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参考人(
大河内一雄君) 従来の
研究班ですと、文部省のにしろ
厚生省の班にしろ、何々を明らかにする目的を持って云々と目的を書きますですね、その次に材料は何を使う、その次は方法は何をやる、何がわかったか、それで
結論となるわけです。その書式で私は書いているつもりですが、あの
研究班の場合は本当に困りました。つまり、何をやっていいかわからないというわけです。
ですが、私
自身の
関係している部分では、HTLVIの
輸血感染のことを当時フォローアップしていましたから、それがあるから、そしてアメリカではそういうことを言っている人がいるわけですね。だから、
血友病の
患者さん、
エイズにかかっていなくても
血友病の
患者さんについて、それを調べることによって何かわかるかということがHTLVIに関することです。
もう
一つは、ヒトパルボビールスというのは、今東京でもはやっているらしいんですが、例のリンゴ病のビールスです。このリンゴ病のビールスは、骨髄にある赤血球の若い細胞、そこを
感染するわけです。
エイズの場合はリンパ球は減ってくるわけですから、事によったら何か
関係があるかもしれないということで、既にアメリカでその作業はやられていました。たまたまパルボビールスと二つのビールスのことは九大の
検査部でも私どもでできることでしたので、まずこれならば何か作業ができる。
いずれにしろ、年度末になると
報告書を書かなければいけませんけれども、何も書かないわけにはいきませんから、それで、材料としては
安部先生のところから、
安部先生というか風間
先生のところから、何人でしょう、百人はなかったと思うんですが、
血友病の
患者さんの血清をいただいて、HTLVIの場合は
抗体があるかないか、パルボビールスの場合は抗原があるかないか。
意味は、二つ違いまして、HTLVIの方は、
抗体があればそれは
感染が続いているよ、でございます。パルボビールスの方は、抗原があれば今
感染があるよ、
抗体があったらもう
感染は済んで二度がかりをしないよという、そういう
意味の
抗体です。
で、やったはいいんですけれども、きちんとした答えを出すことはできませんでした。その理由は、今
血友病の
エイズで問題になっていますのは、濃縮第Ⅷ因子を入れたからなったのかということですね。ところが、もらった
血友病の
患者さんは全例、全部以前に
輸血を受けていたんです。
したがって、二〇%前後、一〇%でしたでしょうか、今数字忘れましたが、
抗体をHTLVIには持っていたんですが、それは
輸血によるものやら濃縮第Ⅷ因子によるものか区別することはできないわけですね、以前の
輸血の影響がありますから。
パルボビールスに関しては、九〇%の人が
抗体を持っていました。抗原を持っていたのは一人もありません。なぜ
抗体を持っているか。普通の人で調べますと、五〇%がそこそこなんですけれども、ほとんどの
患者さんが
抗体を持っていたということは、かつてパルボビールスに
感染したことがあるということか、あるいは第Ⅷ因子の中にビールスの抗原が入っていて、それが
免疫刺激となって
抗体ができたのか、そこの区別ができませんでした。
いずれにしましても、抗原がないということは、そういう
患者さんにパルボビールスが持続
感染はしていないということで、パルボビールスでは説明できない。HTLVIは別のことからでなりますが、HTLVIの
感染は、
輸血といっても白血球が入らないと
感染しません。でも、今問題になっている
エイズは、凝固因子で入るわけですね。だから、疫学的、うつり方からいうと話が合わない。だから、いずれにしましても私の研究の結果というよりは、そちらの筋からこれは違う、うつり方からいって違うから、HTLVIは
エイズのビールスではないだろうと。
そのころ、やはり日沼
教授が朝日か何かに、九州の白血病に起こるというHTLVIは
エイズのビールスではないと、もしそうなら九州にたくさん
エイズがあってもいいはずだし、といったような疫学的なことからそれは否定されたということです。それを研究
報告書に書きました。