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1996-06-13 第136回国会 参議院 外務委員会アジア・太平洋に関する小委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十三日(木曜日)    午後一時三十二分開会     —————————————    小委員異動  五月十五日     辞任          武田邦太郎君  五月十六日     辞任          照屋 寛徳君     辞任          矢田部 理君  五月二十四日     辞任          寺澤 芳男君  六月三日     辞任          畑   恵君  六月四日     補欠選任        寺澤 芳男君     補欠選任        照屋 寛徳君     補欠選任        武田邦太郎君     補欠選任        矢田部 理君  六月五日     辞任          寺澤 芳男君     辞任          照屋 寛徳君  六月十二日     辞任          大木  浩君  六月十三日     補欠選任        寺澤 芳男君     補欠選任        畑   恵君     補欠選任        照屋 寛徳君     —————————————   出席者は左のとおり。     小委員長        武見 敬三君     小委員                 野沢 太三君                 高野 博師君                 寺澤 芳男君                 畑   恵君                 川橋 幸子君                 照屋 寛徳君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 矢田部 理君     政府委員         防衛庁参事官  小池 寛治君         外務省アジア局         長       加藤 良三君     事務局側         常任委員会専門         員       大島 弘輔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○アジア太平洋に関する件  (朝鮮半島情勢について)     —————————————
  2. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) ただいまから外務委員会アジア太平洋に関する小委員会を開会いたします。  まず、小委員異動について御報告いたします。  委員異動に伴う補欠として、本日、寺澤芳男君、畑恵君及び照屋寛徳君が小委員に選任されました。     —————————————
  3. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) アジア太平洋に関する件を議題といたします。  まず、朝鮮半島情勢について政府から説明を聴取いたします。外務省加藤アジア局長
  4. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 外務省アジア局長加藤でございます。  お手元に「北朝鮮情勢について」という資料を配付させていただきました。これに即しまして、若干敷衍しながら、まず冒頭の御説明を申し上げたいと思います。  「金日成主席死後の動向金正日書記後継に向けた動き」ということでございますが、九四年の七月八日に金日成主席が死去いたしました。  そして、九五年七月から八月にかけましては豪雨による大規模洪水が発生いたしまして、北朝鮮国連機関などに幅広く支援を要請するということがございました。  そして、そこの(3)にございますように、九五年十月十日の労働党創建五十周年記念日に、金正日書記出席のもとに、閲兵式と百万人の大衆行進などが行われました。これは、党の記念日であるにもかかわらず閲兵式が行われるということに示されるなど、軍が前面に出る形で実施されました。金正日書記は、マスゲームや夜会を観覧するということで市民の前に姿をあらわしたわけでございます。  (5)の末段のところにございますように、金正日書記は九六年に入りましても前線部隊の訪問など軍関係活動を主に行っているようでございます。  そして、金正日書記後継準備は約二十年にわたって進められてきたものだと言われております。金正日書記は、いまだ労働党書記主席に就任しておりません。現在、同書記国政全般を指導しているとの見方が一般的でございます。しかし、これらのポストへの就任時期については、いまだ確たることは不明な状況でございます。  金正日につきましては、党と人民の偉大な領導者であるというふうに呼称されており、また敬愛する将軍というふうにも呼ばれておるようであります。金正日金日成の一体化のためのイデオロギー作業が進められているというふうに見られています。敬愛する将軍金正日はすなわち偉大な首領金日成であり、我が首領将軍の姿で永生するというふうにも言われているわけでございます。  金正日の健康問題につきましては、引き続き注目すべきものがあると思いますが、現在のところ、少なくとも内部指導や執務に大きな支障があるとは見られていないというふうに思われます。昨年末、金正日書記に会った外国人の印象では、頭はしっかりしており、健康状態も問題は余りなかった、ただしお酒は一滴も口にしなかったというものがございます。  「最近の動き」というところでございますが、(1)にございますように、北朝鮮は従来から困難な食糧事情が伝えられておりましたが、昨年夏の洪水被害により困難の度が増しているものと見られます。先月、韓国の済州島で開催された朝鮮半島情勢に関する日韓米高級事務レベル協議におきましても、北朝鮮情勢経済食糧中心に一層厳しくなっている、特に食糧不足については今後とも注視していく必要があるとの認識で一致いたしました。  この点についてでございますけれども、北朝鮮は種々の機会に各国に対し食糧支援を求めるようになっております。  情報によりますと、三月の初め、北朝鮮在外公館に対しまして、接受国現金決裁でなくて信用供与の方式で食糧を輸入するための交渉を即座に開始するよう大至急訓令を発した模様であります。アジアのある国の政府に対しても、駐在北朝鮮大使から申し入れがあったことが確認されております。ただし、同国は余裕がなく、否定的な回答を行った由であります。中国は、先月訪中した洪成南副総理との間で二万トンの食糧援助提供交換公文に署名いたしました。  食糧事情についてのエピソードでございますが、昨年末、ある国の在ピョンヤン大使館北朝鮮政府関係者を招待してレセプションを催したところ、来訪したほとんどの人がテーブルの上に並べてある卵、肉、さらにはリンゴなどをその場では食べずに家に持ち帰ったというふうに言われております。家族に食べさせるつもりだったのではないだろうかとこの人は言っていたようであります。  また、昨年末、北京にある某国の大使館員によりますと、その人のピョンヤン駐在の同僚の話では、先月、大使館のある現地職員が同人に食糧を分けてもらいたいと言ってきたと。こうしたことはこれまでには決してなかったことである。北朝鮮でも、外国大使館で勤務する者は一般市民よりも社会的地位が高く比較的裕福であり、またプライドも高いと言われているが、そうした人でも食糧が手に入らないようだと。現地職員は大体やせてきていて、食事を余りとっていないように見える。家庭に暖房がないということから、朝出勤してくると、まず暖房の周りに集まって一時間ぐらいはじっとしているということを申していた経緯があります。  他方、最近、北朝鮮を訪問いたしました日本人によりますと、自分たちが見る限りでは食糧不足の深刻さは実感できなかった、しかし停電が頻繁にあり、エネルギー不足であることは間違いなかったということでございます。  また、本年初めに訪朝した外国人によりますと、若干驚いたのは、北朝鮮一般庶民、例えば運転手や食堂のウエートレスといった人たちに至るまで、最も食糧が必要なタイミングで日本相当食糧援助をしてくれていることを知っている、そして感謝しているということを述べていた一ケースがあったようでございます。  このような状況ではございますけれども、これまたある外交団政府関係者観測でございますが、現在韓国においては前大統領、元大統領に対する訴追公判の手続が進行中でございますけれども、このような動きというものが、北朝鮮において見ると、例えば統一が起こった暁に、今韓国で起こっているようなことが自分たちに起こる運命であるというような感じを与えまして、そのために一時的に北朝鮮の中の結束を固める方向に作用しているという観測を述べた向きがございます。  次に、亡命者の件でございますけれども、韓国への亡命者は、九〇年以降、年間七名から十名でございましたが、九四年、九五年には四十名程度に増加いたしております。もっとも、九四年に増加した背景には、シベリアで働く北朝鮮伐採工亡命韓国が受け入れることにしたという事情もあるように考えられます。本年に入ってからも、在ザンビア大使館書記官、空軍パイロット科学者などが韓国亡命いたしました。中朝国境中国北朝鮮国境を越えて中国に逃げ込む者もふえていると言われますが、その数など正確な実態は不明でございます。  こういうふうに亡命者が増加していることは事実でありますが、現在のところ、これが散発的なものでないという確証もまたないように思います。すなわち、亡命背景には、それぞれ個人的な事情も絡んでいるというものがあるように見られるわけであります。亡命者の増加が体制の動揺を示すものか否かについては、まだ慎重にこれを見きわめていく必要があるだろうと思います。  先月二十三日、ミグ19で韓国亡命いたしました李チョルス大尉が、三十歳の人ですが、記者会見で、一応亡命の動機は、人民が飢えているのに権限を持つ者の不正と横暴が盛んであるなど社会内部不正腐敗のためである、人民は虐待され飢えつつあるのに金正日戦争準備に全力を注いでいる、このような社会ではもう生活できなかったなどと述べておりますが、昇進問題での不満もあったというふうに言われております。また、三十一日に韓国亡命した科学者の場合には、科学者同士のあつれきや研究が正当に評価されない実情に対する不満もあった模様でございます。  九四年には康明道という人が亡命いたしましたが、この人は姜成山総理娘婿と言われました。北朝鮮の放送は、この人は姜総理とは何の関連もない人間であって、莫大な国家の公金を横領した犯罪者で、姿をくらましたため関係機関捜査対象となっていた者であるというふうな位置づけを行っております。  いずれにいたしましても、韓国北朝鮮からの亡命者に対して、従来は越南帰順勇士特別報償法という法律によりまして報償金の支給や住宅の提供など特別待遇を施しておりました。しかし、亡命者がふえてきたことに伴い、九三年十二月から帰順同胞保護法という別の法律を施行いたしました。そして、金銭面での援助を減らし、生活保護対象として扱うというふうに今はなっていると承知いたしております。  次に、お手元資料の2の「北朝鮮軍事情勢」についてでございますが、ここは防衛庁の方からも御説明があろうと思いますので、私からは簡単に。  (1)にございますように、一九六二年以来、全人民武装化、全国土の要塞化、全軍の幹部化、全軍の近代化という四大軍事路線に基づいて軍事力を趨勢として増強してきておりまして、現在も、深刻な経済不振にかかわらず、依然としてGNPの約二〇%から二五%を投入していると見られる実態があることを申し述べます。  また、軍事力陸軍中心構成で、地上戦力の約三分の二を非武装地帯付近前方展開しているということもまだ変わっていないというふうに承知いたしております。核兵器開発の疑念につきましても、末尾のところに記してあるとおりでございます。  最近の動きを若干振り返って言いますと、人民武力部第一副部長による談話で、朝鮮半島休戦状態限界点に到達している、軍事境界線の非武装地帯地位をこれ以上維持することが不可能になったという状況に伴う諸措置が盛り込まれた対応策を講究するのだという発表が三月二十九日に行われました。  四月四日には、軍事境界線と非武装地帯維持管理に関する北朝鮮側の任務を放棄する旨の発表が行われました。そして、四月五日から七日まで三連夜にわたり、一個中隊規模武装兵力共同警備区域内に配置した後に二、三時間で撤収するという示威的な行動が繰り返されました。それから四月十一日、北朝鮮軍兵士軍事境界線南側に侵入後、撤収したというケースもありました。そして、韓国の西海岸において北朝鮮海軍警備艇北方限界線を越境後、撤収したということが四月十九日、五月二十三日に起こっております。  北朝鮮空軍ミグ19パイロット韓国への亡命については、先ほど申し上げましたとおりでございます。五月二十三日のことでございました。  3には、「北朝鮮核兵器開発問題」について若干の記述がございます。  米朝合意経緯でございます。  (2)にございますように、この問題で北朝鮮は九三年にはNPTからの脱退を決定いたしました。その後、国際社会の粘り強い働きかけや米朝協議が断続的に行われ、北朝鮮脱退の発効を中断する旨表明いたしました。しかし、九四年三月にはIAEAとの間で事前に合意していた査察活動の重要な一部を拒否、九四年五月から六月にかけて、IAEAとの間で保管方法について合意に達しないまま実験炉から燃料棒の抜き取りを行ったということで事態が緊迫し、国連安保理において協議が行われるに至ったわけであります。  こうした中で、九四年六月中旬、カーター米大統領北朝鮮金日成主席との会談が実現し、これが契機となって米朝協議再開され、金日成主席の突然の死去による中断はあったものの、九四年十月の米朝合意の成立に至るわけでございます。  その流れとして、KEDOにつきましては九五年三月、これが正式にコンソーシアムとして発足いたしました。これは、北朝鮮における軽水炉プロジェクト資金手当て及び供与と、第一基の軽水炉建設までの間、北朝鮮黒鉛減速炉からのエネルギーにかわる暫定的な代替エネルギー供給などをその目的とするものでございます。  次のページの(2)にございますように、九五年九月以降、軽水炉プロジェクトに関する供給取り決め交渉が行われ、九五年十二月十五日、ニューヨークにおいて正式署名され、即日発効いたしました。現在、実施細目につき定める議定書交渉プロトコール交渉KEDO北朝鮮の間で行われております。この交渉において、これまでのところ、概して北朝鮮は非常に実務的な対応をしてきたというふうに思われます。  「コメ支援洪水支援」でございますけれども、4の(1)にございますように、九五年六月には、赤十字を通じて無償十五万トン、延べ払い輸出による十五万トンの計三十万トンの支援が確認されました。十月、二十万トンを追加的に延べ払い輸出することが確認されました。これらの支援日本からの計五十万トンの輸送は四月に完了いたしております。  北朝鮮に対する経済協力については、日朝国交正常化交渉妥結前提になるという政府方針に変わりはございません。  なお、我が国による支援一つ契機として韓国からの支援が行われるに至ったわけで、またこのような日韓からの支援が行われた延長線上で、北朝鮮洪水被害について国際社会支援を要請するという流れになってきたとも考えられます。このように、日本からの支援は、北朝鮮国際社会に向けて開かれていくことを慫慂するという観点からも、一定の成果があったと言えるのではないかなというふうに考えております。  北朝鮮洪水被害に対しては、まず昨九五年九月、日本は諸機関努力支援のため総額五十万ドルを拠出いたしました。  洪水被害に対する国際社会支援関連して、本年初め、北朝鮮側国連機関に対して追加アピールの発出は不要であるとの意向を表明いたしました。どうも軍の方が横やりを入れたと申しますか、外国の人が来て自分の国の中をのぞき回られるというのは余りいいことではないという感じが軍の側にあったようでございます。しかしその後、改めて国際機関支援を歓迎するという立場を明らかにいたしました。そして、途中を省略いたしますが、本年の六月六日、日本時間七日未明でございますが、国連人道問題局が昨年九月に続く追加支援アピール、四千三百六十万ドル相当のものでございますが、これを発出いたしました。  「日朝国交正常化交渉」については、これまで八回の本会談を実施いたしましたが、九二年十一月の第八回本会談で、北朝鮮側が李恩恵問題に関する実務者協議から一方的に退席し、次回日程も決めずに終了したまま会談が中断されて今日に至っております。  九五年三月、日本の連立三与党代表団ピョンヤンを訪問し、朝鮮労働党との間で日朝会談再開のための合意書合意され、これが発表されました。  我が国といたしましては、交渉再開の段取りについて話し合うため北朝鮮側と接触を行ってきてはおりますが、再開の具体的時期等については決定されておりません。  経済協力については、先ほど申し上げましたとおりで、日朝国交正常化交渉妥結前提になるというのが我が国の一貫した方針でございます。  以上でございます。
  5. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) それでは次に、防衛庁小池参事官
  6. 小池寛治

    政府委員小池寛治君) 防衛庁国際参事官小池でございます。  それでは、お手元資料朝鮮半島軍事情勢」を配付させていただいておりますけれども、それに従って御説明いたします。  朝鮮半島軍事情勢は、総じて言いますと、韓国北朝鮮の南北の対立というのが過去四十年間、朝鮮戦争終了時からずっと継続している状況というのは基本的に変わっておりません。韓国北朝鮮合わせて百五十万人を超える地上軍が非武装地帯を挟んで対峙している状態でございます。  まず、北朝鮮軍動向について御説明いたします。  一昨年の七月に金日成主席が死去して二年近くたちますが、いまだ国家主席、党総書記は空席のままで、後継者と目されております金正日書記は就任しておりませんけれども、国防関係ポストについては、人民軍最高司令官には一九九一年になっておりますし、国防委員会委員長にはほぼ三年ほど前についておりまして、制度的には金正日書記が軍を完全に掌握しているという状況でございます。  北朝鮮は、九〇年以降、経済的にはマイナス成長が続いて、食糧難それから外貨不足など深刻な経済困難に直面しておりますけれども、それにもかかわらず軍事面に国力を重点的に配分する、軍事力近代化を図って即応態勢を維持するということに努めていると見られております。  軍事費の国民総生産に対する割合は四分の一ないし五分の一に達していると推定されております。一つの推計によりますと、九四年の北朝鮮GNPは二百九億ドル、それに対して国防費支出が約四分の一ないし五分の一に当たる五十六億ドルに上るというふうに言われております。  それから、総人口は約二千三百万人ですけれども、総兵力約百十三万人、すなわち総人口の約五%が現役軍人と推定されております。それに加えまして、一説には約五百万とも六百万とも言われる予備役が存在しているというふうに言われております。  それから北朝鮮の軍の配備ですけれども、地上戦力の約三分の二を非武装地帯付近おおむね百キロメートル以内に前方展開しておりますし、また前方展開した基地などかなりのものを要塞化しております。加えまして、長射程の火力、例えば二百四十ミリ多連装ロケット射程約七十キロメートル、それから百七十ミリ砲、射程約五十キロメートルと言われておりますけれども、それを非武装地帯付近に増強配備しているという状況でございます。これは何を意味するかといいますと、この前方展開によって再度改めて展開することなく韓国を奇襲できるとか攻撃できる態勢にあるということです。また、それは韓国側から見ると、警報を発する時間が極めて限られておるという状況でございます。  北朝鮮装備の多くは旧式ですけれども、装備近代化を図っている。その大きな特色としては、奇襲戦それからゲリラ戦を行う特殊部隊用装備を多数保有しているという特色を持っております。  各軍について見ますと、陸軍は二十六個師団、約百万人で北朝鮮の総兵力の約九〇%を占めている、すなわち陸軍中心構成になっております。歩兵が中心になっておりますけれども、約三千両の戦車を含む機甲戦力あるいは長射程の火砲を保有しております。兵器の数量では、後でちょっと述べますけれども、韓国を上回っているという状況でございます。もう一つの大きな特色としては、ゲリラ戦などを行う特殊部隊を多数保有しており、その数は約十万人ほどにも達するのではないかというふうに見られております。  それから海軍ですけれども、海軍は合計約六百三十隻、約八万七千トンを保有している。その内容としましては、ミサイル高速艇などの小型艦艇中心になっております。それと、先ほどちょっと触れました特殊部隊の潜入、あるいはそれを運搬するためと見られているミゼット潜水艦、これは乗員を含めて十人程度が乗り組む極めて小型潜水艦ですけれども、そのミゼット潜水艦あるいはエアクッション揚陸艇を多数保有しております。エアクッション揚陸艇というのは四十ないし五十名程度の兵員の輸送が可能という揚陸艇でございます。  それから空軍につきましては、作戦機を約七百七十機程度有していると見られております。ミグ29あるいはスホーイ25などの第四世代に属する新型機も保有しておりますけれども、保有している大部分は中国製あるいは旧ソ連製の第一世代、第二世代旧式機が占めているという状況でございます。そのほか特徴的なのは、特殊部隊輸送に使用されると見られるアントノフ2型、翼が二段になっている複葉機を多数保有しております。  それから核兵器開発疑惑につきましては、九四年十月の米朝枠組み合意により一応問題解決の道筋が提示されたところでございます。それに従って北朝鮮は、現在、黒鉛減速炉及び関連施設を凍結する、最終的にはそれを解体しIAEAによる保障措置協定を完全に履行するということをコミットしております。これに対してアメリカは、代替エネルギー供与あるいは北朝鮮への軽水炉供与アレンジメント等を実施するということで、それに基づきましてKEDO北朝鮮の間で軽水炉供給取り決めが締結されたということは先生方御承知のとおりでございます。  それから、北朝鮮ミサイル開発生産配備でございますけれども、北朝鮮スカッドBスカッドCなどを生産配備するほか、ノドン一号を開発中と見られております。スカッドBというのは射程約三百キロメートル、スカッドC射程約五百ないし六百キロメートルを生産配備しております。そのほか輸出もしているというふうに見られております。  それから、ノドン一号は射程約一千キロメートルのものを開発中というふうに見られております。射程一千キロメートルということは、北朝鮮のどこに配備するか、その配備位置によっては我が国の大半がその射程内に入る可能性があります。ノドン一号は現在まだ開発中と見られますので、その詳細は明らかではございませんが、いろんな情報を総合的に勘案してある程度の推定をいたしますと、射程が約一千キロメートルぐらい、弾頭重量は一千キログラム程度ではないかというふうに見られております。  それから食糧事情については、先ほど外務省の方から御説明がありましたけれども、恒常的な食糧不足に陥っていたと見られますが、特に昨年の水害等により現在北朝鮮食糧不足は一層深刻化したというふうに見られております。  それから最近の北朝鮮軍動向でございますが、ことしの三月末、金光鎮人民武力部第一副部長が、朝鮮半島における休戦状態限界点に達しているという談話発表いたしました。また、四月四日には、人民軍板門店代表部スポークスマンが、休戦協定に基づいて負っている軍事境界線と非武装地帯の維持及び管理に関する任務を放棄する、あるいは板門店共同警備区域と非武装地帯に出入りする北朝鮮側要員と車両に、定められたすべての識別標識を使用しないことにするという談話発表して、その直後、四月五日から三日連続で、迫撃砲、無反動砲、機関銃などで武装した兵士が板門店の共同警備区域内に進入して、応急陣地等の構築訓練を行った後、二、三時間後に撤収したという事件がございました。  これに対して、四月五日、韓国の国防部は、米韓連合軍の監視体制、ウォッチコンと呼ばれておりますけれども、監視体制を従来の三から二に引き上げたという旨を発表いたしました。報道によりますれば、その監視体制ウォッチコンというのは四区分になっておりまして、平時を四、それから最緊急時を一としているということのようでございます。  それから五月十七日には、軍事境界線の別のところですけれども、軍事境界線を越えて韓国側北朝鮮軍兵士が侵入した。それで、一時間後に警告射撃に遭って撤収したという事件もございました。  それから海の方では、西海岸の方ですけれども、四月十九日には北朝鮮の警備艇二隻が、黄海に設定されている南北の境界線、北方限界線を越えて韓国領に侵入して、韓国海軍の艦艇が出動して北朝鮮の警備艇は北朝鮮側に戻ったという事件がありました。同様の事件は五月二十三日、このときは警備艇五隻にふえておりますけれども、同じように北方限界線を越えて韓国側に侵入したという事件がございました。  それから五月二十三日には、ピョンヤンの近くにありますオンチョン基地から飛び立った北朝鮮空軍ミグ19戦闘機一機が、韓国機に誘導された形で韓国空軍基地に着陸して、パイロット亡命したという事件があったことは先生方よく御承知のとおりでございます。  次に、これに対する韓国軍の動向ですけれども、毎年GNPの約四%前後を国防費に投入しており、陸軍近代化及び海空軍近代化に努めている。陸軍は二十二個師団、約五十五万人、海軍は約二百二十隻、約十四万トン、海兵隊二個師団、約二・五万人、空軍はF16を含む作戦機約四百九十機を有しております。  それから在韓米軍ですけれども、在韓米軍は米韓相互防衛条約に基づきまして、歩兵師団それから第七空軍等約三万六千人の部隊を韓国に配置しており、陸軍部隊等は非武装地帯付近前方展開しております。  米国は、在韓米軍の役割をできるだけ主導的なものから支援的なものへと縮小しており、平時の作戦統制権を韓国側に返還しております。  それから、米国は東アジア太平洋地域における安全保障戦略、EASRにおきまして、今後もアメリカは韓国における軍事的プレゼンスを維持するということを確認しております。特に、戦争の抑止の重要性を強調しているところです。ちょっとそのEASRから韓国関連部分についてアメリカの考え方というのを御紹介させていただきたいと思います。  「韓国における抑止力の維持」という中で、「米国と韓国は、北朝鮮による韓国に対する侵攻を打ち破ることができるであろう。しかしながら、戦争が再び起これば、非武装地帯の両側で甚大な損害がもたらされることになるであろう。特に、非武装地帯からわずか二十六マイルしか離れておらず、韓国の政治、経済及び文化の中心であるソウルについてはなおさらである。したがって、韓国にとって問題なのは、単に戦争に勝つのみならず、より重要なことは、北朝鮮による侵攻を抑止することであるという点を認識しておく必要がある。」「この文脈で、」「韓国における米軍のプレゼンスは、北朝鮮の侵略に関し、かかる紛争に米国が自動的にかつ直ちに関与することをまがうことなく明確にすることにより、これを抑止することに役立つものである。」というふうに述べて、その基本的な重要な任務が抑止にあるということを述べているところでございます。  以上でございます。
  7. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) 以上で政府からの説明聴取は終わりました。  ただいまの政府からの説明に対し質疑を行います。  なお、質疑はお一人往復五分以内ということでお願いをいたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 野沢太三

    ○野沢太三君 外務省にお伺いしますが、先般の情報ですと、アメリカの国防総省で北朝鮮の崩壊がもういつ起こるか、起こるかもしれないというイフの段階ではなくて、いつ起こるか、ウェンの段階であるという情報がもたらされたという一方で、昨今は、今度は国務省の方の意見として、当面そのような心配はないんだと、金正日書記は統率力を維持しておるということで崩壊の心配はなさそうだという話をしておると。アメリカの北朝鮮に対する考え方についてこのところどうも多少の混乱といいますか、見方にいろいろと違いが出ているように伺っておるわけでございますが、この辺についていかがでございましょうか。
  9. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 確かに委員御指摘のとおり、米国の内部においてもいろんな意見があるように思います。例えば、二月二十二日の段階で、これは米国の上院の情報委員会でございますけれども、CIAのドイッチ長官が北朝鮮情勢につきまして、もし食糧不足が前線の部隊のところまで広がっていけば体制の安定が損なわれることになるかもしれないという証言をいたしております。類似の証言が国防省筋等によっても行われていたように記憶しております。  他方、この前五月に済州島で行われました日米韓の高級事務レベル協議において、やはり金正日書記国政全般を指導しているという見方が一般的であって、今すぐ崩壊云々という状況にはない。北朝鮮食糧エネルギー不足などいろいろの困難を抱えているのは事実であるので、その情勢の把握にはいろいろ困難な点があるけれども、どうもこれは見ていくしかないなというような感じで意見が一致したということもあるわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、そういう状況が改善に向かっているということはないように思われるわけでございます。例えば、今回アピールを発出する主体となった国際機関、FAOとかWFPは、その評価ミッションの調査結果に基づく報告書において、北朝鮮は配給システムを維持するために既に備蓄を相当取りましている、これが補てんされなかったために備蓄量は継続的に減少しているのであるというような見通しを述べているわけでございます。そして、ことしの六月から十月にかけては昨年の収穫のほとんどが消費されて在庫が急速に減少するので、食糧事情はかなり悪化するだろうということを述べております。  そして、先ほど申し上げましたように、一般に食糧面などで優遇されていると言われる軍隊にも影響が出始めていて配給量が減っている、栄養失調者も出ているというような状況もあるわけでございます。  そういうわけで、ちょっとお答えが明確なものにならないで恐縮でございますが、明らかによくない方向に状況は向かっているように思われますけれども、現時点において金正日書記が全体を統括している、その体制を覆すような状況がそこにあるということではないと思われます。
  10. 野沢太三

    ○野沢太三君 そういう中で、前回援助した米の一部が軍の備蓄の方へ回されて本当に困っている人のところへ届いていないと、こんな情報もあるわけであります。今回、人道援助ということで、これは主としてお金で国際機関を通しての援助であるからにはいきなり備蓄ということにはならないかと思いますが、この辺に関して先般も委員会の方でお伺いをいたしましたが、これをどう担保して本当に援助の効果を上げるか、こういう点について再度お伺いしたいと思います。
  11. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 委員御指摘のとおり、私どもも、北朝鮮との関係を見ていくに当たって、根本的な問題は透明性の欠如ということだと思っております。そして、この透明性の欠如を完全に取り除く妙案というものは持ち合わせていないということだろうと思います。  今回の緊急アピールにつきましては、WFPという機構はそもそもピョンヤンに常設の事務所を持っておりまして、これまでにも状況をモニターするために、WFPは昨年の十一月からことしの五月にかけてでございますか、三十四回、延べ八十一日間のモニタリングを実施しております。ユニセフ、児童基金の方でございますが、こちらは十七回、延べ二十七日間にわたるモニタリングを実施していて、そのいずれのモニタリングにつきましても、実際に港に物が着きましてから、あるいは鉄道の駅に物が着きましてからこれが最終の配付地に至るまで、いろいろの形でモニタリングを実施するという方式をとっているようでございます。そして、今回の緊急人道支援、このアピール、これに基づく協力を行うに当たりまして、今までとってきたこのモニタリングの体制を一層強化するということを言っているわけでございます。  第三者の評価ということでございますが、米国も、現時点においてこのWFPなどが実施するモニタリングというものが支援を本当に必要としている人のところに届かせる、その状況を確保するという上で多分最良のものであるだろうという評価をしていると承知いたしております。  いずれにいたしましても、私どもも北朝鮮との関係においては、今後とも透明性の向上ということに心がけてまいりたいと思います。そして、透明性が一〇〇%確保できないという現実はございますけれども、少なくともこちらから支援が何らかの形で行われる以上、それに見合って北朝鮮が順次なりとも透明度を高めていくというふうに持っていければなと考えておる次第でございます。
  12. 高野博師

    ○高野博師君 外務省の局長にお伺いいたしますが、この外務省がつくったペーパーの四ページ目の4の「コメ支援洪水支援」の(3)ですが、ここで「なお、我が国による支援一つ契機として、韓国からの支援が行われるに至り、また、このような日韓からの支援が行われた延長線上で、北朝鮮洪水被害について国際社会支援を要請するという流れになったとも考えられる。このように、我が国支援北朝鮮国際社会に向けて開かれていくことを慫慂するという観点からも、一定の成果があった」のではないかなとさつき局長が言われましたので、あったのではないかなというぐらいの確信のないことでいいのかなというのと、ここの(3)の話はかなり政府に都合のいいようにだんだん解釈してきているなという私は印象を持っております。  韓国にしても、日本援助、去年の五十万トンの援助については非常に困っていると、韓国からの援助の効果を薄めたというか、そういう批判もあり、反対もあったわけです。  それから、日韓の延長線上に国際機関援助があったとは必ずしも言えない。日韓援助の前に、もう国連関係機関北朝鮮食糧事情洪水の被害等について別途調査を行った。したがって、必ずしもそうは言えないんじゃないかなという印象を持っております。これが一つの質問です。  もう一つ、突然北朝鮮が崩壊したときには当然難民の問題が起こるだろう、これが一番最大の問題だと思うんですが、この突然の崩壊はないとしても、平和的に統一がなった場合でも難民という問題は起こり得るのかどうか、私は起こり得るんではないかなとは見ているんですが、その辺どう外務省は見ておられるのか。  それからもう一つは、冷戦が終わった後、例えばキューバの場合も、これは時間の問題だ、こういうことをよく言われました。しかし、依然としてキューバのカストロ体制は続いている。食糧さえあれば、そしてリーダーが存在していれば体制というのは簡単には倒れない。  私は北朝鮮の体制が倒れればいいと言っているんではないんですが、軍の備蓄を依然としてまだ放出していないという情報と、それから経済的に非常に困っていながらGNPの二五%も軍事費に向けているという現実がある中で、人道的援助とはいいながら援助を続けることによって今の体制が続く。続くということは、核の問題あるいはミサイルの問題で脅威というか懸念がずっと続くことになりはしないかという意味で、きのうもちょっと委員会で言いましたけれども、援助にやはり条件をつけるべきではないかなと。軍の備蓄を全部放出しろ、それと軍事費をもっと削減しろというぐらいの条件をつけて、国際的な援助も含めて、日本援助はやるべきではないかなと私は思っているんですが、その辺の見解を伺います。  最後に、防衛庁ですが、この防衛庁の分析あるいは情報についてはどこから情報を得ているのか。ミリタリーバランスとか国防省の情報等いろいろあると思うんですが、防衛庁独自にこういう情報を得る情報源を持っているのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。  以上です。
  13. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 第一点の配付資料の4の(3)の記述についてでございますけれども、我々といたしましては、ここに書いてありますように、まず日本による支援ということが一つのきっかけとなって韓国からの支援が行われることになった、それでそれが南北関係の進展に資する第一歩になり得るであろうということで、それはその時点において私は前向きに考えられるべきことではなかったのかなというふうに思うわけでございます。  そして、「日韓からの支援が行われた延長線上で、」という書き方について、この書き方が極めて精密に条約の文章的に書いてあるものではございませんので、私たちの意図するところがあるいは正確に伝わらない表現になったかと思いますので、その点は、そうであるとすればおわびを申し上げたいと思います。  結局、そういう誇りの高い北朝鮮が、みずからの弱みというものを絶えて国際社会に漏らさなかったという国が、割合率直に自分たちの苦しさ、窮状というものを訴えるようになった。それをきっかけにして国際社会の方からある種の支援の手を差し伸べる、そのことに応じて北朝鮮側がもう少し透明度というものを増す方向に動く、そういう形で国際社会というものの一般的なルールの中にできるだけ北朝鮮を取り込んでおくということ自体は、あの朝鮮半島情勢における、だれにとってもいいことのない爆発的な事態と申しますか、緊急事態と申しますか、そういうものを避けるためには当然考えられてしかるべき課題なのではないのかなというふうに思うわけでございます。  それ以後、米朝合意もございましたし、またそれに引き続いてKEDO交渉もございましたが、だんだん北朝鮮の側から合理的な対応、実務的な対応というものを引き出せるようになってきていることも事実でございます。  もちろん、縦割りの国、それから透明性が非常に欠如している国でございますから全貌が明らかになるわけではございませんけれども、先ほど申し上げましたようなKEDO交渉における北朝鮮対応というものもある。したがって、米国も北朝鮮がそのような対応をしてくるということに応じて、先般、二百万ドル、五千トンから六千トンの穀物の援助というものを今回の支援に先立って既に行って、北朝鮮のそういう動きに対する認知というものを示したという経緯もあるのだろうと思います。そういうようなことを背景として、この(3)をお読みいただければと思うわけでございます。  一国の体制がどういうふうになっていくか、これはいわゆる学識経験者という方たちの意見なんかを徴してみましても、政権の正統性、レジティマシーの問題というものがあろうかと思います。その政権の正統性がある限り、多少苦しいことがあってもその国は続くということがあるのかもしれません。そこには恐らく、なかなか数量化することは難しいでしょうけれども、正統性の問題ということが基本にあっての話だろうというふうに思うわけでございます。  今回の緊急アピールということとの関連で軍用の備蓄の問題が提起されるわけでございますが、先ほど既に触れましたように、北朝鮮においては、軍用の備蓄かどうかその辺がよくわからないにせよ、少なくとも国際機関の調査で備蓄量は継続的に減少していて、九五穀物年度の初期においては相当少なくなっているであろうという観測がなされているわけでございます。そして、一般的に食糧面で優遇されていると見られている軍隊でも、配給量が減っていて栄養失調者も出ているというような状況があるということも言われているわけでございます。  そういう状況のもとで、今回国連の関係諸機関が、一応現時点において現実的に最も透明度が高いと言われる調査、モニタリングによりましてニーズというものを見極めて、それをアピールの形で問うてきた。これに対して私どもが支援する、あるいは米国が支援する、韓国支援するということは、緊急人道支援の文脈においてこれは必要なことではないのかなと思う次第でございます。  大量難民が出るかどうかということでございますが、今現在そういう状況があるというふうには見られておりません。ただ、安全保障上の緊急事態に対して、大量避難民対策を含めて必要な対応策をあらかじめ検討、研究しておくことは、これは極めて重要であるということであろうと思います。関係省庁内部で所要の作業というものが行われている中に、そういうものも当然入るということだろうと思います。  いずれにいたしましても、北朝鮮について胸にすっきりと落ちるような透明度の高いいろんな手だてというものを講ずることがなかなか難しい状況にあることは事実でございますけれども、今申し上げましたような背景に基づいて一連の施策を考えてまいりたい、こういうふうに思う次第でございます。
  14. 小池寛治

    政府委員小池寛治君) 北朝鮮はまことに透明性の低い閉ざされた社会でございますから、なかなか外からうかがい知れない国ではございますけれども、我が国の近隣にある国でもあり、種々の情報を得るように我々としても努力しているところでございます。その中には、当然のことながら、具体的には申し上げられませんけれども、防衛庁独自に入手している情報というのもございます。  それから、情報がはんらんするに当たっては、先生が先ほどお触れになられたようなミリタリーバランスとかあるいはジェーン年鑑等の公開情報、あるいは北朝鮮を訪問された方、あるいはこの前の亡命者記者会見の発言などもありますけれども、そういうもの、各国の見方なども聞いて総合的に判断しているところでございます。  いずれにしても、近隣国ということでもあり、その動向については我々としては多大の関心を持って情報の収集、分析に努めているところでございます。
  15. 立木洋

    ○立木洋君 お二人に、北朝鮮についての基本的な認識をお聞きしたいんです。具体例は幾つか挙げていただきましたけれども、基本的にどう北朝鮮を考えているのか、見ているのかという点についてお聞きしたいんです。  どうしてかといいますと、去る四月にクリントン大統領が来られまして共同宣言を発表しましたが、その共同記者会見の席上でクリントン大統領は、ロックステーツ、つまりならず者国家の脅威というものに言及されたんですね。それで、ペリー国防長官も、五月十三日のハーバードの大学での講演の中で、ソ連の核戦力を引き合いに出しながら、ならず者国家の脅威はこれ以上に怖いという表現をしております。  このならず者国家ということがアメリカで言い始められたのは、一九九三年九月、アメリカ戦力の見直しの後に使われ始めて、今日ならず者国家こそ世界の最大の脅威だということがしばしば強調されるようになりました。これはもう加藤さんも御承知のことだろうと思うんです。  それで、ならず者国家とはどこの国のことを指しているんだと。いろいろな文献を見てみますと、アメリカ側で出しているのは、アメリカによれば北朝鮮、リビア、イラク、イラン、これらの国を指しているということが明らかになったわけです。これは拡散対抗戦略の中でも明らかなように、いわゆる大量破壊兵器を所有しようとする疑惑でさえも、アメリカはそれを軍事的な攻撃で先制的に抑えるということも当然だという立場をとっているわけです。  私たちは、もちろんどのような国であれ核兵器や大量破壊兵器を所有するというふうなことについては反対ですし、またそういう疑いがあるからといって、それを軍事的な圧力によって抑え込むという覇権的な行為にも我々は同調しません。反対です。  そこで質問なんですが、加藤さんにお伺いしたいのは、このアメリカのロックステーツという脅威論について日本政府としてはどういう認識をお持ちなのかということを加藤さんにお聞きしたいんです。  それから小池さんに、朝鮮半島の有事という問題が今アメリカでもいろいろ言われています。きょうの午前中もここで議論されたわけですが、この朝鮮半島有事を想定したいわゆるガイドラインの見直しということは、アメリカのこういう認識と共通性があるのではないかというふうに考えられるんですが、今のこのガイドラインの見直しと朝鮮半島有事とのかかわりについてどういうふうな見解をお持ちなのか。  その後に、加藤さんに引き続いて、北朝鮮日本にとって脅威があると、日本にとって脅威であると見ているのか脅威はないと見ているのか。脅威があると見るならばその根拠は何なのか、脅威がないといえばその根拠はどうしてなのか。そこらあたりのことをお二人にお尋ねしたいと思います。
  16. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 大変私にとってお答えのしにくい問題であると思います。私の言葉ということでは必ずしもありませんが、非常に一般的に考えますと、ならず者国家であるとかなんとかそういう呼称、呼び方、レッテルということを考える前に、私は朝鮮半島とのかかわりであれ、あるいは中国とのかかわりであれ、その他の地域とのかかわりであれ、結局自分たちの利益のために仕事をしていくべきであるし、そうしているつもりだというのが先にあるわけでございます。  何が日本の国益になるのかということについて、もちろんケースによって意見が分かれるということは、これは多々あるのだろうと思うのでございます。例えば、国益の中に非常に短期的、具体的、直接的、即物的な国益というものもございますれば、一般的で抽象的で象徴的な国益というものもある。しかし、いずれが他方よりも必ず常に重要だということは恐らくないだろうと思います。  したがって、その二つのセットの国益をどういうふうに組み合わせて、日本にとってこれが一番望ましい方向に話を持っていけるのだろうかということを考えるのがまずポイントであろうと思います。その意味で、すべては日本に発するということだろうと私は思います。  そういう日本にとって安全保障というものを日本なりの考え方に基づいて確保していく、平和と安定を維持していくというときに、これは私は、こういう場ではございますけれども、決して特定の国とか地域に結びつけて申しているわけではございません。そういうことを前提にして申し上げれば、失うものがないままである場合により日本の安全が、ある国ある地域なりが全く失うものを持たないという状況であることが日本にとって安全に寄与する話であるのか。それよりも、失うものを何か持つということが安全にとってより寄与するゆえんであるのかという問題があろうと思います。  失うものがないときには、個人の次元であれ何であれ、失うものがない人間としての行動がとられるということだろうと思います。失うものを持つと、その失うものを失いたくないために行動が慎重になるということもあろうかと思います。ただ、そこに全く理屈に合わないボナンザ、とんでもない褒賞があるということでもこれはいけないと思います。だから、その辺のところをどう考えて外交政策とかほかの国とのかかわり合いを律していくのかというところが、一般的に申し上げれば私は一番肝心な問題だろうと思うのでございます。  ですから、私の立場から申しますと、立木先生から今おっしゃられた、そして安全保障の分野でずっと造詣も深くておられて、かつてのソ連脅威論とかいろんなことをつぶさに見ておられた先生に対してのあれでございますから、私はここでは脅威論、北朝鮮が脅威であるかどうかということに正面からお答えすることは差し控えさせていただきたいと思うわけでございまして、そういうとり方はいたしておりません。  ただ、これはアメリカも冷戦終了後になってしばしば用いていた修辞というか、レトリックでございますけれども、不確定性、不安定性ということはこれをできるだけコンテーンと申しますか、封じ込めていかなければいけないという認識があるわけでございます。不確定性、不安定性という形での新たな平和と安定に対する挑戦というものがあるわけでございまして、そういうものをどういうふうにうまく抑えていき、そして経済的な発展も含めて、これを地域において確保していくことができるのかということを、冒頭に申し上げましたように、日本の国益ということを軸にして考えていくということに私は結論は尽きるんではないかと思います。
  17. 小池寛治

    政府委員小池寛治君) 北朝鮮有事とそれからガイドライン見直しとの関連性ということについての御質問ですが、その前に、今の朝鮮半島情勢をどう見ているかということがまず第一の基本になろうかと思います。  若干繰り返しにはなりますけれども、非武装地帯を挟んで百五十万人を超える兵力が対峙しているという状況が過去四十年以上ずっと続いているような状況とか、あるいは核兵器開発疑惑が持たれたり、あるいはミサイルの長射程化のための研究開発をやっている。それから、軍事の体制を見ても、百万人以上の軍隊を擁している国ですが、その三分の二以上が非武装地帯百キロメートル以内に、極めて近いところに配備されている、前方展開されているということを総じて見ますと、北朝鮮のこういう動きということ自体が朝鮮半島の軍事的緊張を高めている。それは我が国にとっても、東アジア全域の安全保障にとってもやはり重大な不安定要因と見ざるを得ないんだというふうに考えます。  それから、日米防衛協力のための指針の見直しについては、これは先生の方がよく御存じですけれども、なぜこの見直しをしているかということは、現在の指針が策定されてから以降の日米防衛協力関係というのがずっと進展してきたということを踏まえるということ。それから、現在の指針というのは、前の防衛大綱の考え方を踏まえて策定されたものでありますけれども、内外のいろんな情勢がその間に変わってきております。それを踏まえて新しい大綱が昨年の秋に策定されたわけでございます。そういうことを考慮して見直しを実施するということでございまして、北朝鮮有事というような特定の事態を念頭に置いているものではないということを申し上げたいと思います。
  18. 川橋幸子

    川橋幸子君 韓国というのは近くて遠い国と言われますけれども、北朝鮮というのは本当に不思議の国ですね。不思議の国というのは、メルヘンチックなアリスのような国だとよろしいんですけれども、どうもやっぱり不気味だという感じがある一方、非常に何か誇り高くて、戦前の日本のような神の国じゃないんでしょうけれども、何かしらアメリカが思うようなならず者の国の中でもちょっと違うんじゃないかなというような感じを持つんですが、一体どういう国なんだろうというのが一番私の伺いたいことなんです。  歴史的には統一されていた国で、それが冷戦構造の中で、米ソの戦争の中で分断されたわけですね。それからもう四十年もたってしまうと血族というのも余りなくなるのかなという感じがするのが一方にあって、もう一方では、逆に南憎しという感じが少なくなってくるのかなとも、あるいはアメリカ憎しも少なくなったんでアメリカを頼るのかなと。アメリカを頼るということも、普通の感覚では、かつての敵国なわけですから、これはベトナムだってどこだってあるはずの話で、かなり人の心というのはわかりにくいところがあるわけなんです。  そのならず者の国の中でも、どうも何というんですか、もしかしたら多少の餓死者は出ても安定を保ち続ける国なのか、やっぱりここは国民を守るために三十八度線を南下するとか、あるいは軍の力でアメリカから援助を引き出していきたいというような、そんな外交カードを持つ国なのか、おわかりのところを教えていただければありがたいと思うんです。
  19. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) まことに申しわけございませんけれども、今の委員の御質問に満足な回答をするような知識、知見というものを持ち合わせておりません。ですから、飛び飛びのポイントをつなぐだけのお答えになってしまいますけれども、御容赦いただきたいと思います。  やっぱり、北から見ますと恐らくアメリカというのは非常に大きく見えているのだろうというふうに思います。ソ連がなくなった後、いわゆる認識一般の次元においては唯一残った超大国であるというふうに見えている。戦後の日本から見てアメリカがどう見えたかということと、そこにすぐ同じ線を引けるものだとは思いませんけれども、相当アメリカが大きく見えていることは間違いないんだろうと思います。  したがいまして、最近の何年間かにおける北朝鮮の行動というものは、まずアメリカとの間に合意を交わしてしまえば、あとは韓国であれ日本であれおのずとついてくるのだと、こういう感じで物事を組み立てていたように思うわけでございます。最近は、しかしアメリカの方がなかなかそういうふうな北朝鮮動きには乗らない。やはり韓国との関係が重要であるということで、韓国への配慮ということをかなり中心に据えて北朝鮮との対応を行っているようでございますから、その思惑どおりに動いていないというのはあるかもしれません。  アメリカとの関係でございますが、結局、戦争ということ、日本の立場から見れば戦争といえば第二次大戦でございますが、北朝鮮から見ればもちろん朝鮮戦争もあったわけでございます。それから、きょうの議題ではございませんけれども、中国という国をとってみれば、戦争といえば、第二次大戦の後もソ連と戦い、インドとも戦い、ベトナムとも戦いというようなことで、相当程度戦時態勢のもとにみずからを置いてきたという感覚が強い国ではないかと思うんですが、北朝鮮もそういういわば臨戦態勢と申しますか、そういう感覚のもとに国家運営が行われてきているんだろうと思います。しかし、朝鮮戦争も相当昔になりました。おっしゃるとおり数十年前の話になってきた。  そこで、物事がどれだけ生きた政治的な現実というものから絵としてかき上げられた歴史というものに変わるかという、その節目の問題なんだろうと思うのでございます。一般的には文書公開の世界なんかで三十年というのが一つの節目になって、三十年たったものは原則もう絵にかき込まれた、でき上がった歴史なのである、それに満たないものはまだ生きて動いている現実なのであるという一応の線を引いているわけでございますが、戦争なんかの場合にはもっと記憶力が双方において長いということがあるのかもしれません。  しかし、最近において、遺骨の返還交渉というようなことでアメリカと北朝鮮との間に実務的な折衝が行われて、初めて北朝鮮の軍人が、たしか中佐クラスかそこら辺だったろうと思いますが、ハワイというアメリカの領土の一部を踏んだというようなこともあったわけであります。そういう国民的な感情というのがアメリカに向いてどう動いているのか、私は北朝鮮の側に立ってこれ以上知るすべはありません。  南北の関係については、いろいろな関係、それこそかぎ括弧時効中断かぎ括弧閉ずというような形でいろんな出来事が起こっているということで、その間に私などのうかがい知れないような強い感情が依然として存在しているということだろうと思います。今、南北の関係が非常に難しくなっていて、私たちは北に対しても、また韓国に対しても南北関係の進展ということが非常に重要であるというようなことを説いておるつもりでございますが、なかなか現実には進まない。  初めて軍事政権色を取り払った文民政権の長となった金泳三大統領が、その後、北朝鮮との関係である種の打開を求めようとしたのがそれがうまくいかず、逆に金日成首席が亡くなった後の葬儀団派遣云々の件で今度は北朝鮮側の感情が硬化するというようなことになって、非常にぎくしゃくした南北関係になっているということを見ますと、なかなか進展というのは近い将来期待しがたい状態にあるのではないのかなと見る人が多いように思います。  いずれにいたしましても、委員がおっしゃられたように、近くて遠い国、不思議な国というような表現にはそういうことをしのばせる要素があるというふうに私も感じます。
  20. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 KEDOについてお伺いしたいんですが、去年の三月、日米韓三国が朝鮮半島エネルギー開発機構の設立に関する協定というものに署名したとここにありますし、事実そうだったと思いますが、これは国会の承認を得ず署名されたように私は記憶しております。アメリカでも国会が随分騒ぎましたが、アメリカも国会の承認を得ずスタートしたわけであります。  今、KEDOがどういう状態で何をしているのか。常勤スタッフが何人いて、日本からはどういう人が行っているのか。あるいは事務所経費が幾らかかっていて、これに日本から出ているのは三百七十三万ドル今経費が計上されていると書いてありますが、それ以外に千九百万ドルを拠出して緊急に対応するための特別の基金を設けるという日本側のことはここにあるんですが、どうもKEDOに対する全体像がよくわからない。現在のKEDOのそういった全体像、経費、それからいわゆる基金、そして実際にどういう交渉北朝鮮とやっていて、アメリカと北朝鮮合意で想定された国際コンソーシアムだろうと思いますが、その辺のところをひとつつまびらかにしていただければありがたいと思います。
  21. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) ちょっと今詳しく御指摘の点にお答えする資料手元にないものでございますから、やや雑駁な御説明になろうかと思いますが、御容赦をいただきたいと思います。  日本は、アメリカ、韓国とともに理事会のメンバーとしてKEDOの政策決定に直接参加しているわけでございます。この三国だけが理事会メンバーでございます。日本は、外務省から梅津次長が出ておりまして、次長ポストを確保しております。それから、そのほかに通産省、科学技術庁などから政策スタッフ、原子力の専門家を事務局に派遣しております。正確な数字は、もちろんこれはすぐわかる数字でございますので、判明次第また御説明させていただきたいと思います。  KEDOにつきましては、大きく言って二つの柱があるんだろうと思います。一つは、炉そのものでございまして、韓国型の炉をこれから八年から十年ぐらいの間に、二〇〇三年でございましたか、二基北朝鮮に設置するという作業が一つの柱としてございます。もう一つの方は、この紙にも述べております代替エネルギー供給ということでございまして、大体重油に直しまして五十万トン、五千万ドル程度のものをその間供与していくということがもう一つの柱でございます。  そして、おおむねの考え方といたしまして、軽水炉の二基の方につきましては韓国が大宗の経費を負担するということでこれまで動いてきていると思います。昨年だったと思いますが、当地駐在の金太智大使が四分の三と申しますか、軽水炉二基にかかる経費の七五%ぐらいを韓国が負担する用意ありということをプレスクラブの講演の際に述べておられたというふうに記憶しているわけでございます。日本もそちらの側に貢献するということでございます。  そして、代替エネルギーとしての重油の供給の方につきましては、アメリカが主として責任を持つという形でこれまで動いてきております。何もアメリカが自分で全部払うということではございませんで、世界の中で、俗な言い方をいたしますれば奉加帳を回して重油供給の方に貢献してくれる国または機関を選ぶということで動いているわけでございます。  そして、米国が今年度の予算に切りかわる過程で未曾有の予算危機というものを迎えましたために、流動性の危機が生じましたので、日本が一千九百万ドルというものを流動性の危機に手当てする基金として供与したということがございます。これは私たち、この時点で日本側が千九百万ドルを供与したという事実を踏まえて、これからのKEDOの、先ほど申し上げました二本柱を中心とする分担作業、これに対応していくということに当然なると思っております。そして、今現在、日本は事務局経費ということで三百七十三万ドルの経費を計上したりしておりますが、大体毎年三百万ドル程度のものを事務局経費として出しております。  ちなみに、アメリカは初年度、千九百万ドルのお金を重油用として、それから事務局経費としてやはり三百万ドル、合計二千二百万ドルというのを予算として獲得しているわけで、次年度予算におきましては、我々はアメリカに対して、事務局経費は同じようなものでしょうけれども、千九百万ドルの方の重油充当部分の方、これをもっと大幅に増加してほしいということを述べるとともに、また日米韓だけで全部背負うというのも将来難しくなっていくであろうから、ほかの国々ほかの機関からも拠出を取りつけるようにということを言っておりまして、日本自身もそれに協力しながらここまで参っております。  EUの方が非常に大口たり得る候補者でございます。例えばHUが千五百万ECUというものを何年間かにわたって拠出してくれるということになりますと、重油供給の問題につきましてはかなり見通しが前向きになってまいります。今そういう方向を確定すべくいろいろな折衝、接触が行われているという状態でございます。  あと産油国やアジアの国々に対しても参加を呼びかけております。ニュージーランドやらフィリピンやらシンガポールやらいろいろな国、これもちょっと正確なところは後ほど別途資料その他でお示しできると思いますけれども、KEDOに参加するということを言ってくれている国がございます。  そういうことでございますけれども、本格的な役割分担と申しますか、経費の負担というものも含めて、作業が必要なら、ことしの夏の終わりから秋以降、すなわち現在KEDOの枠内において、どこに炉を設置してどのようにするかという現地の調査作業やら、それから先ほど申し上げましたように特権免除その他を定めるプロトコール交渉議定書交渉というのが行われておりますので、特に前者の経費見積もり、炉の経費見積もりなんかが出てきた後、そういう問題を今度は詰めていくという姿になると思います。
  22. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 ありがとうございました。
  23. 畑恵

    畑恵君 加藤アジア局長に伺いたいんですが、先ほど局長もおっしゃられたとおり、北朝鮮という国の非常に透明性の低さということがすべての問題の根幹にあると思いますけれども、非常に透明性の低いというところを外交戦略というか戦術というか巧妙に使っている国だなというのは、いろいろと言われているとおりです。  数少ない情報の中で、例えば先日、NHKだったと思うんですけれども、朝のニュースの中で、北朝鮮流れている野草の食べ方というニュースの一部が紹介されていました。そのときの映像というのは、その後も繰り返し繰り返しかなり使われている映像だと思いますが、洪水の影響その他で非常に困窮している北朝鮮国民の悲惨な姿が映される。そういう姿を何度も何度も見せられると、これはやはり人道的に援助しなければということで、非常に数少ない情報を上手に出しながら情報操作、情報戦術をとっているなという印象が私にはいたしました、ちょっとうがったところもあるかもしれないんですけれども。  また、その問題と相前後して亡命者が相次いだ。たまたまそのときに、私どもの党で慶応大学の小此木先生に来ていただいてお話を伺いましたらば、小此木先生の見方は、亡命者については、人数は多いかもしれないけれども、どちらもさほど全体の格からいえば上の人たちではないので、これをもって国が崩壊するというほどのことはないだろうという見方でいらっしゃったんです。  少ないなりに要所要所で出てくる幾つかの情報をどういうふうに外務省の方では読み取っていらっしゃるのか。同僚議員が質問させていただいたように、援助の仕方というのは、どうもこれは困っているようだな、じゃやっぱり出さなきゃ出さなきゃというと、非常に北朝鮮的な、ある意味で自国民を、ちょっときつい言い方かもしれないんですけれども、人質に出して、自分たちの国に援助しないと国民が結局餓死するんだ、国民が困るんだから自分たちの国に援助をしろと。でも実際は、どうもその援助がその人たちに本当に届いているのかというのは不透明と、非常にイタチごっこのようでストレスがたまると思いますので、この部分をどういうふうに解釈していらっしゃるのか伺います。
  24. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 結論を先に申し上げますと、なかなかそれに対する解というものがないということだろうと思うんです。  野草の食べ方というNHKのテレビでの報道というのも承知いたしております。それから、どこかでちらっと聞いたいろいろな情報の中の一つでございますけれども、木の皮をはいで食べている人もいるというような話を耳にいたしました。  しかし、やはり透明性というものが欠如しているという根本問題がございます。現に、最近、先方の招待によって訪れた日本の人なんかに伺いましても、そんなに食糧危機があるのかなと。自分たちに十分ごちそうが出てきたしということもあるでしょうけれども、なかなか食糧危機の深刻さをうかがわせるような状況ピョンヤンの市内なんかにはないと。例えば、普通だったらありそうな戦闘機の飛行訓練やら戦車の行進と申しますか動いている姿とか、そういうものが見られないということはあるけれども、食糧危機の影はそれほど深刻には感じなかった、こういう印象を持って帰られる人もいるわけでございます。したがって、そこにはよく実態がわからないということから来る焦慮感が我々にもあります。  今回ではなくて前回、すなわち昨年九月に国際機関が行ったアピール、最初千五百万ドルでその後二千万ドルに引き上げられまして、それで洪水の被害に対する手当てをしようとしたんですが、実は四五%しか集まらなかったということを明石次長も認めているわけでございます。すなわち、日本のみならず国際社会において、どこが本当の姿なんであろうかという透明性に対する不満足感がありましてそういう結果になっているのかなと思います。  今回の四千三百六十万ドルといううちの二千六百八十万ドルが食糧で、そこに日本が五百二十五万ドル、アメリカが六百二十万ドル、それから韓国が三百万ドル、これで五〇%ちょっとを見るということになりますけれども、ほかの耕地の回復とかそういうものも含めて、全体の四千三百六十万ドルのうちどれぐらいが最終的に満たされるかということは、まだ全貌が見えてきていないということがあるわけでございます。  亡命につきましては、小此木教授がおっしゃられたという点については、これも似たような感じを持っております。すなわち、数がふえてきていることは事実でございますけれども、現在までのところ、それはまとまった組織的なものと申しますか、そういう性格のものではなくて、散発的なものじゃないのかなというふうに思われるものが多いように思うんです。確かに、本当の意味でエリート中のエリートだという亡命者は少ないのであるという分析も耳にいたします。ただ、一人、九四年に亡命した康明道という人は姜成山総理娘婿だと言われて、これはちょっと高かったんじゃないのかなというふうに言われましたけれども、少なくとも公式の部分に関する限りは、北朝鮮の放送で、これは姜総理とは何の関係もない、姿をくらました犯罪者であるという位置づけで片づけているということがございます。  この間のミグ19で韓国亡命した大尉にいたしましても、科学者にいたしましても、それぞれ自分の職場の周りで不満を個人的なものとして抱えていたという状況があるようでございます。  韓国の方でも、相当亡命者がふえてきたということで、従来は越南帰順勇士特別報償法という法律をつくりまして、これで報償金の支給や住宅の提供というのをやって亡命者を優遇していたわけでございますが、最近はだんだん珍しくなくなったせいか、帰順同胞保護法を九三年の十二月から施行いたしまして、金銭面での援助を落として生活保護対象としての扱いを提供するというふうになっている事実もあるようで、これは先ほどちょっと御紹介申し上げましたが、そういう状況だろうと思います。
  25. 畑恵

    畑恵君 ありがとうございました。
  26. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 非常に困難な状況でしょうけれども、北朝鮮というのは世界で最もアウタルキー的な国家でしょうね。それで、ソ連からロシアにかけての援助は著しく低下しているはずですし、中国援助も、時に消長ありますけれども、北朝鮮に対する親近度といいますか、これはもうかつてのごとくじゃない。それから、貿易関係は一応発展しているようには思えませんね。  そういうふうに考えますと、アウタルキーの中で、朝鮮戦争以後もう四十年、戦争以後生まれた人たち国家の重要なところを担う年齢に達している。こういうことを総合的に考えて、北朝鮮というアウタルキーに近い国家は、非常に能力の高い民族だと思いますけれども、成長状況が続いておるのか、それとも衰弱の方向に向かう心配というのか可能性というのがあるのか、どうなんでしょうか。
  27. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) これまた、北朝鮮に関する質問はすべて難しいということかもしれませんけれども、今のも難しい御質問だと思います。  確かに、冒頭の親近感という点から申しますと、中国北朝鮮に対して穀物支援を含めて支援措置をとっておりますし、最近、支援措置のテンポを速めているというような兆候もあるわけでございます。しかし、昔日の姿と比べますと、北朝鮮中国との関係というのは冷えたものというか後退したものになっているということが正しいと思います。  ことしの三月末に来日されました銭其シン外交部長は、先代と申しますか、金日成主席のころはハイレベルの交流というのが北朝鮮との間であったけれども、最近はハイレベルの交流というのがなかなか持ちにくくなった、そういうことで中国北朝鮮に対する影響力というのは余りないのであるという趣旨のことを述べておられた経緯がございます。もちろん、中国として北朝鮮というものを長く見、そしてつき合ってきたわけでございますから、独特の知見、知識の積み上げというものがあるでしょうけれども、今現在の関係はそういうものではない。  特に、一九九二年でございますか、韓国中国が国交正常化をいたしました。その後、韓国中国との関係の進展というものはいろいろな分野においてかなり速いものがあるというふうに評されていると思います。そういうことも当然のことながら、北朝鮮中国との関係に影響を与えずにはおかないだろうと私は思います。  その北朝鮮自体がどうなるかということでございますが、私は自分の知識というものを何も持ち合わせませんのでまた受け売りにすぎないわけでございますけれども、北朝鮮の国の成り立たせ方と申しますか、国をこれまで引っ張ってきたやり方というのは工業立国だったと言う人がいます。中国、ベトナムの場合には、農業ということで国の基礎を固めることから今のような経済成長の路線をつかんでいるという姿があるのに対して、インダストリアルな国、産業国家と申しますか、工業国家と申しますか、そういう方向を志向してきた北朝鮮はそれがうまくいっていないという評価をする人がいるようでございます。  したがって、米の問題とか何かにいたしましても、農業政策とかなんとかという側面も含めて、構造的な問題を抱えて今の窮状に至っているというふうに見られるのではないかなと思っているわけでございます。このような北朝鮮というものについて将来どういう展望があるのか。これは、ちょっと私には今これ以上申し上げる知識はないわけでございます。
  28. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 外務省に一点だけお教えいただきたいと思います。  日朝国交正常化交渉について、政府として現段階ではどのような努力や方策をとられておるのか。また、北朝鮮の側の対応というんでしょうか動き、それはどうなっておるのか、そこら辺をおわかりの範囲で。
  29. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 日朝正常化交渉についての政府の基本的な立場というのは従来から一貫したものでございまして、二つの柱がそこにあるわけであります。  一つは、北朝鮮との正常化、これを進めて戦後五十年以上続いた不正常な状態を直さなくてはいけない、これが第一の柱です。第二は、しかしそういう過程が南北関係の進展、朝鮮半島の安定ということに資するものでなければいけないという柱が二つ目でございます。そういう二本の柱に基づいて韓国その他の関係国と連携を十分にとりながら進めていくというのが、一般的に申し上げた日本北朝鮮との正常化に対する立場なのでございます。  具体的には、私どもは一九九二年十一月、今まで八回重ねてまいりました正常化交渉というものが絶たれて以来、第九回目が持てないでおります。そして、第九回目の正常化交渉、これをいつ持てるかということについては今日現在めどが立っておりません。北朝鮮側からはいろいろな意味で、主に間接的なチャネルを通じて、この問題をそろそろ動かさなくてはいけないのではないのかという意欲と申しますか、そういう希望みたいなものも伝えられてくるわけでございます。  ただ、冒頭の説明で触れましたように、板門店のところにおける軍事行動とか、それからスーパーKの話でありますとか、あるいは日本から善意の象徴として送った米を運ぶ同じ船にサリンの原料が大量に積まれていた、これは外為法違反のケースであるといったようなことで係争中の問題がございます。こういったようなことが起こるもので、雰囲気的に日朝の国交正常化交渉に向けて物事を動かす要素がちょっと欠けているのではないかなと思うわけでございます。  ただ、そういうものとは別に、我々は北朝鮮というあれだけ透明度の欠けた国家について、できるだけ先ほど申し上げました政策と背馳しない範囲内で自分の目で物を見ながら確認していくということは、これは必要なことであると思っております。  アメリカと北朝鮮との間には米朝合意の枠組みの中におけるさまざまな接触がありますし、米朝合意以外にも遺骨の返還交渉でございますとかミサイル協議とか、ああいうことで接触の場があります。日本の場合にはそういうものがなかなか限られていてございません。そういうわけではありますが、最小限の接触、交渉ではございません、接触でございますが、これは北との間に折に触れてまだ維持してきているわけでございます。その内容はしからば具体的に何かということになりますと、これはまさに外交活動の中の国際相場で見ても公にすべきでない部分に属することだと思いますので、その具体的内容を明らかにすることは差し控えさせていただかざるを得ないのでございますけれども、そういう意味での接触というものは維持して今日に至っているわけでございます。
  30. 矢田部理

    矢田部理君 朝鮮問題をどう見るか、どう対応するかというのは非常に大事な課題だと思いますが、どうも私、日本政府対応を見ていますと、先ほどの議論の続きでもあるんですが、対ソ脅威がなくなったということで、安保再定義でアジア太平洋地域の地域紛争対象型の軍事同盟にしていくと。日本周辺ということも言うわけでありますが、そのポイントにやっぱり朝鮮有事を置いているというふうに考えざるを得ないんです。特定国を、特定地域を対象としたものでないと言いながら、実際のシナリオはそれで動いている。  この朝鮮有事を想定して米軍の出動に日本がどう後方支援するかと。つまり、緊張を和らげる方向ではなくて何となく軍事力対応する、そういう体制をつくるようなにおい、意図をいろんな場所でかぐわけでありますが、そういうことを防衛庁だけでなくて外務省も一生懸命やっているということを私は大変残念に思うわけであります。  日本が今、対朝鮮外交でやるべきことは、確かに食糧とか経済的な問題、いろいろ抱えていることはそのとおりだと思いますが、人道的な立場で支援すべきは支援したらいい。アメリカの顔色をうかがったり、韓国と相談しなきややれないというようなものではないはずだし、客観性を担保するなら、国際機関などにもっと相談をして、それらのイニシアチブのもとに進めればいいというふうに私は思っております。  同時に、大事なのは、朝鮮は不透明だ、不確実だ、不安定だという言葉がやたらに走るわけでありますけれども、率直に言うと、まだ南北朝鮮あるいはアメリカとの関係も含めて戦争状態なんですね。板門店でどんぱちはやっていない、停戦ではあるけれども法的には戦争状態であるし、そういう意味でやつばり軍事的対立が続いているわけです。この対立の水準をできるだけ低めていくための努力などをどうしたらいいのかというようなことも含めて、朝鮮の周辺に平和が戻るような施策の展開を環境整備を含めてやるべきだというふうに考えるわけでありますが、その間に今議論がありました日朝国交正常化問題があるだろうと思います。  植民地支配以来、南とは日韓条約の締結がありましたが、これとても非常に無理押しをして当時の政権が結んだためにいまだにいろんな対日批判が起こるというのは、あの条約の立て方自体にも実はいろんな問題をはらんでいたわけです。日韓併合条約はもはや無効などというあいまいな妥結をしてしまった、従軍慰安婦問題についての解決が基本的にできなかったなどなど、政治的にまとめてしまったためにいろんな問題が根っこにあるわけです。  同時に、北との関係では、いまだに国交が正常化していない。それをどうやって進めるかということが外務省の主要な任務なのでありまして、いろんな努力をしていることは私も全く知らないわけでもないし、私たちも幾らか役割を果たしたことはないわけではないのでありますが、李恩恵の問題だとか、それから核疑惑だとかという前提条件を必ず日本政府がつける。前提なしに話し合いたいというのが一つ。  それから、日韓で結んだ条約を前提にして事を運ぼうとするということで、それに対する不満がある。これは韓国側にも実はあるわけでありますが、どうしてもあるということなどを含めて、もう少し外務省は政治的にこの問題をどう解決をするのかと。あるときは政治が動き過ぎていかがかと思うようなこともないわけではありませんでしたが、その努力をすべきだと思うのですが、どうもやっぱりアメリカの動きが気になる、それから韓国の顔色をうかがっているということのために、朝鮮問題を本格的に解決するという腰が据わっていないというふうに私は思っているのであります。朝鮮の有事とか何かということではなしに、そちらに外交の力点を置いたらいかがかというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  31. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 貴重な御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。  ただ、私が今のポストで仕事をしておりまして時間のほとんどを費やすのは、朝鮮半島の問題だろうという気がいたしております。もちろん、そこでの外務省の努力あるいは外務省の政策というものが不十分であるという御批判は、常に私たちは承らなければならないものだと思っているのでございます。  他方、日本の外交を、今の私の所掌ということでは必ずしもございませんけれども、全般に広げて、先ほど申し上げました私どもなりに考える国益ということをできるだけ大きく確保していく観点に立つならば、私どもは基本として日米の安保体制というものがアジア太平洋全体における安定要因としてこれまで作用してきていた、それはむしろこの地域における平和と安定のやはり柱であるという、この基本については実は疑いを持っていないわけでございます。  そういう立場があるがゆえに、ある意味では日本アジア全体に対する外交というものについてのクレディビリティーが非常に増すという面も多々あるというふうに思っております。逆の言い方をいたしますと、日本がアメリカとの関係を十分マネージできない、日米関係がよくなくなったというときに、いわば日本アジア太平洋において有する外交的な価値は全体として非常に低くなるだろうというふうに私は懸念いたします。  したがいまして、何も日本とアメリカとの間でインターオペラビリティーをどうせよとか、防衛力の水準をどうせよとか、そういう話の個々の局面に立ち入るつもりは全くございませんけれども、日本とアメリカがパートナーとしてこのアジア太平洋地域にあるということは、私はしばらくたった後の歴史家の目から見てもこの地域の安定要因であったと認められるのではないのかなと個人としては昔から思っている次第でございます。  それで、韓国というのも、韓国自体の側面に照らしてみますと、この地域における非常に重要な国でありまして、価値の体系におきましても日本と共有する部分というのが非常に多い、民主主義勢力でこの地域にあるということでございまして、韓国との関係はやはり私は重要だと思います。そして、そういう枠組みを持っていることと、それから北朝鮮との今後正常化交渉を進めていって双方に受容可能な合意に至ると、いつの日かそういう合意に至るということが決して矛盾するものだというふうに私どもは端的に言えば考えていないわけでございます。  私は、日朝の正常化交渉とかなんとかという問題については、これは韓国の鼻息をうかがうというようなことまでしているつもりは実はございません。韓国との連携を密にする、それは韓国などというところには米国もあるいは中国も入るのかもしれませんけれども、そういう国々との風通しをよくすることは当然でございますが、それは別に日本北朝鮮に対してとる行動に特定の国が拒否権を持つという意味では全くないというふうに思っております。
  32. 野沢太三

    ○野沢太三君 防衛庁に御質問したいんですが、非武装地帯の近くに三分の二近い兵力を集結して南をうかがっているという話があるわけですが、この間亡命してきたミグの戦闘機の乗員の話では、三日でソウル、一週間で釜山まで征圧する計画があるというような物騒な話もあるわけです。しかし、どうもこの発想は朝鮮戦争当時の発想を何かそのまま拡大延長したような感じを受けるわけで、昨今のようなミサイルが発達した状況では、第一撃の後、直ちに反撃が出るわけですから大変な結果になるということで、今の状況で北の百十万と南の五十五万と米軍の存在を含めた場合のバランスについて、防衛庁はどう考えているのか。そう簡単に三日や一週間で南が制圧されるのかどうかという一つのこの判断。  それから、そういう中で最近の戦争は、もう単に陸軍が取った取られたというんじゃなしに、ミサイルを含めた大変なハイテク戦争だということが湾岸戦の場合でもあるわけであります。その意味で、ミサイル協議というのが一回しか行われておりませんけれども、こういった対話を促進させるということは非常に重要ではないかと思うんですが、平和条約も締結されない中でそういうことができるかどうか。安保対話ということになるわけですけれども、南北、米朝、それから日朝、どんなレベルでもいいんですけれども、場合によっては中国、ロシアを介してもこれはいいと思うんですが、そういった意味での安全保障にかかわる相互交渉、こういったものをもっとやるべきではないかなと、ちょっと努力が足らないんじゃないかと思います。  それからもう一つ、難しいとは思いますが、これは外務省にお伺いしたいんですが、何といってもあの国が閉ざされた国ということが難しくしている原因ですから、例えばラジオとかテレビとか、あるいは新聞が入れられれば新聞、よその世界はこうなっているんだという情報をあの国の皆様に何らかの形でお届けする手段がないのかどうか。東西のドイツが統一された大きな原因の一つ情報の交流というのが先行していたと、こういったことを私どもも伺っておりますが、その点、後でひとつ。
  33. 小池寛治

    政府委員小池寛治君) 最後のミサイル協議の方については、むしろ外務省の方からお答えいただきたいと思います。  先ほどの亡命したパイロット記者会見の中におきまして、北朝鮮軍は先制奇襲を行うための戦闘機を集中配備している、それから爆弾、燃料、補充燃料も十分に確保したといったような発言、あるいは先ほど野沢先生がおっしゃられた、北朝鮮軍は開城、汝山、ソウルを主打撃方向として設定して、釜山まで三段階にわたって、先ほどおっしゃられたように七日間で完全占領する戦略を立てて戦争演習を行っているという発言があったことは承知しております。  しかし、軍事バランスというのをきちんと戦略及び装備すべてを含めて想定することは極めて難しいんですけれども、合理的な判断に基づけば、北朝鮮朝鮮半島を武力によって統一するというか、武力的に制圧するというのは極めて困難で、なかなかそういうふうに踏み切る可能性というのは低いというふうには考えられます。  と申しますのは、確かに奇襲能力というのは持っており、戦車の数あるいは自走砲の数というのは韓国を上回っておりますけれども、質的に、特に空軍力について見ますと、制空権を果たしてとり得るのかという問題、先ほど御説明しました在韓米軍が存在しておる、後方支援能力というのは果たしてあるのかどうか、それから士気はどうなのか、長期戦に耐える能力はどうなのかということをさまざま総合して合理的に考えると、本格的に侵攻するという可能性は乏しいのではないかと考えられます。  他方、北朝鮮のさまざまな行動の中には我々のうかがい知れない面がございますので、何らかの軍事的冒険に出るという危険性は全くないわけではないということで、先ほど冒頭に引用いたしましたけれども、東アジア太平洋戦略におきまして、米軍の存在というのはそういう軍事的冒険あるいは戦争を起こすことを抑止するために存在しているということを特に強調されているというふうに考えております。
  34. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 米朝のミサイル協議につきましては、九四年十月のジュネーブにおけるいわゆる米朝合意、この中で、「双方は政治経済関係の完全な正常化に向けて動く」ということを述べた上で、「米国及び北朝鮮は、各々の関心事項に係る進展に従い、その二国間関係を大使レベルにまで格上げする」という定めがあるわけでございますが、このミサイル協議というのは、これを受けて米国から北朝鮮ミサイル問題につき提起するという形で始まったものでございます。  ことしの四月二十日、二十一日、非公開でございますが、ベルリンの米国大使館の分館、それから北朝鮮の利益代表部でこれが行われました。代表がアインホーン国務次官補代理とリ・ヒョンチョル外交部の米州局長でございました。第一回の協議でかつ二日間ということでございますので、具体的な成果はなかったというふうに聞いております。  そして、アメリカの方からは、ミサイル問題について、輸出規制という問題に加えて開発配備の問題についても取り上げていきたいということを言っているわけですが、開発配備の問題について北朝鮮側が果たして受け入れるかどうかは明らかでない状況のようでございます。  次回協議の日程については、引き続き調整していくということでまだ決まった日取りがあると承知しておりませんが、とにもかくにも協議を継続するんだという姿勢を北朝鮮側も示していること自体は前向きの話ではないのかなと思うわけでございます。帰趨は、今申し上げましたとおりはっきりいたしません。  北朝鮮との間では、なるべく透明性を高めてもらうという観点から、例えば安全保障の分野の絡みで申し上げますと、NEACD、北東アジア安保協力対話と申しますか、そういう枠組みですとか、CSCAPという民間の人同士での交流というような枠組み、これがあると承知いたしております。NEACDの方には中国が非常に積極的に参加をして、そして北朝鮮をいざなってくれてはいるんですが北朝鮮側からの出席がない。他方、CSCAPの方については、北朝鮮側が出席したというふうなことであったと承知いたしております。しかし、これらも限られた窓口、枠組みというべきものなのかもしれません。  情報について、新聞、テレビ、ラジオ、これをどうするかというのは、本当に私、ある意味では不思議なんでございますが、時々耳にする話では、ラジオもなかなか十分にいろんなものがキャッチできる状態ではない、ラジオですからいろんな電波が捕捉できるかというと、そういうふうにはなっていないのだというような話も耳にするわけでございます。それが機械的にどういうふうにすればそうなるのか、私そこはよくわかりません。  そういうわけで新聞、テレビ、ラジオのたぐいにおいてもなかなか周りからの声が届きにくい状況にあるということを言われる中で、少しずつ変わっている面もあるわけでございます。繰り返しになりますが、KEDOの関係で、日本人も含めて現地に参りましたときには相当オープンにサイトと申しますか、場所のあれを見せてくれたとか、そういうところがあるわけでございます。それから洪水支援の関係でも、先ほど申し上げました国際機関の職員の現地立ち入りと申しますか、モニタリングというのが認められているというようなことで、外国人でも地方にだんだん入っていける素地がわずかずつではありますけれども出てきているのかなというふうに思います。日本の国問研、国際問題研究所の代表団が三月に招かれて先方のカウンターパートに当たる機関と交流を行ったというようなこともございます。  私どもも、できるだけそういう側面、どうしたら透明性を高めてもらえるかということを不断に研究、検討、勉強していきたいと思っております。
  35. 高野博師

    ○高野博師君 先ほどの矢田部議員の御意見とも関連するんですが、伝統的にアメリカの外交政策というか対外政策というのは、パワーポリティックスで成り立っているというか、脅威を見つける、そして力の均衡あるいは敵を力で押さえつけるという考え方がもともとある。  冷戦が終わった後、ソ連の脅威がなくなった。そういう中で、アジアの安全保障の大義名分としてやはり脅威を見つけるということで、北朝鮮中国は脅威だという見方をする。それがないと東アジア戦略というのは成り立たない。十万人の軍人を置いておくという理由が成り立たない。また、それがないとアメリカ国民も説得できないということで、新しい日米安保体制というのはこのアメリカの考え方にかなり日本は引っ張られているのではないかなと、私はそう思っています。いずれにしても、中国とか北朝鮮を潜在的な脅威だとかあるいは脅威だというのを強調し過ぎるのはどういうものだろうかなということを私は思っております。これは質問ではありません。私の意見です。  ちょっと加藤局長にお伺いしたいんですが、透明性がない国ということであるいは政府の立場として難しいかと思うんですが、金正日書記をどう見ておられるのか、その指導力というか、あるいはナンバーツーはどなたなのか。  私は、最初、北朝鮮のことを少し勉強を始めた段階では、金正日というのは非常に病弱で愚鈍でリーダーシップのない人かなと思っていたんですが、亡命した康明道とかあるいはいろんな資料等を読んでみると、なかなかしたたかな指導者で、戦略家で、割と柔軟な発想を持っている人かなと。しかし、人間としてはかなり冷酷で猜疑心の強い人だなという印象を持っているんですが、どのようにとらえておられるのか、差し支えない範囲で。
  36. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) そこに入ります前に、私も、今の委員に対するお答えというわけではなく、個人的な感想として申し上げますと、米国のアジア太平洋における位置づけでございますけれども、その国防予算みたいなものも伸びているというわけではなくて、ああいう民主主義社会のもとにおける冷戦後の予算獲得ということがだんだん趨勢的に難しくなっているということではないのかなという感じがいたしております。  したがって、米国の中にもいろいろな声がありまして、米国があらゆる国際紛争に手を突っ込むというわけにはいかないのであって、米国が手を突っ込むべき国際的な状況というものは選択的、セレクティブにしていかなければならないんだというような声も強いようでございます。決して、北朝鮮の脅威というものをいわば大々的に、針小棒大に言っているということばかりではない側面もあるのではないのかなというふうに私は感ずる次第でございます。  なお、金正日さんでございますが、私ももちろん会ったことはございませんし、うわさで聞いていること以外にそれほど知識もありませんので、何となくわからないまま象をなでているのかなという感じがいたしますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、この方は、実際に会った外国人によりますと、要するになかなか頭がいいという感じで、これは昨年末の段階でございますけれども、健康状態も、むくんでいるとかなんとかということが極端に、病的な意味でそうではなかったと。ただ、ちょっとさっきも申し上げましたが、一滴もお酒は飲まなかったということを言っている人がおります。  これは全くほんの一片の情報であって、これをもって金正日さんの健康状態その他、全般を推しはかることはできないと思いますけれども、そういう見方というものが割合まじめに観察する人から聞かれているという事実はあるわけでございます。  そして、あの国の成り立ちからそうなっているのでございましょうか、彼にかわる対抗勢力というものの存在はないと。非常に軍という側面に寄りかかった行動、姿勢という面が目立つようではありますけれども、それなりに国内の政治、軍、その他のいわば総括を彼が行っている、ないしはそれが揺らいでいるという兆候はないというのが一般的なところではないのかなと思います。  ちなみに、済州島における日韓米の三国間の高級事務レベル協議の際、いろんな意見交換、情報交換があるわけでございますけれども、そのときも、どうもやっぱりそういうことであるらしいという感じでございます。それ以上に私ども、これはという情報を持ち合わせているわけではありません。  長く北朝鮮を見てきた人なんかに言わせますと、先ほど申しましたように、二十年間かけて継承を行っているということ、これはすなわち、その中に体制のセーフガードといったような点も含めて、いろいろなことを盛り込んでつつがない継承に持っていったと。周りの人が考えるよりも、二十年という長い年月をかけて丁寧に仕組んでいったシナリオなんで、その辺のところはやっぱり留意さるべき点ではなかろうかという意見もあるようでございます。
  37. 立木洋

    ○立木洋君 加藤さんがさっき、北の脅威論についてはちょっと差し控えさせていただきたいと言われた。思い出したのは、一九七四年でしたか、木村俊夫さんが外務大臣のときに、北からの脅威はありませんと国会で答弁して大問題になって、韓国から大分やっつけられた。そういうことがあったので、脅威がないと言ってもまずいだろうし、あると言ってもまずいかなというふうに思うんです。  しかし、私は、日本の今まで政府がとってきた問題については、日本の安全保障については、朝鮮半島のあり方に極めて緊密な関係があるという立場を日本政府は一貫してとってきたと思うんです。それが間違った方向に、私も矢田部さんの意見に賛成なんだけれども、正しい方向としてその問題が処理されてきたのかどうかという点になると、私はやっぱり疑念があるんです。  最初に問題になったのは三矢作戦ですよ。小池さん、もうあなた防衛庁に行かれて大分たっているんだから知らないはずがないんで、今度のガイドラインの問題だって、朝鮮半島との有事にかかわりがないなんというようなことをおっしゃったけれども、そうじゃないんです。三矢作戦に始まって、それから第六回の日韓閣僚会議まで、朝鮮半島における平和と安全は日本にとって極めて緊要だということを日韓閣僚会議の共同声明で必ず出したじゃないですか。第七回から変わったんですよね。経済重点に援助をして、南の、いわゆる韓国経済的な地位を高めることによって北に対抗していく、そういう立場を補強していくと。あれは浦項製鉄所だったかな、始まったのが、第七回だったと思いますけれどもね。  そしてその後、朝鮮から米軍が引き揚げるという問題になったときに、引き揚げてもらっては困るんだという日本政府はずっと態度をとってきて、いわゆる韓国における米軍のプレゼンス、これを異常に固執する立場をとってきているんです。そういう経緯がずっとあって、今度の日米安保の共同宣言の中で朝鮮についてはきちっと名指しをして出しているんです。  それから、この間のナイ、きょう午前中もちょっと発言したんですけれども、前のナイ国防次官補ですね、彼がこちらに来て話をした中で、あれは記者会見のときだったか、いわゆる朝鮮半島の有事の際に、戦っている米軍に対して支援をできないような国が果たして同盟国と言えるだろうかという発言までナイ氏は行っているわけです。  そういう問題とのかかわりの中で、今アメリカ側としては朝鮮半島の有事の問題に対して日本がどういう態度をとるかということは、準機関紙である「星条旗」、太平洋軍の「星条旗」なんかでも、こういうことをやってもらいたいということが既に数年前から指摘されるというふうな状況にある。だから、そういう状態朝鮮半島の問題というのは極めて深いかかわりを持つものとしてアメリカ側も重視してきたし、日本側も一貫してそういうときに歴史的にそういう態度をとってきた。そういうことを念頭に置いて、やっぱりガイドラインの見直しという問題も重要な一環としてかかわりがあるんだということを小池さんにどうしても言っておきたかったんです。  よく考えて、関係がないなんというようなことを言うということは、幾ら外務省に長くおられて、防衛庁に移ってからの期間より外務省におったときの方が長いなんというようなことを言わないで、そういう歴史も踏まえて、やっぱり関係があるんだ、これは日本の安全の問題を考える上で非常に重要なんだ、だから正しい対処の仕方を朝鮮半島に対してとることは極めて日本のこれからのあり方にとって重要だと。これは日本政府が今まで軍事的に朝鮮半島に関与しようとしたあり方ではない姿勢を私はとっていただきたいと思うんですけれども、加藤さん、小池さん、ちょっと一言ずつ何か所見を述べていただきたいと思います。
  38. 小池寛治

    政府委員小池寛治君) 先ほどの話、若干公式答弁的になるかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたように、ガイドラインの見直しというのは、北朝鮮有事というような特定の事態を念頭に置いているものではないということは再度繰り返して申し上げたいと思います。  しかし、一般論としましては、一般論ですけれども、我が国周辺地域で我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合には、我が国としては我が国自身の平和と安全にかかわる問題として、憲法の範囲の中で事態に応じて適切な対応をとるということは当然であります。平素から何をそのためにすべきか、何ができるのかということについてできる限り具体的に研究、検討していくということは不可欠でありますし、かつ我々公務員の職務だというふうに考えております。
  39. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 私の方からは特につけ加えるということがございません。とにかく、小池参事官が述べられましたように、備えをしておくということは一つ柱としてあると思います。私は、少なくとも朝鮮半島の情勢というのは、それは日本の国益、安定にとって非常に枢要な意味合いを持っていることだと思います。  そこで、何と申しますか、ソフトランディング、本当にふわふわのソフトランディングというのが実現できるかどうか、これはだれにだってわかりませんけれども、少なくとも英語で言うクラッシュというか、破滅的な事態になるということを望んでいる人は実は私はほとんどいないんではないかと思います。私は、むしろそういう角度から、なるべくソフトランディングの中で特にソフトな方向、ソフト度の強い事態の進展、解決というのが得られるということを目指して仕事をしてまいりますという、そういう平凡な結論になってしまうわけでございます。
  40. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  恐らくは、本日の小委員会をもちまして今期国会におきましては最後の小委員会となります。  本小委員会は二月二十九日に設置され、当面、中国・台湾情勢について調査を進め、去る五月十六日に外務委員会に報告書及び提言を提出いたしました。それに基づき、外務委員会で決議が行われたことは御承知のとおりであります。その後、本日は朝鮮半島情勢について小委員会を開きました。  いずれもこうした小委員会活動を通じまして、外交と世論とのよき仲介者としての役割を一定程度担い得たものと考えております。  条約審査の合間を縫っての小委員会活動でございましたが、おかげさまをもちまして大変大きな成果を得ることができました。小委員長といたしまして、この間、皆様方の御指導、御協力を厚く感謝申し上げます。ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十九分散会