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上田耕一郎君 会長から永野議員の御
意見というので、全部反対の
意見を少し申し上げたいんですが、まず第一に、
集団的自衛権の問題を
国連憲章第五十一条の規定を引かれ、
日本も権利としては個別的、
集団的自衛権を持っているということを
確認しているという話から話されたので、ちょっと少し歴史に戻って述べたいんですけれ
ども、
国連憲章の原案、ダンパートン・オークス
会議でつくられた原案には第五十一条はなかったんですね。
二十世紀で二回
世界大戦が起きて、これは軍事
同盟の
対立が根源だというので、国際連盟の規約でも、また国際連合の憲章の原案でも軍事
同盟はもう廃止するというのが趣旨だったんです。それで、ダンパートン・オークス
会議での原案には旧敵国、つまり日独伊、この三国に対抗する
同盟を除いて軍事
同盟というのはつくらないというのが原案だったんですね。私は、これは平和と
民族の自決を守る上で非常に重要な歴史的な教訓だったと思うんです。
ところが、その原案に何で第五十一条が入ったかというと、当時ラテン
アメリカに関して米州機構という
地域的機構をつくることが
アメリカの後ろ盾で進んでおりまして、最後のサンフランシスコ
会議でこの第五十一条が入ったんです。
個別的、
集団的自衛権、
集団的自衛権という概念はあのとき初めて国際法上も提起されたもので、当時
アメリカはダレスが大体
国連担当をやっていたんですが、ダレスの論文を読むと、ソ連が最初反対していたんですけれ
ども、結局これが入るんですが、ダレスは、第五十一条、個別的、
集団的自衛権が入ったというのは画期的だと、画期的な価値があると言って非常に高く評価しておりまして、これに基づいてNATOがつくられ、ワルシャワ条約がつくられ、
日米安保条約がつくられ、米韓
同盟条約がつくられ、ソ連と
アメリカを
中心とする軍事
同盟の対決が戦後
発展してきたわけです。
だから、私はそういう歴史を考えますと、今ソ連がなくなったんですけれ
ども、こういう時期に、戦後半世紀を経てもう一度、二つの
世界大戦を経た二十世紀の教訓からいって、やっぱり
戦争とそれから
植民地支配を生み出す根源である軍事
同盟はなくすという方向を大きく目指していくことが必要だろうというふうに思うんです。
それから、永野さんは核兵器の問題に触れられましたけれ
ども、
国連総会の最初の第一号決議というのは核兵器廃絶だったんで、
日本が唯一の被爆国でもありますし、私たちはだから軍事
同盟もなくす、それから核兵器もなくすというのが集団
安全保障を根本的な原理とする
国連憲章の一番の精神じゃないかと。それはなかなか困難ではありますけれ
ども、軍事
同盟をなくし核兵器をなくすという方向をしっかり踏まえて我々は考えていかなきゃならないんじゃないかと、一番根本問題としてやっぱりそう思うんですね。
日本も、私たちはですから非核非
同盟の方向を進むべきで、これは
国連憲章の精神を踏まえたものだと、そういうふうに考えているわけです。
それから、二番目に
脅威の問題についておっしゃいまして、十万の米軍の存在、
日米軍事
同盟が
脅威だというのはどこの国を回っても聞いたことがないと言われるんだけれ
ども、現にある
政権を回ったんではやっぱり
アメリカと一緒の国が多いんですから、そういう声ばかりお聞きになると思うんですけれ
ども、例えば非
同盟諸国首脳
会議というのは今百十三カ国加盟していまして、
国連加盟国百八十数カ国のうち百カ国を超しているわけですね。この非
同盟諸国首脳
会議というのは、非
同盟という名前があるように、軍事
同盟なくそう、核兵器なくそうと、それから帝国主義、
植民地主義反対、南北
問題解決を目指している国で、いろいろ問題をはらんでいますけれ
ども、やっぱり軍事
同盟をなくそうという方向でつくられている国で、フィリピンも
アメリカとの軍事
同盟をなくして数年前ここに参加していますし、だから、軍事
同盟を全部肯定している国ばかりだというのは、今の
世界の現状の声からいって違うんだと思うんです。
橋本総理も私
どもの質問に対してこの間本
会議で、第二次
世界大戦について侵略と
植民地支配の反省ということを言われました。やっぱり
世界平和を一番崩すものは侵略と
植民地支配なんですね。じゃ、侵略と
植民地支配をやる主体は何かというと、やっぱり二十世紀初頭に成立したインペリアリズムですよ、帝国主義ですよね。だから、第一次
世界大戦というのは二つの帝国主義国家の軍事
同盟の対決で始まったし、第二次
世界大戦は日独伊の侵略的軍事
同盟の侵略行為に対抗して始まっていくわけですね。
第二次大戦後はソ連と
アメリカとの対決ですけれ
ども、私たちはソ連も帝国主義だと思っているんです、社会帝国主義と規定している。社会主義は口ばっかりで
行動は帝国主義と同じだと。これはレーニンが規定した言葉なんだが、社会帝国主義というのは。我々は何度もソ連のやり方は社会帝国主義だと、やることは
アメリカと同じだと、こう言ってきた。
アメリカのベトナム侵略もソ連のアフガニスタン侵略も全く同じですよ。だから二つの帝国主義の対決なんですね、米ソ対決というのは。そのソ連がなくなって、
アメリカが
世界最大の帝国主義国家として
アメリカ的システムを全
世界につくろうとしているのが今最大の問題だと思うんです。
これを
アジアで考えますと、
板垣さんも引用されたナイの論文でも、
アメリカは太平洋国家だと。ナイの一番新しい論文でも彼は盛んに言っていますけれ
ども、
アジアにおいて最大の
軍事力を持っているのは
アメリカですよ。
世界最大の帝国主義国家が
アジアで、我々は太平洋国家だと言ってきているわけだ。その拠点にあるのが
日本です。
日本は帝国主義陣営の中で第二の
経済力を持っていまして、まだ完全に独立していないから今我々
日本は帝国主義国家だと簡単に言っていませんけれ
ども、その実力を次第に持ち始めつつある国です。その二つが
同盟して、
日本を拠点にして
アメリカが
前方展開戦略をとっており、
日本に海兵隊、インディペンデンスを置いて、第三
世界のどこにでも投げ込めるという
体制を
強化しているんですからね。
そういう今の現状と、それから二十世紀に
アジアで何が起きたかというと、
日本の
日本軍国主義の侵略
戦争でしょう。それからもう
一つは
北朝鮮の朝鮮
戦争。これは国内戦ではあったけれ
ども非常に重大な
戦争だ。それから
アメリカのベトナム侵略ですよ。それから
中国のベトナム侵略もありました。だから、
アジアでそういう覇権主義のことをやった一番大きいのは、
日本と
アメリカと
中国の覇権主義とそれから
北朝鮮の覇権主義ですよ。そういうものが
アジアの平和を二十世紀に侵してきた。
そういう点から、物質的に見ると、やっぱり
アジアで
民族の自決、自主的
発展、南北問題の
解決等々を侵し得る力も能力も政策も持っているのは、やっぱり
アメリカ帝国主義とその
アメリカにべったりくっついて基地を提供している
日本ですよ。こういうものが本当に
アジアにおける非常に多様な
民族的、民主的な諸
発展をゆがめて、抑えつけて、
アメリカが考えている
支配の計画、方向、
発展のそれこそスキームの中へ
世界各国を押し込もうという
状況があるわけです。
だから、そういうことで、私たちは、これは浅井教授も
参考人として述べられましたけれ
ども、
戦争責任を反省しない
日本の問題、その
日本が軍事大国になる能力を持って
アメリカとこういう
状況にあること、これについて我々はその危険を自覚しなきゃならぬというふうに言われていましたけれ
ども、
アジアにいろんな不安定、不透明な要因があるから
安保体制を
強化するんだと、
自分のことをすっかり忘れて、まるでもう
日米安保体制が平和の神様であるかのように言うのは、全く僕は
アジアの全体のリアルな現状、
日本の歴史的責任等々を見ない
考え方だと思うんです。
それで、それが
集団的自衛権の方向へ今進もうとしているところに非常な危険がある。笠井さんの
発言の中でも引用したんですけれ
ども、ナイ氏が
国防次官補時代、ちょうど
東アジア太平洋の
アメリカの
戦略を発表したときに毎日新聞との記者会見で、単独会見でこう言っている。これは非常に重要なんですが、この
東アジア戦略報告で示すのは、かたい礎石としての
日米安保体制を
維持しながら、
中国や韓国、他の諸国も含めた
信頼醸成の場としての
多国間協議体を
発展させていきたいということ。
日米安保体制が
中心なんですね。これは
日米安保に取ってかわるものではない。我々が考えているのは、NATOのように強固な
日米安保関係とOSCEのような幅広い
多国間協議体だと。だから、
日米安保をNATOみたいに
多国間にするんじゃなくて、
日米安保そのものをNATOのようなものにしたいというんですよ。それを
中心にして
アジアに
多国間協議体をつくりたいと。
日米安保をNATOのようにしたいということは、
日本は
集団的自衛権を持っていないからまだNATOみたいにいかないわけです。だから、ナイ氏が
日米安保をNATOのようにしたいというのは、
日本に
集団的自衛権を持たして本格的な攻守
同盟にすると。
日米安保が本格的な攻守
同盟になるならば、これを
中心に、
中国も含めて韓国も含めて朝鮮も含めて、
アジアに
多国間協議体をつくりたいというのが彼の構想なんですよ。これは最近のナイ論文でもはっきりしているんです。
だから、
安保再定義で文字どおり地球的
規模に広げようということになっているし、それから今度の新
防衛計画大綱で、
日本周辺で重大な
事態が起きたときには
安保体制を発動するという
安保再定義を先取りにしたようなことが出てくるので、だから、
日本に
集団的自衛権を持たせて本格的な軍事
同盟、攻守
同盟にしようというもう非常に危険なねらいになっているんです。最近の
国会でもこの
集団的自衛権問題がいろいろ
議論になってぐるし、自民党も新進党も
集団的自衛権の問題で前向きな検討をしようという方向に動いているので、これは僕は非常に危険なことだと思うんです。
何で危険かというと、非常に接近しているのは、今度の新
防衛計画大綱にはもう
一つPKO、これの促進が入ったんだけれ
ども、ガリ
国連事務総長が、平和への提言ですか、あれを出して修正しましたね、うまくいかないので。その修正したときの
見解で、どこへ行っているかというと、彼は
国連憲章の第八章を全面的に活用する時期に来ているということを講演の中で言っているんですよ。第八章というのは
地域取り決めなんです。つまり、
安保条約だとかNATOだとか、そういう
日米軍事
同盟に、
国連でいろいろ
PKOでやってみたけれ
どもうまくいかない、だから、こういう
地域的な取り決め、
地域的な軍事
同盟にもう
国連が委任するんですよ。そのことによっていろいろやろうというわけです。現に、ヨーロッパではNATOがもう動き始めていますから。
そういう点で、もし
日本が
集団的自衛権を持って、
日米安保に基づいて
自衛隊が米軍と
日本外で戦闘するということになりますと、本当に
国連が
安保理事会の決議に基づいて
日米安保に委任すると、そうすると
自衛隊がどこに行っても
活動するという危険になってくるので、
アジア太平洋における
安全保障の問題をずっと詰めていくと、
日本として一番考えなきゃならぬのは、
安保条約の再定義、それに基づいた
集団的自衛権の付与、永野さんはそれを強く主張されたんだけれ
ども、そこに集約されてくると。
こういう危険な方向をやめさせて、やっぱり米軍基地の縮小、最終的には撤去、
安保条約廃棄、それで
日本が、冒頭に申しましたように、非核非
同盟の方向に、
国連憲章の目指す方向に進んでいくことがやっぱり
日本の一番の責任だろう、そう思います。