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1996-07-23 第136回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年七月二十三日(火曜日)    午前十一時一分開会     —————————————    委員異動  六月二十日     辞任         補欠選任      山崎  力君     寺澤 芳男君  六月二十一日     辞任         補欠選任      竹村 泰子君     菅野  壽君      有働 正治君     筆坂 秀世君  七月十五日     辞任         補欠選任      尾辻 秀久君     西田 吉宏君      岡  利定君     塩崎 恭久君  七月二十二日     辞任         補欠選任      塩崎 恭久君     尾辻 秀久君      寺澤 芳男君     山崎  力君      筆坂 秀世君     阿部 幸代君   出席者は左のとおり。     委員長         野沢 太三君     理 事                 笠原 潤一君                 西田 吉宏君                 吉川 芳男君                 星野 朋市君                 山崎 順子君     委 員                 海老原義彦君                 尾辻 秀久君                 景山俊太郎君                 清水嘉与子君                 陣内 孝雄君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 松村 龍二君                 守住 有信君                 牛嶋  正君                 武田 節子君                 山崎  力君                 山下 栄一君                 今井  澄君                 菅野  壽君                 阿部 幸代君                 本岡 昭次君                 水野 誠一君                 田  英夫君                 栗原 君子君    国務大臣        大 蔵 大 臣  久保  亘君        法 務 大 臣  長尾 立子君        文 部 大 臣  奥田 幹生君        厚 生 大 臣  菅  直人君        通商産業大臣   塚原 俊平君        労 働 大 臣  永井 孝信君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    倉田 寛之君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  中西 績介君        国 務 大 臣        (沖縄開発庁長        官)       岡部 三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  臼井日出男君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       田中 秀征君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 秀直君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  岩垂寿喜男君         —————        会計検査院長   矢崎 新二君         —————    事務局側        常任委員会専門        員        貝田 泰雄君    説明員        内閣官房内閣外        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房外政審議室        長        平林  博君        国際平和協力本        部事務局長    高野幸二郎君        警察庁警備局長  杉田 和博君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛庁教育訓練        局長       粟  威之君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 康成君        経済企画庁総合        計画局長     坂本 導聰君        科学技術庁原子        力安全局長    池田  要君        環境庁自然保護        局長       澤村  宏君        法務大臣官房長  頃安 健司君        法務省刑事局長  原田 明夫君        公安調査庁長官  杉原 弘泰君        外務大臣官房審        議官       大島 賢三君        外務大臣官房審        議官       重家 俊範君        外務大臣官房審        議官       古屋 昭彦君        外務省北米局長  折田 正樹君        大蔵大臣官房審        議官       尾原 榮夫君        大蔵省主計局次        長        細川 興一君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        国税庁徴収部長  加納 將史君        文部大臣官房総        務審議官     富岡 賢治君        厚生大臣官房総        務審議官     中西 明典君        厚生省健康政策        局長       谷  修一君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省児童家庭        局長       高木 俊明君        農林水産政務次        官        野間  赳君        農林水産省畜産        局長       熊澤 英昭君        通商産業省機械        情報産業局長   渡辺  修君        資源エネルギー        庁長官      江崎  格君        運輸政務次官   北沢 清功君        運輸省自動車交        通局長      荒谷 俊昭君        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        建設省住宅局長  小川 忠男君        会計検査院事務        総局次長     平岡 哲也君        会計検査院事務        総長官房総務審        議官       牛嶋 博久君        会計検査院事務        総局第一局長   深田 烝治君        会計検査院事務        総局第二局長   諸田 敏朗君        会計検査院事務        総局第三局長   山田 昭郎君        会計検査院事務        総局第四局長   小川 光吉君        会計検査院事務        総局第五局長   森下 伸昭君    参考人        日本輸出入銀行        総裁       保田  博君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○平成六年度一般会計歳入歳出決算平成六年度  特別会計歳入歳出決算平成六年度国税収納金  整理資金受払計算書平成六年度政府関係機関  決算書内閣提出) ○平成六年度国有財産増減及び現在額総計算書  (内閣提出) ○平成六年度国有財産無償貸付状況計算書(内  閣提出)     —————————————
  2. 野沢太三

    委員長野沢太三君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る六月二十一日、有働正治君及び竹村泰子君が委員辞任され、その補欠として筆坂秀世君及び菅野壽君が選任されました。  また、去る七月十五日、尾辻秀久君及び岡利定君が委員辞任され、その補欠として西田吉宏君及び塩崎恭久君が選任されました。  また、昨二十二日、筆坂秀世君及び塩崎恭久君が委員辞任され、その補欠として阿部幸代君及び尾辻秀久君が選任されました。     —————————————
  3. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が三名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事笠原潤一君及び西田吉宏君を指名いたします。  なお、あと一名の理事につきましては、後日これを指名いたします。
  5. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 平成六年度決算外二件を議題といたします。  本日は、前回に引き続き、全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 おはようございます。休会中で、しかも大変暑いさなかですが、よろしくお願いをいたします。  早速質問をいたします。  まず、リヨンサミットについて、ここでしかお尋ねする場がございませんので、ちょっとお尋ねをいたします。  サミットの際に、橋本総理は、クリントン米大統領と会談されまして、日米経済問題を初め、日本景気拡大、ガイドラインの見直しなどについてかなり突っ込んだ話し合いがなされたように伝えられております。特に、日米間で懸案になっています半導体保険の二分野の交渉を七月末までに決着させると確認されたと言われておりますが、もう七月の末であります。どのようにされるのか、お尋ねをいたします。
  7. 榊原英資

    説明員榊原英資君) 保険協議についてまずお答えいたします。  日米保険協議につきましては、リヨンでの日米蔵相会談及び日米首脳会談を踏まえて、御指摘のとおり七月の末までに合意に達するよう鋭意協議を行っているところでございます。  先週も十七日、十八日、東京で、私ども黒田財金研所長と、前国金局次長でございますけれどもサウスウイックUSTR代表補代理との間で会合を行いましたけれども、まだ依然として両国の意見の隔たりがかなり大きゅうございます。今週中に局長レベル、向こうはシャピロ大使でございますけれども、二十五、六で協議を行うということを決めておりまして、きょうじゅうにはその場所が決まるだろうということでございますけれども、いずれにせよ第三国で二十五、六、鋭意協議を進めるということにしております。  いずれにせよ、米側の要求は、主要分野における規制緩和、第三分野における規制の維持または拡大ということでございますけれども、私どもとしては橋本政権の基本的なスタンスでございます規制緩和という流れに沿って保険協議を決着したいというふうに考えております。
  8. 渡辺修

    説明員渡辺修君) サミット日米首脳会談におきまして、七月末までに双方が納得いく形で半導体問題を解決しよう、こういうことになったのは先生御指摘のとおりでございます。  我が省といたしましては、本問題についてはWTOの整合性確保市場メカニズムの尊重、さらに双方向性確保という三つの原則を立てまして、従来から議論を続けてきたところでございます。  先般の両首脳合意に基づきまして、現在鋭意交渉いたしておりますけれども半導体をめぐります世界的な諸課題に取り組むために政府レベル主要国政府間会合を設けよう、さらに民間レベル世界半導体会議を設置しよう、その両方を組み合わせることによって対応しよう、こういうことで現在対応しておるところでございます。  加えて先般、塚原通産大臣がニュージーランドのAPEC貿易大臣会合に参加いたしまして、バーシェフスキUSTR代表代行バイ会談をいたしたわけでございますが、その場で、さらに今の二つの会議に加えて官民合同セッションというのを設置をいたして、民間でのいろんな政策提言というのを一緒に聞いて議論するというワーカブルなものにしたらどうか、こういう提案も投げたところでございます。  こういうものも踏まえまして現在アメリカで検討しておるところでございます。七月末までに双方が受け入れ可能な結果を得るべく全力を尽くしてまいりたいと考えております。
  9. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 非常に大事なことですし、首脳同士が七月末までにやるりと約束されたわけでありますからきっちりやっていただきたいと思います。  次に、外務省は今回のサミットの意義について、日本地域分野を問わずバランスのとれた貢献を行う意思能力を持った国であることを強く印象づけたことにあると言っておられるんですが、自画自賛でなくて客観的にこういうことがどういう場面で証明されたのか、改めてお聞かせください。
  10. 重家俊範

    説明員重家俊範君) 先般のリヨンサミットにおきましては、経済政策あるいは国際貿易問題などにつきまして議論が行われたわけでありますが、このほかにも我が国としましては、アジア太平洋の視点を議論に反映させることが重要だと考えておりまして、それに従いまして途上国の開発問題、国連等国際機関の改革あるいは地域情勢問題につきまして朝鮮半島情勢重要性というようなことを力説いたしまして、そういう意味イニシアチブをとりバランスよく積極的に議論に貢献できたと考えております。  さらに、橋本総理からは社会保障を含む福祉問題につきまして、各国知恵経験を分かち合って、各国が持続可能な社会保障制度を確立していくことが重要であるということを指摘されまして、関係首脳の支持を得たところでございます。
  11. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 このサミット開幕直前にサウジアラビアで米軍施設爆破テロ事件が発生して、クリントン米国大統領の強い呼びかけにより、サミットの冒頭においてテロ非難宣言を採択し、具体的なテロ対策を話し合うため七月にもパリにおいて閣僚会合が開かれることになりました。  オウムのサリン事件により世界を震憾させた我が国としては、この問題に積極的に取り組んでいく必要がありますし、特に、テロ目的のための核物質生物及び化学物質などが使用されることの脅威に対して真剣に検討していかなければなりませんが、この閣僚会合にどういう方針で臨まれるのか、お答えください。
  12. 杉田和博

    説明員杉田和博君) 最近の国際テロ情勢は、昨年我が国において発生いたしました地下鉄サリン事件、さらにまた、委員のただいま御指摘のございました六月に発生をしたサウジでの米軍施設爆破事件等、重大かつ凶悪なテロ世界各地で相次いでおる大変深刻な状況であると言えると思います。そしてまた、テロ組織、この活動範囲各国にまたがる世界的な規模で展開をされておるという実情にあります。  こういうテロに対しまして効果的に対応するためには、何よりもまずテロ組織に関する情報、さらにまた捜査技術テロ防圧方策、こういうものについて各国間が積極的にやはり協力し合うことが不可欠であるということを強く認識いたしております。  昨年のハリファクスのサミットにおいて、議長声明がありまして、それを受けまして十二月にテロ関係閣僚会合がございました。その席におきましても、我が国から化学生物、こういったテロに関する専門家会合の開催を提案いたしております。ことしもまた、リヨンサミットを受けまして、七月の末にはテロ関係閣僚会合がございます。  こうした世界的なテロに対する協力の機運、こういうものが高まった今、ただいま申し上げた各国間の協力というものが具体的に推進されますよう一層努力をしてまいりたい、こういった基本的な考え方で臨みたいと考えております。  以上でございます。
  13. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 先ほどの答弁の中にもありましたけれども橋本総理サミットにおいて国際貢献策等を積極的に提言されました。特に、福祉政策の第一人者と自他ともに認める総理世界福祉イニシアチブの構想を提案されたことはタイムリーで、各国首脳の賛同を得て、橋本ペースをそういう意味で印象づけたと思います。  今後、各国知恵経験を分かち合うことになっておりますけれども、具体的に日本はどんな知恵経験を出すのか、お尋ねいたします。
  14. 中西明典

    説明員中西明典君) 橋本総理が提唱されました世界福祉イニシアチブにつきましては、現在、内閣外政審議室長が主宰されております各省庁から成る世界福祉イニシアティヴ関係省庁局長等連絡会議でその具体化方策について検討しているところでございますが、厚生省といたしましては、社会保障あるいは福祉といった分野を担います主要官庁といたしまして、各国がその歴史や経済状況によってそれぞれ異なるニーズを有するという点を十分踏まえながら、世界福祉イニシアチブに積極的に貢献していかなければならないというふうに考えております。  具体的には、開発途上国につきましては、公衆衛生あるいは環境衛生医療福祉サービス所得保障等、広い意味での社会保障分野におきます我が国のこれまでの知識経験、蓄積、これをできるだけ途上国参考としていただけるような事項を中心としまして取りまとめまして、これを情報提供して参考に供するということにしていったらどうかと考えております。  また、先進国相互間につきましては、OECDの場等を活用いたしまして、高齢化に伴う年金や医療さらには介護等先進国に共通する課題につきましてそれぞれの経験知識を分かち合えるよう努力していきたいと、かように考えております。
  15. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 次に、外交、安全保障についてお尋ねをしてまいります。  先週なんですけれども与那国島のある方にお会いいたしました。三月二十三日の台湾における選挙の前後に中国が行いました一連の軍事演習のことを大変心配しておられました。特に三月八日から十五日の間にはミサイル発射訓練が行われましたけれども着弾区域与那国の極めて近くでありましたために、島民などに重大な不安を与えたのでありますけれども外務省はこれについてどういう対応をとったのか、お答えください。
  16. 大島賢三

    説明員大島賢三君) 去る三月の中国によります台湾周辺での軍事演習の際に、ミサイル発射訓練等も行われたわけでございますけれども、そのミサイル発射訓練区域一つとして、着弾区域一つ与那国島から六十キロの距離にありました。  そういうこともございまして、与那国島民方々が大変不安を覚えられたと、こういうことがございました。さらに、我が国航空海運漁業等への影響もございましたので、早速、東京及び北京の大使館を通じまして外交的に申し入れを行いました。まず、中国の自制した対応を要求すると同時に、航空海運等への安全の確保という点をも踏まえまして申し入れを行いました。さらに、三月末には日中外相会談というものもありましたので、軍事的圧力台湾にその立場を伝えようとするやり方には疑問を呈せざるを得ないということを池田外務大臣から銭其シン外相に対して申し入れを行ったところでございます。
  17. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 あの中国ミサイルは、あそこまでしか飛べない能力ミサイルがあそこまで飛んできたわけじゃないんですね。十分日本まで届く能力のあるミサイルをあそこに落とした、こういうことであります。ですから、極めて悪意があれば、あそこに落とすよと言ってそのまま日本に向けて発射してももうどうしようもない、あるいは悪意はなくても一つ間違えば飛んでくるかもしれない。そういうミサイルを言うならばあそこまでぶち込まれたわけでありますから、普通の国なら目をむいて怒るんだろうと思うけれども、どうも日本がそこまで怒ったという印象がない。このことはそのことだけをまず申し上げておきたいと思います。  実は、ある方といいますのは、私と同じ姓で尾辻さんという方でありまして、与那国漁業組合組合長さんなんであります。この尾辻さんの不安、不満というのはこの問題だけではないんです。  台湾平成六年の夏から継続的に与那国島付近海域射撃訓練を行っております。この射撃訓練が行われている海域というのは近隣漁業者にとって極めて重要な漁場であります。しかも、尾辻さんが言われるには、いいところだと思って、いい魚がとれるところだと思って一生懸命頑張り出したら、途端に、今までそこでは訓練をやっていなかったのにここが訓練区域だと言い出した、こういうことであります。非常に漁獲量も減っておりまして、死活問題になっております。  しかも台湾は、沖縄は日本の領土とは認めない、こうはつきり言っておるようでありますけれども政府は毅然とした姿勢で臨んで、台湾側に速やかに訓練を中止させるべきだと思いますけれども、これまたどういう対応をとっておられるのか、お聞かせください。
  18. 大島賢三

    説明員大島賢三君) 御指摘のとおり、与那国島近辺におきましては、先ほどの中国軍事演習のほかに、台湾自身が近くの海域で継続的に射撃訓練を行っておるわけでございまして、まさにこの射撃訓練地域近隣の、特に与那国島漁業者方々にとっての重要な漁場になっておりまして、外務省としましても関係者方々から申し入れの要請を累次受けておるわけでございます。  そういうことを受けまして、今まで台湾との関係におきましては政府間の関係がございませんので、交流協会あるいは亜東関係協会、こういったルートを通じまして、さらに貿易経済会議という場も別途ございますので、こういう機会も通じまして、台湾側に対しまして、まず安全が確保されない限り訓練は中止されるべきであるという申し入れ、さらに、多くの場合に非常にショートノーティスでこの訓練の予定が発表されますので、これが非常に漁業者方々にとって難しい問題を提起しておりますので、少なくとも事前に通報すべきである、それから何よりも影響のないところに射撃訓練区域を移すべきである、こういうことで累次の申し入れを行っております。  その結果、一昨年あたりは月平均にしますと十日とかあるいは月の半分ぐらい射撃訓練が行われておりましたけれども、ことしになりまして訓練日数がかなり減ってきているというふうに承知をいたしております。しかし、まだまだ影響があるわけでございまして、住民の方々に大変な大きな影響がございますので、引き続き申し入れを行いまして、そういった損害が起きないように申し入れを続けてまいりたい、こういうふうに思っております。
  19. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 竹島の問題もあります。尖閣諸島の問題もあります。先月でしたか、与那国に行かれた衆院外務委員会の皆さんへ、町長はぜひ自衛隊に来てほしいと言われたそうでありますけれども組合長は、また日本は我々を見殺しにするんだろうと、そこまで言っておられました。どうぞ政府が国と国民を守る強い意思を示していただくようにお願いをしておきます。  今、中国ミサイルのことを言いました。北朝鮮ミサイルのことも言われております。一体ああいうミサイル日本に向かって発射されたら日本はずばり守れるんだろうか、そのことをお尋ねしたいと思いますし、そのミサイル防御に対して今まで言われていたTMD、何か最近は言葉が変わったとも言われておりますが、要するにTMDに対する研究、これはどうなさるのか、防衛庁お尋ねをいたします。
  20. 秋山昌廣

    説明員秋山昌廣君) ただいま中国あるいは北朝鮮ミサイルについて御質問がございました。  この具体的なミサイルの飛来といった仮定の事態に対する御答弁というものは差し控えさせていただきたいと思いますが、現在、我が国といたしましてペトリオットというシステムを持っておりますけれども、それも含めまして、いわゆる弾道ミサイルに対するそういった対処をすることを想定した防衛システムというものは保有しておりません。特に長射程の弾道ミサイルにつきましては、そもそもこれに対処するシステムを現時点で配備しているという国があるとは承知していないところでございます。  しかし、こういった弾道ミサイルに対する防衛といったものが我が国の防衛政策上も大きな課題であるというふうに認識しておりまして、この弾道ミサイル防衛の必要性、効果、こういったものを論じるために、まずは弾道ミサイルの脅威、あるいは弾道ミサイル防衛システムの具体的な内容、その可能性、特に技術的な可能性、そしてかなり大きな問題だろうと思いますけれども費用対効果、効果のあるシステムに一体どのぐらい金を投入しなければいけないのかといったような問題について十分検討する必要があると考えているところでございます。  本研究につきましては、やはり世界を見ましても大変アメリカが進んでいるという事実がございますので、我々といたしましても、多くの知見、特に経験知識を有する米側協力を得まして、この弾道ミサイルに対する研究を日米共同で進めているところでございます。  我々といたしましては、極力この研究を早く済ませまして、政策判断のために必要な資料あるいは考え方を取りそろえたいと考えているところでございます。
  21. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 今までのお話を伺っても、どうも日本という国が、国を守るということで心もとないなという思いをいたします。その心もとなさの一番の基本にあることが、自衛隊の訓練が十分になされないことではないかと私は思っております。この後、平成六年度の決算について具体的に審査をしていくわけでありますから、平成六年度においても自衛隊が十分な訓練ができましたかということをお尋ねしたい気もしますが、申し上げたように十分な訓練はできていない、こういうふうに私は思っておりますので、質問まではいたしません。  その十分な訓練ができないこと、理由は金と場所がないことだ、こう考えます。したがって、十分な訓練が日ごろできていないからこのところ訓練での事故などというのも起きているんだろうなと考えます。  そこで、まず金のことでありますけれども、今シーリングを目前にしておりますし、大蔵大臣のこのところの御発言もありますから大変気になることであります。普天間の基地移転の経費を防衛関係費の枠組みで処理するのか。こんなことになったらただでさえない金がますますなくなると私は思いますので、大変重大事だと考えますから、まず防衛庁の見解をお尋ねいたします。
  22. 臼井日出男

    ○国務大臣(臼井日出男君) お答え申し上げます。  ただいま委員指摘をいただきました普天間を含むSACO関連経費につきましては、私も閣僚懇におきまして幾度か発言をさせていただきまして、去る四月十六日の閣議決定の趣旨に従いましてその的確かつ迅速な実施が確保できるよう、必ずしも従来の慣行や発想にとらわれない、そうしたやり方で経費面及び執行面での仕組みを確立することが必要であると、このようにお話を申し上げているところでございます。  七月十六日の政府・与党首脳連絡会議の場におきまして、与党側から平成九年度概算要求基準設定につきましての基本的な考え方が示されました。その中で、沖縄関連経費につきましては現時点では具体的に所要額が明確ではない、しかし、その重要性にかんがみ、予算編成過程においては別途措置するということにされたわけであります。  また、七月十九日にはシーリングにつきまして、これまでの政府・与党の議論を受けまして、大蔵大臣、経済企画庁長官、官房長官そして与党政策調整会議の三座長による六者会談におきまして、沖縄関連経費については閣議了解文に予算編成過程で重点的に検討と明記する旨が了承されたというふうに伺っております。これにつきまして、沖縄関連経費の取り扱いについて一定の方針が示されているものと私どもは理解をいたしております。  SACO関連事業の取り扱いにつきましては、四月十六日の閣議決定の基本的な考え方というものに従いまして、その趣旨に従って十分かつ適切に措置が講じられるようにすべきであると、このように考えておりまして、今後これらの問題につきましては政府全体で調整していくべきものと、こういうふうに理解をいたしています。
  23. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 政府の考え方だとか連立与党の考え方というのは今お述べになりましたから、もう繰り返し申し上げません。  要するに、別途措置するというのが結論だと私は思っておりますが、大蔵大臣のこのところの御発言もありますから、大蔵大臣のお考えもお聞かせください。
  24. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) 平成九年度の予算に関します概算要求基準につきましては、七月に入りましてから四回にわたる閣僚懇談会で論議が行われたところでございます。そして、その上に立って、今防衛庁長官も申されましたように、首相の御指示もございまして、私と官房長官、経済企画庁長官の間で七月末の閣議了解に向けての取りまとめを進めている段階でございます。  なお、その間において与党三党の方針に関する取りまとめもいただきましたので、与党三党の政策責任者との間で協議を行って合意を見たところでございますが、今お話がございましたように、最終的に私どもがどう決めますかは、七月二十九日、三十日にかけての与党との協議並びに閣議の議論を経た上で最終的な閣議了解といたしたいと思っております。沖縄問題につきましては、現在、日米特別行動委員会並びに沖縄県との間に行われております作業委員会等の推移を十分に把握しながら、予算編成の過程において重点的に検討するということを明記するという方向で検討を進めておりまして、このようになりました場合に、その内容が別枠か内枠かというようなことについては、沖縄に関します経費の性格がどういうふうに位置づけられていくかということとも関連をして、最終的には内容的に判断されるものと思っておりますが、予算編成過程において重点的に検討するという方針の上に立ってそのような検討が進められるものと考えております。
  25. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 時間もありませんからこれ以上の議論はいたしませんが、どうぞ訓練ができない自衛隊になりませんように、このことだけはお願いを申し上げておきます。  自衛隊の金のなさで日ごろ思っていることなのでちょっとこの際聞かせていただきたいと思うんですが、例えて言うと政府専用機であります。あるいはまたVIP輸送用のヘリであります。こうしたものは自衛隊が使うわけではありません。使うのはほかの役所であります。ところが金は自衛隊が出す、こういうことになります。そういうことで金のない自衛隊にますますしわ寄せが来ると思うんですが、これについて防衛庁はどういうふうに考えておられるか、お聞かせください。
  26. 秋山昌廣

    説明員秋山昌廣君) 御質問の国賓等の輸送に関する点でございますけれども、本件につきましては、自衛隊法百条の五で「自衛隊は、国賓等の輸送の用に主として供するための航空機を保有することができる。」という規定を含めまして、国賓等の輸送が自衛隊の業務になっているところでございます。  そして、この百条の五に基づきまして、各省庁からの依頼により行う国賓等の輸送につきましては、当該輸送が防衛庁の任務とされておりますので、政府専用機等の維持、管理、運航に直接かかる経費につきましては防衛庁が負担しているところでございまして、これにつきましては予算でも積算をして計上しているということであります。  なお、任務運航時における依頼省庁の搭乗者の荷物の空港までの集配等々、依頼省庁の負担が適当であるという点については依頼省庁が負担しておりますが、政府専用機等あるいはヘリコプターの運航経費等は防衛庁が負担をするということで、現在のところこの考えを変更するつもりはございません。
  27. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 先ほど、金と場所がないから訓練が十分にできないんではないかと、こう申しました。  その場所の方ですけれども、これだけ兵器が高性能化しますと、国内での訓練というのは無理になっているものがかなり出てきていると思います。  それについてどういうふうに認識をしておられるのか、それからまた、今後そういう訓練をどうしようとしておられるのか、このことをお尋ねいたします。
  28. 粟威之

    説明員(粟威之君) 御指摘のように、ミサイルの長射程化とか航空機の性能向上に伴いまして、従来から必ずしも十分な広さを持っていなかった演習場でございますとか射場でございますとか訓練空域等の制約が増大していることは先生御指摘のとおりでございます。  このため、シミュレーター等の訓練器材を大幅に活用するというのが一つでございます。それから、ペトリオットでございますとかホークでございますとか、そういうようなミサイルの実射訓練等国内では実施困難な訓練を従来から国外で派遣して行っております。それで練度の維持向上に努めてきたところでございます。  平成八年におきましても、今年度でございますが、新たに、今までやっていなかった九〇式戦車をアメリカに持っていきまして、走行間射撃とか、そういうような実射訓練をやる。さらに、C130型飛行機による戦術空輸訓練等をアメリカで実施するというようなことを計画しておりまして、今後ともこのような各種の施策を講ずることによって適切に対処してまいりたいと、こういうふうに考えておるところでございます。
  29. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 いずれにいたしましても、どうぞ十分な訓練ができるような今後の努力をお願いしておきます。  今、ゴラン高原のコステルス司令官が来ておられて、それで、武器使用についても、自衛隊員の武器使用は他国の兵士が攻撃を受けた際にも正当防衛として認められるべきだという見解を示されたりして、また波紋が投げかけられておるんですが、このPKO協力法の見直しについてお尋ねをしたいと思います。  二点申し上げます。  一点は、もう余り時間もありませんから細かく申し上げませんが、武器使用のことであります。これは、派遣されておる隊員が非常にプレッシャーを感じておるということは今さら申し上げるまでもないことであります。この問題が一つです。  それから、PKOが派遣されてから、私もカンボジアにも二回、モザンビークにも二回出かけて隊員の皆さんともいろんな話をしました。隊員の皆さんがそのときにそのことを問題にして愚痴をこぼしたわけではありませんけれども、私が思うにちょっとひどいんじゃないかなと思うことを一つ申し上げます。  それは手当の問題であります。現地に行って、当然というか、きょうは休日よという日があります。そうすると、休日よという日は手当を払わない、こういう仕組みになっておりますけれども、PKOへ出かけていって、現地に行って、きょうは休日だと言われるから手当なしという、これはどう考えてもひどい話だと思って最初から私は言っているんですが、今なお解決されない。あんな暑いところへ行って、休日だからといってテントの中に寝かされて手当なしというのは私はないだろうと思うし、しかもそのこと自体が、もう危険な場所に行っていていつ何どき何が起こるかわからないし、休みだと言われたってまるっきり休みなわけはないし、何で手当を払わないんだろうと思うんです。  この二つを申し上げて、要するにPKO協力法の見直しをどうしますかということをお尋ねいたします。
  30. 高野幸二郎

    説明員高野幸二郎君) まず、最初にお尋ねの武器使用原則の問題でございますが、委員御承知のとおり、法律の規定に基づきまして、国際平和協力法の見直し作業が現在取り進められているところでございます。その中で、この武器使用原則の問題につきましては、ただいま委員指摘の点等々、私どもも十分な問題意識、強い関心を持って取り組んでいるところでございます。  それから、第二点目の手当の問題でございますが、これは既に委員御承知とは存じますが、国際平和協力法ができまして国際平和協力手当というものが導入されました際に、この手当の性格でございますが、立ち上がりの段階から特殊勤務手当、いわゆる実績給という考え方に基づく手当として導入されたものでございますから、どうしてもいわゆる日当的な考え方といいますか、働いた特定の業務に対して支払われるということで、制度上、そういうことで立ち上がったものでございますから、なかなか変更は難しいということでございますので、そういうことで御理解いただきたいと存じます。
  31. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 要するに、隊員の士気ということ、行っている人たちは金のことを本当にとやかくは言いませんけれども、我々の誇りというのは名誉だと、そう言った人がいます。そして、そんな気持ちで頑張っているんですけれども、やっぱり士気を高めるということは必要なことだし、そういうところでも一つの判断にはなると思いますので、今後の研究をお願いしておきます。  士気ということで、先日沖縄へ行ってちょっとこれはかわいそうだなと思ったことがありますので、質問じゃありませんけれども一つだけ言わせておいていただきたいと思います。  それは、平成二年に沖縄県の要請で出動した、急患の輸送に出ていった飛行機が落ちて四人死んだ事故がありました。その七回忌があったんですけれども、沖縄県が要請したんだから、何はともあれ七回忌なんだから要請した側として出てきてくださいよと沖縄県に頼んだらしいんですけれども、知事はおろか三役も出てこられなかった。このことに隊員諸君は非常にショックを受けておりました。  イデオロギーのことだとか自衛隊に対する考え方とかというのはいろいろあるんでしょうけれども、要請で死んで、七回忌、出てきてくれてもいいのになと、この際申し上げておきたいと思います。別に質問じゃありません。  残された時間で沖縄のことをお尋ねしたいと思いますけれども、もう時間がありませんので、ずばり土地使用の問題です。官房長官が特別立法でいこうと言われた、それからその際に自衛隊用地も含めて考えようと言われた。私も全くそのとおりだと思っておりますが、これについて官房長官のお考えを改めてお聞かせください。
  32. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) 過般、ある場所で個人的な講演を頼まれましてお話を申し上げた中に、特別立法は全国対象にといういわば記事が載っておりますから、多分そのことを援用されたと思うんですが、個人的な見解とは申せ、私は常日ごろそのように思っております。  それは、特に今、来年の改定をめぐって沖縄の問題に問題が集約をされがちでありますが、本来、自衛とは何なのかということを考えますと、自衛の本体は自衛隊であります。その自衛隊を規制する、例えば土地を特別取得する法律が格別に特別法としてないのに、なぜ沖縄にある、いや、米軍の基地にそのものが別個にあるのかどうか、私は残念ながらわかりません。  本来、自衛というのは国の最高の責任というか義務であろうと私は思いますし、平たく言えばそのお手伝いを願うのが米軍であります。確かに自衛隊のみで日本の自衛が完成をするわけではありませんから、少なくとも日本の国土全般における軍用地の確保、自衛隊用地の確保をどうするかという観点があってしかるべしと。そして、そのお手伝いを願う米軍の軍用地がどうあるべきか、こういうのを考えれば沖縄だけを対象にして物事を考えるべき本質的な問題ではない、こういう考えを常日ごろ持っているわけであります。  今お話を聞いている中で、幾つか技術面や装備面や訓練面でもう少し充実をすべきだというお話がございますが、もうちょっと本質的なものは有事において自衛隊はどうすれば活動ができるのか、その問題を全然詰めないで、私に言わせれば枝葉末節と言ってはしかられますが、装備がなければあるいはその体制になってもできませんから訓練も大切でありますが、自衛隊がよって立つ基盤は何にあるのか、そういう問題を考慮に入れないでやるところに問題があるのではないのかなという気持ちを常日ごろ持っております。  しかし私は、今度の沖縄の問題ではなるたけ特別立法というよりは今ある法律をいかに御理解いただいて処理ができるかどうか、そういうことに力点は置かれるべきだと。しかし、国民が挙げて自衛とは本来何なのか、そういう問題をもう一回考える場合にはこの駐留軍の特措法だけで済む問題ではないな、こういう感じがいたしますので、私見を申し上げたわけであります。
  33. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 沖縄の問題を語るとぎすぎすすることも多いですから、もう時間が余りありませんが、最後に開発庁長官に沖縄の夢を聞かせていただいて、私の質問を終わりにさせていただきます。よろしくお願いいたします。
  34. 岡部三郎

    ○国務大臣(岡部三郎君) これはもう先生十分御承知のとおり、沖縄は第二次大戦におきまして唯一国内では戦場となりました。これによって当時の県民の四分の一を超える人たちのとうとい命が失われたわけであります。また、戦後も長い間アメリカの施政下にありました。  さらに、昭和四十七年に本土復帰後も全国の米軍基地の四分の三が沖縄にある。人口は一%でございますから、単純にこれを計算しますと、一人当たりの平均の米軍基地面積は沖縄は三百倍だということになるわけでありまして、こういう大きな負担を強いられておる、それによって大変な困難な問題を抱えておるというのが沖縄の現状であるわけでありますから、振興開発を図る上においては、やはりこのことをまずしっかりと考えて、これを踏まえた振興策でなければならないと思います。  復帰後、三次にわたる振興開発計画を立てまして、これに基づく事業をやってまいりました。今、基盤整備の面では本土との格差が大分縮まってまいりました。中にはもうなくなったものもありますけれども、工種によってはまだ七、八〇%にとどまっているものもある。したがいまして、まず振興開発に当たっては、こうした既存の計画によって定められた事業を早期に完成をするということがまず第一であろうと思います。  それから二番目は、先般のSACOの中間報告で返還の方針が決められた十一の施設の跡地利用をしっかりやって、沖縄の経済の発展なり県民の所得の向上、あるいは雇用の増加につなげていくという問題であろうと思います。  そして最後は、新たな振興策というものを今立てるべき時期であるというふうに私どもは考えております。基盤整備だけやってもなかなかそれが産業の振興につながらないへそこに沖縄の問題があるわけであります。この点につきましては、私も先般沖縄へ参りまして知事さん初め県の幹部の方々ともいろいろ議論をいたしました。今はその内容を現地の総合事務局と県の間で詰めてもらっております。これができましたら、また関係各省にもお願いして、ぜひ実現をしてまいりたい。  こういうことによって活力のある、潤いに満ちた沖縄を実現するために力いっぱい努力をしてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
  35. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 終わります。
  36. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 厚生大臣には、前国会におきまして介護保険法の提出に最後まで頑張ってくだすったというふうに伺っておりますけれども、結局提出は見送りになりました。お年寄りを抱えている方々にとってはこの介護の法案はもう本当に一日も待っていられない法案でございます。法案の早期成立に向かって今後の取り扱い方針をぜひ大臣にお伺いしたいわけでございます。  特に前回、法案提出の最大のブレーキになったのは、市町村の財政問題の不安でありますとか、あるいは介護の方々対応でありますとか、そういった直接に法案の実施にかかわる関係者の十分な理解が得られなかったということにあったと思います。  そういう意味では、こういった問題をどうクリアして次期の国会に提出されるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  37. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) もう申すまでもないかもしれませんが、この介護保険の問題というのは高齢期における国民の最大の不安要因となっている問題でありまして、老人保健福祉審議会などからの答申を踏まえて前国会に関係法案を提出するように最後のぎりぎりのところまでいろいろ努力をしたところであります。  しかし、今、委員からもお話がありましたように、最終場面になって、保険者として給付、財政の両面において大きな役割を担っていただくことを期待しております市町村関係者の理解が必ずしも十分に得られなかったこと、また国民の間にももう少し十分な理解が必要ではないかという、そういう御指摘もあったことなどから前国会への提出というところまでは残念ながらいきませんでした。  会期末の六月の段階で、与党三党の責任者会議、政策調整会議の座長によって、介護保険制度の創設に向けて積極的に取り組んでいくこと、さらには、その創設に当たっては安定した財政運営や市町村における円滑な事務執行、民間活力の積極的な活用など、五つの懸案事項の解決を図りながら作業を行い、次期国会に法案を提出するという形で合意がなされました。また、この合意を私も閣議で報告いたしまして、閣議の了解もいただいたと理解をいたしております。  厚生省としては、与党の合意事項を踏まえ、七月から八月にかけて町村会、市長会等の関係者との協議を精力的に進めるとともに、介護保険制度における民間活力のあり方についても事業者の方々との意見交換を行っているところであります。  こういうことに関連しまして、与党の皆さんも、お聞きするところ、五回にわたる公聴会を与党として開かれるということも聞いておりますし、また厚生省としても、一日厚生省というのを各地で開く予定をできれば三度ぐらいは少なくともやりたいと思っておりましてへそういう中でもいろいろな御意見をお聞きしたい、あるいはさらに、いろいろなグループがシンポジウムなどをやられるところにも私自身を含めて積極的に出ていって、御意見を聞かせていただきながら議論を推し進めていきたいと思っております。  こういう調整を含めて、次期国会に何とか五項目の懸案事項についての御理解をいただいて法案を出していきたいと思っておりますし、また、この点につきましては総理の方からもいろいろな機会に積極的な御意見を表明していただいておりますので、内閣一体となって進めていくことができる、そういうように思っているところであります。
  38. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございます。  さきの厚生省案におきましては、在宅サービスをまず平成十一年に始める、そして施設サービスは十三年からというふうにずれがあるわけでございますけれども、どうして同時に出発できる計画でないのか、その辺の理由についてお伺いしたいと思います。
  39. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) お答えをさせていただきます。  先生今御指摘のございましたように、さきに御提案を、国会提案まで至りませんでしたけれども、法案をつくらせていただきました中の介護保険制度案におきましては、市町村におきます施行準備、あるいは新ゴールドプランによります施設整備等を考慮いたしまして、準備期間をしっかり置くということで、平成十三年度からをいわば完全実施と、これは平成十三年度をめどにということで、三年から六年の間で政令で定める日としておりますが、そのめどを一応十三年度ということで完全実施をするというふうにしておったわけでありますけれども、在宅サービス部門については平成十一年度から先行的に実施をしようという案になっておったことは御指摘のとおりでございます。  在宅サービスにつきましては、全体として見ますと、今後の方向として、できるだけ要介護の高齢者の方々地域で在宅におけるサービスを受けながら地域での生活をしていただくということが理想であろう。そういう意味から申しますと、施設サービスに比べましてそういった在宅サービスの体制整備というものがまだ十分でないということから、この介護保険制度の導入をひとつ契機にいたしまして、民間事業者の参入というようなことも進めながら在宅サービスの基盤整備を進めてまいりたいという、いわば意図のあらわれというのが一つでございます。  これに対しまして施設サービスということは、その性格からいきまして、入所ができた方、そして入所ができなかった方というのが、サービスを受けるという立場からいきますとオール・オア・ナッシングになってしまいます。そういったことになりますので、特別養護老人ホームの入所待機者を解消していく、あるいは一般病院等の施設につきまして施設整備を伴いながら介護施設に転換をして、そういう体制づくりをしていただくというようなことを努力する、そういった期間も必要ではないかということを考えまして今のようなことにいたしたわけであります。  なお、在宅サービスの場合には、今回の仕組みで考えております中でも現実的に給付可能な水準というものがあるわけでありますけれども、そういった現実的に給付可能な水準で過渡的に保険給付の上限を設定いたしまして、ちょっと言葉は悪いですけれども、広く薄く実施するというような、いわば柔軟な扱いというものも在宅サービスについては対応が可能であるというような点も考慮いたしまして、完全実施ということについては平成十三年度を目途ということでそれなりに準備期間を置きましたけれども、少しでも早くスタートさせるという部分として十一年度から在宅をスタートさせていただいた。こんなふうなことで、一応今回はそのような考え方に立って、前回、介護保険制度案要綱という形でお示しをさせていただいたということでございます。
  40. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 局長のおっしゃる意味はよくわかるんですけれども、実際には施設の受け皿がなければ在宅サービスというのは進んでいかないというわけなんですね。  今、施設に関しましては、特養だとか老健施設あるいは療養型病床群などを介護保険の対象とするというふうに考えられているわけでございます。利用者の負担する費用についてはある程度整合性がとられるという考えでございますけれども、将来この施設を介護施設という形で一元化していかれるのかどうか、まずその辺をお伺いしたいと思います。
  41. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 今回の介護保険で、施設サービスの対象として特別養護老人ホーム、それぞれ名称は従来の名称で申し上げておりますが、特別養護老人ホーム、老人保健施設あるいは療養型病床群といったようなものにつきまして今回いわば介護施設として取り上げておるわけであります。  この介護施設のあり方につきましては、今、先生御指摘ございましたように、本来の方向としていえば、要介護高齢者の多様なニーズにこたえるために各種施設の機能、特性、こういったものをきちっと生かしながら、現在の施設そのままでいいかどうかということを含みながら、介護施設に関する制度体系の一元化という方向を目指すべきであるというふうに私ども考えておりますし、そのことは実は老人保健福祉審議会等においても御指摘をいただいております。  したがいまして、将来そういうふうな方向にだんだんに持っていくということを展望しながら、しかし現状でこれから移行いたしますときに、各施設それぞれの性格というものが今までそれなりに機能を果たしてきているというところもございますので、そういったそれぞれの性格等を反映し、また事業主体等の取り扱いにつきましても、それぞれの沿革をも含めて取り扱いが異なっております、税制上の扱い等も含めまして。そういった点については、一挙にということになりますと、円滑な移行という点についてそごを来すという心配もございますので、その一元化がそういう意味では漸進的な、だんだんに段階的な方向で一元化に持っていくという考え方に立ちまして、このような観点から、当面につきましては介護給付に関する事項、例えば先生お話のございました利用者負担の面、給付額の面あるいは介護報酬の仕組みといったようなことについて、できるだけ共通化できるところは共通化をするという形でまずスタートをしていくということでの取り組みをいたしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  42. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ゴールドプラン、新ゴールドプランにおきましても、今の特養ホームあるいは老健施設の整備というものが計画されているわけでございますけれども、療養型病床群はこれまでは医療費でカバーされてきた部分でございますけれども、これをある程度この介護保険でカバーしよう、こういうふうな制度になりますね。ここのところがいわゆる社会的入院という問題になってくるわけでございます。この社会的入院をなくそうというのが今度の介護保険の大きな目標でもあったと思いますが、実際にどのくらいの施設が計画的に介護施設に見込まれるんでしょうか。
  43. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 介護サービスの基盤整備、なかんずく施設整備の関係につきましては、お話しのように介護保険制度を進めるためにも大変重要な条件であるというふうに思っております。そういうことで、基盤整備につきましては、まずもって現在新ゴールドプランが進行中でございます。これにつきまして大車輪での整備促進を図っていくということになろうかと思います。  そういう意味からいきますと、施設サービスにつきましては、平成十一年度までに特別養護老人ホームにつきまして二十九万人分、それから老人保健施設につきまして二十八万人分というものを目標といたしておりますので、これをできるだけ精力的に着実に整備を進めていくということがまず一つあろうと思います。  今先生の方から御指摘のございました療養型病床群につきましては、新ゴールドプランの段階においてはまだ計画に具体化するという形での視野に入っておりません施設でございましたから、これにつきましても今後の介護保険ということを考えれば整備を急がなければならない対象であろうと思います。  これにつきましては、むしろ新たにつくるというよりは、現在の医療施設の体系の中でそういった介護にふさわしい施設にいわば改造、改築等を含めて、あるいは施設の人員配置等を含めて、そういう形につくりかえていっていただくということになろうかと思いますが、そういったことについてもきちっとやっていかなきゃならないという点は御指摘のとおりでございます。  これにつきましては、今回の介護保険制度の検討に当たりまして、療養型病床群等が大体十九万床程度をめどに持っていきたいということを介護保険制度の中ではしておりますので、ここらを踏まえながら必要な整備に努力をしてまいりたいというふうに思っております。  いずれにしましても、そういった基盤整備は介護保険制度創設の重要な条件の一つでございますから、この制度創設に向けたいわば制度論の議論と並行いたしまして、今まで以上の努力を払っていきたいというふうに考えております。
  44. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今大変基盤整備を重視しているというお話をいただきました。  しかし、例えば今特別養護老人ホームがほとんどもうついの住みかになっている、あるいは病院が社会的入院でいっぱい、そういう患者さんでいっぱい、あるいは老人保健施設は中間施設であるはずなのにもかかわらず、三カ月ごとに施設をたらい回しになっているといったような状況のままで、この介護保険対象の施設をどんどんふやしましても、結局は長期入所者をふやし、あるいは社会的入院をふやすことになるんじゃないかという心配もまた一方であるわけでございまして、本当に在宅ケアを進め、必要なときに施設で受けとめてくれるような仕組みがうまくできれば安心して出てこれるわけです、地域へ帰ってこれるわけですよね。  しかし、今ですと一回出てしまうともう入れなくなってしまう、こういうところに大きな問題があるんじゃないかというふうに思います。そういった点で施設の利用の仕方にぜひ工夫をしていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。  もっと介護保険に関しては御質問したいことがたくさんあるんですけれども、次の問題を抱えておりますものですから、次の問題に移りたいと思います。  次は、看護制度の改正の問題でございます。  この介護保険の推進に当たっても大変重要な役割を看護婦が負うわけでございますけれども、その問題でございます。  先月の二十七日に厚生省の准看護婦問題調査検討会というところから准看護婦に関する調査結果が公表されました。まず、菅厚生大臣、この調査結果をごらんになってどんな感想をお持ちになりましたか、お伺いしたいと思います。
  45. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 准看護婦の養成のあり方については従来からいろいろな皆さんからお話をいただいておりまして、私も関心を持って見ているところであります。  六月二十七日の准看護婦問題の調査結果、私もいろいろ拝見をさせていただきました。例えば准看護婦の教育については、病院関係ではまだ不十分であるという御指摘があって、一方で診療所ではこの程度で十分というような御指摘があるとか、あるいは准看護婦の生徒がいろいろな医療行為をしているのは若干問題ではないかとか、あるいは入学志望者がだんだん減ってくるのではないか等々、いろいろなことが、かなり重要な御指摘がこの中で得られているとも思っております。  今回、幅広い対象者に対する初めての全国的な調査でありまして、その調査結果は、准看護婦養成所の生徒や教員、准看護婦として働かれている方々医療機関の方々の生の声を集大成したものとして今後この問題を検討するに際して貴重な資料になるものと考えております。そういった意味で、この調査結果を踏まえての今後の議論の進み方を見守っていきたいと思っております。
  46. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 厚生省では看護婦の需給の見通しというのを立てていらっしゃるわけですけれども、最近のデータを見ますとかなり順調に進んでいる。少し上向き、若干上回っているようなデータが出ているわけでございます。ところが、看護婦と准看護婦それぞれ別々に見ますと、看護婦の場合ですと養成の数もあるいは就業者の数も順調に伸びておりますけれども、准看につきましては、養成所を卒業して准看護婦として働く者が六五%程度と伸び悩んでいるわけでございます。  今後、介護保険制度等の導入によって地域で働く看護婦の需要というのは伸びてくると思います。例えば、訪問看護ステーションに働いている看護職員はほとんど看護婦あるいは保健婦というようなことで、准看護婦に対する需要はそれほど多くないというふうに見えますが、しかし厚生省としては、最近の准看護婦の就業の状況から見て、今後の准看護婦に対する需要というのはどんなふうに伸びてくると思っていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  47. 谷修一

    説明員(谷修一君) 看護職員の需給見通し全体は、今先生お触れになりましたように平成十二年に百十五万九千人で需給が均衡するというふうに見込んでおりまして、現在のところ、この需給計画については順調に推移をしております。  准看護婦の現在の就業先でございますけれども、全体で三十九万五千人の方が医療機関で働いておられます。病院で二十四万人、診療所で十三万人余ということでございます。病院、診療所あるいは訪問看護ステーションにおきます准看護婦さんの割合というものは徐々に減少してきているというのが実態でございます。  准看護婦の需要ということでございますが、先ほどお触れになりました調査結果からちょっと引用をさせていただきますと、将来准看護婦を採用するかという問いに対しまして、病院長では、准看護婦のみを採用というのは〇・五%、また主として准看護婦を採用というのは三・七%でございます。一方、診療所の長では、准看護婦のみを採用と回答しているのが一二・二%、主として准看護婦を採用するというのが二三・四%といったようなことになっておりまして、准看護婦に対する需要の中心というものは診療所じゃないかというふうに考えております。
  48. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 調査結果によりますと、准看護婦生徒の多くが初めから准看護婦になりたいといって学校に来たわけじゃない。むしろ看護婦になりたいという生徒が大変多いわけですね。現に准看学校を卒業しましてからすぐにそのまま准看にならずに三〇%以上の人が進学コースへ行ってしまう。そして、准看護婦の学校に入ってくる人たちはほとんど高卒でございますから、本当でしたら三年で看護婦になれるところを、准看学校に行き、そして進学コースに行き、四年なり五年なりかけて二つの学校を卒業している、こういうことでございます。これは時間的にももちろん非常なむだでございますし、それからそれぞれの養成に公費を相当投入しているわけでございますけれども、その面から見ても非常にむだなんじゃないかというふうに思うんです。  そこで、例えば看護婦になるのに三年コースに行った場合とそれから准看から行った場合と、一人当たりの公費の助成はどのくらい違いますか、教えていただきたいと思います。
  49. 谷修一

    説明員(谷修一君) お話のございましたように、准看護婦資格を得てから看護婦になるという場合には、確かに時間がかかるわけでございます。ただ、今回の調査の中でも、准看護婦養成所の生徒の約三分の一の方が働きながらでないと進学できなかったというようなことも回答の中にあるわけでございまして、その点については事実として受けとめなきゃいけないんじゃないかというふうに思っております。  お話しございました養成に係る経費でございますが、看護婦の養成に係ります補助につきましては、国庫補助及び都道府県の補助によりまして、現在養成所運営費に対する補助、修学資金の貸与等を実施しております。  平成八年度の補助額と平均的な修学年限をもとにいたしまして一人当たりの額ということでお答えをさせていただきたいと思いますが、運営費についての補助の一人当たりの額では、看護婦養成所三年課程で看護婦さんになる場合には約四十三万八千円ということでございます。一方、准看護婦養成所と看護婦の養成所二年課程を経て看護婦になる場合には六十二万七千円という形になっております。  また、修学資金についてでございますが、看護婦養成所三年課程で看護婦になる場合には百二十一万七千円、それから准看護婦養成所並びに二年課程を経て看護婦になる場合には百五十七万九千円ということで、いずれもこれは一人当たりの数字ということでございます。
  50. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今、一人当たりの数字をちょうだいしましたけれども、学生の数から考えますとかなり大きな額になるわけでございまして、こういう点からもやはりこの准看護婦制度の見直しということが必要になってくるのかなという感じがいたします。  ただ、今局長も言われましたように、働きながら資格を取ったいという人が三分の一あった。確かにこういう点が非常に魅力で准看学校に入ってくる人もいるわけでございます。しかし、考えてみますと、半ば強制的に医療機関で働かなきゃいけない。奨学金も借りなきゃいけない。卒業したらそれを返すために何年間か義務づけで働かなきゃいけない。中には明らかに医療行為、これは非常に問題があると思いますけれども、そういったことをやらされているという事実を知りますと、本当に准看護婦の生徒が今日のような学校を望むだろうかというふうな疑問がございます。  確かに、長い間続いてまいりました看護婦不足という中で、こういった准看養成が医師会の先生あるいは民間医療機関の方々の大変な努力によって続けられてきたことも事実でございますし、そういう中から確実な就業者の確保の手段になってきたことも事実でございますけれども、時代の要請が随分変わってまいりました。もう看護婦の教育も大学の教育が一般化しようとしている。厚生省においても四年制の大学教育を進めようという、こういう時代でございます。  そういう中で、このように准看護婦になった人たちが本当に喜んで准看護婦として張り切って仕事をしてくだざるならばいいのですけれども、准看の人たち自身がこの制度に疑問を持ち、廃止をしてほしいと言っているのでございます。そしてまた、准看護婦養成所の先生方自身が、今の准看養成では十分じゃない、将来の入学志願者がだんだん減ってくるんじゃないかとか、あるいは就職先もないんじゃないかとかいうことを心配していらっしゃる。こういう事実にも耳を傾けなければいけないんじゃないかというふうに思うわけでございます。  長年、本当に長いこと医療界でこの問題を取り上げてまいりましたけれども、こういった准看問題を厚生省が今、本当に前向きに取り上げて調査をした、もう大変なことだと思うんですけれども、相当な覚悟でなすったことではないかと私は思うんですね。  そこで、さっき大臣もおっしゃいましたけれども関係各方面の御意見もいろいろでございますから当然それを聞いていただかなきゃいけませんけれども、これからこの問題をどのように進めていくのかということを大臣からお話をいただきまして、私は最後の質問にしたいと思います。
  51. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 今、清水委員の方からお話がありましたように、この准看問題というのは大変長い間議論をいただいておりますし、またそれぞれの時代の変化の中で、今幾つが御指摘もありましたが、一つは全体に高校に進学する率が大変高まっている、あるいは医療分野でもどうしても質的な向上というものが必須になっている、そういうことを考える中で、こういった議論が新しい局面でさらに進んできているというふうに理解をいたしております。  この准看護婦の養成のあり方につきましては、御承知のようにいろいろな関係者、特に医師会を含めいろいろな関係者の方がおられますので、そういった皆さんの御意見も十分にお聞きする必要はあるというふうに思っております。  このため、今回の調査結果を踏まえて、今後、准看護婦問題調査検討会において幅広く自由な議論をしていただきたいと考えているところであります。そういう議論を踏まえて、厚生省としてはその検討結果を受けて適切に対応していきたい。できればことしのうちにはそうした検討結果を受けて何らかの対応ができるように議論が進むことを期待している、そういうふうに考えているところであります。
  52. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今こうした議論がされている間にも准看護婦の生徒さんたちは学び、そして准看として働いている。自分たちの制度が一体どうなるのだろうか大変心配していると思います。准看で働いている方々の中には看護婦の道をもっと開いてほしい、何とか看護婦になりたいという方もたくさんおられるわけでございますから、あわせてその辺につきましてもよろしく御配慮をちょうだいしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  53. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ——————————    午後一時十分開会
  54. 野沢太三

    委員長野沢太三君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成六年度決算外二件を議題とし、全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  55. 牛嶋正

    牛嶋正君 平成会の牛嶋正でございます。  きょうは、国の財政運営のあり方について、主として大蔵大臣とそれから企画庁長官に御質疑させていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  今、国の財政運営を進めるに当たりまして多くの課題を抱えておりますけれども、私はこの中から二つの課題を取り上げて少し御議論させていただきたいと思います。  その一つは、財政再建という課題でございます。これは中長期的な課題ではありますけれども、最近は急速にその重要性を増してきているように思います。いま一つは、少しずつすそ野を広げてきてはおりますけれども、景気回復を本格化するための景気対策ということでございます。  なぜ私はこの二つの課題を特に取り上げたかということですけれども、財政運営に当たりましてこの二つの課題というのはなかなか両立しがたい面が実はあるからでございます。例えば財政再建を考えてみますと、基本的には歳出を抑制して、税収増を図っていく、そして財政収支のギャップを埋めながら財政収支を改善していくということになるかと思います。しかし、こうした財政再建のための財政運営というのは景気回復の芽を摘み取ってしまう、そういうおそれもあるわけであります。  反対に、景気回復の本格化を図るために財政運営を行っていくということになりますと、公共投資を中心に歳出増を図り、そして歳入につきましてはむしろ減税を通じて需要の喚起を図っていく、こういうふうに財政運営を進めていかなければなりませんが、そうなりますと、財政収支は悪化いたしまして赤字幅は増大せざるを得ないということです。ここに私はこれからの財政運営の難しさというのが非常にあるのではないかというふうに思っております。  バブル崩壊後の財政運営というものを見てまいりますと、大体私は景気対策を優先させるような財政運営がなされてきた、これが財政運営における基本姿勢であったのではないか、こういうふうに思います。恐らくそのねらいには、景気対策を進めてできるだけ早く景気を回復させる、そして、平成七年度の補正後の税収増に見られますように、景気が回復してくれば税収も伸びていくだろう、それに伴いまして財政収支は改善されるというふうに考えられるからであります。ただ残念なことには、平成三年度以降、四年度、五年度、六年度と四年続きで前年度よりも税収は減少してしまいました。その間、財政の悪化というものが深刻な状態にまで進んでしまったわけであります。  しかし、ここに参りまして考慮しなければならない二つの変化が見られるのではないか、私はこういうふうに思っております。そしてその変化というのは、これまでとってこられた景気回復優先の財政運営の基本姿勢に若干修正を加える必要があるのではないかというふうに思うわけでございます。  その一つは、先ほども申しましたように、四年続きの前年に比べての税収の減によりまして、非常に深刻なまでの状況に財政の構造が追いやられてしまったということであります。したがって、これまでのように景気回復を優先させるという基本姿勢がとりづらくなっている、すなわちもう財政再建が緊急の課題になっている、先送りできない状態になってきたということであります。  もう一つの変化というのは、先ほど申しましたように、景気回復が少しずつはっきりした姿を見せてきたということであります。そしてだんだん景気回復のすそ野が広がってまいりました。まだ中小企業あたりには業績の不振が見られますけれども、このままある程度景気回復が進んでいくという期待を持ってもいいのではないか、こういうふうに思います。  そうだといたしますと、この二つの変化を考えた場合に、これまでの景気回復優先の財政運営の姿勢からもう少し財政再建を重視するような、そういう姿勢の修正があってもいいのではないか、こういうふうに考えているわけでございますが、まずこの点について大蔵大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  56. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) 御指摘になりましたように、景気回復と財政再建というこの二つの課題は両立しにくい面がございますけれども、しかし今日の日本の経済、財政の状況は、これを両立させなければならない状況にあると考えております。  その中で、今確かに、お話がございましたように、数次にわたります景気回復のための経済対策は、六十数兆に及ぶ事業を対策として講じてまいったわけでありますけれども、それによってまた財政の面では非常に大きな公債の残高を抱えるに至りました。財政制度審議会からも先日、中間報告並びに財政構造改革の考え方について、副題として「明るい未来を子どもたちに」という白書的な文書をちょうだいいたしました。これらを見ましても、今、財政再建の問題はもう先送りを許されない喫緊の課題となってきたと思っております。  このことにつきましては、G7の会議等におきましても、例えばOECDにおきましては、日本の今日の財政赤字の状態は維持不可能な状況になりつつあるという指摘がございます。またIMFからは、日本の景気回復の状況を見れば財政による下支えから脱却すべきことが必要となってきているのではないかという発言もございました。しかしまた、それぞれの国の御意見としては、この際日本は景気を失速させないようにこの秋には補正予算を組む必要があるのではないかという意見もございまして、非常に難しい課題を今背負っているわけでございますが、今回平成九年度のシーリングを検討するに当たりましては、財政再建ということを強く念頭に置きながら九年度の予算を考えるという基本的な立場に立たなければならないということだと考えております。  特に、今日の状況を考えてまいりますと、五年後には歳入に占めます公債の割合が二十八兆に達すると思われており、十年後には三十六兆、これは歳入の大体三割程度のものをずっと引っ張っていく形になりまして、そしてもう十年後には公債の残高がGDPの百工、三十%に達するという試算がございます。これは、もちろん今の財政制度をそのまま延長しました場合、名目成長率を三・五という前提を置いての試算でございますけれども、大変な状況が予測されるのでございます。  それだけに、昨年の十一月十四日には私の前任者が日本の財政の現状は危機的状況にあるということを宣言されたのでございまして、今は、財政制度審議会の御意見にもございますように、財政再建を基本に置きつつ、しかし景気を失速させることがないようにということで、その両面から財政運営を考えていかなければならないという非常に厳しい状況にございます。  景気の状況につきましては、ことしの第一・四半期におきましては年率一二・七%という成長率を見せておりますが、四月−六月期がどういう動向になるのか、それらをしっかり見きわめながら財政運営の今後の方針を最終的に決めていかなければならないのかなと、このように考えております。
  57. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、大臣がおっしゃいましたとおりだと思うんですね。ですから、財政再建の課題も待ったなしである、しかし、そちらにどれぐらい重点を移していくかということは、もう一方で我が国の経済の動向を見きわめていかなければならないと。大臣がおっしゃいましたように、こちらが失速してしまえば元も子もないわけでございますから。そうなりますと、重点を財政再建の方にどれぐらいシフトさせるかということは、これからの景気動向をどう見るかということに私は非常にかかっていると思うんですね。  今、何かことしの第一・四半期一二%というふうにおっしゃいましたが、これは瞬間風速であって、本当の今の我が国の経済の姿をあらわしていないというふうに私は思っております。むしろ、これまでは好況不況が非常にはっきりした形で繰り返されてきましたけれども、今後はそういった景気循環さえはっきりした姿ではなかなか見分けにくいようなそういう経済の動きになっていくのではないかなというふうに思っております。それだけに、景気対策を打つ場合に、今がタイミングなのかというタイミングのとり方が非常に難しくなっている。ですから、財政再建と景気対策を両立させるとおっしゃいましたけれども、その難しさと、さらに加えて景気対策を打っていくタイミングの問題、これが非常に難しくなってくると思うんですね。  今、私申し上げましたように、これからの我が国の経済の動向というのは、これまでのようなはっきりした好不況のサイクルが見えない形で進んでいくんではないかというふうに思っておりますけれども、この点について、経済企画庁長官、どのようにお考えなのか、ちょっと御意見をお聞きしたいと思います。
  58. 田中秀征

    ○国務大臣(田中秀征君) 先ほど専門家の先生から、景気対策、経済政策における財政政策、これについて二つの環境変化がある。一つは財政が危機的状態にあるということ。これは、財政が危機的な状況にあるから余り財政に頼ることができない、こういうことだと思います。もう一つは、景気がよくなりつつあるからそれほど財政の助けが要らないというふうに先生のお考えを受けとめました。  私は、そのような観点は非常に大事だというふうにもちろん思っておりますが、もう一つ、景気が回復の動きを示しているとはいえ、このままでは中長期の安定した成長軌道に乗せることができないというふうに思っております。そのためにはどうしても規制緩和を初めとする構造改革という、そういう筋道を進む以外に中長期の安定成長というのは難しいだろうというふうに思っているわけでございます。  昨年の年末に閣議決定された新しい経済計画、先生御承知のとおりでありますが、そこでは構造改革がうまくいった場合とうまくいかない場合と二通りの数字を示しております。うまくいった場合には、平成八年から西暦二〇〇〇年、ですから、ことし九六年から西暦二〇〇〇年までの平均実質GDPの成長率を三・〇%というふうに見込んでいるわけです。構造改革がうまく進まなかった場合、この場合には一と四分の三、一・七五にとどまるだろうというふうに見ております。  私も大体そのようなものだというふうに思いますし、今回こうやって官民の努力によってここまで景気が明るい動きを示して、本格的な回復の扉が開いたと私申し上げているんですが、本格的な回復軌道に乗せるには本当に思い切った構造改革をやっていかなきゃいけない、そんなふうに思っております。
  59. 牛嶋正

    牛嶋正君 私も大体今の長官のお話と同じようなことを考えているわけですが、そのときにちょっと考えなければならないのは、私は個人消費の動向だと思うんですね。やはりGDPの中で六〇%を占めておりますから、仮に三・五%の成長を維持しようとすれば、少なくとも個人消費に関しましても同じぐらいの伸びが期待されなければならないのではないかと、こんなふうに思います。よく民間の設備投資が問題だというふうに言われますけれども、これは公共投資の絡みである程度補完できますので、私はむしろ個人消費の動向かなと思っております。  最近の動きを見ておりますと、伸びかけるとまた横ばい、場合によってはダウンするというふうな繰り返しなんですね。ここのところが非常に気になるわけです。今、構造改革とおっしゃいましたけれども、消費の動向についての構造改革というのは余り見当たりませんで、価格の内外格差ぐらいのものだと思うんですけれども。  なぜこんなふうに消費の動向が変わってきたのかということですけれども、私は二つ理由があるのかなと思っております。  一つは、これまで順調に伸びてまいりました耐久消費財、自動車を含めまして、これが大体飽和状態になってきている。ですから、各家庭を見ましても、もう自動車でも一台ないしは一台以上あるわけでございます。そうなりますと、こういった耐久消費財に対する新規の需要というのは余り大きくは望めないわけでありまして、買いかえ需要ということになってまいりますと、それはもう耐用年数から考えまして大体計算のできる数量になってしまいます。そんなに大きくは伸びないわけでございます。  それから、もう一つはサービス化、ソフト化というふうに言われますけれども、我々の家計の支出項目を見ましても、随分とサービスに対する需要の構成比がふえてきております。例えばサービスを考えた場合に、お医者さんの診療サービスなんかを考えましても、これは物と違いまして手にとって買う前に見るわけにはまいりません。まず診てもらってからいいサービスを受けたかどうかということが判断されるわけであります。  そうなりますと、サービス化が進むということは、消費を決定する場合にできるだけ多くの情報を集めなければならないということになります。情報を集めて、さらにその情報を分析して判断していくということですから、消費のビヘービアというのは非常に慎重になる、あるいは賢くなってくるということだろうと思うんです。  ですから私は、可処分所得がふえたからすぐに消費がふえるというふうなことはもうこれからは起こらないんではないかというふうに思っておりまして、全体の需要のうち六〇%を占める個人消費の動向が、これからの我が国の経済を運営していくに当たりまして非常に大きなポイントになってくるんだと思うんですが、改めて、企画庁長官にこの点について御意見を賜りたいと思います。
  60. 田中秀征

    ○国務大臣(田中秀征君) これからの景気動向を判断する場合、設備投資とともに個人消費の動向というのは、先生おっしゃるとおり本当に大事な要素だというふうに思っております。  個人消費は、消費者の動向も含めて大変難しい要素がいろいろ加わってきておりまして、お話にはありませんでしたけれども、十年前と比べたら輸入の中での製品輸入が今三割から六割になっています。したがって、個人消費で物を買うということになっても、それが直に国内生産に結びつくという形じゃなくなっていて個人消費が外に出ていってしまう、私は、そういう要素も非常に大きなものがあるというふうに思います。  それで、可処分所得がふえても直に消費につながらない、昔のようなぐあいにはいかないということは、これはバブルの経験から学んだということも当然あるでしょうし、そういう個人消費の動向というものが刻々と変化するものだということもしっかり念頭に置いて経済運営をしていきたい、このように思います。
  61. 牛嶋正

    牛嶋正君 これまでの議論をちょっと念頭に置きまして、これから本論に入らせていただきたいと思います。  これから暮れにかけまして決定をしていかなければならない財政に関する重要な項目が幾つかございますけれども、きょうは、そのうちから概算要求基準の決定の問題、それから消費税率の引き上げの問題、そして臨時国会での補正予算案の編成の問題、それからもう一つ、来年度の税制改正と関連いたしまして特別減税の継続の問題、この四つを順次取り上げて、今議論いたしました、もう少し財政再建に重点を置くような財政運営姿勢を考えた場合に、これらの問題についてどういうふうに判断していったらいいのか、この点についてお尋ねを申し上げたいと思います。  まず、概算要求基準の決定についてでありますけれども、聞くところによりますと、三十日の閣議了解に向けて大体大枠は決定されて、あと細部にわたって詰めをなさっている、こんなふうに聞いているわけでございます。  久保大蔵大臣にとりましては初めての予算編成ということになります。その予算編成に当たっての大枠を決める概算要求基準の決定でございますので、それなりにお考えを持ってこの問題に当たられてきたと思います。また、大臣のカラーといいますか、そういうものもある程度お考えになっていたんだと思いますけれども、まずその点について、今回の概算要求基準の決定に当たりましてどういうふうなお考えで、そしてどういうところに特に努力を払ってこられたのか、そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。
  62. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) 先ほどお話がございまして、私からもお答えを申し上げましたように、財政の厳しい状況の中で、平成九年度の政府予算は財政再建と申しますか、財政構造改革の初年度とならなければならない、これが一つの立場でございます。  それから、そういうことで財政構造改革による再建を目指す厳しい財政事情の中で、橋本内閣としてのめり張りのきいたと申しますか、今政府がやらなければならない最も重点的な施策については予算にもそのことが十分に反映されなければならない、こういうことだと考えております。その意味では、政策の優先順位に基づいて予算が国民の皆様方からも内閣の意思なり政策の重点の置き方というものがよく見える、そのような予算を編成するために努力をしなければならないと考えております。
  63. 牛嶋正

    牛嶋正君 財政再建を進めていく、そしてまた予算の、財源の重点配分も国民の目に見えるような形でというふうにおっしゃいました。その場合、その二つの問題に本当に真剣に取り組んでいくとするならば、私は今のシーリング方式による予算編成は限界があるのではないか、こんなふうに思っております。  そう考える理由は二つあるわけでありまして、一つは、ある程度省庁間にめり張りをつけるということはできると思うんです。だけれども、大事なのは、省庁間に配分された財源が今度は各部局にどう配分されるか。すなわち、個々の事業というのは各部局で行うわけでございますから、そうなりますと、幾ら省庁間でめり張りをつけた配分をいたしましても、それが各省庁に行った場合にそこで部局間の配分が同じようにシーリング方式で行われておれば、私はシーリング方式全体の限界というものは当然出てくるのではないかというふうに思っております。  もう一つの理由は、シーリング方式というのはずっと以前から我が国の予算編成に用いられてきたものでございます。私は、昭和三十年代から四十年代にかけてシーリング方式というのは非常に有効な予算編成方式だったと思います。それはなぜかというと、シーリング方式は税収が伸びるということを前提にしていると思うんですね。その税収の伸びの範囲の中で各省庁に財源の配分を行っていく、その配分を行う場合のめどというふうなものがシーリング方式によって示されてきたということだろうと思います。  今から思い起こしますと、第二臨調の、昭和五十七年度の予算編成でありますが、初めてゼロシーリングというのを用いたわけですね。それから昭和五十八年以降マイナスシーリングが使われたわけですが、これもやはり税収の伸びを前提にしていたと私は思います。財政再建を図るに当たりまして、とりあえず税収は伸びてくれる、だから歳出をシーリングで抑えればそのギャップは埋まっていくであろうということで増税なき財政再建というのが展開されたわけであります。  しかし、今はあの当時ほどの税収の伸びは期待できないわけであります。そうなりますと、財政再建はこれはもう歳出を抑制するということでしか進めることはできないのではないか。その場合に、当然のことですけれども、大臣も言われましたように行政改革あるいは規制緩和等々と結びついた形で歳出の削減を行っていかなければなりませんけれども、その場合にこのシーリング方式がどれほど有効なのかということを考えますと、少しこの方式自体を変えなければ、これからの財政運営を行っていくに当たっての幾つかの課題というものに取り組むことはなかなかできないのではないかと思いますが、この基本のところを大臣にもう一度お聞きしたいと思います。
  64. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) シーリングと申しますと概算要求の基準でありますから、その基準をどのような内容にするかということを今政府におきまして与党との協議も詰めながらまとめているということでございますから、何かシーリングというのは、一つの方式が存在してその方式を踏襲するかどうかという問題ではないと考えております。そういう立場から、例えば投資的経費等につきましては財政の事情から一応平成八年度の水準で抑えてもらう、しかし重点化枠を八年度三千億設定いたしましたものを五千億程度に伸ばせないかということも今検討いたしているところでございます。  そして、そういう中でこのシーリングによって概算要求の基準を決めてまいりますけれども、予算そのものを弾力的で選択できるものとしていかなければならないと思っておりまして、そういう立場から、実際に概算要求となって出てまいりますものは私どもがシーリングで考えます枠よりも大きなものになるんだと思っております。それを今度は十二月の予算編成の段階までに査定を加えていくというやり方だろうと思っておりまして、むしろ今までのシーリングでは例外的扱いといたしました非常に多くの分野がございますが、ここにも例外的な聖域を設けることなく、財政の構造改革という立場から切り込めるところは見直しをやってもらう、こういうことを今度のシーリングの中では決めてまいりたい。  こういう中から出てまいります財源を経済構造改革の特別措置枠として設定できれば、これも従来よりも大きなものにして、政府のリーダーシップのもとにこれらの分野で政策の優先的な予算への反映が可能となるだろうと思っておりまして、私はシーリングを決めますこと自体はお認めをいただいて、そのシーリングの内容は大いに改革されたものとならなければならない、こう考えております。
  65. 牛嶋正

    牛嶋正君 私も予算編成方式についていろいろな検討をさせていただいておりますけれども、大臣が今おっしゃいましたように、シーリング方式というのは、もともとは概算要求する場合の天井を決めるものですね。しかし、概算要求は恐らく天井を超えて要求が出てくると思います。その後、大蔵省で予算が編成される過程でその査定が行われて、シーリングの天井まで抑え込んでいくわけですね。  私はそこが問題だと思うんですね。もう一つ切り込んで、シーリングは設定しているけれども、これは概算要求のための一つの基準であって、その概算要求が出てきた内容を見てそれは切り込んでいくんだというふうなことが行われるならば、私はシーリング方式すなわち概算要求基準を決めるというのは一つの手続上の問題でありまして、予算の編成はかなり効率的な予算編成になっていくと思いますけれども、この点はどうなんでしょうか。  先ほどシーリングを超えて概算要求が出てきた場合、それはそこまで抑えるとおっしゃいましたけれども、むしろさらに切り込んで内容によっては詰めていく、抑え込んでいくというふうなところまでお考えなのかどうか。
  66. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) 投資的な分野につきましては今私が申し上げましたようなことで進められると思いますが、経常的経費や従来シーリングの例外的な分野として考えられてまいりました部分についても、経費の圧縮それから制度の変更による節約等がどのようにして可能になるかということについて各省庁において検討を願っているところでございまして、そういう意味では、今お話がございましたように、思い切って従来の予算のあり方というものに切り込んでいくということがことしの概算要求基準の設定に当たっては非常に重要なことであると考えております。  なお、必要でございましたら今作業を事務的に進めております政府委員の方から詳細のお答えを申し上げます。
  67. 細川興一

    説明員(細川興一君) ただいま進めております概算要求の考え方につきましては大臣から御答弁したとおりでございますが、先ほど先生御指摘の概算要求基準の設定後さらに切り込むかという点につきましては、例えば八年度予算におきましては、これは前年度の予算で見込みました中期展望というのがございますが、それがプラス二兆九千四百億であったものが概算要求基準の段階で一兆七千九百億、これは一般歳出ベースでございますが、それが増ベースで申し上げますと、最終的な予算決定ではプラスが九千九百九十二億。したがいまして、一兆七千九百億とその差は要するに九月から十二月に向けての査定で行ったということでございますから、概算要求基準をつくってさらに切り込むという作業は毎年行われているところでございます。
  68. 牛嶋正

    牛嶋正君 予算編成の問題は非常に難しくて、御質問しますとああいう例がぱっと出てまいりますと後はもう何も言えないというふうな感じになってしまいます。先ほど申し上げましたようにほかにまだ問題がございますので、次に移らせていただきたいと思います。  次は、消費税の平成九年四月からの五%への引き上げの問題でございます。  政府はもうこれはお決めになったということでございますけれども、私の見る限りでは、まだかなり多くの納税者というのはそれについて十分な納得をしていないのではないか、こんなふうに思っております。  その一つの理由は、平成六年度の消費税改正の法律の附則のところで挙がっておりました条件が十分にはクリアできていないのではないか。すなわち、行政改革も先送りされているような感じでありますし、それから福祉、介護につきましてもまだはっきりしたビジョンは出されていない。さりに、私たちも問題にいたしました課税の適正化につきましても十分な検討が加えられていない。そういう条件をクリアしないままに決定されたということに対する不満というふうなものがあるのではないかというふうに思います。  それからもう一つは、先ほどから議論してきております景気の問題で、五%に引き上げることによりまして、前倒しの消費需要が出るかもしれませんけれども、やはり景気を抑制するマイナスの効果が大きく出てくるのではないかというふうにみんな懸念しているわけでございます。  この点について、まずその前の条件が幾つかあって、それがクリアされていないんではないかという国民の不満に対して、大蔵大臣はどのようなお答えをされるのかお聞きしたいと思います。
  69. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) 平成六年十一月に税制改正が行われました際に、平成九年四月一日に消費税一%、地方消費税一%、合わせて二%引き上げるということについては国会において議決されたところでございます。その国会が五%に引き上げることを議決いたしますときの政府の説明は、平成六年度に始まりました減税のうち三兆五千億の恒久的制度減税を行ったものの財源を、減税を先行させるが、九年四月から消費税のアップに求めるということで議決されていたものでございます。  ただ、その際、この五%で固定していいかという議論もございまして、そのことを変更する場合には八年の九月三十日までに変更をしなければならないということで、変更に当たっての条件として附則二十五条に今御指摘がございました四つの条項を決めた、こういう経過でございます。  この四つの検討条項につきましては七年度の予算編成、八年度の予算編成の段階でも検討が行われたところであり、また九月三十日を前にして、通常国会の最終盤、政府税調におきましても数日にわたって御論議をいただき、与党税調の論議も行われた結果、これらの意見も取りまとめていただき、政府としては五%を六年十一月の議決どおり実施すべきものと確認をした、このようなことでございます。  しかし、これらの検討条項の中で、特に行財政の改革というようなことについて十分に尽くされているかという国民の皆さんの御批判に対しましては、私どもは十分だなどと申すつもりはございません。行財政改革につきましては、今後もこの検討条項の中の重要な課題としてこれをさらに検討し、その実現に努めていかなければならないものと考えておるところでございます。
  70. 牛嶋正

    牛嶋正君 その点に関連いたしましてちょっと私が気になりますのは、その消費税の五%の決定をされた当時の首相であります村山前首相が、食料品を含む必需品について三%税率据え置きというふうないわば折衷案みたいなものをお出しになっているわけでございますけれども、これについて大蔵大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  71. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) 検討条項の中にございます課税のあり方についての検討という立場から、消費税の持ちます御批判の特に強い逆進性、それから益税と呼ばれる制度上の欠陥、こういったようなものについては一層改善のための検討が加えられることは重要なことであると考えております。  しかし今、政府といたしましては、四月一日におきます消費税のアップ、五%の実施は六年十一月の議決のとおり実施することを確認いたしているのでございまして、今後、税制改革の年度ごとの検討、あるいは税制の基本にかかわるいろいろな検討の機会、場所においてそのような複数税率の問題などの検討が行われることは、私は当然のことであり、重要であろうと考えております。  もしそれらの検討を通じて消費税の税制の改革が必要となってまいります場合には、そのことについてまた国会においても御論議をいただくことになろうと思います。
  72. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、そういった複数税率の問題については課税の適正化と関連してお答えになりましたけれども、私はこの課税の適正化につきましてはむしろ益税の問題を考えておりまして、これから税率が三%から五%、さらに将来それに上積みをしていく場合、この問題が非常に重要な意味を持ってくると思うんですね。何がこの益税の問題をつくり出しているかというと、やっぱり課税方法にあると思うんです。  今、我が国がとっております課税方法はいわゆる帳簿方式であります、勘定方式とも言っておりますけれども。しかし、私は、これから税率が五、七というふうに上がってくる場合、ここのところは看過できないわけでありまして、できるだけ早く西ヨーロッパ並みの、EU諸国並みのインボイス方式に切りかえなければならないのではないかと思っております。  これは、この前の税制改革のときにも私、当時の武村大蔵大臣に強く求めたところでございますけれども、この課税の適正化のポイントは私はここにあると思っておりますけれども、この点について大蔵大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
  73. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) お答え申し上げます。  課税の適正化の中にいわゆる中小事業者に対する特例措置をどうするかという問題が大きくあったことは事実でございまして、これは、御案内のように平成六年秋の税制改正、それから平成八年度の税制改正におきまして中小事業者に対する特例措置を大幅に縮減させていただいております。したがいまして、私どもの考え方によりますと、いわゆる益税というのはほとんど解消するのではないかと考えているわけでございます。  簡単に申し上げますと、一つは限界控除制度というものを廃止させていただくことにいたしました。それから、簡易課税制度につきまして適用上限を四億円から二億円に引き下げまして、さらにいわゆるみなし仕入れ率でございますが、五〇%という新たな範疇をつくっているわけでございます。さらに、事業者免税点制度の問題でございますが、三千万円という免税点は維持いたしますけれども、免税事業者の方に対しましては、仕入れに係る消費税相当額を上回る価格引き上げを行わないよう、これからいわゆる適正な転嫁等についての広報、指導を行っていきたいというふうに考えているわけでございます。  それで、インボイス方式のお話について御指摘がございました。今回、いわゆる帳簿方式と言われているものがこれまでの方式でございましたが、仕入れ税額控除をやるためには、いわゆる請求書等、英語では請求書等をインボイスというふうに言っていると承知しておりますが、あわせて請求書等の取引の事実を証する書類の保存を要件とするということをお願いしておりまして、インボイス方式というものの定義は何かという問題がございますけれども、私どもの考え方によりますと、今回の改正によってインボイス方式が導入されたと言っていいのではないかというふうに思っているわけでございます。  なお、言いわゆるEC諸国のインボイス方式について申し上げたいわけでございますが、EC諸国におきましては、付加価値税導入の前から取引高税等々が存在していたいろんな歴史的原因や経緯がございます。それで、標準税率が高く設定され、軽減税率や割り増し税率が採用され、税率構造が非常に複雑な構造であったということがあろうかと思います。  そういたしますと、取引金額から即座に前段階で課された税額を算出することが難しいというふうな事情があったのではないかと思うわけでございますけれども我が国の消費税制度を申し上げますと、一つは単一税率制度でございます。また、非課税の範囲も非常に狭いようになっておりまして、したがいましてECのインボイス方式と比べて信頼性において劣るところはないのではないかというふうに考えております。
  74. 牛嶋正

    牛嶋正君 そこまでおっしゃるならば、私のインボイス方式の考えを申し上げますと、EUの指令でもきちっと言っておりますように、請求書あるいは送り状に税額を別記載するということです。これでないとインボイス方式とは言えないですね。全部そこにかかっているわけで、幾ら書類をファイルしても、それは税額がそこに記載されていなければ別に計算しなきゃいけないわけで、そこで簡易課税の方式なんかが出てくるわけです。  今、適正化に努めているとおっしゃいましたけれども、その原因は全部インボイスにあるわけですから、インボイス方式を導入すればこんな簡易課税方式なんて要らないわけですから、そしてまた免税点ももっと抑えることができると思いますしね。そういうことを申し上げているわけでございます。お答えは結構です。  それで、最後に、先ほど補正予算とそれから特別減税の継続の問題を取り上げると申しましたが、時間がございませんので、今の段階での大蔵大臣のお考えだけお聞きして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  75. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) 補正予算につきましては、総理も申されておりますように、景気の動向をさらに見きわめました上で判断をいたしたいと思っております。  特別減税の問題は、これは単年度単年度で特別減税の必要性を判断して決めてきた問題でございます。平成九年度の予算編成の段階におきまして特別減税が必要となるかどうかということについて検討しなければならないと思っておりますが、現在は九年度の特別減税を行うかどうかということについては白紙でございます。
  76. 牛嶋正

    牛嶋正君 終わらせていただきます。
  77. 山下栄一

    ○山下栄一君 平成会の山下でございます。  私の質問を具体的にやらせていただく前に、委員長にちょっと確認というか御要望というか、があるんです。  本日の決算は平成六年度の決算で二回目の委員会でございますけれども、一回目、二回目は総括質疑になっている、したがって基本的には全大臣が御出席いただくことができる態勢になっていると思うんです。ところが、確かに閉会中ということもございまして、日にちによってはやむを得ない事情で出席できない場合がある。だけれども、それはもう特例というか、例外扱いだと思うんです。基本的にはやはり大事な決算委員会に出席を最優先させて準備するはずだと思うわけでございます。  いろんな日程の関係で六月二十日、そして第二回目、本日は総括の二回目でございますけれども、七月二十三日に設定されて、この日に出席できないというふうに私が聞きましたのは五名の大臣だったわけです。この方々は、理事会でも検討して、出席できませんと、だからそれ以外の大臣に質問してくださいというふうなことだったんですけれども委員部からもそういう連絡をいただきました。  私ちょっと理由が気になりましたもので、外務大臣はASEAN、きょうは地域フォーラムですか、あと自治大臣は、午前中は全国知事会の総会か何かがあって午後から出席できる。文部大臣も、当初いろいろ予定があったけれども決算委員会に出席するんだということで出られるということをお聞きしました。ところが、建設大臣と運輸大臣なんですけれども、これはちょっとはっきり理由が、私が聞きましたのは、神奈川県の交通事情視察というふうに聞いているわけですけれども、そんな理由で初めから出席できないんだと、だからそれ以外でということにはちょっとならぬのじゃないかなと私は思います。  したがって、ちょっと委員長に、建設大臣、運輸大臣は七月二十三日に出席できないんだというふうなことでそれ以外でということになったわけでございますけれども、この参議院の決算委員会重要性は常日ごろから訴えられ、国会改革の大事なポイントにもなっておると思うわけです。若干それがマンネリというか、おざなりになっている面が、各省庁の受けとめ方がですけれども、というふうなことを感じましたので、建設大臣、運輸大臣が七月二十三日は出席できないという理由を委員長にもう一回きちっと明確にしていただきたい、このように思います。
  78. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 大臣出席の件につきましては、事務局より各省庁に問い合わせの上、それぞれ理由を伺っておりますが、委員指摘の点につきましては、なお再度調べまして善処をいたしたいと思います。
  79. 山下栄一

    ○山下栄一君 ありがとうございます。  じゃ、私、今大きく問題になっておりますいわゆるO157問題につきまして、関係大臣に質問させていただきたいというふうに思います。  私、大阪出身でございますけれども、大阪も堺市で大変な感染患者が出ておるわけでございます。また、堺だけではなくて、これはもう各市町村に広がっておるわけでございまして、堺以外でも約二十を超える市で発症者が出ておるわけでございます。全国的には八千名を超えると。それで三十九都道府県に広がっておる、四十七都道府県ですから三分の二を超えているといいますか、日本列島全体がいわゆるO157で汚染されている、このように考えてもいい状態になっているのではないかなと思うわけです。  それで、このO157というのは私も余り詳しくわかりませんけれども、O173ぐらいまであるそうでございますけれども、このO157というのはどんな病原菌で、どのような症状をもたらして、157を検出するにはどんな検査体制があってというようなことが何かはっきり、一応言われているんですけれども、その情報は非常に不正確ではないかと、このようなことを感じております。  例えば潜伏期間と給食の保存期間、これも初めは通達では、九十六時間ですから四日間が方が望ましいというふうな通達を出されているわけですけれども厚生省または文部省から、それがいろいろ検討されて最低一週間保存しなさいという通達が出された。ところが、きのうまた再度検討があったのかわかりませんけれども、二週間だと。また新たに追加、保存期間が長くなる。保存期間が長いということは、それだけたくさんの保存場所が必要である。二週間分の給食を保存しようということになったら、また保存場所が大変やから国からも応援しようかという話も出ていると。こういうことで、潜伏期間それから保存期間、一番正しいのは一体どういう期間なんだということもはっきりしなかったということがあると思うんです、きのう変更されたわけですけれどもね。  それから、発病年齢も乳幼児それからお年寄りという抵抗力の弱い人と聞いておりましたら、よく調べてみると二十代、三十代、四十代、五十代、それぞれいらっしゃる。確かに症状は軽いかもわからぬ。ところが、きょうの朝刊によりますと、まだ確定までいっていないようですけれども、新聞報道によりますと京都では五十六歳の会社員の社員食堂か何かでの食中毒の報告があったということで、発病年齢も一概に小さい子供さんとかお年寄りとは限らないという面もあるのではないか。それが何となく我々成人というのは大丈夫なんだという、そんなニュアンスが伝わっている。  その他いろいろ、いわゆるO157以外のO25なんかも神奈川ですか、どこかではあったんだというふうなことも言われている。となってくると、この報告の数はO157だけ調べているのか、こういうことになりますし、保健所経由の食中毒の報告だけなのか、ほかの、保健所を通過しない、食中毒ではない、病院でわかったものでO157と報告されていないものがあるのではないかとか、実態がはっきりしないものがいろいろあるように感じるわけです。  それで、まずこれちょっと厚生大臣にお聞きしたいんですけれども、患者数の報告は正しいのかということがございます。八千名を超えるというのはO157だけで、それ以外のO何とかという、腸管出血性大腸菌ですか、の報告はO157だけなのか、また厚生省が掌握されているのはそれだけなのか、それちょっとお聞きしたいと思います。
  80. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) O157に関しましては本当に国民の皆さんに御心配をかけておりまして、全力を尽くしておりますが、今ありましたように、確かにいろいろな情報を含めて多少新たな状況に対して混乱しているところもあるかと思います。  まず、今お尋ねの患者さんの数の問題ですが、一都二府三十五県で現在O157による食中毒が発生していると認識しております。患者さんの数は、七月二十二日十八時現在、きのうの午後六時現在で、有症者累計が八千三百十四人、入院中の者が五百六十五人、亡くなった方が五名に及んでいると認識しております。  このうち、堺市につきましては、同じく昨日二十二日の十六時現在で、有症者が六千三百三十三人、入院中の者が四百七十八名あると報告を受けております。  おっしゃるとおり、このO157に類するものとして幾つか、26とか111とか128、145、あるいはさらに1とか25とか125とか127とか、いろいろ存在しております。先ほど申し上げた数字はその疑いのものも若干含まれておりますが、基本的にはO157についての有症者数の現在の把握の数字であります。
  81. 山下栄一

    ○山下栄一君 ということは、O157以外の数は掌握されておらないということでしょうか。
  82. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 実は、これも御存じだと思いますが、ベロ毒素という赤痢菌と同じような毒素を発生するものとして他にも種類があるんですが、それらの中ではこの157以外は現在確認されておりません。今、患者が確認されているのは、157以外ではO1とかO25とかというのが岐阜や横浜で確認されておりますが、これらの方はベロ毒素が出ない菌でありまして、そういう点もありまして、報告は来ていると思いますが、今この手元に、これと同列での数字の把握はこの場ではちょっといたしておりません。  ただ、今言いましたように、一番きつい毒素を出すものは現在のところ157だけですので、それについては今申し上げたとおりです。
  83. 山下栄一

    ○山下栄一君 先ほどO157関係で亡くなった方が五名という報告があったと思いますけれども、それは昨日の京都の方がカウントされているということですね。  これ、生活衛生局の関係のいわゆる食中毒ということで保健所経由で吸い上がってくる数じゃないもの、食中毒でない状態で、例えばきのうの京都の場合はそういう例ではないかなと思うんですけれども、結果的には社員食堂だったかわかりませんけれども、要するに生活衛生局の管轄でない医療局の管轄の形の、お医者さんで、腸の病気で、実は食中毒という判断じゃなくてO157が原因となって発症したというふうな場合があったとしたら、それは報告されない仕組みになっているわけですね。
  84. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 先ほど申し上げた現在の数字は、必ずしも食中毒によって報告された数字だけではなくて、病院の中で、例えば何の原因かわからなくて来ている患者さんとか、あるいは入院している患者さんとか、あるいは二次感染のおそれがあるということで調査をした人たちから検出をされた、それらの例をすべて含んだ数でありまして、基本的には他のルートについてもできるだけ掌握するように努めているところであります。
  85. 山下栄一

    ○山下栄一君 大臣、例えば大阪の例もそうですけれども、これは保健所経由の掌握なんですよ。保健所以外から、病院でO157というふうなことが原因であるかどうかも、ちょっと本当に検査体制が各全医療機関にあるのかなということも私は心配なわけですけれども、報告は八千何名と言われているけれども、実は潜在的な、医療機関をしっかり調べたら保健所経由ではわからない、そういう患者さんが実は、それは程度は別として、もっとたくさんあるかもわからぬという非常に不安な調べが出てきたわけですね。だから、今申し上げたように、生活衛生局ではない医療局の関係で調べたら、O157の患者の数はもっとふえるのではないかという不安があるわけですけれども、この点いかがでしょうか。
  86. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 先ほど申し上げましたように、保健所経由以外の、医療機関から直接のものもカウントしております。  それから、もちろん全国民にということでの検査はできておりませんが、例えば感染者が出たところの家族あるいは学校関係者あるいは給食関係者等々については検便検査をできるだけ広くするように指導しておりまして、そういう中での検出も出ております。  ただ、私も心配しておりますのは、ごく一部ですが、病状がないまま保菌をしているというケースが少数ですがわかっておりまして、そういう点では、確かに委員のおっしゃるように、今調べている範囲の外にあるいは保菌者と言っていいんでしょうか、そういう人たちが存在をしている可能性というのは必ずしも否定できない。そういうことも含めてどういう対応をとるか、官邸の方でもいろいろ御議論いただいておりますが、厚生省としては、今保健医療局にもこの問題でしっかり動くようにということで、食品衛生という分野といわゆる感染症の対応をしている保健医療局と両局挙げて対応を進めていきたい、そう考えて今進めているところです。
  87. 山下栄一

    ○山下栄一君 私も、お役所の方、お役人の方にヒアリングする中で、これは生活衛生局だけがかかわっておられるのではないか、保健医療局の方はどうなっているのかなという疑問がわきました。  それで、例えば尿毒症、HUSという病気があるそうでございます。これはO157によって場合によれば重症になっておられる方、そういうことだそうでございますけれども、HUSにかかられた方というのはもっとたくさんあると思うんです。病院でそういう診断をされた。ところが、それが実はO157が原因だったということが後からわかる可能性はないんでしょうか。
  88. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) これは今までの報告の中ではそういうケースは聞いていませんが、しかし確かにおっしゃるとおり、先ほど申し上げたように、保菌をしていても症状があらわれていない例もありますし、あるいは一部あらわれていてもそれが当初はこの病気というふうに認識されないで治療を受けられている方も可能性としては存在は否定できないと思っております。そういう点では、今の御指摘も含めて各医療機関に、症状から見てそういうおそれが若干でもあれば調べるように、その点は徹底をさせたいと考えております。
  89. 山下栄一

    ○山下栄一君 大臣、申しわけありませんけれども、確認いたしますが、このO157、いわゆる腸管出血性大腸菌の検出、検査できる医療機関の体制は整っておるのですか。全国の医療機関の方ですよ、保健所じゃなくて。
  90. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 今、各地の地方衛生研究所の方へ持ち込んでいただければすべて、相当の数であっても検査できる体制をとっておりますので、もちろん場所によっては医療機関みずからも検査できるところはあるということですが、少なくとも持ち込んでいただければできるという体制は各地で全国的にとっているわけです。
  91. 山下栄一

    ○山下栄一君 医療機関というのは診療所もあれば病院もある、個人病院もある。その中で腸の病気で、それがこのO157が原因である、いわゆる腸管出血性大腸菌であった疑いがあるけれども、例えば病名が感染性腸炎とか別の形で処理されてしまっている、そんな例もあるのではないかと。と申しますのは、今申し上げましたように、各医療機関できちっと検査体制が整っていない、そういうふうに私判断しておりまして、そんな状況の中で、余りこの知識のないお医者さんは腸炎という別の形の扱いをした可能性があるというようなことも考えられるわけでございます。  ちょっと時間がなくなってきまして大変あれでございますけれども、いずれにしましても、これは過去、日本の場合は平成二年から昨年まで十の例が言われているわけで、亡くなった方も三名いらっしゃるというふうに聞いておるわけでございます。これは原因究明がきちっとできた平成二年以降、日本のO157の発症例の中で、集団中毒の例もあるわけでございますけれども、感染経路が解明された例は今まであったのでしょうか。
  92. 小野昭雄

    説明員(小野昭雄君) お答えいたします。  我が国におきますO157による食中毒事故は、先生御指摘のとおり、平成二年、埼玉県内の幼稚園での発生報告が最初で……
  93. 山下栄一

    ○山下栄一君 時間がないから結構です。感染経路が解明された例があるのか。
  94. 小野昭雄

    説明員(小野昭雄君) このケースにおきましては、井戸水が原因というふうに判明をいたしたところでございます。それから、それ以降散発的な発生はございますが、これらについて調査を行いましたところ、これは原因がはっきりいたしておりません。  ただ、最近の一例……
  95. 山下栄一

    ○山下栄一君 結構です。  今の埼玉の例、浦和の例も井戸水と言っているけれども、それは途中までの原因がわかっただけであって、その井戸水がどうして汚れたのかというようなことは全然わかっていないわけですよ。合併浄化槽の漏れとか言われておりますけれども、その上は全然解明されていない。したがいまして、今まで平成二年から発症例があるわけですけれども、今回の大量感染者にほとんど生かされていないと私は思うわけです。  O157の潜伏期間、先ほど申しましたように給食の保存期間も二転二転して延長されている。それから、発病年齢も、きのうの場合は五十二歳の方が発症して驚かれているという。病院の方でも検査薬が不足してきて、今需要がどんどん、要求が広がっているというようなことを考えていきますと、私は、このO157問題というのはいわゆるO157問題だけであって、本当はいろいろな病原菌はほかにもある、ベロ毒素に基づく病原菌という、そういうとらえ方が正しいとらえ方であろう、そういう観点からとらえ直すと、新たな例も出てくるんじゃないかという疑問も持ちます。  日本列島は今O157に汚染されているわけでございますので、過去に犠牲者があったにもかかわらずこの取り組みが全然今回生かされていないことを考えましたら、抜本的な体制の見直しですね、研究班もつくられているけれども、その研究班そのものが、保存期間も延長、再延長なんというような指示を出しているということ自身にあらわれていますように、非常にこれは研究体制、検査体制も不十分であるというふうに思うわけです。  したがいまして、これは内閣を挙げて取り組んでいただきたい、厚生省の生活衛生局だけに任せるのではなくて、というふうに考えるわけですけれども、官房長官いかがでしょうか。
  96. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) 今、厚生大臣の御答弁にもありましたし、それから、前々から文部大臣から学童のいわば中毒現象についてのいろんな報告がございましたけれども、確かに特定することができない条件、それから、今まで普通ですともっともっと短く早く判断ができて一つの対処ができたわけでありますが、大変そういうものに不確定要素が多いということで、今朝来、既に何遍か対策会議は開いておりますが、もうちょっと広範な意味で、急速に何かできる方法がないかどうか、総理のもとで今検討を進め、そしてこれは全省庁、いや、自治体もひっくるめ、あらゆる民間研究機関もひっくるめて早く対策をしませんととんでもないことになる可能性がある。  そういうことを考えまして、総理はきょう午後に、自治省あるいは経企庁、もちろん当然文部省、厚生省あるいは農水省、そういうものをひっくるめ、大学の病院や病理を研究されるあらゆるすべてのものを動員して、今までともすると一つの固定的な観念にとらわれたものをもう一回見直しする、そういうことから始まりませんと、幾ら心配をしても心配のし過ぎはありませんから、早く防圧ができるような体制を組もうではないか。そして、官民挙げてできるように、あるいは総理の談話でも、下手に発表してパニック状態になっては困りますが、お互いに関心を払ってもらうような方式をとろうということでさらに検討を深めております。
  97. 山下栄一

    ○山下栄一君 ありがとうございます。  ぜひ内閣に格上げしていただいて、対策を練っていただきたいと思います。  厚生大臣、最後に、これ、私はいろんな不備が出ているというか、何かあいまいな形で不十分な対応をされている背景に、食品衛生法でやるからだと。これはもうまさに食中毒じゃなくて伝染病なんだという扱いで、伝染病予防法ですか、その体制でやっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  98. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 確かに今回の問題は、いわゆる食中毒という側面と、それから感染症、つまりは伝染病という側面と両方が重なった形で出てきているというふうに認識をしております。  ただ、現在の伝染病予防法はかなり古い法律で主に隔離ということを中心とした法律になっておりまして、現在の患者さんを、じゃ隔離することがより効果的なのかといいますと、なかなかそれだけの体制がありませんし、必ずしもそちらの方だけで対応するというものではないと思っております。  例えば、食べ物からきているということは十分やはり同じように予想されているわけですが、食べ物のいろいろな検査などはやはり食品衛生法に基づく検査になっておりますので、そこは両方の法律、あるいは不備があれば、まさに先ほど官房長官にも言っていただきましたが、政府の方針として各省庁お願いをしていただいて対応する、そのことが今の段階ではとにかくまず必要ではないかと、こう考えております。
  99. 山下栄一

    ○山下栄一君 文部大臣、申しわけありません、一言だけ。  国体の国籍条項、参加資格の問題でございますけれども、この見直しを私はぜひやっていただきたいと、このように考えております。日体協で国体委員会でも御検討中というふうにお聞きしておりますけれども、外国人の参加の道を開くという、特に成人の方のですね、その文部省のお考えをお聞きしたいことと、日体協の現在のお考えもあわせてお聞きしたいというふうに思います。
  100. 奥田幹生

    ○国務大臣(奥田幹生君) 国民体育大会は、政府と体育協会、それから地元の都道府県、この三者が毎年共同開催という形をとっております。  今、先生御指摘の件につきましては、やっぱり一番体育協会がどういう考えでおられるのかなと。体育協会は、開催してまいります県の意向も十分に聞いて判断をしたいというお考えのようでございますので、体育協会が固められる判断、それを私どもは早く聞きたいなと、そんな感じでおるわけです。  今、平成十三年まで開催します県が決まっております。これは同じく、最後、十三年が宮城県だったと思いますけれども、それぞれの県の知事さんあるいは体協の府県の皆さん方にも意見を聞いてもらえるものと期待しておりますが、できるだけ早くそういうものを参考にしながら判断をしたいと思っております。
  101. 山下栄一

    ○山下栄一君 どうもありがとうございました。
  102. 菅野壽

    菅野壽君 私は社民党の菅野でございます。二十四分という限られた時間でございますので、御答弁も簡潔にいたしていただきたいと思います。まずお願いいたします。  私は、少子問題について取り上げてまいりたいと思います。  先般、平成七年の人口動態統計が発表され、出生数は百十八万七千人、いわゆる女性が一生に産む数を示す合計特殊出生率も一・四三というふうな最低を記録してまいりました。  思い起こせば、平成元年に合計特殊出生率が当時の過去最低を記録して一・五七ショックなどと騒がれておったのでございますが、年々歳々そのパーセンテージも下がりまして、このごろでは社会の危機意識がむしろ薄らいできているんじゃないかというふうに思われます。  少子化の進行は、年金や医療保険に対する若年層の負担を重くし、社会保障制度全般に大きな影響を与えます。さらに、産む産まないの自由は女性の権利であり、むしろ産みたくても産めない今日の状況は大きな人権問題と言わざるを得ないのであります。  政府は、出生率が低下の一途を続け過去最低を更新した理由をどのように判断しておられるか、その御認識を承りたいと思います。
  103. 中西明典

    説明員中西明典君) 先生御指摘のとおり、平成七年の合計特殊出生率は一・四三ということになりまして、過去最低を更新したところでございます。  出生率につきましては、未婚率の上昇と結婚した夫婦の子供の数、両因あるわけでございますが、近年の出生率の低下につきましては、専ら未婚率の上昇によるものという分析がなされておるところでございます。実際に、最も子供を産む年齢層でございます二十五歳から二十九歳の女性の未婚率はこの十年間で三割から五割に上がっておりますし、三十から三十四歳の女性の未婚率はこの十年間で一割から二割に上昇しておるところでございます。
  104. 菅野壽

    菅野壽君 これまでの出生率の低下の原因は晩婚化にあると説明しておられますが、晩婚化の影響ならば出生率は五年もすれば回復に向かうはずでございます。平成七年の人口動態調査結果では、これまで一貫して上昇してきた三十歳代前半の出生率も減少に転じてきました。こうした状況はもはや晩婚化だけでは説明がつかないのではございませんでしょうか。現在は晩婚から非婚への過渡期であり、本格的な少子社会の幕あけと言わざるを得ないのでありますが、政府の御見解を伺いたいと思います。
  105. 中西明典

    説明員中西明典君) なかなか先を見通すのは難しい問題でございますが、未婚率につきましては各年齢層で上昇しておりますが、四十代の女性の未婚率については現在五、六%程度にとどまっておりまして、さほど大きな動きではございません。また、未婚女子に対して結婚の意欲を調査したものがございますが、それによりますと、九割はいずれ結婚するつもりであるという答えが返ってきております。  こうしたことから、晩婚化は確かに進行過程にあると思われますが、果たして非婚の時代に入ったというふうに断定できるのかどうか、そのような状況にはまだ至っていないんじゃないかというふうに認識しております。
  106. 菅野壽

    菅野壽君 厚生省の人口問題研究所は、五年に一度の国勢調査のたびに将来人口推計を発表しています。しかし、残念ながら出生率の予測は大きく狂っております。  現在の平成四年推計の中位推計も、合計特殊出生率は平成六年に一・四九で底を打ち、平成七年には上昇傾向に転ずるというふうに推計されておりましたが、既に現実とずれが生じております。数年のうちに出生率が回復に向かうという前提自体に誤りがあるのではないかと思いますが、推計が毎回大きくずれたという原因及び今回の推計の実現性について厚生省の見解を伺います。
  107. 中西明典

    説明員中西明典君) 先生御指摘のとおり、合計特殊出生率の実績値は、現在までのところ人口問題研究所の平成四年九月の将来推計人口の中位推計と低位推計との間を推移いたしております。  平成七年につきましては、人口研の中位推計は一・五〇、それに対して実績は一・四三、人口研の低位推計は一・三八ということでございまして、これまでのところ人口研の人口推計の中位推計と低位推計の間を推移してきているという状況でございます。この原因は、晩婚化が中位推計で仮定していた以上に進行しているためと考えております。  いずれにいたしましても、今後の合計特殊出生率は晩婚化の動向に左右されるものでございまして、完全に予測することはなかなか難しいわけでございますが、今の動向を見る限りにおいて申しますれば、中位推計と低位推計の範囲内、そのあたりで動いていくんじゃないかというふうに見ております。
  108. 菅野壽

    菅野壽君 いずれにしましても、出生率の回復は、いかに子供を産み育てやすい環境をつくるかということにかかっていますし、整備していかなきゃならぬ問題だと思います。その意味において、平成七年度からスタートしたエンゼルプランを達成することは、その策定にかかわった我々としても一つの大きな責務があると思います。  そこで、エンゼルプランに基づく施策の実施状況について、文部省、厚生省、労働省及び建設省の各省からお伺いしたいと思います。
  109. 富岡賢治

    説明員(富岡賢治君) 文部省におきましては、エンゼルプランにおきます重点施策としまして私ども関係では、ゆとりある学校教育の推進とか学校外活動の充実とか、子育てに関します相談体制の整備等によります家庭教育の充実、それから教育の機会均等の理念を実現するためにも父母の教育費負担が過大とならないような配慮としまして、例えば予算面では育英奨学事業の貸与人員の増とか事業費の増を図っておりますほかに、幼稚園につきましては、幼稚園の就励費補助事業につきましても減免単価の改定等を行っているわけでございます。  また、税制面につきましても、教育費の負担の重い中高年層に対します税負担の軽減を図る観点から、特定扶養控除制度の割り増し等につきましても努力しているところでございます。  今後とも、保護者の教育費負担軽減の見地から適切に対処してまいりたいと考えております。
  110. 高木俊明

    説明員(高木俊明君) 厚生省関係では、エンゼルプランに基づきまして低年齢児の保育あるいは延長保育といった多様な保育サービスを計画的に整備していく、そういうような観点から、平成七年度を初年度とします緊急保育対策等五カ年事業というものを策定いたしたわけでございます。  この進捗状況でございますけれども、その中にいろいろございますが、例えば地域子育て支援センター事業、こういったものもあるわけなんでありますけれども、これなどはまだそれほどはかばかしい進捗を見ておりませんが、そのほか低年齢児の保育とかあるいは延長保育とか、そういった保育所の関係につきましてはかなり伸びておるわけでございます。  全体として申し上げるとすれば、この緊急保育五カ年事業につきましては着実に進展をしておるというふうに考えておる次第でございます。
  111. 太田芳枝

    説明員(太田芳枝君) 労働省といたしましては、労働者が生涯を通じまして充実した職業生活と家庭生活を営むことができるようにするための仕事と育児の両立ということが非常に重要であるという観点から、各種施策を行っているところでございます。  その中で、エンゼルプランにも幾つか盛り込んでございますが、例えば育児休業制度というのを法制化していただきました。この制度が定着し、円滑に運用されるよう事業主や労働者に対しましてきめ細かな相談指導を実施しておること、またこの育児休業期間中の経済的援助を行っておりまして、約二五%の育児休業給付等も行っておるところでございます。  さらには、事業主に対しまして、その休業期間中の代替要員の確保ということも重要でございますのでそういうものの相談ということをやっておりますし、また事業所内の託児施設の設置などに対しましての補助というようなこともやっておるところでございます。また、育児のために退職しなければならなかった方々が逆に再就職しやすいようにという支援もやっております。  さらに、年間労働時間の千八百時間という目標をつくっていただいておりますが、それの実現に向けて労働時間の短縮等の推進というようなこと等をやっておりまして、男女労働者が子供を産み育てながら安心して働くことができる環境をつくっていきたいということで努力をしているところでございます。
  112. 小川忠男

    説明員小川忠男君) エンゼルプランと住宅対策とのかかわりでございます。基本的には私ども、住宅対策でございます良質な住宅を低廉な家賃で、あるいは適切な負担で供給する、これが根っこにあろうかと考えております。  ただ、エンゼルプランにおきましては具体的に二つの点が指摘されております。  一つは、ファミリー向けといいますか普通の家族向けの質のよい賃貸住宅を供給する、こういうふうな点でございます。これにつきましては、一般的には住宅金融公庫の融資等々で御援助しているというのが基本でございますが、ただ一点御報告させていただきたいのは、平成五年でございますが、私ども特定優良賃貸住宅と呼んでおりますが、民間方々がおつくりになった賃貸住宅を公的な形で借り上げて公的に供給する、こういうふうな制度がございます。これにつきまして平成五年には二万戸でスタートいたしましたが、現在では毎年四万戸の水準にまでなっております。また、特に大都市圏で供給の八五%を占めているというふうな点がございます。こういうふうな政策を着実に推進してまいりたいと考えております。  それからもう一点は、子育てと仕事の両立あるいは家族の団らんというふうなことから、ゆとりある住生活が実現できるようにというふうな点でございます。これは極めて難しいといいますか、住宅政策の究極の目的そのものかと思いますが、特に二点、御報告させていただきたいと思います。  一つは、やはりスペースの問題とあわせまして、住宅がどこに立地しているのかというふうな点が大事であろうかと思います。こういうふうな点から、特に大都市圏におきましては、都心居住と私ども呼んでおりますが、やはり都心部においてきちっとした賃貸住宅を供給したいというふうなことから、現在進行形ではございますが、いろんな施策を現在鋭意展開させていただいておるというふうな点でございます。  それからもう一つ、住宅政策と福祉政策との連携というふうな点、ここしばらく急速に拡充させていただいております。ただ、従来はどちらかといえば高齢者対策と住宅というふうな点が中心でございましたが、エンゼルプランにもございますように、例えば公営住宅等を建てかえる場合には保育所などを併設するとか、きちっと計画的に組み込むというふうなことも今後の課題として展開してまいりたい、このように考えております。  以上でございます。
  113. 菅野壽

    菅野壽君 エンゼルプランの具体化の一環といたしまして、緊急保育対策等五カ年事業についてお伺いいたします。  この緊急保育対策等五カ年事業は五年間の数値目標を定めたものとして評価すべきと思いますが、残念ながら平成八年度の予算まで見る限り、五年間でこの目標を達成するのは極めて難しいと言わざるを得ません。来年度以降よほどの覚悟で臨まなければ緊急保育対策等五カ年事業の実現はおぼつかないのではないかと思いますが、覚悟のほどを厚生大臣にお伺いいたします。  さらに、達成のための財源確保について大蔵大臣にも御見解を承りたいと思います。
  114. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 平成七年度から実施しております今御指摘の緊急保育対策等五カ年事業につきましては、平成八年度予算においても対前年度比九・四%増の二千百八十七億円を確保していただきまして、その推進を図っているところであります。少子化に対応した子育て支援策の充実は重要な課題であると考えており、緊急保育対策等五カ年事業の着実な推進にこれからも全力を挙げていきたい、このように考えております。
  115. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) ただいま厚生大臣から申し上げましたように、緊急保育対策等五カ年事業の重要性につきましては十分に承知をしているところでございまして、平成八年度におきましても、今お話ございましたように二千百八十七億、対前年比百八十八億を増加させる措置をとったところでございますが、今後も財政の厳しい事情のもとではございますけれども、この事業の重要性にかんがみ、緊急保育対策の目指します保育サービスが計画的に整備をされますよう、できる限りの措置を講じてまいりたいと考えております。
  116. 菅野壽

    菅野壽君 子育て支援の観点から子育てに伴う経済的負担の軽減も重要でございます。この問題についてエンゼルプランでは、「経済的負担の軽減の観点から、税制上の措置や児童手当、年金等の社会保障制度等を含め子育てコストヘの社会的支援の在り方について検討する。」とされていますが、児童手当制度について社会保障制度審議会の勧告においては、「今後育児環境の整備の一環として児童手当制度の充実を図っていく必要がある」としておりますが、この問題について、今後の目途について厚生省に承りたいと思います。
  117. 高木俊明

    説明員(高木俊明君) ただいま先生のおっしゃいました社会保障制度審議会の社会保障体制の再構築という勧告が昨年の七月に行われたわけでございますけれども、その中では、児童手当制度は「いまだ必ずしも十分我が国に定着しているとはいい難い。今後育児環境の整備の一環として児童手当制度の充実を図っていく必要があるが、その際児童手当と税制の児童扶養控除や企業による家族手当との調整に考慮が払われなければならない。」というふうに述べられているわけでございます。  それからまた、現行の児童手当でございますけれども、これは平成三年に法改正が行われまして、平成六年の一月から現行の全面実施がなされているわけでございます。その改正の際に、法律の附則におきまして、「この法律の施行後における児童手当制度の実施状況、社会経済情勢の推移等を勘案し、」「その全般に関して検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるべきものとする。」というのが書かれてございます。  それからまた、先般財政審議会の報告がございますけれども、この中では、保育施策との関係ども含めて総合的に検討すべき課題とされているわけでございます。  このように児童手当制度につきましてはいろいろな御意見がございます。私どもとしましては、こういったさまざまな御意見を踏まえまして、幅広い観点から今後検討していかなければならないと考えております。
  118. 菅野壽

    菅野壽君 低出生率がこのまま続くと労働力の減少や予想を超えた高齢化の進展に伴い社会保障費や若年負担の急増を招きかねません。短期的な財政上の視点からのみ児童手当制度を初めとする子育て支援策にメスを入れることはかえって後代に大きな負担を負わせることとなりかねません。  私がこの少子問題を取り上げますことは、今現在この少子問題こそが日本の経済的発展、それからいろんな点において最も重大な課題だと思うからであります。橋本先生は厚生大臣もなされて、最もこの方面に御理解のある方だと思いますが、税制の問題、労働の問題、経済の問題、文教の問題、あらゆる点について少子問題というものは憂慮すべきものでございます。このまま一・四三というふうな出生率の低下をどんどん続けていくならば、日本は滅びます。日本を活性化するためには、どうしてもこの少子問題を解決することこそが介護問題や老人問題とともに重大な問題であるということを、ここに居並ぶ皆様方にひとつ御認識をいただきたいと私は思っております。  私は精神科の医者でございますから直接関係はありませんが、私どもは総合病院を持っておりまして、いわゆる産婦人科もございます。それを見ますと非常に少子問題が憂慮されます。それで、小児科の医者を募集しようにも、今大学では小児科の医者になろうとする者も、婦人科の医者になろうとする者もありません。なぜならば、患者が減少しているからでございます。そういうことは日本の今後の発展にまことに憂慮すべきものと、私は人一倍に痛感しておるわけでございますから、さよう申し上げる次第でございます。  先ほど厚生省、文部省、労働省、それから建設官からいろいろ承りましたが、どうかひとつ厚生官におかれましてはもう少し腹に力を入れてこの少子問題に取り組んでください。それこそが、あなた方が次の二十一世紀をしょっていく若人を育く、そして日本をますます活性化して世界に冠たる日本を築く人を育てることになるわけでございます。私は少子問題こそが最大の今政治課題だと思います。声を大きくしてお願いいたしまして、厚生大臣のお話を一言承ってやめます。
  119. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) 今の菅野先生の御指摘、大変私どももこの問題が大きな課題だと認識をしておりまして、ついせんだっても幹部一同を集めて人口問題の所長を呼んでいろいろと話を聞きました。  先ほど総務審議官からも説明をさせましたが、この少子化のいわば原因というものは大きく言って二つの要素があるんではないかと思っております。  一つは、今いろいろ御指摘をいただいた、女性が社会的な進出と同時に出産、育児ということができるようなそういう体制をきちんとつくるという、そういうことが一つであります。  しかし、データでいいますとそのもう一つ手前がある。つまりは、二十代の未婚率が急激に高まっておりまして、結婚をしている層の出生率というのはそう大きく変わっていないわけですが、結婚をしない人たちの率が非常に高まっている。そういう点では、エンゼルプランの前にキューピッドプランでも考えないとなかなかこの問題が進まないんではないかという議論もあるわけです。  この分野は、必ずしも政治的課題として取り組むべき問題なのか、もう少し幅広い社会的な課題として取り組むべきかとも思いますが、少なくとも今先生がおっしゃったように、このままの出生率で推移しますと余りにも日本の社会の人口構造が、何といいましょうか、バランスを失すると思っておりまして、そういう点では私どももそういった因果関係を含めて十分検討して適切な対応を進めていきたい、このように考えております。
  120. 菅野壽

    菅野壽君 終わります。
  121. 今井澄

    ○今井澄君 社会民主党の今井澄でございます。  本日は、消費税の問題についてちょっとお尋ねしたいわけですが、その前に、前回の当決算委員会質疑の続きとして、一カ月前ですので長いのか短いのか、この前質問したことのその後の経過についてお尋ねしたいと思います。  中西総務庁長官から、いわゆる部落解放問題、同和問題でありますけれども、今なお差別の実態が厳しいことから、地対財特法の来年三月の期限切れを控えて、その特定事業に対する財政的、法的措置を講ずるため七月をめどに頑張るということが一つと、もう一つは、教育・啓発に関する法的措置について可及的速やかに一定の姿が見えるようにしたいということ、そして、そのことに関しても他の省庁とも連絡をとりながらやっていきたいと御答弁をいただいたわけですが、この一カ月間におけるその進展状況についてお答えいただければと思います。
  122. 中西績介

    ○国務大臣(中西績介君) お答えいたします。  同和問題の早期解決に向けましては、既に前回もお答えいたしましたように、地対協からこの基本的なあり方について意見具申がございました。それに沿いまして各大臣に対しましても、前回も答弁申し上げましたように御協力の要請を申し上げ、そして内閣一体になって取り組むという方針を確定してきたところです。  一方、与党の側におきましても、人権と差別問題に関するプロジェクトチームをつくっておりまして、ここで論議を重ねていただきまして、七月の十六日に同和問題の早期解決に向けた今後の方策につきまして大筋で与党合意がなされてまいりました。したがって、これに沿って政府といたしましては、地対協意見を尊重すると同時に、人権プロジェクトの与党の御意見も十分踏まえながら、関係省庁と密接な連携をとりながら今進めておるところでございます。  同和問題の早期解決に向けた今後の方策につきましては、近日中にこれらの問題について政府としての方針を確定し、発表できるものと思っております。
  123. 今井澄

    ○今井澄君 確かにきょうも与党の方でも鋭意協議をしているところでありまして、きょうこの時間に御質問するのはちょっと、時間的にもう一週間か何か後であればよかったかなとも思うんです。世の中一般に夏休みと言われておりますが、その間も精力的に、私どもも取り組みますが、総務庁におかれましても十分取り組みを続けていただきたいと思います。  それでは、本日の本題の消費税ですが、一昨年、消費税を三%から五%へ上げる、うち一%は地方消費税でありますが、そういう決定をいたしましてことしの秋までに見直すということで、先ごろ内閣においてもその当初方針どおりということを決定されたと思いますが、このことがまた大変に国民の皆さんから十分な御理解を得られていない、あるいは誤解を生んでいるということを私、非常に残念だと思います。やはり少子・高齢社会を迎え、またこれからの低成長時代、経済も変わっていく時代の中で、やはり消費税というのは非常に基幹的に重要な税ではないだろうかと、その辺は御理解いただかなければいけないと思うんですが、ただ、なかなか国民から理解してもらえないいろんな問題があります。  きょうは特に滞納問題についてお聞きしたいわけですが、その滞納問題に入ります前に、この滞納問題は実は昨年十二月十一日、本決算委員会において景山委員から御質疑があったわけで、それを引き続いてやりたいと思いますが、その前に、この消費税の税収というのは景気の動向に比較的左右されない安定した税収が得られるということで、その点について過去、消費税導入以降の税収の状況をその他の税目、特に所得課税などとの関連でお答えいただきたいと思います。
  124. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) お答え申し上げます。  消費税導入年度以降の消費税収でございますが、消費税の二〇%は地方譲与税になっておりますので、それを除きました一般会計ベースでお示ししたいと思います。  平成元年度、導入初年度でございますが、三兆二千億余、平成二年度四兆六千億余、四一・四%の増でございます。三年度四兆九千億余、七・六%の増、四年度五兆二千億円余八五・三%の増、五年度五兆五千億円余、六・六%の増、六年度五兆六千億円余、〇・八%の増、七年度五兆七千億円余、二・八%、八年度は予算でございますが、五兆九千億円余で二・八%の伸び率でございます。  他の税目どいうことでございました。いわゆるバブル崩壊後の一般会計の税収全体の数字を申し上げたいと思いますが、御承知のように、平成二年度の六十兆一千億円余がピークでございました。三年度五十九兆八千億円余、九九・五%、四年度五十四兆四千億円余、九一・〇%、五年度五十四兆一千億円余、これも九九・四%と、こういうふうに推移しているところでございます。
  125. 今井澄

    ○今井澄君 例えば、その間平成四年度などは所得税は八六・八%、法人税は八二・六%で大変な減収があったりするわけですから、安定的な政策運営をする上では非常に大事な税目だと思っているわけです。しかし、いろいろな問題がありまして、大変この消費税については御理解がいただけない面がある。  先ほども申しましたように、景山委員の御質問があったわけで、そういうものに続いてということになりますが、平成元年度の導入以降、消費税についての新規発生滞納額とそれから滞納残高、国税全般にわたってあるわけですが、それに占める消費税の滞納額の比率が年々増加してきているのではないかというふうに思います。その点の実態をお答えいただきたいのと、また、その滞納発生率を国税総額の滞納発生率と比較すると倍ぐらいに多いのではないかと思うんですが、その辺の実態をお答えいただきたいと思います。
  126. 加納將史

    説明員(加納將史君) お答えいたします。  滞納残高全体に占めます消費税の滞納残高の比率は、平成元年度が一・二%、二年度が三・九%、三年度五・八%、四年度八・八%、五年度一一・八%、六年度一三・四%となっております。  また、新規発生滞納額全体に占めます消費税の新規発生滞納額の比率は、平成元年度二・七%、二年度一一・一%、三年度一三・四%、四年度二〇・六%、五年度二五・六%、六年度二七・四%となっております。  また、消費税及び国税全体の滞納発生率でございますが、平成元年度は消費税は〇・八%、国税全体で二・一%。二年度は消費税二・八%、国税全体で二・五%。三年度、消費税は三・四%、国税全体では二・七%。四年度は消費税五・四%、国税全体で三・二%。五年度、消費税が六・一%、国税全体で三二%。六年度は消費税五・九%、国税全体で三・〇%という数字になっております。
  127. 今井澄

    ○今井澄君 そういうふうに消費税の滞納額がどんどんふえてきている。国税の滞納に比べて非常に多いんです。滞納の中の四分の一以上もある。この理由は一体何だとお考えでしょうか。
  128. 加納將史

    説明員(加納將史君) 消費税の年度末の滞納額、これは新規発生滞納額が処理額を上回って発生しているために結果として年々増加をしておりますが、消費税の新規発生滞納額は、平成六年度においては平成元年度の導入以来初めて減少をしております。  一般的に滞納原因についてでございますが、税目のいかんを問いませず、景気や営業状態などさまざまな事情によって資金繰りに窮して納付できない場合などが考えられるところでございます。  特に消費税について申し上げますと、所得税や法人税と異なって赤字であっても納税義務が発生する、こういう税であるということも滞納発生割合が他の税目に比べまして高くなっていることの一因であると思っておるところでございます。
  129. 今井澄

    ○今井澄君 消費税の滞納はどういった業種に多いんでしょうか。これは一億円以上の滞納額については全体で発表があるんですけれども、特に消費税について何か調べておられたらお答えいただきたい。
  130. 加納將史

    説明員(加納將史君) 消費税の滞納についてどういうような業種をというお尋ねでございますけれども、滞納の状況につきまして業種別には計数を把握しておりませんので、お答えできないことを御了解いただきたいと思います。
  131. 今井澄

    ○今井澄君 一億円以上の消費税を含む全体の滞納額では、何と四六・七%、これは平成七年度末ですが、半分近くが不動産・建設業なんですね。その前の年度を見ても四五・七%、やっぱりそうすると多いんではないか。  いろいろな記事などを調べてみますと、住専問題で悪名高い桃源社グループが国税、地方税合わせて二十五億円ぐらい滞納しているけれども、そのうちの消費税だけで約十億円あるという報道もありますし、末野興産が数億円の消費税を滞納している、それから麻布建物が一億四千万とか、メイセーが二億数千万とか、こういうふうな記事があるんです。  やっぱり同じように不動産・建設業などに多いとすれば、またこの間の住専問題で明らかになったように、これは納められないんじゃないんですね。大変な貯金をしておきながらこういう滞納をしているということもあると思うので、この辺はきちっと実態を把握していただきたいと思います。  特に、消費税が今非常に国民の理解という意味で難しいところへ来ている以上、消費税についてどの業種のどういうところがどういう理由で滞納しているのか余り明確でないということは、これは非常に困ることですので、きちっと把握するようにお願いをしたいと思います。  そもそも消費税というのは消費者から預かった税なんです。これを滞納するというのは預かり金を納めていないということになるわけです。確かにこれは資金繰りが苦しいからつい使ってしまうということもあるんでしょうけれども、これはある意味でいったら横領ではないかというふうに考えられるわけです。このことがますます消費税に対する国民の反感といいますか批判、信頼を損なうということがあると思いますが、大蔵大臣、この辺についていかがお考えでしょうか。
  132. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) 御指摘のように、消費税の負担者は消費者でございます。消費者が負担をいたしました消費税が国庫に納入されないということになれば、これは極めて遺憾なことでございます。  ただ、法制上は納税義務者は事業者となっておりますことからいたしますと、これを法律上横領と決めつけることが非常に難しい面もございます。しかし、今お話がございましたように、消費者が負担いたしました税金が国庫に入らないということは、これは消費税に対する不信感を一層大きくするものでありますから、これらのことに関しましては、私どもといたしましても、御指摘いただきました点について厳正な消費税の納入が行われるよう十分に今後指導をしてまいりたいと考えております。
  133. 今井澄

    ○今井澄君 消費税の滞納、消費税に限らず一般のその他の税目も含めてでも結構なんですが、特にこの消費税の滞納を減らすように国税庁としてはどういう努力をしてこられたのか、また、今後この消費税の滞納を減らすためにどういう方策があると考えておられるのか、その点をお尋ねします。
  134. 加納將史

    説明員(加納將史君) 国税当局といたしましては、消費税に対する国民の信頼を損なうことのないように、他の税の滞納より優先的に着手するなど、消費税の滞納に対して厳正に対処しているところでございます。  すなわち、納税者に対しましてより細かな広報、指導等を徹底することにより消費税の新規発生滞納の未然防止に努力するとともに、滞納となった消費税については、大口・悪質事案に対し要員を重点的に投入する、また、必要に応じて滞納発生後速やかな保全措置を講ずるなどして、滞納者の個々の実情に即した厳正的確な措置を行っているところでございます。  これによりまして、消費税滞納の処理額は、平成六年度におきましては対前年比三・一%増の三千七百六十二億円となっており、前年度を上回る処理を行っているところでございます。また、平成元年度から平成六年度までの消費税滞納の処理額の累計は一兆三千七百九十一億円となっており、新規発生滞納額の累計額の約八割に達しているところでございます。  今後とも消費税の滞納の未然防止及び滞納整理の一層の促進に努めてまいりたいと考えております。
  135. 今井澄

    ○今井澄君 今、一般的なお答えはあったんですけれども、しかしもっと具体的な手だてが必要だと思うんですよね。  一つは、例えば九一年の改正で納付回数を五百万超に関しては年四回にしたとか、きめ細かにやったとかいうことがあるようですけれども、それが効果が上がっているのかどうか。それからもう一つ、優先充当という形でできるだけそういうことも指導しているというんですが、例えば実際には建設業者なんかの場合、公共事業の受注事業者として自治体のランクづけを受けるときに提出する書類には、法人税の納付証明書は提出しなきゃならないんですね。ところが、消費税の納付証明書はつけなくていいんですよ。したがって、もしお金があればどっちから納めるかといったら、建設事業者の方はまず法人税の方を納めて消費税は後回しになる、こういう構造にもなっていると思うんです。そういう具体的な点を詰めなければいけないんじゃないかと思うんですけれども。  それからもう一つは、これは必ずしも国税庁にお聞きすることではないのかもしれません。企業会計上の処理の問題です。  今、簡単に言うと、消費税としてお預かりした分と売上金とを一括して税込み処理するというか記帳をしているということから、結局あいまいになるということがあるだろうと思うんです。そういう面では、預かり金としてきちっと帳簿処理をするような企業会計を指導するとか、中には消費税預金みたいな形で口座を別につくってさせたらいいんじゃないかという案なんかもあるんですが、そういうことはどうお考えか。  そして、特に大蔵省の場合、先ほども牛嶋先生のお話にもありましたけれども、消費税がうまくいかない、不透明でいろいろと批判を受けるのはインボイスなんです。インボイスを入れないところに問題があるんです。確かに、年をとられた一人、二人でやっておられる方は例外としまして、もう今はどこでもコンピューターの入ったレジやなんか発達しているわけですから、インボイスができない時代ではないんですよね。これは早急にやらない限り、基幹税としての消費税の信頼が得られないと思うんですが、その辺お答えがあったらお願いをしたいと思います。
  136. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) 消費税を含めまして、国民の信頼を得ていくということが最も大切な課題であるというふうに思っております。  それで、滞納がふえているということでございまして、執行面でも努力しているわけでございますけれども、今後またいろいろ検討していかなければならない課題も多いと存じております。  制度面では、先生の方からお話がございましたように、今まで二回であった申告納付を、平成三年の改正によりまして原則四回というふうにさせていただきました。さらに今般の改正におきまして、年四回申告納付していただける年額の水準を五百万円から四百万円に引き下げるという措置も講じさせていただいたわけでございます。  そういたしますと、納税義務が四回ということで、より滞納が発生しないようになるわけでございますけれども、他方、よく皆様方に承知していただきませんと、忘れたみたいな形での滞納も出てまいりますものでございますから、さらに広報にも力を入れていかなければならないと思っております。  それから、先生の御提案の点につきましても、これからまたいろいろ検討していかなければならない課題だと心得ております。
  137. 今井澄

    ○今井澄君 最後に大蔵大臣にお聞きいたしますが、消費税は私は大変大事な税だと思っておりますが、欠陥がやっぱりありまして、これはいわゆる逆進性と言われる問題だろうと思います。  この逆進性の緩和策は、もちろん税制だけではなく、歳出面においてとるべきものもあろうかと思いますが、しかし、例えば医療費は非課税ということになっていたり、現にそういうことの配慮というのはされているわけであります。特に今度三%から五%にするに当たって、いわゆる基礎的食料品の非課税問題が既に議論になっておりまして、これはこの時期にできるのかどうか。一つはインボイスの問題もある、他への影響もあると思いますが、もう一つ、この率でもってやるべきかどうか、いろいろ議論があるところだと思います。  しかし、現在の国民の批判といいますか反発というものを考慮すれば、特にまた今度の三%から五%のときには、特別給付金は前回と違ってわずか五百億でごく限られた層にしかいかないということを考えると、基礎的食料品をこの際複数税率で三%に据え置くとか、そういうふうにすることを考慮すべきではないかと思いますが、その辺はどうお考えでしょうか。
  138. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) 先ほどもお答え申し上げましたけれども、消費税の持ちます逆進性については、この消費税が導入をされますときの国会におきます論議でも、また、その後各政党におかれても消費税の逆進性是正の問題等についてさまざまな角度から御検討が行われたところだと考えております。  今日におきましても、税制はもともとその逆進性と呼ばれる欠陥を含んでいる場合、これはその是正の努力が払われなければならないものと考えております。ただ、来年四月一日から実施することになります消費税の五%へのアップにつきまして、個々に、直ちに逆進性是正のための飲食料品あるいは基礎的飲食料品の複数税率を適用するということになります場合には、総体の税率に影響するのかしないのか、いろいろな問題を生ずると考えておりまして、九月三十日までに今回の消費税率の変更をさらに変更するということが可能であるかどうかということについては、私どもとしては困難と考えております。  したがいまして、四月一日からの実施につきましては平成六年十一月の国会の御決定どおりに実施をさせていただきまして、さらに今後、年度の税制改正あるいは抜本的な税制改正を論議していただきます場におきまして、消費税のあり方についてただいま御提起がございましたような問題についてもぜひ積極的な御論議をいただいて、国民の皆様方のより御納得をいただけるような税制を確立していく努力をしなければならないと考えております。
  139. 今井澄

    ○今井澄君 国民の批判が大変強いということを考えて、ぜひ対処をお願いしたいと思います。  どうもありがとうございました。終わります。
  140. 水野誠一

    ○水野誠一君 新党さきがけの水野でございます。  まず、菅厚生大臣に、スピーチセラピスト、いわゆる医療言語聴覚士の資格制度に関して伺いたいと思います。  現在、全国に百五十万人の言語聴覚障害者がいるというふうに言われておりますが、その患者の方々のための言語聴覚療法を担当するスピーチセラピスト、いわゆるSTと呼ばれておりますが、このSTが不足をしている、それによって患者がかなり治療のチャンスを逸しているということを聞いております。    〔委員長退席、理事西田吉宏君着席〕 STのいない地方では、高度難聴の幼児の治療を行うために母親が新幹線で東京まで通わなければならないといった事例や、あるいは脳卒中で失語症になった患者が自宅近くにSTがいないために言語訓練をあきらめざるを得なくなったというケースもあると聞いております。  現在、我が国では約二千人のSTが医療分野で働いているわけでありますが、高齢化が進展する中で失語症患者数もかなりの勢いで増加しつつあり、百五十万人のこの障害者に対して少なくとも一万二千人ぐらいはSTの数が必要だとも言われております。かなり深刻な不足の事態がそこにあるというふうに見ております。  この医療言語聴覚士の不足の一番の原因というのは、STが国家資格になっていないということであります。理学療法士や作業療法士と異なって国家資格でないために、病院でも正式な定数化が図れなかったり、あるいは医療報酬が理学療法や作業療法に比べて三分の一しかないというために病院もSTを配置しにくいという事情があるようであります。このため、現在養成されているSTの就職先が逆にないという矛盾した状況にもなっているわけです。そういう意味でも、国家資格というものがSTの数の増加と質の向上につながることは申すまでもないわけであります。  この問題についてひもといてみますと、実は厚生省医療制度調査会が昭和三十八年、すなわち今から三十三年前に、理学療法士、作業療法士のほかに視能訓練士、あるいは今話題にしておりますSTの制度化を早急に図る必要があるという答申を出しているわけであります。三十数年前に制度化を図るべきだという答申を受けていながら、三十数年たった現在まだその資格ができていないということは大変残念であります。しかも、昭和五十六年にも厚生省は再び言語療法士身分制度検討会を設けているわけでありますが、そこでも結論は先送りになっているということであります。理由のいかんにかかわらず、これは行政の怠慢と言わなければならないんではないかと思います。  また、この三十数年間、STがなぜ制度化できなかったかという理由の一つに、関連団体の一つ医療分野での法制化に反対しているためと聞いております。菅大臣は、この二月の参議院厚生委員会におきまして、阿部正俊委員質問に対して、関係者合意を得た上で資格制度の整備を図るという答弁をされているわけでありますが、これまで三十年間反対してきた団体と合意を図るためにはいかなる方策をもって当たられるつもりなのか、伺いたいと思います。  私は、この資格推進派と反対派の意見の食い違いというのは、言語療法に関する医療か教育かという、よって立つ哲学の違いではないかというふうに思います。したがって、現実的な解決策については、例えば省庁の壁を乗り越えて文部省との協議を図るなど、知恵をもって当たらない限りこの問題は永久に解決できないのではないかと心配しておりますが、数多くの患者がこのSTの制度化というものを待っているという現状から、ひとつ菅厚生大臣の御意見を伺わせていただきたいと思います。
  141. 菅直人

    ○国務大臣(菅直人君) スピーチセラピスト、つまり言語聴覚療法士の資格法制化につきまして、今、水野委員の方から過去の経緯を含めてかなり詳しく状況の御説明をいただいたところであります。  私も個人的には、もう大分前に亡くなった父親が脳梗塞で言葉をかなりの期間失っておりまして、こういう方に治療を受けた経験もありまして、そういった点ではこのことについては個人的な関心も持っております。また、確かに、以前の審議の折にも多少関係者から説明を聞きましたところ、医療と教育という両面でのこの問題の扱いについてなかなか合意が得られないというようなことがありまして、いま少し検討が、調整が必要であるといいながら大変長い時間がかかってきたということで、行政の怠慢とおっしゃられればそういった面もあったかなと反省をいたしております。  他方、医療が高度化し、専門化し、リハビリテーションの考え方が広く国民の中で定着しているという状況の中では、この言語聴覚療法士の重要性はますます高まっていると考えておりまして、速やかな法制化を求める意見が今の水野さんの御意見を含めてあちこちから出ております。  厚生省としては、基本的にはやはり関係者合意を得た上で資格の法制化を行いたいという考えに立ってこれまでも関係者の意見調整を見守ってきたわけですけれども、質の高い医療の充実を図る観点からは、今後具体的な進め方について関係省庁を含めた関係者と改めて相談をいたしたいと考えております。つまりは、文部省を含め関係する役所あるいは関係者の皆さんと相談をする何らかの場を用意できないだろうか、検討会というようなものを少し念頭に置いて、そういう場をつくって、そして合意を図っていくということに積極的に取り組みたい、このように考えております。
  142. 水野誠一

    ○水野誠一君 ありがとうございました。ぜひこの三十年のブランクを埋めるべく積極的にお進めいただきたいと思います。  次に、農水関係でひとつ御質問をしたいと思います。  平成六年度の決算検査報告において不当事項として指摘されています畜産振興事業団の肉用子牛生産者補給金の交付に関して、まず会計検査院に伺いたいと思います。  今回の会計検査院の報告によりますと、平成四年から七年までに補給金を交付された子牛の生産者千百六十二人が検査され、そのうち九十二人が補給金一億百十八万ほどの金を不正に受け取ったという報告がございます。九十二人もの生産者が補給金を不正に受け取っていたという事実と、そんな不正が簡単にできる国の補給金の交付ということには驚くわけであります。不正の内容も、死んだ子牛を生きていることにして売った者が十六人、乳用の子牛を肉用子牛と偽って補給金を受け取った者が七十四人というものであります。  その中で最も悪質なものに、肉用子牛を持っていない生産者が農協や家畜商と共謀して虚偽の申請をして五千七百万円の補給金を不正に受領したケースがありますが、この件について会計検査院から簡潔に御説明をいただきたいと思います。
  143. 小川光吉

    説明員小川光吉君) 肉用子牛の生産者補給金というものは、肉用子牛の生産者が各都道府県の肉用子牛価格安定基金協会と生産者補給金交付契約を締結しまして、肉用子牛の個体登録を行ったり販売の確認申し出を行うなど一定の要件を満たした場合にこれらの協会から交付されるものであります。  御質問の事態は、ある生産者につきまして、肉用子牛六百六十二頭の販売を対象として補給金五千七百四十三万八千八百十円が交付されておりました。これにつきまして本院で調査いたしましたところ、実際はこの生産者は肉用子牛を所有しておりませんで、農協がこの生産者及び家畜商と合意の上で、家畜商所有の牛を生産者所有の牛として虚偽の肉用子牛個体登録申込書を提出しておりました。そして、これらの肉用子牛を生産者が農協を経由して家畜商に販売したこととする虚偽の販売確認申出書を提出しまして、これに基づいて補給金が交付されていたものであります。そして、この補給金は、家畜商が生産者名義の口座を使用するなどいたしまして実質的に受領していたというものでございます。
  144. 水野誠一

    ○水野誠一君 私は、今回の不正行為は明らかに犯罪行為に当たるのではないかと思うのであります。補助金の交付に関しては、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律というのがありまして、第二十九条に、偽りその他不正により補助金等の交付を受けた者は、五年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金に処するという規定があります。今回の場合は、虚偽の申請をして補助金をだまし取った、詐欺罪にも相当するものではないかと思うのであります。ちなみに、五千万円相当の詐欺罪に対する最近の判決を見てみますと、懲役二年ないし三年という厳しい判決も出ているわけであります。  ところが、今回の事件に関して調べてみますと、五千万余円の補給金を受け取った生産者は、補給金を返却はいたしましたが、それ以外には一カ月間は肉用子牛の個体登録を自粛させられるという処分を受けただけであります。つまり、今後も肉用子牛の補給金をもらえる資格があるようであります。また、共犯とも思われる農協の職員も降格処分だけで、実際は非常に軽い降格処分で終わっているものであります。その上、進退伺を出した農協の組合長、副組合長は、理事会で進退伺は却下され、おとがめなしということでありました。つまり、仲間うちで形式的な処分をしてお茶を濁したというような形になっているわけであります。いずれにしても、国の補助金だからだれが損をしたというわけではないんだということで何かうやむやになってしまった感じがしております。  こういった事態に対して、農水省はどのように処分あるいは指導をなさったのか、御説明を伺いたいと思います。
  145. 熊澤英昭

    説明員(熊澤英昭君) お答え申し上げます。  本件のような不正な事件が発生したことは、まことに遺憾であるというように強く認識をいたしているところでございます。農林水産省といたしましては、この事業の実施主体でございます畜産振興事業団に対しまして、かかる事態が再び発生しないよう、指定協会に対する指導の一層の強化等、制度運用の適正な実施に努めるよう、文書により指導、通達をいたしているところでございます。    〔理事西田吉宏君退席、委員長着席〕  これを受けまして畜産振興事業団の方では、指定協会に対しまして、こうした事態の再発防止に向けて指定協会みずから本制度にかかわります調査確認を行うということはもとより、農協等に対しましても、調査確認を十分に行うよう指導に万全を期し、本制度を適正に実施するようにということで文書により厳重注意を行っているところでございます。  また、当該指定協会を管轄する県に対しましても、当該協会に対する一層の指導を文書により要請したところでございます。  同時に、県の方といたしましても、事業団からの指導要請を受けまして、指定協会に対しまして事務処理体制等の点検、事務の委託先にかかわります事務処理の円滑化と適正な実施の推進など、指導体制の強化を図るよう、これも文書にて指導しているところでございます。  なお、補足して申し上げますと、不適正に交付ごれました補給金につきましては、当該指定協会から平成八年一月三十日に畜産振興事業団に返還をされております。  また、御指摘のとおり、生産者につきましては個体登録の自粛ということを行い、農協につきましては、かかる事態が発生したことにつきまして深く反省し、組合長を初めとする幹部役職員の進退伺の提出とあわせて担当職員を降格処分としたところでございますが、これは結果的には、先生御指摘のとおり、役職員の進退伺につきましては農協の理事会で否決をされたということでございます。
  146. 水野誠一

    ○水野誠一君 結局何にもやっていないということでありますね。文書による注意ということは処分とは言えないというふうに思います。  時間がなくなってまいりましたので、次に法務省に今の関連で伺いたいと思うんですが、畜産振興事業団の助成事業に関しては、平成四年度の決算検査報告においても、助成金一億二千四百七十四万が不適当に交付されたという指摘があるわけであります。されど今回再度の指摘でありますから、この事業団の補助金がかなりいいかげんに交付されているというのが実態ではないかと思います。  そこで長尾法務大臣にお伺いしたいと思うのでありますが、会計検査院なり省庁が今回のような不正を発見した場合、刑事告発するだけの十分な証拠を押さえるというのは確かに難しいかもしれませんが、今回のように告発すべき事件においても告発できない、あるいは告発しないということになってしまうというのは大変私は残念なことだと思います。  しかし、先ほど引用いたしました刑訴法二百三十九条には「犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」とあり、あくまでも犯罪と考えられるときには告発すべきと理解できるわけでありますが、これに関する法務省の御見解を伺いたいと思います。  また、今回のような補助金の虚偽受領の場合等においては、たとえ告発なしでも検察が取り上げ、立件すべき事件ではないかと思うのであります。法務省のこれに対する見解もあわせてお伺いをしたいと思います。  また、先ほど述べました補助金等に関する法律が実際にどの程度適用されているのかについても御説明をいただきたいと思います。
  147. 長尾立子

    ○国務大臣(長尾立子君) お答えを申し上げます。  御指摘のとおり、刑事訴訟法二百三十九条二項は、公務員は、犯罪があると思料するときは告発義務がある旨を規定いたしております。この規定は、犯罪の捜査または公訴権の行使の適正を確保するということのためには各種行政機関の協力が必要であるという趣旨から設けられたものであるとされており、公務員が合理的根拠に基づいて犯罪があると思料する場合には告発義務があると考えられております。  残部の件につきましては、政府委員から御説明を申し上げます。
  148. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) お答え申し上げます。  一般的にどのような事案につきまして実際に捜査を行うかという点につきましては捜査にかかわる事柄でございまして、警察当局におきまして個別具体的に判断すべき事柄であると存じますので法務当局としての答弁は差し控えさせていただきたいのでございますが、警察当局におきましては、刑事事件として取り上げるべきものがあると考えますれば所要の捜査を進めて適正に対処するものと存じます。  なお、お尋ねの昭和六十一年以降、いわゆる補助金適正化法違反事件の処理状況についてのお尋ねと考えますが、いわゆる補助金適正化法違反事件の昭和六十一年以降の処理状況といたしましては、起訴件数といたしましては合計十五件ございました。その内訳は、正式裁判と申しますか、公判請求した件数が四件、それから略式請求ということで、罰金の求刑をして略式裁判によって請求したものが十一件ございます。  なお、先ほども委員質問の中にもございましたように、補助金を不正に受給した事案のうち、例えば私腹を肥やすため他人名義を使用して補助金の不正受給を受けたというような事案については詐欺罪に問擬されるという場合もございます。詐欺罪を適用した事例もあると思われるのでございますが、詐欺罪につきましては態様別と申しますか、関連法律別の統計が作成されておりませんので、その起訴件数等を具体的に答弁することはできないので、その点御理解願いたいと存じます。
  149. 水野誠一

    ○水野誠一君 非常にまだ満足いく御答弁とは思いませんが、時間の関係もありますのでそろそろ終わらせていただきたいと思うんですが、補助金の不正受領で実際に告訴されている案件例は非常に少ないということがよくわかりました。  畜産振興事業団は、平成六年度に八百十五億円の補助金を生産者に交付しているわけであります。財政赤字にもかかわらず国は巨額の補助金をさまざまな分野に交付しているわけでありますから、それらの補助金が不正に使用されないように政府としても心して行政を行っていただきたい。こういうことが国民の政治不信に輪をかけるというようなことがないように、くれぐれも御指導をしっかりとやっていただきたいというふうに思います。  終わります。
  150. 阿部幸代

    阿部幸代君 日本共産党の阿部幸代でございます。  新潟県巻町において、七月二十五日告示、八月四日投票が行われる、巻町における原子力発電所建設についての住民投票が条例の定めるとおり町民の自由な意思が反映されるものになるように、幾つかの点について質問したいと思います。このことについては、既に衆議院の商工委員会で我が党の吉井英勝委員質問をしていますので、その後の経緯を踏まえて質問をします。  初めに問題にしたいのは「明日の巻町を考える会」、この会の事務局次長という方は東北電力の現地巻原子力建設準備本部副本部長の職にある方で、会は巻原発推進派の集まりですが、この会が行う既設原子力発電所の見学会に東北電力が自社所有のバスを提供していた問題です。  六月二十七日の資源エネルギー庁の我が党への調査報告によりますと、このいわゆる白バス提供も広報活動として許容される範囲内と考えるということでしたが、その後、運輸省新潟運輸局新潟陸運支局から行政指導がされています。運輸省はどのような指導をしましたか。
  151. 荒谷俊昭

    説明員(荒谷俊昭君) 七月四日に「明日の巻町を考える会」の宮本氏から新潟陸運支局に、考える会が行っています原子力発電所の見学ツアーの運送行為につきまして電話で照会がございました。これに対しまして陸運支局の担当者は、自家用バスとしての利用範囲を逸脱している可能性があるというふうにお答えをいたしております。  そして、翌日の七月五日に東北電力の新潟支店の方が新潟陸運支局に参りまして、運行実態についての説明がございました。いろいろとお聞きをした結果、東北電力の使われておりますバスは従業員の送迎用のバスでございますが、これを他人の需要に応じて反復、継続して旅客を輸送する行為、これはいわゆる自家用バスの使用範囲を逸脱しているという判断をいたしまして、自家用バスの適正使用について指導をしたところでございます。  そして、この自家用バスを使っての原子力発電所の見学は七月六日に既に中止をされております。現在は貸し切りバスを使って輸送が行われているということで、現状は道路運送法上の問題は解消をされているということでございます。    〔委員長退席、理事西田吉宏君着席〕
  152. 阿部幸代

    阿部幸代君 道路運送法に抵触する法律違反との指摘があって、当初計画では六月十八日から七月末日まで毎日運行する予定だった東北電力の自家用バスの使用を七月六日には取りやめ、翌七日からは貸し切りバスを使用するようになったということです。資源エネルギー庁が、法違反あるいは法違反と疑われるような行為を広報活動の許容範囲としていたことの責任は重大だと思います。  通産大臣に伺います。  電気事業者の許認可権者として東北電力の違法行為の事実関係を明らかにし、今後二度とこのようなことのないよう厳重に注意すべきではありませんか。
  153. 塚原俊平

    ○国務大臣(塚原俊平君) 御指摘があった後に確認をして、大変まじめな態度で確認したと思いますが、確認の後、まずいという状況の中で中止をしたということですから、非常にまじめな対応をいたしていたというふうに考えます。
  154. 阿部幸代

    阿部幸代君 東北電力の対応を問うているんじゃないんです。通産省が東北電力の法違反を厳しく指摘し、指導する必要があるということを私は指摘したんです。  東北電力が行っている懇談会において、弁当やビールが提供されている問題について、六月二十七日の我が党吉井英勝衆議院議員への資源エネルギー庁の報告では、食事どきに懇談が及ぶときには弁当を用意している、また、夜の懇談会の場合、その終了後に一人当たり缶ビール一、二本程度で懇親を行うこともあるということで、これも広報活動として許容される範囲内だというものでした。七月十二日、私も参加して資源エネルギー庁長官申し入れをした際にも、千円くらいの弁当に缶ビール一本程度ならよいだろうという認識を示しました。  公職選挙法上は飲食物の提供が厳しく禁止されています。特に、酒、ビールなどアルコール類は厳禁です。供応、買収まがいの飲食物の提供を認めるエネルギー庁長官の立場は、公正な投票を期待する国民の怒りを呼ぶものであり、断じて認めることはできません。これは答弁不要です。  次に、通産省主催の連続講演会について伺います。  巻町の住民投票条例は、第十五条で、「住民投票に関する運動は、自由とする。ただし、買収等町民の自由な意思が拘束され、不当に干渉されるものであってはならない。」としています。推進派、反対派とも情報収集と提供に力を注ぐのは自然の成り行きだと思います。しかし、何をやっても何を言ってもよいとはいかないと思うわけです。住民が求めているのは公正な情報開示です。  ところが、六月二十四日、巻町公民館で開かれた通産省資源エネルギー庁主催の第二回目の「私たちの生活と放射線の影響」と題する講演会では、講師が質疑応答の中で、放射線が原因でがんになるなどというのは科学的に証明されていないと、こういう持論を展開し、参加者から、広島や長崎の原爆によるがん患者の増加でも関係は明らかだと反発されると、今とは衛生状態など環境が違う、広島、長崎の原爆のころと今とは衛生状態など環境が違う、こういうことを言ってひんしゅくを買っています。  科技庁長官に伺いますが、そもそも放射線ががんや奇形の原因になることが科学的に裏づけられたからこそ国際機関の放射線防護委員会の勧告も出されたし、それに基づく日本の法律でがんなど影響の回避が定められているのではありませんか。
  155. 中川秀直

    ○国務大臣(中川秀直君) 放射線による健康への影響としては、脱毛、白血球の一時的減少など急性影響と、がん、白血病などの晩発的、つまり何年か置いて影響が出るという影響等があるとされております。  これらの放射線障害を防止し、公共の安全を確保するため、放射線障害防止法においては、放射性同位元素及び放射線発生装置の使用等を規制しているところでございます。  今後とも、放射線障害防止法に基づく安全規制により放射性同位元素等の取り扱いにかかわる安全確保に万全を期してまいりたいと思います。
  156. 阿部幸代

    阿部幸代君 科学技術庁の原子力安全局放射線安全課が国際会議「チェルノブイルから十年 事故の影響の総括」の報告書を最近公表しています。  ここでも、「一九八六年に子供であった者の甲状腺がんが極めて有意に増加しているが、これは今までのところチェルノブイリ事故の結果として放射線被ばくが公衆の健康に与えたインパクトの唯一の明白な事実である。」、こういうふうに報告していますね、科技庁長官
  157. 中川秀直

    ○国務大臣(中川秀直君) 国際会議の報告書の件でございますので、政府委員から答弁させます。
  158. 池田要

    説明員池田要君) お答え申し上げます。  先生お尋ねの国際会議でございますけれども、これはちょうどことしの四月でチェルノブイリの事故から十年たっことを契機といたしまして、国際機関でありますIAEAでございますとかWHOそしてECの共催によりまして「チェルノブイルから十年 事故の影響の総括」を行ったものでございます。  その報告書におきましては、「一九八六年に子供であった者の甲状腺がんが極めて有意に増加しているが、これは今までのところチェルノブイリ事故の結果として放射線被ばくが公衆の健康に与えたインパクトの唯一の明白な事実である。」と、こういう旨記載されているところでございます。また、同報告書におきましては、今日まで白血病の発生率にも甲状腺がん以外のがんの発生率にも放射線に起因すると思われる増加は検出されていないと、こういう旨の報告も行われております。  同報告書におきましては、長期的な健康影響につきましてはさらなる調査が必要であるとしておりまして、科学技術庁といたしましても今後ともこの調査の進展について注意深く見守ってまいりたいと存じております。
  159. 阿部幸代

    阿部幸代君 甲状腺がんの多発が重要視されているときに、放射線が原因でがんになるなどというのは科学的に証明されていない、こんなふうに言うのは安全宣伝で原発立地推進に一方的に加担する行為であり、通産省主催の講演会としては絶対に許されないことで責任は重大です。通産省というのは許認可権者であり、同時に安全審査など安全規制の当局でもあるわけです。  もう一つの例についてです。  巻町で行われた通産省主催の第四回目の講演会では、「電源立地と地域振興」をテーマに資源エネルギー庁公益事業部開発課長の藤田昌央氏が講演しています。私もそのテープを聞いてみましたが、これまた決して公正な内容ではありません。電源立地促進対策交付金制度というのがあるのは知っていますし、その話をすること自体に異を唱えるつもりはありません。しかし、次のように言っているんです。  島根県鹿島町の下水道整備は一〇〇%で、鹿島町が下水道の整備を県、国の、建設省の予算を待っていたら恐らく二十一世紀になってもついてこない、また千葉県鴨川市の総合運動施設、これは文部省とか県に幾ら頼んでもこれだけの予算はつけてくれません、こう言っているんです。こんな話が本当に通用するんでしょうか。建設省公共下水道課や文部省体育課が何と言っているか御存じですか、通産省。
  160. 江崎格

    説明員(江崎格君) 今、先生御指摘の連続講演会でございますけれども、このときのテーマは「電源立地と地域振興」ということで、資源エネルギー庁の職員が講演を行ったわけでございますけれども、その場合の具体的な例といたしまして、中国電力の島根原子力発電所の所在いたします島根県の鹿島町が現在日本でも数少ない下水道普及率一〇〇%の町になっているということを例として挙げたわけでございます。  この趣旨でございますけれども、これは発電所が設置されまして自己財源が強化されますと、一般の市町村よりも下水道などの公共事業が早期に整備できることがあるということを強調して述べたものでございまして、下水道の整備事業の対象から特定の地域が外されてしまっているとか、あるいは原子力発電所を立地しないと下水道整備ができないといったようなことを述べたものではないということを御理解いただきたいと思います。
  161. 阿部幸代

    阿部幸代君 私はテープをちゃんと聞いたんです。趣旨のことを言っているんではなくて、県や国の建設省の予算を待っていたら恐らく二十一世紀になってもついてこないとか、文部省とか県に幾ら頼んでもこれだけの予算はっけてくれませんとか、こういうことを言っていること、この事実を問題にしています。    〔理事西田吉宏君退席、委員長着席〕  建設省公共下水道課は、鹿島町の下水道普及は一〇〇%ではなく九五%、下水道部として特定地域の整備に補助金を出さないということは一切していないと説明していますし、文部省体育課も制度上そういうことはないと言っています。当然のことです。事実に反するとしか受け取られない、明らかに利益誘導としか考えられないような広報活動は改めるべきではありませんか、通産省。
  162. 江崎格

    説明員(江崎格君) 原子力の立地を進めます際に、地元の方の御理解をいただくということは私ども不可欠なことだというふうに思っておりまして、各種の広報活動をやっているわけでございますけれども、もちろんその際に行き過ぎたことがないようにということは今後とも気をつけていきたいというように思っております。
  163. 阿部幸代

    阿部幸代君 藤田氏は同じ講演の中で、電源立地促進対策交付金百三十万キロワット一基七十億円でございまして、巻の原子力発電所の場合、一号機から四号機までの計画でいきますと約二百十六億円というのが交付金ということで交付されるということでございますと話していますが、電調審を通って基本計画に組み込まれているのはまだ一基です。四基を既定のものとするなど不当じゃないですか。四基を当て込んだカラー刷りの。パンフレット「No.1巻町」が全戸配布されていて住民が怒るのは当然だと思います。  七月十八日付朝日新聞が、「原発PR戦、資金力で大差」と題して、推進派の「テレビCMなど億単位」に対して、反対派「新聞折り込みで二百万円」という記事を載せていますが、この推進派の資金の中には通産省資源エネルギー庁の分も含まれていますね。資源エネルギー庁の広報事業として行っているものの宣伝費は合計で幾らになりますか、幾ら投入していますか。
  164. 江崎格

    説明員(江崎格君) 今回の巻町に関連いたしまして、私ども連続講演会等をやっているわけでございますけれども、連続講演会、階層別の懇談会、それから新聞の広報などで合計いたしまして二千三百二十三万円でございます。
  165. 阿部幸代

    阿部幸代君 資金力に物を言わせた上、内容面でも講演会などで不公正があるというのでは公正が保てないと思います。ナトリウム漏えい火災事故で動燃がビデオを隠して大問題になりましたが、情報隠しも、また不公正なでたらめな情報開示も国民の不信を募らせるだけだと思います。国民合意を形成する方法として絶対にあってはならない方法だと思います。  そもそも国は、条例が定める住民の自由な意思の表明を妨げるような行為をしてはよくないと思うのですが、念のためにもう一度、通産省。
  166. 江崎格

    説明員(江崎格君) 住民投票に際しまして、原子力発電の必要性ですとか、あるいは国のとっております安全対策などにつきまして十分御理解の上、十分御議論を尽くされて投票をしていただきたいと、このように思っておりまして私ども各種の広報活動をやっているわけでございまして、ただ行き過ぎがないように十分気をつけていきたいと、このように思っております。
  167. 阿部幸代

    阿部幸代君 行き過ぎがないという表現がどうも抽象的な表現で大変気になるんですけれども、住民の自由な意思の表明を妨げるような行為をしてはならない、口から出任せのいいかげんな情報提供はしてはならない。具体的に答えていただきたいのですが。
  168. 江崎格

    説明員(江崎格君) 正しい情報を提供して、十分御議論を尽くした上で投票をしていただきたいという趣旨から私ども各種の広報活動をやっております。
  169. 阿部幸代

    阿部幸代君 必ずしも正しい情報開示ではないということを私は先ほどから指摘をしています。  最後に、経済企画庁に質問したいんですけれども、巻町の原子力発電所建設が、一九八一年、昭和五十六年度の電調審の議を経て電源開発基本計画に組み込まれてきたことはよく存じているのですけれども、過去にこの基本計画が変更されたことはありますか。あるとしたら何件でしょうか。
  170. 坂本導聰

    説明員(坂本導聰君) 御指摘の電源開発基本計画に組み入れられました地点でその後計画から削除されたという例は過去十一例ございます。
  171. 阿部幸代

    阿部幸代君 通産省に今の答弁をよく聞いておいていただきたいと思うのですけれども、基本計画といえども変更があった事実があるんですね、十一件と今おっしゃいました。基本計画を未来永劫不変のものであるかのように振りかざして住民を脅かすようなことは断じてあってはならないと思いますが、どうですか。
  172. 江崎格

    説明員(江崎格君) 今の巻町に関する計画につきましては、これは適正な手続によりまして定められたものでございまして、これを変える必要は今のところはないというふうに私どもは判断しております。
  173. 阿部幸代

    阿部幸代君 もう御存じのことと思いますけれども日本の原子力開発のありようが今国民的な関心を呼んでいます。私、科学技術の特別委員もやっておりまして、何度も「もんじゅ」のナトリウム漏えい火災事故問題を取り上げてまいりました。この問題は、当初、火災という認識もされず、ほんの小規模の漏えい事故であったという認識からスタートをしたんですけれども、今どこまで認識が発展しているか、ちょっとお話をしたいんです。  動燃があの火災事故の再現実験をやっています。その実験の中で、何と床ライナーに穴があいて、それだけで終わっているんではないんです。水素が発生していて、水素爆発が何度も起こっているんです、実験の中で。その床ライナーの穴があいた部分というのは溶接部分でした。これは事故の再現実験でしたから、狭いいわばモデルルームで行われた実験なんです。これが実際、「もんじゅ」のあの大規模施設で起こったら、もう明らかに過酷事故に発展していたわけなんです。紙一重の事故だったわけです。高速増殖炉路線がまだ技術的に未確立てあるということがもはや明確になりました。  この段階で私が注目していることが幾つかあります。九四年に原子力の長期計画というのがつくられているんですが、ここで高速増殖炉の開発路線というのはもう技術が完成したものとされていました。そして次は実証炉、ATRですね、新型転換炉のATRの段階だということまでうたっていたんですが、まだ二年しかたっていませんけれども、電力会社の方の要請もあって、ATRの開発はもうこれは断念です、あきらめているんです。長期計画といえどもこんな簡単に、朝令暮改のように改めることがあり得るんですね。国策というものが改められることがあり得るわけです。そして今、「もんじゅ」もいつ運転再開されるか見通しは立ちません。  残る長期計画の問題は何かというとプルサーマルです。一般軽水炉でプルトニウムとウランの混合燃料を使うということです。これまた、福井、新潟、福島三県の知事が拒否をしています、見直しをしてほしいと。こういう段階で、本当に今日本の原子力開発のありようは、国民ぐるみでじっくり考え合意を形成する大事なときになっています。  この合意というのは不公正な、いいかげんな情報を国民に提供したり、あるいは必要な情報を隠したり、そのような形でつくられていくものではないと思います。国の国民合意を築き上げる姿勢というものが、今度の巻原発の住民投票をどう見るか、ここにも国民が当然注目をしていると思います。公正な投票が行われ、それが尊重されることを切に願って、私の質問を終わります。
  174. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 まず、梶山官房長官にお尋ねいたします。  女性のためのアジア平和国民基金は、韓国、フィリピン、台湾の旧日本軍に慰安婦とされた被害者三百人を対象に一律一人二百万円の一時金を支給しようとしております。韓国、フィリピン、台湾の被害者や支援団体、そしてそれぞれの国の議会や政府の理解と納得を得られてこれが実施されようとしているのですか、お伺いいたします。
  175. 平林博

    説明員(平林博君) お答え申し上げます。  かねてから関係国の政府関係団体等にはいろいろな形で対話をやってまいりましたが、今般、正式に決定いたしましたので、目下関係者がそれぞれの政府当局、関係団体等と対話をやっておりまして、できるだけ早期に支給が実施できるようにしたい、このように考えております。
  176. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、理解と納得が得られたのですかと聞いているんです。
  177. 平林博

    説明員(平林博君) 相手国政府関係者あるいは慰安婦の方々のそれぞれによって程度は違っておりまして、相当の御理解を得た方と、あくまでも反対されるということを表明されている方といろいろございますが、政府といたしましても、また基金の関係者といたしましても、誠意を持って御理解を賜りながらこの決定が実施できるようにしてまいりたい、このように考えております。
  178. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうすると、現在では理解と納得はまだ得られていないというふうに確認していいですね。
  179. 平林博

    説明員(平林博君) ただいま御説明申し上げましたように、相手方の事情によりまして程度がいろいろ違う、御理解を相当いただいたところもあればまだ反対の意見が強いところもあるということでございますので、一〇〇%理解が得られたということもございませんけれども、他方一〇〇%御理解が——もう一度繰り返しますが、一〇〇%御理解を得られたということもまだないかわりに一〇〇%だめだという現状でもない、引き続き努力をしてまいりたい、このようなことでございます。
  180. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それはまた後ほど細かく伺います。  官房長官に引き続き伺います。  六月二十日、韓国の国会議員の九〇%に当たる二百七十名の議員が、日本政府は国連人権委員会の勧告どおり慰安婦問題が非人道的な戦争犯罪であるということを認め、法的賠償の義務を誠実に履行すること、問題を歪曲する女性のためのアジア平和国民基金の計画を中断することという文書に署名しております。私は今ここに持っておりますが、これは官房長官にも渡していると思います。(資料を示す)  この署名者の中には、一九六五年、日韓協定締結時の外務部長官であった李東元議員、あるいは中央情報部長の金鍾泌議員、現在、共和党議長もこの署名者の中に入っておられます。  また、六月二十三日の日韓外相会談でも、韓国側は、韓国内で元慰安婦や支援団体が日本の公的補償を求めている、韓国政府の立場は変わらないが、困難な状況を踏まえ被害者の納得を得られる解決を期待したいというふうに述べております。  これらの状況について、今国民基金がやろうとしていることとの関係で、官房長官、現状をどう思われますか。
  181. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) 韓国の国会議員二百七十名が計画中断を求める署名を行っていることは、私も署名入りの声明文が届けられて、そういうことの動きには大変留意をしなければならない問題だというふうに考えております。しかし、我が国のいわば政府は、今までの長い経緯の中から、女性のためのアジア平和国民基金を発足させて国民的な償いを行うことが現状一番よろしいであろうという認識のもとに今日まで努力を重ねてきております。  今、外政審議室長から、必ずしも十分な理解は得られていないけれども完全にだめだということでもない、そういう今までの政府の方針をこれからも全力を挙げて誠意を持って取り組んで御理解をいただく、その方式のために努力をしてまいりたい、このように考えております。
  182. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 韓国だけでなくフィリピンでも、被害者や支援団体とともに国会の上院、下院で、同じように国民基金でなく国家補償を求める決議案の検討が議会でも始まろうとしています。  台湾は、既に御存じのとおり、議会の九〇%を超す議員を初め、被害者や被害者を代表する支援団体も国民基金の一時金支給に反対して国の補償を求めております。  官房長官、国民基金が支給対象としている国や地域の現状は、どう見ても一時金支給が了解され納得されていると私は判断できません。国民基金は、一人でも受け取る被害者があれば一時金支給事業をこの夏から開始すると決めているようですが、ちょっと乱暴だと思うんですね、事柄の性格上。政府の決断で、被害者の納得はもちろんのこと、支援団体、議会、政府の了解を得るまでこの一時金支給を基金に中止するよう指導をすべき状況にあるのではないかと思いますが、いかがですか。
  183. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) 委員御提案のことは一つの見識かもしれませんけれども、いわゆる従軍慰安婦問題をひっくるめまして、いろんな国際間のいまだに解決できないというか、解決は法理上はされておりますが感情上されていない問題が数多くあることは、委員御承知のとおりであります。  そういうことを考えてみますと、やはり国際法理からいいまして、サンフランシスコ平和条約等に従って誠実に対応してきたこれらの条約の当事国との間では、いわば法的に、国際法理的には解決をしてある。しかし、そういう冷たい言い方というと大変しかられますが、それと実際のいわゆる国民感情、こういうもののはざまにあって今この基金の問題が取り上げられたわけでありますので、さらに誠意を持って行うことによって国際法理とそれから現実の今の国民感情、これの調和を図るためのぎりぎりの努力をいたしているということを御理解いただきたいと思います。
  184. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今の官房長官のお話は、日本日本の立場があるのでぎりぎりまで努力するとおっしゃいました。私は、一たん決めたことですから当然そういうこともあっていいと思うんです。しかし、この旧日本軍による慰安婦の皆さんが日本に今何を求めているのかという被害者の立場なり、各国政府あるいはまた各国の議員がこの問題に関してさまざまな意見を今出してきている。また、国際的な人権委員会あるいはそのほかの場でも意見がある。こうしたことを聞く耳は持たぬというのではこれはまずいので、今おっしゃるように、決めたことは進めるが、しかし周囲の状況もしっかりと情報を入手して、問題は日本の国益になるように解決せにゃいかぬわけで、そういうところを今後なお、その情報を私たちも提供したいと思うし、柔軟に対応してもらいたい、こう思っております。そういう意味で若干質問を続けていきます。  国連の人権委員会でこの問題がいろいろ取り上げられたということを私も前回申し上げました。また、ILOといった国際舞台でもこの慰安婦問題が議論になっております。  それで、官房長官にも今から私の申し上げることを聞いていただいて、ぜひ後で所見をお聞きしたいのであります。  六月十七日から二十六日にかけてジュネーブで開かれた国連小委員会の現代奴隷制作業部会は、慰安婦問題に関するクマラスワミ報告を審議しております。終わっていないんです。まだ審議を続けるんです、これは。その審議の結果、二十六日に採択した勧告というのがございます。その中で、昨年の勧告の中には女性のためのアジア平和国民基金の発足ということ、日本政府対応を歓迎するという文章があったんですが、ことしはカットされました。  それから二番目に、日本政府に被害者の訴えを聞くための行政審査会の設置と国際仲裁による解決ができるように注意を喚起しております。被害者の訴えを聞くために行政審査会を設置してはどうかとか、あるいは国際仲裁機関で解決もできますよというふうなことの提起もしております。  それから三番目に、日本の国会のさまざまな議員によってとられた立法への努力に関する情報に感謝しこれを留意する、国連の人権委員会の動きに対して日本の国会がそれに反応して動き始めたということに感謝し留意すると、こういうふうなことも中に入っておるのであります。  外務省、私の今申し上げましたことは間違いありませんね。
  185. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) ただいまの本岡先生の御指摘の点につきまして、事実を確認させていただきます。  六月末、国連人権委員会差別防止・少数者保護小委員会の現代的形態の奴隷制に関する作業部会というのが行われまして、報告が採択されました。この報告はまだ国連の文書としては正式に配付されておりませんので正確な文言は不明でございますが、昨年報告にございましたいわゆる従軍慰安婦問題に関連しての関係の部分で、日本政府の諸措置を解決に向けての有益な取り組みであると考え、日本政府からの関連情報を歓迎するという部分はことしはなくなっております。確かにそのとおりでございます。本年はそのかわりに、日本政府によってその取り組みについて提供された貴重な情報をテークノートしという内容が盛り込まれております。  その次の別の点でございますが、日本のさまざまな国会議員によってなされた立法へ向けての努力に関する情報を称賛とともにテークノートするという新しいものが入っております。  いずれにしましても、この報告と申しますのは、作業部会の上部の機関であります国連人権委員会差別防止・少数者保護小委員会に八月に報告されまして、この小委員会においてさらに検討されるというように承知しております。
  186. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 御苦労さまでございました。わかりました。  そこで、もう一つはILOの問題なんです。  ことし六月のILO国際労働会議に際し、韓国労働総連盟代表が基準適用に関する委員会の労働者側会議で、日本のILO第二十九号条約違反の件を総会で取り上げることを強く主張しました。これは、従軍慰安婦は強制労働に当たってILO二十九号条約に違反していると、こういうことを言っているわけなんです。この結果、来年のILO国際労働会議日本の第二十九号条約違反問題を議題とする見解が採択されました。  来年のILO国際労働会議の議題とされるようになったのは、ことしの三月、条約勧告適用専門家委員会が年次報告の中で、慰安婦問題が第二十九号条約に違反しているので日本政府が速やかに慰安婦問題に適切な考慮を与えることを希望すると表明しているのに具体的な対応をしなかったからこうなっていっているんです。  永井労働大臣は、五月九日の予算委員会で、この問題は主として外務省や外政審議室の所管事項とのかかわりが深いから、これらの省庁と密接な連携をとりながら今後の推移を十分注意深く見守っていくと。見守っているだけではこういうふうになってしまうんですよ。私は具体的に対応しなさいと言ったのにしなかった。大臣にこのような答弁をさせて、一体労働省は今まで何をしておったんですか。あわせて労働大臣の見解も伺っておきたいと思います。
  187. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 今、委員指摘ありましたように、本年六月のILO総会の条約勧告適用委員会におきまして、労働側代表から発言がありました。その事項の中に、来年討論すべきリストの中に取り上げるべきこととして、七カ国八案件についてそういった言及がなされておりますが、その中に、日本に関しますILO二十九号条約、強制労働に関する条約について来年討議するリストに加えるべきであるということが言及をされておるわけでありまして、このことは条約勧告適用委員会の報告書にも記載をされています。  ということで、今後議論になる可能性はあると私ども思っておりまして、労働省としましては、ILOに対します窓口として関係省庁とさらによく相談をしていきたいというふうに現在思っているところであります。
  188. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、今から相談したのではいかぬのであって、私が五月九日の予算委員会で質問をしたときに、もう既にこの条約勧告適用専門家委員会が年次報告を出して、この問題について適切なる考慮を日本政府がすることを希望すると、こう表明しているんだから、もうこのときから労働省はILOのところにまでこの問題の論議をさせて、日本と韓国の労働組合がそこでお互いに議論をさせるようなことをさせてはならぬと思うんですよ。ちゃんと労働省がしかるべき対応をしておけば僕はこうならなかったと思う。今からじゃ遅いんですよ。  労働大臣、ひとつしっかりと監督してください。お願いいたします。一言どうぞ。
  189. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) ただいまの問題につきましては、ILOに理事として選任をされております日本の労働側の理事の方とも積極的に協議を続けてまいりまして、この問題については最終的に外務省や外政審議室の所管ではありますけれども関係当局との間に十分な連携をとりながら対応することで労働側の代表とも話し合いを続けてきて、ILOの席上で対応してもらった問題であります。  今、官房長からお答えしましたけれども、来年の審議の対象の中に七カ国の八案件、この中にこの問題が一つ含まれているわけでありまして、そこで言われておりますことは、当該政府からはこの問題について来年実際に討論する必要がなくなることを希望すると、このようにつけ加えてありますから、そのことも十分に認識をしながら、今後それぞれの所管するところと協議を進めながら十分な対応をしてまいりたい、このように考えております。
  190. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私が今から六年前、一九九〇年六月の予算委員会でこの問題を取り上げたときに労働省の職安局長がこの問題の答弁に立ったんですよ。私は、何で従軍慰安婦問題で労働省の職安局長答弁に立つのかと思ったが、やはりその当時はこれは職業あっせんの問題として取り組んだようであったんですね。  そのときにきちっとした今のような整理された答弁をすればいいのに、日本軍の軍隊は関係しておりませんでしたと、民間の業者が勝手に連れ歩いただけで私たちにはわかりませんと。本岡にはこのぐらいのことを言っておったら終わりやろというふうに、全くなめたことをやったからこういうことになったんですよ。労働省は最初の対応、ボタンのかけ違い、ここをあなた方が間違ったからこういうことになったという認識を労働省、しっかり持っておいてもらいたいと思うんですよ。  官房長官、声がちょっと大きくなっていますけれども、八月に国連の人権委員会、差別防止小委員会というのがジュネーブで開かれるんです。八月五日ごろから約二十日間ほどかけて開かれますが、ここで先ほど言った現代奴隷制作業部会でのこの勧告の問題が審議されて、またこの暑い夏、ジュネーブで国連のこの従軍慰安婦問題の審議があるというんです。私また行きますけれども、毎年行って聞いておるんです。  それで、ほかの人が、おまえが向こうへ行って火をつけよるのやろかと言うから、冗談じゃないと。私だって日本の国会議員だと、この問題が日本のためにどう解決されるか心配して行っておるんだと言っております。  そこで、このように僕は六年間かけてずっと議論をしてきた経過を見ると、やはり日本政府対応のまずさというのがあるんですよ。だから、次々と国際機関でこの慰安婦問題が取り上げられて、そのたびに日本政府は国際的な信頼を失っていく状況がずっとあるので、それは耐えられないんです。人道とか人権とかこうした問題で、日本とアジア諸国民との信頼醸成を考えていかにゃいかぬと思います。  日本が国連安保理事会の常任理事国に立候補しようというふうな大きな志を持つときに、日本とアジアとの関係、過去の問題だと言って捨て切れない、切り捨てることのできない問題をたくさん抱えながら今いるわけでしょう。その中の人道とか人権とか、特に女性の尊厳の問題にかかわってこの慰安婦問題の解決は最優先の課題だと、こう私は思っておるのであります。  被害者の訴えや国際社会の意見を取り入れて、問題解決の方策をもう少し柔軟に再検討される段階に来ているんじゃないんでしょうか。決めたからこれしかやることはないんだというふうな、一人でも二人でも受け取る人があったらその人に二百万円を受け取ってもらうんや、受け取ってもろうたら勝ちやというふうな発想でやるべきことなのか、非常に私は心配をしているんです。ここで再検討したからといって、怒る者も笑う者もだれもいない。むしろもっと根本的に、みんながああよかったよかったと、自分の気持ちをお金に託して国民基金に募金された人たちもきっとその方が私は喜ぶと思いますよ。  どうでしょうね、官房長官、ここはやはり梶山官房長官の決断というふうなものがなければ、これは動かぬのじゃないかと私は思うんです。どうでしょう、何遍も官房長官の顔を見ながら私も物を言っておるんですが、ここで再検討とかもう少し柔軟に、これしかないというのではなしに、二つ、三つの選択肢を考えておやりになってはいかがでしょうかね。ひとつお言葉をいただきたいと思います。
  191. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) お言葉なぞという言葉を発する勇気もございませんけれども、今までの議論の経過、長い間のあれがございます。そして、それぞれ政府部内において、また国民各層においていろいろな知恵を出した結果が今日の基金制度であるわけでありますから、今直ちにそれが犠牲者の方々に、あるいはその他の国々に全部納得がいただけるかどうかという問題はあろうとも、先ほど申し上げましたように、今懸命な努力を払っているさなかでございますので、その経緯をひとつお見守りいただきたいと思います。
  192. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 きょうこれ以上官房長官に新しい答弁をいただくのはもう無理だと思いますので、この辺でこの問題やめます。  何か政府は、今度は国の資金を七億円、十年間にわたって医療福祉事業としてやるというんですよね。しかも、これはできるだけ現金に近い形で本人に渡したい、一時金の上積みをするような形でやりたいと、こう言うんです。  どういうことなんですか。見舞金で渡すものは国民からみんな出してくれと、医療福祉は国が出す。国が七億円出せるんなら全部国がすればいいじゃないですか。国の七億円と国民が出したのを一切合算して、そして国の責任でやりますと言ったら、受け取る方も素直に受け取られるんじゃないですか。このお金は国民のお金だ、これは国のお金だ、何でそういうふうにややこしく分けてせにゃいかぬのですか。法的責任、道義的責任、そんな理屈はいいじゃないですか。日本の国がやりますと言ってやって、国民も協力してください、それでやればいいじゃないですか。十年間に七億円、ありがたいのかどうなのか、このお金の価値。私はもっと大きなものをこれに投入しなければ問題は解決しないと思うんですよ。  こんな本音と建前をごちゃまぜにしたような議論でやるんじゃなくて、もっと、今言いましたように、国の責任でやりましょうと、国会も国民もみんな協力してくださいと、こういう打ち出し方をひとつぜひとも新しい段階でお願いしたいということを私はここで申し上げ、細かいことをいろいろ聞きたいと思ったんですが、それはまた次の機会にさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  193. 中島眞人

    ○中島眞人君 自由民主党の中島眞人でございます。  委員長を初め、理事並びに委員各位の皆さん方に、きょうの質問時間を私ごとでありながら変えていただきましたことを大変感謝を申し上げ、お礼を申し上げたいと思います。  質問に入りたいと思います。  平成六年度決算の全般的質疑の二日目でございます。決算をめぐる問題についても一言触れなければいけないと思いますので、触れさせていただきたいと思います。また、各項にわたりましてはその都度やらせていただきたいと思うのであります。  平成六年度の決算を見ますと、不用額の推移をまず見てまいりましたが、一般会計全体では四年度の八千億円余り、不用率一・一一%をピークに年々減少をいたしております。六年度には三千四百三十三億円、不用率〇・四五%になっておりまして、不用額が非常に減少をしている。これは評価されることだろうと思うのであります。  しかし一方、特別会計で合計した不用額の推移を調べてみますと、四年、五年度とも十兆円を超えております。六年度はやや減少はしているものの九兆八千五百億円の不用額があるわけであります。特別会計でございますからいろいろの諸事情があろうかと思うのでありますけれども、これらを吟味してみますと、五年を超えているものが非常に見受けられるわけであります。  こういうことに対する大蔵省の、事情があろうと思うのでありますけれども、予算主義をとっている建前から、十兆円に上る不用額というのは大変大きな課題だろうと思うのでありますが、この辺についての御見解をまずお聞きいたしたいと思います。
  194. 細川興一

    説明員(細川興一君) 国の予算は、国民の負担に基づく貴重な財源を使用して国の諸施策を推進してまいっているところのものでありまして、その予算の適正かつ効率的な配分、それからさらに執行に当たっての効率的かつ厳正な執行を行うということに常に最善を尽くさなければならないと考え、努力しているところでございます。  ただいま先生御指摘にありましたように、六年度決算における特別会計の不用額の合計は九兆八千四百七十六億円となっております。  先生御指摘のように、言うまでもなく予算は予定でありまして、内外の経済情勢の動向と密接不可分の関係にありますので、翌年度の経済情勢の動向等をできる限り的確に把握するため、可能な限りの直近のデータを収集したりあるいは分析に努めまして編成しているところでありますが、どうしてもその執行段階における社会経済情勢に変化が生じること、あるいは効率的な執行、節約に努めた結果、先生御指摘がありましたように、その不用の発生の原因はいろいろございますが、多種多様なものとなっているところでございます。  以上のようなことから、不用の発生は避けられない面もあると考えられますが、先ほど申し上げましたように、財政当局としてはこの不用額を極力圧縮すべきものと考えておりまして、不用発生の原因を十分分析してその結果を予算編成に反映させるよう努めているところであり、今後とも全力を挙げて努力してまいりたいと思います。
  195. 中島眞人

    ○中島眞人君 そこで、不用額の特別会計の中の概況をめくってみますと、例えば電源立地対策費とか産業投資あるいは石炭石油エネルギー等の科目とか、あるいはまた食糧管理会計あるいは農業経営基盤強化等々、端的に言うとこれが五年以上継続しておるんですね。あえて言えば、病気で言えば急性でなくて慢性炎と言ってもいいような、ある面では日本の政治が抱えているそういうものの中にこのような不用額が多額に継続化している。さりとて、これをじゃ打ち切っていくのかということもままならない日本の政治的な課題であるもろもろの問題がございます。  しかし一方、予算主義をとっている財政運営という点から考えていけば、これは政策評価というような問題を緻密にやっていかなければいけないんではなかろうか、こんなふうに思うのでありますけれども、大蔵大臣にお聞きをいたしたい、こんなふうに思います。
  196. 細川興一

    説明員(細川興一君) どのような原因で不用が生じてくるかという問題につきましては、先生御指摘ありましたように、特別会計全体としましては三十八特別会計が設けられておりまして、各特別会計がそれぞれの設置の目的によりいろんな広範な事業をやっているという面がございまして、特別会計全体として不用の理由を総括して申し上げるのはなかなか難しいと思います。  ただ、幾つか例を申し上げますと、例えば特定の事業を行う事業特会のうちで保険特会というものがございますが、その保険特会で生じております不用額の中では、例えば不測の保険事故に対処するための予備費を使用する必要がなかったと。六年度で申し上げますと、保険事業特会、不用額の全体が五兆三千五百ございますが、そのうち一兆九千が予備費の不用ということになっております。また、簡易生命保険特会におきましても、契約の失効、解約が予定より少なかったということで保険費が少なくて済んだという問題もございますし、今御指摘ありました食管の関係でございますが、これは調整勘定におきまして、六年度は米の不作がございましたので、国内米の買い入れ数量が予定より減少したということで、国内米管理勘定へ繰り入れを要しなかったというような事例もございます。  ただ、先生御指摘のように、予算をつくりますときに一つ一つ不用発生の原因を十分分析して政策目的との関係をよく念査して努力していかなければならないことは当然でありますので、今後とも全力を挙げたいと思っております。
  197. 中島眞人

    ○中島眞人君 私も全部だめだと言っているわけじゃないんです。それぞれ特別会計が持っている問題点、そして同時に政策的な課題、これをやらなければならないという必要性、こういう問題は十分知っています。しかし、国民の目から見れば、十兆円に上る不用額が出たという形になりますと大変奇異に感ずる。同時にまた不信感を生む要素もあろうかと思うんです。  こういう問題につきましては、十分国民に対して理解を求めていくのと、同時に政策的なすり合わせという問題をやっぱり真剣にやっていかなければいけない、私はこんな要望を強くいたしておきたいと思います。  さて、平成六年度決算でございまして、バブル崩壊からずっと続いてきました税収減は、平成七年度の報告を過般お聞きをいたしまして、六年度で打ちどめになった、そんな感じで、平成七年度は税収も一兆円弱ながら対前年度増に転じたという報道がなされ、厳しい財政状況の中でささやかな安堵感が持たれております。もっと端的に言えば、税収が落ち込んできたのは平成六年度で終わったんだ、これからは上がっていくんだという期待感も実はあるわけであります。しかし、平成七年度は二兆七千億円近くの特例公債を発行しております。また、税収も当初予算と比較すると二兆円近くの減収になっております。そういう点からいくと、決して安心できないわけであります。  八年度、これは今年度の予算委員会で質問をすべきでありますけれども、この間、八年度、七年度、六年度というものの予算状況を見てまいりますと、七年度当初予算に比較して二兆四千億円という、言うなれば予算の規模を少なくしているわけであります。そういう点で、何か大蔵当局は弱気になっているんではないか、こんな思いもするんでありますけれども、あわせて円安傾向、貿易収支の黒字幅の縮小というような問題が平成八年度の歳入の面でどんな影響をもたらすのか、結果を見ないとわかりませんけれども、どんな影響をもたらすのか、その辺についてひとつ真剣な御討議の中での御答弁をいただきたい。
  198. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) お答え申し上げます。  二点御質問があったかと思います。第一点は、七年度当初予算が五十三兆七千億、八年度の当初予算は五十一兆三千億円で、二兆余減少しているのはなぜかということであったかと思います。それから、第二点目のお尋ねは八年度の税収がどうなるかということであったかと思います。  第一点目の御説明を申し上げますが、八年度の当初予算の税収見積もりに当たりましては、まず予算編成時点におきまして七年度の税収がどうなるかということの見直し作業をやります。それで、七年度の見直し作業で七年度の税収が固まりますと、それを土台にいたしまして、政府経済見通しでどのような状況が予想されるかということで八年度の税収推計をやることになるわけでございます。  ところで、七年度の税収、土台を固める作業の中で、法人税、消費税、例えば所得税については、金利も公定歩合も非常に下がりました、相当な不足が見込まれるということで、合わせて二兆九千億円を七年度当初予算から減額することになったわけでございます。今二兆九千億円を減額したところから、じゃ八年度はどうなるかということで、政府経済見通しやらあるいは八年度税制改正でどのぐらい減収になるかというようなことで、五十一兆三千億円というふうに結果的になつているところでございます。それが第一点でございます。  第二点でございますが、今年度の税収がどうなるかということでございます。五十一兆三千億円ということで予算計上させていただいておりますけれども、実は五月までまだ予算の三%しか税収が入っていないのでございます。したがいまして、現段階において税収がどうなるかということをお答えすることがなかなか難しいということを御理解いただきたいと思います。
  199. 中島眞人

    ○中島眞人君 ともかく税収の落ち込みは、下げどまりは六年度で終わった、あとは七年度、八年度に向かって上がっていくんだという淡い期待が実はあるわけでありますので、その辺についてはひとつ的確な判断と的確な示唆を心から期待を申し上げておきたいと思います。  さて、昨年の今ごろはまさに日本国じゅうオウムの恐怖でおののいていた時代でございました。しかし、一年たってみますと、オウムの問題は、時たま裁判の問題が出てくる、そんなことの中で何か忘れ去られようとしております。そういう中で、オウム問題が当局の努力によりまして宗教法人の解散、破産法による財産処分、破防法の団体活動の禁止というこの三つの柱がとられ、そしてそれが今進められている。しかし、進められている状況は決して安易な解決で進んでいない、こんな感じを実は当事者県の一人として私は強く訴えるものでございます。  そこで、時間がありませんから一括して申し上げます。一問一答でやるべきでございますけれども、時間の関係でお許しをいただきたいと思います。  まず、破防法の解散指定の請求にかかわる問題といたしまして、公安審査会の審査の見通し、結論の時期、解散指定の具体的な効果はどうなのか。法務省による解釈基準の確定とその具体化の展望はどうなのか。  同時に、過般、公安調査庁が破防法を適用していく中での禁止事項を幾つか掲げておりますが、その中に信徒が共回生活をした上、奉仕活動等ワークなど教団として行う礼拝儀式、修行に参加することは禁止事項という形になっております。こうなってまいりますと、破産手続あるいは破防法の適用という問題でいきますと、上九一色のあのサティアンの中に依然としている信者、あるいは富士宮にいる信者等は当然この公安調査庁が示す禁止事項に該当をする項目だと思うんです。これらに対して当局がどういう対応をしていくのか。  以上四点、一問一答でいかなければいけないわけでございますけれども、この点についてそれぞれの所管からお答えをいただきたいと思います。
  200. 頃安健司

    説明員(頃安健司君) まず、公安審査委員会の審査の見通し、結論の時期等についての御質問について私の方からお答えいたします。  御案内のとおり、七月十一日、公安調査庁におきましてオウム真理教について破壊活動防止法第七条に規定する解散の指定を求めるための処分請求書を公安審査委員会に提出いたしました。公安審査委員会におきましては、今後、関係法令にのっとり、委員長及び委員が独立してその職権を行うこととされている法の趣旨を踏まえながら、証拠等を鋭意検討されるなどして処分請求の適法性及びその理由の有無につき慎重かつ公正な審査を進め、できる限り早期に適正な決定を行うよう最善を尽くされるものと承知しております。  お尋ねの点につきましては、公安審査委員会において現に審査されているところであり、その決定の見通しや時期につきましては、事柄の性質上、今後審査を進めてみなければ判明しないものでありますので、この段階でその見通し、結論の時期等を申し上げることは大変難しいということを御理解いただきたいと思います。  以上でございます。
  201. 中島眞人

    ○中島眞人君 官房長官の御日程がございますので、先に官房長官に御質問をさせていただきたいと思います。  オウム真理教の問題というのは、どこの省が所管をするかと言うことができない大変難しい問題でございます。そういう中で、内閣内政審議室長が議長になりまして各省庁いろいろな形の連絡調整をとっていただいておりますこと、これは大変地元にとってみれば安心のすることでございます。  しかし、官房長官にお聞きし、また御要望を申し上げたいんですけれども、昨年の宗教法人法の改正をいたすときに、島村文部大臣は、宗教法人法のいわゆる不備の中から起こった一つの出来事だという指摘をされております。もっと端的に言うなれば、東京都で認証をしたオウム真理教が即時に山梨や静岡や熊本へ行ったと。その当事者県のいわゆる行政庁は、行っていろいろなことを言うと、これは信教の自由を侵害するものだという形で立ち入ることができなかった。あれよあれよという間にああいう形になった。もっと端的に言えば、迷惑を受けた地方の自治体としてみれば、言うなれば法の不備から生じた問題であるならば、国家が、国がいろんな形で取り組んでいただくべきだ、こういう気持ちが実は率直にあるわけであります。  その辺の具体的なことはともかくとしまして、この辺に対する見解を官房長官からお聞かせいただければと思うのでありますが、お答えをいただきたいと思います。
  202. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) お答えをする前に、委員の御母堂様の喪中を秘めてこうやって公務に御参加を願っておりますことに心からお悔やみを申し上げ、また敬意を表する次第であります。  お尋ねの件は大変複雑多岐に各省庁絡んでおりますし、また人間の心の中のことでございますから、これを一概に何で律することができるかという大変難しい問題がございます。  しかし、一度暴発をいたしますと、なかなかこの中に入ることのできない、いわば我々はこの中に入らないんだという今までの考え方がございましたから、こういう大きな問題にまで発展をしてしまい、その所在地である方々には大変御迷惑をたくさんおかけしているわけでありますから、原則我々の責任において解決をしなきゃならない問題がたくさんある、このような感じがいたします。  そして、これからは各省庁とお互いに連携をとり合いながら事後対策について適切に対応してまいる、その総合調整も行ってまいりたい、そしてその所在地の方々の御安心を願うために努力をしてまいりたい、このように考えております。
  203. 中島眞人

    ○中島眞人君 今、官房長官からそういう私の質問の趣旨に沿ったお答えをいただきました。地元の皆さん方も安堵されることだるりと思いますので、今後ともよろしくお願いを申し上げたいと思います。  さて、先ほどの質問について再質問いたしますけれども、公安調査庁が禁止事項を掲げましたね。この禁止事項を掲げたことが確定をされていくとすれば、先ほど言ったようにサティアンの中における集団生活、集団礼拝、集団儀式は、これは禁止事項でありますね。そうすると、禁止事項を継続することはあり得ないと私は思うんですけれども、そうなった場合に対する措置はどうなりますか。仮定の問題もあろうかと思いますけれども、その辺についてお聞かせをいただきたい。
  204. 杉原弘泰

    説明員(杉原弘泰君) 先ほど何点か御質問がありましたので、順に従いましてお答え申し上げます。  公安調査庁におきましては、先般オウム真理教について解散指定の請求を公安審査委員会にいたしたところでございますが、その決定がまだ出ていない段階でございますので、仮定の問題として一般的にお答え申し上げますと、解散指定の処分が効力を発生いたしますと、破防法の第八条によりまして、当該団体の役職員または構成員であった者が団体のためにするいかなる行為も禁止されることになります。  先般、解散指定の処分請求をするに当たりまして、委員指摘のように「破壊活動防止法八条について」と題する文書を公表いたしました。これは、今回の規制請求が破防法施行以来初めての事例であることなどの事情を考慮いたしまして、本件の団体に即していかなる行為が同法八条によって禁止されるのか、その団体のためにする行為に当たるのかについて、あらかじめ私ども主務官庁としての行政解釈を明らかにする必要があると判断したことによるものであります。  この文書の中では、解散の指定が効力を生じた後に禁止の対象となる行為及び禁止の対象とならない行為について幾つか例示しておりますが、これはあくまで例示でありまして、現実の具体的な行為が団体のためにする行為に当たるかどうかという点につきましては、証拠によって認定された具体的な事実関係をもとにいたしまして、今回私どもが明らかにした行政解釈の基本的な考え方を踏まえまして捜査当局が判断される事柄であろうと、こういうふうに思っております。  そこで、ただいま委員が御質問になりました上九一色村のサティアンにおける共回生活に関連する御質問でございますが、私どもが明らかにいたしました解釈の基準によりますと、共回生活を営む場合につきまして、これが団体のためにする行為と言えるかどうかという点について若干触れております。  信徒が単に共回生活をして起居寝食をともにするにとどまる場合は、団体のためにする行為には当たらないであろうと。したがって禁止の対象にはし得ないわけでございますが、信徒が共回生活をしながらその場で奉仕活動、例えば一定の印刷物をつくるとかあるいは一定のオウムグッズをつくるとか、そういったような団体の活動を行うとか、あるいはその団体の活動として行われる集団的な礼拝、儀式、修行、こういったものに参加する行為は禁止の対象になるというふうに私ども解釈いたしております。  いずれの事案につきましても、最終的には将来捜査当局において事案に応じ、今回公表しました行政解釈の趣旨を踏まえて証拠に基づいて判断されることになるだろう、こういうふうに考えております。
  205. 中島眞人

    ○中島眞人君 慎重な発言の中にも強い意欲を感じますけれども、既にオウム真理教は麻原教祖にかわって、二歳、三歳の子供を教祖に仕立ててやるためにその会費といいますか、それを五十万円というような形のお布施を取る計画が新聞等で報道されております。言うなれば、これらの問題というのはまさに復活であります、継続であります。  こういう問題の中で、これらの宗教法人の解散、破産手続、あるいは破防法といっても、あのサティアンにそのまま居ついてしまうのではないかという地元の不安があることを、その不安と恐怖は私どもが想像する以上のものでございますので、これらに対する積極的な対応、監視、そして事実、そういうものを十分見きわめていただきたいことを強く要望しておきます。  なお、破産手続でございますけれども、新聞紙上によりますと、オウム真理教の財産は約二億円だろうと。しかし、千五百件から二千件くらいの請求額は五十億円であろうと。結果的には破産廃止に陥るであろう、こういうことが報道されているわけであります。  先ほど私が官房長官に申し上げたのは、率直に言って法の不備の中から起こってきた住民の不安、そういう問題に対して、そんなことがあることはしようがないことでありますが、そうなったときには、地下鉄で亡くなった方あるいはあの上九一色とか富沢町、富士宮あるいは波野村、こういう地域に対する国家的なやっぱり一つの配慮というものがなされていかなければいけないんではなかろうか、こんなふうに思います。  そういう中で、自治大臣がお見えでございますけれども、ことしの二月時点でこの当事者の町村に対しまして特別交付税が通常より倍額の交付税の配分をしていただきました。地元としては自治省に対して、自治大臣に対して大変感謝をいたしているところでございますけれども、もろもろかかわっていく問題があるわけであります。上九、富沢、富士宮あるいは波野村、これらに対する今後の対応についての自治大臣のさらに格段な御援助をいただきたい、こんなことを含めながら自治大臣の御見解をいただきたいと思います。
  206. 倉田寛之

    ○国務大臣(倉田寛之君) オウム真理教関連施設の所在市町村におきましては、委員いろいろ御指摘がございましたが、ごみの処理、農道の復旧整備あるいは監視や警戒、地域住民の不安の解消、安全の確保などのためにさまざまな対策が講じられてきたところでございます。  自治省といたしましては、関係地方団体がこれらの対策に要した経費につきましては、平成七年度の特別交付税の算定に当たって考慮してきたところでございまして、関係団体の財政運営に支障が生じないよう対処もしてまいったところでございます。  今後におきましては、地域の整備のために各種の財政需要が生じるものと考えられますが、自治省といたしましては、関係地方団体における具体的な対応方針が固まった段階におきまして、実情を十分お伺いをしながら、事業の目的に応じた地方債の配分であるとか特別交付税の配分などを通じまして必要な地方財政措置を講じてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  207. 中島眞人

    ○中島眞人君 ただいま自治大臣から大変な御配慮ある発言をいただきました。関係自治体は大変な高齢化、過疎の町村でございますので、どうかひとつなお一層の配慮を心から御期待申し上げたいと思います。  もっともっと質問があるのでありますけれども、予定した質問項目がございますので次に移らせていただきたいと思います。  環境庁にまず御質問申し上げます。  実は、秩父多摩国立公園というのがございます。秩父多摩国立公園は、山梨県が四三・三%、東京都が二四・三%、埼玉が二四・二%、長野が八・二%、こういう公園面積の比率でございます。ところが、どういうことか山梨も長野も抜けた秩父多摩国立公園という名前になっております。これに対しまして、六十二年以来山梨県は、四三%も構成面積を持っているんだから、秩父多摩国立公園ではやっぱり埼玉と東京だけの公園じゃないのか、これは山梨県も何らか入れていただかなければいけないんではないか、こういうことの要望を強く重ねてきたわけであります。  ところが、いつもははみ出したこと、間違ったことには絶対厳しい環境庁がこのことに関しては、公園の看板を書きかえるのには金がかかるとかなんとかというようなこともございまして、なかなか遅々として進んでいないんですね。  これはやっぱり地方の時代、地方分権、そして地方の実態に合ったという一つの国の方針でもございます。そういう点で、山梨県が一番面積が多いんですけれども、一番最初に山梨県を持っていけとは申しません。これは仮称ですけれども、せめて秩父多摩甲斐国立公園くらいの名前を、まあ委員長は長野でありますから、じゃ長野はどうするかということにもなろうかと思うのでありますけれども、このくらいのことは、地方の時代ということを言う以上は、その中でも四三%を占めているんですよ。  だから、この辺について、環境庁長官は地方をよく大事になさる方でございますので、これに対する今後の強い、実態に合ったあり方を長官からひとつお答えをいただきたい。
  208. 澤村宏

    説明員(澤村宏君) 秩父多摩国立公園の名称の変更の問題でございますが、この問題につきましては、先生御指摘のとおり、山梨県などから強い要望がなされているところでございます。  これまでのことを申し上げますと、国立公園の名称の変更に当たりましては、関係者間で十分な理解と合意が得られている名称である、そういうことを前提といたしまして、当該公園の公園計画の見直しを行う際に自然環境保全審議会においてあわせて御審議をいただき了承を得る、そういった手続で進めてきているところでございます。  現在、環境庁といたしましては、秩父多摩国立公園の公園計画の見直しのための調整を関係地方自治体等との間で進めているところでございます。  そこで、今後のことでございますが、国立公園の名称変更につきましても、当該公園計画の見直し手続に合わせまして関係県等関係者の十分な調整が図られるべきものと考えておりまして、環境庁といたしましてもその結果を踏まえまして適切に対処してまいりたいと、そのように考えていますのでよろしくお願いいたします。
  209. 中島眞人

    ○中島眞人君 長官、適切に対処ということは、この構成比率からいって前向きに進んでいくという判断をしてよろしゅうございますか。
  210. 岩垂寿喜男

    ○国務大臣(岩垂寿喜男君) 地方自治体とも十分相談をいたしまして、先生のお気持ちを生かすように頑張りたいというふうに思います。  ちなみに、私は長野県の出身でございます。
  211. 中島眞人

    ○中島眞人君 六十二年以来の懸案が何か前向きにスタートをするということで私も大変うれしく思っております。長野県も外れてはいけませんので、この辺はうまいネーミングを考えながら、ひとつぜひお取り組みをいただきたいと思います。  なお、外国人、特にブラジルの日系人が十七万人日本に就労しておりますけれども、人材開発会社等が中に入っていろいろな問題が起こっているということで、労働省にいろんな形で質問通告をいたしておったわけでございますけれども、個別なところでまた次回にやらせていただきたいので、お許しをいただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  212. 田英夫

    ○田英夫君 沖縄のアメリカ軍基地の問題について意見を申し上げ、御質問をしたいと思います。  去る七月の初めに数日間沖縄を訪問いたしまして、大田知事初めアメリカ軍基地を持つ自治体の市町村長と親しく会談をしてまいりました。率直に申し上げて、政府のお立場ではなかなか、ある意味で意見が対立する状態ですから、こうした自治体の責任者の皆さんと話されてもその真意が伝わっていないのではないかということを危惧いたします。平成四年の当参議院でも、このアメリカ軍基地の問題について、「地元の意向を十分に尊重して対処する」という決議が行われているわけで、これはもう当然政府もこうしたことをお考えとは思いますけれども、私が会談をしてまいりましたその内容も申し上げながら、今後アメリカ軍基地の返還が円滑に進むようにひとつお役に立てればと思います。  最初に、例の普天間基地の返還と、これにかわる基地の問題、これが今最も具体的に出ているわけでありますけれども、代替基地ということが出てきたためになかなか難しいことは事実だろうと思います。現地でも、普天間基地にかわるところの名前が挙がっている自治体の皆さん、責任者の皆さんなどもかなり困惑をしておられる、こういう状態がありましたけれども、現状について、特にSACOの交渉の現状について、外務省ですか、お答えいただきたいと思います。
  213. 折田正樹

    説明員(折田正樹君) 今お話のありました普天間飛行場でございますが、四月十二日の橋本総理とモンデール大使との合意を踏まえまして、四月十五日に特別行動委員会の中間報告が発表されたわけでございます。  その中にございますように、今後五年から七年以内に沖縄県における他の米軍施設・区域におけるヘリポートの建設を含む所要の措置をとった上で全面返還されることが日米間で合意されているわけでございますが、具体的にどのような施設等をどの施設・区域内に建設するかについては、日米間において協議を行い、十一月までに具体的な実施スケジュールを付した計画を策定することになっているわけでございます。  そして、この普天間飛行場の返還合意は沖縄県の方々の強い要望を背景として取りまとめられたものでございまして、政府といたしましては、沖縄県を含めた関係者の御協力と御理解を得つつこれを実現することが極めて重要と考えているところでございます。  政府といたしましては、このような観点から、沖縄県との間におきまして、五月八日に普天間飛行場等の返還に係る諸問題の解決のための作業委員会を設置いたしました。また米国との間におきましては、六月七日に日米合同委員会の下部機関である施設分科委員会のもとにSACO案件のための特別作業班を設置し、現在これらの場におきまして鋭意作業を進めておるところでございますが、現在までのところ、代替ヘリポートの建設候補地を含め、結論を見るには至っていないということでございます。
  214. 田英夫

    ○田英夫君 橋本総理御自身の努力で返還が決まったということも私は承知をしておりますし、せっかくのこのことですから、円滑にいくようにと現地の皆さんも願っていらっしゃることは事実でありますが、代替地が非常に難しい。嘉手納の弾薬庫跡は、関係の宮城嘉手納町長の言葉で言えば、これは狂気のさたであると、こういう発言さえ出てまいりました。到底受け入れることはできない。つまり、自然破壊ということも含めて現実的でないということだと思います。  一方で、一部報道で伝えられております嘉手納の飛行場に併設するという問題については、これは現地で会いましたマイケル・ヘイズ准将という嘉手納飛行場の責任者である空軍の司令官ですが、これは米軍の内部の意見として現実的でないと、こういう言い方を私どもにしておりました。つまり、空軍の基地に海兵隊の普天間基地を移すということを意味していると私は受け取ってまいりましたが、いずれにしても、この問題は大変象徴的な問題でありますから、ぜひ現地の状況、意見も重視をしていただきたい、こう思います。  この米軍基地の返還について、一体、政府政府案というものを総合的に持っているんだろうかということを現地の関係者、自治体の責任者の皆さんは一様に言っておられます。ここまでくれば、普天間を初めとして、沖縄県は二〇一〇年、一五年というところを見通して、全面返還ということを最終的な終点にして、そこに至る計画、同時にそれが実現した場合の国際都市というような構想まで含めて持っているわけですけれども、当然政府もまず基地の返還についての具体的な案を持っているべきではないかと、こう言われるわけですが、この点はいかがですか。
  215. 臼井日出男

    ○国務大臣(臼井日出男君) 委員お話しのとおり、大変長い間、沖縄県の皆様方には米軍基地が集中をしていることにより御苦労をおかけいたしてきているわけでございます。  御指摘の点につきましては、私どもも、米軍のプレゼンス自体が変わらない、こうした環境の中で、しかし、沖縄県民の皆様方の御意思というものも受けながら整理、統合、縮小に、あるときは知恵を使いながら努力をいたしてきているわけでございます。例えば、平成二年に日米合同委員会でもって話し合いのつきました二十三事案等につきましてはほぼ現在までに目的を達成した、こういうこともございますし、先般の普天間を中心とする十一施設等につきますいわゆるSACOの中間報告につきましても、ぜひとも御理解を得ながら、また沖縄県のお力もかりながら実行することによりまして、実際に沖縄県民と米軍の基地どの接点を少しでも少なくすることによって、御迷惑をおかけした分を何とか被害というものを少なくしていきたいと、このように現在も努力をいたしているさなかでございます。御理解をいただければと思います。
  216. 田英夫

    ○田英夫君 実は私ごとですが、私が初めて参議院に参りましたのが昭和四十六年、一九七一年ですが、その年の十一月、十二月がいわゆる沖縄国会でありました。私にとって初めての本格的な国会が沖縄国会でありました。  そこで、実は衆議院では激しい論議が行われまして、最終的に沖縄の特別委員会で当時の社会党は欠席のまま採決、本会議もまた欠席のままという状況の中で一つの重要な決議が衆議院で行われました。  それは、一般的にはいわゆる核抜き本土並みということが当時の合い言葉のようになっておりましたから、そこに注目をして、具体的には非核三原則を沖縄でも守り抜くということを衆議院本会議で決議をしたわけですけれども、実はそこにもう一つ基地の返還についての内容が込められておりまして、「基地の整理縮小につきましては、復帰後すみやかに実現できるよう、現在からこの問題に真剣に取り組む方針であります。」という当時の佐藤総理大臣のこの決議に対する決意表明がこれに加えられたわけであります。  つまり、非核三原則と米軍基地の整理縮小を実現すべきであるという衆議院の決議に対して、佐藤総理がこのような決意を本会議で表明をされている。つまり政府の約束である、公約である、同時に国民の総意である国会の決議だ。  これで、実はこの決議によって当時の与野党の間で修復ができまして、意見の一致ができまして、参議院に送られてきてからは、参議院では激しい中にもすべての政党が参加をして議論ができる状態になったと私は記憶をしております。  そういうことを考えますと、ぜひともこれは、そもそもその時点から始まった沖縄基地の返還であり、またこれを実現することを政府も約束をしておられたということを重く見ていただきたいと思います。  私の意見としては、この返還を実現するためには幾つかの、直接かかわりのないように見えるけれども重要な外交問題があるのではないか。まず、例えば北朝鮮との国交正常化。今しばしば北朝鮮の危険性とか中国の脅威論とかいうことがアメリカや日本の一部で言われておりますけれども、それは逆に受け取って、これをなくす外交をやることがまず第一じゃないだろうか。また、日米安保条約というものをこの際国民のすべての皆さんとともにもう一回基本から見直してみる、そういう議論をしてみるということも極めて重要ではないだろうかと私は今思っているのです。  例えば、実は驚きましたことに、この日米安保条約につきまして、今回お会いした自治体の長、名前を申し上げていいと思いますが、山内読谷村村長からは、勝者と敗者の関係で結ばれた日米安保条約は見直すべきではないかと実感をいたします、こういう言葉が私どもとの話の中で出てまいりました。これはそのとおりなんですね。  これは御存じのとおり、サンフランシスコ平和条約のときにそもそも最初に結ばれた。そして、当時の吉田総理という方は、御本人がおられないので今直接当時の御意思を聞くわけにいきませんけれども、サンフランシスコ平和条約は、同行されました超党派の代表団が全員署名をされた。にもかかわらず、最初の日米安保条約については吉田総理お一人が署名をされている。このことは何を意味しているんだろうか。そして、御存じのとおり六〇年安保、七〇年安保という改定が行われてきて、六〇年でかなり本質的に変わった部分はありますけれども、いずれにしても勝者と敗者の関係で結ばれたというこのことは、私ども肝に銘じるといいますか重く受けとめる、そのしわ寄せが沖縄に来ているんだという意味が込められていると思います。したがって、日米安保条約というものをもう一回見直してみるという私の意見は、こういうことから来ているんだということもぜひお考えをいただきたい。  もう一つ、首長さんの中で驚くような意見を言われた方があります。桃原宜野湾市長、これは普天間飛行場があるその市長さんですけれども、桃原市長は沖縄独立論ということを私に言われました。これは独立をすれば安保条約から解放される、したがってアメリカ軍基地もなくなるというそうした意思から出てくることですと、こう言われたんです。そこまで思い詰めておられる。このことはぜひ政府の責任者の皆さんは重く考えていただきたい。そこまで言われるんですね。  大田知事につきましては御存じの方が多いと思いますけれども、今度お会いした桃原市長も山内読谷村村長、こうした方々はそれぞれの自治体の責任者でありますが、私は実に驚きました。人間的にも実にすばらしい、苦悩の中でそうした人間性を持たれたのかもしれませんけれども、村長さんとか市長さんとかいう肩書以上に一つの政治哲学といいますか人生哲学を持っておられるということに驚きを感じたんです。この問題についてお考えになるときにはこういう方々のお言葉をぜひひとつ重く受けとめていただきたいと思います。  そこで、もう一つ具体的なことでお伺いをいたしますが、最近いわゆる特別立法ということがしきりに言われて、秋の臨時国会ではこの問題が具体的に出てくるんじゃないだろうかということが報道されています。現に、七月十八日、政府の地方分権推進委員会のヒアリングで、防衛庁が米軍基地の問題については国の責任事務にすべきだということを述べておられるようでありますけれども、これはどういう意味を込めておられるのか、お伺いしたいと思います。
  217. 伊藤康成

    説明員(伊藤康成君) ただいまの御質問の件でございますが、地方分権推進委員会におきましては、御承知のとおり機関委任事務というものは原則として廃止をいたしまして、それらを国の事務あるいは地方事務というようなことで振り分けるということを前提に議論していると承知しております。  そういう中で、地方分権推進委員会におきましては、駐留軍用地特措法に基づく関係の事務につきまして、そのたたき台の中で国の直接執行または法定受託事務、これは仮称でございますけれども、一応そういう方向で検討している、そういうことに分類をされておるわけでございます。このことにつきまして防衛庁サイドの意見を聞くということでございましたので、私どもも、今御指摘のように、基本的にはこの駐留軍関係の事務と申しますのは国の安全あるいは生存と安全というような非常に高い公共性を持ったものでございますので、基本的にはこれは国の事務であるということを御説明した次第でございます。ただ、その段階で、国の直接執行事務であるかあるいは法定受託事務であるかということにつきましては、なお勉強させていただきたいということで御説明をした次第でございます。
  218. 田英夫

    ○田英夫君 この特別立法につきましては、もう私から申し上げるまでもなく、これが出てくるというようなことになりますと、沖縄の皆さんは本当に先ほど述べたような言葉が現実に出てくるような気持ちになられる。幸いにして、橋本総理以下政府の皆さん、閣僚の皆さん、そして与党の幹部の皆さんもこの問題については大変慎重に対応しておられるようでありますから、ぜひともこの点は御配慮をいただきたい。  そこで、大田知事の言葉に入りたいと思います。大田知事が、今回私どもにも言われましたけれども、既に昨年の十一月五日付の朝日新聞に意見を述べておられるんです。最近日本国内で、最近というのは去年の秋の状況ですが、安保問題について非常に関心が高まり、議論が高まっているけれども、その引き金になったのは当然沖縄における少女暴行事件であることは間違いない。しかし同時に、私はむしろいわゆるナイ・リポートが引き金になったと思いますよと、こういうことを大田さんは言っておられます。  ナイ・リポートは、言うまでもなくアメリカのジョセフ・ナイ前国防次官補が昨年の春に出された東アジア戦略報告、こういうものでありますが、これは防衛庁長官初め外務省の皆さんももう十分御存じのことですから内容は申し上げませんけれども、私もこれは重大な意味を持っていると思います。先ほど日米安保条約の見直しということまで触れましたけれども、その立場からすれば重大な問題だと。  しかも、ジョセフ・ナイという人は、あえて申し上げれば、決して日本やあるいは朝鮮半島、中国の専門家ではありません。そして、今はもう政府を去って大学の人になってしまっている。こういう人がまるで置き土産のようにして置いていった、これがアメリカの世界戦略となり、それに日本が従うというようなことになるならばこんな不幸なことはない、こう私はあえて申し上げたいのです。  したがって、このようなものが原因になって日米安保条約がアジア太平洋拡大をされ、極東からさらに地域拡大をされるというような事態になっていくこと、そしてアジアに十万、日本に四万七千という米軍をそのまま存続するという基本姿勢を貫かれるというようなことになってくれば、これは全くこの沖縄問題からすれば逆行であります。冷戦が崩壊をして、本来平和になるべき世界の中で、これはまさに逆行じゃないでしょうか。  こういうことを申し上げて、きょうはもう一つTMDの問題を通告しておきましたけれども、時間がありませんから一つだけTMDについてお答えいただきたい。  どうしてBMDというふうに防衛庁は略称を変えられたんでしょうか。もう世間一般、世界的にTMDということで通っていたのを変えられたのはなぜですか。それだけお聞きしておきたいと思います。
  219. 秋山昌廣

    説明員秋山昌廣君) 御質問にございましたTMDでございますけれども、これは日本語に訳しますと戦域ミサイル防衛ということでございますが、これは米国のある意味で研究課題一つの固有名詞になっておりまして、米国の説明によりますと、戦域・戦術ミサイルから在外配備の米軍や同盟国、友邦国を防衛するもの、こういうふうに聞いているわけでございます。  我々、冷戦終結後の国際社会におきまして、大量破壊兵器とその運搬手段となり得る弾道ミサイルの拡散が進みまして、それが現実に我が国周辺には弾道ミサイルを保有する国が存在しているということを考えますと、我々としてもこの弾道ミサイル防衛という問題についてどう取り組むべきかということを考える必要があるということで、あえてアメリカの発想で研究しております、ある意味で固有名詞でありますTMDという言葉と違うBMD、つまり弾道ミサイル防衛のあり方について研究をしたいということで、そこははっきり分けた方がいいだろうということで変えたということでございます。
  220. 田英夫

    ○田英夫君 時間がなくなりました。この問題については改めてまた機会がありましたら御質問をいたしますけれども、結論としては日本は参加をすべきでない。既に昨年度、今年度と予算を計上していることに私は非常に危機感を持っているということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  221. 栗原君子

    ○栗原君子君 新社会党・平和連合の栗原君子でございます。  私は、先般、六月二十日でございましたけれども、この席におきまして、インドネシアに対しての原発輸出の問題を取り上げさせていただきました。時間が切れてしまいましたので、そのまた関連の質問をきょうさせていただきたいと思います。  実は、インドネシアにおいては二〇一五年までに六十から九十万キロワット級の原発を十二基備えるということでありまして、合計出力が七百万キロワットの原発を建設するといった計画を持っているようでございます。これは、今日、日本の新潟県の柏崎の五基五百万キロワットをしのぐ極度に一カ所に集中をした原発銀座になると、こういうことを現地の人たち、さらには日本の運動体の人たちも大変危惧をしているわけでございます。  インドネシアには原発を誘致する必要がないといった考え方を私は持っているわけでございます。なぜならば、インドネシアには天然ガスあるいはまた地熱、石油、石炭、さらにはさんさんと降り注ぐ太陽光が大変豊富にあるところでございます。こうしたことは現地の新聞、コンパスも世論調査をいたしておりまして、圧倒的多数の人たちが原発はインドネシアには必要ないと、こういったことを言っているわけでございます。特に現地では高等教育を受けた人たちの中にこの心配をする向きが大変多いということが伝えられてきております。さらには、女性団体とかあるいは現地の電力会社、そしてまた軍隊の中にも、軍の外でこういった核の問題を扱うことについては反対であると、こういった声も大変強く出ているという報告を受けております。  特に、日本の大阪にございますニュージェックというFS調査、いわゆる事前調査をやっている会社がありますけれども、この調査が六月に終わっております。そして、来年着工するといった運びになっているようでございますので、ここでまず私は、先般外務大臣の答弁の中に、この原発をODAの対象にしないのは非常に収益性が高いからと、こういった答弁を外務大臣がしてくださったわけでございますが、きょう外務大臣は欠席でございますので、できましたら政府委員の中で、なぜこの収益性が高いと、この収益性の根拠についてお触れいただければと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  222. 大島賢三

    説明員大島賢三君) 原子力発電所建設に対しますODA資金の供与につきましては、一九八四年にOECDで原子力発電所向けの信用供与に関するセクター了解というものがございまして、ODA借款を含めまして原則として緩和された条件での信用供与は行わないという一般的な了解がございます。こうした了解がつくられるに当たりましては、そもそも収益性が高い等のいろいろな理由がございまして、種々の議論がOECDの加盟国の間で行われた結果、そういったセクター了解というものが採択されて各国ともこれを守っておるということでございます。  したがいまして、このアレンジメント参加国におきましては、タイド援助信用だとか混合借款、ODA借款、贈与その他、こういったその了解に定められた条件よりも緩和された条件のものについては信用供与を行ってはならないということでございまして、原子力発電所建設案件についてもそういうことで現在に至っていると、こういうふうに了解をいたしております。
  223. 栗原君子

    ○栗原君子君 この原発はもうかると思っているんですか、もうからないと思っているんですか、ちょっとそこのところで答弁お願いします。
  224. 大島賢三

    説明員大島賢三君) この信用供与のガイドラインが議論されました中については、もうかる、もうからないという収益性の観点ももちろんあったわけでございます。これも重要なポイントであったということでございますが、もちろんそれだけではございませんで、一般に国際的な関心でありますいわゆる不拡散であるとか安全性とかいろいろな原子力発電所建設に伴います考慮というものが総合的に議論されまして、こういうふうな国際的な一種の了解になったというふうに理解をいたしております。
  225. 栗原君子

    ○栗原君子君 それでは、通産大臣おいででございますのでお伺いさせていただきたいと思いますが、「総合エネルギー調査会原子力部会 中間報告書の要点」を見せていただきました。東南アジアヘの原子力発電関連資機材等の輸出に当たって「核不拡散確保の観点からの輸出規制は今後とも厳格に実施する。」と、このようにありますけれども、放射性廃棄物対策や核不拡散確保の保証のない輸出は巨大な公害輸出になりかねないと思うわけでございます。輸出規制を厳しくすべきだと思いますけれども、どのようにお考えでございましょうか。
  226. 江崎格

    説明員(江崎格君) 先生御指摘のように、最近、近隣のアジア諸国におきまして原子力発電の導入の動きが大変活発化しているという状況でございますけれども、そもそもそれぞれの国が原子力発電を導入するとか、あるいは今ある原子力発電所を拡大するかどうかというのは、それぞれの国のエネルギーに関するいろいろな事情、エネルギーの需給状況ですとかあるいは地球環境問題への対応等、いろいろなことを総合的に勘案してそれぞれの国がみずからの責任においてそれぞれの国の政府が決定するということになっているわけでございます。  そういう特定の国が原子力発電を導入するということを決定した場合に、日本に対して原子力機器の輸入について要請があった場合に日本としてどのような対応をとるかということでございますが、これにつきましては、今先生御指摘の総合エネルギー調査会の原子力部会の報告書にもございますけれども日本としましてはより安全な原子力発電が行われますように、まず第一に品質の高い原子力機器の輸出というものとあわせて我が国のすぐれた運転管理技術、つまりソフトウエアの技術ですが、こうしたものをあわせて、つまり安全のワンセット供給ということで供給した方がよりその国の原子力の安全水準を向上させるんではないかという方針で私ども臨んでいるところでございます。  それから、今御指摘の原子力機器の輸出に際して、平和利用ですとかあるいは核不拡散、こういった観点のチェックはもちろん十分やることにしておりまして、これは国際ルールがございまして、原子力供与国会合、私どもNSGと呼んでおりますが、こうした機関が決めましたロンドン・ガイドラインなどによりまして、平和利用あるいは非核爆発目的利用、それから保障措置の適用あるいは核物質の防護といったような厳格な平和利用、核不拡散のための担保措置をとるというのはもちろん当然でございます。このような方針で原子力機器の輸出に臨んでいるところでございます。
  227. 栗原君子

    ○栗原君子君 私は、通産大臣にお願いをしたいと思いますけれども、実は、これは新聞の報道でなされているわけでございますけれども、今、日本では原発が大変やりにくいと。住民の関心も高まっておりますし、さらには、先般の「もんじゅ」の事故などにもありますように立地の条件が整わない、そういったことでアジアの市場を開拓したいと、こういった原発の機器メーカーがあるわけでございます。  そして、一方では、使用済みの核燃料や放射性廃棄物の処理まで背負わされてはかなわないと。さらには、政変で施設が奪われたら大変だ、採算が合わないと、こういったことで大変慎重にしている企業もあるわけでございます。  こうした二つの考え方が機材メーカーにあるわけでございますけれども、通産大臣はこういったことに対してどのような御見解をお持ちなんでございましょうか、お伺いします。
  228. 塚原俊平

    ○国務大臣(塚原俊平君) 機材メーカーがどのような考えをしているかというものは、具体的にお話もしたことがございませんので、外国に関しては承知をいたしておりませんが、少なくとも日本の国内において非常に信頼を「もんじゅ」の事故で失った原子力発電を、地域の皆様方の信頼を回復する、国民の信頼を回復する努力をする、そしてさらに安全性を確保した中で、私どもはより計画に近い形でこれから進めていかなければいけないということを強く感じております。
  229. 栗原君子

    ○栗原君子君 そこで、日本輸出入銀行の総裁、おいでいただいていると思いますので、お伺いをさせていただきたいと存じます。  地球環境コンサルタント、ニュージェック社への十億円の融資の審査の経過を少しお触れいただきたいと思います。
  230. 保田博

    参考人(保田博君) 具体的な審査の手続までは私ちょっと知悉しておりませんが、本件につきましては、一般的なプラント類の輸出とは違いました政府の御判断をいただくことが融資の可否を判断する前提として要求されております。  その第一は、外為法上の役務の提供に係る特殊決裁の許可であります。それから第二は、通産省の技術提供等保険の付保というものでございまして、このインドネシアのムリア発電所のフィージビリティースタディーについて本行が融資の可否を決定するに際しましては、この二つの政府のいわゆる許可をちょうだいした上で、本行としまして金融的な判断として、OECDのガイドラインに沿っているかどうか、あるいはまた元本の償還が確実であるかどうかといったような金融上の判断を加えた上で融資を決定したということでございます。
  231. 栗原君子

    ○栗原君子君 このニュージェック社のFS、実行可能調査はいつ終了し、そしてまた調査結果はインドネシアの政府に対していっ提出されたものかおわかりでございましょうか。
  232. 保田博

    参考人(保田博君) 本件についてのインドネシア政府とニュージェック社とのフィージビリティースタディーについての契約の調印は一九九一年の八月であります。その後、調査を進められまして、ことしの七月に調査が完了しております。
  233. 栗原君子

    ○栗原君子君 これは、七月の調査の完了時点で即インドネシアにその報告書が提出されたと解釈してよろしいですね。
  234. 保田博

    参考人(保田博君) インドネシア政府とニュージェック社との細かい経過までは承知しておりませんが、多分、その間に特別の障害があったとは私聞いておりませんから、調査が終了し次第二ュージェック社より結果がインドネシア政府に報告されたものと考えております。
  235. 栗原君子

    ○栗原君子君 そこで、現地の新聞、先ほど申しましたコンパス紙によりますと、国際原子力エネルギー機関、IAEAは九三年七月、さらには十一月、九四年の二月と三回、日本のコンサルタント会社ニュージェックが行った実行可能調査が活断層の調査を行わなかったという理由で、この調査は不完全なものだと発表しておりますけれども、これについてはどうお考えでございますか。
  236. 保田博

    参考人(保田博君) このフィージビリティースタディーの報告書自体は、本件の発注者であるインドネシア政府に対しましてニュージェック社から提出されたものであります。このニュージェック社は契約上の守秘義務というものがございますから、その内容を第三者に開示することはできないことになっております。したがって、本行としてもその報告書の内容を承知する立場にはないということを御理解いただきたいと思います。
  237. 栗原君子

    ○栗原君子君 十億円の融資をしておいて、この調査結果についての内容を全く知らないというのはおかしいと思いませんか。
  238. 保田博

    参考人(保田博君) 我々としましては、先ほど通産省当局からございましたような原子力発電につきまして、核不拡散の問題があるかないか、あるいは平和利用上の問題がないのか、安全性の問題がないのかといったようなことを融資の前提とするわけでございますが、これは本体についての融資の可否を判断する際のものでございまして、本件のようなフィージビリティースタディーの内容について、融資をしたからこれを知悉するということは、権利としてこれをニュージェック社に要求できるものではございません。
  239. 栗原君子

    ○栗原君子君 ここにニュージェック社の社内案内といいましょうか、パンフレットをいただいておりますけれども、この中で、地質、土質、基礎に特に力を入れてやるということを書いてあるわけですね。「地質・土質の把握が基本、地盤と構造物の調和を創出します。」。こんなことで、地質、土質の調査を十分にやるべきであるということもこの会社は言っているわけですけれども、現実に現地のそうした新聞では十分にしなかったと、こういったことを言っているわけでございまして、特にインドネシアは火山国でございまして、地震が多いところでございます。活断層の調査を行わなかったということについては、私はこの調査に不備があったんではなかろうかということを思うわけでございます。  そこで、この調査の報告をインドネシアの政府の方に出されているわけでございますので、できましたら通産省、外務省、大蔵省、そういったところでぜひ、大変日本の国内でも問題となっておりますので、インドネシアに対しまして資料の請求をしてほしいと思いますけれども、これはお約束していただけますでしょうか。どなたに言えばいいんですか。通産大臣ですか。
  240. 大島賢三

    説明員大島賢三君) これはインドネシア政府の要請によりまして今調査が行われて、そしてフィージビリティー調査の結果が提出されたというふうに輸銀総裁の方から御報告がありましたけれども、これ自身について日本政府がその資料請求をするかどうかということにつきましては、そもそもインドネシア政府が原子力発電所の建設そのものについてまだ決定を行っているわけでもありませんし、それ以上に進んでいるわけでもありませんので、他国政府が行っております。そういう調査につきまして、日本政府として調査を申し入れる、資料の入手を申し入れるということについては必ずしも適当ではないのではないかというふうにとりあえず考える次第でございます。
  241. 栗原君子

    ○栗原君子君 そうは言っても、やっぱりこれは国民の血税を使って融資をしているわけでございますから、ちゃんと日本国民に対して説明のつくような状況というのは必要ではなかろうかと、こう思うわけでございます。  それと、実はアメリカなんですけれども、アメリカの輸銀と日本の輸銀、えらい違いだと思います。アメリカの輸銀は、中国に対しまして三峡ダム建設に進出を予定するアメリカ企業への融資見送りを決定したということを言っております。これは今年五月でございますけれども中国での三峡ダムの建設に対して、希少動物などの生態系の保護が確保されない、二番目には水質の維持、さらに三番目には強制移住させられる現地の住民のことなどありまして、アメリカ輸銀は中国の三峡ダム建設に対して融資の見送りをしたということを言っております。  原発の問題は大変な環境に影響する問題でありますし、それから特に現地のそうした反対運動が強いわけでございますから、私はこうしたことを十分に考慮していただきたいと思います。  それから、世界銀行はどういう状況にあるのか私も担当者に伺いました。そういたしますと、一つには、世界銀行は発電源から見て一番安いものがある場合は融資をしない、今まで融資を原発に対して出した実績はないということを言っております。それから二つ目には、途上国の原発の場合、ほかに資金がある場合は出さないといったことで世界銀行では今まで出したことはないと、大変慎重に扱っているわけでございます。日本輸出入銀行と違って私は大きな差があると思うんですけれども、この点はどうお考えになりますか、アメリカの輸銀、そして世銀と比べまして。
  242. 江崎格

    説明員(江崎格君) 先ほどから御議論になっております輸銀の融資の問題ですとか、あるいは政府の支援策の一つとして貿易保険がございますが、この原子力機器の輸出に際しましてこうした公的支援をするかどうかということに際しまして、私ども政府として確認する点が大きく分けまして三つございます。  一つは、その原子力発電を実施する国におきまして、安全の確保あるいは放射性廃棄物対策とか、あるいは原子力の事故対策、こういったことにかかわる責任を十分に果たせる体制がそれぞれの国においてできているかどうか、あるいは規制措置がきちっと実施されているかどうかという点をまず確認いたします。  二番目に、国際的な原子力に関する安全条約あるいは原子力の廃棄物等に関する条約、こうした主要な国際条約をその国が受け入れているかどうかという点をチェックいたします。  それから三番目に、輸出いたします我が国の製造業者あるいは輸出業者が設計とか製作に当たりまして国際的な基準を適切に守っているかどうか、あるいは輸出後の補修とか安全関連サービスにつきまして適切な対応をとれるかどうか。  こういった三点につきましてきちっと確認をすることにしておりまして、確認がとれれば公的な支援を与えるということにしております。
  243. 栗原君子

    ○栗原君子君 あくまでも慎重に扱っていただきますようにお願いをします。  終わります。ありがとうございました。
  244. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 以上で平成六年度決算外二件の全般的質疑は終了いたしました。  次回の委員会は明二十四日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時七分散会