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1996-06-12 第136回国会 参議院 金融問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十二日(水曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員異動  六月十一日     辞任        補欠選任      服部三男雄君     中島 眞人君  六月十二日     辞任        補欠選任      中島 眞人君     小山 孝雄君      山本  保君     荒木 清寛君      吉岡 吉典君     笠井  亮君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         坂野 重信君     理 事                 中曽根弘文君                 前田 勲男君                 吉村剛太郎君                 直嶋 正行君                 林  寛子君                 一井 淳治君                 筆坂 秀世君     委 員                 笠原 潤一君                 金田 勝年君                 小山 孝雄君                 佐藤 静雄君                 関根 則之君                 中島 眞人君                 楢崎 泰昌君                 平田 耕一君                 保坂 三蔵君                 真島 一男君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 阿曽田 清君                 荒木 清寛君                 牛嶋  正君                 海野 義孝君                 高橋 令則君                 益田 洋介君                 山下 栄一君                 渡辺 孝男君                 伊藤 基隆君                 大脇 雅子君                 梶原 敬義君                 山本 正和君                 笠井  亮君                 吉岡 吉典君                 国井 正幸君                 佐藤 道夫君                 奥村 展三君    衆議院議員        発  議  者  錦織  淳君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        大 蔵 大 臣  久保  亘君        法 務 大 臣  長尾 立子君        外 務 大 臣  池田 行彦君        文 部 大 臣  奥田 幹生君        厚 生 大 臣  菅  直人君        農林水産大臣   大原 一三君        通商産業大臣   塚原 俊平君        運 輸 大 臣  亀井 善之君        郵 政 大 臣  日野 市朗君        労 働 大 臣  永井 孝信君        建 設 大 臣  中尾 栄一君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    倉田 寛之君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国務大臣        (総務長官)   中西 績介君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       岡部 三郎君        国務大臣        (防衛庁長官)  臼井日出男君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       田中 秀征君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 秀直君        国務大臣        (環境庁長官)  岩垂寿喜男君        国務大臣        (国土庁長官)  鈴木 和美君    政府委員        内閣法制局長官  大森 政輔君        警察庁刑事局長  野田  健君        総務庁人事局長  池ノ内祐司君        防衛庁参事官   藤島 正之君        法務省刑事局長  原田 明夫君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局次        長        伏屋 和彦君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        農林水産大臣官        房長       高木 勇樹君        農林水産省経済        局長       堤  英隆君        労働大臣官房長  渡邊  信君        建設大臣官房長  伴   襄君        自治大臣官房長  二橋 正弘君        自治大臣官房総        務官       湊  和夫君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    参考人        全国銀行協会連        合会会長     橋本 俊作君        前大蔵省銀行局        長        寺村 信行君        弁  護  士 田中清隆君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○特定住宅金融専門会社債権債務処理促進  等に関する特別措置法案内閣提出、衆議院送  付) ○金融機関等経営健全性確保のための関係法  律の整備に関する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○金融機関更生手続特例等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付) ○農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○特定住宅金融専門会社が有する債権時効の停  止等に関する特別措置法案衆議院提出)     ―――――――――――――
  2. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから金融問題等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十一日、服部三男雄君が委員辞任され、その補欠として中島眞人君が選任されました。  また、本日、山本保君が委員辞任され、その補欠として荒木清寛君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案金融機関更生手続特例等に関する法律案預金保険法の一部を改正する法律案農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び特定住宅金融専門会社が有する債権時効停止等に関する特別措置法案、以上六案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 一井淳治

    一井淳治君 きのうに引き続いて質問をさせていただきます。  住専問題は、日本経済を大混乱させたわけでありますし、税金投入までして対応しなくちゃいけない。ですから、犯罪が仮にその原因としてあるような場合には厳しい処分をするということが当然であると思います。一部の犯罪時効にかかりつつあるわけでありますから、強力な捜査を早急に進めていくということが極めて重要であると思いますけれども、きのう法務省警察庁とお二人お見えであったんですが、警察庁の方のお考えを大変失礼して聞き落としておりましたので、きょうはお聞きしたいと思います。
  5. 野田健

    政府委員野田健君) いわゆる住専にかかわる事件を含む金融不良債権関連事犯に関しまして、警察庁においては金融不良債権関連事犯対策室を設け、法務・検察、国税当局と連携を図るとともに、全国都道府県警察に対し情報収集事件検挙及び体制整備に積極的に取り組むよう指示したところであります。  現在、例えば警視庁において捜査第二課、捜査第四課、生活経済課、合わせて約二百七十名、大阪府警察において同じく約二百五十名の捜査専従体制をそれぞれとるなど、都道府県警察においては所要の体制をもって捜査を推進しているところでございます。  平成五年から七年までの三年間に全国で検挙した金融不良債権関連事犯は百十五件であり、一年平均いたしますと約三十八件であります。本年は六月十一日までに既に四十六件検挙しております。  その内訳は、融資過程におけるもの、これは罪種的には背任とか詐欺等でございますが七件、うち暴力団等にかかわるもの二件、債権回収過程におけるもの、罪種的には競売入札妨害であるとかあるいは恐喝未遂等でございますが二十四件、うち暴力団等にかかわるもの二十三件、その他の金融機関役職員により行われたもの、罪種的には業務上横領であるとか詐欺等でありますが十五件であります。なお、債権回収過程における二十四件のうち六件は住専にかかわる事件でございます。  今後とも、あらゆるレベルで収集を進めております情報資料等を活用し、広範かつ徹底した実態解明を進め、その結果、刑罰法令に触れる行為を認めれば、貸し手・借り手を問わず、また罪種のいかんを問わず迅速かつ厳正に対処してまいる所存でございます。
  6. 一井淳治

    一井淳治君 大変御多忙とは思いますけれども住専問題について特別力を入れていただくように要望いたしておきます。  次に、信用組合に対する都道府県監督の問題でございます。これは前回最後研究課題としてお願いしたわけでございますけれども、著しく監督が不十分な場合には、都道府県預金保険機構に対して損害賠償責任があるんじゃなかろうか、その辺を考えていただきたいということを宿題としてお願いしたわけでございます。  木津信用組合を例にとりますと、ここは九千数百億円の不良債権を発生させておりまして、そのために、預金者保護のためということで保険料を七倍に上げるとか、あるいは税金投入しなくちゃならないんじゃないかという大変なことも起こっているわけでございます。  それで、木津信組がどうしてそうなったのかということを振り返ってみますと、都銀より二・五%も高い高利の預金でどんどん大型の預金を集めてくる、その預金を今度は危険性の高い事業や経営者関係のある企業などに貸し付けておりまして、回収不能債権がどんどんと増加していったというわけでありまして、今後この種のことが起こってまいりますと、大変税金投入しなくちゃならないという危険性が高まってくるわけであります。  そういうふうな放漫な経営をしておりますから、もう前々から倒産するんじゃなかろうかということで有名になっておったわけでありますけれども大阪府の方がもっと早く適切な監督をしておったならば、こういった多額の不良債権は発生しなかったんじゃないかということが今から考えられるわけであります。  そういったことで、国民の税金投入を今後抑えていかなくちゃならないということがあるわけですから、やや感情的かもしれませんけれども、そういった質問をさせてもらった次第でございます。
  7. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 最近の信用組合破綻の事例におきましては、機関委任事務といたしまして委任を受けております、監督に当たっております都道府県におきまして、こうした事態に至るまで必ずしも十分な検査監督を行い得なかったのではないかという御指摘を各方面から受けていることは私どもも承知をしておるところでございます。  私どもも、金融システム全般を守るという観点から、都道府県と協力をしながらこのような事態対応をしていく必要もあろうかと感じているところではございます。そのため、共同検査というような手法をもちまして、国も一緒になってこのような事態に当たっていくということは必要であろうかと考えているところでございますが、何と申しましても、第一次的には地元の事情を一番承知しておられる都道府県におかれまして御尽力をいただくということが必要であろうかと存じているところでございます。  他方、いわゆる財政的な支援の問題につきましては、これまで都道府県信用組合破綻等に当たりまして資金の拠出等を行ってきていただいているわけでございますが、これは機関委任事務といたしましての信用組合監督指導の一環として行っていると、そういう性格のものではございませんで、それぞれの都道府県の実情に基づきまして、地域経済に与える影響や民生の安定という見地から、公益上の必要性があるという考え方に基づきまして都道府県の御判断により行われている、そういう性格のものであると私どもは理解しているわけでございます。  昨年十二月の金融制度調査会の答申におきましても、今まで行われてきた「こうした都道府県財政支援はあくまで自らの判断に基づくものではあるが、今後とも行われることが期待される。」とされたところでございまして、大蔵省といたしましてもこのような考え方に沿いまして、都道府県と協力しながら事に当たっていきたいと考えているところでございます。
  8. 一井淳治

    一井淳治君 都道府県破綻処理預金者保護等のためにお金を出す、これは今まさに言われたとおり、信用組合地域経済に貢献しておりますから、地域経済を守っていかなきゃならないという公益性観点からお出しになる。これはまさしくそのとおりであるというふうに思います。  しかし、今申し上げましたように全くずさんな監督をしている。役所の人が月給をもらっておるのは、監督をすると、それで月給をもらっているわけですから、それが十分に監督をしていないとなれば、これは何のための役所だということになるわけでありまして、今申し上げましたように十分な監督を尽くしていない、大変ずさんな監督しかしていないという場合には、私は損害賠償責任があるんじゃなかろうかと。  そして、その損害賠償を払ってもらわないと、結局住専処理機構の方へ影響してきて、また税金投入という問題があるわけですから、そういったことがないように今後完全な監督責任を遂行してもらいたい。そのためにも、大蔵省都道府県に対してさらに指導を強めていただきたいというふうにお願いしたいわけでございます。  そして、東京都あるいは大阪府の職員の方も、最悪の場合には損害賠償を払わにゃいかぬというふうな気持ちを持ってやっていただきたいし、今後とも強力な監督をして、今回の木津信組のようなことが起こらないように特別の今後の配慮をお願いしたいと思うわけでございます。  次に、これもこの間最後のときに一つ研究課題としてお願いしたわけでありますけれども商法二百八十五条ノ四と法人税法三十三条との関係でございます。  バブルの崩壊後に銀行信用組合あるいは住専等ノンバンク倒産が続出したわけでありますけれども、私はその決算書に、事前に倒産状態になっているということがはっきり決算書表現されておったということを聞かないわけであります。もし、倒産したこういった金融機関ノンバンクが、倒産しそうだということを反映した決算書になっておるということを大蔵省の方で把握しておられたら、それを私お聞きしたいわけでありますけれども、残念ながら粉飾決算になっておったというふうに思うわけであります。  その最大の原因は、これまで何遍も指摘されておりますけれども商法二百八十五条ノ四、これは金銭債権が取り立て不能になった場合にはその金額を控除しなくちゃならないという趣旨の規定でありますけれども、そういうふうに決算書金銭債権の正しい額を記載しておったら問題ないんですけれども、そうはなっていない。その主な原因がこの法人税法三十三条の関係ではなかろうか。  法人税法三十三条によりますと、原則として減額を認めないというふうになっているわけですけれども、この法人税法三十三条との関係で、商法二百八十五条ノ四をそのとおりに解釈して金融機関等決算書表現をしていっていいのかどうか、そこのところの見解をお聞きしたいわけであります。
  9. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 前回にもこの御質問をいただいていたわけでございますが、まず一般論として申し上げまして、会計にはいわゆる商法会計、それから企業会計税務会計といったようなものがございまして、商法会計は、一言で申し上げれば、債権者保護という哲学のもとに構成されていると認識しております。また、企業会計投資家保護といった観点から構成されていると認識しておるわけでございますが、税法課税適正化、恐意的な課税が行われないようにするという意味での哲学のもとに会計基準を設けております。  ただ、先ほど申し上げましたように、一般論として申し上げれば、日本の場合は、企業会計等原則にし、その上で税法上の調整をさせていただくという考え方をとっているところでございます。  そこで、御指摘の点でございますが、御指摘のように、法人税法では、貸付金とか売掛金などの金銭債権につきましては、いずれも金銭等価物であるということからいわゆる評価がえの対象としてはおりませんけれども個々金銭債権について回収できないことが明らかとなった場合には、貸し倒れ損失計上ができますし、また債権償却特別勘定の繰り入れという手だてもございます。あわせて、金銭債権一般につきまして、将来貸し倒れが発生した場合の損失見込み額として貸倒引当金計上を認めているという形で税法会計は整理されているということでございまして、商法との哲学の違いがそこに出ているのかと思います。
  10. 一井淳治

    一井淳治君 結論を簡単に答えてもらったらいいんですが、哲学が違うというのは商法法人税法は両立しないということなんですか。私は、商法二百八十五条ノ四がまず優先して、商法二百八十五条ノ四は決算書基本の問題ですから、これが優先するんだと、その一言をお聞きしたいんです。
  11. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 商法商法考え方で整理されておりまして、それを基本にしつつ税法もできておりますが、ただ調整すべきところは税法上きちっと調整規定が置いてある、それが三十三条であるということでございます。
  12. 一井淳治

    一井淳治君 それならそれで結構なわけでありまして、その精神が今後とも生かされるように期待いたしております。  そして、今回の住専等の経済不安の原因を振り返ってみますと、大蔵省金融機関等に対する監査というものはやはり人員的にも限界があると思うわけであります。そして、金融機関等の各民間企業におきまして監査役等を充実させていきまして民間監査を拡充していくと、これが一番大切であるということを考えるわけであります。そういった観点は、今後市場原理によって金融機関々公正な運営に導いていく、そういう立場からしても非常に決算書が大切な機能を果たしていくと思うわけでございます。  ところで、今回のさまざまな経過を振り返りますと、例えば住専等の中には非常に経営が不如音になっておるにもかかわらず配当をしているというところもあるわけでありまして、今後この住専処理が進んでいって住専内容が歴史的に明らかになっていった場合には、監査がいいかげんであったと。この監査の主体は何といいましても公認会計士とかあるいは監査法人がこれを監査しているわけでありますけれども、余りにもこの監査がいいかげんであった、決算書がずさんであったということが今後明らかになっていくと思うんですけれども、仮にそういうふうに明らかになつていった場合には、公認会計士に対する懲戒処分ということも当然考えていかなくちゃならないと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。もう結論だけ簡単で結構でございます。
  13. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 個々の事案への対応につきましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思いますけれども一般論で申し上げれば、適正な企業内容開示確保という観点から、開示書類審査事務を所管しております私どもにおきまして、開示企業または関与公認会計士からお話を伺うといった適切な対応をとってきておるところでございまして、関係法令に照らして問題があれば厳正に対応していくべきことは言うまでもないと考えております。
  14. 一井淳治

    一井淳治君 今後、住専内容解明が進むわけですから、そういう厳しい態度で対応をお願い申し上げたいと思います。  それからもう一つ監査法人の世界では、言葉が非常に端的でありまして失礼かと思いますけれども大蔵省過剰支配という言葉があるわけであります。  これが出てきた原因は二つあると思いますけれども一つ決算書が正しいか否か。これはもう客観的な事実でありまして、例えば資産評価というものは、真理は一つでありまして、これに対して大蔵省意向が働くということはあり得ないわけでありますけれども大蔵省、特に主税局税収に絡んだ意向が影響していくということが言われておるわけであります。四月十八日の予算委員会で私はこの点を質問いたしました。そのと弐は余り自信がなかったものですからはっきりとは言わなかったんですけれども、その後、朝日新聞の「ウイークエンド経済」に同じような問題意識指摘がございました。  ちょっと記事を読ませていただきますと、これは名前入りで出ているわけですからかなり信頼性があるんじゃないかと思いますけれども、「大蔵省過剰支配は、手続きだけではない。会計処理が適正かどうかは事実に基づくべきなのに、現虫には監査報告書大蔵当局が受理するかどうかで決まる。損失と認めたら税収が減るから、主税局が認めない。会計原則を担当する証券局がだらしないよ。住専不良資産があれほどあるのに、監査法人は去年まで決算は適正と報告していた。不良資産指摘するなという大蔵省の主張をのんだわけだ。」「会計士協会も弱いんだ。大手の法人会長大蔵OBを迎えている。」と。  これは新聞記事ですから、かなり簡略化あるいは象徴的に書いてありますから、これをそのまま受け取るべきかどうかは一概には言えないと思いますけれども発言者名前が書いてあるというわけで、そういう面も非常に強いんじゃないかと思うわけであります。  特に、主要な監査法人会長等大蔵省国税庁等OBが就職しているという点も、これはどういうふうに考えたらいいか、いろんな側面があると思いますけれども一つ指摘されるべき問題であると思います。  これが結果としてどのように働いていくかということですけれどもマイナス面とすれば、例えば第一次、第二次の住専再建計画がありましたけれども、あのころは大蔵省考え方は、住専の、経営倒産状態になることは余り表に出さないようにして、金融不安が起こらないようにしようというお考えがあったんじゃないかと思いますけれども、そういった大蔵省政策決算書に及んでいくんじゃなかろうかという心配もなきにしもあらずでありまして、そういうことも考えるわけであります。  この「大蔵省過剰支配」という、これは非常に簡単な表現でありますけれども、この問題について御所見を承りたいと思います。
  15. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 御指摘新聞記事は私どもも拝見いたしております。  政策論として申し上げますと、先ほど一井先生から御指摘になりました、商法上の会計税務上の会計の問題がこの根っこにあろうかと思いまして、新聞記事でございますのでどれだけ正確かどうかわかりませんけれども、ここにあるお考えは、税務会計をまず優先して考えて、商法会計をそれに合わせてしまう。したがって、税務会計上認められない引当金はもう商法会計上も引き当てしないんだという考え方に立脚して、主税局意向でといった御発言があるのかなと思いますけれども、先ほどこの点は主税局長から明確に御報告いたしましたように、企業会計考え方税務上の会計は違ってしかるべき点がございますので、企業会計の立場からきちんと被監査法人及び公認会計士監査対応されることが望ましいと考えております。
  16. 一井淳治

    一井淳治君 これは課題でありまして、大蔵省あるいは国税庁の専門家の方が公認会計士の世界に入っていかれますと、専門家ですから専門的な力を発揮するという点ではいいわけであります。しかし、外部の人からとやかく言われるようになるとやはり不信感が募るわけですから、そういった点は絶対ないように自粛してもらわなくちゃいけないと思うわけであります。例えば法務省とかいろんな方がこの業界に入っていってバランスをとっておくということが大切じゃないかと思います。  そして、私が現段階で一番心配しておりますのは、外国では、特にアメリカでは監査法人に対する損害賠償請求というのが起こりまして大変問題になっているわけであります。問題になるというのは、監査法人が破産しそうな状態になったりして問題になっているわけであります。  日本では、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の第九条によりまして、会社に対する損害賠償責任というものがありまして、会社に対する損害賠償責任は、将来、住専処理機構に引き継ぐというふうになっているわけであります。その場合に住専処理機構日本監査法人に対して損害賠償を請求する。その場合に大蔵省OBがおられるからというんで手心があったら絶対いけないと思うわけであります。  ですから、ここのところをはっきり、そんな手心なんか加えないという、そしてもし損害賠償責任があるならば遠慮なく請求するという、そこのところの決意をお聞きしたいと思います。
  17. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) お答え申し上げます。  かつて大蔵省に在籍した者がその監査法人に勤務しておるということで、その他の事柄に何らの影響があってならないことは当然のことでございますし、先生の御指摘のとおり、法令上問題が仮にあるのであれば、そのことはそのこととしてきちんと対応していくべきものと考えております。
  18. 一井淳治

    一井淳治君 きちんと対応されるということは、今申し上げましたように、特例法の第九条によって、監査法人決算等の不注意によって会社に対して損害を与えた場合には賠償責任があるという、この問題について適正な処理をしてくださるということと受けとめておきたいと思います。  次に、この委員会あるいは予算委員会におきまして審議を重ねてまいりました。そういった中で、各省庁の方々がどうも自分の省益を中心にして動いておられるんじゃなかろうかという心配をする場面も出てきたわけであります。  例えば、住専経営内容につきましては大蔵省に対して報告がございます。そうすると、大蔵省の方では住専経営内容がだんだん悪くなっているということは当然わかるわけであります。  ところが、その情報が農林省の方に移行しないわけであります。農林省は農協系統の監督団体でありまして、農協系統の資金が大量に住専の方に流れておる、そしてこのまま放置しておれば農協系統に大変甚大な損害が発生するかもしれないという状況になっても、大蔵省の持っている情報が農林省の方に移行しないということが実はわかってきたわけでありますけれども、ほかにもそういったことを我々もよく経験いたします。  例えば、この委員会等で質問いたしておりましても、どうも省庁の方は国会審議に協力するというよりは自分の省益の立場から答弁されるということが多いように思うわけであります。  そういったことで、公務員の方々が国全体の政策を実現していくんだ、国民全体に対して各省はひとしく責任を負っているんだという、そういう立場で今後国の行政を展開していただきたいと思うわけでありますけれども、そういう方向に国家公務員の方々が動いていくようにしていただくのが総務庁の責任ではないかと思いますけれども、御見解を伺いたいと思います。
  19. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) 国家公務員はひとしく政府の一員として国民全体の奉仕者であると、そうした認識に立っておることがまず基本であろうと思います。  そうした中で、総合的あるいは効率的な行政運営をやるということが肝要でありますので、平成六年十二月二十二日に閣議決定いたしまして省庁間の人事交流を推進してきたところであります。特に、人事交流を積極的に推進する中から、各省庁の職員を対象としました啓発機会及び合同研修の充実整備を図って行政の一体性の確保をどのように確立するかが今一番肝要であろうと思っております。そうした意味で、こうした面における施策を徹底して推進してまいりたいと、このように考えております。
  20. 一井淳治

    一井淳治君 もう一つ、総務庁の見解をお伺いしたいのでございますけれども、この金融特でも論じられているわけですが、民間企業経営者の人たちは、もしも自分の仕事に不注意等で不完全なことを行った場合には株主代表訴訟で追及される。その場合には大変巨額な金額を請求されるわけでありますから、自分自体では払えない。もう孫子の代までかかってもその損害賠償金額が払えるかどうかという、そういう厳しい責任の上に立って民間企業経営者は仕事をしているということがあるわけでありますけれども、どうも公務員の方々はそこまで厳しい自分の責任ということを考えておられないんじゃなかろうか、もう少し自覚を持って、責任を持ってお仕事をしてくださった方がいいんじゃなかろうかと、そういうことも感ずるわけであります。  その点、民間企業経営者に比べて公務員の方々にもっと自覚を持って仕事をしてもらいたいという立場で、そういう方向に進むように総務庁の御見解を伺いたいと思うわけですが。
  21. 中西績介

    国務大臣(中西績介君) 先ほども申し上げましたように、公務員はあくまでも国民全体の奉仕者であるということの自覚、このことがまず第一点であろうと思いますし、政府の一員としての自覚を必ず持ち続けるということが大変重要であろうと思っています。そうした中で、職務の遂行に全力を挙げてもらうということが今一番重要な課題であろうと思っています。  そうした中で各種の職員の研修を何回か行っておるわけでありますけれども、その中におきまして公務員の自覚を高めるための、特に国民の信頼を維持し、公務意識を徹底し、綱紀の一層の厳正な維持に努めてまいらせるようにどのようにすればいいかということで今いろいろやっております。特に平成八年度におきましては、人事管理運営方針なるものを発表いたしまして、公務意識の向上あるいは公務意識の徹底を図るために、さらにまた綱紀の厳正な保持を図るために、それぞれ公務員としての自覚を高めることをまず第一義的なものとしてこれから努めてまいりたいと思っています。
  22. 一井淳治

    一井淳治君 それから、住専処理機構が成立した場合には早急に債権の回収を進めていかなくちゃならないわけであります。その場合に、不良資産の中で非常に暴力団が介入しておるというふうなものが少なからずありますけれども、そういったものは競売をしていかなくちゃならない。その場合には、なかなか落札する人はいませんから、自己競落ということもしなくちゃならないと思いますけれども、この住専処理機構に自己競落の機能を与える、そして税法上もある程度優遇していくということが必要ではなかろうかと思いますけれども、見解を簡単にお聞きしたいと思います。
  23. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘のように、譲り受けました財産をいかに処分していくかということが非常に大きな課題になるわけでございます。その場合に、競落を円滑に進めるためにどのような工夫が必要であるかという点につきまして、今、自己競落という御指摘がございましたが、民間金融機関におきましてはそういう手法の活用を既にしているところもございます。住専につきましても、そのような手法の適用につきまして検討をさせていただきたいと存じます。
  24. 一井淳治

    一井淳治君 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきたいと思いますけれども、今一番大切なことは、追加負担をどのように政府の方で、あるいは与党が協力しながらお進めいただくかということであると思います。その場合に、いろんな議論や問題があろうかと思いますけれども、これまでの護送船団方式からすれば一律に負担させていくということになるのだと思います。しかし、これからの新しい考え方によりますと、一律ではなくて、それぞれの体力あるいはそれぞれの状況から、クラスに分類しながら負担をお願いすることもあるんじゃなかろうかと思います。  いろいろと知恵を出し合いながら、ぜひともこの国会が終わる前に、できればこの住専法案が成立するまでに追加負担の問題を解決していただきまして、国民の納得する形で住専処理が進んでいくよう御努力いただくことをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  25. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 日本共産党の筆坂でございます。  私は、総理にまず最初にお伺いしたいと思うんですけれども、この住専問題で何といっても国民が納得できないというのは、国民には何の関係もない住専破綻のそのツケを背負わされる、この点にあると思うんです。これまでの国会審議を通じても、税金は使うべきでない、母体行の責任でという議論というものはますます大きくなっています。だからこそ、この半年の間にも、税金は使うべきでない、こういう世論というのがかえって拡大していると思います。総理もこれまで何度か税金投入について、住専処理策について国民の十分な納得、合意を得ていないと、こういう御趣旨の答弁をされてきましたけれども、その理由は何だとお考えでしょうか。
  26. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 同じ御質問をこれまでも何回か受けてまいりました。そして、非常に単純な言い方をしますなら、住専の問題に対して真剣に政府が取り組み始め、この問題をどう処理するかという議論は昨年の夏ぐらいから真剣に行われてきたと承知をしています。そしてそれ以来、政府・与党、関係者ともに真剣な検討を進めてきたわけでありますけれども、余りにも逆に当事者間の処理ということで年末ぎりぎりまで議論を続けていたこと、それが結果として非常に唐突な印象を与えてしまったのではなかろうかという気がしてなりません。  政府としては、今後ともに関係者のさまざまな責任の明確化に取り組むことによって、今般の住専処理策というものに対しての国民の御理解をより深めていただく、そして住専問題の円滑な処理に全力を挙げていきたいと考えているところであります。
  27. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私は、理由は非常に簡単明瞭だと思うんです。税金を使うから、だからこれは到底納得することはできないということだと思うんです。  私、これまで何度もされてきましたけれども、改めて総理の母体行責任に関する御認識をお伺いしたいと思うんです。  母体行が住専をつくってきたこと、これを支配してきたこと、これはもう周知のとおりであります。しかし、忘れてはならないのは、住専破綻に追い込んできた、いわばつぶしてきたのも母体行だということであります。  例えば第一に挙げますと、大蔵省の第一次立入調査というのがありました、九一年から九二年にかけて。この報告を見ましても、都銀があるいは母体行が住専の分野だった個人住宅ローンの分野に進出してきた、そのために投機的な不動産投資・融資に走らざるを得なかった、それが融資規模を拡大し今日の破綻を招いたと、これは金融制度調査会金融システム安定化委員会の報告でも述べられている。あるいは本院の予算委員会で証言をされた住総の原元社長も、よい顧客を都銀がとっていった、あるいは母体行がとっていったということを証人として証言をされました。  あるいは総理も、この審議を通じて、母体行あるいは銀行による紹介融資がいかにひどいものか、九割以上が不良債権になっている、こういう事実を初めて知られたということもお認めになったように、紹介融資で不良債権をつくっているという点でも、住専をまさに破綻に追い込んできた第一の責任が私は母体行にある。  こういう認識を総理はお持ちでしょうか。
  28. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これも何回か御議論をいただいたところでありますけれども、母体行の責任というものにつきましては、議員が今一部お触れになりましたように、住専の設立そして経営、こうしたものに対して人的にも資本的にも深くかかわってきた、そしてそれに加えて多額の紹介融資を行ってきたといった経緯を踏まえて、債権の全額放棄に加えて拠出あるいは低利融資などさま、ざまな負担や協力を要請してまいりました。  そして、住専処理機構が国会の御審議を終え設立をさせていただきました場合、当然のことながら債権回収に全力を挙げていくわけでありますけれども、その回収過程におきまして、違法な紹介融資などが行われ住専に対して損害を与えていたことが明らかになりました場合には、住専処理機構住専から譲り受けました損害賠償請求権を適切に行使することによってその責任を個別に追及することにもなろうと思います。  私どもとしては、議員が今御指摘になりました母体行の責任というものを全く否定する答弁をいたすつもりはございません。
  29. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 違法な紹介融資があれば損害賠償請求すると。これは別に住専処理法案をつくらなくたって、処理機構をつくらなくたって、これは今だってやれることで、当然の責任追及だと思うんです。  同時に、母体行というのは通常のメーンバンク、こういう場合の責任とは質的に違うんだということを私は申し上げたかったわけです。ところが、母体行側にはこの認識というのが決定的に欠如していると私は言わざるを得ないと思うんです。その代表人物が、きょう午後に参考人で来られますけれども橋本俊作全銀協会長だと思います。先般も記者会見での発言が物議を醸し、久保大蔵大臣も厳しくこれを批判されました。梶山官房長官も厳しく批判されました。ところが、まだ反省していないです。  昨日の記者会見、これを全文私は手に入れましたけれども、どういうことを言っているかといいますと、債権の全額放棄であるとか資金の拠出であるとか低利融資だとかについての御協力を申し上げていると、こういうふうにきのうの記者会見で橋本全銀協会長は述べられています。協力している、政府に協力しているんだという言葉が三回も出てくるんです。これが全文です。  しかし、だれが一体住専をつくったんですか。だれが破綻させて、だれが不良債権をつくったんですか。そして、そのために国会でこれだけ特別委員会もつくって審議しているときに、その第一の当事者が協力すると。私はとんでもない発言だというふうに言わざるを得ないと思うんですけれ一ども、大蔵大臣いかがでしょうか。
  30. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 母体行が持ちます住専問題に関する責任の重さについては、国会においても皆様方の御議論もございますし、政府としても明確に終始一貫して申し上げてきたつもりでございます。  このことを含めて、住専問題を処理するためにどういうことを急いでやらなければならないかということで昨年来協議や検討が行われ、そして今御検討をいただいております住専問題といいますか、住専債権債務処理促進に関する方策についてお願いをいたしているわけでありますが、この方策を策定するに当たりまして、銀行側ともまた系統金融機関とも協議が行われたわけでございます。  その中で、政府の側からこの処理スキームをつくるに当たって考え方を含めて要請し、その理解のもとに協力を求めたわけでございますから、銀行協会の会長が政府からの要請等も含めてこの協議を成立させていくために協力申し上げたと、こういう御発言になっているのは別に問題ではないんじゃないかなと思っております。
  31. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 そういう姿勢だからね。  じゃ、一体だれに協力するというんですか。政府に協力するというわけでしょう。その政府が出している処理案というのは国民の税金で負担しようということじゃないですか。簡単に言っちゃえば国民に母体行が協力すると、そういうことになるんじゃないですか。  だって主体は、不良債権をつくったのは、住専破綻させたのは、その第一の責任は母体行にあるんじゃないですか。だからこそ久保大蔵大臣もこれまで、債権全額放棄だけで母体行責任を果たしたと思ってもらっては困る、母体行の責任はもっと重いんだ、協力じゃなくて当然のことなんだと。総理だってだからこそ、母体行の責任を自覚して、自主的に判断して母体行はその責任を果たしてほしいということを言ってこられたんじゃないですか。母体行が協力して、国民の側が協力してもらう側だというふうにおっしゃるわけですか。
  32. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 大変極端な受けとめ方をなさっているんじゃないかと私は思います。  政府も、この処理スキームをつくっていくために、法的処理ではなかなか困難であると。それで、確かに筆坂さんおっしゃるように、住専問題が今日このような深刻な事態に立ち至るその経過と現状について国民に責任を転嫁するということはなすべきことではないと、それはそのとおりだと思います。  しかし、このことを放置することによって起こってまいります経済への影響、国民生活への影響、将来もしこの問題を先送りして放置した場合に起こってくる可能性のある信用不安、そういうようなものによって引き起こされた場合の政府の財政的負担、そういったようなものも念頭に置きながら、今日から将来にわたっての国民の利益を守るためにどういうことができるかということで検討され、関係者との合意に基づいてつくられたものがこの処理方策だと思っております。  しかし、皆様方の強い御意見もあり、政府としても母体行の住専問題に対する責任は重いということを申し上げてまいりましたから、その責任と現在持っております体力に応じてもっと負担すべきものを負担してもよいのではないか、そうすることによって国民の負担となります財政支出の部分を極力圧縮しようということで進めているもので、ぜひ御理解をいただきたいと思うのであります。
  33. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 全然理解できないですよ。  じゃ、聞きますけれども住専処理の主体的責任は政府であって、そして母体行はあくまでも第三者として協力する立場だと、こういうふうにおっしゃるわけですか。そこをはっきりさせないと、これはそういう姿勢だからこそいまだに追加負担策だって実現しないんじゃないですか。
  34. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 母体行を中心とする銀行側が要請に基づいて協力するということは、どこか問題がありますでしょうか。協力するなとおっしゃっているんじゃないと、よもやそういう御発言ではないと思いますが、協力を求めるということがどこが問題なんだろうかと私は思っております。  母体行責任ということについては終始、この住専の設立から出資、人事、経営、そして紹介融資、こういったようなものを含めてその責任は極めて重いということをはっきり申し上げているつもりであります。
  35. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 久保大蔵大臣は一昨日の本会議で、関係当事者の意欲と努力だけでは解決を図り得ない状態になっている、だから税金投入したと、こういう御答弁をされました。  しかし、母体行の方は本当に意欲と努力を十分発揮したのかと。例えば、先般、予算委員会参考人として出てこられた前全銀協会長、当時の橋本富士銀行頭取が何とおっしゃったかというと、戦略的に重要な直系ノンバンクには債権額以上の支援をする、しかし住専のようにもう再建の見込みのないところには債権額以上の支援はしないと、こういう答弁をされました。これはまことに身勝手な論理だと思うんです。  私は何も協力するなとかしないとかそういうことを言っているんじゃない。協力者の立場でいいのかということで、主体的に自主的に責任を果たすのが母体行の立場じゃないのかということを言っているんです。何も、協力するな、追加負担するなということを言っているんじゃないですよ。そういう第三者のような立場でいいのか、もっと当事者の立場に立つべきじゃないのかと、こういうことを申し上げているんです。
  36. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 私は、銀行協会の会長とも再三お目にかかりましたときにも申し上げておりますことは、あなた方の今日までの協力ではまだ十分でない、したがって今、筆坂さんが言われましたように、自主的に真剣に要請にこたえてもらいたいということを申し上げているのであります。
  37. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 これまで議論されてきましたように、いわゆる直系ノンバンクですね、この場合には、それが修正母体行方式であれ完全母体行方式であれ、これはもう当然のことですけれども、母体行が責任を持って、自分たちで持てないところがあれば関係金融機関にもお願いをする、しかしいずれにしろ税金で面倒を見てくださいと、こんなケースは一度だってありませんでした。  しかし、住専だって私は直系ノンバンクだと思うんです。現に、例えば玉置地銀協会長は地銀生保住宅ローンについて、我々は業界母体だった、業界全体として母体だったと。言ってみれば業界は一つですから。そして地銀生保住宅ローンをつくったんだと、こういうことを明言されました。つまり、直系というのには複数とか単数とかは関係ないわけですから、自分たちがつくった住専なんだということを地銀協会長予算委員会参考人として出席してお認めになりました。  ところが、これまで大蔵省の答弁を伺っておりますと、母体行がたくさんだ、権利関係が錯綜している、そのために母体の責任がはっきりしないということで、あたかも住専は直系ノンバンクではないんだと言われるような議論を大蔵省自身が展開してこられたんじゃないかと私は思う。だからこそ今まで、これ以上の負担はもうできない、これがぎりぎりだということを母体行側は盛んに言ってきた。だって、いわゆる直系ノンバンクのときにはそんなことはなかったわけですから、債権額以上の負担をどんどんやってきたわけです。そして、他行には迷惑をかけない、こういう態度をとってきたわけですね。  ですから、大蔵省が何で、権利関係が錯綜している、母体行がいっぱいだったからだと、こう言って母体行の責任をあたかもあいまいにするかのような議論をされるんでしょうか。この点をお伺いしたいと思います。
  38. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 母体行の住専問題に関する責任をあいまいにしているわけではございません。  それではもし、母体行責任でこの問題は解決しろ、こういうことで公的関与は一切行わない、こうなりました場合に、現在の住専にかかわります母体行の数、それから複雑な利害関係、こういうものからして破産処理以外に方法がなくなるだろう。そういう処理になりました場合に、共産党の皆様方が両院で御主張になりましたように、母体行全責任での決着というようなことになり得るのだろうか。私どもは、そういう意味で、母体行の数が多く利害がふくそうしていることがこの解決を困難にしていると、このように申し上げているのでございます。
  39. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 大臣は、そう言いますとすぐ破産法だと、こういうふうによく御答弁されるんです。しかし私は、もしそれを大蔵省が唯々諾々と認めたとしたら、大蔵省は行政責任を放棄しているということになると思いますよ。ましてや、これだけ世論があって、そして母体行責任がこれほど明白で、系統金融機関だって先般農水大臣だっておっしゃいましたよ、もし母体行が破産法などと言えば、これは応訴して全面的に闘うと。当然の話ですよ。そんな簡単に破産法などということを私はおっしゃるべきじゃないと思うんです。  そして、母体行が多数あるとおっしゃいます。しかし、多数あったってつくるときには見事に意思統一しているじゃないですか。例えば、これは予算委員会にも出されましたけれども、設立趣意書、これを読んでみますと、例えば総合住金、これは第二地銀ですが、これは業界全体の共同事業であり、人、資金、業務面にわたって参加相互銀行全体のメリットを実現するよう運営することを基本とするというふうに述べています。  あるいは地銀生保住宅ローン、これは母体行が一番多いですね。八十九あります。しかし、その設立趣意書を見ると、「両業界」「あげて一致協力し、将来に亘り、新会社の育成、発展に努める」と。いざとなったら逃げ出しますなんて一言も書いていないですよ。  あるいは日住金、「社会的要請に応えつつ」「有力金融機関が互いに相協調してすすむのが最も有利であると考えられるので、ご協力をお願いする」というので、幾つかの銀行が集まって日住金をつくったんです。  つくるときには見事に意思統一をしながら、破綻して大変だ、不良債権をたくさん抱えたということになると、母体行がいっぱいで権利関係が錯綜していると。こんな身勝手な理由を認めたんじゃ、私は母体行にまともな負担をさせられぬのは当たり前だ。だから税金負担になったんですよ。そうじやありませんか。
  40. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 母体行の立場を弁護したり擁護したりするつもりは全くありません。私は、もし法的に強制する手段があれば、その方法をとるべきだとも思っております。しかし、今日、母体行に対してどのような法的強制手段が承るか、そういうことも考えながら、ただ母体行か初め銀行側を悪と決めつけて攻撃するだけでは、この問題は成果を上げられるものではない。款は、関係者が十分に協議を尽くして、お互いに理解した上で最大限の協力を行うということによって国民の皆さんの考えておられることにこたえなければならないと思っているのであります。
  41. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 強制する根拠がないということもたびたびこれまでも言ってこられました。しかし、大臣、よく考えていただきたいんですけれども住専処理法案がもし成立をしますと、国民は税金から六千八百五十億円、二次損失が出ればその二分の一、いや応なしに強制されて取られるのと一緒でしょう。住専処理法案つくる、あなた方はつくると言うんだから、国民には強制力を持って税負担させようとしておるじゃないですか。  だから、そこで知恵を出さなきゃ。私は、その知恵を出すのは何かといいますと、大蔵省が母体行を弁護するんじゃなくて、あなたたちの責任はこうだよと。例えば、権利関係が錯綜していると言うんじゃなくて、何を言っているんだと、つぐるときにはあなた方は意思統一やってつくったんだから、つぶれるときこそ社会的責任を果たしなさいということをしっかりそめときには言っていく。そのときに大蔵省が逆のことを言ったんじゃ、これは責任を迫ることはできません。  例えば、意欲と努力が母体行の側でまじめなものなら、それは系統金融機関やあるいは一般行としての協力も必要でしょう。系統金融機関には何の責任もないと、そんなことは私たち言ってませんから。そうしますと、負担する能力だって十分ある。  例えば、各住専の母体行一行当たりの第Ⅲ分類と第Ⅳ分類の不良債権、これを母体行一行で割ってみますとどうなるかというと、日住金の場合が母体行一行当たり千五百三十億円、住宅ローンサービスが千二百七十一億円、住総が千八百六十一億円、総合住金百二十九億円、第一住金、これはちょっと多いです、九千八十六億円、地銀生保住宅ローン七十八億円、日本ハウジングローン七千七百七十億円です。最も多いのが日本長期信用銀行が母体になっている第一住金です。  しかし、例えば長期信用銀行、昨年九月期決算で見ますと、一兆二千三百九億円の内部留保を持っている、あるいは有価証券の含み益は五千九百五十七億円、こういう体力を持っている。ですから、全体として見た場合に、これまでも議論されてきたけれども、体力は十分ある。そうであるなら、母体行が大蔵省に、政府に泣きつく前に、系統金融機関にお願いする、一般金融機関としての負担もお願いする、しかし、それで足らざるところは自分たちの努力が不足しているわけですからそれは自分たちで持つと、こういうことを御指導なさるのが当然の筋なんじゃないでしょうか。
  42. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 少し筆坂さんと話の食い違っている点があるのは、これは何かというと、私が母体行の数が多いといったような問題を申し上げておりますのは、そういう状態にあるので、破産法などに持ち込んだ場合には、これは大変時間がかかって、利害関係が複雑になるためにその処理が困難になろう、そしてそのしわ寄せが系統金融機関の方へ行くのではないかという意味で申し上げているのでありまして、母体行が責任を回避するために母体行の数が多いというようなことを言っているということを私は言っているのではございません。そういう点ははっきりしておかたいといけないと思うんです。  それから、私はもう何回も繰り返して申し上げましたように、母体行責任というのは、筆坂さんたちがおっしゃることと私ども大部分共通の認識に立っていると思っているんです。その上で、実効ある母体行の協力をどのように行わせるかということで今いろいろと苦心をしているわけでありまして、皆さんにもぜひ御協力をいただきたいと思います。  銀行側を理論的にいろいろと糾弾するということだけでは成果は得られないものだと思っておりまして、法的な強制力がないというのはそのことを申しているのでございます。
  43. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私がこうやって質問していることも、そして母体行責任を追及することも、これは十分母体行に責任を持たせていく上での援護射撃になっているというふうに私は思います。  次に、二次損失の問題についてお伺いしたいと思うんですけれども、昨年十二月十九日に閣議決定がされました。このときには、二次損失について二分の一負担ということは決まっておりませんでした。二分の一負担ということが決まったのは一月三十日の最終的な政府の処理スキーム、閣議了解ということになりましたけれども、ここで二分の一というのが政府、民間の共同の責任ということで決められました。  政府が責任を負うということは、これは結果として国民が責任を負うということに当然なるわけで、何で国民と母体行の側が、あるいは金融機関の側が共同責任をとらなければならないのか、何で折半で割り勘にしなきゃいけないのか、この点について理由をお聞かせいただきたいと思います。
  44. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) この点は先ほど来大臣が御説明を申し上げております、いわゆる一次ロスの処理とも関連するところでございますけれども、この住専問題の処理を例えば政府が関与することなく民間にゆだねるだけにした場合に、例えば法的処理になるというような結果、負担の配分というものは、恐らく今御提案を申し上げておりますような姿よりも民間金融機関に軽いものになる可能性があろうかと存じます。  そのような状況は必ずしも適切ではないのではないかと、こういう考え方のもとに、先ほど来大臣が申し上げておりますように、政府といたしましてもこの住専処理策について努力をしてまいったところでございます。  その努力の結果が、一次ロスの処理につきましては関係者に最大限の協力を、努力を願いまして、御提案申し上げておりますように、母体行は三兆五千億の負担等の処理をした上で、どうしても処理ができない部分につきまして財政的な処理をせざるを得ないと、このような枠組みになっているわけでございます。  御指摘のいわゆる二次ロスの問題というのは、さらにその上で万が一損失が生じた場合にどのような処理の仕方を想定しておくのか、予定しておくのかと、こういう問題であるわけでございますが、関係者が最大限の努力をした上でのさらに必要な措置ということでございますならば、これは金融システム安定のため、あるいは国の経済全体のためということでございますので、関係者の協力を仰ぐとともに、国といたしましてもこの施策を実施していくために必要な努力をする、そういう意味におきまして二分の一ずつの負担、このようなことで関係者の間で話し合いを進めたと、こういうことでございます。
  45. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 あなたね、聞いたことには結局何一つ答えていない。何で割り勘かって聞いたんだ。何で二分の一かという根拠は何も言っていないじゃない、長い答弁したけれども。要するに何で二分の一なのか、割り勘なのかと。国民は母体行と一緒に飲んだ覚えないんだから。その根拠も説明できない。幾ら損失が出るかわからない、それで二分の一の負担を国民に求めていこうという。私は冒頭に申し上げたけれども、これじゃ国民の納得なんか到底得られるわけがない。このことを御指摘申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)     ―――――――――――――
  46. 坂野重信

    委員長坂野重信君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、吉岡吉典君が委員辞任され、その補欠として笠井亮君が選任されました。     ―――――――――――――
  47. 国井正幸

    ○国井正幸君 新緑風会の国井正幸でございます。  今、国民はこの国会というものをかたずをのんで見守っているというふうに思うんですね。それと申しますのは、これだけの大問題を起こしておきながら責任というのがどうも語られないできているんではないかと私思っています。だれがどうとか、彼がこうとか、どうも責任のなすり合いが非常に僕は多いように率直に感じています。  例えば、住専から多額の借金をしている桃源社とかあるいは末野興産とか、これあるわけですが、豪邸に住んで、そして私腹を肥やして、高級車を乗り回して、全然払う意思なんかがない。全くけしからぬ話だというふうに思います。  さらに、住専経営者に至っても、今回の経営破綻というのは、いわゆる土地関連融資を抑制したことによってバブルが崩壊した、だから我々の経営破綻したんだというふうな、ある意味じゃ不可抗力のようなことをうそぶいているやつもいる。全くけしからぬ話だというふうに思います。  さらには、今もお話がありましたけれども、いわゆる住専を設立した母体行ですね、これに至っても、多額の紹介融資を行ったり、あるいは住専を設立する以前は見向きもしなかったようないわゆる個人向けの住宅融資ローンにみずからが参入してきて、そして子供の仕事を奪ってしまう。その割には全然反省の色が見えないというふうに思います。  そこで、大蔵大臣にお伺いをしたいというふうに思います。  今話題になっているのが住専七社です。しかし、本当は住専は八社あるんですね。いわゆる農林系の協同住宅ローンというのがもう一社あるわけでございまして、これはほかの住専七社と同様に大蔵大臣の直轄会社ですよね。そういう意味で、同じ経済環境のもとで経営をされてきたにもかかわらず、この協同住宅ローンは負債はしょっているといいながらもほかの七社とはけた違いなんですね。いわゆる農林中央金庫の協力をいただきながら自力更生を今やっているわけですよ、再建を。ほかの七社と圧倒的に違う。これはどういうわけですか。この点についてお伺いをしたいというふうに思います。
  48. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 大蔵大臣はほかの方で忙しくてそこまで御配慮が及ばないかもしれない、私がかわって御答弁申し上げますが、委員指摘のとおり、六十三年でございましたか、やはり不動産融資に非常に苦しんだ事件があったわけでございます。自来、いわゆる不良債権の償却を精力的にやってきて、現在、不良債権の額はほかの住専に比べて非常に少ない。  そういうことで、今後、農協二段階というようなことが進めば、住宅ローンの需要は大きいわけでございますので、単協でカバーできないところでは中金において、この経営によって住宅ローンの国民の需要を満たしていこうと、そういうことで継続的な運営をしていこうと、こういうことになっておるわけであります。
  49. 国井正幸

    ○国井正幸君 今、農水大臣からお答えをいただいたんですが、同じ経済環境の中でこの協同住宅ローンもほかの七社と同様に経営されてきたわけですよね。僕はこれ調べてみて、協同住宅ローンの場合は個人向けの住宅融資の比率が非常に高いということがほかの七社とは決定的に違うと思うんですよ。つまり、住専そのものが当初の設立目的から大きく外れてきた、ここに僕は今回のこの住専不良債権を抱える問題が発生したというふうに思っているんですが、その辺いかがでしょうか。大蔵大臣どうでしょう。
  50. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 住専の設立目的から離れていきます経営が進んだということが破綻の非常に重大な原因になっていることは、御指摘のとおりだと思っております。
  51. 国井正幸

    ○国井正幸君 そこで、大蔵大臣に続いてお伺いをしたいというふうに思うんですが、大蔵省は昭和四十八年七月四日付の第一七九九号という文書で住専経営実態というものを十分把握していたというふうに思うんですね。  そういうことから考えますと、住専が当初の設立目的から大きく離れていった。にもかかわらず、なぜ大蔵大臣の直轄会社としての地位をそのままに放置しておいたのか。これは金融制度調査会の、国民がマイホームを持つために個人向けの住宅ローンを組む、融資をする、こういう住専というものは育成することが望ましいということでこういう措置を講じたというふうに思うんですね。ところが、大きくその設立目的から外れてきた。にもかかわらず、その地位というものをそのままにしておった。これは大変僕は問題だと思うんですよ。  僕も決算委員会でこの問題について質問をしたんですが、いわゆる大蔵大臣の直轄会社として金融機関としての位置づけがなされなければ、いわゆる農林系においても、特に農業協同組合において員外利用の規制の対象になるわけですよ、住専が。したがって、大量に資金が流入するということは農協法上からもなかったというふうに思うんですね。これをそのまま放置したというのはどういうわけなんですか。
  52. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) まず、直轄会社という言葉がよく使われるわけでございますけれども住専ノンバンクの一種、あるいはノンバンクよりもさらに規制という意味では遠い緩やかな存在でございまして、あくまでも民間経営者の、設立者の経営の自主判断にゆだねられる、こういうことでございます。そういう前提をひとつ御理解いただきたいと存じます。  ところで、なぜ放置しておいたのかという御指摘でございますが、例えば免許の取り消しをするというようなことはどうしてできなかったのかと、こういうような御指摘であるといたしますと、この住専は改正前の出資法に基づく届け出制の会社ということになっておりまして、そもそも行政庁がその営業を停止するとか免許の取り消しをするとか、そういう性格の問題ではないわけでございます。また、業務の改善命令だとか停止命令ということを命ずるというような法律上の権限を与えられているわけではない、そのような形態の会社であるということを御理解いただきたいと存じます。
  53. 国井正幸

    ○国井正幸君 いや、僕はそういうことでは納得できないと思うんですよ。結局、設立をする段階では育成することが望ましいとして認可をしておいて、そして一たん目的が外れて、それに対する行政指導もできないと、こんなおかしな話は僕は通らないというふうに思うんですね。そういう目的があればこそ、やはり金融制度調査会においてもそういうふうな答申があって、そのような位置づけをしてきたというふうに思うんですね。これはやっぱり大変な責任の問題があると思います。  ただ、時間の問題がありますから先に進ませてもらいたいというふうに思いますが、平成三年の十月から平成四年の五月にかけていわゆる住専七社の第一次再建計画というものがつくられたわけでございます。しかし、予想外に土地の値段が下がった、こういうふうなこともあったんだというふうに思いますが、この再建計画は、先につくったところからでは一年半ぐらい、後からつくったところでは一年ぐらいで破綻をするわけですね。そして、平成五年の二月から七月にかけて第二次の再建計画というのがつくられたわけでございます。このときに、農林系の金融機関住専からの資金を引き揚げたい、こういうことを強く求めたというふうに言われておりますし、私も関係者からそういう話を聞いております。  ところが、大蔵、農水両省の強い行政指導のもとで資金の残高を維持することになった、こういうふうに聞いているんですね。嫌がる農林系の資金を住専につなぎとめる。このために、いわゆる覚書と言われるものでありますが、住専の再建は母体金融機関責任を持って対応していく、大蔵省は農協系統に今回の措置を超える負担をかけないよう責任を持って指導していくという内容大蔵省銀行局長と、きょう午後見えますけれども銀行局長と農水省の経済局長の覚書を結んだということではないかというふうに思うんですね。  政府のやることでありますから、ましてや監督官庁でありますから、農林系の皆さんは信用したと思いますよ。私だって、皆さん方が大丈夫だと言えば、これは信用しますよ。  ところが、この覚書が履行されるどころか、今大変な迷惑をかけている。このことに関して、行政責任としてどのように責任をお感じになりますか。これは総理に答えてもらった方がよろしいでしょうか。
  54. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専が四十年代の後半に設立されまして、当時におきましては国民の住宅ローンに対する需要というものにこたえるためであったわけでございますが、その後の経済環境の変化に適応してこの住専というものが健全な機能を果たしてきたかどうかという点につきましては、行政的な見地からも私どもが反省すべき点は多々あろうかと存じております。また、金融制度調査会においてもそのような御指摘を受けているわけでございます。  ただ、今御指摘の覚書の前後の経緯でございますけれども、当時、住専経営が危機的な状況に陥ってきた中で、関係者はある意味ではみんな資金を引き揚げることを期待したわけでございますが、すべての者がそのような行動をとりました場合には金融システムに極めて大きな影響を与えるということから、その事態をどう収拾するかということで農林省と大蔵省が協議をいたしまして、御指摘のような方針のもとに関係者の理解をも求めた、こういうことと理解をしておるところでございます。
  55. 国井正幸

    ○国井正幸君 結局、責任を感じるという話だというふうに理解しますけれども、やっぱりこれだけの問題で、しかもこれは局長ですよ。そして、こういうことをするんだから皆さん心配ないから安心してくれよ、そして協力してくれと言っていて、これができないとなったら、国民が国を信用することができなかったら、これは大変な世の中になってしまう。  僕は、総理、一段落したら、これは政府においても考えておられるかもしれませんが、やっぱりきちっとした責任というのを、ぜひ行政責任というのもとっていただきたい、これは要望してお弐たいと思います。  最後に、総理に御要請を申し上げたいと思いすすけれども、我が国の中で、借りたものを返す、あるいはその果たした役割に応じて責任というのは負うんだということ、今の行政責任も含めて負うんだということ、これがやっぱり常識だと思うんですよ。国民から見れば、いろんな難しい理屈ではなくて、当たり前のことが当たり前に通るようなわかりやすい措置というのが僕はやっぱり必要だというふうに思うんですね。  今後の我が国の教育の問題についても大変な影響を及ぼすというふうに思いますので、決して借り得とか踏み倒し得なんというのが許されないように、特段にこれは総理にお願いをしたいと思いますが、御所見を伺いたいと思います。
  56. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 我々は、借り得、あるいは委員が今お使いになりました言葉をそのままに使わせていただきますなら、踏み倒してそのまま得をさせる、そういったことを許すつもりはございません。むしろ住専処理機構というものの設立を私どもが大変急いでおり国会にお願いを申し上げておりますのも、組織的にこの回収作業というものに全力を挙げさせていただきたい、そのような願いを込めてお願いを申し上げておるわけでありまして、でき得る限りの国会の御協力をも心からお願いを申し上げます。
  57. 国井正幸

    ○国井正幸君 ありがとうございました。
  58. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 最初に梶山官房長官質問させていただきたいと思います。  五月二十四日、都市銀行十一行の決算が発表されまして、低金利政策のおかげで史上空前の純益が上がったということが報道されておりまして、それに伴って、その傍らに官房長官の談話といたしまして、低金利政策もいいがそろそろ預金者の保護考えねばならないということがありました。そのとおりだと思います。それに対しまして、四日後でございましょうか、全銀協の橋本会長が、金利政策というのは日銀の専権事項であるからして、ほかの人があれこれ言うものではないという発言がありまして、官房長官の御宸襟をいたく痛めたらしくて、大変もう怒り心頭に発するような発言がございまして、その直後にまた橋本会長は平謝りに謝る。大蔵省に参りまして発言を撤回して陳謝するという事態があったようであります。  古来から「編言汗の如し」という言葉がありまして、偉い人が一回口にした言葉は汗と同じくもとに戻らない、よってもって慎重にも慎重を期して発言すべきであるということになっておりますが、どうも我が国は、政治の世界でも経済界でもなかなかそれは守られていないようで、植民地問題などでは、発言をしては撤回をする、政治家の見識を疑われても仕方のないような方々がおられるようでありますが、今回の橋本さんにつきましても同じように批判されていいのではないか。銀行の頭取あるいはまたそれを統べる全銀協の会長という方がああいう方でいいんだろうかという気もしないわけではないわけです。  私は実は電車で通勤しておりますけれども、通勤議員を売り物にしておりますが、電車の中で若い連中、サラリーマン風の者がいろいろと議論をしておりまして、この問題について、きのうのあの官房長官の発言を見たか、さすが梶山というのは立派なやつだ、胸がすっとした、それに引きかえあの銀行屋は何だ、ああいうやつはすぐ首にしなきゃいかぬというようなことを言っておりました。  そこで、梶山発言がいかなるものか、ちょっと読み上げさせていただきますけれども、これは記者会見の際に言われたことなのでありまするから、大体そのとおりだと思います。新聞報道ですが、我銀行の大ボスなりと自分を大法王と思っている、金利政策に口を出すなとはしゃらくさい、さくら銀行は悪玉だ、何様だと思っている、銀行は神様ではない、腹の底から怒りが込み上げてくる、民くたばれ、我繁盛というのが銀行だと。  これは率直に申し上げまして、政府の御要職にあられる方の発言と私はちょっと思えないわけです。私だってこういうことを言われて、あいつは何様だと言われたら、ちょっと永田町は怖くて歩けないという気もいたします。梶山官房長官は今や与党、野党を取り仕切っておる大変な実力者で、その力はもうかつての金丸さんにも及ぶんだというふうに言われておりますから、その方からこういうことを言われたらちょっと怖くて歩けない。特に銀行というのは政府の監督下、大蔵大臣の指揮監督下にあるわけですから、その監督者からこういうことを言われたら、その銀行サイドとすれば立つ瀬がないのではないか。もう明日にでもやめねばならないんだろうかという気にもなりましょう。  一体、民主主義の言論というのはこういうことなんだろうかと、私はそこに大変問題意識を持ったわけであります。何もこんなに腹を立てる必要はないのでありまして、いろんな意見があっていいわけですから、銀行会長がこういうことを言えば直ちに梶山官房長官といたしましても反論をなさって、金利政策は確かに日銀の専権ではあるが、政府もそれについて問題があるとすれば発言できる、口を出していいんですよ、意見ぐらい言わさせてくださいよ、それだけのことですよと。  いずれにいたしましても、銀行は今回のことで大変な純益を上げておる、社会的責任を自覚して多少なりとも社会に還元してはいかがですかということを穏やかにおっしゃればいいわけで、それを受けてまた橋本会長が、いやそうではない、いやそうではあるという議論を繰り返していくというのが私は本当の民主主義であろうと思うのであります。先ほど申し上げましたが、私ももしそういうことを言われたら大変に怖い、最初におっかないなと、こういう気もいたしますよ。  かつて、吉田茂という方が労働組合に対して不逞のやからという言葉を使いました。それから、講和に際して、全面講和を主張した南原総長に対しまして曲学阿世の徒という言い方をいたしました。吉田さんというのは、明治十一年生まれですから大変古い方で、世の中、天皇陛下の次に総理大臣が偉い、東大総長であろうが労働組合であろうが虫けら同然と、こういう思いがあってああいう発言になったんだろうと思います。  しかし、この新しい時代の権力者というのか権力を担う者というのは、謙虚な上にも謙虚であらねばならない。そして、国民の意見あるいは関係業界の意見を十二分に酌み取りまして、それで問題があるとすれば穏やかにたしなめてやる、それが権力者。権力者と言えるのかどうか、今こういう世の中ですからだれが偉い、だれが偉くないという時代ではないわけなんで、みんなそれぞれの立場で自分のことを発言する、そしてお互いに意見を交換し合ってたしなめることはたしなめていく、それが民主主義の基本のあり方ではないか。  今、住専問題で大騒ぎをして、住専は確かに重要ですけれども、私は民主主義社会における権力者のあり方、心構え、これも本当に大事だと思うんです。梶山官房長官は何か大変な大物だと、いずれは総理という話も出ておるようでありますけれども、もし総理大臣になりましたら、そういう心構えではやはり反省してもらわなきゃ困るんだという気もいたすわけであります。  私が言っていることは間違いなのかどうか、ちょっと御感想だけでもお聞かせ願えればと思います。
  59. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) お答えを申し上げます。  どういう御質問か御意見の趣旨がよくわかりませんけれども、私に対する大変なおいさめの言葉と受けとめております。  きょうここで読み上げると時間がありませんから、私の記者会見の一、二遍の模様は、既にこの問題に関心のある方はお読みをいただいたと思います。新聞ないしは週刊誌の切り抜きで、公的な場所で部分部分をつなぎ合わせて物事を言われることは大変真実を曲げる場合が多うございます。これはあなたの前歴から見てもそれはよく言えることだと思います。  私が申し上げたのは、平成七年度三月末の決算において業務純益が八兆四千億、都市銀行十一行でも三兆何がし。それから、ちょうど幸いにこの住専の問題をやっておりましたから、去年の九月期の決算と三月期の決算の表がここで出されております。これでも含み益は株価だけで四兆、そういうものがございます。ですから、私は低金利政策が悪いとは言っておりません。この景気回復のためにはどうしても低金利政策をとらざるを得ないだろう、しかしこれによって受ける弱者というものがどういうものであるのか、こういう方に対する金利というものはもう一回見直しをしていただかなければならないだろうということを申し上げたわけであります。  そして、この問題に対して、私はどんな場所でどんなあれをされたのかわかりませんけれども橋本銀行会長は、金利政策は日銀の専管事項だと、ほかの人がつべこべ言われちゃ困ると、こう言われたわけでありますから、その真意をと思いまして、私も記者会見の模様の速記録を取り寄せて読ませていただきました。  私は、金利政策が日銀専管であるとするならば、銀行協会もこれまたこれに口を挟むことはいかがなものかという気がいたします。確かに日銀といえども銀行でありますが、それはおのずと使命が違うこともございます。私はそういうことを感じますと、これは被害感があるのかもしれませんが、ともすると国会議員その他は口のうるさいやつだ、大したことのないやつだ、我こそは偉いんだという思いを持っているのではないかという被害感もあります。ですから私は、銀行は神様ではないんだから間違いの発言もあるだろうと。  というのは、私は彼の発言を取り寄せまして、私があたかも、悪い言葉で言うと恐らく記者の誘導にひっかかって、梶山はいわば日銀の公定歩合を引き上げる方向にという質問をされたのに答えたような気がいたします。しかしそれは、やはり銀行会長ともあろう者、幾人かの部下を持って、スタッフを持ってやっているはずでありますから、相当に正確に説明を求めてなおかつ発言されることがよかろう、こういう思いがいたします。  ですから、委員が言われるほどの、まあ言葉が下手であるとか、あるいは粗いとか粗野だとかという言葉はあるかもしれませんが、真意はそういうものであります。私は、今でも弱者救済的な金利は何らかの方法でとられてしかるべしと思っております。それは、銀行がこれだけの不良債権を持っているんですから、私は不良債権処理をするなとは申し上げておりません、してもらわなければ金融秩序が維持できないわけでありますから。しかし、よく考えてみますと、どうしてこれができるかというと、預金者があればこそこれだけのいわば利益を得ることができるわけであります。その方々に還元をすることは、銀行の社会的な使命やあるいは預金者の利益を保護するためには実は大切なことだと思います。今でも私はそう確信をいたしております。  ぜひひとつ議会でも、そういう思いを、国民のつらい思いを代弁するのが私は議員だと思いますので、その趣旨を変えるつもりはございません。
  60. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 どうも私の議論を全く取り違えて受けとめておられたようでありまして、私は議論の中身を言っているんではなくて、議論の仕方を言っていたわけであります。  いろんな人がいろんな意見があっていいわけですから、それについて異論があればまた穏やかに反論していって、それが民主主義であろうと、こういうわけであります。特に高い地位にある方々はそういう精神、その気持ちが大事なんだろうと、こういうことであります。  低金利政策がいいとか悪いとか、銀行がどうだとか、国民を救うのがどうだとか、そういうことを私は言っているんじゃなくて、私の趣旨を承ってくれればよろしいと思います。  次に、株主代表訴訟の問題に移りたいと思います。  きのうからいろんな提案がなされておりまして、しかしいま一つ良案が得られない、さてどうするかということでデッドロックに乗り上げているような感じであります。この根っこにあるのが、やはり銀行側が債権を放棄すればそれで十分、あとの余分な追加負担をすれば株主代表訴訟の問題が起きてくると、こういう線から一歩も出ていないのがこの問題の根源にあるんだろうと思います。  昨日も問題提起されておりましたけれども、基金をつくってそこに銀行に拠出させる、こういう案はどうだろうかと。これも基本の問題が解決していない、株主訴訟が起きたらどうするかと、こういう問題が解決していない限り銀行側がおいそれとオーケーとは言わないんだろうと思います。  そこで、銀行が言っている株主代表訴訟というのは、単なる口実なのか本当にそうなのか、法律的に随分詰めた議論をして検証してみる必要があるのではないかと、こういう感じが私はいたしておるわけです。  政府はもう既に、この問題が起きて以来、一貫して金融システムを守るために六千八百五十億円は必要だと、こういうことを言っております。昨日も大蔵大臣は、金融秩序というのは、病人に例えれば大変重い病気だ、速やかな治療をする必要があるということを言っておりました。  この問題、一番的確に言っておられたのは自民党の加藤幹事長で、金融システムを堤防に例えまして、六千八百五十億円はアリの穴だと、こういうことで、それを早急に埋めないと堤防がいずれは崩壊する、要するに金融秩序そのものがめちゃめちゃになってしまうと、こういう言い方です。  それはわかりましたと。その次に、その穴埋めの金は国民が出してくださいよと、こうなったものですから国民はちょっと目をばちくりしているのが現状じゃないでしょうか。  そういう問題があれば、だれが考えましても、最初に金融システムを守るべき責任があるのは金融界の人たち、金融機関関係する人たちであります。もとをただせばその堤防の穴というのも、母体行の責任とか農協系が見境なく金をつぎ込んだとかいろいろ言われておりますけれども、自分たちのあけた穴なんだろうと思います。その穴をなぜ国民が埋めねばならぬのかと、こう言われるものですから、国民はちょっと困ったな、納得いかぬなと、こう思っておるところだと思いますが、こういう考えはいかがでしょうか。簡単で結構です。
  61. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 佐藤さんの御意見は御意見として、その考えがどうかとおっしゃられれば、短い時間でお答えするのは大変難しい問題でございますが、金融機関の持っている高い公共性、社会的な責任、そういうものから考えます場合に、名案がないということが株主代表訴訟との関係だけで言われているとすれば、私は御主張のように当たらないことだと考えております。
  62. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 終わります。
  63. 奥村展三

    ○奥村展三君 新党さきがけの奥村展三でございます。  当選をさせていただきましてまだ十カ月、この歴史と伝統のある参議院、しかも今、国民注視の中で議論を闘わせております住専の問題につきまして、登壇をし質問させていただく機会を得まして、大変感動しながら、また感謝しつつ質問をさせていただきたいと思うわけでございます。  なぜ公的資金投入が必要なのか。衆議院予算委員会、衆議院の金融特、そしてまた当参議院の予算委員会、当委員会等々、大変高度な議論をなされてもまいりましたし、その問題等につきまして奥深く議論をしてきた中でありますけれども、国民の皆さん方が今何をお思いだろうか。全然わからないと。私も時々地元へ帰ってお話をさせていただきますが、各先生方もそれぞれの立場でお話をされていると思うんですが、一体住専とは何だ、先ほど来議論をされていますように、大変国民の皆さん方にはわかりにくい。そうしたときに、国民の皆さんは知る権利を持っておられます。我々は、また一方で知らせる義務があるのではないかと思うんです。  私はこの総括審議の最終バッターでございますから、もう一度まとめ的に総理から、そしてまた大蔵大臣から、なぜ公的資金投入が必要であったのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  64. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 私どもが説明をしてまいりましたことを御理解いただいていないということを大変残念に思っております。  この問題は、今日まで住専問題の処理を先送りして放置してまいりましたことに、それぞれ行政も含めてその責任が存在していると思っております。しかし、今日の深刻な事態をこのまま放置した場合には、日本の経済、そしてこの経済を通して国民の生活に大きな影響を及ぼすことになろう。ここでこの住専問題を早期に的確に処理しなければならないということにおいては皆様方の認識はほぼ一致しているんだと私は思っております。  早期に的確に処理する手段としてどういうことがあるのかということで、関係者との間に協議を求めてきたわけでございます。政府も、その指導監督の立場からこのことに公的に関与をしなければならなかったわけであります。そして、この問題を処理いたしますに当たって、まず損失となっているもの、住専七社の欠損となっているものを合わせて、六兆二千七百億と一千四百億、合わせて六兆四千百億、これをどう処理するかということからスタートをしなければならないわけであります。  この問題について、関係者との協議を詰める中で処理スキーム全体を考えてまいりました。もちろん、民間の問題だから民間で法的処理にゆだねればよいではないかという考え方もございます。そのことも検討してまいりましたが、この問題を早期、的確に処理する、そのことが日本の将来にとって命運をかける大変重要な問題であるという立場に立てば、どうしてもこれは公的関与に基づいて処理を図らなければ、法的処理では無理である、こういう立場から検討を重ね、それぞれの余融機関に負担を願って、なおその負担で処理できない分野については、この際公的資金の投入を図っても処理することが国の将来にとってとるべき政策判断、このように決断をしたものでございます。  しかし、審議を通じて皆様方の強い御意見もございますし、私どもも、母体行の住専に持ちます重い責任に立つならば、さらに母体行を中心とする金融機関等に国民負担となる部分が極力圧縮できるよう協力を求めなければならないということと、あわせて今後の金融システムのあり方について、自己責任原則と市場規律の上に立った透明性の高いシステムをつくっていくために金融の新しい時代のあり方をきちんとすべきだということで、金融関連法案の審議をお願いしているところでございます。どうぞ御理解を賜りたいと思います。
  65. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、副総理の方から御答弁を申し上げましたように、政府として考えてまいりました。  要は、ここまでの御議論の中でもさまざまな角度から問題を提起されております。そして、まさに住専問題というのは本来民間の当事者間で解決すべき問題だという御指摘があるわけです。そのとおりのことでありますけれども、六兆四千億円という巨額の損失が生じている、そして関係する多数の金融機関の利害関係も非常に複雑に錯綜している。そうした中で、関係当事者だけの話し合いではどうにも解決を図り得ないという深刻な状況になりました。  そして、この六千八百五十億円の財政支出と申しますもの、これは当事者がそれぞれの負担、協力を行いましてもなおどうしても埋め切れない損失処理する。そのことによって住専問題をできるだけ早く、また円滑な処理を行うことによって我が国経済に重大な傷跡を残さないように、そして新たな金融システムの構築に向けて我が国が立ち上がり得るように、そうした国民経済全体の見地から政府として決断をいたしたものでございます。
  66. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございました。  今、総理にお答えをいただきました、大蔵大臣もお答えをいただいたわけでありますが、国民の皆さん方は、やはり皆さん方の心を、総理から今語りかけていただいたそのお気持ちをお待ちになっているのではないかなと。ということは、官房長官も常にいろいろ記者会見等で御説明をいただいておるわけでございますが、今回のこのいろんな住専のスタートを振り返ってみたときに、夜中に会見をなされたり、国民にとっては非常にわかりづらかった。事あるごとに、総理のお立場として何とかお考えのもとをひとつ語りかけるようにして国民の皆さんに御説明をいただき、御理解をいただけたらというように私は思うわけであります。  今後、沖縄の問題だとかいろいろこれから国内外にはあろうと思います。ぜひ総理みずからがテレビに向かって、あるいは記者会見をされて、ひとつ国民の理解を得られるように御努力をお願いしておきたいと思います。  そして、いろんなお話の中にありましたが、ここでひとつ行政責任についてでありますが、母体行責任あるいは農林系の云々等々いろんなことが醸し出されてまいりました。しかし、四十八年、この住専がスタートいたしたわけでございますが、プラザ合意以降、バブルが発生し大変なことになってきた。そうした中に総量規制をなされた。そして今日を迎えた。確かにそれぞれの立場での責任はあったと思います。  ここで、行政責任につきましてどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  67. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 住専問題についての責任ということになりますと、借り手責任、貸し手責任、それから特にこの住専経営責任に関しての母体行責任等多くの責任がございます。  この責任は、今、法的に追及すべきものについては追及が行われているわけであります。今後もこの責任の明確化に努めなければならないと思っておりますが、行政の責任も決して軽くないと考えております。  これは、時代の変化といいますか、特にバブルの発生から破綻に至ります過程におきまして、資産の価格が大幅、急激に変動することによって国民経済に与えた深刻な影響ということを考えますときに、これに十分に対応し切れなかった行政の責任というものは厳しく問われてしかるべきものと考えております。  今は、この責任を果たす道は、そのような過去の経験に学び、反省を加えつつ、どのようにしてこの金融の危機的な状況を乗り越え、新しい時代にふさわしい金融システムを基本の理念に基づいて確立するかということが第一の責任考えております。そのことをなし遂げます段階で私どもは行政の責任を、大蔵省といたしましても省自体の改革等も含めて考えていかなければならないと思っております。
  68. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございました。  反省していただいて改める姿勢、これが見えてこないと政治不信あるいは行政不信とつながっていくと思います。今、内閣の支持率は上がってきたようでございます。ぜひ国民の目の高さ、国民に向かってひとつあらゆる面でお取り組みをいただきたい。  今、大蔵大臣が最後に述べられました大蔵省そのものの改革、金融システム、これはやはり戦後五十年、大きなひずみが今あらゆるところに浮き彫りになっておると思います。どうぞひとつその点を踏まえて、新しい日本のスタートとしての根幹になるようにお願いを申し上げまして、私の質問を終えます。  ありがとうございました。(拍手)
  69. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  70. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから金融問題等に関する特別委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、中島眞人君が委員辞任され、その補欠として小山孝雄君が選任されました。     ―――――――――――――
  71. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案金融機関更生手続特例等に関する法律案預金保険法の一部を改正する法律案農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び特定住宅金融専門会社が有する債権時効停止等に関する特別措置法案、以上六案を一括して議題といたします。  本日は、六案の審査のため、三名の参考人の方々から御意見を承ることとしております。  御出席をいただいております参考人は、全国銀行協会連合会会長橋本俊作君、前大蔵省銀行局長寺村信行君、弁護士田中清隆君、以上の方々でございます。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人の皆さんから忌憚のない御意見をいただきまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず橋本参考人、寺村参考人田中参考人の順序でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず橋本参考人にお願いいたします。橋本参考人
  72. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 全国銀行協会連合会会長を務めております橋本でございます。  銀行界としての意見を申し述べさせていただきます前に、住宅金融専門会社の問題につきまして世間をお騒がせし、国民の皆様方に大変御迷惑、御心配をおかけしておりますことをまず深くおわび申し上げます。  さて、私ども金融界は、相次ぐ金融機関経営破綻の表面化、住専問題などにより、国内外におきまして我が国金融システム全体に対する信頼感が著しく低下している状況にあります。こうした金融システムに対する信頼感の低下は、我が国経済の先行きに不透明感をもたらしている結果となっております。私ども金融界は、住専問題に限らず不良債権処理を早期に完了し、一日も早く金融システムの安定性に対する懸念を一掃しなければならない当事者でありまして、その責任を痛感しているところであります。  それでは、法案につきまして申し述べさせていただきます。  第一に、特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案についてであります。  住専各社の経営が事実上破綻している現状は、多数の金融機関を通じた金融システムの全体の安定性に与える影響も大きく、不良債権問題の中でも緊要な問題であることから、住専問題の処理を具体的に実行していくスキームを含む本法案の早期成立が不可欠であると考えております。  私どもといたしましては、本問題の一刻も早い解決を目指して、政府の処理スキームに沿って住専向け債権の放棄を行うことに加えて、金融安定化拠出基金への拠出や住専処理機構への低利融資などの最大限の対応をしてまいる所存でありますことはこれまで御説明申し上げてきたとおりでございます。  しかしながら、これまでの国会での御審議の過程でいろいろと厳しい御意見をちょうだいしており、また、住専処理法案及び金融関連法案の衆議院金融問題等に関する特別委員会可決に当たっての与党声明等もございましたので、公共性の高い金融機関として何か金融システムの安定に貢献できる新たな寄与についていい案がないかとさらに模索しているところであります。  私どもといたしましては、政府の処理スキームが崩れると、もう一度合意を形成するには容易な道でないことを感じておりますので、ぜひとも原案どおりで法案が早期に成立することを望んでおります。  次に、金融三法案と言われる、金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案金融機関更生手続特例等に関する法律案預金保険法の一部を改正する法律案につきまして申し述べさせていただきます。  金融三法案は、今後の我が国の金融システム安定化のために必要な包括的枠組みや諸施策を実現するものであり、あわせて、当面の金融機関破綻処理にかかわる預金の全額保護等を行うものであるため、極めて必要度が高く、法案が早期に成立することを望んでおります。  三法案の第一の、金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案につきましては、早期是正措置と言われる金融機関経営の状況に応じてとるべき措置に関する規定整備金融機関等のトレーディング取引への時価法の導入等が盛られており、その必要性から望ましいことと存じます。  なお、早期是正措置につきましては、現在、詳しい発動基準、措置内容、行政裁量を発動する場合の条件が明確になっておらず、これらは今後省令等で規定されることになっております。私どもといたしましては、透明性の観点から、客観的ルールが定められること、制度の公平な運用がなされることが必要であると考えております。  三法案の第二の、金融機関更生手続特例等に関する法律案につきましては、金融機関破綻処理について、従来の任意の営業譲渡等による処理に加え、司法上の倒産手続を用いる法制面の手当てが行われており、妥当なものと考えております。  なお、本法案では、会社更生手続、破産手続の申し立て権を監督庁に与える規定が設けられております。これにつきましては、破綻処理コストの削減の観点から必要な措置であると理解しておりますが、金融機関にとって更生手続、破産手続の申し立ての影響は大きいことも確かであり、監督庁による適切な申し立てを期待いたしたいと存じます。  三法案の第三の、預金保険法の一部を改正する法律案につきましては、預金者保護、信用秩序の維持の観点から、五年間は預金者に預金の全額を払い戻すこととし、そのためのペイオフコストを超える特別の対応が設けられておりますが、時限的措置としてはやむを得ないものと考えております。  ただし、五年間の預金全額保護につきましては、預金者や金融機関経営者のモラルハザードを助長するといった問題もありますので、あくまでも時限的措置として位置づけておく必要があると考えます。  私どもといたしましては、自己責任原則を問い得る基盤整備のためにも、一層健全性を高めるとともに、ディスクロージャーの充実を図ることが重要であると認識しております。  預金保険料につきましては、合計で昨年度の七倍とされる引き上げが予定されておりますが、金融機関の負担度合いという点において見れば、昨年十二月の金融制度調査会答申においても触れられておりますように、個別金融機関経営状況のありようにはおのずと差があることを考えますと、限界の水準であると思われます。  なお、預金保険料の負担増加につきましては、昭和四十六年の預金保険法案に対する附帯決議も認識しております上、保険料負担は金融機関一つの義務と理解しておりますので、預金者に転嫁することなく、みずからの経営努力で極力吸収してまいる所存であります。  今後五年間に生じ得る信用組合破綻処理の円滑化につきましては、受け皿回収機関として整理回収銀行を用い、民間金融機関の特別保険料による財源が不足する場合に財政資金を投入するという時限的な枠組みが不可欠であると政府が判断し、法整備がなされているものと理解しております。  ただ、私どもといたしましては、万全な備えという制度の完成度の観点からは、信用組合以外の金融機関破綻処理につきましても、今後、受け皿機関その他の枠組みについて整備すべきかどうか検討されるべきではないかと考えます。  いろいろ申し上げてまいりましたが、銀行界にとっての課題は、重要課題であります住専ほか不良債権問題を早期に処理して、来るべき二十一世紀に向けた、世界に通用する金融システムを構築していくことであります。住専を初めとする不良債権処理を具体的に実現していくためにも法案の早期成立が不可欠であると思いますので、何とぞ皆様の御理解を賜りますようにお願いをいたします。  以上で終わります。
  73. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ありがとうございました。  次に、寺村参考人にお願いいたします。寺村参考人
  74. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 私は、平成四年の六月から二年間銀行局長を務めました寺村でございます。住専の第二次再建計画策定当時の状況につきまして御説明をさせていただきます。  私が銀行局長に就任いたしましたのは、いわゆるバブル経済の崩壊により景気が下降に転じてから一年余り、景気はさらに悪化の度合いを強めている時期でございました。地価と株価が大幅な下落を続け、それに伴い金融機関不良資産が急激に拡大し、内部蓄積が急激に減少しているさなかでありました。地価はピーク時のおおよそ三分の二程度まで低下しておりましたが、なお下落の勢いは衰えず、それに伴いまして金融機関不良資産が急増をしておりました。そして、金融機関自体がその急増している不良資産の実態を把握し切れていない状況でありました。  ピーク時三万八千九百円台をつけました株価も二万円台を割り、さらに低下を続けておりました。平成元年、大手二十一行の株式含み益は五十五兆円に達し、この膨大な含み益を引き当てに、金融機関はバブル期に積極的な融資活動を展開しました。それが大量の不良資産の発生という結果をもたらしましたが、引き当てとなるはずでありました株式含み益は、平成四年三月には十七兆円にまで縮小し、さらに減少を続けておりました。株価が一万二千円になりますと、株式含み益はゼロとなり、不良資産の償却財源になるどころか、株式自体が償却を要すべき不良資産に転化するおそれが生じておりました。  ところで、銀行預金者からいつでも解約できる預金を預かり、取引先に期限を定めて貸し出しをしております。預金者が解約を求めるようになりますと、どんな銀行でもたちまち資金ショートが発生します。このため信用不安が発生し、預金者の不安心理が増幅するようになりますと、銀行の資金ショートが連鎖的に拡大するおそれが生じます。  昭和の初期におきましては、そのおそれが現実のものとなりまして多数の銀行経営破綻しました。経済を大きな混乱に陥れたばかりでなく、連鎖的な銀行経営破綻から預金者を救済するために膨大な財政資金の投入が余儀なくさせられ、国民経済に多大の負担を強いることになりました。  国民の不安心理から信用不安が発生するのを未然に防ぐため、平成四年八月十八日、羽田大蔵大臣は「金融行政の当面の運営方針」を発表いたしました。  「運営方針」では、バブル経済の崩壊が金融機関に与えた影響は極めて大きく、その克服には相当の長期間が必要であるという厳しい状況認識を示した上で、自己資本の充実、債権の流動化、不良資産処理のための環境整備不良資産のディスクロージャー等の各種の具体的な措置を講ずることといたしました。その中で、住専につきましては、その処理のおくれが金融システムに対する不安感を醸成することになりますので、関係当事者に対し、問題解決のために早急に合意を図るよう強く要請をいたしました。  住専各社は、平成三年から四年にかけまして第一次再建計画を策定し、母体行が金利減免を行っておりました。しかし、平成四年の夏以降、住専経営がさらに悪化し、第一次再建計画では対応できないことが明らかになりました。第二次再建計画の策定に当たり、母体行は、母体行以外の金融機関に対しても負担の分担を求めるようになりました。  住専各社は、いずれも多数の母体行によって設立されました。母体行が多数であるため、いずれの母体行も住専を自行の信用に直結する直系ノンバンクとは考えず、住専損失の全責任を負うことはできないと主張しました。また事実、全責任を負うだけの体力に乏しい母体行も多数存在しておりました。  一方、住専に対する最大の貸し手は農林系金融機関であります。農林系金融機関は、経営体力が弱体でありますので住専損失の負担を分担することはできない、日本金融界のこれまでの慣行に従い、母体行が全責任を負うべきであると主張いたしました。  不良債権処理に当たり、母体行が全責任を負うのか、他の貸し手も負担を分担するのかは特に決め手はございません。すべて関係金融機関の合意いかんにかかっております。  母体行責任処理されるのがそれまでの一般的な慣行ではありますが、法的手続に従って処理される場合もございました。また、母体行に負担能力がない場合、母体行以外の貸し手が負担の一部を分担することもございます。住専以外のノンバンクにつき、そのような合意が平成四年の夏から秋にかけまして徐々に形成されておりました。  しかし、住専につきましては、母体行と農林系金融機関の主張が真っ向から対立し平行線をたどったままで、第二次再建計画の策定は一向に進捗しませんでした。そのため、金融機関の一部から、住専は実態として倒産企業であるので法的手続による清算をすべきであるとの主張がなされました。法的手続によるならば貸し手責任原則とした処理が行われるとの考えがその背景にありました。  しかし、このような手続が進められました場合、最大の貸し手であります農林系金融機関対応できないのは当然としても、当時の状況のもとでは農林系金融機関以外の金融機関でも対応できないところが多数存在しておりました。住専損失を一挙に処理するだけのゆとりを持っている金融機関は、住専に対する融資が比較的少額で基礎体力のある一部の都銀に限られておりました。したがって、清算手続による処理は母体行の間でも合意が得られませんでした。  母体行の完全責任処理しようとしたら対応できない母体行が出てまいります。昨年末の修正母体責任による処理すら三年前の状況では不可能であったと思われます。一方で、貸し手責任処理しようとしても対応できない貸し手が多数存在しておりました。  そこで、損失の一部を公的資金で負担する公的資金導入論が金融機関の一部から提案されました。しかし、金融機関不良債権金融機関の自己責任処理されるのが基本であると考えられております。金融機関が自己責任によるぎりぎりの努力をしてもなお不良債権処理できず、預金者に損害を与えることが明らかな場合にのみ許されるというのが一般的な受けとめ方であります。金融機関が自己責任によるぎりぎりの努力をせず、そのような状況に至らないうちに公的資金の導入を求めましても国民の納得は得られません。公的資金の問題については当時国会でしばしば御論議がありましたが、羽田大蔵大臣、宮澤総理からは、自己責任による処理を目指した金融機関の合意形成を要請する趣旨の御答弁が行われておりますのも、このような考え方によるものと思われます。  もし当時の段階で公的資金の導入に踏み切っていればもっと少ない負担で済んだのではないかという御議論がございます。確かに当時に比べ住専損失は増加しておりますが、それは不良資産の総額が増加したためではなく、担保不動産の価格の下落によりまして不良資産総額のうち償却すべき損失がふえたからであります。  したがいまして、三年前に処理が行われたとしても、担保不動産の処理がなされない限り損失はそれほど変わりはないように思われます。のみならず、当時の段階で、公的資金の導入を求め、国民の合意が得られず事態が混迷に陥った場合には、昭和の初期のように公的資金の導入がパニックの引き金になるおそれは十分にあったと思われます。  十二月半ば、宮澤内閣の内閣改造があり、羽田蔵相が退任され林蔵相が就任されました。林蔵相は、予算編成作業を終えると早速住専問題の処理について説明を求められました。新年早々、公的資金を導入せず、金融システム内で母体行責任と貸し手責任の間のぎりぎりの接点を求めるよう関係金融機関に要請するという対処方針で新蔵相の御了解をいただきました。  新年になりましても関係金融機関の話し合いは一向に進捗しませんでした。母体行と農林系金融機関の相互不信感は激しく、両者は一度も交渉のテーブルに着いたことがないようなありさまでございました。株価は一万六千円台で低迷を続け、三月株価危機説が迫真性を持って語られ、大蔵大臣、次官の定例記者会見では記者団からしばしばそれに関連した質問が行われておりました。住専再建計画の難航が三月危機の原因一つに挙げられておりました。  林蔵相の御了解をいただきました対処方針に基づき、大蔵省は農水省に対し、農林系金融機関が第二次再建計画の策定に参加するよう説得することを要請しました。  信用不安を避ける必要性には農水省も理解を示され、大蔵省の要請にこたえることになりましたが、その際、両省は関係当事者が合意できるぎりぎりの限界を模索し、問題点を整理し、共通の認識で対応することといたしました。それを整理して取りまとめましたのが覚書であります。このような大蔵、農水両省の説得もあり、関係金融機関の間で第二次再建計画の合意が成立するに至りました。住専経営破綻を契機とした信用不安の発生を回避できたのであります。  以上で第二次再建計画策定に至る経緯の御説明は終わりますが、覚書につきまして種々の御議論がございますので、三点ほど御説明をさせていただきます。  第一は、農林系金融機関住専に対する融資の回収は当時はできなかったということであります。当時、融資の回収を図ろうとしても資金は不良債権として焦げついており、回収を図ろうとした途端、住専は資金ショートを起こし経営破綻するという状況になっておりました。したがいまして、覚書のために住専に対する融資の回収がとめられたということはございませんでした。  第二は、ある問題に対し共通の認識で対応しようとする場合、官庁間ではしばしば覚書が取り交わされるということでございます。覚書は、当然のことながら、それを取り交わした官庁の当事者間においてのみ紳士協定としての効力を持つのみで、当事者以外の第三者を拘束するものでもなければ、当事者間においても法的な拘束力を持つものではありません。平成五年二月三日の覚書は、大蔵、農水両省が日本住宅金融の再建支援について、当事者間の協議が円滑に行われるよう対処するために結ばれたものでありまして、関係金融機関やそれ以外の第三者を拘束するものではありませんでした。  第三に、この覚書は母体行の元本保証を認めたものではありません。そもそも母体行しかできない元本保証を大蔵省が行うのは不可能でありまして、農水省がそのようなことを大蔵省に求めるはずはございません。また、農林糸金融機関が母体行に元本保証を迫り、母体行がそれを認められないために事態が膠着しているときに母体行の元本保証を認めたとしたら、母体行は絶対合意せず、そもそも再建計画は成立するはずがなかったからでございます。  農林系金融機関が母体行の元本保証を期待するのはその立場からすれば当然のことでありますが、それはあくまでも一方の当事者としての期待であります。昨年十二月の決定は、一方の当事者としての農林糸金融機関の期待にこたえ、農協の貯金者の損害を未然に防止するため、新たな政治的判断として公的資金が導入されたものと理解しているところでございます。
  75. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ありがとうございました。  次に、田中参考人にお願いいたします。田中参考人
  76. 田中清隆

    参考人田中清隆君) 弁護士の田中でございます。  私は、最初に、私の手元にあります二通のファクスを御紹介させていただきたいと思います。これはいずれも海外のマスコミから寄せられたものでございます。一つはウォール・ストリート・ジャーナルからでございます。   暴力団、総会屋などの裏社会が、日本経済の改革を進めていく中で、いかに大きな障害になっているのかということについての特集記事を企画しています。つまり、経済やくざがどのような形で規制緩和などの動きを妨害し、場合によっては貿易障壁を生み出し、結果的に日本経済の低迷の原因になっているかに焦点を当てた記事です。金融業界の改革を阻害している一つの大きな要因はやく、ざだと言われております。他にもこのような業界が数多くあるのではないかと思います。 こんなような書き出しで幾つかの質問事項を述べております。  もう一つ御紹介します。ワシントン・ポストです。  質問事項   いわゆる暴力団絡みの不良債権はどれくらい大きな問題なのでしょうか。不良債権全体に占  める割合、貸出残高など、概算ではどのくらいですか。   金融機関と暴力団の接点ほどこにあるのでしょうか。都市銀行からノンバンク住専も含めて)など、あらゆるレベルに広がっているのですか。 途中省略いたしますが、   住専と暴力団の関係は、どのように表現するのが最も正確でしょうか。大口融資先として挙げられている企業についてはどうでしょうか。こういうファックスが寄せられております。これだけではなくて、ほかにも同趣旨の照会が海外のマスコミから日本弁護士連合会あてに昨年の末以来多数寄せられておったわけでございます。  私は、これに対して大変なショックを受けたわけでございます。海外のマスコミは、日本の経済界、とりわけ住専問題につきましてこんなふうに見ているんだということを知ったわけでございます。もちろん、こうした海外のマスコミの取り上げ方というのはまことに針小棒大であり的外れである部分もございます。しかしながら、私どもの実感といたしましては、これもまたすべてを否定し去ることができないということも事実であるように思われます。  私どもは、こうした不名誉をそそぐために、何とかよい解決案をと考えまして、日本弁護士連合会の民事介入暴力対策委員会の有志とともにいろいろと不良債権処理の問題に関しまして提言をしてまいりました。そうした御縁で本日参考人として御意見を述べる機会を得たものだというふうに理解いたしております。しかしながら、私が本日申し上げる意見は、これは日弁連としての意見ではございませんで、あくまで有志の代表としての意見というふうにお受けとめいただきたいと思います。  こういった視点からいたしまして、私どもは、住専問題の持ちますさまざまの側面がございますけれども、主として債権の回収をどう進めるのか、暴力団等に不当な、不正な利益を残させないためのシステムづくりをどうするのかという観点を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。  こうした観点から、第一に住専処理スキームのあり方について、第二に現在提案されておりますこの法案をもとにした、その上で生じてまいりますでありましょう幾つかの法律的な問題点という順序で申し上げていきたいと思います。  まず、この処理スキームでございますが、この住専処理につきましてはあくまで法律的な処理によるべきである、破産、会社更生によるべきであるという強い御主張がございます。これは一面でまことにもっともなことだと思います。しかしながら、私は、少なくとも現時点におきましては、残念ながらこの法的処理策というのは時期を逸したのではないかというふうに思っております。この法的処理によるべきという考え方の中心は、やはり財産の早期保全ということにあったわけでございます。しかしながら、この住専関連の債務者につきましては、私どもがマスコミ等でいろいろ拝見する限り、あるいは仕事の上でいろいろ感ずる限りでは、既に相当の資産隠しが進行してしまっている、こういう状態であろうというふうに考えておるわけでございます。  まさに目の前にあるお金をポケットに突っ込もうとするときにそれを回収するということは、これは確かにいわゆる民事的な手続、法的処理によることが適当だと思われます。しかしながら、どこへ隠したかわからない、どこへ行ったかわからない資産を捜し出してこれを回収するということになりますと、これは通常の民事的な手続のみでは非常に困難でございます。例えば破産管財人といえども、あるいは更生管財人といえども、特別な権限を持っておるわけではございません。これについては、あくまで国税あるいは警察、こういったところのノウハウ、こういったものを含めました総合的なバックアップがなければ実際上回収は非常に困難だというふうに考えております。  その点におきまして、今回の住専特別措置法案の第三条一項六号だと思いますが、強力な調査権限が与えられております。これについて私どもは、まことにふさわしいものである、ぜひこういった調査権限をもとにして財産の隠匿を発見し、回収に努めていただきたいと考えておるものでございます。  先ほどの法的処理について若干敷衍して申しますと、法的整理というものは、率直に申しましてあくまで経済的合理性の範囲内、端的に申しますと採算の範囲内で行われるのが実情でございます。破産管財人の費用あるいは競売申し立ての費用、こういったものも回収見込みとの見合いで制約をされるわけでございます。私は細かい数字は存じませんけれども、例えば競売の申し立てをいたしますと、合計一兆円の競売申し立てをいたしますと千分の四で四十億円、印紙代だけでございます。これに一件当たり数十万円の予納金、例えば不動産鑑定人の費用、執行官の費用、こういったものを一件当たり数十万円、裁判所によって違いますが、こういったものを納めなきゃならぬ。仮にこれが数千件あったとしますと、これだけで十億円近い金額になってしまうわけでございます。こういったものをどうするか、そういう問題もあるわけでございます。  さらに、管財人といたしましては、こういった債権回収に直結しないところの刑事責任の追及、あるいは回収見込みの薄い後順位の抵当権、こういったものについて多大な努力や費用を使うということは実際上困難であります。  また、警察や検察あるいは国税の協力を得るということも当然考えられるわけでありますが、今までこうしたことが実際に円滑に行われてこなかった現実がございます。それが制度的な改革なくしては、これが直ちに行われるということは考えがたいわけでございます。  委員の先生方の中にも弁護士経験をお持ちの方がいらっしゃいますので、多分破産管財人の御経験もおありだと思います。私が申し上げた今の点は十分御理解いただけるものと思います。  さらに、根本的な問題といたしましては、今回の住専問題をどう決着をつけるか、ここに何を求めるかということでございます。私たちは、この住専問題の処理を単なる企業の清算の問題ということで終わらせてはいけないと考えております。ある程度の財産が回収できて、そしてそれを配当して一件落着ということで一体よろしいんでしょうか。私はそのようには考えておりません。多くの国民の本音も同じであろうと私は思っております。私どもは、この住専の問題は非常に根が深い問題であるというふうに思いますので、この機会にこそ関係者の責任の明確化、隠匿資産の発見と回収、さらに暴力団等の不当な利得の剥奪、競売妨害の対策の確立、健全な金融システムの確立といった、一言で言いますと公正な社会の再建を何とかここで図りたい。少なくともその第一歩を踏み出したいという願いを持っておるわけでございます。先ほども申し上げました海外のマスコミの論調に非常に屈辱を感じる私の思いもまさにそこにあるわけでございます。  ただ、国民といたしましては、そうは申しましても、具体的な展望のないままに税金がむだ遣いされるんではないか、あるいはそういった公的資金がやみからやみへ消えるんじゃないかという不信を持っておることも事実でございます。ぜひとも立法府とされましてはこの国民の願いを正しく受けとめられまして、そしてまたその危惧感をぬぐい去るような努力と工夫を尽くす責務を負っていただきたい、このように考えております。  こうした観点から、現在の住専処理のスキームを前提といたしまして幾つかの問題点を指摘させていただきたいと思います。  まず第一点といたしましては、預金保険機構は住専処理機構が買い取った債権のうちで回収困難なものの取り立てを行うということになっておりますが、この預金保険機構の具体的な組織及び作業内容ということが私どもにはまだ明らかに見えておりません。警察官あるいは国税の職員、検察官等も入るということを言われておりますが、単にこういった人たちが入ってにらみをきかすということだけでは国民は納得いたしません。  ここがもし作業をいたしますとすると、一体どういうことを具体的にやるのか。例えば、直ちに刑事的な対応を要するような場合には、これは当然警察、検察等の本体が対応することになります。また、多くの民事事件につきましては、例えば財産の差し押さえ、競売の申し立て、損害賠償の請求、こういったものは実際には弁護士がやることになります。そうしますと、預金保険機構の方々は何をするか。  私は、これまでの状況から見ますと、こういった出向された職員の方々は、まさに住専の債務者やその関係者の資産隠しゃ、それから住専役員あるいは職員に対する損害賠償請求のためのさまざまな調査、資料の収集、競売現場における実態の把握と妨害者情報収集あるいは資料提供、さらに債権回収に関するマニュアルづくり、こういったものをぜひとも進めていただきたいというふうに考えているわけでございます。  弁護士には、既に述べましたとおりに格別の調査権限、強制権限がございません。もし預金保険機構の方でこういった調査がなされまして資料が提供されますならば、弁護士にとっては回収に向けて極めて大きな力になるというふうに考えておるわけでございます。  また、現実に大部分の回収事務を扱います弁護士の選任についてでございますが、この役割が極めて重要であることは申すまでもございません。したがって、その選任につきましては、いわゆる一本釣りという形ではなくて、日本弁護士連合会と十分協議をして適切な推薦を受けるということが必要であろうかというふうに思っております。  第二に、住専資産を譲渡してほとんどもぬけの殻のような状態になるわけでございますが、住専自体の解散の問題も残っております。  現在の処理スキームに対する批判の一つは、住専資産を譲渡してしまえば後はもう責任追及がなおざりになるんではないかという不安が指摘されておるところでございます。もっとも、損害賠償請求権なども実際には住専処理機構の方に移されてしまいますから、したがって具体的な権利行使は処理機構によって行われるということになりますけれども、ある程度の情報あるいは端緒、こういったものはやはり住専側から提供されませんと実際には実行は困難でございます。この情報の提供というのが、具体的には住専の清算人から提供されることになろうかと思います。  そういうことになりますと、清算人の人選といたしましては、通常は清算会社の元代表取締役がなるわけでございますが、これでは不適当でございます。裁判所によって適当な清算人を選任するという規定がございますので、その規定により適切な選任がなされることが望まれるわけでございます。そして、この清算人が預金保険機構あるいは住専処理機構と密接に連絡をとりまして、適切な清算を通じて関係者の責任の明確化に協力すべきであるというふうに考えます。  第三に、住専処理機構自体の役員構成等につきましても、元の住専やあるいは関係金融機関の役員であった方々は不適当だと考えられます。可能性といたしましては、この方々に対しては現在まだいろんな民事、刑事の責任の問題が残されておる可能性があるわけでございます。そういったことで利益相反という問題が起きる可能性もありますので、こういった方は不適当であろうかというふうに考えております。  第四に、最後でございますが、この住専処理の問題につきましては、私どもは競売妨害対策ということをぜひとも強力に確立していただきたいということを考えておるわけでございます。そして、競売妨害対策の決め手は三つございます。一つは、民事執行法の改正でございます。二つは、競売絡み犯罪の取り締まりであります。三つ目は、裁判所、とりわけ執行官の体制の強化でございます。  その点で私は現在の民事執行法の改正の動きを非常に高く評価しておるところでございますが、従前の、もともと競売絡みのこういった犯罪がなかなか摘発されなかった、最近はかなり摘発されておりますけれども、かってなかなか取り扱われなかった背景には、競売手続というものが非常に複雑でございましてなかなかわかりにくい、一方、妨害する方はしょっちゅうこれはやっておりますから非常に詳しいということがありました。そこで、先ほど申しましたように、預金保険機構等による実態調査あるいはマニュアルづくりというものがなされていきまして、これと捜査機関との間における密接な連携、こういったことによって競売妨害対策が確立されることを望みたいということでございます。  実は、私自身も競売現場で何度も危ない目に遭ったことがございます。また、私の同僚も競売妨害に絡んで暴行、傷害を受けた弁護士もございます。住専の問題を機としてこういった競売妨害の実態、さらに加えて申しますと、私の実際の体験でも、お国が売った物件だから大丈夫だと信じて買った七十四歳のおばあちゃんが、実際にはそこには悪質な占有者が住んでおりまして、せっかく買ったのに何千万と要求されて、本当に泣きの涙になってしまった。最終的には数百万で和解しましたけれども、そういったケースもある。また、大学の先生が何も知らずに買ったところ、それは暴力団の組長の家であったということで、最終的にあきらめて申込保証金五百万円損しちゃったというようなケースもあるわけでございます。そういったことも考えまして、住専問題を機としてこの競売問題についての対策が確立されることを強く望みたいと思っております。  裁判所、とりわけ執行官の体制については省略をいたします。  以上、時間の制約もありまして大まかな点を申し上げましたが、最後に重ねて申し上げますけれども住専の問題は本当に社会的不公正の縮図であるというふうに私どもは見ております。この問題を解決するかどうかが、まさに日本の公正なシステムの回復ができるかどうか、そして国際的な信用が取り戻せるかどうかということの分かれ道でございます。日本の国民も国際社会もこの点についてまさに注目をしておるわけでございます。どうかそのような認識に立っていただきまして、一日も早く強力な立法をいただきますようお願いを申し上げます。  ありがとうございました。
  77. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  78. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 自民党の笠原であります。  ただいま橋本参考人、寺村参考人田中参考人からそれぞれ御意見を賜りました。いずれもその立場その立場でいろいろと御説明をいただいたわけでありますが、まず橋本参考人からお聞きしたいと思います。  昨年の十二月から今日に至るまで、日本の国を挙げてこの住専の問題に終始しておるわけであります。したがって、この住専というのはいかに大きな国民的な関心事であり、この問題の解決なくして日本の将来はあり得ないというふうにみんな思っているわけです。  そこで、この一番問題である住専でありますが、いろいろな論議が尽くされてまいりましたことは三参考人ともよく御存じだろうと思います。国会の場でこれだけいろいろ論議されてきたわけです。  そこで、橋本参考人にお尋ねいたしますが、あなたは母体行の責任者としてどうお考えになっているか、その責任についてまずお尋ねをしたいと思います。
  79. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 住専問題は、住専各社の経営が事実上破綻している現状、それから多数の金融機関を通じた金融システム全体の安定性に与える影響も大変大きくて、不良債権問題の中でもとりわけ緊要な問題であるというふうに認識しておりまして、本来この関係当事者間で解決すべき問題であったにもかかわりませず、当事者間での解決がなかなかできずに、結果として国民の皆様に御心配や御迷惑をおかけいたしまして申しわけなく思っております。  私どもといたしましては、その住専の設立、住専への出資というような形で関係しておりますので、その関与度合いから申しますと、単に住専に対する貸し付けを行った金融機関という以上の道義的責任まで含んで責任を感じております。  したがいまして、本問題の一刻も早い解決を目指して、政府の処理スキームに沿った住専向け債権の放棄に加えまして、金融安定化拠出基金への拠出並びに住専処理機構への低利融資などの最大限の対応をしてまいる所存でございます。また、公共性の高い金融機関として、金融システムの安定に貢献できる新たな寄与について何かいい案がないかということを目下模索しているところでございます。
  80. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 ただいまお聞きいたしまして、例えばこの機構に対する低利の融資とかあるいは拠出金の話はもう当然これは前々からわかっている話でありまして、一番問題なのはいかに責任を感じておられるかということ。特に銀行家として、今までのように金さえもうければいいという考えじゃなくて、銀行マンというのは、銀行というのは御承知のように日本経済の血であり動脈であると言われておるわけです。したがって、それには哲学がなきゃいかぬ、倫理観がなきゃいかぬ、道徳観がなきゃいかぬというのが、これは私は一番大事だと思うんですよ。しかるに、今までの銀行のやり方というのはそうではなかったと私は思っています。したがって今日これが露呈しておるわけです。  橋本会長、私はあなたは立派な人格者だと思っています。そして、あなたは神戸銀行の頭取でありますと同時に、あなたの銀行は太陽神戸三井銀行です。三井の先覚者には中止川彦次郎という人もおりました。藤山雷太という立派な人もおられました。財政家としては高橋是清という偉い人もおったんですよ。日本の先人には偉大な人がおりました。そのために昭和の金融恐慌も乗り切ったんです。  今、本当に大変な金融恐慌、そして金融システムの安定化が問われているわけです。田中参考人が先ほど言われました。しかし、今の日本を見ますと、この状態を見ますと、今から七十年ぐらい前ですか、アル・カポネのシカゴの時代と変わりないじゃありませんか。あなたはそう言いたかったと思うんですよ。  私は、今本当に何をなすべきか、一番大事なときだと思うんです。橋本会長、あなたは先ほどいい案なら検討する、いいものを模索しているとおっしゃいますけれども、今こそ本当に決断を振るって、母体行が住専を設立した、いろんな過去の経緯はありましょう、それは大蔵の責任もあるでしょう。いろんな責任もあります。寺村参考人、あなたが言われた覚書の問題もあるでしょう。いろいろあります。そんなことはわかっているんです、全部。しかし、今求められるのは何か。決断ですよ、決断。それが日本を救う道なんです。今こそ救うのはあなた方しかない、私はそう思っています。もちろん政治家にも責任があります。  そこで、同時に橋本参考人に、あなたが新しい案なら検討してもいい、前向きでいきたい、こうおっしゃるんです。どうか決断を振るって、国民の血税を使うんじゃなくて、国民が本当に今どうなるだろうと、こう思っているときでありますから、あなたの決断をひとつ聞きたいと思いますが、いかがですか。
  81. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 先生御指摘のとおり、銀行法第一条第一項で銀行の公共性ということがうたわれておりまして、第二項で銀行の私企業ということがうたわれております。私ども銀行経営者には、一見相矛盾する要請でありますところの公共性と私企業性をいかに調和させていくかということが常に問われておるものと理解しております。私は、これらの調和を図っていくということの座標軸になるものが先生おっしゃいますモラルだとかあるいは哲学ではないかと、このように考えております。そういう立場から、今の住専の新たなるこの寄与の問題についても、関係各方面といろいろ協議を進めている最中でございます。
  82. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 今、橋本参考人から新たなる寄与について関係各方面といろいろと協議を重ねられておるという話であります。私どもは、一刻も早く今国会、この国会の中で住専処理法案を初め四法案が通らなかったら、皆さんおっしゃっておるように、日本金融システムは壊れるでしょう。  昨年の十二月に、当時の村山内閣総理大臣と武村大蔵大臣のときに決定されたこの住専処理機構、あの予算のときに六千八百五十億円を出す、それは驚天動地の思いだったと思うのです。国民もびっくりしたと思うんです。今、今国会で解決しなきゃならぬ最後の段階に来ているわけです。この解決がしっかりすれば必ず私は日本金融システムは構築されると思うんです。  かつては日本の東京は世界の金融の中心だったんですよ。今、本当に日本の東京は世界の金融の中心ですか。なぜそうなったんですか。ジャパン・プレミアムが起き、大和銀行事件が起き、こういう不祥事がなぜ起きていったんですか。それは私は、銀行のトップと言いませんけれども、全体に対するリスクのこと、それから過去のいろんな日本の長い金融の歴史のことが忘れ去られて、単なるあのバブルの時代に踊ってしまったんじゃないか。本来でいえば、金融というのはそういうときに踊っちゃいけない。  昔は、皆さんそうでしょう。一円の金が足りなくても、大つごもりに、大みそかに一円の金が足りなくても、それが出てくるまで、明日くる正月であろうとも銀行員は残業して帰ってきた、これが日本銀行の神話じゃなかったですか。それで国民がみんな信頼して銀行に金を預けたんですよ。それがあっという間にもろくも崩れたじゃありませんか。情けないことです。本当に悲しいことだと思うんです。  どうしてこんなことが起きたか。戦後五十年の間、いろんなうみやおりが重なったでしょう、教育も悪かったでしょう、何もかも悪かった。しかし、人様の金を預かる、財産を預かる銀行だけはそれはあり得ないとだれしも思っておったと思うんです。それが今や破綻の極であります。私は、一月にアメリカへ金融の問題について調査に行ってきました。かつてのRTC、この後FDICになりましたが、のヘルファーさんにお会いしてきました。日本語の達者なすばらしい女性の総裁です。グラインダーFRB議長にも会いましたし、ニューヨークの銀行監督局長のルービンさんにも会いました。彼らは異口同音に、一刻も早く日本金融処理、この不安を解消しなけりゃ世界が大変なことになると。  日本不良債権は一体どれだけあるんですか。大蔵省は三十数兆円と言いますが、アメリカの議会のレポートでは約百二十兆円と言っているじゃありませんか。アメリカは膨大なスタッフを抱えて徹底的に調べたと思うんですよ。一刻も早くこれを処理しなきゃならぬ。その第一番が住専なんです。この住専を早く処理するために、思い切ってみんな血を出し骨を削らなきゃならぬと思うんです。  橋本会長はこの前いろいろおっしゃった。しかし、今回、あなたを初め銀行の皆さんが決断すれば、私はこの金融システムは安定し、日本の二十一世紀は開けると思うんです。一刻も早く決断されることを望みますが、いかがでございましょうか。
  83. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 先生のただいまの厳しい御意見、それから大蔵大臣あるいは与党からの重ねての御要請を真剣に受けとめまして、金融システム安定への寄与、ひいては国民経済への貢献という観点から、先ほどから申し上げておりますように、新たな寄与についていろいろ模索をしているのが現在の私どもの立場でございまして、何とぞこの点は御理解を賜りたいと、このように思います。
  84. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 いや、模索されていることは結構でありますし、それは当然でありますが、少なくとも前向きに、本当に私たちも責任を負うんだということを私は明言してもらいたいと思うんです。それはあなたの銀行だけじゃなくてオールジャパン挙げてですよ、金融関係者の一番大事な問題ですから。これが等閑に付されてしまったら恐らく世界も失望するでしょう。  今ようやく二万二千円に返ってきたのはなぜですか。それはこの金融処理のスキームを組んだからです。だから世界の金融筋が安心したんですよ。一万四千九百九十円まで下がってしまったこの日本の株価、先ほど寺村さんがおっしゃったように、一万二千円だったらゼロなんですよ、含み資産も何もなくなってしまう。これは日本の破産ですよ、はっきり言えば。にもかかわらず、政府がこのスキームを組んでやろうと、ここまで決断したんですよ。そのためには、一番大事なのは金融でしょう。皆さん方でしょう。  ですから、前向きな自覚を持って、必ず一刻も早くそれは私たちもやるんだと。今までのような、債権だけ放棄すりゃいい、普通の商行為のそんなことじゃなくして、あなたの哲学、倫理観、何物においてもあなたは会長さんですから。  地方銀行はいろんな弱い体質も持っているでしょう。それはわかりますよ。しかし、それを乗り越えて、護送船団というのは悪いことだけれども、今こそ一番大事なのは、お互いにその護送船団が強い者ばかりじゃなくて弱い人もみんな集めながらオール日本で解決していこう、そのためには負担できる人は負担しよう、体力のある者が負担しよう、しかし負担できない小さな金融機関はそれは助けていこう、こういうふうに皆さんが新たな寄与をしてくれることが私は一番大事だと思いますが、いかがでしょうか。
  85. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) もちろん私も責任を感じ、我々も金融システムの担い手でありますから、自分自身を差しおいてよそにやっていただきたいということを決して申し上げておるんじゃなくて、私自身も含めまして関係の方々と真剣に御相談を申し上げると、こういう気持ちでございます。
  86. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 真剣に考えていただくということですから、私はそれに本当に期待します。一刻も早く真剣にやっていただきたい。  しかし、橋本参考人、それはそれなりにいろんな考えもお持ちでしょう。けさの新聞にも出ていました。これも一つの方法でしょう。しかし国民が、我々の税金を使わずして本当に自分たちの自己責任においておやりになったと、先ほど寺村参考人が言われたけれども、あなたが覚書をつくられたときに当時の大蔵省としては、お互いに公的資金の導入よりもまず自己責任でやろうということだったという話ですね。そういうことならば、自己責任というのはやっぱり母体行でやる。  母体行等が住専をつくったその経緯はみんなわかっていますよ。一々ここであげつらう必要もありません、過去の経緯は全部わかっておるわけですから。全部私は私なりに何百日か費やして調べてきたんですから、もういろんな話は聞く必要はないんです。結論はただそれしかない。  だから、こういう中で本当に真剣にやってくれることを誓っていただけますか。橋本参考人、お尋ねします。
  87. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 種々これまでも申し上げておりますとおり、私どもも含めて金融界全体が金融システムの安定という目的のためにどういう寄与がなし得るかということを検討しておる最中でございますので、そういう事情を十分御理解賜りたいと、このように思うわけでございます。
  88. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 今そういうことで真剣に関係機関とよくお話しになっておりますから必ずいいものが出てくると、私は疑いませんし、そう信じておりますから、どうか今おっしゃったことを必ず実行していただきたい、こう思うんです。  と同時に、橋本参考人、私はどうこう言うわけじゃありませんけれども、これだけ低金利になってきた。じゃ、この金利で食っている皆さんはどうなるんですか。ここにデータがあります。こんなものを見せたら日本人はびっくりしますけれどもね、日本じゅう。この過去八年間の公定歩合の推移。ことしは銀行は膨大な純益を上げておられますよ。八兆数千億円とも言われています。同時に、確かに皆さん方の銀行は国家に寄与されたことは事実ですし、税金も納めていらっしゃるでしょう。しかし、この国税の、皆さんの法人税の納め方の推移と業務純益。そして同時に、退職して本当になけなしの金を預けて、それで生活していこうとしていた人たちの金利が目減りして、その金がどこへ移転したんですか。本来国民が受け取るべき膨大な金というものが反対に金融機関の方へ移転しているんです。この資料はお持ちだろうと思いますから私はあえて申し上げませんよ。  それを思われたら、橋本さん、そんなことは国民のためにも銀行が挙げてこの問題を解決し負担するのは当たり前だと私は思っていますよ。いかがでしょうか。
  89. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 前期の銀行の業務純益が大変好調であったというのは、低金利政策によるところもあったろうというふうに思われます。そもそもこの低金利政策の目的は景気対策のためのものと考えておりますが、そうした状況の中で、有価証券の保有コストの低下であるとか、あるいは債券売買益の好調な推移といったようなことによりまして、収益にプラス効果があった面はございます。  しかしながら、先生仰せのとおり、国民の皆様にとりましては、現在の低金利下でローン金利の低下ということはありましたものの、一方で預金金利の低下というデメリットがございました。とりわけ利子所得に多くを依存しておられる方々に非常に大きな影響が出ておるということを痛感しておる次第でございまして、金融界に対しましてこの面で大変厳しい目が向けられているということを実感しております。  したがいまして、こういったような状況を踏まえまして、今の新たなる寄与の問題もさることながら、こういう方々に対する一般よりも金利の高い福祉定期であるとか、あるいは年金受給者を対象とした優遇金利預金商品というようなものを創設、品ぞろえいたしまして、できる限りの対応を行っているということでございまして、この姿勢につきましてはぜひとも御理解をいただきたいと、このように思います。
  90. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 今、庶民の方に思いをいたされたと思いますが、かつてはだれでも銀行に定期預金すれば大体五%もらえたんです。百万円預ければ五万円ですよ。今幾らですか。〇・五%になってしまったでしょう。それになおかつ源泉分離課税で引かれますとたった四千五百円にしかならないんですよ。余りにもこれは気の毒じゃありませんか。百万円持っておってもたった四千五百円しかもらえないということでは、これが本当に公正なことかと思われます。  今確かに、バブル経済の崩壊のために、やっぱり企業活動をしっかりして経済の活力のために低金利をやっている。これは政府の政策ですよ。これは当然だと思うんですけれども、その反面、低金利というものは、今抱えておられる皆さん方の膨大な不良債権を、これ帳消しにしなかったら日本の経済は立ち直れませんわね、実際の話が。そのために私どもは、ある意味では国家を挙げて、国民を挙げて、その低金利政策をやりながら不良債権を消していこう、こういう政府の意図が私はないとは言えないと思うんですよ。それを橋本参考人、よく銀行の皆さんに考えてもらいたいんです。  大きい銀行であれ小さい銀行であれ、かつては自分たちがやったこと。先ほど言ったように、倫理観がなく哲学がなかったあのバブル時代に、過剰流動性の五十兆円もあった金を何につき込んだか。不動産投資、そしてゴルフ場とかいろいろと使いまくったんですよ。私はあのころの銀行の皆さんがやっていらっしゃったことを全部知っていますよ。こんなつまらぬところをなぜ金出して買わせるのか。そうでしょう、新都市計画法があって家が建てられないところ、がけっ縁まで買っているんですよ、膨大な金を出して。それは全部だめですよ。  そして、私は農家の出身ですが、土地というものは何か、果実が生まれるからいいんですよ。土地を耕して、そこから生まれる米であるとか麦であるとか果実、果実が生まれるから土地の評価ができるんです。対価があるからですよ。  ところが、対価の出ないところに膨大な金を、国民の預けた金をやっておって、それが全部だめになってしまったでしょう。それがバブルなんですよ。泡のごとく、そうさせたんじゃありませんか。  そういう点で、銀行責任ばかりじゃない、それは大蔵省責任があったでしょう。我々もいろいろな意味で、そのときに酔っておった私たちも樺花一朝の夢であったかもわからぬ。いや、世界がそうです。  日本につまらぬ神話がときどき生まれるんです。土地は無限であるけれども、ない。日本の土地はない。そういうことで土地を物すごく過大評価した。  しかし、かつて昭和恐慌の時代に、私の方で田んぼ一反が大体五百円だったんです。田んぼ一反五百円。そして、本屋普請する。昔は四つの八畳の家をつくりたい、四八の家、これがみんなの念願ですよ。四八の家、八畳間が四つあるんです。これを四八と言うんです。それをつくるのが、昔は一代かかって家をつくりたいというのが夢ですよ。二千円だった。  ところが、あの昭和恐慌のときには何と、驚くなかれ、その四八の家の十倍ほどの立派な家が二千円でできたんです。当時一万円かかったのがそのくらい下がってしまったんです。土地も下がった。土地は必ず上がるばかりじゃない。下がるということは明治、大正の人なら全部知っているんです。銀行だってそういう人がいたはずですよ。何でもかんでも上がる、右上がりに上がると思ったのが大間違い。だから、教育が悪いんです。何でも買えば上がる、そんなことはあり得ないんです。経済というものは必ず上がれば下がることがあるんですよ。  そういうことを私はやっぱり、橋本参考人、これからこれを他山の石として、前車の覆るを見て後車の戒めとなすじゃありませんが、前轍を踏んではいけませんから、これから新しい銀行員の皆さん、例えばトレーダーですね、何兆、何億円という、若い二十代の人たちがトレーダーになって、あのディーリングルームでやっているんですよ。金銭感覚が麻痺しますよ。入るときには必ず金融とか銀行史とか過去のいろんなものを教えることが大事です。やっぱり歴史が大事です。歴史は必ず繰り返すんですから。  そういう点でいって、橋本参考人、そういう点についてどうお考えになっているか、ひとつお伺いしたいと思います。
  91. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) バブルの教訓というものをどう受けとめており、それをどう生かすかという御指摘であろうと思いますが、バブルの発生につきましては、先生のお話のとおり、経済全体が右肩上がりという幻想が生まれまして、加えて長期にわたって金融緩和が持続されたということも一つ原因というふうに思いますし、今の土地の価格でありますが、資産価格が経済的な合理性を欠いた水準まで急激に上昇した中で、今度は金融政策の引き締めとかあるいは不動産融資への規制強化等がきっかけになりましてバブルが崩壊したと、このように思っておるわけでございますが、銀行界として振り返ってみますと、反省すべき点は多いというふうに思っております。  当時は、金融の自由化あるいは国際化というような大きな環境変化の中で、例えば社債市場であるとかあるいは海外金融市場の拡大によりまして伝統的な貸出業務の成長性というものに陰りが見え始めまして、収益競争が非常に激しくなって、資金需要が旺盛であった不動産関連の融資が着目されるようになって、多くの銀行がこの分野に傾倒して、結果として不良債権を抱えるに至ったということでございますので、金融界に身を置く身として大いに反省をしておるわけでございまして、今後の銀行経営に当たりましては、この貴重な教訓といいますか、大きな犠牲を払った教訓を決してむだにしないように気をつけてまいりたいと、このように思っております。
  92. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 橋本会長、あなたも私の少し先輩で、私どもはやっぱりガリ版刷りで一生懸命本を読んだときです。あのころは、終戦直後は何もなかったころですから、その思いは私はよくわかっておると思うんです。  ですから、新しい銀行員の皆さん、こういう飽食の時代、物は何でもあるというような豊かな時代と違って、必ず人間というのはそういうことがあるから、やっぱり私は教育が大事だと思うんです。それはそういうことでひとつまたよろしくね。これは橋本さんのさくら銀行ばかりじゃありません。全日本、オールジャパンの銀行にもそういうことを徹底してもらうようにこれからお願いしたいと思うんです。  先ほどの話に返りますが、今模索しておられると思いますが、その模索しておられるようなことについて、どんなことを今模索しておられるか。ここは国会ですから、国民の代表が聞いているわけですから、どこかの中でやるんじゃなくてこの国会で、橋本会長、あなたが今、我々銀行として、そして母体行としても、あるいは協会としても、こんなことをやって国民の期待にこたえたいと思っておられると思うんですよ。それは大蔵とも相談されているでしょう。日銀とも相談されているかもわからぬ。しかし、こんなことをやりたいということを私どもに、三権分立て、私どもは国民の代表ですから、国民の代表に聞かせてもらうことが私は一番大事だと思いますから、その点で模索していろいろんなお考えをここで聞かせてもらうのが一番大事です。どこかで決まっておるような話はいけませんよ。やっぱり国会の場で私は説明してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  93. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) けさの新聞にいろいろな記事が出ておりまして、あの記事によりますと、何か新しい基金をつくるというようなことが書いてあるわけですが、あれはまだそこまで固まった案ではございません。ああいう基金案というものは一つの案になり得るかもしれないと、こういう考えで検討しているところにございまして、まだ構想の入り口というような段階で、輪郭もはっきりまだ見えてこないというわけで、この場で内容を御説明できるような段階にはまだ立ち至っていないということでございます。  今後、一つの案として成り立ち得るかどうかという点も含めまして、さまざまな角度から当局を初め各方面の方々と現在意見交換を重ねておりまして、その結果として何か案として輪郭ができ上がってくればいいがなと、このように思っております。
  94. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 けさの七千億円基金で、運用益を五千二百億円、十五年間、国庫返還、これも大きな選択肢の一つであると、こういうふうに今、橋本会長がおっしゃいました。それ以上になお一層もっといい案があったら、それはそれ以上で我々はこしたことはないし、いわば六千八百五十億円に相当する部分を母体行が全部負担されて寄与されるのが一番いい。これが一番いいわけですけれども、それにはやはりいろんな関係もありましょう。しかし、私は同時に、この案もあるし、少なくともこの国会中には、こういう一つの案が完全に合意を得られて、国民がなるほどよくやってくれたというふうにしていただきたいと思うんです。  今お聞きしましたら、これは非常にいい案であるということで検討中であるということでありますから、それは所管官庁とも、またそれぞれ関係者とも御協議いただかなきゃなりませんが、これもすばらしい案の一つである。しかし、それ以上にもっといい案があれば、私はそれが一番いいと思っています。  と同時に、ここでちょっとお尋ねしたいのは、世界の巨大企業と言われるところ、GMでもGEでも、あるいはチェースマンハッタン、シティバンクもそうですけれども銀行金融機関にかかわらず、世界の巨大企業というのは必ずメセナをやっているわけです。それはなぜかというと、銀行というのは、きざな言い方で言うとおかしいかもわかりませんが、コモンウエルスのためにやっていると私は思っているんですよ。  やっぱり国家社会のために大いなる寄与をしなきゃならぬ。そのために諸外国はいろんなメセナを大いにやっています。残念ながら、我が国でもそうあるべきところを、あのサッカーくじなんかもつくらなきゃならぬ、金がないから体育施設もできない、運動選手も養成できない、あるいは国民スポーツも理解できないというようなことで、こういう話も出るわけですよ。  そういう点で、これから本当に企業が本来的な、先ほど言った公共的な、私企業ではあるけれども同時に公的な意味を持っているわけですから、もっとメセナを大いに重視してそういうことに寄与されれば、私は国民も納得していくと思うんですよ。  そういう点について、橋本会長どうですか。これから銀行挙げてメセナも大いに考えていく。そうすれば日本のスポーツはもとより、老人介護の問題だって町村は皆困っているわけですよ。本当に二十一世紀は老齢化の時代、少子化の時代、福祉もそして同時に健康も大事なときですよ。そういうことに企業がこれから大いに貢献してもらわなきゃならぬと思いますが、そういう点で橋本会長、どうですか、御意見は。
  95. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 社会貢献活動を積極的に行えと、こういう御趣旨の御意見と思われますが、私も全く同感でございまして、当行の、さくら銀行の例で申し上げますと、地域との触れ合いを大切にして、お客様とともに歩む銀行、こういうことを経営理念の一つに掲げておりまして、まだまだ不十分だとは思っておりますが、さまざまな社会貢献活動を行っておるところでございます。  例えば、車いすを使用される方や目の不自由な方が利用しやすいように工夫したATMであるとか、あるいはATMのところまでそういう方々を誘導するガイドシステムの設置店を拡大するとか、あるいは地区のコミュニティーとの共催によるプロムナードコンサートを開催するとか、その他、営業店におきまして手話の窓口の開設だとか、あるいは持ち出し自由なさくら文庫をつくるとか、あるいは地域の清掃活動に行員が参加するとか、また行員個人のボランティア活動を奨励するために、そういう活動に参加するために長期の休暇を与えるというような制度もつくっておりまして、そういう方面の活動をできるだけ積極化してまいりたい。今御指摘の御趣旨を真摯に受けとめまして、よき企業市民として社会に参加していくことができるように努力してまいりたい、このように思っております。
  96. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 非常に御賛同いただきましてありがとうございます。メセナといってもやっぱりお金がかかるわけですから、そういう基金等もこれから大いに、これは税制上の問題もあるでしょうけれども、そうされることによって銀行の、国民といいますか地域社会に溶け込む一番大事なことだと思うんです。どちらかというと、今まで銀行さんというのはそういう点ではちょっと何かなおざりにされておったような気がいたしますが、そのことについて今いいお話を聞きましたので、なお一層積極的にそれを活用されることをお願いしたいと思うんです。  そこで、もう一つは、実はこの金融不安が高まって今一番心配されておるのは、地方銀行を初め信用金庫とか信用組合預金がだんだんよそへ移っていくんです。例えば今、郵便局なんか膨大な金が集まってくるわけです。それはなぜかといったら、金融機関に対する不安があるからです。それは必ず払拭しなきゃならぬし、やっぱり地域の銀行も大事ですから、ちょっと悪くなると吸収されますけれども、合併も大事です。しかし、それ以上に地域銀行もやはり大事にしないと私はいけないと思うんですよ。そういう意味で、非常に地方銀行が不安に思っている。そういうものに対しても、やっぱり銀行協会の中でその地域銀行が成り立っていくようにこれからお互いに相携えていかれることを私は大事にしてもらいたいと思うし、それをお願いしたいと思うんです。  それから同時に、農協もそうです。農協というのは御承知のようにああいう機関でございますから、結局、金を貸してどうこうというわけじゃありません。やっぱり組合組織ですから、そこにはおのずから制限がありますから、結果的に農協というものも最後には住専の方へいろんなことがあってもお貸しをしたわけですよ。農協も系統糸の金融機関も、貯貸率が余りにもあれですから、資金の活用をもっとうまく円滑にできるような方法を考えなきゃならぬ、私どもはそう思っています。そうしなかったら農協の存在意義もなくなってくる。  農協も大事ですよ。農協というのはやはりその村にあって地域の一番大事な根幹です。コミユニティーの一番根幹は農協とか郵便局、大事です。同時に銀行も大事なんです。ですから、その金融機関がこれから不測の事態が起きてはいけませんので、何とかこれから乗り切ってもらわなきゃなりませんし、乗り切っていかなきゃならぬと思うし、この不良債権を一刻も早く償却しながら、そして世界に冠たるかつての日本金融王国を築いてもらいたい。そして、再び東京が金融の中心になるように、今の香港やシンガポールに行くようなことじゃいけないんであって、私はもう一度再構築されるために格段の努力をお願いしたい。  それには、この住専処理問題について、先ほど前向きに検討しながらいろいろなことをやって必ず国民の期待にこたえるということを橋本会長はおっしゃいましたから、その期待にこたえるように必ずやってもらいたいことを心からお願いしながら、いろいろ失礼なことを申し上げましたけれども、国民を思ってのことですから、国民を思って同時に日本金融を思い、私はそういう切実な気持ちで自分の意見を吐露したのでありますから、どうかその点を御了解賜りたいと思います。  質問につきまして懇切なる答弁をいただきまして、ありがとうございました。(拍手)
  97. 平田耕一

    ○平田耕一君 自由民主党の平田耕一でございます。よろしくお願い申し上げます。  お三方にはお忙しいところをありがとうございます。特に、橋本会長におかれましては株主総会を目前に控えて大変お忙しいことと拝察をいたしますが、本当にありがとうございます。  早々に住専処理スキームに対する理解と御協力を表明され、また関連法案中の保険料率の改定に臨みましては、預金者には転嫁しないという旨を表明されまして、敬服をいたすところであります。  しかしながら、預金者はもちろんでございますけれども、資金の貸付金利におきましても、これは同様に一つの商品でありますから、最近特に公定歩合あるいはプライムレートとのさや、あるいは公定歩合と一般の貸出金利とのさやも随分手厚くなっておるように思いますので、その辺のことも預金者に対する表明と同時に、ひとつここでまずもって、同じような扱いでもってできるだけ合理化をし、資金の貸し付けに臨むという御表明をまずお願い申し上げたいというふうに思うんです。
  98. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 金融界といたしましては、やはり極力経営の合理化に努力いたしまして、預金者並びに融資先に対して最良の金融サービスが提供できるように、特に今日のように厳しい時代においてはそういう必要性が非常に高いと、このように自覚いたしておりますので、さくら銀行におきましても毎年毎年の経営計画の中に合理化計画というのを立てておりまして、店舗の合理化であるとか組織の簡素化だとか、あるいは人員の縮小だとかいったようなことを鋭意進めておる最中でございまして、先生のおっしゃるとおり、お客様にその成果をできるだけ享受していただくように努力をしてまいりたいと、このように思っております。
  99. 平田耕一

    ○平田耕一君 よろしくお願いを申し上げます。この処理スキームに基づいて、可及的速やかに不良債権処理、そしてまたその不良債権を生んだ構造の解明に着手しなければならないというふうに考えるわけであります。同時に、これからいかに時間がかかろうとも、その関係機関とかあるいは関係者の法的、道義的責任につきましては、国民の目で見まして最終的に納得のいくように、すんなりおさまるように今後も努力しなければならないし、また時間をかけて最終的におさまった、皆の目で見ておさまった責任に基づいた最終負担というものに変貌していくのもこれは当然であろうかと思って、そのために微力でありますが努力したいと思い、御質問を申し上げる次第であります。  まずもって、これも何度もお答えをいただいておりますが、住専の設立経緯について若干お尋ねをいたします。  昭和五十一年の銀行局の金融年報に「主要業界の住宅金融会社が出そろうかたちとなる。」というふうな表現をなされております。JCBグループ、UCグループ、信託業界、その他金融主要業界が、それぞれ業務に関する相互補完を目的として共同会社方式をもって設立した、このようにその表現を認識させていただいてもよろしいでしょうか。橋本会長にお尋ねをいたします。
  100. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 住専会社は、昭和四十年代の後半から五十年代の前半にかけまして、当時、住宅資金需要が非常に旺盛でございましたので、そういうものにこたえていくべく、金融機関等の共同出資によりまして、個人に対する住宅ローンの提供を主たる目的に設立されたものでございまして、母体以外からの資金調達による住宅資金の安定供給、それから二十年から二十五年の超長期のローンの提供、あるいは物的担保に着目した新規の顧客の利用促進、こういうものをねらいに、四十六年六月の日本住宅金融の設立を最初といたしまして、合計八社設立されたものでございます。
  101. 平田耕一

    ○平田耕一君 そこで、共同出資という形で設立された住専でありますが、その設立された当時、例えば四十七年の三月末で個人住宅金融という業界で見ますと、いわゆる公的サイドで三〇・六%のシェア、そして御社を初め民間サイドで六九・四%、そのうち発足当初の住専は〇・七%でございました。  したがいまして、個人住宅ローンの全国シェアの七割を占める民間サイドが、昭和五十一年の日本ハウジングローン、五十四年の系統による協同住宅ローンの設立をもって母体とその共同子会社による八つのグループに集約された、このように理解をいたしますが、その理解でよろしいでしょうかということと、また、その後、民間サイドとしてその住宅ローンのシェアというものはどんな形で推移したのか、橋本会長に簡単にひとつお答えをいただければありがたいと思います。
  102. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) この四十七年のシェアがどうであったかというのは、ちょっと手元に資料がないわけでございますが、昭和五十年度で見ますと、住専が全体の個人向けの住宅ローンの中で三・八%のシェアを占めておりましたが、その後だんだんとふえまして、五十五年には住専が七・二%になって、それ以降は今度は逆に住専のシェアがだんだん下がっていく、こういう経過をたどっているように思います。
  103. 平田耕一

    ○平田耕一君 ありがとうございます。  そこで、これもまた続きまして橋本会長と寺村参考人にお尋ねをいたしたいと思うわけでございますが、住専の設立以来、やはり銀行局の金融年報の中に「住宅金融専門会社」という項が掲載をされ続けておるわけであります。  昭和五十九年度分からその報告の中に、突如として、他業界からの肩がわり攻勢等厳しい環境による伸び悩みという表現が出てまいります。そして、翌六十年も同じ表現でございまして、六十一年度分の報告では、他業界からの肩がわり攻勢が、他業界による借りかえ攻勢が厳しいという表現に変わっておりまして、さらに、一先当たりの貸付額の大口化傾向を示すという、こういう表現銀行局でなされておるわけでありまして、これは何を意味するのか、御両者からひとつ簡略にお答えをいただきたいと思うのでございます。
  104. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 住専に対しまして私ども金融機関の方から組織的に借りかえ攻勢をかけたというようなことはなかったと、このように認識しております。  営業店の窓口で、お客様の要望によりまして個々に借りかえが行われた、そういう事例はあったと思いますが、住専そのものをターゲットにして組織的な借りかえ攻勢をかけるというようなことはなかったというふうに認識しております。
  105. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 当時の銀行局に在籍しておりませんでしたのでつまびらかにしませんが、多分、銀行からの借りかえが行われたと理解をいたしております。
  106. 平田耕一

    ○平田耕一君 ちょっと時代が古くなりますので申しわけなく思いますが、昭和四十九年の「金融財政事情」という文献に、その当時住専の設立にかかわられた方のレポートが掲載されておりまして、銀行の御勤務でありますが、私は念のためにその方に先日お会いをして内容を確認いたしたわけであります。  これは社名、役職等を掲載しての文でございます。そのところに、  提携金融機関による親密な不動産業者の紹介を受けることは営業推進上重要な手がかりとなる。   要するに、住宅金融会社は各種多数の金融機関の信用力と機能と組織の集合を基盤として存立が可能となるのであり、母体金融機関と相互に資金面、営業推進面、収益面、人事面で利益を分かちあう関係にある。   住宅金融会社と銀行が、住宅ローンについて若干競争する時期があったとしても、その程度のことはどこの業界でもありうることであって、目角を立てることもあるまい。   銀行が住宅金融会社を周辺業務として考えるとき、自己の住宅ローンと提携住宅金融会社による住宅ローンの合算をいかにして極大にするか、住宅購入者や不動産業者へのサービスをいかにして拡充するかに知恵を絞るべきであろう。 というふうに記載をされております。これは大変ポピュラーな業界誌であろうというふうに思っております。  そして、その最後の段に、   わが国の住宅金融会社は生まれ出てまだ二年余であり、はたして将来欧米各国のごとく、民間住宅金融分野において中心的地位を占めるようになるか否か、なお予測しがたいところである、少なくともいえることは、これらの住宅金融会社を生み出した母体金融機関には、その健全な成長と発展を図るため、最善のバックアップをなすべき責任があるといえよう。 これは、その設立当初わずか二年にして、早々に競合状態と、そしてまた母体金融機関支援責任というものを論じたものでありまして、多分これは御高承のとおりだというふうに思っておりますが、四十九年当時のレポートであります。  橋本参考人にお尋ねをしたい、御感想をお聞きしたい点は、今読み上げさせていただきましたレポートは、これは既にして今は昔の物語であるかどうか、御感想をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  107. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 住専の設立の経緯からいたしまして、全国銀行だとかあるいは住宅金融公庫と競合する面があったことは否めないのでありますが、住専は、先ほど申し上げましたとおり、ほかから資金を借りてその資金を個人向けの住宅ローンに貸し出すという仕組みになっておったわけでありますから、だんだんと競争力がほかと比べて相対的に低下をしていったというのが現実ではあろうというふうに思っております。
  108. 平田耕一

    ○平田耕一君 この時点において、大変将来を見通したような論文というものが設立関係者の中から出されておったということには興味を覚える次第であります。  時節は移りまして、銀行金融システムの健全性についてお尋ねをいたそうと思っておりましたところ、折しも、本年の四月二十九日付でやはり「金融財政事情」に、橋本会長みずから、「銀行金融システムの健全性回復に努める」という表題のもとに、編集長加藤雅巳氏のインタビューにお答えをしておられます。  「国際基準を基本金融インフラを整備」というところで、全銀協会長として一年間取り組む重点施策は、一つは、住専不良債権問題の解決を通じて金融システムの健全性を回復すること、二つ目は、グローバルスタンダードを基本にした金融市場の構築に向けて努力をすること、この二点を挙げておられるわけであります。そして、それに取り組むキーワードとして透明性、自己規律、自己責任原則あるいは市場原理にのっとった公正な自由競争、これを挙げておられるわけであります。そしてこの最後のところに、これも御存じでありますが、   いわゆる護送船団方式のときはスポーツにたとえると行政がコーチのようなもので、われわれ選手がやることについて、いちいち「ああやれ、こうやれ」と指示した。あるいは、何かやろうとすると、どうすればいいか相談するなど、銀行のほうも役所頼みに終始し、役所も細かいことまで口を挟むという状況であったが、これからは、自由に選手を活動させて、 というふうにございます。  どうもお感じになってみえるところは、すなわち市場原理にのっとった公正な自由競争を望みつつも、護送船団方式によるその行動とのジレンマをお感じになってみえるかなと拝察を申し上げる次第でございますが、このインタビューにつきまして、その点についてのさらなる御感想をお聞かせいただければありがたいというふうに思います。
  109. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 四月に全銀協の会長に就任をいたしまして、その際に、この一年間全銀協として取り組んでいきたいという柱を二本立てたわけでございます。  今、先生の御指摘ありました、一つ金融システムと銀行経営への信頼の回復を図るということ、それからもう一つはグローバルスタンダードにのっとった金融システムを構築して金融機能の活性化を図っていくというこの二点を申し上げたわけでございます。  最初の金融システムと銀行経営への信頼の回復を図るということにつきましては、住専問題を初めとする不良債権の早期処理、内部管理体制やリスク管理体制の強化、自己資本の充実というようなことを通じまして、金融システム及び金融機関の信頼回復に全力で取り組んでいくことが重要であると、このように思っております。  もう一つの、グローバルスタンダードにのっとった金融システムを構築して金融機能の活性化を図るということにつきましては、特に国際金融市場におきまして金融自由化で先行した欧米諸国の金融行政やあるいは金融機関経営方法というものがデファクトスタンダードになっておりまして、国際的な整合性の追求といった観点からの対応が迫られていると感じたからそういうふうに申し上げたわけでございまして、デファクトスタンダードたり得るための基本的な要件としては、今お話しの透明性あるいは自己責任原則あるいは市場原理にのっとった公正な自由競争ということになると思います。  行政サイドにおかれましても、昨年の十二月に例えば検査のあり方についていろいろなメッセージを出しておられるとか、やはりこの自己責任原則あるいは市場原理にのっとった公正な自由競争を促進するというような方向で、これからだんだんそういう方向に向かって進んでいかれると、このように感じ取っております。
  110. 平田耕一

    ○平田耕一君 ありがとうございます。  私はその護送船団方式を否定するものではありませんけれども金融の中でも、銀行そして政令指定の住専も含めまして国家経済の中枢をなすところでありますから、資金とか金利の動向につきましては強固な行政指導のもとに確実にリードされるのは当然であろうと思います。しかし、片や事業会社たる株式会社としてその市場原理にのっとった公正な競争社会を目指して、日本の産業界は言うに及ばず世界の産業界に範を垂れるべき立場であろうかとも思う次第でございます。  そこで、紹介融資についてお尋ねをいたしたいと思うんですが、紹介融資につきましてはもう何度も議論されましたが、会長の率いられる全銀協会員を初めとして全国で二百を超える金融機関が、住専からの申告によりますと、債権ベースで約一・五兆、債務ベースで約二・八兆という大変大きなボリュームの紹介融資が行われたわけであります。これは一般の事業会社の言葉に置きかえますと紹介営業ということでございます。これは一般の概念で申し上げますと、競争するべき会社に対してこれほどの業界慣行としての紹介営業はやってはならないことでありまして、ましてや自社の与信限度が設定できない会社を他社に紹介するというのは大変道義的にいかがなものかと思うわけであります。  国民の目で見て、数ある事業者の目で見て、住専問題に対する一つの見方として、この紹介融資というものがいろんな意味を持って思われておるということもお考えをいただきたい。  独占禁止法違反、行政指導に基づいたいろんな国家施策、片や事業会社として営業しなければならない、その独占禁止法に対して二百を超える金融機関が一律に競争することなく紹介営業し合っていたと、この事実につきまして、これは正当性というものを御評価されてみえるのか、将来もこの慣行を継続されるかどうかにつきまして橋本会長にまずお聞きをいたしたいと思うし、それから寺村参考人お見えでございますので、銀行局の行政指導と、その業界がそういった競争を阻害しやすいという状況につきまして御見解なり、あるいは御在任の当時、御懸念されましたことがございましたらお尋ねをいたしたいと思います。
  111. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 住専会社につきましては、営業拠点が極めて少のうございまして、設立間もない時期から、その営業活動を補完するために、母体のみならず広く取引金融機関に案件の紹介を依頼してきたというふうに聞いております。ただ、母体が紹介した案件も、自社開拓案件と同様に、住専サイドにおきましては、社内規則にのっとってみずから貸し出しの可否を審査いたしまして、可と判断した案件のみを実行したものというふうに聞いております。
  112. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 護送船団行政についてのお尋ねだと理解をさせていただきますが……
  113. 平田耕一

    ○平田耕一君 行政指導ガイドラインというのが公取から出ておりまして、例えば護送船団方式に例えられるような行政指導につきまして、そういう独占禁止法上の懸念というものにつきまして、御了解でなければ結構でございますが、あればお述べいただきたいと思います。
  114. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 一般的な行政指導の問題について申し上げますと、今、金融自由化、規制緩和を進めておりますので、そういう方向に沿って行政指導のあり方が大きく変わっていかなければいけない時期にあろうかと思います。  まさにそういう点で、いろいろな分野で、先ほどもお話ございましたけれども、例えば店舗の認可とか、そういった各種の規制がどんどん緩和されている段階でございます。それに応じた行政指導の変化が今急速に行われている時期だというふうに理解をいたしております。
  115. 平田耕一

    ○平田耕一君 なかなかこの問題難しゅうございますけれども、しかし普通の目で見て、紹介融資を今後とも継続されるような行き方というのは、明確におっしゃいませんでしたけれども、なかなか難しかろうと思うし、否定すべき言葉ではないかなというふうに思っております。  いずれにいたしましても、一方で莫大な不良債権を抱えつつ、その一方でこれまた莫大な業務純益が計上をされる。もちろん、業界各社は努力もされておられるとは思いますけれども、その大変大きな構造的なものに対しまして、国民は不安と疑問を持ち始めている現状であります。  今こそ、おっしゃいましたように、いろんな行政あるいは銀行業界のあり方につきましても歴史的な転換点でございます。ましてや会長御自身の手腕も問われ、また国民的期待も集めておられるところでありますから、申し上げるべくもございませんが、経済社会の原点にのっとって、未来を見据えて、住専処理スキームそのものへの御協力と、そしてさらなる御負担というものを、再三表明いただいているわけでありますけれども、全銀協会長も二月十五日に工夫の努力は今後もやっていくとおっしゃっておられるわけであります。もう何カ月かたっているわけでありますけれども、妙案があれば妙案があればということもわかりますけれども、何とか妙案は必ず見出すというようなことでも結構でございますから、どうぞ御決意のほどを切望申し上げる次第でございます。  橋本会長、よろしくどうぞ御意見をお願い申し上げます。
  116. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 冒頭の意見陳述で申し上げましたように、母体行といたしましては、政府の処理スキームにのっとって住専向け債権の放棄を行うことに加えまして、金融安定化拠出基金への資金拠出や住専処理機構への低利融資などの最大限の対応をしてまいる所存であります。  しかしながら、これまでの国会での御審議の経過での御議論、さらには連立与党の声明をも受けまして、公共性の高い金融機関として何か金融システムの安定に貢献できる新たな寄与につきましていい案がないかさらに模索をしておりまして、基金案というものも含めて検討しているところでございます。  金融界といってもいろいろな立場の業界もございまして、乗り越えるべき課題も多く、かつ私企業としての限界もありますが、各方面とも相談をしながら私なりに努力をしていきたいと、このように思っております。
  117. 平田耕一

    ○平田耕一君 ありがとうございます。ぜひお願いを申し上げたいわけであります。  実際、倒産状況の会社というのは、その中を精査に入りまして、半年、一年をかけて本当の最終負担が、それぞれの責任者のもとに額が決まっていくという、これが実情であります。したがいまして、処理スキームにおける六千八百五十億というのは、私自身の考えでありますが、責任与党として、まず当面、最悪こういう形で処理に着手しなければならないと、こういう数字でございます。  したがいまして、貴業界に対しましての国民のいろんな見方というものは、会長みずからおっしゃってみえましたように大変厳しくなっているとお感じでございますが、私自身もなかなか難しい局面に来ておろうかと思います。どうぞこの六千八百五十億にとらわれることなく、今本当に再び銀行に対する信頼を取り戻して、また健全な歩みを続けよう、いい経済をつくろうということのためには、一兆、二兆を惜しますに、業務純益を見ましてどんとひとつ突っ込んでいきますように、どうぞその御決意を、さらなる御決意を、決して六千億にこだわらないでください、多ければ国民は納得しますから。もう一度ひとつ御決意を御表明いただきたいと思いますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  118. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 先ほど基金案ということを申し上げましたが、さっきもお答えしたように、現在、この中身につきましては一つの案になり得るかもしれないという、そういういわば構想の入り口の段階でございまして、その輪郭自身もはっきり見えておりませんで、金額も含めまして内容をまだ御説明申し上げるような段階には至っておりません。  今後、一つの案として成り立ち得るかどうかという点も含めまして、さまざまな角度から当局初め各方面の方々と意見交換を重ねまして、その結果、案として輪郭ができ上がってくればと、このように思っております。
  119. 平田耕一

    ○平田耕一君 なかなか時期的にも難しい時点でございまして、御苦労のほどはよくわかるわけでありますけれども、どうぞひとつここに至りました状況をよくお踏まえいただきまして、そしてたびたびお越しをいただいたことにつきましても、橋本会長に皆が期待をしておることの、この時期に集まってまいった本当の最終局面であるなという気がいたすわけであります。  どうぞ鋭意御検討いただきまして、国民の納得のいくお答えを御期待申し上げまして、寺村参考人田中参考人には大変御無礼をいたしましたし、また橋本参考人に対しましてはたくさんのことを申し上げましたが、お断り申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  120. 荒木清寛

    荒木清寛君 平成会の荒木清寛であります。  きょうはお三方には大変ありがとうございます。  まず、私は寺村参考人にお尋ねをいたします。  住専処理にかかわった官僚のだれ一人として責任をとっておりません。そればかりか、今度の健全性確保法案によりますと、大蔵省の権限はより拡大をされている。こんなことでは血税投入を迫られている国民には到底納得がいかないわけであります。  そこで、まずお尋ねしますが、昨年十二月付であなたは全国銀行協会連合会の顧問を辞任されましたけれども、これは住専処理にかかわったという、そういう責任を感じての辞任でございますか。
  121. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) いろいろ考えるところがございまして、協会の顧問を辞任いたしました。
  122. 荒木清寛

    荒木清寛君 私は、住専不良債権損失処理のために血税を使う、反対であります。  しかし、先ほど参考人は、平成五年、つまり三年前の時点でまず一括処理をしておったとしても、仮にその時点で税金投入しておったとしても今の六千八百五十億円と同じぐらい要ったであろう、そういう趣旨の話をされました。そんなに変わらないということですか。
  123. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 住専全体の損失額がそれほど変わらないだろうと申し上げましたので、その損失をどのように処理をするかというのはまた別の問題ではないかと思います。
  124. 荒木清寛

    荒木清寛君 そうしますと、仮にその時点で今の政府の提案しているようなスキームで処理した場合には、もし税金を使ったとしてももっと少なくて済んだ、これはもうはっきりしているわけですね。
  125. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) それはわからないと思います。
  126. 荒木清寛

    荒木清寛君 平成五年の二月三日に、あなたは農林水産省の経済局長との間で覚書を交わされました。これは日住金の再建についての覚書であります。もちろん、先ほどおっしゃいましたように、この覚書は法律的な意味で母体行が農協系の金融機関に元本保証する、そういう効力を持った書面ではありません。これは当然でございます。  しかし、大蔵大臣も今回の委員会の答弁におきましても、この覚書につきまして、言外には、系統側からいたしますと当然元本が保証されるという期待感があったものと思いますと、これははっきりおっしゃっているわけです。あなたも、そういう農協系統の金融機関に期待感を抱かせる覚書であった、それを結んだということはもちろんお認めになるわけですね。
  127. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) それは違うのでございます。というのは、あのとき住専再建計画がなかなか進捗しなかったというのは、まさにこの点が争点になっていたからでございます。  つまり、母体行が元本保証を認めるというのは農林系金融機関の主張でございますが、母体行はそれは絶対に無理だということで、実はこの再建計画が難航しているという事態でございました。これがそのまま放置されておりますと、住専の資金繰りがっかなくなって住専経営破綻が生ずるのはもう明らかでございます。  そのような事態は何とかして避けたい。避けたいということで、農林省ともいろいろ相談をいたしまして関係金融機関を説得し、その説得をするときに、両省がそれぞれ関係機関を説得するときの意思統一を図ったものがこの覚書でございまして、それによって対応したわけでございますが、およそそのようなときに、一方の当事者であります母体行が元本保証は絶対に認められないと言っているときでございますので、そのような元本保証を認めるとしたら、それはそもそもこの再建計画が成立をしなかったということになりますので、そのようなことはないということでございます。
  128. 荒木清寛

    荒木清寛君 久保大蔵大臣自体も、先ほど申しましたように、言外には、系統側からいたしますと当然元本が保証されるという期待感があったと思いますと。この覚書を見た系統の金融機関がそういう期待を持った、そのこと自体もあなたは認めないんですか。
  129. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 系統は常に元本保証を主張しておりました。したがいまして、その前の段階から元本保証を主張しておりますし、それからどのような段階におきましても、実は覚書が締結された後におきましてもやはり元本保証を認めろと、こう言っているわけでございまして、この覚書が元本保証を認めたということではないからそのような主張が行われたのだというふうに理解をいたしております。
  130. 荒木清寛

    荒木清寛君 あなたは衆議院の参考人質疑のときに、この覚書がなければ系統は住専から貸付金の回収という動きになったであろうということをおっしゃっていますね。ということは、要するに系統としてはこの覚書の存在を知って、ああ元本が安心になった、そう思ったからそういう動きにならなかったということになるじゃないですか。
  131. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 先ほど冒頭に申し上げましたけれども、元本の回収があのとき農林糸金融機関は果たしてできたであろうかということを申し上げました。それは、全貸し出しの半分、住専に対する相当の部分の融資ウエートを持っております農林系金融機関がもし回収を図ったとしても、既にその貸し出されている資金は不良債権として焦げついているわけでございますので、その時点で回収を図った途端に実は住専は資金繰りで経営破綻をするという事態になっておりまして、それで資金の回収が図れるという事態考えられないわけでございますので、覚書があったから資金の回収が、融資の回収がとめられたということはそもそもあり得ないことであるということでございます。
  132. 荒木清寛

    荒木清寛君 それは、系統が実際に回収の動きに出て弁済が受けられたかどうかはわかりません。しかし実際、この時点では、この覚書がつくられたために回収の動きにさえ系統は出なかったというのが真実でしょう。
  133. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) よくお考えいただきたいのでございますが、要するに貸し出している資金はもう焦げついてしまっているわけでございます。  ごく一部の、本当に一部の貸し出しの人が返してくれと言うんなら、それは全体の資金繰りの中で回収は可能かもしれません。例えば、外国銀行の一部が回収できたという、それはわかるのでございますが、とにかく全体のかなりのウエートを占めている、そしてほとんどの資金が御承知のとおり焦げついているような状況で資金を回収しようといっても、どこからその資金が出てくるか。それはどこかから借りて返すなら可能でございますが、じゃそこにだれが貸してくれるのか。そのような事態のときにはもうだれも貸してくれないわけでございますので、そもそも資金繰りがっかなくなる。  だから、実は当時、住専が株価が暴落する原因ではないかとか、あるいは銀行の資金ショートが発生するんだとかいうことが新聞、雑誌で盛んに書かれておりましたのは、そういう事態であったからそういう心配がなされていたということでもあるわけでございます。
  134. 荒木清寛

    荒木清寛君 私は、系統が回収に及ばなかったのは、債権が焦げついているからではなくて、この覚書によって安心したからだというふうに思います。現に、衆議院の委員会の質疑におきましても農水大臣がそういうふうにおっしゃっているわけです。
  135. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 事実関係と、それからどういう意図でどういう行動が行われたというのは別の問題でございまして、まず私が申し上げましたのは、あの時点で農林系金融機関が資金の回収を図ろうとしてもそれは不可能であったという、これは事実の問題でございます。このことについては、農林系金融機関の幹部の方は当然のこととして御承知のことだと思います。  次に、ただしあのときに、ではそういった事態でどうやってこの事態を回復するか。ほっておくと実は住専経営破綻をいたします。経営破綻をいたしますと、農林糸金融機関のみならず多くの金融機関がやはり資金ショートが起きるという心配がございましたので、その事態を何とか回避しなければならない、そのためには第二次再建計画をつくらなければいけない、そういう対応をしたわけでございます。  そして、いろいろな紆余曲折がございましたけれども、大幅な金利減免を行うことによって第二次再建計画ができ上がったわけでございます。その時点で、それに参加した金融機関の方々は、当然それによって資金繰りがっくという前提がついたからそのような対応をされたということでございます。
  136. 荒木清寛

    荒木清寛君 この覚書の作成についての責任はお認めになりませんので、次に第二次再建計画の策定についてお尋ねをいたします。  この覚書の結果としまして、住専七社について相次いで母体行による第二次再建計画がつくられました。この計画は大蔵省の強力な行政指導のもとに策定されたということはお認めになりますね。
  137. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 先ほど冒頭に申し上げましたけれども平成四年八月十八日に「金融行政の当面の運営方針」を公表いたしました。  その中であえて一項目を設けまして、住専につきましては、その処理がおくれることが我が国の金融システムに対する国民の不安感を醸成することになりますので、関係当事者に問題解決のためのさらなる努力を要請するというふうに書いてございますが、これはあくまでも住専の問題は関係当事者、具体的には関係金融機関が決められるべき問題でございます。行政当局が具体的に関与すべき問題では本来ございません。あくまでも住専というのは金融機関、いわゆる銀行ではございません。ですから、それに関連する方々で決められるお話でございます。  ただ、先ほど来申し上げておりますけれども、なかなか関係者の対立がございまして、再建計画の策定ができないような状態になっております。そうして、そのままに推移をいたしますと住専経営破綻します。住専経営破綻しますと、それに関連しまして農林系金融機関経営破綻する、のみならずその他の金融機関経営破綻するというおそれがございます。  そうなりますと、国民経済に大変なダメージを与えるということになりますので、そのような事態は何とか避けたいということで関係金融機関に対しまして再建計画の合意形成のための努力を要請したと、そしてその要請を繰り返したということでございます。
  138. 荒木清寛

    荒木清寛君 なるべく簡潔に意見陳述をお願いできますでしょうか。  それで、再建計画の皮切りとなりましたのが平成五年二月二十六日の日住金における再建計画であります。この平成五年二月二十六日におきます、日住金本社における母体行会議の模様というのはかなり詳しく証言に基づいて報道されてもいるわけでございます。  報道によりますと、あるいは証言によりますと、出席者からの昼食のための外出の要求も認められず、十二時間軟禁状態で会議が続いたということでございますが、そういう状況でございましたでしょうか。
  139. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) これは日住金のすべての関係金融機関じゃなくて、母体行だけの会議の状況でございますが、そのように聞いております。
  140. 荒木清寛

    荒木清寛君 これは、要するに三和銀行以外の母体行八行がこの再建計画に非常に難色を示してなかなか同意をしなかったという状況であったわけですね。
  141. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) そのように理解をいたしております。
  142. 荒木清寛

    荒木清寛君 そして、言われておりますのは、その会議の会場には携帯電話数台が入っておって、その会議の内容は全部大蔵省の方に連絡をされておったということでございますでしょうか。
  143. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 具体的にそこまでどうだということは承知をいたしておりません。
  144. 荒木清寛

    荒木清寛君 いや、当時参考人銀行局長であられたわけでございまして、また報道によりますと、その連絡を受けまして審議官が、反対をしている母体行のトップあるいは現場におった担当者にどんどん電話をして説得を繰り返したということも言われていますけれども、そういうことはもう当然御存じですね。
  145. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 時々刻々どのようにということは承知をしてございませんが、そのような連絡を受けたということは承知をいたしております。
  146. 荒木清寛

    荒木清寛君 それで、連絡を受けまして、反対をしている母体行に銀行局の方で説得のために電話をしたということももちろんあったわけですね。
  147. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) あるいはそのようなことがあったかもしれませんが、それについて少し御説明をさせていただきます。  実は、住専問題が非常に難しいというのは、母体行と農林系金融機関の対立だけではございません。それは母体行と母体行以外の一般金融機関、これ自体も対立をいたしまして、それから母体行自体が対立をいたしております。というのは、住専の母体行というのは極めて多数でございますから、経営に関する関与の度合いがまちまちでございます。そうしますと、この関与の度合いが高いところほど責任を負うべきだという議論が母体行の中でも出てまいります。  ところが、母体行以外の一般金融機関から申しますと、それは母体行の中での話であり、大変例えば悪いんですが、目くそ鼻くその問題ではないかと。いやしくも母体行以外のところに負担の分担を求めるなら、母体行は同じ比率でやるべきじゃないかと、こういうような議論が一方で出てまいります。あるいは農林系統金融機関についても出てまいります。それが百数十行あるいは二百行というところでそれぞれの意見の対立がございます。そういった問題が常にこの住専の問題には絡んでまいりまして、相互の利害が対立しているからこそなかなか話し合いが進まなかったというのがこの問題の一番の背景にあるということでございます。
  148. 荒木清寛

    荒木清寛君 いずれにしましても、この日住金における再建計画は、二月二十六日の大蔵省の強力な説得活動が功を奏して、反対をしている母体行も同意をしてできたという事実関係はやはりそのとおりでございましょうか。
  149. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) それは、そうであるかどうかは定かでございません。というのは、私ども最後までこの話し合いがまとまるのかどうかわからない、非常な不安感を持って見ておりましたので。また、事実、それまでも常に期待をしていましたが、その期待どおりに事態が展開しなかったことも何回もございますので、果たしてそのようにそれぞれの関係者の方々が理解をされるかどうかというのは私どもはなかなかわからなかったという状況でございます。
  150. 荒木清寛

    荒木清寛君 そのようにしてできました日住金の再建計画というのは、十年間できちんと実現ができると、そういう認識をされたわけですか。
  151. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 先ほども申し上げましたけれども、私どもは具体的な内容についてどうこうするということではなくて、あくまでも合意をしていただきたいということをお願いしているのであって、具体的な再建計画は、どの部分をどうこうしろと、これはあくまでも金融機関がお決めになることでございます。  私どもがお願いしておりましたのは、とにかく合意をしていただきたいということを再三再四にわたってお願いしてきたということでございます。
  152. 荒木清寛

    荒木清寛君 いや、そうではなくて、この日住金におきましても、この再建案の内容をつくること自体、大蔵省が相当関与しておったんじゃないんですか。  この母体行会議のかなり前の平成五年一月二十九日、あなたは三和銀行の頭取とお会いになって、この再建計画内容について詰められたのではありませんか。
  153. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 二百行や百何十行という中で、何とか合意形成をお願いしようということで、農水省と関係金融機関に当たりまして合意形成の要請をしております。  そこで、それぞれのいろいろな方々がどういう感じをお持ちになっているのか、合意できる接点というのはどこであるかということを、当然そのようなときに私どもは探るということでございますが、私どもは、あらかじめこういう線でまとめてくれということではなくて、とにかく合意ができること、第二次再建計画ができ上がることが必要なので一それぞれの当事者の方々が最低どういうところならまとまるのかということを模索したということは事実でございます。
  154. 荒木清寛

    荒木清寛君 私は、この住専破綻につきまして母体行の責任は極めて大だと思います。しかし、それはそれとしましても、この見込みの薄い再建計画を行政主導で策定して、結果的に問題の先送りをした。その行政の責任もまた私は極めて大だと思いますけれども、そういう認識はございませんか。
  155. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) この問題は、先ほども申し上げましたけれども、当時、ほとんど合意ができないというような見通しが立っておりました。そういたしますと、恐らく住専経営破綻をしたであろうということでございます。  当面、何とかこれを合意していただくことが大切でございますが、一時的な対策でございますと、またこれは信用不安のもとになります。当時、関係者の方々が、これなら少なくとも一時的なびほう策でないというふうにお考えいただけるような案でなければ信用不安のもとになるわけで、そのこと自体、また待つということ自体が信用不安のもとになるわけでございますので、少なくともそのような案にならないようにお願いをしてまいりました。  当時の状況では、私どもとしてはそのような案で対応できるというふうに考えましたし、また当事者の方々も、いろいろ御批判はあろうかと思いますが、当時の状況でよくここまでの対策でまとまったというように、関係者の方々は当時言っておられたということもまた事実でございます。
  156. 荒木清寛

    荒木清寛君 それでは、民事介入暴力対策で非常に御活躍の田中参考人にお尋ねをいたします。  先ほど、裏社会という話を冒頭されました。今回のこの住専につきましても、貸付金の相当の部分が暴力団などの暗黒部分に流れ込んだとも言われております。住専問題で暴力団ないしはその関係者が不当な利益を手にしたとも思われますけれども、その点、御見解はいかがでございましょうか。
  157. 田中清隆

    参考人田中清隆君) 私どもが実際に競売現場へ参りますと、当然のことながら暴力団関係者と思われる人たちと出会うわけでございます。もちろんそうでない人とも出会うこともありますけれども、裏ではどうも関係がありそうだという方々と思われるわけであります。そういうことをいろいろ考えていきますと、そしてまた、個々のケースで私どもがいろいろな脅迫を受けたりあるいは暴行を受けたりというようなことの実例を見ますと、かなりそういった人たちがかかわっておるだろうと。  ただし、私どもは統計的なことがなかなかわかりませんので、競売現場の具体的なそういう肌で感じるもの、あるいは執行官等とのいろんな協議の場の意見、そういったものをもとにして大体考えておるわけでございます。
  158. 荒木清寛

    荒木清寛君 この債権の回収、特に担保がついている債権の回収につきまして、暴力団等による妨害はどの程度ございますでしょうか。また、現行法でこれをきちんと排除できますでしょうか。あるいは、どういう手段で回収をするのがそうした場合に一番有効でございましょうか。
  159. 田中清隆

    参考人田中清隆君) 先ほど申し上げましたようにあくまで体験的なものでございますので、数字的なものはちょっと私どもとしては把握しかねるわけでございます。  排除の方法でございますが、冒頭にも申し上げましたように、民事執行法の改正、これは主として保全処分の対象を広げる、あるいは引き渡し命令の改正というようなところが中心でございますけれども、そういった点が一つ。さらに、競売現場における暴力的な妨害、あるいはうその賃貸借を設定しておるというようなものに対する、詐欺的なものに対する対応、こういった刑事的対応。  民事面では執行法の改正、それから刑事面では競売妨害等に対する厳正な対応、この二つが中心であろうかというふうに考えております。
  160. 荒木清寛

    荒木清寛君 一方で、警察庁の発表によりますと、平成四年から平成八年二月二十九日現在までの間、つまり四年間で金融機関債権回収等に関する暴力団員等の検挙事例は四十五件だという報告を受けております。  私は、率直に言って極めて少ないなと思うんですね。これは民事不介入という原則からすればやむを得ないのか、あるいは警察の対応にも改善点があるのか、あるいは法に不備があるのか、お教え願いたいと思います。
  161. 田中清隆

    参考人田中清隆君) 今四十五件とおっしゃったのはどこの範囲でしょうか。競売現場に関する問題だけでしょうか。
  162. 荒木清寛

    荒木清寛君 債権回収という。
  163. 田中清隆

    参考人田中清隆君) 債権回収全体。競売現場に限らないわけですね。  むしろ、競売現場に限定いたしますともっとはるかに少ないと思います。最近、数件立て続けに出ておりますけれども、私どもも各地で警察あるいは検察と競売現場の取り締まりに関して数年前から協議を申し入れて、いろいろ具体的な事例等について検討してまいりました。しかしながら、ほとんど事例がございませんでした。  この競売関連の刑法の条文というのは、本当にこの一年ぐらい前までは実質上死文に等しい状態であったわけでございます。その原因といたしましては、一つには、この執行競売関係というのは非常に複雑でございまして、警察等もなかなかこれを理解しがたい、加害者の方がその辺については非常に詳しいというような事例もございます。また、いずれにしてもこれは民事の紛争が背景にありますから、警察等としてもどうしても突っ込みにくいというような事情もあったように思います。  しかし私どもは、これは民事絡みというよりは、国家の運営する司法制度の一環である競売制度、これに対する侵害であり挑戦であるという観点からこの問題をとらえるべきであるというふうに強く主張いたしておりまして、最近ではそういう主張が受け入れられて、幾つかの事例についてかなり果敢に対応していただいておるというふうに思っております。
  164. 荒木清寛

    荒木清寛君 私は、住専も含めまして、不良債権の回収にはどんどん競売を利用すべきだというふうに思います。しかし、一部には、非常に時間がかかるし、また売却できても市場価格に比べると非常に低くて回収の実が上がらないという懸念もあるわけですね。この点、現状を踏まえて、不良債権の回収に実効的に使えるのかどうか、お教え願いたいと思います。
  165. 田中清隆

    参考人田中清隆君) 現状の不動産市況を見ますと、非常に厳しいことは事実でございます。しかしながら、現在、裁判所等も、例えばファクシミリサービスとか、それから住宅情報等に対する公告の掲載とか、いろんな形で情報提供に努めておるようでございますので、こういった点をさらにどんどんサービスを進めていただく、これは重要であろうかと思います。  それからまた、不動産業界が競売物件につきましては従来からかなり積極的ではなかった状況でございます。したがって、不動産業界と協力して何とかこういった物件が公正に処理されるように知恵を絞るべきであろうというふうに思います。  それから、聞くところによりますと、物件の多くは市街地の虫食い物件、あるいはリゾート地の中途半端な物件というのが非常に多いというようにも聞いておりますので、こういったものの再開発ということも努力を必要とするかというふうに思っております。
  166. 荒木清寛

    荒木清寛君 ありがとうございました。(拍手)
  167. 益田洋介

    ○益田洋介君 新進党、平成会の益田洋介でございます一  きょうは、三人の参考人の方には御多用中にかかわらずお時間をいただきまして、大変にありがとうございます。  まず、私は最初に寺村参考人にお話を伺いたいと思います。  一九九二年、平成四年九月に、参考人銀行局長に就任されてから三カ月目でございますが、当時の宮澤総理が住専不良債権処理策を検討されている過程に当たり、私はこの段階から政府が住専処理策を検討されていたということを伺ってびっくりしたわけです。それから大変な年月が既に経過して今日に至っているわけでございますが、そのときに宮澤総理が公的資金導入を提唱されたというふうに伺いました。しかし、当時は日経連を初めとする経済界、それから政界、また一般の国民の方からも相当反対の声があった、反応が厳しくあらわれたというふうな状況であったとも伺っております。  このとき公的資金導入を宮澤総理が断念されたというのは、こうした各界の方、特に一般の国民の方からの反対の声が厳しかったから、そうした背景によるものなんでしょうか。
  168. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) そこに至る前に、その一カ月前でございますが、先ほど申し上げました八月十八日、「金融行政の当面の運営方針」というのを公表いたしました。これ自体はやはり宮澤総理に御相談をし、また宮澤総理がいろいろ手直しをされて出たものでございますが、その中では、担保不動産の流動化という問題、今債権買取機構という形で実現をした組織でございますが、その問題に対応しようということがこの方針の中に盛られております。  そして、その具体化をめぐっていろいろ銀行界と議論しているさなかの九月でございますが、宮澤総理が、この担保不動産の流動化あるいは買取機構をつくるに当たってもし必要であるならば、というのは、いろいろな前提条件がございます。金融機関がリストラをするとかあるいはディスクロージャーをする、そういった前提条件が満たされるならば、必要な場合には公的資金の導入もやぶさかでないと、このような御発言を軽井沢でおやりになりました。  私どもは、実は翌日、総理の御真意をお伺いしましたところ、総理は、いろいろな前提条件があるんだと、金融機関のリストラとかあるいはディスクロージャーとか、そういった前提条件が満たされてからの話なんであって、今すぐ大蔵省に公的資金の導入を検討しろという趣旨ではないんだと、そのようなお答えが官邸からございました。というような状況でございます。  それから後は御承知のとおり、特に産業界、それから一般の方々、あるいは政界の方々から非常に強い反発があったということは事実でございます。
  169. 益田洋介

    ○益田洋介君 よくわかりました。当時から公的資金の導入には相当皆さん抵抗をお持ちだったということがわかったわけでございます。  先ほど私は驚いたと申し上げましたが、九二年の段階で政府は既に住専処理をどうしようかということで頭を悩ませていたわけでございますが、その後残念ながら大蔵省経営破綻を先送りし続けてまいりまして、抜本的な処理にはついに至らずに、昨年の十二月の末まで至ったわけでございます。  そして、結局は総計で約一兆四千八百億、これは私の試算でございますが、現在言われております六千八百五十億円の税金の第一次処理への導入に加えまして八千億、これは現在見込まれている二次処理の一兆二千億に、地価が下落し続けておりますためにさらに不良債権が進んで、現段階で既に四千億ほどの不良債権の膨らみが生じている。したがいまして、一兆二千億プラス四千億、この一兆六千億の半分の八千億に今政府はさらなる負担として国民の税金を導入しようと、こういう考えでございますので、現在のところ、私の可能な限りの試算では、国民一人当たり実に一万二千円の負担になるという現状にまで立ち至っているわけでございます。  この一万二千円という負担は、成人とか勤労者だけじゃございませんで、赤ん坊や小学生まで含めた上での一万二千円でございますから、例えば四人家族がいれば四万八千円の負担になる。四万八千円税金を、皆さん余り払いたくないんでしょうけれども、払うために働くということは、一般のサラリーマンの方であれば三カ月も四カ月も汗水垂らして働いたお金をこの住専処理のために現在投入されようとしている、こういう現状でございます。  そして、九二年の五月に三和銀行が調査結果を大蔵省に提出して、その中で、日本住宅金融、日住金の実態は既に倒産企業であるという報告が大蔵省に上がっているわけでございます。参考人局長に就任されたのはその翌月の六月二十六日、このとき土田元銀行局長からどのようなこの件に関する申し送りを受けたものか、伺いたいと思います。
  170. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) この件につきましては直接の申し送りはございませんでしたが、この問題は、その案ができましたときに、第一次再建計画が実は三和銀行によって各母体行の間で調整が行われていたという時期でございまして、結果的には、二つの案がございましたけれども、三和銀行大蔵省に二つの試案を持ち込みましたけれども、ちょうど第一次再建計画がまさに策定されつつあったと、そういった時期でございます。
  171. 益田洋介

    ○益田洋介君 そしてその後も、半年間この三和銀行案というのは大蔵省の内部でたなざらしにされておりまして、そして結局廃案になったと。廃案になった過程においては取り下げをさせられたというふうに私は伺っております。  ある方の話によりますと、三和銀行大蔵省の方から、銀行局の方だと私は推察するわけでございますが、日本住宅金融を絶対につぶしてはならない、金融不安を誘導するので絶対につぶしちゃだめだと。そういうことでこの三和銀行の提案はついに廃案になって日の目を見ることはなかったわけでございます。当時の日住金の不良債権損失見込み額は四千五百億。それが三年たちました昨年の九五年六月の時点で、大蔵省が調査に入りました時点では実に八千億に膨れ上がった、三年間で倍近く損失見込み額が膨らみ上がったわけでございます。  仮にこの九二年の時点で三和銀行の提案どおりに処理をしていれば、母体行の負担額だけできれいに日本住宅金融というのは清算ができていたということを伺っておりますが、この点、参考人はどのようにお考えでしょうか。
  172. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) そのような報道がなされていることは承知でございますが、そのような報道は事実とはちょっと違っているのではないかと思っております。  というのは、詳細に実は三和銀行の案をごらんいただければおわかりになると思いますが、第二次再建計画と実態としては余り変わらないような案になっているわけでございます。  実は、三和銀行がたなざらしと言うんですが、大蔵省は当然いろいろ検討している過程で三和銀行の意見を聞きましたら、三和銀行自体が、これは他の母体行と相談したところとても母体行の中で合意が成立しないから引っ込めますと、そういった案でございました。それだけに、母体行にとってかなりの負担があるという感じで、三和銀行はその案をみずからもう対案ではないんだと言って、実は大蔵省に対しては別の案をお持ちになったわけでございます。その案自体は、また第二次再建計画よりもはるかに金利減免の幅が小さいものでございまして、すぐに対応できないような案でございましたので、大蔵省としてはそのような案ではかえって信用不安を払拭することはできないんじゃないかと、そういった意見は申し上げましたけれども、その案をたなざらしにしたということは全く事実に反するということでございます。
  173. 益田洋介

    ○益田洋介君 この場に本来であれば三和銀行の当時の責任者の方にもおいでいただければ、もう少し国民の方にどちらの言い分がどうであろうかという判断がゆだねられたんじゃないかと思いますが、お話はわかりました。  さらに、一年たちまして九三年の二月三日に、先ほど同僚の荒木議員がいろんな角度から質問をされていました覚書が、これは五兆五千億円の農林系の元本ロスを生じさせないということを強くにおわせる、少なくともそういうことをうかがわせる覚書が大蔵省と農林水産省との間で交わされたわけでございます。  この中で、日本住宅金融への貸出金利を減免しようということで、母体行は金利はゼロで、一般行は二・五%、さらに農林系は特別な措置で四・五%にとどめるというふうなことが盛り込まれていたわけでございますが、何と、一夜明けた二月四日に日銀は公定歩合を下げた。それまで三・五%だった公定歩合を二・五%に下げた。この効果は大変なことでございまして、事実上、中間金利と言われた一般行の二・五%と公定歩合が不思議なことにわずか一日の違いで一緒になってしまった。一般行は金利の損失から一夜にして免れた。そして、さらに加えて言うならば、農林系は受取利息を一%積み上げることになった。  どうもこの辺のところは、やはり一日早い金利の先取りがあったんじゃないか、そうした操作があったんじゃないかと思われても不思議じゃない状況ではなかったのか。これは農林水産省の圧力に屈した大蔵省が、その配下と言っちゃおかしいですが、監督下にある日銀を強く誘導したというふうな談合があったのではないかという話を私は伺っておりますが、この点いかがでしょうか。
  174. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) これは、実は衆議院でも同じ御質問がございましたので、同じようなお答えになるのでございますが、公定歩合の観測記事というのは大体半月ぐらい前から出ているわけでございます。そして、先ほど申し上げましたように、少なくともこういった合意が成立するまでにはどういう経過がたどられたかというと、当然、私どもも農水省もそれぞれ金融機関のぎりぎりの妥協点、限界点ほどの辺にあるんだろうかということを常に模索しております。  ですから、二月三日に決まるのではないわけでございます。もっと早い段階で、大体こんなところじゃないかというすり合わせを、大体この辺なら大勢の金融機関が納得できるんじゃないかと。しかし、それは全部に接触するわけにはいかないわけでございまして、代表的なところの感触を私どもは探ったわけでございます。それで、この辺のところならおおよそ妥協できるぎりぎりの限界じゃないかと、こういうような作業を毎日相当な期間にわたって続けてきたことでございまして、その過程で、金利の水準についてどういう状況ならそれぞれが納得できるかということは、いろいろな金融機関によっても全部違うわけでございます。  ところが、公定歩合の水準がこの辺になるというのは既に、当時の新聞をごらんいただければいいんですけれども、およそ半月ぐらい前からこの種の観測記事が一斉に出ていたと、そんな状況でこういう作業が行われた。  ですから、少なくともこの辺の水準になるだろうというのを、半月とかそれ以上の期間をかけていろいろな打診なりなんなりで感触を探らなければ一つの線は出てこないと、こんな状況でございました。
  175. 益田洋介

    ○益田洋介君 どうも私どもの印象では、公定歩合の引き下げ、それから引き上げにつきましては日本銀行の専管事項でありまして、いつも伝家の宝刀を抜くがごとく突然、もちろんその準備や検討はされているんでしょうけれども、突然のようにして発表されているという印象を受けておりましたので、二月三日の次の日の二月四日に起こっても、どうもそうした印象から類推しますと不思議ではなかったんではないかなという気持ちがいたします。  いずれにしましても、私は、我が国の行政の金融政策運営には不透明な部分が残るなというふうな印象をこの件から受けたわけでございます。  寺村参考人、ありがとうございました。  次に、橋本参考人にお伺いしたいと思います。  ことしの二月に、住専処理策を担当し、また策定し、村山前総理と相談して最終的な閣議決定をされた当事者であります武村前大蔵大臣が、ある新聞社のインタビューに答えて非常に興味深いことをお話しになっております。  ちょっと引用させていただきます。  六兆四千億円の損失補てんは、母体行、一般行が出資割合に応じ修正プロラタ方式で分担を了解してくれた。修正プロラタ方式という舌が回らなくなるような言葉なんですが、大蔵省の方は、そんなにラテン語に詳しい方は私はいないんじゃないかと思っていましたけれども、どこかの文献で見てきて、プロラタ方式、これは比例配分というような意味だそうです。  そういうことで、修正ということなので、出資割合に純粋に応じた配分ではないけれども経営への関与度ですとか、いろいろなほかの要素を取り入れて分担金を引き受けていただいた。残りが一兆二千億だった。ですから、母体行、一般行は五兆二千億は引き受けてくれるという約束を取りつけた後に、その一兆二千億を農林系に負担してもらうつもりでいた。このとおりにいけば公的資金導入の必要はなかったと。  しかし、農林系議員が、これは多分自民党の農林系議員だと思いますが、五千三百億の負担で関係機関に合意を取りつけた、もう了解しちゃったんだと、これが最終回答だと言われてしまったので、その結果、六千八百五十億が宙に浮いた。その意味で、六千八百五十億は、積算をした数字ではなく政治判断だと、このようにおっしゃっている。だから、この予算は、大蔵省の予算ではなく農林水産省の管轄の予算だと。そのようにして、農業金融安定化資金と名づけた方がわかりやすいし正直であると、このように談話を発表されているんですが、この件について、橋本参考人、どのようにお感じになりますか。
  176. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 今の武村前大蔵大臣のお話が、どこでそういうふうなことをおっしゃったのか私は存じ上げなかったのでありますが、政府の住専処理案策定に当たっては、関係当事者に最大の負担を求めた上で、金融システム全体の安定維持を図るという観点から、それでもなお埋まらない部分を財政資金で投入して埋めると、こういう御判断があったかと思います。  ネーミングがどうかということにつきましては、なかなか簡単には申し上げることができないと思います。
  177. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。  それでは次に移ります。  九六年の三月期の決算が発表されまして、都市銀行の業務純益は八兆円とも言われている史上最高を記録したわけでございます。先ほど来、各委員から話題になっておりました紹介融資についてでございますが、この融資額が最も多かったのは住友銀行、融資残高は二千六百八十八億円、そのうち不良債権は二千四百億円以上、大変な数字になるわけです。そして回収不能率は五四・一%、半分も回収できない。次に多いのは住友信託銀行で、融資残高が千五百七十四億円、回収不能率が六九・三%。橋本参考人銀行、さくら銀行は千二百五十億円融資残高があって、回収不能率は三三%、こういうふうなことが発表になっております。  住友銀行というのは住専の一連の出来事については非常にユニークな立場をとっておりまして、母体行となっていない。唯一なっているのは住宅ローンサービス一行だけで、あとは一般行という立場で融資をしている。しかも紹介融資が一番多い。ですから、今回法案が通るとすれば処理スキームで債権放棄をする場合、その損害額よりも回収不能額がずっと多い。五・四倍にもなっている。だから、母体行ではないけれども、やはり紹介融資を大変な額をしているんだから、こういうことからすれば相当な追加負担を住友銀行と住友信託にはお願いするべきじゃないか。  住専に出資もしてないのに一般行として悪質な借り手ばかり紹介していったわけでございますから、損害賠償請求の対象となるのはもちろんですけれども、この辺について参考人はどのようにお考えでしょうか。
  178. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) ほかの銀行の個別事情についてはよく承知をしておりませんが、当行、さくら銀行につきましては、融資残高の何倍にもなるというような、そういう事実はございません。  それから、紹介融資の金額が多いから追加負担の分担額云々ということにつきましては、それぞれの銀行の分担額それ自身がまだ決まっておりませんので、この場ではちょっと御回答を申し上げられないわけでございます。
  179. 益田洋介

    ○益田洋介君 せっかくきょうは橋本参考人に国会においでいただいたものですから、私は実は一つお願いがございまして、きょうはテレビが入っておりまして、国民の皆様にかわってお願いさせていただきたい。  それは、とにかく国民の九六%の方が住専問題の政府案について理解ができない、八六%から九〇%の国民の方が反対だ、税金投入はするべきでない、理不尽であると、こういう声が高まりはすれども低まることはない。これは橋本内閣の支持率とは全く関係ないんです。  あの支持率が高まったのは、普天間基地が返還されるという大変な外交的な手腕を橋本総理が発揮したというふうに勘違いをされている。あれは要するに普天間基地を沖縄の中のほかの基地に移転させる。ヘリポートと言っていますが、実際はヘリポートじゃなくて、千五百メートルも長さのある滑走路をつくる。それをカムフラージュするためにヘリポートと言っている。だから、移転の候補地になっている嘉手納の人たちは今怒っているわけですよ。  ちっとも外交的な手腕を発揮しているわけじゃないんですけれども、それはおいといて、それで私のお願いというのは、きょうここで、国民の皆さんの前で、七千億の基金ということを素案としてお考えで、全国の百五十行ですか、銀行橋本参考人銀行協会の会長として束ねられて五千億を用意され、そして一千億は農林系の方に、そしてあとの一千億は日銀の特融で賄えば、国民の皆様は六千八百びた一文税金投入しなくて済むわけです。  ですから、どうか国民の皆さんの前でお約束いただきたいんです。何としても国民の税金は一銭たりとも投入しないような、そのような努力をしてくださるように、(「質問になっておらぬ」と呼ぶ者あり)質問というか、もうお願いなんですけれども、ぜひ決意発表をしていただきたいです。私に約束しなくていい、国民の皆さんに、テレビに向かって。テレビ、ちょっとアップでお願いしますね。
  180. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 先ほどから申し上げておりますとおり、五千億とか七千億とかいうような金額は私は申し上げておりませんで、基金案というものは一つの案になり得るかもしれない、そういう考えで基金案を検討している、まだ構想の入り口の段階でございますので、そのつもりでお聞きとめいただけたらと、このように思っております。  今後、一つの案として成り立ち得るかどうかという点も含めまして、さまざまな角度から当局初め各方面の方々と意見交換を重ねまして、その結果、案としての輪郭ができ上がってくればと、このように考えておるところでございます。
  181. 益田洋介

    ○益田洋介君 終わります。ありがとうございました。(拍手)
  182. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 きょうは、三人の参考人の方々は、お忙しいところをおいでいただきまして、ありがとうございました。  まず、橋本参考人にお尋ねをさせていただきます。  私がどうしても理解できないことは、住専は、持ち家促進のため個人住宅融資を行うということで、国民の利益にかなつた形で出発したわけですが、深刻な事態に立ち至るまでさまざまにブレーキをかけるチャンスがあったのではなかったかと思うわけです。  例えば、銀行が小口の住宅ローンに参入をしていったとき、あるいは住専が住宅事業者の融資ヘシフトしていったとき、あるいは総量規制が行われてさまざまな系列金融機関から資金調達がなされ始めたとき、あるいはまた平成五年の二月に覚書が交わされたとき、さまざまなときに事業の拡大に歯どめをかけるなり、あるいは店じまいをするなり、さまざまな手当てができたのではないかと思うわけですが、そこが全く何もされないかのような形で今日に立ち至ってしまったということに対して、なぜこうなったのでしょうか。  いつ再建をやめようと考えたか、いつ行政の介入などがあったのだろうか、あるいは公的資金の導入に対して依頼をされたりしたことがあったのだろうか。それに対する社会的な責任という見地から御意見を伺ってみたいと思います。
  183. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 住専がバブル経済の崩壊に伴います資産価値の極端な上昇と下落という急激な金融経済環境の変化というものを十分に見きわめ切れなかった。それから、住専会社が住宅ローン以外の不動産融資にも業務を拡大していったということにつきましては、もともとそれは住宅ローンの拡充につながる、そういう判断のもとになされたわけでありますが、そういう動きに対しまして、結果として適切な助言を与えられなかったということにつきましてはまことに遺憾と思っております。  しかしながら、住専会社は独立した会社でございまして、母体といえども個々の施策や経営方針に口を挟んでいたわけではございませんで、そういうことがなかなかとり得なかったということも事実でございます。
  184. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 先ほどから、さらなる新しい寄与を求める声がさまざまに発せられております。世論の動き、それから国会審議の声などをお聞きになりまして、ただいまは新しい基金の創設の構想の入り口であって鋭意検討をすると言われましたが、全国銀行協会連合会の会長として今後それを取りまとめていくという御決意でいらっしゃるのかどうか、お尋ねをいたします。
  185. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 全国銀行協会連合会にはさまざまな業態の銀行が百五十行入っておりまして、全体のコンセンサスを得るということにつきましては、それぞれの立場の銀行もございますので非常に困難さが伴うということも御理解を賜りたいと思うのでございますが、私なりにできる限りの努力は、関係各方面と意見交換を重ねながら努力を重ねてまいりたいと、このように思っております。
  186. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 橋本参考人は堅実な銀行マンとして信望も厚いと伺っておりますが、今そうした国民の声とか国会審議の声というのを人間の心としてどのようにお受けとめになったでしょうか、お伺いしたいと思います。
  187. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) さっきも御答弁申し上げましたが、金融機関は非常に公共性が強いという立場と、それから私企業という立場の両面がございまして、非常に公共性の強いことをやっていきながら私企業の限界の中でどうやって行動をしていくかということで、常に悩みながらこの経営をやっているということでございます。  確かに、今回の住専問題につきましては、本来民間ベースで関係当事者が集まって解決すべき問題であるにもかかわらず、政府あるいは国会に大変御迷惑をおかけして申しわけがない、また国民の皆さんにも大変お騒がせしておりますことを申しわけないと、こういう気持ちを持っておりますが、物事の解決に、そういう公共性の立場と私企業としての限界のはざまで我々が非常に苦慮しながら事柄を進めていこうとしておる点も御理解を賜ればと、このように思っております。
  188. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ともかく今回の処理スキームを何とか活力のあるものにして金融システムの危機を乗り越え、国際競争力を喪失しつつある現在の日本金融業界のために、不良債権をできるだけ早く処理するということが必要だろうと思うわけであります。どうか大蔵大臣などとも会われまして、新しい寄与に向かって一層の御努力をいただきたいとお願いをするものであります。  次に、寺村参考人にお聞きをいたしたいと思います。  まず、平成八年二月十五日の衆議院予算委員会質疑を読みますと、平成五年二月の覚書の趣旨がさまざまの立場によって異なります。銀行局長は金利減免を確約したと言われますし、母体行は再建に全力を尽くすという趣旨だと言われておりますし、農水省の経済局長は、母体行側がこれ以上迷惑をかけないという約束をしたからには元本ロスはないと言われておりますし、農林中金は母体行と住専とあわせ再建されれば元本は返ると理解していると。  一枚の覚書がかほどにさまざまな憶測を呼んでいるわけでございますが、この合意の真実の意思、内心の動機といったものをもう一度お述べいただきまして、次に、再建は本当に可能だと思っておられたのか、そして次に、どんな手を大蔵省としては打とうと思われたのか、御説明をしていただきたいと思います。
  189. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 関係金融機関が対立をしておりまして、第二次再建計画の合意がほとんど成立しないような状況になっておりました。そのままになりますと住専経営が必ず破綻する、それが見えておりました。住専経営破綻いたしますと、農林糸金融機関が当然経営破綻になります。のみならず、ほかの金融機関経営破綻する当時の状況でございます。ということが見込まれておりましたので、何とかこの事態を避ける必要がある。  そして、あくまでもこの問題は関係金融機関が合意をしなければできないわけでございます。公的資金を投入するならば政府の主導によって対応ができると思いますが、先ほど御説明しましたように、公的資金を投入しないという考え対応しておりましたので、あくまでも関係金融機関によって再建計画を合意してもらうのが大切であった。ところが、なかなか話が進みませんので、関係金融機関の間の調整役を大蔵省と農水省が果たした。そして、調整役を果たすに当たって双方の、両省の意思を統一してあの覚書を使ったと。  しかし、それはあくまでも農水省と大蔵省の間の一つの紳士協定でございますので、これは当然でございますけれども、母体行とかあるいは農林関係金融機関、そういったものを拘束するものでも全くない。そういったものでございますが、それによって関係金融機関を説得いたしまして、そしてその結果合意が成立した、そして住専経営破綻が回避された、こういうふうなことでございます。
  190. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 しかし、先ほど言われたように、系統金融機関の融資の解消は不良債権化していて困難なわけでありましたし、展望として、どのような再建に向かってこの合意が出発点となると考えておられたんでしょうか。
  191. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) この当時どの程度の住専ロスがあったかということでございますが、第一次立入調査のときには実はほとんど損失はなかったのでございますが、その後、急速に地価が下落をいたしておりまして、相当程度のロスが見込まれるということがわかってまいりました。  当時考えられるロスを十年間にわたって償却しようと。そのためにはどうすればいいかというと、当時調達コストが六%台でございました。それを母体行〇%、一般行二・五%、そして農林系金融機関四・五%という調達コストにいたしますと二%台になる。つまり調達コストが三分の一の水準まで下がります。そういうことによって十年間かけて当時見込まれておりましたロスを償却していくと、そういう再建計画が当時できたわけでございます。  これはその当時としては、当時の関係者としては皆さんそうでございますが、この当時見込まれるロスを償却するとしたらやはりこれしかないと、こういう感じでこの計画はつくられていたというふうに考えております。
  192. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そのほか、宮澤内閣のときに蔵相がかわられて公的資金の導入が議論されたと言われたわけですけれども、しかし国会の政治の場ではさほど大きな議論を呼ばなかったのではないかと思うのです。  政治や行政に携わる者といたしましては、アカウンタビリティーといいますか、起きてきた事象、そしてその施策に対する徹底した説明責任というものがあるのではないか。それを大蔵省の方々が果たさなかったということがやはり今回の禍根を残す発端になったんではないかと考えるわけですが、どうしたらこういう事態を防ぐことができたのだろうか、今から振り返って何か御感想はありましょうか。
  193. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) アカウンタビリティーのお話がございました。実は先ほど来申し上げております四年八月十八日の運営方針というのはまさにそのような考えで、行政当局が何を考え、どんなことをしようかということを国民に説明する必要がある、そしてそれによって御批判をいただいて対応していく必要があるということで、その後の金融行政の具体的な方針を全部そこに書き込んだわけでございます。  それから、その後も随時応じて、それぞれ具体的な施策につきましてあらかじめこういうことを考えて、こういう施策を打ちますということで御説明をしてまいったところでございますが、その辺の御論議が十分尽くされていなかったということは、まことにそこは残念であると考えているところでございます。
  194. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 確かに、十分な議論を双方が徹底して交わさなかったところに大きな原因があったのではなかったかと思います。  次いで、田中参考人にお尋ねをいたします。先ほど田中参考人は、いわゆる競売妨害対策を確立することが非常に重要だと言われました。この点について私も同感であります。  最高裁のまとめで見ますと、平成六年に執行妨害があったと回答した裁判所が四〇%に上るという数字がございます。そしてその手口も、競売の決まったビルに暴力団の家紋が張られたり、あるいは競売の土地に○○組管理地の看板が立ったり、あるいは政治団体の街宣車がさまざまな回収を求める弁護士の事務所を回ったりいたします。  こういった暴力団絡みの事件に対して、民事暴力に立ち向かってこられました田中弁護士が、これから回収にかかわる人たちに対してどういう心構えが大事かというアドバイスがあればお聞きしたいと思います。
  195. 田中清隆

    参考人田中清隆君) 回収にかかわる方と申しますと、例えば今後、住専の職員の方というようなことにあるいはなるかもしれませんし、弁護士になるかもわかりません。あるいはノンバンク銀行等の職員の方になるかもわかりません。  私は、これらの方に申し上げたいことは、まずもって現在までの執行妨害の実情について検討をしていただきたい。それぞれの個々の事例につきまして、現在の執行法をかなり無理しながら、解釈しながら、かなりの部分克服してきております。そこのところをまず御理解をいただきたい、研究をしていただきたい、弁護士とともに勉強していただきたい。そしてまた、今後さらに不十分なところについて執行法を改正していただくとすれば、そこでどこまでできるかも具体的に検討していただきたい、このように考えております。技術的なことはそういうことでございますが、それから精神的な面と申しますか、これにつきましてはぜひとも果敢に競売に立ち向かっていただきたい、このように考えます。  もちろん、実際にこういったことにつきましてはいろいろリスクを伴うわけでございますが、私はいろいろこういった講演等をさせていただくときにいつも申し上げる。タクシーの運転手さんは交通事故の危険がある、工事現場におる人は上から何か落ちてくるかもしれない、民暴に携わる者はそれはある程度そういうリスクは負わなければ仕方がない、そういった気持ちを持ちながら、やっぱり果敢に事件に立ち向かい、かついろいろな技術的なことを検討しながら、そして警察、弁護士等とも連絡をとり合って進めていただきたい、そのように考えております。
  196. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 最後に、証拠が次々と隠滅をされております。早期解決は本当に焦眉の問題であろうと思います。そのときに一番大事なのは取り立てにおける情報開示だというふうにおっしゃいましたが、この点について何かもう少し、例えばどういった情報が必要なのかということなど、お教えいただけますでしょうか。
  197. 田中清隆

    参考人田中清隆君) 私どもが現在の執行現場の状況を見ておりますと、いろんな執行妨害にかかわる人たちの情報を集めた場合に、全国で何万人も出てくるわけではないだろうと。想像ですけれども、入れかわり立ちかわり出たとしても恐らく千名かそこらではなかろうか、これは感覚ですけれども。そうしますと、そういった妨害にかかわった人たちの情報が全部集約されていきますと、これはかなり相手方に対する大きな牽制球になってくるはずでございます。  民事執行法には保全処分というのがございますが、そのために執行妨害目的を立証しなければなりません。その目的の立証のためには、この人はこの現場にも顔を出しました、この現場でも妨害していましたというようなことが非常に貴重な資料になるわけでございます。そういったものを統一的に集約するということは非常に貴重な材料になるとともに、相手方に対する大きな牽制球にもなろうかと、このように考えております。  そうしますと、先ほど申し上げました預金保険機構あるいは住専処理機構、ここに集約されます。そういった競売妨害の実態あるいは競売妨害者に対する情報を何らかの形で、例えば別の事件の場面で使う、あるいは裁判、訴訟の場面で文書提出命令あるいは文書送付嘱託というようないろんな証拠提出の制度がありますが、そういうほかの訴訟でも使えるようにしていただけると非常にありがたいなと考えております。
  198. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ありがとうございました。(拍手)
  199. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 日本共産党の筆坂です。  まず、寺村参考人にお伺いいたします。  昨年の九月に、東海銀行にかかわる株主代表訴訟事件がありまして、名古屋地裁で判決が出ております。その判決の内容というのは、九二、三年当時、  金融当局は、金融システム崩壊の回避策として、系列ノンバンク不良債権を親銀行不良債権として一括査定した上、系列ノンバンクは「母体行責任主義」で支えるという方法を指導していた。「母体行責任主義」とは、系列ノンバンクについては、母体銀行が危機に瀕しない限り全面的に支えるというものであり、母体行であるか否かは、歴史的経緯、社会や金融当局の認識等により判断された。 と、こういう決定が下されております。  要するに、九二、三年当時、金融当局、つまり大蔵省であるとか日銀は、母体行が危機に瀕しない限り系列ノンバンクについては、これは修正とか完全とかあるでしょうけれども、母体行責任主義でやるべきだと、こういう行政指導をしていたという認定を行っておるわけですけれども、当時の行政指導はそういうことだったかどうか、お伺いをしたいと思います。
  200. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 私が銀行局長に就任いたしましたのは平成四年の六月でございます。当時、各ノンバンク銀行系のノンバンクのいろいろな再建計画が非常に問題になっておりまして、それで母体行がそのためにいろいろ金融界から指弾を浴びていて、かつそれによっていろいろ信用が失墜していると、そんな状況が続いていたときにちょうど就任をしたわけでございます。  そのときの私の認識といたしましては、母体行責任あるいは貸し手責任あるいは修正母体責任、いろんな対応の仕方があるけれども、それはその時々の状況に応じまして、それぞれの関係者がやはり相談して決めていく以外にないんじゃないかというような認識をそのとき持ったわけでございます。それ以来いろんな場所におきましても、本日一番最初に申し上げましたように、母体行責任、貸し手責任、これは決め手がない、関係金融機関の話し合いによって決まる問題じゃないかということを実は私、就任以来いろいろな会合でも申し上げてきた、こういう経緯がございます。
  201. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 今、母体もその他の金融機関もかなり並列的な感じでお述べになりましたけれども、現にいわゆる銀行の直系ノンバンクの場合に債権額以上の支援をしたというのが、これが大体通例になっているというのはこれまで国会でも答弁されていますよね。ということは、実態としてはそういうことがあったんじゃないでしょうか。
  202. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) これは先ほども申し上げましたけれども、農林系金融機関日本金融界の慣行は母体行責任処理されているんじゃないかということをずっと言われておりましたし、一般的な慣行としては、いわゆるメーンバンクがいろいろ面倒を見る、こういうようなことが行われてきた、これは事実でございます。  ただ、それは通常のメーンバンクと通常の取引先の関係でございますが、いわゆるバブルのときに急成長しましたノンバンクと母体行の関係、これは通常の取引先といわゆるメーンバンクとはちょっと様相が違ってくる。それからさらに、住専になりますと今度は母体行が極めてたくさんある。先ほども申し上げましたけれども、その母体行が母体行としての自行の信用に影響があるという直系ノンバンク考えていないというような、非常に状況が変化をしておりますので、それでいわゆる母体行責任という意味がいろいろな意味にとられている、そんな状況であったのではないかというふうに考えております。
  203. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 メーンバンクとしての責任があるというケースは当然ありますね。ただし、直系ノンバンクの場合には設立母体ですから、これは当然メーンバンクとして以上の責任があるわけですよね、いわば直接支配しているわけですから。その場合に、いわゆるメーンバンク責任じゃなしに母体行責任で通常やられてきたというのは、これは既にこれまで答弁があったことですね。問題は、住専の場合に今おっしゃったような議論があったようです。  寺村参考人が、銀行局長在職当時の九三年五月十九日、赤坂プリンスホテルで、当時衆議院のたしか議運委員長をされていたと思うんですが、中西啓介衆議院議員の朝食会で御講演をなさったことがございますね。ややまとめて言いますと、こういうお話をされたんじゃないでしょうか。一対一の親が一人で子供が一人の場合には、もしこのノンバンク倒産をした、しかし親が面倒を見ないということになると、親の母体行自身の信用が傷つく。あそこは自分の子供の面倒も見れない、こういうことになる。だから一生懸命面倒を見る。ところが、親が複数になると、多数になると、これはだれも責任果たさなくてもどこの銀行が危ないということにならないわけで、十行が危ないとか、あるいは多い場合には、八十九行ありますから八十九行全部危ない、それは実際上あり得ないわけですから、結局そこで親の責任というのが複数母体の場合にはあいまいになると、こういう御趣旨の発言をされていると思うんですけれども、この点についていかがでしょうか。
  204. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) 事実認識の問題としてそのような状況になっていると考えておりました。
  205. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私は、そこに住専問題を非常にややこしくした、複雑化した一つの大きな原因があると思うんです。本来なら、母体行がたくさんあれば、一人の親で面倒を見るよりもはるかに負担は軽いわけです。しかも、つくったことは間違いないわけですから。つくったことは間違いないんで、だれかがつくったものを面倒見ろという話じゃないわけです。ですから、その点で私、先ほど来寺村参考人がおっしゃっていて大変気になるのは、関係金融機関の合意と、こういうことをおっしゃいました。これはそのとおりだと思うんです、任意の整理ですから。  ただ問題は、しかし関係金融機関が合意していく上でだれか音頭をとる人、あるいはだれか責任をとる人がいないとこれは合意がやりようないですね。そして、第二次再建計画のときにも、確かに今おっしゃったような議論があったようです。しかし、最終的にはやはり母体行が系統金融機関にも呼びかけ、あるいは一般行としての銀行にも呼びかけ、必ず再建します、ですから金利減免措置をとってくださいということで母体行がいわば中心的な役割を果たした。これは間違いないんじゃないでしょうか、第二次再建計画をつくり上げる過程で。全く並列だったわけじゃないんじゃないかと思うんですが。
  206. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) これはケース・バイ・ケースではないかと思うんです。非常に多数でありますときに、あるいは住宅金融専門会社自体が関係金融機関を歩くという場合もありますし、それから多数の母体行で、まさか数十行が一緒に調整するということはありませんので、その中でだれかまとめ役が出てくればその銀行が動くこともありますけれども、出てこないときにはそうはならないというのが現実ではないかと思うんですけれども
  207. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 だから、結局大蔵省さんが乗り出して、そして関係者の合意をまとめるようにという指導をせざるを得なかったという面が当然恐らくあったんだろうと思います。  次に、橋本参考人にお伺いしたいと思いますけれども、きょうもこういう御趣旨をおっしゃいましたが、追加負担をすると今政府の方で決められているスキームが崩れることになってしまうというふうに言われていますけれども、この趣旨はどういうことでしょうか。
  208. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 母体行といたしましては、政府処理スキームに沿いまして住専向けの債権を放棄する、それから会社設立とか出資等で住専会社に関与してきた責任を全うする、加えて金融システム安定のために基金への拠出とか処理機構への低利融資を行っていく考えでありますが、それに加えて新たなる寄与と、こういう御要請でございますので、何かいい案がないかということを模索している段階だと、こういう趣旨のことを申し上げたわけです。
  209. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 そうすると、今お考えになっている新たな寄与は、たしか先ほど来新たな基金ということが出ておりまして、きょうの報道を見ますと預金保険機構の外に新しい基金をつくると。これはどの程度固まっておるものか知りませんけれども、仮にそこへの新たな寄与をやったとしても今のスキームそのものは崩れない、こういうことになるというふうに御理解なさっているわけでしょうか。
  210. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 新たな寄与につきましては、住専処理との関連のみではない形で金融システムの安定化に貢献できる何かいい案がないかということで模索しておりまして、結果として国民負担の軽減が図れるものと、そういう観点から考えておると、こういうことでございます。
  211. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 今おっしゃったように、住専処理とは必ずしも絡ませないで金融システムの安定化と、結果として国民の負担を軽くするというお考えからということなんですが、しかしこの基金というのは、発表されたものを見ますと十五年間運用すると、そして運用益が果たして幾ら出るかわからないと、これはこういうものだと思うんですよ。  そうしますと、何も住専処理と切り離すということじゃなくて、住専処理とまさに結びつけて、そして今新たな負担をするということはどうしてもできない話だということになるんでしょうか。
  212. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 住専処理というのも金融システム全体の中の一環でございますから、住専処理とはもう全く無関係ということではなくて、住専処理のみに関連したということではない、住専処理も含まった金融システム全体の安定化に貢献できる何かがないだろうかと、そういう観点で申し上げておるわけでございます。  基金案の中身につきましては、十五年間というお話もありましたが、先ほど来申し上げておりますとおり、まだ構想の入り口の段階でございまして、その中身につきましてはでき上がっていないと、そういう段階でございますので、何ともそれについては申し上げられないというふうに思っております。
  213. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 政府の方針では、今度の住専処理法案での税金投入というのは臨時異例の措置だ、これ以外のノンバンクに対しては今後税金投入はしない、こう述べておられます。そうしますと、今後もし皆様の関係するノンバンク破綻するときには、これはもう母体行の責任処理していくと、こういうお考えでしょうか。
  214. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) ノンバンク処理については、それぞれ自己責任処理をされていくものと、このように思っております。
  215. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 終わります。(拍手)
  216. 国井正幸

    ○国井正幸君 新緑風会の国井正幸でございます。大変御苦労さまでございます。  まず最初に、橋本参考人にお尋ねをしたいというふうに思いますが、今問題になっているのは住専七社の問題でございます。実は住専は八社あるわけですね。御案内のとおりだというふうに思いますが、住専は八社ございまして、同じ経済環境のもとで運営をされてきて、今大変な国民の関心を得て問題になっているのが皆さん方がおつくりになった、皆さんというか、それは生保の方もおりますから橋本参考人のところだけというふうには申し上げませんが、大半が銀行でございますからあえて申し上げますが、その七社が大変問題になっているわけですね。  もう一社の協同住宅ローン、農林系の住専でございますが、これについては農林中央金庫の支援を得て自力で今再建中なわけですね。しかも、同じ住専でありながら負債の額が明らかにほかの七社よりも少ない、こういう状況にあるわけです。  したがって、私どもから見ますと、この経営責任というのは、同じ経済環境の中にあっても経営の仕方一つによってこうも違うものだということがはっきりしているんではないかというふうに思うんです。特にその中で皆さん方の今問題になっている住専七社については、住専が設立された当初の目的というものを大きく逸脱して、いわゆる事業向け融資に走ってきたというのが今日のこの結果を招いたことではないか、こういうふうに思っているんですが、その七社と協同住宅ローンとの比較において、経営責任という点についてどのようにお考えでしょうか。
  217. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 協同住宅ローンにつきましては、私どもは出資も融資関係もございませんので、どういう内容になっているかということを承知しておりませんので何とも申し上げようがないのでありますが、他の七社につきましては、いろいろな調達構造の違いとか、あるいは上場会社であるか否かというようなことだとか、それぞれの会社をめぐる事情が必ずしも一様ではございませんので、一概には申し上げにくいかと存じます。
  218. 国井正幸

    ○国井正幸君 いや、私も別に出資しているわけでもないですし、それはわかりません。だけれども、これだけの問題になっていて、住専の問題が話題になっていて、協同住宅ローンのことを知らないというのは、それはおかしな話ですよ。新聞を含めて出ているわけですから、これは知ってもらわなくちゃ困りますよ。  そういう意味では、国民の意思として、極めてこの経営責任というのは重い、こういうことが言われているわけですから、皆さんも異口同音に言っているわけですよ。国民負担をなくす、そういうことで橋本会長、ぜひ国民の意思として、これは私も申し上げますので、よろしくお願いをしたいというふうに思います。  それから、時間もありませんので、寺村参考人にお尋ねをしたいというふうに思います。  例の平成五年二月三日の覚書について、これは紳士協定であって他を拘束するものではない、こういうふうなお話がございました。しかし、その後、これはマスコミにも報道されているわけでございますが、念書をそれぞれの母体行から大蔵省でとった。そのときのがゴム印だとかいろんなことも言われていますけれども、いずれにしても念書をとった。金利等についてもいわゆる母体行がゼロ、一般行が二・五、いわゆる農林系が四・五、こういうのもそのとおりになった。それで、先ほどもお話ありましたように、この覚書を使って関係金融機関指導して合意をさせてきた。  その中で一つだけ実施されていないのが、いわゆるこの覚書の中にある、今回の措置を超える負担を農林系にかけないように責任を持って指導していく、この部分だけがまだ履行されないで今日まで来ているわけですね。  紳士協定とはいえども、農水省ともども覚書を結んで関係金融機関指導してきて、指導されれば当然そのことを信じるというふうに思うんですが、そのことが履行できなかった責任というのを当時の銀行局長としてどのようにお考えでしょうか。
  219. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) まさにその点が、今御質問のところが元本保証をしているかしていないかのポイントなんでございます。  元本保証していないというのは、要するに、今回の措置を超える負担をかけないように責任を持って指導しているから元本保証をやったんだというのが農林系金融機関が主張されていることでございます。  しかし、これはそうではないと私どもは申し上げている。なぜならば、「再建計画に沿って母体金融機関責任を持って対応していく。」という中の括弧書きとして書いてあるわけです。単純に言いますと、四・五で決まったらそれ以上ふやすというのはやめてくださいよという言い方でそれを書いたわけでございます。ただ、そのように読まれていないと。  ですけれども、私どもはこれは元本保証でないと申し上げているのはその点でございまして、その点は、農水省、一方の当事者の担当局長もこれは元本保証ではないと国会で答弁をしております。まさにその点でございまして、私どもは元本保証をやっていないというのはまさに今のところでございます。
  220. 国井正幸

    ○国井正幸君 もう時間になっていますから私も長くはできませんが、ただ一言だけ申し上げますと、やっぱり日本語というのは文字に書いてあるわけですから、読んで字のごとして、それは勝手に理解できるというのではなくて、他人に対して少なくとも予断を持って想像できるような文言があるということに対して、これはきちっと責任を持ってもらわなくちゃ困ると、このことを申し上げて、僕の質問を終わります。(拍手)
  221. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 最初に、寺村参考人にお伺いいたしたいと思います。  先ほどの御意見の中で、農協糸と母体行の意見が対立して、しまいには交渉のテーブルにも着かなくなったというお話がございました。大変ショッキングな出来事だと思います。自分たちの領域で起きた問題、しかも早急に解決せねばならない問題もう夜を徹してでも議論をしまして解決の糸口を探り出していく、これがもう経済人としての当たり前のことではないかと、こう思いますけれども、いかなる理由があってその交渉のテーブルにも着かなくなったのか。率直に申し上げまして大変無責任な話ではないかと思うものですから、その間のいきさつをちょっと話していただければと思います。
  222. 寺村信行

    参考人(寺村信行君) まず基本的に、農林系金融機関は、日本金融界の慣行では母体行責任だと。したがいまして、実はそれまで住専以外のノンバンクの再建支援計画がございましたが、農林系金融機関は一切この負担分担を拒絶しておりました。これは農林系金融機関の一貫した主張でございます。一方、住専の母体行は、ここまで来たらやはり農林系金融機関といえども貸し手として何がしかの負担の分担に参加してもらわなければ困る、これも強い主張でございます。双方の主張がぶつかりまして、結局一回も話し合いが行われないというのがずっと続いていたということでございまして、実は最後まで双方の話し合いは行われませんでした。
  223. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 いろんな意見があるのは結構なんで、それをぶつけ合って話を進めていくというのが交渉事でありまするから、最初からテーブルに着かないというのは本当に理解できないことだ、これが本当の経済人のやることであろうかと。そのうちに政府が何とかやってくれるわいと思っていたとすればまさしく無責任も甚だしい、こういう気がいたします。  次に、橋本参考人にお伺いいたしますが、母体行としてなぜ法的措置に踏み切らなかったのか。この点につきましては、実は政府の方から、法的措置に踏み切ると時間がかかるとか、訴訟がいろいろ起きて収拾がつかなくなるとか、農協系に不利になるとか、こういう説明は聞いておりますけれども、母体行側がどうして踏み切らなかったのか。顧問弁護士がたくさんおられますから、彼らの意見を聞けば、皆これは法律家ですから訴訟を勧めるに違いないと思います。  これからは、どうもノンバンク関係では法的措置でいくんだろうと思いますが、なぜこれについてはそういうふうな措置をとらなかったのか、嫌な、変な話ですけれども、またどこからか圧力でもかかったのか、その辺をお聞かせください。
  224. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) どこからか圧力がかかったということではなくて、もともと本来は当事者間の話し合いで決めるべき事柄でありましたが、法的整理を申し立てますと、申し立てをした機に系統金融機関を含めた貸し手すべてに対しまして償却負担が発生することによりまして、系統金融機関などの財務内容考えますと、下手をすると信用不安が惹起されて、ひいては我が国金融システム全体に対する悪影響を及ぼす懸念があったということでございまして、我々としては、今は今回の政府処理案の基本的な枠組みについて関係者間のおおむね合意が得られているわけでありますから、これに沿って早急に処理を進めていくということがベストの選択であると、このように思っております。
  225. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 ノンバンク関係では自己責任でやっていくと先ほどおっしゃいましたので、ノンバンク関係ではもう法的措置しかないと思われますので、どうかその点をお含みおきくださいませ。  それから次は、株主代表訴訟の問題です。  実は母体行は、債権を放棄したことで十分だ、それ以上の負担をすると株主代表訴訟という恐ろしい落とし穴が待っておって、そこにはまり込んだらどういうことになるかわからないということを終始一貫言っておられたわけですが、ここに来て風向きが変わったんでしょうか、どうも追加負担をやってもいいようなことを漏らしておられます。  これは大変な問題なんで、実は株主代表訴訟の問題を理論的に克服したということになりますれば、もう六千八百五十億全額負担するということにもなりますし、いや、まだ克服はしていない、恐ろしい落とし穴ではあるが、そろりそろりと近づいていこうということならば、俗な言葉で言うとみみつちい負担で終わるんだろうと思いますが、そのどちらでございましょうか、考えておるのは。
  226. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) 新たな寄与策につきましても、もちろん合法性を有しているか否か、こういう観点からの検討は必要であると、このように思っております。
  227. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 株主代表訴訟が起こされましたら、もし私が弁護士でしたら、いつもあそこで政府の見解をべらべらと述べ立てておる銀行局長、彼を証人に立てまして政府の見解を法廷で述べてもらえれば、大体まず間違いなく銀行側が勝つと思います。この点ははっきり申し上げておきたいと思います。  以上でございます。終わります。(拍手)
  228. 奥村展三

    ○奥村展三君 参考人の皆さん、大変長時間御苦労さまでございます。新党さきがけの奥村でございます。  橋本参考人にお伺いをいたしたいと思います。  与党三党におきましては、三月の時点で「住専問題に関する新たな措置について」ということで、特に天下り等の見直しについて合意をしているわけでございます。その合意は、「特に大蔵省の指定職職員の金融機関役員への再就職については、自省と自粛の観点に立ち、速やかに国民の理解を得られる対応を求める。」ということに合意したわけでございます。  私が最近の新聞で仄聞いたしましたところによりますと、破綻いたしました太平洋銀行の業務を引き継ぐために、会長であります母行のさくら銀行が一〇〇%出資をいただきまして子会社として設立されたわかしお銀行に対しまして、大蔵省と日銀から代表権のある役員を派遣するよう要請されたということが報道されたわけでございますが、事実かどうかお伺いをいたしたいと思います。
  229. 橋本俊作

    参考人橋本俊作君) わかしお銀行は、さくら銀行が一〇〇%出資をすることになりましたが、当初は太平洋銀行支援のために四行共同で子会社を設立するという考えでございましたが、法的制約がございまして、形の上でさくら銀行が一〇〇%出資会社ということにならざるを得なかったわけであります。  一方で、人の問題につきましては、現太平洋銀行平成元年から四行と大蔵省、日銀で役員を派遣いたしまして支援してきた、そういう経緯にありますところから、従来のこの支援枠組みの中で引き続き人を派遣していただくようにお願いをしたわけでございます。私ども考えといたしましては、いろいろと御批判の多いいわゆる天下りということとは趣を異にした要請であると、このように御理解をいただければと思うのでございます。
  230. 奥村展三

    ○奥村展三君 いろいろ御事情があったかもわかりません。  ただ、私が思うのは、今いろいろと議論している中に新しい金融システムを構築していこうという意見が数多くあります。こうしたときに、やっぱり民間銀行として大蔵省に頼らず、ノーのものはノーだとはっきり言い切れるだけの体制をつくっていただきたい。そういう意味で、私はあえて自己責任原則に基づいてぜひ実行していただきたい、対応していただきたいということを思い、ここにお伺いをいたしたわけでございます。  いろいろと各委員の皆様方からもいろんな開陳がございました。どうぞひとつ、これからの日本金融、国際的な金融基盤におきましてもしっかりとした経営がなされるように期待をいたしまして、私の質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  231. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席賜り貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会