○前川忠夫君 既に
通産省、特に
中小企業庁は、今
長官からも
お話がありましたように、さまざまな法律を用意して、
中小企業経営者を含めまして
支援策を講じておられるということは私
ども十分承知をしています。
ただ、
政府自身が提起をするさまざまな
施策がひとり歩きをして、結果的には本来意図していなかったところにしわ寄せを実は来しているという現実はしっかり直視をしていただきたい。
規制緩和はもちろん結構です。あるいは
経済構造の改革、もちろん結構です。あるいは高
コスト構造の
是正、これも結構なんですよ。だけれ
ども、細かくきちっと精査をしないで、ただスローガンだけが先走ると、今申し上げたような最終的には一番弱いところにこれらの問題のしわ寄せが行くということをしっかり肝に銘じていただいてこれからの
施策に当たっていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。
次に、
経企庁長官にお伺いをしたいと思いますが、一つは
長官のせんだっての
所信表明演説の中でも
景気回復についての
お話がございました。さまざまな要素が絡み合っていますので、なかなか歯切れのいい表現がとりにくいという点は私
ども十分承知をしているんですが、実は各地を回りまして
経営者の皆さんといろんな話をしますけれ
ども、最近少し売り上げが伸びたとかあるいは利益が出始めるようになったという中に、特に売り上げは横ばいだけれ
ども利益が出るようになったという中には、最近のいわゆる
円高傾向が一服している。私は百五円が円安だと必ずしも思っていません、百五円というレベルが。しかし、一時期に比べれば円が安くなったということは事実です。
それからもう一つは、これは先ほどの話にも関連をするんですが、リストラの
効果が出たという言い方をはっきりされる
経営者の方がおられるんですね。あるひどい
経営者になりますと、とにかくリストラをやって利益が出る限りはやらなきゃならない、こういう言い方をされるんです。
経営者というのは製品をつくってその製品を売って利益を出すというのが本来の役割なんですが、どうやら何か
経営者のあれを勘違いしておられるらしくて、
従業員の首を切って
人件費が安くなったから利益が出た、こういう発想の
経営者が実はいるんですね。
企業経営の利益が今少し出始めたということが
景気全体にも確かに
部分的には私はプラスになっていると思うんです。しかし、そういう
景気回復というのは限界があります。まさにタコが足を食うわけじゃありませんから限界があるわけです。
としますと、先ほどの御
質問にもちょっとありましたけれ
ども、これからの先のことを
考えますと、例えば来年以降のことを
考えますと、つまり
平成九年以降ですね、消費税の問題の心配があります、あるいは特別減税も
平成八年度で打ち切りですというマイナス要素が一つあります。と同時に、先ほどの
お話にもありましたように、雇用の問題というのが大変私は深刻になるんじゃないか。つまり、
経済全体としては
回復基調にあるものの、なおかつ
雇用情勢が予断を許さないというのは、先ほど言ったリストラが依然として続いているということにほかならないと思うんですね。
このことが結果的にすべての
国民の間に雇用不安という形で
先行きの不安感というものがある。そういう不安感を抱えたままで
経済全体の一番大きな牽引力になるべき
個人消費が本当にふえるんだろうかという心配を実はしているわけです。
そこで、
平成八年度についてはおおむね今の
状況からいけば二・五%あるいは二・五%に近いところまで行くんじゃないかという
お話がございました。それはいいんですけれ
ども、
長官がおっしゃったように
平成八年度以降も年三%程度の実質
経済成長率を見込みたい、もちろんさまざまな条件つきですけれ
ども、一体これから何が牽引車になるというふうにお
考えなのか、まずこの点を一つお聞きをしたい。
それから、私
ども実は雇用の問題についてはこれまでもさまざまに議論がありましたように、いわゆる失業なき労働移動ということで、衰退をしていく産業があるかわりに新しい産業が起こっていく。よく言われますように、例えばマルチメディアだとかあるいは新しい住宅産業だとかあるいは環境だとか、そういう産業に雇用がシフトしていくことによっていわゆる失業なき労働移動というふうに言われますけれ
ども、例えばこの間もある雑誌にちらっと出ていましたが、本当にマルチメディアの産業というのは雇用をそれだけ生み出すんだろうかという疑念の声もないわけではないんですね。そうしますと、これから先のことを
考えてみますと、本当に三%程度の
成長を約束するような条件というのは一体何なんだろうかということが非常に疑問になってくるんですね。ですから、この辺についてもお
考えがあれば、あるいは
見通しがあればお聞きをしたい。
それから、全部一括して御
質問しますが、私は雇用不安の問題、そう一気に簡単に解決をするとは思いません。思いませんけれ
ども、先ほど荒木
委員からの
指摘の中にもありましたが、例えば今労働組合は春闘の賃上げの交渉を始めたわけですね。先ほど
通産省の方にお聞きをしましたように、実は製造
コストあるいは売上高に占める
人件費の
割合というのは、全産業で見ましてもあるいは
製造業で見ましても一〇%かせいぜい平均的に見たところで一二、三%なんですね。ところが、今連合が要求をしている数字なんというのはほんのわずかなんですね。例えば五%のベースアップをしたところで実際
コストにはね返る
部分というのはほんのわずかなんですね。ところが、ほんのわずかな
部分の議論が、日本は
人件費が高いから高いからという形でこれを抑えようとする。なおかつ雇用の不安をあおる。こういう形で実際のこれからの
経済を見た場合に、本当に健全な形で三%台の
成長が可能なんだろうかという疑問も私は持つわけです。
こういった総合的な問題について、私は
政府としてあるいは
経済企画庁として、もちろんベースアップについては個々の
企業が、労使がやる問題ですから、
政府が介入をすべきではないというのはこれは当たり前な話です。しかし、マクロの
経済全体として、いわゆる雇用者の所得なりあるいは
国民全体の所得がどうあるべきなのか、あるいはどうあってほしいという、そういう見解ぐらいはお持ちにならないと、あなた任せで後は結果だけですよというのでは、
政府が
経済見通しを出す立場からいっても私は無責任のそしりを免れないんじゃないかというような気がするんですが、いかがでしょうか。