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1996-06-14 第136回国会 参議院 金融問題等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十四日(金曜日)    午前九時九分開会     ―――――――――――――    委員の異動  六月十四日     辞任         補欠選任      小林  元君     牛嶋  正君      吉岡 吉典君     吉川 春子君      佐藤 道夫君     島袋 宗康君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         坂野 重信君     理 事                 中曽根弘文君                 前田 勲男君                 吉村剛太郎君                 直嶋 正行君                 林  寛子君                 一井 淳治君                 筆坂 秀世君     委 員                 笠原 潤一君                 金田 勝年君                 佐藤 静雄君                 関根 則之君                 楢崎 泰昌君                 服部三男雄君                 平田 耕一君                 保坂 三蔵君                 真島 一男君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 阿曽田 清君                 荒木 清寛君                 牛嶋  正君                 海野 義孝君                 高橋 令則君                 益田 洋介君                 山下 栄一君                 渡辺 孝男君                 伊藤 基隆君                 大脇 雅子君                 梶原 敬義君                 山本 正和君                 吉岡 吉典君                 吉川 春子君                 小島 慶三君                 佐藤 道夫君                 奥村 展三君    衆議院議員        発  議  者  永井 哲男君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        大 蔵 大 臣  久保  亘君        農林水産大臣   大原 一三君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       田中 秀征君    政府委員        内閣法制局長官  大森 政輔君        経済企画庁調整        局長       糠谷 真平君        経済企画庁調査        局長       中名生 隆君        法務省民事局長  濱崎 恭生君        法務省刑事局長  原田 明夫君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局次        長        伏屋 和彦君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        農林水産大臣官        房長       高木 勇樹君        農林水産省経済        局長       堤  英隆君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    参考人        日本銀行理事   山口  泰君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○特定住宅金融専門会社債権債務処理促進  等に関する特別措置法案内閣提出、衆議院送  付) ○金融機関等経営健全性確保のための関係法  律の整備に関する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○金融機関更生手続特例等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付) ○農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○特定住宅金融専門会社が有する債権時効の停  止等に関する特別措置法案衆議院提出)     ―――――――――――――
  2. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから金融問題等に関する特別委員会を開会いたします。  特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案金融機関更生手続特例等に関する法律案預金保険法の一部を改正する法律案農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び特定住宅金融専門会社が有する債権時効停止等に関する特別措置法案以上六案を一括して議題といたします。     ―――――――――――――
  3. 坂野重信

    委員長坂野重信君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案外五案の審査のため、本日、参考人として日本銀行理事山口泰君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 大脇雅子

    大脇雅子君 我が国の金融システムは、昭和恐慌以来経験したことのない危機的な状況にあります。巨大な不良債権をでき得る限り早期処理しない限り、日本金融システム国際競争力を失い、さらに深刻な危機をもたらすと考えられます。  住専処理は、そのための緊急避難的措置であるとは考えますが、金融システム再生プラン構築のためにより果断な政策的な対応が必要であると考えます。資産評価の回復さえ実現すれば自然治癒するはずだという希望的観測は、もはや事実として裏切られております。危機危機として認識するということが重要だと思います。  私は、第一番目に、住専処理スキーム負担割合妥当性によって決められたというものではなく、それぞれが妥当と考えられる負担割合から可能な限りの譲歩を求めた結果としてでき上がったものと考えております。  去る十二日、参考人として出席した全国銀行協会連合会会長橋本氏は、現在新たな寄与として新しい基金方式について検討を始めたと述べられました。新聞報道によりましても、共通する基本的パターンとして、基金方式により実施して、その規模は七千億と言われております。そして、その基金期間は十五年、寄与する金額は五千億円台、この線で大蔵省銀行界調整に入ったと報じております。  新聞報道にもあったこのような基金の創設について、大蔵省銀行の間では相当程度の話し合いが進行しているのでしょうか、それはどのような内容のものでございましょうか、大蔵大臣にお尋ねいたします。
  7. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 政府として追加負担による新たなる寄与を求める考え方を終始国会にも申し上げてまいりましたし、また国会におきましても各党の皆様方から強い御意見もございました。そのような方向金融機関側との接触を続けてまいったわけでありますが、できますならば、この国会の既定の会期中には何としても大枠方向を合意いたしたい、このようなことで今精力的に努力を続けているところでございます。  一昨日、銀行局長金融機関の代表の方々とお会いいたしました際に、新基金設立によるその基金運用益を国庫に還元するという考え方についても有力な考え方一つとして提示いたしました。これらについて金融機関の側からも意見が出されているところでございますが、この基金金額的な枠組みとかその負担の仕方とかいったようなところまでまだ詰めているわけではございませんが、新しい基金の設置を有力な一つ考え方として検討の素材として投げかけているという段階でございます。さらにこれらの協議を進めて大枠の合意を得られるよう努力いたしたいと考えております。
  8. 大脇雅子

    大脇雅子君 こうした国民負担軽減、これは限りなくゼロに近いことが望ましいと思いますが、金融秩序の維持に責任を有する金融機関といたしましては、やはり住専に深くかかわった母体行により大きな拠出を求めるべきではないかと考えております。    〔委員長退席理事前田勲男着席〕 これこそが社会的責任を果たすための貢献と考えられますが、大蔵大臣はいかがお考えでしょうか。
  9. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 仮に、新たな基金をつくります場合にどのような負担を行うかというようなことを論議いたします場合には、今御意見がございましたように、住専問題に関する責任をどう果たすかということと、それから現にどのような体力考えられるか、体力を保有しているか、そういうこと等を勘案の上それらの問題は検討せられるべきものと考えておりまして、母体行の住専問題に関する責任の重さについては銀行協会側も十分に承知されていることと考えております。
  10. 大脇雅子

    大脇雅子君 このことについて農水省は相談を受けておられるのでしょうか。また、農協系統に対しては相談を持ちかけられておられるのでしょうか。相談があったとすれば、いつから協議の列に参加されているのでしょうか、お尋ねいたします。
  11. 大原一三

    国務大臣大原一三君) ただいま大蔵大臣からお話がありましたように、銀行協会との間で新しい基金をつくることについて相談を始めたという連絡がございまして、金額その他については一切メンションがございません。これから交渉が行われるものと思うのでありますが、まだしたがって昨夜でございまして、本件について私の方から系統の方へは御連絡をしておりません。これからの課題でございます。
  12. 大脇雅子

    大脇雅子君 ただいま大蔵大臣から体力に応じてというお話がありましたが、農協系統に対する相談がないまま大蔵省と全銀協との間だけで議論が進んでいるとすれば、金融界全体としての協議が果たせるかどうかということもありますので、ぜひ系統も含めた全金融機関による検討をお願いいたしまして、関係者理解協力を得ていっていただきたいと思います。  さらに、国民負担軽減に関しましては、まず設立される回収スキームに基づきまして債権回収最大限に行うこと、それから住専経営者母体行、借り手に対する損害賠償請求最大限に行うこと、二次ロスを極力生じさせないようにすることによって実現されるものと考えられます。そのために、特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案をめぐりまして一、二御質問をいたしたいと思います。    〔理事前田勲男退席委員長着席〕  この法案によりますと、債務者財産隠ぺいその他債務者財産実態を把握する必要性は大変重要でございますが、それに対して調査を行うとしております。この調査権の具体的な行使方法というものはどのようなものでしょうか。
  13. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 今回の住専処理法案におきましては、住専債務者資産隠し等に対処する観点から、債務者財産が隠ぺいされているおそれがあるもの、その他その債務者財産実態を解明することが特に必要であると認められるものにつきまして、債務者その他の関係者が所有、占有する不動産に立ち入りまして、当該不動産の現状の確認や質問を行い、またはこれらの者の財産に関する帳簿等の提示及び説明を求めることができる財産調査権預金保険機構に付与することといたしております。違反者には五十万円以下の罰金が科せられることになっております。  こうした財産調査権等を迅速かつ的確に活用することによりまして債務者自身財産実態を解明いたしまして、預金保険機構住専処理機構一体となりまして回収に取り組むことにより、強力な債権回収が実現するものと考えております。
  14. 大脇雅子

    大脇雅子君 この法案では、民間金融機関負担によりまして預金保険機構に新たに設置される基金約一兆円の運用益活用をして処理に役立てる方式となっておりますが、この運用益活用方法というものは具体的にどのような内容のものでしょうか。
  15. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 金融安定化拠出基金は、住専処理機構の円滑な業務遂行のための助成金の交付を行うため、住専に対する出融資者であった金融機関等拠出により預金保険機構に浩成されることとなっております。したがって、同基金運用につきましては、預金保険法の定めろところによりまして、有価証券預金等により運用されることになります。  そこで、その運用益が今後住専処理機構存続期間、これは十五年間を予定しておりますが、その間にどの程度見込めるか、こういう問題でございますが、まさにこれは今後の経済金融情勢のいかんによるところが大きいものでございまして、今後金利がどのような動向を示すか、これはなかなか予測が難しいところもございます。現時点で確定的に見通すことは困難でございますが、預金保険機構といたしましては、法令等に定められた要件のもとで最も効率的な資金運用を図っていくものと理解をいたしております。  ちなみに、預金保険機構の最近における資金運用平均利回りは、平成六年度におきまして三・七%強、平成五年度におきまして三・九%程度、このようになっております。
  16. 大脇雅子

    大脇雅子君 住専七社合計の要処理総額の算定の欠損見込み額が提出されておりますが、資産評価の一層の低下とあるいは金利の追い貸しが表面化することによって、この欠損見込み額は現在どのように算定されておりますでしょうか。
  17. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 欠損見込み額千四百億円の積算に当たりましては、住専各社資産譲渡時までの期間損失繰越分、すなわち欠損金譲渡時には損失として処理することが必要であるため、欠損金として算出しております。この金額は約二千九百億円でございます。  また、処理に当たりましては、資本金等の充当を求めることといたしまして、すなわち住専資本金はすべてなくなる、これに充てるということを想定しているわけですが、したがいまして、住専資本金等を控除する必要があるわけでございます。この資本金等自己資本により充当する額は約千五百億円でございます。  以上の結果、欠損見込み額を約二千九百億円から約千五百億円を控除した金額である千四百億円と算出しているところでございます。これは、今後住専処理機構設立されました後に各住専処理計画、最終的な処分計画が策定されますと、その中で決定される、最終的な確定をされることになるわけでございますが、現段階におきましては、ただいま申しましたような見込みを修正する必要があるという事情にはないと考えております。
  18. 大脇雅子

    大脇雅子君 強力な回収体制の確立につきまして、預金保険機構には債権回収推進指導部という構成がなされておりまして、幅広く人材を求める必要があるとされております。  特に今回のスキームについては、国民理解を得るためにも、専門家を含めてでき得る限り国民参加協力体制をとっていくことが必要だと考えます。とりわけ法律専門家につきましては、日弁連の民事暴力対策委員会というものに長い間蓄積された民事暴力に対するノウハウがあります。こうしたことを活用すべきだと思いますが、この点についてどのような検討が始められているのでしょうか、お尋ねいたします。
  19. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 今般の住専処理策におきましては、預金保険機構は、罰則に裏打ちされました財産調査権等を背景にいたしまして、住専処理機構一体的に、住専七社からの譲り受け資産について強力かつ効率的な管理回収処分や厳格な責任追及を行うことといたしております。  このような預金保険機構体制整備につきましては、こうした趣旨等を十分に踏まえつつ現在鋭意具体化検討を行っておりますが、まず組織面では、債権等管理回収体制の司令塔及び実行推進役といたしまして、ただいま委員指摘の強力な専門家集団でございます特別業務部を新設するとともに、これを担う人材といたしましては、法務検察、警察・国税当局等の職員を中心に、御指摘のように弁護士や不動産取引専門家などの参加を求める方向関係方面調整してまいりたいと考えております。
  20. 大脇雅子

    大脇雅子君 担保不動産は適正に売却されるということをもって回収が図られるわけですが、購入自身公的資金を導入するということは大変問題があると思われます。また、不良債権の償却が帳簿上のものだけであれば、いわば不動産は塩漬けになるだけでございます。  したがって、担保不動産の適正な売却のためには国民への情報開示が必要であり、幅広いいわゆる適正売却組織が広がっていくことが重要だと思いますが、この点についてはどのような対策考えておられるのでしょうか。
  21. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘のように、この住専処理にとどまりませず、現在直面しております不良債権問題の処理に際しましては、担保不動産等処分売却、これが大問題であるということは委員指摘のとおりかと私どもも考えております。現在、不良債権処理が進んでいるとはいうものの、まだまだ帳簿の上での処理にとどまっているというものも少なくございませんで、今後このような不動産処分を進めてまいるということが大きな課題になろうかと存じます。  しかしながら、現段階におきましては不動産市場が必ずしもまだ活発でないというようなことで、この処分になかなか難渋をしているわけでございますが、今後このような問題につきまして関係当局、すなわち建設省とか国土庁とか、そういう方面のお考えをも伺い、また不動産関係者のお知恵も拝借いたしながら適切に対処してまいりたいと考えております。
  22. 大脇雅子

    大脇雅子君 今回、時効停止に関しまして新しい法案が制定されようとしております。  特定住専の有している債権時効停止することにした理由は何でしょうか。そして、どのくらいのものがこの法律によって時効の消滅から救われると考えられるのでしょうか。
  23. 永井哲男

    衆議院議員永井哲男君) いわゆる住専処理法案が成立することによりまして、債権処理会社特定住専から有していた債権を譲り受け、預金保険機構とともにその債権回収に鋭意努めることとなります。  この債権の譲り受けに関しては、債権処理会社設立後の一定の時期に約二十万件もある大量の債権を集中的に処理することとなります。しかも、債権処理会社組織としては可能な限り効率的か業務運営が求められております。  特に、譲渡手続の途中ないし直後に時効完成する債権については、債権処理会社等において一つ一つ裁判上の請求等により時効中断を図ることも全く不可能ではありませんが、膨大な債権の譲り受けのための事務の中でこのような時効中断手続に遺漏なきを期するとすれば、債権処理会社事務負担が著しく過重となり、結局借り手等に対する責任追及が万全とはいかなくなるおそれがございます。  アメリカの例では、例えばRTCでは、一定不法行為による損害賠償請求権については時効完成済みでもその時効を復活させるというような制度もございますが、我が民法には、一定権利行使を困難とするような事情、例えば相続だとか地震等の災害がある場合に時効完成を防ぐという制度がございます。  そこで、特定住宅金融専門会社が有する債権時効停止等に関する特別措置法案によって、特定住専法案施行日において有する債権について、同日以降指定期間の終了する日の翌日から起算して一年を経過する日までの間は時効完成しないこととしたものでございます。  なお、この法によってどのくらいの債権の額かということでございますが、大蔵当局が各住専から聴取したところ、住専七社合計平成八年度については八百件、約一千億円、平成九年度については二千件、約三千二百億円、これらの額が放置しておけば時効に係る債権ということになります。
  24. 大脇雅子

    大脇雅子君 そうしますと、この法律施行されますと時効停止期間というのは実際上いつまでを意味するのでしょうか。
  25. 永井哲男

    衆議院議員永井哲男君) 指定期間というものが政令で定められることとなっておりますが、約一年間、一年を予定しております。設立の日から一年、そしてその後の一年、合計二年、この法律施行の日から効力を発することとなりますので、合計すると二年余りという形になります。
  26. 大脇雅子

    大脇雅子君 この強力かつ効率的な回収体制スキームを見ますと、どこに政策決定の一番のトップがあるのか、言ってみればだれが参謀本部なのかということが住専処理機構預金保険機構の両立ての中ではっきりしないと思います。住専処理機構預金保険機構役員というのは、証拠隠滅の疑いが持たれないように行政側とか金融機関から入れるべきではないと考えられますが、いかがでしょうか。
  27. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専処理機構及び預金保険機構役員につきましては、過去の取引経緯あるいは関係者利害等にとらわれることのないよう一新させることとして、例えば債権回収実務経験が豊かであるか、民事刑事法律実務に精通しているかといったような観点も考慮しつつ、必ずしも金融の知識だとか経験だとかの有無だけにとらわれることなく、公正な見地からの判断力にすぐれ、担当業務にふさわしい経験を有する人材が適当と考えられるわけでございます。  そういう観点から、法務検察金融界経済界、法曹界など幅広く選定する方向検討してまいりたいと考えておりますが、これも今後の課題かと存じております。
  28. 大脇雅子

    大脇雅子君 ちょっと質問とずれたのではないかと思いますが、住専処理機構というのは株式会社であり、預金保険機構というのは特定法人だと思うんですが、一応、預金保険機構が助言、指導を行うというスキームになっておりますが、その政策決定のかなめはどこかというふうにお尋ねしたんです。
  29. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専処理を実際に進めていく場合に、預金保険機構住専処理機構とは一体となりまして、不即不離の関係でそれぞれが任務を果たしていくということになろうかと存じますけれども、とりわけ全体の方針を決めるというような意味で申し上げますならば、どちらかといえば公的な色彩を強く持つ預金保険機構がその役割を担うことになろうかと考えております。
  30. 大脇雅子

    大脇雅子君 巨悪を眠らせないということがこの政策推進の背後にある大きなセオリーになる必要があると思います。住専処理機構預金保険機構の結果は随時国会において定期的に報告を行うべきであると考えます。この点について大蔵大臣のお考えはいかがでしょうか。
  31. 久保亘

    国務大臣久保亘君) この問題は日本の命運をかける問題だと申し上げてまいりました。  住専問題処理に当たりまして、国会に対して適時報告を申し上げることは処理機構の当然の任務であろう、このように考えております。私といたしましては、国会に対しましてできる限りの御報告を申し上げてまいりたいと考えております。
  32. 大脇雅子

    大脇雅子君 この回収スキームを強力かつ効率的に運営し早期回収を図るために、まさに魂を入れるためのリーダーシップを私は橋本総理に期待するものでございます。その点についての総理の御決意をお伺いいたします。
  33. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 御質問にお答えをいたします前に、改めて当委員会お礼を申し上げたいと存じます。  昨日、福岡空港におきまして航空機事故が発生いたしました際、その対応策を講じますに際し、委員会からさまざまな御配慮をいただき、時間的にもゆとりを与えていただきましてありがとうございました。冒頭、お礼を申し上げます。  今、大脇委員から御質問のありました点、私は、そのことは先ほどの久保大臣の御答弁とあわせて当然のことであろうと存じます。それだけに、預金保険機構及び住専処理機構の諸君が全力を挙げていただく、これに国税、法務検察、警察など幅広く人材を集めるだけではなく、協力体制をとってもらいながら、私もその一員として全力を挙げて回収に努力をいたしてまいります。
  34. 大脇雅子

    大脇雅子君 最後に、住専が事業者向けの融資を拡大した段階において、住専業務の是正勧告というもの、あるいはさまざまな政策を出していかなかった大蔵省責任というものは大きかったのではないかということが考えられます。  それにも増して、日本全体といたしましても、住専金融機関というものが物的担保主義とか株式投資というものに走ったことを容認したことにあるのではないかと思います。本来、融資先事業というのは、その将来性とかあるいは健全性の審査というものを土台にして行われるべきではなかったかと思います。  今後の再構築するあるべき金融の姿をどのようにお考えになっておられるのでしょうか。預金者保護というものは政策の要請ではございますけれども、国際競争力をしっかりつける形で、今ここを一番といたしまして新しい政策の展開が必要であると考えますが、いかがでしょうか。
  35. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専が発足いたしまして二十年余りの歴史があるわけでございますが、この間、日本経済金融は非常に大きな変動を遂げてまいりました。そのような中におきまして、バブルの発生、崩壊という今までに経験したことのないような大変な事態もございました。そのような中におきまして、金融行政が、その時々においては一生懸命やってきたものの、結果といたしまして必ずしもそのような激動の期間対応し切れなかったという面もあろうかと存じます。今日、住専についてこのような結果になっているということについては、私ども行政といたしましても反省すべき素材は数多く含まれているように感じているところでございます。  しかしながら、この事態を一刻も早く克服いたしまして、ただいま大脇委員指摘のように、二十一世紀を目指しました新しい金融体制に臨み得るような、世界に伍して我が国の金融も活躍ができるような体制を整えていくというのも私どもに課せられた大変に大きな課題であると考えているところでございます。
  36. 大脇雅子

    大脇雅子君 では、時間が来ましたので失礼します。(拍手)     ―――――――――――――
  37. 坂野重信

    委員長坂野重信君) この際、委員の異動について御報告いたします。本日、小林元君が委員を辞任され、その補欠として牛嶋正君が選任されました。     ―――――――――――――
  38. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 私は社会民主党の伊藤基隆でございます。  まず冒頭、大蔵事務当局と日銀に質問いたしますが、これらの質問は、その後に大蔵大臣の見解をお聞きしたいという予備的といいましょうか、そういう質問でございますので、よろしくお願いいたします。  まず、五月一日の参議院予算委員会で証人喚問が行われまして、住総の原元社長からの証言が行われまして、それをまず紹介申し上げます。  まず、井上委員長からの質問につきまして原さんはこのように答えております。「私が社長在任中について、このときは最高責任者でございましたので、振り返って申しますと、昭和五十六年から六十年ぐらい、最初の四年間は私どもの仕事は克明に住宅金融をこなしてまいりました。住宅金融というものの比率が恐らく九五%ぐらいこなしていたと思います。」「昭和五十七、八年からの、それだけが理由ではございませんけれども、一部の銀行等によります借りかえ攻勢等のインパクトも大変強いものがあったのでございます。」。  さらに、井上委員長質問に対しまして、「昭和六十二年六月から、これは私自身の所信でございましたが、もし住専が今後経営多角化の道を選ぶのならば、住宅金融専門会社の社長として信託銀行から御負託を受けた私の仕事は少しそれてきてしまう」ということで、「三菱信託銀行の専務をお務めになりました新谷さんに社長をバトンタッチした」と。  さらに、私の質問に対しまして、「私は、原社長から新谷社長にかわるときに、個人住宅ローンから事業別に変わっていくという転換点がある、すなわち信託銀行出身の方が社長になって、母体行との関係を密にしながらその方向に進んでいったのではないかというふうに思っておりますけれども、その点についてはいかがですか。」ということに対して原さんは、「大変難しい御質問でございます」が、専門の方が来られてやった方がいいと思っていたということでございます。  私は、一九八七年というときに注目をしておるわけでございますが、このときに借りかえ攻勢が激しく行われたと。住専経営多角化、すなわち個人住宅ローンから事業者向け融資に転換をしておる。さらには住総における社長交代が母体行の出身者になった。ほかの住専においてはそのようなことは起こっておりませんけれども、住総においてはそういうことがそのとき起こっているわけでございます。銀行は政策転換のはざまの中で巧みに身をかわしていったんではないかと私は実は思っているわけでございます。  そこで、八七年当時の土地政策について少し述べてみたいと思います。  一九八七年、行革審の中に土地臨調が設定されました。中曽根内閣のときでございます。土地臨調は竹下内閣のときに最終答申を行うわけでございますが、そのときに、地価高騰の責任として、一部の不動産業者と金融機関の融資等の行動は批判されるべきだ、政府、地方公共団体も総合的施策を欠き、対策が遅きに失するなど、責任は厳しく指摘される、地価はなお高水準であり、今後の地価の引き下げを目指す、そう最終答申の前書きに書いてございます。  さらに、八七年当時は国土利用計画法によります監視区域の適用というのが厳しく行われておりました。ただ、監視区域の適用から一歩進んだ規制区域というところにはいきませんでしたけれども、監視区域はそれだけ厳しい政策実行だったと私は思っております。  ただ、そのときに総量規制に先立つ不動産業者向け融資に関する金融機関をヒアリングしたというのがありますが、この内容について大蔵省からお答えいただきたいと思います。
  39. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 昭和六十一年、当局は金融機関に対しまして通達を発出いたしまして、投機的な土地取引等による融資はこれを厳に慎むよう求めておりました。  しかしながら、当時、依然として著しい地価の上昇が続いておりましたことから、昭和六十二年の七月以降、地価高騰地域等に営業基盤を有する金融機関等に対しまして御指摘の特別ヒアリングを実施したわけでございます。これは、土地関連の融資に至る審査体制や融資実行後のフォローアップ体制の充実強化等について指導を行い、投機的な土地取引や著しく適正を欠く価格による土地取引に対する融資を厳に慎むようにとの当局指導の趣旨の一層の徹底を図ったものでございます。  当時、このような行政を行うことにつきまして、世の中のそれを促すようなお声を背景にしたものであったというふうに記憶をいたしております。
  40. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 次に、日銀にお聞きいたしますが、一九八五年九月、先進五カ国蔵相会議によってドル高是正に向けたプラザ合意というものが合意されまして、急速にドル高修正局面に入っていきました。円レートは八五年九月一ドル二百三十円から、一年後には百六十円という円高になったわけでございます。円高不況ということが起こってきたわけでございます。  日銀は八六年一月以降公定歩合を五次にわたって引き下げまして、八七年二月に史上最低の二・五%ということになったわけでございます。低金利と過剰資金が土地投機に向かって地価の上昇を呼び起こしてきたわけでございます。  昨日の議論にもありましたとおり、当時東京が世界の情報・金融センターになるという話題は、株式市場の活況と相次ぐ外国金融機関の東京への進出、外国企業の東京市場への上場などが相まって現実味を帯びて、それがさらに東京の土地高騰に拍車をかける結果となりました。それが日本全土に波及し、バブル経済は全国を席巻して、日本全体が熱病に浮かされたようになったわけでございます。  金融緩和が株の大幅上昇、地価の大幅上昇を招いて、土地と金融資産に偏ったストック化は持てる者と持たざる者の資産格差を広げたと当時厳しく言われたものでございます。  当時、企業は直接市場からの資金供給を受ける状況の中で、資金需要は激減をして銀行の資金が大量に不動産市場に流出し、ノンバンクを含め全国銀行総貸出に占める不動産融資のシェアが三〇%近くになったという状況になるわけでございます。すなわち、政府が行った土地政策と当時の金融緩和というのは、土地対策金融政策が全く別の方向を向いて動いたんではないかということを考えますと、その辺に政策上の失敗があったんではないかというふうに思うわけでございますが、日銀のお考えをお聞きしたいと思います。
  41. 山口泰

    参考人山口泰君) 一九八〇年代の後半の金融政策についての御質問でございますけれども、当時を振り返ってみますと、確かに地価などの資産価額の上昇が次第に目立っていったわけでございますが、同時に、当時は急激な円高の進行の影響ということもございまして、一般的な物価の安定基調というのは維持されておりました。  申し上げるまでもなく、当時最大の政策課題は内需の拡大あるいは経済構造の調整ということを通じまして対外不均衡の是正を図るということにございまして、そのためには為替相場の安定ということが一つの大事な要件であるというふうに考えられておったと思います。  日本銀行といたしましては、物価の安定基調が崩れないという大前提のもとにおいてではございますけれども、為替相場の安定あるいは内需の拡大といった目標につきましても配慮せざるを得ないという状況でございまして、こういう中でぎりぎりの選択を迫られた結果が御指摘のような八〇年代後半の金融政策になったというふうに理解しております。
  42. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 そこで、大蔵大臣にお尋ね申し上げます。  住専問題が露見したのはまさにバブルの時期でございます。このバブルの形成と崩壊の過程を振り返ってその問題点を明らかにすることが将来のバブルの再演を防止する上で非常に重要ではなかろうかと思うわけでございます。住専絡みの不良債権に象徴されるバブルのツケは今、我が国経済国民に大きな負担となっておりまして、マクロ的統計にはあらわれませんが、国民を構成する一人一人の個人、一つ一つの家計が今なおバブルの後遺症に苦しんでおるところでございます。政治というのは、企業活動も非常に重要でございますが、国民に向けて政策を実行されなければならないと思います。私は、個人、家計がどうしたら本当に救われるかということを常に考えておりまして、そのことを念頭に置きまして御質問申し上げます。  バブルの形成と崩壊がもたらしたものについてはさまざま議論がございますけれども、金融機関がいつの間にかその使命である健全主義を逸脱して過剰な資金を土地投機に振り分けて、バブル拡大の主役を演じてしまったことは今のやりとりで実態的に明らかになってございます。しかも、そのツケ払いの原資は、金融機関みずからの企業努力というよりは多くの国民を犠牲にした超低金利政策による恩恵によって調達された。バブルをあおった責任が感じられないばかりか、最近は少し感じているのかもしれませんが、低金利政策の恩恵をみずからの努力による収益というふうにもし誤解しているとしたら大きな問題ではないかと思います。官房長官による批判というのは私も全く同感でありますし、国民の声ではないかなというふうに思っています。  さてそこで、先ほどの大蔵当局の答弁または日銀の答弁と私の質問の中で、政策的な正しさというものについて日銀は物価の問題または為替レートの問題を挙げられましたけれども、それは国際経済、対アメリカとの関係においては非常に重要であるし、またアメリカの経済をどうするかということが当時は最重要課題でございましたから、その点について否定するものではございません。  しかし、バブル形成期において経済政策の転換期があったとすれば、これもまた八七年なのでございますが、八七年十月のブラックマンデーのときではなかったろうかと思っております。  当時、西ドイツを初めとする西欧諸国は協調政策を放棄してインフレ抑制のための利上げに踏み切っていったわけですが、日本はその状況を踏襲しておったわけでございます。日本の利上げがドル暴落の引き金になり、世界の金融危機の発信地になることを恐れたというふうに思わざるを得ません。そのことはそのことでまた正しい、そこに政策の難しさがあるのだと思いますが、そのときにおけるドイツ中央銀行日本の中央銀行の独立性の差というものが今問題になっているのではないかと思っています。  金融政策はその後、一九八九年以降引き締めの方向に向かってバブルが崩壊していくわけでございます。一九八九年、最高値をつけた株価も、九〇年一月の大発会から大幅な下げに転じておりまして、いつまでたっても下げどまらない株価に投資家が悲鳴を上げているという状況が起こっていたにもかかわらず、日銀は市場の声を無視するかのように利上げ政策をとり続けてきたわけでごどいます。六%まで九〇年八月にはなりました。  この時期、政策的な失敗からバブルを発生させたのではないか、または、それに急ブレーキをかけて、バブルとともに日本経済まで一緒に崩壊させてしまうようなことになったのではないかというふうに思うわけでございます。政策当局の考え、特に財テクに走って日本経済をゆがめてしまった経済界責任、とりわけ金融機関責任は非常に大きいと思っております。  このような政策判断がどのようなシステムの中でなされてきたのか、その政策選択の是非、責任の所在、また、二度と再演させないという立場からの大蔵大臣考え方をお聞きしたいと思います。
  43. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 経済の動向に対して的確な対応、適切な行政の立場からの指導、そういうものが行われてきたかと、こういうことになってまいりますと、今御意見がございましたように、結果として振り返ってみれば多くの問題を残していると私は率直に考えております。  確かに、プラザ合意以降の問題というのは、一つは内需拡大ということが基本にあって進められたことでございますが、バブルの発生、破綻、あらゆるそういうものを振り返ってみましても、金融行政の基本は国民経済国民生活をどのようにして守るかということが基本になければ的確な、適切な対応は生まれてこないと、こう思っております。  そういう点からいたしますと、金融といいますか、公定歩合の操作は日銀の専権事項ということでありますけれども、それならばそれなりにやはり国の経済金融、こういうものに関して責任の持てる判断というものをどのように下していくかというようなことについて、バブルの発生から崩壊に至り、そして今日、不良債権をめぐって日本金融が大変重症の病に陥っているというようなことに対する深い反省の上に立って、今後、国民経済の豊かさを保障していくための経済政策、金融政策というものが一体となって進められていかなければならないと強く考えているところでございます。    〔委員長退席理事前田勲男着席
  44. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 五月二十八日の衆議院の金融問題特別委員会橋本総理は、「バブル発生からその後の処理まで、政策的にどこかでミスがあったと言われてもやむを得ない」と答弁されたと報道されておりまして、ただいまの大蔵大臣の御答弁とあわせて、今後についてしっかりやっていただきたいし、その答弁を私たちは安心して聞いたわけでございます。どうかよろしくお願いします。  さて、経済企画庁長官においでいただいておりまして、お聞きしたいと思います。  これまた、個人の問題ということをどうとらえているか、政府からどういう発信がなされるかという観点でお聞かせいただきたいと思います。  これまた、五月一日の住総の原元社長の証言の中にございましたが、「例えば、固定ローンで貸しまして、金利を八%ぐらいで借りていただいて、六%ぐらいに下がっても黙って納めてくださるお客様、」というふうに答えられました。  家を持ちたいという多くの人がウナギ登りの地価に不安を抱き、今のうちにと多額のローンを借りて住宅を建てたわけでございます。  実は、私は、個人的なことになりますが、今から十五、六年前に上尾市で家を購入して、四十五坪の土地に三十三坪の家が建っているんですが、それが二千六百万円でした。それがバブル期に一億円になった。(「そのとき売ればよかったな」と呼ぶ者あり)売ったら住むところがない。実勢価格は六千万円ぐらいでしたが、今は四千万円で売れるかどうかというところまで下がっております、もっと下がっているかもしれません。しかし、私が住んで十五年たったときに、同じ規模の家をその周辺で八千万から九千万で買っています、少し小さいの。今、価値が四千万以下に落ちてしまっている。そういうことが実際に起こっております。  今、多額のローンを借りて住宅を求めたけれども、土地の価格は大幅に下がって高額の借金だけが残っている例が多いわけです。バブル崩壊後の不況で労働所得も減って借金返済計画が狂って、例えば土地を手放そうと思ってもできないという事情に今なっております。  昨日の議論の中でも、阪神大震災で家が壊れてローンだけ残ったということも話されておりますけれども、そういったことがこの国会の中で問題提起はされても、なかなか個人の問題についてどうするかということは答えられておりません。一部の不動産業者などは借金の不良債権化ということで借り逃げとなりそうなのに、個人はどうあっても逃げるわけにはいかない。多くの個人が土地を求めたのは、まさにみずからの生活のためでございまして、企業なりが投機的な行為で売買したのとは違うわけでございます。それなのにこういう状況になってという個人の無念さということは、我々は忘れてはならないんではないかというふうに思っています。  今回のバブルは、個人なり家計の立場から見たときに一体どのような損得をもたらしたのか、経済企画庁がそれをどのように問題意識として持たれているのかということについて、長官のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  45. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) バブルの崩壊がもたらした経済的な影響、特に悪影響ということになると二面性があるというふうに私は思っております。  一つは直接的なもの、もう一つは間接的なものと言ってもいいと思うんですが、バブル崩壊後の経済の最も顕著な特徴ということになりますと、土地や株式等のいわゆる資産価格の大幅で急激な下落ということになると思うんです。    〔理事前田勲男退席委員長着席〕  したがって、土地や株式を保有している人に大きなマイナスがあったわけであります。特に、今先生御指摘のように、バブル期に土地、住宅あるいは株式を購入、取得した人に大きなマイナスがあった。これは今先生のおっしゃったことも含めて、さまざまな形で影響があったというふうに思います。もう一つは、これはバブル崩壊後の経済の低迷、長引く不況ということから、雇用、賃金、所得という面から、間接的には個人の生活、家計にマイナスの影響を与えたというふうに思っております。  プラスはないのかということになると、このように大きな犠牲の中であえて何かよかったことはあるのかということを見つけ出そうとすれば、マイホームに手が比較的届きやすくなった。あるいは先ほど先生が指摘されましたけれども、資産格差が縮小したということを、あえて挙げるとすれば言えると思いますし、この災いの中で大事にしていかなきゃいけないのは、土地は上がることはあっても下がることはないという土地神話が崩壊したんだということは、私は今回学ぶべき最大のことであると、そんなふうに思っております。
  46. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 経済企画庁にお尋ね申し上げます。  今の長官の答弁を受けまして、特にバブル崩壊後の低金利状況が長引く中で、年金生活者が非常に不安の中で生活をしている。先行きの不安は別としても、実際の生活資金の一部に金利収入を充てている個人は多かろうというふうに思います。他の収入も縮んでいる中で、消費支出を切り詰めているのではないかというふうに考えるわけです。  年金生活者の家計について所得、消費、貯蓄というものがどのような動きを示しているのか、現状の分析があれば経済企画庁からお聞きしたいというふうに思います。
  47. 中名生隆

    政府委員(中名生隆君) お答え申し上げます。  年金所得者に限っての統計というものはございませんけれども、年金所得者が多いと考えられます高齢者の無職世帯の所得等ということで、これは全国の消費実態調査に基づく数字でございますけれども、これで平成元年と六年の比較をいたしますと、先生御指摘のとおり、利子等の財産収入というのは二九・三%の減少ということになっております。一方で、配偶者等の勤め先からの収入あるいは社会保障の給付というのが増加したということから、合わせました可処分所得についてはこの五年間で七・五%の増加ということになっております。  また、消費の面でございますけれども、消費支出については一三%の増加という形になってございます。  したがいまして、世帯主が高齢者で無職の世帯という場合には赤字になっておりますけれども、その赤字額が増加いたしまして、平成六年には約三万七千円の赤字ということになっております。  以上、勤労者世帯と比較いたしますと、実収入は勤労者世帯の伸びを大きく下回っているものの、消費支出については勤労者世帯とほぼ同様の伸びと、こういう形になってございます。
  48. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 大蔵省にお聞きいたします。  時間がございませんので簡単に申し上げますが、一つは、今回の法案で提起された金融行政の新しい方式によって、今後、あのバブル期に見られたような金融機関の行動の行き過ぎは防止できるのか。さらに、銀行法によれば「銀行の業務の公共性」という言葉もありますけれども、金融行政の当事者として、金融機関なかんずく銀行の公共性についてどのように認識しているのか。さらに、銀行などに求められる公共性についてより明確化するなどの考えがあるかどうか。この点についてお伺いいたします。
  49. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 金融機関の公共性をどう考えるかという点につきましては、これを最も的確、明確に表現しておりますのは銀行法の第一条であろうかと考えております。「銀行の業務の公共性にかんがみ、」と書き出しがございますが、その次に三つの目的を挙げております。第一は決済機能であり、第二は預金者の保護であり、第三は資金の円滑な供給ということであろうかと存じます。  これは経済にとりまして極めて重要なことであり、したがいまして、金融機関の公共性というものがいかに重要であるかということを示しているものと理解しておるわけでございますけれども、今後、このような役割を的確に果たしていくよう金融行政といたしましても努力すると同時に、金融機関にもそのような意識をより一層強く持っていただくようにお願いをしたいと考えております。  今回、金融法案を御提案申し上げているわけでございますが、このような金融機関の公共性というものをより一層実現していくための一つの手段にしていけるのではないかと考えているところでございます。ぜひ御理解いただき、早期の成立をお願い申し上げる次第でございます。
  50. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  51. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 総理、この間の本会議の答弁等を聞いておりますと、住専に財政資金を投入することを含む今回の処理策は臨時異例の措置だということを繰り返しおっしゃっていました。臨時異例の措置だということになれば、そうでない通常の措置のあり方、通常だったらどういう処理を行うかということについて、まずお伺いします。
  52. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、異例ではなくて特例と申し上げたような気がいたしますけれども、いずれにしても、そうした感じで物を申し上げたことは否定をいたしません。  そして、住専問題というものが、昨年の夏以降大変な議論を関係者の中でいたしながら、現在我が国の金融機関の抱えております不良債権問題の中で最も解決を急ぐ緊急の課題であること、また象徴的な課題であること、こうした点を考えながら、早期解決という観点で、経済金融責任を持つ政府として財政支出の投入を決断いたしました。  住専以外のノンバンクを含めまして不良債権処理、これは過去の事例を見ましても、民間の債権債務関係処理の問題といたしまして、それぞれのケースごとに手法の差異はございますけれども、関係金融機関の適切な処理によって金融システム内の処理が行われてきた、今後もまたそうであろう、そうあるべきであろう、そのように思います。
  53. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 臨時特例じゃなくて、異例の措置と繰り返しおっしゃっています。  私は、今後ともという今お話でしたけれども、今後とも臨時異例の措置ということはないと思いますから、通常だったらどういうやり方が好ましいかということをお伺いしたがったんです。
  54. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ですから、私は住専以外、だから例えば他のノンバンクも含めまして不良債権問題を処理いたします場合、過去の事例を見ましても、民間の債権債務関係処理という問題のとらえ方の中で、それぞれのケースごとに、関係金融機関の適切な対応、措置というものの中で金融システムの中において処理をしてきた、今後もそうあるべきだと、そのように思います。
  55. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 わかりました。  ということは、こういうふうにとってよろしいですか。財政資金の投入というのは本来好ましくない、今回はやむを得ず行ったんだ、そういう考え方に立ったものだというふうにとってよろしいですか。
  56. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 過去におきましても、信用組合につきましては、地方自治体が地方自治体としての立場の中で公的資金を投入されたケースはあると承知をいたしております。そして、金融制度調査会の御意見の中でも、信用組合についてはこの点は否定をしておられません。しかし、その他につきましては私は委員指摘方向で進むべきものと、そのように思います。
  57. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 これは言葉の問題ということにもなるかもしれませんけれども、やはり国民は財政資金投入について非常に大きい怒りを持っている。これは総理大蔵大臣もお認めになっていますね。それを緊急とか、いろいろな事情を挙げられましたけれども、この間の本会議答弁の中で、政府処理策が最善の方策である、こうおっしゃっているんですね。国民がこれを見れば、いろいろ前置きはありますけれども、これがベストだと言われたら、これは国民の怒りの前に火に油を注ぐというのはこういうことじゃないかと思いますけれども、これはもう本当に理想的な最上の策だったというようにお考えですか。
  58. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 多分その単語の前には、まさに議員も御指摘になりましたように、条件がさまざま申し述べられておると思います。そして私自身、昨年の夏以降関係者間において真剣な議論が交わされてまいりました中で、当事者のみではどうしても処理し切れないという最後の段階を迎えて政府としても決断をした。そういう意味では、私はその時点、現時点においての最善の道を選んだと思っております。  反省として、繰り返し申し上げてまいりましたように、その当事者の間で処理しよう、関係の行政機関も入りまして努力を重ねております間に、逆に情報の開示がおくれた、そして国民に問題の深刻さを知っていただくだけの時間をとるゆとりを失ったという点は、私自身が反省材料として持っている部分であります。
  59. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 いろいろ前置きがあるとおっしゃいますけれども、こういう言い方は、国民から見れば、総理国民に向かって挑戦的な答弁をし方ととられてもやむを得ないというふうに私は申し上げておきたいと思います。  そこで、大蔵大臣にお伺いしますけれども、今の総理の答弁を聞いておりましても、今回の処暑というのはいわば臨時異例の例外措置だと、本来財政資金投入というのは、一般的に言えば好ましくないという前提でのお答えだと思います、当事者間で解決するのがいいと。  そうしますと、これは私どもが言ってきた、母体行の責任母体行が母体行にふさわしい負担を行いながら、かつ関係機関の協力も受けながら処理するというのが最も好ましい方法だと言っていること、我々の言葉で言えば母体責任主義ということで言っておりますが、それと違いがあるのですかないのですかということです。今度の策じゃないですよ。通常の、本来望ましいのはどういうものかという点についてのことです。
  60. 久保亘

    国務大臣久保亘君) これらの問題は、民間の債権債務に関する問題として民間における当事者間における協議で解決する、解決がつかない場合には法的処理で解決が図られるということが原則だと思っております。  しかし、私どもは、この住専問題に直面をいたします場合には、今日のような深刻な事態まで放置したことの責任を回避してはいけない、こう思います。そのことは率直に国民に対しても謝罪すべき問題だと思っております。しかし、これをそれでは通常の原則に返せということで非常に困難な住専問題の解決を先送りいたしました場合に、それは国家に、経済国民生活の上に何をもたらすかということは、政治の責任ある判断を求められている問題だと考えております。  そういう中で、望ましいことではないが異例の措置として財政支出を行ってでもこの問題を早期処理することによって、将来予測される非常に困難な事態から国の経済国民の暮らしを守るということを判断しなければならない。そういうことをやっていきます上での対応策としていろいろなことが考えられたけれども、そういう中での最善の策としては、これ以外に今とり得る手段はないのではないかということで申し上げているのでございます。
  61. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 大蔵大臣母体行の重い責任母体行に対する追加負担ということをずっと言ってこられたので、その実現の可能性をめぐってはいろいろ困難があるということもおっしゃったんだけれども、一般的な考え方としては母体責任主義が一番望ましいと考えておられるのかなという印象もこれは与えると思っていましたけれども、今の答弁だとそうではなさそうだと、違いがあるのかなというふうに聞きました。違うんですか。
  62. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 後段の御意見、御質問にお答えしていなかったと思いますが、このような、今政府が提案をし御審議をお願いいたしております方策でもって住専問題といいますか住専債権債務処理促進を図ってまいりますに当たっても、財政支出、つまり将来にわたって国民の御負担をお願いするこの問題につきましては、極力これを原則に照らして負担を圧縮する努力をしなければならないということは終始申し上げてまいりました。  その意味では、住専問題に、その設立から破綻に至りますまで深くかかわって責任を持っております母体行が負うべき責任は非常に重い。その意味では、母体行はこの国民負担の圧縮のためにさらなる負担を求められてしかるべきものであるということを終始私申し上げてまいりましたし、その方向で今も努力を続けているところでございまして、この点に関しましては、その母体行の責任と新たな負担ということにつきましては、吉岡さんと認識が一致する部分もあると考えております。
  63. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 今の時間はそこでおきまして、次の問題ですが、今大臣もおっしゃった、設立から今日に至る経過、これを踏まえて母体行の重い責任のもとで解決すべきであったと、そういかなかったわけでありますが。  そこで、財政資金の投入、私は公的資金と言わずに財政資金ということで、国家財政からという限定をして使わせてもらいますが、を使わざるを得なくなった。これは、これまでの答弁を見ていますと、結局やむを得ず最終的にそういうところへ踏み切らざるを得なかった、こういう答弁が行われてきていると思います。しかし、この間の経過をずっと振り返ってみますと、そうではなくて、初めに税金投入ありきであったというのは経過が明らかにすることだというふうに私は思います。  それで、不良債権住専も含めて財政資金投入、公的資金の投入ということは、途中で否定されますけれども、早くも一九九二年の八月、当時の宮澤総理が発言なさったことがある。否定はされたけれども、こういうことが総理の口から出たり消えたりする。そういうことは、結局は財政資金に頼る心理状況を私は関係者につくるということになったと思います。  今回、住専に財政資金を投入するということを検討され、決定されたのはいつですか。これは局長でいいです。
  64. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) まず、私どもの議論の前提といたしまして、財政資金の投入に対する国民の御懸念が大変に大きなものがあるということを十分認識しつつも、他方において、預金者保護というものについての国民の御期待もまた大きなものがある。これを両立するためにどういう考え方になってきたかという、そういう流れの中で御答弁を申し上げたいと存じます。  平成七年六月二十七日の緊急経済閣僚懇談会の「緊急円高・経済対策具体化・補強を図るための諸施策」におきまして、住専問題と特定されてはいませんでしたけれども、「金融機関の破綻処理等については、公的資金など公的な関与のあり方を含めて、直ちに検討を開始する。」こととされました。また、同年九月二十七日の金融制度調査金融システム安定化委員会の「審議経過報告」におきましては、住専問題を念頭に置きつつ、「金融機関が破綻に陥る以前の段階にあっても、不良債権処理の遅れが我が国金融システム全体に著しい悪影響を及ぼすこととなる場合には、公的資金の導入も含めて早期に問題の解決を図ることも止むを得ないとの意見がある。」とされたところでございます。  政府・与党は、これらの御意見等を十分に留意しつつ、昨年夏以来、与党金融・証券プロジェクトチーム等における熱心な御議論を重ねていただき、関係当事者間による住専問題の早期解決を目指したが、最終的に当事者の意欲と努力による解決は困難な状況に至ったことから、預金者保護及び我が国金融システムの安定性を確保するためにやむを得ない決断として、同年十二月十九日の政府・与党合意において住専問題の処理公的資金を投入することが決定されたわけでございます。  以上が政府公的資金導入における検討の経緯でございます。(「答えていないよ、全然」と呼ぶ者あり)
  65. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 私の言いたいことはこっちから声が出たとおりです。  今の経過の中でもわかるように、年末ぎりぎりのところで税金投入が決まったわけではないんですね。私ここにたくさんその種の資料を持ってきましたけれども、去年の六月の初めから大蔵省は公的関与を打ち出し、そして今紹介があったような公的資金の投入も含む検討を開始しているわけであって、年末、当事者間の協議で解決できないからやむを得ず投入したというようなものではないんですね。  経過を振り返ってみますと、やはり財界とそれから大蔵省、それに金融制度調査会なんかも一緒になって計画的に推進したとしか思えないんですね。もう七月三日には経団連正副委員長会談で財政資金導入だと、それから財政資金導入のスキームを策定することを要請するということを決定している、これが七月三日ですね。七月四日に第一回金融制度調査会の金融安定化委員会が開かれております。それの委員長、館さんは、その委員会が終わるとすぐ経団連に駆けつけて常任理事会で説明し、不良債権対策として公的資金を投入していく必要がある、こう述べております。経団連側からは、経団連のきのう決めた考えが間違いでなかったということがわかった、こういうふうに発言している。これは七月三日、四日の出来事ですね。  そういうことを経て年末に決まったわけですが、その年末に決まった財政資金の投入というのは、私は、臨時異例のやむを得ない措置として、当事者間の協議で決まらなかったのでやらざるを得なかったというふうなものではない、こう言わざるを得ません。これは大臣、就任前のことではありますけれども、こういう経過をどうお考えになりますか。
  66. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 不良債権問題の深刻な事態の中でさまざまな意見がいろいろな場所、立場で述べられたことは、経過として私も承知をいたしております。また、金融制度調査会も、このような意見もあったということも述べられていることもございます。  しかし、最終的には昨年の十二月の初めに与党のプロジェクトチームがガイドラインを設定いたしました。その後も、いわゆる一次損失と言われます六兆二千七百億と欠損一千四百億、六兆四千百億についてどのような負担を行うかということについては、最終段階まで関係者間の協議が続いたと私は報告等に基づいて承知をいたしておりまして、財政支出やむなしということで合意を得ますのは十二月十九日に近い段階であったのではないかと思っております。
  67. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 最終的に手続的に決められたのがその辺だということは私も承知しています。しかし、そこへ至る経過というのは、結局、母体行、こういうところが、もう経過で財政依存ができるという心理状態、そういう気分をつくりながらの過程ですから、もうあえてのまない、のまない時点に立って正式に決めたということだと思いますよ。大蔵省が積極的に世論づくりをやったと私は言わざるを得ない。そういう環境をつくった。  例えば、昨年六月二十七日に発表された政府経済対策では、公的資金など公的な関与のあり方を含めて直ちに検討するために金融制度調査会に専門委員会を設置するという内容が織り込まれていますが、そもそもその専門家委員会検討課題には、公的資金導入はなかった、入っていなかった、それを大蔵大臣の指示でこの文章を入れさせたと当時の新聞では報道されております。これ、否定できますか。
  68. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘の緊急円高・経済対策経済対策閣僚会議として決定されたものでございますし、六月二十七日の緊急円高・経済対策具体化・補強を図るための諸施策は緊急経済閣僚懇談会におきまして決定されたことでございます。当然大蔵大臣も御参画しておられるわけでございますが、政府全体の御決定ということかと理解をいたしております。
  69. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 否定できない。原案にはなかったんだ。公的資金導入は、大蔵省大蔵大臣の積極的な提案で入れられたと。こういう経過から見ても、私は、今回の税金投入、今国民が非常に怒っているこの経過というのが、もうぎりぎりのやむを得ないものではなく、こういうふうに計画的に進められてきたものだということは明らかだということを申し上げておきたいと思います。  次の問題、これは税金投入。  この税金投入が、一次ロスの六千八百五十億円にとどまらない。二次ロスの二分の一の負担があり、さらに母体行等による低利融資と民間拠出に対して預金保険機構が保証する仕組みができているわけですね。とりわけ二次ロスは、専門家は二兆円あるいは三兆円にも上る可能性があると、こういう指摘さえあるわけです。  そういうときに、その二分の一を財政資金で負担するというからには、あなた方は回収の努力をするとおっしゃっていますけれども、それで解消できるものならこれは問題はないわけで、それならこんな二次ロスの仕組みをつくる必要もないわけで、やはり二次ロスが出る可能性があるからつくられており、法案も提出されていると私は思うわけです。  こんな大きい額に上りかねない負担国民に求めるからには、我々は努力するが、場合によってはこういう大きい負担を求めなくちゃならない結果になるかもしれないという、そのロスの見込み額というふうなものについては国民に示すのが私は当然の責任ある態度だと思いますが、大臣、いかがですか。
  70. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 私どもといたしましては、御指摘のような意味での二次ロスの発生を極力最大限の努力を払って縮小、できればなくするということが課せられた課題だと思っております。しかし、あらゆる回収努力を尽くしたといたしましても、今後の地価や経済動向によりましてはいわゆる二次ロスが発生する可能性を否定し得ないということも事実でございましょう。  しかし他方で、例えば住専の大口債務者であろう不動産業者から隠七財産が発見されるなど、借り手責任の厳しい追及が行われていることや、母体、非母体合わせて約四兆円とされる紹介融資につきまして、今後損害賠償請求権が適切に行使されることにより強力な回収努力を続け、これからの回収増収分を国庫に還流させるということによりまして、結果的に全体としての財政支出を抑えるというようなことも可能でないかと考えているところでございます。
  71. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 可能性を聞いているわけじゃなくて、国民に、うまくいけばこんな調子になる、しかし最悪の場合はこういう可能性もあるということを示して国民の信を問う、法案についてならその賛否を問う、そういう態度をとるべきだということを私は言っているわけです。これまで速記録を読んでみると、それについては絶対答えない、そして局長が立って今のような答弁をする。  そこでお伺いします。この第二次ロスの見込み額は公表しないという方針を持っているんですか。それとも調査もしていないんですか。どっちですか。
  72. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 公表しないという方針を持っているということではございませんで、私どもは、今後の地価や経済動向によってはいわゆる二次ロスが発生する可能性を否定し得ないことも事実でございますが、今後の地価や経済動向というものを完全に予測するということはなかなか難しいことだ、したがって将来の問題を完全に計数としてお示しするということはなかなか難しいことだということを申し上げているわけでございます。
  73. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 私は確定的な額を示せとは言っていないです。いろいろな想定に基づく試算は幾らでもできると思います。地価の見通しだって持っているわけでしょう、政府は。地価の見通しもいろいろ立て得るわけですよ。そういうさまざまのケースに沿って、こうなればこう、こうなればこうだという、そういうのをやっているはずですよ。やっていて出さないわけでしょう。  それは私は無責任だと。国民に多額の、多額というよりは巨額の負担を求めることになりかねない、そういうことを今法律で固めようとしている。そういうときに、起こり得る危険、国民負担、それについて示さないでこういう法案を成立させるということは、これは国民に対する非常な許しがたい無責任な態度だと私は言わざるを得ません。しかし、これは答弁がない。これまで見てもない。  そこで、私は角度を変えて聞きます。第Ⅲ分類は、額は幾らになっていますか。
  74. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 昨年の八月から九月にかけまして調査を行いました時点での、いわゆる私どもの調査の基準に基づきます第Ⅲ分類と申しますのは、約一兆二千億でございます。
  75. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 第Ⅲ分類については、これは専門家の書いたあらゆるもので、回収ほとんど不可能と書いています。私はその見通しを論議しようと思いません。しかし、大蔵省の資料によっても、回収が非常に困難であり、将来損失の発生が見込まれる懸念のあるのがこの今の一兆二千億円の第Ⅲ分類だということはお認めになるでしょう。これは大臣、いかがですか。    〔委員長退席理事前田勲男着席
  76. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 債権を四分類いたしております以上、第Ⅲ分類は非常に厳しい債権としてとらえていることは、それはそのとおりだと思います。
  77. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 二月五日に衆議院の予算委員会大蔵省、農林水産省の名前で出された資料によっても、昨年八月の調査結果により把握された損失見込み額に将来の損失発生懸念額を合わせた額は七兆五千百億円であったと、こういうふうに述べられていますね。つまり、Ⅳ分類とそれにⅢ分類、Ⅲ分類については大蔵省損失発生懸念額だというふうに定式化し、合わせて七兆五千百億円の損失及び損失懸念があると。これは文書で出しておられるわけですね。このことはお認めになりますね、大臣。
  78. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) それは昨年八月から九月にかけましての私どもの調査の結果を国会に御報告したものでございます。  なお、第Ⅲ分類と申し上げますのは、先ほど委員が御指摘のように回収がほとんど不可能と、なかなか難しい問題があることは事実でございますが、回収がほとんど不可能というのは少し私どもの理解とは違うと存じます。  それから、私どもは、昨年の八月から九月にかけての調査段階では、七社がそれぞればらばらにこの問題に対応した場合の問題点を指摘しているわけでございますけれども、今回このような法案によりまして新たな対処策が講じられますならば、おのずからまた違った状況にもなろうかと考えているところでございます。
  79. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 さて、その第二次ロスです。大蔵省も、今言いましたように、第一次ロスに加えて第二次ロス、一兆二千億の懸念がある、こういうことを言っている。  これをなぜ半分国が負担するのか。これについてですが、当時のいろいろな報道によると、第二次ロスについては、当初大蔵省の原案では全額母体行に持たせる、そういう方針であり、西村局長住専やら母体行首脳や全銀連の会長などを呼んで説明した。にもかかわらず、それが結局半分国が負担するということになったということが、これはもういろいろなもので述べられております。事実ですか。
  80. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) それはいささか私の理解とは異なっていると存じます。むしろ二次ロスと申しますのは、一般に言われておりますものは、いわゆる一次ロスに加えてさらに何らかの損失が生じた場合、こういうことでございますから、恐らく銀行界理解といたしましては、例えば修正プロラタ方式ということで損失の分担をいたしますならば、それは系統負担すべき分野であるというような理解金融界はしていたであろうと思われます。  したがいまして、全額母体負担だというような主張は当時は金融界にございませんでしたし、私どもも調整を図る立場といたしましてそのような考え方を持っていたというふうには記憶をいたしておりません。
  81. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 そうすると、大蔵省は最初から半分国が負担したい、こういうことだったということですか。  報道によれば、西村銀行局長は今言ったように、第二次ロス、この報道では一兆三千億円になっていますが、母体行が全額負担するように求めた、ところが、銀行がこれを検討した結果、拒否した、その結果、半額国が負担せざるを得なくなった、そのために一次ロスだけでなく二次ロスの負担が出てきたと、こう報道しているわけです。  大蔵省がそういう考えを持っていなかったということになると、そうでなく最初から半額国が持とうということでやった模様であります。であれば、それはそれで結構です。大蔵省国民の税金をつぎ込むことに熱心だったということが今の答弁で私はわかったということにして、次の問題に進みます。  追加負担問題です。追加負担は、大体いつごろから求めようということになったんですか。
  82. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 私は、この住専問題を処理するに当たりましては、住専問題の今日の深刻な事態を招きましたことに対して責任を負う者は、その負担を可能な限り行うべきであるという考え方を最初から持っていた一人でございます。  この国会で、関係者との間の協議に基づいて、今はこの方策以外に考えられないということで財政支出を含める処理方策を提案申し上げたわけでありますが、国会におきましても各会派の皆様方から強い御意見がございました。これらの意見を踏まえながら、私は、極力母体行を中心に追加負担、新たな寄与が行われるべきであるということについて、国会の論議も踏まえてこのことを母体行等の金融機関に要請を強く行わなければならないということを考えていたのでございます。
  83. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 要するに、当初の処理策にはなかった。なかったけれども、国民の批判が強い、国会論戦での批判も強いから途中から追加負担ということが提起されたわけで、私はこれはやはりもともとの処理策がもうこれでは通らなくなったことのあらわれの一つであると思います。  さて、もう時間も来ましたが、この追加策に関連して一つお伺いしておきたいのは、大蔵大臣のこの問題をめぐる答弁を見ていますと、財政資金を投入しても結局追加負担で将来国庫に還元されるということできるだけ全額が国庫に還元されるようにしたい、こういうことをおっしゃっているわけですが、その答弁によると、大蔵大臣考えでは、今の財政資金の投入というのはいわば国による立てかえ払いだというようなお考えのようにもとれるわけです。そういうことならもう立てかえ払いもしなくて、今国会中にも国民負担のないような追加負担対策を決めるとおっしゃっているわけですから、もうそんなむだはしないで、最初からきちっと財政資金なしでやった方がいいというふうに思います。  そして、報道されている一連の案というのは、結局運用益を国庫に入れるということで、直接負担というのは余りこのところ問題にされなくなってきている。ということになれば、国の立てかえ払いのように受け取れる、将来返ってくるといってもこっちも利子はつきますから、だからいわば立てかえ分の利子が将来入ってくるような仕組みをつくろうとしているような計算にもなるわけですけれども、追加負担で何を大体やろうということなのか、もう一回、もう時間ありませんけれども、簡潔にお答え願います。
  84. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 誤解を生ずるといけませんので申し上げておきますが、国が立てかえ払いをするということではございません。これはこの処理スキームを成立させまして、そして債権の譲り受け、回収に入ってまいりますために必要な財政支出を行うものでございます。  しかし、このことに関してはこの財政支出を極力圧縮し、そしてこれが国民負担とならないように努力すべきであるという御意見が強いことも私どもは十分に承知をいたしておりまして、そのことのために必要な方途を今講じようとしているのが追加負担でございます。
  85. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 終わります。
  86. 小島慶三

    ○小島慶三君 総理大蔵大臣、農林大臣、御苦労さまでございます。  私は、きょうはせっかく両大臣おそろいでございますので、国の財政運用というか、そういう点で少し御意見を伺いたいというふうに思っております。  このごろ、前の武村副総理が中央公論に論文を書かれました。これは、要するに財政危機ということが焦点でありまして、「このままでは国が滅ぶ」というふうな強い言葉も使っておられるわけであります。  確かに、今の国債依存の体質から申しますと、年度末の国債二百四十何兆円、それから隠れ借金が四十三兆ですか、さらに地方の地方債が百二十兆ということになりますと、合計して四百兆、これは国民所得の八割にも達する。したがって、こんなに国債依存度の高い国はないわけでありますが、このままでいけば利払いその他で財政運用というのは非常に窮屈になりますし、それからもう一つ大きな問題としては、世代間の負担の公平というのがこれでは妨げられるというふうに思うと。  それやこれやで武村さんの御提案は政府支出を五%カットすると。これは私、前に予算委員会で御提案申し上げたことがございますけれども、それと同じ考え方でございます。もっとも、そのほかに消費税を八%から一二%にするとかいろんな御提案もございまして、この辺は私、賛成じゃないんですけれども、政府支出をカットして少し財政を引き締めるという考えについてはいかがでございましょうか、総理大臣、大蔵大臣にお伺いします。
  87. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、武村前大蔵大臣がお述べになりました御提言というもの、これは一人の政治家の立場として真剣に国を憂う、そんな思いの中から御発表になられたものと思います。そして、国家財政の非常に厳しい現状を御自身大蔵大臣として御体験になられ、その上で税財政の改革に取り組むべき当局に対して貴重な御助言、御叱責をいただいたものと思います。  具体的な内容にわたるコメントは控えさせていただくべきであると思いますけれども、一律カットという手法が望ましいかどうかは別といたしまして、財政を引き締めていかなければならないというそのお気持ちは、私どもも同様の思いを持たなければならないものであると思います。
  88. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 今、政府の基本的な考え方については総理から御答弁になりましたけれども、確かに今の国家財政というものをこれ以上厳しく厳しく見過ぎて見過ぎることはないと私は思っておりまして、武村さんのお書きになりましたものも読ませていただきました。あのときは国の財政「容易ならざる事態」という言葉を使われたんだと思いますが、マスコミではこれを危機宣言と言いました。武村さんは、これは破綻宣言だよなとおっしゃったということを書かれております。破綻状態を私は引き継がされたのかなという思いもいたしておりますが、前任者がそれほど厳しくとらえておられたものを引き継いで、これをどのように再建するか、財政構造改革をどのように進めるかということは、今、日本の最大の政治的な使命になってきたなという気がいたしております。  小島さんのおっしゃいましたこともよく私どもは考えなければならないことだと思いますけれども、今後、財政審等で検討していただいております再建の目標、そして財政の果たすべき役割や守備範囲、そういうものを検討していく中から、財政支出のあり方というものについて思い切った検討が加えられるべきものと考えております。
  89. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。  具体的な財政のスリム化についての提案も幾つかそのほかに私も持っておりますけれども、これは次の機会に譲らせていただきます。  現状で世界のいろんな財政への取り組みというのを見ておりますと、例えばニュージーランドあたりは非常に積極的な財政再建ということで革命に近いようなことをやっているようであります。  それで、古くは一九七九年のサッチャーさんが出てきたときのあれを思い起こすんですけれども、サッチャーさんは、イギリス経済の停滞と国際競争力の失墜、それから失業の増大という局面に対して非常に大なたを振るわれたわけでございます。鉄の女とかいろいろ表現がございましたけれども、その中で私非常に重要だと思いますのは、政府支出の思い切った削減ということがあった。私、このごろの日本政府でも若干支出感覚が甘くなっているというふうな感じがするわけでありますが、まあそれは別としまして、サッチャーさんは、徹底的に政府支出を抑えるということ、それと同時に公営事業を十五も民営に移管するというふうなことをやりまして、財政支出をカットしたということをやって大変成果を上げたと思っておるわけです。  このごろまたドイツのコール首相が四月二十八日に連邦議会で演説をされまして、これによりますと大変思い切った政府支出の削減ということを提言しております。  例えば、連邦、それから地方財政、これについて一九九七年度の支出については、まず国家公務員の賃上げを凍結する、これが三十億マルク、それから各省の予算をカットする、これが七十億マルク、それから児童手当の増額の延期、これが三十億マルク、それから失業手当についても、これも雇用庁への補助でありますが、これも八十億マルクのカット、それから年金機関に関する補助、これも二十億マルク、それから長期失業者補助制度、これに対しても二十億マルクのカットということで、合計何と二百五十億マルクのカットということを提案しているわけであります。それから、地方の関係につきましても同じく二百五十億マルク、それから社会保険基金についても百九十五億マルク、これ全体にしますと約七百億近いわけでありますが、この中の真水の部分ですね、これが五百億と言われております。    〔理事前田勲男退席委員長着席〕 これは日本円に換算しますと約四兆九千億であります。大変な犠牲を払って、そして財政を再建しようということをやっているわけであります。  考えてみますと、日本も戦後五十年間、成長と福祉、ケインズ的な成長とビバリッジ的な福祉ということで、今までそれを合い言葉にしてやってきたんですけれども、やっぱりこの段階まで参りますと、成熟国家として締めるべきものは締めるということが大変必要なのではないかというふうに私思っておるわけでございます。  ドイツにつきましても、これだけいろいろ社会福祉その他で問題になるようなものもカットするというのは、やはり相当な決意、覚悟であるだろうと私思っておるわけであります。  こういう点は、やはり私どもとしましても、この段階まで参りますと、武村さんの御提案ではありませんが、やはりやるべきことをやると。くしくもドイツのコール首相は、国会の演説で、このままではだめだ、このままではやっていけないと、これは武村さんが論文の中に書いている言葉であります。だから、そういう点につきましても、我々としてはもう少し心を冷やして考える必要があるんではないかと思っております。  予算がもう成立してしまいましたけれども、今後また補正予算とかいろいろ出てくると思うので、こういうときにはこの要素というものをぜひ取り入れていただきたいと私は思っておるわけでございます。この点についての所感をひとつ伺いたいと思います。総理、よろしくどうぞ。
  90. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 冒頭申し上げましたように、財政が危機的な状況だということは繰り返し本院でも私自身御答弁を申し上げてまいりました。そして、私どもが歳入を確保すること、これはもちろんその努力は必要でありますけれども、歳出自体をいかにして抑えていくか、この必要性につきましては議員が御指摘のとおりだと存じます。今年度予算編成の時点でもそうした視点を我々は失っていたとは思いませんけれども、そうした意味で今まで以上にしっかりと対応してまいりたい、そのように思います。
  91. 小島慶三

    ○小島慶三君 大蔵大臣、いかがでしょうか。
  92. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 今、総理から御答弁申し上げたことに尽きると思います。血を流す、身を削る改革ということは非常に難しいことだと思いますが、今はそれをやらなければならない非常に厳しい事態に来ているのではないかと思っておりまして、このようなことを進めてまいります場合、ぜひ国会皆様方にも全面的な御支援をいただけるようにお願いを申し上げたいと思っております。
  93. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。そういう方向に沿ってぜひひとつこれからよろしくお願いしたいと思います。  それからもう一つ、これはさっきの予算のカットの問題と関連するんですけれども、とにかく最近のいろんな新聞記事でも見ますように、例えば官官接待であるとかあるいは空出張であるとか、こういう事案というのが全く目につくわけであります。これは私は官吏道の堕落だというふうに思うわけでありますが、こういうことについて今の監査機構ではこれがうまく発見できないのか、あるいはお互いの内々の関係で途中で消えてしまうのかわかりませんけれども、これについては相当に思い切った制度考える必要があるのではないかと思っております。  私は行財政委員会にも属しておりまして、行財政委員会では今までずっとオンブズマンの検討というのをしてまいりました。オンブズマン制度というのは地方でも随分使っているところもありますが、これはやはりこの際考えていい制度ではないかと私は思うわけであります。  殊に財政支出については、ほかのいろんな国民からのクレーム、例えば児童問題とか福祉問題とかのいろいろクレームがございますが、こういったクレームに関する処理ということだけでなくて、財政支出について特別の組織をこの際つくったらどうかというのが私の申し上げたいことでございます。これは大蔵大臣にお伺いしますが、これについてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  94. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 特別な組織をつくりますことについては、御意見を伺ってよく検討しなければならないと考えておりますが、今日の民主主義と陳情政治のあり方というようなもの、そしてまた補助金制度のあり方といったようなものについてやはり根本的にメスを入れて検討をする必要があるのではないかというようなことを、今御意見を伺いながら、私かねがねから思っていることを考えていたところでございます。  非常に難しい問題でありますが、政治、行政の段階でのモラルの問題も、行政の立場で申し上げますと、行政のモラルの根本といいますか基本にかかわるような問題が崩れているということにつきましては、単なる検査や監査を超える問題もあるのではないかと思っております。しかし、そういったような問題を排除してまいりますために必要な制度考えられるのであるかどうかということについては、大変重要なこととして考えさせていただきたいと思っております。
  95. 小島慶三

    ○小島慶三君 ぜひそういう方向でお考えをいただきたいというふうにお願い申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)     ―――――――――――――
  96. 坂野重信

    委員長坂野重信君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、吉岡吉典君が委員を辞任され、その補欠として吉川春子君が選任されました。     ―――――――――――――
  97. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 高邁な御議論の後に恐縮ですが、また話は現実に戻ります。純然たる法律論でございまして、私自身考えてもよくわからないものですから、明快に御説明いただければありがたいと思います。  憲法十四条に法のもとの平等を定めております。言うまでもないことですけれども、特別な理由、合理的な理由がない限り同じような状態にある人は同じように扱わねばならない、身分その他で差別してはいけないと、これが近代法治国家の大原則と言われております。当たり前といえば当たり前のことです。  そこで、設例を挙げさせていただきますけれども、ある人が銀行から融資を受ける、あるいはまた住宅金融公庫から住宅ローンを組んでもらうということになりまして、払っていたんですが、あるときから払わなくなった。払えないのか払わないのかよくわからないんですけれども、いずれにしろ払わない。そういうことで、銀行の担当者あるいはまた住宅公庫の担当者が調査に行きまして、まず事務所に入れてくれと言う。いや、入れない。帳簿をちょっと見せてくれ。いや、見せない。あなた、何かお金があるといううわさですけれども隠しておるようなことはないでしょうかねと、こう聞くと、そんなものはないと。本当はあるんで、それはほかに用途が決まっておるので払いの方には回せないので、金はないと、こううそを言う。  これは考えようによっては大変けしからぬ行為です。金を借りて返すのが当たり前で、それを返さない。しかもうそまで言う。債権者には全く協力しない。けしからぬ話であると思いますが、民事というのはやむを得ない、そういうことなのでありまして、債権者が強制力を使うことは一切許されておりません。無理に事務所に入ろうとすれば住居侵入、帳簿を無理やり見ようとすれば強要罪、それから、あなた金を隠しているんじゃないかと言って無理やり言わせようとすればこれまた強要罪ということで、債権者が処罰されてしまうわけであります。やっぱり裁判所に訴えて、証拠を出して、裁判所の適正な判断を仰ぐと、これが一般化した民事のルールであります。  次に、住専問題についての債務者のことについて例を挙げてみますると、住専から債務者が金を借りておる、あるいはまた住宅ローンを組んだと、こういうふうにいたしますが、あるときを境にまた払わなくなった。払えないのか払わないのかよくわからない。多分払えないんでしょうけれども、払わないという人も多いわけであります。  今までは、住専がやってきますと追い返してそれで済んでいたわけです。文句があるなら裁判所に訴えろと、こう言ってそれで済んでいたんですけれども、今度はどうもそうはいかなくなりまして、ある日突然に預金保険機構の職員と称する人が乗り込んでまいりまして、まず事務所に入れてくれと。これは断ります。次に帳簿を見せてくれと。これも断ります。あなた、お金があるんでしょう、あるなら払いなさいよと、こう言うと、本当はあるんですけれども、それは別に、もう既に隠してあるのか、あるいはまたよそに使うことになっておるのか、金はないよと、こういううそを言うわけです。  これまた大変けしからぬ行為でありまして、これで済むかと思うと、今度は済まないわけで、次の日は警察官が乗り込んでまいりまして、あなたは法律違反である、これは犯罪である、よってもって検挙をする、任意捜査に協力しなければ逮捕もされるわけでありまして、起訴されて罰金五十万円以下と、こういうことになってしまうわけです。  私ここでよくわからないのは、銀行から借りて払わない、これはまことにけしからぬ、しかもうそまで言っている。住専から借りて払わないうそまで言っている、これもけしからぬ。全く同じではないかと。なぜこの住専からの債務者だけが特別不利益な扱いを受けるんだろうかと。  こういうことを言いますと、佐藤議員はこの前、オウムに対する破防法適用の問題でオウムの味方をした、今度は住専借り手の味方をするのかと言われそうでありますけれども、そんなことはないのでありまして、私は理屈だけを言っておって、この理論の筋道は一体どういうことになるのか、それを承りたいなと、こう思っておるわけであります。  要するに、同じような立場にある者を同じように扱うのが法治国家の鉄則でありますから、銀行から借りて払わないうそを言っている者を放置しておいて、住専から借りた、うそを言っている者だけをなぜ処罰するのか、この理屈をお教え願えればと思うんです。  多分、こういうことになりますと、公的資金を導入することが決まったからなんですよと、こういう答えになるんじゃないかなと。これしかないようにも思うんですけれども、公的資金の導入は理屈にはならぬように思いますよ。住専から借りたときは、住専というのは単なる民間の貸金業者でありまして、それを借りて返さなかったというだけでありますが、途中から何か貸し手の方に事情の変化があったらしくて大変な経営不振になってきたと、貸し手にまた貸しておる農協系その他がおかしくなっているというのは、実は債務者には余り関係のないことなんですね。要すれば、債務者が返済するかしないか、それだけのことなんです。  そういうことを言いますと、公的資金を導入するという信用組合、あれについての借り手一体どういうことになるのか、あそこにもまた同じような規定を置く必要があるんじゃないかということになります。  それから、銀行というのは、これは住専以上にはるかに公共性の高い金融機関でありまして、これは預金者の金を貸す、あるいはまた日銀の金、これは公的資金であります、これを直接貸すわけですから、公的資金預金者の金、公共的な性格の金を借りて返さない、これはまことにけしからぬ話ではないか、同じような罰則規定を置いて強制しろ、無理にでも払わせろと、こういうことになりかねないわけであります。  特に住宅ローンのことで考えてみますると、住宅公庫というのは、これはまさしく税金で運用されておる、財政投融資資金もあるようでありますけれども。その税金を借りて払わないやつは、住専のローンを組んでそれを払わないやつよりはるかに悪いではないか。その金はまず第一に返させるべきではないかと。それを放置しておいて、これだけなぜ罰則を背景にして強制力を行使して返済を迫るのか。返済を迫って悪いということを言っているわけじゃないんであって、理屈を教えてもらいたいと、こういうことなのであります。お願いいたします。
  98. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 法案審査の要点に関するお尋ねでもあろうと思いますので、便宜私の方から御説明させていただきたいと思います。  ただいま委員からは憲法十四条の条文を御指摘いただきましたが、要するにこの住専、いわゆる住専処理法案の十七条の合理性に関する御質問に帰するであろうと思うわけでございます。それに関する私ども法制局としての考え方を、若干時間をいただきまして述べさせていただきたいと思います。  まず、いわゆる住専会社に対する多額の貸付債権等回収困難となったことによりまして、金融機関等からの多額の借入債権の返済に困窮している状況のもとにおきまして、信用秩序の維持と預金者等の保護を図るために多額の公的資金の投入を含む住専各社の債務の処理の特例に関してまさにただいま御審議いただいているわけでございます。  そこで、御指摘のとおり、住専会社の有する貸付債権と申しますのは、民事上の債権ではございます。しかしながら、多額の公的資金の投入を余儀なくされた直接の原因と申しますのは、住専各社の不良債務者の巨額の債務不履行にあるということは明白でございまして、仮に住専各社におきまして財政資金を投入することなく整理、清算の手続を進める事態になれば、我が国の金融システムの安定が損なわれ国民経済に大きな影響を及ぼすことは避けられないと、これは今までの審議においてるる御説明いたしたところであろうと思います。  そうだといたしますと、住専各社の不良債務者社会的責任は極めて重い、その者が望んだか否かを問わず、これらの債務者は今回支出される財政負担に対する責任を免れないと言わざるを得ないのでございます。  したがいまして、このような財政資金の支出に対して責任を負う住専各社の不良債務者は、みずからの債務を可及的速やかに、かつ最大限の弁済を行うことによってその責任の一端を果たすべきことが強く望まれるわけでございます。仮にも財産の隠匿等が意図的に、あるいは不適切な資産管理等によって過失によりなし得る弁済を行わないことは、著しく公益を害するものと言わざるを得ないと考えるわけでございます。  そこで、弁済のための努力が真摯になされているかどうかを公的な権限によってチェックすることは当然に許されるべきことである。また、これらの債務者がこのチェックを受忍すべきことも当然であると考えるわけでございます。  そこで、預金保険関係業務のほかに、今回住専処理機構の業務の実施に必要な指導助言を行うとともに、特に回収困難な債権につき委託を受けてその取り立てを行う権限を付与される公的法人であり、その役職員はみなし公務員として、法的規制を受ける預金保険機構にこの権限を付与することといたしたわけでございます。  したがいまして、ただいま御説明いたしました理由、まさに合理的な理由があると私どもは信じており、したがって、通常の金融債務者と異なる取り扱いを受けても、憲法十四条の観点から、法のもとの平等に反する取り扱いを受けたことにはさらさらならないのではないかと考える次第でございます。
  99. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 承っておりますが、まだ全然わからないことは、ほかの債務者との比較を具体的になさっていないことなんです。  銀行から借りて返さない、そのために兵庫銀行それから太平洋銀行などは銀行がつぶれるぐらいの大騒ぎになりまして、その後始末に大変関係者が苦慮した。一般預金者も大変にまた心配したでありましょう。あの銀行と取引しているために破産の憂き目を見た人もたくさんいるのかもしれません。そういう場合、銀行から借りて返さないという人の社会的責任もこれまた極めて大きいんじゃないか。  それから、私、信用組合の問題をちょっと指摘しましたけれども、信用組合から借りて返さない、そのために信用組合がまた整理ということになりまして公的資金が導入される、これについても全く同じことではないかという気がいたします。  そういうことを言っていきますと、一般の私人間の債権債務でありましても、私財をなげうって友人を救った、ところが友人はそれで救われたにもかかわらず金を返してくれない、貸した方がもう一家心中の瀬戸際になって最後は死んじゃうようなおそれもあるという場合だって私は同じことではないかと。片や国が税金を投入するから社会的公共性が極めて高い、私人のやつはもう従来どおり私人間の債権債務ということで処理してほしいと、そう冷たくは言えないんじゃないかという気がいたします。  悪質な債権者というのは世の中にごまんとおるわけですから、それに対していかにして支払わせるか。今度の救済案では、どうやら住専に対する債務者、これについてはこういう考えをもってどうしても支払わせるということを考えておるようですが、ほかの債務者に対しても、やはり同じように、これと匹敵するような悪質性のある債務者というのは幾らもおると思うんです。銀行からの債務者、あるいはノンバンク関係がこれから問題になると思いますけれども、あそこからもまた何兆円という金を、これは何千億か何百億か知りませんけれども、総計すると何兆円、何十兆円にもなるらしいですけれども、それを借りて返さない、そうしますとやはり国にとって大変な問題になる。そうすると、またこれについて救済法をつくる、当然ながらまたこういう罰則が出てくるのかなと、こういう気もいたします。あれはあれ、これはこれと区別して考えるという理屈はどうもなさそうですが、その点いかがでしょうか。
  100. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 個別的比較によりますと、確かに委員指摘のような悪質債務者、不良債務者、多額債務者と申しますのは個々の金融機関等の破綻に際して存在することは御指摘のとおりであろうかと思います。  ただ、この住専債務者と信用組合あるいは、先ほど兵庫銀行という特定銀行の名前を挙げられましたが、そのような銀行債務者との債務処理の違いは、まず第一点は、住専会社の債権債務処理に関しましては、信用秩序の維持という観点から公的資金を投入してまでこういう特例処理をしなければならないほどの公益性が顕著であるということであろうと思います。それに対しまして、兵庫銀行あるいは新聞等で報じられております信用組合等につきましては、いまだ公的資金の投入をもってしてまでも処理しなければならないほどの高度の公益性というところには至っていないという類型的、質的な違いがあるというふうに説明できょうかと思います。  それからもう一つは、今回は、住専会社は今回の特例処理によりまして完全に解散、清算、消滅させるという前提になっております。それに対しまして信用組合等につきましては、その業務は、その信用組合自体は消滅するにしても合併等によってその営業はほかに引き継がれていく。  したがいまして、そういう強制立入調査権限を与え、そのようなことを行いますと、取引先に影響を及ぼし、それ以後の営業に支障を生ずるおそれが類型的に認められる。したがって、法制度としてそこまでの措置をするのはいかがなものであるかというような配慮もございまして、関連法案の方には、この住専法案の十七条のような規定は入れなかったというような内々の検討経過もございます、ということでございます。
  101. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 これは私が改めて申すまでもないんですが、今まで民事上の債権債務関係には一切公権力は介入してこなかったわけであります。これは古今東西すべてそうであります。  裁判所が審理をして右、左を決める。そういうことで債権債務関係処理されていたわけでありますが、警察官がよく民事不介入と申します。あれも当然なことであります。警察官が債権者の肩を持って債務者に払え、払えと、こんなことは言える筋合いのものではございません。  今回のケースは一体どうなんだろうかと。長い間培われてきた債権債務に対する国家権力の不介入の原則を打ち破るだけの必要性が本当にあるんだろうか。そこに私は実は深刻な疑問を抱いておるわけであります。笑い事ではないのでありまして、やっぱり私的自治ということは最後まで法治国家においては尊重さるべきではないか。  この債務を取り立てるのは住専関係者、それを引き継いだ何とかという株式会社がございますけれども、そこまでが限度でありまして、どういうやり方で取り立てるかは知りませんけれども、これは従来の民事の枠内で取り立てるのが限界だろうと私は考えているわけであります。  実は、これは大変大事な問題でして、仮に払わない債務者法律に違反した債務者を起訴いたしますと、法廷で必ず弁護士さんは私が今言っているようなことを言って、これは法のもとの平等に反すると、銀行から多額の借財をして一切返さない者をほうり投げておいてなぜこの債務者だけを起訴したのかと、こういう議論になるわけであります。  そうなりますと、裁判所は必ず、こういう法律をつくったからには国会で深刻な議論がなされたに違いない、国会の議事録を取り寄せて検討してみたいと、こういうことになるわけでありまして、その際にこういう問答が裁判所に対して多少なりとも示唆するところがあれば幸いだと思いまして、法制局長官にわざわざおいで願ったようでありますから、最後にもう一回、裁判所を説得するぐらいの気構えで御説明をいただければありがたいと思います。
  102. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 民事問題に対する権力不介入の原則があるということは確かに委員おっしゃるとおりでございまして、私もそれは最大限度に守らなければならないというふうには考えるわけでございます。  そういう原則があるにもかかわらず、なお本件において十七条を規定したのはなぜかと、これに対して裁判所を説得できるぐらいの意見を言えと、こういうことでございますが、それほどこの住専処理問題というのは大きな公益を損なう可能性のある事態であるということ以外には答えようがございません。また、それで十分裁判所は説得されるんではなかろうかと信ずる次第でございます。
  103. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 終わります。(拍手)
  104. 奥村展三

    ○奥村展三君 昨日の福岡空港の痛ましい事故におきましては、その都度総理の方から御報告をいただき、三名の方がお亡くなりになり、また百余名の方々が負傷なされておるわけでございますが、御冥福をお祈りいたすとともに、一日も早い御快癒をお祈りいたしたいと思います。事故原因の究明、そして二度とこのようなことが起こらないように願うものでございます。  さて、きのう、与党の大蔵省改革プロジェクトチームによりますと、日銀法改正など金融行政改革の基本方針と大蔵省組織、機構については九月じゆうに政府・与党で具体案を作成いたしまして、次期通常国会大蔵省設置法等の改正を行うという大枠の方針を決定なされたわけでございます。  その報告書の最後にも書かれておるわけでございますが、この問題はまないたのコイが包丁を持つことのないように、私は政治主導で議論を進めていただく必要があると思っております。政府に対して政党が主導するのはもちろんのことでございます。また、大蔵省の関与はできるだけ最低限にして、官邸主導、総理みずからのリーダーシップで具体的な検討をなさるべきだというように考えております。  そこで、総理は、直属の機関、例えば行政改革委員会に日銀法改正や大蔵省改革を検討する作業部会を設置され、その議論を公開されて、透明な形で検討されてはどうかというように思うわけですが、総理はどのようにお考えでしょうか。
  105. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 昨日、与党の大蔵省改革プロジェクトチーム、ここの作業で、時代の変化に即応した金融行政あるいは日本銀行のあり方について今後の改革の大きな方向を取りまとめたというお話を伺いました。ただ、昨日、御承知のように福岡空港で発生をいたしました事故の対応に追われまして、また、本日けさから本委員会が開会されておりまして、本日午後、私はその報告を承ることにいたしております。ですから、その御報告内容を私は今詳細に存じておりませんので、内容にわたる点は控えさせていただきたいと存じますが、真剣に伺いながら、政府として検討すべきものにつきましては今後鋭意検討を進めてまいりたいと思います。  また、日銀法の改正問題につきましては、私としても幅広い観点から十分な意見をいただくことが大切だと考えておりますし、先日来、大蔵大臣とも御相談をいたしながらきょうまで参りました。けさ、たまたま日銀総裁の御意見を伺う時間もごく短時間でしたがございましたので、適切な検討の場について早速考えていきたいと思っております。同時に、今後ともに内外から信頼される金融行政というものを確立するために、作業の途中でありましても全力を挙げてまいりたい、そのように考えております。
  106. 奥村展三

    ○奥村展三君 総理のまた決断をよろしくお願い申し上げたいと思うわけでございます。  我が新党さきがけにおきましても、この金融政策あるいは財政政策のもろもろの反省に立ちましていろいろ党内議論を進めてまいったわけでございます。それを踏まえまして、財政政策と金融政策の所管官庁を分離して、そしてお互いにいざというときにノーと言い合える独自性を保ちながら、最終的には官邸主導でマクロ的な経済政策の調整が図られる仕組みをつぐるべきだと我々は思っているところでございます。  こうしたとき、この財政、金融の分離につきまして、久保大蔵大臣が所属されております社民党がまだ社会党と言われた当時、二年前ぐらいだったと思うんですが、「二一世紀への選択」という将来ビジョンの中で、予算編成権を内閣の下に移して、仮称のようでございましたが、予算庁を設置しようという大胆な提言がなされたように仄聞をいたしておるわけでございますが、大蔵大臣として当時の志は今もお変わりないのかどうか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  107. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 志と申すべきかどうかわかりませんが、「二一世紀への選択」という当時社会党が九四年に取りまとめたビジョンがございますが、これは政策審議会の諮問に基づいてつくられました外部の学者等に御参加を願ったプロジェクトチームの提言でございます。そして、この提言は九四年九月の党の大会において参考資料として配付されたものでございます。その中には、御指摘のように、予算決定権を内閣の直轄下に置くため、主計局を大蔵省から分離して予算庁を設置するということがございます。  党は、この答申を受けて、九五年五月に開かれた大会で決定をいたしました九五年宣言に、予算編成は内閣官房を中心とした政治がリードできるように改革することが必要ですということを述べております。  これは、非常に硬直化してまいりました、今財政の構造改革が迫られるような状況に対して、予算の配分を見直し、政治のリーダーシップを高めていくためには、思い切った改革を行うべきだという主張に基づくものだと考えております。しかし、政治のリーダーシップというのは、必ずしも役所の機構を移していくというだけで決着する問題ではなかろうと思っておりまして、政治のリーダーシップがどのように確立されるかということに視点を置いて検討が加えられるべきものと考えております。  その場合に、先ほどまないたのコイが包丁を持つなというお話がございましたけれども、確かにそのような御忠言も大事なことだと思っておりますが、大蔵省大蔵省として、大蔵省の改革を妨げる、省益を守ろうとするようなことは排除すべきものと私は思っておりますが、国益のために大蔵省が今改革に当たって主張すべきことについては、大蔵省大蔵省としてその主張を持つべきものと考えております。
  108. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございました。  今、大臣の申されたとおりだと思うんですが、総理にもお伺いをいたしたいと思うんです。  ちょうど総理が政調会長時代、私も地方の議員で政調会長をしておりました。いろいろ勉強をさせていただく機会があったわけです。そのときにも、自民党の二十一世紀ビジョンの中で、予算そのものをやっぱり官邸に置くべきだというようなことを主張されたやに私は仄聞しておるんです。大蔵大臣がおっしゃったわけでございますが、今の財政と金融の分離についてどのような所見をお持ちなのかお伺いをしたいと思います。
  109. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、いずれにいたしましても、初めに組織あるいは権限の見直しありきというところからスタートする、それは好みません。むしろ、行政のあり方そのものについて十分な検討を行った結果として、その上でその姿というものは決まるべきものだと思います。  その上で一点補足をさせていただきたいと思いますのは、二十一世紀ビジョンというのは確かに党で作業をしておりまして、そういう論議が中にありましたことは事実であります。しかし同時に、私は、今さまざまな角度から御議論があります中で、一つ欠けている部分が非常に気になって仕方がありません。  それは、国際社会に今さまざまな仕組みがつくられ、当然ながら金融、財政の問題につきましても、例えば七カ国大蔵大臣・中央銀行総裁会議というものがつくられております。ここに一つの例をとりますと、日本の場合にはここは大蔵大臣と日銀総裁、それに大蔵大臣を補佐する立場の財務官が出席すればこの席上に出るすべての問題に対応できる仕組みがつくられております。そして、各国もまたこの七カ国大蔵大臣・中央銀行総裁会議においては、日本はその代表がその場で出てくるすべての議題に対応できるということを信じております。  一方、近くリヨンでサミットが行われるわけでありますけれども、この場合、日本は一部の分野につきましては通産大臣に席をかわっていただかなければならない場面がございます。これは当然のことながら、G7の性格の中で環境問題といったもの、あるいは通商政策が議論される局面がございます。あらかじめ設定された議題の中で、当然のことながらその場合大蔵大臣は通産大臣と交代をするわけであります。これは日本だけではなく、例えば同じような対応はドイツ等でも行っております。  しかし、逆にドイツの場合、ドイツ連銀総裁に非常に大きな権限が集まっておりますために、連銀総裁の参加しないサミットの場で金融あるいは為替といった問題を議論いたしました場合に、当然のことながらドイツ政府の権限の一定の幅というものが生ずるケースがございます。そうした国際会議へ対応する場合をやはり想定しながら、私は組織考えていかなければならないとかねてから考えておりました。  そうした点も、今後金融行政のあり方というものあるいは財政のあり方というものを考えてまいります場合に、一つの視点としてお持ちをいただきたいと切に願っております。
  110. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございました。  国際的にもいろいろな立場で今お述べをいただいたようでありますが、ぜひこの改革につきましては政治のリーダーシップを持ちながら推し進めていただくことを強く要望しておきたいと思います。  次に、東京共同銀行経営状況等の情報開示についてお伺いをいたしたいと思います。  東京共同銀行が九六年三月の決算で実質債務超過になったという報道がございましたが、これは事実かどうか。整理回収銀行への改組に当たりまして増資はどの程度予定しておられるのか。東京共同銀行の決算の速報値を概数でも結構でございますから、法案採決までに当委員会に提出をお願いいたしたいと思うわけでございます。  また、東京共同銀行損失が膨らんだ原因といたしまして、当初の不良債権額の算定につきまして東京都の査定の甘さが指摘をされているところでございますが、コスモ信組などは大蔵省も共同検査をしていたのではないか。不良債権の評価基準は国と地方自治体で巨額の不良債権の差を生じるほど異なっています。こうした中で、住専処理機構で同様の不良債権の拡大が起きる心配がないかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  111. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) まず、東京共同銀行の件でございますが、東京共同銀行の八年三月末の決算の見通しは、多額の不良債権償却、コスモ信用組合の事業の譲り受けに伴います営業権の償却等によりまして大幅な赤字、三百三十億円に上る赤字が見込まれております。その結果、八年三月末における当期未処理損失金も多額に上ると見込まれますが、この損失額はバランスシートにおける資本金の額、四百億円を下回りますところから、御指摘の債務超過といった事態にはならないものと承知をいたしておりますが、しかしながら、この経営状況がなかなかに問題があるということも御指摘の点はそのとおりでございます。  預金保険機構からの整理回収銀行への出資につきましては、預金保険法の改正案におきまして、預金保険機構が整理回収銀行に対し整理回収業務の円滑な実施に必要な資金の出資を行うことができるよう御提案させていただいているところでございますけれども、具体的な出資額につきましては、今後この共同銀行を改組する段階におきまして検討を進め、関係者協議を進めてまいりたいと考えているところでございます。  なお、東京共同銀行損失が膨らんだ原因についての御指摘でございますが、確かに、信用組合の不良債権処理あるいは信用組合そのものの処理に際しましては、地方公共団体、都道府県知事が機関委任事務として取り扱っていることは御指摘のとおりでございますが、その場合に、国が所管しております金融機関と都道府県知事が所管しております信用組合に対する資産の評価基準が必ずしも異なっているというわけではございません。それぞれ同一の考え方をもとりながら資産の査定に当たっているところでございます。  なお、住専七社の資産の評価につきましては、先般来御説明しておりますように、私どもとしては厳格な資産の査定をしたということに御理解を賜りたいと存じますし、今後、債権回収に当たりましては努力を続けてまいりたいと考えております。  ちなみに、コスモ信用組合に対する破綻直前の検査は東京都の単独検査によるものでございまして、大蔵省との共同検査ということはいたしておりません。
  112. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございます。  それでは最後でございますが、この整理回収銀行の決算や債権回収の状況につきましては、破綻金融機関等の勘定を分けて債権回収の進捗状況や債権回収率がわかりやすい形で適宜情報開示ということが重要と考えますが、そのように対処できるかどうか、お伺いをしておきたいと思います。
  113. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 整理回収銀行は、今後五年間に生じ得る信用組合の破綻処理を行うための時限的な受け皿・回収機関として、現在の東京共同銀行を抜本的に改組し、引き継いだ不良債権について、法律家、不動産取引専門家等の御参加を得て、法的手段を活用しつつ、債権回収を強力に進めることとされているところでございます。  大蔵省といたしましては、現在御審議いただいております金融関連法案の成立後、速やかに整理回収銀行が発足できるよう関係者と所要の協議を進めることといたしておりますが、あわせて、今委員指摘情報開示という点につきましても十分に考えてまいらなければいけない大切な課題だと考えている次第でございます。
  114. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございました。(拍手)
  115. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 山下君の質疑は留保することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕      ―――――・―――――