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依田智治君 急迫不正の侵害に対して
我が国を守るため必要最小限というと、今のミサイル時代に、撃ってくるミサイルを少なくとも自力で防ぐためには、やはり相手の基地をたたく以外にないんですね。そうすると、相手の基地をたたくものを持てないでどうやって国を守るのかということになれば、今の戦力に関する
法制局の見解というのはちょっとおかしくなってしまうんじゃないでしょうかね。
そういうぎりぎりの状態において国を守るのに、今は飛んでくるミサイルを落とせないから、落とすとすれば相手をたたく以外にない。相手をたたくのだって結局
我が国を守るために必要最小限の
自衛権です。そうしなかったら
我が国は破滅してしまう。アメリカに頼んでたたいてもらうという考えが出てくるんでしょうが、しかし
自衛権としてはそれは認められるけれども、政策として
我が国はそれは持たないんだという議論になってくると思うんですね。
だから、急迫不正という考えは、いずれにしても国際国家がこういう
情勢の変化の中で存立していくのには、私に言わせれば、非常に通用しない議論になりつつあるんじゃないか。やはり
憲法は国際主義で、立法者も盛んに言っていたように、国際連合に頼る気持ちが非常に強い。そうすると、国際連合に加盟したらお互いに力を合わせてやる。そのときは
我が国も必要なその限りにおける軍備を持ってみんなでやっていこうという思想が非常にあると思うんですね。
そうなると、きょう平和協力
本部の方にも来ていただいていますが、PKO法の見直しという問題、
我が国だけが武器使用は個人の使用に限るなんというような個人的なものだけで、国連マニュアルが通用しないような解釈でPKO法をつくっているのは実はおかしいんじゃないのかなという議論もあるわけです。
そこで、この急迫不正の侵害に対して
我が国を守るだけしか認められないという議論は、今の個別的
自衛権の範囲の、
我が国が攻撃を受けた場合に相手基地をたたくこともできないという意味で破綻しているんですが、しかし今それだけで国が守れるのかということになった場合は、守れなくてもいいんでしょうか。
法制局の見解の急迫不正のときだけ守る
自衛権だけ認めていけばそれで国が守れるのかといっても、守れないんじゃないでしょうか。
だから、もし本当に
憲法がそれしか考えられないんだとしたら、政府の責任において
憲法を改正する以外に私は国際国家として
日本が生きていく方法はないと思います。いろいろな学者が、
我が国は平和国家として、国を守るということは一切考えなくて、
我が国は戦力を持たないんだ、
日米安保の強化はけしからぬ、こう言っているだけならともかく、少なくとも政府は国民の生命、身体、財産、福祉というものを責任を持って守っていくとすれば、国際社会の中でぎりぎり
我が国の果たすべき役割が果たせる
憲法でなきゃいかぬと思います。
私は、大きな筋道としての自衛のため必要最小限の
自衛権は認められるという中で、何も無制限に認めろと言っているわけじゃないんですよ。それは無制限にやらざるを得ないような物すごい
状況になってきたときに、
我が国が存立していけなくなった場合に考えればいいことであって、今日ぎりぎり考えることは何かというと、少なくとも
日米安保体制というのは
我が国の存立にとって極めて重要だと思います。
そうすると、ガイドラインの見直しなり極東有事の研究等もぎりぎり
我が国が存立していくために必要なんです。それを、アメリカさん、あとは全部やってくださいといって何もしないでいる、これは問題ですよ。基地から飛び立つんだって大変なことですよ。武力行使と一体ですよ、
法制局の考えに立つと。事前協議だってノーと言えないと思うんですよ。そうなってくると、少なくとも
我が国の存立を維持していくために必要ぎりぎりな形で今考えるべきことは何か。
一つは、
日米安保体制の中で後方支援の燃料補給とかありますが、これは武力行使と一体かといえば、みんな一体ですよ、そんなのは。戦闘に行くものに燃料を補給するとかみんな一体です。しかし、
我が国の安全を維持してもらうために有事に備えて基地を提供しているわけですから、必要最小限の。戦闘部隊として乗り込んでいって一緒に共同作戦するというんじゃないんですね、少なくとも行動する米軍を最小限支援するだけなんです。
あと一つは、国際連合のPKO活動等において、まだボスニア等で戦闘部隊として、平和執行部隊として武装した部隊を送るというのは早いし、
日本の自衛隊はそういうことに全くなれていません。しかし、カンボジア以来、ルワンダとか、今日ゴラン高原へ行っていますが、ああいうところで活動する自衛隊が本当に国連に出ているわけです。少なくとも国連のマニュアルに従って行動するということは決して
憲法違反ではないと思います。芦田さんのさっきの本にも国連による制裁戦争は含まれないと、こうあるわけです。国連憲章でも、国連の目的に合致するものはいいわけです。
我が国の場合は、あくまでも武装した部隊を戦闘の目的をもって送るという海外派兵でなくて、万が一に撃たれた場合は撃つという思想のもとに送っているわけです。
そういう意味では、私は
憲法の解釈も現状においてはそういう二つ、
日米安保における最小限の協力、国連平和維持活動における最小限の協力というようなものは決して
憲法に触れるものではないし、少なくとも今日
我が国が国際国家として生きていくためには当然あるべき道だと思うわけですが、このあたりもやっぱり急迫不正の侵害ということになるんでしょうか。