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1996-05-21 第136回国会 参議院 文教委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月二十一日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  五月十六日     辞任         補欠選任      橋本 聖子君     馳   浩君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         小野 清子君     理 事                 木宮 和彦君                 森山 眞弓君                 山下 栄一君                 三重野栄子君     委 員                 井上  裕君                 釜本 邦茂君                 世耕 政隆君                 田沢 智治君                 馳   浩君                 石田 美栄君                 菅川 健二君                 浜四津敏子君                 林  寛子君                 上山 和人君                 鈴木 和美君                 阿部 幸代君                 堂本 暁子君                 江本 孟紀君    国務大臣        文 部 大 臣  奥田 幹生君    政府委員        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文部省高等教育        局長       雨宮  忠君        文部省学術国際        局長       林田 英樹君        文化庁次長    小野 元之君    事務局側        常任委員会専門        員        青柳  徹君    説明員        科学技術庁科学        技術政策局政策        課長       中澤 佐市君        科学技術庁科学        技術振興局研究        基盤課長     小田 公彦君     —————————————   本日の会議に付した案件日本学術振興会法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 小野清子

    委員長小野清子君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十六日、橋本聖子君が委員を辞任され、その補欠として馳浩君が選任されました。     —————————————
  3. 小野清子

    委員長小野清子君) 日本学術振興会法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 木宮和彦

    木宮和彦君 本日は、日本学術振興会法一部改正法律案についての審議でございますので、私、自民党の木宮でございますが、文部大臣ほか関係当局者質問をさせていただきたいと思います。  時間が余りありませんので十分な質問ができませんけれども、できるだけ端的にひとつお答えをいただければ大変ありがたいと思っております。  最初に、今回の日本学術振興会法の一部改正の中の、新しく未来開拓学術研究推進事業、これを実施するために出資金を百十億ですか、百十のプロジェクトにこれを貸そうと、こういう趣旨のように聞いております。本来は補助金で行うのが妥当だと思いますが、今日のこういう時節でございますので、なかなかシーリングがかかっておってこれを拡大することができないので、文部省当局さんも知恵を絞ってこういう改正に踏み切ったものと私は考えておりますが、これは、単なる財政的な問題でこういうふうに改正するのか、将来にわたって何かほかにも意図があるし、またほかにもいいことがあるんだよという意味でお考えになっていらっしゃいますか。  まず、それを文部大臣、ひとつお答えできましたらぜひお願いいたしたいと思います。
  5. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) おはようございます。どうぞよろしくきょうは御審議をお願い申し上げます。  今、先生から何かいいことがあるのかというお尋ねでございますが、これによって将来いいことをとか、あるいはぼろもうけをしようとか、そういうことではございません。予算の編成は予算の枠内でいきますのが一つの行き方でございますし、それからこういう建設国債のたぐい、今御審議いただいております振興会への百十億円は、ずっと以前から通産省所管で新エネルギー開発推進機構通称NEDOと言っておりますけれども、あれと同じスタイルでございまして、出資金によって研究していただいて、そうして一つ一定成果を生んでいただく。これは一つの大きな非常に貴重な国の財産になってまいるわけで、これの分配についてもあらかじめ請求権を確保しておこうというようなことでございまして、別にそれ以外の何かいいことということは考えておりません。  純粋に科学技術振興、非常に制約された国の厳しい財政事情のもとでありますけれども科学技術基礎研究の充実を図ってまいりたいという、そういう一念で文部省科学技術庁がよく相談をさせていただいて、ほかにもありますけれども、政府挙げて取り組ませていただきたいということでございます。
  6. 木宮和彦

    木宮和彦君 私もそう思って大変この法案には賛成でございますし、ぜひ早く進めていただきたいと、こう思います。ただ、何せ日本も非常に財政が窮屈でございまして、御存じのように二百四十兆以上の赤字財政でございます。  今回の法律によりますと、出資金ですから、国債を売ってその財源を充てて研究をしてもらう、そしてそれについては、平たく言えばたとえ失敗しても、あるいは成功しても、その過程においてこれが国民財産になるであろう、こういう意図でやられるだろうと、こう思います。  ただ一点、このお金、例えば一億円なりとか、あるいは五年間でやると言いますから五、六億円、まあ大した金でないといえばないかもしれませんが、それによって例えばバイオで大変新しい品種ができたと。そのパテント料、あるいはそれが非常によく売れて、もらった金は一億だけれども、もうかった方は二十億も三十億も五十億もあったという場合には、これは返す必要はないのかもしれないけれども、そこでもって税金をたくさん納めてもらうと同時に、この振興会へ寄附をするというようなことも裏では工作ができるのですか、できないのですか、その辺はいかがですか。
  7. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 本事業研究によりまして収益が生じた場合の取り扱いの問題でございますけれども研究によりまして何らかの成果が出た場合には、一定割合資産として日本学術振興会に蓄積されることを予定しておるということでございます。  成果のうち、どの程度割合学術振興会に帰属することになるかということにつきましては、事業実施方法によって若干いろいろ異なる面もございますけれども、基本的には受託機関研究者との契約によって定めるというような形になろうかと思っております。  なお、御指摘のような特許収入のようなものが生じて振興会に蓄積されました資産振興会収入ということになりますので、例えば資本金の欠損を補てんするというような形の使用というようなことを考えておるわけでございます。
  8. 木宮和彦

    木宮和彦君 科学技術というのは非常に基礎的なものと応用的なものとたくさんございますが、三つくらいにこれを大別していきますと、まず第一には、やはり理論ですね。これは、系統的に理論を積み上げていって、そしてある成果を上げるタイプ。  それから二番目には、体験学習といいますか、いわゆるいろんなことを分解したり組み合わせたりして、それを蓄積したものを統計的その他についてやるタイプ。  それから三つ目が、直観型と言っちゃなんですが、ひらめき型といいますか、夜寝ておったら急に考えついて、例えば湯川秀樹先生もそうですけれども、寝ながら、中間子というものが自分でもってあるんじゃないかと、こう思って飛び起きて、それを書いて、それを一生懸命理論づけたと。結果、それがあるということが大体わかったということでノーベル賞もいただいたと、こういうこともございます。  そこで、今回の未来型の開拓研究推進事業というものは、この三つタイプのうちどういうものをターゲットにして、あるいはどういうところに絞って出資金を出そうとしていらっしゃるのか、局長で結構でございますが、文部省として、あるいは学術振興会としてそれをどう考えていらっしゃるのか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。
  9. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 研究内容に応じましていろんな分け方があるんだろうと思うわけでございますけれども先生の御指摘もごもっともな分類であろうかというふうに思います。  今回の私ども研究そのものにつきましては、「学術応用に関する研究」ということを目的として行おうというものでございます。各省庁でいろんな特殊法人を使いまして今回の制度ができるわけでございますけれども文部省の行います事業は、学術応用に関するものではございますけれども学術研究ということでございますので、基本的には大学研究者が主として真理を探求するというような形で行われますような、大学学術研究ということを中心に行おうということでございます。  したがいまして、先ほどのお分けになった形の、すぐそれに答える形はなかなか難しゅうございますけれども、主として基礎的な研究重点を置いた学術的な研究を応援する形で、そういう点に重点を置いて推進してまいりたいと思っております。
  10. 木宮和彦

    木宮和彦君 学術科学ということになりますと分野が非常に広うございますね。私は、できましたら、応用も大事でございますが、応用の方は農水省とかあるいは通産省であるとかあるいは科学技術庁であるとか、それぞれこういうプロジェクトを持っていろいろとお金もつぎ込んでいらっしゃると思いますが、日本に今一番足りないのは創造的な研究といいますか、そういうものが非常におくれていると思います。そういう意味で、局長お話しのとおり、大学に限りませんけれども、できたら大学でも一部の国立大学あるいは旧帝大だけに固まらないように、これは私立大学あるいは民間研究所、あるいはひらめきのときには受け皿が個人でもいいんじゃないかと私は思うんです。  これは、今後これを生かすためには、直轄方式とかあるいは委託方式とかいろいろあるようでございますが、実際に金を分配するときの過程といいますか、どういうふうにして審査され、あるいはこれは公募なのか非公募なのか、あるいはそういう研究をどこへ門をたたけば考えていただけるのか、そこら辺もきちっとしておかないと、私は一番大事なことは、いいものに金をつけると同時に、どこでどういう研究をやっているかということを、少なくとも国の金なんですから、これはやっぱり透明性を持って、どこにどういうふうにして、その経過がどうなっているかということを明白にしないと私は非常にまずいと思うんです。  その辺、もしお考えがございましたらひとつお答えをいただきたいと、こう思います。
  11. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 今回新たに実施をしようとしております未来開拓学術研究推進事業は、出資金による事業でありますことから、将来の実用化につながることが期待されるというねらいが一つございます。しかし、先生指摘のように、文部省実施いたします研究でございますので、学術研究につきましてその応用的な研究をやろうということでございますけれども、私ども従来から「学術応用に関する研究」という場合には、いわゆる基礎研究応用研究開発研究という場合の応用研究のみならず、いわゆる基礎研究部分でも応用的な部分は含まれるというような考え方でいたしておりますので、将来の実用化につながるということを目的としながら、できるだけ基礎研究性格の強いものに私どもとしては重点を置いていきたいというふうに思っております。  それから、この事業研究対象者でございますけれども、この事業学術研究を推進するということでございますので、研究代表者につきましては、大学大学共同利用機関、それから民間学術研究法人研究者に絞って対象にいたしたいと思っておるわけでございます。もちろん、研究協力者等につきましてはいろんな方にお入りいただけるという形にはしてございますけれども研究代表者につきましてはそういう方々を対象にいたしたいと思っております。御承知のとおり、他省庁におきましてはもう少し幅広い研究制度もあるわけでございますので、文部省がねらいますものは当面そういう対象に絞った形で運営をしていきたいと思っております。  それから、研究分野につきましては、出資金性格上、当面は理工系生命科学、それから人文・社会科学を含む複合分野というような形の分野考えております。  それから、審査透明性という点につきましては、私どもも十分配慮してまいらなければならないというふうに思っております。今回の出資事業につきましては、他省庁制度がすべて公募で行われて、そのかなりの部分大学研究費として使われるということ、それから文部省では公募方式で既に科学研究費というものが大変幅広く使われているというようなこともございますので、文部省の今回の出資事業研究プロジェクトの選定に当たりましては、日本学術振興会に設置されます学界や産業界などの有識者で構成されます事業委員会におきまして、研究分野重要性社会のニーズ、研究成果の見通しなどを勘案しながら、各研究分野研究推進計画を立てて、その中でふさわしい研究プロジェクトが選定されるというような形でやっていきたいと思っております。  審査に当たる事業委員会構成メンバー審査基準はできるだけ速やかに公表し、採択されたプロジェクトやその代表者については、採択後公表するなど、審査透明性の確保に努めてまいりたいと考えております。
  12. 木宮和彦

    木宮和彦君 ただいまの答弁で大変私も安心したと言うとおかしいですけれども、ぜひひとつ、せっかくこれだけの金を有効に使っていただくためには、皆様方の御協力と英知を傾けなければ成果は上がっていかないと思います。といって、成果が上がらなくてもこれはやむを得ないことで、成果が上がるつもりだったけれどもだめだということはしばしばあることでございます。  アメリカあたりではベンチャービジネスにいわゆるステータスを持った金持ちが融資して、あるいはだめだったらもうしょうがない、そのかわりうまくいったらそれはちゃんと倍返し、三倍返ししてもらうというような、そういう豊かな国でございます。日本には、税制上のこともありますけれども、なかなか個人でもってそんなに財産を持っている人はたくさんいないわけなんで、そういう意味で国がそれを肩がわりするように、ひとつベンチャー的な要素もたくさん入れて配分をしていただきたい。  それで、百十億あればそれを均等に一億ずつというんじゃなくて、重要で金が要るものはたとえ半分以上でもこれはやむを得ない、あとの残りをたくさんで分けるということもあり得るだろうと思うし、そういう点はぜひひとつ、一番大事なことは、振興会の会長さん以下スタッフがどのくらい日本科学技術あるいはその応用あるいは基礎研究というものに対しての総合的な理解を持っているかということが私は非常に大事なことだと思います。  今、生命科学の問題、あるいは工業技術の問題、あるいは人文的な問題ということで三つぐらいに分類されましたけれども、私は特に人文的なこと、あるいは生命科学的なこと、これから人類はどこまでもつのかというのはだれも研究していないと思います。あるいは食糧は本当に、今六十億ですか、これがまたもっとふえたり、あるいはそれが日本人と同じような食生活をするようになったら一体地球はもつのかとか、あるいは環境的な問題で、大気あるいは水質などが汚染されて果たしてこれで人類がもつのかとか、単に科学だけを、あるいは技術だけを、あるいはそういう便利なことだけを研究するのではなくて、人類そのものの生存が、あるいは国が、戦争なくしてもやっていけるような、そういう研究というものも私は科学技術以上に時と場合には必要じゃないかなと、こう思います。  この問題はなかなか答えづらいとは思いますが、もし御意見がありましたら、簡単にひとつお話しいただきたいと思います。
  13. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 今回の出資金というものがその性格上できるだけの成果を上げられるようにということをねらってもおるわけでございます。私ども大臣から申し上げました提案理由の中でも、「豊かな国民生活の実現」でございますとか、「社会経済発展に資する新産業の創出」でございますとか、今御指摘ございました「地球規模問題の解決などをもたらす創造性豊かな学術研究を積極的に推進することが極めて重要となっております。」ということを申し上げておるわけでございまして、このような意図研究内容そのものに反映されるように十分工夫してまいりたいと思っております。
  14. 木宮和彦

    木宮和彦君 ひとつ、せっかくこの法律が成立しました暁には実のある成果がぜひとも上げられますように心から激励とお祈りをいたしまして、私の質問を終わりますが、最後に、もし何か御感想がありましたら、大臣に一言承って、終わりたいと思います。
  15. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 今、局長から答弁しましたとおり、これからどんどん地球の上では人口がふえてまいりますよね。去年の十一月に大阪で開かれました十八カ国参加のAPEC、あそこでも非常に大事な問題として指摘されました人口増に伴います食糧問題、それからエネルギー問題、ついてはまた水の問題、これが中長期的に見まして人類が安心して生活していくためには非常に大事なことで、そういうたぐいの研究に貢献していただくことが非常に大事になってまいるんではなかろうかなと思っております。  ただしかし、それだけじゃございませんで、何十年か前に湯川秀樹博士中間子論を提唱された、これは非常に基礎知識を十分お持ちでございましたからぱっと瞬間的に思いつかれたことが非常に図に当たってああいう大論文になったわけで、そういうことも大事でございます。また、四十年ほど前でございましたか、もうこれ以上生命の本態は追求しようがないとまで生化学の世界で言われておりましたDNAとRNA、今や遺伝子の組みかえということはもう簡単にできるような時代になっておりますから、そういう問題についても、さらなる発展のためにはこういう新しい百十億円が非常に大きく役に立っていくのではなかろうかなと、私はそういうように大変大きな期待を寄せております。
  16. 木宮和彦

    木宮和彦君 終わります。
  17. 馳浩

    馳浩君 おはようございます。自由民主党の馳浩でございます。  今回の改正の最大の目玉と申しますのは、日本学術振興会出資する百十億円により運営される未来開拓学術研究推進制度であるということでございます。昨年成立いたしました科学技術基本法とも関連いたしますが、我が国は二十一世紀の一大国家戦略として「科学技術創造立国」を掲げています。  しかし、これは日本だけではありません。アメリカでは九四年にクリントン大統領とゴア副大統領の連名の報告書国家利益のための科学」を発表しています。イギリスでは九五年五月に専門家一万人へのアンケートをもとにして「技術予測プログラム」をまとめまして、今後十年から二十年後に産業化可能な技術を選定するとあります。あるいは、フランスにおきましても九五年七月に「二〇〇〇年におけるフランス産業のための百のキーテクノロジー」をまとめております。  この諸外国と比べましても、今回の制度というのがより一層日本として拡充充実されなければいけないものだと思っておりますけれども、どうもスケールが小さいようでございます。その理由といいますのが、文部省科学技術庁通産省等の六省庁がばらばらで科学技術振興事業をやっており、統一的な戦略がないからというふうに批判を受けております。ある意味では縦割り行政の弊害というふうに見られています。  そこで、大臣質問させていただきます。  現在、科学技術会議に諮問されております科学技術基本計画文部省はより主体的に参画をして、六省庁合同戦略を立てて、なおかつその上でこの未来開拓学術研究推進制度を位置づけていくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  18. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) まさに先生がおっしゃるとおりだと私も思っておるんです。とかく経済発展、そのためには、外国からは物まねは日本は非常に上手だなどと言われておりましたんですけれども、それであっては決していかぬわけで、基礎研究から積み上げていくことが大変大事でございます。  そういう反省の上に立って新しく科学技術基本法を制定していただきまして、今、総理を議長といたします科学技術会議で、さあこれからとりあえずの五年間どういう肉づけをして進めていこうかということを御検討いただき、近々それが結論を出していただくようでございます。今お願いしております案件は、まさにそれのはしりといいましょうか、私はそういうように理解をしておるわけでございます。  六省庁とおっしゃいましたが、それの事務局文部省は務めておりまして、科技庁だけじゃございませんで、あとの四つの役所、通産、農水、厚生それから郵政、こういうものとも十分に連絡をとった上で今度のこの百十億円のスタートをさせていただくということでございまして、これからはどんどんこういうものが軌道に乗って誕生していくんじゃなかろうかと思っております。
  19. 馳浩

    馳浩君 文部省のより一層の指導的な役割を期待しております。  それから、省庁利害調整機関にすぎないとの批判があります科学技術会議、これを国全体の科学技術政策を打ち出すための戦略的政策決定評価機関として活性化していくべきではないかという意見がありますが、それに関してはいかがでしょうか。
  20. 中澤佐市

    説明員中澤佐市君) 科技庁政策課長でございます。  先生、今まさに御指摘いただきました国全体としての科学技術政策、あるいは統一的な戦略というお言葉を先生お使いになられましたが、まさにそれが現在、総理からの諮問を受けて科学技術会議で策定中の科学技術基本計画というものに具体化されていくのではないかと我々は思っております。  科学技術庁は、今、奥田文部大臣からもございましたように科学技術会議事務局でありますけれども大学における研究につきましては文部省さんと一緒に事務局をやらせていただいておりますし、ほかの四省庁も含め科学技術を所管する関係省庁とも密接な連携協力をとりながら、事務局としてそういういい基本計画をつくり上げられますよう現在努力をしているところでございまして、この基本計画が今後の我が国科学技術政策の統一的なものとしていいものとなっていきますように努力していきたいと思ってございます。
  21. 馳浩

    馳浩君 私は利害調整機関という批判があると言いましたけれども、これは新聞に出ておったんですが、私は利害調整をするのは当たり前だと思うんです。これは批判を受ける筋合いのものではないと思っております。各省庁得意分野があると思いますので、存分に各省庁の力を発揮していただいて有効に出資金が使われることを私は期待しておりますので、よろしくお願いいたします。  出資制度対象となります研究テーマ研究期間は一テーマ五年程度ですね。一年目が百十億円の出資ならば、途中で出資金が打ち切りにならない限り五年目まで少なくとも毎年百十億円かかるということになると思います。つまり、二年目以降に新規研究テーマヘ出資がなくても百十億円かかることになります。  科学技術発展というのは日進月歩であります。当然、二年目以降に新規研究テーマヘ出資が不可欠となります。そのためには出資の増額もぜひ必要であると思いますが、この点、文部省としてはどう考え、どういう理念のもとにどの程度の増額ということを目指していかれるのでしょうか。
  22. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) これは今後の予算をどうまとめていくかということにかかわりますので、現在の段階で必ずしも確かなことを申し上げにくいところがあるわけでございますけれども先生も御指摘ございましたように、このプログラムは同一研究プログラムを原則として五年間程度継続するということになっておりますので、仮に同じ予算がそのままでございますと、五年間新たな課題が採択できないということになるわけでございますので、私ども担当局といたしましては、できれば同じくらいの規模の新規採択でもできるようなことを目指して、ぜひ何とか今後の充実も図っていくように努力していきたいと思っております。
  23. 馳浩

    馳浩君 よろしくお願いいたしたいと思います。  そこで、今回の百十億円は建設国債で賄われるということですが、どの点で赤字国債と異なるのでしょうか。  道路や橋の建設とは違いまして、科学技術発展によりまして得られた成果というのはそんなにはっきりと目に見えるものでもないと思います。という観点から、この研究成果の知的所有権の帰属は日本学術振興会になるのでしょうか。確認の意味で、この知的所有権はどこに存在するというふうに考えていったらいいのですか、位置づけというものをお伝え願いたいと思います。
  24. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 出資金によります研究成果の知的所有権の帰属の問題でございますけれども、まず直轄方式委託方式で若干異なる面があるわけでございますが、現在考えておりますやり方で申しますと、日本学術振興会がみずから研究を行う直轄方式の場合には、原則として振興会研究成果が帰属するというふうに考えておるわけでございます。  それから次に、振興会国立大学等に研究を委託する場合でございますけれども、この場合は当該国立大学研究を委託するわけでございますけれども、その国立大学研究者個人の関係ということについて見ますと、今の私どもの指導方針によりますと、研究者個人ではなくて、委託を受けた国立大学に原則として研究成果が帰属するということになるわけでございます。  その上で、その国立大学、国と委託者であります振興会の関係について見ますと、この金額が出資金事業であるということを踏まえまして、振興会にできるだけ多くの研究成果を蓄積しようということを考えておるわけでございまして、研究交流促進法によりますと、両者が研究成果の二分の一ずつを共有することが可能というふうな仕組みもございますので、いわゆる国、大学と委託者であります振興会とで、両者の持ち分に関しては共有というような考え方を現在とっておるところでございます。
  25. 馳浩

    馳浩君 共有ということでございますけれども研究者自身あるいはその研究者の所属する大学研究所等の機関、あるいは日本学術振興会、その割合というものをこれからもしかしたら詰めていかなきゃいけないのかなという気もいたしますけれども、その点、個人的にはより研究者にその権利が帰属となりますようにお願いを申し上げておきます。  次の質問に移ります。  日本学術振興会研究主体となりますのは今回の改正の目玉の一つですけれども、いわゆる直轄方式委託方式ではどちらが経費がかかるのでしょうか。どう考えても、より効率的に出資金を使うには委託方式の方がお金がかからなくて済むのではないか、より多くの研究テーマに対して出資できるのではないかなというふうに考えられますけれども、いかがでしょうか。
  26. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 確かに、御指摘のように、今回直轄方式委託方式の二つを想定した制度改正をお願いしておるわけでございますけれども直轄方式でやります場合には、振興会が自分で施設や研究者を保有しているわけではございませんので、これらのための経費もかかるであろうというふうなことを想定いたしますと、直轄方式の方が経費としてはかかることが通常であろうかというふうに思うわけでございます。  そういうこともございまして、今回の制度では主として委託を中心に運営をしていくということを考えておるわけでございます。しかし、事柄によりまして直轄でやる場合も可能性なしとはしないということもございますので、研究性格上直轄でやった方がいい場合にはそれも可能なような仕掛けをお願いしておるということでございます。
  27. 馳浩

    馳浩君 次の質問をいたします。  今回の改正で、「学術応用に関する研究を行うこと」を日本学術振興会目的としておられますけれども、ここでちょっとまとめてお伺いいたします。  科学技術研究には、基礎研究応用研究開発研究ということがございますが、この中において今回の「学術応用に関する研究を行うこと」というのはどういう位置づけがされるのかという点が一つ。  もう一つは、この応用研究というのが平成七年度までの科学研究費補助金に言う試験研究とどういう関係があるのかということの違いをお尋ねいたします。というのは、出資金の使い道の明確化という意味で、私は余り科学技術に詳しくはないのですが、言葉の定義と申しますか、そういったものの位置づけが必要なのではないかと思い、質問申し上げます。
  28. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 今回の法第一条の目的規定や法第二十条第一項の業務規定に新たに追加されます「学術応用に関する研究」でございますけれども、これは例がいいかどうかわかりませんが、現在のところ例えば哲学のような直接実用化に結びにくいかと考えられる研究を除きまして学術研究を広く指しているというふうに解しておるわけでございます。いわゆる基礎、応用、開発と分けました場合の応用研究はもとよりでございますけれども基礎研究について見ましても応用的な色彩の強いものはここに入るというふうに考えておるわけでございます。  それからもう一方、科学研究費補助金では試験研究というような分類を設けておりましたけれども、これと出資金との整理が必要ではないかというようなこともございましたので、この試験研究的なものは出資金事業で対応可能なものもあるということから、このうち高額な研究については未来開拓学術研究推進事業で対応するというふうな形で出資金事業と科研費の区分けなんかも行うというふうなことを進めておるところでございます。
  29. 馳浩

    馳浩君 先ほどもちょっとお伺いいたしましたけれども、「戦略研究」という言葉ですね。これは伺いましたら、科学技術庁の方で新技術事業団によります戦略基礎研究推進制度の中にある言葉としても非常にこれからの政策の中に位置づけられる言葉であり、これをもとにした研究が必要だということで、科学技術庁質問申し上げますが、「戦略研究」のこれからの位置づけというものをどのようにとらえておられるのか、お伺いいたします。
  30. 小田公彦

    説明員(小田公彦君) お答え申し上げます。  まず、用語についてでございますが、「戦略研究」という言葉につきましては、最近、欧米、あるいは昨年の日本学術会議の要望の「高度研究体制の早期確立について」などにおきまして、新しい概念として、将来におきます応用の潜在力に注目いたしました基礎研究応用開発研究との間の橋渡しをする研究として使われているということは我々も承知している次第でございます。  一方、科学技術庁の方で平成七年度、昨年度から立ち上げております戦略基礎研究推進事業というものは、知的資産の形成に資する基礎研究の充実強化を図ると、こういう観点から、新技術事業団への出資金を活用いたしまして大学あるいは国立試験研究機関等を対象テーマ公募いたしまして共同研究実施するというものでございまして、本事業におきます戦略的という意味は、いわゆるばらまきを排しまして戦略的視点に立脚して重点化を図るという趣旨で使っているわけでございます。  具体的には、科学技術基礎研究全般を網羅的に対象にするということは行わずに、その時点での科学技術に対する社会的・経済的要請を考慮いたしまして、これを実現するために必要な創造的な研究、例えば新技術あるいは新産業の創出につながるような基礎的研究、あるいは地球環境問題の解決につながるような基礎的研究重点的、集中的に取り上げるという意味で使っているわけでございます。  こういった観点で、昨年度から行っています二つの戦略目標、「未知への挑戦」それから「環境にやさしい社会の実現」というものを設定いたしまして、その下に四つの具体的な研究領域を設定し、公募を行って、現在進めておる次第でございます。  今後とも、その時々の社会的・経済的な要請を考慮しながら本事業を運営していきたいと考えている次第でございます。
  31. 馳浩

    馳浩君 よろしくお願いいたします。  続きまして、研究テーマの選定についてですが、科学技術庁、厚生省、農水省、通産省、郵政省、ほかの五省庁はすべて公募方式をとっておりますが、文部省だけが選定方式。  二つ質問申し上げます。なぜ選定方式をとられたのですか。それから、だれが選定するのでしょうか。
  32. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 選定方式とした理由でございますけれども、先ほどもちょっと触れましたが、文部省では、科学研究費補助金というほぼ純粋に公募方式予算を今回お認めいただきましたので、一千億円を超える研究費を持っておるわけでございます。それからまた、今回の各省庁出資金事業というものもほぼこれは公募方式によって行われる。それから、その公募方式によって行われます経費はかなり大学関係者によって使われるというようなこともあるわけでございます。  したがいまして、これらのことを考えまして、私どもといたしましては、今回の日本学術振興会への出資金によります事業は、豊かな国民生活の実現でございますとか地球規模問題の解決、さらには新産業の創出というような応用的な学術研究大学などの研究能力を活用して推進するということをねらっておるわけでございます。  したがいまして、この制度におきましては我が国の指導的な研究者などから構成されます事業委員会振興会に設置いたしまして、研究分野重要性社会のニーズなどを勘案した上で、重点的に推進すべき研究分野を選定して、それにふさわしい第一線の研究者に対して自由な発想で独創的な研究プロジェクトを立案実施していただくというふうな方式をとろうとしておるものでございます。  文部省といたしましては、公募方式によります科学研究費によりまして、幅広い分野で新たなアイデアを素早く引き上げて研究実施した上で、それらの中から将来知的資産を形成できるような実用化につながる研究を選定して、出資金事業によって科研費の研究成果をさらに発展させたり、または大規模に展開させるというような枠組みを構築することによりまして、両者相まって我が国学術研究振興することに効果的ではないかという考え方で行うものでございます。
  33. 馳浩

    馳浩君 事業委員会のメンバーが選定するということですが、事業委員会のメンバーはだれが選定するんですか。
  34. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) これは、文部省が全体的な制度についての指導をいたしますし、それからこの制度の基本的な事柄につきましては文部大臣の認可事項ということになっておりますので、文部省といたしまして事業委員会の選定についての大まかな方針をお示しいたしまして、それに従いまして事業実施主体である日本学術振興会において選定していただくという形になるわけでございます。
  35. 馳浩

    馳浩君 日本学術振興会の中にある研究推進委員会の中から事業委員会のメンバーが選定されるということを承っておりますけれども、そこで、日本学術振興会の役員名簿をいただきまして、その学歴を私はちょっと見てみましたら、七名のうち京大三名、東大三名、東北大学一名ということなんです。皆さん国公立の大学ということで、私は、これはもしかしたら選定方式をとられたことに少し弊害が出てくるのではないかという懸念を持っております。  と申しますのも、日本学術振興会実施しております事業である特別研究制度、これの平成八年度の内定者を見ましたところ、国立大学が千五百十七名で全体の八八%、私立大学は百十八名で全体の七・八%。それで、出身大学等々を見ましたら、圧倒的に東大が多く、四百七名で一番、二位が京大の二百四十七名、三番目が大阪大学の百二十九名、四番目が北海道大学の百八名ということで、ベストテンの中に私学がやっと十番目に早稲田大学が出てきます。  ということで、もうちょっと私学振興の観点からも、これは特別研究員の選定ということの資料なんですけれども、実態はこういうふうになっております。日本学術振興会の役員のメンバーは、こういうような実態になっておるということと、あわせまして、今後の選定の過程におきまして、そういった部分の懸念はないのだろうかという質問が一点。  と同時に、要は、より一層私学の研究施設であるとか人材を育成していただきたいということなのでございますから、そういう点の今後の文部省の御配慮、取り組みというものをお願いしたいということで、取り組む積極的な姿勢というものをお聞かせ願います。
  36. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 御指摘のありました中で、日本学術振興会がやっております特別研究員の私学の割合というようなことでございますけれども、御指摘のように、特別研究員の受け入れ機関別の採用状況を見ますと、私立大学への受け入れ率が八%というふうなことでございまして、私学への受け入れが少ないということは事実でございます。  しかし、この選考方法につきましては、振興会に設置されております審査会におきまして公平かつ厳正に審査されておるわけでございまして、この中で審査員の所属について見ますと、国立大学私立大学の比率に関しましては、現状では全体の約三五%が私立大学所属の委員になっていただいておるというような状況もあるわけでございます。  私立大学関係者が余り採用されていないということの背景を少し考えてみますと、採用内定者の約七割を占めます自然科学系、これは医学系を除いた分野でございますけれども、これについて見ますと、大学院博士課程への入学者比率が国立の約九割に対しまして私立が約一割というような状況もあるわけでございますし、それから申請そのもので見ますと、国立関係が約八五%に対して私立が約一〇%になっていたというふうなこともあるわけでございます。私どもとしては、しかし、私学の関係者、優秀な申請者がより多く応募していただくような形での一層の関係者への周知などの努力をしなければならない課題だと思っておるわけでございます。  それから、私学振興、私学の特に研究プロジェクトに対します支援というような形では、これは高等局長の方からお答えするのが適切かもしれませんが、大学におきます研究を推進する面で私学の果たす役割に対する期待は私どもとしては大変大きく持っておるわけでございまして、文部省としても高等教育局におきまして本年度から私立大学ハイテク・リサーチ・センター整備事業が開始されるというふうなこともございまして、そういう面での文部省としての配慮が続けられておるものというふうに理解をいたしておるところでございます。
  37. 馳浩

    馳浩君 より一層の御配慮をお願いしたいと思います。  次の質問に移ります。  援助対象研究テーマの重複というのは、この事業国債で賄われていることからも絶対避けられるべきだと思います。  そこで、関係六省庁が連絡協議会を設けて重複しないように調整するということですが、この仕組みの進捗状況をお聞かせ願います。どのような基準で調整をするのか、その概略もあわせて御説明をお願いいたします。  また、関係六省庁審査員の重複も避けられるべきではないかと思いますが、この観点からも協議はなされるのでしょうか。
  38. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 関係省庁の連絡協議会でございますけれども、この設置の趣旨は、六省庁の各制度が全体として整合性がとれた形で適切に運営されることが重要であるということから、省庁間の連携体制を整備して各制度の円滑な運用を図ることとするものでございまして、昨年の十月二十七日に発足をいたしております。それで、本年の一月十六日には第二回会合を開催いたしまして、また第三回を今月末には開催を予定しているというふうなことでございます。このような中で、具体的にどのような方法、基準で六省庁の各制度間の調整を図るかという点に関しましても検討することを予定しておるわけでございます。  私どもといたしましては、振興会のこの事業実施するに当たりまして、各省庁制度において採択される研究課題と重複しないように留意をするということは御指摘のとおり重要な課題であり、そのように努力したいと思っております。  したがいまして、各省庁で行われます事業で、大学に対して研究の委託がなされる場合には、その具体的な研究テーマ研究代表者等の必要な情報を提供いただいて、これを踏まえて振興会が適切な対象を選ぶようにしてまいりたいというふうに思っております。  それから、審査員の重複についてのお尋ねでございますけれども、これは今後相談していくべき課題の一つでございます。この問題はこれからの相談事ではございますけれども、御指摘のように、重複を避けた方がいいという考え方と、場合によっては一部は重なっていた方がいいという考え方もあり得るかもしれませんので、これらは目的が今のような観点から適切に行われますように十分相談してまいりたいと思います。
  39. 馳浩

    馳浩君 よろしくお願いいたします。  今回の出資制度での最大の課題というのは研究の評価の問題であると思います。この点について質問いたします。  文部省は、九六年の募集分から科研費の交付のための審査方法を大幅に変えるとしておられます。この点を詳しく説明していただきたいと思います。と同時に、この科研費についての見直しは今回の出資事業にも当てはまることでしょうか。同様の審査方法がとられると思いますが、いかがでしょうか。
  40. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 科学研究費補助金につきましては、既に報道などされておりますけれども、平成八年度におきまして、一つ研究種目を改正するということで、先ほども話題になりましたけれども、試験研究等を基盤研究へ統合すること、それから萌芽的研究というようなものを新たに設けること、それから一部の研究種目につきまして不採択の理由をお示ししていくということ、それからこれまで一部未公表でございました審査員につきまして、審査の終了後、その氏名を公表することとして、審査員全員の氏名を公表するなどの改善を予定しているところでございます。  今回の出資事業につきましては、先ほども御説明いたしましたように、科学研究費公募方式とは異なり、日本学術振興会に設置されます、学界、産業界などの有識者で構成される事業委員会において選定をしていくというような形でございますので、必ずしも科研費のやり方というものがそのまま通用する形ではございませんけれども、これまで研究費の配分につきましていろんな御指摘のあったことにつきましては十分勘案をし、遺漏のないように改善してまいりたいというふうに思っております。
  41. 馳浩

    馳浩君 どうかよろしくお願いいたします。  これで終わります。  ありがとうございました。
  42. 石田美栄

    ○石田美栄君 平成会の石田でございます。よろしくお願いいたします。  今、日本はあらゆる面で大きな転換期を迎えておりまして、二十一世紀へのさまざまな課題解決に大きな役割を果たすのは科学技術であろうと思われます。特に、基礎研究重要性が言われて、昨年十一月に成立した科学技術基本法によって、今この科学技術基本計画の策定に向けて論議が進められております。  また、このたびの出資金を活用するといった形での、平成八年度から早速基礎研究推進制度として、ただいまいろいろ議論されてまいっております、六省庁にわたって約三百二十億円余の資金が提供されるわけですが、基本法元年であります。そして、科学技術基本法制定の精神である基礎研究、すなわちすぐには役立たないかもしれないような地道な基礎研究の位置づけが非常に重要であろうと思います。  そこで、お尋ねしたいのですけれども、このたびの基礎研究推進制度について、科学技術庁の方では戦略基礎研究推進制度というふうになっております。それに対して、文部省日本学術振興会ですが、こちらの方は未来開拓学術研究推進事業というふうになっております。このたびの法改正で、この目的と業務のところを見ますと、「学術応用に関する研究を行う」という言葉が追加されているわけですが、これらの、すなわち科技庁関係の戦略基礎研究推進制度文部省関係の未来開拓学術研究推進事業、これはどのように違うのかなというふうに思うのです。この点をお伺いいたします。  そしてまた、日本学術振興会の「学術応用に関する研究」という言葉は、法文としても読んでいて何かちょっと変だなと奇妙な感じもいたしますが、この「学術応用」という言葉なんですが、文部省の方は「学術」で科学技術庁の方は「科学」というふうに使われているのかなと思いますし、また「科学技術」という言葉もそうなのですが、「学術応用」というとすなわちサイエンスの応用、ということは、科学技術すなわちサイエンス・アンド・テクノロジーと同義語なのでしょうか。  この二点、お伺いいたします。
  43. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 今回の文部省日本学術振興会で行います事業科学技術庁戦略基礎研究推進制度との違いでございますけれども、主として二つ違うところがあろうかなと思います。  一つは、私ども日本学術振興会で行います、今おっしゃいました「学術応用に関する研究」ということでございますけれども大学を中心とした学術研究対象としておるわけでございます。これに対しまして、科学技術庁制度によりますと、大学等も含まれますけれども、そのほかに国立試験研究機関や企業などにおきます幅広い研究対象としていると理解しておるわけでございます。  それから、科学技術庁制度でございますと、研究プロジェクトの選定方法が広く研究者から研究提案を求める公募方式でございますのに対しまして、日本学術振興会が行います事業研究プロジェクトの選定方法に関しましては、我が国の指導的な研究者等から構成されます事業委員会振興会に設置いたしまして、具体的な研究プロジェクトを立案実施していただくというような形をとるものでございます。主として両者の大きな違いは、対象となる研究主体の範囲、それから研究プロジェクトの選定方法が大きく違う部分かなと思っております。  なお、今年度、現在のところ、科学技術庁関係の出資対象となります研究対象領域が四つ掲げられてございまして、一つ生命現象、それから二として極微細領域の現象、それから三番目に極限環境状態における現象、それから四番目として環境低負荷型の社会システムというようなものが挙げられておりますけれども日本学術振興会の方では対象領域につきましては、今後、事業委員会等で検討いただいて固めていくということにいたしております。  それから、「学術応用」と「科学技術」との関係についてのお尋ねでございます。  今回の法改正で追加されます「学術応用に関する研究」という場合には、先ほども申し上げましたけれども学術研究全般の中で実用化に結びつきにくいというふうに考えられる基礎研究を除いた、大学を中心とする学術研究を広く指すと解しておるわけでございまして、いわゆる通常言われますところの応用研究のみではなく、基礎研究の中でも応用的な性格の強いものについてはこの「学術応用に関する研究」の中に含まれるということでこれまで解釈をし、今回もそのような方針で当たりたいと思っております。  「科学技術」という用語はいろんな形で使われるというふうに思うわけでございまして、これにつきましてどういう考え方であるということをなかなか言うのは難しいわけでございますけれども、一般には「科学技術」という用語は各省庁産業界などが実用的な技術開発を目指す研究で、行政ニーズに直結した目的志向の計画的な研究開発などが当たるというふうに私は理解をしておるわけでございますけれども、このように考えますと、「学術応用に関する研究」、先ほど御説明申しました内容と「科学技術」という言葉が必ずしも重なるというふうには考えていないわけでございます。
  44. 石田美栄

    ○石田美栄君 ただいまの御説明を聞いていてもなかなか違いというのがわかりにくいのです。  お聞きしたいのは、このたびの基礎研究推進事業三百二十億余ですが、六つの省庁に配分されていて、ほかの四省庁というのはそれぞれの目的があって金額もわずかなんですが、特に科技庁文部省の百五十億と百十億の資金の用途について比べてみると本当にわからなくなっちゃうんですね。  例えば、文部省の方は実施機関が日本学術振興会で、科技庁の方は新しく今度合同しました科学技術振興事業団なんですね。それで、その制度趣旨とか目的を見ると、どちらも「科学技術創造立国を目指して」となっておりまして、さらに先ほど申し上げた未来開拓学術研究推進制度戦略基礎研究、こういうふうになっていますけれども、科技の方はさらにその戦略目的は「未来への挑戦」となると、「未来開拓」と「未来への挑戦」というのはどう違うのか。  対象の機関にしましても、文部省の方は、実は多分科研費の方が国公立に偏っているということで意図してこういう言葉を使われたのかなと思うんですけれども大学等の研究機関と国ということを入れていらっしゃらないんですね。科技の方は、今度は国の大学、国研というふうに書いておられまして、こういうふうに見ていくと、両制度を比べてみて非常によく似ているので、さて応募する側からすると、これに応募するとどういうふうに違うのかなと思われるだろうというので違いをお聞きしたいなと思うのと同時に、また、これだったら重複して両方へ出しておけばいいのかなという、それでもいいのかどうか、この辺の対応についてお伺いしたいと思います。
  45. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 応募される方からごらんになった場合のことでございますけれども、先ほど申しましたように、対象機関が異なること、それから対象領域についても異なることがあり得るというようなことがございますので、それらの条件を満たした方が応募なさる場合に、両方に応募できる分野というのは十分考えられるだろうと私どもも思います。  したがいまして、それにつきましては、基本的には科技庁公募でございますし、文部省の場合は公募と申しますよりも、これは原則は事業委員会によります選定を基本にしておりますけれども、いろいろ研究者の御提案などもお聞きしながら事業委員会の選定作業はしていくことになっているわけでございますので、特に日本学術振興会の方へいろいろこういう研究をしたいというようなことにつきましては研究者からアプローチをしていただいて、それぞれについて重要性が判断されればそういうものについても対象になり得るというような形の選定を考えておるというようなことでございます。
  46. 石田美栄

    ○石田美栄君 複数のチャンスがあったり競争したりもいいのかなと思いますけれども、これもまたある意味では全く似ていて一緒になってもいいのかなという気もいたします。  さて、文部省関係ですと、従来の科研費補助金との比較から考えれば、このたびの制度はより科技庁関係のものが文部省にはみ出してきたのかなという感じもしないわけではありませんが、先ほど未来開拓学術研究推進制度対象分野ということは木宮先生の方のお尋ねでもうありましたので、質問項目に入れていますが、これは自然科学が主となるけれども多少というお答えがありましたので、それは省きます。  この科研費補助金研究種目別の予算額の推移を見ますと、先ほど馳議員も触れておられましたけれども、八年度はかなり改組されておりますね。なくなっている部分も多いし、新規で要するに基礎研究というところに集中して金額も配分されております。このたびの制度では、科研費補助金公募だったのに対して、学術研究推進制度という形で学術振興会の方の三つ委員会で研究計画の企画立案がされるというふうになっておりますが、こういう科研費の種目に従来あるものとどういうふうに調整して企画されていくのか。また、この制度の特色として、産業界等の協力を得て行う研究ということを特色として強調されているのですが、資料を拝見しますと、既に産学協力研究委員会で現在四十四の委員会が活動中ということもありますので、それらとの関係なども含めてどう調整されていくのか、お伺いいたします。
  47. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 今回新たに設けます出資金による未来開拓学術研究推進事業におきましては、将来の実用化につながることが期待される応用的な学術研究を推進するということになっているわけでございまして、科研費の中にその目的において共通のものがある研究種目がございましたので、今回の出資金事業の創設に伴いまして、科研費の研究種目について整理をいたしました。  具体的には、先ほども申しましたが、科研費の試験研究について、その目的において出資金事業で対応可能なものがございますので、このうち従来試験研究対象としておりましたもののうち、高額な研究につきましては未来開拓学術研究推進事業で対応するというふうな形で出資金事業と科研費の区分けを行ったということでございます。  それから、今回の目的の中には、御指摘のように産業界との協力、必要に応じてそういうものもやっていくということも入れてあるわけでございます。先生指摘のように、日本学術振興会は相当古くから産業界と学界とがどのような分野でどのような研究をすることが有意義であるかというようなことの具体的な研究をこれまで進めてきておったわけでございまして、そのための委員会をたくさん設けておるわけでございます。  それで、そのそれぞれの研究成果につきましては、従来は理論的な研究にとどまっていたわけでございますけれども、今回このような出資金制度を産学協力研究委員会の検討の結果で、こういう分野についてはこういうプロジェクト研究をすれば有意義な結論が出そうだというふうなことにつきましてはこの出資金事業出資対象にいたしまして、その関係者で具体的な研究課題を選び、研究計画をおつくりいただいて実際の研究を進めていただくということを考えておりまして、この出資金事業の重要な柱の一つにしたいと思っているわけでございます。
  48. 石田美栄

    ○石田美栄君 このたびの事業ですが、従来の科研費に比べれば少額とはいえこういう費用がもらえるので、それはもらった方が文部省としてもいいですが、なかなか科研費と今度の事業との区分もそうはっきりはしないような気もいたしますが、でも、先ほどもおっしゃいましたように、配分額にしても研究期間についても従来の科研費よりはずっと優遇されております。本当にこの金額にしても従来のですと、これはもちろん人文・社会、いろんな分野が入りますからこういう配分、平均して二百四十万というようなのに対して期間は一年から五年でしたが、このたびの事業は五千万から三億を予定していて、平均一億、そして原則五年間ですから、ずっと優遇された制度で非常にいいことであります。  それであればこそ、資金の使い方について、従来科研費の方はかなり制約があったというふうに伺っておりますが、新しい制度については費用の使い方について制約が外されていくといいんだろうと思います。例えば旅費だとか研究にかかわる人件費といったようなことについてもどのように配慮されていくのか、お伺いいたします。
  49. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 御指摘のように、今回の出資金事業につきましては、できるだけ研究者に使いやすいような形でお使いいただけるような使い方をしたいというふうに思っているわけでございます。御指摘外国旅費も含めます旅費でございますとかそれから人件費などにつきましても、出資金研究におきましてはお使いいただけるようなことも今予定をしているわけでございまして、できるだけ研究に有効にお使いいただけるような制約の少ない形の研究費にしてまいりたいと思っているわけでございます。
  50. 石田美栄

    ○石田美栄君 せっかく新しい事業でありますし、国の将来のかかるこうした研究、いろいろな今までの弊害をできるだけなくするよう、ぜひいい制度にしていっていただきたいというふうに思います。  本日この改正案が通過し、そして本会議を通れば成立するわけです。そうしますと、科技庁関係は補正でも費用が取れていて、もう既にこれに関連した、七年度といいますか八年度、募集も済んでいるようでありますけれども文部省関係のは募集、選考等これからしていかれるのだと思うんです。このたびのは公募ではなくて、委員会の方で研究計画、企画立案されて、ある程度テーマの設定なども進めていかれるんだと思いますけれども、またそしてその推進事業委員会で選定の審査方法なども決めて発表されるんだと思いますが、現在のところこういったことについてどの程度進んでいらっしゃるのか、お伺いできたらと思います。
  51. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 今回の制度は、一つ予算をお認めいただくことと同時に、この法律改正をお願いした上でスタートさせていただきたいということでございます。御指摘のように、省庁によりましてはこのような前提条件が整いまして一部既に具体的な活動を進めているところもあるわけでございますけれども、私どもといたしましては、この法律をお認めいただきましたら、できるだけ速やかに必要な作業が行われ、早い時期に研究活動に取り組めるように準備を進めてまいりたいと思っております。  これまでの間は内々で日本学術振興会におきまして、具体的なやり方、仕組みでございますとか分野、それから必要な審査に携わっていただく方々のリストアップというような形の内々の準備は進めておるわけでございますので、この法律改正をお認めいただきますれば、できるだけ早く事業委員会のメンバーを公表いたしまして、また審査の基準というようなこともできるだけ早い時期にまとめて公表できるように準備を進めてまいりたいというふうに考えております。
  52. 石田美栄

    ○石田美栄君 そうしますと、企画立案という部分研究内容なんかについてはまだなんでしょうか。  私が思いますのに、そういう過程の中で、冒頭に申し上げましたように科技庁とは一味違った、学術振興会の方で進められる内容については科研費の中で進んできていますけれども、さらにそれを補助するような形でもっと、そうすぐには役に立たないというか、未来を見据えたような、本当に基礎研究、すぐには役に立たないけれどもという、そういった部分をより入れていただきたいなというふうな気持ちがありまして、もしそんなことが伺えたらと思ってお伺いいたしました。よろしくお願いいたします。  さて、こういう情報の集約ですが、これだけのお金をかけてまずは五年間ですけれども、その結果の利用について省庁間の連携、今までもいろいろあったと思いますが、どのように行われてきていたのか。  特に、科技庁日本科学技術情報センター、これ日本科学技術情報センターというので従来あったわけですが、今度科学技術振興事業団に含まれますけれども、情報センターとして科技庁の方には別個にございました。そして日本学術振興会との間でも今まで研究成果の情報交換というのはどのように行われてきていたのか、そして今後この新しい事業研究成果などについてはどのようにしていかれるのか。特に「科学技術創造立国」を目指して知的資産を形成するということですので、このたびの制度から特に情報集約、そして資料の作成、利用に供するということで、どのようにしていかれるおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
  53. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 研究成果につきましては、まとまりましたらできるだけ広く早く公表することをいたしていきたいというふうに思っております。  これまで大学等で行われます学術研究の状況につきましては、文部省関係では学術情報センターというものがまさに学術関係の研究情報を収集し提供していくというふうな活動をいたしておるわけでございます。このセンターが今後ともそのような形で学術関係の情報を十分収集していく活動を続けていくようにしたいと思っておりますし、日本学術振興会事業によって得られた成果などにつきましても、学術情報センターによりまして適切な収集、提供ができるような方向で努力をしたいと思っております。  また、科技庁日本科学技術情報センターとの間では、学術情報センターとこのいわゆるJICSTとの間では、学術情報それから科学技術情報の相互流通というようなことも仕組みとして持っているわけでございますので、それぞれの分野で得られました研究成果につきましては、必要な研究者等にできるだけ広く周知ができるような面での努力をしていく必要があろうと思っております。  それから、学術研究で得られましたいろんな特許等の成果を活用していくということにつきましても、従来から科学技術庁特殊法人のお世話にもなりまして、日本学術振興会がその橋渡しをするような活動というようなこともいたしておるわけでございますので、このような出資事業によります成果につきましても、できるだけ広く使われていくような努力もいたしたいというふうに思っております。
  54. 石田美栄

    ○石田美栄君 質問項目は終わったのでありますけれども、最後に文部大臣に、資源の乏しい日本の将来がかかっている学術研究、基本法に大きな期待がかかっており、基本法元年に当たって、基礎研究制度が一般会計からの補助金ではなくてこういう出資金事業という形で行われるということについて、私は残念だなという気もいたします。  研究成果を知的資産として蓄積するということで、苦肉の策の感がいたしますが、この研究成果が本当に蓄積されていって、地球規模の問題解決、そして新しい産業の創出、また二十一世紀への平和で豊かな国民生活の実現に功を奏する事業として成功していきますように、関係者の御協力、御努力を期待しているところでありますけれども、最後に、大臣のこの新制度への御感想、御決意をお伺いしたいと思います。
  55. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 確かに、一般財源でノーマルな形でかなりの研究費予算計上されるということが一番望ましいのかもわかりませんけれども、いろいろな要素が絡んで窮屈な財政運営でございますから、なかなかそうはいかないというのが実情のようでございます。  いずれにしましても、せっかく去年の秋につくっていただいた科学技術基本法、そうして今、技術会議の方で肉づけをしていただいて、もう一カ月ほどしましたらきちっとまとまった御意見がちょうだいできるような、そういうところまで煮詰めていただいておると聞いておりますので、まさにこの平成八年度というのは「科学技術創造立国」のスタートの年であると。そのためには可能な限りの予算をつけて、中には研究をしていただいたら、それは実りの少ない分野もあるかもわかりませんけれども、とにかく情熱を込めて各研究者の方に研究を進めていただくということが必要なんではなかろうかなと思っておるわけです。  とりわけ、これから東南アジアで日本が先進国並みの役割を果たしていきますためには、先ほど申し上げた分野、食糧とかあるいは人口問題以外に環境の問題も非常に大事でございますし、そういう点での国内の研究、あるいは海外の学者もお招きしましての共同研究、それから科学技術の国際貢献ということも大事であろうかと思いますから、私はそういういろいろな研究分野において多角的な研究をしていただいて、そうして何年か先には、やっぱりあのときこれだけの研究をしておいて、これが人類の幸せ、生活の上に相当大きな貢献をしてくれたなと感謝されるような実績がいつの日かつくれることを楽しみにしておるわけでございますので、どうぞひとつ先生におかれても御理解をこの上とも賜って御協力いただきたいと思っております。
  56. 石田美栄

    ○石田美栄君 まだ一、二分あるようですけれども、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  57. 上山和人

    ○上山和人君 社会民主党・護憲連合の上山和人でございます。  本日、議題になっておりますのは、日本学術振興会法の一部を改正する法律案でございますけれども、私は、我が国学術振興に大変深いかかわりを持つ問題であると思いますので、前回に続きまして、海外の先生たちを我が国国立大学等に雇用する問題につきましてお尋ねいたしたいと思います。  私に与えられた時間はわずか十九分でございますけれども、前回四十分にわたってこの問題に集中して御質問を申し上げました。それを踏まえながらきょうは締めくくりをさせていただきたいと思いますので、この締めくくりに当たって提起をされております海外の先生たちのいろんな面での精神的な御不安や生活上の御心配などが解消されればと願っておりますので、どうか大臣局長、そういう観点で前向きな御答弁をいただきますように最初にお願いを申し上げておきます。  前回、四十分の質問を通して明らかになりましたことは、まず一つは、国立大学、公立大学外国先生たちを雇用する制度として二つの制度がある。一つ外国人教師制度、これは一八九三年、明治二十六年に創設をされた制度でありまして、既に一世紀余り経過している大変歴史の古い制度でございます。もう一つは一九八二年、昭和五十七年に議員立法で法律が制定されて導入されました外国人教員制度があるということでございまして、この二本立ての外国人教員の任用制度があるということが明らかになったわけでございます。  そして、平成七年度で見てみますと、この二つの制度のもとで外国人教師の皆さん、外国人教師制度のもとで雇用されている外国人教師の数は三百八十六名、そして外国人教員制度のもとで雇用されている海外の先生たちは四百六十一名、平成七年度で見てみますと、合わせて八百四十七名の海外の先生たちが我が国国立大学、公立大学で働いていらっしゃることになります。  そして、三つ目に明らかになりましたのは、この二つの制度のもとで雇用されている海外の先生たちの身分の問題。これはなかなかわかりにくいんですけれども外国人教師の皆さんは国家公務員ではありますけれども、一般職、特別職のいずれにも属さない国家公務員として任用されております。一方、外国人教員の皆さんは一般職の国家公務員として任用されております。  この二つの制度目的は何ですかとお尋ねいたしましたら、局長の方からは、おおむね大きく言って同じ目的ですとおっしゃいました。  そして、五つ目にはっきりしておりますのは、雇用形態について、外国人教師制度については一年契約・単年度更新の雇用形態になっていることと、外国人教員の先生たちは、これは別にそういった短期契約といったような雇用形態ではなくて、大学と当該先生方との間で話し合われて雇用期間等が定められる制度になっている。そういう雇用形態についてはかなりの差があるということがこの前の質疑を通して明らかになりました。  そして最後に、給与面につきましては、一年契約・単年度更新という制度の不利な点と言えば語弊があるかもしれませんけれども、それを補うという意味もあって外国人教員の皆さんより教師の皆さんの給与の方が比較的優遇されているという実態が明らかになったのであります。  そこで、短い時間でありますので局長に端的にお尋ねいたしたいんですけれども、同じ目的であるのになぜ二つの制度が必要なのかという単純な疑問が起こりますよね。今後ともこの二本立て制度を継続なさるおつもりなのかどうかということについて、局長、端的にお聞かせいただきたい。
  58. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 二つの制度を共通の目的と申し上げましたのは、大学外国人の常勤的な職を迎えて、国際交流の推進やらあるいは当該大学の教育研究の推進ということに役に立つという意味合いにおいて共通の目的を持つということで申し上げたわけでございます。  二つの制度外国人教員、外国人教師それぞれ二つの制度があって、それの違いについてはどうかということについては先生指摘のとおりでございます。  それぞれの違いもございますし、また外国人教員の方は、一般の日本人教員と同じ立場で教授会にも出席できますし、要するに日本人教員と同じ立場でやれるわけでございます。一方で外国人教師の方は、処遇上若干外国人教員の方よりは優遇されておるわけでございますが、一年契約ということで、雇用する側にとりましては場合によって弾力的な契約期間ということで運用し得るというメリットもございますし、待遇上のいい点もあるわけでございます。  私どもとしましては、先ほど先生おっしゃいましたように、外国人教員任用法案が昭和五十七年にでき上がった際に、直後と言った方がいいと思いますけれども、両方の制度を足し込みまして三百十五名の外国人教員・教師があったわけでございますが、その後二つの制度を通して、先ほど先生も御指摘になりましたように八百四十七名ということになっているわけでございます。  申し上げたいのは、この二つの制度という存在を前提といたしまして、これだけ外国人の方々が我が国国立大学に職を得るということによって今の姿があるということでございますので、私どもといたしましては両方の制度それぞれのメリットを生かしながら存続されるべきものだというように考えておるわけでございます。
  59. 上山和人

    ○上山和人君 そうしますと、局長、今後の雇用計画ですね、この二本立ての制度を併存するという今の局長お答えですが、この両制度のもとで、海外からは日本国立大学等に海外の先生たちの数が非常に少ないという問題が指摘をされていることもありますが、今八百四十七名が両制度のもとで働いていらっしゃる、この数は今後ふやす御予定があるのか、現状維持でおおむね継続されるのか、あるいは減らすという構想もあるのか、端的にちょっとお答えいただけますか。
  60. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 外国人教員の方につきましては、全体の定数の枠内の話でございまして、それぞれの大学がどう採用するかということでございまして、文部省が直接ごうごうということでタッチするわけではございません。もちろん、国際交流上推進するという観点から外国人教員が大いに採用された方がいいという一般的なことはあるわけでございますが、個別についてどうこうということはないわけでございます。  一方で、外国人教師の方につきましては、年々予算を決めておるわけでございまして、これにつきましては年々若干ずつではございますけれどもふやしてきておるところでございます。
  61. 上山和人

    ○上山和人君 そうすると、大体現状維持、ややふやしていける傾向にあるというふうに理解してよろしいかと思うんですけれども。  そうしますと、そういう今後の雇用計画のもとで雇用していく場合に、二本立て、併存が雇用しやすい。つまり、雇用する側の立場で考えても、あるいは雇用される側の海外の先生たちにとっても、御希望やあるいは生活設計等に配慮する意味でも選択しやすい、選択肢が一本であるよりも二本である方が選択の幅も広いし、雇用される側の海外の先生たちにとってもその方が都合がいい、だから併存するんだと、こういうふうに文部省のお考えとして理解してよろしいですか。
  62. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 御指摘のとおりかと思います。
  63. 上山和人

    ○上山和人君 そうしますと、大体お考えはよくわかったんですけれども、私が前回御質問申し上げましたその発端になりましたのは、この問題を取り上げるきっかけになりましたのは、前回申し上げましたけれども、海外の当事者の先生たちから国立大学のアパルトヘイトとか、あるいはある日突然の解雇通告といったような表現でこの問題が提起をされ、あるいは告発をされたという経緯がございました。  そういうトラブルがなぜ起こったのか。今の制度趣旨とか目的とか雇用形態、いろいろ局長からお聞きしてみても、前回もお尋ねして御答弁があったんですけれども、なぜその制度のもとでトラブルが起きるのかということについてはやっぱり理解しにくい問題もあります。どうしてトラブルが起きたのか、局長、その原因を端的に整理してもらえますか。
  64. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 問題となっておりますのは外国人教師の方でございますけれども、当初の雇用段階において、これは一年契約でございますので、一年ごとに本人とそれから学長の方で当事者同士がサインし合って当該年度の雇用について確認し合うということになっているわけでございます。  ただし、さらに雇用継続という場合にはそれが更新されると、こういう仕掛けになっておるわけでございますが、これについて、雇用の最初の段階で、あなたについてはいついつまで雇用するよという全体の見通しというのを必ずしもきちっと言わない形で、もっと言いますと、かなりずっと先まで雇用するというような期待を持たせるような形で、雇用の際にそういう状況があり、それについてある時点であなたについてはやめてもらいますよということが突然言われて、その当人の予測なり期待と雇用した側の意思とのすれ違いと申しますか食い違いと申しますか、それによってトラブルが生じたと、こういうように理解しておるわけでございます。
  65. 上山和人

    ○上山和人君 そうしますと、制度趣旨内容が雇用時点で雇用される側の海外の先生たちに十分周知されていなかった、端的に言えばそれだけの理由として理解してよろしいですね。
  66. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 基本的にそういうことかと思うわけでございます。
  67. 上山和人

    ○上山和人君 であるとすれば、これは容易に私は改善できることだと思いますね。こんなトラブルを起こさなくても、十分起こさないように改善できる問題だと思うんですよ。今の教育の国際化、特に文部省がこれからイニシアチブをとって高等教育の国際化あるいは教育全体の国際化が進められようとしているときに、海外からこういう国際的にも我が国に対する不信を招くような事態が発生しないように、これは最大限の努力をしなければならないと思うんです。  今までに、前回御質問申し上げましたように、きょうも一部触れましたけれども、そういうトラブルが発生しないように改善なさるお気持ちがあると思うんだけれども一そのお気持ちと、具体的に来年の四月以降、契約を更新するあるいは雇用を新しくするといったような場合に、同じようなトラブルを繰り返さないためにどのように改善されるお気持ちがあるのか、具体的に簡明にちょっとお聞かせいただけますか。
  68. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 先ほどトラブルの原因について申したことの裏返しになるわけでございますけれども、トラブルを避けるために、新しく雇用しようというときには、相手方に対してかくかくの条件でおおむねこのぐらいの期間、それは多少のずれは全体の教育研究計画の上で出てくるかとは思いますけれども、本人が見通しがつく程度の期間というものをあらかじめ示してやり、それによって当人の方の生活設計と申しますか将来の当人の先行きの見通しというものを得られるような形で示した上で運用していくというのが一つ重要なことだと思います。  また、既に雇用されておって契約を更新されている方々につきましては、ただ年齢が高いあるいは給料が高いということだけで機械的にそれによって契約打ち切りというようなことではなくて、教員人事、これは教員に限らず大事については共通でございますけれども、何分にも信義ということが重要なわけでございますので、十分個別の事情もそんたくしながら慎重に対処していくと、こういう態度が必要なのではないかというように考えておるわけでございます。
  69. 上山和人

    ○上山和人君 局長の御説明、内容もよくわかりましたが、端的に申し上げて、大学の側にも雇用計画がある、同時に海外の先生たちにもそれぞれの個人的な御希望やあるいは生活設計等の条件がある。それを調整しながら、あくまでも個人的ないろんな面にも配慮しながら、表現は少し違いましたけれども、両者が共通に十分話し合って理解し合った上で、新規の雇用者についても、更新者についても、一定の生活設計のめども立つ、日本在住の計画も立てることのできるように個人的ないろんな問題にも十分配慮しながら、大学側と個々の先生たちとが共通に理解し合った上でこれからは雇用していくというふうに理解して端的によろしゅうございますか。
  70. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 御指摘のとおりかと思います。
  71. 上山和人

    ○上山和人君 それでは、この二本立て制度の将来については、これからさらに、あるいはいつかまた議論をしなければならない時期が来るかと思いますけれども、今起きておりますトラブルにつきまして、海外の当事者の先生たちから提起をされている問題につきまして、今の局長の御答弁によってぜひ完全に解消していただきますように。これからいろんな機会があると思います。大学関係者の皆さんの会議あるいは研修会等の機会がたくさんあると思いますので、そういう機会を御活用いただいて、ぜひ今の局長答弁の趣旨を周知徹底されて、同じことが起きないように、そして我が国に対する国際的な信頼が高まるように。  とりわけ昨年一月の日米文化会議の席上でモンデール大使が、アメリカを含めて海外の学者が日本大学に余りにも少ないこと、そして日本国立大学で終身雇用になっているアメリカ人が十人しかいないということに遺憾の意を表明されていることもありますから、そういうものにもこたえられるように、局長、ぜひこれからも御努力を続けていただきたい。  最後に文部大臣、もう時間がなくなりました、三十秒で結構ですが、ひとつ御決意を一言。
  72. 小野清子

    委員長小野清子君) では、雨宮局長から先にお願いいたします。
  73. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 今、先生指摘の点でございますが、これまでも折に触れて大学側に対してはそれなりの説明をしてきたつもりではございますけれども先生の御指摘も踏まえまして、例えば来月、国立大学会議があるわけでございますが、そういう場も活用いたしまして、改めて指導の徹底に努めてまいりたいというように考えております。
  74. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 私もモンデールさんから十分先生の御要請と同じことを聞いておりますから、御趣旨を踏まえて努力してまいりたいと思います。
  75. 上山和人

    ○上山和人君 終わります。
  76. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 基礎研究の充実策について質問いたします。  科学技術基本法に基づく年次報告が発表されていますが、そこでは、「我が国研究開発水準を主要先進諸国と比較すると、基礎研究分野においては立ち後れている」ということで、「基礎研究を抜本的に強化するため、」「基礎研究推進制度を本格的に実施する」としています。この基礎研究推進制度の中に科学技術庁を初め五省庁と並んで文部省日本学術振興会を主体とした事業が挙げられているわけです。しかし、今回の日本学術振興会法の一部改正案では、振興会目的と業務に「学術応用に関する研究を行うこと」が追加されることになりました。基礎研究推進制度と言いながら「応用に関する研究を行う」というのは、矛盾をしているのではないんでしょうか。  朝日新聞などはその社説で、研究活動のフロントランナーを目指すなら、企業主導の効率主義、役立つことから脱皮して基礎研究を重視せよとまで述べていますが、このことは科学技術基本法の精神にも合致するし、その任を最も担うのが文部省だと思うのですが、なぜ応用研究なのか、時間がないので端的に答えていただきたいと思います。
  77. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) これは、前の御質問にもお答え申し上げましたけれども、「学術応用に関する研究」と申しましても、ごく限られた分野を除きまして基礎研究につきましても応用的な性格のあるものにつきましては含まれると考えておるわけでございまして、御指摘のように文部省大学におきます学術研究振興する大変重要な役割を持っておりますので、御指摘のような基礎研究重点を置いた形での運用を図ってまいりたいと思っております。
  78. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 結局、本来的な意味での基礎研究というのは、学術振興会とかあるいは科研費の配分にかかわる学術審議会のいわばふるいにかけられることのない、研究者の自主性に基づく本来の基礎研究を進めるという意味では、財政的には教官当たり積算校費によって賄われていくのだと思うんですね。  この校費なんですけれども、一九八一年から九年間単価が据え置かれ、厳密に言いますと一九八三年は減額されました。こういうこともあって、今日、一九七〇年と比べるとせいぜい二倍程度にしかふやされていないんです。この間の物価上昇率がおよそ三倍ですから、いかに低い水準かがわかるんです。  この校費の現場における実態なんですけれども、産経新聞社会部編の「大学を問う」の中に東大理学部・物理学教室の九〇年度の例が出てきます。  物理学というのは基礎の中の基礎であると思うんですけれども、校費の中で研究室に回ってくる分は、大学本部、学部の事務局運営費、こういうものを除くとたったの二六%、百九十二万三千円。支出の方は、液体窒素・ヘリウム八十万四千円、投稿用論文印刷代十三万六千円などなど、二百三十九万四千円。四十七万一千円の赤字です。  東大は、大学重点化により校費が増額されてきていますが、院生の増加による経費増などに使われて光熱費など必要経費を除くと研究室分は相変わらずほとんど残らないと言います。天下の東大すらこういう状況です。頼みの綱の科研費も申請課題数の約三割しか採択されていないし、これは必ずしも自主的な基礎研究費とは言いがたいものです。  基礎研究充実のための校費の増額は、大学の使命を果たすためにどうしても必要ではないんでしょうか。国大協が倍増を要求して既に久しいのですが、これは大臣の決意を伺いたいと思います。
  79. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 今、東大の物理のお話を聞かせてもらいましたけれども、私はこの間ほかの要件で京都大学へ行きましたときにいろいろ聞きまして、これは医学部の方でございましたけれども先生のお話とは逆に非常に感謝されておる。一千十八億円の真水の研究費ですね、ことし初めて平成八年度一千億円になったわけですが、これ。それから、これは人件費、施設費を含めての話ですが、ことしは大体二兆六千億円ぐらいに、平成四年の場合が二兆一千億円が今日まで四年間に五千億円ぐらいふえておるんですね。こういう点においては非常に感謝されております。  ただしかし、日本が資源を持たない、「科学技術創造立国」を名実ともに歩み続けるためにはこれで決して十分というわけにはまいりませんから、さらに上積みを図っていかなければならぬと、私はそういうように理解をしております。
  80. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 学術振興会が主体となる事業の資金とかあるいは科研費とか、こういうものも大いに活用していただいていいと思うんですけれども、科研費については今述べたように申請の三割ですからね、採択率が刀ですから、まだまだ不十分だし、そういうふるいにかけられるという意味では本来的な基礎研究を担う財源であるとは言い切れないわけで、やはり校費の増額がどうしても必要だし、これは国大協の切実な要望でもあったと思います。ぜひ校費の増額に力を注いでいただきたいと思います。  時間が少しあるのであと一つ質問しますが、学術研究発展のためには研究者大学等の自主性が尊重されるというのが当然であり、これは科学技術基本法でも特に配慮をされています。  そこで伺いたいのですが、学術振興会が直接研究を行う場合も、あるいは研究を委託する場合も、学術振興会の意向は強く働くことになります。その際、研究者大学等の自主性の尊重につながる公平さ、これをどのようにして確保しようとしていくのか。特に研究テーマ研究プロジェクトを企画選定するという分野別専門委員会あるいは事業委員会のメンバーや研究テーマ研究プロジェクトの決め方、研究主体となる研究者やグループの決め方など、徹底して公表すべきだと思うんですけれども、どうでしょうか。
  81. 林田英樹

    政府委員林田英樹君) 御指摘のように、日本学術振興会が行います事業につきましてのできる限りの公平性、透明性を確保するような努力は大変重要なことだと私ども考えております。  具体的な方策につきましては、現在、日本学術振興会におきまして検討中ではございますけれども、例えば事業委員会委員名の公表でございますとか、選定された研究プロジェクト研究代表者研究テーマの公表、さらには研究プロジェクトなどが選定された後の段階におきます研究推進委員会の構成の公表、さらには研究成果の公表というようなものが考えられているところでございます。このようなことを配慮しながら、公平性の確保に努めてまいりたいと思っております。
  82. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 よろしくお願いいたします。  文部大臣は、今回提出されました法律案提案理由として、二十一世紀を目前に控えて、豊かな国民生活の実現、地球環境問題の解決などをもたらす創造性豊かな学術研究を積極的に推進することが重要であるというふうに先日お述べになりました。  先日来私はアマミノクロウサギについて御質問申し上げているのでございますが、これは非常に地球環境そのものでございます。普遍的・創造的な研究調査に基づいて国の特別天然記念物を保護する施策をぜひともとっていただきたい、かように考えております。  ところが、ゴルフ場の建設業者が行いました調査内容は国会にも鹿児島県民にも公開されておりません。  そこで、以下の点について伺いますので、文化庁はぜひ文書でもって県から後日答弁を出していただきたいというふうにお願いいたします。  まず第一に、ウサギの調査では大変ふんの調査が大事だそうです。今回ゴルフ場の計画地内をくまなく歩いて調査をしたのか。一般には調査の際にメッシュに分けて、そしてウサギの個体数を調査すると聞いておりますが、それを行ったかどうか。これが第一の質問でございます。  第二に、今回の調査でおよそ何羽のクロウサギの個体が推定できたでしょうか。それが二番目です。  三番目は、巣穴の調査は行われましたでしょうか。  四番目、巣は何個見つかっていますか。  五番目、子ウサギのふんは発見されたでしょうか。  六番目、クロウサギは子ウサギを穴に閉じ込めてふたをするそうです。お乳を上げるときだけ母親ウサギがその穴をあけて、そしてお乳を上げた後またふたをする習性があると聞いております。そうした繁殖の穴は確認されていますか。確認するためにどのような調査が行われましたか。  七番目です。巣穴あるいは繁殖の穴の破壊でウサギにどのような影響があるか、そのシミュレーションをしたでしょうか。したとしたら、そのシミュレーションを示していただきたい。  次に、クロウサギの調査は延べ日数どのぐらい行われましたか。季節ごとの調査日数をお知らせください。  クロウサギは夜行性の動物です。私も奄美へ行ったとき、夜中にクロウサギを見に行きましたが、夜出てくる動物ですが、どういう時間帯に調査をしていますか。夜の調査は何時間ぐらい行われましたか。それも御報告ください。  そして最後に、これらのクロウサギの調査の結果、影響が軽微であると判断した根拠はどういうことですか。  以上を文化庁は県から御確認いただいて文書でお答えいただきたいと存じます。  きょうは環境庁にもおいでいただきました。ありがとうございます。  ゴルフ場の計画地にはアマミヤマシギ、それからオーストンオオアカゲラ、それからアカヒゲ、ルリカケス、ベニアジサシ、コアジサシ、エリグロアジサシなどが発見されていると聞いています。これらの大変貴重種の鳥類が出ているので調査する必要があると思いますので、それを環境庁に要請いたします。  さらに、貴重種であるベニアジサシ、コアジサシ、エリグロアジサシがゴルフ場予定地に繁殖している可能性があると聞いております。これらの鳥は日本とオーストラリアあるいは日本と中国などの間で渡り鳥条約で保護することを約束しています。そのゴルフ場の中の予定地で調査を行い、保護策を具体的に立てていただきたいと思います。それを環境庁に要請させていただきます。  終わりに、大臣に申し上げたいのでございますけれども学術研究応用それから技術化が人類社会の基盤をつくると、これも先日趣旨説明のときにおっしゃいました。アマミノクロウサギは、まさに環境的視点それから自然科学の手法、そして人類の英知が試されているケースだと信じております。我が国の最高の手法で調査をし、結論を出すことが世界に対する我が国の責任だと思います。現在、文部大臣の職におられる大臣にそのことを訴えたいと思っております。  同時に、先ほど大臣は、環境関連の研究外国研究者と共同で行うことが大変重要だというふうに指摘されましたので、世界的な価値のあるアマミノクロウサギもぜひとも外国との共同研究を行ってはどうかと思いますが、この点について大臣の御決意と御感想をぜひとも伺いとうございます。大臣、どうぞよろしくお願いいたします。
  83. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 環境問題につきまして、私は、国内で研究することももちろん大事でありますけれども、国際共同研究が非常に大事だと思いましたのは、この五月の連休の後半、わずか二泊三日だけでありましたけれども中国の東北に私は行かせていただきました。  北京から晩遅く瀋陽に入って、翌日、瀋陽の遼寧大学、それから副学長なり遼寧省の省長さんといろいろ意見交換をしたんですが、鞍山の製鉄所などがございますから非常に空気が汚れたような、どろんとしたような感じでございました。私は、日本であれだけ四日市ぜんそく以来公害に取り組んで、特に空気をきれいにする、それの現在の日本の取り組んでいる状況をるる説明いたしましたけれども、向こうは、へえそんなことをやっているのという、そんな感じだったんですよね。ですから、空気には国境はありませんし、やっぱりもっともっと積極的にこちらから働きかけて共同研究が必要だなということをつぶさに感じたわけであります。  今、先生が御指摘のアマミノクロウサギにつきましては、もう釈迦に説法でありますけれども、天然記念物の現状変更をやりますときには文化庁長官の許可が必要だということになっておりますが、しかしその変更の与える影響が非常に少ないときにはその限りでないというような項目もございますようでありますから、これは向こうの自治体とそれから百七十ヘクタールを開発しようとする業者との間でのことであると思いますけれども、基本的には大きい小さいにかかわらず環境問題がこれから国境を越えて非常に大事になっているということについては私は先生と認識はそんなに大きな違いはないような気持ちを持っております。
  84. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ありがとうございました。
  85. 小野清子

    委員長小野清子君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 小野清子

    委員長小野清子君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  日本学術振興会法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  87. 小野清子

    委員長小野清子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 小野清子

    委員長小野清子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十九分散会      —————・—————