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1996-02-28 第136回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月二十八日(水曜日)    午後一時開会    委員異動  二月二十八日     辞任       補欠選任      聴濤  弘君     阿部 幸代君     —————————————   出席者は左のとおり。     会長          鶴岡  洋君     理 事                 太田 豊秋君                 清水嘉与子君                 牛嶋  正君                 片上 公人君                 上山 和人君     委 員                 石井 道子君                 大島 慶久君                 金田 勝年君                 鈴木 省吾君                 中島 眞人君                 橋本 聖子君                 平田 耕一君                 三浦 一水君                 魚住裕一郎君                 小林  元君                 木暮 山人君                 林 久美子君                日下部禧代子君                 千葉 景子君                 三重野栄子君                 阿部 幸代君                 笹野 貞子君                 水野 誠一君   政府委員       経済企画庁調整       局審議官      河出 英治君       経済企画庁国民       生活局長      坂本 導聰君       経済企画庁物価       局長        大来 洋一君       経済企画庁総合       計画局長      土志田征一君       経済企画庁調査       局長        澤田五十六君       科学技術庁長官       官房審議官     青江  茂君       科学技術庁科学       技術政策局長    落合 俊雄君       大蔵大臣官房審       議官        永田 俊一君       大蔵大臣官房参       事官       兼内閣審議官    河上 信彦君       大蔵省主計局次       長         林  正和君       文部大臣官房総       務審議官      辻村 哲夫君       文部省生涯学習       局長        草原 克豪君       文部省初等中等       教育局長      遠山 耕平君       文部省教育助成       局長        小林 敬治君       文部省高等教育       局長        雨宮  忠君       文部省学術国際       局長        林田 英樹君       文化庁次長     小野 元之君       通商産業大臣官       房審議官      横川  浩君       中小企業庁計画       部長        藤島 安之君       労働大臣官房長   渡邊  信君       労働省労働基準       局長        松原 亘子君       労働省婦人局長   太田 芳枝君       労働省職業安定       局長        征矢 紀臣君       労働省職業安定       局高齢障害者       対策部長      坂本 哲也君       労働省職業能力       開発局長      伊藤 庄平君    事務局側        第二特別調査室        長        林 五津夫君    説明員        公正取引委員会        事務局経済部調        整課長      楢崎 憲安君        科学技術庁科学        技術振興局企画        課普及奨励室長  高木 茂樹君        文部大臣官房人        事課長      伊勢呂裕史君        自治省税務局企        画課長      細野 光弘君        自治省税務学府        県税課長     石田 直裕君     —————————————   本日の会議に付した案件国民生活経済に関する調査  (二十一世紀経済社会に対応するための経済  運営在り方に関する件)     —————————————
  2. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ただいまから国民生活経済に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、聴濤弘君が委員を辞任され、その補欠として阿部幸代君が選任されました。     —————————————
  3. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 国民生活経済に関する調査を議題とし、二十一世紀経済社会に対応するための経済運営在り方に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 平田耕一

    平田耕一君 将来をにらんだ新しい経済システムをつくる必要があるというふうに私は思っておりまして質問を準備いたしましたが、多少リアルな問題から質問をさせていただきたいと思います。ちょっと順番が変わるかもしれませんけれども、お願いいたします。  現在の資本主義体制下、財の私有とか市場原理等前提とした現在のマクロ経済政策の歴史的な一つの現象として、独禁法公正取引委員会なるものがあると思っています。不当な取引を監視するという、将来必ず重要なポイントになる制度法律であると思います。後ほどの質問も一貫して、私は、大量生産大量販売に挑戦をして、小さいといえども企業家精神にあふれる人々が活力を持って仕事ができる、あるいは稼げるという経済社会をつくりたいという願望を持っておりますので、そういう前提でお聞きを賜りたいというふうに思います。  まず、公取の問題でありますが、例えば昨年の十二月十四日付、行政改革委員会の「規制緩和推進に関する意見 光り輝く国をめざして」というその六ページに「民間不信前提を払拭し、市場原理の導入と民間自己責任原則の確立が急務であると考える。」、そして最後の段ですが、「また、市場における競争ルール、例えば、独禁法の遵守を徹底させた厳正な仕組みを確立することも必要である。」というふうに記載がございます。この部分については私も同感でございますので、一例にのっとりまして質問をさせていただきたいと思っています。  今、いわゆる住専の問題が大きな国民の注目の的になっているわけでありますけれども独禁法の十三条で、「会社役員又は従業員は、国内会社役員地位を兼ねることにより一定取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該役員地位を兼ねてはならない。」、その三項に、「その役員地位を兼ねることとなった日から三十日以内に、その旨を公正取引委員会届け出なければならない。」というふうにありますが、これに基づいて母体行と住専役員兼務について届け出があったかないか、公取の方、お答えをいただきたいというふうに思います。
  5. 楢崎憲安

    説明員楢崎憲安君) 御説明いたします。  今、先生指摘のとおり、独占禁止法では競争会社間の役員兼任というものにつきましては一定範囲届け出を義務づけているところでございます。これは、先生も御指摘なさいましたように、競争会社間の役員兼任それ自体を禁止しているわけじゃございませんですけれども、そういった役員兼任を通じて市場における競争制限されることとなるような場合これを規制する、そういう監視をするために届け出制度が設けられているものでございますけれども、今現在のところ、先生指摘のいわゆる母体行と住専との間の役員兼任に関する届け出は出ておりません。
  6. 平田耕一

    平田耕一君 大蔵省の方も来ていただいておりますのでお尋ねをしますが、現実母体行と住専会社役員兼務があるのかないのか、お答えをいただきたいというふうに思います。
  7. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) お答え申し上げます。  ただいまの御質問でございますが、住専でございますけれども、現在も住専非常勤取締役としてついておるという者がおることは事実でございます。  ただ、一つ説明申し上げますが、銀行法規定にございまして、第七条でございますが、「取締役の兼職の制限」というのがございます。ここでは、「銀行常務に従事する取締役は、大蔵大臣の認可を受けた場合を除くほか、他の会社常務に従事してはならない。」ということで、今御説明しましたように、非常勤取締役として母体行から住専会社でその非常勤取締役をやっておる者はございますけれども常勤ということではございません。
  8. 平田耕一

    平田耕一君 簡単にお答えをいただきたいと思いますが、大蔵省見解としてお聞きをしましたが、今お答えになられた常勤非常勤役員という言葉は法的に規定がございますか、ございませんか。
  9. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) 常勤という言葉ではございませんが、銀行法規定は、今私お答え申し上げましたように「銀行常務に」ということでございますので、まさにその常勤のことを意味しているということでございます。
  10. 平田耕一

    平田耕一君 それでは公正取引委員会お尋ねをいたしますが、公正取引委員会独禁法十三条は、役員ということの規定について常勤非常勤区別をいたしておりますか、いたしておりませんか。
  11. 楢崎憲安

    説明員楢崎憲安君) 役員兼任という形になっております。
  12. 平田耕一

    平田耕一君 届け出公取にないということと、それから要するに常勤非常勤区別がないという独禁法法律ということと照らし合わせて、公取住専あるいは母体行が兼務を届けていないということにつきまして、大蔵省見解お尋ねしたいと思います。
  13. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) お答え申し上げます。私ども銀行法規定と実際の状況について御報告申し上げました。ただいま公取の方からも御説明をされておるのをお聞きいたしました。先生の御指摘を踏まえまして、私ども具体的にもう少し調べさせていただきたいというふうに思います。
  14. 平田耕一

    平田耕一君 銀行法は、私は自分の質問範囲では関係ないと思っておりますが、具体的に何をお調べいただくのか、お教えをいただきたいと思います。
  15. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) 公取ともちょっと御相談の上、先ほどの独禁法十三条との関係本件がその違反に当たるのかどうかということについて、私どもも先ほど御指摘をいただきましたものですから、ちょっと御相談の上、その辺を調べさせていただきたいというふうに思っております。
  16. 平田耕一

    平田耕一君 大変済みませんが、私はまだ本件という解釈をしておりませんが、本件とは何という、どの件でございましょうか。
  17. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) 本件と申し上げましたのは、先ほど先生の御指摘いただきました母体行から住専会社取締役として出ているということにつきまして、私どもは今申し上げましたように、銀行法規定に照らしてそちらは問題ないと思っておりますけれども独禁法の十三条との関係で問題ありや否やということについてでございます。
  18. 平田耕一

    平田耕一君 十三条のどの部分でございましょうか。
  19. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) ただいま独禁法の正確な条文を私今ここに持ち合わせてございません。先ほどのお話を承った限りにおきまして、役員兼任という、ただ役員ということだそうでございますので、その点と常勤非常勤という私ども銀行法解釈の問題とのずれにつきまして御相談をし、調査させていただきたいというふうに思います。
  20. 平田耕一

    平田耕一君 十三条の条文ですけれども後段届け出規定されておるわけでありまして、その前段は「競争を実質的に制限することとなる場合には、当該役員地位を兼ねてはならない。」というふうに書いてあるわけであります。競争が実質的に制限されているかいないかということでありますが、それについては住専母体行というものが競争を実質的に制限している状態なのかそうでないのか、御見解があれば大蔵省に賜りたいというふうに思います。
  21. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) 広く母体行と住専という意味は別といたしまして、先ほど提起されました役員関係につきまして、それが今の独禁法の十三条の、おっしゃられました実質的に競争制限しているかしていないかという部分につきまして、御相談をして調査させていただきたいというふうに思います。
  22. 平田耕一

    平田耕一君 冒頭で申し上げましたように、私自身は本当に今の経済体制というのは非常に難しい局面に来ているというふうに思います。  それで、やっぱりいろんな形で弱者救済といいますか、あるいは違う観点国民みんなが理解を得られる経済体制、あるいはそういう制度というものが必要であると思っておりますので、そのように独禁法公正取引委員会も進化をしていってもらいたいというふうに思っています。そして、独禁法公正取引委員会なるものが、今の御答弁でこの場をおさめられるような御知識ではないと私は思っております。ですから、ぜひひとつ住専問題について、独禁法あるいは公正取引委員会という観点から、住専問題の比較的後の部分、すたわち個人住宅ローンでなくて、住宅ローンのときには確かに競合しておったわけだと、競争状態であったというふうに思いますけれども後段紹介融資ということが出てまいります。  紹介融資というのは、あなたのところはここへ融資したらどうだと、競争するべき二社が相談をして一社に貸し付けをするということであると思いますけれども、その紹介融資について、制限になるのかどうかということについては御見解を今お持ちでございましょうか。御見解も賜りたいというふうに思います。
  23. 楢崎憲安

    説明員楢崎憲安君) 御説明いたします。  先生指摘の事案は、恐らく独占禁止法上の観点からは優越的地位乱用に該当するかどうかという問題であろうかと思います。すなわち一般的に申しますと、これを金融会社というものについて当てはめて御説明いたしますと、金融機関融資先金融機関に対しまして融資物件紹介するというそのこと自体直ちに独禁法上問題となるわけではございませんですけれども当該金融機関融資先金融機関に対しまして優越的な地位にある場合に、そのような地位を利用して融資先金融機関に対しまして自己の指定する顧客への融資を強制し、それによって不当に不利益を与えるというふうな場合には、一般論として独禁法上の問題が生じてくるのではないかなというふうに考えております。
  24. 平田耕一

    平田耕一君 優越的地位乱用ということもあるのかもわかりませんが、私は紹介事項そのものがその公正な競争制限になるのではないかなというふうに思っておるんですが、いかがでしょうか。公取大蔵省の両方の御見解をお聞きしたいと思うんです。
  25. 楢崎憲安

    説明員楢崎憲安君) 紹介融資、御指摘行為につきまして私ども検討いたしますと、問題が生ずるとすれば、優越的地位乱用という不公正な取引方法の問題ではなかろうかなというふうに考えてございます。
  26. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) お答え申し上げます。  ただいま公正取引委員会さんの方からも御説明がありましたように、私ども、いわゆる紹介融資と言われておりますこれにつきましても、具体的に紹介融資が客観的に紹介融資として認識されたかどうかということにつきましては、昨年の調査におきまして調査いたしまして公表をさせていただいたところでございますが、それが今お話のありましたような優越的な地位を利用しかつ強制し、不当なという、これに該当するかどうかにつきましては、一つ一つ案件につきまして法的にチェックをしてみた上での結論が出されるべき問題だろうというふうに考えております。
  27. 平田耕一

    平田耕一君 その優越的地位乱用あるいは紹介自体という問題、ちょっと私も整理が頭の中でできないんですけれども。  ひとつ申し上げたいのは、一つはもし競争制限する事項であれば完全に手続違反である、独禁法に触れる、こういう手続上の大きな問題。もう一つ優越的地位云々よりも、それは別といたしまして、不動産会社に競合して融資をすべき同業者が話をして、一方からの迂回融資というんですか、言葉は別にしまして、そういうような形に紹介をして融資をするという行為自体競争制限するものではないかなというふうに思って、その問題についてはどういう御見解でございましょうか。公取の御意見をお聞きしたいと思います。
  28. 楢崎憲安

    説明員楢崎憲安君) 先生質問のことは、競争会社間で話し合ってある取り決めをするということがいわゆる独占禁止法カルテルに当たるのではないかという御質問ではないかなというふうに思いますけれども独占禁止法で禁止しているカルテルというものは、競争者間で何か取り決めをするということだけじゃなくて、それが市場全体における競争制限する。話し合って二社間では競争がある程度行われなくなるかもしれませんですけれども、それが市場全体における競争制限するというふうなことを禁止しているものでございます。
  29. 平田耕一

    平田耕一君 当時の状況からして、不動産会社融資をするという話が、その融資の話をもって市場とするならば、市場というのは本当に小さなものだろうというふうに思います。大きな金額の融資の話ですから、これは市場でないからというふうな話じゃなくて、二者あるいは三者というものが整っての融資の話ということは、その融資をお願いした者にとりましてはそれがすべての市場であるというふうに私は感じますし、実態はそうであるというふうに認識をいたしております。  そういった意味で、もし競争制限する事項があれば、もちろんその地位乱用というものも御検討いただかなければなりませんけれども、あの金融市場状況の中での競争制限する事項がどうなのかということをぜひともひとつ御検討をいただきたいというふうに思っています。  そして、私は後日また調査結果もお教えをいただきたいと思うし、私自身も一人の人間として国民として見ておるわけでありますけれども、それは住専問題の処理の方法がどうのこうのということではございません。経済を考えるに当たって、これから公正取引委員会独禁法なるものの重要性をかんがみたときに、問題があるのならば、もし問題がなくても役員は兼ねておられるわけでありますから、ぜひともひとつその点については声を大にしてアピールをしていただきたい、そういうふうに思ってこの質問をさせていただいたわけであります。どうぞひとつ、検討結果をお待ちいたしております。  そこで、全般の問題に入りたいと思いますが、私自身は今現状経済を考えて、公定歩合が本当に低い状況が続きましてもいまだに回復基調が弱いという現実がございます。やや回復してきたという表現もとられておるわけでありますけれども、かつてのことを考えますと、異常な低金利ということだろうというふうに思います。そしてまた、たび重なる補正予算でもって公共事業というものを執行しておるわけでありますけれども、その公共事業の要するに乗数効果というのもだんだん低くなってきておるというふうな現状におきまして、大ざっぱな話でありますけれども、いわゆる歴史的なケインズ経済学の終えんということも言われているわけでありますが、今の日本の国を考えた経済政策理論的な根拠とその将来の展望というのをお尋ねをしたいと思います。
  30. 河出英治

    政府委員河出英治君) 政府といたしましては、これまでも数次にわたる景気対策など財政政策あるいは金融政策等を通じまして、インフレなき持続的経済成長の実現に努めてきたところでございます。  公共投資あるいは金利政策効果でございますけれども、私ども経済研究所世界経済モデルによりますと、ただいま先生が御指摘いただきましたとおりに、公共投資波及効果を示す公共投資乗数は一年目一・三二、三年目では二・二二というふうになっておりまして、我が国経済構造変化によりまして高度成長期推計値に比べますと低下しておりますことは事実でございます。ただ、七〇年代以降ということで比べますと、それほど低下をしているというような状況ではないわけでございます。  また、公定歩合引き下げ等によりますところの低金利政策効果につきましては、金利水準低下は、企業、家計を問わず金利負担軽減等を通じまして経済全体にプラスの効果を与えているわけでございます。先ほどのモデルによりますと、公定歩合を一%ポイント引き下げますと国内生産を、一年目で〇・一九%でございますが、三年目では一・三一%増加させるというようにされているわけでございます。  以上申し上げましたように、財政金融政策経済政策の有効な手段であるということには変わりはないと存じるわけでございます。  ただ、現在、我が国経済は構造問題に直面をしているわけでございまして、こういった我が国経済を自由で活力あるものにしていくためには、これらに加えまして経済構造改革推進が不可欠であるわけでございます。昨年十二月に閣議決定されました経済計画におきましても、規制緩和等構造改革必要性につきまして示されているところでございます。  政府といたしましては、最近ようやく経済に緩やかながら再び回復の動きが見え始めている中で、早期に本格的な景気回復を実現していくために、中長期的な安定成長を打ち立てていくということが極めて重要であると考えているところでございます。このために、先ほど申し上げましたような施策を効果的に実施することによりまして、適切な経済運営に努めていきたいというふうに考えている次第でございます。
  31. 平田耕一

    平田耕一君 大変一生懸命やっていただいたと思うんですけれども、結局わからないわけであります。構造改革、構造問題、それからそれを解消するための規制緩和という言葉はおっしゃっていただくわけであります。  後段で申しますが、私は、規制というのは、法律あるいは政策そのものは実はすべて規制じゃないかな、その中では大部分弱者救済という意味があるんじゃないかなというふうにも思っておりまして、ぜひわかりやすい経済政策経済理論というものを早期につくり上げていただいて、そして先ほど申し上げた数字というのがびんぴんと反映するような理論をつくっていただきたいと思ってお尋ねをいたしたわけであります。  ちょっと戻りますけれども金融システムというのは非常に大きな意味を持っているんだろうなというふうに思うほど、住専問題で金融システムという言葉が出てまいります。将来の経済社会を展望したときにも、恐らくその金融システムというのはますます、いろんな信用がいろんなところに創造されて新しい価値を生み出すような状況になるんだろうというふうに思いますが、現在、いわゆる住専問題でおっしゃっていただく金融システム破綻をするということのその金融システムということを簡単に定義していただければありがたいと思いますが、大蔵省にお願いいたします。
  32. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) お答え申し上げます。  金融システムという言葉の定義につきましては、例えば法律的にとか、必ずしも一致した考え方が確立されているわけではございませんけれども金融は資金の供給あるいは決済サービスの提供といいました国民経済活動にとって重要な機能を果たしております。金融システムとは、こうした金融機能を提供するための銀行を中核にいたしました仕組みと私どもとしては理解しております。
  33. 平田耕一

    平田耕一君 これをなぜお尋ねをしたかといいますと、私の解釈でありますが、新聞紙上金融システム、あるいは私もある委員会質問いたしました。当時の橋本通産大臣お答えになりました。住専問題については金融システム破綻をしないようにというふうにおっしゃいました。私自身は、この金融システムという言葉の中にぜひともひとつ国民の懐というものを入れていただきたいというふうに思って質問をした次第であります。そこまで包括的に考えて、本当に公平な経済社会、その中の国民も本当にわかりやすい、利を得られる金融システムというものを目指すために、どうぞひとつこの言葉の中にお含みをいただいてお考えいただきたいというふうに思います。  特に、ちょっと余分になるかもしれませんけれども、おっしゃった銀行というものは、私たちは一概に決めつけていないだろうか、銀行機能というものを。ここで、これから本当に新しい経済社会をつくるに当たって、銀行というものの機能をもう一度考えた方がいいんじゃないか。  銀行というのは、私も随分お金を借りたわけでありますけれども、今も借りているわけです、会社も借りているわけであります。銀行というのは、本当に必要なところには貸してくれないなという実感を当然ながら持っています。ですから、どこでも借りられるところにはどんどん貸してもらえるけれども、なかなか借りにくいところには借りられない。本当に仕事をしたい、前向きに取り組みたい、企業を起こしたいという人が資産の裏づけがない場合にはなかなか貸してもらえないというのが銀行になっているわけであります。  その辺もぜひお考えをいただいて、根本から新しいシステムを構築するようなそういうことを含めた金融システム、そして金融システム破綻をすると言う場合には、本当に国民も利益を得にくくなるという状況でもって破綻という言葉を使っていただくようにお願いをいたしたいというふうに思います。  次に移りますけれども、大企業と中小企業の格差の問題について質問いたします。現在、中小企業は、大企業との比較において、事業所数で九九%、従業者数で七〇%、出荷額で五一%という数字は御存じのとおりであります。大変大きなウエートを占めておるわけであります。しかるに、その総平均の数字をこれまたお尋ねをいたしますと、賃金格差は中小企業は大企業の六七・二%。国民の七割の就業者数がその残りの方々の六七・二%であるというのも大変な私は実は問題であると思いますが、これにつきましての見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  34. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 平田委員指摘のとおりに、中小企業は、事業所数は全国で見まして九九%を占めておりますし、従業員の数で見ますと七八%ということでございます。我が国経済社会において極めて重要な地位を占めておるという認識でありますし、これが国民生活を支え、雇用を支え、地域を支えている、こういうことで我が国経済の活力の源泉だと、こういうふうに考えておりますが、残念ながら御指摘のように賃金等の面でいろいろな格差があるということも事実でございます。  給与のお話がございましたけれども、平成四年の数字だと思いますが、大企業を一〇〇とした場合、六七・二ということになっています。平成六年はこれが六六・六と、こういうふうになっております。付加価値生産性で申しますと、平成六年では五三・九と、こういうことになっております。  こういう格差を是正するためにいろいろな政策を中小企業庁としては展開をしてきておるわけでございます。今後とも、こうした政策を充実して中小企業者の構造変化の中での自主的努力をいろんな角度で支援してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  35. 平田耕一

    平田耕一君 本当に格差はよく認識をいただいて努力をしていただいておるというふうに思います。  それにつきまして、先ほども申しましたが、「規制緩和推進に関する意見行政改革委員会」というものを読みますと、私自身は、本当にこれでそういう格差をなくしていこうという方向に日本が動いていくんやろかどうか、大変心配になります。四ページに、「蛙は、熱湯に放り込まれれば、鍋から飛び出すが、水から茹で上げられればそのまま昇天するということである。日本が茹で蛙にならないよう銘すべきと考える。」というくだりがあります。前文は「自己責任と競争の世界に積極的に参加する」ということでございます。規制緩和という考え方は、大量販売大量生産という単純な、しかし現時点では変えようのない、変動費は同じでありましても、単位当たりの固定費では絶対に勝てない、資本の集中は大企業への集約を必然とするのではないかなと私は考えております。  その七ページに、  競争促進は、とりもなおさず弱肉強食であり、中小零細企業は大企業によって淘汰されるという議論が行われることがある。しかし、淘汰されるのは市場競争に負けた効率の悪い企業であって、そのことは中小企業でも大企業でも同じである。 というふうにございます。同じでないと思います。  変動費を同じにする努力はこれはできるかもしれません。でも、やっぱり設備費なり人件費なりといった固定費を大規模生産と中規模、小規模年産と比較すればもうこれは明確に勝てない論理であります。さらには七ページに、「大企業にはできない斬新なアイデアで効率的に消費者が望れサービスを提供できる余地も大いにあると考え吏る。」とございます。事業所数で九九%、従業者数で七〇%を占める中小企業に対しまして、大企業にはできない余地でやっていきなさいという、こういう答申につきましてどのように御見解をお持ちなのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  36. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 規制緩和そのものにつきましては、中小企業者の大多数、約七割強の者がこうした規制緩和の方向を前向きに評価しているということではございます。  一般論といたしましても、規制緩和推進は中小企業においても各種の制約要因の除去を通じて事業活動のコストの低下あるいは事業機会の拡大や新規参入の促進等の効果が期待されまして、基本的に中小企業を初めとする企業活動の活性化、経済フロンティアの拡大に寄与するものと、こういうふうに考えております。しかし、個別具体的な分野においては中小企業に種々の影響を与えることも事実であります。  こうしたことから、中小企業庁としては規制緩和、中小企業に与える影響を見きわめつつ適切に対応してまいりたいと考えておりますけれども、この答申に書いてありますような中小企業の位置づけについては、私ども規制緩和の側面からいろいろなことを書いたというふうには理解いたしますが、中小企業我が国経済の位置づけにつきましては、委員の御指摘のように、現在の構造変革期において大変大きな役割が期待されているものと我々は思っております。持ち前の機動性、創意工夫を遺憾なく発揮して新たな事業分野に積極果敢に乗り出していくという中小企業の行動力が今まさに期待されているものというふうに考えております。ある意味で中小企業にとっては一つの大きなチャンスという側面もあると思います。  こうした中で私どもは、先ほども申し上げましたけれども、我が国全体の景気の回復後の足取りを確実なものとしていくという方向の中で、中小企業の経営基盤の安定強化を図りつつ、中長期的な視野に立ちまして技術開発、新規創造等の構造改革推進する中小企業のいろいろな環境変化への対応の適応力を向上させていく努力をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  37. 平田耕一

    平田耕一君 それもよくわかります。「保護や規制強化で問題を解決するのではなく、痛みを乗り越えて改革を進める代替手段を、より効率的に提供していくといった、前向きの姿勢で対処すべきである。」というふうにその文章にもございます。  しかし、私自身は、先ほど申し上げましたように、国民を支える経済システムの最大部分であります中小企業のことを思って、本当に真剣にその改革を、例えば生涯獲得賃金で七割を切るというような状況を変えようというふうに思うのならば、言葉の上で効率的に斬新なアイデアで消費者が望むサービスを考えなさいとか、あるいは今はチャンスですとか、そういった言葉では私は解決しないと思うんです。解決するならもうとっくにしています。  そしてまた、本当に中小企業の人間がそういうアイデアを考えて実践できるのならば、大企業のいろんなところにお勤めになる優秀な方々はとっくに考えられるわけであります。大企業すらいろんな分社化をして細かい業際のお仕事に進出をしたり、いろんなことやっているわけであります。それは私は、その代替手段というのが本当にお言葉どおりに生まれるのならば、本当にそれは具体的でなければいけないというふうに思っています。どうぞひとつその代替手段につきましては、ぜひ具体的な御指導を行政上もいただきたいというふうに思います。  それから、これは私も思いつきでありますけれども、一例でいえば、大企業と中小企業と同じものをつくって競争力を持っていくということにするんであれば、例えばその固定費というのは問題でありますけれども、固定費を引いたその利益に税をかけるというのでなくて、粗利の段階で固定費だけ除いた、あるいはその中の一部になるのかもわかりませんけれども、そういうものを除いた段階で何らかの課税をしていく。そして小規模、中規模ということを問わず、本当に立地や過疎地域やいろんな国全体を考えたバランスの中で需要のあるものについてはきめ細かい税制でもっていくというような、本当に全く今までとは違う考え方をしないとなかなか今申し上げたような格差というのはなくならないし、その格差で差をつけられておる方の大部分国民というのが引き続き同じような状況から脱し得ないんではないかなというふうに思っておりますので、ぜひともひとつ御議論をお願い申し上げたいというふうに思います。どうぞ、弱者を言葉で切り捨てないでいただきたいというふうに思います。  そこで、その中小企業対策の中で、中小企業庁ですか、そして労働省も、中小企業の人材の高度化ということについていろんな施策をしていただいているわけであります。私は、この間もちょっと質問ぽいお尋ねをいたしたわけでありますけれども、労働省の施策の中で言う人材の高度化ということについて、私は随分考えるところがございます。何を高度と言って何を低度と言うのかお教えをいただきたいというふうに思います。
  38. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) お答え申し上げます。  今お尋ねのございました中小企業などにおきます人材の高度化でございますが、これ私どもが現在推進しております人材高度化支援事業、これについてのお尋ねかと思います。  先生お尋ねお答えする前に、この人材高度化支援事業の仕組みについてちょっと御説明申し上げ、御理解を賜りたいと思いますが、この人材高度化支援事業は、現在産業構造等が変わる中、また国際的な経済環境も大きく変わる中で中小企業などが競争力を維持していくためにはどうしても高付加価値化あるいは新事業分野で展開してゆく、そういったことが必要でございまして、そういったことを実施していくためには、中小企業におきましても新しい技術を導入する、それに伴って新しい機械を導入する、あるいは生産システムを変えていく、いろんな対応が必要でございます。そういった段階でまず必要になりますのは、そこに勤めております労働者につきまして、その新しい技術、機械あるいは生産システムを担っていく、そういったことのための教育訓練が必要になるわけでございます。  私ども、全国に展開しております公共の職業能力開発施設を活用いたしまして、そこと中小企業の方々あるいはその団体の方々と共同でそういった新しい技術や機械、生産システムをこなしていくための教育訓練の体系、プログラムを共同で開発をまずいたします。そういう開発をいたしますと、その教育訓練のプログラムを公共の能力開発施設で最新の設備、機械を用いまして実施してあげる。そういったところへ事業主が労働者を派遣したり、訓練の体系を、プログラムを開発するためにいろいろ費用をかけたという場合には、そういう費用を国が助成をしていく、こういったことで展開をいたしていくわけでございます。  したがいまして、そこで出てまいります人材の高度化といいますのは、言いかえれば、その企業の労働者の職業能力を新しい技術、機械、生産システムに対応できるように高めていく、こういうことでございます。そういったことで、現在私ども、昨年の十一月の補正予算におきまして、そういった費用助成等も予算措置をいたしまして進めてきておりますが、既に二千二百弱の団体がこの人材高度化支援事業を実施すべく、現在私どもと教育訓練プログラムの開発あるいは既にコースを実施するという段階に至っておるところでございます。
  39. 平田耕一

    平田耕一君 その制度にのっとって二千二百数社の申し出があって事業が実施されておるということは、大変すばらしいことだというふうに思います。  でも、それは二千二百数社でありまして、実は私自身は、中小企業の人材というのが先ほどおっしゃられた新しいシステム、機械等に適応するとかそういう技術を覚える能力というのは、それほど手を差し伸べなくてもできる水準にあるというふうに思っています。  ですから、それはむしろ新しい機械を買うこととか、新しいシステムが何であるのかという、いろんな形でもっと違う形の支援もぜひお考えをいただきたいなというふうに思いますし、中小企業にそういう人材が不足しておるんだと、こういう一般的な概念でとらえてもいけないというお答えでしたからそれはうなずけるわけでありますけれども、これを質問しておる意味というのは、私自身お話をした、先ほどの中小企業と大企業のいろんな格差、これを埋めるに当たってどうするか。  要は仕事は人間でありまして、人間が仕事をしていく。確かに、その人間の優秀性あるいは高度か高度でないかなんという話は、何をもって基準にするかという非常に難しい話でありますけれども現状の基準をもってするならば、やっぱり東大を出てその中のエリートで大蔵省や各省庁に入られる皆さん、これは優秀なんだろうというふうに思います。それから、学校でいえば成績のいい順に企業へ入っていくんだと思います。志望の多い企業は、これは順番にそういう成績のいい人から入っていくと思うんです。  真剣にそういう格差というものを考えて、それぞれの企業あるいは地域やいろんな団体というものを考えて人材というものを、高度化すると言うとちょっとまたこれ言葉の議論があるのかもしれませんが、もう少しいろんな仕事を見つけていただく、うまくやっていただくようにするためには、人材の分散化というのは急務じゃないかなというふうに思っておりまして、できることなら、私は大蔵省で東大卒の方をお採りになるのなら二人か三人に毎年決めていただく、各省庁でも決めていただく。そして、人間というのは成績だけじゃないよということで議論になればそうなると思うんです。  そういう形で、いろんな大学からいろんな能力を持った人を大蔵省も通産省もバランスよく採用していただく。そして、ほかの企業にもいろんな地域にも、そういった今の基準でいう優秀だという人がそういうことであれば、ぜひともそれを分散をしていただくということが、真剣に考えたそういう人材面での政策じゃないかなというふうに思っております。  これは、なかなか本人の希望とかいろんな社会情勢ということがあって難しいと思いますけれども、いわゆる今の基準でいう優秀な人材が集中していくということについての御見解がおありでしたら、労働省から御見解をお聞きしたいというふうに思います。
  40. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 先生指摘のとおり、我が国の経済の基盤を相当数の中小企業が支えておるわけでございまして、そこが活力を持つことが我が国経済社会の発展にもつながっていくというふうに私ども考えております。したがいまして、中小企業の活動の基盤を支える人材が、優秀な人材が中小企業にも目を向け、そこで活躍していただくことは非常に大切なことだというふうに思っております。  ここのところ、経済情勢を反映いたしまして、新規学校卒業者の就職状況は大変厳しいものがございますが、私どもそういった中で、やはりこれから会社に就職するというよりも職を選ぶ、自分の能力を生かせる場を選ぶというような意識を持っていただくようにいろんな機会をとらえて啓発に努めているところでございます。これからも文部省とも連携をとりながら、学校生活の早い段階からそういった問題について考えていただくように、いろいろなセミナーの開催等も計画をいたしてまいりたいというふうに考えているところでございます。  また、中小企業の特にそういう生産部門、あるいは最近の非常に高度化した技術を担う部分に人材を供給できるように、私ども全国に職業能力の開発を専門にいたしました短期大学を展開いたしておりまして、そこで高校を出ましてから二年間、相当ハードな教育を行いまして実践的な技術者の育成も行っております。そういった方々も主としてそういった中小企業に目を向けて活躍の場を求めていただいているところでございまして、そういった施策もこれから積極的に展開をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  41. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 中小企業の人材の高度化のお話でございますので、中小企業庁の方からも一言お答えさせていただきたいと思います。  人材の高度化の定義のお話がございましたけれども、中小企業の立場から見ますと、経営戦略の企画を担当できるような者とか、あるいはそれに対する必要な高度な専門的な知識を持っている、あるいは実行できる者、そういう方、あるいは経営面でございますね、それから技術開発でいろいろな高度な製品開発を担当できる者、こういうような者を総称して高度化の人材と、こういうふうに言うかと思うんです。この人材の確保が、委員が御指摘のように、大変中小企業にとっては重要なことだと、こういうふうに私ども思っておりまして、昨年の十一月に労働省とともども中小企業の労働力確保法という法律を改正しまして、先ほど労働省から御説明がありましたいろいろな施策を展開させていただいておるわけでございますし、我々も中小企業金融公庫等を活用しまして資金面で応援をしておるわけでございます。  それから、人材のいろいろな面での中小企業への分散といいますか、そういうお話がございましたけれども規制緩和との関連で申し上げますと、有料職業紹介事業というのが二十九業種に限定されて認められているわけでございますけれども、これを拡大といいますか、そういう自由にやれるような方向で見直しが行われるという方向にございます。そうした面で規制緩和が行われれば、中小企業の方も先ほど申し上げた高度化人材の確保に資するものと、こういうふうに期待しておるわけでございますので、そういうものも政府の中で検討していきたい、こういうふうに考えております。
  42. 平田耕一

    平田耕一君 ありがとうございます。  ひとつ違う側面でも採用についてバランスよくするとか、その学校に集中するとかというようなことの自粛とかというものを、できるところからといえば例えばまず省庁からというようなことも可能でありますから、そして大企業もできるだけバランスよく採る、あるいは大学を出ていない人もどんどん採用していくというふうな機運になるように、これは実践は一番簡単なことでありますからぜひともやっていただきたいなというふうに思います。あくまで平等な機会が均等に与えられまして平和な将来に資するということになれば本当にいい形になると思いますので、お願いをしたいと思います。  そういう話を通じまして、私自身は思っているんですが、ぜひとも中小企業庁にお考えをいただきたいというふうに思うんですが、中小企業庁というその名前ですね、中小企業という名前。これは私は余り好きじゃないなと思っています。ですから、企業庁の名前も、あるいはいろんな法律の名前も、新聞や雑誌やいろんなところで言う名前も、中小企業ということ以外にもっと夢のある、大企業じゃないんだよ、だけれどもおれたちは新しい日本のために頑張っているんだよ、日本を支えているんだよという機運の出る名前に、一般的な名前に変えて、その名前でもって何々庁とかというような形で、あるいは何々を包括する政策とか、いろんな形で展開をしていただければと思って考えておるんですが、なかなかいい案が浮かんでまいりませんので、ぜひともひとつこれは気分を変えて新しく前へ進むという意味でも御検討いただきたいなというふうに思います。  最後に、日本の将来を見据えて科学技術立国ということが言われるわけでありますけれども、科学技術庁も来ていただいておるわけでございますので、科学技術立国ということにつきまして、遠い将来の科学技術立国というのは、おぼろげながら多分という想定もできなくもないわけでありますけれども、我々が見通せる将来を考えまして科学技術立国、そして新しい技術でもって生産高がふえる部分というのは概略でどんなものなのか、そういうもので日本というのはやっていけるんだろうかなという、もう少し科学技術立国というものを具体的に、それはできる範囲で結構でございますけれども、御説明をいただきたいというふうに思います。
  43. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) ただいま平田委員から御指摘ございましたように、私ども今後の日本を支えていく非常に重要なキーが科学技術であるというふうに考えております。  この点につきましては、一月二十二日に橋本総理が行いました施政方針演説の中におきましても、科学技術の振興が人類共通の夢を実現する未来への先行投資であるということを述べておられるわけでございまして、今後、独創的、基礎的な科学技術によりまして新技術の創出に貢献をいたしまして新たな経済フロンティアの開拓を図る、それによって豊かな国民生活を実現していくということに注力をしたいと思っております。  ただいま御質問ございました今後どういう分野でどう伸びていくのかというお話でございますが、昨年十一月に科学技術基本法を制定していただきました。二月七日に当調査会で私の方から説明の機会をいただきまして、その際にも御説明を申し上げましたけれども、この科学技術基本法にのっとりまして、現在、科学技術基本計画というものの策定作業を鋭意私どもの手元で行っているところでございます。この中では、ただいま平田委員から御質問ございましたような今後の重要研究分野がどういう分野であるのかという点についても、できるだけ分野を明らかにし課題も明確にできればいいなということで、現在、策定作業を行っております。  この議論の中では、例えば現在は情報というのは非常に重要な分野でございますけれども、今後我が国として伸ばしていくべき分野として、例えばバイオテクノロジーというような分野についても十分考えるべきだというような検討もございますし、これらの検討を踏まえまして、できるだけ早期に基本計画の中で明らかにしていきたいと考えているところでございます。
  44. 平田耕一

    平田耕一君 よくわかりました。  それで、そういった将来の理想的な姿に向かっていく。例えば新しいものが開発をされる、そうするとその先端産業というのは飛躍的に伸びて、今ではコンピューターもいろんな機器の中に入っているというような形で国民にフィードバックするわけでありますけれども、願わくはその科学技術立国という表題のもとにいろんな形で、本当に先端でなくても、もっと末端の従来忘れておるような技術もあわせてずりと進展していく。  そして、その先端技術もその都度その都度、五年、十年、二十年という中期的な形でどんどん国民にフィードバックされますよというような形の科学技術基本計画というものをもし作成されますのであれば、ぜひともひとつそういう形で、国民みんなで平等に、だれかが開発したすばらしいものが仕事としても享受できるし、また生活の利便性としても享受できるというような形の目に見えるものにできるだけ近づけていただきたい。そして、みんなでもってそういう科学技術立国というものを進められるような機運をぜひとも一層高めていただきたいというふうに思います。  いろいろ言いたいことを言いましたけれども、一貫して私は、やっぱり今のこの日本の状態はどうも経済がおかしいというふうに思います。そして、それは銀行のことで申し上げましたけれども、従来できそうもないことを一遍白紙に返って、これちょっと違っているんやないか、もし違っておれば大胆に後戻りしてでも、あるいは全部ひっくり返すようなことになっても一遍みんなで協議してやっていく、そんなようなことだと思います。  会計基準や金融システムのあり方や証券のあり方や、いろんなことも一遍白紙に返って、将来どれがええんやと。もうここへ来て日本の先を走っている国というのは余りないわけでありますから、いずれにしたって創造力豊かにやっていかにゃいかぬと思いますので、その先端を走られます省庁の皆様方がどうぞそういうお気持ちで、決して言葉で弱者を切り捨てないように政策をお進めいただきたいことを心からお願いを申し上げまして、数分早いですけれども質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  45. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 平成会の魚住裕一郎でございます。  まず、通産省の方にお伺いをいたしたいんですが、先般、二月七日にるる御説明をお伺いいたしました。今の時代、産業構造が大きく変化をしておりますし、また国際的な大競争時代に入っていく、その中でどういう産業政策をしていくのか、その模索というんでしょうか、それがあらわれているような御説明だったなというふうに感じております。  そんな中で、説明の中では、通産省の役割としては、「日本経済を活性化させていくということで、通産省としては多少他省庁の世界に入ることでもいろいろ議論をしていくことも」云々というような表現がございました。私はそれを伺って、ここまで突き詰めていろんなことをお考えになっているんだなというふうに思うわけでありますが、翻って考えれば、戦後だけでも日本の立国々どうしていくのか、戦後の廃墟の中から傾斜的に融資をして重厚長大な産業を支えてきた、あるいは研究組合とかつくって電子立国というようなものを目指してきた。第五世代コンピューターなんというのはちょっと外れたかどうかはよくわかりませんけれども、そうやって通産省としては一生懸命やってこられたんだろうと思います。  しかし、この時代に入って、この間の御説明のとおり、何か手詰まり状態な感じを非常に受けたわけであります。つまり、今まで通産省、官主導でずっと産業を引っ張ってきた、それができなくなってもうお手上げなのかなというふうなことを実は感じたんですね。先ほど議事録の一部を読ませていただきましたけれども、逆に言えばもう自分のところじゃなくて他省庁まで手を突っ込みますよというふうにも実は読めるわけでありまして、その辺、今後の産業政策の中における通産省の役割というんでしょうか、それは自己認識としてどのようにお考えなのか、その辺の御所見、考えがありましたら教えていただきたいと思います。
  46. 横川浩

    政府委員(横川浩君) 今、委員から御指摘いただきました基本的な考え方は全く私どもも同じゅうしているように感ずる次第でございます。  もちろん、官主導か民主導かということに関連いたしまして、例えば私が役所に入省いたしました二十数年前にも官主導、民主導というような議論もございました。しかし、やはりそのころからの二十数年を見ますと、やはり通産省の産業政策というのが、いわゆる今のような分類で言えば民主導、民の活力をどうやって自由市場経済の中で最大限に生かすか、そのために政府は何をなすべきかということを基本的な考え方にしてやってきたような気がいたしております。  それで、そういった基本的な座標軸を現時点でもう一度確認をいたしてみますと、これからの日本経済、二十一世紀に向かっての日本経済を考えますと、やはり民間の活力、民間企業の活力をどうやってマーケットメカニズムの中で十分に発揮していただくかというのが従来以上にますます重要になってくる、そういった経済状況の中での政府の役割ということになろうかと思います。  具体的にどういったことを政府の役割としてやっていくかということにつきましては、もちろん広範な分野があるわけでございますけれども、若干整理して申しますと、企業の自立的な活動展開を円滑にするため、まず規制緩和などを通じまして日本経済のいわゆる高コスト構造の是正を図っていく、これが一つでございますし、それから、金融資市場でございますとかまた企業に関連をいたします諸法制の整備などを含めまして、新しい産業分野と申しますか企業の活動分野を切り開き、発展させていくためのある種の基盤整備の作業の中に政府の役割があろうかなという気もいたすわけでございます。  それから、これと関連をいたしますけれども、研究開発という世界で考えましても、この研究開発基盤の整備を民の活動を中心にいたしながらもやはり政府一定程度の役割を担う、恐らくこれは従来必ずしも十分なものではなかった分野じゃないかと思いますけれども、これをさらに拡充していく仕事がある。こういったことを含めて、いわゆる経済活動の基盤になります社会資本の準備、これのかなりのものは政府がやる仕事になろうかなどなど、いわゆる経済構造改革等のための諸作業の中でやはり政府の役割というのがあるかなというように考えておるわけでございます。  通産省は、当然のことながら日本経済の活力か高めるということから構造改革に積極的に自分自身の政策の範囲内でもやることはいろいろあろうかと思います。今申し上げましたような幾つかの範疇の中でも通産省自身の予算や制度の中でやっていくこともたくさんあるわけでございまして、こういったものはこれを鋭意進めていくわけでございますけれども、今申し上げたようなことだけで申し上げましても、いろいろ霞が関の関係省庁の法制度、施策にかかわってくるものもあるわけでございます。  もちろん私ども、先日、私がここでプレゼンテーションさせていただきましたときの気持ちといたしまして、決して役所の縄張り的な意味で他省庁の分野云々というふうに申し上げたわけではございませんで、やはり日本経済のこれからを考えたときには、そういう意味では各省庁それぞれの分野分野で精いっぱいやっていただきたい、そのためには通産省も他省庁の分野のことでお願いをしたりまたある種の提案をしたりというようなことも場合によってはやらせていただく必要があるのかな、そんな思いを申し上げた次第でございます。
  47. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そもそも産業政策を考えること自体古いのではないかというような考え方もあるので今のような質問をしたわけでありますけれども、基盤整備とかありました。新しい事業もできるようにということでいろんな模索をされておりますけれども、例えば新規事業法みたいな場合も特定の認定された事業、これについていろんな手だてが考えられているわけでありますけれども、そこに認定というか特定というか、それを選ぶという作業が実はあるわけであります。その選ぶ側の目というか、その辺の検証は一体どうなっているのかなと思うんです。  例えば、いろんな新しいアイデアとか技術、そういうところにそれが伸びるようにしていくということでありますけれども、大変古い話で恐縮でありますけれども、例えば八木アンテナというのがありました。日本の当時の軍部では採用されずにアメリカで採用になったというようなこともあるようですし、またフロッピーディスクも日本じゃなくてIBMで評価されたということもございました。  つまり、選ぶという選定作業自体が、その辺の目のつけどころみたいな部分はどのようにお考えなのかということをお聞きしたいんです。
  48. 横川浩

    政府委員(横川浩君) 委員ただいま新規事業法の例を挙げていただいたわけでございますけれども、例えば新規事業法で認定をいたす場合には、やはり何といってもその当該企業が事業化されようとしておられる技術の内容の評価、それが法律の対象として幾つかの政府の公的な支援を受けるに足る新規性でございますとか、また将来の発展性を持っているかということを評価しなければいけないわけでございます。それを行うためには当然技術の評価ということについての認定を行います通産省自身の実力を高めていかなければならない、これはこれで私ども日々努力をいたしておるわけでございます。  それからまた、新規事業法ということに限定しているわけではないわけでございますけれども、やはり当然私どもの力で十分でない部分につきましては、従来からもそうでございますしこれからもそうでございますけれども、実際にそれを民の立場、ないしは企業ということだけではございませんで、大学等のそういった広い知見のお話、御意見もお伺いをしながらいろいろな政策行為をやっていかなきゃいけないのかな、そのときどきの政策行為に応じていろいろ判断、お知恵をおかりする範囲を決めていこうというように考えて対応いたしております。
  49. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 結局は独創的な目というかそういうものも本当に必要になってくるんだろうなと思うわけでありますが、そういう意味文部省いらっしゃいますか。  先般、人材育成ということで主に国際的な教育という意味で御説明ありましたけれども、やはり独創的な人間、人材を育てることが最も基本ではないかというふうに思うわけであります。六三三制とかずっと続いておりますし、また偏差値教育の弊害が言われてもう長いわけであります。また、新聞記事のコラム欄でありましたけれども、いつまでも学区の問題にしても、小学校にしても住んでいるところですべて決まってしまって一定範囲の子供はみんな同じ学校に行かなきゃいけない、そこには選択の余地がない。そこから出発して画一的な教育をずっとやってきている。  それをこの間、二月七日の日には中島眞人委員からも教育の問題について抜本的な調査をした方がいいのではないかという意見もございましたけれども、この独創的な人材を育てるという意味で、自由な発想のできる教育というか、そういうことを文部省ではどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  50. 遠山耕平

    政府委員(遠山耕平君) 先生お話しの独創的な人材を育てるような教育ということでございますが、その場合も、小中学校は義務教育でございますし、おのずからそういう独創的な人間を育てる教育というのには制約があろうかと思いますが、やはり考え方としては、先生がおっしゃるように子供たちの個性を生かす教育を現在の学習指導要領では目指しております。  これまではとかく知識の量あるいは技術をたくさん覚えてそれをいかにうまく応用できるかというところにかなり重点が置かれてきたわけでございますが、現在の新しい指導要領では、子供たちがみずから学ぶ意欲を持ち、自分の頭で考えて自分で判断をして責任を持って行動できる、こういう能力を育成することを一番の目標としております。  そういう義務教育の上に、今度中学の後半から高等学校にかけてはそれぞれ生徒の興味、関心、能力、適性が非常に多様化をしてくるわけでございますので、それに応じた学校制度といいますか、そういうことを現在いろいろ工夫してございます。  例えば、総合学科というようなことで、今までのように普通科とそれから専門学科という二つの区分ではなくて、子供たちが高等学校に入ってから自分の進路なりあるいは自分で勉強したいことを考えながら自分で学科目を選択していく、こういうような高校もつくっております。それから、単位制高校ということで、従来は学年制をとっておりまして、高等学校で一年で一単位でも落とすと留年というような形になっていたわけですけれども、これも単位制高校ということで、高校の在学中三年のうちに八十単位なら八十単位という高校の卒業資格の単位を取れば卒業ということが認められる制度になっておりまして、留年という制度はございません。そういうようなことで、いろんな多様な生徒の実態に応じてカリキュラムが組めるようにいろいろ工夫しているところでございます。
  51. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そういう方向性、さらに抜本的なところからの教育のあり方の議論を私は深めていきたいというふうに思います。  余り時間がなくなってきたんですが、先般、労働省の御説明の中で、高度の熟練技能の継承という問題、言葉だけ出て中身がなかったんですが、この点について御説明をいただきたいと思います。ずっと東京都内を回っていましたら、やはり空洞化という問題もありまして、先ほど出た下町の中小企業の熟練技能が大変廃れていくというようなこともございまして、その点ぜひお願いいたします。
  52. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今、先生指摘のように、非常に高度の熟練した技能につきまして、近年特に産業界からその維持、継承の問題について私どもいろんな要請を受けておるところでございます。  一つは、例えば例をとりますと、金型の製作にいたしましても、非常に精度の高い金型につきまして、やはり機械では代替できないような部分がある。また、その他非常に高精度が要求される部品の製造過程等でもそういった技能が必要とされる。あるいは、研究開発の過程で試作品等をつくる際にも熟練した、機械を超えた精度を持った技能者の方々の不足の問題等も指摘されております。  ただ、そうした高度の熟練技能が今まで我が国の産業活動の基盤を支えてきた面があるわけでございますが、やはり一つは後継者の問題等もございまして、そういったものがだんだん失われていくのではなかろうか、そういったことになると将来試作品一つつくるにしてもはったと困る場面が出てくるのではなかろうか、そういった声を産業界から私どもいろいろ伺っておるところでございます。  したがいまして、そういった高度熟練技能を私ども後世にしっかり維持、継承していく、そのことが我が国の物づくりの基盤をしっかり残していくことにもつながるんではないかということで、来年度におきましては、我が国の産業界におきましてどういった分野にどういった方々がそういった高度熟練技能を持っておられて、それを維持、継承していくためには現状がどうなっているか、これからどんな形でそれを残していく工夫が可能であるか、そういったことを調査検討するための委員会を設けて、具体的に産業界にどういったものがあるかを調査し、維持、継承していくための方法について検討を早急に行いたい。その検討結果に基づきまして、将来におきましては何らかの具体的な方策を講じてまいりたいというふうに考えておりまして、来年度予算案に必要な予算を計上いたしまして先般御説明を申し上げたところでございます。
  53. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 終わります。
  54. 小林元

    小林元君 平成会の小林元でございます。  時間がありませんので、文部省に限って御質問させていただきたいと思います。  先ほど来平田委員から、またただいま魚住委員からも、人材の育成という観点、あるいは優秀な人材の適正な配置をというような御意見、御質問がありました。これから二十一世紀に向かってもう本当に時間はありません。しかし、やはり教育、人材の育成というのは国家百年の大計でありますから、これは本当に発展基盤の確立という意味では最重要課題ではないかというふうに考えているものでございます。そういうことで、教育に対する要望といいますかニーズは極めて高いんだというふうに考えておりますし、国民は期待をしているというふうに考えております。  ただ、そういう中で、今は現象的にいろんな問題がございます、いじめだとか登校拒否だとか中退だとか。でも、そういうことではなくて、やはりそれを何とか克服して本当の意味で人間性を育てる、あるいは個性を育てる、そして創造性を高めるということが本来の教育の目的ではないかというふうに思います。  そういう中で、これまで中教審の四六答申あるいは昭和六十二年の臨教審の中でも、中等教育において中高一貫校というような答申が、豊二とは言いませんが二度続けてございました。そういう中で、やはりこれは今のいわゆる受験競争の中で、先ほども初中局長さんからお話がありましたが、過度の詰め込み教育、そして画一的な教育に偏して受験競争に陥っているという御判断かと思いますが、そういうものをやはり克服するためには中高一貫校というものは非常に大事なんではないか。しかし、そういう答申がありながら、公立ては全国的にはたった一校しかない。そして、私学の方でそういうものがたくさんあるというようなことでございますが、その辺についてどのようにお考えになっておりますか。
  55. 遠山耕平

    政府委員(遠山耕平君) お話しの中高一貫教育に関しましては、昭和四十六年の中央教育審議会の答申、それから昭和六十年の臨時教育審議会の第一次答申などで提言がされてきたところでございまして、文部省ではこれらの答申を受けまして中学校それから高等学校における教育の連携を深める教育課程の研究開発、それから有識者による協力者会議における調査研究などを行ってきたところでございます。  そこで、この中高一貫教育につきましてはメリット、デメリットがあるということが指摘をされているわけでございまして、メリットは、確かに先生おっしゃるように高校入試の影響を受けずにゆとりある安定した学校生活が送れる、それから教育課程上の重複あるいは切れ目がなくなり効率的、一貫的な教育ができるという点がメリットでございます。しかし、デメリットもあるわけでございまして、一つは中学校と高等学校というのは生徒の能力あるいは興味、関心、こういうものが非常に分化をする時代でございます。  したがって、中高一貫の教育に入学した時点と卒業する時点の子供たちの能力、興味、関心、適性がかなり変わるということが予想されるわけでございます。非常に多様化をする、あるいは能力についても差が大きく拡大をするということが予想されるわけですが、それを一つの学校で果たして対応できるのであろうかということが心配されるわけでございます。  ただ、入るときにこの学校は進学の学校ですよというぐあいに決めるとか、あるいはこの学校は体育、スポーツをやる学校ですよ、あるいは芸術関係の学校ですよというぐあいに決めれば、それはその学校に入ってくる生徒はある程度狭い範囲の能力、適性、興味、関心を持った人が集まるということになるわけですが、そうではなくて、だれでもいらっしゃいという今の中学校的な形で入学試験をやりますと、入学した時点と卒業の時点では、先ほど申し上げましたように、能力、適性、興味、関心が非常に多様化して、それに対して果たして一つの学校で対応できるのだろうかという問題があります。  それからもう一つは、例えばその学校についてほとんどの者が大学進学する学校ですよということになりますと、これは入学の時点で非常に多分激烈な競争が出てくるであろうということで、入試関係のいろんな問題の低年齢化ということが起きるわけでございまして、こういう事柄についてメリット、デメリット両方よく勘案して検討する必要があるのではないかというぐあいに思っております。  文部省としましては、平成六年に公立学校としまして、先生おっしゃいました、全国初の中高六年間の一貫教育を行うことを目的にしまして、宮崎県立の五ケ瀬中学校とそれから五ケ瀬高等学校において中高一貫教育の利点を生かした教育課程の開発を行おうとしているわけでございますので、それに対して研究開発学校に指定をしまして研究を委嘱しているところでございます。  現在、中教審で学校間の接続等の問題に関しましてこれから審議をしていただくところでございますので、私どもとしては中教審の審議を慎重に見守っていきたいというぐあいに考えておりすす。
  56. 小林元

    小林元君 現在、今御答弁いただきましたけれども、メリット、デメリット、十分御議論があった上でこういう答申が続いているんではないか。何とかやはり文部省でそういう問題をクリアしていただきたいというふうに御要望申し上げる次第でございます。  そしてまた、現在の十五期の中教審におきましていろいろ御議論されているようですが、与謝野元文部大臣が諮問をした際にも、中高一貫というものはあってもいいんではないかというふうな発言があったように確認をしておりますが、そういうことで今後ともこれまでの個性を伸ばす、あるいは創造力を育てるという観点に立って学制改革というものを大胆に考えていただきたい、こういうことを御要望したいと思います。時間がありませんので先へ進ませていただきます。  先ほど来お話がありましたが、科学技術創造立国というようなことで、これからの日本が大変期待をされている、伸ばしていくというようなことを皆さん言われているわけでございます。  それで、平成七年の二月に世論調査をやりましたが、理工系離れといいますか、若者が理工系離れをしているというような状況が続いているということで、科学技術庁の方からも大分説明がありまして、それに対する対策を科学館あるいはバーチャル科学館というようなことがございましたらし、ボランティアも募っているというようなことがあったわけでございますが、こういういわゆる理工系離れの実態というものを、文部省は大学の理工系の魅力をふやすんだというような考え方で整理をしておられるように受けとめているんですけれども、その辺の御認識、考え方、いかがでしょうか。
  57. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) ただいま御指摘の理工系離れの点でございますが、いろいろな理由が指摘されておるわけでございますけれども一つには、現象面として理工系学部への進学志願者数というのがふえているのか減っているのかというのが一つございます。  一番最近の数字で、例えば平成六年度におきましては一九・一%という数字でございましたけれども、平成七年度は一九・六%という数字になっております。ただし、ここのところ、昭和六十年が二五%近くであったということから考えますと、昨年に比べまして若干上向いたとはいえ、なおいわゆる理工系離れ、あるいは志願者数の減少傾向というところから脱却したというにはまだ早過ぎるのではなかろうかという感を持っております。  それからもう一つ、各種の調査におきまして問題とされておりますところは、科学技術というものに対する興味、関心というもの、それが世代によってかなり異なるわけでございまして、私ども期待するのは四十代、五十代というところにおいて興味、関心がある、これはこれでいいわけでございますけれども、心配するのは二十歳代におきましての科学技術への関心というのが他の世代に比べて低いというところが問題ではなかろうか、これは多分現在においても引き続き一般的にあることではなかろうかというように考えておるわけでございます。  以上が私どもの事実認識でございますが、それに対する対策やいかにというお尋ねでございます。  先生指摘のように、大学の理工系の学部を設置していく、あるいは間口を用意していく、これも一つの方策ではございますけれども、基本的には私ども二つあろうかと思っておるわけでございまして、一つは、大学の理工系の方からただお客さんを待っているということではなくて、積極的に自分らの理工系の学部ではかくかくの教育研究をやっているんだということを高校生に向かって大いにある意味でPRと申しますか、広めていく。単にある漠然としたイメージということではなくて、こういうことをやっているんだということをできるだけPRする、あるいは場合によっては夏休み等を利用して体験入学もさせて、その大学レベルの理工系教育というものはどんなものかというようなのを味わせてやるというような方策が一つあろうかと思うわけでございます。  それからもう一つは、これはもう中身そのものでございまして、理工系に一たん入った学生が理工系の学部教育において満足のいくようにしてやらなきゃならない、これが重要なことであろうかと思うわけでございまして、平成三年に大学設置基準を改正いたしまして、教育課程についてできるだけ幅広い弾力性と申しますか、大学の自由裁量の範囲を非常に拡大したわけでございまして、その制度改正を受けまして各大学で、これは理工系も含めてでございますけれども、カリキュラムの改善というのをかなり幅広く行ってきているわけでございます。  そういうようなことを通じて、入ってきた学生にとって履修がより魅力的なものになるようにという努力を各大学はしておりますのを支援するということ。それから、いわゆる教育研究条件、施設なりあるいは設備なり、そういう教育研究条件というものをよくしていく、こういう努力をする、これらが大学レベルにおきましては理工系離れの対策になろうかと思うわけでございまして、今申し上げたような趣旨に基づきましてそれぞれの分野で努力しているところでございます。
  58. 小林元

    小林元君 理工系離れというのは大変難しい問題だと私自身も認識をしております。やはり社会的な処遇ですとか待遇ですとか、これは労働省の管轄かもしれませんが、住専問題でもいろいろ指摘があったように、例えば金融業の給与あるいは役員賞与が非常に高い、それに比べてテクノクラートあるいはそういう技術系の職員の給与は、製造業の給与ということになるんだと思いますが、大変低いというわけではありませんけれども、それに比べれば低いというような状況の中で魅力を失っているというようなこともあるでしょう。  また、現在の科学技術のレベルといわゆる小中高生の科学技術の知識といいますか、それが余りにもかけ離れてブラックホールというんでしょうか、ブラックボックスになっている、なり過ぎて格差があってどうもよくわからぬと。コンピューターは操作できるけれども中身はわからぬというようなところが、あるいはそういうことも関係があるのかもしれませんが、いずれにしましても、やはり小中高の段階でもっといわゆる理工系に関心を持てるような教育に専念をしていただきたいということを要望いたします。  次に、情報教育についてお尋ねをしたいと思います。  高度情報化社会に向かって、だれでもパソコンが操作できる、使えるというような時代になっているわけで、実際にもう子供はゲーム感覚でパソコンをいじっているという実態だと思います。  私が教育長をやっておりましたころは、平成三年までやっておりましたが、そのときは文部省の補助基準は生徒二人に一台というような残念なところだったので、県単独で一人一台というようなことで、私、予算をお願いして、文部省からもたくさんいただきましたけれども、そういうことをやってまいりました。現在の整備状況といいますのをお伺いしたいと思います。大体整ってきているのかなというふうな感覚でございます。  それと、時間がありませんので簡単にお尋ねしたいと思いますが、やはり問題は指導教員だと思うんですね。家庭科、国語だとか社会だとか数学だとか理科だとか、いろんな教科がございます。そういう中で、コンピューターが例えば一教室分しかない、一クラス分しかないということになりますれば、本当にほこりをかぶって使わないのか、指導教員が不足しているのか、それから今度はたくさんい過ぎてみんな奪い合いというような状況でどうなのか。あるいはコンピューター教育のいわゆる主任者というんですか、本当にどこの分野でどういうふうにうまく効率的に教育ができるのか、そういうことのお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  59. 小林敬治

    政府委員小林敬治君) まず、コンピューターの設置方針といった点について御答弁申し上げたいと思います。  文部省では、平成六年度を初年度として、地方交付税措置ではございますが、全国の公立学校における教育用コンピューターの整備を図ります教育用コンピューター新整備計画を現在進めているところでございます。平成六年度からおおむね六年間で達成すべき整備目標といたしまして、小学校で二十二台、中学校で四十二台、普通科の高等学校で四十二台の整備を行うことといたしておるわけでございます。  その考え方としては、小学校では児童二人に一台、そのほかに教師用、教材作成用各一台、合わせて二十二台ということでございますし、中学校と普通科高等学校では、生徒一人にコンピューター一台ずつというふうなことで、教師用一台、教材用一台を加えて四十二台、こんなふうに考えておる次第でございます。  今後とも、この点につきましては計画的に進めてまいりたいと思っております。
  60. 遠山耕平

    政府委員(遠山耕平君) もう一方の指導者の方でございますが、現在、コンピューターを操作できる教員は大体今、小中高平均すると半数くらいにはなるんですが、コンピューターを実際に子供たちに指導できる教員ということになりますと、小学校で大体一〇%、中学、高校で二〇%ぐらい、こんな状況でございまして、まだまだ不足をしていると思います。  それで、文部省では、国立教育会館と協力をしまして、指導者養成を目的としまして小中高等学校の情報教育担当教員の研修を大体二週間ぐらいやっておりまして、この教員が今度研修を受けて学校の現場へ帰って、講師として実際に先生方に教えるということを考えて実施をしているところでございます。  それから、平成七年度から教職経験十年目あるいは二十年目の教員を対象とした研修、これでコンピューターに関する中身を教える、研修をしてもらうということをやっております。  それからさらに、民間にも協力をお願いするということで、民間の情報処理技術者、これを委嘱しまして教員の研修あるいは生徒の指導などに当たっていただくということで、その経費を地方交付税措置しているところでございます。内容としては、大体一県二千六百万円ぐらい積算をしてございますので、一校十八時間ぐらい指導するとして大体二百六十校分ぐらいが措置されているところでございます。
  61. 小林元

    小林元君 時間がなくなりましたので質問を終わりたいと思いますが、コンピューターを指導する場合、ソフトというものは非常に大事だと思うんです。それで、市販のソフトを大分使っているというのが現実だと思いますが、大変な労力、時間、コストもかかると思いますけれども、やはりこれは本来は文部省なりのソフトといいますか、そういうものもこれから十分開発をしていただいて、全国平準的な教育ができるように心からお願いをして、質問を終わらせていただきます。  時間を超過いたしまして済みませんでした。
  62. 林久美子

    ○林久美子君 平成会の林久美子でございます。  今国会は住専問題で始まりまして、大蔵省そしてまた母体行、また参考人のお話をいろいろ伺っておりまして、本当に今、私も兵庫出身なものですから、震災復興にもっと財政支援をという国民を代表して、きょう強く感じて質問させていただきます。  住専問題で大蔵省が各議員に説明して回っておられますけれども、もう幾ら説明を受けても国民の税金を住専に、不良債権のために使うということはどうしても納得できません。    〔会長退席、理事情水嘉与子君着席〕  先日、震災の被害を受けた六市、神戸とか西宮、芦屋市等の議員の四十七名が大蔵省の前で被災地への財政支援を訴えに来ました。住専を救うなら被災地を救え、そしてまた、住専処理の血税を被災者へ回せと。また、六千八百五十億円あれば公的住宅二万戸建つ。そして現在の被災地の窮状を率直に訴えたのであります。これは震災復興のために計上される予算が少なくしかも置き去りにされようとしているこの現状に対して、国民とは全く関係のないこの住専の巨額の損失補てんに財政資金を投入しようとしているのを問題視している現状であります。ちまたでは、震災復興は処置済みで、既に終了したとさえ言われております。  そこで、大蔵省にお願いいたします。  被災地は一年たった今でも全く変わっておりません。むしろ生活は苦しさを増している、そういうような状態であります。被災者に少しでも明るい希望を与えられるように、被災地復興にぜひ協力していただきたい。特に、生活困窮者がひとり立ちできるような住宅の確保など、生活関連、被災地復興にもっと財源を投入していただきたい。このお願いをしたいと思います。大蔵省の心温まる御回答をお願いいたします。
  63. 林正和

    政府委員(林正和君) 阪神・淡路の復興につきましては、御案内のとおり、財政当局としては震災からの一日も早い復旧・復興のため、公的住宅の供給、あるいは特別養護老人ホーム等の緊急整備、道路、港湾等の整備等、これまで三回の補正予算などにおきまして、国費で三兆四千億余り、事業費にいたしますと八兆円の措置を講ずるなど最大限の支援を行ってきているところでございます。  被災地の現状を見ますと、電気、水道等のライフライン、あるいは道路、鉄道等の交通基盤施設等の復旧、あるいは瓦れきの処理等につきましてはおおむね順調に進んでいると承知しておりますけれども、復興につきましては長期にわたる事業でございます。本格的な復興に向けての取り組みを引き続き推進していく必要があると考えておりまして、私どもとしても関係省庁と十分相談をして適切に対応してまいりたいと思います。  なお、先生から住宅のお話がございました。これは、これまで私ども、兵庫県のひょうご住宅復興三カ年計画等の円滑な実施を強力に支援しておるところでございますが、さらに加えて、先日の閣僚懇におきまして、総理から関係省庁に対しまして被災地の公的住宅の建設を急ぐ、また、種々の施策により引き下げを図っている公営住宅の家賃ですら重い負担になるような被災者の方々を視野に置いた何らかの工夫について、研究することについて指示が行われておるところでございます。  この住宅の問題につきましては、現在講じられている施策の効果をも見きわめつつ、住宅の建設状況、あるいは復興基金事業の活用状況、あるいは被災者の方々の生活事情も踏まえて検討がなされていくものと考えておりまして、私どもとしても関係省庁とよく相談をして、適切に対応したいと考えております。
  64. 林久美子

    ○林久美子君 どうぞよろしくお願い申し上げます。  陳情は陳情として、また過去の姿勢に対する責任は責任としてきちっと立て分けてちょっと質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。  歌の文句ではないですけれども、こんな住専にだれがしたと。この責任の所在について、現在、予算委員会等で真剣に検討されておりますけれども母体行の責任主義、そしてまた貸し手責任主義、修正の母体行の責任主義、どれも母体銀行、一般銀行、そしてまた信連等に責任をとらせようとしております。さらに加えて、国民にその責任の一端を押しつけようとしております。生活のすべてを奪われた被災者からも同じく五千五百円を住専のツケのために支払えということであります。怒らない被災民はいるでしょうか。  大蔵省住専にかかわってきた経緯が尋常でないことは周知のとおりでありますけれども、しかし大蔵省の具体的な責任については何一つ明確にされておりません。大蔵省自身破綻した住専に対する責任はどのように感じられ、またどのように責任をとろうとされているのか、明確にする義務があると思います。けさの新聞を見ましても、住専問題で一番責任あるのは大蔵省や農水省の官僚であると報道されております。このところで大蔵省の御意見をお伺いしたいと思います。
  65. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) お答え申し上げます。  大変厳しい御批判があるということについては私ども重く受けとめております。  ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げますが、住専を含みますノンバンクにつきましては、大蔵省といたしましても、銀行等に対しますような業務の改善あるいは停止といったものにわたります広範な指導監督権限を持っておらないわけでございますけれども、そうした中にありまして、住専を含みますノンバンクの業界団体に対しまして、昭和六十二年十月以降、繰り返し土地関連融資の厳正化を要請するといったことなど、制度上許される限界の範囲内で最大限の努力を行ってきたものと私どもとしては考えております。  大蔵省といたしましては、住専問題につきまして、これまでの経緯を含めまして明らかにすべき事項について責任を持って明らかにしたいという考え方に基づきまして、これまでも誠意を持つて資料の提出やあるいは答弁を行わせていただいてきているところであります。今後とも、国会におきますさまざまな角度からの御議論を通じまして国民の皆様の御理解をいただきまして、本問題の早期解決に全力を傾注するということがまず肝要かと思っております。  また、これまでの金融行政の手法を再点検いたしまして、自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基調といたします透明性の高い金融システムを構築してまいりたいと考えておるところでございます。
  66. 林久美子

    ○林久美子君 大蔵省、本当に今いろんな問題が持ち上がっているんですけれども、私は、もう一点このことに関して、今、天下りという問題が指摘されております。国公法の規則では、二年間天下りはできないということになっております。しかし、私は、この天下りの転職は官僚との癒着の原因となるということを強く感じ、本来はあってはならないものだと思っております。大蔵省自身このことをどう自省されておられるのか、御意見をお聞かせくださいませ。
  67. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) お答え申し上げます。  公務員の天下り問題でございますが、御批判のあることは我々も十分承知しております。また、この問題については与党でも協議されるテーマとなっておられます。これを注視しながら、私どもも真摯に受けとめてまいりたいというふうに考えております。  他方、憲法上の職業選択の自由の問題あるいは国家公務員法の制度の問題がございまして、ただいま委員がお触れになりました条項等につきましても、もう少しさらなる規定もございますが、問題がありまして、この問題に関してどのように考えるべきかにつきましては慎重な判断が必要といった面も考慮しなければいけないというふうに考えております。
  68. 林久美子

    ○林久美子君 大蔵省、しっかり、きちっと御答弁をお願いします。  どうもありがとうございました。  それでは、今度は学校の防災の方に移らせていただきます。  震災から学んだ教訓は本当にたくさんあります。学校に対するイメージも変わってまいりました。学校は児童の教育の現場であることはもちろんでありますが、地域コミュニティーの中核施設でもあり、防災上、例えば避難場所として地域住民の共生共存の重要な役割を果たす施設としても認識を新たにした思いがいたします。その意味から、学校の防災機能の整備が欠かせない重要な課題になっております。  まず一つは、災害のときにその学校が果たす防災機能の役割やまた教職員の役割を定めたガイドラインの策定が必要だと思います。また、学校の防災施設としての整備に対する財政措置、またみずからの被災をも顧みず地域住民の救済のために奔走された教職員の災害時における勤務条件の検討が要求されます。  その三点について、文部省の御意見をお伺いいたします。
  69. 小林敬治

    政府委員小林敬治君) まず第一点として、災害時における避難住民を受け入れることとなる学校の教職員の対応の仕方について何らかの指針が欲しいということでございますが、私どもとしても今回の阪神・淡路大震災を教訓といたしまして、昨年六月に学校等の防災体制の充実に関する調査研究協力者会議を設置いたしまして、十一月に第一次報告を取りまとめました。  その特徴は、先生ただいまおっしゃられましたように、震災が起こったときに学校が避難所になるという点でございます。この点が今般非常に強く意識した点でございます。そういうことを中心にしてどのようにして防災体制を充実させたらよいかということについて若干の提言がなされたわけでございます。  現在、その協力者会議におきまして、学校が教職員の対応マニュアルを作成するに際しまして指針等になるようなものをつくりたいということで鋭意検討をいたしておるところでございまして、できるだけ早い時期に取りまとめたいというふうに考えている次第でございます。  それから二点目の、学校が耐震の点で十分でなくてはいけない、そのための助成措置等についてのお尋ねでございますけれども、公立学校施設につきましては、校舎等の耐震性能の強化を図るために七年度から耐震診断費、耐力度調査費を工事の一部として新たに国庫補助の対象にするという措置をとりました。それから、補強工事等の所要額を平成七年度の第一次、第二次補正予算において計上いたしておりますし、また八年度におきまして引き続きそうした措置をとっておるわけでございます。  防災機能の充実強化を図る観点から四点ほど申し上げておきたいと思いますが、一つは備蓄倉庫等を整備いたしたい、それから防災広場を整備したい、浄水機能を有する水泳プール等の整備をいたしたい、それから学校給食施設の防災機能の整備を図りたい、こういう点を含んでございます。  それから三点目でございますが、災害時におきまして学校の先生方が、今回の災害のときもそうでございましたけれども、避難者の対応において非常に目覚ましい活躍をしていただきました。そうしたことに処遇等でどう対応していくのかというお尋ねかと思いますけれども、私どもといたしましては、学校としてそうした仕事をしておるわけでございますので、これは先生方の職務とみかしていくというふうに考えておる次第でございます。そういたしますと、仮にその過程で災害等でけがをしたというようなことになりますと、公務災害補償の恩典も受けられるというふうな点もございますので、そうした措置をとっておるわけでございます。  ただ、学校の先生はやはり本来的に学校の先生としての仕事がございます。したがって、そうした災害が起こりましたときに、やはり第一に児童生徒の安全が気がかりでございましょうし、またできるだけ早く学校を再開したい、そのための準備をしたいというお気持ちがあろうかと思います。したがいまして、これはあらかじめその地区の防災担当部局とも十分連絡をとっておいていただく必要がございますけれども、一時的に避難者の対応を一生懸命やっていただくとともに、できるだけ早い時期に学校を回復する努力の方に向かっていただくということもまた大事なことじゃないかなというふうに思っておる次第でございます。
  70. 林久美子

    ○林久美子君 もう時間がなくなってしまったんですけれども、今回、この神戸の震災は非常にいまだかつてない震災でありまして、そして教職員の方々も寝ずに皆さんの救援活動をなさったんですね。そういうのに対して特別な措置なんかは教員に対してはあったんでしょうか、つまりアルバイトみたいな形で何かを差し出すとか。
  71. 清水嘉与子

    ○理事(清水嘉与子君) 時間が参っておりますので、簡潔にお願いいたします。
  72. 小林敬治

    政府委員小林敬治君) これは、教員については教員特殊業務手当というものがございます。その適用を受けられるということになったわけでございます。
  73. 林久美子

    ○林久美子君 聞いたところによると、本当にそれがすごくわずかなものであったということを伺ったものですから、ちょっときょうは突然にお尋ねしたんですけれども、それはどれぐらいのあれだったんでしょうか。
  74. 小林敬治

    政府委員小林敬治君) これはちょっと複雑か構造をいたしておるのですけれども、教職調整額という上に乗っかっている手当ではございますが、私もちょっと数字を持っていないんですが、たしか一日に四千数百円ではなかったかというふうに思っております。
  75. 清水嘉与子

    ○理事(清水嘉与子君) 林君、時間が参っておりますので。
  76. 林久美子

    ○林久美子君 はい。もう時間が参りましたので、どうもありがとうございました。
  77. 千葉景子

    ○千葉景子君 本日は、昨年北京で開催されました国連主催の世界女性会議、ここで採択をされた行動綱領を基本にしながら何点かの御質問をさせていただきたいと思います。  まず、なぜ北京の女性会議がこの調査会の二十一世紀経済社会に対応するための経済運営在り方に関する件ということと関連するかという点について、ぜひ皆さんにも知っていただきたい、そんな意味を込めまして、この行動綱領の何点かの点についてちょっと読ませていただきたいというふうに思っております。   この行動綱領、ちょうど冒頭の部分でございます。済みません、ちょっと長目ですけれども、読ませていただきます。こういう書き方がされています。  この「行動綱領」は、女性のエンパワーメント力をつけていこうということですけれども、に関するアジェンダである。これは、「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略」の実施と経済的、社会的、文化的及び政治的意思決定の完全かつ平等な分担を通じて、公的及び私的生活のすべての分野への女性の積極的な参加に対するあらゆる障害の除去を促進することを目的とする。これはまた、家庭、職場及び広くは国家社会及び国際社会における女性と男性の権力及び責任の分担の原則を打ち立てることである。女性と男性の平等は、人権の問題であり、社会正義への条件であり、また、平等、開発及び平和への必要かつ基本的な前提条件である。  女性と男性の平等に基づく変容したパートナーシップが、人間中心の持続可能な発展の条件である。二十一世紀の挑戦に対処するべく、女性と男性が自らのため、その子どもたちのため及び社会のために共に働くことができるようにするためには、継続的かつ長期的なコミットメントが必須である。  これが冒頭の部分でございまして、いわばこれからの二十一世紀に向けて男性と女性の責任あるパートナーシップがなければ新しい課題解決にはとても及ばない、それなしに課題解決をすることはできないということをある意味ではこの冒頭の部分で象徴的に述べられているのではないだろうかというふうに思っています。  その他の部分も非常に示唆に富むといいましょうか、世界が今どういう認識にあるのか、そしてどういう方向に私たちが進んでいかなければいけないのか、そういう問題について大変内容が豊富でいろいろなことが決意を込めて書かれているわけでございまして、ぜひきょうはこの調査会の男性の皆さんにも、そして、これは当然政府が参加をいたしましてこの行動綱領も一緒につくってきたわけですから、ぜひ皆さんにも一度しっかりと目をお通しいただきまして、それぞれの省庁の施策の中に生かしていただきたいというふうに思っております。冒頭ちょっとこの部分紹介させていただきました。  そして、こういう前提のもとに、今回の行動綱領では重大問題領域として、女性と貧困、女性の教育と訓練、女性と健康、女性に対する暴力、女性と武力紛争、女性と経済、権力及び意思決定における女性、女性の地位向上のための制度的な仕組み、女性の人権、女性とメディア、女性と環境、そして女児、こういう重大問題領域が指摘され、それぞれの課題について戦略的な行動をとれ、こういう指摘がされているわけでございます。  これらの重大問題領域というのは、こうやってみますと日本の場合には大体満足されているのではないか、途上国などでいろいろな問題になることではないかと思われがちですけれども、この内容から見ますと私たちの社会でも改めて見直していかなければいけない、そういう部分がたくさんございます。  きょうは限られた時間でもございますので、女性と貧困、女性と経済、せっかく二十一世紀経済を考えようということでございますのでここにかかわる問題、そして権力及び意思決定における女性、こういう部分などについて御質問をさせていただきたいというふうに思っているところでございます。    〔理事情水嘉与子君退席、会長着席〕  そこで、まず最初にお尋ねをさせていただきますが、女性と貧困、女性と経済、ここに関連する問題をひとつお聞きをさせていただきます。  女性と貧困というと余り日本は関係ないかなということになりますけれども、こういう視点をひとつ御議論いただき、あるいは今後ぜひ施策の中で頭に置いていただきたいというふうに思います。それの一つは、女性の支払われない労働といいましょうかアンぺイドワークと言われている問題でございます。  例えば、家事労働、ボランティア活動、いろいろな社会活動、こういうのは実際には表には幾らの賃金だとかそういう形ではあらわれません。そういう意味では非常に見えない活動、労働ということになっているわけです。しかし、社会の発展やあるいはそれを支える部分としては大変重要な役割を果たしている、こういうことが言えるのではないかというふうに思います。  そこで、経済企画庁にお尋ねをさせていただきたいと思いますけれども、こういう支払われないアンペイドワーク、こういうものについて経済的にはどういう認識をお持ちであるのか。それか九ら、これはやっぱり重要な役割を帯びているんだということを私たちが認識するには一定の何か数値とか指数をもってあらわしていく、こういうことも必要なのではないかというふうに思います。  UNDP、国連開発計画などでは一定の数値を表示しているようですけれども、これが、必ずしもその数値がいいのかどうか、あらわし方としていろいろあると思うんですけれども、我が国においてもこういうアンペイドワークについて何らか見える形にすることはできないものだろうか、こういうことを私も考えているところですけれども、今の点について経済企画庁の方でどんなお考えがあるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  78. 坂本導聰

    政府委員坂本導聰君) 委員指摘のいわゆる家事労働等の女性のアンペイドワークにつきましては、統計的に正確に把握するということはなかなか難しいという点がございますけれども、私ども国民生活行政を預かる立場から申しますと、かかる女性の労働という問題は経済活動の上で非常に重要な意味を持っていると考えております。  そして、この国民経済計算の体系の中にそれをどういうふうに取り込んでいくかというような点につきましては、調査局長からお答えさせていただきます。
  79. 澤田五十六

    政府委員澤田五十六君) 経済活動の総体的な評価ということにつきましては、GDP、国内総輪生産、これを中心としました国民経済計算体系、いわゆるSNAというものがございますけれども、これは大きく分けまして、GDPを中心としました中枢的な勘定とそれから付随的というか衛星的なサテライト勘定という大きく二つに分けることができると思います。  その中で、この中枢的な勘定に取り入れることにつきましては、おっしゃいました家事労働を初めボランティア活動などのアンペイドワークを全額換算して組み入れるということになりますと、二つの大きな困難がございまして、一つは御指摘がありましたように、市場取引されていないということで技術的な評価が困難であるということと、もう一つは、それを何らかの形で評価してGDPなどに取り入れた場合、それをあらわした掛字が何を意味するのかという問題がありまして数例えばGDP等の分析は市場取引されている経済活動の総体ということで、物価の問題でありますとか、経済変動の問題でありますとか、成長の問題でありますとか、雇用や失業、こういったことが分析できるような体系になっているわけですけれども、そういったいろんな要素のものを組み入れていきますとそれが何を分析できるかという形の困難があるわけでございます。  しかしながら、御指摘がありましたように、この九三年に国連におきまして採択されました新しい国民経済計算体系、いわゆる改定SNAと呼ばれるものでございますけれども、これでは環境とかアンペイドワークなどの社会的に関心の高い分野の活動を記録するために新たにサテライト勘定という概念が導入されて、そこのところでフレキシブルに分析して中心的な勘定と連結していこう、こういう考えでございます。  経済企画庁もそういった流れを受けまして、新しいSNAに向けて準備を進めておりまして、国民経済計算調査会議等を活用してアンペイドワークといったようなものを対象とした勘定の研究に着手することとしております。  以上でございます。
  80. 千葉景子

    ○千葉景子君 なかなか難しい問題であるということは私も十分認識をしているところでございますけれども、こういうものを社会的に評価することによって、やはり社会全体として、どちらかといえば会社一点張りというような生き方とかあるいは生活の仕方に対して、何らか生活のありようというものを見直していくようなきっかけにもなるのではないか。いわば、本当の豊かさとは何だろう、こういうことの一定の指標にもなるのではないかというふうに思いますので、私たちもぜひ知恵を出してまいりたいと思いますが、よろしくお願いをしたいというふうに思っております。  さてもう一つ、今度は大蔵省と通産省にお尋ねをさせていただきたいというふうに思いますけれども、女性と貧困ということで、私も意外と気がつかない部分で、はたと目からうろこというのではありませんけれども指摘をされてびっくりしたのは、やはり女性が、例えばみずから事業を起こすとか起業する、こういう際に財政措置あるいは借入金を受ける、こういう部分でまだまだ不利益をこうむっている、こういう指摘がございます。そう言われてみればなるほどなという感じがいたしまして、こういう問題も一つの貧困の一部の問題として取り上げられているわけです。  実際に、自分で事業を起こそうとするとなかなか銀行金融機関からお金が借りられないと。これにはいろんな問題点があろうかというふうに思いますけれども、こういう部分を一歩ずつでも改善していくということが必要であろうというふうに思います用意欲を持った女性の方も大変ふえてきております。  これを質問させていただこうと思ってお願いをいたしましたら、私の選挙区でもあるんですけれども、地元の新聞に、川崎市で女性を対象に新年度から融資制度を導入するということをちょうど新聞記事で私もついきのう見まして、自治体などでも一定の努力をされているんだなということを私も改めて知りました。  大蔵省と通産省にお尋ねをいたしますが、多分制度上は別に女性だから貸さないよとかそういうことはなかろうというふうに思いますけれども、実際には女性はそういう条件がなかなかそろわない、こういう状態にあるというふうに思います。今後、女性の起業家などを育成したりあるいは事業を起こそうというふうなときの条件をできるだけ整備していくという意味で、何かお考えなどがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。大蔵省と通産省、お願いいたします。
  81. 永田俊一

    政府委員永田俊一君) お答え申し上げます。  通産省さんの方でもう少し網羅的なお答えがあろうかと思いますが、私ども、今貸し出しというお話でございましたのでお答えを申し上げたいと思います。  ニュービジネスあるいはベンチャーキャピタルといいますか、そういうニュービジネスの創出を支援する観点から、研究開発力といったものを持っておられます将来有望な企業に対して、担保に偏重することなく資金供給をより一層円滑化していくということは御指摘のとおり重要なことだろうというふうに私どもも考えております。  このため、大蔵省といたしましても、かねてから種々の機会をとらえまして、健全な経済活動に必要な資金の円滑な供給が図られますよう融資体制の強化を金融機関等に要請してきているところでございます。  例えば、昨年六月には緊急円高経済対策の具体化、補強を図るための諸施策が発表されましたが、その趣旨を踏まえました事務連絡を発出いたしまして、金融機関にその旨周知徹底を図ったところであります。  また、金融機関サイドにおきましても、既にベンチャー企業育成のための組織改編とか知的所有権担保融資制度の新設とか、あるいはベンチャー投資事業組合への出資の動きが見られるところでございますけれども、当局といたしましても、先般の施策がニュービジネス等に対します資金供給の一層の円滑化に資することを期待しております。  なお、委員も御指摘のとおり、確かに担保不足だとか経験不足とか、そういうことをカバーする施策という意味では、おっしゃられましたように、特に融資に当たって男女の性別に着目した差別が行われるといったことは全くないというふうに私どもも考えております。
  82. 横川浩

    政府委員(横川浩君) 私、実は前回、「産業政策の課題」ということで若干お話をさせていただいたときに、いわゆる開業率、新しく業を開く率とそれからやめていく廃業率とが、昔はずっと開業率が上回っていたものが、最近どんどん差が縮まってきて、ごく最近は逆転をしてしまったということを申し上げて、この日本の社会の中で業を新しく起こそうという動きがひょっとして弱まっているんじゃないだろうか、それを大変大きな懸念ということで申し上げたわけでございます。その懸念、問題意識を持ちまして、女性だからとか男性だからということではなくて、新たに事業を行おうとする方々の意欲が生かされるような環境を整備していくことがぜひとも重要だというように考えておるわけでございます。  このために、御指摘のありました資金の面でございますとか、それからもちろん人材をどうやって確保していくか、それからまた、研究開発関係の事業でございましたら、そういった研究開発をどうやって支援するか、それからまた、事業分野によっては事業を起こす場合にぶつかる公的な規制が壁になることもあるわけでございますけれども、こういったものの規制緩和も重要でございまして、などなど各種の施策をこれまでも講じてきておりますし、またこれからも講じていきたいと思っているわけでございます。  女性の起業、業を起こすということに関連して申し上げますと、現在、例えば家事関連のサービスでございますとか、それからまた外食産業でございますとか、それからまた情報関係でございますとか、いろいろな分野で女性の起業家、業を起こす方々が多数出てきておられます。それでまた、こうした動きを支援するための起業家セミナーでございますとか、それからまた女性起業家のネットワークのようなものの整備も大分進んできているというように見ておるわけでございます。  ある民間調査機関の調査でございますけれども、全会社に占める女性の社長の会社がどれぐらいあるかという調査で見ますと、一九八〇年には二・四%であったものが九四年には倍増以上でございますが、五・二%女性社長の会社がおられる。この絶対数自体を低いと見るか適当と見るかという御議論はあろうかと思いますが、少なくとも伸びということでいいますと、かなり女性の起こされた会社の数がふえてきているという実態があるわけでございます。  いずれにしても、申し上げましたように、業を起こそうという方の意欲が本当に生かされるような環境の整備に努めてまいりたいと思っております。
  83. 千葉景子

    ○千葉景子君 わかるんです。わかるんですが、というのは、本当に業を起こそうとする意欲のある方をバックアップする、当然のことであろうし、ぜひそれを進めていただきたいというふうに思いますが、そこまで同じ状況にまだまだ女性が置かれていないという、そこは私は改めて指摘をさせていただきたいというふうに思うんです。  そういう意味では、冒頭申し上げましたように、やはり実質的な女性と男性のパートナーシップといいますか、ジェンダー視点とよく言われておりますけれども、そういう点について、きょうはこれ以上申し上げませんけれども、また機会がありましたら御議論させていただきたいというふうに思っております。  さて、今度は雇用の部分での質問をさせていただきたいと思いますが、我が国におきましては、女性と男性が職業生活、そして家族的責任、これを両立させていくという意味でいろいろな施策を展開してまいりました。労働省にも大変御努力をいただき、育児休業、そして介護休業というような形で進んできているわけでございます。これを今後さらにどう促進をさせていくかという点についてお聞きをしたいと思います。  またもう一点は、セクシュアルハラスメント、これについてはなかなか表に出にくい問題でございますけれども、この行動綱領におきましても、「セクシャル・ハラスメントを受けることは労働者の尊厳に対する侮辱であるばかりか、女性がその能力に見合った寄与をなすことを妨げるものでもある。」と、こういう指摘もされておりまして、その点についての法律の制定なども一つの目標として掲げられております。  そこで労働省に、このセクシュアルハラスメントについてどう今後対策をとっていかれるか、それから仕事と家族的責任の両立の問題について今後もどう取り組みを強化されていくか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
  84. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先生お尋ねのセクシュアルハラスメントでございますけれども、職場におけるセクシュアルハラスメントの解消のためには、やはりまず企業自身の自覚、認識というのが非常に重要であるというふうに思います。そのためにやはり事前の対策を講ずることが必要であるというふうに思っておりまして、私どもといたしましては、私どもの出先機関が、都道府県に婦人少年室というのがございますが、そこで啓発用のパンフレットをつくったり、それからビデオ等を活用いたしまして、企業に対してそういうことが起こらないように周知活動を現在行っているところでございます。  それから、現在、婦人少年問題審議会という私どもの審議会で男女雇用機会均等法のあり方、いろいろ女子保護規定の見直しとあわせて均等法の改正の問題が議論をされておりますところでございますけれども、審議会におきましては職場における男女労働者を取り巻くさまざまな諸課題を踏まえまして議論が行われるものというふうに考えております。労働省といたしましては、その審議会の対応を待って対応していきたいというふうに考えているところでございます。  それからもう一つの御質問でございます職業生活と家庭生活との両立てございますが、おかげさまで育児・介護休業法もつくらせていただいたわけであります。これに基づき、今現在この周知徹底ということに対して全力を挙げているところでございますけれども、今後ともこの育児休業制度、介護休業制度企業にきちっと定着し円滑に運用されるように、事業主や労働者に対してきめ細かな相談、指導をしたり、それからいろいろ奨励金などもつくっておりますので、その奨励金の有効活用もしていただこうではないかというようなこととか、それから実際に育児、介護等のために退職した、退職をせざるを得ない方、また前向きに退職する方、いろいろいらっしゃるわけでございますけれども、退職した方々がまた再就職したいという場合にはそういう再就職をしやすいための措置等いろいろ、ともかくも労働者が職業生活と家庭生活との両立が可能になるような支援施策については今後とも総合的、体系的に進めていきたいというふうに考えているところでございます。
  85. 千葉景子

    ○千葉景子君 育児と介護、それぞれの休業制度も、所得保障の面などでもまだこれからという部分もたくさんございますので、ぜひ取り組みを今後ともお願いをしたいというふうに思います。  限られた時間になりましたので、それぞれの省庁に一律にお聞きいたします。細かい点はまた別の機会に譲らせていただきたいと思います。  各省庁管轄をされている審議会があると思います。この審議会、やはり女性が参加をして今後の政策について論議をするということが求められていると思いますので、その管轄する審議会について女性委員の割合が大体どのぐらいになっているか、そして今後それをさらに強化をするなりアップしていくためにどんな御決意を持っているか、それについてそれぞれお尋ねをさせていただきたいと思います。そして、必要な部分は後ほど一覧表など出していただくよう私もお願いしたいと思いますので、この質問の中では一言ずつ割合とそして今後の取り組みについてお尋ねをしたいと思います。
  86. 伊勢呂裕史

    説明員伊勢呂裕史君) 平成七年十二月三十一日現在、文部省が所管する審議会の中で、現在委員が任命されている十三審議会の全委員数三百七十六名のうち女性委員は五十九名でございまして、その占める割合は一五・七%でございます。  文部省の審議会委員の選任につきましては、文部省設置法及び学校教育法などの関係法令に規定された要件を踏まえまして、教育、学術、文化等に関し広い識見を有する者の中から、当面する課題に応じて各分野から適正に選考しているところでございますが、これまで女性委員の選任につきましては、団体に委員の推薦を依頼する場合、当該団体に対して広い視野からの女性の適任者の推薦につきまして協力を要請してきたところでございますし、また審議会の当面する課題に応じまして女性の学識経験者の把握に努めまして、その凄任に努めてきているところでございます。  文部省といたしましては、審議会の女性委員の登用について引き続き配慮してまいりたいと考えております。
  87. 横川浩

    政府委員(横川浩君) 同じく平成七年十二月末現在で、通産省関係の審議会の委員に占めます女性委員の割合が一四・四%でございます。  実は、通産省の審議会、物によりましてはかなり専門性、また職種の特殊性のあるものがございまして、そもそもそういった分野に女性の専門家が残念ながらいらっしゃらないというようなことで、なかなか思うように女性委員の登用ができないというところもあるわけでございますけれども、五年度の末が八・一%でございましたので、かなりのペースでふやせてはいるかなという気はいたしております。  いずれにいたしましても、とりあえず今年度末までに一五%を実現しようじゃないかというのが各省の一応の目標になっておりますので、通産省ももう少してございますけれども、とりあえず年度末までに一五%を目指して今積極的に取り組んでおります。
  88. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 科学技術庁におきましては四つの審議会が置かれてございますけれども、その四つの審議会、総計八十五名の方に委員をお願いしてございますけれども一つち女性の方につきましては十四名の方にお願いしてございます。したがいまして、その割合は二八・五%という状況でございます。  ただ、科学技術という分野におきまして、先生御案内のとおり、いわゆる我々の審議会でございますと研究者の方々に、どうしても専門の方にお願いをするというふうな状況でございますが、一方、研究者全体に占める女性の方の割合がどうしても少のうございまして、ちなみに申し上げますと四万人で七%といったふうな状況でございまして、そもそもこの科学技術の世界、研究の世界に女性の方にうんと入っていただくということがまずは大変重要なことかということで、そのあたりを中心にいたしまして努力をいたしたい、かように考えてございます。
  89. 坂本導聰

    政府委員坂本導聰君) 経済企画庁所管にかかる審議会につきましては、平成二年度末では女性の委員は一〇・一%でございましたが、本年二月末現在では一八・八%ということで、非常に努力を重ねているところでございます。  今後とも、企画庁としてはそういった努力を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  90. 河上信彦

    政府委員(河上信彦君) 大蔵省所管の審議会といたしましては十八ございまして、委員の総数が二百九十三人でございます。このうち、昨日現在で女性の委員の人数は四十六人でございます。割合をとりますと一五・七%でございます。  これまで各省庁から委員を選任するに当たりまして幾つかの問題点が指摘されたところでございますが、私どもが所管する審議会の委員の人選におきましても女性をというようなことをお願いいたしました中でも、例えば団体推薦のところではなかなか適任者がいないといった問題が現実にあるわけでございます。  そうした中でこれまで政府として目標を掲げてやってまいりましたわけで、何とか目標は達したわけでございますが、今後とも関係方面によくこの問題の重要性お話しするとともに、委員の交代の時期に当たりましては、私どももできるだけ引き続き女性の委員をお願いするという形で熱意を持って取り組んでまいりたいと考えております。
  91. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 労働省所管の審議会は十四でございますが、委員総数は二百四十七名、女性委員が四十名で、女性の委員の占める割合が一六・二%というふうに現在なっております。  それから、労働省所管の審議会、これは一つの特色であると思いますが、十四の審議会のうち十の審議会につきましては、法令によりまして公労使の三者構成で、労使委員は労使団体の推薦に基づいて労働大臣が任命するというふうにされております。  そこで、その内訳について見ますと、公益委員その他学識経験者で労働大臣が直接任命できる委員のうち女性委員の占める割合は二四・〇%とかなり高いのですが、労使団体の推薦に基づいて任命をしておりますのは、労働者委員が一一・八%、使用者委員が四・九%ということで、ここの割合が非常に少なくなっております。従来から労使団体に対しまして女性委員の推薦を求めてまいりました。今後ともそうした努力を続けてまいりたいというふうに思っております。
  92. 千葉景子

    ○千葉景子君 ちょっと延びまして済みません。終わらせていただきます。ありがとうございました。
  93. 阿部幸代

    阿部幸代君 初めに、青少年の科学技術離れ対策について伺います。  まず伺いたいのは、青少年の科学技術離れ、理科離れを深刻ととらえる、つまり何とかしなければならないという視点の問題です。科学技術立国を支える人材確保、つまり単なる優秀な人材を確保したいというそういう視点なのか、それともそうした人材を生み出し、支えるすそ野としての国民全体にとっての科学技術離れ対策という視点なのか。念のため、大切なことなので伺いたいと思います、科学技術庁。
  94. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) ただいま科学技術離れについての御質問でございますが、私ども科学技術創造立国を二十一世紀に向けて目指すという観点におきましては、科学技術活動を支えますすぐれた人材というものは極めて重要であると考えております。  その場合に、一人一人の個性に応じてその感性を生かし、創造性の発揮を促すような多様性、柔軟性に富む環境を構築することによって人材を育成していくということが重要だと思っております。
  95. 阿部幸代

  96. 林田英樹

    政府委員(林田英樹君) 文部省におきましては、大学におきます学術の振興を担当しておるわけでございますけれども、私ども大学におきます学術は、人文社会科学及び自然科学の広範な領域の全体にわたりまして体系的に学術研究を発展させる、このことによりまして学術的基盤の確保と維持向上を図るということを使命としておりますし、また一方、このような大学におきます学術の振興は、幅広い分野の研究者を初めといたします多方面の人材養成をも使命としておるというふうに思うわけでございます。  このような学術の研究は、それ自体は知的な資産としての人類共通の財産というふうな側面がございますけれども、その応用を通じまして、実用的な技術開発などを通じまして、国民全体の福祉の向上というふうなことにもつながっているものと理解しております。
  97. 阿部幸代

    阿部幸代君 もっと端的に答えていただきたかったのですが。  九三年版科学技術白書を読ませていただきました。近い将来、若年人口の減少に伴い科学技術系人材の供給が需要の拡大に追いつかないのではないか、こういう不安と同時に、将来における国民の科学技術に対する関心低下を懸念しているんです。つまり、すぐれた科学技術の担い手である人材といえども国民の中から生まれてくるということで、全国民的な規模での科学技術離れ対策、この視点が非常に重要であるというふうに考えます。  そこで、科学技術庁が立てた対策についてなんですけれども、バーチャル科学館の構想、科学館の充実強化、青少年と研究者・技術者の橋渡し事業、先端科学技術体験センターの普及などを考えておられます。もちろんこうした努力自体は否定するものではありません。身近なところでできるだけたくさんの青少年がこうしたものに触れることができたらよいというふうに心から願っていますが、どうも興味づけに終わる嫌いがあるのではないかという気がしてならないんですね。これでは不十分な気がするんですけれども、どうでしょうか、科学技術庁。
  98. 高木茂樹

    説明員(高木茂樹君) お答え申し上げます。科学技術の振興を図っていくためには、科学技術の重要性に対する青少年の理解を深め、科学する心を養っていくことが不可欠だと思っております。  このため、当庁におきましては、毎年四月の科学技術週間などの期間におきまして、全国の研究施設の一般公開など科学技術との触れ合いの場を設けるなどいたしまして科学技術に関する情報の積極的公開、また青少年の科学技術に対する理解を深めるために、研究者とともに研究の現場におきまして最先端の科学技術を直接体験するサイエンスキャンプ、こういうものを実施しているところでございます。またさらに、平成八年度政府予算におきましては、先生今御指摘のさまざまな施策の予算を計上しているところでございます。  今後とも、このような青少年の科学技術に対する関心や興味の増進を図るための施策を積極的に図っていきたいと考えております。
  99. 阿部幸代

    阿部幸代君 最近、宇宙飛行士の若田光一さんが科学技術の特別委員会に来てくださったんですけれども、そのとき宇宙飛行士を夢見る少年たちへのメッセージを請われて、やっぱり算数や理科を一生懸命勉強してほしいとおっしゃったんです。大変印象的でした。科学技術庁が考える対策と同時に、やはりここです、教育にもっと目を向ける必要があるのであろうと思うんです。  小学校から中学、高校と学年が上がるにつれて理科嫌いという生徒がふえると言われていますが、文部省はその実態を把握していますか。
  100. 遠山耕平

    政府委員(遠山耕平君) 理科嫌いの問題につきましては、問題のとらえ方が一様ではなくて、児童生徒への理科の関心が過去と比較しまして必ずしも低くないというデータも見られるわけでございます。例えば中学三年を見てみますと、これは日本科学技術振興財団というところで調べられたものでございますが、昭和五十二年と平成六年を比べております。中学三年の男子でございますが、理科の好きな人の割合、昭和五十二年が四九・七%です。平成六年が六三・〇%です。それから女子が、これも中学三年ですが、昭和五十二年が二二・九%です。それから平成六年が四一二・五%と理科の好きな生徒がふえております。特に女子にふえております。  こういうことで、理科嫌いということにつきましては必ずしも一様に理科嫌いがふえているということは言えないんではないかと思います。
  101. 阿部幸代

    阿部幸代君 理科が好きといっても、実験や観察は楽しいですから、だから好きというのと、理科がよくわかるから好き、つまり、将来、能動的な科学技術の担い手としての、意欲ある好きという意味と随分違うと思うので、その辺の厳密なとらえ方が求められていると思うんです。  九四年の四月十二日付で日本物理学会、応用物理学会、日本物理教育学会の三者が「理科教育の再生を訴える」と共同のアピールを出し、その後、七月二日付で日本数学会、日本数学教育学会、日本応用数理学会、数学教育学会など四者が「数学教育の危機を訴える」という声明を出し、八月二十二日付で日本物理学会が文部大臣あてに要望書を出し、八月二十六日付で日本化学会が「次世紀に向けての化学教育の課題危機に立つ理科教育」というこういう声明を相次いで出しています。  これらはいずれも、今日の理科・数学教育が理科嫌い、数学嫌いをつくり出してしまった、教育がつくり出してしまったことや、入学試験や教員養成のあり方について言及しています。こうした専門家や現場からの声を文部省はどのように受けとめていますか。
  102. 遠山耕平

    政府委員(遠山耕平君) 先ほど申し上げましたように、理科の好きな人の割合はふえているんではないかと私どもは思っております。  それから、理科教育でございますが、現在の学習指導要領におきましては、自然に親しむとともに自然事象への興味、関心を高めるために観察、実験を一層重視しておりまして、生徒の主体的な探究活動あるいは問題解決的な学習の充実を図るなど、小中高を通じて教育内容の改善を図ったところでございます。  したがいまして、文部省では、学習指導要領の趣旨の定着を図るために必要な施策を実施しているところでございますが、引き続き理科教育の振興のために努力をしてまいりたいと思います。
  103. 阿部幸代

    阿部幸代君 文部省はやっぱり専門家の声をもっと聞いた方がよいと私は思うんですね。  学会の声明やあるいは要望書は、いずれも国民教育としての理科・数学教育の充実のための提言をしています。十分な授業時間の確保と同時に、時間的な圧迫をほかの教科に一方的に与えないようにという配慮をして、小中高を一貫した体系的なカリキュラムの創造、こういうものを提案しているんです。  一方、文部省は、小学校低学年の理科の復活をという専門家の意見とは裏腹に、今度は小学校高学年で理科と社会を削って、総合科や環境科という形を既に文部省の研究協力校で実施していると伺っています。それはどういう趣旨なんでしょうか。
  104. 遠山耕平

    政府委員(遠山耕平君) 小学校低学年の生活科でございますが、これは児童の具体的な活動やあるいは体験を通して自分と身近な自然とのかかわりに関心を持つことなどをねらいとしまして、平成四年度の新しい学習指導要領から実施しているわけでございまして、その趣旨の定着に引き続き努力をしてまいりたいと思います。  それから、小学校三学年以上の理科につきましては、先ほど申し上げましたように、観察、実験など自然の事物、現象についての直接経験を重視し、それらの活動を通して問題解決の意欲や能力を育てることをねらいとしておりまして、この趣旨の定着に今後とも努力をしていきたいと考えております。  それから、学校の教育内容を含めまして今後の教育のあり方につきましては、現在、中央教育審議会におきまして検討していただいているところでございます。  いずれにいたしましても、文部省としましては、学校の教育内容につきましては中央教育審議会の審議の結果を踏まえまして教育課程審議会で審議をまたお願いしていただく、こういうことを予定しております。
  105. 阿部幸代

    阿部幸代君 今の学習指導要領そのものが問われているんだと思うんです。  私は、昨年、科学技術特別委員会でも申し上げたんですけれども、一番不幸なのは学ぶ喜びとわかる喜びを奪われている子供なんです。そこでも具体的に申し上げましたが、例えば算数の学習で、かつて小学校六年生が学んでいたミリリットル、今小学校二年生が学んでいます。次のような問題があるんです。「一デシリットルのますの二目盛りまで水が入っています。さて、この水かさは何ミリリットルですか」と。大人でも即答できない人が多いんです。よく考えないとわからないし、余り考え過ぎるとわからないんです。  理科はどうか。低学年理科がなくなって、社会科と一緒になって生活科、心の教育に変えられ、その分三年生の理科が過密になって、現場では今大変になっています。発達に即して楽しく学びながら、しかも科学的な力の基礎を十分身につけていくということが軽視をされて、結局詰め込みと暗記中心の学習にまたなってしまうんです。子供を責めることはできないと思います。理科離れをつくる大もとを変えていく必要があるんだと思うんです。理科離れ、理科嫌いに育った青少年がやがて理科を教える教師になる、こういうことを考えるときにこのことは本当に重要だと思います。  理科系がだめなら文系もあるじゃないか、芸術、スポーツもあるじゃないか、こう言って個性尊重、多様化の名で科学的な基礎学力を軽視することのないような学習指導要領の見直し、学会や専門家の意見を広く十分に求めた上での見直しが必要と思いますが、文部省、どうでしょうか。
  106. 遠山耕平

    政府委員(遠山耕平君) 先ほどから申し上げていますように、新しい指導要領になりましてから理科離れといいますか、理科について興味を持つ生徒はふえているというぐあいに私どもは考えております。  それは、現在の新しい学習指導要領が目指す教育は、従来の知識の量をふやす、あるいは技術を身につけてそれを応用するということではなくて、みずから学ぶ意欲を持ち、主体的に判断し、責任を持って行動する能力を育成するということで、生徒の個性を尊重するということを第一の目標にして現在の学習指導要領はできておりますので、その趣旨に沿って努力してまいりたいと思います。
  107. 阿部幸代

    阿部幸代君 随分話がすれ違っているような気がするんですけれども、やっぱり能動的な意欲、関心というのは、楽しく学びながらしかもわかる喜び、この蓄積の上に成り立つものですから、私は、十分専門家の科学技術庁とも相談し合って対策を立てていただきたいと思います。  専門家たちが将来の能動的な科学技術の担い手を育成する上で、教育条件の整備、実験助手や理数系教師の増員で、せめて二十人規模で実験をやりたいと、こういうことも言っているんですけれども、私はこれももっともな指摘だと思うので、ぜひ前向きに検討していただきたいということか要望として述べて、次の質問をしたいと思うんです。  国民生活と高学費問題です。たしか一九七〇年を基準に考えたときに、国立大学の授業料は三十七倍、初年度納付金は四十四倍という異常な値上げになっていると思いますが、この間の物価上昇率は約三倍だと思うんですけれども、ほかの公共料金を見てもこういう国立大学の授業料ほどの異常な値上げはないと思うんですね。経済企画庁、参考のためにちょっと教えていただけますか。
  108. 大来洋一

    政府委員(大来洋一君) 昭和四十五年を一〇〇にいたしまして、主な公共料金を今おっしゃいましたような教育費との対比という意味で申し上げますと、例えば米では二・八五倍、それから郵便料金は六・六四倍、JRの鉄道運賃は三・六九倍、バス代六・八七倍、電気代一・六八倍、都市ガス代二・六八倍というふうになっております。  それから公共料金、これは米などを含みます広義でございますが、今お話がございました消費者物価全体と大体似たような数字でございますけれども、三・〇五倍というふうになっております。
  109. 阿部幸代

    阿部幸代君 国立大学の授業料、初年度納入金というのは本当に異常な値上がりを続けてきたんです。この四年間だけでも十万円ぐらいの値上げがされていると思うんですね。  そこで聞きたいんですけれども、よく人的資源という言葉を聞きます。政府の科学技術政策大綱でも、「国民の知的創造力が最大の資源である我が国は、将来を科学技術の発展に託するところが大きい。」、こういうふうに述べているんです。この人的資源という場合、一体だれにとっての資源なんでしょうか、科学技術庁。
  110. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) 人的資源という言葉でございますが、ヒューマンリソーシスという英語の概念を直訳的に訳したものではないかと思われます。具体的には個人に帰属する知識ですとか能力のことを指しているかと思いますが、最近、今先生指摘のございました政策大綱でも人的資源という表現はたしか使っていないというふうに考えております。
  111. 阿部幸代

    阿部幸代君 人的資源ということで教育に対する期待が大きいんです。こういう表現を使います、一般的に。  それで、国連が一九六六年に採択した国際人権規約、その第十三条二項(C)ですか、高等教育の無償化を各国政府に求めています。つまり、国民の知的創造力を育成する教育の豊かな実りが社会に還元される、だからこそこういう措置を国際人権規約では進めているんですね。教育の最大の受益者が社会だからこそ、その費用も公的負担とするというのが世界の流れです。  国際人権規約の高等教育無償化条項の批准を日本政府は留保しています。ほかにどんな国が留保しているのか外務省に調べてもらいましたところ、九五年六月末現在で百二十二カ国が批准していて、その第十三条二項(C)、高等教育無償化措置を進めるというところ、これを留保しているのは日本とマダガスカルだけです。この事実は日本というのが本当に教育小国であるというこのことをさらけ出していると思うんですけれども文部省どうですか。
  112. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) ただいま御指摘の国際人権規約の第十三条第二項(C)の規定でございますけれども、高等教育の機会確保のためにとられるべき手段の一つといたしまして、締約国が無償化を漸進的に実現することを求めているということでございます。  先生御案内のように、高等教育の場合、在学者で申しますと約八割に近い学生が私立学校に在学しておるということがございます。いろいろな他の国と高等教育の構造というものの違いもあるわけでございますけれども、そのような私立学校の占める役割の大きい我が国のあり方の基本にかかわることでもございまして、現時点におきまして、従来の方針を変更して無償化の方針をとるということは適当でないということで留保しているところでございます。
  113. 阿部幸代

    阿部幸代君 高等教育の学費問題の根本的なとらえ方が今問われているんだと私は思うんです。このままでいいはずがないんです。  国立大学協会が九三年十一月に「国立大学の授業料の在り方について」という声明を出して、その中で、国立大学は国家、社会の要請にこたえて有為な人材の育成を行っており、その教育の成果は学生個人に帰するばかりでなく、国と社会がその最大の受益者であります。したがって、国立大学の学生納付金については、いわゆる受益者負担の原則を単純に適用すべきでないことは申すまでもありませんと、こういうふうに表明しています。  この趣旨は私学にも生かされるべきなんです。つまり、教育の最大の受益者は社会であるというこの趣旨は私学にも生かされるべきなんです。ですから、私学助成の大幅な増額こそが求められているんだと思います。  そういう意味で、今までの受益者負担論、それから公私間格差是正論、こういうのは世界の流れからいっても、学費の本質的なとらえ方からいっても通用しないんではないか。こんなのは二十一世紀まで持ち越してほしくないんですね。そう思うんですけれども、どうでしょうか、文部省
  114. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 先生今御指摘のようないろいろな論議がございます。教育費の負担というものが軽いものであるということが望ましいことはおっしゃるとおりでございます。  ただ、国立大学の授業料につきましては、社会経済情勢の変化でありますとか、あるいは私立大学の授業料の変化でありますとかということを種々勘案しながら適切に設定していくということで、このところ隔年に改定してきているところでございます。  来年度の予算案としてお願いいたしておりますのも、従来の改定幅よりも若干、約六割の改定幅ということにとどめてございますけれども、いずれにいたしましても、もう一方で教育費の負担を軽減するということで、先生指摘のような育英奨学の問題でありますとか、あるいは私学助成の問題でありますとか、あるいは税制の問題でありますとか、教育費全体の負担軽減を図るための種々の施策があるわけでございます。それらを総合的に措置しつつ、全体として教育費の負担が余りふえないような努力をいたしておるところでございます。
  115. 阿部幸代

    阿部幸代君 学費の根本的な考え方が二十一世紀を前にして問われているということなんです。教育をお金で売る、こういういわゆる受益者負担論というのは国際社会では通用しない、非常識だということを私は強く指摘したいと思うんです。  国大協がその声明で、教育費の高騰は、我が国の急速な出生率低下の重要な要因であることが指摘されている、こういうことを述べていますが、そのとおりではないんでしょうか。これは経済企画庁に伺います。
  116. 坂本導聰

    政府委員坂本導聰君) 平成四年度の国民生活白書におきましては、出生率低下の要因といたしまして、婚姻率の低下や、あるいは晩婚化の進行、女性の就業率の高まり、それと同時に、委員指摘の教育費の増大等を挙げております。さらに、同年の選好度調査国民意識調査でございますが、これは三つまで回答していいということでございますが、五四・六%の方々が「子育ての費用の負担が大きいから」ということを挙げておりまして、次の「育児をする施設・制度が充分でないから」、五一・二%でございますが、この二つが大きな意識的な問題となっているところでございます。
  117. 阿部幸代

    阿部幸代君 教育費、国立大学の授業料がその引き上げの牽引車になっていると思うんですが、それが余りにもかさむために日本の女性が安心して子供を産めないんです。大きな要因になっています。これが少子社会、裏を返すと高齢化社会の一因になっているということです。これ現実です。  経済企画庁に答弁していただきましたが、九二年度の国民生活白書で確かに言っているんです。私立大学に入学した場合、初年度納付金が親の平均収入の三四・四%に達し、複数の子供を大学に行かせた場合の家計への負担は極めて重い、ころ述べているんです。  兄弟が複数いたら、お兄ちゃんが大学に行くから下の子は我慢するとか、お兄ちゃんが私学に行くから下の子は私学に行けないとか、こういうことも起こり得るし、子供の教育のために親は文化的な生活を犠牲にするとか、こういうことが続けられているんですが、こういう国民生活を豊かだ生活と言えるのか、安心して暮らせる潤いのある社会と言えるのか、大いに疑問なんです。経済企画庁と文部省に伺います。
  118. 坂本導聰

    政府委員坂本導聰君) 国民の豊かさ、生活の豊かさという点につきましてはいろんな問題があろうかと思います。例えば、最近では内外価格羊の問題、あるいは社会資本の問題、あるいは環境の問題等がございます。しかし、委員指摘の点も一つの問題ではないかと存じます。
  119. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) お答えする前に、先ほどの答弁を一部訂正させていただきたいと思いますが、来年度予算と申しましたけれども、八年度予算のことでございまして、九年度の入学者のための授業料の改定幅のことを申しましたので、訂正させていただきます。  それから、ただいまの私立学校におきます授業料等の納付金の件でございますが、平成七年度におきまして私立大学につきましては百十九万三千円、それから私立高等学校につきましては六十一万円ということになっております。  それで、私学におきます授業料等の納付金におきましては、先生御案内のように、本来私学自身の責任において自主的に決定されるべき事柄ではございますけれども文部省といたしましては、従来から就学上の経済的負担の軽減を図るということのために、先ほど申しましたような教育費負担軽減のための施策に努めるとともに、私立学校に対しましても、授業料等納付金の値上げにつきましては一層のいわば経営上の努力を促しまして、極力抑制するように要請してきているところでございます。
  120. 阿部幸代

    阿部幸代君 青少年の科学技術離れ対策、国民生活と高学費の問題を質問させていただきましたので、最後の質問になりますが、科学技術離れにストップをかける上でも国立大学授業料に学部間格差を導入するというのは論外だと思いますけれども文部省に、これは最後の質問になります。
  121. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 国立大学におきましては、従来から学部の種類を問わず、それが理系であろうが文系であろうが学部の種類を問わず同一の授業料を設定してきたところでございます。  学部別授業料の導入ということにつきましては、財政制度審議会などからも一部指摘されておるわけではございますけれども経済的理由によって希望する専門分野への進学の機会に制約を生ずる、個人の能力に応じた教育の機会均等が損なわれるおそれがあるというようなことから、また先生指摘の理科離れというようなこととも関連いたしまして、文部省といたしましては慎重に取り扱うべき事柄であろうかというように考えております。
  122. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 先ほど千葉景子委員から、銀行の女性への貸し出しが非常にスムーズに行われなかったという御発言を聞いておりまして、私も内心ああそうだそうだと。  私も銀行にお金をかつて借りにいったときには、銀行にちゃんとガイドブックがあって、この質問のうちマルが幾つあったら貸せ、マルが幾つなかったら貸すなというのがあるということを聞きました。まず収入はあるか、結婚はしているか、親と一緒に住んでいるか、持ち家があるかというのがあって、次々こうマルをつけていって、私などは結婚はしていない、バッテンと、それで親と一緒にいない、バッテンと、こうなって貸してもらえなかったことが何度かありました。どうすれば一番貸してもらえるかというと、結婚して夫の保証があるとマルが一つふえるということで、しょうがないから結婚をしたということを今思い出しました。  大体日本の国というのは、必要なところにお金を持っていかないで、何かおかしなところに予算をつぎ込んだり、あるいはそういう財源を投資するということがあるなと、こう思いながら、きょうは応援の意味を兼ねまして科技庁と文部省と労働省、これは日本の省庁の中では一番予算をもらえないるということで、かつて私の若いときに銀行にお金を貸してもらえなかったことを思いながら、きょうは応援をするつもりで質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、一番先に科技庁にお聞きをいたします。日本は人的資源が重大なんだとか、あるいは知的にこれから国際社会の競争力をつけなければならないというかけ声のもとにありながら、科技庁は非常に予算も少ないようですし、いろんな意味で大変な思いをしているというふうに思います。  しかし、この間科技庁からいただきました「科学技術振興の現状と課題」というのを読ましていただきますと、これはなかなか大変だなという部分が二、三ありますので、それからお聞きをいたしたいというふうに思います。その一つは、十二ページにありますけれども、つまり、効率な研究活動をするために研究をサポートする支援者、助手ですね、が外国に比べて非常に少ないということで十二ページにその数字が出ております。  この数字をちなみに見ますと、ドイツは一人の研究者に対して一・一人、フランスも一・一人、英国は一・二人、それに対して日本は〇・一二という、まさに十分の一というけた違いのサポート体制ですが、こんな少ないサポート体制でどういうふうに苦労していらっしゃるか、その苦労話をひとつお願いします。科学技術庁にお聞きします。
  123. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) ただいま笹野委員指摘のとおり、先日、二月の七日でございますが、当調査会におきまして、私、「科学技術振興の現状と課題」について説明をさせていただく機会々いただきましてありがとうございました。その中でお話を申し上げましたが、研究活動についての一つの問題点、我が国の研究者一人当たりの研究支援者の数が非常に少ない、諸外国に比較しても少ない、かつ実際の研究の現場におられる研究者の方々にお聞きをいたしましても、研究支援者の数が少ないがために研究の本務が非常に阻害をされていると。  具体的に言いますと、例えば事務的な手続でございますとか、実際の実験データをとるための専門的な技術者とかいうものが不足をしているために、それを研究者みずからがやらなければいけないというようなことで、相当に研究者の活動が阻害をされているという現状がございます。  私どもといたしましては、先日もお話申し上げましたが、科学技術基本計画策定の中の一つの大きな項目としてこの研究支援者対策をどうするかというのをできるだけ具体的に計画の中に書き込みたいということで現在努力をしているところでございます。
  124. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 何でもそうですけれども、私たち議員も、これがもしいい政策スタッフがアメリカのように二十人いたとするといろんなことができるんですが、いないから残念ながらこのぐらいですけれども。科学なんというのは本当にそういう意味ではこれから重大なところですので、今はそういう貧弱な体制の中でこうやって頑張っているわけですから、より一層これから頑張っていただくようにしたいと思いますし、私どももいろんな意味でお手伝いをさせていただきたいというふうに思っております。  もう一つ質問をさせていただきますが、この中の十九ページを見ますと、女性の研究者のことが書かれております。先ほどの御質問の中でも、女性の研究者が非常に少ない、だから審議会の委員のメンバーも非常に少ないというお話がありましたけれども、これは私たち女性にとっては大変残念な問題ですので、ここをこれから十分に直していかなきゃいけない。そのために女性の研究しやずいような環境をつくるというのがありますが、どのような環境をこれからおつくりになるように努力なさっているんでしょうか。
  125. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) ただいま委員から十九ページの資料のお話ございました。十九ページの資料の御説明を申し上げたときにございますように、平成六年の十二月二十七日に科学技術系人材の確保に関する基本指針というものを内閣総理大臣決定をいたしております。  この基本指針の考え方は、先日お話を申し上げたとおりですが、科学技術分野は本来男女にかかわらずその能力を発揮できる分野でありまして、女性が持つ感性ですとか創造性、知識、経験などを最大限に生かすことが重要である、そのために女性が安心して研究活動に参加できる環境を整備することが必要であるという指摘をいたしているわけでございます。  一九九四年にアメリカのスペースシャトルに搭乗いたしました向井千秋さん、彼女の活躍というのは非常にまだ記憶に新しいわけでございますけれども、こうした女性の人間像や活動につきまして積極的に情報の発信を行う、それによりまして科学技術というのは女性に不向きなんだというような通念を変えていくことでございますとか、育児休業制度の定着、勤務時間の柔軟化というような女性が働きやすい環境を整備していくことが必要であると考えておりまして、先ほど申し上げました内閣総理大臣決定がございますので、これを各省庁にお願いをいたしまして、各省庁の現場でそれぞれ取り組んでいただくということで対処しているところでございます。
  126. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 本当はもっともっと激励の質問をしたいのですけれども、他の省庁がありますので。  とにかく、これからの日本が国際的に伍していくためには、また女性が生活をエンジョイするためにも、科学の分野というのは非常に重大だというふうに思います。先ほど局長は女性の感性と言われましたけれども、私は、このごろの女性を見ますと感性よりも度胸の方があるわけですから、隣に座っている松原局長も、感性よりも男性が脅威を感じるようなそういう女性がたくさんいるわけですから、そういう点でもどしどし女性がその能力を発揮できるような環境をつくっていただきたいというふうに思います。  続きまして、文部省お尋ねをいたしたいというふうに思います。  それこそこれからの日本は、知的・人的資源として文部省は非常に重大な役割を背負わなければいけません。しかし、この調査会というのは中長期的な二十一世紀を見越してということですので、オウム真理教というあの事件が起きたときに、私自身も今生徒を教えておる立場としまして、あの若い、しかも優秀であるんだと思いますが、そういう人たちが心のよりどころをなくして反社会的な行動に出るということは、非常に私は心の凍る思いがいたしました。これからはああいう殺人集団をつくるということがあってはいけないわけですから、そこで文部省お尋ねしたいのです。  今、国立大学の中で、社会的なルールという問題であるならば、これは一般法学であり、あるいは憲法という講座の中で社会的なルールというのを教えなければいけません。ともすると間違って、道徳論がありますが、私は道徳と法律とは全く違うもの、重なる部分はあっても違うものだというふうに思っています。  人を殺したならば死刑になるんだというルール、このルールを今大学でどのぐらい教えているかという数字を聞くと、文部省はごまかしますから私が言います。ちなみに、国公立の大学を合わせて百四十七校のうち、必修にしている大学が五十一校しかありません。これは三分の一しかないんですね。短大に至っては、八十五あるうち四校しかないということです。  そうするならば、人を殺したる者は死刑になるんだという、これは強い罰則をつけたルールです。道徳というのは罰則をつけられません。ですから、大学の中で社会的なルールをきちっと教えるという、そういうことが今すっぽり抜けているということをこの数字から考えますと、私は、どこかの課程で社会的なルールというのをしっかり教えないということにはこれからの日本の社会にとっては非常に恐ろしい現状が起きてきますし、今その一部分が起きていると思います。  これに対して文部省は、なぜ社会的ルールというのを、一番そのルールを身をもってわかる大学のコースの中にきちっと入れないのかということをお聞きしたいと思います。
  127. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 教育のさまざまなプロセスの中で子供が、あるいは大人も含めてでございますけれども、反社会的な行動をしないようにということのためには、さまざまな教育段階もございますし、また方法もあろうかと思うわけでございますが、先生指摘の大学ということに限って申しますと、特に今先生指摘のような、単に道徳というレベルよりやや進みまして、いわば法規範と申しますかあるいは制度化されたルールと申しますか、そういうことを学ぶ場として大学というのは適切なところであろうかと思うわけでございます。  その場合に、憲法とか、いわゆる法治国家としての構造でありますとかあるいは基本的人権でありますとか、憲法に掲げられておりますさまざまな諸原則というものを学生に学ばせるということは大変意義の深いことだと思うわけでございます。  四年制の大学の場合も、それから短大の場合も共通でございますけれども、大学の中で教育すべき事柄というのは二通りございまして、それぞれの専門の教育というものもあるわけでございますけれども、それ以外にいわば幅広い教養と申しますか、あるいは豊かな人間性を持たせるというようないわば教養教育と言われておるものもあわせてやらなければならないことになっておるわけでございます。先生のおっしゃる憲法とかあるいは法律関係の授業科目がどういうように位置づけられるか、それはそれぞれの大学の決めるところではございますけれども、先ほど申しましたような全体の教養教育あるいは専門教育全体の広がりの中で先生おっしゃるような事柄も教えられるということは大変意義の深いことだと思うわけでございます。  ただ、具体にそれぞれの大学でどういう授業科目を設定してそのような目標を達成するかということになってまいりますと、これはそれぞれの大学の教育の問題でございますので、それぞれの大学が自主的に判断して決定するべき事柄であろうかと思うわけでございまして、文部省が逐一どうこうせよと、こういうような形のものではなかろうかと思うわけでございます。  ただ、先生おっしゃったような趣旨は大学教育の中で大いに生かされるべきだということは、常々私どもとしても指導しておるところでございます。
  128. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 今のお答えの中でちょっと私が気になる言葉が二、三あるんですけれども文部省は大学に逐一あれこれ指導はできないというふうにおっしゃいますが、私も大学の中へ身を置いている一人として、文部省規制の厳しいことはもう大変なことでありまして、一教科をふやすためにもこんな厚い書類を出さないと文部省を通らないというのを身をもって見ておりますので、文部省というのは規制の厳しいところだというふうに思っております。  そういう中で、反社会的なことをするな、人を殺すな、人のものをとるな、人を殴るなというのを、これはどの学部であろうとどの教科であろうと私は共通してこういうことこそ教えなきゃならないことであって、その学部によって、大学によってそれは自由だという考え方は非常に私は危険だというふうに思います。  これから二十一世紀にかけて、基本的人権のわからない医学の学生が出たり、基本的人権のわからない工学部の学生が出たりということはあってはならないことであって、どの学部であっても、社会的な立場にある者は人を殺すことはいけないんだということを文部省の威信にかけて私は学生に教え込まなければいけないというふうに思っておりますが、このことは大論議ですので、きょうはあと労働省が残っておりますのでこれをペンディングにしておきまして、私の持論の展開だけをさせていただきたい。  私は、二十一世紀にはそういう恐ろしい社会の実現がないような、そういう社会を構築するためにはみんな基本的人権を全部理解しているという、自分も死にたくなければ人も殺さないという、この簡単な、しかも重大な価値観が全部わかるようなそういう社会をつくりたいというふうに思っておりますので、文部省もその点どうぞそのように御理解をいただきたいというふうに思います。  続いて、労働省にお聞きをいたしたいというふうに思います。  労働省は、人間が働くということが権利として楽しく、しかも働くということは生きていくことと同意義であるというそういう社会の構築をこれから目指していただかなければならない。そのために今労働省は、時間短縮、そして週四十時間、総労働時間千八百時間、そういう社会をつくろうと努力なさっているというふうに思います。  この時短というのは、私にとっては、人類が人間の権利として一番追い求めてきたものじゃないか。特に、女性はかつて本当に長い時間働かされて体を悪くしたり、女工哀史という言葉を生んだようなそういう時代がありました。そういう意味で、時短というのは本当に私はすばらしい社会の構築だというふうに思っております。  そこで私は、きょうは、松原局長は非常に文学的才能がすばらしい方で、先ほど女性特有の感性といった、松原局長を見て感性というのもちょっと言葉が違うんじゃないかなと思いながら、今から二十年前に出たドイツのミヒャエル・エンデという作家が書いた「モモ」について大変御造詣が深いと聞きました。私は、労働省としましてこの時間に関する考え方というのをひとつ御披露いただければ次の質問が非常にしやすいと思いますので、ひとつこの「モモ」についてお話しいただけますでしょうか。
  129. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 私は、今先生がおっしゃったような「モモ」に造詣が深いわけではございませんで、たまたま大体十五年ぐらい前に、子供が小学生のときに夏休みの読書感想文の宿題にこれを読んで書くようにというものが出たものですから買い求めまして、子供が読みました後に私も読みました。  どういうストーリーだったか詳しいことは覚えておらないんですけれども、そのとき私が持った印象は、御承知のとおり、夫も働いておりましたから非常に毎日忙しくしておりました。したがって、子供が洋服を着がえたり御飯を食べたりするのをもたもたしていますと、早く早くと言うのが口癖でして、いつもそう言って子供のおしりをたたいていだような気がしたものですから、これを読んで、ああこういうことではいけなかったのだなということを感じたということだけは今も思い出すわけでございます。  この「モモ」という本は、ストーリーのことを申し上げるあれはございませんけれども、いわばゆとりのない生活をしていると、単に忙しいというだけではなくて人間性までもだんだん失っていく、そういったことの恐ろしさを示しているものではないかというふうに思うわけでございます。  そういう意味で、今御指摘の労働時間の短縮というのは、まさに豊かでゆとりある生活を実現するために必要な条件だというふうに思っておりまして、私ども行政の非常に重要な施策の柱として進めているということだけをとりあえず申し上げさせていただきたいと思います。
  130. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私自身も「モモ」という本を読んだときに、私は、働くということは時間をどういうふうに上手につくっていくことなんだろうかという原点のような感じがいたしました。今労働時間短縮の問題の一番担当の松原局長がこの「モモ」に深い思いを寄せているということをちょっと漏れ聞きまして、そういう方が時短をやるならば、これはまさに労働政策としてはすばらしいというふうに思いながら、続いて、今千八百時間にするためにはあと一年ちょっとしかありません。しかし、現状は千九百九時間という、あと百時間を短縮しなければならないという現状。この一年間のプロセス、どのようにして千八百時間に持っていくのか、それをちょっとお知らせいただけますか。
  131. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 年間千八百時間の達成に向けまして私どもは三つの柱を中心として取り組んでいるわけでございます。一つは、完全週休二日制の普及促進、二つ目は、年次有給休暇の取得促進、そして三つ目は、所定外労働の削減ということでございます。  中でも、来年度につきましては、そのうち特に完全週休二日制に相当します週四十時間労働制、先生御承知のとおり、これは来年の四月から一部の特例業種を除きましてすべての事業所に週四十時間というのが適用されることになっているわけでございますが、残念ながら、現状を見ますと、特に中小企業を中心といたしましてまだここにまで至っていないところが多数あるわけでございます。そういうことから、来年の四月に向けましてこの残された一年間、特に労働時間短縮が難しいというふうに考えられます中小企業をいかにそこに円滑に移行させるかといいますか、そういうことに向けての指導を全力を挙げて取り組みたいというふうに考えているところでございます。  また、年次有給休暇につきましては、現在の取得状況などを見ますと、平均で一人の労働者に大体十六・九日与えられているわけでございますけれども、そのうち取得されたものが九・一日ということで取得率は五四%程度でございます。この完全取得に向けての雰囲気づくりといいますか、そういったことも非常に大きな柱だというふうに考えておりまして、この点につきましても、機運の醸成などを図るべく取り組みを強めているところでございます。
  132. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 今「モモ」のお話にもありましたように、これからの二十一世紀、人間が豊かに過ごすというのは時短なくしてはあり得ない。まして女性がこれから社会的にいろいろと働くためにも、時短があればこそできることだというふうに私は思っております。  そういう意味で、一部からこの時短の来年度、平成九年四月からを猶予するようにというようなそういう意見があるということを漏れ聞きましたけれども、その実態はどうなっておりますか。
  133. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 昨年十一月末に日本商工会議所ですとか全国中小企業団体中央会など四団体から、今御指摘ございましたように、平成九年四月からの四十時間制への移行というのが非常に困難であるということから、それを先延ばしにしてほしいと、まあそれ以外にもございましたけれども、そういった御要望が労働大臣あて出されているという事実はございます。
  134. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 我々人類も最初長時間労働を強いられた時代もありました。時短などというのは夢のまた夢というそういう時代から、今こうやって千八百時間にみんなが努力しながらやってまいりました。そういう歴史の発展性も考えあわせまして、ひとつ千八百時間が実現できますように労働省は渾身の力を込めてそれに対して頑張っていただきたいというふうに思います。  最後の質問をさせていただきますけれども、常々労働省はいろんな補助をして、働く者あるいは中小企業に対して助成をしながらその成長に一生懸命努力をしていますが、それは常に働く勤労者個人に対する助成というのが余り見られなくて企業にあるいは使用者側にということですが、今度この新しい改革、新分野の開拓、つまり起業、そういうところに対して、能力開発の部面から半働移動能力開発助成金というのを創設したやに聞きますが、これについてちょっとお知らせいただけますか。
  135. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のありました帯働移動能力開発助成金でございますが、これは昨年の七月、不況業種等の雇用安定法を改正いたしまして、これから産業構造等が変わる中で労働移動等を余儀なくされるケースがふえてくる、その労働移動の際に失業を経ないで次の安定した職場が確保されるように、やむを得ず移動が出てきた場合にその移動の前後に能力開発の機会を与えていこうということで、その前後に能力開発の機会を与える事業主に対しましてその教育訓練の費用、その間の賃金につきまして一定の助成を行う、こういう制度でございます。  その後、昨年の十一月の補正予算におきまして、その前後という期間を、六カ月ずつという最初の制度仕組みでございましたが、これを一年間に延長いたしまして内容を厚くして現在実施かいたしているところでございます。
  136. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は非常にそれはいい制度だというふうに思います。こういう制度があることを大いにPRいたしまして、この助成金がみんなに広く使われるようにひとつ御努力いただきたいというふうに思います。  きょうは科学技術庁、そして文部省、労働省、余り予算をたくさんいただいていない省に対して、私は心からこれから重大な省である、こういう非常に重大なところには私たちは心から、特に私は心から応援のエールを送りながら、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  137. 水野誠一

    ○水野誠一君 それでは、まず通産省に伺いたいと思います。  きょうもいらしておりますが、横川審議官が、以前の調査会で、産業政策の現状と課題というテーマで中長期の経済的問題についてお話をされました。日本経済の将来の空洞化に対応するための政策課題ということで、規制緩和あるいは制度改革の実施、新規事業の育成ということを述べられたわけでありますが、これはまさに我が国にとって非常に重要な課題であるということで同感に感じております。  規制緩和に関して申しますと、一時的な失業がふえるのではないかという議論もあります。この議論の是非はともかくとしても、短期的に見ると、確かに規制緩和のコストというものが現実に存在しているわけでありますし、一時的な失業率の増加というものも避けられないことかと思います。現在、既に完全失業率が過去最悪と言ってもいいかと思いますが、三・四%になっているということでありますし、今後も決して予断を許さぬ状況にあります。中期的に見れば、特に九〇年代後半には労働力供給不足の時代になるということで調整されていく側面もあると思いますが、当面の問題としては、この失業率の増大ということも含め無視できない課題であるというふうに思っています。  このような経済状況を考えてまいりますと、新規事業いわゆるベンチャー企業の育成が雇用創出という観点から重要になってくるわけでありますが、しかし現在、ここ数年を見てまいりますと新規開業率が廃業率に比べて低下をしているということなどを見ても、我が国のこういった新規事業の育成というものは米国なんかと比べるとまだ難しいものがあるということを感じるわけです。  もちろん、通産省もベンチャーキャピタルの支援施策の打ち出しとか公的金融などを整備されるということでいろいろ施策を打ち出されているわけでありますが、直接金融に関する制度的な規制をさらに緩和していくということからも、その資金調達を市場からやりやすくするというような方策も必要になってくるというふうに考えます。  しかしながら、この手の新規事業というものが雇用をつくり出せるようになるまでにはどうしても時間がかかる、失業者をすぐには吸収できないという問題があります。とりわけ情報産業、今一番花形と言われている情報産業などでは余り雇用自体を必要としていないという面もある。  つまり、雇用の調整にはいずれにしても時間がかかるわけでありますが、このような状況の中で通産省としてここ数年の具体的課題としての雇用調整、これをどういうふうにお考えになっているか、この点について伺いたいと思います。
  138. 横川浩

    政府委員(横川浩君) 現在、景気全体といたしましては緩やかながら再び回復の動きが見られ始めている、こういう状況にあるわけでございますけれども、こういった中で雇用失業情勢は先生指摘のとおり大変厳しいものがあるわけでございます。  それからまた、規制緩和などの構造改革の実施等を背景にいたしまして産業構造が変化をしてまいります過程におきまして、いわゆる労働の需給のミスマッチ等によります失業問題が発生するおそれがあるということも認識をいたしておるところでございます。  こういった状況に対応いたしまして雇用創出をしていくために、まず、このところの景気回復の動きを絶やすことなく本格的な回復軌道に乗せていくことが重要でございます。その意味で、平成八年度予算の早期成立、執行を図りますとともに、経済構造改革の一層の推進など切れ目のない経済運営に努めていくことが重要だろうと考えております。  それからまた、将来に向けまして発展性のある雇用機会を創出することが不可欠、重要でございます。このためには、詳細は省略をいたしますけれども、各種施策の投入によりましてベンチャー企業、新規事業の創出といったものが大変重要になってくるわけでございます。  それから、先ほど雇用の面でのミスマッチというお話をちょっと申し上げましたけれども、いわゆるこれから伸びていく産業分野、企業に対しての人材の移動を円滑に進めていくための各種の環境整備、これも重要だろうと思っておるわけでございます。  雇用の創出につきましては、このように大変多面的な対応が必要でございまして、今後とも全力を挙げていきたいと考えているわけでございます。  先生の御指摘にもございましたように、産業構造の変化、それからそれと並行してあらわれます労働面での状況、このある種のタイムラグのようなものをなくす、ないしは極力小さくしていくためにも各種経済構造改革対策を早急に打っていく、こういうタイミングも極めて重要だろうというふうに考えておる次第でございます。
  139. 水野誠一

    ○水野誠一君 続いて、国民負担率の増加について伺いたいと思います。  我が国の高齢化社会が進んでいく中で、社会保障費の増加というのは避けられない、また国民負担率は今後相当高くなるという予測ができるわけです。一般に、国民負担率の増加というのは、民間市場の活力を阻害する、ひいては経済全体の停滞を招くということが心配されるわけであります。したがって、行政改革、規制緩和推進とともに、社会保障費の肥大をさせないための年金制度あるいは医療制度の改革が非常に重要な課題になるということであります。これは、私は過去に決算委員会等で厚生省にも何度かこれについての質問をさせていただいてきた課題でもあります。今回また、介護保険の導入に関する審議が進んでいるということで、企業負担の問題がここでも論議されているわけですが、企業にとってはさらに負担が増大することになってくる。こういった国民負担率の増大が経営コストの増加、さらにはさまざまな影響が経済活性化の上で相当出てくるんじゃないだろうかなという懸念もあるわけでありますが、通産省としてはこの辺についてどういうふうにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  140. 横川浩

    政府委員(横川浩君) 平成五年になりますが、臨時行政改革推進審議会が答申を出されまして、高齢化社会への移行に伴いまして社会保障費が増大をして国民負担率が高まっていくということが経済活動の活力を阻害するんではないか、こういったような懸念を踏まえて、高齢化のピーク時、二〇二〇年ごろでございますが、におきまして国民負担率が五〇%を下回ることを目標とすると。それからまた、国民負担率を五〇%未満にとどめるために、社会保障制度を初めといたしました制度、施策を初め、行財政全般にわたり思い切った改革を進めていくことが必要である、こういうことを提言されておるわけでございます。  通産省といたしましても、我が国の経済が活力を保ちながら安定的に成長するということ、それから豊かな高齢化社会を実現していくということ、この双方の両立が可能となるような社会保障制度の改革を進めていくことが重要であろうと認識をいたしておるわけでございます。  経済活動のコストということで申しますと、社会保障費用の負担以外にも、物流、エネルギー、流通などのいわゆる高コスト構造が産業空洞化を招くのではないか、こういった懸念が言われておるわけでございまして、このような懸念を払拭するためにも大胆な経済構造改革を進めていくことが必要でございます。  企業が国を選ぶ時代であります今日、産業活動の場としての我が国の魅力を何とか一層高めることによって空洞化の問題に対応していく、こういうことを基本的な考え方といたしております。
  141. 水野誠一

    ○水野誠一君 続いて、自治省に、地方税における法人課税に関して伺いたいと思います。  今もお話が出ておりましたが、産業の空洞化ということに対処していく中で、法人税の問題というのは無視できないと思います。現在のように企業活動が大変国際化をし、ボーダーレス化していく、企業経済活動のしやすい国を選択することが可能な時代になってくると、産業が法人税の高い国から低い国に移転するということが夢物語ではない、かなり現実化していくことがあるのではないかと思います。  したがいまして、国際的な法人税負担の水準というものを無視して法人税率などを一国だけで決めるということが逆に難しい時代になってくるということも言えるわけです。すなわち、税制改革の議論というものも企業活動の国際化という現状を考えてやっていかなきゃいかぬ。こういう視点から見ていきますと、日本の法人所得に対する税負担というのは欧米諸国に比べてかなり高いということが言われます。  例えば、実効税率において、日本が五〇%であるというのに対して、ドイツは四八%、米国は四一%、イギリスは三三%ということで、これと比べてもかなり高いわけであります。また、実質税負担に関して見ていきますと、日本は実効税率とほとんど違わない四九%であるわけでありますが、アメリカ、イギリス、ドイツでは、租税特別措置の減収率が二割から四割に達しているということで、我が国と諸外国との実質税負担率の格差というものは実効税率よりもさらに大きくなっているという考え方もあるわけであります。したがって、我が国の法人所得課税を国際的なレベルまで下げるべきではないかという議論があるわけであります。  確かに、国税における法人税を下げる必要があるということはしばしば指摘されるわけですが、我が国の実効税率が高いのは、実は地方税における法人税が高いことにも原因があるわけで、地方税の見直しが必要になってくるのではないかというふうに考えます。特に、地方における法人税の依存度が極めて高いわけで、つまり日本の地方税収の三割が法人税に依存しているということも、国際的に比較をしてみるとやや異例な数値になるのではないかというふうに思うわけです。  そういう中で、地方税における法人課税の問題に関して、ぜひ御意見を伺いたいというふうに思います。  そして、さらにこの議論を進めていきますと、それでは法人所得課税の減税のための財源をどうするのかという問題が必ず出てくると思うんですが、その際に、赤字法人に対して税負担を求めるということはできないのかという議論があると思います。法人税の税務会計上の問題もあり、我が国においての申告法人企業というのは約二百三十万社で、そのうちの半分を超える百二十万社が法人所得課税を逃れている赤字法人であるということになっています。しかしこれらの法人は、地域における行政サービスからの受益を受けているわけでありますが、それにもかかわらず税金を払っていない。つまり、受益負担の原則からもそのような法人に対する課税というのは真剣に検討すべきではないかなという考え方もあります。  この点に対する自治省の見解を伺いたい。すなわち、赤字法人にも応分の負担をしてもらうことによって黒字の企業の税率というものもリーズナブルなものにしていく、こういう考え方についていかがお考えかということを伺いたいと思います。
  142. 石田直裕

    説明員(石田直裕君) お答えいたします。  我が国の法人課税につきましては、昨年十二月の税制調査会の答申におきまして、「我が国産業の国際競争力が維持され、企業活力が十分に発揮できるよう、産業・企業間に中立的で経済活動に対する歪みをできる限り与えないような方向で、本格的な見直しを行う必要がある。その際、主要諸外国の動向等を踏まえ、法人課税が財源、税体系に占める重要性にも留意しつつ、税率、課税ベースの両面にわたった包括的な検討が必要である。」旨、指摘されております。  この答申では、さらにこの検討に関しまして、「基本的には、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるという方向に沿って検討することが適当である」ということにしておりまして、法人課税をめぐるさまざまな問題につきまして多面的に議論を進めるという見地から、税の専門家等を入れました法人課税小委員会を昨年十月に設置いたしまして、本年秋に予定しております中期答申に向けて、主に課税ベースの拡大を中心にいたしまして幅広い議論をいたしております。  地方の法人課税のあり方につきましては、今後、このような視点からの税制調査会や法人課税小委員会におきます議論を踏まえまして、多面的な検討を行っていく必要があると考えておるわけでございますが、その場合、昨年成立いたしました地方分権推進法にも規定されておりますとおり、国と地方公共団体との役割分担に応じました地方税財源の充実確保を図っていくという観点も十分踏まえて検討していく必要があると考えております。  次に、赤字法人課税の問題でございますが、先生の御指摘のとおり、最近の法人の申告状況によりますと、全法人の半数を超える法人が赤字申告を行っておりまして、とりわけ中小法人の赤字申告の割合が高い状況にございます。これは結局は赤字法人、所得のない法人に対する法人税の課税ということになるわけですけれども、この問題は、基本的には所得課税としての法人税の枠組みを超えるという問題がございます。  このような状況を踏まえまして、平成五年十一月の税制調査会の中期答申におきましても、赤字法人におきます交際費等の任意的な経費支出の取り扱いについて見直しを行うなど、所得課税の枠内で何らかの措置を講じられないかどうか検討する必要があると指摘されておるところでございます。  一方、赤字法人に対します地方税の課税のあり方につきましては、先生も御指摘のとおり、赤掌法人も地方団体による公共サービスを享受しているということから、事業税の課税標準のあり方を検討すること等によりまして、応益的な負担の強化を図るべきではないかという議論が従来からなされております。仮に事業税に、事業の規模ないし活動量に応じました所得の外形標準を導入することとなりますと、結果的には所得のない赤字法人においても応益的な負担をしていただくということになるわけでございます。  しかしながら、こうしたいわゆる外形標準課税につきましては、適切な外形標準を何に求めるかなど解決すべき点がございまして、引き続き事業に対します応益負担のあり方の問題として検討を進めていく必要があると考えております。  また、現在、地域社会の費用を広く負担していただくという性格の地方税といたしまして、法人住民税の均等割を課税いたしております。この税率につきましては、これまでも定額課税の見直しの一環としてその見直しを行ってきたわけでございますけれども、今後、地方の法人課税のあり方について多面的な検討を行う際には、法人住民税均等割につきましても、地域社会の受益関係等を踏まえまして、その税率のあり方についてもあわせて検討をしていく必要があると考えております。  以上でございます。
  143. 水野誠一

    ○水野誠一君 今の問題に多少関連するんですが、国税と地方税の納入手続が別々であるということが、一方ではかなり経営コストを上昇させているという点もあると思うんですね。これは確かに、これから企業というものがさまざまな合理化を図りながら利益体質に持っていかなければいかぬという中では、こういった納税のための事務ということも非常に見逃せない要素になっていくんではないかというふうに思うわけです。本来ならば、国か地方自治体のどちらかが一括徴税して分配すべきだということ、これによって恐らく国の方のあるいは地方自治体の方の行政コストというものも下がっていくんじゃないかな、一挙両得になるんではないかなというふうに思うんです。  これも、何度か今までこういう素朴な疑問を出す中では、縦割り行政的なバリアに阻まれてなかなかこれが実現しないというか難しいというお答えになるんですが、改めて伺いたいと思うんですが、こういう問題について自治省としてはどうお考えになるか、伺わせていただきたいと思います。
  144. 細野光弘

    説明員(細野光弘君) 地方税につきましては、先生もよく御案内のとおり、県、市町村などの地方公共団体が自分で賦課徴収をするということによりまして、いわばその過程を通じましてその団体の行財政についての住民の関心を深めていただく、そういう面がございますし、地方団体の方におきましても、自分の努力で徴収した税で財政を運営することで税の使途に対する意識というものが強まるという面がございまして、私どもはそこにいわば地方自治の原点があると考えているところでございます。  徴収事務の効率化という観点から、今御指摘されましたように、そういった国税、地方税の徴収事務を一元化できないかというお話があるわけでございますけれども、やはりそこら辺は、今申し上げましたように、地方自治の本旨といいますか、そういった地方自治の考え方から見て問題があるのではないか。また、どういうふうに具体的に一元化の仕組みを仕組むかによりますけれども、行政コストも入れて総合的に見た場合にどのくらいの簡素化ができるんだろうかという問題もあるのではないかというふうに考えておるところでございます。  しかし、いずれにしましても、税制に対しましては簡素化というものを図っていく必要があるわけでございまして、複雑化する傾向のある税制につきまして、国民の方々にわかりやすい簡素なものとするということが必要であると考えておりますし、あわせまして納税者の方の事務負担の軽減、税務執行の効率化ということが必要であると考えているところでございます。  そういう意味で、今までもやってまいりましたけれども、地方の税務行政の運営につきましては、納税の便宜や徴税コストの軽減の観点等から事務の見直しを行いたいと考えておりますし、地方税部局と国税当局との協力体制を強化するなどいたしまして、さらなる簡素合理化を推進してまいりたいと考えているところでございます。
  145. 水野誠一

    ○水野誠一君 これは、地方自治の精神あるいは分権化の精神と事務の簡素化というのは違う次元の話だというふうに思いますので、ひとつこういう新たなるベンチャービジネスを育てていく上でもぜひこの実現を図っていただきたいというふうに思います。  次に、労働省に高齢者の就業について伺いたいと思います。  先ほど横川さんのお話の中にもミスマッチという話が盛んに出たわけでありますが、今高齢者をめぐる雇用状況というのは大変厳しい状況があるということは以前も御説明がありました。六十歳以上の完全失業率が五・九%、また有効求人倍率が〇・〇七%ということでありますから、これは千人の求職者に対して七人しか枠がない、つまり求人がないという現状であります。これは大変厳しい状況になっているわけです。今後、ますます高齢化社会が進む中で、就業意欲を持っている高齢者のためにどのような職業の機会を用意することができるかということが非常に重要だというふうに思います。  特に、長期的に見ていったときには、出生率の低下による若年労働力の不足が今後見込まれるということの中でも、高齢者の就業率の増加というものは片方では非常に歓迎すべきことであるわけでありますが、どうも質的な面でのミスマッチというもの、適切なマッチングというものが行われていないということが言えるような気がいたします。  環境整備の必要性とかいろいろ課題はあるわけでありますが、特にさまざまな経験あるいはバックグラウンドを持った高齢者の就業というものを促進するために、どうも公的な職業安定所の機能だけでは十分ではない。民間職業紹介とかあるいは人材派遣業などの機能はもっと積極的に活用されるべきではないかなというふうに思うわけでありますが、とりわけこの議論はさまざまな場面でなされていることもあるんですが、本日は高齢者の雇用環境の整備、あるいは就業の促進ということに対してお話を伺いたいと思います。
  146. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) ただいま水野先生が御指摘のとおり、高齢者を取り巻く雇用情勢は大変厳しいものがあるわけでございます。  ちょっと僭越ですが、ただいまの先生お話の中で触れられました直近の有効求人倍率、六十歳以上の方ですけれども、これは〇・〇七倍ということで、パーセントではございませんで、〇・〇七倍で百人に七人というそういうカウントに、いずれにしても非常に少ないわけでございます。  そういった厳しい状況がある一方で、御案内のとおり二十一世紀初頭にかけましてこれまでに例を見ない速さで超高齢社会を迎えるということになるわけでございまして、私どもといたしましても、こういった状況に対応して我が国経済社会の活力を維持していくためには、二十一世紀初頭までに希望すれば六十五歳までだれでも現役として働くことができるような、そういった社会的な枠組みをつくっていくことが極めて重要な課題であるというふうに認識をいたしております。  そういった状況を受けまして、私ども、高年齢者等職業安定対策基本方針というものを策定いたしまして、それに沿いまして具体的な施策を展開いたしておりますけれども、その中心となっておりますのは六十歳定年制を基盤とする六十五歳までの継続雇用の推進ということでございますし、また一方で六十歳代前半になりますと高齢者の就業ニーズも大変多様化してくるということで、そういった多様なニーズに対応できるような雇用あるいは就業の機会をどうやって確保していくかということになってまいるわけでございます。  もちろん、その前提といたしまして雇用環境の整備と申しますか、労働時間の短縮を進めていかなきゃならぬ、あるいは時差通勤とかフレックスタイムこういったものを普及させていかなきゃならぬ、また高齢者に配慮した作業環境ですとか作業施設、そういったものの整備も支援をしていかなきゃならぬといったような施策を推進いたしているところでございます。  また、ミスマッチのお話が出ておりましたけれども、こういった一般の雇用の場のほかに、高齢者の能力や経験に見合った活躍をしていくことができるようにするためにも、多様な形での雇用就業を促進していかなければならぬわけですけれども、このため私ども公共職業安定所に専門の職員を配置いたしまして、高齢者の方々の今までの知識あるいは経験を踏まえた形でのきめ細かな職業相談、職業指導、そういったものを行っておるわけでございます。  そのほかにも、労働者派遣の関係では、一昨年、法律改正を行いまして、六十歳以上の高齢者につきましては特例制度を設けまして、業種に関係なく幅広くできるようにするといったような措置を講じたところでございます。  また、臨時、短期的な就労を希望する、こういった方々のためにシルバー人材センター事業を推進いたしておりますけれども、これにつきましてもさらなる事業の発展、拡充を図っていくために、今国会に都道府県単位のシルバー人材センター連合を創設することができるような、そういった内容の高年齢者雇用安定法の改正案の提出をいたしておるところでございます。  こういったいろいろな施策を通じまして、高年齢者の雇用就業の確保に全力で取り組んでまいりたいと思っております。
  147. 水野誠一

    ○水野誠一君 ありがとうございました。
  148. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時散会