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1996-05-07 第136回国会 参議院 文教委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月七日(火曜日)    午後一時開会     —————————————    委員の異動  四月十一日     辞任         補欠選任      依田 智治君     世耕 政隆君      長谷川 清君     浜四津敏子君 四月十二日     辞任         補欠選任      岡  利定君     井上  裕君  四月十七日     辞任         補欠選任      石田 美栄君     今泉  昭君      上山 和人君     竹村 泰子君  四月十八日     辞任         補欠選任      今泉  昭君     石田 美栄君      竹村 泰子君     上山 和人君  四月二十六日     辞任         補欠選任      上山 和人君     菅野 久光君  四月三十日     辞任         補欠選任      菅野 久光君     村沢  牧君  五月一日     辞任         補欠選任      村沢  牧君     上山 和人君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         小野 清子君     理 事                 木宮 和彦君                 森山 眞弓君                 山下 栄一君                 三重野栄子君     委 員                 井上  裕君                 釜本 邦茂君                 世耕 政隆君                 田沢 智治君                 馳   浩君                 石田 美栄君                 菅川 健二君                 浜四津敏子君                 林  寛子君                 上山 和人君                 阿部 幸代君                 堂本 暁子君                 江本 孟紀君    国務大臣        文 部 大 臣  奥田 幹生君    政府委員        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文部大臣官房総        務審議官     辻村 哲夫君        文部省生涯学習        局長       草原 克豪君        文部省初等中等        教育局長     遠山 耕平君        文部省教育助成         局長       小林 敬治君        文部省高等教育        局長       雨宮  忠君        文部省学術国際        局長       林田 英樹君        文部省体育局長  佐々木正峰君        文化庁次長    小野 元之君    事務局側        常任委員会専門        員        青柳  徹君    説明員        環境庁自然保護        局野生生物課長  小林  光君        自治省財政局調        整室長      岡本  保君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○平成八年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付)、平成八年度特別会計予算内閣提出、衆  議院送付)、平成八年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)について  (文部省所管)     —————————————
  2. 小野清子

    委員長小野清子君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  去る五月一日、予算委員会から、五月七日午後の半日間、平成八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省所管について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  予算説明につきましては既に聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 馳浩

    馳浩君 自由民主党の馳浩と申します。よろしくお願いいたします。  まず最初に、予算案とは余り関係ないのですけれども、法制審議会の方から民法改正による選択制夫婦別姓報告案が出されておりまして、まだ政府には上程されていませんけれども、この中の重要なポイントであります選択制夫婦別姓について大臣の御見解を伺いたいと思いまして、質問申し上げます。  と申しますのは、私個人選択制にしなければ非常に不利益をこうむる家族があるのならばそれは認めてあげるべきではないかという意見でおるのですけれども、私の女房が強硬に反対するものですから、なかなか家の中もまとめられないで私も申しわけないんですけれども。  というのは、こういうふうに言うんですね。子供についての問題であります。もしこれが導入された場合には、子供が幼稚園、小学校中学校進学するにつれて、学校教育現場において、あるいは地域社会家庭観念性において、親と子供の姓が違うと、こういうことに関してもしかしたら子供たちが大変な不利益をこうむるような事態も出てくるのではないかと。  私は常に、いや、個別の家庭においての了解父親と母親の了解があっての事態が生じてくればそれは家庭内の問題として対処すればいいのではないかと言うのですけれども、いや、そうではない、家庭は常に地域社会の構成、一番小さな集団でありますから、そういう意味では家庭のきずな、家族一体感ということを考えたときに親と子の姓が違うということはどうも容認できないということで意見が対立しておるのでありますが、さきの中央教育審議会の第一小委員会報告案にもございましたけれども、これからはいじめ問題等々の対策に関しましても学校側家庭地域社会が連携をとりながら一体となってその教育力を高めていかなければいけないということでございました。  大臣のこれまでの人生経験を踏まえ、そして学校教育現場を預かる教育行政責任者である文部大臣として御見解をいただければ私もありがたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  4. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 確かに、戦後といいましょうか、とりわけ最近は女性の社会進出が非常に目覚ましいものがございます。それに従って、例えばかぎっ子対策でありますとかいろいろな問題が、そして新しい施策が必要となってきておることは事実であります。  したがって、今お話しのとおり、家庭学校社会、とりわけこれからの時代に向かってその三者の関係がどうあった方が望ましいかというような大事な問題につきましては中央教育審議会で御論議をいただいておるところでありますが、今具体的に先生お示しになりました夫婦別姓の問題につきましては、これは所管文部省でなくて法務省でございますから、ひとつ法務大臣にお聞きいただきますようにお願いいたします。
  5. 馳浩

    馳浩君 わかりました。私もできる限りその機会を持つように心がけて質問したいと思います。  では、質問を変えます。養護学校高等部障害児に対する訪問教育についてのことでございます。  私の同僚の阿部幸代議員も二月二十二日に文教委員会において質問されておられますが、それ以降の対応として私も質問させていただきます。阿部議員議事録を少々参考にさせていただきます。ここで、奥田文部大臣がこういうふうに述べておられます。  これまでのところは養護学校高等部整備をするのに重点を置いてきた。大体私が聞いておりますところでは、もうこれは八割方進んできたということですから、これの次には先生がおっしゃるようなことについて取り組んでいきたい。それには学習指導要領の中にもそういうのを記入して、そして取り組むという前向きの姿勢でやってまいりたいと思っております。 という御答弁でございました。大変重要なことだと思いますので、まあ再確認と申しますか、この御決意の変わりのないということを改めて御要望申し上げますが。
  6. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) お話しの前向きに取り組んでまいりたいというスタンス、これは変わりございません。  ただ、もう先生百も御承知かと思いますけれども、現在この学校数が七百九十ございます中で、御指摘高等部を設置しておりますのが五百四十九になっているわけです。七割に届いていないんですね。それから、養護学校中学部を卒業した生徒のうちでの進学状況でありますけれども、例えば平成七年、中学を卒業した六千六百四十七人のうち進学された生徒は五千四百九十六人というようなことで、これは八二%の進学率になっているわけです。  それで、文部省はとりあえずあと一割ぐらいはアップしたい、今お話しの御要請については確かに大事でありますけれども、一割程度をさらにアップした後で考えたいというのが文部省の考え方でございます。
  7. 馳浩

    馳浩君 わかりましたが、質問を続けます。  学習指導要領の中にもそういうのを記入してと、前向きの姿勢ということでございますから、いつを目標に記入しようと考えておられるのですか。あるいは次の全面改訂とあわせて実施をするというおつもりならば、大体の目安として平成十年ごろとなります。さらに施行はそれより数年後になるということになります。これではやはり、訪問教育高等部における実施を望んでいる子供たち、その親御さんたちにとっては一日も早くお願いしたいという気持ちは正直なところでございますから、遅過ぎるのではないかなという気もいたします。学習指導要領に別途これだけを記入することはできないのか、もちろん教育課程審議会審議を前提にしてということではございますけれども、そこら辺のタイムスケジュールと申し上げるとあれですけれども、文部省としての御意見をお伺いしたいと思います。
  8. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) お答え申し上げます。  現在の養護学校高等部指導要領でございますが、平成六年の四月から学年進行により実施されているところでございまして、この次の改訂をいつ行うかということについては現在のところまだ未定でございます。しかし、学習指導要領改訂は、その後の社会変化などに対応して教育課程審議会審議を踏まえて改訂されるのが通常でございます。  そこで、養護学校高等部でございますが、これはただいま大臣からお話がございましたが、現在までのところ八二・七%の中学の卒業生が高等部進学をしておるわけでございまして、あと一八%程度が残っている状況でございます。そのうち訪問教育対象者となる数は大体六%前後というぐあいに想定をされております。  したがいまして、まだ一〇%をちょっと超える程度養護学校高等部ができればそこに進学ができると、そういう生徒がいるわけでございまして、平成七年度で言うと大体七百八十人程度がそういう養護学校高等部ができれば進学できるということで待っている生徒ではないかというぐあいに考えておりますので、文部省としてはその養護学校拡充整備を推し進めることが最優先されるべきものと考えております。  また、お尋ねの直ちに学習指導要領に追加できないかという点につきましては、高等部訪問教育の授業時数なり、あるいは指導内容なり、履修方法について検討を行って、学習指導要領に明記する必要がございますし、それから教員配置等につきましても財政措置を講ずる必要がありますので、やはり若干の日時が必要なものと思っております。
  9. 馳浩

    馳浩君 そもそも高等部訪問教育というのは学習指導要領に記載がないと法的には実行できないのでしょうか。  学校教育法施行規則七十三条の十二に、  盲学校聾学校又は養護学校小学部中学部又は高等部において、当該学校に就学することとなった心身故障以外に他の心身故障を併せ有する児童若しくは生徒教育する場合又は教員を派遣して教育を行う場合において、特に必要があるときは、第七十三条の七から第七十三条の十までの規定にかかわらず、特別の教育課程によることができる。 というふうな高等部訪問教育に関する規定がされておりますので、各自治体判断において可能ならば、今確かに財政措置のこともおっしゃいましたけれども、厳しい折から大変だと思いますが、各自治体判断において可能な自治体があるのならば、そして親や子供さんの要請が強くぜひやりたい、そして各自治体教育委員会もじゃ進めようという場合には弾力的な文部省としての対応がなされてしかるべきだとは思いますが、いかがでしょうか。
  10. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) 教員を派遣して行ういわゆる訪問教育につきましては、学校教育法施行規則の七十三条の十二、先生の方で今言われたその規定により行うことが可能とされているものでございます。  その条項によりますれば、特に必要がある場合には学習指導要領に基づくことなしに特別の教育課程を編成実施することも許容されているということで解釈することが確かに可能でございます。しかし、特別の教育課程につきまして考えてみますと、子供の多様な実態に応じて編成するということになるわけでございますが、しかし、また一方、高等部教育を行うものであることも一方の事実でございますので、全く個々ばらばらに行われるということは適当ではないというぐあいに思います。  したがって、後期中等教育でございます高等部目標の実現を図る観点からも、その特例についてどのような指導内容あるいはどのような履修方法にしたらよいかということは当然検討しなければならない事柄であると考えております。その際、やはり全体として整合性のある内容とする必要があるということから、学習指導要領におきまして明確に位置づけて実施すべきものと考えております。
  11. 馳浩

    馳浩君 法的には問題はなく、特例的にも行えるということで、そういう御趣旨もあったと思いますが、今現在、広島県やその他の数カ所の各都道府県自治体においても実施されておるようでございます。少なくとも法的には問題がなく、自治体推進していくべきことを通知通達として文部省としては対応していくべきではないのかなという気はいたします。  朝日新聞のことしの二月十九日の新聞を拝見いたしましたら、広島県の事例に対して文部省が「好ましくはないが、やめろとは言えない」とおっしゃったという記述がありました。  あるいは、この四月二十六日に訪問教育高等部への延長を訴えるということで、「全国訪問教育親の会」代表音弘志さん、この方は実は金沢市在住の方でございまして、四男、息子さんを十四歳のときにお亡くしになったと。その経緯から、どうしても親の立場として、あるいは子供も確かに望んでおる立場として高等部への設置を非常に強く訴えておられまして、全国の署名十二万人分を文部省の方に提出されたと思います。  たまたまこの音弘志さんという方は、十三年前ですか、私が初めて教員になったときに、この方は生命保険外交員の方で、私が初めて社会人になって加入した生命保険の担当の方だったですが、非常に何かの縁があったのかなと思いまして、まあそれだけではないんですけれども私もその方々の御意見を伺って、弾力的に本当に対応できるものならば、これに対しては全国一律にというのではなくて、本当に子供たちや親が望んでいるということに対して文部省としても弾力的に対応していただきたいと。望むところは、文部大臣通知通達なりで対応できないものかなという私は意見を持っておりますが、いかがでございましょうか。
  12. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) 高等部訪問教育につきましては、現在、実施されているものについて法令違反というところまではいかないだろうとは思いますけれども、しかし、高等学校段階に相当する後期中等教育として実施されるものでございますので、やはり全国的にも一定整合性のとれた指導内容なりあるいは履修方法実施することが必要と考えております。各県ごとにあるいは各人ごとに全くばらばらの異なった内容方法実施することは適切ではないと考えております。したがって、高等部訪問教育実施するとした場合には、その指導内容履修方法等学習指導要領に明記した上で、また、その教員について国として財政措置を講じた上で実施するのが適当だと考えております。  それで、広島県の場合でございますが、これも実際に行われているのは訪問教育のような形態をとっておりますが、形の上では障害重複、重度であるということで重複学級に在籍をして高等部生徒になっております。そして、かなりの日数家庭訪問を行うというような形で実際実施されているというぐあいに聞いております。
  13. 馳浩

    馳浩君 これ以上だと何か押し問答のようになるんですけれども、子どもの権利条約にも明記されていたと思いますけれども、同年代の子供たちと同じような教育を受ける権利障害児皆さん方もお持ちだと思いますし、何よりも親御さんたちの望みだと思います。今、中学校から高校へ我々健常者の場合には大体九七%を超える子供たち進学しております。そういう観点から見ましても、障害児皆さん方高等部教育を受ける必要があり、また事情のある場合には訪問教育を受ける権利を有すると思いますので、今後の文部省としての対応を期待いたしまして、この質問を終わります。  続きまして、去る四月二十四日に生涯学習審議会が「地域における生涯学習機会充実方策について」の答申を出しました。この答申に基づきまして質問させていただきます。  この答申の概略に当たる「はじめに」のところで、本答申は、生涯学習の意義は国民理解されたが適切な学習機会の提供がもっと充実されるべきであると述べています。この点につきまして文部省としてはどのように現状理解しておられ、今後どのような施策をとっていこうとしておられますか。
  14. 草原克豪

    政府委員草原克豪君) 臨時教育審議会が生涯学習体系に移行という大きな方針を打ち出しましてから文部省においては生涯学習局が設置されまして、平成二年にはいわゆる生涯学習振興法も制定され、また生涯学習審議会も設置されたわけでございます。  その間、地方公共団体における取り組みも大変活発になってきております。各都道府県、市町村で生涯学習を担当する部局が設置されておりますし、また、各地の生涯学習センターや公民館などで地域住民のニーズに沿った多種多様な学級講座が開設されております。そういう意味で、国民学習意欲は高まってきておりますし、実際に学習者の数もふえているというのが現状かと思われます。  ただ、今、先生指摘のように課題幾つかございまして、まず学習機会の確保ということに関しましては、確かに相当充実してきていると思いますけれども、学習はしたいんだけれども身近なところに施設や場所がないという理由で学習活動をしていない人も少なくないわけでございます。したがって、身近なところでの学習機会拡充するということが大きな課題一つであろうかと思われます。そのためには、やはり地域社会のあらゆる施設を活用するという発想が必要だというふうに思っております。  また、学習内容につきましては、現状ではどちらかといいますと趣味や教養あるいは高齢者の健康問題などを扱った講座が多く見受けられます。それはそれで人生を豊かにするものでありまして大変重要なことでございますけれども、それにとどまらずに、科学技術高度化、あるいは情報化国際化といった社会変化対応して、継続的に新しい知識技術を身につけられるような学習機会充実を図るということも当面の重要な課題であるというふうに思っております。  こういった職業生活に結びつくような知識技術の習得というのは、これまで主として企業内教育において行われてきたわけでありますけれども、しかし、近年、我が国の産業構造雇用形態も変わってきておりますし、また雇用される側の個人の意識も変わってきておりますので、今後はこういった面で大学等における社会人対象としたリカレソト教育の果たす役割が大きくなるものと考えております。  また、学校五日制が実施されている中で、青少年の学校外活動をより積極的に推進していくということも重要な課題だと思っております。文部省では、これまでも社会教育、文化、スポーツにおける各種の事業を推進するとともに、学校施設の開放、大学における社会人特別選抜推進夜間大学院拡充大学における公開講座拡充などを進めてきたところでございまして、相当の成果を上げているとは思っておりますけれども、しかし、なお一層の努力が必要ではないかなと考えているところでございます。
  15. 馳浩

    馳浩君 この答申をわかりやすい言葉で言えば、いつでも、どこでも、だれでも自由に選択して学べるシステムを構築しなければいけないということだと思います。  そういう中で、この答申をちょっと具体的に精査というか見てみましたら、企業協力なしにはできない部分がたくさんあります。  幾つか紹介させていただきます。  例えば、大学生休学を利用したボランティア活動等の促進、これは、就職の際企業がこれを十分評価しなければ意味がない。二つ目として、大学等への社会人の受け入れも、企業による有給教育訓練休暇の創設、フレックス制実施等が重要である。三つ目として、企業の優秀な研究者等教員として受け入れるにも企業了解が要る。四つ目として、父親PTA活動を当然視する啓蒙活動の成否は企業がかぎを握っているということでございまして、結果的には、文部省としても企業皆さん方に、経営者皆さん方やもちろん労働組合皆さん方に対しても、できる限り地域社会における生涯学習への取り組みというものを推進するための働きかけが必要と存じます。これに関して、今後の具体策として文部省としてとっていく施策を、現段階でできる限りでよろしいですからお伝え願います。
  16. 草原克豪

    政府委員草原克豪君) 先生指摘になりましたように、答申の中には企業等協力あるいは理解がなければ実現できない事柄が数多く含まれております。中でも、社会人リカレソト教育推進であるとか、あるいはボランティア活動に対する理解、それから地域において社会人家庭人としてあるいは地域社会の一住民としていろいろな活動に参加できるような、そういうゆとりを持つこと、こういった点については特に企業における理解と支援が必要であるというふうに思っております。  このため、文部省といたしましては、主な経済団体との間で意見交換をする場を設けまして、これらのことについての企業側理解を求めたいと考えているところでございます。
  17. 馳浩

    馳浩君 もう一つは、大学生、これの「社会体験のための休学制度の活用」についてという部分なんですけれども、文部省といたしましても企業にも働きかけていきますということでございますが、大学側に対しても協力をお願いする点が多々あるのではないかと思います。例えば、大学生社会体験をする場合にその体験レポートを卒論の対象と認めるということであるとか、一定条件つき休学中を留年扱いにしないということであるとか、あるいは卒業単位として認めるなどの工夫をして、就職時のハンディとならないようにすべきであると思います。  実は、昨年の阪神大震災があった後、まだそのとき私は議員ではありませんで、あるラジオ局のパーソナリティーをしておりまして、私の番組を聞いておる学生さん方からこういう意見をたくさんいただきました。  ボランティア活動として震災の地へ行き、復興のために大変なボランティア活動をしに行ったんだけれども、ちょうど年度末の試験の期間ということもありましたから、二、三週間で戻ってこざるを得なかった。あるいは、戻らなくて現地にとどまった人間については、大学教授試験を受けなければ単位を認めないとか。もちろん、そのボランティア活動単位として積極的に認めようという教授もあったそうですけれども、なかなか教授皆さん方の御理解が得られなかったという報告を私はたくさん受けまして、社会的な取り組みとして、そういう社会活動ボランティア活動に対する認識というものを、ある部分文部省の側から大学に対して、これも弾力的に対応してあげるようにと求めていく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  18. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) ただいま先生指摘のように、生涯学習社会という中で、単に大学が提供する授業科目あるいは学習のみではなくて、学生が大学の外において社会体験等を広く経験するというような幅広い活動大学が評価するということは有意義なことであるというように考えておるわけでございまして、現実にも大学外の活動、体験実習等につきまして、授業の一環として位置づけて単位を認定している大学もあるところでございます。  また、今回、生涯学習審議会答申にありましたように、休学制度の活用ということが触れられておるわけでございます。  従来、伝統的に休学制度と申しますのは、学生が病気をしたりあるいは経済的に授業料を払えなくなったりというような、勉強したくてもできない、あるいは勉学を継続したくても継続できないような状況で、大学判断して、それならば大学の勉学からは一定の期間離れることを認めると、こういう仕掛けであるわけでございますが、今回の生涯学習審議会答申におきましては、必ずしもそういう消極的なものだけではなくて、学生が積極的に社会体験を深める、あるいはそれが大学における日常の学習に関連づけられるかどうかはともかくといたしまして、広く社会体験を深めるというようなことについても休学制度ということが活用されてもいいんじゃないかと、こういう趣旨であろうかと思うわけでございます。  具体的に先ほど先生指摘のように、例えば卒論の単位にしたらどうかというような御指摘でございますけれども、大学外の活動そのものがどうこうというのはともかくといたしまして、例えば大学におきます学習に加えてこれらの社会活動等の体験も踏まえた形での卒論があるというようなことを考えてみた場合に、それらについて卒業論文だということで大学が認めるということは、これはあり得ていいことだというように考えておるわけでございます。  ただ、休学という概念にかかわることでもございますが、休学期間中は一応フリーな立場になるわけでございまして、それについては、大学教育上その内容についてコントロールするとか、あるいは何らかの基準を設けて大学が云々するというようなものではないわけでございまして、その点先ほどちょっと触れました休学期間中のいろんな社会体験をそのままの形で、いわゆる一般の学生が大学に在学しているのと同じような扱いにすることができるかどうかというのは、これはちょっといろいろ検討すべき問題があろうかということでございまして、にわかにできるというようにはまいらないかと思うわけでございます。  ただし、趣旨としては生涯学習審の答申に基づきまして、大学側に対してもこういうような活用の仕方があるというようなことにつきましては指導してまいりたいというように考えておるところでございます。
  19. 馳浩

    馳浩君 今後の検討を一層よろしくお願いいたします。  それから、昭和六十三年から始まった特別非常勤講師制度についてなんですけれども、これは社会人学校教育への登用を可能とする制度でございます。この今回の答申におきまして小中学校において実績が多くはないとしています。なぜそうなったのでしょうか。  ちなみに、平成六年度からは国による助成措置も講じられていて、高校を中心に延べ二千三百二十八人が教壇に立っているということでございます。恐らく専門性ということを考えたら高等学校が中心になるのかもしれませんが、今後の展開として、一般社会人の皆さんも小中学校において積極的に登用されるべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  20. 小林敬治

    政府委員小林敬治君) お答えいたします。  この特別非常勤講師制度は、先生今おっしゃられましたように、すぐれた知識技術を有する社会人学校教育において活用いたしまして、学校教育の多様化、活性化を図ろうということから、昭和六十三年度の教職員免許法の改正によって設けられたものでございます。  その許可件数は制度の創設以来着実に増加をいたしておりまして、先生が今御指摘のように、高校中心ではございますけれども、全国で二千三百二十八件ございます。ただ、小学校中学校はその中で約一割程度を占めるにすぎないという現状があるのも確かでございます。  そこで、これは基本的には学校先生方にこの制度をよく理解していただくということが一番大事なことであろうかと思います。そのために、私どもとしてはこの特別非常勤講師の活用事例集というものを目下作成中でございまして、こうしたものを広く学校の方に配付して理解を得たいと考えておりますが、そのほかに、平成六年度から中学校に特別非常勤講師を配置して指導上の効果を研究する場合に国庫補助を行いましたところ、その年度から中学校においてその利用が急増したということもございます。  したがいまして、今後の課題としては、この国庫補助の充実というものが小中学校におきましてもこの制度を有効に活用するためには重要なことかなと思いますし、また生涯審の答申の中にもありますように、人材バンクのようなものを設けてこの制度の活用をしやすくするというふうなことも今後検討する必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
  21. 馳浩

    馳浩君 わかりました。  続きまして、我が国の平成八年度のスポーツ関係予算について質問申し上げます。  平成八年度の予算を七年度と比べましたら約十一億円マイナスということでございまして、詳しく見ていきましたら、学校体育施設予算がおよそ八億四千万円、社会体育指導者派遣事業の二億八千万円のマイナスということでございます。  そこで、この両者の減額の理由というのは何でしょうか。
  22. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 平成八年度予算におきましては、御指摘のとおり水泳プール、武道場等の学校体育諸施設整備費につきまして減額となってございますが、これは整備箇所数の減によるものでございまして、必要な箇所数の整備につきましては、これが十分整備できるよう、厳しい財政事情のもとではございましたけれども、所要額を計上したところでございます。  また、社会体育指導者派遣事業への交付金でございますが、この制度は、都道府県が市町村教育委員会の求めに応じて社会体育指導者を派遣する事業に対し国が経費の一部を補助するものでございます。この制度は、昭和五十年度に創設されてから既に二十年が経過をしておりまして、各都道府県において一つの事業として定着をしてきております。そんなわけで、今回、この派遣制度そのものは維持しつつ地方の実情に即した事業の充実を図る、そういう観点に立ちまして平成八年度から段階的に一般財源化をすることといたしたものでございます。  その間、交付金の減額相当分につきましては、地方財政当局と相談の上、地方交付税において所要の財源措置を講ずることといたしておりまして、各都道府県における事業実施に支障を来すことのないよう配慮したところでございます。
  23. 馳浩

    馳浩君 問題は、その後半の部分社会体育指導者派遣事業の減額だと思います。  先ほど生涯学習の振興のところでも申し上げましたけれども、地域に十分な指導者が備わっておって初めて子供たち、もちろん子供たちばかりではなく私たち大人も、これは社会体育あるいは生涯スポーツの振興という面においては必要な事業であると思います。  地方交付税でということでございますけれども、各自治体の財政事情の厳しい折からこの事業が弱体化するおそれもあるのではないかと私は懸念を持ちます。  そこで、自治省としてはこの事業に対してその重要性をどのように考えておられるか、質問申し上げます。
  24. 岡本保

    説明員(岡本保君) 社会体育指導者派遣事業につきましては、市町村におきます青少年あるいは社会人の生涯スポーツ社会の実現のために重要な事業であるというふうに認識をいたしております。したがいまして、先ほど文部省からもお答えございましたように、この事業が地方公共団体の事業として定着し展開されてきているということ等を踏まえまして、平成八年度から段階的に一般財源化したわけでございますが、この事業の重要性についての認識はいささかも変わっておりません。  したがいまして、これらの経費につきましては、地方財政計画に計上いたしまして地方交付税で所要の財源措置を講じておりますし、また、地方公共団体に対しましても、この一般財源化の趣旨に沿いまして適切な予算措置を講ずるよう、またその地域の実情に即して自主的な事業の実施に努めるよう指導をいたしているところでございます。  今後とも事業の重要性を十分認識いたしまして対処してまいりたいというふうに考えております。
  25. 馳浩

    馳浩君 という自治省のお答えですけれども、やはり最終的には各自治体判断が優先されるのではないかなという懸念を持ちます。  そこで、将来的に弱体化のおそれが十分にあるということを私は思いますので、スポーツ振興の責任者である文部省として、今後どのように取り組み、各教育委員会に助言をしていかれるか、質問申し上げます。
  26. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 基本的にやっぱりスポーツの盛んな学校あるいはスポーツの盛んな地域、こういうところは元気があるといいましょうか、活力があるといいましょうか、それでスポーツを文部省としても積極的に奨励してまいらなければならぬと思っております。  問題は、今お話しのとおり、それを人材の養成と施設の両面から力を入れていかなければならぬと。自治省との関係につきましては、十分これからさらに連絡を密にし、相談をして予算措置を講じてまいりたいと思います。施設、例えば屋内の体育館でございますとか、あるいは運動場でございますとか、こういうものにつきましても文部省としては大体三分の一のお手伝いをしてきておると思うんですけれども、地方から要請がありましたときには、確かに財政は厳しいですが、非常に大事な課題でございますから、積極的に取り組んでまいりたいと、このように思っております。
  27. 馳浩

    馳浩君 ちなみに、欧米のスポーツ振興予算現状ということで少し資料をいただきまして見ましたら、イタリア、ドイツ、フランスというのはスポーツ振興予算のほとんどを、まあこういう言葉は適切かどうかわかりませんが、サッカーくじであるとかトトカルチョの収入に頼っているというか、それが支えているという現状でございました。  この件に関しましては、文部省にどうこうというふうに私は申し上げる立場にはなくて、むしろ私たちの方が考えていかなければいけない問題としてサッカーくじ、今はスポーツ振興投票という形で報道等もされておりますけれども、私たちの生涯スポーツ、社会体育の振興ということに関してより一層の支援を国会としてもしていくべきではないかなと思います。  個人的な話になりますけれども、私も今からもう十二年前ですか、オリンピックに行きますときに、当時で百五、六十万円ぐらい借金をして行かざるを得なかった。あるいは地域社会の、私は教員をしておりましたので学園の理事長が余り私がオリンピックに行くことに対して協力的ではなかった、スポーツに対する理解が余り得られない。現状におきましても、社会人としてスポーツをしオリンピックを目指しておる選手たちは、必ずしも理解とか予算的な面でいい状況で日本代表として世界大会やオリンピックに出場しておるわけではございません。  そういう点も考えましたら、国民として運動をしておる者は勝手にしておればよいという態度ではなくて、それを報道等を通じて見る私たち一般の国民もある意味では活力を与えられる、そういう分野でありますから、国民全体として支援していく必要があるのではないかということを私はまず申し上げておきたいと思います。  次の質問に移ります。  昨年の十一月二十四日に総務庁から「芸術文化の振興に関する行政監察結果報告書」が出されております。あるいは昨年の十二月に文化庁が出されました「埋蔵文化財保護体制の整備充実について」、この資料をもとに質問させていただきます。  要は、埋蔵文化財の発掘調査に期間がかかり過ぎて、公共事業もそうですし、民間の事業もおくれて大変な損害も多く出ておるということで、埋蔵文化財の発掘調査の迅速化ということをできる限り行政としても支援していくべきではないかなということでございます。  まず最初に、その勧告をもとに質問させていただきます。文化庁としては、都道府県教育委員会と市町村の教育委員会の発掘調査の分担を必要に応じて見直すよう指導すべきではありませんか。この勧告に対してどのような回答というか対応をされますか。
  28. 小野元之

    政府委員小野元之君) 埋蔵文化財の発掘調査の迅速化でございますが、先生指摘ございましたように各方面からできるだけ早く調査を行ってほしいという要請がございます。一方で、埋蔵文化財は一度壊してしまいますと取り返しがつかないこともございまして、私どもといたしましてもその両方の要請を十分踏まえながら適切に対応していくということが基本的に大切だと思っておるわけでございます。  御質問ございました県と市町村の役割分担の問題、これは御指摘ございましたように勧告の中でも県とそれから市町村教委の役割分担を必要に応じて見直してはどうかということも指摘をなされております。これは一般的な傾向でございますけれども、多くの県におきましては公共事業あるいは国や都道府県、それから公社公団、こういったものが実施をいたします事業についての調査というものは都道府県が行うというのが一般の実例でございます。それから市町村独自の事業、それから民間の事業につきましては市町村が分担をしていくというのが一般的な事例であるわけでございます。  文化庁といたしましては、一般的にはそうでございますけれども、当該地域におきましてどちらが緊急に優先する必要があるのかといったようなこと等を勘案しながら、こういった役割分担を余り固定的に適用するというのではなくて、市町村が忙しいときには県が協力するといったようなことも踏まえて、そういったことも適宜柔軟に対応してほしいということで、私どもといたしましても、埋蔵文化財発掘の主管部課長会議等でもそのような指導を行っておるところでございまして、そういう趣旨は今後とも適切に指導してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  29. 馳浩

    馳浩君 時間が余りございませんので、あと一つだけ質問申し上げます。  民間事業者にとりまして、土木工事等の届け出から発掘調査完了までの標準処理期間の算定に関するマニュアルの作成をすべきではないかという論点が勧告されております心この点につきまして、文化庁としては発掘調査の着手から完了までの期間について平成八年度を目途に標準処理期間の算定に関する方針を作成することになっているとありますが、これに関してどうでしょうか。  もう一つですけれども、民間事業者にとりましては、着手から発掘調査の完了までではなくて、届け出をしてから発掘調査の完了までのこの期間が問題であると思います。その期間が長くなればなるほど金利の支払いとか事業のおくれ、ひいては事業の断念というところに追い込まれるのではないかと存じます。そういうことで、届け出をしてから調査完了までの標準処理期間の算定マニュアルが必要ではないかと思いますが、最後にこの質問をいたしたいと思います。
  30. 小野元之

    政府委員小野元之君) お話ございましたように、埋蔵文化財の発掘調査を迅速化しなければいけないということで、私どもといたしましては、この発掘調査の迅速化を図るために何が必要なのかということをいろいろ考えているわけでございます。  特に、迅速化を図るためには、第一点は埋蔵文化財の担当職員を増員するということで、県や市町村の発掘調査体制を充実するということが一番大事だというふうに思っているわけでございます。この点につきましては、私どもの方も各県や市にお願いしているところでございまして、平成元年度ではこういった専門職員が四千一名でございましたけれども、平成七年には五千六百九十二名ということで、各県や市町村でかなり御尽力をいただいておるところでございます。  そういった調査体制の充実とともに、先生指摘ございました開発事業者との調整あるいは標準的な発掘調査についてのマニュアルあるいは期間をある程度標準的なものを定めて、そして事業者の方もある程度それが想定できるようにするということも大切なことだと思うのでございます。  そういう観点から、私どもといたしましては、発掘調査についてマニュアルをつくるということもございますし、それから各ブロックごとに標準的な積算等を行いまして、標準的な発掘調査への期日といったようなものも算定をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、この点については平成八年度におきまして全国的に各ブロックごとにおきます標準的な積算の基準が作成されるように指導してまいりたいと思うわけでございます。  それから、単なる発掘だけではなくて最初の工事の届け出から最終的な調査までの算定のマニュアルが必要ではないかというお話でございますけれども、この点につきましてもそういったことを踏まえ、私どもといたしましては、事前に業者の方等とお話し合いをいたしまして、できるだけその調整も時間がかからないようにする努力をしていかなければいけないと思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、各方面から要請が強うございます発掘調査の迅速化については私どもとしてもできる限りの努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  31. 馳浩

    馳浩君 終わります。
  32. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 今、第十五期の中央教育審議会審議中であるということを聞いております。時々、関連の記事などが新聞に出ておりまして、私も断片的には承知しているつもりでございますが、教育の在り方というものを論じるこの中央教育審議会というのは非常に重要な役割を担っているものであると存じますので、この際、この第十五期の中央教育審議会審議の今日までの経過と現在の状況について御説明いただきたいと思います。
  33. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) お尋ねの十五期中央教育審議会審議状況でございますが、昨年の四月にスタートをいたしまして、六月ないし七月ごろを目途にしているわけでございますけれども、現在、第一次の答申に向けまして審議が続けられているというのが現状でございます。  中央教育審議会におきます検討事項でございますけれども、二つの視点から二十一世紀のこれからの教育をどう考えるかということについて御審議を煩わせているわけでございます。一つは、いわゆる国際化情報化、あるいは科学技術の進展等がよく例に挙げられるわけでございますけれども、そうした社会変化対応して我が国の教育はどうあるべきかという将来を展望した視点。それからもう一つは、現在、我が国の学校が抱えております受験競争の過熱の問題でありますとか、あるいはいじめや登校拒否の問題その他、現に我が国の学校教育が抱えておる問題に対してどうこれを克服していくか。この二つの視点から今後の教育はどうあるべきかを御検討いただいているわけでございます。  具体的な検討事項といたしましては、大きく教育の在り方、その際の学校家庭地域社会の役割と連携の在り方、これが一つでございます。それからもう一つは、よく画一的云々と言われるわけでございますけれども、我が国の教育においてもっと一人一人の能力・適性といったものを尊重した教育というものを進めていく、そのためにはどのような教育があるべきかというのが二つ目三つ目は、冒頭にも申し上げましたが、国際化情報化、あるいは科学技術の進展という社会変化対応する中で我が国の学校教育がどのような教育を施していくべきなのかという内容の点。この三つが大きな検討課題になっているわけでございます。  そして、今の現状でございますけれども、大きく初等中等教育につきましては、枠組みといたしましては、学校をもう少しスリムにするということで学校週五日制、今、月二回行われておりますけれども、それを完全学校週五日制にしていこうという大きな枠組みが第一点。それからもう一点、教育内容につきましては、学校で教えるべき内容というものを思い切ってスリム化して、教え込む教育から一人一人が学び、考える、そういった面の指導を充実するような学校教育にしていこう。主なポイントと申し上げますと、今のような方向で鋭意検討が進められているというのが現状でございます。
  34. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 今御説明のありましたいろいろな問題は、いずれもとても大事なことだと思います。それぞれ非常に難しいし、本当にここで本腰を入れて考えなければいけないという重大な問題であるということは私も全く異存はないのでございますけれども、私がちょうだいしたこの資料にも大書してありますが、第十五期中央教育審議会の諮問事項というのがあって、それに「二十一世紀を展望した我が国の教育の在り方」という非常に大きなテーマがまず掲げられているわけです。そういうことが前提だといたしますと、今説明なさいましたさまざまな問題は大事には違いありませんけれども、もっと根本的なことを考えなければいけないのではないだろうかという気がしてならないわけでございます。  明治の初めに今の教育制度ができて、そして義務教育の年限を少しずつ延ばしながら、また内容もいろいろ変化させながら複雑、やや高度にして、そして国民全体のレベルを上げるということに努力をしてきた。それはそれなりに成果があったと思うんですけれども、戦後、今の制度になってから五十年たっておりまして、その間の世の中の変化は非常に大きいですし、子供たち状況も大変変わっている。  そういうことを考えますと、そもそも現在の教育の制度の在り方が基本的に見直されるべきなのではないか、二十一世紀を迎えるに当たって今の制度でいいのかということこそ検討していただかなければならないのではないかと私は感じておりまして、そのようなことをとうとう中教審も取り上げてくださるのかと期待していたのでございますが、今のお話ですと、まあ枝葉末節とは申しませんが、やや具体的なことに偏り過ぎていて、基本はそのまま前提にしておられるという気がいたしまして、甚だ残念に思います。その辺はいかがでしょうか。
  35. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) お尋ねの学制改革の問題につきましては、さまざまなお立場からさまざまな御意見があることは十分承知しているわけでございます。それにメスを入れなければ基本的な解決にならないという御意見も確かに貴重な御意見だと思うわけでございますけれども、私ども学校制度を預かる立場からいたしますと、学校制度を変えるということにつきましては大方のコンセンサスがないといけないのではないかという認識に立っているわけでございます。  そういう視点に立ちますと、さまざまな御意見があるわけでございますけれども、制度には率直に申しましてメリットと同時にデメリットもあるということで、大方のコンセンサスということにはなお、まあちょっと失礼な言い方かもわかりませんけれども、至っていないのではないか。  しかし一方、その問題はその問題としながら、先ほど申しましたような社会変化への対応、あるいは現実に抱えているさまざまな教育上の問題、これについてはどうあるべきかを検討しなければならない。こういうことで、中央教育審議会といたしましては、現行の制度の枠組みを前提としながら、ぎりぎりこの枠組みの中で最大限どのような教育改革、教育改善を行っていくことができるのかと、こういう視点に立ちまして先ほど申し上げましたような検討課題で御審議を煩わせているというのが中央教育審議会の現在の姿勢でございます。
  36. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 おっしゃることはよくわかるのでございますけれども、教育がもう非常に限界に来ているといいますか、一つの壁にぶつかっているという認識は教育界の方ももちろん感じていらっしゃるでしょうけれども、それ以外の経済界でも、あるいはジャーナリストの皆さんでも、また政界の我々もそれなりにいろんな場で感じているところでございます。  そして、教育というのは、非常に行政をなさる側から見ると難しくつらいのは、国民がすべて非常に関心を持っていて、それぞれ何か言いたい、言おうと思えば言えるということですから、本当にその大方のコンセンサスを得られるまでと言っていたら大変だと思うんです。その中で努力していらっしゃるという御苦労はよくわかるんですけれども、もう少しおおらかな気持ちになることはできないものでしょうか。大臣、お一言ありましたら。
  37. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 今、横で総務審議官の答弁を聞いておりまして、これは前向きのスタンスなのか後ろ向きの答弁なのか、私自身もどっちともとれるような答弁でございましたが、実は私もそういうふうな答弁をせざるを得ないような、非常に御不満な点も今の制度が長く続いておりまして、それから一つは、例えば中高一貫というような御意見も一方では出ておりますし、あるいはもう少し引き上げたらどうかと。ただ、学制の改革問題は、これはやっぱりもっともっと国民世論が、こうしろよとかこうあってほしいというような御意見が、煮えたぎるような御意見が沸いてこないとなかなか文部省としては取っ組みにくい。私はこれは消費税の税率を選ぶよりもはるかに難しい問題だというように思っております。  しかし、時期が来れば文部省としては決して逃げるつもりはございません。先生方の立派な御意見も拝聴しながら真正面から取り組んでまいりたいということだけは申し上げさせていただきます。
  38. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 大臣御みずから非常にその心中を披歴していただきまして、ありがたく感謝いたしますけれども、私はなおもう少し何とかならないものかなという気持ちがぬぐい切れません。  国民の声いろいろある中で、それを取捨選択しながらということでしょうけれども、例えば私ども自民党の中にも二十一世紀教育ビジョン検討委員会というのを設けておりまして、木宮先生委員長で、私ども毎週一遍集まって一時間から二時間勉強し、いろんな方の御意見を聞き、自分たち意見も発表してやっているわけでございますが、その中では大変思い切った目の覚めるような意見も出てまいりまして、こういうことを聞いていただけないかなというふうにも思ったりしているわけなんです。  例えば、よく言われることは、現在の六三三四制というのがもう今限界に来ているんじゃないか。六三三四制というのが始まったときはまだ昭和二十年代の初めでございまして、日本の国は戦争が終わって、負けて、何にもなくなってしまった焼け野原であったわけですが、その中で今まで六年間だった義務教育あと三年ふやして九年にするということは大変な事業だったと思うんです。しかし、それを一生懸命歯を食いしばって頑張りましてやりまして、その結果、中学まではほとんどすべての子供が行くようになり、さらに、そのころまだ三〇%前後だった高校進学率もその後の経済成長その他のおかげでだんだん向上してきまして、今は九六、七%ですか、が進学しているという状況でございます。  そのころともかくすべての子供に三年プラスして九年の義務教育をしなければいけないということが最大の目標でつくられた六三三四制、それが今はその意味はほとんどなくなりまして、むしろその後の高校にほとんど全部が進学をし、いろいろな種類のいろいろな能力のいろんな特徴の子供が高校というところに上がってきて、それで高校の中においていろいろな問題が起こっている。続いて大学に関しても同様の問題が起こっているというのが現状でありますから、この六三三四制を前提とする今の学校の制度、教育の制度というものにメスを入れるということによって、現在、現象としてあらわれているさまざまな問題の解決の糸口になるんではないかと、そういうふうに私は思うんですが、そういう考え方はいかがでしょうか。
  39. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 学校制度をまず改正して、そのことによってさまざまな問題を解決していこうという、こういう御意見は大変貴重な意見だと考えます。  ただ、先ほど申しましたように、学制改革をするということになりますと、国民全体のコンセンサスの問題、あるいはそのことから生ずるメリットと同時にデメリットその他もろもろの検討をしなければならないということで、私どもといたしましては、現行制度の基本は基本としながら、しかしどこを改めていくことができるかと、こういうことで、中央教育審議会に今御審議を煩わしているわけでございます。  まず学制改正をして云々という、これはこれで一つの貴重な御意見であることは私どもも十分承知しているつもりでございます。
  40. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 文部省としてはそのように今のところおっしゃるほかないという立場はわかるんですけれども、自民党の検討委員会などでは非常に自由にそういうことも活発に議論をされております。  例えば就学年齢を下げるというのも一つ方法ではないか。外国には五歳から就学するという国もぼつぼつあるようでありますし、今幼稚園あるいは保育園等に行っている子供たちの割合も大分高くなってまいりまして、ほとんど七、八割ぐらいの子供たち学校に上がる前に何らかの幼児教育を受けているということを考えますと、また一般にマスコミ、テレビなどからの情報が早く入ってきますので、いろんなことを昔の子供に比べれば随分よく知っております。そんなことを考えると、五歳から就学させるというのも一法ではないかという話も大変盛んに出ております。  また、入学試験が過熱し過ぎているというようなことが問題でありまして、特にそれが中学から高校に進学するときに非常に大きなプレッシャーになるものですから、ちょうどいろんなことを覚えて、あるいは鍛えられて伸びていくという重要な年齢のときに、入学試験にだけ煩わされて、そのためにほかのことは何もできない。結果的に人生全体としては大きなマイナスになっているんではないかということから、中学の三年と高校の三年をもっとスムースにつなぐ、できれば中高一貫の制度にするということはできないだろうかと、そのようなこともいろんな事例を挙げて各議員の皆さんが活発な議論を展開しております。  五十年間たちますと、政治もそうですし経済のさまざまな制度もそうですが、制度疲労というのが生じてくるわけでございますので、そういうことを考えますと、制度を直すのには相当の覚悟が必要だということはわかりますけれども、まずこの制度に問題があるのだ、だからどうすればいいかというところから入るという方がむしろ早道なんではないかとさえ私は思うんですけれども、再度いかがでしょうか。
  41. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) たびたび同じような御答弁で大変恐縮なのでございますけれども、中教審といたしましては、学校制度の基本は基本として前提としながらどこまで改革をなし得るか、改革しなければいけないかというスタンスで検討を煩わしているわけでございます。  そこで、今具体的にお尋ねのございました例えば就学年齢の引き下げの問題、あるいは中高一貫の問題ということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、現在は現行の小・中・高等学校のいわゆる枠組みとしての学校五日制問題をどう方向づけるか、その場合にはスリムになった学校の中で一体どういうものを教え、どういうものをそこからのけていくかという教育内容の議論を鋭意しておるということを申し上げたわけでございますが、その方向づけが出ました後には、一人一人の能力・適性に応じた教育の在り方はいかにあるべきかという第二のテーマに移って中教審は審議をするということになっております。その際には、中高一貫の問題につきましては、現行の六、三、三、四を前提としながらも、中と高のつなぎの問題でございますから、それについては積極的な御議論をいただくということを期待申し上げているわけでございます。  ただ、就学年齢ということになりますと、どうしてもこれは現在六歳からという学校制度の学制の基本にかかわることでございますので、いろいろな御議論は出ようかと思いますけれども、中教審として特にこの点についての御審議はお願いをしていないというのが現状でございます。  いずれにしろ、現行制度そのままで、そしてほかのところを一切動かさないでということではございませんで、六、三、三、四という基本は基本としながらも、先ほど申しましたようなスタンスで中高一貫の問題等については鋭意検討していくということにいたしているわけでございます。
  42. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 中高一貫教育についてはかなり前向きに検討しようかというお気持ちがうかがえまして、私としてはちょっとうれしいんですけれども。  さっきも申し上げましたように、ちょうどその年齢というのは、勉強の面ではもちろんですが、スポーツだとか音楽だとかその他のいろんな趣味あるいは教養、自分の好きな技術、そのようなものを伸ばすのに非常に重要な年齢だと思うんですね。その年齢のちょうど真ん中で入学試験というのがあって、そしてもうスポーツもやめ、絵や音楽の勉強もストップということになりますと、本来ならばその持っている自分の一番いい特性を伸ばすことができたかもしれないすばらしい人がそこでとまってしまうということになるわけですから、それはその人にとって損失であるだけではなくて、社会全体にとって大きな損失だと思うんですよ。ですから、少なくとも中高一貫教育については相当具体的に検討して、さらに広く広めていただきたいと思うんですね。  公立ても県立の高校とくっつけて県立の中学校をつくって、そして同じ場所でずっと続けていけるように仕組んだ試みを宮崎県でやっていらっしゃるということを私は聞きまして、その資料も拝見いたしました。ですから、やればできるわけですね。私学はもちろん中学、高校を続けた学校がたくさんございまして、それ自身非常に高く評価されているわけです。国立てもやっているんでようか、そこは私も詳しく存じませんが、ともかく私学ではそのような仕組みが高く評価されていて、多くの親、子供たちがそこへ入りたいといってやっているわけですから、そのような仕組みを公立、県立、都立、そういうところでももう少し積極的に取り入れるべきだと思うんです。  宮崎県は恐らく文部省と相談されて、そういうやり方でまあ問題はないということで認められていらっしゃるのだと思いますけれども、文部省もその一つや二つの例を見て、そんなにやりたいならまあやってよかろうというようなやり方ではなくて、文部省、とてもお得意じゃないですか、各県にモデル校というのをつくって、そして少しやってみて、よければ伸ばしていくというやり方、何回もいろんなことでやっていらっしゃるでよう。そういうことをこの件についておやりになるというお考えはないでしょうか。
  43. 辻村哲夫

    政府委旦(辻村哲夫君) ただいま御指摘がありましたように、宮崎県におきまして県立の中学校、高等学校をつくっていわゆる中高一貫の教育を展開しているということは御案内のとおりでございます。平成六年度にできましたので、ことしが三年生に進学するということでまだ完成した状態にはなっておりませんが、私どもも大変関心を持ってこの学校の推移を見守っているところでございます。  今お尋ねの、一校ということではなくて、この際全県下にそのような仕組みを文部省がイニシアチブをとってというお尋ねでございますけれども、この中高一貫の問題につきましてもまたやはりメリット・デメリット、さまざまに言われているところでございます。したがいまして、それこそまさに中央教育審議会におきましてこの問題について真正面から御議論をいただきまして、その議論を踏まえて後どのようにこれに対応していくか、これについて我々として判断をさせていただきたい、こんなふうに考えております。
  44. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 今の中高一貫の問題でありますが、宮崎県の話が出ました。これはまだ始められたばかりで成果がはっきりしていないということでありますが、私の地元でも、蜷川さんが昔知事をやっておられましたときに、まだ全国の高校進学率が低い段階で、「十五の春は泣かせない」というキャッチフレーズで京都府立の高等学校をふやしまして、そして他府県に先駆けて進学率を九〇%に乗せたことがございます。  ところが、確かに十五の春は泣きませんでしたけれども、のんびりのんびりやってきましたので、十八の春にみんな泣いたんですよ。大学進学率が他府県の高等学校卒業者よりも京都が非常に低うございまして、これはどうしたことかということで、ようやく他府県並みに最近戻ったのかなと。一遍落ち込みますとなかなか回復することが難しい。  したがって、私は、こういう問題は一都道府県だけでやるんじゃなくて、やるとするならやっぱり全国的に一斉にやるべきじゃなかろうかと。確かにこれは大事な問題でございますから、ごく近い将来に中教審に具体的な項目をこのことについてお願いして御意見を賜りたいなという感じでございます。
  45. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 京都の場合は高校の数をたくさんになさったという形で解決されたわけですから、私の申し上げたいこととはちょっと違いますので、問題はちょっと違うと思うのでございますが、いずれにせよ私の申し上げたいことを御理解いただいたように思いますので、どうぞその線で積極的な審議を進めていただいて、できるだけ早くそのような措置を具体化していただきたいというふうに思います。  もう一つ私は申し上げたいんですけれども、何か中学あるいは小学校の改革について提言を申し上げようとしますと、いやこれは義務教育ですからという答えがあちこちから出てくるわけです。義務教育というのは、もちろん憲法の二十六条あるいは教育基本法その他に、子供たちに普通教育を九年間受けさせる義務があるということになっておりまして、第一義的には親の義務のようになっておりますから、それをとらえて義務教育という言葉がきっとできたんだと思います。  その義務教育という言葉が親の義務であるという第一義的な要素さえも今日はちょっと、昔親が貧しくて教育理解がなくて、義務だと言われないとなかなか学校子供たちをやらない親もいたという時代の言葉なのではないかというふうに思うわけでございまして、今日はそういう問題はほとんど解決されていると考えますので、その点さえも考え直す必要があるんじゃないかと思うのと、それから義務教育という義務という言葉に子供も縛られ、先生も縛られ、もちろん文部省も縛られている。そのために自由な意見や発想が出てきにくいということがあるんじゃないかなという気がいたします。  実は私、シンガポールを訪ねましたときに、向こうの政府の方に、シンガポールでは義務教育は何年間ですかと何げなくお聞きしたんです。そうしたら、我が国は義務教育というのはございませんというふうに答えられましく大変びっくりした記憶がございます。それで実態はどうかというと、一〇〇%の子供が全部就学しているということでございまして、その話を聞いて私は、義務教育という言葉についてもう一度考え直さなければいけないことなんだな、私自身も義務教育というのはもう当然なければならない制度なんだと思い込んでいましたけれども、考えようによってはそういうやり方もあるのかというふうに目を開かれたというような気持ちがいたしました。  もちろん、シンガポールと日本は全然国情が違いますから同じに論ずることはできませんけれども、そもそも義務教育とは何かということも中教審の課題なのではないかとさえ思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  46. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 義務教育につきまして、そもそもどういう意味を持っているかというお尋ねでございますけれども、中央教育審議会で今議論いたしておりますスタンスは、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、現行の学校制度を前提としてその中でということでございます。したがって、例えば義務教育という制度そもそもを外してしまうということ、そこまでの踏み込んだ検討はお願いをしていないわけでございます。  ただ、今御指摘にありましたように、その制度は制度としながらも、一人一人の子供たちの能力・適性というものを、今のままの仕組み、運用でいいのかどうかというところは中央教育審議会におきましても中心的な課題として大変議論されているところでございます。したがいまして、今の先生からのお尋ねにつきましては、制度そのものについて云々ということはともかくといたしまして、今の小学校中学校におきます教育につきまして、これを基本から洗っていかにあるべきかという議論をする、これは中央教育審議会でもそのような議論をしているところでございます。
  47. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 大臣はきっと御存じだと思いますけれども、文部大臣室の片隅に初代の文部大臣森有礼さんの書がかかっております。それは、明治十九年の一月に文部省という役所ができたとき、初代の大臣としての覚悟を書きとめられたものが表装されて掲げられているんですけれども、それには、文部省の人を教育するという仕事は、非常に重要な、ほかの役所の仕事とは質の違う大変大切なものであるから、一生懸命やらなければいけないと、平たく言えばそういうことが書いてありまして、最後のその結びが、「其職ニ死スルノ精神覚悟アルヲ要ス」という言葉で締められているわけです。  私もあそこにしばらくお世話になっておりまして、その言葉を毎日見ておりまして非常に心を引き締められたのでございますが、まさに今の制度を見直して新しい制度を二十一世紀のためにつくっていかなければいけないという重大なときに現文部大臣はいらっしゃるわけですので、どうぞこの初代大臣の言葉をもう一回よく見ていただいて、その精神を体して頑張っていただきたいと思います。  続いて、科学研究費、科研費のことについてちょっと御質問したいと思います。  科研費は皆さんの御努力で最近伸びが大変進んでまいりまして、一千億の大台に乗りまして、このことは多くの方から大変喜ばれております。しかし、額ももちろん問題ですけれども、その使い道、使われ方ということがもっと大事ではないか、実質的に有効に活用されて真に学術研究の発展に寄与するということが重要なんではないかと思いますが、採択される審査その他の状況について簡単に教えていただきたいと思います。
  48. 林田英樹

    政府委員(林田英樹君) 先生、今御指摘のございましたように、科学研究費につきましては近年相当思い切った増額をお願いしておりまして、平成八年度予算案におきましては大幅な拡充ということで初めて一千億を超え、総額一千十八億円、対前年度で申しますと九十四億円の増をお願いしておるところでございます。  御指摘のように、科学研究費補助金は大学などの研究者のすぐれた独創的・先駆的な学術研究を支援し、我が国の研究基盤を形成していくための基幹的な経費でございまして、大変重要な役割を担っておると思っております。この使途や配分等につきましてはいろんな御指摘もあるところでございますので、私どももいろんな改善方策を講じてきておるわけでございます。特に、この平成八年度分につきましては新たに出資金制度というようなものもいろんな形で出てくるというようなこともございまして、学術審議会におきまして、例えて申しますと研究種目を改める、さらにはいろんな審査方法についても改善を図るというようなことにつきまして方針をお出しいただきまして、それに従いまして改善を図ってきておるところでございます。  必要がございましたらまた後ほど御説明をさせていただきたいと思いますけれども、その審査につきましては特に厳正かつ公正な審査をお願いいたしておるわけでございます。特に、現在の主要な考え方で申しますと、研究目的が明確であるかどうか、研究の独創性、さらには当該学問分野への貢献度などを考慮いたしまして、厳正な審査を経て配分をしておるところでございます。  実際の審査におきましては、書面審査で選定をされたものにつきまして申請者からのヒアリングを行うとか、さらには多くの研究種目につきましては、一つの申請課題につきまして三ないし六名の審査員による書面審査を行った後、七名から二十二名の審査員による合議審査、これを第一段審査、第二段審査と申しておりますけれども、このような審査方法によりまして厳正な審査を行っておるという状況でございます。
  49. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 大変審査の方法も改善されて、明朗なものまた公正なものになってきつつあるということは私も評価したいと思いますが、どうしても審査されて採択されなかったという方ももちろんたくさんいらっしゃるわけであります。採択されなかった人に対してはどういう点がまずかったので不採択だった、あるいはそのほか必要な情報が提供されるんでしょうか。
  50. 林田英樹

    政府委員(林田英樹君) これにつきましては、実はこれまでは大変申請数も多いというようなこともございまして、事務的な限界ということを理由にいたしまして御指摘のような審査結果の理由の公表というようなことはできてきていなかったわけでございますけれども、先ほど申し上げました平成八年度からの改善ということで、さきの学術審議会の科学研究費分科会の報告をもとにいたしまして、平成八年度から改正をするというふうなことを考えておるわけでございます。特に、特別推進研究や重占領域研究のような多額の経費を配分いたします補助金につきましては、その不採択理由を簡便にではございますけれども開示するというふうなことを考えておるわけでございます。
  51. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 その方向でできるだけさらに一層明朗な公平なものにしていただきますように、そして若手の意欲的な研究者が一生懸命に努力をすればそのような恩典にもあずかることができるという状況ができますようにぜひ御努力を願いたいと存じます。  次に、私が毎度申し上げることでございますが、今回ももう一度確認をさせていただきたいと思うんですけれども、学術研究というものについて一番重要な三つの要素、それは、大学研究機関の施設整備とか、さらに今の予算の問題、もう一つは人的援助、人的補助というものが非常に欠くべからざる重要な問題だと思いますが、この三つ目の人的補助、研究補助者の問題について一番おくれているような気がいたします。  最近ティーチング・アシスタントとかリサーチ・アシスタントなどの制度を逐次整備していただいて、少しずつやっていただいていることは大変結構だと思いますが、まだまだその数も十分ではないというふうに思いますので、これの拡充の方針についてお聞きいたしたいことと、それから今申し上げたティーチング・アシスタント、リサーチ・アシスタントのような方々は研究者の内容的なお手伝いをなさるのには適当でございましょうけれども、研究というのは学問研究だけではなくてそれを取り巻くさまざまな条件を整備するということが必要であります。  例えば、私の出身地の宇都宮の宇都宮大学は農学部がもともと伝統ある学部なんですが、そこに演習林というのがございまして、その演習林なんかでお話を聞きますと、演習林の整備をするために道路の補修をするとか、その機械の刃を研ぐとか、そういうような仕事ももちろんだれかがやらなければいけないことでありまして、それは大学教授やあるいは大学院の学生や、学問的には大変立派な方々でしょうけれども、その方々にそういうことをやっていただくことはできないし、仮にできたとしてもそんなことをやらせるべきではないと思うんです。  そういうことのうまくて能率の上がる人がほかにいて、そして一緒になって研究の成果が上がるように努力するべきだと思うわけでございますが、その国立大学で言えば技官と言われる人たちの問題についてどのようにお考えでございましょうか、それらをお聞きしたいと思います。
  52. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) かねがね御心配をいただいておるところでございます。行政改革ということでなかなか定員の増員確保というのが難しい状況にあるわけでございますが、その情勢下の中でどうやって大学教育研究の高度化なりあるいは活性化なりを図っていくかというのは大変重要かつ難しい問題でもあるわけでございますが、私どもといたしまして、大きく分けまして二つの方向で努力させていただいているということでございます。  一つは、定員内の問題でございます。  これは、教育研究を直接担う教官も、それから先生が今御指摘の技官等、いわゆる研究補助者を含めての話でございますけれども、定員削減というのは免れがたいわけでございますので、それはそれといたしまして、しかし一方において学部・学科の新設等新たな研究施設等の増設等を通じまして教育研究体制自体の充実という手段を講じつつ、定員削減が一方にありながらも一方で増員を図っていくという、そういう要素を重要にいたしたいというのが一点でございます。  また、若干細かいことになるわけでございますけれども、定員内で処理すべき業務というものを合理化していくということでございます。これは事務の合理化もございますし、また外注になじむような業務につきましては外注する。先生、先ほど演習林のお話に触れられました。木を切る、それを引っ張ってきて適当な長さに切る、それをつかんで井げたに組むというような作業が例えば農学部の演習林の伐採授業には必ずあるわけでございますが、これらをすべて人を介してやるというのは大変でございますので、現実の問題といたしましては、それをそれらの機能を備えた機械を購入いたしましてやってもらうというのが現実に進められておるわけでございます。そういう機械化を通じまして、それまでかかっていた人手を少しでも減らすというような工夫も各大学等で行われているわけでございまして、そういう業務の合理化というのがあろうかと思うわけでございます。  それから大きな二番目の問題といたしまして、定員の中でいろいろ考えるということには少なくとも現在の情勢のもとではおのずと限度があるだろうということでもございますので、定員の外でいろんな雇用形態というものを考えていっていいのではないかということでございます。  これまた先生も今お触れになりましたけれども、ティーチング・アシスタント五千人余りの予算措置を講じておるわけでございますし、また平成八年度におきましては新たにリサーチ・アシスタントというような形で、これは公務員ではございませんが、大学院の学生でございますけれども、大学院学生の処遇という面もございますけれども、あわせまして大学院学生に研究の補助的なこともやってもらうというようなことを通じまして、大学全体の研究機能というものを人の面で補強すると、こういう側面も期待できるわけでございます。  そういう、必ずしも定員内だけにこだわらなくて、いろんな工夫を雇用形態の上で考えていく、それらの努力を今後とも積み重ねていくということが最も現実的な改善策ではなかろうかというように考えておるところでございます。
  53. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 一言だけ。  人材派遣業というのが最近非常に発達しておりまして、いろいろ労働省の方でもその内容の柔軟化ということを考えているようですので、そのような形態も頭の中にお入れいただいたらいかがでしょうかと思います。そういうことも含めて、一層努力してくださいますようによろしくお願いいたします。  終わります。
  54. 山下栄一

    ○山下栄一君 きょうは午後の冒頭から学校五日制をめぐる問題、中教審で今検討の大きな柱になっておるわけでございますけれども、その中で学校教育、特に学校のスリム化という話もございました。五日制が実施されるとともに地域家庭の役割が大変重要になってくるというお話があったわけでございますけれども、かといって学校教育の比重というのはおろそかにされてはならないというような観点から少し質問させていただきたいと思うわけでございます。  中教審の議論の中にも「開かれた学校」という言葉が出てくるわけでございます。この「開かれた学校」という言葉の意味でございますけれども、学校とそれから家庭地域と連携をしっかりやっていかなきゃならないというふうなお話もあるわけでございますが、ここで議論されております「開かれた学校」という言葉の、教育審議会の議論でも結構ですけれども、文部省のまずお考えを、開かれた学校という言葉のイメージですね、お聞きしたいと思います。
  55. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 中央教育審議会におきまして議論をされております「開かれた学校」ということでございますけれども、そこでの基本的な考え方は、学校子供たちを育てていく大変重要な機能を果たしているわけでございますけれども、やはり保護者を初めとする家庭地域の人たちと一緒になって子供たちを育てていくんだと、こういう視点を重視する必要がある。こういう観点に立ちまして、学校自身も率直に自分たちが何を考えているか、そしてどのような教育活動を展開しているかということについて家庭や保護者やあるいは地域社会に語る、同時に保護者や地域社会の人々からも率直な意見をいただき、それに耳を傾ける、こういった面をもっと促していく必要があるんではないか、そういう意味でこの「開かれた学校」という議論がなされているということでございます。
  56. 山下栄一

    ○山下栄一君 ということは、まず学校家庭ということでございますけれども、審議官のお話では、子供教育について学校がきちっと保護者に説明するということ、それから地域にも学校現場の状況説明すると、こういうことが「開かれた学校」の中の柱であるというお話だったと思うんです。  まず、学校家庭でございますけれども、家庭ということは子供の保護者、学校の運営に携わる校長先生また学校先生教員と保護者がツーウエーで語り合うことが非常に少ない。もっと言えば学校で行われていることが余り情報公開されてない。それがさまざまな不登校とかまたいじめの問題の大きな原因にもなっておるというふうに考えるわけですけれども、じゃ、学校側と保護者が対等に語り合う場というのは一体どこにあるんだと考えるときに、それはどのような御返事になるんでしょうか。
  57. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 中教審で議論しておりますのは、そういった学校の在り方、学校家庭地域社会の役割・連携の在り方についての基本的な考え方と申しましょうか、視点と申しましょうか、そういったレベルでの議論をいたしておりまして、先生から今お尋ねになりましたように、じゃ具体的に学校が自分たちの考えや教育現状を語るとしてどのような場で語るのか、あるいは家庭地域社会意見に十分耳を傾けることとして、じゃ具体的にどのような形で耳を傾けるのかという具体的な方途につきましてはなお踏み込んだ議論には至っておりません。  学校家庭地域社会の役割・連携の在り方という基本的な在り方の問題として今のような議論がなされているというのが現在の審議状況でございます。
  58. 山下栄一

    ○山下栄一君 中教審の審議も結構ですけれども、文部省として、学校とお父さんお母さんとの意見交換といいますか、生徒指導、校則その他学校現場における状況は今こういう方針のもとにこういう現状であります、こういう問題もございますというようなことを僕はやっていくべきだと思いますし、これが教育の民主化であると思います。お医者さんが患者さんにちゃんと説明するというインフォームド・コンセントも今よく言われておりますけれども、日本の学校の場合はこういう場が非常に少なかったというふうに思うんですよね。  そういう意味で「開かれた学校」というのをまず地域に開く前にまずお父さんお母さんに開かなきゃならない。そういう場は一体どこにあるんだということは、現状でもなかったらいかぬと思うんですよね。日本は民主国家であるし民主教育が行われているというはずでございますから、それは具体的にはどういう場があるのかというふうに文部省はお考えなんでしょうか。
  59. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) お答え申し上げます。  学校家庭との連携の具体的な例でございますが、一番身近なものとしましては、授業参観あるいはその後の保護者懇談会、こういうものを通じまして、子供たち学校での学習あるいは生活の様子につきまして学校と保護者との連携と申しますか、お互いに情報交換をし合うという場があると思います。  また、個々の子供についてではなくて、一般的な学校の運営なりあるいは授業に対する要望とか期待等につきましては、学校の方でPTA活動に積極的に参加をしまして、教職員が直接PTAから学校への期待あるいは要望を聞くということが期待をされているわけでございます。  またさらに、学校として特に必要がある場合には、地域懇談会等、まあ町内会等に類するものでございますが、そういう場に学校の方で出かけていって学校状況説明したり、あるいは学校の運営について説明をして、さらに意見を聞いたりするという場があろうかと思いまして、文部省としてはそのような場を積極的に設けるよう指導しているところでございます。
  60. 山下栄一

    ○山下栄一君 保護者個人が自分の子供についていろいろ、まあ注文までいかないと思うんですけれども、教員の方から意見を聞く機会はないことはないと思うんですが、対等じゃない。まして、学校全体の校則とか学校運営にかかわることについて、一方的にお伺いするのではなくて対等に意見交換する、そういうことが大変必要になってくるのではないか。考えれば、そういうチャンスもそういう組織もないのではないかと、こういうふうに考えております。  今、PTAというお話がございましたけれども、PTAというのは一体何かなというふうに最近疑問に思っております。先ほども五十年たって制度疲労というお話がございましたけれども、PTAというのは何か保護者の代表組織みたいなとらえ方がありまして、PTAの代表が地域の話し合いの場にも参加するとかいう話があるわけですけれども、PTAの法的位置づけ、これはどうなっているんでしょうか。
  61. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) PTA、実態は先生がおっしゃるように学校の後援会的な役割を果たしているところが多いわけでございますが、学校としましては、そういう後援会的な役割だけではなくて、学校とPTAとが一体となって学校運営をどうしていくかということを、学校の側から相談する場というようなことに積極的に位置づけて運営をしていっていただきたいと思っております。
  62. 山下栄一

    ○山下栄一君 学校教育の中でお父さんお母さんの影が非常に薄いといいますか、そういう印象を強く持っておりまして、「開かれた学校」のためにはお父さんお母さんをもうちょっと浮かび上がらせなければいかぬという、これは義務教育の根底にもかかわることになっていくんですけれども、ちょっと後から触れますけれども、今私が質問しましたのは、PTAという組織の法的位置づけなんですけれども、法的根拠というか、これは何でしょうか。
  63. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) PTAにつきましては、法律上根拠がある組織ではなくて、社会教育関係団体の一つであるというぐあいに認識をしております。
  64. 山下栄一

    ○山下栄一君 PTAの規約とかがあると思うんです。その規約は勝手に学校ごとに決められるんですか、そうなっているんですか。
  65. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) 任意団体でございますので、そのPTAの構成員で規約を決め、団体を運営しているものと思います。
  66. 山下栄一

    ○山下栄一君 もともとこれは昭和二十年代ですか、占領行政のときにできたものだと思うんですよね。それで、今の規約の話ですけれども、規約につきましても、文部省はひな形を全国都道府県教育委員会通達で出していると思うんですよ。行政指導による組織じゃないかなと、こういうふうに私は考えるんですけれども、いかがですか。
  67. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) PTAは生涯学習局所管でございまして、ちょっと私はPTAの経緯等については詳しく存じておりませんので、責任ある答弁をできませんで申しわけございません。
  68. 山下栄一

    ○山下栄一君 どなたか答えていただける方はいらっしゃいませんか。——じゃ、責任ある答弁される方が時間内に来ていただけるんでしたら。急な話で申しわけありません。「開かれた学校」という観点からちょっと質問させていただいているんですけれども。  ただ、先ほど申しましたように、お父さんお母さんの位置づけが非常に学校教育の中で弱いままに「開かれた学校」と言われ、学校でどんなことが行われているかということは保護者に説明する責任が学校としてはあると思うんですけれども、案外そういう場がないと思うんですよね。PTAとよく言われるんですけれども、今も局長の御答弁ございましたように、PTAも余りはっきりしていないというふうな位置づけでございまして、何かPTAというとTが抜けているというか、本来保護者全員が何となく会員になり、それから校長先生以下教員も全部会員になるといったような、形としてはそうなんだけれども、現実は何か保護者の代表みたいな、PTAのTがないというか、そんな感じでよくとらえられるわけです。せいぜい管理職の校長先生と保護者の代表との打ち合わせといいますか、そういう形にはなっている。  現実は、先ほど申しました実質的な意味学校運営にかかわるようなそんな意見交換の場じゃない。そういう権限も与えられておるのかないのか、それもはっきりしていない。お父さんお母さんもそんなこと言っていいのかなというふうな、割り当てられたPTAの代表として学校に存在するだけで、本来保護者全員参加の組織であるはずにもかかわらず、だれが代表で、どんなことをする権限があってというようなことすらはっきりしていないというふうなことが非常にあると思います。  そういう意味で、いろんな機会に、学校家庭地域との連携ということの中にもPTAの活性化とかいうようなことも出てくるんですけれども、肝心のPTAそのものが非常に存在が不明確であると、このように思います。そういう意味で、PTAの見直しをしてもらいたいと思います。  私は、これは文部省通達でできたものじゃないかなと思っているんですけれども、法的根拠がないと。と同時に、お父さんお母さんが学校に対して従属じゃなくて対等に意見を言う、そういう場がなければならないし、お父さんお母さんの組織化をする必要があるのじゃないか。PTAじゃなくて父母会議みたいなものですね、そういうことがないと、校則とか、また学校現場におけるさまざまな意見交換もできないのではないかと、このように考えております。  だから、学校の方針を一方的に聞くのではなくて、さまざまな意見交換をする場が「開かれた学校」、また学校家庭地域との連携というのであるならば、そういう保護者の実質的な代表といいますか、そういう組織が必要であるし、対等に意見交換をするようなそんな保障もする必要があるのではないかと、このように考えるんですけれども、大臣いかがですか。
  69. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) やっぱり、学校家庭をつなぎます唯一の組織は私はPTAだと思います。それ以外に適当な、ほかに少年補導委員会とかございますが、これは別の組織でございますからね。  しかし、ずっとここ二、三十年来のPTAの移り変わりを振り返ってみますると、やはり女性の、お母さん方の社会進出が顕著になってきましたのと並行しまして、PTAの例えば総会でありますとかあるいは授業参観でありますとか、こういう機会に、せっかくの機会でありますけれども、出席されている保護者の数というのは残念ながらふえていってはいないんじゃなかろうかなという感じがします。これは統計をとったわけじゃございませんから断定はできませんし、また地域によってもいろいろむらがあると思いますから一律には決して言うことができないわけでありますけれども、私はかつて二十年ほど前にPTAの会長をわずかだけしかやっておりませんけれども、そういう経験から照らしましても、あの当時よりもこのごろの授業参観とかPTAの総会への御出席、数は減っているのじゃないのかなという感じがするわけであります。  しかし、事教育、とりわけいじめに代表されますような、とにかく学校家庭との連携、それから地域社会も含めての連携と情報交換がますます大事になってまいっておりますので、そういうことについての強化も協力要請してまいる必要があると思います。
  70. 山下栄一

    ○山下栄一君 PTAしかないというふうな大臣のお話でございますけれども、そのしかないPTAが何かはっきりしない。どういう根拠に基づいてこれがつくられ、またそのメンバーはどういう権限があるのかとか、そういう目的、権限、役員の選出その他につきましても、まあ規約に基づいてやっておられるんでしょうけれども、規約そのものも文部省が昭和二十年代に示したものを参考にして、といってもほとんど同じ文章で、各都道府県がそれをつくりなさいと上から与えられてつくられたものであるだけに、肝心の会員の主要メンバーである保護者、お父さんお母さん、非常に意識が低いといいますか、そんな状況の中で「開かれた学校」、また家庭協力も必要である、五日制とともにと言ったところで、私は全然空虚になっていくのではないかというふうに思うんです。  ずっとその淵源をたどっていくと、私は学校教育におけるお父さんお母さんの位置づけといいますか、これが非常にはっきりしないからではないかなと。学校地域家庭と言いながら、またその子供自身は、先ほどの森山先生の話によりますと、一義的に子供教育はお父さんお母さんに責任があるのであるというようになっているけれども、学校教育の中で実際そうなっているのか。学校教育において子供に対して一番権限を持っているのは教師であってお父さんお母さんじゃないと、そういうふうになっているのではないかと思うわけです。  本来、義務教育というのは、子供教育を受ける権利を保障するために、親が学校に信託といいますか任せて、親の信託に基づいて学校教員の役割があると、このように思うんですけれども、現場では学校先生の従属的な地位にお父さんお母さんがあるというふうになってしまっていると、このように思うわけです。  憲法の立場子供教育を受ける権利があるんだという、その教育を受ける権利を保障する中で、親の立場というのはどういうふうな位置になるのかなというふうに思うんですけれども、親の教育権がまずあって、そして学校がある。それはだから、学校に任せるかどうかは親の責任で、国が無理やり学校に行かせなさいというものじゃないのじゃないかと、こういうように思っているわけです。  だから、先ほどももともとの義務教育の根源は一体何なんだという、国が、また学校が、お父さんお母さんに対して子供学校に行かせなさいというふうなものじゃないと私は思っているわけです。子供教育学校に任せるか。保護者が私がやるんだと、そういう私教育の自由といいますか、そういうふうなことがお父さんお母さんに本来認められるべきではないか、その上で義務教育があるのである、これがもう本来のもともとの人権の淵源になっていくのではないかなと、このように考えるんですけれども、親の私教育の自由、これは憲法的にあるかないかについてはどのように大臣お考えですか。
  71. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) 先生がおっしゃるように、自然法的には親には教育権があると思います。しかし、憲法、教育基本法あるいは学校教育法という実定法におきましては学校にも教育権があるわけでございまして、義務教育の年齢の子供には親が義務教育に就学さぜる義務を負っているわけでございまして、親に教育権があるといって現在の法体制のもとでは義務教育該当の児童生徒について学校に通わせない自由はないわけでございます。
  72. 山下栄一

    ○山下栄一君 学校教育権はあると。  父母の教育権についてはどうでしょうか。
  73. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) 義務教育年齢の該当児童生徒については、学校に就学させる義務があるとともに、学校以外の場所においては親が子供教育する権利と義務はあると思っております。
  74. 山下栄一

    ○山下栄一君 ちょっとはっきりしませんけれども、私は、先ほど申しましたように、お父さんお母さんの信託を受けて学校ができて、そして教師がその信託に基づいて子供教育する責任があると、こういうように考えるんですけれども、この考え方は間違っておりますか。
  75. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) 先生がおっしゃったのは、法理論の裏にある、そういう基本的な自然法的な考え方があるのかもしれませんけれども、現在の実定法では、親の信託を受けて学校教育を行うんだということは、学校教育法上あるいは教育基本法上は書いてないわけでございます。
  76. 山下栄一

    ○山下栄一君 先ほどから何度も申し上げておりますように、学校教育においてお父さんお母さんの影が薄過ぎると私は思っていまして、そういう観点からなぜそうなっているのかなと。PTAとか何か言われているけれども、PTAというのはPとTが組織して協議する場であるのかなと思いますけれども、現実はそうなっていない。学校に従属した形でお父さんお母さんがあるというふうな実態になっておるので、余り校則その他の問題について、教育内容についてもいろいろ対等に意見を交換するというふうな、個人懇談というのはあるにしても、そういう学校全体運営の「開かれた学校」という観点から考えるときに、PTAはそのようになっておらないように思っております。  そういう意味で、もともと、五十年たって義務教育の在り方、また学校教育の使命という観点からも、もう一度子供に対して第一義的な責任を持つ親の立場といいますか、これを明確にする必要があるのではないかなというふうに思っているわけです。  生涯学習局長、来られましたので、このPTAの法的根拠、これを確認させていただきたいと思います。
  77. 草原克豪

    政府委員草原克豪君) PTAは、それぞれの学校を中心にいたしまして、学校に在籍する児童生徒の親及び教師によって学校ごとに組織されるものでございます。そういう意味では任意の団体でございます。  このPTAは、戦後、昭和二十二年から二十五年ころにかけまして全国のほとんどの小・中・高等学校において結成されまして、いろんな活動を進めているわけでありますけれども、それに対して文部省としてどういうかかわりをしてきたかということについて申し上げますと、昭和二十九年に社会教育審議会の父母と先生の会分科審議会というのがございまして、そこで小学校父母と先生の会、つまりPTAですが、の参考規約というものが示されました。これが当時におけるPTAの規約の参考としてその役割を果たしてきたわけでございます。  その後、昭和四十二年になりまして、社会教育審議会において、改めて「父母と先生の会のあり方について」という報告を取りまとめております。これはPTAの活動について、なおそのあり方あるいは特に基本的な問題である目的とか性格を明らかにする必要があるというふうに考えましたので、この目的、性格、それからPTAの構成、PTAの運営、PTAの相互の連携についてと、こういう項目に沿って参考となるものを取りまとめたものでございます。  したがって、文部省は、この社会教育審議会の報告を受けまして、これを参考として関係方面に通知を申し上げたと、こういうことでございます。
  78. 山下栄一

    ○山下栄一君 昭和二十九年、一九五四年の参考規約でございますけれども、その参考規約がやはり全国教育委員会通達でおろされて、その規約に基づいて今役員を選んだりPTAの目的とかいうようなことが行われていると思うんですよ。非常に拘束力のあるものだと思うんです、参考規約と言いながらね。実質、都道府県教育委員会がつくっているというよりも、それぞれの学校規定されている規約というのはまさにその参考規約とほとんど文章は一緒ですからね。  そうすると、その昭和二十九年のもう一つ前は昭和二十三年の参考規約、占領下におけるアメリカの指導に基づいてできたものであると。もうちょっと民主的だったと私は思いますけれども、だんだんだんだんちょっと形が変わってきているというふうに思うんです。  だから、先ほども、戦後五十年たって義務教育とは一体何なんだ、それから学校制度ももう一度原点に立ち返って見直しする必要がある、制度疲労を起こしているというお話がございましたけれども、私はその一番のポイントというのは、お父さんお母さんが責任を持って子供を育てるという観点の中で、学校教育は親の責任のもとに自分の子供学校に任せている、その信託に基づいて教師が責任を持って教育しているというふうな考え方が正しいのではないかと思うんです。  ただ、学校教育においては、お父さんお母さんの影が余りにも薄過ぎると。その大きな原因の一つに、PTAというのが何となくあるけれども、何だこれはとはっきりしないままに全員会員で、全員会員のままに、メンバーに入っているか入っていないか、そんな自覚もないままにお父さんお母さんは自分の子供を送っている、実質は校長先生の下請機関みたいになっているというふうな実態じゃないかなというふうに思うわけです。  「開かれた学校」、また学校完全五日制に向けて、地域も大事なんですけれども、まずその根本の家庭学校とか役割とか言いますけれども、お父さんお母さんの学校教育における権限、権利、自分の子供に対する位置づけが余りにもはっきりしていない、弱過ぎるというふうなことが問われなきゃならないというふうに思っておりまして、PTAももう一回見直しする必要があるんじゃないか。  保護者会みたいなイメージがあるけれども、Tが入って先生方も入って、教員も校長以下全員参加のはずであるけれども、そんな意識が教員にない。教職員組合はあってもPTAが、先生方も全員参加で対等にお父さんお母さん方と話し合うというふうな、そんな意識はもう形骸化してしまっているというふうに思うんですね。  そういう意味で、学校教育における父母の位置づけ、これをもう一度見直しする必要があると、このように思って問題提起とさせていただきたいというふうに思います。  結論から言うと、生涯学習局長、PTAは文部省通達に基づいて設置されたというふうに考えたら間違いでしょうか。
  79. 草原克豪

    政府委員草原克豪君) 文部省が示しました参考規約に基づいて任意に設置されているものというふうに考えております。  また、今、先生指摘ございましたように、設置されてからまさに五十年ほどたっているわけでございまして、最近いただきました生涯学習審議会答申の中でも、PTA活動の活性化を図ることが極めて重要であるということが指摘されております。そのためには、PTAの組織としての活動を行っていくだけではなくて、個々の会員がそれぞれの都合に合わせてPTAのいろんな活動に参加できるような活動形態を工夫する必要がある、また職業を持っている人たちがこういうPTA活動にも参加できるような条件づくりが必要であるといったことなどが指摘されております。  私どもとしましては、PTA活動の一層の活性化を図るために、この答申に沿った施策を進めたいと思っておりますし、またこの答申については、PTAの団体に報告をいたしまして、そして理解を求め、また必要な支援を行っていきたいと考えております。
  80. 山下栄一

    ○山下栄一君 任意団体だということは主体的にお父さんお母さんがっくるということであるんじゃないかと思うんですけれども、受けとめ方はそうじゃなくて、何か上から与えられて、お父さんお母さんも全員会員で、知らぬ間に何か会員になっているというふうになっていると思うんですよ。任意団体というのであるならば、つくるかつくらないかを参加メンバーが決めたらいいと思うんですけれども、そうなっていないというのが実質じゃないかなというふうに思うんです。  だから、PTAが何かはっきりしない。だけれども、参考規約というのは文部省通達によって全国に徹底されているというふうな形になってしまっている。何か変則的で大変不自然な位置づけになっているのではないかなというふうに思いまして、この中教審の中間報告でもPTAの活性化ということを言われ、そして家庭の役割というのがますます重要になってくると言われながら、学校教育における保護者の位置づけが余りにも弱過ぎる、PTAの位置づけもはっきりしないという現状があるというふうに思いますので、最後に大臣の御答弁をお願いして、終わりたいと思います。
  81. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) とにかく、初中局長が御答弁申し上げましたように、法的には義務教育学校が主体的といいましょうか主導して教育を行うと。  ただ、先生も御心配いただいておるように、保護者の方の子供教育学校教育に対しての関心がこのごろあるのかないのか薄いのか、心配されることが非常に多いわけですね。でございますから、私ども関西ではPTAと言ったり育友会と言ったり使い分け、別に二色で言っておりますけれども、とにかくPTAの会員の皆さん方がもっと子供教育に対して関心を持ってもらうような、そういうことを教育委員会を通じて文部省要請してまいりたいと思っております。
  82. 菅川健二

    ○菅川健二君 平成会の菅川健二でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  私は、今日の教育の最大の課題一つでございますいじめ問題と、これらに関連いたしまして今後の教育制度の改革の方向につきまして質疑をいたしたいと思います。  いじめ問題につきましては、一昨年の愛知県の大河内清輝君の痛ましい自殺事件がありまして以来、改めて教育界挙げての取り組みがされておるわけでございますが、残念ながらなお後を絶たない状況にあるわけでございます。この間、文部省におかれましても、各種の通達、緊急アピール、対策本部の設置、各種の予算措置等を講じられてきておるわけでございます。  いじめ問題に特効薬なしという状況下にありまして、いろいろな対策を講じられることはそれなりに評価いたしておるわけでございますが、私はこの中でもスクールカウンセラーの設置につきましてその成果に注目いたしておるわけでございまして、その点につきましてまず御質問を申し上げたいと思います。  平成八年度の予算案におきまして十一億円のスクールカウンセラー活用調査研究委託費が計上されております。御案内のようにこの事業は平成七年度から始められたものでございますけれども、一年たちまして、平成七年度の事業の実績と評価、そして平成八年度の現段階における執行計画の案をお示しいただきたいと思います。
  83. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) スクールカウンセラー活用調査研究委託事業でございますが、これは平成七年度三億円の予算で始めたものでございまして、全国百五十四校に派遣を行っております。  この事業の委託研究期間は二年間でございまして、まだ平成七年度の研究校による研究成果は出ておりませんけれども、話を漏れ聞くところによりますと、これまでのところスクールカウンセラーの評価はおおむね良好の情報を得ているところでございます。  主な仕事の内容としましては、教師との面談が一番多いようでございまして、それから生徒との面接あるいは親との相談というのが仕事の内容として多くなっているようでございます。  平成八年度の予算におきましては約十一億円に拡充をされまして、全部で五百六校への派遣が盛り込まれているところでございますが、平成八年度予算が成立しておりませんので、執行についてはまだはっきり決まっていない段階でございます。
  84. 菅川健二

    ○菅川健二君 この予算要求の段階におきまして、文部省はたしか都道府県分だけ十億円の要求をされたかと思うわけでございますが、大蔵省の方で指定都市分一億円を査定憎いたしまして、計十一億円が計上されたやに聞いておるわけでございます。  一般的に言いまして、私も県の財政課長をやっておったときに絶えず各部局に言っておったわけでございますが、予算要求ないところに査定なしということを申しておったわけでございまして、国の自治省に私がおりましたときも大蔵省で査定増をされたという記憶は私自身ないわけでございます。極めて異例な事例であろうかと思いますし、大蔵省のいきな計らいを評価する反面、文部省の弱腰といいますか、あるいは認識の度合いが甘かったんではないかと思わざるを得ないわけでございますが、この点についてどうお考えでございますか。
  85. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) スクールカウンセラー活用調査研究委託事業でございますが、平成八年度の概算要求におきましては約十億円の要求、各都道府県十校という、そういう要求を行いまして、予算編成の段階におきまして御指摘のとおり約一億円の増額査定、各政令指定都市三校分が増額査定されたところでございます。  概算要求の段階におきましては、文部省としましてはシーリングの枠内で可能な限りのいじめ対策予算の要求を行ったものでございまして、このスクールカウンセラーだけではなくて、教員向けのいじめ問題対策パンフレットの作成・配布、これを新規で要求しておりますし、また、いじめ問題等対策研修講座、これは教員の研修でございますが、これも新規で要求をしております。また、いじめ対策地域連携モデル市町村というものも、これも新規で要求をしておりますし、国立教育会館のいじめ問題対策情報センターの拡充等、いじめ問題について考えられる多くの事柄について新規要求を行ってきているわけでございます。  しかしながら、概算要求後もいじめ問題が深刻な状況にあることにかんがみまして、この問題の重要性、それから国としてもさらに積極的に取り組むべき必要性について財政当局に積極的に働きかけを行った結果、その了解を得まして増額査定を得たという、そういう経緯でございます。
  86. 菅川健二

    ○菅川健二君 シーリングがございましても、いずれにいたしましてもウエートの置き方の問題だろうと思うわけでございます。  それは別といたしまして、本年度は昨年度に比べまして、本年度といいますか、平成八年度の予算案でございますが、昨年度に比べまして約四倍近くの派遣校数になっておるわけでございまして、それなりに評価いたすわけでございますが、全国の小・中・高合わせますと約四万校あるわけでございまして、それの比率から見ますとたった一・二%の配置率になるわけでございます。まさに焼け石に水でございまして、また勤務形態から言いまして、平成七年度並みの勤務形態ということになりますと、週二回の計八時間程度で大変中途半端なものになって、これに対する不満が出ておるわけでございます。  文部省とされましては、今後これらの事業をどう改善充実されていこうとしておるのか。もう既に事務的には平成九年度といいますか、来年度の予算編成の事務作業を進めておるんじゃないかと思いますけれども、今後の方向につきまして現段階でお示しできる限り教えていただきたいと思います。
  87. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) スクールカウンセラー活用調査研究委託事業でございますが、これは確かに平成八年度で五百六校でございますので、数としては少ないわけでございますが、いじめ問題につきましては、相談にあずかるのはこのスクールカウンセラーだけではなくて、やはり学校全体で取り組むというのが基本であろうかと思います。  そのためには、学級担任を初めすべての先生生徒の相談に応じるという、そういう心構えが必要でございますし、そのための技術と申しますかそういうことも必要であろうということで、平成八年度の予算におきましていじめ問題対策パンフレットを作成・配布、あるいはいじめ問題等対策の研修講座ということで教員の研修のための予算も計上しているところでございます。そういう教員だけでは不十分なところをこのスクールカウンセラーで補っていこうと、こういうことが基本であろうかと思います。  スクールカウンセラーを全部の学校に配置するということはいろんな問題点があろうかと思っておりまして、現在のところそういう全校配置というところまでは考えていないところでございます。
  88. 菅川健二

    ○菅川健二君 私が次に御質問しようということについて先回りに答弁されてしまいましたけれども、私は昨年の十二月の文教委員会におきまして、スクールカウンセラーを全校に配置することを目標に、学校教育法の位置づけとか配置の充足計画を作成すべきであると主張いたしたわけでございます。調査事業も二年目を迎えまして、そろそろ次の制度改正に向けて検討する時期に来ておるんではないかと思っておるわけでございます。特に、スクールカウンセラーといいましてもすぐ確保できるわけではございません。大学院における養成教育というものも一朝一夕にできるものではないわけでございます。したがいまして、今から長期的な計画的な養成を考えていくということも早過ぎるということはないと思うわけでございます。  この点につきまして、スクールカウンセラーの充実改善方策につきまして、奥田文部大臣の今後の取り組みの決意のほどをお聞きいたしたいと思います。
  89. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) この制度は、発足しまして今は二年目を迎えたばかりでございます。  ただ、この二月十日でございましたが、各都道府県、政令市の教育長さんにお集まり願っていじめ問題に対しての協力要請をいたしました席で、ほとんどの教育長さんにマイクを持ってもらって御意見を聞かせてもらいました。その中でも、大阪の教育長さんを初め、スクールカウンセラーの制度はいじめ問題を解消していく、あるいは真剣に取り組むためには非常にいい制度だと思うから充実していってくださいという御意見、御要請があったわけであります。  したがって、既にぼつぼつ平成九年度の概算要求に向かって文部省の方でも予算をまとめていかなければならぬ時期に差しかかってきておるわけでありますけれども、私としましては、これから担当の局長さん、課長さんと相談をして、さらに充実する方向で予算要求をしてまいりたいと思っております。
  90. 菅川健二

    ○菅川健二君 ぜひ充実するような方向でお考えいただきたいと思います。  次に、昨年四月に第十五期の中央教育審議会が発足いたしまして、「二十一世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の諮問が行われたわけでございます。これにつきましての考え方は、先ほど森山委員が言われましたことと私は全く同感でございます。  ただ、若干手前みそを言わせていただきますと、新進党では既に昨年の参議院の選挙の公約の中で学制改革の必要性を訴えました。その中でもとりわけ中高一体化を公約といたしまして、それだけではないと思うわけでございますが、最高の得票数を得た原因の一つにもなったんではないかと思っておるわけでございます。文部省がもたもたしていただいておるおかげで新進党にかなり有利になったんじゃなかろうかと、また私も当選の栄誉に浴させていただいたということで、感謝いたしておるわけでございます。  冗談はさておきまして、この中で、三月に第一小委員会が総会へ報告します中間まとめ案が公表されておるわけでございます。その内容は多岐にわたっておるわけでございますが、当面のいじめ問題対策から発展いたしまして、今後の教育制度の改善改革を考えます場合に、子供たちに生きる力をはぐくむためには、とりわけ学校教育におきましてゆとりと個性を生かす教育推進することが重要ではないかと考えておるわけでございます。  そこで、今後の検討課題につきまして二、三お尋ねいたしたいと思います。  まず、ゆとりある教育推進します場合に、教育内容の厳選、重点化ということがどうしても避けられないわけでございます。この問題は学習指導要領改訂されるたびごとに従来から指摘されまして、総論では全員賛成されるわけでございますけれども、各論になりますと、各教科の専門家の縄張り争いによりまして、これまでほとんど中途半端に終わっておるのが実情ではないかと思うわけでございます。これから学校完全週五日制を控えまして思い切った厳選が要請されるわけでございます。  ただ、新聞等によりますと「教科間で綱引き」というような、もう既にこういう記事が出ておるわけでございますが、今後の学習指導要領改訂に当たりましては教育課程審議会の役割が極めて重要ではないかと思うわけでございます。委員の構成に当たりましては、各教科の代弁者となる委員は極力避けていただきまして、生涯学習時代にありまして真に学校教育で学ばなければならない教育内容は何かということにつきまして大所高所から判断できる人物を委員に人選すべきであると考えますが、いかがでございましょうか。  あわせて、小委員会の中間まとめ案に審議会のもとに常設の委員会を設けることが提案されておりますが、これに対してどのように受けとめておられるか、お聞きいたしたいと思います。
  91. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) まず、現行の学習指導要領でございますが、これは小学校平成四年から、中学校平成五年から実施されているものでございます。この学習指導要領におきましても、各教科の内容等につきまして各学校段階において確実に身につけるべき基礎的・基本的な内容に一層精選を図るとともに、個性を生かす教育充実を目指して改訂されたものでございます。現在、文部省ではこの学習指導要領に沿いまして指導を行っているところでございます。  それで、今後の学校教育の在り方でございますが、これは現在、中央教育審議会におきまして御審議をいただいているところでございまして、現在まで中央教育審議会におきましては、初等中等教育につきまして子供たちにゆとりを与えるために教育内容を今よりさらに精選する観点について御議論をしていただいているところでございます。その中央教育審議会審議の結果を踏まえまして、教育課程審議会でさらに具体的に審議をしていただくことを予定しているところでございます。  そこで、次期教育課程審議会委員でございますが、これはまだ発足をしておりませんので、中央教育審議会の今後の審議状況を見ながら、教育課程審議会の発足の時期、それから委員の人選等について検討することになろうと思います。  それからもう一点は、教育課程審議会に常設の委員会を設置するということでございますが、この件については、まだ中央教育審議会の方で最終的に固まったものではございません。現在、議論されておりますのが、教育課程審議会が十年に一回程度、二、三年開かれると、こういうことでございまして、その間カリキュラムについて審議をする機関がないということで、いろんな社会情勢の変化等に対応して教育課程について常に見直しをする必要もあるんではないか、そういうことから、教育課程審議会に常設の委員会を設けて、新しいカリキュラムについて常に検討していくということでそういう委員会を設けたらどうかと、こういう提言が検討されているわけでございます。文部省としては、もし中教審の方からそのような答申が出されましたら、それに沿って施策を進めていきたいと考えております。
  92. 菅川健二

    ○菅川健二君 さきのメーデーのスローガンの一つといたしまして学校完全五日制の早期実現が掲げられておるわけでございますが、このことがほぼ世論となりつつある状況にございまして、文部省といたしましても完全五日制に向かっての条件整備を急いでいただく必要があるんではないかと思うわけでございます。  現段階におきまして、大まかでもよろしゅうございますから完全五日制に向けてのスケジュール等につきまして、将来方向をお示しいただければありがたいと思います。
  93. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) 現在、月に二回学校週五日制を実施しているわけでございますが、この月二回を超える学校週五日制を実施する際には、現在の学習指導要領では対応できませんので、学習指導要領改訂する必要がございます。そのためには、我が国の学校教育教育内容について基本的な検討を行う必要があるということでございます。  それで、現在、中教審で学校週五日制の今後の在り方について御審議をいただいているわけでございまして、文部省としましては、その審議の結果を待って、学校教育内容については教育課程審議会審議いただくことになると考えております。  それで、あと学習指導要領改訂するだけで学校週五日制が実施できるものではございません。いわゆる受け皿とも言うべき家庭あるいは地域社会における子供たちのさまざまな体験、あるいは活動機会充実する必要があるわけでございまして、そのために必要な対応策について施策推進していく必要があろうと思います。  また、それだけではなくて、全国民に関係がある事柄でもございますので、国民世論の動向等をも踏まえまして総合的に学校週五日制をいつから実施するかということを検討していく必要があろうかと思います。
  94. 菅川健二

    ○菅川健二君 もう一つ教育の視点といたしまして、個性を尊重し個性を生かす教育が重要であろうかと思います。小委員会の中間まとめ案におきましても、「同質にとらわれる社会」が学校にも影響し、いじめ問題にもかかわっていると指摘されておるわけでございます。  現在、個性を生かす教育につきましては、高校段階におきましては、選択科目の拡大とか総合学科の設置、特色ある学校づくり等々、多様な形態、多様な試みが行われておるわけでございますが、それなりに高等学校段階では評価するものでございますが、中学校段階におきましては教育課程の弾力化とかあるいは指導方法の改善等が一部行われておる程度でございまして、まだまだ不十分ではないかと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、私はこれからゆとりある教育、個性を伸ばす教育を進めるに当たりましてはどうしても現行の学校制度の壁にぶち当たらざるを得ないと思うわけでございます。先ほども森山委員から話がございましたけれども、特に中学校三年、高校三年の期間は短くて、この間に受験という大変なハードルがあるわけでございます。そこで中学校段階でいじめとか登校拒否、校内暴力は集中的に出現しておるわけでございます。まさに中学生の悲痛な叫びがこのような兆候になって出ておるんではないかと思っておるわけでございます。  また、個性を伸ばす教育につきましても、急激に高等学校段階から伸ばすということでは遅過ぎるわけでございます。やはり中学校段階から徐々に、あるいは系統的に進めていく必要があろうかと思うわけでございます。これを単に学校間の接続で解決しようという、どうも文部省のお考えは私は姑息な考え方ではないかと思うわけでございます。貨車を二両連結したところで十分それが機能するわけではないわけでございまして、この際、新進党並びに、自民党も恐らくこれから主張されるんだろうと思うわけでございますが、中高の一体化、中高一貫教育を制度化していく必要があるんじゃないかと思うわけでございます。  この点につきまして文部大臣の御見解をお聞きいたしたいわけでございます。恐らく答えは先ほど申されたようなことだろうと思うわけでございますが、若干その点につきまして私に申させていただきますと、コンセンサスというものは自然にできるものではなくて、これはっくり上げるものではないかと思うわけでございます。特に制度改革に当たりましては、その道の専門家の方が一つの方向を示して、むしろコンセンサスづくりを積極的に進めていくということによって初めて改革は成るんではないかと思うわけでございます。  ずっと古い話になりますけれども、昭和四十六年に四六答申という大変立派な答申が出たわけでございますが、これはなぜつぶれたかというのは、基本的にはやはり、それまでのいろいろな教育で利益を得てきた方々、特に教育関係者の反対に遭ってつぶれたという要因が私は大きいんじゃないかと思うわけでございます。とりわけ制度改革においての最も敵は教育関係者、身近におる教育関係者が敵になるわけでございますので、文部大臣はむしろそれよりもう一段超越しておられるわけでございますので、この辺で勇断をお願いいたしたいと思いますが、再度、恐縮でございますが決意のほどをお聞きいたしたいと思います。
  95. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 特に教育問題に御熱心な先生方から、一遍この際大きな曲がり角に教育も来ておるからひとつ根本的に考えてみなさいという御要請には、私どもは謙虚にこれは受けとめなければならぬと思っております。  その中で、先生指摘の中高一貫教育、まあ去年の参議院の通常選挙をこの問題を看板に上げられた新進党はそれで勝ったんだと、ああそうかなと改めて私は気がついたわけでございますけれども。  いずれにしましても、この中高一貫教育だけでなしに、森山先生がおっしゃったとおり、教育も今非常に大きな曲がり角に来ておるから文部省も謙虚に洗い直してみなさいなという御指摘、その中に先生のお話も私は含まれていると思うんですよね。だから、それじゃすぐ、中教審の答申を来月ちょうだいしますから、来年からこうします、再来年にはこうやりますというように具体的にはここではっきり御答弁できないわけでありますけれども、あのときに言っておいて、我々の注文が徐々にではあるけれども生かされてきておるなと後々御評価いただけるような、そういう謙虚さと実行力だけは持って前へ進んでまいりたいというように考えておるわけでございます。
  96. 菅川健二

    ○菅川健二君 終わります。
  97. 上山和人

    上山和人君 社会民主党・護憲連合の上山和人でございます。  私は、きょうはただ一点だけ、国立大学の外国人教師制度及び国立または公立の大学における外国人教員制度についてのみ御質問申し上げます。  四十分間の私の持ち時間でありますけれども、到底四十分程度で詰め切れる問題ではないと思いますけれども、この問題に大変重大な関心を寄せているアメリカ大使館、さらには最も直接の当事者である外国人教師・教員の皆さんの、この四十分間の質疑を通して我が国に対する不信が解消されて、信頼を取り戻すことができればと思っておりますので、どうぞ大臣関係局長もそういう観点で積極的に前向きの御答弁をお願い申し上げたいと思います。  まず、ちょうど一年前になりますが、朝日新聞社の「論座」という月刊誌がございますが、昨年の五月号、この中に、お手元にも資料があると思いますけれども、「日本の国立大学にあるアパルトヘイト 使い捨てられる外国人教師」という見出しでアイヴァン・ホールさんというブルガリア生まれのアメリカ人のドクターが論文を寄せておられます。  この中で、二十世紀も終わろうとしている今、日本の国立大学の中に外国人教官に対するアパルトヘイトがなお存在している、このことを日本人のどれぐらいの方が御存じだろうか、非常に不幸なことに年配の外国人教官の大量解雇が始まって、それが彼らを大変な不安に陥れている、この実態を日本の皆さん御存じだろうか、そんなふうに、いわば告発だと思うんですけれども、この月刊「論座」の昨年五月号の記事がございます。  なぜこういう問題が起きているのかということについて簡明に局長から御説明をいただきたいし、昨年五月の月刊誌ではありますが、「論座」の告発と思われるこの寄稿をどのように文部省として受けとめておられるのか、ちょっとお聞かせいただけませんか。
  98. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 今のお尋ねにお答えするために、誤解を避けるために、いわゆる外国人教師制度というのとそれから外国人教員制度という二つの制度の仕組みについて御説明をさせていただきたいと思うわけであります。
  99. 上山和人

    上山和人君 できるだけ簡明に。
  100. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) はい。  現在、外国人が国立大学教育関係の職に常勤的につく仕掛けといたしまして二つあるわけでございます。一つは、国家公務員法に基づきます個人的な基礎において契約をもって雇用されるという、これを外国人教師と言っているわけでございますが、これは一年ごとの契約によって雇用される、そういうものでございます。もう一つの仕組みは、これは昭和五十七年のいわゆる議員立法の形で制定されたものでございますけれども、私ども日本人教員と同じように定員内職員として雇用される、そういう教員、これを外国人教員と言っておるわけでございます。この二つの仕組みがあるわけでございます。  それで、上山先生が今御指摘の「論座」の記事にかかわりますのは、そのうちで前者の方、すなわち一年ごとの契約によって雇用される外国人教師の方の点でございます。ここでアイヴァン・ホール氏が言っておりますのは、ある時点で、この個人的基礎において一年ごとに更新される雇用形態のもとの外国人教師が、急にいついつまでにはやめてくれと、こういうように言われた、これは本人の予想したこと、あるいは期待していたことと違う、この辺のところが問題だと、こういうことだというように私ども認識しておるわけでございます。
  101. 上山和人

    上山和人君 なぜ国立大学の外国人教師制度が単年度更新でなければいけないんですか。
  102. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) これは、先ほど申しましたように、通常の定員内の職員扱いではなくて、その年度年度の予算の枠内において、最も最近の数字で申しますと約四十二億円でございますけれども、それぞれの年度年度の予算措置を通じまして雇用される者ということでございまして、予算の単年度主義というところによっているというように理解しておるところでございます。
  103. 上山和人

    上山和人君 せっかくの局長のお答えですが、とても理解できないですよね。どうして単年度更新、一年契約なんですかとお尋ねいたしました。それはそういう制度だからというお話なんですね、今のお答えは。そうじゃなくて、なぜ制度として一年契約の制度、大学先生を単年度更新、一年契約の雇用システムにしなければならなかったんですかと聞いているんです。そういう制度としたから今のような単年度主義といいますか、会計制度上もそうなっている。会計制度は後を追ってつくられていくわけですから、どうして一年契約、単年度更新にしなければならなかったんですかとお聞きしているんです。
  104. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) この外国人教師の制度は、基本的には明治の時代にまでさかのぼるものでございますけれども、したがって先ほど申し上げました外国人教員の制度よりもずっと前からあるわけでございますが、一年ごとでなぜなされなければならないのか。これは多分に、実質的には外国人教師、特に語学関係が多いわけでございますけれども、外国人教師を大学が雇用する場合に、いわば終身雇用的なことよりも任期をつけた方が適当な人材を得やすいという事情もあったかとは思いますけれども、主要な原因としては定員の外の任用として年度年度の予算措置に応じて契約をする。したがって、ある人をとってみますと一年間で切れる場合もありますし、ある人をとってみますとさらにそれを更新して二年、三年といく方もあると、こういうように理解しておるわけでございます。
  105. 上山和人

    上山和人君 かみ合いませんね、局長。  外国人教員制度、二本立てですから、先ほど御説明がありましたけれども、外国人教員制度は国家公務員法の定員の枠内に組み込む制度として後々スタートしていますよね。だから、定員に組み込まれない教師だから単年度更新、一年契約だとおっしゃる。  定員の中に組み込めばいいじゃないですか、なぜ組み込まないんですか、組み込まれた制度として後からスタートした外国人教員制度と同じように。これはもう今からちょうど百三年前にスタートしている明治時代からの制度なのに、なぜ依然としてこの制度だけ一年契約、単年度更新なのか。そうだからこうだというんじゃなくて、必要があったら組み込めばいいじゃないですか、定員の中に。そういう制度として改正することだってできるわけでしょう。なぜいまだに一年契約、単年度更新なんですか。
  106. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 確かに、先生指摘のように、昭和五十七年に国立、公立の大学に外国人教員を任用するという法律案が提出された際に、既存の昔からあります契約に基づきますものを吸収するという議論もあり得たかと思うわけでございます。  しかし、この任用法におきましては、従来から走っております個人契約ベースのもの、これにつきましても併存する形で、あわせて存置するという形で、具体的には第四条でございますけれども、解釈規定が置かれておりまして、ややはしょって申しますけれども、今回の規定は、国公法の第二条第七項に規定する勤務の契約により教育または研究に従事する外国人を採用することを妨げるものではないという解釈規定を置いたわけでございます。  したがって、これの趣旨とするところは多分、まあ推測で恐縮でございますけれども、もとをたどれば明治以来、あるいは国家公務員法ができてからは戦後のことでございますけれども、少なくともこの勤務の契約によって外国人教師が大学に勤務し続けてきたという実態、これらについては十分意義のあることだというような評価を当時されたんではなかろうかというように考えておるわけでございます。  私どもとしては、この従来の仕掛け、それから新たに昭和五十七年から設けられました任用法による外国人教員、これが併存する形で、言いかえますとどちらも選択し得る、逆に言うと、逆といいますか言いかえますと、選択の幅が広がったというように私どもはとらまえているわけでございます。
  107. 上山和人

    上山和人君 局長、一年契約の制度、単年度更新の制度がどんなに不安定な制度であるかというのは今さら申し上げるまでもありませんよね。一年契約で置かれている、日本の大学に赴任している外国の教師たちの精神状態を考えますと、わざわざ外国から日本に来て、それなりの志を立てておいでになっていると思いますよ。そういう人たちの精神状態が一年契約、単年度更新制度で安定するとは到底思えませんよね。  私が言いたいのは、何のために一年契約なのか、何のために単年度更新なのか。つまり外国人教師制度の目的が不明なんです。どういう目的で一年契約で更新する教師たちを雇うことになったのか。なぜ後々外国人教員制度という制度を導入することになったのか。それと明治以来ある、百三年間続いている外国人教師制度との関連もやっぱりはっきりしなくちゃいけないことになるんじゃないでしょうか。  だから、目的は何なんですか。なぜ一年契約でしか雇用できないシステムとしてこの外国人教師制度を亘二年にもわたって続けなければならないんですか。何のためにこの人たちを日本に雇うことになったんですか、どういう目的で。
  108. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 外国人の方を、大学教育研究上必要だということで認めて一年単位で採用するということは有意義だということで存続されてきたというように理解しておるわけでございます。
  109. 上山和人

    上山和人君 それだけの理由でしたら、これだけ社会問題にもなっている、これは問題の推移では外交政治上の問題に発展しかねないと思いますよ。だって、アメリカ大使館の関心も非常に大きいし、去年の一月に大使が日本の国立大学の外国人教師の在り方についても提言をしていますよ。  そういう問題なのに、今、局長が御説明なさるような理由だけでこの制度があるんでしたら、八二年にスタートしている外国人教員制度に吸収して一本化してよかったんじゃないですか。今おっしゃるような目的であれば何も一年更新でなければならないという理由はないじゃないですか。もっと身分を安定させる外国人教員制度に、八二年にスタートしたこの制度に吸収して一本化できたはずじゃないですか。どうしてそれができなかったんですか。
  110. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 昭和五十七年まではこのような契約で雇用される外国人教師しか方途がなかったわけでございますが、昭和五十七年に至って、それだけではなくて、日本人教員と同じような雇用形態で定員内の職員として雇用する、そういう方途も新たに創設すべきではないかというお考えのもとにこのような現在の任用法ができたというように理解しておるわけでございます。  その際に、従来から来ております契約による外国人教師の制度は引き続き存置することについて有意義であるというようなお考えのもとに、先ほど申し上げたような第四条の解釈規定が設けられたというように理解しておるわけでございます。したがいまして、現在の仕掛けとしましては、契約によります外国人教師の仕組みとそれから外国人教員の仕組みと、両方が外国人の方が国立大学教育関係の常勤の職を占めるための二つの仕掛けとしてあるわけでございます。  それで、現実の人数を申しますと、平成七年度で、外国人教師の方でございますが三百八十六人、外国人教員という形で採用されておりますのは四百六十一人ということでございまして、先ほど来話題になっております昭和五十七年度の外国人任用法ができた当座の外国人の方が国立大学に雇用されていた数と比較いたしますと、両方合わせまして二倍以上の方々がこの二つの制度を通じて雇用されている、こういう状況になっているわけでございます。
  111. 上山和人

    上山和人君 局長、なぜ有意義なんですか、その二本立てにすることが。八二年に外国人教員制度がスタートしていますよね。外国人教師制度は百三年前からある、明治以来続いている制度ですよね。その百三年続いている制度が一本外国人教師制度としてある。私はこれと外国人教員制度との関係説明をしてほしいと思うんですが、外国人教師制度が明治以来定着、定着しているという言葉が適当かどうかわかりませんが、ずっと存続しているのに八二年になって外国人教員制度というのをなぜ併存しなければならなくなったんですか、なぜ併存したんですか。  つまり、聞きたいのは、局長にはっきりしてほしいのは、外国人教員制度のもとで日本の国立大学または公立大学に勤務している教員に対する期待、何をやってほしいのか、何を目的に外国人教員制度を導入したのかというその目的と、外国人教師制度のもとで日本の国立大学で働いていらっしゃる人たちに求めているもの、つまり外国人教師制度の目的。両方の目的が違うんですか、同じなんですか。そこをちょっとはっきりしてほしい。
  112. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 外国人の方を大学教育の職に採用して、当該大学教育研究の向上なりあるいは一般に国際交流の充実ということに資するということにつきましては共通だと思うわけでございます。ただし、外国人教師の契約によって雇用される方々につきましては、一般的にやはり任期をつけてということがメーンの頭にあるわけでございまして、またその待遇につきましても一般職の大学教員の場合よりも優遇した形で措置されているわけでございます。  逆に、外国人教員につきましては、一般には日本人教員の場合と同じようにずっと長く勤めていただく、終身雇用的な姿というものを主要な形として思い描かれていたというような違いが出てこようかと思うわけでございます。
  113. 上山和人

    上山和人君 局長、もし目的が大きく一つであるなら、より安定した雇用システムにした方がいいんじゃないですか。そうじゃないからこういう問題が起きているわけですよ。アパルトヘイトだと言われるような、告発されるような実態が国立大学の中にある。私も地元の大学でこの問題について二、三年前に相談を受けたこともあるんです。これは外国人教師・教員のいる大学でみんなくすぶっている問題ですよ。目的が一つなら、より安定した雇用システムに一本化したらどうなんですか。私はどうも理解できないんです。  それで、少し質問を進めますけれども、外国人教員制度がスタートするに至ったいきさつ、なぜ改めて外国人教員制度が導入されたんですか、しなければならなかったんですか。
  114. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 若干繰り返しになって恐縮でございますが、それまでの間は、外国人の方を国立大学あるいは公立の大学に任用する方途といたしましては契約によるものしかなかったわけでございます。これに加えまして、従来、日本人の教員が雇用されているのと同じ形の雇用形態というものもあってしかるべきではないかという御論議があってこのような法制定になったものと、こういうように理解しておるところでございます。
  115. 上山和人

    上山和人君 そうですがね、局長。  一九七二年にOECD、経済協力開発機構が日本に教育調査団を派遣しましたよね。その調査団の日本の教育政策に関する調査報告書、これは提言、勧告ですよ、が七二年に出されている。その勧告の中でこういうふうに提言をしているわけですよ。簡単な一行で言えば「日本の教育機関、とりわけ大学が外国人を雇うさいの手続きを全面的に検討し直すべきである。」、七二年のOECDの日本の教育政策に関する調査報告書はそんなふうに提言、勧告をしているわけですよ。これとの関係はないんですか。  このOECDの日本の教育政策に関する調査報告書などから国際的な問題としても問題を提起されている。したがって、外国人教師制度を改善する制度として外国人教員制度、教師、教員と言っていますけれども、英語に翻訳したらどう言うんですか、教師と教員の区別をどんなふうに英語では言うことになっているんですか。  それはそれとして、それもわかっていたら答えてください。OECDのこの報告書と関係ないんですか。
  116. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 昭和五十七年の立法は、先ほど申し上げましたように、議員立法の形で制定を願ったわけでございます。その提案に至る過程におきまして、先生のおっしゃるような点もあったろうかと思うわけでございますが、基本的には外国人の方に大学教育研究の担い手として幅広く御活躍いただこうと、こういうのが趣旨であったかと思うわけでございます。
  117. 上山和人

    上山和人君 なかなか固執されますので、非常にかみ合わなくて、何が本当なのかという疑念がなかなか私は解けないんですよね。  歴史的に見ますと、明らかにこの調査報告書等が国際的にも提言をされる中で、日本の大学における外国人雇用の問題を改善せざるを得なかった。そういう過程で、しかもこの報告書が出てから十年かかっているわけですよ、外国人教員制度が導入されるまで。十年かかってやっとこの勧告、提言に沿う新しい制度を導入することができたんじゃないですか。  そして、しかも改善した、外国人教師制度が持つ問題よりは進んだ内容として安定した雇用システムにもなっているという趣旨の御説明局長はなさいましたよね。しかし、残念ながら余り変わっていないんじゃないですか、外国人教員制度についても。国家公務員法の定員の中に制度として組み込む、日本人の教員と同じような身分として採用すること、雇用することを可能にする制度ですよね、外国人教員制度というのは。しかし、それでも日本人と同じような取り扱いじゃないでしょう。日本人の教授や助教授や講師の皆さんと外国人教員制度のもとで雇用される外国の先生たちとの取り扱いは違うでしょう。どこが違うんですか。
  118. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) まず、処遇の点で申しますと、外国人教員につきましては、これは一般職の国家公務員ということでございますので、一般の日本人教員と同じ処遇を受けるということでございます。  それに対しまして外国人教師の方につきましては、一般職の給与法の適用ではございませんで、別の給料表が適用されるわけでございますが、その内容といたしましては一般職の国家公務員の場合よりも有利な状況、特に若手につきましては約五割ぐらい上の給料が適用されているということでございます。
  119. 上山和人

    上山和人君 給料面の取り扱いは御説明のとおりですね。  一番問題になっている雇用システム面の違いはどうなんですか。日本人の先生たちとそれから外国人の先生たちとでは、大学教員制度のもとでの外国人の先生たちですね、日本人との違いがあるんですかないんですか、雇用システム。
  120. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 外国人教師につきましては一年ごとの契約ということでございます。実態といたしましては、契約の更新を経た上で三年未満というのが全体の約半分ぐらいであろうかと思うわけでございますが、いずれにしましても、基本的には一年ごとの契約あるいはそれの更新という形をとるわけでございます。  外国人教員の方につきましては、任期つきの場合と任期のない場合と両方あるわけでございますが、現在へ任期をつけた方が多いと、こういう状況でございます。
  121. 上山和人

    上山和人君 つまり、任期をつけた方が多いということは、日本人は任期なしのいわば定年制のもとで安定して勤務することができますよね。しかし外国人は、新しく外国人教員制度が導入されたにもかかわらず、雇用システムは依然として不安定な状態に置かれている。当初三年契約じゃないんですか、ほとんど。そして、以降は一年置きの契約更新になるんじゃないですか、大部分は。そして今おっしゃるように、終身雇用は日本人と違って保障されない、どちらかというと短期更新ということになっていませんか。
  122. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 制度的には、先ほど申しましたように、一年ごとの更新という形でございますが、実態としては、先生の今御指摘がございましたけれども、大体最初は三年ぐらいの契約にして、その後契約を一年ごとに更新していくという形が多いようでございます。
  123. 上山和人

    上山和人君 そうすると、一番問題が集中して提起されている教師制度、教員制度の雇用システムの問題については、ほんの少しは改善されているとはいうもののほとんど改善されていない。ひっくるめて言えば、極めて短期更新、不安定な雇用システムとして教員制度の場合も置かれている。そのとおりですね。
  124. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 先生の論旨でまいりますと、いわゆる終身雇用的な形でないと雇用として完全な形ではないと、間違っていたらあれでございますが、そういうように理解できるわけでございます。雇用形態としていわゆる終身雇用的な、現在の公務員制度が基本的にそうなわけでございますけれども、そういう形のもの、これは確かに先生がおっしゃいますように身分的には、あるいは雇用される立場の者としては非常に安定的なものだと言えるわけでございます。逆に、雇用する側の方からいたしますと、場合によってこのポストはこのぐらいの年限の間必要かもしれないけれども、それ以降は必要ないかもしれないという教育研究活動上の雇用側の立場というものもまた反映されるべき要素ということとしてあるわけでございます。  外国人教師について先ほど来いろいろ御指摘がございましたけれども、一年ごとの契約で行うということにつきましては、そういう大学のそれぞれの分野におきます教育研究上の必要性というものを雇用の上で弾力的に反映させる、そういうことのできる一つ形態である。少なくとも任期をつけない終身雇用的なものよりうんと、比べました場合にメリットとしてはそういうことがある。もちろん、逆に、当人の身分保障という点からすると不安定だと言われれば、それはそのとおりかもしれませんけれども、両用の要請を満たすものとして二つの制度があって結構なことではなかろうかというように考えているわけでございます。
  125. 上山和人

    上山和人君 時間がなくなってしまって、とても詰め切れる問題ではないと冒頭申し上げましたけれども、これは次の機会に問題はすべて持ち越すことにさせていただきたいと思うんですが、局長、一番問題なのは、アパルトヘイトといういわば告発を受けて大変信頼が揺らいでいる。  特に、日米首脳会談が終わりましたよ。そして、クリントンさんと我が橋本総理が共同のメッセージも国民に向かって発しておられる。日米間の信頼をどう育てていくか、アメリカ人と日本人一人一人が心と心を結び、友情を育て合う、これが両国の関係を近づけるんだという共同のメッセージも発して、今まさに国際化国際化教育国際化をうたいとげているのは文部省しょう。そういうときに、差別的な印象を与えるような制度、これからますます国際化と言われる時代になるのに、それを存続しなくちゃならない、どうしてもそれにこだわり続けなくちゃならない理由が本当に日本の大学の間にあるんだろうか。これは理解できないんですよ。  それで、局長、日本の国立大学または公立大学で今採用しているような雇用形態、雇用システムをとっている国が外国にありますか。
  126. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 必ずしもつまびらかにしておらないわけでございますけれども、例えばアメリカの大学教員について、それでは日本の大学教員と同じような形での身分保障というものが与えられているかというと、必ずしもそうではないわけでございます。御案内のように、助手とかあるいは講師の間、あるいはアシスタントプロフェッサーと呼ばれるような時期においては任期つきというのがむしろ一般的でございまして、しかるべき業績審査を経て初めてテニュアーと言われる身分保障を得るというのがアメリカの大学におきましては一般的でございまして、必ずしも日本のいわゆる公務員制度のもとで行われておるような雇用形態というものが世界的あるいは普遍的なものだというようには理解しておらないわけでございます。
  127. 上山和人

    上山和人君 局長、それは違うんじゃないですか。局長が今言われる最初の方の雇用形態ですね、助手とかおっしゃるそういう若い時代の、それはいわば試用期間といいますか、試みに雇用する期間というのは日本だってありますよ。その長短は企業の差とかあるいはいろんな職種の差によってあるかもしれませんけれども、外国は試用期間が長いということは日本に比べて比較的ありますよね。でも、それから先の雇用形態というのは安定していますよ。何よりも今、日本の国立大学、公立大学で問題になって批判を浴びている一年契約とか短期更新制といったような制度はないんですよ。  日本の外国人教師の国籍別分布図を見てみますと、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、中国、カナダ、ロシア、韓国、朝鮮、オーストラリア、オーストリア、イタリア、スペイン、スイス、インドネシア、インド、タイ、アイルランド、モンゴル、アルゼンチン、ベトナム、こういう国々からいっぱい集まっているわけですよ。大臣、どの国だって日本のような、日本人と差別をするような雇用形態をとっている国はないと思いますよ。それは、試用期間の短い長いはありますよ、今言われるように。局長説明されたのはその部分だと思いますよ。雇用形態で外国人を母国人と違う取り扱いをするという国はないんじゃないですか。それは、私も何百カ国というのを全部調べたわけじゃありません。「大学教育国際化」、この本の中に紹介されていますよ。日本のような雇用形態をとっている大学は外国にはないんじゃないですか。  だから、そういう世界の実態を見回しても、先進国と言われる日本が、しかも教育国際化をこれからますますうたいとげて本当に国際化しなくちゃならない時代を迎えようとしているときに、果たして今の外国人教師制度、それを改善した形であるように見える外国人教員制度についてすら先ほどから御説明のあるような問題を含む制度になっていますよ。  文部大臣、どうなんですか。失礼ですけれども、大臣はこの制度を御存じでしたか。
  128. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 今からおよそ一カ月前でございましたか、在日モンデール大使が文部省へ見えて、まさに先生が今お話しになっている問題について御要請がございました。わずか契約が一年、一年ごとの更新ということでは非常に教える側の教員は気持ちが落ちつかない。もう少し落ちついて教壇に立てるようなそういう仕組みにしてほしい。日本からアメリカへ来ておられる研究者、教員はアメリカから日本に来ている者に比べたら非常に圧倒的に多いですよと。アメリカから日本へ来ている者は非常に数が少ない。それがこういうような、一年ごととは言いながら契約は一年だけですから、非常に不安定ないらいらした気持ちでいるんですよという強い御要請があったわけです。  そのときから、きょうもまた先生からこの御質問をいただくということで、私も重ねて勉強をしたわけでありますけれども、一方では確かに一般公務員でもない、枠の外でありますから特別公務員でもない。しかし、給料は局長お話ししたように高い。これは確かに先生から御指摘いただくような問題もありますが、採用するしないは、これは文部省でなくて大学側でございますから、こういう御注文も来ておる、こういう御意見も国会の中にあるということの意見を添えて、一遍大学の採用する側の意見を聞いてみたいという感じがいたします。  だからといってこれを一遍に変えるというんでなくて、文部省が採用するんじゃなくて、大学が実際に教壇に立っていただくように要請をするわけでございますから、御指摘いただいておる御意見も添えて、そういう側に私は一遍聞いてみたいと、そういう感じがいたしております。
  129. 上山和人

    上山和人君 もうあと一分しかありませんけれども、大臣、これは国際的にも大変大事な問題だと思います。  それで、今モンデール大使のお話もございましたけれども、去年の一月にもモンデール大使は国立大学の外国人教師の問題について提言をなさっているんですよね。これはこのまま放置することのできない、日本の世界における責任ある立場を考えるときに一日も早く改善した方がいい、そして外国の信頼もこの面でも取り戻した方がいいと私は思うものですから、きょうは時間が参りましたので質問は途中で終わることになりますが、ぜひ次の機会質問を続けさせていただいて、できるだけお互いにどうしたらいいか、説得力のある解決策が見つからないものかと思っておりますので、文部省としても引き続き御検討をいただけないでしょうか。よろしくお願い申し上げます。  きょうは、質問はこれで終わります。
  130. 阿部幸代

    阿部幸代君 障害児学校教員の腰痛対策と妊娠した女性教職員の健康と安全の確保対策について質問いたします。    〔委員長退席、理事森山眞弓君着席〕  人間である教職員が行うのが教育であり、子供たちも教職員もともに人間として尊重されるように条件整備をするのが教育行政の責任だと思うんですけれども、教職員の実態はなかなかそうなっておらず、健康破壊が大変深刻です。  まず、障害児学校教員の腰痛対策ですが、全日本教職員組合腰痛等調査対策委員会が調査をして、滋賀医科大学予防医学講座がその集計と分析を行った「教職員の健康実態調査報告書 障害児学校教員の腰痛と業務との関連について」が発表されています。この報告書は、情報の偏りをなくするために学校単位の有効回答率が八〇%以上あった百十校を解析対象として、対象となった障害児学校教職員は八千二百二人、うち障害児学校教員五千二百十六人、事務職員三百三十三人が各自記入して密封したものを回収して調査が行われ、でき上がったものです。全国障害児学校の一二・二%、全国障害児学校教員の一九・六%が対象となっていて、この報告書も言うとおり我が国の障害児学校教員の実態をかなり正確に反映する結果であると言えます。  ここにその報告書があります。これによりますと、例えば最近一年間に腰痛を経験した者の中で、腰痛のためにこの一年間に仕事を休んだ者の割合は、特に精肢併置校、これは知的障害と肢体不自由の併置校ですが、そこの男性では四〇%もいるんです。肢体不自由校や精肢併置校では、移動やバスの乗降時の抱きかかえ、学習場面での抱きかかえ全面介助、排せつ時また体を洗ってあげるときの抱きかかえ介助、衣服の着脱ぎ、食事の全面介助等、腰痛を発生させる要因は多く、担任する児童生徒が多くなればなるほど腰痛有症率も高くなるところから、腰痛と教育活動の因果関係が立証されています。また、腰痛発症のピークが六月と十月であるところからも、一般の慣例による腰痛などとは異なる教育活動によるものであることが明らかになっています。  文部省は、こうした障害児学校における教員の深刻な腰痛の実態について掌握していますか。
  131. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 文部省ではおおむね五、六年ごとに調査をいたしておりますが、最近では平成二年度に養護学校教職員の疾病等に関する調査を実施しております。  これによりますと、養護学校の教職員のうち腰痛の症状を有する者の割合は、教員の場合一四・五%というふうに承知をいたしております。    〔理事森山眞弓君退席、委員長着席〕
  132. 阿部幸代

    阿部幸代君 ぜひ今回のかなり精密な全国調査を見ていただきたいと思うんですが、昨年、大阪府下の養護学校教員だった向井和孝さんの三年半にわたる腰痛裁判が勝利をして、向井さんの腰痛症を公務外と認定した地方公務員災害補償基金大阪府支部長の認定処分が取り消されました。裁判で勝利したとはいうものの向井さんの一生は本当に痛ましいもので、あこがれの養護学校教員として採用されて半年後に腰椎分離症を発病し、裁判途中に心筋梗塞で急逝するまで十九年間、最初の公務災害の認定を受けたときを除くと延べ三年間の休職、三度の入院、何種類かの民間治療と、手術をしても腰痛とそれに伴うしびれや突っ張り感、鈍痛など種々の症状がなくならなかったといいます。  この裁判を今後に生かし、障害児学校に働く教員の健康を守るための対策が求められています。まず、腰痛の職場起因性を重視して、公務災害として認定するよう文部省としての働きかけが求められていると思うんですが、どうですか。
  133. 小林敬治

    政府委員小林敬治君) お答え申し上げます。  地方公務員の公務災害補償の認定は、自治省所管の団体であります地方公務員災害補償基金が行っておるところでございまして、公務と疾病との間に相当因果関係があるものについて公務上として認定を行っているわけでございます。腰痛につきましても全く同様でございまして、同基金が定めるところの認定基準に基づいて具体的事例に即して認定を行っているところでございます。  なお、同基金によりますと、平成六年度の公立学校教職員の公務災害認定請求件数は六千四百五十二件で、うち公務上認定件数は六千三百五十五件でございますが、腰痛を原因とする請求件数とか認定件数というものは特に把握をしていないということでございました。
  134. 阿部幸代

    阿部幸代君 文部省として、つまり教職員の職場環境を整備する責任がある文部省としての認識を私は問うています。基金の説明を求めたのではなくて、腰痛の職場起因性を重視していただきたいということです。  労働省の労働基準局が「職場における腰痛予防対策推進について」という通達を一昨年九月に出しています。この通達は、職場における腰痛予防対策指針を定め、腰痛の発生が比較的多い五つの作業について基本的な対策を示していますが、五つの作業の中の重症心身障害児施設等における介護作業の中に障害児学校教育活動を含めるべきではありませんか。
  135. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 御指摘の職場における腰痛予防対策指針は、職場において腰痛を予防するために各職場において講ぜらるべき基本的な対策についての基本的な方針を示したものでございまして、労働省労働基準局長から各都道府県の労働基準局長あてに通知がなされたものと承知をしております。  そこで、御指摘の重症心身障害児施設でございますけれども、これにつきましては、児童福祉法四十三条の四におきまして「重度の精神薄弱及び重度の肢体不自由が重複している児童を入所させて、これを保護するとともに、治療及び日常生活の指導をすることを目的とする施設」と、こういうふうに規定をされておるわけでございます。これと同程度の介護作業を必要とする施設につきましては重症心身障害児施設等に該当するものとされておるわけでございます。  そんなわけで、重度の重複障害児を入学させている養護学校がこれに該当するかどうかにつきましては、具体のケースについての個別的な判断が必要であるというふうに考えておりまして、今後、労働省と相談をしてまいりたいと考えております。
  136. 阿部幸代

    阿部幸代君 労働省と相談するという立場はとっておられるんですね。
  137. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) はい、さようでございます。
  138. 阿部幸代

    阿部幸代君 それから、もう一つ確かめたいんですが、腰痛の職場起因性について重視するという立場はどうですか。
  139. 小林敬治

    政府委員小林敬治君) この問題につきましては、先ほども申し上げましたように、腰痛につきましても地方公務員災害補償基金におきまして、重量物を取り扱う業務、腰部に過度の負担を与える不自然な作業姿勢により行う業務、その他腰部に過度の負担のかかる業務に従事したため生じた腰痛というふうな基準がございまして、この基準に照らし具体的な事例に即して認定を行っているわけでございます。  したがいまして、個々のケースに即してこの認定は行われるべきものというふうに私どもは考えております。
  140. 阿部幸代

    阿部幸代君 文部省はもっと実態を直視していただきたいんですが、今、腰痛の公務災害認定率というのは非常に低いんです。ですから、もっと教職員の実態を把握して、腰痛の職場起因性、ここを重視していく立場をぜひとっていただきたい。これは要望します。  裁判に勝利した向井先生や腰痛に悩む多くの障害児学校教員が共通して言うのは、休憩や休みがとれないということです。例えば埼玉県の養護学校の例ですが、昼食時でも自分が食事をしながら子供の食事の介助をするとか、自分がトイレに行くときにも子供を背負うなどして一緒に連れていくと言います。トイレになるべく行かないで済むように朝から水分をとらない人もいるんです。子供を手放せないんです。朝の登校時、九時十分から午後二時十分まで空き時間はないと言います。せめて交代でも休憩がとれるような人員の確保が必要ではないでしょうか。労働省の通達に照らしても、適宜小休止、休息をとることができるようにするのが当然ではないでしょうか。
  141. 小林敬治

    政府委員小林敬治君) 公立養護学校学級編制及び教職員配置の改善につきましては、これまで数次にわたりまして改善計画を策定し、計画的にその改善を図ってきたところでございまして、現在、教員一人当たりの児童生徒数で言えば一・七人という状況になっております。  平成五年度から平成十年度までの六年間で、小中学部については第六次の、高等部につきましては第五次の教職員配置改善計画により計画的に改善が図られているところでございまして、例えば学級編制の標準につきましては、小中学部は七人から六人に、高等部につきましては九人から八人にそれぞれ改善をいたしますとともに、教職員の配置の改善としては、各障害状況の改善克服のための養護訓練の教諭等定数を改善するなど、きめ細かな措置を講じているところでございます。  現在の厳しい財政状況のもとではありますが、こうした改善計画の着実な推進に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  142. 阿部幸代

    阿部幸代君 現在の定数配置で子供を手放せないと言っているわけです。それに甘んじよということは、子供を手放してもいいということになってしまうんですね。それでいいはずがないんだと思うんです。ぜひ前向きの定数改善を急いで進めていただきたいと思います。  次に、妊娠した女性教職員の健康と安全対策についてです。  埼玉県の教職員組合が、毎年、妊娠出産に関する実態調査を行っています。九五年度の調査によりますと、四百五十一人中百五人、実に二四・一%、四人に一人が切迫流産になっています。無事に出産できた人は七七・六%。二一・六%、五人に一人が異常出産になっています。  こうした妊娠した女性教職員の切実な要求は体育の代替です。埼教組の調査によりますと、体育指導が免除されたのは百四十九人で、免除されなかった人は百十一人もいます。水泳指導を免除された人は百四十七人で、免除されなかった人は百七人もいます。  なぜこうしたことが起こるかといいますと、埼玉県では一九八一年から体育代替が配置されるようになったのですが、今でも妊娠者が一校に二名、一カ月以上重なるときという条件があるために趣旨が十分生かされないんです。東京都では時間講師により、また群馬県では代替教員により、妊娠者一人につき代替が確保される仕組みになっています。しかし、これはまだ全国的には少ない例なんです。  労働基準法上、妊産婦の労働軽減は当然であり、文部省による体育代替の制度化が急がれているのではないでしょうか。
  143. 小林敬治

    政府委員小林敬治君) 妊娠中の女子教員につきましては、母性保護の観点から、労基法により産前産後の休暇、軽労働への転換などの措置が規定されておりますほか、女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律によりまして産休代替教員の任用制度が設けられているところでございます。産前休暇に入る前につきましても、授業時数の軽減あるいは校務分掌上の工夫、体育実技につきましての指導方法の工夫など、各学校において教職員が協力し合う等によりまして職務上の負担軽減のためのさまざまな配慮がなされております。また、東京都のような例もございます。  このように、妊娠中の女子教員につきましては各県がそれぞれの実情に応じましてさまざまな方法により適切な保護措置を講じているところでございまして、文部省として体育代替教員を配置するということにつきましては、他の職種の職員との均衡もありまして困難であると考えております。
  144. 阿部幸代

    阿部幸代君 各校あるいは各都道府県任せですと妊娠した女性教師の労働軽減がなされないんですね。文部省が制度化をするとか指針を出すとか、それが今求められているということを強調して、最後なんですが、休憩室の問題です。  これは、妊娠した女性教職員ばかりではなくて、障害児学校教員の腰痛対策上はもとより、すべての教職員にとっても切実な要求です。  そこで伺いたいんですが、妊娠した女性教職員が横になりたいとき、一体どこで横になればいいんですか。埼玉県で休養室がある学校は二割にも満ちていません。
  145. 小林敬治

    政府委員小林敬治君) 休憩室の問題でございますけれども、休憩室は労働安全衛生規則によりまして、一定数以上の労働者を使用する事業所におきましては臥床できる施設として設けるべきことがいわば義務づけられているわけでございます。ただ、この場合には、常時五十人以上とかあるいは常時女子三十人以上という条件がございまして、学校関係でありますとかなり大きな学校でありますとか特殊教育学校のようなケース以外は余り該当しないだろうと思います。  文部省といたしましては、学校施設整備指針を策定いたしておりまして、その中で休憩室等についてもその設置に関する留意事項をお示ししてその整備充実推進するよう学校の設置者を指導してきているところでございます。  それから、児童生徒の減少等によりまして学校に余裕教室が生じてきているところが少なくないわけでございますが、文部省としては余裕教室活用指針を作成いたしました際に、教職員の執務環境の充実に資するためのスペースについても余裕教室の活用の例として示しているという事情でございます。今後とも、適切な学校施設整備が行われるように設置者に対し指導してまいりたいと考えております。
  146. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 四月十一日に続きまして、鹿児島県奄美大島に生息しています特別天然記念物アマミノクロウサギなど数多くの天然記念物についてきょうは伺いたいと思います。  ゴルフ場の開発が予定されている場所なんですけれども、文化財保護法の八十条は、天然記念物の保存に影響を及ぼす場合には文化庁長官の許可を受けなければならないと定めています。その同じ八十条が、影響の軽微である場合にはこの限りでないということで、言ってみれば相矛盾する書き方になっていると私は思うのですが、そのいずれをとるかということの判断は非常に重要なことだと思います。  もうこの地区がどのぐらい多くの絶滅危惧種や貴重な生物の生息地であるかということはあえてここで話題にいたしませんが、環境庁の調査はこのゴルフ場の予定地にははいれませんでした。それから次に、県の教育委員会は、業者の行った調査をもとに判断した上で長官の許可は必要ないという判断を下しています。  このような国際的にも非常に注目されている絶滅危惧種がいる場所を、そういった業者の行った調査で、しかも非公開で判断していいものなのかどうか、私は非常に疑問を抱いております。したがいまして、客観的な調査を行うべきではないのか。国の調査をこの地域に関してきちっと何らかの形で行う必要がある。そのことについてまず文化庁に御答弁いただきたい。  それから次には、「住用村市崎アマミノクロウサギ生息分布調査報告書」、平成六年七月に出されたものですが、やりましたのは財団法人鹿児島県環境技術協会、この提出を当委員会に求めましたが、これが提出されておりませんので、このことについての見解を文化庁に伺いたいと思います。
  147. 小野元之

    政府委員小野元之君) 御質問ございました特別天然記念物でありますアマミノクロウサギ等が生息いたします奄美大島について、ゴルフ場建設計画があって、先生指摘のような事態が生じていることは事実でございます。  御質問幾つかあったわけでございますが、まず第一点目の文化庁が調査すべきではないか、あるいは環境庁が調査すべきではないかという御指摘だと思いますけれども、この点につきましては、天然記念物の現状を変更し、またはその保存に影響を及ぼす行為をしようというときには、文化庁長官の許可を受けなければならないというのが先ほどの八十条の第一項にあるわけでございますけれども、ただし書きで、保存に影響を及ぼす行為につきましては影響が軽微である場合には、許可を要しないということにもなっておるわけでございます。  そういった観点から、県教委の方から私ども文化庁に対しまして、本件のゴルフ場の開発事業につきまして、県の文化財保護委員会での検討それから環境庁の調査結果等を踏まえまして、この事業につきましては、事業者が天然記念物につきまして適切な保護のための措置を講じるということを条件に、鹿児島県としては文化庁長官の許可を要する場合に該当しないと判断するけれども文化庁の判断はどうかという照会がなされているところでございます。  これにつきまして文化庁といたしましては、前回も御答弁申し上げましたように、必要的な諮問事項ではございませんけれども、事柄が重要なことであるということもございまして、文化財保護審議会の意見を聞いて慎重に対処したいというふうに考えておるところでございます。  それからもう一点の、業者が実施した調査結果でございますので、この報告については公表されていないわけでございます。この点でございますけれども、鹿児島県から私どもが話を聞いている限りにおきましては、業者が行った資料につきまして業者の方が現段階では公表しないということを前提にしておるというのが一点目でございます。  それから二点目は、これも県または国の意思形成、意思を決定する形成過程におきまして取得した情報であって、これを開示するということにつきまして意思形成に支障を与えるおそれがあるということの理由から公表しないということを言われておるわけでございます。  私どもといたしましては、文化庁は当然でございますがこの報告書を持っておるわけでございますけれども、これについては、県においていろんな事情それから情報公開条例等の規定の上から公表ができないということを承っておるわけでございます。この事柄自体については鹿児島県において御判断すべきことだというふうに考えておりますので、私どもとしてこれを公表するということを文化庁自身として行うということは考えていないところでございます。
  148. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 今、鹿児島県の情報公開条例とおっしゃいましたけれども、この情報公開条例は、対象となりますのは、「次に掲げるものとする。 県の区域内に住所を有する個人及び法人 県の区域内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体」となっております。  私は別に鹿児島県の県人ではございません。そして全く別の国会という場で、議事録にちゃんと委員会に御提出いただきたいというふうにきちっと書いてあります。私は委員会かまたは私個人でも結構ですがというふうに申し上げておりまして、そのことはこの県の情報公開条例で考えるのとは別のことではないかと思います。  委員長にお願いしたいのですが、国会法の十二章の百四条に、「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。」というのが、これは国会の方の国政調査権だと思いますので、この資料の提出を委員会として再度求めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  149. 小野清子

    委員長小野清子君) 理事会において検討させていただきたいと思います。
  150. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 よろしくお願いいたします。  では、続いてお願いをいたしますが、非公開というのは私は全く納得がまいりません。意思形成にというのはどういう意思形成なんでしょうね。そこでこれからゴルフ場をつくろうとしている事業者がやった調査をもとにこれは文化庁長官の許可が要らないという意思決定を県がやった。これは、少なくとも国際的にはレッドデータブックに三十年前から絶滅危惧種というふうに国際的に指定されている、日本国としても特別天然記念物に指定されている。何で業者がやった調査でいいんですか。しかも、この前も確認させていただいたように、環境庁はそこには調査に入っていない。しかもそこに、クロウサギだけが問題なのではなくて、天然記念物が数多くいることは当然御存じのことと思います。  ケナガネズミ、これは天然記念物です。オーストンオオアカゲラ、これも天然記念物です。オオトラツグミ、これも天然記念物です。ルリカケス、これも天然記念物です。アカヒゲ、これも天然記念物です。それからカラスバト、これも天然記念物です。それからアマミヤマシギ、これは種の保存法で指定されている国内希少種です。それからベニアジサシ、これはレッドデータブックの貴重種。それからコアジサシ、これも貴重種、レッドデータブックです。ヒャンというこれは両生類ですが、これも貴重種。それからオットンガエル、これは危急種。それからイシカワガエル、これは危急種。それからムラサキオカヤドカリ、これは天然記念物。  これだけのものについて、業者のやった調査は全部十分に科学的な知見にたえるだけの調査をやっているんでしょうか。このことについては、むしろ私は、当然文化庁がこれは県に任せるとおっしゃるということは大変国際的なそれこそひんしゅくを買うと思うんですね。こんなに国際的に注目されていることを、業者がやった調査で、しかも非公開でということは、全く納得がまいりません。  環境庁に伺いたいんですけれども、このような種の保存法の国内希少種も多々あるように、これは地域の科学者たちがボランティア的に調査した結果発見した生物ですけれども、そういったものについての調査をその地域ですることについてはどうお考えでしょうか。
  151. 小林光

    説明員小林光君) 環境庁としましては、平成五年から六年にかけましてアマミノクロウサギを初めとする希少鳥獣について奄美大島全体における分布状況を把握して、奄美大島において保護すべき地域はどこかという洗い出しを行うための調査をいたしました。今後も種の保存法などに基づきまして必要な調査につきましては継続してやっていきたいというふうに考えております。
  152. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 続けて環境庁に伺いますけれども、前回も伺いましたが、住用村のゴルフ場予定地には環境庁は入っていない、そこに入って調査する必要についてはいかがでしょうか。
  153. 小林光

    説明員小林光君) 先ほど御説明申し上げました環境庁の調査の結果では、奄美大島の希少野生鳥獣の生息環境として高樹齢の照葉樹林が重要という結論を得ているところでございます。調査目的はそれでほぼ達成できたというふうに考えております。
  154. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 大臣、世界的に貴重だと言われるものを、業者がやった調査でそれでいいかどうか、これは大変問題だと思います。今、国際化というお話も出ましたけれども、国際的にはこういった問題については情報を公開することがまず鉄則。  次に、国として特別天然記念物に指定しているもの、それから今天然記念物のものが七種あります。そういったものが住んでいるところのものをわざわざ、八十条はどっちに重く言っているかといいますと、やはり「文化庁長官の許可を受けなければならない。」と。それが非常に軽微な場合ということだとすれば、その判断は科学的知見に基づいてきちっと私たちが納得のいくように説明していただく必要があると私は思います。  それを一切科学的知見を示さないで、説明をしない、そして見せもしない、国会に出しもしない、それでこれは県に任せますというのは、私は文化庁としては大変無責任だと思います。国際的に通用しないと思います。そして、この問題は環境先進国などとは絶対に日本は言えない。自然環境を守るためにはどんなことをしてもそういった情報を公開して、十分に知見をお互いに知り合うということがもう今や国際的な鉄則ですので、ぜひとも大臣としてきちっとそのことをフォローしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  155. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 前回に続きましてのアマミノクロウサギについての御意見とお尋ねでありますけれども、今問題になっております公開、非公開、文部省としましてはこうでなければならぬという固定的な気持ちは持っておりませんが、現地の鹿児島県の教育委員会が非公開という方針をとっておられますから、そうかなという感じでおるわけでございます。  確かに、先生がおっしゃるとおり、この種の環境保存ということは大事でありますけれども、一方ではまた地方の自治体の考えを尊重するというような風潮もございますし、やはり鹿児島県の方針を尊重するのが私どもの、鹿児島県とは言いませんが、自治体の方針を尊重するのが中央政府、中央役所の大事な方針であるというようにも思うたわけです。
  156. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 大臣、これは国が指定しているんですよ、国の特別天然記念物。文化財保護法は国のことで決めていることですから、地方にそういう権限があるとはどうしても私は思えません。
  157. 小野元之

    政府委員小野元之君) 業者の委託を受けた調査だとおっしゃいますけれども、これは財団法人鹿児島県環境技術協会が調査されたものでございまして、調査委員会には専門の先生方もたくさんいらっしゃるわけでございます。この調査対象につきましては、先ほどお話にございました天然記念物の哺乳類、天然記念物の鳥類、それから植生及び希少植物種等につきまして、一応綿密な計画のもとで計画地における生息状況等を調査されたものでございます。  もちろん私どもとしては最終決定しているわけではございませんけれども、この具体的な中身につきまして、計画地の中に幾つかのルートを設定いたしまして調査をしたものでございます。その結果といたしましては、アマミノクロウサギについては、建設予定地内の調査ルート上ではふんあるいは体毛、そういったものが確認されております。ただ、巣穴とか繁殖用の穴といったようなものは発見されていないという報告を受けているところでございます。  文化庁といたしましては、この結果も踏まえ、審議会において慎重な審査を経た上で結論を出していただきたいというふうに考えているところでございます。
  158. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 的確にお答えください。  巣穴の調査はやったんですか、やらなかったんですか。
  159. 小野元之

    政府委員小野元之君) これは、ふんそれからふん粒等について調べておるわけでございますが、巣穴自体を目的として調査したものではないというふうに承っております。
  160. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ありがとうございました。
  161. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 私は、久しぶりにいじめ問題をやってみたいと思います。  いじめは相も変わらず起こっておりますけれども、衆参の文教委員会で随分質疑をされまして、いじめ問題はなかなか古くて新しいという問題じゃないかと思っております。随分いろんな議論をし、またいろんな御答弁も文部省の方からもお聞きしましたけれども、何度聞いても何かむだなような気もします。  私は、昨年の十二月十四日にいじめ問題でいろんな提案もさせていただきました。その中で、外部の力をかりないと自殺がもうブームになりますよというようなことを申しました。  そこで、お尋ねいたしますけれども、この質問の日付が十二月十四日ですから、そのときからきょうまでいじめが原因と思われる自殺が何件報告されているか、そして自殺の方法まで詳細にひとつ報告していただきたいと思います。
  162. 遠山耕平

    政府委員遠山耕平君) いじめがかかわったとうかがわれるような自殺事件につきましては、その都度都道府県教育委員会を通じて報告を求めているところでございます。  それから、児童生徒の自殺事件につきましては、毎年一回調査を行っておりますので、年間の件数は把握しておるわけでございますが、その自殺事件についてすべてその都度文部省報告が来ているものではございません。  したがいまして、平成七年の十二月十四日以降本日までに文部省から都道府県教育委員会に確認した自殺事件は全部で十二件ございます。これらの自殺事件の原因については現在もなお調査中で、いじめが原因であったかどうか特定できないものもございます。  現段階でいじめが原因であるというぐあいに考えられる自殺事件は、小学校で一件、山口県の徳山市で六年生の女子児童が自殺した事件、これが一件ございます。それから中学校で二件、福岡県の城島町で中学三年生の男子が自殺した事件、それから茨城県の関城町で中学二年の女子生徒が自殺した事件。この三件がいじめが原因で自殺があったということの報告を受けております。  これらの事件の自殺の方法でございますが、首つりあるいはマンションからの飛びおりという報告を受けております。  それ以外の九件につきましては、現在までのところ調査中でございます。あるいはいじめが原因であったかどうか特定できないという状況でございます。
  163. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 ただいまの御報告にありましたように、これはほとんど実際にはいじめの範疇に入るような事件だと思うんですね。その報告にしても調査にしても素早く対応できるかというと、今の御報告にありましたように、わからないのが九件あると言われておりますけれども、そんなことでこの問題は、例えばこういう委員会で本当にいろんなことを話してもどんどんどんどんおくれていって、実際には実効性がないというふうに思います。  私は、前にも言いましたけれども、いじめには種類があると。それは単純な言葉による暴力というものから、暴行、恐喝というような犯罪まで非常にさまざまだと思います。  前に、いじめは立派な犯罪ではないかとお聞きしたところ、前の島村文部大臣は、少年法上特別な扱いがなされておるわけですなんというような、少年法がどうのこうのというようなことで、何か質問しているこちらの意図と全然違う方向に答弁をされましたけれども、今の子供というのは、前にもこれも言いましたけれども、少年法で罰せられないなんということはもう知っているわけです。だから、そういうことを理解した上で私は奥田文部大臣にお尋ねをいたします。  こういう話も一つあるんです。このいじめの問題で一つ考えていただきたいのは、まあ現場の先生みんながこう思っているとは思いませんけれども、ある現場の先生、川越の方の川上さんという先生ですけれども、この人の話をちょっと紹介したいと思います。  私なんか現場の教師ですから、やれることをやるしか無い訳です。仕事ですからね。みんなちゃんと考えてくれないから困るんだけど、学校がやれるのは、例えば知識を与えることでしょう。それから生活の仕方も教える訳です。そういうことをするのが学校なんです。子供の悩みを聞くのは学校じゃないですよ。いつからそうなったんでしょうね。昔は違ってましたよ。この頃は教師にカウンセラーの役割をしなさいという要求がありますが、教師とカウンセラーの役割は全く違いますよ。教師というのは、生徒を押さえつけなきゃならないことが  いっぱいあるんです。カウンセラーなら、逆に生徒を受け入れて、心をほぐしたりする訳です。教師にカウンセラーをしろというならば変身しなきゃならない。三時間目に怒鳴っていた教師が、四時間目に、さあおいでなんてニコニコ出来ない訳ですよ、大河内君の自殺は、暴行や恐喝というほとんど犯罪といってもいいものが原因でしょう。あれを私たち教師は「超いじめ」と呼んでいます。しかしね、今の子供たちは、普通のことで簡単に死ぬようになったんです。ごく普通のちょっとしたからかいや、悪口めいたことを言われたぐらいで自殺する。「超いじめ」なら教師も察することが出来ますが、普通の人間関係で死んでいったら教師にはわかりません。ことは本当に深刻ですよ。 多少今の話は長くなりましたけれども、紹介をさせていただきました。  この先生の発言を踏まえて、奥田文部大臣になって初めて千葉のいじめ事件で局長を現地に派遣されたということですけれども、その報告をどう聞かれたのか。あわせて、現場の声もそういう声があるということで、大臣のいじめ問題について少しお聞きしたいと思います。
  164. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) 今、先生から千葉県流山市の生徒の自殺について具体的にお尋ねがございましたが、私は、この一月の末に緊急アピールそれから二月十日に教育長会議、あるいは教育関係の団体の皆さん方にお集まりをいただいて、数々のお願いなり向こうから貴重な御意見も聞かせていただきました。一通り文部省の衆知を集めていじめ問題についてお願いをしたと思っておりましたが、それでもなお続くわけですね。  あの流山校の場合、事件のございました翌日の新聞ではかなり具体的に報道されておりました。しかも、学級委員までやっていた男子生徒が自殺しているわけですね。これまで文部省が取り組んできた事柄に大事な落ち度があったのかどうかということ、あるいはお願いをしたことが教育委員会から学校の現場に的確におろしていただいておったのかどうか、こういうことを知りたい、そして今後の参考にさせていただきたい。  でございますから、私はあの翌日の新聞を読みまして、いても立ってもおれぬような気持ちで私が行くと言うたんです。ただ、私が現場の学校へ行くと今取り込んでおられるので大変御迷惑をかけると思うから、県の教育委員会へ行って教育委員会から今申し上げた二つのことを学校責任者に聞いていただくと。そうしたら、ちょうど衆議院で動いてあしたは参議院の予算委員会がありますよと。それはそちらが最優先やわ、じゃ済まぬけれども初中局長、私の気持ちを酌んで行っていただけませんかと。それで行ってくださったわけですね。それで、距離が近いですから夕方お帰りになって、そして調査結果を聞かせてもらいました。  しかし、県の教育委員会とて地元の学校から詳細について一部始終聞かせていただいて、それでわかったというところまではいかないわけですね、すぐその直後には。地元の教育委員会、流山市の教育委員会がいろいろ学校と御相談をいただいて、五人で調査委員会をおつくりになって、専門家の方もお入りいただいておるようです。そして、七月には一応の結論を出したいという方針を打ち出していただいておるようでございますから、当然七月には我々のところにもその報告が来るというように期待をしておるわけであります。  いずれにしましても、私どもはこれで全国教育委員会にお願いした、しかし抜けておるのか、足りない点があるのか、あるいは的確に現場の先生までおろしていただいておるのか、これをどの教育委員会についても県の教育委員会から検証してみたいなと、こう思っておるんです。  この五月十日でございましたか、来年度の教員の新規採用につきましてのいろいろ御意見を聞く教育長会議がございますから、よい機会でございますから、もう一遍その機会に今の問題を提起して御意見を聞いてみたいと、このように思っております。
  165. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 ぜひ大臣には活動していただきたい、いろんな行動をしていただきたいと思いますけれども、実態としてはそういった思わぬ事件が起きてしまうというのが実態だと思うんですね。文部省や役所が思っているような形ではない事件といいますか、そういったいじめの問題が出てくるわけです。  私たちは、前にもこれは質問しましたけれども、先ほどの先生の話にもありますように、カウンセラーの役というのは非常に難しいんですよ。僕はスクールカウンセラーという人がどんな人がなるのかわかりませんけれども、私が前に一応こういう人はどうかなと言ったのは、例えば警察のOBだとかOGだとか、そういった外部の人を改めて雇って教育の現場にそういう人たちも配置したらどうかという話をしました。  それがどうも役所的なことで言うと、そういう外部の人を雇って管理したり、それからほかの役所から天下ってくるのが嫌だとか、この管轄の中にそういう人たちを入れるのは嫌だとかというような、別の方向で何か嫌がっているんじゃないかと。現場の先生たちはそういうカウンセラーを本当にやってくれる人たちを入れたいんだけれども、何かスクールカウンセラーという、さっきどなたか先生のお話にもありましたけれども、それだけでこの問題は解決するかどうか。  そういうことで言いますと、私が前にも提案しました警察OGだとかOBだとかという人たちを、部外者の活用をもっと検討してこの問題に積極的に当たるべきじゃないかなというふうに思いますけれども、その辺についてもう一度大臣にお伺いしたいと思います。
  166. 奥田幹生

    国務大臣奥田幹生君) スクールカウンセラー、日本語で言いますと臨床心理士といいますか、いろいろ悩み事の相談をしてくださる人を週に二回四時間ずつ八時間お願いをしておるわけで、これは始まってまだ一年余りしかたちませんが、それはそれで割合高い評価をちょうだいしておるというように思っております。  ただ、先生がおっしゃる元警察官とかということ、これはだめだと言っているんじゃないんですよ。むしろ、個性ある教育をしていくためには、そういうやる気のある元警察官であるとかあるいは剣道の達人であるとか、それから高等学校の場合は模範的な中小企業経営者地域から尊敬されているようなお方は臨時の講師としてお話を聞いてもいいですよと、現にそれを実行しておるようなところもあるわけですね。それはそれで先生のせっかくの御提言、これはもう文部省も私は必要なときには現場と学校責任者が取り入れておる。  現に報告が来ておりますのにも、群馬県で警察官の場合には柔道の方をお迎えしておるとか、柔道整復師の方を、これも群馬県、それから酪農、それから太極拳は愛知県、それからなぎなたは宮崎県と熊本県というように、そういう学校の主体的な考えによって来てもらって、これはもちろん定員の枠外でありますけれども、必要に応じてお話を聞いたり実技を指導してもらっておるというようなことでございます。それはそれで私は大事な、いいことだと思っております。
  167. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 一言、最後に。  いじめの問題はもう本当にいろんな角度があって、私はいじめとマスコミ報道についてとかその辺ももうちょっとお聞きしたがったんです。先日のTBSの問題も含めて、ああいったことの社会の風潮によっていじめ問題というのもまた起きてくるんじゃないかというようなことも質問したかったんですが、ちょっと時間がないのできょうは終わらせていただきますけれども、そういう具体的なこともぜひ早急に検討していただきたいと思います。  質問を終わります。  ありがとうございました。
  168. 小野清子

    委員長小野清子君) 以上をもちまして、平成八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 小野清子

    委員長小野清子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十一分散会      —————・—————