○本岡昭次君 いや、多種多様であなたがわからぬということじゃないんですよ。あなたに記憶のないほどないことなんです、これは。
それで、私たちの調べた限りでは、前例を挙げれば、満州事変における
日本軍の軍事行動を国際法違反とした一九三二年の国際連盟に提出されたリットン
調査団報告書がある。これは私たちも教科書で覚えましたが、それがあるだけですよ。それ以来の正式の
人権委員会というところの
調査団だと、こういうことなんですね。その
調査団の正式の報告、勧告を
日本政府がこれを無視して、これから先どうなるのかという問題なんです。
三月の十八日から
人権委員会が開かれます、約一カ月間にわたって、ジュネーブで。そこでこの報告書の中身について
議論が行われるわけです。
この報告書が否決されるんならいい。しかし、歓迎されて、これは承認、皆が認めることになると
思います、僕は、見ているところ。それは
日本政府は必死になってロビー活動をやってつぶしにかかるかもしれない。だけれ
ども、つぶせる問題じゃないんです。
女性に対するこのような重大な
人権侵害をやって、そして
日本がそのことについて法的責任をきちっととろうとしない。法的責任と言ったらあの住専も同じことなんですが。そして、
国民基金の道義的責任のところだけで、国はできないから
国民にお願いするんだというようなことで今逃げようとしている。こんなことが国際的な場で通ずるわけがないんです。
人権委員会の中で
日本は孤立します。
日本というのは
人権問題についてこのレベルの国なのかということになるでしょう。
世界
女性会議のあの北京では、
日本が
人権委員会のこうした方向に従わないならば、
日本の商品をボイコットしようというふうな決議がNGOの集会で行われるというふうな
状況にもあるわけなんです。そして、これはきのうやきょうのことではない。私が一九九〇年の六月に参議院の予算
委員会で取り上げてから六年目、国連の
人権委員会でこの
議論が始まってから四年、それだけの積み上げの上にこれがあるんですから非常な重みを持っております。
私は、
長尾法務大臣が
人権擁護の所轄庁である
法務大臣として、この種の問題は、国連は外務省だといってそちらに、つかさつかさなどといって縦割りで切るんじゃなくて、
人権の問題は私のところの所轄なんだといってしっかりと対応してもらわなければ、私は大変なことになると、こう思うんです。閣僚の中で
法務大臣一人でも、この問題を今までのような対応ではだめですと、
日本は
日本のやり方があるんだというようなことでは通用しませんよという主張があってしかるべきだと思うんです。
しかも、このクマラスワミ報告にも書いてありますけれ
ども、
日本は今まで国際条約をたくさん批准してきております。
法務大臣が
女性であるからといってあえてそういうものだけを取り上げるわけじゃありませんけれ
ども、一九〇四年に醜業ヲ行ハシムル為ノ婦女売買取締二関スル国際協定、一九一〇年には婦女売買禁止ニ関スル国際条約、一九二一年には婦人及児童ノ売買禁止二関スル国際条約というようなものを全部批准しているんです。
その中には、「何人タルヲ問ハス他人ノ情慾ヲ満足セシムル為醜行ヲ目的トシテ未成年ノ婦女ヲ勧誘シ誘引シ又ハ拐去シタル者ハ本人ノ承諾ヲ得タルトキト雖」「罰セラルヘシ」、これは第二条に同じように、成人でもこういう醜業につかせることを強制的にやったら罰せられるべし、とこうなっておるんですよ。
そうすると、従軍慰安婦
制度の従軍慰安婦にさせられた
人たちは、これは明らかに醜業につくことを強制的に軍の力によってやらされたわけでしょう。そして、そのことはクマラスワミさんは奴隷だと、奴隷状態だ、性奴隷だ、軍事的性奴隷だと、こういうふうに言っているんです。私は、これほど厳しい
女性に対する
人権侵害の
状況は最近ないんではないかと思うんです。
だからこそこのことをきちっと
日本の
法務省が
人権擁護の
立場から受けとめて、過去の清算を国の責任によってきちっとやって、そして以後こうしたことが再び起こらないように一体どうするかということを国際
社会の中で、憲法にも書いてあるように名誉ある地位を占めるために、
日本は経済大国であるけれ
ども人権大国でもありますと。
そして、アジアの中の
日本としていくためには、五十年前のアジアの
女性に対して行ったこの奴隷的な性搾取のこの問題に対してきちんとして国が逃げることなくけじめをつける。そのことによって、初めてアジアの皆さんから
日本は尊敬されることにもなり、信頼を私は回復することになると思うんです。私は瀬戸際だと思っているんです、これ、これから国際
社会の中で
日本が生きていくために。
法務大臣が文字どおり
人権という
立場で力いっぱい頑張ってもらわにゃいかぬと思うんです。
だから、そのことは抽象的でなくて、今言いましたように三月十八日から
人権委員会が開かれるんですから、そのときに
日本政府はどう対応するのか。それは、この勧告を尊重して、新しく
日本が何をしたらいいのかということをそれこそ政府も国会も
国民も一遍大
議論をやってみる、そのぐらいの値打ちのあることだと私は思うんです。そしてその旗振りを私は
長尾法務大臣に期待したいんです。どうでしょうか。