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1996-05-07 第136回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月七日(火曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    委員異動  四月九日     辞任         補欠選任      小林  元君     鈴木 正孝君      萱野  茂君     松前 達郎君  四月十日     辞任         補欠選任      海老原義彦君     井上  孝君      釜本 邦茂君     岡野  裕君      依田 智治君     世耕 政隆君      松前 達郎君     萱野  茂君  四月十一日     辞任         補欠選任      井上  孝君     海老原義彦君      世耕 政隆君     依田 智治君      谷川 秀善君     鈴木 栄治君      山本 一太君     村上 正邦君  四月十七日     辞任         補欠選任      笠井  亮君     立木  洋君  四月十八日     辞任         補欠選任      萱野  茂君     竹村 泰子君      立木  洋君     笠井  亮君  四月十九日     辞任         補欠選任      竹村 泰子君     萱野  茂君  四月二十六日     辞任         補欠選任      依田 智治君     坪井 一宇君      齋藤  勁君     竹村 泰子君  四月三十日     辞任         補欠選任      坪井 一宇君     依田 智治君      竹村 泰子君     齋藤  勁君     ――――――――――――― 出席者は左のとおり。     委員長         宮崎 秀樹君     理 事                 板垣  正君                 矢野 哲朗君                 吉田 之久君                 齋藤  勁君     委 員                 海老原義彦君                 岡野  裕君                 狩野  安君                 鈴木 栄治君                 村上 正邦君                 依田 智治君                 大久保直彦君                 鈴木 正孝君                 友部 達夫君                 永野 茂門君                 萱野  茂君                 角田 義一君                 笠井  亮君                 聴濤  弘君    国務大臣        国 務 大 臣       (内閣官房長官)  梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  中西 績介君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  臼井日出男君         ―――――        会計検査院長   矢崎 新二君         ―――――    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        藤井  威君        内閣官房内閣外        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房外政審議室        長        平林  博君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        人事院事務総局        給与局長     小堀紀久生君        人事院事務総局        職員局長     佐藤  信君        内閣総理大臣官        房管理室長    安藤 昌弘君        国際平和協力本        部事務局長    高野幸二郎君        総務庁長官官房        長        河野  昭君        総務庁長官官房        審議官      菊池 光興君        総務庁行政監察        局長       大橋 豊彦君        総務庁恩給局長  石倉 寛治君        防衛庁参事官   小池 寛治君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛庁経理局長  佐藤  謙君        防衛施設庁長官  諸冨 増夫君        防衛施設庁総務        部長       大野 琢也君        防衛施設庁施設        部長       小澤  毅君    事務局側        事 務 総 長  黒澤 隆雄君        常任委員会専門        員        菅野  清君    衆議院事務局側        事 務 総 長  谷  福丸君    裁判官弾劾裁判所事務局側        事 務 局 長  中川 俊彦君    裁判官訴追委員会事務局側        事 務 局 長  舟橋 定之君    国立国会図書館側        館     長  緒方信一郎君    説明員        警察庁長官官房        教養課長     小堀  豊君        環境庁自然保護        局国立公園課長  下   均君        外務省欧亜局ロ        シア課長     原田 親仁君        厚生省年金局年        金課長      阿曽沼慎司君        郵政省年金局経        営企画課長    藤岡 道博君        労働省郎政局労        政課長      菅原 英夫君        労働省労働基準        局労災管理課長  播   彰君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○平成八年度一般会計予算内閣提出衆議院送  付)、平成八年度特別会計予算内閣提出、衆  議院送付)、平成八年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)について  (皇室費国会所管会計検査院所管内閣所  管及び総理府所管総理本府、日本学術会議、  国際平和協力本部宮内庁総務庁北方対策  本部を除く)、防衛本庁防衛施設庁))     ―――――――――――――
  2. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月九日、小林元君が委員辞任され、その補欠として鈴木正孝君が選任されました。  去る四月十日、釜本邦茂君が委員辞任され、その補欠として岡野裕君が選任されました。  また、去る四月十一日、谷川秀善君及び山本一太君が委員辞任され、その補欠として鈴木栄治君及び村上正邦君がそれぞれ選任されました     ―――――――――――――
  3. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事齋藤勁君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 去る五月一日、予算委員会から、五月七日午後の半日間、平成八年度総予算中、皇室費国会所管会計検査院所管内閣所管及び総理府所管のうち総理本府、日本学術会議国際平和協力本部宮内庁北方対策本部を除く総務庁防衛本庁防衛施設庁について審査委嘱がありましたので、御報告いたします。  この際、本件を議題とし、順次予算説明を聴取いたします。  予算説明につきましては、国会所管及び会計検査院所管以外は去る二月十六日の本委員会におきまして既にこれを聴取しておりますので、この際、国会所管及び会計検査院所管予算説明を聴取いたします。  まず、国会所管のうち衆議院関係予算説明を求めます。谷衆議院事務総長
  6. 谷福丸

    衆議院事務総長谷福丸君) 平成八年度衆議院関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成八年度国会所管衆議院関係歳出予算要求額は六百八十五億四千七百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと九億七千六百万円余の増加となっております。  次に、その概略を御説明申し上げますと、第一は国会運営に必要な経費でありまして、六百四十七億五千七百万円余を計上いたしております。  この経費は、議員関係の諸経費職員人件費並びに事務局及び法制局事務を処理するために必要な経費でありまして、前年度に比し二十五億千二百万円余の増加となっておりますが、その主なものは、議員歳費議員鉄道乗車証等利用に係る経費及び国会会議録フルテキストデータベース構築等立法情報システム関係経費等増加によるものであります。  第二は、衆議院施設整備に必要な経費といたしまして、三十七億八千三百万円余を計上いたしております。  この主なものは、平成九年度完成を目途とする第二別館の増築費憲法五十年憲政記念館記念ホール整備費国会審議テレビ中継設備整備費及び本館等庁舎の諸整備に要する経費並びに国会周辺等整備に必要な土地購入費でございます。  第三は、国会予備金に必要な経費といたしまして、前年度同額の七百万円を計上いたしております。  以上、簡単でありますが、衆議院関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  7. 宮崎秀樹

  8. 黒澤隆雄

    事務総長黒澤隆雄君) 平成八年度参議院関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成八年度国会所管参議院関係歳出予算要求額は三百九十三億七千五百万円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと十三億六千六百万円余の減額となっております。これは前年度に計上いたしました第十七回参議院議員通常選挙に伴う改選関係経費減額したこと等によるものでございます。  次に、その概略を御説明申し上げます。  第一は、国会運営に必要な経費、すなわち議員関係の諸経費職員人件費及び事務費等でありまして、三百七十四億二千万円余を計上いたしておりますが、国会会議録フルテキストデータベース構築に必要な経費の計上を初め、議員活動を支援するための業務機械化経費調査機能拡充強化経費等につきまして増額いたしております。  第二は、参議院施設整備に必要な経費でありまして、十九億四千九百万円余を計上いたしております。これは公共投資重点化枠による情報メディア対応施設整備並びに国会審議テレビ中継設備整備及び本館その他庁舎等施設整備に要する経費でございます。  第三は、国会予備金に必要な経費でありまして、前年度と同額の五百万円を計上いたしております。  以上、平成八年度参議院関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  9. 宮崎秀樹

  10. 緒方信一郎

    国立国会図書館長緒方信一郎君) 平成八年度国立国会図書館関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成八年度国会所管国立国会図書館関係歳出予算要求額は百六十七億五千七百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと五億三千六百万円余の増額となっております。  次に、その概要を御説明申し上げます。  第一は、管理運営に必要な経費であります。  その総額は百三十五億三百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと五億八千百万円余の増額となっておりますが、これは主として関西館建設準備経費図書館業務機械化国会会議録フルテキストデータベース構築等国会サービス充実のための経費図書館資料収集のための経費等についての増額及び退職手当等人件費増加に伴うものであります。  第二は、科学技術関係資料購入に必要な経費でありまして、五億六千三百万円余を計上いたしております。これを前年度予算額と比較いたしますと二千五百万円余の増額となっております。  第三は、施設整備に必要な経費でありまして、二十六億八千九百万円余を計上いたしております。これは、本館改修に要する経費関西館基本設計及び用地の取得に要する経費支部上野図書館庁舎改修経費等でありまして、前年度予算額と比較いたしますと七千万円余の減額となります。  以上、国立国会図書館関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  11. 宮崎秀樹

  12. 中川俊彦

    裁判官弾劾裁判所参事中川俊彦君) 平成八年度裁判官弾劾裁判所関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成八年度国会所管裁判官弾劾裁判所関係歳出予算要求額は一億二千百九十万円余でありまして、これを前年度予算額一億一千八百一万円余に比較いたしますと三百八十八万円余の増加となっております。  この要求額は、裁判官弾劾裁判所における裁判長職務雑費委員旅費及び事務局職員給与に関する経費、その他の事務処理費並びに裁判官弾劾法に基づく裁判官弾劾裁判に直接必要な旅費庁費でありまして、前年度に比し増加となっておりますのは、職員給与関係経費等増加によるものであります。  以上、簡単でありますが、裁判官弾劾裁判所関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  13. 宮崎秀樹

  14. 舟橋定之

    裁判官訴追委員会参事舟橋定之君) 平成八年度裁判官訴追委員会関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成八年度国会所管裁判官訴追委員会関係歳出予算要求額は一億三千五百二万円余でありまして、これを前年度予算額一億二千八百十二万円余に比較いたしますと六百九十万円余の増加となっております。  この要求額は、裁判官訴追委員会における委員長職務雑費及び事務局職員給与に関する経費並びに訴追事案審査に要する旅費その他の事務費でありまして、前年度に比し増加となっておりますのは、職員給与関係経費等増加によるものであります。  以上、簡単でありますが、裁判官訴追委員会関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  15. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 以上をもちまして国会所管予算説明聴取は終わりました。  次に、会計検査院所管予算説明を求めます。  矢崎会計検査院長
  16. 矢崎新二

    会計検査院長矢崎新二君) 平成八年度会計検査院所管歳出予算について御説明いたします。  会計検査院平成八年度予定経費要求額は百五十五億一千四百五十六万四千円でありまして、これは日本国憲法第九十条及び会計検査院法の規定に基づく本院の一般事務処理及び検査業務を行うために必要な経費であります。  今、要求額の主なものについて申し上げますと、第一に、人件費として百二十九億八千九百四十六万七千円を計上いたしましたが、これは総額の八三・七%に当たっております。このうちには、会計検査充実を図るため、調査官六人、一般職員七人、計十三人を増置する経費も含まれております。  第二に、旅費として八億一千四百九十七万九千円を計上いたしましたが、このうち主なものは、検査旅費が七億一千九十三万七千円、海外検査等外国旅費が二千八百五万九千円であります。  第三に、施設整備費として三億八千三百五十一万四千円を計上いたしましたが、このうち主なものは、不動産購入費二億二千三百八万六千円、宿舎改修工事費七千四百十三万八千円、庁舎事務室等改修工事費四千八百五十四万八千円であります。  第四に、その他の経費として十三億二千六百六十四万四千円を計上いたしましたが、このうちには、検査の円滑な実施を図るための会計検査活動費一億六千四百三十四万二千円、会計検査充実強化のための経費七千九百五十三万五千円、検査業務効率化を図るための経費四億三千七百五十万円及び検査要員等充実強化のための研究・研修体制整備経費二億七千七百九万六千円が含まれております。  ただいま申し上げました平成八年度予定経費要求額百五十五億一千四百五十六万四千円を前年度予算額百五十二億二千二百四十一万六千円に比較いたしますと、二億九千二百十四万八千円の増加となっております。  以上、簡単でありますが、本院の平成八年度予定経費要求額概要の御説明を終わります。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  17. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 以上で予算説明聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  18. 依田智治

    依田智治君 自由民主党の依田智治でございます。  参議院予算委員会における審議もいよいよ大詰め、今週中には決着をつけないと自然成立ということになるわけです。この委嘱審査トップバッターを承りましていささか緊張しております。ひとつよろしくお願いいたします。  予算委員会の総括で、実は二十三日に私、ちょうど日米安保共同宣言が出た後でございましたので、安全保障とはそもそもどういうことなんだろうかというようなこと、それからその基本である憲法自衛権の問題、さらにガイドラインとか沖縄基地問題等について片道二十五分いただいて質問いたしました。ただ、初めてでしたのでしゃべり過ぎたら時間がないとかいろいろございまして、ちょっと詰まっていない問題がございます。  憲法自衛権の問題で私としてもう少し詰めておきたいという問題がありますので、これを法制局中心に質問させていただきたいと思います。  なお、日米共同宣言の中でもうちょっと触れたいと思ったんですが、時間の関係で触れられなかった問題として、要するにアジア地域における安全保障というものをどう考えるか。日米安保を基軸としつつこの地域に安定した安全保障環境を構築するということは極めて重要なことですので、これは日米安保を強化することもさることながら、並行しつつ真剣に取り組む課題である、こういう認識を持っておったわけです。  たまたま先般、防衛庁長官として初めて訪ロされました。これは旧ソ連以来初めてでございまして、もちろん旧ソ連時代には防衛庁長官が訪問するなんという環境は全くなかったわけですが、冷戦構造崩壊後こういう状況の中で初の訪日をされ、日ロ防衛首脳会談なりでいろいろ意見を交換された後、今後の信頼醸成等についてのいろんな措置を話し合い署名してきたというちょうど直後のこの内閣委員会でございますので、ぜひこの問題を取り上げて考えてみたい、こう思うわけでございます。  ロシアの問題を考える場合に、ロシアのペレストロイカその他、その後の状況というもの、内政というのは果たしてどうなっているんだろうかと。それがまさに基盤であり、六月には大統領選が行われて、改革路線を推進しているエリツィン大統領が果たして再選されるんだろうかとか、いろいろ問題があるわけです。軍産複合体等ありますが、これの軍民転換というような問題についても非常に困難を極めている。その他、戦略核の軍縮というのも署名はしたものの進展するには膨大な金がかかるというような問題、かてて加えて我が国とは北方領土の問題があるというようなことで、今後詰めるべき問題が非常にあるわけでございます。  そういう中においても、この日米安保共同宣言の後、総理が行かれて渡りをつけて、防衛庁長官が行かれたということで、私は大変な成果であると思います。行ったこと自体が大変なことであり、また今後の問題はこれからまさに始まることだと思いますが、そういう意味におきましても非常に意義あることであったと思いますので、当の訪日されました臼井防衛庁長官に、訪ロしていろいろ会談を持ったその率直な御感想と、大臣自身としてのこの問題についての評価というか、どういう感じでおられるか、この点をまず冒頭お伺いしたいと思います。
  19. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) ただいま委員御指摘のとおり、今次の訪日防衛庁長官として史上初めてのものでございますが、これは三月二十日の日ロ外相会談、そして四月十九日の日ロ首脳会談におきまして一九九三年の東京宣言に基づいて日ロ関係というものを発展させていくということが確認されましたことを受けまして、そのような発展一環として実現をいたしたものでございます。日ロ間の対話の幅を広げたということで、政治的な意義があるものと考えております。また、今回の訪日が四月十七日に日米首脳間で合意されました日米安全保障共同宣言によりまして日米安全保障体制重要性というものが再確認された上で実現をしたということは、政治的なタイミングとしても適切だったと認識をいたしております。  グラチョフ国防大臣との会談におきましては、東京宣言に基づく日ロ関係発展一環として今般の会談実現をしたことに双方で満足の意を表した次第でございまして、その上で日ロ双方防衛政策日ロ防衛当局間の対話交流、そしてアジア太平洋地域安全保障にかかわる情勢につきまして自由な意見交換を行うことができたのでございます。特に、双方透明性の拡大、相互交流等分野におきまして、双方信頼醸成をしていくために数多くの措置について調整を進めていくことにつきまして意見が一致したわけでございまして、会談における議事録を作成し、署名し、これを確認できましたことは、安全保障対話防衛交流分野において両国関係をさらに進展させていく道筋ができたものと評価をいたしている次第であります。
  20. 依田智治

    依田智治君 日米安保共同宣言が出された後であり、それを受けての訪ロということで、私はこの日米安保というものについてロシアがしっかりとこの重要性なりなんなりを認識され、それでまた世界情勢、特に極東アジア我が国周辺における情勢というものについて同様な認識を持って今後地域における安全保障体制を確立していくということが大変重要なことじゃないかと思っておるわけでございますが、このような問題につきましてはこの会談におきましてどのような具体的なやりとりがあったのか、特にロシア側首脳認識というのを承りたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
  21. 小池寛治

    政府委員小池寛治君) 今回の日本ロシア防衛首脳会談においてはアジア太平洋地域情勢について意見交換をいたしました。  まず、臼井防衛庁長官の方から次のような我が方の認識を示した次第です。  アジア太平洋地域においては、ようやく芽生えてきたASEAN地域フォーラムなどの多国間あるいは二国間の安全保障対話我が国として支援していくつもりである。北朝鮮については、東アジア地域安全保障不安定要因となっている。  最近も休戦協定違反などの懸念すべき動きがあった。北朝鮮が四者会合の提案を遅滞なく受け入れる方向に行くことを我が国としては期待している。中国につきましては、アジア太平洋地域の安定と繁栄を確保していくためには引き続き我が国中国との建設的な関係を進めていく考えであるということを申し伝えました。  それに対して、ロシアグラチョフ国防大臣からは次のような認識が示されました。  まず、北朝鮮情勢についてでありますが、北朝鮮休戦協定違反のために朝鮮半島における問題の解決がおくれている。ロシアとしては、朝鮮半島の統一、これは朝鮮民族のみずからの意思によって進められるべきであると考える。しかし、これには恐らく時間がかかるであろう。ロシア米韓首脳により提案された四者会合に注目している。ロシア朝鮮半島問題の平和的解決に向けたいかなる方策も支持する方針であるけれども、すべての関心国が参加するアプローチの方が合理的であると考えている。中国情勢につきましては、ロシア中国と緊密な関係を図っていきたいと考えている。しかし、中ロ関係の改善というものはいずれの第三国にも対抗するものではないということをグラチョフ国防大臣は述べておられました。  総じて、アジア太平洋地域の諸国間で対話を強化していくこと、朝鮮半島問題の平和的解決が必要であるといったような点について日本ロシア双方認識基本的に一致したものと考えております。
  22. 依田智治

    依田智治君 これからいろいろ安全保障対話を進め、アジア地域における安全保障環境をより安定的なものにしていくためには、やはり北朝鮮さらに中国を話し合いのテーブルに着けていくということが極めて重要であるわけでございます。特にこの両国につきましては、日米安保強化というか、こういう共同宣言というような問題についても非常にセンシティブな反応をしておるわけでございます。そういう中にあって、ロシアが我々と共通な認識を持ちつつ、中国北朝鮮をそういう話し合いのテーブルに引きつけるという意味で極めて重要だと思うわけですね。  そういう意味で、今基本的に御説明あった路線でいろいろ我が国としては透明性なりこの地域での信頼性の向上に努めていく必要があると思いますので、今後ともあらゆる機会にそういう方向で御努力をお願いしたいと思うわけでございます。  ところで、長官はこのロシアの現地部隊を直接視察されましたが、これは冷戦時代だったら到底考えられないことです。現地部隊を視察されたり、いろいろ意見交換されたわけですが、白書なりこの間の防衛大綱等を見ましても、ロシア冷戦構造崩壊後いろいろ軍縮等に努めているけれどもなお巨大な戦力が残っておるという認識もあり、そういう面から注意を要するということが指摘されているわけでございます。  そういう意味で、冷戦構造崩壊ロシア軍というのは全体としてどんな状況になっておるのか、特に極東ロシア軍というものはどのような削減状況になっておるのか。数は削減しても、現実には近代化を進めている部分もあるようでございますが、そのあたりの概略を国際参事官の方からで結構でございますので御報告をお願いします。
  23. 小池寛治

    政府委員小池寛治君) ロシア軍、特に極東ロシア軍の現有兵力あるいは近代化の状況についての御質問ですけれども、今回の日ロ防衛首脳会談においてグラチョフ国防大臣ロシア軍について我が方に次のように説明いたしました。  ロシア軍の再編については、機動部隊を創設し、定員、装備の削減を図り、徴兵・志願混合制システムの構築に努めている。また、必要なインフラの整備を進めている。極東ロシア軍については、九五年までにロシア東部の軍事力を十五万人削減した、太平洋艦隊は八五年以来半減している、このような説明がございました。  防衛庁といたしましての見方ですけれども、現在ロシア軍は軍の再編を実施しており、海外駐留部隊の撤退はほぼ完了して、兵員数も削減されているというふうに見ております。しかしながら、経済の低迷によって必要な予算が配分されないことなどから、軍の再編は予定よりおくれている模様だと判断しております。それから、極東ロシア軍につきましては、近年、量的には確かに減少傾向を示しております。例えば地上兵力は約二十二万人、二十六個師団、艦艇は約六百七十隻強、約百七十万トン、作戦機約一千機程度というふうに見ております。  このように、依然として戦略核戦力を含む大規模な戦力が蓄積された状態には変わりはございません。また、ペースは緩やかになったものの、アクラ級原子力潜水艦の建造、配備などの近代化も続いております。他方、厳しい財政事情などもあって活動は全般的に低調であり、士気も低下しているものというふうに判断しております。
  24. 依田智治

    依田智治君 今ロシア軍、特に極東ロシア軍の戦力の状況について概略説明があったわけですが、極東ロシア軍等を減らしたといってもなお二十二万人ということです。別の平和・安保研の資料を来る前にちょっと見ましたところ、二〇〇〇年までにロシアの戦術潜水艦は、原潜でおおむね四十九から五十五隻、通常潜水艦で三十七から四十一隻というような数字が出ております。  それで、現在STARTⅡというのは署名したけれどもなお批准はされていないというように理解しております。これで三千発まで核弾頭を下げようという、今一万発以上にわたる核弾頭を持っているわけで、これを三千発まで減らそうというドラスチックな計画があるわけですが、膨大な費用がかかるとかその他いろんな諸条件を設けてロシアはまだ批准していない。しかし、これがもし批准されて、膨大な金をアメリカ初め関係国が支援して減らしたとしても、この三千発というものがまだ核弾頭として残る、そういう意味からしてもなお巨大な核戦力を持つ軍事力というものが残る、こういう状況にあるわけです。  そこで私がちょっと心配しておりますのは、後ほどちょっと外務省等にお伺いするんですが、その後の経済改革等の情勢がなかなかうまくいっていないという中でこれだけの膨大な軍備の管理、核なんかの管理というようなものが本当にしっかりと行われているのか。行われていないとしたら大変なことでございますし、巨大な軍需産業を何とか民営化しようとしても、それをするためには膨大な金がかかる。  そういう点も考えますと、軍備の輸出というか、そういう面で生きる道を探さにゃいかぬというような要素もあるわけでございまして、そのあたりも踏まえまして、この巨大な軍の指揮掌握というか、こういう点については外国の内部事情の問題もあるわけですが、防衛庁長官、現場の部隊等を拝見し、また参事官の方ではいろいろ情報等を集めてみたところ、いろんな新聞には給料は遅配、欠配だとか、志願者は応じないのが大勢いるとか、大変な士気の低下であって非常に問題だと、そのために現在のエリツィン政権に反発して、旧制度の方の候補者にむしろ支持が行っているとか、いろんな状況が報道されています。実際上この巨大な軍事力というものが十分管理されておるんだろうかという問題、答えにくいかと思いますが、ちょっと率直な感想をお聞かせいただければありがたいと思います。
  25. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 短時間の、約二時間程度の会談でございましたので、双方とも基本的なことを言うという形でございましたので、意を尽くせないところも多くございました。しかし、先ほど委員お話しのとおり、STARTⅡにつきましても積極的に前向きにやるという表明をいただいたところでもございます。  また、軍の士気というものは比較的低下をしているんじゃないかという感じを持ったわけでございますが、しかしながら統制面における混乱というものは特に見られない、このように思っております。  また、政治状況も、六月に大統領選挙があるわけでございますが、外信の最新の調査によると、エリツィンさんが初めて一位になれた、アンケート調査でもって一位になれたという状況もございまして、そういう意味では、先ほどお話しの給料の遅配等の問題はございますが、こういうものをクリアされればまた新しい局面も開けてくるんじゃないかということを感じた次第でございます。  また、ロシア軍は総体的に技術水準は高いものを保持しているという感じを受けて帰ってまいった次第であります。
  26. 依田智治

    依田智治君 この巨大なロシア軍をいかに適正規模に縮小していき、それでその縮小して退役する軍人の皆さん等もいろんな経済機構の中で十分吸収できるというような体制が本当に早く来ることを望むわけでございますが、いずれにしましてもそういう状況になるまでには大変な時間がかかるのではないか、こう感ずるわけでございます。  そこで、実は私二年前に、まだ民間の経済界で同友会というところに入っていましたときにロシア・ミッションということでモスクワへ行って、向こうの経済界の人たちといろいろ話をした機会があったわけです。私はその一回しか行かなかったのですが、その二年前に第一回ミッションで行った人たちは、当時いろいろ銀行の関係者とか政府関係者と話していて経済用語が飛び出しても向こうはちんぷんかんぷんだったというんですね。話を全然理解しない。ところが、その後二年たって行ったときの印象は、もうこちらが言う前に先取りして非常に経済用語が飛び出す、経済、金融、財政関係の言葉が飛び出すというようなことで、大変勉強しているなという印象が非常に強かったわけであります。  しかし、私がそのときにこれでやっていけるんだろうかと感じたのは、その前年、物価が一年に二十六倍になったんですね。二十六倍の物価というと、年金生活者とかその他どうなっちゃっているんだろうかと。何とかそれが鎮静化したといったって、膨大な物価上昇率になっているというような状況でございました。  それにまた軍民転換の問題がある。ロシアでは軍需産業が相当な部分を占めているんです。しっかりとした自由競争の体制ができて民営化するならいいんですが、巨大な一つの独占体制のまま民営化するとなると、何かその利権を一人がとって、そして民営化しても競争がない、価格なんか自由に設定できるというような状況もあり、宇宙開発のロケットなんかやっている会社も民営化しちゃった。これはまさに国策企業みたいなのを民営化して、それだけじゃ到底やっていけないので、半分は日本の三洋からフードプロセッサーみたいなものを機械を外しちゃった広いところで組み立てていました。これは日本円で大体二千円くらいだというような話をしていましたが、これでは何万人といる企業の労働者を到底養っていけないんじゃないかなというような感じをつくづく受けたんです。  極東地方というのは特に遠隔の地で、軍需産業が相当多いわけです。交通だけでも膨大な費用がかかる。その値段も物すごく上がっていますから、極東地域に住んでいる八百万の人たちというのが生活していくにはよほどの中央の支援がなければやっていけない。しかし、日本にとってはこの極東地域というのは極めて重要で、橋本総理との会談等でも極東におけるいろんな開発等でも今後いろいろ協力していくというような方向が打ち出されておりまして、それはまさに結構だと思うんですが、やっぱりモスクワ等から非常に遠隔な地で行き来だけでも膨大な金がかかる上に、何か政府で半分くらい補助したりしていろいろやっているようであります。しかし、資源の宝庫であり、いろいろある。  こんなことで、これからまさにこういうものを開発していかにゃいかぬという状況にあるわけですが、六月のロシア大統領選挙を前にして国内の経済情勢というものは、物価とか生産量がぐっと落ち込んでいましたが、そのあたりの状況というのは現状ではどうなっているんでしょうか。外務省の方に来ていただいていますので、ちょっとお願いします。
  27. 原田親仁

    説明員(原田親仁君) ロシアの経済状況についてでございます。ソ連が解体して以後、経済改革は約四年余り過ぎておりますが、その進展状況につきまして、ただいま先生御指摘の物価あるいは民営化の進展状況について数字を御紹介して御説明したいと思います。  民営化につきましては、本年三月までに国家登録企業二十四万のうち約十二万三千社が民営化されておりまして、九五年のGDPの七〇%、九四年は六二%だったそうですが、九五年は七〇%が非国営部門で生産されているということで、これまで一定の進展を見ております。  それから、物価動向につきましては、先ほど先生御指摘のように、九二年には年間二十六倍であったわけですが、九三年には十倍の物価上昇を記録いたしました。その後、緊縮財政の効果によりまして九四年の物価上昇は三・二倍、昨年はさらに二・三倍まで鎮静化しております。ロシア政府は本年の月間インフレ率目標を平均一・九%、これは年間一・二五倍になりますが、に設定しております。ことしに入ってインフレは改革開始以来最低の水準に落ちついております。これは月間二%台になっております。  さらに、GDPの動向でございます。ロシアではGNP統計は作成しておりませんので、GDPの動向を御紹介したいと思います。  工業生産はこれまで停滞、縮小を続けてまいりましたけれども、昨年来、好調な輸出を背景といたしまして下げどまりの傾向が出てきております。このため、九五年のGDPはマイナス四%、九四年はマイナス一二・六%でございましたので、マイナス四%と下げどまりの傾向が見られております。本年第一・四半期についてもほぼ同様の水準でございます。  これらは肯定的な傾向でございまして、この反面、マイナスの面もございます。  例えば企業が抱える巨額の債務、これは昨年末現在でGDPの一四%を占めております。さらに生産投資の低迷、これは九五年の投資額は対前年比でマイナス一三%となっております。さらに失業、これは二月の完全失業率は八・五%、対前年同期比で一%増となっております。このほか、貧富の増大も非常な勢いで進んでおります。  そういった意味で、プラスの面もございますがマイナス面もあって、ロシア経済はいまだ困難な状況にあるということが言えると思います。
  28. 依田智治

    依田智治君 やはり我が国の安定した物価状況とかそういうものから比較したりしますと、まだまだ大変な状況にあると。そういう中で、先ほど防衛庁の方から御説明いただきましたように、まだ核を含む巨大な軍事力を抱えておる、こういう状況でございます。  そんなことで、先般の橋本総理とエリツィンさんとの会談でも、ロシア改革路線というものを今後も堅持する方向で日本もいろいろ支持していくということで力強く合意したようでございます。今後ロシアとの安保対話を推進するという面でも、ただ単に軍事面だけの問題じゃなくて、我が国の総合安全保障的見地に立ちつつ、ロシアをあくまでも自由と民主主義を共有する陣営に引きとめて、アジア地域における安保対話、体制の確立ということを目指していく必要があるんじゃないか、こう思うわけでございます。  防衛庁長官、本当に御苦労さまでございました。今後とも引き続きそのような方向で御努力をお願いしたいと思います。  時間の関係がございますので、最後にこの地域安全保障関係で一点だけ伺っておきます。  大綱とか中期防でも安定した安全保障環境の構築ということで項目を起こしておりますし、先般の橋本総理との日米安保宣言でもこの面での重要性を、しかも日米安保体制を踏まえてこの面での重要性を強調されておるわけでございます。今後これら安保政策を推進する上で、ロシアだけの問題じゃありませんが、今年度予算審議でございますので、今年度は予算が通った場合には安保対話の推進という面でどのような特別なスケジュールを考えているのか、ちょっとお聞かせいただければありがたいと思います。
  29. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 冷戦終結後の今日の国際情勢にありましては、より安定的な安全保障環境の構築が重視されるようになってきておりまして、こうした安全保障上の課題の変化や我が国が国際社会に置かれている立場を考慮いたしますと、安全保障対話防衛交流の積極的な推進というものは極めて重要でございます。新防衛大綱や新中期防におきましてもその必要性が確認をされているところでございます。  こうした観点から、防衛庁といたしましては、これまで実施してまいりました周辺諸国との二国間の安全保障対話ASEAN地域フォーラム等多国間の枠組みに対する取り組みをさらに充実させるとともに、各種の新たな事業を開始することといたしております。  例えば平成八年度におきましては、我が国としては初めて各国の国防政策立案担当者の対話の場でございますハイレベルワークショップを開催することを考えております。また、各種の防衛政策透明性を図る等の観点から、「北東アジア戦略概観」、これは仮称でございますが、の発刊を予定いたしております。  いずれにいたしましても、防衛庁といたしましては、安全保障対話防衛交流関連事業の着実かつ実効的な実施に向けて全力を尽くし、もって地域の信頼関係の確立やより安定的な安全保障環境の構築に努めてまいる所存でございます。
  30. 依田智治

    依田智治君 我が国の場合、防衛予算がどうしても武器輸出三原則等もあり非常に高くつく。額では防衛費大国、軍事大国とか言う人がいますが、実は防衛費大国なんですね、中身はそんなに多くはないと私は思っておりますが。そんなことで、本当に専守防衛を旨とし、新憲法のもとに節度ある防衛力の整備に努めておる我が国の防衛というものに対する理解がまだ必ずしも近隣諸国において高いわけでもないという点を考えますと、今回の日米安保共同宣言等も含めたこの地域の安定における意義等も踏まえて、そういう安全保障対話なりいろんな企画を通じてより理解を深め、安定した信頼できる体制の構築に努力していく必要がある、こう考えておるわけでございまして、今後とも一層の御尽力をお願いする次第でございます。  以上で訪ロ関係の問題と安全保障対話関係は終わりまして、残された時間、日本国憲法自衛権の問題について、前回、総括質疑で述べた続きでございますが、ちょっと法制局を中心にお伺いしたいと思うわけでございます。  私はその総括質疑で、そもそも憲法は国の安全保障なり国家の存立のために必要な事項等も書いているわけでございまして、したがって国が存立し、言うなれば国を守るということで、国がしっかりと侵略されずに維持されていく、国が存立するために必要最小限な自衛権というものは認められるべきではないのかと申し上げました。この点については、砂川判決等で日米安保の有効性が確認され、吉田さんが戦後間もないころ野坂参三先生の質問に対して、自衛とか侵略戦争と分けるのは全くばかな話でみたいなことを言った時期がありましたが、我が国独立後、自衛権は認められているということは一貫しているんじゃないかと思  います。  ただ、私の見解でございますが、戦力については、陸海空軍その他の戦力は保持しないと言うが、時代の変化に応じて自衛のため必要最小限の実力はよろしい、それを超えるものが悪いんだということで、実は超えるものというと長距離戦略爆撃機とか大陸間弾道弾とか攻撃的な大航空母艦みたいなものは、これはもう我が国憲法上許されない戦力である、こうなっているわけですね。  しかし、F15、イージス艦も含めあらゆる近代戦力は持てるので、ミサイル時代ですから飛んできたミサイルを落とせるのかといったら、まだ今の技術では、日本の持っているペトリオットでは落とせない。アメリカが持っているPAC2、これだって命中率は悪いけれどもスカッドミサイルをやっと落とせるくらいです。今、日本は一生懸命それを改良しているところで、BMDなりTMDの研究というのは不可欠だと思うんです。  そういう時代で、今の戦力に関する憲法解釈というものが本当に国を守る必要最小限の実力をカバーしているのかというと、必ずしもそうではない。しかし、それは時代の変化の中で少なくとも最新鋭の兵器を持つ、そして技術も研究して、少数ながら最先端の技術と兵器を持っているということがまさに自衛だという感じがします。我が国の場合、そこに自衛力の意味がある。数は少ないけれどもしっかりしたものを持っているということが大変重要だと、それでしかも時代の変化に対応していると。  ところが、自衛権についてだけは、国を守るため必要最小限の自衛権は当然認めているんだ、憲法九条第一項は自衛権を否定するものでない、ここまではいいと思うんですが、なぜこれが、集団的自衛権と個別的自衛権に分けて、個別的自衛権はいいが集団的自衛権はだめという議論になるのか。ここはちょっと明確な根拠というものがないんですね。  そこで、質問の皮切りに、私の言う国を守るため必要最小限の自衛権というのは憲法上当然認められるべきであると、法制局はこの点についてはよろしいのでしょうか、その点をまずお伺いしたい。
  31. 秋山收

    政府委員秋山收君) 先般の予算委員会におきまして委員の御質疑に対しまして内閣法制局長官がお答えしているところと若干重複いたしますが、憲法九条はいわゆる戦争放棄いたしますと、またいわゆる戦力の保持を禁止しておりますけれども、政府としましては従来から、憲法前文におきまして「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と述べていることなどを踏まえますと、外国からの急迫不正の侵害に対処しまして自国の存立を全うするために必要最小限度の実力を行使すること、またそのための裏づけとして自衛のための必要最小限度の実力を保持することは憲法の否定するところではないものと解しているところでございます。  したがいまして、今のお尋ねにございました国を守るための必要最小限度の自衛権という意味が、憲法第九条により禁止されていない自衛権として、外国からの急迫不正の侵害を排除するための必要最小限度の実力行動を行い得る地位にあることという意味であるならば、それは委員御指摘のとおりであると考えます。
  32. 依田智治

    依田智治君 だから、言葉としての国を守るための必要最小限の自衛権は認められる、ただしその必要最小限というのは外国からの急迫不正の侵害があった場合に守ると、こういうことになっているわけですね、そこのところは法制局の見解でございますが。  私はこの前もちょっとこの委員会で示したのできょうは持ってきていませんが、芦田さんの秘密議事録、そのときの委員会を主宰しました芦田委員長が新しい憲法が発布されるその日の日付でダイヤモンド社から「新憲法解釈」というのを出しておるわけです。これは憲法審議をし、終わったところで、二十一年十一月三日付ですからまさに憲法の世に出る日にこれを出したわけであります。「新憲法解釈」はもちろん法制局等も見ておると思うのですが、立法したときの直接の関係者の三、四ページにわたる短い文でございまして、この中にいろいろ述べております。  この芦田さんの考えはあの秘密議事録の中にもありますが、本来は憲法九条の一項と二項をひっくり返しにして、戦力は持たない、交戦権も認めないというのを一項にして、だから国策の手段としての戦争は放棄するんだというふうにやった方がすっきりするじゃないか、そうすればいいんだということを言った。けれども、金森国務大臣は、一項は永久性がある、二項の方の戦力の禁止の規定は将来国連等に入ったときに考える問題じゃないかという私見を述べられて、国連等に将来入った場合には日本もこの戦力を持たないという問題は考えにゃいかぬということに立っていたわけで、まあそういうことかなということで、むしろ大多数の委員が結局はそういう意見に賛同した。芦田さんは最後まで戦力というのは一項に持ってきた方がいいなということを主張しておったわけです。  そう言っていた人がこれを書いているわけですが、この中で「第二章戦争放棄」の最後のくだりのところに、短い文ですから読んでみますと、   第九条の規定が戦争と武力行使と武力による威嚇を放棄したことは、国際紛争の解決手段たる場合であって、これを実際の場合に適用すれば、侵略戦争ということになる。従って自衛のための戦争と武力行使はこの条項によって放棄されたのではない。又侵略に対して制裁を加へる場合の戦争もこの条文の適用以外である。これ等の場合には戦争そのものが国際法の上から適法と認められてみるのであって、一九二八年の不戦条約や国際連合憲章に於ても明白にこのことを規定してみるのである。 こういうふうにわざわざ書いているんですね。したがって、芦田さんは、そうも主張したんだけれども、しかし自衛権は持っているんですよと、侵略戦争は放棄しているけれども自衛の戦争放棄や制裁戦争を放棄したわけじゃないんだと、これを非常に強調した。しかし、国連等に入ったときは戦力は持つように改正すべきだろうという意思が腹の中にあったように見受けるわけです。  そうしますと、戦後独立した時点で我が国はこの憲法を改正すべきであったと私は思うんですが、せずに、独立国が自衛権まで放棄するはずはない、必要最小限の実力は持てるんだということで実は自衛隊を持っており、今日に至り、これは国民の大多数も支持している、こういう状況にあるわけですね。  そうしますと、もともと戦力は持てないという二項は、いずれ憲法を改正して持てるようになれば、国連等に入れば持てるようになるんじゃないかと言っていたときに、実際には憲法を改正せずに持てるという解釈でやったわけですね。それで持っているわけです、今。先ほど説明しましたように、必要最小限の実力を超える戦力は持たないけれども、以外のものは皆持っている。その持つているものをどう使うかという問題は、まさに芦田さんの言う侵略戦争とかそういうものはだめなんだと、自衛とか制裁戦争について禁じられているわけじゃないと、こうなっているわけです。  国連憲章でも第二条に、武力の行使、武力による威嚇等はだめだと規定しておるわけですね。国連憲章第二条四、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と。要するに、国連でも、武力行使とかその他武力による威嚇はやってはいかぬ、しかし国際連合の目的と両立するものはいいということで、実際に平和維持活動とか、憲章第七章以下の正規の国連軍、まだこれはできていませんが、そういう規定などがあります。  こういう現実を踏まえますと、私は、法制局我が国憲法解釈として国を守るため必要最小限の自衛権と認めながらも、それはイコール我が国に対する急迫不正の侵害があった場合とすぐ結びつけているところはどこからくるのか。戦力を持たないというところを持つことにしているから、気が引けるから非常に小さく考えているんでしょうか、急迫不正の侵害があったときのみと。  それは自分の国を守っていればだけで済む時代はいいんですよね。しかし、冷戦構造が崩壊して、一国だけではもう到底守れないという時代になってきているときに、国際協力をしつつお互いに助け合って国を守っていこうという時代に、自国だけ守っていればいいんだ、あとはアメリカと協定してアメリカに助っ人として全部やってもらえばいいんだと。国連へもPKOは出しているけれども、国連マニュアルは全部適用しないで我が国の限られた解釈の中でやっていくと。これはさっき言った、るる説明した立法者の精神にも反しているんじゃないかと思います。  こういうことで、戦力についての規定が科学の進歩、国際情勢の変化の中でぎりぎり必要なものは戦力として持てると同様に、自衛権についても国際情勢の変化の中で考えてぎりぎり必要と思うものは認められるという解釈をすべきで、憲法の立法者にしてもそうだと思いますが、私は平和主義プラス国際主義をもって大きな柱としている憲法としては当然認められるのではないか、こう思うんですが、この点、法制局いかがでございましょうか。
  33. 秋山收

    政府委員秋山收君) 御指摘の点でございますが、手元に昭和四十七年十月十四日付の水口宏三委員に参議院決算委員会で提出いたしました資料がございますので、そのうちの一部分をちょっと読みながら御説明させていただきます。  先ほど申し上げましたとおり、我が国として外国からの急迫不正の侵害があった場合に必要最小限度でこれに反撃して排除することは憲法でも禁じられていないと考えているところでございますけれども、この資料によりますと、  しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものである。 というふうに、九条の文言あるいは憲法全体を貫いております平和主義というものからそういう解釈をしているわけでございます。  それから、自衛力の具体的限度につきましては、現実に即して、その時代時代の国際情勢、技術水準その他に応じて変動してきているではないかという御指摘でございますが、政府といたしましては、憲法九条のもとで我が国が保持することを許容される自衛力と申しますものは、急迫不正の侵害に対処いたしまして我が国を防衛するための必要最小限度の範囲内の実力をいうものであるというふうに解してきております。  このような憲法のもとで保持を許される自衛力の具体的な限度につきましては、その時々の国際情勢とか軍事技術などの諸条件によって左右される相対的な面を有することは否定できないというふうに考えております。したがいまして、憲法のもとで許容される自衛力の具体的な内容が諸条件によって変更されることがあることはございますが、我が国が保有することが許される自衛力というものが急迫不正の侵害に対処して我が国を防衛するための必要最小限度の範囲内の実力に限られるべきであるという、そういう原則といいますか考え方自体はずっと一貫しているものというふうに考えております。
  34. 依田智治

    依田智治君 急迫不正の侵害に対して我が国を守るため必要最小限というと、今のミサイル時代に、撃ってくるミサイルを少なくとも自力で防ぐためには、やはり相手の基地をたたく以外にないんですね。そうすると、相手の基地をたたくものを持てないでどうやって国を守るのかということになれば、今の戦力に関する法制局の見解というのはちょっとおかしくなってしまうんじゃないでしょうかね。  そういうぎりぎりの状態において国を守るのに、今は飛んでくるミサイルを落とせないから、落とすとすれば相手をたたく以外にない。相手をたたくのだって結局我が国を守るために必要最小限の自衛権です。そうしなかったら我が国は破滅してしまう。アメリカに頼んでたたいてもらうという考えが出てくるんでしょうが、しかし自衛権としてはそれは認められるけれども、政策として我が国はそれは持たないんだという議論になってくると思うんですね。  だから、急迫不正という考えは、いずれにしても国際国家がこういう情勢の変化の中で存立していくのには、私に言わせれば、非常に通用しない議論になりつつあるんじゃないか。やはり憲法は国際主義で、立法者も盛んに言っていたように、国際連合に頼る気持ちが非常に強い。そうすると、国際連合に加盟したらお互いに力を合わせてやる。そのときは我が国も必要なその限りにおける軍備を持ってみんなでやっていこうという思想が非常にあると思うんですね。  そうなると、きょう平和協力本部の方にも来ていただいていますが、PKO法の見直しという問題、我が国だけが武器使用は個人の使用に限るなんというような個人的なものだけで、国連マニュアルが通用しないような解釈でPKO法をつくっているのは実はおかしいんじゃないのかなという議論もあるわけです。  そこで、この急迫不正の侵害に対して我が国を守るだけしか認められないという議論は、今の個別的自衛権の範囲の、我が国が攻撃を受けた場合に相手基地をたたくこともできないという意味で破綻しているんですが、しかし今それだけで国が守れるのかということになった場合は、守れなくてもいいんでしょうか。法制局の見解の急迫不正のときだけ守る自衛権だけ認めていけばそれで国が守れるのかといっても、守れないんじゃないでしょうか。  だから、もし本当に憲法がそれしか考えられないんだとしたら、政府の責任において憲法を改正する以外に私は国際国家として日本が生きていく方法はないと思います。いろいろな学者が、我が国は平和国家として、国を守るということは一切考えなくて、我が国は戦力を持たないんだ、日米安保の強化はけしからぬ、こう言っているだけならともかく、少なくとも政府は国民の生命、身体、財産、福祉というものを責任を持って守っていくとすれば、国際社会の中でぎりぎり我が国の果たすべき役割が果たせる憲法でなきゃいかぬと思います。  私は、大きな筋道としての自衛のため必要最小限の自衛権は認められるという中で、何も無制限に認めろと言っているわけじゃないんですよ。それは無制限にやらざるを得ないような物すごい状況になってきたときに、我が国が存立していけなくなった場合に考えればいいことであって、今日ぎりぎり考えることは何かというと、少なくとも日米安保体制というのは我が国の存立にとって極めて重要だと思います。  そうすると、ガイドラインの見直しなり極東有事の研究等もぎりぎり我が国が存立していくために必要なんです。それを、アメリカさん、あとは全部やってくださいといって何もしないでいる、これは問題ですよ。基地から飛び立つんだって大変なことですよ。武力行使と一体ですよ、法制局の考えに立つと。事前協議だってノーと言えないと思うんですよ。そうなってくると、少なくとも我が国の存立を維持していくために必要ぎりぎりな形で今考えるべきことは何か。  一つは、日米安保体制の中で後方支援の燃料補給とかありますが、これは武力行使と一体かといえば、みんな一体ですよ、そんなのは。戦闘に行くものに燃料を補給するとかみんな一体です。しかし、我が国の安全を維持してもらうために有事に備えて基地を提供しているわけですから、必要最小限の。戦闘部隊として乗り込んでいって一緒に共同作戦するというんじゃないんですね、少なくとも行動する米軍を最小限支援するだけなんです。  あと一つは、国際連合のPKO活動等において、まだボスニア等で戦闘部隊として、平和執行部隊として武装した部隊を送るというのは早いし、日本の自衛隊はそういうことに全くなれていません。しかし、カンボジア以来、ルワンダとか、今日ゴラン高原へ行っていますが、ああいうところで活動する自衛隊が本当に国連に出ているわけです。少なくとも国連のマニュアルに従って行動するということは決して憲法違反ではないと思います。芦田さんのさっきの本にも国連による制裁戦争は含まれないと、こうあるわけです。国連憲章でも、国連の目的に合致するものはいいわけです。我が国の場合は、あくまでも武装した部隊を戦闘の目的をもって送るという海外派兵でなくて、万が一に撃たれた場合は撃つという思想のもとに送っているわけです。  そういう意味では、私は憲法の解釈も現状においてはそういう二つ、日米安保における最小限の協力、国連平和維持活動における最小限の協力というようなものは決して憲法に触れるものではないし、少なくとも今日我が国が国際国家として生きていくためには当然あるべき道だと思うわけですが、このあたりもやっぱり急迫不正の侵害ということになるんでしょうか。
  35. 秋山收

    政府委員秋山收君) 今御指摘の米軍に対する支援とPKOの問題でございますが、最小限の協力といいますか支援をすべきであるという点につきましては、それは法律解釈の問題として、憲法上許容される範囲内でそれは当然のこと、ちょっと政策論になりますが、当然のことではないかと考えます。  ただ、その場合、まず後方支援の問題につきましては、憲法我が国としてできますことは、後方支援の行為それ自体が武力行使とみなされるような、武力行使という評価を受けますような一体化の行為としてなされる場合には、それがまさに我が国憲法上禁止されております行為に踏み込むということになりますのでそれはできないわけでございますけれども、そういう一体化するかどうかにつきましては、その行為の態様、それから我が国として全体の状況を勘案いたしまして個別的な事例に応じまして判断していくべきものと考えます。  それから、PKOでございますが、国連の平和維持活動におきます自衛隊の武器使用につきましては、憲法上の可否を判断するに当たりましては、平和維持活動におきます自衛隊の武器の使用が集団的自衛権の行使に当たるか否かを含めまして、憲法九条一項で禁止されました武力行使に当たるものであるか否かという観点から判断すべきものと考えます。  一般に憲法九条一項に申します武力の行使と申しますのは、我が国の物的、人的組織体による国際的な戦闘行為をいうものと解しているところでございますが、国連の平和維持活動におきまして、御指摘のように、通常、要員の生命等を防護するための武器使用と任務の遂行を実力をもって妨げる企てに対抗するための武器使用が国連の原則上は許されております。  そのうちの、我が国の国連平和維持活動等に対する協力に関する法律の二十四条に規定いたします自己または自己とともに現場に所在する我が国要員の生命、身体を防衛すること、これは従前から申し上げておりますとおり、いわば自己保存の自然権的な権利というべきものでありまして、そのために必要な最小限の武器使用は憲法九条一項で禁止された武力行使に当たらないものというふうに考えております。  しかしながら、自己保存の自然的権利とは言えないような、任務の遂行を実力をもって妨げる企てに対抗するために武器を使用するときは、状況によりまして国際的な武力紛争の一環として戦闘を行うという評価を受けることになりまして、このような武器の使用は憲法九条で禁止された武力の行使に当たるという疑いを否定することができないものと考えまして、これにつきましては慎重に考えるべきものと考えている次第でございます。
  36. 依田智治

    依田智治君 私の持ち時間が過ぎて同僚のに食い込んでしまっているんですが、最後に今のPKO法等における武器使用の問題について伺います。  私がちょうど防衛庁におった当時、湾岸戦争が起こって、十分その議論は承知しておるわけでございますが、やはり任務遂行といっても、停戦が成立した後、当事者の了解を得て派遣するわけで、武力行使の目的で派遣するわけではないわけですね。  それで、ある拠点等に行ってゲリラ等が出没しないように監視する、そういう場合に、撃たれた場合に撃ち返すというような問題が出てくるわけで、国連のマニュアル等を見ましても、非常に厳格な使用規定のもとに、まさに自己の生命を守るために使う以外にないくらいな厳しい状況の中でそういうマニュアルができておって、各国ともそういう状況でやっておるわけですね。  だから、そういうものに参加すると国で決める以上は、先ほど言いましたように、国連憲章二条だって国連の目的に適合するものはいいと言っていますし、芦田さんの見解だって、制裁のための戦争には一切これは関係ない、それは認められている、こういう形も考えれば、我が国の場合は余りにも武力行使というのを理論的に考えておって、現実に活動する国際活動、平和維持の活動だという実態面を抜きにした何か机上の武力行使論というか、そういうことに堕しているような感じがするわけです。  そういうことで、私は、このPKO法につきましても三年を過ぎておりますし、やはり武器の使用条件等も含めた見直しを政府としても早急にすべきじゃないかなと思うんですが、総理府の方からも来ていただいていますので、今その問題については事務的に検討しておるというのか保留中というのか、どうなっておるんでしょうか。
  37. 高野幸二郎

    政府委員高野幸二郎君) まず、武器使用原則の問題につきましては、現在の時点におきます政府の解釈についてはただいま法制局の方から答弁があったとおりでございます。  ただ、それでいいかどうかにつきましては、既に国会等においていろいろ議論等がございます。  したがいまして、ただいま依田委員から御指摘もありました三年後の見直し、現在進行中の見直しの中でこの問題については一つの重要な課題として検討が行われているところでございます。適切な結論が得られるように、私どもといたしましても、法制局を含め政府部内で鋭意協議してまいりたいと考えているところでございます。
  38. 依田智治

    依田智治君 終わります。どうもありがとうございました。
  39. 海老原義彦

    海老原義彦君 自民党の海老原義彦でございます。  今、同僚の依田議員の憲法論議を傾聴しておりまして、本当にいろいろと考えさせられるところがございます。我が国のいわゆる平和憲法は制定されてから既に四十八年という月日を経ております。この間、いろいろ功罪はございますけれども、いずれにしましてもこの戦後の五十年という月日は我が国の新しい発展期でもあり、またそれが今停滞しておるという難しい時期に差しかかっておるわけでございますが、この平和憲法のもとで一度も戦争経験のない自衛隊というのが四十何年間続いておるということ、したがって国民も既に過去のあの大きな戦争を忘れておる。私はいつも恩給の問題と絡んで過去の戦争のことを考えざるを得ないわけでございます。  過去の戦争で厳しい体験をし、あるいは亡くなった方も多数おられます。それから、病あるいは傷を負うて傷痍軍人となられた方々もおります。また、生きて帰った方々も、青春を国のため公務のためにささげて、本当に心身ささげ尽くしたということでございます。こういった方々の処遇について一生懸命考えるということが今の日本の体制のもとではなかなかできにくくなっておるのではないか。余りにもいわゆる平和ぼけと申しますか、世の中が変わってしまった、これではやはりだめだと思います。今後、安全保障を考えていく上にも、やはりそういった問題をきっちりと考えていかにやならぬのではないか、こう思う次第であります。  さて、毎度私は恩給の質問をいたしておりますけれども、これまで余り時間がとれませんでした関係で、一人で説明して一人で自問自答するようなことが多かったわけでございますが、今回はやや時間もございますので、政府の皆様方の説明をじっくり伺いたいと思うわけでございます。  昨年は戦後五十年、この戦後五十年の昨年はどうも余りいい年ではございませんでした。いろいろ問題がございました。ここで今さら言うまでもございません。その一つとして、何しろあんなに経済の成長率が低かった年はないのじゃないか。  物価が前年比マイナスだというのも本当に初めての経験でございますけれども、いろいろなことで初めての年だったという気がするわけでございます。春闘の賃金の引き上げ、本来これは社民党などの先生方が御心配になることかもしれませんけれども、私も恩給受給者の処遇との絡みがあって心配てしょうがないわけでございます。  そこで、まず労働省にことしの春闘の状況について、昨年に比べてよくなっておるのかどうか、そういったことをいろいろな角度から伺いたいと思います。
  40. 菅原英夫

    説明員(菅原英夫君) ことしの春闘におきます現在までの民間の賃上げの状況を見ますと、景気に緩やかながら回復の動きが見られるといったことを背景といたしまして、おおむね昨年並みもしくはそれを若干上回る内容、そういうふうになっているという状況でございます。  なお、最終的な妥結結果につきましては、現在、労使交渉中の組合もあります。そこで、労働省としては申し上げることはできませんが、各機関におきまして集計しています。その中間集計の状況を見てみますと次のとおりとなっております。  第一に、連合でございますが、四月二十三日現在で八千四百二十四円でございます。昨年、同じ対象の企業について見ますと八千二百三十二円ということでございましたので、若干上回っている状況でございます。  また、日経連の調査について見ましても、やはり四月二十四日現在でございますが、二・八〇%ということでございます。昨年、同じ対象について見ますと二・七六%ということでございましたので、これも若干上回っているという状況でございます。  一応現在までの今春闘の状況を見ますと、以上のとおりでございます。
  41. 海老原義彦

    海老原義彦君 国営企業の状況はどうでしょうか。
  42. 菅原英夫

    説明員(菅原英夫君) 国営企業の賃金紛争につきましては、中央労働委員会におきまして、労働組合側からの調停申請を受けまして四月十五日から調停作業というものを進めております。そして、四月二十日に調停委員長見解を示したわけでございまして、その内容は、国営企業職員と民間労働者との間での平均賃金の比較をいたしまして、その上に立ちまして本年の民間企業の賃上げの動向等を勘案いたしまして、国営企業職員の賃金を定昇込みで平均三・一〇%、八千八百六十三円引き上げる、そういうような見解を示したわけでございます。  なお、この調停委員長見解につきましては、現在、労使委員の同意が得られません。したがいまして、調停は不調ということになっております。  そこで、中央労働委員会といたしましては、五月八日、明日開きます国営企業担当の委員会議におきまして今後の処理について協議する予定であるというふうに聞いております。
  43. 海老原義彦

    海老原義彦君 昨年の調停はどうだったんでしょうか。
  44. 菅原英夫

    説明員(菅原英夫君) 昨年の調停を見ますと二・八四%ということでございまして、額で申しますと八千二十九円ということでございます。
  45. 海老原義彦

    海老原義彦君 これはいずれも定昇込みの数字でございますけれども、定昇を抜くとどういうふうになりますでしょうか。純粋のベースアップ分だけでとらえることはしておられませんか。
  46. 菅原英夫

    説明員(菅原英夫君) まず、民間の企業について申してみますと、おおむねその賃上げの妥結というのは定昇込みで行われている状況でございます。そこで、労働省としては定昇、ベアそれぞれの額、率については把握を行っていないわけでございますけれども、ちなみに定昇についてはおおむね大体二・〇%というふうに聞いております。  また次に、国営企業についてでございますが、これについては定昇分は推定で二・〇一%というふうに承知しております。
  47. 海老原義彦

    海老原義彦君 次に、人事院に伺います。  今の春闘の状況はこういうことだと。春闘の状況を受けて人事院の勧告作業がいよいよ始まるわけでございますが、今回の人事院勧告に向けての現在の状況をお話しいただきたいと思います。
  48. 小堀紀久生

    政府委員小堀紀久生君) 人事院は国家公務員の給与につきましては民間給与に均衡させるということを基本として勧告を行ってきたところでございます。  具体的に申し上げますと、春闘に基づきまして民間賃金が大きく変化をする四月の時点で支給されております民間企業従業員の賃金と、それから公務員の給与を個別に調査をいたしまして、同種同等と認められるもの同士の給与を比較いたしまして、いわゆるラスパイレス方式によって総合いたしまして較差を算出し、その較差を埋めるために必要な給与改善を勧告しているところでございます。  人事院は本日より民間の賃金の実態を調査するため職種別民間給与実態調査を開始したところでございまして、国家公務員の給与の実態調査については既に終了しているところでございます。
  49. 海老原義彦

    海老原義彦君 そうしますと、きょうから民間給与の実態調査を始めた、国家公務員については既に調査は完了しているけれども、両者を突き合わせていわゆるラスパイレス比較をやってみないとどの程度になるかわからないと。しかし、これまでの経験で、今労働省から御説明のあったような春闘の状況などを見ると、ある程度去年よりいいかとか悪いかとか、あるいはそこまでいかなくとも若干は上がるかとか、とても上がらないとか、そんなことは言えるのかなと思うんですが、その辺はまだちょっと言いにくいんでしょうかね。
  50. 小堀紀久生

    政府委員小堀紀久生君) 私どもの給与改善率と申しますのは今お話ししたとおりでございまして、先ほど労働省からのお話にありましたように企業単位で調査をするようなものではなくて、従業員個々の支給額を調べますし、一方では公務員個々人の給与というものを調べてまいりまして、それを個々に比較するというような作業になるわけでございますので、あくまでも比較した上でないとわからないわけでございますが、今までの傾向からいたしますと、ただいま労働省からお話がありましたような春闘の状況というのはおおむね反映されているという状況ではございますが、詳細なところにつきましては調査を終了し集計してみないとわからないというところでございます。
  51. 海老原義彦

    海老原義彦君 ただいまのお話で、ともかく民間の給与をちゃんと職種別に調査して比較するんだということはわかるわけでございますが、昔から給与を決定する要因として、民間給与以外に生計費とかその他人事院の考える適当な事情とかあるようでございますね。ここら辺、他の要素についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  52. 小堀紀久生

    政府委員小堀紀久生君) 国家公務員法では、公務員の給与等の勤務条件につきましては社会一般の情勢に適応するように定める、そういうことになっておりますが、さらに給与につきましては、生計費、それから民間における賃金、その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定めるという指標が一応定められております。
  53. 海老原義彦

    海老原義彦君 そうすると、生計費についてはどういうふうに勧告の中に取り上げるのでございましょうか。
  54. 小堀紀久生

    政府委員小堀紀久生君) 私ども、公務員給与を決定するために民間の給与水準に均衡させることを基本としておりますのは、公務に優秀な人材を確保し、それから関係者の理解と納得を得るという面でそれが最も適切と考えられているということでございますが、それに加えまして、民間企業におきましては生計費等さまざまな要素を勘案して給与決定が行われておりまして、いわば民間給与には生計費が含まれているというふうになりますので、民間の給与水準との均衡を図ることを通じまして、生計費等につきましても公務員給与に適切に反映することができるということによるものでございます。
  55. 海老原義彦

    海老原義彦君 生計費は民間給与を見ればその中に含まれておる、こういうことでございますね。  さてそれでは、人事院の所掌するもう一つの公務員災害補償、これのベースアップについてはどういうルールがあるんでしょうか。
  56. 佐藤信

    政府委員佐藤信君) お尋ねの国家公務員の災害補償制度におきます年金の補償の額の改定についてであろうかというふうに存じますけれども、年金の算定の基礎となっております平均給与額を改定するという形で行っているわけでございまして、その改定は毎年四月に職員給与水準の上昇率というものを基準といたしまして、私どもの方で定める率を乗ずるということで改定しているわけでございます。
  57. 海老原義彦

    海老原義彦君 そうすると、災害補償の年金の改定は専ら給与によるということでございますね。  次に、労働省に伺いますが、労災保険の給付でございます。これもやはり情勢適応、ベースアップが必要だろうと思うんですが、これはどのような方法でやっておられましょうか。
  58. 播彰

    説明員(播彰君) お答え申し上げます。  労災保険のうち重度の障害を負われた方あるいは労災で御家族を亡くされた御遺族の方に長期給付として年金で補償を差し上げてございますが、これは働いておられた方の稼得能力の損失あるいは減少を補う、こういう機能がございまして、この働きが長い時間の経過で減殺されることがあってはならないという考え方に立ちまして、その給付の額を社会全体の賃金の水準に合わせてスライドしてございます。  具体的に申し上げますと、労働省で毎月勤労統計という賃金に関する基本的な統計がございますが、これの全産業の総平均の数値がございます。  これを毎年比較いたしまして、八月の時点で翌年一年の給付を改定するということでございます。  ちなみに直近の改定、昨年の平成七年八月でございますが、今申し上げました方式で二%の引き上げということをやってございます。  以上でございます。
  59. 海老原義彦

    海老原義彦君 そうすると、災害補償についても、公務員災害補償も民間の災害補償も年金給付の引き上げは給与スライドでやっておる、こういうことでございますね。  次に、一般の年金について厚生省に伺いたいと思います。  厚生省の所管する国民年金、厚生年金、あるいは所管外でありましてもついでにもし例えれば各種共済年金、こういったものの引き上げはどのようなルールでやっておられますか。
  60. 阿曽沼慎司

    説明員阿曽沼慎司君) お答えを申し上げます。  国民年金、厚生年金あるいは今お尋ねの共済組合の年金等いわゆる公的年金の年金額でございますけれども、公的年金につきましては少なくとも五年に一度の財政再計算ということをやっておりまして、財政再計算と申しますと年金の収入と支出を見直しするということでございますが、その時期に国民の生活水準の向上等を勘案いたしまして年金水準の改定、保険料水準の設定ということをいたしております。  それからまた、その財政再計算の時期と次の財政再計算の時期の間につきましては、年金額の実質価値を維持するという観点から、前年の消費者物価上昇率に基づきましてその年の四月から物価スライドによる年金の改定をするという形で改定いたしているところでございます。
  61. 海老原義彦

    海老原義彦君 そうすると、毎年の物価スライドによる改定とそれから五年に一回の見直し、この五年に一回の見直しで国民の生活水準に合わせていくと。国民の生活水準というのは具体的にはどんな指標をお使いでございますか。
  62. 阿曽沼慎司

    説明員阿曽沼慎司君) 五年に一回の財政再計算の時期でございますけれども、その時期に年金水準をどう見直すかということでございますが、国民の生活水準といいますと、例えば国民の基礎的な消費支出あるいは賃金の上昇率、そういったものを総合的に勘案するということでございます。
  63. 海老原義彦

    海老原義彦君 国民の消費支出は、先ほど人事院の方からも御説明ありましたように、賃金といわば同じような流れを示すものだと考えていいわけで、これも五年に一回ではありますけれども賃金スライドが確立している、こう考えてよろしいわけでございますね。  さて、次に恩給局に伺いますけれども、恩給の改定というのはどういうルールでどのようにやっておられますか。
  64. 石倉寛治

    政府委員(石倉寛治君) 恩給につきましては、御承知のように国が公務員との特別な関係に基づきまして支給するものでございますために、毎年その年度で支給すべき金額を計上してお支払いしている、こういうことでございます。
  65. 海老原義彦

    海老原義彦君 毎年その年度で支給すべき金額を計上すると。ベースアップについては具体的にどういう算定方式で、あるいは抽象的でも結構です、どういう根拠に基づいて、どういう考え方でベースアップをしておるのか伺います。
  66. 石倉寛治

    政府委員(石倉寛治君) 確たる算定方式を決めているわけではございませんで、社会経済情勢に合わせて、御本人の所得が保障されるような基本的なその支えになるということを考えて、総合勘案いたしまして算定をいたしておるところでございます。
  67. 海老原義彦

    海老原義彦君 これがいわゆる総合勘案方式でございますね。お役所の方の口からは言いにくいんだろうと思うんですけれども、賃金というか公務員の給与が八、それから物価が二、大体そういった割合で総合勘案する、こういうような方式をとっておられるんだと思うんです。  さて、そこで大臣に伺いますが、今までこうやっていろいろな国の給付、ベースアップの方式を伺ってくると、どうも恩給だけが独自の方式をとっておられるようでございまして、ここら辺、大臣の御感想を伺いたいと思います。
  68. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) 先ほど局長の方から答弁いたしましたけれども、この恩給につきましては、さかのぼってみますと過去六回にわたって基準のとり方等について改定されてきておりますけれども、この総合勘案方式がとられましたのは昭和六十二年に措置されたものと記憶をしております。この間における措置の方法でありますけれども、それまでの間に他の年金等を含みましてずっと変化がございますが、これについては今説明がありましたように総合勘案方式というのをとったところであります。  結局、問題になっておりますように、本年の場合も物価指数は低下をしておりますけれども、昨年と大体同じようにということで〇・七五%ということになっておりますように、結果的にはそうした社会的な情勢あるいは事情などを十分勘案いたしましてこうした改善指標を採用してきたわけでありますので、この点については大きな変化なりなんなりがあればまたこれらについての論議をしなくてはならぬと思いますけれども、一応このようにして、これが最善策だということで今まで措置をしてきたということで御理解いただければと思っています。
  69. 海老原義彦

    海老原義彦君 大臣、大変苦しそうな御説明で、余り御宸襟を悩ませるのも申しわけないんですけれども。  そこで、もう一度局長に伺いますけれども、今の大臣の御説明にも昭和六十二年以来今の方式でやってきたと。そうしますと、仮に六十二年以来それまでと同じような公務員給与に即応する方式でやった場合と、それから今のやり方でベースアップしてきた現在の時点の状況と比べてどれぐらいの差がついたのか、それは計算してみたことはございますか。
  70. 石倉寛治

    政府委員(石倉寛治君) 先ほど大臣が答弁いたしましたとおりでございまして、昭和六十二年以降総合勘案方式になったわけでありますが、調べてみますと、三十七年以前には公務員給与の追随方式をとったり、その後消費者物価水準を引っ張ったり、いろんな形の工夫をしてまいりました。その結果、受給者にとって最も据わりのいい算式は何かということで、結果的に現在の総合勘案方式になったわけでございます。  ただ、総合勘案方式をとったために生じた恩給の改善率と公務員の給与の改定率の格差という御質問ではございますけれども、そういう歴史を踏まえまして、果たしてどれでやれば一番受給者のためになるかということを考え合わせますと、総合勘案が一番よろしいということでここ六十二年以来続けてきたわけでございますが、あえて計算をいたしました点を申し上げたいと思います。  実際にその格差がどれくらいになるかといいますと、六十二年以降平成八年度までの累積改善率は恩給に関しまして二四・四三%でございます。  その指標の一つとして、六十一年度以降平成七年度までの公務員給与行(一)の累積改善率は二六・七八%ということになっておる、そういうふうに試算はいたしております。
  71. 海老原義彦

    海老原義彦君 約二%強の差があるということでございますね。  今、恩給局長説明にもありましたとおり、過去何回もいろいろな方式をとっておる、これこそがまさに恩給の苦難の歴史だと思うんですよ。戦後いわゆる六八勅令で恩給制度が廃止されまして、戦前から続いていた体系が全部崩れてしまった。したがって、二十八年に復活し、立ち直っていくためにどれほど大変だったか。公務員給与との対応も当初は非常に遠慮がちにやっておって、しかもおっしゃるように物価だけ見ればいいという時期も、一応これは案の段階だけだったと思うんですけれどもあるし、いろいろなことがありまして恩給は非常におくれてきたわけであります。  昭和三十年代といえば高度成長期でありまして、春闘はそれこそどんどん進んでいった、公務員給与自体がそれを追っかけるのが容易なことじゃなかった、そういう時期でございます。恩給はそれを追っかけるのにもう息切れしまして、とてもやれないぞというのでいろいろな方式があった。それがようやく公務員給与スライドに定着したのは四十年代、しかも後半からかと思いますけれども、それも当初は実施時期がうんとおくれておりましたのをようやっと実施時期も繰り上げていったというような長い苦難の歴史がありました。また、昭和六十二年に至りまして、年金制度の大改正というような流れの中で、何とか恩給が生き延びていくためにはこういう妥協も図らなければいけないという趣旨かと思うんですけれども、いわゆる総合勘案方式というものが出てきた、これは全部恩給の苦難の歴史なんですよ。  これは一番初めに申しましたように、日本が戦争を忘れて、戦争を知らない人たちばかりがふえてきた。あの厳しい戦争の中で兵隊さんがどれほど苦難の道を歩んだか、それを知らない。だから、そういう血も涙もないことが行われてきた。  恩給受給者というのは一番弱い層なんです。弱い層にしわ寄せすることができたんですね。  今はもう戦後五十年たちました。そろそろそういうのを見直していい時期じゃないか。恩給受給者も皆高齢化いたしました。普通恩給受給者にしたって平均七十七歳という年齢になっている。だから、ここらでもう一度、先ほど大臣のおっしゃったもう一度考え直す時期というのが来ているんじゃないかなと思うんですよ。  そこで、具体的に申し上げますけれども、前回の当委員会でも申し上げましたが、最低保障の改善というのは、長い間言い続けてきたけれども、どうも世の中の恩給に対する厳しい目の流れの中で現実性がないということでございましょうか、実現しなかった。これを現実性があるような形でやっていくために私どももいろいろな工夫をしております。例えば、いわゆる加算年の多い、つまり戦争で本当に苦労した人たちと内地にいた人たちと、同じ実役三年なら実役三年で同じグループになってしまう、これはやっぱり問題があるんじゃないか。最低保障でも加算年を見ていくことが必要かと思います。  これは今すぐ前向きなお答えは求めません。一応、局長からお役所としてのお役人的な答弁をいただきまして、それにとどめておいて結構でございますけれども、ただ将来は、将来というか近い将来、例えば予算要求のときとか、そういうときは考えていただかにやならぬ問題だと思いますので、大臣、ひとつよろしくお願いします。答弁は局長からお願いします。
  72. 石倉寛治

    政府委員(石倉寛治君) 最低保障の問題でございますが、普通恩給などの最低保障額と申しますのは長年勤務したにもかかわらず極めて低額の恩給しかもらえなかった長期在職者のために最初にでき上がったものでございます。この長期在職者というのは実在職年のみで資格年限を満たすことのできる方々でございますが、それに対しまして、おくれて昭和四十九年から先ほどお話のありました短期在職者への導入ということが行われたわけでございます。  最低保障額の設定に際しまして実在職年による区分を設けておりますのはこのような経緯からでございまして、長期在職者に対する短期の在職者のバランスの指標として実在職年を用いることが適当と考えられることによるものでありまして、これにさらに他の要素を取り入れることは困難な問題であると認識いたしておるわけでございます。
  73. 海老原義彦

    海老原義彦君 今すぐ前向きな答弁がいただけるとは思っておりませんけれども、大臣、これはひとつよく考えてください。  特に、一般の年金では物価スライドであっても五年ごとの再計算のときに給与スライドに直すんだと。ところが、恩給だけは物価が二割、給与が八割のまま永遠に続いていくから、だから今恩給局長からも御説明があったように、二・三五%という格差が既に開いておる。こういったことをどこかで解消しなきゃならぬという問題、これと最低保障の改善と絡めて考えていくというのも一つの考え方ではないか、私はこう思うわけでございます。大臣、一言御感想をお願いします。
  74. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) 恩給制度そのものが国家補償的性格を有するというここに基本理念を置きまして考えたときに、現状が今平均年齢が七十七歳になったということもございまして、生活の支えになっておるということ、その内容は十分私たちも認識をしておるつもりであります。  そうしたことからいたしまして、これからいろいろな処遇の方式等につきまして十分努力をしていかなくてはならぬだろう、このように考えておるところであります。したがって、実質価値の維持をどう図っていくかということとあわせまして、これから検討をさせていただきたいと思っております。
  75. 海老原義彦

    海老原義彦君 前向きの御答弁ありがとうございました。  次に、これは厚生省に伺った方がいいんでしょうか、老齢福祉年金と恩給との併給制限の制度がございますね。これはどういう考え方で、どういう金額を設定しておるのか、まずその点から伺いたいと思います。
  76. 阿曽沼慎司

    説明員阿曽沼慎司君) お答えを申し上げます。  老齢福祉年金は、先生御承知のように、国民年金制度が発足をいたしました昭和三十六年でございますけれども、当時既に高齢であった方々、五十歳以上の方々でございますが、こういう方々につきましては拠出制の国民年金に加入できないということで、そういう方々を対象にいたしまして無拠出で全額国庫負担で年金を支給しようということでございます。したがいまして、他の公的年金や恩給など老後生活を支える公的な給付が受けられるといった場合には原則として併給は認めないということでやってまいりました。ただ、その額が低額の場合には一定限度までの併給を認めるということで、現在のような併給調整の規定というものが設けられたわけでございます。  この併給限度額でございますけれども、当初は福祉年金の相当額ということでございましたが、その後逐次改善を行ってきておりまして、昭和五十六年度以降は普通恩給の短期在職者の最低保障額を勘案した額というふうにいたしまして、この最低保障額の引き上げに応じまして併給限度額の引き上げを図ってきているということでございます。
  77. 海老原義彦

    海老原義彦君 これは一般に他の所得がある人について老齢福祉年金をどう制限しておるのか、それとの関連もあると思うんですよ。今、他の公的年金と言いましたけれども、他の公的年金は社会保障、いわば拠出制の年金でございます。恩給は国家補償でございまして、基本的に違うわけです。公的年金以外の他の所得というのは、利子所得、勤労所得などいろいろあると思います。そういった所得がある方については併給制限、併給というのは合わないかもしれませんけれども、他の所得による制限というのはどのように設けておるんでしょうか。
  78. 阿曽沼慎司

    説明員阿曽沼慎司君) 今ちょっと具体的な数字を手元に持っておりませんが、所得制限の場合でございますと、老齢福祉年金の場合、それぞれ本人の所得制限とそれから扶養義務者の所得制限という形で、一定以上の所得がある場合には支給停止をする、そういう仕組みでやっております。
  79. 海老原義彦

    海老原義彦君 昔厚生省でおつくりになった資料を今見ておるのでちょっと古い時点でまだ低いんですけれども、本人の所得で、平成七年度で扶養親族ゼロの場合に所得限度額百五十九万四千円、これは給与収入にすれば二百五十一万六千円というような額のようでございますけれども、それと比べますと、六十九万円でございますか、これは非常に低いですね。ここら辺は説明が難しいんだろうと思うんですが、一応説明をお願いします。
  80. 阿曽沼慎司

    説明員阿曽沼慎司君) 先ほど申し上げましたように、公的年金の併給制限でございますけれども、老齢福祉年金といいますのは、国民年金がスタートをいたしましたときに既に五十歳以上で、そういう方々については拠出制の年金制度から外すということをしてまいりました。したがいまして、拠出制の年金制度に入っている方については社会保険システムのもとで年金が支給されるということでございますけれども、既に高齢であった方については拠出制の年金に入れないということで、特例的な形で全額国庫負担でかつ無拠出であっても年金を支給するということにしたわけでございます。  したがいまして、他の公的年金、例えば厚生年金でございますとか共済年金あるいは恩給など、老後生活を支える公的給付が受けられるといった場合には併給をしないという形でやってまいりました。ただ、非常に低額な場合もございますので、その一定限度額までの併給を認めるという形で対応してきておりまして、そういう意味で、こういう形で公的な他の給付との調整が行われているということでございます。
  81. 海老原義彦

    海老原義彦君 伺っておりましたが、やっぱり説明になっていないですね。他の所得、例えば利子所得であれば百五十九万円あってもよろしい。  地代、家賃などの所得を持っている方も百五十九万円まではよろしい。ところが、恩給をもらったら六十九万円で切る。これはやっぱり説明がつかぬだろうと思うんですよ。これは持ち帰ってよく考えてみてください。  時間の関係もございますから、次の質問に参ります。次は郵政省でございます。  福祉定期郵便貯金という制度がございますが、これはどういう制度でございましょうか。
  82. 藤岡道博

    説明員(藤岡道博君) これは平成四年から官民共通、郵便局と銀行で共通の貯金ということでできたものでございますけれども、一年物の定期郵便貯金でございます。  対象者といたしましては、老齢福祉年金等を受けている方々、あるいは国民年金、厚生年金や共済年金の受給者のうち視力が極めて弱い方、いわゆる重度障害の方々ですとか遺族の方々ですとか、そういった方々を対象にしております。利率は年四・一五%ということで、一人の預金者につきまして三百万円まで御利用いただけるというものでございます。
  83. 海老原義彦

    海老原義彦君 そうすると、恩給については今お話が出ませんでしたが、恩給受給者は対象にしないわけでございますね。この理由はどういうことでございましょうか。
  84. 藤岡道博

    説明員(藤岡道博君) これは経緯がございまして、平成四年スタートでございますが、その当時、老齢福祉年金ですとか遺族年金ですとか、そういった方々を対象にしてスタートしたわけでございますけれども、そのスタート時点の考え方というものにつきましては、一番立場の弱い方を対象にしてやろうということで、ただ実はこれは郵便局だけではなくて銀行とも関連しておりますので、その両者の話し合いの中でこういう形で決まったということでございます。
  85. 海老原義彦

    海老原義彦君 銀行と話し合っても、銀行は恩給を扱わないんですよ。郵便局だけが扱っている。だから、銀行で認めたものしか認めないというんだったら、これは永久に恩給関係は抜けるんです。それじゃだめなんですよ。やはり郵政省として独自の考え方を持って、きちっと恩給当局とも話して固めていかにやならないと思うんです。  これは私は大変な問題だろうと思うんですよ。  今四・一五%という高金利をもらえる預金なんというのはほかにないわけです。  それで、障害者、遺族については、一般に他の年金の障害者、遺族ならもらえる。それから、老齢福祉年金の受給者ならもらえると。ところが、恩給受給者は戦傷病者であろうが戦没者遺族であろうがもらえない。まして生きて帰った人の遺族ももらえないし、それから御本人だってもう八十歳、九十歳という年になっておりますが、そういう方々ももらえない。この福祉定期郵便貯金の権利がもらえるかどうかというのは大変な問題でございますから、ひとつ持ち帰って十分検討してください。
  86. 藤岡道博

    説明員(藤岡道博君) 確かに恩給は郵便局だけしか扱っておりませんが、実は郵便局で受け取った方がそのままおろされまして銀行に持っていかれるということになりますと銀行の方でも福祉定期は受けられるわけであります。老齢福祉年金も郵便局だけしかやっておりませんが、その対象者の方も銀行で対象になっているということでございます。  したがいまして、銀行と郵便局で共通の商品ということでございますが、先生お話しのように、じゃ郵便局単独でもやったらどうかということにつきましては、郵便局だけで、要するに郵政省だけでこういう商品をやります場合には立法上の措置が必要になってまいります。今の郵便貯金のルールと申しますのは、民間銀行と同じ商品を開発する、これはいわゆる民業圧迫論の視点から出ておるんですが、したがいまして郵便貯金独自で一つの商品を決める場合は郵便貯金法の改正という形になっております。  実は私ども今国会に、要介護状態にある方、寝たきり等の方に対しまして、一般の方よりも二割金利を上乗せするという法案をお出ししておりますけれども、これもそういうことで、郵便貯金法の中に一条設けましてそういう根拠を設けてやっておるわけでございます。したがいまして、そういう法律上の問題もあるということを御理解賜りたいと思っております。
  87. 海老原義彦

    海老原義彦君 私は何も郵便局独自のものをやれって言っているんじゃないんですよ。銀行はそもそも恩給とかかわっていないから銀行から発想が出るはずはない、郵便局でイニシアチブを持たにゃだめだと、こう言っているんですよ。  何も郵便貯金をおろして銀行に持っていくなんて、そんな郵政にとって不利なことを一々想定する必要はないのでありまして、銀行だけでそういう制度を設けたらどんどん持っていかれちゃいますよ、だから話し合う必要があるんだけれどもね。それで、ちゃんと郵便局で福祉定期貯金ができるというようになればみんな郵便局へ積みますよ。銀行へ持っていくなんということはないですよ。そういうことでひとつ検討してください。  いろいろ要望申し上げましたけれども、最後から二番目としまして、恩給局に戻りまして、この前伺いかけてちょっと時間の関係説明を省略していただいた恩給受給者の社会経済等状況調査の実施プランについて、現在の状況を伺いたいと思います。
  88. 石倉寛治

    政府委員(石倉寛治君) お話は平成八年度予算案に盛り込んでおります恩給受給者社会経済等状況調査のことだと存じます。  これは、我が国人口の高齢化が急速に進みました中で、高齢者の生活をめぐる諸問題への対応が極めて重要になってきております。そのことと、恩給受給者につきましても戦後五十年を過ぎまして平均年齢が七十七歳を超えるというようなことになっておりますので、そういった観点からも受給者の高齢化に伴う諸問題についてその状況の把握、あるいは恩給受給者の処遇に関する諸問題を総合的に検討したいということで、参考資料を得ることを目的として実施することにいたしております。  本調査は本年九月一日を目途に準備を進めているところでございます。  以上でございます。
  89. 海老原義彦

    海老原義彦君 具体的な調査項目などもお願いいたします。
  90. 石倉寛治

    政府委員(石倉寛治君) まだ詳細は固まっておりませんが、受給者の経歴なり家族の収入、支出の状況なり社会参加の実態、こういったものも調べたいと思っております。
  91. 海老原義彦

    海老原義彦君 これは私どもも大変重要な調査だと認識しておりますので、受給者としてもできる限りの協力をしてまいりたいと思います。ひとつ相互協力していい調査にしたいと思います。  最後の質問になりますけれども、総理府に伺いますが、前回の委員会において、どうも総理府では陳情を制限するとかそういった措置をとっておるんじゃないかという疑いが生じておる。実はその後私も手紙を一通いただきまして、この手紙を見ると、明確にそうは書いていないけれども、ちょっとそういう疑いを持てるような内容のものでございます。  そこで、その問題の、旧日赤従軍看護婦あるいは陸海軍従軍看護婦について、具体的にどんなふうに陳情を受けておるのか、だれがいつ陳情を受けたか、最近二、三年の実績をひとつ言っていただけませんか。
  92. 安藤昌弘

    政府委員(安藤昌弘君) お答えいたします。  お尋ねのありました元日赤従軍看護婦等の方々からの陳情につきましては、従来からもその都度対応いたしておるところでございます。  実際に申し上げますと、平成六年十二月の与党三党合意以降を見ましても、平成七年の一月、また本年になりましても、本年の一月及び四月にそれぞれ元日赤従軍看護婦の会及び元陸海軍従軍看護婦の会の方々から陳情を受けているところでございます。  今後とも元日赤従軍看護婦の会の方々からの陳情、お話がございますれば、これまで同様適切に対応してまいりたい、このように考えている所存でございます。
  93. 海老原義彦

    海老原義彦君 終わります。
  94. 萱野茂

    萱野茂君 社民党の萱野茂であります。  官房長官がお見えになったときのもあるんですけれども、とりあえずまず初めに人権教育のための国連十年についてお伺いしておきたいと思います。  御承知のように、国連は平成六年十二月の国連総会において、平成七年から国連人権教育の十年とすることを採択いたしました。政府はこれを受けて、昨年の十二月、内閣総理大臣を本部長とする推進本部を設置することを閣議で決定いたしました。世界の人々が人権を普遍的価値として、普遍的文化として尊重し合うことは人々が平和のうちに生き続けるための基本的な原理であります。  また、これを教育の場で実践していくことは極めて重要なことであろうと存じます。  そこで、この国連十年について、国連のプログラムを見ますと、一九九五年、平成七年には国連の行動計画を反映した各国の行動計画を策定することとなっております。国内行動計画の策定作業、それに伴う国内施策の実施、予算の確保などについての作業の展開はどのようになっているのでしょうか。また、推進本部としてこの国連十年を人権の確保に当たってどのように位置づけ、意義あるものにしようとしておられるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  95. 藤井威

    政府委員(藤井威君) 人権教育のための国連十年の問題でございますけれども、先生の御指摘のとおり、今日、国際社会におきまして、この人権の促進、擁護というのが非常に大きな潮流となっているということであろうと思います。今後ともにこの流れがますます強くなるということも我々十分認識しておりまして、我が国におきましても、人権が守られ、差別のない公正な社会を築いていくことが求められているものだというふうに考えております。  今、委員のお話にございました推進本部は昨年十二月に設置いたしましたが、去る三月十八日の第一回の会合におきまして、この人権教育のための国連十年に係る取り組みを積極的に推進していくんだということを大臣レベルで強く確認し、合意したわけでございます。  今後の取り組みでございますけれども、当面、人権についての教育、研修、啓発活動の推進などを内容といたします、また国連からも要請のございます国内行動計画の策定に向けて全力を挙げていきたいということもまた申し合わせて、それに基づいて人権教育のための国連十年に係る国内施策を積極的に推進していきたいということでございました。  さらに、ただいま先生からも予算確保あるいはもっと具体的な施策ということもございまして、来年度の概算要求に向けまして、概算要求に間に合うような形で、中間的なあるいは当面の仮の取りまとめというような何らかの成果も上げていきたいということを頭に置いて作業を進めてまいりたいと考えているところでございます。
  96. 萱野茂

    萱野茂君 何よりも予算についてはぜひお願いしておきたいと思います。  官房長官がお見えですので、長官にお答えいただく部分から質問していきたいと思います。  四月一日に官房長官に提出されましたウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会の報告について梶山官房長官に御要請を申し上げたいと思います。  長官は、三月十五日のこの委員会での私の質問に対して、提出が予定される報告はいわば歴史観を持った答申と信じているとの認識を示されておりました。まさにそのとおりの報告であり、心から感謝と敬服をいたしておる次第であります。  私はこの懇談会の報告のポイントは次にあると思っています。  一つは、北海道を我が国固有の領土であるという表現はいかがなものかと、ちょっとその辺は私自身も気にしているところでありますが、ともかくアイヌ民族が我が国に先住していたことは学問的に否定できないとした点であります。このことは、平成三年、政府が国連人権規約に基づいて国連に報告の際、初めてアイヌの人々は少数民族であるとしても差し支えないとすることでアイヌ民族を少数民族としてきた政府見解に対して、ここでは初めて先住民族としたことであります。  二つには、依然、我が国においてアイヌ民族はその民族としての帰属意識と独自の文化を保っているとしたこと、そしてその独自の文化は世界の人々が共有する財産であるとしたことについては評価できると思っております。  三つ目には、我が国が近代化に移行する歴史過程において、特に明治期以降もアイヌ民族への過酷な収奪、支配が行われ、アイヌの生活、文化が決定的な打撃を受けたとして、一定の歴史総括に踏み込んだことであります。  この報告について、当事者である北海道ウタリ協会は、四月一日の野村理事長の談話、四月十六日の理事会決定、四月三十日のアイヌ新法検討委員会の判断のいずれにおきましても、総論としては高く評価をし、これを受け入れることで旧土人保護法などの廃止とアイヌ新法の早期制定を政府に求めることとしています。また、与党のアイヌ新法検討プロジェクトもこの報告を評価し、了解することとしています。  官房長官、私を含め北海道に住む多くのアイヌがいい答申をつくってくれたと心から喜んでいるわけであります。そのような意味で、これからつくられるであろう新しい法律によって過去の歴史に対する一定の清算が行われる、橋本内閣のうちに歴史的和解に至ることを強く希望しておきたいと思っているものであります。  長官は、四月二日、衆議院予算委員会での永井哲男議員の質問に、報告を最大限尊重してとした、心強い答弁をなされておられます。この際、ぜひ長官に御要請を申し上げておきますが、報告に基づく新たな法律の制定、新たな施策の展開については、関係各省庁が十三省庁にまたがるというふうに聞いております。御苦労なことが多いかとは思いますが、早急に関係省庁会議を招集するなどして、政府としての対応方針を各省庁にお示しいただき、法制化の作業を早めていただきたいと思っているものであります。長官の力強い御指導によって、一日も早い内閣としての方向づけをお願い申し上げておきたいと思います。  ただ、一つだけ申し上げておきますが、報告では「アイヌ文化は歴史的遺産として貴重である」というふうな文言があります。  しかし、かく言う私自身、自分の頭の中にある言葉だけを集めましてアイヌ語辞典を編さんし、六月十五日に三省堂から出版されることになっておるわけであります。そのような意味でも、アイヌ文化そのものが過去のものではなくて、まだまだ文化として村では生きていることを皆さんに知ってほしいと思うものであります。私も含め、アイヌ文化は脈々として現代に生き続けていることを申し上げておきたいと思います。今後の施策の展開に当たって御留意をいただければと思っているものであります。
  97. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 委員からは前回もこの問題について貴重な御意見をちょうだいいたしました。御指摘の新たな立法措置等については、この有識者懇談会の御提言を最大限尊重して、これから各省庁と十分相談の上適切な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。  このために、委員御指摘のように、内閣内政審議室長を議長としてこの五月九日にアイヌ関連施策関係省庁連絡会議を設置いたしまして、第一回目を恐らく五月の中旬には開催をいたしながら、今御指摘の諸問題について詰めてまいる覚悟でございます。  確かに、先生が今自分の意見と言いながら長い間の日本におけるアイヌ民族の文化についてお話がありましたが、こういうものをさらに維持し、そして伝承していく方策を講じていかなければならないというふうに考えております。これからの施策にひとつお互いに協力をお願い申し上げる次第であります。
  98. 萱野茂

    萱野茂君 ありがとうございました。  次に、警視庁警察学校が行っている警察官への教育について伺います。  最近、私は警視庁警察学校の教科書といいますか副読本というものを目にする機会がありました。その本の名前は「敬愛」考なるものであります。これは昭和六十年度の初版で、平成元年には第五刷の増し刷りが行われておりまして、なかなかよく読まれている本であるらしく思います。  この教科書はそもそも警察官の倫理観というか道徳心を養うためのようでありますが、この中で日本の国家の由来とか成り立ちなどが記述されております。そして、「日本国の誇り」という項目でこう書かれております。日本は「一億人を超える人口を有するにもかかわらず単一民族であり、単一言語である。しかも永年にわたって非常に優れた日本独自の文化と勤勉な国民性を培ってきた。」としています。警察官にこのように教えているのであります。  さらに、「一国家一民族」の項では次のように書いてあります。「アメリカを初めとする大陸諸国は、多民族国家であるため、言語、風俗、習慣などが異なり、国政運営などにおいても多くの困難を伴い、治安維持の上でも大きな障害となっている。 これに比べて我が国は、同一民族、同一言語、同一文化といった世界にまれなほど、国民が同質的であるという大きな特徴を持っている。」と記されております。  アメリカはもともとインディアンの住む土地であったのですが、それはともかく、このような警察学校の歴史観から見ると、アイヌ民族やアイヌ語の存在は全く無視され、抹殺されていると言わなければなりません。まさにかつて中曽根首相が発言された単一民族国家論そのものであるばかりか、中曽根発言があれだけ国際的批判を浴びたにもかかわらず、それ以降も同様な認識を持っているという警視庁の歴史認識には驚くほかはありません。  このことは四月一日に報告されたウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会でも明らかであり、また政府が国連報告でアイヌ民族を少数民族としたことで、我が国が単一民族社会ではないとしてきた政府の見解とも大きく異なるものであるわけであります。  なぜこのような時代認識となるのか、また警察官の倫理の確立や社会規範の認識になぜこのような教育が必要なのかお伺いするとともに、この際このような認識は改めるべきと思いますが、御見解を伺っておきたいと思います。
  99. 小堀豊

    説明員小堀豊君) お答えいたします。  まず、警察官の教養についてでございますけれども、警察大学校、管区警察学校あるいは各都道府県警察学校で行っておるところでありますが、各学校におきましてはその内容の充実を図るために独自の教材を作成することがございます。  今、委員御指摘の資料は警視庁学校がこのような観点のもとに職業倫理教育のための参考文献として約十年前に作成いたしまして、現在も使用しているところでございますが、現在の社会認識からすると不適切な記述があることも事実であります。したがいまして、既に訂正すべく警視庁を指導したところではありますが、あわせまして各県の警察学校に対しましても同様の注意喚起を行いまして、各種教育の場を通じましてこの点についての認識の徹底を図ってまいる所存でございます。
  100. 萱野茂

    萱野茂君 そこで、この副読本的な本を回収するとか書きかえるとか、そういうことについてはいかがでしょうか。
  101. 小堀豊

    説明員小堀豊君) 今、警視庁におきましてもう一遍全面見直しを行っておるところでございまして、この本につきましては、回収というか、むしろ書き直しということを今検討しておる最中でございます。
  102. 萱野茂

    萱野茂君 今ここで読んだところのアメリカ云々というあたりを全面削除するとか、そういうあたりはどうでしょうか。
  103. 小堀豊

    説明員小堀豊君) お答えいたします。  そういう観点で進めてまいる所存でございます。
  104. 萱野茂

    萱野茂君 次に、旧日本陸軍の毒ガスの投棄とその対策についてお伺いしておきたいと思います。  北海道の阿寒国立公園の屈斜路湖で、昭和二十年八月、終戦直後に、この湖よりおよそ八十キロほど離れた陸軍の計根別飛行場より、四十個ほど容器に入れられた毒ガスが湖岸から百数十メートル沖合に投棄されたということであります。この毒ガスはリペットではないかと言われていますが、リペットであるとすれば、大量の砒素を含み極めて有害であり危険であります。  北海道庁では立入禁止などの措置をとっていると聞いております。昨年夏の潜水調査でその一部が発見され、五月の雪解けを待って、防衛庁が協力をし回収するやに伺っております。  そこで伺いますが、この実態はどのようなものか、引き揚げの時期はいつを考えておられるのか、予算の面はどのようになっているのかを伺っておきます。  また、このような旧日本軍の行った行為についての行政責任はどこに属するのか。これまでは発生の場所などによって所管省庁がばらばらなようであります。このようなことは今後も発生することが予想されるわけでありますが、行政の危機管理にもかかわりますので、所管省庁、対策マニュアルなどが必要ではないかと思われます。そして、何よりも毒ガスでありますから、回収後の措置、例えば一時保管や処分方法などは極めて慎重を要することであろうかと思います。とともに、費用もかなり必要ではないかと思いますが、それらのことについて各省庁間での十分な検討と御返答をいただければと思います。
  105. 藤井威

    政府委員(藤井威君) 御指摘の北海道屈斜路湖に化学弾と思われる物体を投棄したという証言がございまして、調査をいたしまして何らかのものが沈んでいるということで、また先生もおっしゃいましたとおり、四月二十四日に北海道庁から、屈斜路湖において発見された砲弾状の物体の引き揚げに向けまして自衛隊の協力を得て、五月中旬には物体の散乱状況であるとか、概略寸法等に関しまして調査をするための第一回目の潜水調査を行うという旨を発表いたしております。  北海道庁がこのような発表を行いますに際しましては、国といたしましても内閣官房内政審議室を中心といたしまして、北海道開発庁とは十分な御協議を行った上で行われております。また、その過程におきまして、実際に作業に当たります自衛隊とも密接な連絡をとりながらやってまいったつもりでございます。  昨年九月に行われました北海道庁の調査によりますと、御指摘のように砲弾状の物体や木箱合わせて二十八個が確認されたというお話でございますけれども、ただ現時点におきましてはそれが具体的にどのようなものであるかということについてはまだ確認がとれていない状況でございます。  いずれにしましても、先ほど申しましたように、我々といたしましては従来から北海道庁との間で十分な連絡をとりながらこれに対処するということで万全の体制をとっておるつもりでございます。物が物でありますだけに今後ともに慎重な作業の受け入れが必要であるというふうに考えておりまして、またそのための実験等も非常に慎重を期さなきゃいかぬというふうに思っております。  御指摘の点に二、三お答えいたしますと、実際に物体を引き揚げるのがいつになるかということでございますけれども、今回の潜水調査は物体の散乱状況とか概略寸法とかに関する調査でございます。実際に物体に触れて何らかの措置をとるということはまだかなり先になる、そのための十分な準備もまた必要でございますので、かなり先になるんじゃないかというふうに考えておりますが、今回の潜水調査の結果も見まして、今後具体的にいつからそういう作業に入るのかということなども十分に検討して決めていきたいというふうに考えておりますけれども、そんないつまでもということではございませんで、何とか本年中にはきちっと実施いたしたいという見込みのもとでこれからも作業をやっていきたいというふうに考えております。  それから、どこが責任をとるかということでございますけれども、具体的に引き揚げられた物体をそれじゃどうするかということにつきましてもまだ実際には決めておりませんで、これから関係省庁の間で十分に協議していきたいというふうに考えております。  予算措置につきましては管理室長からお答えを申し上げます。
  106. 安藤昌弘

    政府委員(安藤昌弘君) 予算の面につきましてお答えをいたします。  不発弾等の処理に関する事業を行う地方公共団体に対しましては、一件の工事に要する交付対象経費が二百万円以上のものにつきまして、当該経費の二分の一を不発弾等処理交付金をもって交付することとなっておるところでございます。なお、残りの二分の一につきましては特別交付税で措置されるということになっておるところでございます。平成八年度予算案におきましても三千八百八十九万円を計上しておるところでございます。お尋ねの北海道屈斜路湖において発見されました砲弾状の物体の処理等に要する経費につきましても、この平成八年度予算の範囲内において適切に対処していく所存でございます。  いずれにしましても、今後とも北海道庁とよく連絡をとりながら適切に対応してまいる所存でございます。
  107. 萱野茂

    萱野茂君 屈斜路湖ではアイヌが何人か民芸品の店をやっていて、すぐ目の前とは言いませんけれども、近いんです。それで、アイヌの側からぜひこのことはという申し入れもありましてお伺いしたわけでありますが、今お聞きすると、窓口についてはまあこれからということで、余りはっきりではありませんが、やはりこういう危険なものですので、ぜひ何かあるときには一気にそこへ行けるというような管理のされ方があればありがたいな、そんなふうに考えているものであります。  次に、自然環境保全行政にかかわっての行政監察について総務庁長官にお尋ねしたいと思います。  その前に、まず事実関係について環境庁にお尋ねいたしますが、私は平成六年の十一月、環境特別委員会において、昭和四十九年の自然環境保全審議会の答申が二十年たった現在もたなざらしになっていることを指摘したわけであります。すなわち、昭和四十九年、利尻礼文サロベツ国立公園の指定に当たって一部指定から除外されたことについて、審議会は可及的かつ速やかに包含すべきとの附帯意見を付しました。また、環境庁は北海道開発庁との間に答申の同日にこれを裏づける覚書を交わしております。  時間がありませんから除外の理由は省略しますが、この間二十数年たっても何の進展もなく、答申はたなざらしされているわけであります。そればかりでなく、この間、民有地にあっては平成元年より業者による多量の砂利採取が行われ、貴重な自然景観が著しく損なわれているわけであります。また、平成六年には、林野庁の土地ですが、そこの保安林二千三百本もの貴重なミズナラが砂利業者によって違法伐採される事件が起きております。  環境庁はこのような事実をどのように把握されているのか、また審議会の附帯意見の遵守に向けて今後どのように取り組まれておりますか、その点を伺っておきます。  続けて言っておきますけれども、そこで総務庁長官、事実関係はおよそ御理解を得たと思いますが、環境庁がみどりの日の前、この二十五日に発表した自然環境保全基礎調査すなわち緑の国勢調査では、この十年間に七万ヘクタールの自然林が消滅したとしております。これはまさに私が今指摘した自然保護行政の怠慢の結果のあらわれではないでしょうか。  総務庁は中期行政監察計画の中で、平成九年度には初めて自然環境保全対策を対象とした行政監察を実施するとしています。このようなことがいつまでも放置されることのないよう、前倒しをしてでも私が今指摘した事実について行政監察の対象とすべきと思いますが、長官の御決意を伺っておきたいと思います。
  108. 下均

    説明員(下均君) 利尻礼文サロベツ国立公園でございますけれども、先生おっしゃいましたように、昭和四十九年九月に指定されたものでございます。御指摘の区域につきましては、サロベツ川の河川改修計画の策定との調整が必要とのことで、国立公園に含まれないということで整理されたものでございます。  当該地域は利尻礼文サロベツ国立公園の南側に隣接しておりまして、海浜部の草地のほかはトドマツですとかエゾイタヤという植物を主体とする針葉樹と広葉樹の混交林になっておりまして、湿地に生育いたしますヨシやヌマガヤという植物を主体とする湿原等から成るすぐれた自然環境を有しているものでございます。  海浜の一部におきまして古くから砂の採取が行われておりまして、現在も十数カ所で採取されていると聞いておりますけれども、既に作業が終了した箇所では植生が侵入している場所もございまして、周囲の景観と一体になりつつあるところもございます。全体として見ますと、湿原植生等のすぐれた自然景観を維持しながら推移しているのではないかというふうに考えているところでございます。  なお、環境庁といたしましては、北海道開発庁さんの方でサロベツ川の改修計画の決定の折には、速やかに適当な地域を公園区域に編入する方向で調整を進めていきたいというふうに考えておるところでございますけれども、当面、平成八年度におきましては、当該区域を含めましてサロベツ原野の自然環境の現状把握のための調査を実施したいというふうに考えているところでございます。
  109. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) 今も御指摘ございましたように、平成九年度に自然環境保全対策に関する行政監察を予定いたしておるところであります。御指摘のような問題を踏まえまして、これから国立公園の指定あるいは区域の変更のあり方等について調査をいたしたいと思っております。  なお、今御提案がありましたが、現地の北海道管区行政監察局におきまして、これから後できるだけ早い時期に実情に沿って十分な監察をいたしまして情報収集を遂げていきたいと思っております。したがって、先ほど環境庁の方からお答えございましたように、そうした調査とあわせまして一体的にやる必要があるのではないか、こう考えております。  以上です。
  110. 萱野茂

    萱野茂君 自然環境というのは一回壊すとなかなか戻るのが大変です。それと、砂利を採取している、そのことに反対するものではありませんが、必要なものは必要なものとして、とった後をちゃんとするとか、そのような意味でやはりきちっと、どうしてももどのように直らないものであるとするならば、それ相当きつく言って、次に木を植えさせるとかそういうやり方が必要ではなかろうかと思います。  その意味で、私は北海道に生まれて育ってみて、北海道というところは自然が残っている、そのように言われるんですけれども、足元にいた蛇も見えなくなった、カエルも見えなくなった、いろんなことを見るにつけ、自然環境はすごく破壊されていますので、必要なものをとるなとは言いませんが、とらせるにも、とった後その後どうするかということをぜひきちっと指導してほしい、そのように考えております。
  111. 吉田之久

    ○吉田之久君 私は、同和問題、同和対策の現況と今後の法的、行財政的対応、措置について絞って御質問をいたしたいと思います。  既にかなり古い話になりますが、一九六九年、昭和四十四年六月五日、第六十一国会衆議院内閣委員会で同和対策事業特別措置法が起立総員で可決されたとき、私もその場におった一人でございます。その際、私も質問をしたのでありますけれども、私と同郷でこの同和問題に心血を注いでおられました今は亡き八木一男さんが質問なさいまして、それを受けて当時の佐藤内閣総理大臣が「この法律ができ上がれば、ぜひりっぱな成果をあげるように、この上とも御協力のほどお願いしたい。また政府を鞭撻していただきたい」と申されて、大きな拍手を受けられたことが今もなお記憶に鮮明に残っているところなんでございます。  また、それから九年たちまして一九七八年、昭和五十三年の二月に、同法の失効を一年後に控えた衆議院予算委員会の第一分科会で、同和問題の重要性にかんがみ法律に空白をつくってはならないという立場で、同法の強化、延長を私が質問したこともあります。  その中で、私は、残事業量の把握の仕方、補助対象事業の範囲と市町村の必要事業との乖離、また就労対策の重要性を特に総務庁長官にお願いしたことがございます。  今、同和対策をめぐりまして、市町村では、同和対策審議会の答申をベースに、いまだ多くの問題解決のための施策を必要として各種の陳情が激しく繰り返されていることは御承知のところでございます。しかし、政府の対応は、平成四年の現行法延長の際、対象事業を限定されました。答申は同和問題解決の国及び地方公共団体の責務をうたっておりますが、ここに来て国と市町村との認識の乖離も極めて深刻でございます。  改めてこの時点に立って、ちょうどことしを含めまして二十八年になるわけでございますけれども、政府はこの二十七、八年間の同和対策の経過をどのように総括し、今後どうなさろうとしておられるのか、総務庁長官にお伺いをいたします。
  112. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) 同和問題というのは憲法に保障された基本的人権にかかわる重要な問題であるということは周知のことでございます。政府は、今御指摘のございましたように、昭和四十四年以来二十七年間にわたって関係諸施策を推進してまいったところでありますが、先般三月に地域改善対策協議会の総括部会報告書でいろいろな点についてさらに指摘がなされておるところであります。  生活環境を初め物的な面におきましてはある程度改善されたと言われておりますけれども、残念ながらまだ根深く存在する差別意識などについての問題は依然として残存しておるというのが実情であります。特に教育問題あるいは就労問題などの面におきましても、これらの点が大きな課題として残っておるということが指摘されております。したがって、特別対策の実施が住民の意識に与える影響等いろいろありましたけれども、現時点で反省をいたしますと、これは大変反省すべき点があるということを認識いたしたところであります。  政府といたしましては、これまでの成果を土台にして、さらに従来の取り組みの反省を踏まえまして、その中から、我が国で真の人権が尊重されるように、また戦後五十年、民主主義が何であったかということを明らかにするためにも、これから行政的に措置あるいは施策を推進してまいらなくてはならないだろう、こう考えておるところであります。
  113. 吉田之久

    ○吉田之久君 それでは、総務庁としては、平成五年度に同和地区実態把握等調査をなさっておりますけれども、その結果をどのように分析しておられるかということにつきまして若干御質問をしたいと思うわけでございます。  平成三年の十二月十一日に地域改善対策協議会が「今後の地域改善対策について」と題する意見具申をされております。このとき、当時の民社党の同和・社会問題等特別委員会の中井洽委員長は、  本日発表された地域改善対策協議会の意見具申が、来年度以降も財政措置を講じ、引き続き今後のあり方を審議する機関の必要性を提言したことは、地域改善対策の効果を測定し、同和地区の実態及び国民意識を把握する上からも適切であると考える。 という談話を発表いたしております。  また、当時の社会党の部落解放運動推進委員会の渋沢利久委員長は、  「平成三年度限りで法・事業を打ち切ることを前提とした一般対策への円満な移行の方策についてのとりまとめが地対協の任務」というような趣旨の解釈が一部官僚によって流布されていた中で、また、五年前の地対協の意見具申の内容に関連してある程度の継承性を示さざるを得ないという制約の中で、敢えて膨大な残事業量の存在を率直に認め、来年度以降における法律・事業・財政措置の存続の必要性を明確にうたっていることは、地対協の賢明で勇気ある決断として評価できる。 という談話を発表されております。  また、そのとき、全国自由同和会は意見具申に対する見解で、  総務庁が声を大にして唱えてきた「速やかなる一般対策への移行」を今回の意見具申は「直ちに一般対策へ全面的に移行することは適当ではなく、現実的でもない。」と一蹴していることは痛快であり地対協委員の良識に感謝したい。今回の意見具申で特筆すべきこととして、これまでの同和対策の効果の測定、同和地区の実態、国民の意識、などを把握するための調査と調査結果に基づき今後の同和対策を検討するために、審議機関の必要性に触れていることである。 というふうに、当時、全国自由同和会もそういう発表をなさっているわけなんでございます。  なぜあえて長々とこうした経過を申し上げるかと申しますと、地域改善対策の効果の測定など、「しかるべき時期に全国的規模の調査が行われるものと考えられるが、その際、調査結果の客観性を保証できる実施体制、方法等について慎重かつ早期に検討すべきである。」と意見具申は述べております。そして、「今後の地域改善対策の在り方について審議する機関が引き続き必要である」とも述べているわけなんでございます。ところで、「本協議会は、昨年十二月、総務庁長官から、政府において最終の特別法として提案され成立した地対財特法が失効する平成四年度以降の方策について、昭和六十一年十二月の地域改善対策協議会の意見具申の基本的な考え方に沿って、一般対策への円滑な移行を図るという観点から審議を行うよう求められた。」ということも述べているわけなんでございます。  この辺で、いわゆる地対協自身のこれに対する取り組みの姿勢と、一方、総務庁を中心として、あくまでも法律は失効させて一般行政の中で円滑な移行を図るようにいろいろ考えろという制約を与えられているというふうに思わざるを得ないのでございます。  総務庁長官から、五年前の意見具申、今申しました六十一年の意見具申の方向で審議するよう求められた。しかし、その方向は「適当ではなく、現実的でもない」とする平成三年度の意見具申が出されたということは事実認識として政府はよく御承知いただいていると思うのでございます。そればかりか、測定の効果やその客観性を保証する実施体制、今後の審議のための機関についてまで注文がついておったことになるわけであります。  そして、平成五年度に同和地区実態把握等調査が実施されました。しかし、調査する前から今後の方針は確定されているかのような様相を呈しておったと。事実、総務庁地域改善対策室の地対協への対応は委員の同和問題解決のための論議を一部妨害しているようにさえ聞こえるという声まで私どもには届いておったということなんであります。  改めてこの機会に、一体何のための調査であったか、また調査の結果をどのようにとらえておられるのか、御見解をただしたいと思う次第でございます。
  114. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) お答えをさせていただきます。  平成五年度の同和地区実態把握等調査についての御質問が中心でございますけれども、その前に一言だけちょっと申し上げさせていただきたいと思います。  確かに平成三年十二月にいただきました地対協の意見具申におきましては、その意見具申の時点におきまして、「直ちに一般対策へ全面的に移行することは適当ではなく、現実的でもない」と、その時点をとらまえた意見で、一般対策への移行ということについて否定的な見解が示されたことは確かでございます。しかし、意見具申全体を通じて見ますと、平成四年度以降におきます特別措置を検討するに当たって留意すべき基本的な考え方といたしましては、その中に明らかに書いてあるわけでございますけれども、当時におきまして、  二十三年間にわたる特別対策は、同対審答申当時、同和地区及び同和関係者が本来適用されるべき一般対策の枠外に事実上置かれていたことを契機に始まったものである。また、国民に対する行政施策の公平な適用という原則からしても、できるかぎり早期に目的の達成が図られ、一般対策へ移行することが肝要である。このため上記の措置は限時的なものとすべきであり、また、一般対策への円滑な移行のための仕組みを具体的に検討していくことが重要である。 ということが明らかに述べられているわけでございまして、早期に一般対策に移行するという基本的な考え方自体について否定されたものではないということだけは御理解いただきたいというふうに思います。  それで、今御質問の平成五年度の同和地区実態把握等調査はどういう目的のための調査であったか、何のための調査かということについてのお答えでございます。  同じく平成三年十二月の地対協の意見具申で、実態調査をすべきであるという御指摘をいただきました。政府におきましては、この意見具申等を踏まえまして、これまでの地域改善対策の効果を測定し、同和地区の実態や国民の意識等について把握するため、平成五年度に実態調査を実施し、昨年三月に結果を公表したところでございます。  この調査は、行政調査といたしまして、同和地区の概況を把握する地区概況調査、同和関係者の生活実態を把握するための生活実態調査、それから同和関係者及び広く一般国民の意識を把握するための意識調査、この三種類によって実施したものでございます。調査の実施に当たりましては、客観性を維持するために専門家によるアドバイスを受け、あるいは標本調査というような面につきましては、その論理的な正当性を維持するための調査の仕組みを考えて調査をしたところでございます。  その調査結果につきましては、地域改善対策協議会の総括部会において小委員会を設置して課題を整理していただいたところでございますが、その報告の中で、その結果につきまして、これまでの対策は生活環境の改善を初めとする物的な基盤整備がおおむね完了するなど着実に成果を上げ、さまざまな面で存在していた格差が大きく改善されたこと、しかし教育、就労、産業などの格差がなお存在している分野が見られること、差別意識は着実に解消に向けて進んでいるものの結婚問題を中心にして依然として根深く存在していること、人権侵害が生じている状況も見られ、その際の人権擁護機関の対応はなお十分なものとは言えないこと、適正化対策もなお不十分な状況であること等が指摘されておるわけでございまして、こういうものを踏まえて地対協の総括部会の意見が先般出されたところでございます。
  115. 吉田之久

    ○吉田之久君 そこで、政府も実態調査などでいろいろ御苦労されたことはわかるのでございますけれども、総務庁が実施された調査は平成五年六月一日現在で実施した同和地区概況調査で作成された世帯主名簿からの五分の一の抽出で、私のおります奈良県では県下八十二地区のうち三十一地区が調査対象外となっておりました。標本として抽出された世帯は必ずしも県下の縮図とはなっていないわけなんです。そこで、奈良県では補足標本を千二百十七追加いたしまして調査をさらに行っております。五十一地区、三千五百二標本だそうでございます。ここで既に地対協意見具申が述べた調査結果の客観性を保証できる実施体制、方法の言わんとしておったことが改めてよく認識されたということなのでございます。  問題はその調査結果の内容分析であります。  ここに大阪府と奈良県と福岡県、さらに大阪市、福岡市のデータも入っているわけでございますが、この同和地区の現状を見ますとかなり詳しくいろんな部分で調査がされているわけなんでございます。  特に問題の残事業と申しますか、地域改善対策特定事業の事業別進捗状況、大阪府の場合でございますが、建設省だけをとりましても、住宅地区改良事業は総額が四百九十五億円でありますが、平成四年度から六年度までの間で実施された実績は二百九億円でございまして、平成七年度以降の事業量が二百八十六億円も残っており、進捗率は四二・二%という現状でございます。その他、小集落地区等改良事業あるいは公共下水道整備事業等々をとらえましても、建設省だけの小計は総額八百八十七億円でありますが、なお残っておりますのが五百五十九億円という数字が出ておるわけなんでございます。厚生省におきましてもなお四十四億円の残事業が残っておるという状況でございます。これが大阪府の例でございます。  さらに、福岡県の場合には、建設省だけをとりましても、住宅地区改良事業等が総額二百二十七億円、平成七年度以降に残されている部分が百十三億円、進捗率は五〇・二%であります。さらに、住宅新築資金等貸付事業あるいは下水道事業等々を合わせまして、建設省だけの小計でも総額五百二十九億円のうちなお三百三十八億円が事業量として残っておるということでございます。厚生省の部分を見ますと、総額二百四十九億円のうち百十五億円がまだ平成七年度以降の分として残っておるということでございます。  それから、私の奈良県の場合には、建設省にかかわる小集落地区等改良事業というのが非常に膨大でありまして、総額が千三十一億円、そのうち平成四年度から六年度までに既に実施されたものが三百四十億円でございまして、平成七年度以降残されておりますのが六百九十一億円にもなるわけでございます。他に公共下水道等もこれあり、建設省だけをとってみましても、総計千四百五十二億円のうち未消化部分が九百九十七億円という現状でございます。総合計いたしましたら、奈良県の場合には千五百十六億円のうち千二十二億円がまだ残されておるということなんでございます。  だから、この実態調査は全国的にも大小さまざま、経過の違い、ばらつきもあると思います。それはそれといたしましても、こういう三府県だけをとらえてみましても相当な量が残っていることだけは現実的に否定できないと思うのでございます。また、平成四年、五年、六年の三年間においてなされた事業量から推定いたしましてもそれ以上のものが残っておる。このままの推移で見ますと、あと五、六年はかからざるを得ないのではないかと思われるような状況でございます。  この際、特段に平成七年度で大きく消化されたのかどうか、あるいは最後の年である平成八年度にどこまで消化されようとしているのか、その辺のところをもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。
  116. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 平成四年度に現行の地対財特法が延長になります際に、平成三年十二月でございますが、地対協からの意見具申がございました。その意見具申の中に、「物的事業の実施に当たっては、関係各省庁においてその進捗状況を的確に把握する必要があり、そのための進行管理の方法について検討すべきである。」、こういう御提言がございました。  法律を延長するに当たりまして、非常に厳密に残された必要な事業量というのを、私ども国でございますので国費ベースで把握したところでございます。当時の金額で三千八百二十九億円ということで把握され、それでこの残された物的事業を迅速かつ円滑に実施するために進行管理に努めてまいったところでございます。これまでの事業実績、それから平成七年度を終わったばかりでございますので、最終的な決算は終わっておりません。  それから、平成八年度予算に物的事業に必要な予算を計上し、現在御審議をお願いしているわけでございますが、これをもしお認めいただけるということになりますと、当初計画いたします国費ベースで三千八百二十九億という全国ベースとしての事業量を相当上回る、四千億円をさらに上回る事業が実施されることになりまして、全般的に申しますと、地対財特法延長期限内に実施すべき事業量については、国費ベースの予算ベースという意味におきましてはおおむね完了できるものと考えております。  ただ、先生から今御指摘のございました大阪府、奈良県あるいは福岡県という大変大規模な同和地区を抱えておられる自治体からの要請があることも私ども承知しておりますが、その中には、確かに御指摘のように、奈良の小集落地区等改良事業のように事業の立ち上がりが遅かった、あるいは関係地元調整のおくれというようなことから事業の進捗が予定どおり進んでない部分もあることも事実でございます。  こういうようなものにつきましては、先般の地域改善対策協議会の総括部会報告書の中でも、  既に着工済みであるが地対財特法期限までの事業完了が困難と見込まれるものがみられ、かつ、この事業を実施している地方公共団体の中には財政力の弱いものがみられることから、当該事業の完了に支障が生じることのないよう、国として適切に対応すべきである。 という指摘がされておるところでございます。これを踏まえまして、今関係省庁、政府におきまして今後の具体的な措置について誠心誠意検討してまいりたい、こういうふうに思っております。  いずれにしましても、七年度、八年度の事業実績というものがまだ終わっておりませんので、最終的なところというのは確定的なことは申し上げられませんけれども、各省庁とも法期限内にできるものについては極力実施していくという考え方のもとに予算も計上し、事業の取り組みに努力しているところでございます。
  117. 吉田之久

    ○吉田之久君 長官、ただいま菊池審議官のお話を聞きまして、だからこの問題が非常に複雑で見通しが立ちにくくなっているんですね。いろんな審議会が本当に苦労に苦労を重ねて続けてこられました。政府も県も市町村も関係団体もあらゆる努力をしてきたと思います。  確かにそれなりには進んでおるということだけは言えるわけなんですが、実態調査から出てくる数字を見ますと、私が指摘いたしましたように、県や市町村ではかなりのものが残っておるわけなんです。ところが、審議官が今おっしゃいましたとおり、国ベースから考えれば、既にもう四千億も消化しているよと、大体終わっているじゃないかという説明もあるいは成り立つんだろうと思います。  しかし、国ベースだけのもので問題は処理できない。地方がやらなければならない問題がまだ随分、その地方としてはもう耐え切れないほど残っておる。しかも、審議官が、各府県によっては、各地域によっては立ち上がりがおくれたことなどが理由になって残事業が残っているかのようにおっしゃいましたけれども、事実はそれに反するわけであります。まじめに立ち上がってしっかりやったところほどある程度進み、たくさん残っているわけでありまして、いいかげんにあしらっていればそれは終わったかと言えるところがあるかもしれませんけれども、特に福岡や大阪や奈良あたりは非常に集中しているそういう地域が多うございまして、しかも懸命にやってこの状態だということだけはやっぱりよく認識してやってもらわなければならぬのではないかというふうに思うわけなんでございます。  ちなみに、奈良県のことしの一月の要望書を見ますと、「小集落地区改良事業等の残事業完遂のための国の財政支援措置の継続」について、これは知事自身が要望しているわけでございます。  現在実施中の小集落地区改良事業等につきましては、地対財特法の期限内に最大限の進捗が図られるよう努力しているところでありますが、今なお相当量の事業が残されており、同法の期限内 というのはことしいっぱいで終わるわけでございますが、  同法の期限内における事業完了が困難な状況にあります。一方、事業主体の財政状況はいずれも脆弱であり、これらの事業に係る国の財特措置が無くなった場合の市町村負担の急増に対応できず、事業の完遂は極めて困難なものとなります。  つきましては、小集落地区改良事業等が完了するまでの間、地対財特法に基づく現在の国の財政支援措置(補助率三分の二、起債充当率一〇〇%、交付税措置)同等の措置を講ずるとともに、小集落地区改良事業の事業用地に係る譲渡所得税の特例(千五百万円控除)を継続されるようお願いします。 というふうに極めて具体的に陳情しているわけなんでございますね。長官、この辺のことはお聞きいただけばすぐにおわかりいただけると思うのでございます。  また、「下水道事業の残事業完遂のための国の財政支援措置の継続」につきましても、  公共下水道事業につきましては、地対財特法の期限内に最大限の進捗が図られるよう努力しているところでありますが、多くの地区でなお相当量の事業が残されており、同法の期限内における事業完了が困難な状況となっています。  つきましては、同和地区における下水道整備が完了するまでの間、地対財特法に基づく現在の国の財政支援措置と同等の措置を講じられるようお願いします。 と言っております。極めて適切な要望だと思うのでございます。  そういたしますと、この法は来年三月で失効することになるわけでございますが、その後現に残っておる、特に地方自治体に係る部分について、しかも国がいろいろと特別措置を講じなければならない部分について、全然法律なしでそういうことができるのかどうかということが大変心配なんでございますが、その点につきまして長官はどうお考えでございましょうか。
  118. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) 先ほどもお答えしましたように、同和問題については早期に解決をするということが基本でありまして、この問題につきましては先ほど審議官の方からも申しましたけれども、地域改善対策協議会の総括部会におきまして、同和地区実態把握等調査を踏まえた結果、大変な審議をいただいたところであります。さきの三月二十八日、報告書を取りまとめていただき、その報告をもとに五月十七日に地対協総会を開きまして意見具申がなされると承知をいたしておるところです。  したがって、私たち政府といたしましては、報告に盛り込まれた施策をどう実現をしていくかということになるわけでありますから、これから以降、この報告の中にもありますように、法的措置の必要性を含め各般の措置について具体的に検討してまいりたい、そして同和問題の早期解決に努力をしていかなくてはならないという考え方に立っております。  与党の側におきましても、人権と差別問題に関するプロジェクトチームにおきまして与党各党間における意見調整を図っていただいておるところでありますし、その議論の動向等も踏まえまして、これらの問題については十分留意をして今後進めてまいりたいと思っております。  以上です。
  119. 吉田之久

    ○吉田之久君 今、長官もお述べになりましたとおり、五月十七日に地域改善対策協議会の総会が開かれることを承りました。恐らくそこで正式に意見具申がまとめられるだろうと思いますが、それは先日、三月二十八日に総括部会から出されました報告書がベースになって、大体その延長線上で出てくるのではないかというふうに私どもは読み取っているわけなんでございます。  この総括部会の報告書もいろいろ述べられておりまして、  このようなことから、従来の対策を漫然と継続していたのでは同和問題の早期解決に至ることは困難であり、これまでの特別対策については、おおむねその目的を達成できる状況になったことから、 と、おおむね達成できそうだというのが極めてあいまいな概念なんでございますが、  おおむねその目的を達成できる状況になったことから、現行法の期限である平成九年三月末をもって終了することとし、教育、就労、産業等のなお残された課題については、その解決のため、四で述べるような工夫を一般対策に加えつつ対応するという基本姿勢に立つべきである。 と、工夫というなかなか苦労した表現を使っていらっしゃるんですが、どういう工夫で一般対策に加えてどうするのかというところがなかなかきちんと出しにくいと思います。  同時に、  本報告に盛り込まれた施策を実現していくため、法的措置の必要性を含め各般の措置について具体的に検討し、これに基づいて、国及び地方公共団体は、基本的人権の尊重と同和問題の一日も早い解決をうたった同対審答申の精神とこれまでの成果を踏まえつつ、それぞれがその責務を自覚し、今後とも一致協力して、これらの課題の解決に向けて積極的に取り組んでいく必要がある。 というふうに述べているわけなんですね。  大変御苦労なさっていると思うんです。今までの経過がありますし、未来永劫にこの法律があっていいとはだれも思っていません。しかし、どこかで完全に軟着陸をさせるというか有終の美を飾らないと、飛行場が見えたからこの辺でエンジン切ってしまえといったら、これはもう失速して大変なことになりますね。  現に、この間ある新聞で、あの阪神大震災のときに、「ひとつのムラが一瞬につぶれた」という記事が載っておりました。読んでみますと、どうも同和地区のまだ改良されていない地区があの大震災によって一瞬にして全部崩壊し、とうとい人命が失われたようだと。これは何も同和地区の未改良地区に限りません。すべてそういう老朽住宅というものは同じ状況にあったのでございましょうが、私ども同和対策の今日までの経過を知っている人間としてはあり得ることだなというような感じを受けたわけなんですね。  やっぱり途中で中途半端に一部分を残しておくことはできない状況に来ておるということだけは事実でありまして、これは同和対策だけではなしに一般国民すべてにかかわる問題でありますが、わけても同和地区のこの残事業をどう完結していくべきであるかということが総務庁の今日の重大な課題だというふうに思うんですね。  だから、その辺、特にもう八月の概算要求の時期も近づいておりますし、各省庁でよく検討して、これでクリアできるところはクリアしろ、残った部分は各省庁で特段考えろという姿勢でいらっしゃるんでしょうが、その特別の法的措置が部分的に残されるのか、部分的に生き残るのかどうかさえ定かでない現状でどうやって概算要求を組めばいいんだろうかなと私どもも大変心配しているわけなんです。挙げて総務庁長官の全省庁にわたる同和問題での指導性が今発揮されなければならないときなのではないかと思うわけなんです。  重ねてお聞きいたしますが、これだけ私が申しました問題が全く一般法の中で消化できるとお考えでしょうか。それとも、何らかの特段の措置が要ると。法律までは要らないけれども、できるという自信がおありなのか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  120. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 大臣から御決意を披歴していただきます前に、地対協総括部会の意見書の中身について直接引用いただきましたので、それに関連いたしましてちょっとだけ補足させていただきたいと存じます。  今お読みいただきましたところは、まさに地対協総括部会の意見書の中の「同和問題解決への展望」という、今後のあり方について総論として述べられたところでございます。  ただ、そこで若干補足させていただきたいと思いますのは、これはもう先生十分御存じのことでございますけれども、特別対策が終了して一般対策に移行するということは、この地対協の報告書の中にもございます同和問題の早期解決を目指す取り組みの放棄を意味するものでは決してないと。一般対策移行後は従来にも増して行政が基本的人権の尊重という目標をしっかりと見据えて、地域の実情あるいは事業の必要性、その的確な把握に努めて、真摯に施策を推進していくことが必要だと、こういう御指摘もございます。  そこの部分も私どもまさにそのとおりということで、一般対策になったから手を抜いて、今の先生のお言葉ですと、ちょうど飛行場が見えてきたからエンジンを切ってしまって失速して飛行機が落ちてしまうというようなことのないようにこれはやっていかなきゃならぬ、こういうふうに思っております。  それからまた、一般対策に移行するということにつきましても、後の方に地対協の総括部会の意見の中では、一般対策に工夫を加えつつ、その既存の一般対策の中で果たしてそれが完全な受け皿になるのかどうか、それから残されている課題というのがどのくらいのマグニチュードを持っておるのか、どういう状況になっているのかというようなこと、それから地方公共団体の財政状況というようなものを見ながら個別の事業の必要性について検討するということの指摘、工夫の必要性、一定の工夫をしろと、こういうふうな御指摘もいただいているわけでございまして、それを受けて、私どもは各省庁とも手を携えてこれに取り組んでまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  121. 吉田之久

    ○吉田之久君 一般対策に切りかえよう、だからもうすべて放棄しよう、そんなことを考えている人はこの問題にかかわっている人で日本じゅうだれもいないと思うんです。ただ、一般対策に今切りかえることで、それで本当に着地できるんだろうかということを私は聞いているわけなんです。  法的措置を切るということはいわばエンジンを切るようなものでありまして、それでも先ほど申しましたような金額をよどみなくあらゆる工夫をして貫徹できるような措置が講じられるならばそれはそれで結構でございますが、私は行政というのはそんなに便利にできていないと思うのでございます。その辺がどうしても心配だということでございます。  同時に、先ほど長官も申されましたけれども、同和問題というものは非常に根深く存在しておる差別意識であって、今後非常に粘り強く対応を考えていかなければならないとおっしゃっているわけでございますね。  今までの残事業等の推進をハードと言うならば、そういう精神的なあるいは教育啓蒙を必要とするようなものをソフト面と呼ぶ人もありますが、私はソフト面と呼ぶほどソフトなものじゃないと思うんですね。極めて陰湿な、そして深層心理に迫るような非常にネガティブな部分が残っているわけでございまして、これはよほどの努力をしなければ解決しない。その解決がなかったら、仏つくって魂入れずで、結局は同和問題、差別問題は解決されたことにならないと思うのでございます。  だから、長官、その辺をとらえて、解放同盟の方々初め私どもも何らかの基本法がやっぱり必要なのではないかということを強く言っておるところなのでございます。  ちなみに、第三期部落解放基本法制定要求国民運動第二十一波中央集会が三月十一日に日比谷公会堂で開かれておりまして、中西総務庁長官が御出席になっておりました。立派なお写真が載っておりまして、長官が申されたことの概要がここに書かれているわけでございます。  ちょっと読み上げますと、  総務庁長官の中西績介でございます。第三期「部落解放基本法」制定要求国民運動第二十一波中央集会にあたりまして、一言ごあいさつを申しあげます。  部落問題は、基本的人権に関わる、そして、わが国の戦後民主主義の、民主主義そのものが問われている重大な差別問題であります。このあるべからざる差別、恥ずべき社会悪を一日も早くわが国社会から一掃することが必要であり、そのためのとりくみに全力をあげていかなければなりません。  私は、これまで代議士として、この問題の解決のために、「部落解放基本法」制定にむけて、微力をそそいでまいった一人であります。私の故郷におきましても、いまなおこの差別との闘いがつづいております。はからずも橋本内閣の発足にあたり、部落問題を所管する総務庁の長官を拝命したわけでありますが、私はこの問題の解決を橋本内閣の重要課題としてとりくむべく考えております。  「地対協」と与党プロジェクトチームが車の両輪として、政府与党一体になり部落問題の解決にとりくむことが必要と思います。 と、我々野党が差し出がましいことを言わなくともちゃんとやってくださるように読ませていただいて、非常に敬意を表している次第でございますが、最初に申されました長官の御心情から申しまして、今解放同盟の方々あるいは各政党が真剣に考えております基本法の制定、言うならば完全にソフトランディングして、着地して、改めて大きな人権を解決する再出発の飛しょうをしようというその基本法的なものがやっぱり必要なのではないかというふうに私は思うわけでございますが、長官のお考えをお聞きいたしまして、きょうの私の質問を終わらせていただきます。
  122. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) この問題につきましては、先ほどから申し上げておりますように、地対協総会の議を経て意見具申が提出されると承知しております。  特に、この前の報告の中にもございますように、  同和問題の解決に向けた今後の主要な課題は、依然として存在している差別意識の解消、人権侵害による被害の救済等の対応、教育、就労、産業等の面でなお存在している較差の是正、差別意識を生む新たな要因を克服するための施策の適正化であると考えられる。これらの課題については、その背景に関して十分な分析を行い、適切な施策が講じられる必要がある。 という報告になっております。そして、それを受けまして、「今後の施策の基本的な方向」という中におきまして、  本報告に盛り込まれた施策を実現していくため、法的措置の必要性を含め各般の措置について具体的に検討し、これに基づいて、国及び地方公共団体は、基本的人権の尊重と同和問題の一日も早い解決をうたった同対審答申の精神とこれまでの成果を踏まえつつ、それぞれがその責務を自覚し、今後とも一致協力して、これらの課題の解決に向けて積極的に取り組んでいく必要がある。 と述べられておるわけです。  全部読み上げるわけにいきませんのでかいつまんで申し上げましたけれども、そうした方向での意見具申が十七日には出てくるということになっております。  今問題になっております、なお残っておる教育、啓発あるいは就労問題等たくさんの問題がありますし、さらにこの基本理念の問題あるいは救済措置等を含め、たくさんの問題がまだまだ依然として残っておるわけであります。今の事業の問題等についても、依然として残っている部分もあるわけでありますから、先ほど読み上げた中身でもって、そうした面をどのようにこれから具体化していくのか、こうした点について検討していきたいと思っております。
  123. 吉田之久

    ○吉田之久君 ありがとうございました。
  124. 笠井亮

    笠井亮君 私はまず最初に沖縄問題について幾つか伺いたいと思います。  まず、沖縄米軍基地の移転費用の問題でありますけれども、日米特別行動委員会、SACOの中間報告に基づいて、九日には作業部会、タスクフォースが始まるということであります。普天間の返還は当然のことでありますけれども、問題は日米の合意の中身だと思います。沖縄の負担軽減をうたいながら、逆に嘉手納基地の負担がさらに重くなって、さらに岩国基地の固定化と強化、そして有事の民間空港の使用問題まであります。抗議の声が上がっているのは当然だと思うわけであります。  しかも、米軍基地移転に日本が莫大な費用を負担するというのは大問題だと思います。四月十六日の閣議決定を踏まえて、法制面及び経費面を含めて総合的な観点から早急に検討し、十分かつ適切な措置を講ずるということでありますけれども、この間の政府答弁では、まだ積み上げていないが相当の金額だとか、あいまいなことが言われていると思うわけであります。防衛庁長官は記者会見で一兆円の試算という数字も挙げて言っておられるわけですから、ある程度の内訳を見積もりされているはずであると思うんです。  具体的にどこまで幾ら程度持つことを検討されているのか。その中で、普天間関係では嘉手納へのヘリポートの移転、岩国へのKC130移転にかかわる経費はどの程度になるのか、それから普天間の跡地利用の関係費はその中に含めて検討されているのか、まずその点について伺いたいと思います。
  125. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) ただいま御指摘の普天間飛行場の返還に伴う措置、特に種々経費の面でもってお話があったわけでございます。  政府といたしましては、所要の移設を含めた中間報告の措置の実施をするという観点から現在努力をさせていただいておりまして、お話がありましたとおり、関係省庁及び沖縄の代表を含めたタスクフォースを設置することといたしておりまして、第一回会合を五月九日に予定いたしております。  現在、経費等の面につきましても、今後それらの会議の中で関係省庁あるいは米側とも費用負担の面等につきましても相談をしながらこれからいよいよ決めていこう、こういう段階でございます。したがいまして、現段階では経費の面についてお答えできないのでございます。
  126. 笠井亮

    笠井亮君 報道によりますと、この間明らかになっている以外に、合意されたと言われている以外に、アメリカ側が新たに要求しているとされている嘉手納弾薬庫の千五百メートル規模の滑走路というのが出ておりますけれども、これもつくるということで入っているんですか。
  127. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 御承知のとおり、我が自衛隊もヘリコプター等の基地を有しているわけでございますが、それらのものを今後勘案しながら、通常の基地に当然必要なものは整備をしていかなければならない、こういうふうに考えておりますが、いずれにいたしましても跡地問題もまだ決まっておりません。今後そうした協議の中でもってどの程度のものにすべきかということは決めていくべきものと、このように考えている次第でございます。
  128. 笠井亮

    笠井亮君 その通常の基地に必要なものという中に、ではそういう千五百メートル規模の滑走路ということも念頭に置いてやられているということですね。
  129. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 何メーターのものが適当であるのかということはこれからの協議によるわけでございますが、私ども自衛隊も当然のことながら滑走路を有しているわけでございまして、そうしたものも考慮に入れながら今後検討いたしていくということになるわけであります。
  130. 笠井亮

    笠井亮君 自衛隊の有しているものも含めてというのが、どの範囲がどこまでこの米軍の中で使われていくのかというのがよくわからないんですけれども、要するに今回の合意に基づいていきますと、沖縄の負担は軽減されないということが出てくると思うんです。  しかも、沖縄の負担というのは米軍によってもたらされておるものであって、日本側の都合ではないわけですね。それを日本側の要請によってということで、結局、日本側が負担するというふうに検討されているということになっていると思うんですけれども、今、全体の事態の中で、むしろ今回の合意内容というのはアメリカ側の都合じゃないかということが明らかになってきていると思うんです。  ペリー国防長官が言っておりますけれども、これまで普天間基地が維持してきた機能は手放さないのが前提だということになっていますし、さらに有事対処まで広げられてくると。そしてまた、もともと普天間については、米海兵隊内部からも訓練などに不便な上に危険で重要性が低いという声も相次いでいたということも言われておりますし、マイヤーズ在日米軍司令官は、古い住宅地域を返して新しい住宅地域に移るわけだし、沖縄の米軍はよりよい状況になるということまで言っているわけであります。そしてさらに、今伺いました最新鋭の滑走路建設の可能性ということまであるとすれば、これはもうアメリカにとっては返還ということを一方で言いながら願ってもない合意である、これによってさらにいろんなことができるということになるんじゃないかと思います。  基地被害の苦しみを広げるたらい回しの計画をそっくり日本側が負担するということで検討されているとなれば、とんでもないことだということを申し上げざるを得ないと思うわけであります。  その経費の検討内容についても、先ほど現時点では申し上げることができないというふうにおっしゃったわけですけれども、既に報道などでは、与党の連絡調整会議などで防衛庁側が説明したところでは一兆円になるんだとか、普天間だけでも三千億、四千億ということまで含めて説明をされているということが報じられているのに、国会に対しては明らかにできないというのは大問題じゃないかというふうに思うわけであります。  その経費の扱いについてさらに防衛庁長官に伺いたいんですが、現行の防衛費の枠内では無理だと、予算の性格も違うので別枠で処理するということが政府・与党内で言われているようでありますけれども、従来、政府が言ってきたような別枠というのは日本の防衛のための予算ではないということ、そういうことを念頭に置いてやっているんでしょうか。
  131. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 御承知のとおり、我が国の防衛というのは自衛隊と日米安保条約のもとで確保されている、こういうふうに私どもは理解いたしているわけでございます。冷戦終結後のアジア太平洋地域におきましても不安定要因というものが現に存在している、こうした中で、私どもも米軍のプレゼンス、十万大規模、こういうものを理解いたしているところでございます。  そうした環境の中で、私どもはたびたび申し上げているわけでございますが、日本並びにアジア太平洋地域を守るためにアメリカの若い将兵に日本へ来ていただいている、こうした状況を考えますと、日本といたしましてもでき得る限りの努力をすべきである、こういうふうに私どもは考えているわけでございます。  先ほどお話がございましたように、十六日の閣議決定の趣旨を踏まえまして、いよいよこれから法制面並びに経費面について、それらのものを総合的に勘案いたしまして検討を行い、十分かつ適切な措置を講じようとしている時期でもございます。したがいまして、この経費の取り扱いについて何をどうすべきか、こういう問題につきましてはまさにこれから検討すべきものということでございます。
  132. 笠井亮

    笠井亮君 別枠も含めて検討するということで理解していいわけですか。  では、関連して伺いますけれども、この四月に発効した新協定がございますね、新特別協定。この第三条で訓練についての移動費のことが新たに定められたわけですけれども、今回の普天間の問題についてはこれの適用も考えていらっしゃるのか。または、先ほど私の質問に対してお答えが明確でなかったと理解しているんですが、防衛費の枠外で新たにやらなきゃいけないということで、そこまで踏み込んだ検討になっているのか、その辺のところをちょっと具体的に伺いたいと思います。
  133. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) ただいま先生から御指摘のございました訓練移転費の件でございますが、これは現行の仕組みをちょっと御説明いたしますと、在日米軍が本来特定の施設・区域を使用することによって効果的に行い得る訓練を日本側の都合でいろいろ米側に要請をいたしまして、米軍の方が運用上の不便とか不利益を甘受しながら実施する、こういう事情を勘案して私ども日本側がその移転経費の一部を負担する、こういうのが現行の制度でございます。  今御質問の普天間関連でお答えいたしますと、これについては、先般行われましたSACOの中間報告を受けまして、私どもが訓練及び運用の方法等についてこれから細かな点を検討してまいります。そういう段階で具体的に内容というものが決まっていくわけでございまして、現段階ではまだその中身について日米間で細かな議論をしておる段階ではないということでございます。
  134. 笠井亮

    笠井亮君 現段階ではいろんなことがあって明らかでないんだということなんですが、SACOの合意からもう日がどんどんたってくるわけですし、そして十一月ということがあるわけで、そこのところが現段階では現段階ではということで国会にも明らかにされないで、どういうところでこれを話し合っていくのかということは問題になってくると思うんですが、その辺のところをやっぱりきちっとさせる必要があるというふうに思います。  これまで政府は、一九七八年以来思いやり予算ということで、安保条約や地位協定上は負担義務のないものまでどんどん新たに負担をするということで、特別協定によって、あくまで暫定的それから特例的、限定的な性格だと言いながら次々に範囲を拡大して、去年の秋には新特別協定を結ぶという形でやってきたわけです。今の御説明でもはっきりしないんですが、結局今回また新たに一兆円とも言われるお金について、これをまた別枠でやるということも含めて検討しているということになると、これはもう無限に米軍駐留経費の負担が持ち込まれてくるということにならざるを得ないと思うんです。  この問題は極めて重大で、そういう点で言いますと、日米共同宣言で二十一世紀にわたって米軍基地の体制を固定化して、沖縄も本土も黙って米軍基地のもとで暮らせという約束をするから、結局そういうところでどんどん国民に一方では負担がかかるということにならざるを得ないということになると思うんです。沖縄問題は基地の無条件全面返還を基本にして、誠実に基地縮小問題に当たるということを強く要求しておきたいというふうに思うわけであります。  次の問題に移りますけれども、沖縄の基地問題に関連してもう一つ、楚辺通信所の一部用地をめぐる問題について伺います。  私たちは、三月二十六日、それから四月九日の当委員会でこの問題を取り上げて質問してまいりました。その使用期限が切れてから既に一カ月以上が経過しております。沖縄県の収用委員会は去る二日、那覇防衛施設局が申し立てていた六カ月の緊急使用を不許可にすることで合意して、次の十一日に正式決定するとのことが伝えられております。  官房長官は四月九日の聴濤議員への答弁の中で、今でも直ちに違法であるという認識は持っておりませんけれども、これが無制限に長く続くという状態になりますと、これははっきり違法状態と言われるのかどうなのか懸念を持つとされて、沖縄県の収用委員会に対して駐留軍用地特措法に基づいて緊急使用の申し立てを行っているから、いずれ近い機会にこの判断が出る、その間は返還をすべき立場にはないというふうに答弁をされました。  その緊急使用の不許可の判断が出て、この状態が長期化することが明らかな段階にある今、官房長官のおっしゃっていた御意見から見ても明らかに違法状態ではないかと思うんですが、どのようにお考えでしょうか。
  135. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) まだ五月十一日が参っておりません。十一日には私たちの期待する決定がなされることを心から期待している次第であります。
  136. 笠井亮

    笠井亮君 確かに正式決定ではないんですが、十一日にはもう不許可にすることで合意したということが報じられている段階です。  官房長官は三月の段階で、まだその権原のある状態の中で四つの理由なるものを挙げられて、四月になっていわば権原のなくなった状態での対応の仕方、今すぐ特別立法したからといってこの問題の救済ができるわけではございませんというふうにおっしゃって、一般論としては新規特別立法の研究もしていくことは必要だというふうに言われてきているわけです。  それからもう大分たって、緊急使用の動きをとりあえず今見ているからというふうにおっしゃったわけですけれども、いよいよそれもどうなるかわからぬ、緊急使用の不許可に続いて使用裁決自体もどうなるかわからない、今まさにそういう状態が日々進展していると思うわけでありますけれども、この状態が無制限に続くとは言えないというようなことは絶対にあり得ないと思うんです。  どんどん不法占拠状態が長期化しているということは現実に明らかだと思うんですけれども、緊急使用の問題でその動きを見ているんだとおっしゃっている中でのこの間の推移があり、そしてもう十一日が目前という段階で、前回のとき一般論でおっしゃっていたようなことではなくて、いよいよ特別立法にも踏み出すというようなことまでお考えなのかどうか、その辺いかがでしょうか。
  137. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 今、委員お話しのとおり、賃貸借契約に基づいて使用してまいりました楚辺通信所について、現在私どもは沖縄県の収用委員会に裁決申請及び緊急使用申し立てをいたしているところでございます。官房長官からもお答えいたしましたが、五月二日に開催をされ、次は十一日ということの予定になっております。  私どもといたしましては、この楚辺通信所の使用というものが日米間の国と国との約束ということで極めて大切なものであるということ等を収用委員会にもしっかりとお話を申し上げまして、十分御理解をいただいていると理解いたしております。私どもといたしましては、駐留軍用地特措法の趣旨にのっとり緊急使用の許可がなされるということを期待いたしております。  何分にも十一日の決定を待たなければなりませんので、それ以上のことは現在申し上げる立場にはございません。
  138. 笠井亮

    笠井亮君 国と国との約束だということを収用委員会にもよくわかってもらうとおっしゃったんですけれども、確かに条約を結んでいる以上、国と国との間でいえば履行義務があるということは成り立つと思うんです。しかし、国に義務があるとしても、実際に民有地を借りていくということになりますと、それの裏づけとなる国内法できちっと手続がなければならないというのは、これはもう法治国家としては当然のことだと思うんです。そこのところがなしのまま収用委員会に理解いただきたいといってもこれは理屈が通らないと私は思うわけでありまして、特措法が切れたんだから今適法状態と言えないと言われながら収用委員会に御理解いただきたいというのはこれまた変な話じゃないかというふうに私は思うわけであります。  こういうふうにしている間にももう既に一カ月以上がたっているということで、これを再三にわたって当委員会でも私ども指摘をさせていただいたわけですけれども、こういう状態が日々続いていること自体が法治国家であるまじき状態が続いているということであります。三月末のときには、いや、直ちに違法ではない、長期化するかどうかわからぬというふうにおっしゃっていたんだけれども、もう既に一カ月以上、ある意味では長期化している状態が続いているということでありますから、権原が消滅したら一刻も早く所有者に返還するという措置を直ちに今からでもやるということしかないというふうに私は思うわけであります。そのことを強く重ねて求めておきたいと思います。  最後に、私は戦争中に旧日本軍によっていわゆる従軍慰安婦となることを強制された方々への補償の問題について伺っておきたいと思います。  政府はこの問題で、女性のためのアジア平和国民基金、いわゆるアジア女性基金による一時金の支払いという形で処理しようとされてこられました。そのことが内外からの批判を受けてきたということだと思うんです。  そこで、官房長官に伺いたいんですけれども、このアジア女性基金の呼びかけ人の一人である三木睦子さんが去る二日に基金の理事長あてに辞表を提出されたことが明らかになりました。三木さんは国連人権委員会のクマラスワミ報告を高く評価して、学者、文化人とともに橋本総理大臣に改めて国家補償の実行を申し入れましたけれども、政府の対応や募金の集まりの悪さに落胆して他にも辞意を漏らしている呼びかけ人がいるというふうに言われておりますし、けさのNHKのニュースでも関連した基金の理事の方々の動きが報じられておりました。こういう事態を官房長官はどういうふうに受けとめていらっしゃるでしょうか、伺いたいと思います。
  139. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 既に新聞等でも報道されておりますが、五月二日の十三時に総理官邸を三木夫人ほか何人かの、いわばこの募金運動に携わっておる方などが参られまして、幾つかのやりとりがあったようでございます。  ですから、テークノートされていることで、日本政府が個人賠償を行わなきゃいけないのではないか、その点幾つかの問題点の指摘があったようでございますが、総理からは、政府の立場は国際法上の処理は終わっております、それからこの問題はただ謝罪を行えば済むというような問題ではない、将来に向けた行動によって評価をされるべきだ、こういうことを主軸にお答えをいたしております。その後、その呼びかけ人のメンバーの一人である三木夫人がおやめになったということを聞いておりますが、まだ詳細については、何の理由でおやめになったのかわかりません。  ただ、経済情勢その他が悪い状態で予期した以上の募金の成果が上がっていないという現実もございます。ですから、それぞれの国民の方々に私たちも懸命な呼びかけをいたしております。ぜひ皆さん方の御協力を得て、やはり我々はこの方法が一番よろしいという認識に立って始まったわけでありますから、この問題の貫徹に向かって努力を払ってまいりたいと思います。
  140. 笠井亮

    笠井亮君 予期したほどに募金が集まっていないということも言われたわけですけれども、なぜそういう形での取り組みが広範な共感を得られないのか、中心になってやられた方々からも失望が出てくるのかということについて、やはり政府が真剣にみずから問いかけるということが大事じゃないかと思うんです。  少なくとも事がそもそも軍の要請から始まっているということがあり、そして甘言や強圧によるなど本人たちの意思に反して集められた事例が多数あって、官憲等が直接これに加担したということがあったということは政府自身も認められているわけですし、まず責任をとるのはだれかということをはっきりさせないと、これはどうやったってうまくいかないということになると思うんです。  先ほど国際法上のことを言われましたけれども、政府自身に本当に償いをしようという気があれば、国内法の整備で対応できると思います。それをせずに、誠実に対応するとか、反省とおわび、それだけじゃ足りないんだ、どうするかということがかかっているんだということを幾ら繰り返されても、諸外国からも本当にやる気があるのかということにならざるを得ないし、それから国内で熱意を持ってやられた方々の中からもそういう声が出るというふうに思うんです。  ですから、今からでも遅くない、この機会に本当に今までの態度を改めて日本の戦争責任を認識して、元慰安婦の方々への個人補償に取り組むべきだということを私は強く求めて、質問を終わりたいと思います。
  141. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 他に御発言もなければ、これをもって平成八年度総予算中、皇室費国会所管会計検査院所管内閣所管及び総理府所管のうち総理本府、日本学術会議国際平和協力本部宮内庁北方対策本部を除く総務庁防衛本庁防衛施設庁についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会      ―――――・―――――