運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1996-05-30 第136回国会 参議院 厚生委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月三十日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  五月二十八日     辞任        補欠選任      渡辺 孝男君     木暮 山人君  五月二十九日     辞任        補欠選任      木暮 山人君     戸田 邦司君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         今井  澄君     理 事                 石井 道子君                 大島 慶久君                 釘宮  磐君                 朝日 俊弘君     委 員                 阿部 正俊君                 清水嘉与子君                 塩崎 恭久君                 高木 正明君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 勝木 健司君                 田浦  直君                 戸田 邦司君                 水島  裕君                 山本  保君                 竹村 泰子君                 西山登紀子君    国務大臣        厚 生 大 臣  菅  直人君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     亀田 克彦君        厚生大臣官房審        議官       和田  勝君        厚生省保健医療        局長       松村 明仁君        厚生省児童家庭          局長       高木 俊明君        厚生省年金局長  近藤純五郎君        社会保険庁運営        部長        兼内閣審議官   横田 吉男君    事務局側        常任委員会専門        員        水野 国利君    説明員        大蔵省主計局共        済課長      松川 忠晴君        大蔵省主計局調        査課長      松元  崇君        文部大臣官房福        利課長      齊藤 秀昭君        農林水産省経済        局農業協同組合        課長       高橋 賢二君        運輸省鉄道局国        有鉄道清算業務        指導課長     金澤  悟君        自治省行政局公        務員部福利課長  小室 裕一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 今井澄

    委員長今井澄君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十八日、渡辺孝男君が委員辞任され、その補欠として木暮山人君が選任されました。  また、昨二十九日、木暮山人君が委員辞任され、その補欠として戸田邦司君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 今井澄

    委員長今井澄君) 厚生年金保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 大島慶久

    大島慶久君 自由民主党の大島慶久でございます。  菅厚生大臣並びに政府委員室皆様方におかれましては、通告の順に従ってお尋ねを申し上げますので簡潔な、また明瞭なお答えをぜひちょうだいしたいとお願いをしておきたいと思います。  最初に、我が国におきましては、昭和三十六年に国民年金制度が発足し、以来、すべての人が何らかの年金制度に加入する国民年金制度として歴史を重ねてまいりました。既に私たちすべての国民にとって年金のない老後生活は考えにくい状況になっております。  そこでお伺いをいたしますが、現在、老齢年金受給者は、国民年金厚生年金共済年金、それぞれ何人になっているのでしょうか。また、高齢者世帯において年金収入の占めるウエートはどの程度になっているのか、お伺いをいたします。
  5. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 老齢年金受給者でございますが、平成七年の三月末、六年度末でございますが、国民年金が一千四十四万人、それから厚生年金保険が五百八十二万人、共済組合が二百三十七万人となってございまして、高齢化進展等に従いまして毎年増加いたしております。  また、国民生活基礎調査によりますと、平成五年の高齢者世帯の一世帯当たり平均所得が三百二十万円でございました。このうち公的年金、恩給も含んでいるわけでございますけれども、公的年金等は百七十五万五千円でございまして、全体の五五%ということでございまして、国民老後生活の中心的な役割を果たしているということでございます。
  6. 大島慶久

    大島慶久君 今日ではこのように多くの人が年金老後生活の柱としておられます。年金が支給されなくなるのではないか、財政的に破綻するのではないかといった不安は、公的年金制度自体基盤を揺るがすだけではなく、国民にとって老後生活設計が極めて不安定なものになることを意味いたします。したがって、公的年金制度が長期的に安定して運営されることが極めて重要な課題となってまいります。  そこでお伺いいたしますが、今回、厚生年金統合となるJR共済収支が初めて赤字になったのはいつでしょうか、大蔵省から御説明をいただきたいと思います。
  7. 松川忠晴

    説明員松川忠晴君) 鉄道共済収支が初めて赤字となりましたのは昭和五十一年度からでございまして、五十一年度におきましては八十九億円の赤字となっておりまして、積立金を取りましまして年金給付の維持を図ったところでございます。
  8. 大島慶久

    大島慶久君 JR共済は今のお答えのように五十一年に赤字となったということでございますが、その後もJR共済財政構造は基本的に改善されることなく、やがて完全に財政的に破綻することとなるわけであります。  JR共済が完全に財政破綻し、他制度から財政支援を受けるようになったのはいつごろからでしょうか、大蔵省から御説明願います。
  9. 松川忠晴

    説明員松川忠晴君) 鉄道共済におきましては、先ほど申し上げましたように、昭和五十一年度に初めて赤字を計上したわけでありますが、その後も財政状況は悪化してまいりまして、その間、連年にわたりまして保険料率引き上げ等努力も行ってまいりましたけれども、いよいよ自前の努力だけでは運営が困難になりまして、昭和六十年度から長期給付財政調整事業という形で国家公務員共済グループ内での財政調整が開始されまして、さらには平成二年度からは制度間調整事業によりまして被用者年金制度による財政調整が実施されているところでございます。
  10. 大島慶久

    大島慶久君 御説明のように、JR共済財政が破綻し、他制度から支援を受けて何とか年金を支払うといった状態に陥ってまいりました。このような状態になった原因も単純ではないでしょうが、主な原因について御答弁を願いたいと思います。
  11. 松川忠晴

    説明員松川忠晴君) 鉄道共済年金財政の破綻した原因でございますが、まず第一としましては、旧国鉄共済年金時代制度運営等に起因する側面でございまして、現在は是正されておりますけれども、かつての時代におきましては給付設計厚生年金国家公務員共済年金よりも有利になっていたという点、あるいは運用面におきましても、退職特別昇給年金額に反映させていた、さらには成熟度に見合った保険料引き上げ努力が必ずしも十分ではなかったこと等の問題がございました。  しかし、他方におきまして産業構造変化等による要因もあるわけでございまして、モータリゼーションの進行に伴う産業構造変化によりまして旧国鉄が雇用を縮小せざるを得ず、その結果、年金財政支え手である現役の組合員数が著しく減少したということがございます。この点は昭和六十三年十月の有識者による懇談会報告書でも明らかにされているところでございます。
  12. 大島慶久

    大島慶久君 JR共済が破綻した理由には、必要な保険料を徴収しなかったとか、退職時に給料を上げて、上げた給料をもとに年金を支払っていたといった経営上の理由と言うべきものが一つ。  もう一つは、より大きな構造的な要因として、今お答えのように、産業構造変化、つまりモータリゼーション進展によって鉄道産業が斜陽化し、国鉄JRの職員の合理化が避けられなくなったということだと思います。  放漫経営JR共済固有の問題かもしれませんが、産業構造変化という問題はどの共済にも発生し得ることになるわけであります。農協では生産性三〇%向上とおっしゃっておられるようでありますが、生産性が三〇%向上するとすれば農林共済組合員大幅減にもなりかねない、第二のJR共済に陥ってしまうことにもなります。私学共済も、子供の数が減り、進学率の上昇がとまれば急激に成熟度が高まる可能性があるわけであります。したがって、公的年金財政基盤の拡大によって社会の変化に強い安定した年金制度にしていく必要があると思います。  今回の法案は、被用者年金制度の再編成の第一段階と位置づけられておりますが、今後どのように一元化を推進していくのか、大臣の御決意をお伺いいたしたいと思います。
  13. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 三共済厚生年金統合法案をお願いしているわけですが、この統合後も政府としては被用者年金制度の再編成をさらに進める考えでありまして、その旨の基本方針閣議決定において定めているところであります。  その際、被用者年金制度の分立による不安定な制度運営負担の不均衡の問題は、主として各制度成熟度進展に伴って生ずるものであることから、今後二十一世紀にかけて各制度成熟化する段階において漸進的に再編成を進めることといたしております。  具体的に申し上げますと、国家公務員共済及び地方公務員共済のいわゆる公務員グループについては、特に国家公務員共済成熟度が既に旧三公位に次いで高いものとなっていることから、まず公務員グループ内で財政安定化のための措置について検討を進めていく必要があると考えております。  また第二に、今御指摘農林共済については、現在、農協組織整備課題となっておりますので、その進展制度基盤に与える影響などを踏まえつつ、今後日指すべき方向を検討する必要があると、このように考えております。  また、これも御指摘のありました私学共済については、他制度に比べ現在のところその成熟度は遅いわけでありますが、御指摘のとおり、児童生徒数の減少なども見込まれておりますので、今後の成熟化進展などを踏まえつつ、被用者年金制度全体の中における位置づけについて検討する必要があると、このように考えております。  今後、この基本方針に沿って財政計算ごと制度安定性公平性の確保に関し検証を行いつつ、被用者年金制度の再編成を着実に進め、一元化基本的目標である安定した制度運営と各制度間の費用負担の公平を確保してまいりたいと、このように考えております。
  14. 大島慶久

    大島慶久君 ありがとうございました。  各制度は長年にわたって独立して運営してきております。制度の目的も異なれば、財政状況も異なっているわけであります。この一元化は容易ではないと思いますが、ぜひ大臣におかれましては被用者年金制度一元化に積極的に取り組んでいただきたいと思います。  さて、今回の法案では、統合に当たりJR共済等は必要な積立金厚生年金移換することになっております。この積立金の額及びその積算方法についてお伺いをいたします。
  15. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 今回の三共済厚生年金への統合に当たりましては、制度間の公平を図るという見地から、独立した制度として運営されていたときに、そのときに保険料が拠出されるわけでございますけれども、その保険料を拠出したときに確定していた年金給付部分、これにつきましてはその給付を将来にわたりまして賄えますことができるだけの積立金移換を行うことにいたしているわけでございます。  具体的に申し上げますと、各共済組合につき生じて統合時点、来年の四月一日ということを予定いたしているわけでございますけれども、その統合時点におきまして各年金受給者、それから加入者ごと統合前の期間に係ります再評価前、いわゆる生の標準報酬月額を用いまして年金額を算定するわけでございます。個々人ごと年金額をまず算定するわけでございます。それからさらに、その算定しました額を一年後に何%生きておられるか、何年後に何%という生存率を使います。それから予定利率を使いまして割引をすると、こういう手法によりましてその年金額を将来にわたって支給ができますように一時金に換算した額にするわけでございます。これがいわゆる給付現価と呼ばれているものでございます。この個々人たちの一時金の換算額を合算することによりまして、各共済組合として移換すべき積立金額を算定いたしているわけでございます。  このような方法に基づきまして移換する積立金の額は、JR共済で一兆二千百億円、JT共済で一千百億円、それからNTT共済で一兆一千九百億円ということになっているわけでございます。
  16. 大島慶久

    大島慶久君 JR共済等積立金移換はどのような方法によって行われるんでしょうか。
  17. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) JRJT共済平成六年度末の積立金保有状況は、JR共済が約三千四百億円でございまして、JT共済が約八百億円となっているわけでございます。これに加えまして、いわゆる支払い準備金というものを用意しなければいけませんので、必要となります移換積立金にはかなり不足を来すわけでございますし、現に持っている積立金につきましても、組合員住宅貸し付け等をいたしているわけでございまして、直ちに現金化するというのが非常に難しいものもあるわけでございます。  こういった状況を勘案いたしまして、積立金移換額最長二十年、最長でございますから短くして納めていただいても結構なんですが、最長二十年間の元本の分割払いをするということにいたしておりまして、それと同時に利子もつけていただくということにいたしまして、厚生年金財政にとっては中立性が確保できると、こういうふうな形で移換をしていただくことにいたしているわけでございます。  なお、この利息相当分に用いる利率につきましては、資金運用部預託金利を予定いたしております。
  18. 大島慶久

    大島慶久君 JT本社年金積立金不足分六百億円を五年間程度で拠出する方針でいる旨、先日新聞で報道されておりました。JRJT共済については、現在保有する積立金移換に必要な額を大分下回っていると思います。この不足する金額をだれがどのように負担することになるんでしょうか、お尋ねをいたします。
  19. 松川忠晴

    説明員松川忠晴君) 鉄道共済及びたばこ共済のいわゆる積立金不足額負担についてのお尋ねでございます。  鉄道共済及びたばこ共済につきましては、先ほど厚生省の方から答弁がありましたように、積立金といたしましてそれぞれ約一兆二千百億円及び約千百億円を厚生年金移換することといたしております。  なお、鉄道共済及びたばこ共済平成六年度末時点積立金残高は、先ほどもありましたように、それぞれ約三千四百億円及び八百億円でありまして、ともに不足額が発生することが見込まれるわけでございます。  保有する積立金のうち移換金に充てることができます部分は、二カ月の年金支払い準備、さらには経過的に残ります独自給付部分給付費を控除したものでございます。今後積立金残高も変動し得るものでもございますので、現時点でそれぞれの共済についての積立金不足額を正確に見通すことは困難な面もございますけれども、非常に粗い試算を行えば、鉄道共済につきましては約一兆円、たばこ共済につきましては約六百億円の不足額が生ずると見込まれているところでございます。  いずれの場合も、不足額が発生しました場合に、その不足額につきましてはそれぞれの事業主負担することといたしております。ただし、鉄道共済の場合は、民営化前の事業主としての立場を承継しておりますのは国鉄清算事業団でございますので、鉄道共済積立不足額につきましては、国鉄清算事業団JR各社との間で民営化前後のそれぞれの期間に対応する積立金部分比率で按分して負担することといたしております。  具体的には、この比率はおおむね八対二と見込まれますことから、国鉄清算事業団については約八千億円、JR各社については約二千億円の負担が生ずることが見込まれるわけでございます。
  20. 大島慶久

    大島慶久君 JR共済については、不足する一兆円のうち八千億円を国鉄清算事業団負担することになっているようですが、国鉄清算事業団は既に二十七兆円とも二十八兆円とも言われる長期債務を負っているわけであります。年金積立金八千億円を仮に二十年間で分割したといたしましても、元金だけで四百億円、これに利子負担すれば相当な額になるわけであります。  国鉄清算事業団はどのように年金積立金債務を処理することになるのでしょうか。基本的な見通しについて運輸省の方から御説明を願いたいと思います。
  21. 金澤悟

    説明員金澤悟君) 委員指摘のように、国鉄清算事業団の抱えます債務は本年の四月一日現在で二十七兆六千億に達していると見込まれております。  この債務償還につきましては、既に昭和六十三年の一月におきまして閣議決定されておりまして、その際、「土地処分収入等自主財源を充ててもなお残る債務等については最終的には国において処理するものとする」というふうにされておるわけでございます。今回の鉄道共済厚生年金への統合に伴いまして必要となりますこの移換金につきましても、本年三月八日の法案提出時の閣議決定におきまして、「既存の債務等と同様の取扱いをするもの」とされております。  そこで御質問の、それじゃ清算事業団厚生年金にこうした移換金をどのように支払っていくのかという点でございますが、この点につきましては、先ほど年金局長からも御答弁ございましたが、二十年までの分割も可能だという措置をとっていただいております。そういうことを踏まえまして、先ほど御説明いたしました閣議決定を十分踏まえつつ、今後各年度どのように厚生年金に支払っていくかという具体的な方法について、関係者の間で十分に調整していくというふうにしております。
  22. 大島慶久

    大島慶久君 今回の法案では、JR共済等統合に際し、財政支援のための拠出金を各制度負担することになっております。各制度JR共済等に対して財政支援をする理念及び費用分担の考え方についてお答えをいただきたいと思います。
  23. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) JR共済等財政が悪化した原因については幾つかあろうかと思うわけでございますけれども、やはりその主な原因と申しますのは、産業構造等変化によりまして被保険者数が減少したというのが一番大きなものではないのかなというふうに考えているわけでございます。この影響というものは、特定の制度のみに責任をかぶせるというものではなくて、被用者年金制度全体で支え合うのが適当であると、こういうふうな判断をいたしたわけでございます。  このために、統合前の期間に係ります再評価物価スライド部分、いわゆる世代間扶養と目されるような部分でございますけれども、これは被用者年金制度全体で支援することにいたしているわけでございまして、その支援額につきましては、被用者年金制度がそれぞれの負担能力、具体的には標準報酬総額でございますけれども、その標準報酬総額に応じまして公平に分担すると、半分はそういう観点。それからあとの半分は、まだ成熟度が低くて今負担しなけりゃいかぬ保険料水準が比較的低い制度、この制度におきましてはより多く分担していただく、こういうふうな形で負担平準化を図ると、こういう観点から分担を行うことにいたしたわけでございます。
  24. 大島慶久

    大島慶久君 各制度財政支援は、共通する給付である、いわゆる二階相当部分のうち世代間扶養に当たる部分については被用者年金制度全体で支え合う、そしてその分担方法については負担平準化を図るという観点を加味して配分したとの今の御答弁ですが、具体的に負担平準化方法について、またどの程度平準化されたのかを御説明願いたいと思います。
  25. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 負担平準化をも加味した按分の計算方法でございますが、少し複雑になりますが申し上げますと、まず一般制度であります厚生年金負担水準を基準といたしております。  それで、厚生年金より負担水準が高い制度につきましては、いわゆる成熟度が高い制度でございますけれども、負担平準化趣旨に照らして負担はさせないと、こういうことが第二点でございます。  それで、厚生年金より負担水準が低い制度、具体的には地方共済とそれから私学共済でございますけれども、この制度につきましては厚生年金の本来分担となるべき額の一部を負担していただくと、こういうふうに考えているわけでございます。  その場合、さらに具体的に申し上げますと、地方共済私学共済におきましては、厚生年金負担水準からの乖離程度と申しますか、地方共済とか私学共済負担率とそれから厚生年金負担率との差、こういうものを算出いたしまして、その度合いに応じまして厚生年金分担額を軽減する、こういう方法をとっているわけでございまして、その減らされた額につきましては、残りの額とともに、地方共済私学共済におきまして、それぞれの厚生年金からの負担乖離負担率の差に応じまして両制度分担するという極めて技術的な方法をとっているわけでございます。  この結果、被用者年金制度支援額の大きさを各制度標準報酬総額に対する比率で申し上げますと、平成九年から平成十三年までの五年間の平均では、厚生年金で〇・〇九%、国共済で〇・〇五%、地方共済で〇・一二%、私学共済で〇・三二%、それから農林共済では〇・〇五%ということで、国共済農林共済厚生年金より低く、地方共済私学共済はこれより高くなっている、こういうことでございまして、一番成熟度合いの高い制度につきましては〇・〇五%、それから成熟度の最も低い制度は〇・三二%ということでございますので、負担水準は〇・二七%縮まったと、こういうことが言えるというふうに思っております。
  26. 大島慶久

    大島慶久君 今回の法案においては、被用者年金制度は各制度が相互に関係しながら運営していくべきであり、産業構造等変化で急激に成熟度が上がって財政が苦しくなったときは各制度で公平に支え合うべきだという哲学があるようです。  しかし、各制度が勝手気ままに運営し、苦しくなったから助けてくれというようなことは決して許されるべきことではありません。このような事態がたびたび繰り返されるようなことがあれば、国民年金に対する信頼は失われてまいります。  そこで、JR共済等のように財政悪化が進行する前に適切な手を打つべきではないか、自覚症状が出て手おくれになる前にきちっとした予防をしたり健診したりするような仕組みをとるべきではないかと思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  27. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 公的年金制度については、将来にわたって安定した財政運営を確保していくために、御承知のように、五年に一度財政計算を行って保険料給付水準の見直しを行っております。  御指摘のように、公的年金制度財政悪化が進行する前に適切な措置がとられるよう各制度が積極的な情報公開を行うとともに、財政計算ごとに将来の財政見通しなどについて十分な分析を行う必要があると、このように考えております。  こうした点から、社会保障制度審議会の年金数理部会が専門的、中立的な立場から被用者年金制度安定性が将来にわたって確保されているかどうか、また各制度間で費用負担公平性が確保されているかどうかといった点について財政計算ごとに共通の基準に基づく制度横断的な検証を行うことといたしております。  こういった意味で、財政が悪化する前に適切な措置をとるというのは、それ自体はもちろん望ましいことであるわけですが、制度が分かれていても、ある意味では公平な負担あるいは公平な給付という形が順次とられていくごとによって、統合という形に至る前の段階でも実質的な意味では公平性が維持されてくると、そういうふうに思っておりまして、そういった意味で、JRの場合には確かに財政悪化の進行で若干時期が、いろいろな議論が長くかかったということがありますが、今後は、今申し上げたように、専門的、中立的な立場からの検証を常に行って適切に対応していきたいと、このように考えております。
  28. 大島慶久

    大島慶久君 公的年金制度に対する信頼の確保には、各制度間において給付負担の公平が図られること、長期に安定して運営できることが大切です。しかし、制度間だけでなく、あわせて制度内部においても運用が公平である必要があるわけであります。  そこでお尋ねをいたします。  厚生年金の適用対象事業所が段階的に拡大されてきているようですが、適用拡大の条件について御答弁を願いたいと思います。
  29. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 厚生年金保険の適用事業所についてでありますけれども、現在の体系が確立されました昭和二十九年から昭和六十年までにおきましては、適用事業所といたしましては、常時五人以上の従業員を使用いたします一部非適用事業所を除きました適用業種の個人事業所あるいは事務所、それから法人につきましては常時五人以上の従業員を使用する法人の事務所を強制適用事業所としてきたところであります。  昭和六十年の法律改正によりまして、これを法人につきましてはすべての事業所または事務所を強制適用事業所といたしまして、昭和六十一年から六十三年にかけまして段階的に五人から四人、三人、一人というふうに適用を拡大してきているところでございます。  現在の適用状況といたしましては、平成二年におきましては百三十七万の事業所の適用というふうになっておりますが、平成六年におきましては百五十八万三千カ所ということで、毎年適用事業所が増大してきている状況にございます。
  30. 大島慶久

    大島慶久君 制度改正によって適用事業所が段階的に拡大されました。  この結果、例えば私どもの団体であります歯科医師会のことを例にとってお尋ねをするわけでありますが、私ども歯科医師が歯科クリニックを経営し、衛生士を一人雇っているような場合を考えますと、歯科医師が個人の名義でクリニックを開設しているときは厚生年金が適用されないで国民年金の第一号被保険者となるわけであります。ところが、厚生省方針に従って医療法人化を図ると途端に厚生年金が強制的に適用されることになります。  私が現在相談を受けているケースでありますけれども、ある歯科医師が個人名義のクリニックを医療法人化いたしました。税金などの具体的な手続はすべて公認会計士に任せてあったそうですが、だれも年金のことには全く気づかなかったようであります。そのため、厚生年金の手続はしないまま従業員の方も国民年金のままだったようであります。  ところが、つい最近、会計検査院の検査が入って、違法状態だという指摘がなされました。法人化した団体から厚生年金が適用されるべきであるという言い分なわけです。具体的には、さかのぼって保険料を払いなさいと、こういうふうに言われるわけでありまして、この歯科医師の方は大変困惑をしておられます。  確かに、法律上厚生年金と決められている以上、厚生年金の適用を拒否したり保険料の支払いを避けたりしてはならないということはもう申すまでもないわけであります。しかし、制度について知る機会もなく、社会保険事務所から指導もないまま加入手続をしなかったというような場合、さかのぼって加入手続をして未払いの保険料を支払えというのは、これは私がお聞きしていても大変酷な感じがいたします。今さら従業員の方から何年分もさかのぼって保険料負担させるわけにもいきませんし、事業主負担分も相当な重荷となるわけであります。  本人が故意で届け出なかったわけではなく、届け出をすることすら知る機会がなかったために届け出漏れといったような場合には、指摘を受けた後きちんと保険料を納めるということでいいのではないかなと、私は個人的にそういう感じがいたしますが、そこら辺はどうなんでしょうか。
  31. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 事業所の適用につきましては、先ほど申し上げましたような適用条件に該当いたします事業所は強制適用の対象になるわけでありますが、実際の適用に当たりましては、その事業所から届け出が出てまいりまして、保険者としてこれを確認して適用というような関係になっております。  五人未満の法人の事業所は毎年数多く設立されておりまして、大多数が零細中小企業でございます。設立あるいは廃止の頻度も比較的高いということで、私どもといたしましてもなかなか適用事業所の把握が難しいという問題があるわけであります。  私どもといたしましては、現在、法人登記簿等により対象事業所の把握を行いまして、こうした事業所に対する勧奨リーフレット、あるいは個別に事業主に対する巡回指導等を積極的に行うことによりまして、事業主の方々の御理解を得ながら適用の促進を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  32. 大島慶久

    大島慶久君 このケースにつきましては、ぜひ温情ある対処をお願いしたいと思います。  そもそも、このような事態が発生するのは、厚生年金が適用となるのか適用にならないのかといり事情が十分に周知されていないことにあるのではないかと私は思います。世間には法人化されているとはいっても、今お話にもございましたように、家族従業員だけといった小さな事業所もたくさんあります。厚生年金の細かい制度についてはよく理解していない結果起きる同様のケースが多数あるのではないかというふうに思います。  このようなトラブルの発生を防止するため、加入義務など厚生年金制度について事業主を中心にしっかりと周知徹底していく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  33. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 今申し上げましたように、五人未満の事業所につきましては毎年多数設立、廃止が行われておりまして、私どもといたしましてもなかなか把握しにくいという状況にあるわけであります。  こうした状況を踏まえまして、私どもといたしましては、できるだけ適用促進を図る見地から、法人登記簿等におきまして事業所を確認し、個別に事業所等に対する説明あるいはリーフレットの配布、関係団体を通じた周知徹底等に努めることによりまして、事業主の理解を得ながら円満な適用を図ってまいりたいというふうに考えております。
  34. 大島慶久

    大島慶久君 どうぞよろしくお願いをいたします。  最近、運用利回りの低下によって年金財政が破綻するなどといった国民の不信感をあおるような報道がしきりとなされております。しかし、このような報道の問題点は、厚生年金本体の問題と企業年金である厚生年金基金財政の問題や一階部分である基礎年金の問題を混同しながら論じているような気がしてなりません。  世代間扶養として物価スライドや賃金スライドを行う厚生年金本体と事前積立方式の厚生年金基金や賦課方式に近づいてきている基礎年金とを同列で論じること自体に問題があると思いますが、運用利回りの低下がもたらすそれぞれの影響について御説明を願いたいと思います。
  35. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) まず、厚生年金や基礎年金等の公的年金の関係でございますが、公的年金財政につきましては、先生御指摘のとおり、賃金とか物価でスライドをいたしているわけでございまして、賃金、物価が上がれば年金額も上がる、こういうふうなことになっているわけでございます。それで、その最終保険料率への影響といいますのは、運用利回りと賃金、それから運用利回りと物価、こういったような相対関係で決まるということであるわけでございまして、いわゆる実質利回りがどうかという感じで決まってくるわけでございます。  一般的に申し上げますと、運用利回りが低いときには賃金とか物価の上昇率も低いわけでございまして、運用利回りが高くなれば賃金、物価も高いと、こういうふうな相関関係が実際上は見られているわけでございます。  現在、運用利回りは確かに低いわけでございますけれども、賃金も余り伸びておりませんし物価はマイナスになったということで、本委員会でも特例措置を講じていただいたわけでございまして、相対的な関係というのは財政計算を行ったときと変わっていないというふうに考えておりまして、最終保険料率もほとんど変動がないと、こういうふうに見込んでいるところでございます。  一方、厚生年金基金の関係でございます。  この厚生年金基金は、基本的には賃金とか物価の変動に応じて変えない、いわゆる給付確定の仕組みが大部分でございます。一方では、収入につきましては、一定の積立金の運用利率を予定して、これが五・五%を予定いたしているわけでございますけれども、その予定した利回りが得られないということになりますと、その分だけ財政に穴があく、こういうことで非常に厳しい状態に置かれていると、こういう状況でございます。
  36. 大島慶久

    大島慶久君 最近、日本紡績業厚生年金基金が解散といったような記事が相当出てまいっております。  事前積立方式の厚生年金基金が財政難に陥ってしまう原因はどこにあるんでしょうか。
  37. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 厚生年金基金におきましては、加入者の受給権を確保すると、こういう見地から、将来の年金給付に必要な費用といいますのを一定の前提を置きまして予測を立てまして必要な原資を事前に積み立てる、いわゆる事前積立方式で運営をいたしているわけでございます。  しかしながら、完全積み立てとは申しましても、平均余命が延びますと給付もふえるわけでございまして、加入員というのは一応一定ということで予測は立てているわけでございますけれども、実際問題として加入員が減少する場合もあるわけでございまして、減少いたしますと負担能力が低下すると。それから、先ほど申し上げました運用環境が非常に悪くなって利回りが低下したと、こういう事情があるわけでございます。  これまでは平均寿命が延びて給付が延びる、人が減るという現象もいわゆる利差益で穴埋めをしてきたわけでございますけれども、その利差益が逆に利差損になってきた、こういう状況で今のような深刻な状況に至ったと、こういうことでございます。
  38. 大島慶久

    大島慶久君 不足する資金を事業主負担されては大変だという声をよく聞くわけですけれども、これはどういうことなんでしょうか。
  39. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 厚生年金基金がその給付に払います費用として掛金を徴収するわけでございますけれども、これは加入員とそれから事業主が折半負担とするのが一応の原則にはなっているわけでございますが、規約によりまして事業主負担すべき掛金の負担割合をふやすことができることになっているわけでございまして、実際、加算部分につきましては事業主が全額を負担するというケースが非常に多いわけでございます。  御指摘の積み立て不足の場合でございますけれども、先ほど申し上げましたように、設立当初に見込んだ予測が外れて生ずるわけでございまして、これを賄う特別の掛金と申しますのは一般的には全額事業主負担しているケースが多いと、こういうことで新聞等で報道されているわけでございます。
  40. 大島慶久

    大島慶久君 三階部分は企業年金であり、労使の合意で自由に設計できる部分です。しかし、いずれにしましても老後生活を支える年金であるということには変わりはありません。  今後、さまざまな問題を抱える厚生年金基金制度の安定化を図るためどのような対策をとっていかれようとしているのか、大臣の御答弁を願いたいと思います。
  41. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 厚生年金基金制度の創設から三十年を経て、かつてのような経済成長が期待しにくくなっている今日の状況の中で、いわゆる三階建てという部分を構成している厚生年金基金の今後の安定的な発展を図っていくためには制度全体の見直しが必要だと考えております。このため、現在、基金関係者や学識経験者などによる研究会におきまして、基金財政の安定化や支払い保証制度の充実など制度全体について検討し、六月末をめどに報告をまとめていただくことといたしております。  基金制度の今後のあり方については、社会経済の実態や基金の実情に応じて、基金が自主的に判断して運営を行うことができる柔軟な仕組みとしていくことが必要であると、このように考えております。  具体的な対策については、現在、研究会の検討結果を受けて年金審議会や関係者の御意見を聞くという、そういうことを考えておりますけれども、いろいろな考え方があると思いますが、例えば掛金を掛けた上で給付がその運用利回りの中で払える範囲で払っていくといったような制度もあるというふうに聞いておりまして、そういったいろいろな従来の制度だけではない柔軟な対応が必要になってくるのではないかと、そのように受けとめております。
  42. 大島慶久

    大島慶久君 ありがとうございました。いろいろ私の質問に対して今それぞれお答えをいただきました。  しかし、ただいまのような議論はなかなか一般の国民皆様方には御理解がしにくいのではないかという危惧をいたしております。これは、年金という制度の持つ難しさがあることは否定できませんが、もう一つには、各制度が発表する財政状況には一階も二階も三階も区別をつけずに記載されていることによるのではないかという気がいたします。  例えば、共済制度におきましては長期給付の掛金として保険料が賦課されておりますが、このうち、基礎年金拠出金に回っているのがどれだけなのか、三階部分である職域相当部分に充当されているのが何%なのかは明らかにされておりません。しかも、年金の場合は巨額の積立金を保有することから財政の実態が余計に不明瞭になっております。  今後、このような公的年金制度に対する不信感を払拭して二十一世紀に向けて安定した年金制度を確立していくためには、国民皆様方に対して、本体部分、基礎年金部分、職域部分といったように、必要な経費とその将来見込みなどについて適切な情報を一般の国民にわかりやすいように的確に提供していくことが大切であろうかと思います。  知らしむべからずよらしむべしといったような風潮ではなくて、すべての情報を理解していただいた上で公的年金制度に対し信頼を回復してもらうことが最も重要な課題だと考えておりますが、最後に大臣の御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終えたいと思います。
  43. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 確かにおっしゃるとおり、私も年金のいろいろな説明を受けても、制度そのものが分立している、あるいは一階部分、二階部分、三階部分、さらにはそれが半ば融合したような形等々いろいろあって、非常に一般的にわかりにくいという感じがいたします。  また言葉も、例えば厚生年金という言葉と厚生年金基金という言葉、もちろん関係者はその差はよくおわかりになっているかもしれませんが、一般国民の耳で果たしてどこまでそれらのことがわかりやすくというか理解されているかというのは若干心配な感じもいたします。  そういった意味で、国民老後生活にかかわりの深い年金のそうした財政運営状況についてわかりやすい形で国民に情報提供していくことは、広く年金に対する国民の理解と信頼を得ていく上で極めて重要なことと考えております。このため、毎年度の実績や財政計算時にその将来見込みなどについて各制度がそれぞれ適切な情報公開に努めるとともに、各制度共通の基礎年金についても適切な情報公開に努めてまいりたい、そのように指導してまいりたいと考えております。  また、共済年金の職域部分については、一元化懇談会報告において本体と分離して情報が提供されるべきであるとの御指摘もあったところであります。この部分は、特に先ほどの二階、三階というのがいわばはっきりしないといった御指摘もいただきましたが、そういった御指摘もこの一元化懇談会報告の中でもあったわけでありますので、今後の情報公開の中で職域部分の情報の透明化について関係省庁とも相談しながら工夫をしてまいりたいと、このように考えております
  44. 大島慶久

    大島慶久君 それぞれの御答弁、ありがとうございました。  以上で私の質問を終えたいと思います。
  45. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 それじゃ、大島先生の質疑が早目に終わりましたので、私から続いてやらせていただきたいと思います。大体一時間ぐらいでと思っております。やっぱり生理的な問題もありますので、十二時をはるかに過ぎておなかがすいたのに年金の余りお金にならぬような話ばかり聞かされたのではたまらぬということもあるかと思いますので、できたらお昼ぐらいに終えたいと思いますので御協力をお互いよろしくお願い申し上げます。  年金について御議論ということになりますと、年金というのは大変大事な話だなというふうなことは皆さんどなたも否定されないと思いますけれども、何となく自分のことではないといいましょうか、わかりにくいということがみんなしみついているわけですよね。私自身も実は厚生省年金関係を、三年ですか、担当したことがあるのでございますけれども、仕組みとなりますと大変複雑で、しかも自分の年金がどういうふうに形成されていくのかという説明になりますと、確かに先ほど大臣が言われましたようにPRが必要だとか、あるいは国民の理解を得るためにということでさまざまなパンフレットが出ていますけれども、これ自体が極めてわかりにくいといいましょうか、要するにパンフレットのできふできじゃないんですよ。制度そのものが大変わかりにくいというか、何といったらいいんでしょうか、わかってもらおうとしてつくっていないと言った方がいいんじゃないかなという気がするんですよね。  これは後で言いますけれども、私は、役所の努力とか頑張れとか足りないとかいう問題ではなくて、これからの年金制度を考えますと、何かお役所でやっているのをわかってもらうというより、世代間扶養なりなんなりという機能の中での年金制度なんだよということを国民みんなが確認することが年金制度で一番大事なことなんだと思うんです。そういう意味ではかなり致命的な欠陥を持っているのではないかなという気がしてならぬわけなんで、後で触れますけれども、できるだけ単純化した論議をする中で国民の理解を得ていくといいましょうか、それだけが命なんだと思うんです、逆に言うと、年金制度といいますのは。  近藤局長なり大臣なりの能力の問題以上にと言うと変ですけれども、それもさることながら、先ほど取り上げていましたけれども、厚生年金基金の運用とかいいますと今極めて低率ですよね。これ幾ら頑張ったって、今五%で回せなんてだれもできる話じゃないわけなんで、そういうことを超えていわば世代間扶養を確認し合った制度として維持していくとなれば、もっともっとそうした意味でのわかりやすいといいましょうか、本来そういう支持が得られるような形で問題を提起していくということ自体が大事なことなんじゃないかなというような気がするわけなんで、そんなところにある程度焦点を絞って、そんな視点から二、三の問題について触れてみたいと思います。  お手元に「厚生年金保険料率」と「国民年金保険料の将来見通し」の段階保険料と言っているものをお配りさせていただいていますけれども、後で使わせていただきますが、これ私の工夫でも何でもなくてお役所がいつも出している資料でございます。この辺も後で触れますけれども、将来の世代にかなりの部分期待しているわけですね。ということで初めて年金というのは成り立っているので、現役世代がどうという国会のこの場での審議だけじゃなくて、将来、二十年先、三十年先の世代にどう理解されるのかなというのがいわば年金の生命線を握っているわけでございますので、そういう意味でもこれからの年金の論議といいますのは通常の政策論と少し違った感覚での論議が必要なんじゃないかなと思います。  そんな演説をしてもしようがないので具体的な質問に入りますが、第一問は、今回の法改正といいますのは、御存じのとおり、従来のいわゆる三公社と呼ばれる年金の集団を厚生年金保険に吸収統合するということが大きな柱なのでございますけれども、そういうのと、いわゆる公的年金一元化というのが従来言われてきたわけでございます。  公的年金一元化、これは何なのかという意味でございますけれども、一元化というのはさまざまな理屈づけがありますけれども、一言で言いますと、年金といいますのは非常に長いスパンで物を考える話でございます。五十年あるいは百年というスパンで物を考えていく仕組みだと思うんです。  そうなりますと、保険集団の組み立て方といいますのは、そのときは例えば五十万人いたとしても、その集団が将来とも五十年先、百年先も五十万人かということはだれも保証できぬわけでございます。そういうことを考えると、年金というのは短期保険の医療保険とは違いましていわば超長期保険でございますので、集団論というのは、いわば全国民一本以外は制度論としてはあり得ないんじゃないかというのが私は一元化の一番根っこにある議論だと思います。  御存じのとおり、日本での産業の象徴というのは、今回はJRということになっていますけれども、一番大きなつい最近の経験として言えば、いわゆる石炭産業というのはいわば壊滅したわけでございますけれども、年金では何の問題も起きていません。これは何なのかということなんですね。集団論として言えば、JR以上の壊滅になったけれども何も問題なかった、逆に年金があるからこそうまくいったとも言えるわけでございますので、それからしますと、年金一元化というのはかなり本質的な問題だったと思うんです。  今回の法改正といわゆる公的年金一元化という流れ、政策課題をお捨てになったとは思いませんけれども、その課題と今回の改正との関連性というのはどういうふうに理解すればいいのか、これにつきましてまず最初にお尋ねしたいと思います。
  46. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 公的年金一元化といいますのは、私どもの理解では、公的年金制度の長期的な安定、それから給付負担の公平、特に負担の公平、こういう安定化、公平化、こういう理念が一元化の理念だと、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、必ずしも委員指摘のような一本ということでは理解はいたしていないわけでございます。  それで、今回の改正とどういう関係があるかということでございますけれども、JR、JTの共済に対しましては、これまで暫定的な措置といたしまして現在も制度間調整事業という形で支援措置が講じられまして、これによって負担の公平化を図っているわけでございます。このJRとJTの共済年金というのがこれからますます増加する傾向にあるわけでございます。それから、制度間調整事業で前提とされておりました自助努力、こういうものも限界に達したわけでございます。  したがいまして、この制度によってはもう負担の公平化が保てなくなってきた、こういうことでございます。そういうことで、恒久的な仕組みという形で一定のルールのもとに三共済厚生年金統合しようというものでございます。  先ほど御説明申し上げましたように、非常に複雑な仕組みにしておりまして、これはいわば公平を保つためにかなり複雑な仕組みにしているわけでございますけれども、そういう一定のルールのもとで厚生年金統合しよう、こういうことでございます。この三共済厚生年金統合の法改正は、これからの被用者年金制度の再編成、まさに一元化の第一段階になるわけでございまして、こういうルールができたといいますのがこれからの再編成を進める上で有意義な改正ではないのかな、こういうふうに考えている次第でございます。
  47. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 負担の公平あるいは安定ということだということでございますけれども、役所の言葉としてはこういうことになるのかなという気もしますし、それはそれでわからないといかぬのかと思いますけれども、正直言って、じゃ国民に向かって負担の公平と安定化のためよと言ってわかる人いるのかな、何をわかったのかということなんですよね。私は、単純に言えば、先ほど言ったように、私の説明の方がよりわかりやすいのじゃないのかな、こういう気がするわけですね。そういう意味でのアプローチの仕方というのはやはり少し考えていかなきゃいかぬのじゃないかなという気がします。  何も言葉じりをとらえて言うわけじゃありませんけれども、理念といいましょうか、理念というのは頭だけでということなのかもしれませんけれども、年金にとっては私はある意味では理念こそが命なんだろうという気がしてしようがないんです。銭金もさることながら、銭金を生み出す理念なんですから、それがないと、これこそまさに胸突き八丁に今来つつあると思うんですけれども、これから先はそこのところが一番大事なんじゃないかなと。そうすると、年金はみんな共通だというようなところで初めて国民共通の理解みたいなことにつながっていくのではないかなという気もするわけなんで、できれば負担の公平、財政の安定という言葉からもう少し進んだ表現というのをいずれ工夫いただけたらなということをあえてお願い申し上げておきたいと思います。  それで、今回何で三つなのか。現JR、それからJT、いわゆる三公社ですね。なぜ三つなのか。多分御説明としては民間だから、厚生年金も民間なんだからということになるのかと思いますけれども、民間はほかにないのかというと、まだあるわけなんでございまして、私学共済、いわば民間でございます。あるいは農林共済、農林というのは今国会での非常にポイントの一つでございますけれども、これはいわゆる農協の方々が加入する共済なんです。農林省の公務員じゃありません。農林共済といいますのは農協の方々が構成している共済組合ですが、正直申しまして、かなりの程度に人数が受給者よりもこれからふえていく集団だと思えないわけでございまして、現実にかなりしんどい。今しんどいかどうかというより、年金ということで考えますと、過去十年間、現役とOBがどういうバランスだったのかということがこれから続いてくるわけなんですね。今どうかということよりも、どういう経過をたどっているのかと考えますと、農林共済も正直言って相当しんどい見通しになるのかなと思うんです。  この二つは少なくとも民間だと思うんですけれども、一緒に統合するということにならなかった理由と、この二つについて将来どういうふうな段取りになるのかについてお伺いしたいと思います。
  48. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 釈迦に説法でございますけれども、年金制度というのは非常に中長期の給付事業でございます。したがいまして、各制度におきまして多年にわたります独自の経緯を持っているわけでございます。いわゆる団体の理念というふうなものもあるわけでございまして、利害関係者も非常に多いわけでございます。したがいまして、合意形成を得るのには非常に時間がかかる、こういうことであるわけでございます。  NTTはごく最近でございますけれども、JR、JTについては長年にわたりまして大変な状況だということもございまして、いろいろ関係者間でもう既に長年にわたる論議の積み重ねがあったわけでございます。したがいまして、今回の一元化懇談会におきましては、この三共済については合意に達したわけでございますけれども、残念ながら私学、農林共済においては最終的な結論が出なかったと、こういうのが経緯と理由になるわけでございます。  今回の閣議決定におきましては、私学共済につきましてはその成熟化進展、これからお子さんが減ってまいりますので私学もどうなるのかと、こういった問題も当然あろうかと思うわけでございますし、農林共済につきましても、きょうの新聞に出ておりましたけれども、農協の再編成といった問題も当然あるわけでございます。そうすれば当然成熟化進展してくるわけでございまして、しかも急激な成熟化ということになるわけでございます。  私学、農林のことを申し上げますれば、これも経緯的なものでございますけれども、私学は公立の学校並みの年金を、それから農林共済につきましては市町村の職員と同じ年金を、こういうふうな目的のもとに厚生年金からいわば去っていった集団であるわけでございまして、どちらかといえば官的な、公私でいけば公にかなり傾いた意識を持っている団体であるわけでございます。そういう意味で、どちらに位置づけるのかというのを自分のところでまずは検討して、さらに全体の中で検討しようではないかと、こういうことで閣議決定の中にそういう旨の記述をいたしたわけでございます。
  49. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 経緯なりいきさつなり利害関係というふうなことかもしれませんけれども、一方で、普通の国民あるいは厚生年金の加入者というふうな視点からしますと非常に悪い、一方的な表現かもしれませんけれども、例えば今の近藤局長のお話を聞きましても、私学共済にしても農林共済にしても自分たちだけでやりたいということで厚生年金から出ていったと、こういうことなんですね。将来ずっとやれるかとなると、どうも自信がない、悪くなったらまた抱きついてくるのかと、こういうことになりかねないわけですね。私も公務員やめましたのでいわば全くの国民年金の被保険者でございますけれども、そういう一般の感覚からすれば、ましてや厚生年金の加入者等々からすればそういう思いも結構あるのかなという気がするわけです。  そうすると、本当にしんどくなったら頼みますよみたいな感じに聞こえなくはないわけですよね、邪推かもしれませんけれども。もう勇気を持ってずっと未来永劫やりますよと言うのならまだあれなんだけれども、どうもその辺もぐらぐらだということだとしますと、厚生省年金局での対応云々というよりも年金制度全体のあれからすると、どうも何かいいときだけ自分勝手にやっておって、しんどくなったら抱きついてくる、これは何なんだろうなみたいなことを言われかねない部分がやはりあるだろうなと。その辺はどうかひとつ、これ役所にお願いするのはむしろ場違いなのかもしれませんけれども、そういう受けとめ方をされないようにひとつ何か工夫をぜひお願いしたいものだなというふうにあえてお願いをしておきます。  そういう流れの中で、やはりぜひ一度触れなきゃいかぬのはいわゆる公務員の年金でございます。これはどうなったのでございましょうか。なお、お聞きしますと、今回を第一段階とすると、私学共済農林共済につきましては第二段階あたりでというようなニュアンスにお聞きしますけれども、どうも公務員となりますと第二段階にも登場してきませんし、将来ずっと何かわからぬというような状況かなというふうに思います。  厚生大臣年金担当大臣でございます。この年金担当大臣をなぜ置かれたかというのは、やはりある意味では年金一元化というのがあったので年金担当大臣になっているんじゃないかというふうに思います。厚生年金担当大臣国民年金担当大臣ではないわけでございますので、それは何なのかと。厚生大臣は自治大臣でもございませんし大蔵大臣でもないわけでございまして、なぜそういう年金担当大臣という制度を置いたのかということは、やはり年金制度一元化ということがあるからこそ年金担当大臣じゃないのかなという気がします。  先ほど私学共済農林共済については大臣の御答弁は求めていませんでしたけれども、できましたらそれも含めまして、特に公務員というのをどう扱うのかということにつきまして、後で私の意見は申し述べたいと思いますけれども、大臣年金担当大臣としての御見解といいましょうか、これから先というより、まず今回こういう形になったということに至るまでの間の厚生年金制度一元化というようなことを、将来私はあるべきだと思いますけれども、年金制度一元化ということからすると、公務員の年金制度のとらえ方といいましょうか、どういうふうにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  50. 菅直人

    国務大臣菅直人君) まず、もう本当に釈迦に説法かもしれませんが、この法案を出した趣旨としての今の問題についてお答えをして、その上で多少私なりの見解を述べさせていただきたいと思います。    〔委員長退席、理事朝日俊弘君着席〕  昭和六十年の年金制度改正によりまして、共済年金の報酬比例部分について厚生年金と同一の給付設計による厚生年金相当部分と職域年金部分に分離され、いわゆる二階部分については基本的には公務員も民間も同一の給付設計となっているわけであります。その意味においては、この二階部分について厚生年金とある意味では同じような一般の社会保障制度として取り扱われてきているというふうに思っております。  一方、被用者年金制度一元化というのは、制度の分立による不安定な制度運営負担の不均衡といった問題を解決するために、財政単位の拡大による制度の長期的安定と、給付負担の公平を確保することにある、先ほど来の答弁と同じで恐縮ですが、そういう考え方であります。  この一元化の具体的な手法として、社会保障制度審議会年金数理部会報告書にもあるように、統合一本化という考え方、あるいは複数制度への集約という考え方、あるいは恒常的な費用負担の調整といった考え方などさまざまな形態があり得るわけですが、いずれにしても本年三月の閣議決定において各制度が二十一世紀にかけて成熟化していく段階において漸進的な対応を進めることとしたところであります。  国家公務員共済、さらに地方公務員共済については、成熟化状況などに応じ、まず両制度において財政安定化のための措置を検討することとなっており、厚生省としてはその検討状況を踏まえながら、一元化の目的である制度の長期的安定と給付負担の公平化の達成に今後とも努力してまいりたい、こう考えているところであります。    〔理事朝日俊弘君退席、委員長着席〕  私も、この間の阿部委員質疑を聞いておりまして、確かに、十年ぐらい前でしょうか、官民格差ということが年金でかなり言われたことを思い出しております。最近はかなり、それこそ負担給付の均衡といったようなことでそういう面はなくなってきたというふうに理解しておりますけれども、やはりある時期までは比較的有利な制度に属している人たちはそのことを多少既得権益的に守ろうとして独自でやっていく。しかし、先ほど来のお話のように、年金は単年度ではありません。しかも、五年、十年でもなくて、数十年あるいは五十年、百年という単位ですから、それが厳しくなってくると結果的に厚生年金との統合なりそういうことになってくる。そこは確かに、長期的に考えると、そういう方向なら全体をやっぱり一本にしていくという考え方も私は考え方としては十分あると思っております。  また、何らかの議論のときに、例えば私学共済が将来どうなるかわかりませんが、今、私学の先生の子供さん世代が次の段階で払うと。ただ、その子供さんがもちろん私学の先生になるということには限らないわけでありますから、そうするとその費用はだれが払っているのか、だれがということを考えますと、世代間扶養ということでいうと、確かに職域単位で物事を考えるというのは論理的にも成り立ち得るのかなということを今の御指摘もいただきながら考えておりました。  私も新聞などで年金の将来安定なんということについて聞かれますと、結局はそれぞれの時代で生み出した富をその時代その時代、世代間でどのように分配をしていくのかということが年金制度一つのバックグラウンドにあるのかなと。ただその場合において、やはりそうはいっても、かつて自分たちが現役世代のときに保険料として払ったものとのある種の関連性を持たせながら制度を仕組む、そういう意味合いではなかろうかな、そんなことを感じておりまして、今回の法案については最初に述べたような趣旨であるわけですけれども、将来の問題としては確かに、何といいましょうか、年金担当大臣を置かれた意味を十分に踏まえながら、本当に五十年、百年という単位での国民の皆さんにわかりやすい制度としてどうあるべきか、そういう点からも考えてみたいと思っております。
  51. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 それじゃ、あわせまして、きょうは国家公務員年金制度担当の大蔵省さんと、それから地方公務員の年金制度担当の自治省さんからもおいでいただいているんですが、そのお二方からもお伺いしたいと思います。  私の意見を先に言います。私は先はどのような考え方でございますので、むしろ利害、負担とお金の公平性云々というよりも、そもそも年金制度といいますのは、小集団で職域集団というのは、少なくとも社会保障として考える限り、短期保険と一緒に考えるわけにはいかない、別なんだと。  やっぱり一つの基礎集団として国民全体ということをとらえるべきものだ、原則はそこから発するんじゃないかな、こんなふうに思っています。  そういう面からしますと、国家公務員なり地方公務員なりも、公務員の特性というのはそれはあるでしょう、否定しません。あるいは外国でこうだというふうなことを言うかもしれません。だけれども、何も外国に倣う必要も何もないわけなんです。日本の場合においてどうなのかということを勇気を持って考えていくべきなんじゃないのか。そうしますと、少なくとも公的年金あるいは社会保障ということで言う限りにおいて、私は一緒であるべきだろう、こんなふうに思います。  例えば公務員について言いますと、私もついこの間まで公務員だったんですけれども、いろんなところで、先ほども菅大臣がいみじくも言われましたけれども、昔、官民格差とかいうことで、むしろ公務員が年金がよくて民間は悪いんだみたいなことをずっと言われて、手直ししてきましたですよね、過去にも。いわば給付設計を低くしてきたわけです、保険料は高くして。今や同じなんですよね、その間が。同じだ同じだと強調されるわけです、そういうふうな聞き方をすると。それなら、その同じな部分一元化することがなぜ悪いのか。その方がよっぽど世の中通りがいい。  本当に公務員は有利なのか。有利でないんですよね、決して。既にもらっている方はあるいは有利な人もいるかもしれませんけれども、少なくともこれから先を考えますと、同じだとおっしゃるでしょう、多分。違うんですか。やっぱり有利なんですか。有利じゃないんでしょう。そうしたら年金担当大臣はおかしいとおっしゃるでしょうから同じなはずなんです。それならなぜ一緒にしないのか。その上で、公務員の特性とおっしゃるならば、公務員の福利厚生の制度として何か別なことを考えるというのをなぜやらない、そういう整理をなぜなさらぬのかなと思えてしょうがないんです。権利擁護、既得権擁護でも何でもないんじゃないか、なぜそこにこだわるのか。  だから、もともと一元化とか一緒にやりましょうとかというのを言わないのならまた別なんですけれども、未来永劫全然別で、官民格差なんてあってもいいんだ、やりましょうということでやろうというのならそれはまた一つの考え方でしょうけれども、そこをすり寄るところはちゃんとやっておいて、あと何かずっとあれで。むしろ公務員の社会保障といいましょうか福利厚生と考えますと、決して私はもう天下だれよりもいいだなんて思っていません。いわば貧弱です。  たまたま私、今、議員の宿舎に入っていますけれども、議員の宿舎は独身寮で、公務員の宿舎の方がよかったなと思いますけれども、これは非常に個別的な話です。そういう面はありますけれども、どうですか。(「最低だよ」と呼ぶ者あり)最低という言葉がありますけれども、これは問題は問題なんですが、これはともかくとしても、でも一般に、例えば大手の企業等々に比べて給与にしてもあるいは福利厚生面にしても決して恵まれているとは僕は必ずしも思いませんでした。これは自分が経験しているからひがみかもしれませんけれども、そんな状況じゃないですか。  そうだとするならば、厚生年金においても、今、運用が少し左前だという話がありましたけれども、別途の福利厚生制度なりあるいは厚生年金制度を持っているんですから、そういうふうに分けて整理をして、ちゃんとした公務員の福利厚生制度を考えられるということを考えていただきたいものだなと。そうすると堂々と国民に向けて議論もできるんじゃないかというような気がするんですけれども、その点も含めまして御両者のお考えを簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  52. 松川忠晴

    説明員松川忠晴君) 国家公務員共済のいわゆる公的年金一元化に対する取り組みについてのお尋ねでございます。  若干経緯にわたりまして申しわけございませんが、公的年金制度一元化につきましては、平成六年二月以来、各制度の代表者、学識経験者等から成ります公的年金制度一元化に関する懇談会において議論が重ねられておりまして、昨年の七月に、被用者年金制度の再編成の第一段階といたしまして、旧公共企業体共済厚生年金統合することが妥当であるということを指摘するとともに、今後の被用者年金制度の再編成を進めるに当たっての基本的な理念、基本的な考え方につきまして、いわば関係者のコンセンサスとしての考え方が示されたところでございます。  そこで、去る三月八日の閣議決定におきまして、この懇談会報告書趣旨を踏まえまして、今後の被用者年金制度につきましては各制度の目的、機能等にも配慮しながらも、成熟化の動向に応じまして漸進的な対応を進めながら統一的な枠組みの形成を目指すという大きな方針が決定されたわけでございます。  そこで、公務員の共済年金につきましては、確かに委員指摘のように社会保障制度としての側面、これは大きなものとなってきております。でありますけれども、その側面と同時に公務員制度の一環としての側面を有しておりまして、この点は地方公務員共済とも共通しているところでございます。そういった点も踏まえまして、この三月八日の閣議決定におきましては、この両共済国家公務員共済地方共済につきましては、それぞれの成熟化状況等に応じまして、まずは財政計算ごとに将来の財政見通しについて分析をきちっと行って、その上で公務員制度としてのあり方をも踏まえながら、まずは両制度において財政安定化のための措置を検討することとされておるわけでございます。  この点、この閣議決定の意味合いは、いわば国共済、地共済が共通性があるということから、いきなり統一的な枠組みということに至る前に、まず両制度において財政安定化のための措置を検討するという検討の手順を示したものではないかというふうに理解しているところでございます。  国家公務員共済につきましても、今後とも、この閣議決定に沿いまして、一元化の基本理念であります財政単位の拡大を通じた制度の安定化、あるいは共通部分につきましての費用負担平準化という形での制度間の公平性の確保、こういう基本的な目標を十分に踏まえながら、同時に公務員制度の一環としての側面にも留意しながら着実に検討を進めてまいりたいと考えております。
  53. 小室裕一

    説明員(小室裕一君) 地方公務員共済関係でございますが、やはり、御案内のとおり、公的年金制度一元化に関する懇談会におきましていろいろ御議論の上報告が出まして、その報告を踏まえて本年三月八日に公的年金制度の再編成についての閣議決定が行われました。そこでは基本的な考え方ですとか今後の進め方について決定がなされたわけでございます。  その中において地方公務員共済については、国家公務員共済と同様に、成熟化状況等に応じ分析を行い、公務員制度としてのあり方を踏まえつつ、まず地方公務員共済国家公務員共済の両制度において財政安定化のための措置を検討することとされております。公的年金制度の再編成の推進という大変大きな課題について決定いたしましたこの閣議決定に沿いまして、自治省としても適切に対応してまいりたいと考えてございます。
  54. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 同僚議員に聞きましたら、わかりましたかと言ったら、わからないという反応が返ってまいりました。  だからその辺、最初に問題提起しました世代間扶養といいましょうか、国民にどうやって共感を、わからせるのじゃなくて、わかろうとしていないんです、国民は。あとはもう共感なんだと思うんですね、年金制度というのは。年金制度について、これやっていかないと大変なのよというふうな感覚を国民が持ってくれるかどうかの問題だろうなと。一つ一つ国家公務員共済の中身について何か調べ上げて、公務員とどこが違うことがいいのか悪いのか理解しろ、そんなことじゃないと思うんですよ。共感をどう呼ぶのかということなのかなと思うんですよね。  そうなりますと、どうもお上、公務員は別よというのが共感を呼ぶように働くのかどうなのかということはやはり大事な一つの大きなポイントなんじゃないのかなという気がするんです。いわば国民みんなで悩むべきものは悩もうよというふうなことの共感というのは大事なこれからの、高齢化社会高齢化社会と皆さん問題視されますけれども、私は一つの大きなポイントなのではないのかなという気がするわけなので、その大きなかぎを握っているのは私は年金ではないかなと。お金としても、後で触れますけれども、一番大きな数十兆円のオーダーで膨らんでいく話ですよね。これをやるときにどう国民の共感を呼べるような仕掛けにするのかというのは非常に大事な私はポイントのような気がします。  今、例に挙げられました懇談会の利害関係人の方々の云々という話がありますけれども、そういう問題とはちょっと違うんじゃないのかなという気がしてなりません。したがって、これからのその一元化の進め方というのはちょっと質問は省略させていただきますが、あえてそれだけは申し上げておきたいと思います。  さて、以上申し上げたのが同世代の中における横のいわば連帯ということについて申し上げたつもりでございますけれども、次に今度は縦の連帯ということについて少し申し上げてみたいと思います。  お手元に「厚生年金保険料率」と「国民年金保険料の将来見通し」、御存じの通り、厚生年金保険料率ということになっています。一定のパーセントですね、給料の何%ということで保険料がはじき出され、はじき出されというより徴収され、それから国民年金の場合は定額ですから保険料ということで、今一万一千七百円ですか、一万一千百円が一万一千七百円。これは時期的にどうだったでしょうか、その辺の推移ですね。それから、厚生年金保険料率の方は現在は二八・五%ですか、給料の一六・五%を労使で半々負担というのが原則になっているわけでございます。  御存じのとおり、それはそれでいいんですが、両方とも、国民年金厚生年金も階段がついているわけです。この階段は相当長い階段であり、これからきつくなる階段でございます。この階段をどうやって上っていくのかなというのが年金制度のこれからを決めるポイントであることはどなたも否定されないと思うんです。  この階段の上り方、上れるのかどうなのかということによって、今我々の世代の中でどんな議論をしようとも、これ例えば、今一六・五ですけれども、将来二九・八になるという前提で立てているんですけれども、これは何年後ですか、平成四十年あたりですよね。そうすると三十年以上先の話になるんですけれども、我々幾ら頑張っても、ここで三十年後まで国会議員でおられる人というのはまずいないのではないかなということなんですが、同世代同士のさっき言った横の連帯の議論は我々が決めなきゃいけません。だけれども、縦の連帯というのは、やはり今の世代の利害だけではなくて、それを超えた、何というんでしょうか、見識とセンスというものをやはり要求されてくるわけなんですけれども、それいかんによってこの階段がこのとおりいくかどうかということになるわけなんですけれどもね。  それで、これからお聞きしたいんですけれども、こういう階段というのを前提にして今の厚生年金なり国民年金制度というのは成り立っているわけでございます。保険料率はこうやって出ていますけれども、じゃどういう給付をするのか。  入ってくる金があるから出せるんですけれども、入ってくる金はこうなりますよというので、逆に言いますと、どういう出す必要があるからお金をちょうだいよということにもなるわけなんですけれども、どういう給付をしようとされておるのか。入ってくる範囲で配りますよということだけじゃないと思うんですよね。だから、その給付の設計とそれから保険料率の見通しについて、特に給付の設計、保険料率はこういうことでございますけれども、給付の設計はどういう考え方でしているのかについてまず最初にお聞きしたいと思います。
  55. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 給付の設計でございますけれども、現在の給付の設計の原型というのは昭和四十八年のいわゆる福祉元年における年金改正によって設けられた給付設計でございますけれども、現役の男子の勤労者の六割程度を保障しましょう、こういうのが現在の給付設計の原型になったんですが、そのときよりさらに加入年数がふえてきたわけでございまして、四十年加入の場合でその六〇%というのが、これはボーナスは除いての話でございますけれども、ボーナスを除いた毎月の賃金の四十八年では六〇%でありましたものが、現在では夫婦合わせて老齢基礎年金も入れまして四十年加入で六八%と非常に高い数字になってきております。  それから基礎年金でございますけれども、これは昭和六十年の改正におきまして現在の水準が設定されたわけでございますけれども、これは高齢者の基礎的な消費支出、衣食住の基本的な部分を保障しましょうということで六年の改正では六万五千円と、こういうふうな位置づけをいたしているわけでございます。
  56. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 わかりました。  繰り返しますと、厚生年金においては、いろんな細部はありますけれども、現役勤労者の六割、標準的な形で六割のあたりをターゲットにしたいというふうなこと。それから、基礎年金については高齢者の消費支出の基本的部分ということでした。ちょっと言葉としては、これは数字が入っていませんので前後幅があるのかもしれませんけれども、ある程度これがあれば基本的な生活設計ができるかなというふうな感じのところかなというふうに思います。  そういうものを前提にするとこうだということでございますが、さて、給付水準それ自体についてもっとたくさんよこせみたいな意見は幾らでもあるんだと思うんですけれども、一方で、やはりこれも、近藤局長お答えいただいたようなことも、例えば厚生年金で言いますと、現在一六・五%の保険料率が二九・八までいかないとそうならないということですよね。これはもう当然のことでありますけれども、考えてみますとかなり際どい選択なんだと思うんです。二九・八といいますと、今二八・五ですから、しかもこれまではこの段階保険料率を見ますと一〇%を切っていた時代というのは長いわけですよね。一五%を超えて一六・五あたりになってくると、相当ずしりと厚生年金保険料率の重みというのを現役が感じ出してきている状況ではないかな、こう思うんです。これから先考えますと、これが倍とは言いませんけれども、相当なものになってくるわけなので、それを前提にして初めて勤労者の六割ということになるわけなんです。  さて、将来の現役世代がこの高い二九・八という保険料率。国民年金でいきますと、これまた今の約倍近いんですけれども二万一千円。今一万一千円でも未納の人がふえたりという問題点が指摘されている部分もありますけれども、これも倍近いものになる。となりますと、将来の現役世代がこうした負担を是認するという確証があるのかどうなのか。私も大変心配でございますけれども、あるのかないのかというと、多分なかなかあるとはだれも言えないんだと思うんです。同時に、あえてお尋ねしますけれども、あるのかないのかということと、そのためのしなきゃならぬ条件といいましょうか、何をしなきゃならぬかというところは、何かお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  57. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先ほど来御指摘がございましたように、公的年金というのは世代間扶養を基本とする制度でございますので、やっぱり現役世代とそれから年金世代とのバランスというものは非常に大事であるわけでございます。したがいまして、将来にわたります給付負担のあり方につきましては、総合的に検討しながら国民的な合意を得るように努力せぬといかぬということでございますが、確かに、委員指摘のように、これから生まれる人もいらっしゃるわけですので、国民的合意といってもなかなか難しいわけでございます。  それで、平成六年の年金制度の改正におきましては、非常に急激な高齢化が進んでおるわけでございますので、やっぱり後代の保険料負担ができるだけ過重にならないように、老齢年金の支給開始年齢の引き上げでございますとか可処分所得スライド、こういったものも導入したわけですけれども、それでも表にありますように厚生年金で二九・八%ということで三〇%近くにもなるわけでございますし、国民年金もかなりの高水準になってきているわけでございます。  それで、将来の現役世代の方がこういう高い負担を本当に是認してくれるかどうかということでございますけれども、やはりこれは今後の経済成長があるかどうか、実質成長があるかどうか、こういうことにかなりかかってくるのではないのかな、こういうふうに思うわけでございまして、現役世代の可処分所得を減らしてまで負担の増加に応じてくれるかどうか。こういうふうなことで、やっぱり可処分所得が現役の世代で減らないような形で考える必要があるんじゃないか。しかし、それも年金だけではなくて、医療もございますし、福祉もございますし、その他のもろもろのこともあるわけでございますので、全体としてその辺を考える必要があるのかな、こういうふうに今考えているわけです。  ただ、将来の現役世代の負担増ということになるわけでございますけれども、現在の高齢者世代といいますのは、これは年金のない時代、あるいは低い時代に親の世代を私的に扶養いたしたわけでございますし、これからの世代というのは前の世代が積み上げた成長の恩恵を受けるわけでございます。一説によりますと、これから生まれてくる方が少ないわけでございますので、今の現役世代というのは住宅ローンをせっせせっせと払っているわけでございますけれども、次の世代は少ない子でたくさんの親から家を相続するわけでございますので、住宅ローンがない世代だ、こういうふうにも言われているわけでございます。ある程度はいろいろやむを得ない面もあるのではないかということでございますけれども、何といいましても、やはり現役世代と年金世代のバランスを図るというのが非常に大事だというふうに考えておりますので、必要な制度改革というのはこれからもやっていく必要がある、こういうふうに考えております。
  58. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 あと十数分しかありませんので、余りあちこちもいっていられないのであれしますけれども、今のお話をお聞きしていますと、正直言いまして、この段階保険料率というふうな一つのテクニックということで国民につじつまが合うような形で説明してきたんだと思うんです。今までは何とかつじつまが合ったように見えたのは、局長が今いみじくもおっしゃられましたように、あくまで可処分所得が減るわけじゃないんだというふうな、何というんでしょうか、かなりの割合での右肩上がりの経済の中での一つの手法だったのかなというふうに思うんです。  これから先どうなのかというのはあれですけれども、近藤局長は可処分所得の範囲内でというふうなことの意味合いの御説明をされましたけれども、私は、医療なりそれから今議論になっています介護サービスなりを考えますと、実質的にはやっぱり可処分所得の増分を分配するということではなくて、まともな意味での世代間の扶養ということでの合意というものを、合意といいましょうか、感覚というのを求めていく必要があるのかなという気がするわけなんです。  そうなりますと、その合意を得ていくためには、計算上こうなりますよということだけじゃやっぱり説得力が弱いと思うんですよね。合意を得ていくというふうな積極的なスタンスとはちょっと必ずしも言えないのかなと。今、年金についても情報開示というようなことを言われていますけれども、情報開示といいますのは、ただ何か隠しているか表に出すかというふうな論議ではなくて、もっと国民が選択をしやすいような形で出していくということが私は非常に大事なんじゃないかなというふうに思うんですよね。計算の根拠を何かコンピューターの中を見せろみたいな話ではなくて、選択しやすい仕掛けにして、オープンにしていくという意味で私は大事なんじゃないかなと。  例えば、そういう意味で一つの提案といいましょうか、あえて申し上げますと、こういう段階保険料率のどんぶり勘定で必要保険料ということではなくて、例えば今一六・五ですから、一六・五までは皆さん出してくれているわけです。こういう場合だったらどれぐらいの給付が実現するのか。将来、段階保険料段階というと何か段階的にやっていくみたいなニュアンスですが、そうではないんです。一挙に二六・二までいく場合もあるわけですよね。そういった将来の世代に期待する部分給付が成り立つのが幾ら幾らで、今皆さん方出し合っている部分で成り立つものは幾ら幾らで、あともう一つ年金について一つの要素がありますのがいわゆる積立金でございます。これが今九十兆ぐらいですか、厚生年金の場合。相当の額なんですが、それの存在とその運用で将来の給付設計はどれだけになるのか。  多分その三つの要素だと思うんですけれども、それぞれ分けて提起をして、どういうふうに国民の皆さんは選択されますかというふうな提案の仕方というのは要るのではないか。どんぶり勘定でこれだけ必要ですよというようなことだけでは、どうもなかなか納得されないのかなという気がするわけなんです。例えばそういうふうなことを提案したいんです。  あともう一つ、別な見方からしますと、いわゆる世代間扶養とか年金の有利不利の問題でいつも議論になるんですけれども、確かにどこの国でも年金のスタートというのは、いわゆる私保険的な要素を加味しながら国民に訴えてスタートしたという歴史を持っていると思うんです。でも実際上は、賦課方式か積立方式かというのは余りこだわるつもりはありませんけれども、結果論としてやはり世代間扶養に近づいていくことだけは事実なんです。  こうなりますと、別な見方として、例えば月額二十万円の厚生年金をちょうだいしている人がいたとしますと、その方の納めた保険料及び事業主が出してくれた保険料の幾らぐらいが一応想定されて、一方で、現役の働いている人たちの今出してくれている保険料の中から割かれている部分でどれだけになっているのか。私の感覚では、月額二十万円の年金をもらっているとするならば、いただいている金額のうちで御自分が出した保険料分というのは多分二割程度が関の山ではないかなという気がするんですけれども、ほかはみんな今働いている人たちが出している分なんです。  その辺がどうなのか、どういうモデル設計になるのか、やはり率直に打ち出しながらこれからの年金制度を考えていく。そういうことを考えますと、公務員は別だとかというようなことは到底言えるような状況ではないのじゃないかという気が私はするわけなんです。  今二つのことを申し上げました。マクロとして三つの要素に分解してみると、それぞれの給付がどういうふうな割合で成り立っているのか。つまり、現在の厚生年金でいえば、二八・五という既に出している保険料で賄われる分が将来の給付の何割ぐらいで、それから段階保険料に期待する分が何割ぐらいで、それから積立金の運用云々で考えられる分が何%ぐらいなのかというようなことをできましたら教えてほしいことと、それから例えば個別の年金額についていえば、御自分の出した保険料と、それからいわゆる世代間扶養で賄われる分が幾らなのか、その辺をまず御明示いただけるかどうか、お尋ね申し上げたいと思います。
  59. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 御質問のような計算をいたしておりませんので必ずしも正確には申し上げられませんが、現在の水準が一六・五%でございまして、それで今一気に上げれば二六・二%ということでございますので、これで割り算をしますと大体三分の二ぐらいは今の水準で賄える、こういうことでございまして、あとの残余につきましてはどの程度かちょっとわかりませんが、その他で三分の一、こういうことでございます。  それから、個々の人が納めたものと、それから後代でどれだけ負担しているかということを試算したものがございますので申し上げますと、昭和九年生まれの方、平成六年で六十歳、こういう方の例でございます。ごく最近年金を受け始められた方ということでございまして、この方で御説明いたしますと、本人の負担額、それに利子がつく、こういうものでございますけれども、本人が負担したものとその利子分は一三%、これに事業主負担がございますので、これも一三%で、残りの七四%の部分世代間扶養と国庫負担で賄われているということでございます。  それから、そのときに三十歳の方、具体的には昭和三十九年生まれの方の例で申し上げますと、これは本人の負担とその運用の割合というのは非常に高まってまいりまして四五%になります。事業主を入れますと九〇%になる、こういうふうな状況になります。あとは世代間扶養と国庫負担になっている、こういうことでございます。
  60. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 ありがとうございました。  従来なかなかそうした論議がされていないと思いますし、どうも有利不利の議論にすぐ結びつくからということで用心してきた面があるのかなと思うんですけれども、お答えいただきましてむしろ私は感謝申し上げたいと思います。  時間も余りありませんので後段の方の質問はやめますが、これから考えますと、今までも申し述べてきましたように、あくまでも世代間扶養といいましょうか、世代間の非常に長期の、五十年、百年と連綿と続く日本の人間社会としての連続性という中で初めて年金制度というのは成り立っているわけでございます。そうしますと、どうしてもやっぱり利害というものになりますと同一世代の中での問題だけに終始しがちでございますけれども、年金制度といいますのは極めて人工的に、高度な知恵の中で生み出されてきた一つの仕掛けなのではないか。年金自体といいますのは、年寄りが多くなるということだけではなくて、連綿と続く社会の存立、発展する社会というのを前提にいたしまして、その仕掛けというものをずっと永続的にやっていこうよという、いわば世代を超えた合意を仮定して組み立てているかなり高度な仕掛けではないか。  したがって、逆に言いますと、お互いの自制というものがなくなりますとガラス細工のように極めてもろいものだということも事実なのではないかという気がするわけなんです。そうしますと、やはり個別の利害ということを超えた、全体の共感を持った、この制度に対する国民の共感というものを大事にしていく、それを育成するというのは非常に大事な仕掛けなのじゃないか。  それを考えますと、年金一元化にしましても情報開示にいたしましても、そういう視点からもっともっと工夫されて、積極的に働きかけていく仕掛けというものをやはり考えるべきなのではないかというようなことを申し上げたかったわけでございます。  最後に、そういう意味でこれからの対応の仕方というのは、今、国全体としてもいわゆる財政再建といいましょうか、財政構造改革ということも議論され出していますけれども、これも例えば国債発行にあらわれていますように、今の世代で使ってしまって、ツケだけ後に残すみたいな傾向がなきにしもあらずであったのではないかという気がするわけなんです。理屈としては、国債を発行して、建設国債は六十年後も活用できるんだからと、こう言うんでしょうけれども、どうもそうかなという感じがする。  年金段階保険料も逆の意味での国債発行にちょっと近いようなニュアンスもあるわけでございますので、その辺もっと国民に明示をして選択を求めていくというふうな、お役所の責任と義務感というのを少し身軽にしていただきまして、けつをまくるという言葉は適当な言葉じゃないでしょうけれども、まさに抱え込むこと自体が結果的には罪になり得るというようなこともあるのではないかという気もするわけなんです。責任感は大変結構でございますけれども、そういう視点でどうかひとつ考えていただきたいものだなというふうな気がします。  先ほど失礼なことを申し上げまして、大臣なり局長の知恵よりも国民の共感が大事だみたいなことを申し上げましたけれども、もちろんそれを動かしていくのは大臣であり現役の皆さん方でございますが、皆さん方の見識なりにつきまして、できますれば大臣から最後にもう一言お答えをいただきまして私の質問を終わりたいと思います。
  61. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 先ほどから世代間扶養あるいは将来の世代の理解、さらには共感といういろいろ重要な意味を持つ幾つかの表現をされておりますけれども、私もその点は全く同感でして、一つは、情報を開示して選択をすると。  ただ、年金の場合に、まさに選択をする人がまだ生まれていないというようなことまであるわけでありますし、先ほど阿部委員の方から言われた中で、局長から昭和三十九年生まれの例が出ておりますが、私もそのリストを見ると、三十九年よりもっと後になるとどうなるかと。損得勘定で言うと決して得な勘定になっていないわけですね。  ですから、従来のように、年をとったらこうなるんだからこれだけやった方がいいですよという論理だけでは明らかにもう行き詰まってきているにもかかわらず制度はそのまま動いているというところについては、やはり私は相当危機感を持たなきゃいけないのじゃないかと思っております。  その中で、二つの点だけちょっと申し上げてみたいんですが、一つは、ちょっときょうの議題とは違うかもしれませんが、やっぱり子供の数が余りにも減り過ぎているというのがこの年金の構造の中でも非常に大きい問題なのかなと、出生率の問題がやはり大変気になるところであります。  もう一点は、全然性格が違いますが、最後に言われた、役所が抱え込み過ぎると。阿部委員に言っていただくと大変心強いわけですが、私もいろんな問題でそのことを現役の皆さんにしょっちゅう言っているわけです。つまり、情報を独占するということは、よくも悪くも責任も含めて一〇〇%持てるのかと。やはり情報を開示するということは、実は単に情報を開示しているのではなくて、国民に選択権を与えるということは権限も責任もある程度分担することになるのではないか。  今、インフォームド・コンセントという言い方を医療の分野でよく御承知のようにやるわけですが、例えばある薬を使うときに、こういうリスクがあるけれどもこういうメリットもある、あなたの場合どうされますかと言えば、選択権もあると同時にリスクに対する責任も患者の方もかぶるわけであります。そういう意味では、情報開示というのは決してただ、自分たちが知っていればいいものを、うるさく言うから少し見せようということとは全く違った意味を持つんだということをよく役所の中での議論でもしているわけです。  まさに今、阿部委員が言われたことは、それをもう一回り大きな意味で、国民の皆さんに対して役所のとるべき意味みたいなことを言っていただいたのかなと思いまして、大変、心強く勇気づけられた感じがいたします。
  62. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 終わります。
  63. 今井澄

    委員長今井澄君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  64. 今井澄

    委員長今井澄君) ただいまから厚生委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  65. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 午前中に引き続きましての審議でありますのでお疲れと思いますが、大臣、よろしくお願いいたします。  法案の質問に入ります前に、今日的な課題について数点お伺いをしてまいりたいと思います。  まず、新福祉ビジョンの策定時期と財政再建に係る社会保障費のあり方、この問題についてお伺いをしたいわけであります。  去る五月二十六日の新聞報道によりますと、厚生省が福祉ビジョンの抜本見直しを決めたと報道されております。この点については菅厚生大臣も先日の私の質問に対してその旨お約束をなされておりますし、先日の本会議においては橋本総理からも前向きな答弁があったと受けとめております。また、一昨日、新聞報道によりますと、今月の二十七日に、二十一世紀の社会保障サービスのあり方を示した現行の二十一世紀福祉ビジョンを抜本的に見直し、新福祉ビジョンを策定する方針を固め、その作業に着手したと。そして二十八日には、社会保障制度財政制度、老人保健福祉、医療保険の四審議会の会長による会合を開いたと報道されています。その会合では、社会保障制度の充実と財政健全化について議論が行われ、特に財政制度審議会の側からは財政赤字の克服のため社会保障を含めた歳出の抜本見直しが主張され、社会保障関連の各審議会からは社会保障だけが赤字ではないとか、社会保障とは所得の再配分であり、財政とは機能が違うなどの議論があったと報道されています。  そこで、これらの点を踏まえて、まず新福祉ビジョンを大体いつごろ提示なさるお考えなのか、また財政再建の中での社会保障費のあり方について菅厚生大臣の御所見を伺いたいと思います。
  66. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 今、釘宮委員の方からお話がありましたように、いろいろなことが今並行して動いておりますし、またその主体も、厚生省が主体になって受けとめている問題と、それを超えて総理がみずからいろいろな審議会の会長やあるいは大蔵大臣や私厚生大臣などを含めての会を催されて進めておられる問題、内容はそれぞれかなり相互に深い関連を持っておりますが、いろいろな形でこの間議論がスタートしたところであります。  今、直接なお話はいわゆる新しい福祉ビジョンということですが、高齢化進展に伴いまして社会保障の費用が増大せざるを得ない状況に一般的にいえばあるわけであります。こうした中、今後とも経済の活力を損なわずに、また国民に過重な負担を課すことがないようにしつつ必要な給付を実現できるような社会保障制度としていくことが重要であると考えております。このため、制度合理化制度運営の効率化など社会保障制度の構造改革が求められていると認識をいたしております。  こうした観点から、先ほど釘宮委員の方からもお話がありましたが、ちょっと整理して申し上げますと、日時は若干記憶をたどりますのであれですが、最初に財政審、税調、経済審、それから社会保障制度審議会の四会長と、大蔵、経企庁、厚生大臣、そして官房長官を交えて総理が招集された一つの会議がありました。その中から、財政審を軸にして財政審が関係した審議会と話をしながら、それを継続していこうというような話がありまして、財政審が中心になりまして社会保障制度審議会と老人保健福祉審議会と医療保険審議会の各会長を交えての集まりが二十八日にありました。ですから、これはどちらかというと厚生省自体がやったというよりも総理の仕組みの中での議論の一つのブランチのような形であります。  それと、そういう状況を踏まえて、厚生省としても、これは昨日行ったわけですけれども、社会保障制度に関連する厚生省がお願いをしている審議会、八つあるわけですが、それに社会保障制度審議会を加えて、昨日、そういう社会保障関係の審議会の会長にお集まりいただく会議の第一回目を開いたところであります。その中で、今お話がありました福祉ビジョンと言われるものについて議論を深めて、今後月一回程度その会議を開催して、秋口、九月ごろになるかと思いますが、秋をめどにしてその検討結果を取りまとめてまいりたいと思っております。それがまだ新福祉ビジョンとか、そう名前をつけているわけではありませんが、これまでの福祉ビジョンについて新しい観点、新しい視点から見直しをする、そういう場として考えております。
  67. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 その経緯はよくわかるんですが、要するにこの財政再建という問題は、二百四十一兆円の国債を抱え、地方債その他の隠れ借金まで含めれば四百兆近くになるような今の財政状況を考えたときに、来るべき高齢化社会に向けてどういうふうな財政再建論議をしていくかということが今問われているわけですね。  私は、年金の問題もきょう午前中の議論の中でも出たわけですけれども、後世代に対してどういう同意を得ていくのかという部分が非常に大事になってくるわけでありまして、その点について現段階大臣としてどういうふうなお考えを持っておられるのか、その点について。
  68. 菅直人

    国務大臣菅直人君) まず第一点は、社会福祉というものの考え方あるいは社会保障というものの考え方ですけれども、これは制度審の方から既に出されている考え方と私自身もかなり共通するところがあるわけです。つまりは、今の社会保障制度というのは、狭い意味の非常に困った人に対して何かするということから、もうほとんど全国民の現在の生活あるいは将来の生活のいろいろな分野において不可欠なものとしていろいろな制度が根づいている、まず一つ状況としてはそういう認識でおります。  そして、この社会保障制度をきちんと維持して、あるいは場合によってはある部分はきちんと制度をつくる必要があるものはつくってやっていくことが私は究極的には経済的活力あるいは社会的活力を維持し発展させる条件になり得ると思っております。しかし同時に、高齢化社会の急激な到来の中では、これまでの制度の単純な延長上で物事を考えればやや過大な国民負担になってくるということも事実だと思っております。  そういう意味で、行革審等で国民負担率五〇%とかいろいろな言い方がされておりますけれども、つまりはそういう大きな一つ財政的な制約の中で、しかし社会保障、社会福祉の仕組みを質的なレベルでは維持発展させていくためには相当思い切った社会保障の構造的な改革が必要ではないかと、このように受けとめております。  そういった点で、今議論になっております例えば介護の問題も含めて、医療と介護あるいは年金、さらに広げて言えば個人のいろいろな資産的なものも、みずからいわば蓄えた資産を老後のいろいろなものに充てていくということも何らかの形で連動させながら、そういった福祉構造の再構築というものが必要ではないかと。非常に難しいわけですが、質的なレベルは後退させない、あるいは前進させながら、しかし国民的な負担は余りにも過大になることがないように、後世の皆さんにとって余りにも過大になることがないような、そういう二つの目標を両立させることをお互い知恵を出して考えていかなければならないのではないか、このように考えております。
  69. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 今、大臣がいみじくもおっしゃいましたが、後世の世代に負担を残さないように、両立させながらというような言葉にある意味では集約されるのだと思うのです。  そこで、いわゆる介護保険法について、新聞報道等では見送りだとか、いや、今国会にどうしても出すんだというようなことが新聞をにぎわわせておるわけであります。私は、今申し上げましたように、財政再建論議、後世にツケを残さないという意味からすればこれはもう何が何でもやらなきゃいけない、しかしその一方で社会保障費というのはこれからますます増大していく、ならばこれを本当の意味で同意を得ていくためにはビジョンをある程度国民の前に示していかなきゃいけない、このように思うわけです。  そうなれば、この介護保険の問題というのは、九月に行われます消費税率の見直し、こういうような問題とも切り離すことはできないわけでありまして、もしこの介護保険の明確な費用推計が全然示されないままに消費税の見直しが先送りされたり、そういうことで政治がどんどんそういう問題を先送っていくことによって国民の不信感というのはますます増大をしていくのではないかと、私はこのように思うわけです。  そういう意味で、介護保険の問題とあわせて、大臣がどのように考えておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  70. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 介護保険に関しましては、御承知のように、老健審を中心に議論を進めていただきまして、今月の十五日にその報告を踏まえての試案というものを厚生省として出させていただきました。そして、その試案を軸にしまして現在各関係者あるいは与党のプロジェクトの皆さんなどとさらに議論を進めておりまして、その試案を一部修正したものをきょうの老健審に提出をすると、ちょっとまだその結果を聞いておりませんが、そういう段階に至っております。できれば、そうした老健審の理解あるいは与党プロジェクトの理解を得て最終的な試案がまとまった段階で正式な諮問、そして答申を受けてのこの国会中への法案の提出ということを何とか実現したいということで今努力を続けている状況であります。  そういう意味で、それを前提としまして、全体の考え方ですが、これは釘宮委員ともあるいは共通するのではないかと思いますが、まさに介護の問題というのはある意味では医療制度の問題とも非常に関連をしますし、従来的な意味の福祉の分野とももちろんオーバーラップをしているわけであります。  そういう意味では、今ある医療の分野あるいは福祉の分野にただ新たに公的介護という制度をプラスして、それで費用的にもプラスするというふうな考え方ではなくて、新しい公的介護保険制度を入れることによって、ある意味では従来は医療と言われた分野の中でやられていたことが例えば介護の方で受け持つ方がより質的にいい、対応としてはいいという場面もたくさんあるわけですから、そういうものはそちらで対応していく。あるいは、これまで措置制度という形の福祉でやられていたものについても、ある部分については介護で対応する。あるいは、特に在宅の場合は自治体を中心にお願いをしているわけですけれども、それにこうした制度をいわばかぶせる形によってより在宅の介護の体制を強めて対応していく。そういうことを通して、福祉全体としてのいわば再構築の一つの大きな要素としてこの介護制度の導入を位置づけていければと思っております。  時間的にも現在の試案の段階では介護制度は、法案が提案できたとしても、あるいはこれが議論していただいてどこかの段階で成立したとしても、制度の導入そのものは平成十一年とか、あるいは施設については十三年とかということに考え方がなっておりますので、その間にも他の医療保険の問題などの議論が並行して進むと思いますので、そういう議論が進むときに介護の問題というのは、まだ現時点では制度がありませんので、少なくとも法律という形で形を示していくことが他の制度の改革を考える上でも重要ではないか、このように考えて進めているところであります。
  71. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 介護保険の問題は、いずれ法案が提出をされるでしょうからその時点でいろいろ議論をしたいと思うんですが、私、正直申し上げてこの問題が当初の厚生省の考え方から若干後退をしてきているような気がしてならないんです。  これから政治はある意味では国民に対して耳ざわりの悪い、いわば耳の痛い話もしていかなきゃいけない。それを乗り越えないと、財政再建だとか将来の後年者負担というものをある意味では今の世代が少しでもかぶるんだという状況にはなかなかなれない。これが結局、政治がそういった問題に対して明確なリーダーシップが発揮できないということを私は今一番危惧をしているわけであります。こういった問題は大いにこれから議論の中で私も主張していきたいと思いますが、エイズ問題で大変な政治家としてのリーダーシップを発揮された菅厚生大臣には、ぜひかつてのようにもっとはっきり物を言っていただきたいなというふうに思うわけであります。  それでは次に、薬害エイズの真相究明と再発防止についてお伺いしたいと思うんです。  本院と衆議院の両院で当時の関係者の参考人招致をしてまいりました。今日までに延べ十人の方を国会にお呼びしたわけであります。  参考人質疑の中では、当時を反省して積極的な意見陳述をされる方もありますし、また意見の相違、責任転嫁なども散見されるわけであります。  しかしながら、例えば実態研究班の設置についてさえも意見の食い違いがあったり、国民の皆さんにとってみればどうもすっきりしない点が多々あります。私どもも今後国会を通してこれらの問題に向けて、例えば証人喚問であるとかいろんな形で努力を続けたいと思っております。  そこで、厚生省お尋ねをしたいわけであります。  大臣は、これまでの質疑の中で、真相究明に向けては内部の調査には限界があるというようなことをおっしゃられて、司直の手や、さらには国会にお願いをしたいというような答弁をしてきたわけであります。私は、行政の機構そのものが当時と変わっているわけじゃありませんし、ある意味ではどこに問題点があったのかというのは厚生省御自身が一番よくわかっておられるのではないかというふうに思うわけであります。そういう意味では、厚生省がみずからこれらの問題についてもっと何らかの形で真相究明に向けてのアクションを起こすべきだと思うわけであります。  聞くところによると、真相究明については第三者を入れた新たな機関をつくるというようなこともお聞きをしたんですが、大臣、その辺はどうなんでしょうか。
  72. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 御承知のように、庁内につくったプロジェクトでは、先月二十六日に一応の最終報告ということで公表いたしまして、組織としては今後の国会審議などの過程を踏まえるために一応残しているという状況であります。  今、委員も言われたように、厚生委員会でいろいろ御議論いただいておりますし、また捜査当局もいろいろな動きをされていると承知をし、また注意深く見守っているところであります。  省内の問題をまず先に申し上げますと、この調査プロジェクトとしての独自の調査なり報告は一応最終報告ということにいたしておりますけれども、再発防止の本部を設けまして、その中に三つのプロジェクトをつくりまして、その中で政策決定のあり方、あるいは情報のあり方、あるいは薬事行政のあり方についてはさらに続けて議論をしておりまして、そういう中では、今回の問題についても必要な問題については、どこが厚生省として反省すべきなのか、どういう問題があったのか、そういう議論もその中の議論としては含めて課題としております。  今おっしゃった第三者を含めた会でありますが、厚生省には厚生科学会議というものが従来から存在しておりまして、大臣、私自身メンバーの一人という形になっております。この厚生科学会議に臨時的に何人かの方に加わっていただいて、特にこの薬害エイズ問題について御議論を二度にわたってしていただきました。近くそれを座長が取りまとめいただくことになっておりますが、その中でもいろいろな問題指摘と同時に、やはり第三者を含めた調査のためのきちっとした機関をつくるべきではないかという御指摘をいただいておりまして、その厚生科学会議の座長を含めて関係者の皆さんにいろいろ相談に乗っていただきながら、どういう形でそうしたものがつくり得るのか、どういうものをつくれば最も、何といいましょうか、効果的な形で機能するものができるのかということで、今そういう皆さんと個別に若干の相談をさせていただいております。  まだなかなか具体的な形、あるいはどういう方にお願いするというところまでは詰まっておりませんが、何とか、その厚生科学会議でも言われておりますし、当委員会を含めて言われております。そうした第三者を含む調査の何らかの委員会といったようなものを立ち上げたいと現在努力をしているところであります。
  73. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 厚生省国民の信頼を取り戻すためには、ぜひ厚生省みずからがそういう形で真相を明らかにして、二度とこういう問題を起こさないということが私は最も大事だろうと思います。  そこでもう一点、ちょっと気になる点で、いわゆる第四ルートの問題についてちょっとお伺いをしたいのでありますが、非加熱製剤による血友病患者以外の患者の感染です。いわゆる第四ルートでありますが、昨日の読売新聞だったと思うんですが、国内献血からエイズ感染かというようなショッキングな報道がなされました。  厚生省は、全国の約千二百の医療機関に指示して追跡調査を行ったが、現在、同省に医療機関から届いた報告は、カルテなどの書類の不明や担当医の転勤などで三分の一程度にとどまっているということでありますが、そのことについてまず実情をお聞かせください。  それから、第四ルートについては、非加熱製剤が一九八三年ごろから使用されたのに対して、カルテの保存期間が五年と短い点や、カルテ保存がない医療機関がある一方で、保存カルテが何十万、百万を超えるところがあるということで実態把握が壁に直面しているというふうに聞いているわけであります。また、患者はわかっても検査の進め方をどういうふうにしたらいいものかとか、費用の負担など難題がたくさんあるというふうにお聞きをしているわけであります。  厚生省として、この点今後どういうふうに対応していこうとなさっておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  74. 松村明仁

    政府委員(松村明仁君) 血液凝固因子製剤によります血友病以外の患者さんに使用されたケースにつきましては、この問題の重要性を考慮いたしまして、その実態を確実に把握するということで、現在、血液製剤が納入されました医療機関に対して詳細な調査を依頼しているところでございます。現在、調査は続行中でございまして、今、続々とというか、報告が返ってきておるところでございまして、まだ最終的な集計には至っておりません。  今、委員指摘のカルテが保存期間を過ぎているというような問題もあることは私どもも承知をしております。カルテや薬剤管理簿等に基づいてできる限りの調査を行っておるわけでございますが、カルテ等による確認ができない場合には医師から聞き取り調査等を行うことにより可能な限り実態把握を行っていただけるよう重ねて依頼をしておるところでございます。  また、今、委員の御指摘のように、非加熱製剤の投与を受けた可能性のある方が把握された場合、こういった方々に対する対応方法でございますが、私ども、ことしの四月に対象となっております医療機関に調査の依頼とともに、参考資料といたしまして「血液凝固因子製剤による非血友病HIV感染に関するQ&A」、すなわち模範的な応答集、そういうものを配布して利用をしていただいて、よりスムーズに対応ができるように考えているところでございます。  いずれにいたしましても、本調査におきましては医療機関の協力が最も重要でございまして、厚生省といたしましても省内に専門の調査プロジェクトチームというものを置きまして、いろいろ医療機関からの調査についての問い合わせなどについて十分連絡、相談を行うなどいたして、現在調査に努めておるところでございます。
  75. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 この第四ルートの問題については、本人が全く認識がないわけですから、場合によってはそこからどんどん感染が広がっていく可能性もあるわけで、一刻の猶予も許されないというふうに思うわけであります。厚生省はこの点についてはとにかくぜひ早急にやっていただきたい、このことをお願いを申し上げておきたいと思います。  それでは、厚生年金法の改正に関する法律に対しての質疑に移りたいと思います。  きょう午前中、大島、阿部両委員からかなり基本的な部分、また細部にわたっての質疑がなされましたので、できるだけ重複をしないようにしたいと思います。  まず、いわゆる年金一元化について、平成七年を目途に一元化を完了するというふうに昭和五十九年二月に閣議決定がなされたわけでありますが、一年おくれのことし三月に新たな閣議決定が行われ、今回の法案の提出となったわけであります。結局、今回は一元化の過程の第一段階にとどまってしまいまして、そして今回の閣議決定ではその一元化のめどさえ明らかになっておりません。  そういう点を踏まえて、今回の閣議決定と前回の閣議決定との関係、またその経緯についてまず御説明をお願いしたいと思います。
  76. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 公的年金制度一元化につきましては、今、委員の言われましたように、昭和五十九年二月の閣議決定により政府方針が示されまして、これに基づいて昭和六十年改正においてまず全国民共通の基礎年金制度の導入を行い、また被用者年金制度の二階部分給付の公平化を行ったところであります。  この閣議決定では平成七年をめどに一元化を完了することと定めており、これを踏まえて平成六年二月には公的年金制度一元化に関する懇談会を設置いたしまして関係者の合意形成に努め、平成七年七月に同懇談会からの報告書の提出があったところであります。  この懇談会の報告を受けまして、政府内部においても公的年金制度の再編成に関する検討を行いまして、平成八年三月、各制度の目的、機能、過去の運営努力等についても配慮し、各制度が二十一世紀にかけて成熟化する段階において漸進的に被用者年金の再編成を進めるという具体的な方針を定める新たなその次の段階閣議決定を行ったところであります。  そういった意味で、さきの閣議決定は、基本的には相当程度それに沿って基礎年金の導入などを含めて進んできて今回の改正案の提案になっているわけですけれども、さらなる努力を今後もするという意味で平成八年三月に新たな閣議決定をし、同時にこの法案の提出をしてお願いしていると、そういうように理解しております。
  77. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 いや、要するに五十九年二月の閣議決定平成七年をめどに一元化を完了するということを言っていたのに、今回は一元化を完了するどころか一元化のめどさえ全く明らかにしていない。この点について私は極めて、これは閣議決定というものの重さというか、その辺を疑いたくなるわけであります。  それじゃ大臣一元化の完了時期というのを大体いつごろと考えておられるのか、その点について答えてください。
  78. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 一元化という言葉自体がやや幅のある言葉だということはきょう午前中の質疑の中でも何人かの委員の方の答弁で申し上げたわけですが、今回の法案で三公社の共済厚生年金統合されると。残された問題が御承知のように幾つかあるわけですけれども、それらも今後の成熟化に伴う中で議論をし、さらなる次の段階、場合によってはさらに次の段階という形で進めていきたいということで、率直に申し上げて最終的な日限を明確に切っているわけではありません。ただ、再計算ごとという一つのめどがありますので、それを一つのめどとしながら最終的な一元化の方向に向かって進めていきたいと思っております。
  79. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 この議論をしても平行線ですので、それじゃ今後一元化を進めていくということについては、これは閣議決定でなされたことをこれからも踏襲していくということですね。  そういう中で、一元化懇談会というものがいわゆる被用者年金の当事者に有識者が加わって議論をするようなやり方をやっておるわけですけれども、きょう午前中の議論の中にもありましたが、当事者間の利害の調整が前面に出てきちゃって、長期的観点に立った方策を見つけることが私はなかなか難しいのではないかというふうに思うんですね。この際、社会保障制度審議会のもとに一元化部会を設けるなどして、もっと大局的な立場からグランドデザインを描いてもらう必要があるのではないかというふうに思うわけであります。  それと、大臣が先ほどから再三言っておられますいわゆる審議の過程とか情報の開示、こういった問題も今後一元化の議論を進める中では必要ではないかと思うんですが、この点についてお伺いしたいと思います。
  80. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 確かに私も、今回の法案は被用者保険の一元化の第一段階という位置づけをしておりますが、今後の進め方として関係者の合意を得るということはそれはそれで歴史的な経緯がありますから重要だと思いますけれども、同時に、きょう午前中の質疑でも出ておりましたように、最終的に将来どういう形にすることが国民の皆さんにとって理解が得やすい、あるいは共感の得やすい制度にできるかという、そういう観点も大変重要だと思っております。その議論が現在の懇談会という形でお願いできるのか、あるいは、今、委員が言われたように、そういう議論はもう少し別の場で議論した方がいいのか、そういうことについては今後の進め方として少し検討してみたい、このように感じております。
  81. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 それじゃ、続いて一元化の全体像についてお伺いをしたいのでありますが、この一元化の全体像については制度審の数理部会が制度一本化案のA案、それから複数制度への集約案、さらには財政調整案、こういうようなものを提示しております。  今回のこの改正案を見ると、どうも複数制度に集約させるような、そんな感を私自身は持つのでありますが、厚生省としては一体どの方向を目指していくおつもりなのか、その点について全体像を聞かせてください。
  82. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 前の質問にお答えしたこととも関連するかと思いますが、確かに社会保障制度審議会の年金数理部会の報告書は、今、委員の言われました三つの形態があるという言い方で、必ずしも一元化の最終的な姿を一つに決めて提案をされているわけではありません。  ですから逆に言いますと、その三つの案が、どういうものが最終的な絵として望ましいかということについてこの委員会を含めて御議論いただいて、場合によってはそのこと自体を議論する場をさらに考えてみるということも必要ではないかなと考えております。  当面は、御承知のように、残された幾つかの制度について若干似たような性格のあるものについての調整などについて検討を進めていくわけですけれども、最終的な姿も今のような形で考えていく必要があると、このように思っております。
  83. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 今回の三共済厚生年金への統合という点では、きょう午前中にも議論があったんですが、要するに破綻したその個別制度の救済策が優先されたというような感が否めないわけであります。私は、そういう意味ではこうした統合を続けていくとまさに国民の信頼感はなくなっていってしまうのではないかというふうに思います。  そういう意味で、こうした破綻共済を順次厚生年金統合していくという手法は私はやっぱり二度ととるべきではない。ましてや、きょう午前中にもありましたが、私学共済であるとかさらには農林共済、こういったものがこれから成熟化していって、いよいよこれがやれなくなったらまた統合だなんという話になれば、これはもう救えないというふうに私は思うんですけれども、この点についてはどうですか。
  84. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 今、確かに言われるとおり、JR共済は御承知のような長い過程あるいは民営化という過程などがありまして、そういう中で共済制度自身かなり厳しい状況あるいは赤字状況になってきた、そういう中で今回最終的な形としての厚生年金への統合ということを提案させていただいているわけであります。  今の残された幾つかの共済等について、すぐに破綻してしまうというようなことは、当面すぐにということでいえばないと思いますが、確かにこれから先いろいろな経済情勢、社会情勢の変化の中では保険者、いわゆる加入者の増減ということは当然あり得るわけでありますので、そういった点では、今おっしゃるとおり、もう運営ができなくなったら何とかしてくれというような形ではない形で、それに至る前に何らかの形の一元化の方向に向かっての改革が必要であると、そのように考えております。
  85. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 一元化の大きな目的というのは、午前中の議論の中で年金局長が安定化、公平化を目指すんだというような話をされておられました。  やはり年金制度そのものが将来にわたって国民のコンセンサスを得られなければできないわけでありますから、それゆえに今回のような統合の仕方というのは私は非常に問題があるのではないかということで、あえて申し上げたかったわけであります。  そこで、これから一元化を進めていく中で、制度の地ならしというのが非常に大事だろうというふうに思います。  そこで、数点お伺いをしたいのでありますが、共済年金にあって厚生年金にない制度一つとして職域加算というのがありますね。今回、統合されるJRJT共済については既に職域部分は不支給、NTTについては三階部分を支給するということになっているようでありますが、この職域加算部分の位置づけというものについてお伺いしたいと思います。
  86. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 昭和六十年の改正によりまして、共済年金の報酬比例部分につきましては厚生年金と同じ給付設計にいたしたわけでございます。それで、厚生年金相当部分と職域の部分というのが分離されるということで、いわゆる二階部分につきましては基本的には各共済年金厚生年金も同じ給付設計になったわけでございます。したがいまして、共済年金の三階の職域年金といいますのは、民間で言えば厚生年金基金と同様ではないかというふうに思っておりまして、いわば企業年金的な性格あるいは機能を持つものではないかなと、こういうふうに考えております。
  87. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 それじゃ、きょう午前中の議論の中でありました官民格差の問題について数点お伺いをしたいと思うんです。  今、一元化のための地ならし措置が大事だということを私は申し上げたんですが、例えば官民格差として被用者年金の定額部分の上限というものを、現在、三十七年に延長することとなっております。この上限は御承知のように一制度についてのものでありまして、公務員を勤めた後民間企業に天下った場合は上限の適用がないわけであります。その結果、両方の加入期間が丸々算定されてその分有利となっておるんです。この点、格差を是正する必要があるというふうに私は考えるわけでありますが、定額部分の上限のあり方について簡潔にお願いします。
  88. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) この定額部分はいずれはなくなるということで経過的なものではございますけれども、委員指摘のとおりに、単独の制度でございますと三十七年で頭打ちと、渡り歩きますと合計で三十七年を超えてもいいと、こういうことでございます。  しからば、この問題を、個々制度ですべて勤務年限に従って長くすればいいじゃないか、こういう議論も確かにあるわけでございますが、一方で、定額部分といいますのは所得再分配と申しますか、そういうふうな機能で、加入期間が長ければそのまま年金額に反映するというのは好ましくないと、こういうふうな問題もございまして、この点につきましては今後の検討課題というふうに考えております。
  89. 松川忠晴

    説明員松川忠晴君) 定額部分の上限の問題でございますが、この定額部分の上限につきましては、個々公的年金制度ごとに現在適用されておりますことから、加入者が転職により制度異動した場合に、同一の制度に継続して加入した人の場合に比べまして結果として有利になることがあり得ることは委員の御指摘のとおりでございます。これは制度が分離していることに起因するものでありまして、現象といたしましては、共済から厚生年金の場合だげでなく、共済から他の共済、あるいは厚生年金から共済という場合にも起こり得るものと認識しております。  結局のところ、制度をまたがって加入した人の給付のあり方をどう考えるかという問題でございまして、先ほど厚生省からも御答弁がありましたように、個々人に対する給付としまして加入年数をどの程度その年金額に反映させるべきかという問題もございますので、今後の検討課題といたしまして関係省庁とも十分協議して検討してまいりたいと思っております。
  90. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 このほかにいわゆる遺族年金の支給対象、これについても格差があるわけであります。こういうような問題をまず整理していくことが今後年金の格差をなくし、また一元化に向けての地ならしに私はなっていくというふうに思いますので、この点は指摘をしておきたいと思います。  次に、いわゆるJRJT共済厚生年金への統合問題についてでありますが、時間がありませんので少しはしょって質問させていただきます。  特に、積立金移換をめぐる問題については午前中も議論がありました。  そこで、運輸省お尋ねをしたいんですが、二十七兆にも及ぶ債務を抱える清算事業団、これは基本的に国が責任を持つというようなお話もありましたが、例えば今回の八千億のいわゆる持ち出し、これは基本的にはまた税金で賄うということになるんですか。
  91. 金澤悟

    説明員金澤悟君) 午前中の質疑にもございましたとおり、今、委員指摘清算事業団の抱えております二十七兆六千億に及びます長期債務につきましては、既に六十三年の閣議決定で「最終的には国において処理する」となっておりますが、あわせて、その最終的な処理のために必要な新たな財源あるいは措置といったものについては、土地の処分の見通しのおおよそつくと考えられる時点で、歳入歳出の全般的見直しとあわせて検討、決定することというふうにされておるわけでございます。  したがって、今回の移換金負担につきましても、先般の閣議決定におきまして、今御説明している既存の清算事業団債務と同様の取り扱いをするということになっておるわけでございます。  したがいまして、運輸省といたしましては、当面事業団に残されました主な償還財源といたしましての土地あるいはJR株式、こういったものの早期売却に全力を挙げることによりまして最終的に今回の移換金も含めた全体の債務償還に取り組んでいくという考えでおります。
  92. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 今、土地売却という話がありましたけれども、六十二年にこの清算事業団ができてから、土地を合計で四兆一千六百六十二億で売却していますよね。JR東日本の株売却で一兆七百五十九億、合計五兆二千四百二十一億。しかし、実際には借り入れをどんどんまた起こしていっていまして、最終的にはこれはふえているわけですよね。今のような答弁は私は全く無責任だと思うんですよ。  要するに、これはもう雪だるまですよね。だから、どこかでやっぱりこういう状況にあるということを明確に国民に知らせないと、これはまた住専の問題と全く同じですよ、そういう意味では。  私はその辺については指摘をしておきたいと思います。  それから、厚生年金基金制度についてお伺いをしたいんですが、これも午前中に議論がありました。非常に危機的な状況にあるというふうに思います。  特に、日本紡績業の厚生年金基金の解散が大変大きな社会問題となったわけでありますが、厚生省はその基金の現状についての認識、それと現在の財政危機の原因をどうとらえておられるのか、簡潔にお願いします。
  93. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 厚生年金基金を取り巻く運用環境というのは非常に厳しいわけでございまして、そのほかにも平均余命が延びておりますので給付が伸びる、こういったようなことで基金財政というのは非常に大変になっているわけでございます。現在の代行給付に満たないかそれを若干上回っているにすぎない基金が六年度末で百八基金ございまして、この基金につきましては積み立て水準の回復計画を義務づけたところでございます。  ただ、厚生年金基金全体を見ますと、本体の厚生年金に比べまして成熟度というのはまだ低いわけで、いわば若い制度であるわけでございまして、今後さまざまな工夫を凝らすことによりまして基金財政の安定化というのは十分図り得ると考えております。平成七年の状況はまだ明らかではございませんけれども、株価等の状況を見ますとかなり運用環境も好転をしている見通しでございまして、恐らくこれからの景気回復とともに若干の明るさは見えてくると思いますけれども、これからの経済というのは見通しはまだ不透明でございますので基金財政につきましては今後制度的な見直しをする必要があると、こういうふうに考えております。
  94. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 ここに日本紡績業厚生年金基金の件について訴訟が起こっていることについて、これはアエラの四月八日号、これを見ますと、「基金が解散する時は、厚生年金分として集めてきただけの金額を事業を引き継ぐ厚生年金基金連合会に返さなければならない。これを最低責任準備金といい、裁判は、この負担をめぐって起きた。」と。  こういう中で、原告側はその十三億を二十七社で分けたうちの二社分七千万円を要求されたわけです。  ここでちょっと私が気になるのは、日々この金額が膨らんでいっておったと。それで、実は日紡基金側からはもっと以前から解散を申し出て厚生省とやりとりを続けていたけれどもちょっと待てと言われたということが一つのこの裁判のいわゆる争点の中で問題になっているんですけれども、このことは御存じですか。
  95. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 日本紡績業の厚生年金基金の関係でございますけれども、確かに四年度末の決算で既に積み立て不足が生じたと、こういうことでございます。この場合には繰り上げ再計算をしなきゃいかぬと、したがって掛金を上げなきゃいかぬと、こういう事態に立ち至ったわけでございまして、この大幅な掛金につきまして代議員会で同意が得られなかったと、同意が得られる見通しが非常に暗かったということでございます。当時、理事者の方でございますけれども、理事長が平成五年の七月に大阪府の方に解散の打診をされたと、こういうふうにお聞きをいたしているわけでございます。ただ、理事者の方だけでございますので、この日本紡績業の厚生年金基金につきましては、これは多くの事業主が集まってつくられるいわゆる総合型の基金でございますので、社長会とかいろいろございましてその辺の合意がなかなかできなかった、こういう事情もございまして、破綻の可能性が出てから一年半たって解散に至った、こういう次第でございます。
  96. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 それほどこの問題というのは、行政なりがある意味ではしっかりと相談を受けるなりしていかなければ、大変大きな社会問題に発展していくと思いますし、今後基金の問題については、かなりそういうバブルがはじけて以降非常に厳しい状況にあるというふうに私も思っておりますので、この点もぜひ指摘をしておきたいと思います。  時間がなくなってしまいましたので、最後に、本体の厚生年金のいわゆる自主運用、年金積立金の自主運用についてお伺いをしたいわけであります。  バブルの崩壊後、景気の低迷に伴って危機的状況にあるのは厚生年金基金だけではありません。  公的年金本体の積立金の自主運用も大幅な赤字状況にあります。積立金の自主運用の財政状況及び今年度末までの見通しについて答弁をお願いします。
  97. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 年金福祉事業団の方で自主運用事業を行っているわけでございまして、これは財政投融資の方からお金を借りまして市場で運用する、こういう形になっているわけでございます。  現在判明いたしておりますのは六年度末でございまして、運用の資金が二十一兆八千五百億円でございまして、六年度末の累積収支につきましては約七千億円の累積赤字になっているわけでございます。  このような赤字になりましたのは、株式市場の低迷とか金利の低下等で運用収益が低くなったわけでございまして、一方、財政投融資から借りております借入金利は長期の七年ないし十年の固定金利で高どまりをいたしておりますので、その差が赤字になっている、こういうことでございます。  私ども非常に大きな累積赤字だということで極めて厳粛に受けとめているわけでございますけれども、この自主運用事業そのものは長期的に運用が可能な資金でございます。その特性を踏まえて運用するということでございまして、中長期的には財投から借り入れているコストというのを上回ることができるのではないかと考えているわけでございます。  このために、年金福祉事業団におきましては、長期投資方針に基づく基本ポートフォリオというものをつくりまして適切な投資管理というものを行っているわけでございますし、最近規制緩和もされてきたわけでございまして、国内外の株式や債券などの運用機関の得意分野も生かした形で運用体制の充実に取り組んでいるところでございまして、事業目的の達成ということは十分できるのではないかというふうに考えております。
  98. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 ここに「自主運用額の推移」というのがありまして、単年度では平成八年度は六百九十一億の赤字、一番大きかったのが六年度五千七百七十七億、非常に大きな赤字で、その赤字はだんだん単年度ごとでは縮小はしてきているんですけれども、累計では推計で平成八年度で八千八百二十五億ですか、非常に大きな赤が出ているわけです。  私は、これを本当にこれからどうしていくのかということについてお聞きをしたがったわけでありますが、時間がありませんので、この点について指摘をしておきたいと思います。  それから最後に、大臣国民負担率年金水準についてちょっとお聞きをしたいのであります。  国民負担率を五〇%以下にとどめるということをよく言われるわけでありますけれども、そうすると今後とも年金水準を堅持していくのか、あるいはその引き下げも視野に入れて今後検討していくのかということが一つあると思うんです。例えば、先ほど午前中の議論の中で二九・何%ですか、いわゆる保険料率がそういうふうになるというようなことになれば、果たしてこの五〇%というものに抑制をした中でこういうものが可能なのかどうか、その辺について最後にお聞きをして終わりたいと思います。
  99. 菅直人

    国務大臣菅直人君) まず、最初の御質問でもありました福祉ビジョンの従来のビジョンで年金のネット所得スライドを前提に計算した例を見ておりますと、平成三十七年の数字が、これは成長率によって三つの数字が出ていますが、少な目の方で国民負担率が四八・五、大きいところで五二という、その間ぐらいになりそうだということが当時の試算で出ております。  国民負担率につきましては、行革審の答申で、高齢化のピーク時においても五〇%以下をめどにその上昇を抑制するとされているところでありまして、社会保障についても、全体の国民負担率というものについては、一応この行革審の五〇%以下というのは一つのめどになっているというふうに私は理解しております。もちろん、国民負担率はそれ以外の医療あるいは福祉、さらには租税負担など他の要素も当然あるわけでありますが、少なくとも年金につきましては、先ほど申し上げたように、今の形の中でぎりぎり五〇%におさまるかおさまらないかというところが試算の結果となっております。  そういった意味で、今すぐ年金制度をどうすべきかということまで私も言うだけの勇気はありませんけれども、やはり将来にわたってはまさに国民の理解が得られる世代間のいわば所得の再配分としてどの水準が適切なのかというのは今後の議論が必要になるのではないか、このように思っております。
  100. 山本保

    ○山本保君 平成会の山本です。  質問に入ります前に、先日は初めて本会議で質問させていただきまして、特に厚生委員会の先生方には非常に温かいまなざしで応援していただきまして、どうもありがとうございます。初めてで相当興奮しておりました。  きょうは、ここから質問でございますが、時間も短かったということでしょうか、大臣からも非常に簡潔な簡明な御答弁をいただいたわけでございまして、私の勉強不足もあり、まだまだ理解できないところがありますので、繰り返しのようなことになるかもしれませんが、質問させていただきたいと思います。    〔委員長退席、理事朝日俊弘君着席〕  それで、順番をちょっと変えますが、最初は今回の年金一元化のことに関してお聞きし、その後で社会保障にかかわるその他の問題についてお聞きするということで進めさせていただきます。  最初に、年金一元化の問題でございますが、公的年金というのは、きょう午前中からもお話がございましたように、まさに世代と世代の扶助、助け合いという考え方であるわけでございます。  ですから、公平さという観点からいきましても一元化ということが必要であるということはわかるわけでございますけれども、今後どんな形でこれを進めていくのかということについて、昭和五十九年ですか、この当時とは大分状況も変わってきていて、この辺の制度方針の転換というふうなことをいろいろ苦慮されているのではないかなと思うわけであります。はっきり今のところまだ発表できないようなこともあるのかもしれませんが、この辺について少し細かくお聞きしたいと思っております。  まず、きょう何度も出ておりますが、昨年七月の公的年金制度一元化に関する懇談会、きょう午前中にも当事者間の利害が前面に出ているんじゃないかというような御指摘もあったわけでありますけれども、これを読ませていただきますと、確かに特に今回の三月の閣議決定と比べましても何か後戻りをしているような印象を受けるわけでございます。そこで、この辺につきましてまずお聞きしたいわけであります。  いろいろ問題がありますのであれですが、先ほど大臣からもお話がございましたが、まず一元化というものについて、特に平成四年の数理部会の報告書に三つの案があると。Aが制度自体を一元化というか一本化するというもの。それから、Bとして複数の制度に集約していくんだと。はっきりと民と官とを分けるというようなことも書いてあるのかと思うんです。民と官に分けた二本立てというような形かという気もするわけです。そして、Cは制度自体は今のままでというか分立したままで費用負担だけ調整をしていこうと、言うならば現在やっておるものをもっときちんと制度化していくんだというような案が書いてあるわけでございます。  この辺は一体何をもって一元化というふうにお詰をされているのか、全然中身が違うような気もするわけですが、現在この辺についてどういうお考えを持っておられるのか、またそれは当初、五十九年のときの意図とは変わったものであるのかどうかということについてもお伺いしたいと思います。
  101. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 一元化という言葉でいろいろに受け取られる方もあるわけでございますけれども、五十九年当時から必ずしも一本化ではない、給付負担の公平であると、こういう概念で、そういうことによりまして各制度の長期的な安定を図る、こういう趣旨で考えられてきたわけでございまして、そのときには一階部分の基礎年金みたいなものもある程度想定された一元化の概念があったかと思うわけでございます。それで、一階部分はまさに一本化というふうな形で制度化されたわけでございまして、残されておりました給付の方も六十年の改正でほぼ給付設計が一緒になったと。  大きなもので残されておりましたのが、負担の不均衡と申しますか、負担の公平化というのが残されていた問題であったわけでございまして、これを当時の昭和七十年、平成七年でございますけれども、を目途に完了させると、こういう閣議決定になったわけでございます。その間、今行われております制度間調整事業、こういうことで負担の公平化を一部行っていたわけでございますけれども、こういう形ではもたなくなった、こういうふうなことで今回の統合まで来たわけです。  平成六年の二月に一元化懇というのをつくりまして、そこで議論を進めてきたわけでございますけれども、そのときにはもう既に年金数理部会のA、B、Cの三案というのができておりまして、今回みたいな三共済統合案といいますのは一元化懇の中ではいわゆるD案というふうな呼ばれ方をしていたわけでございまして、いろいろ議論をした結果、現実的にはD案しか結論が出なかったわけでございまして、その他の共済組合の関係につきましてはやり方の手順とか検討の方向だけが出た、こういうことで最終的な結論が出なかったと、こういういきさつでございます。
  102. 山本保

    ○山本保君 お聞きしていましてもなかなかすんなり頭に入らないところがありますので、今回のこの法案というのは従来の方針どおり進めたのだというスタンスだと思うわけでございますけれども、今のようなお話であるならば、もう一度やはりその辺についてもわかりやすい御発表、御説明をされた方がいいんじゃないかなという気はいたします。  そこで、これも繰り返しになるかもしれませんが、特に午前中いろいろお話があったことをもう一度確認させていただきますが、お聞きしていてなるほどそうかと思ったわけでございますが、この三月八日の閣議決定で、二番の②、③でございます。微妙な言い方が、確かに文章表現が違うのだなというふうに思うわけでありますが、この辺についてもう少し御説明していただきたいと思うわけです。  といいますのは、「国家公務員共済組合及び地方公務員共済組合については、それぞれの成熟化状況等に応じ、財政計算ごとに将来の財政見通し等について分析を行い、」、この分析を行うのは、どうも午前中のお話ですと、何か近藤局長は自分でやれというようなことをちょっと言われたような、そちらの団体にやらせるんだというようなことを言われたような気もしたんですが、違うかもしれませんが、そして「公務員制度としての在り方をも踏まえつつ、まず両制度において財政安定化のための措置を検討する。」と。そして、農林職員共済については、「構成団体の組織整備進展制度基盤に与える影響を、」と、また私学については、「成熟化進展等を踏まえつつ、」、そして両方とも、「被用者年金制度全体の中におけるそれぞれの制度の位置付けについて検討を行う」と  これについてどういうふうに理解したらいいのか、簡単に。特にきょうのお話ですと、この二つのグループ、どちらを先に進めていくのかというようなことまでも、もしお考えでしたら、お話を伺いたいですね。
  103. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 公務員グループの関係で、だれが分析を行うのかということでございますけれども、当然各共済組合が分析をするわけでございますし、その後で出てまいっております社会保障制度審議会の年金数理部会でも客観的、中立的な立場からさらに二重チェックと申しますか、検証を行うと、こういう形になるわけでございます。  それで、国家公務員共済組合と地方公務員共済組合でございますけれども、現在、国家公務員共済組合はかなり成熟度が高うなっているわけでございます。公務員グループということで外国にも例があると、こういうふうなことも踏まえまして、公務員制度同士でそのあり方も踏まえて財政安定化措置を検討する、いわゆる財政調整みたいなものを考えたらどうかと、こういうふうなことであるわけでございます。  それから、二番と三番は別に順番ということではございませんで、同時並行だというふうに考えております。  農林共済組合につきましては、現在も問題になっておりますけれども、農協の再編成の問題もあるわけでございますし、それが進みますとかなりの、現在ではまだ成熟度は比較的低いわけでございますけれども、場合によっては一気に成熟度が進むおそれもあるわけでございます。  それから、私学共済の関係では、これは各制度の中では一番若いというか成熟度が低い制度でございます。ただ、この私学共済につきましても、これはお子さんの数が減ってきておりますので、私学そのものがどうなるかというのもまだ不透明な面もあるわけでございまして、そういった面での成熟度度合いというものを踏まえつつ考えるべきだ、こういうことでございます。  この位置づけをどうするかということでございますが、先ほどもどなたかに御説明申し上げましたけれども、農林漁業の共済組合農協、漁協の職員でございまして、市町村の職員並みの年金をということで厚生年金から離れていった制度でございます。それから、私立学校の共済組合につきましては、公立の先生方と同じ扱いの年金が欲しい、こういうふうなことでこれまた厚生年金から出ていったわけでございます。  そういう意味で、どちらかといえば、意識的な面では公的な意識も持っていらっしゃる関係者も多いわけでございまして、公私いずれの位置づけにするのか、こういった面も含めまして検討をしていただく、こういうふうな趣旨だというふうに私は理解しております。
  104. 山本保

    ○山本保君 今の御説明でございますけれども、一応確認の意味もございまして、その四つの共済組合年金担当者の方から一元化の取り組みについて御報告いただきたいと思うんです。    〔理事朝日俊弘君退席、委員長着席〕
  105. 松川忠晴

    説明員松川忠晴君) まず、国家公務員共済としての今後の年金制度一元化に対する取り組みについてのお尋ねでございます。  まず、被用者年金制度全体の再編成の基本的な進め方につきましては、午前中来御答弁申し上げておりますように、本年三月八日の閣議決定基本方針を定めておりまして、各制度の目的、機能、過去の運営努力等についても配慮をしながら、今後各制度が二十一世紀にかけて成熟化する段階において漸進的に再編成を進めるということにされております。  その中で、国家公務員共済につきましては、厚生年金等と同様に社会保険制度としての側面もございますけれども、公務員に対して適用される年金制度としての公務員制度の一環としての意義も有しているところでございまして、この点は地方公務員共済と共通しているところでございます。  そうしたことを踏まえまして、閣議決定におきましても、先ほど委員の御指摘がありましたように、これら両共済のあり方につきましてはそれぞれの成熟化状況等に応じて将来の財政見通し等の分析を行った上、公務員制度としてのあり方をも踏まえながら、まず両制度において財政安定化のための措置を検討することとしているところでございます。  国家公務員共済といたしましても、この閣議決定基本方針に沿いまして、再編成の基本目標であります制度全体の安定化あるいは制度間の公平化といったことを十分念頭に置きながら、かつ専門・中立的な機関である数理部会等の検証の結果も踏まえながら着実に検討を進めてまいりたいと考えております。
  106. 小室裕一

    説明員(小室裕一君) 地方公務員共済についてでございますけれども、公的年金制度の再編成の推進について、基本的な考え方あるいは三共済統合を含めた全体の進め方について定めました平成八年三月八日の閣議決定において、国家公務員共済と同様に地方公務員共済についても触れられてございます。  現在、地方公務員共済運営は比較的安定しているわけでございますが、今後やはり成熟化ということが予想されますので、そうした状況に応じまして財政計算時の際には財政見通し等を十分分析いたしまして、それを踏まえて公務員制度としてのあり方をも考慮して、地方公務員共済あるいは国家公務員共済、まず両制度において財政安定化のための措置を検討することといたしております。  今後、この公的年金制度の再編成について定めました閣議決定に沿いまして適切に対応してまいりたいと思います。
  107. 齊藤秀昭

    説明員(齊藤秀昭君) 私学共済についてでございますが、先ほどの年金局長のお話にもありましたように、私学共済は他の年金制度と比較しましても最も成熟度が低い、また現時点では財政的にも健全な状況になっているということでございます。しかしながら、今後の問題としましては、他の年金制度と同様に年金受給者が増加する、それとともに、子供の数が減少するということが私学の教職員数にどういう影響を与えるかということも考えました場合に、徐々に成熟度が高くなっていくのではないかというふうに考えている次第でございます。  したがいまして、文部省としましては、三月八日の閣議決定趣旨というものを踏まえながら、成熟度あるいは財政状況というものにつきまして、財政計算ごとにそれらの将来見通しというものを分析し、年金制度としての安定性を検証しながら、公的年金制度の再編成という大きな課題に適切に対処してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  108. 高橋賢二

    説明員(高橋賢二君) 農林年金制度につきましてですが、現在のところは制度の安定的な運営が行われているということですが、先ほどの年金局長の御答弁にもありましたように、現在、農協系統組織、これは農林年金のかなり大宗を占めておりますが、ここでは西暦二〇〇〇年に向けまして、組織二段階への移行とか広域合併の推進、生産性の三〇%向上、こういったことを現在検討し、またその実践に向かっているところでございます。  したがいまして、このような状況も含めまして、閣議決定にもございますように、構成団体の組織整備進展制度基盤に与える影響あるいは成熟化進展状況、こういったことを踏まえながら、今後、財政計算ごとに将来の財政見通しの分析等を行いまして、制度の安定的な運営を図れるよう適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  109. 山本保

    ○山本保君 お聞きしましてなかなか微妙な違いがあるのだなというふうに思います。  また、先ほど申し上げたように、その目標たる一元化についてもその概念が少し揺れ動いているような気もいたします。この辺につきまして、悪くなってから、破綻してからというのではない手を打っていただくようにお願いいたします。  次に、情報公開についてでございます。  先ほどの閣議決定の中にも、制度運営に関する適切な情報の公開を行うとともに、社会保障制度審議会年金数理部会に要請し、制度の安定等検証を行うものとするということがございますけれども、お話がありましたように、結局、厚生大臣年金担当大臣とはいえ、実際にはさまざまな所管で行われている。また、先ほど来お話がございました基金のようなことで全く当事者間のものもあるということで、なかなか一般の国民にわかりにくいわけであります。きょう阿部先生からもわかりやすくというお話がございました。この辺についてどのように行っていくのか。何か審議会の部会に要請するというようなことではきちんとした、公平な、また適切な情報提供というのはできないのじゃないかというような気もするわけでございますけれども、この辺はいかがでございますか。
  110. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先ほど来情報公開についていろいろお話がございますけれども、当然のことながら、被用者年金制度の再編成を進めるため、あるいは年金制度の安定のためには、やっぱり各制度財政運営につきまして広く国民の御理解を得る必要があるわけでございます。やはり、各制度が共通の基準で情報公開をする、制度運営の実績でございますとか、将来見通しの数字とか基礎的な数値あるいはいろいろな情報を、なかなか難しいんですけれども、工夫を凝らしまして、わかりやすい形で国民に提供する必要があると考えているわけでございます。  社会保障制度審議会の年金数理部会におきましては、専門的、中立的な立場から被用者年金制度安定性が将来にわたって確保されているかどうかとか、あるいは各制度間で費用負担公平性が確保されているかどうか、こういった点で共通の基準に基づく制度横断的な検証を財政計算ごとにお願いするということでございます。  閣議決定の条文にも要請すると書いてございますが、これは一応独立した部会でございますので、閣議として要請を言っていただきまして、年金数理部会の方では心よく承諾してこれに積極的に取り組んでいただくと、こういうふうなことになっているわけでございます。  ここに出しました資料につきましては数理部会の方で全体を調整していただいて、制度横断的な資料として出すように私どもからも働きかけをしたいなと、こういうふうに考えております。
  111. 山本保

    ○山本保君 お聞きしておりまして、何か外国ではもっと権限を法的に与えた形でというものもあるそうでございますので、そういう面と、また逆に、この数理部会というような名前を見ましても、専門家の方が非常に難しいことをやられるんだなという気がいたします。やはり、細かくということとわかりやすくというのは難しいかもしれませんけれども、ぜひわかりやすい情報提供をお願いしたいと思います。  それから次に、この前もちょっとお聞きしたことなんですが、簡単に終わってしまったんですが、基礎年金番号についてでございます。  それで、まず最初に、これはもう行うということでございまして、一体何ゆえにこういうことをするのか、これによってどういうメリットがあるのかということについてまだ余り理解されていないと、私も余り知らないわけなんですけれども。  年金は自分で申請しなけりゃもらえないよとか、よく聞くわけでありますけれども、この番号を統一することによって国民にどういうよいことがあるのかということについて御説明いただき、時間もありませんので、一緒にここでプライバシーの保護について、もう一度きちんとそれを保護していくということについてお答えいただきたいと思います。
  112. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 現在の年金制度が各制度に分立しておりますので、現業業務の方におきましてもそれぞれ記録管理が各制度ごとに管理されている状況になっております。したがいまして、加入者の方の届け出がありませんとどの制度に加入しているのか保険者としてもなかなかわかりにくいというようなことで未加入者が発生しやすいというような状況にあります。また、制度をまたがりました年金相談ですとか年金裁定につきましては、他の制度の情報がありませんので時間がかかるというような支障が生じているわけであります。  基礎年金番号というのは、こうした支障をなくすために各制度年金番号を共通に使用できるようにいたしまして制度をまたがる情報交換を円滑にしやすくする、それによりまして未加入者の発生防となり各種年金サービスの向上を図ろうとするものであります。  例えば、二十歳到達者につきまして、第二号被保険者として加入している人につきましてはこれを市町村の方に連絡いたしまして、市町村の方で二十歳到達者で他の制度に加入していない人を、これは一号被保険者に加入すべき者であるということが正確に把握できるようになりますので、加入勧奨なり年金手帳の送付というものが確実に行えるようになるというメリットがあります。  また、退職とか転職によりましてサラリーマンをやめて自営業者になったというときには一号被保険者としての届け出が必要になるわけでありますけれども、こういった資格喪失の情報を社会保険事務所が市町村に送ることによりまして、市町村において未届け者に対して必要な届け出の勧奨を個別に行うことができるようになるというふうなメリットがあります。  その他、今御質問の中にもありましたように、年金相談とか年金裁定が迅速に行えるようになるとか、あるいは将来的には一定の年齢に達した人に対しまして年金の加入記録のお知らせ、あるいは年金の見込み額のお知らせをあらかじめ行うことによりまして、その人に人生設計等について立てやすくするようなサービスも可能になるというふうに考えているところでございます。  それから、プライバシーの問題でありますが、私どもの考えでおります基礎年金番号につきましては専ら年金業務の分野において使う、しかも加入者と保険者の間で使用されるものということでありますので基本的には第三者にみだりに漏れることはないと考えておりますけれども、プライバシーの重要性にかんがみまして、私どもといたしましても最大限の努力を払ってまいりたいと考えているところであります。  このため、一つは、個人情報保護法を踏まえまして、社会保険業務センターの方に基礎年金番号等を管理する年金番号管理室を設置いたしますとともに、データ保護管理規程を強化いたしまして、データの提供は本人であることを確認した以外は行わないと、あるいはIDカードによる電算室への入退室の管理、データのアクセスヘの制限等厳重な管理を行うことにいたしております。また、加入者本人の方からも第三者の方にみだりに漏れることがないように、本人に対しましても慎重な取り扱いをお願いいたしたいというふうに考えております。  その他、仮に悪用されまして御本人が困っているというような場合におきましては、基礎年金番号自体の変更も認めるような扱いをすることによりましてプライバシーの保護に万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  113. 山本保

    ○山本保君 さまざまなメリットがあるということでございますけれども、基本的にそのメリットが国民一人一人に、何かお上に任せておけばいいというようなことになってしまえば、結局それがプライバシーを侵すということになっていくわけでありますので、一月からとも言っておりますが、一般にはまだまだ知られていないようでありますので、どうぞその辺をもっと広報されますようにお願いいたします。  そこで次に、社会保障全般についてでございますが、きょうさまざまなお話がございましたので簡略化いたしまして、まず極めて単純な形でお話をお聞きしたいんですが、先ほど釘宮委員からも、今の負担率を四五とか五〇というようなことにしておいていけば年金水準を下げざるを得ないんじゃないかという御質問がありました。  私、反対の方から今度お聞きしますが、もしこういう負担率を同じにしておいてやっていけば逆に、六年からですか、二・五%ずつ五年ごとに引き上げると言っておりますけれども、これはまたもっと上げなくちゃいけないというお話になるんじゃないかというふうな気もするわけでございますけれども、この辺どのようにお考えでございますか。  特に、国民負担率の議論について、これはどんどん率が上がっていくということを頭に入れてこういうお話が出てきたのか、そこまでまだ検討していないということなのか、その辺についてもお聞きしたいんです。
  114. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 平成五年度における社会保障給付費は五十六兆八千億円となっておりまして、過去十年度の平均伸び率は一年度当たり五・九%となっております。また、今月、社会保障給付費平成十二年度までの見通しを示したところでありますけれども、「構造改革のための経済社会計画」において示されている名目経済成長率の伸びを踏まえ現行制度ベースで試算しますと、平成十二年度において、国民所得の伸び率が三・五%の場合は八十九兆円ぐらいになる、国民所得の伸びが一・七五%の場合は八十七兆円程度となるというふうに推定をいたしております。  こういったことで、給付費そのものは、国民所得の伸びとの若干の関連がありますけれども、ほぼ八十七兆から八十九兆ぐらいになると、このように推定しております。
  115. 山本保

    ○山本保君 難しいことをお聞きしてお困りかもしれませんが、もう一つこれに関連して消費税の問題であります。  この税の税率を上げることについてどうかということは非常に難しいわけですが、消費税が上がれば当然福祉予算への配分がふえるだろうというふうに一般には考えられるわけでありますが、実際になかなか難しいと思うわけであります。その辺について、もし今より二%上がったときにどんなプラスがあると、福祉の方にとってはどれぐらい予算がふえるというようなことについて何か見通しをお持ちでしょうか。もしお持ちでしたらお話しください。
  116. 菅直人

    国務大臣菅直人君) これは消費税の議論を行いましたたしか平成六年の九月ころに、三%から五%への消費税の引き上げに伴う社会保障関係の財源については、平成六年九月の消費税率を決定した与党首脳会談におきまして社会福祉の財源として平成九年度から四千億円が確保されたと、そういうふうに私も理解いたしております。  この四千億円の財源を見込んで平成七年、平成八年においてもそれぞれ予算で手当てをした一千億、さらに二千億の財源を含めて平成七年度から新ゴールドプラン及び緊急保育対策等五カ年事業が、これは前倒しの平成七年からスタートしているわけですが、平成九年からは今申し上げた四千億の財源が消費税引き上げに伴って一応確保されている、これがこの考え方になっております。
  117. 山本保

    ○山本保君 微妙な言い回し、考え方だということで、もちろん予算が確保できているわけじゃないわけですから、厚生省当局に努力をお願いしたいと思うわけです。  今度またちょっと別の問題で申しわけございませんが、平成六年の衆参の厚生委員会で、基礎年金の国庫負担の割合については二分の一に引き上げることを検討するという決議がされておりますが、これは一体可能だとお思いでございますか。  それで、それについては大分お金がかかるわけですが、そんなことはもうとてもできないよとお考えなのか、いや、努力するとおっしゃるのか、その辺についてお聞きしたいと思います。
  118. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 御指摘のとおり、平成六年の年金法の改正のときに検討規定ができたわけでございまして、このときにも大議論があったわけでございますが、その議論はそのまま続いているわけでございます。やはり、御指摘のとおり、非常に巨額な財源を要するわけでございまして、二分の一にいたしますと数兆円規模で負担がふえる、こういう問題でございますから、これは年金財政だけでなくて国家財政そのものにも影響を及ぼすようなものでございます。前にも私ども主張させていただきましたけれども、受益と負担の関係というのが最も明確な、社会保険料を中心に今の制度ができておりますので、この中に税をふやすことが本当に適当かどうかなというふうなこととか、社会保障施策の中でもいろいろな分野があるわけでございます。  現在も介護が問題になっておりますけれども、医療とかこういった中で年金に巨額な財源を優先的に入れると本当にどうなるのかなと、実際問題考えますとなかなか難しい問題がございまして、検討規定にもございますように、次期財政計算のときの非常に大きな難しい課題として引き続き検討していく、こういう状況でございます。
  119. 山本保

    ○山本保君 決議というのは拘束されることはないそうでありますけれども、しかしそこはやはり今のお考えについてはもう少しきちんと委員会の方にもお示しいただいて、また議論をきちんとすべきじゃないかなと思いました。  それから、これは新聞に載っていましたし、もう以前からいろんな週刊誌等に載っている問題であります。これは通告していなかったので申しわけございませんが、つまり年金等は、午前中に損をするとかしないとかいう問題じゃないんだという高い理念のお話があった後にお聞きするのはちょっとなんでございますけれども、実際損するんじゃないかと。それは厚生省計算はいわゆる事業主負担を入れていないからだというような学者先生のがいろいろなところに載っておりますが、これについて厚生省としてはどういうふうに御説明されますか。
  120. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先ほど来お話がございますように、公的年金というのは世代間扶養制度でございますので、基本的には高齢化が進んで、しかも急速な高齢化でございますので、当然損得というのは発生するわけでございます。それで、数値で損得論がいろいろ言われたものですから、私どもとして損得という形で出すとすれば、やはり個人が自分で出した金、しかもそれが社会保険料控除なんかあるとすればそれを除いて計算すべきなのかなと、こういうふうなことで、個人が納めたそれがさらに利子を生む、こういうものに対しまして実際に受ける給付の見込みがどうかなと、こういうふうに計算させていただいたわけでございます。損得論の見地からは私どもはそれが正しいと思っていますけれども、学者先生の立場から見ると、やっぱり事業主負担というのは当然本人が払っているのと同じじゃないかと、どういうふうな御指摘も一面では正しいわけでございます。  それで、現在既に受給されている方とかもう受給間近な方というのは納めた額に比べますと十倍とか二十倍とかいうふうな形で給付を受けているわけでございまして、結局ずっとフラットでいくとすれば納めたものともらうものが大体一になるわけでございます。現にたくさんもらっている人がいればそうでない方も当然一面に出てくるわけでございまして、やっぱり高齢化社会を迎えたというのがそういう形で如実に出ているのかなと、こういう認識でおります。  私どもは、やはりある程度はやむを得ない現象ではないのかなと。私的扶養の考え方をずっと貫いてやっていくとすれば、かつての高齢者の方ははっきり言えばたくさんの後継者を育ててきたわけでございまして、その人たちの私的扶養を受けようと思えばかなりの私的扶養の可能性があるわけですが、これからはほとんど一人か、場合によってはゼロだという方が私的扶養の形になれば当然受ける私的扶養も少なくなるわけでございますから、それを社会的扶養の年金制度が如実に反映しているのかなと、こんな感じを持っております。
  121. 山本保

    ○山本保君 お話がありましたように、まさに世代間、縦の系列における所得の移転というようなことだと思います。ですから、局長、できましたら高い理念をもう少し打ち出されて、国民の理解を得るような努力をお願いしたいと思います。  それで、時間のこともありますので、あと介護保険、審議会のこと等は釘宮委員からもお話がありましたので飛ばさせていただきまして、子育て支援についてこの前お話を申し上げまして、まさか大臣、考えておられないとは思わないんですが、ちょっと心配なこともありましたので繰り返してお聞きいたします。  冗談だとは思うんですが、大臣は何かまず一時的なお金を出せば子供がふえるというように理解できるような御発言をされたわけでありますけれども、子供の数が減ってくる、そのための対策というのはそんなもので済むわけではないわけでありまして、さまざまな社会的な環境を整備してい又必要があるわけであります、当然でありますけれども。  そこで、具体的に一つお聞きしたいんですが、先回も申し上げました、以前に環境づくりというのがあったときに、絵にかいたもちだという批判もあるかもしれませんが、しかし内閣ですか、が中心になりまして関係省庁連絡会議をつくって、そして各省庁の具体的な課題を設定して、それについてどう進めていくのかということをやってきたと思うんです。ところが、今回エンゼルプランに関して、エンゼルプランで進めておりますというのがこの前の御答弁であったと思うんですけれども、そういうことを進めておられないじゃないでしょうか。  ただ単に厚生省がそう言っているということで、例えば子育て支援というのはさまざまな、労働行政にも、または家庭環境、職場環境、そして女性の就労というような問題があるわけでございます。それを支援していく方策というものがあるわけでございますので、厚生省がぜひイニシアチブをとって、十七も集める必要はないと思いますけれども、関係の省庁と連絡をとりながらこのエンゼルプランをもっと積極的に進めていくための方策をとるべきではないかと思うわけであります。その辺についてお考えをお聞かせください。
  122. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) エンゼルプランとの関係で申し上げますと、現在も関係省庁の連絡会議は置かれておるわけであります。ただ、このエンゼルプランができたときの経緯、これはもう先生よく御承知だと思いますけれども、関係四省庁がそれぞれ子育てをめぐって環境の整備に努力していこうということで関係省庁がそれぞれの立場でまずきちっと整備を図っていく、しかしそれをばらばらでやるということじゃなくて、やはり一つのまとまったプランとして打ち出していこうということでエンゼルプランができているものというふうに考えております。  そういった意味からいたしますと、エンゼルプラン自身が平成七年度が初年度でありますから、まだ最終的な平成七年度の状況というものがきちっとデータが出そろっておりませんけれども、これを十分フォローアップしながら着実に進めていくということが大事であろうというふうに考えております。  そういった中で、例えば平成八年度のエンゼルプラン関係予算の編成に当たりましては、とりわけ厚生省としましても関係四省庁の施策の内容、要求等の内容につきまして中心的な立場からその状況の把握に努めておるところでありまして、基本的には四省庁それぞれが努力しながら一緒にやっていくというのがエンゼルプランの趣旨であるということで御理解いただきたいと思います。
  123. 山本保

    ○山本保君 私としてはもっと積極的に進めていただきたいなということを申し上げます。  最後に、時間があと一分ですので、また大臣といいますか、個人、さきがけの菅議員ということでNPOについて、この前もお伺いしたんですが、ちょっとここでまたお話をさせていただきます。  一般にマスコミの方もNPOといいますとボランティアということで、なぜこんなことを言うのかというのは今さら言うまでもないわけですが、先ほど来の議論で、国が税を使って、または社会保障費を使って進めていくということが難しいとなってきたときに考えられるのがこのNPOではないかという意味で申し上げているわけです。しかし、一般にはボランティア活動などを応援するという意味でのサービス供給のファクターの話であるというふうに感じられておるようでありますが、そうではないんだということを申し上げたいわけです。  まさにこのNPOというのは民間活動に自主的、主体的に個人がお金を支出していくそういう制度として、新しいファクターの経済分野をつくっていくという意味で非常に重要なものであると思っておるわけであります。  実は、昨日、私も鳩山由紀夫さんのところに行きまして、公開質問状というのを持ってまいりましてその辺の話をしましたら、ようやく御理解をされたということで、何か党内でももう一度このNPO法案について新進党案についてもしっかり話し合いをしてみろというような御指示があったというふうにも伺っておるわけでありますけれども、私は、菅大臣、ここでこの法案について骨を折っていただくように、繰り返しになりますけれども、お願いをしたいわけであります。  大臣のお話を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  124. 今井澄

    委員長今井澄君) 時間が経過しておりますので簡略にお願いいたします。
  125. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 私も厚生大臣に就任する前、さきがけの中でこの問題の議論にかなり参加をしておりまして、民法改正が必要なのか必要でないのか、あるいはどういう法律ができるのか、与党三党の議論を踏まえて党内でも議論をしておりました。そういった意味で、NPO法案、何とか与党としても法案を出して、新進党から出されている案等も踏まえ、いわばいろいろとそれらを並べながら、よいところをそれぞれ認め合う中でいいものができればいいなと思っておりますが、現在のところまだ与党三党の中の合意ができておりません。  そういった意味で、今私の立場で何ができるかと言われてもなかなか難しいんですけれども、さきがけにおいてもそういう努力をしている、そのことについて私も余り直接ではありませんが、多少なりとも進めるように努力したいと思っております。
  126. 山本保

    ○山本保君 ありがとうございました。
  127. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 社会民主党の朝日でございます。  今提案されております公的年金制度一元化に向けた当面三共済統合に関する法案については、先ほど来の論議の中で、全体の公的年金制度一元化に向けた一つの重要なステップとして私なりに評価をしているわけでありますが、きょうはこの提案されています法案の具体的な中身についての御質問は、重複をする部分が多々ありますのであえて省略させていただきまして、少し基本的な考え方についてぜひ菅大臣とやりとりをしたいなと、こう思います。  その議論の中心は、昨年七月に出された社会保障制度審議会からの勧告、テーマが「社会保障体制の再構築に関する勧告」となっておりますが、この勧告を中心に幾つかお尋ねしたいと思います。  冒頭に、私自身は、この勧告は一九五〇年勧告以来、日本の社会保障制度の発展過程を中間的に総括しながら、本格的な少子・高齢社会が到来する二十一世紀に向けて、現行制度の枠組みの再編成、再構築を求め、その進むべき道筋を提示しているという点で極めて重要な意味を持つ勧告であるというふうに評価をしております。  ただ、残念ながら期待したほどにはこの勧告についての言及が必ずしも多くはなくて、菅大臣もしばしば行革審のときにはという話に一足飛びに戻ってしまわれて、もう少しこの勧告の部分について留意をしていただけないだろうか、こんな思いを持っております。  冒頭に、大臣、この勧告をどのように受けとめておられるのか、まずお伺いしたいと思います。
  128. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 社会保障制度審議会の昨年の勧告、私も最近宮澤会長などの発言などを含めてこの勧告の持っている意味が、少しずつその重要性を理解しつつあるという段階で、ややちょっと今おっしゃったように認識が浅かったのかなと反省をいたしております。  特に、その前の勧告がいかにして最低限度の生活を保障するかということを課題にしていたのに対して、昨年の勧告は、広く国民に健やかで安心できる生活を保障することが社会保障の理念としての課題と位置づけられ、とりわけ高齢者介護などの社会福祉の充実が課題であるということが盛り込まれているわけであります。  そういった意味で、従来のような、何といいましょうか、困っている人を助けるという概念から大きく前進をして、国民が広くライフサイクルのいろいろな場面、いろいろな時期においてまさに健やかで安心できる生活を保障するためのトータルな一つ制度として位置づけられ、それだけに不可欠な要素として定着をしてきている、そういうことがこの勧告でも明確にされているということでありまして、その点の重要性は大変大きいものがある、このように認識しております。
  129. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今、大臣も申されましたように、この勧告でまず基本的に注目していただきたいのは、ある意味で今日的な社会保障の概念あるいは理念を提起しているということだと思います。  少し雑談になりますけれども、いまだに社会保障を単なる救貧対策だと思っておいでのような発言もしばしばありますので、むしろその概念を改めて私どもも含めてきちっと確認をしておくということが大事なのではないかというふうに思います。  さてそこで、さまざまな問題がこの勧告で提起されているわけですが、時間の関係もありますから二点ぐらいに絞って少し掘り下げてみたいと思います。  初めに、社会保障と経済の関係について。  なぜこんな問題を出しますのかといいますと、どうも最近ある省が極めて単純化した図表を持ち回って、社会保障あるいは国民負担率と経済成長が一直線に関係がある、つまり社会保障の負担が高くなればなるほど経済成長は落ちると、これが一対一の関係にあるかのごとくのグラフを示しているわけですが、私はそのような余りにも短絡的な議論は今後の社会保障制度のあり方論をめぐって極めてまずいというふうに思います。  そういう意味で、少し幾つかの点を引用させていただきますが、この勧告は、例えば社会保障制度の中の公的年金が所得を保障し、そのことによって例えば高齢者の消費支出を一定程度安定化させてきたとか、あるいは公的年金積立金が社会資本の整備などにも用いられ、そのことによって経済成長の基盤を強化してきたとか、あるいはさまざまな形で労働者の健康を回復し、あるいは労働能力を回復するという形で良質な労働力の確保に役立ってきたとか、さまざまな形で社会保障制度は経済を支えてきた側面が極めて重要な側面としてあったと思います。  さらに、今後社会保障制度の充実は新たな分野での雇用機会をつくり出すという可能性も大いにありますし、特に昨今、規制緩和規制緩和ということが叫ばれているわけですが、そのことによって経済の活力を高めるというふうに一方的にというかいささか楽天的に規制緩和のことが語られているわけですが、この規制緩和もセーフティーネットとしての社会保障制度が整備されていて初めて有効な政策になる、こういうようなことが勧告の中で指摘をされているわけであります。  要するに申し上げたいことは、社会保障と経済の関係というのは何か相対立する関係とか、あるいは社会保障が充実されればされるほど経済成長は鈍化するとかいう、そういう関係ではないのではないか、むしろ相互に依存し支え合う関係なのではないかということを私は申し上げたいわけです。  そういう意味で、その社会保障と経済の関係について改めて大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  130. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 今、朝日委員の言われた考え方と基本的には私自身も共通の考え方を持っております。つまりは、社会保障というものが充実し、それにお金がかかると。かつてイギリスはイギリス病と言われて過大な社会保障のために経済がうまくいかなくなったという見方も一方ではあるわけですけれども、私は必ずしもそうではないだろうと。まさに先ほども出ましたエンゼルプラン、女性が社会参加する中で、出産、育児と社会的な参加が両立できるようにすること、これも社会の活力あるいは経済的な問題も含めた活力を維持することにつながると思います。また、先ほど言われました年金における資金が社会資本として使われる、さらには老後の安心感というものが個人の過大な貯蓄というものを、特に高齢者の貯蓄というものをもっと有効な形で活用できるように導いていく、そういった意味で福祉の充実ということが必ずしも経済にマイナスになるのではなく、経済的な意味も含めた社会の活力を生み出す福祉という絵が、構造が現在あるし、また将来もあり得るはずだと思っております。  しかし同時に、そのことは基本的にはそう思っておりますが、これまでの日本の福祉の充実というものが一方では右肩上がりの経済のもとである意味では発展してきたということも事実であるわけであります。そういった意味では、経済の成長が少なくとも従来のような高い成長でない時代において、従来の成長の中の配分として次第に充実してきた今の制度について、その延長上ですべてのものが考え得るかということになると、これはこれでまたそれほど、某省が、某役所が出したと言われました、私もそれに似たものを見たことがありますが、それほど直接的に、何といいましょうか、逆関数ではないかもしれないけれども、しかし、かといって単純に福祉水準が上がれば上がるほど経済の活力が増すということにももちろんそう簡単にはならないわけでありますから、多分そこにはある種のまさに再構築をする中での最適値のようなものがあるのではないだろうかと、イメージとしてはそんなふうに考えております。  そういった意味では、私も大臣に就任した直後から福祉の構造改革という表現をしておりますけれども、構造改革をする中で、まさにこれは二兎を追うことになるわけですが、つまりは福祉の質的な水準の維持向上と同時に、余り過大な国民負担にならない、そういう二つの目標を何とか両立させる道を探っていきたい、このように考えております。
  131. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 後段のしかし以降は大臣の方からあえて私に対する御忠告だと思いますが、私も必ずしも従来の医療や福祉の延長線上にこれからの社会保障制度のあり方を考えようという気持ちは持っておりません。むしろ今問題となっている公的介護保険制度の創設も含めて医療や福祉の分野の、構造改革というふうにおっしゃいましたが、ぜひ新しい仕組みを通じての改革は必要だという立場でいることをあえて申し添えておきたいと思います。  次に、先ほど来何人かの方からも御議論がありました国民負担率の問題についてあえて議論をしてみたいと思います。  まず、大臣お答えいただく前に基礎的な勉強をしておきたいと思うんです。  私の聞くところによれば、この国民負担率という言葉は大蔵省の造語であるというふうにもお伺いしているわけですが、大蔵省の方、おいでですかね。  大蔵省の方に、国民負担率という概念そのもの、あるいは国民負担率という言葉の定義、それをいつからどのような意図を持って用いられるようになったのか、改めてお伺いします。
  132. 松元崇

    説明員(松元崇君) お答えいたします。  国民負担率という言葉の定義ということでございますが、国民負担率とは租税及び社会保障負担国民所得に対する比率ということでございます。  この国民負担率についての議論が広く行われるようになりましたのは、第二次臨時行政調査会が取りまとめました第三次答申、これは昭和五十七年の七月に出されておりますが、ここにおきまして国民負担率が明示的に用いられてからのことであるというふうに承知いたしております。  この第二次臨時行政調査会におきましては、効率のよい政府のもとでの適正負担による福祉の充実についての議論がなされておりまして、そういった中で公的な制度に基づき国民に御負担いただきます租税及び社会保険料の適正な水準を考える必要があるといった観点から国民負担率という指標が用いられるようになったものというふうに承知いたしております。
  133. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 確認しておきたいんですが、「租税及び社会保険料」の「租税」の部分は、もちろんいろいろ議論になっています住専に投入する税も含めて税トータルの額だということでございますね。  つまり、社会保険料は目的が明確になっているわけですけれども、租税について言えば、そのすべてが社会保障の給付に回るものではなくて、さまざまな国家支出の中にもいろんな形で用いられるもの全部をトータルして租税としてカウントしているということでございますね。確認させてください。
  134. 松元崇

    説明員(松元崇君) 住専等に投入されているものも含めて歳出にということになりますと、現在の我が国の財政事情で申しますと、歳入の二八%はいろいろな形で公債、借り入れに頼らざるを得ないということでございますので、これが税金ですべてかといった形の議論、これにつきましてはいろいろな見方があるというところかと思われます。  しかしながら、委員指摘ございましたように、租税の負担、その租税がどこに使われるかということになりますと、そういった今の財政事情では、借り入れといったことも含めてでございますが、各般の歳出に充てられているということは御指摘のとおりでございます。
  135. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 もう一つお尋ねします。  この国民負担率という言葉あるいは概念と同じ言葉あるいは概念が西欧の先進諸国にありますでしょうか。例えば具体的に国民負担率を英語に訳すとどういうふうに表現されますか、ちょっとお尋ねします。
  136. 松元崇

    説明員(松元崇君) お答えいたします。  欧米諸国、具体的にはアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスといったところでございますが、ほぼ同様の概念が存在するというふうに承知いたしております。各国とも必ずしも我が国の国民負担率の概念と全く同じということではございませんが、租税負担と社会保障負担を合わせた額、あるいはそのGDPに対する比率を示しております。  例えば一例としてドイツについて申し上げますと、租税負担と社会保障負担の合計の対GDP比を公的負担率といったことで使用いたしておりまして、本年三月にドイツの連邦大蔵省が将来の公的支出、財政赤字等の試算を行っておりますが、この中でも両者を合わせた形のものをGDP比で公的負担率といった形で示しております。
  137. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 英語で何と言いますか。
  138. 松元崇

    説明員(松元崇君) 済みません。申し忘れました。答弁漏れで恐縮でございますが、ちなみに英語では国民負担率のことをトータル タックスィズ アンド ソーシャル セキュリティー コントリビューション アズ ア パーセンテージ オブ ナショナル インカムということで申しております。
  139. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 要するに単語ではないんですよね。要するに租税と社会保険料負担国民所得に対する、あるいはGDPに対する比率、その概念そのものをそのまま説明した言葉なんですよね。
  140. 松元崇

    説明員(松元崇君) 英訳では御指摘のとおりでございます。
  141. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 先ほどドイツの方では訳せば公的負担率というような概念もあるというお話でございました。  要するに申し上げたかったことは、私は国民負担率という表現は変えた方がいいというふうに思っている。特に、日本語は漢字ですから、表意文字ですので、国民負担する率というこの表現は必ずしもいいイメージを与えない、何か大変な重荷をしょい込むみたいなイメージをどうしても与えてしまう。今、英語でお聞きしますと、ソーシャル セキュリティー コントリビューション、要するに社会保障に対する寄与と。より正確な概念を国民負担率というところで表現をしていくべきではないかというふうに私は思います。  今ここで国民負担率という言葉を改めるという議論をしても始まらないと思いますが、少なくとも、私たちがついつい安易に使いがちな国民負担率という概念についてももう少しきちんと吟味をしてから、その上で議論の道具として使っていくという姿勢はぜひ必要なのではないかということを強調しておきたいと思います。  そこで、例えば国民負担率という言葉を使うよりも、むしろ先ほどドイツの例で出されましたように、より正確には公的負担というふうに言いかえた方がいいのじゃないだろうかと。例えば国民負担、社会保険料や租税といった公的負担が増大したとしても、社会保障制度が充実されるならさまざまな個人負担や福利厚生面での企業負担等が軽減されることになる、逆に公的負担を抑制すれば個人負担や企業負担が増大するというような指摘も、先ほど紹介申し上げました勧告の中に示されています。  また、こんなふうにも言われております。本来、社会保障に係る公的負担は、  望ましい公的給付の水準と利用者負担金などの私的負担とを併せて考慮し、選択・決定されるべきものであり、公的負担だけが前もって給付水準と切り離されて数量的目標として決定できるわけではない。経済成長に見合った負担のあり方が問われるのは当然だが、公私の役割分担も含め、社会保障の給付水準と公的負担の水準との調和を図るべく絶えず点検を行うことが重要である。 とも述べております。  私自身は、これまでの議論がややもすれば国民負担率は何%という数値目標のみが強調して語られ、その数値だけがひとり歩きしている傾向に強い危惧の念を抱かざるを得ません。ある意味で勧告はそのような傾向に対して注意というか警告を込めた指摘をしているのではないかと受けとめています。  改めて大臣にお伺いいたします。勧告のこの部分に関する指摘についてどのように受けとめておいででしょうか。
  142. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 最初に、今の国民負担率という言葉が確かに言葉としては漠然として、そういう意味では公的負担と言う方がより個人負担や企業負担との比較で言えばわかりやすい表現だなということを率直に感じたところであります。  今、勧告の中の重要な部分を読み上げられて意見を問われたわけですが、私もこの勧告、あるいはこの間幾つかの会議でこの制度審の会長みずからが話をされていた場にも同席をいたしまして、まさに公的負担だけが前もって数値目標として議論されるというのはやや、何といいましょうか、議論の仕方としては気をつけないといびつな議論になるのではないかと思っております。  若干敷衍しますと、今回財政問題として議論が始まっているわけですが、この数年間特に国債発行高が非常に大きくなった最大の理由は、何といっても景気対策のための公共投資あるいは景気対策を目的とした減税等がそういうものを生み出したわけでありまして、それはそれとしてその時期その時期に私も必要であったというふうに思って賛成をしてきた立場であるわけですが、決して社会保障の費用が急激にふえたことによっての赤字の累積ということ、それが主要因ではなかったと思っておりますので、そういった意味を含めて財政再建というものを考える場合にも、もちろん社会福祉、社会保障の費用が全体のウエートとして相当部分であることは承知をしながら、しかしそのことが先に何か枠をはめられていくという考え方は必ずしも議論の仕方としては望ましくないという、私もそんな感想を持っております。
  143. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 恐らく、これから財政再建に向けての議論が始まる中で、あるいは公的介護保険制度や医療保険制度制度改革の議論が進んでいく中で、相当この問題については今後さまざまな形で議論の一つの焦点になってくることは間違いないというふうに思います。そういう意味で、今幾つかやりとり申し上げたところをきちっと押さえながら、私自身もそのことを受けとめつつ議論に積極的に参加をしていきたいと、こんなふうに思っておりますので、ぜひ大臣もよろしくお願いしたいと思います。  それでは、残された時間で幾つか少し具体的な課題についてお尋ねいたします。  一つは、日本と外国との年金の通算問題について少しお伺いしたいと思います。  もう改めて申し上げるまでもなく、日本人で海外で働いている方、あるいは逆に日本で働いておられる外国の会社の方々、さまざまな形で産業の国際化というかグローバル化が進んできている。  ヨーロッパなどではそういう意味では相当以前から国を超えた通算規定が既につくられてきて実施に移されている、こんなふうにお聞きをしております。いつごろでしたか、ちょっとお伺いしましたら、ようやく日本はドイツと初めての協定、年金通算のための協定に向けた協議を進めているというお話を伺いました。その辺の事情も含めて、これから国際化時代における諸外国との年金通算の取り決め、協定について厚生省としての考え方をお聞かせいただきたいと思います。  恐らく、この分野に限らず、社会保障制度の分野でやっぱり国際化というか、あるいは国際的なハーモナイゼーションが求められてくることは間違いありません。ぜひ今までの取り組みのおくれを取り戻す意味で積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、経過を含めてちょっと御説明いただきたいと思います。
  144. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 御指摘のとおり、本当に経済のグローバル化が進んでいるわけでございまして、国際的な人的交流というのも非常にふえてきているわけでございます。したがいまして、年金制度、今までどちらかといえば国内の制度の整備に追われていたわけでございますけれども、やはりこれからは国際化にふさわしい対応をする必要がある、こういう認識を持っているわけでございます。  海外の勤務者につきましては、原則としてやはり勤務地の外国の年金制度が属地主義という形で適用されるわけでございますが、その場合に、滞在期間だけで、非常に二年とか三年とか短い場合が多いわけでございますので、外国の年金の資格期間を満たすことができずに掛け捨てになるケースも結構あるわけでございますし、一方で海外勤務期間中でも本国企業と使用関係が残っている、こういう方につきましては自国の、日本でいきますと日本の厚生年金に入りまた外国でも加入するということになりますと、二重の適用ということで、保険料の二重払いということで、これは前からあったわけでございますけれども、最近ではどの国も保険料負担というのが高くなっているということで、企業の負担というのが大きな問題になっているわけでございます。そのために、一時派遣等に対します年金制度の適用を整理する、こういうことで二重加入によります二重払いの防止とそれから加入期間を通算することによります年金受給権の確保、こういうのが国際年金通算の目的であるわけでございます。  それで、ドイツとの関係、これは非常に長い間交渉を重ねてきたわけでございますけれども、制度の仕組み、特に障害年金の仕組みがかなり違うということもございまして、なかなか両国間の協議が進まなかったわけでございます。日本の障害年金は、これは障害が起きたときに入っていた制度がすべて責任を負うというシステムになっているわけですが、ドイツのやり方は、かつて加入していた制度も応分に負担をするというふうなシステムでございます。各国の関係でどちらかといえばドイツのやり方の方が主流的なやり方であると、こういうことで私どもも日本のやり方にこだわっておったらこれはもういつまでたってもできないだろう、ほかの国ともなかなか通算できないだろうということでドイツの方式に乗ると、こういうことで昨年の六月に年金当局者間では一応基本的な協議が整ったわけでございます。  それで、昨年の九月から外務省も参加していただいて、外務省がもちろん協定の主宰者でございますので外務省と私どもの方で政府間の交渉を開始したわけでございまして、ことしの四月の終わりに私どもの方から出かけていきまして協定条文の交渉に入ったわけでございます。まだまだ細かい点でまとまらない点がございますけれども、何とか近々のうちに協定の締結までに至りたいなと、こんな感じを持っております心  それから、アメリカとの関係が一時中断していたわけでございますけれども、この五月の連休明けのころに、まだ情報交換という程度でございますけれども、政府間で交渉か再開をいたしました。まず第一号はドイツとは考えておりますけれども、並行いたしましてアメリカとの協定締結に向けてまいりたいと。  あとイギリスとの関係で、早くやってほしいと、こういうふうな話もあるわけでございまして、かなりの膨大な事務量になりますので余り多数の国について並行してやるのはなかなか難しいわけでございますけれども、おくれを取り戻す意味で精いっぱい取り組みたい、こういうふうに考えております。
  145. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 次に、今回の法案は被用者保険、厚生年金にかかわる改正なわけですが、国民年金の問題についてちょっとお尋ねしたいと思います。  公的年金制度の一階部分ということで基礎年金部分が設定をされております。厚生年金の場合は被用者ですからほぼ一〇〇%適用される、幾つかはまだ問題がないわけじゃないようですが、されるだろうと。ただ、問題は国民年金、自営業者や学生などを対象とする国民年金について、制度への未加入あるいは保険料の未納という問題がしばしば指摘されております。このままでは国民年金は空洞化するのではないかということも言われています。全体の公的年金制度を維持していくためにもこの国民年金における未納、未加入問題というのは、やはりきちっと手を打っておく必要があると思うんです。  そこで、まず実態について、余り事細かにでなくて結構ですので、大まかに未加入、未納の実態、そしてなぜそういう実態になるのかという現状認識について、お伺いします。
  146. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 未加入者でございますけれども、平成四年に公的年金加入状況等調査というのを行っておりますが、その結果によりますと、国民年金の一号被保険者になるべき者で未加入となっている者が約百九十万人というふうに推計いたしております。  保険料の納付状況につきましては月数で計算しておりまして、こうした月数の率、検認率と言っておりますが、検認率が平成六年度で八五・三%になっております。逆に一四・七%が未納という状況でございます。この率から未納者数を推計いたしますと、おおむね二百数十万人程度になると考えております。  こうした未加入者あるいは未納者が出てまいります原因ということでありますけれども、若年者の場合、年金を受給できるようになりますのが数十年先というようなこともございますので、どうしても年金制度への加入の必要性の理解が不足しがちになるという点が一つあるかと思います。  それから、特に都市部におきましては、頻繁な職業移動あるいは転職等によりましてなかなか対象者の把握が難しいという点がございます。  三つ目は、サラリーマン等の場合におきましては資格取得の届け出なり保険料の納付につきましては事業主が行うわけでありますけれども、国民年金の場合には自分で届け出を行う、あるいは保険料の納付もしなくてはいけないというふうなことで手間暇がかかるというようなこともあろうかと思っております。
  147. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今、現状なりあるいはその原因についてお伺いしたわけですが、結構な数になるなという感じを持ってお聞きしました。  そこで、今後どういう対策をとって未納あるいは未加入を少なくするというふうに考えておられるのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。  その際、恐らく実際の業務については、市町村にお願いする部分相当部分あると思います。市町村では御存じのように国民健康保険の、国保の方の徴収の問題もこれあり、ただ少なくとも国保についていえば九〇%以上の収納率ということで相当に御努力をいただいていると思うんですが、国民年金の場合ですともう一つ、具体的にどうしたらいいのか、いささか手をこまねいているような面もなきにしもあらずだというふうに思います。  今後の未納、未加入対策の中で、国としてとりわけ市町村にどのようにこの対策について効果が上がるように支援をしていこうとされているのか、今後の対策についてお伺いしたいと思います。
  148. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 先生御指摘のとおり、未加入者の問題、なかなか頭の痛い問題でございますが、私どもといたしましては、一人一人の将来の年金権の確保をどうやって図るかという側面と同時に、公的年金制度の健全な運営を図るという観点からもこの問題につきまして最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。  まず、未加入者対策でありますけれども、現在私どもがやっておりますのは、一つは未加入者がこれ以上ふえないようにということで、入り口でこれをとめるということで、二十歳になりました人につきましては全員加入を目指しましていろいろと個別に電話等による勧奨を行っていただきまして、加入者であるということがわかっている者につきましては、最終的には年金手帳を送付するというような形で適用を進めております。  それからもう一つは、未加入者のうちで七割の方が国民健康保険の方には加入しているという実態がございますので、市町村におきまして国保の加入者と国民年金の加入者の資格の突合等を行っていただきまして、国保加入者で国民年金に未加入の者についての適用を進めていくと。このために、窓口を総合化していただくとか、あるいは資格取得届を一体化するというような対策を進めているところであります。このための市町村に対する突合システムの電算化等について補助等を行っているところであります。  さらに、九年一月からは基礎年金番号の導入を目指しておりますけれども、これができますれば、未加入者等につきまして個別に市町村においても正確に把握できるように、社会保険事務所から二号被保険者についてのリストを送付することによりまして適用の推進を図ることが可能になるというふうに考えているところであります。  次に、納付対策の方でありますが、これもなかなか頭が痛いところでありますけれども、特に都市部における納付率が低いということもありまして、私ども、そのために一つは、都市部におきましてはどうしても昼間はなかなかおられないというふうなこともありますので、保険料の口座振替制度、これを促進いたしております。  このために金融機関を活用いたしまして、新規の口座振替の設定を行うように進めておりまして、八年度におきましては一つ口座を設定していただくごとに手数料を六百円支払う、七年度に比べまして三百円から六百円に引き上げる等の改善を行うことによりまして納付しやすい環境づくりを図っております。それから、専任徴収員というのがございますが、これの増員を、八年度におきましては七年度の千三百人から千五百人に増員いたしておりまして、こういったことによって収納対策の強化を図ってまいりたいというふうに考えております。  それからもう一つは、やはり若い人に対しまして、年金制度に対する理解を深めていただくことが大事であるということで、私ども相当の予算を使いまして、さまざまな広報媒体による広報あるいはまだ年金に加入する前の中学生なり高校生を対象といたしました年金教育の推進ということで、都道府県に協力をお願いいたしまして進めているところでございます。  こういったことを通じまして、最大限、未加入者、未納者対策の推進に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  149. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 頭の痛い問題、頭の痛い問題ばかりおっしゃらないで、市町村に対して積極的に支援をするという立場で、しばしば思わぬところでこれがあしき前例で引っ張り出されたりすることもありますので、ぜひこの部分についても取り組みをよろしくお願いしたいと思います。  最後に、今のお話の中に出てきましたが、基礎年金番号の問題に関連して一点だけお尋ねしておきたいと思います。  今、未納あるいは未加入対策にとっても、この基礎年金番号の導入によって一定程度の有効性が期待できるのではないかというようなお話でありましたが、こういう番号、そして情報システムを導入するに当たって、どうしても一方できちんと留意しておかなければいけないことは、先ほど山本議員の方からもございましたけれども、個人情報の保護ですね。  プライバシー問題というふうにも言われますが、私はやはり個人情報の保護、そしてデータセキュリティー、そして目的外の使用についてどういうきちっとした歯どめをするかという、この辺の対策を一方できちんと講じておかないと、国民の皆さんにある意味で無用な心配を起こしかねないと思います。かつて国民総背番号制云々という問題もありました。そのような危惧が全くなしとしないということであります。  もう既に実務的に作業に入って、来年の一月ですか、スタートするというように伺っていますので、ぜひそういう意味で個人情報の保護あるいはデータセキュリティー、そして目的外使用禁止、この辺のことについてきちっとこうしているということをはっきり申し上げていただきたいというふうに思いますし、そのことはそのことで理解を求めていかなければいけないと思いますが、その点をお伺いしたいと思います。
  150. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 私どもの考えでおります基礎年金番号につきましては、さまざまな分野に利用することを目的とした汎用的な番号ではなくて、あくまでも専ら年金分野においてそのサービスの向上なり未加入者対策の促進を図るために活用されるべきものというふうに考えているところであります。  したがいまして、その利用そのものも年金業務分野に限定されておりまして、基本的には保険者とその本人との間において番号が使われるということでありますので、汎用的な番号のようにみだりに第三の方々にこれが漏れていくということはないというふうに考えているわけでありますけれども、なお個人情報の重要性にかんがみまして、最大限の措置を講ずることにしているところであります。  そのため、一つは、保有目的以外の利用、提供を規制しております個人情報保護法等の趣旨を踏まえまして、社会保険業務センターの中に基礎年金番号等を専門に管理する年金番号管理室というのを設置いたしております。それから、データ保護管理規程を強化いたしまして、本人であることを確認した以外には提供を行わないということを明確にいたしております。また、データの取り扱いに関しましても、IDカードによりまして入退室なりだれが使ったかというようなことが明確にわかるようなことを通じまして、厳格に管理を行ってまいりたいと考えております。  年金事業に従事する職員につきましては、国家公務員法等による守秘義務もございますので、私どもといたしましては、役所の方から個人情報が第三者に漏れていくことは少ないと思っておりますけれども、こういったことを通じまして万全を期してまいりたいと考えているところであります。  あとは、本人の方は、自分の利益のためにあるいは使われる場合もあるかもしれないというケースが考えられるわけでありますが、私どもといたしましては、本人の方に対しましてもみだりに第三者に番号等を示さないようなお願いをしてまいりたいというふうに考えているところであります。  仮に、どこからか番号が漏れまして、第三者に悪用されて本人が困ったというような場合もあるかと思いますけれども、そうした場合におきましては、番号自体を変更するということによりまして、本人のそういった不利益を救済してまいりたいというふうに考えているところでございます。  私ども、こういった趣旨につきましては、今後あらゆる広報媒体あるいは県なり市町村の広報紙等も使いまして、本人にも十分理解を得ながら実施できるよう、広報等に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  151. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 以上で終わります。
  152. 西山登紀子

    西山登紀子君 この改正は、JR共済等旧公共企業体共済厚生年金統合するということです。一九九七年、平成九年に統合するものであるわけですけれども、この統合というのは、その中身は何かということです。  この統合は、同時に、破産状態にある統合前のJR共済JT共済年金給付について、厚生年金や他の共済組合からの財政支援を義務化する、これが本改正案の主要な中身、柱であると思います。  年金制度一元化の一環であるとか、また被用者年金制度の再編成の第一段階というようなことであるわけですけれども、私はその本質というのはJR共済、それからJT共済へ他の年金保険から財政支援させることを義務化する、しかもその財政支援というのは四十年以上の長期に及んでいく、これが本改正案の重要な柱である、主な内容である、こういうふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
  153. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 公的年金制度課題といたしましては、JRJT共済に顕在化いたしておりますように、小規模な制度産業構造変化等に対しましては極めて脆弱であると、こういう問題でありますとか、各制度成熟度の違いを反映した保険料格差の問題が残されているわけでございます。このために、今回はJR共済等共済厚生年金統合する、統合に際しましては公的年金制度として合理的と考えられます一定のルールのもとに必要な財源分担を行うと、こういうものでございます。  今回の法案におきましては、JR共済等から厚生年金に対しまして一定額の積立金移換する、それから物価スライド、再評価といいました世代間扶養で賄われている部分につきましては、これは一定のルールで被用者保険制度が公平に支え合うと、こういうふうなことでございまして、そういうのが今回の改正の柱だと、こういうふうに考えております。
  154. 西山登紀子

    西山登紀子君 一定のルールのもとにというふうにおっしゃるわけですけれども、破産をしたJRJT共済への他の保険からの財政支援というこの仕組み、その枠組み自体は平成二年、一九九〇年から実施をされてきました年金制度間調整事業の継続であるというふうに思うわけですけれども、そういうことではありませんか。
  155. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 現在実施されております制度間調整事業は当面の暫定措置、地ならしの措置ということで、厚生年金相当の老齢給付につきまして被用者年金制度間の費用負担の調整を行うものでございまして、結果といたしましてJR共済等成熟度の高い制度負担が軽減されると、こういう仕組みであるわけでございます。  その際に条件がついておりまして、一つは、JR共済等の現役被保険者は高い保険料率を負担しなさい、それから二点目は、年金受給者給付を一定程度抑制します、それからJR各社、それから清算事業団は特別な負担を行うと、こういうふうな自助努力が前提になっているわけでございます。したがいまして、こういう自助努力を前提にいたしておりますので、本来この調整事業で行います負担に限度額が設定されていると、こういう状況でございます。  しかしながら、この制度間調整事業につきましては、JR共済等の高い保険料率や再評価の繰り延べ、こういったものが今後とも継続するというのは給付負担の公平という一元化の目的に照らしても望ましくないのではないかと、こういうこと。それから、清算事業団等の特別負担、これは制度的には旧国鉄時代事業主としての保険料の支払い不足額を毎年度返還する、こういう形で行ってきたものでございますけれども、八年度をもってその返済が終了する、こういったような事情があったわけでございます。  今回の法案は、恒久的な仕組み、いわゆる暫定的ではなく恒久的な枠組みといたしましてJR等を厚生年金統合いたしまして、先ほどありました保険料率の格差を段階的に解消する、それから再評価の繰り延べは解除する、こういうことで給付負担の公平を図ったわけでございますし、JR共済等が独立して運営していた期間給付が確定した部分につきましては厚生年金移換金を移しますよと、そういうふうなこと。それ以外のスライドの部分につきましては、これは一定のルールに従いまして各制度間で公平に支え合う、こういうふうな仕組みにいたしたわけでございまして、制度間調整事業と今回の法案というのは考え方や仕組みにおきましてかなり異なっていると、こういうふうに私どもは認識しております。
  156. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は、かなり異なっているというふうには思わないわけですね。地ならしとして暫定的に行っていた他の保険から財政支援するこの仕組みを先ほどいみじくもおっしゃいました恒久的な枠組みにするということだと思います。つまり、他の保険から財政支援をするという大きな枠組み、仕組みというものを暫定的なものから恒久的なものに継続をし、法律的にも固定をする、そして四十年以上財政の援助を義務化するということだと思うわけです。  ですから、私はきょうは、それならば、これまで制度間調整でやってきたJRJT共済へ他の保険者はどのような支援をしてきたのか、このことを見ておく必要があろうかと思います。  厚生省の資料によりますと、平成二年度から平成八年度、厚生年金及び地方公務員共済など五つの保険からこの七年間に総計六千七百十一億円が財政支援をされたわけです。当然のことながら、じゃ労働者の負担は幾らかということになりますと、その保険加入者、つまり労働者の負担分というのはその半分ということになるわけです。これを加入者数で割りますと、単純計算で割りますと、労働者一人当たりこの七年間で約九千円を破産したJRJT共済財政支援した、労働者が連帯をして負担したと、こういうことになるのではないかと思いますけれども、どうですか。
  157. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 御指摘のとおりの数字でございまして、制度間調整事業によりまして平成二年度から八年度の七年間で六千七百十一億円になっております。これを平成七年三月末の人数、三千七百二十四万人になるわけでございますけれども、この人数でこの六千七百十一億円の半分を割りますと約九千円になります。
  158. 西山登紀子

    西山登紀子君 つまり、平成二年度から八年度、暫定的に行われてきたとおっしゃいますけれども、その財政支援、それは労働者一人当たりの負担計算いたしますと、七年間で約九千円の負担支援をしてきたと、こういうことではないかと思うわけです。  それでは、今回の法改正で労働者の負担というのはどうなるかということですけれども、従来の財政支援よりも多くなる、多くなった財政支援を今後四十年以上も続けるということになるのではないでしょうか。その点、どうでしょうか。
  159. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先ほども申し上げましたように、現在の制度間調整事業といいますのは一定の自助努力の上に立っているわけでございまして、その自助努力と申しますのは、JR関係者保険料が高い、それから再評価の賃金スライドはとめ置くと。それから、JR各社それから清算事業団が特別の負担を行うと、こういう自助努力の上に立っているわけでございますけれども、この限界に達したわけでございまして、この分が減るということで負担がふえるのは事実でございます。
  160. 西山登紀子

    西山登紀子君 今もお認めになったように、今度の法改正で負担がふえる。  じゃ、どのくらいふえるのかということです。  従来行ってきた支援額というのは平成二年度から八年度の間に六千七百十一億円ということなんですけれども、じゃこれからどれぐらいふえるか。  九年度から十五年度の七年間、同じ七年間を比較した場合に、平準化した九年度の価格で計算をしてみれば、九年度から七年間では一兆三百三十九億円のこれは負担になるわけです。それで計算をいたしますと、一兆三亘二十九億円を今までの七年間六千七百十一億円で割りますと、計算すればこれは非常にわかりやすい、約一・五倍ということになります。  つまり、今まで制度間調整で連帯をして支援してきた七年間と同じこれから先の七年間を比較すれば実に一・五倍、約五〇%の労働者側の負担がふえる、しかもこの負担は四十年以上にも及ぶ、こういうことになるのではありませんか。
  161. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 単純に計算すれば御指摘のとおりでございまして、一方でもらう人がいれば負担するのは当然であるわけでございまして、これを公平なルールで各制度分担をする、こういう形になっているわけでございます。自助努力でかなり過酷なJR負担というのを解除いたしますとすれば当然この結果になるわけでございまして、JR、JTに対しますこの支援は約四十年間続くことになっております。
  162. 西山登紀子

    西山登紀子君 ですから、従来の財政支援と比べても五四%負担がふえると。  それでは、労働者一人当たりを計算すればどうなるかということです。これは支援する側の労働者ですね、労働者一人当たり、例えば厚生年金でありますと年間千九百円余りになります。私学年金の場合は七千二百円余りの財政支援をするということになるわけです。  この負担増ですが、これは大臣にお聞きしたいわけですけれども、これからの保険料の引き上げの要因になるということはない、絶対に引き上げの要因にしないとお約束していただけるかどうか。
  163. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 今回の統合によりまして厚生年金の新たな負担になるのは各制度支援する額のうち厚生年金負担する額でありまして、その額は、先ほど来御議論いただいていますように、平成九年度から十三年度までの当初五年間は毎年度名目額で千二百七十二億円と見込んでいるところです。  現在、厚生年金の全体の標準報酬総額が百四十兆円程度であることからしまして、この千二百七十二億円というのは、厚生年金負担といいますか、この標準報酬に対する割合で見る限り〇・一%に達しない程度のものであります。そういった意味で、今直ちにこの負担を賄うために保険料を引き上げるという、そういう必要性はないものと、そういうふうに認識をいたしております。  この費用負担については、平成十一年の財政計算以降において他の制度改正に合わせて織り込まれることになると思っておりますが、この費用負担によって平成六年財政計算時の厚生年金保険料率引き上げ幅、これは二・五%が予定されているわけですが、これが変わることはないと、このように考えております。
  164. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣がお約束をしていただいたというふうに確認をしたいと思うんですけれども、問題はなぜ従前の財政支援平成二年度から八年度の財政支援に比べてこれから労働者と中小企業も含めた事業主負担が多くなるかということなんです。なぜ多くなるんですか。
  165. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先ほど来申し上げておりますけれども、制度間調整事業は毎年JR共済等の自助努力を前提といたしまして各制度間で財政調整を行ってきたわけでございまして、その自助努力清算事業団が一千億円、それからJR各社が二百二十億円の特別負担をいたしてきたわけでございますし、そのほかにも、先ほど申し上げましたように、保険料率を段階的に解消する、あるいは給付の方で再評価の繰り延べを解除する、こういうふうな事情がございました。  特に、清算事業団の一千億円、それからJR各社の二百二十億円でございますけれども、この特別負担は旧国鉄時代保険料の支払い不足分事業主として平成八年度まで毎年充当してきたわけでございます。したがいまして、九年度以降といりのはこのお金が当てにできなくなる、こういう事情のもとで負担がふえると、こういう結果になってきたわけでございます。
  166. 西山登紀子

    西山登紀子君 当てにできないとかいろいろ言っていらっしゃいますけれども、私はやはり負担がふえていくというのは、国の財政支援がない上にいわゆる持参金が少ない、だから相対的に厚生年金などほかの支援をしていただく年金制度からの支援額が膨らんでいくというふうに思うわけです。つまり、持参金が非常に少ないと。いわゆる持参金という、言葉は悪いですが、わかりやすく言えばそういうことなんですけれども、その持参金というのが非常に少ない、これに尽きるのではないでしょうか。もう一度。
  167. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 持参金が少ないということでございますけれども、今回の考え方は、単独の制度としてその保険料拠出を行ってきたものについては、JR清算事業団、大変厳しいんですけれども、もうこれは負担していただかなければいけないと、こういうことで持ってきてもらうことにしたわけでございます。年金制度、先ほど来話がございますように、世代間扶養制度でございまして、JRとかJTの子弟の方もこれは当然厚生年金とか公務員とかになっているわけでございまして、そういう意味でスライドの部分につきましては、これは各制度分担して公平なルールのもとで負担する方が適当であると、こういうことで合意に達したわけでございまして、必ずしも少ないということは当たらないのではないのかなと、こういうふうに考えております。
  168. 西山登紀子

    西山登紀子君 今、当てにならなくなったと言われたその額ですけれども、実はこれは非常に重要な意味を持つ額でございます。  実は平成元年の国会で被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法が制度化された。  そのときに国会で修正をしたわけですね。その主な修正点というのは、厚生年金などの拠出額は減らす、つまり支援をしていただく額は減らすと。  毎年千百四十億円の拠出というものを九百十億円に減らしましょう、そのかわり鉄道共済の自助努力、その部分の中心点というのはJR負担の二百億円を二百二十億にふやしなさい、清算事業団負担は八百億円を一千億円にふやしなさいと。つまり、要は旧国鉄関係事業主負担を多くして、その分他の年金からの支援額は減らそうと、こういう修正がなされたのではなかったでしょうか。
  169. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 平成元年のこの制度間調整法を国会に提案したとき、このときにも政府案でも一定の自助努力ということを前提にしていたわけでございます。そのときにJR共済に対します実質的な交付金の額というのは平均で千四百五十億円、こういうふうな提案をいたしたわけでございますけれども、これが国会の修正によりまして千百五十億円に減額されたわけでございます。その差額分は鉄道共済の自助努力等によってふやす、こういうことで賄うことにいたしたわけでございますけれども、先ほどの旧国鉄時代事業主としての負担分を先取りした、こういう形で賄ったというふうに承知をいたしております。
  170. 西山登紀子

    西山登紀子君 この修正というのは不十分ではありましたけれども、旧国鉄はもっと事業主責任を果たすべきだ、鉄道共済の破産に事業主としての当然ではありますけれども責任を負い、負担の増を負うべきだという世論を反映した修正であったというふうに思います。  ですから、その当時、この修正案を提案いたしましたのは自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合、こういう方々が一緒になって修正案を出されたわけですね。その修正の要旨の中には、「日本鉄道共済年金財政対策に関して、日本国有鉄道清算事業団の特別負担の追加等による自助努力の額の拡大が行われることを踏まえ、」というふうに修正がなされた。それほど重い、意味のある二百二十億であり、一千億であったのではなかったかと思います。  その二百二十億、一千億は今日まで続けられてきたわけですが、今回の改正にこの努力をなぜお続けにならないのでしょうか。こういう努力を続けていれば支援する側の労働者側の負担は減ったと思うのですけれども、なぜ二百二十億、一千億、このことを継続しなかったのでしょうか。
  171. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 何度も申し上げておりますけれども、清算事業団それからJR各社負担といいますのは、特に清算事業団の分でございますけれども、旧国鉄時代負担すべきであった保険料の支払い不足分を返済する、こういう形での自助努力でございましたし、そういう旨の法定がされているわけでございまして、それがもう既に八年度をもって終了するということですから、大変な財源難になっております清算事業団にこれ以上の負担というのは無理である、こういうふうなことでございます。
  172. 西山登紀子

    西山登紀子君 どうも説明になっていないと私は思います。  この改正案によるその事業負担総額は、清算事業団負担は八千億、JR各社は二千億、しかもこれは二十年の年賦ということになりますと、これを二十年で割りますと、清算事業団負担というのは年間四百億、JR各社は年間百億円、こうなります。こうなりますと、従来の負担の半分も負担しなくてもよいことになるわけです。事業団は四〇%、JRは四五%の負担で済む。一方、支援する側の労働者の負担はふえる、しかも四十年以上負担を義務づけられる、こういうことになるのではないでしょうか。
  173. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先ほどから申し上げておりますように、旧国鉄時代事業主負担保険料の支払いというのが十分でなかった。これを埋めるという形のものが清算事業団負担であったわけでございまして、これは法律でもそのように規定されているわけでございます。これは八年度でもって終了するわけでございます。したがいまして、九年度以降ははっきり言えばゼロになるわけでございます。  一方、先ほど四百億とか百億とおっしゃられましたけれども、これは移換金積立金移換という形で新たな債務を課したものでございまして、従来の特別負担と性格を全く異にいたしておりますので、金額だけを比較するというのはいかがかなというふうに思っております。
  174. 西山登紀子

    西山登紀子君 それは非常に都合のいい御答弁ではないかというふうに思うわけですね。私はこういう非常に責任もあいまいにした甘い仕組み、そういうことについて反対です。国の負担はゼロだし、事業主負担は大幅に減らすし、その分他の全く何の責任もない保険者、労働者に負担をむしろふやして転嫁するという安易な仕組みには到底同調できません。賛成できないわけです。  しかし、私も働く仲間の連帯とか相互援助、これを否定するものではありません。労働者は本来そうした連帯感を持っているものだというふうに思うわけですけれども、しかし、このJR共済の破綻の原因、それを考えた場合にはこういう全く責任のないところに責任を覆いかぶせるというやり方は、どうもこれは道理がないというふうにも思うわけです。  そこで最後に、大臣にお伺いしたいんですけれども、このJR共済の破綻の原因というのは、そもそも国策として戦前戦中はたくさんの労働者を国鉄に雇い入れ、そして人減らし合理化、臨調・行革のもとで一気にリストラ、合理化をするということによって成熟度が二〇〇%以上にはね上がってしまう、こういうことをやった国に責任がある、あるいは事業主に責任があるというふうに思うわけですけれども、支援を義務づけられる保険者や労働者から見れば、国の支援はゼロだし、事業主負担は大幅に減らす、そして自分たちにはこの負担をさらにふやす、こういう改正案にはなかなか賛成しがたい、こういう批判があるということは大臣はお認めいただけるでしょうか。
  175. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 私も国鉄民営化の当時の議論を少し思い出しながら今の西山委員のお話を聞いていたんですが、確かに戦争中あるいは戦後、たくさんの引揚者を当時の国鉄が雇用して相当の人数になってきたというような事情があるとか、あるいはその後の国鉄運営の中で必ずしも、何といいますか、事業主体の意思を超えて過剰な投資があったとか、いろんなことが議論されたこともありますし、また同時に、先ほど来官民格差という言葉もありますが、国鉄共済が当時の厚生年金などに比べてかなり条件がよくて、そういった意味ではやや、何といいましょうか、将来の共済を独自で運営する上では収支決算が長期的に合わない可能性があったにもかかわらずその改革がおくれたといったような議論もあったように記憶いたしております。  また、このバックグラウンドとしては、よく言われることですけれども、鉄道が中心の物流から自動車中心の物流にという大きな変化が背景にあるわけでありまして、そういう点では国鉄といういわゆる鉄道中心の事業体がある、そういうバックグラウンドが変化したことによって就業構造が変わってくる、あるいは就業している人の数が減ってくるということは、これは産業においてはいろいろとあり得るわけですね。  よく言われる例ですが、石炭なども、私は生まれたところが石炭が出る町でしたけれども、生まれたころには石炭の山がたくさんありましたが、高校になったころにはもう石炭の山は一つもありませんでした。他の業種にどんどん転換していましたから余りつぶれはしませんでしたけれども、そういうことも目の前で見ております。  そういう点では、今、西山さんいろいろ言われましたけれども、西山委員が言われたことも部分的にはあるかもしれませんが、私は今も私が申し上げたような大きな背景がベースであろうというように基本的には思っております。このような産業構造変化を特定の運営主体の責任に特化するというのはちょっと適当ではないのではないだろうか。  今回の年金統合という考え方自体が、そういう意味では、今、政府委員からも言いましたけれども、ある年金に属していて四十年間という意味は、つまりは、きょうは若い方が大分傍聴に来られていますけれども、四十年後に年金をもらう人にも負担をしていただくということですから、ある意味ではそれはお父さんやおじいさんがそういうところで働いていたか働いていなかったか、いろいろな例がありますけれども、そういう人、世代を超えて、あるいは業種を超えてお互いに負担しようという意味での統合案というふうに私は理解しておりますので、そういう点では、今回のように、被保険者が著しく減少している年金制度運営に当たって事業主に特別な負担を求めるという形ではなくて、同じ被用者保険の中である程度支え合っていくという形の中での統合というのは一つの方向ではないかと思っております。  したがって、鉄道事業の斜陽化という産業構造変化による影響については、国やJR各社運営主体として全面的に責任を求めるということは必ずしも適当ではなくて、公的年金制度全体の問題として、ある意味では世代を超えてのいわば御負担をいただく部分、あるいは逆に、負担をいただく部分と同時に、それによって給付を受ける皆さんもおられるわけですから、そういうことを含む統合法案にはぜひ御理解をいただきたい、こう思っております。
  176. 今井澄

    委員長今井澄君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時二十二分散会