○前川忠夫君 今、
局長からお答えをいただきましたように、私的な諮問機関といえ
どもこういう
報告書が出たわけですから、それなりのやはり位置づけをして、恐らくこれからの行政の中に生かしていこうということだろうと思うんです。
そうなりますと、私は幾つかの点を
指摘しておかなきゃならぬと思うんです。前段のいわゆる現状についての分析の中で、漸進的な構造改革を戦略的な構造改革に転換をしていかなければならないという前提があるんですね。この漸進的な構造改革というのは、この
報告書によりますと、いわゆる雇用の維持とそれから
競争力の維持との相克、これを今の
日本の産業あるいは
企業というのは非常に大事にしながら、なおかつそのバランスをとって今はやっているけれ
ども、これでは限界があるんだとこの
報告書はなっているわけです。
そこで、その戦略的な構造改革をするために何をしなければいけないかというのがずっと
流れとして出ているわけです。
私はその中で、これさっと読んだだけで個々に点検を加えたわけではありませんから印象的な話になって大変恐縮な
部分があるかもしれませんが、幾つか今感じている問題点を申し上げますので、きょうの
段階でお答えができる
部分があったら後ほどひとつお答えをいただきたいと思うんです。
一つは、雇用形態を含めましたいわゆる雇用の移動だとかあるいは移転の円滑化、これは実は前々から叫ばれていることなんですね。私は、雇用の移動だとか移転、あるいは例えば配置転換を含めまして、これは確かに必要だとは
思いつつも、なかなかそう簡単にできない土壌というのが
日本の
企業やあるいは社会の仕組みの中にあるわけです。いわゆる
日本的な雇用環境、雇用システムといいますか、こういうものを変えていかなければ、これは簡単にできません。こういう問題について、この
報告書の中でも実はさまざまな提言をしています。
例えば年功的な賃金の仕組み、これも一つは弊害になるだろう。あるいは最近は終身雇用といいましても、実際には一つの
企業に定年まで働くという人がせいぜい三割ぐらいしかいないというふうに私
ども承知はしていますが、いわゆる終身雇用制度そのものも、もっとダイナミックに崩していくとか崩れていくという可能性を
指摘している。それから、雇用の
関係で言えば、いわゆるホワイトカラーの過剰感というのが非常に高い。特に、これはこの
報告書の中ではっきりあからさまには書いてありませんが、いわゆる団塊の世代と言われる四十代から五十代の中間管理職を含めた風当たりというのは非常に強いわけですね。そういう人
たちは、例えば労働移動をしようとしても移動できる条件が整っているのかどうか、あるいはこれからそれをやろうとした場合に、一体どういうような仕組みをつくっていこうとするのか、この辺が非常に不明確なんですね。
私は、ある
企業の話を聞きましたら、とにかく給料の高くなった人は何かの理由、さまざまな理由をつけてやめてもらって、できれば若い人を入れたいと。若い人の方がこれからの
企業にとって、あるいは産業にとっても新しい発想のもとに
企業戦略が立てられるということなんですね。これは私は少し
企業のわがままが過ぎるんじゃないかという感じが実はそのときにしたんですけれ
ども、どうもそういうスタンスに近いんじゃないかという感じが一つはするわけです。
それから、
企業の中での
従業員の能力の活用という点で、いわゆる裁量労働制の採用ですとか、採用というよりも拡大、これは労働基準法にかかわる話なんですが、あるいは女子保護
規定の撤廃等々が実はこの中にもうたわれております。それならば、なぜ、男女雇用機会均等法がざる法になっているじゃないかという
指摘に対して、今まさに女子大生はいわゆる就職氷河期と言われています。こういう女性からの悲痛な声についても、私は女性の能力というのはやっぱり高く評価をして、これからの
日本の産業のあり方、活用の手法というものを考えるべきと思う。しかも、この懇談会に名を連ねておられる
経営者の皆さんというのはまさに
日本の
機械産業を支える大手
企業です。そういうところがもっと積極的にならなければ女性の活用、女性と男性のいわゆる機会均等法と名前はついていても実際には形式になっているじゃないかという
指摘に私は答えたことにならないんじゃないかという気がするんです。こういった雇用の問題があります。
それから、研究開発の問題なんですが、この
商工委員会でも、昨年、筑波研究学園都市に視察に参りまして、研究所の皆さん方にいろいろなお話を聞かせていただきました。今、
日本の公務員の中のいわゆる技術職と言われている方が一体何人おられるのか。これは
通産省の所管だけではないかもしれません、科学技術庁等を含めての所管ですけれ
ども、大変私はお寒い限りだと思うんです。
この問題をやはり解決していこうとすれば、この
報告書にあるように、いわゆる産官学と言われている連携だけではだめなんですね。文部省も巻き込んだいわゆる初等教育の
段階から変えていかなければだめなんです。私が今仮にぽっと街へ出て、大学生あるいは高校生でもいいんですが会って、学校を卒業したらどうしますか。恐らくほとんどの方が、大体九九%そう答えると
思いますが、できるだけ
景気、不
景気の波のないできれば公務員なんかがいいですね、学校の先生もいいですね。それで
景気がよくなると今度はまた民間へ、こういう仕組みになってしまっているんですね、今は。
こういう
状況の中で、今の研究者とかあるいは技術者の皆さん方の処遇、待遇を含めまして本当に魅力のあるものになっているんだろうか。そういうものをきちっとつくらないと、これはまさに五十年、百年かかるんです、こういう問題というのは。そういう問題にまでやっぱり踏み込まなければいけないんじゃないか。ただ、さらっとこれは流しているという感じがしてならないんです。
この辺の問題が一つは気になります。
それから、これは懇談会の構成
自身にもクレームをつけるようになりますけれ
ども、確かに
機械産業の名立たる
企業の方々がずらっと並んでいます。ただ、残念ながら、これはいわゆるアセンブルメーカーが中心ですから、部品を供給している側の代表はだれもいないんです、はっきり申し上げまして。すそ野の産業です。実はこのすそ野の産業が今問題なんです。この中にも一行か二行さらっと書いてあります。部品メーカーに対する配慮とか、あるいはそれぞれの地場産業に近い部品供給の
日本の場合のいわゆる中小下請の問題についてさらっと書いてあるだけなんです。
私は、
通産省でもしやられるんであれば、そういう視点もきちっととらえた上でのこれからの政策でなければならないというような気がするんです。そういう問題について、この懇談会の考え方を尊重してやっていくという場合に、私はこれだけでは困りますということを今ここでは申し上げておきたいと思うんです。
それから、さまざまな法制度上の問題にも踏み込んで
報告書が書かれています。例えば税制の問題がそうです。それから、年金制度の問題にまで踏み込んでおられます。あるいは、私
どもこれはかつて主張した
経過がありますが、いわゆる長期勤続が有利になるような仕組みが本当にいいのかどうかというのは
議論のあるところですから、こういう問題。あるいは退職金の問題、そういった問題にまで踏み込んでおられる。
とすれば、これらを具体的に実行していくということになりますと、
通産省としてはどういう形でこれからアクションを起こしていかれようとしているのか、これらの問題点。私は、きのうきょう見て質問しておりますから、多少深みが足りない
部分やあるいは落ちている
部分があるかもしれませんけれ
ども、ちょっと見ただけでもこれだけの問題点がさまざまあるという感じが率直にするんですが、それらのこれからの扱いの問題を含めまして、お考えがあればお聞かせをいただきたいと思うんです。