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参考人(
川口幹夫君) 前回の御指摘のことは私もよく覚えております。そのとおりの面があると思っています。
ただ、今回の
予算編成に当たりまして、私どもが考えたことをまず申し上げておきます。
当然、
予算というものは
収支とんとん、あるいは少し残すぐらいの
予算を組むのがいいんじゃないかとは私は思います。ただ、ことし非常に大きな要因がありましたのは、去年の阪神・
淡路大震災による大きな痛手がまだことしも残っているということ。それで、それは思い切った措置をいろいろとりましたけれども、結果としてはその余波がまだ残っております。それが
一つあります。
それで、もう
一つ大きな大きな問題は、あの大震災で我々が得た教訓で、ああいうときの
公共放送がどのように動くべきか、そのことについて、これは単に
番組のつくり方とか
報道の仕方とかいうふうな問題ではなくて、例えば機器をどうやって
整備するのかという問題とか、それから連絡のための線をどう
確保しておくのかとか、そういう施設
設備等の
確保のために相当大きな
支出をしないといけないということが起こってきたわけです。
それで、震災対策として、例えば建物の補強等を含めて工事をすることにしますと、これが相当に
予算的には大きな大きな比重を占めることになりました。これはやっぱり
平成八年度の
予算の中で
実施をしませんと、いつ何どきまた大規模な災害が襲ってくるかもわかりません。そういうことのためには、どうしてもこれは切るわけにはいかないというのが
一つございました。
それから、これは前からわかっていたことですけれども、アトランタでオリンピックが
実施をされます。今、オリンピック
放送というのは大きな問題をはらんでいますけれども、
一つは
放送権料の高騰であり、もう
一つは規模が物すごく大きくなって、それを
放送でカバーするのには制作経費がまた膨大なものに相なります。その大きな
支出を覚悟しても、なおかつやっぱりやらなければいけないのかというふうな疑問も当然ありますけれども、私は、現在、
日本人が持っているオリンピックに対するある種の、非常に大きなあこがれとは言いませんけれども、オリンピックに対してたくさん見たいんだという欲求というのが相当大きいというふうなことをいろいろ調べてやっぱりわかりました。
それで、このアトランタ・オリンピックについてはできるだけ節約をするけれども、だけれども
放送権料の問題にあわせて制作経費の増というものに対しては何とか対応しなければいけない。
この二つの大きな要因、つまり阪神大震災を教訓として今後の災害
報道への備え、それとアトランタヘの対応ということの大きな大きな要因がありましたので、これはやっぱりきちんと計上しなければいけない。そういうことを前提にしてやりますと、どうしても四十八億という赤字を出さざるを得ないという
状況になりました。
このことは私にとっては非常に大きな問題でありまして、構造的とおっしゃいましたけれども、
NHK自体が商売をやってもうけて、それでもって利潤を図るというところではない。つまり、
放送の
内容によって
国民に幸福な生活をしてもらうというふうなところである以上は、
受信料で成り立っている組織としてはどこかでまた負担を少し上げていただきたいという
お願いをする時期が来る、そういう性格のものだとやっぱり思います。
ただ、できるだけそれを
経営の
努力によって抑え込んで、昔は四年に一遍でしたけれども、それを五年にしました。それで今度は、
平成二年から始まっていますから二、三、四、五、六、七、八と、今現在七年目に入るんですが、これは抑え込むことができます。九年も恐らく抑え込めます。十年以降については、まだこれは今の段階では何とも申し上げられない要因がいっぱいありますので言明はできませんけれども、これもできるだけ値上げをしないような形でいきたい。
そこで、結果的にどうしても値上げをしなければいけないというような
状況が起こったときにはどうするんだと。それはまさに
視聴者との話し合いだと私は思うんです。それで、
NHKが受信者にとって必要欠くべからざるものであって、しかも出したものは
信頼するに足ると思われるならば、それぐらいの負担は私どもは受けましょうと言ってくださるのか、もう要らないというふうにおっしゃるのか、そこの話し合いになるだろうと思います。私どもはそれにふさわしいものを出し続けたい。結果としてそれが多少の御負担の増になるならば、それはまげて
お願いをするというふうな性格のものではないかと思っております。
だけれども、できるだけその
お願いする時期をうんと長くとって、御負担はできるだけ低く抑え込むということだけは
経営として頑張ってまいりたいというふうに思っています。