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1996-06-17 第136回国会 参議院 金融問題等に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十七日(月曜日)    午前十一時三分開会     —————————————    委員異動  六月十七日     辞任         補欠選任      阿曽田 清君     寺澤 芳男君      吉川 春子君     有働 正治君   出席者は左のとおり。     委員長         坂野 重信君     理 事                 中曽根弘文君                 前田 勲男君                 吉村剛太郎君                 直嶋 正行君                 林  寛子君                 一井 淳治君                 筆坂 秀世君     委 員                 笠原 潤一君                 金田 勝年君                 佐藤 静雄君                 関根 則之君                 楢崎 泰昌君                 服部三男雄君                 平田 耕一君                 保坂 三蔵君                 真島 一男君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 阿曽田 清君                 荒木 清寛君                 牛嶋  正君                 海野 義孝君                 高橋 令則君                 寺澤 芳男君                 益田 洋介君                 山下 栄一君                 渡辺 孝男君                 伊藤 基隆君                 大脇 雅子君                 梶原 敬義君                 山本 正和君                 有働 正治君                 小島 慶三君                 島袋 宗康君                 奥村 展三君    衆議院議員        発  議  者  保岡 興治君        発  議  者  永井 哲男君        発  議  者  錦織  淳君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        大 蔵 大 臣  久保  亘君        法 務 大 臣  長尾 立子君        外 務 大 臣  池田 行彦君        文 部 大 臣  奥田 幹生君        厚 生 大 臣  菅  直人君        農林水産大臣   大原 一三君        通商産業大臣   塚原 俊平君        運 輸 大 臣  亀井 善之君        郵 政 大 臣  日野 市朗君        労 働 大 臣  永井 孝信君        建 設 大 臣  中尾 栄一君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    倉田 寛之君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣         (総務庁長官) 中西 績介君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       岡部 三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  臼井日出男君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       田中 秀征君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 秀直君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  岩垂寿喜男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  鈴木 和美君    政府委員        内閣法制局長官  大森 政輔君        警察庁刑事局長  野田  健君        防衛庁参事官   澤  宏紀君        防衛庁人事局長  大越 康弘君        防衛施設庁労務        部長       早矢仕哲夫君        経済企画庁調整        局長       糠谷 真平君        経済企画庁調査        局長       中名生 隆君        国土庁土地局長  深澤日出男君        法務省民事局長  濱崎 恭生君        法務省刑事局長  原田 明夫君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        農林水産大臣官        房長       高木 勇樹君        農林水産省経済        局長       堤  英隆君        郵政大臣官房審        議官       品川 萬里君        労働大臣官房長  渡邊  信君        建設大臣官房長  伴   襄君        建設省河川局長  松田 芳夫君        自治省行政局長  松本 英昭君        自治省行政局公        務員部長     鈴木 正明君        自治省行政局選        挙部長      谷合 靖夫君        自治省財政局長  遠藤 安彦君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○特定住宅金融専門会社債権債務処理促進  等に関する特別措置法案内閣提出衆議院送  付) ○金融機関等経営健全性確保のための関係法  律の整備に関する法律案内閣提出衆議院送  付) ○金融機関更生手続特例等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付) ○農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○特定住宅金融専門会社が有する債権時効の停  止等に関する特別措置法案衆議院提出)     —————————————
  2. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから金融問題等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十四日、佐藤道夫君が委員を辞任され、その補欠として島袋宗康君が選任されました。  また、本日、吉川春子君が委員を辞任され、その補欠として有働正治君が選任されました。
  3. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案金融機関更生手続特例等に関する法律案預金保険法の一部を改正する法律案農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び特定住宅金融専門会社が有する債権時効停止等に関する特別措置法案、以上六案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  この際、大原農林水産大臣より発言を求められておりますので、これを許します。大原農林水産大臣
  4. 大原一三

    国務大臣大原一三君) 六月十三日の本委員会において山下委員の御指摘を受け、野呂田農林水産大臣に確認いたしましたところ、平成七年十二月十三日、衆議院予算委員会における前原米沢委員に対する答弁において母体行の責任を申し上げる過程で、母体行の大蔵省に対する誓約書提出と、大蔵省農林水産省とで結んだ覚書との時点を前後して答弁したことについて訂正させていただきますとのことでありました。  これに関する農林水産省対応について遺憾の意を表し、心からおわびを申し上げるとともに、今後かかることのないよう十分指導してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
  5. 山下栄一

    山下栄一君 総括質疑の前に一般質疑の続きということで、前回、十三日の私の質疑を保留させていただいたわけでございますけれども、ちょっと限られた時間でございますので若干延びるかもわかりませんが、理事会のお許しも得ているようでございますので、主張すべきことはしっかり主張させていただきたいと、このように思います。  今の大臣答弁は、前の委員会の私の質問のときの最後にされた答弁とほとんど変わらない内容になっておるわけでございますけれども中身はその程度の問題ではないと私は思うわけでございます。  もう一度ちょっと繰り返させていただきますけれども、去年の十二月十三日、衆議院予算委員会における前農林大臣野呂田大臣答弁、これが虚偽の答弁であったということになるわけです。それを農水省はお認めになったわけでございますけれども、これが今日まで放置されてきたということでございます。  答弁中身は、今もお触れになりましたけれども、要するに、住専の「再建計画を策定するに当たりまして、」、これは前大臣答弁中身でございます、「母体行から母体行の責任において対応するという誓約書大蔵省に出しており、それに基づいて大蔵農水が、この問題については母体行の責任対応してこれ以上系統に負担をかけないという覚書を結んでいるわけであります。」と、こういう内容でございます。  これは全く事実に反することであったと今おっしゃったわけでございますけれども、これは、ちょっと記憶間違いであったとかという、そんな程度の問題ではない。正式の農水省としての見解である。しかも、それは農水省だけではなくて、大蔵省もかかわった覚書、そして誓約書でございますので、きちっと予定された正式の内閣見解であると、私はこのように思うわけでございます。  中身系統住専貸し出し元本保証担保にかかわるものである、したがって住専処理根幹にかかわると私は思うわけです。しかも、この大臣答弁は、新進党の米沢さんの質問に対する答弁だけではなくて、今もお触れになりまして後からわかったことでございますが、与党さきがけ前原質問に対しても同じ趣旨答弁をされている。  これは、系統の方が担保をしっかりしていただかないと元本を、住専貸し出し引き揚げるという大変な事態になったわけでございまして、これをされると金融全体に大変大きな影響を与えるということから、必死になって系統元本引き揚げに対する対応を阻止するための工作が行われた。これが念書、そして覚書の問題であるわけでございます。  それが、母体行の方が自主的に自分らで元本保証をいたしますということをまずやった上で、そして自主的な要請に基づいて大蔵農水両省がそれの覚書を交わした。大蔵省母体行に対して責任を持って指導をしていきますと、そういう中身によって、これで安心して系統元本引き揚げをしなかったということになるわけでございますけれども、事実は反対で、この念書が交わされて、平成五年の二月三日にこの覚書は出たけれども、だけれども母体行からそんなことやりますという保証は何にもない。  不安になった系統は、二週間後ですか、二月十六日に、母体行からそんな保証何もありませんよ、本当にやっていただけるんですかという問い合わせを大蔵農水にそれぞれやって、それで二月二十六日に、慌てた大蔵省母体行を集めて、そこで再建会議の中で、日住金に対する八つの銀行三和銀を初めとして、その銀行からのちゃんと元本保証いたしますという念書を無理やりまとめ上げたと、こういう中身になっておるわけでございます。詳しい中身衆議院予算委員会における草川質問で明らかであるわけでございます。  したがって、自主的に母体行が責任を持って元本保証いたしますと言ったのでも何でもないということになるわけでございます。  したがって、この野呂田大臣答弁中身は、当時の状況考えまして、正式な農水省としての見解を発表されたものであると。しかも、今日まで農水省は、前委員会でも御答弁がございましたように、その状況を知らなかったので前大臣答弁内容をもう一回調べますということで、きょうの大臣答弁になったわけでございます。  したがって、この見解を変更してこなかった。この半年間の国会論議はこの誤った見解に基づいて積み重ねられてきたことになるというふうに私は思います。したがって、この六カ月問の答弁は誤った見解に基づく議論が展開されてきた、中身は全く欺瞞であったとも言うべきゆゆしき大問題だと、国会軽視の大問題であると、こういうふうに言わざるを得ないと思うわけでございます。  また、前大臣の正式の答弁を次の大臣が訂正したり取り消すということは、憲政史上今まで一度もなかったと、このように聞いておるわけでございます。  だから、どのようにこれを収拾するか。前国会大臣答弁だから議事録の修正もできないということだそうでございまして、これは私の考えでございますけれども衆議院予算委員会を開いていただいて、大蔵省見解と違いますので訂正いたしますというレベルの問題ではないので、前大臣出席していただいて、そこでどういう意図でこの答弁が行われたのかということをきちっと問いただされた上で対処するしかないと、このように思っておるわけでございまして、衆議院予算委員会でもう一度この議論をしっかりやっていただきたい、これしかないと私は考えるわけでございます。  ちょっと時間が延びてしまいましたけれども、これは委員長にお願いしたいんですけれども、今日まで内閣の正式の見解ともいうべき、大蔵農水考えも正式にあらわれておったこの見解が全く違った虚構に基づく答弁であったと、中身も、住専根幹にかかわる住専処理の問題、そして今検討されています追加措置にかかわる問題でもございますので、この扱いを厳重に、きちっと収拾のために努力されますように委員長の方から衆議院の方にお願いしていただきたいと、このように思いますので、よろしく対処をお願いしたいと思います。
  6. 坂野重信

    委員長坂野重信君) それでは、委員長としてただいまの山下君の質疑に関しまして見解を申し上げたいと思います。  去る十三日、本委員会におきまして、山下君の質疑に際し、大原農林水産大臣から、衆議院における昨年十二月十三日の予算委員会での野呂田農林水産大臣米沢議員質問に対する答弁の訂正について発言がありました。  この件につきまして、翌十四日の理事会農林水産省上野事務次官出席を求め、ただしたところ、次官は前大臣発言について釈明するとともに、農林水産省対応について陳謝しました。また、大原農林水産大臣は、ただいま重ねて遺憾の意を表明されたところであります。  委員長といたしましては、国会答弁重要性にかんがみ、今後かかる失態のないよう関係者に厳重に申し入れます。  今後もさらにチェック機能を持つ参議院にふさわしい審議を行いたいと存じます。
  7. 山下栄一

    山下栄一君 関係者に厳重に注意したいという、関係者というのはどなたのことになるわけですか。
  8. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 関係者は、政府関係もあるし、衆議院に対しては、院が違うことですから、参議院でこういうことがあったということを実質的によくお話をして、衆議院においても、先ほどおっしゃったように、予算委員会等でこの問題をひとつ取り扱っていただくような趣旨のことをお伝えしたいと思います。  以上です。
  9. 山下栄一

    山下栄一君 ちょっと確認させてください。  今、小さい声でちょっとぼそぼそと……
  10. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 小さい声じゃないよ。
  11. 山下栄一

    山下栄一君 元気よく言っていただきたかったんですけれども国会参議院特別委員会の、また非常に国民が注目しております税金投入にかかわる今審議をやっておるその金融特委員長の立場でございますので、非常に言葉に重みがあると思うんですけれども、私が先ほど申しましたが、衆議院の方に正式にきちっと、政府関係者は当然だと思います。  そして、これは与野党の質問に対する答弁が、正式の大臣答弁が、僕は意図を持ってされたと思いますけれども、全然間違った答弁をされておったわけでございまして、その前後どちらになるかによって全然変わってくる中身でございます。だから、国民が納得し、また参議院としても納得できるような対処をきちっとしていただくように正式の要請衆議院に対して、また予算委員会に対してやっていただきたいと重ねてお願いするわけでございますけれども、よろしくお願いします。よろしいですか。
  12. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 発言者趣旨はよくわかりますので、できる範囲内において衆議院にこの事情を説明いたしたいと思います。
  13. 山下栄一

    山下栄一君 できる限りの御努力を全力を挙げてお願いしたい、このように思います。  以上でございます。(拍手)
  14. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 自由民主党の佐藤静雄であります。いただいた時間が、前も切られ後も切られて大変時間がございません。したがいまして、質問について答弁は簡潔にひとつお願いを申し上げます。  昨年十二月に策定されました住専処理スキームをめぐりまして我が国の世論が峻別されまして、険しく論議が行われてまいりました。賛否をめぐり、国会論議だけでも一月以来既に足かけ六カ月、大論争であります。今、大詰めにまいりまして、はるけくも来つるものかなという感を抱いておりますが、この論議を通じて日本型の不良債権処理方式ができれば、これは私は大変好ましい論議であったというふうに考えております。  御承知のように、住専七社には母体行あるいは一般行、そして農協組織を含めますと三百行もの形態が違う、業態が違う金融機関が関与しておりまして、日本金融機関の縮図と言っても過言ではないというふうに思っておるわけでございます。そして、まさにこの住専問題の処理我が国金融システムの安定や景気動向そのものにかかわる重大な問題である、我が国金融政策あるいは金融機関信用を国際的に問われる大きな問題であるというふうに私どもは理解をしたわけでございます。  私は、そういう観点に立ちまして、二月十五日に本院の予算委員会においてこれを指摘しまして、バブル崩壊により我が国経済が受けた大きな損失、これはさきにも御指摘申し上げましたが、経済学者によりますと、地価で七百兆円、株価で三百兆円、合わせて一千兆円が瞬時に吹き飛んがというような状況でございまして、一生懸命戦後我が国民が孜々営々として積み上げてきた金融資産一千兆円に匹敵するものが一朝にしてなくなったというような重大な時期だというふうに考えております。  住専問題の処理は、今後続いて起こりますポスト住専地雷原というふうに言われておるノンバンク不良債権処理、あるいはゼネコンの危険水準にあると思われる債務保証、あるいはバブル期に発行し据置期間が切れました、償還期間が集中して到来すると言われるゴルフの会員権の問題、そういう不良債権処理考えた場合、住専処理の問題は日本不良債権の解消の問題になっておる。金融秩序を守り、世界的に我が国金融経済が受けた信用失墜の回復を図る金融大戦争のまさに序章だというふうに考えておるわけでございますが、総理の御見解をただしたいと思います。
  15. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 金融というものが我が国経済、これは我が国だけではありません、経済の動脈という位置づけ、大きな役割を果たしている中で、この不良資産の問題というものがいかに我が国経済に大きな影響を与えてきたか、今、議員が御指摘のとおりでございます。私どもとしては、住専処理を含む不良資産問題の早期解決、そしてこれにかわる新しい金融システムの構築を図る、こうした目的から今般所要法案を今国会提出させていただき、御審議をいただいてまいりました。私どもといたしましては、我が国金融システムに対する内外の信頼というものを確保し再構築していくためにも、今後ともに政府挙げて全力を尽くさなければならないと考えておりますし、そのためにも所要法律案の一刻も早い成立を心からお願い申し上げたい気持ちでいっぱいであります。
  16. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 ただいま冒頭申し上げましたノンバンクによる貸し付けバブル期に急増しまして、現在、貸付残高が八十五兆円ということになっております。  この問題について、前の委員会でも御指摘申し上げましたが、ノンバンク貸付金のうち約六割が不動産担保貸し付けになっておる。大蔵省が作成した資料で見ましても、有力ノンバンクに二百七十八社、融資残高が五十五兆八千億円、このうち不動産担保融資は三十三兆円というふうになっております。銀行局長答弁でも、「主要二十一行のノンバンク向け融資残高が二十四兆円、そのうち七兆円が不良債権となっております。」と、このような答弁でございますが、住専貸し付けを見たときに、貸付額の七三・五%、これが不良債権でございます。  そうしますると、この不動産担保融資、これは住専と全く同じ態様でございます。したがって、七兆円ぐらいの不良債権だなんということは到底信じられない。三三兆に七五%掛けたらわかるように、二十兆を超す不良債権があるんじゃないかというふうに思われるわけでございます。  もちろん、ノンバンク処理自己責任でという大蔵省見解でございます。しかし、一つのノンバンクの倒産が次なるノンバンク経営破綻を呼ぶ、ノンバンク崩壊ドミノ現象すら心配されておる。これは日本経済を襲う金融クライシスだと言っても過言ではありません。日本経済に及ぼす影響住専以上のものがある。この最悪の状態を避けるためにも、公的資金は投入しないとおっしゃったのでございますが、これは政府それから民間挙げての救済スキームづくりが当然必要となってくると思いますが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  17. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専以外のノンバンクにつきましては、ノンバンク処理そのものについて公的な関与をすることはいたさないということを政府与党で申し合わせているわけでございますが、御指摘のように、ノンバンクが仮に破綻をいたしますならば、その影響が非常に大きいこともまた事実でございます。それは原則に戻って、預金取扱金融機関経営問題として処理することになろうかと存じますけれども、十分に心して当たってまいりたいと考えております。
  18. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 我が愛する農林系統にもノンバンク貸し付けがございます。前回は七・七兆という御答弁をいただいておりますが、その後回収が進んで六・六兆になった。大変結構なことでございますが、地価の下落あるいは建設分野の不況、これがノンバンク経営に容赦なく襲いかかっておりまして、今後の経営破綻が今申し上げましたように非常に危惧されておる。この系統ノンバンク貸し付け不良債権は、農林大臣は五百八十億円程度というふうに御答弁なされましたが、今度は不良債権の定義が変わったそうでございますから、これが一体幾らになったか。  それにしても、これらの不良債権は、今申し上げましたように処理を誤れば経済全体を非常に不安定化させるものである。こういう意味で、この債権処理、特に系統ノンバンクに対する債権処理は私は極めて重大な意味を持つ、こう考えておりますが、その不良債権の実態と対応方針について今度は農林大臣にお尋ねをしたいと思います。
  19. 堤英隆

    政府委員堤英隆君) 先生指摘のように、本年三月末におきますノンバンクに対します系統貸付額は、前年に比べまして一・一兆円減少いたしまして六・六兆円でございます。このうち不良債権額が約三千億ということでございます。この点につきましては、昨年の三月末五百八十億でございましたので、増大いたしておりますが、先生指摘のように、全銀協の統一開示基準が本年三月期から改正をされまして、金利減免債権額に、従来の定義に加えまして新たに、利ざやが確保されていないスプレッド貸付金が含まれるということになったことに伴う増加でございます。従来の定義で申し上げますれば、約五百七十億円でございます。  もちろん農協系統といたしましても、これらノンバンクに対します貸付融資につきましては必要な担保措置をとっているところでございますが、今先生指摘のようないろんな厳しい状況の中で、万全を期すよう私どもとしても指導してまいりたいというふうに考えております。  いずれにしましても、ノンバンク等の住専以外の不良債権処理につきましては、それぞれの経営内部において処理されることが基本というふうに考えているところでございます。
  20. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 大変、私、夜も眠れないほど心配なことがございます。  農林中金の発表によりますと、本年三月の農協貯金量は対前年同月比マイナス〇・一。これは戦後初めてマイナスを記録いたしました。さらに、四月には〇・六%マイナスというように貯金流出がずっと続いております。  この間、地元を回りましたら、農協の組合長や農家の皆さん方が非常に心配をしておる。農協系統以上に信用組合あるいは第二地銀の貯金量も統計上ごらんになってわかるように流出しております。中小企業者も大変強い危惧の念を持っております。これらの預貯金は一体どこに行ったんだろう、大手銀行と国営銀行に行ったんだろうということになっておりまして、こういう意味では、農業や中小企業専門の金融機関の預貯金の減少は私は大問題だというふうに考えております。これは住専処理方策や金融関連法案審議がおくれたこと、これが根底にあるんではないかというふうに私は思いますが、大蔵大臣農林大臣の御答弁をいただきたい。
  21. 大原一三

    国務大臣大原一三君) いわゆる中小金融機関系統を含めまして預貯金の伸びが非常に停滞をしておる、ないしはマイナスになっておるということは事実でございます。この点についてはいろいろの理由があると思うのでございますが、やはり全体の農協関係、農業関係の所得の伸びが停滞しておることも事実でございます。  しかし、私は正直言いまして、系統の貯金というのは将来余り実は心配をしていないのでありまして、農家と農協の密着度、それによって貯金が担保されていく傾向は今後も私は維持されるものと、こう思っております。  ありがたいことに、農林中金さんが、ムーディーズかどこかのアメリカの格付で、日本金融機関でナンバーワンになっているということも皮肉な事実でございまして、そういうことも考えながら、今後どうしていったらいいか。つまり、内部の資金コストのかからないいわゆる金融体系の改革を進めてスリム化をしていくことによって、さらに利回りを高くしていくという仕組みを早急に構築しなければならぬと思っております。
  22. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今御指摘がございましたように、農林中金の調べによりますと、前年同期比でマイナスの現象が三月末、四月末にあらわれております。二月末と実額で比べますと、貯金量が五千億以上減額しているという実態がございますが、これらのことは、やはり住専問題処理をめぐっての不良債権処理に伴う信用不安が心理的に影響した点も否定できないと、こう思っておりますが、そのようなことがないよう、私どもといたしましては金融システムの安定、信用の秩序回復のために、今回五年間にわたります預金者の預金全額を保護するということにつきましても明確にいたしているわけでございますから、預貯金者の皆様方にこの点について安心をしていただいて、もし住専問題の処理をめぐっての預貯金のシフトがあるといたしますならば、そのようなことがないよう、住専問題の処理に積極的に取り組んでまいります中で国民の皆さんの御安心をいただきたいものと考えております。
  23. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 大蔵大臣農林水産大臣から、信用組合も第二地銀も農協も心配ないよとおっしゃっていただいたので、帰りましたら早速関係者の皆さん方に心配ないよと私もお伝えをしたいと、こう思っております。  ところで、これは御答弁要りませんが、ノンバンク処理とともに不良債権の黒い塊と言われておるのがゼネコン、この債務保証、それから完成工事未収金、それから不良土地在庫でございます。七月二十二日付の某新聞の報道によりますと、上場会社における債務保証の額は三兆二千億に達している、そのうち相当な部分が不良債権になっているというふうに報じております。  今申し上げましたように、完成工事未収金のうちの不良なもの、あるいは不良土地在庫等を加えた不良資産考えた場合に、やはり早期にこの問題についても指導をして解消を図らなければ深刻な事態を招来するというふうに考えております。所轄官庁においてよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。  さらに、最近マスコミ各紙が相次いでゴルフ会員権の償還問題を取り上げております。バブル期に会員募集を行ったゴルフ場のほとんどが、ほぼ十年を経過した今日、返還期を今迎えております。その未払い預託金は通産省の調べでも九兆五千億に達している。  御承知のように、バブル最盛期には会員権が投機の対象になりまして、金融機関がこぞってゴルフ場あるいは会員に接近した。バブルのころは、ゴルフ場をつくる開発資金は無条件に金融機関は出した。さらに、お客さんには必ずもうかるからと言ってローンを組ませて会員権を買わせた。今これが非常な問題になっております。預託金が払えないというゴルフ会社が続出しておる。会員権の値段もバブルの絶頂期から比べますと大体四分の一くらいに下がっている。ローンを組まされて買わせられた庶民、これは自分の責任で解決しなさいと、こういうことになるんだろうと思いますが、そのツケは金融機関に当然参ります。償還できません。こういう問題もございます。この問題の処理にはやはり細心の注意を私は払っていかなきゃいかぬというふうに思っておるわけでございます。  住専処理は巨大な不良債権処理の序章だと先ほど言いました。我が国経済金融に潜む不良債権は、我が国経済専門家、あるいは欧米の当局、あるいはアメリカの議会調査局の見方でも、優に百兆円を超えるというふうに言われておるわけでございます。  これらの処理に当たりましては、今回の住専処理の教訓にかんがみ、官僚の秘密主義、独善主義を排しまして、政治の責任において政策決定、その根拠を国民に明らかにする、責任の所在を明確化する、そういうことに十分留意をして、国民の皆様方に御理解をいただきながら処理をしていかなきゃいかぬ、いささかも疑念を持たれることのないように努力をしなきゃいかぬというふうに思っているわけでございます。  したがって、住専処理で終わったということじゃなくて、不良債権解消のために政府は今後さらに全力を挙げて対処する必要がある、早期に解決を図る体制を構築しなきゃいかぬというふうに思っておりますが、総理大臣、御所見をお聞かせいただきたい。
  24. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、議員の御指摘、そのとおりの方向であると思います。そして、住専問題というものを私ども日本金融機関の抱える不良資産処理の突破口、喫緊の課題という位置づけをいたしてまいりましたのも、そうした思いからでございました。これで終わりということではなく、まさに住専の問題を突破口として金融機関不良資産問題の処理には全力を挙げて取り組んでまいります。
  25. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 ところで、何回も各委員から発言されておりますけれども、やはり責任の所在の明確化ということがどの段階でも私は必要だというふうに思うわけでございます。住専処理策について国民の間に不満がたまったというのは、関係者責任の追及が徹底して行われなかったということにあるわけでございますが、末野興産も捕まったし桃源社も捕まったということで、責任の追及が非常に遅いペースではございますが進められている。さらに、大蔵省の改革、あるいは残念ながら今国会への提案は見送られましたが金融機関への罰則の強化、こういうものの検討が進められているということに国民は強い関心を今持っておるわけでございます。  そこで、二月十五日の予算委員会でも指摘をいたしましたが、借り手の責任追及でございます。現在の法律でも、明らかな犯罪、例えば粉飾決算、あるいは財産隠匿、あるいは強制執行の不正免脱、あるいは議院証言法違反の疑いのあるもの、あるいは特別背任の疑いがあるもの、そういうものについてはきちっとさらに追及をすべきだと思いますが、悪質な借り手に対して断固たる措置を講ずる、その必要がございますが、法務並びに警察の捜査状況、今後の方針についてお尋ねをしておきたい、こう思います。
  26. 野田健

    政府委員(野田健君) いわゆる住専に係る事犯を含む金融不良債権関連事犯対策は、警察にとっても喫緊の課題であると考えております。このようないわゆる金融事犯あるいは不良債権回収に絡む知能暴力事犯の捜査においては、舞台となった金融機関、融資先の企業等の数年間に及ぶ財務状況や複雑な権利関係を詳細に解明する必要があります。  そこで、関係都道府県警察においては、庁舎外に施設を借り受け、帳簿解析の能力を備えた捜査員等を大量に投入し、場合によっては他府県警察にいる公認会計士等の資格を有する財務捜査官の応援派遣を受けるなどして、長期にわたる捜査を粘り強く行っているところであります。  警視庁においては、捜査第二課、捜査第四課、生活経済課、合わせて現在約二百七十名に増強した専従体制をとっておりますし、大阪府警察においても同じく約二百五十名に増強した体制をとっておるところでございます。  この種事犯といいますのは、知能暴力事犯に係る専門知識を必要とするということでございまして、過去にこれらの課に属し、現在昇任するなどして警察署等に配置になっている者を中心に臨時に招集するなどして、特別の捜査体制を確保しているということでございます。  平成五年以降に検挙した金融不良債権関連事犯は、過去三年間百十五件でありまして、一年平均約三十八件でありますが、平成八年に入りまして既に四十七件検挙したという状況にございます。そして、うち住専に係るものは十件でありまして、平成八年、本年に入って七件、融資過程に係るもの一件、債権回収過程に係るもの六件というような状況にございます。  本日も、先ほど警視庁におきまして、住専の一つであります住宅ローンサービスの融資先の元会社社長が約二十億円の融資名下の詐欺容疑を犯したということで逮捕いたしまして、事犯の全容解明に向け鋭意捜査中でございます。  警察としては、今後とも、住専問題処理の過程で刑罰法令に触れる行為を認めれば、迅速かつ厳正に対処してまいりたいと考えております。
  27. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) いわゆる住専問題をめぐる不良債権問題に関しましては、御指摘のとおり、貸し手・借り手を問わず、関係者らの刑事上の責任が可能な限り明らかにされる必要があると考えております。  検察当局におきましても、当委員会等における議論等も念頭に置きつつ、あらゆる観点から所要の捜査を現在も進めているところでございます。既に一部の事件につきましては、警察当局、国税当局等関係機関と緊密な連携をとりながら強制捜査等を実施いたしまして、また関係者らを一部起訴している段階にございます。  検察当局におきましては、今後とも引き続き実態の解明に向けまして万全の捜査体制をとりまして、鋭意かつ迅速に所要の捜査を継続して続けてまいりたい、このように考えております。
  28. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 前段の御答弁はきのうおとといも聞かされましたので十分わかっておりますけれども、今度は貸し手の責任でございますが、今の答弁にありましたように、きょう責任追及に着手した、強制捜査にも踏み切ったということでございますから、さらに徹底した追及をしていただきたい。  事例を拾い上げても、某住専の京都の最高責任者が不動産業者に対して融資を行った際に、融資を実行するたびに多額の金銭を受領しておったという報道がなされております。さらに、本日手が入ったコリンズに対しまして不当な融資をした、そういうことももう既に報道されておるわけでございます。本日の強制捜査にかかわらず、さらに他の住専においてもそういうことがあるという報道がなされております。徹底して追及をしていただきたい。  住専処理が進みますと、今度は膨大な件数の担保権の移転登記が行われる。二十万件の貸し付けがある、それに十ずつ抵当がついておりますと二百万件ぐらいの担保権の移転登記が必要だというふうに言われておりますけれども、不動産登記事件の見込みは一体どうなっておるか。さらに、これに伴い、現在の人員、予算等では到底充足できないんじゃないかというふうな心配をしておるわけでございますが、どのように考えておられるか、事務当局からで結構でございます。
  29. 濱崎恭生

    政府委員(濱崎恭生君) 御指摘いただきましたように、本件、住専処理法案に基づきます債権処理会社が設立されますと、住専が有する不動産についての所有権、抵当権等の権利についても債権処理会社に移転されることが予定されているところでございまして、その住専各社が有する債権の数、それに伴います担保権の移転の登記の数、ただいま委員が御指摘されましたような数字であるというふうに推測しているところでございます。しかも、これらの移転の登記は、債権処理会社が権利を取得した後一年以内に登記を受けるものに限って登録免許税が課されないことになっておりますので、大都市圏を中心に大量かつ集中的に申請されることが予想されるわけでございます。そのほか、いわゆる債権回収の手続が進むに伴いまして、それに伴う各種の登記が大量に申請されるということも予想されるわけでございます。  これらの事務を適正に処理するということが私どもにとって大きな課題であると考えておりまして、この処理につきましては、それぞれの法務局におきまして適切な対応のための最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございますが、ただ、見込まれる事件数が大量であって、かつ短期間に集中して予想されるということ、それから、こういった登記手続に適切迅速に対応することが今般の債権処理の問題についても大変重要であることにかんがみまして、事務量に見合った予算措置等についても、関係機関とも十分協議して適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  30. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 次に、新たな寄与、これは大蔵大臣に毎日御答弁いただいたが、大詰めに来ておると思うわけでございます。このために、本院においても予算委員会審議過程におきまして決議をしようということで一生懸命努力をしましたが、残念ながら与野党の足並みがそろわずに政府に対する申し入れということになったわけでございます。また、衆議院の方でも住専処理法案の通過に当たりまして新たな寄与を求める旨の共同声明を出されたということでございます。  それから、従来かたくなに、私企業としての限界もあり苦慮しているところでございますが、いい案が見つかるものなら検討を進める可能性が生まれるというふうに全銀協の会長さんは消極的な発言を繰り返しておった。ところが、十二日には、本院の委員質問に対しまして、金融システムヘの新たな寄与につきましては、公共性の極めて高い金融機関としてその寄与の方式について関係者と協議を重ねている最中でありますと、真剣に前向きに対応したいというふうに一転して前向きの御答弁をされたわけでございます。さすがに日本の良識であるというふうに私は感服をいたしておるわけでございますが、結果がよくなけりゃいかぬ、結果が。  それで、これを受けまして大蔵省は十三日の夜に住専処理の追加負担策を関係機関に示されたという報道もございますが、一体軽減を目指す新方式はどんなものを考えておられるか。これはもちろん日銀を含めて物事を考えなきゃいかぬ。日銀法の第一条に金融秩序の保持育成とちゃんと書いてあるんですから、日銀は当然率先垂範してやらなきゃいかぬと、私はこういうふうに思っておりますが、その点についても総理大蔵大臣の御見解をお聞きしたい。
  31. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 金融機関等の追加負担による新たなる寄与につきましては、今日まで両院の皆様方に熱心な御論議、御主張をいただいたところでございますし、政府といたしましても、母体行を中心にして新たな寄与を行うことによって、国民の皆様方の御負担が極力軽減されるよう全力を尽くすべきだということを申し上げてまいりました。その方針に沿いまして金融機関等関係者とも折衝を重ねてまいったところでございます。私どもといたしましては、本院において住専処理法案等が可決、成立させていただきますならば、その段階までに何とか大枠新たなる寄与についても方向を確認したい、こういうことで今努力を続けているところでございます。  十三日の日に事務局から銀行協会の幹部の方々に対していろいろとこれらの点についてお話をいたしておりますが、その中の有力な考え方として、新しい基金の創設によって、この基金の運用によって生ずる利益を国庫に還元するという考え方も一つの考え方として検討せらるべきであるということを申しているのでございます。私どもは最大限国民負担が軽減、圧縮されるよう努力をしたいと思っておりますから、この新基金によります方策に限定をしているわけではございません。なお残されました時間、全力を挙げたいと思っておりますし、また私も必要に応じて直接銀行金融機関の幹部に要請をいたしたいと考えております。  日銀の果たします役割につきましては、日銀法に定める日銀の役割について今、佐藤さんから御紹介がございました。そのとおりでございまして、私は、損失の補てんに日銀の資金を直接使うということにつきましては、これは国会におきまして日銀総裁も述べておられるように、かなり難しい問題だと思っております。しかし、日銀が金融システムの安定のために役割を果たすということについては、その役割が検討されてよいと考えております。その場合、あくまでもこれは国民負担を軽減するという考え方と、日銀が金融システムの安定のためにみずからの持ちます役割を果たすということとは区別して考えられるものであろうと思っております。  いずれにせよ、今、関係金融機関等との協議が大詰めのところでございますので、私どもといたしましては、皆様方の御意見のありました方向に沿う形で決着できますよう最後の努力をいたしたいと考えております。
  32. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 次に、新金融三法についてちょっとお尋ねをしたいのでございますが、信用組合の指導監督、検査を都道府県単独で行うには人員、能力の面で無理があるという議論がございます。一部の府県では事務を返上したいというふうに言っているところもあるそうでございますが、私はそう考えません。地方分権、地方の権限の拡充強化を論じている今に、今与えられている権限を返すなんということはとんでもない話です。都道府県は工夫を凝らして国民から負託された事務を完全に、しかも円滑に遂行する義務がある、そういうふうに私は考えますが、自治大臣いかがでしょうか。
  33. 倉田寛之

    国務大臣(倉田寛之君) 信用組合につきましては、その地域性であるとか協同組織性が強いという性格に照らしまして、その監督権限が都道府県知事に機関委任されているものと承知をいたしております。  ただ、金融の自由化の進展などに伴いまして信用組合の業務が一層複雑化してまいりました。かつての信用組合とは相当変貌してきているという見方もございます状況の中におきまして、各都道府県が信用組合の監督にはかなり苦慮していることにつきまして認識はいたしておるところでございます。  このような中におきまして、最近の信用組合の実態等を踏まえまして、客観的指標による早期是正措置の導入であるとか、国と都道府県知事の共同検査の発動基準の明確化など、国と都道府県知事の連携のもとに、信用組合に対する検査・監督の充実強化が図られることとされたところでもございます。  信用組合の指導監督事務の今後のあり方につきましては、御指摘いただいておるような、数県が共同して事務処理をする仕組みの問題を含めまして、さらに信用組合の業務の変貌の実態やその見通しなども勘案しながら、現在御審議をいただいております地方分権推進委員会における議論等も踏まえまして、総合的に検討すべきものというふうに考えておるところでございます。
  34. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 今回の法案に、信用組合の破綻処理における都道府県の財政負担について明確な法的根拠やルールが何も規定されておりません。信用組合の破綻処理においては、権限を有する都道府県にも何らかの財政負担をしていただくというのが法の理屈だと、私はこう思っております。今後どのようにして都道府県に負担を求めていかれるのか。  それから、信用組合行政は機関委任事務でございますから、それを受託した知事は監督責任をとらなきゃいかぬ。責任をとるためには当然財政負担が生じます。さなきだに少ない地方の財源からそれを出す、非常にこれは無理でございます。ですから、どこかの知事さんみたいに出したり出さないだり、さっぱり結論が出ない、そういう知事さんもおられます。  したがって、責任責任、きちっと財政負担はする。しかし、少ない財源の中から地方に出させるわけでございますから、国の方で特別交付税で面倒を見るとか、あるいは起債を認めてその元利償還をちゃんと認めてやるとか、そういうふうな措置をする必要があるというふうに私は考えておりますが、大蔵大臣のお考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  35. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 信用組合の破綻に際しましての地方公共団体の財政措置でございますが、これは地域経済に与える影響や民生の安定等を勘案の上、公益上の必要性から、財政支出の方法も含めまして自主的な判断により行われている、そういう趣旨のものと理解をいたしております。昨年十二月の金融制度調査会の答申におきましても、こうした都道府県の財政支援は、あくまでみずからの判断に基づくものではあるが、今後とも行われることが期待されるとされているところでございます。  私どもといたしましても、この考え方に沿って対応をしてまいりたいと考えますし、自治体の御理解も得たいと考えております。
  36. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 大変不満でございますけれども、時間がございません。後の方が切られておりますので結論を申し上げたいと思います。  昨年十二月から延々と続いたこの住専処理に対する論議、これは新しい金融秩序を創設するための枠組みづくりであり、幾多の困難を乗り越えて最終段階に来た。野党の御批判も大変有意義であった。野党の厳しい御批判があって初めて日本型の不良債権処理が完成しつつあるというふうに私は理解をいたします。  その際、政府の説明不足あるいは官僚の秘密主義、これが国民の不信を招き、理解をいただけない極めて厳しい道のりになった、道程になったというふうに考えております。  この長く厳しい道のりと厳しい論議の応酬の間に、衆参両院での真摯な論議の中から、巨額な不良債権の迅速な処理こそ、二十一世紀に向けての新しい金融秩序を策定して安定した経済社会を創造するためにも必須の課題であるというふうに私は認識しておりまして、この認識が静かに国民の間に広がっておる、理解もそういうふうに静かに理解されておるというふうに私は考えておるところでございます。  住専処理スキームを発表して以来、ロンドン市場においてジャパン・プレミアムが解消した、あるいは海外投資家の日本株価への姿勢も強まった、株価二万円台回復の原動力にもなった。そういうことを考えますと、今回の苦しみは本当に有意義な苦しみであったというふうに思うわけでございます。不良債権処理は後戻りを許されないと改めて私は言わざるを得ないというふうに考えます。  経済を取り巻く不透明感を払拭し、我が国経済社会の将来に向けた明るい展望を開くためには新しい金融秩序の確立が必要不可欠でございます。また、国民に痛みを分かち合っていただくことも、これも必要でございます。  そういう意味で、次の世代に希望と誇りのある未来を託するためにはやむを得ない措置だったのかなというふうに思いますが、今後は謙虚に、不良債権を解消するということが次代のためになるんだということを謙虚に訴えていく努力を政府はしていかなきゃいかぬというふうに私は思いますが、最後に総理大臣の御所見をお聞かせいただきます。
  37. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 冒頭申し上げましたように、私どもは、この不良債権処理というものを解決しなければ日本金融というものに対しての信頼が本当に取り戻せるものではない、その突破口としてこの住専という問題に取り組んでまいりました。今後、当然のことながら、残る他の金融機関の抱える不良資産の問題の処理にかかっていかなければなりません。  私ども振り返りましてこの国会審議の間を顧みましたときに、当事者間の処理というものに固執した余りに情報の開示がおくれましたこと等、反省すべきことは多かったように思います。これは金融といいますか、不良資産の問題だけではございません。今後国が抱えていく問題を処理していこうとする場合に、そのプロセスを国民に知っていただくことの必要性等をも含め我々が学んだことは多かったと思います。今後十分留意して行動してまいりたい、そのように思います。
  38. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 終わります。(拍手)
  39. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時三分開会
  40. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから金融問題等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、特定住宅金融専門会社の借権債務の処理促進等に関する特別措置法案金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案金融機関更生手続特例等に関する法律案預金保険法の一部を改正する法律案農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び特定住宅金融専門会社が有する債権時効停止等に関する特別措置法案、以上六案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  41. 牛嶋正

    牛嶋正君 平成会の牛嶋正でございます。よろしくお願いいたします。  この委員会でも、これまで多くの同僚議員から、今国会住専国会として大変な時間を金融改革のために費やしてきたのにもかかわらず、まだ十分な国民の理解が得られていないままに今審議が終わろうとしている、こういう御指摘がございました。あわせて、その理由についても幾つかの指摘があったと思っております。  私自身も、我が国金融システムの安定化及び効率化の問題をめぐりまして、昨年七月ごろからかなりの時間を費やして分析し、検討してまいりました。これまでの審議に対しまして、そういう意味では人一倍特別の感慨を持っているように思っております。  そこで、締めくくり総括での質疑ということで、お許しをいただきまして、今国会での住専問題に対する審議の全体を振り返り、なぜ十分な国民の理解が得られなかったかについて私なりに四つの理由を挙げさせていただきまして、総理及び大蔵大臣に御質問をしてまいりたいと思います。その後、時間が許す限り金融四法につきまして質疑をさせていただきたいと思っております。  今議論を進めている金融改革は、不良債権処理で終わるのではないわけでありまして、その先に安定的でかつ効率的な金融システムの構築がなければならないと思っております。そのためには、新しい金融システム構築のための条件とみなされる自己規律、情報閉示及び検査基準の確立の三要素が、今進められている金融債権処理の過程で個々の金融機関ができるだけ兼ね備えていくことが求められているのではないかと思います。  ところが、今政府が進めている追加負担が、体力のあるところから負担をしてもらうといった形で、何の原則もなしに、また基本的な方針にも基づかずに私は進められているのではないかというふうに思うわけであります。そうしますと、受ける側の金融機関はその対応に追われて、自己規律に基づいて不良債権処理を進めようとしてもできなくなってしまうのではないか、ここが一番大きな問題であり、私が懸念するところでございます。  総理、これにつきましてどのようなお考えをお持ちなのか、まずお尋ねしたいと思います。
  42. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本院におきましても大変さまざまな角度から御論議がございましたこの住専問題、本来なら関係当事者間で解決されるべき問題であろうと思います。しかし、現実の問題として、関係する多数の金融機関の利害関係が極めてふくそうしている、そうしたことなどから当事者間の話し合いだけでは解決を図り得ないような状況になっており、この問題を早期に解決することが必要、早期処理を図る必要といった観点から、私どもは臨時異例の措置として財政資金の投入を含む住専処理スキームを決定いたしました。  今回、議員が御指摘のように、新たな寄与というものを国会の御意向も受けながら私どもとして今議論をいたしております。これは当然のことながら母体行の責任、負担のあり方などに対する国会等からの厳しい御議論というものを踏まえまして、現行スキームを基本にしながら、金融システム安定化の観点から関係金融機関などに要請をするといった考え方をとってもおるものでございまして、議員が今御指摘になりましたような、無原則に金融機関に追加負担を求めるといった御批判とは私は異なるものだと思っております。
  43. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、総理はそうおっしゃいましたけれども、こんな状態のもとで不良債権処理を進めていく、そして同時に、個々の金融機関自己責任の原則を貫いていく、そのためには私は、政府は追加負担を求めるに当たりましても明確な原則あるいは明確な方針というものを提示しなければならないのではないかと思っております。私は、初めの住専処理のスキームからこのことが欠如していて、そして非常に議論を混乱させているというふうに思うんですね。私の第一に挙げたい、国民がなかなか理解できない理由の一つはここにあるわけでございます。  そして今、追加負担に対しましても母体責任の大合唱であります。私は、この大合唱を唱えるためには、その前にもう一度母体責任についても十分に議論しておかなければならないと思います。これは第三の理由になっておりまして、後でまたお尋ねしてまいりたいと思っておりますけれども、この原則がなかった、原則がはっきりしなかった、これが最も大きな理由だと思っておりますけれども総理のお考えを再度お尋ねいたします。
  44. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 委員も、昨年の秋から非常に真剣にこの問題を掘り下げてきたというお話を冒頭なさいました。政府としても、恐らく昨年の今ごろからだろうと思いますが、初夏からこの問題に対して問題意識を深刻に持ち、関係者間の話し合いを積極的に進めてまいったと存じております。むしろ、その関係当事者の間における話し合い、そしてその中に行政が入りながら解決をということに時間を費やし過ぎまして、私は、逆に国民に対して実情を申し上げる機会を失したという点において政府は反省すべきことがあるということを何回か繰り返してここで申し上げてまいりました。  そのプロセスの中においても、今御指摘になりましたような問題点は、当然のことながら私は関係者の間の意識の問題として十分に議論をされてきた、そのように承知をいたしております。
  45. 牛嶋正

    牛嶋正君 ちょっと今の問題と関連いたしますので、二番目の理由を引き続いてお尋ねしてまいりたいと思います。  市場経済を律するのは当然自己責任原則でありますけれども、私は、後々考えた場合に、この不良債権処理もできれば自己責任原則に基づいて進めるべきではなかったかというふうに思っているわけであります。  その手順を申しますと、そのためにはまず住専破綻に追い込んだ経営責任を明確化する、これが大前提ではないかと思うんですね。その上で、それに基づいて住専処理スキームをつくっていくということでなければならなかった。  しかし、今の総理のお話にもありましたように、政府が最初にお決めになりました今回の処理スキームというのは、これは時間切れもあったんでしょうけれども、まずスキームをおつくりになって、そしてその後、責任の所在の明確化に努める、私は全く逆の手順を踏まれたと。このことが必要以上に議論を混乱させているわけでありまして、これが国民の理解がなかなか得られない私の挙げる第二の理由でございます。  この責任の所在がなかなか明確にならない理由も、この手順の違いによってもたらされている部分が非常に大きいのではないかと思うんです。すなわち、責任の所在が明確化していけばしていくほど、最初にお決めになりました住専処理スキームの手直しにつながっていくのではないか。なぜなら、それは手順をきちっと踏むならば、まず責任の所在を明確にしてスキームをつくるということですから、それを逆にしているわけですから、責任の所在が明確になればなるほどスキームの手直しということにつながっていくのではないか。  しかし、政府は繰り返し、当時の我が国経済状態から考えてベストのスキームを選択した、こういうふうにおっしゃっているわけで、そこに大きな矛盾があるわけです。この矛盾が、いつももう一歩突き進んでその責任の所在を明らかにしようということに何かブレーキをかけているのではないかというふうに私は思うのでありますけれども、この点について大蔵大臣、お考えがありましたらちょっと。
  46. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 牛嶋さんは経済学の権威でもいらっしゃいますから、私が申し上げることは釈迦に説法かもしれませんけれども、私どももこの住専問題の処理に取り組むためのスキームを関係者との間で協議いたしてまいりますときに一番問題といたしましたことは、首相からもお答え申し上げましたように、今日のような事態を招くに至ったその経過や責任、これらの問題が解明されていなければならなかったことである、そのことは私は反論を申し上げるつもりはございません。  ただ、現実に今度は政治の問題として考えました場合には、そのような順序の問題を論じている余裕があったのかどうか。それほど今日の不良債権の問題、特にその象徴的な住専問題は、緊急の処理を求められる経済の動脈の中に生じた重大な障害となっていたのではないか。これをとにかく取り除くことをやらなければならない。しかしそのことは、この事態を招いた経過に対する責任、そういったようなものを免責するものではない、そう思っております。  したがいまして、この住専問題と取り組むことを橋本内閣として決めます。その前段階として、官房長官のもとに関係閣僚が集まりまして協議をいたしましたときに、情報の開示、それから強力な回収、責任の明確化、この三つのことを我々は住専問題の処理に当たっては決しておろそかにしてはならない、このことを進めることが非常に重要なことであるという申し合わせをいたしまして、このことは閣議においても了承されたところでございます。  そのような立場からこれと取り組んでまいったのでありますが、しかしその責任論を論じていきます中で、両院の御審議の中でも母体責任ということが与野党を問わず強い御指摘がございました。政府といたしましても、この御審議をお願い申し上げておりますスキームを決めてまいります過程においても、母体責任ということについては十分に視野に置きながら検討されてきたものだと思っておりまして、したがって法的処理にゆだねることは非常に難しい、しかも法的処理が、ふくそうする利害関係その他からいっても住専の場合には大変難しいのではないかという判断から、母体責任もきちんといたしました上でこのようなスキームを組んでまいりました。  しかし、国民負担を極力軽減すべきであるという御意見にもまた私どもは十分に理のあるところと考え、そしてこの処理スキームを財政支出を伴って発足させますけれども、将来にわたって財政支出がどのような形で返還されていくかという過程を通じて国民負担ができるだけ軽減されるようということで、今その努力を重ねているわけでございます。  これをやります場合に、母体行、つまり金融機関の中でも銀行が体力を持っているから出せ、こういう発想には立っていないと私は思っております。その責任国会における御論議趣旨を踏まえた上で、私どもが今母体行にさらなる寄与を要請することについて、それにこたえる体力は存在しているのではないか、そこのところは逆の発想で進められてきたのではないかと考えております。  そういう中で、新たなる寄与の問題につきましても、絶えず国会でも御論議いただきながら、また私どもの方が進めます経過の節々に国会にも状況を御報告申し上げながら、この問題は今日まで進められてきたのではないかと私は考えているところでございます。
  47. 牛嶋正

    牛嶋正君 今おっしゃったことはよくわかるんですけれども、私は、情報開示情報開示と、こう言っておりますけれども、政治もやはり情報開示していかなきゃいけないと思うんです。  それで、政治の情報開示というのは何だろうかということを考えてみると、最初に住専処理スキームをおつくりになった、それはかなり責任の所在が明確化されないままにおつくりになったわけで、責任の所在がだんだん明確化してくれば思い切ってそのスキームそのものも手直ししていく、これが私は情報開示ではないかと。それからまた、これからの政治で一番求められるところではないかなというふうに思っているんですけれども、これについて総理はどんなふうにお考えでしょうか。
  48. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 情報の開示につきましても、また責任論という立場からいたしましても、私は、新しい時代に適応する、的確に対応する金融行政の役割というものに顧みて反省するところは非常に多いと考えております。そういう立場から、金融システムの新たなる構築に関して関連法案もお願いを申し上げているわけでございまして、この住専問題の処理、そしてこれを突破口とする不良債権処理をやってまいりますことと、新たな時代における金融システムの構築ということは、二つの側面から同じ目的に向かうものだ、このように考えておるところでございます。そして、そのことが今、国会におきまして皆様方に御論議をいただいている重要な課題だということを私どもも十分に心に置きながら今日まで御論議を聞かせていただき、また私どもの御意見も申してまいったと思っております。
  49. 牛嶋正

    牛嶋正君 これまでの長い審議にもかかわらず十分に国民の理解を得られなかった第三の理由を私は次に挙げたいと思いますが、それは責任という言葉を使う場合にだれもが共通の意味内容で使っているのかなという気がするんですね。  例えば、先ほど指摘されました母体責任あるいは貸し手責任というような言葉がありますけれども、この言葉がみんな同じ意味合い、意味内容で使っておればいいんですけれども、もしここに食い違いがあると、私は議論がかなり錯綜してしまうんではないかというふうな気がいたします。  私が挙げますのはこの点なので、私が考えております住専破綻に関する責任というものはどういうものかということをちょっと最初に申し上げましてコメントをいただき、そして一つの提案をさせていただきたい、こんなふうに思っております。  自己責任の原則を貫いて住専問題を解決するといたしますと、やはり住専みずからが不良債権の回収に努め、そして債権者たる金融機関に対して少しでも元本を返していく、こうでなければならないと思います。言うならば、住専破綻に関する経営責任は一義的には住専みずから負うべきであるというふうに思います。しかし、既にかなりの額の債権が回収不能となっている現状では住専自体にそれだけの体力はないわけでありまして、結果的に債権者たる金融機関の負担とならざるを得ないわけです。  ここで問題になるのは、回収不能が確定している債権、一次損失。あるいは回収不能が確実視されている債権、二次損失ですね。これを債権者たる金融機関にどのように割り当てていくかということだろうと思います。このことは、住専みずからが負わなければならない経営責任が、債権者たる金融機関によって住専にかわって受け継がれたというふうに考えていいのではないかと思うんです。  したがって、各金融機関への不良債権処理に伴う損失の割り当ては、各金融機関住専との関係の密度、別な言い方をしますと住専と各金融機関の距離、こういったものに基づいて行うのが私は最も公平であり、かつまた公正ではないか、こういうふうに考えます。言いかえれば、それはそのまま責任の所在の明確化ということでもあると思います。  問題は、この両者の関係の密度あるいは距離というものをどうはかっていくかということだろうと思うんです。ここに問題があったわけですね。そしてまた、ここに議論が集中されてきたと思います。  その場合、私は二つ尺度があるというふうに思っております。一つの尺度は、出資や役員派遣など直接住専経営に参加する形をとる場合でありまして、それについてはある程度客観的な数値でその両者の関係をとらえることができると、こういうふうに思います。  もう一つは、各金融機関住専の融資にどの程度かかわったかをはかっていく、この二つの尺度があるということですが、前の方の尺度というのは客観的な数値がありますので比較的明確であります。それに基づいて母体責任というふうな言葉が私は生まれてきたんではないかと思うんですね。しかし、より重要なのは、住専経営にどうかかわってきたかということは、住専経営の中心であります融資にどうかかわってきたかでありますので、この点をもっとはっきりしなければ私は責任の所在が明確になったとは思いません。  融資における金融機関住専との関係をあらわす言葉に紹介融資というのがよく使われてまいりました。住専が融資を決定するときの金融機関のかかわり方であります。私は、そのかかわり方を精査しますと、もう少し細かく分類していっていいのではないかというふうに思っております。例えばある金融機関が融資を依頼された、しかしその金融機関の融資基準に合わない、そのために金融機関は審査基準に合う住専にその融資を肩がわりしてもらうというふうなことですね。これを私は肩がわり融資というふうな呼び方をしているわけであります。  また、信用金庫や信用組合などの中小の金融機関がその系列の都市銀行から貸し付けを依頼されたり、あるいは割り当てられたりする場合があると思いますね。これは協力融資というふうに私は呼んでいいと思うのであります。  また、個々の金融機関は、危険分散のために、みずからが出資している住専、それは母体行になるわけですけれども、に貸し出しを集中させるかわりに、他の住専にも分散して融資をするということもあるわけであります。これは母体行が相互に乗り入れますので、相互乗り入れ融資というふうに呼んでいいのではないかと思います。  以上のような住専への貸し付けを行っている金融機関、これは直接出資や役員派遣をしていなぐても、私は経営上のかかわりはかなり深いというふうにみなさなければならないと思います。これまでこういった金融機関一般行というふうに分類されてきたわけですけれども、今申しましたように、融資を通じての経営のかかわりから考えますと、むしろ準母体行あるいは準母体金融機関一呼んでもいいのではないかと思います。  そうだといたしますと、準母体行に対しましても経営責任を求めることができるのではないかというふうに思うわけですが、こういった考え方に対しまして大蔵大臣はどのように考えておられるのか、ちょっとお尋ねいたします。
  50. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 住専問題の債権者の側につきましては、大きく分けますと母体行、一般行、系統金融機関、三つに分類されると思っております。この三つの分類が住専問題に持ちます責任というのはそれぞれに違いがございます。  特に、母体行の場合には設立の段階から出資、経営、人事、それから紹介融資につきましても特に母体行は住専に対して支配的関与があったと思います。そういう点に関しての母体責任というのは、政府が提案いたしております処理スキームにおきましてもまずは債権の全額放棄ということで、そこへ一つ母体責任というものが考えられたと思っております。  しかし、一般行という場合には、他の住専においては母体行であり、そして別の住専においては一般行であるという関係がございます。母体行は百六十八行、そしてこれを含めて金融機関が三百に達するという状況でございますから、今お話がございましたように、一般行といえども住専問題に関して、他の住専に対して母体責任を有するものについてはやはりこの責任は免れない点があると考えております。それから、金融機関経営者としての貸し手責任というものは全体に共通して存在するものだと思っております。  それからまた、同じ母体行でありましても、住専への関与の仕方、支配的なかかわり方というものについてはそれぞれ責任のはかり方というものは違いもあると考えております。  私は、今後住専処理機構は、預金保険機構と一体になりまして回収並びに責任追及を行ってまいります場合には、これらの住専が持ちます債権、借り手に対する債権の一つ一つについて精査をする任務がこの機構の中の部署としてなければならないと思っております。その債権の一つ一つを精査した上、これに対する責任の追及、回収の進め方というものが必要になってくるんだと思っております。  また、母体行そのものが経営を含めて関与いたしてまいりましたその責任ということについては、住専問題の不良債権処理していきます場合に、その責任に応じて必要な寄与をなすべきものと考えているところでございます。
  51. 牛嶋正

    牛嶋正君 今の御返答を聞いておりますと、私の考え方との間にちょっとずれがあるような気がいたします。  私が今まで述べてまいりました住専破綻に対する責任というのは、これは母体行を一からげにしての話じゃないと思うんですね。やはりそれぞれの金融機関と個々の住専との間の距離をきちっとはかっていかなければならない、そしてその距離によって責任、そしてまた負担をしていかなければならないということなんですね。ですから、わざわざ私は準母体行あるいは準母体金融機関というふうな呼び方をしたわけです。  こういうふうに分類いたしましても、責任の明確化をしていくためには、その融資一つ一つについて先ほど申しましたような分類を行って、そしてそれぞれの金融機関が個々の住専とどのような経営上の関係があったのかということを明確にしていかなければならない、こんなふうに思っているわけです。  そうだとしますと、今の追加負担もそのあたりが非常にあいまいなままに進められているというように思いますので、最初に申しましたように、こういう状況のもとで果たして個々の金融機関の自己規律というものがこの不良債権処理のプロセスの中で確立していくだろうかというふうな懸念を持つわけでございます。  この点について、再度ちょっと大蔵大臣にお尋ねいたします。
  52. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 表現の仕方が私はまずいのかもしれませんが、今お話しになりましたように私は先ほど申し上げたように思います。  母体行一からげの責任論ということではないのではないか、母体行といえどもその母体行それぞれの住専に対するかかわり方というものは違うだろう、そういうことは検討されていかなければならない問題だろうということを申し上げました。また、紹介融資などについても、これは必ずしも母体行が行ったということだけではないかもしれない。したがって、この融資債権となっておりますものについて一件一件精査が行われて、その責任追及と回収の手段が尽くされなければならないということを先ほど申し上げたつもりでございます。  その点に関しましては、先生のおっしゃることに私は全く異論はございません。
  53. 牛嶋正

    牛嶋正君 もう一つだけお尋ねしたいんですが、貸し手責任というのをどういうふうにお考えになっているのかです。  私は、貸し手責任というのは、むしろ債権者としての責任よりも、やはり預金者の信用を確保するというところの責任だろうというふうに思うんですけれども大蔵大臣はどういうふうにお考えですか。
  54. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 金融機関経営責任を負います者は、お話のように、絶えず預金者、貯金者に対して責任を果たしているかどうかという基本の立場が揺らいではならない、私もそのように考えます。  それで、そのような立場に照らして今回の住専問題を見ます場合に、住専に対して貸し手として資金を融資いたします場合に経営責任が十分に果たされたか、そういう点については、いわゆる貸し手責任と言われております金融機関の融資に当たっての経営責任は十分であったか、そのことは問われなければならないことだと思っております。
  55. 牛嶋正

    牛嶋正君 それでは、四番目の理由に移らせていただきたいと思います。  住専処理スキームがまとめられていくとき、そのときの責任者の一人とみなされております加藤自民党幹事長に対する政治献金に絡む疑惑が全く晴れないままに金融改革の審議が今日まで進められてきたこと、これがなかなか国民に理解されないもう一つ大きな理由じゃないかというふうに思うわけであります。  これは大変不幸なことでありますが、加藤幹事長に対する疑念はそのまま住専処理スキームに投影されて、国民は一種の色眼鏡で住専処理スキームを見てきたのではないかというふうに思うわけであります。  そうだとすれば、責任のある地位にある政治家というのは、自分にかけられた疑惑は一刻も早く晴らして、国民が色眼鏡をかけずに国会での審議を見守ることができる環境をつくっていくことに努めなければならないと、こういうふうに思います。私は、これこそ政治家の情報開示であり、そしてまた政治家の最も大切な態度ではないかというふうに思うわけであります。  しかるに、加藤幹事長は、参考人として衆議院金融特に御出席になりましたけれども、必ずしもまだその責任は十分果たされていないのではないかというふうに思います。  それは二つございまして、一つは、六月四日、衆議院金融特別委員会に参考人として出席されましたが、私は、金融改革の審議が終わりに差しかかった出席でしたので、非常に時期が遅過ぎたといいますか、時期を失したというふうな感を持っております。  それからもう一つは、この四日の参考人招致におきまして、むしろ政治献金一千万円の疑惑というのは一層深まったのではないかというふうに私は思うわけであります。それはなぜかといいますと、参考人として出席されたわけですが、何となくその場を取り繕うというふうな姿勢が私には見えたからでございます。仮に政治家としての責任を誠実に果たしていくということになりますと、堂々と証人喚問に応じて疑念を晴らすべきであったというふうに私は思うわけであります。  私は、加藤幹事長がもっと早い時期に政治家としての責任を果たされたならば、金融改革の審議はもっと円滑に進み、そしてまた国民の理解ももっと得られたのではないかと、こういうふうに思います。もしそうだとすれば、私は加藤幹事長の責任は二重の意味で重いものではないかというふうに思うわけですけれども、これについての総理の率直な御見解を賜りたいと思います。
  56. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、六月四日という出席の日取り、日程が遅かったということから始めて幾つかの問題点を提起されました。しかし私は、御指摘のこと、これは司法の場に告発がなされておることでもありますし、事実関係のはっきりしない問題についてとかく言及することは適当ではない、そのように思っております。
  57. 牛嶋正

    牛嶋正君 私は、国民の理解が得られない理由を四つ挙げて総理大蔵大臣に御質問をしてまいりましたけれども、このやりとりを聞いていて、まだまだやっぱり国民の皆さんの御理解は難しいんじゃないかというふうな気がいたしました。  そこで、残りました時間を金融四法の方の御質問に充てて、これから幾つか御質問させていただきたいと思います。  この法案が通りますと、住専処理機構が一応不良債権処理する筋道ができるわけでございます。そしてまた、それを進めていく体制あるいは機構も用意されることになります。  しかし、私もそうですけれども、だれもが、この処理機構というのはそれに課せられた役割、機能というのが十分果たされるものだろうか、すなわち、機能を十分発揮して不良債権の回収というものが進んでいくのだろうかということについて、やっぱりみんなもう一つ納得いかないところがあるような気がいたします。  特に二次損失のことを考えますと、債権回収へ全力を傾注するというふうに政府はおっしゃっていますけれども、まだまだ国民の疑問はそのあたり解けていないのではないかというふうに思うんです。それだけに、債権の回収実績を上げてまいりましたアメリカのRTCがよく引き合いに出されるのではないかというふうに思います。  いただいております資料によりますと、RTCの債権回収努力はかなり徹底しておりまして、処分対象資産簿価、これが四千六百五十億ドルでありますが、そのうち回収額は三千九百十一億ドルに達しておりまして、回収率は実に八七・二%に達しております。  これに対しまして、住専処理機構の場合、今仮に処分対象資産、これが債権額が全体で十二兆でありますから、そのうち一次損失の六兆四千億を差し引いた残額五兆六千億、これを処分対象資産簿価というふうにみなして、今仮に二次損失がそのまま実現しなかった、回収できなかったといたしますと、回収率は七八・六%に.なるわけです。ですから、それでもRTCの回収率をかなり下回っていることになります。こんな計算もできるかと思います。今仮に、住専処理機構が非常に回収に努力をいたしまして、RTC並みに八七・二%まで回収率を引き上げたといたしますと、二次損失というのは〇・七二兆円、すなわち七千二百億円ということになるわけで、かなり圧縮できるわけです。  こういうふうに考えますと、RTCの今までやってきたことをできるだけ学びながら回収に努めていかなければならないというふうに思うわけですけれども、RTCがこのような水準まで回収率を引き上げ得た理由はいろいろあると思いますが、それなりに見てまいりますと、いろんなやっぱり工夫をしております。そして回収に努めていることは確かであります。  よく引き合いに出される一つの例といたしましては、抵当債権及び担保不動産をパッケージにした上で証券化するというふうなスキームを工夫しております。我が国ではこういった市場が整備されておりませんので、このままこういったスキームを使うわけにはまいりませんけれども、私は、日本の風土あるいは商習慣に合った回収方法を工夫して、そして日本的なスキームをできるだけつくっていかなければならないんではないかというふうに思いますけれども、この点について、大蔵大臣、何かお考えがございましたら教えていただきたいと思います。
  58. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 牛嶋先生指摘のように、アメリカのRTCにおきましては八七・二%という非常に高い回収率を上げているわけですが、私ども住専処理機構の場合にこれをできるだけ一〇〇%に近づけるような努力をしたいと、このように考えているわけでございます。  しからば、どのような工夫をするのかという点でございますけれども、ただいま先生の挙げられました証券化という問題、これも私ども、実は住専処理の問題以前に、金融機関不良債権処理のためにもつとこの証券化という手法が活用できないであろうかということを随分検討いたしましたし、例えば建設省のような不動産を管轄しておられるような役所との情報の交換をしたこともございます。  しかしながら、日本では今すぐにこの証券化によって流動化するということは非常に難しい面もございまして、今後の課題として一層力を入れていきたいとさらに関係者と協議を進めているところでございますけれども、直ちにあしたからすぐに使えるということにはなかなかならないように感じております。  私ども、そのいろいろな手法を講じます中で、例えば住専処理機構の組織につきましては、株式会社で本当に大丈夫なのかというような御指摘も受けるわけですが、私どもは逆に、この債権回収を進めるための一つの工夫として、実際に仕事をいたします住専処理機構はむしろ弾力的に仕事を進め得る株式会社として、例えば土地の再開発を図るとかあるいは虫食いの状況になっておる担保不動産を効率的に利用できるとか、そのようなことがこの組織によって弾力的に行われるんではないかというふうに考えているわけでございます。  他方、RTCのような公的な色彩につきましては、住専処理機構の上に預金保険機構という公的機関を強化いたしまして、そのような側面の努力をこの預金保険機構によって重ねていく。この両者が相まって何とか回収率を高めるような工夫をしてまいりたいと、このように考えているところでございます。
  59. 牛嶋正

    牛嶋正君 それじゃ、最初から西村局長にちょっとお尋ねをいたしますけれども、いろいろ私も考えてみたんですけれども、こういう債権回収スキームはどうかなと思ってちょっとお尋ねいたしますが、交付公債の発行ですね。  ですから、国が債務者からその抵当不動産を購入いたしまして交付公債を発行する、受け取った債務者はその交付公債を公社債市場で換金して、そして返済をする。一方、抵当不動産を手にいたしました国は、これを土地信託会社に信託をするということで交付公債の利子を生んでいくというふうなことにいたしますと、土地の流動化もそれから債権の回収もかなりうまくいくのかななんというふうに思っておりますけれども、これについてコメントがございましたらちょっといただきたいと思います。
  60. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専問題を検討している過程で、ただいま牛嶋先生の御提案のような、それに類似したような構想を提案される方もおられたように記憶をいたしております。  私どもは、その場合にも、その交付公債というものをだれが引き受けるのか、そのようなものを日本の市場において引き受けてくださる方がどれくらいおられるだろうかということは、結局は債券というものに対して国民の人たちがどれくらいなれているのかということにかかっているようか気がいたします。  もう一つは、国民が現段階で地価の将来の動向というものについて強気でいるのか弱気でいるのかという問題が根底にはあるように思います。残念ながら、今のところ多くの国民地価の動向というものについて非常に、私どもから申し上げますならば過度に弱気になっておられるような中で、そのような信託方式あるいは交付公債方式というものを円滑に運営することが可能であるのかどうかという点について、まだ十分な自信が持てないということでございました。
  61. 牛嶋正

    牛嶋正君 RTCの債権回収の努力を見ていますと、今おっしゃいましたように日本ではどうかななんて、アメリカでもやっぱりそういうのはあったと思うんですよね、こういう証券化した場合に、果たしてそれがうまく売買されるだろうかという。しかし、RTCのいいところは、見ておりますと、そういう市場を積極的につくっていったんですよ。ですから、今のような西村局長のお答えですと、やっぱり国民住専処理機構の機能の発揮に対しましての不安というのは除けないんじゃないかなというふうに私は思うわけです。
  62. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘のように、アメリカにおきましても必ずしもRTCの手法というものが当初から受け入れられていったわけではないというふうに伺っております。  それは、証券化の問題もそうでございますし、不動産の売却につきましても随分と思い切った、私にお話しされた方は、随分乱暴な手法を使ったがというふうにおっしゃった方もおられるんですが、当初余りに安い価格で処分をしたので、むしろ国民から批判があった、しかしそのことがかえってスムーズな処分に結局はつながっていったんだというような経験を述べてくださる方もおられました。私どもも、住専処理機構の運営につきまして、これは必ずしも今後そういうことができないということではなくて、今後そういう手法も交えて考えていくことは十分可能かと存じますけれども、必ずしも慎重だけではなくて、いろいろと新しい試みも織りまぜて債権の回収というものに当たっていかなければならないと考えております。
  63. 牛嶋正

    牛嶋正君 それでは次に、金融システムというよく使われる言葉ですが、これをもう一度取り上げまして、大蔵省の権限の集中と分散に関しましてちょっとお尋ねをしてまいりたいと思います。  この前、予算委員会でもお尋ねいたしましたが、総理はよく金融システム経済の動脈であるというふうにお使いになるわけです。そのときの金融システムというのは、私は最も広い概念でお使いになっていると、こういうふうに思います。我が国経済における貨幣及び資金の流れを方向づける枠組み全体を示しているのではないかと思いますね。しかしまた、金融システムという場合には金融市場に限定いたしまして、そこでの資金の需給を調整する機能に着目いたしまして、その機能を持っている直接金融制度、それから間接金融制度の枠組み全体を金融システムと呼ぶ場合もあるようでございます。これに対しまして、最も狭い使い方では、金融市場における間接金融に限定して、金融仲介者としての銀行制度を金融システムと呼ぶ呼び方があるように思います。  しかし、金融三法の議論を展開するに当たりまして、二十一世紀に向けた金融システムの再構築という言葉を使っておられるわけでありますが、これは先ほど二番目に申しました金融市場を構成する直接・間接金融制度の枠組み全体を金融システムと呼んでおられるというふうに私はとらえているんですけれども、そうでしょうか。大蔵大臣にお尋ねいたします。
  64. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 私どもは、先生の今おっしゃいました広い意味におきまして、間接金融、直接金融両方を含んだ意味において二十一世紀に向けた金融システムという気持ちでございます。しかしながら、この金融三法そのものにおきましては、その中の間接金融の部分に重点を置いた方策を御提言申し上げているわけでございます。
  65. 牛嶋正

    牛嶋正君 そうでありますけれども、先ほど私が申しましたように、今の金融三法はいわば当面の課題であります不良債権処理のための法律であるわけですね。しかし、それで終わるわけではありませんで、絶えず二十一世紀の我が国金融システムのあり方というものをやっぱり頭の中に描いておかなければ、私はこの金融三法を議論する場合もちょっと部分的な議論に終わってしまうのではないかと、こんなふうに思っております。  直接・間接金融制度、いわば金融市場全体の枠組みなんでしょうけれども、そう今お答えになりました。だとしますと、いろんな切り口があるわけですね。民間金融と公的金融という切り方もあるわけです。それから個人金融と企業金融という切り方もあります。それから国際金融と地域金融というふうな切り方もあるわけです。  そういうふうに考えてみますと、今、西村局長がおっしゃいましたように、この金融三法というのは非常に限定した議論になっているわけでありますけれども、しかし、私が申しましたように、二十一世紀をにらんで今の金融三法を議論していくということになりますと、やっぱりある程度二十一世紀の我が国金融システムの姿みたいなものを描いておかなければならないのではないか。みんなそれがないままに御議論されているのかなというふうなことをよく感じることがあるわけです。  ですから、先ほど申しましたように、ただ不良債権処理だけで終わるんじゃないと。そこで無理した場合に、二十一世紀に構築していかなければならない金融システムの条件というものが整わないんじゃないかということでいろいろと質問をしてきたわけでございます。  私は、今二十一世紀の姿というのを私なりにちょっと描いているわけでございます。  一つは、国際金融市場での邦銀の信頼の回復、これは一つ挙げなければならないだろう。  それから二番目は、直接金融と間接金融の調和。今まで余りにも間接金融に偏ってきた。これがいろいろな不良債権の問題をもたらしてきているわけで、ですから、もう一度やっぱり直接金融と間接金融の調和をどう図っていくかということを考えなければならない。  それから、地域経済を支える地域金融の確立てあります。中でも、信金あるいは信組、これは我が国の地域経済におきましてかなり重要な役割を果たしてまいりました。ところが、この三法を見ますと、そういった今まで地域金融を担ってきた中小の金融機関がどうも整理統合されていくような方向が見られるわけであります。そうしますと、この地域経済を支える地域金融をどういうふうに確立していくかという問題も一つ挙がってくると思います。  それから、民間金融と公的金融の適正な役割分担、そして最後は、生活水準の着実な向上を促す個人金融の拡充、こういったものを幾つか挙げることができるのではないかと思います。  実は私は、皆さんにこういう二十一世紀の我が国金融システムの姿をお示しするつもりはございません。今挙げました五つの目標に大蔵省の各局がどんなふうに絡んでいるかということであります。  大蔵省には七局あると思いますけれども、そのうちの一番最初に挙げました国際金融市場での邦銀の信頼の回復、これはまさに国際金融局の担当だと思います。二番目の直接金融と間接金融の調和、これは銀行局と証券局であります。そして三番目の地域経済を支える地域金融の確立、これは銀行局です。それから四番目の民間金融と公的金融の適正な役割分担、これは理財局でございます。そして最後の生活水準の着実な向上を促す個人金融の拡充、これは銀行局と理財局だろうと思います。  このように私は五つの目標を掲げましたけれども、それに全部大蔵省の各局が関連をしているわけであります。こういうふうに見てまいりますと、いかに大蔵省に権限が集中しているかということがわかるかと思います。  こういった二十一世紀の金融システムを確立するに当たりまして、こういうふうに大蔵省一省の中で各局がそれぞれの目標に関連して、そして権限が集中している、これは一つ大きな問題ではないかなというふうに思うわけですけれども、これについて大蔵大臣のお考えをちょっとお聞きしたいと思います。
  66. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今御指摘になりました大蔵行政の機構、権限というものが、グローバル化が進みます中でのこれからの経済金融に対する行政としてきちっと対応できるのかどうかというような問題が、今日の不良債権処理とともに、新たな時代にふさわしい金融システムの確立が求められている、そういう中でいろいろと検討、模索が続いているわけでございます。  そういう今御指摘のような点に関して、どのような改革が必要かということに関する論議与党においても行われておりますし、国会でも御論議をいただいております。また大蔵省自身としても、今日の非常に激しい動きの中で何が問題であったのか、それからどう改革しなければならないのかということについて問われていることにみずから答えを出さなければならない時代にもなってきたと、このように考えておりまして、今お話がございましたようなことは、これからのいわゆる大蔵改革というようなことで取り上げられている問題の焦点であり、改革を検討いたします場合の重要な視点でもあろうと思っております。
  67. 牛嶋正

    牛嶋正君 もう一つ大蔵省の改革につきまして御留意いただいておきたい点がございますのでお願い申し上げたいと思いますが、これはこの前予算委員会で、金融システムと財政システムの両輪であって、我が国経済の再建のためにはこの二つのシステムをちゃんとした形にしていかなければならないというふうに申し上げました。ところが、この二つとも、先ほど挙げました大蔵省の四つの局以外の残りの三つの局が、これが財政システムの方を担っているわけですね。  バブルが発生したときに、私この前もちょっと申し上げましたけれども、バブルが発生した一つの要因といたしまして、あの当時、政府は財政再建を第一の課題に置いておられたと思うのであります。平成二年には何としても赤字国債をゼロにする、そういうことで税収の増大を図ってこられたと思います。そのときにバブルが発生いたしまして、随分と税収が伸びたわけであります。そして、平成二年に赤字国債が解消するわけですけれども、そのために、私は総量規制の時期というものが多少ともおくれる要因がそんなところにあったんではないかなというふうに思うわけであります。  この前の私の質問のときには、今度は金融システムを一生懸命再建していく、再構築していくというところに余りにも政策の重点を置き過ぎると、どんどん財政システムの方が悪化の道をたどるのではないかというふうなことで申し上げたわけです。この二つを大蔵省がやっぱり両方とも担っておられるわけであります。  その場合に、これまで繰り返してきた過ちが、今後二十一世紀に向けて新しい金融システムを再構築していくに当たってもまた繰り返されるのではないかなというふうな懸念を持っているわけでございますけれども、その点につきまして、今度は総理大臣にちょっとお尋ねを申し上げたいと思います。
  68. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、非常に専門的に分析をされた議員の御議論を拝聴しながら、私は、もう一つ違った角度から考えた場合にどうなるだろうと自問自答いたしておりました。  それは先ほどの、金融市場を広くとらえる、狭くとらえる、あるいは中間的なとらえ方をする、その御議論にも関連するところでありますけれども、市場というものを定義いたします場合に、私はもう一つの定義の仕方があるように思います。  それは、一つは個人の資産運用の場であり、同時に産業が必要とする資金の供給を受ける場としての市場であります。そして、そうした視点から見ましたとき、従来から非常に気になっておりましたのは、我が国における市場の中でリスクマネーの供給という部分についてのシステムが非常に弱かったということでありました。これは近年、特則市場の整備等、特に証券市場においてさまざまな努力がなされております。  しかし、依然として我が国における創業期の支援、あるいは起業時の支援と言ってもいいのかもしれません、の資金調達に非常に困難を感じるケースが多いと言われている。そして、ある意味では今回の事態の裏側の大きな原因でありますけれども担保というものを非常に不動産に限定した形で担保価値を設定している。業を起こす時点でありますから資産がそんなにあるわけは当然のことですがありません。リスクマネーの供給というものが我が国の業を起こす時点における非常に大きなネックになっている。そうした問題意識が一方で成立するように御論議を拝聴しながら感じておりました。  そして、そのリスクマネーの供給に対して民間資金がなかなかシステマチックに動かない部分を、我が国の場合、公的金融がある程度肩がわってきた部分はないだろうか。そう考えてみますと、公的金融がこれをカバーし切ってきたと。し切ったとは必ずしも言えません。しかし、財投原資というものが、ある意味では業を起こす部分におけるリスクマネーの役割を果たしてきたという機能もございます。  そうなりますと、果たして財政と金融と真っ向から分けてしまえるのかどうか。これは我が国の財政・経済政策の根本にも入る部分でありますが、今我々は、景気の回復の基調というものが民需に移行されていくこと、素直な形で流れていくことを心から願っておりますけれども、今まで我が国の景気を立て直してまいります場合、乗数効果が云々されながらも公共投資というもの、しかもハードの公共投資というものに相当部分を依存してまいったことは事実でありました。既にある程度その効果は落ちつつありますが、なおかつこれを必要といたしているわけであります。  一方で、税収の減による事業量の縮小というものを避けるために我々は国債政策をとり、その部分は今累積赤字の増大ということになり、国債の償還に今後非常に苦しまなければならない新しい問題を惹起いたしました。残ってまいりますものは、財投をいかに活用するかということであろうと存じます。  そして、そうした視点を持ってこの問題を見ますとき、必ずしも財政と金融という二つの車、それが一つの場所にあっていいかという、単純明快に分けることはなかなか難しい問題をはらむのではなかろうか。むしろ、今後の経済運営の中で、財投原資というものをいかに活用するかという視点を持って両にらみで考えるべき課題ではなかろうか、率直にそのような印象を持ちました。
  69. 牛嶋正

    牛嶋正君 今の御議論でございますけれども、ちょっと前提の立て方が私と総理との間で違うような気がするんですね。  と申しますのは、バブル以前は、マクロ的に見ますと、我が国の貯蓄に対してまだまだ企業の投資意欲というのは旺盛でして、どちらかといいますと貯蓄と投資はちょうどつり合っていたと、そしてそれ以前の高度成長のときにはむしろ投資の方が貯蓄を上回っていたと、そういう状況での財政投融資の役割は、私はあったと思うんです。だけれども、今はマクロ的に見ると、全体の資金の需給は非常に緩んでおりまして、どちらかというと借り手市場であるわけです。もちろん、先ほど御指摘のありました担保の問題等々ありまして、必ずしもそうは言えない場合もありますけれども、全体としてはマクロ的に見れば。  ですから、今銀行は貸し手、だれに貸すのかというふうなことで、系統もこういう問題を引き起こしてきたわけですね。ですから、これからもやっぱり貯蓄の方が投資をかなりオーバーする、上回るというふうなベースは続くんだと思いますね。ですから、そのところでの財政投融資の役割というものを考えて、先ほど申しました民間金融と公的金融の調和といいますか役割分担というのを考えていかなきゃいけないのではないかと、こんなふうに思います。御返答は結構でございますが、ございましたら、何か。
  70. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私はとても教授にそこまで御説明を申し上げる力はありません。私は今の御指摘を否定するものではありません。  しかし同時に、国民の資産運用の場は当然のことながら必要なわけでありまして、その場合に、その資産運用のために国民が求める市場は何かという問題があろうと存じます。  ですから、私は逆に、議員の一つ前の御論議に戻らせていただきたいと思うのでありますが、私自身が実は債権の証券化を一時期考えて、消化ができるのかなというところでつかえてしまった経験がございまして、先ほど議員が御指摘になり、それに対して銀行局長が答え、それに対して議員がなお交付国債というアイデアを示された、そのやりとりを大変興味深く拝聴いたしておりました。  しかし、今たまたま国民の資産運用の場というものが低金利政策の中で他分野に相当程度回っております。しかし、これは日銀さんの本当に専管でありますし、いっどう変わるのか私どもにもわからないことでありますけれども経済全体の中で日銀が金融政策を変更いたしました場合に、その資金がどこに回るか、そうしたことを考えますと、やはり財投を抜いて、言いかえれば、財投の部分に吸収される、それは郵貯の形であったりするわけでありますけれども、その役割を財政・経済運営全体の中でどの程度背負わせるかということを考えてみますと、過大評価をいたすのではありませんが、その役割というものはおのずからある程度判断の中に入れておくべきものではなかろうか、そのように思います。
  71. 牛嶋正

    牛嶋正君 最後の質問になりますけれども、法律の中で早期是正措置制度が提案されております。この早期是正措置制度のかなめは私は検査基準にあるというふうに思っているわけですね。先ほども、新しい安定的で効率的な金融システムを構築していくためには自己規律、それから情報開示、そして検査基準の確立という三つの要素を挙げましたけれども、私は、この三つの要素は並列的ではなくて、検査基準こそ自己規律、それから情報開示の二要素の前提になるものというふうに実は位置づけているわけでございます。  というのは、個々の金融機関は検査基準に基づいて自己査定をすると思いますね。そして、経営に対する自助努力を重ねて、自己規律をそこで確立していくわけであります。また、個々の金融機関は、その検査基準と関連するデータを開示することによって預金者に対して経営の状態について情報を提示していくということになろうかと思います。また当局は、この検査基準に基づいて個々の金融機関経営状態をチェックし、検査ルールに基づいてより健全な方向へと誘導していく。  こういうふうに考えますと、この検査基準というのは、私は、今回出されました金融三法の中では最も重要なポイントではないかというふうに思っております。もっと大げさな言い方をしますと、二十一世紀に向けた新しい金融システムの再構築を目指すに当たりまして、その成否のかぎを握っているのがこの検査基準ではないかと思います。  この検査基準をつくっていくに当たりまして、私は二つの要件が求められるのかなというふうに思います。一つは、その検査基準は自由裁量の余地がほとんど入らない客観性を持つこと、これがまず第一。それから二番目は、検査基準は個々の金融機関経営状態をできるだけ明示するものでなければならない。この二つの要件を満たすということは、これは大変なことなんですね。  資料の中でも言っておられますように、今まだ検査基準は決まっておりませんけれども、自己資本比率なんというものが挙がっております。アメリカもこれを使っているわけですが、やっぱり客観性を維持しようとすれば経営指標を一本でいかなきゃいかぬのですね。  ところが、そうなりますと、その経営のいろいろな状況を総合的には把握できない、こういう問題があります。今度は、逆に経営状態を総合的にチェックしていくためには、これまでもそういうふうなデータをお使いになっていたと思うんですが、資産内容とか自己資本、損益の状態、流動性、それから経営管理のあり方等々を勘案されていたと思うんですけれども、これは経営指標が複数になりますから客観性を失うわけです。どういうふうにウエートづけするかというところで恣意性が入るわけですね、自由裁量が入ってくるわけであります。  こういうふうに考えると、この検査基準の決め方というのは非常に重要なのでありますが、ところが残念ながらこれは後回しにしているわけですね。省令で決めるというふうにされているわけで、これが私は非常に問題ではないかというふうに思うわけであります。  この検査基準について、まず大蔵大臣、どんなふうにお考えになっているのか。
  72. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今お話がございましたように、この検査基準はできるだけ裁量の入り込む余地が少なくなるように客観的な基準が必要だろうと、このように考えております。この基準をどのように決めていくかということにつきましては、省令をもって決めてまいることにいたしておりますが、できるだけ専門的な方々の御意見も伺う努力が必要になってくるんだと考えておりまして、この検査基準がどのように決定できるかということは、今後の金融システムのあり方にやっぱり基本的にかかわってくる重要な問題であろうと考えております。
  73. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 牛嶋先生指摘のように、実は金融制度調査会におきましても、その客観性、透明性というところを重視するか、あるいは経営状況をより的確に把握するということを重視するかという点について大変に多くの御議論がございました。  結局、結論的に自己資本比率というものをとりましたのは、どちらかというと透明性ということ、あるいは行政の裁量を狭めるということを重視したわけでございます。しかしながら、この自己資本比率ができるだけ経営状況をより的確に示すような一つの工夫として、金融機関そのものが、外部監査も含めました自己査定によりまして、その自己資本比率を算定する根拠をみずから認識していく、そのようなプロセスも入れることによってこの二つの要請を両立させるよう努力してまいりたいと考えております。
  74. 牛嶋正

    牛嶋正君 ちょっと一言だけ申し上げたいんですが、私はどういうふうな検査基準をつくるかということを言っているんじゃないので、こんな大事なポイントだからやっぱり議会での議論の対象にしていただきたいということであります。私なんかそれについては幾らでも言いたいことがあるわけでありますから、それを審議会の話ばかり聞いて我々の、本当に国民を代表した意見を聞けないというのは、先ほど大蔵省の体質改善を申しましたけれども、そんなところから直していただきたいということをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)    〔委員長退席、理事前田勲男君着席〕
  75. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 大変御苦労さまです。  私は、ずっとこれまで議論に参加をしてきまして、とどのつまりは、結局、住専の問題にしても、この異常なバブルがどうして発生をしたのか、そしてバブルがこんなに大きくなる前にそれに早く手をつけ得なかったのか、この辺が私はやっぱり今真剣に反省をしなきゃいけないだろう。バブルは、今度は手をかえ品をかえてまた恐らく資本主義諸国の中では発生をするだろうと言われておりますが、今後、この教訓をどのように生かすかということが私は大事な問題だろうと思います。  我が国が太平洋戦争無条件降伏、ポツダム宣言を受けるときに、戦勝国は、どうしてああいう日本の軍部独裁の国ができたのかと恐らく不思議だったと思うんですね。そこで彼らが考えたのは、やっぱり日本には本当の民主主義がなかったんじゃないか、そういうことで教育の国家統制を外していく。あるいは、職場に民主主義がなかったんだろう、それで労働組合を職場につくった方がいい。あるいは、財閥が日本経済や政治を動かしておる、この財閥を解体する。あるいは、農村地域におきますと大地主が農村を支配しておる。これらを変えて、今日、それを日本が平和憲法で生かしながら、日本の今の平和な状況というのがつくられたと思うんですね。ですから、今度はこのバブルの教訓をどのように生かしていくかということをもっと真剣に考えなきゃいけないと思います。  司馬遼太郎さんが亡くなる前に、このような状態を憂えまして、雑誌で対談をしております。これは日本人に対する遺言とも言われております。  第一に、日本人の土地に対するゆがんだ考え方を指摘しており、第二番目に、今回のバブルについて、バブルを見逃したのは紛れもなく我々全体だと。一度の反省もなく今日の事態を迎えた云々、そして、私は、太平洋戦争を起こし、負けて降伏したあの事態よりももっと深刻なのではないか、日本は再び敗戦を迎えたのではないか、このように指摘をしております。私もそのように思いますし、国会に籍を置く我々にもこれはやはり責任がある、このように考えておるところでございます。  具体的に、じゃ我々国会や政治の責任というのはどこにあるのか、どうするのか、これはなかなか答えが出ませんが、我々も歳費の一部でもカットしてやはりこの不明をわびるようなことも考えなきゃいけないんじゃないか、今つくづくそのように思っております。  問題は、しかしそういう中ではありながら、金融のプロというか、我々が最も信頼をしておる大蔵省金融当局あるいは日本銀行、一体ここらのプロの集団がどうしてああいうバブルをいつまでも放置し、バブルの状態を見逃してきたのか。そしてさらには、プラザ合意以降、金融の自由化以降、いろいろ競争条件はあったとしても、金融会社が競って不動産にどんどん投資をしていく、それに対する大蔵省金融当局の検査あるいは日銀の考査、こういうものがどうして早目早目に反映をされチェックをされ得なかったのか。また、二・五%という超低利の公定歩合が二年と三カ月ずっと放置をされて、これもバブルの一因になった、このように言われております。  私最近いろいろ本を読んでみましたら、経企庁も当時の景気判断に対してあっちじゃないこっちじゃないと相当悩んでおったようであります。適切な経済指導ができ得なかった経企庁にも反省をしてもらわなきゃいけないと思いますが、当面、金融のプロであります日銀あるいは大蔵省金融当局、ここらの反省と改革に対する総理の御見解を承りたいと思います。
  76. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 政治あるいは行政、同じことだと思いますけれども、私はその折その折にはやはり最善を尽くす、そのつもりで努力をしておりますし、また最善の施策を選択していると判断して物事は進めていると思います。しかし、後で振り返ってみれば、あのときこうしておけばよかった、あるいは半年早くこの政策に着手しておけばとか、そうしたものは振り返ってみると出てくるものであろうと思います。恐らくそうしたことから、歴史にもしは禁物だというような言葉も一部で言われたのかもしれません。  私どもちょうど敗戦のときが小学校の二年生でありまして、敗戦直後のインフレをまさに子供の時代に経験をしてまいりました。そして、今振り返ってみまして、このバブルの時期というものの経済は、ある意味では我が国が経験をしたことのない事態でありましただけに、バブルの発生から問題はあったと言わなければなりませんし、その時代から続く右肩上がりの成長というものはどこかでやはり地価であれ株価であれ破綻を来すものだった、それは今になれば我々は本当にそう思います。  当時の政策担当者としてそうしたことを十分理解していなかった点は、これは幾らおしかりを受けても仕方のないことでありますけれども、やはり景気の維持、あるいは地価や物価の安定、さらには資金供給の円滑化、さまざまな政策目的をバランスよくかつスムーズに実行、変更できなかったという点については、我々もそれだけの度胸がなかった部分もありましょうし、政策担当者にも、その先を考えた場合に、もう少し大丈夫だろう、あるいはもう少し様子を見たいという心境が働かなかったとは思いません。この経験というものを十分に肝に銘じながら、いかにして機動的な対応を恐れず実行していくか、これがこのバブルの生成から崩壊のプロセスの中で一番我々が深刻に学び取らなければならないことではなかろうか、そのように考えております。
  77. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私は、常々、経済運営をする場合に、悪い道をアクセルを踏んで走らせて、そして急にブレーキをかける、こういうような経済運営がずっと戦後とられてきたと思います。特にひどかったのは狂乱インフレのときでありますし、そして今回ですね。高原のハイウエーを、上下あります、上がり下がりするように、そういうもっとなだらかな経済運営というものを一方ではぜひやってもらいたい、このように思います。    〔理事前田勲男君退席、委員長着席〕  そこで、我々も国会議論しましたが、政治の責任について少し触れてみたいと思うんです。  一九八五年、昭和六十年五月に、国土庁は二十一世紀の東京のあるべき姿を描いた首都改造計画というのを発表いたしました。その中で、オフィスビルが東京都区部においてだけでも、昭和七十五年、二〇〇〇年には約五千ヘクタール、超高層ビルでいいますと二百五十棟分不足をする、こういう床需要が発生するというような予測を出しました。  それをもとにしながら、当時の内閣は、経済に対して財政は中立だと、民活でいこうと。我々も民活法案審議したことがあるんですが、そういうことでどんどん、一定の土地がまとまればそこに規制を緩和して容積率を上げて、そしてビルをつくろうという、そういう方向で動いてきました。  その結果、例えば新宿の西戸山の国家公務員住宅の一つの大きなプロジェクトをゼネコンを中心にしてやりました。そして、紀尾井町の私どもが住んでいる宿舎の上の司法研修所を入札に出しました。公示価格の約二・八倍で売れた。そうすると、その辺の近所というのはみんな今度は公示価格が上がるわけで、大変な問題です。その後、六本木の林野庁の職員住宅跡地を今度は競売に出しました。これもたしか公示価格の二倍ぐらいまで上がりました。こんなことをしながら、結局気がついてみたら、全国平均の公示地価の上昇というのは八五年の時点では二・四%だったのが、都心の商業地の上昇というのは三〇・八%に上がった。  だから、今回のバブルというのは、言われておりますのは千代田区、中央区、港区、この三区を震源として全国に波及した地価上昇のバブルであったと思うんですね。ここのところは、どう言っても、やはり政治主導の公有地払い下げ、民活、地価対策をしないままそれをどんどんあおっていった責任というのは私は避けられない、このように思うんですが、その点は、総理、いかがでしょうか。
  78. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、議員が今御論議になりましたような中から、その反省を込めて土地基本法も生まれたでありましょうし、あるいは地価税を初めとした土地税制の整備も進んだと思います。  ただ同時に、一点私が申し上げたいと存じますのは、確かにその時点において、東京に対して企業が進出をする、そのオフィスを求める需要というものは大変強いものがありました。むしろ逆に、東京に存在をいたします大公使館が、地価の値上がり、家賃の値上がりの中で、大公使館を維持するための方策について政府に何らかの対応を求める、これは国が招いたものではなかったはずであります。  それだけの日本経済が活力を持ち、その活力というものが、気がついたときにはそれはピークを過ぎておったかもしれないのでありますけれども、それだけの活況を呈する中であった。そして、その中で、例えば土地基本法を土台にした税の形を急ぐべきなのか、あるいは土地利用計画、国土利用計画といったものを先行させるべきなのかという論議が本院においても真剣に交わされたことを私は記憶いたしております。その中で、先ほど牛嶋議員の御論議の際にもお答えを申し上げたことでありますけれども、いつの間にか資金供給のバランスが崩れていく中において、無形の資産を担保とする風習が我が国金融界から次第に薄れていった。そして、特に土地に特化された資産価値に対する融資というものが非常に幅広く行われ、企業もまたその土地を持つことをもって含み益のベースと考えるといった風潮が世間に広がっていった。  私は、さまざまな原因が重なっておったことを、振り返ると、反省の材料としては持っております。しかし、本院におかれましても、当時、土地基本法のようないわば全国一律のルールを策定することを急ぐべきなのか、それぞれの地域における土地利用計画等をよりきめ細かく先行させるべきなのか、土地について真剣な議論が行われておりましたことを記憶いたしております。
  79. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私は、やはり考えなきゃいけないと思うのは、昭和三十六年、所得倍増計画が出たときに土地が本当にびゅつと上がっているんですね。それから、昭和四十八年、列島改造ブームのときにまた上がっているんです。そして、今回の六十年から六十二年にかけまして、これは外圧は確かにあった、そこで民活、そこで上がっている。だから十二年置きぐらいに上がっている。この波というのはなかなか避け得ないんではないかと、このように思うんですが、しかしそういうときには必ず、政治が動いたときに土地は過去三回ともやっぱり上がっているんです。ですから、その点については地価、政治が動くときの土地対策、これは十分にやっぱりやっていく必要があるだろうというのは教訓であります。  次にもう一つ、やっぱり振り返ってみて、私どもでもこれは議論をしたんです。これは私たちを正当化するために言うのではございません、先ほど冒頭に言いましたように。八七年、昭和六十二年の予算が済んで九日ぐらいたって六兆円の緊急経済対策が出てまいりました。これは宮澤大蔵大臣のときでした。強引に宮澤さんが頑張った由であります。  これは何で本予算の中に入れないのという議論を大分やったのを覚えておりますが、もうそのときには景気が上っていたんです。上っていたときにそこでもう一発アクセルを踏んだというのは、やはりこれはバブルに一つは火をつけた。このことも、これも御答弁は要りませんが、やはり反省をしながら、政治のあり方、経済に対する政治のあり方というのも反省をしていかなきゃならないのではないか、このように思うところでございます。  次に、もう時間がなくなりましたから、本題の住専問題に入らせていただきたいと思います。  第一点でありますが、住専処理対策ともう一つ今度の法案に出ております信組の対策等から見まして、預金保険機構の業務の拡大というのが非常に大きな中心になっておりますが、先般日銀に私ども与党のプロジェクトで行って、一体預金保険機構というのはどこにあるのかと言ったら、なかなか見せないんです。話を聞いたら、十数人でどこかでちょっとやっているような形ですが、これでは対応し切れないと思うんですが、預金保険機構の全体のこれから考えようとしておる体制、陣容、規模、その点についてはどのようなものか、伺いたいと思います。
  80. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘のように、現在の預金保険機構は、理事長が日銀の副総裁が兼務しておりますが一人、理事一人、監事一人で、事務局は事務局長以下十五名体制という非常に小さな組織でございます。  今般の住専処理策及び金融制度の拡充に際しまして、預金保険機構は二つの新たな機能を持つことになりますが、一つは、住専処理機構と一体的に住専の承継資産の処理に当たることでございます。もう一つは、信用組合が破綻した場合の受け皿回収機関となります整理回収銀行の業務につきましても適切な助言、指導を行うということで、この住専処理機構と整理回収銀行両者を手足といたしまして、その司令塔としての役割を果たすわけでございます。  その組織体制整備につきましては、現在具体化の検討を行っているところでございますが、まず組織面では、理事長を専任化いたしまして、また理事を二名増員して三名とするほか、債権等の管理・回収体制の司令塔及び実行推進役として強力な専門家集団でございます特別業務部を新設するとともに、これを担う人材といたしましては、法務・検察、警察、国税当局等の職員を中心に、法律、不動産取引等の専門家等の参加をも求めまして機能の拡充を図ろうとしているところでございます。
  81. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。  これは今までの預金保険機構の業務プラスそういうものがつくわけですから、この法律が通り次第、やはり一刻も早く動けるような体制づくりを期待するものであります。  次に、住専処理機構の組織、陣容について、もうこの辺で相当固まっておると思うんですが、固まっている状況について簡単でも結構ですから報告をしていただきたいと思います。
  82. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専処理機構につきましては、まず会社の住専処理機構の業務運営を全体としてコントロールいたします本部と、具体、個別案件の債権回収に当たります債権回収部門の二つがあるわけでございますが、まず本部につきましては、総合企画部、総務部、管理部、法務部のほか、所有不動産の管理、売却等を行います不動産部、責任追及等の拠点といたしましての特別対策部、これは東京と大阪に設置をいたしますが、このような体制となっております。  また、実施部門であります債権回収部門につきましては、回収業務の個別性、専門性、緊急性、譲り受け資産の特質等にかんがみまして、基本的にはもとの各住専対応する形で事業部制をとりつつ、いわゆる大口・悪質・共通案件に集中的に対応いたしますために、これらを横断的に専担する特別整理部を東京と大阪に設置することといたしております。
  83. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。  委員長、この二つの組織というのは非常にこれは急がなきゃならない。この委員会が終わり次第動けるように委員長の方からも特段の督励をお願い申し上げたいと思います。  次に、預金保険料ですね、保険料が七倍に引き上げられますが、たしか今○・○一二%でしたか、これが七倍ということになりますと預金者に影響が出るのではないか、あるいは金融機関経営に逆に影響はないのか、このような心配がありますが、この点はいかがでしょうか。
  84. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 預金保険料率を七倍に引き上げますことによりまして、まず金融機関への影響でございますが、金融機関の利益に対する保険料負担の割合が八%程度になります。これはアメリカの金融機関の保険料負担のピーク時、八〇年代の前半にピークがございましたが、その当時とほぼ同水準でございまして、そういう意味では限度であろうかと考えているところでございます。  次に、預金者に及ぼす影響でございますが、今般の保険料率の引き上げによりまして十分な破綻処理財源が確保されることから、預金者の不安心理が一掃されるということを期待しているわけでございます。  なお、預金金利に与える影響につきましては、保険料負担は経営の合理化等によりまして必ずしも預金者に転嫁されるとは限らないというふうに考えておりまして、これが預金者に転嫁されることのないように金融機関経営者も心がけていただきたいと考えているところでございます。
  85. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 今のような低金利の状況の中でこれが預金者に影響のないようにぜひ頑張っていただきたいと思います。  次に、健全性の確保法ですね、健全性の目安ができることになりますが、その基準を預金者に知らせる方法といいますか、ディスクロージャーの方法というのは非常に大事になると思うんですね。この点について、後で問題があったというんじゃ困りますから、今大丈夫だといろんならひとつお伺いをしたいと思います。
  86. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘の健全性の指標というのは恐らく早期是正措置に関する指標のことかと存じますけれども、この早期是正措置の基準となります指標につきましては、一例として既にこのような形で考えておりますというものをお示ししているところでございますが、さらに専門家の御検討を得ましてそれを公表いたしまして、国民の皆様方にも省令をもちまして明記をするようにしたいと考えているところでございます。
  87. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 同じようなところですが、自己資本比率を計算するに当たって不良資産をどのように見るか。これは人が見るわけですからなかなか難しい。この点を、原則みたいなものをどのような過程で決定していくのか。それは先ほどちょっと質問があったと思いますが、今の金融当局の、大蔵省銀行局の検査体制で一体やれるのか、その点についてお伺いをします。
  88. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 自己資本比率あるいは自己資本そのものが金融機関の資産内容の実態をできる限り正確かつ客観的に反映するということが大切なことでございます。従来からその点についていろいろな御指摘があったことも私ども十分意識をしているところでございます。  このため、当局が、貸出金等の資産に関する回収の可能性、すなわち資産が腐っているかいないかという点でございますが、その点の査定に関するガイドラインを策定するとともに、このガイドラインをもとにいたしまして、私ども監督当局だけではなく金融機関みずからが貸出金等の資産内容を自己査定いたしまして、さらにこれを公認会計士が外部監査するというような仕組みを整備することを検討しているところでございます。  当局の検査におきましては、これらの金融機関による自己査定や公認会計士による外部監査を踏まえまして、自己査定の正確性をチェックする新しい検査方法を導入することを考えておりまして、そのため検査体制等の一層の整備充実を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  89. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 終わります。(拍手)
  90. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 まず、大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、去る五月二十二日、御記憶にあるかどうかわかりませんが、記者会見をされまして次のようにおっしゃっております。「六千八百五十億円の財政支出について「十二兆円の特例公債(赤字国債)で負担されている」」と述べ、「国債償還の資金を何らかの形で金融機関に肩代わりさせることも住専処理の追加策として検討対象になる」と、こういう考え方をお示しになったというふうに報道があるわけですけれども、この点は間違いございませんでしょうか。
  91. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 六千八百五十億円の財源はどういうことで調達されているかということは、一概に国債と、そう言い切ってしまうことは無理があると思います。ただ、住専処理のための財政支出を特別な住専税といったようなもので国民に税負担を直ちにお願いするという性格のものではないと、こういうことを申し上げたように思います。  したがって、これは言ってみれば赤字国債で賄われて、そして来年度以降これが償還されていくというふうに考えてもいいんじゃないかと。その場合には、その来年度以降の償還をどのようにするかということになれば、国民に御負担をおかけしないように、そういうことで考えたらどうだろうかということも私の考えにあるということを申し上げたように思います。
  92. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 今おっしゃったように、実際、この六千八百五十億円の財政支出が十二月十九日に閣議決定で決められるわけですけれども、その翌日が大蔵原案の内示ということになっております。経過的に見ましても、六千八百五十億円の支出ということで公債発行がふえたと、こういうことですから、もちろん金に色目はないとは言え、やはり特例公債に依存した、これは経過的に見ても言えることだと思います。  ところで、大臣もこの場で、今言われている新しい基金につきまして、一つの考え方であるとか有力な素材であると、きょうも同趣旨の御答弁をされましたけれども、この構想というのはもちろんまだはっきりと発表されたものではありませんが、言われているところでは、金融機関系統、そして日銀からの拠出で約七千億円の新しい基金をつくっていくと^こういう構想であります。そして、これを十五年間運用して、運用益を今の住専処理スキームでは国庫に還元する道がないから、この新しい基金ではその運用益を国庫に還元していく、それでいわば六千八百五十億円の財政支出を埋め合わせていくということになっておりますよね。  この運用先は、今検討されているのは、一つは国内証券、国債などの購入、預金保険法が改正されれば新たにできます整理回収銀行、ここへの低利融資、こういう形で運用されていくというふうに報道されておりますけれども、少なくとも今の構想というのはそういう構想だと理解してよろしいでしょうか。
  93. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) まだ私どもそこまで具体的な御提案を申し上げているわけではございませんで、新しい基金を設けてその運用益を今御指摘のような用途に使ってみるということも一つの案として考えられるのではないかと、こう申し上げているわけです。  かつ、その場合に、基金を設ける趣旨でございますけれども、果たして整理回収銀行に融資するというような意味金融システムの安定に資するということがいいのか、あるいはまた別の目的が考えられるのか、そういう基金の目的についても御検討いただければと、このような提案を申し上げているということでございます。
  94. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 まだそこまで考えていないとおっしゃいましたが、あしたにももう発表するという報道だってありますし、今国会会期中なんですよ、もう会期十九日までしかないわけですからね。ただ言えないんだろうと思います。しかし、これが一つの検討対象になっていることは間違いないと思うんですね。最終的にそう決まるかどうか、これは私はわかりません。  しかし、そうなりますと、非常に奇妙なことに私はなると思うんです。六千八百五十億円というのは、いわば実質赤字国債に依存して出される財政支出。これは国債ですから当然利息がつきます。一方、それを穴埋めするために、こっちは六千八百五十億円だけれども、こっちは七千億円の基金をつくると、これはほぼ同額ですよ。そして、この七千億円の資金を国債の購入に充てるというわけですから、こっちで負担する利息と同じ利息がこっちでは利益として出てくるというだけのことですね。しかも、一部は整理回収銀行への低利融資というのが今言われている案ですから、これは国債の運用利回りよりもまた低くなるということは恐らく常識的に見て確実だと思うんですよ。  そうしますと、十五年間、こちらは七千億運用すると、こっちは十五年間国債でやるとすれば、簡単に言えば六千八百五十億円につく利息をこちらでの運用益で賄うだけと。六千八百五十億円はいつまでたったって、大臣元本は減らないと、理屈の上ではそういうことになるんじゃないでしょうか。
  95. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 六千八百五十億を明確に特例公債で充当したということになれば、そういう筆坂さんが今言われたような解釈も成り立たないわけではありません。しかし、今私どもは、今回お認めいただくよう御審議を願っておりますこの住専処理機構への預金保険機構を通ずる六千八百億というものにつきましては、これを国民の負担とならぬよう今後軽減策を講じていきたいと、こういうことで申し上げているのでありまして、その一環として新基金の設置というようなことも検討してみたらどうかという段階でございますので、今直ちにこれは利息を充当するにすぎないというような解釈をしてしまいますことは非常に無理ではないかと思っております。  そして、これらの構想はいずれも国民の負担をどのようにして軽減するかということから生まれているのでありまして、もし何も講じなかった場合に国民に御負担を願います分を、措置を講ずることによって軽減していくという立場で御理解を賜りたいと思うのであります。
  96. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 大臣がおっしゃるように、六千八百五十億円、これを特例公債で賄った、利息がつくと。少なくともその利息ぐらいは運用益で減るわけですから、つまりその意味ではある種の軽減につながることは、これは間違いないと思うんです。しかし、元本そのものにはこの構想では影響してこないと。  計算してみますと、国債の表面金利は年率三・三%です。仮に十五年間三%で運用すると約三千八百億円、四%で五千六百億円ということになります。中間をとればやっぱり大体四、五千億ぐらいは要るということになります。新基金の方は揮用益を約五千億だというわけですからね。  ですから、大臣ももし充当されたということに立てば私が言っていることも成り立つということをおっしゃいましたけれども、やはりこれでは国民が期待している追加負担策ということにはなかなかならないんじゃないか。ですから、これは新聞に書いてありましたけれども、自民党の中でも幹事長代理の野中さんはこの新基金構想について、役人的発想である、大蔵のシナリオでは国民の怒りはおさまらないというふうに厳しく批判をされております。  そこで、私は総理にお伺いしたいんですけれども、今言われている新基金というのは確かに日銀のお金も入っております。これもいわば公的資金の一種ですけれども、それは別にしまして、いずれにしろ母体行など金融機関やあるいは系統金融機関がお金を出すということについてはかなり前向きだということが前提になっています、出さなきゃ新基金はできないわけですから。しかし、もし出せるのであれば直接出してもらう。六千八百五十億円が十五年間運用なんと言わずに、削減されるという出し方を私は今求めるべきじゃないかと思いますけれども総理の御見解はいかがでしょうか。
  97. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 私の方から一つ御理解をいただいておきたいことは、新基金構想は、一つの考え方として今そういう構想が成り立つかどうかの論議をしている段階でございます。それから、新基金構想の金額的な枠その他についてはまだ具体的には協議が行われておりませんので、その点だけは御理解をいただいておきたいと思います。
  98. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、大蔵大臣から御答弁を申し上げましたように、現在大蔵省金融界とがさまざまな角度で話し合いを行っております。よりよい結論が出ることを期待いたしておりますが、ここでその内容について触れることは御容赦を願いたいと思います。
  99. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 昨日のNHKのテレビ討論会で自民党の加藤幹事長が、この新基金構想だけでは確かに不十分かもしれない、合わせ技のようなものも考えなきゃいかぬ、つまり新基金もあるし、ほかの手もあるんだ、ほかの手も考えなきゃいかぬということをおっしゃっておりましたけれども与党の中の自民党の幹事長の発言ですが、大臣はそういうことは念頭におありでしょうか。
  100. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) ずっと筆坂さんの御質問にお答えしていきますと、何か既にそういう構想の話を始めているかのようなことになりますものですから、私は非常にお答えしにくいのでありますけれども、合わせ技というようなことは、昨日私もNHKの日曜討論を聞かせていただきました。ただ、そういうことも、政党の責任者としていろいろお考えになって、極力国民負担の圧縮を図ろうという趣旨から御発言になったものだと思っておりますが、まだこれらの問題については具体的に論議されていることではございません。  私も、大蔵省として金融機関等の理解と協力を得られることについてはできるだけ幅広く強い要請を行うことが必要だ、こういう立場で今事務当局にも指示をいたしているところでございます。
  101. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 次に、二次損失問題についてお伺いしたいと思います。  ここでも随分論議されてきましたが、今の幾ら損失額が出るか、幾らロスが出るかというのは、これは昨年一月一日の路線価がもとになって計算されたものであります。そうしますと、これで計算すれば約一・二兆円というのが回収が困難になるであろうという債権だと。その後、地価は、公示地価は下がっておりまして、約一六%下がっております。同じ率で下がったとすれば、これはことし一月一日時点での路線価もやはりそれぐらい下がっている。つまり、ことし一月一日の路線価で計算すれば、ロス額というのはやはり数千億規模で、数千億といっても下から上までありますけれども、数千億規模で拡大をしている。これはだれも否定することができないと思うんです。  二次損失の問題についてお話しいたしますと、大蔵省は回収に全力を挙げる、こういうふうに必ずおっしゃいます。これは当たり前の話で、適当に回収をやりますなんという言葉が出てくるわけがない。しかし、問題は今なぜ回収できないのかということだと思うんです。  不良債権の回収というのは、要は土地が売却されて初めて回収ということになるわけです。ある意味では努力を超えているところだってあるわけですね。幾ら努力やったって売れない、売れない以上は回収できない、こういうことにならざるを得ないわけです。ですから、努力すれば回収できるというのはきれいな言い方だけれども、それは現実に余り適した表現とは私は言えないだろうと思うんです。  だからこそ、例えば共国債権買取機構が銀行から不良資産を買い取っておりますけれども債権元本額、もともと銀行が土地なら土地に対して幾ら融資したか、この債権元本額と実際に共国債権買取機構が買った間にはどれぐらいの開きがございますでしょうか。
  102. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 債権回収額と買い取り額との比較という意味で申しますならば、五年三月から八年三月までの累計で申しまして、買い取り価格五兆四十三億円に対しまして回収額が四千三百十六億円でございます。
  103. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 ちょっと誤解して御答弁されたようですが、債権元本額約十二兆円ですよね、それを約五兆円で共国債権買取機構は買っているわけです。つまり、もうこの時点で六割減額されているんですよ。そして、その五兆円が、今回収されたのは四千数百億円と。もちろんこれはまだ全部回収されてませんから、売却されてませんから。これはこの前、参議院予算委員会に共国債権買取機構の金澤社長が参考人としておいでになったときに数字を発表されましてわかりましたが、まだ一割下がっているんですね、実際の回収額は。つまり、共国債権買取機構が買った額よりも回収額はなお下がっている。債権元本からいいますと七割のロスがここで既に出ているということなんです。  ですから、回収回収といったって、結局は土地の売却なんですから、今のような地価動向が続く限り、客観的に見て損失が一兆二千億円程度にとどまらない、さらに大きな規模になるということは、これは可能性の問題ではもちろんありますけれども、認めざるを得ないんじゃないでしょうか。
  104. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 確かに私ども最大限の努力を行うということを申し上げた上で、しかしながら、そのような努力を行ったとしても、今後の地価経済の動向によってはいわゆる二次ロスが発生する可能性を否定し得ないことも事実であるということも認めているわけでございます。しかしながら、そのような計算の基礎といたしまして、先ほど挙げられた現在までの地価の下落というものは、公示価格と路線価との間の二割のバッファーの範囲内におさまっているのではないかということも申し上げているわけでございます。  なお、債権買取機構の実績でございますが、これがまたなかなか評価が難しいんですけれども、今まで幾つか実績が出ておりますものの中で半分くらいは路線価を上回る価格で売れている、半分くらいは路線価を下回る価格で売れているというようなことで、すべてがすべて路線価を下回っているというようにお考えになるのは必ずしも事実ではないということもお認めいただきたいと存じます。
  105. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 問題は、路線価を上回っているか下回っているかじゃないんですよ。売れてないでしょう、回収されてないということが問題なんです。五兆円のうち四千億しか回収されてないんだから。だから、そんなこといったって何の反論にもならないということを申し上げておきたいと思うんです。  少なくとも広がる可能性は一方にもあるということは、これはお認めになったわけです。そうしますと、私聞きたいのは、この二次損失というのは、国が二分の一つまり税金で、財政資金で二分の一持ちましょう、あとの二分の一は金融安定化拠出基金、この運用益で持ちましょう、こういうことになっているんです。税金は、これ二次損失が四兆になって、例えばですよ、そういう指摘だってありますね、週刊ダイヤモンドなんかで指摘されていました。仮に四兆円になったって、税金の方は、財政資金の方は二兆円持ちますよ、持つ力がありますよ、国が持つんですから。これ二分の一持つことになるでしょう、このスキームだと。しかし、いわゆる民間、金融安定化拠出基金の方は運用する資金は九千億円でしょう、二兆円の、もし二分の一負担ということになったとき、九千億円の運用益で賄えないことは、これはだれが計算しても明らかでしょう。そういうことにはなりませんか。可能性ですよ。
  106. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) その九千億円の元本でどの程度の運用益が得られるかということも、これまた経済情勢によって違ってくるわけでございますが、今の御指摘の九千億円の運用益で賄えないんじゃないかということは、そのロスの額を想定した上での御発言のように受けとれますけれども、私どもはいわゆる二次ロスというものができるだけ発生しないようにということを努力目標としているわけでございまして、一定の損失額を想定しているわけではないことを御理解いただきたいと存じます。
  107. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 それは全然御理解いただけないよ。だって、ふえる可能性はあるということをあなた方は認めたわけだから。  しかし、九千億円というのは、二次損失が一兆二千億で、二分の一が約六千億ぐらいだということを想定しているから運用資金九千億になったわけでしょう。これが三兆、四兆と損失が広がれば、九千億の運用益じゃ間に合わないじゃないですか。そうすると、預金保険機構が保証する、預金保険機構で間に合わないときには日銀特融を持ってくる、こういうことになるわけでしょう。結局、二分の一負担というけれども、税金で持つ。二分の一負担は、これは確実に持つ。しかし九千億円じゃ、二次損失の規模の拡大によっては、民間が運用益で全部持ちましたということになる保証は全くないということです。全くないということ。  そうすると、この拠出基金をふやすか、あるいは預金保険機構から賄うのか、あるいは日銀特融を放り込むのか。そして、最後のツケは、この残りの民間で持つと言われている二分の一だって、そのツケは税金に回ってくるということだってあり得るスキームになっているということなんですよ。だって、九千億ということはもう決まっているわけですから。ですから、私は、もしそういうことになれば、地価動向によっては早晩このスキームが破綻をする、そういう危険性というのが非常に濃厚だというふうに思うんです。  もう時間がなくなりましたからこれで終わりますけれども、この点は本当に真剣に考えないと、六千八百五十億円だけで税金負担じゃないですからね。二分の一の方は、本当に将来、近い将来破綻するおそれあり、私はこのことを御指摘申し上げて、質問を終わりたいと思います。(拍手)
  108. 小島慶三

    ○小島慶三君 皆様御苦労さまでございます。  私は新緑風会を代表しておりますので、恐らくこの御質問が最後の持ち時間になると思いますので、新緑風会の立場を総括して初めに申し上げておきたいと思います。  私どもの立場は三点に代表されると思うのでございます。一つは、自己責任原則で徹底的な処理を進める、これが一つ。二つ目は、どうしても必要な場合には日銀特融を活用する。それから三つ目は、六千八百五十億は削除していただく。この三点でございます。  しかし、日銀特融というのを使うということにつきまして、きょうも大蔵大臣からなかなか困難な問題があるというお話がございました。それから、この間の公述人の公述では、これは非常に難しいということがやはりございました。  しかし、お話はいずれも平時の、平穏無事なときの金融原論であるというふうに私は思っております。しかし、金融で処置のできない、まさに金融崩壊しそうな時期も起こらないとは限らない。そういう場合に備えて、日銀の法律の中では二十五条という一条がちゃんとあるわけでございます。したがって、これを使うということは合法的であり、可能であり、しかもタイミングが私は合っているというふうに思っております。したがって、我々はそういうふうな主張をしてまいったわけでございます。  それで、非常に難しいという話もございますが、それならば国民の九割が反対していると言われる財政資金の投入といったようなことがより優位性を占めるだろうか、結局はその比較の問題だというふうに私は思っておるわけであります。そういう点から見まして、私どもとしては日銀特融という線をやはり考えておかないといけないのではないかと今でも思っております。  実際問題として、六千八百五十億という予算をお通しになりましたけれども、これが現実にどういう形で使われるかいろいろ考えてみますと、なかなか難しい問題がございます。私、持ち時間の制限がございますからくだくだしく申すことを差し控えますけれども、現実に予算を使うのは非常に難しいという話になった場合に、やはり最後に出てくるのは日銀特融ということではあるまいか、これを使うということが最後に出てくるのではないか。  この間の新しい基金、これについてはまだ構想が固まっておられないという御説明でございましたけれども、この中にも一千億という日銀資金というものが期待されておったように記憶しております。そういう点から見まして、この問題というのはやはり最後まで絡めて我々の頭に置いておく必要があるのではないかと思いますけれども大蔵大臣、この点はいかがでございましょうか。
  109. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 六千八百億は預金保険機構の緊急金融安定化基金に支出され、そして預金保険機構から住専処理機構へ助成されていくことになると思います。  なお、その一次ロスの負担の一部を日銀に融資の形であれ負担させることが可能であるかどうかということについては、日銀には日銀としての異なった意見がおありになると思っておりますが、もし新しい基金が設置されます場合には、この基金の目指すものが、目的とするところが何であるかによって、日銀がこの基金に対して積極的な役割を果たすことは可能となるのではないかと私は思っております。その場合に、金融の安定、信用秩序の保持のために日銀がこの基金に対して役割を果たすということが可能である場合には、積極的な日銀の協力が求められるところではないだろうかと考えております。
  110. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。  それから、これから後は新緑風会の本問題に対する対応の話と少し違うのでございますけれども、私今非常に気になっておりますことは、この前の財政危機の問題、あれに絡むわけでありますが、これまで四年間も予算あるいは補正予算を通じて相当大きな予算を組んでまいりました、約四十兆。この中心は公共事業であったわけでありますが、公共事業の効率といいますか効果といいますか、そういうものはだんだんに落ちてきているのではないかというふうに私は考えております。乗数効果から見ましてもかなり落ちてきております。  それで、一体どうしてこういうふうに公共事業の効果が落ちてきているのかということをいろいろ考えてみますと、例えば公共事業というものが民間投資を誘発しない、あるいは誘発する程度が落ちるということが一つあると思いますし、それから環境とかいろんな問題をかえって壊すというふうなこともあるかもしれません。あるいは公共事業に対する支出の感覚といいますか、そういうものがかなり鈍ってきているということはあるんではないかというふうに思うわけでございます。それで、これは建設大臣にお伺いをしたいのでありますが、この間、六月十三日の新聞記事に「財団受注のダム調査業務」というのがありまして、これは宮ケ瀬ダムの工事、そこから一遍受注した契約のものを今度はさらにダム水源地環境整備センター、そこに随意契約で発注する。そうしたら、そのセンターから今度はまた宮ケ瀬ダム周辺振興財団に発注をする。そこからまた随意契約で民間コンサルタント会社に発注をした。全体約千八百万円の規模のものが七百万円になってしまったと。一体こういうことがあっていいんだろうかというふうに私は思うのであります。  仮にこれが氷山の一角だとしますと、公共事業の効果といいますか、そういうものが落ちてくることは間違いないんだというふうに思うわけでございますが、この辺、建設大臣に、申しわけございませんが御説明をお伺いいたします。
  111. 松田芳夫

    政府委員(松田芳夫君) 私から御説明申し上げます。  報道されました調査業務は、建設省宮ケ瀬ダム工事事務所がダムの水没地及びその周辺地域、いわゆる水源地域の活性化対策の検討のために財団法人ダム水源地環境整備センターに委託したものでございます。  本業務の実施に当たりましては、ダム水源地環境整備センターは、全国各地の水源地域活性化の事例の調査と評価、それを踏まえて宮ケ瀬ダム周辺地域の活性化対策の提言等を行っております。そのうち、宮ケ瀬ダム周辺活性化検討のための基礎的調査の一部を、地域の実情に精通している地元関係市町村と神奈川県が中心となって設立した神奈川県知事認可に係る宮ケ瀬ダム周辺振興財団に依頼したものでございます。  したがって、当該業務につきましては、丸投げというような事実はなく、地元関係の調査部分について地元に精通した財団に委託して調査をお願いしたものであり、特に問題はないと考えております。  今後とも、所管の公益法人が受注する調査業務の実施に当たりましては、社会的に誤解を招くことのないように指導してまいる所存でございます。
  112. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 小島委員にお答えさせていただきます。  ただいま河川局長答弁したとおりでございまして、ある新聞の記事に断定的に書かれておることを私も見ましたので、これを厳重に調査いたしました。ところが、全くその事実はないということはただいま答えたとおりでございますので、私どもとしては局の方からその新聞に厳重に抗議をさせていただきたい、こう思っておる次第でございます。  建設省の事業というものは、安全で快適な暮らしの実現、魅力と活力ある地域づくりというもの、いずれも国民生活と密接なかかわり合いのあるものでございますから、これは極めてニーズの高い事業である、こう考えておる次第でございます。このために、一つの事業分野の予算を大幅に伸ばすために他の分野を極端に抑制することは困難でございますが、建設省所管事業の配分に当たりましては、前年度の実績主義による事業別配分の考え方によるところがあるわけでございます。  一つは、活力ある地域づくり、あるいは快適な生活基盤整備づくり、安全で安心できる町づくり、住宅宅地対策の充実、情報化等の新しいニーズヘの対応といった政策課題に対応した事業に重点的に私どもは予算を配分することといたしまして、平成八年度予算におきましても、これらの政策課題に関する事業におきましては、前年度に比べまして二一・五%増と大幅に予算をふやして、住宅・社会資本整備国民の期待に的確にこたえていこうと、こう考えている次第でございます。  しかしながら、公共事業の進め方につきましては、より効率的、効果的な事業の推進を図ることが極めて重要でありますので、現在省内における検討委員会を設けまして、公共事業の重点化、効率化、透明化につきまして全省的に採用しているわけでございまして、今後その結論を踏まえて十分に適正に対処していくこと、またこういう問題に的確なる処理をしていくということを私もお約束をさせていただきたい、こう思っておる次第でございます。
  113. 小島慶三

    ○小島慶三君 ぜひそういうふうにお願いをいたします。公共事業の効率化というのが恐らくこれからの景気の動向を左右するでありましょうし、そういった意味において、その発注につきましてもそういった疑問が起こらないようにぜひお願いをしたいというふうに思います。終わります。
  114. 島袋宗康

    島袋宗康君 住専処理法案ももう大詰めを迎えておりますけれども、今の情勢では恐らく法案は間違いなく通るというふうな可能性になっております。法律の成立は本当の意味での金融安定化へのスタートというふうな政府の御答弁、説明でありますけれども、まさにこれから行政能力が問われることになりはしないかというふうに思います。  そこで、すぐ問題になり、対応しなければならない金融機関について、どういうふうなことになりますか、今後どういう対応が行われるのか、その辺について、大蔵大臣、御説明願いたいと思います。
  115. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 平成八年三月末におきます我が国の民間金融機関不良債権の総額は、各金融機関からの報告によりますと三十四兆七千億円に達するところでございます。また、このうち今後の要処理見込み額は約八兆円程度と推計されるわけでございます。これらの不良債権処理につきましては、金融機関の業務純益や有価証券の含み益から見まして、金融機関全体として見れば処理可能であると考えているところでございます。  しかしながら、一方、業態ごとの不良債権額処理能力を見ますと、信用組合におきましては不良債権額に対する償却財源が他の業態に比べ脆弱であることから、信用組合を取り巻く経営環境は厳しい状況にあると考えているわけでございます。  こうした事態に対応するため、現在御審議をいただいております預金保険法改正案において、今後五年間に生じ得る金融機関破綻を預金者に負担を求めずに円滑に処理し得るよう、預金保険の中にペイオフコストを超える資金援助を行うための特別勘定を設けまして、財源として特別保険料を五年間徴収することといたしておりますほか、信用組合の破綻に備えまして、受け皿金融機関としての整理回収銀行整備などの環境整備に万全を期することとしているところでございます。
  116. 島袋宗康

    島袋宗康君 今日までこの住専問題は決して国民の理解が得られていないというふうに思います。今回の法律が成立をしても、それで終わりではなく、これから国民の理解を得るために努力すべきだと思いますけれども、具体的にどのような努力が必要だというふうにお考えでしょうか。
  117. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 住専問題の早期処理、解決が今後の日本経済にとって、また国民の皆様方の利益を大局的に守っていくという立場からも非常に重要であること、その早期処理が求められていることについての御理解は、皆様方の長い御論議等を通じて国民の皆様方の御理解も深まってきているものと私は考えております。ただ、この処理の方策について、特に財政支出をやむなく行わねばならない、このことについての御理解を十分に得られていないということについては御指摘のところだと思います。  私どもは、住専問題の処理がこのような深刻な事態に立ち至りますまでの間、もっと金融行政におきましても的確な判断、適切な指導というものが必ずしも十分でなかったという点については深い反省を求められている点だと考えております。しかし、一つは金融そのものが今やグローバル化といいますか、自由化、国際化が非常なスピードで進んでまいります中で、これについていけなかった点があるのであろうと思っております。しかも、住専に関しましては大蔵省といたしましても、立入検査は可能でありましても、業務改善や業務停止の命令を下す権限は法的にはないわけでございまして、そういう点の難しさもございました。  しかし、いずれにせよ、このような深刻な事態に立ち至りますまで、国民の皆さんに十分な情報を提供するとともに、必要な措置が十分でなかったことに対する反省の上に立って、今日、金融関連法案も御論議をいただいているわけでありまして、住専の抱えます不良債権処理を急ぎますとともに、同時に私どもは、新しい時代における金融システムのあり方についても皆様の御論議を通じて、また御提起を申し上げております法案審議を通じて、新たな時代における金融システムの確立を急がなければならないと思っております。そういうことをしっかり果たしてまいります中で、また行政がみずからに課すべき責任というものもおのずから明確にされなければならないと考えております。
  118. 島袋宗康

    島袋宗康君 このような経済金融、土地問題等の状況が再び起きないように政府として腰を据えた姿勢が必要だと思います。政府は今後それらの問題にどのように具体的に臨むのか。経済の方向、金融のあり方、土地政策の見直しなどをどういうふうに進めていくお考えであるのか。経済企画庁、国土庁、大蔵省としての、全体を見渡していらっしゃいます総理にお伺いいたします。
  119. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) この委員会でも問題になっておりますように、バブルの発生、形成、崩壊過程における政策判断の問題、私もよく考えてみるんですが、その時々の内閣が精いっぱい努力して、また真剣な判断をしてきたわけですが、結果としてやはり間違っていたと言わざるを得ない。これは、一つの政策判断というのは前の政策判断の制約をどうしても受けます、選択肢が限られますから。しかし、流れとしては、やはり間違いがあったからこうなったというふうに言わざるを得ないというふうに思います。  どうしてこうなったのか、これもまたよく考えてみますと、資産価格、株式や土地などの資産価格の急激で大幅な変動が実体経済にどういう影響を与えるかということについて、十分な洞察をしていなかったことに私は思い至るわけです。  これからは、私どもの景気の判断もそうですが、地価の動向にしっかりと目を据えて、いろいろな経済指標とともに、地価の動向、そしてその背景となっている投機熱、投機的な行動、あるいは土地が有効に利用されているかどうか、そういうことまでしっかり見きわめて景気の認識、景気の判断をしていかなければいけないというふうに思っております。
  120. 鈴木和美

    国務大臣鈴木和美君) 簡単にお答え申し上げますが、国土庁といたしましては、先般急激な地価の高騰とか下落というような現象が起きましたけれども、これは二度と起こしてはならぬ、そこをまず基本的に押さえています。そのためには、地価の動向を的確に把握いたしまして、必要が生じたときには土地の取引の規制であるとか融資規制などの措置を敏速にとらなきゃならぬと思っているところでございます。さらに、これを生み出すような構造的な要因に対しては粘り強く解消のために努力していかなきゃならぬと思います。  それには、まず土地利用計画の充実整備でございます。二つ目には住宅宅地の供給、そして三つ目には土地の有効利用の促進、四つ目に土地に関する情報の整備充実、こういうところに力を入れてやってまいりたいと思っております。  現在、土地政策審議会でこの問題について議論をしていただいているところでございます。
  121. 島袋宗康

    島袋宗康君 締めくくりの総括として、今回の住専処理を初め不良債権、バブルなどの問題を通じて、政府として行政としての教訓及び反省点をいま一度整理して総括をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  122. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先刻も他の委員に申し上げたことでありますけれども、私どもは第二次世界大戦後の五十年の間にさまざまな体験をしてきたとはいいながら、今回のバブルの発生から崩壊に至るプロセスのような体験というものを今まで持っておりませんでした。  それだけに、地価あるいは株価、後になって考えてみれば、実情を無視してつり上げられればどこかでそれが破綻をする、急角度に崩れるということは当然のことでありましたけれども、その上昇そのものが日本経済の実力のような錯覚の中に、政策担当者までがもし幻想の中に生きていたとすれば、これは我々として二度と起こしてはならない現象だと思います。  いずれにいたしましても、適時適切という言葉は大変使いやすい言葉でありますけれども、事実問題としてそれを文字どおり実行することは非常に難しい局面もあろうかと存じます。しかし、必要と思われる時点で必要と思われる施策を発動することに恐れずに立ち向かっていく、そのような姿勢で仕事に取り組みたいと思います。
  123. 島袋宗康

    島袋宗康君 終わります。
  124. 奥村展三

    ○奥村展三君 総括質疑の最終であるわけでございますが、総理もまた大蔵大臣もたびたび御答弁をいただいており、先ほど来もいろいろ御質問があったわけでございます。  景気の方は緩やかに回復がなされようといたしておるわけでございますが、やはり今日、この不良債権等の問題におきましては、いろんな経済動向を見ましても足かせになっているのは事実でございます。そうしたときに、約五カ月にわたっていろんな審議をそれぞれの立場で進めてまいったわけでございますが、我が国経済金融システム、これは内外ともにやっぱり信頼の確保というものは根底にあると思います。  そうしたときに、先ほども総理は御答弁をされておったわけでございますが、政治の責任、これをどのように受けとめておられるか。この住専処理を今日まで先送りをしてきた、そういう経過を踏まえて、大蔵省農水省の間のあの覚書、ある意味では不透明な存在でもあったわけであります。護送船団方式等々いろんな言葉が使われてまいったわけでございますが、やはり政治、行政がこの過ちを二度と繰り返さないことが大変大事ではないかなというように思っております。  と同時に、国民の皆さん方にぜひ住専処理についての理解を当然求めていかなければならないわけであります。また賠償請求、あるいはこういうものを行使する上で厳格に責任追及をしていかなければならないということはもう今まで各先生方も言ってこられたわけでございます。  政治の責任、あるいはまた今後の徹底的な責任追及等につきまして、総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  125. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これが政治の責任であるのか、あるいは行政に帰すべき責任なのか、私にも分類がうまくつきませんけれども議員からも今お触れになりました護送船団方式と言われた金融行政のあり方、これは自由化以前の我が国金融行政としてはそれなりに意味もあり、また効果を発揮したものだった、今振り返っても私はそう考えております。  それだけに、金融自由化が叫ばれるようになり、現に自由化が進展し始めた時点で、政治家としての私たちはそれに応じた金融行政の変化というものを当然求めるべきであったのかもしれません。しかしその点について、政治は必ずしも行政に金融行政のあり方そのものを変革しろとは求めてまいりませんでした。また、金融行政そのものが自由化の進展によって変質しつつあったにかかわらず、行政自身もその変化に対応してみずからの組織を変化させていこうとしなかった。今、これは私は両面問われる問題であろうと存じます。それだけに、ある意味では私どもも今回国会で大変長い御審議をこれだけ煩わせてくる中でさまざまな教訓を得てまいりました。これは大蔵省のみならず、事務当局もまた行政のあり方というものについてそれなりに考える部分はあったろうと思います。  そして、今後の金融行政と申しますものを、金融行政の手法を見直す、そして新しい金融システムを構築していくために自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い行政をつくる。言葉で言うことは簡単でありますけれども、これに合ったそのとおりの市場をつくり上げていくというのは、私は一朝一夕でできることではないと存じます。また、先ほど牛嶋議員との御質疑の中で出ましたような国民の投資性向の問題もその中には反映してくるでありましょう。  こうしたものを受けて、我々が過ちなきを期すためには、従来以上にこうした分野に対する国会の御論議をも心からお願いを申し上げる次第であります。  そして、責任追及という部分になりますと、これも繰り返しになるようでありますが、法律案を私どもは一日も早く通過成立をさせていただきたい、そして預金保険機構と住専処理機構が力を合わせながらあらゆる分野にわたってその責任の追及をし、債権の回収に全力を挙げる、その過程において法に触れる者があれば何人たりとも容赦をしないということを申し上げてまいりました。  成立をいたしました瞬間から今度は行政の責任が問われることになります。事務当局の諸君もその準備にはおさおさ怠りはないと思いますが、決意を新たにしてこの問題に取り組んでくれることを、心から願っております。
  126. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございました。  今、力強い決意のほどもお述べをいただいたわけでございます。根幹を揺るがすことのないように今後も御努力をぜひお願いいたしたいと思います。  一点だけ大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。  預金保険法の改正についてでございますが、今も総理からありました自己責任の原則に立って、これは当然であるわけでございます。農水産業協同組合貯金保険法改正等のこともあるわけでございますが、これは五年間の時限を切って制度整備をしていこうというものでございますが、特別保険料の率について見直しをするということになっておるわけでございます。三年後の見直しにおきまして具体的にどのような点に考慮されようとしておるのか、わかる範囲で、今お考えのところでお伺いをいたしたいと思います。
  127. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 五年間の時限措置として特別保険料を導入することとしておるわけでございます。また料率についても、先般行われました一般保険料の四倍の引き上げに加えまして、特別保険料についても従来の保険料の三倍相当の料率とすることを考えているわけでございます。  このうち特別保険料につきましては、御指摘のように、昨年末の金融制度調査会答申に沿いまして、三年後には特別勘定の損益の状況、特別勘定がどのような損益状況にあるかということ、金融機関の財務状況金融機関がどのような負担に耐え得るかというようなこと、このようなことを勘案の上に適正な見直しを三年後に行いたいと考えているところでございます。
  128. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございました。  また、保岡先生初め議員提案をいただいております住専債権時効停止法案でございますが、これは住専各社から住専処理機構への債権譲渡に伴いまして、一定期間債権の消滅時効を停止して円滑かつ確実な債権回収を図るためのものでありまして、極めて重要なことであると思います。  さて、私は、いろいろ今日まで、皆さん方もそれぞれの立場で御意見を述べ、この中で審議をさせてもらったわけでございますが、今のことを考えますと、現実的にこの解決策というものは、今我々が審議してきたことが十分生かされてきたのではないかなと判断をしておるところでございます。その上にのっとりまして、ぜひ民主主義、議会政治のルールに乗って粛々と採決を行うべきと考えております。  最後に、私ども新党さきがけは、金融関連六法案の一刻も早い成立とともに、住専問題を引き起こした大蔵省中心の金融行政の改革に向けて引き続き積極的に取り組み、次期通常国会において日銀法、大蔵省設置法等の関係法令を整備していくという強い決意を表明して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  129. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  130. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 私は、平成会を代表いたしまして、ただいま議題となっております住専処理法案を初めとする金融法案に反対の討論を行うものであります。  以下、その理由を申し述べます。  まず、今回の住専処理法案の大枠を定めている住専処理スキームの作成が、そして六千八百五十億円の財政資金投入のプロセスがいずれも密室協議で決められ、しかも大多数の国民の意見を無視した結果のものであることは明白であります。  去る三月五日、連立与党は、今後五年間でリストラにより民間金融機関が五千億円、農林系は千八百億円の税収増を実現し、財政支出に見合う額を捻出する等の論弁とまやかしの追加措置を決定し、一層の国民の非難と反発を招きました。  また、財政資金投入に対する国民の怒りが大きいことを知ると、母体行を初めとする関係金融機関に強引に追加負担を求め、あろうことかそれを法律の枠外で実施しようとしています。  こうした措置をとらざるを得なくなったことは、既に政府住専処理スキーム破綻したことを示しており、政府法案を撤回し、新たな処理スキームを再提案すべきと申せましょう。政府の行おうとしている行為は、自分の作成した法律をみずからなし崩し的に変更しようとするもので、法治国家、民主国家の政府のとるべき態度ではなく、民主主義のルールを大きく逸脱したものと言えます。  その追加負担による新たなる寄与策なるものも具体的な形でいまだ国民の前に示されていませんし、巷間伝えられる内容を見る限りは、十五年かけて財政支出を軽減するという相変わらずの小手先の糊塗策、びほう策の域を出ていません。  いずれにしても、六千八百五十億円の財政資金を住専処理に投入し、使う方針は何ら変えていないというのが実態であります。  さて、住専破綻は、九三年二月の住専第二次再建計画で、大蔵省及び農水省の担当局長覚書を交わし、母体行が無節操にそれを受け入れたことが今日の大きな原因となっておりますが、巨額の税金の使途が一役人にすぎない局長の密室での覚書に縛られてよいものでありましょうか。  政府は、口を開けば金融システムを維持するためのぎりぎりの選択と言っておりますが、今回の六千八百五十億円の財政資金投入は、母体行、一般行、農林系金融機関あるいは大蔵省農水省という行政当局、さらには政府与党、それぞれが責任をなすり合う結果生じた何の根拠も見出せない産物なのであります。その結果、具体的に金融システムのどこに影響が出て、預金者にどのような不利益を与えるのか、今に至るまで明確な答弁はなされておりません。  当初、大蔵省住専処理に伴う一次損失を七兆五千億円と見積もっておりました。しかし、土壇場でのつじつま合わせで一次損失を六兆四千億円に圧縮し、財政資金の投入につなげたわけであります。  特に農林系の負担については、政府母体行及び農林系に配慮に配慮を重ねた結果として出てきた数字であり、財政資金という一番取りやすいところで埋め合わせを行ったと言われても仕方ないものであります。  我々は、政府の関与を排し、自己責任原則に基づく会社更生法による住専処理及び管財業務を遂行、支援する日本版RTCとも言うべき不良債権処理公社の設立を求めてまいりました。裁判所が関与すれば、透明性が高い上に、債権者の責任と負担の関係がはっきりいたします。  また、市場原理と自己責任原則の徹底と透明な制度という我が国金融システムの目指すべき将来方向にも合致することとなります。その意味では、政府住専処理は全く時代の要請に逆行するものであると指摘せざるを得ません。  住専処理機構が将来、債権回収を行い、二次損失が出た場合、これを政府と民間金融機関でそれぞれ二分の一ずつ負担することとしておりますが、どの程度の損失が出るのか、なぜ政府が二分の一の負担なのか明確になっておりません。  こうした措置をとらなければならないのは、さきに申し上げたように、処理スキーム策定において一次損失を七兆五千億円とせず、六兆四千億円と低く見積もるというまやかしから来る損失処理の先送りが原因になっているのであります。  また、法案では回収利益の国庫還元が盛り込まれておりますが、回収で利益を生むようなケースはほとんど想定できませんし、さらに住専経営者への責任追及が果たして担保されているのかも不明確であります。  以上のような理由から今回の住専処理法案に断固反対するものであります。  また、議員立法で提案されております住専債権時効延長法案につきましても、政府住専処理法案責任追及における法的な不備、問題点をみずから暴露したものであり、同様に反対であります。  次に、金融法案について申し上げます。  これらの法案は、昨年十二月に出された金融制度調査会報告書の内容に基づいて作成されたものでありますが、これら法案と報告書が目指す金融機関不良債権の早期処理、市場規律に立脚した透明性の高い金融システムの構築とは法案は整合がとれておりません。  まず、預金保険法改正案でありますが、これは五年後の保険金の支払いに係るペイオフの仕組みを整備するほか、今後五年間預金を全額保護するための時限措置として、預金保険機構に一般金融機関特別勘定と信用組合特別勘定を設け破綻金融機関に対し資金援助を行うこととしております。特に、破綻信用組合については東京共同銀行を改組した整理回収銀行によって処理し、五年後に預金保険機構の特別勘定が赤字となった場合には財政資金投入への道筋がつけられております。  しかし、こうした金融機関不良債権処理において、なぜ信用組合のみを対象として整理回収銀行を使った枠組みを用意するのか、明確な理由づけがありません。結局、この措置は破綻の可能性が高いものから処理の枠組みをとりあえずつくったという場当たり的なものでしかありません。こうした対応はかえって信用組合に預金している国民に動揺を与え、大きな資金シフトが生ずることも懸念されるところであり、金融システム全体を見通した預金者の信頼回復に資することにはなりません。  また、整理回収銀行についても、すべての金融機関不良債権処理を対象としたより公的なものにすることが必要であると考え、反対であります。  次に、農水産業協同組合貯金保険法改正案についてでありますが、この法案は、預金保険法と同様に五年間の時限的措置として貯金の全額を保護するために保険料を現行の二・五倍に引き上げようとするものでありますが、預金保険法の方の七倍と一致しておりません。これは農林系金融機関の負担のみを考慮し、多額のノンバンク向け融資を行っている農林系に対して万全の措置と言えるものではなく、不十分で、反対であります。  最後に、金融機関健全性確保法案及び更生手続特例法案について申し上げますと、早期是正措置の発動基準が依然不明確なこと、更生手続の申し立てが金融機関がいかなる状況になった場合にとられるのか明確ではありません。  こうしたことから、いずれの場合も金融当局の裁量の余地が拡大し、国際標準ルールと比べてかけ離れているのではないかという疑問を持たざるを得ず、両案について反対いたします。  以上、るる今回の法案に反対する理由を申し上げてまいりましたが、政府は、どうしてこのような国民が強く反対する意思を無視して、力づくで法案を通そうとするのでしょうか。今後、二十一世紀の金融システムを展望した議論が切に望まれるとき、国会がその使命を果たさず、政府提出した法案の単なる追認機関となってはなりません。  政府与党がメンツのためだけに執着して、国民の意思をないがしろにする今回の法案は、今後の不良債権処理のあしき先例となるばかりでなく、国際金融システムの一翼を担う我が国金融機関にとっても不幸であることを申し上げまして、私の反対討論といたします。(拍手)     —————————————
  131. 坂野重信

    委員長坂野重信君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、阿曽田清君が委員を辞任され、その補欠として寺澤芳男君が選任されました。     —————————————
  132. 一井淳治

    ○一井淳治君 私は、自由民主党、社会民主党・護憲連合、新党さきがけを代表して、特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案等六法案について賛成の討論を行うものであります。  まず、特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案について申し上げます。  これまで先延ばししてきました住専処理対策は、放置すると金融不安など国民生活への重大な影響を引き起こすおそれがあります。本法案の定めたスキームを早急に強力に実施することによりまして我が国金融システムの活性化と経済の発展を確かなものにし、預金者保護も図っていくものであり、まさに必要不可欠なものであります。いわゆる会社更生などの法的処理では、複雑な案件の処理に著しく手間取りまして全く現実性がないのであります。  次に、金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案金融機関更生手続特例等に関する法律案預金保険法の一部を改正する法律案について申し上げます。  三法案は、金融の自由化、国際化が進む中で、自己責任の原則と市場原理を基軸とした透明性の高い金融システムを確立していくことにより、金融機関経営の健全性の確保と破綻処理コストの抑制を図り、不良債権問題を再発させまいとするもので、そのため、それぞれ重要な方策をきめ細かく講じ、経営基盤の脆弱な信用組合などを含めて万全な措置を確保していくものでありまして、これら諸法案もまた必要不可欠なものであります。  次に、農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案でありますが、農協、漁協の貯金者の保護と信用秩序の維持を図るための制度の改善を行う重要な内容を含んだものであります。  最後に、特定住宅金融専門会社が有する債権時効停止等に関する特別措置法案でありますが、住専の有する債権についての時効を一定期間完成させないなど、債権回収の円滑、確実を図るものであります。  以上のとおり、六法案はいずれも重要な内容であり、法案の成立が強く期待されているのであります。  人類の歴史を振り返りますと、困難に負けて衰退に向かった歴史だけでなく、国民が結束して困難に立ち向かい、発展した歴史もあります。我々は、金融システム経済の大動脈であり、六法案を早急に成立させ、そして関係法律内容を適切に実現していく関係者のひたむきな努力によりまして、日本経済の活性化と発展を図らねばならないと考えているのであります。  今後、住専処理に関して、国民に約束したとおり、厳しく債権回収と責任追及をしていかねばなりません。その作業は、大蔵省の行政を含めて、関係者に反省と将来に向けての改革と前進の材料を提供する作業でもあり、また、責任感がゆがんだ、そして節度を失った経済関係者に正常なモラルを復活させ立て直しを図る作業でもあり、また、仮にブラックの世界に巨額の金額が流入しているものであるならば、ブラックの世界からマネーを取り戻し、ブラックマネーの支配力を圧縮する作業でもあります。我々は、今後とも法案の実行などについて厳しく監視していかなければならないと思うものであります。  この六法案の成立と、これによる新しい政策の展開が、国際的に通用し公正かつ効率性の高い金融システムを打ち立て、我が国と世界の経済の発展に大きく寄与することを強く期待を申し上げ、賛成の討論を終わらせていただきます。(拍手)
  133. 有働正治

    有働正治君 私は、日本共産党を代表して、住専処理法案を中心とする五法案について反対、農水産業協同組合貯金保険法改正案に賛成の討論を行います。  国民の九割は住専処理への税金投入に反対しています。その国民が本委員会に求めたものは、政府が追加負担策を示し、国民の大勢を占める声にこたえる道ではなかったでしょうか。十分な審議を行えば今国会内成立は絶対不可能です。にもかかわらず、実質一週間にも満たない審議時間で、数を頼りに採決を強行することは、世論に逆らい、参議院の責務を放棄し、民主主義の根幹を揺るがす暴挙であると政府・連立与党の態度をまず厳しく糾弾するものです。  住専処理法案は、不良債権処理に初めて国の財政資金を投入するものであり、一次損失の処理に六千八百五十億円の財政資金を入れるのみか、二次損失の二分の一を税金で穴埋めしょうというものです。国民の負担は少なくとも一兆二千億円、それを超えてさらに膨らむことは確実であり、処理スキームの破綻は必至です。  この間の審議で明らかになったように、住専を設立、経営を支配し、紹介融資などで甘い汁を吸い、あげくの果て住専をつぶしたのも母体銀行です。母体行がはっきりしている住専処理は、これまでのルール同様に母体行の責任で行うべきものです。  しかるに本法案は、住専破綻させた母体銀行責任と負担を免罪し、そのツケを果てしない税金投入によって国民に負わせるレールを敷くものです。しかも、なぜ六千八百五十億円なのか、なぜ二次損失の穴埋めを国民が割り勘とも言える折半にしなければならないのか、政府はその根拠を何ら説明することができませんでした。また、政府与党が検討している新基金構想は、六千八百五十億円の肩がわりにならないのみか、二次損失への税金投入の無限軌道の仕組みについては全く手つかずのものです。このような希代の悪法案を認めることは後世に重大な禍根を残すものと言わざるを得ません。  さて、その他の法案について、それぞれ一言ずつ論及します。  金融機関破綻処理ルールを定めるときに必要なことは、母体責任原則の確認であり、母体銀行等の責任を免罪する抜け道をつくることは許されません。金融機関健全性確保法案金融機関更生手続特例法案預金保険法の一部改正案の三法案は、お互いにリンクし合い、こうした抜け道を広げ、経営困難な信用組合などの整理、淘汰を促進するおそれがあり、我が党はこれらの法案に反対です。  預金保険法の一部改正案では、破綻信用組合の処理公的資金を導入することが盛り込まれています。これは、住専処理法案で踏み出した税金投入主義の流れを進めるものであり、断じて認められません。また、預金保険機構は預金者保護のための機関ですが、今回の改正案は、救済金融機関破綻金融機関の不良部分を切り離して、それを預金保険機構や整理回収銀行に押しつける仕組みをつくっており、預金保険機構を銀行業界救済的性格を持つものへと変質させるものと言わなければなりません。  金融機関更生手続特例法案についてです。我が党は、金融機関破綻対処する上で法的ルールを整備することを一般的に否定するものではありません。しかし、今回の特例法案は、母体行の責任と負担の原則に全く触れておらず、母体行等が主要な責任を負う破綻処理においても、会社更生法、破産法の適用による処理が不当に促進されるおそれがあり、賛成できません。  金融機関等経営健全性確保法案は、早期是正措置によって大蔵省が業務停止を命令できることとしています。しかし、明確な発動基準が示されておらず、大蔵省の恣意的運用のおそれもあり、預金保険法改正案、更生手続特例法案とリンクすることにより、信用組合等の整理、淘汰と大銀行責任を免罪する危険を拡大するものと言わなければならず、賛成できません。  与党提出住専七社が有する債権時効停止等特別措置法案は、住専処理法案の成立を前提としたものであり、賛成できません。日本共産党は、債権回収は母体行が責任を持って行い、これを厳しく監視することを主張するものです。  農水産業協同組合貯金保険法の一部改正案は、経営困難に陥った農水産業協同組合が保険事故に至ることを防ぎ、預金者の負担を回避する等の措置であり、賛成するものです。  最後に、住専処理に税金を使うなという国民多数の声を踏みにじる政府及び諸政党は国民の厳しい指弾を浴びざるを得ないことを指摘し、日本共産党を代表しての討論を終わります。
  134. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案の採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  135. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  136. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、金融機関更生手続特例等に関する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  137. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、預金保険法の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  138. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  139. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、特定住宅金融専門会社が有する債権時効停止等に関する特別措置法案の採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  140. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十三分散会      —————・—————