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参考人(
鷲尾悦也君) このような機会を与えていただき、私どもの考え方を
先生方にお聞きいただくチャンスをいただいたことは光栄であり、また大変貴重な時間であるというふうにお礼を申し上げたいと思います。
お
手元に「
労働政策の
課題と
基本的方向」という
レジュメと、それから「
雇用労働問題の
現状と
労働政策の
課題」という資料は届いておりますか。――一枚だけですか、失礼いたしました。
レジュメを出してございますが、それに従いながら御
説明を申し上げたいと思います。
まず、この本題に入る前に、現在の
雇用労働問題の
現状について少し申し上げたいと思います。
これは
先生方皆さん御案内のとおりでございますので簡単に申し上げたいと思いますが、御
承知のとおり、現在
日本の
失業率は
失業統計開始以来最も高い
失業率、
失業者になっていることは御
承知のとおりでございます。ずっと一月まで三・四%、二百三十万人という
失業の状況でございましたが、これがようやく三・三ということで、わずかに改善をされたわけでありますが、まだまだこのような危機は去っていない、このように考えております。特に、この
失業者数の増大は、長期の不況の中で
製造業の
就業者、
雇用者が九三年以降ずっと減少し続けている。それから、これまで
新規雇用の担い手でございました卸・小売、
飲食店の
雇用増が九四年以降、ふえてはいるんですが半減しているということが
影響しているわけでございます。
この高い
失業率、
失業状態を生み出した要因といたしましては、
一つは四年続きのバブル崩壊後の長期不況というのはこれは当然のことでございます。
それからもう
一つは、大変これは難しい問題でございますけれども、
佐野先生のお話も今ございましたように、メガコンペティションの時代に入りまして、
経済のグローバル化、円高の進展などによって国際間の
競争が激しくなり、その
意味で海外移転を含めた
企業、
産業の空洞化が始まつているということであります。
三点目には、
経済の
サービス化や高付加価値々などの
産業構造の
変化の進展があるんですが、これへの移行が必ずしも、
佐野先生の第五次
産業という今のお話、大変夢のある話でありますが、そこに転換がまだ十分果たされていない。
価値観の転換も、そういうふうに言われているわけでありますが、
産業レベルまでには移っていないというところがございまして、これらが複合されて高中業率状態が続いている。
長期不況については何とか早期に解決していただきたいと思いますし、ことしの後半以降、
経済政策のよろしきを得れば我々としても期待をしているところでございますから、循環的な不況を解決する
方法はそれなりに解決のめどはあると思いますが、グローバル化による空洞化の問題とそれから構造転換の問題はさまざまな難題を抱えておりまして、そう簡単にはいかないだろうということを懸念しているわけであります。
一方、今後の
雇用や
労働を取り巻く
環境条件として、
労働力の供給面では、人口の少子・
高齢化が進み、女性の
社会進出、
高学歴化が進むということは、これも条件として考えておかなきゃいけない。
また、需要の側では、今お話にもありましたように、新しい技術、新しい
産業に対応する高度技術者や、あるいは
産業の
サービス化、福祉化を担う
労働者群というものがまだまだ形成されていない、こういうことがございます。新しい
産業というふうには言っておりますけれども、それに対する需要が必ずしも出てこないと同時に、供給の側から見ましても十分準備されていないという問題があるということであります。
また、
労働職場の側面では、
労働時間の短縮や安全、健康面の問題の懸念がこれから出てくるだろう、こういうような問題があるだろうというふうに私どもは
現状分析をしているところでございます。
そこで、
レジュメに戻っていただきますが、これは一から五までいろいろな
課題についてかなり網羅的に提起をしてございます。
一番目の「
雇用の安定と創出」ということで、五点提起をしてございます。
まず第一点目の、
雇用の維持支援制度・施策の拡充ということがございます。これは現在、確かにさまざまな条件で
企業内
失業も非常に多いと言われておりますが、我々の立場からいうと、何とかこれをソフトに現在の
雇用をできる限り維持していくというような支援策は当面の対策として、短期的対策として絶対必要だと、こういうふうに思っております。もちろん大きな
経済の流れ、
産業構造転換の流れに逆ざおを差して、この流れをとどめるために既存の
競争力のない
産業を維持してしまうというような政策になってしまえばこれは問題でありますけれども、しかしながら短期的な条件としては
雇用が安定しているというこうした
社会の安定的な要素、安定化の要素というものも重要でございますから、短期的な方策も必要下あろうというふうに思います。
そのためには、
労働行政の役割も依然としてそう低くなっているわけではない。別に私ども、しょっちゅうつき合っているから
労働省をバックアップするわけでは、ごまをするわけじゃありませんが、
労働行政の役割もやっぱり相変わらず必要だというふうに思っています。
それから、三点目の
雇用の創出は、
佐野先生の第五次
産業などを含めて、いかにして
雇用をつぐるような
産業構造をつくり上げるかということであります。
そして、先ほど
労働力の需給の問題で申し上げましたように、そのためには能力開発や
労働移動支援システムの拡充ということが必要であります。
五点目の六十歳代
雇用政策の検討というのも大事なことでございます。
ここで、全体的に言えることはどういうことかというと、少し
レジュメから離れますけれども、私はあらゆる局面においてもそれぞれの各国
経済、
日本経済も当然でございますけれども、基本的な
経済の進展というのは技術革新と
産業構造転換が順調にかつ
社会的な摩擦なしに進むという国が、
経済的には安定的に発展する国のシステムだというふうに思っています。
戦後五十年を考えてみましても、私どもは、今日のようなドラスチックな
変化ではありませんけれども、この五十年間の間に非常に大きな
産業構造転換を果たしているわけであります。第二次世界大戦直後のときは、まず傾斜
生産方式で石炭や鉄鋼を
中心にして政策的な誘導をもって
産業をつくり上げました。その
産業を、基盤をつくった上で徐々に、先ほど
佐野先生が御指摘になったような
日本の得意とする電機・電子
産業、自動車
産業というふうに転換をしていく、そして
サービス経済化が進んでいくということで、これはまだ過程でございますけれども、
サービス産業、第三次
産業に移っていくということで、例えば昭和二十年と現在の就業構造を比較してみれば明々白々でございまして、大きな
労働力の移動があったわけでございます。
私は時々思うのでありますけれども、この十年ぐらい前から、例えば新幹線ができるに従って東北地方から夜行列車が廃止になりました。私、鉄道が好きなものですからそういうことに注目しているんですが、例えば数年前に急行「八甲田」というのがなくなりました。どういうことかといろと、これは就職列車だったんですね。
皆さん方、若い先生もおられますから御
承知でない方もおられるでしょうけれども、余りどなたがどうと言ってはまずいのですけれども、要すろに春の新聞の
社会面を大きく飾る年中行事として、詰め襟を着た中学生がお父さん、お母さんに送られて、具体的に言っていいかどうかわかりませんけれども、東北の青森、秋田、山形、岩手というところから手を振って集団就職をした。これはどういうことかというと、明らかに第一次
産業である農業から第二次
産業である
製造業への
労働力移動だったわけです。
そして、その
労働力移動の担い手であります
産業は、
日本の
経済政策なり
産業政策でもってどんどん
雇用創国政策を結果的には実現をしていった。そして、オン・ザ・ジョブ・トレーニングを
中心とした
企業内
教育でもって、非常に素朴で素直な
労働者の予備軍を、
自分たちの
企業に適合した技能
労働者として、熟練
労働者として育て上げた。これは大変大きな
産業構造転換と
雇用創国政策と、そして熟練
労働力の創出ということになったわけでございまして、このことが戦後五十年の間に緩やかになされている分には摩擦は起こらないわけです。
これも話が余談に過ぎてせっかく
調査会というまじめなところで冗談半分で大変恐縮なんですが、例えば私たちの世代で、父親が農家で、私は農家の次男坊で、そして学校に出してもらって東京なり大阪に集団就職で出させてもらって、一生懸命
製造業で働いた。
自分はそんな高い学歴じゃないんで、子供ぐらいはせめて大学を出そうといって、大学を出して新聞記者になったと。これは三代にわたる
産業構造転換と技能転換、
雇用転換なんですね。これは同一人物ではありませんから全然問題ない。
ところが、今や非常に大きな問題になっているのは、
産業構造の転換が非常にスピードが速くなってきた。これは国際的なメガコンペティションという問題もあるでしょうし、
日本が非常に
経済が成熟化をし技術のレベルが高くなったことによって、技術の展開というのは非常に速くなり高度化してきているということになりますと、個人の一人の人生の中で
雇用転換を迫られるということをどうするのかということが非常に大きな問題だというふうに思うわけであります。
この点は、これまでは
産業政策という立場で、
産業を興せば
労働力のミスマッチがなく、かつそのことによって成長したコストを配分しながら技能の習熟に
企業も回すことができた。しかし、
企業自体もそういう余裕がなくなってきたということになりますと、これはここに書いてありますように「ミスマッチ対策」というふうに
一言で片づけられないさまざまな諸条件を整えなきゃいけないというのが大きな
課題だと思います。
ですから私は、
雇用労働問題と現在の
産業構造の問題を考えますと、
一つは技能訓練、能力開発をどうするか。同一人物が同一世代でもって転換する際にその対応策、本人が非常にモラルが高くインセンティブを持って新しいところにチャレンジする能力をいかに持っていただくかということが
雇用労働政策の一番基本ではないかというふうに考えております。
その
意味で今求められているのは、こうした大きな
方向性をつかまえた上で、
佐野先生が今御指摘になったような
産業構造の転換に向けてどう個々の
労働者のミスマッチを防ぐかというのが
雇用労働政策の一番基本に置かれなければいけない。もちろん、その間にはどうしてもそれに適合できない、ミスマッチがそのまま個人に残ってしまう方々にとっては、救済的な手段として短期的な
失業対策、
雇用対策が必要だということも間偉いないことであります。
二番目の問題は、これも非常に大きな問題でありますけれども、「
産業・
雇用の空洞化防止施策の推進」でございます。先ほど申し上げたことは国内対策でございまして、しかしこれも外国との
競争の中で
産業が外へ出ていってしまうということについてはそれほど大きな手だてというふうにはならないわけであります。もちろん先ほど申し上げましたミスマッチ対策をすることによって、新しい
産業における熟練
労働者群を育成することによってコスト
競争力は当然高まりますから、
国際競争力も、現在の
国際競争力を彼我の力
関係だけで判断するというのは大きな間違いでありますけれども、しかしなから
産業の空洞化のもともとの原因は中進国、低開発国の追い上げでありまして、安い
労働コストをベースにした
競争でありますから、これはいかんとも自由
競争の範囲を超えている部分がございます。したがって、この点については相当慎重かつ大胆な対策が必要なんではないかと思います。
まず、具体的な対策としては、
雇用の空洞化についてはいろいろ言われているんですけれども、実はよくわからない部分がございます。実態
調査をきっちりとして対策を、なぜ海外に進出するかという実態についても必ずしも十分な把握はなされていないというのが現在の実情でございまして、この点については私どもの手ではちょっと手に余る部分があるんですが、一応例えば通産省が海外事業活動動向
調査というものを平成八年三月にやっておりますが、この内容を見ましても、
製造業現地法人の海外事業活動が輸出入の
変化を通じて国内
生産に与える
影響を推計しておるわけでありますけれども、従来は海外へ進出することによって国内の
生産や
雇用へのプラス効果というものが少しずつ減るぐらい。海外進出もプラス効果はないわけじゃありません。国内
産業や国内
雇用については、お互いの国際的な分業のもとで国内
産業にプラスを与えるという部分があるわけであります。
これは特に業種別では、化学や一般機械などの進出はいわば分業
関係を持って、
日本の国内の川下
産業との相対
関係からいいますと、材料を半製品を
輸入することによって国内
産業が活発化するというようなプラス効果もあるわけでありますけれども、先ほど
佐野先生もおっしゃいましたように、繊維は完全に製品
輸入が非常に増大していますから、これは全くマイナスになってしまう。電気機械についてはマイナス幅が拡大されている。輸送機械も、自動車でございますが、これも従来はプラスだったんですけれども、最近は製品車の
輸入がありまして大幅なマイナスになってきているということでございまして、これらの海外に進出する原因はさまざまでございますので、この要因をそれぞれの
産業別に子細に点検をしてきめ細かい対策を立てるということが空洞化防止対策には非常に重要だというふうに思います。
それからもう
一つ大変な問題は、これは技術俵さんがよく言われることなんですが、基礎技術継承というものが問題なんです。すべて全部根っこから持っていかれてしまいますと、
日本の
産業技術を支えている基盤が全部海外に行ってしまうということで本当にいいのかどうか。これは、保護政策と言ってはいけませんが、ある種の保護政策を国レベルで行わないと、基礎技術まで全部移転してしまうということが果たしていいのかどうかということは、長期的な技術対策からいうと大きな問題でありますから、これは基本的に、WTOだとかなんとかというといろいろうるさいことはあるわけですけれども、しかしこの問題についてはしっかりと国レベルの政策をつけるということが基礎技術の温存という
意味で大変重要な問題になっています。
これは
先生方の地元でも、いろんな中小
企業を
中心とした
産業がそうした基礎技術の継承者がいなくなってつぶれていってしまうという事実をごらんになって、現実の問題として大変深刻だというのは私ども
先生方からもお伺いするわけでありますけれども、私どもの現場の組合員からもそういう声が出てきているということは非常に重要な問題だというふうに思いますので、これはぜひ政策的な補完措置が必要なんじゃないかというふうに思います。
もちろん、三点目の国際化における国内
産業政策の策定、これは従来型のMITIの行政指導という範囲を超えた大きな国民的な合意による国内
産業政策を策定するということが必要なんじゃないかというふうに思います。
それから三番目は、これはごろっと変わる話なんですけれども、最近ドイツでワークシェァリ・グというような話が非常に強く出ております。私は、ドイツ型のワーク
シェアリング政策が
日本にそのまま導入できるかどうかというのはかなり疑問を持っているわけであります。
というのは、先ほど
佐野先生が冒頭に表でお示しになったさまざまな国内の処遇政策といいますか、年功
賃金であるとかあるいは終身
雇用的な
雇用形態であるとかということが完璧になくなれば話はまた別でありますし、これは連合が悪いといえば悪いのかもわかりませんけれども、
日本の
賃金形態が時間当たり
賃金という形ではございませんので、その
意味では、
労働者の側からワーク
シェアリングということになりますと、直ちに
賃金が減少につながるようなワーク
シェアリングというのはなかなか
労働組合側の合意形成が図れないという非常に欠陥を持っておりまして、
労働時間を短くすることによってワーク
シェアリングで
雇用がふえるというのは簡単にいかないというのが難点でございます。これはこれからも私ども検討していかなくちゃいけないと思うんですが。
しかし、大きな流れとしては、
労働時間を短縮することによって結果的には、
佐野先生が先にやっていただいて大変助かるんですが、
佐野先生がおっしゃる第五次
産業を育成することにもつながるわけでありますから、これは
労働時間短縮は大きな流れだというふうに考える。
そしてこれは、
労働時間短縮をすることによって第四次
産業、第五次
産業という
雇用を創出することに一方でつながります。そして同時に、
労働時間短縮することによってワーク
シェアリング、
製造業、第二次
産業、第三次
産業のワーク
シェアリングもできるということでありますから、これは
労働時間短縮はかなり喫緊の
課題だというふうに思わざるを得ない。
しかしながら、残念ながらこの問題については、現在の
経済環境からいうと
労働組合の方も、ことしの春闘がございましたけれども、ぎりぎり詰められて時短か賃上げかというと、大概賃上げとこうおっしゃるわけでありまして、私は大胆に時短だと言っているんですが、こんなとこで愚痴を申し上げてもしようがないんですが、組合がなかなか
承知していただけません。したがって、
雇用か賃上げかというのは今非常にぎりぎり詰められているものですから、そちらの方に頭が行って、なかなか
労働時間短縮の方に向いていないというのが実態でございますが、これは着実に進めていかなきゃいけない。
しかし、この
労働時間短縮は、経営側によく私は申し上げるんですけれども、早く済ました方がいいんじゃないかと。これ、多々ますます弁ずというのは、
賃金の場合はかなり多々ますます弁ずでありますけれども、
労働時間は、どんどん短くして特殊な
産業を除いては年間百時間しか働かないであとは遊んでいていいという話にならないわけですから、ある種の人間の生き方、
価値観の問題でもあるんですけれども、やはり
労働というものは人間の創造力を伸ばすという部分もあるわけでありまして、その
意味では、働きがいが生きがいにつながるという
価値観も当然まだ残っているし残るだろうと、こういうふうに思いますので、その
意味からいうと総
労働時間千八百時間というのがいい目標だなということでございます。
そうなりますと、ただいま問題になっております来年の三月末、四月一日以降週四十時間の暫定措置が切れるわけでありますけれども、これはいろいろ対立がありますが、私どもとしては切に週四十時間
労働は来年の四月から完全実施をしていただきたいと、何か陳情していて大変恐縮でございますが、そういうふうに思うわけでございます。
もちろん、
労働時間短縮をすることによって新しい人間の生き方というのができる。ですから、
労働時間短縮はいわば自由時間の拡大であって、自由時間の拡大は新しい
価値観を創造する、そして新しい
社会をつくり上げて
雇用を創造できるということがキーポイントでございまして、私どもは、この
労働時間短縮についても大きく議論を、国民的な議論をしていくということが大切なんじゃないかというふうに思うわけでございます。
次に、この三項はいろんなことを一緒にしてございますが、②、③、④は違う話でございます。現在の
労働政策の私どもにとって一番大きな問題は、さまざまな
労働諸条件の格差の問題でございます。
日本の
労働条件決定のシステムというは、事態にもよるんでしょうけれども、事業規模における
労働諸条件の格差が大変大きいという、これは皆さん方御
承知のとおりでございます。ごれは、これまで
日本の
産業構造というかシステム自体が、従来型の二重構造ということではありませんけれども、大手、中小の元請、下請
関係で成立しているということでございます。したがって、さまざまな形で、例えば下請の条件についての改善等々の
産業政策上の提言も私どもは大分しておりますし、いろいろなことで御検討いただいているわけでありますけれども、まだまだ
生産構造、取引
関係が必ずしも私どもが望むような
方向になっていない。したがって、事業規模における
労働条件が非常に格差が大きいということでございます。
例えば、いろいろな統計があるわけでありますけれども、私どもが直近で把握しております総理府の統計などでいきますと、五千人以上の
企業の年間総
賃金とそれから十人未満の年間の
賃金を比べますと、十対六でございます。十対六でございまして、
日本の最低
賃金のレベルで月に就労二十五日間ぐらいしたとしても月の収入が二十万程度。最低
賃金、各県によって違いますが、最低
賃金レベルで二十五日間働いて二十万強ということでありますから、三百万に満たないという
労働者が幾らでもいるわけですね。これは、現在韓国の平均
賃金が月収で二十三万にまでなっておりますから、その
意味からいうと大変低いレベルであるというふうに言わざるを得ないわけです。
こうした条件を放置しておきますと二重構造がどんどん拡大し、先ほど言いました
産業構造の転換によるいわば技能習熟というものに対しても大きな
影響があるということでございまして、これは何らかの
社会的な枠組みでもっていわば同一
労働同一
賃金というのはしっかりと守るようなシステムをつくらなきゃいけない、このように考えております。これは、もう時間がございませんけれども後ほど申し上げますが、いわば労使協議と合意形成の重要性という
意味合いからいっても大事なことであります。
高齢者・障害者の
雇用対策の強化は、
先生方御案内のとおりでございますので、当然のことということで
説明は省略させていただきます。
また、四番目の「健康・安全対策の強化」でありますが、最近は中小
企業を
中心として
労働災害も多発している状況にございまして、この点についても強い関心を持っているところを申し上げておきたいと思います。
そこで、最後の五番目でございますが、「労使協議と
労働基本権の確立」という問題でございます。
先ほど
佐野先生のお話にもございましたように、
日本型のシステムはすべてなくなるということではございませんけれども、三種の神器と言われました長期
雇用型の
雇用形態と年功
賃金は明らかに少しずつ崩れ去っていくだろうということは私ども認識しているわけです。
これは何かというと、働く
労働側の多様化が進みますと当然
労働条件は多様化していくということはやむを得ないことであります。しかしながら、多様化をすればするほど同じ
労働についての価値はきっちりと評価をするということにならなければいけないということであります。それともう
一つは、
雇用形態が多様化することによって熟練
労働と未熟練
労働というのは明確に分かれるということの可能性があるわけであります。これは、例えばパート
労働だとか派遣
労働が増加していくということになりますし、このパート
労働や派遣
労働の就業形態や
雇用形態というのは大きく違ってくる、こういうふうに考えております。
そういうことからいいますと、就労が多様化しますと、今までのような
企業別の単位で労使交渉をして労使合意をしさえすればすべてが片づくということじゃなくて、多様な
労働力、例えば年俸制度をとるような
企業がふえてまいりましたが、年俸制度をとるところについてはどのような合意形成のシステムをつくれるかということが非常に重要でございまして、これは、外部
労働市場が形成されると外部
労働市場における労使の合意というのはどこで求めるのか、こういうことが非常に重要なことになってくるんじゃないかと思っております。
この点については非常に難しい問題でございますけれども、どのような形で今までの
企業別の交渉をもっと
産業別や
社会的に決めていくかという仕組みというものが大事だと思います。先ほど申しました最低
賃金の問題や、あるいは
産業別交渉をどのようにつくっていくかということが大変重要なポイントになっています。
今メモが回ってきまして、さっきの最低
賃金は、日当たり四千五百円から五千円ですから、二十万円なんか行かないと。十二万五千円だそうで、半分でございます。ちょっと御訂正を願いたいと思います。
それからもう
一つは、倒産
労働債権対策を改善するということが大事であります。
これは、今持ち株会社の問題でも私ども議論しているんですが、現在の
労働債権の確保の状況は、非常に
労働債権の優先順位が低いわけでございます。持ち株会社のときにも、ダイナミックに
企業を解散しあるいは統合するということが進められるということでありまして、私どもは、
雇用が確保されるということを条件にして
産業構造の転換や
労働力の移動はある程度やむを得ないというふうに考えます。
しかし、その際に
労働債権をちゃんと確保できていないということは大変重要な問題意識を持っておりまして、この
労働債権、
賃金を初めとする
労働債権の優先順位を商法上も上げるという取り組みを進めておりまして、このこと自体も、
労働力の移動を比較的容易にして、かつ
産業構造転換に伴うミスマッチを防ぐためには大変重要なポイントだと。全部倒産して
労働債権を確保しなきゃいけないような形での
労働力の移動は本当は好ましくないんですけれども、やむを得ない形でそういうことが起きた場合には安全弁をちゃんとつけておくということが重要なポイントではないかと、このように考えておりまして、この取り組みの強化をしているということを御紹介申し上げます。
たくさんのことを早口でしゃべって大変恐縮でございますけれども、言いたいことがいっぱいあるものですから、大変お聞き苦しかったと思います。
以上、私の考え方を申し上げさせていただきました。ありがとうございました。