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1996-04-26 第136回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月二十六日(金曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十五日     辞任        補欠選任      山下 芳生君     聴濤  弘君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     会 長         鶴岡  洋君     理 事                 太田 豊秋君                 清水嘉与子君                 牛嶋  正君                 片上 公人君                 上山 和人君                 聴濤  弘君     委 員                 大島 慶久君                 金田 勝年君                 中島 眞人君                 橋本 聖子君                 平田 耕一君                 三浦 一水君                 魚住裕一郎君                 小林  元君                 戸田 邦司君                 林 久美子君                日下部禧代子君                 千葉 景子君                 三重野栄子君                 笹野 貞子君                 水野 誠一君    事務局側        第二特別調査室        長        林 五津夫君     参考人        慶應義塾大学名        誉教授        東京国際大学商        学部教授     佐野 陽子君        日本労働組合総        連合会事務局長  鷲尾 悦也君     ―――――――――――――    本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国民生活経済に関する調査  (二十一世紀経済社会に対応するための経済  運営在り方に関する件のうち労働政策課題  と基本的方向について)     ―――――――――――――
  2. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ただいまから国民生活経済に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、山下芳生君が委員を辞任され、その補欠として聴濤弘君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事聴濤弘君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 国民生活経済に関する調査を議題とし、二十一世紀経済社会に対応するための経済運営在り方に関する件のうち、労働政策課題基本的方向について参考人から意見を取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人の名簿のとおり、慶應義塾大学名誉教授東京国際大学商学部教授佐野陽子君及び日本労働組合総連合会事務局長鷲尾悦也君のお二人に御出席をいただき、順次御意見を承ることになっております。  この際、佐野参考人及び鷲尾参考人一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本調査会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。  本日は、本調査会が現在調査を進めております二十一世紀経済社会に対応するための経済運営在り方に関する件のうち、労働政策課題基本的方向について忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますが、まず、両参考人からお一人三十分程度ずつ順次御意見をお述べいただきました後、委員からの質疑にお答えいただく方法で進めたいと存じます。  それでは最初に、佐野参考人からお願いいたします。
  6. 佐野陽子

    参考人佐野陽子君) ただいま御紹介いただきました東京国際大学商学部人的資源管理論を担当しております佐野と申します。  私は、「雇用創出展望」ということで本日お話をすることになっておりますが、日ごろ感じておりますのは、今雇用問題が非常に急務、解くべき課題になっております。これから新しい雇用を創出しなければいけないということで、例えばベンチャーであるとか、あるいは新しい通信関係であるとか、いろいろなところで雇用創出の努力がなされているわけですけれども、一言で言いますとそこではとても雇用吸収し切れないという、そういう感じを持っておりまして、その辺をどういう解決方向があるかという問題提起をしたいと思っております。(OHP映写)  まず第一には、これは既に大方御存じのところで、特に説明の必要もないわけですけれども、今労働市場を取り巻く環境は揺れ動いておりまして、日本雇用慣行、これも非常にいろいろな議論がありますけれども、とてもこれまでの延長線上ではうまくいかないだろうということで、それでは労働環境はどういう変化があるかというのをかいつまんで申しますと、ここにありますように、新しい技術進歩、ニュテクノロジー、こういうものが影響をしておりますし、それから国際競争というのも、これも非常にこれまでと違う激しさであります。それからまた働く人たち価値観変化、これも小さからず非常に長期的に影響を与えるわけです。  それに加えまして規制の緩和、これもスピードなどで問題はありますけれども、方向的に言えばこれは緩和方向でありますし、それから企業内におきましては高齢化高学歴化という人事構成影響を与える。これが比較的これまでも影響を与えたし、これからも影響を与え続けるんであろうというような要素を矢印で掲げたわけです。  この丸が例えば一つ企業といたしますと、この企業人事慣行が揺れ動いている。ただし、幾つか同心円をかきましたけれども、この外側ほど揺れが大きい、そして中に入るほどまだ揺れていないという、そういうことで並べてみました。外側といいますのは雇用ですね、終身的な雇用慣行、こういうのは御承知のようにいろいろな形で中高年を中心にして変化が見られるわけです。しかし、年功的な賃金体系であるとか昇進構造というのはすぐに変わってくるものではない。これまでの慣行がありますので、簡単に変わるものではないけれども、徐々に影響が与えられている。  しかし、もっと影響が薄いのは、例えば企業の中の人事の、人の採用であるとか人の育て方、それから人事異動、こういうようなやり方については日本企業、組織は比較的自信を持っております。ですから、採用につきましてはやはり新卒採用というのが、これが一番いいという自信を持っておりますし、それを内部で養成して、そして企業内の企業人を育てるという、この辺もまだまだそれほど揺らぎは大きくないということであります。  ただし、この外側の要因が強くなりますと、この矢印が中の方にまで進入してきて、そして影響を与えるでしょうし、それからまたこれが後退いたしますと、これまでの慣行がまた頭をもたげて安定的になっていくかもしれないということで、日本雇用慣行は今非常に問題が多いということを第一に指摘したいと思います。  次に、雇用の分布でありますけれども、これは現在の雇用、この横の長さがいわゆる常用労働者数、全国、全産業のトータルであります。約四千万人ですね。この四千万人がどういう産業分野に分布しているだろうかというと、大きく区分けしますと、一つ製造業、ここの茶色のところが流通関係、そして一番右がサービス関係ですね。この大きいのが三本柱であります。  そして、例えば一番左は建設業でありますが、建設業雇用の約一〇%を占めていて、そして比較的このところシェアは変わっておりません。しかし、青で囲っております製造工業の方は、これはどんどんと減っているばかりであります。今は非常に景気が持ち直して、例えば電機関係におきましては業績も好転しているわけなんですが、雇用につきましては決して全体の中の割合をふやしているわけではない。やはりむしろ減らしているという実態であります。  それからまた、流通関係は非常にシェアが大きいんですが、日本流通は有名な複雑化をしておりまして、ここが雇用を相当に抱えているというのがわかります。そして、シェアもそれほど長期酢的には変わっておりません。  シェアをふやしておりますのがサービス関係です。サービス関係というのは、小さくてわかりにくいかもしれませんけれども、旅館娯楽とか、対事業所サービス医療サービス教育サービス、その他という非常に多様な分野を包含しているんですが、このサービス雇用がどんどんとふえてきているわけですね。  さて、これからの雇用はどうなるだろうかという、これを産業別にずっと見てみますと、これはなかなか明るい見通しが持てない。なぜかといいますと、それぞれの雇用企業活動生産活動に支えられているわけですね。この生産活動は物あるいはサービスをたくさんつくる、ふやすというときには雇用をふやすかもしれない。しかし、たくさんつくるときでも人の要らないような省力的な方法生産するとすれば、生産はふやしても雇用はふやさないかもしれない、あるいは減らすかもしれない。しかし、雇用がふえるためには生産活動がふえなければ普通は雇用はふえない。  ですから、何かといいますと、これからの生産活動、需要はそれぞれの産業で一体どういう方向に行くだろうかというのをざっと見てみたいと思うんですね。  そうしますと、これからの産業がもっと活発化するかどうかというのは、これは先ほどの影響関係にあります国際的な関係国際競争、国際的に比較して有利かどうか、これが一つ大きな決め手になるだろうと思います。ただでさえ今、日本内外価格差が大きいと言われておりますけれども、これからそれが縮む方向にあるのか、あるいはなかなか縮まらないのかというのが、これがこれからの盛衰を決める重要なかなめになると思うんですね。  そこで、いろいろな見方はありますけれども、それぞれの産業国際競争力がどれくらい備わっているかという観点から見てみます。  これは何も輸出しなくても何で国際競争力なのかと思われるかもしれませんが、常に輸入という脅威かあるといいますか、安いものが外で貰えるんであればどんどん輸入して代替が起こるわけですね。ですから、輸出していようが輸入していようが、あるいは国内だけの生産に携わっていようが、もし市場が開放的であれば常に国際的な競争にさらされているということであります。  たまたま昨年の十一月に経済審議会から経済計画報告が出まして、その中に、産業別にコストパフォーマンスがどう違うかという非常に詳細でかつ有益な報告が出ました。それを産業別にずっと見てみますと、一口に言うと、軒並み日本産業大方のところは国際競争力が低いということです。  建設は、御承知のように日本では非常にコスト高。かつて、今ではないですけれども、ひところは家をつくるのはアメリカの三倍、道路をつくるのは西ドイツの二倍というようなそんな数字も出たくらいでありますが、それはもっと細かく報告書で分析されております。建設が問題ですね。  それで、この製造業だけは問題がないんですが、その次のこの黄色いところは実はエネルギーなんですね。エネルギー雇用吸収力は非常に小さいんですけれども、これもコスト高である。それから、その次のこの運輸も、海運にしろ陸運にしろ空運にしろ、これも日本では大変なコスト高である。それから、その次の通信も国際的に非常に高いということがよく指摘されているとおりであります。それから、流通でありますけれども、この流通の複雑な機構はこれはもっと合理化しなければとても内外価格差が埋まらないと指摘されております。その次の赤いところが飲食店で、ここについては特に指摘はないんですが、その次が金融保険、これも御承知のような問題を抱えております。  サービスのところは、これは雇用が伸びていろところですけれども、やはり医療とか教育とかこの辺は公的なかかわりが強い。ここのところの令析は、実は経済審議会では生活関連はしないということでなさっていないんですが、私から見ますと大変問題を抱えているんじゃないか。  ということで、製造業は、これは報告書では及第だったんですけれども、この中も大きく三つに分けまして、例えば消費関連製造業、食品であるとか繊維であるとか、そういうものの輸入との競合というのは、これはもう今もなお進んでいろわけで、この辺は非常に将来も難しい。それから、その次の素材関連というのも、これもやはり重厚長大というのは今転換を非常に激しくしておりまして、ここも問題であります。一番右のところにあります製造業機械関連で、これは実は日本産業の中でも優等生なんですね。輸出競争力もありますし、これからも非常に有望だと言わぎるを得ないわけです。  ですから、この産業群の中でこれからも伸びるであろう産業は、機械関連製造業と、それから通信は、コスト高ではありますけれども非常に重要なこれから伸びる産業でありますので、ここも雇用はふえるでありましょうけれども、もともとがこんなに薄いところでありますので、吸収力からするとまだまだというところです。  それから、私の感触で言いますと、例えば飲食店とか旅館娯楽とか、こういうのはやはりサービス経済化、それからレジャー関連の伸びに従ってもっとふえる分野だと思います。あるいは対事業所サービス、これもアウトソーシングなどでふえると思いますが、こういうところがふえるにしても、これだけの四千万人の労働力の中で非常に一部のところしかこれから明るくない。それを利は「既存の産業構造では雇用を維持できない」と、こういうふうにまとめたわけです。それは、景気のよしあしはありますけれども、長期的な展望としましてはなかなか難しいところがあるだろうということです。  さて次に、先ほど価値観変化ということを申し上げましたけれども、それはどのように変化するのかということです。  これはイギリスのロバートソンという人が書いた「未来仕事」という本の中に出ていたのをここでまとめたわけですけれども、このロバートソンは、対象はアメリカ調査したものなんですが、それを参考にいたしまして、人々価値観は過去から未来に非常に変わってきているというんですね。その変わってきているのを、日本の実情に合わないようないろいろなあれがありますと、それをショートカットしましてこういうようにまとめてみました。  これは価値観といいましても、特に働くことに関係があります。成功イメージですね。人々があの人は成功したというふうに言うときには何を目安にするか。そうすると、大きく過去と未来に分けますとこういう違いがあります。  つまり、過去におきましては、名声であるとかフーズ・フーに名前が出るとか、知名度が高い、収入が高い、学歴が高い、高級住宅に住んでいる、それからセカンドハウスを持っている、あるいはサードハウスを持っている人がよくいますけれども、海外には。住み込みの使用人がいる、それから役員の、エグゼクティブの地位を持っている、毎年新車を買いかえる、それから世界旅行を頻繁にするという、これが過去の成功イメージで、これは我々もなかなかわかるところなんですね。  ところが、これからの成功イメージは、必ずしもこういう経済オリエンテッドではないと。  見にくいかもしれませんけれども、右側の一番上にありますのが自由時間。いつでも自分の好きなように時間を使えるという、働き方もこういうスタイルを好むわけですね。それから、創造的人物としての認知。あの人はクリエーティブだというのは、これは大変高い評価、成功者である。それから、仕事と遊びの一体化。ですから、仕事というのは決して苦汗労働ではない、楽しまなければいけないということですね。それから、金銭より尊敬と愛情で報われること。これもわかるような気がいたします。それから、大幅な社会コミットメント企業だけにコミットしているんではなくて、いろいろな分野に幅広く活動している人ですね。  それから、よく笑う人・涙する人。この辺に灯るとなかなかちょっとわからないんですけれども、でもこのごろの若い人は女性だけじゃなくて男性も泣く者がいるなんて聞きますので、あるいはそれは未来型かもしれません。それから、愛情行為、自我との触れ合い。こういうものを大切にする、こういうスタイル成功者であるというふうに変わってきていると。一言で言えば、脱エコノミックアニマルとでも言うんでしょうか、そういう感じでありますが、学生などを中心にして若い人を見ておりますと何かこういう感じがしないでもないということであります。  ですから、これはアメリカだけでなく、ヨーロッパだけでなく、日本やアジアにも共通する傾向があるのかもしれませんが、もしそうだといたしますと、これからの雇用を考えるときに一つのプレゼンテーションがあるわけであります。  これは、第五次産業というのは、言う人はよく言うんですけれども、一次産業というのは農林漁業ですね。二次産業というのは製造業関係。そわから、三次産業サービス産業。それで、経済が発展してきますと一次が相対的に縮小して二次になり、二次が相対的に縮小して今度はサービス経済化で三次産業が膨らんでくるというのが経済発展段階説なわけなんですが、ところがもう今や牛進国は三次産業が半分を超しているというか、雇用などでいいますともうとっくに半分を超しているわけですね。そうすると、その先ほどうなるだろうかと、こういうことになりまして、そこで四次産業という言葉がよく使われておりました。  四次産業というのは、三次産業の中の情報関連、これがこれから伸びていくであろうので、その情報関連だけ別掲しまして、そして三次の次に四次産業を置くわけですね。具体的に言いますと、先ほどの通信関係であるとか、あるいはマスコミとか出版とか、あるいは金融なんかもその中に入れておりますが、こういうところが四次産業である。  確かに先進経済では四次産業が伸びているわけですが、それに加えてここで言いたいのは五次産業ですね。この五次産業というのは何を指すかといいますと、これはここにも小さく書いてあるんですが、三次産業流通ぐらいが残っております。四次部門情報といたしますと、五次部門というのは文化、スポーツ、福祉、旅行家事と。家事というのは家の家事労働ですが、こういう分野が膨らんでいく。ただし、これは雇用構造なんですね。  雇用構造で五次部門というのは一体どういうことなのかといいますと、ボランティアのようなそういう報酬を伴わない仕事、これも一つ雇用の形態に組み込んでいこうということです。それから、ボランティアといっても完全に持ち出しでやるのもありますし、それから交通費や何かを支給するとか、あるいは市価よりも安い賃金で働くという、そういうボランティアもあります。  それからまた、今までは家庭の中でやっていた仕事、例えば趣味であるとか家庭菜園であるとか、あるいはDIYとか、日曜大工ですね、そういうようなものを外へ出していくわけです。外部化をしていきますと、それが雇用吸収する源になっていくだろう。  それからまた、例えば今問題になっております介護高齢者介護だけではなくて、例えばべビーシッティングであるとか、あるいは一般の病人の世話であるとか、それの予防であるとか、あるいはヘルスケアー般であるとか、そういうものも今までは市場経済中心ではなかった。もつと言えば、昔で言いますと何か女子供がするようなことなんていうあれがありますけれども、そういうのが実は今非常にもてはやされていく分野じゃないか。  そういうところで人がその仕事に携わりますと、それはちゃんとした雇われている雇用でなくてもこれは仕事をするという意味で大変大きな意味を持つわけであります。  これらの市場経済を考えますと、一次、二次、三次、四次ぐらいまでしか普通取り込んでおりませんけれども、それをもっと広い定義をしまして、雇用というのは何も雇用契約をして雇われてどうとか社会保険がどうのというようなことだけではなくて、人々が喜んで生きがいを持って楽しんで何かやると。ですからフリーターも入れば自営業も入ればアルバイトも入ればボランティアも入るというような、そういうような分野を五次部門といたしますと、この五次部門が実は非常に雇用吸収においては重要なのではないか。  逆三角形になっておりますのは、一次部門というのはそんなに縮小しておりますけれども、何も食べることが減るわけではないんですね。ですから、逆三角形の下の方は、これは生産は今までよりもふえているかもしれない、だけれども人を使わなくなってきているわけです。ですから、一次産業も携わる人は非常に少なくなる。二次産業も同様ですね。二次産業機械化省力化で、生産はふえても人は減る。三次産業の例えば流通なんかも、これからはやはりどんどん合理化は進むわけですから人も減るでしょう。  ただ、四次産業は、これは生産活動自体がふえていく分野ですから、当面は非常にここいら辺雇用吸収力はあるわけでありますが、しかしこの四次産業までではまだまだやはり雇用吸収し切れない。そこで、五次部門というさらに大きな吸収分野をつけ加えて考えるというと、これがこれからの雇用問題を明るくする一つのキーポイントになるのではないか。  この五次部門では、それこそ例えば労働時間を決めて何時間働くとかそういうことではなくて、みんなが自分の好きなように、自己実現とか、あるいは社会のために働きたい人はそういうことを目標にするし、それから自分が学習したい人はそのようにするでしょうし、そういう非常にフレキシブルな自由な働き方というか仕事の仕方というものを社会全体で用意する、あるいは支える、そういう方向が必要ではないかということで、これからの雇用を担うのは第五次産業であると、そういう結論を申し上げたいわけでございます。  どうも御清聴ありがとうございました。
  7. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ありがとうございました。  以上で佐野参考人の御意見の陳述は終わりました。  次に、鷲尾参考人にお願いいたします。
  8. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) このような機会を与えていただき、私どもの考え方を先生方にお聞きいただくチャンスをいただいたことは光栄であり、また大変貴重な時間であるというふうにお礼を申し上げたいと思います。  お手元に「労働政策課題基本的方向」というレジュメと、それから「雇用労働問題の現状労働政策課題」という資料は届いておりますか。――一枚だけですか、失礼いたしました。レジュメを出してございますが、それに従いながら御説明を申し上げたいと思います。  まず、この本題に入る前に、現在の雇用労働問題の現状について少し申し上げたいと思います。  これは先生方皆さん御案内のとおりでございますので簡単に申し上げたいと思いますが、御承知のとおり、現在日本失業率失業統計開始以来最も高い失業率失業者になっていることは御承知のとおりでございます。ずっと一月まで三・四%、二百三十万人という失業の状況でございましたが、これがようやく三・三ということで、わずかに改善をされたわけでありますが、まだまだこのような危機は去っていない、このように考えております。特に、この失業者数の増大は、長期の不況の中で製造業就業者雇用者が九三年以降ずっと減少し続けている。それから、これまで新規雇用の担い手でございました卸・小売、飲食店雇用増が九四年以降、ふえてはいるんですが半減しているということが影響しているわけでございます。  この高い失業率失業状態を生み出した要因といたしましては、一つは四年続きのバブル崩壊後の長期不況というのはこれは当然のことでございます。  それからもう一つは、大変これは難しい問題でございますけれども、佐野先生のお話も今ございましたように、メガコンペティションの時代に入りまして、経済のグローバル化、円高の進展などによって国際間の競争が激しくなり、その意味で海外移転を含めた企業産業の空洞化が始まつているということであります。  三点目には、経済サービス化や高付加価値々などの産業構造変化の進展があるんですが、これへの移行が必ずしも、佐野先生の第五次産業という今のお話、大変夢のある話でありますが、そこに転換がまだ十分果たされていない。価値観の転換も、そういうふうに言われているわけでありますが、産業レベルまでには移っていないというところがございまして、これらが複合されて高中業率状態が続いている。  長期不況については何とか早期に解決していただきたいと思いますし、ことしの後半以降、経済政策のよろしきを得れば我々としても期待をしているところでございますから、循環的な不況を解決する方法はそれなりに解決のめどはあると思いますが、グローバル化による空洞化の問題とそれから構造転換の問題はさまざまな難題を抱えておりまして、そう簡単にはいかないだろうということを懸念しているわけであります。  一方、今後の雇用労働を取り巻く環境条件として、労働力の供給面では、人口の少子・高齢化が進み、女性の社会進出、高学歴化が進むということは、これも条件として考えておかなきゃいけない。  また、需要の側では、今お話にもありましたように、新しい技術、新しい産業に対応する高度技術者や、あるいは産業サービス化、福祉化を担う労働者群というものがまだまだ形成されていない、こういうことがございます。新しい産業というふうには言っておりますけれども、それに対する需要が必ずしも出てこないと同時に、供給の側から見ましても十分準備されていないという問題があるということであります。  また、労働職場の側面では、労働時間の短縮や安全、健康面の問題の懸念がこれから出てくるだろう、こういうような問題があるだろうというふうに私どもは現状分析をしているところでございます。  そこで、レジュメに戻っていただきますが、これは一から五までいろいろな課題についてかなり網羅的に提起をしてございます。  一番目の「雇用の安定と創出」ということで、五点提起をしてございます。  まず第一点目の、雇用の維持支援制度・施策の拡充ということがございます。これは現在、確かにさまざまな条件で企業失業も非常に多いと言われておりますが、我々の立場からいうと、何とかこれをソフトに現在の雇用をできる限り維持していくというような支援策は当面の対策として、短期的対策として絶対必要だと、こういうふうに思っております。もちろん大きな経済の流れ、産業構造転換の流れに逆ざおを差して、この流れをとどめるために既存の競争力のない産業を維持してしまうというような政策になってしまえばこれは問題でありますけれども、しかしながら短期的な条件としては雇用が安定しているというこうした社会の安定的な要素、安定化の要素というものも重要でございますから、短期的な方策も必要下あろうというふうに思います。  そのためには、労働行政の役割も依然としてそう低くなっているわけではない。別に私ども、しょっちゅうつき合っているから労働省をバックアップするわけでは、ごまをするわけじゃありませんが、労働行政の役割もやっぱり相変わらず必要だというふうに思っています。  それから、三点目の雇用の創出は、佐野先生の第五次産業などを含めて、いかにして雇用をつぐるような産業構造をつくり上げるかということであります。  そして、先ほど労働力の需給の問題で申し上げましたように、そのためには能力開発や労働移動支援システムの拡充ということが必要であります。  五点目の六十歳代雇用政策の検討というのも大事なことでございます。  ここで、全体的に言えることはどういうことかというと、少しレジュメから離れますけれども、私はあらゆる局面においてもそれぞれの各国経済日本経済も当然でございますけれども、基本的な経済の進展というのは技術革新と産業構造転換が順調にかつ社会的な摩擦なしに進むという国が、経済的には安定的に発展する国のシステムだというふうに思っています。  戦後五十年を考えてみましても、私どもは、今日のようなドラスチックな変化ではありませんけれども、この五十年間の間に非常に大きな産業構造転換を果たしているわけであります。第二次世界大戦直後のときは、まず傾斜生産方式で石炭や鉄鋼を中心にして政策的な誘導をもって産業をつくり上げました。その産業を、基盤をつくった上で徐々に、先ほど佐野先生が御指摘になったような日本の得意とする電機・電子産業、自動車産業というふうに転換をしていく、そしてサービス経済化が進んでいくということで、これはまだ過程でございますけれども、サービス産業、第三次産業に移っていくということで、例えば昭和二十年と現在の就業構造を比較してみれば明々白々でございまして、大きな労働力の移動があったわけでございます。  私は時々思うのでありますけれども、この十年ぐらい前から、例えば新幹線ができるに従って東北地方から夜行列車が廃止になりました。私、鉄道が好きなものですからそういうことに注目しているんですが、例えば数年前に急行「八甲田」というのがなくなりました。どういうことかといろと、これは就職列車だったんですね。  皆さん方、若い先生もおられますから御承知でない方もおられるでしょうけれども、余りどなたがどうと言ってはまずいのですけれども、要すろに春の新聞の社会面を大きく飾る年中行事として、詰め襟を着た中学生がお父さん、お母さんに送られて、具体的に言っていいかどうかわかりませんけれども、東北の青森、秋田、山形、岩手というところから手を振って集団就職をした。これはどういうことかというと、明らかに第一次産業である農業から第二次産業である製造業への労働力移動だったわけです。  そして、その労働力移動の担い手であります産業は、日本経済政策なり産業政策でもってどんどん雇用創国政策を結果的には実現をしていった。そして、オン・ザ・ジョブ・トレーニングを中心とした企業教育でもって、非常に素朴で素直な労働者の予備軍を、自分たちの企業に適合した技能労働者として、熟練労働者として育て上げた。これは大変大きな産業構造転換と雇用創国政策と、そして熟練労働力の創出ということになったわけでございまして、このことが戦後五十年の間に緩やかになされている分には摩擦は起こらないわけです。  これも話が余談に過ぎてせっかく調査会というまじめなところで冗談半分で大変恐縮なんですが、例えば私たちの世代で、父親が農家で、私は農家の次男坊で、そして学校に出してもらって東京なり大阪に集団就職で出させてもらって、一生懸命製造業で働いた。自分はそんな高い学歴じゃないんで、子供ぐらいはせめて大学を出そうといって、大学を出して新聞記者になったと。これは三代にわたる産業構造転換と技能転換、雇用転換なんですね。これは同一人物ではありませんから全然問題ない。  ところが、今や非常に大きな問題になっているのは、産業構造の転換が非常にスピードが速くなってきた。これは国際的なメガコンペティションという問題もあるでしょうし、日本が非常に経済が成熟化をし技術のレベルが高くなったことによって、技術の展開というのは非常に速くなり高度化してきているということになりますと、個人の一人の人生の中で雇用転換を迫られるということをどうするのかということが非常に大きな問題だというふうに思うわけであります。  この点は、これまでは産業政策という立場で、産業を興せば労働力のミスマッチがなく、かつそのことによって成長したコストを配分しながら技能の習熟に企業も回すことができた。しかし、企業自体もそういう余裕がなくなってきたということになりますと、これはここに書いてありますように「ミスマッチ対策」というふうに一言で片づけられないさまざまな諸条件を整えなきゃいけないというのが大きな課題だと思います。  ですから私は、雇用労働問題と現在の産業構造の問題を考えますと、一つは技能訓練、能力開発をどうするか。同一人物が同一世代でもって転換する際にその対応策、本人が非常にモラルが高くインセンティブを持って新しいところにチャレンジする能力をいかに持っていただくかということが雇用労働政策の一番基本ではないかというふうに考えております。  その意味で今求められているのは、こうした大きな方向性をつかまえた上で、佐野先生が今御指摘になったような産業構造の転換に向けてどう個々の労働者のミスマッチを防ぐかというのが雇用労働政策の一番基本に置かれなければいけない。もちろん、その間にはどうしてもそれに適合できない、ミスマッチがそのまま個人に残ってしまう方々にとっては、救済的な手段として短期的な失業対策、雇用対策が必要だということも間偉いないことであります。  二番目の問題は、これも非常に大きな問題でありますけれども、「産業雇用の空洞化防止施策の推進」でございます。先ほど申し上げたことは国内対策でございまして、しかしこれも外国との競争の中で産業が外へ出ていってしまうということについてはそれほど大きな手だてというふうにはならないわけであります。もちろん先ほど申し上げましたミスマッチ対策をすることによって、新しい産業における熟練労働者群を育成することによってコスト競争力は当然高まりますから、国際競争力も、現在の国際競争力を彼我の力関係だけで判断するというのは大きな間違いでありますけれども、しかしなから産業の空洞化のもともとの原因は中進国、低開発国の追い上げでありまして、安い労働コストをベースにした競争でありますから、これはいかんとも自由競争の範囲を超えている部分がございます。したがって、この点については相当慎重かつ大胆な対策が必要なんではないかと思います。  まず、具体的な対策としては、雇用の空洞化についてはいろいろ言われているんですけれども、実はよくわからない部分がございます。実態調査をきっちりとして対策を、なぜ海外に進出するかという実態についても必ずしも十分な把握はなされていないというのが現在の実情でございまして、この点については私どもの手ではちょっと手に余る部分があるんですが、一応例えば通産省が海外事業活動動向調査というものを平成八年三月にやっておりますが、この内容を見ましても、製造業現地法人の海外事業活動が輸出入の変化を通じて国内生産に与える影響を推計しておるわけでありますけれども、従来は海外へ進出することによって国内の生産雇用へのプラス効果というものが少しずつ減るぐらい。海外進出もプラス効果はないわけじゃありません。国内産業や国内雇用については、お互いの国際的な分業のもとで国内産業にプラスを与えるという部分があるわけであります。  これは特に業種別では、化学や一般機械などの進出はいわば分業関係を持って、日本の国内の川下産業との相対関係からいいますと、材料を半製品を輸入することによって国内産業が活発化するというようなプラス効果もあるわけでありますけれども、先ほど佐野先生もおっしゃいましたように、繊維は完全に製品輸入が非常に増大していますから、これは全くマイナスになってしまう。電気機械についてはマイナス幅が拡大されている。輸送機械も、自動車でございますが、これも従来はプラスだったんですけれども、最近は製品車の輸入がありまして大幅なマイナスになってきているということでございまして、これらの海外に進出する原因はさまざまでございますので、この要因をそれぞれの産業別に子細に点検をしてきめ細かい対策を立てるということが空洞化防止対策には非常に重要だというふうに思います。  それからもう一つ大変な問題は、これは技術俵さんがよく言われることなんですが、基礎技術継承というものが問題なんです。すべて全部根っこから持っていかれてしまいますと、日本産業技術を支えている基盤が全部海外に行ってしまうということで本当にいいのかどうか。これは、保護政策と言ってはいけませんが、ある種の保護政策を国レベルで行わないと、基礎技術まで全部移転してしまうということが果たしていいのかどうかということは、長期的な技術対策からいうと大きな問題でありますから、これは基本的に、WTOだとかなんとかというといろいろうるさいことはあるわけですけれども、しかしこの問題についてはしっかりと国レベルの政策をつけるということが基礎技術の温存という意味で大変重要な問題になっています。  これは先生方の地元でも、いろんな中小企業中心とした産業がそうした基礎技術の継承者がいなくなってつぶれていってしまうという事実をごらんになって、現実の問題として大変深刻だというのは私ども先生方からもお伺いするわけでありますけれども、私どもの現場の組合員からもそういう声が出てきているということは非常に重要な問題だというふうに思いますので、これはぜひ政策的な補完措置が必要なんじゃないかというふうに思います。  もちろん、三点目の国際化における国内産業政策の策定、これは従来型のMITIの行政指導という範囲を超えた大きな国民的な合意による国内産業政策を策定するということが必要なんじゃないかというふうに思います。  それから三番目は、これはごろっと変わる話なんですけれども、最近ドイツでワークシェァリ・グというような話が非常に強く出ております。私は、ドイツ型のワークシェアリング政策が日本にそのまま導入できるかどうかというのはかなり疑問を持っているわけであります。  というのは、先ほど佐野先生が冒頭に表でお示しになったさまざまな国内の処遇政策といいますか、年功賃金であるとかあるいは終身雇用的な雇用形態であるとかということが完璧になくなれば話はまた別でありますし、これは連合が悪いといえば悪いのかもわかりませんけれども、日本賃金形態が時間当たり賃金という形ではございませんので、その意味では、労働者の側からワークシェアリングということになりますと、直ちに賃金が減少につながるようなワークシェアリングというのはなかなか労働組合側の合意形成が図れないという非常に欠陥を持っておりまして、労働時間を短くすることによってワークシェアリングで雇用がふえるというのは簡単にいかないというのが難点でございます。これはこれからも私ども検討していかなくちゃいけないと思うんですが。  しかし、大きな流れとしては、労働時間を短縮することによって結果的には、佐野先生が先にやっていただいて大変助かるんですが、佐野先生がおっしゃる第五次産業を育成することにもつながるわけでありますから、これは労働時間短縮は大きな流れだというふうに考える。  そしてこれは、労働時間短縮をすることによって第四次産業、第五次産業という雇用を創出することに一方でつながります。そして同時に、労働時間短縮することによってワークシェアリング、製造業、第二次産業、第三次産業のワークシェアリングもできるということでありますから、これは労働時間短縮はかなり喫緊の課題だというふうに思わざるを得ない。  しかしながら、残念ながらこの問題については、現在の経済環境からいうと労働組合の方も、ことしの春闘がございましたけれども、ぎりぎり詰められて時短か賃上げかというと、大概賃上げとこうおっしゃるわけでありまして、私は大胆に時短だと言っているんですが、こんなとこで愚痴を申し上げてもしようがないんですが、組合がなかなか承知していただけません。したがって、雇用か賃上げかというのは今非常にぎりぎり詰められているものですから、そちらの方に頭が行って、なかなか労働時間短縮の方に向いていないというのが実態でございますが、これは着実に進めていかなきゃいけない。  しかし、この労働時間短縮は、経営側によく私は申し上げるんですけれども、早く済ました方がいいんじゃないかと。これ、多々ますます弁ずというのは、賃金の場合はかなり多々ますます弁ずでありますけれども、労働時間は、どんどん短くして特殊な産業を除いては年間百時間しか働かないであとは遊んでいていいという話にならないわけですから、ある種の人間の生き方、価値観の問題でもあるんですけれども、やはり労働というものは人間の創造力を伸ばすという部分もあるわけでありまして、その意味では、働きがいが生きがいにつながるという価値観も当然まだ残っているし残るだろうと、こういうふうに思いますので、その意味からいうと総労働時間千八百時間というのがいい目標だなということでございます。  そうなりますと、ただいま問題になっております来年の三月末、四月一日以降週四十時間の暫定措置が切れるわけでありますけれども、これはいろいろ対立がありますが、私どもとしては切に週四十時間労働は来年の四月から完全実施をしていただきたいと、何か陳情していて大変恐縮でございますが、そういうふうに思うわけでございます。  もちろん、労働時間短縮をすることによって新しい人間の生き方というのができる。ですから、労働時間短縮はいわば自由時間の拡大であって、自由時間の拡大は新しい価値観を創造する、そして新しい社会をつくり上げて雇用を創造できるということがキーポイントでございまして、私どもは、この労働時間短縮についても大きく議論を、国民的な議論をしていくということが大切なんじゃないかというふうに思うわけでございます。  次に、この三項はいろんなことを一緒にしてございますが、②、③、④は違う話でございます。現在の労働政策の私どもにとって一番大きな問題は、さまざまな労働諸条件の格差の問題でございます。日本労働条件決定のシステムというは、事態にもよるんでしょうけれども、事業規模における労働諸条件の格差が大変大きいという、これは皆さん方御承知のとおりでございます。ごれは、これまで日本産業構造というかシステム自体が、従来型の二重構造ということではありませんけれども、大手、中小の元請、下請関係で成立しているということでございます。したがって、さまざまな形で、例えば下請の条件についての改善等々の産業政策上の提言も私どもは大分しておりますし、いろいろなことで御検討いただいているわけでありますけれども、まだまだ生産構造、取引関係が必ずしも私どもが望むような方向になっていない。したがって、事業規模における労働条件が非常に格差が大きいということでございます。  例えば、いろいろな統計があるわけでありますけれども、私どもが直近で把握しております総理府の統計などでいきますと、五千人以上の企業の年間総賃金とそれから十人未満の年間の賃金を比べますと、十対六でございます。十対六でございまして、日本の最低賃金のレベルで月に就労二十五日間ぐらいしたとしても月の収入が二十万程度。最低賃金、各県によって違いますが、最低賃金レベルで二十五日間働いて二十万強ということでありますから、三百万に満たないという労働者が幾らでもいるわけですね。これは、現在韓国の平均賃金が月収で二十三万にまでなっておりますから、その意味からいうと大変低いレベルであるというふうに言わざるを得ないわけです。  こうした条件を放置しておきますと二重構造がどんどん拡大し、先ほど言いました産業構造の転換によるいわば技能習熟というものに対しても大きな影響があるということでございまして、これは何らかの社会的な枠組みでもっていわば同一労働同一賃金というのはしっかりと守るようなシステムをつくらなきゃいけない、このように考えております。これは、もう時間がございませんけれども後ほど申し上げますが、いわば労使協議と合意形成の重要性という意味合いからいっても大事なことであります。  高齢者・障害者の雇用対策の強化は、先生方御案内のとおりでございますので、当然のことということで説明は省略させていただきます。  また、四番目の「健康・安全対策の強化」でありますが、最近は中小企業中心として労働災害も多発している状況にございまして、この点についても強い関心を持っているところを申し上げておきたいと思います。  そこで、最後の五番目でございますが、「労使協議と労働基本権の確立」という問題でございます。  先ほど佐野先生のお話にもございましたように、日本型のシステムはすべてなくなるということではございませんけれども、三種の神器と言われました長期雇用型の雇用形態と年功賃金は明らかに少しずつ崩れ去っていくだろうということは私ども認識しているわけです。  これは何かというと、働く労働側の多様化が進みますと当然労働条件は多様化していくということはやむを得ないことであります。しかしながら、多様化をすればするほど同じ労働についての価値はきっちりと評価をするということにならなければいけないということであります。それともう一つは、雇用形態が多様化することによって熟練労働と未熟練労働というのは明確に分かれるということの可能性があるわけであります。これは、例えばパート労働だとか派遣労働が増加していくということになりますし、このパート労働や派遣労働の就業形態や雇用形態というのは大きく違ってくる、こういうふうに考えております。  そういうことからいいますと、就労が多様化しますと、今までのような企業別の単位で労使交渉をして労使合意をしさえすればすべてが片づくということじゃなくて、多様な労働力、例えば年俸制度をとるような企業がふえてまいりましたが、年俸制度をとるところについてはどのような合意形成のシステムをつくれるかということが非常に重要でございまして、これは、外部労働市場が形成されると外部労働市場における労使の合意というのはどこで求めるのか、こういうことが非常に重要なことになってくるんじゃないかと思っております。  この点については非常に難しい問題でございますけれども、どのような形で今までの企業別の交渉をもっと産業別社会的に決めていくかという仕組みというものが大事だと思います。先ほど申しました最低賃金の問題や、あるいは産業別交渉をどのようにつくっていくかということが大変重要なポイントになっています。  今メモが回ってきまして、さっきの最低賃金は、日当たり四千五百円から五千円ですから、二十万円なんか行かないと。十二万五千円だそうで、半分でございます。ちょっと御訂正を願いたいと思います。  それからもう一つは、倒産労働債権対策を改善するということが大事であります。  これは、今持ち株会社の問題でも私ども議論しているんですが、現在の労働債権の確保の状況は、非常に労働債権の優先順位が低いわけでございます。持ち株会社のときにも、ダイナミックに企業を解散しあるいは統合するということが進められるということでありまして、私どもは、雇用が確保されるということを条件にして産業構造の転換や労働力の移動はある程度やむを得ないというふうに考えます。  しかし、その際に労働債権をちゃんと確保できていないということは大変重要な問題意識を持っておりまして、この労働債権、賃金を初めとする労働債権の優先順位を商法上も上げるという取り組みを進めておりまして、このこと自体も、労働力の移動を比較的容易にして、かつ産業構造転換に伴うミスマッチを防ぐためには大変重要なポイントだと。全部倒産して労働債権を確保しなきゃいけないような形での労働力の移動は本当は好ましくないんですけれども、やむを得ない形でそういうことが起きた場合には安全弁をちゃんとつけておくということが重要なポイントではないかと、このように考えておりまして、この取り組みの強化をしているということを御紹介申し上げます。  たくさんのことを早口でしゃべって大変恐縮でございますけれども、言いたいことがいっぱいあるものですから、大変お聞き苦しかったと思います。  以上、私の考え方を申し上げさせていただきました。ありがとうございました。
  9. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ありがとうございました。以上で鷲尾参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより両参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 中島眞人

    ○中島眞人君 両参考人の方々には大変御多忙の中をおいでいただき、御足労いただきまして、感謝を申し上げます。  まず、鷲尾さんにお聞きしたいんですが、今、春闘真っ盛りなんですけれども、春闘の中でも悩みが、賃上げか時短かというふうな問題が今まさにあります。私も新聞等で見る限りしか状況がわからないものですから、私の地元の山梨から資料を取り寄せてみました。率直に言って、大変厳しい。要求組合も昨年より減少しているし、あるいは妥結状況も昨年より悪いということでございますけれども、この春季賃上げ要求状況を、トップとしてお取り組みいただいている鷲尾さん、御感想をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  11. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) 大変厳しい御指摘をいただいて責任も感ずるところでございますが、ことしの春闘、私ども連合は春季生活闘争と言っているわけでございますが、全国レベルですから、結果としては額で百円から二百円程度のプラス、率で大体横ばいということでございます。  ただ、大きな問題は、大手企業の場合にはそれ以上の直答を確保しているんですが、中小地場虚業についてはそれより低いというような分布になってございます。したがって、先生の御地元の山梨等では大手企業というのはそう多くはございませんので、その意味からいうと御指摘のような状況があるんではないかと、こういうふうに認識しております。  先ほども申し上げましたように、私どもの今の労働条件に対する取り組みの一番の基本は、名目では世界的に大手企業については高い賃金になっているけれども、中小企業の実態は先ほど御紹介したような状況ですからそれほどでもないというところからいいますと、大手企業についてはやむを得ない部分があったとしても、中小企業労働条件はもっと引き上げるべきではないかと、このように考えておるわけであります。これがなかなかうまくいきません。反省をしているところでございます。  この根っこは、先ほど申し上げました構造的な問題を解決しないとだめである。労働組合の中外も親企業の組合とそれから下請企業の組合との仕同行動を強めることによって、同一労働同一賃金という基本を守っていくというのが大原則ではないかと、こういうふうに思っております。  ただ、トータルでことしの春闘をどう評価するかということになりますと、幸いにして昨年の物価は過年度物価上昇率よりも下がっておりますへら、実質賃金確保という意味ではことしの春闘片まあまあだなという状況にあるというふうに思っています。
  12. 中島眞人

    ○中島眞人君 端的におっしゃって、大企業は微増だ、中小零細というのはもうがくんと落ちていると、こういう実態はやっぱり大変な、後で労働時間の問題についても御質問申し上げたいと思うんですが、三月五日の日に春闘についての対論を鷲尾さんと日経連の専務理事がやっていますね。この中に、日経連の福岡さんが言っている「米虫は賃下げで雇用を守った。ドイツは賃金水準は守ったが、大失業に見舞われた。日本はこのどちらでもない、第三の道を歩むべきだ。そのためにはも経済の構造転換は急務であり、」云々という福岡さんの発言があるわけです。討論じゃありませんから、これに対してのお答えがなくて言いっ放しになっておるんですけれども、日経連の福岡さんが言っているこの意味というものをどんなふうにお受けとめになられますか。
  13. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) その対論はそれぞれインタビューをしましたので、受け答えになってい次いわけであります。  私は、福岡専務理事がおっしゃいました米国の雇用確保というものについては、あのシステムというのは必ずしも好ましいものではないというふうに思っています。したがって、基本的な考え方は、福岡専務理事が言われた第三の道というのけ明確ではないですが、何とかその第三の道を模索するということが必要なんじゃないかと、こういうふうに思っております。  そのためには、日本の場合には非常によき労使慣行もまだございますので、労使が十分話し合いをすることによって、労働条件の問題と雇用の問題を組み合わせてそれぞれが納得できる解決方法を見出すということが大事ではないか。私の立場から、雇用は切り捨ててもいいとか賃上げがなくてもいいとかということはなかなか言いにくいわけでありますけれども、そこは具体的に提言をしていただく。合意形成といいますか労使の話し合いが十分されることによって今までも日本労働者はそれでもって物事を解決してまいりましたから、ここの場で賃下げもいいよとかというようなことは言うわけにまいりませんけれども、個別条件では具体的にそういうこともやられている、苦悩の上でやられているところが多いと思います。  ただ、日本の場合には賃下げをして雇用を守れたというケースはないんですね。ほとんどがほかの原因なんです。ですから、経営側は賃金が高いから雇用が守れないというのは必ずしもすべてではないと、こういう見解を持っております。
  14. 中島眞人

    ○中島眞人君 先ほどの労働時間の短縮の問題、千八百時間という目標に向かってまさにかねや太鼓でたたかれているんです。  ちなみに、中小零細企業がこれをどう受けとめているか。例えば一例を申し上げますと、山梨県の場合では全事業所に占める三十人以下の中小企業比率は九七%なんですね。この中で、例えば全国の平均が千九百九時間、ところが山梨の場合は千九百八十八時間というのが平成七年。そういう中で、かねはたたけども中小零細企業にとってみると、これを短縮することによって賃金コストの上昇、あるいはまた生産高や売上高の減少、従業員の収入減等々の問題の中でなかなか時短というのは進まないんです。  しかし、これはやっぱり国を挙げて目標を一応千八百時間へと言うんですけれども、しかし言えども言えどもそこに到達の道というのは、特に景気低迷がここ続いてきている、そしてそのしわ寄せは、今回の春闘に見られるようにやっぱり中小零細企業賃金がその要求額というものに達していない、これと合わせていくと今も大変な問題だという御指摘をなされましたけれども、しかし目標を捨てちゃいけない、どうしたらいいのか。その辺、ひとつリーダーとしてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  15. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) 長期的には私は日本生産流通システムを大企業を含めて考え直していただかなきゃいけないと思いますね。  例えば日本の大企業が外国との競争力を持っているものの大きなものとして、例えば在庫を全然持たずに中小企業から直ちに物を納入させる、あるいは流通業においても、開店時間の延長に伴って大手企業については交代で労働時間は一定の時間で何とかしながら開店時間を延ばすということは可能ですが、そこに納入する業者さんについてはそのようなことはできないわけでありまして、そうしたシステム自体を大きく変えていくということにしなければこれは中小企業の皆さん方の労働時間短縮につながらないわけですね。  いわば実態労働の長さがどうかというよりもその拘束される条件というものが大きくて、運輸業や建設業労働時間が非常に縮まらないというのはその点に問題があるわけです。ですから、その点を解決しないと長期的には解決にならないと思います。  短期的な問題としては、やはり国、地方の時短促進に対する援助策というものを強化するということは必要だと思います。
  16. 中島眞人

    ○中島眞人君 佐野先生、もう時間がございませんので、後ほどまたメモでもいただきたいと思うんですけれども、実は今、厚生省が介護保険を導入しようという形でいろんな論議が重ねられておりますね。その中で現金支給という問題がございます。それをやることによって女性の社会進出を家庭に閉じ込めてしまう、そういうことになるんではないか、そういうふうな女性側の意見もあり、私もそんな感じがするんですけれども、もう時間が来てしまいました。次の方も予定をなさっておりますので、また機会を見てそんなことに関する御意見をお聞かせいただければ幸いだと思います。
  17. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 答弁はよろしいですか。
  18. 中島眞人

    ○中島眞人君 はい。終わります。
  19. 金田勝年

    ○金田勝年君 きょうは非常に示唆に富むお話を労働市場の問題としてお聞かせいただきました。そこで、二点ほど鷲尾参考人に、そして佐野参考人に一点ほどお聞きしたいと思います。時間が非常に限られていますので、簡潔にお願いできればありがたいのでございます。  ただいまの御説明の中で、労働市場が直面する大きな変化というものについていろいろお話があったと受けとめております。需要面で日本経済の国際化、そしてまた産業構造の大きな転換、いろんなお話がございました。需要面の変化だろうと思います。それから、少子・高齢化の進展によるいろんな変化というものもある。そしてまた、労働力の供給面における変化もお話をいただいた。やはり高齢化の進展、それから新規学卒者が減ってきておる、それから女性の職場進出ということもございますし、やはり労働者、国民の意識の変化というものが、そういうお話で非常によくわかるんでございます。  去年の十二月に、政府の方でも第八次雇用対策基本計画というものを出されておりますし、そういうものを見ても、また昨年の十月でございましたか、連合と日経連で「新産業雇用創出共同研究会報告」というものを出されておられますね。  まず、鷲尾参考人になんですけれども、いずれにしても、例えば希望すれば六十五歳まで働けるような社会のシステムをつくらなければいけない。そういうときに、やはり協力してといいますか、政府、経営者、それから労働組合と、政労使と言うんですかね、その協力で課題の克服に当たるということが非常に重要ではないか。今の日本現状では、私はそういうふうに思っておる一人なんですけれども、その点についてどういうふろにお考えか。その際に、協力して取り組む際の重要なポイントは何なんだろうかという点をお聞かせいただきたいというのが一点目でございます。  そしてまた二点目は、労働組合の組織率というものがここのところ非常に低下傾向にあるということを私も知っておるんでございますが、推定組織率で、去年の数字でございますと九五年六月現在で二三・八%という数字が公表されております。この数字が非常に下がってきておる。私は、今の労使の協調性の必要ということも非常に重要だとは思うんですが、一方で私ども政治家の世界では、政治家に対する国民の期待、有権者の期待、そういうものが非常に無関心的なものにつたがっておるということが言われておるんですけれども、そういう視点で考えた場合、労働組合に関しましてはその期待というものがどのようになってきておるのか。そういう数字を見たときに、鷲尾参考人は組合のリーダーとしてどういうふうにこれをお受けとめになっておられるのか、そこら辺をお聞かせいただきたい。  以上、二点です。
  20. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) 両点とも大変厳しい御指摘でございますが、しかし基本的なお考えについては先生御指摘のとおりでございまして、考え方については私ども異論がございません。  したがいまして、第一番目の御質問にございますような労働市場に大きな変化があるだけに、政労使がこれに対しては具体的な対策を練らなくちゃいけない、こういうことについて努力をしなきゃいけないと思います。  その場合の重要な点は何かということでございますけれども、一つだけ挙げると、私はやつぱめ技能訓練ということだと思います、政労使が協力するということでは。もちろん雇用の創出については労働組合も協力しますけれども、これは主体的に産業界と政府の産業政策で行われることであります。私どもは、スムーズにミスマッチをなくして新しい産業に移っていく、そして新しい産業国際競争力を持つという立場からいうと、技能訓練、技術訓練、しかも従来のような低レベルの技能訓練じゃなくて、ハイレベルの技能をいかに中高年の方まで含めてつけるかということは、政労使が一体になってやる重要な一番のポイントだと、こういうふうに思っております。  それから二番目の組織率については、大変弱点を突かれたわけでございますけれども、政労使協力するんだけれども、二四%ぐらいじゃどうもならぬと、こういう話にもつながるわけでございまして、私ども一番危機感を感じているのは、ことし実数が減ったんです。これまでは分母の労働力参加がふえましたから、分母がふえて率は若干下がりましたけれども実数はふえていったんですが、ことしは実数が減ったわけです。これは、連合を初めとして労働組合の幹部として大変危機的な状況であるということを考えております。労働組合に期待するということが少なくなってきたということであれば、ゆゆしき時代だというふうに思っています。  これはもう対策というのは基本的にはこれというものはないわけでございまして、組合員の方々が期待しているのは、きっちりと組合の組織か真面目に労働条件に取り組んで、春闘についてもちゃんと結果を出すということしかないことが一つ。  それから、組織率が低下している大部分が中小企業、先ほどの中島先生の御指摘じゃありませんけれども、中小企業であります。今、中小企業に対していかに格差是正対策まで含めて労働組合がちゃんと面倒を見られるかということが大事であります。  それから三点目は、やはり労働組合が持っている政策立案能力です。中小企業に対しては、個別企業を幾ら攻めても労働時間だって賃上げだってできないという実態がありますから、これは政策全体でカバ一していかなきゃいけないわけでありまして、先ほど中島先生が御指摘になりました保険の問題、年金の問題というのは中小、大手に限らずあまねく全部対応できるものでありますから、政策、制度の強化ということが必要だと、こういうふうに思っています。
  21. 金田勝年

    ○金田勝年君 時間の関係で、次に佐野参考人にお聞きしたいと思いますが、今の労働力の供給面、これで非常に新規学卒者が減少しておるという状況はございますけれども、将来に向けてやはり若い人がどういうふうな形で雇用という問題にかかわっていくか、これは非常に私は関心が高いわけであります。もちろん女性の方のお立場、職場進出の一層の進展ということもございますけれども、若い人にとりましては、大学を卒業したらその卒業時の就職が一生の仕事だという傾向が今まで高かったわけですけれども、これからの時代というのは、まさにお話にもありますように、やはり自分自身の個性が尊重される、そして自分仕事を選んで、そして自分の付加価値を高めていくというふうな発想、こういうふうな欲求というものが非常に強いというふうに見ております。  これは全体の価値観が変わってきておる中での現象なんですけれども、そういうことを考えますと、一たんは就職できても、やはり労働丈の移動というものも可能でなければいけませんし、そういう若い人たちにとってこれからの十年後、二十年後を考えた、準備するべき手段といいますかシステムといいますか、そういうものが非常に重要になってくると私は思うんであります。  それに対しまして、現在の日本というものが抱える何かネックとか乗り越えなければいけないハードルとかいったようなものがあるとしましたら、それは何とお考えか、その辺をちょっとお聞きしたいと思います。
  22. 佐野陽子

    参考人佐野陽子君) 私は、この三月まで慶応大学におりましてゼミナールを持っておりました。毎年三十人ゼミ員がいるんですけれども、二の近年は非常に就職が厳しくなって大変血眼にみんな就職活動するんですが、不思議なことに、就職しましてから、例えば一昨年の例ですと、三人が一年以内に退職いたしました。それから昨年の例ですと、もう七月に一人が退職いたしました。非常に変わり身が早いというか、しかし割と情報なんかも非常によく得ていますから、よく調べてみんな就職しているはずなのに、なかなか落ちつかないわけです。  しかし、海外の事情を見ますと、日本のような一括採用であるとか若い者だけが就職活動をするというのは非常に特異なんですね、例外的なんで、これからはますます若い人からふえていくでしょうけれども、労働移動がスムーズにいく、これが産業構造の転換にもつながっていくわけで、これから国際競争力を強めながら、企業の活力を維持して、そして雇用を維持するためには、やはりこの移動がスムーズにいくというのが非常に重要なことだと思います。  具体的にどういうこと、こういうことというのはございますけれども、今までの日本企業は井戸の中に入ったようなもので、飛び出すのに大変な努力が要ったわけですけれども、これからはもう本当に横の移動がオープンになるというのが、これが重要な課題と考えております。
  23. 金田勝年

    ○金田勝年君 以上で終わります
  24. 小林元

    ○小林元君 平成会の小林元でございます。  きょうは、大変夢のあるあるいは大変厳しい現実の話をいただきまして、ありがとうございました。  それで、古い発想かもしれないんですけれども、グローバリゼーションの進展の中で競争が激化し、あるいは最適環境を求めて企業が国際展開をやっていく、しかし次代を担う新産業の創出といいますかそういうものがなかなか思うようにいかないと。これは佐野先生からも御指摘がありましたし、鷲尾参考人からもそういうお話がございました。そういう中で、失業率が最低を脱したかどうかわかりませんけれども三・三というようなことで、回復基調にあるというふうなことは大変展望があるというふうに考えているわけでございます。  それで、佐野参考人からは、第四次産業というような位置づけでいわゆる通信情報といいますか、高度情報社会に向けて相当伸びるんではないかと。ただし、従来のような形での産業あるいは雇用というものが発生するかどうかというようなお話がございました。  電気通信審議会で高度情報社会の実現に向けてというような中で検討されたものを見てみますと、二〇一〇年には百二十二兆円、あるいは二百四十三万人というような雇用も出ると。これはあと十五年あるわけですから、それが大きいものなのか小さいものなのかはかり知れませんけれども、かなり大きいんではないかと。そして、ごく最近のデータで見ましても、九五年、昨年の日本の設備投資の中で一番伸び率が高いのはやはり情報通信、そして電子機械といいますか電機関係しいうようなものが二五%あるいは二七%ということで大変伸びております。  これが直接雇用にどの程度響いておるのかというのは私もデータを持ち合わせていないんですが、その辺の展望なり御意見がございましたら、佐野参考人鷲尾参考人から御意見を伺いたいと
  25. 佐野陽子

    参考人佐野陽子君) 情報通信が伸びることは確かなんですが、産業別にどれくらい伸びるかというのは、これは非常にいろいろな前提を置いて推計をするわけで、私もちょっと今のところどれくらい伸びるかということの数値は持ち合わせておりません。  その場合に、情報通信関係、どこまでをそれに入れるか。情報通信の事業が波及する範囲まで、ほかの分野まで入れるのか、あるいは情報通信というカテゴリーがどこの範囲かというのがやはり一つ問題ですし、それから雇用という場合に、それはフルタイム換算にした雇用の人数をいうのか、あるいは延べ労働時間的なものをいうのか、あるいはパートやいろいろな形を含めた人数をいうのか、私も大学なんかにおりますと理屈ばかりになるんですけれども、そういうことで非常に伸びることが期待されるんですが、やはりここで国際競争というのがございまして、その辺のこれから見通しを、よほど情報を集めてきちんとやる必要があろうかと思います。  以上です。
  26. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) これはいろいろな数字がありまして、先生御案内だとは思いますが、例えば電通審の報告などでは二〇一〇年に新規雇用創出が二百四十三万人というデータがございます。また、通産省の九四年の産業構造審議会の基本問題小委員会で、私も参加したんですが、ここでの情報通信分野での雇用増は二〇〇〇年までに百三十万人、こういうことでございます。  私どもは日経連との間で百万人雇用創出プランというものをつくりました。これは郵政省や通産省のような具体的な調査機関でやったわけではありませんからそれほど緻密に計算したものではございませんけれども、百万人をこの数年間、二、三年間で、二〇〇〇年を待たずして緊急対策としてつくらなきゃいけないと、こういうようなことで議論をいたしまして、これも三、四十万人は確実に増加する、こういうようなことで目標を掲げる。  これは数字が問題じゃなくて、佐野先生が今おっしゃったように、この数字を確保するためにどういうことをやらなきゃいけないかという提言の方が私ども重要だというふうに思っておりまして、その意味では、例えば高度情報通信社会をつくるためのさまざまな阻害をしている規制緩和の問題であるとかシステムの問題などというものを解決しなきゃいけない、こういう提言にしているところでございます。
  27. 小林元

    ○小林元君 先ほども質問があってあれだったんですが、今回、四月二十二日に高齢者介護システムについての答申というか、老健審の報告という形で出されたわけでございます。高齢福祉社会の実現のために、家族あるいは女性の負担が非常にかかっているというような現状を打破するためにも必要ですし、あるいは介護休業制度ですとかそういう形での労働の生活、あるいは家庭生活の両立をする、そしてまた労働力、熟練労働力をも含めましてそういう確保をしていくというためにぜひとも必要だと思います。  この辺につきまして連合でもいろいろ考えを出されておられるようですが、新たな負担がかかるというような問題ですとか、あるいは佐野先生からもお話がありましたけれども、ホームヘルパーですとかベビーシッターとかそういう形で、いわゆる第五次産業というんでしょうか、二〇〇〇年には二百八十万人の要介護者があるということになりますと六十万人のヘルパ一ですとか介護職員が必要であると。これも多いか少ないかあるわけでございますが、民活というような形ですね、公的システムではありますけれども、そういうものの方が経済効率性も上がるんではないかというような考えもあると思いますけれども、その辺についてお二人から御意見をお伺いしたいと思います。
  28. 佐野陽子

    参考人佐野陽子君) 非常に重要な問題でありますけれども、私は介護労働力現状のままでは国内では供給し切れないというふうに考えております。海外を見ましても、やはり国際的な労働移動がいろいろな形で活用される時期でございますので、日本介護だけではなくてベビーシッターなんかも、先進国では働く女性を助けるために保育園ではなくて自宅で子供を見てもらうという、そういうベビーシッターも非常に発達しているんですが、やはりそれは非常に動いている社会のシステムの中でいろいろな人たちを活用するということが必要ではないか。ですから、国内だけで窮屈に考える必要はないのではないかと常々感じております。
  29. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) 介護保険そのものの問題については別の議論でございますからきょうは避けさせていただきますが、現在、老人保健審議会で議論されています介護保険をベースとした介護システムを議論するということになりますと、私どもの認識としては、サービス提供時に必要となるサービスの量と質を確保するのが非常に重要な課題だと、こういうふうに思っておりまして、相当程度人的資源も必要だと、こういうふうに考えています。  これは別の問題としてゴールドプランの中で出されておりますが、私たちはゴールドプランから自分たちの勝手な名前をつけてスーパーゴールドプランというのをつくって、人的計画もつくらなきゃいけないと、こういうことを提言しているわけでございますけれども、これは今の介護保険議論の場合でもややまだ不十分な部分だというふうに思っています。  そこで、スーパーゴールドプラン達成のために私どもの計算としては、プラス約八十万人の雇用が必要だと、こういうふうに考えておりますが、これも先ほどのお話ではありませんけれども、前提条件がいろいろございます。介護のやり方の問題もありますし、医療介護との関係をどう区分けするかという問題もございますけれども、いずれにしろ高齢者介護従事者は約八十万人というふうに考えています。  なお、参考までに産構審の報告では、福祉・医療関連の雇用規模についても、これも二〇一〇年に五十六万人ということが提起されておりますけれども、相当大規模なものではないかと思っております。  しかしながら、今、佐野先生が御指摘の外国との雇用の自由化という問題に関連するんですが、何せこの分野労働者に対する処遇条件が非常に悪い、人の数は合っていても今の段階ですと来る人がいない、こういう実態でございますので、この医療介護の従事者の労働条件改善をコストという意味でいかに考えていき処遇を上げていくかということが大きな課題だというふうに思います。もちろん、この分野産業は単なる競争力だとかあるいは収益だとかということで認定できない問題でございますから、何らかの政策的な手段がないと誘導できない、このように考えております。
  30. 小林元

    ○小林元君 次に、労働環境といいますか、先ほど来ちょっとお話が出ましたが、終身雇用制あるいは年功序列型の賃金体系ですとかが限界に来ていろんな形が出てきております。就業形態の多様化につきましても、パートタイマーですとかあるいは人材派遣業ですか、今国会でも改正案が提出されておりますけれども、パートタイマーにしましても、これはちょっと古いあれですけれども一九九〇年で五百八十四万人、いわゆる正規社員の一四%に及ぶと。あるいは人材派遣業は三年前ですと十五万人ぐらいというふうに言われております。  先ほど来、佐野先生からもお話がありましたように、自由な時間に好きな仕事を選ぶというような形で個人として働くという場合もあるでしょうし、例えば人材派遣会社に登録をしていくというような形もあるいはあるのかもしれませんが、そうなりますと、いわゆる雇用労働条件というんでしょうか、そういうことでいろいろ問題になって、そのために法的な保護といいますか制度が整備されないと困るというようなことで二つの法律案が整備されてきているというふうに考えておりますが、そういう中でこの辺の問題ですね。  それから新しいのは、こういう情報社会の中にあってサテライトハウスというんでしょうか、テレワークといいますか、在宅勤務ができるかもしれない、なるんではないか。現にアメリカあたりではそういうものが出てきているわけでございますが、その辺について連合というお立場でのお話を鷲尾参考人にお願いできればと思います。
  31. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) ただいま先生御指摘の労働就業形態の多様化というのは、これは私は必然だというふうに思っています。これは産業構造の転換と高度情報社会というのが切り口になるだろうと、こういうふうに思うわけであります。その際に問題になりますのは、従来のような固定的な常用労働者のグループの処遇条件の交渉といいますか、労使の交渉と全く別のスタイルを考えていかなくちゃいけないというのが非常に大きな問題だと思うんです。  御案内のように、日本の労使交渉というのは企業別に展開されております。しかしながら、派遣労働者やパートタイマーの労働者というのはそのジャンルに入らない。いわば日本企業別組合が日本の労使関係の安定に非常に大きく寄与している、これはあくまでも従来型の常用雇用者でございまして、そのことが先ほど諸先生から御指摘いただきました格差にもつながっている。いわば労働組合が介入できてない分野については労働条件はどうしても低下ぎみだというのはちょっと我田引水な話なんですけれども、組合側としては大変危険視をしなければいけないと思っています。ですから、産業構造の転換でそういう新しい雇用形態ができるのは経済環境として必然でありやむを得ないと思いますけれども、そこには必ず労使が合意をして、労働条件決定にお互いの合意でもって物事を決めるというシステムをつくらなきゃいけない。  そうなりますと、派遣労働者でありますけれども、今先生御指摘のような人数だけではなくて、先生もおっしゃいましたようにどんどんふえているわけですから、派遣労働者の組織化というのは非常に難しいわけです。派遣元に一遍参りますけれども、雇用期間というのは派遣期間がばらばらでして、いろんなところに行っているわけですから、従来の労働組合の概念からいいますと職場集会をやるといったって来れるはずがないわけですね。ですから、要求を決めろといっても無理がある。そうなりますと、派遣元の労働組合をつくるということはどういうやり方があるのかということも根っこから議論しなきゃいけないという非常に大きな我々にとっての課題があるというふうに認識しています。現在、解決方法はないんですが、しかしパート労働者や派遣労働者の組織率を高めるという方策は必要だと、こういうふうに思います。  その際には、例えば今でも安全衛生委員会の制度が法律で決められております。一定規模の従業員を持っているところについては衛生委員会をやらなきゃいかぬ、安全委員会をやらなくちゃいけないという規定を、労働組合がないようなところに波及させる。パートや派遣が主体の職場に普及させることによって、労働組合がなくても従業員代表との話し合いはちゃんと最低限のところはつけるというようなことをしていかないと労働条件は守れないと、このように考えております。  こうした大きな課題についてはぜひ先生方にも御理解いただきまして、何も労働組合の力を単に上げたり組織率を上げたりするために問題があるのではなくて、社会的な合意というものをつけた上で新しい雇用形態に対応するということが社会の安定化にも必要だということをぜひ御認識いただきたいと思います。
  32. 小林元

    ○小林元君 佐野参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほど大変夢のある話といいますか、個性豊かな生活をするというようなことで、自分の意思で仕事と遊びを一体にしたというような形で仕事といいますか雇用というんでしょうか、そういうものをやっていく価値観といいますか変化が出ているということで、本来そういうことになれば大変望ましいといいますか夢のある社会が実現するんじゃないか。アメリカなどではいわゆるアメリカンドリームといいますか、そういう形でパイオニア精神あるいはチャレンジ精神というものが非常に強い。ところが、日本の場合は御承知のように、先ほどもお話がちょっとありましたけれども、受験戦争の中で偏差値教育をやられて、やられてというか追い込まれて、一流大学、一流企業と、そういうもので生活が安定できるというようなことになって、我も我もというような状態が今でも続いているというのが現状ではないかと思います。  そういう意味で、これからそういう創造性、個性を伸ばすというような教育といいますか、そろいうことについて連合あるいは日経連でも教育問題についてこういうことをやろう、やってもらいたいというような提言もされておられるようですが、大学という現場の中でその辺につきまして御意見がございましたらお伺いしたいと思います。
  33. 佐野陽子

    参考人佐野陽子君) ちょっとお答えになるかどうかわからないんですけれども、日本はよく資本主義とか自由主義とか言うことがありますけれども、海外の学者がつぶさに日本を知って言うことには、日本社会主義だというんですね。つまり、法律とか規則とか制度とかでがんじがらめになっているという、そういうのがイメージだろうと思うんです。私も、例えば首都圏ですとかあるいは関西とか大都市の真ん中におりますとそういう感じは余りしませんけれども、一歩地方に行きますと、これは経済の基盤というのは非常に公的なところに負っているわけで、ですから非常な二重構造というのはそういう民活部門と公的部門、それから大都市と地方と、こういうのが非常にアンバランスな様相を呈しているんではないかと思います。  そこで、一体どういう方向に行ったらいいかということなんですけれども、これは法律を決めるとか、何とか誘導するとか、そういうやり方はマイナスではないか。そういうものをなるべく取っ払って自由にしていくというのが、これが重要だろうと思っているんですね、ですから、例えば最低生活水準とかそういうところは維持する必要はあるでしょうけれども、それ以上はもう自由におやりなさいという、そういうことを基本に考えますと、これは産業にしろ教育にしろ生活にしろ、すべてに当てはまるんではないかと思うんです。  ですから、教育もこれは自由にやりなさいと。私は、一番やめてほしいのは義務教育ですね。この義務教育というのを九年やらなきゃいけない、これが一番の縛りになりましていろいろな問題が出てきているんじゃないか。今何も文盲でどうのなんという時代ではございませんので、個人が自分の子供あるいは孫に対しては好きなように教育をしたらいいんじゃないでしょうか。海外に行かせたいなら海外に行くとか、家庭教師でやるとかいろんな形があると思いますけれども、教育の自由化ということが基本ではないかと考えております。
  34. 小林元

    ○小林元君 ありがとうございました。以上で終わります。
  35. 千葉景子

    ○千葉景子君 社会民主党の千葉景子でございます。  きょうは貴重なお話を伺いまして本当にありがとうございました。私の持ち時間が十分でございますので、たくさんお聞きしたいことがございますけれども、佐野先生に二点、鷲尾参考人に三、点、最初に申し上げますので、大体その配分でお答えをいただければ幸いだというふうに思っております。  佐野先生には、先ほどもお話が出ておりましたけれども、今大きな産業構造変化やあるいは日本雇用慣行変化、こういうグローバルな動きがございます。そういう中で一つ私も気になるのは、労働力の国際移動のようなものが当然あるだろうと。その中で、我が国でもいろんな意味で、きちっとした制度のものか否かは別として、多くの外国人の方が働いている。先ほどの介護の問題などにも、日本労働力だけで十分足りるだろうかという御指摘もございました。  そういう意味で一点、この外国人の労働力についてどう考えておられるか、あるいはそれに対して日本社会がどう対応していくべきか、お考えがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。  それからもう一点は、第五次産業ボランティアとかそういうものなども考えたときに、これからは雇用をされるというだけではなくて自分社会活動的な仕事というんでしょうか、そういう部分というものも出てきているだろうと。そういう意味で、今よく言われておりますNPO、いわゆる非営利事業とかそういうものへの対応というのが日本社会は特に整備はされておりませんけれども、そんな点についてどうお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。  それから鷲尾参考人には、端的に言いますが、これからどうしても女性の労働力というのが必要とされ、あるいは当然のごとき参加をしていくということになると思います。その際の問題点、そして今最大の課題というのがどういうところにあるか。  それからもう一つは、先ほどからのお話の継続になりますが、労働形態の多様化ということになりますと、これからは企業ごととかそういう労働条件のはかり方ではなく、個々の問題が非常に重要になってくるということだと思います。その際に、労働法制のあり方ですが、特にまず基本になる労働契約、そこらの法制度のありようというものも問題になってこようかと思いますが、どうお考えになっておるか。  それから、これはっけ足しのようなものでございますが、男性を見たら必ず聞くということにしておりますので。  こういう労働形態が変わってきますと、家族のありようというのもまた変わってくるだろうと。そういう中で、今民法の改正とかあるいは税金とか年金とか、こういうものについてもやはり男性と女性の格差とかあるいは対応の仕方、こういうものが問題として指摘されておりますが、その点について鷲尾参考人の御意見を伺いたいと思います。  以上、よろしくお願いいたします。
  36. 佐野陽子

    参考人佐野陽子君) 先ほどの二点についてお答えいたします。  まず第一の外国人労働の問題ですけれども、これは国際的な情勢によりますと、物の貿易は今ほとんど自由化ということで合意されていて、もう自由化の方向に向かって邁進をしているわけですが、その次に出てきている問題がサービス貿易の自由化なんですね。  サービス貿易というのはどういうのかといいますと、例えば金融であるとか建設であるとか観光であるとか運輸であるとか、そういう関係の方面なんですけれども、これは一口に言うと、先進国は自由化していて途上国は閉鎖的なわけなんです。閉鎖的というのは、つまり、そこで開放しますと非常に競争上不利になって先進国に全部支配されてしまうということです。ところが、今の国際情勢は、サービス貿易の自由化をしょうじゃないかというそういう方向なんですね。そこで、それを自由にするかわりに、じゃ途上国は何を要求しているかというと、労働力の輸出といいますか、労働力の自由な移動、特に単純労働ですね、それを要求しているというこういう段階であります。  日本は、サービス貿易については非常に閉鎖的であり、そして労働移動についても閉鎖的という、これは国によりますからちょっとあれですけれども、そういう状況でありますが、これからはもっと国際的な依存関係が強くなるわけで、何も人が動かなくても人が動いたと同じような効果というのは、実は貿易が自由化すればあるわけですけれども、コストをより安くそういうメリットを使うためにはやはり人が動くということが重要になる。それから、いやでも旅行とか留学とかで人は動くわけですから、そういうものを防ぐことはできないだろうということで、日本で特に現業労働力がこれから不足するのは明らかでございますので、そういうところを活路にしたらいいのではないかと考えております。  二番目の問題はNPOですけれども、これは非営利組織ということで、日本は株式会社組織は非常につくりやすくなったんですけれども、それ以外の法人は、大変昔ながらのあれが残っておりまして、財団法人でも社団法人でも非常につくるのが大変なわけですね。  ところが、社会活動をする基盤になるのにやはり組織とか法人とかが必要でありまして、この法人をもっと簡便に、エフィシェントにつくるという方向に動いてきてはいると思いますが、先日も宗教法人の問題などが出てきまして、また何か問題になるかもしれませんけれども、しかし大体機は熟してきているのではないかと思います。こういうための活動を容易にするために、ぜひこういう法人組織はたやすくできるということが重要だろうと考えております。
  37. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) 時間がありませんのでぶっきらぼうになりますが、恐縮です。  まず、第一番目の女性の労働力問題でございますが、長期的な課題としては私は教育だと思います。今までの産業社会のニーズが女性に対して求めるもの、男性に対して求めるものというのは過去と現在では大分違っておりますから、教育からまず基本的に考え直さなきゃいけない。短期的な問題からいいますと、現在、均等法の話は平等法ということで私どもは主張しているところでございます。その点からいいますと、さまざまな労働法規の面でも、母性保護を中心とする保護をする部分とそれから自由にする部分というのをもうちょっと国民的な論議をした上で、男女合意の上で新しい規定、基準をつくるべきだと、こういうふうに思っています。  第二番目の労働形態の多様化については御指摘のとおりで、大変重要な問題だと思います。  私は、労働法制のあり方についてはいろいろな問題点があると思います。それはなぜかというと、現在の労働法制のあり方は企業別組合については有利に働いておりまして、地域ユニオンだとかクラフトユニオンだとか、いわば地域コミューティーの合意形成をするための法制としては非常に不十分だと、こういうふうに考えておりますので、私は、中長期的な課題として、労働基準法の問題よりも労働組合法をもう一回大胆に見直すことが必要だと。できるだけあらゆる多面的な話し合いの形態ができる保障を法律ではつくるべきだと。これは決して規制緩和の流れとは逆行しません。  三点目に、家族のあり方でありますが、私は、現在法制審議会で出されました民法改正の問題についてはできるだけ早く決めていただきたいと、こういうふうに思っておりまして、基本的にそういう立場に立っております。ですから、税制や年金の問題についても、千葉先生御指摘のとおりに、私は、個をもっと大事にするという時代が来ますから、男女問わず個人というものをベースにした制度にすべきであると、このように考えています。そして、家族は別の意味での社会構成のコミュニティーとして男女が話し合ってっくり上げる社会だと、こういうふうに考えています。  以上でございます。
  38. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございました。
  39. 聴濤弘

    聴濤弘君 最初に、佐野参考人にお伺いしたいと思います。  第五次産業とかそれから労働に対する新しい価値観など、大変おもしろい参考になるお話を聞かせていただきました。それを聞いておりまして一つだけ確かめたいなというふうに思ったことが出てきましたのでお尋ねするんですけれども、そういう新しい現象というのは確かに一つの流れとしてあると思うんですが、やはり第一次産業、第二次産業というのは価値を生み出す基本であると思うんですね。このことについては変わりはないと、今後の社会においても。  ですから、価値を生み出すそういう産業があってこそ第五次産業があり、新しい労働に対する価値観も生まれてくるわけなんで、この部分で第一次産業、第二次産業の持っている意味というのはますます重要になってくると。それがどの程度の比重になるかということはまた別問題だと思うんです。そしてまた、そういう新しい労働の価値佃というのも、まさに第一次産業、第二次産業、そこで働いている労働者に、あるいは働いている人々にそういう価値観が生まれてくるようなものをつくり出していかなきゃいかぬと、そういうふうに私は思うんですけれども、佐野参考人のお話を聞いておりまして、そういう新しい価値観というのは何か第五次産業にしか生まれないような、そんなふうに私とったわけじゃございませんが、その辺ちょっと確かめたいなと思いました。  ついでで申しわけないんですが、先生の論文を読んでおりましてゴールドカラーという言葉が出てくるんですが、ホワイトカラー、ブルーカラー、これはイメージがわくんですが、ゴールドカラーというのはどういうイメージ、どういうことから出てくる言葉なのか、その点についてもちょっと御説明いただきたいと思います。
  40. 佐野陽子

    参考人佐野陽子君) 先ほどの第五次部門が出てきている図は、パリー・ジョーンズというオーストラリアの歴史学者が書いた本から借用したわけです。パリー・ジョーンズはもっと非常に深くいろいろ説明、考察をしておりますけれども、一言で言いますと、今の社会市場経済とそれから非市場経済とでできているわけですね。今までの一次産業、二次産業、三次産業、あるいは四次産業も含めると、これは市場経済に属するわけなんですが、これから第五次部門、非市場経済に半ば足を突っ込んだところが膨らんでいくわけですけれども、今の御指摘のように、今までの既存の一次、二次、三次、四次、これは非常に重要なんですね。これは、人は食べますし、着ますし、寝声すし、こういう必需的な物資は必ず必要でありますので、この部門生産量としては経済の発展とともに膨らんでいくわけであります。しかし、それに携わる雇用は、これは減るだろうということなんですね。  それじゃ減った雇用は一体どういう働き方をするかといいますと、減るというのはやはり三Kというような、つらくて汚くて危険な仕事から減っていくんじゃないんでしょうか。  そうしますと、残った例えば第一次産業に携わる者も、やはり自然の中で物を育てるという喜びを主たる根幹にしたような働き方、こういうものが残っていって、そして価値は今までよりも余計に生み出すことができるという、そういう循環が生まれてくると思います。  ですから、一次、二次、三次は、これがあってこそ四次、五次が成り立つという、まさに御指摘のとおりであると思います。  それから、ゴールドカラーというのは、そこまでちょっと話は出しませんでしたけれども、今までのブルーカラーあるいはグレーカラー、こういうところが今のような機械化や何かで減っていきまして、そしてホワイトカラーがふえてくる、これがこれまでの先進国の歴史なんですが、ところがアメリカは、私は日本の先を行っていて大変いいお手本になると思っているんですけれども、アメリカで起こっていることは、ホワイトカラーが二分化するんですね。二極分化しまして、そして非常にエリートといいますか、情報を駆使して大変高収入を得てやりがいのある仕事をしているホワイトカラーと、それからもう単純といいますか、定型的な仕事やあるいは今までの人減らしの渦中にあるような、そういうホワイトカラーと、こう二分化されるというわけです。  じゃ、何がそれを決めるのかということなんですけれども、私は、一言で言えばやはり国際競争力だと思うんですね。今は国の中で囲われて働いていましても、やはりつくるものは海外にも流通するわけですから、海外の労働者と常に競争をしているという、これが基本的な流れだろうと思うんです。  そこで、ブルーであろうとグレーであろうと、あるいは女性のことはピンクカラーと言いますけれども、ピンクであろうと、海外の一番効率のいい労働者と競争をして勝つことができる労働力、これがゴールドカラーだろうということで特にゴールドとつけたわけです。  ですけれども、実際に日本では、別にホワイトカラーの中にだけゴールドカラーがいるわけでけなくて、ブルーカラーで先ほどの工場で働く非常に能率がよくてクリエーティブな労働者は、これはやはりブルーであってもゴールドだと思うんですね。それは農業部門でも建設部門でもあり得るわけで、国際競争力がある労働者ということでゴールドカラーを使わせていただいております。
  41. 聴濤弘

    聴濤弘君 鷲尾参考人に一問御質問したいと用います。  産業構造の転換とか産業空洞化の問題、こういったものが大問題になっていることはもう周知のとおりですが、これに対する基本的なスタンスの問題なんですけれども、これは経済法則としてやむを得ないんだと、一つ経済法則としてそういう動きが出てくるが、これはもうそのとおりだと思うんですが、それはそれでやむを得ないんだと。  そうすると残る問題は、それに国民なり働く者がどう対応していくのか、適応していくのかというふうにとらえるスタンスと、同時に、やはり産業の空洞化の問題を取り上げますと、例えば地域の産業、地域経済にとって大打撃を与えるという問題、これはもう実際の問題として起こっている。そうすると、それに対して、これは経済法則だからやむを得ないんだということでいけば、地域が崩壊する、あるいはそこでの雇用がなくなっていくということで、どうしてもそれはやめさせなきゃならぬという考え方が出てくるのも、これまた当然だと思うんです。それは経済法則と違うからといったって、生活を守る上でこれはもうやむを得ない当然のこととして出てくる。そうすると、そこに対しては、やはりそういう産業の空洞化に対しては規制が必要だという考え方が出てくると思うんですね。  この二律背反的問題について、どう対応していくことが参考人としては一番適切と考えておられるのか。労働組合の代表でもあるんですが、これを今言ったような角度からの問題提起に対してどんなふうに考えておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  42. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) 大変重要な御指摘だと思います。私は、これからの産業を考える場合に両側面が必要だというふうに思っています。その意味からいうと、産業構造転換が必然だということだけ御説明を申し上げましたけれども、経済自体が安定的に国民に対しても有効な形で発展していくということは国民すべてが望んでいることであります。そうした意味合いからいいますと、産業構造の自然に任せた転換の方向に対して国民生活という立場から、聴濤先生おっしゃるとおり我々は政策転換を迫るという側面もなければいけない。  その際に、私どもは労働組合ですから相手側は当然経済界ということになりますが、経済界に対しては、国民生活が安定するという側面、経済原則は確かに自由競争でコスト競争力はやや落ちるかもわからないけれども、しかし当両国民生活に対する補完的な政策を進めるために、わかりやすく言えば産業の自然に流れた産業構造転換をとめるということは、国民生活にとっての安定感を増すんだから回り回って長期的には産業にとっても望ましいんだと、国全体の活力を保持できるんだと。あるいは個々人がソフトランディングで新しい産業に移るような力を得られる、生活が保障されて新しいことへ移ろうじゃないかという気持ちにさせるためには、やはり保護政策といいますか、ある種の一定期間の規制というものは絶対に重要だと、こういうように思っています。  私は、ですからトータルで考えればある種の規制も産業の活性化に役に立つと、こういうふうに主張しておりますし、それは正しいと思っております。
  43. 聴濤弘

    聴濤弘君 どうもありがとうございました。
  44. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 本日は、両参考人におかれましては大変興味のあるお話を聞かせていただきましてありがとうございました。  私の大学の女性の友人が、ある市役所で勤めておりまして部長になりまして退職した友人がおりますが、その友人に並みいる男性の中で女性が部長になれたというのはどういうことで最もあなたはなれたと思いますかという質問をしましたら、笑わないことだったというふうに言いました。私は非常にこれは重大で、彼女は女性が笑うと軽く見られるんだと、こういうふうに言いました。きょう、佐野参考人のお話を聞きますと、これから未来型の人間というのは大いに笑い大いに涙する愛情豊かな人だという御指摘がありました。私などは本当に未来型だなと思って、今は希望に胸を震わせております。  きょうは、お二人の参考人にいろいろなことをお聞きしたいんですけれども、残酷にも私の時間は十分しかありません。そこで、今三分ですから十三分までが私の持ち時間ですので、その間に両参考人に御質問させていただきます。  まず、鷲尾参考人にお伺いしますが、先ほどから日本雇用というのは流動型になる、そして労働移動というのはこれは必然的なんだ、そのときに一番重大なのが能力開発、教育だということを力説なされておりました。私も全くそのとおりだというふうに思います。しかし、今のこの能力開発を見ますと、企業企業自分に都合のいい形、労働省は労働省で非常に一生懸命やっているんですけれども効果の上がらないことをやっていますし、私にしましたらもうこの点で、つまり働く人と行政とそして企業が一緒になってこの流乱する雇用社会に対応できるような人間的精地方、基礎知識、そして応用力というような、つまりそういう総合的な教育機関を持つべきだというのが私の持論なんです。  そこで、鷲尾参考人、名前はともあれ連合大学というか連合労働大学というか、この大きな構想を打ち立てるというそういう御計画があるやなしやを、まず一点です。  次に、今、派遣法を委員会でこれから審議しようといたしております。こういうときに、規制緩和推進計画のところで、行く行くは全部ネガティブリストとして日本の働き方を派遣に開放すべきだと、こういう意見がありますが、私は先ほど参考人の御意見を聞くと、必要なところには規制をする方がいいというお話がありました。どこら辺まで、そしていつごろまでそういう規制というものが必要であるか。その二点をお聞かせいただきたい。  続いて、時間がないものですからぶつ続けでやりますが、佐野参考人にお聞かせいただきたいと思います。  非常に先生のお話、何かるんるんの気持ちで聞いておりました。確かに、働きたいときに働きたい仕事をやる、教育も義務教育はない方がいい、私など聞いて本当にうれしくなりました。しかし、私は先生にお聞きしたいんですが、憲法の二十七条に「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」ということが書いてあります。私は、権利というのは楽しいことだというふうに思いますが、義務というのはそれに反してつらいことだと思います。先生は、勤労の義務、特に女性にとっての勤労の義務というのはどのようなことを意味するのか、お聞かせいただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。
  45. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) 連合大学については、笹野先生がイメージされているものと同じかどうかはわかりませんが、構想はございます。しかしながら、私は、先ほど笹野先生御指摘の企業、行政、労働者一体となった能力開発のシステムをつくるべきだという御指摘については、もう少し広い範囲で考えていくべきじゃないかと思います。  ただ、欧米の労働組合について見ますと、御案内のように労働組合が労働力を商品として高く売りつける、言い方はおかしいですが、という機能を持っておりまして、その意味では労働力商品の高度化については労働者側にも一定の責任なり、あるいはそうした仕組みをつくるということは重要でありまして、日本労働組合はその機能が従来欠けておりました。したがいまして、私どもは広い意味での能力開発ということで労働組合が関与することは必要だと。その際には、やはり行政や企業側との共同行動というのは一部あってよろしいんじゃないかと、このように考えているところでございます。  次に、二番目には派遣法の問題でございますが、これは派遣法の問題だとか職業紹介の自由化の問題で、実は労使の間で大変大きな議論になっています。私は、規制緩和の大きな流れというものについては全面的に反対ということではございません。しかしながら、派遣法につきまして言いますと、これまで労働省の各種審議会で議論をしてまとめ上げたものでございますから、これにもいろいろ私ども労働組合として意見はございますけれども、今回の法案というのはそういう面では一歩前進をしたということでありまして、全面的に現在の段階で自由化をするということについては、当面反対でございます。  そして、職業紹介の自由化やあるいは派遣の自由化についてでありますけれども、この点については、一つ一つの職業の形態やさまざまな条件を勘案して、初めにネガティブかポジティブかということじゃなくて、個別に点検してこれは結構じゃないかということであれば自由化していけばいいわけでありまして、一個一個の点検なしにばさっとネガティブかポジティブかという議論は不毛の議論だと思います。ですから、個別にこういうたぐいの職業や技術、技能、労働というのは派遣法で適合するかどうかということを一個一個積み上げていけば、基本的にはネガティブの方が多いのかポジティブの方が多いのかということが判明いたしますので、そういう点でこれから議論していくということが大事じゃないかと、このように思っています。
  46. 佐野陽子

    参考人佐野陽子君) ただいま学校時代に戻ったような、試験を受けているような気持ちで、勤労の義務というのがそういえばありました。そわで考えますと、義務と権利とは裏腹でございまして、例えば学校教育は義務教育だとそれは無料下受けられるという裏腹になっておりますので、勤労の義務があるのであれば、働きたいところで働きたい仕事を女性はいつでも保障されるということがあってしかるべきだと思うんですが、そこけどうも満たされていないので、義務の方も余り一〇〇%満たさなくてもいいんじゃないかという子んな感じでございます。
  47. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 終わります。
  48. 水野誠一

    ○水野誠一君 きょうはありがとうございました。  まず、佐野先生に伺いたいと思うんですが、私も実は慶応で、先生の後輩になりますが、川田ゼミで労働経済学を学ばせていただきました。昨年は藤沢の総合政策学部でソーシャルマーケティングの教鞭をとらせていただいたというようなことで、実は先生のきょうのお話にありました第五次産業論というのは私自身の持論でもございまして、私自身、長年第三次産業流通業におりましたんですが、この第三次産業というもの自体が次第に解体をしていって、情報産業としての第四次産業と、それからまさに今先生がおっしゃったような究極のサービス業としての第五次産業に分々していくんじゃないだろうかというような考え方を持っております。そんなことで、今実は私自身もちょっと論文をまとめている最中でございまして、大変きょうのお話は意を得たりといいますか、大変心強い思いをいたしました。  そういう中で、一つは、こういった労働経済というものを前提として考えたときに、私は三方一両損の経済学という考え方がどうも必要なんじゃないかなと。その前提としては、やはりこれか二の経済というものが成長の時代というよりかむしろダウンサイジングの時代に入っていく。あるいは、今デフレということに対して非常に恐れられているわけですが、私は良質なデフレ型の軟着陣という考え方がやっぱり経済の中では必要なんじゃないだろうかなと、そんなふうにも思っているわけであります。  そういうことを前提として考えたときに、第五次産業の必要条件としてワークシェアリングという考え方、これが出てくるのではないか。鷲尾先生の方からは、ドイツ型のワークシェアリングの導入ということに対しては時間がかかるんじゃないかというようなお話も今あったわけなんですが、佐野先生に一つ伺いたいのは、有償ボランティアとかこういうものを前提として考えていく場合にもワークシェアリングというものの導入がどうしても必要なんじゃないかというふうに私は思うんですが、先生の御意見を伺わせていただきたいと思います。
  49. 佐野陽子

    参考人佐野陽子君) ワークシェアリングという考え方は、パイが一定でそれを分けて働くという、そういうアイデアだと思うんですね。何か一定のものを分け合うという、そういう意味だろうと思うんです。  先ほど言った第五次部門の活動というのは、これはどうなんでしょうか、もう幾らでも広がっていくものでありまして、何もシェアをする必要がないといいますか、そういう意味では。やりたい人が皆やりたいだけやれば、それが自然に経済活動にも行く行くはつながるという、そういうことですので、ワークシェアリングとおっしゃっている意味をちょっと私がとりかねているところもありますけれども、その働き方が、ある人はもう二十四時間近く働きたい人もいるでしょうし、そわからメジャーな仕事を持っていて、傍らアルバイト的に日曜だけやりたいという人もいるでしょうし、それから好きな時間、気が向いたときだけやりたいという、いろいろなスタイルがあり得ると思うんで、そういうものを総じてワークシェアリングということであればまさにそういう形だろうと思います。  ですから、やはり働くこと自体が楽しい、それが目的でやりがいがあるという、そこのところが一番大事なことで、それが市場経済の場合とどこが違うかというと、市場経済ではやはり効率性を追うわけですね。ですから労働生産性は高い方がいい、効率は高くするべきだと、これが目標になるんですけれども、そういう自己実現型の分野では何もそんな急ぐ必要もないし、効率を考える必要もない。ですから、例えばパン屋へ行ってパンを買えばおいしいパンが買えるのに、自分の家で手間をかけてパンを焼くとかあるいはそばを打つとか、そういうようなことが、それ自体が仕事といえば仕事だという、そういう世界を私は考えております。
  50. 水野誠一

    ○水野誠一君 私も同じようなイメージで申し上げておりましたんです。  それで、一つ今度は鷲尾先生に伺いたいんですが、先ほど持ち株会社のお話が出ました。実は私も与党商工調整会議の座長としまして、ここニカ月間、百数十時間論議をしてまいりまして、昨日その労使スタディーチームの取りまとめがございまして、肝心なところでやはりなかなか折り合わないというようなところが出た。その後、鷲尾事務局長の談話ということで、持ち株会社解禁に当たっては、労組法等の改正など労働面での条件整備が同一一体的に処理がなければならないことを改めて表明するというふうにおっしゃっているわけであります。これを受けて社民党さんなんかは、労働法改正の一体処理が絶対条件だというようなお話になってきているわけであります。  私は、使用者概念とかあるいは資本家の概念、これは確かに時代の変化とともに変わってきている、これの再定義をするというようなこと、これは絶対必要だというふうに思いますが、どうも必ずしも労組法等の改正ということまではいかなくても十分担保できるやり方があるんじゃないかなというふうに思ってその調整に努めてきたわけでありますが、こういうせっかくの機会でもございますので、そこについてざっくばらんな御意見を伺わせていただきたいと思います。
  51. 鷲尾悦也

    参考人鷲尾悦也君) ただいま水野先生が御指摘のような状況になってございまして、私どもはもう、非常に漠とした言い方で言いますと、いわば経営側が独禁法を改正して持ち株会社を起こすことによって経済を活性化するということ自体については、私どもの専門分野でもございませんし、そういう方向について否定をしているわけではございません。しかしながら、私どもが危惧を感じておりますのは、水野先生がおっしゃるように本当に担保できるかどうかという、こういう感覚的な問題でもあるわけです。  もちろん、今までの日本の労使慣行からいいますと、法制に規定をしていなくても、物事の円満解決のために、そうした親子関係にある現在の事業持ち株会社の場合でも労使協議を行う場面もございます。また、それを拒否されたことによって裁判所に持ち込まれ、判例もできておりますから、その意味からいうと、実態に即して使用者性を認定をされ、団体交渉の応諾義務があるケースがあるというのが経済界の言い分だと思うんですけれども、私は、漠としたことを言うとすれば、経済界が念願をして進めたいというふうに思うのであれば、話し合いをした方がよろしいという法規自体を否定することはないんじゃないかと。ギブ・アンド・テークということもございますし、何も私はそれによって何か行動を制約するんじゃなくて、話し合いをしなさいという法規をつくること自体がそれほど経済界にとって制約的になるかどうかということを逆の側面から感じているわけです。  したがいまして、私どもは、その意味からいうと、経済界が譲歩することが本当に持ち株会社をつくることに対して障害になるのかどうかといろ点について疑問を持っておりまして、ぜひ私どもは、一体かどうかというのはまたこれからの議論になるんですが、労組法の改正の問題についてはぜひ議論の俎上にはのせていただきたいと、こういうふうに思っています。
  52. 水野誠一

    ○水野誠一君 今のお記を値いまして大変参考になりました。特に、連合の方の立場としては労組法の改正などという含みを、幅を持たせていただいておりますが、私は大いにそこに望みをつなぎながら対応を考えていきたいというふうに思っております。  本日はありがとうございました。
  53. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 以上で両参考人に対する質疑は終了いたしました。  佐野参考人及び鷲尾参考人には、お忙しい中、本調査会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。  本日お述べいただきました貴重な御意見は今後の調査参考にさせていただきます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十分散会