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1996-06-04 第136回国会 参議院 厚生委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月四日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  五月三十日     辞任         補欠選任      戸田 邦司君     木暮 山人君  六月三日     辞任         補欠選任      木暮 山人君     都築  譲君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         今井  澄君     理 事                 石井 道子君                 大島 慶久君                 釘宮  磐君                 朝日 俊弘君     委 員                 阿部 正俊君                 尾辻 秀久君                 清水嘉与子君                 塩崎 恭久君                 高木 正明君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 勝木 健司君                 田浦  直君                 都築  譲君                 水島  裕君                 山本  保君                 竹村 泰子君                 西山登紀子君    国務大臣        厚 生 大 臣  菅  直人君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     亀田 克彦君        厚生省健康政策        局長       谷  修一君        厚生省薬務局長  荒賀 泰太君        厚生省社会・援        護局長      佐々木典夫君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省児童家庭        局長       高木 俊明君        厚生省年金局長  近藤純五郎君        社会保険庁運営        部長        兼内閣審議官   横田 吉男君    事務局側        常任委員会専門        員        水野 国利君    説明員        大蔵大臣官房審        議官       和田 恒夫君        大蔵省主計局共        済課長      松川 忠晴君        大蔵省銀行局銀        行課長      村木 利雄君        文部大臣官房福        利課長      齊藤 秀昭君        運輸省鉄道局国        有鉄道清算業務        指導課長     金澤  悟君        労働省婦人局婦        人福祉課長    村上  文君        自治省行政局公        務員部福利課長  小室 裕一君    参考人        中央大学法学部        教授       貝塚 啓明君        社会保障制度審        議会年金数理部        会委員      山本 正也君        年金実務センタ        ー代表      公文 昭夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○医薬品副作用被害救済研究振興調査機構法の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付  )     ―――――――――――――
  2. 今井澄

    委員長今井澄君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る五月三十日、戸田邦司君が委員辞任され、その補欠として木暮山人君が選任されました。  また、昨三日、木暮山人君が委員辞任され、その補欠として都築譲君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 今井澄

    委員長今井澄君) 厚生年金保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、三名の参考人方々から御意見を聴取することといたしております。  中央大学法学部教授貝塚啓明君、社会保障制度審議会年金数理部会委員山本正也君、年金実務センター代表公文昭夫君、以上の方々でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  参考人の皆様から忌憚のない御意見をいただきまして、本案審査参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず貝塚参考人山本参考人及び公文参考人の順序で、お一人十分程度の御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  なお一参考人の御発言は御着席のままで結構でございます。  それでは、貝塚参考人に御意見をお述べいただきたいと思います。貝塚参考人
  4. 貝塚啓明

    参考人貝塚啓明君) ただいま御紹介ありました貝塚でございます。  私は、公的年金制度一元化に関する懇談会の座長をやっておりました関係上ここにお招きいただいて、その趣旨を御説明するということだと理解して発言させていただきます。  公的年金制度は、よく御存じのとおり、かなり制度的に分立しておりまして、それぞれの制度財政状況はかなり違っておるというのが実情であります。そのために、一番端的な例は、かつての国鉄共済ケースを引き継いだJRの場合には御想像のとおり財政状況はよくないということでございます。以前からこの問題についてはその時々に政府間で協議し、その財政負担の仕方を決めてこられたわけですが、現在の段階でやはりもう少し長い目で見てどういうふうにするかということを方向づけするのがこの懇談会の目的でございます。  ですから、やっぱり小さい財政単位ですとどうしても財政が悪くなったところ、いいところと非常に差がはっきりしていろんな問題が発生する。  保険でありますので、入る人をできる限りたくさんにして財政単位を大きくするということが考え方としては重要ではないか。それから、公的年金というのは社会保障でございますので、国が全体として社会保障水準とその場合の負担をなるべく均一化あるいは平準化した方がいいということがありまして、その二つの観点で一元化の問題に取り組んだということでございます。  理屈はそうでございますが、しかしそれぞれの制度は過去いろんな経緯をお持ちになって今もおやりになっているわけでして、そう簡単にすぐに一つにまとめるということは非常に困難であるということはおわかりのことと存じます。しかしながら、全体の方向としてどういう方向に持っていくかということをはっきりさせて、その中で今の段階ですぐにも制度として一つにまとめることができる部分があればまとめたいという方向でございまして、第一段階としては旧公共企業体共済JRJT、NTTについては厚生年金統合するということをこの懇談会ではっきりと提案したということでございます。  いずれにいたしましても、厚生年金というのは今年金の中では一番大きな単位でありまして、多分そこがある意味では標準になるといいますか基準になるわけで、ほかの共済その他の年金についても厚生年金と比較の上でということが多分いつでも問題になるということではないかと思います。  それ以外にももちろん私学共済農林共済等共済はございます。私は今たまたま私学共済に入っておりますが、私学共済は一番黒字が多くて財政が豊かで、私学共済はなかなかそう簡単に一緒になるとはですね。そういう財政的な事情がいろいろありまして、農林共済さんは大変単位がたくさんありまして、全体としてまとめるというのはかなり難しいわけですが、しかしいずれにいたしましても、この報告書の中では「被用者年金制度全体の中におけるこれらの制度の位置付けについて検討する必要がある。」と、お役所の文章は少しあいまいになっておりますが、ある時点ではやはり考える必要があるということが暗黙のうちに言われているんじゃないかというふうに思います。  それから、国共済地共済、これは公務員ケースでありますが、国家公務員それから地方公務員でございます。これは、公務員雇用形態というのはちょっと違っておりまして、要するに平たく言えば、私は昔国立大学におりましたが、国立大学というのは就職すれば、大学によって違いますが、普通は六十なら六十あるいは六十三までそのまま勤めるということがほとんど当たり前のことになって、制度的にもそういうふうに身分が保障されております。そういうものと民間雇用者の場合は恐らく大分地位が違うといいますか、制度とかが違いますので、これをすぐ一緒にするということもいろいろ、そういう点の違いがありますので、その点についても配慮しながら、両制度においても財政安定化のための措置について検討するということでございます。  それからもう一つ重要なポイントは、年金については大変業務が複雑でございます。年金は、要するに今まで年金保険料を支払われた方々それぞれについて過去の支払いの記録、これは全部ファイルされてないところがある。ですから、これは非常にたくさんの情報があるとともに、この処理は大変事務的に手間のかかるものでございます。  しかし、分立している年金制度年金のそういう過去の加入されている人々記録というものをできる限り統一的な番号をつくって、うまく処理ができるようにした方がいいという現業業務一元化についてもこの懇談会で一応提案しております。  いずれにいたしましても、高齢化社会に入る日本の場合には年金全体はだんだん財政的には大変難しい状況になってくるということは当然予想されます。現在の段階ではやはりすべての人々年金を支え合うというポイントは非常に重要でして、そのためには当然のことですが、現在の年金基本的な部分については共通する基礎年金がございますが、その上の報酬比例部分も共通する給付ないしは保険料というのがありまして、それプラス独自のそれぞれの給付をなさることは別段差し支えはないと思います。その場合には、やはりそれを含めてまた別途そういう形でやや高い保険料になるとかいろいろなことがございますけれども、とにかく共通する部分はみんな日本全国、特に被用者については、働いている人あるいはその人の老後については国民全体で、共通する部分についてはなるべく均一にして、公平にして、そして負担し合うというのが基本的な原則であろうと。今後、年金財政は全体としては大変になりますが、なるべく多くの人がプールして負担を分かち合って、できる限りシステムとしては効率的なものにしていった方がいいんじゃないかというのが、多少私の私見もつけ加えて、原則的にはそういうことではないかというふうに考えております。  一応私の話はここで終わらせていただいて、また後で御質問の中でお答えさせていただきます。  ありがとうございました。
  5. 今井澄

    委員長今井澄君) ありがとうございました。  次に、山本参考人にお願いいたします。山本参考人
  6. 山本正也

    参考人山本正也君) 私、社会保障制度審議会年金数理部会委員をしております山本でございます。今回の法案につきましてこのような場で意見を述べる機会を与えられましたことは、まことに光栄に存ずる次第でございます。  私は、これまで企業年金公的年金数理に携わってまいりました年金アクチュアリーでございまして、平成三年に委員を拝命いたしまして以来、年金数理部会では第三次報告書、第四次報告書の作成に参画してまいりました。この二つ報告書の副題はそれぞれ、「公的年金制度長期的安定をめざして」と「財政計算情報公開について」でございまして、どちらの報告書公的年金制度の安定的な財政運営という課題に関しまして、年金数理立場から議論の際の素材になればと思い取りまとめさせていただいたものでございます。  申し上げるまでもなく、公的年金一元化はその一つの大きなテーマでございました。昭和六十年の基礎年金の導入により、いわゆる一階部分につきましては既に一元化が完了しているわけでございますが、今回の法案被用者年金制度に共通するいわゆる二階部分についてその再編成を進めようとするものでございます。  今回の旧三公社厚生年金への統合に際しまして、鉄道共済たばこ共済の二制度につきましては、厚生年金への統合前の期間に係る二階部分給付につきまして、再評価物価スライドを除く保険料拠出時に給付が確定している本来部分につきましては必要な額の積立金を移換し、再評価物価スライド部分については、旧鉄道たばこ共済組合員保険料でなお不足する部分については世代間扶養部分として被用者年金制度で支え合うこととされております。  この仕組みは今後制度統合を行う場合の基本的なルールとなるものと考えておりますけれども、物価スライド、再評価といった世代間扶養により賄うべき部分については、産業構造就業構造の変化に脆弱な部分でございまして、全制度で支え合うべきであるという考え方一元化趣旨にかなうものと考えております。  また、移換すべき積立金水準につきましては、年金数理部会第四次報告書で、該当する部分を読ませていただきますと、「保険料拠出時点において給付が確定できて、しかもその費用について負担を平準化することが必要であると考えられる部分については、積立方式を取り入れた財政運営を行っていくことが重要である。その際には、この部分給付に見合う積立金を確保していく必要がある。」との考え方を示しておりますが、この趣旨に沿うものであり、評価できるものと考えております。  さらに、被用者年金制度による支援につきましては、その半分を各制度で公平に分担し、残りの半分は各制度の体質に応じて分担するという方法がとられておりますが、これは年金財政安定化に配慮した方法として数理的にも評価できるものと考えております。  一元化方式につきましては、年金数理部会議論を行い、第三次報告書におきまして、全被用者年金制度統合一本化を行う案、複数の制度に集約する案、恒常的に費用負担調整を行う案という、いわゆるA案B案C案という類型を考察いたしました。そして、一元化の究極的な目標、すなわち年金財政安定化及び給付負担公平化が達成されるならば、一元化方法としては完全統合以外にもさまざまなバリエーションがあり得ると考えておりました。  今回の閣議決定におきまして、民営化された旧三公社共済厚生年金統合した後につきましては、これまで各制度が独立して運営されてきた経緯もあり、漸進的に一元化を進めることとされておりますが、私は現実的な妥当な選択であると考えております。  なお、被用者年金の再編成が今後漸進的に行われることとなりますので、被用者年金制度財政安定性公平性を確保していくことが必須でございます。さらに、関係者理解を得ながら着実に再編成を進めていくことが重要であり、このためには情報公開及び財政計算時における検証が大きな役割を果たすことは言うまでもございません。  過去の例を見てみますと、旧国鉄共済は、昭和四十九年度は保険料のみで給付を賄うことができたわけでございますが、昭和五十年度には積立金運用収入を使わざるを得なくなり、その翌年の昭和五十一年度には保険料運用収入では給付を賄うことができなくなり、積立金を取ります状態に陥っております。  このように、急速に財政悪化が進む前に年金財政に関する適切な情報に基づきしかるべき手段を講じていくことが、国民年金に対する信頼を確保するためには不可欠なことでございます。  年金制度保険料拠出から年金給付に至るまで数十年にわたる長期制度でございます。このため、長期的に安定して運営されることが非常に重要であり、なかなか短期に急にかじ取りを変更することは困難でございます。それゆえ、的確な情報に基づき長期的視点に立って財政計画を立案し実行していくことが不可欠でございます。被用者年金の今後の再編成加入者年金受給者等の十分な理解を得ながら着実に進める上で情報公開財政検証は重要な役割を担っております。  閣議決定におきまして、年金数理部会制度安定性公平性の確保に関し財政計算時に検証を行うよう要請を受けました。年金制度から離れた中立的な立場に立って客観的に財政状況を明らかにしていく場としての年金数理部会役割がますます重要となってきていることを痛感している次第でございます。  どうもありがとうございました。
  7. 今井澄

    委員長今井澄君) ありがとうございました。  次に、公文参考人にお願いいたします。公文参考人
  8. 公文昭夫

    参考人公文昭夫君) 御紹介いただきました公文でございます。  私は、ただいま本院で審議されている厚生年金保険法等の一部を改正する法律案に対して、基本的に問題があり、賛成できないという立場から意見を述べたいと思います。  まず第一に、本案の底流、前提となっている公的年金一元化構想のそもそもの動機背景が持っている不純な要素について指摘しておかねばならないと思います。  私も、日本国民すべてが平等、公平の年金が受けられるようになることを願っておりますし、そうした政策行政の積極的な推進には賛成です。  しかし、そのための方法論一元化しかないとは思いません。国民で支え合うという方法保険もありますし、あるいは税金を通じて行うこともできます。特に、一九八二年の臨時行政調査会の第三次答申、それを受けた形での八三年、八四年の閣議決定によって計画され実行されてきた公的年金一元化具体的法改定は平等、公平、安定を目指すものとは到底思われないのであります。  一元化の第一弾として行われた八五年の基礎年金創設は、形だけ全国民すべてが国民年金加入者ということになりましたが、それと引きかえに、御承知のとおり、厚生年金共済年金国民年金一号被保険者すべての年金額が二十年間かけて三五%引き下げられる。負担の面では保険料を三倍に値上げする。さらに、九四年の改定では、今日の不況を背景としたリストラも含めて高齢者雇用環境がますます悪化する中での年金支給開始年齢の六十五歳への引き延ばしなどが決められています。  八五年の年金改定時の第百二国会の参議院社会労働委員会、当時は社会労働委員会でございましたが、当時の野党の質問に対して厚生省年金数理官が、この年金改定が進行すれば国の支出は将来ほぼ半分にできる、すなわち具体的な数字としては、一九八六年度の国の支出を一〇○として見た場合、二〇〇〇年には八五・四五、二〇四五年には五六・五七に減らせると答弁しています。これはその当時の会議録十二号に載っておりますので御参照いただきたいと思います。つまり、基礎的部分一元化の最大の理由負担給付の公平などにあったのではなく、いかにして社会保障年金制度から国の支出を削減するかにあったことはこの事実を見ても明白であります。  今回の法案前提として、一階建て部分一元化は完了したから、今度はその上に二階建て部分を整理して乗せるのだというお話があります。しかし、現実はどうでしょうか。委員の皆さんに配られているこの参考資料の百三ページにも載っておりますが、年々値上げする保険料の払えない人たち免除者はふえ続けて三百万人を超えています。免除されず滞納している人たちが約二百七十万人、未加入者は百九十万人とも言われております。このまま推移すれば大量の無年金者、多数の生活できない低い年金しかもらえない人が発生することは明らかです。朝日新聞や多くのマスコミも言うように、まさに年金基本部分一元化の完了どころか空洞化しているとしか言えません。  本法案提案理由、御主張では、官民雇用労働者給付負担の公平と言っておられますが、内容の基本鉄道共済年金に生まれた赤字処理対策が焦点となっています。鉄道共済年金赤字は、そこで働いていた労働者、現にJRで働いている労働者はもとより、すべての雇用労働者には全く何の責任もありません。すべて国と当局JR各社の負うべき責任であることは歴史的に見ても明白な事実です。そうした意味では、本来、国と当局政策がつくり出した年金赤字処理問題と給付負担の公平を図るという年金制度基本的システム改革とは別問題であり、当然切り離して議論すべき課題ではないでしょうか。それを無理やりセットにして組み立てるということ自体おかしな話です。これでは赤字処理こそ本命の意図と言われても仕方がないと思います。不純きわまる背景動機と私は思います。  第二に、この背景動機の問題を前提としてやや具体的に法案に沿って申し上げれば、本法の提案理由も含めて、鉄道共済年金赤字原因責任、そして反省が全く見当たらないということです。九六年二月十一日付の読売新聞では、「JR共済財政悪化の真の原因は、モータリゼーション化民営化によるリストラで、若い現役世代が減り、高齢化が一挙に進んだことだ。」と言っています。もっともな指摘だと思います。だから、公的年金制度一元化に関する懇談会報告の中でも、国の負担を明確にすべきであるという意見があったと記録されているのだと思います。  繰り返しになりますが、鉄道共済年金たばこ共済年金赤字処理は本来の制度改革案とは切り離して討議、処理すべきです。したがって、本法案の目玉である厚生年金を初めとした各年金制度による年間千六百億円の赤字処理拠出についてはどこで分担、負担すべきかは申し上げるまでもないと思います。  第三に、今度の法案が決めようとしている赤字処理方法が、単に八九年に決定された費用負担調整に関する特別措置法の暫定的な継続ではなく、未来永劫に固定化されるという点です。  関連資料を見ましても、一九九七年から五年間年度当たり平均拠出額は、厚生年金年間千二百七十二億円をトップにして、トータル千六百億円とされています。今までの拠出額の倍以上の負担です。加入者一人当たりの金額で見ましても、私立学校先生たちが毎月一人当たり千二百十円、地方公務員労働者が毎月五百九十円、厚生年金加入労働者三千二百万人が毎月三百三十円、値上げされていく本来の保険料に上乗せされて取られることになっています。  しかも、この政府が生み出した赤字原因責任負担の穴埋めを四十年間以上にわたって続けさせられるということになっています。民間企業を初め自治体や各省庁のリストラの進行によって今後財政が悪化する年金が生まれてくれば、当然のことのように全労働者保険料値上げ年金水準の引き下げでカバーするという枠組みが固定化されることになるでしょう。  第四は、民間産業労働者として厚生年金に加入することとなるJRJT労働者保険料の問題です。給付厚生年金と同じだが、保険料は高いまま据え置くという不公平は許されません。当然引き下げて同率にすべきです。  第五として締めくくりの意見を申し述べますが、前に述べた年金制度空洞化を解消し、一人の無年金者も無年金障害者も出さないという本当の意味での年金制度の平等、公平、財政の安定を図る道は、とりあえず一階建て部分基礎年金全額国負担で賄う最低保障年金制度の確立がベターではないかと思います。  この考え方については、既に一九七七年の社会保障制度審議会の建議でも、最低保障部分全額公費で保障する基本年金、その上に社会保険年金を積み上げるという考え方が発表されております。  こうした制度の根本の仕組みの問題とあわせて、九四年の年金改定の際、全党一致附帯決議、附則が決められています。基礎年金国庫負担の増額、現行三分の一を二分の一にするという方向が参議院でも採択されております。最低保障年金制度へ向けての第一歩として私は高く評価しております。まことに良識ある決定と敬意を表しますが、とりあえずこの附帯決議を実現していただければ、鉄道共済年金赤字処理問題も含めて、全国民負担を大きく減らすことができると思います。  以上、時間もありませんので大きなポイントについてのみ意見を述べ、参考人としての意見陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  9. 今井澄

    委員長今井澄君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 自民党の尾辻であります。  先生方にはわざわざお越しをいただきまして、ありがとうございます。きょうは、先生方の御高説をゆっくりお伺いしたいのでありますけれども、私の時間も十五分しかございませんので、どうぞよろしく御協力ください。  まず、貝塚先生にお尋ねをいたします。  お話しのとおりに、先生は公的年金制度一元化に関する懇談会の座長として、今回の三共済厚生年金への統合を初め、被用者年金制度の再編成の枠組みの取りまとめに大変御苦労をいただいておるところでございます。  そこで、まずお伺いするのでありますけれども、JR年金問題は十年来の課題でございました。この問題がこれまでなかなか決着を見ることができなかった一つの要因として、関係者の間にJRに対する相当のアレルギーがあったことも挙げられるだろう、こういうふうに思います。こうした中で、一元化基本的な方向に関する意見が取りまとめられたわけでありますから、大変御苦労があっただろうなとお察しを申し上げるわけです。このように、統合する厚生年金や支援する各制度の側から見ますと、破綻した制度を助けるわけでありますから、いろんな思い、意見があっただろうと思われます。  そうした問題について、どのような議論を経て合意形成が図られたのか、まずお伺いするところであります。
  11. 貝塚啓明

    参考人貝塚啓明君) お答え申し上げます。  ただいまの御質問は大変機微に触れた御質問でございます。確かに、JR共済といいますかあるいは旧国鉄といいますか、その年金の問題が年来の問題でして、この問題に関しましては非常に平たく申し上げれば、経営責任とかいろいろなことがございまして、ある程度自分でやるべきだという考え方がかなり強く、その結果としまして、実を言うと保険料の差異が既にできておりましたし、それから給付につきましても上限が設けられて、JR共済の方はかなり結果的には不利な状況になっているということです。  しかし、この懇談会ではもちろん個別の委員方々はそれぞれにお考えをお持ちですし、多少そういうふうな趣旨の御発言もあったことは私は記憶しておりますが、やはり全体の保険の中で特定の集団が非常に不利な扱いを受けるということは、現在の社会保障制度の中では許容できないというのが大局的な御意見ではなかったかと思います。  その結果として、ある意味では非常に財政力の豊かなところは持ち出しになるということで、もちろん必ずしもはっきりと賛成されたということじゃなくて、平たく言えばやむを得ないという表現ではなかったかと思います。そういう方々も含めて最終的には、そんなに差ができた場合にはどうしてもある部分均一化して、それぞれの負担で全体としてプールする方向が望ましいのではないか、そういうふうに厚生年金を基準としてできる限りそれに近づけていった方がいいのではないかということで、大局的には懇談会の結論になったということです。  もちろん、懇談会の結論もよく読んでいただければいろいろ複雑な表現になっておりますが、最初はともかくも、かつての三公社については厚生年金一緒にやりましょうということについて合意が得られたと。その先についてもこれから考えましょうということについては、程度の差はございますけれども、やはり考えなくちゃいかぬということではそういうふうに皆さんがお考えになった結果、一応こういう文章ができ上がったというふうに理解しております。
  12. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 そこで、さらにお尋ねするんですが、今回の統合の枠組みでは、積立金の移換という形で各制度が今日まで独立運営してきたことの言うならば責任を果たすという形にしてございますし、それからもう一面として、財政的に楽な制度がより多く分担するという負担の平準化という要素が同時に組み込まれておると理解しておるわけでございますが、今後さらに一元化を進めていかなきゃならないと考えます。  その中で、今回の枠組みが今後のそうしたさらに進んでいく一元化という中でどういう意義を持っておると考えておられるのか、このことをお尋ねいたします。
  13. 貝塚啓明

    参考人貝塚啓明君) ただいまの御質問は、多分この懇談会報告書のある意味でもう既に外側の部分で、それぞれ皆さん御意見が違うということがありますが、多少私見ということで申し上げますと、全体として高齢化社会に移るとある時期から、私は私学共済に今所属しておりますが、私学共済といえども財政状態はある時期にはやはり少しずつ悪化していくと。  特に、私学共済のことを申し上げれば、子供の数が戦後ふえたのが大学生まで来まして非常に大学が拡張して、大学が拡張するとそのときに若い職員をたくさん私立大学は採用したわけですね。  その結果、若い人の比率が一番高いというのがまさに現在の私学共済の置かれている現状です。しかし、考えてみれば私立大学もやがて、今既にその兆候はあらわれておりますが、だんだん大学に入る人の数が全体として減ってくる。そうなると、財政的に本当に将来、二十年先三十年先が大丈夫かということについては、そんなに確信が持てないという状況であります。  ですから、うんと長い目で見ますとやはり何らかの意味で全体として一つの共通の方式、今では厚生年金が一番有力ですが、被用者についてはそれを基本的な枠組みとしてほかの制度も大体それに見合ったものを確実にやると。もちろん財政力の豊かなところは少しプラスしても構いませんと、そういう状況が描かれるのじゃないかと思います。  ただし、制度それ自身が本当に統合する、一元化するというのはいろんなケースがありますが、制度が全部がちゃんと一緒になって本当に一つになるという話はちょっと今の状況ではとても考えにくい。少なくとも給付負担について共通化して厚生年金に合わせるというのが常識的なところじゃないかというふうに私は考えております。
  14. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 次に、山本先生にお尋ねをいたします。  先生は、年金数理に長年携わってこられた年金数理人というお立場でありますから、お尋ねするところであります。  年金は、国民に身近で大切なものでありますけれども、一方、複雑でわかりにくいという面があることも否定できないと思います。  そこで、今後の制度改正に当たっては、国民年金財政の現状とか将来の見通しをわかりやすい形で示して、そして国民議論を展開していくことが必要だと私も考えております。先生は公的年金制度を横断的にごらんになっておられるお立場でありますから、各制度情報公開の現状ということについてどういう問題を考えておられるか、またどのような形で年金情報公開していくべきだとお考えなのか、まずそこいらをお尋ねいたします。
  15. 山本正也

    参考人山本正也君) ただいま情報公開の問題点、それから今後の方向につきましての御質問がございました。  先生から御指摘をちょうだいいたしましたように、年金は大変複雑でわかりづらいというのが通説でございますけれども、その一半の責任は、方法あるいはその内容が必ずしも統一されてこなかった従来からの情報公開のあり方にあったことはもう否定できない事実でございます。今回これらに関しまして、今般閣議決定に基づき、私ども年金数理部会検証の御要請があったわけでございます。これによりまして、この問題解決に対する明確な方向づけがあるいはなされ得るんではないかというように考えておるわけでございます。  すなわち、私ども年金数理部会は、今後は当然のことながら各制度を総括いたしまして、検証結果につきましての正式な報告書を提出する義務を負うわけでございます。この正式な報告書を提出するということになりました場合には、同時にこの報告書の内容を一般国民にわかりやすく説明する義務もあわせて課せられてくるというように考えておるものでございます。  その方法等につきましては、今後十分に検討してまいらねばならないことは申し上げるまでもございませんけれども、大まかに申し上げまして、私どもの考え方でございますが、一般国民向けといたしましては、既に現在いろいろと利用されております成熟度とかあるいは積立金の準備状況等いろいろございます財政指標、こういったものをできるだけわかりやすいものにいたしまして、かつまたわかりやすく解説していくということが一つ。  同時に、多少専門的にはなりますけれども、各制度の将来の収支にかかわります予測、特に将来の保険料等の負担のあるべき姿というものを標準的な統一的な財政手法を用いまして横断的に比較していくと。  なお、この手法につきましては、現在既に私ども年金数理部会といたしまして試験段階に入っておるわけでございますけれども、こういった作業を通じまして、できるだけ年金国民に開かれたわかりやすいものにするよう努力してまいりたいと目下のところ考えておる次第でございます。
  16. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 今回は再編成の第一段階と位置づけられておるわけでありますから、今後とも着実にこの再編成を進めていかなければなりません。  そうした中で各制度財政状況を適切に検証していくことが非常に重要なことだと思われます。できれば今回のJRのように財政的に完全に行き詰まってから統合するというのではなくて、やっぱりある程度危険水域に入っていないかどうか、公平な第三者、専門家の目で点検をしていただくということが重要なことだと思いますので、この点についてのお考えをお聞きいたしたいと思います。  先生、まことに申しわけないんですが、あと二分しかございませんので、恐縮ではございますが、よろしくお願い申し上げます。
  17. 山本正也

    参考人山本正也君) ただいま財政状況検証方法につきましての御質問がございましたですが、これはまだ私ども年金数理部会といたしまして最終意思決定をしているものではございませんので、私の個人的な意見を簡単に述べさせていただきますと、年金財政に影響を及ぼします大きな要因としては実は二つございます。  一つは、物価、賃金あるいは利回り等の経済的な要因でございまして、これらの経済要因というものはすべての年金制度に共通的に大きな影響を及ぼしてまいります。例えば、物価と賃金との関係をとらえてみた場合におきまして、従来、安定成長路線にありました時代にはこの両者はおおむね並行的な推移を示してきたわけでございますが、今般経済基調が変化いたしまして、物価と賃金との従来のバランスは必ずしも保たれてきていないというような状況にございます。  この物価と賃金というものが並行的に変動しております場合におきましては年金収支というものも比較的バランスがとれておったわけでございますけれども、このバランスが崩れてくるということになりますと年金の収支バランスというものも大きく崩れてこざるを得ないという一つの要因がございます。なおまた、利回りの低下というものが大変大きな影響を与えますことは既に御高承のとおりでございまして、この経済基調に対して十分に留意してまいらなければならないということでございます。  第二は、個々の制度の体質の問題かと存じます。先ほど貝塚先生からも御指摘がございましたけれども、例えば私学共済、出生率の低下というものが児童生徒数の減少につながりまして、これが私学共済の将来的な体質に対してかなりの影響を与えてくるだろうということが考えられるわけでございます。また、農林共済につきましては組織整備がどのように進むのかということ、これは体質の変化に影響を及ぼしてくることは必至であろうかと考えるわけでございまして、このような体質の変化というものの年金財政に与える影響というものにも十分留意してまいらなければならないというように考えておる次第でございます。
  18. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 公文先生にもお尋ねしたいことがございましたけれども、時間がございませんのでお許しください。  以上で終わります。
  19. 田浦直

    ○田浦直君 平成会の田浦でございます。  きょうはお忙しいところありがとうございました。  私も、年金は素人でございますから、教えをいただくというふうなことで御質問をさせていただきたいと思っております。  貝塚先生が初めにおっしゃられましたけれども、財政単位としては大きい方がいいわけだし、あるいは均一化とか平準化ということで一本化をする方がいいというお話をされました。そうであるならば、今度は三公社をするわけですけれども、あとの残っております私学共済あるいは農林共済国家公務員共済あるいは地共済、そういったものも同時にするというふうなことはできないのかという疑問があるわけなんですね。  こういったものは、例えば先生がおっしゃられましたけれども、国家公務員制度がちょっと違うんだと、そういうこともあると。あるいは私学共済においてはまだ豊かだからなかなかそういうのに寄ってこないというふうなこともあるのではないかなという気がするんです。そうであれば、一元化というのは、ただ救済のためとか、そういったことのためにするような感じが私はしているわけですね。  先生が初めにおっしゃられましたように、均一化あるいは平準化のためだ、単位を大きくするためだということであれば、その原点にのっとれば一本化というのはもっと早く行うべきではないかなというふうな気がするんですけれども、その辺についての御見解を賜りたいと思います。
  20. 貝塚啓明

    参考人貝塚啓明君) ただいまの御質問は、もし学者が提案するのであれば今おっしゃったとおり、全部一緒に提案するのが多分理想的だろうと思います。  そういうわけで、おっしゃる御趣旨にある意味では基本的には賛成なんですが、ただ現在の制度というのは、私が言うのもおかしいんですが、利害関係というのがどういうふうにあるかというのはなかなか複雑なんです。やはり財政状態のいいところは今の状況について別に特段問題を感じておられないわけですね。  ただ、財政状態が悪くなったところはある意味では本当にもうお金が場合によっては払えないわけですから、どこかからお金を借りてくるとかいろんなやり方をしなくちゃいかぬわけです。そうしますと、そこでの意識の差が非常にありまして、ですから、財政状態の悪いケースは、そういう人々はやはりもう大変だということになる。  他方、まあ表現はあれですが、お金持ちのところは余り関係ないやというか、あるいはそんなところに出すのはどうしてそうなんだと、経営責任的なものも多少あるでしょうということがありまして、そこでの利害といいますか、あるいは考え方の違いというか、要するに問題がどの程度差し迫っているかということの違いが当事者の方々の間にかなり意見の差になって出てきまして、そこのところでとりあえずここから出発するという形にと。  ですから、原則論はある意味では非常にはっきりしておるんですが、実際動かすときにはどうしてもやはり財政状況が悪いところをどうするかという話から出発せざるを得なかったという点は御理解いただきたいと思います。
  21. 田浦直

    ○田浦直君 大体一階部分ができた六十年度には、七十年には二階部分一元化するんだというような閣議決定が出ているわけですね。でも、その年に来ましたら、いやなかなか難しいんだというような論法ではちょっと困るなという気がするわけですね。これは先生方の方の問題ではないと思うんですね。政治とかそういったものがもっと力を持ってやらなければならない問題だと思うんですけれども、同時に先生方にも、そういう意思といいますか、裕福だからやらないんだとか、制度がちょっと違っているからというようなことはもう外していいんじゃないかなと、極端に言えば、先生方としては。やるやらないは政治になってきますけれども、理念としてはそうあった方がいいんじゃないかなと私は思っているわけでございますけれども、いかがでございますか。
  22. 貝塚啓明

    参考人貝塚啓明君) 私は基本的には理念としてはそのとおりだと思っております。ただ、諸外国の例でも、恐らく多くの場合は公務員のところは少し別になっていることが多いと思いますね。  それ以外の部分はなるべく、それから基礎年金部分はございますけれども。  ですから、公務員をどういうふうに考えるかというのは制度として結構難しい問題。要するに、民間企業の雇われている方と公務員ケースは雇用の仕方がちょっと違っているということがありまして、そういうことがどうしても年金で、わかりやすく言いますと、公務員の方は原則的には定年まで勤められるわけですね。民間企業の方は、今はもう大企業というのは途中で随分人を別会社に移したり、場合によっては単純に言えば解雇するということすらあり得るわけですから、そうすると、そういう方々年金考え方というのはどうしたらいいか、これは結構難しいんですが、途中で辞められた方をどうするかと。  その辺のところはかなり差異があって、その部分が最後には一番ネックになるといいますか、一緒にするときに。それ以外の、民間企業基本的には、最終的には厚生年金を中心に、報酬比例部分もそういう形で、少なくとも一元化というのは、計算とかそういうものはすべて同じやり方でやってこうですよということで均一にするのが一番いいんじゃないかというふうに考えております。  とりあえずのところはそこが次のステップでありまして、その段階でやはり私学共済農林共済も、わかりやすく言えば厚生年金に歩み寄っていくということが考えられると私は考えております。
  23. 田浦直

    ○田浦直君 ありがとうございました。  では、山本参考人にもちょっとお尋ねしたいと思うんです。  何か一元化のためにいろんな制度調整することによってかえって複雑になってきているんじゃないかなと。一元化して簡単になってきているのか複雑になってきているのか。私ども国民としては年金というのは非常に大事なもので大変関心があるんですけれども、さっき尾辻先生がおっしゃったように、非常にわかりにくくなってきているような気がするんですね。それは一元化のデメリットかなと私は思っておるんですけれども、そういうことはございませんでしょうか。
  24. 山本正也

    参考人山本正也君) ただいまの御質問につきましてお答えさせていただきます。  社会保険体制のもとにおきましては、今回の一元化が目的といたしておりますいわゆる財政安定化とそれから公平性の確保ということは大変重要なことになっておるわけでございます。  今回の第一段階といたしましての旧三公社統合でございますけれども、これによりまして財政安定化が最もねらっておりますいわゆる構造変化の影響の除去というものにつきましては、おおむねこれはなされたんじゃないかと。あと、先ほど貝塚先生からもお話がございましたけれども、私学、農林が残るわけでございますけれども、これは種々の事情がございますので、もう少し時間の猶予はやむを得ないんじゃないかなとは思っておるわけでございます。  そういうふうなことで、第二段階といたしましては、私の感触といたしましては、先ほど貝塚生生からのお話もございましたように、これは公務員をどうするかということでございますが、公務員の方はもう御高承のとおり、いわゆる構造変化に対しましてはどちらかといえば中立的である、構造変化の影響を直接的に受けるものではないと。こういうことで、いわゆる今回の一元化の最も大きな目的でございます財政安定化というものは旧三公社統合によりまして一応はクリアできてきておるんだと、こういうように私は考えておるわけでございます。  したがいまして、公務員をどうするかということにつきましては、先ほども申し上げましたように、一元化というのは必ずしも一本化ということと同じ意味ではない。一元化というものにつきましてもいろいろな方法がある。一本化が最も簡単な形ではございますけれども、いわゆる民間公務員というものが両立いたしまして両者間で財政上の調整というものも行うというような方法も考えられるわけでございますが、ただいま先生が御指摘のように、そういうことをやればさらに複雑になって年金はわかりづらくなるんじゃないかというような御指摘でございますけれども、これはまさしくそのとおりでございます。  いわゆる最も単純な姿にするというのが私も望ましいとは思うのでございますけれども、これはいろいろの事情がございまして、必ずしも一挙にそこまで行き得ないと。そういうようなことにつきましては、これはやむを得ない事情といたしまして、数理的にもこれはある程度は大目に見ていかざるを得ないんじゃないんだろうかなと、そんな気持ちでおるわけでございます。
  25. 田浦直

    ○田浦直君 もう一つお尋ねしたいんですけれども、この厚生年金基金の部分ですね。これは五・五%の利回りの運用ということに決まっておるんですが、実際、現在はもうとても乖離しているわけですね。でも、それを守らぬといかぬというふうになっておるようですけれども、これを弾力的にいろんな数字を変えるというようなことはできないんですか。そうしないと、今でも大変なのに、これからどんどんそういう企業が出てくるんじゃないかなという気がするんですけれども、その五・五%の利回り運用というのは動かせないものなんですか。
  26. 山本正也

    参考人山本正也君) ただいま厚生年金基金の利回り問題につきましての御質問がございました。  現在の利回りというのは非常に低うございまして、五・五%というものを実質的に確保するというのはまさに不可能な時代に入ってまいりました。今後この利回りというものが、経済変動の若干の波によりまして多少は回復してくるということも考えられますけれども、私個人の感触からも従来の五・五%という水準までの回復というものは大変難しいのではないかなと、こういうように思っておるわけでございます。  それにもかかわりませず、現在、いまだに五・五%というものを基本として固定いたしておるわけでございますけれども、この利回りを仮に変更したといたしますと、これは御高承のことと存じますけれども、利回りが一%変わりますと保険料が二〇%変動してくる、したがって利回りが一%下がりますと保険料は二〇%上がると、こういうのが経験的に出ておる数値でございます。したがいまして、これはアクチュアリアルな観点から見ましても予定利回りというものを変更するということは、これは簡単なことなのでございますけれども、実際それに伴いまして負担する側に立ってみた場合におきましては極めて大変な事態であるということも事実でございます。  それともう一つ厚生年金基金の場合におきましては、その本体、厚生年金を代行しておる部分と、それから独自に企業側がそれに付加しておりますいわゆる加算部分という二つ部分から成り立っておるわけでございます。この代行する部分につきまして、代行するものでございますから、厚生年金特別会計に納めます掛金がその分免除されるわけでございますけれども、この計算が従来五・五%で行われてきておりまして、いまだにその点は守られておるわけでございます。これを変更するということになりますと大変難しい問題も出てくるわけでございますので、アクチュアリアルには利回りの変更ということは簡単なのでございますけれども、実際面から見ますとこれをそう動かし得るのかと。  したがいまして、ちょっとここしばらく今後の利回りの動向というものを見た上で最終的な判断をしてはどうかというような感触で関係者の方はおると思いますし、私もまたそういうような感じを持っておるわけでございます。
  27. 田浦直

    ○田浦直君 公文先生に一つだけお尋ねしたいと思うんですけれども、四十年間制度調整をするということはおかしいと。私も同感ですね。これについて先生のちょっと御見解を述べていただければと思います。
  28. 公文昭夫

    参考人公文昭夫君) 四十年間にわたってというふうに申し上げましたけれども、この関連資料を見ますと、四十年先である二〇三五年まで計画が組まれておりますが、それで終わりということにはなってないというのが大変大きな不安なんですね。したがって、これは先ほども申し上げましたけれども、この赤字処理問題というのはできるだけ早く解決をすべきだと思うんです。  したがって、先ほども申し上げましたけれども、本法案とは本来切り離して処理をきちっとした上で、その上で給付負担の公平、厚生年金それからその他の共済を含めまして年金統合を図るというのが筋道だと思いますので、こういう計画自体到底国民として見た場合に納得できないんじゃないかなというふうに思っております。
  29. 田浦直

    ○田浦直君 ありがとうございました。
  30. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 社会民主党の朝日でございます。  きょうは、貝塚参考人山本参考人それぞれに二つずつお尋ねをしたいと思っております。  冒頭に、一元化懇談会での座長として大変御苦労いただいたと思います。改めて敬意を表したいと思います。私自身は今回の法案を今後の一元化に向けた道筋をつけたということで一定の評価をしておりますし、せっかく懇談会でいろいろ御苦労いただいて、多分いろんな意見があったのを何とか調整されてまとめられたということですので、そのことをまた一からほじくり出すというのもいかがなものかというふうに思いますので、むしろ今後の課題というところでお尋ねをしたいと思います。  その第一点は、先ほど来何人かの委員からも御指摘がありますが、懇談会報告の中で公務員共済の今後の取り扱いについて触れた部分がございます。ちょっとこの部分を解説といいますか、読み解いていただきたいんですが、参考までに公務員に適用される年金制度は、こういう書き方をしてありますね。「両制度において、社会保障制度としての在り方及び公務員制度としての在り方を踏まえつつ、その財政安定化のための措置について検討すべきである。」、こういう表現になっていると思いますが、ぜひこの部分について少し読み解き方をお教えいただければと、これが第一点の質問でございます。  それから第二点に、私学共済農林共済、この部分についても、懇談会報告では、「被用者年金制度全体の中におけるこれらの制度の位置付けについて検討する」と、こういう表現になっております。今後、全体の一元化に向けて次のステップとしてこのような課題も念頭にあるように読み取れるわけですが、果たしてこの部分、どんなような今後の見通しを持って受けとめることができるのか、参考人としての個人の考え方も含めてお聞かせいただければありがたいと思います。
  31. 貝塚啓明

    参考人貝塚啓明君) ただいまの御質問は、役所の方がたくさんおられる中で言うのもあれですが、役所の作文というのは極めて取りまとめたところに微妙な表現が入っておりまして、それは必ずしも本当の意味できちっと皆さんがそう思われたと、非常に明確にそうだと、大体のところこうですという感じの部分がある部分はありますが、それもある程度反映しておるというふうに思います。  公務員の場合には、先ほど来私が申しましたように、公務員の採用のときから、元来公務員は普通は定年まで身分がある程度保障されている制度です。これは制度として身分が保障されているんだと思います。ですから、そういう場合と民間企業の場合の被用者といいますか、雇われている人とはちょっとやはり制度的な位置づけが違うというところは、もともとやや複雑な問題がありまして、そこをどう考えるかという話が基本的にあるわけです。その話が公務員としての採用の仕方とかあるいは公務員の地位というのが民間のサラリーマンの場合とはやはり違っているという認識があります。それと、もともと年金の話としては国家公務員共済がありますし、地方公務員共済がありますし、これはもうある意味では厚生年金と同じように比較して検討することができます。  そういう問題がありまして、公務員を全部一緒に中へ入れちゃうというのが果たしてどうか。その辺、例えば雇用保険というのはこことは関係ございませんけれども、失業保険なんというのはある意味では公務員には多分ないと思いますが、そういう違いがあるところを考慮に入れて、これから先どうしてもこの制度の違いがある部分は残っておりまして、諸外国でもやっぱり公務員年金というのは別枠になっている場合が多いんですね。  そこのところを手っ取り早く一緒にしちゃうということがうまくできるのかなというところが将来像としてありまして、その問題はどうしてもあるところまで残るんじゃないかというふうに私は基本的には思っております。完全に同じ枠の中にはいれるかどうかについてやや疑問に思っておるところです。そういう点がございます。  それから、私学あるいは農林共済につきましても表現はややあいまいになっております。端的に申し上げれば、今のところ必ずしも差し迫った問題と考えておらないケースがありまして、今の段階で将来の二十年先三十先のことを考えるというのはとても無理であるというふうなお考えのもとで、なかなか簡単に一つシステムにまとめるという御主張はとても出てこなかったということがあります。ただ、それらの方々もやはり財政状況のいいところであってもなおかつ将来問題は発生し得るということについてはある程度御理解いただいたんじゃないか。  したがって、全体の中でどうしても考えるべき時期がやがて近づくであろうと。そのときはそのときとして、先ほど私が申し上げましたように、個人的にはやっぱり厚生年金になるべくならば全部うまく吸収して、吸収するという言い方はあれですが、同じような算定の方式でみんな同じにしてやる。公務員の問題は多少残っておりますけれども、少なくとも農林共済あるいは私学共済についても、非常にわかりやすく言えば、厚生年金とほぼ同じような扱いの中で皆さんがそこに全部入っていただいてやるのが将来像としてはいいんじゃないかというふうに考えている方がかなり多かったはずです。しかし、それ自身をはっきりと文章に書けるものでもなくて、とにかく将来としては考え直すべき時期が来るんじゃないかということについては、皆さん、利害関係のある方もそういうふうにお考えになっていて、それが文章として表現されております。  ですから、先まで言えば、今私が申し上げたようなことに、厚生年金を中心にしてすべての年金制度を、公務員部分が残るという可能性はありますが、それ以外のところは最小限そういうふうな形になるのが、大分先の話ですが、年金というのはそういうものになるんじゃないかということでございます。
  32. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ありがとうございました。  次に、山本参考人にお尋ねします。二つあります。  一つは、先ほども議論がありまして、何でもうちょっとわかりやすくならないのかという点なんですが、実は当委員会でも少し議論がありまして、例えばそれぞれの年金制度全体としてそれなりの数理がどうなるかというのは示されているわけですけれども、本体部分と例えば一階部分、二階部分を分けて、今後の数理がどうなっていくのか、あるいは費用負担のあり方がどうなっていくのかもう少し示したらどうかという御意見もあったと思います。そんなことも含めて、参考人年金数理の専門家というかアクチュアリーと言うんだそうですが、ぜひ素人にわかりやすく情報を提供していただきたいという意味を込めて、その辺どんなふうにお考えなのか、御意見をひとつ伺います。  二つ目の問題は、これは今後の課題ということになりましょうか、各年金制度財政計算方法が必ずしも同一の考え方に立っていないように思います。恐らく平成十一年ですか、財政計算の時が来ると思うんですが、例えば厚生年金における財政計算考え方とそれから共済年金における財政計算方法と多少違っているように思います。そもそもこういう財政計算方法が違っているということがそれぞれの将来見通しを比較検討する意味でも少しわかりにくくしているのではないか。そういう意味では、段階が要るんでしょうが、財政計算方法についてももう少し共通させていくということが必要なのではないかというふうに思いますが、この点についての参考人のお考えを伺いたいと思います。
  33. 山本正也

    参考人山本正也君) ただいま二点につきまして御質問がございました。  まず第一点の、特に一階部分と二階部分を分けてやるようにすればどうかと、こういうようなことにつきましてお答えをさせていただきます。  この一階と二階というものにつきましては、これは制度的には現在、確かに確実に違ったものになってきておるわけでございますけれども、それぞれ各制度が従来からございまして、ここが一階部分、二階部分を一括して保険料を個人から徴収し、それをその一階部分と二階部分に分けて、一階部分は一階部分の方に別途払い込むというような形をとってきておるわけでございます。  したがいまして、ここのところを一体どう考えていくのかという問題につながっていくんだろうと思うのでございます。一階部分給付は、御高承のように、いわゆる定額給付という形になっております関係で、それに対する負担金と申しますか、保険料は各制度が一応各加入員から徴収いたしました掛金の中から定額でこれをその一階部分の方に払い込むと、こういう形をとっておる。各加入員から取っております保険料は所得比例、実はそういうような形になっておる。ここのところ、所得比例で取りました保険料から定額の掛金というものを分離いたしまして払い込むと、ここで一つのいわゆる大きな質的な転換をやっておるのが現状でございます。  したがいまして、こういうような転換というものは実際必要なのかどうか。私も個人的あるいは数理的に考えまして、一階部分は一階部分給付が定額であれば掛金も定額で徴収する。かつ、これは各個人から直接現在の制度が窓口として徴収するという方法もございますし、また異なった方法を採用するということも考えられるんじゃないかなとは思うわけでございます。したがいまして、そこのところを今後どのような形で考えていくのかということが一つの大きな問題じゃないかなと、その辺のところをすっきりしていくということも一つ方法として検討されるべきじゃないかなと考えておるわけでございます。  それから、第二の点でございますが、いわゆる再計算方法が各制度で必ずしも同一ではないと、これは統一する方向でやっていけばいいじゃないかと、こういう御指摘でございます。  この点はまさしく御指摘のとおりでございます。これにつきましても、やはり各制度の従来の経緯というものが若干絡んできておるということは確かでございまして、例えば保険料の決定方式も現在厚生年金が、それから農林共済もそうなっておりますけれども、いわゆる段階保険料方式という方法をとってきておる。それ以外の共済制度におきましては、平準保険料方式を基準にこれに若干の修正を加えました、私は準平準保険料方式と呼ばせていただきたいとも思いますけれども、そういうような方式をとってきておりまして、違っておるわけでございます。  なぜ、こういうような違いが出てきたのかということにつきまして、私もこれはよくわかりません。ただ、共済関係の各制度がこの平準保険料方式に準じた方法というものを現在とってきておりますのは、従来いずれの制度ももともとは平準保険料方式でスタートしておりまして、これを変えてきておるわけでございます。この従来採用しておりました平準保険料方式というものに対するこだわりが一つあったということと、それからこの平準保険料方式で預けました保険料を修正して適用しておる。いわゆる実際に適用している保険料と純粋の平準保険料とはどういうような相対的な位置と関係にあるのかということが見やすい方法であるということで、いまだに平準保険料方式をとってこられておるんじゃないかなと。じゃ、この二つ段階保険料方式と平準保険料方式のどちらがいいのかということなんですけれども、この優劣につきましては私も申し上げることもないわけでございます。  なぜ、平準保険料方式がこういうような形に転換してきたのかということは、これはもう申すまでもなく、いわゆるスライド制が導入されまして後発の負担がどんどん出てくる。これを賄うためにいわゆる負担を後代に先送りするという必要からのことでございます。したがいまして、それに伴いまして、現在、積立方式から賦課方式への順次変更過程にございまして、いわゆる積み立て水準を下げつつあるという実情にあるわけでございますけれども、この過渡的な方法といたしまして現在二つ方式があるわけでございます。
  34. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 どうもありがとうございました。
  35. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子です。  どうぞよろしくお願いをいたします。貝塚先生と公文先生に御質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。  私は、年金、全くの素人なんですけれども、素人の私が考えましても、今度のこの統合法案にはどうしても納得がいかない、非常に問題点があるんではないかというふうに思うわけです。  まず、貝塚先生にお伺いしたいと思います。  今度の統合法案というのは、従来、JRJT共済の救済ということで行われてきた制度間の調整と同じ仕組み、同じ枠組みの継続ですね。そして、その同じ枠組みの継続なんですけれども、従来の調整のときよりも厚生年金などの支援額は約五割もふえるものです。他方、事業主責任としての清算事業団及びJR各社負担というのは従来の半分以下で済むというふうになっているわけです。そして、先ほどもお話にありましたが、厚生年金などの支援する側は四十年以上それを続けるということになるわけです。  この財政支援策というのは、旧国鉄事業主の責任というものを薄め、国の負担はゼロです。そして、労働者、支援する側は五割近くふやすという、非常に安易に他の年金労働者負担をかぶせるというふうな大変酷な財政支援になっているんじゃないかと思うんです。先生は、この公的年金一元化を御論議いただいた際に、今回の改正案がこんなふうになるというふうに予想していらっしゃったのかどうか。また、旧国鉄関係団体は事業主負担をやはり引き続いてもう少し持つべきだというふうにお考えでしょうかどうでしょうか、その点をお伺いしたいと思います。
  36. 貝塚啓明

    参考人貝塚啓明君) ただいまの御質問はかなりこの問題の財政調整について鋭い質問をされたと私は思います。基本的にこの懇談会は、従来、二年置きぐらいに、とにかくJR共済というのは、私はエコノミストですので、単純に言いますと、ほとんど破産しているわけですね。それを毎年毎年、ある意味ではその時々の当事者間の話し合いで、いろいろな考え方はあるでしょうが、とにかく毎年毎年、割と短期的に何とかしのいできたわけですね。  しかし、その短期的にしのいでいくというやり方も限界に来ているので、だとすれば、やはりその場合には短期的にしのぐというだけでは不十分でして、年金全体の中で、一体そもそも年金をどういうふうにして、かつての三公社というのはどういうポジションにあって、そこのところは全体の中でどういうふうに考えるかということの原則を出して制度間の調整をしないともう限界に来ているというのが、正直なところそういう考え方が背後にあったと思います。  しかし、そのときの計算の仕方としては、やっぱり年金全体として過去の債務については責任を持つと。それは政府が、俗称持参金と言っておりますが、持参金の部分は、過去については持参金を出しますと。しかし、これから先のところは、私なんか個人的には、JRに所属していたがゆえに給付が猛烈に低くて保険料が物すごく高いというのは社会保険としてはぐあいが悪いんじゃないかというふうに考えております。だとすれば、標準的な算定方式に基づいてやってみて、それでその結果として過去債務については、これは単純に言えば政府が面倒を見ますと。それは、国鉄はかつて政府企業でありましたから政府が見る。これから先の部分についてはこういうふうにしましょうと。その場合も依然として財政調整が必要であるということはそうですが、今までのやり方よりはもう少し考え方として合理的になるんじゃないかというふうに考えてこの懇談会では議論したわけでございます。  したがって、年金全体の中で考えて、それはもちろん細かい数字の大小というのはいろいろなことがあると思いますが、私どもはそこまで全くタッチしておりません。全体としての方向性だけを申し上げて、実際の細かい数字のことは、当然でございますが、政府の各省庁の中でいろいろ折衝されて、それからもちろん個別の年金共済団体の方も当然御意見を言われたでありましょうし、そういうことを全部合わせて最終的に今言ったようなことになったというふうに理解しております。  そういうふうなことでございますということを御説明して、御質問にお答えしたいと思います。
  37. 西山登紀子

    西山登紀子君 それでは、時間が余りありませんので、公文参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、先ほど参考人は、この赤字の問題とそれから年金一元化という問題は切り離すべきだというふうにおっしゃいました。私もそうだというふうに思うわけです。  鉄道共済の経過を見ておりますと、一九八〇年には四十一万九千人の組合員に対して退職年金受給者は二十二万一千人。それが逆転をします八五年には二十八万二千人の組合員に対しまして、退職年金受給者が三十四万二千人というふうにこの五年間で逆転をする。当然のことながら財政状況が悪化をするわけであります。あとはもう悪化の一路ということになるわけです。この五年間にどれだけの人減らし、合理化が行われたのか、あるいは戦後満鉄からの引き揚げなどで国策として非常にたくさん採用すると、そして現役労働者が減少していく、こういうふうな結果として成熟度が逆転をするということが起こったんではないかと思うわけです。  ですから、この逆転というのはあくまでも労働者責任ではなくて国策の結果と言うべきだと思うわけです。この点につきまして、先ほど来、政府がやはり早く特別の手だてをとるべきだったというふうな御意見があったと思いますが、もう少しその点詳しくお話をいただけたらと思います。
  38. 公文昭夫

    参考人公文昭夫君) 私も余り詳しくは申し上げられないんですが、西山委員の御指摘のとおりだと思っております。  特に、鉄道共済年金の問題というのは、これはもう釈迦に説法なんですけれども、被保険とは違うわけですから、当然全体の責任を、国家的な運輸政策ということで運輸大臣が最終的な責任を負っておられたわけですし、国会で選ばれた総裁を中心にした当局一緒になってやっていたと思うんですね。  ですから、年度的に見ても、七九年の七月に国鉄当局が要するに国鉄再建の基本構想というのを発表して、今御指摘のとおり四十二万から十万人減らすと。それをバックアップする国の法律として当時特別措置法をつくって、いわば国鉄の再建計画ということを名目にしたリストラの援助をしたということはもう明らかなんですよね。  その中で、事実上、一九八四年度には十万人減らした三十二万の体制になって、そして今御指摘になったように、最終的には逆転する。しかも、その内容はもう皆さん御承知のとおりのことであって、要するに希望退職だとか関連企業への配転あるいは民間への移しかえ、あるいは各省庁に人を回していくというような形で事実上減らした。  これはもうだれが考えたってわかることであって、そういうふうに八〇年以前から人を減らし現役の世代を減らしていけば、結局、共済年金の中に赤字が生まれるなんということはもう当たり前のことなんですから、当然民営化される八七年以前に処理をすべきことであっただろうし、またそれが間に合わなくても、八七年当時に、民営化と同時にそういった問題が起きないような処理というのをとるべきであったというふうに私は思っております。  それが十年間もそのまま野放しに、野放しとは申し上げません、いろんな御努力があったと思いますけれども、傷口をどんどん広げてきてにっちもさっちもいかないから、ここでひとつ厚生年金統合ということに合わせてその赤字処理を図っていくというのは本末転倒しているんじゃないかというふうに思っております。
  39. 西山登紀子

    西山登紀子君 公文参考人は労働運動にも深くかかわってこられたということでございますので、次にお伺いしたいと思うんですけれども、公的年金制度というのは国民の老後生活を支える柱でありますし、かなり定着を見てきたというふうに思うわけです。  政府に対する要望についての各種アンケートの第一番目に公的年金制度の充実というのが挙げられておりまして、国民的な関心の広がりというのは非常に大きいというふうに思うわけです。それだけに、公的年金財政の安定や年金制度の充実というのは当然のことでありますし、そのためにも雇用の安定と賃金の適切な引き上げ、このことがやはり大変重要な問題ではないかというふうに思うわけです。  ところが、現在の我が国の経済界、財界の動向を見ておりますと、残念ながらその逆を行っているんじゃないかと。例えば、リストラに集中し過ぎであるとか、もう五十を過ぎると肩たたきで賃金の低い、もっと労働条件の悪いところにどんどんとかえていく、こういうようなことが行われているんではないかと思うんですね。  ですから、年金制度の安定のためにも、定年制の延長などを含んだ雇用の安定、適切な賃金の引き上げ、こういうところにもつともっと財界も意を用いるべきじゃないかと、こういうふうに思うわけですけれども、どうでしょうか。
  40. 公文昭夫

    参考人公文昭夫君) もうつけ加えることもないぐらい明確な御指摘だと思います。これは収入だけではなくて、少なくとも社会保険制度をとっている以上は、財源を安定させる道というのはいかにして保険料収入をふやすかということですから、そのふやすための一番単純な方法は適正な賃金の引き上げであり、それから雇用を安定して保険料を払う人たちをどうふやしていくかということとイコールだと思います。  したがって、これはもう入り口の問題だけでなくて、出口の問題からいっても、御承知のとおり年金計算の基礎というのは厚生年金公務員共済年金も同じですけれども、一番決定的な要素というのは働いていたときにもらっていた賃金が幾らかということと、それからいわゆる雇用の安定と同じ、加入期間がどれだけ長くあったかということが年金額にストレートに響いてくるわけですから、響いてくるというよりもそれによって決定されるわけですから、そういう意味ではおっしゃるとおり年金財政の安定というのは、そこに一番焦点を当ててすべての計画が組み立てられるべきであろうというふうに思います。
  41. 今井澄

    委員長今井澄君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時二十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  42. 今井澄

    委員長今井澄君) ただいまから厚生委員会を再開いたします。  厚生年金保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  43. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 自由民主党の塩崎恭久でございます。きょうは百七分いただいておるわけでございますが、さまざまな何か事情があるようで、一時間ちょっとでやめるということになっておりますので、ひとつよろしくお願いいたします。  年金の話に入る前に、この間ちょうど年金の話で自由民主党の阿部先生から、保険料率、将来の推計、国民年金保険料の将来の見通しとか、これを見て改めて、このときまで私が生きているかどうかよくわかりませんが、そのとき息子や、娘はいませんけれども、孫かだれかが負担をするのかなと、こういうことを考えると、やっぱりこれからかなり難しい時代になるのかなという気がいたすわけでございます。そういうことで、今ちょうど厚生省の中にも社会保障に関する構造改革推進本部なるものをおつくりになったようでございますし、最初に社会保障全体の見直しにつきまして、少し大臣の基本的なお考え、あるいは今後のスケジュールについてお話をお聞きしたいと思うわけでございます。  その前に、私自身がどう考えているのか、何がポイントかということでございます。恐らく厚生省も、あるいはここにおられます委員の皆様方本大なり小なり同じようなことを考え、今までのような連続線上の上ではなかなか難しい時代なんだろうなとお考えになっているのではないかと思うわけでございます。  ポイントは五つぐらいあるのかなと私は思っておりまして、一つは、やっぱり社会保障でありますから、社会的に弱い立場にいる人たちの確実な社会的な支援というものを確保していく、これはもう当然のことだろうと思うわけであります。  さはさりながら、二番目のポイントとして、高齢者もかつてのように定年をしたらそのままということじゃないのはもう常識になっているわけでございまして、社会参加というものをどうしていくのか。つまり、高齢者自身が扶養されるだけの立場ではもちろんないということを改めて確認しなければいけないのかなというふうに思うわけでございます。社会保障自体も、こういった高齢者の社会参加、ボランティアであったり、勤め続けるとかいろんな形があるんだろうと思うんですけれども、それを助けるような観点もこれからは必要なんだろうということだと思います。  それから三つ目は、高齢者のこういうような形のライフスタイルも随分変わってくるわけでありますから、当然多様なニーズがあって、選択の自由というものがなければいけない。これまでの福祉というのはどうしてもお仕着せであったり一方的な平板なものが多かったわけでありますけれども、高齢者が健康であるかどうかとか、あるいは社会的・経済的に置かれた状況によってさまざまなニーズが高齢者の中にも出てくるし、そういうものに応じた社会保障の見直しというのは当然必要になってくるということだろうと思います。そのためには個人の選択を自由にということで、介護保険の問題は後で申し上げますけれども、厚生省あるいは老健審、そして我々与党の福祉のPTも選択の自由というものを随分大事に考えてきたような気がいたします。その手段としては民間活力をフルに動員するということではないかと思います。  四番目は、そういう中で、やっぱり経済の実態、あるいは個人の負担であるとか、そういうものとの平氏性というものも大事に考えなければ、二九・八%まで上がるという年金保険料率に代表されるように、これから大変厳しい時代になってくるわけでありますから、例えば社会保障の今の制度をもしこのまま続けていった場合には、将来の国民負担国民負担についてもいろんな議論がこの委員会でも出ておりましたけれども、その辺も率直に国民の皆さんにお示しをするということが大事なんだろうと思うわけであります。かねてから高齢化のピークでも負担率が五〇%以下と言われておりますし、今回、橋本総理は四五%以内にというようなことも巷間伝えられているわけでございますが、そういったものとの整合的な社会保障制度の選択肢というものを国民に示すことが大事なんだろうと。  今回、介護保険、また後で述べますけれども、今、月五百円でというような話がありますけれども、例えばこれも前提としては半分公費で見るということが今までの福祉の延長線上で入っているわけでありまして、例えばドイツのように全部保険料でやっちゃった場合に、皆さんにはこれだけ負担をしてもらわなきゃいけませんよ、だけれども、いろいろなお立場の方もおられるから、そこで半分あるいは三分の一公費を入れる場合にはこのぐらいの負担になりますよと、いろんなメニューを示すことによって、これからのなかなか厳しくなる自分たちの社会保障のあり方というものを我々を含めて国民全体が認識していく、そういうプロセスが大事なんじゃないかな。  ですから、余り隠さずに、ひとつここはガラス張りにいろいろな選択肢や問題点というものを出していくことが大事であろうと。もちろん、成長率も随分下がってきた、前回の福祉ビジョンから見てもまた下がっているということでありますから、そういった点からの見直しも当然必要。  その一方で、この間、朝日先生から某役所の相関関係の話が出ておりましたけれども、社会保障負担と経済成長率の相関関係というのがありました。しかし一方で、今は企業があるいは人が国を選ぶ時代になったということはもう皆さんも御案内のとおりでありますから、この某役所の指摘する社会保障負担が経済に与える影響というのも全く無視するわけにもいかないだろう。しかし、それが本末転倒になって、社会保障の問題が言ってみればその問題で振り回されてしまうということはいけないんだろうと思いますけれども、しかし無視はできないということではないかと思うわけであります。  五番目に、世代間の公平ということがもう言わずもがなではありますけれども大事で、この公平さというものをどう考えていくのか。また後で述べたいと思います。  何か大演説になってしまいますが、介護保険の問題についてもちょっと言っておかないと、後で基本的哲学の中で言っていただかなければいけないので申し上げますけれども、さっき申し上げたように、我々、福祉プロジェクトをけさもやって、第八十三回か七回か忘れましたが、八十数回やってきて、そのかなりの部分を公的介護保険議論に費やしてきた。  そういう中で、厚生省もいわば社会保障の構造改革の第一のステップだとおっしゃって、何が何でもこの国会に出そうと、こういうふうに聞いているわけでございますけれども、例えば利用者負担を定率で導入するとか、あるいは高齢者自身、年金から保険料を取っていくとか、あるいは医療と福祉の一体化であるとか、あるいはまた民間サービスの福祉のジャンルへの導入とか、かなり新しい試みを果敢に行っているということは我々も高く評価をしなければいけないというふうに思っております。  しかし、今考えてみますと、きょう、あす市長会が行われていると聞いているわけでありますけれども、まだまだこの運営主体となるであろう市町村の了解が十分得られていない、納得が得られていないというふうに思われておりますし、またサービス供給のインフラの整備不足とか、あるいは地域間格差の問題、あるいは例えば二〇二五年のピーク時の負担が示されていないということで将来への不安をやっぱり皆持っている。今五百円と言ったって、二〇二五年にどうなんだということがよくわからない。また、在宅だけ先にスタートすることについての批判もある。四十歳以上を対象ということにも批判があって、いろいろ煮詰まっていない問題があるんだろうと思うんです。  ですから、結論から言いますと、待ったなしになっている介護の問題に早くこういった仕組みを導入するということの議論喚起のために、早くたたき台をつくるということは大変重要だと私も思っております。それには大いに賛成をしますけれども、修正を覚悟で今のまま国会に上程をしてくるということは、ちょっと政府提案としてはいかがなものかなと。政府提案ということで出してくるならば、もちろん最終的に修正があったとしてもこれでいくんだというものがなければ、とりあえず出して、みんなの御意見をいただいて修正していこうという程度のものであったならば、私はあえて閣法として出すのにはなじまないんじゃないかなというようなことを思っております。  そのほか、医療保険の抜本的な見直しも少なくとも来年度からスタートしなければいけないということでありますから、年内にもう議論が詰まらないといけない、こういうことになっているわけであります。  いろいろ言いましたけれども、そういうような今私が申し上げたようなことを踏まえて、ひとつ大臣のこれからの社会保障全体の見直しに関する基本的な哲学並びに今後のスケジュールについてお聞かせいただきたいと思います。
  44. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 今、塩崎委員の方から、全体の問題あるいは介護保険の問題、いろいろと御意見を述べていただきまして、問題意識としては、私自身は今の塩崎委員の問題意識とほとんどの点で共通しているんではないかと思っております。  社会保障の構造改革本部というものを設けた経緯はもう御承知のことだと思いますが、まず総理が四審議会の座長さんを招き、また大蔵大臣、厚生大臣、経済企画庁長官、官房長官を含めて議論を一度させていただきました。その後、財政審を中心に各審議会、例えば厚生省関係であれば医療保険とか老健審なども含めた議論をしていこうということで、これは官邸主導といいましょうか、総理の主導のもとで動き始めておりまして、そういう議論厚生省としても前向きに受けとめて積極的に参加していこうということで、省内に社会保障の構造改革本部というものを設けたわけであります。  この中での議論、これも今、塩崎委員の方から五点の問題指摘がありましたが、私どもの中でも、全く同じという形ではないかもしれませんが、基本的にはこういった点を踏まえて議論をしていこうと思っております。  その中で一つだけ。高齢者の社会参加ということが指摘をされたんですが、実は私が厚生省の事務方に言っているのは、例えば年をとったときに仕事を続けていくためには、経済構造とかいろいろな仕組みの問題と同時に、場合によったら、例えば一時間も満員電車に乗って通勤しなければ職場に着けないというような町の構造なんかも実は非常に影響しているんじゃないかと。  厚生省が町の構造なんということを言うと、もしかしたら、従来的に言えばやや範囲を逸脱しているというふうに言われるけれども、実は高齢化社会の問題というのは、そういう町の構造も含めた問題、バリアフリーの住宅といったようなことはもう既によく言われておりますが、町全体の構造も含めて高齢化社会に備えてのあり方ということを厚生省サイドも議論をして、必要なら他の省庁に対しても逆に提案するようなことをやったらどうかということも言いながら、こういった問題をまずは自由に議論してもらいたいということで省内でも議論を始め、関係した審議会八つあるわけですが、もちろんその座長さんにもお集まりをいただいていろいろ話を聞かせていただく、あるいは議論していただく、こういうことで進めております。  一応のめどとしては、一つは消費税議論等々の中で言われたところですけれども、秋ごろを一つのめどにして検討の結果を取りまとめていきたいと、こういうふうに考えております。  多少細かい点を申し上げますと、第一回会議は、この審議会の会長にお集まりいただいた会議を五月二十九日に開きまして、社会保障給付に係る制度間の重複の調整及び連携、あるいは公的な社会保障制度がカバーすべき範囲と内容、あるいは社会保障関係サービスの提供に当たっての民間活力の活用といった点について検討をいただくこととした次第であります。  同時に、これに関連して、今介護保険制度についての塩崎委員の方からの問題認識なり考え方についての御意見をいただいたわけですが、まさに御承知のように、今までは医療は医療でどちらかというと医療保険制度を中心に考え、また福祉は福祉で措置制度を中心に考え、年金年金年金制度ということで来たわけですが、介護というのはある意味では、従来家庭で行われたところ、あるいは入院という形で結果的にお願いしたところ、あるいはいろいろな社会福祉施設などを中心にやっていただいたところ、または自治体における在宅サービスなど、従来の形でいえばいろいろな分野にまたがった分野になっているというように思っております。そういう点では、逆に言えば、社会保障制度の改革を進めていく上で高齢者介護をどういう仕組みにするかということは大変私は大きなかかわりを持っている問題ではないかと思っております。  そういった点で、今ある制度制度のままで、それにプラスして公的介護保険制度を導入するという考え方ではなくて、今ある制度そのものもいろいろな形で改革することを連動させる形で公的介護保険制度というものをだんだんと組み立てていく必要があるのではないかと、そんなふうにも考えております。  そういった点で、今回与党のプロジェクトの皆さんにも本当に大変な御努力をいただいて、ぎりぎりの状況で試案なり修正した試案というものをお示しし、さらに今週前半の自治体のいろんな皆さんの御意見も伺いながら、与党の皆さんにも御相談申し上げながら、できれば六日の段階で正式諮問ができるような状況になればありがたいということで努力をしているところであります。  そういった点で、今回の試案なりあるいは法案というものを考えております中で、それがたたき台としては、この時点で出すことの必要性は塩崎委員の方からも御理解をいただいたように思いますが、確かに政府案という形で法律を出すときに、いやもっといろいろ議論があったときは修正があるかもしれない云々ということを私の立場で余り言うべきではない、あるいはそういう性格のものではないという御指摘もよくわかるわけであります。  そういったことも含めて、あと残された時間は少ないんですけれども、少なくとも最終諮問なり法律というところにこぎつけた段階では、現時点では最善と思える形のものとしてお示しをし、諮問をし、答申をいただいて法律という形で出させていただきたい。それから先のことは、国会の議論の中でまたいろいろと御議論があろうかと思いますが、提案をする責任者としては、提案をする段階では最善のものと考えられるものをお示ししていきたい、このように考えております。
  45. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 ありがとうございました。  介護保険の問題についてはこのところハイペースでいろいろな新しい仕組みも出てきて、我々も一回ぐらい福祉プロジェクトを休むと何だかよくわからないというぐらい速いペースで物事が進んでいるわけであります。ということは、恐らく国民あるいは市町村の保険者になられる方々などは大変心配をしている。もちろんその一方で、この介護は何とかしないといけないと思いながら、非常に複雑な思いでおられるんだろうなというふうに思うんです。  ですから、諮問が出たら即法案として出すということについて、そこは意見が分かれるかもわかりませんし、私はむしろ、閣法である限りは、先ほど申し上げたように、何が何でも出すということはおやめになった方がいいんではないかなと実は個人的には思っておりますが、しかし、制度としてスタートするということについてのタイミングについての意見はそんなに変わっていないと思うので、その辺はよく議論をしていきたいなと、こういうふうに思っております。  今、社会保障全体の見直しをこれからいろいろやっていくという話がありまして、秋までに出すんだと、こういう話がありましたが、先ほど申し上げたように、やっぱり大事なことは、今まで割含みんなに将来の絵まで見せずにやってきたという嫌いがあるんじゃないかと思うんですね。  我々、党内でも、例えばこの介護保険の問題でも、二〇二五年が高齢化のピークだと言われながら、二〇二五年の介護費用の見通しというものが出てこなかったりしているんですね。大体二〇一〇年とかいう数字ぐらいまでしか出てきていない。ましてやその保険料も、最初は二段階で行けば月五百円とこう言われておりますけれども、二〇二五年が幾らになるのかというのは相変わらず資料が出てこない。こういうことではやっぱりみんなで議論をしようというときにはよくないんだろうと思うんですね。  今スタート時にただ五百円ですよと言うと、それだったらいいわと。前、アンケートでたしか月二千円ぐらいまでだったらいいよとかいう話もあったと思うんですけれども、小さく産んで大きく育てようじゃないですが、小さな負担で将来でっかくなるというんじゃこれは困るんで、やっぱりある程度きちっと、ピークの一番苦しいときの状況のときに皆さんはこれだけお願いしますよ、そのかわりそのサービスがこういうことになりますよということを見せないといけないと思うんです。  そういう意味で、例えば二〇二五年の介護費用保険料の見通しというのはどうなっているのか、また国民負担率ベースでも出てきていないので、その辺についてお答えいただけるならばお話を聞きたいと思います。
  46. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お尋ねの二〇二五年における介護費用でございますけれども、今まで確かに二〇一〇年ぐらいまでのところの介護費用をお示しいたしておりました。二〇二五年までになりますといろいろ要件等が変わる部分もございまして、そういう意味で不確実な性格が加わるということでそのようにしておったわけでありますが、一つの仮定を置いた計算としてお示しをさせていただければ、まず平成二十二年度、これは既にお示しをしておるわけでありますけれども、介護費用平成七年度価格で六・八兆円としておりまして、この介護費用から利用者負担分を除きました介護給付費、これに今前提にしております二分の一公費負担をしたという形で、四十歳以上の一人当たり負担額で言えば、これは三千四百円と既に試算をしているところでございます。  そこで、平成三十七年度、二〇二五年でございますけれども、これにつきまして、今申し上げました平成二十二年度の介護費用六・八兆円に、平成二十二年度から平成三十七年度までの要介護者等の全体での増加率というものを、今一応二〇一〇年三百九十万人が二〇二五年五百二十万人になるであろうという予想を立てておりますので、その増加率に乗じて計算をいたしますと、単純な推計では平成七年度価格で約九兆円という数字になります。  また、この場合の、同じように利用者負担分を除きまして介護給付費の二分の一を公費負担した場合の四十歳以上の一人当たり負担額、これも先ほど平成二十二年度、二〇一〇年が三千四百円と申し上げましたが、これに要介護者の高齢者の増加率一・三倍を乗じまして、逆にいわば負担をする方の四十歳以上の人口の伸び率、大体この間が一・〇四倍と推計をされております、七千百万から七千四百万ということになっておりますので、それで割り戻しますというと約四千四百円という数字になります。  ただし、冒頭申し上げましたけれども、これらの数値につきましては、今後のいわゆる寝たきりゼロ作戦というような形でリハビリテーション等を通じまして要介護高齢者を減らす努力というものをやってまいります。そうしますと、このぐらいの長期の期間になりますというと、その効果があらわれてくるという要素でありますとか、あるいはサービス内容につきましても時代の変遷に応じての変化というものが当然考えられるわけでありますが、こういったものを考慮しない単純な推計値でございます。そのようなこととして、将来の変動要因を考慮に入れて推計するということがこういったものにつきましてはなかなか難しいということから、やや機械的に試算したわけでありますが、そのようなものとして今申し上げさせていただいたことで御理解をいただきたいと思います。
  47. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 機械的でも、仮定を置けばみんなには理解ができるんだろうと思うので、そういうものはどんどん出して多くの人に議論に参加をしてもらうということが大事だろうと思うんです。  今のはコストいろいろありましたけれども、今回特に民間活力を導入しようという話をしているわけでありまして、この民間活力を導入するというのは具体的にどういうことを考えているのか。  今まで導入できなかった隘路というのが多分あったんだろうと思うんですけれども、それを取っ払ってどういうものをやるのか。  サービスの面と、それから民間保険、生損保の民間保険も介護保険というのを随分やっていますけれども、こういうものを組み合わせるという話だろうと思うんですけれども、なかなか余り詳しい話もまだ書いていない。試案の中にも一、二行たしか入っていたような気がしますけれども、この辺の具体的な考え方というのは大臣いかがでしょうか。
  48. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 今、御指摘いただきましたように、今回の介護保険制度、修正試案の中でも民間活力の活用を表明しているわけです一この制度において、規制緩和を進めて民間の活力を活用することが特に重要だ、必要だと考えております。  サービス提供の主体については、利用者本位の効率的なサービス提供の観点から、多様な民間事業者の参入を促すとともに、市民の非営利団体あるいは地域住民の組織なども参加できるような柔軟な仕組みとすることが適当と考えております。  こういった点は、これからサービス供給のいろいろな形をどう認定し、どう認めていくかということになってくると思いますが、できるだけ幅広い、いろいろな形の参入ができるようにしていきたいというのが基本考え方であります。  また費用面については、ニーズの多様化を踏まえ、保険給付額を上回るサービスを本人が選択した場合には、その超過分を本人が負担することにより、給付額を超えても介護サービスを利用できる柔軟な仕組みとすることが考えられます。この場合の自己負担については、民間保険の積極的な活用が図られるよう努めてまいりたい、このように考えております。
  49. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 今の民間保険のお話で、上乗せのような形の御答弁だったと思うんですけれども、これはちょっと通告していないのかもわかりませんが、上乗せという場合に、そっちはそっちで勝手におやりなさいね、公的なものは公的なものだけですよという形でやるのか。それとも、その辺は連係プレーをさせるのかというのはいかがでしょうか。
  50. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 民間保険といわば公的な介護保険ができました場合の組み合わせの仕方でございますけれども、結論から申し上げれば連携を図る形にしていきたいというふうに思っております。  具体的に申し上げれば、今、民間の介護保険がやられておりますけれども、これの一つのネックになっておりますのが、要介護の認定をそれぞれやるのがなかなか難しいというような御議論がございます。そうしますというと、今度公的な介護保険ができまして一つの要介護認定基準というものができますれば、その上に立って民間の方もそれなりの設計ができるというふうになります。  また、公的介護保険につきましても、従来、医療保険の場合などでございますと、医療保険における保険診療にいわば自由診療を上乗せするというのは、ある種の限られた場合だけを想定するような仕掛けにいたしておりますけれども、介護の場合には、そのニーズなりサービスの性格からしまして、もうちょっと自由度の高い、つまり費用として公的な介護保険としてはここを見ますけれども、その上で例えばホームヘルパーを、この人の要介護度ですと週何回ぐらいが標準的なサービスとしていいですよと、こうしたときに、自分のいわば希望でもっとホームヘルパーを呼びたいというときには、自分でその費用を出してホームヘルパーを呼ぶというような形の、いわば公民ミックス的な感じができるように考えていく。そうしますというと、そこに当然、金銭需要というものが出てまいりますから、そういった面での例えば民間保険というようなものもそこに組み込まれる余地が大きくなるというようなことが考えられるのではないかと思います。
  51. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 何といっても、四人に一人が六十五歳以上になってしまうときにどうやるかという話ですから、とてもじゃないけれども、民間活力をフルに活用していかなければ乗り切れないんだろうなというふうに私も思っております。  ですから、これからは社会保障を見直すときには新しい考え方を導入しないといけないということで、一つ大臣にお伺いしたいんですが、今までは、例えば特別養護老人ホームに入っている場合に、所得がなければ月五万円ぐらいの負担で入れると。ところが、亡くなられてからよくよく見たら田園調布に三千坪土地を持っていたとか、そういうふうなことも間々ないことはないわけであります。そうすると、その間、公費を半分ぐらい福祉というのは当然入れているわけでありますから、その公費というのはどこから出てくるかというと、所得の低い方も含めてあまねく消費税などで取ってきているわけですね。そういう人にそういう税金が行くということになっているわけです。  そうすると、これから新しい社会保障制度を考えるときに資産というものをどう評価していくのか。リバースモーゲージという方法もあるようですし、武蔵野方式というのもあるようでございますが、こういった資産をどの時点でどう活用するかはいろいろなパターンがあるようでありますけれども、これから全くそれを無視していくことは難しいんじゃないかなと私は個人的には思っているわけでありまして、それについてのお考えというのは、大臣いかがでしょうか。
  52. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 御承知のように、今回の介護保険制度でも、いわゆる六十五歳以上の皆さんにも保険料を払っていただく、その場合に場合によったら一部は年金の中からお払いをいただくと、そういうことが制度として考えられているわけです。  今の塩崎委員の言われた、もっと資産というものを活用すべきではないかということについて、私も塩崎委員も団塊の世代の前後といいましょうか、ほぼ同世代だと思いますが、特にその世代が七十歳前後になる時期には一番まさにピーク時でありまして、それを考えますと、その世代その世代である程度、貯蓄したもの、あるいは資産として所有しているものをその高齢者の介護の原資に結果的に振り向けていくということも考えなければならないのではないか、そうしないと後世代の負担が大き過ぎるようになるのではないかということを思っております。  そういう点で、先ほど御指摘をいただいた武蔵野方式なども、ケースは少ないんですが、家があって屋敷がある場合に、自治体がそのサービス供給のコーディネーター役になって有料介護サービスを提供する、いわばそれをツケにしておいて、亡くなったときにそれを遺産で清算すると、そういう考え方でありますが、こういう考え方をやはりこれから検討しなきゃいけないんじゃないんだろうか。  ただ、現時点ですぐに導入するというよりも、これからの中期的な課題としてこういう観点に立った検討が必要であろうということで、場合によっては先ほど申し上げた社会保障の構造改革本部などの議論でもやっていただきたいし、あるいは各審議会の会長さんの会議でもそれに関連した話も出ておりますので、そういうところでも御議論いただきたいし、もちろんこうした委員会でも御議論いただければと。そういうものを踏まえて、中期的将来の問題として考えるべき課題かなというふうに認識しています。
  53. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 世代間の扶養が社会的に行われる一方で、高齢者から若い世代へ所得移転が相続という形で私的に行われる、このアンバランスの問題であろうと思いますので、まだなじみのないことでありますから、いささかびっくりするようなアィデァというとられ方もあるかもわかりません。中期的というお話でございましたけれども、しかし、これからの社会保障制度を見直すときには聖域をつくらない方が私はいいんじゃないかなというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  次に、年金の問題に移りたいと思いますが、一元化の問題についてはもう既に我が党からも大島議員や阿部議員等々多くの方々が御質問されておられますので、さらにというところがあれでございますけれども、一元化というのは一体結局何なんだということでございまして、何度かお話が出て、財政運営安定化制度間の給付費用負担公平化ということなんだと。ですから、単純な統合ということではないんだというお話が繰り返し出てきたと思うんですけれども、大臣として、今回三つの統合を行うわけでありますが、一元化の最終的な形というのをどう考えていらっしゃるのか、これをひとつ御説明いただきたいと思います。
  54. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 御指摘のとおり、この統合法案一つの大きな目的は、制度長期的安定と、給付負担の公平という観点に立って、一元化という目的を達成するためのその第一段階という位置づけでお願いをしているわけです。  この一元化という考え方には、いわゆる統合して制度を完全に一本化するという考え方だけではなくて、少なくとも今のようなたくさんの分立から二つとか三つの複数制度への集約という考え方、さらには、制度は分立しているけれども、財政調整等によって公平なり安定を図っていくという考え方など、幾つかの選択肢があるというふうに思っております。そういった点で、現時点一元化の最終的な姿が、今申し上げた三つの中で、もうこれでなければならないというふうに一つに決め切れているというふうには認識いたしておりません。  いずれにしても、本年三月の閣議決定において、各制度が二十一世紀にかけて成熟化する段階において漸進的な対応を進めることといたしておりまして、先ほどの言葉と同じで恐縮ですが、制度長期的安定と、給付負担の公平というこの一元化の目的が達成するという方向の中で、どういう形が関係者理解を得て進むことができるか、そういう立場からこの一元化というものを推し進めていきたいと、こう思っております。
  55. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 ありがとうございました。  この一元化を乗り越えるのと恐らく並行して、財政計算も十一年にですか、またやってくるわけであります。介護の問題も本当はもっと早くから国民的な議論が盛り上がればよかったなと思っているんですけれども、年金の問題も恐らく全体的な社会保障制度の見直しの中でいろいろな改革をこれからやられると思うわけでありまして、これについても早く国民になるべくガラス張りで将来まで見せるということを私は大事にしないといけないんだろうと思うんです。  最近ずっと外国のいろんな例を見てみますと、アメリカはもう十年ぐらい前でしょうか、八三年ですか、いろいろ見直しをしておりまして、開始年齢も六十七歳と、日本ではちょっと信じられないようなことをやっていらっしゃる。それから賦課方式から修正積立方式になったり、どこもなかなか厳しいことをやっているわけでありますけれども、これは我々老後の所得の保障の問題でありますから、いきなりこういうようなものが出てくるというのは大変国民にも混乱をもたらすということでありますので、スライド制の変更とか、こういう諸外国のいろいろなものを見てみると、やっぱり早目にやることが大事なんだろうと思うので、ぜひ厚生省においては早目に議論を始めていただきたいなというふうに思います。  次に、この間、朝日議員からもお話が出ておりましたけれども、年金の国際通算の問題でございまして、この辺についてちょっとお伺いをいたしたいと思います。  厚生省からいただいた資料を見ると、各国との人的交流の状況というのを見ると、アメリカがやっぱり圧倒的に日本から行っている人が多くて、永住者を除いた数で十六万三千人ぐらいおられるようであります。イギリスが四万ちょっと、ドイツが二万ぐらいでありますから、もうアメリカが断トツ一番ということであります。  この間の朝日議員への答弁を見ますと、ドイツとの間で話し合いが大分進んでいるやに承ったわけでございます。もちろんこの目的については、保険料が掛け捨てになってしまうとか、あるいは保険料の二重払いということになっているようでありまして、この通算の問題について外国でもやっぱり同じような問題があるんだろうと思うんですね。諸外国間の国際年金通算協定の締結状況というのはどんなになっているのか、これをまずちょっとお聞かせください。
  56. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 欧米の先進諸国におきましては、これも二国間という形で通算協定が行われているわけでございまして、例えばアメリカの場合でございますと十七カ国、ドイツの場合でございますと二十六カ国、それからイギリスの場合には植民地等もございまして三十一カ国と、こういうふうな形で協定が締結されております。
  57. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 それに対して我が国は今のところまだゼロということですか。
  58. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 今のところまだゼロでございます。
  59. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 余りの差にびっくりいたしますが、ドイツについては大分詰まってきているように聞いておりますけれども、ドイツとの間の交渉状況はどんなになっているのでしょうか。
  60. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) ドイツとの関係というのは大分前からやっておりまして、最初は昭和四十三年という形でございますが、その後長らく中断をいたしておりまして、本格的に再開いたしましたのは昭和六十年からでございます。それで、毎年一回程度のペースで協議をしていたわけでございます。  仕組みが両国で全く違いますのが障害年金、それから遺族年金関係でございます。障害年金関係は、日本の場合ですと、障害が起きたときの制度が全部年金負担するという形になっているんですが、ドイツの方式によりますと、過去に既に加入してきた制度も加入期間に比例して応分の負担をする。老齢年金と同じような仕組みをとっているわけでございまして、ドイツのやり方の方が国際的に言えば一般的だと。こういうふうな事情もございまして、我が国の方式に固執する限りにおいては、これはどこの国ともほとんど協定は締結できないだろうと、こういうふうな判断もございまして、昨年六月の段階でこの考え方を転換いたしまして、ドイツ方式に乗らざるを得ないと、こういうことで年金当局間で一応の合意の見通しができたわけでございます。  昨年の九月から政府間交渉を始めまして、ことしの四月の終わりころ再度交渉を行っておりまして、かなり煮詰まってきております。これは外交交渉でありますから確定的なことは申し上げることはできないんですが、できれば年内に協定を結んで、来年に協定の批准ができればなと、こういうふうな希望を持っております。
  61. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 できれば年内ということでございますので頑張っていただきたいと思いますが、先ほど申し上げたように、何といったってアメリカが一番日本から行っている人が多いわけで、もちろんアメリカからこちらに来られている方も四万近くおられるわけであります。  アメリカとの関係でございますが、聞くところによると、阿部議員がかつては携わっていたという話も聞いておりますけれども、なぜかうまくいっていない、一体どうなっているのかと。アメリカに行って、それは永住権を取ってしまえば別ですけれども、普通はサラリーマンで、お役所の方々が行ったら二年か三年で帰ってくるわけでありますから、聞いてみると、向こうでも払う、こっちでも払って、二重に払っているわけですね。それで、向こうは資格が得られるのは五年以上ですか、ですから結局全部捨ててしまうということで帰ってくる格好になるんだろうと思うんですが、これをずっとやり続けるというのは被用者にとっても雇用者にとっても大変なことだろうと思うんですね。  そういうことで、アメリカがなぜうまくいかないのか、またこれからどういうふうにしていくのか、どういう見通しなのか、この辺の事情をちょっと説明していただきたいと思います。
  62. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) アメリカの方に日本から行っている方が非常に多くて、向こうからこちらに来られている方が少ないという事情もございまして、アメリカの方で数理計算をいたしますと、掛け捨てになっているケース給付することになりますと、アメリカの年金財政にも影響を及ぼすんじゃないかと、こういうふうな懸念で中断をいたしてきたわけでございますけれども、日本制度負担率が高くなってきたわけでございますし、これからの経済交流を考えますとアメリカとしても放置できないと、こういうふうなことで、昨年から再開をしたいという申し入れがございまして、ことしの五月の連休明けでございますけれども、私どもの方から出かけていきまして、これはまだ情報交換程度でございますけれども、両国で話し合いを始めております。  アメリカの方も早くやりたいと、こういうふうにお聞きいたしているわけでございまして、私ども、ドイツとの関係を何としても先に片づけなきゃいかぬわけでございますけれども、これとのころ合いを見ながら両国間でさらに協議を進めていきたい。物理的な事情がございますけれども、できるだけ早く協定までこぎつけたいと、こういうことを考えております。
  63. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 かなりの人数の方々に影響の出るお話でございますから、せっかくこの連休明けからお話し合いが始まったということでありますので、ぜひ頑張っていただきたいと思うわけでございますが、何か聞いてみると、厚生省の中でこれを担当する方というのはかなり人数も少ないし、それ専属の方もいないということで、今この年金統合法案がかかっているということで、そっちの方はお留守になっているやの話も聞こえてくるわけであります。まあ、お留守と言ったら怒られてしまいますが、やっているんでしょうが、なかなか大変だということで大蔵省だったら国際租税課というのがもうずっと昔からあって、国際租税条約を結んで企業活動等々がうまくいくようにやっているわけであります。  そういう意味で、今まで年金の問題に対する民間人の意識あるいは一般の方の意識が、あるいは企業の方も含めてかもわかりませんが、低かったかもわからない。しかし、だんだんとこういうことで意識も高まってきていますから、その辺をひとつ専属、あるいはそういう体制を厚生省の中で組織的にも考え直してみたらどうだという気もいたすわけですけれども、それはいかがですか。
  64. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 通算協定の関係は、はっきり申し上げればまだ片手間的な感じは否めなかったわけでございますが、昨年度、初めて私どもの企画課の方に国際年金通算のための係が新しくできたわけでございまして、それと同時に担当企画官というものも配置されたわけでございます。それで、その後も増員をいただいているわけでございまして、これからの作業の進捗状況も見ながら必要な体制の整備をする必要があると思っております。  交渉だけでなく、協定が締結されますと後の維持というのもあるわけでございますし、それから社会保険庁の方ではやはり保険者としての体制づくりというのも必要になるわけでございますので、その面ではこれから意を用いる必要があると、こういうふうに考えております。
  65. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 ありがとうございました。  今いろいろ通算問題についてお話を承りましたけれども、大臣のこの辺についての決意はいかがでしょうか。
  66. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) まさに現在、国際的な人的交流が活発化しておりまして、加入期間の通算による年金受給権の確保や、二重適用の防止といったことを内容とする年金通算協定の必要性は特に増大しているというふうに認識しております。  先ほど政府委員の方からも話を申し上げたように、ドイツの交渉が本年四月には協定条文の交渉というところまで来ておりますし、またアメリカも若干時間はかかっておりますが少し動き出したということでありまして、厚生省としては、外務省とも緊密な連携を図りながら、当面は実質的な協議が最も進んでいる日独間の協定の早期締結に全力を挙げていきたい。そしてその上で、我が国との人的交流の最も多いアメリカ、さらにはイギリスについても、日独間の交渉の状況を見ながら適切に対応して何とか早く締結をできるように努力したい、こう思っております。
  67. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 ありがとうございました。  ちょっと順番を変えて申しわけないんですが、年金基金の方の問題に移りたいと思います。  けさの朝日新聞にもちょっと出ておりましたけれども、六月一日土曜日の日経の一面トップに厚生年金基金改革で研究会報告書案とえらいでかく出ておりました。報告書案なんということになっておりまして、幾つか項目が挙げられております。年金基金の、例えば日本紡績業厚生年金基金の解散の問題とか、大島議員からもこの問題については冒頭から御質問をしておられたようでございますけれども、この基金がなかなか難しいということが、年金の問題全体をよくわからない一般の方々にとってみると何か年金全部が危ないんじゃないかと、こういうことで週刊誌も年金が危ないなんというでかいタイトルで出てきたりするようなことになっていて、この問題を解決するのは大変重要だというふうに思っております。  これはもちろん、一番の問題は受け取る方の側の問題でありますし、その一方で企業の方の問題でもあるということでありますが、この新聞記事ですが、いわゆる抜かれたということなんでしょうが、これについてちょっと一つ一つ、ちょうどお聞きしようかなと思っていたことが皆大体入っているものですから聞いてみたいと思うんです。  この項目を見るとまず第一に、一番でかいと思うのは、例の五・五%の運用ができないということで、厚生年金厚生年金基金の間で財政調整を実施するということを一番トップに、「厚生年金財政支援」と、こう書いてあるわけですけれども、これの真偽のほどはいかがでしょうか。
  68. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 現在、厚生年金基金制度の研究会を設けておりまして、今月末を目途に報告書を取りまとめるということで報告書の取りまとめの段階になっているわけでございます。  ただ、現時点報告書案がまとまったという段階ではございません。  新聞記事で大きく出ている「厚生年金財政支援」ということでございますが、今回の研究会の検討の中で基金の財政運営のあり方というのが一つの大きな項目になっているわけでございますけれども、その中で、代行部分財政運営に関しまして、非常に収益率がよくなったり悪くなったりするわけでございますので、リスクが生ずるわけでございます。そのリスクを厚生年金基金と厚生年金本体、政管の本体でございますが、との間でより一層公平に分担していく方法は考えられないだろうかと、こういうふうな御意見が出ているのは承知いたしておりますけれども、一方的に厚生年金本体が厚生年金基金を支援すると、こういうことは到底考えられないわけでございまして、もし行うとすれば相互だということになろうかと思うわけでございまして、この新聞記事というのはかなり誤解を与える記事ではないのかなと、こういうふうに私どもは認識しております。
  69. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 二番目に、支払い保証制度の問題でございますが、発動例はないと聞いておりますけれども、この加入の義務づけというのも出ておりますけれども、これはいかがですか。
  70. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 支払い保証制度は現在もあるわけでございまして、任意事業で行われているわけでございます。これからの自由競争あるいは規制緩和、こういう時代を考えますと、この支払い保証制度の充実というのは必要だと、こういう方向では先生方大体一致した方向に考えておられるというふうに認識しておりますが、強制にするかどうかということにつきまして、これはまだ御議論がございまして、任意のまま拡充する方が現実的ではないかと、こういう有力な意見もあるわけでございまして、一方では強制加入にした方が制度としてはかちっとしたものができると、こういうふうな御意見がまだ分かれているような段階でございます。基本的には事業の拡充という方向では変わりませんけれども、その方法論につきましてはまだ結論が出ていないと、こういう段階でございます。
  71. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 ありがとうございました。  一番大きな問題は例の予定利率五・五%という問題だろうと思うんです。きょうの朝日新聞の一面に出ていたのも、この五・五%で「積立金不足広がる」ということで、幾ら積み立て不足になっているかと企業ごとに出ているわけでございますが、振り返ってみると、平成四年度ぐらいから五・五%を下回っているように私どもの持っている資料ではなっておるわけであります。  それまではもちろんもっとずっと高い金利で回っていたということで、そのおつりがあるじゃないかと、こういう説もないわけじゃないんですけれども、やっぱりそうじゃないところもあって、今、公定歩合でも〇・五でずっといって、これからこのままいくとは思いませんけれども、安定成長、低成長でいくならば金利もそうむちゃくちゃに上がることはないだろうということであると、五・五でコミットしていくということはこれからまた大変な問題になるということは言うまでもないので、それで研究会の一つの大きなテーマでやっていらっしゃるんだろうと思うんです。  この日経新聞は、五・五%で固定していた予定利率の一定枠内での自由化ということを報道しているわけでありますけれども、私も弾力化ということを恐らくやらざるを得ないんだろうなと思っておりますけれども、この辺についての議論は、あるいはこの報道の真偽はいかがですか。
  72. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 基金の実際の財政運営に要します掛金等に用います予定利率でございますけれども、成熟化の度合いでございますとか基金の資産の運用方針、こういったことで基金によって実現できる利回りというのは差があるわけでございますけれども、実際は五・五%ということで一律に規制していると、こういう状況になっているわけでございます。  現在の研究会での議論でございますけれども、一定の幅の中で基金が主体的に設定できるような仕組みに改めたらどうかと、こういう意見の先生の方が多いというふうに受けとめております。ただ、予定利率を下げますと、これは掛金をふやすかあるいは給付を下げるか、こういうふうな選択を迫られるわけでございますので、この数字を変えればすべてが解決するわけじゃございませんし、実際の基金運営というのは実績値で動く、こういうことであるわけでございますから、この予定利率を変えればすべて問題が解決する、こういうわけじゃございませんので、その辺も踏まえて御議論を願っていると、こういうことでございます。
  73. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 当然そういうことで、自由化をすればという一つの可能性の中で支給水準の引き下げというのが考えられるというお話が今ございましたけれども、この中でも、「労使の合意に基づく年金支給水準の引き下げ容認」と、こう書いてありますが、割合刺激的なお話でございますけれども、この辺については議論いかがですか。
  74. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 給付設計、最初は自由であるわけでございますけれども、これまでの扱いでは、給付はなるべく大きくなった方がいいと、こういうふうな考え方が非常に強くて、給付水準の引き下げというのは基本的にはだめということになっているわけでございますけれども、これからの運用環境等を考えますと、給付水準の引き下げを認めてほしいと、こういう御意見が非常に強いわけでございます。  現在、研究会におきましては、受給権の保護との関係をどういうふうに調整するか、それから条件といいますか手続といいますか、こういったものをどういうふうに考えたらいいのかと、こういうふうな議論で労使の推薦の委員の先生を中心にさまざまな議論がまだ展開されていると、こういう段階でございます。
  75. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 もう一つ、この記事からの最後に。  確定拠出年金。今、確定給付型になっているわけでありますけれども、この問題でありまして、特にこれは企業サイドからの要望が多いんだろうと思うわけでありますが、アメリカなどでは四〇一Kプランなんというのが随分最近伸びてきて、数字を見ると、企業年金の中では確定拠出と確定給付というのは今逆転して確定拠出の方が多くなっているというふうに聞いているわけで、その中で半分弱ぐらいが四〇一Kプランというものになっているというふうに聞いております。  企業にとっては損金扱いができて、それから受ける方、従業員にとっては課税の繰り延べがあって、それでもう一つよく言われているのが、労働力のモビリティーが高くなる中でポータビリティーといいましょうか、転職した場合に継続がしやすいというふうによく我々は聞かされているわけでありますけれども、この辺の確定拠出型、これによると「部分的導入」というふうに書いてありますけれども、この辺の審議状況とこの方向性はいかがでしょうか。
  76. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先生御指摘のように、確定拠出制度はアメリカ等で非常に普及いたしているわけでございます。メリットとして考えられますのは、運用利回りが低下いたしましても事後的な負担がないと、こういうメリットがあるわけでございますけれども、一方では、運用利回りが低かった場合には年金額が減ってくると、こういうデメリットもあるわけでございます。  研究会で議論はいたしておりますけれども、これは企業年金ということで上乗せの給付をして、それによって老後生活の保障をすると、こういうことでございますから、やはり厚生年金基金というのは終身年金というのが基本だろうと、こういうふうに思っているわけでございまして、その中にどの程度こういった確定拠出的なものが取り入れられるかどうかと、こういうことだろうと思うわけでございます。  したがいまして、現在の御議論の中では、その基金制度の老後の所得保障として果たす役割とか、それから既存の制度、例えば財形年金なんかもあるわけでございますので、こういったものとの関係等につきまして十分な検討が必要だと、こういうふうなことで、かなり前向きということを言ってもいいと思いますけれども、その中でもさらに慎重に検討したいと、こういうのが現状でございます。
  77. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 かなり前向きというふうにとっていいのかなというふうに受けとめましたが、いずれにしても、この年金基金がやっぱりできる限りのリターンを確保するような運用をしていくということが大事で、この間ずっと規制緩和が行われてまいりました。五・三・三・二規制と言われるものも、例えば信託銀行ごととかそういうのは今回なくなったというふうに理解しておりますが、基金の全体としての五・三・三・二規制というのはまだ残っているというふうに理解しているわけですけれども、これはこの間のたしか規制緩和の推進計画の中では廃止の方向でいくということになっていたと思うんですね。これからこの撤廃に向けてどのようなスケジュールでいくのか、これについては厚生省になるんですか、お願いします。
  78. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 御指摘のように、信託銀行ごとの五・三・三・二というのはこの四月で廃止をされまして、今は基金資産全体で五・三・三・二がかかるということでございます。それで、運用管理体制が整っている基金につきましては個々の厚生大臣の認定という制度が設けられたわけでございまして、一定の四要件を省令の形でお示ししたところでございますけれども、この要件に具体的に該当する基金につきましては五・三・三・二は撤廃する、近いうちに撤廃された基金というのが出現するだろうと思っております。  ただ、全体的に言いまして、今まで基金の関係といいますのは非常に規制の中に埋没した基金というのが多かったわけでございます。したがいまして、急に五・三・三・二を撤廃して運用しろといいましても、体制が全然整っていないところも多いわけでございます。したがいまして、行政改革委員会報告自体もそういう実質を知った上での撤廃ということでございましたので、運用管理体制の整備等、状況を見ながら、これからの課題だというふうに考えております。早く体制ができて全面的な撤廃に向かえればいいなと、こういう感じを持っております。
  79. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 去年の九月の経済対策の中で、信託なんかが運用対象となれる株式の中で、上場銘柄というのはもうやめたと、こういうことだったと思うんですね。ところが、それが消えたけれども、市場性の高い優良な銘柄でないとだめだと、こういうふうに引き続いてなっているわけであります。  この市場性の高い優良な銘柄の株式というのは何なのかということなんですけれども、具体的に言いますと、店頭市場というのがあるわけですが、この店頭市場の株がその対象としてなるのかどうか。それから全くの未公開株、これがその対象になるのかどうかという点について、これは大蔵省だと思いますが、お答えいただきたいと思います。
  80. 村木利雄

    説明員(村木利雄君) 御指摘のとおり、年金信託の合同運用の株式投資の対象は、現在、大蔵省の通達上、努めて市場性の高い優良な銘柄というふうにされているところであります。この趣旨は、合同運用の性格から、公正な時価の把握とそれから公正な時価での処分が容易であるもの、これが適当であろうと、そういうふうに考えている次第であります。  したがいまして、一般論として申し上げれば、店頭株につきましては、最近の店頭株式市場の整備等によりまして公正な時価の把握が容易になったというふうに考えられますので、投資対象になるものというふうに考えております。また、未公開株につきましては、まさに未公開でありますので、流通市場が存在しないというようなことから、公正な時価の把握に困難が伴うことが少なくないだろうというふうに考えております。そうした意味で、公正な時価の把握が困難な未公開株は合同運用の投資対象としては適当ではないものというふうに考えております。
  81. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 今の未公開株についてですけれども、去年の十二月に中小企業特でやはり村木さんからお答えをいただいたときは、「政策的に未公開株式の投資を禁止しているということはございません。」と、こう言い切っていらっしゃるんですね。今は未公開株はだめだとおっしゃったような気がするんですけれども、どうですか。
  82. 村木利雄

    説明員(村木利雄君) おっしゃるとおりでございまして、政策的に私どもは未公開株への投資を抑制しているということではございません。ただ、先ほど御説明いたしましたように、合同運用という性格から、常に的確な時価の把握ができるということが必要だろうと。これは複数の人から預かっているわけでございますので、その持ち分を適切に把握しておく必要がある、そういう性格から、どうしても未公開株への投資というのは制約されてしまうというふうに考えております。  ただ、十二月の際にも御説明いたしましたけれども、合同運用口以外の一般のものにつきましては、未公開株も含めまして三割まで株式に投資することができるというふうになっておりますので、企業年金の規模は先生御案内のように相当大きいわけでございますので、このこと自体が未公開株全体への障害となっているというふうには考えられないのではないかと思っております。  しかしながら、調べてみますと、現在のところ店頭株につきましては去年の十二月の改正で可能になったことから若干の運用実績がございますが、残念ながら未公開株につきましては運用実績がないと、こういうことでございます。
  83. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 本来、先ほど申し上げたように基金が、ハイリスクは余りよろしくないにしてもリターンを高めないといけないという意味では、未公開株というのは、公開されるときのキャピタルゲインというのがすごく大きなものを期待して投資をするというのが当然ですね。だから、そのキャピタルゲインを得られるような市場をつくっていくということが大事なので、これは、銀行局に言ってもしょうがない、証券局に言わなきゃいけない。今度は証券局も一緒に呼んでやらにゃいかぬなと今思いました。  いずれにしても、公正なとかいうような言葉はよくかつてから聞いている話でありますけれども、その公正な価格が決定できるような仕組みというものをつくることが大事で、それがこの基金の最終的な利回りの向上につながるわけでありますから、単なる配当ばかり期待していたってそんなものはうまくいくわけがないので、やっぱり公開というそこにリターンが高くなる可能性を秘めているわけです。ただ、リスクはあるかもわからない。しかし、それはリスク分散の論理で何ぼでもリスクを下げることができるわけでありますから、その辺は帰られてぜひ証券局にもう少し考えるように言っていただきたいなと思います。  最後に、適年、適格退職年金について、これについては五・三・三・二規制も個別信託、生保についてもまだやっているわけでありまして、基金の五・三・三・二と大分様相を異にしているわけですね、規制緩和という面においては。その辺について私も企業を調べてみると、適年しかやっていないという大企業なんかも結構あるんですね。  そういうところの人たちというのはやっぱりできる限りのリターンを得たいという、それは会社の人たちへの所得保障ということで期待をしているわけでありますけれども、何でこの規制緩和をやらないのか、あるいはやるとするならば御計画等をお聞かせいただきたいと思います。
  84. 和田恒夫

    説明員(和田恒夫君) 今お話がございましたように、厚生省においては厚生年金基金制度研究会で基金の見直しが検討されているというように聞いておりますが、適格退職年金の見直しにつきましては、今後そのような状況等をも踏まえつつ、幅広い観点から勉強させていただきたいと思っております。
  85. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 勉強だけしていただいても困るわけで、やっぱり結果を出していただかなきゃいけないんですが、結果を出す方向で勉強するという意味ですか。
  86. 和田恒夫

    説明員(和田恒夫君) 運用の規制緩和を検討する場合には、受給者保護のための十分な措置が講じられているかどうかも踏まえ検討する必要があるということでございます。
  87. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 どっち向いているのかよくわかりませんからあれですけれども、勉強しようということでありますからよく勉強していただいて、できる限りリターンを高くすることによって所得保障を確保するということでございます。  今、大臣官房からおいでだということで、これは別に質問項目を何も通告していませんけれども、そもそも適年というのは大蔵省の中でどこが担当しているんですか。
  88. 和田恒夫

    説明員(和田恒夫君) 窓口といたしましては大臣官房の私の方でやってございまして、制度は法人税法関係でございますので主税局、そして実施機関は国税庁、そして、先ほどから御議論になっておりますように、運用の実態につきましては、信託銀行ないしは生命保険会社でございますので銀行局というふうになっております。
  89. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 いろんなところがタッチしていて、結局どこも責任をとらないような感じがするわけでありますけれども、今聞いていて抜けているのは、受け取る側の会社の人たちの将来の所得がどうなるかとかいうような発想を持って担当しているというところがないなという感じがするんですね。  ですから、これは縦割り行政の最たる例であって、この辺は厚生省も似たような適年というものができていて横にらみでお考えになって、大蔵省も基金を横にらみで見ているんでしょうけれども、もらうものは同じお金で、適年と書いてあるわけじゃないですから、その辺はちゃんとどこかまとめて、特にもらう側の論理というのを大事にするようなところもひとつ大蔵省も考えていただいて、厚生省ともよく御相談をしているんだろうと思いますけれども、そういった観点から、将来の所得保障という意味で、適年しかやっていないところもあるわけでありますから、ぜひ考えていただきたいと思います。  ちょっと長くなりましたが、大体言われた時間だろうと思いますので、やめます。  ありがとうございました。
  90. 都築譲

    都築譲君 平成会の都築譲でございます。  きょうは、厚生大臣初め関係省庁の皆さん、大変御苦労さまでございます。厚生年金保険法の一部改正ということで、いろいろ勉強させていただきました。  きょうの質問の大きな観点は、年金一元化というのは昭和五十九年二月の閣議決定平成七年度を目途に完了させる、こういうお話であったと、私自身こういうふうに理解しておりましたが、今回の改正法の内容を見ますと、どうもこれは後退するような内容じゃないか、いつになったら一元化が実現できるんだろうか、こういう思いで幾つかお尋ねをしたいと、このように思っております。  前提としては、少子・高齢化が本当にもう着々と確実に進んできている。こういう状況の中で、本当に今まで政府の方で厚生年金制度とかあるいは各共済制度、老後の安心、豊かさ、こういったものを保つためにいろんな施策を講じてこられたわけでございますけれども、ただ、産業構造就業構造も非常に経済が世界化する中で大きく変化しつつありますし、また情報産業という形で新しい産業分野が出てくると、こういう変化が大変激しく起こっている今日でございます。  それからまた、今までのように右肩上がりの経済といったものはこれから期待できないんじゃないか。本当は期待したいんですけれども、今のこの時期、本当に一時的なセットバックということであってもらえればいいと思うんですが、実際にはなかなかここまで経済が大きくなるとそう簡単にいかないのかと、こういうふうなことも考えられる。経済環境も金利が非常に乱高下をする、非常に低金利水準で推移をする時期が長くなる、こういう状況になりますと、なかなか思ったとおり世の中が動いていかないと、こういう話になるわけでございます。そんな中でも安心、豊かさ、こういったものをしっかりとつくっていっていただく必要がやっぱりあるだろうと、こういうふうに思うわけでございます。  そういった意味で、今回の改正も、実は最終的にはこれだけの未曾有の高齢化を迎えるわけですから、国民みんなで世代を超えてお互いを支え合うと、こういう話が基本だろうと思うんですが、もしそうであるならば、私が申し上げたいのは、みんなで支え合うということであれば、やはりだれか一部分のグループだけがうまい思いをするというんじゃなくて、少しずつでも痛みを分け合うという精神で物事に取り組んでいく必要があるんじゃないか。こんな観点で幾つかたださせていただきたいと、こういうふうに思うわけです。  まず、今回JR共済の救済が一つ大きな柱になっているわけでございますから、運輸省の方に、国鉄の長期債務の現状、そしてまた続けて、清算事業団に昭和六十二年に負わされました五・〇兆円の年金債務相当額の処理状況、こういったものは一体どんなふうになっているのか、手短で結構でございますから教えていただきたいと思います。
  91. 金澤悟

    説明員(金澤悟君) 国鉄改革当時、六十二年の四月でございますが、旧国鉄から清算事業団が引き継ぎました長期債務は約二十五兆五千億でございました。本年四月までの九年間に清算事業団が処理いたしました土地その他の資産売却による収入は総額で約十一兆三千億円でございます。しかしこの間、年間平均で一兆四千億に及びます金利の支払いなど、さらには鉄道共済財政対策のための特別負担といったものがございまして、この間新たに約十三兆四千億円の債務が発生いたしました。したがって、その結果といたしまして、平成八年度首、ことしの四月でございますが、におけるその長期債務の残高は二十七兆六千億円程度になっているものと見込んでおります。  そこで、二番目の御質問年金債務の処理状況でございますが、委員御指摘のとおり、六十二年の国鉄改革当時に清算事業団が承継いたしました債務のうち、約五兆七千億円が六十二年四月の時点以降将来にわたって費用負担していくべきいわゆる将来費用として承継したものでございます。その将来費用のうち、年金に係ります費用といたしましては、追加費用が約四兆七千六百億円、それから公経済負担の清算金が約一千六百億円、恩給負担金が約八百億円の総計約五兆円がこれに含まれておりました。  この支払い状況でございますが、旧国鉄が公経済主体として負担しておりました負担の清算金については、すべての金額を払い終えております。  しかし、追加費用についてはなお約三兆五千億円、恩給負担金についても約四百億円残っておりまして、これに加え新たに平成二年度から先ほど申しました特別負担が約七千億円課せられたということもございまして、現在なお総計で約三兆六千億円残っておるという状況でございます。
  92. 都築譲

    都築譲君 先ほど、当初国鉄債務は二十五・五兆円というふうなお話でございましたけれども、国鉄の長期債務が二十五・五兆円で、年金負担は五・〇兆、今お話を聞きましたけれども、あと鉄建公団債務とかそういったものも合わせると総額で三十七・一兆というのがたしか当初の全体の将来発生見込み債務と、こういうことになろうかと思っていたんですが、その状況はいかがですか。
  93. 金澤悟

    説明員(金澤悟君) 総額三十七・一兆円の国鉄長期債務等につきましては、先ほど申しましたとおり、清算事業団がそのうちの二十五・五兆円を引き継いで処理をしております。残る十一・六兆円はJR、あるいは当時新幹線保有機構という承継法人ができましたが、そういった法人においてこれを処理しておりまして、例えばJR三社につきましては、そのときに負いました五兆九千億円余の債務が現在四兆四千億円程度になっております。  新幹線保有機構につきましては、実は平成三年にこれが鉄道整備基金というものになりました関係で、現在その負いました五兆六千億円余の債務はなお五兆六千億円余になっておりますが、これは無利子貸し付けという制度が入ったために生じておる現象でございまして、順調に償還をしておるという状況でございます。
  94. 都築譲

    都築譲君 きょうは運輸委員会ではありませんので、その点についてはまた別途機会を改めてお伺いしたいなと、こう思いますが、今お聞きしたような状況の中で、二十七・六兆円、さらに三・五兆円残っていると、こういうふうな状況の中で、今回八千億円がそのスキームを拝見すると清算事業団の方に付加されると、こういうことなんですが、それは先ほどの三・五兆円にさらに付加されていくことになるわけですね。
  95. 金澤悟

    説明員(金澤悟君) 端的に申しますとそういうことでございます。すなわち、六十二年四月に、年金関係負担として昭和三十一年に公共企業体職員等共済組合法というものが施行されまして、その施行期間以前の旧国鉄の負担であるところの追加費用あるいは恩給負担金を現在、清算事業団が引き続き負っているわけでございまして、これらについては、今申しましたとおり三兆五千億円余残っておりますが、今後清算事業団が負担してまいります。  御質問の今回の統合に伴う八千億円でございますが、これは昭和三十一年七月に公共企業体職員等共済組合法が施行されまして、それ以降、旧国鉄は事業主としての責務を負っておるわけでございます。そして昭和六十二年の国鉄分割・民営化までの間、その間の事業主責任として新たに今回この八千億という債務を負担するものでございますので、今回の八千億というのは、先ほど御説明した将来費用に追加して負担すべきものでございます。
  96. 都築譲

    都築譲君 今、運輸省の方からお話がございました八千億円の負担の根拠ですけれども、これについて、積立不足額一兆円のうちなぜ清算事業団が八千億円を負担しなきゃならぬのか。JR各社が合わせて二千億円と、こういう按分割合になっているんですが、この根拠はどういうものなんでしょうか。これは大蔵省の方でしょうか。
  97. 松川忠晴

    説明員(松川忠晴君) 清算事業団の約八千億円の負担の根拠についてのお尋ねでございます。  御案内のように、厚生年金への統合に伴いまして鉄道共済は、統合前の期間に係ります給付費のうち、独立した制度として運営してきていた期間においていわば保険料拠出段階給付が確定した分、物価スライド、賃金再評価を除いた部分についての積立金といたしまして一兆二千百億円を厚生年金に移換することといたしております。  現時点での鉄道共済積立金残高は約三千四百億円でございますが、このうち移換金に充てることのできます部分は、二カ月分の年金の支払い準備をする必要もございますし、なお経過的に残る独自給付部分給付費も引き当てる必要があるということで、これらを除いたものでございまして、今後、積立金の残高も変動し得るものでございますので、現時点で正確に不足額を出すことは困難でございますけれども、ごく粗っぽい試算をいたしますと、約一兆円の不足額が生ずる見込みでございます。  そこで、この積立不足額につきましては、いわば年金制度の当事者として事業主に負担をお願いしておるわけでございますけれども、鉄道共済の場合は、民営化前の事業主としての立場を承継しておりますのは国鉄清算事業団でありますことから、この積立不足額の負担につきましては、国鉄清算事業団とJR各社との間で民営化前後のそれぞれの期間に対応するいわゆる移換積立金の比率、この一兆二千百億円を民営化前後でそれぞれ計算した額の比率で按分して負担することとしているわけでございます。  具体的には、この比率はおおむね八対二と見込まれますので、国鉄清算事業団につきましては約八千億円の負担が生ずる見込みとなっておるところでございます。
  98. 都築譲

    都築譲君 今の御説明がよくわからぬのです。  というのは、冒頭になぜ国鉄長期債務の状況をお聞きしたかというと、最初二十五・五兆が清算事業団に行って、資産売却で十一・三兆やったと。  ところが、鉄道共済の救済などのためにさらに十三兆四千億円の発生が追加利息等いろいろ含めて出てきたと。結果として二十七・六兆もまだ残っている状況ですよね。  さらに、それから別枠で五兆円将来年金負担ということで積み上げていて、それが三・五兆まで減ってきていると。ただ、三・五兆積み上げたのは将来の分を全部見込んでやっていたんじゃないのか。そのほかに特別負担ということで全部でまた毎年一千億とか幾らずつどんどんつぎ込んできて、さらにまた八千億円も、民営化前の期間と民営化後の期間ということで八対二になるからなんという理屈が何で出てくるのか、これは全然わからぬのですよ、はっきり申し上げて。  それで、もし今回の改革がさらに十年後だったら、じゃ一対一でやってくれるんですかと、こういう話になってくるんじゃないですか。あれは昭和三十一年からだから計算がちょっと大ざっぱですけれども、そういう話になるんですか。だから、清算事業団が、今これを見たって、もう新聞でも相当取り上げられて、およそ二十兆円ぐらいは国民負担になってしまうだろうと、こういう状況で、幾らでも毎年一千億特別負担でやっていますと、こういうふうに言っているけれども、じゃ一千億だれが払ってくれるんだと言われたら、払い切れなくて、最後は国民負担だという状況になるのであれば、それは税金でやっぱり払うということになるわけですよね。そんな状況の中でさらにまた八千億もぽんと投げ込んでおいて、これはだれが負担するんですかと、こういう話になってくると思うんです。  今、JRの各社全部合わせて二十万人ぐらいいらっしゃるんでしょうか、そういった人たちが一生懸命働いている。この人たちも物すごく高い保険料、ほかのところよりも高い保険料を払っている。新しく入った人は、何でおれたちはこんなに高い保険料、二〇%にもなるような、労使折半ですが、それにしてもほかの制度よりも高い保険料を払い続けなきゃならぬのかというのもわからぬというところもあるんじゃないかと思うんです。  むしろ、JR日本だと、この間何か決算が終わって大変な利益を上げているような話があるんであれば、そういったところはもう少し負担をして、みんなで痛みを分け合うぐらいの財政計算というのはできないのかなという気がするんですが、いかがでしょうか。
  99. 松川忠晴

    説明員(松川忠晴君) 鉄道共済年金財政安定化の問題はもう十数年来議論されておりますが、当委員会でも議論されておりますように、鉄道共済財政破綻の根本的な原因は、産業構造の変化の中で制度が分立していることに伴ってその影響をもろに受けたと。したがいまして、それを鉄道共済だけに責めを負わせることは適当でないということから、年金一元化の中で年金制度全体で支え合っていこうということで議論してきたわけであります。しかしながら、現実には鉄道共済年金給付も高い、保険料も過去は十分に取っていなかったという面もあると。いろいろな問題もございましたので、いろんな経緯をたどって今日に至っております。  その結果、関係者が一堂に会しましていろいろ議論を積み重ねた結果、今回の統合の枠組みといたしまして、いわば世代間扶養に係る部分はみんなで支え合うかわりに、そうでない、独立制度として運営してきた時代に給付が確定した部分については、積立金を事業主としてきちっと補てんをした上で持ってきなさいということが、いわば関係者の合意として、枠組みとして決められたものでございます。  そこで、そういった移換金の積立金趣旨を考えました場合に、その金額は一兆二千百億円でございますけれども、そのうちそれを民営化の前後で分けて考えてみますと、先ほど省略いたしましたけれども、民営化前に係る部分は九千八百億円、民営化後の期間に係る部分が二千三百億円でございまして、そういった移換金の趣旨、それから、国鉄の場合は事業主としての負担につきましては、民営化前の債務を承継するのは国鉄清算事業団とされております現在の枠組みからいたしますと、八割程度のものを清算事業団で持ってもらうのが妥当であると、こういうふうになったところでございます。
  100. 都築譲

    都築譲君 お話としては、だからそう説明せざるを得ないのかなという気がするんです。  ただ、昭和六十二年の国鉄の民営化のとき、確かに事業会社というJR各社に、貨物もひっくるめていろいろな債権債務、資産、こういったものを全部承継させると。残余の部分だけを清算事業団で引き受けるという形で包括承継の、だから、本当に国鉄の真正の承継者は何か清算事業団のような形になっています。  これはもう本当に清算をするための事業団であって、何も今のJR各社、そこにだからたくさんの人が新規採用という形をとりました。あれは全部一応国鉄との契約関係は切れて、それで労働関係もきれいに整理をしてJRの各社に行くんだと、こういう話の中で整理をしたんですけれども、実際には相当数がみんなJRのところに、例えば夜行で走っている運転手なんかは途中で国鉄から急にJR日本の職員に変わったりなんかしたわけですからね。そんな話の中でやっているわけです。  だから、実際にはやっぱりJR各社の中に、そしてJRグループというふうに言っているぐらいほとんどもう国鉄と変わらないんですよね。そういった形で事業活動をやっているわけだから、もっと国鉄の皆さんもやってほしいなと思うし、何も清算事業団の方に、いわゆる公共企業体の中で、労働関係でいろんな賃金の交渉問題にしても、仲裁裁定とかいろんな制約がある中でなかなかやれなかったから、共済関係とかいろんなそういう面で非常に甘い交渉をやってきたところがあると思うんですね。  だから、そういう責任、特にまた退職を促すようなときは二階級特進なんという話がいろんな新聞記事に出て、それで給料をぽんとはね上げておいて、退職金もふやして、それで年金の額も、これは標準報酬月額じゃなくて最終月額でいくわけですから、物すごい額をもらうような形にしてじゃぶじゃぶにしておいて、それで共済がつぶれちゃったら、そうしたら国民の皆さんお願いしますと。最初は国公共済で、だから、一挙に長期掛金が二倍ぐらいにはね上がったのを私も覚えていますけれども、それは同じ国のグループだということで、もう当然やらざるを得ないだろうという意識を私は持っていましたけれども、今ここまで来てまたさらに八千億円もつぎ込んでいくようなことをじゃぶじゃぶやっておいて、一体何を考えているのかという気がしないでもない。  最後のところ、これは運輸省の方にお答えいただくのか、だから、最終的には国民負担というか、最後は税金になるんでしょう、この負担のところはいかがですか。
  101. 金澤悟

    説明員(金澤悟君) 今、委員御指摘のとおり、清算事業団は昭和六十二年に発足いたしましたときに二十五兆五千億の債務を負ったわけでございますが、この国鉄長期債務すべてを土地あるいはJR株式などの売却による自主財源によって償還する計画があったわけではございません。既にこの委員会でも御答弁申し上げましたとおり、昭和六十三年一月の閣議決定で、事業団の長期債務の償還につきましては、土地処分収入等の自主財源を充ててもなお残る債務については最終的には国において処理をするというふうにされておりますし、今回の移換金につきましても、本年の三月の閣議決定において同様の取り扱いをするものというふうにされております。  したがって、清算事業団といたしましては、委員質問のとおり、今回新たな移換金債務もこの二十五兆五千億につけ加わる負担になるわけでございますが、それは結果的に最終的な国民負担の増加につながる可能性もございますが、私どもとしては今後、他の長期債務等とあわせてその長期債務の早期処理に全力を挙げていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  102. 都築譲

    都築譲君 そこのところは、今の答弁としては言わざるを得ないのかもしれませんけれども、今もってなお二十七・六兆残っておって、今残っている土地資産を全部売って、それからJRの株も全部売って、その他もろもろやったってやっぱり二十兆ぐらい残ると、こういうふうな話になるだろうと思うんですよね。だから、当初は十三・八兆ぐらいの国民負担という規模がここまでもう拡大をしてしまったと思うんですよね。  だから、国において処理をするという言葉でわけがわからないのかもしれませんけれども、私はそういうことははっきりさせていくべきだと思うんですよね。国民の皆さんに堂々と諮って、こうしないと国鉄の皆さん方が本当に大変なことになってしまう、あるいは年金制度全体がおかしくなってしまうということでお願いをしますというんだったらわかるけれども、いつまでも国において処理すると。これは二十年、三十年あるいは四十年先だから、そのころの話だなんというふうな話にはならないと思うんですよ。特に国鉄のあれについては平成九年度末に資産売却を全部終わると、こういう話になっているわけですから、いつまでもあいまいな姿勢では困ると、こういうふうに思います。  それで、次の問題に行きたいと思います。  ちょっと細かいお話を聞かせていただきたいんですが、今回、JRJT積立金合計一兆三千二百億円で給付費の積立対応部分八百七十六億円を二十年で充当していくと、こういうふうになるんですが、この積算根拠はどういうふうになっていますでしょうか。
  103. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 口頭で説明するのは非常に難しいんですけれども、ちょっと長々となりますが御説明申し上げたいと存じます。  統合前のJRJTの期間に係りますいわゆる給付確定部分、これに対応する部分を移換金の形でいただく、これが一兆三千二百億円になっているわけでございます。この移換金からの充当といいますのは、その充当額というのが安定的に推移するようにというふうに一種平準化を図っているわけでございます。  したがいまして、本来ですとこの給付確定部分の発生に合わせて充当するというのが筋であるわけでございますけれども、今回のやり方としましては、平準化するために統合前のJRJTの期間に係ります平成九年度価格によります給付の一定割合にすると、こういうふうな考え方で、そういう一定割合で充当していくということを考えているわけでございまして、その給付現価は給付確定部分給付の現価であるわけでございます。すなわち、移換金の額に等しくなるように充当いたしているわけでございます。  具体的な数字で申し上げますと、この場合の一定割合でございますけれども、移換積立金の額が、先ほど申し上げましたように、JRJT合わせまして一兆三千二百億円でございます。それで、統合前のJRJTの期間に係ります九年度価格によります給付費の総額、これは九年度以降のスライドはしない、こういう前提での給付費の総額であるわけで、統合前のJRJTに係ります給付費の総額であるわけでございますけれども、これを統合前の現価に直しますと五兆七千九百億円になるわけでございまして、この一兆三千二百億円を五兆七千九百億円で割りますと二二・八%になるわけです。これを九年度に当てはめて計算いたしますと、この二二・八%の額が八百七十億円になる。ちょっと技巧的になっておりますので、口頭で御説明を申し上げるのは大変難しいので、御容赦願いたいと存じます。
  104. 都築譲

    都築譲君 よくわからないんですよ、本当にね。この資料がございますですね。これは参議院の調査室の方でつくっていただいたんですが、厚生省からの資料に基づいてつくっておるわけで、八百七十六億円という積立対応部分があって、JRJTからの積立金合計一兆三千二百億円でやる、それで二十年でこれを埋めていくと、こういう話なんです。今言われた五兆七千九百億、それで一・三二兆、それで割合でいくと二二・八%と、こういう話なんですが、二十年ということで考えるのであれば、例えばこの一兆三千二百億円を毎年毎年つぎ込んでいくわけですね。でも、八百七十六億円を例えば二十年つぎ込んだら、単純に言ったって一兆七千億ぐらいになるはずですね。そうすると、それをちゃんと割り戻してそういう計算をやったからというふうな話なんでしょうかね。そこがよくわからないんです。
  105. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) これは、返済の方は二十年という形でいただくわけでございますけれども、この使いぶりというのはまさに給付費がなくなるまでということでございますから、ほとんどなくなりますのが二〇五七年とか二〇六七年とか、そういう超長期にわたって使っていくと、こういうことでございます。
  106. 都築譲

    都築譲君 そうすると、例えば八千億円負担というのは、超長期ということになると、二〇五七年とか言われると今から約六十年かかるということですね。そうすると、清算事業団に八千億、JR各社に二千億と、こういう割り振りをしていますけれども、毎年の単価で言ったらどれぐらいになるんですかね。  というのは、新たに八千億ですね、丸々八千億円というキャッシュを今の時点で動かすわけじゃないですよね。それぞれの清算事業団とかJR各社が毎年何億という、その毎年のあれが平成九年度価格でいくと八百七十六億円ということですよね。ただ、それでいったら、そうすると翌年はもっとぐっと少なくなっていくのか、あるいは例えば金利の問題とか物価上昇の問題でぐっとふえていくことになるのか、そこのところはいかがですか。当面これは五年間か何かをベースにしてやっておられるのかどうかわかりませんけれども。
  107. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 五年間ごとに年金を再計算するわけでございますけれども、それと同じような形で実態に応じまして再計算をすると、こういう形になるわけでございます。  それで、先生がおっしゃられていますのは、清算事業団なりNTTなんかから厚生年金の方への移換金を持ってくるやり方と、それからそれを給付の方に充当するやり方というのが混同されているようになっているわけでございまして、移換の方につきましては最長二十年で、JTなんかは五年でお返しいただくと、こういうふうになっているわけでございまして、充当するのを一遍に使わないで、これは給付に大体沿った形で使っていくということで、給付が全くなくなりますのは今から六、七十年先でございますので、それに相応した形で使っていくと、こういうことで非常に御説明が難しいということを御容赦願いたいと存じます。
  108. 都築譲

    都築譲君 六、七十年先と言われると、びっくりしてしまうわけですね。清算事業団をじゃそれまでまた生き長らえさせるのかと、こういう話にもなってくる。そこの辺のところはちょっとこれからまた私もよく勉強してあれしたいと思います。  今のお話を聞いていて、あと、それから各制度からまた支援をいろいろやっていくと、こういうお話に実はなっておるわけでございまして、その支援の額についてこれは各共済制度からいくと、こういうことで、当初五年間の平均の一年度当たりの価格でいくと、例えば厚生年金の方では、平成九年度で一千百九十一億円、これはNTTを含むということですが、それから、あと国共済で二十四億とか、あるいは地共済で百八十八億とか、私学共済で六十六億、農林共済で八億と、こういうふうなお話になっております。  ただ、これまた厚生省からいただいた資料をベースにしてつくられておりますが、参議院の調査室の資料の二十七ページのところなんですが、五年間平均でいくと、実は厚生年金では一千二百七十二億円と、こういうふうになっておるんだけれども、その「粗い試算」という表がここにあります。この上に九、十、十一、十二まであって十三年度がないからわからないんですが、この数字でいくと、厚生年金、一一九一でずっといって一一七八、一千百六十四億円でいっているわけですね。そうすると、これを四年間で単純平均したら、とても下のは一千二百七十二億にならない。  それぞれみんな同じような状況が実はあるんです。ぴったり合うのは農林共済か何かぐらいですけれども、あとのところは何でこんなにずれてしまうのか、その理由をちょっと教えていただけますか。
  109. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 千六百億のベースは、五年間のこれからの給付費の増という形で名目額の平均でございます。  それから、もう一つの数字は、これはこれから約四十年間の現在価格の数値をあらわしたものでございますので、名目とそれから実質の違いだということで御理解願いたいと思います。
  110. 都築譲

    都築譲君 名目価格と実質価格、確かに超長期ですから、割り戻していくと相当なずれが出てくるのかなという感じがしますけれども、そういうことであれば、JRに対して各制度財政支援をいつまで見込んで、トータルとして一体何兆円ぐらいになるのか、それはどういうふうに見込まれていますか。
  111. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 約四十年間の支援になるわけでございますけれども、この額を現在価格といいますか九年度価格で見ますと、これは割り戻しておりますけれども、四兆三千億円でございます。
  112. 都築譲

    都築譲君 四兆三千億円ということでございまして、先ほど恐らく国民負担になるであろう五兆円のベース、さらに追加でずっと特別負担ということでやってきたわけですね。膨大なお金になると。それで、問題は、JR共済の方の議論もあるんですが、私自身は、だから、各共済制度あるいは厚生年金で四兆三千億円もこれから負担をしていこう、支援をしていこうということであれば、なぜその三共済以外の共済制度が今の時点厚生年金統合していかないのか。そこまでお令を出してもまだ独立の共済制度として維持することの方が何かメリットがある、うまみがあるから、確かに歴史的な経緯も複雑さも大分違いますからいろいろ面倒くさい問題があるのかもしれませんけれども、それでも実質的なところは、もうかるかもうからないかというのが市場原理の働くところだろうと思うんですね。自分たちのグループの勤労者にどれだけ有利な思いをさせることができるかという、こういうふうな気がするんですが、なぜ共済制度はここまで四兆三千億円もトータルでつぎ込んでいくのに統合しないのか、その理由は一体何なんでしょうか。
  113. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 四兆三千億円の大部分厚生年金でございまして、必ずしも共済の支援額ではございません。大部分厚生年金でございます。  なぜ一本にならないのかということでございますけれども、先生も御指摘ありましたように、各共済制度、これまで独立して運営してきているわけでございまして、目的とか機能とかいいますのも非常に違うわけでございまして、こういった過去の経緯、沿革等にも配慮する必要があるわけでございます。やはり関係者間で息の長い議論の積み重ねがあって初めてこういった長い信頼関係身持つ制度というのが永続していくんじゃないかと、こういうことでございます。  今回、JRJT、それに加えましてNTTが統合されますことになりましたのは、特にJRにつきまして非常に長い経緯議論の積み重ねがあったわけでございます。関係者の合意、特に受け入れ側の方も、これははっきり言えば負担がふえるわけでございますが、その辺の合意というのもなかなか時間がかかったと、こういうふうなことでございまして、関係者の合意というのがなかなか形成しにくいと、こういう事情があったわけでございます。  やはりこれから、世代間扶養制度でございますので、基本的には保険集団というものを集約していく必要があるわけでございまして、財政単位を大きくすると、こういう必要があるわけでございますので、これから財政計算期ごとに給付増等も行ってまいりまして、着実に一元化方向に持っていきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  114. 都築譲

    都築譲君 いろいろ理由があるし、世代間扶養ということで一元化方向にということで、本当に世代間扶養ということであれば、まだ生まれていない人たちがやがて二十年、三十年たって戦力となって働いてもらって、それで保険料なり税金を納めてもらうと、こういうことになるわけですから、私は制度ごとに本当は不公平、不平等があっちゃいけないと思うんですよね。  自治省の方が来られていると思いますけれども、今回の一元化懇談会報告で、結局公務員グループは国共済地共済というのはグループ内で財政安定化措置を検討というが、本当にどういう可能性があるのかなと、僕はこれは非常に大きく疑問に思うんです。まだこれだけ世の中が激しく動く時代になっていると、今までの右肩上がりで倍々ゲームでどんどんふえていくような話じゃなくて、産業構造も大きく変わる。地方自治体だって恐らくこれから行政改革とかいろんな問題が進んでくれば、公務員の数も本当に今のままで済むのかどうかとか、いろいろ問題もあるだろうと、こういうふうに思うわけです。そういった中で、地共済としてはどういうふうにお考えになっておられるのか、まだ認識が甘いんじゃないか。  それから、もう一つお聞きしたいのは、恐らく僕は地方公務員共済の方も結構今まで有利な給付を約束しておったんじゃないかと思うんです。それで、大分その状況が厳しくなってきているから、そうなると、いざ払えなくなったときに、今は地共済は単独でやります、将来破綻したらまた厚生年金助けてくださいとか国の方に助けてくださいなんということは絶対ないというふうに約束できるんですか。
  115. 小室裕一

    説明員(小室裕一君) 大変厳しい御指摘ですが、地共済の方も御案内のとおり、六十年の大改正のときに給付水準というのは厚生年金と同じようなレベルになるような改正を行っております。  それから、もう一点、地共済の場合には九十組合に分かれていたんですが、これは年金の面ではなるべく一つの率にするということで、これまで連合会をつくる等、地共済の中でそういった年金の中の算定の率を一つにしていくというような努力を重ねてございます。  そして、今回の閣議決定におきましては、御指摘いただきましたとおり、地方公務員共済につきましても国家公務員共済同様公務員という職域に適用されるものでありますので、まず地方公務員共済国家公務員共済の両制度において財政安定化のための措置を検討することとされたところでございます。  その財政安定化措置の検討に当たっては、それぞれの制度における将来の成熟度あるいは年金財政の見通し、こういったもの等を踏まえて財政計算時ごとに分析を行いまして、それらの状況に応じ対応の具体的方策を検討してまいりたいと考えてございます。
  116. 都築譲

    都築譲君 それでは、ちょっと質問を飛ばして恐縮ですが、文部省も来られていると思うんですが、今度は文部省の方にお伺いをしたいのは、これまた一元化懇談会報告の中で、私学共済については被用者年金制度全体の中の位置づけの検討ということになっておりますが、これはどういう可能性が本当にあるのかということと、それから問い十九ということで私はお流ししていたと思いますけれども、年金の成熟度の見通しについて、今自治省の方からも将来の成熟の度合いとか、こういうお話がございました。  私が私学共済の資料をこれまた拝見すると、私学共済の方は当初から大変高い保険料率をやって、今は割と低く抑えておられて、非常に見識のある共済制度運営をやられてこられたんじゃないかと、こういうふうに思うんです。  ただ、将来の見通しを見ますと、二〇四〇年で組合員数が三十九万八千人ですか、これは平成六年度末以降一定と、こういうふうな形でごらんになっているんですが、二十年以上のいわゆる厚年でいったら老齢給付相当の人は十四万、ところが二十年未満ということで通算老齢年金相当の方が六十三万というふうに四倍に実はなっておるんです。それで、成熟度はと言われると、通常は三六・四%という老齢給付の方は組合員数で割ってやっておられるんですが、実は二十年未満の方も足した形でいくと、合計全年金者でいくと二七四・九%と、こういう状況になってしまうわけで、本当にその成熟度の見通しについてこういったものでいいのか。  いやいや、実は通算年金部分についてはみんなもう通算するということで、その勤めた期間だけということで、実際の財政収支計算のときはすべてを含めてやっているから大丈夫なんですと、こういうふうなお話を聞くんですけれども、例えば今少子化がどんどん進んでこれから子供たちを学校が奪い合うような世の中になってくるときに、そしてまた、合理化とかそういったものも学校経営として考えなければならないときに、本当にこんな教職員数があって、こういう状況で推移していくのか。  それから、今は例えば二十年未満という若い人たちは幼稚園というふうなお話がございますけれども、その幼稚園の状況だって子供がどんどん少なくなって、あるいは保育所だってどんどんふえてきていると、こういう状況の中で本当にこんな成熟度の見通しで済むのかどうか、見通しがちょっと甘いんじゃないのかなというのが私の印象なんですが、そこら辺についていかがでしょうか。
  117. 齊藤秀昭

    説明員(齊藤秀昭君) 御質問が多岐にわたっておりますが、まず最初の御質問でございますが、私学共済は、先生御案内のとおり、他の年金制度と比較しましても現在としては最も成熟度が低い、また財政的にも安定しているという状況になっております。  ただ、今後の問題としましては、やはり他の年金制度同様徐々に成熟度は高まっていくだろうと、こういうことなわけでございますが、文部省としましては、先般の閣議決定を踏まえまして、今後財政計算時ごとに将来の財政見通し等というものを分析しながら、私学共済年金制度として安定的に運営できるようにしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。  ただ、今の時点でどのような再編成になるのかということにつきましては、現時点で特定のパターンというものをあらかじめ決めておくということではなくて、財政計算時ごとに、その時点その時点における年金制度状況というものを踏まえながら検討させていただきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、成熟度の問題でございますが、確かに先生が今御指摘なさったとおり、私学共済の場合に幼稚園の先生等組合員期間が非常に短い方が多数いらっしゃいます。そういう意味で、直近の成熟度は九・七%と他の年金制度と比べましても大変低いわけでございますが、その意味では成熟度ということだけで財政状況を的確に反映しているということは、これは先生御指摘のとおりそういうふうには私どもも考えておりません。  しかしながら、財政計算におきましては、この老齢相当の給付費用だけではなくて、通算退職年金相当あるいは障害、それから遺族年金、こういう給付費用全体の費用を算定した上で財政計算をさせていただいております。その意味で、給付費の将来見通しとしましては、現実に比べまして低く見積もるというようなことにはなっていないだろうというふうに私どもは考えている次第でございます。  それから、子供の数の御指摘もございましたけれども、これもずっと近年減り続けておるという状況がございます。一般的に申し上げますと、確かに児童生徒数の減少といいますのは教職員数の減少につながるというふうに考えられるわけでございますが、実際問題としましては、例えば大学の場合でございますと、進学率というのは近年急速に高まっている。こういう進学率の動向はどうなるか。あるいは初中教育レベルにおきましても、私立学校と国公立学校の在籍割合というものがどういうふうになっていくのか。典型的な託が、中学校の場合在籍者数全体としては減っているわけですが、その大部分は公立が減る、私立学校の場合にはむしろふえていくと、こういうよろな状況もあるわけでございます。その意味で、確かに児童生徒数は減っているということは私どもとしましても懸念をしている次第でございますが、これが現実にどのように教職員数に影響を与えるかという見通しはなかなか現実問題としては難しいということでございます。
  118. 都築譲

    都築譲君 確かに、これから四十年、五十年生の話を見通していくというのはなかなか難しい託です。だからこそ、これだけ産業構造が大きく変わっていくというんであれば、できるだけ早く財政基盤を安定化するという観点からもどっと広いものにしておくと。今ここで自治省さんにお聞きしたように、本当に国に頼る、あるいは厚生年令に頼ることはないんですねという言葉は聞きませんけれども、そこのところはよくよく考えていただかないと困るんじゃないのかなというふうな気がいたします。  それからまた成熟度の問題についても、これは抽象的な話でございまして、私自身もっとよく勉強しなきゃいかぬのですが、どうも老齢給付相当部分だけを組合員数で割ると、こういうふうな仕組みで、言っていることが本当に的確なのかどうかちょっと疑問だなと、こういうふうにいろいろ御説明を聞いて思うわけです。これはまた改めて勉強したいと思います。  それで、ちょっと大蔵省の方にまた恐縮ですが、実は存続組合というのが三共済の方に残る、健保組合をつくって短期給付については健保組合で対応すると、こういう話なんです。恩給期間とか職域部分給付については結局存続組合が必要になってくると、こういうことなんですが、私は、これは実は、なぜこんなものを残さなきゃいけないんだと。それで、よくよく見てみたら、どうも既裁定者の方には費用を全部一括して渡して政府管掌保険の方から払ってもらうということですよね。それで、新規裁定者については恩給期間が残っている部分については存続組合から払うと、こういう話なんですが、何でそんなのを一本で全部政府管掌の方に行かなかったのか、その理由がちょっとよくわからないんです。  むだではないか、統合できないのかと、こういうことをちょっと。これまたその後存続組合を残すだけでも、恐らくJR共済とかNTT共済とかJT共済にそれぞれ相当な職員を配置して、わざわざ新規裁定者分の恩給期間に係る給付のためだけに残さなきゃいかぬわけですよね。それだけの本当に対費用便益効果というのがあるのかどうか。いかがなんでしょうかね。
  119. 松川忠晴

    説明員(松川忠晴君) 鉄道共済等を初めとする今回統合されます共済年金制度は、委員御案内のように、沿革等から恩給公務員期間等の部分給付を引き継いでおります。この給付につきましては、恩給制度からの流れでございますので、保険料拠出給付を賄うということではございませんで、いわば公的年金制度とは性格の異なるものでございます。したがいまして、厚生年金にはない部分であります。  そういったことから、今回の統合当たりましては、恩給公務員期間につきましては厚生年金の被保険者期間とはみなさないということでございまして、それらに係る給付については厚生年金に引き継がれないという扱いになっております。  しかしながら、現実として受給権の保護という問題もございますので、これらについては別途支給していく必要があるということで、現行の共済組合はこういった目的のために経過的に存続させると。  このほかの存続組合につきましては、移換金を払う場合も、一度には支払えないものですから最長二十年間ということで払っていくと、そういった事務をしていただく必要もございますので、これらのために存続組合を残しているということでございます。
  120. 都築譲

    都築譲君 ちょっと時間がありませんので、ほかにももっと実はたくさんお聞きしたがったんですが、大変申しわけありませんが、きょうは割愛をさせていただいて、今の大蔵省の御説明では私は納得いかないんです、はっきり申し上げて。  というのは、統合前から年金を受給していた既裁定者分については一括して社会保険庁から支給すると。ただ、恩給部分等については、三共済の清算法人が費用負担ということでそれをまた二十年ぐらい負担し続けるんですと、こういう話なんですが、先はどのように現在価値に換算をして、それで渡してすっきりさせるということぐらいなぜお考えにならないのか。また二十年もそのためだけに、新規裁定者分の恩給期間の給付のため、それからこの費用を毎年毎年払い続けるためになぜそれだけの職員を置いていくことになるのか。  実際よくわかりません、どれぐらいの人を置かれるのか。  制度が確かにいろんな経緯、歴史を持っているから複雑になるかもしれないけれども、本当にそういったいろんなところにしがらみがあって、むだばかりがふえ続けているんじゃないかと、こういうことも考えられるわけでございますので、これから本当に国民の皆さんに税金という形で負担をお願いしなければならない、あるいは保険料ということでお願いをしなければならないのであれば、ぜひ少しでも痛みをみんなで分かち合うという観点から一生懸命お取り組みをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  121. 水島裕

    ○水島裕君 ただいま大変濃密な議論がございましたので、私はもう少し大ざっぱに年金とか社会保障ということについて総論的なことを幾つか申し上げて、厚生大臣及び政府委員の方から御答弁をいただきたいと思います。    〔委員長退席、理事朝日俊弘君着席〕  私の論点は、先ほど塩崎議員の方からも多少出ましたけれども、高齢者の方も働きやすい環境ができていればできるだけ長く働いて、年金はなるたけもらわないで済ませたらどうかということでございます。  その前に、先ほどから予測がかなり違っているのではないかと、こういうことを考えていく上には、厚生省の人もいろいろ心配しないで本当のところを言っていただかなくちゃいけないという議論もございました。これは、実は五月二十八日の朝日新聞の記事で、そこでよくごらんになれるかどうかわかりませんけれども、要するに合計特殊出生率の推移を調べた図でございます。一九八六年の予測はこういうふうに上がっていって一・八、一・九ぐらいになっておりますけれども、実績はこのとおり落ち込んでおりまして、これを一九九二年でもう一度予測し直して、落ち込んだのを途中からまた上にずっと上げているという予測なのであります。  我々、自然科学をやってきた者は、一回こういう間違ったデータを出すとなかなか後は信用してもらえないんですけれども、本当に何か子供がすっと書いたみたいでございますが、これは予測が甘かったんでしょうか、それともお得意の軟着陸ということを示すために少しずつデータを小出しにして、国民に余り心配をかけないという厚生省の非常に親切心から来たものでしょうか。
  122. 亀田克彦

    政府委員(亀田克彦君) 一九八六年の人口問題研究所の人口推計でございますが、当時、ちょうど一九八一年ぐらいから数年間、出生率が上がってきたと、こういう時期がございます。こういうことから、八六年の人口推計におきましては、晩婚化がこれ以上余り進まないんじゃないかと、こういう見込みで推計をいたしたわけでございます。  ところが、実際は御指摘のように一九八五年、昭和六十年以降、またかなりなスピードで晩婚化が進行してまいりまして、その結果、先生の、どちらかと、こういうお話でございますが、推計の見通しが間違ったと、こういうふうに理解をしております。
  123. 水島裕

    ○水島裕君 じゃ、軟着陸ではなくて見通しの甘さということで、エイズよりはよかったと思っております。  こういうことがありますと、将来、例えば二〇二〇年には二人前後で一人の高齢者を支えるという計算も違ってくるんじゃないでしょうか。この件はいかがでございましょうか。
  124. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 年金財政計算でございますけれども、年金制度長期的な制度として運営されるわけでございます。したがいまして、五年に一回は直近の将来人口推計等を用いまして計算を行っているわけでございまして、平成六年の財政計算におきましては、平成四年九月の推計の中の中位推計を前提にいたしまして計算しておりまして、この中位推計では平成三年が一・五三、それから平成六年が一・四九まで下がりますよと、こういう前提で、その後出生率が回復して二〇二五年には一・八に戻ると、こういう前提に立っているわけでございます。  したがいまして、次の財政計算は、ことし恐らく新しい推計が出ると思いますので、それに基づいて計算することになると思いますけれども、御指摘のように出生率が下がるということになりますと年金財政に悪い影響があるのは当然でございまして、そういう予測のもとにおいては、その状況に応じまして年金給付負担のあり方、こういったものを踏まえて検討していく必要があると、こういうふうに考えております。
  125. 水島裕

    ○水島裕君 いずれにしましても、二人前後で一人を支えなくてはいけない時代が来るというのは大変なことだと思います。  それで、菅厚生大臣にお聞きしたいわけでございますけれども、そういう場合、年金制度を幾らスリムにしたり効率化してもなかなか大変ではないかと思うんです。それで、負担する方の人がそういうぐあいでしたら、やはり受給者である高齢者という方を何とか考えられないだろうかということでございます。  そこで、六十ないし六十五歳以上の人が自動的に年金がもらえるシステム、つまり高齢者はもう働かなくていいから休んで年金をもらって、まあ遊べるかどうかわかりませんけれども、遊んでいろというような考え方は少しずつ変えていかなくてはならない。  私どももよくわかりますけれども、六十五歳以上の年齢の人でも精神的・肉体的には非常に能力の高い人、この間も衆参の厚生委員会でお招きしたエイズの参考人のボスのような方は七十九歳と七十七歳でございまして、大変元気でございましたので、少なくともかなりの人は生きがいとしてもっと働いていきたいということではないかと思います。ですから、たとえ給料が安くても若い人たち一緒に自分に合う仕事で働き、社会に参加するということを望んでいるのではないかと思います。そして、本当に困ったときは必ず助けを差し伸べてくれるということにすればよいのではないかと思います。  このように考えていきますと、年金給付の必要性は、年齢ではなくて経済状態とか健康状態と、そういうことでもって規定するのが妥当だと思います。私も六十五歳を過ぎてもまだまだ働きたい、年金などはもらわなくていいというぐらいに思っておりますけれども、厚生大臣は私より大分若いと思いますけれども、そういうことも含めて御意見はいかがでございましょうか。
  126. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 私の義理の父親ももう八十五歳ぐらいですが、田舎で開業医をやっておりまして、まだ往診などに行って、時々碁の大会で勝ったりしております。  おっしゃるとおり、その世代世代に合った仕事の仕方、もちろん個人差はあると思いますし、そういう点では、年金の問題を考えますと、先ほどの少子化のやや急激な予測を超えた問題をどうするかということと、あわせて高齢者自身が現役で働けるような社会的な仕組みをどうつくっていくかというのは、両方大変重要ではないかというふうに思っております。  こうした観点から、平成六年の改正において、雇用政策において高齢者雇用の促進を図るとともに、年金制度において雇用と年金の連携を図りながら、年金制度自身も雇用促進的な仕組みとするため老齢厚生年金の支給開始年齢の見直しや在職老齢年金の改善などの改正を行ったところであります。こういったことで、今後労働省とも十分連携をとりながら高齢者雇用の促進を図っていきたいと思っております。  そういう中で、もう一、二点個人的に申し上げますと、農業でも最近の考え方では、いわゆるたくさんの収穫を上げるという産業としての農業と、環境を守るという意味での農業と、ある意味ではいわゆる高齢者が生きがいを持って働ける農業という、そういう考え方があるのではないかという指摘もあります。  また、先ほどの御質問にもちょっと触れたんですが、都市における高齢者の場合に長距離の通勤というのは大変負担で仕事がなかなか継続できない問題もありますので、そうなると、都市構造といいましょうか、職住接近で、ある程度短時間でも仕事ができるというような構造とか、そういうある意味では社会トータルが高齢者も仕事ができるような仕組みにしていくという考え方が必要なのではないかと、こう思っております。これは厚生省という枠を超えた問題ですが、ぜひいろんな立場でお互い検討していく必要があるのではないかと、こう思っております。
  127. 水島裕

    ○水島裕君 今お話がありましたように、高齢者が働きやすくするということをいろいろ考えていただく、あるいは年金をどうするかということも考えていただくということが必要でございます。  ただいまの環境ということも本当に大切であるとともに、私は仕事の種類もいろいろ考えていかないと、だんだん肉体的にも弱まったり精神的にも少し働きが悪くなっていって、働きに行ったところで若い人とかそういう人にばかにされたりなんかするということがありますと高齢者はすぐ働く意欲がなくなってしまいますので、やはり無理せずに快適に働ける職種というのを、いろんなことがありまして、私も実は幾つか申し上げようと思っているんですけれども、そういうのを申し上げると、そういうところで働いている人が、これは高齢者の仕事かと何か後で言われそうな気がしますので、きょうはあえて申しませんけれども、考えますと高齢者に向く仕事というのはたくさんあると思いますので、そういうのを、私だと失言しちゃいそうですので、じっくり考えていただければと思います。  年齢のことをもう少し具体的にお尋ねいたしますと、現在、在職老齢年金制度では六十歳から少しずつ年金がカットされるわけでございますね。  それで、三十四万円を過ぎますと働いた分だけ年金からカットされるということで、これは私は理に合っていると思いますけれども、何で六十五歳までかということをお尋ねしたいわけであります。つまり、六十五歳を過ぎても、先ほど申しましたように、年金とか保険というのは年で決まるのではなくて、やはりその人の健康状態とか精神状態だと思いますので、六十五歳を過ぎても同じような計算でやっていけば少しでも年金財政が助かると思いますけれども、いかがでございましょうか。
  128. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 昭和六十年の年金法の改正前までは、六十五歳以上の方につきましても働いて賃金収入があるときには年金額を一定額カットすると、こういう制度があったわけでございますが、この昭和六十年の改正によりまして、そのときに基礎年金ができまして六十五歳以上の方から一律に支給されるようになったと、こういう事情もございまして、六十五歳以降は厚生年金の被保険者の適用から外すということになったわけでございます。したがいまして、現役の被保険者でございませんので、賃金と年金との調整はしないで全額支給と、こういうことになっているわけでございます。  先ほど来お話がございますように、これからの高齢化に伴いまして年金財政というのは非常に厳しくなるわけでございまして、かねてから水島先生の御指摘のように、六十五歳を過ぎて働いて賃金収入がある人、こういう人から年金の全額支給というのをやめたらどうかと、こういうふうな御指摘がしばしばあるわけでございます。今までの経緯もございますし、現にもらっている方との兼ね合いもございますので、関係方面の御意見を十分お聞きしながら今後検討する課題であると、こういうふうに考えております。    〔理事朝日俊弘君退席、委員長着席〕
  129. 水島裕

    ○水島裕君 私も詳しいところはよくわかりませんので、私の申し上げている趣旨をよく御理解されて、そういう方向に進んでいただければと思います。  実は、データによりますと、六十五歳より前に繰り上げして年金はもらえるわけでございますけれども、そういう人たち昭和五十九年には七六%でしたのが、その十年後ではそれが半分近くに減っているわけでございますね。それはその方が得であるということだと私の家内なんかは申すのですけれども、そればかりではなくて、六十歳から六十五歳、働けるうちは働いていようということのあらわれではないかと思いますけれども、その辺の解釈はいかがでございましょうか。
  130. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 国民年金の支給につきましては六十五歳から行うというのが原則でございますが、稼得能力の喪失の度合いについて個人差があることを踏まえまして、本人の意思によりまして六十歳からの繰り上げ支給を受けることを認めているところでございます。新規国民年金の裁定者の繰り上げ受給率は、先生の御指摘にもございましたように、昭和五十八年度には七七・四%でございましたが、年々低下いたしまして、平成六年度におきましては三九・六ということで、約二分の一程度にまで下がってきております。  その理由でございますけれども、明確な統計データ等を私ども持ち合わせていないわけでありますが、一つ考えられますのは、平均寿命が次第に延びてきている中におきまして、老後生活の支柱としての年金役割というのが国民の間に意識されまして、繰り上げ支給による減額された年金よりも、できる限り本来の年金を受けたいという人がふえてきたということがあるのではないかというふうに考えております。また、総理府が平成三年に長寿社会に関する世論調査を行っておりますが、これによりますと、六十歳以降も働きたいという人が七一・八%おりまして、六十歳以降も就業意欲を持っている人がかなり高い割合を占めております。  御指摘のように、働けるうちはできるだけ働きまして、稼得収入によって生活したいという方もふえているのではないかというふうに考えております。
  131. 水島裕

    ○水島裕君 働ける間は働きたいというのは、別な言葉で言いますと生涯現役ということで、生涯現役プランというのを私はこの間WHOの中島事務局長のお話で聞いたので、こういうことがWHOで進められているかと思って厚生省の方で調べていただいたら、なかなかよくわからないということですので、WHOもこれからそういうプランを推し進めていくのかと思います。  そういうプランというのはいろんな意味で必要でございますので、今、厚生省でおやりになっている新ゴールドプラン、これはサービス、保健とかそういうことばかりではなくて、そういうことも入っていいんじゃないかと思いますけれども、そのゴールドプランなどにはこういうことが触れられていないんでしょうか。また、何かほかの対策を立てていらっしゃるかどうか、お聞きいたします。
  132. 亀田克彦

    政府委員(亀田克彦君) WHOの状況につきましてはさらに情報をとってみたいと思っております。  御指摘の就労等の社会活動への参加、こういうことでございますが、今後の急速な高齢化ということを考えてみますと、生涯にわたって意欲と能力に応じまして社会活動に参加するということは大変重要でありますし、またすばらしいことであろうと、こういうふうに考えております。  御指摘の新ゴールドプランでございますが、この中に「高齢者の社会参加・生きがい対策の推進」と、こういう一項目が盛り込んでございまして、この項目と申しますかプランに沿いまして、高齢者の生きがいと健康づくり推進事業あるいは老人クラブ活動の支援、こういうことをやってきておるところでございます。また、かなり前からでございますが、高齢者能力開発情報センター事業、こういうものをやってきておりまして、この事業におきまして、高齢者の能力等に応じた就労の機会の確保あるいは高齢者が社会参加するために必要な各種の情報を御提供申し上げると、こんな事業をやってきておるところでございます。  基本的には労働省さんなんかとも連携をとりながら進めていく必要があろうかと思いますが、厚生省といたしましても、今後とも高齢者の社会参加の促進、こういった観点の施策の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
  133. 水島裕

    ○水島裕君 ひとつ簡単にお答えできたらそうしていただきたいんですが、仕事をやめて年金がもらえる状態になっても、先ほどの話のように財産があるから、経済的なボランティアの仕事としまして年金はもらわないでおこうというような人は、今はそういう方はほとんどいらっしゃらないと思いますけれども、そういう方がいるかどうかというのは調査できる形になっておりますでしょうか。また、実際にいらっしゃればお知らせいただきたいと思います。
  134. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 年金給付につきましては、支給要件を満たしました受給権者がみずからの意思によりまして裁定請求を行いますが、これに基づきまして行われることになっているわけであります。  あえて申請ができるのにやめる人というのは私どもほとんど現実にはいないのではないかというふうに思っておりますが、現実にも一体そういう方がどのくらいおられるのか、今までのところ私どもとして統計データ等を持ち合わせていない状況にあるわけであります。また、年金給付を途中から辞退するという方も私どもとしては想定しておりませんので、現実にまだ調査等もやったことがないという状況でございます。
  135. 水島裕

    ○水島裕君 そのうちいろんなことからそういう方がふえるかもしれませんので、調査をしていただければと思います。  最後に、菅厚生大臣のお考えをお聞きしたいんですけれども、多少繰り返しになりますけれども、これからの年金制度というのは、掛けたものを取り返すという思想ではなくて、困ったときには社会全体で助け合うという発想に変えていかなければならないと思います。つまり、高齢者は、ボランティアでもいいですけれども、なるたけ働いて、企業負担にならないような、それほど高い給料ではなくても、年金よりはちょっと高いぐらいの給料で、その人に合った仕事を快適にして、周りの人もそれを助けるというふうにしていきますと、高齢者も非常に幸せになると思いますし、年金給付ということからも、どの程度のパーセントの方が働いてくださるかわかりませんけれども、それにより社会保障負担額も減っていくのではないかと思います。  そのために最も必要なことは、先ほどからも大臣が言われておりますように、高齢者が快適に働けるような環境をつくるということで、賃金はもう二の次で、年金よりちょっと高いぐらいでいいというぐらいの考えにすれば、これが本当の高齢者のための福祉国家ではないかというふうに思いますが、厚生大臣から最後に御感想あるいは御意見をお伺いしたいと思います。
  136. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) この年金議論の中で、今、水島先生もおっしゃったように、どの世代であれば掛けたお金に対してどのくらいの年金を受けられるかといったような議論も時折ありまして、確かにそういう物の考え方を私たち自身もする場合もありますし、またそれに対してもきちんと事実を答えなきゃいけないと思いますけれども、年金制度そのものは、それぞれの時代に生み出したある種の富をどういうふうに世代間で分け合うかという、そういうことが根底の理念としてあった上で、いわば掛金等のあるルールによってその配分を決めていると、そういうふうに見るべきではないかと思っております。    〔委員長退席、理事朝日俊弘君着席〕  そういう点では、生み出す富というものを高齢者の方も元気で、まさに現役の中で生み出されてみずからが得られるということが御本人にとってもいいことですし、また社会全体にとっても非常な急激な高齢化社会の中では望ましいことだと思いますので、まさにそういう条件づくりをいろんな形で努力しなければならない、このように思っております。
  137. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 今回の法案は、もうこの委員会でも何度も議論されましたけれども、旧三公社共済組合を厚生年金統合するだけではなくて、今後一元化を公平に進めていくためのいわば統合ルールを定める大事な法案ではないかというふうに考えております。  私、先日の本会議でも質問いたしましたけれども、一元化が破綻した制度を救済することだけになってしまっては、国民の信頼を得るどころか、逆に公的年金制度に対する国民の信頼はますます揺らいでしまうのではないかと心配をしております。  本委員会でもそういう御議論が幾度もありましたように、年金は大変わかりにくいというのも問題です。難しい専門用語の問題もありますけれども、これに加えて何十年間にもわたる保険料の支払いがあり、また、この間積立金の運用など経済的な要素も入るためなかなか素人には理解しにくい。  そこで、情報公開、ディスクロージャーをしていかなきゃいけないのではないかというふうに思いますけれども、専門家が制度財政状況をきちんと分析して国民にわかりやすく紹介する、そのような仕組みをつくっていただくことが公的年金制度に対する国民理解を得る、信頼を回復するための重要な方法ではないかと思いますけれども、厚生大臣の御見解をお伺いいたします。
  138. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 今おっしゃったとおり、国民の老後の生活にかかわりの深い年金の、例えば財政状況などに関する情報をできるだけわかりやすい形で国民に提供していくということは、年金に対する国民理解あるいは信頼を得ていく上では大変重要だと考えております。  このために、各制度制度運営の実績や将来の見通しに立っての情報をそれぞれ積極的に公開していこうとそれぞれの制度で努力をしておりますし、またその努力を進めるように厚生省としても指導しているというか進めているところです。  また、根本的な問題としては、社会保障制度審議会年金数理部会というところの委員や事務局の構成員の大部分がいわゆる年金数理の専門家で構成されておりまして、この年金数理部会が専門的あるいは中立的な立場から、一つ被用者年金制度安定性が将来にわたってどういう形で確保されているかという問題、あるいは二つ目には各制度間での費用負担公平性が確保されているかという視点、こういう視点に立って財政計算期ごとに検証を行っているわけであります。    〔理事朝日俊弘君退席、委員長着席〕  しかし、こういう専門家のきちっとした報告は出ているんですけれども、きょうの議論を私も聞いていてなかなか難しいというのは率直に感じておりまして、それだけに、逆に言えばこういう国会での審議などを通して、国民の皆さんが疑問に思っておられることをいろいろ出していただくことがあるいはより積極的な公開ということにもなるのかなと、ここの議論を聞いておりましてそんな感じもいたしているところであります。
  139. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 専門家の議論だから難しいのかもしれないと思いますね。非常に高度な議論はよくしていらっしゃるんだと思いますけれども、わかりやすく国民に説明するということではやっぱりまだまだという感じがいたしますので、ぜひ努力をお願いしたいと思います。  きょうは私、もう既にたくさんいろんな議論がされましたので、女性の問題について少し議論させていただきたいと思います。  さて、公的年金制度基本長期的な安定と、給付負担の公平ということの確保ですけれども、女性の年金問題についてはまだまだ多くの問題を残していると私は思います。  そこでお伺いいたしますが、現在、女性の平均年金額は幾らか、男性の平均年金額は幾らか、お答えください。
  140. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 厚生年金の老齢年金の平均年金月額につきましては、平成六年度末の数字でございますが、男性で十九万九千円、女性で十万七千円となっております。これは、女性の平均加入期間が男性に比べましてはぼ十年ぐらい短いということ、平均標準報酬月額が男性に比べまして十四万円ぐらい低いというようなことによるものであります。  また、国民年金につきましては男性四万九千円、女性四万円ちょうどとなっておりまして、厚生年金ほどの差はないという状況でございます。
  141. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 いろいろ理由があるんですけれども、このように女性の年金額は男性に比べてかなり低い額になっています。男性よりも女性の方が平均寿命が長いことを考えれば、女性の年金額が低いということは大きな問題と言わなければならないのではないでしょうか。これは、現在の年金制度が男性の終身雇用的なシステムに合わせてつくられていて、女性のライフサイクルに必ずしも合っていないのではないかというふうに考えます。  そこでお伺いいたしますけれども、いわゆる家庭の主婦が第三号被保険者となるための条件はどのようになっているのか。パートの主婦の場合、年収が百三十万円を超えますと被扶養者ではなくなってしまいます。ですから、現在パートで厚生年金が適用されることは余りありませんので、普通は国民年金の第一号被保険者となるわけですね。この国民年金の第一号被保険者となると、年間十四万七千六百円の保険料のほか国民健康保険保険料を支払ったり、夫の給料の家族手当がなくなったり、手取り収入が逆転してしまうわけで、この結果、百三十万円の壁というものを守らなければ、年末になるとこの壁を守るためにいろいろ時間調整をしたり、結局責任のある仕事ができないという障壁に、壁が障壁になっているわけです。  そこでお伺いいたしますけれども、パートの人が厚生年金の適用を受けるためにはどのような条件が必要なのでしょうか。
  142. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 主婦などの方がどのような年金に入るかということにつきましては、先生御指摘ございましたように、通例は国民年金の三号被保険者という場合が多いかと存じます。  パート等によりまして年間収入が亘二十万円以上になりますと、これは独立の一号被保険者ということになるわけであります。  厚生年金関係の適用がどうなるかということでございますが、厚生年金の適用につきましては、パートタイム労働者であるかどうかにかかわらず、その者が事業所との間におきまして常用的な使用関係にあるかどうかによって判断することになっております。  いわゆるパートタイム労働者の常用的使用関係の有無につきましては、当該労働者の労働日数、労働時間等により判断しております。具体的には、一日または一週間の労働時間あるいは一月の労働日数というものが、当該事業所における同種の労働者の所定労働時間なり労働日数のおおむね四分の三以上である場合におきまして厚生年金を適用するというような扱いになっているところであります。
  143. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 その辺は通達が八〇年に出てわかっているんですけれども、現在パートタイムの人の仕事ももう立派な企業の戦力となっています。ただ違うのは、パート先の正社員の人に比べて今おっしゃったみたいに勤務時間が短いというだけです。いろいろな事情でフルタイムの勤務ができない、していないといった事情だけで厚生年金が適用されない、自分の年金権が十分に保障されないというのは問題ではないでしょうか。  年金審議会の意見書においても、「労働形態の多様化も考慮し、被用者はなるべく厚生年金の被保険者にするという基本考え方」に立つべきだとしておりますね。女性の年金権を保障するためには、現在の厚生年金の適用の条件である今おっしゃった四分の三の条件、これを緩和して、例えば二分の一というふうに変更すべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
  144. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) パートタイム労働者の場合、一般的に労働形態を見ますと、就労、退職が非常に頻繁に行われるとか、あるいは労働時間も他の労働者に比較して短い、勤務形態なり賃金も変動しやすいということで、こうした者について他の常用労働者と同様な国民年金を適用するかどうかということにつきましては、保険料負担する事業主なり本人の方におきましてもなかなか合意が得にくいという問題等がございます。本人の方におきましても、厚生年金が適用される場合には、先ほども御指摘がありましたように、健康保険保険料もあわせて払わなくてはいけないというようなことで、希望しない場合もあるわけであります。  ただ、先生御指摘のとおり、産業構造なり就業構造が多様化いたしまして、こうしたパートタイム労働者がふえてくるのではないかというふうに考えられますので、私どもといたしましても、その適用のあり方につきましては、雇用保険制度等他の制度や、あるいは年金制度の中における給付負担関係のあり方等との関連におきまして今後検討してまいりたいというふうに考えております。
  145. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 この第三号被保険者制度が導入されました八五年、私は衆議院の社会労働委員会におりまして質問をしております。菅大臣もたしかあのころ社労におられたのではないかと思いますけれども、このときに新米の竹村議員はこんなふうな質問をしております。  「ちょっとショッキングなことを申し上げますけれども、」「政府案では、正式な結婚をして子供が生まれる、夫婦は離婚しない、妻は外で働かない、これが基礎となっているのではないでしょうか。」「新しい制度では、個人単位考え方で貫いて、これまでの厚生年金のような世帯単位考え方は改めるべきではないか」というふうに言っているんですね。それで、夫が失業したときの妻の無年金の問題とかいろいろ言いまして、そのとき長尾政府委員が、三号被保険者という考え方は「「被扶養配偶者」というふうに規定されておるわけでございます。」と、あくまでも妻は、奥様として独自の年金手帳を交付するけれども、三号被扶養配偶者であるというふうに答えておられるんですね。  そこで、私は反発をいたしまして、「あくまでも自立した婦人が」、このころ「婦人」と言っておりますけれども、今は「女性」と申しますが、「自前の保険料を支払って年金権を獲得することを基本とすべきだと私どもは思います。」というふうな主張をしているんですけれども、余り変わっていないじゃないかと、これは十二年前ですけれども、政府考え方ですね。八五年にこの制度が導入されて、この結果、専業主婦として被扶養者認定を受けている限り国民年金保険料は夫の加入する制度負担をしてくれることになったわけです。この限りにおいて女性を優遇する制度となっているわけです。  ところが逆に、さっき申しましたパート収入が百三十万円を超えて被扶養者認定を受けられなくなると、第一号被保険者として自分の保険料を払う必要が出てくる。また、正社員として働いている場合は言うまでもなく厚生年金保険料を支払う必要がある。  つまり、年金制度では主婦はそこそこに働いて、いいですか、そこそこに働いているときが最も有利な扱いを受けることになっているわけです。こういう女性像をつくってこられたんですね。それで、結局は女性の社会進出を阻害する機能を持っているということになるわけです。  女性を一人の社会人として遇するために、私は第三号被保険者制度をこのあたりで見直すべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  146. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) この第三号被保険者制度は、女性の年金権の確立という観点から、今お話のありましたように、昭和六十年の改正で創設された制度でありまして、被用者の妻に独自の基礎年金を支給することとしたものです。その際、みずから収入のない被用者の妻に未納、未加入による無年金あるいは低年金を発生させることなしに基礎年金を確保させる仕組みとして、第三号被保険者制度は現実的な仕組みというふうに考えて導入されたものと理解をしております。  しかし、第三号被保険者制度が発足して十年を経て、この制度について被用者の妻から保険料を徴収しないのは不公平ではないかなどのさまざまな意見があることは承知をいたしております。  先ほど来いろいろな面で指摘がありましたが、税制もこのパートの問題を含めてどちらかといえば家族単位の税制をベースにしていて、個人単位というのはまさにある範囲を超えたところから個人単位になる。社会保険制度もそういうふうになっているわけです。そういう点で、将来の問題としてこういったものを家族単位から個人単位考え方を変えていくということも一つ議論としては十分あり得るかと思うんですが、これは相当に社会制度のあり方そのものとも絡んでおりますので、それぞれ議論としては賛否いろいろあるというふうに思っております。  そういう点で、各方面の意見を聞きながら厚生省としても検討してまいりたいと思いますが、こういう議論はどちらかといえば役所としてどうするというよりも、社会全体がそういう方向を本当に目指すのかどうかということにもかかわっていると思いますので、そういう議論を深めていく必要があるのかなと感じております。
  147. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 年金制度安定性ということは国民の信頼感にあることは言うまでもありませんけれども、しかし、近年の急激な出生率の低下は年金制度長期的な安定に暗い影を差しております。子供の数が減ってくる、どうしたら女性が子供を産んでくれるだろうかというふうな真剣な議論がある中で、それは年金財政を困難にするだけではなくて、日本社会全体の活力を奪うことになりかねません。本会議でも質問いたしましたけれども、子供を持ちたい人が安心して子供を産み育てることができる、子供自身が健全に成長していくことができる、子育てを社会全体で支えていくようなシステムづくりが必要ではないかと思います。  厚生省でもエンゼルプランを発表したり、平成六年の年金法改正において育児休業中の女性の社会保険料を免除するなどの処置をとってきておられますけれども、出生率の下げどまりの傾向は見えてきません。  そこで、子育てを社会全体で支えていくようなシステムづくりを推進するために厚生省の策定した緊急保育対策等五カ年事業の進捗状況について、余り時間がありませんので、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  148. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 緊急保育対策等五カ年事業でございますけれども、平成七年度を初年度として実施をしてきております。  これまでの状況を申し上げますと、地域子育て支援センター事業、これなどは当初予定していた水準まで行っていないというものも若干見受けられますけれども、全体的に申し上げるならばおおむね着実に進展していると、このように私ども考えております。
  149. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 おおむね順調とおっしゃいますけれども、保育事業を推進していくためには各家庭の事情に応じた柔軟な制度を整備拡充していく必要があると思います。  育児休業法ができてから、一年間は自分が面倒見られる、でも保育園が受け入れてくれる二歳あるいは三歳までの間は行き場がないという、いわゆる乳児保育ですよね、そういう声をよく私の周りでも耳にいたします。低年齢児の保育はどのように進んでいるんでしょうか。
  150. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) ゼロ歳から二歳までの低年齢児の保育でありますけれども、これも緊急保育対策等五カ年事業の中にも数値目標を掲げまして推進をしているところでありますが、平成十一年度には六十万人を目標として掲げております。  この実績状況でございますけれども、平成七年度で見てみますと、現在のところ四十六万七千人を受け入れることができる体制が整備されてきておりまして、平成八年度の予算におきましては四十九万人を受け入れることができる体制の予算措置を講じておるわけでございます。
  151. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 また、一たん保育園に預けても熱が出たりするとすぐ職場に電話がかかってくる。  お子さんが熱を出しましたから連れに来てくださいという電話がかかってくるんですね。それから、朝熱が出ていたりすると連れてこないでほしいと言われたりして、母親は職場を早退したり欠勤したりしなければならなくなります。これでは女性が責任ある仕事をすることは不可能に近くなってしまいます。  今後、子供が風邪などで、病気の子供というか、もちろん程度の差があると思いますけれども、軽い風邪などの場合でも保育をしてくれるような仕組みを充実させるべきであるか、あるいはどのような預かり方をどこがするべきであるのか。これは労働省おいでいただいていると思いますのでお答えください。
  152. 村上文

    説明員(村上文君) ただいま先生がおっしゃいましたようなことを背景に、労働省ではファミリー・サポート・センター事業というのを始めております。  この事業は、急な残業や子供の急病など、変動的、変則的な保育需要に対応するために、育児の援助を行いたい者と育児の援助を受けたい者から成る会員組織でありますファミリー・サポート・センターを設けまして、地域における育児の総合援助活動を支援する市町村などに対しまして都道府県を通じて二分の一の国庫補助を行っているものであります。  ファミリー・サポート・センター事業は現在一部の市町村において実施しているところでありますけれども、本事業は子供を持つ労働者の仕事上育児との両立を支援する上で大変有効な事業であると考えております。今後とも、地域のニーズに応じてその設置を支援していきたいと考えております。
  153. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 私もパンフレットをいただきました。大変きれいなパンフレットを出していらっしゃるんですけれども、このファミリー・サポート・センターの八年度の予算はお幾らでしょうか。
  154. 村上文

    説明員(村上文君) 約四億四千万円でございます。
  155. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 フレーフレー・テレフォン事業なんというのもありまして、いろいろ考えていらっしゃるんだなと私も思いましたけれども、ますますこれは非常に重要になってくるのではないかと思います。  そして、フルタイムで仕事をしていれば、仕事の都合で急に残業しなくてはならなくなることがあります。ところが、現在の保育園のほとんどは五時とか六時とかまでにお迎えに行く必要があります。これではパート仕事しかできないことになってしまいます。例えば電話一本で延長保育できるような仕組みを整備して、女性が社会に出て働きやすい環境整備をすべきではないでしょうか。これも労働省でしょうか、厚生省ですか。
  156. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 先生お尋ねではありませんでしたので私はお答えしませんでしたが、その前の、いわゆる風邪を引いたとかそういったときに保育所がもうちょっと弾力的に対応できるようなシステムというものを考えてはどうかということも入っておると思います。これにつきましても、私どもはそういった意味で利用者の視点に立った保育所のシステムづくりというものを考えなけりゃいけないということで考えております。  そういった意味では、保育時間の問題につきましても利用者サイドに立った弾力的な対応ということが必要であるということで、実は平成七年度におきまして延長保育事業につきまして運用面における改善を図ったわけでございます。  内容的には、保育所の保育は通常六時ということでありますが、六時の場合に保護者が急な残業で延長が必要になったと、こういったときに保育所に申し出ていただきまして、電話等をしていただいて、その子供さんをお預かりする。ただしその際、追加の利用料というものを保育園の方に払っていただく。こういうようなことで弾力的な対応をしていけるような方法というものを新たに導入していっておるわけでございます。
  157. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 それから、女性の社会進出が進みますと保育に対する要望も多様なものになってきます。市町村や社会福祉法人の設置する保育所だけではなくて、企業が職場に設置した保育所で保育するような仕組みも有効な場合が少なくないと思いますけれども、現状はどのようになっているのでしょうか。また、これに対する支援はどうなっているでしょうか。これは厚生省でしょうか、労働省でしょうか。
  158. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 事業所内の保育所の状況でございますけれども、一番多いのが病院の中のいわゆる院内保育所と呼んでおるものでございます。これらを含めまして、平成八年の一月時点で見ますと、全国で三千四百二十五カ所設置をされております。これにつきましては国からも施設整備に対する国庫補助をやっておりますけれども、さらに平成六年度からその運営費についても国庫の助成を行っておるというところでございます。
  159. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 ちょっといただいた資料で、私はこれ前もってお聞きする時間がなかったのですけれども、施設型保育サービス運営事業費という予算のうち事業所内保育施設運営事業、この予算が平成七年度より減額になっているんですけれども、この理由は何なんでしょうか。ごめんなさい、通告していませんので。
  160. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 予算的には実績との見合いで予算措置をしておるものですから、実績がそれほど上がっていないということで予算が前年度より減っているというふうに考えております。
  161. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 そうすると、職場の中の、いわゆる事業所、企業の中の保育所というのは余り進んでいないというか、需要も多くないし必要度も余りふえているとは厚生省は見ておられないのでしょうかね。予算は減っているんですよ。
  162. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 申しわけございませんが、また中身をよく勉強しまして御報告させていただきたいと思います。
  163. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 ごめんなさい。ちょっと私、時間が不足で通告しておりませんでしたけれども、大変これ不思議だなと思ったんですね。  こういうことではなかなか女性の社会進出を易しくするわけにはいかないのではないかな、もっと支援してあげる必要があるのではないかなと思いますが、まあ一概には言えないと思います。例えば、子供を職場に連れていくためには、朝、ラッシュの電車に乗せていかなければならないわけで、これは子供にとって果たして幸せかどうか、やっぱり地域で預かってくれた方がいいのかもしれませんが、しかし、授乳中のお母さんなんかはとても安心なんですよね、そばに子供がいると。それは一長一短があると思いますが、お互い研究いたしましょう。  それで、保育といいましても小学校に上がるまでで終わりというわけではありませんで、むしろ現在問題になっておりますのは小学校低学年の子供たちです。一、二年生は学校に行ったかと思うとすぐ帰ってきてしまいます。ですから、むしろ働く女性にとっては保育園時代よりも、保育園は一応夕方まで預かってくれるわけですから、とても心配だと。放課後児童クラブとして厚生省も対策をとっておられるようですけれども、地域によっては取り組みが進んでいないところがあるようです。これについてどのように推進されようとしているのか。  私の聞いた話では、自分の通っている学校ではいわゆる放課後児童クラブというようなものが、学童保育というようなものがないので、わざわざ集団下校して違う遠い学校まで行って、そこで学童保育を受けるというふうなことも多々あるようでありますけれども、どのようにお考えでしょうか。
  164. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 保育所から今度小学校に入り、そして低学年の子供たちの健全育成という、これが非常に重要なわけでありますが、放課後児童クラブということで事業を推進しておりますけれども、このたびの緊急保育対策等五カ年事業でもこれを計画的に整備を進めていこうということで、平成十一年の最終目標としましては九千カ所整備をしていこうということで進めております。平成八年度の予算では、現在五千二百二十クラブございますけれども、これを六千クラブにふやしていくという予算措置を講じております。  ただ、この問題につきましては予算措置で現在実施しておりますけれども、この制度化の問題等を含めましていろいろ議論のあるところでございます。そういった意味で、現在、中央児童福祉審議会の中で基本問題部会というものを設けまして、この保育体系のあり方というものを検討していただいておるところでございます。この検討の状況も踏まえまして今後適切に対応してまいりたいと、こんなふうな方向で進めております。
  165. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 最後に、子育ては各家庭の問題でありますとともに、社会全体の問題でもあります。急速に出生率が低下してくる中、なぜ出生率かこんなに急速に低下しているのであろうかといりことを考え、また女性の権利の保護の重要性が向まってくる中、社会全体で子供を育てていくという考えが大切になってくるというふうに思いますけれども、環境整備に向けて、先日、本会議では厚生大臣にお聞きする時間がありませんでしたけれども、ぜひ厚生大臣の御決意をお願い申し上げます。
  166. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 少子化などに対応して、子供を持ちたい人が子供を持てないような状況を解消して安心して子供を産み育てる、そういう環境整備をしていくことは社会全体の課題であると考えております。  そういった点で、平成七年度からエンゼルプランに基づいて、仕事と子育ての両立を図る観点から、育児休業制度の制定や緊急保育対策等五カ年事業に基づく低年齢児保育や延長保育の充実など、保育サービスに努めているところであります。  また、子育てをめぐる制度面において、保育所を中心とする保育体系のあり方等の検討も、先ほど局長からも話がありましたが、中央児童福祉審議会において進めているところです。こういったことを踏まえながら、二十一世紀に向けて個性豊かでたくましい児童が育つような環境づくりをしていきたいと、こういうことであります。  もう一つつけ加えますと、私はこういう議論をしながら、じゃ、そうした環境整備をすればどういう形で出生率が回復するのかという、そういう議論をしますと、環境整備は環境整備として非常に重要だと思うんですが、そのことと出生率の回復ということがどういうふうにつながっているかというところの分析は必ずしも明確ではないんですね。役所ごとにいろいろ努力をされている、あるいは厚生省ももちろん努力しているんですが、その努力というのは、環境はよくなっているけれども、じゃ、それで子供の数がふえることにつながっているかというと、一概にどちらとも言えない面もあるように思うんです。  ですから、厚生省に限りませんが、今、社会全体の構造が、なぜ、どういう条件のもとで出生率が下がっているのかというのをいろいろ調べてはいるんですけれども、できればもう一遍根底にさかのぼって調べた上で、どういう政策をとることがより効果的かということの議論をやり直す必要があるんではないかと思っております。  その中で、これは言葉なんですが、余り出生率の向上とか言いますと、かつての産めよふやせよという言葉を思い出される方もあって、多少やっぱり役所としては慎重なんですね。ですから、確かに言葉の使い方は注意しなければいけませんが、私は出生率の回復ということを明確に政策一つの目標の柱にして、それに対する対応ということで議論をもう一回深める必要があるのではないか、そんなこともあわせて感じていることを申し上げておきたいと思います。
  167. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 ありがとうございました。  時間がなくなってしまいましたので終わりたいと思いますが、私、八四年の十二月の社会労働委員会質問のときに、このパートタイムの労働者の問題で、八〇年に社会保険庁から全国の各都道府県の健康保険課長に通達が出ている、これがさっきの四分の三というくだりだと思うんです。  そのパートタイマーが常用的使用関係にあるかどうか、その就労者の労働日数、労働時間、就労形態などを調べて、おおむね四分の三以上であれば通常の就労者であるというふうに考えるべきだという通達なんですけれども、これに対して当時の長尾政府委員は、八四年に私が質問しておりますからこれは八〇年の通達なんですけれども、その後の適用状況はどうなっているかと私が聞いたら、「パートの就労状態、これは実際問題としていろいろでございますので、私どもとしては正確に把握をいたしておりません。」というふうにお答えなんですね。  きょうはもう時間がありませんので後で、お願いですが、これは労働省の方がいいのでしょうね、パートの就労状態、これを現実の問題としてお調べになったものがあるかどうか、あれば教えていただきたいし、なければそういう調査をぜひしていただきたいというふうにお願いをして、私の質問を終わります。
  168. 今井澄

    委員長今井澄君) 暫時休憩いたします。    午後四時九分休憩      ―――――・―――――    午後四時十八分開会
  169. 今井澄

    委員長今井澄君) ただいまから厚生委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は御発言を願います。
  170. 西山登紀子

    西山登紀子君 前回の委員会の質疑のときに、私は、今度の法案というのは、今まで行われていた制度調整の枠組みをそのまま継続する、しかしその中身は、事業者負担あるいはJR各社負担、これは大きく減らされるにもかかわらず支援する側の労働者負担は非常にふえると、こういう問題について指摘をさせていただいたわけですけれども、今回は、高いと言われるJRJT共済加入者保険料の問題、この問題について取り上げたいと思うわけです。  どれぐらい高いかということで、具体例、これはJR西日本にお勤めの方の給料表を借りてまいりまして、少し御紹介をしたいと思います。  標準報酬月額三十四万円の労働者、三十八歳の方です。平成八年五月の給料表で計算をしてみますと、この方は三万三千三百三円の年金保険料を払っているわけですけれども、じゃ同じ標準報酬月額の厚生年金の方はどれぐらいお払いになっているかといえば二万八千五十円ということで、その差は五千二百五十三円、非常に高いということになるわけです。  もう一人例を出しますと、五十一歳の方で、同じくJR西日本労働者で標準報酬月額が三十八万円の方ですけれども、この方の保険料というのは三万七千二百二十一円払っている。同じ厚生年金の方はどうかといえば三万一千三百五十円ということで、その差は五千八百七十一円ということであります。厚生年金と比べてこのように高いと、そういうことではないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
  171. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) JR共済三十八万円、それから三十四万円の方の標準報酬がそういう前提であれば御指摘のとおりでございます。
  172. 西山登紀子

    西山登紀子君 やはり厚生年金と比べて非常に高い、五千円から六千円近く差があるということだとお認めになったわけです。  それでは、JTの場合はどうかということです。  これも日本たばこ産業株式会社に働いている女性の給料表を借りてまいりました。女性で、勤続年数三十三年働いて、五十一歳であるわけですけれども、標準報酬月額三十四万といたしまして、この方の保険料は三万二千四百十九円払っているわけでございまして、その差は四千三百六十九円、このように差があるわけです。かなり高いわけです。  先ほどのJRの方のお給料、いろいろ差し引かれてみますと非常に安いんですね、手取り額というのは。五十一歳で差し引き十八万足らずになってしまいますし、三十八歳の労働者の方は手取り二十万という、これで家族七人が暮らしている。  こういうふうな暮らしぶりは本当に楽じゃないなというふうに実感をいたしました。  このように保険料は非常に高いわけです。この保険料がなぜ今回の統合を機にいたしまして引き下げられなかったか、厚生年金並みにされなかったのかという問題をお聞きしたいわけです。  もともと今回のJRとかJT共済の破産には労働者は何の責任もありません。特別の自助努力というふうに言われてきたわけですけれども、自助努力という点でいえば国も国鉄当局もやるべきでありますし、労働者負担を転嫁するのはそもそもお門違いと言わなければなりません。しかし、旧国鉄労働者も先輩の面倒を見るという点では特別の負担を長い間強いられてきたし、それをやってきました。このあたりでもう私は免除されてもよいと。統合を機に厚生年金並みにどうして引き下げなかったのか、お伺いしたい。
  173. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) JR共済等の保険料率につきましては公的年金制度一元化懇談会でも大変議論がございました。多くの先生方は、現役の人たち保険料率が高いということについてはかなり同情的な意見が多かったと思います。  ただ、JRそれからJT共済組合は支援を受けるわけでございまして、支援する側の関係委員の先生方の方からは、やはり段階的に縮小すべきであって、すぐ解消するのはいかがかと、こういうふうなことで関係者の合意になったわけでございます。これを踏まえまして、JRJT共済加入者保険料率につきましては、厚生年金保険料率が追いつくまでの間は据え置くということで段階的に格差の解消が図られると、こういう形になったわけでございます。
  174. 西山登紀子

    西山登紀子君 それは事情の説明でありまして、決して私はそのことに道理があるというふうには思いません。なぜ引き下げなかったのか。一元化懇談会でも格差を是正するのが望ましいということを言っていらっしゃるんですね。ところが、その格差の是正とは、JRの高い保険料をそのままに据え置かせて、後は追いついてくるのを待てと、こういう酷な方法であります。  制度調整のときに払っていたJR各社とか清算事業団の負担というものは、私がこの前指摘いたしましたように大幅に引き下げられるわけであります。ところが、今のJR労働者の高負担をそのまま継続して、後は追いついてくるまで待ちなさいという、これは余りにも御都合主義といいますか、現役の労働者にとっては非常に酷な改正だと思いますけれども、そうではありませんか。
  175. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先ほども申し上げましたとおり、JRJTというのは支援を受ける側の制度であるわけでございまして、やはり現在やっている程度の自助努力というのはやってもらう必要があると、こう一方であるわけでございまして、他方では一緒にすべきであるという御意見もあったわけでございます。このままJRが独立して制度をやっていきますと当然のことながら格差が開いていくわけでございます。  今回はそういうことは当然やらないというふうなことで、負担公平化を目指すということであったわけでございますけれども、今までの自助努力のある程度はやっぱり持ってもらう必要があると、こういうことで、段階的に格差解消ということになったわけでございまして、次の次の改正ぐらいには厚生年金と同率になるのではないのかなと、こんなような感じを持っております。
  176. 西山登紀子

    西山登紀子君 労働者には高い自助努力をそのまま継続させる、そして事業主とかあるいはJR負担というのは大幅に減らすと、こういう改正の内容ですから、私は賛成することができないわけです。  次に、少しテーマを変えまして、学生の国民年金の強制加入問題に移らせていただきたいと思います。  先日、私の地元の京都ですけれども、自治会の代表の方が私学助成の問題で陳情に来られたわけです。学生さんが国会に来られるというのは大変珍しいことですけれども、陳情に来られました。  内容は、生活費の問題、私学助成をふやしてほしいという問題で来られたわけです。下宿しながらアルバイトをしていらっしゃる方ですが、家賃が八万円だとか、あるいはアルバイトも大変なアルバイトをしているわけですね。朝の三時から六時間コンビニでアルバイトをしている。睡眠時間は三時間。この方は法学部の学生さんなんですけれども、なかなか勉強と両立できない、こういうふうなお話でありました。親が高い学費を払ってくれているんだけれども、最近おやじさんが三交代の仕事にかわった、だんだんおやじの頭が白くなってくる、大変心苦しい、こういう言葉を若い人が国会に来て切々と訴えるということに私はむしろ異常な事態を感じたわけであります。  それで、国民年金の学生強制加入が始まって丸五年がたったわけですけれども、その実態はどうなっているのか、教えてください。
  177. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 学生の国民年金の適用につきましては、私どもは新規加入者の数が何人という形で把握しております。これで申し上げますと、平成四年度で六十四万人、平成五年度で六十六万人、平成六年度におきまして六十九万人の適用をしているという形になっております。  免除につきましては、平成六年度末で五十七万人という状況であります。
  178. 西山登紀子

    西山登紀子君 新規の場合の実情を言われたわけですけれども、私が持っている社会保険庁の資料では、二十歳以上の学生の加入率、おおよそですけれども、国民年金に入っている率は約七割ですね。そして、入っていらっしゃらない方は約三割。入っている人の中で免除されているのが約三割というような数字があります。そして、大変心配するのは都道府県の中で加入率に非常に大きな差があると、これも非常に心配であります。  しかし、私がきょう問題にしたいのは、約三割の学生さんが入っていない、この問題です。障害者になれば無年金の障害者になるわけです。しかも、強制加入制度になった後だということで義務を放棄し、権利を放棄したものとみなされてしまうわけでございます。この強制加入という制度だけが先行していく、しかし実際は多くの学生、約三割に近い学生さんが入っていない、実際には多くの無年金障害者の予備軍といいますか、放置されているのではないか、私はその点が大変心配されるんですけれども、どうお考えですか。
  179. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 二十歳から二十四歳の年代の加入率は、これは学生も学生でない人も含めてでありますけれども、八〇%というふうになっておりまして、その裏側といたしまして未加入率が大体二割というふうになっております。このうち学生の割合がどのくらいになるかというのはちょっと手元に統計が、私どもとしては統計をとっていないのでわからないということでございます。  学生につきまして強制加入になった事態を踏まえまして、私どもといたしましてもできる限り加入をしていただくということが、御指摘いただきましたように障害年金の受給権の確保ということもございますし、将来できる限りフルペンションの年金額を受給していただくためにも重要であると考えております。このための適用対策といたしましては、二十歳になった時点で全員に加入していただくということを目指しまして、現在市町村において数度にわたる勧誘をしていただきまして、その方が未加入であるというふうに判明した場合には最終的には手帳を送付していただくというような形で適用を進めているところであります。  また、国民健康保険の方には入っておられる未加入者の方も多いということがございますので、市町村の段階国民年金加入者との加入状況の突合をしていただきまして、そちらの方に入っている方で国民年金の方に入っていない方については適用していくというような形の対策を進めているところであります。  それから、九年一月から基礎年金番号の導入を目指しまして現在準備しておりますが、これが実現できれば未加入の方が的確に把握できるようになりますので、こういった点で学生の未加入対策もさらに進めることができるというふうに考えております。  次に、収納対策があるわけでありますが、御指摘いただきましたように、学生がみずから保険料を納めるという場合もあるわけでありますけれども、多くは親元の援助を受けて納付をしているということも多いわけでありますので、私どもといたしましては、本人に対する保険料納付の督促等のほかに、親元世帯に対しまして納付案内書を送付いたしましたり、親元からの口座振替等によって納付していただくような方法、あるいは一括して前納制度というのがありますが、そういった前納制度の利点の周知、あるいは郵便局等を使った振り込み制度というようなものを進めているところであります。また、若い世代を対象にいたしまして、さまざまな機会を通じて私どもは年金制度に対するPRを強化してまいりたいというふうに考えております。
  180. 西山登紀子

    西山登紀子君 時間がなくなりましたので、最後に大臣にお伺いをしたいと思うわけです。  今、実態を手元に持っていらっしゃらないとおっしゃったけれども、社会保険庁はちゃんと数字が出ているんですよね。よく研究をしていただきたいというふうに思います。  約三割の方が入っていないという厳しい実態があります。平成元年にこの強制加入の制度が審議された国会で実施時期が修正をされまして平成三年になったわけです。その理由というのは、学生自体に負担能力がない場合に親の負担能力によって新たな格差、つまり無年金障害者や加入年金の差が生じるのではないかというような議論だとか、月八千円以上の新たな負担というのは本人にとっても親にとっても大変じゃないかと、こういういろいろな意見が出されまして、そしてそういう点を是正するために十分必要な検討、研究をする期間が必要だということで実施時期が延びて平成三年になったわけであります。  現在、およそ三割の学生さんが入っていないということで、無年金の障害者の予備軍、私は大変な問題ではないかというふうに思っているわけですけれども、やはりこの無年金障害者の問題を解消する方向に努力しなければいけませんし、学費も非常に上がりました。国民年金は九四年から、私は改悪だと思うけれども、毎年五百円アップされ、今は月額一万二千三百円払うわけですが、これが大変な負担感になっているわけです。当面、差し当たって免除要件を改善していただいて、若い無年金障害者をなくす努力をぜひしていただきたいと思いますけれども、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  181. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 学生の保険料免除基準については、親元世帯の収入水準が、学生を抱える世帯における全国の平均的な消費支出、学費等の水準に達しない場合には保険料を免除するというように、一般の免除基準より緩やかなものとしております。しかしながら、学生の適用状況を考えると、障害無年金の発生を防止するためにも加入促進や滞納防止などの対策が極めて重要であると考えております。  今後とも、学生の保険料免除基準についての実態に即して改善していくとともに、年金の重要性について広報の強化、年金教育資金貸付制度による在学中の国民年金保険料に係る貸し付けなどにより、加入や保険料の納付促進に努めてまいりたいと考えております。
  182. 今井澄

    委員長今井澄君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  183. 今井澄

    委員長今井澄君) 医薬品副作用被害救済研究振興調査機構法の一部を改正する法律案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。菅厚生大臣。
  184. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) ただいま議題となりました医薬品副作用被害救済研究振興調査機構法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  がん、エイズ等の疾病の克服は人類共通の悲願であり、画期的な医薬品、医療用具等の開発は、国民の保健医療水準の飛躍的な向上に寄与するのみならず、国際社会にも大きく貢献するものであります。  近年の遺伝子治療技術を初めとする先端的科学技術が目覚ましい進歩を遂げている中、こうした技術の開発の基盤となる保健医療分野における基礎的研究は、ますますその重要性を増しているところであります。また、基礎的研究につきましては、国が率先して取り組むべき分野であり、積極的な施策の推進が必要であると認識しております。  このような認識のもと、今般、医薬品、医療用具等に関する研究開発を振興するため、基礎的研究への出資制度を創設して、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構に基礎的研究を行わせることとし、この法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。  第一に、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構の目的につきましては、医薬品の生産等に関する技術の基礎的研究に関する業務を行うことにより、国民の健康の保持増進に寄与する技術の開発を振興し、もって国民保健の向上に資することを新たに追加することとしております。  第二に、基礎的研究業務につきましては、医薬品の生産または販売に関する技術のうち、医薬品の品質、有効性及び安全性の確保向上等国民の健康の保持増進に寄与する技術のほか、医療用具等に関する技術も対象とすることとしております。  また、業務の内容としましては、基礎的研究の実施のほか、その成果の普及等を追加することとしております。  第三に、政府の出資金及び運用利益金の充当先に基礎的研究業務を追加しております。また、機構は、厚生大臣の認可を受けて定める基準に従って、基礎的研究の一部を委託することができることとしております。  なお、この法律は、公布の日から起算して一カ月を経過した日から施行することとしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  185. 今井澄

    委員長今井澄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会      ―――――・―――――