来、先生から御指摘がありましたこの犯罪被害者給付金支給法というものによります対応、そのほか医療、所得補償というような一般的な対応の中で考えてきたものでございます。  これをオウムの今回の被害に限りまして新たな対応をすることができるかどうかということでございますが、一般の犯罪の被害者に対しまして、今の法体系とは別個の体系のものが成立し得るものか、またそのような財政負担の是非ということにつきましてはいろいろな角度から検討していかなければならないものと思っております。しかしながら、今回の被害実態というものは大変に深刻なものと受けとめておりますので、今先生から御指摘がありました問題点は、私としまして考えさせていただきたいと思っております。
  68. 橋本敦

    ○橋本敦君 終わります。
  69. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  証人等被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  70. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 全会一致と認めます。  よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時三十一分散会      —————・—————