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1996-04-10 第136回国会 参議院 外務委員会アジア・太平洋に関する小委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十日(水曜日)    午後三時二分開会     ―――――――――――――    小委員異動  四月四日     辞任          林  芳正君  四月九日     補欠選任        笠原 潤一君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     小委員長        武見 敬三君     小委員                 大木  浩君                 笠原 潤一君                 野沢 太三君                 高野 博師君                 寺澤 芳男君                 川橋 幸子君                 照屋 寛徳君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 椎名 素夫君                 佐藤 道夫君                 矢田部 理君     政府委員         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君     事務局側         常任委員会専門         員       大島 弘輔君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○アジア太平洋に関する件  (中国台湾情勢について)     ―――――――――――――
  2. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) ただいまから外務委員会アジア太平洋に関する小委員会を開会いたします。  まず、小委員異動について御報告いたします。  委員異動に伴い、昨日、笠原潤一君が小委員に選任されました。     ―――――――――――――
  3. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) アジア太平洋に関する件を議題といたします。  まず、政府から説明を聴取いたします。外務省加藤アジア局長
  4. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) ただいま御紹介いただきました外務省アジア局長加藤でございます。  小委員長を初め小委員各位に対し、現下の台湾海峡地域情勢及び台湾をめぐる問題に関する我が国政府立場を御説明申し上げます。  台湾海峡地域の平和と安定は東アジアの平和と安定にも重要な意味を持っており、我が国としても情勢の推移に大きな関心を払ってきたところであります。現在の情勢について述べる前に、これまでの台湾海峡情勢を簡単に振り返ってみたいと存じます。  近年、中国政府台湾当局との関係は、緊張要素をはらみながらも、おおむね安定的に推移してまいりました。特に、一九八七年に台湾当局戒厳令を解除し、また住民中国大陸親族訪問を解禁して以降、海峡両岸の間においては人的往来や投資、貿易等が活発に展開されています。人口約二千百万人の台湾において、昨年までに中国を訪問した住民の延べ数は約八百四十万人に上ります。また、香港を経由する中台間の貿易往復で昨年二百十億ドルに達しましたが、これは九〇年の五倍の伸びを見せております。ちなみに、昨年の日中貿易額往復で約五百八十億ドルでございます。  このような交流進展と並行して、台湾海峡両岸では九〇年代初めに実務面を担当する民間窓口機関がそれぞれ設立され、さまざまな問題について話し合いを積み重ねてきました。しかしながら、台湾指導者がいわゆる実務外交を展開するようになると中国側不信感を高め、特に昨年の夏に台湾李登輝総統米国を訪問したことを契機として、中国台湾当局政策中国からの独立を進めようとするものであるとして強く反発し、民間窓口機関間の話し合いは中断され、両岸関係緊張の度合いを深めることとなりました。  現在の状況でございますが、台湾をめぐる問題に対し中国が従来から表明している基本的立場は、一国二制度による平和的統一に向けてあくまでも努力するが、外国勢力台湾問題に介入したり、また台湾独立を目指す場合には武力行使を放棄しないというものであります。  昨年一月に江沢民主席が発表した台湾問題に関する八項目を内容とする談話では、中国はこのような基本的立場を確認しつつ、中国人中国人を撃たないといったやわらかい表現も見られましたが、李登輝総統が訪米し、台湾での総統選挙が近づくにつれて、最高首脳部発言は極めて厳しいものへと変化していく中で、選挙間近の三月に入り、中国軍台湾周辺においてミサイル発射訓練海空軍による実弾演習陸海空軍統合演習といった大規模軍事演習を相次いで行いました。  この間、我が国として、台湾に対し直接の武力行使が行われるとの差し迫った状況にあるとの情報には接しませんでしたが、台湾海峡緊張は一挙に高まり、我が国を含む東アジアの平和と安定の観点から憂慮される事態が生じました。  中国側は、今回の演習の対象は選挙でも民主化でもなく、台湾独立に断固として反対するためであると説明していますが、軍事的圧力を用いてその立場台湾に伝えようとする今回の中国やり方には我が国として疑問を呈さざるを得ず、また今回の演習中国意図したような効果をもたらしたかどうか定かではありません。さらに、今回の中国やり方には、東南アジア諸国を初め中国周辺諸国も少なくとも戸惑いを覚えているのではないかと考えられます。  次に、台湾問題に対する我が国基本的立場でありますが、これは日中共同声明において表明されているとおり、中華人民共和国政府中国の唯一の合法政府であることを承認するとともに、台湾中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重するというものであります。このような基本的立場に立って日中関係を発展させ、また台湾との間に非政府間の実務交流を進めてきたことは東アジアの安定と繁栄に大きく寄与してきたと考えており、我が国としてこの基本的立場を今後も堅持していく方針に変わりはございません。  同時に、我が国として東アジアの平和と安定の観点から、台湾をめぐる問題が平和的に解決されることを一貫して強く希望してきておりまして、バンコクにおける日中首脳会談及び外相会談において、関係当事者平和的解決という基本的な考えに立って行動することを強く希望していることを明確に中国側に対して伝えました。また、その後、中国が前述した軍事演習を実施する過程において、私から二度にわたり在京の中国大使館に対し、総理及び外務大臣が表明した我が方の考え方を踏まえて、我が国の懸念を申し伝えました。これに対し中国側は、台湾問題に関する原則的立場を述べつつ、当該演習通常演習の一環である旨応答しました。また、我が方としては、航空、海運の安全などにつき、この申し入れに加えて在北京大使館を通じて別途申し入れを行った経緯があります。  台湾選挙を経た今後の展望でございますが、台湾において先月二十三日に初めて民選の指導者が誕生したことは、まことに意義深いものがあると考えています。台湾における選挙が終了した今日、我が国としては海峡両岸の関係当事者が現在の困難な局面を乗り越え、台湾をめぐる問題の平和的解決に向けた方途を見出すことを強く希望するものであります。  去る三月三十一日には日中外相会談が長時間にわたり行われましたが、その際、池田大臣から銭其シン副総理外交部長に対し、台湾をめぐる問題に対する最近の中国対応の仕方の影響もあって、日本国民中国への親しみが減じていることを心配している旨指摘の上、台湾海峡情勢に関する我が国内外の見方を率直かつ明確に伝えた次第であります。  中国では、現在、江沢民主席中心とする集団指導体制のもとに政治運営が行われていると見ておりますが、台湾問題は中国にとって主権と統一に係る根本問題であり、予見し得る将来、中国指導部がこの問題に対する基本的立場を大幅に変更することは考えられません。しかしながら、台湾における選挙の後、中国指導者公式報道は、従来からの基本的立場を堅持しつつも、選挙前に見られたような激しい調子を控えているように見受けられます。また、台湾においても、中国との話し合いに向けてさまざまな検討が行われているとの話も耳にいたします。  台湾海峡岸関係の将来については今なお決して楽観するわけにはまいりませんが、台湾海峡両岸の当事者が、昨年夏までの間、両岸関係がおおむね安定的に推移してきたことが東アジア全体の安定と繁栄に少なからず寄与してきた事実を想起して、両岸関係安定化に向けた努力を早急に開始することが強く望まれる次第であります。  なお、明年七月に中国返還される香港については、一国二制度のもとで現行の諸制度が最低五十年間は変更されず、外交防衛分野を除き高度の自治権を有することとなりますが、我が国としては、返還後の香港がよく整備された法制度のもとで自由で開かれた体制を維持し、安定と繁栄を続けていくことを期待しております。  次に、米国動向についてでありますが、米国国内法において、台湾に危険が生じた場合にそれに対処するために大統領議会がとるべき適当な措置について決定する旨定める一方、中国との間の三つのコミュニケにおいて、一つ中国一つ台湾といった政策をとらないことを明確に表明しております。このような枠組みのもとで、米国我が国と同じく台湾問題の平和的解決を強く求めていると承知しております。台湾選挙を目前に控え中国軍事演習が本格化した時期、米国は二隻の空母を含む海軍部隊台湾近海に派遣いたしましたが、この米軍行動予防行動として通常訓練を行いながら監視活動を行うことを旨としたものであったと承知しております。  米国は、中国軍事演習を挑発的かつ危険であるとする一方、中国との間に建設的関係を築くことは米国国益にかなうものであり、そのような米中関係台湾の安定と繁栄にとっても根本的に重要な要素であるとの認識を示しております。来る四月十九日にはハーグにおいて米中外相会談の開催が予定されておりますが、米中関係をこのような方向に進める上でこの会談が成果を上げることを期待いたしております。  日米間では、台湾海峡情勢を含むアジア太平洋地域の諸問題について、さまざまなレベルで広範かつ緊密な対話意見交換を行ってきております。日米安保体制日米同盟関係の中核であるとともに、アジア太平洋地域の平和と繁栄基盤をなすものであります。御案内のとおり、クリントン米大統領来日の際には、日米安保体制のこのような重要な役割を改めて確認する共同文書を発出し、二十一世紀に向けた日米同盟関係あり方につき内外に明らかにしていきたいと考えております。  このような日米安保体制信頼性の向上、またこれを基盤とした日米間の協力強化は、アジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠の要因であります。このような日米協力強化日中関係あるいは米中関係進展を阻害するかのごときものでないことは申すまでもありません。  日米両国とも、この地域の安定と繁栄にとって中国が担う役割重要性を十分認識し、今後とも引き続き、さまざまな問題に関し中国との協力関係を発展させていく考えであります。さきの日中外相会談において池田大臣が、日米安保体制重要性を確認することは日中友好協力関係の促進に矛盾するものではない旨述べたところがございますが、まさにこの考え方を示したものにほかなりません。  二十一世紀アジア世紀と言われております。しかしながら、発展を続けるアジアの裏面には、食糧とエネルギーの不足、人口問題、環境問題等を抱えたアジアがあります。このような客観情勢の中で、中国の今後の動向いかん地域の平和と安定に必ずや大きな影響を与えずにはおかないでありましょう。  政府としては、中国が改革・開放政策の推進をみずからの国益に最も資するゆえんであるとの判断を堅持し、我が国がこれに実質的な協力を行うというシナリオが地域の平和と安定の維持のためには現実に最も望ましいものと考えております。  今後の日中関係あり方についてはさまざまな議論があり得ると思います。五月二十日には台湾総統就任式が行われます。台湾への米欧からの兵器の供与も今後実施の段階に入ります。香港返還は明九七年七月一日に予定されています。その間、中国核実験、CTBTへの対応、人権問題、海洋法条約に伴う問題米国との間のMFN更新問題等々が世界の注目を集めずにはおかないでありましょう。我が国安全保障にとって、米国との同盟関係を堅持しつつ、いかに中国との間に建設的なパートナーの関係を維持し得るかが最重要の課題となりましょう。  日中間では、政治安全保障、経済その他の分野での対話が行われておりますが、これを一層深める必要があります。それと並行して、既存の多数国間の枠組みの中における対話を推進することが重要であります。さらに、時宜に応じ日米中三者間の政策対話を推進していくといった必要もございましょう。結局、こうした対話の積み重ねと組み合わせが台湾海峡情勢を含む東アジアの平和と安定に寄与するゆえんであることは言をまちません。  台湾をめぐる問題についての政府基本的立場は既に述べたとおりでありますが、こうした考え方について本委員会の御理解、御支援、そして御批判、御示唆を承りたく、よろしくお願い申し上げます。
  5. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) それでは、次に防衛庁秋山防衛局長
  6. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 防衛庁秋山でございます。  お手元に「中台情勢について」という資料をお配りしてあるかと思いますが、それに沿って私の方から、中国が三月に台湾付近で実施した演習の中身と、それから中国軍台湾侵攻能力ということにつきまして御説明させていただきたいと思います。前者につきましては既にこの委員会で別の方からお話があったやに私も聞いておりますが、政府としてといいますか、防衛庁としてこのように認識しているということを簡単に御説明させていただきたいと思います。  まず、演習の概要、四ページに図が出ておりますけれども、三月八日から十五日まで台湾近海の二カ所に航行制限海空域を設定いたしまして、八日から十三日にかけて第二砲兵部隊ミサイルを四発発射しております。ミサイルはいずれもM9と認識しております。着弾地は、一、三、四発目が高雄の西方、二発目が基隆の東方と認識しております。  何枚かめくっていただきますと別紙2というのがございますので、ごらんいただきたいと思います。  M9の飛しょう概念図でございますが、我々の理解するところでは、大体射程距離が六百キロというミサイル認識しております。通常でありますと、ここに書いてあるような飛しょう概念、つまり高度百五十キロで飛しょう時間約六、七分という認識でございます。  しかし、今回中国が撃ちました四発は、いずれも我々の理解するところでは、かなり高い仰角といいますか、上の方に撃って、射程では四百五十キロ強という形で発射しているというふうに認識しております。ミサイル関係専門家によりますと、非常に着弾地の精度を高める撃ち方というような認識をしているところでございます。ある意味で、そらしてはならないといったような撃ち方ではなかったかというふうに理解しております。  それから、また資料の一ページを見ていただきますと、「海・空軍実弾演習」というところでございます。三月十二日から二十日まで福建省南部沖航行制限海空域を設定いたしまして、原子力潜水艦も参加いたしました各種艦艇あるいは各種作戦機の参加による実弾演習が行われた海空合訓練という認識をしております。空中ミサイル射撃訓練、対地あるいは対海爆撃訓練等が実施されたと見ております。悪天候影響等によりまして、十五日以降はかなり訓練が小さかったと考えております。  それから三番目でございますが、三月十八日から二十五日、総統選挙の日をまたいでの陸海空統合演習福建省北部沿海部及びその沖合に航行制限海空域を設定してなされた。しかし、これも悪天候影響等がありまして、大規模演習は実施されなかったという認識をしております。  二ページを見ていただきますと、その後の状況でございますが、我々の認識は、中国軍一連演習を終了して、台湾正面に集結していた一部の部隊がおのおの基地に帰還をして、ほぼ集まってくる前の状況に戻っているという認識をしております。  米国対応でございますが、今、アジア局長からも説明がありましたように、空母インディペンデンス及びニミッツを台湾海域に派遣いたしておりまして、国防次官補代理のキャンベル氏の発言にありますように、事態を重大に見ている米軍一つ行動であるという認識を我々も持っております。  議会対応は、御案内のとおりでございまして、三月十九日に下院での決議案、三月二十一日に上院での決議案といったようなものが採択されているわけでございます。  中国側の反応は、これも御案内のとおりで、ここに書いてあるとおりでございますが、李鵬首相あるいは外交部のスポークスマンの発言といったようなものがあるわけでございます。  防衛庁対応といたしましては、台湾付近で実施された中国軍一連軍事演習動向について、これは当然十分注意を払わなければいけないという認識のもと、航空自衛隊海上自衛隊航空機等によります情報収集体制強化いたしたところでございます。当然のことながら、その他の関連組織における所要の勤務体制をとったところでございます。  それから、三ページを見ていただきますと、「中国軍台湾侵攻能力」というタイトルになっておりますが、一言で申し上げますと、中国軍規模的には大変大きいものがございますが、質的には旧式の装備が大変多うございまして、台湾侵攻能力は限定的という認識をしております。  もう少し詳しく御説明させていただきますと、最後の七ページになりますが、中国台湾軍事力比較した表がございます。これはミリタリー・バランスあるいはジェーン年鑑等をベースにいたしまして作成した表でございますが、まず上の方を見ていただきますと、中国には当然のことながら台湾にない核戦力というものを持っております。ICBM若干基、それからよく言われる中距離弾道ミサイル百基前後、そして短距離弾道ミサイルとして今回四発演習で発射されたM9といったようなものがあるわけでございます。こういった装備台湾にはございません。  陸軍について見ますと、兵力では中国が約九十個師団台湾が十二個師団、人員で二百万強と三十万人程度、こういう比較でございます。数はわかりませんが、当然中国地対空ミサイルがあるということと、台湾に、後ほどミサイル対処能力というところで御説明したいと思いますが、地対空ミサイルとしてナイキ四十基、改良ホーク百基、それから台湾が独自に開発いたしました天弓、これは数はわかりませんが今配備中という認識をしております。  海軍でございますけれども、艦艇につきまして、中国が百万トンの一千隻、台湾が二十万トン強の約四百隻ということでございますが、中国の場合、小さい船を入れますともう少し多いのではないかという見積もりをしております。  しかし、中を見ていただきますと、駆逐艦護衛艦中国が五十二隻、台湾が三十五隻。潜水艦の数は中国の方が非常に多いわけですが、戦時中のドイツのUボートから発展してきたような小さな潜水艦がたくさんあるということでこれだけ大きな開きになっております。両用戦艦艇を見ていただきますと、中国の場合、小さいものを入れますともう少し多いと思いますけれども、ミリバラ等比較では台湾の方が多いような数字になっておりますが、ほぼ拮抗しているのではないかという見方をしております。  作戦機の場合、台湾にはここの分類では対潜哨戒機だけでございますが、中国の場合、海軍爆撃機戦闘機を持っておりますので、下の方で合わせて見ていただきたいと思います。  空軍では、台湾爆撃機を持っていないというところが中国と違うところでございまして、戦闘機中心でございます。全体で四百機強。それから、数で言いますと、海軍航空機も入れまして中国は大変多くの作戦機を持っている。特に、台湾と異なりまして爆撃機を所有しているということでございます。  ただ、これは台湾中国全体の比較でございまして、中国台湾侵攻能力意図は別にいたしまして侵攻能力というものを見ます場合には、当然中国のこれだけの戦力が全部台湾に行くということはあり得ない、中国人口、国土それから地政学的に言いましても、この一部が行くということだと認識しております。  例えば、中国陸軍について考えますと、幾つかの軍区があるわけでございますけれども、台湾に面している軍区というのは三つほどでございまして、その軍区の兵力を例えば積み上げて見るといったような手法によりまして、一体陸軍海軍空軍中国台湾侵攻兵力というのがどのぐらいであるかと。一つ見積もりでございますけれども、非常に雑駁な言い方をいたしますと、潜水艦を除きまして、中国台湾侵攻能力というのは台湾を一とした場合に二ないし四倍といったような見積もりを我々はしているところでございます。  その中で、台湾中国の間に海峡があるわけでございますから、制空権、制海権、この辺が非常に大きな課題になるわけでありますけれども、中国にとって一つ大きな問題は、海軍における海を渡って侵攻する能力があるかどうかというあたりに非常に制限的なものがあるのではないかといったような見積もりをしているわけでございます。  いずれにいたしましても、これは意図は別にいたしまして、純粋に配備状況あるいは装備状況から中国台湾への侵攻能力について見ますと、我々の見方は今申し上げたようなところでございます。  ところで、台湾弾道ミサイル対処能力というところでございますが、これは資料の三ページのところに簡単に書いてございますけれども、現時点では弾道ミサイルに対処することを想定したシステムを保有していないというふうに我々は見ております。  先ほどちょっと御説明いたしましたように、今台湾が所有している地対空ミサイルナイキ改良ホーク、それから台湾が独自に開発したと言われる天弓というところでございますが、いずれにいたしましても今回中国が発射したミサイル、あるいはそれより射程の長いミサイルに対する対処能力というものは保有していないというふうに見積もっているところでございます。  参考のためでございますが、三ページにございますように、しからば日本弾道ミサイル防衛はどうなのかということでございますが、これも率直に申し上げますと、我が国弾道ミサイルに対処することを想定したシステムを保有していないということでございます。一般論として、我が国防衛に関しまして、我が国自身防衛力日米安保体制と相まって、すきのない防衛体制を構築することによりまして、この弾道ミサイルによる攻撃といった事態も含めて、我が国に対する侵略事態を生じさせないことを基本としているわけでございます。  最後に書いてありますように、弾道ミサイル防衛の問題についてどう考えるかということは、我々にとりましても大変大きな課題であります。かかる観点から、我が国としては弾道ミサイル防衛に関しまして、米国協力も得て現在鋭意研究をしているところでございます。  冒頭の私の発言は以上で終わらせていただきます。
  7. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) 以上で政府からの説明の聴取は終わりました。  ただいまの政府からの説明に対し質疑を行います。  なお、質疑はお一人往復五分以内でお願いをいたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 野沢太三

    野沢太三君 まず、アジア局長さんにお願いしたいんですが、台湾の存在というのは中国にとって非常に大切なものだと思うわけです。いずれ自分のところと一緒になるんだと言っている以上は、やはり我々としてはこれは平和的にやってほしいと。一つのモデルが香港ではないかと思うわけですが、その香港で一国二制度が可能ならば台湾でなぜそれができないか、武力までなぜ持ち出すかということですが、香港台湾の違いといいましょうか、これをどうお考えになりましょうか。お考えがあったら聞かせてください。  それから、防衛局長さんに先ほどミサイルのお話を伺いまして大変参考になりました。私どもも、台湾侵攻ということになれば、制海権、制空権という問題がありますが、それを越える弾道ミサイルの存在というのは大変な脅威でありますね。ところが、中距離といいますか、この程度の距離と時間、六ないし七分ということで有効な防衛能力というものが可能なのかどうか。それがもし可能ならば、これは大変な脅威を減殺できる。その意味でのBMDの研究というのは大変有意義ではないかと思うんです。日米はいいんですが、その場合に台湾は仲間に入ってくるかどうか、要するにBMDの研究成果を台湾も備えられるか、この点を御判断いただければありがたいと思います。  それから、折田さんがおいでですが、日米安保の存在というものは中台関係の安定という点でも相当な寄与があるのではないかと私ども見ております。今回の再確認、再定義を進める場合でもこの辺は当然視野に入ると思うんですが、いかがなものでしょうか。これ、一問ずつ簡潔で結構です。
  9. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 台湾香港の違いということでございますが、香港の場合には、中国から逃れた人たちがそこに居ついてそこでイギリスの施政下に置かれてきたということがあって、これが今度イギリスから中国の方に戻る、こういう因果関係になっているんだろうと思います。そういうことを反映してか、香港中華人民共和国の言う一国二制度という基本方針を受け入れているということがまず出発点においてあると思います。  他方、これに比べて台湾の方は、かつて中華民国ということで一九七二年の共同声明ができるまで、すなわち日中国交正常化が行われるまで日本との間に外交関係があった、その他の国との間にも外交関係があったような国でございまして、そして大陸からある意味での遮断がなされてから相当長期間今のような姿で来ているということがあり、中華人民共和国の言う一国二制度という制度の中にみずからが入るということを受け入れていない、ここが大きな違いだろうと思います。
  10. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) ミサイルについての対処能力といいますか、防衛システムということについての御質問でございました。  私の理解するところでは、ミサイルにいろんな種類がございますけれども、大陸間弾道弾ミサイルも含め、それから今議論の対象になっているミサイルも含め、弾道ミサイルに対する有効な防衛システム米国も含めてまだ開発できていないという認識をしております。特に今御指摘のありました飛しょう時間がいわば十分以内といいますか、五分をちょっと超えるような短時間のものについての防衛システムというのは、これはまずその一点だけ取り上げてもなかなか難しいという要素がございます。  しかしながら、現実問題として世界にいろんな種類の弾道ミサイルがあって、それが間違いなく脅威になっていることは事実でございますので、それを防衛するシステムにつきまして、これは個々の国の地政学的な状況によって異なると思いますし、いろいろな装備面の水準でも異なると思うわけでございますけれども、その研究はこれは大変喫緊の課題ということで、最も研究の進んでいる米国協力も得て現在その研究を進めているということでございます。  我々が今進めておりますBMDの共同研究につきまして、御指摘のありました台湾についての考慮というものは全く念頭にございません。
  11. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 日米安保条約と中台関係ということで申し上げますと、安保条約は別に中国に対抗するものではございません。日本もアメリカもこの台湾の問題が双方の当事者の間で平和的に解決することが必要であるというふうに考えておりますし、中国アジア太平洋の平和と安定に建設的な役割を果たしてくれることが重要であるという考えを持っておりますし、この地域の平和と安定のためには中国との協力関係を進めることが重要であるというふうに日本もアメリカも考えているんだろうと思います。  そこで、日米安保体制が非常にしっかりしていて、アジアにおいてアメリカのプレゼンス、関与ということがあるということにつきましては、これは私のあるいは私見かもしれませんが、中国台湾問題を解決するに当たっていろんなことを考える際に、政策のいろんな選択をする場合に、やはり日本、アメリカがそういう考えに基づいているということが入ってくるんだろうと思います。  そういうことは、中国台湾の問題を解決するときに直ちに武力に訴えるとかなんとかということではぐあいが悪いんだと、そういう抑制的な効果を果たすのではないか、日米間がしっかりしていれば中国はより慎重になるのではないか、そういう意味で私は日米安保体制というのは中台関係平和的解決に大きな役割を果たしているのではないかというふうに思います。
  12. 高野博師

    ○高野博師君 加藤局長にお伺いいたします。  中国外交政策というか外交戦略の一環として大中小三つの三角形の関係があるというのをちょっと聞いたんです。一つの小三角形というのは中国台湾香港関係、それから中トライアングルは中国とASEANとNIES諸国、それから大三角形が中国とアメリカと日本、この三つがある。この大中小が大きくなるほど中国にとっては重要性を持っているということ。それで、この小三角形の台湾香港との関係についてはむしろ国内問題であるから、武力行使しようが一国二制度をとろうが何をしようが次元の違うアメリカとか日本は口出しはやめてくれという、そういう態度をとっているということを聞きました。  それで、日本との関係も、日本中国脅威論とかなんとかというのをとることを含めて、この三つ関係を非常に注視しなくてはいけないんではないか、特に中国の場合は原則がはっきりしているものですから。こういう外交戦略があるのかどうか、私はわかりません。こういうものがあるというのを聞いたものですから、局長のコメントをお願いしたいと思います。  それから防衛庁秋山局長には、中国の軍部というのは国際交流がほとんどない、したがってその考え方とか視野はどちらかというと狭いというのを聞いたことがあるんです、世界をよく知らないと。ほかの海軍とかの場合は国際的な交流をやっていて、非常に緊密な関係を持っている。しかし、中国の場合は全くそれがない。そういう意味では問題が起きたときに情報等もなかなかとれないということがあって難しいと。この辺についてどう思われるか。  以上二つです。
  13. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 今、先生が御指摘になられました三つの三角形というような文言ないし表現での政策の表明というのは、公式には行われていないというふうに承知いたしております。  香港台湾については国内問題である、中国の内政問題であるという立場は極めて明確なものがございまして、これについては、先般、銭其シン副総理外交部長が来日しました折にも、その原則的な立場を改めて強調して言った経緯があるわけでございます。  中国にとって米国日本との関係はもちろん非常に重要なものであるだろうと考えます。そして、我々に対しても中国台湾問題は国内問題であるということを申すわけでございます。他方において、中国台湾海峡においてとる行動いかんによっては、それは国際的な影響というものをいわば不可避的にもたらすことがあり得ると。それを国際的な側面、すなわちこの地域の平和と安定に対する影響という観点から我々がそれを取り上げて我々の立場申し入れるということは、これは今の中国考えていることと別に矛盾することにはならないだろうというのが私たちの考え方でございます。
  14. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 中国の軍部の国際的な交流といいましょうか、そういう点についての御質問でございます。  これは私たちから言うのもなかなか難しい問題で、御質問についてのお答えになるかどうかわかりませんが、東西冷戦下におきましては、中国中国で東側との防衛交流は頻繁であっただろうと思います。当然そのとき西側は西側で交流は頻繁であったと。しかし、その時点のときを考えてみますと、我が国にとって東側との防衛交流というのはまずほとんどなかったということですから、冷戦下においての状況は東と西に分かれていたということであろうかと思います。もっともトップの方でいろいろ交流はあったかと思いますけれども、一般的にはそういうことでありました。  冷戦が終えんいたしまして、ロシアですとか東ヨーロッパがある意味で西側との交流が非常に頻繁になったというのと比較いたしますと、中国が西側との交流で相対的におくれているという面は現象としてあろうかと思います。しかし、当然のことながら、我が国としても中国との交流、そういった面で大いにこれは意を用いていかなくちゃいけないし、中国側にもその意図は十分あると思います。  この一月にアジア局長とも北京に参りましてポリティコミリタリー、安保対話というものをやってまいりましたけれども、交流については大変積極的でございました。御案内のとおりARFによるある意味での多国間の安全保障対話、ここにも中国は参加してきているということでございますので、それほど閉鎖的とは私は思っておりません。
  15. 高野博師

    ○高野博師君 ありがとうございました。
  16. 立木洋

    ○立木洋君 加藤さんでも折田さんでもどちらでも結構なんですけれども、アメリカと中国が国交正常化したのは一九七九年一月一日からでしたが、その後、台湾関係法が国内法として成立したんです。一九九四年八月にこの台湾関係法がアメリカで改正されました。そして九月七日に新台湾政策というのがアメリカで決定されております。その当時、アメリカの新聞等はアメリカの台湾政策が根本的に変わったということを各紙で一斉に報道されているわけです。アメリカでは確かにこの問題については経済、文化の交流強化するんだというふうなことが提起されていましたけれども、内容を見てみますと、国交を正常化する過程の中での米中関係とさまざまな点で異なっている点がある。  その前に、アメリカの上院の会議においては、いわゆる台湾の国連加盟を全会一致で支持するという決議がされました。それから関係閣僚の交流、訪問をより積極的に推進すると。国家関係がないにもかかわらず投資貿易協定ですか、これが締結されるというふうな事態もありましたし、それから台湾が最も望んでいた台北という名称を加えて台北経済文化代表部というふうに名称が変えられたり、さまざまな経過があります。そして、武器の提供についてもそれまでの経過とは異なった状態が生まれてきている。  このアメリカの台湾政策の変化ということを日本政府はどういうふうに評価してこられたのか、そして一九九四年以降それに対して日本としてはどういうふうな対応をされてこられたのか。これが一点です。  もう一点は、台湾の問題というのは中国の国内問題であり、中国一つの省だと。ですから国内問題だという点についてはもちろんそれはそうなんですけれども、だからといって武力で威嚇を加えるということが許されていいはずが私はないと思う。だから、中国のそういう態度については当然これは批判されてしかるべきだろうというふうに思います。  先ほど秋山さんの方でおっしゃったが、空母二隻を中心とする十七艦船が出ておりますし、飛行機にしますと百四十機が周辺地域で警戒態勢に入っているという状況にあるわけです。これらについては、台湾内部においても、あるいはガリ事務総長も、これはアメリカの過剰介入じゃないか、もっと関係諸国は自制すべきだというふうなことでガリ事務総長も声明を発表しているという状況があるので、アメリカの態度についてもいかがなものかと、極めて私も批判的な考え方を持っております。  ですから、こういうふうな状態の場合、台湾住民の意思も含めて中国の人々が自主的に平和的な方法で一つ中国という問題を解決していく、これは自主的にやっぱり行われるべきだと。その場合に日本としては、平和的に解決するためにはどういう対応考えられるのか、今後の政策の問題として考えていただきたい。  この問題で特に問題になるのは、沖縄が今問題になっておりますけれども、先般アメリカが発表した東アジア戦略報告の中には、中国について一つの項目を割いて述べております。それから、日本の新防衛大綱についても、中国を当然念頭に置いたと思われるような記述があります。核戦略を含む大規模軍事力の存在に言及しております。  そういうふうなことを考えていきますと、安保問題の再定義ということが今問題になって、それが強化されていくということになると、自主的、平和的に解決するという日本の主張していることと異なった事態が生まれてくるんじゃないかと思うんです。今度クリントン大統領が来たときに、その問題についての矛盾がないようにどういうふうに対応されるのかという点についてもひとつお答えいただければありがたいと思います。
  17. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) まず、事実関係そのものから申しますと、立木先生が指摘されました九四年夏の新台湾政策と言われるものは、実務面での高官の交流の活発化でありますとか事務所の名称の変更、こういうものでありまして、これは三つの共同声明の枠内に入る措置であるというふうに説明されているというふうには思います。ただ、そこの背景と申しますか、規定と申しますか、そこに台湾に対するある種の思い入れみたいなものは見られるわけでございます。  私は、その辺の事情を決してつまびらかにするわけではございませんけれども、例えば昔アメリカの政府にいた人なんかが個人的な見解として言っているものの中に、一九七〇年代、アメリカ、日本は中華民国との間の外交関係を切って、そして中華人民共和国との間に国交の正常化を行うということがございました。そのときのアメリカの政府あるいは社会の中に、台湾というのはある種腐敗した政権で余り将来の展望の開けない国であろうという見込みみたいなものがあった。ところが、日本、アメリカなどとの国交が切れた後、台湾というのはまさに自力によって経済の成長を達成し、そして東洋世界では相当な民主化というものを達成した。  アメリカは、建国以来自分たちの国をまとめていく一つのテーマといたしまして、あるいは柱石といたしまして民主主義ということを重要視していること、これは多くの人々の想像を超えたものがあるだろうと思います。台湾民主化というものに焦点を合わせてみれば、アメリカの議会の中でこういう動きがあったということは、それは素直に結びつくところではないかと私は考えるわけでございます。そういうことが背景にあっての動きだろうと思います。  安保との関係については北米局長の方から申し上げます。
  18. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) クリントンさんが来られるに当たって、今まさしく日米安保に関する共同文書の作成の作業をやっている真っ最中でございます。二十一世紀に向けた日米安保体制あり方について考え方を明らかにしていきたいということでやっておるわけでございますが、まだでき上がっておりませんで、アメリカ側と調整中でございますので、余り立ち入ったコメントをする段階ではないことをお許しいただきたいと思いますけれども、アジア太平洋地域安全保障状況に対する日米認識というのが当然入ってくることになろうかと思います。  その際、私どもは、中国についてはやはり中国が肯定的、建設的な政策をとることがアジアの平和と安定にとっては非常に重要である、そういう政策をとることを慫慂するような、また日本もアメリカも中国との協力関係を深めていくことが大事であるという観点から、そういうことを重要視しているという点を踏まえながら文章が練られていくことになろうかというふうに思います。
  19. 笠原潤一

    笠原潤一君 本当は韓半島をめぐる問題でちょっとお尋ねしたかったんですけれども、きょうは中台情勢ということに絞られております。私は板門店へ一九七五年に実際あの中に入った。ですから状況を知っていますから、今のこの韓国と北朝鮮の問題について本当を言えば少しお聞きしたがったけれども、それはあすのあれに回させていただきたいというふうに思います。  一つアジア太平洋に関する、特に中台の問題についてですが、大分冷却してきたものですから私どもも非常に安心をしているわけです。  考えてみますと、アメリカがどうして台湾に肩入れするかというのは、先ほどの立木議員の話じゃありませんが、台湾関係法を結んだ。その時点、ちょっと古い話ではありますが、もともとキッシンジャーが隠密裏にインドから入っていってあれをやったことについて、結局はニクソンは再選をにらんでやったわけですよ、非常にいろんな問題があったから。ですから、アメリカがいろんな問題で中国を認めたことが大きなとがになっていることは事実なんです。  したがって、日本もばたばた慌てて、実際田中角栄さんも行って、もうあのときは本当に角さんも知らずに入ったという話もあるけれども、あのときのいろんな状況を聞いてみますといろいろあって、結果的にはどうもそれが足かせになって、今、日中も中台も大変いろんな問題を抱えておることも事実だし、歴史の事実です。もう二十年たってしまったんですから今さらこれを言ってもしょうがない話ですけれども。   ですから、アメリカの中で台湾を呼ぶときに、台湾独立した国として呼んでいる連中は今なお圧倒的に多いわけです、地方へ行っても。それから同時に、彼らは台湾のことを何と言うかというと、フリーチャイナと言っているんですね、自由中国とか平気で言っているんだから。中国には二制度がある、こういうことを中国は言っているけれども、アメリカの大部分の人たちはそういうことを言っているわけです。  したがって、これからアメリカがどういうふうに出てくるか。クリントンさんが日本へ来て橋本総理とどういうお話をされるか知りませんが、サンタモニカの会談後、急速にこうなってきて、大分変わってきたんですから、一応その点はやや安心して、クリントンさんとこの問題はうまく話がいけそうではないかと思うんです、今の状況で見ますとね。そういう点で言えば、私は今の状況としては深刻さを一時的に脱しておると思う。  台湾の問題でアメリカがなぜ台湾ストレートの中ヘニミッツをやったかといえば、本当はチベットとかいろんな問題にもっと介入すべきだったけれども、チベットとかああいう辺境の民族の問題は遠過ぎて、結果的に手を出せなかったということもあろうと思うんですよ。今回の台湾というのは本当に近いわけで、太平洋の中に浮かんでいる島ですから、そういう点で言うとアメリカも出ざるを得なかったと思う。  今後、一件落着とはいかないまでも、少しは緊張が緩和されたことについては非常にいいけれども、しかし油断はできない。中国の中がどうなっているかということをこれから日本の方も、自民党の中でもそうそうたる皆さんが連休をにらんでおいでになりますし、小沢一郎さんも何か出かけていかれるそうだけれども、その中で中国軍部とか中国政府とどういう話し合いができるか、そこら辺はちょっとわかりませんが、いずれにしても橋本・クリントン会談でも中台の問題は主要なテーマになってくると思う。  したがって、問題は、李登輝さんが五月二十日に総統に就任される、その前後に中国がどういうことを行うかということだけれども、そんな挑発的なことはしないだろうと私は思っています。甘く見過ぎちゃいけませんけれども、どうもそんなような感じがいたさないわけでもないけれども、その辺はどうでございますか。
  20. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) クリントンさんが日本に来られたときに橋本総理とどういう話をされるだろうかという観点から申し上げますと、中国台湾関係というのは、私は首脳レベルでお話しになっても不思議のない問題であろうというふうに思います。最終的には両首脳がお決めになりますから、我々事務方でどうこうとは申し上げられませんけれども、事務方としてはちゃんと資料は準備するつもりでおります。  緊張が一時と比べれば大分薄まっているというのは確かにそのとおりだろうと思いますけれども、他方、私は余り油断もできない、慎重にやっぱり見ていく必要があるんだろうというふうに思います。恐らく両首脳はお話しになるであろうというふうに思います。
  21. 川橋幸子

    川橋幸子君 今までの小委員会の開催状況の様子を御存じかどうですか、学者の先生、さまざまな専門あるいは立場の方が来られて自由な発言がありましたのに比べますと、きょうはお答えがかなり限定的でいらっしゃるだろうと思うので、何を聞こうか大変迷うところです。別に政府側とかなんとかということじゃなくて、個人的なお立場はとりにくいかもわかりませんけれども、できれば三局長、ぜひフリーにフランクにお答えいただけるとありがたいと思うんです。  直前の回では「結びつく経済、離れる心」というようなキーワードをめぐりましてさまざま質問が出たりお答えが出たりして、大変考えさせられるところが多かったわけです。どういう脈絡で出てきたかというと、中台は、両岸はかつては離れた経済、離れた心だったんだけれども、このごろは結びつく経済になっているけれどもまだ依然心が離れているというような、こんな脈絡で出てきたんです。  それで、三局長さんは、日本政府立場といいますか、個人的にで結構なんですけれども日本立場をお話しになられると思うので、このキーワードを日本の中に当てはめるのは難しいのかなと思いながらも、中台の問題というのは結局日中の問題であり日米の問題であるとすると、日中、日米、その経済面ないしはその心というのは何なんでしょうね。同じ価値観を共有する政治体制ということですかしら。「経済」というのと「心」というキーワードがあるわけですけれども、どんなふうに日本はスタンスをとっていこうとお考えになられるのか、お聞かせいただきたいと思います。  大変漠然とした問いかけでお答えにくいかもわかりませんけれども、秋山局長には、ポスト冷戦は脅威がなくなるというんですかね、脅威論がなくなるはずであると。学者先生の中でも、日米は仲よくしっかり同盟してもらっていいけれども、そこの中に脅威論を持ち込まないでほしいというような話が出てくるんです。脅威論というのは、くっつけるための脅威論あるいは離すための脅威論という、いろいろな外交があるのかもわかりません、軍事上の外交があるのかもわかりませんが、そんなことも少し御参考にしていただきまして日中、日米について。  中台は今回例示的に挙がっているわけです。韓国の話も出てくるし北朝鮮の話も出ますしアジアの話も出るとすると、アジア局長さんには少し応用問題としまして、日本外交防衛政策についてはどんなふうなスタンスをとっていくのが冷戦後はよいのか、基本的なところをお尋ねしたいと思います。
  22. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) お答えになるかどうかちょっとわかりませんけれども、「結びつく経済、離れる心」というのは中台関係を言われているんだろうと思います。私は個人的にあれですけれども、経済の交流が進めばどうしても人と人との交流というものが深まりますから、いろんなことはあるかもしれませんが、長い目で見ればやはり協力の方に心が向いていくのではないだろうかなという感じが漠然といたします。  私は、東京に帰ってくる前、香港の総領事をやっておりました。香港中国の一国二制度のもとで来年の七月一日から中国のもとに入るわけです。中国は主権の問題ということで香港問題を非常に大事にしておりますが、香港から見ますと、香港の経済の今繁栄しているあの状態が中国に入ってもうまく続くようにということで彼らは頑張ってやっているわけです。香港中国の間の経済交流というのは物すごい勢いで進んでいるわけで、私はそれがあるから、香港はああいう小さな存在かもしれないけれども、中国のもとに入っても生き続けられるし、そうしてほしいというふうに思っているわけです。今、先生のお話を伺ってそれをちょっと思いついたものですから申し上げました。
  23. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 今の御質問は非常に根本的なところに触れておられるものですから、私としても部分的な回答ですらないものしかできないので申しわけないんですけれども。  第二次大戦後の世界というものを考えた場合に、西ヨーロッパというものとアジア地域との間には一つの顕著な違いがあったという事実はあると思います。すなわち、西ヨーロッパの方には、国と国との間の相互依存ということと並んで、人と人、民族と民族との間のある種の親和力みたいなものがあったということだろうと思うんですね。特に西ヨーロッパについて申し上げておりますけれども、その両者が兼ね備わっていたと思います。  それに比べてアジアの方を見ますと、国と国との依存関係というものはありますけれども、人と人との親和力というものにはちょっと乏しいものがあったというのが現実ではなかったかというふうに思うわけでございます。したがいまして、NATOのような安全保障枠組みというものはアジアには生まれませんでした。SEATOというのができましたけれども、できた途端にもう活動しなくなって今日に至っているという状況だろうと思います。そのかわりにアメリカが中核になる形で日本それから韓国等と二国間条約というものを網目のように張りめぐらせて、それの積み重ねでもって全体の平和と安定を維持してきたという姿、現実がそこにあったという感じがいたします。  したがって、そういう特性というものを考えてみました場合に、やっぱり相互理解ということは大事なことだろうと思っています。相互理解というものを中国との間であれほかの国との間であれつくることは、言うはやすく行うはかたいことだと思います。しかし、いろいろなレベルでの対話安全保障面での対話ということもそうでありましょうし、文化的な面での対話、人と人との交流というのもそうでありましょう。とにかくお互いの立場に同意するという以前の問題として、相互理解を増進して親和力を少しでも築き上げていくということは一般的に必要なことだろうと思います。ただ、国と国との関係を律していく場合にはまたそれだけでもいかないところがあるだろうという気もいたします。  したがいまして、例えば中国の場合、特に台湾との間での平和的な問題の解決を我々も望むということであるとすれば、中国の改革・開放体制というものをどう位置づけるかという視点が必要になってくると思います。中国が改革・開放体制というものに焦点を合わせて、これが自分たちの国策の第一優先順位の仕事であるということでありますならば、それを文字どおりに追求する中国というものはほかのシナリオのもとにおける中国というものよりも国際社会の平和と安定にとって望ましい中国ではなかろうか。したがって、そこのところは、日本はどういうふうに中国をそういう目標を追求し続けていく存在にするかというような面での考え方も必要になってくると思われます。  とにかくそのようなもろもろの状況というものを総合的に考え中国政策あり方あるいはアジア外交あり方というのを考えていくというのは、これから日本に課せられた大きな課題であろうと思います。
  24. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 政府の職員を離れて私人として答えたくなるようなテーマでございますけれども、防衛局長として答弁させていただきます。  今御指摘のあった結びつく経済は後戻りはないだろうと思いますけれども、離れる心というのは、私流に、まことに個人的な意見でございますけれども、二つの面があるのかなと。やはりもともとその違いはあったんだろうという、つまり本省人、外省人、そういった台湾と大陸の違いというものがあったのに加えまして、最近、台湾における政治制度といいますか民主主義の発展といったようなことも一つ要素として、政治体制、社会体制が少し離れてきているというような問題もあるのかなという気がいたします。  ただ、私がここで申し上げたいのは、そういったことがあろうとも、それがどういうふうにいくか我々はよくわかりませんが、いずれにしても、非常にラフな言い方をすれば、この中台の問題における中国の存在は非常に大きなものではないか。当たり前といえば当たり前かもしれませんけれども、単なる国内問題という意味で私は言っているわけではありませんけれども、北京政府行動といいますか、中華人民共和国行動、物の考え方というのは非常に今後注意していかなくちゃいけない大きな要素ではないかという気がしております。  そういう意味におきまして、実は国防分野でございますけれども、日米安保体制の議論をこの一、二年間、米側とやってきた中で、もちろんこの中台問題も含めた北東アジアの平和と安定にとって中国の存在というものが非常に大きな存在として我々は議論してまいりました。その一つの答えが今度の新防衛大綱に出ておりますところの我が国の「防衛力役割」という役割の中に当然のことながら我が国防衛というのはあるわけでございますけれども、それに加えてより安定した安全保障環境の構築という柱を立て、その中で意識的に考えましたのは、米国日本中国といったような、そういうバイ・プラス・マルチと言うんでしょうか、それぞれバイの関係なんですが、結果としてマルチになるような安保対話重要性というものを非常に認識してきているわけでございます。  したがいまして、もちろん日中の間でもこの安全保障対話というものをバイで強力に進めていく必要はあると思いますけれども、この北東アジアの安定のために、中国の存在というものを十分意識して、この対話の中でいい結果を生んでいかなければいけないといったような認識をいよいよ強くしているわけでございます。
  25. 大木浩

    ○大木浩君 先ほどの台湾関係法と、それからいろんな共同声明があるということで、加藤局長がおっしゃった共同声明との関係ですが、台湾関係法というのは共同声明の枠内で読めると。要するに、それはお互いに矛盾しないというふうに言われたように私は聞いたんですが、そうじゃなかったんですか。では、もしそうでなかったらそれを直していただきたいんです。  いずれにしましても、今の時点におきまして要するにアメリカとしてはどれを基本として台中関係考えておるのか。ただ、アメリカから政府関係者やら議員ばかりじゃなくていろんな研究所からいっぱい紙が来まして、その研究所によって、右寄りとか左寄りという言葉がいいかどうかわからぬけれども、あえて言えば共和党寄りとか民主党寄りとかいろいろありまして、その辺の読み方が多少違っているようにも感じているんですけれども、それをまずどういうふうに見ているか。これが一つ。  それからもう一つ、国連加盟の方は、実は二、三日前にちょうどシンガポールの在京大使と話をしていて、そんなことを言ってみてもどうせ中国が拒否するに決まっているんだからそんなものをやったって意味ないよと彼は言っていましたけれども、国連加盟のことを表にいきなり出さないにしても、これから台湾としてはいろんな意味外交活動と言っていいですかね、やっぱりいろんな国とできれば外交関係、できないまでもいろんな実務関係というのをもっと広げようと思っていると思うんですが、台湾海峡が大変厳しくなる前からいろいろ双方で、中国それから台湾側でそういった努力をしていると思いますが、その辺どういうふうに見ておられるか。それぞれが相当いろんな活動をしておると思われますので、これはファクトとしてどういう状況になっているかということをあえてコメントできるなら、ひとつしていただきたいと思います。  以上です。
  26. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 第一の共同声明と台湾関係法の関係についてでございますけれども、私が先ほど立木先生の御質問にお答えしたときに、三つの共同声明が台湾関係法の枠内に入る、あるいはその逆というようなことを申し上げたつもりはまず全くございません。それは併存しているわけでありまして、公聴会の席上なんかでもアメリカの政府の責任者が、アメリカの中国台湾についての立場というものはこの三つの共同声明と台湾関係法という枠組みである、要するに両方あるということを述べている次第でございます。  議会の中の雰囲気というものについてはもう御案内のとおりでございますけれども、アメリカの政府に限って申し上げますと、アメリカの政府はこの三つのコミュニケを通じてほとんど日本政府と同じ認識を示しているわけでございます。すなわち、中華人民共和国中国を代表する唯一の合法の政府である、そして台湾中華人民共和国の一部であるという中国立場を、アメリカで言えばレコグナイズする、すなわち留意すると申しますか認識するというか、そういう表現でこれを規定している。すなわち、そこは日本の一九七二年の共同声明における取り扱いとほぼ同様の構成になっているということが言えると思います。  それに加えて、国内法としての台湾関係法というものがございまして、これの中で、一定の台湾の安全が損なわれたというか安全に脅威が生じた場合にとるべき措置について大統領議会が協議して決めるんだというような規定でございますとか、台湾に対して十分な防衛能力みたいなものを保障するためのいわば武器の供与を行うとかということが条文に記載されているわけでございます。その二つをアメリカの政府立場からすれば矛盾なく運用してきているということだろうと思います。  また、F16の供与についても、これは中国側から非常に強い反発があったわけでございますけれども、台湾関係法の枠内の問題として処理されており、またそれは共同声明との間の整合性というようなところについても別にそれが違反しているとかなんとかというところで決着がついた話ではなかったんじゃないかというふうに思います。要するに、三つの共同声明はその後といえども維持されつつ、台湾関係法もそこに存在しているという感じであります。  この辺がアメリカの戦略的なあいまいさというところとどういうふうにつながるのか、私も必ずしも精密には申し上げられないんですけれども、とにかくそういう二つの要素を、国内法と共同声明というものの二つの柱を持った枠組みがアメリカの側にはあるということだろうと思います。  それから、国連加盟云々というところでございますけれども、先般の三月二十三日の総統の選挙に先立ち、あるいはその選挙を挟む形で行われた軍事演習、こういったものについての分析というものが海峡の両岸でやっぱり進められているのではないかなというふうに思うわけでございます。  先ほどの御質問にもあって、私がお答えしないでここまで来てしまいましたけれども、中国の方では、独立志向派というのが少なかった、現状維持を求める声が七五%であったという言い方をしており、また台独を主張する民進党の票が二一%であって、そしてむしろ大陸との連携を重視する新党、陳履安の党の票の合計が二五%ぐらいになるので、これはむしろ台独の方が負けたのであるという説明中国はしているというところからいたしまして、そういう論理を構築しているところかなと思うわけでございます。  しかし、この後、李登輝さんの方でも、中国台湾問題にやはりあれだけのこだわりを示している、昨年六月の訪米後の反応ということもまた思い合わせて考えられているのだろうと思います。この後の台湾繁栄、平和、安定というものをどういうふうに維持していくのかということで、まさに今はいろいろ考えておられる段階ではなかろうか。そういうわけで、この選挙での勝利に任せて国連の加盟ということをわっと押し上げて提起するんだというような兆候は必ずしもないわけでございます。  いずれにいたしましても、今、両岸が比較的落ちついた中で双方の関係者が情勢を分析し、これからの進め方を考えているところではないかと思います。
  27. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 外務省に最初にお尋ねしますが、まず台湾の若い指導者層、政治家とか官僚とか、学者も入るかどうかわかりませんけれども、事業家あるいは学生も含めていいと思いますけれども、若いエリート層が台湾の将来について三十年先、五十年先にどういう設計図を思い浮かべているんだろうか。多分調査されておると思いますので、その辺を説明していただければと思います。  というのは、我々にとってはせいぜい二十年先ぐらいを考えればこれは十分なものですから、今までのまま、こういう状態のまま推移するであろうというくらいの気持ちしかないわけですけれども、彼らにとっては五十年たってもまだ七十、八十ですから、当然そこまでの設計がないことには将来の自分の人生設計もできないんじゃないかと思いますので重大な関心を持っていろいろと議論をし考えてもおることだろうと思うので、その辺のところ、わかる限り御説明いただければと思います。  それから、防衛庁については、これはたしか朝日の田岡俊次という記者が、それなりに名前の売れた記者ですけれども何かに書いていたことで、中国台湾に対する侵攻能力はないとはっきり書いていました。なぜかといえば、軍備がすべて旧式である、特に空軍がひどい、ほとんどソ連からの下がり物であって古い旧型のミグであって、それがそのままの状態で使われておる。これに比べて台湾の方は金があるものですから年々新しくなって装備も近代化しておって、とてもじゃないけれども中国は太刀打ちできない、ですから中国軍事力というのは台湾に関する限りはそう恐れるに足らないんだということを書いていたんですけれども、その辺のことは防衛庁はどういうふうに分析しておるのか。この二つです。
  28. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 二十年先、三十年先ということを読み、あるいはそれを現実に考慮に入れた政策、国策を立案していくということは非常に難しいことであるだろうと思います。  私は、台湾の中でそういうような政策形成というのは進んでいるのかどうか、実はこれはつまびらかにいたしませんし、それから若いエリート層と言われる人たちの方向感覚がどういうことであるのか、これもいろいろコミュニケーションの手段ということが限られていることもございまして、十分に把握しているとは申し上げられないと思います。  ただ、一面におきまして、台湾がここまでの経済的な成長とか民主化の推進というものをなし遂げてきたところから見て、今現在の国民平均所得が二万一千ドルを超えるというような状況で、いいところまで来ている、今現実に手にしているところのものがかなりいいものであるという実感はあっても不思議はないだろうと思います。したがいまして、そういう意味での現状を維持し、これを漸進的にさらにもっとよくしていくというような志向が強いというところまでは言えるのではないのかなと思うわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、台湾が今後本当に中長期的な将来ということを考えるのであれば、それは中華人民共和国との間の関係というものをどういうふうにするかということをおいては考えられないわけでございまして、そこの間に平和的な問題の解決を追求していくことがないと、長い目で見た場合の安定とかなんとかに資する結果がなかなか得られないであろうという感じは持っているわけでございます。  これは若干抽象論でございますが、これ以上のことは私としてもなかなか申し上げる基盤を持たないというのが現実でございます。
  29. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 先ほど私が御説明いたしましたように、中国の保有する軍事力というものは規模的には大きいけれども質的には旧式装備が大部分であるということは事実だと思っておりますが、それでは台湾装備は質的に非常に高いかというと、その点については私はそうでもないというふうに認識しております。  特に、空軍について見ていただきますと、先ほどの資料の別紙4というところを見ていただきたいと思いますが、中国戦闘機について見ますと、J6というのは第一世代、一九五〇年代に開発された飛行機でありますから大変古いというのは事実でございます。そしてJ7、これも第二世代ですから六〇年代に開発された飛行機であります。ただ、台湾の方のF5Bというクラスは、これも大体第二世代の飛行機でございますから一九六〇年代の飛行機というふうに御認識いただいてよろしいのかと思います。むしろ中国はSU27、これはまさに第四世代の一番世界的にも非常に力のある戦闘機を一飛行隊今持っているわけでございまして、その意味では台湾は第四世代の戦闘機は持っていないという、そういう格差があるわけであります。  したがいまして、確かに中国は非常に古い飛行機をたくさん持っておりますけれども、質的に比較した場合に台湾が上だということは私は言えないというふうに思っております。
  30. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 日中共同声明のときですが、両方で唯一の合法の政府だということを当時の北京も台北も言っていたから、これはどっちか選ばなきゃしょうがないわけで、北京が唯一の合法政権だということを認めたと。それから、台湾中華人民共和国の領土の不可分の一部であるという中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重したわけですね。しかし、日本は戦争に負けて、台湾を放棄して、その帰属については我々の方から言える立場じゃないというのが当時の立場ですね。それは今でもそうなんだろうと思うんです。そうすると、これは国内問題だとおっしゃる立場は、理解し、尊重するという以上のことは出ないだろうと思うんですが、それを一つ伺います。  もう一つ別の角度を言うと、さっき佐藤委員がおっしゃったけれども、台湾の人たちが先のことを考えるというようなことで、先のことを考えてその意思が政治に反映するような政治制度をつくってしまったというのは、当時と全く違ったと言ってもいいんじゃないかと思うんですが、状況ができてきてしまっているというあたりをどうお考えになっているのか。我が国だけでなしにどの国でも、アメリカでもそうだと思うんですが、両当事者間で十分話し合えと言っているということは、両当事者がいるということなんですね。それは理屈の上で一体どういうことになるのか。あいまい政策でいかなきゃいけないんだったらお答えにならなくても結構ですが、そのあたりを伺いたい。
  31. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 日中共同声明の中の表現、すなわち「台湾中華人民共和国の領土の不可分の一部である」との中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重すると。そこでいわばとどまっておるということはそのとおりでございます。すなわち、理由はまさに椎名先生がおっしゃられたようにサンフランシスコ条約の二条で権原を放棄したわけでございますが、だれに放棄するということを決める当事者能力がない、したがってそのことについて日本が口を差し挟む余地がないということがあるわけでございます。  そこで、国内問題云々ということでございますが、実は私どもは国内問題であるという言い方は必ずしもしておりません。国内問題という言葉でございますが、これは厳密な法令上の定義とかなんとかというのはあるいはないのではないかと思います、すなわち、国内問題であるということを言っても、それが国際的な影響というものを及ぼす場合には、その及んだ国際的な影響という観点からその国内問題について他国がいろいろな発言を行い、立場を表明し、申し入れを行うといったようなことはそれはあり得るわけでございますが、国内問題というその言葉自体が非常に私はあいまいなものだろうと思います。国内管轄事項というようなかたい言葉が国際法的な文脈ではあるようでございますけれども、その内容というものはこれまた時代とともに移り変わりする要素もあると思います。  したがいまして、そこのところは原点のところに戻りまして、共同声明に記載されているとおり十分理解し、尊重しなければならないということでございますが、そこでとどまるわけでございます。  実は、当時大分話題になったと思いますけれども、法匪事件と申しますか、正常化交渉を担当していた高島条約局長が法匪だと言われたエピソードがございました。何をめぐってそういう表現が出てきたかといえば、この理解し、尊重するというところを越えて承認するというところまでは言えないということを日本側が最後まで主張して、それが入ったというそのエピソードの部分を指すわけでございます。  それから当事者のあれでございますが、これについては海峡の向こう側の両当事者、ちょうど民間のあれができておりますし、そこで現実に会って話し合って、そしてできるだけ前へ進めて平和的な解決に資するようなものであるならばそれはそれでいい。もう当事者ということでいえば通ずる感じになっておると思いますので、ある意味ではその当事者間の平和的な話し合いによる解決を求める立場というものを支持するということで、そういう立場を堅持していくことになると思います。
  32. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 日本としては、中国台湾とが平和裏に一つになってほしいとか、そうあるべきだという基本方針がありますね。ところが、アメリカで見ると大体似たような線もあるようだけれども、もし中国武力的な行動をとる場合にはアメリカが武力を発動して台湾を極端に言えば守るという姿勢があるとすれば、必ずしも日本とアメリカのこの問題に対する態度が完全に一致しているとは言いがたいと。特に、日米安保によって日本がアメリカの軍事行動の後方支援的なことをやらねばならぬとすれば、これは中国側から見れば、幾ら日本が平和的に一体になることを願うといっても素直には受け取れない条件がそこにあるのではないかというのが一つです。  もう一つは、そうはいっても中国政府あり方が我々にとって望ましいかというと、これは必ずしもそうではなくて、台湾に対する姿勢もそうですが、例えばチベットに対する態度だって同じような中国政府基本姿勢がそこに出ているとも言えぬことはありません。また現在の、これは小さい声で言うわけですけれども、江沢民政権の基盤がまだはっきりしていない、ややもするとうつぼつたる軍部がこれを引っ張り回す心配が絶無ではない、これは日本の過去を振り返っての反省もあるわけですが。  したがって、我々が平和的に一体になることを望むとすれば、本当に友情に満ちた隣人としてはかなり北京政府にアドバイスすべき問題性を日本は持つのが至当であろう。こういうふうに考えますと、問題はなかなか単純でありませんですね。これで我々が北京に対し、ワシントンに対し、双方を納得させる世界政策基本線を出すということになれば、どういう政策論理が成り立ちましょうか。
  33. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 既に日本がアメリカとの間に日米安保体制を中核とする同盟関係を有しているということで、その問題についての一つ基本的な解決の方途は示されているんだろうと思います。この日米の安保体制というものを、先ほどの北米局長の話にもございましたように、その根本的な考え方、哲学というものの上に立って堅持していって、その上で中国との間でできるだけ建設的なパートナーシップの関係を樹立していく、簡単に申し上げればそこに日本のこれからとっていく道は尽きているのかなという気がするわけでございます。  中国に対しては、これは率直な対話でいろいろなことを伝えなければならないし、また伝えるべきであろうと思います。しかし、それを伝える場合に、これはむしろ戦略に比べれば戦術的な次元になることかと思いますけれども、中国側の人々の胸にやっぱり落ちやすい表現ないしは方途によるメッセージの伝達ということを日本考えていくことが必要であろうと思います。そういうメッセージを中国側の胸に落ちやすい形でなるべく率直に伝えていく過程を通じて、改革・開放体制、これが国策の第一の優先順位の事業である、むしろ軍事的な能力の開発よりも上の優先順位をそっちに与えているという中国基本政策、これが実効性を持って担保されていくような関係日本として構築する、こういうことになるんだろうと思います。
  34. 立木洋

    ○立木洋君 加藤さんに先ほどお尋ねしたときに一つお答えいただけなかった部分があるので、簡単で結構ですが。  台湾問題と言った方がいいか、より正確に言うならば台湾海峡というふうに言った方がいいかもしれませんけれども、この平和的な解決のために日本政府は何をすべきで、何をすべきでないのかという点だけお伺いいたします。
  35. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 台湾海峡の問題の平和的な解決にどれぐらい直接的につながるかどうかは別として、今の日本米国との間に持っている日米安保体制というものが引き続き実効性、信頼性を持って堅持されていくように努力して、そしてこの地域における平和と安定を全般的に保つようにするということが一つの柱だろうと思います。その上において中華人民共和国、これも巨大な実体でございます、そして隣国でございます、との間にできるだけ建設的なパートナーシップというものを築いていって、そしていろいろな問題について要するに話が通ずるように持っていくということであろうかと思います。
  36. 立木洋

    ○立木洋君 すべきでない方、してはならない方はどうですか。
  37. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) してはならないことというのは、これはもう今の私には同義反復をもってお答えするしかないわけでございまして、今のような基本的な政策というものに照らして賢明でない、適当でないと判断されるような具体的な措置はとらないようにするということであろうと思います。
  38. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 中国台湾海峡での演習をめぐる中台関係緊張の中でいよいよ来週日米首脳会談が開かれるわけでございますが、新しい時代へ向けた我が国安全保障考えていく上で、特に基地の島沖縄に住む者としてこの中台関係緊張がどういう影響を及ぼすんだろうかということで非常に注目をしておるわけです。  それで、これまで外務省、防衛庁、それから政府を挙げて御努力をしていることはよくわかるわけですが、正直申し上げましてマスコミ等から伝わってくる首脳会談へ向けた外交交渉の内容に沖縄の県民は期待をしていないというか、また私たち県民のあれが裏切られるんじゃないかという思いが今しているわけです。  安全保障考える上で、私は武力には武力をとか、あるいはかつて冷戦体制の中で沖縄の基地が対ソ侵略から我が国の安全と防衛を守るためにつくられたといってどんどん仮想敵国がふえるのは非常に困るな、こういう思いを持っているんです。中台関係で参考人の先生が「結びつく経済、離れる心」と、こういう表現をしておりましたけれども、結びつく日米、離れる沖縄であっては困るわけで、この中台関係が今度の首脳会談にどのような影響を及ぼすというふうに考えておられるんでしょうか。
  39. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 中台関係で確かに緊張が高まったという事態がありますけれども、私ども東アジア安全保障環境ということを考えますと、既に私どもは冷戦後もこの地域には依然として不安定要因が残っているということをずっと申し上げてきたと思うんですけれども、その認識が今度の中台関係の問題で言ってみれば改めて確認されたということであって、認識自体がこれによって厳しくなったとか特別に変わったという認識は持っておらないところでございます。  沖縄の方々が非常に関心を持って見詰めてくださっているアメリカの基地の整理、統合、縮小の問題でございますが、中台問題があったから私どもが作業を控えただとか、それからアメリカ側が中台問題があるからここのところは今までとは違うんだよというようなことを言ったということは全くございません。中台問題があろうとなかろうと、私どもはずっと努力してきているところでございます。  余り大した結果が出ないのじゃないかというようなことを今おっしゃっておられましたけれども、クリントンさんが来られるまでまだ一週間弱ございます。私どもかなり精力的にやっておりまして、実はきょうもこの委員会が終わったら直ちにまたアメリカ側と交渉をやる予定でおりますし、今、できるだけの成果が出るように日夜努力しているということは申し上げたいと思います。
  40. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今の照屋先生の御指摘は大変重要なポイントでもございますし、今の北米局長の答弁につけ加えて私の方からも一言答弁させていただきたいと思います。  確かに中台問題、緊張問題が起こった一つの結果として、例えば我が国における危機管理体制はどうだとか、あるいはもう少し具体的なことを申し上げますと日米間の防衛協力の問題はどうだろうとか、そういう問題がある意味でクローズアップされたあるいはそういう影響があったということは私は事実だろうと思いますけれども、今申し上げました問題については、実は昨年防衛大綱を策定したときから問題意識を持っていた問題でございます。その点については当然やらなければいけないということで我々は考えておりましたが、かなりこれをクローズアップして報道されたりあるいは議論されたりしたという印象を持つものでございます。  他方で、沖縄の米軍基地の整理、統合、縮小という問題を考える場合において、我々が何度も現時点では次のような方針でということを申し上げておりますのは、日米安保体制の目的達成との調和を図りつつ、現有程度の米軍の機能とか兵力を前提にして何とかその整理、統合、縮小をと、こういうことを議論しておりますが、中長期的に考えた場合に、当然のことながら、我が国を取り巻く安全保障環境あるいは北東アジアのいわゆる軍事状況といったようなものは一つの大きなこれからの検討すべき要素であると思っておりますので、今最初に申し上げたような問題と同時に、我が国を取り巻く安全保障環境の好転といいますか、より安定したものへの我々の努力というものもあわせて我々は議論をしている。  その点が余り脚光を浴びておりませんけれども、そういう点も我々は十分重視しながら、そしてこの沖縄の問題について検討をさせていただいているということを答弁させていただきたいと思います。
  41. 野沢太三

    野沢太三君 秋山さんにお伺いしたいんですが、中国の軍隊が着々と近代化を進めたり増強したり、特に予算の面で見ると軍事費の増強というのは相当なレベルだと私ども拝察しているわけです。一方、その意図というかそういった面では、防衛に徹するということで防衛白書というものも初めて出すということで、いわば防衛的なものであるということも一方で言っているわけです。そういう状況でございますと、私どもとしては、日本中国のいわゆる安全保障対話というものをもっともっと各レベルで促進をすることが極めて必要であり、有意義であると思うんです。  局長は、このお正月でしょうか、中国へも行かれていろいろ対話されてきたんですが、その後それをどういうふうに展開するかということについての話し合いはどうでしょうか。銭其_さんもおいでになった中で何らかの進展があったかどうか、できる限りで結構ですからお話ししてください。
  42. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 一月の日中安保対話における一つのテーマがこの日中安保対話の促進あるいは日中防衛交流の促進ということでございました。  今、大きな課題として我々が考えておりますのは、従来から中国の遅浩田国防部長の訪日というものを実現したいということで、この課題一つございます。それから我々としては、この遅浩田国防部長の訪日とあわせ、あるいは前後して、今御指摘のとおり、各レベルでの防衛交流あるいは安保対話というものを実現したいということでいろいろ具体的な提案もし、現在事務レベルで話し合いをしているところでございます。  一月以降実現した話としては、一つ中国国防省の詹懋海少将が二月に日本にある程度の人数を連れてやってまいりました。このときのテーマは、なかなか私も興味を持ったんですが、防衛庁、自衛隊における教育制度あるいは教育のあり方というものがテーマでございました。防衛庁の新しい防衛政策ということではなくて、教育のあり方、そこに一つまた中国人民解放軍の関心が割合と現実的に示されたということで、私は大変興味を持った次第でございます。  そのほか、例えば自衛官、制服組の交流も、今もちろん少しは実現しておりますけれども、日中の関係でございますから余りにも少ないということで、そういう面での交流考えて今検討をしているところでございます。例えば、日韓の防衛交流が過去二年間に急速に発展いたしました。それと同じような状況が今起こっているかというと、そうでもございませんが、私は楽観的に考えております。
  43. 野沢太三

    野沢太三君 これはひとつ着実に一つ一つ積み重ねて信頼関係を醸成していただきたいと、こう思います。  それから、加藤さんにもう一つ御質問したいんですが、台湾独立は許さないとか阻止すると言っているんですが、民主的に総統を選ぶという手順、手続というのは中国の歴史にとってみればいわば初めての経験であった。こういうこともあって、実は中国として一番心配しているのは、もし民主的なリーダーを選ぶという手法、要するに民主化が本土に及びますと現在の北京政府そのものが否定されるんじゃないかということがむしろ心配の種ではないか、こういう見方一つあると思うんですね。十二億とか十三億とか言われるようなあの大きな国が一つでいること自体が一つの奇跡のような気が私はするんです。  それで、社会主義・市場経済という体制がいつまで続くのか、要するにこれでどこまでやれるのか、非常に私は興味あるし、それがうまくいけば結構なんですけれども、果たしてどこまでやれるのかなと大変危惧もしておるわけです。これはもう個人的見解で結構ですから、ひとつおっしゃっていただければと思います。
  44. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 全く個人的な見解であり、かつわざわざ申し上げるほどのものでもないのかもしれませんけれども、私の感じを申し上げます。  確かにこういう民選というのは初めてのことであったということだと思います。したがいまして、中国の側では今回の台湾のあの総統選挙総統選挙とは呼んでおりませんで、指導者選出の方法の変更というか、そういう表現でたしか呼称していたと思います。  今おっしゃられたような点は、実はこういうレジームということであればそのレジームに不可避的に伴う点であろうというふうに思うんです。まだ今の中国の政権というのも過渡期に特有の不確実性、不確定性というものを国内に抱えて政治運営を行っている状況にあるのではないかというふうに考えます。  中国についての問題点というのは、やっぱり中国が非常に大きな存在であって、これはだれにもうまく中国を自分の意のままに誘導することができない存在だということなんだろうと思います。独立国であればおおむねそういうことだという御意見はあり得るでしょうけれども、特に中国の場合にはこの地球上のだれをもってしても中国をうまく誘導することさえ非常に難しい。まして中国自身が言うようにコンテーン、封じ込めというようなことをしようとしても不可能な国であるだろう、そういう不可能な実体であるだろうというふうに私は考えております。  そういう誘導不可能な巨大な実体というものがあって、その進み方というのは結局その本体自身において決められなければならないことでございますけれども、それでは全く打つ手がないかといえば、ただ供手傍観しているということではなく、その巨大な実体がなるべく我々の目に触れる世界で透明性を持ちながら活動していってくれる、ないしはそういう状況を確保するということだろうと思います。  既にAPECというような枠組みがございます。それからASEAN地域フォーラムのような安全保障対話の場もございます。アジア・欧州対話というような枠組みも新たにできてまいりました。それから、今度ASEANの非公式首脳協議とかいろんな会合があるたびにASEANの側から日本、韓国とあわせて中国に招待方招請があるというケースも多く予想されるわけでございます。そういうふうな枠組みが、政治安全保障、経済、いろんな面にわたってつくられてきて、その中に中国がメンバーになっているという状態が最近顕著になってきているということも、今、先生が御指摘になられましたようなアジアにおけるそういう感じというものをもしかしたら心の底に置いて出てきた話なんではないかという気もするわけでございます。  そういう枠内においてどういうことが結局自分たちの、日本でいえば日本国益にとって一番よい方途であるのかということを考えながら、中国とのおつき合い、中国への政策ということを考えていくということしか実はないだろうと思います。
  45. 高野博師

    ○高野博師君 簡単にお伺いしたいと思います。  今の加藤局長のお話で大体解答はあるのかなと思うんですが、一つはこれから中国が一体どうなるのかということなんです。この膨大な十三億という人口を抱え、そしてまた広大な土地を持っている中国で当然、古い言葉ですが富国強兵、あるいはナショナリズムを高揚する政策をとっていくんだろう、こう思うんです。そういう中で中台緊張とかあるいは天安門事件のようなことはこれからも十分起こり得るのではないかなというふうに私は見ております。  もう一つは、対中国外交政策の我が方のカードとしてよく言われている円借なんですが、この円借というか、そのカードの使い方というか、これが余り上手でないんではないか。核実験をやったときにすぐ円借をやめるぞということを言って、かえって逆に賠償問題を持ち出すぞということでおどされるとかそういうこと。今回は政府は円借の話は全くしませんでしたけれども、与党の一部の政治家は円借はやめるべきだなんということも言っている。したがってこのカードそのものは中国に対しては余り効き目がない。したがって、この外交のてこというか、カードはまた別なものを考えるべきではないかというふうに私は思っております。  中国人の物の考え方一つとして、本音を言うのは余り尊敬されないということで、特に中国にとっては経済的な問題が一番痛いところ、そこをこの円借を絡めて言われることは一番嫌なところで、そういうやり方は再検討する必要があるんではないかというふうに私は思っております。簡単で結構でございます。
  46. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 中国に対する円借というのは、単に円借という以上の意味を持っていると思います。それは、今のような日中関係を下から支える最大の柱としての役割を果たしているということだと思います。この円借が、言葉をかえて申し上げれば、中国が改革・開放体制、改革・開放政策、これを追求することを可能にする非常に大きな道具立てになっているということだろうと思うので、その意味というものを看過してはならないというふうに思います。  現実に中国に対して円借をどういうふうにするかということは、今申し上げました円借がエキストラに持っている重要な意味も踏まえて、そして慎重に検討されるべきものだというのが政府立場でございまして、それ以上のことをこれまで申し上げたことはないと思います。
  47. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時五十七分散会