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佐藤道夫君 高邁な御議論の後に恐縮ですが、また話は現実に戻ります。純然たる
法律論でございまして、私自身
考えてもよくわからないものですから、明快に御説明いただければありがたいと思います。
憲法十四条に法のもとの平等を定めております。言うまでもないことですけれども、特別な理由、合理的な理由がない限り同じような状態にある人は同じように扱わねばならない、身分その他で差別してはいけないと、これが近代法治国家の
大原則と言われております。当たり前といえば当たり前のことです。
そこで、設例を挙げさせていただきますけれども、ある人が
銀行から融資を受ける、あるいはまた住宅
金融公庫から住宅ローンを組んでもらうということになりまして、払っていたんですが、あるときから払わなくなった。払えないのか払わないのかよくわからないんですけれども、いずれにしろ払わない。そういうことで、
銀行の担当者あるいはまた住宅公庫の担当者が
調査に行きまして、まず
事務所に入れてくれと言う。いや、入れない。
帳簿をちょっと見せてくれ。いや、見せない。あなた、何かお金があるといううわさですけれども隠しておるようなことはないでしょうかねと、こう聞くと、そんなものはないと。本当はあるんで、それはほかに用途が決まっておるので払いの方には回せないので、金はないと、こううそを言う。
これは
考えようによっては大変けしからぬ行為です。金を借りて返すのが当たり前で、それを返さない。しかもうそまで言う。
債権者には全く
協力しない。けしからぬ話であると思いますが、
民事というのはやむを得ない、そういうことなのでありまして、
債権者が強制力を使うことは一切許されておりません。無理に
事務所に入ろうとすれば住居侵入、
帳簿を無理やり見ようとすれば強要罪、それから、あなた金を隠しているんじゃないかと言って無理やり言わせようとすればこれまた強要罪ということで、
債権者が処罰されてしまうわけであります。やっぱり裁判所に訴えて、証拠を出して、裁判所の適正な判断を仰ぐと、これが一般化した
民事のルールであります。
次に、
住専問題についての
債務者のことについて例を挙げてみますると、
住専から
債務者が金を借りておる、あるいはまた住宅ローンを組んだと、こういうふうにいたしますが、あるときを境にまた払わなくなった。払えないのか払わないのかよくわからない。多分払えないんでしょうけれども、払わないという人も多いわけであります。
今までは、
住専がやってきますと追い返してそれで済んでいたわけです。文句があるなら裁判所に訴えろと、こう言ってそれで済んでいたんですけれども、今度はどうもそうはいかなくなりまして、ある日突然に
預金保険機構の職員と称する人が乗り込んでまいりまして、まず
事務所に入れてくれと。これは断ります。次に
帳簿を見せてくれと。これも断ります。あなた、お金があるんでしょう、あるなら払いなさいよと、こう言うと、本当はあるんですけれども、それは別に、もう既に隠してあるのか、あるいはまたよそに使うことになっておるのか、金はないよと、こういううそを言うわけです。
これまた大変けしからぬ行為でありまして、これで済むかと思うと、今度は済まないわけで、次の日は警察官が乗り込んでまいりまして、あなたは
法律違反である、これは犯罪である、よってもって検挙をする、任意捜査に
協力しなければ逮捕もされるわけでありまして、起訴されて罰金五十万円以下と、こういうことになってしまうわけです。
私ここでよくわからないのは、
銀行から借りて払わない、これはまことにけしからぬ、しかもうそまで言っている。
住専から借りて払わないうそまで言っている、これもけしからぬ。全く同じではないかと。なぜこの
住専からの
債務者だけが特別不利益な扱いを受けるんだろうかと。
こういうことを言いますと、
佐藤議員はこの前、オウムに対する破防法適用の問題でオウムの味方をした、今度は
住専の
借り手の味方をするのかと言われそうでありますけれども、そんなことはないのでありまして、私は理屈だけを言っておって、この理論の筋道は
一体どういうことになるのか、それを承りたいなと、こう思っておるわけであります。
要するに、同じような立場にある者を同じように扱うのが法治国家の鉄則でありますから、
銀行から借りて払わないうそを言っている者を放置しておいて、
住専から借りた、うそを言っている者だけをなぜ処罰するのか、この理屈をお教え願えればと思うんです。
多分、こういうことになりますと、
公的資金を導入することが決まったからなんですよと、こういう答えになるんじゃないかなと。これしかないようにも思うんですけれども、
公的資金の導入は理屈にはならぬように思いますよ。
住専から借りたときは、
住専というのは単なる民間の貸金業者でありまして、それを借りて返さなかったというだけでありますが、途中から何か貸し手の方に
事情の変化があったらしくて大変な
経営不振になってきたと、貸し手にまた貸しておる農協系その他がおかしくなっているというのは、実は
債務者には余り
関係のないことなんですね。要すれば、
債務者が返済するかしないか、それだけのことなんです。
そういうことを言いますと、
公的資金を導入するという信用組合、あれについての
借り手は
一体どういうことになるのか、あそこにもまた同じような規定を置く必要があるんじゃないかということになります。
それから、
銀行というのは、これは
住専以上にはるかに公共性の高い
金融機関でありまして、これは
預金者の金を貸す、あるいはまた日銀の金、これは
公的資金であります、これを直接貸すわけですから、
公的資金、
預金者の金、公共的な性格の金を借りて返さない、これはまことにけしからぬ話ではないか、同じような罰則規定を置いて強制しろ、無理にでも払わせろと、こういうことになりかねないわけであります。
特に住宅ローンのことで
考えてみますると、住宅公庫というのは、これはまさしく税金で
運用されておる、財政投融資資金もあるようでありますけれども。その税金を借りて払わないやつは、
住専のローンを組んでそれを払わないやつよりはるかに悪いではないか。その金はまず第一に返させるべきではないかと。それを放置しておいて、これだけなぜ罰則を背景にして強制力を行使して返済を迫るのか。返済を迫って悪いということを言っているわけじゃないんであって、理屈を教えてもらいたいと、こういうことなのであります。お願いいたします。