○直嶋正行君 私は、
平成会を代表いたしまして、ただいま議題となっております
住専処理法案を初めとする
金融六
法案に反対の討論を行うものであります。
以下、その理由を申し述べます。
まず、今回の
住専処理法案の大枠を定めている
住専処理スキームの作成が、そして六千八百五十億円の財政資金投入のプロセスがいずれも密室協議で決められ、しかも大多数の
国民の意見を無視した結果のものであることは明白であります。
去る三月五日、連立
与党は、今後五年間でリストラにより民間
金融機関が五千億円、農林系は千八百億円の税収増を実現し、財政支出に見合う額を捻出する等の論弁とまやかしの
追加措置を決定し、一層の
国民の非難と反発を招きました。
また、財政資金投入に対する
国民の怒りが大きいことを知ると、
母体行を初めとする関係
金融機関に強引に追加負担を求め、あろうことかそれを法律の枠外で実施しようとしています。
こうした措置をとらざるを得なくなったことは、既に
政府の
住専処理スキームが
破綻したことを示しており、
政府は
法案を撤回し、新たな
処理スキームを再提案すべきと申せましょう。
政府の行おうとしている行為は、自分の作成した法律をみずからなし崩し的に変更しようとするもので、法治国家、民主国家の
政府のとるべき態度ではなく、民主主義のルールを大きく逸脱したものと言えます。
その追加負担による新たなる寄与策なるものも具体的な形でいまだ
国民の前に示されていませんし、巷間伝えられる
内容を見る限りは、十五年かけて財政支出を軽減するという相変わらずの小手先の糊塗策、びほう策の域を出ていません。
いずれにしても、六千八百五十億円の財政資金を
住専処理に投入し、使う方針は何ら変えていないというのが実態であります。
さて、
住専の
破綻は、九三年二月の
住専第二次
再建計画で、
大蔵省及び
農水省の担当
局長が
覚書を交わし、
母体行が無節操にそれを受け入れたことが今日の大きな原因となっておりますが、巨額の税金の使途が一役人にすぎない
局長の密室での
覚書に縛られてよいものでありましょうか。
政府は、口を開けば
金融システムを維持するためのぎりぎりの選択と言っておりますが、今回の六千八百五十億円の財政資金投入は、
母体行、
一般行、農林系
金融機関あるいは
大蔵省、
農水省という行政当局、さらには
政府・
与党、それぞれが
責任をなすり合う結果生じた何の根拠も見出せない産物なのであります。その結果、具体的に
金融システムのどこに
影響が出て、預金者にどのような不利益を与えるのか、今に至るまで明確な
答弁はなされておりません。
当初、
大蔵省は
住専処理に伴う一次損失を七兆五千億円と見積もっておりました。しかし、土壇場でのつじつま合わせで一次損失を六兆四千億円に圧縮し、財政資金の投入につなげたわけであります。
特に農林系の負担については、
政府が
母体行及び農林系に配慮に配慮を重ねた結果として出てきた数字であり、財政資金という一番取りやすいところで埋め合わせを行ったと言われても仕方ないものであります。
我々は、
政府の関与を排し、
自己責任原則に基づく会社更生法による
住専処理及び管財業務を遂行、支援する
日本版RTCとも言うべき
不良債権処理公社の設立を求めてまいりました。裁判所が関与すれば、透明性が高い上に、
債権者の
責任と負担の関係がはっきりいたします。
また、市場原理と
自己責任原則の徹底と透明な制度という
我が国の
金融システムの目指すべき将来方向にも合致することとなります。その
意味では、
政府の
住専処理は全く時代の
要請に逆行するものであると
指摘せざるを得ません。
住専処理機構が将来、
債権回収を行い、二次損失が出た場合、これを
政府と民間
金融機関でそれぞれ二分の一ずつ負担することとしておりますが、どの
程度の損失が出るのか、なぜ
政府が二分の一の負担なのか明確になっておりません。
こうした措置をとらなければならないのは、さきに申し上げたように、
処理スキーム策定において一次損失を七兆五千億円とせず、六兆四千億円と低く見積もるというまやかしから来る損失
処理の先送りが原因になっているのであります。
また、
法案では回収利益の国庫還元が盛り込まれておりますが、回収で利益を生むようなケースはほとんど想定できませんし、さらに
住専の
経営者への
責任追及が果たして
担保されているのかも不明確であります。
以上のような理由から今回の
住専処理法案に断固反対するものであります。
また、
議員立法で提案されております
住専債権時効延長
法案につきましても、
政府の
住専処理法案の
責任追及における法的な不備、問題点をみずから暴露したものであり、同様に反対であります。
次に、
金融四
法案について申し上げます。
これらの
法案は、昨年十二月に出された
金融制度調査会報告書の
内容に基づいて作成されたものでありますが、これら
法案と報告書が目指す
金融機関の
不良債権の早期
処理、市場規律に立脚した透明性の高い
金融システムの構築とは
法案は整合がとれておりません。
まず、
預金保険法改正案でありますが、これは五年後の保険金の支払いに係るペイオフの仕組みを
整備するほか、今後五年間預金を全額保護するための時限措置として、預金保険機構に
一般金融機関特別勘定と
信用組合特別勘定を設け
破綻金融機関に対し資金援助を行うこととしております。特に、
破綻信用組合については東京共同
銀行を改組した整理回収
銀行によって
処理し、五年後に預金保険機構の特別勘定が赤字となった場合には財政資金投入への道筋がつけられております。
しかし、こうした
金融機関の
不良債権処理において、なぜ
信用組合のみを対象として整理回収
銀行を使った枠組みを用意するのか、明確な理由づけがありません。結局、この措置は
破綻の可能性が高いものから
処理の枠組みをとりあえずつくったという場当たり的なものでしかありません。こうした
対応はかえって
信用組合に預金している
国民に動揺を与え、大きな資金シフトが生ずることも懸念されるところであり、
金融システム全体を見通した預金者の信頼回復に資することにはなりません。
また、整理回収
銀行についても、すべての
金融機関の
不良債権処理を対象としたより公的なものにすることが必要であると
考え、反対であります。
次に、
農水産業協同組合貯金保険法改正案についてでありますが、この
法案は、
預金保険法と同様に五年間の時限的措置として貯金の全額を保護するために保険料を現行の二・五倍に引き上げようとするものでありますが、
預金保険法の方の七倍と一致しておりません。これは農林系
金融機関の負担のみを考慮し、多額の
ノンバンク向け融資を行っている農林系に対して万全の措置と言えるものではなく、不十分で、反対であります。
最後に、
金融機関の
健全性確保法案及び
更生手続特例
法案について申し上げますと、早期是正措置の発動基準が依然不明確なこと、
更生手続の申し立てが
金融機関がいかなる
状況になった場合にとられるのか明確ではありません。
こうしたことから、いずれの場合も
金融当局の裁量の余地が拡大し、国際標準ルールと比べてかけ離れているのではないかという疑問を持たざるを得ず、両案について反対いたします。
以上、るる今回の
法案に反対する理由を申し上げてまいりましたが、
政府は、どうしてこのような
国民が強く反対する意思を無視して、力づくで
法案を通そうとするのでしょうか。今後、二十一世紀の
金融システムを展望した
議論が切に望まれるとき、
国会がその使命を果たさず、
政府の
提出した
法案の単なる追認機関となってはなりません。
政府・
与党がメンツのためだけに執着して、
国民の意思をないがしろにする今回の
法案は、今後の
不良債権処理のあしき先例となるばかりでなく、国際
金融システムの一翼を担う
我が国金融機関にとっても不幸であることを申し上げまして、私の反対討論といたします。(拍手)
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